Tumgik
hasami-j-blog · 6 years
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【神話創世アマデウス】オレンジ
常世国に遣はして、非時香菓を求めしむ。 今橘と謂ふは是也。 ──『古事記』
■【シナリオあらすじ(顛末まで)】 ■推奨レベル1~2 ■シナリオテーマ『神の愛』『親と子』  神子たちはヤマト神群の神、ワダツミより依頼を受け、絶界となったある孤島の事件を解決に向かう。その島には、かつてヤマト神群との勢力争いに敗北した神が棲み、島独自の土着信仰が残っていた。ヤマト神群に属さぬ『まつろわぬ海神』は、その長きにわたる歴史の流れの中、伝承が廃れ、存在が消滅しかかっていた。海神は島民たちを神子とすることで己の存在を保っていたが、神子の1人である『丹波みなと』が外の世界の人々と縁を結び、外界へと憧れるようになったことから、自身の消滅の恐怖と、子が己のもとから離れていく寂しさに狂い、ついには怪物へと堕ちる。  嫉妬深い神は嘆き、怒り、子を、己の存在を知る島の人々を、島ごと絶界へと隔離した。忘れられないために。見捨てられないために。置いて行かれないために。
■【GM向け解説】  このシナリオのテーマは「神の愛」「親と子」となっている。それぞれの親神との関わり方を神子達に問いかけるような進行を推奨する。このシナリオの中で、最も悩み、考えるべきは、NPCではなくPCたち当人であるべきだろう。  シナリオの内容から、叙情的なストーリー展開となる可能性が高い。特にPC3はその傾向が強くなるだろうことを、予言配分の際にGMは留意しておくことが望ましい。また、PC2の真実公開のトリガーが難しいので、アマデウスに慣れていないプレイヤーへ配布するのは避ける事が好ましい。  アマデウスに於いて普遍的な題材をテーマとしているため、基本的にはどの神群の子でも楽しむことが出来るだろう。  敢えて、特にシナリオの進行に関わりやすい神群を挙げるならば、ストーリーに登場するワダツミ・まつろわぬ神への関わりが深い『ヤマト神群』の神子、消えゆく神々というテーマに関わりやすい『ケルト神群』の神子、黄金の林檎伝説への造詣を持ちやすい『ギリシア神群』『北欧神群』の神子となるだろう。反面、『クトゥルフ神群』の神子などは、対人・対神における叙情的なやりとりが発生するため、神子の傾向によってはロールプレイが難しくなるかもしれない。  レベル1の神子だけであれば苦戦する内容に、レベル2の神子であればやや余裕をもってクリアできるだろう。  テーマ、難易度共に、ある程度アマデウスに慣れているプレイヤー向けのシナリオである。
■【想定されるシナリオの流れ】
1.万神殿でワダツミから予言を授けられる。           ↓ 2.危険な旅を超えながら、橙之島で調査を行う。  想定される情報の流れは以下の通り。
『橙之島』の暗示を公開→『橙之島』の真実を公開 →『少女』の暗示を公開⇄『PC1』の真実を公開 →マスターシーン『対立』発生 →『少女』の真実を公開→『PC3』の真実を公開 →『PC4』の真実を公開 →マスターシーン『親子』発生→決戦フェイズへ           ↓ 3.決戦フェイズで『まつろわぬ海神』との戦闘を行う。 →戦闘中に『PC2』の真実の公開を想定。           ↓ 4.戦闘を終え、終了フェイズを行い、ストーリーをまとめる。
■【まつろわぬ神とは】  語意としては、古事記・日本書紀などにおける神々の争いや平定事業において、抵抗し、帰順しなかった神のことを指す。  このシナリオのエネミーは、そういった、過去にヤマト神群と対立した神の一柱の成れの果てである。アマデウスの世界観としては、2巻で説明されている悪魔と同じものだが、このシナリオではワダツミはまつろわぬ神へ敬意を払っている為、そうした呼称を意図して用いていない。  海神として一部のデータを改変しつつ、怪物『土蜘蛛』に該当する。詳しいデータは戦闘フェイズの項目に記述する。
1.プレイヤーの予言
■PC1 ◆暗示  君はワダツミから依頼を受け、事件を解決するため、とある孤島へ向かうことになる。  君の任務は怪物の退治だ。 ◆真実  ワダツミは君に告げた。 「今回の事件には、一柱の神が関わっている。  正しき名は語られていない、まつろわぬ神だ。  あれは私と同じ、海の神だった。  遥か昔、我々は対立した。私が勝利し、あれは力の大半を失った。一つの島から二度と出ぬ事を条件に、私はあれにトドメを刺さなかった。  伝承の風化と、時による穏やかな消滅を願っていたのだが……それは私の傲慢だったらしい。  君達に頼むのは怪物退治であり、同時に神殺しそのものでもある。  いにしえの不出来を押し付けてすまない。どうか、心してかかってくれ」  この真実が公開された時、好きなインガを1つ自由に配置できる。 ◆トリガー  「橙之島」の真実が公開される。  この真実が公開されたとき、マスターシーン「対立」が発生する。
■PC2 ◆暗示  君はワダツミから依頼を受け、事件を解決するためとある孤島へと向かうことになる。  君の任務は島民たちの救出だ。 ◆真実  君は未来の光景を幻視した。どす黒い空の下で荒れた海。波間に攫われそうなほどの小さな島。その島に迫るおぞましい大津波。  絶界により逃げ場を失っていた島民たちは、ただ呆然とそれを見ていることしかできなかった。  かくして、島は津波に飲み込まれ海の底へ沈む。これはまだ夢だが、このまま行けば真実となってしまうだろう。  神子として、このような惨劇は食い止めなければならない。  この真実が公開された時、好きなインガを3つ自由に配置できる。 ◆トリガー  青のインガが第三段階に到達する。  戦闘フェイズ終了までにこの予言が公開されていない場合、予言は真実となる。
■PC3 ◆暗示  君はワダツミから依頼を受け、事件を解決するため孤島へ向かう。  初めて訪れる島のはずなのに、何故だか見るものすべてが懐かしい。これは一体…?  君の任務は違和感の理由を突き止めることだ。 ◆真実  君は未来の光景を幻視した。それは自分が一人の少女の胸を貫き、彼女を殺害する夢だ。  彼女は安堵したような顔を向け、君へ微笑みかける。 「また会えてよかった」  そして君の腕の中で息絶えた…。  これはまだ夢だが、このまま行けば真実となってしまうだろう。それが悪いことなのかどうかすら、今の君には分からないのだが。  この真実が公開された時、好きなインガを一つ自由に配置できる。 ◆トリガー  「少女」の真実が公開される。  冒険フェイズ終了までにこの真実が公開されない場合、予言の夢は真実となる。
■PC4 ◆暗示  君はワダツミから依頼を受け、事件を解決するため孤島へ向かう。  しかし、君は万神殿に招かれた段階で、己の果たすべき本当の任務を理解していた。  君の任務は本当の任務を達成することだ。 ◆真実  君は過去の光景を幻視した。  それは旅人と思しきPC3が、この島の人々と楽しいひとときを過ごしている夢だ。PC3は島の人々と交流を深め、再会の約束を交わし島を去っていく。  その背を睨みつけるおぞましい気配があった。それは島の人々とPC3の再会を厭い、島を去るPC3へ呪いをかけ、島の記憶を消してしまった。  あなたの本当の任務は、この事件で発生するあまねく悲劇を回避することだ。  この真実が公開された時、好きなインガを1つ自由に配置できる。 ◆トリガー  PC3の真実が公開される。  この真実が冒険フェイズ中に公開された時、マスターシーン「親子」が発生し、決戦フェイズに突入する。
■絶界化の影響について  シナリオの舞台となる『橙之島』は、神子たちが到着した段階では、絶界とは思えないほどのどかで牧歌的な日常が繰り広げられる平和な島だ。この島に発生している絶界化の影響は、NPC『丹波みなと』以外の島民が、無自覚のうちに、島の外へ関心を抱かなくなっているということ・かつて島を訪れた外部の人間(PC3を含む)のことを完全に忘れてしまっているということである。  また、島民たちはみな無自覚の神子として生活を送っているため、多くの老人は伝説の子と似た状態になっている。その為、年齢に反して健康で元気な者が非常に多い。また、年齢を聞いたならば、通常の人間の寿命ではあり得ないほど長寿の者もいるかもしれない。そして彼ら自身は、そこになんの違和感も持っていない。
2.導入フェイズ  万神殿へ集められた神子たちは、ワダツミから予言を授けられる。 『日本海のはずれにある、ある島が絶界に取り込まれてしまった。  絶界は少しずつ勢力を増している。このまま放っておけば、他の土地にも影響が及ぶだろう。  絶界が発生した理由は、島に海獣の怪物が現れたことが原因だ。  島へ向かい、この怪物を退治してきてほしい』  GMはプレイヤーたちへ予言を配布する。  かくして神子たちは各々の任務と思惑を胸に絶界へと向かう。
□道中  万神殿から絶界の先『橙之島』へ向かうには「危険な旅」の判定を行う。  試練表には、公式サイト配布シナリオ「消えた第七艦隊」付属の「���海試練表」を使用する。  「危険な旅」の判定を終えたタイミングで、冒険フェイズに突入し、予言『橙之島』の暗示を公開する。
3.冒険フェイズ  このシナリオのメインフェイズは1サイクルとなっている。  冒険シーンには、公式サイト配布シナリオ「消えた第七艦隊」付属の「大海シーン表」の一部そぐわない文面を任意で改変し使用する。
■予言『橙之島』 ◆暗示  日本海遠洋に存在する小さな島。  希少な独立種のオレンジの産地として有名。  島民は約2000人程度の限界集落。ごく僅かな子供たちの笑い声や、老人たちの近隣間との交流が和やかに続く、現代から切り離されたような独自の生活が、今も続く島。 ◆真実  島の人々と交流を深めた君は、あることに気付く。この島の人々はみな、無自覚の神子なのだということに。  彼らは日常の中で、どこの神群にも属さぬ独自の神への信仰を持っている。この島の神が島民たちの夢の中で彼らに己の血を分け与え、彼らは無自覚の神子として、島の神の加護のもとで、今日まで生きてきたのだ。  島の灯台の頂上にはその神を祀る古いほこらがあり、その社は今、『丹波みなと』という少女が灯台守となって管理しているという。  予言『少女』の暗示を公開する。 ◆トリガー  PCの誰かがこの真実を得る。
■【オレンジの実】  オレンジの木々を見て、親神の誰かが神子へと語りかける。(口調は随時変更すること) 『絶界にオレンジか! この国に珍しい……。ああ、いや、人間としての意味じゃあないぜ。  『黄金の林檎』伝説って知ってるか?  林檎って訳されちゃいるが、ありゃ実際はオレンジの事だ。だからオレンジは、昔から神の食べ物だとか、不死の源だとかいわれてる。  西洋の神にとっちゃ、少し特別な果物なんだ。でも、ヤマト神群の神話じゃあんまり聞かねえから、珍しいなぁって思ってさ』
■『黄金の林檎』伝説  ギリシア神話や北欧神話を中心に、さまざまな国や民族に伝承される民話や説話の果実。   醜怪な敵役が隠したり盗んだりした黄金の林檎を、英雄が取り戻すというあらすじのものが多い。  また、親神たちはこう口にしているが、ヤマト神群の伝承にも「非時香菓(トキジクノカクノコノミ)」の伝承でオレンジ(橘)は登場する。そこでも不老不死の果実として取り扱われているので、ヤマト神群の親神やワダツミから、この点への注釈を入れるのも自由である。 (このシーンの目的は、『オレンジは神話上、不老不死や蘇りの為の果物とされている』という認識をプレイヤーに持たせることだ)  『橙之島』の真実が公開された時点で、『少女』の暗示を公開する事が出来る。PC1の真実公開や、マスターシーン『対立』を終えた後に暗示を公開するか、終える前に暗示を公開するかはGMの自由にして構わない。
4.マスターシーン『対立』 □発生タイミング:PC1の真実が公開された時  橙之島に関する情報が少しずつ明らかになってきた。しかし真実に至るにはもう少し情報が足りない。  調査を続ける神子たちは島で一夜を過ごす。  気のいい女将の経営する小さな民宿での一夜。島の人々が寝静まった夜半。  柔らかな月光が差し込む障子窓の向こう、遥か眼下に夜の海が寄せては返している。  神子達が眠る夜半。  襖が開く。音もなく。  何かが入る。音もなく。  それは部屋の中に入り、しばらくの間、PC3を見つめるようにじっとしていた。  しかしやがてそれは動いた。『武器』を抜き、PC3の胸へと、振り下ろす…!
*神子たちは『武勇』で難易度5の判定を行う  成功した場合、襲撃者の攻撃を防ぐ事が出来た。格好良く自由に演出をしてもらう。ただし、成功していても、この時点で襲撃者の正体は明らかにはならない。この判定は全員が行う。  失敗した場合、PC3は2d6のダメージを負う。
*成功時  襲撃者の攻撃を神子たちは防ぐ事が出来た。  襲撃者は武器を収めると、一目散に障子窓を開き、その先の海へと身を躍らせて逃げてしまう。  月明かりに逆光となったその素顔が誰のものかは、分からないまま…。
*失敗時  襲撃者の攻撃を神子達は防ぐ事が出来なかった  襲撃者の武器がPC3の体を傷つける。その時、神子達は確かに聞いただろう。他ならぬ襲撃者自身が狼狽え、悲鳴を堪えるように息を飲んだのを。  襲撃者は武器を収めると、一目散に障子窓を開き、その先の海へと身を躍らせて逃げてしまう。  その後ろ姿が、PC3には、何故だかひどく懐かしいものに思えて仕方がなかった…。
■予言『少女』 ◆暗示 「あ、お客さん!? 珍しー! ゆっくりしてってください、ゆっくり!」  丹波みなと(たんば・みなと)。島の灯台守を勤める少女。  両親は幼い頃に他界し、今は島の人々に支えられながら、灯台守として生活している。  日に焼けた褐色肌の眩しい、活発で明るい陽気な少女。島の外の世界に興味津々であり、神子達にも親身になって接する。 ◆真実 「……ねえ。あなたにとって、神様ってどんな存在?」  彼女の正体はマスターシーン「対立」の襲撃者であり、自覚ある島の神の神子である。  彼女はPC達と(おそらくは)同じように、神子として親神を慕い、敬っている。けれど、年齢相応の少女として、外の世界へ憧れているのも本心だ。  その関心の発端は、かつて島を訪れたPC3との交流にある。彼女はPC3と交流を深め、外の世界が存在する事を知り、強い興味を抱くようになった。しかし彼女の親神はその感情に嫉妬し、彼女たちが己の手元から離れていかぬよう、この島を絶界に閉じ込め、彼女以外の島民達のPC3との交流の記憶を消してしまった。  親神の行いが正しい事ではないという分別はついている。 外の世界への興味もある。しかし、寂しいと子らへ縋り、見捨てないでと訴える、名も知らぬ己の『親』を、 彼女は見捨てる事が出来なかった。 ◆トリガー  PCが丹波みなとに対し交流判定を行う。  交流の結果、感情を結べたか否かで、マスターシーン「親子」での彼女の立ち位置が変化する。
5.マスターシーン『親子』
◆発生タイミング:PC3の真実が公開された時、PCが丹波みなととの交流判定に成功している
 己の神子が他の神の子と再会した事を知った島の神は嫉妬に狂う。  島を凄まじい地震が襲い、空が俄かにかき曇り、一瞬にして大嵐が到来する。街の人々に混乱が走る。  オレンジ畑の木々が揺れ、白い花が、金色の果実が地面へと落ちていく。 「お父さん! やめて、やめてよ!! ずっと一緒にいるから、私が一緒にいるから! だからこの人たちに手を出すのはやめて、お父さん!!」  みなとが海へと叫ぶ。それに答えるように、一瞬にして凄まじい風と波が押し寄せ、彼女の体を海へと攫う。だが、猛る海は鎮まらない。  海原が蠢く。水平線が盛り上がり、おぞましい何かが姿を現さんとしていた。 「津波が来るぞ! 高台へ!」「早くしろ!」 「母さんこっち!」「急げー!」  理由を知らぬ街の人々は混乱し逃げ惑う。しかしこの島が絶界である限り、彼らに逃げ場があるはずもない。  神子達は目にするだろう。海面に現れ、天を覆った巨大な海獣の姿を。  己を忘れる己の子らを、己と共に深海の奥底へと連れて行かんとする、荒れ狂うまつろわぬ神の成れの果てを。 (*…エネミー「まつろわぬ海神」の脅威「暴虐の神子」を使用しない)
◆発生タイミング:PC3の真実が公開された時、PCが丹波みなととの交流判定に失敗している。
 己の神子が他の神の子と再会した事を知った島の神は嫉妬に狂う。  島を凄まじい地震が襲い、空が俄かにかき曇り、一瞬にして大嵐が到来する。街の人々に混乱が走る。  オレンジ畑の木々が揺れ、白い花が、金色の果実が地面へと落ちていく。 「お父さん! やめて、やめてよ!! ずっと一緒にいるから、私が一緒にいるから!」  丹波みなとが海へと叫ぶ。それに答えるように、凄まじい突風が陸から海へと駆け抜け、みなとの体を海へと引き寄せる。  海原が蠢く。水平線が盛り上がり、おぞましい何かが姿を現さんとしていた。 「津波が来るぞ! 高台へ!」「早くしろ!」 「母さんこっち!」「急げー!」  理由を知らぬ街の人々は混乱し逃げ惑う。しかしこの島が絶界である限り、彼らに逃げ場があるはずもない。  神子達は目にするだろう。海面に現れ、天を覆った巨大な海獣の姿を。  己の子らが己を完全に忘れる前に、己と共に深海の奥底へと連れて行かんとする、荒れ狂うまつろわぬ神の成れの果てを。 「……また会えてよかった」  神子達へ背を向け、丹波みなとは顔を涙で歪めながら、震える声で告げる。不器用に笑う。 「でもね、やっぱり……お父さんには、私が付いていてあげないといけないみたい」  そうして、彼女は君たちの目の前で海へと身を投げる。 (*…エネミー「まつろわぬ海神」の脅威「暴虐の神子」を使用する)
◆発生タイミング:メインフェイズ終了時点でPCが情報「少女」の真実に辿り着いていない時
 己の神子たちが他の神の子と再会した事を知った島の神は嫉妬に狂う。  島を凄まじい地震が襲い、空が俄かにかき曇り、一瞬にして大嵐が到来する。街の人々に混乱が走る。  オレンジ畑の木々が揺れ、白い花が、金色の果実が地面へと落ちていく。  海原が蠢く。水平線が盛り上がり、おぞましい何かが姿を現さんとしていた。 「津波が来るぞ! 高台へ!」「早くしろ!」 「母さんこっち!」「急げー!」  理由を知らぬ街の人々は混乱し逃げ惑う。しかしこの島が絶界である限り、彼らに逃げ場があるはずもない。  神子達は目にするだろう。海面に現れ、天を覆った巨大な海獣の姿を。  己の子らが己を完全に忘れる前に、己と共に深海の奥底へと連れて行かんとする、荒れ狂うまつろわぬ神の成れの果てを。  それと相対するように、岬に少女の姿があることにPC3は気がつく。  それが誰なのかを、PC3はついぞ思い出す事が出来なかった。彼女はPC3へ微笑みかけ、嵐の中で何事か叫んだようだった。  また会えてよかった!  彼女はそう叫んだのではなかったか? けれど神子たちが真実に至る事は、ついになかった。  神子たちの目の前で、彼女は荒れ狂う海へと身を投げた。 (*…エネミー「まつろわぬ海神」の脅威「暴虐の神子」を使用する) (*…また、このルートの場合、戦闘終了時に、「暴虐の神子」に対するPC3の予言が現実となる演出を行う)
 マスターシーン『親子』が終了した時点で、プレイヤーとGMは即座にクライマックスフェイズに突入するか、残りのサイクルで休憩や交流などの処理を終えてからクライマックスフェイズに突入するかを自由に選んで構わない。
■まつろわぬ海神とオレンジ  『まつろわぬ海神』の正体は何なのか? その正体がこのシナリオ内で詳しく語られる事はない。神代の時代にヤマト神群との勢力争いに敗北した、今は名も語られぬ神の一柱というだけだ。  『黄金の果実』との関わりも、シナリオ内で細やかな設定は存在しない。もしかしたら『まつろわぬ海神』はかつては西欧に属する神であったのかもしれないし、タイタン神群の何者かによる干渉を受けた事があるのかもしれない。その解釈をどう定めるかはGMとPLの自由である。『まつろわぬ海神』の背後に黒幕めいた存在が居り、そこから新しいキャンペーンへと繋がっていくなどしても、それはそれで面白いかもしれない。
6.戦闘フェイズ
◆本体『まつろわぬ海神』 ■怪物Lv4(基本・290P・「土蜘蛛」より一部改変) タグ:神・水 生命力70 防御値4 攻撃値4 【怨嗟】ヤマト神群のPCが受けるダメージが1d6点上昇する。 【怨嗟の声】本体の生命力を減少させたPCは変調「絶望」を受ける。 ……現代の世には語られぬ奇妙な海獣の姿をとって顕現した、かつての神の成れの果て。鯨の如き巨体は波を操り、島と子らを海の底へ誘う。
◆パラグラフ1『水牢』 ■脅威Lv2(基本・290P・「糸絡み」より一部改変) 分類:術式 タグ:水 判定:技術 威力--- 攻撃値+0 耐久度10 防御値+2 【水牢】欄外にいないPC全員を捕縛状態にする。 ……怪物の操る水と波が、牢のように神子を捕らえ、その足を阻む。
◆パラグラフ2『衝撃波』 ■脅威Lv2(基本・274P・「衝撃波」より一部改変) 分類:攻撃  タグ:衝撃  判��:霊力 威力1d6+1 攻撃値+0 耐久度12 防御値+0 【波動:青】青の属性でないPC全員を攻撃対象に選ぶ。 【衝撃】誰か一人でもこの攻撃でダメージを受けた者がいると、すべての領域にあるインガを1つ取り除く。 ……打ち寄せる波の力。自然の暴威と一体と化したその一撃は、あらゆる運命を薙ぎはらう。
◆パラグラフ3(-)『暴虐の神子』 ■脅威Lv3(基本・276P・「暴虐の神子」より一部改変) 分類:攻撃 タグ:独立・実体・人 判定:頭脳 威力3d6 攻撃値+0 耐久度15 防御値-2 【ムードダウン】この脅威カードが攻撃を行ったとき、好きな領域のインガを一つ減らす。 ……父を見捨てられぬと語った少女は最早何も語らず、ただ神子へ武器を向けるのみ。その頬を、海水ばかりがしとどに濡らす。
◆パラグラフ4(3)『親神の慟哭』 ■脅威Lv3(02・222P・「鋭い一撃」より一部改変) 分類:攻撃 タグ:実体・衝撃 判定:技術 威力3d6+2 攻撃値+2 耐久度11 防御値+1 ……それは悪魔の咆哮か。あるいは寂しい親の成れの果てか。憎悪と共に放たれる一撃はあまりにも鋭い。
◆パラグラフ5(4)『黄金の林檎』 ■脅威Lv1(基本・272P・「再生」より一部改変) 分類:術式 タグ:独立・実体・強化 判定:愛 威力--- 攻撃値+0 耐久度8 防御値-1 【超再生】脅威カードを一つ選んで未行動状態にし、この脅威の次のタイミングで行動させる。 ……神の食料。不死の源。あるいは、まつろわぬ神が嘗て、身を寄せていたかもしれぬ土地の残滓。
■エネミーの行動方針  パラグラフ1『水牢』でPCたちを捕縛状態にして達成成功率を下げ、パラグラフ2『衝撃波』でPC2の予言達成を阻む。  パラグラフ3『暴虐の神子』はマスターシーン『親子』で『丹波みなと』が入水しているか否かで使用の有無を決める。パラグラフ5(4)で再生させる脅威カードはパラグラフ3『暴虐の神子』か4(3)『親神の慟哭』の脅威カードとなる。
7.終了フェイズ
□顛末 -Good End- 分岐条件:全ての真実が公開されている
 丹波みなとは戦闘終了時点で、無呼吸状態で海から引き上げられる。この時点で彼女の意識はなく、危険な状態にある。PCたちが彼女の蘇生を望み【嘆願判定】に成功するのであれば、丹波みなとは息を吹き返す。 『分かった、力を貸そう……貴様!?』  親神の驚く声が神子の脳裏に響く。顔を上げたなら、水が引いていく浜に、うすらぼんやりとした人影が立っていた。最早その顔立ちすら定かではない影は、意識を失った丹波みなとへ手を伸ばし、その手の中からぽろりと黄金の果実……オレンジの実を一つ、零した。  そうして、瞬きを一つする頃には、その人影はあとかたもなく消えてしまった。浜にはオレンジの実だけが打ち上げられている……。 『……最後の力を振り絞ったか。……愚かな。それならば何故最初から……』  親神のつぶやきが、むなしく浜に響いた。 「……どこかで、お会いしたことあります?」  丹波みなとが生還した場合、目を覚ました丹波みなとは己の親神や、神子に関わる記憶や知識を完全に失っている。それはPCたちと過ごした記憶や、かつてPC3と出会った時の記憶も同様だ。  丹波みなとは『忘却の子』として生きることになるかもしれない。あるいは、何も知らぬ一般人として、以後の一生を終えるかもしれない。少なくとも、暴走した己の親神の呪縛からは逃れる事が出来たのだといえる。 「なんだか……初めて会った気がしなくって。会えて、すごく嬉しくて……なんでかな?」  その問いにどのように答えるのかは、神子たちの自由だろう。  事件解決後、神子たちは再び万神殿へと招かれる。そこで改めてワダツミから礼を言われる。 『まずは、ありがとう。君たちは本当に頑張ってくれた。古のしがらみに終止符を打ってくれたこと、感謝する。  あの島を覆っていた歪んだ時の流れも、少しずつ自然に戻って行くだろう』 『……少し、独り言をこぼそうか。あれは堕ちた神ではあったが、しかし、神の愛とはいつも身勝手なものだ。  私たちもまた、己の子を愛し、時に嫉妬し、時に執着する。  私たちは何も変わらない。だから私は、あれを悪魔と呼びたくはないのだよ……』 『……つまらない話をしてしまったね。さあ、君たちはお帰りなさい。  きっと、君のお父様やお母様が、君を心配しているだろうから』
□顛末 -Bad End- 分岐条件:PC2の予言の真実が公開されない
 神子たちは『まつろわぬ海神』を打ち倒すことに成功した。  しかし、運命の輪は残酷に回り続ける。──島へと押し寄せる大津波は止まらない。 『(PC名称)! もう駄目だ、お前だけでも!』  神子たちは、親神たちの力によってその津波から守られる。神子たちの眼前で、島の全ての家と、全ての人々が、津波に飲み込まれていく。  かくして、『橙之島』は海の底へと沈み、この世界から完全に消滅する。  波が去ったあとには、一面に凪いだ海原、そこにたゆたう一個のオレンジだけが、残されたものの全てとなるだろう。  戦いを終え、万神殿へ戻った神子たちをワダツミが礼とねぎらいの言葉と共に出迎える。 『まずは、ありがとう。君たちはよく頑張ってくれた。古のしがらみに終止符を打ってくれたこと、感謝する』 『そして、お疲れ様。絶界が、あの島一つで収束したのならば、それは……まだ、幸いだった。彼らは波の下の都に行き、そこで彼らの父と、幸せな時を過ごすのだろう。  きっと最初から、こうなる運命だった。……そう考えると良い』 『さあ、君たちはお帰りなさい。  きっと、君のお父様やお母様が、君を心配しているだろうから』
※上記エンディングはいずれも「想定され得る可能性の高いシチュエーションの顛末」です。  実際のED描写は、神子たちの性格やロールプレイなどに応じて、柔軟に行うと良いでしょう。
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hasami-j-blog · 6 years
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【クトゥルフ神話TRPG】狩人の矜持
 ショッピングモールで怪物とバトル!  使えるものは──店内の全て!?
