Tumgik
mellowtyphoonpaper · 6 years
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シナリオの大まかな設定
世界観
 街並みは中世ヨーロッパ寄り、科学と魔法の融合した世界、人間以外の種族も当たり前のように存在する。(魔族・獣人族・有角族・妖精族・神々etc.)  神々は基本不干渉、魔族と括られている種族は主に"外見が著しく人間と掛け離れている、または人類に対し有害"という括りなので、獣人族にも関わらず魔族刈りの対象になることもある。
 人類は神々を信仰し、悪しき"魔族"との戦いを数千年単位で繰り広げてきた。奪い取った領土も一部あれば、魔族に侵攻され奪い取られた領土もあり、一進一退の攻防に疲弊しきっている。        人類側
 大地を創造した後、単細胞生物の一部に神々が介入、知恵を身に付けた一部の猿が進化した一族。  古来より神を崇め、聖なる恩恵を受けた教団が王政の背後で実権を握り、聖騎士団という軍事力を唯一保持している。
 数千年の間に本来の教義とは掛け離れ、"神こそ正義、神の姿を模した我々人類こそが地上を統べるべき"と声高に主張、他種族への差別意識を民衆に植え付けている。
 教えに反する者、異教徒、異種族に対する弾圧を躊躇せず、絶対の教えを胸に突き進む。
 魔法を使える者はおらず、基本的には神から与えられた"神器"、若しくは科学技術によって創られた武器を手に魔族に立ち向かう。  ただし、神と接触する権利や神器を所有する権利を保有するのは教団であり、聖騎士として貢献した一部の人間しか授かることができない。  一般人でも銃程度の武器所有は許可されているが、火薬類は高価なためなかなか入手できないのが実態である。  学校等の教育機関や医療機関はあるが、貧困の差が激しいため通えない子供も多数存在する。
神々側
 遥か昔に地上を創造したものの、その後何をせずとも発展するようになった文明に"我々の介入は不要"と判断、以降は飢餓が起きようと戦乱が訪れようと静観を保っている。  時折、気紛れに地上への介入を試みる神もいるが、大抵は途中で地上生物の矮小さに失望して天界に戻る。  介入の仕方は様々で、中には地上の生物に憑依する神もいた。当然ながら高位思念体が宿るということは、元の生物にとって著しい負担となり、依代とされた地点で生存は不可能。  堕天という考えはなく、天災を与えるのもまた神の意志として罰されることはなく、神々にとって地上は気紛れに育てられただけの箱庭に過ぎない。
 神と定義付けられているが、その実態は宇宙に誕生した高位思念体であり、基本的な精神構造からして地上の生き物とは全くの別物。           魔族側
 神々によって人類が創られた後、人類を堕落させる試練として創られた存在。  元は"試練を乗り越えることで、人類の種族的な成長を促す"のが目的だったため、魔族もまた神々の教えに従い、神々が命じたままに人類を害してきた。  しかし、とっくに神々の興味が薄れたことで役割を失い、ここ数百年急拵えの魔王を据えての統治を図っている。
 基本的な寿命は人類より長く、中には不老不死の種族も少数存在する。  人類のことは"無知蒙昧な愚かな民"と認識しており、搾取し、略奪し、屠殺するための家畜として大多数が見下している。  魔法が使える以外にも、種族的な身体能力値が高いため、人類との戦いで拮抗している理由は数の不利と統制のなさに尽きる。  神々と直接言葉を交わした上級魔族たちの中には恨みを抱く者もいるが、手出し出来る存在ではないため諦めている者が大半である。
その他の種族
 魔法と自然が混合した結果、人類でも魔族でもない種族が各地で生まれ、それぞれが独自の文化を築き存続してきた。  人類が生まれる以前から存在していた種族もおり、戦乱が訪れる前は人類の善き隣人、ないし知覚外の隣人として共存関係にあった。  しかし、世界が混沌として秩序が乱れ始めたとき、人類は真っ先に他種族を敵として迫害を始めたため、人里以外の山奥でこっそりと隠れ住む他に生き延びる術がなくなった。  魔族からは攻撃されないものの、同族ではないため関与もされることがない。そのため、魔族に下って配下となる種族も少数存在する。
 魔法を使える者、使えない者と多岐に渡るが、生物であることに変わりないため寿命が存在する。  短くて数年、長ければ数百年、種の存続を最も重要な価値基準としている種族が多い。
妖精族・精霊
 地上を創造する際、高位思念体が環境整備のため創り出したインターフェースであり、妖精族には他種族を監視するシステムとしての役割が残されている。  精霊はそれぞれ担当する自然要素を持っており、魔法を発動させるためのプログラムそのもの。
 つまり、魔法とは超常的な力のことではなく、精霊に思念レベルで働き掛け、使役する力のことである。  魔力に当て嵌めて考えるなら、当然のように低位思念体<中位思念体<高位思念体の順に力を持つという構図が出来上がる。
