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2018-3月号
アンビグラム作家の皆さんに同じテーマでアンビグラムを作っていただく「月刊アンビグラム」、主宰のigatoxin(アンビグラム研究室室長)です。
『アンビグラム』とは「複数の異なる見方を一つの図形にしたもの」であり、 逆さまにしたり裏返したりしても読めてしまう楽しいカラクリ文字です。 詳しくはコチラをご参照ください⇒アンビグラムの作り方/@2r96
◆今月のテーマは「映画」です◆
参加者の皆さんに、タイトルや用語など映画をめぐるいろいろな語句でアンビグラムを作っていただきました。
3月号の参加者は、[akasann氏、ARTAKANA氏、Mouhu_0613氏、96mayuko氏、hino389ra氏、sab0nte氏、ottwo氏、意瞑字査印氏、DMT_ICE氏、kawahar氏、he_art氏] です。
今月も飛び切り面白いアンビグラムが集まっております。 まずはakasann氏の作品からご覧ください。

『時計じかけのオレンジ』 @akasann氏
キューブリックの名作映画タイトル。 180°回転させても同じ形です。 オレンジと時計の針を散りばめた素敵なナッドサットロゴ。アンビグラムはその性質上どうしても金釘流の筆記になりがちですが、作者の@akasann氏は意匠を凝らした精度の高いレタリングでアンビグラムを制作するデザイナーです。
『映画⇄Movie』 @ARTAKANA氏
回転式共存型。 「映画」を引っくり返すと「Movie」になるバイリンガルタイプの回転寄せ字です 。レタリングの略字処理が素晴らしく、連続する字形が映写機とスクリーンのイメージになっている素晴らしいデザインです。回転式共存型 (逆さにすると別の字形になるもの)は、ただの回転型よりも人気の高いギミックです。
180°回転→

『活写』 @Mouhu_0613氏
180°回転させても同じ形。 映画の旧称「活動写真」を略した造語と、物語において重要な心情などの「活写」の二つの意味があるアンビグラム。楷書で『 活写、』と書かれた上品な字形は 作者@Mouhu_0613氏の創意を感じさせます。
『特殊メイク』 @96mayuko氏
鏡像型。優れた対応解釈だと思います。ラングドンのアンビグラムにも通じるカッコよさがあり、90°回すと特殊メイクをした顔にも見えてきそうな、素敵なアンビグラムです。

『ゾンビ』 @hino389ra氏
敷き詰め図地反転型。2色で塗り分け可能な正方向の組み合わせで群がるゾンビを表現してくれました。 まるで千鳥格子のようなゾンビ柄です。このタイプのアンビグラムには作例がなく@hino389ra氏のオリジナルと言っていいでしょう。

『ローマの休日』 @sab0nte氏
ヘップバーン主演の名画タイトル。劇中登場のスペイン広場大階段のイメージが作字に組み込まれ、同時にそれがアンビグラムのギミックにもなっています。字画に拘らず字影の優雅さで見事に判読させる手法にデザインの力を感じます。

『鳥』 @ottwo氏
ヒッチコックのパニック映画のタイトル。実際の映画ロゴそっくりに作字されています。勢いのある字形は飛び回る鳥を想起し、回転型アンビグラムにピッタリです。

『メトロポリス』 @意瞑字査印氏
回転型。2026年の巨大都市を舞台にしたディストピア映画タイトル。機械的、幾何学的な字形がアンビグラムのもつ対称性とマッチしています。

『特撮』 @意瞑字査印氏 (thx. @96mayuko)
手偏「扌」を中心に据えた回転ギミック。文字の共通点をいかしデザインされています。 漢字のアンビグラムは論理積をとりながら字画を��理すると作りやすいです。

『TERMINATOR⇄TRANSFORMER』 @DMT_ICE氏
回転式共存型。引っくり返すとTERMINATOR (ターミネーター)がTRANSFORMER(トランスフォーマー)に変化するアンビグラム。 また字面と連動し、図像中央のシュワルツェネッガーの顔がオプティマスに変わる騙し絵になっています。とても不思議なフライヤーです。
180°回転→