はじめに
NPCについて
■狩屋真人(かりやまひと) 人類学者 42歳 STR:10 CON:10 SIZ:14 INT:13 POW:11 DEX:12 APP:11 EDU:17 幸運:55 知識:85 アイデア:65 耐久値:11 MP:11 正気度:15 ダメージボーナス:0 技能:クトゥルフ神話技能41% 「我々は狩人に狩られ、無惨に散り行くだけの獲物でしかないのか?」 「正気という安寧のなかに閉じこもり、ただ崩壊の時を待つ事しか出来ないのか?」 「人間にも矜持がある筈だ。我らは蹂躙される無力な獲物ではなく、抗い続ける狩人だと」 「私はそう信じている……そう信じずにはいられない」  元探索者であり、過去に神話的事件に巻き込まれるが、辛うじて生還する。  その経験によりこの世界が外なる神によって戯れに狩られかねないものである事を理解。人類の小ささにショックを受けるが絶望には至らず、どうにか対抗手段を持てないかと研究を始めるようになる。イ=ス人の存在はある種の彼にとっての希望であり、人類の理想の終着点と見なしているようだ。  長年の研究により感情が摩耗しており、イ=スそのもののような言動をする男。  彼が実際に巻き込まれた事件は、ショッピングモールで発生したものだった。元々は古代ローマの文化に関わる研究を行っていた大学教授だったようだ。  彼の情報はシナリオの根幹に関わる情報の為、KP側から強く存在を主張する事は推奨しない。 ■《忌まわしき狩人》 STR:42(21) CON:18 SIZ:54 INT:13(6) POW:36 DEX:22(11) 耐久値:36 MP:36 ダメージボーナス:+3d6 装甲:9ポイントの皮膚 噛み付き65%…ダメージ1d6 尾90%…組み付き 聞き耳50% 追跡25% 呪文:なし 正気度喪失:0/1d10 弱点:強い光。常に明るい光に照らされているショッピングモール内では一部のステータスが()内の数値に変化する。暗所では通常のステータス通りとして扱う。  また、非常に強い光に対しては装甲を無視したダメージを受ける。
導入
 探索者は気付いたらショッピングモールに居る。周囲には探索者達以外には誰も居ない。恐らく探索者達は面識が無いだろう。何故ここに居るのかという事も思い出せない。  そんな探索者達の前に、一枚のレポート用紙が落ちている。レポート用紙には一言「光あれ」と書かれている。この辺りで探索者同士の自己紹介を済ませておくと良いだろう。  あなたたちが困惑していると、突然轟音と共に忌まわしき狩人が姿を現し、あなた達に攻撃を加える(噛み付き固定)。成功失敗に関わらず、狩人はその時点で飛び去ってしまう。敵意を示すには十分だろう。 【正気度チェック0/1d10】  探索者達の脳裏には、あの怪物をどうにかしなければ、ただ死があるのみだという事が間違いなく分かるだろう。
逃げ道など無い
 逃げ惑ううちに、あなたたちは気付く筈だ。ショッピングモールのあらゆる出入り口は通常通りに存在する。窓の外には車が走り、人々が笑いながら行き来し、いつもと変わらない平和な世界が広がっている。しかしあなたがどれほど頑張ろうと、どれほど声を上げようと、外の人々があなた達に気付く事は無いし、外の世界へ逃げる事も出来ない。窓を壊す事も出来ない。逃げ出す事が出来ない。 【正気度チェック。1/1d6】  これは出入り口であ��ても、屋上への通路であっても同様だ。とにかくここからは脱出する事が出来ないという事をKPはPL達へ理解させるように。
シナリオ基本進行
 各地に点在する各種アイテムをプレイヤーは組み合わせ、如何に忌まわしき狩人を仕留めるかという��とがこのシナリオの主題となっている。  進行は基本的には戦闘ラウンドのようにDEX順に行う。  ラウンド末で狩人は聞き耳ロールを行い、成功した場合は次のラウンドで追跡ロールを行う。これに成功した場合、狩人は探索者達の前に姿を現し、噛み付き攻撃を1回発生させる。探索者達が逃げ出す場合は積極的には追ってこない。  狩人は明るいショッピングモール内が苦手の為、基本的な移動は暗いスタッフ用通路を利用している。  探索者達が道中で音を立てる等の行動を行った場合、KPは忌まわしき狩人の【聞き耳】ロールを行う。成功した場合、狩人は探索者達の位置を完全に特定し、探索者達を発見し襲いかかる。逃げる場合はDEX対抗が必要になる。  狩人は一回攻撃を加える、三回ロールを行うことで探索者達を無視して逃げ出してしまう。明かりが眩しく苦痛なのだ。しかし暗闇ではこの限りでは無い。  忌まわしき狩人との遭遇時には逐一正気度チェックを行うが、恐怖に慣れるルールを採用する。  つまり狩人に対する減少値は最大10までであり、10の正気度を喪失した探索者は正気度チェックを行わない。  探索者達がこの忌まわしき狩人をこの建物内にある物品で如何に撃退するかというのがこのシナリオの大筋である。  アイテム入手の際は【目星】や【幸運】を振らせても良いし、探索者側からの提案があれば技能無しでそれを認めても構わない。  次頁にて各エリアの詳細と発見出来る武器、それに付随するダメージ量等を記載する。ここに記載する以外でもKPの任意で増やして構わない。
ショッピングモールエリア
【3F】 ホームセンター・スポーツショップ・本屋・スタッフ用通路 【2F】 玩具売場・フードコート・電化製品売場・スタッフ用通路 【1F】 出入り口・生鮮食品売場・衣服売場・スタッフ用通路
エリア詳細とアイテム
■【生鮮食品売場】 ・胡椒…1d3ラウンドスタン ・火炎瓶…2d6+火炎(【投擲】) ■【衣服売場】 ・布類 ■【玩具売場】 ・エアガン<機械修理で改造>…1d10(【拳銃】) ・バッド…1d6(【杖】) ・花火…1d6+火炎(【幸運】【投擲】)(暗闇で使用する場合はダメージ1d6) ■【フードコート】 ・肉切り包丁…1d6+db(【ナイフ】) ・プロパンガスのガスボンベ…爆発させる場合は3d6(【投擲】or設置) ■【電化製品売場】 ・カメラ(フラッシュ)…暗闇、或いは至近距離で使用した場合、装甲無視1d6(カメラの場合は【写真術】) ・パソコン ・スタンガン…スタン(【こぶし】) ・スタンガン(射出型)…スタン(【拳銃】【電気・機械修理】) ■【ホームセンター】 ・釘打ち機…1d10(【電気・機械修理】【拳銃】) ・スプレー缶…火炎放射2D6+火炎(【DEX×5】) ・チェーンソー…2d8(【杖】【ナイフ】) ・鉈…1d8+db(【杖】【ナイフ】) ・斧…1d8+2+db(【杖】) ・鎌…1d6+db(【杖】) ・両手用ハンマー…1d8+2+db(【杖】) ・電気ドリル…1d10(【電気・機械修理】) ・芝刈り機…2d8(【杖】) ・催涙ガス…スタン(【DEX×5】) ・発煙筒…暗闇で使用した場合2d6(【投擲】) ・釘 ■【エリア不問】 ・消化器…スタン ・電線による感電…2d8+スタン(【電気・機械修理】) ・着火剤…火炎 ・タクティカル・バトン…1d8+db(【杖】) ・ガムテープ ・ワイヤー ・強い光(カメラ等のフラッシュ、懐中電灯の光) …暗闇、或いは至近距離で使用した場合、装甲無視1d6(カメラの場合は【写真術】) ■【本屋】  【図書館】で技能の底上げを図る事が出来る。調べた場合指定の技能に+10%補正。  【目星】で一冊の本が床に落ちている事が分かる。詩集のようだ。  タイトルは『orandum est, ut sit mens sana in corpore sano.』。中は日本語で書かれている。【ラテン語】でタイトルは「健全なる精神は健全なる身体に宿る」と訳される事が分かる。  本屋に置かれているのが不自然なほど奇妙に手垢がついてボロボロな本だ。  中を読むと、古代ローマの詩人、ユウェリナスの詩を纏めたものである事が分かる。その中に何度も読み返されたような跡がある頁を発見できる。どうやらユウェリナスの代表的な詩のようだ。 『強健な身体に健全な魂があるよう願うべきなのだ。 勇敢な精神を求めよ。 死の恐怖を乗り越え、 天命は自然の祝福の内にあると心得て、 いかなる苦しみをも耐え忍び、 立腹を知らず、何も渇望せず、 そして、ヘラクレスに課せられた12の野蛮な試練を、 サルダナパール王の贅沢や祝宴や財産より良いと思える精神を。 私は、あなたたちが自ら得られることを示そう。 必ずや善い行いによって平穏な人生への道が開けるということを。』  この時点ではそれ以外の詩集の内訳の詳しい情報は出さずとも良いだろう。 ■【電化製品売場】  電化製品売場の一角、テレビ等の販売が行われているエリアは、年代も地方もバラバラのテレビ番組がランダムに放送されている。  ここで【目星】などのKPの任意のロールに成功すると、探索者はテレビの一台が映していたニュース番組を目にする。「ショッピングモールで未曾有の大惨事、事件か事故か」というテロップのニュースが流れており、内容は某県に新しく建てられたショッピングモールで大勢の人間が不審な死を遂げたという内容である。  目撃者は居らず、死体は皆獣に食いちぎられたような形で死亡していたという情報だけが報道され、詳細は不明。現在も警察によって捜査が進められているとのこと。件のショッピングモールは閉鎖され、取り壊しが決まった事が報じられている。  また、報道の中で、事件が起きた日ことニュースの放送日は今から10年前である事が判る。  自分達が同じ状況下にある事、自分達の居るショッピングモールが今から10年前に取り壊されているという事を理解した探索者達は、現実離れした恐怖を改めて感じ正気度チェックを行う。 【正気度チェック。1/1d6】 ■【KP用注釈】  ショッピングモールエリア内で探索者に示唆すべき必須の伏線は、 ・狩人は光に弱い ・狩人は移動にスタッフ用出入り口を利用している ・その奥には何か助けになるようなものがある  の三点である。  それ以外の行動は探索者の自由にすると良い。  スタッフ用通路の奥へ向かうも、ここにあるだけの道具で狩人撃退を目論むも、探索者達の自由だ。
スタッフ用通路へ
 スタッフ用通路等に出入りしようとする場合、そこは電気が点いておらず、また狩人のステータスが本来の数値に戻り圧倒的な攻撃力を発揮するようになる。  中からは何かの機械が稼働しているような、ゴウンゴウンという音が聞こえてくる。  狩人はその時点での聞き耳が成功していれば探索者達と同じ階数のスタッフ用通路に、失敗していれば1d3で居るエリアを決定する。  スタッフ用通路は奇妙に入り組んでおり、1d3+1回、右に進むか左に進むかの選択を逐一探索者へ与えるように。迷路のようになっている。どの道を選んで進んでも構わないが、これは忌まわしき狩人の聞き耳ロールの回数に影響する。KPは個別に地図を用意したりして、より迷路性を上げてみてもいいだろう。  狩人が聞き耳ロールに成功した場合、狩人は探索者達のすぐ近くまでやってくる。光の世界と違い、恐ろしいスピードだと伝えると良いだろう。【隠れる】【隠す】(暗い為、+30%の補正あり)、あるいは【DEX×5】に成功する事で距離を取る事が出来る。探索者達が何の行動もせずに奥へ向かう場合、狩人のロールを振る。成功した場合、戦闘ラウンドに突入する。  狩人をかわしてスタッフ用通路に挑んだ探索者がいた場合、スタッフルームに案内する。  そこには忌まわしき狩人に対して有効な武器であるスポットライトと、一枚の紙、そしてショッピングモールエリアの監視カメラの監視映像が置かれている。発電機が置かれており、建物全体のブレーカーが設置されている。 ■【一枚の紙】  探索者達が目を覚ました際に見つけたものと同様、レポート用紙である。  表面には、 「…私は我が友の忠告を常に聞く。 「真実に閂を掛け、拘束せよ!」 しかし、誰が見張りを見張るのか?…」 と書かれている。また、裏面には 「…我々人間は、矜持を失って狂気の認識ができなくなって以来、 真実に対する関心を失って久しい。 かつては政治と軍事の全てにおいて権威の源泉だった我々は、 今では一心不乱に、専ら二つのものだけを熱心に求めるようになっている― すなわち、正気と建前を…」  という一文が書かれている。【アイデア】で何だか詩のような文面だと感じるだろう。  本屋でユウェリネスの詩集を入手していた場合、見比べる事で原文を理解する事が出来る。表面は「女性への警句」という詩の一分であり、裏面は「パンと見世物」という詩が改変されたものだという事が分かる。  本と見比べれば、原文との差異が理解出来るだろう。 原文1 「…私は我が友の忠告を常に聞く。 「彼女に閂を掛け、拘束せよ!」 しかし、誰が見張りを見張るのか? 妻は手筈を整えて、彼らと事を始める…」 原文2 「…我々民衆は、投票権を失って票の売買ができなくなって以来、 国政に対する関心を失って久しい。 かつては政治と軍事の全てにおいて権威の源泉だった民衆は、 今では一心不乱に、専ら二つのものだけを熱心に求めるようになっている― すなわちパンと見世物を…」  【アイデア】で何故こんなものがここにあるのだろうか、と疑問とも違和感ともつかないものを覚える。これは自身の存在を仄めかす狩屋真人のメモである。  イ=ス人との対話の際に、一人称が「我々」であるという事からこれを書いた者は人間である筈だ、という旨の指摘、或いは「パンと見世物」と「見張りを見張る」といった文面からもう一人黒幕が居るのではないか、という指摘を行う事が出来た場合、《黒幕の正体は》へ至る事になる。 ■【スポットライト】 ・スポットライト …暗闇、或いは至近距離で使用した場合、装甲無視で毎ラウンド3d6のダメージ。効果はライトが消えるまで続く。  これらの制限を伝え、KPは探索者達に如何にその状況へ忌まわしき狩人を連れ込むかを考え戦闘の作戦を練らせるように誘導する。またスポットライトは当然だが電源が無ければ点ける事は出来ない。  【機械修理】【電気修理】を用いればどのエリアでも電気を引いて来る事が出来る。基本的にはスタッフルームからしか電気を引く事は出来ない。 ■【監視カメラ】  スタッフルームでは、ショッピングモールのスタッフ用通路以外のエリアを監視している監視カメラの映像を見る事も出来る。これを用いれば、スタッフ用通路に居る時以外の忌まわしき狩人の現在地を把握する事が出来る。  また、【機械修理】【電気修理】【コンピューター】等に成功すれば、カメラの映像を巻き戻し探索者達がこのショッピングモールを訪れる以前の映像を確認する事も出来るだろう。映像を巻き戻すと、探索者達が意識を取り戻す前の気絶した状態の映像以前はテープが存在しない事が判る。  また、一番最初の映像に対して【目星】を行うなどしてより深く観察を行った場合、その場を立ち去る人間の足のようなものを目にする。しかし本当に一瞬の映像の為、詳しい事は分からない。
怪物を倒したら
 怪物を倒した途端、怪物は身悶えた末に灰となり消えてしまう。そして次の瞬間、建物がまるでバーチャル映像が消えるように、或いはテレビの電源を消した時のように、ブン、と微かな音を立てて消えてしまう。  そしてまるでサイバー空間のような黒い闇の中に緑や青の光が飛び交う世界で、探索者達の耳は歓声を聞く。その声はどんどんと大きくなっていき、それにつれてワイヤーフレームのような光が世界を構築していく。やがて描かれるのはスケートリンクのようなエリアと、それを見下ろす観客席、そしてそこから探索者達を見下ろす奇怪な怪物達(イ=スの偉大なる一族)である。 【正気度チェック1/1d10】  その怪物の��体が探索者達のもとに現れ、脳裏に響くような形で声をかける。彼らは自分達がイ=スの偉大なる一族という存在である事、人間の知性をテストする為にこういった遊興に耽っている事、探索者達の知性は見事この場に適したという事を説明する。  無事に試練をクリアした探索者達はこのまま元の場所へと帰される事が約束される。更に報酬として、何でも1つ願いを叶えてやるという。  オーパーツを願っても良いだろうし、神話知識を願っても良いだろうし、大金や人外へ転じる方法を願っても良いだろう。前言通り、イ=スは願われた全ての事を報酬として叶えてくれる。ただしあまりにも分不相応な願い事には相応の代償がついてしかるべきかもしれないが。  ここで探索者が提案を飲み、何か報酬を願って帰還するのであればエンディング2に至る。  イ=スへの質問も簡単なものならば行う事が出来る。その中で探索者達が事件の真相がイ=スのみのものではないと看破し、イ=スに黒幕の事を尋ねたならば、イ=スは探索者達へ黒幕の存在を曖昧な形で伝え、真実を求めるならば、「知る事」が願いとなる事を伝える。私欲を優先した願い事をするか、真実を知る事で願いを消費するかの二択を迫られる。  ここでイ=スへ黒幕の正体を教えるよう願った場合、イ=スは快哉を上げ「見事だ!」と探索者の勇気と知性を讃える。  そして「君の願いに答えよう、知性ある者よ」と探索者へ告げ、探索者の意識を飛ばし《黒幕の正体は》へ至る。
黒幕の正体は
 イスに黒幕の存在の照明に成功し、黒幕の事を知る事を報酬として選ぶ場合、探索者達は気付くと一件のマンションの一室に居る。リビングのようだ。窓から外を見ると5階程度の高さだという事が分かる。  そこに狩屋真人が現れ、日常と変わらぬ態度で探索者達を歓迎し、探索者が望むのであれば、珈琲を入れながら一連の事態の真相を伝えるだろう。  狩屋真人は過去に神話的事象に巻き込まれ、それ以来この世界が非常に危険なバランスのもとに存在している事を知った。世界の真の平穏を願った彼は、人間の立場が外なる神に対抗できるようなものとなる事を祈り研究を始めた。  長年の研究の果てにイ=スと契約を交わした彼は、無差別に人々を識別し、ああした形で神話生物の脅威とそれに対する対抗法を人間達に(身にしみ込ませる形で)伝えていった。世間では狂人としか見なされないのであれば、狂人の見る世界を常人へ伝えようとしたのである。 【正気度チェック1/1d6】  狩屋真人は人間の抗う遺志こそを重視しており、自分達を理不尽な目に合わせた狩屋に対する探索者達の怒りを尊重し、好きにしろと提示する。死ねと言われれば彼は死ぬだろうし、何かを命じれば可能な限り承諾するだろう。  狩屋真人をどう処理するかについては、探索者達の意志に委ねると良いだろう。  殺害しても構わないし、無視しても構わない。研究を止めるよう迫った場合は断られるだろう。それに対する対処を探索者は求められる。 ***  以下はKPの任意の選択肢であり、気持ちのよいエンディングを探索者達へ迎えさせたいと思うならば採用するべきではない。しかしイ=ス人を用いたキャンペーンなどの導入などでこのシナリオを用いようと試みる場合や、探索者達へより陰鬱な展開を用意したいと思うのであれば、採用しても構わない。  何れの展開を採用しても、基本的にはエンディング処理は3となる。 【展開1】  【アイデア】であまりにも狩屋真人が従順だと思う。  【アイデア】に成功してそれに気付いた場合は【説得】に成功すれば理由を答える。  この世界では既に、各国が秘密裏に同様の実験を行い、人類は外なる神達への対抗の為の試験を、人知れず進めているからなのである。  或いは今日も、どこかで、誰かが何者かの意図のもと、神話生物の脅威を身を以て感じているのかもしれない……。【正気度チェック0/1d4】 【展開2】  狩屋を殺す、或いは無視する等の対処を行い、その部屋から出ようとすると、ブン、と微かな音を立てて視界が消えてしまう。そして探索者達は眠っていたベッドの上で目を覚ます。  その後、狩屋真人について調べた場合、彼は10年前に自室で何者かに殺害されているという事だけが判る。  そう、探索者達が狩屋を殺害していた場合は、それと同じ方法で……。
エンディングとクリア報酬
1:【探索者が狩人に勝てず死亡した場合】  恐ろしい恐怖と共に目を覚ます。周囲は自宅。探索者達は眠っていたのだ。  どんな夢を見ていたのか思い出す事が出来ない。けれど確たる恐怖が探索者達を襲う。 ・死の恐怖に正気度減少1d6+1 ・報酬なし 2:【探索者がイ=スの提案を飲み、報酬を得て帰還した場合】 ・シナリオクリア:1d10 ・他、イ=スに願った報酬各自1つ 「よかろう、君達の願いを叶えよう。  それでは……精々良き生を、愚かなる家畜諸君」  探索者達は目を覚まし、各々の願った報酬を手にしながら、日常へと帰っていく。  そして、まるでテレビの電源を落とすように、ブン、と微かな音を立てて視界が消えてシナリオ終了となる。  不気味な余韻を残して演出すると良いだろう。事件の真相をPLへ伝えるかどうかはKPの任意だ。 3:【探索者が狩屋の存在に辿り着いた場合】 ・シナリオクリア:1d10 ・真相に至った:1d10 ・他、狩屋真人に対する任意の処理  前頁「黒幕の正体は」参照。
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hasami-j-blog · 6 years
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【クトゥルフ神話TRPG】悪霊の家和風改変
 基本ルールブック記載の『あのシナリオ』を勝手に和風アレンジ。
はじめに
NPCについて
