白百合を求めて
エイラとペリーヌがお互いを求め合うお話です。
※女性同士が苦手な方はブラウザバックをお勧めします。
(そういえば……)
いつもより静かなティータイム。 食堂で一人紅茶を楽しむ少女は辺りを見回した。
(今日は随分と穏やかですわね)
この時間であれば、リーネのスコーンと、自分の紅茶やリョクチャと呼ばれる物を、誰かしら楽しみに来ている筈だった。 しかし今は誰も見当たらない。
今朝の伝令を思い起こすと、確か数人がこの時間に買い出しへ出ていたはず。 となると、他の隊員も何かしらの用事があるのだろう。静かな訳だ。
(これなら、花の世話に時間を割けますわね)
今日は訓練の予定も無く、外の天気も良い。習慣付いている花壇の水やりには絶好の一日だった。
それからもう暫くだけ紅茶を楽しむと、花壇の世話の為に日傘とじょうろを手に外へ出た。少しきつくはあるものの、力強い日差しが視界を刺激する。ようやっと目が慣れてきた頃、日傘を広げて自らが手掛ける花壇へと歩を進めた。
「あら、白百合の花が……もう咲きましたのね」
花壇の端に置かれた鉢植えから、白く立派な花弁を携えた白百合が顔を覗かせていた。水やりにはまだ時間がある。少女は、慈しむように花弁を撫で、暫くその花が発する香りを楽しむ事にした。
ーーーその光景を、隊舎から見つめる一人の影。
「…んー?ツンツンメガネじゃないカ。何シテンダ…?」
先刻、非番を告げられるも、暇を持て余した奇跡のエースは隊舎の窓から一人の少女を見つける。
風にたなびく美しい金髪と、それとは対照的な真っ青な制服に手元の白い花が良く映えている。陽光の眩しさから見辛いのもあったが、目が慣れてからも思わずじっと見つめてしまった。
(アイツ、あんなに綺麗だったカ……?)
遠くから眺めていると、水やりを始めたのが見える。
「……やる事ないし、ちょっとからかいに行ってみるカ」
悪戯な笑みを浮かべ、花壇の世話へ興じる少女の元へと忍び寄る。
肉食獣が獲物を狙うように、姿勢を低くして一歩、そしてまた一歩、慎重に距離を詰めていく。
そして……。
「ツーンツーンメーガネっ」
「うひぇぁひゃぁ!?」
耳元で声をかけ、脇腹をつつくとまるで猫の様に跳びはねた。急に驚かされた少女は、見事なまでにじょうろの水をひっかぶってしまった。
「きゃっ…! ち、ちょっと、どういうつもりですの!!」
「あぁー……悪い悪い。そんなに怒らないでくれヨー……」
手を差し伸べ、不満そうにぼやく少女を起こしてやる。
「何ですの、全く! 服がびしょ濡れになったじゃありませんか!」
「だから悪かったってー、そんなにツンツンするナヨ…ほら、タオル」
暫くタオルと顔とを交互に睨まれたものの、奪う様にタオルを受け取り、乱暴に髪を拭きはじめた。
銀髪の少女は、水に濡れ、ブロンドに輝くその髪にドキリと胸が高鳴るのを感じた。太陽の光を反射して煌めくそれは、とても美しく、視線を惹き付けるには十分だった。
「……? 何ですの、そんなにジロジロ見て」
「いや、お前の髪キレーだなーって思って」
ブッ、と噴き出されてしまった。赤面した彼女に思わず心配されてしまう。
「な、なんですの!今日は熱でもあるんじゃなくて!?」
「熱……あー、あるかもナ。熱くて仕方ないヨ」
「何をっ………~!?」
聞き返そうと開いた口を、急に引き寄せられ、塞がれた。眼鏡の内で見開かれた青い瞳が、目の前の人物を捉えて離さなかった。離せなかったのだ。
「~~!!……っぶは!はっ、な、何が……」
「ツンツンメガネの髪見てたら、我慢……出来ナカッタ」
ぐい、と肩を抱き寄せられ、華奢な体が抱き止められた腕にすっぽりと収まってしまう。なんて小さい身体だろうか、抱き締めた本人はその事実に尚の事、体が火照るのを感じた。
「や、いやっ…この間、もうこれきりだって……!」
「無理ダヨ、ペリーヌ。ごめんナ…無理だ……それに、本当は嫌じゃないダロ?」
そう答えると聞くが早いか、つぅ、と尾てい骨の上をなぞり上げた。指先だけで、軽く、まるで羽でくすぐるように。ゾワゾワとする感覚が背筋を走り、ピンと背筋が伸びてしまう。
そんなペリーヌの焦る表情を観察するように、余計に顔が近付いた。けれどもそれは、憧れのあの人ではなく……自らを喰わんとする、まるで、肉食獣の様な瞳を携えたスオムス人だった。
ペリーヌは、思わず息を飲み込んだ。うっすらと紫がかったその瞳に、まるで縛られてしまったかのように見つめてしまう。
「っ……せめ、て……水やりだけはさせてくださいまし……」
やっとの思いで視線を反らすも、弱々しくそう伝えるしか出来なかった。その様子を見届けたスオムス人は、獣めいた眼光を潜ませると満足そうに頷いた。
「じゃ、オマエの部屋で待ってるからナ。ゆっくり水やりしてやれヨ~」
此方も振り返らず、腹立たしいほど気楽に手をヒラヒラとさせながら、奇跡のエースは去っていった。
(あんな、熱く求める瞳……ズルいですわ……)
ペリーヌは、悶々としながら思い出すように唇をなぞると、残りの水やりを半ば上の空のまま再開した。
陽が少し傾き、昼もやっと過ぎたであろう頃。ペリーヌは、宮藤やリーネと共にする共同部屋の前で二の足を踏んでいた。
(……これは部屋のプランターに水をあげるため……そう、プランターの為ですわ。決してエイラさんの為ではありませんわ……!)
