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takahashi1030 · 7 years
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ロコモ フレイル サルコペニアを理解し健康寿命をのばそう
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最近至る所でフレイル サルコペニア ロコモティブシンドロームなど高齢の方々向けの言葉が多く聞かれるようなりましたが、統一された定義がなく、それぞれの意味と関係がいまひとつ分かりにくいようです。 そこで私なりに少し整理してみようと思います。 フレイルは2014年に日本老年医学会がFrailty=弱さから作った造語で、加齢による予備力低下が原因で、些細な外的因子に対して健康被害をきたしやすい状態を言います。
サルコペニアは以前ブログで書いたように、ギリシア語で「肉」を表すサルコと「喪失」を意味するペニアを合わせた造語で、筋肉が無くなることを意味しています。主に進行性および全身性の骨格筋肉量や骨格筋力の低下により身体的障害や生活の質が低下するような状態を示し、筋肉をメインにした言葉です。
ロコモティブシンドローム(ロコモ)は10年前に日本整形外科学会が提唱した言葉で、筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、立つ、歩くといった移動機能が低下している状態を示しています。
フレイルには糖尿病、心臓病、認知症などの加齢による慢性疾患が背後に存在している場合が多く、長年の生活習慣が影響を及ぼします。 フレイルの診断基準としては①体重減少(年間5%以上)②疲れやすい(何をするのも面倒だと週に3,4日以上感じる)③歩行速度の低下④握力の低下⑤身体活動量の低下のうち3項目以上を示すものとされます。 またフレイルは身体的なものだけでなく、認知能力や精神的、社会的な面も関係しており、少し動ける人から寝たきりの人も含まれるので割と幅広い概念であるともいえます。 フレイルに適切な治療などの介入をすれば、健康の方向に戻すことも可能ですが、介入をしないと身体機能障害が進み死に至る危険性があります。
一方、ロコモティブシンドロームには移動機能を調べるロコモ度テストがあります。①下肢筋力を調べる立ち上がりテスト②歩幅を調べる2ステップテスト③痛みやしびれ、日常生活動作などの25項目の問診に答えるロコモ25の3つのテストからロコモ度1or2を判定します。 ロコモ度1は移動機能の低下が始まってきていることを示し、ロコモ度2は移動能力の低下が進行して自立した生活ができにくいことを示します。 因みに40歳以上の日本人でロコモ度1は4590万人、ロコモ度2は1380万人いると言われています。 もともと整形外科学会としては人々が要介護にならないように移動機能という面から注意喚起をして予防するためにロコモを提唱したので、フレイルという状態の前段階を示しているように私は感じます。 実際にフレイルにならないようにロコモ対策をしようとロコモとフレイルの連続性を言う老年内科の先生も出てきているようです。
サルコペニアの診断は60歳以上で①歩行速度②握力③筋量の測定により行われ、日本では370万人と推定されています。 整形外科医的にはその数倍は存在する印象があり、このロコモより圧倒的に少ない数に驚きを感じます。 よってサルコペニアはロコモより重症なものとしてフレイルの中の一病態と考えた方がしっくりきます。
厚労省のホームページによるとフレイルとサルコペニアの関係において、Frailty cycleの中にサルコペニアを位置付けています。 つまり、サルコペニアになると筋力、活力の低下で身体機能と活動度が低下し、さらに基礎代謝が低下することで体全体のエネルギー消費が減少します。 すると食欲と食事摂取量が減り、低栄養に至りその結果サルコペニアが進むといった悪いサイクルに陥ってしまうと説明しています。こ れはサルコペニアをフレイルサイクルの中核病態として位置付けているといえます。
まとめると加齢によりロコモとなり、様々な疾患が加わることでフレイルへと進むが、そのフレイルを加速させる中核にサルコペニアが存在すると私は考えます。
ロコモを進ませないためにはロコトレをはじめとする運動とタンパク質とカルシウムの入った食事が大切と言われています。またフレイル予防にはもちろん運動とビタミンDとタンパク質の摂取が大切です。 運動療法に関する最近の論文では、肥満高齢者に運動指導する際、有酸素運動と筋力トレーニングを合わせて実施することで、有酸素運動または筋力トレーニングのみを実施する場合に比べ、半年後の身体機能はより大幅に向上することが示されました。 有酸素運動だけでは体重が減るだけでなく股関節骨密度も減ってしまい、筋力の増加割合も他群の1/4以下で、あまりいい結果ではありませんでした。 つまり、有酸素運動だけでは加齢に伴う筋量および骨量の低下を加速させ、結果としてサルコペニアやオステオペニアを生じさせる可能性があるので、筋力トレーニングの併用が望ましいと論じていました(Villareal DT. N Engl J Med.2017) 。
また、フレイル予防には絶対に避けなければいけない病気として糖尿病があります。 糖尿病はインスリンが働かず、糖新生の抑制が効いていない状態なので、常に体タンパクの異化か続いており、筋肉のタンパクが使われてやせ細ってゆきます。 フレイル予防におけるタンパク質摂取は食事から60~80g/日くらい必要で、運動とともにアミノ酸のBCAA一つであるロイシンを十分とることも大切です。これはロイシンが筋タンパク質を増やす働きが強いためです。 もちろんタンパク質の代謝を促すビタミンB群は必要ですが、ビタミンDも骨だけでなく筋肉にも働き、代謝を上げてタンパク質の合成を促進することもわかってきました。
これらの栄養素を十分とりながら有酸素運動と筋トレを行い、中核病態であるサルコペニアを予防することでフレイルに陥らないようにしましょう。
このようなことを40代から心掛けていればもちろんロコモにはなりません。
photo: Fraser Health News
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takahashi1030 · 7 years
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運動と栄養と幸運
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運を動かすと書いて運動と読みます。以前のブログでもご紹介した言葉です。
私は良い運を引き寄せるためには、運動はたとえ軽めでもまた少しさぼってもやり続けることと思っています。特に無理をせず自身のレベルに合った運動をチョイスすることが大切です。
運動にはスポーツ選手レベルからダイエット、体力向上レベル、そして高齢者レベルと段階に応じたものがあります。
高いレベルの運動は立つ、走るなどの基本的な動作に十分な筋力が加わり、そして高度な技術が備わって初めて可能になります。
中等度以下の運動レベルでは高度な技術ではなく基本的な動作と筋力訓練が中心となります。
筋力をつけるには、筋力訓練、栄養補給、十分な休養が基本となります。
特に胸 腹 背中 大腿など体幹筋にある程度の強い負荷を与え、筋肉にダメージを与えてから約48時間後に筋力がさらに強くなる超回復というもの考えながら行うのが近道です。つまり毎日毎日激しい筋肉運動をするのではなく2,3日インターバルを取って鍛えるのです。
そのためには運動によるタンパク質の減少に注意して、運動前の糖質の摂取と運動後のタンパク質の摂取を心掛けます。
また運動はあくまでも筋肉に刺激を与え、わずかな崩壊を引き起こすもので、筋肉が成長するのは筋を休めている時であることから十分な休養は大切です。
 今年1月にソフトバンクの柳田選手が自主トレで毎日ゆで卵の卵白8個と鶏むね肉中心で炭水化物カットの高タンパク、低脂肪、低糖質の食事をしていることに対してダルビッシュ選手が苦言を呈したことがありました。
ダルビッシュ選手の言い分としては極度の炭水化物制限が筋肉を削り体脂肪の減少による弊害が出てしまうというものです。私もその通りだと思いました。
柳田選手の鍛え方は筋肉を見せるボディビルダーに当てはまる方法で、短期間勝負に適したやり方です。
短期間で筋肉をつけても骨や関節の動きがついてゆけず、関節近辺での炎症や疲労骨折、筋断裂の副作用が出てしまいます。
つまり、炭水化物を取らないと体はエネルギー不足に陥り、そのエネルギーを補うために筋肉から糖質を作らなければならず、結果筋肉が減ってしまうことになります。
また体脂肪もエネルギーを蓄えるために大切であり、脂肪の減らし過ぎは良くありません。野球のように長い期間戦い、バッティングや守備において強くて繊細な筋肉運動が必要な場合、十分な炭水化物を取りながらゆっくり筋肉量を増やすトレーニングが優先されるべきでしょう。
因みにソフトバンク柳田選手の5/16現在の打率は2割4分4厘で過去5年間において最低となっています。今からでも遅くないので食事内容を改めて早く成績を上げてほしいものです。
このように運動と栄養はともにリンクしており状況に応じて、食事内容や食べ方の工夫をしてある程度変えなければなりません。
そして、タンパク質と糖質の摂り方には基本があるので、そのあたりをおさえながら進めてゆくのが良いでしょう。
1日に必要なタンパク質は普通の人であれば体重1㎏あたり1gとされていますが、アスリートは2gぐらいが適当です。つまり、体重60㎏の人であれば60~120gは必要になります。
タンパク質は、朝食時、運動後、就寝前に必ず摂ることが大切です。朝は1日の始まりであり、栄養が一番不足している状態なのでその日に必要なタンパク質を摂ります。
運動後は壊れた筋肉が修復のためタンパク質を欲しているので、30~40分以内に摂ると効果的です。このとき筋肉のタンパク同化作用を促すためにも炭水化物を一緒に摂ることが大切です。
また、就寝後深い眠りに入り2時間くらい成長ホルモンが分泌され、体のメンテナンスが行われます。このときに十分なタンパクがあることが大事なので、温かいミルクやナッツを一緒に摂ると良いでしょう。
炭水化物は普通の人であれば体重1㎏あたり6gで、アスリートは9gぐらいが
適当であると言われており、やはりアスリートは多めの炭水化物が必要です。
食事は3食を基本とし 朝は前日の夕食後からの飢餓状態からのスタートなので、果糖たっぷりのフルーツ等だけではなく卵、納豆、牛乳などのタンパク質を取り入れることが大切です。
朝運動するのであれば炭水化物とタンパク質少量を摂ってからはじめ、運動後も炭水化物を摂ります。炭水化物は一度に大量に摂るのではなく運動前後にこまめに摂ることが秘訣です。
こうした工夫により筋肉のタンパク質が蓄えられ、筋力の維持ができます。
運動による身体活動量の増加はもちろん筋肉が担っています。
それにより総エネルギー量が増加し脂肪消費が増える際に、アディポサイトカインというホルモンの分泌が是正され糖・脂質代謝が改善するともに、体の慢性炎症が抑えられるといわれています。
慢性炎症は病気の根源なので、結果運動により病気を遠ざけることができます。
 運動は運を動かし引き寄せるとはこのあたりにあるように思います。
タンパク質と糖質を上手に摂りながら運動を続けて健康という幸運を手に入れましょう。
photo: Phil Tognetti
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takahashi1030 · 7 years
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琉球温熱で深部体温を上げよう
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知り合いのドクターから琉球温熱で体の表面を温めているが、実際に体内の内臓近くの温度を上げているのか質問されました。つまり深部体温が実際に上がるものなのかということです。
 体温には寒い、熱いなど外気の影響を受けやすい体表面温(皮膚温)と環境の影響を受けにくい体内部の深部体温(核心温)があります。
深部体温は37℃前後で体表面温より約1度高いとされています。これは体が正常に機能する上で最も適した温度であることを示しており、熱産生と熱放散によりうまく調整されています。
熱産生は主に骨格筋や褐色脂肪組織で行われ、熱放散は汗腺からの発汗や皮膚や口からの蒸散と末梢血管拡張による放熱で行われます。
近年この調節がうまく行かないためか、皮膚温が35度台の低体温の人が増えています。
実際、当院に来られるうつやがんの方のほとんどが低体温です。
この場合、一つにはストレスが原因で自律神経の乱れが起こっていると考えています。ストレスに対する体温の調節に大切なものは自律神経のバランスとホルモンのバランスと言われています。
自律神経には交感神経と副交感神経があり血管の収縮、拡張を調整しており、このバランスが崩れると血液の流れが悪くなり、低体温となります。
また副腎で作られて抗ストレスホルモンであるコルチゾールなどのホルモンバランスが崩れると細胞ダメージの回復ができず、細胞自体のエネルギーが低下し、低体温となります。
 低体温は様々な病気を引き起こします。
