Tumgik
#獅子舞 ドッキリ
studiodiveoffice · 11 months
Text
天狗 が舞う-富山県 高岡市 国宝 瑞龍寺 - 獅子舞
国宝 瑞龍寺を訪れた一人の女性。魅せられた天狗が彼女の姿を追っていきます。目の前に現れた天狗に驚く彼女は富山で伝統の獅子舞の笛子でした。 天狗と笛子のひとときの舞が繰り広げられます。   瑞龍寺 について 国宝 瑞龍寺 (ずいりゅうじ)は、 富山県 高岡市 にある 曹洞宗 の 仏教寺院 。山号は 高岡山 。本尊は 釈迦如来 。開基は 加賀 前田家 3代目当主 前田利常 、開山は 広山恕陽 。 高岡城 を 築城 してこの地で亡くなった前田家2代目当主、 前田利長 を弔うために建立された。 天狗 について 越中富山 は 獅子舞 が多いところで、800箇所以上の伝承があるといわれている。 今回の 天狗 の舞は、 射水市 ( 新湊 )の団体のものです。 獅子舞 は 獅子 ・ 天狗 ・ キリコ 3つの役が出てきて、祭りを盛りあげる。
Tumblr media
View On WordPress
1 note · View note
groyanderson · 3 years
Text
ひとみに映る影シーズン2 第四話「ザトウムシはどこへ行く」
 ☆プロトタイプ版☆ こちらは無料公開のプロトタイプ版となります。 最低限の確認作業しかしていないため、  誤字脱字誤植誤用等々あしからずご了承下さい。 尚、正式書籍版はシーズン2終了時にリリース予定です。 (シーズン2あらすじ) 私はファッションモデルの紅一美。 旅番組ロケで訪れた島は怪物だらけ!? 霊能者達の除霊コンペとバッティングしちゃった! 実は私も霊感あるけど、知られたくないなあ…… なんて言っている場合じゃない。 諸悪の根源は恩師の仇、金剛有明団だったんだ! 憤怒の化身ワヤン不動が、今度はリゾートで炸裂する!! pixiv版 (※内容は一緒です。) ☆キャラソン企画第四弾 牛久舎登「かっぱさん体操」はこちら!☆
དང་པོ་  洗面所で顔を洗い、宴会場に戻る。時計は丁度六時をまわった所だ。ふと、窓の外から懐かしい歌が聞こえてきた。 『かっぱさん体操第一ィィィ!』『プッペケプッぺップー』 「うー。何だよぉこんな朝っぱらからぁー!」 「ふわあぁ~」 「ああ、かっぱさん体操の時間……」  朝っぱらから近所迷惑な体操音楽によって、佳奈さん、万狸ちゃん、玲蘭ちゃんが同時に布団から出てきた。玲蘭ちゃんと私はカーテンを開け、大音量で音楽を流しながら体操する河童の家教団を眺める。 「牛久の河童はかっぱっぱーのパァー」 「お皿を磨いてツーヤツヤーのツャー」 「「みんなで腹からワッハッハーのハァー、笑顔に勝るー力なし」」 「は? 二人なんで歌えるの?」  歌詞を暗記している私達を、佳奈さんが訝しんだ。 「佳奈さんの地元にはいませんでしたか? 河童信者」 「ぜぇんぜん」 「北関東から東北あるあるなんじゃない? 私も会津にいた時はほぼ毎朝だったのに、沖縄(うちなー)では一度も聞いた事なかった」  影電話で万狸ちゃんにも聞いてみる。 <木更津はどう?> 「一度だけ布教に来た事はあったね……あの体操で大狸様を怒らせちゃって、追い出されてた」 <あはははは>  河童の家、案外ローカルネタなのかな。 「じゃあ、どの学年にも一人はいる子河童も知らないですか? 佳奈さん地元は京都でしたっけ」 「ううん、両親両方京都だけど東京生まれ東京育ち……そもそも子河童って何?」 「そこからですか」  茨城県に本拠地を置く新興宗教、河童の家。元お笑い芸人の牛久舎登が発足し、『笑顔に勝る力なし』を教義とする。そのため宗教活動では一発芸や話術を磨く修行をし、信者は男も女も子供も、皆河童のように頭頂部を剃り上げる。この教団が近所にあると毎朝『かっぱさん体操』という体操曲が爆音でかかり、また近隣の学校には通称『子河童』と呼ばれるお調子者な学生が何人か生息する。そして彼らは将来、教団が運営する芸能事務所『かわながれ興業』に所属するんだ。でも人を笑わせる、そして人から笑われる事も最上の幸福であるという教えを拡大解釈した信者が、パワハラやいじめ、体罰を起こして時折問題になっている。 「私が知っている河童の家についての情報は、こんなところですかね」 「へぇ……やけに芸能界に影響力がある宗教だと思ってたけど、そんなだったんだね」 「ああ、東北も多いけど、大阪には芸人養成学校があるから日本一信者が多いんだって」  玲蘭ちゃんがスマホで調べてくれた。  その時、トントン、と襖がノックされる。 「おはよぉございます……。お嬢さん方。河童さんが体操終えて食堂混む前に、朝食行きませんか?」  タナカDだ。 「そうしよっか」  カメラが回るだろうから、私達は各々最低限顔を描く。眉毛面倒だから影で作っちゃった。後で朝風呂に入ってからちゃんと直そう。 གཉིས་པ་  食堂に行くと、奥の席で既にタナカDが朝食を一品ずつ物撮(ぶつど)りしていた。テーブルには全員分のネームプレートと朝食が配膳されている。 「ぅあ~~~~~~~~……」  席につくなり、佳奈さんからアイドルが一番出しちゃいけないような声が漏れた。 「どうしたんですか佳奈さん、まるで深夜バスにでも乗ってたみたいな顔して」 「似たようなもんだよ……ずっとすごい雷鳴ってたじゃん。しかもなんか救急車の音とかしなかった? それで朝はかっぱさん体操。ほぼ一睡もできなかった」 「救急車、ですか」 「はぁ……一美ちゃんは本当にどこでも眠れるよね……昨晩大雨だった事も知らなかったでしょ」 「うーん……」  本当の事を言うと、眠るどころじゃなかったんだけど。それを説明する事もできないからもどかしい。 「雷雨ぐらい気付いてました。私も全然休んだ気がしないです」 「でも寝てただけいいじゃん」 「嫌な夢を見てたんですよ。私は地元のお寺の尼僧になってて、お御堂のバルコニーが浸水して和尚様が馬頭観音になってすっごい怒ってる夢」  この内容は嘘ではない。そういう夢を見たのは事実だ。 「ば、罵倒観音? なにそれカオス……それはうなされるわ」 「おう何だ何だ、お二人共だらしないですなぁ!」  タナカDが物撮りを終えて席につく。彼は朝から声が大きい。 「まあ冷めないうちに食べようじゃありませんか。『じゅんなぎ』もありますよ」 「へえ、じゅんなぎですか」  手元のネームプレートを裏返すと、朝食メニューが書かれていた。 『朝食 おこんだて イシガキダイのちらし寿司 小松菜とかぼちゃのお味噌汁 わ���めの辛子味噌和え じゅんなぎ』  おお、朝からなかなか豪華だ。ちらし寿司は大きな鯛のお刺身がどっさり乗っていて海鮮丼のよう。お味噌汁のかぼちゃもほうとうを彷彿とさせる大きなスライスで食べ応えがある。わかめは勿論新鮮な生わかめ。そして、千里が島で一度は食べてみたかったじゅんなぎ! 「皆さん、これはですね。『蓴菜(じゅんさい)で鰻繋ぐ』、つまり『ヌルヌルした野菜でヌルヌルした鰻を捕まえるような行いは無謀である』という諺が由来の、千里が島の郷土料理なんです。蓴菜と冷製の鰻を湯葉で巻いてあるから、『不可能を可能にした縁起物』、すなわち霊力が上がるパワーフードなんですよ!」 「おぉいおいおい、紅さん。台本もないのに詳しいですなあ! ま、僕はじゅんなぎが無くても今日は無敵ですがねぇ……フフン」 「どうしてですか?」 「いやね? お二人が眠れない夜を過ごしていた間に恐縮ですけど。昨夜、狸おじさんのおかげですごぉく縁起の良さそうな夢を見ましてですねぇ!」 「へ?」  何の事ですか? と言いたげな��情で、隣のテーブルの斉一さんがこちらを見る。 「夢に人語を話す化け狸が出てきて、僕にお酌してくれるんですよぉ。なんかご利益ありそうでしょぉ。しかもただの化け狸じゃない、ドレッドヘアのちょいワル狸ですよ!」 「ぶっ!! げほ、げほ!」  斉一さんが辛子味噌和えをむせた。ていうか、その狸、完全に斉二さんの事じゃないか。 「い、いや、わざとじゃないんだよ!? なーんか俺もタナカさんと晩酌する夢を見た気がしてたんだけど、本当わざとじゃないのマジで!!」  当の本人は必死に否定している。要するに寝ぼけてタナカDに取り憑いたまま寝ていたという事らしい。どうりで今朝あんな事があったのに、斉一さんしか迎えに来なかったわけだ……! 「狸おじさん、風水的にはどうなんですか? ラスタな狸って縁起いいんですかね??」 「ん゙っ、ん゙んっ……き、聞いた事ないですね……あれかな! 昨晩私が張った結界が効いている証拠とか! はい、ぽ、ぽんぽこぽーん……ふっくくく……ぽっ、ぽこ……」  斉一さん、完全にツボに入ってしまったようだ。佳奈さんも釣られて肩を揺らしだした。 「ちょっふっふっふ……タナカDが能天気すぎるだけだよそれ! てか狸おじさん困ってるし……なにラスタな狸って!?」 