#「盆踊り」 先日、 「盆踊りに行きませんか?」 というお誘いをいただきました。 この夏、 まだこれから盆踊りするところが あるらしいのです。 考えてみたら、 盆踊りってやった
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海と山のあいだの夏
ずっと練習していたステージがようやく終わって、疲れ切っている間に晩夏。今年のお盆は顧客も休みだったので休みを取って、時間が山ほどあるぞと思っていたが、中華屋さんでエビチリを食べてからフラを踊ったら顔中に蕁麻疹が出たりして、翌日は寝て過ごしたためなんか思いのほか休みが足りない。いや休んでいるんだけど。川とか湖とか行きたかった。エビで蕁麻疹が出���のは中学の部活以来で、調べてみたら甲殻類と運動が合わさることで出現する食物依存性運動誘発アナフィラキシーというものがあるらしい。アレルギー検査でひっかかったことはないためアレルギーではないはず。ただ、もともとエビカニはあまりすきではないので生き物の体は自分に合うものがなんとなくわかるのかな、と思う。ちなみに牛肉にはちょっぴりアレルギーがあり肉の中で一番苦手。
ステージは、ほんと~うに疲れて、またやりたい!と無邪気には言えない。成長した気はしている。踊りとの向き合い方も、人との関わり方も。なんかレッスン中に泣いたりしてしまって思い出すと「なぜ我慢できなかったのか」と悔やみますが、あのときそうなってしまったことは仕方ないですね。甘えが出たんだと思う。家でもびーびー泣いてぐずぐず言ったりしたけれど、ひとまず乗り越えられてよかった。オットは一日目の公演はすこし緊張していたものの、ドキュメンタリーのインタビューも受けにいったり、カメラ目線も決めたりして、笑っちゃうくらい満喫していた。
ステージの一週間後には、母と父が家に遊びに来てくれた。生まれ育った町がここだったらどれほど良いかとしみじみ思う。まいにち両親に会いたいし、ちいさいころからの友人が近くにいたら、楽しいんだろうな、と。それでもこれを選んだのは自分なんだけど。暑かったのと疲れが取れていなかったので、あまり起きていられなかったので次はもっと出かけたりしたい。母は一緒に行った丘にあるレストランを気に入っていた。今度来た時も行きたいらしい。父は家を気に入っていて、あまり出かけもせず、オットは私と父はやはり似ているのだと言っていた。
この数日でひさしぶりに自分のことを考えたりして、これから先やりたいことがまたできた!小さく始めたい。それにもうすこし家を整えたい。庭と、収納と。昨日はいっしょうけんめい部屋を掃除していたのに、掃除機を落として階段がへこんでかなしいぜ。ねこたちがつけたひっかき傷は愛おしいが掃除機は違う。これが暮らすということだ、とオットに慰められた。オットはそれよりもっと前に、つけ麺の汁を土壁にぶちまけているわけですが。丁寧に暮らそうね。
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2018 0730 - 0805
え?いま? はい、このタイミングで? 恋をしたらいいの?
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【0730】 クレジットカード変更の関係でネット屋に電話をしたり、百均にいったりする必要があるな、と思いながら出社したら、社内で害虫が見つかって最悪な気持ちに。 名前を言うのも嫌なのでもう本当に最悪な気持ちだった。
今日の夏休み子ども科学電話相談はダイナソー小林凱旋ということで、大変良い内容でしたな。
帰ってきてKIRINJIニコ生を見たところ、かなり良かったので良いです。 あと、あいちゃんのインスタにあがっていた先日のビアホールでのおれがめちゃくちゃに楽しそうで、こんなに楽しそうな人いる?と思った。
【0731】 今日の夏休み子ども科学電話相談は間違いなく神回。 恐竜桃太郎がめちゃくちゃに良すぎた。
仕事中にちょっと呼ばれて話をしたところ、給料が増えることになって非常に喜ばしいこと。
あとはもちもちラジオで多様性が評価されるなど。
【0801】 ついに八月が始まってしまった。 普通に仕事して普通に帰ってきたら、普通に家に害虫がいて発狂してしまい、最悪な気持ちが大変なことになる。
数時間かけて退治し、泣きながら眠ることにした。
【0802】 最悪な気持ちのまま出勤し、調子の出ないまま仕事をしたら、近くでお酒を振る舞われたのでしこたま飲む。 明日も仕事だけれど獺祭は美味かったし、出てくるものがすべからく美味くて感動する。 中でももつ煮がめちゃくちゃに美味かった。
祭りだったのだけれど、大変なグルーヴのある祭りで、相当数の人が盆踊りを踊っていたのはめちゃくちゃ見ごたえがあったし、完全にバイブスが至っていた。
少し心をもちなおして帰宅。
【0803】 二日酔いを押して仕事をする。 今日はよその施設でイベントなのだけれど、本番直前にマイク変えたりありえないことがおこりつつもなんとか終了。
明日は結構忙しいのでお買い物をして帰ろうとしたところ、ごーいちに誘われたので新橋に舞い戻る。
最終的に6人ぐらいになり、なかなか楽しくお酒を飲んだので良い一日だったと思う。
【0804】 かなりの暴飲ぶりを見せつつまゆみ宅へ。 一人4000円以上の飯や酒を持ち寄って飲む、という富豪飲みを開催したので、お漬物を4000円分持って行ったら好評だった。
なんと同日にパソコン音楽クラブのリリースパーティーが入ってしまったので、まゆみ宅を中座して渋谷へ。
circus東京は初だったが、どのアクトも素晴らしく良くて超楽しんでしまった。 in the blue shirtを生で見れたのが本当にうれしくて、しかもミックスがサイコーだったので死ぬかと思いました。
会場入ったらすぐオカダさんとアリムラさんが楽しそうに話してて「うわっ本物だ!」と思って超嬉しかったし、終わった後ロビーにOmodakaの寺田さんがいてぶっ飛ぶかと思った。
その後まゆみ宅に戻る。祭から祭への梯子だった。
【0805】 戻ってきてお風呂借りてサイコーにダラ付きながらもまだ遊んでいた。
音楽の話をしたり、映画を観たりしながら結局日付がかわるぐらいまでいてしまった。 ごーいちの紹介してくれた「オールドボーイ」という映画がかなり良かった。
7月から8月にかけて、まゆみ宅にいすぎだと思う。 いつもありがとう。
話をしていたら、なりちゃんから「お前、容姿はともかく弁は立つんだから、マッチングアプリとかでサクッと女つくればいいのに(意訳)」というような発言があり、ふむ、と考えてみたのだが、おれは多人数で話していると面白いけれど、一対一に弱いので対人戦を強化していかなければならない、という結論にいたる。
彼女いたらいいと思うけれど、別に急務でもないんだよなという感じです。 新型iPhoneと一緒。
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最近は家でゆっくりすることも多く、何を見ようかと悩むことも多いので、また内村さまぁ~ずを見ている。
一通り見終わったというのと、超大自然クイズ2018が始まったというのもあって、大自然クイズだけを古いやつから見ているのだけれど面白い。
思えばクイズ番組というのはテレビ業界でずーっと人気があるし、クイズゲームやクイズアプリも多数存在するし、クイズ本というのも書店にずっとある。
クイズというのはなぜあんなに面白いのだろうか。
メディア的側面から見ると「自分も参加しているような疑似インタラクティブの感覚があるから」という話になるのだろうけれど、ひどく穿った見方をすればクイズというのは「知識自慢」と何ら変わりがない。
で、人や方法にもよるけれど知識自慢を聞かされるのが好きだ、という人はあまり見かけない。
しかしクイズはみんなが好きだ。角も立たないし、誰かが気分を害することも基本的には無い。
クイズというのはとても不思議だ、そしておれは今日もまた大自然クイズを見るだろう、というのがもっと不思議だ。
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【S/D】アナ雪パロまとめ
アナ雪2の制作ドキュメンタリー面白かった。みんなで一つのものを作るって素敵だなって素直に感動しちゃった。一人でコツコツ作り上げるのも素敵だけどさ、それとはまた違うよね。
アナ雪は大好き。2でアナが超進化を遂げたのでもっと好きになった。また兄弟パロ書きたいな。
3話あるけど全部で12000字くらいなのでまとめました。
<エルサのサプライズパロ>
弟の誕生日を祝うため、城や城下にまで大がかりなサプライズを仕込んだディーンは、過労で熱を出してしまった。キャスたちの協力もあって無事にサプライズは成功したものの、そのあとで何十年ぶりくらいに寝込むことになってしまった。 (これくらいで熱を出すな��て、おれも年をとったもんだな。そりゃ、ここのとこ狩りもあって、ろくに寝てなかったけど……。昔はそんなこと、ざらだったのに。こんなていたらくじゃ、草葉の陰から親父が泣くな) 「ディーン」 スープ皿を銀の盆に乗せて、弟のサムが寝室にやってきた。「寝てた? ちょっとでも食べれそう?」 「食べるよ。腹ぺこだ」 まだ熱のせいで頭はもうろうとしていて、空腹を感じるところまで回復してないことは自覚していたが、弟が持ってきた食料を拒否するなんて選択肢は、ディーンの中にないのだ。 サムは盆をおいて、ディーンが体を起こすのを手伝ってやった。額に乗せていた手ぬぐいを水盆に戻し、飾り枕を背中に当ててやって、自分の上着を脱いで兄の肩にかけてやる。 兄がスープをすするのを数分見つめてから、サムは切り出した。 「ディーン、今日はありがとう」 「うん」 「兄貴に祝ってもらう最初の誕生日に、こうやって世話が出来て、本当にうれしいよ(※何かあって兄弟は引き離されて大人になり、愛の力で再びくっつきました)」 「おまえそれ、いやみかよ。悪かったな面倒かけて」 「ちがうよ」 サムは少しびっくりしたように目を広げて、それから優しく微笑んだ。「本当にうれしいんだ。まあ、サプライズのほうは、あんたの頭を疑ったけど。ワーウルフ狩りで討伐隊の指揮もしてたってのに、よくあんなことやる時間あったな? 馬鹿だよ、ほんと。ルーガルーに噛まれたって、雪山で遭難したときだって、けろっとしてるあんたが、熱を出すなんて……」 「うーん」 ディーンは唸った。弟の誕生日を完璧に祝ってやりたかったのに、自分の体調のせいでぐだぐだになったあげく、こうやって真っ向から当の弟に苦言をされると堪えるのである。 「でも、そのおかげかな。こうやって二人きりでいられる」 「看病なんてお前がしなくていいんだぞ」 気難し気に眉を寄せてそっぽを向きたがるディーンの肩に手をおき、ずれてしまった上着をかけ直してやって、サムはまた優しく微笑んだ。「ずっと昔、僕らがまだ一緒にいたとき、あんたは熱を出した僕に一晩中つきそって、手を握って励ましてくれた」 そんなことを言いながらサムが手を握ってきたので、しかもディーンの利き手を両手で握ってきたので、ディーンは急に落ち着かなくなったが、すぐにその思い出の中に入り込んだ。「ああ……おまえはよく熱を出す子だった。おかげで冬は湯たんぽいらずだったな」 「一緒に眠ると怒られた。兄貴に病気をうつしてもいいのかって、親父に叱られたよ」 「おれは一度もおまえから病気をもらったことなんて」 「ああ、あんた病気知らずだった。王太子の鏡だよな、その点は」 「その点はって」 「僕はその点、邪悪な���王子だったんだ。あんたに熱がうつればいいって思ってた。そうしたら、明日になっても、一緒のベッドに入っていられる。今度は僕があんたの手を握ってやって、大丈夫だよ、ディーン、明日になれば、外で遊べるようになるさって、励ましてやるんだって思ってたんだ」 「……そりゃ――健気だ」 「本当?」 「うん……」 「こうしてまた一緒にいられて、すごく幸せなんだ」 「サミー」 (キスしていい?) サムは兄の唇を見つめながら、心のうちで問いかけた。息を押し殺しながら近づいて、上気した頬に自分の唇の端をくっつける。まだふたりが幼いころ、親愛を込めてよくそうしていたように。 ディーンはくすぐったそうに笑って顔をそむけた。「なんだよ、ほんとにうつるぞ。おまえまで熱出されたらキャスが倒れる」 「もう僕は子供じゃない」 サムは握った手の平を親指で撫でながら言った。「だからそう簡単に病気はうつらないよ。そもそも兄貴の熱は病気じゃなくて過労と不摂生が原因だからね」 「悪かったな」 「僕のために無理してくれたんだろ。いいんだ、これからは僕がそばで見張ってるから」 「おー」 目を閉じたディーンの顔をサムは見つめ続ける。 やっと手に入った幸福だ、ぜったいに誰にも壊させない。兄が眠りについたのを確認すると、握った指先にそっとキスを落とす。彼がこの国に身を捧げるなら、自分はその彼こそに忠誠と愛を捧げよう。死がふたりを分かつまで。
<パイとエールと>
公明正大な王と名高いサミュエル・ウィンチェスターが理不尽なことで家臣を叱りつけている。 若い王の右腕と名高いボビー・シンガー将軍は、習慣であり唯一の楽しみである愛馬との和やかな朝駆けのさなか、追いかけてきた部下たちにそう泣きつかれ、白い息で口ひげを凍らせながら城に戻るはめになった。 王は謁見の控えの間をうろうろと歩き回りながら、臣下たちの心身を凍り付かせていた。 「出来ないってのはどういうことだ!」 堂々たる長身から雷のような叱責が落ちる。八角形の間には二人の近衛兵と四人の上級家臣がおり、みんなひとまとまりになって青ざめた顔で下を向いている。 「これだけの者がいて、私の期待通りの働きをするものが一人もいない! なぜだ! 誰か答えろ!」 「おい……どうした」 ボビーは自分の馬にするように、両腕を垂らして相手を警戒させないよう王に近づいた。「陛下、何をイラついてる。今日は兄上の誕生日だろ」 サムは切れ長の目をまんまるに見開いて、「そうだよ!」と叫んだ。「今日はディーンの誕生日だ! ディーンが天界に行っちゃってから初めての誕生日で、初めて王国に戻る日だって��うのに、こいつらは僕の言ったことを何一つやってない!」 手に持っていた分厚い書冊を机に叩きつけた。ぱらぱらと何枚かの羊皮紙が床に落ちて、その何枚かに女性の肖像が描かれているのをボビーは見た。頬の中で舌打ちして、ボビーは、今朝、この不機嫌な王に見合い話を持ち掛けた無能者を罵った。 まだ手に持っていた冊束を乱暴に床に放り投げて、すでに凍り付いた家臣たちをさらに怯えさせ、サムは天井まである細い窓の前に立った。 ひし形の桟にオレンジ色のガラスが組み込まれている。曇りの日でも太陽のぬくもりを感じられる造りだ。サムがそこに立つ前には、兄のディーンが同じように窓の前に立った。金髪に黄金の冠をかぶったディーン・ウィンチェスターがオレンジの光を浴びて立つさまは、彼を幼少期から知る……つまり彼が見た目や地位ほどに華美な気性ではないと知るボビーにとっても神々しく見えたものだった。 ディーンがその右腕と名高かったカスティエルと共に天界に上がってしまってからというもの、思い出の中の彼の姿はますます神々しくイメージされていく。おそらくはこの控えの間にいる連中すべてがそうだろう。 「兄が戻ってくるのに、城にパイ焼き職人が二人しかいない」 「ですが、それで町のパン焼き職人を転職させて城に召し上げるというのは無理です……」 家政長が勇気を振り絞った。しかしその勇気も、サムのきつい眼差し一つで消えた。 「��ての近衛兵の制服を黒に染めろといったのになぜやらない!」 二人の近衛兵は顔を見合わせたが、すぐに踵をそろえて姿勢を正した。何も言わないのは賢いといえなくもない。 「何で黒にする必要がある?」 ボビーの問いにサムは食い気味に答えた。「ディーンが好きだからだよ! ディーンは黒が好きだ、よく似合ってる」 「ディーンはベージュだって好きだろ。ブラウンもブルーも、赤も黄色も好きだ。やつは色になんて興味ない」 「それに注文したはずのエール! 夏には醸造所に話を通していたはずなのになぜ届いていない!」 項垂れる家政長の代わりに、隣に立つ財務長が答えた。「あー、陛下。あの銘柄は虫害にやられて今年の出荷は無理ということで、代わりの銘柄を仕入れてありますが……」 「その話は聞いた! 