Tumgik
suzukomomoyama · 4 years
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ジャコウアゲハ
suzukomomoyama
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2018年10月14日
 最近とても落ち込むことがあって、泣きながら歩いていた。落ち込んでいるので地面を見ながら。すると、アスファルトにジャコウアゲハの幼虫が一匹落ちているのを見つけた。ジャコウアゲハの幼虫は、この絵日記の表紙にもなっている私の大好きな幼虫だ。 指を差し出すと、ぴとぴとと、這い上って来た。               涙が吹き飛び、直ぐに周辺に食草を探したが、見当たらない。食草がないのに、どうしてここにいるのだろう?いつからいるのだろう?謎である。持ち歩いているタッパーに幼虫を入れ、帰宅途中だったが、Uターンして山に向かった。                                       目当てはウマノスズクサだ。山の中腹で、無事に採取し、幼虫の入っているタッパーに、葉っぱを放り込んだ。                      
 するとそこへちょうど、水色のベレー帽をかぶったおじさんが山を下って来て、私に声をかけて来た。 「メジロを、見かけませんでしたか?」 「昔は秋になるとメジロの集団がいたのに、一匹もいないのです。それに、今年はウグイスが真夏に囀っていました。一体どうしたのでしょう」などと、私に野鳥の話を始めた。
 私はヤブ蚊にたかられながらも、おじさんの話に付き合った。おじさんに興味があったからではない。私は野鳥が大好きだからだ。話を聞きながら、私の頭の中では、メジロが飛びかい、ウグイスが囀り、アオバトが海水を飲んでいた。  しかし、おじさんの方はいつの間にか、野鳥から私へと興味の矛先を変えていたらしい。                                「また..会えませんか?」目をキラキラさせて言って来たのだ。                            私は激しい吐き気に襲われた。頭の中のかわいい野鳥たちが、一瞬にして、生々しい違うものに変わって私の方を向いている。                
 「あ!電話だ!ちょっとすみません…」                  スマホに電話がかかって来たふりをして、足早におじさんを振り切った。  
 小道に入ると、私は演技をやめてジャコウアゲハ の幼虫を確認した。     幼虫はタッパーの中でウマノスズクサにさっそく齧り付いていた。かりかりといい音を立てて、ひたすら食べている。                     その姿を見ていたら、吐き気がスーッと引いて、いつしか私は笑顔になっていた。
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suzukomomoyama · 4 years
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朝日新聞tripper
tripper春季号
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suzukomomoyama · 4 years
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工作舎から作品集
5月に刊行予定です
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suzukomomoyama · 4 years
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2018年8月22日
ツマグロヒョウモンの蛹を描いていると、 呼び鈴が鳴った。
名前を尋ねると、 「わたくし、蝶々です」という。 鍵のかかっている引き戸に手をかけているようで、 戸が、がたがたと音を立てている。
一瞬、頭が混乱して、無言でいると、 「蝶々です!A町の蝶々です!」 と繰り返し言う。
蝶々 → チョウチョウ → .... 町長......か!
鍵を開けると、                                              
白いピケ帽をかぶり、青いスニーカーを履いた初老の男性が、 「こんにちは。私がA町の町長です!」と立っていた。
町長は、ビラ配り中、道に迷って、山中の我が家に辿り着いたらしい。 方向音痴の私は何のお役にも立てなかった。 そのうち、町長も察してくれて、 「…..ということで、私がA町の町長です。 今後ともよろしくお願いいたします。」 と言って、去って行った。   町長からもらったビラには、満面の笑みの写真とともに、輝かしい学歴、職歴が大きく印刷されていた。
机に戻って、再び蛹の絵を描き始めながら、想像した。
玄関を開けると、羽化したツマグロヒョウモンがふわふわと飛んでいて、    「わたくし、A町のチョウチョウです!」と言う。
その場合、蜂蜜入りの紅茶などをお出ししたら、喜ぶのだろうか….。
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