 魔法を使える者には、当然のように精霊や世界を構成する式が見えており、見えない者にはその存在すら知覚することは不可能である。  また、神器と呼ばれる品々は、神々が適当な武器や防具にプログラムを組み込み、一定の条件下でのみ発動するよう設定されているだけの代物。  寿命という概念はなく、個であり全、全であり個の中位思念体が妖精、低位思念体が精霊と分類されている。
人物紹介 (敬称略、登録名表記)
朽木
 混沌を極める地上に、とある神が生み出した悪意の産物。  妖精だった中位思念体の精神体と、少数民族だった有角族の真新しい肉体を組み合わせた生き物。  実験のため生み出される際、全ての同族は神の手により殺され、魔族の管理下に置かれるよう仕組まれていた。
 管理下にあったもののまともな教育はされておらず、善悪の区別もなく、生き物としての本能と地上一の魔力を持つ。  言うならば無垢な子供そのものであり、一部の魔族によって魔王に仕立てられようとしている真っ最中である。
 齢200年を越えた近年反抗期に突入しており、居城から抜け出した森の奥で偶然主人公と出会うこととなった。
ネオン
 魔王を仕立て上げようと企む魔族側の皇族、真っ先に祭り上げられた本来の魔王。  本人は権力に興味がなく、矢面に立たされる不便さを全て新魔王に被せようとしている。  享楽・刹那主義の問題児で、軽薄で残忍な本性を笑みの上に貼り付けているような男。
 派閥としては穏健派に属しており、魔族を統治した後に人類を家畜として隷属させる魂胆がある。  現在、脱走した新魔王の居所を探しているが、各派閥が足を引っ張り合い難航していることが目下の悩み。
沼田
 魔族に降った獣人族の若者、たぬきの姿に变化することが出来る。  主な仕事は魔王城での下働きだが、もっぱら新魔王に悪戯されたり、その被害の後始末のために扱き使われている。
 仕事に対し不満はあるものの、魔族としての暮らしに不満はなく、人間を殺すことに一抹の躊躇もない。  雇い主は魔王だが、新魔王とつるんでくだらない嫌がらせをせっせと繰り返すのが趣味。  現在の主な役割は新魔王の監視であり、魔王からの命令を忠実に守る、という口実で一緒に城を出てきた。
神夢
 魔族の中でも位の高い貴族、派閥は穏健派の皮を被った混沌派。  神の支配を逃れ、地上の生き物が覇権を争う今の状況こそが最も活気に溢れ、美しい世界であると過信している。  そのため、魔族統治についても反対しているが、表立って争わずに裏から手を回して魔王側の失脚を目論む。
 優雅な物腰と柔らかい物言いで新魔王に近付くも目的は暗殺、既に数百回失敗しているが諦めない、そして目論見もバレていない。
花菱 正樹
 魔族領地にある山奥で隠れ住む、下半身が馬の姿をしている獣人族の青年、属する一派は古来より戦闘部族としてその名を馳せてきた。  嘗ては人類と共に魔族と戦ってきたが、他種族排他の時流によって衰退の一途を辿っていた。  近年になって何度も魔族側からの打診があったものの、遥か昔に人類と交わした約束を今でも一途に守り続けている。
 族長の一人息子にして、一族で最も優れた槍の名手、次期族長としての信頼も非常に厚い。  人類について思うところはあるが、道を違えた"古き友人"を害する気はなく、しかし同時に裏切った人類に手を貸す必要があるとも思っていない。
カルマユウジ
 一般家庭で育った人間の青年、王都の宮廷技術局に若くして配属されたエリートながら、本人の気質は至って不真面目。  言われた仕事は熟すが、言われなかった余計なことをしたりしなかったりするトラブルメーカー。  雇われているのは給金がいいことの他に、最新技術の粋が集まる技術局で一人黙々と研究をするため。
 秘密裏に行っている研究は魔法と、知覚外に在るという神々について。  もちろん教団により禁忌とされているため、見付かればお咎め程度では済まない。  動機は"気になったから"、最終目的は機械を通じてコンタ��トを取ること。
 人間によって滅ぼされた有翼族の生き残り、偶然通りがかった魔族の騎士に助けられた。  一族は物珍しさから元々愛玩用の奴隷として狩られていた歴史があり、細々と生き延びていた一族を殺されたことで人間への恨みが烈火の如く燃え上がった。
 助けてくれた魔族の騎士に恋をしており、彼の手足として働けることを何よりの喜びとしている。  歌声によって精神の精霊を操ることが得意で、魅了するも錯乱させるも思いのまま。  目下のところ、脱走した新魔王の探索を任されているが、可能ならば自分の手で誅殺したいと考えているようだ。
波多野玉香
 スラム街に隠れ住む人間の少女、嘗て、自然信仰を続けてきた部族の一人。  他種族の根絶を唱える教団と真っ向から対立し、宗教弾圧を受け散り散りになったものの、独自の情報網を持って王都周辺に潜伏している。  対立当初から数えて、既に世代が幾代も代わってしまった結果、戦友だった部族との繋がりをなくしてしまっていた。
 "古き友人"の存在は親から子に語り継がれ、一族の悲願を達成するために尽力している。  その悲願とは、教団の歪んだ思想を根絶し、いつの日か再び人と自然が手を取り合う世界を創ること。  度々教団員たちから金品を巻き上げては、貧しい暮らしをしている人々に分け与えている。
久原敦
 恵まれない家庭で育った人間の青年、教団の一員として街外れの協会を任されている。  実は神の存在をあまり快く思っておらず、信仰心というものを欠片も持ち合わせていない。
