Tumgik
noah-choco · 4 years
Text
君つむ。8話
「失礼しまーっす」
保健室のドアをガラッと引く。
「あれ?時永いないの?」
保険医の時永はどうやら保健室外へ出向いているらしい。
「うーん、どうしよう?」
「時間はあるし、ちょっと待ってみるか?」
「…あ、そうだ。」
レイくんは何かを閃いたらしい。一つだけ使用中の保健室のベッドの方へ向かう。
「冬くん、起きてる?」
いきなり、ベッドのカーテンの向こうへ話しかけるレイくん。
しばらく間があり、カーテンが少しだけ開いて、どこか浮世離れした雰囲気の男の子が顔を出した。どうやら中等部の生徒のようだ。
「起こしてごめんなさい。時永先生、どこに行ったか知ってる?」
レイくんがそう尋ねると、冬くんと呼ばれていた少年は、どこか気怠そうに返事をした。
「…グラウンド」
「すぐに戻るって言ってた?」
「…怪我の手当て」
「それなら、そんなにかからないかな」
グラウンドでは野球が行われているはずで、どうやら試合中に軽い怪我をした生徒がいるようだ。
「冬くんありがとう」
「…いいよ」
冬と呼ばれた中学生は、それだけ答えて、ベッドのカーテンを再び閉めてしまった。
色々と気になることはあるが、さすがに小声でも本人に聞こえてしまいそうなので、我慢する。
「あ、噂をしてたら、戻ってきた」
保健室にはグラウンドの方に直接出られる出入口があり、レイくんはそちらに小さく手を振っている。
「あれ、后さん、どうしたの?」
「ほんとだ、后じゃん」
時永の後ろから、クラスメートの杉藤準が顔を出した。
「あれ?怪我したのってジュンなの?」
「いや、俺はただのサボり」
「こら。堂々とそういうことを言わない」
ジュンの発言に教師らしく静止を入れる時永だが、顔は特に怒っている様子はないので、黙認されているようだ。
「じゃ、俺は冬と話してくるから、トッキーは后さんたちのこと見てあげて」
「はいはい、言われなくてもそうするよ。で、どうしたの?」
「あ、えーっと、おれ、じゃなくて、ヒロが」
「あー。さっき、バレーボールが頭に直撃しました。」
「えっ!?」
俺は時永に、ボールがぶつかった経緯と、ぶつかった位置を説明した。
「特に痛みとか、異常はないんだね?」
「そんなに強い球じゃなかったから、大丈夫だと思うんだけどなぁー。後輩が絶対行けっていうから来ましたけど」
「いや、後輩くんが正しいよ。頭は何があるか分からないからね、用心するに越したことはない。」
特にタンコブなどもできていないようだったが、時永は「もし少しでも異常を感じたら、病院に行くこと」と念を押す。
「わかりました」
「うん、じゃあもう戻って大丈夫だよ」
「よかったね、ヒロ」
「いい後輩を持ったね。そこまで心配してくれるのって、なかなかないんだよ。特に男子校だからか、割とみんな適当だからね。」
確かに。俺もボールがぶつかったくらいで大袈裟な、と思ったし、多分大半がそういう反応をする気がする。
「じゃあ、体育館戻ろっか。」
「そうだな。」
時永にお礼を伝えて保健室をあとにする。今から戻れば、おそらく次の冴くんの試合開始には間に合うだろう。
もっとも、その場合の対戦相手はうちのクラスで、そもそも冴くんたちが先ほどの試合を勝ち抜いている前提にはなるが…。
どっちを応援したらいいんだろうか。不意に桜井の問いが頭をかすめた。
「気持ち的には冴くんなんだよなぁ…」
「え?ヒロ今何か言った?」
「えっ、あっ、大したことじゃない独り言だから」
まずい。心の声が漏れてたようだ。
「そうなの?」
特にそれ以上追求はされなかったので、とりあえず足早に体育館に戻ることにした。
0 notes
noah-choco · 4 years
Text
設定がガバガバである
書きながらいい加減昔のやつを読んで設定確認してたけど、色々矛盾が起きまくる!!w
程々に採用しつつ程々に改編しつつだな…
なんかもう色々時系列整理しないとだ!
昔のキャラ設定見てると、たまにぶっ飛んでて笑うw
0 notes
noah-choco · 4 years
Text
君つむ。7話
中京学園高等部では、学期の終わりに球技大会がある。
超がつく運動音痴の俺にとっては、あまり嬉しくないイベントだ。
俺はレイくんと、早々に卓球で記録的な大敗をしたので、あとは一日応援だ。
「もう始まってるかも」
レイくんと一緒に、桜井の出ているバレーの応援をすることにして、体育館へ移動する。到着すると、ちょうど一回戦の途中のようだ。
「勝ってるみたいだな」
得点ボードを見ながら、コートのそばの壁に寄りかかる。さすがにまだ、自分の試合があるのか、人が少ない。
「ナナミー!頑張ってー!」
レイくんは無邪気に桜井を応援している。レイくんの声に気がついた桜井が、こっちを向いて小さく手を振る。
「桜井は運動神経いいよなぁ」
「うん、サッカーも故障するまではエースだったみたい」
「すげえなぁ。俺、バレー苦手なんだよな、サーブがうまく投げられねえし、ボールに当たると痛いし」
「コツがあるみたいだよね。ちゃんと打ち返すと痛くない、って前にナナミが言ってたよ」
そんな感じで、レイくんと他愛のない話をしていたら、俺たちのクラスは1回戦を突破したようだ。
「レイ、ヒロ、お疲れ!」
「桜井もお疲れ。俺たちは、見ての通りの一回戦敗退だけどな。」
「じゃあこの後は、ずっと俺ら専属の応援団ってとこかな?」
「ふふ、ナナミたちなら優勝も狙えそうだから、楽しみ」
レイくんは本当に楽しそうに、ニコニコしている。
「あっ、ヒロ先輩」
急に名前を呼ばれた。ついに冴くんの幻聴でも聞こえるようになったのかと思ったけど、振り返ったら冴くん本人が立っていた。
「冴くん、バレーなの?」
「あ、はい、このあと試合です」
「そっか、がんばってね」
コートの方から、冴木ー?と呼ぶ声が聞こえた。俺は冴くんの背中に手を振る。
「今のが噂の後輩くんかぁ」
そういえば、桜井がいるのをすっかり忘れていた。心なしかニヤニヤしている。
「な、なんだよ!」
「思ってた10倍くらい顔が整ってて驚いた」
「そ、そうだろ!?だろ!?」
「ヒロ、そのリアクションは違うと思う」
なぜカレイくんが苦笑いで止めに入る。
「今試合ってことは、これを勝ち抜いたら、次に当たるのは俺たちか」
「え、そうなの?」
「ヒロはさすがにー俺たちを応援してくれるよなー?」
「うっ…あ、あたりまえだろ!」
「ナナミ、あんまりいじめないの」
「なんかヒロって、反応が楽しいよね」
「楽しいってなんだよ!勝手に人で楽しむなよ!」
「あはは、俺ヒロのそういうところ良いと思うよ!っと、次の作戦会議するみたいだ、行ってくるね」
「おー、頑張れ」
「ナナミ頑張って!」
「ヒロは今のうちに後輩くんを応援しとけー!」
桜井は笑いながら、バレーチームの方に戻っていった。レイくんは相変わらず苦笑している。
「ヒロ、どうする?冴木くんの応援する?」
「…まぁ、しない理由もないしな」
「素直なのはいいことだと思うよ」
先ほどまで、桜井たちが試合をしていたコートで、冴くんたちの試合が始まった。
冴くんは運動は割と得意だ、と聞いたことがあるが、実際に見てみると、思っていたよりもだいぶ運動神経がいいらしい。
小柄ながら、ボールをうまく拾ってはあげている。
「わぁ、冴木くん上手だね、ヒロ」
「俺、自分の試合観られてなくてよかった…」
「一本もサーブの入らなかった試合は、球技大会の卓球史上はじめてって言われたものね…」
レイくんと俺の散々な結果を思い出して、2人で苦笑した。冴くんとは、時々目が合うので、俺が見ていることには気が付いてくれているようだ。
…それにしても、こちらをみる回数が多い気がするのは、気のせいだろうか。先輩である俺が見ていると、緊張するのか?
