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Etsuko Sonobeのクリエーション
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ofstokyo · 6 years ago
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OFSオープン当初から取扱いをしている「Etsuko Sonobe」のジュエリー。ジュエリーと聞いて思い浮かべるものを飛び越えたその美しい佇まいや、不思議に心をとらえる強くキラキラとした魅力に迫るべく、デザイナーである薗部悦子さんにお話を伺いました。 最終回は、「アイデアの煮詰め方」と「新しい試み」について。
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――新作は定期的に発表されているんですか?
薗部 ええ、いまも作り始めているところです。赤い色の素材を使ってみたいのだけど、石って真っ赤のものはなかなかなくて。で、別に石にこだわらず、アクリルを使ってみようかと思って、いま試しています。
――定期的に発表するとなると、なにかしら期日があるからアイデアが生まれるのをただ待っているというわけにもいかない。どのように考えていくんでしょうか���
薗部 以前は沢山スケッチをしていました。ちょっと思いついたものをかたちにして描いてみる、それを繰り返していくと煮詰まっていく、みたいな感じ。だからスケッチをする時間が楽しい。
――いまはもうあまりスケッチはしないのです?
薗部 します、します。その時間が好き。手を動かして描いて、煮詰めていく時間が好き。よく、アイデアが突然湧いてきたとかって言うけど、そうじゃなくて、人間って考え出すと意識しなくてもぼーっとしていても頭のどこかで思考が継続していくものらしいです。そしてふとアイデアが出てくるときが訪れる。
若い時は、枕元にスケッチブックを置いて、ちょっと考えてから寝ると、夢のなかで「あっ!」って思いつくみたいなことがあったけれど、最近は疲れてすぐ寝てしまう(笑)。
あと、紙でモデルを作るということもよくします。意外と自分が考えるものは紙で作るのに適しているというか。
ちょっと違う話ですけど、『dropス』(*OFS gallery / 2015年)の時、最初、紙のジュエリーを二人で作ろうかって話していたんです。私がかたちを考えて、(渡邉)良重さんがそこに絵をつけるような。でも現実問題、見積りを出してもらったらすごく高くなっちゃってやめたんですけど。
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――『dropス』は、『ジャーニー』のときの経験があったから、薗部さんと良重さんのあいだに寺山修司さんの詩を、ということだったんですか?
薗部 いえ、寺山さんの詩に宝石がいろいろ出てくるからおもしろいんじゃない? ということで。詩を読んで、そこからインスピレーションを得て、良重さんと私とそれぞれ別々に仕事を進めたんです。良重さんからの提案もあって、当日並べるまでお互いの作ったものは見なかったの。そしたらすごくぴったりはまっていて二人で驚きました。「この絵とこれがこういうふうにつながっているわね!」みたいな感じで。あの、石が入っていないリングとかね。「その石はこの絵のここにあるのよ!」とかって良重さんが(笑)。
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――あれはすごかったですね(笑)。テーマや決まりごとがあると苦労されるようにおっしゃっていましたけど、『dropス』の時は大丈夫だったんですか?