『全米が泣いた!』 @kawahar氏
回転型。 180°回転させても同じ形。これはよく練られたギミックで、「入(いりやね)」と「!」を上手く対応させ、「が」の濁点を中心に据えています。一文字ずつの単純対応ではなく、このような絡み合った塊で回転させるタイプも魅力的です。

『活動写真』 @ottwo氏
「活/動」が左右方向に、「写/真」が上下方向に無限に繋げる事ができる交換型アンビグラム。 まるでフィルムフレームの残像のようなナイスアンビグラムです。

『どんでん』 @_he_art氏
どんでん返しの回転型アンビグラム。モーションタイポグラフィの名手でもある@_he_art氏の作るアンビグラムは、いつも可読性を第一に考え設計されています。仮名のアンビグラムを作るとき懸案になるのは濁点の処理ですが氏の作るものは常に読みやすくシンプルです。
ラストは私の作品を。
『恋と嘘』 @igatoxin
コミック原作の実写映画タイトルからチョイスしました。
10��前は「アンビグラム」で 検索 をかけると日本人の作った作品は、 ほとんどヒットしませんでしたが今では多くの人が作るようになりました。 では日本語アンビグラムを最初に作ったのは誰でしょうか? 明治25年出版 『精神病者の書態』には不思議な日本語の鏡文字が登場しますが、 作家として日本語アンビグラムを作った先駆者は、さかさ文字クリエイターの 伊藤文人氏でしょう。 伊藤氏のアンビグラムは2002年の東大入試問題に引用されるなど、 多方面の媒体で紹介されています。 その後は仮名や漢字でアンビグラムを作る人も増え、今に至ります。 月刊アンビグラムは「さかさ文字」の系譜をリスペクトしつつ、更なる面白さを 開拓したいとおもっております。 月刊アンビグラムに参加していただいているデザイナー、アンビグラム作家の 皆さんに深く感謝いたします。
さて、 次回のお題は『色彩』とします。色から連想する語呂、画材、自然現象など解釈は自由です。締切は3月31日です。 それではよろしくお願いいたします!
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2018-2月号
アンビグラム作家の皆さんに同じテーマでアンビグラムを作っていただき、毎月8日に発行する「月刊アンビグラム」、主宰のigatoxin(アンビグラム研究室室長)です。
『アンビグラム』とは「複数の異なる見方を一つの図形にしたもの」であり、 逆さまにしたり裏返したりしても読めてしまう楽しいカラクリ文字です。詳しくは 2r96氏執筆のコチラをどうぞ⇒アンビグラムの作り方
2月号の参加者は、[akasann氏、2r96氏、ARTAKANA氏、ottwo氏、kawahar氏、yonanuki氏、hino389ra氏、Mouhu_0613氏、意瞑字査印氏、sab0nte氏、96mayuko氏、soyo_mai氏、tok415gtsp氏] です。
◆今月のテーマは「蟲(むし)」です◆
古代エジプトではスカラベは不死の象徴でした。 蟲は幼虫から成虫へと形態を変えます。 そんな蟲を題材にした文字のメタモルフォーシスを紹介します。

『テントウムシ』 @akasann氏
左右鏡像アンビグラム。左右の鏡像は作るのが難しいのですが、キレイに異なる文字に変化しています。レタリングとしても素晴らしいデザインです。

『甲虫』 @2r96氏
回転型。神は甲虫がお好きらしいという言葉があるほど種類が多い虫の総称。それを氏は綺麗に引っくり返してくれました。カフカの小説「変身」で主人公が変身した巨大な虫「ウンゲツィーファー」も甲虫だと考えられています。 余談ですが中華圏には「曱甴」という自然アンビグラムの虫を意味する漢字も存在します。
『カブト/クワガタ』 @ARTAKANA氏
回転型。 ワクワク感のあるレタリングでパッと見て判読出来てしまうアンビグラム。昆虫界の人気者が対決してるような楽しい作字です。