私はこう言ったはずだ、ディーンは代わりの銘柄は好きじゃない。今年出荷分がないなら去年、一昨年、一昨々年に出したのをかき集めて城の酒蔵を一杯にしろと!」 「そんな、あれは人気の銘柄で国中を探してもそれほどの数はありません……」 「探したのか?」 サムは、背は自分の胸ほどもない、老年の財務長の前に覆いかぶさるように立ち、彼の額に指を突き付けた。「国中を、探したのか?」 財務長の勇気もこれで消えたに違いなかった。 ボビーは息を��いた。 「みんな出て行ってくれ。申し訳ない。陛下にお話しがある。二人だけで。そう。謁見の儀の時間には間に合わせる。ありがとう。さっさと行って。ありがとう」 促されるや、そそくさと逃げるように控えの間から去っていった六人を丁寧に見送り、ボビーは後ろ手に扉の錠を下ろした。 「どうなってる」 ボビーの怖い声にもサムはたじろがなかった。気ぜわしそうに執務机の周りを歩き回る足を止めない。 「最悪だ。完璧にしたかったのに!」 床に落ちた肖像画をぐちゃぐちゃにしながら気性の荒い狼みたいな眼つきをしている。「ディーンの誕生日を完璧に祝ってやりたかったんだ! 四年前、僕らがまた家族になれたあとに、ディーンが僕にしてくれたみたいに!」 「四年前? ああ、城じゅうに糸を張り巡らせて兵士の仕事の邪魔をしまくってくれたあれか……」 ボビーは口ひげを撫でて懐かしい過去を思い返した。「しかしあの時はディーンが熱を出して……結局は数日寝込むことになっただろう」 「完璧な誕生日だった。僕のために体調を崩してまで計画してくれたこと、その後の、一緒にいられた数日間も」 「あのな……」 「いろいろあって、あの後にゆっくりと記念日を祝えたことはなかった。ようやく国が落ち着いたと思ったら、ディーンは天界に行っちゃった。いいんだ、それは、ディーンが決めたことだし、僕と兄貴で世界の均衡が保てるなら僕だって喜んで地上の王様をやるさ。滅多に会えなくなっても仕方ない。天界の傲慢な天使どもが寛大にも一年に一日だけならディーンが地上に降りるのを許してくれた。それが今日だ! 今日が終われば次は一年後。その次はまた一年後だ!」 「わかっていたことだぞ」 ボビーはいった。「べったり双子みたいだったお前たちが、それでも考えた末に決めたことだ。ディーンが天界にいなければ、天使たちは恩寵を失い、天使が恩寵を失えば、人は死後の行き場を失う」 「これほど辛いとは思わなかった」 サムは椅子に座って長い足を投げ出し、希望を失ったかのように俯いた。 「なあ、サム。今日は貴重な一日だよな。どうするつもりだった。一年ぶりに再会して、近衛兵の制服を一新した報告をしたり、一晩じゃ食べきれないほどのパイの試食をさせたり、飲みきれない酒を詰め込んだ蔵を見せて自慢する気だったのか?」 「いや、それだけじゃない。ワーウルフ狩りの出征がなかったら、城前広場を修繕して僕とディーンの銅像を建てさせるつもりだった」 「わかった。そこまで馬鹿だとは思わなかった」 俯いたサムの肩に手をあて、ボビーはいった。「本当に馬鹿だな。サム、本当にディーンがそんなもの、望んでると思うのか?」 「ディーンには欲しいものなんてないんだ」 サムは不貞腐れたように視線を外したままいった。「だからディーンはディーンなんだ。天界に行っちゃうほどにね。それだから僕は、僕が考えられる限り全てのことをしてディーンを喜ばせてあげなきゃならない。ディーンが自分でも知らない喜びを見つけてあげたいんだよ」 「ディーンは自分の喜びを知ってる。サム、お前といることだ。ただそれだけだ」 サムの��子のような目がボビーを見上げた。王になって一年、立派に執務をこなしている姿からは、誰もこの男の甘えたな部分を想像できないだろう。 もっとも、王がそんな一面を見せるのは兄と、育ての親ともいえるボビーにだけだ。 「……それと、エール」 「ああ、焼き立てのパイもな」 ボビーは笑う。「職人が二人もいればじゅうぶんだ」 サムはスンと鼻をすすって、ボビーの腕をタップして立ち上がる。 「舞踏会の用意は?」 「すんでるよ。ああ……サム、中止にするわけにはいかないぞ。もう客も揃ってるし、天界のほうにもやると伝えてある」 「わかってる。頼みがあるんだ……」
ディーンがどうやって地上に戻ってくるか、サムは一年間毎日想像していた。空から天使のはしごがかかって、白い長衣をかぶったディーンがおつきの者たちを従えてしずしずと降りてくるとか。水平線の向こうからペガサスに乗って現れるとか。サムを驚かせるために、謁見の儀で拝謁する客に紛れ込んでくるかもしれない。 そのどれもがあまりに陳腐な空想だったと、サムは反省した。 謁見の儀を終えると、ディーンは何の変哲もない、中級貴族みたいな恰好で、控えの間に立っていた。 ひし形に桟が組まれた、長い半円の窓の前で。 「ディーン」 サムの声に振り向くと、ディーンは照れ臭そうな顔をして笑った。「サム」 二人で磁石みたいに駆け寄って、抱き合った。
ディーンの誕生日を祝う舞踏会は大盛況した。近隣諸国の王侯貴族までが出席して、人と人ならざる者の世の均衡を保つ兄弟を称え、その犠牲に敬意を表した。ディーンと彼に随行したカスティエルは、誘いのあった女性全員とダンスを踊った。そしてディーンは、しかるべき時間みんなの祝福にこたえたあと、こっそりとボビーに渡された原稿を読み上げ――それはとても礼儀ただしく気持ちの良い短いスピーチだった――大広間を辞した。 「どこに行くんだ?」 一緒に舞踏会から抜け出したサムに手を引かれて、ディーンは地下に向かっていた。「なあ、王様がいなくていいのかよ。まだ舞踏会は続いてるんだぜ」 「僕がいなくてもみんな楽しんでる。今夜は一晩中、ディーンの誕生日を祝っててもらおう」 「本人がいない場所でか?」 「ああ。本人はここ」 サムは酒蔵の扉を開いてディーンを招いた。「ディーン、来てくれ」 いくつかある酒蔵のうち、一番小さな蔵だった。天井は低く、扉も小さい。サムの脇をくぐるように中に入ると、まるで秘密の洞窟に迷い込んだように感じた。 「ここ、こんなだったっけか」 踏み慣らされた土床の上に、毛皮のラグが敷かれている。大広間のシャンデリアを切り取ってきたみたいに重々しい、燭台に灯されたろうそくの明かり。壁づたいに整列された熟成樽の上には、瓶に詰められたエール、エール、エール。 「パイもある」 どこに��してあったのか、扉を閉めたサムが両手に大きなレモンパイを持ってディーンを見つめている。 ちょっと決まり悪そうな、それでも自分のやったことを認めて、褒めてくれるのを期待しているような、誇らしげな瞳で。 「誕生日おめでとう、ディーン」 二人きりで過ごしたかったんだ。そういわれて、ディーンは弟の手からパイを奪い取った。 パイは危うい均衡で樽の上に置かれて、二人はラグの上に倒れ込んだ。
<永遠>
誰がなんというおうと、おれたちが兄弟の一線を超えたことはない。 天使たちはおれの純潔を疑ってかかった。天界に昇る前には慌ただしく浄化の儀式をさせられた。”身持ちの固さ”について苦言をたれたアホ天使もいたほどだ。おれはその無礼に、女にモテモテだった自分を天使たちが勘違いするのも無理はないと思うことにした。 ああ、若く逞しい国王のおれと、いちゃつきたがる女は山ほどいた。でもおれは国王だ。心のどこかでは、弟に王位を譲るまでのつなぎの王だという思いもあった。だからこそ、うっかり子供でも出来たら大変だと、万全の危機管理をしていた。 つまりだ、おれはまだヴァージンだ。浄化の儀式は必要なかった。 女とも寝てないし、男とも寝てない。弟とは論外だ。 いつか、サムに王位を譲り、おれが王でないただの男になったら、女の温かな体内で果ててみたいと、そう思っていた。 でもたぶん、それは実現しない。なんというか、まあ……。 天界に行ってから、天使たちがおれの純潔について疑問視した原因が、女じゃないことに気がついた。そこまでくればおれだって、認めないわけにはいかない。 クソったれ天使たちの疑いも、あながち的外れじゃあないってこと。
おれと弟が一線を超えたことはないが、お互いに超えたいと思っていることはどっちも知っている。 ということは、いずれ超えるってことだ。それがどうしようもない自然の流れってやつだ。 どうしてそんなことになったのかというと、つまりおれたち兄弟、血のつながった正真正銘の王家の血統である二人がおたがいに意識しあうようになったのはなぜかということだが、たぶんそれは、おれのせいだ。おれの力だ。 おれは小さい頃から不思議な力があった。 それはサムも同じだけど、サムの力はウィンチェスター家から代々受け継いだもので、おれのほうはちょっと系統が違った。今では、それが天使の恩寵だとわかっているが、当時はだれもそんなこと、想像もしなかった。それでも不思議な力には寛容な国柄だから、おれたち兄弟は一緒に仲良くすくすくと育った。ところがある事件が起きて、おれは自分の力でサムを傷つけてしまった。それ以来、両親はおれの力を真剣に考えるようになり、おれたち兄弟は引き離された。 おれが十一歳のとき、もう同じ部屋で寝ることは許されていなかったが、夜中にサムがこっそりとおれの寝室に忍び込み、ベッドに入ってきたことがあった。 「怖い夢を見た」という弟を追い払うなんてできるはずがなかった。お化けを怖がるサムのために、天蓋のカーテンを下ろし、四方に枕でバリ��ードをつくって、ベッドの真ん中でふたり丸まって眠った。 翌朝、おれは自分が精通したのを知った。天蓋ごしにやわらかくなった朝日がベッドに差し込み、シーツにくるまっていたおれたちは発熱したみたいに熱かった。下半身の違和感に手をやって、濡れた感触に理解が追い付いたとき、サムが目覚めた。汚れた指を見つめながら茫然とするおれを見て、サムはゆっくりとおれの手を取り、指についた液体を舐めて、それから、おれの唇の横にキスをした。 おれはサムを押しのけて、浴室に飛び込んだ。しばらくすると、侍女がおれを迎えに来て、両親のことろまで連れて行った。そこでおれは、これからは城の離れにある塔で、サムとは別の教育を受けさせると言い渡された。大事にはならなかったとはいえ、サムを傷つけた力には恐怖があったから、おれはおとなしくその決定に従った。結果として、サムがキスをした朝が、おれたちが子ども時代を一緒に過ごした最後の日になってしまった。 おれの変な力がなかったら、あのままずっと一緒に育つことができただろうし、そうならば、あの朝の続きに、納得できる落とし前をつけることもできただろう。おれはなぜサムがキスをしてきたのか、その後何年にわたってもんもんと考える羽目になった。サムによれば、彼もまた、どうしてあのタイミングでキスしてしまったのか、なぜすぐにおれの後を追わなかったのかと後悔していたらしい(追いかけて何をするつもりだったんだろう)。なんにせよ、お互いに言い訳できない状況で、大きなわだかまりを抱えたまま十年間も背中合わせに育ってしまったんだ。 再会は、おれの即位式だった。両親の葬儀ですら、顔を合わせていなかった。 喜びと、なつかしさ、罪悪感に羞恥心、後悔。それを大きく凌駕する、愛情。 弟は大きくなっていた。キャスに頼んで密偵まがいのことをさせ、身辺は把握していたけれど。王大弟の正装に身を包んだサムは、話で聞いたり、遠目にみたり、市井に出回っている写し絵よりもよっぽど立派だった。 意識するなって言うほうが無理だろ。
ところでおれは、もう人じゃない。 一日に何度も食べなくても、排泄をしなくても、死なない体になった。天使いわく、おれは”顕在化された恩寵”だそうだ。恩寵っていうのは天使の持ってるスーパーパワーのことをいう。つまりおれはスーパーパワーの源で、天界の屋台骨ってこと。 そんな存在になっちまったから、もう必要のない穴ってのが体には残っているんだが、おれの天才的な弟ならその使い方を知っていると思っていた。 そして真実はその通り。弟はじつに使���方がうまい。 「純潔じゃなくなったら、天界には戻れない?」 一年前から存在を忘れられたおれの尻の穴にでかいペニスを突っ込んだサムが尋ねた。 うつ伏せになった胸は狼毛のラグのおかげで温かいが、腰を掴むサムの手のひらのほうが熱い。ラグの下に感じる土床の硬さより、背中にのしかかっているサムの腹のほうが硬い。 ついに弟を受け入れられたという喜びが、おれをしびれさせた。思考を、全身を。顕在化されたなんちゃらになったとしても、おれには肉体がある。天使たちはおれにはもう欲望がないといった。そんなのはウソだ。げんに今、おれの欲望は毛皮を湿らせ、サムの手に包まれるのを期待して震えている。 「サム……あ、ア」 しゃっくりをしたみたいに、意思を介さず肛門が収縮する。奥までサムが入っていることを実感して、ますます震えが走った。「サム、そのまま……じっとしてろ、おれが動くから……」 「冗談だろ?」 押さえた腰をぐっと上に持ち上げながら、サムはいった。「どうやって動くんだよ。力、入らないくせに」 その通りだ。サムに上から押さえつけられたとたん、おれの自由なはずの四肢は、突如として意思を放棄したみたいに動かなくなった。 「そのまま感じてて……」 生意気な言葉を放ちながら、サムはゆっくりと動き始めた。おれの喉からは情けない声が漏れた。覚えているかぎり、ふざけて登った城壁から落ちて腕を骨折したとき以来、出したことのない声。「はああ」とか「いひい」とか、そういう、とにかく情けない声だ。 「かわいいよ。かわいい、ディーン」 「はああ……」 「あんたの純潔を汚してるんだよ、ディーン……。僕に、もっと……汚されて……」 サムの汗がおれの耳に垂れた。「もう天界には戻れないくらい」
まあおれは、かねがね自分の境遇には満足だ。天界にエネルギー源として留め置かれている身としても、そうすることを選んだのは自分自身だし、結局、やらなきゃ天界が滅んでしまう。天国も天使もいない世界で生きる準備は、国民たちにもだれにも出来ていない。 せっかくうまくいっていたおれとサムの関係が、期待通りにならないことは承知の上だった。おれたちは王族だ。自分たちの欲望よりも優先すべきことがある。おれは天界で腐った天使どもと、サムは地上でクソったれな貴族どもと、ともに世界を守れたらそれでいい。そう思っていた。サムも、そう思っているはずだった。 一年に一日だけ、地上に戻る許可を与えられて、おれが選んだのは自分の誕生日だった。 ほんとはサムの誕生日のほうがよかった。だけどおれの誕生日のほうが早く訪れるから。 サムに会えない日々は辛かった。想像した以上に永かった。
下腹をサムの手に包まれて、後ろから揺さぶられながら、おれはふと気配を感じて視線を上げた。酒蔵の奥に、ほの白く発光したキャス――今は天使のカスティエルが佇んでいた。 (冗談だろ、キャス。消えてくれ!) 天使にだけ伝わる声で追い払うが、やつはいつもの表情のみえない顔でおれをじっと見つめたまま動かない。 (取り込み中なの見てわかるだろ!?) (君はここには残れない) キャスがいった。(たとえ弟の精をその身に受けても。君はもはや人ではないのだ) (そんなことはわかってる) おれがいうと、キャスはやっと表情を変えて、いぶかしげに眉をひそめた。(君の弟は���かっていない) (いいや、わかってる……) 「ディーン、こっち向いて」 キスをねだる弟に応えて体をひねる。絶頂に向かって動き始めたサムに合わせて姿勢を戻したときには、もう天使は消えていた。 わざわざ何をいいに来たんだか。あいつのことだから、もしかして本当に、サムのもらした言葉が実現不可能なものだと、忠告しに来たのかもしれない。 天使どもときたら、そろいもそろって愚直で融通のきかない、大きな子どもみたいなやつらだ。 きっと今回のことも、天界に戻れば非難されるだろう。キャスはそれを心配したのかもしれない。 お互いに情けない声を出して、おれはサムの手の中に、サムはおれの中に放ったあと、おれたちは正面から抱き合って毛皮の上に崩れ落ちた。 汗だくの額に張り付いた、弟の長い髪を耳の後ろにかきあげてやると、うるんだ緑の目と目が合った。 「離れたくないよ、ディーン」 「おれもだ」 サムはくしゃっと笑った。「国王のくせに、弱音を吐くなって言われるかと思った」 おれはまた、サムの柔らかな髪をすいてやった。 おれがまだ人だったころ、おれの口から出るのは皮肉や冗談、強がりやからかいの言葉ばかりだった。だれもがおれは多弁な王だと思っていた。自分でもそうだった。 でも今や、そうじゃなくなった。 おれは本来、無口な男だったんだな。 見つめていると、弟の唇が落ちてきた。おれは目を閉じて、息を吸い込んだ。このキスが永遠に続けばいいのにと思う。 願っても意味はないと知っているからな。
