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hoshi4x115-blog · 8 years ago
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雨といいわけ(イタチとサスケ)
サスケの足取りはいつもより重かった。 今日の任務は国境で好き勝手していた盗賊の捕獲で、スリーマンセルの作戦は危なげなく完遂された。一つ反省があるとすれば、地面に転がった敵に足首を触れられたことか。しかし僅かに触れた指先は瞬時に蹴落とし地に押し付け、直後には確実に気絶させた。触れられた箇所には外傷も痛みもない。サスケは怪我なく帰還した。 だというのに妙に疲れている。過度に気を張っていたつもりは無い。理由のわからない疲労が余計にサスケの気持ちを沈ませる。 不幸は重なると誰が言ったのだったか。夜も更け人通りの少ない帰路、急な大雨に見舞われた。傘を持っていないサスケは服を着たまま行水でもしたのかという有り様だった。さっさと風呂に入って寝たい。本当ならば忍具の手入れも済ませておくところだが、集中できる気がしない。そちらは一眠りしてから取りかかることにした。 極力音を立てぬよう玄関へ入ると、どうやら家の中には誰もいないようだった。暗部に所属する兄や警務部隊長を務める父とサスケの在宅のタイミングが合わないのはいつものことだが、母までいないとなると珍しい。父に随伴したのだろうか。やたらと疲れた顔を見せて余計な心配をかけずに済んだのは幸いだ。 よく気のきく母はこの雨を予測していたらしく、上がり框の隅にはタオルが数枚置いてあった。水滴が落ちない程度まで全身を拭き、自分のほか無人であるならいいかと着替えの準備は後にして、サスケは浴室へ直行した。土ぼこりと汗に加えて、濡れて重くなった髪は貼り付き肌はべとついている。家の中でも聞こえてくる雨音が憂鬱を呼んでくるようだった。 濡れた衣服を洗濯機に放り込むとべしゃりと重い音がした。身体を洗いながら任務の一連の記憶から疲労感の原因を探るが、思考がまとまらない。眠気を堪えながら頭からシャワーを浴びて、先ほどから湯を溜めておいた浴槽へ身を沈めた。 そうして数分ほどだろうか、感覚がふわふわと身体から離れ始めた。湯気の中へ意識が遠のいていく。かすかにマズイと思いつつ、サスケの視界は抗いようもなくゆっくりと闇に沈んでいった。 「目が覚めたか、サスケ」 意識が浮上したときには、ソファの上でなぜか半裸のイタチに後ろから抱えられていた。 「風呂の中で寝るとはな」 危ないぞ、と笑うイタチの息が耳元をくすぐる。 「……いつ帰って来たんだ、兄さん」 「1時間くらい前だな。この大雨だ、濡れ鼠になって帰って来たからすぐ風呂に入ろうと思ったら風呂が使われてる。まあ一緒に入ればいいかと戸を開けたらお前が湯船で寝ていたというわけだ」 あの雨はどうやらまだまだ続くらしい。 「……それで風呂は?」 「入ったさ。お前を少し寄せてな」 「起こせよ……この歳になって兄貴と一緒に風呂に入ったあげく髪を乾かしてもらうやつがあるか」 寝てしまった落ち度はサスケにある。しかし叩くなり揺するなりして起こせばいい話だ。寝てるヤツの世話をするより労力が少ないに決まっている。 「ん?そうだな……」 おもむろに身体を半回転させられて、心なしか楽しそうなイタチと目があう。 「世界で唯一オレたちだけでもいいんじゃないか」 イタチの瞳。サスケの瞳。もともとはお互い目の前の人間の眼孔に嵌まっていた瞳。少しの間、時が止まる。 「そういえば」 梅雨入り前のじっとりした空気を再び揺らしたのはやはりイタチだった。 「お前の服が乾いていなかったから、悪いがオレの服を着せた」 「……ああ」 イタチが上に何も着ていないことも気になっていたが、もう1つの違和感はそれだ。着ている服が妙に大きい……悔しいがそう、5つ年上のイタチはサスケより身長が高いし、体格もしっかりしている。その結果、イタチの半袖の服はサスケには微妙な丈になった。 「それでなんでアンタは……あ」 半裸の方の理由をサスケが問おうと口を開くが、タオルで耳を包まれて阻まれた。 「寝惚けたお前が何と言っていたか教えてやろうか」 サスケは小さく首を傾げた。そのいたずらっぽい響きにあまり良い予感はしない。しかし意識があったことさえ覚えがない。仕方なくサスケは続く兄の言葉を待った。 「兄さんのにおいがする、だ」 予感的中である。なんだその恥ずかしい台詞は。 「……!!言ってねえ、そんなことっ」 「いや、言ってたぞ」 とんでもない失態だ。眠気とはかくも恐ろしいものか。