Tumgik
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2019年・夏【復路】
【はじめに】
8月16日、5時起床。眠い。いよいよ性春18禁ひとり旅の再開である。どうせ起きれないからと昨夜カーチャンに叩き起こしていただけるよう依頼しておいたのが吉と出た。その上、朝飯まで用意してくださったものですから、頭が下がって地面に食い込んでいるのでございます。さて、本日東京まで帰るなどと、はたまた無計画を企てているのだが、あれま、にわかにドデカい台風が近付いているではありませんか。にわかに、というより直撃も直撃、大打撃である。果たして今日中に東京に着くのか甚だ疑問。その上、途中どこかで観光をしようとしているのだから呑気なものである。皆様、台風にはお気を付けて。
そんなこんなで朝から忙しなくドタバタしていた。実は、7時2分発のJRに乗ろうとしたら案の定運転取りやめだったのだ(はははは)。家を出る際に親父が、駅まで車で送ってってやるよ、と言うので甘えさせていただいたのだが、駅に着いた瞬間見知らぬオバチャン(復路オバチャン1人目)が、運休やで、と。結局再び車に乗り込んで、もう少し先の大きな駅(こちらは列車が動いていた)まで連れて行ってもらうことに。大変とても助かったのでした。親父さん、ありがとさんです。いや、車で送ってなかったらどうするつもりだったのよ、はははは、と突っ込まれましたが、どうするつもりもなかったんですね、コレが。スミマセンねえ。止まってたらいつまでも待つつもりだったんですよ。
さて、時刻は7時22分。汽車(電車ではなく汽車なのよね)は問題なく走り始めて、ひとまず智頭を目指します。智頭からは急行を使って上郡まで出てしまうのです。ところが、どうやら上郡から走る山陽本線が止まっているらしいのだ。アレ、旅は終わりかな?どうすんのかな?どうするつもりもございません。待つか、進むか、その時に考えるのです。早朝からだらっと、ぐだっと、性春18禁ひとり旅、復路の始まりです。
【1】
旅と銘打っているものの、汽車に乗っているだけの時間が続くので暇で仕方ないのだ。気休め程度に外を眺めて紛らわすが風景も田んぼ、畑のド田舎である。鳥でもいねえかなあ(移りゆく風景における楽しみがこの程度である)、と眺め続けていると、急に自然に溶け込み切れない大手ドラッグストアが目に入ったのである。場に相応しくないドラッグストアは一瞬で通り過ぎてしまったので、幻だったかもしれない。ドラッグで幻覚とは嫌にサイケデリックな響きである。
しかし、こんなところにこんなものが、という事象は結構見掛けるもので、田舎道中のコンビニなんかはよく気に掛かる。家族でシフトを回しているようか小さなディスカウント酒屋などは別にして、コンビニが一軒ぽつりと建っているのをちょこちょこと目にすると(田んぼの横に、である)、頭を悩ませる。コンビニといえば在庫を持たない形態なのだから、密集させてトラックで回りながら補充という運営ではなかろうか(違うかもしれん)。こんなところに建てていては、効率よく回れないのでは、はてさて。経済だの何だのには疎いので詳しい話は分からんが、田舎のぽつりとしたコンビ二は誰が何を買うのか、どう儲かっているか不思議なものである。田んぼの横っちょのコンビニでサトウのごはんをチンできるようなら皮肉なものである(皮肉ではないか)。下手すりゃ鍬や鋤、はたまた唐箕なんてものまで売っているのではないか、と妙な期待すらしてしまうのであった。海の近くのコンビニに水着やら浮き輪やら売っているのと、きっと至って同様である。
【2】
ポーッと汽笛を鳴らし、列車は智頭へと到着する。車窓から眺める風景は相も変わらず田んぼ、田んぼである。列車を降り、ぼうっと歩いていると知らず知らずの内に閑散としたホームに立っていた。あれま、このホーム違いますねえ、と調べると、反対側のホームの奥の方に(遠い!)乗るべき列車が到着しているではないか。ただでさえ台風で遅れている汽車・電車、一本乗れなければ命取りである。ぜひ、気を抜かないでいただきたい。
さて、無事に可愛らしいワンマン列車へ乗車することができた。ここから暫し1時間ほどの暇である。何をすることもない、一旦眠りに就くとする。グー。
いつの間にやら上郡に着いていた。上郡まで、一切遅延することなく無事に旅が進んでいる。出発から既に2時間、台風は日本列島に沿ってゆったり北上。追われる形で姫路に逃げることとなる。姫路まで無事に抜けてしまえば追い付かれることはないようだ。どっかで遊んで時間を使いすぎなければ。そんなこんなで、途中に再度京都に寄ろうとも考えたのだが断念した(というより、よい電車がなかった)。一日で鳥取・東京間を走ろうと思うと列車も限られているのだ。今回は旅行というより台風から無事逃れられるかの闘争なのである。ちょっとでも降りて休んでいると時間がなくなってしまうので、京都を諦める英断を下したのであった。
【3】