「部屋にラスタな狸がいたら報告した方がいいですか?」 「あっはっはっはっは!!」  何故か玲蘭ちゃんまで佳奈さんに調子を合わせる。じゃあ私も。 「玲蘭ちゃん、ラスタな狸はタナカさんに譲るんで、可愛い女の子狸は私が貰っていい?」 「それなら昨夜ずっと一美の隣で寝てたよ」 「きゃー! アハハハ」  皆で和気あいあいと食事していたら、いつの間にかじゅんなぎを無意識に食べてしまっていた。けどなんか、別にもういいかな……という気分だった。 གསུམ་པ་  食後。手短に朝風呂に入り、軽く荷物をまとめてホテルを発つ。今日はまず主要な観光スポットを幾つか巡って、図書館で資料を見ながら埋蔵金の場所を推理する段取りだ。ロビーを出ると、青木さんが待ってくれていた。 「おはようございます。昨晩は凄い雨けど、ご快眠を?」 「全然だよー。そこの三角眉毛は別だけど」 「おう誰がデブで三角眉毛だとぉ? この極悪ロリータ」 「佳奈さんデブとは言ってないじゃないですか。いいから行きますよ、お二人共。青木さん困ってるでしょ」  手元で地図を見ながら、一行はまず徳川徳松こと御戌神(おいぬのかみ)が祀られる、御戌神社へ。ホテルから海沿いのなだらかな丘を五分ほど登ると、右手に見えたのは『石見沼(いしみぬま)』だ。青木さんが解説をしてくれる。 「中央に大きな岩をご覧で? あれに水切りで石当てるのに成功すると、嫌いな相手が怪我を」 「初っ端から物騒な観光スポットですね!?」  驚く私の背後で、カメラを抱えたタナカDがガハガハと笑った。 「これぐらいで驚いてちゃあ後が持ちませんよぉ紅さん! なにせ千里が島は縁切りのテーマパークですからなぁ。この後はもっともっと物騒な所をお見舞いしていきますよぉ」 「タナカさん、あなた本当にこの島を応援したいんですか? それとも視聴者をドン引きさせたいんですか?」 「ナハハハ、だぶか放送後は調布飛行場に行列が出来ているかもしれませんよ? 『あの紅一美がチビった恐怖の心霊島』と……」 「青木さん、石! 丸い石ください、水切りしやすそうなやつ!!」 「あややや、喧嘩はやめて下さいだぁあ!」  と、こんな所で尺を取っても始末に負えないから、小競り合いを演じたらさっさと移動する事に。暫く進み、御戌神社の鳥居が見えてきた。 「ウゲ……」  それを見た途端、私は絶句。それは鳥居と呼ぶには余りにも不気味な色に見えた。まるで糖尿病で壊疽を起こした脚みたいな……いや、この異常には心当たりがある。 「佳奈さん、この鳥居なんか変じゃないですか?」 「え、普通じゃない?」  思った通り、佳奈さんは平然としている。これは倶利伽羅龍王を討伐した時、地元の神様から聞いた現象だ。倶利伽羅を生み出した邪教、金剛有明団にまつわる物は、信仰心に準じて見た目が変わって見えるらしい。例えば倶利伽羅も金剛信者には美術品のように美しい龍に見え、金剛に恨みがある私には汚物にしか見えない。今回もそれと同じ……つまりこの神社は散減同様、金剛にまつわる領域なんだろう。我慢して入るしかなさそうだ。བཞི་པ་ まずは普通の神社と同様、手を清める。案の定手洗い場も気持ち悪く見えて、正直とてもじゃないけどここの水に触れたくない。ていうか臭い。牛乳を拭いた雑巾みたいな臭いがする。とりあえず口はつけず指先をちょっとだけすすいだけど、後で境外で肌荒れするまで手を洗いたい!  詳しく境内を見る前に、賽銭箱に小銭を入れて手を合わせる。金剛とこれ以上因縁が続いては困るから、小銭がない振りをして五円玉をタナカDからタカった。神様に手を合わせている間は金剛への嫌悪感を読み取られないように、無我を貫いた。  参拝が終わったら、境内を進み御戌神が眠る『御戌塚(おいぬづか)』へ。境内はそこそこ広い割に、随分と殺風景だ。まず社務所がない。青木さんいわく、神社境内に職員が常駐すると現世との縁が切れてしまうからだそうだ。そして狛犬もいない。御戌様が御神体だからだという。  奥へ進んでいる途中、私はふと左手に一際強烈な禍々しさを感じた。見ると竹やぶに覆い隠されるように、傘立てみたいな簡素な祠が建っていた。厳重にしめ縄が巻かれ、星型の中央に一本線を引いたような記号の霊符が貼ってある。 「青木さん、あれは何ですか?」 「大散減(おおちるべり)というオバケを封じた祠ですだ。あまり直視したら良くないかも……ああっタナカさん、撮影など!」 「ダメかい? そんなに恐ろしいオバケなの、そのオオチルベリってやつは」 「モチのロンだから! 体が五十尺もある、八本足にそれぞれ顔がついてて、そのうち本物の顔を見つけて潰さないと死なない怪物で! しかも人間の肋骨食べて、一本足のミニ散減を生み出すとか。だからともかく、大散減は撮っちゃダメですだぁ!」 「一尺って何メートルでしたっけ、なんだか想像つかないですなぁ~」  タナカDは渋々とカメラを逸らした。人間の肋骨から新たな散減を生み出す……昨晩、おばさまの肋骨から散減が生まれた瞬間を私は見た。それに、倶利伽羅龍王も……。  そして私達は御戌塚に到着。平将門公の首塚みたいなお墓っぽい形状の石碑を予想していたら、実際は犬の石像だった。徳松さんご本人は不在のようだ。恐らく既に成仏されたか、どこか別の場所にいるんだろう。 「あれ? 一美ちゃん、これ犬じゃなくない? タテガミがあるよ」 「これはどちらかと言えば狛犬ですね。狛犬は獅子に似ているんです」 「あ。確かに、普通の神社の狛犬も、タテガミ生えてたかも! そういえば、徳川徳松は狛犬の魂を持ってたんだよね。じゃあお犬様の犬種って狛犬なのかな?」 「あはは、そうかもだ。それと、志多田さん。御戌様はわんこの『犬』でなくて、十二支の『戌』という字を」 「へー、どうして?」  青木さんによると、戌という漢字は滅ぶという字が元になっているそうだ。植物が枯れて新たな命に変わる様子を表しているんだ。早逝して祟り神になった徳松さんをよく表していると思う。 「御戌塚から伸びる道は、竹やぶで薄暗いのが『亡目坂(なきめざか)』、奥の見晴らしいい方が『足失坂(あしないざか)』で。いずれも嫌な奴を思い浮かべながら歩くと、それぞれ違ったご利益がとか。ちなみに足失坂を途中で右に下ると『口欠湿地(くちかけしっち)』が……」 「青木さん、今は特に切りたい縁はないんで大丈夫です!」  さすが御戌神社周辺は地名が物騒だ。昨晩斉三さんが言っていた、『気枯地』という言葉がしっくり来る。これ以上ここにいても千里が島のネガティブキャンペーンにしかならなさそうだから、私達は次の場所へ移動する事にした。ལྔ་པ་ 足失坂を下り、ザトウムシ記念碑がある『千里が島国立公園』へ。物騒な地名とは裏腹に本当に見晴らしが良い。閉塞的な御戌神社から出た瞬間、空がばっと広がったような感じだ。麓に見える口欠湿地も空の青を反射して美しく輝き、それをタナカDが嬉々としてカメラに収める。千里が島の縁切りや祟りといった暗い側面だけじゃなくて、こういった絶景も収録出来たのは本当に良かった。  国立公園は坂中腹からふもとまでの広い敷地を有する。地面は芝生とシロツメクサで覆われ、外周は桜並木に囲まれている。ただ、やはり気枯地だからか、桜はどれ一本として真っ直ぐ生えていなかった。  ザトウムシ記念碑は簡素な作りで、歌詞と小さなイラストだけ書かれた石碑だ。歌い継がれてきた民謡のため、作詞作曲者は不明らしい。また隣にはザトウムシの生態を説明するパネルもあった。 「ええと、『ぼくはクモに似てるけど、ダニの仲間なんだよ! 八本足に見えるけど、そのうち一本は杖なんだよ! 一人ぼっちよりも、みんなで集まるのが大好きだよ!』なるほど……ザトウムシがワサワサ密集してたらなんかちょっと嫌ですね」 「僕前に公園のベンチで、黒いタワシみたいな塊落ちてて……触ると大量のザトウムシがブワササーと」 「やだー! 青木君やめてよ~」 「わはははは!! それは最悪ですなぁ!」  公園を抜けて市街地へ降りていくと、月蔵(つきくら)小学校と併設する町民図書館が見えてきた。カメラに群がる小学生達に軽くファンサービスしながら、図書館へと急ぐ。私がお目当ての子はみんな「ドッキリ大成功! したたびでーす!!!」と絶叫しながら全力疾走で追いかけてくる。佳奈さんの影響だ。私も期待に応えて校庭をダッシュしたら、地面から急にスプリンクラーが出てきて水を撒き始めた! 「ぎゃー! また騙されたーっ!!」དྲུག་པ་ 何とか濡れずに済むも、息絶え絶えで図書館に入る。トイレを借り、やっと手を洗えた! と安堵して戻ると、皆は既に資料が並べられたテーブルを囲んでいた。太っているタナカDと大柄な青木さんは、小学生向けの低い椅子で収まりが悪そうにモゾモゾ蠢いている。私も着席するとカメラが回り、タナカDが進行を始める。 「実際に歩かれてみて、お二人何かお気付きになった事はありますか?」  気付いた事か。