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Hansel in the Egg
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平楽の城は��まだ遠い。
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t-t-took · 7 years ago
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前半(線画終了まで)
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t-t-took · 8 years ago
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穢れなき紳士
相変わらずのお久しぶりっぷりですが。
トーウィとユノティカが初めて出会った日の話。書きたいところから書きたいところまでなので、唐突に始まります。説明も一切ないですけど悪しからず。あと地味にワンシーンなので区切りがなくて読みにくいかもです、申し訳ない。
それでもまあ大丈夫そうなら以下からどうぞ!わーい!
【穢れなき紳士】
「ふうーん……」 
 顎に手を当てて腰をぐっと屈め、客人は目の前に座る紳士を、まるで新種の蝶の標本でも観察するかの如くしげしげと眺めた。確かレ=トーウィと先ほど名乗っていたこの人物は、こうして近くまで寄ると、存外に若そうな面差しをしている。定規のようにまっすぐ伸びた背筋、膝の上ですらりと重ねられた節のない五指、そして来客用のごく薄い微笑み以外には何の表情も浮かんでいない、整ったかんばせ。そこにはまだ、一切の穢れがない――例えるならば、絵の具を塗りたくる前の紙。真っ白で、まだ誰にも触れられたことのない、僅かな折れも傷も、一点の染みすらない、ただの無。そんなものを前にしてじっとしていられるほど、ユノティカはよくできた人間ではなかった。不意に、それを汚してみたくなった。
だから、口を開いたのだ。どういう風でもいいから、インクをぶちまけてみたくなった。あるいは、思うがままに鋏を入れて、切り裂いてみるのでもいい。くしゃくしゃになるまで折り曲げて、破いてみるのでもいい。そう、ぴかぴかの白い紙を与えられた子どもなら誰でも、必ずやるように。理由なんか何一つない、ただやってみたい、遊びたい、それだけ。
「あんたさあ」
沈黙が破られて、紳士がぴくりと睫毛の先を震わせる。それは、次の台詞を待つ合図。
「そういう喋り方しか、できないの?」
「……はい?」
問いかけに対して屋敷の主人が最初に浮かべたのは、狼狽未満のきょとんとした表情だった。何を言われているのか、あまり分かっていないといった様子。そう、悪くない。この調子だ。
「随分お行儀がいいみたいだけど。喋り方だけじゃない、そういう立ち居振る舞いしかしちゃいけないって、"教わった"のか?それ以外は駄目って"禁じられてる"?……ああそうだ、それとも」
言葉を切り、鼻と鼻がくっつきそうなほど顔を近付ける。双眸の中にまず映るのは、口の端を持ち上げている己の姿。それを透かした向こうを覗けば、次にあるのは驚きの色。でも、それで終わりではない。丸く蒼く縁取りのある、燻んだ茶色の瞳の底に蟠っているのは、ティースプーン一杯分ほどの怯え。彼は明らかに、眼前のぶしつけな客人から次に発せられるであろう言葉を、予期している。いいぞ、なんて胸の中でわくわくしながらもう一度口を開いたら、紳士は確かに一瞬、その痩身を固くした。ああ面白い、もっともっと遊ばせて!
「それとも……そういう風に、"つくられた"から?」
「どうして、そう仰るのですか」
間髪を入れず返す紳士は、語気の鋭さとは裏腹に、すっと目を逸らした。その些細な仕草さえも愉快でたまらない、何もかも見逃せない。この穢れなき紳士の全てに、すっかり魅せられてしまっている。いっそ、不自然なほどに。でもそんなことどうだっていい、今は目の前のまっさらな白を、ただただ好きに弄びたい。
「どうしてかって?俺には、あんたがそう見えるから。俺には分かる、でも違うか?いやもしかして、隠してるのか?秘密なのか?言われたら、嫌なのか?」
なおもじろじろと舐め回すように視線を送りながら、ユノティカは矢継ぎ早に問いを重ねた。その声に滲む愉悦を捉えられないほど鈍感ではないらしく、レ=トーウィは露骨に鬱陶しそうな顔をする。眼を細めて頭を逸らしたから、その瞳の中に渦巻いていた感情は、ユノティカからは隠されてしまった。
「下らない。別に、隠していたつもりなど毛頭ございませんよ。特に言及されたくないという訳でもありません。ただ、今までに誰もお気付きにならなかっただけのこと。必要もないの��言わないでいたら、そのままいつの間にか秘密になってしまったようなものです。格別、自ら言いふらすようなことでもありませんし。ただ……」
どこか躊躇うように、紳士が眼差しを揺らす。しかしユノティカでさえ、本当に彼がそのような仕草を見せたかどうか、はっきりさせることはできなかった。刹那の後、もとへと戻されたレ=トーウィの視線が、あまりにも鋭かったから。再び開かれた唇からの言葉が、あまりにも研ぎ澄まされていたから。心臓を、寸分の狂いもなく刺し貫かれたかと思うほどだったから。ユノティカが我知らず左胸に手を遣ったのは、そこから血が溢れていないかを確かめるためか。
「私がこうして礼儀と分別、作法を重んじているのは、あくまで私自身の意思です。私がどのようにして生まれたのかは、一切関係ありません。でも、今までそれを誰も疑わなかった。貴方以外、誰も私をそのようには言わなかった」
「……なるほど。ふふん、じゃあ気付いたのは俺が最初って訳だな?」
調子を取り戻そうと、客人はわざと得意げな顔を浮かべ、テーブル上のカップを無造作に掴んだ。既に冷めてしまった中身を一息で飲み干せば、その雑な仕草にまた、屋敷の主人は眉を顰める――瞬刻前の張りつめた空気は、またどこかへと消え去っていた。どうしてこんな奴を自分の屋敷に招き入れてしまったのか、心底後悔しているといった面持ちだ。いい、今はそれでも構わない。己の言動次第で新しい表情が引き出せるなら、悪役だって何だって演じられる。
「まあ、そういうことになるのでしょうね。今までここの住人が誰も知り得なかったことを、このような形で暴かれるのは、いささか心外ではありますが……とはいえお噂は、本当だったということでしょうか」
「噂?俺の話を、何か?」
今度はユノティカが、驚きの表情を見せる番だった。この若く、真っ白で、どこか浮世離れしたところのある紳士が自分に関することを聞き知っているなんて、なぜだかこれっぽっちも想像していなかったのだ。こうしてわざわざ訪ねるまで、自分は彼の姿すら、目にしたことがなかったというのに。まあ街の様子が面白くてあちこち巡っていたら、偉い人への挨拶などしている暇がなかっただけだけれど。
「ええ。貴方がここに足を踏み入れられてからしばしば、小耳に挟んでおりましたよ。こう見えても、日がな一日この屋敷にこもっている訳ではありませんから。私��、それなりに必要とされておりますし」
奪われ続けていた話の舵を握れているのが嬉しいのか、紳士は少し背筋を緩め、長い脚を組んだ。そのくつろいだ居住まいに、ユノティカは心を奪われる。ああそれがいい、そっちの方が断然似合ってる。きっとその姿が一番美しく見えるように、つくられ��いるから。
「それで、街の奴らは俺のことをなんて?」
「奴らなどと仰るのは、くれぐれも控えて頂けるとありがたいのですが……。何やら凄い眼を持った不思議な御仁がやってきて、誰とも何も語らずとも、この街のことを見るだけで理解してしまう。まるで稀代の魔術師のようだ、と」
「ふむ、なるほど魔術師か。まあ、俺は魔法は使えないんだけど」
ユノティカは小さく鼻を鳴らして笑い、もともとあてがわれていた客人用の椅子に、初めて腰を下ろした。魔術師と言われて、まんざら悪い気はしない。
「確かに貴方は魔術師とはお見受けしませんが、何か格別な技をお持ちのご様子。私の……なんと言いましょう、ええと、秘密にお気付きになったのも、その技によるものなのでは?」
紳士が首を傾げつつ問いかけると、客人は座ったばかりの椅子からぐっと身を乗り出して、人差し指の腹を突き出した。座ったばかりなのにじっとしていられないのは、彼の数多ある悪癖の一つである。
「知りたいか?」
「……ええ」
「じゃあ、条件を出させてもらおう。俺は自力でお前を暴いてみせたんだから、お前が苦労せずに俺のことを知るのは不公平だ。そうだな……」
不公平だと思ったのは本当だけど、条件は特に考えていなかったことに気付く。しかし、ここで前言を取り消すのもつまらない。何か条件にふさわしいものが、この部屋にあれば……ユノティカはもう一度椅子に身を沈めつつ、ぐるりと広間全体を見渡した。
 改めて目を配ると、ところどころ埃っぽくはあるものの、大きな窓や二階までの吹き抜けのお陰で、部屋は明るい。窓の向こうにはバルコニーがあるらしく、差しっ放しになっているらしい日除けのパラソルの頭だけが、少しだけならここからでも見えた。天井近くの明かり取りには色付きガラスが嵌められていて、階段や部屋奥の大きな暖炉に、柔らかな彩を落としている。今は暖炉に火の気配はないが、寒い季節になればきっと広間全体は赤々と照らし出されるのだろう。その前に置かれたふかふかの長椅子は、座るにも昼寝するにも心地良さそうだ。壁一面を覆っている本棚も、どこか心踊る。きっと知らない言葉のものも山ほどあるだろうし、全部読めるなんて思ってはいないけれど。そして一階二階を問わずいくつもある扉の向こうには、どうもまだ部屋があるらしい。
そこで、ふっと言葉が漏れた。
「……この屋敷、一人で暮らすには随分と広いな」
「部屋を貸せと仰るので?」
その返事は、ユノティカにとっては想定外のものだった。しかし聞こえた声色があからさまに不服を示している様子から、この紳士がそう思い込んでいることは間違いない。ならば好都合。
「話が早いじゃないか。宿無しの���をここに住まわせてくれるなら、あんたの言う"技"を、いくらでもあんたの前で見せてやるよ。口で伝えるだけじゃ、きっとあんたは満足できないだろうから。俺の “技" っていうのは、そういうものさ」
不��な物言いに、主人が胡乱げな眼差しを寄越す。こいつ、いよいよ腹の中を隠さなくなってきたな。無理もないだろう、さっきからこれだけ図々しい悪役を相手にしているのだから。でも笑顔ばかり向けられたってつまらない、誰だっていつだって作って、仮面のように貼り付けることができる顔なんか、あげると言われたって突き返してやる。それよりはもっともっと、怪訝な顔や疲れた顔が見たい。どろどろしていればしているほどいい、こっちが無理にでも引きずり出してやらなければ、決して露わにならないような感情が欲しい。でもここにずっと居られれば、そんなのだって山ほど目にできるはずだ。彼が隠しているものを、何もかも見ることができるかもしれない。そう思うだけで、胸が踊るのを抑えられない。
「ときに、宿無し、と仰いましたけれど。貴方、ここにいらして一日二日ではありませんよね?今まで、どちらで寝泊りを?」
尋ねるレ=トーウィの瞳は、訝しげな色を湛えたままだ。
「適当に大きそうな家を訪ねて、一晩雨露凌がせて、って声をかけたな。この街の奴はだいたい親切だ」
「……くれぐれも今後は、住人を無闇に困らせるような行いは何であれ、控えていただきたいものです」
「そういう意味でも、俺をお前の目の届くところに置いておくべきなんじゃないのか?何をしでかすか分からないぞ。それに、あんたも話し相手ができていいんじゃないか?誰も損しないな」
「私がいったいいつ何時、話し相手が欲しいなどと申し上げました?」
青年の顔に現れているのは、今や苛立ちと怒りに近い。この短い時間でここまで色々な姿を見られるなんて、とユノティカは思わず頰を緩める。しかし幸か不幸かその様子には特に目を向けることもなく、紳士は客の示した条件についてぶつぶつと呟いていた。
「ううん、いえ……しかし……そうですね、まあ幸い、使っていない部屋もあることですし……」
絶対に住まわせてなどやるものかという考えに至っていないあたり、この青年、どうも根はひどくお人好しらしい。とはいえその呟きが客人ユノティカに向けてではなく、彼自身を納得させるために発せられていることは間違いないようだ。街のどこかに居を構える許しをやるだけならまだしも、この屋敷の中に一部屋与えようとするには、客人は少々難があり過ぎるように思われているのは間違いないだろう。それが、知りたいことを教えてもらう対価であったとしても。レ=トーウィは、なおも理屈を並べて己を鎮めている。
「まあこの街ももう随分と永い間、客人を迎えておりませんから、私が口を利いたとしてもいい宿の用意はないでしょうし……仮に長くいらっ��ゃるとしても、新しく家を建てるというのも大変でしょうね……」
そしてついに意を決したように顔を上げ、邸の主人はこう言い放った。
「いいでしょう、貴方がお持ちの技を見せて下さる代償として、この屋敷の一部をお貸しいたします。粗相のないように、よろしくお願いいたします」
自分でそう言いながら、はあ、とここぞとばかりに溜息を吐く。しかしそれ以上、彼は何も言いはしなかった。こうして迷惑極まりない客人ユノティカは、街で一番大きな屋敷の住人となったのだ。
おしまい。
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t-t-took · 8 years ago
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接吻の戯れ
大昔に自創作サイトに隠しページとして載せていた文章。あまりにも拙くてすぐに下げてしまったのですが、未練はあったので改稿しました。 相変わらず設定の説明がないとわかりづらい話ですが、とりあえず載っけときます。では以下よりどうぞ。 【接吻の戯れ】 「さて、と……」 だだっ広い食堂の中、彼女は僕の向かいの席で、自分の腰ぐらいまでもある大きな旅行鞄を、なんとか食卓の上に持ち上げた。厳つい真四角な革張りのそれが、ろうそくの眩い光を鈍く返している。彼女は鞄をぐるりと回し、大袈裟な装飾の施された金の留め金を自分の方に向けた。次の瞬間、ばちりと食堂中に響き渡るような音がして、椅子に座った僕は肩を跳ねさせた。彼女が、留め金を外したのだ。 「うーん」 舌先をちょっと噛んで首を傾げながら、彼女はスカートの裾をたくし上げると、椅子の上に足を乗せた。ぎし、と不吉な音がして、もう長いこと誰も座らせることのなかった椅子がわずかに傾ぐ。僕は小さく息を飲んだが、そんなことにはお構いなしの彼女は鞄の底を掴んだかと思うと、次にはそれを思いっきりひっくり返した。勢い良く飛び出した中身が、テーブルクロスの上にぶちまけられる。いろんな形をした木切れのようなものが、あっちこっちに音を立てて散らばった。そして鞄から最後に零れた何かが、食卓を横切って転がり落ち、僕の膝の上にぽとりと乗った。 「あっ」 ガラス玉、だった。濃い碧色。夜の帳を下ろしたばかりの、東の空の色。或いはかつて本で読んだ、深い深い海の底の色。滑らかで決して大きくはないそれは、中に靄のような曇りを宿していて、その向こうを見透かすことはできない。僕は温もりを持たないそれを、燭台の灯にかざした。ぼんやりとした淡い影が、テーブルクロスの上に落ちた。 「綺麗な色だ」 僕がそう呟けば、彼女はなんてことないわ、と投げやりに返す。 「当たり前じゃない。この子の眼は、綺麗なのよ。だって、私の眼がそうだもの」 「……えっ?」 「さあ、それ、返して。眼がなきゃ何にも見えないじゃない」 自分の血の気がすうっと引くのが、分かった。ガラス玉をつまんだままの指が、悴む。言われるがままにテーブルに戻したそれは、まるで意思を持っているかのように、ころころとまた彼女の元へ転がっていった。その様を目で追い、彼女の眼を改めて見つめ、そして食卓の上の組木を見遣った時、何もかもを悟った。 元の姿も分からないほどに崩された、人の身体。ばらばらになった腕、喉、足、指、腰、鼻。大胆に、残酷に、分断された頭、腹、腿、胸、顔、肩……。開きっぱなしの鞄から覗く大小の球は、それらの継ぎ目だろうか。 それらは木でできているということを除けば、無惨にも切り刻まれた、哀れな人間の欠片だった。椅子の肘掛けを掴んだままで凍りついている僕を尻目に、彼女は腕を伸ばし、手元へと燭台を引き寄せた。彼女の眼窩の中、近づいた灯を映したその双眸は、碧く碧く透き通っている。その中に、さっき僕があのガラス玉の中に見た曇りは、ただの一点もありはしない。 「まあ、見ててごらんなさい」 ろうそくの火の向こうで、彼女は口の端を持ち上げて、にやりと笑った。 それから、作業が始まった。彼女は慣れた手付きで木片を身体の部位ごとに分け、器用に指を動かしていった。 白く傷のない、華奢な手の中で、一つでは意味をなし得ない木片たちが合わさり、確かな形を得てゆく。掌には五本の指がそろい、肩には二の腕が差し込まれた。繋ぎ合わされた腿と脛の間には、丸い膝が嵌め込まれる。微かに揺れるろうそくの赤い光のもと、欠片にうっすらと描かれていたはずの木目は消えて、それは本当の人間の肌さながらに見えた。彼女の手の中にあるものは確かに硬く、尖った木片なのに、それがつなぎ合わされた途端に、血と肉を備えた人間のように見えてしまうのだ。 「どういうことなの」 僕の動��とも困惑とも、はたまた恐怖ともつかない感情とは裏腹に、彼女はいたって冷静だった。 「どういうことって、しっかり目を開けて見ている?この子を造ってあげているのよ。だってこんなにばらばらじゃ、自分で動けやしないのだもの」 彼女の眼差しを一身に浴びて、正しく彼女の手によって、そして僕の目の前で、ばらばらの木片は少しずつ、人の形を成していった。 「よし、と」 どのくらい経っただろうか、細身のろうそくはかなり短くなっていたような気がする。その明かりに淡く照らされ、さっきまで彼女が腰掛けていたはずの席には、彼が座っていた。 背の高さは、おそらく僕とあまり���わらないか、少し高いかだろう。やせた身体つきは確かに青年のそれで、さほど肉が付いているとは言い難い。椅子の背に寄りかかった首から上はがっくりと垂れ、両腕は肘掛けからだらりと落とされている。緩やかに下がった肩、ほんの少し骨ばった腕。長めに伸びて撥ねた髪は、彼女と同じ濃い茶色に染められている。彼女はそれを手櫛で軽く梳くと両耳の上だけを器用に編んで、首の後ろで残りの髪と合わせてまとめた。彼女が着付けてやった品のある装いは、彼にはやや大きく仕立てられているようだ。僕が机の向こう側からそれを眺めている間、彼女は彼の手に白い手袋をはめてやろうとしていたが、どうもうまくいっていないようだった。 「合ってないわね。大きくなったのかしら?今更ねえ」 僕の視線を感じたのか、彼女はそう呟くと、手袋を引っぱって外した。現れた長い五指は、そこに硬い継ぎ目が埋まっているとは考えられないくらい、しなやかで細い。その形の良い手を取ると、彼女はどこかうっとりとした表情で、その甲を自分の指で撫でた。 「ねえ、綺麗でしょう」 彼女の唇から、長い溜息が漏れる。彼女は手を離すと、今度は彼の顎を掴んで持ち上げた。 「ほら、とっても」 小さな顔。輪郭は彼女よりはやや鋭いけれど、とてもよく似ている。少し薄めの眉も、紅い唇も、瞼を縁取る長い睫毛も。ぴったりと閉じられたその薄い瞼の下には、あの碧色をしたガラス玉が嵌っているのだろう。 彼女に言われなくたって、非の打ち所などあるはずもないことは明らかだった。彼は、完璧だった。それは彼女の姿を初めて目にしたときと全く同じで、彼は今まさに、確かにここに存在していた。 「ねえ、ちょっと」 彼女の言葉が耳に届いて、僕はしばらく詰めていた息をようやく吐き出した。思いのほか僕は彼に見入ってしまっていたようだ――彼女の少し尖った声色から察するに、何度か呼ばれていたらしい。改めて顔を向けると、彼女は手招きした。 「こっちへ」 誘われるまま、無闇に長い食卓を椅子の背伝いに一歩ずつ、ぐるりと回って彼女の隣に立つ。そうすれば、彼がとても近くなる。 「ほら、生きてるみたいでしょう?」 その言葉に頷くほか、できることはなかった。左胸に耳を当てたら、きっと静かに脈打つ心臓の響きが聞こえてくるだろう。そんな確信が、彼をじっと見つめれば見つめるほど、僕の中に湧いてくる。間近で見る彼に再び目を奪われて、こくりとひとつ肯く僕を見て、彼女は悪戯っぽく笑った。 「あのね、そうしたら……」 そのまま彼女は僕の耳許に手を寄せて、ばら色の唇を近付けた。僕たち以外誰もいないと分かっているのに、その秘密めいた仕草は、僕の鼓動を速くさせた。彼女の唇が震えて、僕にしか聞こえない言葉を囁く。 「……えっ?」 途端に狼狽えた僕に、彼女はますます面白そうに笑う。 「でも生きてるって思うなら、できるはずよ。生きてる人にするみたいに、してみればいいんだから。きっとお話でも、読んだことがあるでしょう?」 おかしそうなその���子で、彼女が僕に何か隠している、と察しはついた。しかし強く拒まなければならない理由も、これといってなくて。強いて言えば、ちょっぴり気恥ずかしいという些細な感情だけ。目の前の彼に再び目を遣れば、今にも吐息が聞こえてきそうだった。触れてみたい。この手だけじゃなくて、この僕の身体で、一番柔いところで。この錆び切ってしまぅた身体にもまだ残っている、鋭く研ぎ澄まされた感覚で、触ってみたい……。 短く息を吐き、一歩、彼に近寄る。僕は、好奇心に負けたのだ。 「ちゃあんとやるのよ。軽くじゃ、だめ。そうねえ、愛し合ってるふたりみたいに」 最後に付け足された一言に、僕は思わず眉を顰めて彼女を振り返った。躊躇してしまった僕を、彼女はひらひらと手を振って急かす。 「ほら、早く」 「どうしろっていうの……」 「どうってことないわ。大丈夫よ、別に何も起こらないわ。起こっても、それはきっと素敵なことよ」 「素敵なこと?」 「いいから、早く!」 ぐずぐずしていても無駄だと諦めた僕は、膝をちょっと曲げて、腰を落とした。俯いた彼の顔を、ついさっき彼女がしていたのと同じように、軽く持ち上げる。肌は思ったよりも冷たくて、僕の乾いた指のわずかな熱が吸い取られるのがわかる。 やはり彼は、生きてはいない――僕は、そう感じた。幾ら生きているみたいと言ったところで、所詮はただの、精巧な木の人形。そう思えば、早まっていた鼓動も、少しは落ち着くような気がした。だって、見ただろう?