いやそもそも兄さんが勝手に入ってくるからだ、あまつさえ着替えさせるからだ! 恨みがましい視線を受けてもイタチはどこ吹く風だ。ひょいと顔が離すと、サスケを抱え上げて横にずらした。サスケの文句が口から出るより前に「座っていろ」と言ってくる。憮然とするサスケに、「乾かすぞ」ともう一声降ってきた。ドライヤーを持ったイタチがソファの後ろに立っていた。 くつくつと漏れる可笑しげな笑い声がスイッチを入れたドライヤーの唸り声に紛れていく。質問をし損ねた。渋い顔のサスケは、温風に吹かれながら髪に差し込まれた手のひらの感触を追う。すらりとした指が時折地肌を撫でた。整えられた爪はサスケの頭皮を掻くことはなく、触れるのは指の腹だ。 イタチはこうして度々、そっとサスケを温める。やさしく包み込んで熱を分け与える。 サスケがついうとうととしていると、ふいに風の音が止んだ。イタチがドライヤーを置き、乾いた髪を手櫛で整えにかかる。乾いた途端につんつんと跳ねるサスケの髪は見た目よりも柔らかい。イタチが丁寧に乾かしたこともあって指通りも良い。前髪を整える兄の手にされるがままになっていたサスケは、その動きがどうやら手櫛でなくなったことに気が付いて少し首を回した。 「おい」 反射的に出た文句は、しかし大した棘を持たなかった。イタチも特にいらえをせず、跳ねっ返りを面白がるように、柔らかな手つきでサスケの癖毛を撫でつける。生まれたときから癖が強い髪質の弟と違って、兄の髪は母親譲りのストレートだ。自分にないものが面白いのか、イタチはよくサスケの後ろ髪に触れる。 乾かしたついでとばかりにサスケの頭をひとしきり撫でたイタチは、再びサスケの隣へ腰を下ろした。 「さて……足を出せ、サスケ」 「足?」 想定外の要求にサスケは間の抜けた声で返した。それより早く自分の髪も乾かしたらどうなのだと、目の前の頭を視線を向ける。イタチの髪はまだ湿っている。イタチはサスケが言わんとすることは察しているようだった。しかし話を中断する気はないらしい。 「やはり気付いていないか。お前の右足首を中心にチャクラの流れが少しおかしい」 「……!」 サスケはその言葉にハッとする。 「……心当たりはあるようだな」 足首。唯一接触のあった部分だ。恐らくあの瞬間、敵の忍に何かしらの術を掛けられたのだろう。 今観察しても足首に何の変化も見られない……が、通常は視認できなくても、サスケがもっと注意していれば気付けるはずだった。チャクラを色で見分ける写輪眼ならば。警戒を怠った――シンプルな理由であり、忍にとってあってはならない失態だった。何より、己の未熟さを兄の指摘で知らしめられたことが悔しくて情けない。 顔を歪めて俯くサスケにイタチは何も言わなかった。右足のかかとを掴んで持ち上げ確認している。 「恐らく……対象の体内のチャクラが少しずつ漏れ出るような抜け道を作っている」 紅に三つ巴の写輪眼が4つ。どう処理すべきかサスケが考えている間、イタチは再び無言になった。少しの間が空く。 サスケは静かに息を吸い込むと、脚全体のチャクラの流れを意識的に整えるため気を込めた。ぐるぐると巡るチャクラはやがて足首にぽつんと空いていた細い抜け道を吸収するようにして正常なルートを通り始める。 「……塞がった」 「気が付きにくい代わりに強力な作用ではなかったようだな」 「触れられたのも一瞬だったからな……」 僅かに残った力で、手を伸ばしてぎりぎり触れたのだろう。この術の本来の効力がどの程度であるのかは測れない。 「ならごく短時間で『穴』を開けたということか……。なるほどな、厄介なことだ。お前が接触したというその忍は既に拘束されてはいるだろうが、早めに報告をした方が良さそうだな」 「ああ」 サスケの心は悔恨に沈んだままだったが、内心がどうであろうと仕事をすべき時には迅速に行動する。火影室へ報告の訂正を急ぎ伝えるために腰を上げかけた。 「オレが影分身を出す。サスケ、お前はもうチャクラを消耗するな」 「なっ」 しかしサスケが立ち上がるより早くイタチに手を取られた。一瞬浮いた尻がぼすんとソファに戻される。イタチは素早く印を結んで影分身を出現させた。 「烏をやってもよかったが……口頭で直接伝えた方が確実だ、頼む」 「ああ、了解した」 短い会話を済ますと、サスケが止める隙もなく影分身が部屋を出ていった。 「風呂で寝ていたのもチャクラが流れ出て疲労していたからだろう。どこで倒れるかわからない」 「…………もう寝る。尻拭いさせて悪かった」 サスケは喉元まで出た文句を無理矢理飲み込んだ。イタチの言うことはもっともだった。そのまま立ち上がって外ではなく2階の自室に行こうとする。が。 