■古尾人ウタ 呪われた神子 ??歳 STR:18 CON:22 SIZ:18  INT:16 POW:18 DEX:7 APP:1 EDU:6  幸運:90 知識:30 アイデア:80 耐久値:17 MP:18 正気度:0 ダメージボーナス:+1d6 装甲:10ポイントの魔術装甲 技能:隠す30% 聞き耳60%    神話技能31% 憎悪71%    間違った所へ導く64% 呪文:《肉体の保護》《支配》    《黄泉醜女の召喚/従属》(※クトゥルフ2010参照) 武器:空飛ぶ前差し…攻撃力:1d3。命中率:ウタの現在のMP×5%。 一度攻撃を行う度にウタのMPは1減少する。 耐久力:3 ※ただし命中させるのは非常に難しい。 弱点:  オルゴールの音を聞くと全ての能力値が−2され、前差しの自律攻撃が行われなくなる。  また次のターンから全ての技能の成功率が−10%ずつ低下して行く。 設定:  神子として一族による儀式を半端に施された結果、永遠に死ねない肉体を持ってしまった少女。肉体だけは醜く老化を続ける一方で、精神だけは永遠に9歳の幼い少女のままであり、今や元の容姿は見る影もない醜悪な容貌へ姿を変えている。  自らに永遠の苦痛を与えたこの世界を憎み、せめてのも安寧を守る為に屋敷に狂気と���に固執する。けれど彼女の本当の願いは、紛れも無く、この世界からの解放、即ち自身の死である。 ◼︎古尾人ヲリ 母親の亡霊 享年35歳  INT:16 POW:11 アイデア:80 MP:11 設定:   ウタの母親の亡霊。元は古尾人家の先代神子の妹。姉の無惨な死に姿が忘れられず、古尾人家の呪われた因習に恐怖を抱き続けてきたが、逃げる勇気も持てずウタを出産した。彼女に逃亡をもちかけた夫は一族の者により殺害され、それが彼女の逃亡の勇気を削いでしまった。  けれど娘が儀式の生贄になる事に遂に耐えきれず、娘を助けようと儀式に乱入。しかし彼女の乱入により儀式は失敗したものの、ウタは更なる呪いをその身に宿す事となってしまった。  儀式の失敗後は一族により離れに幽閉され、娘の呪いによって発生した火災により生涯を終える。生涯娘の安寧を強烈な罪悪感と共に祈り続けていた。  彼女の願いは娘の解放と救済である。 ◼︎広能文隆(ひろのうふみたか) 神主 57歳 「……帰れ。この件はお前達が関わるべき問題じゃない」 STR:16 CON:14 SIZ:14  INT:14 POW:10 DEX:9 APP:7  EDU:17  幸運:50 知識:85 アイデア:70 耐久値:15 MP:10 正気度:50 設定:  町に唯一存在する神社、日置神社の神主。真面目で厳格な性格をした中年男性。厳めしい面構え。現在は七夕祭りに備えて忙しくしている。  日置神社は古尾人家と関わりの深い神社であり、彼自身も古尾人家に纏わる伝承は理解している。古尾人家のお祓いを行っていたのも彼である。尚、お祓いは代々50年に1度行われているという。  ウタは邪悪な悪霊であるといった表面上の伝承を伝え、これ以上関わるべきではないと探索者達を諭すだろう。悪い人間では無いが融通が利かない頑固な性格。 ◼︎広能妙(ひろのうたえ) 放浪巫女(元) 92歳 「ヒッヒッヒ……半端に手を出す事こそが悲劇の引金よ、阿呆息子め……」 STR:8  CON:11 SIZ:9  INT:18 POW:18 DEX:18 APP:2  EDU:11  幸運:90 知識:55 アイデア:90 耐久値:10 MP:18 正気度:90 設定:  文隆の母。前代宮司、なのだろうか?  不気味で腰の曲がった無駄に元気な老女。普段は各地を放浪しているらしい。古尾人家に伝わる伝承を独自の視点も交えて語る。探索者達へウタを完全に除霊するにはどうしたら良いかのヒントを与えるだろう。  飄々とした掴みどころの無い浮世離れした人物であり、どうせ関わるなら最後までキッチリやれと探索者達をけしかける。  登場させるのが面倒くさければ割愛しても構わない。 ◼︎番 万(つがいよろず) 地元の駐在 55歳 「もうすぐお祭りだよ、楽しみだねえ」 STR:13 CON:10 SIZ:15  INT:10 POW:9 DEX:6 APP:11 EDU:14 幸運:45 知識:70 アイデア:50 耐久値:13 MP:9 正気度:45 設定:  地元の交番の唯一の駐在。穏やかでまるまるとした気の良いおじさん。最近地元の「悪霊の家」で不審な人影を目撃した者が続出し、また付近��家で小火が発生している事から、廃墟に不審者が住み着いたのではないかと訝しみ、探索者達へ調査を依頼する。  もしも探索者達が途中でリタイアする、中途半端な状態で除霊を終える等をした場合、エンディングにて様子を見に行った彼は死亡する。  一切の霊感を持たず、ウタの怪現象や母親の霊の姿を目にする事が無い為、事態の危険性を今ひとつ理解出来ず暢気している。  KPの都合の良いように利用すると良い。
導入
 このシナリオには2種類の導入が存在する。KPは探索者の傾向に応じて導入を使い分けると良いだろう。或いは別の導入が可能そうであれば改変しても構わない。或いはプレイヤー側から意見を求めても良いだろう。いずれにせよ悪霊の家の前で合流するとすれば、スムーズに話が進む筈だ。 ◎導入1 依頼型  あなた達は七夕祭りの為にこの町を訪れている。ある日、探索者達は滞在中に偶然知り合い仲良くなった地元の駐在である番から、一件の建物の調査を依頼される。  それは街外れの山奥に建つ古い和風建築の民家であり、最近その建物の近辺で不審な人影の目撃や、小火騒ぎなどが起きているのだという。番巡査は七夕祭りの対応で忙しく、手を回す事が出来ないらしい。  依頼としては、建物の中に不審者が居ないか確認して欲しいというもの。手伝ってくれれば相応の報酬は出すと彼は探索者達へ頭を下げるだろう。 ◎導入2 自主参加型  あなた達は怖い話が大好きなオカルト好きだ。  ある時、あなた達は最近有名になっているオカルト屋敷の話を耳にする。何でも嘗て呪われた一族がそこに住んでおり、今もなお呪いが残されているというのだ。  酷薄な好奇心から、或いは何か違う理由から、あなた達は自らその悪霊の家へと足を運ことにした。
1:悪霊の家・地上
 山を少し入った所に問題の家は存在する。長らく手入れがされていないらしい荒れ果てた和風建築の家。表札に書かれている文字は掠れてしまい文字を読む事が出来ない。  この時点では古尾人家の地上部を捜索する事になるが、この時点で捜索出来るエリアは殆どがトラップエリアである。  亡霊と化したヲリの姿やウタの幻覚等を出し、シナリオ全体の雰囲気の紹介として演出すると良いだろう。 ◎玄関  玄関は嘗ては栄華を保っていた事がわかるような大きなもの。【目星】で玄関の靴棚の下に子供用と思われる非常に小さな下駄を見つける。褪せた赤い鼻緒が着いているが切れてしまっている。  【アイデア】でそれがデザインの割には小さ過ぎると気がつくだろう。【歴史】【人類学】に成功する事で、中国の纏足を思い出すかもしれない。  下駄を手にする、或いは屋敷内へ足を踏み入れようとすると、屋敷の奥へ続く廊下を幼い少女が鞠を追いかけて消えていく姿を見るだろう。 ◎居間  家族全員が団欒するためと思しき部屋。部屋の中央に囲炉裏があり、蓋がされた鍋がかけられている。蓋を開いて中を覗くと血腥く腐った臭いのする、吐き気を催すどろりとした奇妙なものが入っている。奇妙な事に、この臭いは蓋を明け、中を見た者しか感じる事は無い。 【正気度チェック0/1】  【アイデア】でそれが人肉であるような気がする。【医学】で調べるとそれが完全に腐った人肉である事に気付いてしまう。 【追加正気度チェック0/1d2】  部屋の隅には今にも壊れそうな戸棚が置かれている。棚の中を覗くと、引き出しの中にぎゅうぎゅう詰めに詰められた女性の無惨な姿を見る事になる。  そして次の瞬間、劈くような悲鳴を上げながら、引き出しの中から焼けただれた女の手が大量に伸び、あなたの顔を引き出しの中へ引きずり込もうとするだろう。【DEX×3】で回避が可能。失敗した場合、1d2のダメージ。また戸棚は完全に壊れてしまう。 【正気度チェック。1/1d4】  壊れた戸棚からは屋敷の見取り図が発見出来る。 ◎台所  土間状の炊事場。竃や水場が存在する。竃にかけられた鍋には蓋がされており、囲炉裏と同様のトラップが存在する。  中に入ろうとすると、少女の笑い声が聞こえ、背筋が凍り付くような感覚を覚える。中に入るならば、錆びた包丁や不気味なものが詰められた鍋などの台所用品が一斉に浮き上がり、探索者達めがけてとびかかってくるだろう。  【DEX×3】【回避】で回避が可能。失敗した場合、1d2のダメージ。 【正気度チェック。1/1d4】  これはウタが探索者達を追い出そうとしている様である。 ◎客間  客間へ近付くと、中からは子供の声で歌が聞こえてくる。客間の襖を開くと声はぴたりと止む。この歌は後述する子守唄と同様のものだが、この時点でははっきりと内容を聞き取る事は出来ない。  中は広々とした不気味な部屋になっている。部屋の中央に古い前指し(匕首)がぽつんと飾られているのが真っ先に目に入るだろう。前指しには奇妙な紋様が描かれている。これは古尾人家の家紋である事がその後の調査で分かる筈だ。これが重要なアイテムである事が分かるよう、KPは探索者にそれとなく伝えると良いだろうが、持って行く事をKPから探索者へ伝える必要は無い。  小刀に触れるとゾッとするような鋭い冷たさが触れた者を襲う。 【正気度チェック。0/1】  天井の梁の部分には歴代の当主達の図と思われる写真が何枚か飾られているが、その何れもが顔の部分が破られている。まるで故意に破り散らしたかのようだ。 ◎中庭  中庭には客間から移動する事が出来る。中庭の片隅には井戸が存在するが、中を覗くと水が並々と入っているように見えるだろう。  正確にはこれは他人からの干渉を強く拒むウタ、及び彼女を封印しようとした古尾人家の呪術によって映されている幻影であり、実際の井戸はとっくの昔に枯れ井戸になっている。後ほど文隆や妙から情報を聞く事でこの幻影を打ち破る事が出来る。この時点では誘導する事は好ましくないだろう。  中庭に出ると、少し離れた場に存在する【離れ】が目に入る。 ◎離れ  離れはお堂のような形をしている。入口には一枚の古い札が貼られているが、中央で破れている。誰かが先に入ったのか、扉が微かに開き風に煽られ音を立てているだろう。  【オカルト】で札を観察する事で、それが神道の除霊などで用いられる神札と呼ばれるものだと分かる。また周囲を【目星】で観察する事で、どす黒く変色した清酒の瓶や、やはり変色した盛り塩などを発見する事が出来るだろう。  【アイデア】で地元の詳しい人間に尋ねれば詳しい事が分かるかもしれない、という印象を受ける。  これは日置神社の神主である広能家が50年に一度の周期で執り行っている封印の儀式の跡である。文隆もこれを行ったが、何も知らない地元の子供達が入り込み、結界を壊してしまったのだ。  お堂の中に入ると、中には大量の燃え堕ちた蝋燭と燭台、大量のこけしが飾られている。入口以外、部屋のどこにも窓が無い事が見て分かるだろう。中は異常な程に肌寒くゾッとする空間である。  中に入ると、女性がすすり泣きながら何かを歌っている声と共に、部屋の隅にある化粧机に半透明の女性の姿が浮かび上がる。女性はやがて消えてしまう。正に幽霊だ。 【正気度チェック。0/1d3】  化粧机を調べると、机には爪で引っ掻いたような痕で文字が刻まれている。文面は下記の通り。 唯々憎ヒハ己ノ不甲斐ナサ 古尾人ノ家ニ産マレネバ幸セニナレタダラウカ 好ク眠レテイルダラウカ 其レダケガ氣ニナツテナラヌ セメテモウ一度オ前ヲ此ノ腕ニ抱キタヒ 愚カナ母ヲ憎メ 其レガ生キル糧トナルナラ 憎メ 憎メ  また机の上には一台の小さな箱のようなものが置かれている。蓋を開くとオルゴールだという事が分かるが、壊れて音が出る事は無い。適切な機材を揃えての【機械修理】か、地元住人の力を借りれば1日かけてオルゴールを修理する事が可能である。  オルゴールを良く観察すると、裏側に『ウタへ』と傷が残されている事が分かる。これはヲリが娘を想って用意したオルゴールである。  室内を【目星】でよく観察する事で、ここが女性の部屋であったらしいような印象を受ける。同時に、部屋の片隅に、焼け焦げたような痕を残す鉄製の足枷の存在に気付くだろう。  室内の情報をあらかた出した所で、3体のこけし達が一人でに動きだし、探索者達へ襲い掛かる。 「カエレ」「マッテ」「カエレ」「マッテ」  交互にそう口にしながら、こけしは探索者達へ襲い掛かる。室内は暗い為、何らかの手段を講じない限りは技能に−10%の補正がつく。 【こけしのステータス(1体あたり)】 STR9(7) DEX8(6) 耐久力3 攻撃手段:体当たり40%…1d2ダメージ ※同一ステータスのものが3体存在する。 ※探索者が小刀を所持している場合、各ステータスに−2。攻撃成功率が20%に軽減。  こけしと戦うも、この場から逃げ出すも探索者次第だ。或いは時間が厳しければこの戦闘はKPの判断で割愛しても構わないだろう。  探索者達が古尾人家を後にする際、半透明の女性が探索者達を留めるように此方へ手を伸ばす姿が見えるが、すぐに消えて見えなくなってしまうだろう。
2:町での捜査
 悪霊の家の探索を終えた探索者達は、何らかの方法で家の事を調べようとするだろう。下記に各情報とその情報を得られるエリアを記載する。 ◎家の歴史について調べる  古尾人家の調査を終えた探索者達は家の歴史について調べようとするだろう。或いは事前に情報を入手しようと動くかもしれない。その場合は市役所の帳簿や交番の資料を【図書館】で調べる事が出来る。小さい町の為、この町に図書館は存在しない。【図書館】を3時間かけて調査を行う事で、1成功につき1つ下記情報が分かる。 *あの家はかつて古尾人(こびと)一族という地元の権力者が住んでいたが、明治期を境に古尾人一族は急速に衰退してしまった。今は名義上の管理は日置神社(ひおきじんじゃ)が引き継いでいる。 *古尾人一族は嘗てこの土地の宮司ような役割を担っていた。火卸(ひおろし)の儀と呼ばれる儀式により人々へ豊穣を齎したとされる。一族の衰退以後は別の土地から訪れた神事関係者がそれを引き継いだ。それが日置神社である。 *古尾人家は代々『神子(みこ)』と呼ばれる女性を有し、その女性が神託を受けていたようだ。 *古尾人一族の衰退が始まって間も無く、古尾人の家は謎の大火に見舞われ、一族の殆どが死亡したらしい。 ◎神社で話を聞く  日置神社はこの町に唯一存在する神社であり、町の規模に反して奇妙に大きな神社である。御祭神は迦具土神。現在は七夕祭りに備えて多くの人間が準備の為に出入りしている。  神社内では薪が土台状に組まれている。この土台に一晩中火を燃し、7日を終えた所で飾った笹や短冊をこの火で燃やすのが七夕祭りの習わしだという。  ここには神主の広能文隆が居るだろう。彼は探索者達が古尾人家について調べていると知ると良い顔はしないが、【対人技能】に成功する事で古尾人家に関する詳しい歴史を教えてくれるだろう。出てくる情報は下記の通りだ。 *嘗て古尾人家は神降ろしの儀式を行っていたその儀式は『火卸の儀』と呼ばれていた。それが訛って日置になり、この神社の由来となったという。彼らはその儀式によって体内に神を宿した『神子』という存在を生み出し、神子の齎す神託や不思議な力を用いてこの地域へ豊穣を齎したとされている。古尾人家は火の神を信仰していたという。寒い地域である故に、火を神聖視していたようだ。 *この街の七夕祭りは元を辿ると火卸の儀の事である。古尾人一族の衰退と共に形や名称が変わっていった。今は地鎮祭の意味が強いとされている。屋台や見せ物なども集まり、地域外からの観光客も存外多いという。 *古尾人家の衰退の原因となったのは、ある時、火卸の儀に失敗してしまったからである。原因までは分からない。当時の神子の名は古尾人ウタという。古尾人家最後の神子である。  【心理学】を用いる事で、「火卸の儀失敗の原因は分からない」という言葉を伝える時に彼が僅かに目を逸らした事が分かるだろう。しかしこの事について彼の口を割らせる事は容易な事ではない。  探索者達が古尾人家で発見したアイテムを見せると下記の反応を示す。 *前差し  火卸の儀で用いられた祭具の一つに小刀があったという事は聞いている、だが詳しい利用方法についてまでは分からない。あの家でそんなものが見つかる筈は無い、誰かの悪戯だろう。何なら引き取ろうか? *オル��ール  思わずと言った体で「何故これがここに?」と呟くだろう。探索者がとぼければ暫く何かを考えた素振りを見せるが詳しくは話さない。  封印が壊れていたという事を伝えれば【聞き耳】で「参ったな」と呟くのが判る。  オルゴールに関しては、それは自分が返しておくから渡してくれと言われるが、探索者が断るならば強く要求する事は無い。 *神札  誰かが肝試しの真似事でもしていたんじゃないかと回答されるが、【心理学】で彼はそれに見覚えがありそうだという事が分かる。  これらの情報を揃えた上で【対人技能】に成功する事で、ようやく彼は「ウタの呪いは晴れてはいない」と答え、これ以上この件に関わらない事を探索者達へ強く進め、話題を切り上げてしまう。祭りの準備の為にその場から立ち去ってしまうだろう。 ◎オルゴールを修繕する  適切な機材を揃えて【機械修理】に成功する、或いは町の修理屋へ依頼するなどで、1日かけてオルゴールを修繕する事が出来る。  オルゴールを引き取ると、オルゴールからは子守唄が流れてくる。そのメロディは屋敷で少女が口ずさんでいたものと同じだという事が分かるだろう。  音を聞いた町の住人達は懐かしい歌だとそれを懐かしむ。曰く、これは町に昔から伝わる子守唄なのだという。この町の子供達は皆これを聞いて育つのだと住人達は教えてくれるだろう。  探索者達が歌詞について言及すれば、下記のような文面を教えて貰う事になる。  ふるえ、ふるえ、ゆらゆらと  ひふみよいむなやここのたび  ふるべ ゆらゆらと ふるべ  【オカルト】でこの歌詞の由来が迦具土神信仰の文言である事が分かる筈だ。 ◎奇妙な老女  ある程度情報が集まってきたところでこのイベントを発生させると良いだろう。探索者達が何らかの行動をしていると、「もし、そこのお若いの」と声をかけられる。振り返ると���わくちゃの老女がニヤニヤと不気味に笑いながら探索者達を見つめているだろう。  「悪霊の家の話を知っておるかえ?」と彼女は切り出してくる。彼女から古尾人家に纏わる、より詳しい話を聞く事が出来る。 *火卸の儀とはおぞましい代物だ。神子には代々若い女が選ばれる。清められた小刀によって割腹を行い、そこに儀式によって降ろした神という名の火の塊を封じ込める儀式である。神子達はそれにより超常の力を得るが、死ぬまで体の内側から焼かれ続ける苦痛を味わい続けるのである。 *最後の神子である古尾人ウタの火卸の儀は失敗した。儀の場に邪魔に入った者が居たからだ。それは我が子を憐れんだウタの母親だった。けれどそれにより儀式は失敗し、ウタはより悲惨な末路をたどる事となった。永劫の苦しみの中にその身を置く事になったのである。 *ウタの苦しみと母親の嘆きはそれは酷いものだった。ウタは一族とこの土地、そして己の母親を呪い続け、母親��一族を呪い娘の境遇を嘆き続けた。その負の念により古尾人家は衰退を辿った。やがて二人の怨念により建物内で火災が発生し、古尾人一族の殆どは死亡してしまった。それ以来あの土地はずっと呪われ続けており、木は朽ち、水は枯れ、自然すらもあの家を避けるのだ。 *二人の怨念が土地へと溢れ出す前にと、街の人々は古尾人家に見切りをつけ、外部から人を呼び、日置神社を作りウタと母親の怨念を封じ込めた。文隆ら日置神社の宮司達はその任を代々引き継いでいるのである。  これらの情報を昔話を語るように老女は伝える。何故そんな話をするのかという理由を問われたならば、彼女はウタの封印が解け始めている事、今更再度封印を行った所で大した効力は最早得られないだろう事を伝え、手遅れになる前に早く町から逃げると良いと探索者達へ伝える。暗に、この町はもう駄目だと探索者達へ伝えるのである。  彼女の提案にどう応えるかは探索者次第だ。 ◎前差しの呪い  道中で手に入れる事の出来る前差しは呪われており、それを屋敷から持ち出した探索者が居た場合、夜な夜な夢にヲリの記憶を垣間見る事になる。  その都度正気度チェックが発生する。基本的な減少量は【1/1d4】。  一度この夢を見ると、それ以後は前差しを屋敷へと返しても、夢から目覚める度に枕元に前差しが置かれている事になる。  この夢を用いて、KPはシナリオの背景説明などの演出を行うと良いだろう。
3:悪霊の家・地下
 情報収集後、探索者達が古尾人家へと戻ると、中庭で子供の歌声が聞こえてくる。オルゴールの解析を終えていれば、それはオルゴールの子守唄と同じものだと分かるだろう。  探索者が興味を示すようなら、この辺りで歌詞を示したりしてもいい。  中庭に出ると井戸の傍らに子供が立っているが、すうっと消えてしまう。 ◎地下へ至る道  本来ならば水は存在しないと言う話を聞いてから、井戸を覗き込むと先日まで確かに存在した筈の水が消えている。問題無く中へ入る事が出来るだろう。  底に着くと、人間一人が通れるぐらいの隠し階段がある事が分かる。一列に降りていく事になると伝え、隊列を決めるようKPは指示するように。  やがて地下へ降りて行くにつれ、どんどん温度が上がっていく。暫く進むと探索者の誰かが持っているだろう前差しが一人でに動きだし、探索者めがけて襲い掛かってくる。 【正気度チェック。1/1d4】 【呪われた前差し】 攻撃力:1d3 命中率:ウタの現在のMP×5 一度攻撃を行う度にウタのMPは1減少する。 耐久力:3 ※ただし命中させるのは非常に難しい。  小刀を避けて地下へ向かう場合、【DEX×7】に成功しないと階段から転落し1d3のダメージを受ける。ただしナイフの攻撃圏から逃れる事が出来る。  ナイフから逃げて地下へ向かう途中で【目星】か【聞き耳】を行わせる。【聞き耳】に成功すると、探索者達の後ろから、鎖がこすれるような音が聞こえてくる。【目星】に成功すると、探索者達の後ろから、半透明の女性がゆっくりと階段を降りてくる様を目撃する。  これはウタの母親、古尾人ヲリの姿である。探索者達が結界を解いた事で、探索者とともに娘の元に向かおうとしているのだ。  ヲリに触れられると正気度チェックが発生。これは接触の度に発生する。 【正気度チェック。1/1d4】  接触した探索者にヲリの記憶を垣間みさせても良いだろう。ヲリは探索者達と意思の疎通をはかる事は出来ない。話しかけてもブツブツと俯き何かを呟き続けているだけである。  細い階段を下って行くと、やがて鉄錆びた扉が目の前に現れる。扉からは非常に強い熱気が漏れている事が分かるだろう。 ◎地下室の中で  探索者達が中にはいると、むせ返るような腐臭と肉の焼ける臭いが鼻を突くだろう。地下である筈なのに周囲は明るい。何故ならそこには体内に決して消えぬ火を抱えたまま、百数年の長きに渡り生き続けている怪物、古尾人ウタの変わり果てた姿があるからだ。  ぶよぶよと白く濁った肉塊のようなものから、小さな足と手がチロチロと、不釣り合いに伸びている。  じゅうじゅうと肉の焼けただれる音がする。吐き気を催す酷い悪臭もまた。  肉塊の傍らにはボロボロの手鞠が寄る辺無く転がっていた。  化け物は自室へと入ってきた貴方達を見て、まるで獣のような咆哮をあげるだろう。  貴方達はその声と言葉に、もしかしたら思い当たるものがあるかもしれない。  怪物は、それは、彼女は、古尾人ウタの成れの果ては、貴方達へ確かにこう言っているのだ。  ————…「帰れ」と。 【正気度チェック1/1d8】  以後、古尾人ウタとの戦闘ラウンドが発生する。彼女のステータスはNPCの項目を参照。  戦闘開始後、入口を振り返ると、半透明の母親はそこに居る。しかしウタは母親を視認せず探索者への攻撃を続ける。  【目星】でウタの目には醜悪な肉の塊と化した瞼と大量のヤニが溜まり、彼女は目が見えていないという事が分かるだろう。  ヲリは娘へ手を伸ばそうとするが、足につけられた足枷と鎖がそれを阻んでいる事が分かる。  探索者達がハッピーエンドを望むならばどうにかしてウタに母親の存在を認識させなければならない。  考えられる手段としては、 *ウタの瞼を開かせてヲリを視認させる(【ナイフ】、【組み付き】等の技能でウタに対して部位狙い攻撃を行う) *ウタを説得しヲリを認識させる(【説得】と【憎悪】の対抗ロール) *ヲリの足枷を破壊しウタに近付けさせる(ヲリとのPOW対抗のちに足枷へ攻撃を行う(足枷の耐久:5))  辺りだろう。  他、プレイヤー側から提案があった場合は、KPはそれを積極的に採用するようにしても良いかもしれない。  5ターン以内に、暴れるウタに対し母親を認識させるアプローチに成功すれば、ED4のルートへと至る。  成功せずに5ターンが経過した場合、ウタはオルゴールの音色すら耳に入らなくなり、母親への愛情を永久に失い和解の機会は失せられる。
エンディング分岐とクリア報酬
