sleepingswimming

[sleepingswimming]

唯

元旦、2022年もよろしくお願いします、って送られてきたから、今年は会えると確信してた。今思えば全く根拠なくて、ただあなたの暴力的な律儀さが今に至ってるだけ。コロナに罹りたくないとか落雷に遭遇したくないとか、公共の場で倒れたくないとか、歯医者に行きたくないとか、友達に死んでほしくないとか、家燃えてほしくないとか、そういうの以外で願ってたこと、あの人に会いたいってことだけだったのに結局叶わずに終わってしまった。それでも魚座は大幸運期で、来年は星座占いなんて絶対に信じない。1回も会えなかった。あれほど願ったのに。あれほど願ったから、本当に健やかだった。逃げられるすべてから逃げて、それでも支障はなく、日常は穏やかに進んだ。不幸なことは何も起こらない1年だった。苦しくても寂しくても一度も不幸だとは思わなかった人と苦しくも寂しくもなかったけどなぜか死ぬほど不幸だったわたし。不幸ってどういう状態？心が満ちてないこと？健康が一番、だったらそれでいい、それはわかってる、でもやっぱり、それとこれとは別、に、してほしい。みくちゃんもストレスがないのが大幸運なわけないって言ってくれた。嬉しかった。「何もない幸せ噛み締めましょう」と言われたことを噛み締めて、そのことを意識して意識して、未来のどうしようもない自分の姿を想像して、それでやっと幸せな気がすると微かに認識できるほどの幸せ。「ひらつかはなんでこの仕事してるん？」と聞かれ、「本当の理由と嘘の理由、どっち答えたらいい？」と聞き返すと「本当の理由」と言われ「こどもが好きやからかな」と嘘の方を言う。「じゃあ保育園の先生になったらよかったやん、なんで学童なん？」と、確かに、確かになあ、あなたの鋭さにはいつも感心して、そういう距離感で関わりながら、多分無意識に贔屓することもあっただろう、人間だから。講習を受けてレポートを書いたら誰でも通る資格をもらって、4月から3年生の担当になって、少し時給が上がって、たぶんいろいろあって、その都度自分なりに真摯に対処してきて、でもこうやって振り返るとなんでもなくて、家に帰ってきたら、土日を跨いだら、全部忘れる。覚えてるけど、完全に別だから、そこに私情が入り込むことはほとんどなくて、でもほんとうに何もなかった2022年を振り返ったとき頭に浮かぶのはあの子たちがわたしを睨んだり馬鹿にしたり殴ったり罵ったり、彼らの楽しそうに笑った顔だった。そういうふうにできてる。もう約束はできないだろうから、いつかどこかで会ったら、宮沢賢治のやまなしを朗読しながらその青白くうつくしい指でルービックキューブを揃えてほしい。それを目の前で見ることができたら青空のグラウンドに立ちがらんどうの心で子どもが帰ってくるのを待っていたあのときの気持ちがぜんぶ報われる。来年はもっと自分らしく生きていきたい。2022.12.31