Tumgik
#紫輝掠鳥
kachoushi · 10 months
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各地句会報
花鳥誌 令和5年7月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年4月1日 零の会 坊城俊樹選 特選句
一葉の家へ霞の階を きみよ 春昼や質屋の硝子なないろに 小鳥 伊勢屋質店今生の花とほく 光子 菊坂に豆煎る音や花の昼 和子 一葉の質屋は鎖して春の闇 はるか 本郷の亀を鳴かせて露地住ひ 順子 おかめ蕎麦小声で頼み万愚節 いづみ 文士らの騒めきとすれ違ふ春 三郎 一葉を待つ一滴の春の水 光子 物干に如雨露干したり路地の春 和子
岡田順子選 特選句
一葉の家へ霞の階を きみよ 金魚坂狭め遅日の笊洗ふ 千種 菊坂の底ひの春の空小さし 光子 坂の名のみな懐かしき日永かな 要 赤貧の欠片も少し春の土 いづみ 本郷の間借りの部屋の猫の妻 同 質店の中より子規の春の咳 俊樹 止宿者の碑のみ残すや蝶の舞 眞理子 本郷の北窓開く古本屋 きみよ かぎろひの街をはみ出す観覧車 いづみ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月1日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
花冷の背後より声掛けらるる 美穂 幾年も陽炎追ひて遊びけり 散太郎 濃きほどに影のやうなる菫かな 睦子 化粧水ほどの湿りや春の土 成子 画布を抱き春の時雨を戻りけり かおり 昼月は遠く遠くへ花満開 愛 シャボン玉の吹雪や少女手妻めく 勝利 麗かや砂金三つ四つ指の先 睦子 成り行きの人生かとも半仙戯 朝子 鞦韆の羽ばたかずまた留まらず 睦子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月3日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
花吹雪卍色と云ふが今 雪 花冷に後姿の観世音 同 そぼ降りてひと夜の契り花の雨 笑 観世音御手にこぼるる花の寺 同 お精舎やこの世忘れて糸桜 啓子 逝きし友逢へないままに朦月 同 裏木戸を開ければそこに花吹雪 泰俊 御仏と咲き満つ花の句座に入る 希 愛子忌や墓にたむけの落椿 匠
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月5日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
縋りつく女心や桃の花 世詩明 肌寒く母の手紙はひらがなぞ 同 啓蟄や鍬突き立てし小百姓 同 日野河原菜花の香る祭りかな ただし 菜の花や石田渡しの蘇る 同 雛祭ちらしずしそへ甘納豆 輝一 ぽつたりと落ちて音なき大椿 清女 花吹雪路面電車の停車駅 同 大拙館椿一輪のみの床 洋子 花の山遠く越前富士を抱く 同 吉野山日は傾きて夕桜 誠
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月6日 うづら三日の月 坊城俊樹選 特選句
花の下天をを仰げば独り占め さとみ 春陰やおのが心のうつろひも 都 春耕や眠りたる物掘り起す 同 左手の指輪のくびれ花の冷え 同 園児等のお唄そろはず山笑ふ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月8日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
膝をまだ崩せずにをり桜餅 秋尚 登り来て本丸跡や花は葉に 百合子 葉脈のかをり弾けて桜餅 同 桜餅祖母の遺せし会津塗り ゆう子 売り声も色つややかに桜餅 幸子 木洩日の濡れてゐるやう柿若葉 三無 春愁や集ふふる里母忌日 多美女 伍しゐても古草の彩くすみをり 三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月10日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
心経をとなへ毛虫に火をはなつ 昭子 マンホール蓋の窪みに花の屑 昭子 栄螺売潮の香りを置いてゆく 三四郎 金の蕊光る夕月てふ椿 時江 禅寺の読経流るる花筏 ただし 若者の髭に勢や麦青む みす枝 龍が吐く長命水の春を汲む 三四郎 花吹雪受けんと子等の手足舞ふ みす枝 土器の瓢の町や陽炎へり ただし 海遠く茜空背に鳥帰る 三四郎 紅梅のことほぐやうに枝広げ 時江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月10日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
片棒を担いでをりぬ四月馬鹿 三無 薬草園とふ門古りて松の花 和魚 だんだんと声ふくらみて四月馬鹿 美貴 四月馬鹿言つて言はれて生きてをり 和魚 松の花表札今も夫の居て 三無 白状は昼過ぎからや四月馬鹿 のりこ 一の鳥居までの大路や松の花 秋尚 松の花昏き玄関応へなく 美貴
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月11日 萩花鳥会
京よりの生麸草餅薄茶席 祐 不帰のヘリ御霊をおくる花筏 健雄 ただ一本ミドリヨシノの世界あり 恒雄 堂々と桜見下ろす二層門 俊文 猫に愚痴聞かせて淋し春の宵 ゆかり 杵つきの草餅が好きばあちやん子 美惠子
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令和5年4月13日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
便り待つポストをリラの房覆ふ 栄子 畑打つや鍬を担ひし西明り 宇太郎 軒下の汚れし朝や燕来る 都 桜蕊降る藩廟の染まるまで 美智子 桜蕊降るももいろの雨が降る 悦子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
何氣なく来て何気なく咲く花に 雪 神御座す杜の新樹に聞く鳥語 かづを 老の踏むひとりの音や落椿 ただし 野辺送り喪服の背に花の蕊 嘉和 夜ざくらのぼんぼり明り水あかり 賢一 喝采の微風を受けて花は葉に 真喜栄 生きる恋はぜる恋ととや猫の妻 世詩明 葉ざくらに隠されてゐる忠魂碑 同 眩しさを残して花は葉となれり かづを
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月16日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
極大と極小としやぼん玉宙へ 要 穴出でし蟻の列追ふ園児どち 経彦 頰􄼺をつく石仏の春愁 貴薫 酸模を噛む少年の今は無く 要 稲毛山廣福密寺百千鳥 同 瑠璃色を散らし胡蝶の羽ばたきぬ 久 春陰の如意輪仏へ女坂 慶月 棕櫚の花年尾の句碑に問ひかくる 幸風 朴の花仏顔して天にあり 三無
栗林圭魚選 特選句
蝌蚪の群突くひとさし指の影 千種 峠道囀り交はす声響き ます江 美術館三角屋根に藤懸かる 久子 こんもりと句碑へ映るも若葉かな 慶月 微かなる香りや雨後の八重桜 貴薫 朝の日に濃淡重ね若楓 秋尚 落ちてなほ紅色失せぬ藪椿 経彦
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月19日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
通勤のバスから見ゆる日々の花 あけみ 花馬酔木白き房揺れ兄の家 令子 亡き鳥をチューリップ添へ送りけり 光子 偲ぶ日の重く出たるや春の月 令子 あの頃の記憶辿って桜散る 美加
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月19日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
矢車の音きしみ合ふ幟竿 世詩明 風よりも大きく揺れて糸柳 啓子 花万朶この世忘れて花の下 同 あたたかやお守りはねるランドセル 同 甘き香の女ごころや桜餅 千加江 春場所や贔屓の力士背に砂 令子 落椿掃きゐてふつと愛子忌と 清女 春の虹待ちて河口に愛子の忌 笑子 散りそめし花の余韻も愛子の忌 同 城の濠指呼の先には花の渦 和子 花筏哲学の道清めたる 隆司 故郷の深き眠りや花の雨 泰俊 山道の明るさを増す百千鳥 同 ほころびて色つぽくなり紫木蓮 数幸 花桃に出迎へられて左内像 同 瞬きは空の青さよ犬ふぐり 雪
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月21日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
忠直郷ゆかりの鬱金桜とぞ 雪 椿てふ呪縛の解けて落つ椿 同 春愁や言葉一つを呑み込んで 同 御襁褓取り駈け出す嬰や麦は穂に みす枝 鶯の機嫌良き日や鍬高く 同 ただならぬ人の世よそに蝌蚪の国 一涓 あの角を曲つてみたき春の宵 日登美 春の果次も女に生れたし 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月21日 さきたま花鳥句会(四月二十一日)
清冽な水は山葵を磨き上げ 月惑 連写して柳絮の舞ふを収めけり 八草 天守閉ぢ黙す鯱鉾朧月 裕章 行き先は行きつく所柳絮飛ぶ 紀花 南無大師遍照金剛春の風 孝江 揚浜に春の虹立つ製塩所 とし江 柳絮飛ぶ二匹の亀の不動なり ふじ穂 筍堀り父編むいじこ背負ひ来て 康子 花吹雪ひと固まりの風の道 恵美子 満天星の花揺らしつつ風過ぎる 彩香 夢叶へ入学の地へ夜行バス 静子 啓蟄やピンポンパンの歌聞こゆ 良江
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令和5年4月23日 月例会 坊城俊樹選 特選句
真榊はあをばの中に立つてをり いづみ 水の上の空のその上鳥の恋 順子 掌の中の春の蚊深き息を吐き 炳子 耳朶を掠めて蝶のうすみどり 緋路 仕上りの緻密なる蒲公英の絮 秋尚 手放して風船空へ落ちてゆく 緋路 春の闇より声掛けて写真館 順子 零戦機日永の昼の星狙ふ ゆう子
岡田順子選 特選句
玉砂利の音来て黒揚羽乱舞 和子 耳朶を掠めて蝶のうすみどり 緋路 仕上りの緻密なる蒲公英の絮 秋尚 風光る誰にも座られぬベンチ 緋路 緋鯉とて水陽炎の中に棲み 俊樹 手放して風船空へ落ちてゆく 緋路 蜂唸る神の園生に丸き井戸 炳子 佐保姫は夜に舞ひしか能舞台 俊樹
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
つかまへし子亀に問へり亀鳴くか 美穂 亀鳴くや拷問石にある哀史 ちぐさ 亀鳴ける賓頭盧尊者撫でをれば 美穂 板の戸に志功の天女花朧 喜和 連子窓に卯の花腐し閉ぢ込めて かおり 大人へのふらここ一つ山の上 光子 ふらここや無心はたまた思ひつめ 同 ふらここや関門海峡見下ろして 同 さくら貝ひとつ拾ひて漕ぎ出しぬ かおり 午後一時直射にぬめる蜥蜴の背 勝利 花冷の全身かたき乳鋲かな 睦子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月4日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
落城の如く散りたる落椿 世��明 三人の卒業生以て閉校す 同 双葉より学びし学舎卒業す 同 氏神の木椅子はぬくし梅の花 ただし 鳥帰る戦士の墓は北向きに 同 草引く手こんなですよと節くれて 清女 雛あられ生きとし生くる色やとも 洋子 官女雛一人は薄く口開けて やす香 露天湯肩へ風花ちらちらと 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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mashiroyami · 4 years
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Page 112 : 変移
 育て屋に小さな稲妻の如く起こったポッポの死からおよそ一週間が経ち、粟立った動揺も薄らいできた頃。  アランは今の生活に慣れつつあった。表情は相変わらず堅かったが、乏しかった体力は少しずつ戻り、静かに息をするように過ごしている。漠然とした焦燥は鳴りをひそめ、ザナトアやポケモン達との時間を穏やかに生きていた。  エーフィはザナトアの助手と称しても過言ではなく、彼女に付きっきりでのびのびと暮らし、ふとした隙間を縫ってはブラッキーに駆け寄り何やら話しかけている。対するブラッキーは眠っている時間こそ長いが、時折アランやエーフィに連れられるように外の空気を吸い込んでは、微笑みを浮かべていた。誰にでも懐くフカマルはどこへでも走り回るが、ブラッキーには幾度も威嚇されている。しかしここ最近はブラッキーの方も慣れてきたのか諦めたのか、フカマルに連れ回される様子を見かける。以前リコリスで幼い子供に付きまとわれた頃と姿が重なる。気難しい性格ではあるが、どうにも彼にはそういった、不思議と慕われる性質があるようだった。  一大行事の秋期祭が催される前日。朝は生憎の天気であり、雨が山々を怠く濡らしていた。ラジオから流れてくる天気予報では、昼過ぎには止みやがて晴れ間が見えてくるとのことだが、晴天の吉日と指定された祭日直前としては重い雲行きであった。  薄手のレースカーテンを開けて露わになった窓硝子を、薄い雨水が這っている。透明に描かれる雨の紋様を部屋の中から、フカマルの指がなぞっている。その背後で荷物の準備を一通り終えたアランは、リビングの奥の廊下へと向かう。  木を水で濡らしたような深い色を湛えた廊下の壁には部屋からはみ出た棚が並び、現役時代の資料や本が整然と詰め込まれている。そのおかげで廊下は丁度人ひとり分の幅しかなく、アランとザナトアがすれ違う時にはアランが壁に背中を張り付けてできるだけ道を作り、ザナトアが通り過ぎるのを待つのが通例であった。  ザナトアの私室は廊下を左角に曲がった突き当たりにある。  扉を開けたままにした部屋を覗きこむと、赤紫の上品なスカーフを首に巻いて、灰色のゆったりとしたロングスカートにオフホワイトのシャツを合わせ――襟元を飾る小さなフリルが邪魔のない小洒落た雰囲気を醸し出している――シルク地のような軟らかな黒い生地の上着を羽織っていた。何度も洗って生地が薄くなり、いくつも糸がほつれても放っている普段着とは随分雰囲気が異なって、よそいきを意識している。その服で、小さなスーツケースに細かい荷物を詰めていた。 「服、良いですね」 「ん?」  声をかけられたザナトアは振り返り、顔を顰める。 「そんな世辞はいらないよ」 「お世辞じゃないですよ。スカーフ、似合ってます」  ザナトアは鼻を鳴らす。 「一応、ちゃんとした祭だからね」 「本番は、明日ですよ」 「解ってるさ。むしろ明日はこんなひらひらした服なんて着てられないよ」 「挨拶回りがあるんですっけ」 「そう。面倒臭いもんさね」  大きな溜息と共に、刺々しく呟く。ここ数日、ザナトアはその愚痴を繰り返しアランに零していた。野生ポケモンの保護に必要な経費を市税から貰っているため、定期的に現状や成果を報告する義務があり、役所へ向かい各資料を提出するだの議員に顔を見せるだの云々、そういったこまごまとした仕事が待っているのだという。仕方の無いことではあると理解しているが、気の重さも隠そうともせず、アランはいつも引き攣り気味に苦笑していた。  まあまあ、とアランは軽く宥めながら、ザナトアの傍に歩み寄る。 「荷造り、手伝いましょうか」 「いいよ。もう終わったところだ。後は閉めるだけ」 「閉めますよ」  言いながら、辛うじて抱え込めるような大きさのスーツケースに手をかけ、ファスナーを閉じる。 「あと持つ物はありますか」 「いや、それだけ。あとはリビングにあるリュックに、ポケモン達の飯やらが入ってる」 「分かりました」  持ち手を右手に、アランは鞄を持ち上げる。悪いねえ、と言いつつ、ザナトアが先行してリビングルームに戻っていくと、アランのポケモン達はソファの傍に並んで休んでおり、窓硝子で遊んでいたフカマルはエーフィと話し込んでいた。 「野生のポケモン達は、どうやって連れていくんですか?」  ここにいるポケモン達はモンスターボールに戻せば簡単に町に連れて行ける。しかし、レースに出場する予定のポケモン達は全員が野生であり、ボールという家が無い。 「あの子達は飛んでいくよ、当たり前だろ。こら、上等な服なんだからね、触るな」  おめかしをしたザナトアの洋服に興味津々といったように寄ってきたフカマルがすぐに手を引っ込める。なんにでも手を出したがる彼だが、その細かな鮫肌は彼の意図無しに容易に傷つけることもある。しゅんと項垂れる頭をザナトアは軽く撫でる。  アランとザナトアは後に丘の麓へやってくる往来のバスを使ってキリの中心地へと向かい、選手達は別行動で空路を使う。雨模様であるが、豪雨ならまだしも、しとしとと秋雨らしい勢いであればなんの問題も無いそうで、ヒノヤコマをはじめとする兄貴分が群れを引っ張る。彼等とザナトアの間にはモンスターボールとは違う信頼の糸で繋がっている。湖の傍で落ち合い、簡単にコースの確認をして慣らしてから本番の日を迎える。  出かけるまでにやんだらいいと二人で話していた雨だったが、雨脚が強くなることこそ無いが、やむ気配も無かった。バスの時間も近付いてくる頃には諦めの空気が漂い、おもむろにそれぞれ立ち上がった。 「そうだ」いよいよ出発するという直前に、ザナトアは声をあげた。「あんたに渡したいものがある」  目を瞬かせるアランの前で、ザナトアはリビングの端に鎮座している棚の引き出しから、薄い封筒を取り出した。  差し出されたアランは、緊張した面持ちで封筒を受け取った。白字ではあるが、中身はぼやけていて見えない。真顔で見つめられながら中を覗き込むと、紙幣の端が覗いた。確認してすぐにアランは顔を上げる。 「労働に対価がつくのは当然さね」 「こんなに貰えません」  僅かに狼狽えると、ザナトアは笑う。 「あんたとエーフィの労働に対しては妥当だと思うがね」 「そんなつもりじゃ……」 「貰えるもんは貰っときな。あたしはいつ心変わりするかわかんないよ」  アランは目線を足下に流す。二叉の尾を揺らす獣はゆったりとくつろいでいる。 「嫌なら返しなよ。老人は貧乏なのさ」  ザナトアは右手を差し出す。返すべきかアランは迷いを見せると、すぐに手は下ろされる。 「冗談だよ。それともなんだ、嬉しくないのか?」  少しだけアランは黙って、首を振った。 「嬉しいです」 「正直でいい」  くくっと含み笑いを漏らす。 「あんたは解りづらいね。町に下るんだから、ポケモン達に褒美でもなんでも買ってやったらいいさ。祭は出店もよく並んで、なに、楽しいものだよ」 「……はい」  アランは元の通り封をして、指先で強く封筒を握りしめた。  やまない雨の中、各傘を差し、アランは自分のボストンバッグとポケモン達の世話に必要な道具や餌を詰めたリュックを背負う。ザナトアのスーツケースはエーフィがサイコキネシスで運ぶが、出来る限り濡れないように器用にアランの傘の下で位置を保つ。殆ど手持ち無沙汰のザナトアは、ゆっくりとではあるが、使い込んだ脚で長い丘の階段を下っていく。  水たまりがあちこちに広がり、足下は滑りやすくなっていた。降りていく景色はいつもより灰色がかっており、晴れた日は太陽を照り返して高らかに黄金を放つ小麦畑も、今ばかりはくすんだ色を広げていた。  傘を少しずらして雨雲を仰げば、小さな群れが羽ばたき、横切ろうとしていた。  古い車内はいつも他に客がいないほど閑散たるものだが、この日ばかりは他に数人先客がいた。顔見知りなのだろう、ザナトアがぎこちなく挨拶している隣で、アランは隠れるように目を逸らし、そそくさと座席についた。  見慣れつつあった車窓からの景色に、アランの清閑な横顔が映る。仄暗い瞳はしんと外を眺め、黙り込んでいるうちに見えてきた湖面は、僅かに波が立ち、どこか淀んでいた。 「本当に晴れるんでしょうか」 「晴れるよ」  アランが呟くと、隣からザナトアは即答した。疑いようがないという確信に満ち足りていたが、どこか諦観を含んだ口調だった。 「あたしはずうっとこの町にいるけど、気持ち悪いほどに毎年、晴れるんだよ」  祭の本番は明日だが、数週間前から準備を整えていたキリでは、既に湖畔の自然公園にカラフルなマーケットが並び、食べ物や雑貨が売られていた。伝書ポッポらしき、脚に筒を巻き付けたポッポが雨の中忙しなく空を往来し、地上では傘を指した人々が浮き足だった様子で訪れている。とはいえ、店じまいしているものが殆どであり、閑散とした雰囲気も同時に漂っていた。明日になれば揃って店を出し、楽しむ客で辺りは一層賑わうことだろう。  レースのスタート地点である湖畔からそう遠くない区画にあらかじめ宿をとっていた。毎年使っているとザナトアが話すその宿は、他に馴染んで白壁をしているが、色味や看板の雰囲気は古びており、歴史を外装から物語っていた。受付で簡単な挨拶をする様子も熟れている。いつもより上品な格好をして、お出かけをしている時の声音で話す。ザナトアもザナトアで、この祭を楽しみにしているのかもしれなかった。  チェックイン���済ませ、通された部屋に入る。  いつもと違う、丁寧にシーツの張られたベッド。二つ並んだベッドでザナトアは入り口から見て奥を、アランは手前を使うこととなった。 「あんたは、休んでおくかい?」  挨拶回りを控えているのだろうザナトアは、休憩もほどほどにさっさと出かけようとしていた。連れ出してきた若者の方が顔に疲労が滲んでいる。彼女はあのポッポの事件以来、毎晩を卵屋で過ごしていた。元々眠りが浅い日々が続いていたが、満足な休息をとれていなかったところに、山道を下るバスの激しい振動が堪えたようである。  言葉に甘えるように、力無くアランは頷いた。スペアキーを部屋に残し、ザナトアは雨中へと戻っていった。  アランは背中からベッドに沈み込む。日に焼けたようにくすんだ雰囲気はあるものの、清潔案のある壁紙が貼られた天井をしんと眺めているところに、違う音が傍で沈む。エーフィがベッド上に乗って、アランの視界を遮った。