 子供の頃から食べるものにも一苦労する家で育った結果、どうにかして貧乏暮らしから脱却したいと教団に入ることを決意する。  学力や身体能力の他に、人望や学校からの推薦がなくてはならないため、いつでも本心を隠し猫を被って生きている。  最近、スラムに布教に出かけた際、出会った少女の苛烈な眼差しと言葉が忘れられずにいる。
まこと
 スラム近辺に住む人間の青年、物心付いた時から両親はおらず、日頃は靴磨き等の雑用をしながら生計を立てている。  他人に対して必要以上の興味が持てないため、名前と顔を覚えるのが絶望的に苦手だが、仕事ぶりや人当たりが良いので友人はそれなりに多い。
 しかし、本性は他人の目玉を集めるのが好きなシリアルキラー。  子供の頃、街で見掛けた青い瞳の少女に惹かれてからというもの、目玉を瓶に入れて収集するのが楽しくて楽しくて仕方がなくなってしまった。  魔族やその他の種族について興味はないが、出会う機会があれば是非隙を見て目玉を抉りたいと考えている。
しろー
 裕福な貴族の家に生まれた人間の若者、善良な両親と共に熱心な教団員でもある。  根っからの善人で神の存在はもちろんのこと、教団が行っている迫害や糾弾に対しても盲目的に必要なことなのだと信じ切っている。  異教徒はもちろんのこと、教団の行いに異を唱えるものですら認められず、学生時代は絶対的な正義感から悪意なく虐めを先導していた。
 現在、聖騎士団に入るべく鍛錬に励んでおり、悪しき魔族の侵攻から市民を守ることを信条としている。
烏丸 凛太郎
 普通の家庭に生まれた人間の若者、通っていた学校で最も優秀な成績を取ったため、教団側からのオファーが来て入会を決意。  教団の教えに背こうとは思っていないが、心優しい性根から迫害される他種族に対し同情的な視点を持つ。  ただし、過去にそのことが同級生にばれてしまい、一時期クラスの人気者から虐められていた経験がある。
 現在、神父として役職につけるよう修行中だが、最近庭に迷い込んできた魔族の子供をこっそりと匿っている。  両親とは進学の際に別居しており、王都の外れにある祖父が遺した一軒家で一人暮らし中、家族仲は良好。
甲斐
 全身をフルメイルで包んだ魔族の青年、常に炎を纏った愛馬に跨り、銀槍を手に数多の戦場を蹴散らしてゆく。  元は位も何もないただの傭兵だったが、当時即位していた魔王によって引き立てられ騎士となった。  派閥は強硬派で、魔族を統治し人類を滅ぼすべきだと考えており、新魔王ではなく魔王自身が王位に就くよう何度も進言している。
 身寄りもなく一人で生きていた幼少期に、親代わりとも言える魔族の青年に拾われて大切にされていたが、魔族狩りに来た人間から逃すために犠牲となってしまった。  以来自分の無力さを嘆き、懸命に鍛錬を積みながら恨みを深め、必ずや仇を討つべく、そして二度と悲劇が起こらぬよう愚かな人類を滅ぼすべきだと考えている。
鷹野
 ふらりと繁華街に現れては消える遊び人風の青年、正体は魔族だが人間に紛れて暮らしている。  若く見えるが種族的に歳を取らない種族らしく、既に千年単位で遊び呆けており、外見で判別できる人間との差異は地毛の色くらいしかない。
 当然一つの場所に長居はできず、日銭を稼ぐついでにスリや盗みを働いている。  人間や他種族に対して友好的だが、それは単に見ていて面白く、自分が生きる上で便利に利用したいがため。  魔界の派閥争いに興味はないが、現状を維持したい保守派、混沌派に近い考えを持つ。
蒼龍翔
 体の彼方此方に青い鱗を持つ魔族の青年、原形に戻れば家よりも大きな龍に変身する。  魔族の中でも龍は血族の繋がりを何より重んじ、その習性から卵の段階での刷り込みが可能で、闇市場で高値で取引されてきた。
 そして、例に漏れず奴隷商によって巣から連れ攫われ、従順な奴隷として数百年に渡りとある貴族の家に仕えていた。  しかし、年々取締が厳しくなるにつれ、処遇に困った現代の主人が薬で眠っている間に野山に捨てたため、行く宛もなく家族に会いたい一心で街へと戻ってきた。  奴隷として働く間、ずっと家畜以下の扱いを受けてきたにも関わらず、恨みや怒りといった感情とは無縁の穏やかな気性を持つ。  ただし、餌として常に"生きた人間の雌"を与えられていたため、とある市民に保護されるまでは空腹の度に一人殺していた。
雨咲
 薄く透けた蝶のような羽根を持つ妖精の青年、精霊と違い妖精には個体差があり、自由な自我の形成が許されている。  ただし、神々が作ったシステムとしての役割は残されており、自由意志よりも神の意思が何より優先されるべきだと強くインプットされている。  生物的な欲求や感情が欠如しているため、高位思念体である神への反乱や人間への無意味な介入をする気はなく、次元の違う"妖精界"と呼ばれる住処から人類の進歩を観察している。
 新魔王として取り立てられている新たな生命体について、自分たちと同じ存在ながら生物的欲求を元に進化する姿を興味深く思っているようだ。  最も重要な使命として、地上を星ごと処分するという最終プログラムが組み込まれており、教団の教えにもある"ラグナロク"を静かに待っている。