低体温には血流障害、交感神経の緊張や副腎の疲労が関わり、また体の酸化を防ぐ抗酸化酵素の低下をもたらします。
その結果、便秘や歯周病、花粉症など軽度のものから糖尿病、胃潰瘍、潰瘍性大腸炎、骨粗しょう症、パーキンソン病、認知症、喘息、アトピーなどの病気に罹りやすくなります。
また、体温が一度下がると免疫力は30%下がるといわれ、そのため35度台で活発化するがん細胞をさらに元気づけてしまいます。
したがって私達は低体温にならないように体温を上げる努力をしなければなりません。
 体温が上がると血流がよくなります。
血流がよくなるとダメージを受けていた細胞に栄養素が行き渡り、滞っていた老廃物が洗い流されます。そして、37℃付近になると酵素活性が上昇しそれぞれの細胞がエネルギーを効率的に作り出すことができるようになります。
エネルギー産生が高まると内臓脂肪の消費が進みメタボからの脱出が可能になります。
メタボは糖尿病や心臓病など生命にかかわる重大な疾患の原因なので、これらから遠ざかることで寿命が大きく伸びることにつながるでしょう。
また、がんが生育しにくい環境になり、同時に免疫力も上がると言われています。
一つに2014年小林らの体温の上昇と免疫応答の調節についての研究があります。
ボランティアを全身温熱療法装置で(直腸温38.5℃以上で60分)加温し、加温前と加温後に採血しT細胞の働きを調べました。
加温後にインターフェロンγ(IFN-γ)およびインターロイキン-2などのサイトカインの顕著な増加が見られたこととT細胞の膜流動性の変化で応答性が増加した結果が得られ、熱刺激により免疫力が向上したことが示されました。
このように深部体温を確実に上げれば、体の免疫は確実に反応してくれます。と言いたいところですが、ここで一つ問題がでてきました。
実は直腸温は日本と違って欧米では深部体温と認められていないのです。
AORN(米国周術期看護師協会)によると脇の下、口の中、膀胱、直腸、側頭動脈は深部体温測定に適さない部位とされ、適する部位としては鼓膜、下部食道、鼻咽頭、肺動脈で、この中で最も正確なものは肺動脈とされています。
ただ温度測定のために肺動脈にアプローチすることは侵襲が大きく常識的ではありません。
そこで考え出された方法が熱流補償式体温測定原理に基づく加温センサーによる測定で、肺動脈温と高く相関した結果が得られます。
これは医療材料大手の3M社が開発した深部体温モニタリングシステムで、前額部にセンサーを貼付するだけで簡単に肺動脈温に近似した深部体温が測定できます。
当院にて琉球温熱施療前後で測定してみたところ全例で深部体温の上昇が確認されました。
脇の下の皮膚温も同時に測定しましたが、皮膚温の平均上昇温度は0.22℃で、深部体温のそれは0.76℃でした。
また今年から琉球温熱を取り入れた白金の石原内科クリニックでも同様の方法で測定したところ、表面体温以上の深部体温の上昇が確認されました。
よって琉球温熱療法は深部体温を上昇させる一つの方法であるといえます。
病状改善には一時的な深部体温の上昇だけでは不十分で、恒久的な上昇が必要です。
そのために琉球温熱を継続したり、家で毎日湯船に42℃で10分、41℃で15分、40℃で20分を目安にして入ることが大切です。
 私の体温は35度台ですと堂々と言っておられる方は要注意です。
低体温から早く脱出して健康な体を取り戻しましょう。
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takahashi1030 · 8 years
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脳腸相関は第2の脳といわれる腸の腸内細菌との連携プレーである
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ストレスで胃やおなかが痛くなる、ストレスで便秘、下痢になるなど、誰もが経験します。
最近、消化管に器質的疾患がないのに、症状が慢性化する機能性消化管疾患が増えています。
それには機能性ディスペプシア、非びらん性胃食道逆流症、過敏性腸症候群、慢性便秘などがあります。
器質的に異常がないため病院を受診しても対症的に胃腸薬などが処方され、根治することなくQOLが低下したまま我慢をされている方も多いようです。
こういった状態は腸と脳との間のシグナル伝達の異常ととらえる考え方があり、脳腸相関の問題といわれています。
脳腸相関は脳から腸へのシグナルと腸から脳へのシグナルがあります。
またそれぞれ神経による伝達経路とホルモンなどの物質が血管内を移動する循環系の経路があります。
腸から脳への神経の経路は消化管内腔の粘膜細胞の刺激を迷走神経が感知し、延髄孤束核に伝える系と消化管壁内にある内在性知覚ニューロンから脊髄に入り視床―大脳皮質へと行く系があります。
過敏性腸症候群は脳から腸、腸から脳のどちらのシグナルの異常でも発症しますが、特に下痢型の場合、内在知覚ニューロンのセロトニンの5-HT3受容体に原因がありここをブロックすることで抑えることができます。
慢性便秘の多くは腸管の拡張を伴わない機能性便秘で、脳腸相関の不具合が関係しています。
最近、便秘症と神経変性疾患の関係において、便秘の人は便秘のない人に比べてパーキンソン病に6.5倍、多発性硬化症に5.5倍罹患しやすいことが分かりました。メタボの1.4倍、心血管疾患の1.5倍に比べてかなり高い値を示しているので、慢性便秘の治療はとても大切です。
京都府立医大の内藤裕二先生は ①全粒穀物、果物、野菜など繊維の多い食品の摂取、②速足で歩く、自転車に乗るなど中等度の運動、週に最低2時間半③水分を1日1000ml 以上摂る④食後の排便時間の確保⑤便意を我慢しないなどが慢性便秘解消の基本と述べています。
 脳から腸への経路は副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)が視床下部-下垂体-副腎を活性化し副腎からのコルチゾールの分泌によりストレスに応答する系が知られています。
もう一つはCRFが室傍核や延髄の孤束核など中枢神経のCRF2受容体に作用し神経を通じて上部消化管の運動を抑制したり、CRF1受容体を介して下部消化管の運動を亢進させる系があることが分かってきました。
またCRF以外に外側視床下部の神経細胞で作られているオレキシンという神経ペプチドがあります。
これは迷走神経依存的に胃酸分泌、胃や大腸の運動を亢進させるといわれており、最近の研究では脳内のオレキシンのシグナルが低下することが消化管機能障害、睡眠障害、食欲不振、抑うつ状態などに関与していることもわかってきました。腸が第2の脳といわれる所以がこのあたりにあります。
 ストレスを受けた腸管では、平滑筋刺激による腸管運動亢進だけでなく、腸内フローラにも変化が生じます。ストレスが消化管内のカテコラミンの分泌を増やし、このカテコラミン受容体を持つ大腸菌が増えることで腸内フローラの乱れが生じ、病原性が増強するといわれています。
また宇宙飛行士のフローラを調べた実験では細菌数が飛行前から変化し始め、飛行中に異常が進み、善玉菌のラクトバチルスやビフィドバクテリウムが減少し、悪玉菌であるエンテロバクテリアやクロストリジウムが増加していたとの報告があります。
このようにストレスは腸内フローラに対して大きな変化をもたらし、体に影響を与えます。
 腸内フローラの中の体にとって良い菌である有用菌は、腸内の食物繊維から短鎖脂肪酸を作ります。
短鎖脂肪酸には酪酸、酢酸、プロピオン酸があり、酪酸には抗うつ作用や認知機能改善作用があるようです。
酢酸は腸から吸収されたのち肝臓から脳の視床下部まで到達しプロピオメラノコルチン神経細胞に働き食欲を抑制する方向に作用します。
プロピオン酸は肥満の人への投与実験で食欲の減少の他に体の脂肪量の減少とインスリン感受性を維持する働きをします。
まず腸から吸収されたプロピオン酸は門脈に入り門脈神経叢にある短鎖脂肪酸受容体(FFAR3)に結合し、腸と脳の間の神経回路を活性化させます。
 活性化した脳細胞は遠心性神経回路を通じて腸間粘膜細胞にブドウ糖をつくるように働き腸内糖新生を促します。腸内でブドウ糖が作られることにより肝臓でのブドウ糖産生が減り血糖値は安定化へと向かいます。そしてインスリンの値が安定する結果、食欲も落ち着いてきます。
これは水溶性食物繊維の分解から始まり、腸から脳さらに腸へとめぐる回路が形成されて、さらにエネルギー代謝の調節に至るといった腸内細菌と生体の巧みな連係プレーです。
 腸内細菌とメンタルの関係では、まず発達障害に関して、フィンランドのParttyらは乳幼児期にプロバイオティクスを与えられた群はプラセボ群よりアスペルガー症候群やADHD(注意欠陥多動性障害)の発症が有意に少なかったことを報告しています。
抑うつや不安に関して、フランスのMessaoudiらはプロバイオティクスのランダム比較試験においてプロバイオ摂取群が抑うつ気分だけでなく自覚的ストレス度の有意な改善が見られたことを報告し、TillischらはfMRIを用いプロバイオ摂取群が、不安惹起刺激による不安関連脳領域の活動性の減弱(不安にならなくなった)を認めたことを報告しています。
 このように腸内細菌による脳の変化を客観的にとらえたことはとても重要で、腸内細菌とメンタルが大いに関係していることを示しています。
 以上より、脳腸相関の安定化にはやはり良い腸内フローラの存在が大切です。
そのためにはヨーグルや漬物などで腸内細菌を供給し続けること、食物繊維やポリフェノール類をとり腸内細菌を増やすこと、そして腸内フローラを有用菌に変える納豆やみそなどの発酵菌を十分にとることが必要です。
また、運動を取り入れてストレスの少ない生活への改善、良質のタンパクやビタミンBや鉄などを多く含む食生活で脳に栄養を十分届ける工夫が求められます。
 腸を良くしてあげれば頭が良くなり、頭を良くしてあげれば腸も良くなります。
photo: sott.net
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takahashi1030 · 8 years
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甘酒は腸内環境を整えるための力強い味方です
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幼少の頃、お祭りで甘酒を初めて飲まされ、あまりおいしくなかった印象があります。
以後二三度口にしたものの、それ以上欲することはなく過ごしてきました。
そのころ飲んだのは酒粕を湯に溶かし砂糖を加えた甘酒だったので、お酒の香りが合わなかったのかもしれません。
しかし、医者になって7年が過ぎたころ酒粕についての本とめぐり合い、その効能があまりにも素晴らしかったため、好きではないはずの酒粕に興味を持つようになりました。
のちに基礎研究の機会を得て脊髄損傷の研究を始めましたが、その傍らで酒粕の研究も細々と行いました。ねずみと日々暮らす中で、ある時肥満ラットに酒粕を混ぜたエサを与えてみると中性脂肪の増加と体重増加の抑制作用があることがわかり、これを何とか形にしようと酒粕を飲みやすくしたSAKECAKEというサプリメントを作ったことがあります。今は製造しておりませんが、酒粕の力を埋没させるのはもったいなく、またの機会に作ってみようと思います。
最近は米麹を使った甘酒が人気のようです。
米に麹菌をつけ米麹とし、この米麹に水を混ぜて60℃で温め続けること6~8時間で、とろとろの甘酒ができます。麹菌が発酵過程でお米のでんぷんを分解しブドウ糖に変えるのでとても甘いです。甘酒にはブドウ糖の他に豊富なビタミンB群やアミノ酸も含まれており、「飲む点滴」「飲む美容液」などと呼ばれています。また8~10%アルコール分が含まれる酒粕と違ってアルコール分がゼロなので子供や妊婦、運転者も安心して飲むことができますし、カロリーも砂糖を入れる酒粕甘酒より低いため、カロリーの気になる方には良いでしょう。
一方、酒粕甘酒はアルコール分のことを除くと、米麹甘酒と比べてビタミン、アミノ酸、食物繊維の含有量が多く、何よりコレステロールの低下に関係するレジスタンントプロテインが含まれており栄養価としては上回っています。
 甘酒と腸の関係において、甘酒に含まれる食物繊維やオリゴ糖が大腸に届くと酪酸菌のエサとなり酪酸菌が増えて酪酸を豊富に作ります。酪酸は制御性T細胞による免疫寛容に関与し過剰な炎症を抑えるため炎症性腸炎や喘息、アトピーの鎮静化の助けとなります。
また植物性乳酸菌を含んでいる場合には、それらが小腸に達した後、乳酸にて腸内を酸性にして蠕動運動を活発にするとともに乳酸菌が産生するバクテリオシンが悪玉菌を抑制し腸内環境を改善します。
生の米麹甘酒(生甘酒)では熱入れをしていないので、麹菌が作り出したアミラーゼ、プロテアーゼなど多くの酵素が活性のある状態で存在しており、腸における消化吸収を大いにサポートします。
 先日の点滴療法研究会のワークショップにおいて桑島内科医院の桑島先生は甘酒を実際に患者さんに用いてその効果について発表されました。
まず外来患者さんに飲ませたところ便秘が最も多く改善し、夏バテや肌の改善、そして過敏性腸症候群やパニック、過換気症候群が軽快したようです。
続いて特別養護老人ホームの認知症、不穏、食欲低下や下痢などがある状態の悪い入所者7名に生甘酒を毎日一杯飲ませ3-4か月続けました。その結果7名中4名の全身状態が改善し、不穏と便秘、下痢の改善、食欲の増進によるアルブミン値の改善が見られました。
