#三つ組みバレエ
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indigolikeawa · 1 year ago
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2024年6月27日木曜日
病院の待合室にて21
くちずさむ歌はなんだい?思い出すことはなんだい?(3)
 私が道を盛大に間違えたおかげで(せいで、じゃないです)、ビジネスホテルに着いた頃にはもう午後四時過ぎになっていた。中がどうなっているか未だによくわからないエレベーターみたいな立駐に車を突っ込んでチェックインし、荷物��部屋に放り込んで街へと繰り出した。駅の近くにホテルを取ったと思っていたのが、間違えて歓楽街の近くにホテルを取っていたおかげで(せいで、じゃないです)、すぐに良さそうな飲み屋があった。準備中とあ���。「何時からですか!」「五時!」まだ五時にもなってなかった。何軒か見て回ったが、最初のところが良さそうだったので、歓楽街をぶらぶらしたり、ソープランドのキャッチのおじさまに「どうですか?」と聞かれたのに対して「お疲れ様です!」と返したり(私が)、全ての成人した徳島県民が一度は待ち合わせしたことがあるであろう「アクティ前」の植え込みの階段になっている部分に腰を下ろしたりして時間を潰した。五時になった。「いいですか!」「七時までな!(七時からは予約でいっぱいでよ)」ということで無事に居酒屋に入店した。ビールだー!やったー!私がアルコールを口にするのは去年の忘年会/送別会以来のことなのだ。Tくんも私と同じように盛り上がっていたが、この人お昼もラーメン屋で瓶ビール飲んでました。私は忘れていません。ともかく乾杯だ。
 あなたの人生には後悔がありますか?私にはあります。ここのお店で私たちが注文したメニューは、鯖の棒鮨、阿波尾鶏の唐揚げ、馬刺し、そして多量の生ビールだった。ねえ…お料理少ないって。どれもめちゃくちゃおいしかったのに、話に夢中で全然追加注文しないでやんの!ビールばっか飲んで!もっとお料理注文しないと!本当に後悔!いや、私が悪いよ、Tくんは全然悪くない。私がどんどん食べてどんどん注文すべきだったよね。そうしないとTくんも食べづらいよね。徳島の美味しいものをこれでもかと持ってきてもらうべきだった。何のために徳島に来てもらったのか。あのお店また行こう。今度は予約していこう。それは別の誰かと行くか、一人で行くということになるような気がする。ごめんねTくん。Tくんがまた来るって言うんなら止めないけどさ。(お料理の写真も当然撮ってません)
 私たちが夢中になって話していたこと、そんなのはもちろん昔話だった。今年で四十歳になる中学の同級生ふたりが居酒屋で夢中になって話すことなんて絶対に昔話だった。例えば。
「あのさ、僕ら主催ライブをやったよね?あれってさ…高校生になってたっけ?」
「いや、あれは中三の時だよ。あの時ね、なんかみんな煙草吸ってたでしょ?ガイアの前の道でもみんな普通に吸ってたから、近所の人なのか分からないけど、知らないおばさんに『あんたたち中学生でしょ?みんな煙草吸ってるけど、いいと思ってんの?』って言われて、『ああー、私高校行けない可能性出てきたなあ』ってぼんやり不安になったもん」
「あれ中三の時だったんだね。信じられないなあ。今でも夢だったんじゃないかと思うよ」
 そう、私とT君で組んでいたバンドは主催ライブを行った事がある。あれは中三の…あれ?なんとなく春休みにやった記憶があるから、まだ中三になってないのかな?それとも中学卒業と高校入学の間の春休み?まあともかく、バンドメンバーである私とT君ともう一人のドラムを叩いてた子は、まだ全員十四歳か十五歳だった、と思う。会場はclub gaiaというクラブだった。JR沼津駅から徒歩六分(今調べました)、現在はもう閉店してしまったようだが、当時はもちろん営業中で、おそらく昼から夜にかけてはバンドのライブなどをやっていて、深夜帯はパーティーを中心としたクラブ営業をやっていたのではないかと思う。今ですらこんなあやふやな想像しかできないが、当時はそんなことは何ひとつ知らず、ありきたりな憶測すら出来ていなかったはずなのに、よくやったもんである。そもそも我々はこのclub gaia を電話帳で発見した。我々は電話帳を本当によく活用していたバンドだった。練習スタジオ(いわゆるリハスタ)が実はもっと近所にあるのではないか、と思って電話帳で探し、「スタジオなにがし」みたいなのを見つけて「あった!」と思いチャリで行ってみると、「バレエ・スタジオだった!がっかり」ということはザラだった(電話してから行きなよ。電話帳でしょ)。レコ屋を探してみたり、ライブハウスを探してみたり、同級生の自宅の電話番号を探してみたり(本当の話である。当時の我々は電話帳から同級生の家電(いえでん)を探し当てるくらいの能力は備えてしまっていた。携帯なかったしね。いきなり自宅に直電し、「君!ドラムに興味ないか!あるなら我々とバンド活動をしようではないか!」と勧誘したりしていた。今考えると完全にどうかしている)電話帳は情報の宝庫だった。そして電話帳の「ライブハウス/クラブ」の欄に載っていたお店のひとつがclub gaiaだった、と思う。我々捜索隊はそれを電話帳に発見するやいなや、ただちに現場に急行した(電話しなよ。まあ今考えるとビビってたんだと思われる。あと電話する用件がない。建物を見たいだけだから)。gaiaは割と住宅街の中にあり、我々の持つ手がかりは住所しかないため(実際は電話番号も知っているけども)捜索は難航したのだが、日没前に見つけることができた。「おおー、あるんだ」と言ってその日は帰った。中学生は本当に暇である。本日の我々くらい時間が有り余っていた。
 我々のバンドは「パンジー」と言って���もちろん花の名前からとったのであるが、「パンクでノイジー」というとても中学生的な意味もあった。パンジーは後に「ルーラ」という名前になったり、「べとべとさん」という名前になったり、「べとべとさんとぶるぶるちゃん」という名前になったりしたが、ここではパ��ジーという名義で統一する。パンジーはgaiaで主催ライブをする前に、国道一号線のとある交差点の北東にあったすみや(同じ交差点に「すみや」というグループのお店は三店舗あり、北東にあるのが楽器屋とスタジオ、南東がパソコン館、南西がCD屋だった。ちなみに北西はファミマ)の二階のスペースで開催されていた”Get in Live”(「入れライブ」て)で2回演奏した事があった。その二回のライブを経て、我々はライブハウスなどでも演奏したい!と思ったのだ。普通はブッキングライブに出よう、となりそうなもんなんだが、そういう仕組みは知らなかったのかな。あと沼津にはそういうライブハウスが多分なかった。三島にはゴリラハウス、富士にはアニマルハウスというライブハウスがあって(動物ばっかり。かわいい)、多分ブッキングライブなどもやっていたと思うが、我々は沼津市民だから沼津でライブしよう、レペゼン沼津!…と思ったのかな?忘れました。
 中学生で主催ライブを行うなんてもの凄いことのような気がするが、細かいことは全然覚えていない。ここから先は(何ならここまでも)すべてうろ覚えですので、そこんとこよろしくお願いします。我々も含めて多分バンドは四つ出た。パンジーと飲波波波(ヤンパパパと読みます。金岡中のバンド)とあと二つのバンド(名前は失念)。もちろん昼の時間帯。私たちはなぜか最初に出たような気がする。演奏は多分めちゃくちゃ。コピーがメインだけど、オリジナルも演奏したような気がする。演奏が終わって誰かに「お疲れ様です」って言われて、「わあ、ミュージシャンみたい!」って嬉しかった記憶がある(そこ?)。クラブを借りるお金を捻出するために前売りチケットを売ったと思う。チケットはgaiaの人がデフォルトみたいなやつを作ってくれたのか、我々で作ったのか覚えていない。当日券で来る人もいた気がするが、いずれにせよライブの途中から適当になり、最終的にはフリーライブみたいになった。めちゃくちゃお客さん入ってた。そしてほとんどの人が煙草を吸っていた(みんな中坊。高坊もいたのかな?)。ライブはかなり盛り上がっていたと思う。gaia使用料の精算時、あんなに人が入っていたのに、お金が少し足りなかったので、「どうしよう…」となっていたら、対バンの誰かが「なに?足りないの?じゃあちょっと金作ってくるわ」と言って街へ消えていき、金を作って戻ってきた。お金って作れるんですね。全て終わって最後にみんなでフロアを掃除した。めっちゃ吸い殻落ちてた。あんなに大量の吸い殻を見たのは、四十年近く生きてきたがあの時だけである。
 確かに今でもこんな主催ライブをしたのはあんまり信じられない。というか飲んでる時はこんなに細かく話していない。細かく話せば良かった。絶対盛り上がったのに。あとこの文章を書くに当たっても、あの時話しておけば、視点がもうひとつ増える事で正確性を増す事ができたのに。またしても後悔。後悔ばっかり増えている。酒の席の反省なんてしてはいけないのかもしれない。
つづく
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sdeet · 1 year ago
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NDTのオンライン配信を見た(一日目)
ネザーランドダンスシアターの作品配信を購入したので見た。24日25日それぞれ一日限り(ヨーロッパ中央時間)の配信なので、観たい方は今日明日中に。明日はマルコ・ゲッケ作品。
とりあえずのメモ。
1日目のプログラムはクリスタル・パイトとノエ・スーリエとヨハン・インガー
A triple bill of beloved works danced by NDT 2: Ten Duets on a Theme of Rescue (2023) by Crystal Pite About Now (2023) by Noé Soulier IMPASSE (2020) by Johan Inger
ノエ・スーリエはこのあいだ日本��演があったんだけど観に行けなかったなー。
三作品見た中ではヨハン・インガー作品がキッチュ且つ不穏でニコニコしながら圧かけてくる感じの群舞とかがあってちょっと笑いながらみちゃった。好き。終わりの方の幕が下りてきて向こうとこちらを隔てる壁を越境しようとするさまとかがぐっときてしまう。
以下は作品トレーラー
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私の場合、ダンス作品を見ているとき脳が活性化するので見ながらずっといろんなことをぐるぐる考えている。イメージの飛躍みたいなのが起こりやすくなるなとも思う。
あとNDTは今年日本ツアーをするんだけど、会場によって上演される演目が違うので全部観たければ二か所以上の会場へ行く必要があり、「オランダへ行くより安いと言えば安いが安い旅行ではない」になってしまい、確かに私はダンスが観たいがために生きてはいるが生きるためにダンスを見ているのであって、ダンスを見るために生活を犠牲にしては本末転倒なのではないか??? やってられるか畜生という気持ちが湧いたけどNDTの作品を見るのは好きです。好きな振付家の作品が一気にたくさん! だがぜんぶみるの生活上かなりきつい。
いろいろなご事情があるのはわかるがご無体な、という気持ちでいっぱい。
ゲッケ作品神奈川だけだし逆に神奈川ではフォーサイスをやらない。私はガブリエラ・カリーソ作品が第一に観たいものなので名古屋神奈川に行けばよいとなるが、7月に週末ごとに遠征を……?泊りで……? みんなどういう日程組んでる……?
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fujihara-org · 14 days ago
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【観劇雑記】ミュージカル『刀剣乱舞』 〜真剣乱舞祭2017〜 (2017年12月20日 国内最終公演)ミュージカル『刀剣乱舞』 十周年応援上映祭にて
こんにちは、藤原です。私現在、寝る前に真剣乱舞祭2022の各地方の公演を、作業用かつ予習として見ておりまして、折り返しの宮城公演→福岡公演の途中まで観劇したのですが、宮城公演びっくりするくらい全編通してカメラワーク良いですね。なにこれ。ちょっとびっくりしてます。驚きだな!と思ってたら、この公演は全景収録もありなんですね〜!さすが凝ってる。全景、レーザーやフォーメーション含めて綺麗ですね。でもそれだけじゃないパワーがあるような気がする〜!やっぱりこれが舞台やライブの魅力でもありますよね〜!たのし〜!! というわけで、十周年応援上映祭にて、ミュージカル『刀剣乱舞』 〜真剣乱舞祭2017〜 を観劇いたしましたので、その個人的備忘録的なたんぶらとなります。大変恐れ入りますが、全曲レビューはできない上に、映画館で見たあと、サブスクでもう一度見た上で、この概略たんぶらを書いております。ひょっとしたら解釈違いなどありましても、ご容赦ください。というかその場合は画面ブラウザのそっ閉じをお願いいたします。 繰り返しになりますが注意事項として、改めて個人の主観での主張でありますことを明示いたします。また、キャスト名・キャラクター名に関しては基本的に敬称略として記述いたします。ご了承ください。
なんかいきなり「ミュージカル刀剣乱舞」っぽくなっていた。2016年から1年で何があった。とはいえ、直線状に「2.5次元ミュージカルの年1回のお祭り」と「2025年のミュージカル刀剣乱舞」があったときに、お祭りを原点0、2025年の刀ミュを100としたときに、65〜70くらいの間にいるような感じ。ちなみに、おんなじ直線上で2016を指すのであれば、48〜53の間くらいだと思う。個人的尺度で申し訳ないけど、総合的に17くらい刀ミュ度とでもいうものが上がっていたように感じる。 うーん…特別何がっていうわけでもないんだけど、強いていうならキャラクターが馴染んだとでも言うんだろうか…。キャラクタ同士の掛け合いなどが増えて(解釈や印象の個体差はあれど)そのキャラクタに近いように見える場面が増えたからとか?馴染んでる的なアレなのか?背景にイラストが出てきたり、蝋燭の演出があるのは、すごい2.5っぽい表現だなぁとは思う。
以下、演者キャストについて垂れ流し的メモ。 イントロの竹千代×2はとても微笑ましい。ジャンプして手を合わせるやつとかタイミング練習したんだろうか。この子たちの将来がとても気になる。健やかに育ってくれ。して、ご機嫌な音楽とは? 中盤みとほせ人間キャスト「面妖な!!」 総司のキャストさんが勝利の凱歌で刀めっちゃくるくる回すところ、好きです。
にっかりさん、初手から怪しさ満載だなぁ。どうにも拭えない得体知れない感じがあるんだけど、ほぼほぼ垂直に起立してるように見えるからかもしれん。関節の微妙な動きとかどうしてるの?あと、青江さん表情を片面からしか抜かれないのもすごいそれっぽい。最後の寸劇のところの大股にかつての大脇差っぽさを感じてすごいキュンとくる。正面から抜かれるときはめちゃめちゃ笑顔で可愛いよ。癒される。 髭切・膝丸ペアは声が似てるというか、すごい本人?本キャラ?っぽい。本当に兄弟なんじゃないかっていう存在感すごいんだよな。二振りとも組む相手が変わると印象が変わるのもすごいそれっぽい。なんかすごい初手からプロっぽい。っぽいばかりで申し訳ないけど、本当にこれ以上あるのか?って言いたくなる感じすらもある。キェエエモードの声が二振りとも似てる。このパターンは珍しいかも。あと2人ともそこはかとなく上品。 村正〜!!!個人的に刀ミュでキャラクタの解釈が広がったキャラクタの1人は間違いなく千子村正である。っぽいわけでもないんだけど、オーラ?というか、一つの記述式正解をぶつけられる感じ。どのカメラで抜いてる瞬間でも村正なのがプロすぎる。どのカットでもso cute 村正なのは本当すごい。ずっと妖しい。ゲーム内の「悪い奴ではない」の回収すぎると思ってるよ。 大倶利伽羅、馴れ合うつもりはない!→加州、こわ、は笑うしかない。全然怖そうではないだろ。財木くんの大倶利伽羅はこれのみ。良いやつヤンキー感拭えない。不器用かな?それはそれとしてダンスの色気すごいね。それぞれの曲でダンスのときの空気感やば。 蜻蛉切さんは2.5次元初のキャスティングと把握しているけど、慣れてない感じも本キャラっぽい感じはある。ガタイがいいので、それだけで舞台映えするし、存在感があると再度実感する以外にない。 物吉くんは一番どう表現するか悩んだけど…、これはこれでありかな、というところ��落ち着いた感じです。ゲーム準拠だったらもっと声が可愛い感じでもいいけど、脇差っていう役割を考えたときには縁の下の力持ちでいてくれるのはほんと大事。人数的にもだけど圧倒的にバランスが取れるので、必要だと思う。
長曽袮さんは体の作りが変わった気がする。分厚くなった?足幅が広くなって手の動きが大振りになったか、構えの位置が少し低くなった感じかな…。すっごい、ぽさが増してるんだよなあ。お見事!蜂須賀、内番着可愛くなったね〜。服変わったのかな…。動きやすそう。蜂須賀は服が難しいからいろいろ制限があるのかもしれん。最後の決め台詞かっこいいよ! 和泉守は相変わらず足長い。というか足絡まないのかな。こっちは見てるだけで絡みそうで心配しちゃうけど。兼さんはビジュいつ見ても最盛期過ぎるけど、声のテンションが全然落ちないんだよ。石切丸さん、上手くなったというか、貫禄出た感じがします。2回目の本公演を終えたからかな。腰の位置が構え一つとっても低くなったと思う。なんというか、とてもありがちな表現だけど、存在感が増してるけど本人の雰囲気は変わってる感じがないのもすごい。経験だけきれいに吸収してキャラクタに消化させたってことでいいんかな。 加州は今回初めの方から加州っぽかった。ダンスはとてもしなやかになってたね。数こなしただけある。表現力の幅というかスキルもアップしていた。同様に三日月も。三日月は声変えずに、凄みを出せたり朗らかにできるようになったりしている気がする。いまつるちゃん、声量のコントロール凄すぎるな。無邪気さと声の高さのトップギアは変わらないかも知れないけど、そういう細かな技術がついてきてる気がする。岩融も身体作った感じするな。フードが相変わらず似合うな。
以下楽曲についてのメモです〜!全曲できずに申し訳ないし、コメントがどんどん粗雑になっていたらほんと申し訳ない。
あどうつ聲 小狐丸ソロ。びっくりするくらい声出てるというか、響く。雅楽っぽい感じが声質的にも似合うのかも知れぬ。息が乱れるのは気になるけど、肺活量は鍛えればなんとかなるので現時点ではそんなに気にしない。小狐の舞をするときに身体のサイズよりも大きめに歩幅開いてるようで、実物より体が大きく見えるかも。
脱いで魅せまショウ これどっからどう聴いてもタイトル詐欺すぎる。バックの音かっこいいんだよ。なんでこんな重く歪ませるの。正統派と色物のぶつかりの感じすごい。あとおそらく当時トレンドだった、主旋律と交わらないハーモニーの曲。ようこんな難しい曲歌わせるな。
双つの軌跡〜となり〜 歌うまいな。声量がよく出てるけど、その声の大きさでそんな踊れるの?ってくらい踊るな。ア��ションもバレエもなんでもありでなんでもであり兄弟だな。ハモリ難しい。余談ですが、有澤くんが髭切膝丸兄弟に衝撃を受けたって言ってたけど、そうなるよなってくらい、パンチある。
Can you guess what? 圧倒的カッコよさ。これ数日間耳の奥ずっとなってる。耳奥の占領曲その1。オリメンのバランスがそもそも神すぎる。なんじゃこりゃ、奇跡かよ。石切丸の大太刀っぽい大きな振りがとても好き。青江くん、もともと大脇差だったこと意識してるのか上半身があまり動かずダンスの足幅が比較的大きいんだけど、本当にそれが好き。もうああ"ってなる。本当にかっこいい。あと全体的に衣装似合いすぎる。国宝でいい。
Jackal この流れやばすぎるだろ。まじで本当夢見たわ。数日間の耳奥の占領曲その2。この時点ではあんまりない、歌唱面とダンス面が分かれた楽曲。かといって手を抜いてるわけでもなく、センターで踊る村正は圧巻。ボーカルの声が強いのものある。本当にかっこいい。太田さんだから成立させてるところある。けど、これちゃんとセンターステージで村正が役割を果たしてメインステージに戻ってくることを見越して踊ってくれるオリメンもすごい。ちなみに全員、ベール脱いでいる衣装もかっこいいんだよな。これも国宝。
Nameless Fighter 大倶利伽羅と青江、君ら、こんなに相性良かったんだね。二刀開眼、決めすぎじゃない?全然審神者知らなかったよ。声の相性が良すぎて永遠に聞ける。全身で大きく踊る大倶利伽羅と決めるところ決めるスタイルの青江の対比もいいと思う。ここ見比べると、青江の足の開き方とか、なんとなく感じる動きの不自然さみたいなものが分かりやすい。あと単純にバックの電子音が気持ち良すぎる。そしてニッカリ満面の笑顔が可愛いよ。
Signalize→Get your dream 曲割的に4人ではしんどそうだけど、その分ハーモニーがめっちゃよく聞こえる。兼さん、歌上手くなったね。声量どんどん上がってる気がする。加州もよく声出てる。下ハモもすごいよく聞こえる。だた、6人見ちゃってる分ちょっとパンチが足りない感じはする。MCは単純に可愛かった。こういうのはすごい刀ミュっぽい。蜂須賀、不愉快だ!が一番声出てる。ダンスはGet your dreamの方が良い感じで見れるのですけど、やっぱセンターステージの方が似合う男たちなのか。単純に迫力の問題かな。1番サビの舞台向かって左隅にいる蜂須賀の足をクロスしてる感じが好き。一瞬だけどね。
Beautiful Life!! 歌のうまさがよくわかる曲。よく声出てる印象だけど、見返したらサビのダンスが意外に激しい。こんな踊ってたんか。止まる緩急が難しい感じだと思うんだけど、よくできるな。兄者とシンメの膝丸、笑顔かわいいよ。サビ入り前のいまつるちゃんのパートが好き。間奏のダンスもめっちゃ激しかった。あとこの路線で三条は生きてくれ���無理かも知れんけど。
Real Love どう聴いても恋する洋楽すぎる。キーあげて出るのがすごい。よう出るな。本当リサイタル感。このくらい自信満々にやってくれるとほんと三名槍〜!!って感じする。圧倒的王者。この感じはあんまり2.5次元感はない。
mistake 新人+オリメン。この時点で通過儀礼になった…のか?髭切膝丸が初め階段上で踊ってるのが好きです。あと間奏中好きに踊る髭切膝丸兄弟も好きです。2番サビ入ってポンポンの前に加州から開けていくフォーメンションも好きです。銃のアクションもいいよねえ。大サビ前にセンターステージに移動して、Wowと慟哭する石切丸さん、頭のところで指をくるくるさせる加州さんも好きです。好きの要素しかない。このくらいの人数だと純粋に凄みを感じるフォーメーションというか演出になると思いました。
サヨナラ この二振りこんなに歌うまかったっけ?大賞。ペンライトの色も相まってすごく爽やかな感じもするけど、めっちゃ切なさが胸に残る。オーバーラップされる映像は泣かせにきてる。最後の演出が好き。
美しい悲劇 多くは語れないけど、サビのハモリが圧倒的美。真剣乱舞祭2016とはまた違う味わい。イメージ的に絶対的に悲劇しか待っていないエンド。2番サビの加州に持っていかれる。これが場数か。
獣 イントロの演出好き。めちゃかっこいい。朱色っぽいのがいい。2番始まりの大倶利伽羅のパート好きです。めっちゃかっこいい。あと、2番サビでポジション変わってセンターステージ最前で踊る石切丸さんな、決まりすぎてるんだよ。余裕ある兄者の表情もかっこいいよ。カッコすぎるのよ。この頃から定番になった回す光る棒が登場。兄者は光る棒振り回して、なお余裕ありそう。
えおえおあ 石切丸を筆頭に行ってくれるラインダンス好き。ニッカリえおえおあやってくれる青江と、全くやらない大倶利伽羅よ。ファンサービスタイム。っていうかこれめっちゃ広いと思うんだけどな。みんな駆け出してすごいな。
KEY MAN この曲がすごい2.5次元ぽさから刀ミュっぽさを引き上げてる気がする。タオルの上下を間違えちゃう石切丸さんとか、めっちゃ近距離で気まぐれにファンサする三日月とか、2人だけセンターでお払いの振り方し始めたりとか、始まる前の和泉守と大倶利伽羅のやり取りとか、まさにそれ!!という感じですらあるのよ。あと、なんか去年(真剣乱舞祭2016)とめっちゃくちゃ印象違うぞ、なんでだ。
SA・KA・ZU・KI 華兄弟! 出だしの今剣の小ささと岩融のデカさの対比がすごい。岩融、手長くなった?上半身も伸びた気がする。体感低くして大きく反ってるとかかなぁ。いまつるちゃんはほんと体力おばけすぎるな。あと、蜂須賀のダンス可愛すぎる。この曲通して青江と戯れたりとか可愛いのよ。バシッとも悪くはないんだけど、本人の雰囲気とかと合わせて考えるとこのくらい気が抜けている方が良さそう。手足の長さ��めっちゃ映える。ぷんすこ村正ちゃんも可愛いよ!あとラスサビの大倶利伽羅のお酒飲むところのダンスの色気すごすぎるから、なんとかして欲しい。大倶利伽羅と膝丸の最後の肩ポンもいい感じ。
漢道 やっぱ太鼓がたまらん。脱いでくれるのも嬉しいけど、太鼓というか、音の厚みがこのくらい欲しいんだよ。紐ぶんまわし組、扇子組、シャンシャン組と忙しい。なんかこの…全景と個人カットが入り混じってる感じもすごい刀ミュの編集っぽい。なんというか、この岩融越しの三日月の背中とか、加州と蜻蛉切が同一画角に入っている感じとかが本当に刀ミュっぽさな感じ。ごった煮感とあれ?みたいな気付きの塊。
かざぐるま 単純にいい歌だった。本編1部の曲って感じする。歌詞の内容も良かったと思うし、ハーモニーが全体的にきれい。締めにふさわしいとでもいうか、ちゃんと終われる曲。何度でも聞きたい。好き。
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yfxif · 7 months ago
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2024.04日記
2024/04/01.02
2024-04-01  二日前くらいから棒アイスが食べ切れなかったり変な体調と思っていたら朝から信じられないほどの胸やけで、通勤の電車もかなり図太いひととして無理のある距離から座席をうばったりし、極悪人のふるまいをしているくせに勝手に消耗してしまった。新年度の初日だからリクルートスーツに付属のパンプスときっちりのお化粧と地味な髪形、ブランド物のバッグを持っているひとが多くいた。このようなひとがゆくゆくは新宿三丁目のあの短い乗り換え通路できびきびあるくひとたちになるんだろうか。  向上心がありビジネス本のいらない人生とTwitterに呟いたあと、これは自己啓発本のことだったと気付いた。自己啓発本はいらないけれどその分胃薬が必要な人生。この日は広告のファンクラブかなにか青色のゴシック体の太字「FC」のFの折れ曲がったところをひたすら目で追って吐き気を逃した。  今月からよく知らない先輩が同じ現場に配属となり、現場リーダーとなるらしい。とりあえずひとりで会社のことを背負わなくてよくなって安心。ひとりをいいことに���社しておにぎりをたべながら仕事をはじめたり、けっこう自由にやらせてもらってはいたけれど不明な責任や交渉にくらべたらとなりに上司がいるほうがずっといい。  日野啓三『砂丘が動くように』を読んでいる。モチーフとしての砂の扱い方や一文ごとの簡素さ、簡素な言葉による演出としての地の文、でありながら主人公の語りをとおした鋭い感受性などをみると小説とは現象とあらためて思う。小説を現象として至ることができるものとみなすなら、短歌は額縁だろう。短歌はいくつか作ると最後は同じようなことばかり書いてしまう。短歌にしろなににしろ同じようなことを書くようになったあと、乾いた体でモノから書くべき泉を見出せるかどうかがつくることの起点になるのではないかとおもう。
