kmtnhns - Tumblr blog

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「…え、さすがに長くない？」

脱衣所に座り込んで、お風呂に入ってるししょーを待ち続けて、早30分。ここに来たのは、ししょーがお風呂に入って1時間くらい経ってから。そろそろ上がってくるかなー、なんて思いながら、お風呂上がりのししょーを驚かせるために来たのに。待ちぼうけ。当の本人はのんきに歌ってるし。30分も床に座り続けてたから、さすがにおしりが痛くなってきた。はやく上がってこないかなあ。

――――――ガチャ。

「…あ。」

『みょん！？！こんなとこで何してんの？！心臓飛び出るかと思った…。』

「ししょーおそい！ずっと待ってたのに！」

『へ？あ、ごめんね！？みょんも入りたかった？一緒に入る？』

「ししょー今上がったばっかじゃん…みょんさっき入ったし…。」

『じゃあなんでここにいたんだよ…。』

「ししょーのこと驚かしたかったの！ばあ、ってしたかった！！」

『……発想が可愛いから何でも許す！俺ちゃんと驚いたし。完璧じゃない？』

「ばあってできてないから完璧じゃないの。あ、動画撮って樹に送ろうと思ってたのに！わすれてた！！！」

『みょん、俺の裸の動画拡散しようとしないで？』

「樹に送るだけだからだいじょぶだよ。ししょーはやく着替えないと髪乾かしてあげないよ！」

『え、推しに髪乾かしてもらえんの？！最高じゃん、5秒で着替えます…！』

「いーち、にーい、さーｎ…」

『待って、本当に数えてる。早い。まだパンツしか履いてない。タンマ。』

「よーーーーーーーーーーーーーーーん、」

『めっちゃ伸ばしてくれてる…天使か…。』

「ごーーーーーーーーーーーーーお！おわった？」

『終わった！ギリ。』

「じゃあドライヤーしよ。こっちおいでー。」

『なんか緊張してきた…。』

「ふわふわさらさらになった！かんぺき！」

『みょんのヘアオイルめっちゃいい匂いする…！ありがとうございます！！』

「どういたしまして！お礼に1個おねがい聞いてくれますか！」

『お願い？聞きます。なんでしょう！』

「クリスマスケーキたべたいです！！！」

『お、いいじゃん！俺も食いたい。ちなみに何ケーキ？』

「いちごのショートケーキ！駅前のあのオシャレなケーキ屋さんにね、ちっちゃいサンタさんが乗ってるケーキがあるの！ホールケーキだからおっきいんだけど、でもおっきいのにしかサンタさん乗ってなくて…。」

『食べたいものまで可愛いのなに？ホールとか二人だと絶対食いきれない量だけど買っちゃう！みょんのためにししょー買ってあげちゃう！』

「え！すき！ケーキの写真撮ってみんなに見せる！わあい！！」

『あ、このお願い聞いてほしくて髪乾かすって言ったのか…なんなら脱衣所で待ってたのも策略だったり？だとしたら結構あざといけど、まあみょんだからいっか。』

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"Reconciliation"