そして、この実験の途中、集団感染がおこり多くの方が発熱し抗生剤の治療を受けましたが、生甘酒を飲んでいなかった人に比べ飲んでいた人は軽症で済んだようです。
今度は生甘酒による腸内の変化を見るために、状態の良い方3名に生甘酒を毎日1杯1か月間続けてもらい、摂取前後の便検査を行いました。すると腸の炎症性マーカーであるカルプロテクチンの有意な減少と真菌のカンジダの減少がみられました。
これらから生甘酒が腸内環境の改善に少なからず関与していることが分かり、先の入居者の全身状態が改善したことは腸内細菌叢を整えることにより免疫力や精神機能の改善につながったものと思われます。
このような結果を導く生甘酒は大したもので、十分な利用価値があるといえます。
在宅医療の現場や私が理事をしている四街道の特養でも便秘の問題があり、今後は生甘酒の活用も必要であると考えています。
なるべく薬に頼らず、機能性の食品を利用し、自然な形で体調が整えられることはとても大切ですし、甘酒をより多くの方に使っていただきたいと思います。ただ、飲みすぎは、糖質の取りすぎにもなりますから注意が必要です。
 話は変わりますが、このたびの会で久しぶりにソフィアイーストクリニック日本橋の尾崎先生とお会いし近況を伺うことができました。
尾崎先生はがん患者さんの腹水治療のスペシャリストです。CART(腹水ろ過濃縮再静注法)という腹水を腹腔から抜いて、細菌やがん細胞を取り除き、アルブミンなどが濃縮された腹水を再び点滴で戻す治療をしていて、私は腹水の患者様から相談があった際には、必ずご紹介する先生です。
ところがこのたび尾崎先生は2トントラックを改良し救急車を大きくしたような感じのCARTの設備を整えた車を作ったのです。つまり、通院できない腹水の患者宅まで自ら出向いてからこの車の中でCARTをしようというものです。外観はピンク色の背景に赤いハートがいくつか描かれておりとても目立つデザインです。
とてもユニークで日本ではオンリーワンであり、ますますの普及が期待されます。
 このたびの点滴療法研究会は何名かの先生方に独自の治療法や技をご紹介いただきそれを学ぶ場でありましたが、皆さんに共通しているのは、患者さんのためにとことん努力している姿勢でした。
これからの個別化医療に対応するためにはこのような気持ちと技を持ち合わせることが大切であると感じました。
ただ、多くの検査法や治療法が日々増えているので、混乱が懸念されます。
私たち医師は有用なものとそうでないものを選別し、最短距離で患者さんに治療方法をお伝えする技量が必要です。
そうした中で私は食品を基本とし、それに新たな治療法を組み合わせる方法を選択し今後ご紹介して参りたいと思います。
 photo: 田中酒造
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takahashi1030 · 8 years
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ケトン食による がん 兵糧攻め作戦
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かつて戦国武将たちは、さまざまな戦術を展開し、勝利した者だけが生き残れる過酷な世界にいました。豊臣の時代、黒田官兵衛らは鳥取城を陥落する際に兵糧攻めという方法を選択しました。本格的な攻めの前に城下にあったお米を倍の値段で買いあさりその地域の米の量を減らしました。その後、領民たちを焼き討ちなどで追い立て城の中に追いやったあと城を囲み外部からの食糧補給を絶ちました。城の中は4千もの人であふれかえり食料があっという間になくなり武力衝突することなく陥落したそうです。手間はかかるものの味方の損失はなく、まさに戦わずして勝つ優れた方法であったと思います。
銀座東京クリニックの福田一典先生はこの兵糧攻めという考えをがんの治療に応用しました。最近よく耳にす��糖質制限に、脂肪を沢山とるケトン食療法を加えたのです。がん細胞の主な栄養源はブドウ糖であるので、これを断つことでがん細胞を兵糧攻めにして、正常細胞は脂肪から栄養を補給するというものです。 糖質の過剰摂取は体の細胞を糖化することで老化の進行や糖尿病、がんなどの多くの病気を引き起こします。糖質の摂取をなるべく少なめにすることはとても大切ですし、病気にならないための基本です。がん予防には糖質の制限とタンパク質と緑黄色野菜の摂取と適度な運動が好ましく、がんになってしまった場合にはケトン食を追加するという考え方です。 ケトン体とは、脂肪の分解途中でできる、アセト酢酸・βーヒドロキシ酪酸・アセトンを総称したものです。糖質不足や代謝の障害がおこると、体は糖質に代わるエネルギー源を脂質に求めるようになり、脂質の代謝が盛んになります。 体内の脂肪細胞に蓄えられた脂質(脂肪酸)は、肝臓に運ばれて、アセト酢酸に変わり、さらにこのアセト酢酸が変換されて、βーヒドロキシ酪酸・アセトンなどのケトン体ができて肝臓以外の各臓器でエネルギー源として利用されます。このように、血液中に増えたケトン体がエネルギーとして使われている状態を「ケトーシス」と呼びます。 ケトーシスの体を作るには、まず1日の炭水化物の量を、1日の摂取カロリーの5%に抑えます。例えば、1日に2000kcal摂取している人なら炭水化物の摂取量は100kcal(25g)以内にします。この状態を数日週続けると、体脂肪がエネルギー源として利用される「ケトーシス」となります。
がん細胞は無限に増殖する使命を帯びた細胞で、そのために酸素を必要としない嫌気性解糖系を選択し、ブドウ糖を原料に(ATP)エネルギーを作り、そのエネルギーをもとに自己の細胞構成成分を合成してゆきます。 ミトコンドリアを利用した方がATP産生量は多いのですが、大量の活性酸素が発生するので、酸素を必要とするこちらの系をがん細胞は選択しませんでした。 よってがん細胞の周りにいくら酸素があっても好気性呼吸を行いません。これはがん細胞内で低酸素誘導因子(HIF-1)が常に活性化し解糖系方向の促進とTCA回路方向の抑制が働いているためといわれています。 つまりがん細胞はブドウ糖の取り込みを常に亢進させていないと生きて行けない細胞であるともいえます。 一方、がん細胞はケトン体をエネルギー源として利用することはできないばかりか、ケトン体自体にがん細胞の増殖を抑える作用があり、脂肪の摂取は有用と考えられます。 どの程度まで脂肪をとることが可能か調べた実験で、健常人にカロリーの85%以上を脂肪で摂取するような食事を続けても内臓や運動機能に悪影響がないことが認められました。このことからかなりの量の脂肪を糖質の代わりにとることができます。 ケトン食療法は元々てんかんの食事療法としてかつて用いられた方法ですが、薬の進歩により使われなくなりました。しかし、てんかんに関連して脳腫瘍にケトン食療法を行ったところ抗腫瘍の効果が見られたことや、抗腫瘍効果が血中ケトン体濃度と相関した実験結果も示されたことから最近、がんの食事療法として見直され研究されるようになりました。 実際のケトン食療法は ① 脂肪として肝臓で代謝されやすい中鎖脂肪酸を使います。 オリーブオイル、魚油(DHA,EPA)、亜麻仁油、しそ油などです。具体的にはココナッツオイルや精製中鎖脂肪酸(マクトンオイルやMCTオイル)を1日に40~100g摂るようにします。(1日の食事の60%を脂肪にする) ②1日40g以下の糖質制限(ごはん一杯150gには50gの糖質があるので、1日1杯も食べられません。) ③タンパク質は体重1kgあたり1~2g摂ります。 基本的に脂肪:(糖質+タンパク質) を 3:2にします。  例えば糖質40g(160kcal)タンパク質80g(320kcal)の場合脂肪は180g(1620kcal)で合計2100kcal/日になります。 ケトン食の欠点は極端な糖質制限を行うので重度の糖尿病の方に行うことは危険で、また高脂肪、高タンパクになるので重度の肝障害や腎障害がある場合も難しくなります。主にⅠ型糖尿病でインスリン不足により脂肪の代謝が亢進し、血中にケトン体が蓄積し酸性血症により意識障害に陥る糖尿病性ケトアシドーシスがあり、ケトン体に良くない印象を持たれる方もあるでしょう。 しかし、実際はインスリンの働きが正常である限り、一時的に上昇したケトン体によるアシドーシスは血液の緩衝作用で正常に戻るため、ケトン体は安全なエネルギー源であるといえます。また高脂肪ががんの発生を高めるとの意見もありますが、これは高脂肪と高糖質が合わさった食事での話であり、低糖質では逆に発がんを抑制する実験結果も出ており、心配することはないでしょう。 断食やカロリー制限と違って栄養不足や体力低下に陥ることも少なく、副作用のほとんどないこのケトン食療法は、がん細胞の弱点をついたとても理にかなった方法です。がん攻略には標準療法の正攻法ももちろんですが、過去の武将にならい、がんの兵糧攻めも一考の余地があると思います。
photo: www12.plala.or.jp
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takahashi1030 · 8 years
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すすむ個別化医療がそのうちがんの標準治療になるかもしれない
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個別化医療やプレシジョンメディシン(精密医療)ということばが、特にがん治療においてよく聞かれるようになってきました。 今や2人に1人が罹患するがんに対して、医療者側は遺伝子解析など細かい検査により個々人に合う薬や治療法を提供する時代に入ったことを意味しています。 また、今の手術、化学療法や放射線治療など標準治療ではどうしてもカバーしきれない部分があり、それを新たな手法で補っていく必要があります。 その一つとして今や広く普及した分子標的薬があります。 分子標的薬はがん細胞に特徴的に発現しているタンパク質の分子を標的として、この働きをブロックすることでがんの増殖を抑える薬です。 がん細胞は自分で死ぬこと(アポトーシス)することなく、自ら栄養補給のための血管を作り、増殖し続け、その血管内に侵入し血流に乗って、遠くの臓器へ転移する特徴があります。これらはすべて異常な遺伝子から作られた異常なタンパク質による仕業です。 そして、この異常なタンパク質を攻撃するためにモノクローナル抗体や低分子薬などの分子標的薬が作られ、様々な種類のがんに用いられています。 分子標的薬は通常の抗がん剤に比べて髪の毛が抜けることや食事が全く摂れないなどのADLを著しく低下させるような副作用が少なく、治療成績も向上し進歩した感はあります。 しかし、全く効かないケースや、重篤な副作用が出現することもあり、またそのうち耐性も出てきてがんを制圧するまでには至りません。これは現時点でがんの特徴を厳密に調べ上げることが出来ていないためだと思います。 同じ臓器のがんでもそれぞれ遺伝子の異常部位や数が異なるため個々人でがんの性質が違います。どの遺伝子が本当に悪さをしているのかを見つける技術と、それに適した分子標的薬を選択する方法を確立することが早急に求められます。
分子標的薬とは別に、新たな手法として遺伝子に働きかける方法や免疫細胞に働きかける方法があります。 がんは突然がんになるわけでなく、例えば大腸がんでははじめ、正常粘膜細胞内のAPCという遺伝子が傷つくことで細胞が変化し腺腫ができ、さらにK-rasという遺伝子の傷で細胞が悪くなり隆起します。続いてがん抑制遺伝子であるp53が傷つくことで腺腫内にがんが発生、最後にSMAD4,PTENの傷で進行がんに発展すると言われています。 このp53やPTENの傷を元に戻そうというのが遺伝子治療の基本で、ウイルスの力を借りて体内に注入後、がん細胞のアポトーシスを導こうというものです。 ただし、この効果も限界があり現時点では、高活性化NK細胞を用いた併用療法や腫瘍が縮小した後に標準療法を加える方法がとられています。 将来的には目的の遺伝子を狙った位置に挿入できるゲノム編集という技術が確立すれば更なる効果が期待できます。
また新たに遺伝子治療と細胞療法が合体したキメラ抗原受容体T細胞療法:CAR-Tがあります。通常がんは自身の抗原性を隠し免疫をすり抜けようとします。CAR-Tはこの抗原性を認識する力を発揮するキメラ遺伝子を自身のキラーT細胞に遺伝子操作で導入した後、体内に戻す方法です。がんを殺す確率が最も高い治療法とされており、治療困難な白血病に対して9割近くの人を回復させました。しかし、自身のB細胞を攻撃したり、免疫応答に大切なサイトカインを狂わせる副作用がでます。今後この副作用が調整できれば、がん治療の強い味方になります。 一方、免疫細胞に働きかける方法としては最近話題のオプジーボ(抗PD-1抗体)を用いまたこれを応用した方法があります。がんはPD-L1という物質をつくり、がんを攻撃するT細胞のPD-1に結合することでその攻撃を免れています。オプジーボはその結合を阻みT細胞の攻撃を復活させる抗体薬です。現在、悪性黒色腫と非小細胞性肺がんへの保険適応があり、そのほかのがんには使用できません。