薗部 ちょっと苦しみました(笑)。でもそれを乗り越えられた時は楽しいで��よ。
以前、名古屋で展覧会をやった時にも12カ月の石のものを作ってほしいとギャラリーの方に言われて、『stone love-12の月の物語』というタイトルで。テーマに沿うような石を探すのに結構苦労しました。
サファイアとかは、普通にカットがされているルースしか見つからなくて、全然制作意欲がわかない。そんな時インド人のディーラーが、彼のおじいさんが持っていたという石を3つだけ出して来てくれて、時を超えて巡り会えた石に感激でした。原石に近い形であんまり加工していないような石で、ディーラーのおじいさんを思い浮かべながらデザインしましたよ。
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――OFSでも取り扱っている、ダイヤの原石を使ったリングも、ダイヤモンドと聞いて想像するものとかけ離れていて、かっこいいのでゾクゾクしました。
薗部 ダイヤモンドだけど原石なのでダイヤモンドっぽくないですからね。でも、12カ月というテーマが意外と喜ばれたんです。そこは普段アートのギャラリーだから、アート好きで作品を買ったりするようなお客様がほとんどだったのですが、ジュエリーは持っていないという人がすごく多かった。で、話してみると、普通のジュエリーって全然つける気がしない、って。「キラキラは好きなんだけど、ギラギラしているものは嫌いなのよね」という方が多くて。「自分は誕生石がエメラルドでずっとエメラルドのリングを探していたけど、着けたいものがなかった、けど、これだったら着けてみたい」とか言ってくださる方もいて。
宝石だけれど構えて着ける必要はない、そういうジュエリーでありたいですね。
ギャラリードゥポワソンでの展覧会は、毎回、冬の時期なので、冬の張り詰めたようなキラキラした感じを石で表現しています。石をスライスしたものには、薄氷がはったみたいなきれいさがあって、ジュエリーを通してなにか物語を感じてもらえたら楽しいかな、と。
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――多くの人は、そんなふうにテーマに沿うようにして作っていくのかもしれないですけど、薗部さんにとってはなんだかすごく新しい試みですね。
薗部 そう、そう。でも楽しいです。
――OFSでもまたなにか企画展を行いたいですね。
薗部 そうですね、また『dropス』みたいな企画もやりたいですね。
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OFSでは、2018年11月に開催したフェア『JEWEL BOX #002 ジュエリーとクリスマス』のほか、今後も薗部悦子さんの作品をご紹介する企画を計画していきます。どうぞご期待ください。
聞き手:寺田未来(OFS/KIGI)、今村真紀
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ofstokyo · 7 years ago
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OFSオープン当初から取扱いをしている「Etsuko Sonobe」のジュエリー。ジュエリーと聞いて思い浮かべるものを飛び越えたその美しい佇まいや、不思議に心をとらえる強くキラキラとした魅力に迫るべく、デザイナーである薗部悦子さんにお話を伺いました。
第5回は、「イメージの源」と「枠を超えるワクワク」について。
――これまでのお話で、薗部さんはもともと誰かが考えたであろう、ある機能性を一度取り払うことや、「これ、なんだろう?」と思ってしまうような意外性などからアイデアを生み出しているとお聞きしました。
ですが、最初に薗部さんのジュエリーを知った時には、雪の結晶のようなブローチなら、実際に雪の結晶を見て、こういうジュエリーが作りたいと制作したのかなとか、バケツのネックレスなら、木の実がバケツに入っているのを目にして……とか、そういう発想からきているのかと思ったんです。薗部さんのジュエリーからこちらが勝手に受け取るイメージと、実際の薗部さんのアイデア源がまったく違うというか、それがまた面白いなと思います。
薗部 よく、何からイメージするんですか? とか、どういうものを見ることでイメージがわくんですか? とか聞かれるけれど意外とないの。時々、自分でもそれを期待するんですけど、ないんですよね。なにもないところからイメージがわくのかも。
先日、ドイツのジュエリーアーティストが日本に1カ月滞在していて「日本の庭」をテーマに次の展覧会に向けて作品を作ると言っていて。どうやってやるんだろ?って、興味深かったです(笑)。
――偏見かもしれないですけど、アーティストって、そういうところから発想したり、インスピレーションを受けて作ったりしているのかなって思ってしまうんです。だから、何かそういうテーマやくくりのようなものがあったほうが作りやすいのではないかと思ってしまいますけど、薗部さんは逆に苦労されてそうですね。
薗部 苦しいと思う。「日本の庭…?」みたいな(笑)。
――でも、そういったところから作品は生まれていないのに、『ジャーニー』のような物語性のある絵本になることがまったく不思議ではなく自然なことにも思えて、薗部さんの作っているものにストーリーが感じられるんですよね。どこかファンタスティックなところもあったりして。
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たとえば『ジャーニー』には、箱をイメージしたようなデザインのジュエリーがいくつか登場します。(渡邉)良重さんも、むかしから素敵な箱を集めて宝物を入れておくのが好きだったと言っているんですが、素敵なパッケージとか箱モノを見ると欲しくなってしまうような、そういう、女の子の箱に対する思いみたいなもの、ありますよね?