蒼白のままかすかに笑み、細い指でライラックの体毛をなぞる。一仕事を済ませた獣は、雨水を吸い込んですっかり濡れていた。 「ちょっと待って」  重い身体を起こし、使い古した薄いタオルを鞄から取り出してしなやかな身体を拭いてくなり、アランの手の動きに委ねる。一通り全身を満遍なく拭き終えたら、自然な順序のように二つのモンスターボールを出した。  アランの引き連れる三匹が勢揃いし、色の悪かったアランの頬に僅かに血色が戻る。  すっかり定位置となった膝元にアメモースがちょこんと座る。 「やっぱり、私達も、外、出ようか」  口元に浮かべるだけの笑みで提案すると、エーフィはいの一番に嬉々として頷いた。 「フカマルに似たね」  からかうように言うと、とうのエーフィは首を傾げた。アメモースはふわりふわりと触角を揺らし、ブラッキーは静かに目を閉じて身震いした。  後ろで小さく結った髪を結び直し、アランはポケモン達を引き連れて外へと出る。祭の前日とはいえ、雨模様。人通りは少ない。左腕でアメモースを抱え、右手で傘を持つ。折角つい先程丁寧に拭いたのに、エーフィはむしろ喜んで秋雨の中に躍り出た。強力な念力を操る才能に恵まれているが故に頼られるばかりだが、責務から解放され、謳歌するようにエーフィは笑った。対するブラッキーは夜に浮かぶ月のように平静な面持ちで、黙ってアランの傍に立つ。角張ったようなぎこちない動きで歩き始め、アランはじっと観察する視線をさりげなく寄越していたが、すぐになんでもなかったように滑らかに隆々と歩く。  宿は少し路地に入ったところを入り口としており、ゆるやかな坂を下り、白い壁の並ぶ石畳の道をまっすぐ進んで広い道に出れば、車の往来も目立つ。左に進めば駅を中心として賑やかな町並みとなり、右に進めば湖に面する。  少しだけ立ち止まったが、導かれるように揃って湖の方へと足先を向けた。  道すがら、祭に向けた最後の準備で玄関先に立つ人々とすれ違った。  建物の入り口にそれぞれかけられたランプから、きらきらと光を反射し雨風にゆれる長い金色の飾りが垂れている。金に限らず、白や赤、青に黄、透いた色まで、様々な顔ぶれである。よく見ればランプもそれぞれで意匠が異なり、角張ったカンテラ型のものもあるが、花をモチーフにした丸く柔らかなデザインも多い。花の種類もそれぞれであり、道を彩る花壇と合わせ、湿った雨中でも華やかであったが、ランプに各自ぶら下がる羽の装飾は雨に濡れて乱れたり縮こまったりしていた。豊作と  とはいえ、生憎の天候では外に出ている人もそう多くはない。白壁が並ぶ町を飾る様はさながらキャンバスに鮮やかな絵を描いているかのようだが、華やかな様相も、雨に包まれれば幾分褪せる。  不揃いな足並みで道を辿る先でのことだった。  雨音に満ちた町には少々不釣り合いに浮く、明るい子供の声がして、俯いていたアランの顔が上向き、立ち止まる。  浮き上がるような真っ赤なレインコートを着た、幼い男児が勢い良く深い水溜まりを踏みつけて、彼の背丈ほどまで飛沫があがった。驚くどころか一際大きな歓声があがって、楽しそうに何度も踏みつけている。拙いダンスをしているかのようだ。  アランが注目しているのは、はしゃぐ少年ではない。その後ろから彼を追いかけてきた、男性の方だ。少年に見覚えは無いが、男には既視感を抱いているだろう。数日前、町に下りてエクトルと密かに会った際に訪れた、喫茶店の店番をしていたアシザワだった。  たっぷりとした水溜まりで遊ぶ少年に、危ないだろ、と笑いながら近付いた。激しく跳び��ねる飛沫など気にも留めない様子だ。少年はアシザワがやってくるとようやく興奮がやんだように動きを止めて破顔した。丁寧にコーヒーを淹れていた大きな手が少年に差し伸べられ、それより一回りも二回りも小さな幼い手と繋がった。アシザワの背後から、またアランにとっては初対面の女性がやってくる。優しく微笑む、ほっそりとした女性だった。赤毛のショートカットは、こざっぱりな印象を与える。雨が滴りてらてらと光るエナメル地の赤いフードの下で笑う少年も、同色のふんわりとした巻き毛をしている。  アランのいる場所からは少し距離が離れていて、彼等はアランに気付く気配が無かった。まるで気配を消すようにアランは静かに息をして、小さな家族が横切って角に消えるまでまじまじと見つめる。彼女から声をかけようとはしなかった。  束の間訪れた偶然が本当に消えていっただろう頃合いを見計らって、アランは再び歩き出した。疑問符を顔に浮かべて主を見上げていた獣達もすぐさま追いかける。  吸い込まれていった横道にアランはさりげなく視線を遣ったが、またどこかの道を曲がっていったのか、でこぼことした三人の背中も、あの甲高い声も、小さな幸福を慈しむ春のような空気も、まるごと消えていた。  薄い睫毛が下を向く。少年が踊っていた深い水溜まりに静かに踏み込んだ。目も眩むような小さな波紋が無限に瞬く水面で、いつのまにか既に薄汚れた靴に沿って水玉が跳んだ。躊躇無く踏み抜いていく。一切の雨水も沁みてはいかなかった。  道なりを進み、道路沿いに固められた堤防で止まり、濡れて汚れた白色のコンクリートに構わず、アランは手を乗せた。  波紋が幾重にも湖一面で弾け、風は弱いけれど僅かに波を作っていた。水は黒ずみ、雨で起こされた汚濁が水面までやってきている。  霧雨のような連続的な音。すぐ傍で傘の布地を叩く水音。 全てが水の中に埋もれていくような気配がする。 「……昔ね」  ぽつり、とアランは言う。たもとに並ぶ従者、そして抱きかかえる仲間に向けてか、或いは独り言のように、話し始める。 「ウォルタにいた時、それも、まだずっと小さかった頃、強い土砂降りが降ったの。ウォルタは、海に面していて川がいくつも通った町だから、少し強い雨がしばらく降っただけでも増水して、洪水も起こって、道があっという間に浸水してしまうような町だった。水害と隣り合わせの町だったんだ。その日も、強い雨がずっと降っていた。あの夏はよく夕立が降ったし、ちょうど雨が続いていた頃だった。外がうるさくて、ちょっと怖かったけど、同時になんだかわくわくしてた。いつもと違う雨音に」  故郷を語るのは彼女にしては珍しい。  此度、キリに来てからは勿論、旅を振り返ってもそう多くは語ってこなかった。特に、彼女自身の思い出については。彼女は故郷を愛してはいるが、血生臭い衝撃が過去をまるごと上塗りするだけの暴力性を伴っており、ひとたびその悪夢に呑み込まれると、我慢ならずに身体は拒否反応を起こしていた。  エーフィは堤防に上がり、間近から主人の顔を見やる。表情は至って冷静で、濁る湖面から目を離そうとしない。 「たくさんの川がウォルタには流れているけど、その一つ一つに名前がつけられていて、その中にレト川って川があったんだ。小さくもないけど、大きいわけでもない。幅は、どのくらいだったかな。十メートルくらいになるのかな。深さもそんなになくて、夏になると、橋から跳び込んで遊ぶ子供もいたな。私とセルドもよくそうして遊んだ。勿論、山の川に比べれば町の川は澄んではいないんだけど、泳いで遊べる程度にはきれいだったんだ。跳び込むの、最初は怖いんだけどね、慣れるとそんなこともなくなって。子供って、楽しいこと何度も繰り返すでしょ。ずっと水遊びしてたな。懐かしい」  懐古に浸りながらも、笑むことも、寂しげに憂うこともなく、淡々とアランは話す。 「それで、さっきのね、夏の土砂降りの日、レト川が氾濫したの。私の住んでた、おばさん達の家は遠かったし高台になっていたから大丈夫だったけど、低い場所の周囲の建物はけっこう浸かっちゃって。そんな大変な日に、セルドが、こっそり外に出て行ったの。気になったんだって。いつのまにかいなくなってることに気付いて、なんだか直感したんだよね。きっと、外に行ってるって。川がどうなっているかを見に行ったんだって。そう思ったらいてもたってもいられなくて、急いで探しにいったんだ」  あれはちょっと怖かったな、と続ける。 「川の近くがどうなってるかなんて想像がつかなかったけど、すごい雨だったから、子供心でもある程度察しは付いてたんだと思う。近付きすぎたら大変なことになるかもしれないって。けっこう、必死で探したなあ。長靴の中まで水が入ってきて身体は重たかったけど、見つけるまでは帰れないって。結局、すごい勢いになったレト川の近くで、突っ立ってるセルドを見つけて、ようやく見つけて私も、怒るより安心して、急いで駆け寄ったら、あっちも気付いて、こうやって、二人とも近付いていって」アランは傘を肩と顎で挟み込むように引っかけ、アメモースを抱いたまま両手の人差し指を近付ける。「で、そこにあった大きな水溜まりに、二人して足をとられて、転んじゃったの」すてん、と指先が曲がる。  そこでふと、アランの口許が僅かに緩んだ。 「もともと随分濡れちゃったけど、いよいよ頭からどぶにでも突っ込んだみたいに、びしょびしょで、二人とも涙目になりながら、手を繋いで帰ったっていう、そういう話。おばさんたち、怒ったり笑ったり、忙しい日だった。……よく覚えてる。間近で見た、いつもと違う川。とても澄んでいたのに、土色に濁って、水嵩は何倍にもなって。土砂降りの音と、水流の音が混ざって、あれは怖かったけど、それでもどこかどきどきしてた。……この湖を見てると、色々思い出す。濁っているからかな。雨の勢いは違うのに。それとも、さっきの、あの子を見たせいかな」  偶然見かけた姿。水溜まりにはしゃいで、てらてらと光る小さな赤いレインコート。無邪気な男児を挟んで繋がれた手。曇りの無い家族という形。和やかな空気。灰色に包まれた町が彩られる中、とりわけ彩色豊かにアランの目の前に現れた。  彼女の足は暫く止まり、一つの家族をじっと見つめていた。 「……あの日も」  目を細め、呟く。 「酷い雨だった」  町を閉じ込める霧雨は絶えない。  傘を握り直し、返事を求めぬ話は途切れる。  雨に打たれる湖を見るのは、アランにとって初めてだった。よく晴れていれば遠い向こう岸の町並みや山の稜線まではっきり見えるのだが、今は白い靄に隠されてぼやけてしまっている。  青く、白く、そして黒々とした光景に、アランは身を乗り出し、波発つ水面を目に焼き付けた。 「あ」  アランは声をあげる。  見覚えのある姿が、湖上を飛翔している。一匹ではない。十数匹の群衆である。あの朱い体毛と金色の翼は、ほんの小さくとも鮮烈なまでに湖上に軌跡を描く。引き連れる翼はまたそれぞれの動きをしているが、雨に負けることなく、整然とした隊列を組んでいた。  ザナトアがもう現地での訓練を開始したのだろうか。この雨の中で。  エーフィも、ブラッキーも、アメモースも、アランも、場所を変えても尚美しく逞しく飛び続ける群衆から目を離せなかった。  エーフィが甲高い声をあげた。彼女は群衆を呼んでいた。あるいは応援するように。アランはちらと牽制するような目線を送ったが、しかしすぐに戻した。  気付いたのか。  それまで直線に走っていたヒノヤコマが途中できったゆるやかなカーブを、誰もが慌てることなくなぞるように追いかける。雨水を吸い込んでいるであろう翼はその重みを感じさせず軽やかに羽ばたき、灰色の景色を横切る。そして、少しずつだが、その姿が大きくなってくる。アラン達のいる湖畔へ向かっているのだ。  誰もが固唾を呑んで彼等を見つめる。  正しく述べれば、彼等はアラン達のいる地点より離れた地点の岸までやってきて、留まることなく堤防沿いを飛翔した。やや高度を下げ、翼の動きは最小限に。それぞれで体格も羽ばたきも異なるし、縦に伸びる様は速度の違いを表した。先頭は当然のようにリーダー格であるヒノヤコマ、やや後方にピジョンが並び、スバメやマメパト、ポッポ等小さなポケモンが並び、間にハトーボーが挟まり中継、しんがりを務めるのはもう一匹の雄のピジョンである。全く異なる種族の成す群れの統率は簡単ではないだろうが、彼等は整然としたバランスで隊列を乱さず、まるで一匹の生き物のように飛ぶ。  彼等は明らかにアラン達に気付いているようだ。炎タイプを併せ���ち、天候条件としては弱ってもおかしくはないであろうヒノヤコマが、気合いの一声を上げ、つられて他のポケモン達も一斉に鳴いた。それはアラン達の頭上を飛んでいこうとする瞬きの出来事であった。それぞれの羽ばたきがアラン達の上空で強かにはためいた。アランは首を動かす。声が出てこなかった。彼等はただ見守る他無く、傘を下ろし、飛翔する生命の力強さに惹かれるように身体ごと姿を追った。声は近づき、そして、頭上の空を掠めていって、息を呑む間もなく、瞬く間に通り過ぎていった。共にぐるりと首を動かして、遠のいていく羽音がいつまでも鼓膜を震わせているように、じっと後ろ姿を目で追い続けた。  呆然としていたアランが、いつの間にか傘を離して開いていた掌を、空に向けてかざした。 「やんでる」  ぽつん、ぽつりと、余韻のような雨粒が時折肌を、町を、湖上をほんのかすかに叩いたけれど、そればかりで、空気が弛緩していき、湿った濃厚な雨の匂いのみが充満する。  僅かに騒いだ湖は、変わらず深く藍と墨色を広げているばかりだ。  栗色の瞳は、アメモースを一瞥する。彼の瞳は湖よりもずっと深く純粋な黒を持つが、輝きは秘めることを忘れ、じっと、鳥ポケモンたちの群衆を、その目にも解らなくなる最後まで凝視していた。  アランは、語りかけることなく、抱く腕に頭に埋めるように、彼を背中から包むように抱きしめた。アメモースは、覚束ない声をあげ、影になったアランを振り返ろうとする。長くなった前髪に顔は隠れているけれど、ただ、彼女はそうすることしかできないように、窺い知れない秘めたる心ごとまとめて、アメモースを抱く腕に力を込めた。
 夕陽の沈む頃には完全に雨は止み、厚い雨雲は通り過ぎてちぎれていき、燃え上がるような壮大な黄昏が湖上を彩り、町民や観光客の境無く、多くの人間を感嘆させた。  綿雲の黒い影と、太陽の朱が強烈なコントラストを作り、その背後は鮮烈な黄金から夜の闇へ色を重ねる。夜が近付き生き生きと羽ばたくヤミカラス達が湖を横断する。  光が町を焼き尽くす、まさに夕焼けと称するに相応しい情景である。  雨がやんで、祭の前夜に賑わいを見せ始めた自然公園でアランは湖畔のベンチに腰掛けている。ちょうど座りながら夕陽の沈む一部始終を眺めていられる特等席だが、夕方になるよりずっと前から陣取っていたおかげで独占している。贅沢を噛みしめているようには見えない無感動な表情ではあったが、栗色の双眸もまた強烈な光をじっと反射させ、輝かせ、燃え上がっていた。奥にあるのは光が届かぬほどの深みだったとしても、それを隠すだけの輝かしい瞳であった。  数刻前、ザナトアと合流したが、老婆は今は離れた場所でヒノヤコマ達に囲まれ、なにやら話し込んでいるようだった。一匹一匹撫でながら、身体の具合を直接触って確認している。スカーフはとうにしまっていて、皮を剥いだ分だけ普段の姿に戻っていた。  アランの背後で東の空は薄い群青に染まりかけて、小さな一等星が瞬いている。それを見つけたフカマルはベンチの背もたれから後方へ身を乗り出し、ぎゃ、と指さし、隣に立つエーフィが声を上げ、アランの足下でずぶ濡れの芝生に横になるブラッキーは、無関心のように顔を埋めたまま動かなかった。  膝に乗せたアメモースの背中に、アランは話しかけた。 「祭が終わったら、ザナトアさんに飛行練習の相談をしてみようか」  なんでもないことのように呟くアランの肩は少し硬かったけれど、いつか訪れる瞬間であることは解っていただろう。  言葉を交わすことができずとも、生き物は時に雄弁なまでに意志を語る。目線で、声音で、身体で。 「……あのね」柔らかな声で語りかける。「私、好きだったんだ。アメモースの飛んでいく姿」  多くの言葉は不要だというように、静かに息をつく。 「きっと、また飛べるようになる」 アメモースは逡巡してから、そっと頷いた。  アランは、納得するように同じ動きをして、また前を向いた。  ザナトアはオボンと呼ばれる木の実をみじん切りにしたものを選手達に与えている。林の一角に生っている木の実で、特別手をかけているわけではないが、秋が深くなってくるとたわわに実る。濃密なみずみずしさ故に過剰に食べると下痢を起こすこともありザナトアはたまにしか与えないが、疲労や体力の回復を促すのには最適なのだという。天然に実る薬の味は好評で、忙しなく啄む様子が微笑ましい。  アランは静寂に耳を澄ませるように瞼を閉じる。  何かが上手くいっている。  消失した存在が大きくて、噛み合わなかった歯車がゆっくりとだが修正されて、新しい歯車とも合わさって、世界は安らかに過ぎている。  そんな日々を彼女は夢見ていたはずだ。どこかのびのびと生きていける、傷を癒やせる場所を求めていたはずだった。アメモースは飛べないまま、失われたものはどうしても戻ってこないままで、ポッポの死は謎に埋もれているままだけれど、時間と新たな出会いと、深めていく関係性が喪失を着実に埋めていく。  次に瞳が顔を出した時には、夕陽は湖面に沈んでいた。  アランはザナトアに一声かけて、アメモースを抱いたまま、散歩に出かけることにした。  エーフィとブラッキーの、少なくともいずれかがアランの傍につくことが通例となっていて、今回はエーフィのみ立ち上がった。  静かな夜になろうとしていた。  広い自然公園の一部は明日の祭のため準備が進められている出店や人々の声で賑わっているが、離れていくと、ザナトアと同様明日のレースに向けて調整をしているトレーナーや、家族連れ、若いカップルなど、点々とその姿は見えるものの、雨上がりとあってさほど賑わいも無く、やがて誰も居ない場所まで歩を進めていた。遠い喧噪とはまるで無縁の世界だ。草原の騒ぐ音や、ざわめく湖面の水音、濡れた芝生を踏みしめる音だけが鳴る沈黙を全身で浴びる。  夏を過ぎてしまうと、黄昏時から夜へ転じるのは随分と早くなってしまう。ゆっくりと歩いている間に、足下すら満足に見られないほど辺りは暗闇に満ちていた。  おもむろに立ち止まり、アランは湖を前に、目を見開く。 「すごい」  湖に星が映って、ささやかなきらめきで埋め尽くされる。  あまりにも広々とした湖なので、視界を遮るものが殆ど無い。晴天だった。秋の星が、ちりばめられているというよりも敷き詰められている。夜空に煌めく一つ一つが、目を凝らせば息づいているように僅かに瞬いている。視界を全て埋め尽くす。流星の一つが過ったとしても何一つおかしくはない。宇宙に放り込まれたように浸り、ほんの少し言葉零すことすら躊躇われる時間が暫く続いた。  夜空に決して手は届かない。思い出と同じだ。過去には戻れない。決して届かない。誰の手も一切届かない絶対的な空間だからこそ、時に美しい。  ――エーフィの、声が、した。  まるで尋ねるような、小さな囁きに呼ばれたようにアランはエーフィに視線を移した、その瞬間、ひとつの水滴が、シルクのように短く滑らかな体毛を湿らせた。  ほろほろと、アランの瞳から涙が溢れてくる。  夜の闇に遮られているけれど、感情の機微を読み取るエーフィには、その涙はお見通しだろう。  闇に隠れたまま、アランは涙を流し続けた。凍りついた表情で。  それはまるで、氷が瞳から溶けていくように。 「……」  その涙に漸く気が付いたとでも言うように、アランは頬を伝う熱を指先でなぞった。白い指の腹で、雫が滲む。  彼女の口から温かな息が吐かれて、指が光る。 「私、今、考えてた、」  澄み渡った世界に浸る凍り付いたような静寂を、一つの悲鳴が叩き割った。それが彼女らの耳に届いてしまったのは、やはり静寂によるものだろう。  冷えた背筋で振り返る。 星光に僅かに照らされた草原をずっとまっすぐ歩いていた。聞き違いと流してもおかしくないだろうが、アランの耳はその僅かな違和を掴んでしまった。ただごとではないと直感する短い絶叫を。  涙を忘れ、彼女は走っていた。  緊迫した心臓は時間が経つほどに烈しく脈を刻む。内なる衝動をとても抑えきれない。  夜の散歩は彼女の想像よりも長い距離を稼いでいたようだが、その黒い視界にはあまりにも目立つ蹲る黄色い輪の輝きを捉えて、それが何かを察するまでには、時間を要しなかっただろう。  足を止め、凄まじい勢いで吹き出す汗が、急な走行によるものか緊張による冷や汗によるものか判別がつかない。恐らくはどちらもだった。絶句し、音を立てぬように近付いた。相手は元来慎重な性格であった。物音には誰よりも敏感だった。近付いてくる足音に気付かぬほど鈍い生き物ではない。だが、ここ最近様子が異なっていることは、彼女も知るところであった。  闇に同化する足がヤミカラスを地面に抑え付けている。野生なのか、周囲にトレーナーの姿は無い。僅かな光に照らされた先で、羽が必死に藻掻こうとしているが、完全に上を取られており、既に喉は裂かれており声は出ない。  鋭い歯はその身体に噛み付き、情など一切見せない様子で的確に抉っている。  光る輪が揺れる。  静かだが、激しい動きを的確に夜に印す。  途方に暮れる栗色の瞳はしかし揺るがない。焼き付けようとしているように光の動きを見つめた。夜に照るあの光。暗闇を暗闇としない、月の分身は、炎の代わりになって彼女の暗闇に寄り添い続けた。その光が、獣の動きで弱者を貪る。  硬直している主とは裏腹に、懐から電光石火で彼に跳び込む存在があった。彼と双璧を成す獣は鈍い音を立て相手を突き飛ばした。  息絶え絶えのヤミカラスは地に伏し、その傍にエーフィが駆け寄る。遅れて、向こう��から慌てた様子のフカマルが短い足で必死に走ってきた。  しかし、突き放されたブラッキーに電光石火一つでは多少のダメージを与えることは叶っても、気絶させるほどの威力には到底及ばない。ゆっくりと身体をもたげ、低い唸り声を鳴らし、エーフィを睨み付ける。対するエーフィもヤミカラスから離れ、ブラッキーに相対する。厳しい睨み合いは、彼等に訪れたことのない緊迫を生んだ。二匹とも瞬時に距離を詰める技を会得している。間合いなどあってないようなものである。  二対��獣の間に走る緊張した罅が、明らかとなる。 「やめて!」  懇願する叫びには、悲痛が込められていた。  ブラッキーの耳がぴくりと動く。真っ赤な視線が主に向いた時、怨念ともとれるような禍々しい眼光にアランは息を詰める。それは始まりの記憶とも、二度目の記憶とも重なるだろう。我を忘れ血走った獣の赤い眼。決して忘れるはずのない、彼女を縫い付ける殺戮の眼差し。  歯を食いしばり、ブラッキーは足先をアランに向ける。思わず彼女の足が後方へ下がったところを、すかさずエーフィが飛びかかった。  二度目の電光石火。が、同じ技を持ち素早さを高め、何より夜の化身であるブラッキーは、その動きを見切れぬほど鈍い生き物ではなかった。  闇夜にもそれとわかる漆黒の波動が彼を中心に波状に放射される。悪の波動。