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卓司「それは、すでに完了しているから?」 リルル「いいえ」 リルル「pが未来に起こることでも∀w.pw→p@よ」 卓司「そうなんだ」 リルル「うん」
ゲーム「終ノ空」(ケロQ、1999年)、シナリオ: SCA-自
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「話が作り物になった以上は、いっそのこと、めいめい作り話をすることにしましょうよ。ぜったいに自分で考えた話でなくてはいけないことにしましょう」 一番手になったのは、はたしてまたベロヴゾーロフです。 若い軽騎兵は困って、 「私は何も考えつきませんよ!」と大きな声で言いました。 それを受けてジナイーダが言いました。「そんなつまらないことおっしゃらないで! じゃ、たとえば、奥様がいると想像して、奥様とどんなふうに過ごすか話してくださらない。どこかに閉じ込めてしまうかしら」 「閉じこめますね」 「そしてご自分は奥様につきっきりでいるかしら」 「つきっきりでいるにちがいありません」 「わかりました。じゃ、もし奥様がそれに飽きて裏切ったらどうなさいます」 「殺すでしょう」 「奥様が逃げてしまったら」 「追いかけていって、やっぱり殺してしまうでしょう」 「そう。じゃ、仮にですけど、私が奥さんだったとしたら、どうなさるかしら」 ベロヴゾーロフはしばらく押し黙ってから、こう言いました。 「自殺するでしょう」 ジナイーダは笑いだしました。 「決めるのがお早いこと」
トゥルゲーネフ 『初恋』 沼野恭子訳、光文社〈光文社古典新訳文庫〉、2006年、107頁。
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でも待った。そんなストーリー展開はどうだろう、ちょっと学君がかわいそうすぎやしないか? いや、物語的には、ちょうど良いよ、だってこいつロクな事してねえし。そうだね、因果応報、クズにはクズの運命を、ってことで、なかなか教訓的でいいじゃないか、反面教師。 いやいや、クズはクズなりに頑張った、ところもないわけじゃない、九条さんが隠しているのは、もっと��村くんにとって嬉しいことだった、という感じでもいいんじゃないかあって思うんだけど? えー。えー。だってどうせ木村学だしねえ。だってどうせ木村学だよほんと。え、うん、まあ、言われてみるとそうだね。そうだよ。そうだよ。 うんそうか。一致団結、ってことで、どうせ僕なので、どうせろくでもない運命が、どうせ待ってるっぽいらしいぞどうせ。それで良いのか。って、良くないよ、なんとかしなくちゃあ。と木村学は思いました。かといって木村学の脳裏には何も良案が浮かびません。実はそのとき木村学はただもう不安と焦燥に追われて、気が変になりそうで、そんな自分を抑えるので精一杯だったのでした。っていうか、ほとんど押さえられてないんだけどね。 僕は気がつけば銃を握っていた。そして漠然と考えていた。 これをくわえてちょうど銃口が頭頂を射抜くようにして引き金を引けば、38口径のフルメタルジャケットが僕のこのぐちゃぐちゃした思念や人格や記憶のからみついた脳みそを吹っ飛ばして破壊する、そしたらすっきり綺麗に大解決じゃねえの?