ばらばらになって、食卓の上に散らばっていた彼が形を成してゆくその様を、まざまざと、この眼で。だから僕がこれからすることにも、きっと意味なんてありはしない。そう、これはきっと、我儘で悪戯好きな彼女の、ちょっとした気紛れなのだ。僕は、それに振り回されているだけ。そんな他愛もない戯れにほんの少し付き合ったところで、彼女の言う通り、何が起こるわけでもないだろう……。 彼の顎を支えていない方の手を後ろ頭へと回し、顔をこちらに傾かせる。そのせいで、彼の瞼が薄く開いた。顔を近づければ、その眼の中が見える。暗く曇って、煙のようなものが渦巻いていた。やはり、僕が手の中で見たものと同じ。ものを見ることのない眼。美しいけれど、何もないただのガラス玉。彼は、息をしない人形。 彼の口許に掛かった髪を指で払って、軽く息を吸う。あんまり顔を見つめたままなのも気が引けて、眼を閉じた。そのまま一瞬の逡巡の後、僕は自分の唇を、彼のそれに重ねた。 「ん……っ」 彼が座る椅子が、ぎしりと軋んだ。 僕の乾いて荒れてざらついた唇は、およそ誰かに口づけるには向いていないだろう。幼い頃から、誰かに口づけた記憶もあまりない。まだこの家に人がたくさんいた頃はそんなこともあったかもしれないけれど、もうその頃のことは霧の彼方のように遠く昔のように思える。少なくとも、誰かと愛を確かめ合うために口づけしたことなんて、僕はもうひとつも思い出せない。 僕は息も継げずに、目の前の人形に触れるだけのキスを続けていた。このあとどうすれば良いのかも、そもそもいつ止めたら良いのかさえも、分からない。彼女に背後から未だよ、と告げられた気がして、僕は口づけたまま、後ろに倒れそうな彼の頭を、支えていた手でぐっと起こした。しかし、どうも加減が悪かったらしい。人形の身体は案外に前のめりになり、次の瞬間ばきりと嫌な音が広間に響いた。 彼女のきゃっという小さな叫びが聞こえると同時に、椅子から滑った彼の身体が前にがくんと傾ぐ。彼のほぼ正面にいた僕は身を翻す間も与えられずに、倒れてくる人形と脚の折れた椅子をまともに受け止める羽目になった。とはいえ脆弱な僕に、そんな芸当ができるはずもないことは明らか。強かに硬い石の床に頭を打ち付けた僕は、あっけなく意識を失ったのだった。 *** 「何か、飲み物は?」 「要らないよ……」 「喉、乾いていないの?」 「乾いてはいる、けど……」 「けど?」 「飲みたくないし、飲めないから……あ、頭痛い」 一人で使うにはいささか広すぎる寝台に半分起き上がり、丁寧に包帯の巻かれた頭を押さえる。今の僕は長話ができるほど、調子がいいとは言い難いありさまだった。後ろ頭の辺りがずきずきと痛んで、軽い目眩が治らない。 眉を下げ酷くしょげた顔をした彼は、ごめんなさいとぽつりと呟くと、僕の枕元にそっと腰かけた。寝台のばねがきしりと小さく、音を立てる。 そう、僕のすぐそばに座って目を伏せているのは、まぎれもなく彼だった。ついさっきまでは、ばらばらに分断されて、鞄に詰め込まれていた木片。僕の目の前で彼女が全てを造り上げた、そして僕がこの唇で触れた、冷たい人形。それが今細く息を吐き、まばたきを繰り返している。俯いた、どこか憂えをたたえた横顔を、僕の眼前に晒している。 すらりと細い指が、顔に掛かった髪をおもむろに耳へと掛ける。手袋など嵌めていなくても、彼の手は十分に色白だった。露わになった輪郭にはもちろん木目など見えはしないし、指にあったはずの丸い継ぎ目もやはり消えている。頬と唇は食堂で見たときよりも明るく染まっていて、髪だって僕よりずっと艶やかな色をしているし……。少し背を丸めて腰掛けたその姿を目にするたび、さっきまでの光景がますます信じられなくなる。あれは、ただの夢、束の間の悪い夢だったって言うの……? ぐちゃぐちゃと際限なく思いを巡らせていたせいで、僕は彼にじっと見つめられていたことに気づかなかった。はっと顔を上げると、あの碧い瞳の中に、僕が映っているのが見えた。こちらを覗き込むその碧は深く、どこまでも透き通っている。僕が手の中で見たはずの曇りは、今やどこにもない。その不思議さに気を取られている間に、僕の頰に彼の手が触れた。少し冷たい指先の感触に驚いて、思わずひゃっと声が漏れる。 「ごめんなさい、でも大丈夫……?顔が真っ赤だ」 そう言われて、初めて顔の火照りに気づく。確かに熱っぽいけれど、頭を打って気を失った後だから、当然と言えば当然だろう。 「いいの、そんなに酷くないよ、多分」 彼の視線から逃げるように、僕は首を���に振った。誰かに心配されることがあまりにも久々で、胸がざわざわして仕方がなかった。顔が熱いのは、頭を打ったからだけじゃないかもしれない。 「なら、また少し眠った方が……。痛みも、忘れられるかもしないし。熱も引くよ」 彼はそう言うと、寝台から腰を上げた。 「じゃあ」 彼が、踵を返す。 その背を目にした途端、僕は喉がぐっと締まるような錯覚に陥った。行ってしまう、その一言が頭をかすめただけで、息ができなくなる苦しさに襲われる。 ――助けて、お願い、ひとりにしないで! はっと気づいたら、僕は前のめりになっていた。伸ばした手は、彼の服の裾を強く掴んでいる。 「どうしたの?」 彼が振り返って、碧色の瞳がもう一度、まっすぐ僕を覗き込んできた。ガラスの瞳のはずなのに繰り返すまばたきはやけにゆっくりで、ついつい見入ってしまう自分自身が愚かしい。深い深い瞳の底には、やはり僕が、僕だけが映っていた。荒く浅い息をぜいぜいと繰り返して、寝間着の襟から覗く胸を上下させている、惨めな僕の姿。 「……あの、もうちょっと」 からからの唇を渇いた舌で舐めたって何にも変わらないのに、僕はそうやって言葉をむりやりに切った。いざ言おうとすると気が引けて、子どもっぽいと馬鹿にされる気がして、一息でなんか言えるはずもなかった。 「……ここに、いて欲しいの」 絡められていた視線を無理に外して、伸ばしていた手も引っ込める。彼が、僕に向き直った。助けて欲しいのに、声が掠れて、思うように伝えられない。 「あとほんの、少しだけ」 涙が出そう、そう思ったけど、まばたきをしてぐっと堪えた。どうしてこんな気持ちになるのか、自分でもよく分からない。でも怖くて、ひとりになることが震えるほど、息の仕方も、心臓の動かし方も忘れるほど恐ろしくて、それを分かって欲しくて。 「僕が眠ったら、行ってしまって構わないから。わがままでごめんなさい、でも、でも……」 眼を見開いた彼の前で息も絶え絶えになって、縺れる舌でどうにか、拙い言葉を紡ぐ。乾いた唇が切れて、血の味がする。 冷たい、ただの人形に過ぎなかった彼が、こうして僕の目の前で息を呑み、僕の訴えを一心に聞いている。それは確かに、驚くべき事実だった。でも僕にとってそれより何百倍も奇妙だったのは、今まで誰にも助けを求められなかった僕が、こんなに必死になって、彼に縋り付こうとしていることだった。僕だって、誰彼構わずこんなに浅ましく縋る訳じゃない……一応、それなりの矜持があるから。けれども、そんなものかなぐり捨ててもいいと僕に思わせる何かが、彼にはあった。だから、僕はなりふり構わず、血を吐くような思いで、彼を引きとめようとした。今、そうしなければならないと、強く感じた。 そばにいて欲しい。何も要らない、何にもしなくていい、だからどうか、どうか僕のそばから離れないで。その綺麗な碧い瞳に、僕を、僕だけを映していて。もう二度と、ひとりになりたくないの。 寝台のばねがまた軋んで、僕は顔を上げる。僕には大きすぎる白い枕の隣に、彼は再び座っていた。身体をこちらに向けて、彼の少し冷たい手が、僕の半端に伸ばしたままになっていた腕を伝う。そして指の上に被さって、包み込んだ。 「いいよ。じゃあ��ここにいる」 そう告げて、彼は笑った。どこか安らぎを得たような、緊張の糸が切れたような微笑みだった。彼も、不安だったのだろうか――そんな思いが、胸をかすめる。 「何だって、貴方の言う通りに」 優しい声でそう言うと、彼は不意に、軽く被せ���いた掌で僕の手首を掴んだ。そしてそのまま、ぎゅっと力を込めて引き寄せる。僕の上体は平衡を失って、あっさりと彼のすぐそばに倒れ込んだ。顔を上げれば耳元へと、彼が口を寄せる。たったそれだけで頭がくらくらして、何も考えられなくなる。 「ねえ、貴方は僕に、生命をくれた。だから……」 僕の耳元に触れる彼の撥ねっ放しの髪が、くすぐったい。そうなのか。彼に生命を与えたのは、この僕なのか。そうだとすれば、この僕がまだ生き永らえていることにも、細やかながら意味があったと言えるのだろうか。こんな僕にも。こんなにちっぽけで、乾いていて、ひとりでは何にもできない僕にも。 「だから、僕がどんなに、どんなに貴方に尽くしても、貴方のくれたものを超えることなんかないよ」 その後のことは、あまり覚えていない。もともと調子もよくなかったし、きっとすぐに眠ってしまったのだろう。たった一つだけ記憶に残っているのは、僕の乾いて血の滲んだ唇に控えめに重なった、柔らかくて温かな感触だけ。 おしまい?
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t-t-took · 8 years ago
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冴先輩に
100の質問。かれこれ1年ぶりらしいです、これ考えるの割と気力がいるんですよね。でも最後まで考えるとその人物に対して不覚向き合える気がしてるので、これからもちょっとずつやっていきたいです。今回はリクエストがあった冴先輩。とある学校の生徒らしいですよ。
創作小説キャラクターに100の質問
拝郷 冴
1. 名前とその由来は? あだ名(通り名)があるなら、そちらも教えてください。
拝郷冴だよ。おがむに故郷のキョウでハイゴウに、目がさえるのサエね。意味的な由来は特になくて、音の響きと字の綺麗さで選んだらしい。あだ名はつけられたことないかな?私は人につけることもあるんだけど、自分にはついてないかも。冴先輩、って呼んでくる子が一番多いかな。なんでか分からないけど同級生も先輩って付けて呼んでくるんだよね、同い年なんだけどなあ。 2. 年齢を教えてください。
18だよ。高校3年生。
3. 生年月日はいつですか?(判っている範囲で)
6月22日。梅雨どきって感じだなあ。
4. あなたの国籍、民族(ま��は種族)は?
普通だよ、普通。
5. 今、どこに住んでいますか?その町(市、村etc.)に対してあなたはどんな印象を持っていますか?
高校から電車で20分くらいの街に住んでるよ。うーん、都会すぎず田舎すぎず良いとこだと思うよ?
6. 出身地はどこですか?いつまでそこにいましたか?その町(市、村etc.)に対してあなたはどんな印象を持っていますか?
出身地は、今住んでるとこと一緒だね。まだここから離れたことはないな。
7. あなたの髪の毛、瞳、肌は、それぞれ何色ですか?
髪はグレー。わりと明るいから、太陽の下だと白っぽく見えるみたいだね。
眼は黒?黒って言うには薄いかな。
肌は白いよ。日焼けしないんだよね、赤くはなるけど。
8. あなたの外見上の特徴を体格、顔つき等の面から五つ前後挙げてください。(具体例:身長は並、顎がしゃくれてる、等。)
身長は176cm。高い方かな?そうでもない?
体型はまあ、痩せてる方。
目は丸いかな。びっくりしてるみたいな顔って言われることがあるよ。
あとなんか、手が骨ばってるらしい。結斗くんとかしょっちゅう触っては硬いとか言ってるけど、別に硬くてもいいでしょ。 9. あなたの外見上以外の特徴を身体能力、持病等の面から五つ前後挙げてください。(具体例:右利き、近眼、頭痛持ち、等。) 目がすっごく悪くてね、でも普段はコンタクト。家ではもっぱらメガネだけど。
声はかなりよく通るよ。ちょっとした集会くらいならマイクなしでも全然オッケー。でも内緒話には向いてないかもねえ?
歩くのが早いってよく言われるな、自分では普通のつもりなんだけどねえ。結斗くんは脚が長いからって言ってくれるよ、嬉しいね!
ああ、あと真顔がちょっと怖いって。何考えてるかわかんないらしいんだけど、多分私は何も考えてないよ!
それからねえ、どうでもいいけど握力は強いよ。握手とかは、気をつけてるけど。 10. あなたが普段喋っているのは、どんな言語ですか?標準語ですか、地方方言ですか?仲間内だけで通じる学生言葉や業界用語のような言葉はよく使いますか?公私等で使い分けているならば、それぞれどう使い分けていますか?
標準語、って言っていいと思うよ。用語みたいなものはそんなに使わないな。うーん、みんなの前で喋るときや目上の人へはもちろん敬語を使うけど、私の口調は基本的に、普段はこんな感じでフランクだよ。 11. 字は書けますか?達筆ですか?癖字ですか?字を書くのによく使う、筆記用具は何ですか?
もちろん。達筆かどうかはさておき、まあ綺麗な方なんじゃない?私自身は自分の字、好きだけどね。筆記用具はなんでもいいけど、まあ高校生だし専らシャーペンかな。 12. 職業は何ですか?副業は持っていますか?(学生なら、どこの学校に行って、何を勉強していますか?アルバイトはしていますか?)
職業は学生、高校生。生徒���長もしてるよ。うちの学校は普通科しかないから私も普通科で、進学するつもりでいるよ。私は文系かな、でもどっちも好きだよ。
バイトは特になし。バイト禁止だからね、生徒会長なんだから風紀を守らないとねえ? 13. 職場の(学校の)人間関係には恵まれていますか?恵まれていませんか?職場(学校)の誰が原因でそう感じるのだと思いますか?
恵まれてると思うよ!素敵な人がたくさんいるし、私のことを慕ってくれる人もいるようだしね。特に結斗くんみたいな子は、得難いと思ってるよ。本当にかわいいねえ、彼は! 14. 今の仕事(学校)は自分に合っていると思いますか?どんな時にそれを感じますか?
仕事って言ったら、勉強以外に生徒会の仕事もありそうだねえ。まあ、合ってないとは言わないかな。勉強も生徒会も、あと部活も、好きな人たちとわいわいできるなら苦ではないからね。何か結果が出せた時が、合ってるって感じる瞬間かな。 15. 今、誰と暮らしていますか?家族構成を教えてください。
私は一人っ子。両親と3人家族。いわゆる核家族ってやつだよ。
16. 今住んでいる家(部屋、宿)の様子を差し支えない程度に教えてください。
家はまあ、普通の戸建て?部屋はね、自分の部屋はないんだ、だから遊ぶのも勉強も全部リビングかな。私のスペースみたいなところが部屋の隅にあって、そこの机に色々広げてる。 17. 家の自室、仕事場(教室の自分の机、ロッカーetc.)等、あなたが日常的に個人的に使う場所は、整頓されていますか?掃除や整理整頓は得意ですか?不得意ですか?
あー、整理整頓はあんまり。手の届くところに何でも置いておきたくてね、どうしても近場に色々積み上げちゃうんだ。掃除とかはまあ、たまにするけどね。でもサボっちゃうことが多いな。 18. 特技(特殊能力)はありますか?何ですか?あなたにとって、その特技(特殊能力)が一番役立つのはどんな時ですか?
そうだなあ、特技っていうかどうか微妙だけど、あまり緊張しない質なんだよね。だから大勢の前で喋ったりとか、何かパフォーマンスしたりするのは得意かな。誰かに意見するときとかも、あんまり物怖じしないから色々言うよ。やっぱり言いたいことは言っちゃうのが楽じゃない? 19. 賞(賞状・勲章)をもらったことはありますか?もらって嬉しかった賞、自慢できる賞は何ですか?
まあ、時々ね。夏休みの宿題のレポートとか、書道とかでね。うーん、賞ならもらえれば何でも嬉しいけどね。褒められるのが嫌な人っていないでしょう。 20. 免許、資格(特権、特別許可etc.)持っていますか?それは今役に立っていますか?
書道ちょろっとやってたから、段位は持ってるよ。硬筆一段、毛筆二段くらいかな……でもあれ、作品提出してれば勝手に段位が上がるやつだからなあ。役に立ってはいると思うけど、直弥くんほどの綺麗さじゃないんだよねえ。彼は本当に美しい字を書くから。 21. 体は丈夫な方ですか?今までにかかった一番��きな病気は何ですか?また、一番大きな怪我は何ですか?
丈夫だよー、怪我も病気もさっぱり縁がないね。ここだけの話、ちょっと骨折とかして入院してみたいな、なんてね。病院食はまずいらしいから嫌だけどね、って冗談だよ冗談!
22. 信仰している宗教はありますか?あなたは敬謙な信者ですか?そうでもありませんか?
いやあ、特にないよ。むしろ自分が教祖とかなってみたいよね、面白そうじゃない?でもそういうのを部活で実践しちゃうと色々やばそうだから、さすがにやめとこうっと。
23. 好きな年中行事は何ですか?それが好きなのは何故ですか?
そうだなあ、運動会とか、文化祭とかかなあ。裏方であれこれやってるのが楽しいんだよ、自分だけひとと違うことしてるのって、わくわくするでしょ。 24. あなたは今どんな髪型で、どんな化粧をしていますか?何故そうすることを選んだのですか?
ええと、髪の長さは首筋半分覆うくらいかな?セットとか全然してないし、くりくりになっちゃってるからよくわかんないけどね。暑い時には括ったりもするし。お化粧はなし。外見には特にこだわらない主義だけど、身なりを整えるのは大切なことだとは思ってるよ。 25. 普段どんな服を着ていますか?お気に入りの一着はありますか?
そうだなあ、襟のある服が好きだけど、それ以外は特に頓着してないな。部屋の中ではTシャツジーパンなんてことも普通だしね。お気に入りってほどでもないけど、私は寒色が好きだし似合うって言われるから、青とか緑とかの服は好き。あと暑がりだから、わりと1年のうちでも半袖の期間が長いな。
26. 日常的に使う道具は丁寧に扱っていますか?乱暴に扱いますか?長く愛用している物があったら、教えてください。
まあ、それなりにね。乱暴に扱ってるつもりはないけど、スマホの充電器とかイヤホンとか、よく壊れるんだよねえ。なんでかなあ、気づかないうちにどこかにぶつけたりしてるのかなあ……。
27. お金はいつもいくらぐらい持ち歩��ていますか?お金を支払う時、現金以外の手段を使いますか?それは何ですか?
お小遣いだからね、普段は1000円も持ってないよ。学校でジュース買うくらいでしょう?まあたまに本屋に寄ったりするから、その時は少し多めだけど。もちろん現金以外の手段も持ってないし。 28. ちょっとした臨時収入があったら、まず何に使いますか?
臨時収入?そうだなあ、私はわりとインドア派だし、あんまりこだわってる趣味もないから、意外ともらったお金は溜まるんだよねえ。まず、って言えるほどのものは思いつかないなあ……。いっぱいあったら、結斗くんやルイくんとテーマパークにでも行ったら楽しそうだけどね。 29. 自分の持ち物の中で、他人に比べて数を多く持っている、あるいは品質がいい物をそろえていると思うものは何ですか?自慢の一品があったら、教えてください。
筆記用具なんかは新しいものが出ると気になってしまうから、ついつい揃えてしまうね。同じようなものでも、出してる会社によって微妙に作りとか、色合いとかが違ったりするでしょ?だからペンとか、いろいろ持ってるよ。これといって自慢するほどのものはないけどねえ。 30. 縁起、験を担いでやっていることや、気をつけているジンクスは何かありますか?どんなことですか?
ジンクスには、頼らない主義だけど……。家の裏にちっちゃい神社があるから、何かお願い事をする時はそこに行くことが多いかな。お賽銭投げて、手をあわせるだけだけどね、なんとなく心が落ち着くっていうか。 31. 家と職場(学校)以外で、あなたがよく足を運ぶ場所はどこですか?そこに何をしに行くのですか?
うーん、近所の公園かな?公園って木陰とかもあって居座れるし、お金かからないし良いよね。私はよく結斗くんやルイくんとお喋りしたりするよ。年甲斐もなく遊具で遊ぶこともあるし。楽しいよ。
32. よく使う交通機関は何ですか?愛車(またはそれに類するもの)を持っていますか?車種は何ですか?
えーと、電車?学校へは電車通学だからね。車は持ってないよ、免許もまだだしね。いつか取りたいとは思ってるけど!
33. 行き慣れない場所に行く時、目印、目安にするものは何ですか?地図を見て、はじめての場所に迷わず行けますか?
だいたい目立つ建物を気にしながら歩くけど、私は結構方向音痴だからね。地図もなんか気づいたら進行方向と逆向きに持ってたりして、なかなか目的地にたどり着けないこと多いなあ。未羽ちゃんは地図を読むのが得意みたいだけどね。
34. 身近な情報から時事問題等まで、あなたが情報を得る時の、主な手段は何ですか?どこからの情報を、一番信用していますか?
テレビもそこそこ見るしスマホもわりと弄るから、まあその辺りだね。学校内ことは結斗くんに聞くことが多いかな。1年生のことは未羽ちゃんからのことが多いかなあ、でもあの二人全体的に似てるから、どっちから何を聞いたか混ざっちゃうんだよね。
35. 幼い頃、あなたはどんな子供でしたか?友達は多かったですか?夢中になっていた遊びや、熱心だった習い事はありますか?
サルみたいな子どもだったと思うけど。キャラは今とあんまり変わってないから、友達はさほど多くはなかったけどね。実は人付き合いに関しては、得意中の得意ってわけでもないんだよねえ。
遊びは外遊びの方が好きだったかな、サルだしね。習い事は書道ぐらいしかしてないけど、そこそこ好きだったよ。 36. 勉強は好きでしたか?(好きですか?)得意分野、不得意分野を教えてください。
立場上、嫌いでも嫌いって言っちゃいけない気がする!でも大丈夫、私勉強は好きだから。ただし得意科目に限るけどね。得意なのは英語とか、国語とか。言語系ってことかな?問題文って、時々雑学みたいな話あって面白いよね。不得意なのは……うーんやっぱり数学かなあ。強いて言えばって感じだけどね。航佑くんに時々教えてもらうよ。
37. あなたは不得意分野は避けて通りますか、それとも克服しようとしますか?
克服できたらそれに越したことはないし、とりあえずやってみようとは思うかな。やってみたら意外といけた、とかよくある話だし、やっぱり何事もチャレンジだよね!
38. 身に付けようとした技術、能力等で、結局身に付かずに諦めたことはありますか?身に付けることができなかった敗因は何故だと思いますか?
水泳があんまり得意じゃなくてね、スイミングスクールに通ってた時期があったんだけど。でもやっぱり好きになれなくてやめちゃったなあ、だから泳ぎは今でもちょっと苦手かな。水は好きなんだけどねえ。敗因はなんだろう、やっぱりあんまりやる気なかったのかなあ、自分でやりたいって言い出したはずなんだけど!