エーフィには効果的であり、いとも簡単に彼女を宙へ跳ね返し、高い悲鳴があがる。ブラッキーの放つ禍々しい様子に立ち尽くしたフカマルも、為す術無く攻撃を受け、地面を勢いよく転がっていった。間もなくその余波はアラン達にも襲いかかる。生身の人間であるアランがその技を見切り避けられるはずもなく、躊躇無くアメモースごと吹き飛ばした。その瞬間に弾けた、深くどす黒い衝撃。悲鳴をあげる間も無く、低い呻き声が零れた。  腕からアメモースは転がり落ち、地面に倒れ込む。アランは暫く起き上がることすら満足にできず、歪んだ顔で草原からブラッキーを見た。黒い草叢の隙間から窺える、一匹、無数に散らばる星空を背に孤高に立つ獣が、アランを見ている。  直後、彼は空に向かって吠えた。  ひりひりと風は絶叫に震撼する。  困惑に歪んだ彼等を置き去りにして、ブラッキーは走り出した。踵を返したと思えば、脱兎の如く湖から離れていく。 「ブラッキー! 待って!!」  アランが呼ぼうとも全く立ち止まる素振りを見せず、光の輪はやがて黒に塗りつぶされてしまった。  呆然と彼等は残された。  沈黙が永遠に続くかのように、誰もが絶句し状況を飲み込めずにいた。  騒ぎを感じ取ったのか、遅れてやってきたザナトアは、ばらばらに散らばって各々倒れ込んでいる光景に言葉を失う。 「何があったんだい!」  怒りとも混乱ともとれる勢いでザナトアは強い足取りで、まずは一番近くにいたフカマルのもとへ向かう。独特の鱗で覆われたフカマルだが、戦闘訓練を行っておらず非常に打たれ弱い。たった一度の悪の波動を受け、その場で気を失っていた。その短い手の先にある、光に照らされ既に息絶えた存在を認めた瞬間、息を詰めた。 「アラン!」  今度はアランの傍へやってくる。近くでアメモースは蠢き、アランは強力な一撃による痛みを堪えるように、ゆっくりと起き上がる。 「ブラッキーが」  攻撃が直接当たった腹部を抑えながら、辛うじて声が出る。勢いよく咳き込み、呼吸を落ち着かせると、もう一度口を開く。 「ブラッキー、が、ヤミカラスを……!」 「あんたのブラッキーが?」  アランは頷く。 「何故、そんなことが」 「私にも、それ���」  アランは震える声を零しながら、首を振る。  勿論、野生ならば弱肉強食は自然の掟だ。ブラッキーという種族とて例外ではない。しかし、彼は野生とは対極に、人に育てられ続けてきたポケモンである。無闇に周囲を攻撃するほど好戦的な性格でもない。あの時、彼は明らかに自我を失っているように見えた。  動揺しきったアランを前に、ザナトアはこれ以上の詮索は無意味だと悟った。それより重要なことがある。ブラッキーを連れ戻さなければならない。 「それで、ブラッキーはどこに行ったんだ」 「分かりません……さっき、向こう側へ走って行ってそのままどこかへ」  ザナトアは一度その場を離れ老眼をこらすが、ブラッキーの気配は全く無い。深い暗闇であるほどあの光の輪は引き立つ。しかしその片鱗すら見当たらない。  背後で、柵にぶつかる音がしてザナトアが振り向く。よろめくアランが息を切らし、柵に寄りかかる。 「追いかけなきゃ……!」 「落ち着きな。夜はブラッキーの独壇場だよ。これほど澄んだ夜で血が騒いだのかもしれない。そうなれば、簡単にはいかない」 「でも、止めないと! もっと被害が出るかもしれない!」 「アラン」 「ザナトアさん」  いつになく動揺したアランは、俯いてザナトアを見られないようだった。 「ポッポを殺したのも、多分」  続けようとしたが、その先を断言するのには躊躇いを見せた。  抉られた首には、誰もが既視感を抱くだろう。あの日の夜、部屋にはいつもより風が吹き込んでいた。万が一にもと黒の団である可能性も彼女は考慮していたが、より近しい、信頼している存在まで疑念が至らなかった。誰も状況を理解できていないだろう。時に激情が垣間見えるが、基は冷静なブラッキーのことである。今までこのような暴走は一度として無かった。しかし、ブラッキーは、明らかに様子が異なっていた。アランはずっと気付いていた。気付いていたが、解らなかった。  闇夜に塗り潰されて判別がつかないが、彼女の顔は蒼白になっていることだろう。一刻も早く、と急く言葉とは裏腹に、足は僅かに震え、竦んでいるようだった。 「今はそんなことを言ってる場合じゃない。しゃんとしな!」  アランははっと顔を上げ、険しい老婆の視線に射止められる。 「動揺するなという方が無理だろうが、トレーナーの揺らぎはポケモンに伝わる」  いいかい、ザナトアは顔を近付ける。 「いくら素早いといえど、そう遠くは行けないだろう。悔しいがあたしはそう身軽には動けない。この付近でフカマルとアメモースと待っていよう。もしかしたら戻ってくるかもしれない。それに人がいるところなら、噂が流れてくるかもしれないからね。ここらを聞いて回ろう。あんたは市内をエーフィと探しな。……場所が悪いね。あっちだったら、ヨルノズク達がいるんだが……仕方が無いさね」  大丈夫、とザナトアはアランの両腕を握る。 「必ず見つけられる。見つけて、ボールに戻すことだけを考えるんだ。何故こうなったかは、一度置け」  老いを感じさせない強力な眼力を、アランは真正面から受け止めた。 「行けるね?」  問われ、アランはまだ隠せない困惑を振り払うように唇を引き締め、黙って頷いた。  ザナトアは力強くアランの身体を叩き、激励する。  捜索は夜通し続いた。  しかしブラッキーは一向に姿を見せず、光の影を誰も見つけることはできなかった。喉が嗄れても尚ブラッキーを呼び続けたアランだったが、努力は虚しく空を切る。エーフィも懸命に鋭敏な感覚を研ぎ澄ませ縦横無尽に町を駆け回り、ザナトアも出来る限り情報収集に励んだが、足取りを掴むには困難を極めた。  殆ど眠れぬ夜を過ごし、朝日が一帯を照らす。穏やかな水面が小さなきらめきを放つ。晴天の吉日と水神が指定したこの日は、まるで誰かに仕組まれていたように雲一つ無い朝から始まる。  キリが沸き立つ、秋を彩る祭の一日が幕を開けた。 < index >
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0056etf · 5 years
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06年9月,公司組織去九寨玩,蠻腐敗的,住在九寨天堂。第1天從原始森林一路玩下來,不表。第2天早上去長海,我因為以前自己去玩過,所以遊興一般,主要陪著同事,幫他們拍拍照片。去過長海的tf知道,那裡是個觀景台,人多的要死,拍照要搶位子的。。。 那麼幾個同事排隊準備憑欄微笑去了,我這邊也打開相機,先調好光圈快門,為了節約時間,我會對著要拍的位置上的陌生人測光,這次桃花運來了,一個姿色不錯的女人落入了我的鏡頭。。。 幫同事拍好後,我自己回看照片,女人不錯,大概27、8的樣子,10分的話7。5分應該是有的,但風情要給10分滿分的,因為就是在鏡頭中那麼一閃而過,我的心就彷彿被偷走了。--不過我的心比較容易 被 偷走 看她衣著,我想一定不是上海遊客,上海老、中、小s都比較會打扮,贊一下我們上海女人 我開始在人群中找她,可惜怎麼也找不到了,想搭訕失去了機會,有點懊惱,也有點慶幸。 我以前是很擅長搭訕陌生女人的,老婆也是自己搭訕來的,正因為如此,老婆把我看的很緊,包括錢和時間,我也樂意有人管束我,好結束浪子的生涯。 結婚後,搭女人就成了我的負擔,本性喜歡拈花惹草,但是搭上以後,又要想辦法存小金庫,又要編借口請假出來,最後也就是個活塞運動,沒什麼大意思。 不過,這個女人讓我很想重出江湖。 如果後來再沒碰到,那也沒故事講了,我們在諾日朗又碰到了,--地名中有個日字,難道是個天意 這裡用y來代表她。 y和幾個恐龍一起,老恐龍小恐龍,她被襯托的更加出眾,想好了台詞我就上了,,, 「你好」她很驚詫地看著我,恐龍們也很驚詫,我繼續,心裡略有點緊張,--前面說我擅長搭訕,不過每次還是會緊張的,,, 「你看,我剛才測光的時候碰巧把你拍進去了,不過拍的挺好的,就沒捨得刪掉,,,」她看了看我的相機,臉有點紅,說:是挺好的,恐龍們也圍上來看。 「你給我個郵件地址吧,我回頭髮給你」 我的攝影技術在山上拿不出手的,不過肯定比幾個娘們強多了,我早就料到,y是不會捨得讓我當場刪掉的,這會是她此行最漂亮的一張照片。 y很爽快,她說好啊,把你的手機號給我,我把地址發短信給你,--我靠,好容易啊! 我報手機號,她記,邊上的恐龍們笑的很曖昧,看來也很懂 記完,沒話找話說,我問她們從哪來的,她們說:紹興,正好我的一個sb同事叫我,我只好離開,心想紹興不遠,又有了手機號碼,以後有大把機會,卻忘記叫y撥一下我的號碼,這一點後來讓我很懊惱。 按過去經驗,女人主動問你要電話,那麼很快就會和你聯繫,所以我當時沒要她的電話,也沒叫她撥我一個,用山上的話說,有點ib,--在恐龍們嫉妒、興奮、yy的目光中,我瀟灑地轉身離開,放長線才能釣大魚,急吼吼把人家電話要來,待會打還是不打,不打卵癢心也癢,打過去說什麼?所以我一般扔下個電話號碼就走,一切盡在掌握! 意外來了,y就是沒給我打電話。 我晚上獨守著九寨天堂的大床房,沒有電話,噶好的錯b環境浪費,有點恨自己的ib行為,不過想想不要緊,明天回成都,正好有個會要開,會比同事多住2 天,y肯定也要回成都的吧,還來得及,吃吃火鍋,泡泡茶館,逛下春西路,--春熙路上美女大把,y你也別矜持了,美女在成都不值錢,晚上就從了我吧,哈哈。 不幸的是,在成都的幾天也沒接到y的電話,我想是她記錯電話了?是��然矜持著?是根本忘記了我?猜過所有的可能,孤獨地在異鄉鬱悶,成都住的是喜來登,跟女人ib也不錯呀,又浪費了! 回到上海,也沒有電話。 一個月很快過去了,我徹底忘記了這件事。 忘記的時候,電話卻來了。 電話裡是個怯怯的聲音,向我問好,問我記得她嗎,九寨溝的那個女人,照片還在嗎,她想看,,, 女聲很好聽,普通話帶著紹興口音,小地方女人的那種羞澀,我是硬著和她說完第一個電話的,--女人開始和你交往了,後面的事情八九不離十了 昨天說到y的電話來了,怯怯的聲音惹人生憐,我故意將手機話筒貼近嘴巴,語速放慢一點,--我的嗓音比較低沉,有磁性,很多女人讚過的,彷彿女人對男人的聲音比較在意,或許耳邊一句輕回的低語,是開閘放水的密鑰所在,--y除了要那張照片,不知道該說些什麼,但也沒有結束電話的意思,大概心頭正在撞鹿吧,我蠻喜歡這樣的感覺,泡妞最愉快的階段,也就在窗戶紙將破未破之際了。 於是留了郵箱,想起來那張照片還在相機裡,導進電腦,調整一下對比度和色彩,邊調邊想:她為什麼過了這麼久再聯繫我呢?斷不至於是忘記,那麼就是在猶豫,如果是猶豫,那麼她一定猜到我有企圖,掙扎過後,還是決定開始一些感情的冒險,如此瞻前顧後,大概已為人妻了。。。--我喜歡猜一猜女人的心思,女人心,海底針,猜中了會很有趣,也使下一步的行動更加精準有效。 y是紹興市府的一名公務員,上班不能上網(後來可以了,也不知道為什麼),所以我們一開始通過郵件交流。頻繁的郵件來往,也漸漸瞭解了她的一些情況:她的家庭條件比較優渥,父親是當地要害部門的正印局長,兩個姐姐姐夫也是當地有點頭臉的人物,(從這一點,我開始懷疑她的實際年齡應該不止27、8歲,但至始至終沒有問過她的年齡,她也沒主動說過,所以我更加懷疑她其實蠻熟了,哈哈。)她上下班有馬6代步,老公(果然)也是公務員。 不要去人肉啊,大致是這個情況,但細節我改動過了 後來麼,老套路,她給我發得意的照片,我極盡溢美之辭,讓她很受用,不斷的給我發照片,我都看的煩了,看來看去都是穿衣服的,我就這點追求啊 不過有一張還是很不錯的,穿著白色的背心熱褲,光著腳丫盤坐在一張長椅上吃蘋果,骨肉勻停,巧笑倩兮,最流鼻血的是可愛的腳指頭,白裡透紅,像嫩姜,或者象太湖紅菱,又生的盈盈一握,用它來搓弄我的弟弟,或者捉在手裡把玩,然後再輕舉上肩,那是何等旖旎的風光啊! y把電話全留給我了,兩個手機,辦公室電話;她辦公室3個人,我開始偶爾往她辦公室打電話,一來發揮我的磁性嗓音,二來慢慢地用話語挑逗,辦公室裡說這樣的電話有一妙處,因為有顧忌,她只能含混其詞,語焉不詳,我說到濃處,她只能應不能回,好比蓋著蓋子煮湯,也好比做的時候摀住嘴不讓叫,別有一功 我這個說法是有道理的,y5點就可以下班,慢慢的,她總要蹭到6點才走,就是為了等有機會和我單獨通電話,爽了就要叫,女人的控制力有時候蠻差的。那麼天天要等我電話,應該是魚兒在要鉤了吧? 不過電話的內容頂多也就是想要抱抱你啦,忍不住想親你啦,也直接誇過她的腳長的好看,我是由衷地喜歡女人有一雙好看的腳的。 越來越熟絡了,她給我發了筆記尼照片,居然很凶 以前沒看出來,--我這方面目力蠻厲害的,在九寨溝時沒覺得,那張背心照片也沒覺得,難道特意為我去隆凶了?發揮你們無敵的想像力吧,答案後面會給出的。 除了胸前的亮點,身材也沒話說,細腰豐臀,我的辦公室有獨立衛生間,當下自己去了下火,在自己腦中導演了我和她主演的一部片子 我覺得y是入巷了,決定更進一步,,, 有次電話裡,也是以一些初級情話開始,我腦子全是她的大咪咪,她的小嫩腳,說是在挑逗她,我自己早就硬幫幫,說到情深意切時,我說,好想進入你,好想好好地愛你, 一般來說,騷一點的女人會馬上配合你,可以完成一次電話ml;矜持一點的女人呢,會很害羞,說你是壞蛋, 沒想到她的反應是 她的反應很強烈,很西數,,, 她勃然變色,說:你把我當做什麼人了?!!!啪的一聲掛斷電話。 我有點沒回過神,這種情況沒經歷過呀,筆記尼給我看了,愛你愛我的說過了,電話裡親過抱過了,每天不等到我電話不下班回家的,那麼我現在要進入她,不是老正常的嘛?弟兄們說說看,正常伐? 回過神來我哈光火,更光火的是,y隔手來條短信說,你以後不要再給我打電話了! 錯b,碰到赤老了,又不是青純少女了,裝b不是這樣裝的,玩弄我的感情是伐,我本想打電話去嘲伊兩句,想想算了,男人嘛,大方點,本來就是想上人家,上不到也沒必要失態。 照片、郵件、短信、電話全刪掉,留著是禍害,羊肉沒吃到到時候惹身騷,刪掉結束,以後不碰西數女人,路子怪來西。 兩個星期後,我正在下班路上,y打了我的電話,問了句你最近好嗎,我說還好,--語氣即不興奮也不冷淡,應該聽不出我仍有一絲介懷,她說:我好想見到你,,, 我知道精彩的開始了。 接下來兩個禮拜,她或暗示或明說,想和我見面,我總是推脫,我要再添上兩把柴,把y這鍋水燒得滾滾燙;再說,我那陣工作的確忙,不可能翹班,週末跟家裡請假呢,又要提早點鋪墊起來,不好有破綻,--偷吃味道是不錯,累是很累的,尤其是有個絕頂聰明的老婆。 估摸著水也燒開了,燒幹掉就不好玩了,約見面吧 不敢約到上海來,雖然茫茫人海,但有時候會碰赤老的;約紹興更不行,小地方轉也轉不開,何況她家人脈挺廣。取個中點,杭州。 我訂了劉莊的湖景房,以前公款住過幾次,環境是沒話講了,碰到過李朋鳥同志的,關鍵是06年12月,我在股票上開始賺到不少錢,手頭很活絡,如果是今天,有女f要和我ons的話,事先聲明,只能去168,不要怪我,怪這個國家吧 12月的一個星期五,下了班,我到南站坐上了最快到杭州的一班火車,沒開車是怕暴露車牌,第一次見面,小心不是錯;她也沒開車去,大概人同此心吧,理解理解。 她比我早到一個小時,在東站等我,不斷的發信息問我到哪了,我很想調侃她是不是已經太濕了,想去酒店換內褲啊,不過不敢造次,她的西數脾氣我領教過,雖然這樣的約會擺明了是場肉搏戰,但還是不要太直接,說不定人家喜歡婉約派,為了弟弟的幸福,我不能操之過急呀 說實話,在火車上我一點也不著急,長夜漫漫,狀態不可出的太早 看了兩份報紙,和一個回杭州的小姑娘聊聊天,火車就到站了。 出站,尋覓,伊人正在燈火闌珊處,她肯定先看到了我,在一盞昏黃的路燈下向我微微笑著。九寨溝一別,網絡和電話讓我們成了准情人,然而等到相見時,既陌生又熟悉,感覺好奇妙,拙筆難以名狀,,, 我也抱以燦爛的笑容,向她走過去,--眼中的她,比照片上更加嫵媚,新燙了劉海,紮起了馬尾,大大的含羞的眼睛,俏皮的嘴巴,江南女人的秀氣體現充分;紫色緊身的高領羊毛衫,套著件黑絲絨的中式馬甲,下身著黑色牛仔褲,蹬著一雙長統高跟皮靴,煞是英武明媚。 走過去,霸道地抄住她的腰,好像我們早就是對鴛侶,--腰肢很細很柔軟,我舉槍表示致意, 我柔聲問道:「先去酒店辦入住好麼?」,她輕輕地恩了一聲,把頭埋在我的胸脯上,才估計到,她大概1米63左右的個子,但是修長的雙腿,另她看來更高一些。 汽車載著雙野鴛鴦,穿過杭州的鬧市區,一片燈紅酒綠,行人如鯽,偶爾路過酒店或民宅,內裡有多少我們這樣香艷的故事正在開始,正在落幕,多麼輝煌或者平淡的人生,都逃不過一個情字,和有情人做快樂事,別問是劫是緣。 車子從南山路到楊公堤(大概如此),忽地拐進一條小路,西湖國賓館的石碑,然後有上著雪亮刺刀的武警給你敬禮,呵呵,錯人家老婆還有武警站崗,不經歷一下算什麼人生? 房卡拿好,去餐廳吃飯,兩樣可口小菜,一個暖鍋,一瓶古越龍山,,, y大概有點酒量,是她要求喝酒的,看來蠻要的 暖鍋中蒸騰起的霧氣把我倆對面分開,氤氳中看著她笑語,想想其實y才是我今晚的菜,呵呵,或者我是她的菜,,, 幾杯下肚,烘暖了身子,她脫掉馬甲,羊毛衫裹住婀娜有致的身軀,--我知道你很凶,我已經聽不進你在說什麼,我只想著雲騰雨蔚的情形了 吃完散步,住劉莊不散步太浪費了不是? 牽手在湖邊走著,是夜有風,湖面漣漪陣陣,由遠及近,輕拍岸巖;是夜月光皎潔,灑落人間,山樹披銀,波浪湧金。 我將她抱起,在草地上轉圈,她咯咯地笑,兩團肉擠在我胸前,我突然將她放下說,哎喲,不行了不行了,她急切問道,怎麼了, 我說,我有個地方好硬了,怕被你壓斷,她大笑罵我流氓,然後要來打我,我將她手握住,拖入懷中說,我們回去吧,她點點頭,眼含柔情看著我,清晰地說:「好」 進房間,一張雪白的大床,足夠做任何姿勢 床頭有幅金色的題字,媽的,居然是赤壁懷古,看來我今天要被她的浪淘盡了; y沉下臉說,就一張床啊,兩個人怎麼睡? 無沙發,徹底無語 我想這女人又要來這一手啊,心裡有點不爽了,,, y倒笑西西地貼上來,雙臂勾住我的脖子,主動和我接吻起來,直接就是舌吻了,饒舌,咬嘴唇,下半身貼禁我,微微地扭動,大概是在試驗我的硬度? 說實話,我有點不喜歡女人這麼主動,不過也不能示弱,兩手開始遊走,一手撫腰摸臀,一手摸著她的脖子,捏弄她的耳垂 上面吻的越濕熱,下面越受煎熬,那話兒漲得有點發痛,一隻手從背後深入,摩挲她如玉的肌膚,背上那條脊溝向下,引導著我的手去探索,褲腰太緊,只能夠著臀溝的發源,不過癮,改向上摸,文胸後面沒有扣子,急死人的事情,,, 只好委屈小弟弟,稍稍離開女人的身子,欠欠身,將手從前面伸進去,摸著扣子,要擠開,但是太心急,幾下都沒弄開, yy把我推開,笑笑說,我先洗澡啊 洗澡麼,肯頂要進去水戰的,很不巧的是,老闆正好打電話進來,跟我討論工作的事情,我定定神和老闆電話,心裡把老闆家媽媽問候了好幾遍,個b樣囉哩囉嗦,講個不停,y裹著浴巾出來了,他還沒講完,我是等不及了,和y做了個眼色,拿著電話進浴室,邊脫說電話,節約時間,並且提醒他我手機要沒電了。 脫光了,我直接關手機,裝沒電,不管了。 快速洗好,重點洗弟弟和菊花,腳指頭也仔細洗過,--萬一她口味重呢,懂伐 再刷個牙,我來啦!!! y絕對是有備而來,居然換了件短擺的絲質內衣,床燈調到昏黃,玉體橫陳在雪白的床上,黃黃的燈光柔柔地從她肩頭灑落,看上去她就像塊就要融化的冰淇淋,我湊上去,吻了吻她的額頭,四目相交,慾望糾纏,愛意融融,,, 我將目光移下,絲綢也比不過y的肌膚細膩,絲綢隨意地在她胸前皺起,恰好露出那銷魂蝕骨的玉溝 我埋首去溝裡呼吸,耳裡只聽y的一聲歎息,夾帶些須顫音,也帶得絲綢下的雙乳一顫,用指間輕摸上去,乳尖已作豆蔻悄立 那雙玉兔是緊張還是渴望,她們等待著我暴雨來襲,呵呵,可我偏不,兵者,詭道也,我將她的秀髮向上擼起來,散佈在白色枕頭上,雙手卻去捧著她一張俏臉,只是吻她的眼皮,她嬌羞地閉著眼,朱唇微啟,努力地均勻呼吸 我很清楚現在可以驅入了,但不是最佳時機, y太渴望了,我可以多給一點,我去輕咬她的耳垂,在她耳邊粗重地呼吸,她的雙腿開始扭動,兩手抱緊我的後背,想用力貼近我,又鬆手躺下,無奈地去抓床單, 我在她耳邊細細地問她:今晚好好地要你,可以嗎? 她急促地點頭 我向下,挽起她的雙腿,分開來,私處畢現,毛很少,柔順地貼著,大概是好脾氣的女人吧,,肉鮑居然還是粉紅色,連蝴蝶翼也是粉的,不見色素沉澱,難道她老公使用的很小心 她急忙用手來遮,不叫我看,我求她,這樣的好鮑難得,怎可不品? 真的算是上品了,玉縫緊緊的,但玉露仍然滲出來,晶瑩透亮,向著菊花滑落過去,我捨不得它白白流走,舔了一下,微鹹,一種女人特有的淡淡的腥,她受此刺激,兩腿一夾,夾住我的頭,大概覺得不雅,又鬆開,但不好意思張的太開,好有意思的女人,我去看她時,她用手臂蓋住眼睛,輕咬著嘴唇,那份害羞真不像結過婚的女人,, 我說,你的汁水真好吃,等我慢慢吃你吧,她不作聲,將嘴唇咬緊了些 我說你等一等,去沙發的褲子裡摸出手機,呵呵,不是拍照,是放了個專輯《琵琶語》 然後重新上床,有音樂,y可以放鬆一些, 我仍然去弄她的玉鮑,將緊合的唇撥開些,竟有些水一湧而出,原來早已氾濫的不成樣子,我也不再逗她,伏進腿間賣力地刷卡 熱熱的舌頭從會陰處向上,刷過深溝,也刷過玉珠,幾下子,玉珠就爆了出來,我用舌尖頂住它,有節奏地抖動,, y開始哼哼了,伴著輕音樂,宛如天籟 也該我享受享受了,我爬下床,將她也拉下來,輕輕按她下去,她很順從地開始吃我的香腸了,, 不能不說,功夫很棒女人真是矛盾,看她的害羞絕不是裝出來的,但功夫卻又那麼出色,要麼是她老公調教的?但顏色看起來又像常常閒置不用的呀?琢磨不透,只管此刻的歡樂吧, 想到她的老公,我很邪惡地希望他這會來個電話,我好像有的tf一樣,可以讓她邊挨我的抽弄,邊和老公說電話,可惜沒那麼巧的 那話兒已脹成紫色,亮錚錚只想那個仙人洞 我將y重新抱回床上,讓她跪臥,伏低身子,橛高屁股,兩個門戶都暴露出來,我又去舔舔濕糊糊的玉戶,另她搖晃著臀部耐受;我興起,也顧不了許多,去舔她的菊花,她被刺激得嬌聲告免,一時再也跪不住,向側面倒在了床上 我扶她重新擺成剛才的姿勢,提槍進入,她仰首吸氣,彷彿這一刻等待良久,其實我何嘗不是如此 沒入之時,我只送入蘑菇頭,那一汪油立刻溢出,小嘴兒連忙包裹住我的蘑菇,我又拔出,蝶翼兒翻出���面更嫩的肉色,稍離開一點,急忙牽出了兩根不捨的粘絲 反覆如此,音樂蓋不住唧唧汩汩的聲音,彷彿小貓舔吃糨糊(不知道哪本書裡看到這個比喻,很喜歡),彷彿老牛踏入春泥 y開始向後夠著,信號明顯啊 y低伏身子,任我後入不已,絲綢短裙的荷業邊半遮了我們的結合處,隨著每一下撞擊掙扎著向後滑落,漸漸地,暴露出一整個雪白p股,像個可愛的胖梨;裙邊顫落至腰部時,一時無險可守,倏地堆向肩頭,露出瘦瘦的背脊,脊線很是好看;玉兔的晃動也了然在目了。 