S.M.L.「CARNIVAL」 シナリオ: 瀬戸口廉也
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「こんな話がある」 「世界を一つの論理に しようとした若者がいた」 「頭のいい彼は その夢を実現し」 「一歩下がって出来栄えを見た」 「美しかった」 「不完全も不確実なものも ない世界」 「地平線まで続く きらめく氷原」 「若者は自分の世界を 探検することにした」 「踏み出した彼は 仰向けに倒れた」 「摩擦を忘れていたのだ」 「氷はつるつるで汚れもなかった」 「だから歩けない」 「若者はそこに座り込んで 涙にくれた」 「でも年をとるにつれ 彼には分かってきた」 「ザラザラは欠点ではなくて」 「世界を動かすものだと」 「彼は踊りたくなった」 「地面に散らかった物や言葉は」 「汚れて形も定かでなかった」 「賢い老人は」 「それが あるべき姿だと悟った」 「それでも彼の中の何かが 氷原を恋しがった」 「そこでは すべてが輝き 純粋で絶対だった」 「ザラザラの地面はいいが」 「彼には住めなかった」 「それで 彼は地面と氷の間にいて」 「どちらにも安住できなかった」 「それが 彼の悲しみのもとだ」
映画『ヴィトゲンシュタイン』、1993年、アップリンク 監督:デレク・ジャーマン 脚本:デレク・ジャーマン、テリー・イーグルトン 和訳:関美冬
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愛する人を殺すのは二度目だった。 もしかしたら死んだのはブレティラのせいじゃないよと許してくれるかも知れない。あるいは罵倒してくるのかも知れない。 どちらでも良かった。 ただ、そばにいてもう一度声を聞きたかった。 『どうせなら人魚姫みたいなのが良かったな』 リリーの言葉をもう一度思い出す。 しかし今あるのは真っ白な灰だけだった。吸血鬼は奇麗な泡にはなれないみたいだ。 「私はどうすれば良かったんだ」 ネックレスを握りしめ私は自問自答する。死者は答えてくれない。私の中で生き続ける死者は結局の所、私だ。 「私が旅に出ようと言い出さなければリリーは助かったの? でもそれは貴方を裏切ることになる」 愛する人を天秤にかける。これほど残酷な事は無い。どちらも愛しているのに、商品や金みたいに扱うなんて私には出来ない。 幸せになれる可能性を頭の中で追い求めてしまう。 私がもっとワガママだったら、彼女達は助かっていたのだろうか? 私はリリーだった灰をかき集める。せめてリリーのお墓を作りたかった。
落果聖『孤独の城のリリー』〈タイニー文庫〉、2016年
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「ご、ごめん」 「いいって言ってるでしょ」 「ごめん」 僕の頭は自然と垂れた。ロンドは抱き枕を抱(かか)えるとベッドに腰(こし)を下ろして言った。 「でも、ここ何日間かは会わなくて正解だったかもしれないわよ。わたし、ほんとうに怒(おこ)ってたんだから。それこそ、怒(いか)りで髪(かみ)が金色に逆立って伝説の戦士になるくらいに」 「いや、元から金髪(きんぱつ)だし」 「でも、その時ふと思ったの。わたし、ここしばらくこんな想(おも)いや気持ちになったことあったっけ、って。世界はいっぱい出来事に満ちていて、知らないことがたくさんあって―――それをわたし、久しぶりに味わってるって。子供の頃(ころ)は毎日笑ったり泣いたり怒ったりしていたわ。でも、いつのまにかそれは長くて平べったい時間の中に溶(と)けていって⋯⋯。そりゃあすごくびっくりしたし、怒ったし、わんわん泣いちゃうくらい悲しかったけど、それもこれも、全部ベッドの上でじっと天井を見上げて自分が死ぬ日を数えていた頃には味わえなかった感情なの。いつしかわたし、そんな自分に慣れていたのね」 「ロンド⋯⋯」 「だからいっぱい感情が溢れちゃって。わたし、ログといるときはいつもそうなの。いつもテンションが高くなってしまうの。ふだんはもっといい子なのよ」
清野静『さよなら、サイキック 1. 恋と重力のロンド』 株式会社KADOKAWA〈角川スニーカー文庫〉、2016年。
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──が、結論から言うと、しっかりばっちりこれ以上なく楽しんだ。 まず単純に、映画の出来がよかった。脇役まで見せ場がある脚本は見事だったし、戦闘シーンの作画はすごかった。音響は迫力があり、声優さんの演技も光っていた。意外性はなかったけど、テレビシリーズのファンを全力で楽しませる! というスタッフ��誠実さが伝わってきた。 劇場で観(み)てよかった。 そしてなにより、結月と観にきてよかった。 当然、上映中はひとこともしゃべらなかったが、お互いの気持ちが文字どおり手に取るようにわかった。 つまり『おっ』とか『ウケたw』とか『いまのよかった』とか『ここ好き』とか、そういうふうに思ったとき、俺たちは手の握り方で、相手に気持ちを伝えた。 