2024/04/02  昨日の吐き気からつづいて腹痛が続き眠れない夜で2時に目覚めて眠りのコツをつかみかけたり(眠りは背筋を伸ばして力を抜くことより、寝具に甘えるのが大切。寝具のことをすきになる気持ちで眠るのがよく、正しい眠りをもとめると眠りの一歩手前で正しさを疑って身じろぎしてしまう。とはいえ正しい眠りスタイルの勝率も7���5分くらいはあるからへんに開拓せずとも早く布団にはいってひたすら同じ姿勢に耐えるという手もある)、5時半にまためざめて小説の手直しをしたりした。何とか二度寝して7時すこしすぎくらいにめざめるとなんと夢の中の自分が小説を書いてくれている。というふしぎな気分になりながら寝不足の躰をかかえて今日も仕事。寝不足だとあたまがぼんやりし光がまぶしいのがよくわかる。曇りだったのに雲の間から透ける光がまぶしかった。輪郭をくすませながら切れ間ながら紐状というわけでもないところは変な形のパズルのようできれい。あのかたちのパズルをいっかい床におとしてばらばらにしたらもう戻らないだろう。  仕事はいいかんじだけど、いいかんじだから気力にあふれるわけではない。むしろ気力がないからこそいいかんじでいてくれないと困る。だから今日はいいかんじでまだましのほう。いいかんじというのは、わからないところを解決する努力ができてそれでもわからないところを厳しめの上司に聞き、その上司が見たこともない手順で解決したりその解決方法をわたしに伝えない場合のこと。やれることはやってたみたいとわかると勝手にいいかんじ判定になる。  また部署異動となり同期ともしばらくお別れ。なんだか異動ばかりでずっと社長に謝られているけれど謝るわりにべつに丁寧ではない人事采配でうまく使われてしまっているとおもう。わたしも謙虚すぎるほど謙虚にへんな配属(新人たったひとりをアサインされたことのない会社に送り込み、事務処理の交渉をさせ、道が整った頃上司を入れられやるせない。上司に交渉させてほしかった)にもひたすらありがとうございます、使ってくれるだけで本望です、どこまでもついてゆきますの犬コミュニケーションしているから不満が伝わらないのはあたりまえ。お給料がほしいだけで自分の力で羽搏きたいとかはとくにないけれど、いちおう前のめりの姿勢だけをみせておく。でもプログラミングの本はふつうにおもしろそう。   家にかえるとお風呂場で妹が機嫌よくいきものがかり『気まぐれロマンティック』を歌っていて扉越しに聞こえる歌声になんてかわいいと思った。「叱ってくれる大事なひと」を「ひっとぉ」と歌うところが楽しそうに甘えるみたいで。楽しそうなひとはかわいい。彼氏もこんなひとが彼女ならかわいくてしかたないだろう。
2024/04/03
夢の記録。青葉市子と夏帆がいかにも岩井俊二っぽい光の中でバレエをしたりご飯を食べるシーンのあるドリル的映画(と夢の中では評されていた、ある一点の欲望を叶える手段に暴力が選ばれさいごに破滅する作品を表す自作の言葉)が公開される。  通勤の時間とお弁当を食べ���いる時間は『砂丘が動くように』を電子書籍で読み、読書の時間が取れるときは『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』を読む。後者は再読。  原神は毎日デイリーチャレンジと急氷樹、爆炎樹、盗賊団をひたすら倒すのを毎日やっている。主戦力としてエウルアを育てたいけれど育成に必要なクエストをまったくクリアできない。あとはベネットと行秋が強いらしいからゆくゆくは育成するけど好みで育てたいのはロサリア(陰湿な見た目とキャラなのにモーションが獣みたいで良かった。槍を叩きつけるみたいに使うところ)。今のところガイアが主戦力(片手剣キャラが主戦力は個人的にちょっと)、バーバラで回復、ノエルで防御の初期キャラクターパーティでなんとかなっている。ポケモンのときもそうだったけど目移りするのが面倒で攻略サイトがよほど推している以外は初期キャラクターを育成しがち。ここに旅人の風か、ベネットの炎で元素反応。アクションあんまり得意じゃないから草の時限爆弾とかまでは手が回らない。
2024/04/04
ここ数日に比べてずっとからだの調子がよく起き抜けの吐き気もなし。毎日こんなふうに起きることが出来たらいいのに。最近の仕事は真剣にやっていて、ほかのことを真剣にやりたいというのはあるけれど、出社しすることもなくExcelの個人用の日次記録にこことおなじような日記を落書きするより、どうしようもないソースをこねる一日のほうが楽しい。  『砂丘が動くように』を簡素な一文と言ったけれどそれは読みはじめだけで、もう中盤にはひとつひとつがエネルギーをもつ砂粒、熱量のうねりが厚みを持って描かれているから文じたいは簡素ではなくなった。むしろこのような内面に差し迫る文章でよく物事が進んでゆくものだと感心する。  リーダー同士が「こういう仕事はNではだめだと思う」「じゃあ(私)さん?」「そうだね。その方が丁寧」と小声で話していたのを聞き、自分は細かな作業が得意なふうに見えているらしい。昔からケアレスミスの多いタイプだから見た目の地味さや声の小さいことがそうした印象をつくっているのだと思う。細かな作業が得意そうな人として地道な作業を割り振られたい。大まかな開発をするよりそちらのほうが性に合う。
2024/04/05
 久々に残業。あとから参画した上司もわたしの見守りのためと残ったけれどさいごは先に帰り、わたしのコンパイルもうまくゆかず。上司はブルーライトカットの眼鏡を掛けている。見守りのために残るってなに?監視ならよいが気遣いなら息苦しいからやめてほしい。  uvoの日傘を今年こそ。白地に薄紫のラインが入った折りたたみを買うつもり。華金だからと駅ビルへ入るとsnidelのワンピースがかわいかった。
ですから、海辺に一人でいる男を見た瞬間��女にはこんな思いが浮かんだのでしょう。『退化したひれを持つ我々はみんな、来ない船を待って陸地で死ぬのだ』。
『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』ペ・スア
 明日は誕生日。誕生日プレゼントには自分では買わないアクセサリーショップの髪留めを頼もうと思う。相手の意志があるぶんサプライズのプレゼントはなにでも嬉しいけれど自分からねだるものはすこし考える。例えばワンピースは私生活に入り組み過ぎて鬱陶しいし、実用性を求める(通勤用グッズとか)ものも変に息づいてしまっていやだ。ぬいぐるみもしかり。自分で頼むものならそれほど生活を侵食しない小物がよい。
2024/04/06.7.8
04/06  誕生日プレゼントにアクセサリーを買って貰おうとあらかじめ決めていたお店へ。会社にも付けられるようバレッタを3つくらいと思っていたのに思った以上目移りしてイヤリングをふたつ、指輪、バレッタをもらう。誕生日ケーキを見に行き、一目惚れしたプリンセスのケーキを買う。とてもかわいく、家に帰って何枚も同じような写真を取ったあと食べた。
04/07  ぽつぽつお誕生日おめでとうメッセージが届く。シュウウエムラのクレンジングやハーゲンダッツのセットを貰う。6日に誕生日のことはほとんど終えてしまったからぐうたらしていた。久しぶりに昼寝もして、原神のお誕生日メッセージを全キャラ分聞いた。
04/08  このままうまくいかないのではないかと絶望していた仕事が解決し、あらたな絶望へ…。ひとつめの絶望が解決したとき、親身になってくれたひとに報告したらクラッカーのスタンプを付けてくれた。誕生日プレゼントに良いものをもらいすぎて、物欲の熱がなかなかひかない。6日に見たほかのアクセサリーを忘れられずもう一度行くと、新作が増えていた。今欲しいものはバレッタ(無限にほしい)、uvoの日傘(確定で買う)、仕事用の可愛いブラウス(やっぱりほしくなるかわいい仕事着)、カバンに付けるぬいぐるみ(もう候補はあるけど、あまり生き物ばかり買うのもと悩み中。sheinで見た200円くらいのすずらんの編み物みたいなぬいぐるみもかわいい)。
2024/04/09
 30分残業しようと思ったけどわたし以外の偉くない会社のひとはすべて帰っており、オフィスが偉い人たちだけが偉い人たち同士電話でプロジェクトの詳細を確認するというようなボーナスステージに入ったのでしぶしぶ24分の残業で帰る。これはサービス残業ということ。  近くでプロジェクトリーダーが次の仕事の割り振りについていろいろなひとに相談していて話が聞こえてくる。若手をひとりで案件に付けるか、先輩を置いて案件に付けるかで悩んでいるらしい。わたしには先輩をつけてほしい。
「目を覚まして。それは安らかな睡気なんかじゃないわ。酸素不足の朦朧状態よ」 姉の声だ。これまで���いたことがない切迫した情感がこもっている。 「目を覚ませ。眠りこんではだめだ。立ち上がって走れ」 ビッキーの声だった。どうしてビッキーが命令するんだ、父親みたいに。 「どうして目を覚まさなければいけない?」 前にも同じことを尋ねた記憶がある。 「見えないものを見るために。おれたちには見えないものを、きみが見なければならないからだ」 前とちがってビッキーの声はきっぱりと言った。
日野啓三『砂丘が動くように』
これほど熱烈に情景を描くひとの「目を覚まさなければいけない」とはどれほど研ぎ澄まされた、いちぶの隙も与えない苦しいまっとうさだろう。無数にうごめく粒子を湛える集合としての砂丘、そのうごめきのひとつぶひとつぶをじっと見つめる瞳。
2024/04/10.11
04/10     順調に行って欲しい仕事が順調に。 04/11     『砂丘が動くように』が情景の小説なら外村繁の『落日の光景』は事情の連鎖。私小説は事情(過去)を解説することができながら、過去を積んでゆくから2通り過去がある。  26歳にもなってあがって言葉に詰まって頭を真っ白にさせているのは哀れというか、目も当てられないだろう。いまかわいいとかいっていじってくるひとも、年齢を知ったら戸惑ったような顔で憐れみの眼差しを向けるにちがいない。
死のことを思うと恐しい。しかし物質的なものへの愛着のためではない。名誉欲のためでもない。また自分の分限もわきまえたつもりでいるから、自分の仕事への未練でもない。所詮は、親しい人との永別が名残り惜しいのである。
外村繁『落日の光景』
2024/04/12
 昼ご飯を食べながら大田洋子『屍の街』を読んでいたら当てられて気分が悪くなる。ある日突然発症する、死の宣告は突然死ぬことよりこわい。日本もう戦争してほしくないな。  新年度会で頭がくらくらするくらい笑ったりうなずいたり。同期にあって、アイナナのBlu-rayを安く買う。
2024/04/14
猫の姿が見えるようになり、魂がぼんやり光っているとかではなくて、ほんものの実体のように見える、これからはもう別れに怯えなくていいんだ、ほんとうにこんな奇跡ってあるんだ。と生きていた頃のように撫で回す夢を見た。のを昼、運転免許の更新へ向かう電車の中で思い出した。  運転免許更新は初回だから講習を受けた。初回講習者と違反者が同じ講習を受ける。斜め後ろの元違反者が、講習に飽きてパンフレットの全面を黒鉛筆で塗っていた。  ドン・キホーテてトップコートを買って帰宅。
2024/04/13
カラオケへいき、雑貨屋で髪留めを買って帰宅。日付を超えてZOZOTOWNをのぞいたらuvoの日傘が1000円引きだったので出社の鞄につけたいストラップとともに購入。  わたしはたぶん30代までは恋愛を糧に生きるだろうけれど���れ以降のビジョンが思うかばない。このさき自分がどういう死に方をするかうっすら見えている気もするが、そのまま生きるだろう。ただ40代になったとき、『わたしのいるところ』のように街行く他人の会話を聞いてあれこれ思っていたり、会話を聞くため他人のあとを付いていって、そのくせ内省ぶってあれこれ考えるのが刺激だけの、そとみは静かなつねに外向きの40代女性になってたらいやだな。いつか、夢中にならずとも、自分を遠ざけるものを見つけられているといい。
2024/04/15
 仕事は言葉をつかうというより言葉をボックスに入れ、ボックスを入れ替えたり貼り付けたりするばかりなので気を抜くと言葉が使えなくなる。頭の中はほとんど図形だらけ。  遠きにありて、ウルは遅れるだろうを再読中。2章の「内面から滲み出てくる即興的な一歩」が踊りになってゆくさまは踊る少女たちの熱っぽさに匹敵するほど凄まじいシーンだった。これを見落としていたのだから再読して良かった。
室内は大股で五、六歩歩けば向こうの端についてしまうほど狭かったが、という特定の感情がこもった身振りで歩くという行為そのものが女を次第に陶酔させる。そしていつしか女の体は徐々に、自分にも聞こえない何らかの音楽に乗っているかのように動きはじめる。 (中略) 女の中で発火したその何かが女を燃やしていく。それは自然発生した、踊る者の意志からは独立した踊りだ。女の肉体は自分を支える媒質を意識し、それに呼応し、それを捨て、それを創造し、それに反逆する。それがすなわち踊りである。女は踊りはじめてやっと踊っている自分に気づき、戸惑いつつ驚く。
『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』ペ・スア
↑ここすき。
一度女の体に乗った踊りはひとりでに踊られる。女はそのことに気づく。炎のように、波のように、ひとりでに揺らめく。だがゆらめくのは女の体ではなく女の内面の言葉だ。女は自分に解読できないその言葉が思いきり発話されるがままにさせておく。女は踊るのではなく、踊りの言語に自分を差し出した媒介物だ。だが女は止まらない。
『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』ペ・スア
媒介物という言葉がⅠの巫女を思い出させる。 あとは踊りといえば、アイナ・ジ・エンド(と女王蜂アヴちゃん)のラジオ。
「BiSHでも初めての子達と振り付け一緒にしてたとき思ったことがあって 年齢も関係なくて遅いとか絶対なくて 遅いほうがよくて 喋ってる仕草とかご飯食べてる手付きとか全部本当は踊りで それを生きてきた年数が多いほど、自分の染みついてる仕草だし それが踊りやすさに出るから個性になる」
https://youtu.be/QmsK2PJWLXw?feature=shared 18:30〜
『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』Ⅱの歩み-踊りがシームレスに繋がることはアイナ・ジ・エンドの「全部本当は踊り」と通じる。いっぽうで『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』における、「踊り」に含まれうる行為と真なる踊りの違いは、肉体を媒介物として内面の言葉に差し出していることだろう。精神は肉体のうちである(メンタルが崩れたら美味しいご飯を食べてゆっくり寝ようとか)というのはよくきくし、わたしもそう思って健康を目指しているけど、肉体を言葉に差し出すことが踊りというのならそれは肉体は精神のうちであるともいえるのではない? と考えると、言葉を扱いながら精神のみの存在にむやみにあこがれることなく、肉体こそが精神の一部であると描くことは、命を生きる作家としてとてもまっとうだ。それをその言葉以外で、内面に飲まれたあげくの行為を、踊るさまを情景として言葉で描写したことも。
2024/04/16  寝るぎりぎりまで『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』を読んでいたので鞄に入れ忘れ、仕方ないので通勤や休み時間はウルフ『波』を読んだ。冒頭セリフが重なり、行為が重なり波紋のように動いてゆく。とはいえ、遠きにありてウルは遅れるだろうと並行して読むのは相性が悪い。砂丘が動くようにや落日の光景はよかった。もうすこし小説然とした長編小説を併せて読みたい。   引き続きFateApocryphaを流し見する。Prime Videoにはfateシリーズがたくさんあって、しばらくアニメには困らないかも。アニメキャラクターは感情の起伏が激しく、誰も聖杯を制していないのに願いを蔑まれたくらいで怒る必要ある?とか「ななななななななななななっなななななっななななななな何を言って!?」にそのリアクションにその尺はいる?とか思うけれど、聖杯が誰の手に渡るのか、もっと単純に次脱落するのはだれか、など追い続けられる要所があるからみていられる。あまり良く考えず観ているから、ちゃんと見ているひとはどうなのだろうと知恵袋を見たら「戦争と言いながらタイマン張ってるだけ」という意見があり、それはたしかに。第三勢力じみたジャック・ザ・リッパーや赤の陣営でありながら神父の操作を免れた獅子劫とモードレッド、意志を持ちはじめたホムンクルスが聖杯戦争にどう影響を及ぼすか…とみていたら総力戦はほぼなく、「聖杯戦争の域を超えた敵」がもう三つも出てきている。陣営がごちゃっとなったあとまた2つに分かれ、構図は脅威vs総力か、2つに分かれたのに今のところまたタイマンを張り続けている。でもこのお話は戦争と言いつつずっと寿命が3年というホムンクルスの少年を中心に据え、個人の(幸福に繋がらないだろうすべてを引き受ける)自由の話をしているので、別にそこまで気にしていなかった。それにしても、深夜の時間帯にこんな激しい演出で『自由』をテーマにした作品を観て、会社員は次の仕事に行けたのだろうか。わたしなら深夜の悲観的な感傷に自由の気高さを流し込まれつつ、キャラクターらがひかりすぎる大剣を振り回しては地面を割りまくっていたら、自分は貧弱な人間のサラリーマンで構造に従うことしか生き延びる術が��いことをあらためて自覚して、ぐだーっとなってしまう。
2024/04/18
 Honeysのワンピースけっこう好きだから仕事着にできるのならいっぱい買うのだけど。  暖かくなってきたらオフィスが空調をつけるようになり寒かった。夏のクーラーの具合は現場によってちがうからとても寒かったりしたらこまる。在宅勤務ならそんなこと気にせずともよかったのにとおもうが、その分電気代がかかることを考えるとひとり暮らしのひとは嬉しいのかもしれない。  そろそろ一人暮らしを…と思いながら目先の利益につられて定期を3ヶ月分買っているので、まだこの地に縛られる。利益500円くらいだけど大事なことだ。けれど一人暮らしをすると言ってもそもそも在宅/出社が確定されていないし、勤務先も確定でない以上ひとところにお金を払って住むのはリスクがある。
2024/04/19
仕事。飲み会を断って定時帰宅以降の記憶なし。
2024/04/20
洋服を見に行く。
2024/04/21
 earth music&ecologyに行き、会社へ着ていける可愛いワンピースを探しに行った。今の現場の服装規定は女性はオフィスカジュアルという名のほぼ私服、男性はスーツとありがちでよくわからないものだけど、女性のうち私服でいるのがチームリーダーしかおらず、あとはみなスーツのためわたしもスーツを着続けている。頃合いを見て、ワンピースで仕事に行きたいけれど今のところ目処は立っていない。  原神を久しぶりにプレイ。稲妻で神の目を奪われた人々の顛末を見届け、神里綾華とお祭りに行った。はじめは屏風の裏から話しかけてきた神里綾華がお友達だからと言って顔を見せてくれたあと、街の人にはぜんぜん顔をさらして、しかも街のひとも彼女の顔を見慣れているのはなに。わたしはなにを見落としたの。稲妻は日本がモチーフだが今のところ地名や人名に訓読みは使われるものの、そういえば平仮名はまったく使われない。日本に漢字があることにちょっと甘えすぎ?
2024/04/22
 自分をenfpと思い込んで世界に対して外向きに早起きをしたり、活動的になったりしたが、仕事中にもとの性格に戻り(なにだかわからないけど…)あかるくたのしくほがらかにというより黙々とずっしり着実に仕事をし、そういうのもすきだから気持ち良く退社。  体調がよく、はやあるきできるからいつもより早い電車に乗って帰ることができた。クレジットカードの締め日を意識しながら生活していると、あっという間に給料日。任天堂の株が安くなっていたのでたいした読みもなく買い足す。  64シリーズのゼルダの伝説が好きという理由だけで、すべてのお金を失っても良いと思って任天堂の株を買っている。とくに下がっても0円以外は利益と思っているから心的ダメージは少ないのだけど、どうせならいつかあがってほしいし、やっぱり奇跡が起きて億万長者になりたい。綺麗に死ぬために貯金をしている。
2024/04/23
昼休み中にウエルシアでリセッシュ、サプリなど生活用品を買い足し、帰り道のPLAZAで乾燥さんの緑の化粧下地とチャコットのルースパウダー、リップモンスター03/05を買う。  最近去年まではみられなかったひりひりする赤みのニキビが治らず、放置してもう二か月くらいになるので自然治癒をあきらめ、ようやく化粧品やケア用品を買い替えて真剣なニキビ対策をすることにした。ビタミンB2のサプリを飲み、ティーツリーのパックをし、しばらくファンデーションはやめて下地とパウダーのみにする。  そろそろ流行りも収まって好きに買えるだろうと昨日紹介動画を見比べて購入したリップモンスターは、両方ともそれぞれ使いやすい色で気に入っている。03陽炎は色が柔らかく、唇の存在感を薄くするから唇の小さくて厚いわたしにはちょうどよい。雑なブラウンメイクに合わせると全体的な軽さをのこしたまま馴染むし、色が淡いぶんほがらかな印象になるから、なんでもないひとと会うときに重宝するだろう。05ダークフィズは下瞼に色を濃い目にのせた時に、さらに顔の下側に重心がくるから重みでバランスが取れる。誕生日に貰ったジルのアイシャドウと併せて使うと、王道ブルべ夏の化粧ができるのではないかしら。
2024/04/24
 仕事を持ったままのひとがずる休みしたのでなんのこともできず、なんのこともできないのまずいかなと念のためリーダーに相談に行くと、リーダーとずる休みは同じ会社なので「予定的に困ってしまう作業はない認識で〜」とずうずうしくもフォローしだし、結果的にわたしはでしゃばりの立ち位置に。ずる休みはずる休み常習犯で、かなり優秀なひとだからみんなからそのバランスと人柄で好かれている。わたしもべつにきらいではなくて、ただ結果的にしゃばってしまったことを素直に反省している。  『王の二つの身体』を読む。このような神秘主義の例にふれると、過去大学の課題で、たしかほんとうに【修道士みたいな。宗教においてなんらかの対話をするひと】に霊的なちからがあるなら【なんか死んだ偉いぽいひと、王とか、イエスとか】を生き返せることができ、だから死体の方へ墓から生き返ることを禁ずると【現えらいひと、王とか】が命じる場面があったはずで、それを思い出す。ぜんぜん思い出せてないけど。  一方的な被害者として庇護をうけたいというのは昔からある欲望で、毎日なんだか突然怒りだしたひとのなげた椅子が偶然頭に当たり大怪我をしたい、のようなことを考えながらちゃくちゃくと仕事をこなし定時退社している。自覚のないだけでこの欲望は性欲と地続きなのかもしれない。
2024/04/26
 女性リーダーが真横で「おんなのこきらーい」と言っていて戦慄。自分が「おんなのこ」かどうかは置き、わたしのような自力でハキハキできない声の小さいとりあえずなんでも謝罪するような卑屈な女性が、そのようなしごでき女性からどう見えるか考えると憂鬱。  帰り道に焼き鳥を5本買い、まとめサイトでちいかわを読む。ちいかわも労働しているからわたしも労働をがんばる。無心で労働して、無心でお金をつかい、無心で快楽を享受し、快楽のために無心で労働するのただしくふつうの幸福のことなのかもしれない。このひとたちもなんかおいしそうにラーメン食べてるし。
2024/04/27
 電子書籍のセール広告を見て、吉本隆明『共同幻想論』、小川洋子『口笛の上手な白雪姫』『ブラフマンの埋葬』、西村賢太『どうで死ぬ身の一踊り』を購入。  午後は湘南美容外科から貰った誕生日ポイントで洗顔せっけんと睫毛美容液を購入。一度安い脱毛を契約しただけなのに毎年5000円もくれるなんてたいそう儲かっているのだろう。  一度もスマートフォンを購入したことのない叔母がようやくを購入したらしく、連絡がきた。持ち始めてすぐポケモンGOを始めたらしく、アカウントがあるようなら復帰してフレンドになってくれとのこと。話の流れで、散歩しながらポケモンGOをすることに。
2024/04/28
 任天堂のgwセールでダンガンロンパV3とdeemoを購入。Atlantis loveやpure whiteがいつでも聞くことができる。コントローラーでプレイすると画面が遠いのは嬉しいが、連打させられて腕が疲れるからレベル1.2くらいのものを風を浴び���がらもくもくとやるのが丁度良い。1800円で200曲プレイできるらしく、ことあるごとにNew bookといってあたらしい譜面が増えている。スマホのときは同じ曲を何度か繰り返しながらクリアした記憶があるけれど、今回は興味のある曲を試しているだけで勝手にクリアしてしまいそう。既存の曲はさきに挙げたV.KのAtlantis loveやpure white、MILIのutopioshereが好きだったけれど、今日はじめて聞いたのだとspring collectionの楽曲がかろやかでよい。  ダンガンロンパV3はプロローグを終える。下野紘、柿原徹也などの面子が懐かしい。ゴア表現が苦手なのに800円だから買ってしまったの大丈夫だろうか。今のところ地の文がライトノベルすぎるという印象。  仕事の書類を作って、すこし小説を書いて寝る。無償の仕事を全うしてえらいが、仕組みは酷い。
2024/04/29  曇りでなんとなく気分が悪く家から出なかった。  ダンガンロンパv3プレイ。探偵の最原終一が主人公になるだろうから、赤松楓は殺されるか犯人だろうな、と読んでいたら、犯人のほうらしい。疲れて流れが変わったところでやめる。Apocryphaも少し見て、かれらは最終決戦でも最終決戦のタイマンを張っている。deemoは相変わらずたのしく、昨日1日でsuspenseful third dayまで開放できたのでsansetまでもうすぐ。プレイじたいはやはり指のほうがたのしい。  寝る前まで2023冬のrta in japanのいくつかを見た。上手なマリオのプレイを見るのは楽しい。3DSマリオでは「3DSまだまだ現役だと思うので」と解説者が言っていたけど、もう生産終了してしまったな。プチプチおみせっちは、同じペースでなにかしらをどのタイミングでも解説していて飽きずに見終えられた。ゲームづくしの週末。
2024/04/30
私服出社で良いらしいが様子見のためスーツで出社。隣のひとはぼりぼりお菓子を食べていて、上司はときおり石のように寝ていた。
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bearbench-3bun4 · 1 year ago
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「虚無への供物」中井英夫 0011
序章
1サロメの夜 01
虚無へ捧ぐる供物にと 美酒すこし 海に流しぬ いとすこしを
ポール・ヴァレリーという詩人の詩からは始まります。 ヴァレリーがどういう人物かというよりも、 “虚無へ捧ぐる供物にと”の一節が必要だったのかと思います。 まさにこの小説のタイトルですからね。
この詩について少し考えてみます。
あくまで翻訳された詩ですから、原文の意味までは汲み取れません。 だから、かなり想像や意訳の部分が多いです。
さて、まず“美酒”ですが、この当時なら、多分ワインでしょう。 もしかするとウィスキーやビールの可能性もありますが、 “美酒”という表現にピッタっとくるのは、ワインのような気がします。
弔いの意味で、海に酒を注ぐのは、日本に限らず海外でも行われているのしょう。 そういう意味では、“虚無”というのは死者を指すのかもしれません。
つまり、死者の弔いのために酒を注いだということです。 特に、赤ワインだとすると海では、まるで血のよう見えるのかもしれません。
これから、死者に対する弔いのための供物(小説)が、 海に広がるワインのように展開する。 っと言うところでしょか。
その詩の次に、 “その人々に” の一文があります。
これは、流石にここでは、どういう意味かはわかりません。 先の詩から考えると、“人々”とありますから、死者が数名出てくることになるといったところでしょうか?
