Tumgik
hiyori26-blog · 9 years
Text
くりんば現代パロ②
くりんば現代パロ②
じりりりり。 けたたましく鳴るアラームは午前五時を示している。 「ん…」 花屋の朝は早い。寝ぼけた身体を目覚めさせる為にシャワーを浴びる。すっきりとさせたところで着替えて店の軽トラックに乗り込む。今日は競りの日なので市場に出向かなければならない。なるべく安価で活きのいい花たちを仕入れなければならないので週に何度かの競りは勝負どころだ。 競りが終わり、軽トラックに慎重に花たちを積み、店先へ。鮮度が勝負なので、余計な葉を取り除いてから手早く花たちに水を吸わせてやる。今日はグラジオラスや紫陽花を仕入れた。涼しげな色が初夏にふさわしい。朝の手入れと店の清掃が終わり、ふう、と息をついた頃、2階の居住スペースと店舗のバックヤードを繋ぐ階段からどたどたと音がした。 「んあ、廣光…今日は競りか」 眠そうにふああ、と欠伸をしながら階段を降りてきたのは親戚の鶴丸国永だ。俺のはとこにあたる彼はフリーランスのデザイナーをやっていて、仕事が佳境になると「缶詰めさせてくれ」と俺の家に上がり込んでくる。しかも結構な頻度で。 「ああ、今しがた帰ってきた所だ」 「そうかそうか、お疲れさん。俺はコーヒーが飲みたい。ドリップがいいなあ」 「…」 遠まわしなお願いにはあ、と溜息をつく。これではどちらが年上か分からないな、と呆れた俺は一度2階に上がった。 2階に上がると鶴丸が待ってました、と言わんばかりにマグカップを準備していた。 「お湯は沸かしておいたからな」 「ああ」 挽いた豆を入れたフィルターをセットし、丁度湧いた湯を注ぐと香ばしい香りがした。 「ああ、やっぱりコーヒーはドリップに限るな。体に沁みる」 コーヒーを啜りながらしみじみと呟く鶴丸の色白の目もとにはくっきりと隈ができていた。 「アンタ、もしかして寝てないのか」 「寝たいのは山々なんだがな…、今日、一期がデザインのデータを取りに来るんだ。あいつ、俺には手厳しいんだよなあ」 ああ~~~、と呻きながらテーブルに突っ伏す鶴丸に、日頃の行いが悪いからなのでは、と指摘すると、
「うう、廣光も俺に厳しい」 「そんなの今に始まったことじゃないだろ。俺は店に降りるから仮眠を取るなりシャワーを浴びるなりしたらどうだ」 「そうさせて貰うぜ。シャワー浴びてくる」 そう言い残して、鶴丸は勝手知ったる浴室へ向かって行った。俺もそろそろ店舗に降りなければ。
バックヤード兼事務所に置いてあるパソコンに注文予約のメールが来ていないか開店前にチェックする。今日は法事のための仏花、華道教室の稽古花の引渡しがあるのみだ。開店を知らせる札を提げる。 午前10時、湿度・気温良し。今日も長船生花店、開店。
* 沿線沿いの商店街の裏手に位置する長船生花店は電車の時間に合わせて客の波が押し寄せる。予約注文の引渡しも終わり、午前の買い物客のラッシュも引いたところで昼休憩に入ることにする。バックヤードに用意しておいた昼食を取ろうと引っ込もうとした時、ちりん、と店のドアベルが鳴った。 「いらっしゃいませ」 「いつもお世話になっております。羽柴デザインの一期です」 皺ひとつない小綺麗なスーツに身を包んで現れた青年は一期一振という。歳は俺と同じくらいか。嫌味がなく、爽やかな印象を与える青年は、鶴丸の担当だという。あの奔放な性格のはとこにきちんと仕事をさせるあたり、かなり敏腕なのだろう。 「ああ、どうも。うちのがお世話になっている」 「全く鶴丸さんは煮詰まってくると廣光さんの所に駆け込むのが癖のようでしてな…。今日は何がなんでも納品していただかないと」 「それは大変だな。鶴丸なら上にいるから、上がっていい」 「いつも上がり込んでしまい申し訳ございません。少しですが、召し上がってください」 すす、と一期が差し出した箱は人気店の菓子折り。 「いいのか」 「いいですとも。私のささやかな気持ちです」 外見に似合わず甘いものに目がない俺は、遠慮なく受け取ることにする。一期は丁寧に礼を言うと、2階に上がっていった。しん、とまた沈黙が訪れ、俺は中断していた昼食をとり始める。途中「廣光の裏切り者!」と2階から鶴丸の声が聞こえた気がしたがいつもの事なので、聞こえない振りをした。
花たちの手入れをしたり、店に並べるプチブーケの補充をしているとあっと言う間に日差しは西に傾いていた。近隣の小中学生がわいわいと帰路に着いている時間帯なので、午後3時くらいか。この時間帯に決まって「彼」は訪れるのだ。ちりん、とドアベルが鳴る。
ひょこ、とドアの空いた隙間から顔を覗かせたのは、同じ商店街にある洋食店従業員の山姥切国広だ。彼とはつい3ヶ月前ほど、些細なきっかけで知り合った。今はお互いの店を行き来したり、休みが重なった時は自宅に出向いたりしている。どことなく似たところがある俺たちは知り合いから友人と関係の形を変えていた。 「お疲れ」 「ん」 彼、こと国広は足元にある鉢植えたちを蹴らないようにそっとレジ兼作業台へ向かう。 「これ、試作品なんだが」 食べるか、と国広から差し出された紙袋からは甘い香りがした。見習いパティシエである国広は時々自らが作った菓子を持ってきてくれる。先程も言ったとおり俺は甘いものに目がない。そして力仕事の後の空腹感が上乗せされて腹がぐるる、と鳴る。存外大きく腹が鳴ったのが恥ずかしい。誤魔化すように食べる、と簡潔に返事をする。 「今日はブラウニー。兄さんの許可が出たら店に出せるんだが」 なかなか難しくてな、と呟きながら国広はブラウニーと泡立ててきたホイップクリームを用意する。俺は渡されたブラウニーにクリームを軽くつけると、がぶりと齧り付いた。店で冷やしていたのだろう、ひやりとした生地が心地よい。 「ふまいな」 もぐもぐと食べる俺を国広は苦笑しながら「フォークくらい使えよ」と注意するが、本気で咎める様子はないようだ。ふ、と柔らかく笑う国広の表情は可愛い。本人の機嫌を損ねるので言わないでおくが。 「ごちそうさま。美味かった」 「それなら良かった。また持ってくる」 「今度はチーズケーキがいい」 「了解。そろそろ店に戻る」
「なんだ。コーヒーでも飲んでいけばいいのに」
朝に淹れたコーヒーを冷やしておいたからすぐに出せるのだが、国広は「また今度ゆっくり飲みに行く」と丁重に俺の申し出を断った。
「ん、そうだ国広、渡したいものがある」 ちょっと待ってろ、と国広に言い残してバックヤードに下がる。 「これ、いつもお前にもらってばっかりだったたからな。お礼」 国広に渡したものは訳あり品の花たちを使ったアレンジメントだ。メインは彼の髪色に似た黄色のフリージア。甘い香りが鼻をくすぐる。 「綺麗だな」 目を輝かせながら国広は感嘆する。予想以上の反応に花屋として誇らしいやら、気はずかしいやら。 「店にでも飾ってくれ。小さいけど映えると思う」 「そうする。さっそくショーケースの上に飾る。ありがとう」
嬉しい、と顔を綻ばせる国広はやはり女性が放っておかないだろうな、と思うと胸がちくりと刺されるような感覚を受ける。この感覚の正体が分からないまま、俺は国広を送り出した。19時閉店までやらなければいけないことは山ほどある。俺は仕事を再開した。
この気持ちの正体を知るのは、まだ先の話。 フリージアの花言葉:あどけなさ、親愛の情
0 notes
hiyori26-blog · 9 years
Text
現代パロでくりんば
「ありがとうございました!」
兄の威勢のよい声が店にこだまする。現在は金曜日の昼下がり、ランチタイムもそろそろ終了の時間だ。今ほど送り出した客が最後だったのだろう。店内が一瞬、沈黙する。
「おつかれさま、二人とも。これでランチ営業は終了だよ」
兄が店の玄関先に「準備中」の札を下げながら労いの言葉をかける。これから休憩に入る前に、ディナータイムに向けての軽い打ち合わせが行われる。ホールを余すことなく動き回り、接客もこなしながら経理や会計を専門に行う堀川が俺たちキッチンの状況を尋ねる。
「今日も盛況だったな、兄弟!仕込んだ食材も綺麗に捌けたぞ」
「うんうん、無駄なくコストは低く、だね。ランチのデザートのほうはどう?」
「ああ、こちらも問題ない。」
「それなら良かった。じゃあこれからディナータイム開店までに交代で休憩をとるとして…、山伏兄さんは仕込みの関係もあるから一番先に休憩取っちゃって」
「承知した。少し仮眠をとってくることにしよう」
「分かった」
「お疲れ」
そういうと兄の山伏は店のすぐ上の階―俺たち兄弟の居住スペースだ―に戻っていった。
「さて、俺はケーキ生地の仕込みでもしようかな」
キッチンに戻ろうとしたとき、堀川兄さんが「あ、ちょっと待って切国」と俺を引き止める。
「頼まれてほしいことがあるんだ」
「…?なんだ、兄さん」
「今日のディナー予約のお客さん、結婚記念日なんだって。それで、サプライズで花束を渡すことになったんだけど…、その花束を奥さんに渡すまでは店で保管しなきゃなんだよね。悪いんだけど…、その花束を取りに行って欲しいんだ。僕はこれからランチの会計を締めなきゃいけないし…お願い、してもいい?」
俺に向かって手を合わせてくる兄の頼みを断ることはできない。俺はエプロンを脱ぎ、街に繰り出した。
とある小さな町のメインストリートになる商店街の一角に、俺たち兄弟が切り盛りしている「山伏洋食店」がある。営業はランチタイムが中心で、夜は完全予約制ではあるがディナー営業もしている。昔ながらの洋食店で、ありがたいことに町の、商店街を利用する住人には特に親しまれている。俺、こと山姥切国広は(見習いではあるが)パティシエとしてデザートやスイーツを担当している。パティシエとして働き始めて日が浅く、戸惑うことや悩むことも多々あるが、この仕事は嫌いではない。
「ここか」
堀川兄さんが書いてよこした地図によると、おつかい先はここらしい。同じ商店街の大通りから一本裏に入り、商店街の賑わいからやや遠ざかったところに、その店はあった。「長船生花店」と書かれた簡素な看板よりも、店内外に活けられた色とりどりの切花たちが目立つ。ドアを開けると、ちりん、とドアベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
花に囲まれたレジ兼作業台から、青年が顔を出す。ブーケを作っていたのだろう、作業台には包装紙やら切花の茎などが散らばっていた。歳は俺よりも少し上くらいだろうか。褐色の肌と赤みのかかった茶色の髪が、やや失礼だが俺の抱いていた花屋のイメージとはかけ離れている。
「…何か」
青年の訝しむ声。失礼だとは思いつつじろじろと見てしまった。
「あっ、すまない」
慌てて青年から視線を外すと、
「いいや。慣れている。俺みたいなのが花屋か、といったところだろう」
「…」
図星だ。口下手な俺は上手い返答が見つからず、もごもごと黙り込んでしまう。
「別に怒ってなどいない。この容貌は生まれつきだからな。…こちらこそ、変な言いがかりをつけた。これでおあいこだ」
「こちらも失礼な物言いをした」
青年の表情がふ、と緩む。つられて俺の緊張も和らぐ。歳が近いせいもあるのか、どことなく雰囲気が和らいだような感じがした。
「…そういえば、何か用があったんだよな」
「そうだ、花束を取りに来たんだった。山伏洋食店か堀川で、予約は入っていないだろうか」
予約の台帳を付けているのであろう、青年はノートをぱらぱらとめくる。
