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夢��話
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mori-xxx-blog · 5 years ago
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水無月
風はある。出窓とベランダから滑り込む風には夏の匂いが混じり始めた。
空気は昼間の熱を大きなスポンジに吸わせ、じわりじわりと押し出して後を引くような熱気をこんな時間帯まで寄越してくれる。そこにほんの少しの夜気を乗っけて、まだ真夏の夜のねっとり、とした不快感はない。いい仕事をするじゃないか。
昼間は何をしたっけ。今の仕事は、正直、好きじゃない。 弥生までの自分はどこにいってしまったのか、あの熱量と「私が」という意気込みはまるで古い映画のワンシーンのように少し褪せてみえる。
今の自分には「ピタッと」がきていない。小さいころ漫画で読んだ「何か」と「何か」がピタッとかみ合う瞬間。「ピタッと」がくると脳はするすると回転し始め、あんなことやこんなことを思いつき始め、十指がキーボードを軽やかに滑る。そんな瞬間が、まだきていない。
卯月は地獄だった。「期待しているよ」、そんな言葉に踊らされつつ、一部のお世話になった方々からは「お前の頭じゃ絶対に足りないからな」と言われ、「お前ができなきゃ、他にできる奴ぁいないよ」とお世辞を受け取り、いざ降り立った場所は大都会の砂漠、ジャングルの草原、たくさんの背の高いものに囲われまるで覆いかぶさるような重圧のなか��一人ポツンと立ちすくんでしまった。
皐月は皐月でこれも地獄だった。1か月経ったのにまだあれもできない、これもできない自分が恥ずかしかった。じゃあそんな自分を変えるために己は何をやったのか?何もしていない。ただ起きて飯を食い、会社から支給されたパソコンに向かい、参加した会議の議事録をとって、パスされた調べ物やExcelの修正をパタパタとやって、片手間でTwitterを開いては人の動きを見る、他人と比べてあぁ自分はダメな奴だ、頭の悪い奴だとネットでの自傷行為に勤しんでいると時間が過ぎている。お給料泥棒もいいところだ。
可哀想な自分を「可哀想に」と慰めている孤独な大人の自慰行為ほど滑稽なものはなかろう。ただ、自宅で一人仕事をしていると滑稽だと思うひとはまわりにいない。自分を滑稽だと思っているのは自分だけで、本当はもっと周りから滑稽だと思われたい。そうすればわたしは変わるのだろうか。
諦めてもいいだろうか、価値のないこのわたしを。
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