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【七月のご挨拶】
猛暑、早い梅雨明けかと思えば、 逆戻りしたような豪雨が降る日々。 初蝉も戸惑ったようで、 今年は鳴き始めが遅かったですね。
暑気払い様々。 夏は瑞々しい果実が 身近にたくさん出てきますから、 果物で水分やビタミンを補給して 朝食やデザートにされている事と思います。 旬の桃や枇杷、葡萄、西瓜。 先日は野生のヤマモモをいただきましたっけ。 南国からくるパイナップル、貴重な茘枝や竜眼。
果物は、生でいただく以外に、お料理に使う事も。 よく脂のついた豚肉の三枚肉をたたき、 多種多様な下味を付けてから生の茘枝を載せて、 手で茘枝をつぶすようにして肉に良く揉み込み しばらく漬けます。茘枝の酵素が豚肉を 柔らかくして、爽やかな風味を添えるのです。
この肉をチャーシューのように焼き上げます。 茘枝の種を取り、中に肉餡を詰めて 衣を付けて揚げ、甘さを効かせて 黒酢でからめた料理も。黒酢茘枝肉という料理。
台湾では、発酵させたパイナップルの 漬け物があり、瓶詰めで売られています。 発酵パイナップルと白い苦瓜を、 鶏肉やスペアリブで蒸しスープにすると、 夏向きで滋味ある料理となります。 苦瓜のほろ苦さとパイナップルの甘酸っぱさ、 相反する味覚が火の力で 巧みに溶け合い融合する。 肉が柔らかくなり、美味しいスープになります。
暑い一日を過ごした後、疲れた身体。 ほっと一息してから、食をすすめる力も 果物にはあるのですね。
二〇二五年 七月暑中 中国茶会 無茶空茶 黄 安希 拝
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【六月のご挨拶】
雨の気配がやってきました。 梅を黄色く色づかせるこの雨を、中国では黄梅子雨とも呼びます。 この時期は梅しごとをなさる方も多いでしょうね。 教室でも、毎年六月には点心に梅を氷砂糖で煮たものをお出しします。少し時間はかかりますが、きわめてシンプルで何も目新しい事もないのですが、作り方をよく聞かれますので、ここに記しますね。
大ぶりの青梅一キロを水洗いして、ヘタをとり、竹串で梅一つにつき、5.6箇所に穴を開けます。 あまり穴を開けすぎると、煮る時に崩れやすいのでほどほどに。
穴を開けた梅をステンレスの大きなボールに入れ、粗塩を満遍なくまぶします。梅を入れたボールを10回くらい上下に振り、塩をなじませて少し梅に振動を与えて、タネ離れをよくします。この時、梅がボールにあたる音が犬の鳴き声そっくりなので、楽しく作業ができるでしょう。
小一時間、塩をまぶしたまま放置して、その後、粗塩を洗い流します。
大鍋に水を張り、洗った梅を入れて、極弱火で静かに煮ていきます。 沸騰直前で火から下ろして静かに静かに湯をきります。身が崩れないように。また新しい冷水を入れ、極弱火で煮ます。沸騰直前で下ろす。
二回茹でたら、大鍋をシンクに置き、極弱い水流にして、梅に直に水があたらないように加減して、六時間くらい水をチョロチョロ流しながら、渋抜きをします。
水を全て切った梅を一つずつ、そっと綺麗に洗った鍋に戻し、 一キロに対して600グラム程度の氷砂糖を上に乗せてしばらく放置します。
静かにヒタヒタと水分が上がってくるので、火にかけて、極弱火で沸騰直前まで煮ます。白いアクを丁寧に取り除いてください。 沸騰の手前で火を止め、そのまま冷めるまで蓋を閉めて放置します。
冷めたら底の広い密閉容器に梅を崩さないように一粒ずつ並べて、シロップをかけて冷蔵庫にしまいます。
冷たく冷やした青梅の甘露煮。 清涼感を呼び、梅雨の季節を乗り切るのにぴったりでしょう。 緑茶、烏龍茶、茉莉花、いずれにも合います。
二〇二五年 芒種 中国茶會 無茶空茶 黄 安希 拝 http://www.muchakucha.net/
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【五月のご挨拶】