「そうだな。先ほど準備ができたという連絡をした。本当なら届けたほうが花のためにもなるのだろうが、俺しか店員がいないからな」
「一人で店を切り盛りしてるのか」
「ああ。厳密に言えば経営者は別にいるんだが、留守にしがちで実質俺だけで回しているようなものだ」
溜息交じりに青年がごちる。店内はやや狭いものの、隅々まで掃除が行き届いているし何より、店内に飾られている花たちが生き生きとしている。自分も自営業に携わっているが、ここまで店全体に気配りができていないのが現実だ。
「すごいな」
素直に感想を口に出すと、青年はわずかに顔を赤らめ「ありがとう」と小さく返事をして、店の裏手に引っ込んでいった。
ごそごそと物音がした後、青年はこぼれんばかりの大きな花束を持って姿を現した。
「これが予約の花束だな。リクエストに沿ってメインはピンクのバラに。これ、サプライズで出すんだろう。インパクトがあったほうがいいと思ってボリュームを出してみたんだが」
「ああ。こんな大きな花束をサプライズで貰ったらきっと喜ぶと思う」
「そうであってほしいな。渡すまでは日当たりのない涼しいところで保管してほしい。花がぐったりしてしまうから」
俺にそう指南している間に青年はてきぱきと花束に最後の仕上げを加えていく。
「できた。案外重いから気をつけろよ」
「っとと…、本当だ。気を付けて持っていく」
「そうしてくれ。あとこれはオマケ」
両手がふさがっている俺のズボンのポケットに何か突っ込まれる。
「?なんだ?」
「花の持ちがよくなる保存剤。あとウチの連絡先。今日みたいな花束の予約があったらまた連絡をくださいと、堀川さんに伝えてくれ」
「分かった。伝えておく。ありがとう」
店を出ようとすると、もの言いたげな青年に引き止められる。
「また、時間が空いたときにでも遊びに来てくれ」
「もちろんだ。こちらにも飯食いに来い。…デザートくらいは、サービスしてやる」
「楽しみにしてる」
「また、な」
「ああ。ありがとうございました」
両手いっぱいの花束を抱え、俺は店を後にした。
「ただいま」
店に戻って青年の言うとおりに花束を保管すると、帳簿と睨めっこをしている堀川兄さんと行き会った。
「おかえり。随分時間かかったね」
「いや、花屋の店員と話していただけだ」
そういえば彼の名前を聞いていなかったことにはたと気づく。
「ああ廣光くんね。切国と確か4つ違いだったかなぁ。話した感じ切国と似た感じの子だから、もしかしたら話が合うかも、なんて思ってたんだよね」
兄さんは俺の返事を待たずうんうん、と頷く。
「いつも廣光くんにはお世話になっているし、今度夕食にでも呼ぼうかなぁ」
「それはいいかもしれないな」
「切国がそんなこと言うなんて珍しいね!近いうちに連絡してみよう」
「そうしてくれ」
些細なきっかけから知り合った俺と廣光という名の青年。
この出会いが俺の将来を変えることになろうとは、この時の俺は想像もしていなかった。
0 notes
hiyori26-blog · 9 years
Text
いちつるワンライlog
2015.5.10参加分
テーマ:「誘惑」
「うう~~~~~」
「ちょっと鶴丸さん飲みすぎ!ほら間に水挟む!」
「みずはいらないぞ、さけもってこーい!!」
燭台切光忠は途方に暮れていた。我が本丸第一部隊隊長の鶴丸国永は、戦場では頼りになるが戦以外のことはからきしなのだ。特に色恋沙汰に関しては。
部隊長の鶴丸国永と副隊長の一期一振が晴れて恋仲となったのはついふた月前だろうか。受肉する前にともに皇室御物としてともに在った縁でふたりは意気投合し、じっくりと時間をかけてその関係の形を仲間意識から友情、親愛、恋愛へと形を変えていった。燭台切をはじめふたりのことをよく知る第一部隊の面々もその様をほほえましく思っていた、のだが。
「なんで一期は俺に手出ししてこないんだよぉ…」
鶴丸が伊達のふたりに当てられた部屋を『ちょっと相談したいことがある。一期は抜きで』と酒瓶片手に訪れたのがほんの一刻前。鶴丸の素振りから一期が絡むことを話すつもりなのだろう、と予測はしていたが。まさか夜の生活のほうの相談とは。同室の大倶利伽羅は話に加わらず雑誌をめくり話の輪に参加しない構えだ。
「何か心当たりはあるのかい?」
「ないんだな、これが…、口吸いも済ませたし俺の部屋で添い寝をするまでにはなった。しかしその先が、無いんだ…」
さっきまで「酒を寄越せ」と騒いでいた鶴丸が急にしおらしくなる。
「俺に魅力が、無いのだろうか」
「それはないと思うけどね。一期くんが鶴丸さんを内面も、外面も魅力的だと思うから恋人としてお付き合いしてるんだと思うし」
「そうか…」
「自信もちなよ。…僕に管巻いてないで、さっき鶴丸さんが僕に言ったことをそのまま一期くんに伝えて、しっかり話し合って。ね、一期くん?」
「そうさせて、頂きます」
燭台切がちら、と目線を遣った襖がすす、と静かに空いて現れたのは、今一番鶴丸が会いたくない人物だった。
「!?」
「そんなに飲んで碌に歩けないでしょうから、私が部屋まで送り届けます。燭台切殿、お世話になりました」
一期は燭台切に向かって微笑んだ後、慣れた手つきで鶴丸を横抱きにする。
「一期、ちょっと」
「鶴丸殿の部屋に行きましょう。二人で話したいことがあります」
一期の有無を言わさぬ笑みに圧倒され、鶴丸は首を縦に振ることしかできなかった。
鶴丸の自室に戻ると、すでに布団が二組敷かれていた。用意周到な一期のことだから、あらかじめ敷いておいたのだろう。横抱きにしていた鶴丸を静かに布団の上に下ろす。鶴丸は先ほどの勢いはどこへやら、すっかり顔を火照らせて縮こまっている。
「さて。鶴丸殿に私がなかなか手出しをしなかったことに不満があるのですね」
「…そうだ。君がなかなか先に進む素振りを見せないから不安になったんだ。なあ一期、俺に魅力がないのが原因か?俺は女みたいに柔らかくないし、痩せぎすだし」
「そうではありません」
「では何故、っひ」
鶴丸が今にも泣きそうな顔でまくし立てようとしたが、一期の細い指が鶴丸の唇をなぞったことで中断された。
「私はいつも鶴丸殿に誘惑されていますよ。この薄桃色の唇に今すぐにでも食らいつきたいし、飾りを開けていない無垢な耳元を舐りたい。貴方様の鍛えられた身体を隅々まで触れて、最奥を暴きたいと思っています」
「…」
一期のあまりにも明け透けな告白に鶴丸は一瞬呆然とした。普段は気立てよく隊を取り仕切り、弟たちをいつくしむように接する彼の苛烈な一面に、くらくらとする。
「…はは、そうかそうか」
「どうされました、鶴丸殿。おかしいことを申し上げましたでしょうか」
「いいや、そうではない。俺とお前が同じ気持ちであったことが嬉しかったんだ」
言うなり鶴丸は着物の帯をほどいた。しゅる、と布が擦れる音がして布団の上に帯が落ちる。次いで襟元を肩口まで肌蹴させ、普段の装束姿では見せることはない鶴丸の隠れた透き通る肌が、部屋の薄明かりのもと明らかになっていく。
「俺も、一期に触りたいし、触られたい。俺の心を、今以上に一期でいっぱいにしてほしい」
恋愛はもちろん色事にめっぽう疎い恋人からの精一杯の「誘惑」に、一期の理性はじりじりと焼き切れていった。
0 notes
hiyori26-blog · 9 years
Text
KEISOTSUへし燭へしリーマンパロ
※やまなしおちなしいみなし 途中でぶつ切れ。落書きクオリティ! 僕と同じ営業課からの評判は「鬼の長谷部」「経理課の主」。仕事に一切の妥協を許さない彼が、ひっそりと呼ばれているあだ名だ。 僕、こと燭台切光忠と長谷部くん―へし切長谷部とは同期入社だ。僕は営業課、長谷部くんは総務課に配属されて数年経ち、今はお互いに「主任」という肩書きがついている。 「光忠!伝票は早く出せと言ったろうが!会計が締められないだろう」 「だから、先方の返事が来ないと出せないってば」 「全く…それなら仕方が無いな。忘れるなよ」 「申し訳ない、僕からも課長に言っておくから」 僕と長谷部くんが仕事でやりあうのは日常茶飯事だが、だからといって長谷部くんのことが嫌いな訳ではない。お互いにベストを尽くそうとしてああなるのはお互いに承知しているし、それがなければ気のおけない数少ない同期だ。あちらも僕のことを悪からず思っているのは、なんとなく分かる。(以前長谷部くんと喧嘩になった後、総務課の薬研くんが、「長谷部は嫌いな奴とは口をきかないぜ、光忠のことはああ言うけど嫌いじゃないと思う」とこっそり教えてくれた) その長谷部くんが今、飲み会の席で泥酔している。 今回の飲み会は、年度明け恒例の、いくつかの課が合同で行うものだ。年度末の諸々の混乱が落ち着いた頃、社員の労を労う意味で行われるため、僕を含め、参加した社員は思い思いに酒や食事を楽しんでいた。ただ一人を除いては。 「長谷部、顔色が悪いぞ。飲み過ぎだ」 「水挟まないとやばいんじゃない?」 長谷部くんの異変に気づいた僕と薬研くんがたしなめるが、空気を壊すことを悪いと思ったのだろう、長谷部くんは「大丈夫」の一点張りだ。 「そうだよなぁ。まだまだいけるだろう、長谷部」 「注ぐから飲んで飲んで」 「はい、頂きます」 長谷部くんは勧められるがままに酒を口にした。 「あちゃ〜」 「どうするよ、これ…」 会はお開きになり、既に他の社員たちは2次会に行く者、帰路につくものと散り散りになっていた。 勧められるがまま酒を飲み続けた長谷部くんは完全に潰れてテーブルに突っ伏している。 「残業続きの身体にはさぞや染みたろうよ」 心配と呆れが混ざったような表情で薬研くんがごちる。 「これは一人で帰れないよねぇ…」 「そうだなぁ、送っていきたい気持ちは山々なんだが、今日は弟たちを家で待たせているからな…、光忠、頼んでもいいか?方向、同じだったよな」 「オーケー、任せて」 今度飯奢るから、と言い残して薬研くんも帰路に着いた。そして、会場にはついに僕と長谷部くんだけになる。 「んん、光忠…か」 「うん。飲み会は終わったよ。今タクシー手配してるからちょっと待ってて」 「わかった」 そう言い残すと僕にもたれかかって再び意識を手放した。 「長谷部くん、部屋の鍵はどこ?」 「鞄の…内ポケットのなか…」 「わかった。ちょっと中漁るね」 「別に…構わない…」 『大変ですね』とタクシーの運転手に苦笑いされつつ、どうにか彼の部屋があるマンションに着いた。寝室のクイーンサイズのベッドに彼を寝かせ、ネクタイを緩めてワイシャツのボタンを外す。開放感があるのか長谷部くんの身体から、力がふっと抜ける。 「ん…」 「家に着いたよ。水でも飲むかい?」 「のむ」 ペットボトルを渡すも上手く飲めずに口元から水がぼたぼた、と溢れていく。そもそも同性で、今までろくに意識していなかったが、濡れて身体にぺたり、と貼りつくワイシャツや濡れててらてらと光る唇に、どきりとした。 「っげほっ…」 「ああもう飲めてないじゃないか」 長谷部くんからそっとペットボトルを受け取り、口に含む。そして、僕の口伝いに長谷部くんへ流し込んだ。長谷部くんの唇は少しかさついていて、アルコールの強い匂いがした。 「んんっ…んくっ」 舌を使い水を上手く嚥下できるよう促すと、上手く飲めたようでこくり、と喉仏が上下する。擬似的ではあるがあの長谷部くんとキス紛い(しかも深い方)をしてしまった。嫌悪感よりも身体が快感を拾っているあたり、僕も相当酔っているようだ。 「みつただ、」 もっと飲ませてくれ、と舌足らずな声色で求められて、理性が焼ききれる感覚がした。 とりあえずここまで!