『芋虫(いもむし)』 @ottwo氏
回転型。ローファイでとてもカワイイ文字 。読み仮名もアンビグラムになっています。

『おしりかじり虫』 @ottwo氏
回転型。氏は字画を余すことなく使う名手。濁点処理はアンビグラム作家の腕の見せ所です。

『回虫』@kawahar氏
敷詰式内包型+回転型アンビグラム。まさに回る蟲。

『虫刺され/ムヒ』 @yonanuki氏
内包型。文字の中に別の文字を潜ませるタイプ。ムヒロゴが文字の骨格線に嵌るように全体がデザインされています。

『蚊』 @hino389ra氏
回転型。シンプルですが実は対応ギミックがとても優れています。氏は図地反転型アンビグラムの名手ですが王道の回転型もお手の物です。

『むかで』 @2r96氏
回転型。字画を綺麗に使い切っています。ヒゲ装飾の文字処理がムカデらしいレタリングになっていて面白いですね。

『壁蝨(だに)』 @Mouhu_0613氏
回転型。美しい壁蝨。ペンで一発書きしたカリグラフィーアンビグラム。アンビグラムを一発で書くことは普通は無理なのですが、その速度が独特の魅力を醸し出しています。

『蜻蛉(とんぼ)』 @意瞑字査印氏
回転型。蜻蛉という字がトンボ返り。

『アレクサンドラトリバネアゲハ』 @sab0nte氏
回転型。蝶の形をしたアンビグラムレタリング。美しい蝶に見合った素晴らしいデザインです。

『手塚治虫』 @96mayuko氏
上下の鏡像型のアンビグラム。「塚」を略しても全体的の塊として判読が可能です。手塚治虫というペンネームは昆虫のオサムシからとったとの事で今回のテーマにぴったりな人名アンビグラムですね。

『堤中納言物語』 @yonanuki氏
回転型。平安時代の短編集。その中の一編「虫愛づる姫君」は蟲が好き過ぎる姫君の物語です。

『arachnophobia』 @soyo_mai氏
アラクノフォビア(蜘蛛恐怖症)で回転型アンビグラムが成立しています。蜘蛛の巣をイメージした字形処理も素敵です。 ちなみに漢字の「蜘蛛」もまたアンビグラム化 可能な文字列で作例もありますね。

『擬態』 @tok415gtsp氏
回転型。 フラクトゥールアンビグラム。氏のアンビグラムは特徴的でオリジナリティにあふれています。

『蛾/葉』 @意瞑字査印氏
葉に擬態する蛾のアンビグラム。「蛾」が90度旋回で「葉」に変身します。日本だとアカエグリバという蛾が枯葉そっくりに擬態しますが、その擬態っぷりに感心してしまいます。

『虫の居どころがわるい』 @2r96氏
回転型。 民藝調の文字デザイン。アンビグラムは文字数が多くなるほど制作は困難になりますが、このアンビグラムはとても読みやすいです。これは驚くべきことです。
最後は私の作品を。