幾つかあったけど、金剛有明団や霊にまつわる情報は直接共有できない。少しぼやかして話そう。 「斉ぞ……ええと、狸おじさんから伺ったんですが、植物が曲がって生える土地は風水的に不吉らしいんです。それで今日気にして見ていたら、御戌神社がある坂の上に近づくほど木がねじれたりしてて、海沿いの石見地区や市街地である月蔵地区はそうでもないんです」 「御戌様が埋蔵金を守ってるからかな? じゃあ神社の近くが怪しいね!」  佳奈さんが消せる蛍光ペンでコピー地図を囲んだ。 「不吉な場所ですかぁ。だぶか神社から一番遠い南側、竹由……こりゃ『たけよし』で合ってるかい?」 「ですだ」 「竹由地区ね。この辺はまっすぐ生えてるんですかねぇ」  確かに地名に『よし』が入っていて、島の南側は縁起が良さそうではある。私達はまだ行っていない竹由地区の資料を見ると、小さなお寺が一つあるだけで後は住宅街のようだ。 「志多田さんはどうだい?」 「うーん、埋蔵金については何もなかったかなー。ところで青木君、この地図のここ、誤植じゃない?」 「え、誤植で?」  全員で地図を確認する。佳奈さんが指さしている箇所には、『新千里が島トンネル(旧食虫洞)』と書かれていた。昨日、私と青木さんが行ったコンビニの所だ。 「食虫……洞? 確かに変ですね。『虫食い洞』なら虫がトンネルを掘ったような感じで意味が通じるけど、食虫洞じゃ洞窟が虫を食べちゃうみたい」 「でしょでしょ? それともウツボカズラがいっぱい生えてるのかな」 「いえ、『食虫洞(くむしどう)』が正解で。ウツボカズラは生えてねぇけど、暗いから虫を食うコウモリが住んでるかもだ」 「うーん、そういう問題なのかな……? まあ関係ないからいっか……」  佳奈さんは煮え切らない顔のまま、地図を机に置いた。タナカDが仕切り直す。 「じゃじゃじゃあ、まずは今まで埋蔵金探しに失敗した方々の仮説を見てみましょうよ! 青木君」 「はい、こちらを」  タナカDは青木さんが差し出した資料を私達側に向ける。インターネット上で日本各地の徳川埋蔵金に関する情報をまとめたサイト、『トレジャーまとめ』さんの記事コピーだ。これまでザトウムシの歌詞をもとに埋蔵金のありかを探索した人々のレポートらしい。上からざっと目を通す。 ・その一 ザトウムシは座頭、盲目の暗喩だ。歌詞の『ザトウムシ』という言葉の総文字数を歩数として、記念碑から亡目坂を登る。そして到着地点の地面を掘ってみた。  結果 何も出てこなかった。これを試みた探索者の一人が島を出た後(以降は修正液で消されている) ・その二 『水墨画の世界』は白黒、あの世を表している。竹由地区には名前に『虫』がつく虫肖寺(ちゅうしょうじ)があり、そこには墓地が隣接している。その墓地で、黄昏時に太陽が見える西側の井戸内を調べた。  結果 何も出てこなかった。これを試みた探索者全員が数日後、(以降は修正液で消されている) ・その三 ザトウムシが埋蔵金を表しているなら、食虫洞は金を蓄える隠し場所に違いない。歌詞の通り、黄昏時から逢魔が時にかけての時間、トンネルを調査した。  結果 翌々日、(以降は数行にわたり修正液で消されている。塗りこぼしから微かに『トンネルが永遠に続いて外に出られ』という一文が垣間見える) ・その四 『口欠』『足失』『亡目』など体の欠損にまつわる地名は心霊現象や祟りが多いという。その三箇所いずれかに宝があるとみて、調査した。  結果 それらの地点には共通して護符の貼られた祠があり、護符を剥がした探索者は肋(次の行以降は紙ごとハサミで裁断されている) 「「いや怖いわ!!」」  全部読み終わる前に佳奈さんと異口同音! 「ちょっと青木君、これ元は何て書いてあったの!?」 「すいません、あんまりにも酷いデマなどが。根も葉もねぇので僕が修正を!」 「本当にデマなんでしょうね!?」 「嘘こいてねぇです、本当に事実無根なので! 大体、コトが事実なら普通新聞に載るなど……」  事実なら新聞に載るほどの事が書いてあったのか。これは下手に島を引っ掻き回すと、またとんでもない事になりそうだ。 「まあまあまあ、お嬢さん方。要はあなた方がね、埋蔵金を見つけちゃえばいいんですよ」 「なに他人事みたいに言ってるんですか、この三角眉毛は。祟られる時は全員祟られるんですよ? わかってんですか?」 「そーだそーだ、デブちん三角眉毛!」 「おう遂にちゃんとデブって言ったな!? 今日の僕にはラスタな狸がついているんだ。一人でもしぶとく生き残ってやるぞぉ」 「一美ちゃん、ちょっと今夜御戌神社で丑の刻参りしよっか」 「了解しました。加賀繍さんのぬか床に五寸釘入ってるから分けてもらって……」  ん? 「佳奈さん、今の言葉もう一回いいですか?」 「え? だから、『御戌神社』で『丑の刻参り』」 「……それだ!」  ラッキー! 今の超下らないやり取りで、歌詞の謎が一つ解けたかもしれない! 「おぉ何だい、そんな聞き返すほど僕を呪いたいのか小心者」 「違いますよ。見て下さい、歌詞の一番と二番の冒頭……」  ザトウムシの一番、二番の歌い出しは、それぞれ『たそがれの空を』『おうまが時の門を』だ。 「いいですか? 昔の日本は十二時辰(じゅうにじしん)、つまり十二支で時間を測る単位を使っていました。その単位では、『逢魔が時』と『黄昏時』……つまり夕方から夜に変わる時間帯は、『酉の刻』と『戌の刻』になるんです」 「じゃあ歌詞に当てはめると、一番は『戌の刻の空を』、二番は『酉の刻の門を』に変換できるって事?」 「はい。ここで思い出しませんか? 御戌塚から伸びる二つの道」 「薄暗い亡目坂と、見晴らしがいい足失坂……あ��、『戌』から『空』が見えるのは足失坂だ!」 「そうです。しかも続きの歌詞が『ふらついた足取りで』、足って言ってるんですよ! 一方二番……酉の門といえば?」 「神社の『鳥居』! 坂からまた神社に戻っちゃってる!?」 「そうなんです!」  つまり、私の説はこうだ。この歌は埋蔵金のありかを一箇所漠然と示しているんじゃなくて、そこに至る道順のヒントが歌詞になっているんだ。御戌塚から始まり、足失坂を通って何らかのルートを経由。やがて神社に戻って、そこからまたどこかへ行く……こうして遠回りをする事自体が、埋蔵金を発見するために必要なのかもしれない! 「なるほど、道順を! それは今まで誰もやらなかったかもだ……それにしても、お若いのによく十二支の時間をご存知で?」 「あはは、青木さんより若くはないですよ~。小さい頃ちょっとだけお寺に住んでた事があって、こういう���史っぽい雑学にちょっと明るいだけです。ただ……」  残念ながら、歌詞に干支にまつわる描写はそれしかないんだ。そこから先の謎はまだわからない。私が自説をフリップに書き終えると、タナカDが佳奈さんに話を振る。 「志多田さんどうですか? 紅さんがワンアイデア出しましたよぉ」 「急かさないでよー。私まだ食虫洞の謎が頭から離れないんだから。そーいうタナカDこそ何かないの?」 「僕かい? そうですな……このサビの、『月と太陽が同時に出ている』って、日蝕か月蝕って事でしょ? 千里が島で日蝕月蝕が観測された事って歴史的にあるんですかねぇ?」 「え? この歌詞って単純に黄昏時の事じゃないんですか?」 「あ、そうか。そりゃ黄昏時には月と太陽が両方見えますな」  すると今度は佳奈さんが閃いた。 「ちょっと待って、日蝕……?」  佳奈さんは私の手元から地図を取り上げ、食い入るように見つめ始める。 「……しょく、ふき、ぞう、すずり……」 「佳奈さん?」 「あー、そういう事かあ! これ、千里が島の地名ってさ、繋げるとみんな漢字一文字になるんだ!」 「え、そうなんですか?」 「どういう事で?」  青木さんも知らなかったようだ。全員興味津々で佳奈さんの指さす地図に見入った。 「例えばこれ、食虫洞はさ、食と虫を繋げて書くと日蝕の『蝕』になるでしょ。亡目坂は盲目の『盲』、月蔵は臓器の『臓』」 「すごい、本当ですね! 石見は書道の『硯(すずり)』、竹由は『笛』ですか。あれ、でも足失坂は……」 「『跌(つまずく)』。常用漢字じゃないけど」 「つまずく?」  タナカDは自分のスマホで『つまずく』と入力し、跌と変換できるか試みた。 「ああ、跌(つまずく)だ! 確かに跌ですよ跌! いや、よく読めますなあ。ところで佳奈さん、最終学歴は?」 「いちご保育園だってば。何度も聞くなー!」  佳奈さんは国文学分野で大学を卒業しているけど、年齢不詳アイドルである彼女にとってそれは公然の秘密だ。タナカDはそれを承知の上で度々ネタにしているんだ。 「あれ、佳奈さん。それを当てはめたら歌詞解読できるかもしれませんよ!」 「え本当? よーし、やってみよう!」  こうして数十分試行錯誤しながら、私達したたびチームの歌詞解釈はほぼ完成した。それが、こうだ。 