新緑が美しい季節となりました。 枝が腕を開いて若葉が光り輝き、 木々の下を歩くと良い香りがします。 花の春も良いですが、木々の葉っぱ、 これも生命みなぎる花の内ですね。
茶葉の中にも花があるのです。 茶葉を摘み取り、太陽に当てて軽く揉むと、 花のような香りが出てきます。 日光萎凋、揺青という烏龍茶の工程で、 摘みとったばかりの時にはなかった香りが生成されます。 ジャスミンや梔子、蘭を思わせる清々しい香り。 茶の中に見えない花が香りとなり 立ち現われる瞬間です。この香りを固定させ、 お茶として仕上げていくのが烏龍茶の技法です。
春に訪れた広東省鳳凰鎮では、 早くも初夏の日差しの元、 鳳凰単叢の日光萎凋が行われていました。 あたりに広がる芳しい花香に誘われたのか、 てんとう虫も寄ってきて うっとりしているようでした。
二〇二五年 五月立夏 中国茶会 無茶空茶 黄 安希 拝
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【春分のご挨拶】
早いもので、もう春分近くとなりました。昼間が長くなり一雨ごとに膨らむ木々の新芽、花の蕾。 明るい予感と成長がはじまるこの季節がとても好きです。
中国では黄砂の飛来などもあり乾燥が著しくなるため、努めて潤いを取るように言われます。 また休眠していた冬から、春になって季節のエネルギーが徐々に満ちていくのと呼応するように、体内に生まれ持った個々の生命エネルギーを補充する必要があり、冬の間、停滞気味であった腎を養います。腎を養う代表的な素材として、豆があげられます。 中国では、この時期に大豆や黒豆を食べて腎を養い、梨で潤いをとって喉や肺を潤すように勧めます。 体内の水分には体液として血液も含まれており、血液が足りないと 白髪が増えたり抜毛したりします。また腎が弱ると難聴、目がかすむ、頻尿などが起き、活力が奪われます。老化が進む可能性があるわけですね。 ここをうまく食生活でカバーする事で身体を整えるわけです。
季節の推移に逆らわず日々を過ごし、自分自身で無理なくメンテナンスを行えたら良いですね。
新茶の季節も近づいています。 新芽の再生エネルギーを取り込む事ができ、潤いをもたらすお茶を楽しみましょう。
二〇二五年 春分 中国茶会 無茶空茶 黄 安希 拝
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【二月のご挨拶】 本日、二月十二日は元宵節。
一月二十九日の巳年春節から 十四日目にあたり、満月の宵です。 春節は新月0として数えますので、 十五日後が満月になりますね。 この月は、元宵、あるいは 上元と呼んで 一年要めの満月となり、 願をかけたら良いと言われています。
わたしも、昔からこの春節後の満月の日を、 特別に思っていました。思い煩っていた事ごとを この時には特別なら新規一新の思いで、 いざ、届け、或いは散れ。 とばかりに毎年祈っていたものです。
元宵の月は、年により、早い夕方から上がる事があり、 低い位置に大きく見えます。 立春が過ぎた頃、日がだんだんと長くなり、 望洋とした月が明るい空に満々と登っている様子。 春が近づいている感じを強めます。
物事万事善かれ、と願い 日が長くなり、明るさを増す事を喜ぶ。 一年の萌芽を感じます。
一ニ三四五六七 万木生芽是生日
二〇二五年 元宵 中国茶会 無茶空茶 黄 安希 拝 http://www.muchakucha.net/
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【一月のご挨拶】
新しい一年のはじまり。 大阪は晴天が三日続いて 晴れ晴れしています。
歳神様が其処ここに福音をもたらされているようで、 街を散歩するだけで清々しい気分になるのです。
今年はどんな年になるだろう。
一年が改まる事で、意識せずとも 自分の立ち位置は確実に一歩進んでいます。 目標を定め走り出す前に、すでに前進しています。
前に進む、ということは、 わたし達全てにそなわった自然の摂理。
天から落ちた水が、山の頂きより流れはじめ、 やがて大河に合流して海に向かう。 決して逆流しながら、山に戻る事はないでしょう。