「驚いたよ」 天界へ帰るすがら(地上からは一瞬で消えたように見えただろうが、階段を上っていくんだ。疲れはしないけどがっかりだ)、キャスがいった。「きみたちは……意外とあっさり別れた。もっと揉めるかと思っていた」 「揉めるってなんだよ」 「ずいぶんと離れがたそうだったから」 「ふつうは他人のセックスをのぞき見したこと、隠しておくもんなんだぜ」 「のぞき見などしていない」 キャスは大真面目にいった。「のぞき見ではない。私は隠れてなどいなかった」 おれは天界への階段から転がり落ちそうになった。「おま……キャス……じゃあ、おまえの姿、サムには……」 「見ていただろうな。君とキスしているときに目があった」 「――あいつそんなこと一言も」 「今朝、私には警告してきた。次は翼を折ってやると。君の手の大きさじゃムリだと言ってやったが」 おれはため息を吐いた。 「次があると思っているのだな」 「もう黙れよ」 「一年に一度の逢瀬を、続けるつもりなのか。君はもう年をとらず、彼は地上の王として妻をめとり、老いていくというのに」 「なあ、キャス。おまえに隠してもしかたないからいうが、おれが天界にいるのはサムのためだ。サムが死後に行く場所を守るためだ」 キャスはしばらく黙ったあと、唇をとがらせて頷いた。「そうか」 「ああ、そうだ」 「きみに弟がいて世界は救われたな」 おれは足を止めて、キャスの二枚羽の後ろ姿を見つめた。彼がそんなふうに言ってくれるとは思っていなかったから驚いた。 キャスが振り返っていった。「どうした」 「べつに。おまえ皮肉が上手くなった���って。ザカリアの影響か?」 「やめてくれ」 盛大に顔をしかめてキャスはぷいと先を行ってしまう。 「お、待てよ、キャス。おまえのことも愛してるぜ!」 「ありがとう。私も愛してるよ」 たとえばサムが結婚して、子どもができ、平和な老後を迎えるのを、ただ天界から見守るのも素晴らしい未来だと思う。義務感の強いサムのことだから、十中八九相手は有力貴族の娘か、他国の姫の政略結婚だろうが、相手がよっぽどこじれた性格をしていない限り、いい家庭を築くだろう。あいつは優しいし、辛抱強くもなれる。子どもにも偏りのない教育を受けさせるだろう。安定した王族の指導で、王国はますます繁栄する。国王と王妃は臣民の尊敬を受け、穏やかに愛をはぐくみ、老いてからも互いを慈しみながら、孫たちに囲まれ余生を過ごすだろう。 愛と信頼に満ちた夫婦。サムがそんな相手を見つけられたらどんなにいいか。おれは心から祝福する。それは嘘偽りのない真実だ。 だけど、それは死が二人を分かつまでだ。 サムが死んだら、たとえその死が忠実な妻と手をつなぎ、同時に息を引き取るような敬虔なものだったとしても、彼の魂はもう彼女のものじゃない。死神のものですらない。おれだ。おれがサムを直接迎えにいく。 そしておれがサムのために守ってきた天国で、おれたちはまた、やり直すんだ。 おれが精通した十一歳の朝からでもいい。 ぎこちなかった即位式の午後からでもいい。 世界におれたちだけだったら、どれだけ早くたがいの感情に正直になれたかな。それを試すんだ。 だから今は離れていても、いずれは永遠に側にいられるんだ。 今は言葉だけでいいんだ。おれを汚したいといったサムの言葉が何物にも代えがたい愛の告白に聞こえたなんて変かな。サムの愛の言葉と、この体のどこかに残っているサムの精だけで十分なんだ。 また来年、それをおれにくれ。おまえが誰かいい女と結婚するまで。 おまえのための天国を作って、おれは永遠が来るのを待っている。
おわり
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【アンケート企画】 「2017年の3本」
WLでは読者のみなさんから2017年に見た舞台作品の中で印象に残った3本を、その理由などを書いたコメントとあわせて募るアンケートを実施しました。WLスタート以来毎年行っているこの企画、3回目の今回は20名の方にご参加いただきました。掲載は到着順です。
雨宮 縁(会社員) ・劇団四季『ノートルダムの鐘』(四季劇場〔秋〕) ・ホリプロ『パレード』(東京芸術劇場 プレイハウス) ・ホリプロ『ファインディング・ネバーランド』(東急シアターオーブ ) 『ノートルダムの鐘』は何が悪なのか? 怪物は誰なのか? 人間の業と差別について圧倒的なクワイアの歌声で問われる秀逸な作品。 ミュージカル『パレード』はストレートプレイを見ているようなミュージカル。アメリカ南部で起こった実話の冤罪事件をミュージカル化した異色作。ある少女殺人事件をきっかけに人種差別や成功者への妬みなどから警察やマスコミ、政治家様々な立場の人達により犯人に仕立て上げられていく恐ろしさ。これが物語ではなく実話であるというさらなる恐ろしさに声が出ない程の衝撃だった。実力者ぞろいの出演者達で見応え満点だった。 ブロードウェイミュージカル『ファインディング・ネバーランド』は来日公演。ミュージカルらしい作品。イマジネーションの世界は自由だと夢のあるミュ���ジカル。窮屈な現実から解き放される感動作で前向きな気持ちにしてくれます。(年間観劇本数:24本)
小田島 創志(大学院生・非常勤講師) ・KAAT『オーランド―』(KAAT神奈川芸術劇場) ・やみ・あがりシアター『すずめのなみだだん!』(小劇場てあとるらぽう) ・地人会新社『豚小屋』(新国立劇場 小劇場) 1.KAAT『オーランド―』…ジェンダー、言葉の意味、文化慣習、時代精神などの脱自然化を、舞台上で緻密に表現。観客の想像力を喚起する役者さんの演技も白井さんの演出も圧巻。「男である」「女である」のではなく、「男になる」「女になる」というボーヴォワール的な価値観を、演���的にスタイリッシュに表現していて素晴らしかった。 2.やみ・あがりシアター『すずめのなみだだん!』…個人と社会、個人と宗教の関係性を、コミカルかつ丁寧な言葉を紡いで描いた意欲作。テーマが複層的で、観客側の思考を誘う。 3.アソル・フガード『豚小屋』…個人よりも集団が過剰に優先され、個人の犠牲の上に集団が成り立つ状況下で、戦争に駆り立てられる庶民の「受難」を、北村有起哉さんと田畑智子さんの壮絶な演技で伝えていた。(年間観劇本数:53本)
豊川 涼太(学生) ・ロロ『父母姉僕弟君』(シアターサンモール) ・木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談 通し上演』(あうるすぽっと) ・ままごと『わたしの星』(三鷹市芸術文化センター 星のホール) 今年の3本を選んでみると、全てが再演(初演はどれも観ていない)だった。 特にロロ『父母姉僕弟君』はキティエンターテイメントプロデュースで、より大きなサイズで大きなスケールで上演できていた。 他の方々も語るように、再演賞を設ける等、演劇界全体で再演文化の定着に力を入れて欲しい。(年間観劇本数:50本程度)
なかむら なおき(観光客) ・月刊「根本宗子」『スーパーストライク』(ザ・スズナリ) ・劇団四季 『ノートルダムの鐘』(四季劇場〔秋〕) ・こまつ座『イヌの仇討』(紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA) 『スーパーストライク』は良し悪しの前にもっとも欲していることが届く作品だったので。『ノートルダムの鐘』はあえて出来事だけを表現して観客に判断を任せているのが面白かった。そして『イヌの仇討』は忠臣蔵を下敷きに目に見えない得体の知れない大きな力を描いていて続々としたなぁと。あ、これらは趣味です。 で、上演された作品を見ると、今の世の中に応答するような作品が多いように思うのです。そして小劇場界隈で育ってきた演出家が大劇場の演出を務めるようになってきているように思うのです。また少し変わったかなぁと思うのです。(年間観劇本数:100本ぐらいですかね)
北村 紗衣(研究者) ・ケネス・ブラナー演出、トム・ヒドルストン主演『ハムレット』(RADA) ・カクシンハン『マクベス』(東京芸術劇場 シアターウエスト) ・モチロンプロデュース『クラウドナイン』(東京芸術劇場 シアターイースト) 今年は『ハムレット』を6本見て、アンドルー・スコット主演版や川崎ラゾーナ版なども良かったのですが、ヒドルストンの『ハムレット』が一番好みでした。ハムレット以外の若者役を全員女性にするキャスティングが効いていました。カクシンハンの『マクベス』はまるでゴミみたいなセットでしたが、内容はゴミとはほど遠いエネルギッシュなものでした。『クラウドナイン』は大変面白かった���ですが、あまりよく考えずに「レズ」とか「少年愛」などという言葉を使っているマーケティングは大変残念でした。 (年間観劇本数:121本)
町田 博治(会社役員) ・青☆組『グランパと赤い塔』(吉祥寺シアター) ・小松台東『山笑う』(三鷹市芸術文化センター 星のホール) ・ SPAC『アンティゴネ ~時を超える送り火~』(駿府城公演特設会場) 『グランパと赤い塔』 吉田小夏が人の綾なす思いを紡ぎ、丁寧に織り上げられる。 背筋が伸び厚みと洒脱さを合わせ持つ老紳士を佐藤滋が見事に演じ、福寿奈央の初老の妻も見事。二人が作品に一本の筋を通す。 裏の主役とでも言うべき女中役を大西玲子が、目線、ことば、仕草、身体で見事に演じていた。役者が皆素晴らしい。 『山笑う』 兄と妹、地方と都会、肉親ゆえの諍い。 静かに光る小さな宝石の様な作品。 松本哲也の演出がシリアスさと笑いをバランスさせ絶妙。厚みのある演技、役者達のバランスも絶妙。 『アンティゴネ』 冒頭女優石井萠水がミニ・アンティゴネを演じ客を引き込む。 舞台は一面水。灯篭が浮かび明かりが揺れる。あの世と現世の境としての水、水上で舞台が静かに進む。背後に投射された動きが影となり、台詞、歌唱が絡み、幻想的。 「弔い」にこだわるアンティゴネ、最後、円く連なってゆく静かな盆踊りが弔いを暗示胸を締め付ける。(年間観劇本数:299本)
文月 路実(派遣社員・フリーライター) ・ゴキブリコンビナート『法悦肉按摩』(都内某公園) ・NODA・MAP『足跡姫』(東京芸術劇場プレイハウス) ・ 範宙遊泳『その夜と友達』(STスポット) 「五感を総動員する」と謳っていたゴキコンの本公演は、まさにその通りの悪夢だった。入り口で目隠しされ、何が何やらまったくわからない状態で味わう地獄。四方八方から泥水や血糊や汚物や虫が飛んでくる。突然役者が飛び出してきて身体の上に載る。内容はいつも通りのひどい話だ。テント内はかなり暑く、なにやら異臭がすごい。終わったときには頭に虫がとまり、レインコートは泥や血糊でぐしょぐしょ、汗で眉毛が半分消えておったとさ。そんなに過酷だったのにもかかわらず爽快感を覚えたのは不思議。普段使わない感覚を刺激されたからか。これこそが演劇の力なのでは。『足跡姫』は勘三郎へのオマー��ュ。ここ数年の野田作品のなかで一番ストレートに「想い」が伝わってきて、純粋に美しいと思った。『その夜と友達』は、生きづらさを抱えた「夜」というキャラクターが個人的に刺さった。「しんどさ」を知ってしまった人間にも希望はあるのだと信じたい。(年間観劇本数:42本)
永田 晶子(会社員) ・努力クラブのやりたくなったのでやります公演『フォーエバーヤング』(人間座スタジオ) ・燐光群『湾岸線浜浦駅高架下4:00A.M.(土、日除ク)』(ザ・スズナリ) ・dracom Rough Play 『ぶらんこ』(OPA_Lab) 上演日順です。 ・説明が削られ、描くべきことだけ残った合田団地氏の劇作は、努力クラブの魅力のひとつです。同世代の俳優による静かな演技で、人生における中途半端な時間の儚さをより楽しめました。 ・燐光群の公演で、劇場という閉ざされた空間が持つ危うさを確かめました。戯曲に負けない強い演技と、暗闇にわずかな光を感じるラストシーンが印象的でした。失われた街に思いを馳せる機会にもなりました。 ・既存戯曲を本読み一回・稽古一回で上演するラフプレイを観て、演劇は一度きりの瞬間に在ると思いました。会場全体に広がる「わかりあえなさ」に、戸惑いつつも笑いました。戯曲を忠実に辿ろうとするデッサンのような行為は、dracom の新作での慎重な表現にも繋がっていたと思います。(年間観劇本数:100本くらい)
青木 克敏(地方公務員) ・SPAC『アンティゴネ〜時を超える送り火〜』(駿府城公演特設会場) ・ロシア国立サンクトペテルブルク マールイ・ドラマ劇場『たくらみと恋』(世田谷パブリックシアター) ・NAPPOS PRODUCE『SKIP〜スキップ』(サンシャイン劇場) あまりぱっとしない演劇状況に思えました。その中で、SPACの宮城聰さんの取り組みは素晴らしいものに感じています。アンティゴネは構成がしっかりとしていて分かりやすいかったですが、私の価値観を揺るがしてくれるほどの感動を、与えてくれました。たくらみと恋では、俳優陣をはじめとして芸術レベルの高さを見せつけられました。そして、スキップ。なんだかんだ言っても、キャラメルボックスは、夢と希望をいつだって分かち合おうと走り続ける劇団です。(年間観劇本数:32本)
矢野 靖人(一般社団法人shelf代表理事・芸術監督) ・WORLD STAGE DESIGN『The Malady of Death』(台北国立芸術大学) ・HEADZ『を待ちながら』(こまばアゴラ劇場) ・SCOTサマーシーズン2017『サド侯爵夫人 第二幕』(新利賀��房) The Malady of Death”はバンコクの盟友、僕がいちばん信頼している僕自身のプロデューサー的存在でもあるリオンが演出する作品とあってわざわざそれを観るためだけに台湾まで行った作品。そういうことが出来る/したいと思える仲間がいることに感謝。今年いちばん記憶に残っている。デュラス晩年の最後の恋人は実はゲイで、しかし献身的にデュラスを愛し、デュラスに尽くしたという。美しく儚い作品だった。鈴木忠志「サド侯爵夫人 第二幕」はこの超絶技巧のこのアーティフィシャル(人工的)な日本語台詞をねじ伏せた俳優陣に快哉。久しぶりに劇場で観劇した飴屋法水さんの「を待ちながら」はこちらが思っていた以上に泣けるほどに清々しくベケットで。選外に1作品、APAFワン・チョン氏演出の「Kiss Kiss Bang Bang2.0」を。ノンバーバル且つインターナショナルな演劇の新たな可能性を垣間見せてくれた。(年間観劇本数:43本)
野呂 瑠美子(一観客) ・劇団昴ザ・サードステージ『幻の国』(サイスタジオ大山第1) ・劇団チョコレートケーキ『熱狂』(シアターウェスト) ・文学座創立80周年記念公演『中橋公館』(紀伊国屋ホール) どの時代をどういう切り口で、どのように選ぶかは作者の意識と力量による。劇団チョコレートケーキの古川健さんは、大きな歴史の流れを巧妙に切り取り、多大な資料を元に、新たに肉付けをして、その時代がどんなであったかを観客に見せてくれる。『幻の国』『熱狂』ともに、3時間ほどの舞台からは、困難な時代に置かれた人々の思いと息遣いが伝わってくるようであった。文学座の真船豊の『中橋公館』も、殆ど知られることがなかった、外地・北京で敗戦を迎えた日本人の様子をよく伝えていて、感心した。どの作品も、過ぎ去った時代を描きながら、実は現代をきちんと映し出している秀作揃いで、感動とともに、印象深い作品となった。最近あまり見なくなった歌舞伎だが、今年は仁左衛門の『千本桜』がかかり、おそらく彼の一世一代の知盛であろうと思われて、拝見した。人生は速い。(年間観劇本数:80本)
