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#オンコタイプDX
ishuran · 11 months
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Vol.163 遺伝子パネル検査はこれからのがん治療のパスポートになる
7月に入って、関東地方は身体に堪える暑さが続いています。もしかしたら、もう梅雨明けしてしまっているのかもしれません。
一方、九州北部は大変な豪雨とのことで、お住まいの方にはお見舞い申し上げます。
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【記事1】 遺伝子パネル検査はこれからのがん治療のパスポートになる
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遺伝子パネル検査についてはこれまでも何度かメルマガで取り上げてきました。
背景と現状のおさらいですが、、、
・がんを引き起こす様々な遺伝子異常がわかってきた中で、一つ一つの遺伝子異常の有無を調べていく既存のやり方ではキリがないので、まとめて一気に調べる「遺伝子パネル検査」が出てきた
・遺伝子の異常がわかっても、対応する治療薬が存在しない場合が多い。とはいえ、存在する場合はその治療薬を使わなかった場合と比べ、圧倒的に優れた治療効果が期待できる
・現状、日本だと、当該検査の医療費は56万円で、保険が適用されると患者負担はその1-3割
・日本で保険が適用されるのは、「標準治療がない、又は終了する見込みである固形がん」などごく限られたケースで、それも一人一回のみとなっている
さて、この遺伝子パネル検査に関連する論考が出てきました。
 ■”Universal Germline and Tumor Genomic Testing Needed to Win the War Against Cancer: Genomics Is the Diagnosis”「がんとの闘いに勝つために必要な、生殖細胞系列と腫瘍の普遍的な遺伝子検査:遺伝子は診断である」(Journal of Clinical Oncology)
この論考の中で、首がもげるほど頷けたのが、
「がんとの戦いに本気で勝とうとするならば、がんを治療するためにも、がんを早期に発見するためにも、がんに関するあらゆる情報を得る必要がある。」
という一文です。
今のところ、遺伝子パネル検査が普及していないのはコストの問題が一番大きいわけですが、技術の発展と共に、今後さらにコストは下がっていく可能性が大きいですし、普及すれば患者さんが無駄な検査や治療をするリスクとコストを下げ、治療成績が上がることも期待できます。
折しも、日本では、患者会から遺伝子パネル検査に関する要望書が政府に対して上げられました。
 ■「『適切なタイミングでのがん遺伝子パネル検査の実施に関する要望書』厚生労働省への提出と財務副大臣への手交のお知らせ」(一般社団法人 全国がん患者団体連合会)
”米国でのがん遺伝子パネル検査については、「全てのStageⅢ、StageⅣの進行再発がん、あるいは再発、再燃、転移がん」の患者さんが対象となっており、初回治療の患者さんを対象にがん遺伝子パネル検査を実施し、その検査結果に基づいて「従来の標準治療の実施」「コンパニオン診断の結果に基づく分子標的薬の投与」「がん遺伝子パネル検査の結果に基づく新たな治療候補薬の選定(治験やコンパッショネートユースなど)」いずれかの治療選択を可能とする「プレシジョン・メディシン(精密医療)」が初回治療から可能となっています”
とあるように、米国の方が一歩進んでいるのが現状です。
日本でも、もう一段遺伝子パネル検査のコストが下がって、誰もが治療の中で何度か使うような「がん治療のパスポート」的な存在になる時代が、早くやってくることを期待したいですね。
※本項執筆時点(2023年7月13日)で、筆者は複数の遺伝子パネル検査機器メーカーの株式を保有しています。
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【記事2】すったもんだの保険適用:オンコタイプ DX 乳がん再発スコアプログラム
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ホルモン陽性・HER2陰性の早期乳がんの患者さんで、「術後化学療法」を行なうかどうかというのは、これまで医療者にとっても患者にとっても悩みどころでした。
再発リスクは下げたいけれど、術後化学療法での副作用を経験したくないという患者心理がある中で、どのような人であれば術後化学療法をやる必要なしという明確な”線引き”がなかったのです。
そこに出てきたのが「オンコタイプDX」という検査です。腫瘍に関連する21個の遺伝子を解析し、再発リスクを「RS(Recurrent Score)」という形でスコア化します。
現在、乳がん診療ガイドラインでは、Oncotype DXを用いたTAILORx試験の結果に基づき、
「Oncotype DXのRSが25以下の場合には,リンパ節転移陰性であれば術後化学療法を省略することを強く推奨する」
としています。
 ■「CQ11   ホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌に対して,多遺伝子アッセイの結果によって,術後化学療法を省略することは推奨されるか?」(乳癌診療ガイドライン2022年版)