「サスケ」 またもやイタチの手によってソファへ戻された。 「今度は何だ!」 「オレが2階へ連れていくからそこで待っていろ」 「そこまで弱ってない」 「階段で転んだらどうする」 「アンタはどこまで……!!」 強引に立ち上がりかけたサスケの腕はイタチにしっかりと掴まれたままだった。やり場をなくした勢いで姿勢が崩れ、イタチと至近距離で顔を突き合わせる形になる。漆黒へ戻った瞳は揺れるサスケの瞳をまっすぐに捉えていた。 「サスケ……」 兄は強く、優しく、温かい。サスケが��れを感じるたび、兄との5つの年齢だけではない差が突き付けられる。競争意識と敬愛の間で器用に折り合いを付けられないサスケは、イタチが差し出してくれる手をいつの日からか素直に取れなくなった。いつまでも子どもではいたくないと思うのに、これでは意地を張る子どもそのものだ。自分自身への苛立ちを兄に向けてしまいそうだった。彼はそれもきっと受け止めてくれるのだろう。しかしサスケは嫌だった。 「オレはお前の兄なんだ。心配させてくれ、サスケ」 つい先ほどサスケの頭を気ままに撫でていた指が、再び耳のあたりから差し込まれる。イタチの手つきはやはりやわらかく、癖のある髪を少しずつ連れていきながらゆっくり移動していく。後ろへ回った指の隙間からこぼれた髪がサスケの耳と頬を撫でた。 昔、イタチに付いていったイノシシ狩りの記憶がふとよみがえる。矢をまともに当てることができなかったサスケに、イタチは説教をするでもなく、ただ「修業だな」と笑いかけた。今日もイタチはサスケに小言の類いは言わない。本当に助言が必要なときにしか語らない人だった。 こんなときくらいな、と続けられる。手を貸されることを嫌がって突っぱねてきたサスケに、イタチは甘えてもいい口実をそれとなく作ってくれるのだ。そしてサスケはイタチがそうしたときに断りきれた試しがなかった。 小さく息を吐いたサスケが自分の膝へ視線を落とすと、腕と髪に触れていたイタチの手が離れていった。サスケももう立ち上がろうとはしなかった。 「お前を濡らしてもいけないからな。すぐに乾かす」 「別に体調が悪いわけじゃない。急がなくても――」 サスケは言いかけてふと口を閉ざす。サスケには明日の昼まで予定がなかったが、イタチはこの後また出掛けていくのだろうか。暗部であれば深夜や早朝からの任務はそれほど珍しくないはずだ。 「オレは明日の夜の任務まで休みだ」 中途半端に切れた言葉の続きを察したのか、ドライヤーのコードを持ったイタチが先に答えた。それに「ああ」とか「おう」のような曖昧な返事をする。イタチの手からドライヤーを取ろうとすると、イタチが首をひねる。 「何だサスケ」 「オレがやる」 「……オレの髪をか?」 「悪いか」 「いいや、頼む」と笑ったイタチは、ドライヤーの権利をサスケに明け渡した。 長い髪を扱うのに慣れていないサスケの手つきはややぎこちない。外側を軽く持ち上げて内側の水気を飛ばす作業を、丁寧に繰り返す。そうしてあらかた乾いてから手櫛で髪の流れを整えた。そういえば幼い頃にも、髪を乾かしてもらったお返しをしたことがあった。今もイタチはサスケのやりたいようにさせている。もしかしたら同じことを思い出しているのかもしれない。 無言で髪を乾かし終えたサスケが視線をさまよわせているとイタチが「どうした」と問うた。櫛はどこだと答えると「持ってくる」と立ち上がってソファをいったん離れ、櫛を持って戻ってきた。ついでにサスケの手から取ったドライヤーもしまったらしい。 木つげ櫛はイタチの黒髪によく似合うと思う。丁寧に乾かされた髪はつやつやとした見た目通りに櫛の通りもよく、櫛のからさらりと背中に落ちる。この湿気で多少うねりはするだろうか。いや、結んでいるから気にならないか。 両手で一束にまとめた髪をするんと後ろへ流す。慣れない髪のケアはそこで終了だったが、サスケの頭に浮かぶものがあった。櫛で整えたばかりの髪に指を差し込む。首から背中へ流れるラインをなぞるように、一方向へゆっくりと、繰り返し移動した。それは十にも満たない数で、最後に指がほんの少し耳に触れて髪を離れた。 「昔からさらさらだな、兄さんの髪は」 イタチの隣へ戻ったサスケはぽつりと口を開く。 「手触りがいい……兄さんがときどき髪を触る理由がわかるかと思ったが、オレの髪はアンタと違いすぎる」 それで触ってたのかとイタチが笑う。サスケから手を伸ばすことは珍しい。何だどうしたと思っていたのだろう。 「サスケの髪は強気で触り心地がいい」 「何だそれ。髪に強気も弱気もないだろ」 「持ち主に似て強気だ」 それがいいのか。サスケは余計にイタチの意図を見失った。 「さて、サスケ。寝ようか」 「待て。