たそがれの空を  ザトウムシ ザトウムシ歩いてく   (御戌塚から始まり、空が見える方向へ進む)  ふらついた足取りで  ザトウムシ歩いてく   (そのまま神社境外に出て、つまずきやすい道、つまり足失坂へ進む) 水墨画の世界の中で  一本絵筆を手繰りつつ   (足失坂のふもとから水墨画の世界、硯と水を象徴する石見沼へ進む)  生ぬるい風に急かされて  お前は歩いてゆくんだね   (石見沼から風が吹く方向、口欠湿地方面へ進む) あの月と太陽が同時に出ている今この時  ザトウムシ歩いてく  ザトウムシ ザトウムシ歩いてく   (口欠湿地から月が太陽を蝕む場所、旧食虫洞へ進む) おうまが時の門を  ザトウムシ ザトウムシ歩いてく   (食虫洞を抜けた所から丘を登り、御戌神社の鳥居をくぐる)  長い杖をたよって  ザトウムシ歩いてく   (神社境内から視覚障害者が杖を頼りに歩くような暗い道、亡目坂へ進む) ここまで考察した段階で、地図に道順を引いていた佳奈さんがペンを止めた。 「何これ……星……?」  蛍光ペンで地図に書かれた道筋は、島の中心に魔法陣のような模様を描いていた。五芒星の中心に一本線を引いたような、シンボルを。 「佳奈さん。まだ、解読できてない歌詞は残ってますけど……これはこの形で完成だと思います」 「一美ちゃんもそう思う? これ以降の歌詞って、対応する地名が見当たらないんだよね……」 「青木さん」  私はさっきの埋蔵金探し失敗談を手に取る。 「この消されている箇所、要するに全部『祟りがあった』って事ですよね?」 「はい……あ! いえ、そんな事は……」 「そうなんですね。つまり余所者が千里が島を検めるためには、正しい儀式か何かを踏まないと祟りに遭う。その儀式の方法こそが、この民謡ザトウムシに隠された暗号の正体だった」 「……」 「私、さっきこのシンボルを見たんです。御戌神社の、祠で……」  もう私の中で謎は核心に迫っていた。霊能者達は今それぞれ除霊活動に励んでいるけど、『ザトウムシ』……恐らくは、怪物の親玉であるそれを倒さなければ島の祟りは終わらないのだろう。 「結論が出ました、青木さん。ザトウムシは、徳川埋蔵金のありかを示している歌じゃありません。私はこれを……八本足の怪物、大散減を退治するための手順を示した歌だと思っています」  衝撃的な結論に全員が呆然としていると、窓の外で何かが破裂するような音がした。更に間髪入れず、河童信者が一人血相を変えて図書館に飛びこんでくる。 「たた、た、大変です! 大師が……大師が……紅さん、ともかく来てください!」 「え? どうして私が……うわあ!?」  河童信者は乱暴に私の腕を掴み、外へ連れ出した。他の皆も続く。牛久大師が私を指名したという事は、また散減が現れたのだろう。けど今はカメラが回っている。玲蘭ちゃんや万狸ちゃん達は別行動だし……私、どうすればいいの!?
0 notes
re2-01yasu · 4 years
Video
youtube
4月25日土曜日よる7時からはドッキリGP2時間SP! ~ フジテレビ番組動画 4月25日土曜日よる7時からは「芸能人が本気で考えた!ドッキリGP」2時間SP!! 大好評「秒でドッキリ」で帰国直前のウエンツ瑛士にロンドンで…獅子舞が離さない!? 高跳びで驚異のジャンプ力を見せた日光猿軍団が今回は幅跳びに挑戦! 新旧ボス猿の熱き戦いが繰り広げられる! 浜口京子に恋愛サプライズ!? 小学生の修学旅行で1日先生を務める浜口京子に数々の恋愛相談が…!どうする!? 妖怪ドッキリ新企画「妖怪アパート」! 妖怪たちがターゲットにバレないようにこっそりひっつき虫をひっつける! 鉄道好きの子ども達にサプライズ! 超貴重体験をかけた鉄道早押しクイズで大白熱! オフィシャルサイト:https://ift.tt/2FAhYY8 From Things I'm interested in https://ift.tt/3anllvj
0 notes
Text
仏の御心に触れるアドベンチャーカードゲーム「なむあみだ仏っ!」イベント「第二回梵納寺魔滅まき大会~穀霊大盤振る舞い!?~」を開始
Dr.STONE全巻セット週刊少年ジャンプ連載中、ドクターストーン26話「Z=26 」のネタバレ。 画バレ(画像バレ)の掲載はありません。 あさぎりゲンの石化が解かれたのはゲンと千空が出会う10日ほど前だった 司が復活液をゲンに浴びせる 復活したゲン「…何これドッキリ~?マネージャーに止められなかった?」 ゲン「俺メンタリストだから仕掛け人の仕事なら受けるけど…」 司「今日は西暦5739年。でも君は19歳のままだ」 ゲン「霊長類最強の男…獅子王司ちゃん…!」 司「ここには君を含めて優先的に復活させるべき人間の石造を集めているんだ」 ゲンが振り返るとたくさんの若者の像が集められていた 司「君のメンタリストとしての腕を見込んで頼みたいことがある」 司「あくまで念のためだが千空という男がまだ生きているなら探し出してもらいたい」 司「俺がこの手で殺めた世界一切れる男だ」…
View On WordPress
0 notes
groyanderson · 5 years
Text
ひとみに映る影 第二話「スリスリマスリ」
☆プロトタイプ版☆ こちらは無料公開のプロトタイプ版となります。 段落とか誤字とか色々とグッチャグチャなのでご了承下さい。 書籍版では戦闘シーンとかゴアシーンとかマシマシで挿絵も書いたから買ってえええぇぇ!!! →→→☆ここから買おう☆←←← (あらすじ) 私は紅一美。影を操る不思議な力を持った、ちょっと霊感の強いファッションモデルだ。 ある事件で殺された人の霊を探していたら……犯人と私の過去が繋がっていた!? 暗躍する謎の怪異、明らかになっていく真実、失われた記憶。 このままでは地獄の怨霊達が世界に放たれてしまう! 命を弄ぶ邪道を倒すため、いま憤怒の炎が覚醒する!
(※全部内容は一緒です。) pixiv版
 ◆◆◆
 「いつも通り一美ちゃんの人権を無視して拉致が敢行されんとしていた、その時! 我らが極悪非道ロリータの志多田佳奈(しただかな)ちゃんは、ひょんな事から英雄物流(ヒーロジスティクス)密売事件の重要人物、石油王こと平良鴨譲司(へらがもじょうじ)氏と再会する! かくして始まった「したたび」放送開始以来異例のインタビューはまァだまだ続く! それではまた来週~!」
 譲司さんをテレビ湘南(しょうなん)のクルーに連れていかれて、私はオリベさんと、彼女が連れてきた高校生ぐらいの女の子を乗せたミニバンを運転し、先に熱海町に向かう事にした。
 大人になって東京でファッションモデルをしていた私は、たまたまオーディションに受かったヒーローショーイベントの仕事でアイドルの志多田佳奈さんと出会い、 それ以来彼女の冠番組「ドッキリ旅バラエティしたたび」に、ドッキリ企画と称していつもノーアポで連れ回されている。 テレビ出演が増えたのは嬉しいけど、最近の私にはまるでプライベートがない。 テレビ局は何故か事務所とグルで私のスケジュールを完全に把握しているし、いざ連れていかれると、 原付で一都六県を一周させられたり、ドーバー海峡をスワンボートで横断させられたり、ともかく割に合わない過酷なロケに付き合わされる。 なので今回あの番組の矛先が譲司さんに向いたのをいい事に、私達はこれ幸いと先に行かせて頂く事にしたのだった。
 撮影が一段落つくだろう時間を見計らい、矢板(やいた)のサービスエリアで一旦休憩する。 オリベさんが譲司さんに「終わったら新幹線で来てね」とメールを入れている間、私は後部座席で背中を丸めている女の子を見た。 パステルピンクのドルマンスウェットと同色のシュシュ、真っ赤なバルーンスカート。典型的なオルチャンファッションだ。
 <さすがファッションモデル、よくわかったわね。その子は韓国人よ>
 隣のオリベさんが目で語ってくる。 医療機器エンジニアのオリベ・ヒメノさんは、子供の頃に脳神経をやられて声を失ってしまったユダヤ人の女性だ。 でもその代わりに、脳から直接テレパシーを送受信する力を持っている。だから日本語が喋れなくても会話できる。
 今回熱海町に行くメンバーは全員、NICという脳神経科学研究機関の関係者で、その中でも脳の異常発達や霊能力によって特殊な力を使える人達だ。 数時間前に連れていかれた譲司さんも、肺に取りこんだ空気の成分や気圧差で色んな事を読み取るダウジングや、物に触って過去を読むサイコメトリーといった「特殊脳力」を持っている。 だから多分、この子も「特殊脳力者」なのだろう。 顔色が良くないので、休憩所に連れていく事にした。
 「Sorry for the late introduction, because I was driving. I’m Hitomi. And how can I call you?」 (運転中に自己紹介できなくてごめんね。 私は一美です。あなたのお名前は?)