『猪 鹿 蝶』 @igatoxin
アンビグラムを作っていると、一文字多面相の字形を設計したくなる誘惑にかられます。このタイプは「松竹梅」「吾唯足知」など、いろいろな作例があります。面白いのでぜひ挑戦してみてください。
虫尽くしのアンビグラム祭、いかがでしたでしょうか? 様々な「蟲」のアンビグラムが収集され、文字の蠱術的な回になったのではないでしょうか?
さて、 次回のお題は『映画』とします。映画から連想する語句、人物、小道具など解釈は自由です。締切は2月28日です。それではよろしくお願いいたします!
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『クリーム』
10年前のネタをリライトしたものです。 以前はほぼ縦書きで作ったものが今回は横書きロゴ風になりました。
以前は「リ」の一画目が縦棒なので 縦書きにせざるを得ないと思っていたんですが 今作り直してみると横書きでできることに気付きました。 経験の積み重ねは大きいですね。 :igatoxin
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『甘~い、苦~い』 振動型アンビグラムの亜種。
対象物の一部が隠れて見えないとき、 欠けた部分を脳内で補完して全体像を認識する作用を「アモーダル補完」と言います。 その対象物が文字である場合、まわりに書いてある情報と自分の知識から、隠れた部分を補完して脳が文字列を知覚します。 このデザインはまわりの情報として色だけが違うんですが、それが脳内補完に影響を与えるのか、というちょっとした実験です。
「チョコ」なので「甘~い」または「苦~い」と補完して欲しいところ。読み方の組み合わせは4とおり考えられます。 Twitterでアンケートを取ったところ(N=223)、51%の方が上を「甘~い」下を「苦~い」と読んだ、と回答しました。 やはり、補完作用に対して色は重要だということが分かりますね。:igatoxin
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『雷門』
「雷」の裏に「門」を見出す。
浅草のランドマーク「雷門」。これは通称で、正式名称は「風雷神門」。提灯の裏側を見てみよう。 :igatoxin
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2017-10月号
アンビグラム作家の皆さんに同じテーマでアンビグラムを作っていただく「月刊アンビグラム」、主宰のigatoxin(アンビグラム研究室室長)です。
毎回素晴らしい作品を寄せてくださるアンビグラム作家の皆さま、ありがとうございます。作家さん同士がお互い刺激し合って切磋琢磨し、その結果作品のレベルも上がっていけばいいなという、最初の狙いはうまくいっているように感じます。今回も素晴らしい作品が寄せられていますよ!
◆今月のテーマは「GAME」です◆
お題は「GAME」。広義のゲームもあり、テレビゲームタイトルもあり、楽しいラインナップですよ。

「ボードゲーム」@2r96氏 鏡像型。
濁音が3つもあって濁点の処理が大変なはずなんですが余ることなくきれいに処理されています。対称軸と文字の区切りのずれをマス目という舞台背景で分かりやすくしているのも素晴らしいです。

「チェス」@hino389ra氏 敷き詰め式図地反転型。
今月も天才的な敷き詰めです。黒vs白で向かい合う、チェスというゲームにぴったりの表現ですね。

「ゲームクリア」@96mayuko氏 回転型。
レトロゲームの雰囲気が漂う色とエフェクトですね。昔のゲームはどう転んでもクリアできる、というのは少なかったなぁと思い出してしまいました。

「遊戯」@ARTAKANA氏 旋回型。
全体の形を見て鏡像型かなと思ったら「遊」と「戯」は90度回転の関係。さらに「GAME」「ゲーム」「YU-GI」の回転型も仕込まれており、本当に遊びつくされたロゴタイプですね!
ここからはテレビゲームタイトルが続きます。

「DragonQuest XI」@akasann氏 回転型。
いつもながら美しい文字が組まれていて読みやすいですね。解像度の異なる2つのバージョンがそろえられているのにぐっときます。

「女神転生」@akasann氏 回転型。
こちらも美しいです。「ネ/云」の対応がなんとも言えない不思議な感じです。短い横画のお作法がそろっているので統一感がありますね。

「きららファンタジア」@kokumoku氏 回転型。
まんがタイムきららのキャラクターによるRPGでしたね。元のロゴにうまく似せています。色の部分も元のロゴに準じているんですが、字画のあまりの処理などにぴったり利用できているのが凄いです。

「洞窟物語」@_he_art氏 図地反転型。
図地反転に挑戦してくださいました。図と地のどちらでも文字を作るためにどこをつなぐか、どこを切るかが重要なんですが、うまく調整できていますね。

「バンゲリングベイ」@yonanuki氏 回転型。
実力者の飛び入り参加です。言葉の区切り方にあれっ?となるんですが、4つある濁点をすべて余らせずに使うために考えられているんですね。文字の形もステキです。
「クロノ・トリガー」@kawahar氏 回転型。
旧作のリライトです。濃淡を使って読みやすくしているんですね。直線的な図案が効果的です。

「メトロイド」@意瞑字査印 氏 回転型。
主人公(サムス)が回転するゲームでしたね。ファミコン絵っぽい仕上がりなので、本当にこんなロゴだったんじゃないかと勘違いしてしまいますね。