どちらからやりだしたかは定かじゃない。最初は無意識だった。感情が高ぶると、自然と手に力が入る。それをいつの間にか意識的にやるようになり、序盤の山を越えたあたりからすっかり暗黙の了解になっていた。 もちろん俺と結月では、反応するポイントに差異がある。俺はヒロインたちのかわいさ優先だし、結月は仲間の絆(きずな)が垣(かい)間(ま)見(み)えるさりげないやりとりがお好みのようだった。 でも時折、完璧に嚙(か)み合(あ)うシーンもあった。 同時にぎゅっと握り合うのだ。 その瞬間、俺はうっかり泣きそうになるくらい胸が熱くなった。 楽しいとも嬉(うれ)しいとも微妙に違う。 なんというか、そう、たまらなく、幸せだった。 ──ああ、そうか。幸福ってこういう気持ちを言うのか。 エンドロールが流れているとき、不意にそのことに気づき、俺はけっこう動揺した。 俺にとって〝幸せ〟とは、異世界でハーレムを築くことにほかならない。 なのにこの世界で、こんな些細なことで、俺は幸せを感じてしまった。 それはつまり──
暁雪『異世界とわたし、どっちが好きなの?』 株式会社KADOKAWA〈MF文庫J〉、2016年。
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アイは食べた。山ほど食べた。大(たい)盃(はい)を干すようにスープを飲み。パンをがつがつと喰らい、ベーコンを噛(か)み砕(くだ)く。 塩と水が補給されて新しい涙(なみだ)があふれ出した。それと同時に麻(ま)痺(ひ)していた悲しみが疼(うず)きだす。 自分がこうして食べ、眠り、生きているという事実がひどく申し訳なかった。先立つものがなければ涙も出ない自分が疎(うと)ましかった。 ご飯なんて食べたくなかったはずなのに、おいしいからと、簡単に食欲を取(と)り戻す自分が絶望だった。 罪悪感が嗚(お)咽(えつ)になって首を締(し)め付(つ)けて、望んだように食事が喉を通らなくなった。悲しみが心地(ここち)よく気力を奪った。 このまま死んじゃおうかな⋯⋯と思う。 そうするだけの理由は十分にあると、アイは思った。 ここでずっと泣き続けて、首を絞(し)められたまま悲しみの海に沈(しず)んでしまいたかった。心の��底で、それが最もきれいな結末だという気持ちが消えなかった。 アイが静かになってしまうと、居間にはもう何の音もしない。 「わあぁ――!!」 アイは突(とつ)然(ぜん)雄(お)叫(たけ)びを上げて顔を上げ。パンを千切っては食べ千切っては食べ。ベーコンをむしゃむしゃした。無様にわんわんと泣きながらわけも分からず飯を喰った。 いまはただ、そうしなければならないのだと感じた。
入江君人『神さまのいない日曜日』 富士見書房〈富士見ファンタジア文庫〉、2010年、71頁。
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仕方が無い、と思いながら、それでも切なさに胸が苦しくなってしまう。美優は、本当に困った様な顔をしていた。私が本当に困ってしまうのは、曇り気味な表情すら、美優は本当に可愛いと思ってしまうこと。何をしていても、どんな顔でも、きっと泣き顔でも可愛いと私は思ってしまうのだろう。恋の病も極まると此処まで至ってしまうらしい。それでも私は、徐々にその病が治まっていってくれてると感じていた。初めてキスをした時より、そして昨日より、私は純に美優の幸せを願えている。やがて醒めてしまう夢なのだと、私はちゃんと分かっているから。だから少しずつでも、美優を元の幸せな場所へ帰してあげないといけない。そう、心から思っていたのに。「……帰りたくないなぁ」どうして、美優はそんな言葉を紡いでしまうのだろう。静寂が、私と美優を包む。時間が少しずつ、少しずつ過ぎていく。魔法が解けてしまうだろう瞬間が近付いて来る。切なげな声を零した美優は、私と視線を合わせない。私は息をするのも忘れて、ただ静かに鼓動の高まりだけを感じた。「……また、喧嘩しちゃったんです」また、一言。美優はグラスに口を付けて、お酒を口にして、細く溜め息を溢れさせた。ついうっかり、という感じで美優は何処か苦しそうに声を紡いでいく。私にはどうしてもその姿が隙だらけに見えてしまう。そして困った事に、美優はその隙を意図して見せているようにも感じてしまう。だから私は、その隙に付け入るしかない。この夢が醒めてしまわぬ様にと。
クリティカルエラー - 支倉薪人 - pixiv
