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大学の頃、無差別にデータをぶち込んでいたHDD内のフォルダ〈いつか整理する〉がたぶん消滅した。〈い.ai〉、〈ろ.ai〉、〈は.ai〉、〈に.ai〉、被ったら〈い1.ai〉、〈ろ1.ai〉・・といった要領でそれはそれはお粗末に名付けられた可哀想なデータたちだったけど、当時の疾走感がそこにはずっと残っていて好きだった。そしてそこには私の大切な大切な卒業制作のデータも入っていることに私は気づいていた。iCloudとかもよくわかんなくて同期とかしてないし、本当の本当にそこにしか入っていないデータだった。ポケットティッシュやカレンダーのデータはよく使うので、雑にではあるがデスクトップに並べられていたのが救い、他はたぶん全部消滅してしまった。たぶんというのはその消滅の仕方にあって、もしかしたらもしかすると復元できる可能性がなくもないという消え方をしているので。寝起きの同居人が一生懸命復元方法を検索してくれている。目に縦に跡が入ってシャンクスみたいになっている。私も「HDD 復元」とかで調べるけどPC自体もだいぶおじいちゃんなので、いつもと違う負担をかけることで爆ぜ、デジタル作業が何もできなくなることだけは避けたい。個展まで2ヶ月を切っているのでね。(これでも焦りでひと吐きできる)よく考えてみると直近で必要なデータはそこにはない。何も絶望する必要はない。けれどあのデータたちは私にとって実家の倉庫に置いてきた今後絶対使わないけど捨てたくないものと同じで、自分でももう何を置いてきたかもわからないし、それが必要になることもここ何年かはなかったし、でももしかしたら大切なものが混ざっているかもしれない(実際そうだった)可能性を秘めし存在だったので。「カエちゃんの部屋にあったやつ全部捨てといたけんね」と実家から電話がかかってきたことを想像してみたけど、そうですね、やはり同じ喪失&不安だ。シャンクスと一緒に復元のことを考えてもみたけどもう仕事へ出かける準備をしたい時間になっていた。昨日いい匂いのお店で注文しておいた化粧水が届いていたのもまた救い。もうこれはきっと今までのことに目を向けるな☆前へ進め☆断捨離☆断捨離☆という思想が強くなってもきたけど普通に無理だった。シャンクスが夕方にコインランドリーに乾燥に行く洗濯物をもう朝まわしておいてもいいんじゃないという意味不明の提案をしてきて絶望のエネルギーが少し怒りのエネルギーに変換された。よくないよくないと思い謝ったけどシャンクスは「いいよぉ全然気にしてないよぉ」と斜め下を向いて笑っていた。でも彼は昨日私が適当に温めたまだポソポソの中華ちまきを「出汁が効いてておいしい」と言うような人なのでシャンクスはわからない。傘をさして口紅を塗りながら駅まで歩いて電車に乗って、外が見える場所の吊り革を持てたのでぼーっとした。西院駅に差し掛かる前にあるトンネルで急に窓にうつった自分は思っていたより悲壮感に溢れていて気まずかった。お昼は成城石井のベーグルです。敬具
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