 探索者達の行動によってエンディングは4つの形に分岐する。クリア報酬と併せ、下記に記載する。 ◎ED1 火卸の儀・再 条件:地下に行く事無く探索を諦める    /地下へ行く事無く七夕祭りの日を迎える  解き放たれた母親の怨霊は娘を探し求めて地上へ溢れ、ウタの怨念と合わさり街へ襲い掛かる。その思念は多くの人々の思念が集う祭りの場の気と合わさる事により、地の底に封じられていたイォマグヌットを蘇らせる事になる。奇しくも、それは嘗て古尾人一族が行っていた儀式のように。  蘇らせられたイォマグヌットは、街も人も、全てを余す所無く焼き尽す。後には原因不明の大火によって一夜にして燃え尽きた街だけが残されるのだ。  ウタとヲリの魂は目的を遂げたイォマグヌットによって連れ攫われ、永遠の苦痛の中に身を置くこととなるだろう。  探索者達が街を逃げ出していれば探索者達は死なずに済むが、番万や広能文隆を始めとした地元住人達は全員死亡する。 *クリア報酬:無し ◎ED2 母子再会・絶 条件:地下室でウタを倒さず逃げ帰る  探索者達が地下への扉を開く事により、母親の怨霊は娘と再会を遂げる為、街の悲劇は回避される。しかし屋敷そのものの除霊が為された訳ではない為、古尾人屋敷はその後も悪霊の家として語り継がれる事となる。  そして祭りが終わった翌日、番巡査の無惨な死体が屋敷の前で発見される事になるだろう。 探索者達の報告を受けて、祭りを終えた番巡査は屋敷を自ら見に行ってしまい、悪霊の手にかかってしまったのである。 *クリア報酬:無し ◎ED3 母子再会・終 条件:ウタを物理的に殺害する  武道に長けた探索者達が相手だった場合は不可能な選択肢ではないだろう。  ウタは断末魔の悲鳴を上げ死亡する。或いはそれこそが彼女にとっての幸運なのかもしれない。ウタの排除が完了する為、街の悲劇は回避される。探索者達は祭りを楽しむ事が出来るだろう。  そして探索者達は祭りの翌日、番巡査から礼を言われ、こんな事を話される。 「実はね、君たちに頼んだ手前、昨日の夜に例の屋敷の様子を見に行ったんだよ。そうしたらね、不思議だったんだけど、屋敷の中から女の人の泣き声が聞こえてきたんだ。『ごめんね、ごめんね、ごめんね…』って。わたしゃ、何だか凄く悲しくなっちゃってねぇ。あそこには、何か悲しい記憶でも残っているのかなあ……」  文隆や妙からヲリに関する詳しい情報を与えても良いだろう。  確かな事は、娘は成仏したが、娘を悪霊としてしまった罪悪感に囚われ続けた母親の魂は、その後も暫くは地上に縛られ続けるだろうという事だ。  しかしそれは最早、探索者達にはどうしようもない話だろう。 *クリア報酬 ・シナリオクリア…1d15の正気度回復。 ◎ED4 母子再会・幸 条件:ウタを殺害する事無く、ヲリの霊共々ウタを成仏させる。  ウタだった醜い化け物は、「……おがあ、ざ、ん」と悲しげな呻き声をあげて母へと近寄るだろう。母親も娘を抱きしめ、母子は暫しの再会を堪能する。  そしてウタは探索者へ「殺して」と告げるだろう。それによってようやく、ウタとヲリは共に成仏する事が出来る。  その後、祭りはつつがなく執り行われる。探索者達は祭りを楽しむ事が出来る筈だ。そしてその祭りの人ごみの中、笑って人ごみに紛れて消えていく、半透明の母子の幻影を見るかもしれない。 *クリア報酬 ・シナリオクリア…1d15の正気度回復 ・母子を成仏させる…1d5の正気度回復 
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hasami-j-blog · 6 years
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【クトゥルフ神話TRPG】RESPONSE
 ねえ、ねえ、ねえ。  こたえて。  ねえ、こたえて……。
 狂気の音色はまだ終わらない。あなたは正気? それとも…。
■【はじめに】
 CALLINGの続編にあたるシナリオ。単体でのプレイは非推奨となっている。  作中での時系列はCALLINGのED3のものである。 (前作の黒幕、狂信者軍司直衛が廃人となりながら生存している時系列)  CALLINGと併せ、キャンペーンとして回す事も出来るシナリオとなっている。本作はタイムリープ物の要素も併せ持っている為、最初からキャンペーンとする場合はKPは時系列や描写の整合性に留意する事を推奨する。  舞台は現代日本と夢の中の1999年の日本を行き来する形となっている。  プレイヤーは4〜5人を想定しており、プレイ時間は音声セッションで6〜8時間程度のシナリオである。  探索者はCALLINGの探索者を続投しても良いし、それ以外の探索者を何らかの形で関わらせても構わない。物語への説得力という面では、正気度他が保てば続投を推奨する。  CALLINGで何らかの経緯で魔導書を入手していた場合、神話技能はそのまま保有していても構わない。ただし前作から然程時間が経っていない関係上、魔術はまだ会得していないとするのが適切と思われる。 (知識はあるためSANは減っているが、訓練他が足りない為に実践には至らない程度と解釈すると都合が良いだろう)  推奨技能は<目星><聞き耳><図書館><対人技能><精神分析>  戦闘はあるが、戦闘技能が無くともクリア自体は可能だろう。
■【推定難易度】
KP:★★★★☆(夢世界を中心とした情報管理とNPCのRPを要求される) PL:★★☆☆☆(CALLINGよりは楽になっている)
【舞台】
 時代はCALLINGの一年後、2014年の夏。  探索者達は最近奇妙な夢に苛まれている。真っ赤に染まった空と、見覚えのある(あるいは見知らぬ)電波塔、その傍らで見下ろす街の景色。夢の時間は少しずつ伸びており、それに伴う精神的苦痛を探索者達は味わっている(前作の探索者であれば、説得力が増すだろう)。そうして探索者達は再び事件を追い始める事になる。  主な舞台となるのは前作の舞台である山間の町、赤霧市。そしてもう一つ、赤霧市から電車で2時間ほどかかる、海に面した町、流累市(るるいし)である。  CALLINGで語られた15年前(1999年)の夏に発生した集団自殺事件と、現代で発生している奇妙な夢事件、双方を同時に追って行く形となる。
【シナリオ背景】
 探索者達が見ている夢は1999年の赤霧市の「集団自殺事件」が発生するまでの出来事である。探索者達は望まぬままに軍司直衛の過去に関わる事になる。  この事件の背景には、CALLINGの一件にて廃人状態となった軍司直衛を引き取り治療を行う事になった精神科医、響恭という女性が関わっている。  彼女は『ヒプノーシス』という学問を専攻する研究者にして、同時に流塁市でサナトリウムを経営する優秀な精神科医である。前作にて正気を完全に失った軍司を重度の精神患者として引き取り、『ヒプノーシス』を用いた治療を行った結果、彼女は軍司の有する神話知識の一端に触れ、その狂気の世界に引き込まれる事になる。  狂信者じみて彼に魅了されていった響は、彼の過去をより深く知りたいと願う事になり、前作で彼と深く関わる事になった探索者達を利用する計画を思いつく。彼女は夢を見させる魔術によって探索者達の意識を軍司直衛の夢の世界へと送りこみ、自身はサナトリウムから監視者めいてその様子を垣間見ているのである。  彼女は軍司直衛に傾倒しているのであり、彼の持つ知識を正しく理解している訳ではない。故に彼女はその知識の危険性など何も知らず、無知のままに危険を犯している。彼女はやがてアザトースの招来を目指すだろう。自分の望み故ではなく、それを軍司直衛が望んでいた故に。  このシナリオのタイムリミットは、基本的にはシナリオ内時間において4日間となっている。
【余談】
 前作に引き続き、このシナリオのコンセプトは「人間vs人間」「狂気と正気の境界線」となっている。また、前作以上に「既知を選ぶか、無知を選ぶか」といった問題へフォーカスがあたるようになっている。軍司直衛の末路は知りすぎた者の末路であり、響恭の末路は知らなさすぎた者の末路となっている。  その中で探索者達が自分自身をどう定義付けるのか、踏み込むのか、退くのか、最後に何を選ぶのか。そういった形で演出を行っていくと良いだろう。
■シナリオ本編
1.基本導入と特殊ルール 2.各種情報−現実の世界 3.各種情報−夢の世界 4.夢の世界:最終日 5.現実の世界:最終決戦 6.ED分岐とクリア報酬 7.NPC情報
1.基本導入と特殊ルール
■導入 【奇妙な夢】 + + +  貴方達は気付くと奇妙に青みがかった景色の中に居た。  そこは夕陽に照らされた小高い丘の上。後ろを振り返れば山があり、森がある。  傍らには青白い夕陽に照らされた電波塔が、まるで貴方達を見下ろすかのように聳え立っていた。 『ノストラダムスの…(ざざッ)い規模な混乱が予想——…(ざりッ)(ざッ)』  どこかからともなく、ノイズまじりのテレビの音声が聞こえる。  電波塔の名前が目に入る。第弐八電波塔。 「そんな所で何してるの」  すぐ傍らから声が聞こえた。  振り返れば、制服を着た一人の少年が、不思議そうな顔をして貴方達を見詰めていた。  視界にノイズが走る。 + + +  と、いった夢を見て探索者達は目を覚ます。周囲を見れば見慣れた自宅が眼に入る筈だ。それは探索者達が一週間程前から見続けている奇妙な夢である。  最初の夢では空が。次に森が、街が、鉄塔が、そして音が加わっていった。  そしてついに今日の夢で、夢の中に人が現れ、あなた達へと話しかけてきたのである。  探索者達が前作を経験しているのならば、夢の場所も、夢の中の少年の正体も既に察しがついて��るだろう。それは1年前に探索者達が悪夢のような目にあった山間の街「赤霧市」であり、少年はその事件の首謀者だった軍司直衛という男の面影を色濃く残していた。  一年前の、山の中の小さな街で起きた悲劇は、まだ終わっていないとでもいうのだろうか? そんな疑念に駆られ、そしてもう一つの現実的な問題故に、探索者は再び立ち上がる事になる。  現実的な問題とは、即ち不眠だ。  探索者達は夢の影響で、この一週間、どれだけ眠っても眠ったような気がしなくなっている。身体は疲れたままだし、ストレスで心がすり減っていくようだ。  こんなことが続けば、きっと自分は発狂してしまうだろう。  ……それとももう、狂っているとでもいうのだろうか?  自身の肉体と精神の限界を感じた探索者は、調査を開始する。 (探索者が前作未経験PCである場合は、後者の理由を大きな動機とすると良いだろう。その場合前作の事件に関する情報や軍司直衛に関する情報も、シナリオ内で順次明かしていく事になる)  ここでこのシナリオ内のルール、【夢ルール】の説明を行う。また、前作の継続探索者である場合は、この時点で連絡を取らせる等して合流させる事を推奨する。  導入時に夢に関して【オカルト】か【知識】を振る事で、「ノストラダムスの大予言」というキーワードから、夢の中の赤霧市は1999年の街なのではないかと察せられる。
■シナリオ内特殊ルール 【夢ルール】  導入以降、探索者達は1日経過するごとに【CON×4】の判定を行う。これによって成功で1、失敗で1d4の正気度喪失が発生する。 【CON×4…正気度喪失1/1d4】  またシナリオ内では常に「狂人の洞察力」ルール(基本ルールブック91頁参照)を採用する。これは本作のテーマの一つである「狂気=既知」を示している。KPは周囲からヒントになるような情報を与えるなどし、進行に都合の良い情報を適宜示していくといいだろう。  このシナリオは基本的に朝、昼、夜、夢の4ターン制で進行する。1ターンにつき一つの場所に移動し調査を行う事が出来る。(運転等で急いで移動するなどの申請があり、それが成功した場合に限りもう一回分行動ターンを増やしても構わない)  夜に眠る、或いは道中で1ターンを消費し眠るという選択をした場合、夢の世界で情報収集を行う事になる。KPは夢の世界での時間の流れに留意する事。  夢の世界、現実の世界で得られる情報は次頁以降を参照。  シナリオ内の基本的なタイムリミットは4日間であり、それを経過すると夢の世界の出来事からアザトースの招来方法を知った響によってアザトースの招来が行われる。  その時点までに現実の世界での探索によって響にまで辿り着けていない場合はゲームオーバーとなる。
2.各種情報−現実の世界
 朝・昼・晩のターン内で、現実の世界で探索を行う事で得られる各種情報。  現実の世界で有すべき情報は、CALLINGでの事件がその後どう扱われたのかという事や、軍司直衛のその後についてなどが主となる。  また、前作では軍司を有能な医師だと歓迎していた街の人々が、掌を返したように腫れ物扱いしている描写を入れるなどし、街の住人達の無自覚な残酷さを演出すれば、夢の世界で探索者が軍司と交流を持ち易くなるだろう。  前作で登場させたNPCを再び利用するなどすれば、演出的な足がかりとなるだろうと思われる。ただし、あまりにも友好的すぎるNPCを出す事は、ゲーム的な観点から推奨されない。 ■第弐八電波塔について  探索の起点となる情報の為、これを知るのにダイスを振る必要は無い。  調べると赤霧市という山間の街に存在した電波塔の名称であることがわかる。老朽化等の問題により、一週間前に壊されている。1年前に奇妙な事件が起きたらしい。  より詳しく調べる場合は【図書館】【コンピューター】などで調べる事が出来る。KPが適切だと判断する調査方法で情報を出して構わない。  基本的に技能が1つ成功するにつき、以下の中から適切と思われる情報を1つ提示する。基本的には非継続探索者向けの情報が中心である為、継続探索者相手に情報を出す際は、前作のおさらい程度に留める事を推奨する。 (必要無いと判断した場合、これらの下調べは無視してそのまま赤霧市へ向かわせてしまっても構わない) 【1999年の電波塔・赤霧市について調べる】  今から16年前、即ち1999年に赤霧市に存在したカルト教団「宇宙星辰会」の煽動による集団自殺事件が電波塔で発生したという事が判る。 【1年前と16年前の事件の関連について調べる】  16年前の事件の遺族が1年前の事件に関わっているという事が分かる。軍司直衛という男だという事が判る。 【軍司直衛について簡単に調べる】  固有名詞を知った時点で、【コンピューター】【図書館】などで調べられる。  精神医学を専攻していた開業医であり、赤霧市に診療所を持っているという。インターネットで調べれば診療所のホームページが存在する。  ホームページの更新は1年前で止まっており、ネット上の掲示板では1年前に電波塔でカルトじみた事件を引き起こしているという事が判る。当事者でない限り、事件の詳細は分からない。
■【赤霧市に移動する】
 1ターン分消費して行動する事が出来る。経過時間は1d4+2時間程度。  街へ辿り着けば、街の人に話を聞いたり、電波塔について直接調べたりする事が可能である。以下に取れそうな行動を具体的に記す。  山に囲まれた都会とも田舎ともつかない閑静な街。1年前の事件や軍司直衛の事に関しては、住人達はあまり好んで口を開かないだろう。表立っては分からないが、田舎町特有の閉鎖的な空気も併せ持っているのだ。 【電波塔に行く】  「電通トンネル」というトンネルを通った先、小高い丘の上にある電波塔跡地。現在は電波塔はほぼ完全に崩され、鉄骨等の撤去工事が進められており、日中であれば工事現場の人と話をする事が出来る。  現場の人々は街の住人ではない為、1年前の事件に関して簡単に口を開いてくれるだろう。ただしその反面、知っている情報は表面的であり少ない。  1年前に住民達の一部が突然暴れ出すという事件が発生し、また電波塔から茫然自失状態の人間が大量に発見されるという事件があったという。電波塔の頂上からはカルト的な儀式の痕跡が発見され、警察は住人達の暴動の原因だったのではと推察しているが、明確な証拠は出なかったという話を聞ける。  電波塔撤去の工事が始まったのは一週間前からであり、作業はスムーズに進行しているとのこと。 【軍司直衛について詳しく調べる】  街の住人に対する【交渉技能】など、KPが適切と判断したロールに成功する事で話を聞く事が出来る。  かつてこの街の山の麓で軍司診療所を開いていた精神科医。1年前の事件で電波塔で茫然自失状態で発見されたという。  その後、警察で捜査が行われたが、重度の精神障害と判定され、責任能力が見受けられず、証拠も無かった事から結局この街の市民病院送りになったらしい。  診療所時代は街の人々に評判の良医だったという。現在は街の人々は彼のことを腫れ物を扱うように触れたがりはしない。  ロールの際に良い出目が出るなどすれば、彼の幼少期に関する話を聞くことが出来るかもしれない。その辺りの情報の匙加減はKPの自由だ。 【市民病院で話を聞く】  市民病院で軍司直衛のその後について話を聞きに行けば、半年前までは入院していたが、その後別所に引き取られたと教えられる。身寄りが無く、また私生活を行う事も難しいほどの重度の精神障害者をこの病院ではずっと世話をしている事は出来なかったというのが病院側の説明である。以前はそういった患者は軍司診療所へ回していたようだ。  軍司が引き取られたのは流累市という街にある「サナトリウム流塁」という療養所であるとのこと。また、他の重度精神障害者(即ちCALLINGで電波塔での戦闘で敵対者として出来てた狂人NPC達を示す)達も同時期にその病院へ送られたが、彼らは半年で驚く程の回復を遂げ、現在は各々の形で日常へ復帰しているという。  医療関係者や元患者達は、サナトリウム流累の院長である響恭という女性の腕前を誉め称えるだろう。あたかも1年前まで軍司診療所に与えられていた評価そのままに。  会話の中で【心理学】に成功することで、市民病院の関係者達は何らかの後ろ暗い所があるようだ、と察するだろう。この時点では如何にそれを問いつめようとも口を開く事は無い。  響に直接会ったり、サナトリウム流累について調べたりする事で、軍司他の患者の提供が一種の被験者提供、言い換えるならば体の良い厄介払いだったということがわかるだろう。 【診療所跡地に向かう】  山の麓に存在する診療所跡地。今もなお焼け跡が残され、不気味な雰囲気を残している。関係者の話によれば、撤去しようにも本来の所有者の権利が複雑な状態になっている事、また撤去しようとすると怪現象が多発するといった事から、今も放置されたままになっている。  跡地を詳しく調べる場合は【目星】で焼け跡の床部分に埃の切れ目がある事に気付く。近付けば、それは地下室の扉だという事が判る。STR12との対抗ロールで扉を開く事が可能である。  また、継続探索者の場合は【アイデア】で、その地下室の位置は前作で院長室の奥にあった厳重にロックのかけられた扉の部屋だと察する事が出来る。  地下室へ降りる事は出来るが、そこには最早何も残されてはいない。しかし僅かに、床に何かを動かしたような痕跡がある事だけが分かる。 (ここには前作時点で集団自殺事件及び現時点で響が使用している「夢見のテレビ」が存在していた。軍司はニャルラトホテプであった協力NPCの力によってこれを入手し、前作で街の人間に無差別に耳鳴りを発症させていた。今作では一週間以上前に響が跡地を訪れ、このアーティファクトを回収し再利用している)
■【流累市へ行く】
 1ターンかけて移動する事が可能である。具体的な時間としては1d4+1時間程度。  海に面したひっそりとした街。赤霧市とはまた違った閑静さを感じさせる。  この街の住人達は、赤霧市の住人とは異なりどこか朴訥とした真面目な雰囲気を演出すると良いだろう。  街外れにひっそりとサナトリウム流累が存在する。  街の住人への【交渉技能】など、適切なロールで下記情報を入手する事が出来る。 【流累市について】  最近、夜間に奇妙で不気味な生物の目撃情報が相次いでいる。化け物は夜に海辺、特にサナトリウム流累周辺で目撃されているようだ。  けれどあくまでただの目撃情報であり、それに襲われたといった被害情報は無い。また目撃されている怪物達に共通性は無いようだ。 (ある時は魚のようであり、ある時は鳥のようなものがいた。ある時は不定形の怪物でありといった具合である) 【サナトリウム流累について】  海辺の街、流累市の外れに存在する小さな療養所。運営者は響恭という女性。  軍司直衛も現在そこに収容されている。  元々は結核患者の治療の為に作られた施設だったが、時代と共に変化していき、研究施設を求めていた響の手に療養所として渡る事になったと言う。  殊更長期の治療を必要とする患者を主に収容している。その特徴から基本収容患者数は少なめ。 【響について】  現役の精神科医にして催眠療法【ヒプノーシス】について研究している女学者。学会ではそこそこ名の通った若き有能女医だという。冷静で学者肌の正に才女といった雰囲気の女性だと言う。  街での【聞き耳】や適切な【交渉技能】などを行う事で、名の通った立派な医師であるといった事が判るだろう。  基本的に彼女に関する悪い噂は存在しない。クリティカル等よほど良い数値が出た場合は不気味な印象を持つなどと語る人間が居てもいいかもしれないが、この時点で響への不信感を探索者へ抱かせすぎる事は後述のイベントを発生させ辛くなる危険性がある為、推奨しない。
■【サナトリウムの訪問】
 直接施設を訪れるとまずは受付でナースが応対する。軍司の知人である等の何らかの理に適った説明を行えば、響や軍司と面会する事が可能だろう。働いているナースの数は非常に少ない事が判る。  サナトリウムに入ってすぐに【目星】を行わせる。成功で、待合室に非常口の扉がある事に気付くだろう。  探索者達が軍司のもとを訪れれば、響は探索者達へ自ら面会を申し出る。響はそばかすの目立つ、キツい目鼻立ちをした、醜悪ではないが美人とも呼べない素朴な女性だ。  響はこの時点で探索者達の夢中での同行を観察している為、彼女は探索者達の事を一方的に知っている。それ故に探索者達へ会う事を拒まないだろうし、むしろ積極的に接して来ようとするかもしれない。  軍司は力なく車椅子に座り、知性無き虚ろな目に半開きの口といった正に廃人と言った状態で探索者達と面会する事になる。軍司へは何を話しかけても明瞭な反応が返ってくる事は無いが、アザトースの名称を告げた時に限り、探索者達を真っ直ぐに見詰めてくる。  ここで彼が完全に正気を失っている事と併せ、瞳の丸さ等の描写をさりげなく入れておくと良いだろう。  サナトリウム内では、希望すれば下記のような行動をとれる。 【響の治療に同伴する】  響のヒプノーシスを用いた軍司の治療現場に同伴する事が出来る。  暗い部屋にノイズの走ったテレビ(これが夢見のテレビだが、探索者達はこの時点ではこの情報は知らない)が置かれ、その前に患者である軍司が置かれる。 室内の灯りはテレビの放つ光のみであり、響は患者の後ろから患者にゆっくりと話しかける形で行われる。  基本的には響からの一方的な質問であり、軍司がそれに返答をする事は無い。響が幾つかの質問をしていく内に、やがて軍司は口を開くが、そこから返されるのは鼻歌のような奇妙なメロディのみである。それは夢の中で耳にしたメロディであり、同時に1年前の事件で例の電波塔で流れていた狂気の笛の音色であるという事を理解する。  響は軍司のこの反応は初めてだと、どこか熱に浮かされた様子でカルテへと筆を走らせる。先程までの冷静な様子とは打って代わった、どこか狂的な熱中と執着を感じるだろう。不気味な音色に対する反応には似つかない、喜色を孕んだ熱中である。  この異様な雰囲気を感じ、怖気が走る不気味なメロディを聞いた探索者は正気度チェックを行う。 【正気度チェック1/1d4】 【診察室内を探索する】  診察室の更に奥に催眠療養用の小部屋が存在し、治療に同伴する場合はそこに入る事になる。軍司の治療中、望めば途中で退出し捜索を行う事も出来るだろう。  それ意外の方法をとる場合は【忍び歩き】か【隠れる】が必要。  響への【言いくるめ】【説得】で許可を得ても良い。  清潔でこざっぱりとした印象の普通の診察室。カルテ棚にはこれまでの患者のカルテが仕舞われている。【目星】【図書館】などでカルテ棚を調べる事が出来、軍司直衛のカルテを発見出来る。 「軍司直衛のカルテ」  入院した日や治療の進行状況、その際の響の所感などが書かれている。  この施設にやってきたのは半年前であり、赤霧市の市民病院に響が声をかけられたのが切欠であったという。【アイデア】で一種の被研体提供だと察するだろう。  以降、軍司はこの施設で治療を受けていたようだ。  ヒプノーシスを行う度に軍司はまるで物語のような荒唐無稽な話をや知識を呟いていったらしい。それは気の狂れた者の妄想の一種と思われたが、それにしては整合性と一貫性を持ち、いつしか響はそれを記録に残すようになっていった事が判る。  【アイデア1/2】で、記録する響の文面が徐々に熱を帯び始めているように感じるだろう。 * * * 「外宇宙の彼方の王宮に棲むという白痴の王、海の底に封じられ今も夢を見続けているという邪神、精神生命体として時間を克服した偉大なる種族……彼の語る物語は荒唐無稽ではあったが、知性に溢れ、決して支離滅裂では無かった。  この人は一体どんな人間だったのだろう?  ああ、彼と直接話をする事が出来たらどんなにか良かっただろう!」 * * *  カルテを読む事で、その異様な文面に正気度チェック。 【正気度チェック0/1d4】  また、1%のクトゥルフ神話技能を得る。 【病棟を見て回る】  まともに会話が出来ない状態の患者達が多く収容されている。  【幸運】に失敗した場合、気の狂れた人間に突然殴られ1d2ダメージを負う。  特に得られる情報は無い。