0 notes
hiyori26-blog · 9 years
Text
お酒と二口と、俺
「ふぃ~~、ただいまぁ」
とある春の日の夜。会社帰りの俺はいつものようにアパートの鍵を開ける。一人暮らしを始めてしばらく経つのに、誰もいない部屋に向かって「ただいま」と言ってしまう癖がいまだに抜けず、ちいさく苦笑いする。
冷蔵庫を開けると缶ビールが二缶と鯖の甘露煮の缶詰が入っていた。今日は金曜日。明日は休みの為弁当を作る必要がない。夕飯は、手抜きして鯖の甘露煮をメインにしよう。
「(二口も、今日は研究室の新歓だって言ってたしな)」
恋人の来訪が遅い時間になることを言い訳にして、俺は鯖の甘露煮を小皿に移した。
*******
時刻は22時半を回り、夜の色がいっそう濃くなってくる頃。テレビを観ながら二口の帰りを待っていると、ドアががちゃがちゃ、と音を立てる。二口だろうか。いつもならうちに来るときは毎回「これから向かいます」「鍵開けといてくださいね」と簡潔な連絡が入るはずなのだが。
そっとインターフォンのモニターを覗くと見慣れた茶髪姿が扉にもたれかかっていた。二口だ。
「もにわさぁん、開けて~」
扉越しに聞く二口の声は舌足らずで甘えたようにとろりとしていて、(普段は生意気なことばかり言っているこの口が、である)相当酔っていることが分かる。
「二口、ドア開けるから一瞬どいて」
「はぁい」
「もにわさん、ただいまぁ」
「お帰り…っのわぁ!?」
ふわ、とドアにもたれかかっていた重みがなくなる。ドアを開けて出迎えてやると、二口が勢いよく俺に抱き着いてきた。悲しいかな、二口よりも貧弱な体型の俺は大型犬に押し倒された飼い主よろしく二口の重みで床に押さえつけられた。強かにぶつけたところが、じんじんと痛い。
「ふふん、もにわさんだぁ」
「ふたくち、ちょっと苦しい、」
退いてくれ、といった意味で背中を軽く叩いてみるものの、二口はお構いなしに緩みき��た顔で俺に頬ずりしてくる。こいつ、俺の知ってる生意気で、意地っ張りな二口と違う…!
「ふたくち、」
「ねえもにわさん、俺はいつまでも、ふたくちなんですか」
「へ?」
「俺たちつきあってるんだから、ふたくちじゃなくて、けんじって、呼んでほしいです」
「ずっと、賢治って、呼んでほしかったの?」
「うん…ずっと、呼んでほしかったんです。名前で呼んでもらったほうが特別って、感じがするじゃないすか」
甘えたモードの次は拗ねモードに入ったらしい。酔ったときの二口は本当にころころと表情が変わって、可愛い。つい甘やかしたくなる。
「分かった、」
賢治、一緒に布団入っておやすみしような?耳元で囁いてやると、二口は顔をユデダコのように真っ赤にして「…はい、」とだけ返事をした。
次の日、酒が抜けて正気を取り戻した二口が取り乱していたのはまた別な話。
ちなみに、俺はあれから、(二人きりの時限定ではあるけれど)賢治、と呼ぶことにしている。
***********
相方とのお題交換シリーズ「二茂二で、どっちかが酔っ払う」というシチュで書いてみました~
私は二口が酔っぱらうというシチュで。
二口:伊達工卒後、宮○高専に編入。建築を専門に勉強している。サークルでバレーは続けている模様。一人暮らしせず、実家から学校までバイク通学。茂庭さんの部屋の合鍵をもらっている。週末は半同棲状態。
茂庭:仙台市内の某メーカー技術職。一人暮らし。繁忙期になると途端にだらしなくなるが、二口が家事をしてくれるおかげでなんとかなっている。まったりおうちデートしているときが幸せ。
毎度生かし切れてませんが上記のような設定がございました^^;
0 notes
hiyori26-blog · 9 years
Text
今宵は君と(いちつる/R-18)
「一期。今夜晩酌に付き合えるか」
「ええ。弟たちを寝かしつけてから伺いますので」
この些細で自然なやり取りが、二人の逢い引きの合図になっていることを知る者は本丸でほんのひと握りである。
「ねえ、一期って下戸だったよね」
ずっと疑問だったんだけどさ、と蛍丸が光忠に耳打ちする。光忠は一瞬答えに窮しながら、困ったように笑って、
「んー、まぁ、本人たちには突っ込まないであげてね?あれでばれてないと思ってるから」
「あー…、うん、分かった」
事情を察したらしい蛍丸が、いささか気まずそうに二人を見やった。
夜も更け、しん、と皆が寝静まった頃。鶴丸の自室の襖が静かに開く。部屋の照明は殆ど落としてあり、書斎として宛がわれている机のまわりだけが、蝋燭の明かりでぼんやりと明るい。
「遅くなりました」
「いいや。俺も俺で考え事をしていたところだ」
紺色の着流しに着替えた鶴丸が来いよ、と手招きする。普段の装束が白一色なだけに、紺色の着流しは鶴丸の白い肌がなお一層映える。匂い立つ色香にごくり、と鶴丸に悟られないように生唾を飲み込む。
「明日の、作戦ですか」
「まあな。夜戦になるから目が慣れるまで時間がかかるだろう?しっかり頭に叩き込んでおかねばな」
鶴丸が机の上に広げていたのは、明日出陣する予定の地形図だ。現代では博物館学芸員をしているという主がこっそりと写しを渡してくれたものだ。
本丸に戻ればやれ退屈は良くないぞ、とか驚きが必要、などといささか忙しく他の刀たちを茶化して回っているのに、戦場での鶴丸はこちらが驚くほど静かだ。じっと敵の出方を伺い、無駄な動きは一切せず切り伏せる。そんな芸当を続けられるのは、このような入念な下調べを怠らないところだろう。言葉には出さないけれど、副隊長の一期はもちろん、他の隊の面子も鶴丸を信じてついていこうとする所以が、そこにあるのではないか、と一期は思う。
「…まあ、これは明日の朝に見直しをかけるとして。作戦会議の折は、いい案を頼むぞ、一期」
「承知しております」
鶴丸は満足そうにん、とだけ返し、地形図を畳み、杯に残っていた酒をくいと煽る。嚥下する喉仏が色っぽく、歯を立ててしまいたくなる。
「まあ、ここからが本題なわけだが。…随分と、もの欲しそうな目をしているな」
「…焦らさないでください、」
と返す一期の声は低く掠れていて、欲を含んでいた。察した鶴丸がくすり、と笑う。
「あはは、すまんすまん。ついからかいたくなった。さあ、もっと近寄れ」
「…はい」
どちらからともなく口付けを交わし、布団になだれ込む。衣服越しに肌にかかる吐息は熱く、お互いの熱を高めるには十分だった。
「…っ、一期、明かり」
「消しませんよ。今宵は明るいところで貴方を抱きたい」
「君もなかなかだな、色事など知りませんという顔をして、…っぁ、」
鶴丸の揶揄を含んだ反論は、一期が首筋を強く吸ったことで中断された。
「明かりの下ならば、私が散らした跡もよく見えますな」
「ばか…」
首筋についた大輪の紅の周りにも唇を落とし、小さな紅を付けていく。鶴丸の白い肌にはよく映える紅だ。
触れるところは首筋、鎖骨…、ついには胸へと降りる。鶴丸の胸の頂にそっと舌を這わすと、鶴丸は「あっ!」とひときわ甲高い声を上げた。
「一期…っ、それやだ、」
「何故です、こんなに気持ちよさそうにしているのに」
指で弄っていた反対側の頂にも舌を這わすと、鶴丸は幼子がいやいやをするようにかぶりを振った。
「っ…下も、」
「下?」
「さわれよ…!焦らさないでくれ、」
鶴丸の下半身を見やると、乱れた着流し越しでも分かるくらい確かな欲望の兆しが見てとれた。これは辛そうだ。布越しに鶴丸の隠茎を軽く握ると、びくびくと震えて快感を享受している。
「あっあぁ…いちご、変に、なる」
「…っ、変になっていいですから、」
背中に回された腕に力が篭る。立てられた爪が柔らかく刺さり、甘い痛みを滲ませた。
「あっくぅ…っ、イく、イく…!」
鶴丸はちいさく喘いで、あっけなく精を放った。
「なあ一期、このままでは君も辛いだろう」
一度達したせいか鶴丸の金色の瞳は冴えた光を取り戻していた。
はだけた着流しの間から上気して薄桃色に染まった身体との対比が艶めかしい。ますます一期の情欲を煽る。
「鶴丸殿の色気に当てられて、正直」
「それでは、」
一度開いた間合いがあっという間に詰まった。呆気に取られていると鶴丸から唇を食まれる。一期が一瞬力を抜いた隙に鶴丸は一期の両脚の間に滑り込み、一気に下履きごと衣服をずり下げた。
「〜〜〜〜!!」
予想もしなかった鶴丸の行動に声にならない声が漏れた。
外気に晒された一期の男根は大きく反り返り、欲望が募っていることが見てとれる。
「まだまだ驚くには早いぜ」
鶴丸の唇が弧を描いたのは一瞬で、数瞬後には一期の男根を鶴丸の口内に招き入れた。温かくてぬるりとした感覚が一期を包む。あの鶴丸に口淫されているのだと認識すると、腰がずくりと疼いた。
「…っ、鶴丸殿」
「ろうら、ほとろいらは!」
「くぅっ…、口の中で喋らないで下さい」
あの鶴丸が、自分のものを。興奮と征服欲で思考が奪われてゆく。鶴丸がたてる卑猥な水音に聴覚も犯されていく。
「…っ、あむ、んん…」
「腰が…揺れているようですが」
「んん、っむ」
どうやら気持ちが昂っているのは鶴丸も同じらしい。
何か言いたげな様子だったが、すぐに目を伏せて口淫を再開する。
「鶴丸…っ、殿、離れて頂けますか」
銀糸をさらりと撫でながら乞うと、鶴丸は素直に離れた。
「なんだ、気持ちよくなかったのか」
「いや、そうではなく。早く…、鶴丸殿の中に入りたいのです」
果てるならば貴方の中が良い、と耳打ちすると、鶴丸は顔を真っ赤に染めて「君の素直な所は好きだが…、時々とてもいたたまれなくなるな」と悪態をついた。
敷かれた布団の上に寝転がる鶴丸に覆いかぶさる。
「後ろは風呂の時に準備してあるから、早く来るといい」
「そんな…煽らないで下さい」
大切にしたいのに、本能の赴くままに抱き潰してしまうではないか。
「指、入れますね」
「ん、」
つぷ、と水音をたてて鶴丸は一期の人差し指を難なく飲み込んだ。
誘い込まれるように奥まで。一旦指を抜き、中指を添えて中をかき回すと、鶴丸はたまらないと言うように身体を震わせた。
「あっあ…、苦し、」
「苦しいならば、一旦抜きますよ」
「ん…や…」
「どうすれば、よろしいですか」
「君のものが、欲しい。君のもので、俺の中をぐちゃぐちゃにかき回して…、奥まで突いて欲しい」
「承知、しました」
鶴丸の望みどおりに一期は指を引き抜き自らの先端を宛てがい、ゆっくりと鶴丸の中に入ってゆく。
「…少々、きついですな」
準備をしてきたとはいえ、本来は出すことを目的としているそこはぎゅうう、と一期を締め付ける。受け入れる側の鶴丸も苦しいのか、顔を顰めている。
「無理を…強いていませんか」
瞼に唇を落とし、力を抜くよう促す。
「いいや。俺が来いと言ったんだ。少しきついが、じき慣れるさ」
鶴丸の中を探りながら、奥までゆっくりと腰を進めていく。時間にして数分だが、長い時を過ごしているように感じた。体感している時間が凝縮している。
「分かりますか。全部入りましたよ」
ゆるくえぐるように動くと、鶴丸の中がひくひくと蠢いた。
「ん…っ、分かる、俺の中に、君がいるのが分かるよ。たまらないな」
掌で腹を撫でさする刺激が中にいる一期にも伝わってきて、せりあがる快感に気を遣ってしまいそうだった。
「…くっ」
「ふふ、今イってしまいそうだったろ。我慢させたな、君の好きなように動いていい」
俺も気持ちよすぎで限界なんだが。耳元で囁く鶴丸の吐息が、一期の理性を取り払っていく。
「そうさせて、頂きますね」
「あっ!?いきなり、」
「好きに動いていいと言ったのは貴方ですよ、っ」
「んぁっ、ん、激しいの、好き…っ、おくも、ついて」
「望み通りに、」
がつがつとお互いの腰骨がぶつかる。その痛みすら、快感へと変換されて身を震わせた。
「ん、う、鶴丸殿、そろそろ、達しそうです」
「あ、ん、おれも…、もっと近くに、一期、」
一期の腰回りにあった鶴丸の両脚が交差して絡まる。鶴丸の脚の重みでさらに腰と腰が密着する。
「つるまる、さま、これでは、抜けません…っ」
「構わない、っから、中に、お前のを寄越せ」
「もう本当にあなたは…!」
「んん…、はやく、突いてくれ、…っあん!一期、くる!」
「私も…っ、もう、・・・っくう、つるまる、さま」
どくどくとつながった部分が脈打ち、二人はほぼ同時に精を放った。
「は、ん…」
引いてはまた打ち寄せる快感の波に吞まれ、どろりとした眠気に鶴丸は身をゆだねた。
********
「ん…」
鶴丸が目覚めると障子の向こうが薄明るい。ぐっすりと眠ってしまったようだ。
汗やらいろいろなもので汚れた身体はいつの間に一期によって清められていたらしい。隣で横になっていた一期がもぞ、と身動きする。
「おや、起こしましたか」
「いいや、外が明るくなってきて自然に目が覚めた。あの後、すぐ眠ってしまったようだな、すまん」
「貴方の可愛らしい寝顔が見れたので構いませんよ」
微笑みかけられて、なんとなく気恥しくなった鶴丸はふい、と顔を逸らす。照れていることは一期も察しているようで、ふふ、と笑われてしまった。いたたまれなくなって、話題を変える。
「弟たちを、起こしに行かなくてもいいのか」
「明日は夜戦になるからゆっくり寝たいのだ、と薬研と厚に頼んできました。なので…今日はもう少しだけ、鶴丸殿に甘えてもいいですか」
おずおずと腕を伸ばす一期が可愛らしくて、鶴丸は一期の背中に腕を回した。
時間が許す限り、この可愛らしい年下の恋人に甘えられようと、鶴丸は再び訪れる微睡の中、思ったのであった。
***********
~おまけ~
うちの本丸の朝の風景(第一部隊のみんなで、朝ご飯)
御手杵「なあなあ、あいつら起こしにいかなくて大丈夫かよ」
山姥切「あの二人が寝坊なんて珍しいな?…様子を、見にいったほうがいいだろうか」
蛍丸「寝せとけばいいんじゃない?(いちゃいちゃしてるところに遭遇したらすごい気まずいし…!)」
光忠「(国広くんにはきっと刺激が強すぎるしなぁ)あの二人には残ったご飯でおにぎり準備するから、僕が様子見がてら届けてくるよ。二人には悪いけど、おかずは食べちゃおうか」
御手杵「やりい!俺魚もらうわ~」
山姥切「俺も、その卵焼きもらう」
光忠・蛍丸「(まったくもう・・・)」
************
右月ちゃんと話して滾った結果、がっつりえろいお話を書いてしまいました。実は本番まで書いたのはなんだかんだでこれが初めてだったりします 
理性的な一期のペースを乱す鶴丸さんほんとギルティ(頭抱え)
支部にも同じ作品を再録という形で載せようと思います
BGM:椎名林檎「自由へ道連れ」
0 notes
hiyori26-blog · 9 years
Text
【現代パロ/山姥切受】古書堂三日月
ゆるゆる設定めも
【キャラ設定】
《山姥切国広》
とある寺の息子(跡取りではない)。山伏、堀川の兄二人と一緒に住んでいたが、大学進学とともに上京。古書店を営む三日月のもとへ下宿することになる。(山伏と三日月は、大学時代の友人)筋金入りの読書好きで、図書館や古本市に行くのが趣味。
大学での専攻は日本史。のちに編纂所職員(兼歴史学者)の鶴丸と出会う。
「女顔であること」がコンプレックス。
三日月⇒兄のような存在
鶴丸⇒騒がしいけれど頼れる先輩
《三日月宗近》
古書堂「三日月」の店主。大学進学を機に上京するという山姥切を迎え入れ、下宿先とする。家賃の代わりに店番をお願いしたり、家事一般をやってもらっている。自他ともに認める「本の虫」であり、古書の仕入れのために長期で店を空けることもしばしば。
大学時代は山伏、燭台切、鶴丸などと親しくしていた。その縁で山姥切の下宿の提案を受ける。
大学時代はそのマイペースな性格や浮いた話を全く聞かないことから、友人から「じいさん」「殿」と呼ばれからかわれていた。(本人はまったく気にしていない様子)
山姥切に対しては、同居人兼兄のような気持ちで接していたが…?