さて、
序章 1サロメの夜の数ページです。
まずは、「サロメ」ですかね。
よくわからないので、検索してみると人物の名前なんかが出てきます。 そのまま読み進めると、 あるバア「アラビク」での様子、そして踊り子の様子が描かれます。 踊り子を「サロメ」にたとえているのでしょうか?
その後、 1954年12月10日と具体的な日付が出てきます。 それから地名、「三ノ輪寄りの竜泉寺」と、この辺りは、現実っぽさを出すのに効果的でしょう。
とはいっても、東京在住でもないと、どのへんかさっぱりわからないかもしれません。
この場所も、後々の伏線なんでしょうか?それとも、別の意味があるのか? 徐々に解って来るのでしょう。
バアの話からは一旦離れて、 この年の殺人事件の数が記載され、これから起こるであろう出来事を示唆します。 しかも、本文と関係があるのか、 「二重橋圧死事件」(皇居一���参賀において、二重橋で参賀者の将棋倒しが発生した事故) 「第五福竜丸」(強い放射能を帯びた「死の灰」で、公海上で操業中だった遠洋マグロ漁船「第五福竜丸」乗組員が被ばく) 「黄変米」(大戦後の食糧難に輸入された米のいくつかから有害ペニシリウム菌が混入) 「洞爺丸事故」(青函航路で台風第15号により起こった、国鉄の青函連絡船洞爺丸が沈没した海難事故) を新形式の殺人と表現しています。
ほかにも 「鏡子ちゃん殺害事件」 「カービン銃ギャング事件」 がスリラーとして挙げられています。
これだけの悲惨な出来事や事件をあげてて、恋愛小説でもないでしょうから、 ミステリーが始まるのは想像に固くありません。
さて、場面はまた、バアの様子に戻ります。
先程の踊り子は「おキミちゃん」、 なんと、三味線の伴奏で、来日中のフランスのプリマバレリーナであり、女優だった「コレット・マルシャン」が、踊る7つのヴェールの踊りを真似て踊りはじめます。 “7つのヴェールの踊り”は、1世紀頃の古代パレスチナに実在した女性“サロメ”で、その人が踊った踊りだそうです。
やっと、“サロメ”の意味がわかりかけてきましたね。
“サロメ”を踊る踊り子のバアの夜。
その様子として、 フォリー・ベルジェール式の裸。とありますが、 これも、検索してやっとそれらしき意味がわかります。
さて、踊り子である「おキミちゃん」が咥えていた造花ではないらしい薔薇が、光田亜利夫(みつだありお)のそばに花びらをちらしながら落ちます。
これ人が主人公ですかね。 まあ、とりあえず名前だけ出てきます。
それから、その薔薇を拾い上げたのが、奈々村久生(ななむらひさお)。 これも、とりあえず名前だけです。
性別すらこの時点ではわかりません。
バア、アラビクでの一夜で、これから起きるであろう出来事をなんとなく示唆して、あとは登場人物の紹介でもするのでしょう。
ここで、まず、奈々村久生が奈々緋紗緒(ななひさお)の芸名でかけだしのシャンソン歌手、本職がラジオライターというのがわかります。 設定が昭和29年ですから、ラジオライターですが、さしずめ脚本家っていうところでしょうか? それが、どれほどの収入になるかはわかりませんが、 少なくても、バア「アラビク」で、ストレスを発散できるということなんでしょう。
牟礼田俊夫(むれたとしお)というフィアンセがいることで、女性だというのもここではっきりします。 だから、気楽な探偵気取りでいられるとなっていますが、ざっくりとした黒白の七分コートに緑の手袋という服装は、かなりちぐはぐな感じです。多分、この人物は、主人公というよりも、狂言廻しという感じですね。
さっきも書きましたが、脚本家なんだから、これから起きるであろう事件をまるで自分が脚本を書くように、引���掻き回すんでしょう。
光田亜利夫のことを奈々村久生は「アリョーシャ」とよんでいますが、これ、なにか意味があるんでしょうか?
さて、バア「アラビク」では、踊り子のキミちゃんがピルエットしてます。 表現として、「グリッサー」と書かれていますが、これが、よくわからない。 元々、「グリッサ」といわれていた踊りが、現在バレエに使われている「グリッサード」というステップになったそうですが、これを、総称して、「グリッサー」と表現したのでしょうか?
それでなんとなく意味は通じるのですが。 前出のコレット・マルシャンも引き合いに出しているので、多分そうなんだろと思います。 まあ、それだけ踊りがうまいということなんでしょう。
七色のヴェールのように黄、赤、オレンジと変わるという表現は、 前出の“7つのヴェールの踊り”のことを表していて、実際に7つの色に変わるというよりも、 黄、赤、オレンジと変わるということで、妖艶さを演出しているのでしょう。
ただ、その後の表現にはちょっと驚かされます。 踊り子のキミちゃんに、女性特有の乳房がない。
奈々村久生(ななむらひさお)が女性だとはっきり書いていながら、 キミちゃんには、乳房がないと表現してます。 このジェンダーな表現は、男性のような女性なのか、単に男性なのか。 それとも、他になにかあるか?
男であるキミちゃんをさっきの妖艶さの演出によって、女性らしくみせているということは、 やはり、キミちゃんは男ですかね。 まあ、すぐわかるでしょうけど。
これからこのストーリーを紡ぐとしどのようの絡んでくるのか楽しみです。
つづく。
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cherr-blossom · 1 year ago
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Storia dei sogni(747)
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2月11日は
彼女(♥崔岩光(サイ・イエングアン)様♥)
彼女の愛犬,マエストロ(西本智実先生)
マネージャー先生,事務局のお姐様方
アーティストの方々,合唱指導&伴奏の先生方
合唱仲間の皆様,オケの皆様
etc…が出て来た゚+.(o´∪`o)゚+.゚
いつも通り
朝食や家事etc…済ませて
自主練したり,声楽レッスン受けて
かーらーのー
代々木第一体育館へ移動し
マエストロや合唱仲間の皆様らと
合流し,集合写真撮って
かーらーのー
円陣組みながら
ソプラノのリーダーA&B,アルトのリーダー
「今回も優勝するぞー(`・ω・´)」
私達イルミナートのメンバー一同
「おー✧*。٩(ˊᗜˋ*)و✧*。」
かーらーのー
楽屋へ移動し,着替えetc…済ませて
かーらーのー
運動会(●´3`)ノ*。'*、+ 
ちなみに
マエストロも含む先生方や事務局のお姐様
彼女の愛犬etc…のペット達,桂々は
彼女やマエストロらのファン方々に混じって
客席で私達の応援+.d(・∀・*)♪゚+.゚
(出場チーム)
①イルミナートチーム
(合唱・オケ・バレエ・アーティストで編成)
②クラシックチーム
(歌手・奏者・指揮者・オケ・バレエ等で編成)
③JAZZチーム
(歌手・奏者等で編成)
④ロックチーム
(ロックバンド等で編成)
⑤ミュージカルチーム
(宝塚・劇団四季等で編成)
⑥アニメチーム
(アニソン歌手・アニメ声優で編成)
⑦ゲームチーム
(ゲーム音楽の歌手・声優で編成)
⑧ジブリチーム
(ジブリ歌手・声優で編成)
⑨ディズニーチーム
(ディズニー歌手・声優で編成)
⑩ボカロチーム
(ボカロの歌手等で編成)
⑪伝統芸能チーム
(歌舞伎・民謡・日舞等の方々で編成)
⑫芸能人チーム
(歌手・女優・俳優・子役・タレント・モデル
読モ・ミュージシャン等で編成)
⑬ご当地アイドルチーム
⑭アダルトチーム
(AV女優・男優,監督等で編成)
⑮ストリッパーチーム
(ストリッパーで編成)
⑯グラビアチーム
⑰芸人チーム
⑱落語チーム
⑲ダンサーチーム(バッグダンサー等で編成)
⑳アナウンサーチーム
㉑YouTuberチーム
㉒VTuberチーム
㉓インフルエンサーチーム
㉔大食いチーム
(大食い選手権の出場者らで編成)
㉕裏社会チーム
(ヤクザや元殺し屋等で編成)
司会・実況
安住アナ,夏目三久
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tarinofdancecompany · 2 years ago
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2024年カンパニー本公演『死と乙女』オーディション選考メンバー決定!!
今年11月に開催したカンパニー本公演『生と死を見つめる3部作-死と乙女-』のためのオーディションでは、24名のエントリーがありました。
オーディションでは、テクニック・存在感・環境設定即興・面談を行い、TARINOFの活動や方向性が合う方を、プロジェクトメンバーとして選考させて頂きました。
11月に開催予定のカンパニー本公演では、カンパニーメンバーに加え、5名のプロジェクトメンバーと共に作品を創り上げます。 沢山の方に劇場へ足をお運び頂けましたら幸いです。 【2024年11月14日~15日開催】 Tarinof dance company本公演『生と死を見つめる3部作-死と乙女-』(公演の詳細は後日発表)
プロジェクトメンバー紹介(50音順)
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安心院 かな-Kana Ajimu- 福岡県出身。6歳よりクラシックバレエを始める。 高校卒業後はカナダのGoh Ballet Academyに2年半留学。その際にコンテンポラリーダンスに出会い、 バレエとは違う表現の幅広さに興味を持つ。帰国後上京し、コンテンポラリーダンスを本格的に始める。 これまで小㞍健太、三東瑠璃、鈴木竜、柴田恵美、櫛田祥光、竹内春美、大塚郁実らの作品に出演。 三東瑠璃主宰Co.Ruri Mitoに所属。
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かとう りな-Rina Kato- 4歳から児童舞踊を経てモダンダンスに触れ、日本大学芸術学部演劇学科洋舞コース卒業、芸術学部長賞受賞。 現在は同大学院に在学し、観客とダンス作品との関係性を研究している。 舞台作品に加え、地域の駅前広場や、路上ミュージシャンとのコラボレーションなど、 舞台からアウトリーチした作品制作にも積極的に取り組み、最近では映像作品や、 MVの振付・出演など幅広い出演や制作活動も行なっている。 第53回埼玉全国舞踊コンクール創作舞踊部門第2位受賞。
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神渡 茉由-Mayu Kamiwatari- 5歳より金田こうのバレエアカデミー(現バレエスタジオO)にてクラシックバレエを始める。 2015年YAGPアンサンブル部門日本予選2位、アメリカ本選3位受賞。 その後日本芸術専門学校に入学。コンテンポラリーダンス、ジャズダンス、HIPHOP等を学ぶ。 在学中タイ古式マッサージ師資格取得。 卒業後は舞台、映像、展示、バックダンサー等幅広く活動中。
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星野 梓-Azusa Hoshino- 小学生の頃から約10年間、新体操に取り組む。 採点競技ではない踊りに興味を持ち、早稲田大学入学とともにジャズダンスを始める。 在学中にコンテンポラリーダンスに出会い、その表現の広さ可能性に魅了される。 2021年、踊ることを追求するために渡独し、DART DSP プログラムに参加。 その後、フリーランスダンサーとしてベルリンを拠点に活動。2023年12月に日本に帰国。 表現者として日本を拠点に活動を開始する。
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吉田 明莉-Akari Yoshida- 4歳からクラシックバレエを始める。第3回座間全国舞踊コンクール第1位。 2017年 パークサイドバレエスタジオにて堀岡美香に師事。 2019年 同スタジオのSクラスを卒業し、ドイツ、マンハイム国立バレエアカデミー入学。 2021-2022年 カールスルーエ•バーデン州立劇場のメンバーとして活動。 2022年 同校のバチェラーコース、マスターコースを卒業。 2022年 帰国後、パークサイドバレエスタジオ講師就任。2023年 ジャイロキネシス®認定トレーナー資格取得
宣伝美術/宮村ヤスヲ
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ryotarox · 2 years ago
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「オケ中ピアノ」あれこれ藤井 泉(ピアノ)
(新交響楽団ホームページ: 「オケ中ピアノ」あれこれから)
一般的にはあまり知られていない「オーケストラの中のピアノ」について書いてみようと思う。
オーケストラの中のピアノ、つまりオーケストラ作品の1パートとしてのピアノ、略して「オケ中ピアノ」となるとその様相はかなり違ってくる。  そもそも「オケ中ピアノ」が入るオーケストラ曲はいつ頃から登場したのか。その前にピアノとオーケストラの成り立ちについて簡単にふれておきたい。
古典派後期からロマン派以降は、主に管楽器や打楽器等の種類が多様化し、楽器編成がより拡大する傾向にあった。例えばピッコロやコールアングレ、バスクラリネット、コントラファゴットなどの標準的な楽器の同族楽器や、タムタムやグロッケンシュピールなどの多様な打楽器群の参入である。またベルリオーズ「幻想交響曲」(1830)のように、オーケストラ作品にハープが効果的に使用されるようになったのもこの時期だ。だが鍵盤楽器は、協奏曲に代表される独奏的な扱いを除いて、まだオーケストラには登場しない。  ここで本題の「オケ中ピアノ」の初登場を検証したい。今まで私が新響で弾いた作品を、作曲年順に15番目まで列記してみる。 1,サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調「オルガン付き」(1886) 2.ドビュッシー:交響組曲「春」(1887) 3.マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」(1906) 4.サン=サーンス:「ギース公の暗殺」(1908) 5.ストラヴィンスキー:バレエ音楽「火の鳥」(1910) 6.ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1911) 7.プロコフィエフ:スキタイ組曲(1915) 8.ファリャ:恋は魔術師(1915) 9.レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」(1916) 10.ファリャ:「三角帽子」第2組曲(1919) 11.バルトーク��舞踊組曲(1923) 12.レスピーギ:交響詩「ローマの松」(1924) 13.ショスタコーヴィチ:交響曲第1番(1925) 14.コダーイ:組曲「ハーリ・ヤーノシュ」( 1927) 15.レスピーギ:交響詩「ローマの祭」(1928)
7番目にはプロコフィエフ「スキタイ組曲」(1915)とファリャ「恋は魔術師」(1915)が入ってくる。「スキタイ組曲」*1はストラヴィンスキーの「魔王カスチェイの凶悪な踊り」をさらに輪をかけて狂暴にしたような曲で、体育会系「オケ中ピアノ」の筆頭といえる。冒頭から延々と続く最強音でのグリッサンドでは、軍手が欲しいほどだ。ここを抜けると低音の補強に入るのだが、引き続き懸命にグリッサンドをしているお隣のハープ奏者を見るにつけ、「まだピアノでよかった」と胸をなでおろすのであった。  なお、このグリッサンドと低音楽器の補強という役回りは、スキタイ以降の「オケ中ピアノ」の定番パターンの1つとなる。
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*1 Prokofiev Scythian Suite, Op. 20 - YouTube
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「ピアノ協奏曲」とかではなく、オーケストラの1パートとしてピアノを扱った管弦楽。 ポピュラー音楽なら普通にある。
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satoshigemi · 5 years ago
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オスカーシュレンマーのトリアディックバレエ、初めて映像を全部見ました。学生の時に印象に残っていた衣装のスケッチ画、このバレエのだったのかーと感慨深かった。(今頃!?) YouTubeでも見れました。素晴らしいー。 https://youtu.be/mHQmnumnNgo 次の大津絵展も面白そうです。 #バウハウス展 #きたれバウハウス #bauhaus #東京ステーションギャラリー #オスカーシュレンマー #oskarschlemmer #triadicballet #三つ組みバレエ https://www.instagram.com/p/CEzOBQYBYG_/?igshid=1jsa07k0ayplv
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someones-voice-2021 · 2 years ago
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#05 中沢レイ
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一日の流れ
朝は6時半くらいに起きて朝ご飯とお弁当をつくります。家は私と息子と私の母の3人暮らしです。息子に持病があって、12時間おきに飲まなきゃいけない薬があるので、彼が寝てようが何してようが飲ませてから出かけます。職場は三重県内の市役所で、移住関係の仕事をしています。非常勤で働いてもうすぐ3年になります。
家から市役所までは車で山道を走って40分ぐらいで、道が混んでいたら小一時間ぐらいかかるときもありますね。仕事は17時15分までで、時間になったらすぐ家に帰ります。以前、息子と二人で暮らしていたときは夕飯のお弁当を買って帰っていましたが、今は母親が夕飯の支度をしてくれているので、それをありがたくいただいています。夕食後はだいたいぼーっとスマホを見たりして、気づくと2時間ぐらい経ってたりします。息子はゲームが好きで、夜はゲームのコアタイムだから私とは全然話をしてくれないんですよ。みんなが思い思いに過ごしているのを確認してからお風呂に入って、寝るのは23時ぐらいです。
市役所の仕事のほかにヨガを教える仕事もしていて、レッスンがあるときは、仕事のあと家に一旦帰って晩ごはんを食べて、借りているレッスン場に出かけます。土曜日はバレエ教室で子どもたちにコンテンポラリーダンスを教えています。ダンスというか、キャッキャ言いながら自由に動いたり、何でも試してみようというクラスですね。日曜は基本的に休みですが、移住の仕事は土日にイベントがあることが多いので、結構出張したりもしています。空いている日は子どもと一緒に過ごそうと、何をするわけじゃないけど、家にいるようにしています。
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生い立ち
生まれは岐阜県岐阜市���す。母方の祖父母が縫製業を営んでいて、一家総出で服をつくっていました。両親は朝から晩まで、すごくうるさい工業用ミシンを踏んでいて、家には有名なブランドの布が置いてありました。だけど、私が小学校1、2年生の頃に景気が悪くなったのか、父が仕事を辞めて養鶏場に働きに出るようになりました。それまでは家にずっと親がいたけど、突然鍵っ子になって、弟は泣いていましたね。姉である自分はしっかりしなくちゃと思っていた記憶があります。
中学3年のときに親が頑張って家を建てて、引っ越しをしたんですよ。私は転校もしたんだけど、ある日修学旅行から帰ってきたら両親に「離婚するわ」って言われて。私から見たら仲は悪くなかったんだけど、実際はそうじゃなかったみたいです。せっかく建てた新居も出ることになって、その家は私の叔母さんが住むことになりました。弟は父に、私は母についていくことになったんですが、母の家に引っ越すと中学校を変わらなきゃいけないと言われたので、卒業までは叔母さんのもとで居候をしていました。叔母さんは私のことをかわいがってくれて、叔母さんというよりお姉さんという感じでした。
母は家を留守にしがちだったので、高校からは一人暮らしのような感じでした。家の下がうどん屋さんだったので、母が置いていったお金で天丼の出前を頼んだりしていました。高校3年のときに母が再婚して新しい家族ができましたが、私はもう高校生だし「あなたたちとは関わらないので」と言って、学校もあまり行かずに好きなように過ごしていました。高校卒業後は好きな英語を勉強するために、英語の専門学校に入りました。
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仕事のこと
私が専門学校に入った頃は超バブルの時代で、成績が良い子は先生の薦めで在学中から証券会社とか銀行に就職するんですよ。私も1年の終わりには学校に籍を置きながら商社で働きはじめました。同じころ、音楽���やっている友だちから「岐阜放送っていうラジオ局で話す人を探してるんだけど」と言われて。当時はバイリンガルのDJが流行っていて、私が英語を話せると思って声をかけてくれたんですね。実際はそんなに話せないんだけど、洋楽を聴いていたからそれっぽくは話せるんです(笑)。それでラジオ番組のDJをやることになりました。商社は1年勤めて辞めました。
田舎の放送局だけど案外仕事はありました。レコード会社の人がプロモーションで名古屋に来たときに、そんなに回るところがないから岐阜放送まで来てくれるんですよ。「若くてちょっと変わった子がいる」みたいな感じでいろんな人に良くしてもらって、外タレのアーティストに直接インタビューさせてもらったりもしましたね。でも、DJとかタレントになりたいという気持ちはまったくなかったです。どちらかと言うと裏方や制作をやりたくて、19歳ぐらいから台本や企画書を書いたりしていました。自分の番組では選曲も全部自分でやっていたし、そうした仕事が周囲に伝わって愛知や東京でもDJをやるようになりました。
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踊りのこと ラジオと平行してやっていたのが、幼少期から続けていたダンスです。うちの親は全然そういう素養はなかったんですが、私が幼稚園のころに「バレエをやりたい」と言ったみたいで、母が習わせてくれました。ただ、習っていた先生が怪我をしてバレエをやめることになってしまい、次に入ったのがモダンダンスの教室でした。少しして「これはバレエじゃない」って気づいたんですが、それがかえって良かったんです。というのも、その先生は生徒にお手本を見せないんです。「シュッとなってパッよ」というふうに擬音で振り付けをするので、みんなそれぞれの「シュッとなってパッ」をやるんですね。中学高校と、その先生のもとでダンスを続けました。
あるとき、名古屋で開かれたダンスの大きなコンクールに通訳として参加したんですが、そこで出会ったのが(舞踏家の故・)和栗由紀夫さんです。和栗さんに「お前、踊りやってるのか。うちに遊びにこいよ」と言われて、東京に行ったら板橋にあった和栗さんの家に遊びにいくようになりました。ある日、和栗さんの家に行ったら、ベニヤ板を2枚出してきて、「ここに座って」と言われて。言われたとおり座ったら今度は「右手をこう出してみな。左手は上から出して。これが閉じてさ、開くんだよ」と���言われて。「こうですか?」みたいな。それで「今度舞台やるんだけど出ない?」とくるわけです(笑)。
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それで出演したのが、新宿のパークタワーホールでやった和栗さんの『エローラ〜石の夢』という作品です。その後、和栗さんが主宰していた「好善社」に入るとともに、東京に引っ越してきました。好善社の男の人たちは、それまでダンスをやったことがなくて突然踊りを始めているから、発想がとても面白かったんですよ。そこから結局6、7年は東京に住んでいたと思います。
その後、もう踊りはやめようと思うことがあって、カポエィラに打ち込んでブラジルに行ったりもしました。ダンスの世界は、なんだかんだ言って身体を動かすことが得意な人しか入ってこないけど、カポエィラは、趣味でやってますみたいなお姉さんとか、イケイケの男の子とか、格闘技好きのオタクっぽい子とか、いろんな人がいるんです。一般社会では絶対に仲良くならないような人たちが嬉しそうに一緒にやっているのがすごくいいんですよね。でも、ブラジルにいたとき、テレビから流れてきた音楽に合わせて、やめたつもりの踊りをふと踊っていたときがあって、やっぱり踊りはやめられずにいます。
