#それにとって、私の相手をする事に利益は殆ど無いから。次に繋がらないから。
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moshimoshi2 · 1 month ago
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キビネナゴは怪物だ。食物でなく、人の認識を喰らって生きている。記憶を食べ散らかして生きている。
仮に生き物のヒエラルキーの中に組み込むとしよう。するとそれは人の上に立つ。しかし、奴らのピラミッドを想定するならば概ね中層下部か下層の存在でしかない。ただの小魚にすぎないのだ。
神格は殆ど放棄されている。人間が技術でそれの存在の根拠たる現象を克服出来ると思っているからだ。神というかたちを与えて、どうにもならない事象として恐れる必要が無くなったからだ。
それは今、小さな願いと幾つもの恐怖と積極的な認識によって存在している。かたちを与えられて存在させられている。
ふと目を逸らした時、目を瞑る事が出来た時、それは何処かへ消えてしまうだろう。元から何も無かったかのように。
しかし目を開いた時、それを認識してしまった時、それはそこに居るだろう。いつもそこにあったかのように。
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gekkan-tesusabi · 3 months ago
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つじしまみちこ寄稿 「私の音楽生活」
「嗚呼、真実とはこれ程までに退屈か!」と、事実に基づいた文章を著わす度に考える。日常の軛から逃れる為に創作をしているにも関わらず、何故、現実の雑事を子細に記載しなければならないのだと思い始めると、途端に気が重くなり、やがて、官僚のような生真面目さは影を潜め、自ずと筆は虚構の世界へと向かい始める。そして、いっその事、一から十まで、何もかも創作してしまった方が良いとさえ思うに至るのが常であるのだが、今回は出来得る限り真実を記す事にする。
不労所得を得る為、BGM、音楽素材の作編曲に励んでいた2010年代半ば頃、ドラマでも映画でもゲーム音楽でも、とりあえずは金になれば何でも良いと思っていたので、柄にもなく、コンペへの応募の他、音楽配信サイトへ登録し、出来るだけリスナーの印象に残るようなメロディアスで奇抜なアレンジの音楽を量産しては投稿を繰り返していたのであるが、音楽素材の利用者は何人かいたものの、一向に大きな収益には繋がらず、知名度も上がらないまま一、二ヶ月が過ぎた頃、とうとう好きでもないものを作る事にも嫌気が差し始め、以���、一般向けの作品制作を完全にやめてしまった。
当時、既にメジャーコードのクリシェと作曲者自身がその名も分からぬような不穏な和音を組み���わせた「躁鬱ポップ」の原型は出来上がっていたので、一般に流通しているドラマや映画、アニメ、ゲーム内で流れている、ありきたりなBGMのようなものは、別に私が作る必要はないとさえ思うようになったが、AIによる作曲の実用化がなされつつある昨今、この判断は誤っていなかったと思う。作編曲はセンスなどではなく、殆ど、単なる技術に他ならないが、音楽は既に市場において、需要に比して供給過剰な状態であり、本業で十二分な収入を得ている私にとっては、アレンジやミックスにどれ程の手間暇を掛け、どれ程その技術を極めようと、機材を一新しようと、投資に見合ったリターンは望めないのが実情である。今も昔も私は別段、有名になりたい訳ではなく、ただ単に自分のしたい事がしたいように出来れば良いだけであるので、頭に血が上ったバンドマンのように、大手レーベルと契約したり、マスメディアに登場したいとは思っていない。醒めていると言えば醒めてもいるが、低俗で知能指数の低い輩と関わった所で私に何一つメリットはないという態度は昔から一貫している。
「つじしまみちこ」名義でウェブ上に音楽を投稿し始めた2019年頃も同様の心境のまま、最早、リスナーに対しての嫌がらせ以外の何物でもないものを作り続ける事になり、やがてそんな自分自身にさえ嫌気が差して、公の場で音楽を公表する事を20年代に入ってから止めてしまう。やがて、音楽への探求心さえ失った私は、COVID-19のパンデミックの最中、世界規模の「大本営発表」を前に一色に染まった大衆に対して怒りが爆発した結果、愚かな三政権が延長に延長を重ねた緊急事態宣言を完全に無視し、日本中を旅しては地酒を呷る日々を送ったのだが、そんな放蕩生活を送った後に出会ったのが次の一曲である。
youtube
2023年頃、私は新しい音楽への興味すら失していたのであるが、Caroline Polachekの「Desire, I Want To Turn Into You」は発売と同時期に聴き、感激してすぐさまMP3を購入した次第である。自殺衝動に苛まれて抑鬱状態となったメンヘラアーティストたちによる電子音楽をとうの昔に聴き飽きていた私は、Carolineのどこか退廃的でありながらも肉感的な音楽に、喪失した身体性の回復を感じた。私も自身の音楽のスタイルを一新しようと思い、DAWを立ち上げ音作りを始めるのであるが、どういう事か一向に熱意が湧かず、2、3小節を作っては消してを繰り返す内、2年半の時が経過していた。気が付くと、岸田内閣は倒れ、石破内閣は成立直後に衆議院選挙で敗れ、故安倍晋三を後援したネトウヨと創価学会員のコラボレーションによって2012年に再誕した自公政権は風前の灯となっていた。明らかに新しい時代の兆しが見え始めた頃、私は徐々に創作意欲を取り戻し、新譜の制作に取り掛かる。
2024年の衆議院選挙の結果を見て私が思ったのは、右側からではなく、中道・リベラルの側から、右派政党自民党が作り出した「戦後レジーム」と言う名の過去の清算とそれらとの決別を本当の意味で行う必要があるのだろうという事である。安倍晋三が2012年に政権の座に返り咲いて以降、あたかも20世紀へ回帰したような奇妙な政治状��が作り出されたが、この国が安倍という男によって10年以上に渡り翻弄された事は間違いない。知性の欠如した首脳による2度目の劇場型政治は、安倍の暗殺、岸田の暗殺未遂、そして石破政権下での火焔瓶の首相官邸への投擲という悲劇に終わり、かつての小泉劇場と異なり、笑う者はいなかった。新譜制作の最中、私の頭の中では自身の置かれている現況や国政・社会状況についてのそのような想念が次々と浮かんでゆくのであった。
そうした中で生まれたのが、この度の新譜「Goodbye to AI」である。なお、断っておくが、ここで言う「AI」は「Abe's Intelligence」の略称ではない。
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takahashicleaning · 5 years ago
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TEDにて
デボラ・ゴードン:脳や癌細胞とインターネット。アリ達が教えてくれる事
(詳しくご覧になりたい場合は上記リンクからどうぞ)
生態学者のデボラ・ゴードンは、砂漠や熱帯地方や彼女のキッチンなど、いたる所でアリの生態を観察しています。
この魅力的なトークの中で、彼女は、私達の殆んどが何も考えずに追い払っている昆虫について、彼女が取りつかれている訳を説明してくれます。
彼女は、アリの生態やコロニーと言われるものの運営アルゴリズムが私達の病気や遺伝子、テクノロジー、人間の脳についても昆虫から学ぶ事があるのだと主張します。
例えば、脳の仕組みや私達が設計するデータネットワークや癌(悪性新生物)についてでさえもです。
これら全てのシステムには、中央司令塔はないのです。アリのコロニーは、皆さんが歩いている所を見かけるアリと最低1匹の生殖を行うメスで 成り立っています。
このメスは、ひたすら卵を産むだけで誰にも指示を与えません。「女王アリ」という名にもかかわらず、なんら命令を出すわけではありません。
つまり、コロニーにリーダーはおらず、この類の集中制御機能の無いシステムは、全てとても簡単な「やりとり」によって制御されています。
この絶えず変化するネットワークは、コロニー全体の行動となって現れます。全てのアリが巣内に籠もるとか、何匹が収穫に出るかなどを決めているのです。
実は、脳も同じように機能していますが、アリの良いところは、ネットワーク全体をリアルタイムで観察出来る事です。
人間は、一つの脳でアリのコロニーの全体に相当します。さらに、人間は脳同士を言葉とコミュニケーションで連携させて何十億人と大規模な共同作業を行います。
コロニーが存在する訳をアリをニューロン(神経細胞)に見立てて、神経科学のモデルから理解しようとしています。
よく、脳について話をしますが、もちろん、それぞれの脳も微妙に違い、それぞれの性質やそれぞれの状況によって、ニューロンの電気的特性等に違いが生じ、発火により多量の刺激が必要になり、その差が脳の機能の違いに繋がるかもしれません。
進化の過程を知る為には、繁殖に成功しているかどうか知る必要があります。これは、私が28年間、アリ数の追跡調査を行ってきた地域の収穫アリのコロニーの地図です。この年数はコロニーの寿命とほぼ同じです。
次のステップは、この相似を生み出す遺伝子の違いを探す事です。そこから、どのアリが繁栄しているかを探ることもできます。
これまでの研究の中で、特に、この10年間は、南西部アメリカでは、厳しい干ばつに襲われていますが、水を節約するために、猛暑の日は、巣の中に留まり、最大限の収穫を犠牲にするコロニーがより多くの子孫を残す事が解りました。
自然な動物群の集団行動が、進化する過程を追跡調査して、どの行動によっていちばん繁栄するのかを明らかにしました。
インターネットは、データの流れの制御にアルゴリズムを使用していますが、この仕組みは、収穫アリが餌集めに送り出す個体数を制御する仕組みによく似ています。
データの伝送路容量が、十分に確保されているという信号を受けるまで、発信元コンピューターは、データを送出しません。
インターネット初期は、運用コストは非常に高く、データを紛失しない事が極めて重要だったので、システムは信号のやりとりによって、データ送信を開始するように設計されました。
アリが使用するアルゴリズムと近年発明されたシステムの酷似は、興味深いものがあります。
物理学者のランダウは、相転移の理論、対称性の破れ、超電導でも一流の研究者です。
脳の仕組みや私達が設計するデータネットワークや癌(悪性新生物)についての共通の現象などを数値で解き明かしています。
例えば、物理学者にとって、熱は、広い意味では、原子の激しく無秩序な運動に他ならない。したがって、温度が高くなればなるほど、秩序とは、反対の方向に進み、高温になるほど、秩序のあった状態が、バラバラに壊されてしまう傾向がある。
逆に、温度が低くなればなるほど、原子は、一体となって作用を及ぼしやすくなり、そのため、組織的構造化を促進する傾向がある。
ランダウは、このような組織的な構造へ向かう動きと組織的な構造が崩れる方向へ向かう動きに注目することで、秩序と無秩序の間の根本的なせめぎ合いを表す一連の関係式を作り上げました。
ランダウの考え方では、これらの式は、あらゆる物質で生じるどんな相転移についても、転移の際の極めて重要な魔法を表現しているはずだった。その後、相転移の理論は、ランダウの理論をもとに、さらに発展を遂げて、スーパーストリング理論に応用されます。
その他には・・・
アリのセキュリティの1例をお見せしましょう。中央部で、1匹のアリが自らの頭で巣の入口を塞いでいますが、これは、他の種に出くわした結果です。
相手は、腹部を上に曲げて動き回っているアリです。脅威が去るとすぐに入口は、開けられます。
コンピューターのセキュリティでも、状況によって運用コストが安い場合には、直面する脅威に対して、一時的に対応して、接続をブロックし
再度、接続を開始する方が、恒久的なファイアウォールやフォートレスを築くよりも効率的かもしれません。
さて、もう一つの環境問題。全てのシステムにおいて必要なのが「資源」です。「資源」を見つけ、集める事です。アリは、この問題の解決に集団探索を行っています。この行為は、現在ロボット工学で注目されている問題です。
なぜなら、例えばですが、他の星の探査や火災のビルの捜索などに、洗練された高価なロボットを1台使用するより
最小限の情報を交換する安価なロボットを複数使った方が、効率的だと考えられていますが、これは、まさにアリのやり方と同じなのです。
アリは、様々な環境の中、様々な方法で「やりとり」を利用しています。私達は、これらのやりとりから他の「集中制御機能の無いシステム」についても学ぶ事が出来ます。
単純なやりとりを利用するのみで、アリのコロニーは驚くべき偉業を1億3千万年以上成し遂げてきました。
技術が、すべてのことを解決できると言いますが、我々が、100倍エネルギー効率のいい乗り物を作ることができるとすれば、大枠としてこれは正しい意見です。
しかし、エネルギー効率ではなく、生産性を高めた結果、イギリスは見事に産業が空洞化してしまいました。
参考として・・・
月面は、太陽風によりもたらされたヘリウム3が、鉱物資源として豊富に存在していることが確認されています。原子力発電や核融合に最適です。
これでもバカのひとつ覚えのように、生産性を高めますか?基本的人権も無視して・・・
なお、ビックデータは教育や医療に限定してなら、多少は有効かもしれません。それ以外は、日本の場合、プライバシーの侵害です。
通信の秘匿性とプライバシーの侵害対策として、匿名化処理の強化と強力な暗号化は絶対必要です!
さらに、オープンデータは、特定のデータが、一切の著作権、特許などの制御メカニズムの制限なしで、全ての人が
望むように再利用・再配布できるような形で、商用・非商用問わず、二次利用の形で入手できるべきであるというもの。
主な種類では、地図、遺伝子、さまざまな化合物、数学の数式や自然科学の数式、医療のデータやバイオテクノロジー
サイエンスや生物などのテキスト以外の素材が考えられます。
最後に、マクロ経済学の大目標には、「長期的に生活水準を高め、今日のこども達がおじいさん達よりも良い暮らしを送れるようにする!!」という目標があります。
経済成長を「パーセント」という指数関数的な指標で数値化します。経験則的に毎年、経済成長2%くらいで巡航速度にて上昇すれば良いことがわかっています。
たった、経済成長2%のように見えますが、毎年、積み重ねるとムーアの法則みたいに膨大な量になって行きます。
また、経済学は、大前提としてある個人、法人モデルを���う。それは、身勝手で自己中心的な欲望を満たしていく人間の部類としては最低クズというハードルの高い個人、法人。
たとえば、生産性、利益と��う欲だけを追求する人間。地球を救うという欲だけを追求する人間。利益と真逆なぐうたらしたい時間を最大化したいという欲を追求する人間。などの最低生活を保護、向上しつつお金の循環を通じて個人同士の相互作用も考えていく(また、憎しみの連鎖も解消する)
多様性はあるが、欲という側面では皆平等。つまり、利益以外からも解決策を見出しお金儲けだけの話だけではないのが経済学(カントの「永遠平和のために」思想も含めて個人のプライバシーも考慮)
<おすすめサイト>
ロドリゴ・ビジュー:アメリカ政府はサイバー戦争を理解していない? — 必要なのはライトサイドのハッカーだ
ケレン・エラザリ:ハッカーというインターネットの免疫系
インターステラー(字幕版)
ケネス・ツーケル:ビックデータはより良いデータ?
スーザン・エトリンガー: ビッグデータにどう向き合うべきか!
ルトハー・ブレフマン:貧困は「人格の欠如」ではなく「金銭の欠乏」である!