四季の流れは螺旋を描くような人生の旅と共にあります。 前進しながら、何を作り出し、何を与える事ができるのか。 また何を捨てる事ができるのか。 今年も学びながら生きていきたいと思っています。
二〇二五年 乙巳新春 中国茶会 無茶空茶 黄 安希 拝
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【十二月のご挨拶】
閉塞成冬。 空低く鉛色の雲が天を覆い、冷たい空気が降りてきました。 これから冬至までの間、太陽の力が徐々に弱くなります。 師走という事で何かと気忙しい日々となりますが、 この時期に本来大切にすることは「休養」です。
太陽と共に物事を進める力も落としていき、 自らの中に余力をためておく。 重要な決定や大きな変化は避ける。
暗い天気の日には体力を温存し、気分が良くなる事をします。 まず、暖かくすること。 部屋の温度や灯り、好きな着心地の衣服。 お茶を入れたり、美味しいものを食べましょう。 みかんを食べるのも良いですね。 柑橘には理気作用と言って、気分を高める効果があります。 こたつにみかんや柚子湯などの昔の過ごし方は、 理にかなっているのです。
冬至の日はゼロ地点。 一旦休止の日です。 心静かに感謝して過ごします。
翌日から一陽来復。 運気が良い方向へ転換していきます。 一年の大きな変わり目。 何事も楽しく味わっていきましょう。
万福!
二〇二四年 大雪 中国茶会 無茶空茶 黄 安希 拝 http://www.muchakucha.net/
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【十一月のご挨拶】 先月はマレーシアへのお茶旅をしてきました。 中国茶を学ぶ中で、中国、台湾以外に 華僑の人々が移住した周辺の国々にも興味が出てきます。 中華文化との融合の様子や、その地に根付いた方々が どんな生活をし、茶文化はどのように浸透していくのか。 そのような視点から、過去には ミャンマー、スリランカを訪れました。
今回のマレーシアツアーは、マレーがはじまったマラッカ、 そしてイギリス人によるティプランテーションが 作られたキャメロンハイランドへ。
十四世紀にマラッカ王国建立と共に、 明の皇帝の命を受けて、鄭和が大船団を組んで マラッカに到達します。マラッカ王朝と明との間に 交易が始まり、初期華僑が大量にマラッカに流入します。
彼らは五つの地域からの人々で、 福建、広東、潮州、海南、客家。 茶産地の民、茶を持つ人々でした。 マレー人女性と婚姻した彼らは プラナカンと呼ばれるようになります。
プラナカンの人々は、交易によって 巨額の富を得た人も多く、その生活は豪奢で、 子孫を繁栄させ、南方の明るい色調に 中華の美意識が合わさった独自のスタイルに進化しました。 その中においても喫茶の風習はなくてはならないものとして、 故郷のお茶��船に積まれ持ち込まれました。
マラッカはその後、ポルトガル、オランダ、イギリス、 日本、再びイギリスの支配を受けていきます。 十九世紀に錫鉱山の発掘のため、 新たに大量の中国人労働者が入るようになります。
こうして、多民族多文化の中で生きていく 中国人の社会が営まれる中、文化や習慣は 昔ながらの感じが残される事が多く、茶文化もその一つで、 今ではあまり見られないタイプのお茶が 現在も飲み継がれていたりします。 また、肉体労働者が大量に流入した事から、 水分補給や熱帯のマレーの熱病などを予防するために、 安価で毎日がぶ飲みできるようなお茶がたくさん消費されました。
キャメロンハイランドは、イギリス統治時代に イギリス人が1800メートルの高地に切り開いた プランテーションで、紅茶が欠かせなかった イギリス人の熱量のたまもの。 彼らはプランテーションとゴルフ場を建設し、 イギリス風のホテルの中でアフタヌーンティーを楽しみました。