我雙手把定y細細軟軟的楚腰,兩個拇指相距不過寸許,男人粗糙的大手和女人羊脂玉般的皮膚形成鮮明的對比,我忍不住將一手開始摩挲,滑向側前方,握住一隻跳脫的玉兔,肥滿的感覺彷彿從指間溢出;另一隻手仍然掌握她的腰部:淺嘗時,不讓y向後要的太多,疾進時,為自己的挺進加上一把輔力。在我多點進攻之下,y開始叫出聲來,淺嘗時低哼,悠揚而渴望,疾進時高聲,急促而滿足。 y漸漸被我推向高峰,她大概很需要一個著力點吧,一會攥緊床單,一會又將單手向後,抓住我扶腰的手臂,緊緊扣住,指節發白。快感陣陣湧了上來,從眼中,從手上,從肌膚相親處而來,敵軍勢大,將我軍密密匝匝圍住,任我左衝右突,急切難下;敵將多謀,用火來燒,又發水來淹,精兵耐受不住,幾番想突陣而出,皆被我勘勘勒回。我別過頭去,戰鬥場面不敢再看,哪知床頭櫃上的銅牌、呈亮的燈座、電視機的屏幕,無不倒影出兩具交戰的肉體。 女人的叫聲越來越響,我估計自己再也走不過三十回合,怕她失望,便打招呼似的說,你真迷人,我快要堅持不住了,,,沒想到y很體貼,她說,你不用忍的,你開心了就好。這話讓我更加憐愛這個雪白的、倦曲著的,嬌小的女人,雖然我們其實很陌生,但我決定今夜要好好地愛她一次,,, 暫時抽離她的身體,下了床,我要讓戰鬥部隊小小地休息一下,並且,還要玩個小花招增添點情趣,,, y有點奇怪我突然離開,卻不料我走到窗前,兩下扯開了窗簾,推開半扇窗戶。房間在三樓,還不到睡覺的時間,冷冷的風從西湖上掠進來,夾雜著夜晚散步住客的交談聲;高昂的玉杵首先感到了一絲寒意,清醒許多,但硬崢的姿態不減,我瞥到它時,它還塗著一層愛液,月光正好灑落,憤怒突起的青筋帶了點陰影,看上去分外的雄壯冷冽。 回頭壞笑著看她,她俏臉通紅,急忙拉了個被角遮住身體,說,你幹嗎呀,人家要看到的,我走向她說,大概不會看見的,但是你叫的那麼響,他們肯定能聽見,明天早上走廊裡撞見了,要他們妒忌有這樣一個美麗的女人被我弄的尖叫。她嬌嗔著那拳頭來擂我,卻被我掀開了被子,捉住一隻腳踝抗上肩頭,再一次地插了進去。那傢伙剛才受了點寒,又回到軟綿濕潤的地方,精神抖擻地重新研磨了起來。 y果真害怕叫聲被路人聽見,壓抑著不敢出聲,我中間得了次喘息,這回更是精進勇猛,y略有些嗚咽,含混地叫我老公,說她愛我,我也不理會她,閉目只顧遞送,魂靈彷彿飄出了腔子,作一個旁觀者,逼視著兩具肉身。即便在那一刻,我想我還是愛我的髮妻的,我確定了好幾遍;眼前這個迷亂女人,在家庭和單位裡又以何種形象出現呢?我和她的人生本來是兩根毫無關係的平行線,卻在這刻交軌,是魔鬼的誘惑,還是上帝的賞賜? 肉體還在瘋狂糾纏,靈魂卻在一旁發笑,人真的屬於自己嗎?還只是別人的一個宿主而已! y終於壓抑不住自己,毫無旁顧地叫了出來,倒將我的魂靈拉回身體,窗外一片寂靜,剛才交談的幾個人不知是走遠了,還是在聽壁角,反正不管了,稍遠處,西湖水輕拍著石岸,有幾股正好湧進了石穴中,猛發出汩地一聲,我的身體也開始僵直,小頭漸漸不聽指揮了,索性將y另一條腿也抗起來,向前一壓,使她的臀部離開床墊,迎合我最後的衝刺。 我蹲起來,雙手叉在y的膝彎,用力將一雙大腿壓向她的身體,直到壓扁了ru房,y的門戶已是一片狼籍,像洪水過後的河灘,兩岸茅草雜亂地倒伏,沾滿著泥漿,我定神欣賞著自己的傑作,一派淫糜難言的景象,短暫的停頓後,船兒堅定地進入河道,每下都抵達最深處。y的玉戶開始節律地緊縮,一陣一陣,一浪一浪,我的腦中一片空白,深,深,,,還要更深處,,,我將所有的愛慾噴射了進去。 那天晚上,梅開二度,連續作戰兩次,已經讓我很疲憊了,我靠在床上抽一支事後煙,y倦縮在我懷裡,安靜地發著短信。 y的頭髮燙過,有點硬,--不像我老婆頭髮那麼柔軟,--毛扎扎的,讓我赤裸的胸膛感覺不太習慣。短信來回了三兩條,我隨口問她再和誰發呢,她拿手機給我看,屏幕上寫著「放心吧,再打兩圈就回家,你也早點睡吧」,我看看她,她頑皮地吐了下舌頭,略帶幽怨地說,這個傢伙,老婆丟了還在外面玩的高興。我聞言心頭一蕩,放下香煙,又去把玩y的ru房,y也貼緊了我,拿臉在我脖彎親暱地蹭著,忽然在我肩膀上狠狠咬了一口,推開我,一陣風地下了床,問我要不要喝水,我吃了一痛,有點蠢動的老二偃旗息鼓,才感覺那裡有些脹痛,想想算了,不必強逞少年之勇了。 熄燈睡覺,一夜無夢。 第二天醒來,y先洗漱,換好衣服出來,卻把那件珠光色的絲綢內衣小心地收進坤包裡,說是上面有我們的氣息,回去也不洗它,好作個念想。我見她說的誠懇,暗自慚愧,女人到底多些情誼,不像我,昨天風流之後立刻開始想家,恨不得從杭州趕回上海,--睡在自家的床上,才算睡得塌實。 早餐時,說說笑笑,我拿她昨天的表現打趣她,她羞赧要來啐我,四目相交時,腹內暖流又在奔流,眼神裡,彼此有了那意思,匆忙回房,又是一場好鬥。 事畢,離退房時間還早,我和y便在劉莊裡散步,這地方對面就是蘇堤,園子裡有參天古木,有茵茵綠草,是游西湖的絕佳所在。一路走走,到了丁家山上,說是山,但其實很袖珍,上山有座小房子,終日鎖著門,邊上立塊石碑,以前看過,知道是毛臘肉的讀書處,不過誰知道他在這裡幹些什麼。 我不是無緣無故把y引來這裡的,這小山包上,濃蔭蔽日,只聞鳥鳴,罕有人至。我讓y背靠著那小房子的牆,細細吻她,間或柔聲說些甜蜜的話,待y慾火重新燃起,將她一條腿從靴子和褲子裡脫出,y稍稍抗拒也就從了,白白的腿被我盤至腰上,探手摸下去,蕾絲內褲已經濕透,我掏出寶貝,用手指挑開她的褲邊,陷了進去。 陽光透過秋葉,灑在我們身上,即便這樣,12月份的天還是挺冷的,y的光腿上起了雞皮疙瘩,我心疼她,加快了速度,想早點結束。 蘇堤上的人聲遠遠地傳來,近處是鳥鳴山更幽,我低頭看她,她一腿穿著英挺的皮靴,一條腿赤裸纏繞,心裡又怕有人也上山來玩,百八十下後,就把持不住,突突地完成了這次野戰。 那天中午,我們在知味觀吃了頓飯,我特別喜歡他們家的醬鴨,其實楊公禪寺煲我也喜歡吃,不過臭臭的味道,不適合雲雨初霽的氣氛,,,總之,在知味觀隨意點幾個小菜,絕對不會讓我失望,,, 餐後沿著楊公堤向東,牽手散步,一路只有三言兩語。大概連續晴了好些日子,地上枯黃的梧桐葉被烤得很乾了,有風吹過時,滿地亂走的葉子摩擦出刺耳的聲音。三點鐘還不到,太陽就開始發白,無力地遠遠掛著,我們各自豎豎領子,找不到什麼話說,「激情過後的那一點點倦」,老b樣寫的哈好。 我說回家吧,y也有此心,於是打車去火車站,各自跳上一列最早的火車,分作東西。。。 分開以後,親暱增了一層,神秘去了七分,y開始每天給我打電話,不過一直很遵守紀律,工作日之外,從不給我打電話和發短信,估計她自己也不方便,這是少婦的又一個好處,, 我往她辦公室送過花,送過別的禮物,機關裡的風氣有點壞,這些東西出現在桌子上,擺明了有情人,她同事看到後居然羨慕她,這讓y很受用,,電話裡多次提到了她們同事怎麼怎麼說,又個和她非常要好的女人,居然知道了我們的一切,我猜,床上的表現她大概也知道了,女人們好像會在一起說這些話題的,, y這個同事被提到的次數越來越頻繁,我也知道了她的名字和一些情況,她叫z,27歲,大概和某局長有些曖昧,一直單身。聽下來我覺得,y會紅杏出牆,多少受z的作風影響,反正z對我們的地下工作很鼓勵,勸y要把握機會,好好享受激情 漸漸地,我開始感覺到,z不僅對我和y的密情感興趣,彷彿對我也充滿好奇,--我的直覺很靈敏,難道???我開始生出了得隴望蜀的念頭,, 心裡落了顆種子,就一定會生根發芽,我和y的聯繫中,多了一個影子,只是當時,自己也沒有意識到。 07年春,我有個機會去寧波出差,通知了y,她非常開心。在寧波快快地處理完公事,下午就溜到紹興,在鹹亨開了間大床房。 選擇這家酒店,是因為它餐廳的飯菜比較可口,我們可以叫房餐,省得跑到外面去招搖。 把房間號發短信給y,看看離下班還有一段時間,乾脆去重遊沈家花園。少年時為陸游和唐婉的愛情故事糾結,長成後也難以釋懷,每次總是懷著些許親切感去看看這個園子。這次又有些別樣的感覺,--當年的才子佳人,能逃開道德的枷鎖,盡享這江南的春色嗎?若是不能,詞裡行間,又怎麼會字字淒血,纏綿悱惻呢? 暮春時節,風是融融的,帶著花香的味道,我側坐在迴廊的美人靠上,享用一支香煙,--其實我抽煙很少,與其說是為了過癮,不如說是喜歡指間煙霧縈繞的感覺,縹緲散去的樣子,令人遐思。 不知不覺,日頭偏西,我看看時間差不多了,起身回酒店,起身的剎那,想起了房間裡的大床,襠下一緊,流過一陣麻癢的感覺。原來從靜思人生的狀態轉入偷腥的激動,彷彿也只需要按一個切換鍵。 回到我住的樓層,折過彎,y已經等在門口了,拿著手機正給我發短信。好個熟透的少婦,一身淡粉的套裝,透明私襪,淡粉的細高根鞋;衣服是「凹」字領,露出點粉嫩的胸脯;新剪了齊耳短髮,顯得明眉皓齒的樣子。 我熟稔地摟住y的腰,去她耳邊說聲好想你,她含羞回應,鼻中聞到她身上那股熟悉的女人香,一陣魂銷,便去親她的小嘴。y薄施粉黛,抹了珠光色的唇彩,應該是為了這次約會刻意打扮過,--y打扮時,她的老公應該就在身邊吧,我有點邪惡地想,越是告誡自己不能不厚道,越是難禁這份收穫人妻的刺激。 y推開我的狼吻,說趕緊進去吧,要給人家看見的。我忙打開門,甫一進去,便將y頂在牆上,y也被急速引燃,和我濕溫起來。思念已久的小弟立刻膨脹,支在y 的腹部,脹得難受,我從套裙中探手進去,竟是開襠絲襪,絲質的小褲褲裡,肉唇清晰能辯。這一摸讓我更加迫切,手指老練地從褲邊溜入,想著來次閃電戰也很不錯,不想y連連拒絕,說到,現在不要,我說為什麼,小甜心,她答到,馬上還有人來,,, 我吃了一驚,還有人來?莫非是z?也只有z了,腦子快速轉動,但不敢確定。 還閃過些念頭:y故意把z引入局,拿我當鴨子?還是我想多了,y只是把情人向閨密亮個相?或許說,鴻運當頭,有雙飛的機會? 我假裝一點也不知情,問是誰啊,y神秘地說,待會你就知道了。 大腦一思考,小頭就沒那麼衝動了,拿起電話打到餐廳點了幾個菜,要了瓶紅酒,心裡盤算著,不管是上面哪種情況,相機而動吧 我對y說,你先看電視,我去洗個澡,,,從包裡拿出件乾淨的白襯衫,順便把armani的香水也帶上,收拾乾淨,面對女人會更有自信,,, 快洗完時,門鈴想起,y去開了門,多了個女人的聲音,z來了。 剛擦乾的頭髮,男士香水,敞開的白襯衫,我覺得這樣應該有幾分性感的 拉門出去,看到y和z正在沙發上聊天,假意很吃驚。兩個女人站了起來,z面目嬌好,笑矜矜地望著我。z居然有168左右,江南女子中算得異類,但仍不失越女的溫婉,著一身嫩綠淺花的連身裙,腰身剪裁得很貼合,曲線畢露;裙裾及膝,未著絲襪,皮膚有著瓷器的光澤。 y介紹說,這是我們局裡的大美女z,我的好朋友;指著我臉泛紅暈地說,這人就不介紹啦,你知道的,,, z倒是爽朗,說,果然是位大帥哥啊,難怪我姐姐著迷, 我豈是什麼帥哥,中人而已,眼前桃紅柳綠,吳噥軟語,倒是一雙璧人。 三人相對,一時有些沉悶,我一時沒把握猜透兩個女人的底線,又按捺不住地渴望終極艷事,本來會說的嘴巴,也有點找不到台詞,,, 恰好有點冷場時,服務員叫門送餐,小餐桌推到床邊支開,白色的餐布逐一擺放好菜餚,紅酒,高腳杯,然後那小男生彬彬有禮地告退,氣氛一下就好起來了,我們愉快落座,窗外正值華燈初上。 z先舉杯祝我們浪漫相隨,我回敬雙姝更加美麗,一時以不同組合,各式祝詞,觥籌交錯起來,,, 幾杯紅酒落肚,漸漸烘動春心,我暗自思量,如何拿話來挑 正在犯愁間,z鬧哄哄地要我和y喝個交杯酒,我笑著說我們相交很深了,再來喝交杯酒豈不是小兒科,,, y聽懂我說相交很深是帶著雙關,呸了我一口,倒讓這句5z話更加露骨。我站起身,y也施施迎著我,我梢欠下身,兩人臂彎擁著脖子,來了個大交杯, 我聞著y的香味心花怒放,想起y那開襠的褲襪,又想著若和z這樣喝一杯,以她的身高,大概更加和諧,,,男人欲貪天下色,女f少怪。 z在一旁又是叫好,又是怪我們做作,秀恩愛給她看。我漏嘴說,要不我們也來交個杯?說出立刻覺得不妥,忙拿眼睛去看y,--喜新不厭舊才夠紳士,莫要傷到y才好,,, 但又想說了也好,看看y的反應,若是接口往下撮合我和z,那麼今天兩個女人是來玩雙飛來了,想把老子當鴨子;若是慍怒,倒還對我有些真情,z也只能夢裡相會了 y笑西西地對z說,給姐姐個面子,讓這臭男人便宜一回,和他喝一個。我聞言心裡正五味雜陳,腿上卻傳來一陣生疼,原來y暗地狠狠的擰了我一把,我不敢作聲,卻聽y有點冷冷地說,你們倆還不快喝? z大概也聽出y的弦外音,說,才不要便宜他呢,你喜歡的男人你自己多喝點,我才不來和你搶;我也連忙訕訕地把話岔開來,,, 妄想既已破滅,腦子就清楚起來。想想y和我雖是露水一場,但她在床上婉轉承歡,平時儼若情侶,給了我很多美好時刻,我怎可初見z就想另攀新枝?我倆雖沒有說過海誓山盟的話,但逢場作戲時也有許多甜言蜜語,輕易負她不似我平日所為,,, 都怪平時黃書看多了,想什麼雙飛的好事,這下得罪了y,也讓z笑我孟浪! 心態端正以後,不再去招惹z,十分慇勤,七分給了y,y自然很開心,兩頰各飛一朵紅雲,眼神溫柔流盼,似要滴出蜜來,, 我知道今夜自有一番繾綣,想想y那特意為我準備的裙內風光,不由心旌動搖起來。 待會z一走,就要把y扔上床,直接把她的套裙擼起,隔著那條絲質小褲頭搓她的小肉頭,看她怎樣求饒。不過剛才已經濕了一次,騷味太重,若要吃她時,還需脫光光去衛生間洗洗乾淨,--心裡想把y層層剝了舔吃,桌上的菜就沒心思動了,, 點上支煙,一手夾著,一手搭在膝蓋上,箕坐在床沿。 不料大腿隨意一動,搭著的手碰到一片柔膩,是微涼光潔的皮膚,我知道那是z的腿,心頭猛顫了一下,趕緊把手逃開 偷看z的神色,她彷彿沒有注意到什麼,或許她不反感這樣的觸碰?--其實也就是無意碰到一下,但那種滑膩觸感帶來的快樂,遠遠勝過ktv裡滿把滿握的揉捏。 我大起膽子,將腿靠攏剛才邂逅的位置,估計也就十多公分的距離,我卻像完成一次太空對接般的困難,臉上強作神態自若,心頭卻連連撞鹿。 等我移動到剛才的位置,卻沒碰見z的美腿,再靠過去點,還是沒有碰到,原來我有心她無意! 我真想碰落一雙筷子,好學西門大官人的招數,趁撿筷子時,去捏那雙金蓮。念及此,暗暗側過身子,去桌布底下看那雙美腿。 只見她一隻腳斜斜撐著,著一雙綠色淺口皮鞋,鞋子有繁複暗隱的雲紋,低調而精緻,白皙的腳趾收攏在淺淺的鞋面裡,露出一排嫩生生的趾溝;另一隻腳絆在這只後面,半脫出皮鞋,足弓底側的粉紅色隱約可見。 愚以為,女人三種溝中,趾溝的性感一點也不亞於乳溝和臀溝。 到趾溝,我還要囉嗦一句:設計這種淺口女鞋的人真是了不起的天才,懂得穿這種鞋的女人多半有幾分媚惑。不過,今年街上這樣的鞋越來越多,真怕會像黑絲一樣,氾濫成災,最後變成惡俗的潮流。 z的美腿美足讓我魂不守舍,菜羹已殘酒微醺,接下來z該先走了,她滿足了見我的好奇,我留下春草一般的情思,, 一念至此,頓生愁腸,佳人尚在,天涯已遠,, 我能做的,就是頻頻側身偷窺美妙絕倫的一雙小腿。不知道她們倆各懷了什麼心事,竟也漸漸無話,房間裡又安靜了起來。。。 我正瞥著z的裙裾輕擺,分神之際,y起身說要去洗手間,我被說話聲稍一驚,眼神從桌下抽回來,恰和z四目相交,--憑我的第6感,與其說我們目光偶然相遇,不如說她的視線早就在那處等我,, 我心頭一熱,耳聽得轉角處衛生間門「卡塔」鎖上,更是全身的血液往頭上湧,要知道,這是唯一和z獨處的機會,若要說什麼做什麼,那就該在此刻! 但我腦中充盈了快樂和興奮,同時冒險和猶豫也激烈交戰。一個聲音對我說,快把握機會;一個聲音說,別背叛y;又一個聲音說,你早就沒資格考慮「背叛或忠誠」;還��個聲音冷靜地說,小心是陷阱,兩個女人設局考驗你呢。 一時間頭緒紛繁,倒弄了個張口結舌,面紅耳赤! 我彷徨之際想把目光移開,反被z的目光死死鉤住,見我窘迫,她倒先開了口,壓低聲音問,剛才看夠沒有? 她一言甫出,頓時滿室春光,她自己也臉上飛紅,忙端起酒杯來輕泯一口,卻也遮不住她帶笑的梨渦。 原來早被她察覺到,既然她已挑明,那還等什麼?等著來山上被判3年嗎? 當下再不多想,一手立刻從她裙擺處探入 我一邊摸入裙中,一邊柔聲答到,怎能看的夠?怎能摸的夠? z的臉上紅雲更盛,忙用手把我那只還在向上溯流的狼爪拒住,小聲地嗔到,快拿出來,你膽子好大! 雖是隔著裙布,被她玉手一握,我心裡更熱,哪肯抽出手來,先前知道紹興女人慣會欲迎還拒,手上加了把勁,想去佔領那慾望的高地。 我見再難深入,乾脆以退為進,手向下一滑,滑過膝彎,順勢將她小腿抄起,擱在我大腿上,來回輕輕撫摸,陶醉在那份柔膩的觸覺中,, z也不再抗拒,微微閉眼,鼻翼翕動, 那一刻極其短暫,但我和z彷彿沉醉了很久,直到衛生間傳來沖水聲,z忙把腿收回。 z說,別這樣,被她看見不好。我心裡發笑,想你剛才怎麼不說這句話? 衛生間裡水籠頭打開,我急忙抓過z的手機,撥打一下我的號碼,掐掉; 衛生間門「卡塔」打開,我堪堪將手機放回原處。 z背對著y走過來的方向,朝我吐了吐舌頭,莞爾一笑,臉上紅霞兀自位散。 y也不坐下,單跪在床沿,依在我肩頭,我摸著她的手回頭和她笑笑,見她短髮的樣子頑皮可愛,隱隱有些愧疚。 y問道,你們吃好了嗎?那意思,有點像逐客令了,這少婦大概有些想要了吧。 我這會又怕z也感到這層意思,想找話岔開,忙對y說,你看她的臉這麼紅,別是酒勁上來了,我們泡點茶來喝吧。 y看看z,笑道,喲,你平時這麼好的酒量,今天怎麼紅成這樣了?我接住話說,面孔紅通通,肯定想老公,,, 桌子底下,我的腳被z用力踩了一下,--一會被y擰,一會被z睬,疼在身上,甜在心裡。 閒聊了幾句,z知趣地告辭,臨別留下一句,讓我晚上留點力氣。y當作一句玩笑,兩人鬧紛紛地哄笑;我卻別有理解,猜她是要我留下一份情來給她,這麼一想,胯下巨物傲然挺立。 門才合上,我便抱起y往床上一丟,自己脫去襯衫和牛仔褲,y在床上媚眼如絲,膩聲說,要你,,, 我來不及脫三角褲,撲上床便將她裙子擼上去,粉色的小褲在開襠處,作最後一道遮掩 我隔著小褲頭在核心處一陣揉弄,已把布料濕透,我剛想去撥開她褲邊,卻被她拉手起身,直拉到床邊地下站立,,, y主動來尋我的唇,一陣濕吻過後,她開始一路向下吻去,最後跪了下去,把臉頰靠在我凸起的部位,來回磨蹭,長長地呼吸。 我低頭看著她,只見自己白色的棉內褲高高地支起,她一張俏臉粉紅,似有火在暗暗燃燒,連露出的胸脯也呈紅色了。 我伸手去摸她的頭,穿過短髮,摸摸她的耳垂,她受到撫摸的鼓勵,笑盈盈地抬頭看我,我見鼻子長得俏模俏樣,忍不住刮了一下,她輕哼一聲,低頭隔著內褲便將鵝含住,兩手發力箍住我的屁古 少婦真是有顆狂野的心,未過片刻,又將我三角褲拉下,鵝蹦出來,打在她臉上,那活物還在晃動不已時,已被她一口含住,令我頓覺陷入溫暖的軟泥中,--有一回洗泥浴,大致便是那麼舒爽! 少婦品咂了一會兒,吐出,衝我笑笑說,等我先去洗洗,--這樣甚好,我喜歡先把女人洗乾淨,去除異味,方可以弄個盡興。 y背向快速脫去裙襪和衣服,只著三點,翩然走進浴室。 y的胸不算小了,但背卻很瘦,有條很好看的脊溝,靠近溝的下端有兩顆痣,反顯出皮膚的白來;溝的上段,乳罩的帶子正好跨過,像座白色的小橋,,, y扭著pp走進去,搞得我心神蕩漾,自己擼了兩下,稍稍慰問一下。 等她洗了一陣,我也走了進去,美人洗澡的景致,怎麼能錯過。 我閃進去,熱水從頭澆下,y將我拉開一點,躲過水幕,幫我也塗上沐浴露洗起來,洗到臍下三寸,y將它一手握住,藉著沐浴露的潤滑前後套弄,時而放開它,卻去溫柔地把玩兩隻油麵筋,這樣來回數次,我幾欲噴發,, 我趕忙將y轉過身來,背對著我,好叫她無從下手,我卻將手繞至她酥胸前,將我倆前後貼緊,--我將肉香蕉側過來,也緊貼在她背上,, 我們開始慢慢摩擦,貼合處皆是的滑滑的;互相亂摸,著手處也儘是滑滑的感覺 我倆漸磨漸快,慾望的火焰也越升越高,我顧不上摸別地方,但將兩手佔據她的胸前,或輕輕地感受她的圓潤,或重重地體味她的彈性;她似全身酥軟無立,用兩條手臂勾住我的頭,仰起細長的脖子任我親吻她的肩窩。 腳下一個散亂,我倆退入水幕中,水嘩嘩地灑下,又飛濺成千萬顆細小的水珠,分不清是從誰的肌膚上彈起,都在燈光中飛舞, 「月照花林皆是霰」,--可有幾分相似處? 沐浴露的泡沫漸衝去,我扳過y的身體,去含弄她的蓓蕾,一些水流順著那弧度進了我嘴裡,我興奮已欲狂,將水吞下繼續舔食。 y被我弄得絲絲吸氣,突然將我的頭抬起,在我的脖子上咬住,良久不鬆嘴,身體緊緊貼住我,大概是到了一次。 我給y一個長長的擁抱,這是女人高潮後最需要的,但自己的慾望還沒有消退,大大的傢伙頑固地擠在我們中間,, 過了一會,y緩過勁來,小手又開始摸索,我便讓她扶著那面玻璃,稍稍分開腿來,我自己蹲下一點,一聳而入。 大概貪圖更深,y將臀撅起來湊,這樣一來,她乾脆將臉和胸貼在玻璃上,可惜我無法分身,否則真想在玻璃外欣賞兩隻擠扁的ru房。 她前面到過一次,我也就不用再照顧她,乾脆將她一條腿抄在手中,也不說話,一味猛幹起來。 周圍全是靜默,只有嘩嘩的流水聲和偶爾響亮的撞擊聲,我不敢低頭逼視顫動的臀肉,去仰天看那噴薄而出的水線,想著逝者如斯,而我的青春也只化作一次次激情艷遇的回憶,別無痕跡。 原始的快樂漸漸如潮頭漲起,趁雷霆之怒,夾風帶雨夾衝擊堤壩,幾番之後,終於潰堤而去。。。 我們回到床上,相向而擁,她盡量倦曲著,像嬰兒在母體的姿勢,我也倦曲著,貼合著這個旅遊撿到的寶貝,, 風暴過後,我們安靜地聊著家常,基本上是她說我聽,聽她講前年父親病故時的傷痛,形容丈夫的模樣和性格,描繪機關同事間的傾軋。。。生活的細節讓懷裡的女人更真實起來,,, 說話間,手機響了,有條短信進來,--手機放在y那側的床頭櫃上,本不想看,又下意識覺得應該看一下,--請她遞過來,打開一看,已有2條未讀信息,, 是個陌生號碼。大意如下: 短信2:剛才膽子那麼大,現在當她的面短信也不敢回了? 往前翻, 短信1:壞男人,在幹嘛? 我心裡發一聲笑,z在咬鉤了。 不過總感覺有點太快,女人和男人燃點不同,任你脂粉班頭,風月老手,也難讓她們片刻之後傾心於你。潘、驢、鄧、小、閒,她要是圖其中一樣我倒也塌實,想來想去我也沒什麼可讓她圖的呀? 我將手機丟在枕頭邊,暫不去理會她。 y自然不知道我在想什麼,只顧說她的。 只聽她說道:「我們單位的黨委書記可討厭了!」 我隨口接道:「怎麼了?」 「老色鬼,經常揩油。」 「許我揩不許人家揩呀?」 少婦拍了我一巴掌,接著說:「去年吃年夜飯,大家喝了不少酒,飯後包了個舞廳去玩,他和我跳舞時手不老實,把我的p股摟得緊緊的。」 「好過分」,我表示憤慨, 「那裡還頂著我」 我聽了居然有點興奮,也頂了她一下,問:「哪裡呀,是不是這裡頂的?」 「啊呀,你好壞哦,沒有同情心,不理你」。 我不理她的話,下面開始起來了,抵緊了她兩腿間,有問:「他的大不大?」 「恩~~,不知道」 「有我那麼燙嗎?」 「沒有,哦!」 「有沒有頂到你這裡?」我已經抵住了她的要害,濕濕熱熱的感覺傳來, 「沒有,討厭死了,你」她將身體扭了兩下,分不清是在逃避還是調整一個更好的位置。 倆人已有默契,幾下子就滑了進去。 這個體位不能深入,只能把一個螺頭滑進滑出,有個好處,倒是我能充分享受她的咬合力,她能仔細感受我的粗細, 不一會工夫,突起的那一圈就被她刮得酸脹,她也被那個圈撩得難耐極了,開始斷續地出聲 我說我要不行了,再找個男人一起來好不好?她說不要, 我停了下來,說我真的堅持不住了,得歇一歇,她含混答應,但不停扭動, 我說現在我就是你們書記了,讓我進去嗎?