個人賃金保障、ベーシックインカムは、労働市場に対する破壊的イノベーションということ?2020(人間の限界を遥かに超えることが前提条件)
世界の通貨供給量は、幸福の最低ライン人間ひとりで年収6万ドルに到達しているのか?2017
ベティーナ・ウォーバーグ: ブロックチェーンが経済にもたらす劇的な変化
<提供>
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groyanderson · 6 years ago
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ひとみに映る影 第六話「覚醒、ワヤン不動」
☆プロトタイプ版☆ こちらは無料公開のプロトタイプ版となります。 段落とか誤字とか色々とグッチャグチャなのでご了承下さい。 書籍版では戦闘シーンとかゴアシーンとかマシマシで挿絵も書いたから買ってえええぇぇ!!! →→→☆ここから買おう☆←←←
(※全部内容は一緒です。) pixiv版
◆◆◆
 人はお経や真言を想像するとき、大抵『ウンタラカンタラ~』とか『ムニャムニャナムナム~』といった擬音を使う。 確かに具体的な言葉まで知らなければ、そういう風に聴こえるだろう。 ましてそういうのって、あまりハキハキと喋る物でもないし。 特に私達影法師使いが用いる特殊な真言を聞き取るのはすごく難解で、しかも屋内じゃないとまず���ってる事自体気付かれない場合が多い。 なぜなら、口の中を影で満たしたまま言う方が法力がこもる、とかいうジンクスがあり、腹話術みたいに口を閉じたまま真言を唱えるからだ。 たとえ静かな山間の廃工場であっても、よほど敬虔な仏教徒ではない人には、『ムニャムニャ』どころか、こう聴こえるかもしれない。
 「…むんむぐうむんむうむむむんむんうむむーむーむうむ…」  「ヒトミちゃん?ど、どしたの!?」 正解は、ナウマク・サマンダ・バザラダン・カン・オム・チャーヤー・ソワカ。 今朝イナちゃんは気付いてすらいなかったけど、実はこの旅でこれを唱えたのは二回目だ。
 廃工場二階部踊り場に催眠結界を張った人物に、私は心当たりがあった。 そのお方は磐梯熱海温泉、いや、ここ石筵霊山を含めた熱海町全域で一番尊ばれている守護神。 そのお方…不動明王の従者にして影法師を束ねる女神、萩姫様は、真っ暗なこの場所にある僅かな光源を全て自らの背後に引き寄せ、力強い後光を放ちながら再臨した。
 「オモナ!」  「萩姫…!」 驚きの声を上げたのは、テレパシーやダウジングを持たないイナちゃんとジャックさんだ。  「ひーちゃん…ううん。紅一美、よくぞここまで辿り着きました。 何ゆえ私だと気付いたのですか」 萩姫様の背後で結界札が威圧的に輝く。 今朝は「別に真言で呼ばなくてもいい」なんて気さくに仰っていたけど、今はシリアスだ。  「あなたが私達をここまで導かれたからです、萩姫様。 最初、源泉神社に行った時、そこに倶利伽羅龍王はいませんでした。代わりにリナがいました。 後で観音寺の真実や龍王について知った時、話が上手くいきすぎてるなって感じました。 あなたは全部知っていて、私達がここに来るよう仕向けたんですよね?」 私も真剣な面持ちで答えた。相手は影法師使いの自分にとって重要な神様だ。緊張で手が汗ばむ。  「その通りです。あなた方を金剛の者から守るためには、リナと邂逅させる必要があった。 ですが表立って金剛の者に逆らえない私は、敢えてあなた方を源泉神社へ向かわせました。 金剛観世音菩薩の従者リナは、金剛倶利伽羅龍王に霊力の殆どを奪われた源泉神社を復興するため、定期的に神社に通ってくれていましたから」 そうだったんだ。暗闇の中で、リナが一礼するのを感じた。
 萩姫様はスポットライトを当てるように、イナちゃんにご自身の光を分け与えられた。  「金剛に選ばれし隣国の巫女よ��  「え…私ですか?」 残り全ての光と影は未だ萩姫様のもとにあって、私達は漆黒に包まれている。  「今朝、あなたが私に人形を見せてくれた時、私はあなたの両手に刻まれた肋楔緋龍の呪いに気がつきました。 そして勝手ながら、あなたの因果を少し覗かせて頂きました」 萩姫様は影姿を変形させ、影絵になってイナちゃんの過去を表現する。 赤ちゃんが燃える龍や肉襦袢を着た煤煙に呪いをかけられる絵。 衰弱した未就学の女の子にたかる大量の悪霊を、チマチョゴリを着た立派な巫女が踊りながら懸命に祓う絵。 小学生ぐらいの少女が気功道場で過酷なトレーニングを受ける絵…。  「はっきり言います。もしあなた方がここに辿り着けなかったら、その呪いは永遠にとけなかったでしょう。 あなただけではありません。このままでは一美、熱海町、やがては福島県全域が金剛の手に落ちる事も起こりうる」 福島県全域…途方もない話だ。やっぱりハイセポスさんが言っていた事は本当だったのか?
 「萩姫様。あなたが護る二階に、いるのですね。水家曽良が」 決断的に譲司さんが前に出た。イナちゃんを照らしていた淡い光が、闇に塗りつぶされていた彼の体に移動した。  「そうとも言えますが、違うとも言えます、NICの青年よ。 かの殺人鬼は辛うじて生命力を保っていますが、肉体は腐り崩れ、邪悪な腫瘍に五臓六腑を冒され、もはや人間の原形を留めていません。 あれは既に、悪鬼悪霊が蠢く世界そのものとなっています」 萩姫様がまた姿を変えられる。蛙がボコボコに膨れ上がったような歪な塊の上で、燃える龍が舌なめずりする影絵に。 そして再び萩姫様の御姿に復帰する。  「若者よ。ここで引き返すならば、私は引き止めません。 私ども影法師の長、神影(ワヤン)らが魂を燃やし、龍王や悪霊世界を葬り去るまでのこと。 ですが我らの消滅後、金剛の者共がこの地を蹂躙する可能性も否定できません。 或いは、若者よ。あなた方が大量の悪霊が世に放たれる危険を承知でこの扉を開き、金剛の陰謀にこれ以上足を踏み入れるというのならば…」
 萩姫様がそう口にされた瞬間、突如超自然的な光が彼女から発せられた。 カッ!…閃光弾が爆ぜたように、一瞬強烈に発光したのち���踊り場全体が昼間のように明るくなる。  「…まずはこの私を倒してみなさい!」 視界がクリアになった皆が同時に見たのは、武器を持つ幾つもの影の腕を千手観音のように生やした、いかにも戦闘モードの萩姫様だった。
◆◆◆
 二階へ続く扉を堅固に護る萩姫様と、私達は睨み合う。 戦うといっても、狭い踊り場でやり合えるのはせいぜい一人が限界。 張り詰めた空気の中、この決闘相手に名乗り出たのは…イナちゃんだ!  「私が行きます」  「馬鹿、無茶だ!」 制止するジャックさんを振り切って、イナちゃんは皆に踊り場から立ち退くよう促した。
 「わかてる。私は一番足手まといだヨ。だから私が行くの。 ドアの向こうはきっと、とても恐い所になてるから、みんな温存して下さい」 自虐的な言葉とは裏腹に、彼女の表情は今朝とは打って変わって勇敢だ。 萩姫様も身構える。  「賢明な判断です、金剛の巫女よ」「ミコじゃない!」 イナちゃんが叫んだ。  「…私はあなたの境遇に同情はしますが、容赦はしません。 あなたの成長を、見せてみなさい!」
 イナちゃんは目を閉じ、呪われた両手を握る。  「私は…」 ズズッ!その時萩姫様から一本の影腕が放たれ、屈強な人影に変形!  <危ない!>迫る人影!  「…イナだヨ!」 するうちイナちゃんの両指の周りに細い光が回りだし、綿飴めいて小さな雲に成長した! イナちゃんはばっと両手を広げ、雲を放出すると…「スリスリマスリ!」 ぽぽんっ!…なんと、漆黒だった人影がパステルピンクに彩られ、一瞬でテディベア型の無害な魂に変化した!  「何!?」 萩姫様が狼狽える。
 「今のは…理気置換術(りきちかんじゅつ)!」  「知っているのかジョージ!?」  ジャックさんにせっつかれ、譲司さんが説明を始める。  「儒教に伝わる秘伝気功。 本来の理(ことわり)から外れた霊魂の気を正し、あるべき姿に清める霊能力や」 そうか、これこそイナちゃんが持つ本来の霊能力。 彼女が安徳森さんに祈りを捧げた時、空気が澄んだような感じがしたのは、腐敗していた安徳森さんの理が清められたからだったんだ!
淡いパステルレインボーに光る雲を身に纏い、イナちゃんは太極拳のようにゆっくりと中腰のポーズを取った。  「ヒトミちゃんがこの旅で教えてくれた。 悲しい世界、嬉しい世界。決めるのは、それを見る私達。 ヒトミちゃんは悲しいミイラをオショ様に直した。 だから私も…悲しいをぜんぶカワイイに変えてやる!」
 「面白い」 ズズッ!再び萩姫様から影腕が発射され、屈強な影絵兵に変わった。 その手には危険なスペツナズナイフが握られている!  「ならば自らの運命をも清めてみよ!」 影絵兵がナイフを射出!イナちゃんは物怖じせずその刃を全て指でキャッチする。  「オリベちゃんもこの旅で教えてくれた」 雲に巻かれたナイフ刃と影絵兵は蝶になって舞い上がる!  「友達が困ったら助ける。一人だけ欠けるもダメだ」
 ズズッ!新たな影絵兵が射出される。 その両手に構えられているのは鋭利なシステマ用シャベルだ!  「ジャックさんもこの旅で教えてくれた」 イナちゃんは突撃してくるその影絵を流れる水のようにかわし、雲を纏った手で掌底打ちを叩きつける!  「自分と関係ない人本気で助けられる人は、何があても皆に見捨てられない!」 タァン!クリーンヒット! 気功に清められた影絵兵とシャベルはエンゼルフィッシュに変形!
 間髪入れず次の影絵兵が登場! トルネード投法でRGD-33手榴弾を放つ!  「ヘラガモ先生もこの旅で教えてくれた」 ぽぽんぽん!…ピヨ!ピヨ! 雲の中で小さく爆ぜた手榴弾からヒヨコが生まれた!  「嫌な物から目を逸らさない。優しい人それができる」 コッコッコッコッコ…影絵兵もニワトリに変化し、ヒヨコを率いて退場した。
 「リナさんとポメラーコちゃんも教えてくれた!」 AK-47アサルトライフルを乱射する影絵兵団を掻い潜りながら、イナちゃんは萩姫様に突撃!  「オシャレとカワイイは正義なんだ!」 影絵兵は色とりどりのパーティークラッカーを持つ小鳥や小型犬に変わった。
 「くっ…かくなる上は!」 萩姫様がRPG-7対戦車ロケットランチャーを構えた! さっきから思ってたけど、これはもはやラスボス前試練の範疇を越えたバイオレンスだ!!
 「皆が私に教えてくれた。今度は私あなたに教える! スリスリマスリ・オルチャン・パンタジィーーッ!!!」 パッドグオォン!!!…ロケットランチャーの射出音と共に、二人は閃光の雲に包まれた!  「イナちゃあああーーーーん!!!!」
 光が落ち着いていく。雲間から現れた影は…萩姫様だ!  <そんな…>  「いや、待て!」 譲司さんが勘づいた瞬間、イナちゃんもゆっくりと立ち上がった。 オリベちゃんは胸を撫で下ろす。  「これが…私…?」 一方、自らの身体を見て唖然とする萩姫様は…
 漆黒の着物が、紫陽花色の萌え袖ダボニットとハイウエストスキニージーンズに。  「そんな…こんな事されたら、私…」 市女笠は紐飾りだけを残してキャップ帽に変わり、ロケットランチャーは形はそのままに、ふわふわの肩がけファーポシェットに。  「私…もうあなたを攻撃できないじゃない!」 萩姫様はオルチャンガールになった。完全勝利!
 「アハッ!」 相手を一切傷つけることなく試練を突破したイナちゃんは、少女漫画の魔法少女らしく決めポーズを取った。  「ウ…ウオォォー!すっげえなお前!!」 ファンシーすぎる踊り場に、この場で一番いかついジャックさんが真っ先に飛びこむ。 彼は両手を広げて構えるイナちゃんを…素通り! そのまま現代ナイズされた萩姫様の手を取る。  「オモナ!?」
 「萩姫。いや、萩!俺は前から気付いていたんだ。 あんたは今風にしたら化けるってな! どうだ。あのクソ殺人鬼とクソ龍王をどうにかしたら、今度ポップコーンでもウワババババババ!!!!」 ナンパ中にオリベちゃんのサイコキネシスが発動し、ジャックさんは卒倒した。 オリベちゃんの隣にはほっぺを膨らましたイナちゃんと、手を叩いて爆笑するリナ。  「あっはははは、みんなわかってるゥ! ここまでセットで王道少女漫画よね!」
 一方譲司さんはジビジビに泣きながらポメラー子ちゃんを頬ずりしていた。  「じ、譲司さん?」  「ず…ずばん…ぐすっ。教え子の成長が嬉しすぎで…わああぁ~~!!」  <何言ってるの。あんたまだ養護教諭にすらなってないじゃない>  「もうこいつ、バリに連れて行く必要ないんじゃないか?」  「嫌や連れでぐうぅ!向こうの子供らとポメとイナでいっぱい思い出作りたいもおおぉおんあぁぁあぁん」  「<お前が子供かっ!!>」 キッズルーム出身者二人の息ぴったりなツッコミ。 涙と鼻水だらけになったポメちゃんは「わうぅぅ…」と泣き言を漏らしていた。
 程なくして、萩姫様は嬉し恥ずかしそうにクネクネしたまま結界札を剥がした。  「若者よ…あんっもう!私だって心は若いんだからねっ! 私はここで悪霊が出ないように見張ってるんだから…龍王なんかに負けたらただじゃ済まないんだからねっ!」 だからねっ!を連発する萩姫様に癒されながら、私達は最後の目的地、怪人屋敷二階へ踏みこんだ。
◆◆◆
 ジャックさんが前もって話していた通り、二階は面積が少なく、一階作業場と吹き抜け構造になっている。 さっきまで私達がいたエントランスからは作業場が見えない構造だった。 影燈籠やスマホで照らすと、幾つかの食品加工用らしき機材が見える。 勘が鋭いオリベちゃんと譲司さんが不快そうに目を逸らす。  <この下、何かしら…?直接誰かがいる気配はないのに、すごくヤバい気がする。 まるで、一つ隔てた世界の同じ場所が人でごった返しているような…>  「その感覚は正しいで、オリベ。 応接室はエレベーターの脇の部屋や。そこに水家がおる。 そして…あいつの脳内地獄では、吹き抜けの下が戦場や」  <イナちゃん。清められる?>  「無理です。もし見えても一人じゃ無理です。 オルチャンガール無理しない」  <それでいい。賢明よ。みんなここからは絶対に無理しないで>
 譲司さんの読みは当たっていた。階段と対角線上のエレベーターホール脇に、ドアプレートを外された扉があった。 『応接室』のプレートは、萩姫様の偽装工作によって三階に貼られていた。 この部屋も三階の部屋同様、鍵は閉まっていない。それどころか、扉は半開きだった。
 まず譲司さんが室内に入り、スマホライトを当てる。  「水家…いますか?」 私は申し訳ないが及び腰だ。  「おります。けど、これは…どうだろう?」 オリベちゃんがドアを開放する。きつい公衆トイレみたいな臭いが廊下に広がった。 意を決して室内を見ると…そこには、岩?に似た塊と、���晶でできた置物のようなもの。 岩の間から洋服の残骸が見えるから、あれが水家だと辛うじてわかる。  「呼吸はしとるし、脳も動いとる。けど恐ろしい事に、心臓は動いとらん。 哲学的やけど、血液の代わりにカビとウイルスが命を繋いどる状態は…人として生きとるというのか?」 萩姫様が仰っていた通り、殺人鬼・水家曽良は、人間ではなくなってしまっていたんだ。
 ボシューッ!!…誰かが譲司さんの問いに答えるより前に、死体が突如音を立てて何かを噴出した!  「うわあぁ!?」 私を含め何人かが驚き飛び退いた。こっちこそ心臓が止まるかと思った。 死体から噴出した何かは超自然的に形を作り始める。 こいつが諸悪の根源、金剛倶利伽羅…
 「「<「龍王キッモ!!?」>」」 奇跡の(ポメちゃん以外)全員異口同音。 皆同時にそう口に出していた。  「わぎゃっわんわん!!わぅばおばお!!!」 ポメちゃんは狂ったように吠えたてていた。  「邂逅早々そう来るか…」 龍王が言う…「「<「声もキッモ!!?!?」>」」 デジャヴ!