「DRAGON QUEST」@oyadge01氏 鏡像型。
旧作ですが初期の名作ですね。これには非常に驚いた記憶がありますが、今見てもやはり素晴らしいです。

「世界樹の迷宮」@igatoxin 鏡像型。
オリジナルのロゴを見てすぐにアンビグラムにしてみたいなと思って作ったものです。なぜか「Ⅱ」でも「Ⅲ」でもなく、「Ⅳ」のカラーリングにしてしまったのが失敗でした……
いかがだったでしょうか。今月もたくさんの傑作があつまり、主宰冥利に尽きます。ゲームのロゴを模したものはぜひオリジナルと比べてみてください。さらに驚きがあると思います。
次回のお題は「TOY」とします。 トイから連想する語句、おもちゃの名前、その他関連するものならOKです。 締切は10月31日です。 それではよろしくお願いいたします。
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『収支』
作り甲斐のあるアンビグラムの中では最も画数が少ない言葉ではなかろうか。しかも対義語の組み合わせである。 まだまだこんな言葉が眠っているとは。楽しいですなぁ。
旋回型ということもあり、アンビグラムと気づかない人もいるかも知れないが、それが我々の目指すアンビグラムデザインの境地である。 :igatoxin
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『栗/梨』
振動型というのはそのまま見ているだけで複数の見え方に見えてしまうタイプ。「ウサギとアヒル」のだまし絵のようなものですね。 どちらに見えやすいかは、見る人にとってどちらが好きかに関わるともいわれています。
ということで、秋の味覚のアンビグラム、どちらが先に見えたでしょうか? :igatoxin
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『星雲』
180°回転アンビグラム。 星雲と聞いて私がまず思い浮かぶのはドーナツ星雲(M57)で、 虹色のリングがとても綺麗なのです。
ところで、喜ばしいことに最近アンビグラムを作る人が増えてきました。 アンビグラムは特殊な技術ではなく、実は誰にで���書けるものなので、 気軽に作る人がもっと増えればよいと思います。:意瞑字査印
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『謎/解』
180°回転アンビグラム。 「謎」のパーツを組み替えると「ナゾトキ」にもなります。
文字をひっくり返していると、ふと文字という記号には初めから秘密のゲシュタルトが 潜んでいるのではないかと錯覚する事があります。それで、 ついつい楽しくなりアンビグラム作りがやめられなくなるという寸法です。 :igatoxin/kawahar/意瞑字査印
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2017-09月号
アンビグラム作家の皆さんに同じテーマでアンビグラムを作っていただく「月刊アンビグラム」、主宰のigatoxin(アンビグラム研究室室長)です。
節目の第6回目となりました。この半年の間でアンビグラムの認知度も上がり、作る人もちらほら増えているようです。そしてこの企画に参加したいと手を挙げてくださる新しい作家さんもいらっしゃり、嬉しいかぎりです。これからもよろしくお願いいたします。
さて今月はアンビグラムという表現にぴったりの「回文・たいこめ」がテーマです。テーマに沿って、アンビグラムも180度回転型のみとしていますよ。アンビグラムだけではなく、回文やたいこめの方もお楽しみください。

「ギネス超すネギ」 @akasann氏
【ぎねす こす ねぎ】回文師らしく自作回文による一作。ネギっぽい色が目をひきますが、回し方も素晴らしいので対応付けにも注目です。字形に躍動感があり鮮やかです。

「三点差/サンテンサ」@akasann氏
回転すると明朝体のウロコがはらいに化けるところ、ウロコの形のままなのがよいですね。書体の装飾を上手く活用していて驚きます。

「ここ伸びんぞ ゾンビのここ」@akasann氏
【ここのびんぞ ぞんびのここ】回文は氏の代表作の一つですね。10文字以上の長文を、メリハリのある書体をうまく生かし、キレイに回していて素晴らしいですね。

「啄木鳥」@ottwo氏
【きつつき】有名な回文単語ですが実物は見かけないやつ。なるほどの一作で、絶妙に自然な対応付けで読みやすいです。技巧を凝らした優れた神品です。