名古屋まで降りない、と決めて10時7分。網干に着いた。一度降りるか、姫路で降りるか。降りる選択をしている私がいるのである。おしっこが漏れそうなのである。トイレ休憩というものを一切忘れてしまっていたのである(なんと!)。ダダ漏れはヤバイ。あと10分すれば姫路に着く、そして外を見てみればあっと驚け、日本晴れではないか。もう台風来ないんじゃね?名古屋まで一切降りないのも何ですし、一回降りてもいいんじゃないの?と思った次第でございます。非常に迷っている。非常に迷っているのである。というのも、姫路で快速に乗ってしまうと、米原まで2時間半乗車し続けるのである。東京までの旅を尿意に左右されるとは思わず、苦悩している(漏れそう、という苦悩も含め)。
結局ここまで書いて、次の駅で降りることにした。つまり姫路で一休みである。というのも、実は先程列車内で人が倒れ急停車した関係で、乗り換えようと思っていた列車への乗り換えが難しくなったのだ。熱中症だろうか。女性の回復を祈り、私も自身の健康のため(膀胱炎にならないように)姫路を目指すのであった。
と、ここまで書いて何やらまた事件。またまた列車が急停車したではないか。どうやら非常ボタンが押されたようである。車掌さんたちが満員電車の中を掻き分け、助けを求めた方を探す。夏だしなあ、そりゃ体調崩すよなあ、とぼんやり待っていると周りから溜息が聞こえてくる。まあ、数分の間に2回も止められれば気持ちはわからんでもないが。別によいではないか、おしっこを我慢し続けている私がよいと言っているのだから(限界である)。兎にも角にも、乗ろうと思っていた列車は既に出てしまっている。さて、1時間。性春18禁ひとり旅、急遽姫路の地に降り立つことになったのであった。
【4】
実は、前回のひとり旅でも姫路に立ち寄っていた。トイレ休憩がてら姫路城でも見に行こうかと下車したが、ちょいと寄って行く程度には姫路城までなかなか距離があったのだった。今回も姫路城へ立ち寄るかなあ、と思いつつ、そうは言っても台風が追いかけているのである。長居はできない。15時ごろに名古屋に着くよう調整してテキトーに散歩することにした。時間、僅か30分程度。
さて、フラフラ歩いていれば何かしら見付かるだろうと散策したのだが、びっくりする。何もない。自身ド田舎に生まれ、それ以下はないと知っているから敢えて言うが、姫路駅周辺もなかなかのものである(失敬)。チェーン店はいくらか見付かるが、旅行先の昼食である。ある程度のものは食いたいが、本当に店がないのである。特に入りたい店が見付からないまんま、時間が過ぎる。何か食いたい気分。お昼時。腹が減った。仕方なく駅に戻るとパッと目に入ったのは吉野家。え〜、ここまで来て吉野家食うのか〜。しかし腹が減った。減っているのだ。姫路で食うのは、まさかの牛丼である。牛丼を頼む。紅生姜を乗せる。茶を飲む。食い終わる。さて、もうすぐ列車が来る時刻である。おしっこをして、牛丼を食うなど、この一連を姫路で行う必要があったのだろうか。大変遺憾である(にっこり)。
食ったのが牛丼だろうが、吉野家だろうが、ひとまず腹が満たされたこと自体には大変満足した。姫路から神戸線新快速に乗り、米原を目指す。この間、2時間半である。14時到着まで、はて、どう時間を潰したものか。幸い鳥取にて、書籍をいくつか買い足していた。この辺りを読み潰している内に、どうせ寝てしまうのだろう。グー。
意外と寝なかった。ずっと起きている。書を読み、アイフォンをぽちぽち触っている内に米原に着いてしまった。
【5】
この2時間何もなかったのか、というと何もなかったわけではないのだが、往路のからあげクン事件ほどの衝撃があったかどうか、と言えば至ってフツーの旅を送ってしまった(しまった?)のだった。只今米原を出て、大垣へ。大垣からいよいよ名古屋へ向かう。結局姫路で観光できず、京都で降りることができず、旅とは何なのか考え直さざるを得ないポンコツ旅行になってしまっているので名古屋で挽回を、という寸法である。しかし、名古屋にいられるのも1時間程度。あんまり時間ないので目的なく散策するのはやめにして、この前の旅で立ち寄った喫茶に再度寄ろうと思う(呑気なことを書いている最中、列車は関ヶ原の地を通っている)。
��とどうでもよいが、事は深刻。列車の中が暴力的に暑い。局所的酷暑である(言いにくい)。冷房がブチ壊れているのか、窓際だからなのか、眠たいからなのか、身体が火照っている。多めに水分を取るが、その分汗ばみ気持ちが悪い。サウナ状態の列車の中へろへろになっているのだが、同じ列車に乗る小さな子どもたちはワイワイとおしゃべりをして盛り上がっているのである。身体の構造が違うのか、年齢か、夏休みパワーなのか(夏休みパワーなら、こうして旅を満喫している私が授かってもおかしくないようなものだが)。どうあれ、私のパワーは既に枯渇している。夏休みの使者は次世代に託し、この酷暑の中、死なない程度に昼寝をしようと試みるのだった。
車内、ポカリスエットを飲んでいる人を見掛け、無性にそれを飲みたくなった。夏である。
【6】