その前に一つアンタに聞きたいことがある」 「ん?」 「なんで着ないんだ。上を」 サスケは目覚めたときから気になっていたことをようやく尋ねた。自分は寝ている間に着替えさせられていたというのにこの兄は今の今まで半裸のままだ。 「ちゃんと気付いたか」 「当たり前だ!」 気付かないわけがない。妙な小芝居をするな。 「ないからだ」 「ない?」 「服がない。ついでに言うとオレのベッドのシーツもない」 さっきサスケの服もないと言っていたからつまり、ほぼ全滅だ。予想だにしなかった事態にサスケは動けない。 「母さんは雨を予想していたんじゃないのか……?タオルは……」 「空が怪しくなってきたところで洗濯物を心配した母さんが一度家に帰ったらしいが……取り込む前にこれだ。タオルは置いておいてくれたようだが」 雨音はいまも止む気配がない。 「集落の入り口でごめんなさい、たぶん服がないわ……という伝言を受け取った」 これからは洗濯物を迂闊に外に出せないな、とイタチが苦笑する。笑っている場合ではないが笑うしかない事態だ。 「じゃあこれは兄さんが着ればいいだろう」 サスケが着ている服はイタチが替えとして任務に持っていったものなのだろう。今日はあれもこれも世話を焼かれっぱなしのサスケの眉間にシワが寄る。 「サスケ、お前は今万全の状態じゃないだろう。身体を冷やさない方がいい。オレももう寝るから気にするな」 また保護されていることを良くは思わなかったが、イタチにも譲るつもりはなさそうだった。有無を言わせぬ気迫さえ感じる。実際にくたくたのサスケが言い合うには、今日の兄はあまりに強い。理由はわからないが。 「おんぶでいいか」 「………………ああ、もういい、それで」 疲れきった顔で普段なら是としないイタチの提案に頷く。家の中だ、気にする目はひとつもない。嫌だと言ったら今度は横抱きにされそうだ。しゃがんで背を向けたイタチに体重を預ける。幼い頃からサスケの世話を焼いていた兄には今でも手慣れたものらしい。首に腕を回すと足を抱えられ、わずかに視界が上昇した。 「はは、重くなったな」 「いつの話をしてるんだ……」 イタチの肩口に頭を預けたサスケは、いつかの帰り道での兄の背中を思い出し、面映ゆさで俯いた。顔をくすぐる髪の毛はあの頃より少しだけ長い。 「そういや兄さんはどこで寝るんだ」 母の手が間に合わず雨でずぶ濡れになったシーツは、当然まだまだ乾く気配がなかった。 「サスケと寝るから問題ない」 「……まあそうなるよな」 ベッドが狭くなると小さく文句を言うと許せサスケ、雨のせいだと笑われた。この雨に閉ざされた夜なら、裸のイタチが冷えるからと言える今夜なら、ぴったりと温度を分け合って寝る理由がある。
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hoshi4x115-blog · 8 years ago
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蛇スケの衣装が一番好き
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hoshi4x115-blog · 8 years ago
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香る弟
※RTN 「サスケもいたのか」 ふと尋ねられる。質問ではあったが確信を持ったような言い方に、メンマはややいぶかしげな顔をする。 久しぶりに里へ帰還したらしいイタチとは、商店街でばったり会った。イタチは里をまたいであちこちで仕事をする傭兵集団「暁」に所属する身のため、木ノ葉の里で姿を見かけることは滅多にない。メンマにとっては友人の兄、程度の認識で大した会話をした記憶もないが、イタチは弟の友人の顔、もしかしたら金髪をかもしれないが、を覚えていたらしい。正面から歩いてきたメンマ���声をかけてきたのがつい先ほどだ。 「ああ。さっきまで任務だったからな」 「そうか。それは引き止めて悪かった」 「いや、別に大きな任務でもなかった。イタチこそ疲れてるんだろう」 「多少はな」 とは言いながら、イタチに特に疲れた様子はないように見える。忍びであること以前にあまり表に出さない性分なのはメンマも同様ではあるのだが、イタチのそれはなかなかの鉄壁だ。 しかし、イタチはナルトが任務帰りということはわかっていなかったらしい。メンマは少し前の疑問に立ち戻る。 「任務だからサスケもいたと思ったんじゃないのか?」 ああそれは、とイタチが相変わらず変化の乏しい表情で答える。 「サスケの匂いがした」 「……匂い?……ああ……」 それは忍犬や犬塚一族が感知するニオイではなく、サスケがいつもふわりとまとわせている香りだということにメンマは思い至った。恐らく花か何かの香水。いい匂いと言えばいい匂いではあるが、忍びが任務先で香りをふりまくのはどうかと思っている。 「アイツが帰っているなら少し急ぐか。ではな」 火影室へ向かうのだろう、遠ざかるイタチの後姿をわずか見送り自分もまた歩き出したメンマは、弟の匂いがした、とかいうイタチの発言もどうかと思っている。