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妊娠・出産
出産したのは38歳のときです。妊娠がわかったときは、当時結婚していた夫とフランスに住んでいました。日本では私がダンスをやっていると言うと、初対面の人にさえ「いつまでそんなことやってるの」と言われたりしましたが、フランスではまったく逆で、みんな興味を持ってくれました。現地の人たちと仲良くなって一緒に作品をつくったり、小劇場で即興の企画をやったりもしましたが、一方で自分の底が知れた感じもあって、妊娠を機に日本に帰ることに決めました。
出産はだいぶ時間がかかって大変でした。それでも元気に生まれて良かったと思っていたんですが、生まれてからがさらに大変だったんです。とにかく夜まったく寝なくて、ベッドに置いたらどれだけ寝ていても起きて泣いて……。子どもってそんなもんなのかなと思ってたけど、自分も寝れないから信じられないくらい痩せてしまって、布団で寝ていても背骨が痛くなってしまうほどでした。夫は仕事に行ったきりほとんど帰ってこなくて、赤ちゃんと二人暮らしみたいな感じです。しかも、夫の希望で都内からもう少し田舎に引っ越すことになって、それまでは遊びに来てくれた人たちも来れなくなって、本当に孤独になってしまいました。
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それでも息子を地元の幼稚園に入れてなんとか生活していたんですが、2011年の1月末に、幼稚園に息子を迎えにいったら、先生から息子の様子がおかしかったと言われました。確かに、家に帰っても何もしゃべらないし、ご飯も食べないんです。病院に連れていって、インフルエンザの検査をしたりしたけどなんともなくて。食塩水を点滴してもらって、ちょっと良くなったように見えたんですが、次の日にはもっと具合が悪くなってしまって。抱っこしたらびっくりするぐらい重たくて、これはおかしいと思いました。
再度病院に行って尿検査をしたら、測れないぐらいたんぱくが出ていて、大きな病院に行くように言われました。行った先で「これはネフローゼという病気��、治療に長い時間がかかります」と言われて、そのまま入院です。ステロイドを大量投与する治療をはじめたんですが、息子はステロイドを半量に減らしたところで再発してしまい、それから一切ステロイドが効かなくなってしまいました。
これはもう救急車で運ばなければという状態になってしまって、埼玉から東京の世田谷にある成育医療研究センターに救急車で運ばれて入院しました。それが2011年の3月11日です。病院について、しばらくしたらダアーッと揺れて点滴は倒れるわ、壁に亀裂が走るわで大パニックです。しかも原発事故で放射能がどうこう言われていたから、ガラケーで一生懸命情報を調べました。食事も大変で、子どもには病院食が出るけど、自分の食事は出ないからコンビニに行くんだけど食料がないんです。なんとかゲットしたパンひとつで一日過ごすなんてこともありました。
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生きていてほしい
入院して息子の具合は良くなるどころか、同室の子から風邪をもらったのがきっかけで敗血症になってしまいました。ICUに入って人工呼吸器をつけられて、カテーテルを入れられて……まだ小さくて暴れてしまうので、鎮静をかけられて眠らされていました。そんな息子の姿を見たときに、親としてこんなことを言っていいかわからないけど、この子は何ヶ月も苦しんできて、これ以上苦しむなら、楽になって逝ってしまった方がいいのかなとも思いました。
でもあるとき、私が「今日はもう帰るね」と言ったら、小さくイヤイヤしたんです。鎮静をかけられていて目は開かないけど、耳は聞こえていたみたいで。ICUで隣だった女の子も、私からすると寝てるだけに見えるんだけど、その子のお母さんが「この子は嵐が好きなのよ」と言って、嵐の曲をかけると「喜んでる」って嬉しそうにするんですよね。それまで私は、寝たきりの人や重い障がいのある人が生き続けるのってどうなんだろうと正直思っていたんです。
だけど、1ヶ月ぐらい経つと、嬉しそうな感じがするとか、これは嫌なんだなって分かるようになるんです。それで、やっぱり息子には生きててほしいって思うようになりました。なんて言っていいかわからないけど、何もできなくても生きているという事実が目の前にあるだけで、周りの人が安心するというか。息子がイヤイヤする姿を見て「ああ、とにかく頑張るしかないな」って思ったんです。息子の病気をきっかけに、私の考えはすごく変わりました。
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やってみたいこと
治療は長くかかりましたが、幸い息子に合う免疫抑制剤が見つかって、1年くらいかけて普通の暮らしができるぐらいまで回復しました。何かあったときのために、そのまま入院しておくこともできたけど、外に連れていこうと思って思い切って退院させました。その後、息子が4歳になる前に埼玉から三重に移住して、間もなく夫とも離婚しました。 息子は小学校4年生ごろに自閉スペクトラム症の診断を受けて、学校生活も苦労しましたね。小学校1年生からずっと行き渋りで、6年生まで毎日送迎していました。下駄箱でしばらく入れずにいるのですが、なんとか中に入っていくのを確かめてから自宅に戻り、学校からの電話があるといけないので待機していました。中学3年間は完全不登校でしたが、この春から通信制の高校生になりました。
息子が東京で入院していたときは、家と病院が離れていたので、病院の近くにある(ドナルド・)マクドナルド・ハウスという入院患者の家族のための施設で寝泊まりしていました。そこには、地方から出てきて泊まり込みで付き添いをしているお母さんたちがいて、中には子どもが生まれてから10年間そういう暮らしをしている人もいました。みんな自分のことは置き去りで子どもに付き添っているんです。
そういうお母さんたちのために何かできないかと思ったけど、「ダンスしましょう」とは言えないじゃないですか。「ダンスなんてハードルが高いし、そんな気分じゃないわよ」って言われると思うんですよね。でも、みなさんマッサージとかにはお金を払って通っていたので、ヨガだったらやってもらえるかなと思って。これまでも障がい者施設や高齢者施設ではヨガやダンスをやってきましたが、病気の子どもたちに付き添っているお母さんのためのヨガも、いつか実現したいことのひとつです。
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みんなに場をつくりたい
私は踊るのは好きだけど、舞台の真ん中で踊りたいとは案外思っていないんですよ。私が踊りをやるのは「みんなに場をつくりたい」からです。1998年に「オービタルリンク」という即興のイベントをはじめたのも、あらゆるジャンルのパフォーマーが自分の表現を模索しながら、やる側も観る側もジャンルの垣根を超えて出会ってほしいという思いがあったからです。ラジオDJをしていたときも、自分が面白いと思ったら無名の人でもゲストに呼んだりしていましたからね。当時から今にいたるまで、やっていることは変わらないと思います。
今日撮影をしたアトリエ第Q藝術も、大きすぎない規模だからこそ「個人」が見えて好きなんです。劇場が大きくなればなるほど、後ろの方まで届くように表現しようと思って動きが大きくなり、身体の動きだけを見せることになることが多いと思うんです。そうすると結局、どれも同じような作品になってしまうというか。私は、踊りの完成度はどうでもよくて、その人が踊りを通して「本当のこと」を言ってるかどうかを知りたいんです。そういうことが見えるのは、このぐらいの規模の劇場かなと思います。チーフディレクターの早川誠司さんには以前からお世話になっているし、舞踏や演劇関係の友だちもよくここで公演をしているので、私のルーツのような場所でもありますね。
人生って、「あのときあそこに行ってなかったらあの人に出会ってない」とか、そんなことばかりじゃないですか。でも本当に好きなことを続けていたら、絶対にまた元のところに戻ってくるし、ずっと会っていなかった人ともまた会えるんですよね。もっと別の仕事をする機会も、別の人と付き合う機会もあったろうけど、そのときの自分がそれをやりたくて選んだんだしなって。自分は、いつも「こういうことを考えている人がいるなら、こういう場所をつくったらいいんじゃないかな」と思って、場所をつくって人と人をつなげてきたんですよね。さらに、自分の場合はそこに「踊り」がありました。そうしてここまでやってきて、今の自分があると思います。
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(2023年3月26日収録) 取材協力=アトリエ第Q藝術
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sdeet · 2 years ago
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観たいもの気になるものメモ
・『むかし、むかし』
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劇団KIOとカナダのカンパニーCorpus(日本では「ひつじ」の演目が有名で劇団コープスとも呼ばれるけどダンス、フィジカルシアター)の演出家の共同制作初演だそう。めっちゃ観たい。チケット詳細はもう少し後かな。
・太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)『金夢島 L’ÎLE D’OR Kanemu-Jima』
公演は東京と京都。佐渡島が取材先のひとつでありイメージとかモチーフになっているらしいのに何故新潟でやらない。なぜ佐渡でやらない????? チケット購入済み
関連イベント 太陽劇団『1789』上映 &アリアーヌ・ムヌーシュキンとのトーク
・映画 『ダンサー イン Paris』
ホフェッシュ・シェクターとカンパニーがそのまんま出てくる映画。日本でも上映してほしいな〜〜と言っていたやつがちゃんと劇場上映になるそうなのでやったー。見に行く。
・国内ダンス留学@神戸9期Newcomer/Showcase#1・#2
ピチェ・クランチェンの振付作品があるのでこれは観に行く。
・〈新国デジタルシアター〉演劇公演『骨と十字架』無料配信
めちゃめちゃ話題になってた作品『骨と十字架』が9月からYoutubeで無料配信になるそう。普段新国立でかかるタイプの演劇とかは観ない感じの人もどんどん話題にしててすごかったもんな。うぉーありがとう新国立劇場。公共の仕事してる。
・音楽ドキュメンタリー映画『 遊牧のチャラパルタ』上映
・THEATRE for ALLがリニューアルする
・イ・ラン Moshimoshi City :1から不思議を生きてみる|뚜벅뚜벅, 1도 모르는 신기속으로
・バック・トゥ・バック・シアター 影の獲物になる狩人
以前見た『ガネーシャ VS. 第三帝国』がじわじわと印象深かったので観たい。
・講座 奇術の歴史
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trinityt2j · 5 years ago
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ダ-ティ・松本 不健全マンガ家歴30年[-α]史 ●はじめに  この文章は同人誌「FUCK OFF!7」において書かれたものをベースにして逐次増補改定を加えていき、いずれ歴史の証言として、[というほど大袈裟なものでは無いが…]一冊の本にまとめたいという意図のもと、近年どんどん脳が劣化していくダ-松の覚え書きとしても使用の予定。事実関係は間違いに気付き次第 訂正。同人誌発表時のものも今回自粛配慮して、実名、エピソード等を削除した箇所有り。有り難い事に某出版社よりすでに出版打診があったがまだまだその時期ではない、マンガを描く事が苦痛になったら活字の方も気分転換にいいかも…。 /*マークは今後書き加える予定のメモと心得たし。 ●前史/修行時代・1970 さいとうプロの短くて濃い日々……  1968年に上京。数カ月後東京は戦場に。熱い季節の始まりだった。 2年後親元を飛び出し友人のアパートに転がり込む。場所は渋谷から井の頭線で駒場東大駅下車、徒歩5分。地図で見ると現在の駒場公園あたり。昼間でも裸電球を付けなければ真っ暗という馬小屋のような部屋。数メートル先には当時の建設大臣の豪邸が…。前を通りかかるだびに警備のおまわりがじろり。  いつまでも友人に迷惑もかけられないのでとりあえずアシスタントでも…と手元にあったマンガ誌をひっくり返し募集を探す。幸いさいとうプロと横山まさみち氏のところでアシ募集があり両方応募。どっちか一つ通れば…と思っていたら何と両方受かってしまい、双方に条件を聞く。当時高円寺 のアパート、風呂無し4畳半の部屋で相場12000円の時代。前者一ケ月の給料10000円、後者20000円との事。給料の方がボロアパートの家賃より安いとは…!どう考えても前者は食う方法がないと判断し、後者さいとうプロへ入社。  ここに居たのはたったの半年に過ぎないけれど今思えばこれだけで本が一冊描ける位の濃い半年だった。しかしこのあと2X年分も書かねばならないことを思えば今回はいくつかのエピソードを書くだけに留めよう。  ダー松が入った時は小池一夫氏[クビ?]、神田たけ志氏や神江里見氏、きしもとのり氏[現・松文館社長]等と入れ替わりの時で、きし氏の女遊びの凄さと神江氏の絵のうまさは伝説になっていた。現在「亀有」「ゴルゴ」が歴代単行本の巻数の多いベスト1、2位だが[ともに100巻を越えた]、3位は神江氏の「弐十手物語」[70巻以上]だという事は知ってる人は少ないだろう。  当時の制作部は、さいとうたかを[以下ゴリ]をトップに石川班[ゴルゴ13、影狩り]、甲良班[バロム1]、竹本班[シュガー、どぶ等]の3つに分かれ、それぞれのキャップにサブ・チーフが一人づついて、ヒラが2~6人いるというシステムで総16名。独立し現在も活躍中の叶精作、小山ゆう、やまさき拓味の3名がそれぞれの班のサブ・チーフ。ダー松は石川班で左右1メートル以内に叶氏とゴリにはさまれ、のんびり出来ない状態で、はなはだ窮屈。叶氏はほとんどマンガ家になりたいとも思った事のなかった人で、設計事務所みたいなところで図面を引いていた人がなぜマンガプロダクションに来たのか不思議だった。格別マンガ好きというわけでもなかったせいか現在まで全ての作品が原作もので、オリジナルは一本もないのはそのせい?祭りなどの人がうじゃうじゃ出てくる群集場面が得意。 やまさき氏は大の競馬好き、現在競馬マンガを多く描くのは当時からの趣味が生きたというべきか。もう一つの趣味である風俗についてはここでは書くのは差し控えよう。小山氏は後日ここの事務の女性と結婚するが、当時はつき合っているとは誰も知らず、スタッフの一人がやめる時その女性に交際を申し込んだら、茶店に呼び出されて小山氏からと凄まれたと聞いたが嘘か本当かは不明。  ここでの生活は新入り[ダー松を含めて3名]は朝の9時前に会社に行き、タイムカードを押し、前日のごみをひとまとめして外に出し、トイレ掃除をして、16人分のお茶を2Fで入れて制作部のある3Fへの狭い階段をふらふら昇り、机ごとに置いて歩き、終れば、一息ついて買っておいたパンと牛乳を3分で食べて、やっとそれから仕事。しかし新入りの3名の内1人折茂は常に遅刻なのでいつも佐藤と2人でやっていた。佐藤も遅れる時はダー松1人で。辞めてから10年位、16人分のお茶を持って階段をふらふら歩きお盆をひっくり返す夢をよく見たものだが、実際ひっくり返したのは折茂と佐藤の2人で、よく茶碗を割っていた。 たまには夕方6時には帰れるが、普通は夜10時までで、アパートに帰って銭湯に行けばもう明日にそなえて寝る時刻、このくり返しの日々。週1日は徹夜で明け方に帰り、その時は当日の昼12時出勤。休日は日曜日のみで忙しい時はそれも取り消し。つまり休みは月3日。[これで給料2万円!]そんな日々の繰り返し。  夕方までは皆和気あいあいと仕事していたが、ゴリが夕方6時頃に「おはようさん」と現れると、全員無駄口がたたけなくなり、仕事場はシーンと静まり返り、以下その日が終わるまでは疲れる時間がただひたすら流れるのみ。 当時石川班は「ゴルゴ13」と「影狩り」を描いていたがゴリは主人公の顔と擬音のみ。マジックで最後に入れる擬音はさすがに入れる位置がうまいと感心。ゴルゴの顔はアルバムに大小取り混ぜてコピーがとってあり、忙しい時は叶氏がピンセットで身体に合わせて「これが合うかな~」といった感じで貼り付けていた。  その頃すでに「ゴルゴ」は近々終わると噂されていたが、現在もまだ続いているとは感嘆ものだ。 ゴリと石川氏が「ゴルゴ」の最終回の終わり方を話しているのを聞いたら、何ともつまらない終わり方。しかしあれから20年以上も経つ事だし、きっともっといい終わり方を考えてあるだろうなと思っていたら、先日TVで本人が最初から考えてある終わり方だと言うのを聞き、がっくり。企業秘密だろうから書かないが、作品の最初の方に伏線が数度出ているのでわかる人にはすぐわかる筈。  辞めた小池一夫氏とさいとうプロに何があったかは知らないが、漏れ聞く話では結構もめ事があったみたいだ。 「子連れ狼」で「ゴルゴ13」と同じ設定の回があった時、「小池のガキャー訴えたるー!」とゴリが吠えていたものだが、結局たち消え。さいとうプロ作品で脚本を書いた本人が辞めた後、他の作品で同趣向の作品を書いても著作権は脚本を書いた原作者のものだと思うがどんなものだろう。その回のタイトルは忘れたが、ある場所に居合わせた人々が武器を持った集団の人質となり、その中に素人だと思われていた主人公、実は殺しのプロフェッショナルがいて、次々とその集団を殺していく、といったプロットで、ミッキー・スピレーンの短編に同じような作品があり、本当に訴えていたら恥をかいたと思うが・・・。  そういえば事務の方には山本又一郎という男がいたが、後年映画プロデューサーとして 「ベル薔薇」や「太陽を盗んだ男」等を創る事になるが、この野郎が生意気な男で当時皆に対して10歳は年上、といった感じの振る舞いだったが後日俺と一つしか年が離れてなかった事を知り、そんな若造だったとは、と皆怒ったものだ。以来奴の事を「マタさん」から「クソマタ」と呼ぶようになる。  さて半年後に先輩たちが積もり積もった不満を爆発させる反乱事件が勃発し、2年は居るつもりでいたここでの生活も、辞めるか残るかの選択を迫られる。残ればさいとうプロの現体制を認める事となるので、ダー松も退社。 しかし反乱グループとは別行動をとって一人だけの肉体労働のアルバイター生活へ突入。超ヘビーな労働の製氷工場、人使いの荒い印刷所、命綱もない高所の足場で働く建設現場等々。トラックの助手をしていた時は運ちゃんが「本宮ひろしって知ってるか?うちの息子の友達でさぁ、昔、おっちゃんメシ食わしてくれーなんて言ってきたもんだが、今は偉くなっちゃってさー、自分のビル建てたらしいよ。赤木圭一郎みたいにいい男なんだ。」とうれしそうに話してくれたが、運ちゃんには悪いがそいつは今も昔も一番嫌いなマンガ家なんだ。あの権力志向はどうにかならんか。天下を取る話ばかりだもんなぁ。  ところで後日、単行本の解説で高取英が「さいとうたかをのヤローぶっ殺してやる!」とダー松が言ったなどと書いているが、小生はそんな危ない事言った覚えはないのでここできっちり訂正しておきます。 「会社に火ィつけてやる!」位は言ったかも・・・[嘘] 。 悪口は言っても別に怨みなど無い。ところでアシスタントとしてのダー松は無遅刻、無欠勤以外は無能なアシだったと反省しきり。理想的なアシスタントとはどんなものか、それはまた別の機会に。 *入社試験はどんな事を? *さいとうプロには当時ほとんどろくな資料は無かった? *ハイジャックの回の飛行機内部の絵は、映画「大空港」を社内カメラマンが映画館で写してきたものをもとに描く。 *当時のトーンは印刷が裏面にしてあり上からカッターでけずったり出来ない。 *トーンの種類は網トーンが数種、それ以外はほんの3、4種類位しかなかった。 *仕事中のB.G.M.はアシの一人が加山雄三ばかりかけるので大ひんしゅく。好評だったのは広沢虎造の浪曲「次郎長三国志」、初代桂春団次の落語。眠気もふっとぶ位笑えた。 ダ-松が岡林信康の「見る前に跳べ」をかけてるとゴリは「何じゃー!この歌は!」と怒る。名曲「私たちの望むものは」はこの男には理解不能。 ●1 9 7 1 ~ 1 9 7 4  持 ち 込 み & 実 話 雑 誌 時 代    当時は青年劇画誌全盛時代で、もともと望月三起也氏や園田光慶氏のファンで活劇志向が強く、 主にアクションもののマンガを描いて持ち込みに行っていた。今のようにマンガ雑誌が溢れかえって、山のようにマンガ出版社がある時代ではなく、数社廻るともう行くところがない、という状態で大手では「ビッグコミック」があっただけで 「モーニング」も「スピリッツ」も「ヤン・ジャン」も当然まだない。テーマを盛り込んだ作品を持って行くと編集から「君ィ、うちは商売でやっているんだからねぇ」と言われ、アクションに徹した作品を持って行くと「君ぃ、ただおもしろいだけじゃあねぇ」と言われ 「おい、おっさん!どっちなんだ?」とむかつく事多し。この辺の事は山のように書く事があるが、有りすぎるのでパス。 *そのうち書く事にする。  ただ金属バットで頭をカチ割って脳みそをぶちまけてやりたいような奴が何人もいたのは事実。今年[’97]「モーニング」に持ち込みに行って、断られた奴が何万回もいやがらせの電話をかけて逮捕された事件があったが、そのうちトカレフを持って殴り込みに行く奴が出てくるとおもしろい。出版社も武装して大銃撃戦だぁ!などと馬鹿な事書いてどうする!とにかく持ち込みにはいい思い出が何もない。そんな中、数本だけ載った作品は渡哲也の映画「無頼」シリーズの人斬り五郎みたいな主人公がドスで斬り合う現代やくざもの[この頃の渡哲也は最高!]、ドン・シー���ルの「殺人者たち」みたいな二人組の殺し屋を主人公にした『汚れたジャングル』、陽水の「傘がない」が好きだという編集さんの出したテーマで車泥棒とブラックパンサーの闘士とのロード・ムービー風『グッバイ・ブラザー』、拳銃セールスマンを主人公にした『ザ・セールスマン』、等々10本ちょい位。  さてその頃並行してまだエロマンガ専門誌といえるようなものがなかったような時代で、実話雑誌という写真と記事ページからなる雑誌に4~10ページ位を雑誌の味付けとして描かせてもらう。当時、お手本になるようなエロマンガなど皆無で、エロ写真雑誌を古本屋で買ってきてからみのポーズを模写。マンガで裸を描く事はほとんど初めてで、これがなかなか難しいのだがエロシーンを描くのは結構楽しい。当時出版社に原稿持って行き帰りにグラフ誌をどっともらって帰るのが楽しみだった。SM雑誌の写真ページも参考になる。なお当時のペンネームは編集部が適当につけた池田達彦、上高地源太[この名前はいけてます。また使いたい]等。その数年後、逆にマンガが主で記事が味付けというエロマンガ誌が続々と創刊される。 *さいとうプロをやめたあと編集や知人に頼まれて数人のマンガ家の所へ手伝いに行く。秋田書店「漫画ホット」で『ジェノサイド』を連載中の峰岸とおる氏の所へ行き、仕事が終わったあとまだ売れてない頃の榊まさる氏も交え酒を飲む/川崎のぼる大先生のところへ数日だけ/3000円たこ部屋/小山ゆうオリオンププロ *当時のアルバイトは記憶によると時給150~200円位/大日本印刷市���谷駐屯地/坂/ *一食100円/どんなに貧しい漫画家もみかん箱の上で書くやつはいない/TV萩原サムデイ *ろくでなし編集者 ●1 9 7 5 ~ エ ロ マ ン  ガ 誌 時 代 に 突 入   実話誌は意外とエロは抑え目で描くように口すっぱく言われていたのだが、以前活劇っぽい作品を描かせてもらってたが潰れてしまった出版社にいた児島さんが編集する「漫画ダイナマイト」で打合せも何にもなしに好きに描かせてもらい、ここでエロマンガ家としての才能[?]が開花する。描いてて実に楽しく眠る時間がもったいない位で、人に睡眠時間が必要な事を恨んだ程。出来る事なら一日中休まず描いていたい気分で完全にはまってしまう。  初の連載作品「屠殺人シリーズ」はこの頃から/『漫画ポポ』。中島史雄氏は大学時代にこの作品を見ていたとの事で、トレンチコートにドクター・ペッパー模様のサイレンサーつきマグナム銃で遊戯人・竜崎一也が犯しまくり殺しまくり、サディスト、マゾヒスト、殺人狂、まともな奴が一人も出てこない性と暴力の祭典。ちなみにタイトルページは描かないでいい、との事でどうするのかと思っていたら編集部が中のワンカットを拡大してタイトルページを創り、1ページぶんの原稿料をけちるというせこいやり方だった。けちるといえば、原稿の1/3にCMを入れる際、原稿料を1/3削った会社もあり。 ●1 9 7 6 ~   後に発禁仲間となる高取英と出逢い、『長編コミック劇場』で「ウルフガイ」みたいのをやろうと、怒りに震えると黒豹に変身してしまう異常体質の主人公を設定し、獣姦のイメージで「性猟鬼」なるエロマンガをスタート!