乗り換えた(ポカリを買った)。万歳、涼しい車両である。大垣より、名古屋を目指して30分。もうそろそろ名古屋めしに辿り着くのであった(吉野家め)。それにしても、鳥取を出て早7時間。景色は相変わらず田んぼである。途中、京都やら大阪やらを経由したはずなのだが、果てしなく田んぼが広がっているのである。日本のほとんどは田んぼで完成しているのであった(テキトー)。そして到着、名古屋。駅改札を出て、地下鉄へ。矢場町へと移動しようコーヒーの旨い店を知っているのだ、はははは、向かおうか。いえ、その前にちゃんと昼めしを食おうではないか(吉野家め)。
矢場町に向かう地下鉄。まずは栄を目指すのだが、間違えて伏見で降りてしまった(しまった!)。どうしようもないので、伏見から目当ての喫茶まで歩いて行くことに。その道中、あのスガキヤがあるらしいので寄ることにした。皆様は知っているだろうか、ラーメンフォークで有名なあのスガキヤである。一度行ったことのある人なら分かるだろうが、メニューにクリームぜんざいのあるラーメン屋なのである。というのも、スガキヤはそもそも甘味処から始まっているらしいのだ。元々あんみつだの何だの甘味を出していた店がラーメンを出したら売れてしまったとかなんとか。その名残で今でもメニューにぜんざいだの、ソフトクリームだのが並んでいるらしい。さて、スガキヤでラーメンを頼んで啜る。大して旨いもんではない(失敬)。しかし、懐かしいというか何というか、マズイとも言い難い素朴な食べ物でいる。駄菓子感覚の値段故か、はてさて。結局名古屋めし、といっても菓子のような食事をしてしまったのだった。吉野家とスガキヤを食って旅が終わりとは、何とも虚しく寂しい気持ちである。さて、このぽっかり空いた心を埋める、絶品のコーヒーを知っているのだ。牛丼、ラーメンを忘れさせるそれを目指して残り数メートル、てこてこと進むのであった。
【7】
目当ての喫茶へ。ここは、BAPEやAVIREXが並ぶ通りにあるくせに、妙に洒落ている隠れ家なのである。入店、カウンターの向こうではミルクとコーヒーの層を丁寧に作り上げるオッチャンと、煙草を吹かしながら客を捌くネーチャンが並ぶ。さて、運ばれて来たのは白と黒に別れた私に似つかわしくないお洒落コーヒーである。先程までスガキヤラーメンを啜っていたなどは、ぜひ店員さんにはお伝えしないでいただきたい。
暫し休憩、そう長くは休めない。20分後には出なければ静岡までの移動に支障が出る。やっぱり1日で鳥取・東京間を渡るには無理があるなあ(旅について記録するにも、何一つ面白いことが起こらないなあ)など、反省しつつ、諦めつつ。大して休まることもなく、次の列車に乗り込むべく、店をでるのであった。
名古屋駅へ戻る道中、名古屋の女性は化粧の仕方が似ているなあ、など甚だどうでもよいことを考えていた。しかし、実際何かが同じ気がするのである。私は化粧だのメイクだの(化粧とメイクは同じか)には疎いので何が一体どうなのか全体分からないのだが、きっと何かがあるだろう、と踏んでいるのである。ぜひ、その道のお偉い方(誰だ?)に検証していただきたいものである。
【8】
名古屋から浜松、浜松から静岡に向かう。性春18禁ひとり旅は、鈍行で行く帰省の旅である。この「鈍行で行く」を最大限感じられるのが、静岡県を横断する、この瞬間なのである。鈍行で行けば分かる、静岡の長さ。一説には日本列島の4分の1を占めるなどと言われている(感覚的には割と正しい)。ここから東京までもうどこかに立ち寄ることはない。とあれば、後は本でも読みながら時間を潰すだけである。鳥取で数冊本を仕入れておいて助かった。なんとか場を繋ぐことはできそうである。
そんなこんなで静岡、熱海、品川と来た。この間ひたすら本を読んでいたら、あっという間に着いてしまったのだ。久方振りの東京である。と言っても一週間すら経っていないのだが。こんなに早く帰って来たのに、こんなに長く感じるのは、実家にいた時間どうのこうのではなく、この道中の長さであろう。しかし、この復路、書き溜めてはみたものの、往路に比べて何も起こらなかったのである。列車から降りることができなければ、こうなるのは当然であった。無念。
本当に何も起こらなかったなあ、というか、疲れ切っていたのか何かを探そうとすらしなかった。この旅は復路に何かを求めても仕方ないのかもしれん。往路に色々と起こり過ぎたことも問題である。こうして呆気なく、この度の「性春18禁」は幕を閉じる。やけにオバチャン多めだったこの旅、しかしピークはマックが壊れたことだったのではないだろうか、などと少々心配事を抱えている。そう言えば道中何を食ったかなあ、と振り返り、牛丼とラーメンで腹を満たしていたことを思い出す。これでは夏の身体に悪いなあ、と帰り道、コンビニで気休め程度の青汁を買ったのであった。グー。
【おわりに】
そして、翌日である。お家に帰るまでが、という文句はあるが、翌日まで旅を記録する意味があるだろうか(果たして、これは旅だろうか)。実は余った青春18きっぷを売りに来たのである。新宿の某金券屋で換金をすると、5200円になった。7000円程度で性春の旅を謳歌したことになる(値段相応ではあったが)。新宿に馳せ参じた私にはやらねばならぬことがある。マックを迎えに行くのだ。さて、丸の内線を乗り継いで。余程の便意に襲われぬ限り、はたまた余程タイ風焼きそばを食いたくならぬ限り(まずない)。四ツ谷は素通りするであろう。