她趕緊同意,說快點進來, 我將身體朝後挪了挪,和她幾乎呈90度,一下滋到深處,惹得她失聲大叫 恰在此時,電話鈴又響,抓來一看有是z的短信,「知道你們在幹什麼,就是故意騷擾你們,嘻嘻,好好玩吧,不打擾了」。 人在那樣的狀態之下,根本顧不上思考,不知道哪起來的邪念,按了下回復電話,塞回枕頭底下。。。 早些年上歡歡的時候,彷彿看到過這樣的情節,沒想到居然會被我用上了。 我稍稍放緩,估摸著那邊快接通了,就使出渾身解數,直弄得y長哼短吁,我仍覺不夠,不住地問她喜歡我嗎?喜歡我cha嗎?還要更深嗎?我情緒高漲,每發一問,y也興奮地大聲肯定,幾十下後,我在y的鶯聲燕語中結束了風暴。 趕緊伸手到枕頭底下,按掉電話,還怕有隱患,乾脆關掉手機。 今年9月份的一個中午,正在kds上潛水,彷彿那天天氣不錯,微微有點涼,我起身關掉扇窗戶,在短袖外套了件針織背心,剛要坐回去,接到y的電話,說她此刻就在上海,下午就跟公司的車子回去,言下之意,約我見個面,, 我問清她的位置,趕忙定好愚園路長寧游泳池邊的餐館,自己先急急趕到,找了個露天座位,把菜點好,燒起一支香煙,心情複雜地等待女人的到來。。。 女人赴約總是姍姍來遲,不過想到她們見你之前必須照上100遍鏡子,那麼多等一會,其實是種榮幸,, 我無聊之中,望著指間裊裊青煙定定地出神,思緒瞬間回到了1年多前那個離奇的夜晚。 昏黃的燈光,椅背上搭著的衣褲,皺皺的白床單,兩具赤裸的肉體,像極了一幅電影海報,, 我仰躺著,y俯身趴在我邊上,用一根手指頭在我胸膛上畫著圈,--她大概在享受暴雨過後空氣的芬芳,我卻暗怪自己剛才有些太鹵莽,--z到底聽到沒有,她會怎麼想,她以後會怎麼給y說,會不會把不好的影響帶到y的生活中去? 雖然,老實說,y和z並不是我生命中不可失去的女人,但是。。。我心裡非常忐忑。 我把一條胳膊攤開,y很默契地將頭枕上來,我側身將她擁得緊一些,她的身體也側了過來,擠出一條深深的ru溝。我用手指托住ru房的下沿,輕輕掂了兩下,--y的ru房讓我很迷戀,總是百玩不厭。 電話鈴想了起來,我不太想打破安詳的氣氛,擁著y的手臂沒有鬆開的意思,y頓了頓,還是將我輕輕推開說,大概是她老公的電話,說完便溜下了床,一跳一跳地去拿電話,, 我見她胸前兩隻白兔也隨之起伏不已,有點邪惡地開始想像她老公在電話那頭的樣子,不過隨即冒出另一個念頭,叫我厚道一點,不可以這樣欺負人家。 y接起電話,嘰嘰喳喳地用紹興話說開了,--那一帶的方言,講的慢一些再結合上下文,我是能聽懂的,但是他們這樣刮啦刮啦地講,我多半如墜雲霧裡。 只聽y開始還講得高興,慢慢開始說得少聽得多,臉色也陰沉下來。我覺得有點不妙,猛然意識到可能是z來的電話,這女人,行事風格怎麼如此生猛! 只聽y啪的一聲合起電話,拿起椅子上的衣服,一件一件地穿起,也不說話,,, 這時我基本能猜著個七、八分了,想想任何辯解也是徒勞,乾脆也不說話,穿起內褲,坐在床邊等她發作。 待y全部穿好,拎起包包就朝門走去, 「你去哪」我問, 「回家」, 「深更半夜,你身上有我香水味道,怎麼回家?」 被我一說,y眼圈一紅,落下淚來,怪我道;「你為什麼要這樣做?傳到單位裡去我還怎麼做人?」 我也後悔當時鹵莽,不過多說無益,只問說:「她在電話裡說什麼?」 「說她全部聽見了,誇你好厲害,總之你們背地裡對上了眼,別將我扯在中間,我現在就回家,給你們騰地方。」 她一副梨花帶雨的樣子,楚楚可憐,反惹得我柔腸百轉,先前一心想求新歡,這時卻立志呵護好舊愛,主意一定,便對y說,你哪裡也別去,好好在這裡待著,我來處理這事。 當下開了手機,給z撥了過去,,, 電話那頭等待音響起,我心裡也很矛盾,不知道接通了該說什麼好?自己和她一起瘋的,不能去指責她吧? 卻被y把手機拿過去,聽她說了一些話,最後用國語說了句:「你還是上來吧,你們兩個神經病一起給我道歉」,說完將電話還給我,見我十分錯愕,她說前面那個電話裡,z說她一直沒回去,就在一站路外的咖啡館裡坐著。 趁z還沒上來,y說了些關於z的佚事,彷彿倒在為她開脫,我心裡好笑,心想你不介意了我就更無所謂,偷眼看y的臉色,也不像還在生氣的人了。 門鈴再度響起,我早已穿戴整齊,忙去將門打開。走廊裡的燈光一下子鋪射進來,我眼睛一時不適應,晃眼間,但見z一襲綠衣,亭亭玉立地背光而立,光暈籠罩之下,美麗不可方物。 z見是我,低頭抿嘴,也不理我,從我身邊擦過,逕向y快步走去,我回頭看時,桃紅柳綠再度並立,一時叫我恍惚不定:如此良人佳麗,方才正是我淫戲之人? 只聽z嬌聲道,姐姐不要生氣,都怪他不好,我本來就在羨慕你們成雙結對,他還那樣來惹我,我也會受不了的,--聲音漸漸低不可聞。 「先生,冷菜給你上一下」服務生的話打斷了我的回憶, 冰鎮黃酒雞、四喜考夫、桂花糖藕,--他們家的本幫菜非常地道,在配上老洋房的環境,是向外地朋友介紹上海文化的一個好去處。 我向服務生點頭應允,恰看見y從院門裡進來,緊身牛仔褲,白色慢跑鞋,白t恤,還是那樣的短髮,我正要揮手,她已經看到我,笑盈盈地走來。 y今天的裝束顯得分外青春活力,我忍不住發揮口才,大大地恭維了一番,她自然受用,一陣花枝亂顫後,卻幽幽地歎到,「你只會甜言蜜語哄我,1年多了,怎麼不見你主動聯繫過我?」 我說聯繫得太緊,怕自己會愛上她云云,搪塞了幾句,知道她也不會信,, 心裡暗自歎息「也別怪我無情,『���生若只如初見,何事秋風悲畫扇,等閒變卻故人心,卻道故人心易變』,邂逅的美麗,也就在於初見之時,一回鮮,二回熟,三回就有點乏味了。若再碰到不明智的,日子一長動些真情,豈不生出些額外的煩惱?」小弟是有原則的人,再好的酒,只飲三碗。 一會兒,熱菜也漸次上來,有份熏魚是我最喜歡的,老早過年的時候,爸爸媽媽買回青魚段,為了年三十吃新鮮,會在小年夜裡熬夜趕製,, 我給y夾了一塊,叫她趁熱吃,介紹說,這家的熏魚是現做的,熱的時候肉質酥鬆,飽含蜜汁,, 她連忙咬了一口,連連稱讚,我突然湊到她耳邊說,我吃你的時候就這口感,,她聽了俏臉通紅,瞪了我一眼,卻問,「你後來背著我和z聯繫過嗎?」 1年多來,我沒和y見過面,至於z,甚至連電話也沒有打過。 07年紹興的那個晚上,好像有陣冷空氣下來的,--因為記得z說,她沒有叫到車,走了一站路過來,街上突然起了風,吹得好冷路好長,,y關切地叫她趕緊去洗個熱水澡,那姐妹情深的樣子還真不像是裝出來的。 我仍舊沉浸在肉厚汁多的熏魚帶來的聯想中,用這個聯想調侃y其實也是對她的一份讚賞,我至今驚異於少婦在性事方面的潛力,並因為她那一晚的表現而對她感激不已。 y見我吃得有點沉默,問我在想什麼,我說我在想那天我們好瘋狂,但不知道你怎麼會肯的? y聽我提起這一茬,嬌羞地將頭低下,--我迷戀這個婦人的,就是她在夜裡盡情綻放,又在白天不勝嬌羞。 半晌,她似乎想好了答案,看著我堅定地說,「我知道我們沒有未來,可能也不會長久,所以在一起的時候,就要開心」。 逢場作戲也不是一兩次了,但聞此言,還是被小小感動了,女人能這般通達,當是我的福氣。 我敬了y一杯,自己先乾了,微笑著看她喝完。陽光下,y的眼角爬上了幾絲不易察覺的魚尾紋,我壞壞地想,如果把這個細節用大光圈定格下來發到山上,估計叫阿姨、菜皮的tf至少會有兩頁吧,不過,熟婦的好,只有「懂的」人,才會發出會心的 不過女人到了這個年紀,會越老越快了,--1年以前,我曾在燈下那麼仔細地將她看遍,那時光潔的臉龐上絕對沒有歲月的痕跡,,, z進去洗熱水澡了。 我的心猛烈地跳動了幾下,有一下幾乎要跳出腔子,一種興奮到要窒息的感覺,傳說中才有的雙飛,本人艷遇史上的重大突破,眼下就要發生。 我定定神,知道還有一件事情沒解決,, 一龍二鳳的好事就是張窗戶紙了,但即便是張紙,也要有人捅破呀,我不見得等z洗好出來就對人家動手動腳,萬一會錯了意呢? y正站在一面茶色的長鏡子前,不知是不是看透了我的心思,飛了我一眼,似嗔帶笑,似笑含怨。我走到她背後,伸手摟定她,在鏡中看她那張粉臉,--她也在鏡中含情地看我。 茶色鏡上方有兩盞射燈,長長的金屬燈腳彎曲著,像昆蟲的觸角。我把兩隻燈腳都擰向上方,鏡子失去了直接照射的光線,裡面的人像變的柔和起來,好像正在上演懷舊老片;室內的空氣彷彿也有了咖啡的味道,香濃順滑。 曖昧的空氣勝過任何多餘的語言,我感到身體裡的火苗重新點燃,漸漸燎原,y的春潮再度暗湧,雖然鏡中淺淺的微笑沒有絲毫變化,但既然在我的懷中,又怎麼逃得過我的直覺? 我幫她褪掉絲襪,除掉內褲,她默默地配合著;再叫她穿回絲襪,這回被她輕輕捶了一下,, 她既然讀懂了我的壞念頭,那麼就是最好的挑逗了,我等她自己拉勻連褲襪,向她中間一摸,果然已是夜露正濃了 y推搪說z快要出來了,我心想就是要她看見才好順利切入正題,嘴裡卻說我們快快地來一次,, 見她不再反對,我把椅子拉到鏡子前,自己將褲子脫到膝蓋,坐到椅子上去,叫y分開腿,跨坐在我上面,, 蠟燭是我的,蠟燭油是她的,我們合夥開張起蠟燭買賣來,,這個姿勢彼此很省力,也很深入,但有兩個缺點我不喜歡:我的頭埋在她胸前,太悶;視線被阻,少了份刺激。 我令她轉過身,順便脫掉衣裙,只剩了bra和開襠絲襪,我則在椅子上挺直了身體,,y大概覺得這樣比較有趣,笑著跨上我,低頭扶住我的蠟燭,再次將蠟燭油倒澆了上去。 我們的蠟燭鋪面清楚地暴露在鏡子中間,絲襪將女人的腿型修飾得很漂亮,而我繃緊的肌肉也蒙上了層巧克力色,具有雕塑的美感,, 少婦被我強令著一起欣賞鏡子中的動畫,大概是受了這份視覺刺激,起伏得更加賣力起來。 y雖然如此賣力,我卻離爆發還很遠,主要是三分魂靈在當前,七分魂靈在浴室裡,--那邊廂洗澡水關掉有一會兒了,z這會在幹什麼呢?待會出來撞見了這場面,她又是什麼反應呢? 這是我從來沒經歷過的,饒得是平日智機百出,也不由地緊張起來。 我使勁抬腿挪了挪,以便稍稍側身,好借助鏡子的反光看見衛生間的門,,卻發現,那門留了道縫,並未關嚴,--我分明記得z進去的時候有落鎖的聲音。 呵呵,定是她偷偷在看外面的情況,藉著鏡子,估計能將我們看得很清楚。 那就讓你看個夠吧!我很方便地摘掉y的乳罩,一手一隻肉球摀住,將y的身體向後扳,直到靠在我胸脯上,小嘴也將香蕉扳起,不能像剛才那樣深入,卻很誇張地呈現在鏡像之中。 y被我雙手捂胸,動彈不得,卻又正是最難耐時,兩隻手抓緊了我大腿兩側,將下體和我癡癡纏繞,, 我怕被她纏到爆發,只好輕聲提醒到,z大概正在看我們呢, y聽後清醒了幾分,忽然將我從她身體裡退出來,跑回床上躲進被窩裡說,你快去找她。 這份上也顧不上許多,我大剌剌地去推衛生間的門,胯下閃亮的武器兀自挺立晃動,, z已知道我要進來,拿浴巾擋在胸前,站在霧氣騰騰的浴室中,等著她的君主前來臨幸,,那條浴巾半遮半掩反而讓眼前的裸美人更加秀色可餐。我微笑上前,將她橫身抱起,浴巾隨之落下,我轉身走回臥室,將她丟在y的旁邊,, 大床上,一位美女掩隱在雪白的被子下,吃吃地笑著;另一位美女玉體橫陳,羞得拖個被角蓋住臉面。--這是怎樣撩人的活色春宮啊! 一帝二妃雖是生平頭遭,但既然這個遊戲中,我為帝二女為妃,那就由我主動,無須再作扭捏, 當即分開z的兩條長腿,學那蜜蜂去花蕊中採蜜,,一隻手向她穎長的身體游了上去,--z的身體又是另一番好處,小腹更加平坦,mimi不如y的大,但彈性十足,我這才剛剛摸索,她已扭動起來,, 我稍停止飲蜜,叫y也來摸z的椒ru,y聽話地俯身來摸她同事,不想z也不甘示弱,也騰出一隻手去托住y垂下的白球,兩個女人自己嬉鬧起來,我得此空隙,也把自己脫個精光,但見斗室之中,肉光一片,無邊春意洋溢而生,, y白皙而豐滿,z修長而緊繃,嬉戲之時,四條藕臂纏繞,四座山峰對出,嬌喘未定,顏色艷若夏荷,吐氣如蘭,芬芳氤氳滿室,嬉笑之聲,婉轉而如百鳥投林,, 我剛才已有兩度梅開,此刻也不急於提槍躍馬,但將寶物握住,笑吟吟賞盡這人間春色,, 至哉舜聖,得俄皇女英共伺;孝成何幸?偕飛燕合德同歡;最可笑曹家阿瞞,被東風燒敗,江隔二喬,銅雀空鎖。 我雖是籍籍無名之輩,卻也能擁有自己的風流美談,老天真是厚顧。 正當我苦苦追思古代雙飛達人的時候,y喚我一起「收拾」z,我忙趕入戰團,z也半推半就,任我倆撲倒,且將腿分開,撥開那荷葉邊,中間一抹花蜜早已包夾不住,手指一試,便牽出蛛絲來,, 我那聳立的危巖,本待一貫而入,轉念一想,三人之樂,不可太過尋常,須化簡為繁,花樣疊出,, 便叫y幫我分開荷葉,我的巨龍擦過她的指尖,再歸於z的巢穴。如此一來,三人的視感觸感交織在一起,再排列組合一番,別有一番奇妙滋味 我見場景如此淫糜,心意快要飛散出去,趕緊小心收攝心神,不敢大意,只將巨龍慢慢進出。z舒服得將腿夾緊,卻把y的手指夾攏,挨挨擦擦地靠著我的龍身。小龍進進出出地帶出些白水來,潤滑無比,將y的手指從荷葉上滑下,卻正好捉住我的小龍,數度之後,y也不去分開z的肉荷葉,玉手直接圈住我的塵根,閉上眼睛,遐想著那份磨擦,, 我見y也動情,稍稍直起身,將她摟近,吻上她的嘴唇,,她忙吐出香舌任我品咂,身體也不由地扭動起來,, 我的小龍不會分身數,只好先委屈舊愛,將兩根手指暫時替代,,, y扭動更加劇烈,我心中有愧,不忍她空巢太久,便指揮y俯身摟抱住z,兩個女人初次裸體相擁,有點彆扭,但如今二女共事一夫,也格外順從,,兩人摟抱在一起,分別將頭別過,少了點剛才嬉鬧時的輕鬆,, 我從後觀之,兩處桃源,並蒂蓮開,問到,我要上上下下跑進跑出咯?y輕聲說了句,隨你怎樣都可以,z也恩了一聲。 得到許可,我也省去了換次房間換次衣服的麻煩,鼓起全部精勇,上下求索,左右逢源,如水田里的鰍鱔,才出土隙,又入泥穴;也像在吃西式自助餐,才嘗了千島汁,又試試愷撒汁。 我把手掌從兩個女人身子中間插入,費力地上下移動,手心手背是兩個不同女人的溫熱肉體,感覺真是奇幻,, 小龍也沒有片刻休息,繼續遊走於兩片茂林深處,交換之間,停頓雖然短暫,但情緒卻分外微妙。每次抽離,是一個女人的留戀,每次進入,是另一個女人的渴望;用它山之水,潤澤另一鄉的幽谷,帶一泓泉水的溫度,累積另一眼泉水的沸點。 我奮起神威,這坡行雲,那坡布雨,忙了個不亦樂乎。 小龍彷彿比平日更大更長,似膨脹到了極點,慾望也膨脹到了極點;身下交疊的女人也漸漸摟抱不住,像是因為脫力而要各自散開,又像是為了攀上某個高處而扭動不已;耳邊兩種叫聲纏繞,此起彼伏,我也忍不住地哼出聲來,, y先退出戰團,滾至邊上自己喘氣去了,我少了個對手,便專供z的桃源,全部本領盡讓她領教,直到她將我盤緊,口中聲不能出,我也不再堅持,三春雨露,盡施於她這塊新田。 我翻身躺在兩姐妹中間,將她們的頭左右攏在胸膛上,自己仰望著天花板享受生命的中最寧靜的時刻,--如果天花板上有個照相機將這一刻記錄下來,該是多麼傑出的作品! 雨橫風狂三月暮。門掩黃昏,無計留春住。 淚眼問花花不語。亂紅飛過鞦韆去。
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taiwandriving · 6 years
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跨海福建精彩自駕七日遊
全新的旅遊方式,自駕車暢遊神州大陸,好不快意哉~
出發日期:2018年 9月 19日,每人費用 NT$26800元
每輛車費用 NT$26000元(一般轎車及七座以下休旅車)
七座以上休旅車為 NT$29000元
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 【行程特色】:
★ 早去午回,行程最特別最超值。
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★ 『麗娜輪』
總噸位10,712噸,船艙裏設有偌大的全海觀景落地窗, 令人心曠神怡。外型設計如海底世界的Q板塗鴉,麗娜輪的第一印象就格外親切。全長112公尺、寬 30.5公尺,航速最高可達每小時83公裡;船身部分也頗有學問,具備「耐波性能」及減搖的T-Foil、Trim Tab,讓麗娜輪能在惡劣的海象中降低晃動,坐起來舒適平穩!
【景點特色】:二處國家5A级景區、一處國家4A级景區
【風味美食】: 嵐島風味  平潭風味 閩北特色
【行程自由】: 全程自己開車,臨時想停下來休息也可以!
【當地購物站】:全程無購物。 (不上攝影、不含景中站)
【當地推薦自費】: 無自費行程。
♥提供每日每位旅客優質礦泉水。
♥堅持獨立出團,並全程指派熱心、負責的專業領隊及大陸導遊,隨團服務。
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【使用船班參考】: 【每週2.3起航】
出發船班:臺北港 - 平潭   麗娜輪 0900/1200
返程船班:平潭 - 臺北港   麗娜輪 1430/1730
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●【武夷山】是經由聯合國通過,成為世界上少數僅有的『自然與文化』雙遺產保護區,擁有世界上發育最完整,保存最完好的『丹霞地貌』!保存了世界同緯度最典型、面積最大、最完整的中熱帶原生性森林!是名符其實的世界生物之窗,其境內的國家級自然保護區,是世界同緯度帶現存面積最大,保存最完整的中亞熱帶森林生態系統。不僅風景秀麗,還有著悠久的人文傳統,歷史上有過夏商、西漢和南宋等多次鼎盛時期,如以架壑船棺為象徵的古越族文化時期,以城村古漢城為標誌的西漢文化時期和以朱熹為代表的宋朝理學文化時期,這些都為這座名山增添了深厚的歷史感。
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●【九曲溪漂流】武夷山國家風景區中最美麗的景點,乘坐竹筏緩緩駛於彎彎曲曲的小溪上,聽著訓練有素的排工,一邊指著兩岸的秀麗風光,一邊訴說著動人的傳說!涼風徐徐的吹來,轉一個灣變一個景,多麼使人感到悠閒快樂!
<行程內容>
第一天  臺北港(八里)/平潭麗娜輪  0900/1200 - 屏南縣
早上在臺北指定地點集合,前往臺北港搭乘全世界最大最快的渡輪《麗娜輪》直駛由北京中央辦公室直接規劃的平潭島綜合實驗區!午餐後,辦完領車的手續直接經由高速公路駛往風景秀麗的閩東屏南縣。 【福建寧德市屏南縣】(古屬福州府屏南縣)屬内陸山區縣。東南與寧德市相連,東北與周寧縣交界,北與政和縣接壤,西北至西與建瓯縣比鄰,西南至南與古田縣相接。全境東西宽54公里,南北长50公里,總面積約1487平方公里。 有“紅旗不倒縣”、“鸳鸯之鄉”、“夏香菇之鄉”、“油柰之鄉”,福建省“水電之鄉”之美譽。
餐食:早:X  
午:中式饗宴 RMB60
晚:酒店內用餐 RMB60
住宿:★★★★屏南天外天國際大飯店
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第二天  屏南【白水洋、鸳鸯溪】
早餐後,驅車前往驅車前往【鴛鴦溪景區】,景區是中國唯一的鴛鴦鳥保護區。 鴛鴦溪長14公里,附近山深林密,幽靜而清淨,是鴛鴦棲息的好地方。每年秋季有數百上千隻鴛鴦從北方飛來越冬,使這一帶溪流早在一百多年前就發現鴛鴦,故屏南有"鴛鴦之鄉"之美譽。
午餐後,前往被譽為"奇特景觀""天下絕景,宇宙之謎"的【白水洋】國家級5A景區。其是世界唯一的"淺水廣場",其平坦的河床長約2公里,最寬處182米,總面積達8萬平方米,一石而就,河床布水均勻,淨無沙礫,人行其上,水僅沒踝,陽光下波光瀲灩,一片白熾,因而得名白水洋。在中下洋之間有一條近百米長的天然滑道,赤身下滑不傷肌膚,被稱為"天然衝浪游泳池"。陽光、白水、水蝕波痕,形成了色彩斑斕的河床。人們或踏水、或衝浪、或開展賽跑、拔河、武術、騎車、舞獅等別具一格的水上運動,盡享大自然賜予的清涼!
餐食:早:酒店內
午:中式饗宴 RMB60
晚:酒店內用餐 RMB60
住宿:★★★★屏南天外天國際大飯店
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第三天 屏南-武夷山【九曲溪漂流、武夷宮、仿宋古街、水濂洞景區、印象大红袍】
早餐過後,驅車經由高速公路前往著名的國家五星級景區”武夷山度假區”。
【九曲溪漂流】順流而下,滿載山光水色,覽盡兩岸千峰競秀!只見竹筏時而掠過淺灘、忽又泛遊深潭、別饒妙趣、樂而忘返!正如未代李綱詩曰〝一溪貫群山、清溪縈九溪、溪邊列岩岫、倒影浸寒綠〞沿途流覽玉女峰、小藏峰、虹橋板、假壑船棺、仙掌峰、仙釣台、響聲岩、小九曲、上下水龜、大王峰等。九曲溪全長62.8公里,經星村入武夷山,折為九曲,到武夷宮前匯於崇溪,盤繞山中約7.5公里,水繞山行,自有風情。(排工小費RMB20請自理)
【宋街】位於武夷宮,全長300米,取南北向,街頭建有石坊門,街尾構築了古門樓,模仿宋代建築遺風。在宋街盡頭的【古代名人館】內有朱熹種的桂花樹,有將近800多年的歷史,稱”宋桂”。【武夷宮】是最古老的宮院,初建于唐,宋賜〝沖佑萬年宮〞存有兩口龍井。
【水濂洞景區】水濂洞是武夷山風景區最大的岩洞,是水準岩層中較軟岩層受流水侵蝕凹陷而成,故不同於石灰岩溶洞,洞內比較寬敞,可容千人,洞頂有泉下落,形成高達 80 米的瀑布,水大如水管湧出洶湧澎湃,水小如白色玉帶隨風漂灑,古人讚「赤壁千尋晴疑雨,明珠萬顆畫垂簾」被譽為“山中最佳之景”!
【印象大紅袍】晚上安排觀賞由張藝謀導演策劃完成的印象系列第五部秀《印象大紅袍》首創360度旋轉觀眾席和矩陣式實景電影,1988個觀眾席5分鐘內即可完成一次360度平穩旋轉,坐席視覺半徑超過2公里。觀眾置身其中,武夷山著名的大王峰、玉女峰可一眼望盡,九曲溪水潺潺流動,大紅袍茶香繚繞,溫暖在心,盤旋之間,如夢似幻,完美融入到自然山水之中。270位當地演員70分鐘的精彩表演,由“盛唐笙歌”“竹林群舞”“神話傳說”“炒茶表演”“竹筏漫遊”5個章節組成,把天、地、人、山、水、茶和諧共融的情景演繹得淋漓盡致!
餐食:早:酒店早餐
午:中式饗宴 RMB60
晚:武夷風味 RMB60
住宿:★★★★★武夷山華美達酒店    或同級
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第四天 武夷山【雲窩天遊峰景區、茶洞、桃源洞、紫陽書院、中華武夷茶博園】
早餐後,【雲窩天遊景區】雲窩天遊號稱武夷山水的「第一勝處」,雲窩奇峰峻拔,巨石參差,形成十多個幽奇的洞穴,常年雲霧繚繞,變幻莫測,故有「雲窩」之稱;從雲窩往裡走即到壁立萬仞的天遊峰,天遊峰高聳於群峰之上,遊人登臨其中,有如遨遊天宮,故有 「天遊」之稱,「不登天遊峰,不算到武夷」,登峰頂可綜覽武夷全景和九曲山水,風光絕勝。【茶洞】是一個奇異的幽谷洞天,洞天深處隱藏著罕見的井穀奇觀;飛瀑傾注在清隱岩右邊峽谷之中,在谷底匯成一潭,這潭即是仙浴潭,相傳是神仙洗浴的地方。【桃源洞】以風光近於武陵桃源而得名,桃源洞內群巒環繞,田疇平曠,阡陌縱橫,屋舍儼然,桃花盛開,燦若雲霞,洞的四周,翠竹叢叢,裊娜搖曳,引人入勝,宋代陳石堂、吳正理在此避世隱居,明代謝肇制、徐霞客、曹學佺等均曾到此遊覽,留下不少詩文!