薗部 ありますね。『ジャーニー』に、どのジュエリーを使うかというのは、たくさんあるなかから良重さんが選んでくださったのです。そしたら箱のデザインのものがすごく多くてビックリしました。
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――ただ、薗部さんの発想はどちらかというと、箱の持つイメージとか、箱に対する思いというよりは、箱自体のかたちや箱そのものへの興味ですよね。
薗部 ええ。そもそも箱が好きだったんです。箱ってなんかおもしろいじゃないですか、なかに入っている状態と、なかに入っていない状態と。立体なんだけど平面でも表現できるし。開いたときと閉じたときの意外性みたいなこととか、ちょっとワクワクしますね。それで、箱のピアスとか、箱をつないだようなブローチとか、可能性を広げていくことができるのかもしれませんね。
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――そういうふうに、薗部さんと良重さんは実は発想源が全然違うのかもしれない、だけど、違和感がないどころか、なぜかどこかあう。近くで見ているとそれもまた面白いなと感じます。
薗部 良重さんと最初にお話をする時も、きっとお花とか少女とか、そんなジュエリーだったら良重さんももっとやりやすいんじゃないかなと思ったりもしました。
以前は、自分と同じようなスタイルの人と仕事をしたいと考えていて自分に近いものをどこかに求めていたんです。それは安心感からなのだと思いますが、でもそうすると最初から結果が見えてしまって自分の枠から超えることはない。
その点、良重さんはスタイルが全然違うじゃないですか。だから、そのまったく未知なところで「いったい何ができるんだろう?」という期待でワクワクしてしまう。
(第6回につづく)
聞き手:寺田未来(OFS/KIGI)、今村真紀
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ofstokyo · 7 years ago
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OFSオープン当初から取扱いをしている「Etsuko Sonobe」のジュエリー。ジュエリーと聞いて思い浮かべるものを飛び越えたその美しい佇まいや、不思議に心をとらえる強くキラキラとした魅力に迫るべく、デザイナーである薗部悦子さんにお話を伺いました。 第4回は、「自分でも発見のあるものを作ること」と「表情のある石」について。
――『ジャーニー』にも登場している、バケツのようなデザインのネックレスといったアイデアはどこからきたんでしょうか。
薗部 あれは、置いてある時に「これ、なんだろう?」みたいなものを作ってみたかったのです。でもつけると「ああ、バケツがぶら下がってるネックレス!」みたいな(笑)。
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――制作にいたるまでの考えの流れが興味深いですね。ネックレスを作ろうと思ってこのかたちにたどり着いたのではなく…。
薗部 そういう流れで考えるということは、あまりないですね。 意外性のあるものが好きというか、このピアスも置いてあると、「どうやってつけるんだろう? どういうかたちになるんだろう?」って思いますよね。
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薗部 でも���けてみると普通につけられる。
置いてあると平面なのに、つけると立体になるブローチとか、そういうギャップがあるものもおもしろいかな、と。そういうほうが作っていても楽しいし、自分でも「あ、こんなふうにできるんだ」という発見がある。そういうものでないと、きっと人には伝わりづらいのではないかなと思ったりします。
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――ほとんど見えないのに、実はダイヤが入っているマリッジリングもありますね。「まさかここにダイヤが!」というような。
薗部 あれは、細かい小さなダイヤを一周ぐるっと留めているので、その部分に透明感が出るんです。
――マリッジリングは、比較的、決まりごとというか、制約のようなものがあると思いますが、そういうなかでどういうふうに発想していくのですか。
薗部 肌になじみやすいものというのを意識したり、触れた時に本当にピュアなものが肌にあたるように純金を使ったり。いままでやっていなかったようなことをブライダルリングで出来たらな、と考えています。
――なかなか気づきにくいけれど、実は「丸」ではなくて「8の字」になったものが繋がっているようなデザインのチェーンネックレスもありますね。