39. 自分の性格を表現するのにちょうどいいことわざ、四字熟語等を挙げるとしたら、何ですか?
奇想天外、とかじゃない?私は好きにやってるだけなんだけど、みんなそんなことを言うね。でも人と違ってるっていうのすっごく好きだから、そう言われるのってとっても嬉しいよ。 40. 自分は記憶力がいいと思いますか?他はともかく、このことに関しては記憶力が良くなる、というようなことが何かありますか?反対に、このことだけは何度覚えようとしても抜けていく、というようなことは何かありますか?
そうだな、悪くないと思うよ。特に人の顔と名前を一致させるのは結構得意。1、2回会えば大体は覚えられるかな?特に記憶に関して苦手って感じることは、ないな。
41. 作業や仕事をする時に、時間、場所等、どんな環境だと一番はかどりますか?
賑やかな場所。静かなのが嫌なんだ。うるさければうるさいほどいいよ!どうしても人がいないときは結斗くんに無理矢理喋ってもらったり、音楽聞いたりするかな。なんていうか、ながら作業が好きなんだよね。集中してるときとそんなに結果のクオリティ変わんないし……。
42. 春夏秋冬の中で、好きな季節、嫌い(苦手)な季節を、それぞれ理由もつけて教えてください。
暑がりだから夏は暑くてへばってることが多いけど、実は案外好きだよ。明るい気分になれるしね。春とか秋とかもいいんだけど、どっちつかずな日が多くて服装とか困るから、そういうのは嫌かなあ?
43. 好きな食べ物、嫌いな食べ物、を教えてください。
なんでも食べるよ!嫌いなものなし!好きなものはお好み焼きとかたこ焼きとか、粉もん?なんでだろうね、おいしいよね。
嫌いなものは……強いて言えば、柔らかい食感にわざわざしてあるもの?があんまり好きじゃないかなあ。とろふわって銘打ってあるスイーツとかね。スプーンの形が残るやつが好きなんだ。 44. 食事は一日何回、どこで誰と取ってますか?それぞれのありがちなメニューって何ですか?食事は自分で作ってますか?
平日は3回、休みの日は大体朝を寝過ごすから2回。朝と夜は家で食べるけど、昼は学食かな。だから自分では作らない。学食にはね、結斗くんが毎日迎えに来てくれるんだよ。かわいいよねえ!
45. お酒は飲みますか?強いですか?弱いですか?酔うとどうなりますか?
未成年だから、もちろん飲まないよ。酔うとどうなるんだろう……うちの両親は、そんなに性格変わらないんだけどね。
46. 睡眠時間は一日何時間ぐらいですか?寝つき、寝起きは良い方ですか?悪い方ですか?
4、5時間程度かな、わりとショートスリーパーの類かも��れないね。でも寝つきも寝起きも良いから、これで大丈夫なんだと思う。 47. 一日の中で、ほぼ習慣になっていること、何かありますか?
習慣?うーんなんだろう、とりあえず結斗くんの顔を見ない日はないよね。生徒会室ですることがあるときはもちろん会うけれど、それ以外でもお昼を食べる時も来てくれるし、私が新設した部活に入ってくれることも多いからそこでも会うし。学年が違うから教室のフロアも違うのに、よく会いに来てくれるよねえ。私もたまにはお返ししないとね。 48. 趣味は何ですか?自分はその趣味の何に魅力を感じているのだと思いますか?
そうだなあ、わりと飽きっぽいからずっと続けてる趣味ってないけど……だいたい気になるものがあるとそれを部活や同好会にしちゃって、取り組むことが多いかな。折り紙とかボルダリングとか羊毛フェルトとか落語とか、とにかくなんでもかんでも!魅力って言われると難しいな、多分やったことのない新しさに惹かれてるんだと思うな。
49. 歌うことや踊ることは好きですか?演奏できる楽器は何かありますか?
まあ嫌いじゃないけど、普通かな。楽器はピアノが少し。ほんとに少しだよ、こつこつ練習するタイプじゃないから上達しないんだ!
50. 観劇、映画、コンサート、スポーツ観戦、展覧会等に、お金を払って見に行きますか?好きなジャンル、アーチスト(チーム、選手etc.)は何(誰)ですか?
映画は好きだよ。家でDVDを観るのも好きだけど、映画館は格別かな。やっぱり大画面で大音響で観るのが一番楽しい作品ってあるから!ジャンルは結構なんでも、面白いならホラーとかでもいいけど、最近は結斗くんやルイくんを誘って行くことが多いから、そういうのはあんまり見てないかな。二人は怖いのダメなんだって。 51. 体を動かすのは好きですか?得意なスポーツがあれば、教えてください。
好きと言えば好きだけど、得意かと言われれば微妙かな?ボルダリングは最近始めた部活だけど、まだ得意って言えるかは分かんないな。 52. 持久力、瞬発力には自信がありますか?あなたの持久力や瞬発力に関する、分かりやすいエピソードがあれば、教えてください。
すぐへばるタイプだから、持久力があるとは言えないな。かと言って瞬発力があるかと言われても難しいけど、まあマラソンよりは100m走の方が好きだよ。エピソードにはならないと思うけど、生徒会に入ってると運動会は運営に回るからね、競技に出なくていいんだよね。役得!
53. 苦手なもの、怖いものってありますか?それは何ですか?
今は特に思い浮かばないなあ?一時期、朝に飲む牛乳が嫌いだったことがあったけど。なんか、いつの間にか克服されてたね。なんでダメだったんだか。
54. やらなくてはいけないけれど、やりたくないこと、あなたは我慢してやりますか?やりませんか?
やりたくはないけど、まあやるかな。やらずに放っておいて、いいことがあるとも思えないし。
55. 日常生活の中で幸せを感じる瞬間ってありますか?どんな時ですか?
私のしたことや話したことで、誰かが笑ったときかな。誰かを笑わせられると、やった!って私もなんだか嬉しい気分になるよ。だからと言って、体を張るほどではないけどね。ただ話題になりそうなネ���は、いつでも持っておくことにはしてる。 56. 一度始めたら、なかなかやめられないこと、何かありますか?どれくらい続けてしまいますか?
飽き性だからね、やめられないってほどのものはないかなあ。本とかは切りのいいとこまで読んじゃいたいから、なかなか手放せなくて、誰かを困らせることもあるけど。
57. ちょっと一息つきたい時、一休みしたい時、何をしますか?
散歩かな。音楽でも聞きながら、ぶらっと歩いて回って戻るよ。誰かがいれば誘って、一緒に話をしながら散歩するかも。 58. 休みの日、誰かとどこかに羽を伸ばしにいくなら、誰とどこに行きますか?そこでどうやって過ごしますか?
家族か、はたまた結斗くんみたいな友達か、迷うね。遠くに旅行に行くなら家族だけど、まあちょっと隣の街まで程度なら、友達との方が面白い気がするな。 59. あなたにとって、有効なストレス発散の手段は何ですか?どれくらいの頻度でそれをしますか?
大声で叫ぶとか。うわーーーっ!!!てね。滅多にしないよ、私は気が長いからね! 60. いらいらする瞬間は、どんな時ですか?自分は気が短いと思いますか?気が長いと思いますか?
そうだなあ、ちゃんと喋ってるはずなのに、声が届いていないときかな。伝えようとこっちが努力してるのに伝わらないのってなんていうか、すごくもやもやするし。あっ一個前で言っちゃってた、気は長い方だと思うからまあそういうことは稀だけどねえ。 61. 自分の立場(身分、年齢)ではできないけれど、やってみたいことってありますか?どんなことですか?
免許ないとダメだけど、危険物取扱とかやってみたい。でも完全に「やってみたい」��けだから、免許取るまで気力が持たなそう!誰か付き合ってくれたらいいんだけど。部活にすればいいのかな? 62. 喜怒哀楽、最近の出来事で一つずつあげるとしたら、どんなことですか?
喜はね、昨日の集会でちょっと喋らなきゃいけなかったんだけど、そこで言ったことがなぜか他の生徒にウケたことかな。やっぱり笑ってもらえるのは嬉しいよね。
怒は、そうだな、短く喋れって言われたから短く喋ったのに、それだけしか言うことないのかって先生に言われちゃったときかな。いや短く喋れって言ったでしょ!!って思わず口答えしそうになったよ。
哀は、結斗くんが風邪でちょっとお休みしたから、昼ご飯が淋しかったこと。そういう時のメンバーってだいたい決まってるじゃない?だから別のグループに入るのも入りづらいし……。
楽は、こないだの土日にショッピングモール行ったときに、ゲーセン入ったことかな。私あんまりああいうのやらないから、難しかったけど。なんか家族の方が盛り上がってて、コイン投入してたよ。 63. 忘れられない景色はありますか?いつどこで見た、どんな景色ですか?
うーん、特にこのときっていうのはあんまりないけど?学校の講堂で喋るときに全校生徒を見下ろすのは、ちょっと快感だよね。みんなが私を見ているし。注目されるのが好きなんだろうな。 64. 自分はどちらかと言えば積極的だと思いますか?消極的だと思いますか?普段は積極的(消極的)だけれども、このことについては消極的(積極的)になる、という事はありますか?どんなことですか?
積極的だと思うよ。やりたいことはどんどん進めちゃうし��。でもこの間ルイくんに、「先輩って意外と消極的��とこありますよね」って言われちゃったんだよね。どういうところ?って聞いてもあんまり答えてくれなかったけど。だからまあ、とりあえずは何にでも積極的ってことでいいと思う! 65. 他人に指摘されて初めて気がついた自分の性格、または自分ではそう思わないのに他の人からよく指摘されるあなたの性格って何かありますか?
一つ前とおんなじ感じになるけど、ルイくんは結構私のこと消極的って言うんだよね。彼はいったい私のどの辺りを言っているんだろう?きっと、でたらめを言っているのではないと思うんだけどね。 66. 他人に尊敬されたり、評価されたことで嬉しかったこと(うれしいこと)は何ですか?反対に、評価されても嬉しくないこと、ありますか?
何でも評価されたら嬉しいよ!評価されて喜ばないなんてもったいないし、喜べる方が人生楽しいよ、多分。
67. 法律や規則は厳守していますか?こっそりやった(している)規則違反、やった(している)けど露呈していない違法行為、何かありますか?
基本的には守ってるよ。真っ当に生きてるつもりだからね!立場的にも守らないとまずいし。
68. 法律や規則、あるいは風習として決まってしまっていることで、納得できないこと、変えて欲しいことはありますか?どんなことですか?
いやあ、特にないけど。学校で変えて欲しいことがあったら、変えるべきだって言っちゃうしね。
69. あなたは時間に几帳面ですか?待ち合わせをして、待たせる、待たされる、それぞれどれくらいなら自分の許容範囲ですか?
うーん、時間は守るべきだってのは分かってるんだけど、どうもね。特に待ち合わせの相手が親しい人だと遅れちゃうんだよね、甘えてるんだと思うんだけど。だから逆に、私の方も待つぶんにはいつまででも大丈夫だよ。
70. 話をするのは好きですか?大勢の前で演説する、親しい人と喋る、誰かを説得する、何かを説明するetc.どんな場面で話をするのが得意で、どんな場面で話をするのが苦手ですか?
好きだよ!好きじゃないと生徒会長とかしないでしょ。演説系じゃなくても、説明とかもまあまあ得意だと思ってるよ。でも意外と少人数で他愛もないお喋りのときには、相手に喋らせちゃうかな。そういうのは、聞いてるほうが好き。
71. 共同作業をするのは得意ですか?不得意ですか?あなたは自分が中心になって動く方ですか?
得意ではあるけど、好きかって言われると微妙なところ。中心にはよくなってると思うけど、なりたくてなってると言うよりいつの間にか真ん中に押し出されてる感じだなあ。まあそれもそれで楽しいから、拒みはしないよ。 72. 今一番の悩みは何ですか?その悩み、解決するあてはありますか?
悩みかあ、そうだな、もっと自分の気持ちを口にできるようになれたら、とは感じてるかな。意外と率直な気持ちって伝えるの難しいなって、最近思うんだよね。解決するかどうかは、まさに私次第だけどね。
73. 今一番、欲しい物は何ですか?それが欲しいのは何故ですか?
欲しい物……脳波で動く猫耳とかかな。ぴょこぴょこしてて楽しめそうじゃない?あっでも学校には持ち込めないかな?
74. もらって嬉しかった贈り物は何ですか?反対に、もらって困った贈り物は何ですか?
ルイくんに何かを貸してあげたら、後でそれを返してもらったときにお礼ですって乾電池いっぱいもらったんだよね。お礼に乾電池くれる人って初めて見たけど、確実に役に立ったから嬉しかったよ。……困ったものかあ、あれかな、タイヤグミ。あれはタイヤだったな。 75. あの時こうしておけば良かった、と思っていることがありますか?どんなことですか?
結斗くん、今はもう元気にやってるけど私と会った頃すでにだいぶ参ってたみたいだったから、もうちょっと早く気づいてあげられたら良かったかなって。仕方ないっちゃ仕方ないんだけど、出会った最初の頃は結斗くんもよそよそしかったし……。まあ、過去の話だけどねえ。 76. 今までした一番激しい大喧嘩は、誰と何が原因でしましたか?その相手とはどうなりましたか?
大喧嘩って言えるくらいのものは家族くらいとしかやらないけど、家族とならそこそこやってるよ?いたってしょうもない内容ばっかだから、わざわざここで言わないけど。家族だし、結局最終的には仲直りするんだけどね。 77. 『その時、その瞬間』だからできた、今もう一度やれと言われてもできないこと(またはやりたくないこと)ってありますか?どんなことですか?
うーん、生徒会長も立候補する気はあんまりなかったんだけど。でも結斗くんやルイくんがイケそうって言うからノリで立候補してみたら当選したって感じかなあ。当選するって分かってたらもうちょっとちゃんと考えたかもだけど、まあ大事なことって意外とノリで決まるものだよね。
78. 今まで受けた一番激しいカルチャーショックは何ですか?今では慣れましたか?
カルチャーショック受けるほどのカルチャーに触れたことがあんまりないけど……強いて言えば、ちっちゃいころに世の中にはご飯より先にお風呂に入る家もあるってことを知ったときに驚いたかな。これってカルチャーショック?
79. 墓の中まで持っていくつもりの嘘、秘密はありますか?それを共有している相手はいますか?
え?いやあ、ないと思うよ。隠すの苦手だから、結構顔にでるらしくて。後輩とかにも、先輩何か隠してます?ってすぐ勘繰られちゃう。
80. ちょっとした嘘、相手の勘違い等、で訂正しないまま今にいたっていること、何かありますか?
結斗くんは、私に最初の頃に声かけられたのは自分が一人でいて目立っちゃってたからって思ってるみたいだけど、別に私だって目立ってる人に誰彼構わず声かけるわけでもないし。かわいい子だなって思ったから、話しかけただけ。やっぱり顔って大事だと思うんだよね、美醜とかの問題とはまた違う話だけど。
81. 自分と違う世代の相手と付き合うのは得意ですか、不得意ですか。苦手な世代はありますか?それは何故ですか?
得意なんじゃない?だって実際さっきから、後輩たちの話題ばっかりだよね。苦手な世代とかも別にない気がする、先生と話すのも好きだし。同年齢の友達の方が少ないくらいかも……航佑くんとか、直弥くんとかには感謝しなくちゃ。貴重な同学年の友達だ!
82. あなたにとって付き合い易い相手とは、どんなタイプですか?今あなたと仲が良い人は、そのタイプに当てはまりますか?
うーんどうだろう、好きにやらせてくれる人かな。もちろんある程度の助言とかは普通だと思うけど、基本的に口挟まないで欲しいかなあ。今の仲良しはみんな私には呆れてると思うけど、別にだからやめろとか、そういう風には言わないから付き合いやすいかな。 83. あなたにとって付き合い難い相手とは、どんなタイプですか?今身近にそのタイプの人はいますか?
何でもかんでも反対してくる人とは付き合いにくそう。先生にも、時々そういうタイプの人いるけど……ま��私のためを思って反論してるというよりは、私のことが嫌いなんだろうね。
84. 恋人(良人)はいますか?付き合うことになった(結婚した)きっかけは何ですか?
うーん、ここで結斗くんって言ったらあの子怒るかな?私は結構真剣なんだけどね、でもついつい本人の前では茶化しちゃうから、伝わってるのかどうか微妙だなあ。きっかけは、まあ結斗くんがクラスでちょっと居場所がなくなっちゃってたときに声かけたことなんだけど。そういう意味では結斗くんのこといじめてた子たちにも感謝すべき?……まあ、許してないけどね。
85. 尊敬している人はいますか?誰ですか?何故尊敬しているのですか?
ルイくんとか、私とは違う感じでちょっと変わってるっていうか、なんか不思議だよね。ああいう感じ結構尊敬するなあ。結斗くんもなんていうか、一つのことに対する熱意とか集中力とかすごくて、私にはないなあって思うよ。私はとにかく移り気だから。 86. 恩人、と呼べる相手はいますか?その人は、どんな場面であなたを助けてくれたのですか?
んー、まだそういう人って難しいかも。でも白嵜先生は私の個人的な相談に色々乗ってくれたり、結斗くんのこととかこっそり協力してもらったりしてることもあって、恩人というか味方というかって感じ。 87. 今のあなたにとって最も大切な人、必要な人は誰ですか?
家族を抜きにするなら、今特に仲良くしてる子たちは本当に大切だし、あの子達抜きの生活はきっと退屈だと思うなあ。結斗くんは格別だけど、ルイくんも未羽ちゃんも、ね。 88. 疎遠になってしまった人で、できればまた付き合いたい相手はいますか?それは誰ですか?
うーん、結構今までは人付き合いもわりと適当だったし、そういう人はあんまり思い浮かばないかな。そういうのって相手にも伝わってると思うから、向こうも別に私のことただの変な人と思って忘れてそうだし。いや変な人だったら忘れないかな?どうだろう?
89. 苦手だけれど、一目置いている相手はいますか?それは誰ですか?どう苦手で、何に一目置いていますか?
さっき言ったこととちょっと関係あるんだけど、ルイくんって実はちょっと近づくの勇気いるところあるんだよね。見透かされてるっていうか、私自身がよく分かってない自分のことまで知られてる感じ。けどいい子だし、はっきりとは言ってこないから付き合えるんだよね。そういう眼差しというか、雰囲気は一目置いてるかな。
90. 自分ではまねできない、うらやましい性格の知人、友人はいますか?それは誰ですか?うらやましいと思うのは、どんなところですか?
結斗くんはね、人を褒めるのがすごく上手だよ。私はどうも苦手なんだよね、要は偉そうな性格ってことなんだろうけど。結斗くんの前では何したって褒めてもらえるような気がするよ。それで嫌な気分になる人ってきっといないだろうし、そういうところうらやましいな。
91. ライバルはいますか?何に関してのライバルですか?今の時点でその相手よりあなたが勝っていること、反対に負けていることはそれぞれ何ですか?
ライバルかあ、あんまり気にしたことないなあ。あんまり私に張り合おうとする変な人はいないんじゃない?私も私でライバルがいっぱいいそうなことはしたくないしね。 92. あなたは誰かにとっての『一番』でいること、ありますか?誰にとって一番何ですか?
結斗くんにとっては、今では一番近くにいる人かもしれないね。家族とか以外でならだけど。結斗くんもそう思ってくれてたらいいけど、案外に一番めんどくさい先輩くらいにしか思われて��かったりして。 93. あなた自身のことで、誇っていること、自負していること、自慢に思うことを教えてください。
人が思いつきもしないようなこととか、やりたいけどやりたいって言えなかったこととかをやれる人でありたいし、そういう自分であることは自慢できるかなって。もちろん、人に迷惑をかけることはやらないけどね。したいって思ったときにしたいんだって言えるような自分は我ながらちょっとかっこいいって思ってるんだけど、どうなのかな。 94. 将来の夢は何ですか?その夢の実現のために、今していることが何かありますか?
何でもいいから新しいものを開発したいな。それか、新しいことを発見するか。今してることといえば、とりあえず勉強くらいしかないけどね。
95. 今の自分とは違う生き物になるなら、何になりたいですか?何故ですか?
海底の熱水噴出孔に住んでる生物とかかっこいいよね。だって毒ガス出まくりのところで平気な顔して暮らしてるんだよ、ある意味最強じゃない?まあ本人たちは特にどうとも思ってないだろうから、私も実際にそれになっちゃったらあんまり感動できなさそうではあるけどな。
96. 今いる世界から抜け出して、別の物語の登場人物になるならば、どんなジャンルの物語のどんな役が自分にはぴったりだと思いますか?
今のこの世界の私はこんなにはっちゃけてるから、もしかしたら違う世界のっていうか物語の私はもっとおとなしいかもしれないね。新しいことをどんどんやるんじゃなくて、たった一つの古いものをじっと守っているのかもしれない。きっとお屋敷の庭園に閉じ込めて、鍵をかけちゃうんだよ。それで、その鍵をかけた記憶ごと、消しちゃうんだ。 97. 次の文の○○に言葉を入れてください。『世界は○○に満ちている。』それは実感ですか?他のものですか?
「!」だよ。「!」って、驚きとか、興奮とか、そんなもの。だってそうだよ、今までの人生でびっくりしたり興奮したりしなかった日なんて、きっと一度もないから! 98. 今一番の願い(望み、希望していること)は何ですか?
今の友達と、ずっと仲良くしていられたらなって。時が経てばお互いに離れ離れになることもあるかもしれないけど、忘れたくないし、できれば近くにいたいな。特に結斗くんのことは守ってあげたいと思うよ、これからも。
99. 座右の銘、モットーを教えてください。
やりたいときにやる!……座右の銘にしてはかっこつかないね?まあいいや。
100. これが100問目になりますが、以上99問に答えながら、初めて知った自分自身の設定はありますか?
えっ、そうだな……ルイくんのことちょっと苦手だって思ってることかな?ここまで読んでくれて嬉しいよ、っていうかこんなのよく読んだね!どうもありがとう!