なんてことを考えて不安になっていたら、冴くんの返した球が思い切り逸れてこちらに飛んできた。
運動音痴の俺が避けられるはずもなく、ボールは思い切り俺の頭部に直撃する。
さほど速度もない球だったが、冴くんはこちらに飛んできた。
「先輩大丈夫ですか!?ごめんなさい!!!保健室行きましょう!」
「えっ、大丈夫だってこのくらい!俺が避けられないのが悪いし」
「ダメです、頭は脳震盪の危険もあるので、保健室には行かなきゃダメです!」
「大丈夫だと思うけどな…」
「行かないなら俺が連れて行きますよ!?」
こんなに頑なな冴くんははじめて見る。
「いや、冴くん試合があるでしょ」
「変わってもらいます、ぶつけたのは俺なので、責任取ります」
「悪いって、ほら、みんな困ってるし」
試合が止まってしまったので、視線が痛いほど俺たちに注がれている。
「冴木くん、俺がヒロを保健室に連れて行くよ。保健委員だからね」
見かねたレイくんからの助け舟。顔見知りのレイくんからの提案なら、冴くんも素直に飲むだろう。
と、思っていたが。
「…いや、俺が、俺がついていきます」
「大丈夫、ちゃんと行くから!信用して!レイくんに連れてってもらうから!」
「…」
まだ不服そうな冴くんだったが、クラスメートにも宥められ、結局レイくんと俺が保健室に行くということで落ち着いた。
「なんかごめんな、冴くん、気にすんなよ。試合頑張れ!」
俺としては、なんだかんだで冴くんに心配されて、悪い気はしなかった。
でも、保健室に行っておかないと、冴くんのあの剣幕なら、試合後に確認に行きそうな気もする。レイくんの申し出にありがたく従い、俺はレイくんと保健室へ向かった。
0 notes
noah-choco · 4 years
Text
君つむ。6話
七月。冴くんに八つ当たりしてしまった一件から、ちょうど二ヶ月が過ぎた。
もうすぐ大会当日ということもあり、練習も佳境に入っており、毎日のように練習に参加してくれているレイくんには頭が上がらない。
もちろん大道具、小道具の作成も佳境で、実際に設置しての通し練習��見てから、気になる部分を治したりと、なかなか忙しい。
特に、俺は衣装も担当しているので、男役はともかく女役のドレスの仕上げに苦戦中だ。
冴くんも、森のシーンで使う切り株の椅子を作成していた。俺の作ったお手本をもとに、残り二つを作ることになっているが、どうやら相当苦戦しているらしい。それでも、俺と蒼司先輩のアドバイスを受けながら、一所懸命に作業している姿は、見ていていじらしい。
そんな感じで、特に衝突もなく平和に過ごしてはいたが、俺は内心気に入らないことがある。夏目部長のことだ。
「おーい、蒼司、リハの大道具搬入の手順だけど」
そんなことを考えていたら、元凶の人がやってきた。
「ヒロと冴くんもお疲れさま。」
こっちの気も知らないで��どんな時でも、俺と冴くんへの気配りを忘れない、それが夏目部長という人だ。
ここのところ、外部生の冴くんに対しての遠慮が取れてきたのか、他の部員たちは「冴木くん」という呼びかたを改めて「冴木」や、「冴」と呼びはじめた。
それはいい。冴くんがみんなに馴染むのは先輩としても喜ばしいところだ。なにせ、冴くんは少し壁を作るところがあるし、普段は俺と蒼司先輩とばかりの作業になるから、みんなに馴染めているのか勝手に心配していたのだ。
だけど、そんな冴くんのことを、俺と同じく「冴くん」と呼ぶ人がもう一人いる。それが、夏目部長なのだ。
俺はこの呼び方を気に入っている。他でもない冴くんが、こう呼んでください、と言ってくれたからだ。そして、冴くんと呼ぶのはずっと俺一人だけで、そこに俺は特別感のような、優越感のようなものを感じていた。
ところが、みんなが冴くんを冴と呼びはじめた頃から、夏目部長も冴くん、と呼ぶようになり、それが俺に取って極めて不愉快なのであった。おかげで、夏目部長に対して、いささか冷たい対応になっているような気がしなくもない。
かと言って、「冴くんと呼んでいいのは俺だけだ!!」なんでことを言えるわけもなく。かれこれ2週間以上、夏目部長が冴くんを呼ぶたびにモヤモヤしているのである。
そしてもう一つ。
「そうだ、冴くん。脚本の、この部分なんだけど、役者の方からセリフを変えたいって意見があってね。手が空きそうなら、今から練習を見にきて、意見をくれないかな?」
「いいですよ」
まただ。こうやって、やたらと夏目部長が、冴くんに構うのだ。よくわからない口実で、冴くんを連れ出すことも多く、もしかして冴くんに役者をやらせることを、まだ諦めてないのでは?と勘繰ってしまう。
「というわけで、蒼司、冴くん借りていくな」
「…構わないが、どちらかというとヒロに言ってやるべきだろ」
蒼司先輩の切り返しにドキッとする。心を読まれているのかと錯覚するが、冷静に考えると、俺が冴くんを気にしていることは、蒼司先輩にはバレている。蒼司先輩なりに俺を気にしてくれているようだ。
「いや、俺に冴くんの行動に口出しする権利とかないっすから」
つい、素っ気ない態度をとってしまう自分が情けない。
「…いまの冴木の作業は、ヒロが教えているところだろう。」
「あー、そういうことっすか。まぁ、あんまり頻繁に部長の方に行かれると、今の作業間に合わなくなるかもしれないっすね。」
意地悪を言っている自覚はあるが、実際その危険性があるのは事実だ、と自分に言い聞かせる。
「わかった、じゃあ、早めにこっちに返すようにするよ。ごめんな、ヒロ」
「なんで俺に謝るんすか」
「冴くんにばかり来てもらってるから、拗ねてるのかなって思ってさ。なんならヒロも見にくる?」
「〜〜ッ、いいですっ!間に合ってますっ!」
夏目部長の見当違いな問いかけに、思わず声を荒げてしまう。
「ヒロ、機嫌悪いの?」
夏目部長は、俺ではなく、蒼司先輩に向かってそう問いかけた。
「あ〜…衣装制作が難航してるからな。夏目がいると集中できないだろうし、早く冴木を連れて練習に戻れ」
蒼司先輩は、俺の方をチラッと見ながら、夏目部長に練習へ戻るように促してくれた。
「なるほどね。じゃあ冴くん、行こうか」
「ヒロ先輩、すみません、行ってきます」
二人が倉庫を出ていくと、俺は大きなため息をついた。
どうしてこんなに、上手くやれないのだろうか。冴くんにも気を遣わせてしまうし、夏目部長にももう少しスマートに接したいと思っているのに、感情のコントロールがこれっぽっちもうまくいかない。
「ヒロ、大丈夫か?」
蒼司先輩の気遣いが身に染みる。
「なんか、俺、最近心狭いんです。」
「冴木が絡むと、人が変わったように凶暴になるからな」
「そんなふうに見えてるんですか!?」
「去年までの温厚で人懐っこいヒロとは思えない、とこの間、夏目がもらしていた」
「うわー、夏目部長にも態度がおかしいの、やっぱりバレてますかね」
「気が付かないわけがない。夏目は観察眼が鋭いからな、あいつに隠し事は無理だぞ」
「うーーーーん」
なんかもう、消えてなくなりたい。恥ずかしい。
「まぁ、ここにはいま、俺しかいない。気の利いたことは言えないが、聞くくらいなら出来るぞ」
「俺、蒼司先輩のそういうとこ、めちゃくちゃ好きっす」
「…そういうことを、冴木に言えばいいと思うんだが」
「無理!無理無理!絶対に無理!」
言えるわけがない。中学の頃からの付き合いで、ずっと一緒に作業してきた蒼司先輩にだからこそ言える軽口だ。
「冴木は、ヒロに心を開いているようには見えないな」
突然、蒼司先輩が、胸が抉れるようなことを言い出した。
「…そうっすかね?俺には懐いてくれてると思うんですけど」
「ヒロに懐いてるのは、その通りだろう。ただ、冴木はあまり、ヒロに心の内を見せていないように見える」
「それは、冴くんの性格じゃないっすかね」
「…どうだろうか」
冴くんはあまり人懐っこい性格ではないし、誰に対しても一歩引いたところがあると思う。いつかは俺にも心を開いて欲しいと思ってはいるけど。
「…俺は、冴木もだが、おまえも心を開いているように見えない。」
「えっ、冴くんに?」
「あぁ。冴木が心を開いていないというよりか、ヒロが冴木に心を開いていないから、冴木もヒロに対して接し方を迷っているように見えるがな」
「それは、考えたことなかったっすね…」
俺が冴くんに心を開いていない?