「性春18禁ひとり旅」。往路、復路思い返して、まあ大して地獄でもなかったかなあ、と思いつつ。地獄の対義は天国ではなく、日常だよなあ、などと妙に感傷に浸りつつ。今年の夏を、ある程度は、謳歌したのであった。(完)
フチダフチコ
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2019年・夏【往路】
【はじめに】
8月9日、仕事を片付けて帰宅。さて、明朝から旅に出るぞ!と、上機嫌に洗濯を回していると何やら・なぜか・何かがおかしい。アマゾンプライムで流していた「いろはに千鳥」の音が急に消えたのだ。アレ、アイフォンで流してるはずだけどな?そろっとアイフォンに目を遣ると画面は真っ暗、全く充電されていないのである。アラ、旅直前にして壊れちまった!これは困るなあ、とトチ狂ったようにガシャガシャ充電のケーブルを抜き差し。しばらく格闘し爽やかに汗を流した直後、気付く。愕然。もしかすると。ハア。ご名答である。普段、マックにぶっ刺したハブ経由でアイフォンを充電しているのだ。その通り。なんと「ひんし」だったのはアイフォンではなくマックの方だったのだ(通りでアイフォンまで電気が通らない)。さて、ド真夜中。ポケモンセンターなら24時間営業・無償かもしれんが、アップルストアは要予約、はてさて一体おいくら万円掛かるのかしら。どうあれ、マックをマサラタウン(実家)まで連れて行くのは取り止めだ。旅行先で細かい仕事を片付けるつもりだったのになあ。しかし、自宅に置いておくとはいえ旅から戻ってもマックが壊れたまんま、というのは色々とマズイ。ライトニングケーブルと闘い続けたボクサーは、明朝アップルストアに殴り込むべく改めて拳を高く掲げるのであった。余談だが、ポケモンセンターのお仕事って、とってもブラックではないだろうか。ずっとナースのネーチャンいるよなあ。兎にも角にも、明日はホワイトな林檎マークに向かい「めざせ!ポケモンセンター」すると決めて、私は軽やかに寝落ちしたのであった。
【1】
明朝。日付で言えば8月10日。フツーに寝坊した。11時半、めちゃくちゃ素敵なお昼時である。マックどうのこうの、の件で出発を遅らせたが、そもそも朝の出発は難しかったのではないか、いやはや。さて、9時過ぎ。早速アップルストアに問い合わせる。お姉さんの声・電子音ver.が流れた後、人間のお姉さんが対応する。「あの、マックがブチ壊れてしまって」(中略)「赤坂見附のビックカメラであれば本日受付可能です」。というわけで、「まずは湘南を目指して」「熱海をカメラに収めたい」はずの青春のひとり旅は、「まずはポケモンセンターを目指して」「赤坂のビックカメラに任せたい」を経由して始まることが確定。マック赤坂当選ならぬ、マック・赤坂見附・通せんぼである。
最寄りの中野駅発、中央線・丸ノ内線を乗り継いで赤坂見附へ。ビックカメラに到着するや否や、特筆すべき話題もなく私のマックはカウンターの奥へと引き取られ消えて行った。達者でな、というかお前壊れるタイミング考えろや、という本音ダダ漏れで見送った後、急に腹痛が。こちらのダダ漏れはヤバイ。一旦四ツ谷駅まで移動し、やけにオシャレなトイレへと駆け込んだ。ハイ。ここまでの文章を、電車を乗り継ぎ、だらだらと、最終的にはトイレでウ◯コしながら書いている。この上「性春18禁」などとタイトルを決めてしまったので最早ほとんどスカトロAVである。フツーに出発してフツーに終わると思っていたけれど、どうも私はいつでも地獄を突き進むらしい。こんな調子ではございますが、「性春18禁ひとり旅」開幕です。
【2】
四ツ谷で始まるとは思っていなかった「性春18禁ひとり旅」。元々1日目で京都まで行きたい!と思っていたけれど本日の残された時間を考えると中々に難しい。難しいならいっそ四ツ谷でめしを食ってしまうか!と思い切り、街へと飛び出した(「飛び出した」と言っても駅前の横断歩道を一本、二本渡っただけだが)。パッと目に入った店に入ろう、と決めてテキトーに歩いていると「アジア大衆料理」を謳う独特なカラーリングの看板を見付けた。冷静に考えると、「アジア料理」って何やねん。店の前にはベトナムと書いてある。ドアにはパッタイの写真。最早和食すらあるんちゃうか?という謎の店構え。ええ���ん、入ったるわ、と猛スピードで飛び込んだ。横断歩道を渡るのとはワケが違う。店に入ると気のイイ感じのオバチャンが「イラッシャーイ」とお出迎え。「アジア料理屋のオバチャン」って一体ナニジンやねん、というツッコミは色々とアレなので避けておき、颯爽と席へ着く。一人も客おらんがな。オバチャン大丈夫かいな。メニューをパッと開いて目に入ったのはパッタイ(タイ風やきそば)だった。どうやらイチオシらしくデカデカと載っているのだ(キャッチコピー付き)。