現在、マレーシアの紅茶シェアの95%を担う プランテーションはBOHという会社で、創業は95年目。 BOHは福建省の武夷山を表すBOHEAから取られた名前です。 イギリス人は茶を巡り、清国とアヘン戦争を引き起こすほど 紅茶の魅力に憑かれ、手強い熱帯雨林にプランテーションを。 その底に沸るお茶への徹底した自負を感じたのでした。
旅の最後には、マラッカ海峡に沈む夕陽を見ながら お茶を淹れました。マレーシアの歴史を 一杯のお茶にも感じとるような旅の幕切れとなりました。
二〇二四年 立冬 中国茶会 無茶空茶 黄 安希 拝
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【十月のご挨拶】
秋虫の声、豊かな実り 美しい夕焼けとともにつるべ落とし いよいよ秋本番ですね
秋のお茶は味わいが濃く深くなることで知られていますが、 人の身体もまた、その濃厚さを喜び、 気温の低下にしたがってさっぱりしたたものより こっくりしたものが好ましくなってきます。
湯を注ぐと湯気がたちのぼり、 茶葉を落とすとかすかな発酵の香りの奥に、 物事が少しずつ変化していく様子が感じられます。
溌剌とした活動的な緑の時期を経て、静かな休眠のサイクルへ。 秋から冬は、物事を興すスピードを 少しだけ緩めて良い頃だと思います。
天高く爽やかな天気があれば ただただ、それを喜び享受したいと思う次第です。
二〇二四年 旧暦重陽 マレーシア キャメロンハイランドにて
中国茶会 無茶空茶 黄 安希 拝
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【九月のご挨拶】
仲秋の月がそろそろ見られる頃 今年の秋はにわかに降る大雨や雷も連れ、 まだまだ暑い日差しの中を歩んでいます。 いちじくや梨、葡萄、栗など 秋の果実が出回りはじめて、そこを見ると 実りの秋の最中を実感します。
仲秋節には月餅が欠かせませんが、 日持ちするお菓子であるという事と、 一つを切り分けて分かち合って食べるという事が特徴です。 かつては各家庭で作ったものですから、 皮や餡のバリエーションもさまざまで 家庭の風味に地方色が多種多様に合わさったお菓子でした。
北方では、五仁と言って、松の実、南瓜の種、 胡桃、ひまわりの種などナッツを さまざまに組み合わせた餡が有名で、 他には棗餡、山楂餡、小豆餡など。
蘇州地方では、皮を白く何層にも重ねた パイ生地のように作り、中身は薔薇の花をすりつぶしたりします。
雲南省では名産の雲南火腿や肉の脂身を入れた月餅。 広東省では蓮の実に家鴨の塩漬け卵を入れて ねっとりした口溶けに留意して仕上げ��す。 他にも胡麻餡や野菜や梅干しを入れたものもあり、 最近は餅米の皮を使った柔らかいお餅のような月餅も。
和菓子に通じる味わいの小豆月餅などは 日本でも人気がありますが、見ていると 甘辛ミックスの地方色豊かな月餅は好みが分かれるところです。
月餅に合うお茶はたくさんあって、濃厚な風味を味わうには お茶は欠かせません。
渋みが効いた鉄観音、深く濃厚な熟成したプーアール茶、 爽やかな凍頂烏龍茶、口当たりも秋を感じる 菊花茶や桂花茶などが月餅に合うように感じ、 何故か紅茶はお菓子の伝統的な風味と合わないように思い わたし自身は余り合わせませんが、 みなさんは月餅を食べるならどんなお茶が良いでしょうね。 月を見上げながら、好きな組み合わせを 探してみるのも楽しい事ですね。
二〇二四年 仲秋 中国茶会 無茶空茶 黄安希 拝
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【八月のご挨拶】
立秋、送り火 朝晩の風にもわずかずつ、 季の移りを感じます。
厳しい暑さと冷房で夏枯れしたような身体に 一服の岩茶。 丹念に炭火を使って焼かれ ミネラル豊かな茶が染み渡るのを、 身体で感じる事ができます。 お稽古でも八月には冷茶は用いず、 温製のお茶を出し、点心もスープや蒸し物を出します。
中国においては滋味豊かな鍋料理は 残暑からはじまり、冷えた内臓には熱いお茶を飲み、 体内を循環させて養生に務める習慣があります。 晩夏の手当が年末まで繋がるといいます。