新田
 国王の甥として生まれた人間の青年、本来なら王位継承権は国王の弟である父が第一位だったはずが、魔族との戦闘に巻き込まれ死去したため第二子として引き取られた。  国政だけでなく剣技の腕前でも名を広め、皇太子を差し置き次期国王へとの呼び声も高い。  人柄が良く人望はあるものの、政治の裏や策略を練れない兄を蹴落としてでも自分が王になるべきだと考えており、教団との癒着に一役買っている人物でもある。
 教団の活動を全面的にサポートする裏で、王族が名実共に実権を握れる社会を創るため画策している。  魔族との相互理解は難しいと考えており、必要ならば種族問わず全ての他種族を殲滅できるよう、技術局に更なる兵器開発を促している。
 絶滅したとされていた有翼族の娘、偶然一族の村が襲われた日に森に出掛けていたため難を免れた。  焼け落ちた村の残骸を見て泣き崩れるも、自分のように生き延びた仲間がいると信じて旅に出たが、奴隷商の度重なる襲撃により傷付き消耗していった。
 遂に羽根の傷が原因で命を落としかけたとき、たまたま通り掛かった薬草売りの青年に保護され治療を受けたが、化膿し腐敗し始めた羽根は切り落とす他なかった。  だがそのことを気にしてはおらず、人里に紛れ込みやすくなったと楽観しており、恩返しがてら仕事の手伝いをしながら各地を回っている。
輝羅 瑠衣斗
 珍しい左右非対称の目を持って生まれた人間の青年、その姿から他種族との混血ではないかと疑われ、差別されてきた。  極平凡な家庭で生まれたにも関わらず、親に捨てられ、友人もできず、居場所もないままずっと孤独を味わった結果、"自分は魔族なのだ"と思い込むに至る。  その一環として欲望のままに盗み、奪い、殺すことに一切の躊躇はなく、自分の悪い行いはすべて魔族が悪であるとした社会のせいだと信じ切っている。
 住処を点々とする内、偶然主人公と行動を共にする新魔王と出会い、その秘密を知ることで何とか利用できまいかと一人画策する。  目的は、自分を救ってくれなかった人類、魔族、その他の全ての生きとし生ける者を滅ぼすこと。  偶然街中で見掛けた、自分と同じ左右非対称の目を持つ猫に懐かれ、餌や寝床の世話をしながら連れ回している。
花市
 普通の猫に憑依した高位思念体、新魔王を創り出した神とは別。  地上が出来上がって進化の終点が見えてきた頃、量子力学における波動係数を操作するプログラムを地上に施した。  これにより物事が何故起こり、どういう結果に結びつくという因果律に左右されず、一つの結果に行き着く未来を設定することが出来る。
 新たな生命体である新魔王が自ら選択し、導き出した"答え"に興味を示しており、試練のせいでどれだけの犠牲が出ようと憂いはない。  現在は自分の目で成り行きを観察すべく、新魔王と接触した一人の青年に飼われているふりをしながら同行している。
水町 奈月
 山奥の内陸湖に住む人魚族の青年、数百年前に群れを離れて一人で暮らしている。湖の水は海水であり、飲水に適さないため他の生き物が寄り付かない。  とても繊細な性格をしており、人間への敵視が強まる同族たちの姿を見ているのが辛く、誰にも行方を告げずに旅立ったのが切っ掛け。  種族的な特徴として、他のどんな種族であろうと異性ならば虜に出来る魅了の力を持ち、水の精霊を使役する魔法が得意である。
 ある日一人の少年とうっかり出会してしまい、咄嗟に「自分は神さまである」と言い張った結果、一人で足繁く通ってくる彼と少しずつ交流を持つようになる。  しかし彼には何一つ本当のことは教えず、あるときからぱったり姿を見せなくなった彼を心配し、嘘ばかりついてしまったことを深く悔やんでいる。
ちま
 山間部の遊牧民として生まれた人間の青年、自然と調和を愛する一族であり、古来より男子は独り立ちして商いをするのが習わし。  教団の教えに従うでもなく、逆らうでもなく、時流を読みながらその時々でもっとも中立的な立場を守ってきた。  選択した商いは薬売りだが、請われれば薬であれ毒であれ構わず商品として扱う。医師と関わる機会が多かったため、多少医術の心得がある。
 救いのない世界で苦しんで生き永らえるより、死にたいと願う者には安らかな死が与えられるべきだと考え、安楽死用の薬を勝手に処方する事もある。  数年前に偶然見掛けた有翼種の少女を助けたが、本人曰く「薬を必要としていたから売っただけ」としており、現在は彼女の労働力を賃金として受け取っている。
鴻 透
 とある魔族によって肉体に定着させられた精霊、年齢や性別という概念は存在しなかったが、作り主の好みが外観として与えられている。  体自体は若くして死んだ女性の物を使用しており、多数の術式で魔法を常に発動しながら辛うじて留まっているだけの人形のような存在。  感情や自我というものはなく、基本的に命じられたことを実行することしかできないが、逆を言えば命じられればどんなことでも実行する。
 元々は冷気を担当する精霊だが、肉体を得たことで神々との接続が断たれており、魔法も使えない普通の人間として魔族に仕えている。
シンヤ