しかしその号で雑誌が潰れる。この路線は今でもいけそうな気がするがどんなものだろう。  この頃の珍品に「快楽痴態公園」がある。タイガースに11-0とワンサイドで打ちまくられ、怒ったジャイアンツファンのおっさんが公園でデート中の女をずこずこに犯りまくり、その間にジャイアンツは9回裏に12-11とゲームをひっくり返してしまうのである!その時のジャイアンツの監督はもちろんミスター長嶋、先発堀内、打者は柴田、土井、高田、王、張本等々がいる。タイガース監督は吉田、ピッチャー江本、キャッチャーフライを落球する田淵、そしてあの川藤もいる。解説は牧野…… ●1 9 7 7 ~   上記2作品を含む初の単行本「肉の奴隷人形」が久保書店より発行。後にリングスの会場で逢った佐竹雅昭氏はこの本が一番好きとの事だった。  「闇の淫虐師」もこの年スタート。一話完結でバレリーナ、バトンガール等々、毎回いろんな女たちをダッチワイフのごとくいたぶりまくるフェチマンガとして1979年まで続け、単行本は「堕天使女王」「裂かれた花嫁」「エロスの狂宴」「陶酔への誘い」「終りなき闇の宴」の全5巻。ちなみに今年「闇の淫虐師’97」を『コミック・ピクシィ』にて発表。いつか『闇の淫虐師・ベスト選集』でも出したいところ。 [’98に実現、’99には続刊が出る] ●1 9 7 8 ~   久保書店より第2弾の単行本「狂った微惑人形」。収録作品の「犯された白鳥」は持ち込み時代に描いた初のバレリーナもの。結構気に入っていた作品なのに、後年再録の際、印刷所の掃除のおばさんが捨ててしまい、この世にもはや存在しない不幸な子となる。[’99に宝島スピード・ブックに本より直接スキャンして収録]  エロ、グロ、ナンセンスの会心作「恍惚下着専科」を発表。サン出版より同名の単行本発行。また同出版より「コミック・ペット/堕天使画集」として今までの作品を続々単行本化。全10巻位。これは今でも古本屋で流通しているとの事で、まだまだ世間様のお役にたっているらしい。  この年、「堕天使たちの狂宴」を描いていた『漫画エロジェニカ』が発禁処分、来年でもう20年目となる事だし、当時の人たちと集まってその大放談を収録し「発禁20周年特集号」でも創ってみようかと計画中。さて当時の秘話としてもう時効だろうから書いてみるけど、前述の『堕天使画集』に「堕天使たちの狂宴」は収録される事となり、当然修正をガンガン入れて出版されるものと覚悟していたら、米国から帰国後出来上がった本を見ると発禁になった状態のまま再録されている!以下桜木編集長との会話 ダ/いや~、いい度胸してますね。 編/だって修正してあるじゃない。 ダ/その修正状態で発禁になったんですよ 編/・・・・・ ダ/・・・・ 以下どんな会話が続いたのか失念…… それにしてもサドの「悪徳の栄え」の翻訳本は発禁後20年以上して復刻されたけれど、「堕天使たちの狂宴」は半年もしない内に単行本になっていたとはエロ本業界とは何といいかげんな世界!しかし作品そのものは、今見るとリメイクする気にもならないどうという事もない可愛い作品で、結局あれもあの時代の姑息な政治のひとかけらに過ぎなかったのだろう。いい点があるとしたら一つだけ、それまでのエロマンガになかった瞳パッチリの少女マンガ的ヒロインを登場させた事位か。今の美少女エロマンガは本家の少女マンガもかくや!という位眼が大きいが当時としては画期的だったかも。 ●1 9 7 9 ~   この年の「淫花蝶の舞踏」は「堕天使たちの狂宴」よりずっといい/『漫画ソフト』。今年出た「別冊宝島/日本一のマンガを探せ!」でベスト2000のマンガがセレクトされているが、ダー松の作品の中ではこの作品が選ばれている。教師と生徒、二人の女たちが様々な男たちの手によってに次々ともてあそばれ、闇の世界を転々として再び巡り会う時、女たちは蝶と化し水平線の彼方に飛び去り、男たちは殺し合い血の海の中で屍と化す。ダー松作品にはこのように男根が女陰の海に飲み込まれてに負けるパターンが多い。[性狩人、遊戯の森の妖精、美少女たちの宴、人魚のたわむれ・・等々]  この年からスタートの「性狩人たち」シリーズ[劇画悦楽号]はバレエ、バイオレンス、SEXの三要素がうまくからみあい、それぞれが頂点まで達する幸福な神話的作品だ。ここから派生した路線も多く、美少年路線は’83の「聖少女黙示録」へ。身体障害者路線は’80の「遊戯の森の妖精」、’84からの「美姉妹肉煉獄」へと繋がる。’81の最終話「ハルマゲドンの戦い」ではせりふなしで24ページ全てが大殺戮シーンという回もあり、中でも一度やりたかった見開きで銃撃戦の擬音のみという事も実現。こんな事がエロマンガ誌で許される時代だった。ちなみにこの回は[OKコラルの決闘・100周年記念]だが、何の意味もない。単行本は最初サン出版より、その後久保書店より「白鳥の飛翔」「少女飼育篇」「ヘラクレスを撃て!」「眼球愛」「海の女神」の全5刊。現在入手出来るのは後の3刊のみ。[「海の女神」も最近在庫切れ]  この年出た「人魚のたわむれ」の表題作は性器に{たこ}を挿入するカットを見た編集長が「・・・[沈黙]・・・頭おかしいんじゃ・・ブツブツ・・気違い・・・ブツブツ・・・」と呆れてつぶやいていたのを記憶している。たこソーニューは今年出た「夜顔武闘伝」で久しぶりに再現。なおこの作品は’83にマンガと実写を噛み合せたビデオの珍品となる。水中スローモーションファックがなかなかよい。 ●1 9 8 0 ~   なぜか「JUNE」の増刊として作品集「美少女たちの宴」がサン出版より出版され、その短編集をもとに脚本化し日活で映画が創られる事となる。[「花の応援団」を当てたこの映画の企画者・成田氏は日活退社後「桜の園」等を創る。]その際、初めて映画撮影所を見学し、せこいセットがスクリーン上ではきちんとした絵になってるのを見て映画のマジックに感心。タイトルはなぜか「性狩人」で、’96にビデオ化された。監督・池田敏春のデビュー第2作となり現在までコンスタントに作品を発表しているが、出来のいい作品も多いのになぜか代表作がない。初期の「人魚伝説」が一番いいか。  この映画に合わせて「美少女たちの宴」を2~3回のつもりで「漫画ラブラブ」で描き出すがどんどん話がふくらみ、おまけに描いてる出版社が潰れたり、雑誌が潰れたりで雑誌を転々とし条例による警告の嵐がきた「漫画大飯店」を経て、「漫画ハンター」誌上で完結したのは’83になる。この作品でクリトリスを手術してペニスのように巨大化させるという人体改造ものを初めて描く。  この年の「遊戯の森の妖精」は身体障害者いじめ鬼畜路線の第2弾!森の中の別荘に乱入したろくでなしの二人組が精薄の少女の両親達を虐殺し、暴行の限りをつくすむちゃくちゃな作品で、雷鳴の中、少女の性器に男達のペニスが2本同時に挿入されるシーンは圧巻!しかしこのとんでもない男達も少女の性のエネルギーに飲み込まれ、朽ち果てていく・・・。 ●1 9 8 1 ~   美少女マンガ誌のはしり「レモン・ピープル」誌創刊。そこで描いたのが「白鳥の湖」。虚構の世界のヒロインを犯すというコンセプトは、アニメやゲームのヒロインをずこずこにするという今の同人誌のコンセプトと同じかも。バレエ「白鳥の湖」において悪魔に捕われたオデット姫が白鳥の姿に変えられる前に何にもされてない筈がないというモチーフにより生まれたこの作品は、悪魔に男根を植えつけられたヒロインが命じられるままに次々と妖精を犯して歩き悪魔の娘となるまでを描くが、あまり成功したとは言えない。ただ人形サイズの妖精をしゃぶりまくり淫核で犯すアイデアは他に「少女破壊幻想」で一回やっただけなのでそろそろもう一度やってみたいところ。「ダーティ松本の白雪姫」はその逆をいき、犯す方を小さくした作品で7人の小人が白雪姫の性器の中にはいり、しゃぶったり、処女膜を食べたり、と乱暴狼藉![ちなみに両者をでかくしたのが同人誌「FUCK YOU!3」の「ゴジラVSジュピター」]この童話シリーズは意外と好評で続いて「ダーティ松本の赤い靴」を上記の単行本に描き下ろして収録。童話は結構残酷なものが多く、この作品も切られた足だけが荒野を踊りながら去って行くラストは原作通り。 *近年童話ブームだがこの頃もっと描いておけば「こんなに危ない童話」として刊行出来たのにとくやまれる。 「2001年快楽の旅」もこの本に収録。快楽マシーンを逆にレイプしてしまう、珍しく映画「2001年宇宙の旅」風のSF作品。  掲載誌を決めずに出来る限り多くのマンガ誌で描こうというコンセプトで始めたのがこの年スタートした「怪人サドラン博士」シリーズ。「不死蝶」シリーズや「美少女たちの宴」シリーズの中にも乱入し、「漫画ハンター」最終号では地球をぶっ壊して[その際地球は絶頂の喘ぎ声をあげ昇天する!]他の惑星へ行ってしまう。今のところ10誌位に登場。いつかこのサドラン・シリーズだけ集めて単行本化したいところ。ちなみに「サド」と「乱歩」を足して「サドラン博士」と命名。作者の分身と言っていい。 [後年、「魔界の怪人」として全作品を収録して刊行、04年現在品切れ中]  この年描いて’82の単行本『妖精たちの宴』に収録の「とけていく・・」はレズの女たちが愛戯の果てに、肉体が溶けて一匹の軟体動物と化す、タイトルも内容も奇妙な作品。作者の頭もとけていた? ●1 9 8 2 ~ 1 9 8 3   ’83年に「美少女たちの宴」が完結。全てが無に帰すラストのページは真っ白のままで、このページの原稿料はいりません、と言ったにもかかわらず払ってくれた久保書店、偉い![明文社やCM頁の稿料を削った出版社=某少年画報社なら払わなかっただろうな……と思われる……]この作品以外は短編が多く、加速度をつけてのっていく描き方が得意のダー松としてはのりの悪い時期に突入。また10年近く走ってきてだれてきた頃でもあり第一次落ち込み期と言っていい。マンガがスタンプを押すように描けないものか、などとふとどきな考えまで湧いてくる。思えば一本の作品には、いったい何本の線を引いて出来上がっているものなのか。数えた馬鹿はいないだろうが数千本は引いている筈。一ヵ月に何万本とペンで線を引く日々・・うんざりする筈です。  この頃のめぼしい短編をいくつか書くと、少女マンガ家の家に税務調査にきた税務署員が過小申告をネタにねちねちいたぶるが、アシスタントに発見された署員は撲殺される。そして板橋税務署は焼き討ちにあう、といった作品「[タイトル失念]xx税務調査」。[後日読者よりこのタイトルを「色欲ダニ野郎」と教えていただく。ひどいタイトル *編集者のつけるタイトルはその人のセンスが実によくわかる。しかしサイテ-の題だなこりゃ…。 果てるまで「おまんこして!」と言わせながら処女をやりまくる「美処女/犯す!」はラスト、狂った少女が歩行者天国の通行人を撃ちまくり血の海にする。「嬲る!」はパンチドランカーとなった矢吹ジョーが白木葉子をサンドバッグに縛りつけ、殴って、殴って、殴りまくる。段平おっちゃんの最後のセリフ「・・ブスブスくすぶっちゃいるが・・・」「打てッ!打つんだ!ジョー!」「お前はまだ燃えつきちゃいねえ!」とはエロ・ドランカーの自分自身に向けて発した言葉だったのかも。トビー・フーパーばりの「淫魔のはらわた」は電気ドリルでアナルを��げてのファック!とどめにチェーンソーで尻を切断!いまだに単行本に収録出来ず。[’98の「絶頂伝説」にやっと収録]「からみあい」は夫の愛人の性器を噛みちぎる。「危険な関係」はアルコール浣腸をして火をつけ尻から火を吹かせる。この手は『FUCK YOU!2』の「セーラー・ハルマゲドン」で復元。そういえばこの作品の序章と終章だけ描いて、間の100章位をとばすやりかたはこの頃の「禁断の性獣」より。女性器にとりつき、男性器に変身するエイリアンの侵略により地球は女性器を失い滅亡する、といったストーリーで当時聞いた話では谷山浩子のD.J.でこの作品がリスナーの投書でとりあげられ、ダー松の名はダーティ・杉本と読まれたそうな。ヒロインの少女がひろ子という名前なのでこのハガキが選ばれたのかもしれないが、作者は薬師丸ひろ子からとったつもりだったのだが・・。[別にファンではない。] 「女教師狩り」は映画館で観客に犯される女教師とスクリーン上の同名のエロ映画の二本が同時進行し、一本で二本分楽しめるお得な作品。 ’83は’80に「漫画エロス」にて描いた「エロスの乱反射」の最終回の原稿が紛失したため単行本が出せないでいたのを、またまた「仏の久保さん」に頼んでラスト近くをふくらませて「漫画ハンター」に3回程描かせてもらい、やっと’85に出版。見られる事に快感を覚えるファッション・モデルが調教される内に、次第に露出狂となっていき、街中で突然裸になって交通事故を起こさせたり、最後はビルの屋上でストリップショー。そしてカメラのフラッシュの中に飛び降りていき、ラスト1ページはその性器のアップでエンド!  本格美少年・ゲイ・マンガ「聖少女黙示録」も’83。レズの姉たちの手によって女装に目覚めた少年がホモのダンサーたちに縛られなぶられ初のポコチンこすり合いの射精シーン。そして性転換して女となった主いるが、その中の’84の「白い肌の湖」はタイトルで解る通りのバレリーナものだがポコチンを焼かれた男が、一緒に暮ら人公が手術で男になった少女と暮らすハッピーエンド。この作品は単行本「美少女ハンター」に収録されてす二人の女と一人の男に復讐するエンディングがすごい!まず男の性器を切���取り、片方の女の性器にねじ込んだあと、その女の性器ごとえぐり取る。そしてその二つの性器をつかんだまま、もう一人の女の性器にフィストファック!のあげく、その二つの性器を入れたままの女性器をナイフでまた切って、ほとんどビックマック状態でまだヒクヒクうごめく血まみれの三つの性器を握りしめるとんでもない終り方!全くダー松はこんな事ばかりやっていたのかとあきれかえる。もう鬼畜としか言い様がない!しかし「ウィンナー」を二枚の「ハム」で包むなんて・・GOODなアイデアだ、又やってみよう。 ●1 9 8 4 ~   「漫画ハンター」で「闇の宴」前後篇を描き、後日これをビデオ化。雪に包まれた六本木のスタジオで痔に苦しみながらの撮影。特別出演として中島史雄氏が絶妙の指使い、東デの学生時代の萩原一至が二役、取材に来たJITAN氏もスタジオに入ってきた瞬間、即出演で生玉子1000個の海で大乱交。カメラマンが凝り性で照明が気に入るまでカメラを廻さず、たった二日の撮影はやりたい事の半分も出来ず。撮影が終ると痔はすぐに完治。どうもプレッシャーからくる神経性だったみたいでこれに懲りてビデオは一本のみ。 この年の「肉の漂流」は親子丼もので、近所の書店のオヤジからこの本はよく売れたと聞いたが、一時よく描いたこのパターンは最近では「FUCK YOU!3」の「母娘シャワー」のみ。熟女と少女の両方が描けるところが利点。「血の舞踏」は久しぶりの吸血鬼もの。股間を針で刺し、噛んで血を吸うシーン等々いい場面はあるが、うまくストーリーが転がらず3回で止める。短編「果てるまで・・」は核戦争後のシェルターの中で、父が娘とタイトル通り果てるまでやりまくる話。被爆していた父が死んだ後、娘はSEXの相手を捜して黒い雨の中をさまよう。  またリサ・ライオンの写真集を見て筋肉美に目覚め、マッチョ女ものをこの頃から描き出す。しかしなかなか筋肉をエロティックに描くのは難しい。 ●1 9 8 5 ~   くたびれ果ててすっかりダレてきたこの頃、8年間働いてくれたアシスタント女史に代わってパワーのかたまり萩原一至、鶴田洋久等が東京デザイナー学院卒業後加わってダーティ・マーケットも第2期に突入!新旧取り混ぜておもしろいマンガをいろいろ教えて貰って読みまくる。「バリバリ伝説」「ビーバップハイスクール」「ペリカンロード」「めぞん一刻」「わたしは真悟」「Be Free!」「緑山高校」「日出処の天子」「吉祥天女」「純情クレイジー・フルーツ」「アクター」「北斗の拳」「炎の転校生」「アイドルをさがせ」「綿の国星」「いつもポケットにショパン」「バツ&テリー」「六三四の剣」永井豪の絶頂期の作品「バイオレンス・ジャック」「凄之王」「デビルマン」等々100冊以上とても書ききれない位で、う~ん・・マンガってこんなにおもしろかったのか、と感動! そこで眠狂四郎を学園にほうり込んで、今まであまり描かなかった学園マンガをエロマンガに、というコンセプトで始めたのが「斬姦狂死郎」。「六三四の剣」ばりに単行本20巻を目指すものの、少年マンガのノリは今では当たり前だが、当時はまだエロマンガとして評価されず、ほんの少し時代が早すぎたかも。’86に中断、今年’97に「ホリディ・コミック」にて復活!果たしていつまで続けられるか? →後に「斬姦狂死郎・制服狩り」、「斬姦狂死郎・美教師狩り」として刊行完結  前年末から始めた「美姉妹肉煉獄」は身障者いじめの鬼畜路線。盲目の姉とその妹を調教して性風俗店等で働かせ、娼婦に堕していく不健全・不道徳な作品で、肉の快楽にひたっていく盲目の姉に対し妹も「春琴抄」の如く己の眼を突き、自らも暗黒の快楽の世界にはいり、快楽の光に目覚めるラスト。 また、これからは女王様物だ!となぜか突然ひらめき「筋肉女」シリーズの延長としてフィットネス・スタジオを舞台に「メタル・クイーン」シリーズも開始。これは単行本2冊分描いたが、連載途中でヒロインの髪型を歌手ステファニーのヘア・スタイルにチェンジしたり、レオタードもたっぷり描けてわりと気に入っている。  10年近く描いた「美蝶」先生シリーズもこの年スタート!こうしてみるとマンガを描く喜びに満ちた大充実の年だったかも。 ●1 9 8 6 ~   この年は前年からの連載ものがほとんどだが、「エレクト・ボーイ」は空中でファックするシーンが描いてみたくて始めた初の超能力エロマンガ。コメディ的要素がうまくいかず2回で止める。この路線は翌年の「堕天使輪舞」で開花。  「夜の彷徨人」は自分の育てた新体操選手が怪我で選手生命を失ったため、その女を馬肉のごとく娼婦として夜の世界に売り渡した主人公という設定。しかし腕を折られ、女にも逆に捨てられ、そして事故によってその女を失ったあげく不能となってしまう。失った快楽を取り戻すため無くした片腕にバイブレーターを取りつけ、夜の街をさすらい次々と女たちをレイプしていくというストーリー。がっちり設定したキャラだったのにまったく話がはずまず、男のポコチンは勃起しないままに作品も不発のまま終る。  「斬姦狂死郎」が不本意のまま終わったため学園エロス・シリーズは「放課後の媚娼女」へと引き継がれる。当時見ていた南野陽子のTV「スケバン刑事・」とS・レオーネの「ウエスタン」風に料理。ラストの「男といっしょじゃ歩けないんだ」のセリフは一番好きな映画、鈴木清順の「東京流れ者」からのもじり。単行本は最初司書房から出て、数年後ミリオン出版から再販、そして’97久保書店より再々販ながら結構売れて今年また再版。この作品は親を助けてくれる有難い孝行息子といったところ。 ●1 9 8 7 ~   さいとうプロOBで那珂川尚という名のマンガ家だった友人の津田が「漫画ダイナマイト」の編集者になっていて、実に久しぶりに同誌で「堕天使輪舞」を描く。超能力エロマンガの第2弾。今回はエロと超能力合戦とがうまくミックスされ一応成功といっていい。この路線は「エレクト・ボーイ」とこの作品、そして’96の「夜顔武闘伝」も含めてもいいかも。一時、この手の作品は数多くあったが最近はめったに見かけない。しかし、まだまだこの路線には鉱脈が眠っているとにらんでいるがどんなものだろう。 ●1 9 8 8 ~   「放課後の媚娼女」に続いて抜かずの凶一無頼控え「放課後の熱い祭り」を2年がかりで描く。’89に完結し司書房より単行本化。そして今年’97に改定してめでたく完全版として復刊!この頃が一番劇画っぽい絵で、たった2~3人のスタッフでよくこれだけ描き込めたなと改めて感心!エロシーンがちょっと少なめながら中島史雄氏がダー松作品でこの作品が一番好き、とお褒めの言葉を頂戴する。  TVで三流アマゾネス映画を見ている内、むくむくとイメージがふくらみ、昔から描きたかった西部劇と時代劇がこれで描けると、この年スタートさせたのが「不死蝶伝説」なるアマゾネス路線。昔々青年誌の創世期にあのケン月影氏がマカロニ・ウエスタンを描いていたことを知る人は少ないだろう。俺もあの頃デビューしていたらウエスタンが描けたのに、と思う事もあったが、このシリーズでほんの少しだけその願望がかなう。  この頃、アシスタントやってくれてた格闘技マニアの鶴田洋久に誘われ、近所の空手道場通いの日々。若い頃修行のため新宿でやくざに喧嘩を売って歩いたという寺内師範は、もう鬼のような人で、行けば地獄が待っていると判っててなぜ行く?と不思議な位休まず通う。体育会系はマゾの世界と知る。組手は寸止めではなく顔面以外は当てて可だったので身体中打撲のあざだらけ、ビデオで研究したという鶴田の体重をかけたムエタイ式の蹴りをくらい、右手が饅頭のように腫れ上がる。先輩たちの組手の試合も蹴りがもろにはいってあばら骨が折れたりで、なぜこんなヘビーな事をする?と思うが、闘う事によって身体の奥から何か沸き上がってくるものがある。スリランカの元コマンドと組手をやった時、格闘家の気持ちが少しだけ判るようになった。 ●1 9 8 9 ~   ’94まで続く「美蝶」シリーズでこの年は『ノスフェラトウ篇』を描き、シリーズ中これが一番のお気に入り。同人誌の「王夢」はこれが原点。  短編では「悪夢の中へ」はスプラッタ・エロマンガで久しぶりにチェーンソゥでお尻のぶった切り!はらわた引きずり出し、人肉食いちぎり!顔面叩き割り等々でラストに「ホラービデオの規制をするバカは俺が許さん!」などと書いているので、この年が宮崎事件の年か?世間は彼が日野日出志・作のホラービデオ「ギニーピッグ」を見てあの犯罪をおかした、としてさんざんホラービデオの規制をやっといて、結局見てもいなかったとわかったあとは誰一人日野日出志氏にもホラービデオさんにも謝らす゛知らんぷり。残ったのは規制だけで、馬鹿のやる事には全く困ったもんである。先日の「酒鬼薔薇・14才」の時も犯罪おたくの心理学者が、「これはマンガやビデオの影響です。」などと相も変わらずたわけた寝言をぬかしていたが、馬鹿はいつまでたっても馬鹿のまま。少しは進歩しろよ!お前だよ、お前!短絡的で幼稚な坊や、小田晋!よぅく首を洗っとけ!コラ!  「獣人たちの儀式」は退学者や少年院送りになつた生徒、暴走族、ヤクザ達が集まって酒盛りしながら女教師たちをずこずこにしてOB会をひらく不健全作品。編集長が「また危ない作品を・・・」とこぼしたものだが、岡野さん、田舎で元気にお過しでしょうか。この頃の「漫画エロス」には「ケンペーくん」だとか「アリスのお茶会」だとかおもしろい作品が載っていたものです。「爆走遊戯」は伝説のストーカー・ろくでなしマンガ家の早見純が一番好きな作品と言ってくれたが、なぜだかわからない。人の好みはいろいろです。以上3本は単行本「熱き唇の女神」に収録。 「ふしだらな女獣たち」はフェミニストの女二人が美少年をいじめる話。これは「氷の部屋の女」に収録。 ●1 9 9 0 ~   この年の「美蝶」シリーズは『ダンシング・クイーン篇』。マネキン工場跡でJ・ブラウンの「セックス・マシーン」にのせて5人プレイをするシーンや文化祭でのダンスシーン等々結構好きな場面多し。暗くて硬い作品が多いので、この「美蝶」シリーズは肩肘張らずに、かなり軽いノリでキャラクターの動きに任せて、ストーリーも、そして次のコマさえも先の事は何にも考えず、ほとんどアドリブで描いた時もある。  「不死蝶伝説」に続いてシリーズ第2弾「不死蝶」は2誌にまたがって2年位続ける。これも結構お気に入りの一遍。 ●1 9 9 1 ~ 1 9 9 3   「性狩人たち」の近未来版、といった感じの「夜戦士」は学園物が多くなったので、マグナム銃で脳天をぶっとばすようなものが又描きたくなって始めたミニシリーズ。全5話位。松文館より単行本「黒い夜と夢魔の闇」に収録。  この年から知り合いの編集者がレディス・コミックを始める���が多く、依頼されてどうしたものかと思ったが、エロなら何でもやってみよう精神と何か新しい世界が開けるかも、という事から’94位までやってみたものの結果的に不毛の時代に終わる。与えられた素材が体験告白物という事で、非現実的なものは描けないという事は得意技を封印して戦うようなもので苦戦を強いられ、これって内山亜紀氏がやまさき十三原作の人情話を描いたようなミス・マッチングで不発だったかな。今後、もしやることがあれば美少年SMのレディス・コミックのみ。そんな雑誌が出来れば、の話だが。  いくつかやったレディコミの編集の一人「アイリス」の鈴木さんは同じさいとうプロOBで、マンガ・アシスタント、マンガ家、マンガ誌の編集、そして今はマンガ学校の講師、とこれだけ多くのマンガに関わる仕事をしてきた人はあまりいないだろう。これでマンガ評論でもやれば全て制覇だが・・・。  この頃はいつもと同じ位の30~40本の作品を毎年描いていたが、レディコミは一本30~40枚とページが多く結構身体にガタがきた頃で、右手のひじが腱傷炎になり1年以上苦痛が続く。医者通いではさっぱり痛みがひかず、電気針で針灸治療を半年位続けてやっと完治。その後、住んでいたマンションの理事長を押しつけられ、マンション戦争の渦中に巻き込まれひどい目にあう。攻撃するのは楽だが、話をまとめるなどというのは社会生活不適格のダー松には大の苦手で「お前等!わがままばかり言うのはいいかげんにしろー!」