 龍王はキモかった。それ以上でもそれ以下でもない、ともかくキモかった。 具体的に描写するのも憚られるが、一言で言えば…細長い燃える歯茎。 金剛の炎を纏った緋色の龍、という前情報は確かに間違いじゃない。シルエットだけは普通の中国龍だ。 けど実物を見ると、両目は梅干しみたいに潰れていて、何故か上顎の細かい歯は口内じゃなくて鼻筋に沿ってビッシリ生えて蠢いてるし、舌はだらんと伸び、黄ばんだ舌苔に分厚く覆われている。 二本の角から尾にかけて生えたちぢれ毛は、灰色の脇毛としか形容できない。 赤黒い歯茎めいた胴体の所々から細かく刻まれた和尚様の肋骨が歯のように露出し、ロウソクの芯のように炎をたたえている。 その金剛の炎の色も想像していた感じと違う。 黄金というかウン…いや、これ以上はやめておこう。二十歳前のモデルがこれ以上はダメだ。
 「何これ…アタシが初めて会った時、こいつこんなにキモくなかったと思うけど…」 リナが頭を抱えた。一方ジャックさんは引きつけを起こすほど爆笑している。  「あっはっはっは!!タピオカで腹下して腐っちまったんじゃねえのか!? ヒィーッひっはっはっはっはっは!!」  <良かった!やっぱ皆もキモいと思うよね?> 背後からテレパシー。でもそれはオリベちゃんじゃなくて、踊り場で待機する萩姫様からだ。  <全ての金剛の者に言える事だけど、そいつらは楽園に対する信奉心の高さで見え方が変わるの! 皆が全員キモいって言って安心したよ!> カァーン!…譲司さんのスマホから鐘着信音。フリック。  『頼む、僕からも言わせてくれ!実にキモいな!!』 …ツー、ツー、ツー。ハイセポスさんが一方的に言うだけ���って通話を切った。
 「その通りだ」 龍王…だから声もキモい!もうやだ!!  「貴様らはあの卑劣な裏切り者に誑かされているから、俺様が醜く見えるんだ。 その証拠に、あいつが彫ったそこの水晶像を見てみろ!」 死体の傍に転がっている水晶像。 ああ、確かに普通によくある倶利伽羅龍王像だ。良かった。 和尚様、実は彫刻スキルが壊滅的に悪かったんじゃないかって疑ってすみません。  「特に貴様。金剛巫女! 成長した上わざわざ俺様のもとへ力を返納しに来た事は褒めてやろう。 だが貴様まで…ん?金剛巫女?」 イナちゃんは…あ、失神してる。脳が情報をシャットダウンしたんだ。
 「…まあ良し!ともかく貴様ら、その金剛巫女をこちらに渡せ。 それの魂は俺様の最大の糧であり、金剛の楽園に多大なる利益をもたらす金剛の魂だ! さもなくば貴様ら全員穢れを纏いし悪鬼悪霊共の糧にしてやるぞ!」 横暴な龍王に対し、譲司さんが的確な反論を投げつける。  「何が糧や、ハッタリやろ! お前は強くなりすぎた悪霊を制御出来とらん。 せやから悪霊同士が潰し合って鎮静するまで作業場に閉じこめて、自分は死体���横でじっと待っとる! 萩姫様が外でお前らを封印出来とるんが何よりの証拠や! だまされんぞ!!」 図星を突かれた龍王は逆上!  「黙れ!!だから何だ、悪霊放出するぞコノヤロウ!! 俺様がこいつからちょっとでも離れたら悪鬼悪霊が飛び出すぞ!?あ!?」
 その時、私の中で堪忍袋の緒が切れた。
◆◆◆
 自分は怒ると癇癪を起こす気質だと思っていた。 自覚しているし、小さい頃両親や和尚様に叱られた事も多々あって、普段は余程の事がない限り温厚でいようと心がけている。 多少からかわれたり、馬鹿にされる事があっても、ヘラヘラ笑ってやり過ごすよう努めていた。 そうして小学生時代につけられたアダ名が、『不動明王』。 『紅はいつも大人しいけど本気で怒らすと恐ろしい事になる』なんて、変な教訓がクラスメイト達に囁かれた事もあった。
 でも私はこの二十年間の人生で、一度も本物の怒りを覚えた事はなかったんだと、たった今気付いた。 今、私は非常に穏やかだ。地獄に蜘蛛の糸を垂らすお釈迦様のように、穏やかな気持ちだ。 但しその糸には、硫酸の二千京倍強いフルオロアンチモン酸がジットリと塗りたくられている。
 「金剛倶利伽羅龍王」 音声ガイダンス電話の様な抑揚のない声。 それが自分から発せられた物だと認識するまで、五秒ラグが生じた。  「何だ」  「取引をしましょう」  「取引だと?」 龍王の問いに自動音声が返答する。  「私がお前の糧になります。その代わり、巫女パク・イナに課せられた肋楔緋龍相を消し、速やかに彼女を解放し��さい」  「ヒトミちゃん!?どうしてそん…」 剣呑な雰囲気に正気を取り戻したイナちゃんが私に駆け寄る。 私の首がサブリミナル程度に彼女の方へ曲がり、即座にまた龍王を見据えた。イナちゃんはその一瞬で押し黙った。 龍王が身構える。  「影法師使い。貴様は裏切り者の従者。信用できん」 返事代わりに無言で圧。  「…ヌゥ」
 私はプルパを手に掲げる。 陰影で細かい形状を隠し、それがただの肋骨であるように見せかけて。  「そ…それは!俺様の肋骨!!」 龍王が死体から身を乗り出した。  「欲しいですか」  「欲しいだと?それは本来金剛が所有する金剛の法具だ。 貴様がそれを返却するのは義務であり…」 圧。  「…なんだその目は。言っておくが…」 圧。  「…ああもう!わかった!! どのみち楔の法力が戻れば巫女など不要だ、取引成立でいい!」  「分かりました。それでは、私が水晶像に肋骨を填めた瞬間に、巫女を解放しなさい。 一厘秒でも遅れた場合、即座に肋骨を粉砕します」
 龍王は朧な半物理的霊体で水晶像を持ち上げ、私に手渡した。 像の台座下部からゴム栓を剥がすと、中は細長い空洞になっていて、人骨が入っている。 和尚様の肋骨。私はそれを引き抜き、トートバッグにしまった。 バッグを床に置いてプルパを像にかざすと、龍王も両手を差し出したイナちゃんに頭を寄せ構える。  「三つ数えましょう。一、」  「二、」  「「三!」」
 カチッ。プルパが水晶像に押しこまれた瞬間、イナちゃんの両手が発光!  「オモナァッ!」 バシュン!と乾いた破裂音をたて、呪相は消滅した。 イナちゃんが衝撃で膝から崩れ落ちるように倒れ、龍王は勝利を確信して身を捩った。  「ウァーーッハハハハァ!!!やった!やったぞぉ、金剛の肋楔! これで悪霊どもを喰らいて、俺様はついに金剛楽園アガル「オムアムリトドバヴァフムパット」 ブァグォオン!!!!  「ドポグオオォオォォオオオーーーーッ!!?!?」
 この時、一体何が起きたのか。説明するまでもないだろうか。 そう。奴がイナちゃんの呪いを解いた瞬間、私はプルパを解放したのだ。 赤子の肋骨だった物は一瞬にして、刃渡り四十センチ大のグルカナイフ型エロプティックエネルギー塊に変形。 当然それは水晶像などいとも容易く粉砕する!
 依代を失った龍王は地に落ち、ビタンビタンとのたうつ。  「か…かはっ…」 私はその胴体と尾びれの間を掴み、プルパを突きつけた。  「お…俺様を、騙したな…!?」 龍王は虫の息で私を睨んだ。  「騙してなどいない。私はお前の糧になると言った。 喜べ。望み通りこの肋骨プルパをお前の依代にして、一生日の当たらない体にしてやる」  「な…プルパ…!?貴様、まさか…!」  「察したか。そう、プルパは煩悩を貫く密教法具。 これにお前の炎を掛け合わせ、悪霊共を焼いて分解霧散させる」  「掛け合わせるだと…一体何を」
 ズブチュ!!  「うおおおおおおおぉぉぉ!!?」 私はプルパで龍王の臀部を貫通した。  「何で!?何でそんな勿体ない事するの!? 俺様があぁ!!せっかく育てた悪霊おぉぉ!!!」 私は返事の代わりに奴の尾を引っ張り、切創部を広げた。  「ぎゃああああああ!!!」 尾から切創部にかけての肉と汚らしい炎が、影色に炭化した。  「さっき何か言いかけたな。金剛楽園…何だと? 言え。お前達の楽園の名を」  「ハァ…ハァ…そんな事、知ってどうする…? 知ったところで貴様らは何も」
 グチャムリュ!!  「ぎゃああああぁぁアガルダ!アガルダアァ!!」 私は龍王の胴体を折り曲げ、プルパで更に貫通した。 奴の体の一/三が炭化した。  「なるほど、金剛楽園アガルダ…。それは何処にある」  「ゲホッオェッ!だ、だからそんなの、聞いてどうする!?」  「滅ぼす」  「狂ってる!!!」
 ヌチュムチグジュゥ!!  「ほぎいぃぃぃごめんなさい!ごめんなさい!」 更に折り曲げて貫通。魚を捌く時に似た感触。 蛇なら腸や腎臓がある位置だろうか。 少しざらついたぬめりけのある粘液が溢れ、熱で固まって白く濁った。  「狂っていて何が悪いの? お前やあの金剛愛輪珠如来を美しいと感じないよう、狂い通すんだよ」  「うァ…ヒ…ヒヒィ…卑怯者ぉ…」  「お前達金剛相手に卑怯もラッキョウもあるものか」  「……」  「……」
 ゴギグリュゥ!!!  「うえぇぇえぇえええんいびいぃぃぃん!!!」 更に貫通。龍王は既に半身以上を影に飲まれている。 ようやくマシな見た目になってきた。  「苦しいか?苦しいか。もっと苦しめ。苦痛と血涙を燃料に悪霊を焼くがいい。 お前の苦しみで多くの命が救われるんだ」  「萩姫ェェェ、萩イィィーーーッ!! 俺様を助けろおぉぉーーーッ!」 すると背後からテレパシー。  <あっかんべーーーっだ!ザマーミロ、べろべろばー> 萩姫様が両中指で思いっきり瞼を引き下げて舌を出している映像付きだ。  「なあ紅さん、それ何かに似とらん?」 譲司さんとオリベちゃんが興味津々に私を取り囲んだ。  「ウアーッアッアッ!アァーーー!!」 黒々と炭化した龍王はプルパに巻きついたような形状で肉体を固定され、体から影の炎を噴き出して苦悶する。  <アスクレピオスの杖かしら。杖に蛇が巻きついてるやつ> ジャックさんとリナも入ってくる。  「いや、中国龍だからな…。どっちかというと、あれだ。 サービスエリアによくある、ガキ向けのダサいキーホルダー」  「そんな立派な物じゃないわよ。 東南アジアの屋台で売ってる蛇バーベキューね」  「はい!」 目を覚ましたイナちゃんが、起き抜けに元気よく挙手!  「フドーミョーオーの剣!」  「「<それだ!>」」 満場一致。ていうか、そもそもこれ倶利伽羅龍王だもんね。
 私は龍王の頸動脈にプルパを突きつけ、頭を鷲掴みにした。  「金剛倶利伽羅龍王」  「…ア…アァ…」 ���るうち影が私の体を包みこみ始める。 影と影法師使いが一つになる時、それは究極の状態、神影(ワヤン)となる。 生前萩姫様が達せられたのと同じ境地だ。  「私はお前の何だ」  「ウア…ァ…」  「私はお前の何だ!?」
 ズププ!「ぐあぁぁ!!肋骨!肋骨です…」  「違う!お前は倶利伽羅龍王剣だろう!?だったら私は!?」 ズプブブ!!「わああぁぁ!!不動明王!!不動明王様ですうぅ!!!」  「そうだ」 その通り。私は金剛観世音菩薩に寵愛を賜りし神影の使者。 瞳に映る悲しき影を、邪道に歪められた霊魂やタルパ達を、業火で焼いて救済する者!
 ズズッ…パァン!!!  「グウゥワアァァアアアアーーーーー!!!!」 完成、倶利伽羅龍王剣!  「私は神影不動明王。 憤怒の炎で全てを影に還す…ワヤン不動だ!」
◆◆◆
 ズダダダァアン!憤怒の化身ワヤン不動、精神地獄世界一階作業場に君臨だ! その衝撃で雷鳴にも匹敵する轟音が怪人屋敷を震撼! 私の脳内で鳴っていたシンギング・ボウルとティンシャの響きにも、荒ぶるガムランの音色が重なる。  「神影繰り(ワヤン・クリ)の時間だ」
 悪霊共は、殺人鬼水家に命を絶たれ創り変えられたタルパだ。 皆一様に、悪魔じみた人喰いイタチの毛皮を霊魂に縫い付けられ、さながら古い怪奇特撮映画に登場する半人半獣の怪人といった様相になっている。 金剛愛輪珠如来が着ていた肉襦袢や、全身の皮膚が奪われていた和尚様のご遺体を想起させる。そうか。  「これが『なぶろく』とか言うふざけたエーテル法具だな」 なぶろく。亡布録。屍から霊力を奪い、服を着るように身に纏う、冒涜的ネクロスーツ!
 「ウアァアァ…オカシ…オヤツクレ…」  「オカシオ…アマアァァイ、カシ…オクレ…」 悪霊共は理性を失って、ゾンビのように無限に互いが互いを貪りあっている。  「ウヮー、オカシダァア!」 一体の悪霊が私に迫る。私は風に舞う影葉のように倶利伽羅龍王剣を振り、悪霊を刺し貫いた。
 ボウッ!「オヤツゥアァァァー!」 悪霊を覆う亡布録が火柱に変わり、解放された魂は分解霧散…成仏した。 着用者を失った亡布録の火柱は龍王剣に吸いこまれるように燃え移り、私達の五感が刹那的追体験に支配される。  『や…やめてくれぇー!殺すなら息子の前に俺を、ぐわぁあああああ!!!』 それは悪霊が殺された瞬間、最後の苦痛の記憶だ。 フロリダ州の小さな農村。目の前で大切な人がイタチに貪り食われる絶望感と、自らも少年殺人鬼に喉を引き千切られる激痛が、自分の記憶のように私達を苛む。  「グアァァァーーー!!!」 それによって龍王剣は更に強く燃え上がる!