 中流貴族の位にある魔族の青年、同族の中でもまだ若いが、類稀な魔法の才能に恵まれ伸し上がってきた実力者である。  しかし、人類に興味はなく、単に自分の才能である魔法の研究を続ける内に今の地位に就いただけの男。  道徳、倫理観というものを持ち合わせておらず、自分の知的好奇心や探究心、知識欲を満たすためならどんな研究でも喜んで行う。
 特に魔族や他種族で魔法を使える者、使えない者の違いについて大変興味があり、時々攫っては生体実験を繰り返している。  その一環で魔法が使えるようになるかと精霊を人間の体に移してみたが、結果は失敗、しかし消すのは惜しいのでそのまま助手として使役している。  現在は保守派として魔族の統治と、人類や他種族との折り合いを求めているが、統治する王が誰であるかは争点になく、争いのない社会で研究対象を存分に物色したいと考えている。
ケイゴ
 地上に干渉する高位思念体、創世記に関わった神の中の一人。  時間の概念をプログラムした神であり、地上が消滅する際に発生する莫大なエネルギーの消費を防ぐため、現在の地上を存続させたいと考えている。
 とある二人に時間を遡る魔法を授けて成り行きを見守っているが、味方と呼べる存在ではない。  因みに魔法によるタイムトラベルによる被害はなく、使用者以外に巻き戻ったことを自覚する事のできる生命体は地上にいない。  いくらでも過去を改変する事が可能であり、変えられた未来は観測されなかった世界として時空間に生じるのみとなる。
萩原 怜
 先祖代々王家に仕えてきた人間の青年、幼少の頃から城で皇太子たちと一緒に育てられ、彼らのために死ぬ事が義務付けられている。  嘗て城の女中に恋心を抱いていたが、想いを伝える前に第二皇太子の"お手付き"となり、着の身着のまま叩き出されるような形で彼女は解雇されてしまった。
 以降血の滲むような努力で第二皇太子の傍付きとなり、最も信頼できる部下の地位を獲得したが、本心では当時の出来事を微塵も許してはいない。  第二皇太子が王位に付けるよう尽力するも、真の目的は戴冠式の最中、最も達成感に包まれる瞬間の彼を誅殺することにある。
あまみやかなえ
 現国王と王妃の間に生まれた人間の青年、生まれつき体の弱かった王妃は一子を産み落とした直後に死没、国王は後妻を娶ることなく国政に尽くしている。  そのため、皇太子として過大な期待を寄せられていたが、当の本人は母親譲りの美貌と病弱な体で生まれついてしまった。  一方、幼少期に引き取られた従兄弟は非常に優秀であり、自分よりも遥かに国王の座に相応しいと考えている。  高い身分を持ちながらも自尊心が低く、他人への思いやりを忘れない気立ての良い人物、と周囲の人間に認識されている。
 敬愛する兄のような従兄弟の企みも、幼馴染である家臣の恨みも、気の合う友人である研究員の秘密も。  すべてを見抜いた上で何もせず、また気付いていることも悟らせずに、無知で無力なふりをしながら全ての責務や重圧から逃げている。
主人公
 魔族と人間の間に生まれた混血の少年、肉体の成長が遅く見た目は子供のよう、精霊の存在を知覚出来るが魔法は使役できない。  生みの親はおらず、道端で啼いていた赤ん坊を拾った獣人族の夫婦が育ててくれたが、現在では既に老衰でこの世を去っている。  黒目と白目が反転した瞳を持っており、顔を隠すために前髪を鼻先近くまで伸ばし、俯きがちに背を丸めながら世間を渡ってきた。
 陰気そうな外見とは反対に、育ててくれた夫婦の気概を受け継ぎのびのびとした生き様を好み、乱世であってもどこ吹く風と気儘な暮らしを謳歌している。  湖で出会った青年を異種族と見抜くも指摘せず、時の流れに気付かない彼が自分を人間の子供として接するのを面白がっていた。  ある日、人里離れた森の奥で出会った傍若無人な青年と、彼に文字通り振り回されていた喋るたぬきに同情し、仲裁に割って入ったのが事の発端。
 以降、彼らが旅をするための手助けをしていたが、とある神により波動係数を操作され 何 度 回 避 し て も 死 亡 す る 未来が決定している。
死因例
新魔王逃亡の手助けをしたとして、魔族の追手を差し向けられ死亡(ネオン)
逃げずに魔王を説得するよう新魔王に進言、出向いた魔王城で暗殺され死亡(神夢)
新魔王の逃亡を手助けした罪を、魔王に許してもらうため殺害され死亡(沼田)
過去に新魔王の手で仲間を殺された部族と衝突、折れた穂先が偶然突き刺さって死亡(花菱 正樹)
神との通信を試みるべく技術局に向かうも、機材が爆発し研究員諸共死亡(カルマユウジ)
立ち寄った酒場で偶然出会い、油断した隙に殺害され死亡(泰)
偶然教団員との戦闘に巻き込まれ、放たれた銃弾により死亡(波多野玉香)
協会での礼拝を勧められ参加するも、老朽化した協会の天井が崩れ落ち死亡(久原敦)
街中でばったり出会し意気投合、仲良く接する内に異常性に気付くも殺害され死亡(まこと)
新魔王と魔族を匿い、人外の目を持つ異教徒として断罪され死亡(しろー)
青年が匿っている魔族の存在を知り、教団に告げ口されることを恐れた彼に口封じのため殺害され死亡(烏丸 凛太郎)
新魔王を討伐すべく一騎打ちを仕掛けてきた騎士に、近くにいた他の人間共々焼き殺されて死亡(甲斐)
買い出しに出かけた際スリの犯人から身代わりとして悪役に仕立て上げられ、魔族としてその場で暴行を受け死亡(鷹野)