…確かに、言われてみたら、そうかもしれない。だけど、こんなぐちゃぐちゃな心、みっともなくて開けるわけがない!
「ただいま戻りました」
蒼司先輩と話し込んでいるうちに、冴くんが戻ってきた。夏目部長は一緒ではないらしい。
「おかえり」
「おかえり冴くん」
「抜けちゃってすみませんでした」
「夏目が振り回してすまないな」
「蒼司先輩が謝ることじゃないです!それに、夏目部長が俺を呼んでくれるのは、俺のためですし」
「そうか、ならいいがな。何かあったら、俺から夏目に伝えるから、遠慮せず言うこと」
「頼りにしてます!」
冴くんは、屈託ない笑顔で蒼司先輩に笑いかけた。確かに、俺にはそんなふうに笑うことは少ない気がする。
でも、夏目部長の呼び出しを「俺のため」と言い切っていることの方が気になって仕方がない。どういう意味なのだろうか。
「あっ、それで、ヒロ先輩…ここの色塗りなんですけど、うまくできなくて、すみません、コツ教えてください」
「ん、ここか。絵具混ぜてある?」
「まだです、すみません、作ってきます!」
…確かに、冴くんは、俺に対しては、やたらと謝ることが多い気がする。これが心の壁ってやつなのだろうか。
なんにせよ、今日の作業を進めることにしよう。冴くんが心を開いてくれていなくとも、俺には教えられる技術がある。俺だって、冴くんのために出来ることをしているし、きっとそれは、冴くんにも伝わっているはず。
そう言い聞かせることくらいしか、俺は自分を落ち着かせる術を見つけることができなかった。
0 notes
noah-choco · 4 years
Text
君つむ。5話
五話
資材倉庫の扉を開けると、蒼司先輩と冴くんが、何か話をしているところだった。
「冴くん、昨日は、ごめんっ!」
まず、その言葉が飛び出した。言葉を選んだり、冴くんの言葉を待つ余裕はなかった。
「ヒロ先輩?」
「昨日っ、俺、八つ当たりみたいなこと言った。夏目部長がどうとか、そんなの、言い訳だ。俺が冴くんに、この大道具小道具班に、いて欲しいだけなのに」
「ちょ、落ち着いてください、ヒロ先輩!」
冴くんは、必死な俺とは対照的に、落ち着いていた。
「えっと、あの、昨日のことは、もう気にしてないですよ。」
冴くんが、俺のことを宥めるようにそう言った。
何故だか、気にしてないと言われると、それはそれで不服な気がして、だけどそんなことを言っている場面でもないことは分かっているから、グッと堪える。
蒼司先輩は、俺と冴くんを交互に見て、それから黙って成り行きを見守ることにしたのか、すっと俺たちから離れたところで壁にもたれかかっている。
「あの、ヒロ先輩?」
「ん…」
「俺、夏目部長の、脚本が、すごく面白いと思ったんです」
夏目部長を褒めていることについて、どうこう思う以前に、それについては俺も同感だった。確かに、夏目部長の書く話は面白い。大道具や小道具を活かすシーンを入れてくれたり、役者ごとに一番演じやすいようなキャラ付けをしたり、そう言った気配りまで含めて、すごくレベルの高い脚本だと思う。
「それで、俺、どうしてもあの脚本を、そのまま作品にして欲しかったんです。俺、本読むのが好きで、その…紡ぎ手の作った世界観って、大事だと思ってて、今回の夏目部長の考えたお話は、少年と少女のアンバランスな距離感が、大事だと思ってて…」
冴くんは、慎重に言葉を選びながら、そう説明した。
そうか。夏目部長、ではなく、夏目部長の作品、が好きなのか。
そう思うと、心につっかえていたものが、急に取れた気がした。
「ごめん、冴くん、ごめんな。冴くんの考えもちゃんと聞くべきだったのに、頭ごなしに否定するようなことを言って、すごい嫌な先輩だな、俺って」
冴くんは、それを聞いて、首をはっきりと横に振る。
「ヒロ先輩は、俺が本当は、あまり女役をやりたくないことに、気がついていたから、ああいう風に言ってくれたんだと思ってます。」
確かにそれは、なくはない。初めてきちんと話した時に、顔を可愛いと言ったら嫌そうにしてたことは覚えているし、だからこそ女役をやるという立候補が意外で、何だか裏切られたような気持ちになったのも事実だ。
「だけど、誰もやれないなら、自分がやるしか、作品を守ることができないって、思って…」
冴くんが申し訳なさそうな、消え入るような声で続ける。
俺は、ハッと大事なことを思い出す。
「そうだ、そうだ冴くん、そのことなんだけど、女役をやれる人がいたらいいんだよな!?夏目部長にも聞いたんだけど、他にやれる人がいたらいいって、それで、俺、代わりにやってくれる人見つけたんだ!」
「本当ですか!?」
「うん、中等部の頃に演劇部の助っ人をしてくれてたから、部員や部長とも面識があるし、何より本人が興味を持ってくれてるみたいで」
「それなら、その人が引き受けてくれれば…」
「冴くんは、大道具小道具班のまま!」
俺の話を聞いて、冴くんは、心なしか興奮しているように見える。
「ヒロ先輩、すごいです、やっぱり、自分が演じるより、きちんと…作品を外から、観れたら一番だなって思ってて…裏方って、それを一番近くでできるじゃないですか」
「そうなんだよ!自分の作ったものを、演じる人たちが、その世界の一部にしていく、それを間近で見れるのが、最高なんだよ!」
この考え方は、昔蒼司先輩にも話したことがある。蒼司先輩は、「俺は単に、他の役回りが向いてないだけだ」なんて言っていたけど、冴くんが俺と同じような気持ちで取り組んでくれてるなんて!
こんなに、嬉しいことって、ないかもしれない!