(古書堂 三日月)
東京下町の古書街にたたずむ昔ながらの古書店。古書の取扱いのジャンルは学術書(日本史、世界史、国文学、社会科学など)、近代文学など。博物館に寄贈されるような古文書、巻物なども取り扱うため、研究者の中では評判が高い。
《鶴丸国永》
某大学の史料編纂所職員兼歴史学者。専攻は日本史(鎌倉時代)
山姥切の通っている大学の卒業生であり、所属するゼミのOBでもある。山姥切が入学する前、文献を探しに「古書堂 三日月」を訪れたところ、引っ越してきたばかりの山姥切と出会う。山姥切が大学に入学した後も何かと世話を焼く、頼れる先輩。
三日月とは幼馴染で、小、中、高、大学と同じ学校だった。本人いわく「腐れ縁をこじらせた」とのこと。
どこか危なっかしい山姥切を気にかけているうちに、恋愛感情を抱いていることに気付く。
【出会い編/みかんば】
「こいつが今日からお世話になる山姥切国広だ。…ほら、ちゃんと挨拶しなさい」
山伏の背後からひょこ、と現れたのは、金髪碧眼の青年だった。碧の双眸が一瞬三日月を見、また逸らされる。
「山姥切国広…よろしくお願いします…」
「三日月宗近だ。こちらこそよろしくお願いするな」
お近づきの印に、と三日月が差し出した手に、少し時間を置いてから山姥切も応える。握られた手はじっとりと湿っていて、かなりの緊張が伝わってくる。
「この通り人見知りでなぁ。難儀するかもしれんが…」
「ははは、時間はかかるかもしれんが、じき慣れるさ」
「…なんてこともあったなぁ、国広」
「ああ、そういやそんなこともあったな。…何故今その話になる」
「取引先のお子さんが大学に受かったと、喜ばしげに言っていてな。お前がうちに初めて来たときのことを思い出したんだ」
「ふうん」
あのときは上京したばかりで、期待と不安で胸がはちきれそうになった。そんなとき、三日月は穏やかに、優しく山姥切のことを迎えてくれた。そのときの安心感といったら。照れくさくておざなりに返事をしたけれど、山姥切自身もあのときの記憶は鮮明に覚えている。
「あの時の国広はあどけなくてとても可愛い子だ、と思ったけれど、大人になった国広も変わらず可愛いぞ」
「…急に何を言い出すのかと思えば…」
「ふふ。耳まで朱に染めて、国広は可愛いだけでなく色っぽいなぁ。触れたくなってしまうよ」
自身の振る舞いが、三日月の理性を崩す最大の要因になろうとは、三日月と恋仲になった今でも、山姥切は思っていなかった。静かに距離を詰める三日月に、山姥切は狼狽えることしかできなかった。
「ちょっ…ばか!やめっ…!」
ピーンポーン、とチャイムが鳴った後に、宅急便が来たことを知らせる呼び声。今日は備品が配達される日であったことをすっかり失念していた。
「…」
「ほら、受け取りに行ってこいよ」
「いってくる」
「続きは…夜な」
明日休みだし構わないから、ともごもごしながら言う恋人が愛おしくて、今度は三日月が顔を朱に染める番だった。
【くっつく瞬間/つるんば】
とさり、とベッドに押し倒される。敷かれた寝具からは鶴丸が纏うフレグランスの香りがわずかに残っている。このベッドに横たわったのは、酔いつぶれた俺を鶴丸がここに運んできてくれた時以来だったか。
「俺はあんまりまどろっこしいのが好きじゃあないから、ストレートに言う。国広、お前のことが…好きだ」
俺を見下ろす金色は、夜だというのにきらきらと輝いている。満月みたいで綺麗だな、と思った。
「俺も…、好きだ、っ」
言い終わらないうちに視界が銀色に染まる。口づけをされていると自覚したのは、鶴丸の唇が俺から離れようとしているときだった。
「俺としては我慢するつもりだったんだが…、すまん、」
触れた唇だけがかっと熱くてもどかしい。もっともっと、触れてほしくなる。言葉の代わりに頬に触れ、そっと俺から口づけする。ちゅ、ちゅ、とついばむだけの口づけがだんだん深くなり息苦しくなる。このままこの息苦しさに溺れてしまいたい。
予想以上にいろいろ描いちゃいました
↑の文章に肉付けしてひとつの作品にしたいです。取り急ぎ設定メモ
まんばくんと鶴丸さん���愛でたいです
0 notes
hiyori26-blog · 9 years
Text
とける(クロ月/R-15)
やってしまった。
そもそもの発端は昼間まで遡る。ゼミの日がたまたまバレンタインデーに被ったからと、ゼミの女子にチョコレートをもらったのだった。 「月島、はいコレ」 「え、僕が貰っていいの?」 君にはあげるべき彼氏がいるじゃないか、と言外に訴えてみる。 「いつも助けてもらってるしね。いーのいーの。あいつには内緒だからね」 右手薬指に指輪着けてる奴に本命なんて贈ったりしないって、とからからと笑う彼女に、今度は僕が照れる番だった。
「ただいま」 講義を終えて帰宅する。今日は黒尾さんは仕事が遅い日だったっけ。どちらか先に帰って来た方が夕飯を作る事になっているので、有り合わせの食材で夕飯の準備をする。時計をふと見ると19時を回るところだった。先ほど黒尾さんから「あと1時間くらいで帰る」と連絡がきたから、夕飯は黒尾さんが帰ってきてからにしよう。
「(小腹空いたな)」 目に留まったのは、先刻貰ったチョコレート。包み紙を空けると、有名なブランドの銘柄。これ結構値段したんじゃないか。一粒口に入れると、チョコレートの甘い香りと、お酒のツンとした香りがした。成分表によると、このチョコにはブランデーが入っているらしい。
程なくして体がかっと熱くなる。頭もくらくらする。いわゆる下戸である僕はちょっとしたアルコールでも酔っ払ってしまう面倒な体質なのであった。
毎日顔を合わせているにもかかわらず、無性に黒尾さんに会いたくなった。早く帰って抱きしめて、キスして欲しい。筋張った長い指で、僕に触れて欲しい。アルコールで靄がかかった頭の中で、僕はそればかり考えていた。
ピンポーン
「…ぁ、」
ガチャガチャと部屋の鍵を開ける音。黒尾さんが帰ってきたらしい。ふらふらとおぼつかない足取りで、僕は玄関へ足を進める。
「おかえりなさい、」
「ただいま~、って蛍!?すごい顔赤いけど熱か!?」
外気にさらされて冷えた黒尾さんの掌がアルコールで熱くなった額に触れる。それすらも快感として僕の身体は感じ取ってしまう。
「…っぁは、黒尾さん、」
「蛍…っ、んむ、」
じれったくなって黒尾さんの唇を塞ぐ。黒尾さんより僕のほうが(若干ではあるけど)背が高くてよかったと、この時つくづく思った。いつも黒尾さんがしてくれるように、舌を絡め取る。深い、口づけ。
「…ふは、今日の蛍は積極的ですこと」
「たまには、そういう日があってもいいじゃないですか」
燃えませんか?と問いながら黒尾さんのコートを脱がせてネクタイを引き抜く。しゅる、と布どうしが擦れる音がしてネクタイが玄関の床に落ちた。
「とりあえず上がろうぜ。ここだとなんもできないだろ?」
優しくあやすように僕の髪を撫でる。こういうときに大人なそぶりを見せる黒尾さんはずるい。僕は無言で黒尾さんの手を取り、寝室へと向かった。
ベッドに寝転ぶ黒尾さんに跨り(いわゆるマウントポジション、というやつだ)、ワイシャツのボタンを外して肌蹴させた。黒尾さんは抵抗せず、僕の行動を興味深々、といったように静かに観察している。その余裕ぶりを崩してやりたくて、僕は黒尾さんの胸元に思いっきり歯を立てた。
「いっつ…!」
眉間に皺を寄せて痛がる黒尾さんの顔が最高に色っぽくて僕は興奮した。歯を立てた胸元を見ると赤い歯型がくっきりと残る。僕がつけた独占の証を今度は舌でなぞると、そこから快感を拾ったらしい黒尾さんが甘い声を上げた。
「くろおさん、」
「どうした?」
「今日は僕が上になろうかなって思ったけど…限界です」
黒尾さんの手をとり僕の股間に持っていく。あからさまに情欲をしめしているそこに触れて、黒尾さんはひゅう、と小さく息を飲む。
「僕と、セックスしてください」
「…っ、どうなっても、知らないからな」
視界がぐるり、と反転して、今度は黒尾さんが僕に跨る。
「っふ、あたって、る」
「当ててんのー」
細身にデザインされているスラックスの一部が形を変えている。黒尾さんも僕に興奮してくれている。それをスラックスの布越しに感じて、腰がずくり、と重くなった。
「俺もこんな感じだからさ、優しくできないかも」
「いいです、だからはやく、ちょうだい」
「了解」
こうして僕らは、ふたりベッドに沈んでいった。
**********
(黒尾サイド/事後)
「…しにたい」
酔いから醒めて正気に戻ったらしい蛍が呟く。俺的にはえっちな蛍がいっぱい見れて眼福だったけどな。ええ、セックスも大いに燃えましたとも。ありがとうございますボンボンチョコレート様。
「まあまあ。蛍、すげえ可愛かった」
ご機嫌をとるように蛍のはちみつ色の髪に口づける。蛍は「フォローになってない。うるさい」と不貞腐れたけれど、耳が真っ赤になっていてその仕草すらかわいい。
「でも、酒で毎回えっちになられても困るからなー」
「…」
「代わりに、蛍はこっち」
冷蔵庫で冷やしておいた小さな箱を取り出し、手渡す。こっそりお取り寄せしておいた、全国的に有名なチョコレートのブランドの生チョコ。
「ありがとうございます」
返答こそぶっきらぼうだが、表情は早く食べたいとうずうずしている。蛍は本当に、甘いものに目がないのだった。
「頂いちゃっていいんですか」
「いーの。折角だから今開けて食べようか」
箱の中の生チョコをつまんで蛍の口元に持っていくと、蛍は俺の指ごと口内に持っていく。舌のぬるりとした感触とともに、チョコレートは融けて行った。
「ごちそうさま」
「けーいー。今のは反則デショ」
黒尾さんの鉄朗くんが元気になっちゃったんですけど、と茶化すと、蛍は赤面しながら「わざとですよ…、いいから、もっかいしましょう」とだけ返ってきた。明日の東京は猛吹雪かもしれない。据え膳食わぬはなんとやらなので、俺は布団にくるまった蛍を押し倒しにかかることにした。
余談になるけれど、蛍がもらったボンボンチョコレートの残りは、俺が美味しく頂きました。
*********
相方とバレンタインを題材に、お題を交換してクロ月で書くことになりまして、書いてみた次第です。
コンセプトは「えっちなツッキーに襲われる黒尾さんのはなし」です ひどすぎる
本番の描写はありませんが、事後描写などありますのでR-15とさせていただきました。
全然バレンタインらしくない話になってしまいましたが、どうでしょうね…?