「まさかさかさま」@ottwo氏
「か」と「さ」の間の字画のやりくりがぴったりであまりが出ないのが奇跡的。 これは理想的なアンビグラムです。

「まさかさかさま」@96mayuko
こちらは別解。まっすぐ並べつつ「さ」の字形が揃っているのがよいですね。

「馬鹿/河馬」@kokumoku氏
【ばか・かば】最も有名なたいこめでしょうか。「馬」は回しやすそうな形なのですが「鹿/河」の対応付けが素晴らしいです。字形の全体的なバランスも秀逸です。

「私/したわ」@kokumoku氏
【わたし・したわ】たいこめですが、回文師界隈ではテンプレとか構文とか呼んで、回文の欠片とも見ることができます。ここから回文アンビグラムへの発展もできる素材ですね。アンビグラムとしても読みやすいです。

「私負けましたわ」 @ARTAKANA氏
【わたし まけましたわ】有名な回文。前の作品の「私/したわ」を使ったタイプは作例があるんですが文字ごとに対応付けしたギミックは初でしょうか。お見事です。

「男女(なん・おんな)/sexes」@2r96氏
翻訳回文として作者が発見したもの。背景色と性別記号の色の関係がうまく考えられています。いわゆる万能な記号ですね。バベルの塔混乱以前の普遍文字を彷彿します。

「狭い蛹脱ぎなさいませ」@JISB4648氏
【せまいさなぎ ぬぎなさいませ】文字列は罅ワレ回文氏の看板作を取り上げています。字の勢いのよさで見逃しそうになりましたが、蛹と蝶のモチーフがうまく機能しているのがステキです。ぜひ拡大表示のほうでもご覧ください。
拡大表示

「大旋回完成だ」@_he_art氏
【だいせんかいかんせいだ】自作回文ですね。筆文字っぽくすることで字形を崩すことを許容させ、対応付けしや��くしていますね。回文、アンビグラムともに優れた一作です。 実は氏は最初「まさかさかさま」を制作してくれました。そして既に同じ題材が揃っている事を知ると本作を急遽作ってくれました。 @_he_art氏作 「まさかさかさま」 三者三様、アイデアが同じでも作者の癖が出て対応解釈が被らないのがアンビグラムなのです。

「カンバスから 小さい西瓜 アリすすり 赤い水彩 散らかす晩夏」@hino389ra氏
【かんばすから ちいさいすいか ありすすり あかいすいさい ちらかすばんか】自作の短歌回文で回文の出来も良いなと思っていたものですがきっちり回していて凄いです。是非皆さん解読してみましょう。回文には季節感。アンビグラムとしても20文字以上。「アリすすり赤い水彩」辺りの字形がカッコよくて個人的に凄く好みの大作です。
「丸くなり立てで、きっとデコボコでとっき、でてたりな車」@kawahar研究員
【まるくなりたてで きっとでこぼこで とっきでてたりなくるま】自作回文ですね。特に中央部あたりで得意のドット文字風なのが上手く機能していると思います。突起出てたりとの事で、車の解体工場の情景を詠んだ回文でしょう。

「廻転鑑定家」@意瞑字査印/@oyadge01 両研究員
【かいてん かんていか】回文は詠み人知らずの古典的例文。いたるところにうまいギミックがあって両氏には毎度感心させられます。「廻」の方だと綺麗に回るんですね。