 涼しい外のベンチに並んで座り、私はとりあえず英語で話しかける。 先述の「したたび」で度々海外ロケにも連れていかれるせいで、ある程度英語が話せるようになっていたのは不幸中の幸いというか、怪我の功名というか。 でも女の子は俯き加減のまま私を見上げて、消え入りそうな声で「日本語でいいヨ」と言った。
 「私パク・イナです。日本語の方がいい。 ヒトミさんテレビの韓国で見てた知ってるます。会えたの嬉しいヨ」 イナちゃんと名乗った女の子は、少しカタコトだけど聞き取りやすい日本語でスラスラと答えた。 でも、「会えたの嬉しい」と言う割にはまだ元気がないように見える。  「酔っちゃった?できるだけ安全運転したけど、ごめんね…」 背中をさすろうと思って彼女に触れると、小刻みに震えていた。
 「スリスリマスリ…スリスリマスリ…」 よく耳をすますと、イナちゃんは両手を強く握りしめてなにか呟いている。 意味はわからないけど、韓国語か…
 その時、ふと目線を上げると、ベンチの周りに数匹のカラスが集まっていた。いや、カラスだけじゃない。  「ニャーン…」背後から猫の鳴き声。 振り向くとそこには、おびただしい数の動物霊、交通事故死した人間の浮遊霊、魂未満の小さな鬼火、生きた野良猫、蟻やゴキブリ、目の焦点の合っていない小さい子供… 自我の弱い生き物や魂達が、私達の半径2m外を取り囲んでいた。
 「ひっ…」恐怖で声が出そうになるのをこらえる。 動物霊はこちらが見えている事に気付くと襲ってくる事があるから、なるべく目を合わせないようにしなければいけない。  「スリスリマスリ…スリスリマスリ…」 イナちゃんが何と言っているかはわからないけど、その言葉のおかげで集まってい��ものたちがそれ以上近寄って来ない事を直感で理解する。しかし、
 バサバサバサッ!!喫煙所の屋根から土鳩の群れが私達めがけて飛来し、イナちゃんは驚いて呟きを止めてしまった。 すかさず大量の霊魂と生物が私達に押し寄せる!
 私はイナちゃんをかばいながら、足の裏の自分の影に意識を集中させた。 幸いその日はカンカン照りの快晴、光源は充分ある。 床に置いたワンピースを下から持ち上げて着るように、自分達の体を影で覆いながら、周囲の光の屈折を歪める。 私達を覆う影が濃くなるにつれて、その分行き場を失った光線が影の外縁で乱反射する。 その反射率がほぼ100%になると、私達の姿は彼らから全く見えなくなった。影法師の「影鏡(かげかがみ)」という術だ。
 彼らは目標を見失って立ち止まった。しかし未だに私達を取り囲んだまま動かない。 私は第二の手に出る。影鏡の輪郭を半球状に広げながら屈折率を更に強めていく。 自分達の視界が完全な漆黒になるけど、その外側は電球のように光っているはずだ。 そのまま集めた光を360度放射する。  「ぎゃあああ!」幾つか叫び声が上がると同時に視界が戻ると、彼らは強烈な紫外線を浴びて散り散りに逃げていた。  「今のうちに戻るよ!」 私はイナちゃんの肩を押して車へ駆け戻った…。
 ◆◆◆
 <さすがね、ミス・ヒトミ!イナをあなたに任せた甲斐があったわ> 運転を交代してくれたオリベさんが、まるでヒーローショーでも見ていたかのように呑気に言う。 イナちゃんは極度の「引き寄せ体質」で、特に精神的に緊張したりストレスを感じてしまうと何でもかんでも引き寄せてしまうらしい。 韓国で色んなお寺や教会、霊能者を頼ってもどうにもならず、ご両親がダメもとで病院に連れて行ったら、NIC会員の医師に研究対象として保護された。 そして来週からインドネシアにある脳力者児童専門の養護施設、「キッズルームバリ島院」にて、体質をコントロール出来るようになるまで住みこみでリハビリする事になったという。
 <イナのギャザリング体質は今回のミッションに適しているわ。 ジョージも丁度来週からバリ島院の養護教諭になるし、日本で待ち合わせて一緒に出発しましょうって話になったの。 この子がタルパの聖域フクシマに行くと思うと…とってもワクワクするわね!>オリベさんが意地悪に笑う。  「いやいやいや、本人はとってもビクビクしてるんですけど!?福島の心霊スポット系は本当にヤバいんですよ!! ていうか肝心の譲司さんが別行動ですし!」  <平気平気!あなたが付いているもの。 それにインドネシアの悪霊は韓国や日本のよりも刺激が強いから、少しぐらい鍛えておかなきゃでしょ>
 確かにオリベさんの言う通りではあるけど、当のイナちゃんはあれからずっと私の腕にしがみついている。 (オリベさんに運転を変わってもらったのはこのためだ。) ちなみに刺激が強いというのは、物理的に交通事故などの事故死亡率が多い国は当然幽霊もスプラッターな姿の方が多いという事だ。 私も「したたび」でインドネシアに行ったことがあるけど、実際バイク大国で信号が少なかったし、 観光客がバシャバシャ写真を撮っている公園で白昼堂々首なしの野良犬の霊がうろついていたのも確かだ。
 「イナちゃん大丈夫だよ。福島は色んな姿をした人工の魂が多いから、幽霊さん達も死んだ時のままじゃなくて、 おしゃれに自分の好きな姿にしてる方が多いんだ。 ゾンビみたいな人はめったにいないから、安心して。 そうだ…おしゃれといえば、渋谷とか原宿には行ったことある?」
 私が「渋谷とか原宿」と言った瞬間、曇っていたイナちゃんの目がキラリと輝いた。  「シブヤ、ハラジュク!」 やっぱり。オルチャンガールだから反応すると思った。
 「かわいい物は好き?」 「かわいい」という単語を聞いて、イナちゃんの表情が更に明るくなる。  「うん!日本のかわいい好き!! 大人になったらアイドルになりたいです。だから日本語勉強してるだヨ! 「したたび」のカナちゃんは一番好き日本のアイドル!」 一気に饒舌になって力説し、一瞬はっとして「でもヒトミちゃんも同時な好きヨ!」と小さくフォローを入れてくれた。 いつの間にか「ヒトミさん」が「ヒトミちゃん」になっていたのが、ちょっと嬉しかった。  「じゃあ無事にこの旅が終わったら、一緒に渋谷と原宿でお買い物しようね」
 その後の車内は、熱海町に着くまでさながら女子会のようにずっと盛り上がっていた。 それぞれの国にあるかわいい物、悪い霊から身を守る色んなおまじない、 最近流行っているコーデ、スイーツ、 それに三児のママであるオリベちゃんの子育て苦労話も。 気がつくと私達全員が全員をちゃん付けで呼び合うようになっていた。 この旅の本来の目的については、誰一人触れようとしなかった。
 ◆◆◆
 「磐梯熱海温泉(ばんだいあたみおんせん) 右折」という三角のモニュメントを確認して、熱海町に入ったのを実感する。 ここは東北新幹線の停まる郡山(こおりやま)駅からも近い温泉街だ。 都心の観光地に比べると小さい町だけど、町内には温泉やスポーツ施設、無料で入れる足湯などがあり、県内外の人々に愛されている。 駅から安達太良山(あだたらやま)の方向に登っていくと石筵だ。 私や玲蘭ちゃんが修行していた霊山や、その更に奥には牛の乳搾りやバーベキューを楽しめるふれあい牧場がある。 残念ながら今回は遊びに来たんじゃないけど、目的が早く済んだら観光案内をする約束だ。
 貸し切り民宿に大きな荷物と車を置いて、ようやく私達は本題に入った。
 <イナちゃん。NIC会員の規定は知っているわよね?> オリベちゃんが真剣な目でイナちゃんを見据える。 イナちゃんは緊張した声で答えた。  「はい。ひとつ、自分のセレキック・アビリティ(超脳力)、人を助けるに使うこと。 ふたつ、私は医療発展に大事な人だから、自分とアビリティ一番大事なすること。 みつ…犯罪するセレキックいたら、積極的原因究明すること」
 イナちゃんが私にも伝わるように日本語で言ってくれたNIC会員規定は、私も会員登録の時に一読した事がある。 NICは医師団の組織でありつつ、警察と協力して超脳力者が関与する事件の捜査をする義務もある。 そういった事件には、一般的な事件捜査では処理できない超常的な現象や証拠があるからだ。
 <その通りよ。あなたにはこれから、その引き寄せ体質でとある行方不明の脳力者捜索を手伝ってもらうわ。 但しもちろん、いつだってあなた自身の身の安全が最優先よ>  「…はい、覚悟準備終わてます」 気丈に答えるイナちゃんだけど、まだその表情は固く、私はサービスエリアでの不安そうな彼女を思い出した。 ひょっとしたらこの件はイナちゃんにとって、自分のコンプレックスである体質が、初めて人のために役立つ機会なのかもしれない。 それに「犯罪捜査」なんて言われると、なにか恐ろしい事に関わるんじゃないか…というイメージもあると思う。 そう考えると緊張するのもわかる気がした。 でも、オリベちゃんは優しく微笑み、鞄から小ぶりな米袋ほどの大きさの何かを取り出した。