なるほどタイ人の方なのね、とアジアンオバチャンを呼ぼうとしたその時。オバチャンが客入っとんのに華麗にYouTubeをみているではないか。「オイ注文やで」と声を掛け「コレくださいな」とオーダーするその間、私はタイ風焼きそばのことなど一寸と考えていない。オバチャンが何を視聴しているのかが気に掛かって仕方ないのだ。目を細めて画面をみる。みえないので姿勢を変える。おっ、みえた。アレ?並んでんの漢字だな。ん?コレ中国版「朝まで生テレビ!」的なヤツじゃね?うむ、どうやらオバちゃんは中国の方らしい。しかし中華料理はメニューに並んでおらず、「エスニック」と括られる系の異国の料理の写真ばかりが載っている。一体全体彼女はどういうルーツの方なのよ、と小さな飲食店で「坩堝」的な何かすら感じてしまっている。
【3】
色々な生き方があるもんだね、と妙に感心して間もなく気付く。アレ、この店厨房ないやんけ!ぐるぐる店の中を見回しても、ない。暫くぎょろぎょろと周りを眺めているとアジアンオバチャンが、私が口を開くまでもなく質問事項を読み取り、「リョウリハ、ウエヨ」と先回りして教えてくれた。二階で料理しとんのかいな。わざわざ持って降りるんかいな?と思ったその時。ウィーン。リフトである。こういうタイプの店でリフト採用しとんのかいな。高架下と駅二階両方に入り口あるタイプのマクドナルドかい。
色々とツッコミどころのある店だったが、こういう類のぐちゃぐちゃ感はなぜか憎めない。遂にオバチャンはYouTubeをみながらめしを食い始めた。ぜんぶ許しましょう。もう暫く滞在したい気持ちもあったが、せめて今日中に熱海までは出てしまいたいのである。金を支払い出発する直前、オバチャンが話し掛けてきた。「ナツハ、オヤスミカイ」「あい、休みでこれから旅しますねん」。そう伝えると急にオバチャンが奥からゴソゴソと箱ティッシュを取り出した。旅にティッシュ?旅人を見送る中国特有の伝統か?ワケもわからずティッシュを引き出す私。困惑する私に、オバチャンが「ハナミズ」と。私が鼻水垂らしてるだけかいな。気付かんかったわ。どんなタイミングでティッシュ差し出しとんねん。ありがとう。
やることなすこと一つとして納得できない店だったが、妙に愛らしく思えてしまう。今回の旅はこんな素朴な出会いから始まった。いや、まだ始まってないのか。ちなみにマクドナルド四ツ谷店のパッタイは大変すこぶるビミョーであった。
【4】
「青春18きっぷ」には、「四ツ谷」と判子が押されている。さて、まずは新宿へ。湘南新宿ラインと東海道本線を乗り継ぎ熱海を目指すのだ。そう言えばフツーに「性春18禁ひとり旅」なんて言っているが、これって一体なんぞやと。ハイ、私の故郷は東京より西に下ったその先の、鳥取という地にありまして。そちらを終点と定めて夏・冬に鈍行ひとり旅(帰省)を決行しているのでございます。この度も御多分に洩れず東京は四ツ谷を始点(図らずも)として旅が始まろうとしているのでした。「性春18禁」に深い意味・意図はございませんので悪しからず。
さて、熱海に着いた後間に合えば名古屋まで走りたいところだが、はてさてどうするか迷いどころ。ビミョーなパッタイを濃い味・名古屋めしで搔き消したいのだが、そもそも電車の本数があるかないか次第なのである。一旦流れに身を任せ。
ひとり旅漸くスタート!と言ってもぶっちゃけ電車の中は暇。今回はマックがブチ壊れてしまったので、車内で映画みる・ゲームするなんてことも難しい。もうホント、やることがない。画面真っ暗のせいで、お先真っ暗である。
代わりにいくらか本棚から摘んだエッセイを持ち込んだ。この辺りを読み込んで時間を潰したが、暫くして飽きた。コーヒーを飲んだ。お茶を買い忘れた。もうそろそろ熱海に着く。名古屋まで行きたいな、などとぼやいていたが辿り着くにはやっぱり時間が足りないらしい。というワケで、本日の終着点を浜松と定めた。その前に、どうあれ熱海で2時間ほど休むことにしたのである。
【5】
間もなくして熱海に到着した。大して歩いてもいないのに、身体が痛い。さてこの地では何が起こるか。地獄へGOしてしまう性分の私に何が待ち受けているか。地獄巡りとは、本来そんな意味ではないのだが。温泉だよなあ、温泉。温泉?いや、やっぱり熱海に来たからには海なのか?海に臨まねば。テキトーに歩いている内に、目的地は海へと変わっていた。しかし土地勘のない私はひたすらに歩き回る。テキトーに辿り着けない立地ではないはずだ。潮風の方へ(グーグルマップを見ろよ)。
暫くして海に到着した。しかし、防音壁なのか何なのか、真っ白の壁に覆われているではないか。壁の向こうに海があるのに見えない状況。思い付いたのは超古典的「高台」作戦である。シンプルに高い所から見下ろせばいいのでは?と、目に入った「何に繋がるのかワカラナイ階段」を登った(今思えばアレ、廃病院とかだったんちゃうか)。まあ良き夜景の広がること。スゲー!と言いたいものだが、流石に熱海じゃ街の光量が足りず、海は真っ暗、街明かりもまあまあ許せる程度といった感じである。この弱さ・儚さがイイんだよな、と私はにやけているが、私の周りにいたお兄さんお姉さん方はこの夜景をどう思っているのかしら。隣りのニーチャン・ネーチャンは海を見ながらラーメンの話をしていた。