薗部 あれは、既成のチェーンを使わずに、オリジナルのものを作りたかったんです。だけど、1個ずつパーツを作って繋げていくとその分手間がかかるのですごく高い工賃になってしまう。それが8の字になると作業が半分になるじゃないですか。つまり、工賃も半分で済む。そういうこともあったんです。
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――ああ、そうだったんですね。そういうことも制作していく上では重要な部分ですよね。
薗部 ちょっと現実的だけど、でも、そこも考えないと(笑)。
――OFSでお客様と話していると、わりと男性も興味深くジュエリーを見てくれることが多いように感じます。かたちそのものや素材の組合せからなのか、いわゆるジュエリーというものへの視点とは違って、建築的なもののようなイメージを持つようなんですね。薗部さん自身は、そういった要素は意識していたりするんですか。
薗部 自分では意識していないんですけど、オランダで展覧会をした時も興味を示してくださる方に、建築家とか建築関係の方がすごく多かったんです。なんでなんだろう? と思います。
――OFSで展示をした時に、ライトを当てたら下に映ったジュエリーの影がすごくきれいでしたよね。あの時に、建築系の人が興味を持つのは、こういう造作というか、かたちに興味がわくのかなあと思ったりしました。
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――一方で、石など天然のものに関しては、もとの姿・かたちをあまりあれこれしたくないという気持ちも強くあるんでしょうか? たとえば、真珠のネックレスといえば、普通、真珠に穴を開けて繋げて作ると思うんです。でも、薗部さんのものは、まずゴールドの貝を作って、そのなかに真珠をはさんで、そこに隠れているようなデザインになっていますよね。それはなんだか夢があるようで素敵だと思うんですが、実際には穴を開ける加工を加えたくない、もとのかたちを壊したくないということからのアイデアですか?
薗部 そう、真珠に穴を開けたくないから、そうせずにネックレスを作りたいと考えたのです。それで金属で貝みたいなものを作って、そのなかに横から真珠を押し込むようにしてセットしました。加工を加えず自然のままのきれいなかたちを生かせればと思います。
たとえば、石というものは、一般的にいわゆるきれいな無傷のものがよいとされているじゃないですか。でも私はそれには石としての面白みを感じない。ちょっとインク���ージョン(*ほかの鉱物や気体、液体などの内包物)が入っていたりする表情のあるものが好きです。
ジュエリーって、きらびやかにするためにどんどん装飾する方向へ行ってしまうじゃないですか。私はそういうジュエリーが好きではなかったし、自分の肌にはあわないと感じていたんです。なので、できる限りそういう余分なものは取り除いていきたい、でもどこかかわいらしさは残したいという気持ちはあります。
(第5回につづく)
聞き手:寺田未来(OFS/KIGI)、今村真紀
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ofstokyo · 8 years ago
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OFSオープン当初から取扱いをしている「Etsuko Sonobe」のジュエリー。ジュエリーと聞いて思い浮かべるものを飛び越えたその美しい佇まいや、不思議に心をとらえる強くキラキラとした魅力に迫るべく、デザイナーである薗部悦子さんにお話を伺いました。 第3回は、Etuko Sonobeの代表作ともいえる天然石のジュエリーについて。
――天然石を使ったジュエリーは、石からデザインを考えたりするんですか。
薗部 いいえ、全体のデザインを考えてから、どういう素材を使おう? と検討して、必ず素材があとから来ます。私の場合は、そのほうがやりやすい。石を見てイメージをふくらますとか、素材にこだわるとかそういうことはできない。私は石を見ちゃうとそこで止まっちゃう(笑)。そこで制約ができてしまう感じがして広がらなくなるんです。
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――制約とか、決まりごととか、こうだと思い込まれているものとか、そういうものが本当にあまり好きじゃないんですね(笑)。
薗部 そういうのも誰かが考えたわけだから。 もともとは石には興味がなかったので、全然使ったことがなかったんです。すでにカットが施された石を使って何かジュエリーを、って言われても楽しいイメージが出てこない。
以前、山梨に住んでいた時、市の依頼で山梨の企業を回る機会があったんですね。山梨は宝石の研磨が地場産業としてあって、そういう会社がたくさんあります。ただ、どこの会社も東京ですでにやっているようなことを追ってやろうとしていたので、できたものを見てもおもしろくなかった。そして、ある時たまたま倉庫を見せてもらったら、原石がごろごろしていたんです。こんな石は使い物にならない、と企業の人たちが言っていて……。でも私は、この石を使うんだったら、これこそおもしろいものになるんじゃないかと思った。それを使ってジュエリーを作ってみようと思ったのが石を使った最初なんです。