TAILORx試験では、リンパ節転移陰性でRSが25以下の集団は、化学療法をやった場合(化学療法+ホルモン療法)とやらなかった場合(ホルモン療法のみ)で
 5年IDFS(再発しないで元気に過ごした患者の比率):93.1% vs 92.8%
で、有意差はなく、化学療法を加えるメリットはないという結果になりました。
ということで、オンコタイプDXを使用する意義も示され、日本でも2021年8月に承認されたわけですが、ここからすったもんだがありました。
 ■「オンコタイプDXに関するこれまでの経緯と今後の対応について」(厚生労働省)
いやあ、当該企業(エグザクトサイエンス株式会社)に対して完全に怒ってますね、厚生労働省(苦笑)
2021年12月1日までにプログラムの修正を約束していたのに、企業側が守らなかったということで、
「当企業に対しては、厚生労働省に対して、正当な理由なく安定供給が困難な事態を遅滞なく 報告しなかったことから、企業からの再発防止策等の改善策が示されない限り、経済課において今後の保険適用の手続きを留保する。」
とまで書かれてしまってます。
これがようやくのこと、本年9月に保険収載されることになりました。
 ■「乳がん遺伝子検査、9月から公的医療保険の対象に…3割負担で13万500円」(読売新聞オンライン)
問題が起きてから解決するまでなぜ2年もの時間がかかったのか等、モヤモヤは残りますが、ともかくも正常な環境下でこの検査が普及する体制が整ったことを、まずは歓迎したいと思います。
※本項執筆時点(2023年7月13日)で、筆者はオンコタイプDXに関して、特筆すべき利益相反はありません。
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tomitamai · 8 years
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夫同席のもと、主治医と話し合い、抗がん剤治療を受けることにした。
手術でとった細胞を病理の検査で細かくみていったところ、手術前の細胞検査と大きな乖離はナシ。
まず、わたしのがんの良いところ。
・リンパ節転移なし ・ホルモン治療がとても効くタイプ ・HER2という悪性度の高い遺伝子タンパクがほとんど発現していない(陰性)
そして、わたしのがんの心配なところ。
・浸潤がんである(再発・転移する可能性がある) ・30代での罹患(ちょっと若い) ・がんの大きさが2.1センチを超えていた(測る方向によっては3センチ超え) ・リンパ節にいくまでの通り道に、少しだけがんがあった ・核異型度(がんの顔つき)が良くも悪くもない中間だった
ということをふまえて、少なくともホルモン治療(5年間の服薬)はやりましょう、と。で、抗がん剤はどうするかというところで、現状は「やってもやらなくてもいい」というギリギリのラインなんだけど、がん研有明病院乳腺科の総意としては「患者に抗がん剤をすすめたほうがいい」という判断だった。
あとは本人の気持ち次第ということ。で、わたしの性格としては、やれることはすべてやって、それでも再発したらしょうがないと思えるだろうけど、もし抗がん剤をやらなくて再発したらとても後悔するだろうと話し、同席してくれた夫も同じ意見だった。ちなみに夫は「僕はやらないタイプ」だそう(主治医は笑ってた)。
ということで、ほとんど即決で抗がん剤をやることに。主治医は「持ち帰って検討すると思ってた」と驚いていたけれど、わたしは決断が早くて揺るがないタイプなので、まあ想定内かなあと。ちなみにいちばん懸念していたのは「ギリギリのラインだけど、総意として抗がん剤をやらなくてもいい」と言われた場合どうするか、だった。その場合は40万くらいする「オンコタイプDX」という保険適応外の検査に細胞をまわしてもらおうかとまで考えていた。
なぜこれだけ判断を慎重にしないといけないか。
多くの場合、がんというのは初めて見つかったものについては寛解を期待できるけれど、再発した場合は「延命治療」になるという厳しい現実がある。しかも、これまでの研究では、再発が早く見つかって治療を始めた場合と遅く見つかって治療を始めた場合とでは、治療効果に差はないという結果が出ている。そして乳がんの場合、だいたい2〜3年めが再発率が高くなるけれど、20年30年経って再発することもある。つまり、がんのなかで最も「長く付き合っていく」という覚悟が必要なのが乳がんである、と。
そういった現実をふまえ、いま自分にできるすべてのことをやっておきたいと思い、抗がん剤治療を受けることにした。「尿まで真っ赤になる」と悪名高いCEF療法で、3週間に1度の抗がん剤点滴×4クールというスケジュール。
もちろん、すべては「可能性」の問題で正解はない。わたしのがんが、じつはホルモン治療も抗がん剤治療も必要なくて、手術だけですでに完治している可能性だってもちろんある、ということだ。
ただ、現在の医療は「あなたのがんは再発します」と断言できるところまでいっていないので、可能性の話になってしまうわけで(わたしは臆病なので、可能な限りリスクを回避したいというだけの話)。だから今後、医療が発達して、再発するタイプと診断された場合だけ追加治療を行なうことができるといいなあと願う。
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