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　やわらかな夢寐。いまがくるしいなら、おれが、うんと、だきしめて上げる。ここには、なきむしがいるって。きいたことある？ようせいの偽言にはだまされないで、いっしょに、ねむろ。

　あたたかなかぜの先に垣間見る翳り。あれは。視線を、ゆる、り、うごかした。まぶしくて、うっかり眇む。太陽でしょうか。はたまた、お月さまとよぶべき？

　胎盤の滋養の如く、肝腎な心胆となずきとを、同様にさずかった。白眉の容姿も、下賜されたんだよ。蠕動の末、先にうまれたのは、おまえだったらしーね。そのあと、ずうと、蔑まれたのは、だれだっけ。

　そういえば。さいごに、ころされたのは。あれ？ころしたのは？だあれ。

　暗澹に、靉靆。

　オレがそれらに呑み込まれる最中。

　僕の名前を、宙が称した気がしました。

　あはは。うみのなかのくせに。あたたかかったんだよ。ひとの、つめたい、ぬくもり。

　ええ。そのときに醒めて、しまった、きがしました。総てをつつみこむような、その称呼が、きこえて。

　あれは、おまえだったのかな。はたまた、おれ自身だったのかなあ。

　靡く髪が、ずるりと剥ける。

　髪を撫ぜた感触のさきは、きもちわるかった。隠蔽した夢見鳥は、当然、無に帰す。だって、おれが。しずめたから。

　轟く鼓動と塵芥とは、一縷のいとのくせに、プツ、とイヤなおとをたてて、とだえました。それはーーが、ーー。

　ただただ、今も燃えさからんとするものは矜恃のみだった。

　つきは、きれいだよ。しかしお月さまは、太陽に照らされることで、はじめて存在を成すんです。だって。

　おれは、うっかり、つきを、嚥下しちゃったのかな。だって、つきが、いなくなっちゃった。こんなに、さびしい。

　揺蕩う。

　あれ。どっちが、しんだんだろう。なにがしんだ？ひゃくねんは、まだ？

　おつきさま。つぎは、ベニクラゲになりたいよ。そしたら。鵲の橋を仰視するしかなかったつめたさと、いま、そこまでのみちのりの船賃を、どう稼ぐかなんて、かんがえなくていいんだもん。ね。

　いまは、こうしてことばをこぼして、どうにか、こうにか、ここに在りつづけるもくてきと、かちを、さがしてる。

　催涙雨のこえが、きこえる。カワイソウって。それがいちばん、かなしいことも、雨はしらない。開豁なうみに還るまでに、雨はいじわるをして、勝手にきもちよくなって、おだやかなフリをしてるだけだった。

　それにね。百合のはなだって、つきあかりに照らないと、太陽のせいで、また、キタナイこえがきこえちゃう。こわい、こわい、しょくぶつ。

　あの翳りで、うすら、えみがみえる。酷くなつかしいこえで、百年は、来ない。と、なく、あ。ーー、けっきょく。さびしいのは、かわんない。かいぶつは、ようせい。ようせいは、…。

　ほしくずがおちてた。ほしくずの、ばらばらの、てがみ。

　よるは、たしかに、ここに在る。天をみあげれば、つづみ星はあるし、月魄はある。しずかにねむる大衆をおいて、にんぎょにはなれない。ただの、にんげんが。たまらずうみにとびこんだ。

　おいで、みどりご。きっと、ここなら、だいじょうぶだから。

　こうしん。2021ねん 2がつ 16にち かようび。

　あきたらけす。いっかいやすみ。もういっかい。こんどはおまえといっしょに、やりなおし。