 「どんどんいくぞぉ!やぁーーっ!!」  「グワアァァァーーー!!」 泣き叫ぶ龍王剣を振り、ワヤン不動は憤怒のダンスを踊る。  『ママアァァ��!』『死にたくなああぁぁい!』『ジーザアァーーース!』 数多の断末魔が上がっては消え、上がっては消え、それを不動がちぎっては投げる。  「カカカカカカ!かぁーっはっはっはっはァ!!」…笑いながら。
 「テベッ、テメェー!俺様が残留思念で苦しむのがそんなに楽しいかよ、 このオニババーーーッ!!!」  「カァハハハアァ!何を勘違いしているんだ。 私にもこの者共の痛みはしかと届いているぞぉ」  「じゃあどうして笑ってられるんだよォ!?」  「即ち念彼観音力よ!御仏に祈れば火もまた涼しだ! もっともお前達は和尚様に仏罰を下される立場だがなァーーーカァーッハッハッハッハァー!!!!」  『「グガアアーーーーッ!!!」』 悪霊共と龍王剣の阿鼻叫喚が、聖なるガムランを加速する。
 一方、私の肉体は龍王剣を死体に突き立てたまま静止していた。 聴覚やテレパシーを通じて皆の会話が聞こえる。
 「オリベちゃん!ヒトミちゃん助けに行くヨ!」  「わんっ!わんわお!」  <そうね、イナちゃん。私が意識を転送するわ>  「加勢するぜ。俺は悪霊の海を泳いで水家本体を探す」  「ならアタシは上空からね」   「待ってくれ。オリベ。 その前に、例のアレ…弟の依頼で作ってくれたアレを貸してくれ」  <ジョージ!?あんた正気なの!?>  「俺は察知はできるけど霊能力は持っとらん、行っても居残っても役に立てん! 頼む、オリベ。俺にもそいつを処方してくれ!」  「あ?何だその便所の消臭スプレーみたいなの? 『ドッパミンお耳でポン』?」  「やだぁ、どっかの製薬会社みたいなネーミングセンスだわ」  <商品名は私じゃなくて、ジョージの弟君のアイデア。 こいつは溶解型マイクロニードルで内耳に穴を開けて脳に直接ドーピングするスマートドラッグよ>  「アイゴ!?先生そんなの使ったら死んじゃうヨ!?」  「死なん死なん!大丈夫、オリベは優秀な医療機器エンジニアや!」  「だぶかそれを作らせたお前の弟は何者だよ!?」
 こちとらが幾つもの死屍累々を休み無く燃やしている傍ら、上は上で凄い事になっているみたいだ。  「俺の弟は、毎日脳を酷使する…」ポンップシュー!「…デイトレーダーやあああ!!!」
 ドゴシャァーン!!二階吹き抜けの窓を突き破り、回転しながら一階に着地する赤い肉弾! 過剰脳ドーピングで覚醒した譲司さんが、生身のまま戦場���見参したんだ!
 「ヴァロロロロロォ…ウルルロロァ…! 待たせたな、紅さん…ヒーロー参上やあああぁ!!!」 バグォン!ドゴォン!てんかん発作めいて舌を高速痙攣させながら、譲司さんは大気中の揺らぎを察知しピンポイントに殴る蹴る! 悪霊を構成する粒��構造が振動崩壊し、エクトプラズムが霧散! なんて荒々しい物理的除霊術だろう! 彼の目は脳の究極活動状態、全知全脳時にのみ現れるという、玉虫色の光彩を放っていた。
 「私達も行くヨ!」 テレパシーにより幽体離脱したオリベちゃんとイナちゃん、ポメラー子ちゃん、ジャックさん、リナも次々に入獄!  「みんなぁ!」 皆の熱い友情で龍王剣が更に燃え上がった。「…ギャアァァ!!」
◆◆◆
 さあ、大掃除が始まるぞ。 先陣を切ったのはイナちゃん。穢れた瘴気に満ちた半幻半実空間を厚底スニーカーで翔け、浄化の雲を張り巡らさせる。 雲に巻かれた悪霊共は気を正されて、たちまち無害な虹色のハムスターに変化!  「大丈夫ヨ。あなた達はもう苦しまなくていい。 私ももう苦しまない!スリスリマスリ!」
 すると前方にそそり立つ巨大霊魂あり! それは犠牲者十人と廃工場の巨大調理器具が押し固まった集合体だ。  「オォォカァァシィィ!」  「スリスリ…アヤーッ!」 悪霊集合体に突き飛ばされた華奢なイナちゃんの幽体が、キューで弾かれたビリヤードボールのように一直線に吹き飛ぶ!  「アァ…オカシ…」「オカシダァ…」「タベル…」 うわ言を呟きながら、イナちゃんに目掛けて次々に悪霊共が飛翔していく。 しかし雲が晴れると、その方向にいたのはイナちゃんではなく…  <エレヴトーヴ、お化けちゃん達!> ビャーーバババババ!!!強烈なサイコキネシスが悪霊共を襲う! 目が痛くなるような紫色の閃光が暗い作業場に走った!  「オカヴアァァァ…」鮮やかに分解霧散!
 そこに上空から未確認飛行影体が飛来し、下部ハッチが開いた。 光がスポットライト状に広がり、先程霊魂から分解霧散したエクトプラズム粒子を吸いこんでいく。  「ウーララ!これだけあれば福島中のパワースポットを復興できるわ! 神仏タルパ作り放題、ヤッホー!」 UFOを巧みに操る巨大宇宙人は、福島の平和を守るため、異星ではなく飯野町(いいのまち)から馳せ参じた、千貫森のフラットウッズモンスター!リナだ!  「アブダクショォン!」
 おっと、その後方では悪霊共がすさまじい勢いで撒き上げられている!? あれはダンプか、ブルドーザーか?荒れ狂ったバッファローか?…違う!  「ウルルルハァ!!!ドルルラァ!!」 猪突猛進する譲司さんだ! 人間重機と化して精神地獄世界を破壊していく彼の後方では、ジャックさんが空中を泳ぐように追従している。  「おいジョージ、もっと早く動けねえのか?日が暮れちまうだろ!」  「もう暮れとるやんか!これでも筋肉のリミッターはとっくに外しとるんや。 全知全脳だって所詮人間は人間やぞ!」  「バカ野郎、この脳���! お前に足りねえのは力じゃなくてテクニックだ、貸してみろ!」 言い終わるやいなや、ジャックさんは譲司さんに憑依。 瞬間、乱暴に暴れ回っていた人間重機はサメのようにしなやかで鋭敏な動きを得る。  「うおぉぉ!?」 急発進によるGで譲司さん自身の意識が一瞬幽体離脱しかけた。  「すっげぇぞ…肺で空気が見える、空気が触れる!ハッパよりも半端ねえ! ジョージ、お前、いつもこんな世界で生きてたのかよ!?」  「俺も、こんな軽い力で動いたのは初めてや…フォームって大事なんやなぁ!」  「そうだぜ。ジョージ、俺が悪霊共をブチのめす。 水家を探せるか?」  「楽勝!」 加速!加速!加速ゥ!!合身した二人は悪霊共の海をモーゼの如く割って進む!!
 その時、私は萩姫様からテレパシーを受信した。  <頑張るひーちゃんに、私からちょっと早いお誕生日プレゼント。 受け取りなさい!> パシーッ!萩姫様から放たれたエロプティック法力が、イナちゃんから貰った胸のペンダントに直撃。 リングとチェーンがみるみる伸びていき、リングに書かれていた『링』のハングル文字は『견삭』に変化する。 この形は、もしかして…
 「イナちゃーん!これなんて読むのー?」 私は龍王剣を振るう右手を休めないまま、左手でチェーン付きリングをフリスビーの如く投げた。すると…  「オヤツアァ!」「グワアァー!」 すわ、リングは未知の力で悪霊共を吸収、拘束していく! そのまま進行方向の果てで待ち構えていたイナちゃんの雲へダイブ。 雲間から浄化済パステルテントウ虫が飛び去った!  「これはねぇ!キョンジャクて読むだヨー!」 イナちゃんがリングを投げ返す。リングは再び飛びながら悪霊共を吸収拘束! 無論その果てで待ち構える私は憤怒の炎。リングごと悪霊共をしかと受け止め、まとめて成仏させた。
 「グガアァァーッ!さては羂索(けんじゃく)かチクショオォーーーッ!!」 龍王剣が苦痛に身を捩る。  「カハァーハハハ!紛い物の龍王でもそれくらいは知っているか。 その通り、これは不動明王が衆生をかき集める法具、羂索だな。 本物のお不動様から法力を授かった萩姫様の、ありがたい贈り物だ」  「何がありがたいだ!ありがた迷惑なん…グハアァァ!!」 悪霊収集効率が上がり、ワヤン不動は更に荒々しく炎をふるう。  「ありがとうございます、萩姫様大好き!そおおぉおい!!」
 <や…やぁーだぁ、ひーちゃんったら! 嬉しいから、ポメちゃんにもあげちゃお!それ!> パシーッ!「わきゃお!?」 エロプティック法力を受けて驚いたポメラー子ちゃんが飛び上がる。 空中で一瞬エネルギー影に包まれ、彼女の首にかかっていた鈴がベル型に、ハングル文字が『금강령』に変わった。  「それ、クムガンリョン!気を綺麗にする鈴ね!」  <その通り!密教ではガンターっていうんだよ!> 着地と共に影が晴れると、ポメちゃん自身の幽体も、密教法具バジュラに似た角が生え��神獣に変身している。
 「きゃお!わっきょ、わっきょ!」 やったぁ!兄ちゃん見て見て!…とでも言っているのか。 ポメちゃんは譲司さん目掛けて突進。 チリンリンリン!とかき鳴らされたガンターが悪霊共から瘴気を祓っていく。 その瞬間を見逃す譲司さんではなかった。  「ファインプレーやん、ポメラー子…!」 彼は確かに察知した。浄化されていく悪霊共の中で、一体だけ邪なオーラを強固に纏い続ける一体のイタチを。  「見つけたか、俺を殺したクソ!」  「アッシュ兄ちゃんの仇!」  「「水家曽良…サミュエル・ミラアァァアアアア!!!!」」
 二人分の魂を湛えた全知全脳者は怒髪天を衝く勢いで突進、左右の拳で殺人鬼にダブル・コークスクリュー・パンチを繰り出した! 一見他の悪霊共と変わらないそれは、吹き飛ばされて分解霧散すると思いきや… パァン!!精神地獄世界全体に破裂音を轟かせ、亡布録の内側からみるみる巨大化していった。 あれが殺人鬼の成れの果て。多くの人々から魂を奪い、心に地獄を作り出した悪霊の王。 その業を忘れ去ってもなお、亡布録の裏側で歪に成長させられ続けた哀れな獣。 クルーアル・モンスター・アンダー・ザ・スキン…邪道怪獣アンダスキン!
 「シャアァァザアアァァーーーーッ!!!」 怪獣が咆える!もはや人間の言葉すら失った畜生の咆哮だ! 私は振り回していた羂索を引き上げ、怪獣目掛けて駆け出した。 こいつを救済できるのは火力のみだあああああああ!!  「いけェーーーッ!!ワヤン不動ーーー!!」  「頑張れーーーッ!」<燃えろーーーッ!>  「「<ワヤン不動オォーーーーーッ!!!>」」
 「そおおぉぉりゃああぁぁぁーーーーーー!!!!」
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highlandfeet · 8 years ago
Text
雪の降る2012年12月末に綴り始めた本ページ。今週末で、開設5周年を迎える事になりました。
SNSを始めた先に綴り始めた本ページ。唯、日々の想いを残していくとどんな風になるのかなぁと、漫然と始めてみたのですが、いつの間にかこんな所まで来てしまいました。
今朝の時点で公開中のコンテンツ数は562、アクセス数は累積で58万弱、暖かくなって桜が咲く頃には60万アクセスに達するのでしょうか。無料サイトの為に広告が表示されているかと思いますが、当の本人はアフェリエット等に興味が無く(画像データのストレージは有償で借りています)、時間もお金も浪費しての、完全に自分の好きな事を(時に裏モードも)追いかけた記録を綴ってきた本サイトが、これほどまでご覧頂けるとは、正直、考えていませんでした。
そんな何の役に立つのか判らない、趣味丸出しの本サイトを訪れて下さって、そして暖かいコメントを残して頂きました皆様に、深く御礼を申し上げます。
それでは恒例で、この一年の本サイトへのアクセス状況をネタバレでご紹介です。
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サイト開設からこれまでの、アクセス数の推移です。
50万アクセス到達時にちょっとこぼれ話的にお伝えしましたが、今年の2月に某超巨大検索エンジンさんのアルゴリズム変更の影響が、こんな辺鄙なサイトでも露骨に響くという、明白な証拠でしょうか。私自身はWordPress.comのユーザー共有を殆ど使用していないのでWordPress readerからのアクセスは非常に少なく、本サイトへのアクセスは(ロボットによる自動学習を含めて)約2/3が検索サイトからのようです。
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2014年7月からの月毎のアクセス推移の推移をご覧頂ければ、その効果がよく判るかと思います。ヒット率を引き上げるためには継続的なコンテンツの提供、それも多くの新規閲覧者を引き入れるタイムリーなテーマでコンテンツを出し続けないと、こうなりますよという、典型例を見せて頂いている気分です。Webで収益を得ている方にとって、多分検索サイトとは一衣帯水なのだなぁと、しみじみ感じた一年でした。
データを確認していてちょっと興味深かったのが、例年100アクセス/年以下のFacebookからの閲覧が今年は急増した点。後ほど理由の方はご紹介しますが、Facebookの共有ユーザー間における連帯の強さを見た思いです。
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今年1年のアクセスランキングです。ホームページへの直接閲覧が約36000アクセス/年、初掲載が実に2013年の2月に遡る、トヨトミレインボーストーブを紹介したページ2本でしめて16000アクセス程度です(中の人じゃないよ!でも、某ホームセンターで石油ファンヒーターの使用可能標高表示が復活したのは、この記事が理由かも?)。一番下のコンテンツで約250アクセスほどです。グリーンのラインで示したコンテンツが今年新たに掲載した分です。
流石に旧型SX4を紹介したページや、当初は多数のアクセスの有ったFM番組の最終回への想いを綴ったページへのアクセス数は低���してきた一方(それでも今年新たに掲載したコンテンツよりアクセス数多いのです)、意外だったのが美ヶ原の放送用電波塔たちと、信越放送のマウンテントップ方式開闢の石碑を紹介しているページ。類似の紹介ページは複数あるかと思いますし、もっと専門的に書かれているページもありますが、美ヶ原に訪れた方なら誰もが気になるその威容、掲載以来、例年多くの方にご覧頂けているようです。
今年のビーナスライン冬季閉鎖直前に訪れた際の写真を。人が織りなす様々なドラマが眠る天空に広がるこの大地。幾度訪れても想いが募る場所です(今年は吹雪いていてちょっと大変でしたが)。
昨年は、余り新しいコンテンツをご覧頂けなくてと、こぼしていたかと思いましたが、総アクセス数が大きく減少した今年、実は新規ページをご覧頂いた件数が確実に増えていた事に気が付きました。これも巨大検索エンジンさんの描き出す技故なのか、ちょっと興味深い結果になったので、ページを執筆した際の心境を含めてご紹介です。
まず、驚きの3番目(ホームページを除く)にランクされたのが、鹿避け笛(鹿笛)の記事。八ヶ岳界隈に居住されている方にとっては常々、苦労が絶えないテーマですが、実に多くの方が困られているのだという事を実感した次第です。なお、取り付けた後も相変わらず鹿さんには街中、山中を問わずしょっちゅうお会いしますが、幸いなことに私も愛車SX4も無事である事を、ここにご報告させて頂きます!