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Melting Edge
投稿するたびに久々の掌編。Breathless Breaktimeの契渡と良が、相変わら��の感じです。前作(?)の「出発」「帰宅」の続きなので目を通していただいた方が楽しめるかもしれませんが、これ単体でも特に問題ありません。では以下よりどうぞ。 【Melting Edge】  契渡が具合が悪いと言いだしたのは、ちょうど時計の短針がてっぺんを過ぎた頃だった。テレビから控えめに流れていた誰かの笑い声が不意にぷつりと消え、ちょうど明日提出の課題を終えてパソコンを閉じた良が振り向く。そうすれば否応なしに、テレビを消した張本人と目が合った。 「どうした、契渡。帰るのか?」 契渡が良の部屋で夜を過ごすことが日常茶飯事と化して久しいが、あまりそれを普通だと思うのも気が引けて、良はそう問うた。しかし、そういうことではないらしい。契渡は酷く億劫そうに、首を横に振った。 「違う。ねえ、良……」 「うん?」 「なんか、くらくらするの」  仮に身体が不調を来していたとして、それを契渡が良に、言葉という形で伝えることは極めて稀だった。それは彼が性格上やけに甘え下手だということとも無関係ではないのだろうが、おそらくそれ以前に、彼が人間とは少し、いやかなり違う類の生き物であることに由来していた。  契渡本人曰く、吸息魔というものは身体の感覚と快・不快のつながりが人間よりも薄いらしい。仮に体調を崩して身体がいつものように動かなくても、よっぽどでない限りそれが不快だとは思えないというのだ。だから、その状態を改善しようとか、誰かに伝えようとかする発想もない。たとえば真冬並みの寒さという天気予報を耳にしながら、部屋着にしていた半袖Tシャツ一枚で外出しようとする。寒いと分かっていても、ならばそれを防ごうという思考が、契渡には欠落していた。結果として顔面蒼白になった良が玄関先で慌ててそれを阻止し、必要以上に着膨れさせられた契渡がボクを雪だるまにするつもりかと唇を尖らせたのが、ほんの数日前のこと。  良としてはその思考回路の奇怪さを理解したいとは思っていなかったが、契渡との少しだけ複雑な関係性の都合上、放っておいていいという訳にはいかないだろう。それを抜きにしたって、何事につけ余りにも無防備な恋人――そう呼んでいいのか、未だに少し迷うことがあるけれど――の姿には、どこか胸をくすぐられるところがある。良は元来、世話焼きなのだ。  しかし、ともあれ今は、違った。契渡は確かに、誰に促されるでもなく、良に己の不調を訴えたのだ。眉を落としたその顔は、なぜか良の心をもざわつかせた。 「息が……」  薄く開いた唇から発せられた声が、さっきよりも掠れている。とりあえず横になれ、とベッドへ顎をしゃくって促せば、契渡は大人しく寝転がった。いつもならその雑な指示はなんだなどと煩く口を挟む��せに、こういうときに限って――勿論、こういうときだからこそなのだということは分かってはいた――、見せる従順さは普段の彼からはあまりにもかけ離れていて、良の調子を狂わせる。ざわつきが、酷くなる。 「ええと……吸えよ、いつもみたいにさ」 そう声をかけても、契渡は困惑した表情を崩さないまま、また首を横に振った。シーツの上に、淡い淡い色をした髪が、ぱらぱらと散らばって広がる。 「駄目、吸えない。無理だよ、うまくいかない」 確かに契渡は短い喘ぎを繰り返すばかりで、いつものように息を吸っている様子はない。取ろうとした白い腕は、ずるりと良の手から落ちた。良はベッドに乗り上がって、改めて契渡の姿を見下ろした。  はくはくと浅い呼吸で、眉を顰めて冷や汗をかいて、これ以上は助けを求めることもできずにいた。こうして話をしている間にも、明らかに具合が悪くなっているようだ。蒼ざめた顔で、目だけがこちらに向かって開かれている。何が起こっているのか、理解できていない顔だった。今までに見たことがないくらい、危うげな表情だった。どれくらい長く一緒にいたらそう言えるのか、よくわからないけれど。 「良、ボク、死ぬ?」 唐突にそう問われた瞬間、きっちり一拍分、鼓動が停止した。と思ったら、今度は煩いくらいにばくばくと動き始める。百メートル全速力で走ったときみたいに。きっと胸の上からでも、心臓の形がくっきり見えるだろうというくらいに。 「バカだな、そんなわけないだろ」 絞り出した台詞は、誰よりも自分のための言葉だった。契渡がバカだと思ったのなんて、後にも先にもこの一度だけだった。そして顎を掴んで引いて、力なく開いた唇を、躊躇いなく己のそれで塞いだ。  しかし吐息は、いつものように契渡の体内へと引き込まれはしなかった。まるで風船を膨らませるのに失敗したときのように、唇の合わせ目から、良の吐息が虚しく溢れる。掌を置いた喉が、ひくひくと震えている。契渡の言った通り、彼は吐息を吸うことができなかった。  ああ、どうしようなんて口に出して言ったら、何もかもおしまいになってしまう気がした。でもどうしたらいいのかなんて、分かるはずもなかった。息を与えてやる以外に自分にできることなんて何一つ思い浮かばなくて、ただ所在なさげに投げ出されている白い手に、自分の指を絡めた。契渡の瞳は今や煙って、人形と見紛うようだった。ああ、この眼は見たことがある。あの、寒かった夜に……。  そのときのことなら、今でもまるで昨日のように思い出せる。あの日の契渡はちょうど今みたいに、氷さながらの冷たい肌をしていた。ただ寒さの只中にあったからというだけではなくて、身体の内側から凍りついていたのだ。あのときはそう、この部屋の中で、長い間、たった一人で。何も食べず、何も考えず、ただ"在った"のだ。 ――どうして?どうして、そうなってしまった? あの夜はうやむやにしてしまった疑問が、はたと蘇る。契渡はあのとき、なんて言っていたっけ? 考えて、考えて、その台詞を思い出す。控え目な唇の動きを、ざらついた声を、記憶の底から引っ張り上げる。 《永い間、ずっとずっと目を瞑ってきたものに、今更向き合えない》 そう、契渡は、結局答えを言おうとはしなかった。でも、今なら分かる気がする。お前があの日、最後まで口にしなかったことは……。俺が、気付くべきだったことは……。 「寂しかったのか」  口をついて出たその言葉に、契渡は茫洋と溶けかけていた視線を揺らした。 「契渡、ちゃんと言え。ごまかさずに」 僅かに強くなった声色に、腕の中の身体が縮こまるのが分かる。 「勝手に一人になるな。生きようとしろ。意志を持て」 俺が、ここにいるのに。一人じゃないって、分かってるはずなのに。こんなにも近くにいるのに、どうして、どうして、離れていこうとする? 「お前と出会う前にお前がどんな風に生きてきたか知らないけど、今は、寂しいなんて思うな。今は、一人じゃないんだから」 ぐるぐると渦巻く思考の中で、先んじたのは怒りだった。腕の下で寝転んでいるこの小さな、生き物と言っていいのかすら怪しい存在への同情でも、憐憫でも、なかった。もはや悲哀ですらなかった。こんなに人の心を乱しておきながら、遠くへ遠くへと行ってしまおうとする契渡が、無性に腹立たしく思えた。急にむしゃくしゃして胃がひっくり返りそうになるのを治めようと、良はその手を契渡の髪の中に突っ込み、手荒に撫で始めた。 「一人になるな。俺のことも、一人にするな。誰だって知ってる、一人じゃ生きていけないって……なのに、お前ってヤツは、バカだからそんなことも知らないで、誰にも言わないで、勝手に黙ってるからこんな目に遭うんだ」 ひっくり返す前のホットケーキに浮かんでは消える泡のように、怒りやら不満やらがふつふつと込み上げる。だからそれらを言葉にして、ぶつけてやった。文句があるなら、言ってみればいい。お前が好きにするなら、俺だって好きにする……。ぶつぶつ言っていたら、契渡が不意に、良の手を握る指に力を込めた。 「怖いの」  たった一言、反らせた喉を震わせて出た台詞は、余りにも頼りなくて。それでも、表情を失った顔の中で大きく見開かれた瞳は、確かに良を見ていた。今では凍てついた湖面のようにさざなみ一つ立っていない、静かなそこに映る良は、驚��た顔をしている。その中の口がひとりでに動いて、言葉が溢れた。 「大丈夫、怖くない。ほら、ちゃんと俺がいるから……」 そう告げた瞬間、不意に湖面は波紋に揺れた。未だ映る良の顔を歪めたかと思うと、雫が一粒、目尻から音もなく垂れ落ちる。 「俺がいるから、もう怖くない。寂しくもない。ずっと、一緒にいるから」 良は、もう一度唇を寄せた――今度は契渡の口のではなく、額に。既にぐしゃぐしゃになってしまった髪を掻き上げて、冷たく、滑らかで傷のない、氷のような肌に、ただ触れるだけのキスをした。 キスをして、今度は優しく頭を撫でて、抱き締めて温めてやった。一人じゃないって、嫌でも分かるように。これからずっと、死ぬまで。 「ふふ……」 腕の中で、契渡がかすかに、笑う声がした。 「キミといると、泣き虫になってしまうよ。不本意だけどね」  次の日の朝、二人揃って部屋を出るとき、契渡が不意にぼそりと呟いた。あれからそのまま眠りに落ちてしまった契渡は、目の縁をほんのりと紅く染めていた。 「氷は溶けると、水になるからな」 「なんて?」 「なんでもないよ」 なんでもないことないでしょ、とごねる契渡の尖らせた唇に自分のそれを軽く触れた後で、良はにやりと笑ってみせた。我ながら、悪くない言い回しだと思ったのだ。 ***  数週間後、二人は昼食を学寮のテラスで食べていた。実際のところ食事をしているように見えたのは良だけで、契渡は何もしていないように見えていたのだが、そこで契渡がふと口を開いた。 「……それにしても、この間のあれは何だったんだろう。突然だったし、ああまで具合が悪くなるなんてさ」 契渡はあの夜の体調不良が気にかかっているようで、その後もしばしば話題に出していた。良は二つ目のサンドウィッチの包装を破りながら、何ということもなく言葉を返す。 「何かが変わった。変化した、だから身体が少し、戸惑っただけだろ」 そうは言ったものの、何が変わったわけでもなかった。ただ強いて言うならば、契渡自身を包む空気が変わったように、良には感じられていた。近寄るだけで皮膚を裂くかとすら思われた彼の鋭さは、確かにあの日を境に少しだけ、ほんの少しだけ薄れた。それはたとえばそう、氷を研いで作ったナイフがやがて溶けて、切っ先を丸くするようなもの。でもそんな風に感じているのはきっと自分だけで、それを証明することなんてできはしない。だから、契渡には何も言わなかった。ただ、自分だけが知っていればいい。あからさまに不満げな表情を浮かべている契渡の頭を、良はまた、くしゃくしゃとかき混ぜた。 おしまい。
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t-t-took · 8 years ago
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Speak to me
久々の掌編。青年・調(しらべ)がふと思い立つ話。
調と調の住む城の主・ギーズが出てきます。あと調の友達の縁(よすが)がちょくちょく話題に上ります。名前が読みにくくてすみません。雑に言うと舞台は死後の世界みたいな感じなので、生前の話がごく自然に出てきます。では以下よりどうぞ。
【Speak to me】  調はその日、珍しく一人でいた。  彼は広間の一番端の椅子に軽く腰掛けて、窓の外を眺めていた。今日はとてもいい天気で、窓越しの柔らかな日差しが気持ちいい。視線の先を流れる雲のように輪郭のない思いが、ふわふわと頭の隅によぎっては消えていく。広間の椅子はどれも背が高かったから、青年は床につかない脚をぶらぶらと揺らしていた。いつも一緒にいるはずの縁は、今ここにはいない。城の他の住人に誘われて、つい先ほど街へと出かけて行ったばかりだ。彼女がいないと、調の周りは静かになる。彼の周囲には今、物音一つ立っていない。 
少し前までは、それが当たり前だった。静かでなければ、生きてゆけなかったのだ。他人の声はもちろんのこと、己の発する声も、 箒が床を掃く音も、本の頁をめくる些細な音ですらも、彼にとっては毒に他ならなかった。それらは彼の身体を気づかぬうちにじわじわと蝕んだばかりか、時には針で突くような痛みの形で、彼を苛んだ。だからひっそりと、どんな音も立たないような、静寂に包まれた暮らしをしてきた。けれどその中で彼女の、縁の声だけが、この耳に入ることを許されたのだ。どうしてなのかは未だに分かっていないのだが、とにかく彼女の声は、調にとって救いだった。彼女がいなければ、世界はまさに彼にとっては針の筵に他ならなかったし、彼女に出会う前は実際にそうだった。 
 けれど、今はもう違う――そう、分かってはいる。分かっているのだけれど、永らく音を拒み続けてきたこの身体は、新しいものに触れることにはどうにも臆病になってしまうようだった。この城にいて、彼はまだ自ら音を、声を出すということをしていなかった。城の他の住人もみな調のことを分かっていて、彼のそばでは不用意に音を立てることはしなかった。それで、別に困ることなんて何もない。言葉を介さなくたって、その気になればいくらでも思いを伝えあうことはできる。ただ、縁だけは時々、この耳に吹き込むように顔を寄せて、ふっと一言囁きかけることはあった。そうたとえば、「大丈夫だよ」とか。何が「大丈夫」なのか、調にはあまりよく分かっていなかったけれど。  視界の端で、何やら人の動く気配がする。目を遣った先、広間のもう片方の端には、厨房に入っていく背の高い人影があった。この城の主、ギーズだろう。お茶でもするつもりなのだろうか、なにやらごそごそと棚の中を探っている。首を傾けて、その様子を見るでもなく眺めていると、視線に気がついたらしい彼がこちらに向かって、にっこりと笑いかけた。何となく興味を惹かれて、調は席を立とうとした。調子に乗って、勢いをつけて飛び降りる。でもそれが、いけなかった。椅子の脚を蹴ったとき、つま先がずるりと滑って、脚貫に引っ掛かった。身体だけが、空へと投げ出される。しまったと思う間もなく、青年は床にその身を打ちつけた。
 痛みに息を詰めて、調はじっと蹲った。たいした高さから落ちたわけでもないのに、打ち方が悪かったらしい。椅子が倒れた時の大きな音が、頭の中にびりびりとこだましている。
 城の主人が駆け寄ってきていたと分かったのは、するりと抱え上げられたときだった。脇に手が差し込まれて、身体が浮き上がる。そのまま向かい合うように彼の膝の上に降ろされて、目の前の心配そうな顔を見つめた。一瞬、少しだけ開いた口の中で、舌がぴくりと動く。けれどそれで言葉を紡ぐことはないまま、ギーズは調の様子を診た。頭に、顔に触れて、首筋に触れて、怪我をしていないか確かめられていく。そうして肩の前面に指が当たったとき、思わず顔を顰めた。シャツのボタンを二つ開いて肩を露わにすれば、青黒い痣が思ったよりも広がっていた。白い紙に、インク瓶を倒して中身をぶちまけた後のようだった。椅子に引っ掛けた足首も、ひどくはないが思ったより赤く腫れていた。うろたえたような目をしておろおろと俯く調の頭を、ギーズは優しく撫でてやった。
 城の主に抱きかかえられて自分の部屋へと戻った調は、寝台にそっと降ろされた。ちょっと待ってて、と言いたいのだろう、こちらに掌を見せて踵を返したギーズに頷いて、その背を見送る。彼のことだから、何か訳があってだろう。どのみちこの脚で、今すぐどこかに行くことなどできない。
 することがないので、調は再びぼんやりしようと努めた。でも、どうもさっきのようにはうまくいかない。気が動転しているのは確かだし、そうでなくても両肩と脚から、鼓動と同じ拍で脈打つ痛みが伝わってきて、頭の中を邪魔するのだ。そう言えば、音以外からこんな風に痛みを感じたことが、今までにあっただろうか。ふと、そんな問いが思い浮かんだ。ひたすら音を出さないように、静謐の中で生きてきて、誰が見てもそうと分かる怪我をしたことなんて、思えば一度もなかった。手をついて身を守ることもできなかったのは、転び方を知らないからだ。外で遊んだことなんて、なかった。外はこの身を傷つける刃にあふれていて、出ることなんて望んだこともなかった。縁に出会って、外の世界の話を聞いたとき、それで十分だと思ったのを、よく覚えている。そのときには、話を聞くだけで心底満足したのだけれど、でも。
――このまま永遠に、外には出られないのかな。
城での暮らしには、終わりがない。その中で、ずっと厚い壁の内側にいることが、なんだか急に重苦しく、退屈なことのような気がした。城の外と中を思いのままに行き来する縁が、初めて妬ましいと思った。そして、もう恐れる必要もないものを未だに恐れ続けている自分自身が、酷く滑稽に感じられた。  ギーズは、怪我の手当てがうまかった。治療に必要なものを抱えて戻ってくるとすぐ、肩にも脚にも湿布が貼られた。冷たさに少しだけ身震いしたけれど、それで気が紛れたのか、ずきずきする痛みはあまり分からなくなった。脚には上から包帯を巻いて、少しだけきつく縛った。これでもう大丈夫、そう言いたげにギーズが微笑む。そして、再び背を向けようとしたその姿に向かって、調は口を開いた。 「あのね」
声を出すのは、ぎこちない。
「……ありがとう」
手当て、してくれて。ギーズが、はっとした顔で振り向く。
「僕、大丈夫だから。声でお話、できる」
自分で自分に言い聞かせるように、そう告げた。喉を開いて、息を震わせて、唇の外へと送り出す。
「だから、声でお話してくれて、いいよ」
「そうなのかい?」
初めて発せられた彼の声は、少し低くて、天鵞絨のように滑らかで、温かかった。それでもその声を聴いた耳が、胸が、肌がざわつく。心臓に銀の匙を差し込んで、まるで砂糖壺をかき回すみたいに、ぐるぐるとかき回されているようだ。眼を見て話すとそれが余計ひどくなる気がして、調は軽く視線を下げた。
「無理しなくて、いいんだよ」
「無理、してないよ」
返事とは裏腹に、顔は少し歪んでいたかもしれない。でも、もう怯えているのは嫌だったから。身体中がざわざわするのが治らないのは仕方がないけれど、前みたいに気持ちが悪いとは思わなかった。
「はじめて、怪我、したの」
怪我をした肩を手で、押さえつけるように触れながら、ぽつりと呟く。
「はじめて?」
「そう……静かに、してたから……だから、怪我したこと、なかった」
「そうだったか」
ギーズが調の隣に腰かけたので、寝台がぎしりと沈んだ。
「でもね、もう、そうしなくても、いいし……」
縁のように舌先で言葉を操ることは、やってみると想像していたよりも難しい。唇がやたらと乾くよう��、調は指で口元をなぞりながら、次の台詞を探した。
「ええと、だから……お外、行きたいの」
思いをそのまま口にすれば、子どもっぽいとしか言いようのない言葉しか出てこなかった。脈絡もなくて何だか変だし、伝わっているのか自信がない。それでも城主の顔は、ふわりと綻ぶ。
「じゃあ、早く怪我を治さないと。少なくとも脚は、よくしないとね」
うんと頷けば、ギーズはまたくしゃくしゃと調の頭を撫で、そして一つ問うた。
「ほかに、したいことはないの?」
「したい、こと?」
ううん、と調は痛まない程度に首を捻った。そう言われても、特に思い浮かばない。そもそも声で話をしたい、外に出たいというのだって、きっと怪我をしなければ思いつきもしなかっただろう。なりゆきというのか、偶然というのかはよく分からないけれど、とにかく何かよくよく考えた上での希望、という訳ではないのだ。
「何でもいいんじゃない?せっかくだから、何か考えるといいよ」
「そう、だな……」
何が、したいんだろう。眼をすっと閉じて、思惟の海に沈もうとした調の頭の中にふと響いたのは、歌声だった。何よりも聞き慣れた、縁の歌声。己にせがまれるままに何度も何度も繰り返し歌った、大好きだった歌。
ーーああ、あの歌が、僕も歌えたら。
調は顔を上げた。あのね、と囁くように言えば、ギーズはこちらをじっと見つめる。そのまなざしはどこまでもまっすぐで、曇りがなくて、どんな言葉も受け入れられる気がした。何を言っても、ゆるされるような気がした。この人がいるのだから、きっともう何も恐れなくていい、そう信じられた。
「僕……歌が、歌えるように、なりたいの。縁も、一緒がいいな」
「そうか。それは楽しみだね」
城の主は見開いていたその眼を細めて、いっそう笑みを深めてみせた。
「縁はね、いっぱい、歌を知ってるから。僕も、いっぱい、聴いたから。今度は、僕も、歌いたいの」
「いいね。歌えるようになったら、聴かせて。みんなを呼んで、音楽会をしよう。庭でね、お茶なんかしながら……あっ」
にこにこと話していたギーズが急に立ち上がったので、寝台が上下に揺れた。調は不思議そうに、その顔を見つめる。
「すっかり忘れてたよ、お茶をしようと思って、いろいろ出しっぱなしにしてたんだった。準備して、ここに持ってくるよ。待ってて」
調の返事も待たず、城主は慌ただしく部屋を出て行った。今日何度目かの彼の後ろ姿を見送り、調はふっと息を吐く。思ったよりたくさん喋ってしまって、自分でも気づかないうちに緊張していたようだ。でも話をしていれば、肩や脚の痛みは気にならない。肌や胸のざわざわする感じだって、きっと慣れればそのうち消えてゆくだろう。
「大丈夫、お話できる。お外にも、出られる。歌も、きっと歌える」
口の中で、誰に言うでもなくそう呟く。縁の言っていた「大丈夫」って、このことだったのかな。お話しても大丈夫、何をしたっていいんだよって、ことだったのかな。
 しばらくして、ふと耳に何かの軋むような音が届いて、調は慎重に寝台を降りた。庭の門を、押し開く音だ。ずっと閉めていた部屋の窓を開け放つと、温かな風に乗って、話し声も聞こえてきた。この声は、この世界の誰よりもよく知っている声。
「……縁!」
窓から身を乗り出して、手を振ってお帰りを言う。みんな帰ってきたことだし、今日はこれから、賑やかなお茶の時間が楽しめそうだ。
おしまい。
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t-t-took · 8 years ago
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お絵描きの過程を見るのが楽しくて気まぐれにうpっちゃいます。加工前なんでなんかサイズとかおかしいけど。今年はいっぱいお絵描きしたい!