【6】
海を見たら満足した。やけに満足してしまった。折角来たのに熱海は終わりかなあ。しかし、海だけで終わらせるのはどうにも勿体ない。時間もあるのでフラフラと散策した後、軽食を摂ることにした。道中、坂を登ったり階段を走ったり。熱海特有・街の高低差に体力を奪われながら、昭和の香り漂うスナック喫茶「くろんぼ」へと辿り着いたのである。
渋さと可愛らしさを兼ね備えた看板を眺めつつ階段を降りていくと、「よくある喫茶」と「よくあるスナック」が融合した憩いの空間が広がっていた(当たりだ!)。出迎えてくれたのはアジアンオバチャンとは異なるタイプのお淑やか・オバチャンだった。このオバチャンも看板・内装に負けず劣らず渋&キュートを極めている。席に着いて思わず「フーッ」と息を吐いた私に、「旅です?」と投げ掛ける渋キュー。「ええ、東京から来てんス」と返すとその後は特に何を語ることもなく、一人微笑んでいた。
ザ・日本食、花柄の皿に盛られたカレーライスと緩く冷えたアイスコーヒーをいただく。渋キューさんに向けて道中について話そうと試みたが、ぶっちゃけ道中であったことなど何もなかった(マックが壊れた、パッタイがビミョーだったなどは決して旅の話ではない)。ふと我に返る。そっか、まだ旅してないんだなコレ。そう思い始めると少し笑ける。目的も持たず、観光地を巡らず、ただ歩く。一般的に言えばコレは旅ではないのかもしれん、と思うと笑けてきた。どうせフツーに旅などできないのだ、もうこの砕けた旅を続けるのも一つアリではないか。そんなことをぼうっと考えている内に、緩く冷えたコーヒーは放ったらかしすぎて半分水になっていた。
また来ますねえ、と目処の立たない口約束を交わして喫茶「くろんぼ」を後にする。てくてくと熱海駅に戻る道中にホンモノのマクドナルドを発見した(パッタイはない)。立ち寄らねば。決してハンバーガーを食べたいわけではない。充電がないのだ。先程コーヒーを飲んだところなので、またコーヒーを頼むのと胃が破れる。紙パックのミルクをオーダーし、暫し場を繋いだ。結局充電は10%ほどしか溜まらず、胃の中の水分だけが増えたのだった。
【7】
さて。電車は走る。お次は沼津へ向かうのだ。時刻は22時。現在静岡。近くで花火大会があったのだろうか、電車の中は浴衣を纏った中高生やマイルドヤンキーたち(見た目の話)で溢れている。マイルドヤンキーといえば、いつの時代もその類の人々は見た目で何となしに分かってしまうものだが、随分私のガキの頃とはルールなのか、流行りなのか色々と変わっているらしい。昔はキティちゃんのサンダルにプーマのジャージを着た輩風のニーチャン・ネーチャンがなんかイケてる扱いをされていた。当然私は、といえば冴えないフツーの子だったために(エッヘン)。そんな文化に染まることなくコンバースのスニーカーを履いていたのだった。
充電の溜まらなかったアイフォンを触っていては後々困るからと、手持ちの本を読み進める。しかし一度読んだ本。流石に早々飽きが来る。満員電車内で座ることもできず、いつの間にか旅が面倒臭くなっている自分がいる。誰が決めたんだ、ああ。お前がやる言うたからやんけ、と自身を奮い立たせるべく、ウコンの力スーパーを激しく一気飲みした。効果は未知数(何もない)。旅に対するだらけた気持ちが芽生えた頃、取り敢えず身体だけでも沼津へと到着した。さて、ここから静岡・浜松と移動して今日の旅はお終いなのだ。後一踏ん張り、飽きずに頑張って欲しいものである。ぜひ良ければ心も、追い付いていただきたい。
【8】
浜松に到着、日付変わって8月11日0時26分。青春18きっぷに2つ目のスタンプが押された。この時期はやっぱり18きっぷで旅する人々が多いらしい。改札にスイカを翳して(あるいはイコカなのか)、すっと抜けて行く人々の横、駅員さんによる目視での確認を待つ行列が伸びていた(青春18きっぷはJR一日中乗り放題の権利を、なんと5日分も手に入れられるという魔法の切符なのである。使い方は簡単。1枚の切符に例えば「8月10日」のスタンプが押されれば、後はそのスタンプを駅員さんに見せることでどこへでも行けてしまうのである)。もちろん私も青春18きっぷを確認していただくべく、その行列に追随する。おや、私の前のオッチャンが何やら揉めているのだ。どうやら、8月10日中に浜松に到着したかったのに乗り換え等々失敗してしまったらしい。繰り返すが、日付変わって8月11日0時26分。たったの26分過ぎたこと���、青春18きっぷには次の日のスタンプを押されてしまうのだ(私の場合は明日もどうせJR乗り回すからスタンプ押されてもオッケーなのだ。どうもこのオッチャンは翌日JRを乗り回す予定がなかったらしい。すると1日分の切符が無駄になってしまうんだね)。どうもこの仕組みに納得できず、ギャーギャーごねていたのだ。遂には話を捻じ曲げて、「電車が遅延したんだ!」と言い出す始末。スタンプ押さずに通せ!と。おお、駅員さんも大変やね、という気持ち半分。早くしてくれ、という気持ち半分以上(足して100%越えているのは悪しからず)。しかし強面の駅員さんは、青春18切符にそんなルールはねえんだ、とハードボイルド対応で眉間に銃を突き立てていた(嘘ですよ)。結局たったの26分にスタンプ1個を捺印され、オッチャンは儚くも浜松の地に散っていった。次に並んでいた私もスタンプを1個押されてしまう。ま、先述の通り、私は明日も旅をするので全く関係ないのだけれども。