【紫陽書院】亦稱為「武夷精舍」在南宋時期是最大的一所民辦大學,朱熹在此培養了許多人才,也都在朝廷上有所成就。「朱熹園」占地2萬平方公尺,規模宏大,內有重建的「武夷書院」、「朱子銅像」….等,其中「武夷書院」是朱熹園主體,歷經800多年歷史滄桑,曾幾度興廢。武夷書院改建後外觀是仿宋建築,內分四個展廳,展廳最大特色是運用高科技, 透過電腦多媒體有聲有色地介紹全館佈局及朱熹生平事蹟。清晰的重現出南宋時期朱熹的理學文化與教學情景。
【中華武夷茶博園】總體分為景觀園區、地下廣場、山水實景演出觀賞區、茶博館和遊人服務中心等五個部分。在中華武夷山茶博園這面積約7.8萬平方米的園區裡,集中展示了武夷茶文化悠久的歷史、神奇的傳說、精深的工藝;以“濃縮武夷茶史,展示岩韻風姿”為設計主題,通過歷代名人的記敘、歷史畫面的再現、茶藝的互動表演,讓大家領略到武夷茶深厚的文化底蘊和誘人的岩骨花香!   
餐食:早:酒店早餐
午:中式饗宴 RMB60
晚:特色用餐 RMB60
住宿:★★★★★武夷山華美達酒店       或同級
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第五天 武夷山【一線天景區、大紅袍茶園景區】-3.5h福州
【一線天風景區】這裡有武夷山最奇特的岩洞一線天,還有號稱中國第一長的岩洞—樓閣岩,巨大的岩壁上佈滿大大小小數百個洞穴,狀如閣樓上的門窗,當地人稱其為神仙樓閣,洞中有世上罕見的哺乳動物白蝙蝠,洞旁有竹中奇珍—四方竹,以洞天奇觀而聞名遐邇!
【大紅袍茶園景區】此樹一年只產七兩茶,自古以來皆為皇帝貢品,沿著山間小道前往參觀世界第一的烏龍茶樹。武夷岩茶屬烏龍茶類,向有「岩骨花香」盛名,列為唐代及元大代的貢品,清朝後遠銷海外。
午餐後,經由高速公路驅車前往福州。
餐食:早:酒店早餐
午:中式饗宴 RMB60
晚:酒店內用餐 RMB60
住宿:★★★★福州山水大酒店
第六天  福州【三坊七巷、林則徐紀念館】-2h平潭【仙人井景區、北港村-石頭會唱歌】
福州【三坊七巷、林則徐紀念館】-2h平潭【仙人井景區、北港村-石頭會唱歌】
早餐後遊覽【三坊七巷】國家5A級旅遊景區,景區是福州老城區經歷了建國後的拆遷建設後僅存下來的一部分。是福州的歷史之源、文化之根,自晉、唐形成起,便是貴族和士大夫的聚居地,清至民國走向輝煌。區域內現存古民居約270座,有159處被列入保護建築。以沈葆楨居、林覺民故居、嚴複故居等9處典型建築為代表的三坊七巷古建築群,被國務院公佈為全國重點文物保護單位。接著參觀民族英雄【林則徐紀念館】,館中珍藏林則徐的墨寶及鴨片戰爭的文物。午餐後,驅車前往平潭。
平潭最具傳奇色彩的東海仙境——【仙人井】,井深超過47米,井口直徑超過50米,井中水猶如兩條蛟龍撲騰,噴起簇簇白色浪花,觀仙人峰、仙人台、駱駝峰、金觀音、牡蠣礁、漁人碼頭等眾多景區!
【北港村】是個依山傍水的小漁村,石頭厝是平潭的一大特色,冬暖夏涼,從高處遠望下來就像童話一樣色彩繽紛,甚是美麗!目前已經開發為”文創基地”,有許多來自全國各地包括台灣的年青藝術工作者在此創作,還有特色咖啡屋及風味小吃。
餐食:早:酒店早餐
午:中式饗宴 RMB60
晚:酒店晚宴 RMB60
住宿:★★★★★平潭麒麟榮譽大酒店
第七天 平潭【將軍山】/臺北港(八里) 麗娜輪 1430/1730
早餐後,驅車至平潭碼頭,進行報關程式及登船繫固後派車載各位旅客至
【將軍山】海拔104米,面積約1.1平方公里,山勢臨海而起,險峻陡峭,巨岩交錯,怪石呈奇,盤根錯節,佳境迭現。該山與敖東鄉大福村的東邊山連成一脈,共同組成海壇國家重點風景名勝區——青觀頂景區。區內原以丘陵石景、岬角海灣、寺廟建築為主要景觀特色。午餐後,前往碼頭搭乘《麗娜輪》直接返回臺北港,結束此次令人懷念的跨海自駕之旅!期待下次的相見!
餐食:早:酒店早餐
午:碼頭簡餐
晚:X
住宿:X
備  註:
1.行程內容因國際船班變動而有所調整。 
2.若遇不可抗拒之情況,本公司保留變更行程之權利。
報名截止時間 : 2018年 8月 19日
請來電協會 (02)25077530 找玉慧報名
敬祝您 旅途愉快!
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astavt-eretah · 7 years
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氷が水に変わる場所
1.僕 理沙は冷たい拡がりを纏っているみたいだった。 関わり合わない限り人間同士は、いつまで経っても、別々の宇宙人としての、遠い、遠い隣人同士なのだと思う。一度人と深く関わり合う決心をしてしまったら、広漠な世界へと続くはずだった自分の部屋のドアは、個人的な誰かへと続く、生活のためのドアとなり、自分がそれまで漠然と所有していた宇宙、少なくとも身近な可能性としての宇宙という概念は、僕の中から意図的に放棄されてしまう。或いは、最初から無かったことになってしまう。 いや、違う。僕は対人用のドアを入念に作り上げて、自分に元からあったドアを塗り固めてしまったんだと思う。宇宙へと開くはずだったドアがあるとすれば、それは完全に消失したりしない。でも、長いこと自分が対人用のドアを使い続けているな、と感じると、僕は時々、自分がここにいないような、間違った人格を所有し続けているような気になってくる。そして、その居心地の悪さ自体を自己の属性として、何が何でも認識し、受け容れなければならないような気になってくる。居心地の悪さを抱いたままで、周囲を見渡せば、誰を見ても誰かのための取って置きの笑顔を永久に保存してしまっているかのように見える。誰もが、誰に本当の笑いを向けたらいいか分からず、全ての人に平等に向けられた笑みの下で、自己喪失の不安に怯えているみたいに見える。 僕は罪深い存在だ。 僕は僕の中に入り、宇宙に向かって自分を開く。理沙がいつもそうしているように。僕たちは、当たり前の宇宙にいて、目を瞑ったまま起きていて、会話している。そして会話の中で僕たちは、ここでしかないこの場所に存在している、と確かに感じられる。 僕は赤い物を身に着けるのが好きだ。自分の居場所を見失わずに済むから。 「歌の中に雲が降りてくるの、それを、ピン留めするように、ギターを弾くの」 理沙は言った。 卑屈さを感じない、高い、高い空。それは目を瞑った時にだけ、僕には見える。 緋彩は唇の端を少し歪めるようにして、上下の犬歯で軽く下唇を噛んでいた。血の気が抜けたようになっている唇の、そこだけが赤くなっていた。水のように聞こえる緋彩のギターの音は、時に雨のように、僕の鼓膜に降る。彼女の弾く音は、空間の色を分散させているみたいだった。 理沙は時々、明確に自分を緋彩であると認識する。彼女にとっての一番の願望は、自分の中で、自分ではない自分に出会い、そしてそれ自身になることだった。 彼女はいつも「何かが足りない」と言っていた。 彼女の憎悪は彼女自身に向けられていた。想像でしか汲むことの出来ない地下水を思い、彼女は焦り、激しい渇きを覚える。 彼女からは細かい磁石の混じった、冷たい水のような匂いがすると思った。でも僕はそのことを理沙に言わなかった。 理沙は紫色の唇に笑みを浮かべていた。暗鬱を示そうとする、いくらか作為的な愛想笑い。部屋には彼女以外は誰もいない。彼女は数日前から睡眠薬の備蓄を切らしていた。市販の鎮咳剤と、ネットで購入したアミノ酸のサプリメントのボトルが机の上に置かれていた。音楽は彼女に恐怖をもたらした。音に浸るには、彼女は自分が無防備すぎると感じた。窓の外で鳥が鳴いている。その鳴き声が彼女には、まるで彼女を非難するような、細長い針で出来た音のように聞こえる。彼女はアミノ酸の白いカプセルを四錠手の平に取り、新聞写真みたいに灰色に見えるグラスの中の水で飲み干す。水とグラスの境目がほとんど分からない。それから鎮咳剤を、正確に十錠……いつの間に中身がこんなに減ったのだろうか?……飲む。薬はすぐに頭に回り始め、彼女は額の奥に、赤いような、鈍い痛みを覚える。 潰れた箱から、煙草を一本取り出して、口に咥える。そのまま、火を着けないで、身体を捻って、立てかけていたエレキギターを手に取り、ピックを持って、アンプの電源は入れずに、いくつかのコードを弾き始める。知らない内に彼女は『アンダー・ザ・ブリッジ』のリフを弾いていた。壊れてしまいそうなバランスの上で光を放っている曲だ、と彼女は思う。それから、彼女は『グレイス』を弾く。外で人の声がする。彼女はギターを、さっきよりは素早い動作でスタンドに置き、赤い金属製のライターで湿りかけた煙草に火を着け、それからヘッドホンを着ける。彼女は真剣な、悲しいような眼付きで煙越しの壁を眺める。 煙草の火を、半分くらいのところで丁寧にもみ消して、目を瞑る。しかしすぐに目を開き、口の片方だけで笑う。机の上の文庫本の角を意味もなく親指で撫で、それから水を一口飲む。「何が信じられる?」彼女は、自分でも殆ど意識していないのだろう、小さな声で呟く。 2.緋彩 「魅入られたみたいな顔して、まるで戦争でも起こるみたいじゃない?」 緋彩は僕に言った。 僕はテレキャスターを抱えたまま、右手の人差し指を軽く唇に当てて、しばらくの間放心していたらしい。弁解するように、 「透明な魚のことを考えていたんだ」 と言った。緋彩は「ふうん」と気が無さそうに応えた。僕は続けて、 「右目が左目の世界を見るんだ。左目が右目の世界を見てね。つまりその魚は体内を見ている訳なんだ。それにも関わらずちゃんと外の景色も見えている。でも魚は『これは僕の中だ』って思い込んでいるんだ。そういう、絶望的なこと」 と言った。緋彩は再度、「ふうん」と言った。僕は緋彩の方を一度見てから、また視線を壁に戻して、 「それで、その魚は歌を歌うんだ。ミとかラとか、緑色や赤色の声で。そうすると歌の行く先が絶え間なく魚の内面になるんだ。それでね、魚の歌を聴く人は、みんな魚の内面になってしまうんだよ。そういうことを考えてた。魚というのはギターのことなんだけど」 僕が言うと、緋彩は少し俯いて、小さく笑った。僕が言ったことに対して、というよりは、僕の真面目な口調に対して、という感じの笑いだった。彼女は少し身構えるように、両腕で身体を抱くようにして、 「たいへん。君のテレキャスター君が、窒息しないようにしないと」 と上目遣いになって言った。 僕は「そう、そうなんだ」と言いながら、また右手を唇に当てて、左手でギターのネックを軽く叩いた。月の裏側をノックするみたいな音がした。取り留めの無い何かが浮かびかけては消えていく。 「ねえ、こうも思うんだよ。一匹の魚は全ての魚なんだ。みんな透明なんだよ。僕たちはみんな空を飛ぶ島国みたいなものでね、それぞれの島がぐるぐるひとつの方向に飛びながら、巨大な一匹の魚をロープで引っ張っているんだ。ところが魚の方から見ると、ひとつひとつの島は小さな魚なんだ。全体として、群れとしては正しいんだよ。大きな魚から見た小さな魚の一匹が僕なんだけど、僕から見ると僕が中心にいるようにしか思えないんだ。僕はそのロープの方向を知りたいんだ。そう思った。正しい方向とは、歌なんだよ。ロープがその先で複雑な回路になっているかどうかは知らないんだけど、とにかくそれは一本なんだ。僕にとっては」 僕はギターの一弦を解放で鳴らした。 「でも、どうしてそう思ったのか、よく分からないんだ。ギターを弾いていて、そう感じたんだけど、でも、僕は何だか怖くなって……」 と言って緋彩を見た。緋彩は僕を見ていた。彼女は何だかちょっとした悪ふざけを思わせるように笑っていて、僕の言葉の文末に自分の声を合わせるように、 「大丈夫だよ、入谷くん。魚のこと、分かると思う。でも……」 そして、右手の爪で頬を掻いてから、 「でもね、君の言うことは正しくない」 と少し窘めるように言った。 自分の心について語る時には、厳密さが少しでも欠けると、全て台無しになる、というのは緋彩の口癖だった。彼女が、そのことを僕の言葉に対して言うのは、何かアンフェアな気がしたのだけど、僕はギターを壁際に立てかけて、目を瞑ってから、 「僕は、歌が何かを教えてくれる、と思ったんだ。今の僕は、歌を素直に聴く受け皿みたいなものが無い。そうだな、さっきふと自分が空っぽになっててさ、そこに歌が流れていたんだ。……そのずーっと先の方で何か見えたはずだと思ったんだけど……、僕たちは巨大なお芝居の中にいるんじゃないんだ。数々の回り合う個性があってさ、そう、僕はコピーのことを考えていた、コピーと実物の関係なんて無いんだ、って。何かしらの原型なんて無いんだよ。イデアなんて無い。イデアなんて持ち出さなくても、ここに在るものだけで十分なんだ。ここにあるもので、全てだ。そういう感じがしたんだよ」 と言���た。自分でも、脈絡が全然無い、と思ったのだけど。 緋彩を見ると、彼女はいつの間にか煙草をくわえて、壁際のプラスチックの椅子に、身体の片方を預けて、まるで、僕の話には気のないような表情をして、座っていた。僕が見ているのに気付くと、 「うん? 夢の話は終わり?」 と茶化すように言ったので、僕は腹が立ってきた。僕が何かを言おうとする前に、彼女は煙草を持っていない方の手を軽く上げて、僕を制止して、 「いや、分かるんだ。分かるんだけど、君がイデアなんて言うから、少し疲れちゃって。ごめんね。君が作り話を言おうとしているんじゃないことは分かるの。でも、ちょっと落ち着きなよ。君は不思議な夢を見ただけかもしれないよ。君は、ここにあるもので十分、と言いながら、一生懸命夢を思い出そうとしているみたいだよ。……まあ、そう怒らないで。君はね、いい? 現実にここにいる私に向かって、現実の在りかを説こうとしているんだよ。そんなことよりさ、一緒にギターを弾いて歌ってた方が百倍面白くて、現実的だと私は思うんだよ。ここに無いことの奇跡の話よりも、ここにあることの奇跡を喜んだ方がいいのよ。気分的にね」 と言って、首を二十度ほど傾げて、僕に向かって、にっこり笑った。僕は、何だか怒る気が無くなってしまって、彼女に笑い返した。 「言葉というものは詩になりかけると冷たい息を吐くときがあるね」 理沙は言った。 3.理沙 僕は不安を抱えていた。その不安は、薬の効能とは関わらない場所にある。眠ると夢を見る。水色の夢。小さな味がする。……まるで食べ物を口に入れたまま眠ってしまったかのような吐き気を感じて目が覚める。 理沙の住む15階建てのアパートメントの屋上からは、白い折り紙細工みたいな街並みとその向こうの煙突が見えて、僕たちの頭上では、果物みたいな形の雲が、ゆっくり動いていた。 「眩しさが消えない内に、死んでしまえたらいいのに。みんな愛おしく感じられて……私にとって、正しく私がいなくて」 理沙は掠れたような笑みを浮かべて、小さく呟いた。このところ、彼女はずっと死についての想念から離れられないみたいだった。僕に向かって、唐突に観念的な質問を投げかけてきて、僕がそれに答えられないでいると、何か僕に罪があるような目で、彼女は僕を見るのだった。「何故、これはこうしてあるの?」「何故、あるものはあり続けるの?」というような、何故も何も、そうなっているのだからどうしようも無いとしか答えようが無い質問を、彼女は繰り返した。 「どうにかしたいのじゃない。ただ、私は本当に信じられる何かが欲しいの」 と、彼女は困惑したように言うのだった。 理沙は、大事なものを抱えてきて、それを地面にまき散らす人のような動作をして、それからまた、空っぽになった手を胸の前に重ね合わせるような体勢に戻った。彼女の目の周りは涙で縁取られていて、そこに夢の名残のような虹色のラメがきらきらと輝いていた。 「生きるのは、完璧に生きることなのよ。遠くない死を自覚した人のように。本当に生きたい場所は、ここなのよ。私は、ここにいたいの。ここに辿り着けないの」 理沙は落ちていた石をひとつ拾うと、手の平を上に向けて、その石を軽く握った。 僕は屋上の端のベンチに座って、くすんだ人工芝の青に目を遣っていた。 理沙は軽く身を引いてから、僕の頭上あたりを目掛けて石を投げた。石は僕の後ろのフェンスを越えていった。僕は振り向かなかった。理沙は、脱力したように、スカートの裾をつまんで、二、三度はためかせてから、歩いてきて、僕から斜向かいの地面に座った。 屈んだ姿勢から、僕を見上げて、彼女は、 「私は消えてしまってもいいの。何がどうあってもいい」 と言って、唇の端に、凍った壁の花のような微笑を浮かべた。それから立ち上がり、向こうを向いて、何かを言った。 「何?」 と僕は訊いた。 「あのね、……ううん」 彼女は言い淀んだ。それから、素早くこちらを向いて、 「あのね、みんな、あるがまま、ってことにしたいんじゃないかな。みんな、とても感傷的じゃない? 狡いよ」 と言った。 屋上の世界には、僕たち以外誰も存在していなかった。雲の切れ目から、僕たちの上に陽が注いできた。僕は右手を唇に軽く当てて、 「ねえ、理沙、僕たちは随分、眠りから離れてしまっているとは思わないか? 多分ね、僕たちが目覚める場所は、ここじゃないんだよ。いや、僕たちの目覚めは、こんな風じゃなかったはずなんだよ」 と言った。 理沙は、二、三度、その場でくるくると回ると、僕を見て、 「そうね、眠れば。今から部屋に帰って、眠ってしまえば、きっと全ては正しくなる。きっと、全ては……」 と言い、溜め息を吐くように、ふっと笑うと、 「私は、多分大丈夫。大丈夫だよ。だって私には、君がいるものね」 と言った。 僕たちは、手を繋いで、下の階へと続く暗い階段を降りていき、理沙の部屋の前に辿り着いた。彼女は一瞬だけ僕の方を見て、それから、ドアを開けた。
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vixenwolcott · 7 years
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女帝 Episode 1
  炙夏,日光東來。
  向著通往與謁見廳殿連結在一塊、兩側皆植滿象徵當代皇室的扶桑花的迴廊內緣,外頭白晝陽烈的光跡透過間距有序的彩繪玻璃的落地窗,傾斜地、漸層分散似地漫射進入迴廊內裡。彩繪玻璃上頭所繪製雕飾歷代繁複不暇的寓言圖樣,藉著光線在廊道延展出與其本身相互輝映且隨著時間緩緩拉長,並且擴廣開來相互覆疊的豐艷混色。
  母親,還有父親,兩人左右一邊輕拉著年幼的我緩緩地在廊道中前行,我們前方擔當引路人的宮中侍官已數度調整步調配合著我們一家的行進步伐。母親與父親,似乎是想拖遲些什麼。
  「母親,皇宮很大呢。」
  初次進宮的我,幾乎徹底地被偌大的宮廷建物、挑高拓展的穹頂以及協調劃一的一致規律吸引了,就好似旋渦那般若是深陷便難以掙脫。
  「那麼,女帝喜歡這樣子的宮殿嗎?」
  方才吐出這項疑問的瞬間,拉著雙親的手掌被兩方緊張地握了一下。這時我才意識到是我的懵懂犯了差錯。
  「安分點吧,在宮中以及陛下面前可不要失禮了。」
  母親又反覆握了幾次我的手掌,拉了拉我的手輕輕地責備著,「然後,妳往後得時時注意敬語的使用呢。」母親停下腳步,彎下腰並將我轉向她面前,一邊整理我領口處略顯偏斜的領巾時鄭重地向我叮囑著。
  「沒事的,家主閣下還請不需要分神操勞這些。」
  引路的侍官轉過身來,爽朗地報以笑容朝著母親的方位稍事淺淺的欠身。不過母親看似並沒有打算搭理侍官的動作,轉而是父親將侍官客套地打發回去繼續引路。
  「陛下是很親切的人呢,請不用擔心。」
  侍官在返身繼續引路前,留下尾句時,恰巧彩繪玻璃上頭冷色調色塊的投射自她臉上一掠而過,將她臉部短短幾秒內微微變貌、抽動的客套表情隱沒,當下的那麼一瞬間,我好像失去了握著雙親手掌的真實感,以及開始領悟到待人方面一份真摯感的崩解。
  親切?雙親對於侍官的言論顯得相當的不以為然,更應該說是隨時都警戒著侍官口中的那位陛下呢。
  女帝,到底是個什麼樣的存在呢?若干年後我仍舊不停地尋找箇中答案。
  究竟行走多久了呢?思緒在紛色光影的渲染下便顯得有些紊亂無章,集中力像是散沙那般暫且無心專注,或許時間的概念在當下,數十分鐘也就庸愚地鈍化為數小時的錯誤認知,反之或許亦然。
  日中。烈陽磊落。
  隨著侍官步出迴廊底部開始,視野中的焦距也因正午烈焰似的強光的關係,數度不停的眨眼調整。深刻烙上眼底的,是步出迴廊時便在眼前一展而開,宛若絲毫邊際都無法探知,廣袤且深遠、空寂卻厚實,諸如這幾項表裡各成一派的形容詞所堆砌建立的殿前廣場。廣場上頭,與迴廊裡的落地窗一般,同樣也是以固定間距規劃列展,不過卻僅以素白做為外在身姿的高聳、渾圓寬厚的大理石旗柱群井然地在主要路徑的兩側有秩地向旁側逐一矗立。而旗柱頂上所昭懸的皇室旌旗在略帶勁道的陣風中滾動,並且獵獵地作響。
  我暫時鬆開右側與父親的拉手,伸手在眼際上方遮了遮,屏除部分的烈陽以便弄清視距。接著抬頭想更看清楚那些昭懸的旌旗、想更看清楚雙親的面容。
  父親注意到我的目光,他由原先的向前注視轉而向我扮了個滑稽的鬼臉想逗弄我,不過我卻在父親扮鬼臉時五官糾結在一塊的那短暫數秒裡,似乎瞥見了父親眼角一隅快速地泛過淚閃。相反地,母親則是一直筆直地盯住前方,對於我側過頭望著她的側臉的舉動似乎沒有察覺。母親的眼角在我們已經接近謁見廳殿前方的臺階時開始緊繃起來,雖然無法直接看到母親的表情,不過我能察覺得出來母親明顯展露出相當銳利的目光,提防著那位女帝。我未曾謀面的那位女帝。
  錚錚澄樂。扶桑百階。
  灼灼碩美的扶桑花叢,縱貫且連綿地栽植在隨著臺階斜度一併設置的垂帶上頭的花圃當中。另外,或許是已經十分接近廳殿的緣故,每登上數階臺段,似乎是廳殿中正在演奏的樂器合鳴便不間斷地、愈加清楚地傳入耳中。登上女帝的廳殿,那麼此處有著扶桑相伴的百階,即是最後一哩路。印象父親曾在床邊故事提起,一直向著西方前進,越過國境線後,亞世神一族的國度裡,在謁見之前有著栽滿紫藤花的千段臺階呢。一聯想到這,原先對百階顯露疲態的我不禁燃起了一股想將其征服的念頭。
  踏上百階頂端時,我轉過頭向下方方才行經的路徑一望,一開始的迴廊底端幾乎已經湮沒在遠處模糊曖昧的景深當中難以尋覓,而百階下方的偌大廣場,此時望去也就僅是偌大而已,普世的紛紛物事似乎與女帝的廳殿有著一道無形的藩籬,劃分出既定本質之間的格差。母親也曾說過,她在尚未進宮任職以前,生命就如同井水般卑微卻寧穩,沒有絲毫波瀾。但當她踏足宮廷的那一刻起,一道門被徹底地、猖狂地狠狠拽開,讓她清楚地認識到自己的欲望就如同海中深淵那般,洶湧、激烈,而且無法使其和緩。
  「已經到了,陛下在殿內等著,還請進。」
  侍官在廳殿入口處停下,轉過身,挺直背桿並深深地彎下腰盡了她的禮節,而雙親也回以相符合的禮數。
  廳殿內與外頭的百階或者廣場而言,徹底的已是另一層格段的景致。廳殿的結構算是相當地簡明,主體以大圓環形式做為外觀的呈現,另外頂部則以直徑五十米的穹頂予以包覆,另外穹頂內部也施以相當的工法,以九層數量相當,同時更隨著向頂部用以採光的圓形天井延展,繼而加以逐層縮小的凹格階層彰顯、導引出穹頂的巨大,並且給予來訪者們一種向上的活力以及肅穆的氛圍。
  或許是浸潤在這等氛圍裡頭,直至左手被母親又拉了拉提醒時,赫然地才發覺玉座,以及之上女帝,這兩者的輪廓已經映入視距以內。女帝,還有當然也在旁栽滿扶桑的素白玉座,在正午採光的天井下頭,沐浴於金色陽光當中的女帝,還有灼碩綻放的扶桑花群,由略帶景深模糊的視距望去,便使得年幼的我深陷癡迷,那種由光線錯落造成的不完全實感,就好似正在燃���一般,緩緩地、溫穩地將那金色烈焰的盛勢透過眼簾開始蔓延至我體內,而且在體內各處血管、末梢以及神經節點間展開一股激昂的、急遽的燥熱,更使得皮膚���層毛細孔及其下方的毛細血管就好像沸騰起來那般有著燒灼時疼痛,但那疼痛卻帶來了直衝腦門的刺激與快感,令我霎時將精神緊繃起來。
  母親與父親領著我在距離女帝玉座前方約三十個步伐的距離停下。在雙親正要欠身行禮前,女帝,擺了擺手示意這次的謁見並不需要這等形式的禮節。雙親轉回正姿時我回想起先前侍官的親切說,如果只是因女帝這次的不拘小節而能被稱作「親切」,那麼對於在母親的嚴謹教誨下的我而言,確實還真的有那麼點親切。
  步上玉座前,有著十階的小臺段。此刻的女帝已從玉座起身,但令我意外的是,女帝褪下跟鞋,並將其整齊地置於玉座一側,後便以赤足緩緩地步下階段與雙親以及我同處平等的位置。或許是正午金色烈焰扎得眼睛有點疲倦的緣故,僅剩二十來步距離的女帝面貌在眼中卻顯得難辨。而女帝的裝束也非同雙親的正裝穿著,僅以連身且素樸的白底長裙與帶有流蘇袖口的淺灰色披肩作為衣著的搭配。這樣是否「親切」過分了,又或者說有更深層的意思隱藏在其中,那時的我仍然什麼的沒能弄明白。至於雙親,直到謁見結束皆不曾出聲。
  「你就是歸璃采吧。」
  女帝出聲,不是問句同時也不要求肯定。但那聲音與目光的方向顯然地只聚焦在我身上,或許是女帝突如其來,而且不帶有壓迫感的嗓聲,使得原先精神緊繃的我在受此反差之後癱軟,只能怯怯地點了點頭,接著便逃開女帝的目光,轉頭望向母親與父親希望尋求一絲依靠。不過母親就像是在廣場那時一樣,並沒有發現我求助的目光,只是緊緊地盯住前方女帝的身影。而父親這次也忽略我的視線,反而代替母親單純地向女帝再度微微地欠過身。
  稍稍地逃開與女帝直接相交的視線,眼珠咕嚕咕嚕地向著四方輪轉打量著殿內、玉座後方,而女帝也在那時溫緩不迫地伸出手,向身後玉座方位的區塊做出招來的手勢。於是一名或許也是身為父親的男性從容地牽著暫且應該是女兒的小女生走向女帝。然後那個小女生便怯生生地將自己藏入女帝身後摟住女帝腰間,只探出側臉對著我的方向觀察,至於那位男性則與女帝同列,接著他便向我們一家微微地彎下腰過了禮數。至此我心中的答案很明顯了。
  「在害躁什麼呢,往前去吧。」
  女帝這時沒有彎腰,只是稍事轉動上半身且挪動視線,並伸過了左手搭向半掩在自己腰際後方、輕抓著母親連身裙襬的小女生,微微地鼓勵著然後將她輕輕地向我的方向推出。接著小女生似乎在一瞬間下了決心,放開了女帝的裙襬離開她母親身側,筆直地、穩定地向著我走來。
  白色膚層、薄雪般粹白髮絲,以及像是染著扶桑花色的赤色虹膜,有點活脫像是故事繪本中跳出來的人偶一樣,再者或許是被正午的煌煌烈焰覆疊的緣故,向著我走來,年紀可能略小我一兩歲的那個小女生,就有著行走於蓮池水澤面上那樣,踏出的每步步伐似乎都能漾起帶有半透明、爍著紫金色的蓮花花瓣的襯托。那瞬間,不禁讓我有股想化作蓮花的意念,到底只要能被她所寵愛,那麼即便是最下階的蓮花也無妨。
  在她開始朝我走來時,我打量四處的眼角餘光也注意到了,母親、父親以及女帝夫婦,都深深地彎下腰向著她欠過身。還在思考是否該與母親一樣做出反應時,母親將發楞的我朝著那小女生的方向輕送而去,回過神時她已經來到我的正前方。
  她拉過手,尚保有些微粉色的嘴唇淺顯地抿過一笑。
  「貴安。初次見面,我是夏蓉──」
  對,那一刻也許青鳥飛揚,而我當時卻沒有捆入掌心。
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sabooone · 7 years
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My Favorite Things.