と頭をカチ割りたくなるような事ばかりで、ひたすら我慢の日々で血圧がガンガン上がり、病院通いの日々。確実に寿命が5年は縮まる。あの時はマジで人に殺意を抱いたものだが、今でも金属バット持って押しかけて奴等の脳みそをクラッシュしたい気分になる時もある。いつかこの時の事をマンガにしようと思っていて、まだ誰も描いてない「マンション・マンガ」というジャンル、タイトルは「我が闘争」。え?誰も読みたくない?  この間に出た単行本は「血を吸う夜」、「赤い月の化身」「熱き唇の女神」[以上・久保書店] /「牝猫の花園」「真夜中の人魚たち」[以上久保書店]、「美蝶/放課後篇」「美蝶/ダンシング・クイーン篇」「不死蝶/鋼鉄の女王篇・上巻」[以上ミリオン出版]。 ●1 9 9 4 ~ 1 9 9 5   ろくでもない事が続くのは厄払いをしなかったせいか、このままここにいたら頭がおかしくなる、と15年以上いたマンションから引っ越し。板橋から巣鴨へ移動し気分一新!以前からうちもやりましょうよ、と言われていた同人誌創りをそのうち、そのうちと伸ばしてきたものの遂に申し込んでしまい、創らざるをえなくなる。しかもそれが引っ越しの時期と重なってしまい大いに後悔する。しかしいろんな人にお願いして何とか一冊でっちあげ、ムシ風呂のような夏コミに初参加。これが運命の分岐点。レディコミもこの年で切り上げ、以下同人街道をまっしぐら。現在まで「FUCK OFF!」が9まで、「FUCK YOU!」が4まで計10+&冊創る。  ’95からダーティ松本の名前にも飽きてきたしJr,Sam名でも描き始める。 レディコミ時代は松本美蝶。あと2つ位違うペンネームも考案中。  この間の単行本「氷の部屋の女」「双子座の戯れ」[久保書店]、「黒い夜と夢魔の闇」[松文館]、「危険な女教師/美蝶」[ミリオン] ●1 9 9 6 ~   美少女路線の絵柄もこの年の「夜顔武闘伝」あたりでほぼ完成、今後また少し変化させる予定。しかしこの作品は超能力、アマゾネス、忍法エロマンガとでも呼ぶべきか。「グラップラー刃牙」みたいに闘技場での勝ち抜き性武道合戦までいきたかったけれど、残念ながらたどり着けず。  「冬の堕天使」は久しぶりの吸血鬼もの。都営住宅で生活保護をうけている吸血鬼母子のイメージが浮かび、そこから漫画家協会・加藤芳郎を撃つ有害図書騒動のマンガへ。吸血鬼少年が光の世界との戦いに旅立つまでを描き、「闇に潜みし者」は時空を越えて近未来での戦い。その間を描く作品を今後創らなければ。  「FUCK CITY 2006」はクソ溜めと化した近未来のTOKYOを舞台に久しぶりにダーティ・バイオレンスが炸裂!ハード・エロ劇画と同人誌風・美少女路線の合体は果たしてうまくいったかどうか?30ページほど描き足して、’97、9月にフランス書院のコミック文庫にて発売。[「少女水中花」]  「放課後の媚娼女」と「人形愛」刊行。[いずれも久保書店刊]前者は以前、上下巻だったのを一冊にまとめて。後者は近作を集めた同人時代を経ての初単行本で、同人誌を知らなかった読者はショックを受ける。メタルフアンから以下のようなお手紙を受け取る。「これはジューダス・プリーストの『ターボ』だ。ラストの『眠れる森の少女』は『レックレス』にあたる。しかしジューダスもその後『ラム・イット・ダウン』や『ペイン・キラー』という傑作を世に出した事だし、今後を期待したい」という意のダー松のようなメタルファン以外は意味不明の激励をうける。 ●1 9 9 7   同人誌「エロス大百科シリーズ」スタート!いろんな項目別に年2刊づつ計100ページ位を別刊シリーズとして出し続ければ10年で1000ページになり、以前「谷岡ヤスジ1000ページ」という枕に最適の本があったが、これも一冊にまとめて枕にして寝れば、目覚める頃は3回夢精しているなんて事に・・・などとまだたった40ページの段階で言っても何の説得力もないか。飽きたら2~3号でSTOPするだろうし・・。[推測通り「毛剃り」「美少年SM」「女装」3号でストップ中]冬にはやおい系にも進出の予定。  今年出した単行本は厚くて濃いエロマンガを集めた久保書店MAXシリーズ第2弾!「放課後の熱い祭り/完全版」と「夜顔武闘伝」オークラ出版。ともに大幅描き足して25周年記念出版として刊行。ティーツー出版よりJr,Sam名で「昼下がりの少女」、9月にはフランス書院より「少女水中花」の文庫本が出る予定で現在、この同人誌と並行して描き足し中。「斬姦狂死郎」第2部も「ホリディ・COMIC」誌にて6月よりスタート!年内創刊予定の『腐肉クラブ』なる死体姦専門のマンガ誌にも執筆予定。  さてさて25年間、旅行の時を除いて、現在まで2日続けてマンガを描かなかった事はほとんどない。これはその昔、伊東元気氏というマンガ家とお会いしたとき「今月何ページ描いた?」との問いに、「今月仕事ないんでぜんぜん描いてません」と答えたら、「そんな事じゃ駄目だ。仕事があろうがなかろうが、毎月100頁は描かなきゃ。」と言われ、以後その教えを守り[描けるページ数は減ったが]、マンガは仕事ではなくなり、朝起きたら顔を洗うのと同じで生活そのものとなり現在に至る。  今は何でも描けそ��なハイな状態で、以前はたまには外出しないと煮詰まってしまうので週いち位ガス抜きをしていたものだが、最近はせいぜい月いち休めば十分の「純エロマンガ体」。[純粋にエロマンガを描くためだけの肉体、の意。ダー松の造語]  こうしてふり返ると、この路線はまだえぐり足りない、これはあと数回描くべし、なぜこれを一度しか描かない!等々、残り時間にやるべき事、やりたい事の何と多い事! 爆裂昇天のその日まで・・・      燃 え よ ペ ン !  なお続きは 1997年後期 1998年 INDEX
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sorairono-neko · 5 years ago
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ひとたびにして永遠
 聞き分けよく、申し分のない態度で送り出したはずだった。これはまちがいではない、ほかにやりようはないし、お互いに必要なことだとわきまえてもいた。けれど、やはり──怒っていたのかもしれない。だからヴィクトルは、ひと月という長いあいだ、勇利に連絡を取らなかった。  ひと月!  よくもそんなに耐えられたものだと、勇利からのメールを受け取ったとき、ヴィクトルは自分自身、驚いた。勇利の言葉を目にしてしまうと苦しくなった。しかしその「ひと月をなにごともないように過ごし抜いた」という英雄的事実は、やはり愛情を反対側から見た結果だったのかもしれない。いとおしかったからこそ、腹が立ち、感情がみだれ、そんなに言うなら勝手にしろとなげやりになって、そしらぬふりをしたのだ。  ヴィクトルのそんな反抗的態度とはまったく異なり、勇利のメールは、きわめて愛情深く、優しいものだった。ヴィクトルはマッカチンを抱きしめながら、それをむさぼるように読んだ。  最愛のヴィクトル  こちらは今日は雨です。ヴィクトルが好きだと言った、ぼくの部屋のすぐ外の木が、しずくを打ちつけられてうなだれています。ヴィクトルに会えなくてぼくもしおれそうです。  お元気ですか? このひと月のご無沙汰は申し訳ないのひとことです。とても忙しかったのです。でも、ぼくがこれだけ忙しいのだから、貴方はもっとそうなのでしょうね? もしかしたらぼくのことなどもう忘れているかもしれません。そのときのことを考えて、自己紹介しておきましょう。お久しぶりです。勝生勇利です。貴方が大事にして、いろいろ教えてくださった生徒ですよ。思い出しましたか?  日本ではどれをどんなふうにどうしようと考えていたのですが、考えるまでもなく、ぼくの予定は管理されてしまいました。誰にでしょう。よくわかりません。ぼくは先日まで、スケート連盟の人に会ったり、これまでのスポンサーに挨拶したり、これからもよろしくお願いしますと言われたり、何かの番組でしゃべったり、こういうことに興味はないですかと声をかけられたり、とにかく、人と会っていました。正直なところ、誰と何を話したのかおぼえていません。すぐになんでも忘れるヴィクトルを思い出し、こういうところも先生に似たのだと思いましたが、ヴィクトルは人を楽しませたり喜ばせたりすることは好きなので、こんなことは忘れたりしないのかもしれません。実際、オフシーズンに愉快なことに精を出す貴方を見ているから、やっぱりここは先生に似たのではなく、ぼくの身勝手な一面だと納得しました。  つまらない話はやめておきましょう。  といって、おもしろい話もないのです。とにかく昨日までそういうことをしていて、あまり長谷津にもいられませんでした。ホテル暮らしが続いて、退屈でした。夜にはいつも貴方を思い出しました。早くゆっくりメールを書きたいと思っていました。  さて、ぼくは昨日長谷津へ戻ってきて、もう我慢できなくなったので貴方にこうして文章を綴っています。でも、そんな日々だったものだから、何も報告できることがありません。ヴィクトルこそ、ぼくが東京で退屈していたように、いまぼくのこのメールを読んで退屈しているかもしれませんね。でも、これからさきは楽しいメールを送りますと約束もできません。なにしろぼくはおもしろみのない人間なのです。貴方ならわかっているでしょうけど。  あれ? でも、よく、「勇利はおもしろいなあ」と言われた記憶があるな。なぜかな?  それでは、このあたりで。 ���そちらはまだ寒いでしょうね。マッカチンと抱きあって眠っていることでしょう。風邪をひかないようにね。  貴方の勝生勇利  灰色の空を背景にした、濡れた木の写真がくっついていた。勇利の部屋の窓からの風景だった。それを見た瞬間、ヴィクトルの胸は引き絞られた。勇利に会いたい。そう思った。  ヴィクトルは、勇利が競技生活を終えようがどうしようが、ふたりのあいだにある絆は不変で、離れることはないと信じていた。だから勇利が日本へ一度帰ると言ったとき、「ああ、とりあえずのんびりするのがいいかもね」と簡単な挨拶をした。 「勇利が帰るなら俺も帰るよ。いつにする?」  勇利はまじめに言った。 「ぼくひとりで帰るよ」 「なぜ? あ、俺の予定を気にしているのかい? べつにいいよ。用事があればこっちへ来ればいいんだし、いますぐしなくちゃいけない仕事もないし。まあ、いろいろ──苦情は言われるかもしれないけど、深刻なものじゃない。俺が好き勝手にするのなんて、みんな慣れてるからね。生涯関わらないでくれと言えばちょっと待てと引き止められるだろうけど、すこし休暇が欲しいと要求するくらいなんでもないさ」 「ちがうんだヴィクトル。ぼくは考えてみたいんだ」 「何を?」 「今後のぼくたちのことを」  そのとき、ヴィクトルは直感的におののき、めまいを起こしそうになった。勇利がまたいやなことを言い出すのではないかとおびえた。しかし勇利は「離れたい」と言ったわけではなかった。「考えたい」──そう言ったのだ。 「ぼくたちは近づきすぎていると思う。お互いのことしか見えない」 「それで何か問題があるのかい?」 「問題はないよ。でも、もっといろんなヴィクトルを見たいし、ぼくはヴィクトルのことを改めて考える時間が必要なんだ」 「それってつまり、俺はもういらないということ?」 「なんで?」  勇利は笑い出した。 「ヴィクトルのこと考えたいのに、なんでいらないなんて思うの? 反対じゃない?」 「別れることを考えたいんじゃないのか?」 「ヴィクトルのことを考えたいんだよ」  その「ヴィクトルのこと」の中に「別れ」もふくまれるのではないかと気が気ではなかった。勇利はヴィクトルを愛している。これはいつも感じていることだ。しかし、愛されているからといって油断できないのが勝生勇利なのである。  勇利は一度きめたらこころを動かさない頑固さを持っている。ここで「だめだ。日本へは帰さない」とヴィクトルが譲らなかったとしても、なんとしても自分の思い通りにしてしまうという予感があった。ヴィクトルはあきらめた。そのことをクリストフにこぼしたら、彼は笑って気楽に言った。 「いいんじゃない。確かに君たちはひとつになりすぎだよ。いまは完全にとけあっちゃってるからね。離れないとわからないこともある。スケートと同じさ。自分ですべっていたら、いいのか悪いのか、判断がつかないことがあるだろう。あとで映像を見て、ああ、こんなふうだったか、って理解できる。たまには風を入れることも必要だよ」 「そんな理屈はくそくらえだ」 「ずいぶん上品な言葉遣いをするじゃないか。けど、ゆるしたんでしょ?」 「ああ。好きなだけ羽を伸ばしてくるといいと言った。でもすぐに勇利は泣くぞ。俺がいなくてさびしくて、やっぱり一緒にいたいから貴方も日本へ来て、あるいはロシアに戻ります、そんなふうに泣きついてくる。一週間もしないうちにね」 「つまり勇利は、自分がそうなるかどうかためしたくて離れたんだ」 「……ならなかったらどうなると思う?」 「なるんでしょ」  クリストフは楽しそうだった。 「自信があるんだろ、ヴィクトル」  勇利はひと月、連絡をよこさなかった。  勇利は、俺がいなくても生きていけるかどうか、それをためしているのでは?  ヴィクトルはそんな思いがぬぐえなかった。しかしそれなら、メールなんて送ってこないはずである。完全にヴィクトルを切り捨てにかかるにちがいない。けれど勇利は、最初のメールのあと、しばしば連絡を入れてきた。それも、運命をこころみているとは思えない、愛情深い様子だった。  最愛で最愛の最愛なヴィクトル  今日はすこしリンクですべってきました。大変です。東京でも、時間があれば知っているリンクへ足を運んですべっていたのですが、改めて時間をかけて滑走してみたら……、驚かないでください。  トリプルアクセルが跳べなくなっているのです!  クワド? 訊かないで。  冗談ではありません。トリプルアクセルといえば、ぼくの代名詞ですよ。勝生勇利ほどトリプルアクセルをうつくしく跳べる者はいないと、世界じゅうで評判なのです。毎回かならずGOEプラス3の加点、ヴィクトル・ニキフォロフよりもすばらしいジャンプ、プリンスオブトリプルアクセル。そんな勝生勇利です。もう跳べません、なんてとても口にはできません。  ……ごめんなさい。だいぶおおげさに言いました。こういうのを日本語で「盛る」と言います。ヴィクトルは日本語がだいぶ上手になりましたよね。この表現は知っていましたか?  ともあれ、ぼくがトリプルアクセルを得意にしていることと、トリプルアクセルが跳べなかったことは本当です。これはやばい。今日から猛練習を始めることにします。まず筋肉量が落ちているのをどうにかしなければいけません。ああ、こんなとき、優秀なコーチがいてくれたらなあ……。  なんて。  ヴィクトルは、マッカチンと仲よくしていますか?  それでは、また。  貴方だけの勝生勇利  写真は、なつかしい、アイスキャッスルはせつの玄関口だった。ヴィクトルはいますぐ勇利のところへ行って、トリプルアクセルの見本を跳んであげたくなった。  いや、待て。いまの自分のトリプルアクセルはうつくしいだろうか? このところ忙しくてリンクに顔を出していない。明日は行かなければ。  愛するヴィクトル  今日は地元のちいさな地方誌の取材を受けました。昔の話をしました。スケートを始めたころのことです。いえ──バレエを始めたころのことかな。ヴィクトルにいつからあこがれているのか、という話もしましたよ。ぼくが貴方に夢中になったのは何歳のときだったか、そのことを貴方に語ったことはありましたっけ? もし知りたかったら、この地方誌を取り寄せればいいかもしれません。取材をしてくれた人は、「いつもはたいていあまるけど、このインタビューが載る号は瞬く間になくなるにちがいない」と言っていました。まさかそんなことはないと思いますから、簡単に手に入るでしょう。  いろんな人が、ぼくに会うたび褒めてくれます。女性はいつも「肌がお綺麗ですね」と言います。冗談だと思っていましたが、今日会った人にも言われたので、もしかして本当では、という気がしています。ヴィクトル、貴方もよくそう言ってくれましたね。  みんな、ほかにもいろいろ褒めてくれるのですが、差し引いて聞いています。おもしろいのが、どれも、ヴィクトルが一度は言ってくれたことのあることばかりなのです。でも──、そう、ひとつだけ、初めて聞いた言葉があります。それはこんなのです。 「勝生さん。勝生さんがニキフォロフさんを見るときの目がとてもすてきです。最高にかわいらしいです。いつもそんな目で見ていらしたのですか?」  どうですか? 貴方は、ぼくが貴方を見るとき、かわいい目つきをしていたことに気づいていましたか? 貴方は「かわいい」とか「綺麗だ」とかは言ってくれましたが、「俺を見るきみのまなざしが最高にかわいい」と言ってくれたことはありません。かわいいそうですよ。知らなかったならおぼえてください。知っていたら──、どうして言ってくれなかったのですか? ひみつだったの?  ぼくからも貴方に言うことがあります。ヴィクトル、貴方の目は──ぼくを見るとき、みんなが知るヴィクトル・ニキフォロフじゃなくなりますよ。ぼくはその瞳がとても好きなのです。ご存じでしたか?  貴方の従順な  勝生勇利  ヴィクトルはリンクへかよい、まるでシーズン中であるかのように熱心に練習をして、トリプルアクセルも、四回転のジャンプも、すべてうつくしく仕上げた。機嫌よく帰宅し、食事をしているところへ、勇利からメールが届いた。見ると今日は文章がほとんどない。その代わり、動画がくっついていた。  ヴィクトルコーチ  ぼくのトリプルアクセル、いかが?  貴方の忠実なる生徒  ヴィクトルは勇利のジャンプをじっくりと眺め、ここがいい、ここがよくない、プラス3はつけられない、と判断した。  愛するヴィクトル  今日は用事があって福岡へ行ったのですが、リンクで南健次郎くんに会いました。おぼえていますか? 試合で顔を合わせたことが何度もありますよ。日本の選手です。ぼくを見ると口が利けなくなったようです。でもすぐに立ち直っていました。ぼくはすこしすべりました。動画撮影の許可を求められたのでいいよと答えました。  今日使ったリンクは氷がやわらかかったです。ヴィクトルは固い氷が好きなんだよなあ、と思いました。  ぼくがどういう氷が好きか、貴方はおぼえてくれていますか?  貴方の勇利  ヴィクトルはすぐさま調査をし、南健次郎のSNSを探し当てた。いちばん新しい投稿に動画があって、「尊敬する勇利くん!!」と興奮ぎみに言葉が添えられていた。勇利はジャンプをすることもステップを踏むこともなく、まるで一般的な人のようにすいすいとすべっているだけだった。こちらを見ようともしない。相変わらず不親切である。しかしヴィクトルは食い入るように勇利の姿をみつめた。  右手を見た。  きらっ、と光るものがあった。  ヴィクトルは驚くほど安堵し、やすらかな気持ちでマッカチンを抱きしめ、眠りについた。  最愛の貴方  ヴィクトル、大切な話があります。  じつは……。  太ってしまいました……。  なんということでしょう……。  いえ、愛するヴィクトル、安心してください。貴方が長谷津へ来たときほど肥えてはいません。ぼくはいま、甘やかされているのです。ヴィクトルもずいぶんぼくに甘いひとですが、ゆるしてくれないこともたくさんあります。貴方がいなければぼくはこうなってしまうのです。知っていましたか?  ぼくがダイエットが得意なことはご存じでしょう。明日からがんばります。走りますし、食事制限もしますし、筋力ももっとつけます。そのためにいちばん効くのが何か、ぼくはわかっています。 「そんな身体じゃ、何を教えても無駄だね、こぶたちゃん」  貴方の、こちらのこころを凍らせるようなすてきな笑顔を思い浮かべて励みたいと思います。  痩せるまで連絡しません。そうしたら一日でも早く痩せられるのでは、と思います。  ヴィクトルはどうして太らないの? ずるいよ。  おやすみなさい、ヴィクトル。  貴方の夢を見る  勝生勇利  いとしいヴィクトル  痩せました!  驚きましたか? わりとすぐだったでしょう? ぼくはやればできる子なのです。知っていましたか? これでも、コーチによく「勇利はやればできる子なんだよ」と褒められたものです。  そして思い出しました。ぼくはちびっこスケート教室なるものの講師を任命されていたのです。すっかり忘れていました。痩せてよかった……。  というわけで、スケート教室の先生をしてきました。  あ、なんですか?  おまえなんかに講師が務まるのかって?  ばかにしないでください。  ええ、ぼくもそう考えました。自分の資質のなさに気づいていないとお思いでしたか?  大丈夫です。ぼくはグランプリファイナルで選手を優勝させるという大きな目標もありませんから、それほど重大な役割ではありません。どこかのレジェンドコーチほどよくわからない宇宙語も使わないし、とめどのないお説教もしません。「なんで自信が持てないんだ?」と不思議そうにしたりもしません。いいですか。ぼくのコーチングはこうです。 「みんな、いまからジャンプをするからよく見ておいてください。見ておぼえるんですよ。わかりましたか? おぼえたら各自やってみるように」  ……冗談です。もうすこし言葉は尽くしました。でも、ごまかしの上にごまかしを重ねた感じです。ぼくの指導で優秀な選手が出るとはとても思えません。でも、本当に幼い子たちなのでそれでいいのです。スケートをする楽しさが伝わればいいなと思いました。スケートは楽しいものなのです。世界一のあこがれの選手に片想いをして、その選手と同じ氷の上に立ちたいとねがいながらするスケートは最高です。  みんな転んでばかりです。教える時間より、助け起こす時間のほうが長かったくらい。でもどの子も笑っていました。ぼくは自分がスケートを始めたときのことを思い出しました。ヴィクトル、貴方も最初はあんなふうに転んだのでしょうか? とても想像がつきません。ぼくの中のヴィクトルは、いつも最高にかっこうよくて、すてきで、超越していて、崇高で、きわだった皇帝なのです。  ぼくがそう思っていること、知っていましたか?  勝生勇利  追伸  でも、家ではちょっと子どもっぽいところもありますよね。  勇利はいま、日本ではいちばん有名な男子のスケート選手なので、インターネット上にもいろいろな記事が出ていた。また、南健次郎のように、動画をアップロードする者も少なくなかった。加えて、ウェブ上の番組に呼ばれることもあり、そうした姿もときおり見られた。ヴィクトルは最近の勇利を目にするたび、彼の右手に黄金のリングが輝いているのを確かめた。時に、「それはヴィクトル・ニキフォロフさんとおそろいの……」と尋ねられると、彼はほほえみ、「ええ、そうです」と落ち着いて答えた。ヴィクトルのひとりよがりかもしれないが──外すつもりはないという意思��感じられた。勇利からの恋文──ただのメールだとヴィクトルは受け取っていなかった。あれは恋文だ──も途切れることはない。たわいないことでも、彼は熱心に書き送ってくれる。ともに住んでいるときにはなかったことだ。ふたりでいたころは、必要なことを、そっけない文句で、飾らずに連絡してくるだけだった。いまは愛情のこもった文章を綴り続けている。  しかし、それでいて勇利は、「そろそろロシアに戻りたい」とか、「ヴィクトルは日本へ来る気はない?」とか、そういったことは言い出さなかった。ヴィクトルは、もしや勇利は、このへだたりを保って今後付き合いたいのでは、とそんなことを考え、そわそわした。  ヴィクトルのことは愛してる。でも一緒にいなくても万事上手くいくんだということがわかったよ。──いつそう言い出すかわからない。  そんなのはだめだ、と思った。それは無責任というものだ。勇利は、一度ヴィクトルを殺し、生まれ変わらせたのだ。新しく誕生したヴィクトルは前よりも傷つきやすく、勇利の愛情を欲している。勇利はよく「わかっていますか?」「知っていましたか?」「気づいていましたか?」と尋ねるけれど、彼こそわかっているのだろうか。  おまえが俺を変えたんだ。  愛するヴィクトル  貴方がウミネコをカモメと言った海へ行ってきました。ひとりで行きました。貴方が隣にいなくてつまらなかったです。  写真は、夏にヴィクトルがはしゃぎまくっていたシャワーです。楽しかったですね。  勝生勇利  ヴィクトルは、勇利の撮ったなつかしい海を後ろにした写真に見蕩れた。勇利のこころに初めてふれたときのことがありありと思い出された。  いとしのヴィクトル  今日は、いつかふたりで出かけた長谷津城を訪れました。みんな誰かと一緒でした。ひとりなのはぼくだけでした。  写真をつけておきます。  ぼくがいま、誰に会いたいかおわかりになりますか?  勇利  いとしいヴィクトル  ヴィクトルといつだったかお酒を飲んだお店に行きました。あのとき飲んだのは何だったでしょう? おぼえていないので、ヴィクトルが好きな焼酎を頼みました。美味しかったです。ヴィクトルがいればいいのになあと思いました。  写真をつけておきます。なみなみと注がれているから、ぼくがまた酔っ払って余計なことをしたのではないかと心配でしょう。大丈夫です。この一杯きりにしました。  帰ってきて、ぼくはいまひとりで自室にいます。さっき、ふと思い立って、ヴィクトルが使っていた部屋に行ってみました。そこはがらんとしていました。ベッドに寝転がってみると、ヴィクトルの匂いがしました。不思議ですね。もう長いあいだヴィクトルはこれを使っていないのに。