しかし、湘南メディカルクリニックの阿部吉伸先生は保険診療以外の形をとることで様々ながんに用いています。その施設ではオプジーボを少量ずつ投与することで副作用の発現を避けつつ、活性化NKT細胞との併用療法を行っています。 昨年の9月からの半年間に245人にこの方法を用いたところ約半数でがんの縮小がみられたと報告しています。 またオプジーボと似て樹状細胞の免疫のチェックポイント阻害を行い、さらに制御性T細胞を抑え込むことでT細胞の活性化を促すヤーボイという薬を追加した場合、8割の人にがんの縮小効果が見られたようです。 そして、この内容を報告していた阿部先生自身がもし自分ががんになったら真っ先に受けたい治療であると述べていたのは印象的でした。
ここ数年NK細胞や樹状細胞を用いた細胞療法が行われてきましたが、1,2種類の細胞だけでは効果の限界があります。 また樹状細胞の成熟には自然免疫のNKT細胞の活性化が不可欠であることやがんの原発巣と転移巣では抗原の出方が異なり、転移巣ではよりNK細胞の働きが必要であることが分かってきました。 このことからキラーT細胞、NK細胞、γδT細胞、NKT細胞、樹状細胞の5つをまとめて使う5種複合免疫療法も行われています。
さらに樹状細胞ワクチン療法を新たな方法で今まで以上に強化したエイビーバックス療法があります。これは日本での個別化医療の推進に尽力しているアベ・腫瘍内科・クリニックの阿部博幸先生が作り上げた方法です。 今まではショートペプチドでWT1など1つのがん抗原を樹状細胞に入れていましたが、新たに単球未分化増殖技術により樹状細胞を増殖させ、ロングペプチドにて4~6種類のがん抗原を樹状細胞に入れることで、がん細胞の多様性に対応した樹状細胞を沢山作ることができるようになりました。副作用も少なく、かなり効果のある方法です。当院でも取り入れたい方法の一つです。
現在個別化と言ってもさまざまな方法があり、何がある一人の患者さんに適しているかはまだわからない状況です。効果、副作用、経済的な問題も考慮するとさらに複雑になります。
この複雑さを少しでもシンプルにするために血液中のCTCs(循環腫瘍細胞)検査結果による治療法の選択というアプローチがあります。 CTCsは転移の原因となるがん幹細胞に相当し1ccあたり5個以上検出されるとがんの危険性があると判断されます。 さらにこの細胞の遺伝子、分子標的薬、抗がん剤、天然物による感受性試験の結果からその人に効く薬の選別が可能になります。つまり効かない抗がん剤で苦しむことがないように事前に判断ができるわけです。
こういった検査を利用して複雑に絡み合った問題を一つひとつ解きほぐしながらデータを積み上げていくことが個別化医療の基本であると思います。 この積み重ねがいずれ標準になり、今の標準治療の形が変わる可能性はあります。 現時点で私が思うことは、自身ががんになった時に何とかして化学療法を後回しにしたい。そのためにはCTCs検査をして、遺伝子治療やピンポイント放射線で縮小後、手術ができるならまず手術を行い、細胞療法、抗体療法の順で治療を行うことを考えています。 しばらくしてこの順番も変わる可能性もありますが、私としては体への侵襲が少ない順に行うことを基本にしたいです。
もちろん温熱とビタミンC点滴は初めの段階から使います。
photo; The University of Tokyo Hospital
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takahashi1030 · 8 years
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健康のためにダークチョコレートをもっと好きになろう
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今の健康ブームの中でチョコレートは脚光を浴びております。それを愛する人は多いと思いますが、私もその中の一人です。週に5回は夕食後、お茶と一緒にチョコをつまんでから床に就いています。 しかし先日、海外発の有名なチョコレート専門店で食べたチョコが全く私の口に合わなかったため、おいしいチョコを求めて蔵前まで行ってきました。
今年2月にオープンしたダンデライオンというお店で、元IT起業家の若者二人がサンフランシスコで創業し2店舗目を日本の蔵前に作りました。 この店内だけで世界各地から取り寄せたカカオ豆からチョコレートまで製造し、お客はその場で食することができます。 ここのチョコはカカオときび砂糖だけでできており、他の混ぜ物は一切なし。だからおいしく、お客さんがひっきりなしの状況でした。 メニューもホットチョコレートからブラウニーなどわりと豊富にあることも人気の理由のようですがそれ以外に、私は味わってみて自然に近いシンプルなおいしさを皆さんは求めているのだと改めて思いました。
カカオの木には“神様の食物” テオブロマ・カカオというギリシア語に由来する学名がつけられております。はじめは紀元前1000年ころより中南米で利用され、マヤやアステカの貴族の飲み物として珍重されていたようです。 16世紀にスペイン人によりチョコレートとしてヨーロッパに持ち込まれた頃、はじめは王侯貴族の飲み物でしたが、そのうち体にいいものであると考えられるようになり科学者がテオブロマと学名を付けて、19世紀には砂糖やミルクを加えることにより多くの人が食すようになりました。
カカオの木は赤道から緯度で南北20度以内の地域で栽培されており、ラグビーボール大の実を付けます。この実の中に白い果肉に包まれ約30~40個のカカオ豆があり、実から取り出した後、果肉と一緒にバナナの葉でくるんで発酵させます。1週ほどしてカカオ豆を砕きの皮を取るとカカオニブができます。 さらにカカオニブを炒めてから細かくつぶしていくとチョコレートの元になるカカオマスができます。 カカオマス100g中には脂質50g(オレイン酸32%、ステアリン酸31%)、食物繊維17g(難消化性食物繊維のリグニンが50%)、タンニン4g(ポリフェノール)、テオブロミン(苦み成分)1.3g、無水カフェイン0.1~0.2g、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などのミネラル、ビタミンE、βシトステロール(植物ステロール)が含まれています。 このように豊富な栄養素を持つカカオマスがチョコレートに多く含まれるほど機能性を発揮するため70%以上のもの(ダークチョコ)が望ましいとされています。 愛知学院大学の大澤教授によると1日5粒25g(150kcal)のチョコレートを1か月ほど食べることで血圧が低下するそうです。 また先生は、別の認知機能の研究においてチョコレート摂取によりBDNFという脳由来の神経栄養因子が増えて今後認知症の予防に期待がもてるが、これらはみなカカオポリフェノールの抗酸化、抗炎症作用によるものと述べています。 つまりチョコレートの機能性の原動力となるのがカカオポリフェノールと考えられます。そこで各食品100g中のポリフェノール含有量を比較してみると、コーヒー200mg、緑茶115mg、赤ワイン101mg、ブルーベリー300mg、オリーブ346mg、ブロッコリー45mg、クルミ1215mg、アーモンド187mg、ココアパウダー3448mg、ダークチョコレート1664mgでチョコレートには圧倒的な量のポリフェノールが含まれています。 ポリフェノールはもともと植物が過酷な環境で生きてゆくために作り出した物質であるため、人が食すると苦みや渋みとして感じられます。 5000種ほどあるポリフェノールはお茶のカテキン類、大豆のイソフラボン類やレスベラトロールのスチルベン類など大きく10種類に分けられ、それぞれに得意とする機能を持ち合わせています。 特にカカオポリフェノールは強力な抗酸化性をはじめ、慢性炎症やアレルギー炎症の抑制、動脈硬化予防効果や発がん増殖抑制効果、先ほども述べた脳内機能増進効果など多種多様な機能性を持ち、研究対象としての注目が高まっています。 理想的なポリフェノールの1日摂取量が1500mgという意見がある中、お茶の水女子大の田口先生の研究によると日本人の1日のポリフェノール摂取量は840±403mgでコーヒーから47%、緑茶16%、紅茶6%、チョコレート4%の順でした。 一方フランス人では男性1280mg、女性1120mgでコーヒーからが40%、次いで果物そしてワインの順で、日本人の摂取量がやや少ない印象です。 そこで、もともとポリフェノールの多いチョコレートの割合を少し増やすことにより理想値の1500mgに近づける可能性があります。ダークチョコレート25gで416mgプラスできることを目安に取り入れてみてはいかがでしょう。
チョコレートにより糖尿病患者のインスリン抵抗性が改善したり、心筋梗塞の患者さんの心臓死亡率を減らしたり、またダークチョコレートで下肢末梢動脈疾患患者の歩行機能が改善したり、世界からチョコレートの効能効果が報告されています。 がん患者に対する報告はありませんが、動物実験レベルでは2012年にエピカテキンの含有量の多いココアがin vitroですい臓がん細胞の増殖を抑制した報告があります。また、最近ではココアパウダーの抽出物(プロシアニジン;ポリフェノール)が卵巣がん細胞の細胞内ROSレベルを上昇させることにより卵巣がん細胞をアポトーシス(細胞死)に導き、さらにがん浸潤に関係するpro-MMP2レベルを低下させた報告がありました。
このように期待が広がるチョコレートですが、糖分や脂質が多いため食べ過ぎるとメタボになるので注意が必要です。またミルクチョコレートは脂質以上のの糖質を含む場合が多いので、なるべくカカオ70%以上のダークチョコレートがおすすめです。
寒くなるこれからの季節はホットチョコレートで温まるのもいいですね。
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takahashi1030 · 8 years
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細胞内ごみ処理システムとノーベル賞
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もうすぐノーベル賞の発表です。 毎年この時期になると誰が栄冠を手にするのか 様々な予想が飛び交い、周りはにぎやかなムードに包まれます。 非常にインパクトがあった2012年の山中先生のiPS細胞以降、2014年のLED関係、2015年のカミオカンテと寄生虫とほぼ毎年日本人が受賞しています。 2016年も日本人受賞が大いに期待できます。 勝手な予想ですが、私が期待しているのは生理学・医学賞のオートファジー関連で東大の水島先生、東工大の大隅先生、小胞体関連で京大の森先生です。特に森先生は山中先生と同じくアメリカのラスカー賞とカナダのガードナー賞を獲得しており有力と考えます。
オートファジーや小胞体など聞きなれないものですが、いずれも細胞の中のごみ処理メカニズムの研究です。なぜこのごみ処理が注目されているかというと、このごみ(不良タンパク質)処理の良し悪しがさまざまな病気の発症に関わっているからです。                           小胞体は細胞核に隣接し、周囲のリボゾームで作られたタンパク質を小胞体内できちんとしたタンパクに整えてゴルジ装置へ送り出します。       そしてこのタンパク質はゴルジ装置からリソソームそして細胞表面に旅立ってゆきます。                              小胞体はいわばタンパク質をきちんと育てるための学校のようなものです。 細胞内で合成されたばかりのタンパク質は生理学的な役割を果たすことができないため、正しい立体構造に折りたたまれるフォールディングという処理を受けなければなりません。基本的な礼儀を学ぶということです。 しかし、時にフォールディングがうまく行かなくてきちんとしたタンパクができない場合があります。新規の合成タンパク質が小胞体内に次々に入ってくるものの、きちんとしたタンパク質を送り出せなくなり小胞体という学校が礼儀を知らない不良で溢れてしまします。                    このような状態を小胞体ストレスといいます。 小胞体ストレスの誘因としては細胞に血が行かなくなる虚血や遺伝子変異があげられます。そしてストレスが長時間に及ぶと神経細胞や膵臓の細胞が死んでパーキンソン病や糖尿病に至るといわれています。
しかし、細胞は賢いのでそのような状況を打破しようとさまざまな手を打ちます。フォールディングに重要な酵素である分子シャペロンを多く生産しタンパク質の折りたたみ効率を上げたり、タンパク質の翻訳を減らし小胞体への入場を減らし、変性タンパクを積極的に分解除去します。そして、どうしても改善不可能なレベルに達したとき細胞は自ら死を選択し消滅するアポトーシスを誘導します。 このように細胞は自ら立ち直ろうとする力があるので、適度なストレスが逆にタンパク質の折りたたみを促進します。そのストレスは一過性で短時間のものであったり、入浴などの温熱刺激だといわれています。
また、小胞体ストレスとオートファジーは大いに関係しており、小胞体ストレスにより細胞内シグナルを介してオートファジーが誘導されます。          