気に入ってもらえれば幸いです。ハッピーバレンタイン!
BGM:椿屋四重奏「恋わずらい」「トワ」
    東京事変「ただならぬ関係」
0 notes
hiyori26-blog · 9 years
Text
こいぶみ。(刀剣乱舞/みかつる)
「こんにちは鶴丸さん!三日月さんからお手紙です」
「ありがとうな五虎退。すぐに返事を書くから、中で休んでいてくれ」
「わかりました!」
たたた、と小走りで去っていく五虎退を目で追い、俺はちいさくため息をつく。
「さあて、どうしたもんかね…」
三日月から送られてくるものは軍議書や報告書など、戦に関係するものではなく、他ならぬ恋文なのだから。
書斎に戻り、簡素な包みを開けると、歌が一首と松の枝が添えられていた。歌の内容と松を見比べる。なんとあからさまな愛の告白だろう。頬がかっと熱くなるのを自覚する。
「(まあ俺は、そう簡単には落ちてや���ないけどな)」
また俺は今日も筆をとり、あいつにつれない返事を書いてやる。
(恋ひ死ねとするわざならし むばたまの夜はすがらに夢に見えつつ)
******
「ただいまです!」
「おかえり。お使いご苦労だったね」
「いえ、そんな!あっ、三日月さん、鶴丸さんからお返事、預かってます」
五虎退からおずおずと手渡された手紙。少し角ばった字は鶴丸自身の字であることを物語っていた。
「…ふふ、あいつめ」
「三日月さん?」
「いいや、なんでもないよ。返事をどうしようかと思っているところさ」
これを書いた鶴丸はどのような顔をしていたのだろう。可愛い可愛い、俺の想い人よ。
(しのぶれど 色に出でにけり わが恋(こひ)は ものや思ふと 人の問ふまで)
********
新月の夜も更け、濃密な闇が辺りを支配している。
人の気配で眠りから覚めると、此処にいるはずのない奴が俺に覆いかぶさっていた。
双眸に映る三日月が、きらきらと輝いている。
「驚かないのかい、鶴丸よ」
「いつかこんな日が来るんじゃないかって、思ってたさ」
「それはそれは。お前を驚かせたかったのに、残念なことをしたな」
「これから、もっと俺を驚かせればいいだろう?」
三日月のしなやかな指に俺の指をそっと絡ませて囁く。
「承知した」
********
降りてきたネタを思うがままにらくがきしてみた。手紙を送り合う二人の馴れ初めを書いてみたかったので。
三日月さんうちにおいで、と願いをこめて。
普段はひょうひょうとしているけれど、三日月さんに振り回されてむっとしたり照れたりしてたらかわいいと思います。たまに意趣返し。
「恋ひ死ねとするわざならし むばたまの夜はすがらに夢に見えつつ」
(焦がれ死にしろということか、あなたが一晩中夢に出てくる)
「しのぶれど 色に出でにけり わが恋(こひ)は ものや思ふと 人の問ふまで」
(心に秘めてきたけれど、顔や表情に出てしまっていたようだ。私の恋は、「恋の想いごとでもしているのですか?」と、人に尋ねられるほどになって。)
1 note · View note
hiyori26-blog · 10 years
Text
西東小ネタ集※未来ねつ造甚だしいです注意!
①実業団選手西谷×美容師旭さん基本設定
※書きたいところしか書いてません
ふう、と息をつくと時計は19時を指していた。今日はクリスマス前ということもあってヘアメイク希望で予約する客が多い。回転は速いが、客足がいつまでたっても途切れない日だった。
「お疲れ様です。コーヒーでもどうですか?」
「ん、ありがとう」
アシスタントからコーヒーが入ったマグカップを受け取り、くい、とあおる。今日は開店からフル稼働だったから、コーヒーの苦みが心地よく身体に染み込んでいくようだ。
東峰が美容師として独立し、自分の店を構えるようになって数年になる。現在はアシスタントをひとり雇えるくらいの余裕もできた。ヘタレな自分でもやればできるもんだ、と思う。まだまだ課題は山積みだから、慢心は禁物だが。
アシスタントが帳簿を見ながら、
「今日の予約分はすべて終了ですね」
「んー…一日長かったな」
ううー、とうなり声をあげながら伸びをする。本格的な運動は高校でやめてしまったので、疲労で体がきしむような感覚がする。
「そうだ、明日は定休日にしてあるし、もう上がっていいよ」
「え、いいんですか?」
「たまには優秀なアシスタントを労わってあげないとね」
茶化して言うと、アシスタントは顔を赤らめて「お言葉に甘えます」と応えた。
定休日前の夜。いつもより少し早めに店を閉めるのは、唯一の従業員であるアシスタントを労わるのも間違っていない。だが、本当の理由は別にある。
今日は東峰の『お得意様』が来店する日だから。
『閉店』の看板をドアノブに提げ、鍵をかけずにドアを閉める。使っていないフロアの照明を落として明後日の予約状況を確認していると、バターン!と大きな音がして、店のドアが勢いよく開く。こんなことをする人は、東峰の店の客にも、見知った近所の人にもいない。
「旭さーん!!!!遅れました!!すません!!!!」
「ちょっと西谷!ドア壊れるから勢いよく開けるなって言ったろ!」
『お得意様』兼、東峰の恋人である西谷夕が夜の美容室にやってきた。
「すんません!勢い余りました!!」
「まったく、しょうがないなぁ…」
早く旭さんに会いたくて、と甘えてくる西谷に東峰は大概弱いので許してしまうのだが。
「で、今日はどうする?」
②西谷夕とシャンプー
泡が飛ぶから目元ごめんね、と旭さんから言われ、視界が白く覆われる。
「髪濡らしてくな」
「よろしくおねがいします」
ぬるすぎず熱すぎない、心地よい温度のお湯がさああ、と髪にかかっていく。
「熱くない?」
「大丈夫ッス」
「じゃあシャンプーしていくね」
泡立てたシャンプーを纏った旭さんの指が俺の髪に絡んでいく。髪にシャンプーをなじませたあとは、ゆっくりと時間をかけて頭皮マッサージ。視界が布で制限されているため、旭さんの細やかな指づかいを余計に意識して変な気分になる。
普段優しく細やかに客に触れる手が、夜は俺の背中に爪を立てて縋り付いているギャップ。これはかなりクる。
「痒いところはありませんか~?」
「痒いところはないッスけど、」
「けど?」
「なんか…ムラムラしました」
「はぁ!?」
俺の発言に動揺したのか軽く爪を立てられた。ちょっと痛い。
「何を言い出すかと思えば…」
「旭さんのマッサージきもちーんですもん!帰ったらすぐに寝かせませんからね!」
「はいはい」
③帰宅してムラムラしちゃった西東
靴を脱いで部屋に入るなり西谷に押し倒された。運動をやめた俺と現役の西谷では、悲しいかな西谷にされるがままだ。がっちりと両手首を床に縫い付け、西谷は俺の項首筋に思いっきり歯を立てる。
「いっ!!痛いよ…西谷、」
「すません…でも俺、余裕ないんで」
いますぐにセックスしてもいいですか、と言外に訴える西谷の目は欲に濡れている。
「…せめてベッドでお願いしたいんですが」
西谷の耳にそっと唇を寄せて強請ると、西谷の身体がぴくりと震えた気がした。
「…っ、分かりました、行きますよ、旭さん」
「…うん」
西谷にぐい、と腕を引かれてベッドに沈む。
この後腰が立たなくなるまで愛されたことは、また別の話。
******************
twitterで東西コンビが見たい!というリクエストがありましたのでざくっと書き起こしてみましたがすごくバカップルになってしまったことを心より反省いたします
好みで西東仕様になっておりますが喜んで頂けると嬉しいです
羅羅鬼ちゃんへこのバカップルめを捧げます!
0 notes
hiyori26-blog · 10 years
Text
Four Season ①ふゆのひ(影菅/馴れ初め話)
(side:影山)
菅原さんとの思い出を振り返ると、冬のなんでもない情景が思い出される。
いつも、俺たちの関係が変わるのは冬の日だった。
*******
菅原さんを『恋愛対象』として意識しはじめたのはいつだっただろう。実のところはっきりと覚えていない。人と付き合うことが下手くそで、そのくせプライドばかり高い俺に、はじめてまっすぐ向き合ってくれたのが菅原さんその人だった。同じポジションの唯一の先輩ということもあって、菅原さんと俺はゆっくりと、しかし着実に親しくなっていった。
春高バレーが終わってしまうと、感傷に浸る間もなく主将引継ぎが行われた。先輩たちの進路を決定する試験が、もう間もなくとなっていたためだ。
雪が静かに降るとある冬の日。部活の全体練習が終わってひとりサーブ練習をしていた。しん、と静まりかえった体育館のなか、
「影山!」
出入り口付近へ視線をやると、制服姿の菅原さんが手を振っている。傘もささずに体育館へ向かったのだろう。制服の肩のあたりがうっすら白くなっている。
「…うす、お疲れ様です」
「体育館に人の気配がして、ボールの音もしたから。もしかしたら影山かもって思って来たら当たりだった!」
にしし、と笑う菅原さんを見るのがかなり久しぶりのような気がした。実質、菅原さんたちが引退してからそんなに時間は経っていないはずなのに。ちくりと胸が痛んだ。
「サーブ、見ないうちにまたうまくなったな」
「そうすか…、」
気恥ずかしくて視線をそらしてしまうと、「またまた照れちゃってー!かわいいやつ!」とわしゃわしゃ頭を撫でられた。いつものように俺はされるがままだ。
「なあ、影山のサーブ、もうちょっと見てっていい?」
「…はい」
結局菅原さんは、俺が自主練を切り上げるまで体育館にいた。部室の鍵を返却し、辺りは真っ暗なはずだが、降り積もった雪明りでぼうっと明るくなっていた。誰も通っていない雪道を、俺と菅原さんが踏みしめて歩く。きゅ、きゅ、と音を立てて雪が踏み固められていく。
「すんません、遅くまで」
「いーのいーの。俺が残るって言ったんだから。あとなー、影山とちょっと、話したかったんだ」
それから俺たちは菅原さんたちがいなくなった後の部活の話だったり、お互いの近況だったり、他愛もない話をした。そろそろ俺と菅原さんの通学路の分かれ道、というところで、菅原さんがぴた、と足を止める。
「あ、あのさ。改まった話していいかな」
「?」
「引退のとき、バタバタしてお前と二人で話す時間、なかったもんな。みんながいるところだと言い出しづらかったんだけどさ…、影山、ありがとう」
俺をまっすぐ見て話す菅原さんの表情は真剣そのもので。あの頃、ベンチでチームメイトを見つめていたまっすぐな視線が、今は俺に向けられている。
「影山、今までありがとうな。お前とバレーができて、本当によかったよ」
「それは…、俺のセリフですよ、菅原さん」
俺に向けられた菅原さんのセリフは過去形で。そのことがもう菅原さんと俺が烏野高校の選手として一緒に闘っていくことはもうない、という事実を俺に突き付けた。
もっと色々なことを教わりたかった。もっと、あなたの笑顔を傍で見ていたかった。もっと…。
雪明りでぼうっとしていた視界が、ぐにゃりと歪んだ。
「影山、泣くなよ」
「ないてないです…」
「せっかくの男前が台無しだぞ」
「うう…すんません、」
おもむろに制服からハンカチを取り出し、俺の目元のものをそっと拭う。クリアになった視界の先には、困ったような顔をして笑う菅原さん。菅原さんたちが部活にいたとき、いつも俺はこんな笑顔をさせていたっけ。
「もう大丈夫だよな?」
結局菅原さんは、俺の涙が引けるまで辛抱強く待っていてくれたのだった。
「はい」
「日向と月島と仲良くやるんだぞ」
「…それは、難しいかもしれないっす…」
「そこはハイって言うところだろ!影山はほんっと、素直なやつ」
「…すません」
ここからが本題だけど、と前置きをした後、菅原さんの冷たい掌がそっと俺の手を包む。菅原さんと触れたところだけが、かっと熱くなったような気がした。
「烏野高校バレー部をよろしく頼む」
「はい」
今度はまっすぐ、菅原さんを見つめることができた。このひとが守り続けてきたものを、俺も守ってみせる。
またな、と言って、俺たちは別れた。
あの冬の日から瞬く間に春が来て、菅原さんは烏野高校を巣立っていった。
***********
つづきます 影菅への妄想をこじらせた結果、4部作になる予定です
とびおちゃん誕生日おめでとう!