そのままうとうとしたら、ヴィクトルの夢を見ました。内容は忘れてしまいました。目がさめて、「ヴィクトル?」と呼びかけてしまいました。そうか、夢か、と思いました。ここにはぼくひとりしかいません。  この自室にいると、いまにもヴィクトルが扉を開けて、「勇利!」と飛びこんできそうな気がします。  ヴィクトル、知っていましたか? ぼくは貴方が来るまで、部屋の壁一面に貴方のポスターを貼っていたのです。現在? どうでしょう。知りたいですか? 壁の写真を送ろうかと思いましたが、送ってあげません。  ヴィクトルはいま何をしていますか? ぼくはいま、ヴィクトルのことを考えています。  明日から東京です。何かの番組の収録だったと思います。何だったかな……。  おやすみなさい。  今夜ヴィクトルの夢を見られたら、今度こそおぼえていたいです。  ヴィクトルはぼくの夢を見ますか?  貴方の勝生勇利  勇利。俺を変えたのはおまえなんだ。おまえが俺を殺して生かした。なのにそんなことも知らないで、よくもこんな恋文を送ってくるな。ヴィクトルはせつなさを感じながら部屋の中を歩きまわった。いますぐ勇利のところへ行きたい。しかし彼は考えているのだ。──いったい何を考えているのだろう? こんなに愛を語っていても、明日には「もう考えるのはよすことにします。メールを送るのもやめます」と言い出しそうでこわい。  おまえが俺を新しくしたのに。おまえが……。そんなことをずっと考えていたら、ふと思い出すことがあった。 「──ねえヴィクトル」  あのとき勇利は、自分の金メダルを眺めていた。ヴィクトルに寄りかかり、すこし酔ってとろんとした目をしていた。 「ぼくには誕生日がふたつあるんだよ」 「え?」  生まれるときに時刻が変わった、という意味かと思った。しかしそれなら、変わったあとの日付が誕生日になるはずだろう。 「ぼくが生まれたのは、十一月二十九日」  勇利はほのかに笑った。 「でも、ソチでのグランプリファイナルのとき、全部が終わったと思ったんだ」  ヴィクトルは、あのとき、帰る人々でごった返すロビーで傷ついた顔をした勇利を思い出した。 「ああ、おしまいだって。おおげさかもしれないけど、そう思った。本当だよ」 「うん」 「でも」  夢見るように勇利は目をほそめた。 「雪の降る春の日、ヴィクトルがぼくの前にあらわれて、ぼくは新しくなったんだ」  彼はヴィクトルにことさらにもたれかかり、甘えるようにささやいた。 「あの日がぼくのふたつめの誕生日……」  勇利はヴィクトルの手を握りしめ、耳元に口を寄せて、熱心な言いぶりで礼を述べた。 「どうもありがとう、ヴィクトル。ぼくを変えてくれて」  ──勇利。  ヴィクトルは勇利の私室へ入った。勇利のナショナルジャージが、壁際にかかったままになっていた。これを着た彼が幾度ヴィクトルに飛びつき、笑ったかしれない。ヴィクトルは手を伸ばした。そしてジャージを荒々しくつかみ、胸に抱きしめた。 「勇利……」  勇利は指輪を外さない。しかし、彼はここにはいなかった。  それからふっつりと恋文が届かなくなった。ヴィクトルは、そうか、東京だと言っていたな、と思ったけれど、べつに東京からでもメールは送れるだろうと不機嫌になった。しかし、心配はしていなかった。仕事をしているのだろうと受け取っていた。ところが、三日経っても四日経っても音沙汰がない。いったい幾日の仕事なのだろうとそわそわした。まだやっているのか。それとも、別の仕事が入ったのか。まさか何か事故が起こったわけじゃないだろうな。ヴィクトルはニュース記事を丁寧に調べた。何も問題はなさそうだった。  そわそわしていたのが、いらいらに変わってきた。一週間が過ぎた。もう我慢できない、日本へ行ってやる、と思ったとき、勇利からなにごともなかったかのようにメールが届いた。  恋しいヴィクトル  こんにちは。いまぼくがどこにいるかおわかりになりますか? じつは日本にはいません。  バルセロナです!  うそだと思う? 写真をくっつけておきますね。  今日着きました。  わかると思うけど……、時差ボケです……。  ごめんなさい、もう寝ますね。  死にそう……。  おやすみなさい。  眠りのとりこ  勝生勇利  追伸  いまでもぼくをスリーピングビューティと呼んでくださる?  バルセロナ!  ヴィクトルはあぜんとした。  どうしてバルセロナなのだろう? これも仕事だろうか? ただの旅行か。勇利は旅に興味があるたちではない。誰かに会いに行ったのか。バルセロナに友人はいないはずだ。ヴィクトルはなんだか落ち着かなかった。  バルセロナ。バルセロナ……。  親愛なる貴方  こんばんは。そちらはいま何時かな。今日は、ぼくたちの初めてのグランプリファイナルの会場となったところへ行ってきました。中には入っていないよ。何か催しがおこなわれていたみたい。あのとき、ロビーに飾ってあったぼくのパネルを、ヴィクトルがしみじみと眺めていたことを思い出しました。  じつはまだ本調子ではないので(眠いだけ)今日の活動はこれで終わり。明日はいろいろできるといいな。  おやすみなさい。  夢の住人  勝生勇利  厳しいヴィクトル先生  雨だったので、一日ホテルにいました。もったいないかな……。  夜には雨が上がったので、屋上のプールに行ってみました。ヴィクトルが入ったあそこだよ。  あそこ……、いいね。のんびり泳ぐことができて。星空が綺麗でした。  ヴィクトルとは海にもプールにも行ったけど、本気で泳いだところは見せたことがないかもしれません。ぼく、泳ぎはわりと得意なんだよ。スケートの選手になっていなかったら、水泳選手になっていたと思います。……冗談です。でも、得意なのは本当。ヴィクトルと本気で勝負すればよかったな。  いまは部屋に帰ってきて、ぼんやりしています。プールの写真を一緒に送るね。なつかしい?  明日は晴れると思います。  ここへ来てからもずっとヴィクトルのことを考えてるよ。  言うことを聞かない生徒  勝生勇利  ヴィクトルはだんだん不安になってきた。勇利は何のためにバルセロナにいるのだろう。あのプールに入ったということは、つまりあのときのホテルに泊まっているのだ。それでどうするつもりなのだろう?  勇利は──。  勇利は、いったい……。  愛する貴方  晴れたのであちこち出歩いてきました。おぼえていますか? あのとき、ぼくはヴィクトルに観光に連れていってとねだり、貴方はぼくをいろいろなところに案内してくれましたね。あのとき行った場所、ほとんど全部、ひとりで行ってみました。変わってなかったよ。入ったお店も同じ。どれも、ちゃんといまもありました。ごはんもね、そこで食べた。たまたまテーブルが空いてたので、席も同じ。ヴィクトルがスーツを買ってくれたお店、ひとりで入るのは勇気が必要だったけど、思いきって足を踏み入れました。驚いたことに、あのときの店員さんがいて、ぼくをおぼえてくれていました。正確にはヴィクトルをおぼえていたんだと思う。貴方は有名人ですからね。すこしだけ話しました。  ナッツ屋さん。行きました。思い出すと可笑しくなる。ナッツで喧嘩するぼくたちって何なのでしょう。でもたぶん、いま同じことになってもやっぱり喧嘩するのでしょうね。あのナッツ、結局どこへ行ったんでしょう? 誰が食べたのかな? あのあと、ぼくがロシアへ渡ってから、ヴィクトルがおみやげだと言ってナッツを買ってき、いたずらっぽい顔をしたことを思い出しました。  あのときは、ヴィクトルについていろんなところへ行って、とても疲れたけど、ひとりで行くとちっとも疲れなかったです。淡々と目的地を目指すだけだからでしょうか。  こちらにはもう一日います。明日行くところもきまっています。  おやすみなさい。  貴方の勇利  今日の写真は、勇利が休憩していたベンチだった。本当にあそこに勇利は行っているのだ、とヴィクトルは思った。そしておそろしいほどの焦燥にかられた。  勇利はなぜ、ふたりの思い出の場所に、ひとりで足を運んでいるのだろう?  いったい何のために?  まるで……。  まるで、過去を清算しているようではないか……。  ふたりで過ごした長谷津でヴィクトルのことを考え、ふたりが絆を結んだバルセロナでもヴィクトルのことを考えている。  ヴィクトルとの、どんなことを?  思い出をたどって……、終わりにするためでは?  勇利はヴィクトルに、別れを告げているのではないか?  彼はあのとき、普段にはしたがらない観光をしたがった。別れるにあたり、思い出をつくろうとしたのだ。最後のデートだと。  それを、いま、��どって……。  勇利は……。 「うそだろう」  ヴィクトルは低く言った。 「うそだろう、勇利」  最愛のヴィクトル  バルセロナは今日で最後です。明日、ここを発ちます。  今日は大聖堂に行ってきました。  おぼえていますか?  ぼくはここで貴方に指輪を渡しました。  貴方は優しくぼくにもはめてくれましたね。  とてもうれしかった。  ただのおまもりです。  でも、ものすごいききめのおまもりです。  一生の宝物だと思いました。  ぼくはこれを外しません。  階段に座って、あのときのことを思い出していました。  なつかしかった。  勝生勇利  俺はどうしておとなしく待っているのだろう。  ヴィクトルは自分に猛烈に腹が立った。  勇利がいないのに、どうして何もしないのだ? 勇利のすることを見ているだけ。なぜ、恋文が届くというだけで満足しているのだ? 考えたい、と言われたからといって何なのだ。そんなことは知ったことではない。こんなの、ぜんぜん俺らしくない。  ヴィクトルはヴィクトルでいて欲しい。  俺は俺なのだ。 「ヤコフ」  ヴィ���トルは、深夜だというのにヤコフに電話をかけた。 「頼みがあるんだ」  勇利は明日、日本へ帰るのだろうか。そして──どうするのだろう? もう満足しました。貴方との思い出を訪ね歩いてみちたりました。これ以上は望みません。終わりにしましょう。さようなら。──そんな言葉を送りつけてくるつもりか。  ヴィクトルは誰もいないリンクに立った。勇利のことを考える。勇利のことだけを。  繊細な旋律が流れ始めた。ヴィクトルは両手いっぱいに愛をみたし、勇利のことを想った。なめらかに踊り、すべった。これまで、こんなに複雑な感情をともなってスケートをしたことがあっただろうか?  それは祈りのようだった。そして、情熱でもあった。情愛でもあった。つまるところ──愛だった。勇利が織り上げた愛を、ヴィクトルは思い出していた。  勇利のスケートを初めてじっくりと目にしたのは、ヴィクトルの「離れずにそばにいて」をすべったときだった。映像ではあったけれど、ヴィクトルは視線を外せない思いで熱心にみつめた。勇利は、ヴィクトルのまねをし続けた昔を思い出すためにあれをすべったという。難しいプログラムだ。試合でそのまま使うものである。しかし勇利は、うわべだけではなく、ほとんど自分のものにしていた。相当すべりこんだにちがいない。勇利はあの曲を通して自分をみつめ──そしてヴィクトルをみつめていたのだ。  勇利は自分の愛を表現するとき、何を考えていただろう? ヴィクトルは、勇利の振りをすっかりなぞりながら、あのときの勇利を思った。この曲を振り付けしたのはヴィクトルだ。勇利を理解し、彼の深い想いがあらわれるようにした。しかし、ヴィクトルの思うそれと勇利の本物のこころはまったく同じではない。勇利は……ヴィクトルのことを、どんなふうに……。  勇利がヴィクトルをみつめたように、ヴィクトルもいま、勇利をみつめていた。  あのころ、愛のようなものに気づき始めた勇利。彼はどんな気持ちでいただろう。そして──グランプリファイナルで最後だときめたとき、何を思ったのか。  ヴィクトルは、「終わりにしよう」と言った勇利を責め立て、激怒した。あのときはそれが精いっぱいだった。勇利を求めていたのだ。「もっと俺を必要としているのかと思った」──そうも言った。しかし、勇利がヴィクトルを求めていなかったとはけっして言えない。彼には決断する勇気があっただけだ。そのあと、勇利と過ごした日々を思えばわかるではないか。彼はヴィクトルをこころから熱愛し、楚々とした、はかりしれぬ愛を捧げ続けた。おぼつかない気持ちで「終わりにしよう」なんて言ったはずはない。彼は苦しんだ。じゅうぶんに……。  自分よりも、ヴィクトルを取ったのだ。  それはヴィクトルの望むところではなかった。勇利はヴィクトルの気持ちを考えていなかった。そうかもしれない。彼のひとりよがりではある。でも、ヴィクトルを愛していなかったという証拠にはならない。むしろ正反対ではないか。勇利は、自分のことよりもヴィクトルを……。  勇利……。  またそうやって俺を愛するあまり、俺の手を離そうというのか。  きみの紡ぐ愛は繊細に過ぎる。  そして──身勝手だ。あまりにも……。  ヴィクトルは微笑を浮かべた。そうだ。勇利はそういう子なのだ。そんな勇利だから、ヴィクトルは愛してしまった……。  でも──。  勇利。  俺もね……。  身勝手さでは、おまえに引けを取らないんだよ。  知ってたかい?  この曲……。  いい曲だね。  一緒に、何度も何度もすべった。あのときは勇利のお手本だったけど……。  いまは、俺の愛を織りこめるよ。  俺だけの、きみにだけそそぐ、愛を……。  ヴィクトルは、最後に、手を、差し伸べた。  いつも勇利がヴィクトルに向かってそうしていたように。  このときはヴィクトルが、勇利に向かって……。  それで初めて気がついた。  この手のさきに愛するひとがいるというのは、どんなに胸のあたたかくなることだろう。  ──勇利。  いつもこんな気持ちで俺を見ていたの? 「どうもありがとう、ヤコフ」  ヴィクトルはリンクサイドに上がると礼を述べ、物穏やかにほほえんだ。ヤコフはなんともいえぬ奇妙な表情をしていた。 「おまえが人のプログラムをすべるのを初めて見た」 「そうだっけ」 「いい演技だ」  ヴィクトルはちょっと目をみひらいた。 「ヤコフが率直に褒めてくれるのは珍しい。初めてじゃないか?」 「いい演技だ」  ヤコフはもう一度言った。 「本当に……」 「…………」  こころからのその賛辞に、ヴィクトルはかすかな笑みを浮かべた。 「俺……、彼を見ていたんだ……」  その夜、一本の動画がインターネット上にアップロードされた。 【Victor NIKIFOROV】I tried skating.【YURI ON ICE】──。  ヴィクトルは食事の支度をしていた。まったく自分は料理の腕が上がったと彼は考えた。勇利と暮らすようになってから、格段にそれは進歩したのだ。しかしヴィクトルは、自分のつくるものより、勇利の用意する食事のほうが好きだった。でもそれと同じくらい、自分のつくったものを食べた勇利が喜ぶのが好きだった。 「マッカチン、そろそろごはんにしようか?」  マッカチンが返事をした。マッカチンのごはん、ごはん、と戸棚のほうへ行ったら、玄関の呼び鈴が鳴り渡った。何かが届く予定も、訪問の約束もなかったのでヴィクトルは首をかしげた。しかし、誰だろう、と思う間もなく、開錠の音がし、続いて扉がひらいたので、はっとして息をのんだ。一目散にマッカチンが玄関へと走っていった。ヴィクトルは動転しながらあとを追った。 「わっ。元気だな……。はいはい、ただいま。いい子にしてた?」  マッカチンが喜んで吠えた。ヴィクトルは廊下で立ち止まり、戸口に視線を注いだ。 「ん」  マッカチンを撫でていた勇利が顔を上げた。彼はぱっと立ち上がると顔を輝かせ、両手をひろげた。 「ヴィクトル!」  なつかしい、おさなげな笑顔にヴィクトルは見蕩れた。勇利は気持ちよさそうに叫んだ。 「ぼくは貴方と結婚する! そして、貴方の人生をしあわせにするぞっ」  ヴィクトルは目をみひらいた。勇利は靴を脱ぎ散らかし、ヴィクトルに駆け寄った。そして飛びつくようにして抱きついた。ヴィクトルはふらついた。しかし、しっかりと受け止めた。 「ただいま! ね、太ってないでしょ!」 「勇利……」  ヴィクトルはぼうぜんとした。勇利はヴィクトルの胸に頬をすり寄せ、しあわせそうにほほえみながら、仔猫のようなしぐさをした。 「ヴィクトル、いい匂いがする! ごはんつくってた?」 「あ、ああ……」 「ぼくのぶん、ある?」 「あるよ……」 「食べる!」  勇利が元気に言った。ヴィクトルはうなずき、「じゃ、支度するから」と答えた。 「荷物を片づけておいで」 「はーい」  勇利は、さほどのものは持っていなかった。手まわりの品だけ、といった印象だ。遠征のおり、ジャージやスケートシューズ、衣装、着替え、と持ち歩いていたことを思えば、かなり身軽な様子である。ヴィクトルは上の空で食卓をととのえた。 「いただきます!」  ふたりは向かいあって食事を始めた。マッカチンも食べ出した。ヴィクトルはそっと勇利のそぶりをうかがった。勇利は「ヴィクトルのこれ、久しぶり」と言いながら炊き込みごはんをたべている。まるで、ちょっと数日仕事で留守にしたけれど、何の問題もなく帰ってきた、といった具合だ。 「バルセロナからそのままこっちへ来たの?」 「うん、そうだよ。出国しようとしてちょっと足止めされたけどね」 「何かあったのかい?」 「とくに予定をきめてなかったから、いろいろ狂っちゃって。飛行機に乗れなかっただけ」 「そう……」 「おいしいなー。ヴィクトル、おかわり」 「また太るぞ」  そう言いながらもヴィクトルはおかわりのぶんを与えた。勇利は終始にこにこしており、普段通りだった。ヴィクトルは、何のためにバルセロナへ行ったのか、ということを訊けないままだった。いやなことを言われるかもしれない。いや、しかし──勇利はここへ帰ってきたとき、なんと言っただろう? 「もうくたくただよ。いまあるのはね、食欲と睡眠欲。できればお風呂も入りたいけど、眠気に勝てるかなあ」 「旅行、楽しかった?」 「写真見た? なつかしかったでしょ?」 「……ああ」  勇利は食事のあと、目をこすりこすり風呂へ入った。そして上がるなり「むり」とつぶやいて寝室へ直行して寝てしまった。ヴィクトルは、夢ではないのか、勇利は本当に帰ってきたのか、と思いながら片づけをした。幾度も寝室をのぞきに行って、勇利の寝息を確かめた。マッカチンが勇利にくっついて眠っていた。  ヴィクトルは寝支度を済ませると、そっと勇利の隣にすべりこみ、彼の寝顔をみつめた。ずっと見ていた。眠れなかった。勇利の頬にふれようとして、手をひっこめた。  勇利……。  それでもいつの間にか寝入ったらしい。夜半、ふっと目ざめると、勇利の目がぽっかりと開いていた。彼の瞳は、暗闇の中で、濡れたようにひかっていた。 「……勇利」 「体内時計がめちゃくちゃなんだよね」 「……そうだろうね」 「眠れなくなっちゃった……」  ヴィクトルは手を差し伸べた。このほどは、慎重に、そっと勇利の頬にふれた。勇利は天井からヴィクトルのほうへ視線をまわし、まぶたをほそめてにっこりした。 「あれ……、見た。すごいね……」  勇利はささやいた。 「うれしかった。ありがとう」 「……あれをすべって、勇利のいろいろなことがわかったよ」 「ぼくもあれを見て、ヴィクトルのことがわかったよ」 「どんなこと?」 「わかるでしょ?」 「…………」 「わかるはずだよ。ぼくはもう、胸がいっぱいなんだ」 「勇利……」 「ん?」 「帰ってきたとき言ったことは、本当?」 「うん」  勇利は熱意のこもったまなざしをヴィクトルに向け、こっくりうなずいた。 「もうきめたから」 「…………」 「で、指輪を買おうと思ったんだけど」 「えっ」  ヴィクトルは仰天した。 「買ったのか!?」 「時間がなくて……」 「…………」  勇利は���れたように笑った。 「なんだか、ヴィクトルにすぐ会いたくなっちゃって、でも飛行機が取れなくて、いらいらして、ホテルでふてくされてたら、時間が経っちゃったんだよね。そのあいだに店に行けばよかったんだけど、すっかり動転してて」  ヴィクトルは息をついた。 「……指輪なら、もうもらったよ」 「それはお礼だよ」 「金メダルを獲ってくれたから、それでいい」 「そっか」  ヴィクトルはせつなくなって口をつぐんだ。 「ヴィクトルはやっぱりかっこいいね」  勇利はつぶやいた。 「あんなスケート、見たことないよ……」  しばらくふたりとも黙っていた。勇利はもぞもぞと身じろぎすると、ヴィクトルのほうへ寄ってき、ぎゅっと抱きついて首元に額をくっつけた。 「……ヴィクトルだ」 「うん」 「ヴィクトルの匂い……」 「うん」 「いつぶりかな?」 「さあ……」  ヴィクトルは額に落ちかかる勇利の髪をそっと払ってやった。 「おぼえてないな……」 「ヴィクトルはすぐ忘れるもんね」 「勇利と会えない時間なんてまじめにはかっていたら、気が狂う」 「…………」 「勇利はそんなふうに思うこと、ない?」 「……ヴィクトル、ぼくね」  勇利は低くささやいた。 「ずっと、貴方だけ見てたんだ」 「……うん」 「ヴィクトルのスケートを見て、夢中になってから、もうずっと。脇目もふらずに、ヴィクトルだけを」 「……ああ」 「ぼくはヴィクトルのスケートが好きで好きで……、」  勇利はほのかにほほえんだ。 「スケートから離れても、ヴィクトルが好きなんだろうと思った」 「…………」 「ヴィクトルをどうしようもないほど愛していて、おぼれていて、どっぷりで、離れられないんじゃないかって」 「…………」 「そうじゃないかと予感してたんだ」  勇利が何かを探すように手をさまよわせた。ヴィクトルは彼の手を握った。強く……。 「その疑いは濃厚だった」  勇利の声は、青くかすむ神秘的な夜の中にしみこんでゆくようだった。しかし、けっして消えない。ヴィクトルのこころにとけて、じわっとそこをあたためる。 「それを、確かめたかったのです」  カーテンの隙間から、わずかばかり入ってくるおぼろなひかりが、勇利の頬を白く照らした。真珠のような純潔さに、ヴィクトルは陶然となった。 「……それで?」  ヴィクトルはちいさく言った。勇利はあえかな息をつき、微笑を浮かべた。 「思った通りでした」 「…………」  勇利……。  いま?  いま……、それを知ったのかい?  いまごろ……。  俺は……。  俺はもう、とっくに……。 「……変わった子だね」 「そうかな」 「そういうの、好きだけど」 「そう?」 「ああ」 「そっかぁ……」  勇利は夢見るように笑った。 「……楽しかった?」 「何が?」 「長谷津とか……バルセロナとか……」 「何度もメールに書いたけど」  勇利はヴィクトルの耳元にくちびるを近づけ、優しく言った。 「貴方がいないから、つまらなかったよ」  ヴィクトルは胸が痛くなり、ものが言えなかった。 「ヴィクトル……」 「…………」 「ぼくのこと……、最��まで……、」  勇利の愛情深い声が可憐な懇願をした。 「……おねがいします……」  勇利は寝息をたて始めた。ヴィクトルは起き上がり、まくらべの棚のひきだしを開けて、そこからちいさな箱を取り出した。そして、もうずいぶん前に支度していた指輪を、勇利の薬指にそっとはめた。自分の指にも通した。勇利が何かをつぶやいた。すてきな夢を見ているように、彼は口元に微笑を漂わせていた。  そこでヴィクトルは、棚に携帯電話を置き忘れていたことに気がついた。近頃は仕事の用事が多いので、電話をふたつにわけているのだ。こちらは私的なものである。深夜にヤコフにかけてから、そのままだったのだと思い出した。電池が切れてしまっている。なにげなくコードにつなぎ、メールが入っていることに気がついた。ヴィクトルははっとした。急いで開封し、視線を走らせる。そしてすやすやといい気持ちそうに眠っている勇利を見た。 「勇利……」  あのヴィクトルのすべりを目にして、勇利はこころをきめたのだと思っていた。しかし……。 「勇利」  ヴィクトルはたまらないという表情になった。我慢できず、身をかがめ、勇利のくちびるにおごそかに接吻した。 「勇利……、俺もだよ」  最愛なるヴィクトル  眠れません。  明日……ううん、今日発つというのに、これでは寝坊してしまいそうです。でも、いくら寝ようとしても眠れないので、こうしてヴィクトルのことを思い出しています。  ヴィクトル。  ぼくは貴方と離れてから、たくさん貴方にメールを書きました。メールを書いていないときでも、貴方のことを考えていました。何をしていても、ヴィクトルのことで頭がいっぱいでした。一緒にいるときより、いっそう、そうでした。そうだろうと思っていました。でも、実際体験すると、「そうだろう」と想像していたのとずいぶんちがいました。  さびしく、せつなく、つらかったです。  思ったより、ずっと……。  何を見ても、何をしても、ヴィクトルがそばにいないことが不思議でした。貴方がいたらなんと言うだろうと考えました。どんなふうに笑うだろうと思い浮かべました。  ヴィクトル……、ぼくは、貴方のスケートをひと目見たときから夢中でした。でも……。  いつからぼくはこんなふうになってしまったのでしょう?  貴方はいつ、ぼくをこんなふうにしたのですか?  いつだったか、ぼくには誕生日がふたつあると言ったのをおぼえていますか?  ぼくは、苦しいくらい貴方が好きです。  その気配はずっとしていたし、予感もありましたが、それに、今日、気がつきました。  新しいぼくになったのです。  ぼくのみっつめの誕生日です。  ヴィクトルはいつもぼくを新しくしてくれますね。どうして?  どうしてぼくはこんなに貴方が好きなのでしょうか?  そのひみつを、貴方は説明できますか?  ぼくにもいつか解き明かせるでしょうか?  これが最後の便りになります。もう、メールなんかでは満足できません。ぼくはヴィクトルに会って、ヴィクトルにみつめられ、ヴィクトルの声を聞いて、ヴィクトルの匂いを感じたい。  ヴィクトルに抱きしめられたいです。  貴方はこんなぼくをどう思うでしょう? 度を超した愛情だとひるむでしょうか? おかしな子だと笑うでしょうか? 貴方の気持ちがわかればいいのですけれど。でも、わからなくても構いません。ぼくはまっすぐ貴方の胸に飛びこみます。  貴方はぼくのすべてです。  もう、ずっと前からそうだったのです。  ようやくはっきりとわかりました。  貴方は知っていましたか?  ぼくの愛は貴方のものだと。  永遠に貴方の  勝生勇利