「寄席だもん品も出せよ」@igatoxin
【よせだもん ひんもだせよ】トリは品のあるものを、と思いましたがさてどうでしょう。今回は難しいお題かなと思っていたんですが、アンビグラムにできる回文は結構あるようですね。
いかがでしたでしょうか。まさか逆さま? な回文アンビグラムが揃ったとおもいます。回文をアンビグラム化する誘惑は、アンビグラム作りにはつきもので「字義」「発音」「形状」の3つがくるくる回るアンビグラムは、文字本来の魔術性が増幅されたような楽しい感覚があります。 またアンビグラムは文字数が増えるほど字画の余り(無意味な汚れ)が生じ見苦しくなるものですが、それがほとんど見られません。そんな参加者の高い技術が伝われば幸いです。
次回のお題は「GAME」とします。 ゲームから連想する語句、ゲームタイトル、ゲームキャラクター、なんでもOKです。 締切は9月30日です。 それではよろしくお願いいたします。
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『縦 横』 90度回転アンビグラム。「縦」を横倒しにすると「横」になる字形。
『前 後』 鏡像アンビグラム。「前」と「後」がコインの裏表になっている字形。 それぞれ意味に沿ったギミックになっています。
:igatoxin/oyadge01/意瞑字査印
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『特報』 回転型。
とある新聞の紙面を見てアンビグラマビリティが高いなと思ったので作ってみた文字列。 アンビグラマビリティとは「アンビグラムにしてください!」感の強さぐらいの意味です。
まだまだそういう言葉はごろごろ転がっているはずなので、探してみたら面白いですよ、 という特報でした。 :igatoxin
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2017-8月号
アンビグラム作家の皆さんに同じテーマでアンビグラムを作っていただく「月刊アンビグラム」、主宰のigatoxin(アンビグラム研究室室長)です。
今回で発行回数5回を数え、参加していただいているアンビグラム作家の方々にはあらためて感謝の意を表します。そして素適な作品が今回も多数集まりました。中には独自のテクニックや様式を使いオリジナリティの高い作品が並び、8/8に相応しいラインナップになっております。文字に隠された秘密のゲシュタルトをご覧ください。
◆今月のテーマは「宇宙」です◆
お題は「宇宙」。ということで、まずはとびきり不思議な作品からご紹介します。

「木星人/オカルト」@akasann氏 振動型。
回文師として有名な作者は、日本語アンビグラムデザイン随一の美しさをほこるアンビグラム作家でもあります。 「オカルト」の語句の上を星たちが公転する軌道で「木星」と判読させるギミックはため息ものです。飾りの星は、木星とガリレオ衛星でしょうか。本当にすばらしい作品です。

「apollo」@ottwo氏 回転型。 回転式重畳型でもあります。
円と棒の2要素でデザインされていて美しく仕上がっています。人類を初めて月に送り込んだアポロ11号を図案化したようにも見え、ゆっくり回転しながら宇宙空間を進む船に相応しい素敵なロゴ作品です。

「空飛ぶ円盤」@2r96氏 鏡像型。
鏡像アンビグラムの中でも左右の鏡像は難易度が高いです。それが見事に制作されています。しかもこのアンビグラムは見慣れないギミックが使われています。背景色を字画に加えることで、左右の字画密度の違いをカバーしているのです。これは驚きのテクニックです。
「星」@hino389ra氏 敷詰式図地反転型。
敷き詰め作品のパイオニアである作者の傑作。連なる星は流星群のようです。目をこらして青い「星」の字を見つけるにつけ、どういう脳の構造でこのような作品が作れるのかと仰天します。

「銀河回転」@kokumoku氏 回転型。
銀河回転とはつまり銀河系の自転の意味ですね。アンビグラムの評価基準には読みやすさのほかに、対応解釈の必然性があります。回転型アンビグラムにする語句に回転する必然性があれば、作品としてさらによいです。

「EDGEWORTH KUIPERBELT」 @soyo_mai氏 回転型。
エッジワース・カイパーベルトとは海王星軌道の外周部にあるリング状の領域。またも長文アンビグラムに挑戦していただきました。 短周期彗星の軌道で書かれたようなアルファベットにしびれます。

「自/公」@鏡画家氏 共存型。
自転し公転する。 宇宙は回転が好きなようです。この作品も回転する必然性がある部類の語句。いわゆる、アイデア勝負の作品は作るのも見るのも楽しいものですね。

「宇宙戦艦ヤマト」 @ARTAKANA氏 回転型。
作字(レタリング)の美しさとアンビグラムの出来栄えを両立させるのは難しいのですが、氏の作品はそれを実現させていて毎回が目の保養。字形が完全な点対称になってないところも逆に文字への愛情を感じますね。