例年、多くの方にご覧頂く小淵沢駅の臨時列車時刻表、そしてバスの時刻表。今年はその小淵沢駅に大きな変化がありました。7月に開業した新駅舎開業までの日々と想い出を綴ったページにも多くご訪問頂きました。取り敢えず建屋とエントランスだけ夏の観光シーズンに間に合わせようと突貫工事で仕上げた感もある、開業以来の改築とも云われる新駅舎のオープン。開業直後に指摘が出て来た利便性の問題についても、周辺の観光施設へ向かうバスの一時待機場所の設定、行き過ぎた体面上のエコロジーが生み出した、夜間に無人になると真っ暗になっ��しまう、通路に奥まった待合室も照明が点灯するようになり、地域交通の伝手を繋ぎ止める最後の手段である、マイクロバスや路線バス、自家用車や各観光施設及びペンション等などからの迎えの車すら新駅に乗り入れられないという致命的な欠点は、年末までに漸く整備中のロータリーが完成する事で解消に向かう算段が見えてきました。
その一方で、ロータリーの用地を捻出する為に解体された旧駅舎。このシーンが望めなくなるのは少し寂しいのですが、新年からは行き交う列車のバックに、ダイレクトに八ヶ岳が遠望できるようになります。
そして、今年を象徴する様なページたち。刊行数の多寡に関わらず、お気に入りの(もしくは難物の)一冊をご紹介できればとの想いで書き始めた、読んでいる本の紹介。時にレア物新刊紹介として検索エンジンから辿られる方もいらっしゃいますが、今年ご紹介した中で上記に掲載している3冊は極めて特徴的なアクセスの動き、即ち、著者の方に直接ご紹介を頂いたor著者の方もしくは関係者の方のFacebookによる紹介でアクセス数が伸びたという、これまでとは違うパターンが生じた点です。
これまでも、著者や訳者の方にご挨拶を賜る事が幾度かありましたが、今回ご紹介した本、特に後続の2冊に関しては、私自身へのフィードバック等はなく、純粋に引用して頂いているサイト内や、Facebook内で拡散、閲覧が繰り返されていたようです。そのような意味で、ちょっと狐につままれたような感もありますが、ご覧頂きました皆様のご興味に対して、一助となっていれば幸いです。
形はともあれ、もし本サイトをご覧になって、本屋さんでお手に取って、更には購入されて読まれるという機会があるのであれば、本が好きで、より多くの方に本に興味を持って頂きたいという一心で、拙い文章を曝している恥ずかしい身としては、殊更に嬉しい限りです(ステマですかとか、何処かの出版社さんの中の方ですか、などのようなご照会を頂く時がありますが、お小遣いの範疇でコツコツと買って、仕事の合間と就寝前に読書時間捻出している程度、更にはこんな酷い文章、ど素人に決まっているでしょ!)。
SNSでRTしているくせに買ってないじゃないかとのご指摘もあるかと思いますが、お財布事情以上に「お願いです、版元の皆様、どうか本屋さんに入れて下さい!」。見かけた場合、ほぼ確実に買って読んでおりますので。そんな中で、面白かった本が評価されると、読んでいた本人も実は嬉しいのですよという例を、今年、古代歴史文化大賞を受賞された「タネをまく縄文人」ご紹介のページアクセス推移でお見せします。
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最後に、年末になって余りにも急な知らせに驚いてしまった事を。
多くの方にページの方をご覧頂いたようですが、年少の頃から大好きだった、脚本家の島田満さんが今月、急逝されました。いきなりあのような文面をつらつらと書き並べると、貴方何者なのと思われたかもしれませんが、ネットなどが誕生する以前からその作品を追いかけていた、少し年上のお姉さんのような、本当に大好きな脚本家さんでした(殆どの資料を昨年自宅を整理した際に処分してしまったのですが、掲載した写真はその中で唯一残していた、クリーミィマミ脚本陣揃ってのインタビュー記事からです)。
本ページでも紹介させて頂いている、小説家の村山早紀さんを知ったのも、島田さんがシリーズ構成を手掛けられた作品の原案協力をなさっていた事から(その後になって、同じメンバーが手掛けていたひとつ前の作品が、今、私が住んでいる場所を舞台設定に使っているよと教えられて、慌てて見直すことに)。恐縮なことながら、毎年カレンダーを頂いてしまっているトラッシュスタジオ様と佐藤好春さん知るきっかけとなったのも、ジブリから日本アニメーションに復帰した佐藤好春さんがキャラクターデザインを手掛けられて、島田さんが全話の脚本を書かれた、世界名作劇場「若草物語ナンとジョー先生」本放送の際に感銘を受けたからです。このページで、時に大西洋やアメリカ北東部、中西部をテーマに扱った本の紹介が散見されるのも、���女の作品や、それ以前から続く世界名作劇場の作品たち、更にはそれらの原作となる物語達に幼少期から親しくし接してきたその先に、今の自分の興味が色濃く残っているためだとの想いもあります。
近年ではファミリー向けの作品での脚本参加が多かった中で、意外ともいえる明らかにコアな男性アニメファン向け作品へのシリーズ構成、脚本としての立て続けの参加に驚きながら、今やSNS等で瞬時に伝わる完成した作品の放映後の評判の高さ。シリーズを通貫させるテーマ性や深くキャラクターを掘り起こしていく卓越した描写力には、放映が1年に渡るのが当たり前だった往年のオリジナル作品や、原作のストックが無くなっても放映を止められない大作のアニメ化作品における、オリジナリティと原作のテイストを最大限に引き出す、脚本家の方々が培ってきたテクニックと思考力が遺憾なく発揮されているように思えます。女性向け作品で絶大な支持を集める、同年代で同じ女性脚本家の金春智子さんが回顧されていたように、作品の想いを汲み取りながら、突っ込み過ぎるぐらいに、更に掘り込んでキャラクターの魅力を引き出していくシナリオたちがもう見られなくなるのは、とても寂しい事です。
少し脱線してしまいました。
この文書を書きながら、唸りながら横で来年度のカレンダーに使う写真のセレクションを続ける師走の午後。
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今年も色々な事がありましたが、このような辺鄙なサイトにご訪問頂き、ご覧頂きました皆様に改めて感謝と御礼を申し上げます。
大好きな八ヶ岳を間近に望むこの場所で、ゆっくりと一歩ずつ。
  サイト開設5周年のご挨拶(ご訪問頂きましたすべての皆様に改めて感謝を)2017.12.23 雪の降る2012年12月末に綴り始めた本ページ。今週末で、開設5周年を迎える事になりました。 SNSを始めた先に綴り始めた本ページ。唯、日々の想いを残していくとどんな風になるのかなぁと、漫然と始めてみたのですが、いつの間にかこんな所まで来てしまいました。 今朝の時点で公開中のコンテンツ数は562、アクセス数は累積で58万弱、暖かくなって桜が咲く頃には60万アクセスに達するのでしょうか。無料サイトの為に広告が表示されているかと思いますが、当の本人はアフェリエット等に興味が無く(画像データのストレージは有償で借りています)、時間もお金も浪費しての、完全に自分の好きな事を(時に裏モードも)追いかけた記録を綴ってきた本サイトが、これほどまでご覧頂けるとは、正直、考えていませんでした。 そんな何の役に立つのか判らない、趣味丸出しの本サイトを訪れて下さって、そして暖かいコメントを残して頂きました皆様に、深く御礼を申し上げます。 それでは恒例で、この一年の本サイトへのアクセス状況をネタバレでご紹介です。 サイト開設からこれまでの、アクセス数の推移です。 50万アクセス到達時にちょっとこぼれ話的にお伝えしましたが、今年の2月に某超巨大検索エンジンさんのアルゴリズム変更の影響が、こんな辺鄙なサイトでも露骨に響くという、明白な証拠でしょうか。私自身はWordPress.comのユーザー共有を殆ど使用していないのでWordPress readerからのアクセスは非常に少なく、本サイトへのアクセスは(ロボットによる自動学習を含めて)約2/3が検索サイトからのようです。 2014年7月からの月毎のアクセス推移の推移をご覧頂ければ、その効果がよく判るかと思います。ヒット率を引き上げるためには継続的なコンテンツの提供、それも多くの新規閲覧者を引き入れるタイムリーなテーマでコンテンツを出し続けないと、こうなりますよという、典型例を見せて頂いている気分です。Webで収益を得ている方にとって、多分検索サイトとは一衣帯水なのだなぁと、しみじみ感じた一年でした。 データを確認していてちょっと興味深かったのが、例年100アクセス/年以下のFacebookからの閲覧が今年は急増した点。後ほど理由の方はご紹介しますが、Facebookの共有ユーザー間における連帯の強さを見た思いです。 今年1年のアクセスランキングです。ホームページへの直接閲覧が約36000アクセス/年、初掲載が実に2013年の2月に遡る、トヨトミレインボーストーブを紹介したページ2本でしめて16000アクセス程度です(中の人じゃないよ!でも、某ホームセンターで石油ファンヒーターの使用可能標高表示が復活したのは、この記事が理由かも?)。一番下のコンテンツで約250アクセスほどです。グリーンのラインで示したコンテンツが今年新たに掲載した分です。 流石に旧型SX4を紹介したページや、当初は多数のアクセスの有ったFM番組の最終回への想いを綴ったページへのアクセス数は低下してきた一方(それでも今年新たに掲載したコンテンツよりアクセス数多いのです)、意外だったのが美ヶ原の放送用電波塔たちと、信越放送のマウンテントップ方式開闢の石碑を紹介しているページ。類似の紹介ページは複数あるかと思いますし、もっと専門的に書かれているページもありますが、美ヶ原に訪れた方なら誰もが気になるその威容、掲載以来、例年多くの方にご覧頂けているようです。 今年のビーナスライン冬季閉鎖直前に訪れた際の写真を。人が織りなす様々なドラマが眠る天空に広がるこの大地。幾度訪れても想いが募る場所です(今年は吹雪いていてちょっと大変でしたが)。 昨年は、余り新しいコンテンツをご覧頂けなくてと、こぼしていたかと思いましたが、総アクセス数が大きく減少した今年、実は新規ページをご覧頂いた件数が確実に増えていた事に気が付きました。これも巨大検索エンジンさんの描き出す技故なのか、ちょっと興味深い結果になったので、ページを執筆した際の心境を含めてご紹介です。 まず、驚きの3番目(ホームページを除く)にランクされたのが、鹿避け笛(鹿笛)の記事。八ヶ岳界隈に居住されている方にとっては常々、苦労が絶えないテーマですが、実に多くの方が困られているのだという事を実感した次第です。なお、取り付けた後も相変わらず鹿さんには街中、山中を問わずしょっちゅうお会いしますが、幸いなことに私も愛車SX4も無事である事を、ここにご報告させて頂きます! 例年、多くの方にご覧頂く小淵沢駅の臨時列車時刻表、そしてバスの時刻表。今年はその小淵沢駅に大きな変化がありました。7月に開業した新駅舎開業までの日々と想い出を綴ったページにも多くご訪問頂きました。取り敢えず建屋とエントランスだけ夏の観光シーズンに間に合わせようと突貫工事で仕上げた感もある、開業以来の改築とも云われる新駅舎のオープン。開業直後に指摘が出て来た利便性の問題についても、周辺の観光施設へ向かうバスの一時待機場所の設定、行き過ぎた体面上のエコロジーが生み出した、夜間に無人になると真っ暗になってしまう、通路に奥まった待合室も照明が点灯するようになり、地域交通の伝手を繋ぎ止める最後の手段である、マイクロバスや路線バス、自家用車や各観光施設及びペンション等などからの迎えの車すら新駅に乗り入れられないという致命的な欠点は、年末までに漸く整備中のロータリーが完成する事で解消に向かう算段が見えてきました。 その一方で、ロータリーの用地を捻出する為に解体された旧駅舎。このシーンが望めなくなるのは少し寂しいのですが、新年からは行き交う列車のバックに、ダイレクトに八ヶ岳が遠望できるようになります。 そして、今年を象徴する様なページたち。刊行数の多寡に関わらず、お気に入りの(もしくは難物の)一冊をご紹介できればとの想いで書き始めた、読んでいる本の紹介。時にレア物新刊紹介として検索エンジンから辿られる方もいらっしゃいますが、今年ご紹介した中で上記に掲載している3冊は極めて特徴的なアクセスの動き、即ち、著者の方に直接ご紹介を��いたor著者の方もしくは関係者の方のFacebookによる紹介でアクセス数が伸びたという、これまでとは違うパターンが生じた点です。 これまでも、著者や訳者の方にご挨拶を賜る事が幾度かありましたが、今回ご紹介した本、特に後続の2冊に関しては、私自身へのフィードバック等はなく、純粋に引用して頂いているサイト内や、Facebook内で拡散、閲覧が繰り返されていたようです。そのような意味で、ちょっと狐につままれたような感もありますが、ご覧頂きました皆様のご興味に対して、一助となっていれば幸いです。 形はともあれ、もし本サイトをご覧になって、本屋さんでお手に取って、更には購入されて読まれるという機会があるのであれば、本が好きで、より多くの方に本に興味を持って頂きたいという一心で、拙い文章を曝している恥ずかしい身としては、殊更に嬉しい限りです(ステマですかとか、何処かの出版社さんの中の方ですか、などのようなご照会を頂く時がありますが、お小遣いの範疇でコツコツと買って、仕事の合間と就寝前に読書時間捻出している程度、更にはこんな酷い文章、ど素人に決まっているでしょ!)。 SNSでRTしているくせに買ってないじゃないかとのご指摘もあるかと思いますが、お財布事情以上に「お願いです、版元の皆様、どうか本屋さんに入れて下さい!」。見かけた場合、ほぼ確実に買って読んでおりますので。そんな中で、面白かった本が評価されると、読んでいた本人も実は嬉しいのですよという例を、今年、古代歴史文化大賞を受賞された「タネをまく縄文人」ご紹介のページアクセス推移でお見せします。 最後に、年末になって余りにも急な知らせに驚いてしまった事を。 多くの方にページの方をご覧頂いたようですが、年少の頃から大好きだった、脚本家の島田満さんが今月、急逝されました。いきなりあのような文面をつらつらと書き並べると、貴方何者なのと思われたかもしれませんが、ネットなどが誕生する以前からその作品を追いかけていた、少し年上のお姉さんのような、本当に大好きな脚本家さんでした(殆どの資料を昨年自宅を整理した際に処分してしまったのですが、掲載した写真はその中で唯一残していた、クリーミィマミ脚本陣揃ってのインタビュー記事からです)。 本ページでも紹介させて頂いている、小説家の村山早紀さんを知ったのも、島田さんがシリーズ構成を手掛けられた作品の原案協力をなさっていた事から(その後になって、同じメンバーが手掛けていたひとつ前の作品が、今、私が住んでいる場所を舞台設定に使っているよと教えられて、慌てて見直すことに)。恐縮なことながら、毎年カレンダーを頂いてしまっているトラッシュスタジオ様と佐藤好春さん知るきっかけとなったのも、ジブリから日本アニメーションに復帰した佐藤好春さんがキャラクターデザインを手掛けられて、島田さんが全話の脚本を書かれた、世界名作劇場「若草物語ナンとジョー先生」本放送の際に感銘を受けたからです。このページで、時に大西洋やアメリカ北東部、中西部をテーマに扱った本の紹介が散見されるのも、彼女の作品や、それ以前から続く世界名作劇場の作品たち、更にはそれらの原作となる物語達に幼少期から親しくし接してきたその先に、今の自分の興味が色濃く残っているためだとの想いもあります。 近年ではファミリー向けの作品での脚本参加が多かった中で、意外ともいえる明らかにコアな男性アニメファン向け作品へのシリーズ構成、脚本としての立て続けの参加に驚きながら、今やSNS等で瞬時に伝わる完成した作品の放映後の評判の高さ。シリーズを通貫させるテーマ性や深くキャラクターを掘り起こしていく卓越した描写力には、放映が1年に渡るのが当たり前だった往年のオリジナル作品や、原作のストックが無くなっても放映を止められない大作のアニメ化作品における、オリジナリティと原作のテイストを最大限に引き出す、脚本家の方々が培ってきたテクニックと思考力が遺憾なく発揮されているように思えます。女性向け作品で絶大な支持を集める、同年代で同じ女性脚本家の金春智子さんが回顧されていたように、作品の想いを汲み取りながら、突っ込み過ぎるぐらいに、更に掘り込んでキャラクターの魅力を引き出していくシナリオたちがもう見られなくなるのは、とても寂しい事です。 少し脱線してしまいました。 この文書を書きながら、唸りながら横で来年度のカレンダーに使う写真のセレクションを続ける師走の午後。 今年も色々な事がありましたが、このような辺鄙なサイトにご訪問頂き、ご覧頂きました皆様に改めて感謝と御礼を申し上げます。 大好きな八ヶ岳を間近に望むこの場所で、ゆっくりと一歩ずつ。