未病、疲れをためないように、 食養生で季節にフィットさせて行く知恵を 取り込みたいものです。
二〇二四年 八月 処暑 中国茶会 無茶空茶 黄 安希 拝
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【七月のご挨拶】 梅雨明けきらぬうちより四十度近い気温。 夏は猛々しさを増しているようですね。 暑さに閉口しながらも、夏の風物を見るにつ���、 懐かしさと共にのんびりした気分が漂います。
きっと夏休みの記憶というものは 生涯忘れないものなんでしょう。
お茶の席で考えると、 いくつか夏を楽しむ工夫があります。
一つ、組み合わせを簡素にする。 暑い季節には複雑や精緻なものは 余計です。色数も少なく、道具も少なく。 まずは空間が風通し良いようにします。 また重いものより軽いものがこの時期良いですね。 重いと疲れるからです。おもちゃみたいなものを 組み合わせるのもこの季節ならでは。
二つ、水を意識する。 涼しい水音がする金属の道具、 水の濡れた景色が視覚で見えるもの 素焼きの焼き物、板など 濡れた感じが夏は嬉しいものです。
三つ、お手前にうるさいことを言わない事。 気楽に楽しく過ごせる、夏はそれが本意に思います。
お茶の先生も夏休みに入ると致しましょう。
二〇二四年 小暑 中国茶会 無茶空茶 黄 安希 拝
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【六月のご挨拶】
ころころと固い青梅の季節になりました。 梅を黄色に熟す雨、梅雨は中国から来た言葉で、 揚子江流域で長雨が続くこの季節に梅が熟す事から。 黄梅雨とも呼びます。 また長雨でカビが生えやすいため 黴雨とも呼ばれたそうです。 しかし、雨天続きでも、梅のすかっとした芳香をかぐと、 胸が晴れるような気持ちがするものです。
ジャスミンや梔子など清々しい香りの白い花も咲き、 それらはお茶に良く合うため、 お茶に香りつけをしたりする以外に、 お茶の芳香を花の感じになぞらえるように酸化発酵させ、 茶の中にあたかも花を見るような茶作りも行われます。 蜜蘭香や黄枝香、夜来香など。
桜や桃など春咲く花は美しいけれど、 風味はほろ苦いものが多く、茉莉花や梔子、金銀花などは 爽やかさの中に冷たいバニラのような味も感じられ、 口当たりが涼やかでみずみずしいのが特徴。
まもなく陽の力一年で最も強い夏至へ向かう時期。 花とお茶の香りがなんともうまく巡り合わせ、 涼と英気を与えてくれます。
二〇二四年 芒種 中国茶会 無茶空茶 黄 安希 拝
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【五月のご挨拶】
一雨ごとに新緑が勢いを増して、 景色がすっかり変わっていきます。 黄緑から深緑のあらゆる緑のグラデーション。 キラキラ光る若葉が木漏れ日を反射し、 吹く風にも良い香りがします。 まさに薫風。
春が終わり夏が生まれるこの時期は、 お茶も柔らかな新芽から しっかりと開葉した葉へ成長します。 小さな小さな新芽から作る緑茶の時期は終わり、 成熟したしっかりした茶葉となります。 その茶葉が山の空気と太陽、風を浴びて 萎凋と発酵を促され、新たな力を持ちはじめます。 花の香りや果実の香りが中から生まれ、 うっとりするような変化を遂げていきます。
そうして作られた青茶や白茶。 季節の推移をどうぞその中に 見て感じてください。
二〇二四年 立夏 中国茶会 無茶空茶 黄 安希 拝
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【四月のご挨拶】
寒食の朝に起こった台湾の地震。 被害に遭われた皆様におかれては 心よりお見舞い申し上げます。 今は何もできませんが、心を寄り添い 見守りたいと思っています。
桜の開花とともに 新茶が到来しました。 毎回、この季節は特別な感慨があり、 まさに春の息吹を形にした新芽が お茶になっている姿、心が躍ります。 深く香りを吸い込むと 新鮮な冷たい山の空気と緑の香り、火の気配がして、 産地の人の手から手へつながり、 今年も新茶をいただく事ができる幸せを感じます。