「大気圏突入」 @kokumoku氏 鏡像型。
フォント(書体データ)をベースにして設計したのでしょうか、良い効果が出ていると思います。アンビグラム作家には字画を気にして制作する人と、字形(フォルム)を気にして制作する人がいますが、字画を無視して字形を優先したほうが読めるものになる場合があります。 さて当作品は字画が正確では無い箇所がありますが、文字力で読ませてしまう気迫を感じる好例だと思います。また重力に引き込まれる雰囲気が左右の鏡像対応にマッチしています。

「はやぶさ!」 @JISB4648氏 回転型。
文字組みの妙で綺麗に成立しています。 まさに王道のアンビグラム。 「ぶ」の濁点が「はやぶさ(探査機)」の影になっているのもステキです。


「ほしとそら/星空」 @ottwo氏 回転式共存型。
読み仮名と漢字のペアともいえる回転アンビグラム。「ほしとそら」の自然さも素晴らしいですが、「星空」のほうを眺めると「星座」に空目するところも見逃せない作品です。 ottwo氏の作品にはアンビグラムが本来もつ楽しさが詰まっています。

「うちゅう/コスモス」@pm85122氏 鏡像型。
平仮名「うちゅう」が鏡面対象で片仮名「コスモス」になっています。マンガの描き文字のような筆運びが2つの語句を自然に読ませています。 pm85122氏はゲバ文字フォントを制作するフォントデザイナーでもあるので、氏の作るゲバ文字調のアンビグラム作品も今後是非見てみたいです。よろしくお願いいたします。

「宇宙」 @_he_art氏 回転型。
ステンシル文字の味わいがあるアンビグラム。ステンシル文字は書き順に縛られること無く自由に字画を切断する事ができるので、アンビグラム生成に向いた様式と言えます。
「宇宙/ウチュウ」 @kawahar研究員 振動型。
読み仮名を寄せて漢字を形成するタイプの作品。氏は、このタイプの「読み漢」を多数作っています(例えば「月/つき」など)。長年、アンビグラム生成に没頭してきた熟練のワザです。

「星雲」@意瞑字査印研究 回転型。
字画より字形に重きを置いた作り方で、 図案文字的な形状が可読性を担保しています。アンビグラム作りはどこか数学の難問を解くような感覚があり正解字形を探る作業とも言えます。どんな文字列にも正解字形はあり、それを発見できるかが鍵です。大概の場合、良い解はシンプルです。

「STAR WARS」@oyadge01研究員 回転型。
カッコイイのひとことですよね。

「乙女/♍」 @igatoxin 鏡像型。
最後は私の作品、乙女座の記号「♍」と「乙女」の斜め鏡像です。 「♍」 が文字だとすればアンビグラムですし、文字じゃないとすればアンビグラムじゃないという、定義上グレーの領域を狙った問題作、のつもりです。 鏡像型アンビグラムには「上下」「左右」「斜め」と大きく3タイプありますが、中でもこの斜め対応は日本語に適していて、読みやすいアンビグラムがたくさん作られていますから皆さんも是非作ってみてほしいですね。
いかがでしたでしょうか。8月8日発行に見合った∞宇宙をテーマにしたアンビグラム祭、楽しんでいただけたなら幸いです。
さて次回のお題は『回文、たいこめ』とします。「竹やぶ焼けた」「よろしいか池に飛び込む小人に警戒しろよ」などの回文、「罪(つみ)/蜜(みつ)」のような”たいこめ(転文)”を各自、自由に選び、それを180度回転アンビグラムのみで作ってください。 来月は回転型アンビグラム強化月間といたします。
また来月もよろしくお願いいたします。
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『衣/食/住』 共存型 5年前に一度断念し、最近ようやく出来上がった。 3つ以上を対応させる共存型は当然難易度が高いのだが、 当時は回転だけでうまくできないか考えていたのができなかった要因の一つ。 鏡像も含めて考えればよいことに気付けばうまくいく可能性も高くなる。 :igatoxin
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『包』
図地反転アンビグラム。ネガで くるみ、ポジで つつむ。 唐草風の包字模様。: kawahar/意瞑字査印
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『たぬきそば/きつねうどん』
麺類の「きつね(油揚げ)」と「たぬき(天かす)」。 対になる呼称なのでアンビグラムに向いている。どちらも美味しい。:意瞑字査印
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