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robatani · 8 years ago
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安眠の園
 昼寝から覚めると、目の前に透けた女が���っていた。 「もし、そこな剣士様。どうかわたくしを助けてはくれませぬか」  うららかな春の午後、花の零れるアーモンドの木の下でうつらうつらとしていた所を熟れた果実のように甘い声に囁かれ目が覚めた……と思ったらこれである、神殿剣士として生きているとやたらと面倒が舞い込んでくる。勿論面倒といっても普通の面倒ではなく、普通の方法では解決できない類の面倒である。今回もその手の面倒にありがちなことに、避ける間もなくおれはドツボに嵌っていた。 「わたくしは美女の霊にございます」  自分でいうか。幽霊というのはそんな頭がいいものではない。脳味噌が無く思念だけがふよふよ浮いているのだから頭の巡りが悪いというのがおれの持論である。確かに肢体は血肉が通っていたならばなかなか食い気をそそられる官能的な丸みを帯びていた。だが触れることができないのでは意味がない。第一この自称美女、一番重要な部分がない。首がないのだ。どうやって美女かを見分ければいいのだ。顔以外は確かに素晴らしいが、肝心の顔が分からないのではメインディッシュの無い御馳走のようなもの。面食いとはよく言ったものだと思わず駄洒落が脳裏を走る。 「どうかわたくしの頭を取り戻してはいただけませんか。何もお礼は出来ませぬが、このままでは落ち着くに落ち着けず」 「美女のお誘いを断るのは悪いんだが別の奴に頼んでくれ。おれは剣しか能がない男だ。頼っても何も事態の解決にはならないぞ」 「ですがその紋章、瞳持つ孔雀の羽根は「監視の女公」のものでは……」  顔がないのにどうやって視認出来ているのかと首をひねる。 「確かに今のおれの雇い主は彼女ということになるなあ」  厄介なことになって来たぞと思いながら辺りを見回す。誰もいないので虚空に呼びかけている妙な奴だと思われる心配はない。だが問題はそうじゃない。 「かの女神はわたくしの守り神ではありませぬが、あなた様と出会ったのも「女公」のお導き。今ここにはあなたさましか頼れるお方はいないのです、どうか、どうか……!」  幽霊にしなだれかかられおれは途方に暮れる。こういう日に限ってこういったことに強い腐れ縁のホトル、妖精の血を引く呪い師は側におらず、その上おれは女の衣装に見覚えがあったのだ。  ――この女、巫女だ――  おれは朝方のことを思い出していた。 *  おれは、神殿剣士だ。そうなる前は各地で傭兵として働いていたが、色々と安定した生活が愛しくなってこの大河の側の都市にたどり着き、転職した。  神殿剣士というのは神殿に雇われている戦士であり、叙事詩に出て来るような聖なる祝福を受けた戦士達とはもちろん違う。そもそも神殿剣士と言いながらも好まれている武器が剣であるだけで槍使いや斧使いも当たり前のようにいる。諸神殿から色々な提供をしてもらえはするが、触れるだけで奇跡を起こしたり剣が神々しく光ったりなどはしない。国王や領主の名のもとに雇われるように、ただ名義上の雇い主が神々だというだけだ。その中でも「片目の貴婦人」、「眠らずの女」とも呼ばれる「監視の女公」におれは雇われている。姿は片目を失った毅然とした女、印は瞳の埋まったクジャクの羽根。教義は「汝見逃すなかれ」といたって簡単。何を、と言われれば不正や悪行や何やなのだが、神官ほど厳しい誓いを立てた訳でもないため、ときたま薄目になって見逃すこともある。主な役割は街のいざこざを取り締まること。つまり他の都市では衛兵や自警団がやるような仕事を請け負っている。いい所はいくら平和な時でも飯と寝る場所に困らない。ただし香を焚き染めた神殿の禁欲的な寝台と食事が快適だと思えるならば、だが。面倒な所は名義上の雇い主とはいえ神が主人であるためそこそこ素行に気を付けねばならんことと、ときたま普通の衛兵や傭兵ではどうしようもないような任務がやってくることである。暗殺者との切った張った、魔女にかどわかされた被害者の救出、やんちゃのすぎたはぐれ魔術師達の討伐、挙句の果ては邪神を崇める地下教団との大立ち回りまでやらされるので防護呪文の提供と命がいくらあっても足りないようなものだ。無論、死霊や妖魔とのやり取りもここに含まれるが魔祓いは専門ではないので本業の神官もしくはそれに類した者達に任せた方がいい。
「マウラーン、血は好きか」  唐突に聞いてきたのはウルベラ、「監視の女公」に身を捧げた隻眼の女神官だ。元々彼女も傭兵上がりで、傭兵になる前は東方で禁忌の魔術を学んでいたのだが様々なことが嫌になって剣の道に走ったらしい。片目を戦で失ったのを何かの天恵と受け取り隻眼の女神に仕えるようになり、才能があったのか女神に愛されたのか両方なのか、あっという間に様々な奇跡を起こすようになった聖女といってもいい女性だ。だが、腰に武骨な剣を下げ、しょっちゅう部下や他の神殿剣士と手合せをする姿は一般的聖女とは程遠い。因みに変に敬称などを付けるとまどろっこしいと渋い顔になるため彼女に対して恭しい口をきく神殿剣士は殆どいない。これはこれでやりやすいのだが、やはり聖女とは程遠い。 「――血が好きだと答えるのは戦狂いか妖魔だと思うぞ」  ウルベラの唐突過ぎる問いにおれは困った顔をする。このご婦人は悪い御仁ではないのだが時折脈略なく唐突に物事を言う節があり、しょっちゅう困惑させられる。そういえば、「女の血の匂いは麝香に似ている。少し腐り始めるとよくわかる。甘い匂いだ」と言った奴は誰だったか。傭兵仲間の一人だった気もするが、よく覚えていない。変な奴であったのは確かだろう。女と男の血の匂いの違いということをそもそも考えないし、戦場ではそんなことを気にしている暇などない。 「まあ血を固めた肉詰めは好きな方だが。茹でたあれをつまみに黒い麦酒をかっ込むのはたまらん……が、そういう話ではないんだろう」  うむ、と頷いてウルベラは話を続けた。 「井戸から血が出た」  これまた唐突過ぎる話で、おれははあ、と相槌をうつしかなかった。ウルベラは自分の言葉の何が足りなかったのか���からない様子で、おれと彼女の間にはどうしようもない沈黙が流れていくばかり。しばらくの間石造りの静かな神殿の中を行き来する神官達の衣擦れの音が行き来していた。 「死体がな、井戸に投げ込まれていた」  それを最初から言え、とおれはウルベラにぼやく。大分話が分かりやすくなった。  曰く、まじない路地近くの共同井戸に首のない死体が投げ込まれていたと。最初は実験に失敗したはぐれ術師の不法投棄かと思われていたが、今朝もまたまじない路地近くの別の共同井戸にやはり幾つかの死体が投げ込まれていた。  その中に「灰の庭師」の巫女の死体があったのだ。  「灰の庭師」というのは数多いる死の神々の中でも墓を司る神であり、主に灰色の園に座る異形の男の姿であらわされる。現世利益が殆どないため忘れられやすくはあるが、彼の庭に咲く花はこれまで存在していたあらゆる生者の記録である、と言われている古い神である。最もこの手の逸話は似た権能の神々もそれぞれそれらしい形で持っており、例えば「死者の名がずらりと刻まれた石板」やらその類の神話だけでも類似した物が多々見つかる。それらのどれがオリジナルの神話かは人である身にはわかるはずもなく、本家だ元祖だと騒ぎ立てる神官らが入り乱れる中おれたちは生きている。  話がずれた。 「死因は皆バラバラで、儀式的なものではないらしい……と呪い師達の方から報告が来ている。共通点は全員首がないことくらいだ」  全員首がないこのに儀式的なものを感じたのだが、呪術的および魔術的観点(この二つの違いをあまり理解できていない)からすると色々と違いがあるらしい。まったくわからない世界である。 「おれはこの報告を喜ぶべきか、呻くべきか悩んでるんだが。ともかく、死体を使った大規模儀式なんぞ都市の中でされたらそれこそ何が起こるかどうかわかったもんじゃないのは確かだな」  ともかくマイナーではあるが古い神の巫女さんまで殺されたとあっては大事件である。――無論、元々の死体不法投棄も大事件なのだが。様々な祈りとまじないの力渦巻く「都市」の中では何が引き金で予想外のことが起こるか分か���たものではない。生贄の線が低いのは不幸中の幸いだ。ウルベラも同じ考えのようで無言でうなずいた。下手に地下の妖魔悪鬼を呼び出されたり古代の邪神やらに復活された日にはしがない神殿剣士にはどうしようもない。それこそ本物の「神の奇跡」を願うしかない。 「で、どうすればいい」 「いつもの通りだ。手掛かり探して犯人を見つけて思いっきり殴ってこい」 「生死問わずか」 「「灰の庭師」の姉妹団の長が死体から吐かせる気満々だから、その辺りは気にするな」  恐るべし、巫女。 「しかしそんなことが出来るなら何で沢山いる死者たちに頼まないんだ」 「頭がないからだ」 「は?」 「死者を喋らせるのはもともと難しい儀式だ。死体の頭がないときわめて難しい。逆にいえば頭を壊してしまえばどんなことをやっても真実が暴かれることはない……」  死人に口なしとはいうが、本当に死者に喋らせるのに口が必要だとは思わなかった。 「そうか。じゃあ、請け負った。ウルベラ「様」、いつもの祝福を頼む」  そうしてしかめっ面にしか見えない苦笑いを浮かべるウルベラから祝福を受け、おれは意気揚々とまではいかないまでも、やる気十分で出かけて行ったのだった。 *  それがどうしてアーモンドの木の下での昼寝に繋がるかというと、歩き回って疲れたせいと、「灰の庭師」の神殿で被害者達を検分しているうちに、死者をも眠らす静かな香の匂いを嗅ぎすぎたせいだということになるだろう。いやもう一つ。手がかりが一つもないから諦めて天恵が降りてくるに任せたというのもある。実際にやってきたのはゆらゆらと裳裾を翻す顔のない透明な霊体だったが。しかもしっかりおれに憑りついていると来た。  「灰の庭師」の神殿は「安眠の園」と呼ばれており、引き取り手のない死体が埋められた様々な庭で構成されている。その発想におれはぎょっとするものを感じるのだが、庭を管理する庭師の姉妹団――巫女達はそうは考えていないらしい。多種多様の白い花々が細やかな美的センスと神聖な意図が込められた配置で燃やされた屍の上に植えられ、庭は今もまた新しい屍達が仲間入りするのを待っている。これらの花から作られた香はどのような不眠症の患者にも安眠を与えると言われており、姉妹団の大きな収入源となっている。おれとしてはその話を聞いた時に安眠とはそっちの意味ではないだろうと訴えたい物があった。その眠りは本当に次に目覚めるのか。  さておき。はらはらと名前の分からぬ白い花が散る庭園の中でおれは幽霊を連れながら歩いていた。巫女さん達が彼女に気付いて引き取ってくれないかというのが一つ。もう一つが彼女の親しい場所でだったら頭が無くても何か思い出してはくれないだろうかという儚い望みが一つ。 「そういえばどうしておれに憑いてきたんだ」  花散る中ゆらゆらと花弁と戯れている幽霊――本当に助けを求めているのかわからなくなった――に話しかける。庭園には人影はなく、喋りかけても怪しまれる心配はない。 「目が覚めた時にはあなた様の側に立っていたのです。助けを求めなければいけない気がして。どうやって死んだかもわからず、ただ首を探さねばならぬという思いに駆られて……あなた様に憑りつきました。恐らくは、香がわたくしを運んだのでしょう……かの香は霊の微睡を精製したようなものですから。とはいえわたくしはまだ埋葬されていない眠れぬ霊ですからおかしな話ではありまするが……」  お香の思わぬ情報に、おれは絶対に死んでもここの香には頼らないぞと心を決めた。うっかり彼女のような寝ぼけた霊がやってこられたら手におえない。 「なあ、お嬢さん……あんたの名前を聞いていなかったな」  正確には聞いていたのだが、死体の名前を昼寝ですっかりうっかり忘れ去っていた等とは口が裂けても言えない。死体が若い女の物だったのは覚えていた。 「タラーマ。確かそう呼ばれておりました。姉妹団では一番年下の巫女でありました」  そこで会話が途切れる。彼女を助けるにも首を探し出さなければいけなく、恐らくその首の行方は犯人のみが知っていると来た。ウルベラの話が正しければ首はもう破壊されているかもしれない。 「その、タラーマ。不運な話なんだが。そちらの頭はもう壊されている可能性が」 「いいえ、それはありませぬ」  やけにきっぱりとした断言だった。 「わたくしの頭は持ち去られ、今もどこかに保管されています……もう骨だけになっているか、それとも肉の付いたままかはわかりませぬが、存在していることは分るのです」 「じゃあそれがどっちにあるかは分かるか」 「わたくしは、羅針盤ではありませぬ!」  ぷい、と頭を――あったならばの話だが――背ける仕草をしたタラーマをうっかりおれは愛らしいと思ってしまった。 「じゃあ、地道に探すしかなさそうだな」 「ならばやってみましょう……面白い考えですもの……」  物事はそう簡単にはいかないと思っていたが、意外にもやる気になってくれたらしい。タラーマは無い首を巡らせながら、ふわふわと回っていたが、やがて、ある方向を向いて止まった。まるで羅針盤じゃないか。おれは心の中でつぶやく。 「近くにあるような気がいたします……」 「近くだと!? 何でそれを先に言わない」 「だって頭がぼんやりとしていたのですから」  漫才をしている場合じゃない。神殿内に彼女の頭があるとしたらここで彼女が殺されたということになる。全くもって不可解だ。こちらこちらと急いで手招くタラーマの後を追っていく。大理石作りの神殿に足音が響く。怖ろしい程に人影はない。タラーマにいつもこうなのかと聞くと「いえ、いつもはもう少し人影があるはず」と返された。何かの儀式中かと聞いても思い当たる節はないらしく、そうこうしているうちに神殿内の道は終わり壁に突き当たった。 「道を間違えたんじゃないか、タラーマ」 「いいえ、この向うから気配が致します……だんだん見えて来ました、季節外れの白い花……見てはならなかったもの……思い出したっ!」 「おい、タラーマ。どうしたっ」 「この壁は壁ではありませぬ……ほら、そっと隙間に剣を滑らせて……」  タラーマの言うとおりにやる。なるほど、剣の切っ先が隙間に嵌り、 「隠し戸か」  後は簡単、力任せに叩けば―― 「いえ、引き戸ですわ」  おれはしたたか打ち付けた肩をさすりながら人の話は最後まで聞くものだという教えをしみじみと噛みしめていた。