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仕方なく子どもの本を手にとり、読みはじめた。著者から贈られたものだが、すぐに放りだした。すっかり腹がたったのだ。なぜか。著者が自分の読者である子どもたちに、ほんとうに信じこませようとしていたからである。子どもはいつも陽気で、どうしていいかわからないくらい幸せなのだ、と。このいかさま作家によれば、子��も時代というものは極上の生地で焼いたケーキということになってしまう。 どうして大人は自分の若いときのことをすっかり忘れてしまうのだろうか。子どもだって悲しくて不幸になることがあるのに、大人になると、さっぱり忘れてしまっている。(この機会に心からお願いしたい。子ども時代をけっして忘れないでもらいたい。どうか約束してもらいたい) 人形が壊れたからでも、あとで友だちを失ったからでも、泣く理由はどうでもいい。人生で大切なのは、なにが悲しいかではなく、どれくらい悲しいか、だけなのだ。子どもの涙が大人の涙より小さいなんてことは絶対にない。ずっと重いことだってよくある。どうか誤解しないでもらいたい。不必要にメソメソしようと言っているのではない。つらいときにも、正直に言ってほしいだけなのだ。骨の髄まで正直に。
エーリッヒ・ケストナー 『飛ぶ教室』 丘沢静也訳、光文社〈光文社古典新訳文庫〉〉、2006年、18頁。
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多米が三十年間覗き見を続けて獲得した技を、野実は何百行か何千行かの作業手順にまとめ、どんな人間にも利用できるようにマニュアル化するためにここへきている。多米自身の依頼によるものだ。純粋に商業的な観点からの取り組みであり、多米は別にその技術を標準化して売り払い、小金に換えて一時の腹を満たそうとしているわけではなかった。穏当な知的所有権を設定し、自分も経営に参加することになる会社でそれを手広く扱いたいという、ひどく常識的な判断だった。 「それは勿論、自分が何をしているのか、何をできているのかを知りたいっていう好奇心もありますがね」と言う。「自分がどういう手順でものを食べているかを知ったからって、食べるってことについて何かがわかるわけでもないんでね」と言う。「でも、食べ方がまずい人の食べ方をましにすることはできるわけでしょ」 「この手の動きが」と言う。「わたしですよ。他の人には理解できないわたし自身だ。わたしにしか理解できないものなのに」と笑う。「標準化して広く行き渡らせることはできる。コピーとして、クローニングされた機能としてね。これはすごいことですよ」と言う。「こうやって口をきく機能なんかより、はるかに有意義なわたし固有の機能で、わたしの思考なんかより、この手の動きの方が偉いですよ。みんながわたしをインストールして使うことを想像してみるとわかります」
円城塔 『リスを実装する』 Amazon Services International, Inc.〈Kindle Single〉
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◆SasitamAの動画制作メモSasitamAの動画制作時に、さしみやまから指摘された、問題点と提案された改善策のまとめです。参考になれば。1:意味のある要素を入れる ・まず作品とは思想が反映されるものである ・したがって、人に対して作るという意識を持つことが重要である ・なぜなら、作品を通して作者の意識が、受け手に伝わるから ・好き放題作っても良いが、意味のない要素は入れない ・なんとなく入れたものは、「なんとなく入れた」ということが伝わってしまう ・意味を考えて要素を入れることで、自分でも反省点がわかる ・受け手が作品の世界観にのめりこめるようにするため、 作中に入れる要素の意味を、考える必要がある2:入れる要素は絞る ・まず人間は魅力を感じないものを見ると疲れる ・要素を入れすぎると、まとまりがなくなり、意味があるものも意味がなくなる ・よって、ごちゃごちゃしててもよいが、まとまっている必要がある ・見るために作られてないとわかったら、見る側は冷める ・作り手の「ほめてほしい」という気持ちが見えてくると受け手は萎える ・「がんばって作りました自慢」は受け手にとって興味のないこと ・自分の作品を見て、だれがどう思ってくれるのかを考えることが大切 ・受け手に伝える内容にまとまりを出すため、作品に盛り込む要素は絞る必要がある3:人のために作る ・まず、依頼主が喜ぶものを作る ・例えば痛い表現や怖い表現があったとして、 表現を入れる意味がなければ、ただ傷つける表現になる ・だから、入れる表現には意味があると、まず自分自身が信じて作る ・受け手がつまらないと感じる表現は不要 ・一部その表現の信者がいたとしても、同じ表現は見飽きてしまう ・それでも、その表現の信者が大切か、考えたとき、 10年後誰も残らず独りぼっちになってしまうかもしれない ・穴埋めするためだけの表現は、 作ったときに自分の中でどうかと思っているはず。 ・人に言われて自分を磨かないと、「でもあそこはよかったよね」という 傷のなめ合いをする関係しか残らなくなってしまうかもしれない ・依頼人を喜ばせるのが目的とすると、 「でもあそこがだめ」と言われるなら、「不合格」とも言える ・他の人が成功しているのを見てて「ぐう」となるくらいなら、 ちょっとでも評価されるように変えればいい ・常にファンを置いていくくらいがちょうどいい ・どれだけヘタクソでも、新しいことをやろうとしているものは技術がなくても面白い ・いい作品といい技術は別 ・技術があれば仕事が必ずくるわけではない ・知識を知らない人がすごいと思う技術は必要 ・人に見せる一定の技術はまず持っていて当たり前 ・ある程度の技術や、ある程度の人柄があって人を喜ばせることができる ・またはブランディングが成功していれば一定以上の技術がなくても 受け手を喜ばせることができ、人のために作ることができる