片山 幹生(WLスタッフ) ・SPAC『病は気から』 (静岡芸術劇場) ・ゴキブリコンビナート『法悦肉按摩』 ・平原演劇祭2017第4部 文芸案内朗読会演劇前夜&うどん会 「や喪めぐらし」(堀江敏幸「めぐらし屋」より) ノゾエ征爾翻案・演出のSPAC『病は気から』は17世紀フランス古典主義を代表するモリエールの喜劇の現代日本での上演可能性を切り拓く優れた舞台だった。ゴキコンはいつも期待を上回る斬新で過激な仕掛けで観客を楽しませてくれる。高野竜の平原演劇祭は昨年第6部まで行われ、いずれも既存の演劇の枠組みを逸脱する自由で独創的なスペクタクルだったが、その中でも文庫版200頁の小説を4人の女優がひたすら読むという第4部の企画の体験がとりわけ印象的だった。食事として供された変わったつけ汁でのうどんもおいしかった。(年間観劇本数:120本)
kiki(勤め人) ・日本のラジオ『カーテン』(三鷹市芸術文化センター 星のホール) ・あやめ十八番『三英花 煙夕空』(平櫛田中邸/シアトリカル應典院) ・風琴工房『アンネの日』(三鷹市芸術文化センター 星のホール) カーテン:この一年で拝見できた日本のラジオの作品はどれも面白かったが、結局一番好みにあったのがコレ。劇場の使い方や題材の面白さに加えて、奥行きのある人物描写で15人のキャストの魅力が充分に生きた。 三英花 煙夕空:あやめ十八番初の二都市公演で、東京と大阪の会場がどちらも物語によく似合いつつ印象はガラリと変わって面白かった。音の響きや照明も変わり、キャストも変わって、東京公演では濃密な仄暗さが、大阪公演ではエッジの効いた明暗がそれぞれ印象に残った。 アンネの日:風琴工房の題材への取り組み方にはいつも心惹かれるが、観る前には地味だろうと思っていたこの作品がこの一年で最もツボにハマった。描かれた人々の誠実さと強さ、それを演じるキャスト陣の説得力が魅力的だった。(年間観劇本数:155本)
りい���ろ(会社員) ・第27班 キャビネット公演B『おやすみ また明日 愛してるよ』(シアターミラクル) ・コマイぬ『ラッツォクの灯』(石巻 GALVANIZE gallery) ・アマヤドリ『青いポスト』(花まる学習会 王子小劇場) 2017年も足を運ぶ先々に多彩な舞台の力がありましたが、中でも常ならぬ舞台の密度や呼吸を感じた3作品を。 この一年、くによし組や劇団ヤリナゲ、劇団普通、KAZAKAMI、遠吠え、キュイなど若い作り手たちの作品にも心惹かれつつ、てがみ座『風紋』、風琴工房『アンネの日』、青組『グランパと赤い塔』、うさぎストライプ『ゴールデンバット』、ワワフラミンゴ『脳みそあるいてる』など実績のある作り手の更なる進化を感じる作品も数多く観ることができました。FunIQの5人の作演での連続上演の試み,ロロの「いつ高シリーズ」やシンクロ少女の『オーラルメソッド4』のように過去作品と新作を合わせて上演することも作品の世界観を再認識させ作り手の進化を感じ���せる良いやり方だったと思います。またあやめ十八番や水素74%などの歴史建造物での上演にも、スイッチ総研の諸公演やガレキの太鼓ののぞき見公演などの企みにも捉われました。(年間観劇本数:315本)
矢作 勝義(穂の国とよはし芸術劇場 芸術文化プロデューサー) ・ イキウメ『天の敵』(東京芸術劇場 シアターイースト) ・TBSテレビ『俺節』(TBS赤坂ACTシアター) ・風琴工房『アンネの日』(三鷹市芸術文化センター 星のホール) 『天の敵』は、戯曲・演出・美術・俳優など全てのピースが寸分の狂いもなく組み合わされた、これまで観たイキウメ作品の中で一番素晴らしい舞台でした。 『俺節』は、主演の安田章大の歌・芝居ともに素晴らしく、回りを固める小劇場系の俳優も一丸となり、見事に劇世界を支えていました。何と言っても、脚本・演出の福原充則の仕事ぶりが充実していました。 風琴工房の詩森ろばさんは、2017年の1年間で多数の作品を生み出していましたが、なかでも『アンネの日』は、教養エンターテイメントと名付けたいと思います。事実の羅列や解説にとどまらず、それをエンターテイメントに昇華しながらも、一つの物語として創り上げられたとても素敵なものでした。 番外として、自身の劇場制作の、青木豪作、稲葉賀恵演出の「高校生と創る演劇『ガンボ』」と桑原裕子作・演出の穂の国とよはし芸術劇場プロデュース『荒れ野』を上げておきたいと思います。(年間観劇本数:132本)
須川 渡(研究者) ・ dracom『空腹者の弁』(ウイングフィールド) ・山下残『無門館の水は二度流せ 詰まらぬ』(アトリエ劇研) ・アイホールがつくる「伊丹の物語」プロジェクト『さよなら家族』(AI・HALL) 今年も関西で多くの作品を観ました。劇場の閉館はたびたび議論になりますが、dracomと山下残はこの問いかけに作品という形で応答していました。dracomはウイングフィールドという場所で演劇を続けること、山下残はアトリエ劇研がなくなることの意味を、どちらも非常に挑戦的な方法で示していました。『さよなら家族』は、伊丹という場所と時間をかけて丁寧に向き合った秀作です。スタイルは様々ですが、観客である私も、同じ場所にとどまって演劇を観続けるとはどういうことかに思いを巡らせた1年でした。 (年間観劇本数:133本)
かいらくえんなつき(演劇ウォッチャー) ・ロロ いつ高シリーズvol.4『いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した』(こまばアゴラ劇場) ・悪魔のしるし『蟹と歩く』(倉敷市立美術館 講堂) ・範宙遊泳『その夜と友達』(STスポット) 2017年も前半は大阪にいたので、関東近辺の演劇はそこまで多くは観ていません。とはいえ、ここにどうしても挙げたいと思う関西の作品に出会えなかったのは、残念。 選んだのは今後ずっと忘れないだろうなと思う観劇体験だったものです。 この他に挙げられなかったのは、���Tで上演された『忉利天(とうりてん)』 (構成・演出・美術:チェン・ティエンジュオ)。 これだけをみていうのもと思いますが、それでもいいたくなるぐらい、中国の勢いを感じさせられ、それと裏返しの日本の閉塞感を感じました。 2017年は(も?)色々と区切りとなる出来事の多かった1年だったような気がしています。 毎年同じようなことを書いている気がしますが、2018年はもっともっと新しい刺激的な作品に出会いたい!!(年間観劇本数:おそらく150本くらい)
薙野 信喜(無職) ・ Schauspiel Leipzig『89/90』(Berliner Festspiele) ・Akram Khan Company「Until the Lion」(Main Hall, ARKO Arts Theater) ・日本総合悲劇協会『業音』(西鉄ホール) 2017年は、海外で観た20数本の作品の印象が強い。パリで観たオペラ・バスティーユ『ラ・ボエーム』、オデオン座『三人姉妹』、コメディ・フランセーズ『テンペスト』、ベルリンドイツ劇場『フェードル』『しあわせな日々』、ソウルで観た Yulhyul Arts Group『Defeat the ROBOT 3』、明洞芸術劇場『メディア』の印象が強烈だった。
九州に来演した作品では、ヨーロッパ企画『出てこようとしてるトロンプルイユ』、サードステージ『舞台版ドラえもん のび太とアニマル惑星』、イキウメ『散歩する侵略者』、トラッシュマスターズ『たわけ者の血潮』 などが楽しめた。 九州の劇団では、劇団きらら『プープーソング』、そめごころ『ちずとあゆむ』、転回社『夏の夜の夢』 がおもしろかった。(年間観劇本数:156本)
でんない いっこう(自由人) ・東京芸術劇場『リチャード三世』(東京芸術劇場 プレイハウス) ・新国立劇場『プライムたちの夜』(新国立劇場小劇場) ・文学座『鳩に水をやる』(文学座アトリエ) 1.リチャード三世の人格形成に身体の障害を前面に出さなかったし、最期の苦しみを、脳内の様子が突然飛び出し襲い掛かるような映像と音響で訴えたプルカレーテ演出の意外性が惹きつける。 2.人は何に向って本心を言えるのか、自身の老後は応答するロボットを考えていたが、人型のAI・スライムなら2062年でなくとも頷けてしまう身近な物語であった。人を失した悲しみ、本来わかりえない存在、一個の人間。 3.童話作家だった男、今は認知症の鳩に水をやる男。誰にわかると言うのだ、その内面の心理が。過去を生きている男に通じる回路を持たない今を生きてる者達。���点は若い俳優、演出家の成長が嬉しい『その夜と友達』『ダニーと紺碧の海』『ナイン』気になる劇作・演出家で楽しかった『ベター・ハーフ』大野一雄に惹かれ、その時代の映像が見たくて、疑念を持ちながら観たのに何故か後半引き込まれてしまった『川口隆夫「大野一雄について」』等がある。(年間観劇本数:27本)
小泉 うめ(観劇人・WLスタッフ) ・点の階『・・・』(京都芸術センター 講堂) ・風琴工房『アンネの日』(三鷹市芸術文化センター 星のホール) ・神里雄大/岡崎藝術座『バルパライソの長い坂をくだる話』(京都芸術センター 講堂) 前半は人生最高ペースの観劇本数だったが、後半は落ち着いて、おしなべてみれば例年並みの本数になった。そのため見逃したと思っている作品も多い。演劇が演劇であるが故の悔やみである。 『・・・』 ファンタジーという言葉だけでは済まされない不思議な観劇体験となった。窓の外の雪や隙間から入ってくる冷たい空気までもが演劇だった。 『アンネの日』 詩森の戯曲はいつも緻密な取材力とそこからの跳躍力に支えられているが、この戯曲からは一人の女性として、ひいては一人の人間としての彼女の姿が明瞭にうかがえ、彼女の代表作となるだろう。 『バルパライソの長い坂をくだる話』 神里のターニングポイントと言える。再び上演される機会もあるだろうが、あの場所であの役者陣でのスペイン語上演は、当然のことながら二度とないものを観たという印象が強い。 西日本での観劇も例年よりは少なかったが、結局KACで上演された2本を選んでいるあたりも私らしいところか。(年間観劇本数:355本)
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Time To Say Goodbye (8)
8月も終わりとはいえ、まだまだ陽の高い昼過ぎに、駅前のドラッグストアまで痒み止めを買いに行かされた。
確かに姉ちゃんに借金をしてるのは俺だ。 「絶対来月返すから!」と言い続けて半年返してないのも俺だ
つまり、こういう時使いっぱにされるのは ある意味仕方ないとも言える。 が、暑い。とにもかくにも、暑い。
夏は好きだけどアスファルトの照り返しの蜃気楼とかほんと、もぉやだ。 溶けそうだな……と商店街のガラス越しに映る自分をチラリと見ればなんだか猫背でだらしない男が映っていて更にゲンナリとする。こんなダッセー男に彼女なんかできねぇよなぁ……とガラスに映る自分を冷静に見つめながら、ガラスにでかでかと貼ってある浴衣の写真のポスターに目が移る。
あれ……?空座盆踊り大会、今日じゃん
……
……
なんだか突然どうしようもなく寂しくなってしまい思わずそのまま立ち竦んだ。 毎年行ってたその祭りを自分が忘れていた事もあるが、誰からも誘われてもいない。 去年はー そうだ、一護や井上さん達と行ったよな その前の年も
…………
俺だけ? 俺だけ誘われてねぇとか?
辛い!寂しい! そりゃねぇんじゃないの? いやいや、つい最近皆で海行ってるし。あれ俺誘われたんだし?一護来なかったけどさ。
……じゃあ祭りは とうとう、誰ももう行かねぇってことか……
無意識に唇を尖らしてしまう いやいーんだけど
俺だって今じゃ高校の頃の友達より、専門の奴等とつるむ方が全然多い。どうしたって毎日会う奴との方が話すし出かける率も高い。 高校の奴等と会うのも、最近じゃ誰かしら来れない事も多々ある。 皆、優先するものが変わって行くんだ
それにしてもこの間の海に一護が来なかったのは意外だった。
だって死神サン達と遊ぶの���一護がいないなんてさ。 井上さんとチャドと石田は親交もあるけど、 俺と有沢なんてほとんど知らねーのに行ったのに。まぁ楽しかったけど。 それにしても石田が可愛い女の子を連れてきたのには驚いた。うん、あれは驚いたな。 なんか初々しくてちょっといいなとか思っちまった。でもあれ、彼女なんだろーなぁ? 連れてきちゃうんだし。 そういやルキアちゃんいなかったんだよな。
あれ? ん?
一護とルキアちゃんいないのって 何か怪しくね?
「うん、じゃあまた……」
祭りのポスターの前でぼんやりしていたら、よく知る声が聞こえて思わず顔を横に向ける。向けてからわざとらしいくらいの2度見をすれば、女はスマホを耳から離して眉間に皺を寄せて俺を見た。
「……なんだよ、そのわざとらしい態度」 「いや、だって、らしくねぇ格好してっから見間違えかと」 「うるせぇーよ!馬鹿」
ペシンと女は俺の頬を平手打ちしてきた。 平手打ちしちゃう?ねぇ?
「どっか、行くの?」 「は?」 「いや、有沢サンが女の子みたいな格好してるから……どこかへおでかけですか~なんて」 「…………一護んとこ」 「は!?」
一護とデート?と言えば今度は反対側の頬を平手打ちされた。痛いんですけど、本当に。
「……浅野さぁ、暇なら一緒に行かない?一護んとこ」
痛いってばよぉと涙目の俺を気にすることなく、そのわりには伏し目がちに有沢が俺を誘ってきた。
なんだコイツ?
というか、だから何で今日そんな格好してんだよ。一護の為……はないなありえないよな。
「行く!暇だし」 「……ありがと���
ありがとうって何だ?とも思ったが、一護とは最近会ってないしなんとなくセンチメンタルな気分になってた(一瞬ね)し即答した。 じゃあ手土産にアイスでも買って行こう、と有沢とサーティワンに入る。
「浅野何?」 「俺ね、あれ、パチパチするやつ!」 「ラヴね、あとは?」 「2個いいの?」 「いいよ」 「……半分だそうか?」 「いいよ、出かけるのやめたから。金あるんだ」 「……ふーん。……じゃあナッツの」 「オッケー。一護はチョコだよな……」
そう言いながら有沢は合計8個のアイスを買った。遊子ちゃん夏梨ちゃんのだろう。
一護の家まで二人で歩く。 今日の有沢はうっすら化粧までしていて何だか落ち着かない。足元もいつもみたくスニーカーじゃなくてミュールを履いていた。 足首が妙に生々しく感じて、つ、と目を反らす。 まてまて俺。何ときめいてんだ。これ、有沢だから。
「……おまえ、出かけるって一護んとこ行くのにその格好したの?」 「はぁ?」
有沢は不思議そうな顔をして俺を少しだけ睨んだ。
「つーか、別に普通なんだけど」 「普通じゃねぇだろ!?おまえ、スカートなんて履かねえじゃん」 「履くよ馬鹿。あんたが知らないだけだろ?」 「化粧してるし」 「いつもしてるよ」 「嘘!?」 「嘘ってなんだよ、あんたいつまであたしを高校生と思ってんだよ」
ばーかと言われ、キツい言い方でもないのに何だか少し凹む。 確かに 確かにそうだよな 高校出てもう2年だもんな
皆、変わっていくんだ 今の生活に染まっていくんだ さっきそう思ったばっかなのにな
あっちーなぁと化粧して頼りない足首を晒す有沢のその口調に、それでも何だかほっとするな、なんて思ってるうちに一護の家についた。
◾ ◾ ◾
「おぅ、って、啓吾も一緒なんだ」 「ぅぃ〰っす」
一護に会うのはそんな久しぶりというわけでもないけど。 一護も海にでも行ったのか珍しく日焼けしていた。 真っ白なTシャツにスエットを膝の辺りまで捲りあげて、元々明るい髪色の一護は、なんだかやんちゃな奴みたいでちょっと笑える。
「焼けたねーあんたも海行ったんだもんな」 「たつきはあんま焼けてねぇのな」 「女はもうそろそろ日焼けやばいからね」
楽しそうにそんな会話をする二人に ちょっと嫉妬。なんつーか俺よりはこいつら会ってたりするんかなー
「啓吾はすげー焼けてんな」 「まぁね、一護の来なかった海でかなり遊んだからさ」 「あー、悪かったなそれ」
一護はちっとも悪びれない態度で笑いながら謝ってきた。別にいいんだけどね。
まぁ、あがれよと言われ有沢と二人、一護の部屋に通された。エアコンが効いていて凄く涼しい。
「アイス買ってきたの。とりあえず冷凍庫にいれといてよ」 「おぅ、さんきゅ」
一護は有沢からアイスの箱を受けとると階段を降りて行った。 久しぶりの一護の部屋は何も変わらない。 よいしょっとベッドの下に腰を下ろした。 有沢もすんなり俺の反対側に腰を下ろすと、ふぅ、と吐息を溢した。
なんだろな?
さっきから感じるこの違和感
てゆーか有沢は何で今日一護のとこに来た?