「あの、ヒロ先輩。」
まだ興奮しきりの俺と違って、冴くんは少し冷静さを取り戻したようだ。
「はい」
なぜか、俺が畏ってしまう。
「…あの、俺、先輩の、この手も、好きなんです」
そう言って、急に冴くんが俺の右手を、両手で包むように触れる。
心臓が、ドキッと音を立てて跳ねた気がした。
「冴くん…!?」
俺が驚いた声を出すと、慌てて冴くんは手を離す。
「あっ、ごめんなさい、なんか咄嗟に…あの、変な意味じゃなくて…先輩の、この手が、いろんなものを作って、産み出していく、それを見てるのが好きなんです、俺。」
冴くんは、そう言いながら、以前綺麗だと褒めてくれた絵画を指差す。
「あの絵とか、それから、あの小道具のお皿とか、衣装や装飾品とか、そういうすごいものが、この手から産み出されてる。まるで魔法みたいに」
冴くんの目は真剣そのもので、声にも熱が入っている。その顔はいつにも増して、綺麗に思えた。
「…そんなに褒めても、何も出ないよ」
あまりにも照れくさくて、そう言うのが精一杯だった。
冴くんも、思わず熱く語ってしまったことが恥ずかしかったのか、それ以上は何も言わなかった。
なんだか、顔が熱くて、火が出そうだ。
二人とも無言で俯いていたら、蒼司先輩が口を開いた。
「とりあえず、話は終わったか?」
「あっ、すんません!」
「すみません!」
俺と冴くんは慌てて謝る。
「…まったく、手のかかる後輩たちだ。」
蒼司先輩は、あまり感情を顔に出さないから、普段は怒っているのかどうかの判別がつかない。でも、なんとなく今は、嬉しそうな顔をしている気がした。
0 notes
noah-choco · 5 years
Text
君つむ。4話
翌日、放課後になると、一目散に部室へ走った。冴くんどころか、まだ誰もきていない部室で、ソワソワしながら冴くんを待つ。
「あれ、ヒロ?早いね」
俺のあと、次に部室に来たのは、よりによって夏目部長だった。今はなんだか、夏目部長とあまり顔を合わせたくなかった。
何か返事をしなければ不審がられる。
「…部長」
俺は思い切って、昨日思ったことを問うてみることにした。
「なんだ、どうした?」
「なんで冴くんに、役者をやらせようとするんですか」
自然と咎めるような口ぶりになってしまう。
「うーん、女役もできそうなのが冴木くんくらいだからね」
「冴くんの気持ちはどうなるんです」
「そりゃ、無理にやらせるつもりはないよ。ダメなら少年に変えるだけだからね。だけど、冴木くんが、それなら自分がやるって言うから」
予想外の返答に面食らう。もともと、冴くんが言い出したことだったのか?
「冴くんが…?」
「この脚本なら、絶対少女の方がいい、誰もいないなら、さいあく自分が役者をやってもいい、って言ってくれてね」
「そう、なんですか」
「脚本通りにするべきだ、って言ってたよ」
「…それなら、ほかに少女役をやれる人がいれば、解決しますか?」
「まぁ、そうとも言えるかな…」
とは言え、身長180超えの俺がやるわけにもいかず、それ以上の抵抗はできそうになかった。
なにより、冴くんの意思なのであれば、俺が口を挟むことでもない。
俺も部長も、それから特に口を開くでもなく、静かに時間が過ぎていった。しばらくすると他の部員も集まってきて、夏目部長は他の役者からの質問に答え始めた。
俺はそっと部室を抜け出す。今日は確か、このあと文化部全体の会議があるはずで、夏目部長も参加するはずだ。つまり、冴くんが役者をやるかどうかは、明日の部会で決まることになるのではないか。
それまでに、俺は心の整理をしなければいけない。
そもそも、どうして冴くんが役者をやることが、こんなに嫌なんだろうか。いや、それ以上に、夏目部長だけが知っていたことが不服なのか?
頭をぐるぐると悩ませていたら、いつのまにか昇降口まで来ていた。今日はこのまま倉庫のほうに行ってしまおう。冴くんもきっと、顔を出す。その時に昨日のことを謝ろう…
「ヒロ、こんなところで頭を抱えてどうしたの?」
ふいに名前を呼ばれた。この声はレイくんだ。
「レイくん。いま帰るとこ?」
「うん、保健委員の当番だったんだ」
「お疲れさま。いつも偉いね、だいたいのやつはサボってるんじゃない?」
「うーん、まぁ、おれは保健医にお世話になってるから」
確かにレイくんは、中学部の時は着替えなどを保健室ですることも多かった。保健室は中等部、高等部で共通なので、その時のことを言っているのだろう。
「それで、ヒロは一体どうしたの?なんか、泣きそうな顔してるけど」
レイくんにそう指摘されて、驚く。俺は周りから見たら、そんな風に見えていたのか…!?
「何から話せばいいか…いや、そもそも話すことでもない気もするし」
「今日、時間あるから、話してスッキリすることなら聞くよ。溜め込むのは、いいことないから」
ね?と微笑むレイくんは、有無を言わせる気はないようだ。俺はありがたく話を聞いてもらうことにした。
自販機でレイくんにジュースを買って、お礼がわりに手渡し、そのままベンチに座る。念のため、蒼司先輩には、少し遅れるとメールをしておいた。
俺は、昨日のことと、今日の夏目部長との会話のこと、それから俺が今思ってることを、ぽつりぽつりとレイくんにこぼした。
「……なるほどね。」
「なんだろう…冴くんのことになると、自分がよくわからなくなる。どうして欲しいのかも、そもそも、どうしてこんなに気にかかるのかも…」
「うーん、それについては、多分、説明できるけど、おれから聞くよりは、自分で気がついた方が…いいと思う」
レイくんは、言葉を選びながら、ゆっくりと話す。
「それで、そっちじゃなくて、そもそも"冴くん"が、役者をやらなくていい方法なら、心当たりがあるよ」
思わず、えっ、と口に出た。レイくんは顔色ひとつ変えずに、続きを話し出す。
「おれが、やればいいかなって」
「…えっ!?」
「そんな驚かなくても、中等部の時は何度か頼まれて、出たことあるでしょ?それに、女の子の役なら、おれでも力になれるかなって」
「そ、そりゃあ、そうしてくれたら、俺も、多分部活のやつも、みんな喜ぶとは思うけど…」
「高等部に入ってから頼まれなくなったのは、おれが男として過ごすことを選んだからでしょ。女役をやらせることを、遠慮しているのかなって思ってた。でも、おれ、別に嫌じゃないんだよ。楽しいなって、思ってたから、中等部の時も手伝ってた」
意外だった。
確かに、中等部の頃、文化祭でやる劇なんかはよくレイくんに助っ人を頼んでいたし、レイくんも快く引き受けてくれていた。
だけど、高等部に入って、髪をバッサリ切って学ランを着たレイくんに、女役を頼んでいいのか、とみんな遠慮していたのも事実だ。
そこまで気がついていたことにも驚くし、その上でこの提案をしてくれることに、もっと驚く。
「で、でもさ、前は文化祭だったけど、今回は大会だから、練習も前よりずっとたくさんあるし」
「特に部活に入ってるわけじゃないし、中等部の頃よりは門限も遅くなったから、大丈夫。ね、��くない話でしょ?」
女神に見えるとは、このことか。
「…ただ、まずは、"冴くん"の気持ちを確かめてみた方がいいと思う。本当は役者をやりたかった、って可能性もあるから。そうじゃなくて、やる人がいないから、っていうのがハッキリわかったら、おれが出るよ。まずは、ヒロが確認してきて欲しいな」
俺は大袈裟なくらい思い切り頷いた。こんな、俺にとって有り難すぎる話は他にない。
「冴くん、もう来てると思うから、俺、今すぐ聞いてくる。あ、謝るのが先か!とにかく、確認して、えーーっと…電話したらいい?」
「メールがいいかな、夜はあんまり電話してるとお兄ちゃんがうるさいから」
「そうか、じゃあメールで連絡する。ありがとう、本当に!俺、ちょっと倉庫行ってくる」
「うん、気をつけて!がんばれヒロ!」
レイくんはそう言って小さく手を振ってくれた。俺は、レイくんに頭を下げ、その場から駆け出す。
冴くんは、もしかしたら、もう結論を出してしまったかもしれない。そもそも、昨日の俺に呆れていて、大道具小道具班を抜けたがるかもしれない。そんな悪い考えばかりが浮かぶ。
どうか、冴くん、来ていてくれますように…!
俺はそう祈りながら、資材倉庫の扉をあけた。
続くよ!