 <唯一の手がかりは…これよ> それは人形だった。色褪せた赤青の布を雑に縫い合わせて作られたものだ。 手足がなく、顔も左右ちぐはぐな目をしたブリキのお面で、背中側にはネジや釘が飛び出した機械がついている。 人形を手渡されたイナちゃんが不思議そうに機械のハンドルを上下すると、それに連動してお面の顎もカコカコと上下する。 まるでゴミ捨て場のガラクタで作った獅子舞のようだ。
 <その人形には昔、ジャックというタルパが宿っていた。彼は私やジョージの幼馴染だったの。 でもジャックの魂は日本で行方不明になってしまっていて、これから私達は彼を探しに行くのよ>  「たるぱ?」  「人工妖精、人が作った魂のことだよ」 首を傾げるイナちゃんに私が補足した。 この熱海町や石筵、県外からの修行者も訪れる魂作りの聖地なら、ジャック君が見つかるかもしれない。 オリベちゃんはそう考えて私に案内を依頼したのだった。
 <地味な依頼で拍子抜けしたかしら?>オリベちゃんが人形の金具を弄びながら言う。  「そ…そんなことないヨ!お友達探す頑張ります!」  <ありがとう、心強いわ!じゃあヒトミちゃん、案内をお願い>  「はい。まずは、この辺りの神様であるお不動様と萩姫様のお寺に挨拶に行きます。 萩姫様は影法師のお姿をお持ちで話が出来るから、ジャック君について聞いてみましょう」
 ◆◆◆
 温泉街から見て駅の反対側へ抜けると、萩姫様の伝説に縁のある五百川(ごひゃくがわ)があり、萩姫様がお住まいの大峯不動尊はその先の小高い丘の上に建っている。 私は同伴者二人をそこに案内し、鈴を振り鳴らしてから真言を唱えた。 すると屋根の下の日陰が一箇所に集まっていき、大きな市女笠を被った女性のシルエットになった。この方が萩姫様だ。 その影の御姿はよく目を凝らして見れば、細かい陰影によってお顔や着物の細部まで鮮やかに視認できる。
 「ようこそいらっしゃいました、旅のお方よ…」 そう言いかけた萩姫様が笠の下から私達を見上げると、アルカイックな営��スマイルが驚きの表情に変わった。  「…あれ、ひーちゃん?」
 「お久しぶりです、萩姫様!」  「なんだぁ、ひーちゃんならわざわざ真言で呼ばなくてもいいのに」  「親しき仲にも礼儀ありってやつですよ。それに、お客さんの手前だから格好つけたかったし」 私が同伴者2人に目配せすると、笠を脱いで足元の影に放り投げようとしていた萩姫様が慌ててそれを被り直し、再びアルカイックなキメ顔を繕った。 オリベちゃんがくすっと口角を上げ、<似てるのね、あなたとプリンセス・ハギって!>と私にテレパシーを送った。
 私達は萩姫様に人形を見せ、事情を説明する。  「うーん…人形に見覚えはないな。その『じゃっく君』を作った人の名前はわかる?」  「はい。サミュエル・ミラーというアメリカ人です。 日本に帰化して、今は水家曽良(みずいえそら)と名乗っているそうです」 萩姫様は少し考えた後、  「…うん、やっぱり知らないな。何かわかったら連絡するね」人形をイナちゃんに押し返した。
 「そうなんですね。じゃあ、私達は別の場所を当たってみます」  「ああ、その前に。その子を源泉神社に連れて行きなさい。 倶利伽羅龍王の祈祷を受けると良いでしょう」  「クリカラ…リューオー」 イナちゃんが不思議そうに首をかしげる。倶利伽羅龍王とは、燃え盛る龍の姿の不動明王の化身。 よく不動明王像が持っている、剣に巻きついた炎の龍…あれの事だ。 源泉神社にかつてリナに知恵を与えた龍神様がいるのは知っていたが、それが倶利伽羅龍王だったというのは初耳だ。 私達は萩姫様に改めて一礼し、源泉神社へと向かった。
 源泉神社はケヤキの森遊歩道というハイキングコースの先にある。 五百川の裏山にあるこの遊歩道で、森林浴によって心身と魂を清めながら神社に向かうんだ。 直線距離の長さも然ることながら、山の高低差のせいで、これが意外ときつい。 私は二人がついてきているか確認するために振り向くと、オリベちゃんが何だか訝しげな顔をしているのに気がついた。
 <あのプリンセス、何か隠してる気がするわ。今はまだ、わからないけどね> 私の視線に気付いたオリベちゃんが言う。 実は私もそんな気がしていた。けど、長いハイキングコースを引き返す気にもなれず、 私達は予定通り神社へ向かう事にした。
 ◆◆◆
 丘を下ったところにその神社はあった。 入口では小さな龍を象った蛇口から飲用可能の源泉が垂れ流されている。この龍が魂として独立したのが例の倶利伽羅龍王だろうか。 どうやら龍神様は留守のようだったので、先に社に挨拶に向かうと、私はふと違和感を覚えた。
 「ヒトミちゃん?どしたの?」  「そういえば、ここ…稲荷神社だ」  「イナリ…スシ?」
 「うんとね…。ここはオイナリ様っていう、作物の神様を祀る神社なの。 倶利伽羅龍王は仏様の化身だから、どうして神道の神様がいる神社に住んでるのかなって思って」  <それは宗教が違うって事?シュラインの中の神様に聞いてみればいいんじゃない?>  「それが…、ここのお稲荷様、霊魂として形成されていないんです。 社の中のご神体にこの地や神主様のエネルギーがこもっているけど、自我はお持ちじゃないみたいで…。 それも、ヘンですよね。どうして鳥居の外の龍神様だけ魂になってるんだろう」
 すると、誰かが鳥居の外から私の疑問に答えた。  「ここはクリカラの数ある別荘の一��って事よ」 聞き覚えのある男性声に私は振り返った。いや、この声は、『彼女』のものだ…。
 「リナ!」 いつの間にか、神社の入口に巨大な霊魂が立っていた。 私が中学生の時に生み出したタルパの宇宙人、リナだ。 リナはロングスカート状の下半身をフワリと浮かせ、社への階段を飛び登った。
 「キャ!」驚いたイナちゃんが尻餅をつく。  「マッ失礼ね!人の顔見てキャ!だなんて」  「いやいや、初見は普通驚くでしょ。巨大宇宙人だよ?」  「それもそうね、ごめんあそばせ」 リナは乙女チックにくるんと回り、例の美男美女半々な人間の姿に変身した。
 「この子はリナ、私が昔作ったタルパです。 リナ、彼女は韓国から来たイナちゃん、こっちの方はイスラエルのオリベちゃんだよ」  「あら、ワールドワイドで素敵なお友達じゃない。アンニョンハセヨ、シャローム! アタシは千貫森(せんがんもり)のフラットウッズモンスター。リナと呼んで頂戴。 一美がいつもお世話になってますわ」  <お会いできて光栄よ、ミス・リナ>  「初めまして、私はパク・イナだヨ!」 二人がリナと握手する。久しぶりに福島に帰省したとはいえ、日程的に彼女と再会できるとは思っていなかったから嬉しい。 宇宙人(を模した魂)であるリナは今、福島市でUFOの飛来地と噂される千貫森という森に住んでいるらしい。
 「クリカラ…倶利伽羅龍王は、石川町(いしかわまち)で作られた紅水晶像の化身よ。 彫刻家が死んだときに本体の像と剥離して以来、福島中の温泉街のパワースポットに自分の守護結界を作ってフラフラ見回っているらしいわ。 要するに、根無し草のプー太郎ってやつね」  <あなた、神様をそんな風に言っていいの?>  「ああ…リナと龍神様は個人的な因縁が…」  「ちょっと待って」
 ふいにリナが私を制止した。リナは表情をこわばらせて、イナちゃんの抱えるジャック君人形を見つめている。  「ねえ…アナタ、その人形を誰に貰ったの?」  「貰ったじゃないヨ、私達この人形のタルパ探すしてるなの。ジャックさんいいますこれのタルパ」イナちゃんが正直に答えた。  「これを作ったのがどんなオトコか、知ってるの?」  「エ…?」
 嫌な予感がした。そういえば、オリベちゃんはまだ彼女に、ジャック君の創造者について一言も話していない。 たぶん…わざとだ。  「なによ。…まさかアナタ達、知っててこの子に黙ってるワケ!?」  <…時期を見て言おうとは思っていたわ。でも今はダメなの。だって、この子は…> 剣呑な雰囲気にイナちゃんが生唾を飲む。そんな彼女の不安感を感じ取ったのか、 神社の結界の外に良くないものが集まって来ているのを私は察知した。 私もすぐに全てを打ち明けるのには賛成しない。でも、
 「今はダメですって?どういう神経してるの? 何も知らない子に…指名手配犯の連続殺人鬼が作った人形を持たせるなんて!」 リナはついに、パンドラの箱を開けてしまった。
 「サツ…ジンキ…?」 イナちゃんが人形とリナを二度見する  「あ…あ…ヒッ!!!」イナちゃんはまるで今までゴキブリでも抱えていたかのように、人形をおぞましそうに地面に叩きつけた。 歪に組み立てられた金具がガシャンと大きな音をたて、どこかから外れたワッシャーが転がり落ちる。 同時に御神体に守られていた神社の結界にも綻びが生じたのか、 無数の霊魂や動物がイナちゃん目がけて吸い寄せられた!