告るんじゃないだろう。それなら俺を誘わないだろうし。何か、何かわかんないけど引っかかるのだ。
「コーラでいいか?」
そう言いながら一護が片手にグラスを3つ、片手にコーラのボトルを持って戻ってきた。
有沢が受け取り手際よくグラスにコーラを注いで俺達に渡してくれる。
…………そういや、幼馴染だっけこいつら
なんていうか一護と有沢は嫌みのない仲の良さがある。嫌みのないというか 井上さんと一護とか ルキアちゃんと一護とは違う、なんていうか……
ひとしきりくだらない話を続けているうちに、海の話になる。 あのツルピカ頭の奴とかそれのボスみたいな怖い男が海の家で暴れた話とか 松本さんと井上さんがナンパされまくる話とか スイカ割りをしたらルキアちゃんのお兄さんがものすごく正確に綺麗にスイカを割ったなんて話を笑いながらしていた。
「あんたも来ればよかったのに」 「俺はその日はデートだって言ったろ?」
二人のその会話に「はい!?」と思わず声が裏返る。
「い、一護さん、デートって言いました?」 「おぅ」 「な、なぬ……?」 「連れてくればよかったのに」 「やだね、二人でいらんねーじゃん」 「石田は連れてきたよ」 「え!石田が?彼女?!」 「一護……いつの間に彼女いたの……」 「そうだよ、小さくてカワイイ人だったよ」 「まじで?あの石田が?」
……
俺の話をスルーして二人は話している。 待て待て待てよ、一護彼女とか俺知らねーし。有沢知ってて俺知らないとか酷くない? つーか 一護の彼女って それってー
「あんたも、こそこそすんの、やめなよ」
少しだけ、力強い声で有沢が言った。
「こそこそなんて、してねーよ?」 「してるよ。アンタらしくないよ」 「……俺は彼女を護らなきゃなんねーの」 「……何から?」 「彼女を傷つけるものから」
なんか、喧嘩とまでは言わないけれど 二人の雰囲気が少しだけ変わった。 一護の纏う雰囲気が、少しだけ怖くなる。 かといって有沢は怯む事なく一護に食らいつく。
なんだよ、どうしたんだよぉと口を挟めず、ベッドの上にいる一護に目をやった時 あれ、と思わず目を擦った。
……ん?
一護はベッドの上で、手を後ろについて胡座をかいている。 いやそれはさっきからずっとなんだけど。 ぼんやりと何かが見える。 一護の右腕の間に何か見える。 何かが、一護にしがみついている。
え?
一護の腕の間に、ルキアちゃんが見える。 見間違えか?幻か? いやいやいや どういうことだ?さっきまでいなかったよな?そーだよ、だって一護なんも言わねえし。
それに
なんていうか見たことない感じというか
いつもどっちかといえば腕組をして一護を見上げて小言を言うような感じのルキアちゃんじゃなくて 体全体で甘えているルキアちゃんが、いる。 顔もぴったり一護の胸元にくっつけて 伏し目がちに悲しそうな顔をしている。 悲しそうなのはなんで? いや俺おかしいのか?幻覚みてんのか?
違う、
有沢と一護の会話を聞いて、 そ��な顔をしてんじゃないのか? 一護にしがみついてるのも そのせいなのか?
「あんたの行動で傷つく人もいるんだよ」 「……だから?」 「だから……」 「俺の大事なものを傷つける奴もいるんだぜ?例えそれが悪意なくても無意識でも」
一護は怒ってるとは言わないが、断言するように有沢に話す。 有沢は口をつぐむ。 そして、幻覚なのかわかんねーけど ルキアちゃんが一護の胸から顔をあげてふるふると首を振っていた
「だからって……」
少しの沈黙のあと、有沢が躊躇いがちに話し出した。
「あんたが、一人で悪者になることはないんだ。自分から、身を引くみたいな真似する必要はないんだよ」 「…………」 「そりゃあさ、前みたく、は難しいよ。そんなのわかってる。でも、あんたは悪いことしてるわけじゃないんだ、そうだろ?」 「……そうだよ」 「じゃあ堂々としてろよ。彼女云々なんて言葉でごまかさないで、ちゃんと朽木さんって言えばいい。連れてくりゃいいんだよ皆の前に。曖昧に彼女なんて言葉で誤魔化さないでさ。だって、皆しってんだから。アタシ達は皆、あんたが朽木さんしか見てないの、知ってんだから」 「…………たつき、」 「このままじゃ織姫はいつまでも浮かばれないし、アタシ達だって、あんたと織姫をどう扱っていいのかわかんなくて嫌なんだよ!朽木さん護りたいのはわかるけどそれなら堂々と手を引いて皆の前にいりゃーいいじゃんか!ずっと、ずっとそうだったんだから。織姫だって馬鹿じゃない。でも好きな男には頭も悪くなるし決断も鈍くなるよ。織姫だってわかってんだ。あんたが朽木さんしか見てないこと好きなこと。なのに、それを言わないで彼女がいるとか変な事言うからー」 「でも俺、別に井上に何も言われたことねーんだぜ?それでわざわざ井上に言わなきゃいけねーの?」 「わかってんだろ?悪趣味なこと言うなよ!」 「俺が不愉快なら会わなきゃいいだろ?井上や他の奴等が困るなら、俺をほっといてくれよ!」
全然ついていけない、わけじゃないけど 会話には入れない。それよりルキアちゃんの困ったような顔が切なくなってきて
「やめろよ、二人とも!ルキアちゃん泣くぞ!」
思わず口走ってしまう。え?と一護が驚いた顔して俺を見てから、やはり幻覚なんかじゃないのだ、ルキアちゃんの顔に視線を落とした。
「……浅野、あんた、見えるの?」 「ふぇ?は? じゃあ、有沢も……?」 「え?何?まじ?なんで?」
一番慌てたのは一護だった。 有沢ははぁ、とため息を落として
「見えてるの、あたしも。あんたの腕に朽木さんいるのが。……ごめんね、朽木さん」
そう言ってやはりルキアちゃんのいる場所に目を向けた。
「……なんだよ」
そう言うと一護は徐に立ち上がり、クロゼットからルキアちゃんの脱け殻?を取り出した。ぐたりとしたそれに驚いて俺も有沢もひぃ!と声をあげた。 ルキアちゃんがすっとその脱け殻に入って今度はいつも見ているルキアちゃんが俺達の前に現れた。
「すまぬ、有沢」 「謝らないでよ、それからあたしは朽木さんと一護のこと、責めにきたんじゃないんだよ?その反対」 「反対?」 「朽木さんも、これからは一緒に遊ぼうよ」
照れたように有沢が笑った
「今さらこそこそしないでさ、今まで通りでいてよ」 「有沢……」 「��たしは、織姫の親友だけど、一護との方が付き合い長いんだ。幼馴染ってやつね。これでもさ、大事な幼馴染なわけよ。 そいつが色んなこと気にして下手な嘘ついたり一人で抱え込んでるなら助けてもやりたいんだよ。朽木さんもさ、織姫の事気にすんなって言うのは難しいと思うけど……でも隠れないでよ。寂しいじゃんか」
ルキアちゃんが下を向いてしまった 一護がそっと抱き締めて膝にのせる。な、なにこの甘い一護。って、俺が照れてどーすんだ。
「最初はキツいし居心地悪いかもしんないけど。こんなことでアタシ達は一護を嫌ったり怒ったりしないって。織姫もそう。二人が真剣なら、それを壊そうとか邪魔しようなんてしないよ?……認めるのに時間はかかるかもだけど。���れは仕方ないんだ、誰が悪いとかじゃないじゃん?ないんだよ」
ありがとう、有沢
ルキアちゃんは震える声でそう言った
ルキアちゃんを見つめながら一護は何だか少しだけ泣きそうな顔をしていた。有沢も。 不覚にも、俺も。
俺もそうだ、井上さんが一護の事好きなのは知ってた。一護がルキアちゃんを好きなのも知ってた。そんなのもう、ずいぶん昔から
でも最近は
井上さんが一護に一生懸命な事に 一護が俺達との付き合いが悪い事に
どうしていいのかわからなくなっていた
そしてそれは 一護も有沢も同じだったのかもしれない
「なぁ、祭り行かない?」
場違いな気もしたけど、提案してみた。
「今日空座盆踊りじゃん。4人で行こーぜ」
頼むよ断ってくれるなよ?そんな祈りも込めてそう言えば 3人とも、笑った。
「行くか?」 「うむ」 「あ、じゃあさ、さっきのアイス食べちゃおうよ」 「あ!そうだよ俺あれね、サーティワンラブとナッツトゥーユー」 「一護にはロッキーロードとなんだっけ? 朽木さんには抹茶とイチゴ系選んだけど、イヤならアタシのと変えよ?」
え? あ、そーいやコイツ多めに買ってたよな ルキアちゃんの分だったのか
最初から知ってたのか? ここにルキアちゃんいること
いつのまにか すっかりいつものように寛ぐ有沢と 笑う一護と もう泣きそうな顔じゃないルキアちゃんを眺めながら
有沢って 本当は井上さんと同じくらい 一護を好きなんじゃないのかなと思った そんでもってその愛情は 何ていうか大きくて強くて 何だか無性に胸を掻きむしりたいような 落ち着かない気持ちになった
◾ ◾ ◾
俺と有沢が並んで歩く前を 一護とルキアちゃんが歩いていた。 色とりどりの灯りの雑踏の中、手を繋いで 一護を見上げながら楽しそうに笑うルキアちゃんと 優しい瞳でルキアちゃんを見つめながら笑う一護にからかいたいようなそっとしておいてやりたいような くすぐったい気持ちになる
「高校の頃は、朽木さん苦手だったんだよ、あたし」
前を向いたまま、ぽそりと有沢は呟いた。その顔は穏やかだ。
「そーなの?」 「うん。だって、ぽっと出て来て一護の全部持ってっちゃってさ。織姫の作った笑顔みせられるのも辛くて」 「うん……」 「だから、逆恨みってゆーか。んでもってどこかで朽木さんのこと人間じゃないしそのうちいなくなるだろうしなんて、酷いことも思ってたんだよ」
すごい意地悪だよな、と唇を少し曲げて有沢は笑った。
「それなのに、なぁ……」
笑いながら有沢はもうすっかり闇に包まれた空を見上げた。
「有沢、お前さ、一護好きなんだな」 「は?」 「それも無償の愛っての?」 「なんだよ、それ」
目元をクシャッとさせて笑う有沢に それ以上は言わなかった。 すげーよ、おまえは
独り占めしたい愛 誰にも渡したくない愛 有沢の愛は
愛する男の幸せを願う愛なんだろな
ちぇ、 一護の野郎 なんか色々羨ましい男だよな
有沢の想いを絆を 無駄にすんじゃねぇぞ?
そう思いながらなんとなく幸せな気持ちになって手を繋ぐ二人の間にジャンプして飛び込んだ。
「なぁ!ケバブ食お~ぅぜぃ!」
無理やり手を引き離して俺が真ん中に割り込んで、俺が一護とルキアちゃんの手を繋ぐ。 俺も混ぜてよ~とルキアちゃんに笑いかければ一護の鉄拳に制裁された。 コイツ、洒落も通じない奴だったんだなと改めてわかった。
よくある射的の景品に大きなウサギのぬいぐるみを発見したルキアちゃんは、欲しいぞ一護、あれをとれ!と無茶な事を言い出した。 いやあれは無理だろ、倒れねえだろ と俺と有沢が言っても一護はしかたねぇなぁと挑戦していた。が、やはりウサギは倒れない。 下手くそ、と罵られると拗ねた顔する一護が面白い。 こんな顔するんだなぁとなんだかニヤニヤしてしまう。 よし、ここで俺あのウサギ取ったら一護悔しがるだろーな、と
「よっしゃ!!ルキアちゃん、頼りない一護でなくこの浅野啓吾が打ち落としてみせますよ!」 「ぉお、本当か?」 「ばぁか、無理だぜこれ」 「浅野~、そんな大口叩いて取れなかったら朽木さん泣くぞ?」
いやいやいや、倒れるとは思ってないけど 奇跡はあるかもしんねーじゃん? んでもってルキアちゃんにあの可愛い顔で 嬉しそうにみつめられちゃったりして、そしたら一護悔しがったりとか……なんて調子いいこと考えていると、くん、と腕を引かれた。
「パパ、お願ぁい、あれ、絶対とってね」
……は?
小さなルキアちゃんの上目遣いの可愛い顔で甘えたその言い方はすごい破壊力だった。やべぇ、取ります打ち落とします!浅野啓吾あなたの為に絶対ウサギをあなたのその手にお渡しします!
てか!何なの、その台詞!?
「な、なに言ってんだよ!おまえ!」 「ん?この魔法の言葉を使うと相手は絶対言うことをきいてくれるのだろ?」 「ばばばばかじゃねぇの?誰に教わってんだよ馬鹿!つーか、それはせめて俺に言えよ!あ、や、やっぱいい、そのうちそれ、シャレにならなくなる!」
なんだか笑えるほどに動揺して怒りだす一護ときょとんとして悪びれないルキアちゃんに有沢が腹を抱えて笑いだした。 そんな中俺は、ルキアちゃんの破壊力半端ない甘え方に奇跡をおこしてウサギを倒していたのだが
「なぁ、まじで今のはもうやめろよ?他の奴にあんな事、言うなよ?」 「わかったわかった、しつこいなぁ」 「なぁ誰にそんなこと教えられたんだよ」 「ん?浦原が。何かどうしても欲しいものがあったらそう言えと」 「あんにゃろぅ……マジ一度ぶっとばさねぇとダメだな」
ウサギはもういいんでしょうか? 二人はなんだかいつのまにかイチャイチャしてるし。というか一護がね。
トホホホと今となっては恥ずかしい、大きなウサギのぬいぐるみを店主に渡され抱えていると有沢が手をだしてきた。
「そのうちエキサイティングしてんの落ち着いて気がつくから。あたし持っててやるよ」 「な、なんだよ。手柄とる気かよ」 「はぁ?ばかじゃないの?じゃぁいいわよ、自分で持って歩けよな」 「わ、嘘です!恥ずかしいからお願いします有沢様!」
仕方ないなぁ、と俺の手から大きなウサギのぬいぐるみを受け取り抱えて笑う有沢が ちょっとだけ、なんだか可愛く見える。 横ではまだ一護がルキアちゃんにぶつくさ言っている。
いいな、なんか ダブルデートみたいでさ
「そういやさ」
「あんた、ずいぶん可愛い財布使ってんのな」 「へ?」
えぇ、そこで思い出しましたよ
今日の昼間、財布渡されて 「痒み止め買ってこい10分で戻らなきゃコロス」と姉に家を追い出されていた事を
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⑤第三幕 夏 -夏休み前-
みれい「なぁ。いつになったら学校来るんだよー?」 きいち「だから、学校にはたまに行ってるって。」 みれい「俺たちとエンカウントしない時間にだろー?ああ!ここにバナナ置いたやつだれだ!!」 きいち「人が多い時間に行けないんだよ。入学式初日の俺様を見てればわかるだろう?」 みれい「あの日、ぶっ倒れたもんなぁ。人混みに酔って。おっ!スターゲットだぜ!!」 きいち「それに…。」 みれい「それに?」 きいち「何度か行こうとしたけど、変なやつが付きまとってきて。」 みれい「変なやつ?」 きいち「ちみっこい変なやつ…ゴール!」 みれい「ああ!!いつのまに!きいち、もう1回勝負!!」 クーラーが効いた部屋でみれいは同学年で引きこもりのきいちとマ〇オカートの対戦中だった。 窓の外ではセミたちがここぞとばかりに鳴いていた。 【第三幕 夏 -夏休み前-】 ゆうひ「さて。明日から夏休みだね。夏休みといえば…。」 やも「流しそうめん。」 なた「プール!」 ゆか「サマフェス!」 りゅうや「盆踊り!」 今日は終業式。 夏休み前の最後のテストは全員難なく終え、パフォ部は部室に集まっていた。 ゆうひ「うんうん、間違ってはいないね。でも、僕らはパフォ部。やらなきゃいけないことがたくさんあるよ?」 りゅうや「わかってますって!まずは学校説明会で俺たちパフォ部のアピールをさりげなくする!」 教室にある黒板に走り書きで発言内容を書くりゅうや。 ゆか「『この間の学校よかったよね~あのパフォーマンス部?っていうの?また見てみた~い♡』と思わせ文化祭に来てもらい!」 なた「文化祭ではパフォーマンスを披露し拍手喝采!!『この学校に入りた~い!』と思わせる!!」 無駄にかっこよくなたとゆかの発言内容も黒板に書き、キメポーズで終わらせるりゅうや。 ゆうひ「そういうこと。そのために、僕たちはこの夏休みを無駄にせず有意義に過ごすためなにをすべきか。」 やも「まあ、練習あるのみですよね。演目もまだ決まっていませんし、夏休みはほぼほぼ学校へ通い詰めることになりそうですね。」 なた「夏休み中もみんなの顔を拝めると思ったら…ああ!夏休み最高!新しいカメラ買おうかなぁ!」 りゅうや「あれ?ところでみれいとしんさんは?」 周りを見渡すと、部室には5人しかいない。 やも「兄さんからは何も聞いてないですね。」 なた「みれいしゃんは終礼が終わった途端に走ってどっか行っちゃったんすよね。」 ゆか「トイレ?」 なた「かもです。」 りゅうや「それにしたって長いよね。」 ゆうひ「お腹壊しちゃったのかな。」 みれい「待たれよーーーーー!!!」 勢いよく開かれる扉。 みれい「ふふん!待たせたっすな皆の衆!」 なた「みれいしゃん!お腹の具合はもういいの!?」 みれい「お腹痛くてダッシュしたんじゃないよなたちん。」 ゆうひ「どうしたの?」 みれい「今日は新しい仲間を紹介するっす!」 りゅうや「え?」 ゆうひ「新しい仲間…?」 きいち「いやだから!やるなんて一言も言ってねえから!!」 みれいはきいちを引っ張って来た。 みれい「こいつはきいち!訳あって引きこもりくんなすよ!」 やも「紹介の仕方が少々雑ですね。」 