0 notes
noah-choco · 5 years
Text
君つむ。3話
冴くんが部活に入部してから一ヶ月、3人しかいない大道具小道具班は、だんだんと打ち解けてきたが、俺には悩みがあった。
冴くんが、可愛くて仕方がないのだ。
きっと、はじめてできた後輩だから、だと言い聞かせてはいるが、「本当にそうだろうか」という疑問も湧かないわけではない。
それは、だいたい、2人の姉のせいであり、ここが男子校だからでもあるのだが…。
そんなことを考えながら、深いため息をついていたので、レイくんに「どうかしたの?」と聞かれてしまった。
今は昼休み。いつもレイくんとお昼を食べている桜井は部活のミーティングだそうで、今日は久しぶりにレイくんと2人でお昼を食べている。
「んー。あのさぁ、引かれるかもしれないこと言っていい?」
「うん」
「冴くん…って、俺の部活の後輩なんだけど、その冴くんが、めちゃくちゃ可愛くて」
「うんうん」
「なんかこう、俺気持ち悪いかなーと思って。別に、ただ可愛いなって思うだけなんだけど、男にそう思われるのって、やっぱキモいかなって。レイくんは、そういう経験、ある?」
「うーーん、よくナルに可愛いって言われるけど、気持ち悪いなんて思ったことはないかなぁ」
「そういうもん?」
「おれが、ナルのこと、好きだからかもしれないけど」
「…え、それって、友情的な?」
「さて、どっちでしょう?どちらにしても、特別な人には変わりないのだけど、何を言われても、されても、気持ち悪いとか、嫌だとか、思ったことはないかな」
「マジかー…そうかぁ…うん、レイくん、ありがと。ちょっとだけ安心した」
「でも、あくまでおれの場合だから、そこは忘れないでね?」
「もちろん。」
ナルは、高校から外部に進学した、武蔵野成志のことだろう。
そっか。つまり、レイくんって、もしかして、恋愛対象は男の子なのか。
…そして、そのことに関して、おれには何一つ偏見はない。なぜなら、2人の姉に英才教育を受けて育てられたからだ。
むしろ、抵抗がなさすぎる。それが今、問題になっている気がする。
「でもさぁ、一般的には、男が男に可愛いとか、そういうのって、相手からしたら引くよなぁ」
実際、冴くんは、顔は可愛いけど、意外と中身は男らしい。
俺よりもずっと力持ちだし、運動も得意で、体育がてんでダメな俺からしたら、ずっとカッコよく見える。
それでも、ふとした拍子に、ふとした表情が、とてつもなく可愛く、感じる時がある。
うーん。これって、どうなんだろう。
「んー、なるようになんじゃない、かな?」
レイくんは、やや首を傾げて、微笑みながらそう言う。どうしてか、レイくんにそう言われると、なんとかなるような気がしてくるのが不思議だ。
その日の部活は、夏の大会の演目を決める会議から始まった。
といっても、脚本というか、大まかなプロットはとっくに夏目部長がみんなに話してあったので、今日は細かい部分を詰めていくことになる。
「うーん、あとは、少女Cだけかな」
演じられる人数に限りがあるため、役者を先に当てはめてから脚本を修正していくことも多く、今回の一番の議題は「少女Cを誰がやるか」となった。
「うーん、思ったより新入部員が少なかったのもあるけど、ここはもう少年に変えていくしかないんじゃないかな」
「でも、少女だからこその良さがあるシーンだと思う」
「でもやれるやつがいないんじゃなあ」
役者勢たちが、あーだこーだと相談をはじめた。こういう時、大道具小道具班は蚊帳の外になる。強いて言えば、衣装を用意するのも俺たちの仕事なので、少女Cになるか少年Cになるかは、その後の衣装作成に影響する程度だ。
すると、突然夏目部長が俺たちの方を向いて、とんでもないことを言い出した。
「冴木くん、やっぱり役者をやってみる気はない?」
突然話を振られた冴くんに、さほど驚いた様子がないことに、俺が驚く。
「うーん、考えさせてください」
そして何より、冴くんが断らなかったことに、ショックを受けている自分がいた。
どうしてだ?裏方志望で入ってきて、役者には興味がないといっていたはずなのに。そもそも、部長は「やっぱり」と言っていた。ということは、以前にも役者を頼まれたことがあるのか?
1人で混乱しているうちに、とりあえず保留という形で話し合いが終わり、役者たちは基礎練習をするために体育館へと移動を始めていた。
夏目部長と冴くんは何やら話し込んでいる。
しばらくして、冴くんが俺と蒼司先輩のところに戻ってきた。
「今日は役者の基礎練習を見学してきます」
どうやら夏目部長に、勧めら��たらしい。
「冴くん、役者やるの?」
「わかりませんけど、一応、色々と見てから決めた方がいいかなと」
「……」
「ヒロ先輩、怒ってますか?」
「…いや、ごめん、ちがう」
こういうとき、うまく言葉が出てこないのがもどかしい。
「ヒロは、後輩を取られるのが悔しいんだろ、多分」
やりとりを聞いていた蒼司先輩が口を開く。
「…まだ、決めてないですし、その、俺はヒロ先輩と蒼司先輩と、大道具を作りたいって思ってます。ただ、夏目部長の…」
「ッ、夏目部長のことが気になるなら、その通りにしたらいいだろ!?」
自分でも驚くほど大きな声が出た。
「……」
冴くんは、驚いたような、困ったような、複雑な顔をして、それから軽く会釈をして、体育館に向かうために俺たちのもとから離れた。
「ヒロ、とりあえず、俺たちも倉庫に行くぞ」
俺は自分が八つ当たりをしたことに呆然としていた。蒼司先輩に促されるまま、場所を変える。いつもの倉庫に入ると、ほんの少し落ち着いて、同時に後悔の波が押し寄せる。
冴くんがどうしようと、俺に口出す権利なんてないじゃないか。
「ヒロ、落ち着いたか」
蒼司先輩が、俺の頭をポンポンと叩く。
「蒼司先輩、俺、冴くんに嫌われちゃいましたかね」
自分でも驚くほど、弱々しい声だった。ほとんど泣いているようなものだ。
「ヒロは、冴木くんのことが好きなのか」
唐突な質問に、動揺を隠すこともできず、気がつくと俯いていた。それは、頷いているとも取れるような、曖昧な答えだった。
「俺、どうしたらいいのか、分からないんです。冴くんに対してだけ、どう接したらいいのか、分からなくて、冴くんのことを考えると、冷静じゃいられなくて、なんかもう、本当にどうしたらいいのかわからない」
「そうか」
「こんなのおかしいですよね」
「別に、そんなもんだろ。好きな相手のことで、冷静でいられる方が珍しいぞ」
「…蒼司先輩でも、そういうことってあるんですか?」
「…まぁ、俺はないな、あんまり。でも、人それぞれだろ。感情的になるやつも知っているし、それがおかしいことだとは俺は思わない」
蒼司先輩は、そう言って俺の頭をくしゃっと撫でた。
「まぁ、そんな顔するくらいだから、相当冴木くんのことが気になるんだろうが、俺たちもそろそろ作業をしようか」
こんな時、蒼司先輩の優しさが身に染みる。
「明日、ちゃんと謝ります。」
まずはそれが、先輩として、俺がするべきことだから。
気持ちの整理はつきそうにないけど、まずはとにかく、八つ当たりしたことを謝って、それから、素直に大道具小道具を一緒にやりたいと伝えよう。
そしてその上で、冴くんの決断に任せよう。
嫌われていませんように。
そう祈りながら、翌日を迎えた。
続くよ!
0 notes
noah-choco · 5 years
Text
君つむ。2話
新入生が入学して3日。新入生歓迎会という名の部活説明会も無事終了し、俺はほっと胸を撫で下ろしていた。
今日の放課後から、新入生の見学と仮入部がはじまる。
俺の通う中京学園は、中高一貫校の男子校だ。生徒数は中等部、高等部を合わせると1000人以上になるが、部活は中等部と高等部で独立しているものも多い。
もちろん、中等部と高等部で一緒に活動する場合もあり、演劇部はその一つに含まれる。
とはいえ、基本的には中等部は中学生の、高等部は高校生の大会に出場するため、一緒に活動するのは文化祭などの学園内でのイベントに限られる。
それでも、高等部で演劇部に入部するのは、顔見知りの後輩も多く、部活見学も真新しい顔を見ることはないだろう、と思っていた。
高校から演劇を始めるやつか、外の中学から外部受験をしてきたやつ、そのくらいしか真新しい新入生が来る可能性はない。
ところが。
「というわけで、今日の体験生はこの4人です。顔見知りも多いとは思うけど、外部生の子もいるから、自己紹介して貰おうかな」
夏目部長が、そう言って連れてきた4人の一年生。その中に、あの少年がいた。俺は自分の目を疑い、ついでに頬をつねってみる。
(どうしよう、レイくん、このパターンは想定してないよ!)