それで、『おちこぼれの宝石』というタイトルで展覧会を行ったんですね。人の目に触れない、誰も目を向けないような石、捨ててしまうような石、でも本当はそこにこそおもしろいものがあるんじゃないかな、と思って。石をこんなに自由に使えると初めて気付き、誰もやっていないことができるんじゃないかなと思いました。
――いまでこそ、いろんな発想からジュエリーは作られている気もしますけれど、その頃は、決められたような石をみんなが使うというのが当たり前という感じだったんですね。
薗部 ええ、それは20年前くらいの話だから(笑)。 その展覧会では、木の角棒をたくさん立てて、その上に指輪とかジュエリーを並べたんです。その時にしか作らなかったものもあるし、似たようなイメージで作っているものや、ちょっとアレンジして作りつづけているものもある。
最初はほんとに河原で拾ってきた石ころみたいなイメージで作っていたんです。
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――それでいまもあのころんとした感じのリングなどがあるんですね。やっぱりあれだけ石が大きいと台座もすごくしっかりしたものをつけないと普通は留まらないものなんですか。
薗部 そうですね、普通は「爪」のようなものを。
――それを、その「普通」はイヤだから?(笑)
薗部 その爪だって最初は誰かが考えたものだし、もしそういうものが例としてなければ、石の留め方を自分で考えなくちゃならないわけです。ただその頃は技術もなく、爪を作ることが出来なかったという理由もあるんですけどね(笑)。
――でも、薗部さんの選んだ石の留め方のほうが難しそうに思います。薗部さんのジュエリーがOFSにあるって知って、ジュエリーの学校に通っている方などが時々見に来てくれるんです。そうすると、この留め方はほんと難しいんですよ、とか言って教えてくれたりして。石に金属を貫通させたりしているじゃないですか。
薗部 そうですね、あとはテンションを使って留めるとか。
いまはすべてはできないけれど、最初のころはほとんど自分で作っていたんです。
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売られているジュエリーって、キャストといって、型を作って金属を流し込んで作るやり方が多いけれど、私の場合は全部地金から叩いたりして作ります。流すと金属の性質が変わっちゃうから、本来の金属じゃなくなっちゃう、というようなこだわりが自分ではあって。前は全部自分で叩いて作っていて、そういう時間も癒される感じがして好きでした。自分で作ると金属の扱い方とかもわかってくるし、金属でなにができるかということも見えてくる。金属って硬いけど、実際使ってみるとほんとにやわらかい素材だなというのに気がついた時があって、それから扱いやすくなったところもありますね。
(第4回につづく)
聞き手:寺田未来(OFS/KIGI)、今村真紀
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ofstokyo · 8 years ago
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OFSで当初から取扱いをしている「Etsuko Sonobe」のジュエリー。ジュエリーと聞いて思い浮かべるものを飛び越えたその美しい佇まいや、不思議に心をとらえる強くキラキラとした魅力に迫るべく、デザイナーである薗部悦子さんにお話を伺いました。 第2回は、「ジュエリー」を選んだわけについて。
――大学に入学する時にはもう、進路というか、ジュエリーでやっていこうと考えていたりしたんですか?
薗部 美大に入る時は、ただモノを作るのが好きだったから、なんでもいいと思っていたんです。陶芸家になろうかなとか、テキスタイルやろうかなとか思ってはいたけど、全然ジュエリーには興味がなかった。入学して授業を選択しなくてはいけない時にも優柔不断だし決まらなくて。そしたらたまたま隣に座った男の人が「金属おもしろいよ」と言っていて。じゃあやってみようかなと思って、金属を(笑)。最初は鉄を叩いて大きい彫刻を作ったり、ただただ金属で何かを作ったりしていたんですけど、先生のジュエリーの仕事を見ているうちに私もジュエリーをやってみようかな、みたいな感じで。人の意見にすごく流されちゃうんです。
卒業してからは、ジュエリーの会社にデザイナーとして勤めたのですが、20代後半くらいになってどこか物足りなくなってきて。で、自分の仕事も始めて、海外の展覧会でも発表するようになったんです。
――ジュエリーの展覧会や展示会のようなものは日本と比べて海外では多いのでしょうか?