BGM: aiko「スター」
    BUMP OF CHIKEN「スノースマイル」
0 notes
hiyori26-blog · 10 years
Text
明るい夜に待ち合わせ(クロ月)
黒尾さん、今日は外で飲みませんか?
お酒があまり飲めない恋人からの、突然の誘いに驚きつつも、
「行く。絶対定時で終わらせる…っ、と」
簡潔な返事をし、俺は仕事を再開した。
*******
待ち合わせは19時、蛍のアパートの最寄駅改札口。猛烈な勢いで仕事を終わらせた俺は、弾む足取りでホームの階段を上る。蛍は普段外でデートしたがらない(同性どうしで恋をしている、俺たちの事情がそうさせるのかもしれない)ので、今日の蛍からの申し出は意外で、同時に嬉しくもあった。
「お待たせ、」
ひらひらと手を振り声をかけると、蛍はヘッドフォンをそっと耳から外す。紺のピーコートに赤いチェックのマフラーが映えている。
「イエ、こっちも今来たばかりなので大丈夫です。…さあ、行きますか」
俺の手をとり先を急ぐ蛍。今日は珍しく積極的じゃないの。どうしちゃったの。
駅前の繁華街を抜け、細い路地に入って5分ほど歩くと、蛍は足を止めた。
「ここです」と蛍が指し示した店は蛍のアルバイト先のバーだ。初老の男性がマスターで、こじんまりとした広さだが落ち着いた雰囲気で飲める隠れ家バーとして密かに人気を博している。俺もアルバイトが終わった蛍を迎えに行っているうちにマスターに顔を覚えられ、何回かマスター特製のカクテルをご馳走してもらったことがある。
「いらっしゃい。お待ちしておりました」
「お疲れ様です、マスター。今日はよろしくお願いします」
店に入ると、件のマスターがにこやかに出迎えてくれた。平日ということもあり、客は俺たちだけのようだ。カウンター席に通されると、さっそく前菜の盛り合わせがテーブルに出される。
「外で飲もうなんて、珍しいんじゃない」
かねてからの疑問を口に出すと、蛍はちいさくため息をついて、
「黒尾さん、今日は何月何日です?」
「11月の17日だろ…あ、」
本日、11月17日は俺の誕生日だった。仕事に忙殺されていて、すっかり失念していたが。
「忘れてたんですね…」
「うん。すっかり」
蛍はすっかり呆れた様子だ。カウンター向こうで、
「ふふ、あまりに忙しいと自分の誕生日すら忘れてしまうこともありますよ」とマスターが静かにフォローを入れてくれた。
「今日はひとつ、いつもお世話になっている黒尾くんの誕生日ということで、サービスさせて頂きますね」
と俺たちに出されたのは、インペリアル・フィズというカクテル。
「黒尾くんの誕生日に、乾杯」
「おめでとうございます」
赤面して、グラスを傾ける蛍の仕草が可愛い!ここが家だったら間違いなくキスしてた、いや押し倒してたかもしれない。必死に理性でもたげてくる本能を抑え込みつつ、俺もグラスを傾ける。からり、とグラスの涼しげな音がした。
「今日は、ご馳走しますから」
「んー、ありがと蛍ちゃん」
隠れ家的バーということもあってこの店はフードも美味しい。そして何より酒に合う。会社の接待で居酒屋に行くことはあるが、こんなにゆったり(しかも恋人と)美味しいお酒と飯を頂くのはいつ振りだろう。
「モーニング・グローリー・フィズです」
いつの間に次のお酒がオーダーされていたのだろうか。こくり、と一口飲むとウィスキーのつん、とした香りと、レモンの香りがした。
「飲みやすい」
「もともとは二日酔いの朝の迎え酒として考案されたらしいですよ」
「蛍ちゃん、勉強してるね~」
「…まあ、作るの手伝ううちに、興味が…。ほら、料理きてますよ!冷めちゃいます」
ほら、と料理を小皿に取りわけてぶっきらぼうに渡す蛍が可愛くて、蛍の頭をくしゃりと撫でてやった。
********
食事も酒も進み、デザートのチーズケーキも平らげたところで蛍が「事務所に忘れ物あるので取ってきます」と言い残して席を外し、俺はひとりカウンター席に残された。
さて、そろそろいい時間だしすぐに出れるようにしとくか、とハンガーにかけてあったコートを取ろうとしたとき、
「黒尾くん、今日の月島くんはおしゃべりだと思いませんか?」
「…?いつも通りだと思いますけど」
マスターの言葉の意図が分からず首をかしげていると、マスターはふふ、と含みのある笑みを浮かべて声を潜めた。
「黒尾くん、カクテル言葉って知ってます?」
「いえ、初めて聞きますね」
「花言葉とか、宝石言葉みたいに私どもバーテンダーでお出ししているカクテルにも、カクテル言葉というものがあるんですよ。例えば、私が最初にお出しした『インペリアル・フィズ』というカクテルには『楽しい時間』というカクテル言葉があります」
「なるほど」
カクテルと、そのカクテル言葉の一覧を指し示す。こんなものがあったなんて初耳だ。
「黒尾くん、今日は何のカクテルを召し上がったか、覚えてます?」
「えーっと、さっきのを除くとモーニング・グローリー・フィズ、あとはベルベット・ハンマー、でしたっけ」
「ええ。ここに載って���るカクテルですから、見てみてください」
月島くんが何を伝えたいか、わかりますよ。と含みのある言い方で、マスターは微笑む。
「んーっと…」
カクテル名とカクテル言葉のリストを目で追っていくと、蛍がオーダーしたカクテルを簡単に見つけることができた。
「…!え、ちょっ…」
だんだんと頬が火照っていくのがわかる。それは酔いが回ってきたからというわけではなさそうだ。
これは反則でしょ、蛍。
「ふふ、分かったみたいで何よりです」
恋人の(間接的ではあるけれど)情熱的なメッセージにくらくらした。
自分の誕生日であるからと理由をつけて、家に帰ったらめいっぱい可愛がって、ぐずぐずに愛してやる。蛍のメッセージにふさわしい返事を、たっぷりしてやらなければ。
ひっそりと心に決めて、俺はちょうど戻ってきた恋人の手を引き、いそいそと帰路についた。
*********
黒尾さん誕生日おめでとうございます!
作中に出てきたカクテル言葉のネタばらしをしておきますと
ベルベット・ハンマー『今宵もあなたを想う』
モーニング・グローリー・フィズ『あなたと朝を迎えたい』
でした。
アフィニティ『ふれ合いたい』、ネグローニ『初恋』、XYZ『永遠にあなたのもの』あたりも差し込みたかったのですが…、黒尾さんいくらなんでもちゃんぽんし過ぎだろwということでボツになりました。他の話で入れられたらな…と思っております。
あとナップ・フラッペっていうカクテルの『星は君、月は僕』っていうカクテルがすごく月島っぽくてときめきました。
カクテル言葉を引くにあたり
http://cocktailkotoba.nomaki.jp/
参考にさせていただきました!
0 notes
hiyori26-blog · 10 years
Text
濃密な、(大照/R-18)
(side:照島)
金曜日の夜。週末の夜独特の浮足立った空気の仙台の街中をふわふわと歩く。
待ち遠しかった週末。
俺が、大地くんを独占できる貴重な時間だ。
*******
俺の住むアパートから大地くんのアパートまで地下鉄で2駅ほど。同じ仙台市といえど、大地くんが住んでいるところは静かな住宅街だ。金曜日の夜ということもあり、街はしん、と静まり返っている。俺がアパートの階段を上るかんかん、という音がことさらに響いた。
ズボンのベルトに引っ掛けている皮のキーケース(俺の誕生日に大地くんがくれたものだ)から合鍵を取り出し、慣れた手つきで鍵を開ける。家主は今夜職場の飲み会がある、とのことでまだ帰っていない。大地くんが就職したばかりの頃は、職場の付き合いを重んじる大地くんに拗ねたり怒ったりしたけど、今はちゃんと待てるようになった。俺も大人になったなあ、と思う。
部屋の隅に荷物を置き、大地くんの家に常駐させているスウェットに着替えてちら、と携帯を見ると21時を回っていた。大地くんからのメッセージはまだない。本当は起きて出迎えたいけれど、1週間分の疲労がたまっていたせいか体が重い。少し仮眠をとるつもりでベッドに横になる。ぎし、と鈍いスプリングの音とともに体がベッドに沈んでいく感じが心地良い。布団にくるまると、ふわりと大地くんのにおいがした。
「(そういえば、最後にえっちしたのっていつだっけ…)」
最近はお互いに忙しくて、ご無沙汰だった気がする。
しっとりと汗ばんで、熱を持った肌。
俺の体を這うごつごつした手のひら。
俺を見下ろす、ぎらぎらした顔つきの大地くん。
思い出した途端、急速に体じゅうがかっと熱くなる。
「(やべ、勃った)」
布団のにおいを嗅いだだけで大地くんとのセックスを思い浮かべてしまった。俺は変態か!
大地くんには申し訳ないけれど、一発抜かせてもらおう。布団にくるまったまま片手でパンツごとスウェットのズボンを下ろす。熱を持ったそこに手を伸ばすと、完全とまではいかないが勃起していて、なんだか気恥ずかしくなってきた。
大地くんはどうやって触っていたっけ。最初は緩く扱くだけだった手が、だんだんと大胆さを増してゆく。
「ん…っう、」
あ、気持ちいいわこれ。イイところを刺激しようと腰を動かす。だけど、大地くんのおかげで後ろでの気持ちよさを知ってしまった俺の身体は、もっと、もっと、と快楽を求めて疼く。
「…っふあ、」
後ろに手を伸ばす。人差し指をそっと挿れると、新たな快感を期待して中がひくつき、すんなり受け入れる。でも、いつも大地くんが気持ちよくしてくれるようにできなくてもどかしい。
「んう…だいちくん…っ」
「おー、呼んだか」
「!!!!!!!????????」
がばっと体を起こすと、スーツ姿の大地くんがベッドサイドにもたれかかっていた。
予想もしていなかった返事に、声を失う俺。
えっ、大地くんはまだ帰ってきてないんじゃ…?