じょうろ片手に言い訳を繰り返しながら、意を決して共同部屋の扉を開ける。しかし、そこで待ち構えて居るはずのエイラはベッドに横たわっていた。近付いてみるとかすかに寝息が聞こえる。
「……はぁ、あなたって人は……拍子抜けですわ……」
安心したような。少しガッカリしたような。溜め息をこぼしながら、窓際に置かれたプランターに水を遣ると、じょうろを置いてベッドへ腰掛ける。横たわるエイラの銀髪に櫛を通すように指先で触れると、ほんの少しだけ白樺の香りが漂った。
「ん、ぁ…ナンダヨ、来てるなら起こしてくれヨナ~……」
「なっ、あなたが勝手に寝ていたのでは……きゃっ!」
寝そべっていたベッドの主は、気だるげに大あくびをしながら、腕を引っ張ってきた。ペリーヌは、咄嗟の事に逃げられずに、背を預ける様にして抱きかかえられてしまった。白樺とラベンダーの混じりあった香りがふわりと香る。
エイラは、眼前に収まるブロンドに隠されたうなじに顔を埋めた。すんすんと鼻をならし、ラベンダーと汗の匂いを鼻いっぱいに頬張る。ペリーヌは緊張しているのか、大人しく腕に収まっている。
「ふーん、ラベンダーか…私はこの匂い好きダゾ」
やがて羞恥に耐え切れず、抵抗するペリーヌの制止も聞かず、存分にそれを堪能したところでキャンディーを舐める様に、首筋に舌を這わせた。
突然の事に、ペリーヌは素っ頓狂な声を上げた。うなじから首筋にかけ、ほんの少しざらつくぬらりとした感触が何度も這うのだ。堪らず身を縮めるが、その度に無理矢理抱き寄せられ、舐め回された。
「やっ、エイラさっ……やめてくださいまし……あぅっ!?」
震える声を押し出すと、今度は鈍い痛みが伝った。
「いつっ…!」
痛みの正体を知るため目を向けると、鋭く尖った犬歯を突き立てられていた。こちらを伺うように、そのまま視線だけ向けた瞳と目があった。
「い、痛い、痛いですわエイラさん…!」
一瞬眉をひそめ、嘆願すると犬歯がすっと離れていく。首筋には赤い歯形がくっきりと残っていた。
「綺麗に付いたナー…痛かったろ?ごめんな」
額に優しく口付けられる。向けられた眼差しは先程と違って、慈しむ様に穏やかだった。
「……ズルいですわ。そうやって、わたくしをいつも弄んで……」
向き直り、今度は自分から口付けをする。軽く、短いものだったがエイラにはそれで十分だった。
「ツンツンメガネの方からなんて、火が付いタナ?」
「もうっ、今は名前で呼んでくださいまし!」
ぺし、とエイラの額を叩くと体を預ける様にペリーヌはベッドへ横たわった。すらりと細い脚に手がかかると、股を広げるように持ち上げられる。黒く薄い布地に隠れた素肌を味わうように、唾液を絡めた舌が腿をなぞられ、それを啜るように吸い上げて味わうと、内腿側に手をかけ破り捨てた。
「…なっ!?破かないでと前回あれほど言いましたのに!」
「後で買ってやるから怒るナヨー…何だかんだで好きダロ?これ」
外気に晒された白い肌に手が触れ、するりと太股に向かって滑り込んできた。くすぐったいような感覚に短く声を漏らすと、ペリーヌは何も言わずに目を反らしてしまう。が、エイラはそれを許さなかった。
くい、と顎を持ち上げ、舌を捩じ込むように強引に口付けた。色気ある吐息と声が、鼻腔を通して聞こえてくる。
ペリーヌは思わず目を見開いた。羞恥に耐えきれず視線を反らした筈が、無理矢理に顔を上げさせられ、舌がこじ開ける様にして口内へ侵入してきたのだ。生暖かい吐息が頬を掠め、長い舌が厭らしく水音を立てながら舌を絡め取ってくる。そして逃れようと舌を動かすほど、互いの唾液は混ざり、絡み合い、飲まされるのだ。
「はっ…んく、はぁっ……!」
舐め回され、口内を余すところ無く蹂躙される度に声が短く漏れる。それはエイラの嗜虐心を煽り、更に激しくペリーヌを攻め立てるには十分な反応だった。 腿を擦る手が付け根へと移動し、ズボン越しに秘部全体を擦れば、その手にぬたりと湿る感覚を伝えた。