オートファジーは自食作用ともいわれ、細胞質のリソソームにおいて細胞質内の不要になった成分を分解する機構で、マクロ、ミクロ、シャペロン介在オートファジーの3つの経路があり、主にマクロオートファジーの研究が多くなされています。                             細胞質内の不要なタンパク質を選択的に分解するユビキチン・プロテアソーム系と違い、オートファジーはタンパク質だけでなくミトコンドリアなどのタンパク質以外の細胞内構造体も分解できる特殊なシステムです。        この分解の仕方はとてもユニークで、処理したい対象があると細胞質から隔離膜が出てきて対象を取り囲んでから、さらにリソソームに取り込まれて中身を分解します。                             リソソームはオートファジーの主役でもあり細胞内のごみ処理工場に相当します。リソソームの内部には70種類の酵素があり、酸性に保たれ、ここに入って来たものは何でも分解されます。そうすることで細胞内をクリーンにします。 普段はアミノ酸やインスリンがmTORC1(タンパク複合体)を介してオートファジーを抑制しています。                      mTORC1は食事のカロリー制限により寿命を延ばすことに関係する物質としても知られていますが、アミノ酸やインスリンがなくなる飢餓時にはmTORC1の抑制がとれてオートファジーは活性化し、自己タンパクから不足しているアミノ酸を生成して飢餓に対応します。                   つまり、オートファジーは単なるごみ処理だけでなく生体の調節の根幹を担っているとも考えられています。                                    また、オートファジー関連遺伝子の同定とその遺伝子改変動物の実験にから、オートファジーの機能不全は変性タンパク質や構造物などの細胞ごみがたまることで、パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患や腸の炎症疾患のクローン病、糖尿病、心不全、腎症そしてがんの発症に関係することが分かってきました。 がんに関しては、通常Sqstm1/p62というユビキチン結合タンパクが異常なミトコンドリアとともにオートファジーにより分解されますが、Sqstm1/p62が分解されずに細胞内に蓄積するとNF-kBを活性化してがん形成に関与すると考えられています。 神経変性疾患であるハンチントン病や脊髄小脳変性症は神経細胞内にポリグルタミンが蓄積する病気ですが、熱ショックタンパク(hsp70)と伸長ポリグルタミン鎖の結合を促進すると、ポリグルタミン鎖はリソソームに運ばれオートファジーにより分解されます。これはシャペロン介在オートファジーでhspと関わる反応です。hsp は熱により細胞内で増加するので、小胞体ストレスと同じように体を温める温熱刺激が有用かもしれません。
他にもさまざまな遺伝子や数多くの物質がオートファジーに関わっており、病気の発症のメカニズムの解明と創薬に向けた研究が世界中で行われています。今では日本より海外での研究が盛んであるという意見もあります。                                    そのメカニズムが解明されたとき、さまざまな病気の治療が一気に進む可能性があると思います。
私は病気の根本につながる小胞体やオートファジーの研究を世界に先駆けてはじめた日本人の研究者の立派さを改めて感じると同時に、この研究者のもとへノーベル賞が近づいてきている予感がします。
photo: businessinsider.com
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takahashi1030 · 8 years
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がん治療の守備固めに漢方を使おう
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がん治療の中で大切なことはがんを縮小させる攻撃的な面と抗がん剤や放射線などによる副作用を軽減させる守備的な面の両立です。
抗がん剤により貧血、白血球減少、下痢、しびれ、味覚障害、口内炎、食欲低下などが起こります。
これらに対し様々なアプローチがなされますが、中でも大事なことは栄養や水分を口から入れる摂食をいかに維持するかです。
栄養や水分が不足すると元気がなくなって活動性が低下し、がん治療による弊害が前面に出てきて、がん治療そのものの継続ができなくなります。
そこで摂食を維持しこれらの副作用を軽減させるために漢方が用いられます。
漢方には保険のきく医療用医薬品(例えばツムラ、クラシエなど)のものとそれぞれの薬局の伝統的な特徴もって調合される自由診療的なものがあります。
医療用医薬品の漢方は多くの施設で使われているため論文も増えてその精度も高���ってきています。
よく用いられる漢方の一つに六君子湯があります。これは逆流性食道炎の時にしばしば処方されますが、シスプラチンなどの抗がん剤による食欲低下や胃がん術後の慢性的な胃痛、胸やけを呈する機能性ディスペプシアに有効です。
六君子湯は胃からのグレリンというホルモンの分泌を促し、上部消化管の蠕動運動を良くして食欲を増進させます。よって代謝が改善され、がんの悪液質の改善の力となります。
また、疲労感や抑うつで食欲が低下している時に気を補う補中益気湯を用いることがあり、ある一定の効き目がありますが、この効果が不十分な場合には六君子湯が必要になります。
抗がん剤であるシスプラチンは食欲低下のほかに手足のしびれや口内炎を引き起こすことがあります。特に口内炎が続くと食欲は落ちてしまいます。口内炎には半夏瀉心湯が有効とされ、これは炎症部位でのプロスタグランジンE2(PGE2)という痛みに関する物質を抑制する働きがあります。アズノールうがい液でうがいをした後に服用すると効果的です。
便秘もおおいに食欲低下に関係します。大腸がん術後の腸閉塞の予防によく大建中湯が使われます。大建中湯は腸管運動促進や血流改善作用があり、便秘の改善に役に立ちます。
また、咳が続いて食欲が低下した場合、まず咳を抑えるために、麦門冬湯を選択します。これは肺がん術後や肺転移時の咳に対してたびたび使われる漢方です。麦門冬湯はカプサイシン、ブラディキニンやPGE2などの炎症物質の産生抑制、遊離抑制作用の他に気道を潤す作用があります。
しびれなどの末しょう神経障害も直接的ではありませんが、食欲に影響を及ぼします。手足の軽いしびれからボタンがかけられないなどの運動障害、味覚障害、自律神経障害、耳鳴りや聴力障害などがひどくなり日常生活ができないレベルに至ることがあります。しびれに関して血流改善や鎮痛作用のある牛車腎気丸が有効との報告があり、他にアルツハイマー病で使われる抑肝散も使われることがあります。そして牛車腎気丸だけで効果不十分な場合ブシ末の追加投与が役に立つ場合があります。ただし、重度の場合、漢方だけでは不十分なことが多々あります。
抗がん剤の副作用で元気がない場合に体力回復を願って十全大補湯がよく用いられます。十全大補湯は骨髄造血機能、免疫機能やQOLの改善に有効とされますが、食欲を低下させたり炎症を助長してしまう副作用があるので食欲不振がある場合は不向きです。
漢方には副作用がないように思われていますが、全く無いわけではありません。抗炎症作用のある黄ごんという生薬は肝障害を引きおこす可能性が10%という報告や間質性肺炎に至ったという報告もあります。上記の漢方の中では半夏瀉心湯があてはまるので注意をしながらの服用が大切です。
また甘草を含む漢方により直接ビリルビンが上昇や低カリウム血症を発症することが報告されています。甘草は上記の大建中湯や牛車腎気丸には含まれていませんが、それ以外のほとんどの漢方に使われていますので、時々血液検査をしたほ��が良いでしょう。
医療用医薬品の漢方を上手に使い副作用の軽減しつつ、抗がん剤や放射線治療の継続ができればよいのですが、そうではない状況に置かれることが多々あります。
このような場合、独自の製法で効果を上げている漢方薬局の協力が必要になります。
福岡県にある創業110年の老舗薬局の榎屋相談堂さんではさまざまな病気の相談を全国から受けており、がんだけでも200件以上あるそうです。
この薬局は栄養補給と強い免疫力の獲得によってがんと共存する長期戦略を目指しており、胸水や腹水の溜まった方や余命があと少しと言われた方々に対応しています。
その処方には独特のものがあり、海の栄養素である牡蠣、大地の栄養素として紅参、エノキタケとブナシメジを中心に他の生薬をブレンドし処方しています。
この薬局の代表者である中尾薬剤師はこれらの処方により奏功や安定が50~60%得られると述べています。
当院は数年前から重度の患者さんに対し相談堂さんと連絡を取り合いながら処方をしており、実際、状態が良くなった方もおられ、現在クリニックと薬局が密に話し合える良い関係にあります。
がん治療において医療用医薬品の漢方であれまた老舗薬局の漢方であれ、漢方を使いこなすことで、守備的な面を確固たるものにすることができます。
また体力や免疫力の回復により、元気な日常生活を再び取り戻すことができるかもしれません。
標準治療にプラスαとして漢方を取り入れることはとても大切であると思います。
photo: spainfitness.com
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takahashi1030 · 8 years
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安全に続けるためにもっとゆるゆるの糖質制限がおすすめ
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今では多くの人に知れ渡った糖質制限。
飲食店でご飯を残す人が増えて、お店側もちょっと頭を抱えているとか。
このまえファミレスで近くの席にいたカップルの会話が少し気になりました「今、糖質制限中だしごはん半分残すわ!」と男性の声、「偉いね~」と女性の声。この二人の中では糖質制限はとても良いことだと捉えられているようです。
一方、最近糖質制限ダイエット推進派の作家さんが急死したことにより糖質制限は危険であるといった意見もマスコミを通して多々聞かれるようになりました。以前から糖質制限反対の意見がありましたが、ここにきてヒートアップしているように感じます。
数年前までは糖質制限という言葉はダイエットに取り組んでいる一部の人の間で使われているだけでしたが、今は日常会話に普通に使われており、私はこれほどポピュラーになるとは思いませんでした。もともと糖質制限ダイエットは2002年にアメリカ人のロバート・アトキンス医師が提唱した考え方で、炭水化物を制限する代わりに肉やたんぱく質はカロリーに関係なく、いくら食べても良いというものです。実際この方法をやってみると急速に痩せますが、その糖質制限の厳しさのあまり脱落する人や、肉や油の摂り過ぎでかえって具合の悪くなる人がでてきたために廃れてしまいました。また皮肉なことにアトキンス医師自身も最後は肥満になってしまったようです。
ただ、私は2002年当時、炭水化物のブドウ糖への分解のされやすさを示すにグリセミックインデックス(GI)値のダイエットへの応用とその効果を知り得たことで、アトキンスダイエットは理にかなった良い方法であるとずっと思ってきました。かつて一度私は2013年7月に糖質制限のブログを書きましたが、以来この考えは変わっていません。
現在、アトキンスの基本を踏襲し糖質制限という言葉に代わっていますが、その厳しさや方法が原因と思われる問題がでてきているようです。2012年のイギリスの報告では炭水化物制限を長期に続けると心筋梗塞や脳卒中になる危険性が高まるといわれ、アメリカNIHからは死亡率が高まると報告されています。
その一方で、糖質制限は糖尿病を改善し、運動との併用でロコモティブシンドロームを予防できることも報告されています。
もともと日本の1日に摂るべき栄養に関する考え方は1日に必要なタンパク質量、脂肪量を決めてから残りを炭水化物で補う方式のため、どうしても炭水化物が多くなってしまいます。
厚労省の日本人の食事摂取基準2015年版によると摂取割合は炭水化物57.5:脂質25:タンパク質16.5が適当であると示されています。これらは%エネルギーという値で1日に必要なエネルギーつまりカロリーの割合を元に計算されています。厳密にはこの値の求め方は年齢ごとの死亡率が最低な体格(BMI)が一番健康であると仮定し、このBMIを維持するためのエネルギー摂取量と消費量が等しくなるカロリーはどのくらいかを専門家が計算して出しています。
成人のタンパク必要量は0.65g/kg/日とされ、またあらかじめ目標値として脂質は25%と決められており、必然的に炭水化物、糖質は6割近くになってしまいます。低めのタンパク質の必要量設定に引っ張られる形で炭水化物の割合が多くなっている印象です。
例えば、成人男性で1日の必要エネルギーを2000kcalとすると6割の1200kcalが糖質になります。4kcalが糖質1gなので300gの糖質が必要量になり、ごはん一膳150g~180g中の糖質が60gくらいなので、1日にごはんは5杯食べることになります。
ちなみに糖質が体内の脳や腎臓で使われるための最低必要量は100g程度といわれており、また主に絶食時に機能しますが、筋肉のアミノ酸や中性脂肪のグリセロールから肝臓でブドウ糖が作られて補充されるので、1日に300gもの糖質摂取はやや多いと思われます。
しかし、あまりにも糖質摂取が少ないと脂肪酸からケトン体が作られエネルギー産生に使われます。最近ではケトン体の脳での利用やがん予防の栄養、神経の保護作用などいい面もわかってきています。しかし、ケトン体の血管内皮細胞への有害作用も示されてきておりケトン体オンリーでは注意が必要です。では、糖質摂取におけるほどほどの量はどのくらいでしょうか?