■【イベント:サナトリウムでお茶会を】
 最終決戦及び最終日の夢に繋がるイベント。4日目を迎える、或いは情報が十分集まったとKPが判断した段階でこのイベントを発生させる。このイベントで眠りに落ちる事で、夢の世界でも最終日を迎えるようになるよう、KPは情報の出し方を留意するように。  適当にサナトリウム内を探索し終える/あるいは流累市に滞在する探索者達に、ナース、或いは響が探索者達へ接触してくる。 「お茶にしましょう、あまりここには人が来ないから。あなたの話を聞かせてくれないかしら」  そう言って彼女は探索者達を茶会へと誘うだろう。  探索者達が断ろうとする場合は響がその場で何かを呟いたのが見える。  【聞き耳】でそれがまるで聞いた事の無い言語である事が判り、どこかゾッとする響きを帯びている事が判る。 【正気度チェック0/1d2】  そしてその呟きが終わると同時に探索者達は眠りに落ちる事になる。  お茶に応じた場合は応接室に通され響と会話を行う事が出来る。狂人の洞察力に関する彼女の見解について(彼女はそれを、嘗て軍司が学会に発表して避難を浴びた「重度精神障害患者に於ける共通点とそれに関する見解」という論文の証左ではないかといった見解を持っている)や、ヒプノーシスという学問に対する彼女の見解などを語らせ(彼女は非情に興味深い研究内容でありながら、一方的に呼びかけ続けているだけの虚しい行為であるようにも感じている)、彼女の人間性を演出して行くと良いだろう。 「例えるなら、テレビのようなものよ。見ている事は出来る、情報も教えてくれる、けれど決して私に返事はしてくれない」  ここで出される紅茶には睡眠薬が仕込まれている。  また紅茶を飲まなくとも、周囲に薫き込められた微かなお香や響の呪文によって探索者達は眠りにおちる事になる。抗おうとする探索者達を強制的に眠りに落��し、響の黒幕感を演出すると良いだろう。 「おやすみなさい。……どうか、良い夢を見せて頂戴ね」  このイベントを経て、「夢の世界:最終日」のイベントへと続く。
3.各種情報−夢の世界
 夢の世界では宇宙星辰会の陰謀を暴こうとする若き軍司直衛と接触しながら、1999年の赤霧市を探索する事になる。  眠りにおちる度に夢の世界に現れる事になり、また夢の世界で現れる度に夢の中の現地の時間は少しずつ進行している。突然探索者達が消えたりする事に関して、軍司少年を始め夢の中の住人達は違和感を持つ事は無く、自然に受け入れている。  以下の情報の中からKPは現実の世界での進行状況等と併せ、適宜適切な情報を出して行くといいだろう。  基本的に1エリアの探索を終えるごとにノイズと共に目を覚ます事になる。  最初に夢の中で探索を行う時点で、日付は7月3日。集団自殺事件が発生するのは7月7日であり、その直前に市役所で「夢の世界:最終日」のイベントが発生するのは7月6日である。  夢の世界は全体的なカラーリングが青(導入)→赤→マゼンタ→緑→シアン→黄色→白の順に変化していく。これはテレビのカラーバーの色味を意味し、探索者達がこの事に気付いた場合、更に【アイデア】を振らせてまるで何者かに覗かれているようだと感じさせると良いだろう。  その演出に伴い、夢の終わりは必ず視界にノイズを生じさせて終了する事。  軍司少年は探索者達が夢の世界で意識を取り戻すと、必ず近くに居て、基本的には探索者達へ最初に話しかけてくる。探索者達が望むのであれば協力者として同行するだろう。  反面、探索者が望まないのであれば、彼は単独で調査行動を行っていく。  以下は夢の世界で得られる各種情報である。
【基本背景情報】
 1999年7月の赤霧市では「宇宙星辰会」と呼ばれる哲学サークルが爆発的に流行していた。宇宙星辰会の教義は「宇宙進出を果たした人類は、これからは更にもう一段上のステップに立って物事を考えなければならない」というものであり、暗に外なる神々の存在をゆっくりと人々に植え付け信心を育て上げていた。尚、宇宙星辰会の正体は星の智恵派の分化組織であり、外なる神の招来と知識の授与を目的とし活動を続けるカルト団体である。  宇宙星辰会は赤霧市の経済活動に積極的に資金援助を行う事で、昨今のオカルトブームも相俟り、数年前から急速に赤霧市内で勢力を伸ばしていった。その動きを警戒する者も居るが、法に触れる事もしておらず、組織として行っている活動もただ月に数度のセミナーのみである為、表立って反対する者は少数派であった。  月に数度市民会館でセミナーを行っている。セミナーでは当たり障りの無い世間話やお茶会が行われているとされているが、このセミナーに参加した者は皆一様に宇宙星辰会に対して親和的になる。というのも、このセミナーで教祖である福良乙女は狂気の音色を用いて、参加者達を洗脳し、信者としているからである。(※洗脳方法は基本的にはクトゥルフカルトナウ 星の知恵派の項目に倣う)  代表者の名は福良乙女(ふくらおとめ)。美しい黒髪のスレンダーな女性、手に黒い扇を持っている。正体はニャルラトホテプの化身である。彼女はこの街の人々を生贄に、外なる神の何かしらを召喚してやろうと目論んでいる。  無論、そこには何の意味もありはしない。
■宇宙星辰会について調べる
【軍司少年が持っている情報】
 宇宙星辰会は数年前から街に存在する哲学サークルである。月に数度市民会館でセミナーを開いている。代表者の名前は福良乙女。  地元民は警戒している者も居るには居るが、殆どが無関心、或いは好印象である。理由までは軍司には分からない。  1年前から両親が参加するようになった。その結果、家事を放棄する、仕事を不規則に休む等、急速に様子がおかしくなっている。真面目だった両親がああなった理由が分からない。恐らくは健全な理由ではないように思える。  教義内容については気持ち悪くて聞いていない。  彼は半年前から独力で調査を行っている。
【街で調べる】
 市民への【対人技能】で上記基本情報を好ましい印象で市民達は伝える。技能の半分以下の数値が出た場合は悪感情を抱いている人間に出会え、地元への寄付金云々の話題を聞く事も出来る。  クリティカルが出た場合は組織の教義について信者から聞く事が出来るだろう。  街での【聞き耳】などで一週間後にセミナーが開かれる事が分かる。  【コンピューター】は時代柄一般家庭には存在しない為、使用するには工夫が必要である。軍司の携帯電話を用いるのが一番手っ取り早いと思われるが、インターネットそのものがあまり普及していないこの時代ではネット上ではあまり情報を得る事が出来ない。  【図書館】などで宇宙星辰会について調べると、”星の知恵”というワードを拾うことが出来るが、それが何を意味するものなのかということはわからない。【オカルト】【クトゥルフ神話技能】でそういった名前のオカルト団体が歴史上多く存在することを思い出す。
■福良乙女について調べる
 数年前に街に突如現れ、宇宙星辰会を立ち上げた美女。具体的にいつ現れたのかは誰も知らない。富豪の娘にして事業家であり、暇を持て余しているという。  普段は市内にある邸宅で生活を送っている。探索者が望めば快く面会してくれるだろう。後述のイベントのタイミングでも構わないが、福良乙女と面会すれば、彼女は脈絡無くティンダロスの猟犬の事を意味深に話す。これは最終戦での戦闘へのヒントである。 「ねえ、角度から現れる犬から逃れるにはどうしたら良いと思う?」 「正解はね、丸い部屋に住むのよ。角度が一つも存在しない、まあるいまあるいお部屋で、一生ね」 「でもそんなお部屋で一生を過ごすことが本当に出来るのかしら」 「不思議だわ、本当に不思議」 「ねえ、どうしたら良いと思う?」  彼女はニャルラトホテプの化身である為、夢の世界であっても現実の世界の情報や探索者達の情報を有しているかもしれない。次元と時間を超越した黒幕として不気味に演出すると良いだろう。  彼女の邸宅にはロクに情報は無いが、忍び込むような不届きな探索者が居た場合、探索者らの正気度を削るようなおぞましい事象を引き起こすと良いかもしれない。(怪物に襲われる、幻覚を見る等)  或いは嘗て軍司診療所に潜入した時と同じような状況に持ち込むのも手だが、その辺りはKPの演出の好みだ。
■市民会館について
 山の麓にひっそりと存在する小さく古い市民会館。探索者達は【アイデア】で、それが現在の軍司診療所がある場所であると察していいだろう。  月に数度、そこで宇宙星辰会のセミナーが行われていると言う。最も直近のセミナーは7月6日の18時からだという。  事前に探索者達が中に入ろうとすると「使用には予約が必要だ」と言われる。次に予約を入れられるのは直近でも四日後だと言われるため、セミナー以前に探索者達が市民会館の内部を調べるには忍び込む以外に方法は無い。  探索者達が忍び込もうとする場合は【忍び歩き】に成功する必要がある。或いは別行動で誰かが気を引くような行動をとれば潜入を認めても良いだろう。中に入ると至って平凡な小部屋が並んでいる。  診療所跡地で地下室の入口を見つけた地点へ向かえば、同じ場所の部屋の中に同じく地下への入口がある事が判る。扉に近付こうとしたならPOW18との対抗ロールを行う。失敗時はSANを-2消失。成功時は地下から奇妙な音色を聞く事になる。探索者が継続探索者である場合、それが電波塔事件の際に流れ続けていた狂気の笛の音色だという事が判るだろう。  しかしここで警備員に発見され、探索者達は追い出される事になる。それ以上の捜索は不可能である。
■軍司少年について
【軍司少年が持っている情報】
 宇宙星辰会への調査に協力すると伝え、自分たちが宇宙星辰会と関わりが無い事を証明すると、軍司は素直に自分の事を話すだろう。  軍司直衛。16歳。地元の進学校である赤霧高校1年生。塾通いをしており、帰りが遅くなることから両親に携帯電話を与えられている。  日常に退屈しており、何か自分でも熱中出来るものは無いだろうかと心の中で望んでいる。宇宙星辰会の案件に首を突っ込むのも、本人の好奇心に依るものが大きいと認識している。  父親は会社員。母親は専業主婦。平凡な一般家庭、の、筈だった。  最近、妙な耳鳴りが続いて困っている。
【街の人々に尋ねる】
 【対人技能】で聞き出す事が出来る、他人から見た軍司少年の印象を知る事が出来る。  成績優秀で運動神経も良い、何事もそつなくこなす物静かな少年。反面情熱に乏しい現代っ子で、何を考えているか分からない不思議な雰囲気を持った変わり者の子供。  対人技能時に【幸運】に重ねて成功する事で、両親が宇宙星辰会の熱心な学徒であり、子供ながらに心配しているらしいという話を聞く事が出来る。
4.夢の世界:最終日
 響によって強制的に眠らされた探索者達は、7月6日の17時頃、電波塔のすぐ傍で目を覚ます。  探索者達が携帯電話を持っており、それまでに軍司と接触があった場合は軍司から電話がかかってくる事になる。 「何やってるの? 早く行かないともうすぐ始まっちゃうよ」  と言って、軍司は今日がセミナー当日であるという事を告げる。  接触が無かった場合は【アイデア】で今日が宇宙星辰会のセミナー当日である事を思い出すだろう。セミナーは18時スタートだ。  KPも市民会館へ行くよう促すと良いだろう。
■セミナー会場へ
 宇宙星辰会セミナーは来る人拒まず、探索者達が向かえば問題無く迎え入れられるだろう。【目星】で少し離れた場に両親と共に軍司が座っている事が判る。  セミナー自体は雑談会のような気安い雰囲気で進む。ティンダロスの猟犬の話題を出していなかった場合、ここで話題に上げてもいいだろう。  セミナー中、【POW×3】で判定を行う。失敗時には激しい頭痛を覚え、正気度���2減少させる。成功した場合、どこからともなく奇妙な音色を聞く。  【聞き耳】でそれが地下室から聞こえてくる事が判る。探索者によっては聞き覚えがある狂気の音色であるという事が分かる筈だ。  その頃にはセミナーは奇妙な熱を帯びており、参加者達は福良を讃え始め、福良の言う事に服従し始めるだろう。軍司と探索者達だけがそれを眺める事になる。 「知りすぎる事、知らなすぎる事、どちらが悲劇を招くのかしら?」  福良はそう言って信者達を煽り、軍司と探索者達へ襲い掛からせ、自分は地下へと降りて行く。探索者には1人につき1d2人の信者が襲い掛かる。福良を追うには自分に襲い掛かってきた信者をかわす必要がある。  方法としては、 【DEX対抗】…信者達は一律でDEX10。 【STR対抗】…信者達は一律でSTR9。 【精神分析/説得】…人数分成功で移動可能。  などが挙げられる。KPは適切であると思ったロールで自由に信者をやりすごさせて良いだろう。  軍司はダイスを振らず、面識があっても無くても極力探索者を助けるよう動く。探索者達を助けた後は軍司は両親を止める為にその場に残るだろう。  その時の彼には熱の薄い変わり者の少年の面影は無く、ただおかしくなった両親に困惑する普通の少年の面影を強く残しているだろう。 「父さん! 母さん! どうしたんだよ、しっかりしてってば! ねえ、返事してよ!」
■地下へ
 信者達を潜り抜けて地下へ向かうと、地下にはノイズを走らせたテレビが置かれている。  探索者達はそれが響が用いていたテレビだと気付くだろう。テレビからは狂気の笛のメロディが流れ続けており、画面の中にはこの部屋の中の様子が映されている。それは地下へ降りて来た探索者達の姿と、その前に立つ福良の姿もだ。  テレビの中の部屋には現実には存在しない奇妙な魔法陣が描かれている。  すぐ側には鶏の死体が無造作に置かれ、鶏の血で描かれているらしい事が判る。 「一体何が出てくるのかしら?」と福良は楽しそうに笑い、奇妙な呪文を唱える。  その呪文はまるで反響するかのように響き渡り、狂気の笛の音色と同様に、まるで耳鳴りのように探索者達の頭に残り続けるだろう。 (これは後述する魔術呪文である。覚える事が出来る)  するとテレビ画面がまるで水面のように波打ち、福良はその中へとずぶずぶと入っていく。  人間がテレビ画面の中に潜って行くという非現実的な光景を目撃した探索者は正気度チェックを行う。 【正気度チェック1/1d6】  仮に彼女を止めようと探索者達が途中で行動を起こそうとするならば、彼女はゲラゲラと笑いながら探索者達を制止する。 「駄目よ。ようく覚えておかないと。あなたの為なのよ?」  彼女の体が巨大な脂肉の塊に見える幻覚を見る。【正気度チェック1d3/1d10】  そして探索者達が恐怖に竦んでいる間に福良はテレビの中へと消えて行く。  SAN消費が激しいため、KPは極力忠告を与えるようにするといい。  次の瞬間、軍司が地下へと落ちてきて、1d2+1人の狂人が地下へと降りてくる。狂信者達は探索者達を止めようとするだろう。戦闘ターンに突入する。  ここでの最終的な目的はテレビを破壊し召喚を阻止する事である。  敵対する狂人のステータスはNPC一覧に記載する。 <夢見のテレビ> 耐久:5 装甲:1ポイント(探索者の傾向に応じて割愛可)  6ターン以内に破壊出来ない場合、アザトースの招来が成功する。  が、事実とは異なる展開に世界が歪に歪み、電源を落とされるようにしてブツリと切れ、「現実の世界:最終決戦」へ続く。 (この展開になった場合、味わった絶望故のSAN減少1d10/1d20)  テレビの破壊に成功する失敗する問わず、夢から覚める際に探索者達は画面の中の福良の哄笑を聞く事になる。 「見られているの? 見ているの? 一体どちらなのかしら?  これから何が起きるのかしら?  私はそれを知っているのかしら?  あなたはそれを知っているのかしら?  あなたの後ろの人はどうなのかしら?  あなたに返事をするのは一体誰なのかしら?」  哄笑と共に壊れたテレビは激しくノイズを走らせ続け、そのノイズの狭間に、テレビの外から中を覗き込んでいるような響の姿が映り込むのを探索者達は見るだろう。  そうして福良の哄笑と共に夢の世界そのものに激しいノイズが走り、探索者達は夢の世界から放逐される事になる。  消え行く視界の中で軍司があなた達を見て、何かを言おうとしていたのが最後に見えるかもしれない。
■最終決戦へ
 探索者達はサナトリウム流累で目を覚ます事になる。  SANの処理と同時に、ラストバトルの場に居た探索者達は、福良の唱えた呪文が耳鳴りのように頭に残り続けている。それにより「<吸引>の呪文」を覚える事になる。  それは福良がテレビの中に消えていった際に用いた魔術である。 *<吸引>の呪文  魔力(MP)を帯びた物品の中に任意の対象を吸引する呪文。  魔力を帯びていないものに吸引する事は出来ない。呪文の使い手を中に封じる事も出来る。物品に込められたMP×5で成功値を判定する。  一回の使用につき1d5の正気度を喪失する。
5.現実の世界:最終決戦]
 探索者達が目を覚ましたのは診察室の奥の小部屋であり、テレビは夢の中で探索者達がそうしたように破壊されている。外は既に夜になっている。  サナトリウムの人々は患者、ナースの区別なく、皆深い眠りに落ちている。  軍司の姿は無く、響の姿も無い。  サナトリウムをくまなく探せば、非常口の扉が開いている事に気付くだろう。ここでサナトリウム内を捜索する事で、響の軍司のカルテのより詳細を見る事が出来るかもしれない。 「今日の診察で、彼少し笑ったわ! きっと今日はいい日に違いないわね」 「彼が呟いてた言葉を真似してみたら、なんだか不思議な事が起きたわ。正直まだ信じられないけれど……これもあの人の力なのかしら? 一体あの人何者なの?」 「スゴイ! スゴイ! 彼の力は本物よ! ああ彼ともっと話をしてみたい!」  といった文面から、響が軍司から聞き出した魔術を用いて様々な召喚等を試していた事が判る。  響は軍司を信仰するかのように軍司に入れこんでいる事が察せられるだろう。  非常口を伝うと洞窟に続いており、やがて入り江に出る。周囲を岩で囲まれたその小さな入り江の頭上には三日月と夜空が輝いている。  そこには軍司を連れた響が居る。砂浜には夢で見た魔法陣が描かれているだろう。  響は<ヒプノーシス>を用いて軍司からアザトースの召喚呪文を聞き出そうとしている所である。軍司からの返事の無い一方的な問いかけは、探索者の目には虚しく奇妙なものに映るだろう。 「この子達を呼び出しても、この世のものとは思えないおかしな力を使えるようになっても、あなたは私に応えてはくれなかった」 「きっと私の理解が足りなかったのね。でも大丈夫、私諦めないわ。貴方の為なら何でもする。本当よ」 「白痴の魔王、貴方はそれを目指していたのね。その理由をさっき見て来たの。頑張ったのね、大丈夫。今度は私が力になるわ」 「ねえ、それが現れれば、きっとあなたは私の言葉に応えてくれるんでしょう?」
■最終戦闘
 響は夜鬼を1体、ムーンビーストを1体召喚して探索者達を阻む。2匹を抜き去り、響の召喚を阻止する事が戦闘の目的である。  この時、召喚された神話生物を目撃して発狂した探索者が居た場合、必ず<狂人の洞察力>を発揮させる事。  これにより、召喚に際する魔力は軍司から供給されている事が判るだろう。  響は神話知識が足りない故にアザトースの危険性など理解すべくもない。  響がヒプノーシスを1d3+1回数分成功する前に探索者は響と軍司を引き離す必要がある。それには二匹を抜き去り響の元へと辿り着き【武道】技能による力押し、【STR対抗】による引きはがし、などで響を引きはがす必要がある。  夜鬼とムーンビーストは探索者達の他、互いも攻撃対象に含めて戦闘を行う。よって場合に寄っては夜鬼とムーンビーストの同士討ちが発生する事もある。探索者達にはその隙を突いて響の元へ向かわせるといいだろう。  これは、ニャルラトホテプを主とするムーンビーストと、ノーデンスを主とする夜鬼とではそもそも仕える主が異なり、また彼らの主が互いに対立関係にある事から従者である彼らの相性も良く無いという事を示す。狂人の洞察等でこれらの情報を示しても良いだろう。  彼らの世界の事を軍司を通してでしか知らず、また正しい知識を有さない響には、そのような事は判りようも無い。
■ティンダロスの猟犬を追い返せ
 彼女を軍司から引き離すと、響は爆発的な怒りを示し、召喚呪文を唱えティンダロスの猟犬の召喚を行う。しかし時空転移を許さない魔犬は、召喚と同時に召喚者である響に襲い掛かる。そして以降は探索者達にも平等に矛先を向けるようになるだろう。 「どうして! どうしてよ! 何がいけなかったのよ! 私たくさん練習したわ! あなたがやったみたいにたくさん! おんなじよ! この子達だって呼べるようになったわ! 言う事だって聞いてくれる! 不思議な事も出来るようになった! あなたの事だって調べたわ! あなたの事なら何でも知ってる! 頑張ってた事も素敵な人だった事も何でも! それなのにねえ! どうしてよ! 何でよ! どうして! どうしてなの! 何が駄目なの! 応えてよ! 話してよ! 返事してよ! ねえ、何が足りないの? 私はどうしたらいいの? お願いだから何か応えてよおおおおおおおおおおおおお!!!!!」  【アイデア】などで夢の中の福良の台詞を思い出させ、呪文の存在を思い出させる。MPを帯びた球体があれば封印出来るかもしれないことを示唆するといいだろう。  悩んでいるようなら【アイデア1/2】などで軍司の目に関するヒントを与えてもいいかもしれない。或いは軍司直衛が光の無い目でまっすぐに探索者達を見詰めているという事をそれとなく示すのも良いだろう。  【医学】或いはそれに類する技能で適切な処置のもとで眼球の摘出が可能。或いは眼球を摘出する事無く、そのまま軍司の体内に封印するとしてもいいだろう。  込められているMP×5で判定を行う。  軍司の目を使用する場合は1d10+15で目のMP量を判定する。  また、プレイヤーの目を摘出して使用するという���言があった場合、プレイヤーのMP×5で判定を行う。響の目を用いる場合も同様である。  判定に成功した場合、ティンダロスの猟犬は封印される。  ティンダロスの猟犬封印時に響のHPが未だ残っていた場合、彼女は夜鬼に連れ去られる/ムーン=ビーストに惨たらしく殺害されるの何れかの結末を辿る事になる。  殆どあり得ないだろうが、探索者により神話生物が一掃された暁には、虫の息で命をつなぎ止めるかもしれない。その時は軍司ともども探索者に後の事は委ねれば良い。