薗部 そうですね。専門のギャラリーもたくさんあるし、ジュエリーに特化したような美術館もあるし。アートフェアも、ヨーロッパ、特にオランダなんかは盛んです。だからもっと「アート」とか「アートジュエリー」みたいな感じで、すごく主張が強いようなものも多い。ここ数十年のあいだに海外のアーティストが「ジュエリー」の概念をいろいろ変えていこうとして、「ジュエリー」という名の下にいろんな試みをしています。ジュエリーってちっちゃなものだけど、それだけに留まらずに、人間のからだとの関係性とか、自然のなかでの人間との関わりだとか……、それを海のジュエリーとか、山のジュエリーとか、そういうようなかたちで表現する人もいたり、からだやダンスで表現する人もいたり。でも、そういう動きは一時的なものだったように感じます。
――薗部さん自身も、そういった気持ちをお持ちなんですか?
薗部 30代の頃はやはりそういうものを作っていました。大きいものとか、紙や布、プラスチックとか、いろんな素材で作ったりして。「ジュエリーってなんだろう?」ということをいつも考えていました。それが、バッグや帽子のようなものになっちゃった時もあります。
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――では、作り始めた時と比べて薗部さんのジュエリーは変化してきているんですか?
薗部 途中ですごく変わってきた。学生の頃はちっちゃな彫刻を作るみたいなかたちで、かたちだけをいつも考えていたんです。でもそのうち、ジュエリーなのにおかしいな? と思えてきて、「機能」のことを考えだしたの。機能的なことって、なんでも最初は誰かが考えたもので、それを当たり前だと思ってデザインしちゃうと表面的にアレンジすることにしかならない。だから一度、「機能」というものを取っ払って、何もないところから考えてみたいと思って。
ブローチひとつにしても、当たり前のように裏にブローチピンを付けることがイヤで、とにかくイチから考えたいと思った。そういうことを学生の終わりくらいから考え出したんです。バッグにしても、どのバッグもバッグの持ち手ってどれも同じ、だからその持ち手の「機能」をもう一度考えてみることがデザインに繋がるのではないか、そんなことを考えたりしていました。
その頃っていつも考えてはいたけれど、それを商品化するまでには至らなかった。アイデアを思いつくとプロトタイプを作ってみて、でもそれで終わっちゃう。それをもっと人の手に渡るようなかたちに本当はしていくべきだったんだけど、そこまで考えが及ばなくて。
――そうやって考えていくと、最終的に服飾のほうへいってしまう人も多いかと思うんですが、それでも薗部さんがジュエリーを選んだのはなぜでしょう?  
薗部 バッグのデザインをやろうかなと思ったこともありました。ジュエリーに限らず疑問に感じることがあると、解決する為のアイデアを出してみたくなります。
(第3回につづく)
聞き手:寺田未来(OFS/KIGI)、今村真紀
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ofstokyo · 8 years ago
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OFSオープン当初から取扱いをしている「Etsuko Sonobe」のジュエリー。ジュエリーと聞いて思い浮かべるものを飛び越えたその美しい佇まいや、不思議に心をとらえる強くキラキラとした魅力に迫るべく、デザイナーである薗部悦子さんにお話を伺いました。 第1回は、取扱いのキッカケともなるKIGI・渡邊良重との出会いについて。
――(渡邉)良重さんとの出会いはどういうキッカケだったんですか?