たまたま入った路地裏で、空腹に苦しむ青年を助けようとしたが食い殺され死亡(蒼龍翔)
新魔王誕生後も地上はろくな動きを見せず、管理に飽きた神々の審判が下され死亡(雨咲)
新魔王を亡き者にしようと企む王族の青年に嵌められ、誰より罪深い咎人として処刑され死亡(新田)
異種族であることがばれた少女を逃す手伝いをするも、暴徒たちの手によって敢えなく死亡(築)
新魔王と最も親しい友として、友人だと思っていた青年に殺害され死亡(輝羅 瑠衣斗)
久しぶりに会った友人が苦しんでいるのを知り救おうとするも、水中に引き摺り込まれそのまま死亡(水町 奈月)
旅先で落ち込んでいた際、「死にたい」と愚痴を溢したことにより毒殺され死亡(ちま)
主人に命じられた少女に攫われかけるも、必死に抵抗した結果力加減を間違えた彼女の手により殺害され死亡(鴻 透)
魔族と人間の混血という大変珍しい血筋を狙われ、研究材料として数多の残虐行為を受け死亡(シンヤ)
王都で国を挙げての戴冠式の真っ最中、復讐を目論む逆徒が仕掛けた時限爆弾に巻き込まれ死亡(萩原 怜)
魔族と人間の王族によるの和平交渉にまで漕ぎ着けるも、発狂寸前だった皇太子の自爆により巻き込まれて死亡(あまみやかなえ)
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mellowtyphoonpaper · 7 years
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シナリオに沿った撮影シーン
(尺は全行程の四分の一程度)
・冒頭、胸から剣を生やして倒れている主人公。
 夥しく流れ出る赤、反して青白い顔、露わになった異色の双眸が虚空を見上げている。
 ふと滲んだ視界に覗き込む人影が映るも、判別できないまま暗転して場面が切り替わる、プロローグ。
・尾ひれの美しい人魚が、湖の縁に座って誰かと話している。
 視線の先には、先程死んでいた主人公、小さな膝を抱えて彼の話を聞いていた。
 唯一露出している唇が仄かに笑みを浮かべ、楽しそうな二人の様子を描き出している。
・やがて話を終え、少し日が傾き始めたところで少年が立ち上がる。
 少し伸びた影、甲高いボーイソプラノが「じゃあ、今日はもう帰るね、また今度」と声を掛け、森の方角へと歩き出した。
 手を振りながら見送る人魚、だが、その距離が開くにつれ、浮かべていた淡い微笑みが淋しげな表情に変わる。
・重たいポシェットを揺らしながら、獣道を歩いてゆく少年の姿。
 辺りはだんだん暗くなる、明かりもない森の中でも躓く様子はない。
 しかし、ふと立ち止まった少年の耳に、ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人組の声が聞こえてくる。
・現場に向かうと、そこでは一人の青年が、人語を話すたぬき相手に怒鳴っている場面だった。  たぬきは何か言い返しているようだが、尻尾の付け根を掴まれ振り回されているため聞き取れない。  少年は隠れていた木々の間から顔を覗かせ、青年にたぬきを話してやるよう声を掛けた。
・だが、身形のいい青年は、心底不思議そうに何故かと少年に訊ねる。  曰く、この持ち方が最も安定しており、足元を見下ろすのは疲れるのに何故だと青年は言った。  少年は「そんな風に持ったらたぬきさんだって痛いでしょ、うん」と当然のように答えるも、青年はその理由では納得できなかったようだ。
・痛いのはたぬきであって青年ではない、青年になんら支障はない。  そう言って不思議がる青年に、少年は「自分がされて嫌なことをしてはいけない」と、自分が教わった通りの教えを繰り返し説いた。  初めは不可解そうにしていた青年も、一生懸命説得しようとする少年に興味を抱き、言われた通りたぬきを地面に降ろしてやった。
・不思議がっているのはたぬきも同じで、少年の言う理屈は不可解であり、いつも傍若無人な青年が彼の言うことを聞き受けたことにも驚いていた。  当の少年は二人の様子を気にせず、すっかり夜になってしまった森で「二人はお家に帰らなくて平気なの?」と訊ねる。  すると二人はバツが悪そうに顔を見合わせ、そっぽを向いてしまった青年の代わりにたぬきが家出中であることを打ち明けた。
・少年は二人がどこの誰かも聞かず、また事情を聞こうともせずに「じゃあ、今夜はここで野宿だね」と言ったかと思えば、手近な落ち葉や枯れ枝をせっせと集め始める。  ぽかんとしている二人に飛ぶ叱責、慌てて拾い始めた二人の手伝いも借り、あっという間に焚き火を灯した少年は地面に座り込む。  そしてポシェットから取り出した硬いサンドイッチを彼らに分け与え、水筒に入った水をそれぞれに飲ませた。
・青年は少年の様子を面白がり、不味いサンドイッチに罵倒しながらも一緒に食べ、思い付く限りにいろんな質問を投げ掛けた。  少年は何を言われても顔色を変えず、淡々と答えられる質問に答え���ゆく。  たぬきは二人の様子をじっと眺め、頭の上を飛び交う会話を黙して聞いていた。
・こうして一夜を共にした三人、獣避けの焚き火がぱちぱちと燃え続ける。  段々とズームアウト、鬱蒼と茂る森の木々を抜け上空に出れば、広大な森の左右が別々の大地に覆われていることが知れる。  西側は魔族の支配する荒廃した世界、東側は人間の支配する整然とした世界。