あのツンケンしたお嬢様を、自分が良いように弄ぶ……その状況に何度となく心が高ぶった。満更でも無い様子で、快楽を享受し、自分を受け入れるそのガリア人に、エイラは酷く興奮した。以前もサーニャが夜間に出ている間、夜通しで互いに体を重ねたものだが、その時も互いに求めるまま、ひたすらに交わった事を覚えている。
最初に手を出したのはエイラだった。
少し前にサウナで絡んだ時、偶然に背筋へ指が触れた瞬間、ペリーヌが短い悲鳴を上げた。その瞬間、一瞬で沸き上がった衝動にまかせ、唇を奪ってしまった。
そこからは、枷が外れたように、のぼせる寸前まで互いに身体を重ね……そして部屋へと連れ去った。口付けた後は一切の抵抗が無かった所を見るに、彼女も火がついていたのだろう。
それからエイラ達は、同僚の目を盗みながら身体を重ねた。エイラはサーニャの居ない間に、ペリーヌは坂本との訓練が無い時や宮藤達と居ない間に時間を共にする事が増えた。だが、ペリーヌがここまでのめり込んだのには、憧れの坂本への背徳感からでもある。尊敬する少佐にではなく、このスオムス人に抱かれる事が、一体どれ程の興奮と快楽をもたらしたか。
「…ぷぁ……はぁ…大丈夫カー?」
背徳のもたらす劣情に飲まれそうになった瞬間、舌は抜き取られ、唇が離れた。口内には最早どちらのものかわからない唾液の味が充満している。惚けた様子で、咀嚼する様にその液体を舌に絡め、自身の指に絡めて食んだ。
その様子を見るや、エイラは上着に手をかけ丁寧に、労るように青いガリアの制服を脱がしていく。脱がされ終わってからではあるが、惚けていたペリーヌも流石に我を取り戻したのか、恥ずかしそうに胸を腕で隠した。
「明るい中でこれは……流石に恥ずかしいですわ……」
「ナンダヨ、今更気にするなッテー…私は好きなんだからサ」
胸を隠した手を掴み、優しく諭すように動かしていく。絹糸の様にきめ細やかな肌に、赤みがかった蕾のコントラストが美しく映る。 恥ずかしさの余りに顔を伏せられるも、ブロンドの髪に隠された頬すら赤みを帯び、潤んだ瞳だけがこれから何を行うかと様子を伺っていた。
「フフン、そんな期待するなんてお仕置きが必要ダナー…?」
何も応えず、きゅっと口をつぐむペリーヌをよそにヘソから上へと線を引く様に、腹を舌先でなぞった。抵抗させぬよう、利き手の手首を握ったまま、何度も、何度も。なぞる度に腹筋が震え、か細い吐息が頭上から聞こえる。
そんな事もお構い無しに、引き締まった裸体を味わう舌は止まらない。もどかしさを与える事がお仕置きだとばかりに、大事な双丘の突起には触れず、その周辺を舐め回すのみ。 自身を襲う快楽に物足りなさを覚え始めた頃、ペリーヌはようやく自分こそが獲物なのだと自覚した、その瞬間だった。
高潔に、強く、美しくさえあったペリーヌのプライドは消え去り、浅ましくも見える雌の本性が顔を覗かせた。淫靡な声が漏れ、猫が人の手をねだるように腰をくねらせ、エイラの劣情を引き出そうとさえしている。そこに、あの気高いお嬢様の姿は無かった。
しかし、突如として眼前で乱れ始めたペリーヌにエイラは困惑した。何か、壊れる程の事をしてしまったのだろうか。幾ら考えあぐねても、その真意はわかる筈も無く……このまま楽しむ事に決めた。 ペリーヌの矯声を後に、その柔肌を味わい続け、指はついに決して触れなかった胸の突起へと伸びる。
指先でピン、と爪弾き、歯を立て、固くなったそれをいじるとペリーヌは一瞬で達してしまった。今まで以上に体を震わせ、シーツやエイラ、制服を汚してしまう。 絶叫に近い喘ぎ声も、最後の理性が出させまいと腕を噛む事で何とか抑えていられた。程なくして、快楽の波も収まると体も落ち着いた。
「あぁー、モー……制服がびちゃびちゃダゾ~…」
エイラは制服を脱ぎ捨てると、再びペリーヌに覆い被さった。
「次からは泣いても許さないからナ」