わたくしは、弱いものが大嫌い。
貧しいのが嫌い。惨めなのが嫌い。侮られるのが嫌い。
人に謀られるのは、もっと嫌い。
「姫様、姫様、どうかお鎮まり下さいませ」
藤田が私の腕にしがみつく。
投げ捨てようと思っていた香水の瓶が藤田の額にごつりとぶつかり、鈍い音をたてた。
夫婦の寝室に、私のぜいぜいという呼気ばかりが大きく聞こえてくる。
ゥアンゥアンと、頭の中で大きな音が反響し、くらりと目眩がした。
落ち着いて呼吸を繰り返していると、次第に藤田の啜り泣く声がしているのに気がつく。
見下ろすと、その紫色の瞳いっぱいに涙を浮かべて泣いていた。
わたくしは、美しい宝石が好き。
綺麗な着物が好き。豪奢な装飾品が好き。贅沢が好き。
雫で潤む、アメヂストが一等好き。
「――紅茶、淹れて頂戴」
私がそう命令すると、パアと顔を明るくして藤田が立ち上がる。
パリンパリンと硝子の欠片を踏み砕いて、紅茶を淹れに部屋から出て行った。
私は何だかもう疲れ果てて飽きてしまって、持っていた香水をトンとそこらの絨毯に投げ捨てる。
乱れた前髪をチョイと手で直しながら、長椅子に座って一息ついた。
陽の光が差す。
斯波との寝室は滅茶苦茶だった。
テラスの硝子窓は砕け、鏡台の鏡も蜘蛛の巣のようにひび割れが、
宝石だとか夜会服だとか、何もかも床に投げ捨て、その上に香水の瓶が割れて中味が零れ、酷い臭いをさせている。
藤田が盆に紅茶を乗せ戻る。
美しい丁寧な所作でそれを注ぎ、私は一口飲み喉を潤す。
折角の紅茶の香りが、台無しだわ。
「ねえ、窓を開けて。臭いわ」
「かしこまりました」
殆ど窓硝子の残っていない枠を開ける。
藤田は、私の言う事ならば何でも聞くのだ。
莫迦莫迦しい命令だろうと、何でも。
あゝ何て弱い男だろう。
私の命令ならば何の疑問も持たず、不満も抱えず、只々命令されるが儘に。
愛情が無限で、枯れ果てはしないと思っている。
緩慢な死の病の様に、この安穏とした日々が続くと思っている。
自分の身の上では仕方がない、仕様がない、と嘆くだけの薄弱な意思。
わたくしは、弱いものが大嫌い。
「私は……お前だわ」
「姫様?」
私は立ち上がり、割れた鏡で自分を映す。
「ねえ、藤田。私の旅行鞄を出して」
「かしこまりました」
「中には私の服を。お前も鞄を用意するのよ、それにお前の服を詰めて」
「どこか、出掛けられるのですか……?」
ふつふつと、胸の底から熱いものが沸いている。
怒りと、苛立ちだった。
藤田の問いかけに、自分でもぞくりと寒気立つほどの微笑をする。
「わたくしはね、人に謀られるのが大嫌いなの。
わたくしの事を縛れる物は何もないのよ、誰もいないの」
私は弱かった。
弱さを女の所為にして、誰を疑う事もなく、逆らう事もなく、緩慢に生きてきた。
私を誰も、救ってくれなかった。
ずうっと愛して守ってくださると思っていたお父様も。
私を誰も、誰も、救ってはくれなかった。
「大丈夫よ、私がお前を守ってやるわ」
私ですら、私を救ってやれなかった。守ってやれなかった。
だから、せめて、お前を救って守ってやるのよ。
自動車を用意させて、荷物を積み込む。
女中たちが行き先を尋ねるが、私は頑として口を利かなかった。
運転手に行き先を告げると、藤田が驚いたような顔をした。
「そんなに遠くまで……どうなさるおつもりなのですか?」
「お前、知らないでしょう。家を買ってあるのよ」
度重なる不幸は私の目を覚まさせたわ。
貧しさは私に知恵をつけさせ、惨めさは私の心を強くした。
斯波と結婚をして、借財を返したとしてもそれは一時凌ぎにしかならない。
いつ、会社が潰れてしまうか、斯波が死んでしまうか分からない。
私は斯波やその周囲の人間を観察し、金を儲ける術を身につけた。
株や証券、土地に建物――幸い情報を仕入れる為の晩餐会や舞踏会、会合などはいくらでもあった。
「尤も、こんなに早くにこの家に住むとは思っていなかったのだけど」
或る避暑地に立てられた一軒の屋敷。
別荘と呼ぶにはこぢんまりとしているが、二人で住むには十分だった。
屋敷へ続く木立の道の端で自動車が止まり、藤田が先に出てドアを開ける。
二つの鞄を重たげに運びながら、夕暮れの静かな並木道を歩く。
ぴぃ、ちちち、とどこかから小鳥の囀りが聞こえ、ほうほうと梟の鳴き声もする。
私は、扉の鍵を開けて中へと入った。
藤田が後から続いて玄関を入り、ぼうっと高い天井や部屋を見渡している。
一番広い部屋には、ピアノが置いてある。
「どう、藤田?」
「――夢の、様です」
「いやね、現実よ――ほら」
私はそう言って足を踏み鳴らす。
はっとした藤田がすぐさまに屈み瞳を閉じた。
タイを掴んで引き寄せ、その唇を吸う。
「目、を開けなさい。夢ではないんだと、よく、見るの」
「っ、あ、ふぁ…い、姫さま――」
私が意地悪く強めに舌を噛んでやると、紫の瞳が揺れる。
「藤田、屈んで、も、っと。――膝、つきなさい」
「はぁっ、はい」
藤田の頭を抱き込み、口を塞いで窒息する程に口吻た。
さわさわ、と聞こえるのは木々の葉が掠れる音で、あの女中たちの低い話し声ではない。
藤田は私の口吸いに酔いながらも、掠れる息と共に私に問う。
「――様は……どう、なされるのです」
すうと熱くなっていた心が冷える。
唇を離し、藤田の輪郭に手を添えて問い返した。
「……どうして、お前が子供の事を気にするの」
「――姫様……」
やめて、やめて、やめて。
そんな目で私を見るのはやめて!
身体ばかりが未だに熱く、私は藤田に絡めていた腕を振り払う。
逃げる様に窓辺に寄って、すっかり日が暮れてしまった見知らぬ風景に鳥肌が立った。
「身体が冷えたわ、お湯を用意して」
「――かしこまりました」
藤田が部屋を出て、私は大きく溜め息をついた。
すっかり忘れていたつもりだったのに、藤田の一言で子供の顔が脳裏をよぎる。
窓越しに裏庭へ走る藤田が見える。
あたりはすっかり暗くなっている、東京と違って周囲に明かりらしい明かりはない。
昼でも夜でも、好きなだけピアノを弾かせようと思っていたのに――。
窓から離れる、ピアノの漆黒に自分の顔を写す。
しばらく待っていたら、すまなそうな顔をして藤田が戻ってきた。
「姫様、薪を割る斧がありませんでした」
「――明日にでも買い出しに行けばいいわ。紅茶淹れて頂戴」
「それが――台所も火が使えないのです」
「……そう、ならもういいわ。疲れたからもう寝るわ。
お前も一緒に寝るでしょう?」
「姫様と、一緒に眠っても――よろしいのですか」
「ええ、朝まで一緒に眠るのよ」
ようやく藤田が喜ぶのを見て安堵した。
寝室は広い寝台とチェストが置いてある簡素な部屋だ。
結いあげていた髪を降ろし、帯締めを解く。
帯揚げを取り、帯紐を緩めて帯板を外す。
着物を脱ぎ、襦袢一枚になってしまうと肌寒さを感じた。
「何をしているの、早くなさい」
藤田も上着を脱ぎ、タイを外しかけていたがその手が止まっていた。
同じ方を見ると、窓の外の木立がチカ、チカと光っている。
「姫様、姫様――自動車が……」
光がしっかりと見えてくると、今度は自動車のエンジンの音が響く。
屋敷の前で自動車が止まると、バンとドアを閉める乱暴な音が聞こえた。
中から出てきたのは間違いなく、斯波だった。
しかも、どうやら一人の様で玄関の前の階段を一足飛びに駆け上がると大きな音を立てて扉を叩く。
「百合子さん!百合子さん!!居るんだろう!!」
今にも扉を蹴破りそうな勢いに、私は目眩を覚える。
追ってくるだろうとは予想していたが、こんなにも早いとは思ってもいなかった。
女中らから連絡を受けてすぐに後を追ってきたに違いない。
私が思っている以上に、斯波は私に執着しているのだ。
くすりと思わず笑みが漏れる。
「姫様……?」
「――早めに話を付けるには丁度良かったわね」
私は襦袢の上から着物を羽織り、簡単に腰紐で前を結ぶと勿体をつけながら階段を降りる。
玄関の扉はぎしぎしと軋み、今にも鍵を打ち壊されてしまいそうだ。
パッと玄関の明かりが付き、斯波の声が止む。
私は眠たげな声を出して、玄関を開けた。
「なあに?」
「ああ、百合子さん!無事だったか!」
斯波はそう言うと無遠慮に私の屋敷に上がり込み、私の肩を抱いた。
そして、階段の踊場程に藤田が居るのを見ると、ぎゅうと腕に力を込める。
「藤田!貴様、百合子さんを拐かすとはどういう了見だ!!」
すっかり激情してしまった斯波は額に青筋を浮かべて、唾をまき散らさんばかりに怒鳴る。
一方の藤田はその迫力に今にも土下座をして詫そうな勢いだった。
「嫌だわ、拐かすってどういう事なの?」
私は鈴のなるような声でころころと笑う。
斯波は鼻息荒く藤田を睨みつけ、そのまま私の肩を抱き今にも連れ去ろうとせんばかりの勢いだ。
「まあ、斯波さん上がって頂戴。お茶はまだ出せはしないけれど」
「上がるだと?何を言っているんだ、今直ぐ屋敷に帰るんだ!」
「ねえ、冗談はよして。貴方お一人で帰って下さいませ」
私の小さくはあれど凛とした声の響きに、斯波の身体が強張るのが分かる。
「な、あ、貴女は何を……莫迦な事を――」
「ここは、私の屋敷よ。藤田!斯波さんがお帰りよ、お見送りして」
「百合子さ――」
斯波が無理矢理に私の腕を掴む。
藤田の名を再び呼ばう事無く、藤田が私と斯波の間に入り、斯波の手を払った。
「藤田、貴様何を考えているんだ!必ず後悔する事になるぞ!!」
「姫様?」
藤田に羽交い締めにされながらも、もがく斯波を見下ろしながら私に問う。
私はもちろん、にっこりと笑って答えた。
「追い出して」
「かしこまりました」
「嫌だ!百合子さん!!俺は、絶対に離縁などしやしないぞ!」
「どうぞ、貴方の思う通りお好きになさって。私も好きに致しますわ」
みっともなく悪あがきをする斯波。
結婚や離縁、書類上の契約が今更何だと言うのかしら。
藤田から逃れようと玄関の床を這いずりまわる斯波を、私はもう見ることもなく背を向けた。
「さ、斯波様――」
藤田に引きずられる様にして扉の外に出され、斯波は髪を振り乱して叫んだ。
「は、あ、こ、子供は――子供たちはどうする!え?!
貴女は子供が恋しくはないのか?!愛しくは思わないのか?!」
藤田の手が緩み、斯波は形振り構わず追いすがり私の足にしがみついて懇願した。
「子供――」
「ああ、そうだ!今だってきっと泣いているぞ!
さあ、帰ろう、百合子さん――」
わたくしは、弱いものが大嫌い。
貧しいのが嫌い。惨めなのが嫌い。侮られるのが嫌い。
「親子の情をちらつかせればほだされるとお思い?
わたくしはね、侮られるのが嫌いなの」
斯波が絶句する。
足に巻き付いてきた腕を振り払った。
「それでもわたくしが――わたくしが一番赦せないのは、貴方がわたくしを謀ろうとした事よ」
怒りに自分の瞳が燃えているのが分かる。
声は鋭く、言葉は容赦なく斯波に刺さる。
私は呆然とする斯波をそのままに、藤田を見た。
察したように、すぐさま階段を駆け上り斯波の腕を掴んで立ち上がらせた。
「私の前に、二度と顔を見せないで」
「い、嫌だ、嫌だ!赦してくれ!」
「藤田」
「赦してくれ!頼む、何でもする――!!」
私は暴れる斯波を抑えている藤田を手で制す。
そして、まるで無垢な少女の様な仕草をして斯波の瞳を見つめて問うた。
「――何でも?」
「あ、ああ!何でも、貴女の望むことならば何でもする!!」
私はその言葉に、にっこりと微笑んだ。
わたくしは、美しい宝石が好き。
綺麗な着物が好き。豪奢な装飾品が好き。贅沢が好き。
この男の瞳は自信に満ち輝いているのが一番映えるのだろうとずっと思っていた。
下履きを脱がされ、妻とその愛人の前で四つん這いになり、その尻に革ベルトの鞭を受ける。
一切の容赦なく、鞭が振り下ろされる。
ヒンと空気を切り裂き、パンと尻の肉を叩く。
「ぐ――ッ、あ、ああッ……!!」
「わたくしにお尻をぶたれているのに――こんなに嬉しがっているの?」
「は、あ――ッ、うあッ……」
「ねえ、山崎や女中が知ったら驚くでしょうね。
アレはうわさが好きだからあっという間に広まってしまうわ」
唇噛み締めて眉根寄せて顔赤くしながら、荒い呼吸を繰り返す。
一振り、ニ振りと鞭を下ろす毎にようやく怒りが鎮まってくる。
斯波は額から汗を流して床の上に崩折れ、見かねた藤田が私に声を掛ける。
「姫様、これ以上は――」
「お前は優しいのね。
――いいわ、今日はこれぐらいで赦して差し上げるわ」
そう言うと何だかもう急に疲れてしまい、革のベルトを藤田に返した。
藤田が心配そうに斯波に駆け寄って履物を渡すが、斯波は藤田の手からそれを乱暴に奪い取った。
「藤田、何をしているの。お前は私と一緒に眠るのよ」
階段を上るのも億劫で、藤田が私を抱き上げて寝台まで運ぶ。
優しく寝台に横たえさせると、敷布を首までかけてくれる。
私は、藤田の瞳が嫉妬で曇っているの気がついた。
どうして嫉妬などするのか。可笑しくて思わず、藤田の頬をなでた。
「愛しているのはお前だけよ」
けれど、私は欲張りなの。
どちらかを諦めるなんて絶対に嫌なのよ。
わたくしは、美しい宝石が好き。
綺麗な着物が好き。豪奢な装飾品が好き。贅沢が好き。
慙愧に堪えて燃ゆる紅玉が好き。
雫で潤む、アメヂストが一等好き。
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odasakudazai · 7 years
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ばいばいペイルブルー
(性行為、モブや犯罪の描写があります。閲覧は自己責任でお願い致します。)
さようならペイルブルー
「こんなはずじゃなかったの、」 かさかさに乾いたくちびるから、掠れた声が零れる。冷たいシーツに体育座りをして、痩せた膝を抱きしめ震える恋人を見下ろす。織田は心臓を針山にされた気持ちになった。 割れたランプシェードがぐちゃぐちゃのベッドカバーに散らばって、剥き出しの電灯の元青く輝いていた。シーツとおなじ純白のカバーはベッドからずるりと落ちて毛の短い絨毯の上に垂れさがっていた。端っこから真っ赤に染まっていく。サイドテーブルからの光が斜めに差し込んで、蹲った太宰の影を落としていた。 「太宰、」 織田は優しく声をかけた。温めたミルクのように柔らかい手つきで、ふわふわの蓬髪を撫でた。びくりと肩が震えて、それから引き攣って苦しそうな呼吸が漏れ出る。皺だらけのシーツに、ぽたぽたと模様が広がった。 織田は太宰が、指が白くなるほど強く握り込んだピローカバーの端を、数度軽く引っ張った。 怯えたように指を震わせて、漸くそれを離す。 「大丈夫だ、」 「おださく、ごめんなさ、」 揺れる肩を抱き寄せ���。 「大丈夫だ。」 何度でも言ってやる。太宰は裸の背を丸めて泣いていた。すっかり冷えた肩に清潔な新しいシーツをばさりと掛けて、織田は立ち上がった。鉄臭いベッドカバーをぐるぐると巻き取る。太宰の視界の外、シャワールームに持ち出した。センサーで織田を感知した電灯が、ぱちりと音もなくつくと、洗濯籠に丸めたそれを放り込む。ぴちゃぴちゃと水の垂れ続ける蛇口を捻り直して、太宰の泣く部屋に戻った。 太宰は茫然とベッドの上に座り込んでいた。細い腕を取り囲むようについた手の跡が、赤みを失って紫色に変わり始めていた。お揃いの変色が、普段は包帯の下に隠れている真っ白なのどもとにも、ぐるり。織田は砕けるぐらいきつく歯を食い縛ると、部屋の奥に向かった。 王様の寝床よろしく堂々としたキングサイズのベッドの脇、一人掛けのソファに腕を凭せ掛けた状態で敵対組織の幹部が一体転がっていた。彼の血液が汚したバスローブを、しっかり着込ませる。首側の襟を掴んで、ずるずると引き摺った。意思の無い体は重い。不自然に開きかけた瞼がこちらを見つめてくる。それが気持ち悪くて、織田はついと顔を背けた。バスルームに向かう歩を早める。幹部の体はずっしり重くて、急なコーナリングに対応しきれなかったらしい。ごつんと鈍い音をたてて化粧台の椅子に頭部をぶつけた。その音に、太宰がびくりと肩を揺らす。涙の膜越しに、視線が合った。 「少しだけ待っていてくれ、」 太宰がゆるりと口を開いて何か言いだす前に、織田は言いつけて会話を終わらせた。それから、サンタクロースのようにずるずると白い塊を引きずって部屋を出る。  残された太宰は、居た堪れなくなって視線を落とした。捻ればすぐに折れそうな細い手首に、細い布でつけられた無残な擦傷を認めて吐息をつく。織田が来てくれて良かった。自分の呼吸以外の全ての音が消えたホテルの一室に、気がおかしくなりそうだった。
 ごつごつと逞しい男の手が気道を絞めた時、初めて己の体に空気が巡っていることを自覚した。疲労でずきずきと痛む頭、ランプシェード越しの男の顔の陰影。目の前をちらちらと赤が掠めた。腹の薄い皮を突き破られんばかりの圧迫感。それから、額に降りかかる汗。こんなにも、痛い。体の芯はじんじんと冷たいのに、表面だけは燃えるように熱い。内臓を搔き雑ぜられるような不快感に、ふらふらと不安定な浮遊感がオーバーラップする。 ああ、生きている。私は生きているのだ。苦しいのがその証拠だ。体がじくじくと呻き声を上げている。視界が徐々に浸食されていく。男の顔は真っ赤だ。血液が頭に回りきっている。ピンで刺したら弾け飛んでしまいそう。どろどろとしたあかいもの、あたたかくて、まっかなもの。 ふと、自分の体が締め付けるような痛みから解放されていることに気付いた。手の上に、水の流れを感じる。暖かい。湯船につかっているようだ。胴から胸にかけて、何か途轍もなく重いものに圧迫されている。鉛のように重い腕を持ち上げて、それをぐいと押しやった。ずきずきと痛む頭と、不安定な浮遊感は未だ続いている。 薄ら開いた視界に、真っ赤な世界が飛び込んできた。
「うっ、ああっ、んえっ、」 太宰が咳込んで噎せる。 やるつもりなんてなかったんだ。とうとう、息を吸うように人を殺してしまうようになってしまった。ああ、ほんとうに、殺すつもりはなかった。脂肪の詰まった木偶の心臓に、ナイフを刺すつもりなんてなかったのだ。 浴槽につかるような、血を浴びる感覚と、生々しい生の痛みが体を蝕んだ。
「大丈夫だ、大丈夫。」 温かい手が、背中をゆっくり摩った。労わるように少しだけ距離を保って、緩いリズムをとるように撫でてくれる。悪夢から救い出してくれるのは、いつもこのベルベットのように深い友人の声だった。 「んっ、あ、おださく、」 しゃくりあげながら名前を呼ぶ。生ぬるいシーツの上に座り込んで、太宰をあやしてくれる。織田が、いつの間にか幹部を片づけて戻ってきていた。 凶器のナイフは備え付けの冷蔵庫に放り込んでおいた。マフィアの手にかかれば、現場を強盗か怨恨殺人に見せかけることなど赤子の手を捻るより容易い。後で、同支部の下層構成員に手伝わせて現場を演出するつもりだった。 「大丈夫だ、もうあいつはいない。」 「わたしが殺したの。」 太宰は震える声で言う。 「知っている。辛かったな。」 織田がぎゅうっと太宰の肩を抱きしめた。ぽんぽんと背中を叩く。 「殺したことに気付かなかったの、」 太宰の呼吸は急いていた。 マフィアに籍を置くものは、四つのステップというものを伝え聞いていた。人の生命を奪う仕事をするものが歩む、ダーウィンも驚きの進化論。 最初に、人を殺せるようになる。次に、殺した数がわからなくなる。次第に殺した者の名前を気にしなくなって、最後には―― 太宰が疲れきった目で織田を見上げた。笑みのつもりだろうか、下手くそに口元を歪めている。長い睫毛が震えていた。 「ねえ、おださく私を殺して。」 真っ白な手が、同じ色の細い喉元へ織田の手を誘導する。 「さっきここを絞められた時、あんまり苦しくて、初めて生きていることがわかったの。ねえ、ほら、早く。」 ダークブラウンの瞳がこちらに真っすぐ向けられている。芸術家の切り出した大理石の如く滑らかな肌は、大小様々の痛々しい傷で彩られていた。中でも一際目立つ首輪のような痣に指を這わせる。織田は太宰の瞳がつるつると涙を流し続けるのを見た。 「辛かったな」 織田は自らの腕に掛けられた冷たい手を掴んで抱き寄せる。
太宰治が粉々に壊れて風に吹きさらされる夢を見たのは、いくつか前の冬のことだった。 横浜市街で起きた大規模な抗争の応援に駆け付けた織田は、水溜りの泥水を吸って濡れたズボンの裾を忌々しい気持ちで引きずりながら灰色の空を背負った倉庫街を急ぐ。ぐちゃぐちゃになった敵対組織の構成員が、草臥れた小麦粉袋みたいに引きずられていた。薬莢の転がるカラカラという音が涼しげに響く。鉄と泥のにおいがした。 鼠色の広場の真ん中に、少年が立っている。いつの間にか、針のように細い真冬の雨が降り出していた。ぽつり、ぽつりと体を刺す。場違いなくらいに華奢な少年の、真黒な外套に染み込んで、その色を更に濃くしていく。 「大丈夫か、」
「あ、織田作。どうしたの、顔が蒼いよ。いや、紙みたいだ。」 太宰が振り返る。そう言う彼の顔の方こそ粉砂糖のように真っ白で、吐き出した二酸化炭素さえ淡く白むばかりですぐに消えてしまう。 「いや、俺は、」 そんなに酷い顔をしているだろうか。言い訳をしようにも自覚がないからまごついてしまう。しっかり水を吸い込んだ髪が、額にへばりついて気持ち悪かった。 太宰がくすりと笑う。 「お前の方こそ、顔色が優れないぞ。」
わからないことには触れなかった。その代り、小さな友人がきっと知らないであろうことを言ってやる。太宰の右手には真新しいしゃんとした包帯が巻かれていた。くすんだ十二月の景色の中、輝くような白は居心地が悪そうだ。織田の胸に不安が広がる。水に墨汁を落としたような感覚だ。じんわり広がって、濁ったグレイにしてしまう。細い手首を引っ掴んで走り出したい衝動に駆られた。ここじゃないどこかへ、どこでも良い。新宿でも弘前でも、サンディエゴでも川崎でも良かった。 「…寒いな。」 太宰の、頬にへばりつく髪を耳の後ろに追いやる仕草がぎこちない。ああ、また利き手を怪我している。雨に濡れた頬にも掠り傷が付いていた。 結局、織田は走り出さない。太宰の真っ白な手首に触れることもしないし、壊れてしまいそうに美しい友人の、視界を閉ざすこともしない。二人の眼の前には隠しきれない罪悪が広がっていた。鼠色の地面には花が咲いたように赤が飛び散っていた。 「今回の襲撃は末端からの情報流出が発端だ。」 太宰が何か言っている。絹のように柔らかな声が耳に流れ込んでくる。 「武器輸送の詳細な日程は本部しか把握していなかったが、この手際を見るに流出した細かい情報から今月の搬入日をかなりの自信を持って割り出したに違いない。まあ、当たっていたわけだけれども。」 「そうか。」 「それには相当の年月が必要だったはずだ…我々の行動パターンと得た情報の精度の確認をするなら、慎重になりすぎることはないだろうからね。その割に襲撃は生温かったような気がするのは…火力不足か。何となく、見えてきたよ。」 織田にはさっぱりだ。太宰の瞳は引きずられていく構成員を通り越して過去がうつっていた。沈黙して同じ方向を眺める。織田には未来が見えていた。五秒後も、同じ光景が広がっている。 「…織田作、