 「イナちゃん!すぐに社の中に入って…」私が言いかけた時には、イナちゃんは階段を駆け下りていた。 鳥居の外に出たらまずい!私とオリベちゃんは電撃的な反射神経で彼女を追う。
 「アアアア!!オジマ!スリスリマスリ!!アイゴーーー!!!」 韓国語で叫びながら逃げ惑うイナちゃんの背後では、無数の魑魅魍魎が密集し、まるでイワシ群が集まって大きな魚に擬態するように巨大な影の塊になっていた。  <<ヒシャール・メァホール!>> オリベちゃんがテレパシーで吼える。 するうち魍魎群全体をブラックライト色の閃光が包みこみ、花火のように点滅して爆ぜた。サイコキネシスだ! 霊魂達はエクトプラズム粒子に分解霧散(成仏)し、生き物達は失神して地面にパタパタと落下。 でもすかさず四方から次の魍魎群が押し寄せる!
 「ちょっと一美あんた、あんたっ一美!なんなのよアレは!?」 私達の後を追ってリナが飛来する。  「あの子は超引き寄せ体質なの!しかも精神面にすごく影響しちゃうの!!」  「じゃあどうしてあんな人形を…ああもうっ、どきなさい!」
 リナは再び宇宙人の姿になり、長い枯れ枝のような腕で大気中に漂う先程のエクトプラズム粒子を雑に吸収すると、そのエネルギーを一瞬にして空飛ぶ円盤型の幻影に錬成した。 円盤は第二魍魎群の上空に飛翔し、スポットライト状の光で霊魂達をアブダクションする!  「生きてるヤツらは無理!頼んだわよ!」
 「<上等!>」私とオリベちゃんが同時に返事する。 オリベちゃんが再びサイコキネシスを放とうとしている間に、私は自分の影が周囲の木々に重なるように位置取る。 歩道沿いに長く連なった木陰に自分の影響力が行き渡ると、木陰は周囲の光を押し出すように中空へ伸びていった。影移しという技法だ。  「イナちゃん止まって!」私の声でイナちゃんが振り返る。 彼女は自分の周りを光と影のメロン格子状ドーム結界が守っている事に気がついて立ち止まった。 生き物達がギリギリまでイナちゃんに近付いた瞬間、オリベちゃんのサイコキネシスが発動! 結界で守られたイナちゃん以外の全ての生き物はその場で体を痙攣させて落下した。
 <ふう、間一髪ね…>オリベちゃんが安堵のため息をつこうとした、その時だった。 「ビビーーーッ!!!」 けたたましく鳴るクラクションの方向を見ると、そこには暴走する軽トラックが! イナちゃんの引き寄せが車まで呼びこんでしまったのか?いいや、違う。 不幸にもそのトラックのハンドルを握っていたのが、夢うつつの寝ぼけた高齢者だったのだ。  「うわ…きゃあああ!?」 咄嗟に車を避けようとしたイナちゃんは足を滑らせ、橋のたもとから五百川に落水してしまった!
 「イナちゃぁぁーーん!!!」 溺れるイナちゃんに追い討ちをかけるように、川の内外から第三の魍魎群がにじり寄る。  「助け…ゲホッ!助けて!!」 まずい。水中の相手には影も脳波もUFOも届かない。 万事休すか!?と絶望しかけた、その時だった。
 「俺に体を貸せ!」 突然、川下から成人男性ほどの大きさの白い魚がイナちゃん目がけて川を登ってきた。 いや、よく見るとそれは、半魚人めいた姿の霊魂…タルパのようだ。  「ひっ、来ないで!スリスリマスリ!」イナちゃんは怯えて半魚人を拒絶するが、  「うるせぇ!!死にたくねえならとっとと俺に任せろ、ガキ!!」半魚人は橋の上の私達にも伝わるほどの剣幕で彼女の肩を掴んだ! その時、溺死者と思しき作業服姿の幽霊がイナちゃんの足首に纏わりつく。「アヤッ!」 イナちゃんは意を決して、半魚人に憑依を許した。
 ドシュッ!!途端にイナちゃんの体がカジキマグロのように高速推進し、周囲の魍魎群を弾き飛ばす! イナちゃんに取り憑いた半魚人は、着衣水泳とは思えないしなやかなイルカ泳ぎで魍魎や障害物を避けながら、冲に上がれるポイントを模索した。 しかし水から上がろうとする隙を魍魎に狙われていて、なかなか上陸できない。  「ああクソッタレ!なんなんだコイツらは!?」半魚人がイナちゃんの声で毒づく。 私達も追いつくのがやっとで、次の手を考えあぐねていた。 すると駅の方向から、一台の自転車が近づいてくる。 また誰かがイナちゃんに吸い寄せられたのかと思ったら、その人は…
 「右へ泳げ!右の下水道に入るんだ!!!」
 観光客用の電動レンタサイクルの前カゴに真っ白なポメラニアンを乗せて、五百川に向かって全力疾走する青年…平良鴨譲司さんは、 まるで最初からこの場にいたかのような超人的状況把握力をもって、半魚人に助言を叫んだ。 これが彼の脳力、空気組成や気圧の変化であらゆる情報を肺から認識する「ダウジング」だ!