 扉を開いた先はガラス張りの天井が張られた中庭で、骨よりも白くタラーマの裳裾のようにひらひらとした花弁を付けた背の高い緑灰色の植物が几帳面に植えられていた。上の庭園にあったような儀式的な様子はなく、ただ一面の白い花畑――そして手前にまだ掘り返した跡が新しい土。おれはこの花に見覚えがあった。 「……罌粟だ」  そして、タラーマは言った。 「そう、わたくしは、殺されたのでした」  手前の土を掘り返すと、はたして小ぶりな女の頭蓋骨が現れたのだった。  それが生前美女だったかどうかはおれには分からなかった。 *  罌粟の栽培はこの都市では禁止されている。一部の神殿のみが治療用に使用するための物を栽培することを許されているが、「灰の庭師」の神殿の名はその中にはない。 「どうやら一部の巫女達が金稼ぎのために特殊な香を作って売りさばくことをやっていたようだ。確かに一時の安眠を与えるだろうさ――何せ麻薬なのだから」 「物騒な話だな。で、一番若かった巫女のタラーマがそれを見た結果殺されたと」 「ああ、そうだともマウラーン。正確には仲間に引き入れられそうになったところを拒んで殺されたと。何で頭を破壊しなかったか理解に苦しむがな」  報告を聞き駆けつけてきたウルベラと「庭師の姉妹団」の長はいつの間にか出来ていた罌粟畑に口をあんぐりとさせていたが、見つけ出されたタラーマの頭蓋骨と幽霊の証言もあったため、タラーマ殺しかつ御禁制の罌粟を栽培していた巫女達は一発でお縄になった次第。 「タラーマは異国の植物でもよく育てる腕前の持ち主でもありました……おそらく、そのために頭だけ残して畑に埋めたのでしょう。作られた香の効能を高めるために」  老巫女長は沈痛な面持ちのまま薬草茶を淹れていた。 「おれは信じられない話だが。女の頭蓋骨ひとつで麻薬の効き目は変わるものなのか」 「普通の物だったら、否。ただ今回は神殿謹製の品だ。象徴一つが深い意味を持つ可能性もある」 「えーと、あれか。よく花に話しかけるとよく育つようになるとか言う」 「あれは迷信、こちらは技術の話だ」  ウルベラは断言した。違いがよく分からない。第一殺された上に畑の一部にされた日には、おれだったら怒りのあまり植物全てを枯らしそうなもんだが神殿勤めの人々の思考回路は分らない。 「じゃあ、なんで井戸に死体が投げ込まれたんだ」 「それは「灰の庭師」の中での一番の罰だからです」 「罰――?」 「マウラーン、「監視の女公」の信徒にとっての一番の罰とは何だ」  おれは考えた。 「両目を潰される……とかか」 「そうだ。女公は残された片目ですべてを見通すことを行っている女神だ。見るというのが神聖な行いである女公の信徒に対して、片目ならともかく、両目を潰されるというのは一番の罰だ」  ウルベラは続ける。 「同じように「灰の庭師」の信徒が一番されて一番の罰は全ての死体を庭に埋められないことだ。これは死後永遠に休息を得られないことを意味する。花に変わるわけでもなく、花の香の中でまどろむことも許されないわけだからな……それを巫女達はタラーマに行った。何故か。見せしめのためだ――逆らうならば、安寧はないと思えと。タラーマの屍が言う所によれば、姉妹団の中では麻薬作りに従事している者が結構いたらしい。巫女長補佐が音頭を取ってやっていたという位だから……」 「知らずは私ばかりということになりますな……お恥ずかしい話です。そういえば調査を頼んだときも巫女長補佐はあまり良い顔をしませんでした」  巫女長は長くため息をついた。 「だが巫女の死体一つでは外部の者に怪しまれる。そこで屍の登場だ。生憎ここは行く当てのない死者を埋葬するための神殿だ。死体だったら腐るほどある。同じように頭を切断した死体を用意し……井戸に投げ捨てたというわけだ。「首のない巫女の死体が発見された」のと「首のない死体の中に巫女がいた」のでは巫女の死体の持つ意味が違ってくるからな……結果は、まあ、首のない巫女の幽霊が出てきたことで予想外のことになったのだが」  脈略なく喋る悪癖を我慢して長く喋ったことに疲れたという風に、ウルベラは茶をぐい、とあおる。 「何故、おれの所にタラーマが現れたのかは分かるか……」 「それこそ神の思し召しだ。「偶然」誰にも出会わなかったのだろう――お気に入りの巫女を殺されて、しかも罪もない死体まで罰を与えられてはたまらないと思ったのだろうさ」  それを言われると確かにとも思ったが、どことなく納得がいかなかった。
 タラーマの死体は彼女がたわむれていた白い花の木の下に埋められることとなった。骨となったタラーマの姿は小さく、結局最後まで顔が美女だったか分からなかったなあと思いながらおれは彼女を見送った。  眠れ、安らかに。  白い花がはらはらと舞い散り続ける中、おれは短く祈りをささげた。 * お題:「眠り」Repose的な。D&D3.5版のクレリックさんの領域の中にある安眠領域に思いをはせていたらこんなのが出来ました。因みに安眠領域はアンデッドを作らない死の領域みたいなものなので、一日一回即死攻撃を放てるのは同じだったりします。眠れ(比喩的に)。死神ゆえ致し方なし。
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kusanotakashi · 8 years ago
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日本は天皇の祈りに護られている
■「神話とは神代の物語」 江戸時代は 「神代巻しんだいかん じんだいまき」と呼んでいた 「神話」は、“myth”の翻訳語で、明治32年から一般でも 広く用いられるようになりましたが、 しかし“myth”には、他に、「作り話「でっちあげ」「根拠のない話」 という意味もありる。 「一神教」改宗した西洋の人々から見ると 「ギリシャ」「ゲルマン」「ケルト」など 多神教の「神話」は「作り話」「でっち上げ」「根拠のない話」 にみえる。 ■「安全神話」 安全だと思っているのに、それは 「作り話」であり「でっち上げ」「根拠のない話」 という意味に使われている。 自分たちの国の尊い神々の物語を「神話」という内部に 毒を秘めた言葉で呼んで良いのか。 学生と話をしていると、 「えーっー“つくり話”じゃなかったんですかぁー」と、 「じゃあ、あなた達は、伊勢の神宮も全国の神社も みんな“つくり話”をもとにして、何千年も続いてきたと思っている?」 学生らもちょっと考えた後、 「そう言われてみれば、確かに変ですねぇー」 ソクラテスは、神話について人間とは 2500年経っても、あまり進歩��ていない。 故に一般に認められているとそのまま信じる」 と語っている。 しかし、この「ソクラテスの忠告」 にもかかわらず、 紀元前4世紀シチリア島に生まれた哲学者、神話学者である エウヘメロスが『神論』の中で 「人々の崇敬を集めている神々は、元来、地方の王または 征服者であったが、人々の感謝の念がいつしか、彼らを神にした」 という仮設を立て やがて、古代キリスト教が成立する時代になると キリスト教徒は、ギリシャ・ローマの神々を滅ぼす為、 「お前たちの信じる神々は、所詮人間に過ぎない。 エウヘメロスという大学者もそう言ってるじゃないか。 それに比べたら、我々の仰ぐ神=ゴッド創造主は、人智を超えた 唯一絶対の存在である。 だから、これまでお前たちが信仰してきた神々と称する 人間への信仰を捨て、 私たちが信じるキリストの信仰に帰依せよ」 エウヘメロスの「神話学」によって ギリシャ・ローマの神々は 「聖なるもの」が失われ、既に、「神」から「人」に 転落していたわけですから この様な攻撃に、ひとたまりもなかったわけです。 こうして、ギリシャ・ローマの神々は、 一神教の前に屈服してしまいる。 日本人には、ピンと来ないかもしらないが 世界の宗教闘争は過酷。 今や、ギリシャ・ローマの神々を「お祀り」していた神殿は、 廃墟と云う無残な姿を留めているというのが現実です。 近現代ではアフガニスタン共和国バーミヤン州の 石窟寺院にある石仏を 政権をとったタリバン党= イスラム原理主義を唱える党が 偶像であるとして破壊しました。 このままでは、日本の神々が ギリシャ・ローマの神々の 「二の舞」になってしまう。 あの国の神話は、日本のこの神話に似ている。 そうだ! それが、日本に伝わってきたのだ と考えるのは、あまりにも単純一方的自虐的主張。 フランスの社会人類学者、民族学者でベルギー人の レヴィ・ストロースが来日した時 「神話の起源を探る事はそもそも不可能」 こう忠告している。
■「神話の起源を探る」必要があるのか?
我が国には、縄文時代から、我が国なりの文化があり 世界最古の「土器」は、日本の縄文土器 縄文時代の専門家は、 「世界の土器作りレースにおいて、東アジアが先陣を切り その中でも、日本列島は、一番手にあった。」 そのような日本で「神話」のみが、空白地帯であったと考える事に 合理的なものはありません。 フランスの社会人類学者、民族学者レヴィ・ストロースは、 縄文文化は、土器の製作に優れ、この点では 比類のない独創性を示してゐる。 人間が作った様々な文化を見ても この独創性に並ぶものはありません。 縄文土器に類する土器が全くない。 古さにおいてもそうで、これほど昔に 溯る土器の技術は知られておりません。 またそれが、1万年もの間 続いたことでも他に並ぶ例がありません。 と述べている。 ■日本古語 縄文時代1万年の間に、日本列島の「コトバ」は 統一的なものとして形成されている。 つまり“初めに民族の一体感”があった。 「神代の物語」によって“一体感”が作られたのでは ありません。 例えば、お風呂に入ろうとする。 その場合、湯加減を知る為の「温度計」を使って お湯の温度を数値で「知る」人もいる。 湯加減を知る方法は、もう一つありる。 それは直接自分の手を、お湯の中に入れることです。 それによって、一番知りたいことを瞬時に 「知る」事が出来る。 そうやって「知る」事が出来た人は 「今、何度?」と聞かれても、正確な温度=数値をいう事は ない。 だいたいxx℃ぐらい、ちょうどいい、「冷たい」くらいしか 答える事が出来ない。 客観的な数値でものを「知る」方法を絶対視している 唯物論者からすると、 その人の言葉は、とても曖昧に聞こえる。 「本当に知っているのか?」と疑いたくなるでしょう。 しかし、実は、お湯に手を入れた人こそ 「今、このお湯は入浴に適しているかどうか」 という、今、一番知りたい事を最も早く 最も正確に「知る」事が出来た人。 「温度が何度か?」「どういう器具によって計測したのか?」 などは、いわば、“どうでもいい問題”に過ぎない。 ハインリッヒ・ハイネは、1835年(天保6年)から翌年にかけ 「精霊物語」、「流刑の神々」という本を書いた。 その中で、キリスト教が、ヨーロッパの精神世界を 支配するようになってから、ヨーロッパの太古の神々への信仰が 「邪教」として抹殺されていく様子を書いている。 フランスの学者デュメジルは 「神話を持たぬ民族は既に生命をなくした民族だ」 と明言している。 今や欧米の人々は欧米式の物質文明の過ちに気付き 「神話」もしくは「神話的物語」に夢中で米国では聖書の次に なんと教育勅語が「徳の本Virtue's book」と言う名前で 聖書に次ぐベストセラーになっている。 例えば「スターウォーズ」は、アメリカの新しい“神話”の1つです。 監督のジョージ・ルーカスは、ジョセフ・キャンベルという 神学者のアドヴァイスを基に、映画の構成を練り そのキャンベルが、 「神話には神秘的な役割、宇宙的な次元、社会的機能の他に もう1つの機能があり 現在もあらゆる人が、そこから離れてはならないと思う。 それは、教育的な機能、いかなる状況の下でも 生涯人間らしく生きるには、どうすべきかを教えてくれる。 と言っている故 教育勅語がベストセラーになるのも理解できる。 ところが我が国は政治的な思想でも保守と革新の定義からすると 欧米とは逆になっている。 平成8年、富山の中学校で、給食の時間、全員で「いただきます」と言う行為を 、一部の保護者が「宗教的な色彩がある」と騒ぎ立て とうとうその習慣が廃止されました。
■神代の物語
神代の物語もある意味「夢」と似たところがありる。 一見すると、「荒唐無稽」であっても 実は、そこに、民族の「深層心理」が現れている時がありる。 そこに秘められている私たちへの「教え」とは何なのか? ・・・と静かに内省する時、いつしか私たちは 今を生きる私たちにとって大切な キャンベルが語っている「教育的機能」が 秘められている事に気づくはず。
■岩戸がくれ
アマテラス大神の「岩戸がくれ」 今も神社のお祭りには「踊り」は欠かせません。 神様に奉げる「踊り」には、閉塞した日常性を突破する 力が宿っている。 次に「笑う」事の大切さを、この物語は 私たちに教えてくれる。 この「岩戸がくれ」は、アマテラスの「死と再生」の物語。 キリストの復活と同じような意味もある 「良い子」でいようと無理をし続けている間は アマテラスは、まだ真の意味で、偉大な神では なかったのかもしれず 「岩戸がくれ」という「死」を経た後、 真に偉大な神として「再生」された。 キリストも神の子として皆の罪を背負い死ぬ この時までは偉大な神の子と言えず 磔となりそして再生し真の神の子となる。
■言霊 昔、ある高僧がは晩年に 「物欲を断つのは容易で肉欲を断つことも 壮年期を過ぎれば何でもない事であった。 しかし、最後まで自分を苦しめたのは 他の僧侶の良い評判を聞く時に生じる 嫉妬の念である」と語った。 「嫉妬」という主人には 「怒り」「怨み」「呪い」「不遇感」「被害者意識」「自己承認欲求」 という部下が居る それら“闇の思念”に勝つことは出来ないまでも せめて負けないようにする為の“光の言葉”を私たちは 昔から持っている。 それは、「感謝」と「祝福」 日常の言葉にすると「ありがとう」と「おめでとう」 スサノヲの神は、自分の犯した罪を背負って 「根の国」に追放されるが、その時 自分を追放する姉に向かって、別れ際に 「祝福」の言葉を残している。 日本書紀の原文では、 「姉のみこと 天つ国に照らし臨みたまひ おのづから 平安(=幸 さき)くましませ」
どうかお姉さん、これからも天上の世界を 明るく照らし続けてください。 そうしてくだされば、お姉さんも他の神々も みんなが幸せに過ごせるから。それでは・・・どうぞお幸せに)
嫉妬心から罪を犯したスサノヲが、流離の旅を経た後は 自分を追放する姉を心から祝福するところまで 神格を高められている。 この後、スサノヲの神の舞台は、出雲に移り スサノヲの神は、頼もしい「男」に。 もう「男の子」ではない その境地に至るには、ヤマタノヲロチとの厳しい戦いがあった という所に物語のポイントがある。 “リスクのある正義の戦い”を経なければ、 人はなかなか「清々しい清浄の境地」には、たどり着けない 亡き母を慕い「髭が生える歳になっても」泣いてばかりいた神が “リスクのある正義の戦い” に勝利し、「英雄」になり、美しい女性と結ばれ 真の「自立」を果たす。 現代の若者に聞かせたい物語。