「や、優しく、って言いました、のに……」
息もまだ整っておらず、これからの期待と不安に満ちた、今にも泣きそうな瞳がエイラを捉えた。
「お前ナ~……」
ペリーヌをうつ伏せにさせ、背に体重をかけると一言。
「絶対逃がさないかンナ……」
そう、ボソリと後ろから呟いた。ペリーヌが何か言う前に、口へ指を滑り込ませると塗り込める様に口内で暴れさせた。指に伝わる舌の滑りに、ぞくそくとした興奮が襲ってくる。
当のペリーヌは、反論される前に突っ込まれた指を噛む事もできず、好き勝手にされるしかなかった。艶かしい声と共に、唾液の跳ねる音が耳に入る。
「やっ、はっ…んぁ、あう……~~!?」
口内を弄ぶ指に興奮を覚えてきた頃、抱えるようにしながら、今まで触れなった秘部へ指が潜り込んできた。何かを抗議しようにも、指が邪魔になってしまい、そうする間にも指はどんどんと奥へ入り込み、ペリーヌの意識すらも掻き回していく。 何度も体を重ね、弱点もほぼ知り尽くされた中では、ペリーヌも気を保つのがやっとだった。 指を伝い、滴る液体がその快楽の程を如実に示していた。
「はぁっ、くっ……あぁぁ……!」
深く息を吐き、堕ちる様な声をあげると下腹部に包み込まれた指が収縮を繰り返しながら何度も締め付けられる。それを見るなり、エイラは指を引き抜き、見せ付けるようにペリーヌの眼前へと晒した。
羞恥に耐えきれず、小声で違いますわ、などと言っても、ペリーヌにもわかっていた。エイラの指に絡み付いたソレは、確かに自分が漏らしたもの、垂れ流した物だと言う事を。
「ほら、綺麗にしてくれヨ……『いつもみたいに』、ナ?」
賢い狐は、哀れな黒猫を追い詰める。黒猫にはよもや逆らえる訳もなく……。
(こんな恥辱、どうして私が……何故……)
脳裏をよぎる疑問に解は無し。僅かにざらついた舌が指に触れれば、味覚が塩気をはっきりと認識させた。これがお前の味だと言わんばかりに、鮮烈に。
この光景に背徳的な快楽を覚えない者は少ないだろう。エイラは、目の前のお嬢様が見せる艶かしい姿に心を奪われかけていた。あと一歩の所で踏み留まる理由は、心にちらつくオラーシャ人の影。
自分が求めるのは安寧か、背徳の快楽か。今はその背徳に身を委ねる為に、再び臀部へ手を伸ばした。
指に食らい付いているのを良い事に、再び秘部へと手を滑り込ませ、指を絡めるように攻め立てた。だが先程とは違い、今度は背面から覆い被さり、絶対に逃がさないという無言の意思を示す。そして、背に重みを感じながらの行為というものは、抵抗の無意味さと息苦しさが快感を加速させる事をエイラは知っていた。
それから何時間、身体の自由を奪いつつ抱いただろうか。呼吸も整わず互いに体を委ね合い、犯し、味わい尽くした。 煌々と輝いていた太陽が、今や夕陽を彩るランプと化している。部屋の窓から吹く風が、二人分の汗や体液の匂いを攫っていく。二人は、暫く無言で抱きあったままだった。
「…そろそろ、片付けますわよ…」
先に口を開いたのはペリーヌだった。
「……ん……んんー!?」
無愛想に応えながら制服を着る為に起き上がろうとした瞬間、エイラの唇は柔らかく触れる物に塞がれてしまった。
「んん…っはぁ!…ふぅ、今日一日のお返しですわ。さ、一緒に片付けて貰いますからね」
暫く呆然とするエイラだったが、こういうのもアリかな、と思いながら、いつもの軽口を叩きつつ仲良く後始末をする事にした。
(久しぶりで燃え上がり過ぎたナ…)
ペリーヌの首筋には二つのキスマーク。 勢い余って付けてしまったが、仕返しされたのだからこちらも黙っておく事にした。そもそも、自分の背中にも大きな引っ掻き傷が残されている。お互い様というものだ。
その夜、二人揃ってサウナでからかわれるのはまた別のお話。
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