 「馬鹿か、何を根拠に言ってやがる!あんな所に入ったら袋の鼠だぞ!?」 半魚人が潜水と浮上を繰り返しながら反論する。  「根拠やと?そんなもん…」肩で息をしながら譲司さんが答えた。「ダウザーとしての勘だ!俺を信じろ…ジャック!」
 ジャック、と呼ばれたその半魚人は目を見開き、橋の上の青年を見上げた。 栗色の髪、アラブ人ハーフの彫りの深い顔。ジャック氏の脳裏で彼の幼馴染の面影が重なったのか、 彼はイナちゃんの身を翻して、川辺の横穴に潜っていった。
 「こっちやオリベ、紅さん!」 私達が譲司さんに案内されて、上流から見て川の右側へ駆け寄ると、温泉街らしくない工業的な建物があった。 イナちゃんは建物下方に流れる下水道の横に倒れていて、ジャック氏が介抱している。 彼女らの周りにはもう、魑魅魍魎の類いは集っていなかった。  <そうか。ここは発電所で、すぐ近くに送電線がある。 イナちゃんのギャザリング力も、ここでは歪みが生じて遠くまで及ばなくなるのね>  「日本の電力施設の電磁波は、普通の携帯の電波やテレパシーには影響せんレベルやけどな。 引き寄せ体質とかのオーラ系は本来そこまで飛ばん力やから、ちょっと遮蔽物を作るだけで効果がめっちゃ変わるんよ」
 話している間にジャック氏が再びイナちゃんに取り憑いて、鉄パイプはしごと柵をよじ登って私達に合流した。  「あぅ…わうわ?」譲司さんの自転車に乗ったポメラニアンのポメラー子(こ)ちゃんが、イナちゃんを見て不思議そうに鳴く。 譲司さんは愛犬の投げかけた質問を呼気で理解し、親しい友人の前でだけ話す地元弁で、  「ああ、この子気絶しとるかんな、ジャックが中に入って助けとったんや」と優しく答えた。
 ◆◆◆
 民宿に戻った私達は、意識の戻ったイナちゃんの身体を温めるために温泉に入った。 まだ日没前の早い時間だったから、実質貸切風呂だ。 イナちゃんの服は幸い全部洗濯可能だったから、オリベちゃんからネットを借りて洗濯機にかけている。
 私とオリベちゃんは黙々と身体を洗い、イナちゃんは既に湯船に座っている。 先に髪の毛の水滴を絞った私は、手首に巻いていたゴムバンドで適当に髪をまとめ、湯船に入った。 誰も一言も喋らず、重い沈黙が流れる。
 「…スリスリマスリって、何?」痺れをきらした私がイナちゃんに尋ねた。 イナちゃんはキリスト教のお祈りみたいに組んだ両手を揉みながら、か細い声で答えた。  「意味ないヨ…言うと元気出ます。チチンプイプイ、アブダカタブラ」 「<えっ!!?>」 私とオリベちゃんが思わず彼女を見る。 あの魍魎群がイナちゃんに近寄れなくなるから余程神聖な力のこもった呪文だと思っていたけど、まさかこの子、気力だけで魍魎を拒絶し続けていたなんて。 私達が思っていたよりも、ずっと根性がある。
 「ゴメンナサイ…」 膝を抱えたイナちゃんが弱々しく頭を下げた。 本人が衰弱しているからか、もう魍魎は寄ってこない。 オリベちゃんは顔を背け、持ち込みのマイシャンプーを手のひらに溢れるほど出しながら<悪いのは私の方>と返した。
 <着いてきて貰うだけでいい。 もしジャックがここにいるのなら、あなたを連れて行けば巡り会えると思った。 なにも殺人犯そのものを探すんじゃないし、大丈夫だろう…って。 あなた自身の体質の危険さに対する認識不足だったわ> オリベちゃんの長い癖毛が泡立ち、ラベンダーとシナモンを煮詰めたような存在感のある香りが湯船にまで漂ってくる。
 「どうして、探した?」イナちゃんが問う。  「ジャックさんはオリベちゃんとジョージさんと友達、わかる。 でもジャックさん作った人ヒトゴロシ。しかも連続ヨ。 もし私の友達の親ヒトゴロシだったら、学校では遊ぶ。でも友達の家は行きない。 ううん、わかてる。私は臆病ですね…」 友達の家族が人殺しだったら…。無理もない、いや、当然の反応だ。 私はイナちゃんの白い肩にお湯をかけた。
 「サミュエル・ミラーは、強いタルパを作るためにたくさんの生き物を殺してきたんだ。 生き物を殺して、魂を奪って、それを継ぎ接ぎしながら怪物を育ててたの。 神になりたいから、って動機だったらしくて」  <その通りよ。私やジョージも、かつてあの男の作った怪物に殺されかけた。 その戦いで、私は声を、ジョージは…一番の親友を失った>  「だったらなんで!?」イナちゃんが身を乗り出す。  「そこまでされて友達助ける、凄いヨ?偉いヨ。でも、ヘンだヨ! そんなの…」息継ぎもせずに思いの丈を吐き出して��イナちゃんは再び湯船にうずくまった。「そんなの、できないヨ…」
 「そこまでされたから、だよ」  「え…?」 オリベちゃんは既にシャワーで泡を落としきっている。 でも膝の上で拳を握りしめて、肌寒い洗い場で私達に背を向けたまま動かなかった。
 「…あ…!」 イナちゃんは閃いたようだ。オリベちゃんや譲司さんが、ジャック氏を見つけ出そうと覚悟した理由に。 サミュエル・ミラーはタルパを作るために生き物を殺す。つまり、  <そう。ジャックもあいつに殺された、元は人間だったのよ>
 「そういう事情だったの。そうとは知らず、悪かったわ」 いつの間にか私の背後で、湯船の縁に人間姿のリナが座ってくつろいでいた。  「キャ!」イナちゃんが慌てて顔を手で覆う。  「あ、またキャッって言ったわね!」  「だ…だって!ここ女湯ヨ!!」 赤面しながらイナちゃんが指をずらし、ちらっとリナを見る。 でも、リナの首から下は完全に…  「…オモナッ?」  「ほんっと、失礼しちゃうわ」  「え…じゃあなんで、おヒゲ…え?」 だって、しょうがないじゃない。 中学の時に作ったんだから…知らなかったんだもん。男の人のがどうなってるのか。
 ◆◆◆
 居間に戻ると譲司さんの姿はなかった。 庭の方からドライヤーの音がする。そういえばこの民宿は、庭園の池がペット用露天風呂になっているとか。 新幹線の長旅で疲れたポメちゃんを、譲司さんがお風呂に入れてあげていたんだろう。
 窓際の広縁を見ると、ジャック氏が水の入った丸底フラスコのような形の物を咥えていた。 息を吐いているのか吸っているのかはわからないけど、フラスコ内の水が時々ゴポゴポと泡立ち、そこから伸びた金具の先端でエクトプラズム粒子が小さく明滅する。 霊力を吸うための喫煙具のような物なのだろう。
 「ジャック・ラーセン」ジャック氏はこちらを一瞥もしないで語りだした。「…それが俺の本当の名だ」
 生前、アメリカで移動販売のポップコーン屋台を経営していたジャック氏は、フロリダのある小さな農村を訪れた時、サミュエルの怪物と村人に襲撃されて命を落としたという。
 「ん」ジャック氏はイナちゃんに目配せする。 イナちゃんが広縁に近づくと、ジャック氏は立ち上がり、二人羽織で袖を通すようにイナちゃんの腕にだけ取り憑いた。  「オモナ…」二度目だからイナちゃんはすんなり受け入れている。 ジャック氏は指差しでイナちゃんを誘導する。 みんなの荷物と共に固めて置かれていたあの人形の前にイナちゃんを座らせると、 ブチチチッ!雑に縫い合わされていたボロ布を躊躇なく引きちぎり、 中の奇妙な機械を剥き出しにした。
 「こいつぁポップ・ガイっつってな…。ほら、背中のレバーを上げると口が開くだろ? ここから弾けたてのポップコーンが出るんだよ。元々は屋台そのものの一部だったんだ…」 ジャック氏は慣れた手つきでポップ・ガイ人形を操る。背中の小さなスイッチを爪で押すと、お腹のスピーカーから微かにノイズが流れた。  「ああ、ちゃんと電源も入るな。オリベ、マスクは?」  <もうないわよ。ジョージがサミュエルを撃った時に割れて壊れたわ。おかげでトドメをさし損ねた>  「そうか。…いや、あのマスクに小型マイクが付いててさ、 そいつを被って喋ると、そのスピーカーからボイスチェンジャーを通したおかしな声が出るんだよ。 単純なもんだが、小さいガキ共には好評だった。 ま、それだけの話なんだがな…」 ジャック氏はスイッチを切り、イナちゃんから自分の腕を引き抜こうとするが、  「…ん?どうした。こら、離せよ」
 イナちゃんは力をこめて、ジャック氏の腕を自分の体内に留めた。  「…スリスリマスリ」  「あ?何だそりゃ?ほら抜けねえだろうが…」 イナちゃんは細い腕の中にジャック氏の太い腕を湛えたまま、ポップ・ガイ人形を抱きしめた。  「オンジン」  「あぁ??」
 <あははは!ジャック、よっぽどイナちゃんに気に入られたようね!>  「おいおい勘弁してくれ、これじゃボングもろくに吸えやしねえ。 ほらガキ、とっとと離れろ」  「ヤダ、もうちょと。あと私イナだヨ、ガキじゃないもん」  「あぁー!?」 イナちゃんが駄々をこねる。高校生ぐらいの彼女は、時折どこか子供っぽい仕草を見せる。 お寺、教会、霊能者…色んな人を頼っても自分を救える人は現れず、彼女は今までずっと、おまじないの言葉だけを頼りにあんな恐ろしい物と孤独に戦い続けてきた。 そんなイナちゃんのピンチを初めて救った私達は、彼女にとって親にも匹敵するほど心強い仲間になったことだろう。
 「ったく…しょうがねえな」 ジャック氏は彼女の腕を、ジュゴンのように柔らかく暖かそうな彼の胸板に抱き寄せた。  「…ジョージが戻ってくるまでだからな」
0 notes
re2-01yasu · 4 years
Video
youtube
笑ってコラえて!SPゲストはバカリズム!お父さんは好きですか?の旅は成人式SP!可愛いワンちゃんも大集合!2/19よる7時56分放送 ~ 日テレ公式チャンネル 笑ってコラえて!SPゲストはバカリズムが初登場! ▼お父さんは好きですか?の旅は 成人式スペシャル! 女優の卵が お父さんへ壮大なドッキリ! 自身の主演VTRを作成し、映画館を借り切って お父さんへサプライズ上映! ▼高そうな犬を連れている人は きっとセレブに違いないの旅は 獅子舞のコスプレをする「フレンチブルドッグ」に遭遇! 他にも可愛すぎるワンちゃん 大集合! ▼ダーツの旅は徳島県つるぎ町貞光へ! 世界遺産農業に認定された驚きの農業とは? 【出演者】 所ジョージ 佐藤栞里 スペシャルゲスト バカリズム 紫吹淳 古川雄大 馬場ももこ 武田修宏 「1億人の大質問!?笑ってコラえて!」2020年2月19日(水) 19:56放送 番組公式HP:https://ift.tt/ZRrcOc From Things I'm interested in https://ift.tt/2SoSWPU
0 notes