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t-t-took · 9 years ago
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少し前に
自分が恵まれているとかどうとかの話をぐだぐだとした記憶がある。その話にはまだ結論が出せていなくて、それ故にここでまたあれ以後に溜まったもやもやを吐き出さないとやっていけない。 僕はおおよそ全てにおいて恵まれた人間だけれど、人生はどう頑張っても一度しかない。僕に与えられたこの恵まれた人生は綺麗に舗装されてガードレールも街灯もついた広い道を履き慣れたお気に入りの靴で歩くようなもので、その道だけを歩いている限り、がたがたの石ころだらけの道を裸足で歩くときの歩き方や、暗がりを手探りで進む感覚を知ることはできない。でももっとできないのは、道を踏み外してみることだと思う。せっかく自分に美しい道が用意されているのに、わざわざ歩きにくい方を選ぶことはできない。そんな勇気は、それを勇気と呼ぶのかはさておき、僕にはない。その道を歩いている人に話を聞いてみるのもアリだけれど、聞いたところで実感には程遠いだろう。きっと言語という枠にはめてしまった時点で、その感覚は僕には3割くらいしか伝わらないと思う。僕は、自分で体験したことじゃないとうまく文章にできない人間だから、余計にそれでは困るのだ。 それに関連して、以前僕は面白い物語の主人公たちはどこかしら「恵まれていない」と言ったけれど、よく考えてみると僕の尊敬する偉大な人たちもまた、部分的かもしれないけど「恵まれない」子ども時代を歩んでいたようだ。たとえば指輪物語の作者トールキンは幼い頃に父も母も亡くしているし、ハウルの動く城の作者ジョーンズは子ども時代にネグレクトを受けていた。他にも僕の敬愛する多くの作家は、第二次世界大戦を経験している。そのときの経験は、多かれ少なかれ物語の人物に映し出されている。だからこそ、そのお話の人物や出来事、主人公が何かを乗り越えて行く姿などはリアルで、ついつい引き込まれてしまうような、心に響く面白さがある。 きっと僕には、そんな物語は書けないと思う。僕の子ども時代はもう終わってしまっているけれど、第二次世界大戦みたいな世界中の人々のアイデンティティを揺るがすような出来事はなかったし、両親からもひたすら愛されて生きてきた。もし僕が子どもを省みない親を描写しても、きっとリアリティは皆無だろう。それに、今までこうして育ててくれた僕自身の親に向ける顔がなさすぎる。お話と現実は関係ないはずなんだけど、なんだかそんな気分になる。だって面白い作品には、作者の経験が投影されるものだから。でも僕が今までの人生を投影しても、面白いお話が書ける気はしない。だって、あまりにも恵まれていて、良い意味で「普通」だから。まあまあの財力の家に生まれて欲しいものは大体手に入り、家族に愛されて育ち、何の障壁もなく学びたいことを学んで遊んで楽しんでる人の話、読んでて面白いかな? そう考えると、僕の創作者としての人生は既に終わっている。僕の子ども時代に、今後投影できるようなことは何一つ起こらなかった。僕は人の心を動かすような物語を書くには、あまりにも薄っぺらい人間に育ってしまった。親を持たない、自分の誕生日もよく分からない子どもは、どんな気持ちなのか。自分は何も悪いことをしてないのに家柄だけで差別されたら、どんな風に感じるのか。愛して欲しい人が愛してくれないのは、どれくらい辛いのか。元々あった腕や脚を失くしたら、どんな生活なのか。僕が知ってる「哀しい」「嬉しい」なんて、きっとたかが知れてるということしか、分からない。死にたいと思うほどの哀しみってどれくらいだろう?それを知らないのに、死にたいと思うほど苦しんでる人が、それを克服する話が書けるだろうか?僕はそういうお話が、ずっと好きだったのに。好きだから、自分でも考えてみようと思ってきたのに。僕が好きなものを作り出せる人に、僕はなれない。ならば僕は何を目指し、どこに進んでいったらいいの?僕は今まで考えてきたお話を、人物を、どうしたらいい? そうは言いつつも僕はまた明日になったら自分の創作について考えるし、そしてこのあまりにも大きい問題について頭を悩ませるだろう。誰か「お前には、お前の望むような物語を書くことはできない」って言い切ってくれる人がいたら、どんなにいいだろうか。でも心の中で、駄目だと思ってる自分を、ぎゃふんと言わせてやりたがっている自分もいる。僕も書けたって、いつか言いたい。僕にも書けるお話があったって、胸を張りたい。だからまだ創作のメモは捨てずに、とりあえず取っておこうと思っている。万が一、億が一の可能性に賭けたい。
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t-t-took · 9 years ago
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ミルクいろの微睡
前回「続く」って書いたときに既に書き始めてたのに、3ヶ月(だったっけ)もあっためていました。一応これで完結。何やってんだって感じですがこれ以上あっため続けてもキリがないので放出します。相変わらずの誤字、表記ゆれなど見つけ次第容赦なくご指摘ください。それでは。 
 【ミルクいろの微睡】
目覚めたのは、真夜中だった。 
正確に言えば、なんとなく真夜中のようだった。辺りは静まり返っていて、誰の声も、誰の足音も聞こえはしなかった。瞼を押し上げると、しっとりとした薄闇の中、蝋燭の薄い灯りが揺らめいているのが分かる。青年は横たわった寝床の上で伸びをするように、背中の翼をばさりと広げた。
何だか長い夢を見たような気がするけれど、どんな内容だったのか、さっぱり覚えていない。ただ、優しい誰かと話をしたことだけが、霧の向こうのようにおぼろげに蘇る。何を話したのだろう、何を告げられたのだろう……頭を捻っても、まるで思い出せない。けれど、何かを--この胸に支えて、己の息さえも危うくさせていた何かを--吐き出して、それを受け止められたことは、確かなようだ。ここにたどり着いたときにはもう一歩も動けないと思うほど疲れていたのに、夢を経て目を覚ました今は少しだけ心が軽くなって、なんだかじっとしていたくない気分だった。 
青年は起き上がって、部屋の扉をゆっくりと開けた。廊下へ出て後ろ手に扉を閉めれば、真っ暗闇にたったひとり、取り残される。踏みしめる石の床は冷えていて、裸足の脚が粟立つのが分かった。ただひたひたと繰り返される足音だけが、己が歩みを進めていることを示している。床を滑る足の裏と、その音を捉える耳だけが今の自分の全てになったようで、彼はひとり、笑みをこぼした。どこに行くつもりもなかった--城の中を彷徨えば、ただそれだけで落ち着いて、満ち足りた気分になれるから。ここにいるときは、たとえひとりきりでいるときでも、淋しいと思うことも、怖いと思うことも、なかったから。 
たどり着いた広間には、誰もいないはずだった。だから、大きな長机の端に伏せる影を見つけたとき、青年は思わず足を止めた。どうしたらいいか、分からなくて。 
その人は、どうやら眠っているようだった。近くには読みかけの本が何冊か放り出されていている。開かれたページが揺れていることから察するに、どこかの窓が開けっ放しになっているらしい。机の中央から引き寄せられた燭台の蝋燭は、既に燃え尽きていた。緩く息をする音と共に上下しているのは、丸めた背中。そしてその右半分だけを覆っているのは、白く大きな翼。 
その色を目にすれば、背中にナイフを突き立てるような痛みを覚えて、青年はとっさに目を瞑った。融けるほどの熱が、傷痕だけが残された肌の下で蠢く。それはかつてその翼が、まさに青年の背で対を為すものであったという、何よりの証だった。ぎゅっと力を込めて閉じた瞼の裏で、視界が眩んで白くなる。彼は胸に手を押し当てて深く息を吸うと、椅子の背に寄り掛かった。こうしていれば、この厄介で煩わしい熱も痛みもやがて去ることは、既に知っている。その間にも彼の隣では、何も知らない静かな寝息が続いていた。 
「たね」 
ふと、気まぐれに呼びかけてみる。痛みに押し潰された声は思ったよりも小さくなって、囁き程度にしかならなかった。こんな声では、きっと聞こえやしないだろう。 「こんなところで眠っていたら、風邪を引いてしまうよ」 外からは夜の風が入ってきているようだし、城で一番広いであろうこの部屋を温めるには、既に小さくなっている暖炉の火では些か勢いが足りない。実際のところ、背中の疼きをやり過ごす間にも、青年は剥き出しの腕を何度もさすって温めようとしていた。それでも、その人が目を覚ます気配は、どこにもない。規則正しい寝息だけが静かに、ゆっくりと、広間に溶けてゆくばかり。青年はおもむろに椅子を引いて、そっと腰を掛けた。もうしばらく、待とうと思った。 
「ねえ」 
不意に呼びかけられたように感じたのと、暇を持て余した青年がその人の髪に触れようと手を伸ばしたのは、ほぼ同時だった。半端に出していた手を、びくりと震わせながら引っ込める。
「な、なに?」
とっさに返事をしたが、聞こえている風はない。空耳かと思ったそのとき、今度はさっきより僅かにはっきりと、言葉が紡がれた。 
「ねえ……わたし、あなたが居ないと」 
唇は確かに動いているのだが、その眼は閉じられたまま。何か、夢でも見ているのだろうか。宙を掻いていた指をもう一度伸ばして、頬を覆う、ミルクを入れた紅茶の色をした髪をそっと払う。浮き上がった肌の白が、薄闇に慣れた目に眩しい。そして、次に零れた言葉に、はっと息を止めた。 
「淋しくて、しかたがないのよ」 
閉じられた瞼を縁取る睫毛が震えて、目尻を滲ませた雫が頬を横切る。そのさまを、その一瞬を、息を止めたまま、ただ見つめた。それしか、できなかった。 
「淋しいのよ。わたし、淋しいのよ」 
ほとんど息だけのようだったけれど、声は確かにそう繰り返した。そしてその人の手が、まるで何かを探すように、机の上をぎこちなく滑る。避ける間も与えられず、机の上に乗せていた青年の指は、白い指に絡め取られた。長くこの広間の空気に晒されていたその指先は、思ったよりもずっと冷えて、悴んでいた。 誰のことを言ったのかなんて、分かりはしない。けれども、己のことであったら良いのにと、確かに願った。そしてそう思っている自分に気づいて、青年は俄かに顔を熱くした。さっき背中に感じたのとは違う類の熱を、彼は薄闇の中でひとり、ただただ持て余した。痛みも、疼きもないこの熱がどうやったら去るのか、彼には分からなかった。 
 それから、どれくらい経っただろうか。最初に動いたのは、右肩を覆う翼だった。 
「ん……」 
ひとつ小さく身じろぎした後、青年の指に未だ絡んでいた指が、するりと離れる。それが顔に掛かった髪をすくうのを、何とはなしに眺めた。 
「わたし、眠ってしまっていたのね」 
身を起こし、控えめに伸びをしながらの独り言は、少しだけ掠れていた。どうも、青年の指を握っていたことなど、覚えていないらしい。その証拠にその人は、隣に座る青年に気づいた途端、酷く驚いた顔をしたのだ。 
「あら……?いつからいらしてたの?起こしてくださって構わなかったのに」
さっきの涙の名残なのか、未知を湛えた瞳はまだ少し潤んでいる。そこに映った己の顔がまだ紅い気がして、青年は思わず目を逸らした。 
「いや、ついさっきだよ……気にしないで。でもここは冷えるみたいだから、眠るならここじゃない場所がいいと思うな」 
「うふふ、本当に!わたしったらご本を読んでいる間に、居眠りしてしまうなんていけないわね」 
椅子から立ち上がり、手を伸ばして本を引き寄せながら、おかしくてたまらないといった風にその人は笑った。 
「ねえ、わたし眠ったから、なんだか目が冴えてしまったわ。よかったら、何か温かい飲み物でも作ってきて、少しお話でも?」 
「いいね。ゆっくり話すのは、久しぶりかもしれない」 
青年も頷いて、立ち上がる。そして二人は連れ立って、広間を出て行った。開きっ放しの窓から風がふわりと吹き過ぎて、二人の白い翼をそっと撫でる。その風にどこか、木陰で揺れる草の蒼い匂いを感じて、青年はふっと微笑んだ。
「思いもよらぬかたちで、何かが……」 
 おしまい。
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t-t-took · 9 years ago
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みどりいろの午睡
ちゃんとした更新は久々ですが。ものすごく前に某氏が見たいと言ってくれていた二人がお喋りするお話を、今更完成させるという愚行。しかもその方がここを見てくれてるかどうかは微妙……。しかも全く喋らせたことのない二人なので言動に四苦八苦。した割に文章には反映されていませんが! ともあれ、相変わらずのSSですのでお気軽にお読みください。表記揺れとか誤字脱字あったらいつでもご一報ください。僕もたまに気づいたら過去のやつとかも直したりしてますので。
【みどりいろの午睡】
その青年が城へと帰ってきたのは、しばらく前のことだった。 と言っても城の中には皆に等しく流れる時間などないのだから、本当はもっともっと昔だったかもしれないし、ほんのついさっきのことだったのかもしれない。とはいえ薄汚れた大きな翼を引きずった彼が酷く疲れた顔をしていたことと、出迎えた城の主に気づいた途端、差し伸べられた腕の中に音もなく倒れ込んだことだけは、紛れもない事実だったのだ。城主の呼びかけにも応えることなく、青年はそのまま、さながら海の底へと深く深く沈むように、目覚めを知らぬ眠りへと落ちていった。
次に目を開けたとき、青年は小さな白い丸テーブルに向かって、腰掛けていた。彼は目を丸くして辺りをきょろきょろと見回したが、ここがどこなのか見当もつかなかった。背後には大きな樹があり、彼はその太い枝の作る木陰の下にいた。茂った葉の間から差し込む光が、テーブルにのせた己の手の甲に映って、ちらちらと揺れている。微かに草の匂いのする風が、彼の背中の左半分を覆った翼を撫ぜて、そして遥か彼方へと駆け抜けていった。 「さあ、どうぞ」 不意に落ち着いた声が頭上から降ってきたかと思うと、目の前でことりと音がした。はっと我に帰った視線の先には、淡くみどり色のカップがひとつ。驚きで動けずにいる目の端に、それを置いたのだろう白い手袋をした指先が、ちらりと映った。 「えっ?」 何の説明もないままに、次は同じ手がポットを傾ける。湯気の立つ液体が、カップに満ちてゆく。 「驚くことはないですよ、少しゆっくりしたら如何ですか?お茶でも飲んで、お話をして」 「ええと……」 身を強張らせてしまった青年は、ろくに声も出せずに口をぱくぱくさせた。一方その間に声と手の主はもう一脚の椅子を引くと、そこに掛けた。青年とその人は、まっすぐに向かい合った。 声と手つきに違わず、落ち着いた気配を纏った人だった。ゆるく結わえた髪は月も、星のない夜のように黒く、この何もかもが淡く思える場所で、妙にくっきりと彼の輪郭を示していた。紳士、という言葉がよく似合うように思われた。 そしてその人は軽やかに脚を組むと、此方に向かって微笑みかけた。といっても、それは彼の口が緩やかに弧を描いたことでしか判断することはできなかった--彼の双眸は、幾重にも重ねられた布で覆われ、すっかり隠されてしまっていたから。しかしその厚い目隠しにも関わらず、彼は自分のカップにもなみなみとお茶を注ぎ入れた。迷いのないその仕草に再び目を見開いた青年に向かって、その人も再び、笑ってみせた。目隠しを結んだリボンが、彼の頭の後ろで、そよと風になびく。 「……貴方は、だあれ?」 「誰だと、お思いになりますか?あるいは、ここは何処だと?」 紳士は問い返し、笑んだままの唇に、カップをつけた。 「これは、夢……。僕は、夢を見ている。僕は城に、帰ってきたはずだもの」 「では、私は何者?」 「ううん……僕の、夢の住人?」 「それでは、そういうことにしておきましょう。事実、ここは貴方の夢の中。お城で過ごす、ほんのひとときを夢に費やしてしまうほど、貴方は疲れておいでですよ」 どうして己のことをこんなに知っているのか、青年には分からなかった。しかし、こんなところでそこに踏み込もうとするほど、彼も野暮ではない。夢の住人との邂逅は奇妙で、何だかむず痒いのも確かけれど、決して不快ではなかったからだ。青年は未だ湯気を立てているカップに口をつけると、少しだけ傾けた。 「おいしい」 頬が緩んだのが、自分でも分かった。誰かにもてなされるなんて、いったいいつ以来だろう。そもそも、己のような者をもてなしてくれる人なんて、今までにいただろうか……そう考えた青年の胸に、みどりの影が過ぎった。ミルクを入れた、紅茶の色をした長い髪。その柔らかな色が風に揺れる様が、まざまざと蘇った。 「夢の中なら、何を話してもいいのでしょうか」 何処か遠い目をして、ふいにカップを置いた青年に、眼前の紳士は穏やかな表情を崩さないままで頷いた。 「もちろん。貴方の気に病むことの全てが解決されるとは、言い切れないけれど。それでも胸につかえたものがお有りなら、言葉にすることで溶かすこともできましょう」 青年は、目を伏せた。背中の翼が、身震いするようにひとつ、羽の先まで震えた。
「教えてください、僕は……過ちを犯したのかどうか」 己の声がか細く掠れるのを、青年は感じた。所詮これは独り言だ、そう思って彼は続けた。 「僕は彼女に、近づきすぎた。でも、彼女のことはこれっぽっちも分かりはしなくて……僕がどう思われているのかすら、まるで雲を掴むよう」 溜息が零れるのを、抑えることができなかった。大きく肩を落とすと、己が一層小さく、縮んでいくように思われて仕方がなかった。 「彼女が幸せかどうか、僕はそばにいてもいいのか、ただのひとつも分からずに……僕は、誰の姿も見えない霧の中。ああ、どうして僕は、僕は、あのようなことを」 声に出すたび、両眼が潤んでどうしようもなくて、顎を上げて瞬きを繰り返す。そして隠されて見えないはずの視線がこちらに向けられるのを、感じた。 「僕は、赦されないのでしょうか?」 「……分かっているはず。私に答えを求めることは、できはしないと」 その言葉に、滴を零さないように、そっと頷いた。
「貴方にとって、彼女は未知。未知とは、強く人を誘い、引き込み、しかし容易くは姿を表さないもの。もしかしたらこれからも、一度だって見ることができないかもしれない」 その人の声は、まるで歌うようだった。低く、しかしこの場に吹き抜ける風のように透きとおったその声を、青年はただ聴いていた。 「しかし貴方は、未知というものそれ自体を、愛したわけではないでしょう?貴方が想いを砕くのは、彼女というひとそのものであったはず。それを、忘れないで」 忘れられる、はずがない。初めて出会ったときのあの星の煌めき、己を呼ぶ柔らかな声、他愛もないお喋り、腰を下ろした草のみどり、それから、それから……。何もかもが、限りなく愛おしいと思えた。ただ己の前で笑う彼女が愛おしいと、そう思えた。そして、彼女になら受け入れられると思ったものが、たくさんあった。彼女にだけは隠したくないと思うことが尽きることなく溢れて、彼自身ですら、その気持ちを持て余してしまったのだ。両腕いっぱいに抱えても、それはなお湧き上がって、青年は途方に暮れたのだった。どうしたらいいのか、見当もつかなくて。 そして、最後にその手の中に残ったのは、恐ろしい何かだった。よそ見をする彼女を、振り向かせたい。独り占めしてしまいたい。僕を、僕だけを、見ていてほしい。 だから、彼女に荷を負わせた。この身を裂いてでも、己を刻みたいと思った。彼女に、癒えない傷をつけた。彼女の気持ちからは、目を逸らしたままで……。 喉をぎゅっと絞められたような、声にならない声が漏れて、青年は両手で口を押さえた。この薄汚い、忌むべき感情は、言葉にすることなどできはしなかった。今ここで剥き出しの欲望を露わにすれば、己の忌まわしさに、浅ましさに、殺されてしまうと思った。肩を怒らせ、背中を丸め、青年は見開いたままの瞳からぼろぼろと涙を零した。もう、我慢などできなくなっていた。背を覆う、半分だけの歪な翼が、まるで彼の犯した罪の深さを思い知らせるように、その重さを増したような気がした。
「貴方の罪は、私には裁くことなどできません。そも、それが罪と呼ぶに値する���のか否かも、曖昧です。けれど、貴方の彼女への想いに一片の嘘もないことが、紛れもない事実ならば」 紳士はそう言って脚を組み替え、また一口お茶を飲んだ。 「その想いが伝わらないことなどあり得ない、それもまた事実であるべきでしょう。底を知らぬ井戸のように、どんなに石を落としても、何も返ってこないこともありましょう……しかしいつか、思いもよらぬかたちで、何かが戻ることもきっとある。そのように、信じるのです」 その人は席を立って、青年の傍まで歩み寄った。草を踏む柔らかな音が、耳に届く。彼は相変わらず口を押さえて、しゃくりあげるのを堪えながら、紳士の眼を--目隠しの下、二つの目玉がきっと、嵌っているであろう辺りを--見上げた。縋るように、あるいは迫るように。 「もしも貴方への想いが欠片もないのなら、きっと彼女は貴方を拒むでしょう。彼女には、それだけの力があるのですから。それに彼女が、ひとを徒らに弄ぶような人物でないことも、貴方は既にご承知のはず。……だからこそ、それまでに彼女を想うのではありませんか?」 その人はそう告げて身を屈め、青年の、くすんだ枯れ葉の色をした髪をゆっくりと撫でた。青年は両腕を流れる雫で濡らしながら眼をぎゅっと瞑り、もう一度だけ、深く頷いた。 次に顔を上げたとき、確かにそこにいたはずの紳士は、もうどこにもいなかった。青年の頭を撫でていたのは、テーブルの上をふわりと吹き過ぎる、蒼い風に過ぎなかった。辺りを見回すこともなく、彼はカップの中の最後の一口を軽く煽ってから立ち上がり、その場所を後にした。
続く。
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t-t-took · 9 years ago
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思うことなら
色々とある。 僕が創作をする上ではドラマのない平凡すぎる人間だっていうのは前々からよく言ってるけれど、その平凡っていうのは「恵まれてる」って言い換えてもいいかもしれない、ってちょっと思ったりしている。ここから先は自慢話ではないことを前提に読んで欲しい。そもそもこれは僕の脳内垂れ流しなので、無理なら読まないで欲しいし読んでて不快になったら速やかに読むのをやめて欲しい。 僕は経済的にもそこそこ余裕のある家に生まれている(もちろん石油王でもないけど、欲しいものはまあ、常識的な範囲で手に入るっていう意味で)。進学先だって好きなように選ばせてもらえる。親からいっぱい愛されて育った自信(?)もあるし家族の仲も基本的に良好。勉強もまあまあ好きだし得意���て言える方で、少なくとも生まれもった頭は悪くないと思う(ただし努力してるかどうかは別)。容姿も人生に絶望するほどじゃないし、そもそも僕自身は自分の顔は嫌いではない。声も通る(高さはあんまり好きじゃないが)。 つまり何が言いたいかっていうと、僕はとても恵まれてるってことなわけで。僕の努力次第でどうにかなるわけじゃない部分(どんな家に生まれるかとか、どんな顔に生まれるかとか)において、僕は恵まれている。平凡な、を恵まれてるに言い換えてもいいって最初に言ったけど、平凡なって言うにはちょっと恵まれすぎてるかもしれない。こんなに恵まれてることを平凡なって言っちゃいけない気がする。今後平凡っていうのはやめます、恵まれてる。 でね、まあ僕は恵まれてるわけなんですけど。物語の主人公って、得てして何かしらの理由において恵まれてない場合が殆どじゃないですか。例えば両親を亡くしているとか、過去に何かトラウマがあるとか、家族仲が悪いとか、何かしらの障害を持っているとか、あるいは見た目が変わっている、特殊能力を持っているとか。そういう、自分の努力や選択ではどうにもならない部分において、何かが世間一般と違ってないと、多分物語って始められないんですよ。その「一般との違い」そのものが物語として成立するから、そういう「普通とは違う」設定がつきがちなんだと思う。よく分かんないんだけど、実際そうじゃん?何の問題も抱えてない普通の人が物語の主人公になったって、その話面白くないでしょ。 で、ちょっと話が変わるんだけど、昔僕が好きな作家の講演を聞く機会があって、そのときにその作家が「語られるべき物語を持っている人間は、すぐに分かる」っていう趣旨(多分)の発言をしてたのね。僕はずっとその言葉が気になってて、その時からひたすら「僕自身には、"語られるべき物語"はあるんだろうか」って考えてるんだけど、自分だけじゃ答えが出せずに今に至っている。でも、さっき言ったみたいに面白い物語の主人公(="語られるべき物語"を持っている人)が何かしら世間と違っている部分を持つとしたら、きっと僕みたいな恵まれた環境で育って、特に人生で紆余曲折があったわけでもないような人間は、"語られるべき物語"なんか持ってないんじゃないかと思うわけですよ。 僕はそれが、すごく恐ろしい。自分の物語がないのに、創作なんてできるわけないじゃんって思ってしまう。でも僕は、創作せずにはいられないし。だからきっと僕は創作することを許された人間じゃなくて、それなのに、許されてないのに、ただただ面白くもない、つまらない自己満足の、そもそもそんなもの創作って呼べるのかすらよく分からないものを並べてる、罪人なんじゃないかって思ってしまう。そう思うと、僕は何もしちゃいけない気がしてくる。でもそれって、理由があるとすれば「僕が恵まれてた環境で育った人間だから」で、それは僕の努力や選択で変えようのない部分なわけで。僕は恵まれてるが故に、自分の最もやりたいことを許されてないっていう訳分かんない状態にあるのだろうか。僕は「恵まれてる」ことが、「恵まれてない」のだろうか。 でも、それに反発する僕もいて。僕みたいな、世間とのズレ?が特にないような、むしろ世間一般より良い生活をしているって言えるくらいの人間も面白い物語を持ち得るって、僕自身が証明したいって思うこともあって。究極的には、自分が許されてるって、思いたくて。創作が、続けたくて。 だから最近は、安易に「変わった環境の人」を作りたくないなあと思っている。例えばニルギは生まれつき脚が悪いっていう、自分ではどうにもしようのないものをもって生まれた人間の代表なんだけど、最近はそういう設定を安易につけることに抵抗を感じているというか。もちろん今までに作った人物でそういう設定がついてる人は山ほどいるからそれを覆すつもりはないし、それはそれで大好きだから別に良いんだけど。でも僕の中で新たな試みとして、恵まれてる、あるいは平凡な人間であっても、物語の主人公になれるってことを証明したい。 ぐだってたら何言いたかったのかよく分かんなくなったからここまで。ただの愚痴にしかなってない気がするけど。ではまた。
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t-t-took · 9 years ago
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二人の②
思った以上に一つ前の投稿のやつじゃ二人の関係性分からなさそうだったのでその2を放出。こっちの方が昔に書いてたしちょっとずつちょっとずつ推敲してたんで、実はかなり気に入ってるSSの部類。ただし超クライマックスがいきなり容赦なく始まる感じ。あーでもそうでもないかな?