自分を慰めていたところを見られた羞恥で俺は、パニック状態になっていた。
***********
(side:澤村)
職場の飲み会を一次会で早々に切り上げ、帰路につく。
「(照島、もう家にいるよな)」
照島には合鍵を渡してあるので外で待たせることにはならないけれども、恋人をいつまでも待たせたままにするのは気が引けた。(過去に俺は、照島に何度も寂しい思いをさせてしまった)
飲み会の会場を出るときには帰宅する旨メッセージを送っているが、いまだに照島からの返事はなし。部屋の明かりはついているので、照島が俺の部屋にいるのは確実だろう。
「ただいまー…」
返事は返ってこない。もしかしたらもう寝ているのかもしれない。
そっとドアを開けると、かすかに照島の「うう・・・」とか「ん・・・」とか言葉にならない声が聞こえてくる。うなされているのだろうか。
足音を立てないように、そっとリビング兼寝室へ入る。
「あっ…ふあ、」
「…!?」
ベッドの上で繰り広げられているあまりに非日常な光景に目を見張る。
寝室で、恋人が自慰に耽っている。
リビングに入った俺の気配に気がつかないほど、照島は行為に夢中になっているようだ。
「んう…だいちくん」
舌足らずな調子で名前を呼ばれてしまったら、たまらない。これが「据え膳」というものなんだろう。恋人の目に余る痴態に、理性が焼き切れてしまいそうだ。
「おー、呼んだか」
「えと…だいちくん、なんで、どうして、」
照島は予想もしていなかった展開に混乱しているようだ。俺も逆の立場だったら間違いなく同じ状態になる。
「メッセージ、何通か送ったけど返事なかったから。ちょっと心配になって早く帰ってきた。…驚かせてすまん」
あわあわと落ち着かない照島を抱きしめると、照島のほうからもぎゅ、と抱き返される。
「んーん。ありがと大地くん。あのね、」
寂しかったからあそんでよ、と強請る恋人の唇を強引に塞いだ。
*********
(side:照島)
一人えっちしていたところを大地くんに見られたときは恥ずかしくて穴があったら埋まってしまいたいと思ったけれど、大地くんのたくましい腕にぎゅっと抱きしめられてしまったらもうどうでもよくなった。
「寂しかったからさ、あそんでよ…大地くん」
俺の精一杯のおねだりを聞いた大地くんの目がぎらりと光る。普段は穏やかな大地くんがケモノになる瞬間が、俺はたまらなく好きだ。
ああこれから俺は、大地くんに食べられてしまうのだ。唇を割り開いて侵入してきた舌が、俺の舌と絡まってぴちゃ、と音を立てる。スプリットタンをしている箇所を舌先で執拗になぞられると、快感がせりあがってくる。男として情けないけれど、キスだけでイってしまいそうだった。
「は…っ」
「とろとろだな」
「まあね…、キスも気持ちいけど、もっと触って」
焦れったくなって脱ごうとすると「俺がやるから」と制止されてしまった。するり、と慣れた手つきでスウェットが脱がされていく。自分だけ何も着ていない状況と、恥ずかしさとこれからの期待がない混ぜになってぞくぞくした。
「触んぞ」
「うん…」
大地くんのごつごつした指先が首筋、鎖骨をなぞって腹筋、腰、とはい回る。大地くんの指から与えられる快感を味わっていると、首筋をじゅう、と強く吸われて「あっ!」と女の子みたいな声を上げてしまった。一瞬大地くんの動きが止まって、ふふ、と息がかかる。顔は見えないけれどきっと笑ってるな。
「っひゃあ、」
大地くんの掌がだんだんと下がって、完全に勃起している俺のものに触れた。なけなしの理性で堪えたけれど、ちょっとの刺激ですぐにでもイってしまいそうだった。
「かたいな…遊。一回いっとくか?」
「ぁ…っ、は、も、むり…っ」
「了解」
大地くんの手の動きが早くなる。快感が波のように打ち寄せてきて、何も考えられない。
「ああっ…、だいちくん、も、イく…!…っやああ…!」
「イっていいぞ、」
耳元で大地くんの声がしたような、気がした。
**********
(side:澤村)
「おーい、遊、ゆう?」
呼びかけても返事がないので一瞬不安がよぎったが、すぐにすうすうと寝息が聞こえてくる。ほっとすると同時に、
「(どうすっかな、コレ…)」
照島の痴態に興奮しきった身体はまだ、熱を持っている。シャワーでも浴びて、なんとか収めよう。照島の身体をお湯で絞ったタオルで清め、よたよたと浴室へ向かった。
数時間後。
「へあっ!?朝!?」
がばり、と飛び起きる照島。
「うー…どうした」
デジタル表示の時計を見ると時刻は午前2時15分。まだまだ明け方には早い。
「俺、あの後から記憶ないんだけど、もしかして、寝落ちしちゃった?」
「まあ、そんなところだな」
「うっ…ごめんなさい」
珍しくしおらしくしている照島が可愛くて、くしゃりと髪をなでてやる。
「謝らなくていいぞ。照島は明日休みだろ?」
「うん。明日はバンドの練習もないし一日オフかな」
「じゃあさ、さっきの埋め合わせ、頼む」
期待してる、と囁くと、耳まで真っ赤にした照島が消え入りそうな声で「うん…がんばる」と呟く。こんな些細な仕草でさえ可愛らしいと思ってしまうのは、惚れた弱みというやつなのかもしれない。
俺が照島をめいっぱい甘やかせる、ふたりきりの週末はまだ始まったばかり。照島の指をそっと自分の指に絡ませ、俺はゆっくりと意識を手��した。
BGM:椎名林檎「カプチーノ」
    平井堅「Strawberry Sex」
         「楽園」
*********
大地くん:24~5歳、地元企業に就職したサラリーマン
      住んでるのは仙台市内の住宅地(八木山あたりをイメージ)。
照島:23~4歳、地元就職(イベント企画会社の音響スタッフ)
   住んでるのは地下鉄の勾当台公園のあたりをイメージ(定禅寺だけに)
っていう活かしきれない設定がございました
そしてこの小説をいつもお世話になってるしーざんに捧げます!
1 note · View note
hiyori26-blog · 10 years
Text
ハロウィン小ネタ集(twitterにあげたもの)
【影菅】
「菅原さん、トリックオアトリート…です!」「(可愛い…!)ふっふーん、こんなこともあろうかと用意してたんだよな〜、はいコレ(チロルチョコを影山に渡す)」「あざす!…でも、」「でも?」「悪戯も…したいッス(ぼそぼそ)」「(きゅん)…っ、いいよ、後でな」「はい!」
⇒影山(攻)の可愛さにきゅんきゅんする菅原さん(受)
 菅原さんからお菓子ももらいたいし、悪戯もしたい我儘な影山かわゆい
【岩及岩】
「岩ちゃん、トリックオアトリート〜!」「は?」「今日はハロウィンだよ?お菓子くれないと悪戯されちゃう日なんだよ?」「ふぅん」「岩ちゃんノッて来て!岩ちゃんお菓子持ってないよね?悪戯してもいいよね?(じりじり)」「及川目が据わってんぞ!ちょっと待…、あっ…!」
⇒及川さんは攻だろうが受だろうが(岩ちゃんに)甘えたりいじったりしてるんだろうな~と思うともえる
【鎌二】
「今日は菓子やらないと悪戯してもいい日らしいぞ二口」「なんか趣旨違くないですか?残念でした、グミ持ってるんであげますね(と言いつつ自分の口に入れる)」「二口ィ!」「ん、(グミを口に含んだままぐい、と先を引き寄せ口付ける)」「⁉︎」「だから、あげるって言ったじゃないスか」
⇒確信犯誘い(襲い)受な二口くんが超好みです。攻×攻みたいな。
「いつか自分が鎌先さんに突っ込んでやる…!」とか思ってる(※受)
 二口くんに振り回されながらも、内心まんざらでもない鎌先さん
【クロ月】「トリックオアトリート(棒)」「何だよつれないなぁ、ほれ」「…何でポッキー咥えてるんですか」「やるって言ったじゃん、来いよ」「ハァ」「(自分で来いって言った手前やめらんないけどなんか恥ずかしい…ツッキー睫毛長ェ」ボキッ「ファッ⁉︎」「ごちそうさまでした!」「逃げた…」
⇒うちの黒尾さんはヘタレです。笑 包容力のあることに定評のある黒尾さん
【大照】
『今日ウチでハロウィンライブやるから仕事終わったら来てよ!』『ん、了解。つか狼男のコスプレ似合いすぎ(笑)』『ピッタリだろ?待ってる』
(ライブ後)「お疲れさん、かっこよかったぞ」「やっぱり?今日は気持ち良く吹けたから楽しかった」「ん。たくさん遊べたか?」「うん!」「今日は何時上がり?」「今日はもう終わり〜。今日はバンドとして来たから働かなくていーの」「じゃあさ、家帰って飲み直そうか」「飲み直すだけでいいの?(ニヤニヤ)」「…」「悪戯してよ、大地くん?」「(ムラッ)それ反則。…帰るぞ遊児」「へいへーい」
⇒サラリーマン大地くんとサックスプレイヤー照島。
 いつか、定禅寺通りジャズフェスに出てる照島くん書きたい
 
 
 
0 notes
hiyori26-blog · 10 years
Text
月島蛍の恋人。(クロ月)
これって、運命の出会いだと思うんだ。
がちゃがちゃ、きぃ、とドアが鳴って、すこしだけじめっとした風が部屋の中に入る。蛍が帰ってきた合図だ。俺は今まで寝そべっていたクイーンサイズのベッドを離れ、お出迎えの準備。心なしか、玄関に向かう足取りは軽い。
「おかえり!」
「ん…ただいま」
蛍は俺を見るなりふわりと微笑む。目がとろんとして、つんとしたお酒のにおいもしたので、今夜は「飲み会」だったらしい。お酒に酔った蛍の仕草が可愛らしいと知ったのは、つい最近のことである。おかえりなさいのハグをして、お酒で火照った蛍の頬にキスをしてやると、蛍も仕返しとばかりに頬ずりをしてくる。蛍は「大の男にかわいいはないでしょ」と拗ねるけど、俺といちゃいちゃしているときの蛍は本当にかわいいのだ。
「風呂は入らないのか?」
「んー…今日はもう眠いからシャワーでいいや」
ベッドで待っててね、と頭を撫でられ、蛍はバスルームに消えていった。かわいい夜のお誘いにどきどきしながら、俺は寝室で蛍を待つことにした。夜には強いほうだが、ふかふかのベッドに横になっていると、どろりとした眠気が俺を包む。視界が、だんだんとぼやけていく。
********
夢を見ていた。
蛍と、はじめて会った時の夜の夢だ。
前の恋人に追い出されてぼろぼろになっていた俺は、あてもなく町をさまよっていた。空腹と孤独感で、どうにかなってしまいそうだった。
ぽつ、ぽつ。ざああああああ。
真夏は気まぐれな天気だ。さっきまではきれいな満月が空にぽっかりと浮かんでいたと思えば、急に雨が降り出しついには雷まで鳴り出す始末だ。どこかで雨宿りして雨が止むのを待とう。俺は近くのアパートの軒先を借りることにする。びしょ濡れになったせいで、だんだんと体温が奪われていくことが分かる。
「(もう、ここで死んでもいいかもな)」
「キミ…大丈夫!?」
なけなしの力を振り絞って声の主のほうを向く。蜂蜜色の髪と瞳の青年が、心配そうにこちらを見つめている。
「見れば分かるだろ。全然大丈夫じゃねえよ」
青年は俺がついた悪態をさらりと受け流す。
「待って、すぐに温かくするから」
青年は泥だらけになった俺を抱きかかえる。俺のせいで彼が来ていたTシャツは泥だらけだ。青年はそれでもかまわないという様子で、泥だらけの俺を風呂場に連れて行き、温かいシャワーを浴びせる。ふかふかのタオルにくるまれたころには、俺の体はすっかり温かさを取り戻していた。
「はい、どうぞ。口に合うといいんだけど」
と、青年が俺の前に差し出したのは、ほかほか湯気が立ったミルク。熱いのが苦手なおれは、おっかなびっくり口をつける。
「あのさ、…ありがとよ」
感謝の意をこめて青年を見つめると、青年はくすぐったそうな笑みを浮かべて俺の自慢の黒髪をなぜた。
「僕は月島蛍。蛍でいいよ」
この日がきっかけとなり、俺と蛍の半同棲生活がスタートしたのだった。
********
ちちち…と鳥の鳴く声が窓越しに聞こえてくる。いつの間に朝になっていたらしい。俺の横で寝ている蛍の柔らかな髪がふわ、と当たってくすぐったい。
まだ起きる気配のない蛍を起こさないようにそっとベッドから降りて軽く伸���をする。秋の朝のひんやりした空気は気持ちいい。
カレンダーを確認すると今日は土曜日。蛍は土日休みらしいから、今日と明日は蛍と存分にいちゃいちゃできる。
…はずだった。
ピンポーン
チャイムが鳴る。休日のこの時間帯に蛍の家に来る奴は、幼馴染の山口か(蛍のことを「ツッキー!」と呼ぶそばかす君だ)あいつしかいない。
俺の最大のライバル、黒尾鉄朗。
ドアががちゃがちゃ、と音を立てる。あいつめ、合鍵で家に入る気か!俺はまだ持たせてもらってないのに!