さて、浜松に着いたはいいが、ここから何をするということもあるまい。お宿を探すのだ。残り数%しかないアイフォンでグーグルマップ。近くのカラオケを探し出す。北口に「まねきねこ」があったので今夜はここで歌い叫びながら一泊することにした。烏龍茶を注いで、14号室へ。よし、折角歌える宿に来たのだ。何か歌ってから寝よう、と何も考えなくても歌える、くるりやら何やら数曲を予約した。「ロックンロール」を歌っていると、途中金髪のニーチャンが間違えて入って来た(天国のドアを叩いている途中に地獄のドアを開くなよ)。歌い疲れて靴を脱ぐ、靴下を脱ぐ。ソファの上に横になる。グー。就寝前、タオルで身体を拭き、Tシャツを着替えたが、本当は流石に一風呂浴びたかった。明日は米原経由で京都に向かう。京都に着いたらサウナに行こう。梅湯に行こう。
【9】
アラームが鳴る。5時40分。さて、3時間ほど寝れたので旅を再開する。浜松駅から米原までは直通で2時間半。寝ようと思ったがどうも寝付けず、じゃあ本でも読むか、と読み始めて間もなく眠気が襲った。ふと目が覚めた時には既に米原。車内の人々が乗り換え時の席の奪い合いのためか、ほとんど競走馬然としている。ここが勝負だからな、とハイテンションに語るジーチャンはいざドアが開くと若者たちにガンガン抜��れていった。京都駅まで1時間。米原まで散々寝た私は、まあ座れんでもええか、くらいに考えていたのでこの熱気に共感できなかったが、案の定座れなかったジーチャンは、悔しそうに、クソ、クソ、などと申していたのが逆に笑けてしまった(言葉、ママではない)。とはいえ、ジーチャンなのですから誰か譲ってあげてもいい気がするが。
座れなかった、もとい座らなかった私は、本を読んだりアイフォンを突っついたりして時間を潰す。すると、急にオッサンがマスターベーションに興じている動画がエアドロップで送り付けられてきた。ははん、最近巷で噂のエアドロップ痴漢ってヤツだな、と若干興奮を覚えながらも充電食いそうだったので拒否しておいた。スマンな、オッサンのチ◯コ。躍動感ある下腹部の様子はサムネイルのみ拝見させていただいた。
そんなこんなで松沢呉一を読み耽り1時間を費やす。
【10】
いよいよ古都・京都府へと馳せ参じたのだった。駅構内を進んでいると、ぽてっと落ちている免許証を発見。改札出るついでに渡しておいた。これは割とどうでもよい話。
まだまだ発育している途中、伸び続けていると噂の京都タワー(嘘です)。デカブツを横目に東へと、北へと進み目指すは「サウナの梅湯」である。「性春18禁ひとり旅」の際、毎回立ち寄る素朴な銭湯。その名の通り、レトロな浴槽並ぶ向こうにサウナが併設されているのだ。カラオケで一夜を過ごした私は、汗ばんだ身体を癒すべく、この古びた湯屋の暖簾をくぐるのであった。
至福の瞬間である。汗を流して、湯に浸かる。壁面にはスタッフが手作りで仕上げた新聞が並んでいた。他に眺める物もないので、手書きの文字をじーっと追う。「京都に住んでいたわけではない、大学に入ってはじめてこの土地に来たのだ」という女子学生の手記。暫く読んで、「最近くるりの“京都の大学生”を聴く」、と続く。わかっているねえ。京都の大学生、心に来はったわ。
サウナと水風呂を繰り返し、腕時計(防水)に目を遣る。そろそろか。実はこの無計画の旅にも多少の計画が成されておりまして。なんと、同期のイラストレーター・もちがわが、丁度京都にて個展を開いているのであった。折角なら酌み交わそうと、電車乗り換え・梅湯の隙間に時間を作り、フラフラ新京極へと向かう。
【11】
五条から四条。地下鉄で走り新京極に降り立つ。「この店で昼呑みをしたい」と事前にもちがわから提案されていた酒屋(定食屋?)があった。「京極スタンド」である。12時開店に合わせて行ったのだが既に行列が続いている。早めに向かって正解だった。ちなみにスタンドへ向かう途中に、有名な判子屋さんで「ターバン男」という名の判子を買った。これもそこそこどうでもよい話。
中は素朴。「イイ意味で」小汚い単なる定食屋である。昼呑み目的で来ていることは店員・顧客ともに同意の上なのか、席に着くや否や酒のオーダーについて声を掛けられる。大瓶とグラス2つ、暫くしてポテサラ・ハモ天・冷やしトマト・うにくらげ・ホルモン焼き・ハムカツという奇跡の役満オーダーを叩き出した。いつも東京で呑んだくれている二人が敢えて京都の地でアルコールを摂取する。