   
   キャビィは寝台に腰掛けると、膝に乗せた分厚い本を開いた。頁は、何処でもいい――自分が書いた処でなければ。
 落とした視線の先に並んだ美しい文字を、彼はぼんやりと眺めた。書かれている内容になど、興味はない。ただこの頁をずっと、何も考えることなく、只管に眺めていたい。瞼の裏に深く刻んで、焼き付けて、片時も離れていたくない。ずっとずっと、いつまでも、己が息絶えるその日まで。
 指先でそっとなぞる文字列に――それは大きさも形も、キャビィにとっては完璧としか言い様がなかった――、息を呑む。何度も何度も朝から晩まで眺め続けている筈なのに、その二つの目を飽きさせない何かがそこにはあったのだ。
 しかしそれほどに美しい多くの頁にも、残されていたのは文字だけではなかった。
 数行おきに現れる震えた線、あちこちに滴ったインクの大きな汚点。折れたペン先の刺さって凹んだ跡、そして不自然に滲んで掠れた文字。完璧である筈の頁に散らばったそれらが、どうしようもない違和感を醸し出す。
 物語を読むともなくぱらぱらと頁をめくっていたキャビィは、一際汚れの酷い頁でふと手を止めた。少し前の完璧さからは考えられない程に乱れ切った文字列をそっと撫でて、目を閉じる。そうするだけで、あのときの自分にすっかり戻れる様な気がしたから。もうこの場所では二度と逢えない友人に、もう一度逢えるような気がしたから。
   
  ◆◇◆◇◆◇◆
   
暖炉の焔が、二人の顔を照らしている。キャビィはナーシュを膝の上に乗せて、安楽椅子をゆっくりと揺らした。ナーシュが、そうしてくれと言ったから。それが、もう書くことも、歩くことも、食べることも出来なくなった友人の、ささやかなお願いだったから。
「キャビィ」
掠れ切って息だけになったような声で、腕の中のナーシュが己の名を呼ぶ。二人の顔と顔が、近付いた。
「どうした」
口から零れるのは、いつも気のない言葉だけ。もっと、労ってやらなきゃ。もっと、守ってやらなきゃ。もっと、伝えてやらなきゃ。分かってるんだ、分かりすぎるくらい分かってるんだーーでも、でも、どうしても言えない。俺は、いつだって何もできやしない。 膝の上に乗せた友人が、ひゅうひゅうと喉を鳴らして息をする。焔は明々と燃えているのに、手を触れた頬は氷よりも冷たく感じられた。
「川が、見える」
「川?」
そう、とナーシュが頷く。川など、この部屋の中に流れているわけがない。しかしナーシュは何度も、何度もその言葉を繰り返した。川が見える、と。
「俺には、見えないよ」
嘘を言っても直ぐ暴露るだけだと、正直にそう呟く。それを聞いたナーシュがゆっくりとキャビィを見つめたその瞬間、苦しみに満ちた顔を無理矢理歪めて浮かべた笑みに、キャビィの心臓がどきりと跳ねた。
これなんだーーいつも鼓動が早くなって、思い出すだけでも胸が締め付けられるような気持ちになるのは、この笑顔なんだ。どうして、そんな顔をする?痛いなら痛いと言えばいいじゃないか。疲れたなら疲れた顔を、苦しいなら苦しい顔を、すればいいじゃないか。なのにどうして、どうしてお前はいつも、何も言おうとしない?どうして俺に、いつだって笑顔を向けようとする……?
「見えなくたって、構わない」
そう言うと、ナーシュは凍てついた右手でキャビィの手を掴んだのだ。なけなしの力を振り絞って、ぎゅっと、強く。
「ねぇ、キャビィ、目を閉じて……」
ああ、川が見える。
そこには、確かに川があった。その淵に、彼は友人を抱いて座っていた。
言われる侭にしっかりと目を閉じた筈なのに、キャビィには目の前を流れる細く浅い川の様子がよく見えた。ナーシュが見せてくれたのだと、心の隅で彼は考えた。
「キャビィ」
腕の中の友人が、己を見上げて呼び掛ける。彼には心なしか、さっきよりもはっきりした声になったような気がした。
「一つだけ、お願いしてもいいですか」
無言で、キャビィは頷いた。一つじゃなくてもいい。お願いなんて、いくらでも聞いてやるのにーーでも心の中では、彼も気付いていた。このお願いが、きっとナーシュのこの世で最後のお願いなのだということに。
ナーシュはそれを見ると、また莞爾と笑って続けた。
「キャビィ、約束してください」
「約束?」
「そう、約束。僕はもう、この世に在ることは出来ません……貴方と一緒にいることも、叶わない……だけど」
言い淀んだナーシュの瞳が、不意に潤んだ。
「だけど……約束して。もう一度、僕に会いに来てくれると。もう一度だけで構わない、だから僕に、僕に会いに来て下さい。ずっと、待っていますから。だからどうか、どうか僕のことを、忘れないで。街外れの小さな店で、曲がった手で、ただ只管に文字を書いたナーシュのことを。貴方と話し、笑い、そして貴方を心から愛したナーシュのことを、どうか忘れないで」
ナーシュの大きな瞳から雫が零れ落ちるのを、彼は見た。いつも笑顔だった表情がくしゃくしゃに崩れるのを、ただ見つめた。次から次へと絶え間無く落ちる涙が、彼を抱いたキャビィの腕を伝う。
そのときふと、彼は気付いたのだ。友人の哀しみの涙を見るのは、初めてだということに。耐え難い痛みに歪む顔や、混乱して訳もなく流す涙なら、見たことがある。でも今の涙は、混じり気のない哀しみの涙だったのだ。その泣き顔を、キャビィは限りなく愛おしいと思った。
「キャビィ……僕は、手も心も弱くて醜い、出来損ないです」
そんなことない、という言葉も言えず、キャビィはじっと動けずにいた。突然何を言う、そんなことないんだ。出来損ないなんかじゃ、ないんだ……。
「僕のこの手が幾千の文字を綴ったって、それは僕���お話じゃない。どれだけの人がその本を開いたって、 彼らが読むのはそこにある物語であって、文字そのものじゃない。その物語を綴ったのは僕だけれど、僕の存在は彼らには見えない。人の記憶にいつまでも残るのは物語であって、そこにあった文字じゃない。おはなしを書く、というのがおはなしを作るということと同じ意味をもつならば、僕がやっていたことは何なのでしょう」
ナーシュはゆっくりと、しかし確かな声で言った。
「僕の"書く"という行為には、意味がない。意味のないものは、人の記憶に残らない。だから、怖いんです。僕は……貴方の中の僕が消えてしまうのが、怖い」
消えたりなんかしない。意味がないなんて、あり得ない。怖がらなくたっていいんだ、俺の中のお前は、消えたりなんかしないから。ーーただ、今迄一度も、そう言えなかっただけで……。
「怖いんです……僕が綴ったおはなしを読む人たちと同じように、貴方にとっての僕も、何の意味も持たない存在なんじゃないかって。貴方は僕を見ていたんじゃなくて、僕を透かした先にある別の何かを見ていたんじゃないかって。明日には、忘れられてしまうんじゃないかって。そう思うと、胸が抉られる様に痛むんです。この手の何倍も激しく、痛むんです。おかしいですね……貴方にとって、僕は何でもないというのに」
そんなことはない。俺はいつだって、お前を見ていた。お前の手を、お前の綴る文字を見ていた。お前の手も、その手で書いた文字も、お前自身のことも、俺は忘れたりなんかしない。
ーーならば、それを伝えなければ。
「約束、守るから」
「えっ?」
「約束、絶対に守るから。必ず、会いに行く。お前のこと、忘れたりなんかしない。絶対に、絶対にもう一度会いに行く……だって、」
 キャビィは、深く息を吸い込んだ。言わなきゃ。今、言わなきゃ。
「好きだから。ナーシュ、愛してる。ずっとずっといつまでも、お前を、お前だけを愛してるから」
これ以上ないくらい強く、痩せた身体を抱き締める。愛してるんだ。大好きなんだ。片時も離れていたくないんだ。離れ離れになるなんて、考えられないんだ。本当は、本当は、もう会えないなんて耐えられないんだ……。
「ありがとう、キャビィ」
耳元で、ナーシュが囁く。
「僕も、貴方のこと、きっと待っていますから。忘れないで、ずっとずっと、いつまでも……」
川の流れが強くなり、抱き締めていた筈のナーシュはいつの間にか冷たく、硬くなっていた。最後の涙が頬を転がり落ちて、川の水に溶ける。
“キャビィ、もう、ゆかせて”
そんな声が聞こえた気がして、キャビィは抱えた友人の亡骸を浅い水底へ横たえた。流れがその小さな身体を浚ってゆくのを、彼はいつまでも、いつまでも眺めていた。
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t-t-took · 9 years ago
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二人の
関係性がわかる文章をupしたかったのに……ない……つらい……。 「その世界の終りにて」のメインの二人・ナーシュとキャビィ。めっちゃ遂行途中なんで体裁も整ってないしいつ消えるかわかんないし次に世に出たときにはめっちゃ変わってるかもしれないけど悪しからず。題名すらない短文。
 その日もキャビィはナーシュの作業場へ赴き、彼が仕事をする様子を頬杖をついて眺めていた。ここのところナーシュは腕が少々痛もうが冷えようがお構いなしに作業を続けようとするので、見張りが必要だったーー少なくともキャビィ自身は、それが自分がここに来る理由なのだと、己に何度となく言い聞かせていた。  作業を一旦始めると、ナーシュは途中でやめることをひどく嫌った。ペンの冷たさが手を余計に悴ませるらしく、何度も指に息を吐きかけては次の文字を書いてゆく。休めと言うだけでは絶対に従わないことは分かっているから、キャビィはいつも頃合いを見計らってはその手からペンを取り上げ、ごねるナーシュを座った椅子ごと暖炉の前に連れて行くのだった。  だからその時もキャビィは、一心不乱に書き続けている友人の様子を、横目で伺っていたのだ。 ーーそろそろか? そう思って声を掛けようとした、まさにその時だった。ナーシュの動きが、ぴたりと止まったのは。 萎縮した右手に器用に差し込まれていたペンが、音を立てて滑り落ちる。インクが書きかけの紙に飛び散り、じわりと広がる。そこにできた濃い色の染みに、なぜか胸がざわついた。よくないことが、起こっている気がした。 「どうした」 尋ねたキャビィの声に、ナーシュは答えなかった。彼はただ呆然と、ペンを失った自分の手を見つめていた。そしてただ一言、ぽつりと呟いたのだ。 「書けない」 自分の発したその言葉でようやく状況を理解したのか、次の瞬間ナーシュはがたがたと震えだした。眼は見開かれ、口からはよく分からない声が漏れた。顔がみるみるうちに歪んで、血の気が引いていった。 「ナーシュ、落ち着け。どうした」 椅子の前に膝をつき、キャビィが問う。震える肩を掴んだら、ナーシュの身体はずるりとキャビィの腕の中に滑り落ちた。自由の利く方の手でキャビィの胸に縋ったナーシュは、尚も震えていた。 「キャビィ、もう書けない……何も感じない、分からない……書けない」 譫言のようにそう口走っているナーシュの右手は、不自然にだらりと垂れ下がっていた。 「どうしよう、キャビィ、キャビィ」 まるで親を求める雛鳥のように、ナーシュは友の名を激しく呼んだ。眼と鼻の先に彼はいるのに、それが分からないようだった。これまで見たこともないようなナーシュの変わりように、キャビィは思わず竦んだ。呼びかけに答えても答えなくても何も変わらない気がして、彼は口を噤んだままでナーシュの頭や背中を撫でさすった。 「キャビィ、キャビィ!」 見開かれた瞳から、大粒の涙が溢れる。それを皮切りに、ナーシュはついに声をあげて泣き出した。キャビィは何も出来ないまま、ただ己の名を呼ぶ友を抱き締めた。
「動かせないか」  問い掛けに眼を伏せて、ナーシュは暖炉の前で唇をぎゅっと噛んだ。安楽椅子の肘掛けからずり落ちたままの右腕を、椅子の前に膝をついたキャビィがそっと取る。 「俺が握ってるの、分からないか」 「……ええ」 その消え入りそうな呟きにキャビィは頷くと、右腕を友人の膝の上に載せてやった。 「それにしても……見苦しい姿をお見せしてしまいました。子どもの様に、泣き喚いてしまうなんてお恥ずかしい。忘れてください」 自由な左の手で、ナーシュは右腕を撫でた。その仕草に、ほんの少しぎこちなさが見える。 「気にするな」
 その日からナーシュは、明らかに窶れていった。キャビィが訪ねたときにはいつも、仕事場の窓から空を眺めていた。その顔には何の表情もなくて、ただ店に入ってきたキャビィを認めるそのときは、いつもと同じように笑むのだった。 力の入らない右腕は、触れるたびに冷えていった。食事も、ほとんど摂らなくなった。キャビィが手を取ってやらなければ、自分で歩いて動くこともなくなった。彼は自分で気をつけていないと、或いは友人が声をかけてやらないと、心をどこかに置き忘れてしまうようだった。
「キャビィ、握るなら、こっちの手に���てください」 「どうして」 「だってそっちじゃ、握ってもらったって分からないんだもの」 そう言って、あはは、とナーシュは乾いた声で笑った。キャビィは何も言えなくて、ただ曖昧に頷いた。
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t-t-took · 9 years ago
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tumblr
ステンドグラス風イラスト、意外に一部の方に好評頂いてまさかまさかの第5弾。リク頂いてて、今回はノクトヴィローナのヨグくんです。 デジタルの過程は使ってるアプリの関係でビデオ書き出しできるんですけど、それをどこかに出してみたくてたまらなくて!大した過程でもないし途中時々遊んでるのモロバレなんですけど放出。うまくいくのかな。
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t-t-took · 9 years ago
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以前にも
ここだったかは忘れたけどどっかでは言ったことのあるようなないような話。深夜のノリでつらつら。
僕が書いてるというか、書きたいというかなお話の世界は必ずしも全部が同じ世界かどうか分からないのですが、でも前提として共有している部分はないわけではなくて。そのひとつが、「境界の少しだけ曖昧な世界」っていうものかなと思っています。
僕の今生きている現実には境目がいっぱいあって、その中でも僕が普段気にしているのが性別の境だったり、生き物とそうでないものの境だったり、生と死の境だったりするわけなのですが(国境とか、境目ってもっと大事なものが色々あるだろって感じだけど、僕が気にしてるものだけピックアップできるのが創作の良いところですからね!)、そういうのが少しだけ薄らぐ世界が僕のお話の世界かなって思ってるわけです。既によく分かんない感じ。
例えば、僕がお話の登場人物の性別として、中性を作ってるのはそういう理由だったり。本当ははっきり「中性」って言っちゃうと今度は女性と中性、中性と男性の間に境ができちゃうので実は「中性」っていう言葉もあんまり好きじゃないんですけどね。僕は、わりと性別ってグラデーションみたいなものかなって思ってる人間なので。男性と女性をそれぞれ端に置いた定規があるとして、その中で自分はどの辺りかを考える、みたいな。30cmものさしだったとしたら、0cm部分が男性で、30cm部分が女性で、自分はその30cmの間のどこにいるかなっていうのを考える感じ。しかもそれも日によるっていうか、毎日自分が同じ長さの部分にいるとは限らないと思うんですよね。昨日は29cmくらいのとこにいてすごく女子の気分だったけど、今日は12cmくらいでなんとなく男子っぽい気分だなみたいな。僕はわりとそういう感じ。この説明伝わってるのかな?この考え方って別に僕のオリジナルじゃなくて僕も以前とあるとこで聞いた話で、完全にそこからの受け売りなんですけど、すごく個人的にしっくりきたのでそのまま僕の世界に採用しちゃってる感じなのです。まあ要するに、僕の世界の住人たちは自分の性別をそんな風に捉えてくれてたらいいな、って思うわけです。自分を「男性」「女性」「中性」みたいにはっきり分けようという意思はあんまりないのかなって。さらに言うと、多分さっきの性別は日替わりみたいなのも、振れ幅が大きい人とあんまり大きくない人がいるんじゃないかなって思ってます。僕は一応、その振れ幅の大きい人(0cm〜30cmまで自由に動いちゃう人)や、振れ幅の位置が中心に近い人(15cm辺りをうろうろしてる人)を「中性」っていう風に便宜上位置付けているつもり。逆に、振れ幅は大きいけどわりと0cm〜15cm(定規的にいうと左半分)に寄ってることが多い人や、振れ幅がそんなに大きくなくてだいたい10cmくらいまでを常にうろうろしてる人を「男性」、それが右半分だと「女性」っていう風に、あくまでも便宜上ですが表記しているわけです。うーん、やっぱりこういう説明難しい。図が要りますね。
で、まあそれに関連して、僕はあんまり三人称に「彼女」っていうのを使いたくないのです。「女」ってつくと女の子感をすごい出しちゃう気がして……。端から見ればかなり神経質っていうか、ぶっちゃけめんどくせーよっていう感じでしょうが、あくまでも僕の世界における、どうでもいい拘り。だから、女子っぽい見た目の(と僕が思ってる)子でも、わざと三人称に「彼」を使うことがあるのです。彼っていうとまあ普通は男性の三人称なのは分かるんだけど、あくまでも僕の創作の中では、三人称の総称的な感じって思ってもらいたいのです。絶対難しいけど。
なんか思ったより長くなったので、とりあえず性別の境界の話しかしてないけどここまででいいや。生き物かそうじゃないかとか、またその辺の話もこんな感じで無駄に長文で説明したいですね。そんな感じです。ではでは。
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t-t-took · 9 years ago
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庭番と隻眼の少年
クウィンシーとオリヴァーのお話。出会いのお話と言っていいのかな?