・そして、焦点は西側、常に薄暗い雲に覆われた魔族の国へと当てられる。  異形の生き物が行き交う平地には、土でできた原始的な建物がそこかしこに建てられていた。  その中央、唯一の人工物である巨大な城へとカメラはズームアップ、おどろおどろしい内装を余さず映し出す。
・豪奢な玉座は空席で、謁見の間には数人の人々が話し込んでいるようだ。  一見人間のような風貌をしているものが多く、瞳の色や髪の色、耳の形や尖った爪以外は普通の貴族のようにも見える。  中でも一際異彩を放つ、金髪の青年が周囲を睥睨しながら声を低め、居なくなってしまった魔王の所在について是非を問う。
・それまで、思い思いに話していた面々が押し黙り、やがて緩やかに波打つ髪の青年が指を組み替えながら笑う。  現在配下を総動員して捜索に当たらせているため、心配せずともすぐに見付かるだろうというのが彼の意見だった。  他の面々もそれに従い、一瞬苦々しい顔をした金髪な青年だが、釘を刺すようにすぐに見付けろと明言するに留めて席を立った。
・謁見の間から足音荒く出てゆく彼を、甲冑に身を包んだ騎士が一人追い掛けてくる。  そして、足を止めようとしない彼の背に続きながら、騎士は口々に現在の状況に対する見解を明らかにしてゆく。  一向に纏まりのない軍の統制、迫り来る人類側の脅威、脅かされる国境線の警備が限界であること。
・特に、新しい魔王についての言及は厳しく、即急な対応が求められていると嘆願する騎士。  力はあれど政治的能力はなく、それどころかまともな良識や判断力を持たない新魔王は脅威であり、人間との共存はお伽噺に過ぎない。  より強い国として纏まるためにも、是非また玉座に舞い戻ってほしいと騎士は訴えた。
・だが、漸く立ち止まった青年、改め元魔王の答えは否だった。  統治を面白く思わない反乱分子含め、王政に従わない者たちを従えるには力が不可欠。  判別のできない今の魔王だからこそ、裏から操りやすい傀儡に相応しい。
・何より、餌同然の人類が居なくなれば静かではあるが、食糧問題や様々な問題に直面する。  そのため家畜として飼い殺す予定はあれど、騎士の言うような政策を取る気はないことを堂々と宣言し、再び歩みを再開した元魔王。  今度はその背を追うことなく、元魔王の去った方向を見据える騎士の横顔で画面は切り替わる。
・森を出た一行は、山間にある集落へと足を運んでいた。  彼らに同行する動機について、少年は「だって、お兄さん何にも知らないから、分かんないまま悪いことしちゃうでしょ?」とあっけらかんと話す。  何より、流浪の旅を続ける少年に、旅の目的など元からなかったのだ。
(中略)
・旅を続ける新魔王は様々な登場人物と出会い、様々な人種、思想と触れ合うことで見識を広めてゆく。  同行する少年はもちろん、今まで手酷く扱ってきた周りの人々に対し、少しずつ心の垣根がなくなっていく。  途中途中の追手を切り抜けながら、段々と三人や登場人物たちとの間に絆が生まれ始める。
・そんな様子を静かに見詰める、左右非対称の目を持つ猫。  正体である高位思念体は新魔王の変化について、矮小な少年の存在が鍵になると考えた。  そこで、直接ではなく間接的に、少年の運命が死に向かうよう魔法をかける。
・そうとも知らず旅を続けた一行は、二度と追手を差し向けられずに済むよう魔王城へと向かうことにした。  この頃には少年も彼らの事情を知り、彼らもまた以前のような暮らしぶりより、楽しい旅をこれからも続けられるよう願うようになっていた。  だが、対談とは名ばかりで、待ち構えていた衛兵に取り囲まれ、乱闘の末少年の胸に剣が突き刺さった。
・この時、衛兵を殺さぬよう手加減していた新魔王だが、少年という歯止めがなくなったことで激昂。  魔王城諸共焼き払い、湧き出る怒りをぶつけるかのように暴れ続けた結果、止めようとしたたぬきの青年も友人もすべて失くしてしまった。
・慟哭、喉が裂け血が滲んでも止まない絶叫の最中、場面は一瞬の眩い光に包まれた後暗転する。  次に新魔王が目を覚ますと、元通りの魔王城がそこにはあった。  自分が殺したはずの元魔王を始め、たぬきの青年や衛兵の一人に至るまで誰一人欠けていない。
・新魔王は自分の身に何が起こったか、消えた少年の行方とその後についてたぬきの青年を問い詰める。  だが、たぬきの青年が告げたのは、そんな少年の存在は知らないということと、そもそも新魔王と共に城を出た覚えもないという呆気ない返事だった。  少しだけ打ち解けてきたその態度も、今は不審そうに冷ややかな眼差しで新魔王を睨めつけていた。
・混乱しながらも日々を過ごす内に、出会す場面場面に既視感を抱くようになった新魔王。  そして、とうとうある日、前回城を飛び出した日と同日にたぬきの青年を連れて森へ向かった。  胡乱そうな青年の態度に苛立ちながらも、何かを探すように当て所なく森を彷徨い続ける。
・そして、日の暮れかけた夕刻、森の奥から一人の小柄な少年がやってくるのを見た。  新魔王は歓喜し、少年に向かって親しげに話し掛けながら近寄るも、やはりたぬきの青年は怪訝そうな顔をしている。  同様に、再会を喜ぶ彼に抱き締められた少年もまた、彼のことを不思議そうな顔でじっと見上げているのだった。