例のレポ:FRENZ2016:からいほう : 赤卵の考え方
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私はゆっくりと腰を上げる。 やっぱり時間の無駄だった。貴重な睡眠時間を削っただけの話。 ――でも結局寝付けなかったのだから、同じ事か。 トイレに籠もってから一時間余り。きっと寝付けてもそんな位だっただろう。 ふとトイレットペーパーに手を伸ばし掛けて、意味がない事に気付く。 長時間座っていたせいか、お尻が痛い。きっと便座カバーの痕でもついているだろう。 みお「⋯⋯⋯⋯」 ――まだ来ない。望む望まない関わらず、私はまだ羽化出来ないらしい。 ガッカリしたような、ホッとしたような。 いやこの感情はどちらかといえば、安堵だった。 ――まだ、女になんかなりたくない。 私はそう望んでいる。まだ子供でいた方が幸せだ。 その方が⋯⋯綺麗なままでいられる気がする。 みお「⋯⋯⋯⋯最低」 見下ろした水たまりは、入ってきた時と同じく透明のまま揺らめいていた。
ゲーム「破瓜病-クワビヤウ-」 2006年 シナリオ: hirok
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「わたし、うちの旦那の頭を膝に載せて、耳搔きをしている時にいつも思うんだよね。こういうことができるのは本当に平和な証拠だなあ、って。だってさ、戦争とか起きたら、耳搔きしてる場合じゃないでしょ」 「センソウ」私と潤也君はここでまた声を合わせて、発音してしまう。蜜代っちはやっぱり、いろいろ考えすぎだ、とも思った。戦争なんて現実的じゃない。 「戦争中にさ、セックスはできても耳搔きはできないよ、たぶん。だからね、旦那が耳をこっちに向けて、じっとして、でも息をしてるから、ゆっくりと身体が動くでしょ」 「呼吸で?」 「うん、そう。その呼吸を感じながら、のんびりしている時間が、わたしは好きなの。こうやって、耳搔きができる時間をありがたく思わないとなあ、って」
伊坂幸太郎『魔王』講談社〈講談社文庫〉、2008年。ISBN 9784062761420。
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紗世の口から俺の名前が発せられたとき…。 もうダメだった。 完全に紗世にKOされていた。 ふわりと地に足がつかないような状態になってしまっていた。 でも俺は、紗世にKOされたことで自分を脅迫していた“何か”を掴んでいた。 それは有り体な言葉で表すなら…。 “恋心” “紗世が好きだ”という甘く切ない気持ち。 掴んだ恋心は…。 紗世がキーを叩くたびに、胸の中で飛び跳ねた。 跳ね上がった場所から落ちることなく、胸を揺さぶり続けて、 【紗世】「大好きだよ」 【学】「…!っ」 口から飛び出そうになるほどだった。
Coda ~棘~ シナリオ: ココノツ
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好き、嫌い、切ない。悲しい、嬉しい、楽しい。憎い、辛い、うらやましい。心に浮かぶ、それら感情を…世の中の、どれだけの人が離さずに握っているんだろう。樹や花が、吸い込んで癒してくれるという、感情の名前をどれだけの人が正しく他人に告げられるんだろう。いつか、君が持ちたいという…“恋心”が、胸に浮かんでもそのときには、気づけないで見過ごしてしまうことが…あるかもね。
Coda ~棘~ オープニングムービー
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僕は城を作り、町を作り、キャラクターたちに役割を与え、そのどれもがぴったり配属された世界を作ることが好きだった。そして誰も傷付かず、誰も見捨てられず、平等に愛されて、平等に役割を与えられ、均等の取れた世界を構築するのが好きだった。僕のLEGOはお城シリーズを元に作られていたが、城のトップは常に魔法使いか勇者で、王冠を頂いた王様はいても、常に衛兵と同じ目線で生活していた。あるいは、玉座に衛兵が座っていた。立場と役割はあっても、上下関係はなかった。それが僕にとっての美しい世界。家来は王様のために働くが、人徳者である王様は家来を決して蔑ろにはしない。尊敬の念が、お互いの中にある。美しい世界だった。
心が死んでしまった君へ : 戯村影木の紙ラジオ
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