糖質制限を研究されている北里大学の山田先生によると一食当たりの糖質量を20~40gとし、かつ1日10gのスイーツを食べて、1日当たり70~130gの糖質にするという緩やかな糖質制限食を“ロカボ”と名付けて普及活動をしています。
そして、この糖質レベルではケトン体の産性を避けながら嗜好品も食べられるため有用な方法であると思われます。
ただ、緩やかと表現されていますが、糖質量を最大130gとすると1日にごはんを2膳は摂れるものの、それ以外の糖質はゼロになってしまうので、おかずの糖質(野菜や豆など)が取れなくなってしまいます。私としてはもう少し緩い基準でもいいと考えています。
私は6年程前から糖質制限をはじめて、ロカボレベルのスタートでしたが、かなり体重が落ちました。またそれ以前からウォーキングをしていたため体重が減りすぎたので、制限をもう少し緩くした経緯があります。
あまり糖質制限をしすぎたり、夜に適度な糖質を摂らなかったりすると困ったことが起こります。つまり睡眠中にエネルギーとして使うべき糖質が少なくなり、代わりに筋肉のアミノ酸から糖を作り利用されるので、せっかく運動で作り上げた筋肉が減少してしまいます。その結果、代謝が落ちてかえって痩せにくい体になってしまいます。
よって、運動を少しでもされている方であればごはんが朝夕に1膳ずつ食べられてかつ野菜や豆などのその他の糖質が取れる150g~200gのゆるゆるの糖質制限で長期間維持した方が、ストレスもなく健康的であると考えます。
もちろん肉やチーズなどのタンパク質は多めにとりますが、糖質もある程度とれているので、貪るような高脂肪摂取まで至らないレベルで落ち着いてきます。
実際、私自身ゆるゆる糖質制限を何の苦も無く続けており、体重の維持ができています。
つまり、厳密な糖質制限ではメリットもありますがデメリットもあることが分かってきましたので、メリットを最大限に生かすためにはロカボやそれよりももっと緩いゆるゆる糖質制限を取り入れる時期に来たかもしれません。
さらに効果を高めるためには野菜から食べて炭水化物は最後にする順番とGI値に基づきパンより米、パスタ、そして、うどんよりそばを選択する頻度を増やす大原則を忘れないようにしたいものです。 
photo: diet.lovetoknow.com
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takahashi1030 · 8 years
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奥多摩の巨樹にかこまれ 森林セラピーでがん予防
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梅雨の晴れ間に中央線に乗って奥多摩の森林セラピーに参加してきました。
森林浴はよく耳にしますが、森林セラピーという言葉は初めでした。訳すと森林療法になるので、体にいいこと好きな私としてはとても興味を持ちました。
森の中にいると自然と気持ちがよくなります。
森林浴は血糖値、血圧、ストレスホルモンを低下させ、自律神経のバランスを整えてリラックス効果をもたらすものとして1982年に提唱された概念です。
この頃より森林が体に与える効果の研究が進み、免疫力が上がるなど実証されてきました。森林セラピーはNPO法人 森林セラピーソサエティにより商標登録されております。
その総合サイトによると森林セラピーは医学的な証拠に裏付けられた森林浴効果のことで、森を楽しみながらこころと身体の健康維持・増進、病気の予防を行うことを目指すものとされています。
実際にある森の森林浴効果が都会との比較実験により証明されれば、その森は森林セラピー基地として森林セラピーソサエティから認定されます。
現在、全国で62か所の基地とセラピーロードが認定されており、今回の奥多摩はその一つで“おくたま巨樹に癒される森”と呼ばれています。
森の中を歩くことが基本ですが、ヨガやそば打ちそして星空浴などいくつかが組み合わされたメニューがあり、セラピー基地ごとに特色があります。
 奥多摩の駅からバスで約40分揺られて山のふるさと村に到着。
施設の部屋でガイダンスを受けたのち血圧と唾液アミラーゼ測定でストレス度をチェック。私自身のストレス度はやや高めでしたが、気にせずにそば打ち体験へ。
はじめてのそば打ちは思っていた以上に難しい。しかし、これが後の昼食になるので、額に汗して一生懸命につくりました。出来上がったそばは手前味噌ながらなかなかの物で地元のおかずと合わせ、さらにおいしくいただきました。
昼食後、いよいよガイドさんと一緒に森の中のセラピーロードをウォーキング。
今回は奥多摩湖畔に沿ってつくられた全長12kmの“奥多摩湖いこいの路”を行きましたが、私たちは散策しながらリラックスすることが目的なのでそのうちの2kmのみを歩きました。
木立の間からエメラルドグリーンに近い色の湖が見えて、湖面から吹き上げてくる風がほてった体を適度に冷やし、ヒノキや杉の森の香りにつつまれてとても心地よい気分になりました。
湖畔にてガイドさんから森に関わる小動物や虫、植物の話を聞きながら、奥多摩でとれたハーブのティータイムも癒しを演出してくれました。
続いて皆で湖面に向かって奥多摩式森林呼吸法を実践し、森林セラピーのクライマックスを味わいました。
施設に戻り再度血圧と唾液アミラーゼの測定を行ったところ、ほとんどの方に血圧の低下とアミラーゼ値の減少が見られ、森林セラピーの効果があったようです。
私は最低血圧(血圧の下の方)の低下がみられ、客観的な効果としては少ないですが、その後の温泉の気持ちよさと合わせてとても満足することができました。
是非、多くの方に味わっていただきたいと思います。
森林浴は癒し以外に免疫力を高める効果があり、特にNK細胞の活性を上げるといわれています。NK細胞はがん細胞を直接殺し、感染症の防止にも役に立っている細胞です。
しかし、ストレスによりNK活性は抑制されるので、ストレスを低減することが重要になります。
日本医科大学の李先生は森林と都市部の生活の比較実験を行い、NK活性、NK細胞内の3種類の抗がんたんぱく質と尿中アドレナリン濃度を測定しました。
結果は森林生活をはじめて2日でNK活性とNK細胞数が増加し、一方都市部の生活では変化が見られませんでした。
また、抗がんたんぱく質は同様に都市部では変化がなかったものの森林生活において2日で上昇しました。
NK細胞はパーフォリン、グランザイム、グラニュリシンなどの抗がんたんぱく質を放出してがん細胞を攻撃します。
実験においてこの3種の増加がみられたことから、抗がん活性も高まったと考えられます。またこれらの活性が1か月後も持続していたことから、月に1度森林浴をすれば高い免疫機能を維持できる可能性があることもわかりました。
ストレスの指標である尿中アドレナリン濃度は森林生活において減少したものの都市生活では変化がなく、森林生活がストレスを減少させた結果が得られました。
最近よく耳にする森の香りの成分であるフィトンチットは樹木が自らを害虫から守るために発散する揮発性物質です。
それが人間の免疫にどういった影響を与えているかを調べるために、フィトンチットとしてヒノキ材と葉油、α-pineneを用いて試験管レベルでの実験を行ったところ、ヒトNK細胞内の抗がんたんぱく質が増加しNK活性を上げる結果が得られました。
結果をまとめると、森に漂うフィトンチットが呼吸を通して体内に入り血液に溶け込み、直接的に免疫細胞を活性化させたといえます。
またフィトンチットが脳を鎮静化し自律神経に作用しストレスホルモンを減らすことで、間接的にNK活性を上昇させる効果をもたらすこともわかりました。
がん予防においてはNK活性を上げて維持することが大切です。
免疫力向上にはさまざまな方法がありますが、森の中に入れば直接的、間接的に免疫力を上げてくれるので、私たちはもっと森に近づき接してゆくべきでしょう。
森を活用した森林セラピーはがん予防や健康維持に役立つ理にかなった良い方法であり、気軽に参加でき楽しめるので、多くの方に知っていただきたいと思います。
奥多摩は思っていた以上にいいところでした。
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takahashi1030 · 8 years
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慢性炎症から早く逃れてがんにならない体づくりをしよう
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私が医者になりたてのころ先輩から、患者さんを初めて見るときに、その病気が炎症なのか感染なのかもしくは腫瘍なのか、まず大きく分けて考えなさいと教えられました。たしかに病気を見分ける際には大きな間違いが減り、今でも役に立っています。
時が経ち、最近では炎症が様々な病気の原因や進行に関わっていると言われるようになりました。ピロリ菌感染と胃がん、C型肝炎ウイルス感染からの肝がんの発症など感染に起因する発がんや糖尿病、その合併症の血管病変も慢性炎症によるものとされています。
特に糖尿病に罹っているとがんの発症が20%も増えるという研究結果もあり注意が必要です。
肥満も慢性炎症に関係しており、脂肪組織中の活性化したマクロファージから炎症を引き起こすサイトカインのTNFαが出て、これが脂肪細胞に働きかけて抗炎症作用のあるアディポネクチンという善玉ホルモンの分泌を抑制し、炎症がますます進んでしまうのです。
炎症を示す血液データの中にCRPというものがありますが、肥満でCRPが上がる傾向にあるのはこのためです。さらにアディポネクチンの低下によりインスリン抵抗性が高まり糖尿病になります。
このように炎症によりさまざまな病気が引き起こされ、やがてがんに至ります。
CRPとがん患者さんの生存率をしらべた研究(J Clin Oncol 2009 May1;27-13)では、CRPが高いほど生存率が低下する結果が出ており、炎症をいかに抑えるかが鍵となります。
がんの炎症のはじまりはNF-κB, STAT3, HIF1αなどの転写因子の活性化です。
これらを活性化させる要因として感染や環境や食事による炎症の外因性経路と  がん遺伝子活性化やがん抑制遺伝子の不活性化による内因性経路があります。
この2つの経路の刺激により転写因子からプロスタグランジンPGE2やCOX2が産生され炎症細胞が活性化して、がん関連の炎症に至ります。
そして、がん関連の炎症により細胞増殖、アポトーシス抵抗性、血管新生、免疫の抑制、腫瘍細胞の遊走や浸潤、転移、ホルモンや抗がん剤への応答変化などが起こるとともに、再び転写因子を活性化することで炎症が慢性化して、がんが進行します。
また、がん細胞からはIL6という炎症性サイトカインの放出が続き、炎症が拡大していきます。体内で炎症が拡大すると食欲が低下し代謝機能が落ち、タンパク質の異化が亢進することで筋肉のタンパク質がなくなり痩せてゆきます。また腸管からの鉄の吸収が落ち貧血が進み元気がなくなり体力が衰えてゆきます。
よって、この炎症を止めるためにはNF-κBやCOX2を阻害し、さらにアラキドン酸の炎症カスケードを抑制しなければなりません。
NF-κBの阻害にはビタミンE,C,B6,フコイダン、クルクミンがあり、COX2の阻害には整形外科で良く使われている痛み止めのセレコキシブがあげられます。疫学的に痛み止めの非ステロイド系消炎鎮痛剤を服用している集団では、発がんリスクが低いことが示されており役に立つでしょう。そしてアラキドン酸の抑制にはEPA(エイコサペンタエン酸)が有用です。
さらに腸管粘膜の保護のためにプロバイオティクスや、真菌感染に対しては抗真菌剤を用いることで、炎症をあらゆる角度から抑えることが大事です。
特に、酸化ストレスは炎症の要因となりNF-κBを活性化させるので、ビタミンEやCの抗酸化アプローチも大切です。
天然物質であるクルクミンは、がんの増殖に関わるほとんどの因子に対し抑制的に働くことが分かってきており、今後とても有用な物質になるでしょう。
またn-6系の脂肪酸であるアラキドン酸代謝をn-3系のEPAやDHAが拮抗的もしくは直接的に抑制することで、炎症を抑える働きをします。
このように慢性炎症とがんの関係が徐々にわかってきているので、私たちもこれらのメカニズムを理解した上で、生活習慣を改め、食事の工夫をしてゆくべきでしょう。