■スサノヲ伝説 日本書紀は、スサノヲの神の流離の旅を「雨風、甚だしといえども 留まり休むことをえずして、辛苦(たしな)みつつ降りる」 意味は、強い雨が降り、激しい風が吹いていたが、どこで宿泊する事も 休むことも出来ず、大変苦しみながら、天上界から降りていかれた。 「辛苦みをたしなみ」と読ませている所に、古代の人々の深い知恵がある。 真の「教養」��「節度」は、「苦しさに耐え、努める」という経験に 裏打ちされるもの。 スサノヲの神の物語の不遇な幼少時代、流離、偉業 そして、別れ際の「いさぎよさ」などに 日本的英雄の形が現れている。 ヤマトタケル、源義経、織田信長、坂本龍馬、吉田松陰、西郷隆盛など どこかスサノヲの神の影が漂っているかもしれない。
■軍国主義 なぜ自分の国の「誕生日」を祝うと「軍国主義の国」になるのか。 全世界の国々が、「独立記念日」という形で 自分の「国の誕生日」をお祝いしている。 今も畏怖されるのが ある限度を超えるとブチ切れて70数年前世界138カ国相手に暴れまわった日本 のいわば 国民性である。 日本人は謙虚、しかし「鬱気質」な国民、ある線を超えると ブチ切れて180度変わり外国への「迎合」「卑屈」そして その裏返しで手が付けられなくなる。
■神の子孫 近代の欧米には、「神の子孫の君主」は、もういません。 しかし、元々古代のヨーロッパの王たちは、 神の子孫そされている。 例えば、古代ギリシャに、アガメムノン王。 西暦で云えば、紀元前1200年ごろの「トロイ戦争」に勝った王す。 トロイア戦争は永らく神話だと思われていましたがシュリーマンが 史実であることを証明し実在の王であることが判っている。 この王の6代前がゼウスというギリシャ神話における最高神。 古代ローマの初期の王たちも「ローマ神話」の 「ユピテール」という神の子孫。 本邦では神武帝はアマテラスから数えると6代目の子孫になるのだが 6と言う数字には意味があるかもしれない例えば サタン、獣をあらわす数字は666。 同じことは、古代アングロサクソン民族にも云える。 7世紀の栄えた古代イギリスのノーサンブリア王朝の系図を遡ると ゲルマン神話オーディン神に繋がっています ヨーロッパだけではありません。 エジプトのファラオは、太陽神「ラー」の子孫です。 インカ王の先祖は、「マンコ・ガバック」という神。 ジンギスカンの祖先も「アラン・ゴア」という神。 神々の子孫が、先祖になるというのは世界的に見れば普通の現象。 ならば天皇が神の子孫であっても不思議はない。 我国の皇室以外は、「神の子孫」である君主の家系は 滅亡している。 例えばエチオピアの皇統はソロモン王につながる皇統で 3000年続いていたが革命で滅ぼされてしまい 現在は世界最古の皇統である。
レヴィ・ストロースは、 『古事記』は、より文学的です『日本書紀』は、より学者風 。スタイルこそ違え、どちらも比類なき巧みさをもって、 世界の神話の重要なテーマ全てを纏め上げている。 そして、各々の神話が、知らず知らずのうちに 歴史に溶け込んでいて世界のどこを見ても、神話を構成する 色々な要素をしっかりと組み上げている所は我国以外にない。 8世紀の日本の文献ほど、広汎に綜合的材料を提供するものはない」 と発言している。
■泣いたり、笑ったり
なぜ、日本の神々は、泣いたり、笑ったりするのか? なぜ、日本の神々は、迷うたびに、自分が神様でありながら “独断”で判断されず、他の神々に“相談”しつつ 物事を決めのか? それは、つまり、人もそのようにして生きてゆけば良い、という 規範。 そもそも神道には教義がない、背中を見て学ぶそれが教え そこには、人が道を踏み外さず、生きる為の知恵が 秘められている。 アマテラスが「岩戸がくれ」した時、 八百万の神々が集まり、会議を開く。 その時、アマテラスにお出ましいただく為のアイデアを出し そのアイデアに基づいて、現場を指揮したのは、知恵神「オモヒカネの神」 しかし、「オモヒカネの神」は、独裁者ではない。 八百万の神々の委託を受け「役割」を果たしている。 (
「大祓詞」が、今でも全国の神社で、「奏上」されているのは 「天孫降臨」の物語を繰り返し語る事によって “時間の経過”から生じる“歪み”を元へ正す為。 それによって、日本という私たちの共同体 国家は 基点、起点に立ち戻りる。 そして、「初心に帰って」生き生きとした活動を 再開する事が出来る。 これこそが再生の物語の岩戸神話の実践
■妬み嫉みの神と和する神 神の謀りごと
「旧約聖書ではエホバ、ヤハウェ 存在するもの は はそれ以外を神として拝むことを民に禁じる。 人々が、その教えに背くと、大洪水を起こし ノアの一族を除き己が作ったものを総て滅亡させる。 悪魔が殺した人数より神が殺した人数の方が多いのである 北欧神話にいたっては、「神々」と「巨人たち」の 最終戦争ラグナロクが起き相討ちとなり 神々の世界」が、一度、滅び去っている。 外国の「神話」の中から、この様な「残酷」な物語を上げて いけばきりがない。 それに比べて、日本における神々の物語は、まさに 戦いが起ころうとする寸前で なぜか、平和的に事態が収拾してしまうケースが少なくない。 例えば、イザナギの神は、イザナミの神に追いかけられても 向き合って戦う事無く、ひたすら逃走。 離婚を宣言された時も、言葉の応酬だけで終わる。 アマテラスとスサノヲの対立も、神々の“産み比べ”で 事が治まりました。 ツクヨミとアマテラスの確執も二人が交流を断つことで 昼と夜に分かれたとされる 極めつけは、オオクニヌシの 国譲り、武力を背景にした交渉を云いながら 全面戦争には至らず局地戦でおわり「交渉」によって 地上界の統治権が平和裡に譲り渡される。 この様な「平和的な政権交代」の物語は、 外国の「神話」には、ほとんど見られません。
日本では、神々が権力に「執着」する姿勢も殆ど見られない。 「旧約聖書」では自分以外の「神」を拝んだ人々を滅ぼし、 「ゼウス」は、自分の地位を守ろうとして 妊娠している妻を子供ごとのみ込んでいる。 外国の「神」は、「権力」に執着するところがある。 ところが、日本の神々は、その点、実に「あっさり」 日本人は、どういう行いが“醜く悪”と感じ また、どういう行いを“美しく善”と感じるのか? 神代の物語には、日本人の人生観が とても解りやすい形で、現れている。 その様な穏やかな「神代の物語」こそ まさに、日本人の「心のかたち」を表わしたものだ。
■やまと言葉 高谷朝子さまが、お話になる言葉は御所言葉で 「・・・であらしゃいます」などという平安時代の 言葉遣いをする。 高谷朝子さまと一時間もお話していると、いつの間にか その後しばらく妙に“上品”な言葉遣いになっているらしい(笑)
スイス人ユング派の女性心理学者 マリー=ルイズ・フォン・フランツは 神話についての豊かな知識を自由に操って 世界がどう創られたのか 創造性とは何かを明らかにし われわれの意職がどう生まれたかを探る 「世界創造の神話」と言う著書で 「オーストラリア原住民の人々は、人間が技術を発明したのではなく それは、人間に啓示されたものである。 神が知識を生み出し、人は何か実地に仕事をする時、 それを使っているだけなのだ、という話を未だにしている。 だからこそ彼らは、たいてい、この認識を失った者より 優れたわざ師であり続けている 古来の信仰を持ち続けている事が 「優れたわざ師」である事を保証している と言っている もしかしたら、今の日本人の高い技術の背後にも 古代以来の信仰が息づいているのではないだろうか。
■働くということ 「額に汗して働くことは卑しく悪と考えるのが世界の価値観 遡ればそれはアダムとイヴが知識の実を食べ 罰としてエデンを追放された原罪 労働は悪。 と言う物語に依拠する。 しかし、日本ではアマテラスと言うオバサン嫌元へ 最高神が古事記などによると御自ら機織りつまり「働いて」いる。 神のやることは悪ではなく善。 その為、今でも日本人は、基本的に働き者。 もしも、そのような「神代の物語」以来の「労働観」を 日本人が失ってしまえば、我が国は、益々衰退していくに違いない。 神学者・若林強斎(1679-1732)の著「神道大意」(享保10年)には、 「全体的に言えることですが、神道を語る際には、解りやすく、 堅苦しなく語るのが、良い事。 忌部正道いんべまさみち室町時代の神官で忌部神道の創始者)は、 子供の言葉を使って、神々の心を呼ぶ」と云っている。 一見すると浅はかな、子供っぽい事の中に、とても 心が晴れ晴れとするような、満ち足りて快い 何かが秘められている。
学問をするということ 学問すると神々の事が分からなくなる。 そんなものだと認める以外神様の事は 永遠に分からない。 水には、水の神霊日のは水の神霊物事総てに神霊が宿る。 あそこに、ミズハノメの神と思い、水を汲む。 火を燈す時も同じ あそこに、カグツチの神と思って、火を大切に取り扱う。 小さな木1本を取り扱う時も、 クワノチの神、草1本を取り扱う時もカヤノヒメの神と。 兎に角、何につけても、触れるもの、出会うもの全てに、 「あぁ、有り難い」と、畏れ慎み感謝するのが神道
◆一燈照隅 万燈照国 伝教大師 最澄の言葉と言われるが 一人だけでは片隅しか照らすことができない 皆が集まれば国を照らすことができるのである。 「あれをしてくれ、これをしてくれ」という祈りより 先ずは感謝の祈りを捧げ 神様に対して、ひたすら畏れ慎み誠心を 捧げることを大切に。 最も神様が喜ぶ“祈り”。 皇后陛下は「よかれかし」という祈りを捧げておられ 真似れば充分。 「よかれかし」の祈りは、「私が」「私の」を 抜いたもの。 いわば、主語を抜いた「よかれかし」の祈り。 そのような祈りを何十年も続けていけば、いつしか 一人ひとりの心の底からの「歓び」にかわっていく。
稲盛さんの言葉をお借りすると ==
目先の利益ではなく「利他の心を判断基準にする」ということ。 私達には「自分だけがよければいい」と考える 利己の心と、 「他によかれかし」と考える利他の心 利己の心で判断すると、自分のことしか考えていないので 誰の協力も得られません。 自分中心ですから視野も狭くなり 間違った判断をしてしまいる。 一方、利他の心で判断すると 「人によかれ」という心ですから 周りの人みんなが協力してくれる。 また、視野も広くなるので、正しい判断ができる。 ですから、よりよい仕事をしていくためには 自分だけのことを考えて判断するのではなく、 周りの人のことを考え、思いやりに満ちた 「利他の心」に立って判断すべきな。
昭和天皇 御製歌会始 昭和21年(満45歳)
降り積もる 深雪(御幸でもある)にたへて いろかへぬ 松ぞ雄々しき 人もかくあれ
「神話を教えなくなった民族は100年続かない」
歴史学者、アーノルド・トインビーは 世界中の民族を研究して、こう言った。 「神話を教えなくなった民族は100年続かない」 第二次世界大戦以降、 日本の教科書に「神話」はない。 歴史(国史)もない、教えられるのは考古学。 ブチブチと途切れた事柄を教えられる。 ところが歴史と言うものは因果応報と言うように 途切れてはいない。 戦後7年間日本を社会実験?の意味合いも含め 占領統治していた米国は自国の国益に沿い (と言っても共産主義者が多かった) 天皇の系譜や日本書紀などの建国の話を 「危険思想として教えることを禁じた」からである。 世界の国々で建国の歴史を教えない国はない。 共産党中国も韓国も北朝鮮でさえ教え革命で奪取し それを正当化するために反日教育をする 寧ろ自慢げに国の歴史を語る国民がほとんどだ。
ところが、日本人は建国の歴史を知らないほうが普通で、 自国にあまり自信を持っていない。 それほど、戦後のアメリカ支配によって植えつけられた 日本人の罪悪感は国民性もあいまって強烈だった。 アメリカがことのほか丁寧に日本人の意識を変えたのは、 「天皇」に関する事柄である。 現在、日本の教科書に天皇の記述はたったの4行、 「戦前は絶対的な主権者だった天皇が、 戦後その地位を追われ、国民が主権者になった。 天皇はもはや象徴である。」という主旨。 我々が常識としている「象徴としての天皇」がここにいる。 しかし。 「天皇主権の主権と、国民主権の主権とでは、全く意味が違う。 天皇のそれは権威であり、国民のそれは権力である」 そして、それは「戦前も戦後も何ら変わっていない」 過去の日本を振り返れば、 天皇が権力を握って政治を行った親政の例は 極めて少ない。 「天智、天武、持統、宇多、醍醐、後醍醐天皇」くらい。 あとは幕末に孝明天皇が一時権力を握ったほかは、 ポツダム宣言の受諾のみ。 権力が機能不全に陥った時だけ 権威たる天皇がピンチヒッターとして政治に口をだしている。 旧憲法にある緊急事態条項でさえ事後でに議会承認が必要だった。 今の憲法は米国が日本の国防を担うことが前提だからこれがない。 だからこそ政治空白が生まれた場合の安全弁、 緊急自体条項として天皇の存在が必要 ■行き詰まり 欧米式の民主主義が行き詰っているのは ウシハク つまり権力者である国民を選ばれた代表が 私することを認めることに理由がある 権威と権力は分業させねば独裁者��生まれる。 海外の王は民を私有してきた。我が国は対等とし 君主と民が共治してきた。 つまり天皇の主権とは、大昔から権威であり、 「戦前も戦後も何ら変わっていない」
それが、戦後の喧伝によって日本人は、 あたかも天皇が主権者から 「象徴」に転落したかのごとき錯覚に 陥ってしまっている。 そんな戦後の歴史を経て、日本は 「日本が好き」という人が4割しかいない国民となった。 これは先進国中「最下位」であり、異常な数字である http://eikojuku.seesaa.net/article/196420177.html
■神話とは「比喩」
神話は目には見えないことを表現しようとしている。 何を言わんとしているのか? それを探る気持ちで読まなけれは、 神話は全く意味のない物語となってしまう。 「古事記」は目に見えないものを表現しようとしていて、 それを誰にでもわかるような比喩を使って 表現している。 そして名前を逐一記しているところにも、 ちゃんと意味がある。 「古事記」はまだ日本語が完成していない時代に 作られたも、から、 当てられた漢字にはほとんど意味はありません。 (音を頼りに読み解いていく) 「古事記」には我々日本人の歩んできた歴史が 比喩を駆使して生き生きと描かれている。 (ねず=小名木義行さん説)
■悲劇
今まで順調に神々を産んでいったのに どうして火の神が生まれたことでこんな悲劇が起こるのか? 火を操るすべを得た人類は飛躍的に文明を発達させる。 現在の文明は「火」と「鉄」に支えられている。 火は同時に「力」の象徴でもありる。 武力を持ったことで感情による殺傷が始まったことを 語っているのではないか? 銃火器や刃物といった武器にしろツール 道具にすぎない。 それを扱う人の意思次第で所謂平和主義者の 言う人殺しもできれば調理など命をつなぐツールにもなる。 重要なのは扱う人の意思。 そろそろ、我々の神話=究極の古典を 取り戻しても良い時期では?
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