■夢の波と終焉
 ティンダロスの猟犬の封印に成功すると、響の魔術の効能が解け、周囲の空間がぐにゃりと歪み始める。  探索者達は夜空に、そして海面に、電波塔と思しきものの根元が映り始めていることに気付く。それは夢で見た1999年の電波塔だと探索者達は本能的に気付くだろう。  やがて夢の光景は岩肌を、砂浜を浸食し、探索者達を追い始める。  徐々に全景が露わになっていく電波塔からは、苦悶の声と共に人々が飛び降りていく様が少しずつ映し出されて行く。映像の中の人々は、皆一様に夜空を見上げている。まるでその先に何かとてつもなく恐ろしいものが映っているとでもいうかのような顔で。  これは7月7日の集団自殺事件当日の映像であり、その視線の先には当時招来されたアザトースの姿が存在する。探索者達がその場に留まり続け、映像の末路を見届けようとするならば、探索者達はアザトースの姿を直視する事になるだろう。  映像とともに周囲には地響きが響き、入り江は崩れ始め、洞窟では落石が発生している。探索者達にその場に留まる事は危険であるという事を伝え、その場からの脱出を誘導する。  単独で逃げようとする場合は問題無く安全地帯まで逃げる事が出来る。  軍司を連れて行こうとする場合は、STRとSIZの対抗に成功した上でDEX×3に成功する必要がある。  その場から無事脱出すると、サナトリウムの扉を潜りぬけた途端、探��者達の意識はふつりと途切れてしまう。  そして目を覚ますと、あなた達は壊れたテレビの前で眠っている。響の後を追った直前のように。  今まで見た光景は夢だったのだろうか?  それとも、全て本当に起きた現実だったのだろうか?  けれどそれに対する答えが出る事は、もう二度とありえないのだという事を理解しながら、探索者達は朝を迎える事になる。眠気は最早訪れない。  エンディングへ移行する。
6.ED分岐とクリア報酬 ■基本エンディング  響はその後発見される事は無く、行方不明として処理され、サナトリウム流累は閉鎖が決定する。収容患者達は各地の病院へ分散される事になるだろう。街の人々は彼女の失踪を惜しむだろう。  彼女が執着していた一人の狂人の事は、人々が知る由も無い。  他、エンディングに関する演出は探索者の自由に行わせると良い。 ■エンディング分岐 【軍司を残し脱出する】  探索者達は夢の波に包まれていく男の姿を見る。  波に包まれる刹那、彼が顔を上げ、貴方達を見たような気がした。  その口が微かに動いたのが見えた。けれど何を言っていたのかを理解するよりも早く、軍司は夢の波に飲まれ消えてしまうのだった。  いつぞやに、夢で見た少年と同様に。  その後、彼の死体は響同様に発見される事はない。 【軍司を助ける】  探索者達は苦難の末に軍司を連れての脱出に成功する。  出入り口を潜る刹那、男が僅かに振り返ろうとしたような気がするが、それよりも早く皆の意識は落ちる。  目を覚ますと、小部屋の中に軍司も気を失った状態で残っている事になる。  しかし彼の白痴状態が回復する事は無く、彼はその後も狂人として施設を転々とし一生を終える事になるだろう。  彼を助けた事で、探索者もまた彼のその後の人生に何らかの介入を許されるかもしれない。  けれどそれがどんな意味を持つのかは、その探索者の中にしか答えは存在しないだろう。 【何れかの段階で軍司を自主的に殺す】  死の瞬間、彼は心から嬉しそうに笑い、探索者の攻撃を受け入れるだろう。 ■響のアザトース招来阻止に失敗する(バッドエンド1)  アザトースの招来に成功した響は喜びの声を上げ空を見上げるが、すぐにそれは絶望と恐怖に満ちた後悔の悲鳴へと変わる。  赤黒く染まった空で門が開く。そしてその中から、これまでに見た何よりも醜悪で、冒涜的な怪物が、こちらを濁った目で見下ろしている。  どうして。何故。  けれどあなた達の中に浮かぶ数多の疑問に何一つ結論が出る事は無く、あなたたちは無知のままに、いともたやすく世界の終焉を迎える事になるのだ。  所詮この世界は最初から、白痴の魔王の見る夢に過ぎないのだから。 ■探索者が夢の波に飲み込まれる(バッドエンド2)  夢の波に飲み込まれたあなたは、気付くと電波塔の頂上に立っている  周囲には泣き喚き、殺しあい、我先にと死を選ぼうとする人々で溢れ返っている。  その理由をあなたは察する事が出来るだろう。  頭上に、これまでに見た何よりも醜悪で、冒涜的な怪物が、こちらを濁った目で見下ろしているからだ。  信じられない、信じたくない光景に、けれどあなたの意志などお構いなしにありとあらゆる知識があなたの頭に注がれる。  無知が罪だというのならば、知識は果たして恩恵か?  けれど貴方に与えられた悪魔の知恵が、貴方にその回答を教えてくれる事は決して無い。  探索者は神話技能を99%入手し、正気度上限を変更した後に、以下の正気度チェックを行う。 【正気度減少1d10/1d100】  さて、ところで。  君はいま、高い塔の上に居るのだが……何をしようか? ■クリア報酬 ・シナリオクリア(アザトース召喚阻止)…1d20の正気度回復 ・福良乙女の撃退に成功…1d5の正気度回復 ・軍司直衛の生存…1d10の正気度回復 7.NPC情報 ■響恭(ひびき・きょう)(27歳) 「私は何も知らない」 「だから教えて欲しいの、この人に」 「ねえ、お願い、返事をして?」 STR12 CON12 SIZ12 APP12 POW11 DEX12 INT11 EDU20 MP12 HP4 SAN15 精神分析:81% 精神分析<ヒプノーシス>:75% 医学:75% 心理学:75% 薬学:75% 神話技能:0% <ヒプノーシス>  眠りに落ちている相手にこの技能を行使する事で、簡単な事柄を聞き出したり、簡単な命令を下したりする事が出来る。相手はその間の記憶を保持しない。  彼女はこの技能に虚しさを覚えている。  詳細は基本ルールブック150-151頁参照。 <基本設定>  海に面した街、流累市でサナトリウムを経営する精神科医にして、催眠療法の研究を行う若き女学者。  各地の病院と連携をとっており、偶然赤霧市の市民病院からの依頼で軍司を引き取り収容する事になった  治療と研究の一環として彼女は軍司に催眠療法を行った結果、軍司の無意識下の心を垣間見る。それは彼がかつて蓄え続けていた神話知識の片鱗であった。  彼女はその知識に強い興味を抱き、どうにかして彼を癒し、彼からより詳しい話が聞けるだろうかという事を日に日に強く望むようになった。  軍司の論文や研究は「狂人の洞察力」を示すのではという見解を持つ。  海外で博士号を取得した経験もある才女であり、平常時は学者然とした冷静で落ち着いた応対をみせる。しかし軍司直衛に纏わる事象には多いに平静を失い、ヒステリックな面を強く見せるようになる。  軍司直衛の狂信者であり継承者。或いは恋をした盲目の女。  やがて彼女は一つの推論に至る。  彼の壊れた心を修復するには、彼の壊れた心を再び繋ぎ合わせなければならない。  その為には、彼の記憶を遡る必要がある筈だ。  自分は行けない。自分は観察しなければならない。彼の反応を。  使い捨てても良いような、他人が必要だ。 ■夜鬼(ナイトゴーンド) STR15 CON10 SIZ14 INT3 POW14 DEX=(探索者の平均DEX-2) MP14 HP12 装甲:2ポイントの皮膚 組み付き40%…STR対抗に成功しなければ離れる事が出来ない。 くすぐり30%…1d3ターンの間行動不能 (組み付き状態・恐怖の注入状態であれば100%) ※組み付きを行っている間は夜鬼も行動する事が出来ない。 消失SAN:1/1d8(多段SANチェック扱いとする) ■ムーン=ビースト STR10 CON12 SIZ17 INT16 POW16 DEX=(探索者の平均DEX-3) db…1d4 MP16 HP15 装甲:なし(火器に対してのみ耐性あり) 攻撃: 槍25%…1d10+1d4+1 呪文: ・恐怖の注入 ……対象に恐怖を覚えさせSANチェックを発生させる。0/1d6。即時発生。   またそのラウンド内、或いは次の1ラウンド行動不能にさせる。 ・ヨグ=ソトースのこぶし ……不過視の攻撃で相手を殴り飛ばす。2d6ダメージ。 (夜鬼に組み付かれている人間を吹き飛ばすと夜鬼の影響下から逃れさせる事になる) 消失SAN:1/1d6(多段SANチェック扱いとする) ■ティンダロスの猟犬 STR13 CON27 SIZ16 INT23 POW33 DEX8 db…1d4 MP33 HP21 装甲: 2ポイントの皮膚 1Rに4ポイントのHP再生 物理武器無効、魔力武器・呪文有効 攻撃: 前脚90%…1d6+1d4+膿汁(POT6) 舌90%…1d3POW吸収 ※ティンダロスの猟犬は真っ先に響を攻撃対象に選ぶ。 彼女を殺害した以後、探索者達に襲い掛かる。 撤退方法: 魔力を帯びた球体を飛び込んでくる相手に向ける。 勢い余ったティンダロスはその中に吸い込まれる事になるだろう。 消失SAN:1d3/1d20 【夢の中NPC】 ■軍司直衛(ぐんじなおえ)(16歳) 「そんな所で何してるの」 STR13 CON12 SIZ11 APP16 POW18 DEX12 INT17 EDU16 MP18 HP13 SAN90 アイデア85 幸運90 知識80 回避40% 隠れる50% 忍び歩き50% 聞き耳50% 目星50% 図書館50% 機械修理50% 電子工学51% コンピューター51% 心理学55% 医学50% 精神分析56% 信用50% 英語51% <基本設定>  赤霧市在住の高校生。宇宙星辰会の陰謀を暴こうとしている16歳の少年。  父母との3人家族。突然豹変した両親が理解できず、何か犯罪に関わっているのではと怪しんでいる。  表情は硬く大人びているが好奇心旺盛。塾通いの為と親から与えられた携帯電話を所持している。  進学校の優等生。何でもそつなくこなすが熱は薄い現代っ子。家は中の上階級。  同時、日常に退屈しており、事件の気配を若干楽しんでいる気がある。 ■福良乙女(ふくらおとめ)(31歳)  ニャルラトホテプの化身。  黒い扇を所持したスレンダーな美女の姿をとる。 ■宇宙星辰会狂信者 DEX:10 STR:9 攻撃: 噛み付き40%…1d6 こぶし50%…1d3 耐久:10 装甲:なし、気絶判定有り
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hasami-j-blog · 6 years
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【クトゥルフ神話TRPG】CALLING
 ああ、誰か、誰か、誰か。  この音を、  この音を、止めてくれ……。
 ある田舎町で起きる、奇妙な耳鳴りと着信。  探索者たちの周囲で巻き起る連続怪死事件。正気と狂気の境目は何処。
【はじめに】
 舞台は現代。都市探索型(シティ)シナリオ。プレイヤー4〜5人程度を前提としている。プレイ時間はボイスセッションで8〜9時間程。非常にSAN値が減少するシナリオの為、探索者のSANは最低でも50は欲しい。  探索者は必ず全員が携帯電話かスマートフォンを所持している必要がある。自宅電話や会社の電話があるかどうかも事前に決めておくと活用出来るかもしれない。同様に探索者の家族環境等について予め聞いておき、シナリオに組み込むのも手だろう。  推奨技能は<対人技能><精神分析><図書館>など。  また必ず活用出来る保障は無いが、<電子工学>や<コンピューター>、<隠す><忍び歩き>などの能力に秀でていても面白いかもしれない。  戦闘あり。
【推定難易度】
KP:★★★☆☆ PL:★★★★☆
【舞台】
 時代は2013年の夏。  舞台となるのは、街外れに古い電波塔を持つ小さな街。山に囲まれた小さな都市とすると話を進め易いだろう。  15年前、この街では宗教団体の煽動による儀式の決行、及びそれの失敗故の集団自殺事件が発生している。街の住人達はその過去から目を背け、蓋をしようとしている。  また、ネット上では7年ほど前からとある都市伝説の舞台がこの街なのではないかとまことしやかに囁かれ続けている。  そして1年ほど前から精神に異常をきたす者が大量に発生しており、同時に街では奇妙な噂が囁かれている。 「街中に奇妙な音色が響き渡る。その音色を耳にした者は狂って死んでしまう」  探索者達がこの街を訪れるのは丁度そんな頃だ。
【シナリオ背景】
この謎の音事件は、アザトースの狂信者である軍司直衛という精神科医と、彼に協力するニャルラトホテプによって引き起こされている。  軍司は15年前に発生した集団自殺事件で両親を失っており、またその際にアザトース招来の儀式とそれによって片鱗を見せたアザトースの姿を目撃している。彼はその場で正気を完全に失うが、理性を失う事はせず、また自分が狂気に陥った自覚もなく、ただその際に目撃した白痴の魔王に魅了され心酔するようになる。また、その際に音声を録音していた彼の携帯電話にはアザトース招来の音色と電波塔の人々の絶叫が録音され、狂気の笛としての素養を得る事になる。  それ以後、軍司はもう一度アザトースの姿を見たいと願うようになり、ミスカトニック大学への留学や多くの研究の果てに、笛に魔力を付与する方法や様々な呪術を学び、同時にアザトース招来の知識を得るに至る。この際に彼の研究に目を付け、彼の知人に扮したニャルラトホテプが軍司に人間として接触し、協力者となるに至る。  軍司は故郷である街に診療所を開きながら期を待ち続け、やがて満を持してアザトース招来の儀式へ向けて行動を開始する。それと同タイミングで、彼の傍らのニャルラトホテプは街に携帯電話を通じた謎の音事件を発生させ、探索者達を誘導し、軍司の儀式を阻止させるべく暗躍を始める。
【余談】
 このシナリオのコンセプトは「人間vs人間」「狂気と正気の境界線」の二点である。最終決戦では、狂人として登場するNPC達を見捨てればこのシナリオの難易度は一気に下がるという事をPL達に伝えて、どう行動するかを見守るのが基本的なスタンスとなるだろう。  しかし当然、生きた人間であるNPCを見捨てるという事は、その分だけ探索者達は狂気の道へ近付いていくことになるのである……とかなんとか言うとプレイヤーの葛藤を引き出せて面白いかもしれない。
【シナリオ内訳】
1.基本導入と特殊ルール 2.各種情報 3.最終決戦 4.ED分岐とクリア報酬 5.携帯電話イベント表 6.NPC情報
■導入
探索者はここ暫く奇妙な耳鳴りに悩まされている。当初はうっすらとしたものだったその耳鳴りは日が経つにつれ強さを増していき、遂には探索者達の頭を悩ませるまでになっている。  それはまるで電話のコール音のようだった。  頭の中でルルルル、ルルルル、ルルルル、と一定のテンポで機械的な音が鳴り続けるのである。まるで電話に出るのを急かすかのように。  そんな悩みを抱える探索者達の下、突然探索者達の携帯電話に着信が入る 「その音の消し方を教えてやる」  謎の声はそう言うと、日付と場所だけを告げ、電話は切れる。
【指定された場所「電通トンネル」】  街外れの山へと続く古いトンネル。歩いていくことも出来る。使われなくなって久しい。電波状況は非常に悪く、携帯の電波は届かなくなっている。  行き方は調べれば簡単にでてくる。懐中電灯を持っていく事を示��てもいいし、携帯を明かりにするよう誘導してもいい。  手前までは車で行く事も可能だが、トンネルの中までは入れない。  指定された時間は夜九時。この時間になるとトンネルの周囲に人通りは消え、周囲は真っ暗になっていると気付けて構わない。
【暗闇の中で】
トンネルに入る所で探索者達を合流させると良いだろう。トンネルに入って中へ声をかけても反応はない。  トンネルに入って暫く行った所で、<目星>か<聞き耳>を行う。 <目星>:トンネルの奥の方に何かぼんやりとした灯りを見つける。 <聞き耳>:誰かが口論しているような一人分の声が聞こえる。「……で……だろう…けるな……めてくれ……!」 (探索者達には見えないが、ここではNPC1は協力NPCと対峙している。そして協力NPCの手により発狂させられるのだ)  人影に近付こうとすると、突如としてトンネル内に男の絶叫が響きわたる。人影の下にいくと、そこには呆然自失した男がへたりこんでいる。傍らには電源の入った携帯電話(スマートホンではなく携帯電話であると必ず描写する事)が落ちている。  男に話しかけてもまともな反応は返ってこない。 <心理学>:男はひどく混乱している <精神分析>:男はほぼ完全に正気を失っている(回復不可) <目星>:周囲には人は居ない。男のものと見られる携帯電話だけが落ちている。  探索者が携帯電話を拾おうとする、或いは何か行動を起こそうとすると、男が突然「思い通りになってたまるか!」と叫び、隠し持っていたペンを自分の喉に突き刺し自殺しようとする。  この時、探索者が自発的に望むならば、<組み付き>か<DEX対抗とSTR対抗ロールの双方成功>により判定し、男を助けても構わない。  <STR対抗ロール>に失敗した場合は<幸運>を。成功すれば無傷、失敗した場合は流れ弾により1d3のダメージを受ける(NPC1は死亡する)。  生存した場合、NPC1は精神異常者として軍司診療所へと運ばれる事になる。  男が死亡した場合、彼の奇妙な死に様を見た探索者は1/1d4のSANチェック。(生存の場合はSANチェックなし) 調査:<NPC1の死体> 「所持品」 ・財布(保険証に男の名前が書かれている。男の自宅住所が記載されている。この街の住人のようだ) ・手帳(探索者達の携帯電話番号が書かれ、横に○が打たれている。ちぎり取られているページが多い) ・携帯電話(電池パックは抜かれている) <アイデア>成功で、この携帯は電池パックが抜けていたのに着信が入っていた事に気付く。 ・他、NPC1が持っていてもおかしくないだろう物品を持たせ、キャラクター性を出しても良い。  トンネルの中は圏外だ。警察や救急車を呼ぶには、一度外に出る必要がある。トンネルから外へ出た時、探索者達の携帯が一斉に鳴り響く。着信音は電話に出るまで鳴り続ける。  同時、探索者達の頭の中でも耳鳴りがより強く鳴り始める。携帯の着信音と連動するように。  例え携帯の電源を切っても、電池を抜いても、延々とコール音は鳴り続ける。携帯を遠くへ投げ捨てても、ふと気付くと足下で鳴っている。逃げ出しても同様だ。  電話に出ると、頭の中で聞こえていた耳鳴りが「ガチャリ」という音と共に止む。  実際の携帯電話からは何の声も聞こえない。何を話しかけても同様。やがて、携帯電話の着信はガチャリと音を立てて切れる。  電話が切れた直後にメールに着信が入る。メールには「みつけた」と書かれている。  着信は非通知であり、メールアドレスも未知の言語で書かれている。この着信履歴とメールアドレスは後ほど消滅する。  この奇妙な現象にあった探索者は0/1のSANを喪失する。  この導入のラスト、探索者達は<アイデア>を振る。  成功すると、絶命した男の声と、このトンネルへ誘う電話をかけてきた男の声は同じものであることに気づける。  警察への連絡や聴取を終え、 (この際にNPC2<警察官>とのRPによりNPC1の情報などを伝えておくと後々の展開を起こし易い)  帰宅した探索者達の携帯電話が再度鳴り響く。電話に出ると不気味な音色が流れてくる。  音を聞いていると、探索者達はそれにのめり込んで行くような、ずっと聞いていたいよな、けれどどこかそら寒いような奇妙な感覚に駆られる。  やがて電話は唐突に切れる。この奇妙な現象にあった探索者達は1のSANを強制的に失う。ここで特殊ルール「携帯電話ルール」の説明を行うと良いだろう。ここから探索者達の行動が開始される。
■シナリオ内特殊ルール
【携帯電話ルール】  導入以降、探索者達はニャルラトホテプと軍司直衛の標的にされる。このままではじわじわと正気を失わされ、やがてはSAN0となりNPC1のような末路を辿る事になるだろう。それを避ける為にも探索者は調査を行わなければならない。これ以降、行動する度に探索者達のもと、電話が鳴り、奇妙な音色が響いていく。  このシナリオは基本的に探索者達の時間は朝・昼・晩の3ターン制で進む。1ターンにつき一つの場所に移動し調査を行う事が出来る。(運転等で急いで移動するなどの申請があり、それが成功した場合に限りもう一回分行動ターンを増やしても構わない)  一度移動する毎にPC達の携帯電話へ電話がかかって来る。電話は基本的には探索者の誰かが出るまで鳴り続ける。探索者が頑なに電話に出る事を拒む場合、電話の内容によっては本来電話に出た時よりも悲惨な状況が発生するかもしれない。 (詳しくは下記の『携帯電話イベント表』を参照)  少ない探索場所でより多くの情報を集めたいと望む場合、道中で知り合い、連絡先を交換した(或いは知っている)NPCへ電話を使って連絡を取る事により、移動することなくその場で情報を入手する事が出来る。  ただしそうして親しくなったNPCがシナリオ内で発狂する可能性も同様に高くなる。 【ハッキングルール】  PCが高い<コンピューター>技能を有していた場合、パソコンへのハッキングを仕掛けて情報を抜き出す事が出来る。  基本的には軍司直衛の<コンピューター>技能との対抗ロールになる。  得る事の出来る内容はKPが自由に設定して構わないが、あまり成功値を高くしすぎると探索者達が一切動かなくなる危険性がある為、KPは難易度調整に気を遣うと良いだろう。  他、携帯電話やスマートフォンを利用して移動する事無く効率的に情報を入手する方法を探索者が提案した場合は、KPは積極的にそれを取り入れるといいだろう。  シナリオのタイムリミットは三日。それを超えると強制的に最終決戦に突入する。
■各種情報