私がお手紙を出したのが最初なんです。
オランダのGalerie Marzeeで賞をもらったんですけど(*The Marzee Prize/2009年)、受賞すると作品集を作らなくてはならないんですね。作品集を作るのに必要なお金を出してもらえて、それが賞金の代わりになるというか。それで、どういうものにしようかなって1年くらい考えていたんですけど、自分の作品集というもののイメージが全然わかなくて。今まで受賞した人のものを見ると、だいたい最初のページに美術館のキュレーターとかどこかの美術大学の先生の言葉が入ったような、ほんと「作品集」という感じで、そういうものは作りたくないと思っていたのです。そんなものを作っても誰も喜ばないんじゃないかなって。せっかく作るなら、普通の人でもパラパラっと見て楽しめるようなものができないかなって。でも結局、考えがまとまらなくて。
その年の暮れに、宮崎にいる友人のところに遊びに行ってそんな話をしたら、「もっと気楽に楽しい本を作ればいいのに。良重さんの『BROOCH』(*渡邉良重・絵、内田也哉子・文/2004年/リトルモア刊)みたいな」って言われて。彼女がその本を持っていたんですね。それで、あぁそうか、と思って。良重さんのこと、実はそんなによく知らなかったんです。でもその前にちょうど直島に行っていて、豊島美術館できれいだったからポストカードを買ったりしていた。それで手紙を書いてみようかなって思って。自分の作っているものの写真を入れて、実はこうこうこうで本を作りたいんですけれども、ご相談にのってもらえませんか? って書いて出したら、すぐにお返事をいただいて。私のジュエリーを見たことがあったそうで、「外国の方の作品かと思っていた」、「ぜひ会いましょう」って。それで会って、なにか面白いものができそうだからやってみようかという話に。
――そうしてできたのが『ジャーニー』(*2012年/リトルモア刊)なんですね。それはいつごろの話ですか?
いつだろう、『ジャーニー』が2012年だから、4、5年くらい経つかな。
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――『ジャーニー』は、作るのにどれくらいの期間がかかっているんですか? 絵も全部良重さんの描き下ろしですよね?
1年くらいだと思う。
ただ、最初、ジュエリーの写真と絵をどうやって組み合わせるのか全然イメージがわかなくて。へんに浮いちゃうかなとか思ったりして、もしあれだったらジュエリーの写真はナシで良重さんのイラストだけで……って言ったんです。そしたら良重さんが「それはダメ、それはないでしょう」って(笑)。写真と絵がマッチすると思わなかったんですよね。
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――長田(弘)さんの詩が入ることになったのは話しているうちに出た案なんですか?
そうですね、編集の方の意見だと思うな。これらをつなぐものとして詩を、って。もうほとんど出来た状態のものを長田さんに渡したんです。長田さんが先に会わない方がいいっておっしゃったとかで、出来上がるまで長田さんとお会いしなかった。
――ということは、薗部さんのジュエリーがあって、良重さ��が絵にして、その2つを見て長田さんが詩を作ったという流れだったんですね。『ジャーニー』では、その3つの一体感があるので読んだだけではどういう順序で進めたのか全然わかりませんでした。
そう、すごいですよね。詩でひとつになったっていう感じ。
ーーでは、受賞されて作品集を完成させるまでの期間についてはそんなに制約がなかったんですね。
ええ。でも、ほぼ出来た時にオランダのギャラリーにその資料を送ったら、「これは作品集じゃない」ってやっぱり言われてしまって。最終的にギャラリーは絡まないことになっちゃった。
――え、そしたらまた別に作品集を作ったんですか?
まだ作ってない(笑)。作り直しなさいって言われたけど、トーンダウンしてしまってまだやってないんです。そんな人、これまで私だけだと思う。でも私にしてみれば、良重さんに連絡を取るキッカケを与えてもらったから、ほんとによかったなあと思って。最初は、無理だろうと思っていたので。
長いこと仕事しているけど、ジュエリーの世界ってすごく狭くって。ほかの仕事の人と絡むことがあまりなくて、なかなか外に向けて発信できないというか、知ってる人もあんまりいない。だから、もっといろいろな人にも知ってほしいなと思いながらずっと仕事してきたので、そういう意味もあって、違う分野の人と仕事ができるっていうことがいま喜びでもあるかな。
(第2回につづく)
聞き手:寺田未来(OFS/KIGI)、今村真紀
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