「昔から京都にちらほら来てたんよねえ」「そうそう」同期・もちがわのこれまで、などというと大袈裟か、どうか。そんな類の話を聞いた。いつも会っている同期のはずが、場所と食事を変えればまた違う。そして、どう話しても、どう黙っても塩山椒の乗るハモ天は旨い(旨いなあ、と思いつつ最後の一切れをもちがわに譲った私はとてもエライのである)。ホルモン焼きはこれまでか!という量のガーリックにまみれていた。うにくらげも、クセなく絶品。
【12】
ごちそうさんでした、と出口へ。そろばんでのお会計。丁度よい程度に酔いが回った。地下鉄が来ちまうから一旦四条駅近くまで移動しよう、と炎天下のアーケードを闊歩する。東京のカラっとした熱気とは異なる、じんわりと体力を奪う熱、夏。会話も、あっちいなあ、あっちいなあ、ばかり。途中、言うても次の列車まで時間あるよなあ、ということでパッと目に入った喫茶に入った。夏バテ予防に、普段頼まないトマトジュースを注文し、飲み干す。程良い酸味が頭をしゃっきりさせる。書き忘れていたが、京極スタンドに入店する直前に八つ橋を買った。東京からの帰省なのだから、実家で待つ家族たちは東京土産を待っているだろう。依然無視して土産は京都の生八つ橋である。正直有り難みはない(地元鳥取は言うても関西が近いので、八つ橋くらい簡単に入手できてしまうのである)。でも旨いよなあ、ニッキの八つ橋。色もイイよなあ。
さて、「めざせ!ポケモンセンター」から始まったこの旅も終盤に差し掛かっている。マサラタウン(実家)に戻るため、改札前、もちがわに見送られつつ私はエンジュシティ(京都)を旅立つのであった(というと、そもそもマサラタウンのモデルは静岡県だったはずだ。マサラタウンに向かう、というのは、はてさて「カラオケ「まねきねこ」まで戻るという意味に捉えられるのではないか。いえ、それはご勘弁願いたい)。
京都から姫路、姫路から上郡。上郡からは智頭急行に乗り換える。JRではないため、上郡から鳥取までは青春18きっぷが使えない。とはいえ、1200円のフリー切符で移動できてしまうのだから、お安いもんである。今回タイミングが合わなかったのか、上郡から鳥取まで直通で移動できる列車に乗れなかった。一旦「大原行き」に乗り込んで降車。大原から鳥取まで向かう列車を待つ。その間、何となしに待合室にあったご当地鉄道ピンズガチャガチャを回す。「スーパーはくと」が当たった。ちょっとカワイイ。
【13】
最後の列車に乗り込んだ。流石にもう何もない。後はこの列車に乗っていれば故郷、鳥取に辿り着くのだ。寝るか。ちょっと本読むか。旅の終わりをどう過ごすか考えていた、その最中。ボックス席に一人で座っている私に、一人のオバチャンが近付いてきた。私の向かいの席にドーン!と何かを投げ付ける。からあげクンである。「これ、ローソンに売っててん」。うん、からあげクンはローソンに売ってるだろね。「食べ物に悪魔ってネーミングしてんねん!(ガチギレ)」。おう、めっちゃキレてんな。その後暫く黙っていたが、車内の全員に向けて演説を始めたのだ。「コンビニは変なものを売っている!日本を取り戻せ!」といった趣旨のお話である。添加物がどうのこうの!この話をSNSで拡散しろ!だの色々とまくし立てている(正直笑い話に昇華してよいのか甚だ絶妙なラインである)。散々お言葉を述べられたオバチャンは結局、再び私の元へ来て、からあげクンを回収した(くれないのかよ)。その後、なぜか裸足で大量のおかきを食べ漁っていたのである(おかきはいいんだね)。しかし、他にも乗客がいた中でなぜ私が「からあげクン事件」のターゲットになってしまったのか。そして、なぜコンビニ嫌い・悪魔ネーミング嫌いのオバチャンは、このからあげクンを購入し売り上げに貢献してしまったのか。平和に終わると思われた私の旅は幾多の謎を残したまんま、やっぱり地獄に終わってしまうのだった。食べ物に対する意見は様々だろうが、公共の場を荒らすのはなるたけご勘弁いただきたい。ここまで書いて、今度はオバチャンから「スパイシーひまわりの種」が飛んで来た。はてさて。他の人を当たってくれ。
【おわりに】
途中、列車に乗っているだけの時間が続き張り合いのない文章になってしまうなあと思っていたところに、最高に悪魔風でスパイシーな話題が飛び込んだのだった。事故である。それはさておき、知らない間に故郷へ着いてしまった。
さて、「おわりに」という形で〆にしようとしているが、どうせ実家に滞在している間もたくさんの地獄に出会うのであろう。ちょこちょことメモして残しておくとする。さて、長々と書きましたが一旦この辺で終わります。
一体何のために書いたのか。実はこの性春18禁ひとり旅、実に3回目なのである。毎度それぞれドラマが生まれるので文章で記録したら面白そうだなと。本当にそれだけの気持ちで始めたものだったのだが、多少は笑けるエピソードが生まれたのではなかろうか(やけにオバチャン多めだったのはなぜだろうか)。ぜひぜひ、復路もご期待いただきたいのである。こんな形で「往路」編、終わります。再び地獄で会いましょう。
フチダフチコ
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