私は適度な運動はもちろんのこと糖質を控えてタンパク質やヨーグルトを摂ることを日々の基本とし、ブロッコリー、ニンニク、トマト、キャベツなど多めの野菜と良質なオイルの摂取を心掛けています。この上でウコン(クルクミン)、がごめ昆布(フコイダン)、青魚(EPA,DHA)などを加えて慢性炎症の予防をしております。
また漢方でも黄連(オウレン)、黄ごん(オウゴン)、半枝蓮(ハンシレン)など炎症を抑える清熱解毒薬があり、抗がん剤の副作用軽減や抗腫瘍効果を期待して用いられます。
当院と関係のある九州の漢方薬局の相談堂では地竜田七という漢方を抗炎症に用いており、今後は食事プラス漢方で慢性炎症を確実に抑え込んで、がんにならない体づくり、がんを進行させない体づくりを目指してゆきたいと思います。
photo; Science photo Library
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takahashi1030 · 8 years
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いつまでも健康でがんにならないように緑茶を飲もう! 進む分子生物学的緑茶研究
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私は毎日欠かさず緑茶を飲んでいます。
3年前、2013年5月に「緑茶を飲んでがん予防」というブログを書いた手前、ずっと続けています。緑茶には胃がん、肺がんの予防効果があって、そのカギを握るのが4種のカテキンの中のEGCG(エピガロカテキンガレート)であるとお話ししましたが、最近ではその仕組みがさらに明らかになりエビデンスも積みあがってきました。また、がん以外の病気や健康にも影響力を持つことが分かってきたので、今回はそのあたりをご紹介したいと思います。
もともと日本人は長寿であることから、緑茶を飲むことが病気の予防や長寿に影響を及ぼしていると普通に考えられます。
国立がんセンターの井上先生の研究では、1990年から始まった14万人の日本人地域住民を対象とした多目的コホート研究(大規模疫学研究)において男女とも80パーセントの人は毎日緑茶を飲用する習慣があることがわかりました。
続いて緑茶の飲用とがん、心臓、脳、呼吸器などの主要死因死亡リスクとの関連では1日2杯以上の緑茶飲用量が増えるにつれて死亡リスクが低下する傾向が見られました。またカフェインも摂取量に応じて同様に死亡リスクの低下がありました。理由としてカテキンによる脂質、血糖の調節、改善効果やカフェインによる血管内皮の修復や気管支拡張作用が死亡につながる危険因子を除去しているためと考えられています。
がんとの関連で、まず胃がんでは女性で1日5杯以上飲む人は胃の上部3分の1と下部3分の2で分けた場合、下部での胃がんの明らかなリスクの低下があり、胆道がんでは7杯以上飲む人に有意な低下がありました。前立腺癌では前立腺を超えて外に広がっている進行性と内にとどまっている限局性を比較したところ、緑茶の飲用が多いほど進行性のリスクの低下が見られました。甲状腺がんは少し変わっており、閉経前の女性では緑茶を良く飲む人ほど甲状腺がんになりやすく、一方、閉経後では良く飲む人ほどなりにくい傾向が見られました。そのほか大腸がん、肝がん、膵がん、乳がん、膀胱がんでは関連は見られませんでした。
疫学研究からは緑茶の効果は限定的な感じに受け取れますが、私��緑茶には少なからず抗がん効果があることが重要と思います。それには分子生物的な手法で研究を進める必要があります。
九州大学の立花先生は緑茶の効果を明確にして、さらに引き出そうと日々奮闘されており、今やカテキン研究の第一人者です。そもそもカテキンは巷で良く聞くポリフェノールという物質でありフラボノイドと総称される成分の一種です。そのカテキン類の一つであるEGCGは他のカテキンと比較して強い生理活性を示すとともに茶以外の植物には見いだされていないお茶特有の物質です。
体内には細胞を支持する基底膜があり、この基底膜を構成する糖たんぱく質にラミニンがあります。ラミニンは細胞接着因子でもあり、このうち67KDaラミニンレセプター(67LR)がEGCGの活性発現に関与する標的分子であることを立花先生は同定しました。
つまり、お茶の中のEGCGが細胞膜の67LRに結合することで様々な反応が起こるということです。
結合すると①アデニル酸シクラーゼの経路を介してがん抑制遺伝子の一種であるMerlinを活性化しがん細胞増殖を抑制します。
②NO(一酸化窒素)合成酵素を活性化しcGMPを増やすことで酸性スフィンゴミエリナーゼが活性化され、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導します。
③TLR4シグナル阻害因子であるTollipを発現誘導し、がんにより引き起こされている炎症反応を抑えます。
しかし、これらの実験はEGCGがある程度高い濃度で行われているので、生理的な低濃度では効果が不十分である可能性がありました。そこで、いくつかの物質を用いて何がEGCG活性を促進するのか実験が行われました。
まずはビタミンAの誘導体であるオールトランスレチノイン酸です。
これをメラノーマ腫瘍に用いたところ67LRを増やしEGCG細胞表面結合量を増加させて、その成長を抑制する効果が見られました。
続いて、EGCG活性化によるアポトーシス誘導にはcGMPが必要ですが、腫瘍に高発現しているホスホジエステラーゼ5(PDE5)はcGMPを減らしてしまうので、PDE5を阻害する物質が必要になります。
カフェインにはこれを阻害する効果があり、緑茶にもともと含まれているので有用ですが、ED治療薬のバイアグラにも阻害作用があることが分かってきました。そこでヒト乳がん細胞をマウスに移植したモデルにEGCGとバイアグラを投与したところ16日間で細胞が死滅しました。また、多発性骨髄腫や胃がん、すい臓がん、前立腺がんでも同様の結果が得られ、バイアグラとEGCGのコンビが、かなり期待できる物質であると考えられています。
またEGCG活性の増強作用はスフィンゴシンキナーゼ阻害剤との併用においても観察されます。スフィンゴシンキナーゼは、がんの血管新生を促進するので、強い薬以外にこれを阻害する食品があれば助かります。最近、大豆由来のスフィンガジエンがスフィンゴシンリン酸と拮抗し結腸癌の発生を抑える可能性も言われてきているので、もう少し研究が進むことを願っています。
現時点でEGCGを活性化させる食品の候補としてビタミンA、カフェイン、大豆が有力と考えられています。特に、ビタミンAを含むレバーやかぼちゃの摂取だけでは追いつかないので、ビタミンAに関してはサプリメントを用いることも大切です。
 がん以外ではEGCGには抗アレルギー作用、LDL酸化抑制作用、インフルエンザ予防効果、認知機能の低下抑制があることがデータとして示されてきております。
つまり、緑茶が単なる健康飲料から薬効をもった飲料であると示される日が近づいてきているからでしょうか。
私たちの周りにはあふれるほどの健康食品がありますが、あれこれ手を出さず、じっとお茶だけを飲んでいるだけでも、かなりの病気を遠ざけることができると思います。
 わたしはこれからも緑茶を飲む習慣をやめることなく、続けて参りたいと思います。
photo :富士山写真道楽
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takahashi1030 · 8 years
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健康寿命はいい歯医者さんとの出会いにより伸びる!?
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いい出会いがあり、その関係が続くことは幸せなことであります。
また、出会えそうでなかなか出会えないのは、ちょっとしたストレスですし悩みにもなります。
私が長年求めていたのは、近所のいい歯医者さんです。
昔、治療したところの詰め物が取れたり、歯が欠けたり、何年かに一度トラブルに見舞われますが、それを最小限に抑えるためと最近話題の歯周病などの予防のために、定期的に通える歯科クリニックを探していました。
昨年やっと、以前ブログで書いた“かなで”(暮らしの保健室)の福田さんからこばやし歯科クリニックの小林院長先生をご紹介いただき、実現できました。
福田さんとの出会いがなければ小林先生とも出会えなかったわけで、一つひとつの出会いがとても大切であると改めて感じました。
初めての小林先生の治療はとても丁寧で確実で、十分な説明があり、安心した覚えがあります。他の先生や歯科衛生士さんも同様に好印象で、私はこばやし歯科クリニックにこれからも通い詰めようと思います。
このクリニックとは以前から在宅患者さんの口腔ケアをお願いする関係がありましたが、お互い顔の見えない間柄でした。しかし、このたび訪問歯科部門の斎藤先生とも知り合うことができ、これからは優しい笑顔の先生を思い浮かべながら、多くの患者さんを紹介していけることも一つの喜びとなりました。
 在宅医療において常に問題となるのが、誤嚥性肺炎です。
これは飲み込む力の衰退により食べ物が誤って気管から肺に入り込み肺炎がおこり、適切な治療をしないと死に至る危険な病態です。
斎藤先生は口腔の専門家としていち早く摂食嚥下障害を発見し、内視鏡にてその障害の程度を評価し、姿勢、一口量、食べるペースなどを指導し誤嚥予防に尽力しています。
最近では言語聴覚士(ST)による嚥下リハビリや管理栄養士による栄養指導も合わせた多職種の連携により誤嚥性肺炎を予防するようになってきました。
また、誤嚥予防に対する別のアプローチとして、なじみのある食材、薬物を用いたものがあります。
嚥下反射と食べ物の温度との関係では、体温に近いほど反射が遅れ、体温から離れた冷たいものや温かいものでは反射が早くなる特徴があり、これは末梢神経のTRPという温度受容体が感知しています。
このTRPを刺激する食材として冷感のメンソールや温感のカプサイシンがあり、これらを高齢者に用いた実験ではいずれも嚥下反射を改善する結果が得られました。
つまり高齢者には体温に近いぬるめの食事だけでなく、温度にメリハリのある食事を摂っていただくことも大事であることが伺えます。
またブラックペッパーの香りが脳を刺激して嚥下反射を改善したり、口腔内の感覚や反射に関係するサブスタンスPという物質の血液中の濃度を上昇させることも分かりました。東北大学の海老原先生はブラックペッパー精油を染み込ましたアロマパッチを開発し、誤嚥性肺炎の予防に応用しています。
そして、カプサイシントローチやミント入りゼリーを併用することで、誤嚥性肺炎をおこした患者さんが再び上手に経口摂取できるようなアプローチの研究もされています。
兵庫県の西播磨総合リハビリセンターの吉田先生はアロマパッチを誤嚥性肺炎の既往のある高齢者に用い、嚥下能力と咳嗽力(咳をする力)が改善したことを報告しています。パッチは胸元の衣服の内側に貼るだけなので簡単に扱えるため、私も今後用いたいと思います。
誤嚥性肺炎の予防に大切なことは口腔ケアです。
口の中にも腸と同じように善玉菌と悪玉菌がいて、高齢で唾液の分泌が少なくなったり、歯磨きがおろそかになると(プラーク)歯垢で悪玉菌が増殖し口腔内環境が悪化します。この状態で誤って菌が肺に入ってしまうと容易に肺炎を引き起こしますので、歯磨きで清潔を保つことが大切です。
そして高齢者だけでなく私達も常日頃から口腔ケアをすることが大切です。私は2か月に一度、こばやし歯科クリニックで歯科衛生士さんにメンテナンスをしてもらっています。
 また口腔内の健康を保つ上で大切なことは栄養です。
歯周病はプラーク中の歯周病菌の刺激により歯間リンパ系細胞から活性酸素を放出し殺菌しようとする働きにより慢性炎症が起き続ける病態です。
この時に原因となる活性酸素に対して抗酸化作用のあるビタミンEやビタミンCの補給が必要になります。
ビタミンCやEと抗酸化ネットワークを形成するCoQ10は実験的に歯肉の酸化ストレスの抑制し、プラークや歯肉からの出血や口臭を低下させ、ドライマウスにおいては唾液分泌量を増加させる働きがあることが分かりました。