・「初めましてお兄さん、どこかで会った?…ごめんね、俺、人の顔を忘れたりしないんだけど…」と、不思議そうに首を傾げる少年。  新魔王は漸く、自分だけが以前の記憶を持って時間を遡ったことを確信し、忘れられてしまった事実に生まれて初めての悲しみを覚えた。  しかし、やはり少年は同じように振る舞い、以前と同じ不味くて硬いサンドイッチを三つに分けてくれた。
・そこで新魔王は強引に二人を連れ、再び旅をやり直すことを決意した。  向かった先々で出会う人々も彼らのことを忘れていたが、再び訪れた楽しい時間の前には些細な問題だった。  だが、新魔王の接し方が以前と違うことで、ほんの少しずつ前回との"ズレ"が生じ始めていることに気がつけなかった。
(中略)
・やがて一行は、魔王城に赴き掛け合ってみようという、前回と全く同じ案が出された。  しかし今度は新魔王が確固として頷かず、絶対にだめだと言い張ってその案を却下することとなった。  渋る二人を何とか説得した新魔王は、これで少年やたぬきの青年が死なずに済むと安堵していた。
・だが、前回と同日の同じ時刻、食料の調達のため立ち寄った人里で、住人たちに追い回される少女を見掛けた。  すぐさま助けに行こうと駆け出した少年の背中に、あの日の残像が重なって見えた。  加勢に向かった二人の目の前で、大勢の大人に足蹴にされた少年が襤褸雑巾のような風体で転がってくる。
・前回の記憶と今回の記憶が入り混じり、怒りに支配された新魔王は暴徒諸共地上を破壊、世界ごと消滅させんとばかりに暴れ狂った。  他の群衆と同じように転がった二人の遺骸を前に、喉も割れよとばかりに叫ぶ新魔王の姿があった。  悲愴な背中が苦しみながら丸められ、小さく蹲った彼の視界は血で染め抜かれたどす黒い大地しか残らなかった。
・そして、再び気が付くと新魔王は魔王城の私室にいた。  やはり前回と同じく、前々回のことは愚か前回のことも覚えている人物は誰もいない。  これで漸く新魔王は決心し、どうにかして小さな友人が死なない未来に行き着くよう画策を始める。
(中略)
・何回、何十回、何百回と同じ時間を繰り返したが、一度として少年が死なずに済む未来はなかった。  中には少年と会わず、遠くから彼の様子を見守るだけにしてみたこともあったが、それでも彼の身には不幸な死が降り掛かる。  少年以外の人々と打ち解け、仲良くなり、各人の抱えた難題を解決したこともあったが、世界がどんなに変わったところで少年は必ず死ぬ。
・やがて新魔王は疲れ切り、明日死ぬ予定の"今の"少年に全てを打ち明け、自分が今までに様々な手を尽くしたことを打ち明ける。  黙って聞いていた少年は、やがて小さく微笑ってお礼を言うと、いつもの淡々とした様子で「まあ、それでいいんじゃないかな」と軽く言ってのけた。  忽ち激高した新魔王は少年の襟首を吊し上げ、どうしてそんなことを言うのかと怒鳴りつけるものの、苦しそうな顔をしながらも少年は笑う。
・「仮に明日死ななかったとしても、いつかは死んじゃうんだ。多分、それが明後日でも明々後日でも、五十年先でも絶対に納得できる死に方なんてできないと思う」  「こんなに毎日楽しいんだから、百年でも三百年でも生きていたいよ、俺はね」  「でも、いつかは死ぬ。それを、意地悪な君が一生懸命食い止めようとしてくれてたなんて、これ以上幸せなことってないんじゃない?」
・それでも渋る新魔王に、少年は過去を振り返るよう促す。  少年には一度きりだった出会いや思い出が、新魔王には幾通りも重なって思い出された。  少年は過去を振り返り、相変わらず抑揚のない口調で「俺は今日まで楽しかった、きっと、明日も楽しい一日になると思う。…君もそうなら、俺との"昨日"をなかったことにしないで」とお願いをした。
・翌日、少年は死んだ。  平和になり誰にも命を狙われなくなった世界で、老衰という避けようのない終わりを迎えた。  魔王は黙って、眠っているような少年の死体を見詰めている。
(中略)
※補足
中段の部分は全て未定、一度目の回でのみ登場人物が決められた設定のまま登場する。  個性的なキャラクターと、ひとりひとりの持つ過去や企みをふんだんに盛り込み、各人の思惑が交錯する様を描いてゆく予定。  二度目以降は毎回少しずつ展開が変わり、または変わらず、主人公以外の登場人物がどう動くかで物語が左右される。  敵対していた関係が改善されたり、死なないはずの人物が死んだり、当初の目的とは掛け離れた終点に行き着く場面も存在する。  最終的なシナリオでは主人公である少年自身の考えが明かされるも、それによって登場人物たちが、また新魔王がどんな選択をするかは全くの未知数。
上映期間中何度足を運んでも、同じエンドを迎えることは一度もない。  ブルーレイディスクで全編をセットしたスペシャルエディションを発売予定、未公開シーンや演じた出演者たちのコメントシーン、NGシーン集も入った豪華な内容となってお値段(ry
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