「ししょー1人だけずるい！なんで連れてってくんないの！」

『ちが、急遽行くことになったんだって！ごめんな…。』

「みょんも温泉行きたかった！！！」

『みょんとも行くってば、休み合わせるから。ね？』

「樹と3人で行こって言ってたのに…抜けがけだ…。」

『ごめんって…お土産あげるから機嫌直して…！』

「ししょー最近みょんに構ってくんないもん！知らない！」

『おい、知らないとか言うなよ！傷つく！！』

「やだ！樹と2人で温泉行ってくるからお留守番してて！！」

『はあ！？ハブるのは良くない！俺も行くから！！』

あのー…、何騒いでるんすか？

「ししょーが抜けがけして温泉行った！！！」

あっれぇ、俺らと行く約束だったのに？

『違うって、急に行こうって話になったんだってば！』

なるほど、じゃあ前々から約束してた訳じゃないんすね？

『そういうことです…信じてください…。』

なーんでみょんはそんなに怒ってるの。いつものみょんならすぐ理解して許すじゃん。

「だって、だってししょーが、」

んー？師匠がどしたの。

「ししょーが最近みょんに構ってくれなかったから、それで、」

それで拗ねてた、ってことね？

「ん、そゆこと、です。」

ですって、師匠。…ちょ、隠れて悶えるの辞めてください。

『いやだって、理由可愛過ぎるじゃん！？やっぱみょん天使…。』

「…みょん本気で拗ねてたんだよ！もう！」

『よしよし、ごめんな？これからは嫌ってほど構うから！』

みょん、仲直りできる？

「……ん、怒ってごめんなさい。」

『俺もごめんね、今度3人で温泉旅行しよ。』

よーーーーし、これで仲直り！腹減ったんでどっか飯行きましょ。…師匠の奢りで！

『…お、おう！今日は俺の奢りだーー！！！』

「みょんポテトたべたい！！」

『え、ポテト！？！？！』

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「よるのうみ」

「いちごみるく…いちごみるくがない…昨日まであったのに…。」

あ、のー。みょんさま。いちごみるくの素、探してたりしますか？

「探してます…みょんのごほうび…ない…。」

…ほんっっっっとうにすみませんでしたぁ！！！！！

「え、っと？なんで樹は土下座してるの？」

いや、あのですね、さっき、ついうっかり飲んでしまって…。

「…………さいてー。」

…マジでごめん。何でもするから許してください。

「…新しいやつ買ってきてくれる？」

もちろんです。次は箱買いします。ストック常備します。

「今度ごはんご馳走してくれる？」

いくらでもご馳走します。高い焼肉でも、回らない寿司屋でも。

「……ドライブ、連れてってくれる？」

…ドライブ行きたいの？今から？

「うん、今から。夜の海に行きたいの。だめ？」

よし、わかった。ドライブしよっか。外寒いから、厚着して行こ。

「ぃやったあ！もこもこのパーカー持ってくる！」

…さみー。

「なんで樹は部屋着のまま来たの…？しかも裸足だし。」

なんとなく、いけっかなあって。

「…ぁ、待って、みょん間違えて樹のパーカー着てきちゃってる？」

んは、気にしなくていーよ。それあったかいっしょ。

「どうりで樹の匂いがするわけだ…。はやく言ってよー、ごめんね。」

大丈夫大丈夫。みょんに風邪引かれたら困るし。

「樹に風邪引かれるのも困るんだよなあ。…あ！」

ん？……ぉわっ！

「これならちょっとは寒いの紛れる？」

うん、だいぶ肋骨締められてるけど。あったかいよ、ありがと。

「樹ほっそ、骨しかないじゃん。明日からごはん大盛りにする？」

…食い切れないからやめてください。

「夜の海、真っ暗でこわいね。吸い込まれちゃいそう。」

怖くなっちゃった？よしよーし、俺がいるよ。大丈夫。

「ねえ、次は夕日見に来ようよ。絶対きれい。」

あー、確かに。俺も見たい。次の休み、また海来よっか。

「………」

…あれ？みょん？

……抱きついたまま寝るのやめられる？俺動けねえ。

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“Perfume”

最初はちょっとした出来心で、樹が出かけたあと、テーブルの上に残されてた香水をつけてみただけだった。あー、いつもの樹の匂いだ。この匂い、結構好きなんだよなあ。香水の名前教えてもらって、お揃いにすることも考えたんだけど。なんか、気持ち悪がられたら怖いじゃん。勝手に家に住み着いてる身だし。追い出されたら住む場所ないし。だから、今日だけ、内緒でつけさせてもらお。香水ってすごいな。樹がいなくても、すぐそばに樹がいる感じ。気分上がってきたし、どっか出かけようかなあ。

「ちょっとだけ出かけてくるね。夜までには帰ります。」

りょーかい。気をつけて。

出かけるときには必ず連絡を入れるのも、だいぶ当たり前になってきた。一人で出かけんの、めちゃくちゃ久しぶりかもしれない。なんだかんだ、出かけるときは樹が一緒だったからなあ。てか、電車乗るのも久々じゃん。いっつも樹が車出してくれてたから。やっぱ俺甘やかされてんな。外出てきたのはいいんだけど、これからどこ行こ。…新しい香水、見に行こうかな。まだ11月なのに、街中が着々とクリスマスムードになってる。気が早いなー、なんて考えながら、お気に入りの香水ショップに向かって。小一時間悩んだあと、やっと新しい香水を買えた。今日の目的は達成したし、帰って夜ごはん作らなきゃ。

「ただいまー。」

いつもの癖で、誰もいない空間に投げ掛けられた言葉。

お、帰ってきた。おかえり。

「あれ？今日早いね。」

そー、用事早く片付いたからさ。どっか飯でも食いに行く？

「そうしよっか。樹なに食べたい？」

そんな会話をしながら、樹の横を通り過ぎた。

…みょん、香水変えた？つか、俺と同じ匂いすんね。

「え、あ、これは、その。…香水、借りちゃった。」

んは、なーんだ、そういうこと？好きに使っていーよ。

「…！いいの！あ、でも今日新しい香水買ってきたばっかだ…。」

じゃあさ、俺もたまにその香水使っていい？匂い、交換こ。

「もちろん！好きなだけ使って。」

この日から、出かける前に樹の香水を振ってもらうのが習慣になった。樹からは、自分が買った香水の香りがする。たまに使う、とか言いながら、完全に交換こになってるの。めちゃくちゃ面白い。でも稀に、「今日はこっちつけよー。」って言われて、ふたりで同じ匂いを纏うこともある。樹の気分次第だけど。交換こも、お揃いも、どっちも嬉しいから、正直どっちでもいい。ちなみに今日は、お揃いの日。明日はどうなるかな。

匂いの記憶ってさ、視覚とか聴覚から得られた情報よりも、色濃く脳に焼き付くんだよ。これで俺らが何かの拍子に離れちゃう日が来ても、街中で同じ香水をつけてる人がいたら、俺のこと思い出して。

…なんてね。

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Puschkinia scilloides var, libanotica