みれい「細かいとこ��は置いておいて!どっすか!?きいちは運動神経いいしばっちりかと!」 ゆか「引きこもりで運動神経いいってw」 きいち「たしかに俺様は引きこもりだけど!身だしなみもしっかり整えて、食生活も乱さず適度な運動をしている引きこもりだ!」 りゅうや「ポジティブな引きこもりだ…。」 ゆうひ「みれいくんは彼をパフォ部に入れたいの?」 みれい「うっす!なぜかというと、こいつ学校には俺たちが授業受けているときにこそっと来て補修とか受けてるんすけど…。そんな高校生活もったいないっす!もっと仲間たちと青春を謳歌しなければだめっす!と思って!でも、きいちは人が多いところが駄目で。それならパフォ部ぐらいの人数なら大丈夫かなーって!」 なた「小学校や中学校は平気だったの?」 きいち「…中学の卒業旅行で観光名所に行ってから。人が多すぎてそれに酔ってだなぁ…。それに!学校へ行き辛いのはそれだけじゃねえ!俺様のストーカーがいるんだよ!」 ゆうひ「ストーカー?」 みれい「話聞いてると、学校へ通い始めて少ししてから付きまとわれてるらしいっすよー。」 りゅうや「こわっ!なにそれ、ちゃんと先生に相談した? きいち「したんだけど…先生が見張りに着くときに限ってそいつ現れなくって…。」 ゆか「先生の行動はすべてお見通しってことか。やるなぁ、ストーカー…!」 ゆうひ「ゆかさん、ちょっと楽しんでない?」 ゆか「え?w」 やも「ストーカーだなんて…そんなひどいことをする人の顔、見てみたいですね。」 しん「みーつーけーたーーーー!!!」 廊下を走り部室前へ滑り込んできたのはしん。 しん「さあ、今日もこっそりと後をつけるぞー!」 しんは部室に入ると壁際に備え付けのロッカーの影に隠れてきいちの観察を始める。 やも「…あれが、ストーカーですか?」 きいち「ああ…。」 みれい「え!?ストーカーってしんくんのことだったの!?」 ゆか「なーに楽しそうなことしてるの!ぼくも混ぜてよ!」 しん「いいよー!おれ、同担歓迎だから!」 ゆかはしんの横に並ぶ。 ゆうひ「ゆかさん、混ざらないの。」 なた「しんぱいせん!隠れきれてないですぞ!」 きいち「おいこらてめえいいかげんにしろよ!」 しん「怒った顔もかっこいー!誰か写真撮って写真!」 なた「ほいきた!」 みれい「…誘った理由としてはパフォ部に所属すれば、話に聞いていたストーカーも近づかなくなるかなーと思ったんすけど…。」 ゆうひ「まさかの部員…。」 やも「うちのバカ兄がすみません。申し訳ございません。深くお詫び申し上げます。」 きいち「ストーカーがいる部なんて入れるか!俺様は帰るぞ!」 やも「まあまあ…ちょっと待ってください。」 きいち「はーなせー!!」 やもはきいちを羽交い絞めして取り押さえる。 りゅうや「そりゃそうだ。」 ゆうひ「んー。しんくん、最近パフォ部の活動さぼりがちだったけど、もしかして、きいちくんの後をつけるため?」 しん「ぎくっ!」 やも「効果音を口で言わないの兄さん。」 しん「だって…さすがに授業には出てないと先生に怒られるし、放課後ぐらいしか時間なくて…。」 ゆか「きいちがパフォ部に入れば、しんくん、ちゃんとパフォ部来るんじゃない?」 ゆうひ「はっ……それだ。」 名案、とゆうひは手を叩く。 きいち「おい!!」 しん「えー!?きっちゃんパフォ部入るの!?それだったら毎日迎えに行くし、パフォ部もしっかり出るよー!」 りゅうや「きいちくん…ご愁傷様。」 きいち「ちょっとまて!」 やも「きいちさん、バカ兄のせいですみません…ふふっ、犠牲になっていただけませんか?」 きいち「ざけんな!なおさら引きこもるわ!てか笑ってんじゃねー!!」 なた「顔がいい人が増える…ああ、なんて幸せな部なんだ!ストロボ買い足そう!!」 なたはいそいそとスマホを取り出し通販サイトでストロボの物色を始め、値段を見ずにポチる。 ゆうひ「きいちくん、パフォ部に入れば身の安全は保障する。」 ゆか「そうだねぇ、ぼくらの目につかないところにいるよりかは、目の届く範囲にいてくれたほうが。」 みれい「そうそう!どう?きいち!なかなか魅力的な…。」 きいち「よし入ろう。」 りゅうや「はやっ!!」 きいち「身の安全が第一だ。」 みれい「おっとこまえー!さすが!!」 しん「やったーーー!!きっちゃんようこそパフォーマンス部へ!」 しんはきいちに引っ付こうとするが、ベシッと叩かれ阻止される。 ゆか「でも…よかったの?ゆうひさん。」 ゆうひ「なんで?」 ゆか「センター作るなら7人のほうが作りやすいとかあったんじゃないの?」 ゆうひ「あまり考えてなかったかなあ。それに、人数が多いほうが華があっていいんじゃない?」 りゅうや「じゃあ今日は新しい部員も増えたし、改めて歓迎会しようか!」 やも「いいですね。おいしいもの、食べに行きたいです。」 なた「あ!ワシのおすすめのお店がありますよー!シフォンケーキがめちゃくちゃおいしいですよー!」 ゆか「わーい!いくいく!」 ゆうひ「クリームソーダあるかなあ?」 やも「パクチーさえ���ければ何でもいいですよ。」 りゅうや「紅茶のシフォンケーキとかあると嬉しいなあ!」 みれい「りゅうや先輩それいいっすねー!」 部室を後にする8人。 ゆうひは部室のカギを閉めながら思い出した。 ゆうひ(あ、合宿の件話せなかった。まあ、お店で話せばいいか。) なたのおすすめの喫茶店に入ったはいいが、おしゃべりに花が咲き、合宿の話ができたのは合宿開始日の前日だった。 明日から夏休み。 ゆうひ、ゆか、しんにとっては高校生活最後の夏休みとなる。 NEXT→第三幕 夏 -合宿-
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混乱する夫18
それでも仕事は山積しており、今日片付ける事は無くとも予定の立案は始末しておかなければならなかった。 ディスプレイに視線を向けて集中している内に、脳裏のざわめきは引いてゆき気がつくと終業の時間となっていた。 昨晩も遅かったので、身体自体はさほど疲労していなかったが帰宅する事にした。 部下にも今日は早めに切り上げる事を伝えると、雨にぬかるんだ駐車場に向かい車に乗り込んだ。 車内の独特の香りは神経をリラックスさせ、座席で大きく伸びをするとエンジンを始動した。 幸いラジオでも渋滞はさほどない情報を伝えており、帰宅はスムーズと言って良いものだった。 自宅に戻ると早い時間もあって空腹感はさほどなかった。 夕食を整える必要も感じず、pcの前に座ると犯人の指定したサイトに接続した。いつになく情報の流入を示す画面下部のスライダーバーをもどかしげに見つめていると犯人からのメッセージの到着を告げる表示が現れた。 遂に犯人が自分が細工したファイルを送ってくるかと思うと、心拍数の高鳴りを感じた。が、自宅で妻が帰宅する事を思えばここでそれをダウンロードする事は得策とは思えなかった。 帰宅してからの再度の外出は億劫なものである筈だったが、ノートpcの入った鞄を持ち上げるとそそくさと自宅を後にした。 特に目的地は決めていなかったが、幹線道路を真っ直ぐに走るうちに閑散とした倉庫街を通り掛かるとハンドルを切り進路をその中にある仕事で取引のある業者の付近に向けた。 自分の位置情報が捕捉されるなら可能な限り自然にみえた方が良いとの判断だったが、姑息な事をしている感覚は拭えなかった。 辺りは暗くなり、人通りも無く物音といえば時折幹線道路から響く騒音のみだった。 車を降り、孤独に照明を灯す自動販売機で飲物を購入するとそそくさと車に戻り犯人の送ったファイルのダウンロードを始めた。 おおよそ1時間は掛かる見込みだったので、再び犯人からのメッセージに目を通すのだった。 ご主人へ 奥様を開発中の映像をお送りします やや手の込んだ方法ですが、奥様の魅惑的な姿を写しています 是非ご覧下さい 恐らくご主人は私の事を憎んでいると思います しかし、私に手が届くことはありえず、当局に訴えでるような危険を冒す事は無いでしょう そこで考えていただきたい事があります 私がこれまでお送りした映像でより多くを見たいと思った事があるでしょう 私は奥様を壊すつもりはありません むしろ、ご主人の要望を叶えて差し上げていると言えます 今の奥様にご主人からこのような映像を見たいと言っても叶う事はありません あと10年先にここで映像が終わりとなっても後悔する事はないでしょうか 美しく乱れる奥様を映像の形で残す機会はこれを於いてないでしょう 一方的であることは承知していますが、ご主人の賛同があればより良いものをお届けします もし、それが不服な承諾であったとしても構いませんし、こちらから従わざるを得ないリスクを提供しそれでご納得いただけるなら、それでも結構です 今後、幾つかご主人にはお願いすることもあるかもしれませんが上記を良くご検討くださるようにお願いします 幾度読んでみても以前の様に怒りに血流を増すことがなかった事は驚きだった。 犯人のメッセージに自分の心情を読み取られているようで不快ではあったが、全くない事と言下に否定できない事も事実だった。 誰しも年齢を重ねれば老いを迎え、果たしてその年齢を迎えた時に犯人からの申し出を否定した場合に後悔が残らないかと言えば迷いを感じない訳にいかなかった。 最愛の妻を凌辱しつつ高慢この上ない文面は、もし目の前に犯人がいるなら誓って息の根を止めるところだったが、できない事を言い訳に最上の、誰にも知られる事のない妻の痴態を見る欲望は消えなかった。 犯人からのメッセージがなければそのような妄想は浮かぶはずもなかったが、窮地にある立場としては犯人に委ねるしか選択肢はないのかもしれないと考える頭は疎ましかった。 考えを振り払おうと、画面を下らない情報サイトに移したが文面に集中する事はできなかった。 ダウンロードが完了するまでは確定しなかったが、それに犯人につながる情報が含まれていると思えば、まだ解決の余地は残されていた。 そうとすれば決断する必要さえもなく、ただ待つだけで良いとも思えた。 ダウンロードが完了するまで30分程となったので、今一つ集中できないサイトを離れ、若者が撮影した女子社員の机の下の映像を開くのだった。 再び見るそれでも、おそらく妻と思われる画像に食い入るように見入った。 幾つかの写真をみても、やはり制服のスカートは自分の知る長さだった。余程脚を開かない限り股間まで光が届く事のない覆いを見たが、昼間に見た妻の下半身との一致は見出せなかった。 ため息をつくと、他の女子社員のものに視線を向けたがその長さは今日の妻との一致を見た。 よく考えれば妻のスカート丈はようやく他の女性と同じになった程度の事で心配する程の事はないと自分に言い聞かせるのだったが、犯人の束縛がないであろう社内で何故そのような変化を見せたのかは説明したくな��った。 妻の着衣で肌を露出する面積を増すことは単に自分を良く見せたいという女性らしい心情を満たすのみであれば良いのだが、それは必ず男性からの視線を意識することになるのだった。 妻を賛美する視線には性的なものも含まれると思えば愉快ではいられなかった。 画面をみているうちに急にやりきれない気持ちに襲われ映像を閉じると妻の携帯の位置情報サービスの画面を開いた。 夏祭りの打ち合わせがあるとのことだったが、夏祭りの準備をしている自分にも妻が夏祭りで何かをするような話は聞いていなかった。 妻の行動に疑念を持つことは誤った考えと知りつつ画面を操作し得られた情報を見ると、その位置は会社からさほど離れていない町内の体育施設だった。 公の施設でもあり、疑念を持つような場所では無かった事に安心すると考えを巡らせたが、夏祭りの打ち合わせならば社内ですれば良いところに社外に出ることが分からなかった。 夏祭りの準備で当日の進行は大体頭に入っているのだったが、特に妻が参加する予定はなかった。職場が事務部門なので何かの手伝いに駆り出されることはあるかもしれなかったが特段打ち合わせが必要なものは思い浮かばなかった。 ふと出し物以外に頭を向けると、ステージの演目に考えが及んだ。 夏祭りではグランドの中央に盆踊りの櫓を仮設業者に依頼して作るのだったが、同時に中央近くにステージも建てそこで近隣の学校や団体の発表を行うのだった。 子供の太鼓や空手教室の演武などは微笑ましいものだったが、時代なのか一昨年あたりからチアガールの発表に大きなカメラを持ち込む輩も増え会場の整理に気を使わねばならないなど苦労が増えているのだった。 昨年は社内の女子社員がダンスを披露し、団体名のみ記憶していたところで社内の女性集団だったので驚いたのだったが、出場枠は抽選となっているので公平性の点を危惧した事もあった。 実際には事後の反省会の席で年配者のフラダンスなどよりよほど華があって良いとの事で安心し、年配者からはそこまで気を使わなくても会場を提供する会社に感謝こそあれこの点を問題とするような事はあり得ないとの言葉を貰い胸を撫で下ろしたのだった。 その余波として社内で非公認のサークルができているという話は妻から聞いていた。 昨年は仮設業者を変更した事で予算が余り、それを見透かした業者が特別価格で照明と音響設備を提供するとの話に乗った事で舞台が派手になり評判も良かった。 今年は出場団体が事前に照明効果の打ち合わせを業者に依頼する仲立ちが必要になったと同僚から嫌味を言われた事を思い出すと心中穏やかでは無かったが、近隣地域の同種の祭りとの差を気にする地域柄今年は無しにする選択は無かった。 業者の思惑にまんまと嵌ったような気がしないでも無かったが、町内会の会長の面々は表立って言わなくても近隣の祭りとの差に満足しており、それが祭り終盤の花火大会の協賛金増額に表れていた。 余計な事まで考えが及んだが、おそらく妻は夏祭りのステージでの演目に関係していると想像することで一先ず安心できたのだった。 画面のダウンロード状況に目を移すと、気づかぬ間に終了していた。 いつものように圧縮されたファイルを解凍すると、そこには映像ファイルがあった。 そのファイルにはおそらく犯人による妻を凌辱した映像が収められている筈だったが、いままでの物と異なる点はそれが事前に自分が細工した可能性がある事だった。 ふと気が付くとその映像に目を通していなかった事に驚いた。妻が送ろうとしたファイルを自分で細工したものと入れ替えした記憶は鮮明にあったが、いままでその映像ファイルに目を通す事がなかったのだった。 そう思うとファイルにポインタを当てダブルクリックするだけであるのだったが、理性は優先順位を叫んでおり指の動きを押しとどめた。 あらかじめノートpcに設定したあったアプリケーションを開くと、その画面はシンプルにファイルを選択するボタンのみだった。 いま解凍したファイルを選択すると、アプリケーションは暫く処理中である表示を見せたかと思うとすぐにその表示は処理終了に変わり、画面下部の表示領域にそのファイルの設定値の集まりを映し出した。 妻の痴態映像を見る時のように心拍数が急増するかと思っていたが、自分の身体に変化はなかった。 それはただ散文的に退屈な事務処理をこなす時のように画面に映る処理をこなす時と同じだった。 事務的なpc画面をみれば体調に変化の無い自分が奇妙ではあったが、画面に映る文字列の解読にはいった。 上から順にファイルの作成日、作成者と普通の設定があり、その後に映像のフレームレートなど詳細な設定があったが、その末尾周辺に目指すものがあった。 自分が求めたものは、そのファイルを扱ったpcに設定されているインターネットへとつながるゲートウェイアドレスと、接続したルーターのMACアドレスだった。 どちらとしても、ゲートウェイアドレスが会社など識別できるものか、ルーターが公衆に繋がるものかである可能性に賭けたのだった。 先ずゲートウェイアドレスに望みがない事が判別できた。それはプライベートなネットワーク内で用いられるもので個人の特定に用いるには用を成さないものだった。 やや苦い思いをしながら、次のルーターアドレスを見ると希望が蘇りその文字列をコピーした。 ブラウザーを開くとブックマークしてあった公衆MACアドレスの検索サイトを開き、それを貼り付けして応答を待った。 画面の更新がない事に焦りを感じる間も無く、画面には緯度経度が表示された。 もともとはGPS衛星の情報によらず、あらかじめ公衆MACアドレスの位置を示したデータベースからPCの自己位置を調べる為のものだったが、然るべき方法をとれば逆引きすることもできるのだった。 別に開いた地図サービスから指定した緯度経度の場所をみれば、首都圏のベッドタウンといって良い住宅地の中にあった。 可能性としては会社など団体のもので個人の特定は難しいのではないかと考えていたが、画面に表示された戸建が並ぶ住宅地にあっては特定が容易なものと思われた。 