中等部で後輩だった3人には悪いけど、自己紹介が全く頭に入ってこない。
しかし、4人目の、あの少年の番が近づくと、自ずと意識が自己紹介に集中していくのがわかる。
「冴木久遠(さえき くおん)です。県外の中学に通ってました。よろしくお願いします。」
緊張しているのか、最低限の自己紹介だけにとどめ、夏目部長に進行を戻す。
(冴木くん、かぁ。)
やはり整った顔立ちをしている。可愛い。うちの演劇部は男子校ゆえに、女役も男が演じることになるのだが、小柄な体型も相まって十分いけそうだ。
「……てるか?…ヒロ、おーい」
気がつくと、夏目部長に呼ばれていた。
「ヒロ、全然聞いてなかったね?」
笑顔が怖い。
夏目部長こと、篠宮夏目(しのみや なつめ)先輩は、美人な顔立ちとダントツのカリスマ性から、校内の人気者だ。
実際優しくてあまり怒ることはないが、演劇のことになると意外と厳しく、部員の間では最も怒らせてはいけない人と言われている。
元々去年までは女役をやることが多かったが、部長になると同時に舞台から降りて、今は脚本や演出を担当している。
「す、すみません!」
咄嗟に頭を下げると、まぁまぁ、と仲裁の声が入った。篠宮部長と同じく3年の、伊月蒼司(いづき そうじ)先輩だ。
「ヒロにはあとで俺から伝えておくから。そろそろ部活はじめないと、体験生が退屈するぞ」
「…確かに、蒼司の言う通りだな。わかった、ヒロと冴木くんのことは、おまえに全面的に任せるから、よろしくな。」
「無論。」
よかった、さすが蒼司先輩。篠宮部長の幼馴染なだけあって、扱いを心得ている模様。…って、今、冴木くんもって言った?
「じゃあ、ヒロ、俺たちは資材倉庫に行くぞ。」
「あっ、はい!」
「冴木くんも、ついてきてくれ」
「はい。」
「えっ、冴木くん、なんで!?」
思わず聞き返してしまう。どうやら、先程の夏目部長の言葉は、聞き間違いではなかったらしい。
「あの…俺、迷惑でしょうか?」
歩き出してから、冴木くんがボソッと、呟いた。
「いやいや、いや、ごめん!そうじゃなくて!ちょっとビックリして!きみ、可愛いから、てっきり役者志望かなって」
「…そう、ですか。」
「べ、別に迷惑とかじゃないから、な!」
「…。」
あ。
これは、地雷を、踏んだ、気がする。
冴木くんはすっかり黙ってしまった。もしかして、本当に迷惑だと思ったのだろうか。それとも、話を全く聞いていなかった俺に、呆れている?それとも、可愛いは、禁句だったか?
「……別に、好きでこんな顔してるわけじゃないです」
最後のやつだったーーーー!
「ご、ごめん、なんか、そういう意味じゃなくて」
「というか、先輩も、かなりかっこよくないですか?なんで、舞台に上がってないんです?」
「えっ!?!?」
突然のかっこいい、に思わず声が裏返りそうになる。
「背も高いし、役者向きじゃないですか」
「あ〜〜、それは、えっと」
俺が返答に困っているうちに、資材倉庫に到着し、蒼司先輩が助け舟を出してくれた。
「冴木くん、こいつが、舞台上ではなく、この倉庫にいる理由は、今からわかる」
そう言って倉庫の鍵を開ける。
この倉庫の中には、さまざまな大道具と小道具が保管してあり、同時に作成中の大道具も床に広げてあった。
そう、この資材倉庫は、演劇部「大道具小道具班」の活動拠点なのだ。
「う、わぁ、すごい」
冴木くんが、小さな声で歓声をあげた。
「この小道具は、殆どがこのヒロの作ったものだ。それから、大道具の彩色もヒロに手伝って貰っている」
「すごい…綺麗…」
冴木くんは、そう言って小さな額縁を手に取った。それは、俺が作った壁にかける用の絵画で、絵も自分で描いたものだ。ストレートに褒められたことなんてなかったので、思わず顔が火照る。
「すごいですね、朝倉先輩」
「あれ、俺名乗ったっけ…?」
「前に、会ったじゃないですか。大通り公園で、覚えてませんか?」
「えっ!冴木くん、俺のこと、覚えてたの!?」
「1週間前のことですよ、流石に忘れませんよ」
「でも、俺名乗ってないよね?」
「ジャージに名前が書いてありましたから。」
あっ…そういえば、俺、あの日ジャージでコンビニに行ったんだった!
急に恥ずかしくなって、咄嗟に話を変える。
「そ、蒼司先輩!その、さっき部長が話していたことって?」
「冴木くんは裏方、特に大道具志望だそうだ。俺とおまえで面倒見てやれだと。」
「そっ、かぁ」
わざわざ演劇部に入り、望んで裏方をやる人は、そう多くはない。同じ裏方でも照明や音響につく人も多いし、殆どが役者と兼業だ。
はじめから大道具、小道具を希望していたのは、これまで蒼司先輩と俺だけで、俺たちはこの資材倉庫を根城に、不必要なほどに凝った大道具や小道具を作っている。
「俺、冴木くんが、はじめての後輩だ」
なんていうか、感慨深い。
「このまま入部するつもりなので、よろしくお願いします。」
わざわざぺこりと頭を下げる冴木くん。これが後輩ってやつ。なんて、可愛いんだ。このまま頭を撫でたい。って、何考えてるんだ、俺は!
「? どうかしましたか」
「あっ、いや!よろしく!俺のことは、ヒロでいいよ。」
「さすがに呼び捨てはできませんよ!ヒロ先輩、でいいですか?」
「うん、なんか、こそばゆいな、先輩って響き」
「俺のことも蒼司でいいぞ。」
「蒼司先輩ですね」
ふと、思いついた。はじめての後輩を、自分だけの呼び方で呼ぶとか、なんか、よくないか?
「あー、その、冴木くん…冴ちゃんって呼んでいい?」
「え、嫌です」
「あっはい…」
夢、3秒で潰える。
「…冴…くん、なら、いいですよ?」
首を少し傾げながら、照れくさそうに、そんなことを言われたら、なんていうか、どうしていいのかわからない。
「蒼司先輩、どうしよう、なんかやばい!俺おかしい!」
「いつもそんな感じだろ?」
「冴くん!うん、冴くん!よろしく!」
こうして大道具小道具班に新しい部員が増え、これから夏の大会に向けて頑張っていくことになるのである。
三話に続くよ!
