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gotoda4 · 4 years
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『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』
《あらすじ》
6歳のムーニー(ブルックリン・プリンス)とシングル・マザーのヘイリー(ブリア・ヴィネイト)は定住する家を失い、“世界最大の夢の国”フロリダ・ディズニー・ワールドに隣接する安モーテル「マジック・キャッスル」でその日暮らしの生活を送っている。
シングルマザーで職なしのヘイリーは厳しい現実に苦しむも、ムーニーから見た世界はいつもキラキラと輝いていて、モーテルで暮らす子どもたちと冒険に満ちた楽しい毎日を過ごし、管理人ボビー(ウィレム・デフォー)はそんな子どもたちを厳しくも温かく見守っていた。
そんなムーニーの日常が、ある出来事をきっかけに大きく変わりはじめる…。
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《感想》
「衝撃のマジカルエンド!子どもの目は魔法の虫眼鏡、すべてが魔法に変わる。ディズニーランドのそばに立つ安モーテルを舞台にアメリカの低所得者の生活をリアルに描くすごさ。」
『フロリダ・プロジェクト』というタイトルを見て、フロリダ計画?フロリダビジネス?と、意味が気になったので「プロジェクト」の意味を調べてみたら一般に日本で使われているような計画や事業の他に「低所得者向けが多く住むスラム住宅」のことも指しているそうで。
つまり『フロリダ・プロジェクト』っていうのは「フロリダのスラム」という意味なんだけど、ポスターを見ても本編のワンシーンを見てみても「スラム」にしては雰囲気がポップですごく明るいので、まだ本編を観ていない人からしたら違和感しかないよね。
“世界最大の夢の国“フロリダ・ディズニー・ワールドでは周辺にたくさん「モーテル」と呼ばれる簡易宿泊所があって、高級なホテルの近くに乱立してるんですが、そんなモーテル街の中に、「プロジェクト」と呼ばれる超オンボロの公営住宅地みたいな住宅が建っているそうです。
そして今作の主人公ムーニー(娘)とヘイリー(母)が暮らすのはそのオンボロ住宅地の「プロジェクト」ではなく実は「モーテル」の方。
「プロジェクト」ってタイトルがついてるのになぜモーテルなのか。この親子はその日暮らしの生活を送ってるってあらすじにも書いてあったのに。
なぜなら、彼女たちは低所得者が住む「プロジェクト」にも住めない“超超“低所得者だから。つまり本来定住する場所でない宿泊施設を居住地として生活をしているのです。
日本で例えるなら漫画喫茶に泊まってその日暮らしの生活をしているような感じでしょうか。
モーテルなら電気代、水道代、ガス代はかからないし、洗濯機も公共のものが設置されてて宿泊代だけで、結果的には安いのかもしれない。
☆この映画のすごいところその1
1,本編のほとんどの場面が子どもの視点(地上1メートルほど)で描かれるということ。
そのため大人は足のみ写されることが多い。
大人は毎日の食事代にも苦労している状態で、教会の炊き出しに参加することも。このような人々の生活に関する重要な情報を見る人に与える時は、大人の視線に合わせたアングルになりますが、しばらくすると主人公のムーニーの視点の高さに戻ります。
このような複数の視点を組み合わせることで、視聴者に「そこで何が起こっているのか」を理解できます。ベイカー氏は「炊き出しがどんなものなのか」ということそのものを描きたいのではなく、「ムーニーにとってそれらがいかに当たり前のことなのか」を描こうとしているのです。この点が非常に見事とのこと。