回想を挟んだお話って難しいんですよね。行間の開け方がおかしかったら容赦なく指摘してもらえるとうれしいです。
【庭番と隻眼の少年】
「クウィンシー!」  甲高い声が、寝ぼけた耳に突き刺さる。名前の主は長椅子からのそりと身を起こし、眼を擦った。 「クウィンシー、脱いだものを散らかすのはやめてって言ったでしょう。どうして貴方はいつもいつも!」 早口にそう捲し立ててながら彼の周囲をばたばたと走り回っているのは、ひどく小柄な少年だった。その腕の中で、部屋のあちこちからかき集めたであろう服が、ちょっとした山になっている。 「オリヴァーお前、もうちょっと大人しくだな……だいたい、わざわざ俺の部屋まで来て片付けする必要ないだろう」 くしゃくしゃになった頭を掻きながらぼやくクウィンシーを、オリヴァーと呼ばれた少年が睨めつけた。その眼光の鋭さに、彼の数倍は年を取っているはずのクウィンシーですら口籠る。 「貴方にあれこれ言う権利はありません!こんな部屋に住まうなどというのは、たとえ使用人であろうと、ラーデンギャロア家の一員を名乗る者として有るまじき愚行ですよ。それに言っておきますが、貴方の部屋を片付けろと僕に仰ったのはご主人様であって、僕の意志ではありません」 「ううん、よく喋るようになったな……お前を拾った頃は、まさかこんなに貶される日が来ようとは」 「ちょっと、話を聞いてください!」 少年が更に声を荒げる。しかしそれと同時に、彼は自分の右眼にさっと手を遣った。正確には右眼にではなく、そこを覆い隠す大きな眼帯の上に、だが。ところが彼に背を向けていたクウィンシーには、その姿は見えていなかった。 「こうなるって分かってりゃ、拾って来なかったかも知れねえってのに」 まずいと思った時には、もう遅かった。どさりと音がして振り返れば、服の山を取り落とした少年の姿があった。 「わ、悪い、言い過ぎた」 慌てて取り繕う言葉など、少年の耳には入っていなかった。顔は見る間に血の気を失って蒼ざめ、肩はがくがくと震え始めた。身体の力が、抜けていく。彼は呆気にとられているクウィンシーの目の前で顔を覆い、崩れるように膝を折った。口から漏れたのは、あの日と同じ台詞だった。 「いや、帰さないで……あそこは僕の家じゃないの……」
***
 その日もラーデンギャロア邸の庭番は、昼間から下町の酒場に入り浸っていた。入り浸っていると言っても、さほど飲むわけではない。街の名家の庭番という自分にはもったいないくらいの職を、そうやすやすと手放すつもりはなかったからだ。そもそも自分にどうしてこの職が回って来たのかなんて覚えていないが、気付いたときには庭番として、あの邸に収まっていた。とはいえどうも最近は、仕事にやり甲斐も見出せない。話し相手も、いない。日に日に募る退屈をどうにか紛らそうと街へ出るようになってから、もうかなりの月日が経っていた。
「おい、外が騒がしくないか?」  誰に問うでもなく、クウィンシーはそう呟いた。相席の相手が確かに、と頷く。下町の酒場前が騒がしいなんて日常茶飯事だが、今日は少しいつもと違う気がした。激しい怒号が聞こえる。どうも、喧嘩らしい――そう分かる��否や、野次馬根性が頭をもたげる。それは相席相手も同じだったらしく、クウィンシーは彼の後ろについて酒場を出た。 外にはもう小山の如く人だかりができていて、一体何が起きているのかはよく見えない。とは言え、このまま引き下がるのも些か癪な気がする。もう一度クウィンシーが人ごみの中心を覗き込もうとしたのと、人混みが一際大きな悲鳴を上げたのは、ほぼ同時だった。そして喧噪のど真ん中から紙切れのように吹き飛ばされてきたものを見て、クウィンシーは絶句した。
くしゃくしゃのぼろ切れさながら道の端に転がった少年の許に駆け寄って、抱き上げる。彼はぎくりと身を強張らせたが、抗おうとはしなかった。抗うだけの力など残っていなかったと言う���が、正しかったのかもしれないが。 「大丈夫か」 薄汚れた少年は頷いたが、表情は窺い知れなかった――両の掌で、ひどく殴られたらしい顔を押さえていたからだ。顔を覆う指も、腕も脚も何処も彼処も、黒や青の痣になっていた。クウィンシーは身動きできなくなっている少年を抱えたまま、一目散にその場を離れた。一瞬でも早くここを去らねばこの子どもの生命が危ないことくらい、火を見るよりも明らかだった。 「……まさか喧嘩の相手が子どもだとは思わなかった」  クウィンシーの様子に気付いて、誰かが慌てて辻馬車を呼び止める。運良く誰も乗っていなかったそこに飛び乗り、とりあえずラーデンギャロア邸と行き先を告げた。抱いていた少年を、膝の上に乗せてやる。痛む顔、特に右眼辺りを押さえる手は、馬車が揺れるたびに強くなるようだった。 「おい、もうちょっと静かに走れないのか?怪我人なんだぞ」 そんな無茶苦茶な注文があるかと御者に悪態を突かれ、舌打ちする。少年が口を開いたのは、その時だった。 「あ、あの」 「どうした。痛むか」 彼は首を横に振った。痛まない訳がない癖に――呆れるほど頑ななその様子に、思わず溜め息を吐く。 「じゃあ、何だ」 呻くようにそう問えば、少年は怯んだように俯き、呟いた。 「僕を、か、帰さないで」 「えっ?」 「あ、あそこには、……もう、戻らない」 面食らっているクウィンシーなどお構いなしに、少年は声を絞り出した。それだけで酷く目が痛むらしく、一言発するたびに顔が激しく歪む。不恰好な手当てが気になるのか彼はしきりに目の上を手で摩っていたが、その腕もまだあちこちが血だらけのままだった。怪我が多すぎて、とっさに全て手当てすることなどできなかったのだ。 「戻らない……絶対そうするって……き、決めて、決めてた、だから」 「お前喋るな、痛いんだろ」 「い、痛くなんか……っ」 そう反論しつつ、少年は顔を背けた。しかし血と泥に汚れた手がぎゅっとクウィンシーの袖を掴んだのを、彼は見逃しはしなかった。 「だから、……僕を、か、帰さない、で」 「なんだって?」 「もうあ、あそこには、帰りたくない……ぼ、僕はどうなろうと、あそこには、絶対、絶対、帰らな……痛っ……だからもう、絶対……うっ」 痛みで頭が湧いているのか何度も同じことを譫言のように繰り返しながらも、少年は堪え切れなくなってきたようだった。言葉は更に途切れがちになり、大きく何度も息をする肩は震えていた。その様子があまりにも憐れで、哀しくて、クウィンシーは思わず口を滑らせたのだ。 「分かった分かった、あそこには帰さねえから、安心しろ。大丈夫だから、もう喋るな」 「……本当?」 顔を上げ、掠れ切った声で少年が囁いた。声は微かでも、こちらを見上げたその目には、ありったけの期待が込められていた。迂闊な台詞を口にしたことをクウィンシーは即座に後悔したが、今ここで撤回するわけにもいかない。 「本当だって。わざわざ嘘ついたりしねえよ。だから頼むから黙れ」 「あ、ありが、ありがと、……っ!」 律儀に礼を言おうとした少年はその途端一際激しく呻き声を上げ、ついに耐えられなくなってクウィンシーの胸に頭を預けた。今まではなんとか、彼の膝の上で所在無さげに背中を丸めていたのだが。 「……ううっ」 その後は、それまでずっと気丈に喋っていたのが嘘のように、少年は時折痛みに喘ぐ以外に声を出さなくなった。食いしばった歯の間から、細い呻きが漏れる。寒くもないのにがたがたと震える肩に、クウィンシーは出来るだけそっと腕を回した。 「ああ……見てらんねえ」
 庭番が少年の名を知ったのは、それから何日も経った後だった。少年はその間ずっと、庭番の部屋で暮らしていた。 「そう言えばお前、名前は」 少し声を張ってはっきり言ったのは、少年の両眼が分厚い包帯に覆われていたからだった。声の出所がよく分からなかったらしく、きょろきょろしている少年の隣に座ってその肩に触れる。 「ここにいる。それでええと……そうだ名前、教えてくれ。何て呼んだらいい」 少年は躊躇う素振りを見せたが、やがておずおずと口を開いた。 「お、オリヴァー……」 「オリヴァーか。俺はクウィンシー。ここにいるのは基本的に俺だけだ。何かあれば俺を呼べ」 「ええと……」 「安心しろ、取って食いやしねえ。お前を殴ったりもしねえし、家に帰れとも言わねえよ。まずは傷を治せ」 オリヴァーと名乗った少年はその言葉に、うんと一つ頷いた。それが彼がこの場所で示した、最初の意思だった。
***
 しばらくの後、オリヴァーはクウィンシーの膝の上に小さく収まっていた。もう震えはほとんど止まっていたけれど、手は冷たいまま、顔は蒼いままだった。 「悪かったな。俺が、言い過ぎたな」 「いいんです……もう、大丈夫です。僕こそすみません、取り乱してしまって」 そう言って膝から降りようとするオリヴァーを、クウィンシーは抱き留めて制した。些か不思議そうな顔で、少年が振り向いてクウィンシーを見上げる。 「俺は時々、いやいつも忘れてるけど……お前はまだ、子どもなんだよな」 そう言って、少年の頭を撫でてやる。弾みで右眼から眼帯がずれて外れ、首元へと落ちた。潰れて濁った眼と、紅や黒のインクをぶちまけたような痣の跡が、露わになる。 「子どもなのに、こんなにたくさん怪我なんかして、怖い思いをしたんだな」 傷跡に、出来る限りそっと指を伸ばす。少年は首を竦めたが、拒みはしなかった。ざらりとした感触が、指先に残る。ここに触れるのは、初めて会ったあの頃以来かもしれない。あのときこの子は身も心もぼろぼろで、これ以上ないほどに傷つけられていて――。 「……僕は、ここにいてもいいんでしょうか」 オリヴァーが不意に、そう呟いた。 「ここにいるのは、ただの僕の我侭で……僕は醜くて、仕事だって、何にも出来やしなくって……ああ、せめて、せめてこの眼が見えていたなら……こんな怪我を、しなかったなら……!」 言葉と共に、大粒の雫が左眼から零れ落ちる。顔を歪めてしゃくり上げ始めた少年を、クウィンシーは見据えた。 「でもなあオリヴァー、もしもお前がその傷を負わなかったならな、俺はお前の我侭を聞いて、連れて帰るなんて真似はしなかっただろうさ」 もう一度、指を髪の中に潜り込ませる。何度も、何度も頭を撫でて、少年が落ち着くのを待った。他に己ができることなんて、何も思い浮かばなかった。 「もちろん怪我なんかはないに越したことはねえけど……でもな、俺はこれがなかったら、お前に出逢わなかった。それにな、眼なんかどうだっていいんだよ」 そう告げれば、涙に濡れた瞳がもう一度、此方を見上げる。向けられた真剣な視線が少しくすぐったくて半ば自棄になって、クウィンシーは喋り続けた。 「お前はなあ、まだ子どもなんだよ。仕事なんて出来なくったって当たり前なんだ。今できてたら、今後の伸び代がねえだろうが。それにな、今のお前だって、好いて下すってる方がいるじゃねえか」 「好いて下さる、方……?」 「そうだよ。奥方様に、綺麗なお顔って言って頂いたんだろ?それに、メリウェザー様はいつもお前を傍に置きたがって離さねえし。十分好かれてるじゃねえか。お前は好かれてるんだから、ここにいていいんだ」 ここにいていい、それが言いたかっただけなのに、妙に回りくどい言い方をしてしまった気がする。でも、オリヴァーの顔に浮かんでいた痛いほどの苦しみは、確かに和らいでいるように見えた。 「……そうですね。そう思うことにします。傷があって、眼が見えなくても、大丈夫って思うことにします」 少年は袖口で涙を強く拭い、今度こそ立ち上がった。
「クウィンシーは、僕のこと好きですか」  部屋の片づけを一通り済ませ、クウィンシーの隣に腰かけたオリヴァーはふと、そう問うた。さっき外れた眼帯がまだ、首元に引っかかっている。いつもの、気の毒なほど傷跡が見えるのを気にする少年をよく知っているクウィンシーにとっては何だか不思議だったが、言うのはやめておいた。 「俺は、どうだっていいだろうよ」 生返事をすれば強い視線で、ぐいとこちらを見つめてくる。 「よくないです。僕をここに連れてきてくれたのは、クウィンシーだから。僕の世界を変えてくれたのは、貴方だから……だから、たとえ誰に好かれて、求められていようとも、僕は貴方に好かれていないと、きっとどうしていいかわからなくなるでしょう」 言いながら、またオリヴァーの顔が曇る。恐怖に我を忘れたり、泣いたり、また元気になったり、そう思えばまた落ち込んだり……本当に忙しい奴だなと、クウィンシーは心の中で苦笑する。 「……ったく、面倒な奴だな。嫌いだったら、こんなに世話焼いて、あれこれ言ったりしねえよ」 まあ、世話を焼かれているのはこっちの方かもしれねえがな……そんな独り言が漏れる。一方のオリヴァーは、尚も納得がいかない様子で首を傾げた。 「どういうことですか?」 その台詞に、軽く溜息を吐く。 ――ああ、また忘れてたな。 元々頭の悪い子ではないことは、知っている。ただ、子どもなのだ。子どもはどんなに饒舌で、全て分かっているようで、何もかも察しているようでいても、思いもよらぬことを理解できずにいることがある。仕方ねえな、と彼はもう一度口を開いた。 「……好きだよ、オリヴァー。俺も、お前のことを好いてる。かわいいと思ってる……この屋敷の、誰よりもな」 元々、面倒くさがりな性分だ。好いていなかったら、面倒なんて見てやらな��った。こうやって馬鹿みたいに、このちっぽけな少年の心を鎮めるのに躍起になったりなんかしなかった。自分でも可笑しいくらい、この子のことを気にかけている。そしてそれが――こんなにもこの子に、目をかけているのが――自分だけであればいいと、心のどこかで思っている……。 「だから、大丈夫だ。お前は、何しててもいい。ここにいる限りはな」 その台詞を聞いて、オリヴァーは頭をクウィンシーの肩に凭せ掛けた。 「ああ、貴方がいなかったら、僕の心はとうに潰れていたでしょう……この眼と、同じように」 そうして眼を閉じて、ゆっくりと息を吐き出す。 「ありがとう、クウィンシー」
お終い。
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t-t-took · 9 years ago
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掟に
100の質問。相変わらず微妙に改変箇所あり。 第4弾にして初の女の子キャラ。口調を考えるのが楽しいですね。ちょいちょいイラッとする発言をしてくると思うのでその辺ご注意。相変わらずのネタバレも若干。ではどうぞ。
創作小説キャラクターに100の質問
掟【機械人形と碧の双眸】
1. 名前とその由来は? あだ名(通り名)があるなら、そちらも教えてください。
私の名前は掟。おきてと読むのよ、どうぞよろしくね。
由来があるかどうかは定かではないけれど、私と対になるお人形は「契」というから、名前もきっと対になっているのでしょうね。それにしても、あの子が契で私が掟って、うまい名付けだと思うわ。 2. 年齢を教えてください。
お人形に年齢なんてあるのかしら?私には分からないわ、年を取っている感覚もないんだもの。
3. 生年月日はいつですか?(判っている範囲で)
これもお人形には難しいわね?お人形としてできた日をいうのか、それとも今のようにお話したり、動いたりできるようになった日かしら?それともあの日……私が契を連れて、初めてお家を出た日かしら……?
4. あなたの国籍、民族(または種族)は?
さあね。お人形ってそういうのないでしょ、きっと。 5. 今、どこに住んでいますか?その町(市、村etc.)に対してあなたはどんな印象を持っていますか?
今は、大きなお屋敷に住んでいるわ。トレグノという青年が一人で住んでいたの、私たちが来るまではね。
家はずいぶん古くて、街はずれのの高台に建ってるの。この街には川がたくさん流れていて、まるで街全体が水の上に浮いているみたいなのよ。川沿いは舟も多くてとても賑やかだけど、この辺りは静かね。嫌いじゃないわ。 6. 出身地はどこですか?いつまでそこにいましたか?その町(市、村etc.)に対してあなたはどんな印象を持っていますか?
ここからは、とても遠いところ……ずいぶん長く、そこにいたと思うわ。そこも静かで、小さくて、素敵なお家だったわね。もう、帰ることはないでしょうけど。 7. あなたの髪の毛、瞳、肌は、それぞれ何色ですか?
髪は、艶のある茶。契に比べると、少し濃いわ。瞳は深い碧。これは、あの子とそっくり同じ。肌は白いわ。ちゃんとお手入れしてるのよ。
8. あなたの外見上の特徴を体格、顔つき等の面から五つ前後挙げてください。(具体例:身長は並、顎がしゃくれてる、等。)
身長は、あまり高いほうではないわ。小柄って言うほどではないと思うのだけれど。
眼はね、切れ長かしら。契は丸いのだけど、私は彼ほどまんまるではないわね。
顔の血色はとてもいいの、何も塗らなくたって頰も唇もいつも薔薇色よ。
足が小さいのは嫌いじゃないけれど、靴を選ぶ時にいつも少し選択肢が減ってしまうのが残念だわ。
鼻は、もう少し高くても良かったのにと思うことがあるわね。私の主人にそう言ってあげるべきだったわ!
9. あなたの外見上以外の特徴を身体能力、持病等の面から五つ前後挙げてください。(具体例:右利き、近眼、頭痛持ち、等。)
こう見えてもね、重たいものを運ぶのは得意なのよ。筋力があるってことかしら、契をいつも鞄に入れて運んでたからね、きっと。
お喋りは好きだし得意よ、いい相手がいるとなお良しね。
新しいことをするのが好きなの、契は飽きっぽいとか言うけれど。
手先は器用なほうよ。じゃなきゃあの子を組み上げられないもの。
10. あなたが普段喋っているのは、どんな言語ですか?標準語ですか、地方方言ですか?仲間内だけで通じる学生言葉や業界用語のような言葉はよく使いますか?公私等で使い分けているならば、それぞれどう使い分けていますか?
標準語でしょうね、あんまり気にしたことはないけれど。改まった席では勿論より綺麗な言葉を使うけど、それ以外では特に変化はないわね。
11. 字は書けますか?達筆ですか?癖字ですか?字を書くのによく使う、筆記用具は何ですか?
書けるわよ、主人が教えてくれたの。癖はひどくはないと思うわ。書く物にこだわりはないけれど……でも、主人に貰った万年筆はずっと持っているわね。 12. 職業は何ですか?副業は持っていますか?(学生なら、どこの学校に行って、何を勉強していますか?アルバイトはしていますか?)
ないわね。何なら、この屋敷の女主人を名乗ってあげてもいいのよ?だってあの子ったら、頼りないったらありゃしないわ!契が一緒にいてあげてるから、ようやっと生きてるようなものよ。
13. 職場の(学校の)人間関係には恵まれていますか?恵まれていませんか?職場(学校)の誰が原因でそう感じるのだと思いますか?
人間関係は、そうねえ、恵まれているとは言えないかも。話がまともにできるのは契だけよ、トレグノは私のこと苦手みたいだし。まあ、それをからかうのもまた一興なのだけどね、うふふ!……それにしても、契はあの子のどこがいいのか、私にはさっぱりだわ。 14. 今の仕事(学校)は自分に合っていると思いますか?どんな時にそれを感じますか?
合っているとは思いたくないわね、こんな陰気なお屋敷なんて。もっと明るくて華やかな場所が、私は好きだわ。でもトレグノも出会った頃よりは身体の具合が良くなったみたいだし、前よりはましかしらね、ここの空気も。
15. 今、誰と暮らしていますか?家族構成を教えてください。
私の対のお人形の契と、このお屋敷の持ち主のトレグノ。その二人だけよ。トレグノにも昔は家族がいたみたいだけれど、今はなぜか彼一人ね。どこに行ってしまったのか気になるけど、あの子はそのことを話したがらないわ。
16. 今住んでいる家(部屋、宿)の様子を差し支えない程度に教えてください。
かなり荒れてるし、掃除されてないから埃っぽいわよ。これでも結構お掃除したけれど、何しろ広いし大変だわ。特にひどいのはお庭。雑草だらけなんてものじゃないわよ、どこから手をつけたらいいのかさっぱりだもの!
17. 家の自室、仕事場(教室の自分の机、ロッカーetc.)等、あなたが日常的に個人的に使う場所は、整頓されていますか?掃除や整理整頓は得意ですか?不得意ですか?
私がもらっているお部屋は、勿論綺麗にしているわよ。誰のお部屋なのかは分からないけれど、女性の好みそうな色合いの家具が多いし、女性のお部屋で間違いないでしょうね。ただ、かなり若いというか……幼い趣味のような気がするわ、その人は。子どもかとも思ったけれど、違う気もするのよね。 18. 特技(特殊能力)はありますか?何ですか?あなたにとって、その特技(特殊能力)が一番役立つのはどんな時ですか?
さっきも言ったでしょ、お喋りには自信があるの。ありもしないことだって本当のように言えるわ、その逆だって簡単よ。役に立つのは、崩れてしまった契を元に戻したい時かしらね。あの子に生命を注いでくれる人を探すには、それなりに話術が必要だわ。 19. 賞(賞状・勲章)をもらったことはありますか?もらって嬉しかった賞、自慢できる賞は何ですか?
そういう機会には、恵まれていないわね。
20. 免許、資格(特権、特別許可etc.)持っていますか?それは今役に立っていますか?
いいえ、特に何も。でも、品のある所作は多く教わったから、心得ているつもりよ。
21. 体は丈夫な方ですか?今までにかかった一番大きな病気は何ですか?また、一番大きな怪我は何ですか?
元はお人形だしね、病気に悩まされたことはないわ。怪我も、ちょっとしたものよ。
22. 信仰している宗教はありますか?あなたは敬謙な信者ですか?そうでもありませんか?
ないわ。でも何であれ、それを盲目的に信じてる人って、なんだか滑稽よね。
23. 好きな年中行事は何ですか?それが好きなのは何故ですか?
こんなお屋敷にいたら、年中行事なんてあったものじゃないわよ。まあここに来るまでもあっちこっちを遍歴してたから、あんまりそういう行事に詳しくはないわね。
24. あなたは今どんな髪型で、どんな化粧をしていますか?何故そうすることを選んだのですか?
耳の上の髪を三つ編みにして、それを他の髪と一緒に首の上で纏めてるわ。あんまりまとまりのない髪型は嫌いなの。お化粧はしないわ。もともと造られた身だから、これ以上する必要がないのよ。ときどき遊びでやってみるけどね。
25. 普段どんな服を着ていますか?お気に入りの一着はありますか?
普段着はシンプルなのが好きだわ。スタンドカラーのブラウスに、あまり飾りのないロングスカートってところかしら。時にはおめかしもするけれど。気に入ってるのはそうね、碧の夜会服かしら?契がいいって言ってくれるの、あの子はセンスがあるわ。
26. 日常的に使う道具は丁寧に扱っていますか?乱暴に扱いますか?長く愛用している物があったら、教えてください。
何でも丁寧に扱っているつもりよ。そうね、契を詰めて運んでた鞄も、ずっと同じのを使ってたわ。もう使うことが、ないといいのだけれどね。
27. お金はいつもいくらぐらい持ち歩いていますか?お金を支払う時、現金以外の手段を使いますか?それは何ですか?
さほど持ち歩きはしないわ。そもそもお金を使うこと自体、あまりないわね。
28. ちょっとした臨時収入があったら、まず何に使いますか?
そうねえ、どの程度かにもよるけれど。でもできるなら、たくさんお花の苗を買うわ。それであのお庭をお手入れして、少しは見栄えがするように整えるの。トレグノだって、嫌だとは言わないはずよ。この間、窓からお庭を見下ろして溜息ついてたもの。でもあの子、屋敷の外に出るのがなんだか怖いみたいだわ。何かあったのかしら? 29. 自分の持ち物の中で、他人に比べて数を多く持っている、あるいは品質がいい物をそろえていると思うものは何ですか?自慢の一品があったら、教えてください。
そうねえ、もともと多くを持ち歩いていないから、特にないわ。私が持ち歩くもののほとんどは、いつも契だったもの。 30. 縁起、験を担いでやっていることや、気をつけているジンクスは何かありますか?どんなことですか?
そういうのとは違うかもしれないけれど、ときどき契の手や顔に触れて、確かめたくなるの……木の人形じゃない、私と同じ温もりがあるかどうか。歩いたり喋ったりできるならちゃんと温かいって分かってるのに、つい、ね。
31. 家と職場(学校)以外で、あなたがよく足を運ぶ場所はどこですか?そこに何をしに行くのですか?
高台を降りて街の方に行くことはあるわ。お店に、布地を見に行くの。最近お屋敷にミシンがあるって分かったから、お洋服でもと思って。契はともかく、トレグノったらろくな服を持っていないのよ!
32. よく使う交通機関は何ですか?愛車(またはそれに類するもの)を持っていますか?車種は何ですか?
馬車か、歩きね。私は使わないけれど、この辺りでは舟もかなり大切みたい。
33. 行き慣れない場所に行く時、目印、目安にするものは何ですか?地図を見て、はじめての場所に迷わず行けますか?