0 notes
noah-choco · 5 years
Text
君つむ。1話
「はぁー…。」
大きなため息を吐きながら、俺はコンビニから自宅へと歩いていた。
俺の名前は朝倉浩(あさくら ひろ)。中高一貫校の男子校に通っていて、この春で高校二年になる。
春休みに入ってから、毎日のように姉にパシられていた。今日も、コンビニにコピーを取りに行くように命じられ、ようやく100枚のコピーが終わったところだ。
さすがに反抗心も湧くってもので、俺は遠回りをして、大通り公園の桜でも見て帰ることにした。
そこで、君と出会うことも知らずに。
『君と紡ぐ物語』
「というわけで、俺は天使を見たわけよ」
春休み明けの始業式の後、俺は友人の桜井南波にそんなことを零した。
「へぇぇ、そんなに可愛かったんだ、その男の子」
「おう、めちゃくちゃ可愛かった。子どもって、あんなに可愛いんだなって」
「ヒロ、よく、子連れの人に話しかけれたね」
「あー、いや、そこは成り行きで。っていうか、その子連れてたの、俺らと同じくらいの男の子でさ」
「へー、弟の面倒でも見てたのかな」
あの春休みの、コンビニからの帰り道。
寄り道した公園で、俺は2歳くらいの男の子を抱いた、少年を見かけた。地面に落ちた桜の花びらが風で舞い上がり、その桜吹雪の中に立つ少年こことを、一瞬幻覚かと見紛うほど、「綺麗だ」と感じた。まるで絵画のような、映画のワンシーンのような、そんな感じ。
しばらくぼーっと眺めていたら、2歳の男の子が手に握りしめていた小さなタオルが、風にさらわれて俺の足元の方は飛ばされてきた。
とっさにタオルを拾い、持ち主である男の子と少年の方に駆け寄る。
「あの、これ」
「あっ、すみません、ありがとうございます。」
少年は丁寧に頭を下げ、抱いていた男の子を地面に下ろした。
「ほら、ユウ、お礼して」
男の子はタオルを受け取ると、はにかみながら、「あいがと」とお辞儀の真似事���する。
その仕草があまりにも可愛くて、天使か!と心の中でリアクションをしてしまった。思わず「可愛いっすね」と声を掛けようと、少年の方に向き直ったら、少年は愛おしいものを見るように、男の子を見て微笑んでいた。
その、微笑みこそ、まるで、本当に天使のようだった。
そんなわけで、俺は天使を見たという話を、この友人にしたのだった。ただし、流石に同い年くらいの男子を天使と形容するのは、恥ずかしいので、そちらには言及をしていない。
「また会えないかな」
「なんか、ストーカーみたいだよ、それ」
「えっ、いや…確かに…?」
「ま、ヒロが情緒的なことを言ってるのが面白いから、いいけど。ねぇ、弟がそれだけ可愛かったら、お兄ちゃんの方も可愛かったんじゃないの?」
「ん、あー、うん、まぁ」
「レイとどっちが可愛い?」
レイ、というのは、俺の友人であり、桜井の親友でもある后麗華のことだ。女のような名前だが、れっきとした男である。
「なに、おれの、話?」
ちょうど噂をしていたら、入学式の手伝い係の打ち合わせで呼ばれていたレイくんが教室へ戻ってきた。
「なんかね、ヒロが春休み、可愛い男の子を見たんだって」
「へえ、なんか、ヒロのそういう話珍しいね」
俺は、櫻井にした話を、かいつまんでレイくんにも説明する。
「それで、レイとどっちが可愛い?って話してた」
「や、やめてよ、なんて話してるの」
レイくんは顔を真っ赤にして俯く。レイくんは中学までは女子として生活していて、高校で突然、本来の性別である男として過ごすようになった。そこには複雑な事情があるんだろうけど、正直言ってレイくんの可愛さは女子そのものというか、下手したら女子より可愛い。
「なんていうか、レイくんとあの男の子の美人さは、種類が違うんだよなぁ」
あの、弟らしき男の子に向けていた、屈託のない笑顔。それは何か、人と比べるようなものではないな、と感じる。
「あ、いけね。そろそろ部活いかなきゃ」
桜井が慌てて荷物をまとめ、慌ただしくグラウンドへ向かっていった。俺もそろそろ、と鞄を肩にかける。
「ねぇ、ヒロ。」
「なに?」
「また会えるといいね」
「…ありがと」
見た目や口調が男でも女でも、俺はレイくんのこういう気遣いが好きだ。
「じゃ、また明日」
明後日の新入生歓迎会に備えて、まだやることがたくさんある。
俺はレイに、自分の所属する演劇部の部室に行くと告げると、足早に部室へ向かった。
0 notes
noah-choco · 5 years
Text
Tumblr media
中京学園の演劇部裏方を舞台に、新しいの書こうと思ってキャラ設定とプロットまで作ったところで、名前と見た目だけペタペタ。
0 notes
noah-choco · 5 years
Text
キャラ設定→「惺」
Tumblr media
★朱月惺(すげつ さとる)
なんでも屋「プラスチックレンズ」の店主。学生時代に祖母の店を貰い受け、なんでも屋として開業。
クール。ツンデレ。怒ると怖い。ヘビースモーカー。天才。守銭奴。無自覚やきもち焼き。わりと大雑把。
パートナー→夾
家族?→チュー、ヂュー
バイト→空斗、成志
余談:
本人は断固としてタチだけど、相手が夾なので押し切られてネコに回ることの方が多い。
怒ると怖い。縛るくらいのことをしないと夾が屈服しないので、なんでもするが、特別そういう趣味があるわけでもない。
お金大好き。誰かのミスや間違いに気が付いていても面白そうならスルーして楽しむお茶目な一面も。
0 notes
noah-choco · 5 years
Text
キャラ設定→「夾」
Tumblr media
★哉杜夾(さいづ きょう)
度を越して過保護な母親から逃れるために、家出をして友人の家を転々としていたところを、学級委員長をしていた惺に拾われる。今は住み込みで惺の店を手伝い中。惺に頭が上がらない。
いじめっ子。暴力的。甘いものが苦手。勉強ができない。ヤンキー。売り。夜の街。我儘。俺様。
パートナー→朱月惺(攻め寄りのリバ)
おもちゃ→チュー、ヂュー、基要
後輩→陸海空斗、武蔵野成志
余談:
キョーさんのアイコン作るの難しすぎて8パターンくらい作ったとかいう。
惺の店「プラスチックレンズ」に住み着いている謎の生命体、チューとヂューをいじめるのが日課。キヨをパシるのも日課。
キヨの気持ちには気が付いているが、応える気はなく、あしらっている。それでもしつこく諦めの悪いキヨのことは、可愛いパシりくらいには思っている。
0 notes
noah-choco · 5 years
Text
組み合わせ考えるの巻
うちの子たちの組み合わせには存在していないタイプのカップリングを書いてみたくて、あれこれ考えてた。
◎書いてみたい攻め
ヘタレわんこ
◎書いてみたい受け
感情表現が薄い系
塩対応クール男子
無自覚恋愛音痴
◎書いてみたい組み合わせ
腹黒教師と落ちこぼれ生徒
人気者生徒とヘタレ教師
ヘタレ男子と無表情男子
世話焼き男子と幼馴染ずぼら男子(リバ)
むっつり男子と無自覚天然タラシ
学園物で書くなら中京の設定もらって書くのが楽かなー
ガッツリでもいいんだけど丁寧に過程を描写したり何気ない日常のイチャコラを書きたいそんな気分
0 notes
noah-choco · 5 years
Text
アーカイブやば…こわ…
昨日鯖落ちしてて見れなかったウェブバックアーカイブに昔のサイトのurl入れたら、うわぁぁってくらい残ってて、怖い怖い
おとぎお題やっぱ残ってたわ…!これが昨日見れてたら狐晴も忘れなかったのに!ちくせう!
あとミスフルとか魔探偵ロキとか懐かしいものが出てきました怖いですね(とおいめ)
0 notes
noah-choco · 5 years
Text
Tumblr media
ざくさんは、アイコンメーカーのイラストを、絶対に私の絵だと勘違いすると確信していたよ!
代理はそらとも。あぐら書くのむずいよね。
0 notes
noah-choco · 5 years
Text
FF14のシェアメイト
オスッテ君たちのあれこれを妄想したり考えたりするの巻。
Tumblr media
左:アインくん 右:メグくん
兄弟設定なのにカップリング設定が共存してるのって冷静に考えるととんでもねえな?