アスタキサンチン(赤や黄色を呈するカロテノイド)は活性酸素の除去と過酸化脂質の生成を抑制する働きがあり、実験的にアスタキサンチン摂取後、唾液中の脂質の過酸化マーカーであるHEL(ヘキサノイルリジン)が減少することも示されました。
そして、大豆に含まれているイソフラボンは腸内細菌によりエクオールなどに分解されエストロゲン様作用を有します。乳癌に対してはエストロゲン受容体との競合阻害により抑制的に働く他、歯槽骨の吸収抑制、歯の再石灰化促進、唾液分泌障害の改善に働きます。このように歯の健康維持には抗酸化能をもつ栄養素を十分に取り込むことが大切になります。
最近では口腔内の環境の悪化が、心臓病やがんなどの大きな病気につながることも分かってきており、また高齢者の場合は肺炎を引き起���して寿命を縮めることに直結するので、私たちは軽く思いがちな歯や口腔に関して、いま一度真剣な見直しが必要であると思います。私自身、歯に気を使うことで体全体にも気を使うようになりましたし、患者さんの歯に関しても注意をするようになりました。
なにより、私はこのたびのいい出会いにより自身の健康寿命が大きく伸びた気がしています。
photo:CFAH
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takahashi1030 · 9 years
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腸内細菌のバランスを整えるための4R
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先日、私の友人からそのお父様の体の調子が半年以上も優れないため、どうしたらよいかと相談がありました。
昨年半ばから食欲がなく、時々嘔吐し病院に行くも原因が分からず点滴を受けて帰宅することを繰り返していたようです。徐々に体力が落ち、とうとう今月に状態が悪化して集中治療室に入院してしまいました。
検査の結果、胃腸に真菌がいたことが原因とわかり抗生物質を投与され一命をとりとめ、現在快方に向かっていますが、嚥下障害になり胃ろうが必要な段階に至ってしまったようです。
カンジダはカビ(真菌)の一種で私たちの体にいる常在菌です。ストレスやホルモンバランスの崩れなど何らかの原因でカンジタが腸内で増えるとヘルパーTリンパ球のTh1/Th2のバランスが崩れて免疫が低下したり、腸粘膜の機能が落ちてリーキガット症候群のように吸収に不都合が生じます。
今回のケースのようにカンジダ菌感染症は倦怠感や腸の不調など不定愁訴があるので、自律神経失調症やうつ病などと間違われやすく、診断まで時間がかかってしまうことが多いです。
診断には便検査や尿の有機酸検査などがありますが、医師側がカンジダを疑わない限り検査にたどり着くことも大変でしょう。
こういった状況に陥る前に、私たちができる予防策として腸内細菌のバランスを整えておくことが大切です。
体内には1000兆個の腸内細菌がいて、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌、ウエルシュ菌、ブドウ球菌などの悪玉菌、バクテロイデスや無毒の大腸菌などの日和見菌に分けられ、この善:悪:日和見の比が1:2:7であることがバランスの良い状態であると考えられています。
バランスが整った状態であれば善玉菌がカンジダにつけ入る隙を与えません。
よって日ごろからヨーグルトを積極的に食べることは大切なのです。
また炭水化物の取り過ぎや抗生物質の使い過ぎにも注意が必要です。
腸を整えるためにヨーグルトを積極的に摂るとことはとても大切であり、私自身も毎日欠かさず摂っています。そして、来院される方々や在宅で診ている患者さんやそのご家族にも乳酸菌の必要性を話し、摂っていただいています。
ヨーグルトが苦手な方には乳酸菌のサプリメントをおすすめしています。
ただ乳酸菌のサプリメントも数多くあって、どれを選んだら良いのか非常に迷います。
そういったときに大事なのが4Rです。
私が栄養学の基本としている分子栄養の考え方の一つに4Rという腸内環境改善のための方法があります。
4Rは身体の防衛機能の最前線である消化器系の健全性を取り戻し、保つことをコンセプトとしており、腸内において①Remove(除去)②Replace(補てん)③Reinoculate(植菌)④Regenerate(再生)の4つのRが大切であることを表しています。
①    Remove(除去)は腸内細菌のインバランスなどを引き起こす有害菌やウイルス、毒素(薬物、アレルギー物質)、環境ホルモンなど消化管の環境に悪影響を与える原因物質を除去することで主にカンジダの除去をターゲットとしています。
②    Replace(補てん)は加齢、ストレスなどで消化酵素の分泌が低下し消化不良が続くと、病原菌による未消化物の異常発酵などで消化管の負担が増大し、全身に悪影響が出るため、消化酵素を必要に応じて加えることをいいます。
③    Reinoculate(植菌)は乱れた腸内細菌叢のバランスを整えるためにプロバイオティクスを腸内に送り込みます。
④    Regenerate(再生)は常に有害物質にさらされている腸管粘膜を修復と再生するためにプロバイオティクスの餌となる食物繊維やオリゴ糖などのプレバイオティクスやグルタミン、ビタミンAなどの腸管免疫にも重要な栄養素を与えることです。
 具体的な成分として
①    除去には抗菌作用のあるオレガノオイルやセージなどのハーブや免疫グロブリンを含む乳清そして免疫調整作用のあるラクトフェリンを使用しています。
②    補てんでは糖質、タンパク質、脂質、食物繊維を分解する酵素が含まれますが、この中のプロテアーゼがカンジダの抵抗性の元となるバイオフィルムを破壊します。
③    植菌では乳酸菌(アシドフィルス)とビフィズス菌(ラクチス)を1カプセルにそれぞれ150億個ずつ含んだものを用います。
④    再生では炎症、便秘、下痢などの症状に応じたアプローチがあり、抗炎症にcox-2阻害作用のあるホップ抽出物やクルクミンを用い、便秘がメインの場合イヌリン、プランティンフルーツ末、米ぬかを用い短鎖脂肪酸の生成に役立てます。下痢には腸粘膜の再生を目的にL-グルタミンやカンゾウ、アロエベラ抽出物を用います。
 少し複雑になりましたが、一つひとつが緻密に考えられ作られています。
4Rの考え方は分子栄養学的に腸を十分に研究した結果得られたもので、とても理にかなっていると思います。
また、これらの上手な使い分けで腸内環境が整えられるようになったことは、かなりの進歩であると思います。
病気になり、根本から治そうとしたときに、まず腸の環境はどうなのかを第一に考え、その環境を改善し整えるために4Rの基本を思い起こせばきっとうまく行くでしょう。photo:Be Brain Fit
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takahashi1030 · 9 years
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がん10年生存率を上げるため免疫細胞療法の力を借りよう!
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                                                      がん治療において5年生存率が一つの目安になっていますが、このほど国立がん研究センターより10年生存率が公表されました。
1999年から2002年の間に16施設で診療した3万5千症例が対象で、がん全体の5年生存率が63.1%に対し10年生存率は58.2%でした。
まあまあじゃないかと思われる方もいるでしょうが、がんを部位別でみるとかなりの差があります。
最も10年生存率が高いものは甲状腺がん���90.9%、最も低いものはすい臓がんの4.9%です。
5年と10年の比較では胃と大腸がんは69%の横ばいで推移し、早期であれば治療により5年で完治とおおむね言えるでしょう。
一方、肺がんは39.5%から33.2%へ、肝臓がんは32.2%から15.3%へ大きく低下します。乳がんは生存率そのものは他のがんと比べ80%台と高いのですが、5年の88.7%から10年で80.4%と8.3%も大きく下落しています。
何とか5年間を乗り切れば、あとはずっと長生きできると考えている方にはちょっとショックの結果かもしれません。
やはり5年で油断することなく長期フォローのスタンスで、免疫力を高めたり、新たな治療を加えていく必要がありそうです。
特に30%台の肺がんまたはそれ以下の食道、胆のう、肝臓、膵臓がんに対しては今の標準治療だけで生存率を大きく伸ばすことは、とても厳しい気がします。
もちろん今後は標準治療も進歩して行きますが、現時点では標準治療プラスαの治療が必要であると思います。
 今年早々に私はお世話になっている健康増進クリニックの水上治先生と連絡を取り、今後のがん治療についてご意見を伺ったところ、新樹状細胞ワクチン療法と活性NK細胞療法の治療成績がとても良く、標準治療のプラスαになりうる治療と教えて頂きました。
樹状細胞ワクチン療法は免疫療法の一つで、自分の樹状細胞を試験管で増やし、自分のがんの目印を付けて、再び体に戻し、その目印をキラーT細胞に覚えこませ、実際にその目印を持ったがん細胞をキラーT細胞に攻撃させるものです。
目印には自分の体にできたがんを手術で取り出した後にすりつぶして利用するものと人工抗原があります。人工抗原は正常細胞ではなくがん細胞に特異的にある抗原でWT1抗原が良く使われます。
この抗原を樹状細胞につける際に、樹状細胞の表面にあるHLAという器にWT1抗原を乗せますが、何種類かあるHLAの型と合わないと乗せることができずワクチンとして機能しない欠点があります。
新樹上細胞ワクチン療法ではこの欠点を克服した新しいWT1を全ての患者さんに使用できるようにしたものです。そして新しいWT1はキラーT細胞だけでなくヘルパーT細胞も活性化するので攻撃力が上がります。
また培養技術の進歩により、今まで自分の血液中の樹状細胞の元となる単球の取り出しに何時間もかかり大変でしたが、これが少量の血液採取で済むようになったこともあげられます。
私たちの体の中で毎日DNAのコピーミスで6000個前後のがん細胞ができているといわれていますが、これをせっせと殺して処理しているのがNK細胞であり、我々にとってとても大切な免疫細胞です。
活性NK細胞療法は自己、非自己に敏感なNK細胞を採血後2週間かけて約1000倍に培養して活性化した後、点滴で戻す方法です。
活性化したNK細胞は、がん細胞の表面にあるMHC分子の減弱を見つけ出し、それをめがけて攻撃します。
またがん細胞のMHC分子がはっきりしないか、消失している場合はIgG抗体を用いFcγレセプターを介してがん細胞を攻撃します(ADCC活性)。
よって活性NK細胞はこれら二つの方法で確実にがん細胞に取りつきアポトーシスに導きます。
この新樹状細胞療法考えたアベ・腫瘍内科・クリニックの阿部博幸先生は活性NK細胞療法と合わせたハイブリッド療法を提唱して良好な結果を出しています。
ただしこの方法を成功させるには患者さん自身のある程度の体力が必要で、がんで栄養失調になった状態では厳しいようです。
その体力を保つためには、野菜や玄米だけの偏った食事でなく、肉、卵など動物性たんぱくも含めたバランスの良い食事が大切であると阿部先生は述べています。
これらの方法は、未だ保険がきかず経済的な負担が大きいのが欠点ですが、ある程度の効果があり、副作用もあまりないので、今後標準治療にプラスαの治療として一番の候補になり、生存率にも影響を与えていくと考えます。
直近(2004~207年)の5年生存率はがん全体で68.8%に上がっており、今後の10年生存率はもうすこし高くなると予想されます。
そしてこのハイブリッド療法が安くできるようになりの広く普及することで、肝臓、膵臓がんの生存率が底上げされれば、全体の5年、10年生存率はさらに上がるでしょう。
世の中のためになる良い方法なので、今後は当院でも取り扱えるよう努力したいと思います。
 image:labroots.com 
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