 シナリオ内で得られる各種情報。全てを出さずとも、黒幕に辿り着けるだけの情報が入手出来れば、基本的には問題無い。 【NPC1の自宅情報】  初日の夜、或いは翌日にNPC1の自宅を訪れた場合、炎上するNPC1の自宅を目撃する。  NPC1の自宅にあった情報はほぼ全て炎上して消失するが、インターネット上に残した情報のみ生きている。  過去の集団自殺事件で死亡したNPC1の親族に関する情報が出てくるかもしれない。放火を行ったのは協力者であるニャルラトホテプ。よって自宅炎上時、軍司にはアリバイが存在し、この放火の火元や犯人はよく分からない。  この家のコンピューターに対し、<コンピューター><電子工学><機械修理>に成功する事で、彼のツイッターのログを見る事が出来る。  ログによれば半年前から耳鳴りが酷くなり始めた事が記載されており、一月前に市民病院に入院する事になった旨が書かれている。  最新の呟きは「5000444411224444」となっている。最後に呟かれたのは事件発生前日。  被害者の所持品は携帯電話であると必ず冒頭で伝えておくこと。 (=「なんていきて」=何で生きて、となる。ニャルラトホテプのフラグとして扱う) 【集団自殺事件】  15年前、とあるカルト団体が煽動した事でこの街で起きた集団自殺事件。  複数の信者達が山の頂きにある電波塔から首を吊ったり飛び降りたりした。  宗教団体による煽動によるものと思われているが、信者の殆どはその事件で死亡している為、詳細は迷宮入りし不明。  関係者への<言いくるめ><説得><信用>、或いは関連物への<オカルト>などで調べる事ができるだろう。  シナリオ後半や数値次第では遺族の何人かは今もこの街で暮らしている事が分かる。数値やRPの仕方によってはNPC1<第一情報提供者>もその一人だと言う事が分かってい���。  事件当日、どこかから奇妙な、けれど非常に美しい音色が聞こえてきたと証言する者もいていいだろう。それ故に、ここ1年の不穏な事件もこの事件と同じものなのではないか、と警戒する者が多い事も分かる。 *カルト教団:<宇宙星辰会>  15年前にこの街で流行していた小さなカルト団体。 宇宙開発への関心を持つ者達による小さな自称哲学サークル。主にセミナー等の活動をしていたようだ。  当時から怪しまれてはいたが、決定的な証拠がなかった為に社会的に詰問される事は無かった。関係者や殆どの信者は集団自殺事件で皆死亡しており、既に組織としては消滅したと見られている(実際はこの街から手を引いた)。  数少ない生き残った信者達も事件以後は改心し街を離れて行った様子。数少ない生存者は軍司診療所に入院している。 【山奥の電波塔】  <目星><ナビゲート>で高さ50Mほどだと分かる。電通トンネルを抜けた先、山の頂に存在する古ぼけた電波塔。  正式名称は第弐八電波塔。一般人の立ち入りは基本的には禁じられている。元はテレビやラジオの電波の送受信を行っていたものである。  無断で訪れようとすれば、入り口でNPC4「鉄塔管理人」と遭遇する。<言いくるめ><信用><説得>で入る事が出来る。  失敗した場合は中へ入る事は出来ないが、管理人との話によって鉄塔の情報を得られるだろう。  嘗てはテレビ・ラジオの電波塔として役割を果たしていたが、地デジへの移行により現在は使用されなくなった。来年には取り壊される事が決まっている。15年前の集団自殺事件以来、無断侵入を避ける為に、地元住人による厳しい管理が行われるようになったとのこと。  管理人の許可を得ずに入り込む場合は<忍び歩き><隠れる>のどちらかに成功せねばならない。失敗した場合は侵入不可。  中に入ると、天辺まで続く錆び付いた階段が目につく。「危険立ち入り禁止」の看板が立っている。  天辺まで昇る事が可能。昇ると天辺には小さなスペースがあり、街の風景を一望する事が出来る。古びた機材やパラボアンテナ等が存在している事が分かる。電源は入っておらず、現在は使われていない様子。  <機械修理><電子工学>等でこの機器が古くはあるが現在も使用事態は可能である事が分かる。  <目星>などで嘗てここで起きた惨劇の痕跡を察知する事が出来ていい。 (血の痕、縄を擦った痕、落下するのを拒もうとしたような爪の跡など) *イベント:<恐怖症>  鉄塔から降りてくると下で管理人が待っている。虚ろな目をし、足下には携帯電話が落ちている。  次の瞬間、管理人は猛スピードで鉄塔の階段目指して走り出す。  管理人は不定の狂気<恐怖症>を発症しており、重度の低所恐怖症状態に陥っていて、とにかく高い所に行きたくて仕方がなくなっている。  管理人を止めるにはまず<DEX対抗>となり、その後<STR対抗>を行い無力化しなければならない。チャンスは全員一度きり。失敗した場合、管理人は鉄塔の天辺まで昇りきり、飛び降りて探索者達の目の前に落下する。  人間が砕け散る様を間近で目撃してしまった探索者達は1/1d5+1のSANチェックを行う。  助けられた場合、発狂した<鉄塔管理人>は軍司診療所へと運ばれる。 【謎の音の噂】  1年ほど前から噂されている奇妙な噂。 「街中に奇妙な音色が響き渡る。その音色を耳にした者は狂って死んでしまう」  実際に1年前からこの街では耳鳴りを訴え精神に異常をきたす者が多発している。  自殺者の数も増加傾向にあり、その影響で発生した噂のようだ。呪いなどと嘯く者も居る。  学者は都市開発による環境の問題や各種電波と脳の影響ではないかと考えているらしいが、詳細は分かっていない。  症状は老若男女問わず出ている。  「医者」や「学者」、「警察官」などへの<説得><言いくるめ><信用>で聞く事が出来るだろう。街の住人ならば<知識>で成功すれば簡単な概要には気付いても良い。  15年前の集団自殺事件と関係があるのではと疑う者も存在する。 *イベント:<殺人癖>  この情報を入手したターンを終える、或いは一定ターン数経過すると、道行く探索者達にNPC2<警察官>が声をかける。雑談じみた会話RPを行えばいい。  その時警察官のもとに電話がかかり、警察官は一旦離れ電話に出る。  <聞き耳>をするという申請があった場合、成功すると警察官の携帯から奇妙な音色が聞こえた事が分かる。  成功した探索者には1/1d5のSANチェックを。  まともに音声を聞いた警察官はSANが吹っ飛び発狂。  携帯電話をポトリと取り落とし、「殺人癖」を引いた警察官が探索者達へと襲い掛かってくる。戦闘ラウンド開始。  <警察官>のノックアウト判定に成功する、<精神分析1/2>か<組み付き+STR対抗>などで無力化する事が出来れば戦闘終了。他にも探索者が戦闘が苦手な探索者であった場合にはKPは調整すると良いだろう。  警察官は軍司診療所へ収容され、その後まともに話をする事は出来なくなっている。  このような異常事態に直面した探索者達は1/1d4のSANチェックを行う。  また、誤って殺害した場合、更に直接手を下した者は1/1d3の追加SANチェックを行う。  誤って殺害した場合、その探索者は拘束され、その日のターン警察署以外で行動する事は出来ない。その後も逐一マイナス補正がかかるだろう。 【この街の都市伝説】  この街について、人の集まる場所で<聞き耳><図書館><知識1/2><オカルト>などで成功した場合に判明。  この街は7年ほど前からネット上ではちょっとしたオカルトスポットだった。というのもネット上でまことしやかに囁かれる都市伝説の発生源がこの街だという噂があるからである。  より詳細な情報は更に<図書館><コンピューター><オカルト>で成功した場合に判明する。都市伝説というのは、謎の異常な生物が映された動画や写真、また古文書めいた文面の記されたPDFファイルが、流出しては消え、流出しては消えている、という奇妙な噂。例えDLして厳重に保存していても、気がつくと消えてしまっているのだという。  また、奇妙なことにそれを見たという報告が非常に少ない事から、真相は眉唾めいて語られている。  探索者がネット上でより詳細に調べようとするのなら、2chなどの掲示板で当該スレを発見しても良い。そこには過去にデータを見たという人間の言葉もある。NPC6<記者>から紹介されても良いだろう。  以下文面。 「あれは作り物なんかじゃkなかった。あれはまともうyrじゃなかった。あれは知っtちゃいpけないものだっvた ん だ。 どうしておれはあの日あれを見てしまった。あの非の俺を殺した1。忘れrrられない。消えない。怖い。聞こえ る。今も画面nの中にあの化け物がdんm、;りc  失礼しました。あれはどう見ても作り物なので、調べるだけ無駄だと思いますよ。」  それ以降はどれほど連絡をしても返事が返ってくることはない。やがてスレッドに接続出来なくなる。  0/1のSANチェック。 【軍司診療所】  7年前から街に設立されている私営の心療内科診療所。  山の麓にこじんまりと建物が存在し、軍司直衛という医者が個人で運営している。  裏庭ではアニマルセラピーの一環と称して鶏を飼っているようだ。 <調査可能な場所> 「待合室」 「病室」 「ナースセンター」 「院長室」 「裏庭(昼夜兼用)」 <夜に軍司診療所を訪れる場合>  診療所の前で、軍司に会いにきていた協力NPCに遭遇させるといいだろう。  潜入には<隠れる><忍び歩き>で潜入に成功する必要がある。<鍵開け>判定はお好みで。  或いは協力NPCから何らかの方法で鍵を渡しても可。  ただし、室内には防犯カメラを始めとした各種防犯装置がとりつけられている。  「ナースセンター」での<コンピュータ>か<電子工学><電気修理><機械修理>で解除が可能。<知識1/3>も可。  また、何処かの調査途中で必ず軍司が来室し、探索者達を追い出す事になる。  対話する機会があった場合、そこで軍司のキャラクター性を示すのも手だろう。 「待合室」  昼に訪れた場合、待合室へは何の問題も無く入る事が出来る。  <聞き耳>で患者の多さに比べ、その建物全体が非常に静かである事が分かる。  <目星>で待合室を見ただけでも驚く程に先鋭的な設備が整っている事が分かる。  最近は精神病患者の急増に伴い、大手市立病院からの下請けも行っているという。重症患者の引き受けも快く行っており、入院患者も多数居るようだ。  実際に病院を訪れた場合、何らかの形で<協力NPC>か<患者/学者>を登場させるといいだろう。上記情報は軍司本人または協力NPCへの<言いくるめ><説得><信用>で判明する。 「病室」  入院患者達が生活をしている病室。病室へ続く道には鍵(電子ロック)がされている為、昼であっても同行者が必要となる。  入院患者に話を聞こうとすると、皆正気を失っている為にまともな会話が行えないが、<精神分析>に成功する事で夜中に不気味な鳥の鳴き声が聞こえて来るといった情報を入手出来る。  <NPC1>が生存していた場合、彼が軍司病院に対して非常に怯えている事や、電話の音を極端に厭っている事などが、同じく<精神分析>により分かるだろう。 (<NPC1>は多くの情報を知りすぎている為、狂気症状や携帯電話のコール等であまり長く話をさせないようにするといい)  他、発狂済みのNPCが居る場合は面会可。ただしまともな会話は行えない。  また、更に奥へと向かえば、完全に痴呆状態となった壮年〜老年の男女を数人見る事が出来る。同行者が居る場合は奥へ向かう事は良しとされない。  痴呆状態となった男女は会話どころか反応すら無く、ただ涎を垂らし、虚ろな眼で虚空を見るばかりである。ナースセンターのカルテで、その男女が開院当初から収容されている、15年前の生き残り達である事が分かる筈だ。  KP情報的にはこの老人達は軍司のMP源であり、NPCが全員道中で死亡している際の最終決戦時の補欠要員である。 「ナースセンター」  待合室近くにあるこじんまりとしたナースセンター。  <目星>で捜査可能なのは「カルテ棚」と「電子盤」だと気付ける。  「電子盤」で監視カメラもそこで管理されている事に気付いて良い。  <コンピュータ>か<電子工学><電気修理><機械修理>で防犯装置のある程度の解除が可能。(あくまである程度の、であり、あまり派手な事をすれば作動すると釘を刺しておくように)  建物全体の電源を遮断するのであれば技能判定無しで可能だが、それをすると院長室のコンピューター、奥の部屋等が捜査不可能になる。  「カルテ棚」への<図書館>を用いる事で患者のカルテを見る事も出来る。  また、各種部屋の鍵も基本的にはここで入手する事が出来る。 「院長室」  院長室内は待合室同様、様々なハイテク医療機器が揃えられている。  <目星>で書類棚、コンピューター、奥へ続く扉を発見する事が出来る。
「書類棚」を調査する場合は<図書館>。成功した場合、古いカセットテープを発見する。その場では再生機器はないため、持ち帰るには<隠す>成功が必要。  何らかの方法で再生すると大分劣化してノイズ塗れになった奇妙な音色が聞こえて来る。聞くと1/1d5。 「個別用文章」  再生を押すと、まずざりざりと酷いノイズが聞こえてきた。音飛びなども多く、随分と古い音源のようだ。 「ザザッ……年……月7日……2…時…………ザーッ…記ろ……者、…軍司ザザザッ…  自分は……ザザッ…ま、電通トンネルのなザザッに居る…  …宇宙星…ザーッ、…は弐八塔を目指しているよう……詳しくは……らないが、重要な儀式を……ザザッ……行……  ザッ……これ……ら後を追……バレない方法で録音を続けたまま……接触を試……る……  この記録が……あのカルト…ザーッザザッ、…の正体を明か……決定的な証拠にな……ザザーッ……を祈る……」 少年の声でそれだけ録音されており、その後には暫く足音やノイズが続く。 しかしやがて大きなノイズが走り、その後、ノイズが走った奇妙な音色が聞こえて来る。 それは以前にトンネルで耳にしたメロディと似たもののように思えた。 「聞き耳深化」 奇妙な音色の中、多くの人間の断末魔の叫びが混ざっている事に気付く事が出来る。 また、離れた場所から少年の声で 「……綺麗だ」 と呟かれた声を聞き取る事が出来る。 追加SANチェック。1d3/固定値5。  SANチェックに失敗し、アイデアに成功した場合はカセットテープの音色を覚えておける。アイデア失敗の場合は忘却。最終戦で関係する。  また、��セットテープに対する<アイデア>や調査で、事件などにおいて磁気テープは証拠能力が高いとされる事が分かる。 「コンピューター」を調べるには<図書館/コンピュータ>。成功した場合、データ化されたネクロノミコン(アラビア語)が入手出来る。その場(シナリオ内)で完全な解析は不可能だが、  <知識>で「ネクロノミコン」というタイトルを、  <英語>で「出典:ミスカトニック大学」というのが分かる。  このデータは持ち帰っても暫くすると消滅する。  ここで軍司の学生時代の論文のデータを与える。 ◇論文「重度精神障害患者に於ける共通点とそれに関する見解」 ・重度の精神障害を持つ患者達は一見支離滅裂なように見えて、広くデータを集めるとある規則性や同一性に基づいた発言をしている事がままある。 ・これらの比率から、彼らはある特定の同一の何かを見ているのではないか(=クトゥルフ神話の事を指す) ・そしてそれは狂人の戯言ではなく、理由ある一つの世界なのではないか (言外に狂人の見ている世界が正常で、自分たちの見ている世界こそが誤りではないかという含みを察せられていい) 尚、論文は長く、読破には時間がかかる為、その場での解析は実質不可能である。(出来なくは無いが危険だと示唆すれば良い)  フレーバーとして、「芥川龍之介の「河童」」「魯迅の「狂人日記」」「京極夏彦の「姑獲鳥の夏」」「夢野久作の「ドグラ・マグラ」」「グリム童話「ハーメルンの笛吹き」と元となったドイツの伝承」「荘子の説話「胡蝶の夢」」等の電子書籍データが入っている事に気付ける。  USBなどにDLして持ち帰るには<コンピュータ>か<電子工学><電気修理><機械修理>での成功が必須。<知識1/2>も可。  また非常に重いファイルの為DLには時間がかかり、更に軍司本人がDL中に訪れる為、  1d3回分の<隠す>の追加成功が必須。RPで時間を稼ぐ等で補正しても良い。  ただしネクロノミコンそのものの解析は時間がかかるためシナリオ内時間では不可能。  「奥へ続く扉」には電子ロックがかかっており、探索者達はその鍵を持っていない。  奥へ行くには<鍵開け>か<電子工学><コンピューター>の組み合わせ技能。  破壊する場合は防犯システムが鳴り、警察へ連絡される。  室内には魔術的なアイテムとハイテク機材が不気味に同居しているのが分かる。  <目星>でズタズタにされた鶏が死んでおり、血の溜まった瓶がある事に気付く。0/1d2のSANチェック。  血の溜まった瓶に手を伸ばそうとすると強制的に軍司が来室し、探索者達の意識を魔術によって奪う。以降探索者は気絶し、強制的に3日目の最終決戦に移行する事になる。  いずれかのタイミングで軍司が妨害に現れる。 「裏庭」  鶏小屋や小さな畑がある。患者のセラピー用のようだ。 <目星>で鶏小屋周辺に不気味に輝く奇妙な鱗を発見出来る。 <生物学>魚のものでは無さそうだ。どちらかというと爬虫類のものに近いが、このサイズの鱗を持つ爬虫類など聞いた事が無い。 <神話技能>これはシャンタク鳥の鱗である。 NPC:【軍司直衛】  私営の心療内科を営む精神科医。人々への<聞き耳><信用><言いくるめ>等で判明。  最新鋭の機器を積極的に導入する医師。探索者が望むならツイッターやブログ活動を行っている事を示しても良いかもしれない。  丁寧で穏やかな性格だが、感情をあまり感じられない。淡々と話をする。  街の住人受けは概ね良いが、学者や医者などにはあまり良い顔をされない。  というのも彼の過去に起因しているようだ。学者、医者、記者に対して彼の事を聞く際に追加での<説得><信用><言いくるめ>などを行う事で、彼が学生時代に発表した論文で学会で大批判を浴びた事が判明していい。ただし論文の詳細は分からない。  また彼に関する調査の中で何かしらの技能を30以下の数値で成功する事により、彼は15年前の集団心中事件の遺族である事が判明する。学生時代は宇宙星辰会を摘発する為に奮闘していたという。 【協力NPC】  【集団心中事件】か【この街の都市伝説】他を調査中、  何かしらの技能にクリティカルで成功する事により(協力NPCが事前に姿を現している場合に限る)、協力NPCと同姓同名の人間が13年前に交通事故等で死亡している事が判明する(<幸運>などで判明させてもいい)。  では自分たちが今まで接していた相手は誰なのか? 同じ名前の別人なのだろうか?  この事実にぶつかった探索者は得体の知れない恐怖を覚え、協力NPCと直接面識のない場合は0/1d3、面識のある場合は1/1d6のSANチェックを行う。  個別に情報を与えるなどしても面白い展開になるかもしれない。
■最終決戦
 あらかたの情報が集まった段階で、突然探索者達の携帯にメールが届く。そこには写真が添付されており、電波塔の写真が載せられている。メール文面には一言「おいで」と書かれている。 <全体状況と処理>  山の上に建つ電波塔屋上にて、アザトース招来の儀式を実行しようとする軍司との戦い。  場には軍司の他に、軍司に操られた狂人が1d3人、或いは道中にてSAN0となったPC・発狂判定を受けたNPC分だけ居る。(最大5人。PTの人数や技能を見ながら設定すること)  彼らの妨害を阻みながら、鉄塔を登り、軍司を止める必要がある。  電波塔の高さは基本50M。探索者達の所持品に応じて可変。  シャンタク鳥が一羽周囲を旋回している。0/1d6のSANチェック。  シャンタク鳥は軍司に使役されており、探索者達に襲いかかる。  更に、鉄塔周辺には「フルートとバイオリンが合わさったような奇妙な美しい音色と、数十人の人間の断末魔の絶叫のコーラス」という狂気の笛の音が響きわたっており、探索者達は1ターンに一回<成功>1d3/<幸運成功>1d6<幸運失敗>1d4+2のSANチェックを行わなければならない。  以前にカセットテープをしっかりと(聞き耳を用いて)聞いていて、SANを減らした経験のある探索者は、以前の慣れもありここでのSAN失敗時の減少値が一律1/1d5に変更。  7ターン以内に決着がつかない場合、アザトースの招来は成功する。(1d10/1d100。街崩壊END)  軍司へ近寄るにはシャンタク鳥の旋回の隙を突き、且つ狂人達を退け、軍司の召喚を止める必要がある。  軍司の目の前には血の溜められた大瓶があり、彼の手にはその中から取り出されたと見える古い携帯電話が存在する。 (1R目で全員に<目星>を振らせ、電波塔天辺で彼が瓶から携帯を取り出し天高く掲げる様を目撃させる) <注意事項>  狂人たちは狂っても人間である。  故に彼らを1人殺したら1/1d3、2人殺したら1/1d2、3人殺したら0/1のSANが減少する。それ以上殺した場合は減少無し。判定は全体ではなく殺した人間ごとに行う。目撃者のSANチェックは減少SANが各々マイナス1。職業による補正はPC側から提案があれば有り。  死ぬ間際に狂人達に探索者を詰る言葉や追いつめるような言葉を吐かせても良いだろう。 (例:正気に戻す等) <全体の流れ>  まず軍司の元へたどり着くにはDEX対抗が必要になる。  狂人たちは探索者達の平均DEXの同一値判定だが、壁となっている狂人の人数分成功しなければならない。  ただしシャンタク鳥が場に居る場合はどんな数値でも必ず回り込まれほぼ自動失敗となる。  狂人たちを殺さずに行動不能にさせるには<精神分析>に成功すれば当該狂人はその後1d3ターン行動不能となる。ノックアウト宣言で攻撃し、気絶させるのもありだろう。  気絶させた場合、起き上がってくる事は無い。  全てのDEX対抗に成功すると、電波塔の頂上へたどり着く事が出来る。  以降、狂人達とのDEX対抗は不要。単純な乱戦となる。軍司への攻撃も可能になるが、軍司の気絶/殺害に成功しても狂気の笛の音が止む事は無い。  軍司を殺害した場合、探索者が殺人に慣れていなければ相応のSANチェックを行う。  軍司の手には電波塔と接続された旧型の携帯電話が存在する。電波塔との接続を遮断された場合はターン末のSAN減少が軽減(常時1d5になる)  また、余談ながら響き渡る範囲が狭まり、街中からこの電波塔周辺に変更になる。  召喚を阻止するには携帯電話を破壊する必要がある。  携帯電話の耐久は5。魔術で保護されており、装甲が常時1。  また軍司の意識がある場合は探索者への攻撃よりも携帯の保護を優先に行動するだろう。(例:抱きかかえる等)  軍司から携帯を奪い取るには、<組み付き>に成功した後、同ターンで別PCならばSTR対抗(軍司のSTR-2)、同一PCが次ターンで行うならば同数値でのSTR対抗となる。  或いは部位狙い(-20%)で手への攻撃に成功すれば軍司は携帯を取り落とす。  取り落とした携帯電話は未行動の別PCであれば即座に拾う事が出来る。  これらに成功しない限り、軍司は意識を失うまで携帯電話を離す事は無い。 <敵ステータス表> 軍司:HP14。装甲無し。  軍司が気絶/死亡した場合、探索者は軍司を引きはがして携帯電話を手にする必要がある。その場合、STR12との対抗。  死亡時は1ターン経過するごとに死後硬直が始まり、STRに+1されていく。死体を破壊する場合はその限りではない。 死体の耐久力:5  軍司の妨害を防いでいる場合、携帯電話への攻撃は自動命中とする。  攻撃でファンブルを起こせばPCが転落しそうになり、クリティカルを起こせば軍司/狂人が転落しそうになる、などとしてもいいだろうが、その辺りはKPの好みだ。 <捕足>  軍司に協力NPCの正体がニャルラトホテプである事を伝えた場合、軍司の動揺により必要ターン数が10ターンに変化する。何故なら彼は協力NPCが本当に自分の協力者である人間だと思っていたからである。  狂人達への催眠も弱まり、DEXの値にマイナス2。  軍司本人の全ステータスに−1。  反面、EDルート2と4の道が開く。 <補足2>  軍司生存状況下で携帯電話の奪取に成功した場合、軍司は激しく激昂し<手足の萎縮>或いは<アザトースの呪詛>の呪文を用いてくる。  1ターン後には携帯電話を所持している/最も脅威であるPCに呪文が発動する。  KPは探索者達に1ターンで決着を付けないと不味い事を伝えるといいだろう。  ダメージ1d8。また左右の手の何れかが萎縮し弾け飛ぶ。CON-3。  目撃者に0/1d3のSANチェック。その後、受けた探索者は手を使用する技能に−20%。CON永久的喪失。 <シャンタク鳥> STR:40 CON:13 SIZ:50 INT:4 POW:11 DEX:27 移動:6/飛行30 耐久力:40 装甲:毎ターン9ポイントの皮膚、スタン無効 呪文:なし 攻撃手段: 噛み付き/55%/1d6 特徴:  シャンタク鳥は2ターンに一度しか攻撃してこない。その巨体によるすれ違い様の攻撃の為、旋回して戻ってくるのに時間がかかるのである。  軍司へ攻撃を加えるには、何らかの方法でシャンタク鳥の気を引くか、旋回している間に狂人達を排除してから行わなければならない。  シャンタク鳥を物理的に排除しようとするのはやや無茶だろう。 <狂人達> 攻撃手段: 噛み付き/40%/1d4(db換算なし) 鉄パイプ/30%/1d6(db換算なし) こぶし/50%/1d3+(db-2) 装甲:なし 技能:命令に従う DEX:探索者の平均DEX-2 特徴:  元々のNPCのHP分体力が無くなれば当然死亡する。  都合良く操られているため、積極的に軍司を庇う行動をとる。  狂人の攻撃が外れた場合、狂人NPCの幸運値でロールし、失敗した場合は塔から転落しそうになる。  STR*5に成功すれば次ターンで復帰。失敗時は転落し20d6ダメージ。