いままで雲を掴むような犯人の捜索に大きな手掛かりを得たことは大きな収穫だった。 どのような理由にせよ犯人の行為は社会的にも個人的にも許されるものではない事は確かで、適切な手段で犯人を捕らえる必要があった。 犯人からの脅迫にあるように、適切な手段で行わねば必ず妻の将来が閉ざされると思えば安易な行動は慎まなければならないのだったが、いまからも地図の位置に赴きたいと思う思いは冷めなかった。 今は行動を起こすよりも、計画を立てるべきと自分に言い聞かせるように地図の位置をインターネット上で検索するとめぼしい建物は2つに限られた。 航空写真でみれば一つには車が2台、ワンボックスのワゴンと軽自動車のようだった。もうひとつの家には黒いセダンがあることを考えれば、前者は否定できるように思われた。 目を皿のようにして仔細に観察すれば、前者に庭には子供の遊具らしいものが写す影があり、犯人の人物について詳細は分からなくても、家族を持っている印象はなかった。 安易に結論に飛びつく事はできなかったが、差し当たり近日中にこの2件の登記簿をみれば姿を現さない犯人を明らかにする事ができるものと思われた。 身体が震える程の喜びを感じたが、果たしてここ最近の出来事からその感情が適切なのか、あるいは陰湿なものではないかと自問するのだった。 そのまま満足感を得たまま帰宅する選択もあったが、ハンドルに手を掛ける前にダウンロードしたファイルを開いてしまうのだった。 画面は日中の揺れ動く街中の映像で始まった。映像の場所は自分の記憶には無かったが、立ち並ぶビルに飲食店などが見えるところを見ればどこにでもあるオフィス街のようだった。 カメラは犯人の鞄に納められてるのか、しきりに揺れ動く画面は自分が犯人のうちにとらえられているようで不快感を催すのだったが、犯人の歩みは信号のある横断歩道をわたった先にあるビルに進んでいった。 そのビルは1階に不動産屋が入っているらしいこと以外は特に特徴もなく、明るい外からビルの中に入った事で一瞬画面が暗転した事には戸惑ったが、徐々にカメラの昨日が働きだし、内部の様子を明らかにしていった。 さほど新しい建物ではないようで、一昔前の建物のようにエントランスは狭く、エレベーターの奥にビルに入居している店舗の一覧が金属製のプレートに示されていた。 犯人はこの建物を知っているように迷いなくエントランスの奥にあるドアを開けて階段を登ると3階と表示のあるドアでフロアに出た。 そこはビルの外観に比して小綺麗にカーペットが引かれ、壁も染みひとつなく単色の場所だった。 意外に感じたが、一瞬写った看板には、司法書士か弁護士の事務所らしい表示があればそれも納得出来ることだった。 犯人は迷いなく男性トイレのドアを開けると、一番奥にある個室のドアに歩み寄った。 そこに妻が写し出される可能性が頭に浮かぶと一気に鼓動の高鳴りを感じたが、内開きのドアの中は無機質な便器がその清潔な白さを持って不浄な自分の心中を見つめているのだった。 ひとまずそこに妻の姿がないことには安堵したが、犯人の意図が読めないことには混乱が増すのだった。 画像はやや高い位置にある小窓に向かうと犯人の手はそれを開けた。 その時画像が乱れ、自分の視野は犯人によって幾度も振られると唐突に画面は白くなった。 画像は突然外に向け��れた事に抗議するように白く曇ったが、建物に入った時のようにやがて鮮明にトイレの窓から写された外の様子を写した。 犯人の意図は即座に理解できた。 視線の先には道路を挟んで向かいにあるビルの3階にある喫茶店を写していた。 そのビルの窓越しに通りに向かって座る女性は妻であることに疑いは無かった。 カウンターテーブルの上では白いブラウスを着た妻は携帯電話に目を遣りやや俯き加減で写し出されていた。 そこまでは何ら問題にする点は無かったが、カウンターテーブルを挟んでその下部は自分の心臓を締め付けるに十分な光景だった。 妻はやや短めというには過ぎたグレーのショートスカートを履いていた。普段膝より上を見せるスカートを履くことは珍しい妻だった。 向かいから見れば座っていることで太股まで見えてしまう危機感のある衣服を見に纏っていることはその伴侶とすれば自分意外の者に性的アピールをしているようで不愉快だった。 ショートブーツから優美な脚線は黒いタイツにおおわれていたが、その末端に視線を写すと、それはスカートに隠れ切っていなかった。 それを確実と言い切れるほどには鮮明ではなかったが、その時犯人が映像を妻の下半身一杯にズームしたことでそれは確実になった。 正直、妻は出会う誰にでも美しいと言われる訳では無かったが、少なくとも男性であればその胸の膨らみと脚線美には惹かれるものがあるのではないかと思われた。 妻が自分意外に誘惑される可能性が相当に高くは無いと思える事は安心と同時にその全てを知る自分の満足ともなっていたが、公衆の面前でここまで大胆な服装では自分の知る妻の中を晒けだす事はそれを削り取るに等しい振る舞いだった。 映像からも滑らかさを感じる妻の膝から太股に黒色の脚線をなぞった線は突然白い柔肌に続いていた。 それは良識ある女性ならする筈もない角度で股は下品に開かれており、両足の合わさる場所にはそれが確かに分かるショーツが白い光沢を上に被さるスカートの影にあってさえ見せているのだった。 公衆の面前で妻がそのような姿を見せている事は信じられない光景であったが、全く普段と変わりないカウンターテーブルの上との差異が日常と非日常を分けていた。 呆然とする前に慌てて視野の橋をなぞったが、ビルの3階ともあれば地上からそれが見える可能性は無視していいのかもしれなかった。 よく見れば妻の座る席の位置はガラスより幾分交代しており、それは建築者の当然の配慮だと思われた。 何度見ても携帯を散文的に眺める妻の上半身と対照的な非常識さを写す下半身はそれが意図して行っているようだった。 座れば太股を露出するような姿をしてまで股間をだらしなく開く事は考えられず、以前スーツ姿を纏って電車の車中でもきれいに膝を揃えている事を尋ねた記憶が甦った。 隣り合った妻のそれを眺めて、自分も試みたところ妻は突然吹き出し品を作ったオカマのようだとくすくすと笑うのだった。 妻は女性は自然とスカートを履けば膝を開かない事を意識せずとも出来る事を話すと急に小声になり、そこを見せるのは自分だけと恥じらいながら言ったのだった。 妻がかつて言った、そこは今や意識して開かれているとしか思えず、その鈍い白さに目が奪われた。 自分のいる対面のビルからはそこが見えると思えば焦燥感に駆られたが、この映像が既に過去の事であればもがく余地のないことは自明だった。 映像は数分の事だったと思うが、妻が羞恥に耐えられないのかその太股を微妙に閉じようとする度に微妙な陰影がさらに陰猥な影を作った。 妻が少しでもスカートを伸ばそうと手をその端に掛けて軽く座り直した時など、座る角度が浅くなってしまったのか、ショーツが秘部を隠している場所を示すクロッチが見えてしまったのだった。 犯人は期を逃さず、妻の股間を画面一杯に広げ、強制的とはいえ妻との性交でそこに舌を這わす時と同じような妻自身の香りが鼻腔に広がった感覚を覚えた。 すぐに妻は姿勢を直してしまったが、その性的魅力に溢れた映像を���した事で先程とは別種の焦燥感を覚えた事に自分の複雑な感情にいまさらながら気付くと同時に男性としての恥じらいを覚えるのだった。 いつまで妻を嬲るつもりなのかと自分の無力さを感じていると、画像は自分の希望を叶えたように妻の太腿に力が入ると立ち上がる姿を写した。 カメラが急に引いても視線はスカートに隠された妻の股間ばかりに向いていた。 妻は立ち上がると奥へと歩いてゆく姿を僅かに写すと視界から消えた。 これで映像が終わるのかと、あっけなさを覚えた自分を即座に戒めているうちに店の奥側にあるボックス席に数人の若者が座っていった。 それは盗撮というよりただの日常を描いているようで、自分が学生の時分に煙たがられながら喫茶店で友人と過ごした事を思い出した。 他愛もない事を思い浮かべて若者の集団を眺めていると、その脇を女性が通りかかる姿が目に止まった。 それが妻とはすぐに分からなかったのは普段は留める事のない髪を後ろで結い頭全体が一回り小さく見えた事、そして先ほどまで纏っていたブラウスを小脇に抱えていたからだった。 さほど暑い季節でもなかったがブラウスを脱ぐほどでもないかと考えると頭に疑問符が浮かんだ。 妻は先ほどまで腰掛けていた椅子に元通り座るのだったが、先程と同じように見えない違和感があった。 漫然と眺めてもすぐには判らなかったが、その理由はすぐに判明した。 本能的に妻の見事な曲線を描く脹脛に視線を向け、それを徐々に上方へ移してゆくと妻はそれに反応したように躊躇いなく柔らかな肉体で閉じられていた谷間を開いた。 その時には妻は俯いており視線をカウンターに向けていたが、時折左右を確認するように顔を振る仕草で妻の表情は赤面している事が分かった。 飽きる事なく再び犯人によって視線は妻の股間に集中していった。 それから顔を背ける事はできず拡大してゆく映像を見つめていると、スカートの影に隠れてさえ白さを見せたショーツは確認できなかった。 急に高まった鼓動を抑える事なく抽象画のように妻の股間だけを画像は遂に妻の秘所が直接外気に触れていることを示した。 下品に開かれた妻の太腿は白さを翳らせながら股間に伸び、その中央では柔らかな薄い陰毛が申し訳ていどに生えていた。 そのすぐ下からグレーのスカートが座席に触れていた箇所に僅かに妻の性器の始まりであるやや色を濃くした部分を確かに捉えていた。 それがある種の性的な戯れである事程度は知識にあったが、それが現実に妻に起こり得ていることは衝撃だったが、直接犯人が妻と性交渉した場面に比べれば幾分救われるものではあった。 が、しかし映像はその程度で終わるつもりは無いのだった。 カウンターテーブルを挟んで下半分は恥じらいの影もない下品なものだったが、まだ上半身は妻の表情を除けば日常のものだった。 妻はビルの下から視線が通らない事を確認するように二三回下方を見やると、緊張しているかのように無表情なり、おもむろにスカートにたくし込まえたキャミソールに手を掛けた。 まさかと思ったが、妻の腹に白い肌を目にしてこれから見せられる屈辱を想像した。 おずおずと妻は片手でキャミソールを持ち上げていたが、やや余裕を持った布地は胸に向けてぴったりと張り付いており、股を開き腹を晒した状態で妻は止まってしまった。 妻は躊躇いがちに顔を下に向けると、腕を胸につけたまま徐々に二つの性的秘所を晒していった。 乳房の下あたりがようやく見えようとした時、そこに本来あるべきブラジャーの姿は無かった。 妻は豊かな胸でもそれは張りがあり、立ってさえその頂点はやや上方を向き裸体の妻と触れ合う時は、妻が恥じらいを浮かべていても二つの乳首は自分に挑戦するかの如くこちらを向いているのだった。 そんな事を考えていると、妻の動きの遅さに苛立ち、場違いな感情にさらに苛立っている自分が情けなかった。 遂に妻の胸を覆う布は乳首まで晒すと、それを通過する瞬間それが僅かに跳ねる動きを見せた。 それは残酷な事実だった。 自分が妻の乳房を見る時は大抵性行為の際だったが、稀に数回の交わりで妻が疲労にそのまま寝てしまった時など、朝に目にする妻の乳首は自分が吸い付いていた時より明らかに勃起していなかった。 その場合は目覚めに妻の胸に頭を埋め幸せに浸るのだったが、画像の妻のそれは性行為時と同じように屹立していた。 羞恥心のある女性であれば有り得ない姿を晒しては止むを得ない事だったが、妻が性的興奮にあると理解出来ることは限りなく不愉快だった。 片方に乳房は乳首寸前で止まっていたが、もう片方は僅かに正円を外れた事でさらに魅力的なフォルムの白い乳房全体を曝け出していた。 アダルトビデオの様に動きがある訳でもなく、ただ妻は片方の乳房と股間の性器を正面から見せているだけだったが、それは自分自身の視点で見る妻よりセックスアピールに満ちていた。 ふと、頭に犯人の言葉が浮かんだ。 あと10年先にここで映像が終わりとなっても後悔する事はないでしょうか 美しく乱れる奥様を映像の形で残す機会はこれを於いてないでしょう このまま犯人によって撮影された映像を見ることが絶えても構わないと心の底から言える自信はあった。 が、画像の妻がしきりに頭を左右に向ける事で柔らかを示すように揺れ、そのたびに乳首が僅かに方向を変える事に視線が集中している自分には僅かな動きと同じようにその自信に揺らぎを感じるのだった。 どれくらいの時間たったか、短いといえば短く、長いといえば長い、苦しみと陰猥さが混じった画面の下をみると、まだ映像が始まってから15分程度の出来事だった。 漸く妻は股をピッタリと閉じると、腕の動きが不自然にならないようゆっくりと胸を隠していった。 薄いキャミソールは妻の胸に張り付き、今までの乳房を隠す事がさらにその形を知っている事で興奮を増すようだった。 それに目を留めている間に妻はブラウスで胸を隠してしまった。 いま��過剰に乳房の形を示しているキャミソールを除けば他は普段と変わらぬ姿になった妻は、半分飲みかけのグラスを手に取ると、その場を去っていった。 ボックス席の若者の頭が一斉に動いたところを見れば、妻の胸に一枚しか纏わぬ姿は彼らの視線を浴びせるには充分に性的魅力に富んでいる妻の姿を思い描いた。 映像の余韻も残さず画像は一瞬暗転するとすぐに次の場面を映し出した。 何の変哲もない駅前の雑踏のようだった。 どこの駅かと探したが、おそらく駅ビル付属の入り口は画面の隅にあり鮮明にそれを読み取る事は出来なかった。 いずれ妻を写すのだろうと思っていたが、映像は一向に妻の姿を見せなかった。 人の動きよりその風景に注目していると、まるでそこは無人の駅前のように錯覚に陥り我に返った。 と、犯人の意図が読み取れた。 その姿がさほど大きく無いので確実とは言えなかったが、状況からそれが妻であることは間違いないものと思われた。 駅前の広場の傍らにあるベンチに妻は腰掛けていた。 普段掛ける事のないサングラスを掛けている姿は確信までは言えなかったが、その身体とグレーのスカート、ショートブーツは先程の妻の姿だった。 が、その上半身には薄い布一枚が覆っているだけだった。 それは先程までキャミソールかと思っていたが、肩にかかる部分がストラップでないため、黒のタンクトップだったと分かった。 が、幾分暖かとなったとは言え、周囲の行き交う人々から比べるとやや珍奇な服装であることは確だった。 妻を写す映像は幾分角度がついていたので、胸の膨らみが魅惑的な曲線から頂点からピッタリと張り付いたタンクトップに抑えられていた。 喫茶店の映像から考えれば、薄いタンクトップの下には妻の素肌しか無いものと思われた。 サングラスを掛けてそのような姿をしていると、穏やかで優しい妻のする服装とも思えなかったが、肌に張り付いたタンクトップにショートスカートからのびる黒いタイツの優美な曲線はモノクロの色彩でありながら扇情的に見えた。 これでは、既婚とも思えない露出の激しい風情の印象の異なる妻に戸惑っていたが、それは妻の異なる美しさに目が向けられていない自分を責める材料となった。 混乱したまま、映像に目が慣れてくると、通行する男性の視線が妻に刺さっている事に気がついた。 盗撮そのものなので当然だったが、露骨に視線を向けたまま名残惜しいように一瞥をくれて駅に歩み去る年配の男性や、性的興味そのものといった視線を妻に向けながら不躾に妻を舐め回すように歩く大学生らしい集団が煩わしかった。 自分の妻をまるで娼婦のようにその内面も知らず、肉体それだけを好色な視線で見る男性は許しがたいものだった。 妻を失うのではとの危機感が背筋を登ったが、なぜか衆目に晒されている妻は限りなく淫らに映るのだった。 通行人を怒り混じりの感情で眺めていると、ふと妻の傍らに一人のスーツを着たサラリーマンらしい若い男が立っていた。 その男は携帯を眺めており、特段不審な点は無かったが、注目しているうちに、時折妻を見る視線に気が付いた。 よもや公衆の門前で妻が犯罪に巻き込まれるとは思っていなかったが、その男は携帯を目線から外すと地面に垂直に向けた。 最初はその意味が判らなかったが、男がそうするたびに携帯を熱心に眺めている様で行為の意味が理解できた。 男は妻を盗撮していた。 赤子を撮影するためと銘打って撮影時の音を無音とするアプリがあることは知っていた。 とするなら、そのような姿をしながら背筋を伸ばし豊かな胸をさらに強調するような姿勢でいる妻を側面からの映像で自身のものとしているのは確実だった。 