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トワイライト シンドローム
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tkhstkhstkhs-blog · 8 years ago
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喫茶店とコーヒー
 喫茶店が好きだ。
 喫茶店と言ってもスターバックスやドトールのようなチェーンのコーヒーショップではない。街なかにぽつんとあるような、その土地に根を生やしてその土地と一緒に呼吸をしているような、そんな喫茶店が好きだ。何もない休日の昼下がりや少しだけ早く予定が終わった午後なんかにふらっと入ってコーヒーを飲む。たまには買いだめしてある雑誌や文庫本を一冊二冊カバンに入れて、コーヒーを飲みながらそれらをめくったりもする。そんな瞬間が贅沢だと思っている。
 そんな喫茶店のコーヒーは苦いに限る。たまに酸っぱいコーヒーを出す店もあるが、あれは気に入らない。コーヒーは苦ければ苦いほどいい、とまではいいすぎかもしれないが、とにかく苦いコーヒーでなければ喫茶店のコーヒーではないと思うのだ。
 喫茶店の軽食も好きだ。サンドイッチやナポリタンだったら大概どこの喫茶店にもある。コーヒーばっかり飲んでいないでたまにはそういう軽食を食べるのもまた良い。その中でもやっぱりナポリタン。やっぱり喫茶店といえばナポリタンだ。ここだけは譲れない。喫茶店のナポリタンは太麺に限る。そして具材は輪切りのウィンナーとタマネギ、そしてピーマン。それ以上でもそれ以下でもない。下手に具材が多くないほうがいいのだ。おしゃれなカフェによくある、小皿にちょいと乗っているような、ボンゴレだとかジェノベーゼだとかいうパスタなんかは求めていない。もっと無骨で、少し下品さも感じるナポリタンこそが喫茶店の軽食なのだ。
 もちろんチェーンのコーヒーショップが嫌い、というわけではない。たまにはなんちゃらフラペチーノやなんとかマキアートとか飲みたくなるときもある。ただそれは一過性、例えるならマクドナルドのようなジャンクフードだ。たまに食べる分には良いが、毎日食べたいというわけではない。それ��同じだ。やっぱり最終的には喫茶店のコーヒーが飲みたくなる。いや、喫茶店でコーヒーが飲みたくなると言ったほうがいいかもしれない。
 喫茶店のコーヒーはあの空間すべてを含めて味わうものなのだろう。あの少し薄暗く湿ったような空気感、ジャズやクラシックが薄くかかる店内、無表情でコーヒーを入れるマスター、煙草を燻らすサラリーマン、パフェをつつくカップル、他愛もない話に花を咲かせる女子大生。あの空間に存在する空気、物、人、全てをひっくるめて味わうのが喫茶店のコーヒーなのだ、と思う。
 ただ正直なところコーヒーの味なんかどうでもいいのだ。どこどこ産のなんとかっていう豆だと力説されても正直味の区別が付くかは分からない。たとえインスタントを出されたってもしかしたらわからないかもしれない。もしかしたら普段飲んでるコーヒーと何も変わらないのかもしれない。あんな小さなカップ一杯に500円も出すのは馬鹿げているのかもしれない。ただ、喫茶店のコーヒーはなぜかうまいし、何度でも行きたくなる。少し暇とお金があれば足を運んでしまう。喫茶店はそんな不思議な魅力を持った空間だ。
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