映画における重要なシーンは、このようにほぼ全てが「子どもの視点」で描かれます。例えばムーニーの母親の売春に気づくシーンは以下のような感じ。ムーニーがお風呂に入っていると
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ガチャッと部屋の扉が開く音がひびき、姿は見えないものの、誰かが入ってきたことがわかります。
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「子連れなのか?」
「だから入るなって」
母親が男性とやりとりしている様子が声だけで聞こえ、状況が直接描かれるわけではありませんが、ムーニーの体験を通して母親が売春を行っていることがわかるわけです。
さらにこのムーニーの入浴シーンはこの"母親の売春を悟ったシーン"以前に何回か登場しており、1回目はムーニーの髪をヘイリーが洗ってあげているシーン、このとき浴室に音楽は流れていません。
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2回目以降はいずれもムーニーひとりで、浴室には大きめの音でクラブ音楽が流れています。一定時間映した後に何事もなく次の場面に切り替わり、少し不自然です。
このことから今までの入浴シーンの裏では、ヘイリーが売春を行なっていたのではないかと推察できます。
つまり、我々もムーニーと一緒でこのときは母親の売春に気づいていない、そうムーニーと同じ体験をしているということになるわけです。
これすごくないですか。ほんとすげー。
そして、物語の後半でヘイリーが9人の男性を家に招き入れているところが防犯カメラに写っていたことから複数回に渡って売春をしていたことが管理人のボブにバレてしまう所で、この推察が確証に変わるところまでバッチリ。
☆この映画のすごいところその2
ヘイリーとムーニーがこのまま暮らしていくことが危険だと判断した児童保護局は、ムーニーを一時的に離し、施設に送ることに。最後のお別れのあいさつをしにムーニーはスクーティーの元へ。そしてその後ジャンシーの元を訪ねるが、スクーティーの時とは違ってなぜか涙が溢れてくる。
いつもは気丈な性格のムーニーが泣きじゃくる姿を見てジャンシーは「ムーニー、恐いよ」
ムーニー「あんたは親友よ、でもきっともう会えない。」
「あのね、言えないよ…」
そして震える声を振り絞ってついにジャンシーに
「バイバイ」
と言う。
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で、ここの演技がとにかくすごい。
きっとムーニーはディズニーワールドがどんなところか知らなかったはず。ヘイリーとムーニーが盗んだマジカルバンドを観光客に押し売りするシーンで、もしディズニーワールドがどんな場所か知っていたらマジカルバンドをお金と交換とはいえ、子どものムーニーなら手渡していないと思うのです。
ヘイリーもディズニーワールドに行くお金なんてないから、ムーニーに知らせないようにしていたのではないでしょうか。
ムーニーにとってはさびれた廃墟や、牧場のサファリパーク、アイスクリーム屋がテーマパーク同様だったのでしょう。
そんなムーニーがディズニーワールドの世界を初めて知る瞬間がこのラストシーン。
私的にですがこの結末からは、
子どもは親の経済状況に大きく左右される傾向にあり、生まれた環境で人生の可能性が制約されてしまう。だけど、世界の全てを「遊び場」に変えることができるってこと。
またそういう世の中に対して必死で歯向かって行く子どもたちの強い意思を感じました。
『“イマジネーション“というどこにだって行ける足がついていれば世界は全く違う色に見える。』
そういうことよな、多分。
私この映画めっちゃ好きだ!ムーニーとジャンシーありがとう!!
いつかシンデレラ城でふたりで暮らすんだぞ!
めちゃ良い映画です!!