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hoshi4x115-blog · 8 years ago
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climax!拘束衣
「絶対、お前に全部背負わせたりしねェ」 サスケの肩を握る手がぐっと力む。 「そんで、俺はもう絶対一人で背負ったりしねェ!お前の兄ちゃんに教えてもらったんだってばよ」 ああ、わかっている。でもな。 「そういうことは、目を見て言え」 この封印が外れたら、いずれ。
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hoshi4x115-blog · 8 years ago
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誇り高きうちは一族に変わりはないのだから
うちは。うちはサスケ。 友を傷つけ、マダラと共に里を、忍世界をさえ脅かした罪人。 暁のデイダラと同胞殺しのS級犯罪者うちはイタチを討ち、ナルトと共にカグヤを倒し、無限月読を解除した英雄。 うちはサスケはいつも天秤で計られる。 高名な一族の名と共に。
「……サスケ」 ナルトのすぐ横を歩いていたサスケは、足早に立ち去ろうとするでもなく、急停止するでもなく、ナルトの声にゆっくりと歩みを止めた。 「オレは誇り高きうちは一族……兄さんがオレに遺してくれたものだ」 そう、イタチは世を去ってなお、うちはを、里を、一族の中で独り残された弟を想い、己の真実が知られることを止めた。 この世界では今でも、かつての木ノ葉警務部隊であり、名門としてのうちはだけが名を残している。 「そして……里の為に在ることもまた、うちはの誇りだということもな」 やさしい風と共に振り向いたサスケの顔はひどく穏やかで、とても綺麗だと思った。
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hoshi4x115-blog · 8 years ago
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緑の伏見くんと流
「今、猿比古が目の前で爆発してもおれは困りません。作戦、継続です」 伏見がいなくなっても、という意味だったのだろうがなぜ爆発させる必要があったのか。この王は引きこもって姿を見せないスタイルに反してわりと派手好きだ。 「……はん、でしょうね」 特に望む答えがあった会話でもない。伏見は手持ちぶさたにくるくるとタンマツを回しながら、あまり気のない返事をした。 「でも」 続きを予想しなかった伏見がちらりと目線をやる。タンマツは軽やかに舞っている。 「おれの陣営はひとつ駒をなくし、ゲームは少しつまらなくなります。残念です。おれはそんなことは望んでいません。なら猿比古はおれにとって必要でしょう。回答です」 静かに光る瞳がゆっくりと動き、伏見を捉えた。 「おれは猿比古に、ここにいてほしいと思います」 悪くない答えだったが、伏見は口を開かなかった。
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hoshi4x115-blog · 8 years ago
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イタチとサスケ 幼少
置いていかないで。 でも、自分の力で歩きたい。 なんて我儘だろう。それでもイタチは、そっとサスケの手を握り、5才ぶん小さい歩幅に合わせて、ゆったり隣を歩いてくれた。 「サスケ」 イタチはサスケを引っ張ることはせず、ふたり並んだちょうど真ん中で、繋いだ手が小さく揺れる。 「空を見ながらゆっくり帰ろう」
ほんのり赤のにじんだ空。夕飯まではまだ、少し���け時間があった。
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