「おじゃましま~す」
挨拶もそこそこに黒尾の足取りは寝室に一直線だ。図々しいやつ。
精一杯黒尾のことを睨み付けてやると「おー。お前もいたんだ」と軽く流されてしまった。
「んう…」
「お、起きたな。おはよ」
「おはようございます…」
黒尾はベッドサイドに腰掛け、寝起きで無防備な蛍の髪をなぜている。(蛍はとても朝が弱いのだ)
「あれ黒尾さん、仕事は?」
「今日は得意先が急用ができただかで休みになったから、出張先からこのままこっち来たわ」
「ふーん…」
「何だよつれないなぁ」
黒尾は蛍の髪をくるくると弄りながら、と蛍の様子をうかがっている。こいつは蛍の照れ屋なところとか、それ以上に不器用なところを見透かしたうえで、蛍をからかうのだ。別に、とふいとそらした蛍の顔が、心なしか赤い。悔しいけれど、蛍にこんな可愛い表情をさせるのは、黒尾鉄朗その人しかいない。
「それより、ほとんど寝ないでこっちに来たんでしょう。寝たらどうです?すごいクマですよ」
「うー…でもせっかく蛍んち来たし、いちゃいちゃしたい…」
「僕は逃げませんから、まずはゆっくり休んでください。黒尾さんが起きたら、その…黒尾さんが前観たいって言ってた映画観に行きましょう。バイト先で、前売り券もらったので」
「りょー、かい。蛍に甘えてちょっと寝るわ」
「はいはい」
「けい~、おやすみなさいのキスは?」
「今日だけですからね」
甘い雰囲気になりだした二人の間に俺が入る余地はなくて、俺はそっと寝室を出る。リビングに向かうと、日は少しずつ高く昇り始めていて、今日もすっきりとした秋晴れになりそうだ。
黒尾が起き出すまで、蛍は独占させてもらうんだからな。ちいさく俺はつぶやいて、自慢の黒髪を手入れしながら、恋人を待つことにした。
***********
わかりにくいかと思いますが、月島宅に居候中の猫視点です。
名前はおいおい。
トウテムポール様『東京心中』と、三浦しをん様『きみはポラリス』の『春太の毎日』にヒントを得て書き上げたものです。
ツッキー周辺のひとたち+αでシリーズ化したい。
BGM:椎名林檎「闇に降る雨」
0 notes
hiyori26-blog · 10 years
Text
カップリング考(memo)
影菅
1)馴れ初め
・現役時代はお互いのことを(同ポジションとして)意識しているものの、恋心とは思っていない。初めて恋愛対象として意識しはじめるのは影山で、菅原さんが卒業するとき。「ああ、菅原さんがいなくなるんだ、寂しいな…」って思うところから始まって、自分中でいかに菅原さんの存在がいかに大きくなっていたか気づく。
・菅原さん、影山のことはほっとけない、可愛い後輩というところからスタート。自分が卒業するとき、「ああもう、影山とバレーできないんだな、寂しいな」と思っていた。このころから、影山の自分に対する態度の変化にうすうす気づくようになる。卒業後は地元の大学に自宅から通っていたため、ちょくちょく高校には顔を出していた。
・影山が選手として、人間として成長していくのを目の当りにしてドキドキする菅原さん。ぽろっと「お前かっこよくなったな」ってからかい口調で影山に言ったら、照れて赤くなった顔で「かっこいいかどうかは分からないっすけど、菅原さんのおかげです」って予想外の答えが返ってきてきゅんときてしまう。
このとき、菅原さんは影山のよき相談役というポジション。口実を見つけては菅原さんと会って、嬉しいと思う反面、好きだという思いを伝えられなくて悶々する日々が続く。
・影山から東京に進学すると告げられたときから、菅原さんも影山のことを意識しはじめる。このとき影山高校3年生、菅原さん大学2年生。
・菅原さんは成人式の飲み会で(慣れない)お酒にぐでんぐでんになった菅原さんに呼び出され、仙台の飲み屋から菅原さんのアパートまで迎えに行く影山。酔ってとろんとろんになった菅原さんに性的魅力を感じてしまう。酔っぱらった菅原さんにキスをせがまれ、勢いのままキスしてしまう。したあと、「今まで抑えてたけど、俺、やっぱり、菅原さんのこと好きだ…!」って明確に恋愛感情をもつようにになる。
・(実は酔った時の記憶が全部ある菅原さん)(あれは酔ってたから、と話題に出さないように努めた)
・でもまだ自分の中で整理がついていないのと、恋心なのかはっきり自覚していないので菅原さんに想いを伝えないまま、東京の大学に進学先が決まり、影山、高校を卒業。
・大学進学後は、大学のバレーボール部に所属して、練習に勉強にと多忙を極める。盆正月あたりには帰省して、烏野OB会に出てたりした。(菅原さんとの接点)
・菅原さん大学3年、影山大学1年。秋ごろから菅原さんが就職活動の関係でちょくちょく東京に来ることが多くなり、都合があえばごはんを食べに行ったりしていた。だんだん、影山のアパートに泊まりにいく回数も増えていった。(影山のアパートに前泊して、次の日面接に行く、みたいな)
・いろいろなことを話していくうちに、お互いに「もっと(影山と)菅原さんと一緒にいたい」と思うようになる。
・菅原さんの就職が決まってから、影山、意を決して告白。
「菅原さん、ずっと…、ずっと好きでした。菅原さんが俺んち来てくれて、それだけで十分でした。でも、もう我慢できません」
「なあ影山、それって過去形?」
「え?それってどういう、」
「俺も、影山のこと好きだよ。影山と同じ意味で」
抑えていた感情がないまぜになって溢れだしていく。頬に温かいものが伝い、ぽたり、ぽたりと落ちていった。
「すがわらさん、すきです、すきです・・・!」
「うん、俺も。これからは恋人として、よろしくな」
「はぃぃ…!!!」
「あーもう鼻水かめ!男前が台無しだべ」
・東京に就職を決めた菅原さんと半同棲みたいになって、影山も社会人になったときに同居する流れで。影山は強豪実業団チームを擁する企業に就職。
2)イメージ・小ネタ
・とにかくくっつくまでに時間がかかる。
・べたべたしすぎず、穏やか。二人で一緒にゆっくり、歩いていく。
・影山が故障したときに、試合出場を止める菅原さん。「なんでですか!!この試合は将来を決める大事な試合なんです!!」と激高する影山を抱きしめて「影山…影山の夢はもう、俺たちの夢でもあるんだ。だから…ここで無理しないでくれ」って優しく諭す菅原さん
・プロ入りしてから、影山に関する記事のスクラップ手帳を作る菅原さん
・影山が出る試合のテレビ中継は、リアルタイムで見る
3)夜
・初キスは早かったくせに初セックスは付き合ってからしばらくした時点で
・お互いに淡泊
・でも遠征帰りとか、会えない日が続いたあとはお互いに燃え上がる
・アブノーマルプレイは好まない
4)イメージソング
スキマスイッチ「ふれて未来を」
チャットモンチー「シャングリラ」
0 notes
hiyori26-blog · 10 years
Text
ふれる(木赤)
※『満員電車』の続きです
最近どうも木兎さんの様子がおかしい。
練習中もどことなくよそよそしいし(いつもならくだらない理由をつけてちょっかいをかけてくる癖に)何より肩を組んだり抱き着いたり…などのスキンシップが、ぱったりとなくなったのだ。
調子が悪いのか?と勘繰ったが、練習を見ている限りそれはなさそうだ。
「なー赤葦、木兎となんかあったのか?」
休憩中、ひとり水分補給していると、ケンカでもしたか?と心配そうに尋ねてきたのは木葉さんだ。俺たちのぎこちない感じは、周りにも伝わっているようだ。
「…いえ。心当たりがなくて」
「そうかー。まあ木兎のことだからぐずぐず引きずったりしないよ。もう少し時間が経ったら赤葦からモーションかけてみたら?案外普段どおりかもしれないしさ」
「そうですね。いつまでもこのままなのもすっきりしないですし」
あんまり思いつめるなよ~?と言い残し、木葉さんはコートに戻っていった。先輩のさり気ない気遣いがありがたかった。
*****
停滞した状況を打破するチャンスは案外早く訪れた。練習が終わって俺は部室で部誌を雑務をこなしていて、木兎さんはひとり体育館に残ってサーブ練習をしていた。ほかの部員は皆帰ってしまったらしく、部室はしん、と静まりかえっている。
部室の静けさを破ったのは、木兎さんの足音だった。
「おー赤葦、お疲れさん」
「おつかれさまです」
ふぃー、今日も疲れたぁ、とごちながら練習着をぽいぽいと脱ぎ捨て、制服に着替える木兎さん。木兎さんここ自分ちじゃないんですから、と何度文句を言ったかわからない。(治る気配は一向になかったが)俺に向けられるよそよそしさ以外は、いつもの木兎さんに見える。
「…あの」
「ん?」
「俺、何かしましたか?」
「えっいや何もないぞ!赤葦は悪くないんだ!」
木兎さんはあからさまに慌てた様子でまくし立てている。怪しい。
「…怒ったりしませんから、話してください。木兎さんによそよそしくされ���と…なんか調子狂うんです」
「あかーし…俺、」
あー、うー、とうめいて神妙な顔をする木兎さんを見守りながら、次の言葉を待つ。
「俺、変態かもしれない」
「は?」
予想の斜め上をいった木兎さんの発言に力が抜けた。
「だーかーらー!俺は変態かもしんないのー!!」
「木兎さん、声大きいですって」
「う・・・すまん」
完全にしょぼくれモードになった木兎さんはヤケになったのか、ぼそぼそと話し始めた。
「あのさ、この前電車で一緒に帰ったじゃん?」
「はい」
「そのときにさ、事故だったけど俺、赤葦の…尻に触っちゃったわけよ」
知ってます、とは言わないでおく。あの時、尻に伸びる掌の感触に、もしかしたら痴漢かも、とおそるおそる横目で見たら木兎さんの掌で、内心ほっとしたことを覚えている。
「で、赤葦が尻触られてるのに気付いて耳真っ赤にしててさ。すごいときめいちゃったの。コーフンしちゃったの、男同士なのに。だから、あの後部活で会うたびにあの時のこと思い出してどうしていいかわからなくなって、俺、赤葦のこと避けてた。…赤葦はなんも悪くない。ごめん」
木兎さんのカミングアウトよりも、嫌われていたわけではなかったことに深く安堵している自分に驚いた。なんと返答しようか迷っていると、
「あかーし…」
一瞬の沈黙にも耐えられないのか、弱弱しく名前を呼ぶ木兎さんは目を伏せ縮こまっている。叱られるのを待つ子どものように。
「木兎さん、木兎さんに尻を触られたくらいで軽蔑したり、嫌ったりしませんよ。むしろ…木兎さんでよかった。痴漢だったらどうしようって、一瞬不安になったから」
あやすように髪を撫でると、俯いていた木兎さんがゆっくり顔を上げる。琥珀色の瞳がまっすぐ俺を捉えて離さない。
「あと…あの時から気づいたことがあるんです」
「ん?」
「俺も、木兎さんに触られて興奮しました。なので…、俺もおあいこです」
言う予定がなかった言葉が、つるりと喉をついて出る。
「…っ、あかあし…!」
「わっ…!」
身体のバランスを崩したのは一瞬のことで、気づいたときには木兎さんに抱きしめられていた。木兎さんの心臓がどくどくどく、と強く脈打っているのがわかる。
「赤葦、そんなこと言われたら俺、調子に乗っちゃうよ」
「いいですよ」
「俺は赤葦に触りたい。こうやって抱きしめたいし、キスもしたい。それ以上のことも…したいと思ってる」
「はい」
「それでもいいの?赤葦は俺の傍にいてくれる?」
離すつもりなんかないくせに。
「いますよ。だから、」
もっと触ってください。と言い終わる前にふたりの唇が一瞬だけ触れて離れる。
「赤葦、すき」
消え入りそうな声で囁く木兎さんの唇を、こんどは俺が塞ぐ。俺もです、と返事をすると、木兎さんはくしゃりと笑った。
*******
なんとかひとつの形に収めることができました!
うちの木兎さんは赤葦さんに頭が上がりません(笑)亭主関白な木赤も好きですが^^
0 notes