いち早く皆さんにも味わっていただきたい。 いつしか新茶の節目は一年の中で 最も大切な時間の一つとなりました。 茶道具もわくわく待っているかのように見えるのです。
二〇二四年 清明 中国茶會 無茶空茶 黄 安希 拝 http://www.muchakucha.net/
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【三月のご挨拶】
啓蟄を過ぎて、まだまだ寒さは残りますが、 陽の光は春の気配。 一月、二月と踏み固めてきた道、 三月は一気に下から生命の息吹が地表に出、 春は足元の大地からはじまります。
たんぽぽのように大地にぴったりくっつくように 葉を伸ばす小さな低い草が知らない間に表れ、 桜の幹は足元から桜色に変わっていきます。
自然に倣えば、コートやマフラーをまだ手放せなくとも 足元に軽やかな春の気配がある人。 白いスニーカーやベージュのパンプスをはいて 背筋を伸ばして歩いていく姿。 とても素敵に見えます。
二〇二四年 啓蟄 中国茶会 無茶空茶 黄 安希 拝 http://www.muchakucha.net/
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【二月のご挨拶】
新年快楽 万事如意
二月十日は春節 旧暦のお正月です。 今年は立春の後に春節を迎える事となりましたので、 比較的暖かな春節になるようですね。
中国の春節について、ご紹介します。 年度が変わる新暦のお正月より、春節の方が 改まる、という感じは強く、 干支は兎から龍に切り替わります。
大晦日は除夕と言って、家族親族が集まり 賑やかに食卓を囲みます。 水餃子を手作りしてみんなで包んで食べますが、 水餃子には各家庭のこだわりがあり、 皮の厚み、餡の風味がうまく融合して、 つるつるといくつでも食べられるのが美味しい餃子。 たれをつけなくても味が整っているのが 美味しい餃子なのです。
他にもさまざまなご馳走が並び、 縁起を担いだ立派な魚料理は(魚の発音は余に通じる) 年年余余、いよいよ運気が良くなり 余裕ができますように、と願いから。
客間には吉に通じる金柑の鉢植えや 香り高い梅の花、水仙を飾ります。 先祖を祀る台は清めて果物や花、香を立てます。 玄関には、縁起の良い言葉を赤地に金で装飾した 細長い紙に書いた春聯を一対で貼ります。 印刷されたものもありますが、 手書きのものは、家族の達筆の人が腕を振るい 気の利いた文言を書きます。 各門戸に貼られたこれらの春聯の 様々な吉祥の言葉を眺めながら、 散歩するのも楽しいものです。
赤い紙で作った斗方は四角い紙に 縁起の良い文字や絵を書いたもの。 菱形に窓や壁に貼ります。
新年には来客もあります。 子供だけでなく目下の人には、 紅包という赤い小袋に入れたお年玉を渡します。 来客には、蜜銭といわれる 甘い砂糖漬けのドライフルーツや 棗、落花生など吉祥果をたくさん出して 食事まではお茶を入れて談笑します。
春節の期間はとにかく、ご馳走を集まって食べる、 という事が一番大切ですから、 女性も男性もかわるがわるキッチンに立ち、 それぞれが得意料理に腕を振います。 誰かが作った料理が卓に置かれたら、 間髪入れずみんなが箸を伸ばして味わい、 その料理を作った人を褒めそやします。
春節の間は喧嘩や揉め事は御法度。 一年が台無しになるからです。 温かい和やかな春節風景。 最近は気分転換に海外や国内旅行に 行く人も増えていますが、心の奥底には、 昔ながらの春節の温かい光景は 決して消える事はありません。
十五日間は春節期間。 十五日目は大きな満月が出ます。 この日に食べるのが元宵という白玉団子。 湯気を立てるこのお団子を食べて お正月行事は終わりとなります。 今年は二月二十四日になります。
二〇二四年 春節 中国茶会 無茶空茶 黄 安希 拝 http://muchakucha.net
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