アイメグ。尊い。
Tumblr media
ノアくん。みんなの総攻めお兄ちゃん。いわゆるスパダリだよね。多分裏組織のボスとかしてる気がする。趣味と特技は監禁()
Tumblr media
モカ。顔は可愛いけど職業はボディーガード。
私の中での暫定の流れ(なおFF14には鏡像世界というパラレルワールドがあるため、別の世界線も存在するので、これはあくまで私の中の世界線の設定)
・階級設定
アルファ(上流階級)→ベータ(一般人)→オメガ(下級層)
・オメガバース的な設定 
♂しか出てこないので基本的に♂のことのみ
アルファ:基本的に攻め。オメガとツガイになることができる。性欲強い。
ベータ:どちらでも。アルファやオメガとツガイにはなれない
オメガ:発情期あり、フェロモンあり、アルファと、または、オメガ同士でツガイになることができる。
ツガイになると、オメガの発情フェロモンが、ツガイ相手にしか効かなくなる。
発情期を発散しないでいると体調が悪くなる。また、他の♂を刺激するフェロモンを出すため、社会的に疎まれやすい。フェロモンは超高額な薬によりしばらく抑えることができる。フェロモンを発している間、路地裏とかにいると大抵襲われる。
キャラ付け
アインは、心配性かつブラコン、メグ溺愛。オメガ。発情期は、少年期からずっとメグが発散させてくれていたため、外から見るとオメガには見えづらい。優秀な研究家であり、オメガの発情期を抑える薬の研究をしている。
メグは兄が大好きで、できることなら自分が兄に変わってオメガであればよかったと思っている。自分がベータなため、アインとツガイになることができないことを心から悲しんでいる。
ノアは、表の顔は製薬会社のお偉いさん。アルファのエリート中のエリートであり、総攻めであり、ド鬼畜。アインの所属する研究グループのスポンサーをしている。裏では、擬似的にオメガになる薬(いわゆる媚薬のようなもの)の研究開発を支援している。また、一時的にフェロモンを抑える高額な薬を扱っているため、アインたちの研究が上手くいくと困るので、表ではスポンサーのふりをしているが、裏で手を回して研究の妨害をしている。
モカは学院時代にアインに憧れており、オメガでも社会の役に立てるという志のもと護衛の道へ進む。しかしオメガのボディーガードはなかなか雇い手がおらず、困っていたところにノア専属ボディーガードとして雇われることになる。ノアはモカを従順なスパイとして育てるために調教を施し、表向きはボディーガード、実際はスパイとしてアインの研究室に送り込まれる。憧れのアインとの再会はモカにとってもノアにとっても想定外であり、ここから物語が動き出す。
的な。設定を今考えました。一本書けるやつやん。
メグは、アインとツガイになるために、裏ルートで流通するオメガになれると噂の薬を探し、ノアの元へ行き着く。薬の実験台になるという条件で、ノアの元へ通うようになり、オメガになれる薬(と称された媚薬)の実験台として調教開発を受ける。心はアイン一筋なため、堕ちるのは身体のみ。
アインは弟の異変に気が付き、調べていたらノアに辿り着く。弟を救うべくノアに直談判に行った結果、ノアによって強制的に発情期を起こす薬を盛られてしまい、メグの目の前で犯される。その後、メグを救いたければ言うことを聞けと言われ、様々な辱めに合うも、最終的にはメグとノアの元から逃げ出す。
しかし、メグには実験に使われた薬や調教の後遺症として、強い発情(オメガのものとは違うため、フェロモンはない)と感度上昇の後遺症が残り、身体の疼きを沈めるためにと時折ノアに誘われて堕ちたりしている。アインはアインで、よくノアにいろんなことで脅されて好き放題されている。お互いがお互いのために奮闘しつつ、ノアの掌の上。
一方でモカは、ボディーガードとして配属されたノアの元で、いきなり犯され拘束される。突然の調教に、もとよりM気質のあったモカは一瞬で堕ち、ノアなしでは生きていけないと思うところまでおとされる。
ノアの命でスパイ兼ボディーガードをすることになり、派遣された先で憧れのアインと再会。さらに、アインとメグの現状を知ってしまう。憧れのアインの堕ちた姿を見て、ノアの恐ろしさを知るモカだが、身体がノアを求めており、逆らえないことに気がつく。また、調教の結果、気持ちも大きくノアに依存していた。
それでもアインたちを裏切ることはできず、スパイとしての役目を放棄することをノアに宣言し、キツいお仕置きをくらう。ノアは、従順なペットとして育てたつもりのモカがアインの存在により自分に歯向かったことが気に入らず、またモカがアインを意識していることにイラつきを感じる。
基本的に玩具程度にしか考えておらず、健気で従順なモカは反抗的なアインに比べて、やりがいがないと思っていたノアだが、想定外の裏切りに動揺していることに気がつく。
ノアはモカを二度と裏切れないように徹底的に調教し、モカはノアのペットとして飼われる生活を望むようになる。
まで考えました。性癖がバレる(真顔)
そして泥沼オブ泥沼で誰も幸せにならない展開すぎて草生えた。でも、ノアはアルファとしてのあるべき姿というか、別に根っからの悪人なわけではなく、単にド鬼畜なだけだと思うし、モカはもともと奴隷願望的なものがあったんじゃなかろうか。
アイメグはお互いが好きすぎるのに、ノアの介入により混乱しつつもやっぱりお互いが好きすぎればいいと思う。
最終的にノアが3人ともおもちゃにしてそれを高みから眺めてたらいいよ!
あとアインと再開して一時的に我に帰ったモカは、アインに「スパイをやめて欲しいですか?それなら、僕を一晩だけでいいので、恋人のように抱いてくれませんか」とか言って欲しい。密かな恋慕。でも抱かれた結果、なんか違って、そうか、もう自分はノアのものなのか、と思い知るが良い。
自分のキャラに対して優しくないな?←
あとなげえよ!何時間書いてんだよ!楽しかったよ!!!!!!!!
2 notes · View notes
noah-choco · 5 years
Text
えんぽち「もしも5人がネトゲをしたら」
Skype通話にて
おとぎファンタジー14というネトゲを、キヨの提案でやることになった5人。
知矢「よっし!キャラできたー!空斗、どう?」
空斗「僕もできたよ。職業、ってなんでもいいの?」
キヨ「なんでもええで!」
空斗「んー、僕あんまりこういうのやったこと、ないからなぁ。キヨのオススメは?」
キヨ「フィーリングでええんちゃう?」
知矢「テキトーだなぁ。な、な、空斗、俺これが似合うと思うな。」
空斗「どれ?…ふーん、投げナイフを使うキャラなんだ。じゃあこれにしよっと」
知矢「俺はこのバルト族っていう狼のキャラにする!格闘術が使えるらしい!」
キヨ「俺は余った職業でええわ。ナルと后さんは決まったん?」
ナル「俺は弓使ってるやつにした。レイは回復が似合うと思うんだけど」
空斗「それナルの趣味じゃない?」
ナル「ちがっ」
レイ「このウサギさん?可愛い!」
キヨ「ルピナス族はヒーラーに向いてるし、ちょうどええんちゃう?」
ナル「そしたら、キヨは魔法使いか。ピーターパンがモチーフなんだな。」
知矢「似合うような、似合わないような」
空斗「魔法使い(笑)」
キヨ「だーれが万年魔法使いや!」
ナル「いいから始めないか?」
-------
なんとなく思いついてザクさんにしかわからない小ネタをぶちこんでいくスタイル。
どうしてもバルトの相棒の名前が思い出せなかったよ!ウェブアーカイブまで探したよ!悔しい!
ゲームのうまさは、経験から
知矢>キヨ>空斗>ナル>レイ
空斗は要領いいからすぐにマスターしそう。ゲームは子供の頃は一切やったことなくて、最近知矢の影響で少しやってるくらいかな。無双系とかシミュレーション系とかハマりそう。
知矢は絶対モンハンとかめっちゃやってると思う。王道ファンタジーRPGとかも一通りやってそう。あとウイイレ。
キヨは格ゲーとか音ゲーとかをゲーセンでやるタイプっぽい。あとはシューティングとか。あとソシャゲにハマって沼るタイプ。
ナルはマリオとか王道のものはやったことありそうだけど、あまりゲームには馴染みなさそう。男の娘が出てくるBLゲームの存在を知って、やってみたくてそわそわ。
レイはどうぶつの森とか延々コツコツとやってそうだけど、基本的には機械に弱い。どうぶつの森は兄が与えた。多分ものすごいゲーム音痴。
上の小ネタは性格が似てるのを当てはめてたけど、普通にネトゲをやらせた場合は、
盾役のキヨ、剣士の知矢、魔法使いの空斗、弓使いのナル、ヒーラーのレイでめちゃくちゃしっくりきそう。そしてヒールが全然来なくてキヨ即死しそう。空斗はサブ的に覚える回復魔法でしれっと知矢を救出しつつ、ナルと一緒に逃走。だいたいキヨは可哀想。でも多分文句言いつつも一番楽しんでるのもキヨだろうなぁ。
0 notes