太宰がぽつりと呟いた。 「大人にはなりたくないねえ。」 溜息のように小さな声。弾かれたように顔を上げる。太宰の表情は北風に流された蓬髪のせいでちっとも見えなかった。 「名前なんて全然、わからないよ、」 ふわりと泣きそうな顔で微笑む。
一匹狼の最下層構成員が、組織に伝わり「四つの段階」の話を知ったのはその暫く後のことだった。
太宰の首がぐらりと後方に仰け反った。白い喉仏が晒される。柔らかな蓬髪がぱさりと揺れた。 太宰の腰はあまりにも細くて、下腹部は余分な肉の一欠片も付いていない。織田の陰茎をすっぽり収めたそこは不自然に膨らんでいた。織田が愛おしげに撫でると、 「んあっ、さわ、らないで、」 初めて言葉らしい言葉を漏らす。 織田が後孔に指を滑り込ませている時から、否、もっと言えば傷ついた体を確認するように丁寧に愛撫している時から、彼は快楽と衝撃に母音を漏らす程度で、後は一言も喋らなかった。 だらりと力の抜けた体はドールのようだ。一切の抵抗も���い代わりに、疲弊し思考を放棄した太宰の脳は全てを織田に委ねると決めたらしい。子供のように軽い体を抱えて、労わりながら抱いていく。細い足を抱えて腰を進めると、太宰がはあっと熱い吐息を洩らした。 敵幹部をジャックナイフで葬った太宰の手は小さかった。織田の手が平均より大きいことを考慮しても、酷く頼りなく見える。開いた大きさ云々より、その指の細さや、節の目立たない華奢な作りが両の掌を実際より脆く見せていた。血が飛び散ったらしいところは執拗なまでにスポンジで擦られていて、皮膚が少しばかり傷んでいる。 織田は薄くなったそこに舌を這わせた。彼の傷を舐めとって飲み干す所存だ。
「あっ、やめて、織田作、やめて、」
太宰が悲痛な囁きを漏らす。何をされても拒まなかったくせに、内出血の跡を労わるように撫でると泣きそうな顔で首を振った。織田はやめない。 ゆっくりと腰を引きぬいて、再び剛直を押し込んだ。太宰の呼吸がはくはくと荒くなる。火照った頬を指で撫でて、半開きの唇をぺろりと舐めた。そのまま口内に舌を捩じ込んで、息が続かなくなるまで貪った。太宰の瞳からは透明な涙がぽろぽろと流れていた。薄く開いた口から、快楽の吐息が漏れる。織田は宝物を確かめるようにその頬を拭ってやる。何度も、何度も。 織田が動いて、太宰の中の良いところを抉ったらしい。あっと声を漏らして、中がきゅうっとしまった。 陰茎を熱で包まれている、その溶けてしまいそうな心地よさに頭がくらくらした。太宰の背中がシーツに沈んだ。足首を掴んで持ち上げる。
「んあっ、おださく、きもちい、おださく、」
太宰が幸せそうに喘ぐ。掴んだ腰があまりに細いから、最初は緩やかな動きにする。太宰はそれがいたく気に入らなかったらしい。しなやかな足を織田の背に回して、挿入を深くするように絡みつかせた。
「おださく、もっと、」
バターのように蕩けそうな声が名前を呼ぶ。頭の奥で、かちりと理性がオフに切り替わった。腰を最奥に押し付けて、勢いよく抜き差しした。
「あっ、あつい、あつ、とけちゃう、おださく、おださく、」
ぐちゃぐちゃと音を立てるのは織田の先走りだ。太宰の呼吸は昇り詰めて、自らの腰を揺らしながら織田を求める。 「だざい、きもちいいか?」 欲を追い求めて掠れた声で尋ねる。
「きもち、い、おださくっ、んっ、」
織田が声を発すると、太宰の中がきつくなる。それがじんわりと嬉しくて、織田は何度も太宰の名前を呼んだ。太宰はその都度それに応えた。 分厚いカーテンの向こうで重々しい夜の空が薄らぎ始めていた。
肌を刺すような冷気が、眠気と事後の気だるさを溶かして意識をしゃんとさせる。 冬の夜明けはおかしな色をしていた。グレーがかった紺色がすうっと薄くなっていって、翡翠を混ぜたようにほんのり明るく白んでいく。愛車のイグニッションからキーを引き抜くと、ぶるりと震えてエンジンが鎮まる。きんと冷えたドアノブを引いて、扉を押しあける。潮のにおいがした。 後部座席の扉を開けて、シーツの塊を引きずり下ろした。
太宰の腹の中に熱い精液をぶちまけて、そのまま胸の突起にかぶりついて興奮を高めた。インターバル無しに始まる第二ラウンドを、欲を吐き出したばかりにも拘らずむくむくと肥大する織田の陰茎から察したのだろう。太宰は戸惑ったように織田の名前を呼んだが、反論はキスで沈めた。織田だって若い。一度出したくらいでは熱が収まらないこともあるのだ。 夜が白み始めたころに太宰が三回目の絶頂を迎え、織田は漸く陰茎を引き抜いた。あちこちに飛び散った白濁を簡単清めて、温かいタオルで太宰の体を吹いてやった。それから手短に自分のシャワーを済ませ、マフィアに入ってから何度も行ってきた現場の隠滅工作をした。血痕を綺麗に拭き取って、冷蔵庫で冷えたナイフをタオルに包む。冷たい肉塊をシーツで何重にも包んで、大きな風呂敷のように端を結んだ。車に押し込んで、小さなホテルを後にする。別にどこでも良かったが、何となく海にした。冬の波は穏やかで、なんびとたりとも寄るなかれとばかりに冷たい色をしている。鼠がかったペイルブルーに罪悪を投げ捨てた。桟橋の上からどぼんという音を聞いた。小さな白い飛沫が上がって、すぐに水面は落ち着いた。くうくうと海鳥が鳴いていた。平和な朝だ。織田はジャケットの内側をまさぐる。愛飲する煙草の、少し潰れた箱を取り出して一本取り出した。薄青い十二月の空に、ラッキーストライクの白い輪がぷかぷかと飛んでいく。 「大人にはなりたくないよなあ、太宰。」 冷たいコンクリートに腰を下ろす。胸に煙が広がって、吸い込んだ朝の空気と混ざった。 男が沈んでいった海を感慨も無く見つめる。全てを飲み込んだ海は、白けた顔をしてざーざーと波打っていた。 「そういえば、俺も名前を知らなかったな。」 織田はまだ吸える煙草の火を消して、水面に背を向けた。ポケットからキーを取り出して、愛車の施錠を解いた。 早く戻らなければならない。恋人が目を覚ましたら、消毒と包帯をやり直さなければならないからだ。
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fantasy-cre · 10 years
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這隻夢幻般的鳥是紫輝掠鳥(Lamprotornis purpureus),是八哥鳥的近親,成鳥可以長到20公分。它棲息在熱帶非洲的開闊林區,是群居的鳥類。
圖片來源:wikipedia
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mashiroyami · 5 years
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Page 64 : 遺志
 暗闇の中で、感覚がおぼろげに帰ってくる。それを自覚した直後、転がりこむように痛みが体の中を突き抜ける。顔が歪み、閉じた瞼をゆっくりと開いた。まず入ってきたのは光だ。眩しい昼間の光を嫌うように反射的に視界は細くなる。鼻腔をくすぐるのは草の匂い。頭部後ろに固い感触。眠気に似た怠惰と、押し付けられているような頭痛では、体を動かそうという気になれなかった。思考も霧で四方八方塞がれているようにはっきりとしない。明順応が利いてきたところで何度か瞬きを繰り返す。ゆっくりと腹を膨らますように呼吸をしてみた。息ができる。一つ一つを確かめていく。静寂の中で耳をすませてみた。直上の木の葉が擦れる音がした。肌を撫でる風が心地良かった。  ここはどこだろう。  漸く疑問が浮かんできた。  思考は重く回転していく。  僅かに体を動かすと、肌が露呈している部分が草に擦られるのが分かった。草原に寝転がっているのだった。  と、体に細い何かが乗っかって、圧迫感が突如襲ってくる。小さな呻き声を漏らしたら、視界の端っこから赤い目をした黒い何かが顔を覗かせる。元々大きな瞳は更に丸くなっていて、穴が空いてしまうのではないかと思うくらいに釘づけになっている。冴えていない脳ではすぐに識別をすることができなかったけれど、やがてブラッキーであることに気が付いた。 「……」  名前を呼ぼうとして、しかしうまく声が出ない。まるで喉の奥が痺れているようで、肺だけが震撼する。反射的にいくつかの咳払いが虚空に弾けた。 「ラーナー!」  直後、慌てた声は彼女の近くにて。 「クロ、ラーナーが起きた!」  まだ幼い男子の声。聞き覚えがある。  狭くて焦点がうまく合わせられない視界の中で、ブラッキーとエーフィと圭が揃って不安げな顔を見せていた。  ラーナーの死角で、クロは立ち竦む。隣に立つポニータに一瞬目配せした後、胸の中は弛緩していった。
 *
 目覚めてからも暫く気怠さに勝てず起きあがれなかったが、圭に肩を借りながら、ラーナーは漸く隣の大きな幹に背中を預け座り込んだ。それでもまだ感覚が不透明で寝起きのような状態だった。エーフィとブラッキーがまるで両隣から離れようとせずじんわりとした気恥ずかしさがあったが、弱った身体には嬉しいものだ。少しずつ精力を取り戻してきて、喉の違和感も数分前に比べれば随分薄くなっていた。 「……あ、あー」  試しにに声を出してみると、風邪で喉が潰れている掠れ声だったが、緊張が続いていたその場の雰囲気が、一気に緩む。 「良かった……なんもなさそうだな」  圭が安堵の表情で声をかける。 「頭が痛いけど……記憶が曖昧で」 「覚えてないのか?」  記憶の引き出しを開けようとするときんと脳裏に痛みが走る。それに耐えながら一つ一つ順を追って思い出していく。  今どうしてここにいるのか。倒れていたのは何故か。何があったのか。瞼を閉じる。  白い町並みと、青い風景。  青い、蒼い、空と、湖。身を寄せていた町――キリの面している湖だ。探していた。飛んでいた。銀色の鳥ポケモンに乗って。そして叫んでいた。  瞬間、ぱっと彼女の中で大きく閃く。 「クラリスは!?」  大きな声は出ず、悲痛を押し殺したような口調になった。まっすぐに見つめられた圭だったが、彼は逃げるようにその目を逸らし、代わりに少し離れたところで見守っていたクロに視線を移した。すぐにラーナーも追いかける。注目されたクロは無表情だった。いや、被っている帽子で感情に影が差しているようにも窺える。  ゆっくりとラーナーの傍まで来ると、その場に座り込んだ。 「クラリスどころじゃなかった。ここはもうキリから距離がある。あそこは、もう居続けるべき場所じゃなかった」  淡々と彼は言う。  しかし記憶が途切れているとはいえ最後の印象に強く残っているキリから既に離れているなど、ラーナーは俄には信じ難かった。眠りから覚めたような感覚なのだから無理もない。 「もう戻るつもりは無い」  とどめを刺すように言い放つと、ラーナーは顔を歪ませる。何か言いたげに唇を開いたが、問いただすような元気は失われていた。  素直になりきれないものの彼女が呑み込んだと見たクロは、再び口を開いた。 「あの時……あんたはエアームドに乗ってクラリスを探しに行った。そこは覚えているか」 「うん」 「その後、電撃を受けたことは」  ラーナーは黙り込み、記憶を改めて掘り返す。最後の景色は非常に曖昧で、殆ど残っていない。断絶されたように突然途切れている。  黙り込んだ様子を確認してから、クロは続けた。 「電撃を食らったんだよ。すごい風に押されてバランスを崩されて、その直後に」 「……風に、電撃」  確認して飲み込むように復唱する。 「風はあの家の罠だと思ってる。家を守る、近付く者を追い払うための。ただ電撃は遠目でもはっきりと動きがわかった、あんたを狙う殺意があった」 「やばかったんだぜ、本気で」  二人の神妙な顔つきに、ラーナーは押し黙った。  彼等の脳裏には今もその光景が強く焼き付いている。柔らかな朝日が照らす穏やかな湖の上で、紫紺に煌めく強風に煽られバランスを失った直後、横方向に走った稲妻の衝動の軌跡。火花を撒き散らしながら迷うことなくラーナー達に槍の如く突き刺さり、嫌な音が聞こえたような気がした。収まった頃に僅かにか細く昇る灰色の煙。焼けて、糸が切れたように堕ちる人間。その後彼自身の理性すら飛んでしまいそうになるほどの、喉が張り裂けるような怒���に似た叫び。色濃く残っている。まるで深く抉られて出来た傷のように。  しかし、ラーナーはその話がまるで遠い別の人の話に思われた。当人であるが、目立った異常は喉が少々おかしいことくらいだ。 「でも、体はなんともない。まだ怠いけど」 「丸一日以上寝ていればそれは怠いだろうな」  一日。あの朝から一日経っている。と、いうことは。ラーナーは息を止める。  クラリスの誕生日だ。  そして、季節の変わり目と変わり目。夏が終わり、秋がやってきたという日。季節が確かに��った日。 「……クラリス……」  静かに彼女の名前を呟くしかできなかった。  届くか届かないかを考えず、必死に叫んだ努力はあっけなく水泡に帰した。離すまいと伸ばした手は叩かれた。  クロは項垂れる感情を察することができたが、心をあえて鬼にする。 「クラリスはどうしようもなかった。俺達じゃ何もできない。あの家は、力が強すぎる。……それより、まずはあんたの話をしていいか」  急くような口調だった。ラーナーはほぼ放心状態で、大人しく彼の誘導に従う他無かったのだった。落胆しながら頷くと、クロは話を再開させた。 「結果としてあんたは助かった。けど、それはおかしい。体に火傷の一つも残ってない、後遺症もない。……死んでいたって、おかしくなかったはずなんだ」 「……え」  悪寒が走ってラーナーは咄嗟に自分の腕に視線をやる。そこには、いつも通りの肌があるだけ。外傷はまったく見当たらない。  もう一度不審な目でクロを見る。呑み込めないラーナーは、流れてくる話がまるで別世界のことのよう。しかし、クロの鋭い話し方が、真剣な瞳の強さが、嘘を語っているようには到底見えなかった。 「死んでた?」  信じきれずラーナーが恐る恐る尋ねると、クロはゆっくりと頷いた。 「多分、奴等だ」 「狙われてたんだよ」  圭が悔しげに顔を歪める。無意識的に地面に置いている刀を握る力が強くなり、金属が掠れる音がした。冷たい殺気はそれだけじゃない。エーフィやブラッキーもそうだ。特に、ブラッキーは顔を強く歪め、砕けてしまうのではないかと思うくらいに歯を強く食いしばっていた。  草原の上に似つかぬ息の詰まる沈黙に一層強い寒気が走る。 「……黒の団?」 「他にいない」  クロのか細い溜息が、高まった緊張の中を滑っていく。 「明らかな殺意があった、出力源もあった。多分、ポケモンによるものだ。俺達が手を出せないところを狙ったんだ」 「湖に叩きつけられるのは、エーフィのサイコキネシスのおかげで回避したんだ。でも、その時ラーナーが無事だったかはわかんなかった。その時には気を失ってただろ」 「何も覚えてない」  ラーナーは収縮していく心をなんとか保ちながら、声を絞り出す。時間が経って、彼等の言葉が重なるにつれて現実感が浸食してくる。自覚はなくとも、当人であるという事実が、全身が凍りつくような感覚と共に纏わりついてくる。 「でも」  クロが流れを途切る。ラーナーはふと視線を上げた。 「問題は……いや、全部問題だけど、その直後、あんたから光が出て」 「……光?」  反射的にラーナーは聞き返していた。 「そう、光。エアームドとかエーフィとか、全部巻き込んでしまうような、強くて……真っ白い光だった。太陽みたいに眩しすぎるものじゃなくて、優しい光」 「何が起こったの?」 「それがはっきり解ればいいけど……でも、ちょっと心当たりがあったから、勝手だったけど鞄を探らせてもらった」 「えっ」  思わず声をあげる。旅に向けて最小限の荷物に抑えているとはいえ、鞄の中身を見られるのに強い抵抗感をあげるのは当然の反応だ。しかし、事情が事情であるがゆえに安易に怒りをぶつけることもできず、なんと返答したらいいのか解らない。 「……ごめん」  申し訳なかったのか、クロは素直に謝罪の弁を述べた。先に謝られては手の打ちようもない。ラーナーは結局何も言えず、仕方なく諦めの道を進んでいく。 「いいよ。それで、何か分かったの」 「もしかしたら、これが関連するかもしれない」  そう言って、彼は上着のポケットを探り、青いハンカチにくるまれたそれを取り出す。ラーナーは一杯の興味と一抹の恐怖が混濁した中で、前へ体を寄せる。クロもそれに気が付いてもう一歩分ラーナーに近づく。すぐ正面まで来たその時、彼は硝子製品でも扱うような丁寧で慎重な手際でハンカチを開く。  視界にはっきりと入った瞬間、予想もしていなかった中身にラーナーは自分の目を疑った。 「それ、お母さんの……」 「そう、ニノのブレスレットだ」  クロに自分の身元を隠すためときつく言われ、ウォルタを出て以来ずっと鞄にしまい隠しこんでいた、白い小さな石が一列に紡がれたブレスレット。他ならぬラーナーの母、ニノ・クレアライトの形見の品である。 「あの光はきっと……いや、間違いなくニノの光だ」 「お母さんの?」 「ああ」  淡々と肯定するクロだが、ますますラーナーは前も後ろも分からぬ混乱へと引き込まれていく。 「どういうこと? お母さんはもういないのに」 「そう、いない……だからそこが引っかかるけど」  間違いなくとはいったものの、完全なる確定事項ではないようだ。  しかし、ラーナーは突然降りてきた自身の親に纏わる手掛かりに、戸惑いと興奮を隠せなかった。知りたい。ただ知りたい。知らなかった母親のこと。知るべきだろう母親のこと。断片が顔を出している。目の前にある。 「俺が、ニノに命を助けてもらったっていう話は、したことあったっけ」  慌ててラーナーは更に別の記憶の引き出しを探ることになる。しかし、聞き覚えはあった。確か、リコリスで圭から聞いた話だ。クロ本人からではないが、知っていることには変わりない。頷くと、そうか、とクロは呟いた。 「ニノは……このブレスレットを使って、治癒能力を使うことができたんだよ」 「……治癒?」  突然出てきた特殊な事象。突拍子もない。クロもクラリスもそう。ラーナーはまだ知らないが、圭も該当する。  普通でない、異様を自分の母も持ち合わせていたことにラーナーは驚きを隠せない。そんな話は微塵も聞いたことがないのだ。世話になった叔父叔母夫婦からも、知り合いからも、誰も話題の欠片すら見せていない。 「そう、驚くのも無理はないと思うけど」  クロは自分の右腕に手を当てる。その袖の下には、赤々と黒々と膨らみ弾けた火傷の跡が隠されていることを、ラーナーは既に知っている。 「俺も一番世話になったときは殆ど気を失っていた……この火傷は、そのときのものだ。時間がなかったのか、大部分の表面の火傷を治しきることはできなかったようだけど……破裂した内蔵や、顔とかどうしても露出する部分は治してくれた。多分、その気になれば全部完治させることができたと思う。何度か見たことあるけど、それぐらい強い力なんだ。まるで、白い光が吸収していくみたいに、治していく。その光と、あんたを包んだ光はまったく同じだった」  クロは視線を落とす。 「あの時ニノが助けなかったら、俺も死んでいた」 「……でも、お母さんがいなくても、それはできる?」 「そこが最大の問題だ。けど、もしかしたら、ブレスレットにニノは何らかの方法で力を残していたのかもしれない。……きっとニノは分かっていたんだ。いつか、あんたやあんたの弟が命を狙われることを。……自分が死んだ後も、守れるように」 「……」 「これはただの憶測だけど。本当のことは、ニノが死んでいる今、分かりようがない」  クロは自分の記憶と目撃を照らし合わせ、確固たる証拠がない中でそう言い切った。強い意志が込められた深緑の瞳から、ラーナーは目が離せない。  不透明でモノクロだった母親の背中が、突然柔らかな光を帯びていくように���ーナーには感じられた。今まで縋りながらも中身が見えない人形のようだった親の形が、確かな肉として象られていくようだった。喉が渇いていく。脈は煌々と打たれる。  その中で、ニノの手持ちであったブラッキーは口は強く縛ったまま、静かに瞼を閉じた。一番彼女の傍で長く居たブラッキーが何を考えているのか、何を思い出しているのか、それはこの場にいる者には誰にも解らない。 「あんたは、エーフィが間に合おうと間に合わないだろうと、あの電撃でかなり危険な状態になってた。でも……助けられたんだ」 「お母さんに」  クロは頷いた。そして、ゆっくりとその手元のブレスレットを差し出した。ラーナーは周囲に目を配らせられる範囲内の者たちに視線をやった。誰もがラーナーを囲み、彼女を見つめている。冷たい真剣さが漂いながらも、矛盾するように温かに見守っている。  無言に背中を押されたラーナーは、鉛のように感じられる自らの重たい腕を上げて、恐る恐るブレスレットを手に取った。  完全に彼女の手に戻されたとき、ラーナーは改めてそのブレスレットを見つめる。白色透明の石は普段より幾分弾けるように輝いている。物は語らず、その存在で静かに主張をしているかのようだった。  それでもセルドは救えなかった。  咄嗟にラーナーに浮かびあがった。あの時、ブレスレットをしたままセルドに近付いたはずなのに、彼は救われなかった。何故か。わからない。けど、今、彼女は助けられた。クロの憶測が正しいというのなら、救われたのだ、記憶にも殆ど残っていない母親に。まるで天秤にかけられたようだった。その一線の差は、丁度生死の境目に立っているように危うく、どちらに傾いても文句の一つも通じない。  隣のエーフィとブラッキーが更に其々の自らの体を寄せてくる。両者から伝わる生きた温もりに包まれながら、弟に対する悔しさを含んだ複雑な感情が、ラーナーの中で強く瞬いた。 < index >
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