その妻の全ては夫である自分のもの、男には見えない覆われた胸も、股間の秘部も自らの瞳孔に写したものと思えば、男に対して優等感が込み上げたが、この場で行為を止められない無力感がそれを曇らせた。 妻は人を待っているように何気ない様子で携帯を見つめていたが、逆にその姿勢に固執している姿は妻が感じている恥じらいを示しているのだった。 無防備に身体の線を外に晒したまま妻はその肉体を気づかないまま性的欲求の被写体としていた。 そうしている内に、同じ事をしている一人二人と男性は増え、一人は妻のやや前で鞄を取り落としたところを見れば徐々に遠慮の無い輩が増えつつあるのだった。 危機感を増す映像のなか、優等感より屈辱感が増しても、今の怒りは犯人より妻を視姦している男たちに向けられているのだった。 時刻も午後に入ったのか、木々の影が伸びているところを推察するとおそらく午後3時あたりではないかと検討をつけると、妻の帰宅まで考えれば映像の終了が期待できた。 妻の肢体を嬲る視線は不愉快極まり無かったが、妻が腕時計を一瞥すると立ち上がった事で、周囲の男性は一斉にわざとらしいほど何気ない様子に移る姿は滑稽なものだった。 妻が周囲に表情を向けた時、妻はいまさらながら晒しものになっていた事に気が付いたのかと思ったのだが、サングラスを掛けていても、その表情はやや離れた映像でも朱に染まった様子が見えた。 妻は性的魅力を発散していた事を知りつつ行っていたのかと疑念が湧いた。 それを振り払おうとしても、歩み去る妻を物欲げに見つめる数個の視線を見れば繰り返しその疑念は冷静さを願う自分の頭を流し去るのだった。 妻が画面から消えると画像は次の場面に移るかと思われたが、急に画面が揺れたかと思うと、次第に安定してゆくそれには駅への歩む視界が映し出された。 映像が途切れない事を疑問に思ったが犯人によって固定された視線からはその意図が判るはずも無かった。 駅へと近づくにつれて駅名の看板からその場所が分かった。 首都圏に住んでいた頃には、数度所用で訪れた事がある場所だったが、数年前の事でもあり、今更映し出された事で記憶が甦っても、それはただ苦い感覚しか呼び起こさなかった。 駅ビルに入ると軽い足取りで階段を登る映像からは、存外犯人は若いのかもしれないと思われたが、駅ビルであればエスカレータでもあるところ、わざわざ階段で登る犯人の意図は判りかねた。 やがて数階を登り、フロアにでると薄暗くそこがどこか戸惑ったが、装飾からすると見知った映画館だった。 そこが目的地とは思わなかったが、犯人は迷いなく事前発券機の前に立つと自分の視線はその無機質な単色に埋められたが、数秒で犯人は手続きを終えると館内の入り口へと進んだ。 カメラを回したまま薄暗い通路を進む犯人と意図が映画の盗撮にあると考えるには先程までの映像には無理があった。 重そうな扉が開くと、映画の上映前の宣伝が流れており、重低音がスピーカーから流れ出る度、軽いノイズが響くことは不快だったが、映像が明るくなったことは有難かった。 視線を隈なく座席に座る観客に向けたが、既に流行りを終えた映画なのか、午後のこの時間では席に座る人影は両の手で容易に数える事ができた。 その中に女性もあったが、妻の姿は無いのだった。 犯人は最後列の席に腰掛けると視界は座席の背しかなく、その映像が続く事が不安を煽った。 自身が焦れていることを見透かすように照明が落ち、画像も黒い画面を写すだけになると変化が訪れた。 朧気ながらスクリーンに映し出された映像に反射した光が犯人が移動している事を知らせた。 幾つかの座席を渡り歩く先には女性の頭があった。 それが妻であるかどうかは判らなくても��犯人の腕が伸び女性のなめらかな曲線を描く肩に触れた事で妻であろう事は明らかだった。 妻は反射的に頭をこちらにもたげたが、それは犯人の指先が妻の顎に触れた事で止まった。 顔は見えなくてもうなじから伸びる曲線、髪型そしてなによりシャツで隠していてもその隙間から見えるタンクトップがピッタリと張り付いている事で判る胸の膨らみの大きさは妻である事を確実とした。 数人でも観客のいる席で淫らな行為に至るリスクは、慎重をおす犯人らしく無いと危機感を募らせたが、それを宥めるように犯人は紙袋を妻の隣の席に置いたのだった。 それから犯人の動きは無かったが、妻は視線を前に向けながら無造作に取り上げた。 妻は物音を立てないように慎重にそれを開いたが、いずれにしても音響によりそれが他に気づかれる事は無いと思われた。 妻がそろそろと手を袋に入れると、一枚の紙片を取り出した。 それには何か記入されているように見えたが、それを自分が読解する前に妻はそれを丁寧に折りたたむと、紙袋に戻した。 それきり動きが無い妻の行動から、文面を推察もできないまま混乱に陥っていると、画面は座席の上から戻り、座席と座席の間に向かった。 それは柔らかな素材と知りつつも、視界をその閉塞された空間に押し込まれる事に軽い恐怖を覚えたが、数秒で視界は座席の間から抜け出した。 最初に映し出された抽象画のような映像には戸惑ったが、犯人は座席から操作しているのか、すぐにピントがあった。 画像は座席に掛けた妻をやや角度をつけて上方から覗き込んでいた。 良からぬ行為をすることは分かっていたが、どのように展開するか判じかねていたが、妻が姿勢良く掛けていた腰を前方にずらすと、その腕は大胆にスカートに差し込まれた。 この場で下着を脱ぐ行為に緊張が高まるとともに、喫茶店以降下着を着用していた事実に安堵する間もなく、両手で張り詰めた白いショーツがスカートから出てくると、膝上でそれを止めた。 公共の場で有り得ない行為に及んでいる妻が信じられなかったが、次の行為はその不信を打ち砕いて余りあるものだった。 だらしない若者が腰掛ける時のように腰を座席の縁まで進めると、自身がそこに注目している間に取り出した醜悪なデザインのディルドを股間に侵入させた。 その時スクリーンが明るくなったことで、局部はスカートに覆われていても、あと数センチで妻の性器に侵入しようとする性具が映し出された。 それは明るさの中にあってもあくまで黒く妻の胎内を舐る暗黒面を示していたが、同時にそれを受け入れようとする妻の腕にそれが余っている様子は太さ長さとも自分の男性器と比較せずには居られなかった。 妻がわずかに仰け反るような動きをしたことで、性具の先端が妻の秘部に触れたらしい事が察せられた。 行為を止める事が叶わない映像では成すすべは無かったが、その後ゆるゆると妻の腕の誘いにより胎内に侵入する性具に疑問が湧いた。 知る限り妻との性交時は前戯で受け入れ安いようにそこを解すのだったが、当然そこが最初から潤っている事はなかった。 あるとすれば、自宅で鑑賞した映画で濃密なベッドシーンを見てから、たまらずにソファに押し倒した時、それにストリップと称して自分の誕生日に卑猥な下着を身に着け、自分にその肢体を見せつけて戯れた時くらいしか記憶に無かった。 が、さほどの抵抗なく妻の表情も変わらず挿入されてゆく性具、見ている間にスカートに全てが隠れてもなお妻が自身を穿つ事を止めない姿は、先程の駅前の露出と呼んで差し支え無い行為を想像させた。 映像が途切れないと言う事は、妻が幾多の性的視線を浴びてからさほどの時間が経過していない事を示している。 妻とて股間を拭う事程度はしているかもしれないが、清楚と呼ばれる妻でも男性の欲望に満ちた視線は股間から清楚を流し去る液体の分泌を促すのかもしれなかった。 ただ、それが自分の視線でなく晒し者にされた挙句に出現した妻の身体的性癖とすれば、ただ不愉快だけと言えない感情に股間が緊張した自身に戸惑うのだった。 性具は最後まで妻に埋まったのか、妻は痴呆者のようにだらしなく口を開くと何かを呟く様にそれから数度息を吐くと膝に留まったショーツを再びあるべき場所に戻そうとした。 我に返ったのか、挿入時の緩慢な動作から比べると素早い動作に見えたが、腕をスカートの中にたくし込む動作が瞬時に止まった。 それがショーツを履くことで自身の胎内を穿つ異物をより深く挿入してしまう事に思いが至らない程慌てていたのか、あるいは股間から脳に送られる女性と仕手の声に意識が濁っていたのかは判らなかったが、その両方であろうと思えた。 先日の直接妻が犯される光景と比較するなら、まだマシとも言えたが言いようの無い感情が頭を支配していた。 急に妻は所在なげに周囲を見渡して警戒すると映像に目を向けた。 それがどのような映画なのかは角度の関係で判明しなかったが、時折チラチラと明るくなる画像からは、やはり盛りを過ぎたアクションものかと思われた。 別段犯人の指示は無かったが、妻はだらしなく腰掛けた姿勢が気になるのか、腰をそろそろと引いていった。 それが更なる陰猥な欲望のためとは思いたくなかったが、元通りに近い姿勢に戻ると妻は特段不審な点など無いように振る舞っているように見えた。 が、妻は鞄からハンカチを取り出すとそれを再び腕で股間に伸ばしていった。 座席を汚すほどの愛液が股間から溢れているのかと、妻の股間の節操の無さに苛立ったが、女性がこの状況でどれだけ耐えれるかには想像は及ばなかった。 目的の場所にハンカチを敷く事が出来たものと見え、腕はすぐに出てきたがその後から妻の奇妙な行動が始まった。 シャツが胸を隠しているか確認するようにボタンを優美な指で弄っていたかと思うと、次には座った姿勢ではスカートに隠れきっていない大腿を隠すように膝上まで落ちたタイツを引くのだったがその所作の全てに不自然さを纏っていた。 ぎこちない動作は全て股間に杭を打たれている事によるものと分かっていても、身じろぎする度でも僅かに姿勢を移す妻の感情は判らなかった。 数度目にタイツを弄っているところその時は来た。 突然音響が地鳴りのような音を立てると、画面に注目していなかった妻は急に背を伸ばすと驚いた時に良くするように片手を広げて口に当てた。 映画の音響如きで妻は痺れた様にそこに静止していた。 先程の醜悪な黒い物体と、それを埋め込まれた妻の下腹部のサイズを想像すると、おそらく実物以上に強調されたその頭部は自分が未だ到達していない子宮口まで届いているかもしれなかった。 頭に妻の下腹部の透視図を思い浮かべると、外周のクリトリスや膣口が犯人の手により嬲られるより一層その奥底を犯される図が眼底に映し出された。 妻は驚きにより咄嗟にとった姿勢によりそれを深く奥底まで咥え込んでしまったのだった。 横顔でも妻は無表情を保っていたが、それが下半身の状況を示していない事は不自然とも思えたが、それを抜き取るためかそろそろと腰を前に動かすと再び妻は片手を口にあてると、その先に顰めた表情が目に入った。 意に沿わず公衆のなかで醜態を晒している妻は最大限の自制心をもって性的被虐を耐えているようだった。 しかし、男性の視線を浴びて興奮状態に導かれた妻の身体は股間のそれを抜き去る事を不可としていた。 やや額に皺を寄せながら妻の視線はスクリーンに向けられていても、横顔に映るその瞳は虚ろだったり、何かを求めるような熱情的な視線と移り変わっていた。 その心を推し量るまでもなく、表情は腰の僅かな動きと連なっていた。 妻の性器は全てを満たされ、男性器で感じられる全ての暖かで微妙に感触を変える膣から子宮口にいたる肉壁はディルドに密接していた。 激しい抽送でなくとも性的快楽を妻の脳髄に伝える濡れた内腹部は、わずかな動きでもその摩擦を快楽に変換し妻を単一の感情に陥れるのだった。 身体の芯に杭を打ち込まれ、それに抗う事はさらに妻を痺れさせてゆくように呆然と視線をタンクトップとスカートに覆われた妻の痴態に置いていた。 痺れが遂に妻の理性を決壊寸前まで追い込んだとしか思えなかった。 妻は両手を腰骨のあたりに当てると、そうする事でより多くの快楽を引き出す事ができるようにゆらゆらと押し当ててる迄に自身の理性を一枚ずつ捲り剥がしていた。 妻の視線にスクリーンの映像が写っているとは思えず、それは形の良い唇が僅かに開いている事でも知れた。 映画の上映時間は判らなかったが、この陵辱がその時間続くかと思うと、時間とともに剥がされる妻の理性はそれが旧に復することがあるか、一度身体に覚え込まされた快楽は忘れる事があるか危惧するのだった。 それはまとめれば妻の身体が開発されていると言うことだった。 肯定的に用いられるその単語の意味するところに反して、この場合の用法は限りなく闇に包まれていたが、妻と同様に抑えがたい自身の勃起は同じく暗い悦びを叫んでいた。 やや男性の興味を引く服装ながら映画でも見ていれば問題ない姿の妻が自ら腰をスライドさせ、得られる快楽を試しているかのような姿は自分には無残だった。 やがて腰に当てられた片方の腕をおずおずと下腹部に手の平を触れさせると、それは妻の股間を貫いた醜悪な物体がどこまで自身を荒らしているか確かめるようにそこを撫でた。 それは将来生まれくる赤子を撫でるような優しい動きであれば、精を放つ機能を持たず、ただ内壁を埋めつつ快楽を絶え間なく送り続けるそれを愛撫するような淫らさのある印象を生んだ。 自分以外の性器を迎えるような仕草は込み上げる怒りを生じさせたが、手の終着点はそこではなかった。 しなやかな手を男性が性交時にするように乳房まで滑らせると、膨らみの下半分を親指と人差し指を伸ばし覆うように当てた。 周囲の視線を伺うように軽く左右に首を振ると、堪えきれないようにシャツの合わせ目から手を侵入させると、手の甲でそこを覆うように手を止めた。 タンクトップの中までは及んでいないようだったが、手の延長線に目を遣ると、そこには乳房の頂点があるものと思われた。 妻の張りのある乳房は裸で正面から見据えるとこちらに両の乳首をやや上に向けて対面することから、想像するまでもなく妻の指は自身の白い乳房から柔らかな桃色に色を変える乳首を弄っているに違いなかった。 自分が吸い付く事で小さな突起をやや固く勃起させるそれは、妻自身が性的目的で触れるものとは考えつかなかったが、画面はただ現実を示していた。 衣服に覆われ実態の見えないそこに視線を集中していたのか、瞳が痛みを覚える頃に我に返った。 改めて画面を凝視すれば、先程まで腰にあった片方の腕は股間を覆うスカートの下に差し込まれつつあった。 その手にはハンカチらしき布があった。 直ぐに妻の股間に消えたそれはディルドを経て性器から滴る性的興奮で分泌される液体で座席を汚さない為の配慮かと思われた。 妻は乳首を指で弄ぶような状況にあってさえ、社会的に一定の配慮を示していた。 それは妻が完全に堕落の虜となっておらず正気を保っている証でもあったが、反面正気で自ら股間から溢れる程の快楽を貪っている事も伝えるのだった。 改めて画面下に表示される時間を見ると、映画の始まりから十数分の事かと思えば、この時間で正気を朧気とする妻の身体が開発されている事を慨嘆するのだったが同時に妻が離れるような感覚も覚えた。 映像は公衆の中で公然と悦楽に耽る妻を写していたが、漸くそれは暗転した画面とともに消えた。 そこでようやく自分を傷つける映像は終わった。 少なくとも妻は犯人の男性器を受け入れる事は無かったが、喫茶店の秘密の露出から駅前での視線に嬲られる光景を経て映画館での妻自身による自らの陵辱まではそれに等しい感情を植えつけた。 犯人が妻をレイプするのでなく、意に沿わない行動でも妻自身が肢体から快感を生み出す過程は自分には惨めな開発風景だった。 どれだけ時間が過ぎたのか考えるまでもなく、映像に見入っていた時間分が経過しており車の中で苦しみと悲しみに暮れようとしても、怒張が醒めない股間はスーツをテントのように不自然に歪ませていた。 混乱した頭では犯人を追跡することは考えられず、エンジンに火を入れるとそこが妻の陵辱現場であるように不必要な加速でその場を後にした。 今はただ、自身の男性器を妻に備わる快楽器に埋めたかった。 この時間は帰宅の車が横を通り過ぎていたが、構わず路肩に車を停めると携帯電話で妻を呼び出した。 数回の呼び出し音で妻が応答しない事に苛立つと、圧力で切断する訳でもない硬質のあくまで冷たい樹脂を押さえつけた。 呼び出し画面から、電話番号リストに変化した画面を見つめていると、衝動のままに行動する愚かさが背筋を伝うと冷静さを取り戻した。 今自分は犯人への経路を手に入れ、誰にも知られる事無く問題を処理する事ができる機会を大事にすべきだった。 一時の激情に身を任せては犯人に捕らわれる一方ではあるのだった。 一呼吸置いた途端に携帯電話は細やかな振動で妻からの着信を知らせた。 努めて冷静に妻に応じると、妻は今から帰途につくとの事だった。 仕事が長引いた事を言い訳がましくならないように伝えると妻を拾って帰る事で話がまとまった。
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