何の変哲もないけれど、大きな建物とかかしら?地図は読めるけれど、あまり地図を見ながらどこかを目指したことはないわね。ここに来たのだって、ただの偶然。もしかしたら、運命と言えるかもしれないけれど。
34. 身近な情報から時事問題等まで、あなたが情報を得る時の、主な手段は何ですか?どこからの情報を、一番信用していますか?
街に出ている時に色々なところから聞くのが、一番かしら。だいたい噂話だから、どれを信じてどれを信じないかは私次第ね。でもその辺りを判断する力は、それなりに身に付いているはずよ。
35. 幼い頃、あなたはどんな子供でしたか?友達は多かったですか?夢中になっていた遊びや、熱心だった習い事はありますか?
私たちに子ども時代があったかどうか定かではないけれど、今よりはいくらか世間知らずな頃はあったかもしれないわね。契は友達って言えるかしら……でも一緒に、主人がくれたいろんなおもちゃで遊んだわ。勝負事ではだいたい私が勝っていたの、あの子はあれこれ考えすぎていつもうまくいっていなかったわね。それにあの子は嘘をついたり、ごまかしたりするのが大の苦手だから。
36. 勉強は好きでしたか?(好きですか?)得意分野、不得意分野を教えてください。
お勉強は嫌いじゃないわ、よりよく生きていくためには、知性と教養が大切じゃない?得意、不得意はあまり��く分からないわね、そのように分けて学んだことがないから。机に座って教授のお話をただ聴くだけのお勉強は、きっと退屈でしょうけどね。
37. あなたは不得意分野は避��て通りますか、それとも克服しようとしますか?
そうね……必要とあらば、立ち向かうでしょうね。でも、必要でないものなんて実はあんまりないというのが、世の中というものだわ。
38. 身に付けようとした技術、能力等で、結局身に付かずに諦めたことはありますか?身に付けることができなかった敗因は何故だと思いますか?
絵を描くのはあまり得意ではないわね。契の方がいつも絵は上手だったから、なんだかやる気をなくしてしまって。あの子のせいにするのもどうかとは思うけれど、そうなんだから仕方ないじゃない?
39. 自分の性格を表現するのにちょうどいいことわざ、四字熟語等を挙げるとしたら、何ですか?
そういうのとは違うでしょうけど、私の性格を一言で表すとしたら「強か」、でしょうね。色々な意味で。
40. 自分は記憶力がいいと思いますか?他はともかく、このことに関しては記憶力が良くなる、というようなことが何かありますか?反対に、このことだけは何度覚えようとしても抜けていく、というようなことは何かありますか?
良い方だと思うわよ。特にこれはよく覚えられるといったことはないけれど……でも昔のことは契がよく覚えているから、私はあんまりその頃のことを思い出そうとすることはないわね。
41. 作業や仕事をする時に、時間、場所等、どんな環境だと一番はかどりますか?
そうねえ、静かすぎる場所はあんまり好きじゃないわ。なんだかそわそわしちゃうのよね……鼻歌と独り言が癖になっちゃう。適度に賑やかな所の方が、作業って意外と捗るものじゃなくって? 42. 春夏秋冬の中で、好きな季節、嫌い(苦手)な季節を、それぞれ理由もつけて教えてください。
冬は苦手、どこもかしこも冷たくて、生命の気配がなくなってしまうもの。だから春や夏は大好きよ。お花が咲いて、緑の葉が芽吹いて茂っていく様子を見ていたら、こちらまで元気になってくるのよね。
43. 好きな食べ物、嫌いな食べ物、を教えてください。
好き嫌いはさほどないけれど、甘いものは得意ではないの。甘いっていうか、甘ったるいものね。ああ見えて、甘いものは契の得意分野なのよ。あの子ったら、スコーンにどれだけジャムを乗せれば気が済むのかしら? 44. 食事は一日何回、どこで誰と取ってますか?それぞれのありがちなメニューって何ですか?食事は自分で作ってますか?
1日3回、朝と夜はだいたいお屋敷で。昼は出かけていれば街で取ることもあるわ。トレグノはいつもお寝坊さん……って言うかベッドから出るのもなかなか大変だから朝は抜いてることも多いけど、私は適当に食べているわ。本当は、食べなくたって生きていけるのかもしれないけど。
45. お酒は飲みますか?強いですか?弱いですか?酔うとどうなりますか?
まあ、たしなむ程度に。酔っても何もないわ、へべれけになるほど飲まないからそもそも知らないの。そういえば、トレグノはものを飲むのをひどく嫌うわね。あれは嫌いというより、身体が彼の意思とは関係なく拒んでるというのが正しいのかもしれないけれどね。 46. 睡眠時間は一日何時間ぐらいですか?寝つき、寝起きは良い方ですか?悪い方ですか?
6、7時間くらいかしら。寝つきも、寝起きも良好よ。いたって健康だわ。
47. 一日の中で、ほぼ習慣になっていること、何かありますか?
お屋敷の中のお掃除かしら?朝のうちにやっておけば、すっきりするでしょう?契も手伝ってくれるけれど、あの子はトレグノのそばにいる時間の方が長いから、あんまり意味がないわね。銀食器を磨いたり、古くなったカーテンを変えたり……お手伝いさんがいればその人がしたでしょうけど、いないから暇つぶしも兼ねてやってるの。
48. 趣味は何ですか?自分はその趣味の何に魅力を感じているのだと思いますか?
最近はお裁縫かしらね。素敵なお洋服がたくさんあるって、とてもわくわくすることだと思うわ!契は何を着せても似合うわよ。そりゃあ、私が見立ててるってこともあるとは思うけれどね。 49. 歌うことや踊ることは好きですか?演奏できる楽器は何かありますか?
好きよ、踊りはお相手がいないと難しいけれどね。楽器は、ピアノをそれなりに。聴かせられる程度には弾けるわよ。
50. 観劇、映画、コンサート、スポーツ観戦、展覧会等に、お金を払って見に行きますか?好きなジャンル、アーチスト(チーム、選手etc.)は何(誰)ですか?
そうねえ、観劇は楽しそうね。昔は時々行っていた記憶があるわ、主人に連れられて。始めの頃は契も行っていたけれど、そのうち一緒には行かなくなったわね……。こういうのが好き、っていうのは特にないけれど、強いて言えば俳優よりお話の面白さの方を先に考えるわね。だいたい自分が美しいひとって他者の見た目の美醜には頓着しないものよ、うふふ。 51. 体を動かすのは好きですか?得意なスポーツがあれば、教えてください。
さほどでもないわね。あまり汗をかきたくないの。それになかなか相手が見つからないわ。
52. 持久力、瞬発力には自信がありますか?あなたの持久力や瞬発力に関する、分かりやすいエピソードがあれば、教えてください。
瞬発力は試したことがないけれど、持久力はあると思うわよ。重たい荷物を持って、何日もひたすら歩くことだってあったもの。
53. 苦手なもの、怖いものってありますか?それは何ですか?
苦労することは苦手だわ。苦手っていうか、嫌いなの。何事も、それなりに楽しいと思っていたいじゃない? 54. やらなくてはいけないけれど、やりたくないこと、あなたは我慢してやりますか?やりませんか?
どうしてもやらねばならないのなら、やるけれどね。本当にどうしても、っていうときだけよ。やらなくても損するのが私だけっていう程度なら、きっとやらないわね。
55. 日常生活の中で幸せを感じる瞬間ってありますか?どんな時ですか?
いろいろあるけれど、契が幸せそうにしていたら、私も幸せだわ。あの子が笑った顔なんて、もうしばらく見ていなかったもの。そういう意味では、トレグノにも感謝してるわね。
56. 一度始めたら、なかなかやめられないこと、何かありますか?どれくらい続けてしまいますか?
パズルとか、何か作るものは途中やめにできないの。途中で放っていると、そわそわして気がそぞろになっちゃうのよね。だから時間がたくさんあるときじゃないと、やらないわ。
57. ちょっと一息つきたい時、一休みしたい時、何をしますか?
お茶を入れて、少しお菓子でも頂きたいわね。契と、具合が良ければトレグノも呼ぶわ。
58. 休みの日、誰かとどこかに羽を伸ばしにいくなら、誰とどこに行きますか?そこでどうやって過ごしますか?
誰とって、契かトレグノ辺りしかいないじゃない?でもトレグノはきっと私と二人きりは嫌がるでしょうし、結局三人で、になるでしょうね。
行き先は……そうねえ、川の向こう岸の大きな街に行くのは面白そうね。トレグノはこの街に住んでてもほとんど外のことを知らないみたいだし……そもそもあの子だって、一日中寝たきりなのは良くないと思うの。
59. あなたにとって、有効なストレス発散の手段は何ですか?どれくらいの頻度でそれをしますか?
たくさん食べることかしらね。でもせっかくおいしいものをいろいろ用意してるのに食い散らかしちゃうとなんだか哀しい気分になっちゃって、すぐやめるわ。
60. いらいらする瞬間は、どんな時ですか?自分は気が短いと思いますか?気が長いと思いますか?
気が長いとは言い難いでしょうね。そうねえ、些細なことでもいちいち答えるのに時間がかかる人を見てると、いらいらするわね。お茶の時間には何が食べたいとか、そんな程度のことよ。
61. 自分の立場(身分、年齢)ではできないけれど、やってみたいことってありますか?どんなことですか?
あまり思い浮かばないわね……今したいと思っていることは、だいたい叶えていてよ。ああ、強いて言えば、華やかなパーティなんて開いてみたいかしら。契も、トレグノもちゃんと着飾らせてね。トレグノだって顔は悪くないんだから、きっと素敵に見えるわよ。
62. 喜怒哀楽、最近の出来事で一つずつあげるとしたら、どんなことですか?
喜は色々あるけれど、最近は新しい日傘をもらったことかしらね。このお屋敷にあったのだけれど、トレグノは使わないからって、くれたのよ。
怒は、そうね、他愛もないことだわ。なんだか契がくよくよしてたから、もっとしっかりしなさいよって。見ててはらはらするのよ、あの子は。
哀は、買おうかと思っていた素敵な鉢植えが、次にお店に行ったら無くなっていたことかしら。その日は持ち合わせが少なかったのだけれど、残念だったわね。
楽は、お茶の時間に出すクッキーを作ったときね。珍しくトレグノも出てきて、みんなで一緒に作ったのよ。
63. 忘れられない景色はありますか?いつどこで見た、どんな景色ですか?
景色って言うのか、よく分からないけれど……契を鞄に詰めて出て行くとき、最後に振り向いて見た私たちの家は、ずっとこの目に焼き付いているわ。今頃、どうなっているのやら……。 64. 自分はどちらかと言えば積極的だと思いますか?消極的だと思いますか?普段は積極的(消極的)だけれども、このことについては消極的(積極的)になる、という事はありますか?どんなことですか?
積極的よ。何だって、経験したことのないものには手をつけてみたいの。好き嫌いも得手不得手も、やってみなくちゃ言えないでしょう? 65. 他人に指摘されて初めて気がついた自分の性格、または自分ではそう思わないのに他の人からよく指摘されるあなたの性格って何かありますか?
契には、なんだかんだ言って優しいとは言われるわね。別に誰かに優しくしようとか思っているわけではないけれど、いつだって意地悪したいわけでもないわ。気まぐれなだけ。 66. 他人に尊敬されたり、評価されたことで嬉しかったこと(うれしいこと)は何ですか?反対に、評価されても嬉しくないこと、ありますか?
お洋服とか持ち物を褒めてもらうのは、嬉しいわよ。でも容姿を褒められてもさほど嬉しくはないわ、私がどうこうした訳ではないですもの。評価されるなら、私の行為に対してがいいわね。
67. 法律や規則は厳守していますか?こっそりやった(している)規則違反、やった(している)けど露呈していない違法行為、何かありますか?
特にはないと思うけれど。でも契を目覚めさせるために、適当なことを言って人を焚きつけたことは何度かあるかしらね。あの子には内緒よ? 68. 法律や規則、あるいは風習として決まってしまっていることで、納得できないこと、変えて欲しいことはありますか?どんなことですか?
いいえ、特に不満はなくってよ。至って普通に生活しているから、さほど困ってることもないし。
69. あなたは時間に几帳面ですか?待ち合わせをして、待たせる、待たされる、それぞれどれくらいなら自分の許容範囲ですか?
そうね、待たせるのも待たされるのも嫌だわ。だから待ち合わせは守るし、守らない人は嫌い。そういう人って、相手に対して失礼だと思わないのかしら?
70. 話をするのは好きですか?大勢の前で演説する、親しい人と喋る、誰かを説得する、何かを説明するetc.どんな場面で話をするのが得意で、どんな場面で話をするのが苦手ですか?
お喋りは、どういう場であれ大好きよ。さすがに全然知らない人とよりも、それなりに仲良くしてる人との方が気楽でしょうけどね。お茶でもしながらゆっくり、他愛もないお話をしてる時間って幸せよね。
71. 共同作業をするのは得意ですか?不得意ですか?あなたは自分が中心になって動く方ですか?
共同作業をすると言ったら契くらいしかいないけれど、契は一緒にいない時間の方が長いくらいだから……今も昔も、ね。だから何だってだいたい一人でこなしてしまうわ。だけどまあ、もし誰かと何かをすることになったら、私があれこれ言う方になるでしょうね。そういう質なんだもの。 72. 今一番の悩みは何ですか?その悩み、解決するあてはありますか?
悩み、なのか希望なのか分からないけれど、契のことはいつも気にして��るわ。あの子がずっと今のままでいられるかどうか、心配しているの。少なくとも、あの子が私が心配していると思っている程度よりかはずっと、気になってるわね。でも、きっと大丈夫って思ってる……トレグノはあの子を必要としているわ。今までも、これからも、ね。
73. 今一番、欲しい物は何ですか?それが欲しいのは何故ですか?
お洒落なティースタンドが欲しいわね。この間、使おうとしたら壊れてしまっていたの。スタンドがあればトレグノの寝室でも午後のお茶ができるし、便利なのよ。本当は、もちろんもうちょっと広いところでやるべきでしょうけどね。お庭が綺麗になったら、外の空気を吸いながらお茶がしたいわ。
74. もらって嬉しかった贈り物は何ですか?反対に、もらって困った贈り物は何ですか?
ずいぶん前に契が目覚めていたときに買ってもらった髪留めが可愛らしくて、ずっと大切にしているの。リボンに小さいお花がついていて、気分がいい日にはきっとつけることにしてるのよ。困ったものは、特にないけれどね。ああ、口に合わないお菓子なんかはいつも、どうしていいか分からなくなるわね? 75. あの時こうしておけば良かった、と思っていることがありますか?どんなことですか?
そうね……もっと早く、契を連れてどこか遠くに行ってしまったらよかったかもしれないって、思うことはあるわ。でも、そうしたら私まで壊れてしまっていたかしら?分からないの、その方が、契にとっては良かったのかもしれない。ああでもそう言えば、きっとあの子は嫌がるでしょうね……あの子、自分のために何かされるのって嫌がるから。
76. 今までした一番激しい大喧嘩は、誰と何が原因でしましたか?その相手とはどうなりましたか?
まあ、するとしたら契としかいないでしょうね。昔主人と一緒に暮らしてた頃は、それなりに喧嘩してたけれど……大喧嘩って言えるほどのものはしたかしら?だいたいゲームでずるをしたとかしないとか、好きなものを相手の分まで食べられたとか食べてないとか、そんな程度のものばかりよ。 77. 『その時、その瞬間』だからできた、今もう一度やれと言われてもできないこと(またはやりたくないこと)ってありますか?どんなことですか?
このお屋敷にやって来たのは、多分あのときしか出来ないことだったでしょうね。2階の窓からトレグノが顔を覗かせていなかったら、そもそもお屋敷に人がいるなんて思ってもみなかったもの。それに、進んで入りたいと思うようなお屋敷ではないわ、ここは。あんまり荒れてるものだから! 78. 今まで受けた一番激しいカルチャーショックは何ですか?今では慣れましたか?
カルチャーでもなんでもないけれど、トレグノほど生きている気のしない人間がいるということは驚きに値するわよ。あの子、なにか不思議な力を持っていると思うの、本人には言っていないけれどね。でも多分あの子自身、薄々気づいているとは思うわ。 79. 墓の中まで持っていくつもりの嘘、秘密はありますか?それを共有している相手はいますか?
主人が最後に私に言ったことは、少なくとも契には黙っているつもり。言って、お互いに良いこともないし。今までだって、誰にも言っていないわ。 80. ちょっとした嘘、相手の勘違い等、で訂正しないまま今にいたっていること、何かありますか?
トレグノは私に嫌われてると思ってるみたいだけど、別に嫌ってるわけではないわ。からかって遊んでるだけよ。むしろ本当に嫌いだったら、早々にここを出て行ってるでしょうね。 81. 自分と違う世代の相手と付き合うのは得意ですか、不得意ですか。苦手な世代はありますか?それは何故ですか?
得意よ。話が通じるならば誰とだってお話できるわ。だから不得意なのは話の通じない人、子どもとか……嫌いじゃないのだけれど。 82. あなたにとって付き合い易い相手とは、どんなタイプですか?今あなたと仲が良い人は、そのタイプに当てはまりますか?
前のお話と似るけれど、お話しやすい人ね。聞き上手じゃなくてもいいの、一緒にお話できれば。私だって普段はあれこれ喋ってるけれど、それなりに人のお話を聞くこともできてよ。今の仲良しもそうね、だいたいそんな人たちばかりかしら。
83. あなたにとって付き合い難い相手とは、どんなタイプですか?今身近にそのタイプの人はいますか?
さっきと真逆ってことでしょ、だから話しにくい人よ。なぜだかお話が噛み合わない人っているでしょう?身近にはいないわね、そんな人とお付き合いするほど心が広くないもの。
84. 恋人(良人)はいますか?付き合うことになった(結婚した)きっかけは何ですか?
いいえ、いないわ。契もトレグノもそういうのではないし。いつか見つかれば良いとも思うけれど、私には必要ない気もしているわ。
85. 尊敬している人はいますか?誰ですか?何故尊敬しているのですか?
尊敬ねえ、契は私にないものを色々持っているから、尊敬しているといえばしているわね。でも私たちは二人で一つというか……お互いがお互いとは違うものを持っていて、重なるところがないの。だから私があの子に劣る部分があっても当たり前って思ってしまって、尊敬って言えるかどうかは微妙なところだわ。
86. 恩人、と呼べる相手はいますか?その人は、どんな場面であなたを助けてくれたのですか?
もしトレグノが今後も変わらずに契を必要としてくれるなら、彼を恩人と呼んであげてもいいわね。……まあ、一度必要とした以上、手放すつもりはないわ。私は何が起ころうと、ね。
87. 今のあなたにとって最も大切な人、必要な人は誰ですか?
大切なのは契、必要なのはトレグノ。契の存在にトレグノが必要である以上、私もあの子を必要としているわ。契を大切にしてるから、トレグノが必要なの。そういう意味では、トレグノも大事かもしれないけど……そういうのとは違う気がする。
88. 疎遠になってしまった人で、できればまた付き合いたい相手はいますか?それは誰ですか?
主人にもう一度会えたら、と思うことはあるけれどね。でも、不可能なことを望むのはナンセンスだわ。 89. 苦手だけれど、一目置いている相手はいますか?それは誰ですか?どう苦手で、何に一目置いていますか?
苦手、って思う人はそもそもあまりいないわよ。でも契って、もし全くの他人として接したとしたら結構苦手な部類かもしれないわね。一緒にいて、話題が膨らむような人じゃないし。でももちろん一目置いているわ、私にはないものを本当にいろいろ持っているもの。忍耐強さとか、思いやりとか。だからって、私もあの子と同じようになりたいとは思わないけれどね。
90. 自分ではまねできない、うらやましい性格の知人、友人はいますか?それは誰ですか?うらやましいと思うのは、どんなところですか?
うらやましいという感情を人に対して抱くことは、ほとんどないわ。だってうらやんだって手に入るものでもないし、私には私の、何か他人にうらやまれることがあるはずだもの。 91. ライバルはいますか?何に関してのライバルですか?今の時点でその相手よりあなたが勝っていること、反対に負けていることはそれぞれ何ですか?
何かを競い合うっていうことが、そもそもないから難しいわね。誰かをライバルとみなすっていうことは、その人を自分と同じ地平に並べるということでしょう?それってちょっと癪よね。
92. あなたは誰かにとっての『一番』でいること、ありますか?誰にとって一番何ですか?
契にとっては、一番長く傍にいた人だと思うわよ。私がいなければ、あの子は組み上げられることすら出来ないのだもの。
93. あなた自身のことで、誇っていること、自負していること、自慢に思うことを教えてください。
主人に造られた容貌も、身に付けた立ち居振る舞いも、私に与えられた者は何もかも、もちろん自慢に思っているわ。自分に自信を持つことって、とても大切なことだと思うの。 94. 将来の夢は何ですか?その夢の実現のために、今していることが何かありますか?
もっと明るくて社交的な生活がしたいわ。将来の夢、と言うほどでもないでしょうけれど。そのために今していること?そうね、とりあえずトレグノがまともな生活ができるように助力はしているつもりよ。結局私たちも、居候の身なんだし。 95. 今の自分とは違う生き物になるなら、何になりたいですか?何故ですか?
そもそも私たちが生き物かどうかって、曖昧よね。だから本当の人間になったらどんな感じか、少し知りたいわ。まあ、ほとんど変わりはないような気がしているけれど。 96. 今いる世界から抜け出して、別の物語の登場人物になるならば、どんなジャンルの物語のどんな役が自分にはぴったりだと思いますか?
ううん、難しいわね?でも、契と離れ離れは嫌だから、双子の片割れがいいわ。ジャンルは何でもいいけれど、落ち着いた物語の中で……二人で一緒に、小さなお家に住めたらいいわよね。それで時々街に出て、面白いことに出くわすの。うふふ、主人公ではなさそうね!
97. 次の文の○○に言葉を入れてください。『世界は○○に満ちている。』それは実感ですか?他のものですか?
必然、かしらね。偶然というには運命的すぎるけど、運命って言えるほど強い結びつきでもないような、そんなものっていう意味でね。私たちが主人の許を離れたことも、トレグノの許に辿り着いたことも、全てそう思えるの。
98. 今一番の願い(望み、希望していること)は何ですか?
契が私と同じように、人と変わらない身体を得ること。そして愛する人と永遠に、幸せに暮らせること。できれば、私も傍にいたいけれどね。 99. 座右の銘、モットーを教えてください。
誰かの言葉っていう訳ではないけれど、運命は自分で切り開くもの、っていつも思っているわ。私が行動しなければ、何も変わらない。何か変えたければ、動かなくちゃ。可及的速やかに、ね。
100. これが100問目になりますが、以上99問に答えながら、初めて知った自分自身の設定はありますか?
そうねえ、ミシンが使えるとか、お庭のお手入れを多少してるとかかしらね。それにしても、百も質問があるなんて、思ったよりくたびれるわね。ここまで読んで頂けたのなら、お礼を言うわ。ありがとう、ではまた、どこかでね。
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