《番外編》
☆好きなシーン その1
映画はヘイリーの娘であるムーニーと、同じモーテルに暮らすスクーティーが隣のモーテルに暮らすディッキーから「新しい住人が来た」という報告を受けて見物しにいくところから始まります。
3人は新しい住人のものと思われる車に2階から唾を飛ばし誰が1番遠くに飛ばせるか勝負をして遊んでいたが、このいたずらが持ち主の��ばさんに見つかってしまい大目玉をくらうも3人はクソババアなどと汚い言葉を連発し、無敵の様子。このあと罰として車を掃除させられることに。
この件をきっかけに、今まで一緒に遊んでいたディッキーが外出禁止になってしまい、仲間を失ってしまった代わりに、唾を飛ばされたおばさんの孫にあたるジャンシーを新たに仲間に加え子どもたちは毎日のように探検に出かけるようになる。
手始めに2人は、“新人”のジャンシーをいつも探検しているスポットに案内。アイスクリーム屋の前を通りがかったところで
ムーニー「ここはタダなんだよ」
ジャンシー「本当?」
ムーニー「ちょっと来てみ」
ムーニーが観光客に「お金ちょうだい」と明るい声で小金をせびり、平気で「医者から喘息って言われてるの」とかえげつない嘘をつく 笑。
で、タダでアイスクリームを買うことに成功 笑。
帰りは3人で1つのアイスクリームを一緒に食べながら歩く。
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その後も3人の探検は続きます。
モーテルのプールに死んだ魚を浮かべて生き返るかどうか実験したり、チップをくれない観光客に水風船を投げつけたり、モーテルの立ち入り禁止の機械室に入って施設のブレーカーを落としたり、プールで裸で寝ているおばさんに遠くから「垂れパイ、垂れパイ、バナナパイ」とリズミカルに囃し立てたり、おばさんに服を着るように注意��るボビーに向かって「ボビー、パイピー」と大声で叫んだり笑
ここはめちゃくちゃ笑った 笑。
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これらの探検を彼らの視点で写すことで、まるで視聴者も子どもたちと探検をしているようなワクワクした気分になるのだ。
3人の探検はどんどんエスカレートしていき、ある日廃墟に忍び込んで暖炉に枕をつめて火をつけ逃げ出してしまう。誰にも内緒と3人で固く約束を交わすが、後で廃墟が大火事になったことが判明。
スクーティーの母親(ムーニーの母親ヘイリーと仲が良い)は息子の挙動不審な態度から放火をしたことを悟り、ムーニーとジャンシーと会うことを禁止し、さらに以前から仲が良かったヘイリーともほぼ縁を切る状態に。
☆好きなシーンその2
ヘイリーはスクーティーの母親の態度がいきなりそっけなくなったことに異変を感じて、彼女のバイト先であるファミレス?にムーニーと共に向かう。
彼女の名を指名し、嫌がる彼女に強制的に注文をとらせるが、ヘイリーは「ムーニー、なんでも頼んで、今日は1日中いるんだから」と言う。それを聞いたムーニーは目を輝かせながら次々と注文をしていく。
「ストロベリー・ワッフル、あたたかいメープルシロップめっちゃ追加で、ベーコンエッグ、ストロベリーとブルーベリー、コーラ、ルートビア、レモネード、ソーダ。ママは?」
ヘイリー「それだけ?なんでも頼んで良いって言ったのに」
ムーニー「じゃ、ベーコン追加で、山盛りだからね、それとゼリーも忘れないで」
さらに親子は店内で好き勝手やる笑
ヘイリー「ゲップ大会やらない?」
ムーニー「マジですか!?」
すると、ムーニーがでっけえゲップを1発店内に響かせる笑。1回じゃ飽き足らずさらにもう1発をお見舞い 笑笑。
スクーティーの母親も呆れ顔、痺れを切らしてテーブルに伝票を叩きつけます。すげえ嫌がらせだ笑。
☆好きなシーンその3
ムーニーとジャンシーがマジック・キャッスルの上にかかる虹を見て話すシーン
ムーニー「虹の始まりって金色なんだ、妖精は麓に金貨を隠してる」
ジャンシー「でも分けてくれないのやさしくないよね」
ムーニー「よし襲っちゃえ行こう!」
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☆好きなシーンその4
ヘイリーとムーニーが近くの高級モーテルの宿泊者専用のバイキングに宿泊者だと偽って行くシーンにてムーニーの発言
「ストロベリーとラズベリーの同時食い」
「フォークがアメだったらいいのに」
「私、妊婦みたいにお腹が大きかったらごはん詰め込む」
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