■ED分岐とクリア報酬
【ED分岐】 ED1:軍司を殺害し、ニャルラトホテプの正体が不明の場合  軍司は死亡(殺害PCの慣れ程度によってはSAN1/1d3)。  同時刻、診療所にて火災が発生。  収容されていた患者や残されていただろう資料を道連れに、謎だけを残して全ては炎の中に消えて行く。  その日を境に、協力NPCは姿を消す。 ED2:軍司を殺害し、ニャルラトホテプの正体を軍司に伝えている場合  軍司は死亡(殺害PCの慣れ程度によっては1/1d3)。軍司の携帯に着信が入る。  携帯に出ると協力NPCに繋がり、全てを終えた探索者達に真相を明かし、あざ笑い褒め称える(正体はぼかす程度で良いだろう)。  通話に出たPCはSANチェック。最後の台詞は「また遊んでね」。  直後、診療所から火柱が上る。まるで何かが空へと帰っていくように。SANチェック1d5/1d10。  協力NPCの正体と行方が間接的に分かる以外は1と同じ。 ED3:軍司が生存し、ニャルラトホテプの正体が不明の場合  軍司は生存。軍司を含めた探索者達の携帯に着信が入る。  軍司もまた理解出来ていない。  携帯は誰か1人が出た段階で一斉に協力NPCの声で話し始める。  探索者を称え、軍司を笑う。「また遊んでね」。  その後の展開は1と同様。全員1d5/1d10のSANチェック。  軍司は強制的に発狂。廃人と化す。 ED4:軍司が生存し、ニャルラトホテプの正体を軍司に伝えている場合  軍司は生存。全員の携帯に着信が入る事も同様。  直後、シャンタク鳥が蘇り、軍司を連れて空へ舞い上がる。  協力NPCが姿を現し、探索者達と軍司を褒め称え「また遊んでね」と告げて正体を現し、空へと舞い上がる。  軍司はシャンタク鳥に連れ去られ共に虚空へと消える。  全てを目撃したPC達は1d10/1d100のSANチェック。  診療所は炎上せずに残ることとなる。  後日、探索者達の携帯電話に一通のメールが入る。  軍司の連絡先が分かっている場合はそれが軍司からである事が分かるだろう。  しかし文字は全て文字化けており、何が書いてあるのかは全く分からないのだった。 BAD END:儀式の妨害に失敗した場合  数日後、奇妙なニュースが紙面を飾る事になる。  山間に位置する小さな街の住人達の殆どが一斉に自殺を遂げたという事件である。  生き残った僅かな人間達も全て発狂しており何が起きたか詳細は不明。  警察では薬品や食品による集団食中毒事件ではないかという疑惑が流れているが、信憑性は薄いようだ。  そうしてこの街の事件は幕を閉じる。  そうして今日も、“誰か”の携帯電話に、着信が入る…。
■クリア報酬/実績
1*基本クリア報酬 …SAN回復:1d20のSAN回復 2*NPC生還(軍司と協力NPC以外のNPCで殺害/死亡させる事が無かったNPCが居てクリア) …SAN回復:生還NPC人数d5のSAN値回復 3*NPC全員生還(軍司も含めたNPC全員生還) …SAN回復:追加で1d5のSAN回復 4*ニャルラトホテプの正体を明かす(ルート2か4END) …クトゥルフ神話技能+5% 【軍司診療所でネクロノミコンのデータを入手している場合、全てを解析すると18%のクトゥルフ神話技能を入手出来るが、代償として斜め読みで1d10、本格的に研究するならば2d10のSANを失う。解析には68週間かかる】
■携帯電話イベント表
 1イベント1回。3日の間で殆どの内容をこなすことになるだろう。  基本的には1d10で発生イベントを決定すると良いが、KPの調整で多少変更しても構わない。 【1】  携帯にメールが届く。メールには動画が添付されている。  動画は激しく動くため画面が定まっていないが、人の悲鳴と奇妙な鳥の鳴き声、  また動画の端々に化け物(シャンタク鳥)の姿が映り込んでいる事がわかる。  動画の最後は撮影者の悲鳴と血が飛び散る様で終わっている。1/1d3のSANチェック。  <目星>などでより深く動画を観察する事により、それが夜の電波塔付近の映像である事に気がつく。  ただしより深い観察を行う事により、SANチェック量が1/1d5に変化。 【2】  今までに遭遇したNPCが一人発狂する。発狂内容は自傷癖。  発狂したNPCが自分を傷つけているムービーがその人物の携帯電話からメールで送られて来る。  この映像を目撃した探索者は1/1d3のSANチェックを行う。  電話に出なかった場合、翌日、或いは一定時間後に対象NPCは死亡する。この際は判明後に1/1d3+1のSANチェック。  遭遇したNPCが居ない場合は1d6の上下で1か3の内容を行う。 【3】  8と同様の出来事が起きる。 【4】  PDF化され翻訳された魔術書「ネクロノミコン」の一部。  歯抜けながら読む事が可能。目を通すとアザトースの記述の一部が強制的に目に入る。 「な*ての無限の中核で冒瀆の言辞を吐き**して沸きかえる、最下の混沌の最後の無定形の暗影にほか***すなわち時を超越した想像も**ばぬ無明の房室で、下劣な**のくぐもった狂おしき*打と、*われた***トのかぼ*き単調な音色の只中、餓えて齧りつづけ*は、敢えてその名を口にした者とて居らぬ、(メールはここで途切れている)」  このファイルを目撃した探索者は垣間見たおぞましさに1/1d5のSANチェックを行う。代償に1%のクトゥルフ神話技能を得る。  このファイルは目を通した後でメールの着信履歴も含め綺麗に消失する。 【5】  今までに遭遇したNPCが一人発狂する。発狂内容は幻覚。  発狂したNPCから電話がかかってきて、明らかに頭のおかしい内容を呟いている。  (例:鼠が襲ってくる助けて死にたく無い化け物めどうしていやだ助けて鼠が目を齧る鼠が私の喉を)  最後は正気を失した絶叫を残し電話が切れる。この通話を受けた探索者は1/1d3のSANチェックを行う  途中で電話を切った/電話に出なかった場合は何度も何度もコール音が続き、それでも出ない場合は自殺したNPCの写真が写メで送られて来る。この際は1/1d4+1のSANチェックを行う。  遭遇したNPCが居ない場合は1d6の上下で4か6の内容を行う。 【6】  電話。  奇妙な音色が聞こえてきて、耳に押し当てた部位から突然刺が飛び出し自分の頭を貫く幻覚を見る。質感と痛みもリアルに感じ取る。  ハッとして正気に戻ればそんなものは存在しないが、この奇妙な経験をした探索者は1/1d3のSANチェックを行う。  電話に出なかった場合は周囲に存在する全ての電子機器が電話に出るまで一斉に鳴り始める。1/1d4に変化。 【7】  ダイスで対象探索者を一人決定。対象となったPCはふと気付くと視界と動きを奪われどこかに居る(個別処理)  その他の探索者達はPvP展開、<精神分析>による支配解除は不可能。  <心理学>と併せ、別人のように感じるだろう。  解除はショックロールかターン数経過、或いは別行動PCが下記の行動に成功した時のみ。  何も無い場合この戦闘ターンは3ターンで終了する。  PCの姿を奪った軍司は探索者達への何らかの攻撃か、探索者達の持つ情報を破壊しようと動くだろう。  状況によっては戦闘に持ち込まなくても面白いかもしれない。  対象となったPCはターンの自分の手番の時に<STR×2>でロールを。  無事脱出出来れば縄が解け、自分の姿を目撃する。  あなたは軍司直衛の姿になっている。この現象が起きたらこのイベントは強制終了。  戦闘した探索者達は1/1d4の、精神交換をされた探索者は1/1d6のSANチェックを行う。 個別用文章: <冒頭>  気がつくとあなたの視界は真っ暗になっており、両手足は一切動かす事が出来なくなっている。口も塞がれているようだ。  感覚から察するに、椅子に座った姿勢のまま目隠しをされ、手足を拘束されているといった状況らしい。  あなたがこの状況から脱するには、<STR×2>の数値でのロールに成功する必要がある。  通話をミュートにし、KPのアナウンスに合わせて上記ダイスを振って下さい。 <成功した場合>  どうにか拘束を解こうともがいたあなたの行動の結果、あなたの目を覆っていた布がずれた。  それにより、あなたは周囲の状況を僅かに確認する事が出来た。  そこは窓の無い暗い部屋だった。  あなたの目の前には様々な魔術的な呪具や、捌かれた鶏の死体、血の溜められた大瓶などが並んでいる。まるで別世界のような有様だった。  そしてあなたの正面にある血の溜められた大瓶には、椅子に拘束され、猿轡を噛まされ、目隠しをずり落とした、軍司直衛の姿が映っていた。  それを確認した直後、あなたの意識は遠のき、元の仲間達のもとへと帰る事が出来るだろう。  ミュートを解き、セッションに合流して下さい。 <失敗の場合>  あなたは拘束を解こうともがいたが、あなたは拘束を解く事が出来なかった。  そうこうしている内に徐々に意識が遠のいていく。完全に意識が反転する寸前、あなたは耳元で囁く誰かの息遣いと笑い声を聞いた。 『ああ、残念』  それを聞き取ったのを最後に、あなたの意識は完全に遠のき、あなたは元の仲間達のもとへと帰ってくる事が出来るだろう。  ミュートを解き、セッションに合流して下さい。 【8】  携帯にメールが届く。メール画面を開くが画面は真っ暗であり、やがて画面から大量の血が溢れ出て来る。  やがて血が溢れる画面は穴のように窪んでいき、その中で何かが瞬きをしている光景をあなたは目撃する。  真っ赤に光る三つ目と目が合った。目が三日月型に歪み笑った。  1/1d3のSANチェックを行う。 【9】  今までに遭遇したNPCが一人発狂する。  発狂したNPCから電話がかかって来る。電話に出ると「あー…あーあー…あーうーあー…うあー…」といった  言葉にならない音声だけがひたすら繰り返される。最後には絶叫となり、通話は切れる。  この通話を受けた探索者は1/1d3のSANチェックを行う。1/1d3+1  遭遇したNPCが居ない場合は1d6の上下で10か8の内容を行う。 【10】  ボソリと一言、奇妙な声が聞こえた。何と言っているのかまでは聞き取れなかった。  けれどその言葉を聞いた途端、とてつも無い恐怖が探索者を襲う。理由すら分からない圧倒的恐怖。  探索者にこの時点での軍司とのPOW対抗ロールを。成功で1d3のSAN、失敗で1d3のPOWと1d5+2のSANを失う。 (POW減少の影響は幸運にのみ影響。現在SANには固定値以外影響無し)  使用呪文:<アザトースの呪詛>  <聞き耳>を使用する事でより深く踏み込む事により、その声が男(軍司)のものであると気付き、声に狂気を感じて良い。  ただしより深く耳にした為、POW対抗ロールとSAN減少に併せ、更に追加で1d3/1d5のSANチェックを行う。(対象/一人)  着信を無視すると強制的に着信し、その場の対象が全員になる。
■NPC情報 ・ダイスによって事前に「協力NPC/ニャルラトホテプ」「発狂し襲い掛かって来るNPC」を決定する「第一情報提供者」を他の担当NPCと並立させても良いかもしれない。それ以外のNPCは出しても良いし省略しても良い。 ・ニャルラトホテプNPCは軍司と長年親交のある人物となり、持っている情報に「軍司直衛の情報(全て)」が追加される ・それ以外のNPCについてはある程度自由に動かすと良い。 <NPC1>第一情報提供者  謎の音事件により発狂し通院を重ねていたが、重症化し入院。やがて軍司診療所への転院が決定するが、偶然(或いはニャルラトホテプの干渉により)軍司の本性と彼の計画を知り、過去の事件を再来させないために、ニャルラトホテプから与えられた情報から探索者達へ連絡を取る。  基本導入において探索者に音を止める方法を伝えようと連絡するが、探索者達と出会う直前にニャルラトホテプによって発狂させられる。ニャルラトホテプに最も弄ばれるポジション。  何事もなく話が進んだ場合は自殺する。15年前の集団自殺事件の遺族。  死ぬ前から大分発狂しかけていたようだ。  発狂しているが、明確に軍司に対して危機感を覚えている。 【(生存した場合)このNPCが持っている情報】 ・集団自殺事件について ・謎の音色怪事件について ・軍司診療所について(一部) (ただし殆ど発狂している為、聞き出すには<精神分析>他が必要) <NPC2>警察官  謎の音怪現象に悩む警察官。実際に事件に取り組む刑事としても良いし、市民を気にかける善良な警察官という扱いでも良いだろう。  探索者の職種によっては同僚ということにして、導入に使用しても良いかもしれない。  軍司に対しては街に貢献する善良な医師という認識から比較的好印象を抱いている。 【持っている情報】 ・集団自殺事件について(警察視点等) ・謎の音色怪事件について(警察視点他) ・<NPC1>について(知人と言う事にしても可) <NPC3>医者  街の市民病院に勤める医師。精神科医とするのが進行上妥当か。NPC1の元担当医としても良いかもしれない。  謎の音怪現象による患者の急増に首をひねりながら、街にある診療所の噂を耳聡く聞きつけている。  基本的には職業柄軍司の経歴については知っており、あまり好印象は抱いていない。  シナリオ進行に伴い、幕間にて謎の電話を受けた際は発狂する。  進行の都合上、市民病院ではなく軍司診療所に入院することになる。  探索者の職種によっては同僚ということにして、NPC2同様に導入に使用しても良いかもしれない。 【持っている情報】 ・集団自殺事件について(医者観点他) ・謎の音色怪事件について(医者観点他) ・軍司直衛と軍司心療内科について(同業者観点、過去の学会等) <NPC4>鉄塔の管理人  職種指定無し。  街外れの山奥の鉄塔に纏わる昔話の情報を探索者達に与える。  展開次第では死亡or発狂する。  このNPCをニャルラトホテプとする場合は死後も活動している様が見られるとすれば良いだろう。  軍司に対しては基本的に街の優秀な医者として好印象を抱いている筈である。 【持っている情報】 ・集団自殺事件について(鉄塔の情報中心) ・鉄塔の歴史について <NPC5>学者  謎の音について調査を進めている学者。何の学��にするかは一任。  病院の情報や軍司の過去に関する情報を持つ。  シナリオ進行に伴い何れかの段階で発狂するかもしれない。  軍司の過去についての情報も知っているが、単純な悪感情は抱いていない。  働きかけ次第では警戒心を抱いてくれるかもしれない。 【持っている情報】 ・集団自殺事件について(街の噂程度) ・軍司直衛と軍司心療内科について(患者視点、集団自殺事件の遺族等) ・謎の音怪事件について(被害者視点・学者視点) <NPC6>記者  ネット上の都市伝説やこの街に纏わる噂、15年前の事件の情報等を探索者達へ与える。  過去の事件に関し、嘗て調査を訴えていた軍司の事を知っている。  彼がその事件にどの程度関わっていたのか、軍司との仲等については自由に設定すると良いだろう。  シナリオ進行に伴い何れかの段階で発狂するかもしれない。 【持っている情報】 ・集団自殺事件について(より詳しい情報) ・謎の音怪事件について(噂、世間の目視点) ・軍司直衛の情報(記者視点) <黒幕>軍司直衛(グンジナオエ)(31歳) STR:15 CON:14 SIZ:13 APP:16 DEX:14 INT:15 EDU:21 POW:18 MP:40+発狂したNPC数のPOW(最低でもNPC2、NPC4の二人分はプラス) SAN:0 HP:14 呪文: ・狂気の笛(携帯電話) ・魂の歌(他の呪文と併用して一連の事件を起こすために扱っている) ・アザトースの呪詛(携帯現象1にて使用) ・支配(携帯現象8にて使用) ・精神的従属(改変)(狂人の使役に使用) ・精神交換(改変)(携帯現象4にて使用) ・精神力吸収 (ほぼ全ての呪文と組み合わせて使用されている。発狂したNPCのMPを吸収している。また病院の収容患者からも適宜吸収している為、実質軍司のMPは底なしである) ・笛に魔力を付加する(笛=携帯電話。招来の儀式に使用) ・手足の萎縮(キレた時のみ使用。MP8消費)(1ターン経過後に1d8ダメージ。対象1。周囲に0/1d3のSANチェック) ・アザトース招来 <技能> 精神分析:81 信用:60 心理学:99 経理:36 生物学:51 医学:61 コンピューター:90 その他の言語(英語):41 クトゥルフ神話技能:58% <目的>  より多くの人間を狂気状態にする事、及びアザトースを再びこの世界に召喚する事。  その為ならクトゥルフ神話技能に関わる情報の開示も厭わず、己の冒涜的な所業が明らかになったとしても相手が自分の目的に明確に反対しないのであれば何食わぬ顔をしている。 「狂気と正気の境目は、既知か無知かではないだろうか」 「白痴とは、我々とは違う世界を生きている人の事を指すのかもしれない」 「彼らは我々の知る現実とは違う世界を見、そしてそこに生きているのではないだろうか?」 「正気の世界の住人である我々に、どちらの世界が真実なのかなど分かりはしない」 「例えるならば夢を見ているように」 「私は……その先にあるものを、彼らが見ているその世界を知りたいと思う」  10年前からこの街で小さな個人診療所を運営するメンタルセラピスト。  重度の精神疾患を持つ者を積極的に受け入れる医療施設を運営する医師。  最新鋭の機材を惜しむ事無く導入し、ハイテク技術を駆使する。ブログやツイッターなども精力的に使用しているようだ。  無表情で冷静。淡々と喋る人間味の薄い男。  反面知識を取り込む事には貪欲であり、「進化」というワードに執着心を持たせれば後述の設定とリンクさせ易いかもしれない。  旧型のぼろぼろの携帯電話を肌身離さず持っている。  狂気とは人類が未知のものに振れた結果としての飛躍的な進化であるという独自の主張から、より多くの人間を狂気へとつき落とそうと暴走する狂信者。  アザトース招来の音楽が録音された携帯電話を持ち、そこから多くの人間の携帯へと怪電波を送り、多くの人を狂気の底へとつき落とし、傀儡めいて生きた人間を使役する。 *<余談>  彼のアザトースへの崇拝の念は思慕の情に似通っている。  また、彼自身はとっくの昔にSAN0だが、彼自身は自分は正気だと思っている。そしてそれ故にSAN0となった先の世界を知りたいと渇望している。言わば自分も狂いたいと願っているのである。  しかし彼は既にSAN0である。そんな彼がアザトースの招来に成功したとしたらどうなるのか?  結論から言うと、白痴の魔王の姿を、彼だけは決して認識する事が出来ない。 *<バックグラウンド>  かつて両親が宇宙星辰会に所属しており、アザトースの招来を実行。  宇宙的狂気の一端に触れた両親は一斉に発狂しその場で自殺する。  アザトースは完全に呼び出される事はなく、また気まぐれな王の興味を惹かなかったのか、白痴の王は奇跡的にもそのまま退散する。  両親の所属する不審な宗教団体の実態を暴いてやろうと物陰から様子を伺っていた若き軍司もまたそれを目撃。そして狂気の底へと落とされた彼は、逆に狂気に魅了され、とある真理にたどり着く。「狂気とは人類の考え及ばぬ何かにふれてしまった際に陥る、自己防衛めいた瞬間的な進化である」と。  宗教団体の実態を暴くため、軍司は手にしていた携帯で音声録音を実行していた。  その携帯にはアザトース招来の音色と、何十人もの人々の絶叫が録音されていた。  それは聞くものを狂気に陥れる狂気の音色だった。  それが今から15年前の話。  狂気に魅せられた軍司は精神科医の道へと進み、歳を経るに従い軍司はより深淵なる狂気を望むようになる。  より深い狂気を、それに伴う更なる真実を、と求める軍司の元に、とある人間が現れる。  自分なら協力できるかもしれない、と。  それが今から13年前の話。  その後、軍司は海外への留学経験(ミスカトニック大学)を経て、この街に診療所を作るに至る。  その裏に真の目的を秘して。  それが今から7年前の話。  再びアザトースを招来し、この世界を狂気に染めあげ、人類を更なる進化へと導く為、狂信者は暗躍する。  その手に携帯電話を携えて。 *<地雷> ・協力NPCの正体  軍司直衛は自身のすぐ側で自分を助けてくれる“友人”の本当の姿を知らない。  軍司は友人はあくまで志を同じくする人間であり、同胞であると思っている。  これを探索者が指摘すれば、驚き混乱した軍司の全ステータスに−1。  それに伴い、最終決戦時の必要ターンは10ターンに変化、携帯電話の音によるSAN減少も軽減される。 ・携帯電話を奪い取る  シナリオ最中、或いは最終決戦時に、軍司が生存している状況で彼の携帯電話を奪い取る事に成功した場合、彼はそれまでの鉄仮面を崩して激昂し、携帯電話を取り戻そうとしてくるだろう。  彼にとってこの音は真実に辿り着く為のただ一つの手段であり、長年の心の拠り所だからだ。  これを行う事で、軍司のターンに彼は携帯電話を所持している人間に対し、物理的な攻撃呪文である<手足の萎縮>を行ってくる。この呪文は1ターン経過後に発動する。 *<ニャルラトホテプ>協力NPC  軍司直衛の知り合いとして暗躍。  それとなく軍司へ神話知識を与え活動を活発なものにさせる傍ら、NPC1へ接触し、軍司の目的や探索者達の情報を与える。完全に遊んでいる。  軍司はこのNPCが神話生物である事を知らず、基本的には協力者、賛同者、友人として信頼している。
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