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shogotakeuchi · 5 years ago
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《文句言ってないで西田さんがお金の支援したらいいじゃない。たくさん稼いでるでしょ?》
俳優の窮状「直訴」したら…西田敏行、思わぬ“炎上” 一般の個人事業主たちから反発
実は僕も、同様のことを思っていました。
もちろん、辛辣で冷徹なことを言っているという自覚はあります。
でも、憲法で職業選択の自由が謳われて、実際ほぼそのとおりになっているこの国で、ひとりのオトナとして、一種の成果給の世界に身を投じる事を選んでの現況なのですから、甘んじて受け入れるか宗旨変えをするか、それは各々で考えてくださいとしか言いようがないのです。
例えば歌舞伎役者の世界でも、俗に「三階さん」と呼ばれる端役のポジ���ョンがありますが、食えなくて廃業する人が跡を絶たないと言います。
僕は中学生の頃から宝塚歌劇の星組のファンなのですが、あの世界もまた残酷で、レビューで大階段から降りてくるシーンなんかは、男役と娘役のトップ各1名だけが、(多くの人がテレビやポスターなんかで周知している)羽飾りやらラメやらの装飾ゴテゴテのひとりカーニバル状態になることを許されて、その次の準主役級なんかはもう、孔雀の羽2本だけとか、物凄い格落ち感を出しまくって現れるのです。それでも、そうやって単体で紹介されるというだけで、ある意味雲の上の存在で、その他大勢は(狭き門をくぐって音楽学校に辿り着いたのにもかかわらず)八百屋でザルでまとめ売りされる果物のごとく、ひとりひとりの見分けなんかつけようのないラインダンスで舞台に現れてオシマイというのが相場なのです。それはそれはまことに、清く正しく美しく、舞台での人気だけがバロメーターという、本当に公平で公正で、当然その分残酷で、野坂昭如の娘だろうが、当代の片岡仁左衛門の娘だろうが(でも、そこそこ売れた)、松岡修造の娘だろうが、脚光を浴びなければそれまでなのです。
いやいや、主役級として、宝塚という狭い(そしてディープな)世界で一世を風靡しても、卒業後の、その先の世界もまた長く険しいというのが、引き続き残酷な実際です。元宝塚の肩書で引き続き食べていけるなんて、一握りどころかヒトツマミなんじゃないかと、心底思うほどです。残りの大部分は、ヒトタマリもないでしょう。
元宝塚で女優と言えば、パッと思いつくのは黒木瞳(月組)とか純名里沙(雪組)あたりかなぁといったところですが、星組推しのワタクシとしましては娘役の南風舞(みなかぜまい)が良かったと、声を大にして言いたいワケです。特にトルストイの戦争と平和の冒頭の、ソプラノ独唱は、いまでもあれ以上の華やかな娘役は出てきていないと個人的には思うのですが、卒業後の現在、別に売れてはいないというのが、まぁ、広い世界での評価や相場ということなのでしょう。※ご当人は、門戸厄神の駅前のスタジオで、バレエの先生をなさっています。
一応、自分なりに、そういう世界を、相応の時間を費やして眺めてきたので、西田氏の持つ危機感だとか、彼の立場だとかは、斟酌に値するとは思いつつも、役者だから、俳優だからという括りだけでモノを言うのは、「甘ったれるな」という感想しか出てこないのです。
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snowtale05 · 6 years ago
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ジャンル名「百合系ミステリィADV」とは『flowers』レビュー
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初めにこのゲームを人から勧められた時に引っかかったのは「百合系ミステリィADV」というジャンル名だ。なぜこの二つを掛け合わせたのだろう。
「flowers」は、全四部からなる百合をテーマにした連作ADVゲームだ。各篇は季節の名前を冠しており、2014年に第一部である春編がリリースされてから一年に一本のペースで続編が公開され、2017年に完結している。
身近に本作の熱心なファンがいたため評判の良さは以前から聞いていたが、四部作というハードルの高さに後回しにしていた。そしてつい先月、全編をワンパッケージにまとめたPS4版が発売されたとのことで意を決してプレイしたのだが、仕事と食事と睡眠の時間以外全てを捧げるほどのめり込んでしまい一週間足らずでクリアしてしまった。それどころか本編だけでは飽き足らず、今では卒業アルバムのような分厚さのアートブックや関連CDの収集まで始めている。この記事はレビューという体だが、本作を布教するための文章であり、また何故私が本作にここまでのめり込んでしまったのかを整理するための文章だ。
以降の本文では、出来る限りネタバレは避けたつもりが、レビューの上で必要と判断した内容には触れるため未プレイの方は注意して欲しい。特に「flowers」は前知識の有り無しで体験の質が変わってしまう内容であり、それこそ公式HPの情報すら見ないことを推奨する。
『flowers』のコンセプト
「マリア様がみてる」に影響を受けたという本作は、ミッションスクール(キリスト教主義学校)を舞台に百合を描くという王道な設定に挑んでいる。主人公である白羽蘇芳は、家庭内のトラブルから心に傷を抱え学校へも通えなかった事から対人能力への自信を失っている。そこで、学園側が仮り初めの友人を作らせ生活を共にさせる"アミティエ"という制度のあるミッションスクール「聖アグレカム学院」へ入学することとなる。つまり、社会生活で傷を負った者が世間から離れた場所で他者とのふれあいを通して回復していくというプロットだ。ここでいう他者とは同級生、上級生、先生など学園の様々な人たちを指している。本作は白羽が人間関係を広げていく姿を描いたもので、百合としては恋愛のみにとどまらず友情も含んだ物となっている。四部作という尺の長さをうまく使い、この二つの要素は片方が蔑ろにされることもなくバランスよく描かれている。結果的に人を選ばないリーチの広い内容になっていると言えるだろう。
あえてミッションスクールを舞台としているだけあって、本作は清楚で上品な雰囲気を強く打ち出している。グラフィックは淡い色調と細い線で描かれており、キャラクターは繊細で儚げな雰囲気を纏っている。私はADVは好んでプレイする方だが、ここまで甘美的なものは初めてで、慣れるまではなかなか話に集中できなかったほどだ。もしあなたが本作のパッケージイラストやCGイラストに惹かれるものがあるならば、「flowers」と相性が良い可能性が高い。グラフィックを手掛けるのはディレクターを兼任するスギナミキ氏であり、本作のコンセプトを端的に示しているからだ。グラフィック以外でもこだわりは強く、文章は地の文の割合が多めであるし、文体も硬すぎないがカジュアルとは思われないようにバランスがとられている。キャラクターはお嬢様ばかりというわけではなく皮肉屋やひょうきん物も混ざっているが、決して露悪的にならないよう一線引かれており上品さを失わない。本作は作り手の拘りが作品の隅々まで行き渡っており、方向性に共感できるならば素晴らしい体験になるだろう。
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イラストのクオリティは総じて高く印象に残るものが多い
『flowers』のゲームプレイとミステリ
ゲームプレイはADVとしてはかなりシンプルだ。プレイヤーは選択肢を選ぶことで物語を読み進めていくが、分岐は最低限に抑えられており、複雑なフラグ管理を求めるようなものではない。あくまで物語に没頭してもらうことを重視したスタイルだ。ただし特殊な点として、本作はジャンル名にミステリを含む通り、推理パートが発生することがある。
先に百合をテーマとする本作に、何故ミステリ要素が入ってくるのか説明する。それは人間ドラマを描くために「日常ミステリ」のフォーマットを使っているからだ。日常ミステリとは、犯罪事件ではなく、日常生活の中での謎を追う物語だ。このフォーマットの大きな魅力の一つとして、謎の内側に人の意外な本心を忍ばせておくことで、人間ドラマを最大限に演出することができるという点がある。「flowers」は白羽が人間関係を広げていく話であると前述したが、プレイヤーは主人公の視点で語られる物語を元に謎を解き、明かされる学友の心情と向き合い距離を縮めていく過程を共に体験することとなる。謎の内容は学園内での小さないざこざを解消するものから、学園の七不思議の正体に挑むなど幅は広い。また、その意外な真相に驚かされたり、どうしてそこまで気が回らなかったのかと後悔させられたりと、主人公の心情とシンクロして動揺してしまう場面もあった。これはゲームらしい没入度の高さをうまく使ったストーリーテリングであるし、プレイヤー自身が苦労することで白羽と周囲の人物との仲が深まっていくことに説得力を与えている。少し遠回りなコミュニケーションをしているような印象も受けるが、奥手な白羽が意を決して他人と関わろうとする感覚が出ているとも言える。
推理パートが挟み込まれるのは、一つの事件において謎を解くための手がかりが全て揃ったタイミングの一度だけになっている。このとき、事件の筋を理解できているか確認するためにいくつかの選択肢が問われるので、無事正しいものを選択できれば、また次の事件の推理パートに到達するまで一直線に読み進めることができる。いわば、ミステリ小説の「読者への挑戦状」がインタラクティブ化されたようなものだとイメージしてもらえればいい。物語の進行を頻繁に止めてプレイヤーの干渉を促すようなものではなく、あくまでもミステリ要素は演出としての利用に留めており、人間ドラマを魅力的に描くことに注力している。
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最悪謎が解けなくても、四択の選択肢を連続で数回問われるようなものなので、全パターンを試してしまえば簡単に物語の続きを見ることができる
少し脱線するが、本作をプレイしながらとあるミステリ作家の「ミステリは書きやすい」という言葉を思い出すことがあった。これは、ミステリには必ず謎と解が存在していて、このフォーマットに当て嵌めて物語を作れば、必ず解が明かされる瞬間に盛り上がりが発生するし作品全体もそこへ向けて密度を高めていくことになるから、という事らしい。本作の推理パートは一作につき四回前後用意されており、その度に小さい単位の物語に決着がつくようになっている。このため、全体を通してメリハリがあり興味が牽引されやすい構成になっている。それだけでなく、シリーズ全四部を通して解明に挑む事となる大きな謎も存在する。つまり、目の前の事件、一作通しての物語、シリーズを通しての物語という三階層の物語が同時にじりじりと進行する形になっている。これは常に物語が前進している感覚を与える効果があり、私は優れた長期連載漫画を読んでいるときのように続きが気になってプレイの止め時を失ってしまった。言わば、フロー状態にプレイヤーが導かれるように物語構造によってレールが敷かれているのだ。このシリーズを通しての謎はもはや日常ミステリの規模を超えて恋愛物から乖離しかけるところまで行くが、制作側も自覚しているのかギリギリの所で留められている。しかしこの謎の存在感故、エンタメ性が高く万人に受け入れられ易い内容にまとまっており、むしろ長所と呼んでいい部分だと言えるだろう。
学園物としての『flowers』
ここまでミステリの話ばかりになってしまったが、事件が起きるのは物語が大きく展開する瞬間のみで、主に描かれるのはミッションスクールでの生活とキャラクター達の交流だ。アングレカム学院は山奥に建てられた全寮制の学院で、テレビすらないという世間から隔絶された場所だ。それゆえ、学院の生徒の娯楽は部活や趣味、しかし一番は学友とのお喋りになる。
本作の登場人物は趣味に傾倒している者が多く、会話の内容も気付くとディープな方面へ行ってしまう。一見大人しそうにみえる主人公の白羽も、書痴を自称するほどのビブリオフィリア兼シネフィルで、その手の話を語らせるとうるさい人物でもある。会話の中では実在する小説や映画の名前を挙げてキャラクター達が作品について語り合う。扱われる作品は夏目漱石などの近代文学から、「ダークナイト」といったごく最近の映画まで年代の幅は広い。恐らくよほどサブカルチャーに精通している人でなければ全ての内容を理解することは難しいだろう。しかし、本作を楽しむ上でこれらの作品を知っている必要は実はない。重要なのは、彼女らが紅茶やコーヒーを飲みながらマニアックな歓談をしている様子を眺めていると、だんだん一種の陶酔感が生まれ、まるで実在の人物であるかのように錯覚させる効果があることだ。ADVファン向けに言うなら、サイバーパンクバーテンダーシミュ「VA-11 HALL-A」において、バーに訪れた二次元のキャラクター達の世間話や明け透けのない性に関する話を聞いている際、そのギャップと共にリアリティが立ちあがってくるあの感じに似ている。こういった物語の本筋と関わらない雑談が本作は頻繁に差し込まれる。これらは一見純粋なフレーバーに思えるが、気づかぬ内にプレイヤーを作品の世界の中に引き込む効果的な演出となっている。
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クリントイーストウッドについて熱弁する主人公
寮生活ということもあり、夜にはこっそり人を集めて怪談が始まることもある。これは事件への接続として使われている部分もあるが、それを差し置いても本作は怪談への拘りが強い。登場回数は多く、場合によっては専用の挿絵まで用意されていることすらある。関連グッズのドラマCDでもお約束のように毎回怪談専用のトラックが差し込まれている。ここまで触れていなかったが、本作はキャラクターに声優によるボイスが吹き込まれている。声優による演技力の高い、抑揚の効いた語り口には引き込まれるものがある。キャラクター達の親密な雰囲気を感じさせる印象的な場面の一つだが、本作で可能な表現から算出された効果的な演出でもある。
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アングレカム学院は行事も多い。合唱、バレエ、演劇など様々な催しが用意されており、主人公等もこれらに参加することとなる。準備にて起こる事件や人間ドラマを超えた末に辿り着く本番シーンは、各編の最も盛り上がる場面の一つとなっている。ここではテキストボックスなどの常駐していたUIが取り払われ、制約のない特殊な演出で進行する。その内容は演目により様々だが、タイポグラフィ、イラスト、声優によって吹き込まれたボーカル曲などを組み合わせたリッチなものになっている。
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学院でのイベントについて幾つかの例を挙げたが、コストがかかっている場面もそうでない場面も、ADVというジャンルの特性をよく理解した演出がされていることが分かってもらえるだろうか。本作は「YU-NO」の系譜のようなストーリー分岐を用いるストーリーテリングは退化しているが、その代わりに表層的な部分での表現は非常に饒舌だ。本作が文学や演劇への数多くのリファレンスを持っていることを踏まえると、「flowers」は伝統的なテキストアドベンチャーとしての総合芸術的な作品だと呼びたくなる。「flowers」をプレイしていて感じる���醇さ、贅沢さはこういった所に起因する物と考える。
『flowers』のテーマ
「flowers」は、学院での日常と、謎が生む非日常とを行き来する形で進行し、その過程で白羽が周囲の人たちと交友を深めていく様子が描かれる。しかし、なぜミッションスクールを舞台にする必要があったのだろうか。また、交友関係を描くにしても、なぜあえてミステリという手法を選択する必要があったのだろうか。それは、本作全体を通して語られるテーマと関係しており、このテーマこそが私が最も心を打たれた部分になる。
端的に言えば、本作のテーマは「はみ出し者たちが他者との相互理解の末に世界との向き合い方を見出す」というものだ。
アングレカム学院はミッションスクールであり、入学してくる者は良家のお嬢様が多い。しかし、その家柄故、強固な教育方針などで個人の意思を縛られて育ったことで、自尊心を欠いていたり悩みを抱える者がいる。また、世間から離れた、空気の澄んだ山奥に建てられた学院の特色から、病を持つ者が療養を目的として入学するケースもある。問題を抱えているのは主人公の白羽のみではなく、皆どこかで社会からはみ出してしまっていて、それぞれの葛藤を抱えている。
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そして、「flowers」の最も信頼できるところは、この登場人物達が抱える葛藤は徹底的に隠されていること、また、ミステリパートにおける謎解きによって直接この葛藤が明かされることはないことだ。
本作はミステリであり、物語は主人公の主観で語られる。このため他人の心の内がモノローグでプレイヤーに伝えられるようなことは基本的にない。また、ミステリパートで扱われる謎は、学院内で起こった事件で容疑者に挙げられてしまった学友の濡れ衣を晴らすなどといったもので、あくまで学友を助けることが目的であり、そこで犯人の心の内を積極的に暴くようなことは避けようとすらする。それこそ、事件の中には真実の追求を求めず、傷つく人が生まれない嘘の真実を構築しようとする話だってあるのだ。
日常ミステリは「謎の内側に人の意外な本心を忍ばせておくことで、人間ドラマを最大限に演出することができる」と前述したが、実の所これは諸刃の刃だ。ミステリはその構造上、外的な痕跡から他人の心を推測してそれが真か誤りかといったやり取りをすることになるが、そうやって他人の心の内を明け透けにさらしてしまう事は冒涜的な一面がある。こうしたところにこのジャンルへ苦手意識を持っている人は多くはないがいるのでは無いだろうか。
その点において、本作は一貫して他者の神聖な領域を侵すことを拒んでいる。私は小説やゲームにおいてもミステリは好きなジャンルでどちらかと言えばよく触れる方だが、ここまで優しい手つきのミステリは見た事がない。
こういったスタンスを取る事で、ジャンルとしての面白さが失われているのではないかと思われるかもしれない。しかし、本作はミステリのみを主軸においた物語ではなく、推理パートは全体からすればほんの一部で、プレイヤーがインタラクションできない日常パートで充分にドラマは語られている。そして、ずっと見守って来たプレイヤーの分身である主人公が、学友を気にかけて探偵役を買って出るとき、プレイヤーは謎解きを行う事でその背を押す事ができる。これまで語られてきた物語を通して彼女らに親密さを覚えていたなら、これは非常に重要なインタラクションになる。
日常生活や事件を通して彼女らの信頼関係が構築されていき、その末に、彼女らは悩みを打ち明け互いを受ける事で、葛藤を克服し社会と向きあう力を得る。これは、一般的な百合をテーマとした物語へ回帰するように、プレイヤーの手を離れ俯瞰的な形で語られる。しかし、主人公の目を通してよく知った登場人物達が立ち直る姿には強く心を打たれるものがある。
「flowers」がミッションスクールを舞台とするのは、キリスト教の禁じる同性愛を扱う作品であるためではない。本作では自身が同性愛者であること自体に強く悩んでいる者は登場しない。しかし、他人に打ち明けられない悩みや葛藤を抱えるもの達が、密かにそれを共有しあい世界と向きあう力を獲得する場所として機能している。またミステリは、他人の心を暴くためのものではなく、むしろ他人の不可侵の領域を強調することに機能しており、尊敬を持った上で近づこうとする意思を示すためのものだ。この他者との距離感を重んじた姿勢で描かれる回復の物語こそが「flowers」の唯一無二の魅力であり、「百合系ミステリィADV」というジャンルが達成した物だ。
最後に
「flowers」は一見甘美的すぎるし、百合という題材からニッチなゲームと思われるかもしれない。しかし、描かれるストーリー、テーマは誰もが共感できる普遍的なものであるし、ミステリを通してプレイヤーを物語から置き去りにはしない。多くのADVファン、キャラクターゲームファンに手を取って欲しい一作だ。
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studiorada · 2 years ago
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夏の舞踊学校2023 クラス紹介
8月11日(金)
10:30-12:00  
北村思綺『身体を見つめる脳にも気持ちいいバレエ』/2500yen
足裏ほぐしから始め、ターンアウトやお尻のエクササイズを取り入れ身体にスイッチを入れてからバーレッスンを行います。まずはバレエの立ち方から、頭と身体を使ってしっかり丁寧に向き合うようなクラスです。
13:00-14:00  
鈴木佳奈『ジャイロキネシス®︎』/2500yen
60分間にジャイロキネシス®︎のモットーとしている「心地よく・あるがまま・わくわくするような楽しい気分で味わって」を詰め込んで、どなたにも気を張らずにご参加いただける内容でお届けできたらと思います。
前半は、イスに座った状態で「流れのある動き」の反復と呼吸の波にのって踊るように。後半は、フロアワークとスタンディングで足裏から大地に根を生やすようにどっしりと。
カラダを芯からすみずみまで意識した動きと呼吸のハーモニーで関節や筋肉のバランスを整え、「もっと動きたくなるカラダ」をみつけていきましょう。 14:30-16:00
彩希子&SUMIRE『モデル&タンゴ!ウォーキング交換留学!?〜対談と実践〜』/3000yen
「ハイヒールで歩く」という共通項から生まれた、モデルとタンゴのコラボレッスンです。2人の異なるジャンルの「ウォーキング」をテーマに対談と実践を交えながら、楽しく歩きや表現を深めていきます。
ワークショップの最後は【ファッションショー形式】で、モデル体験。 ”空間と衣装と、そして床を感じて強く立つ事、〇〇を大事に歩く” あなたの歩きと表現が、新たな美しさを獲得しているはず!
講師も、どんな効果が生まれるかと楽しみにしている、挑戦的なレッスンです。「歩き」に興味があるすべての方へ。 経験、性別、年齢、体型、ヒールの高さを問わず歓迎します。 お気に入り���ハイヒール靴をご持参ください。
18:30-20:00
清水えりか・品野剛之『華やかな宮廷世界を体験!社交ダンス入門』/3000yen
10種類以上ある社交ダンスの踊りの中でも、ヨーロッパの舞踏会でよく踊られていた「ヴェニーズワルツ」をピックアップして踊ります。
男女が向かい合って手を取り、速いテンポの三拍子に合わせてくるくると回っていくため、やや難易度の高い踊りではありますが、軽快で華やかな音楽を聴けばきっと思わず踊りたくなるはず!
今回はショーや舞台でもすぐに使える簡単な振り付けをご用意しました。 社交ダンスをそれっぽく踊ってみたい!というご要望に応えられるはず。
初めての方もぜひ宮廷の世界を楽しんでみてください。
8月12日(土)
10:30-12:15  
中谷広貴 『バレティーク for チェア』/3000yen
バレエとイメージすると高い柔軟性や特別な容姿が備わっていなければ行うことが出来ないと思われがちですが、呼吸と音楽をベースに、バレエが求める身体の使い方を椅子を使うことで誰でも安全に心地よく体験することの出来るクラスです。 そしてバレエを踊る上で重要となる引き上げやターンアウト、上半身の使い方にも集中してレッスンを行なっていきますので、バレエのテクニックや表現力を高めたい方にもオススメのクラスです。
13:00-14:45
大江麻美子『プリエ・タンデュで広がるバレエ』/2500yen
基礎レベルのバレエクラスです。プリエとタンデュはいわゆるバレエの基礎と言われることが多いですが、それはなぜなのか、プリエとタンデュを組み合わせてバレエのどこまで行けるのか、を体験するクラスです。
納得しながらすすめていきます。
16:00-18:00
奧山ばらば『ゆったりから始まる。』/3000yen
力を抜いたボーっとした意識、重力に従ったカラダの準備から始めます。 そして、呼吸の抑揚を使いながら色んなイメージをカラダに出入りさせてみます。また、外側の空間にも意識を広げてみて、カラダの内と外の入れ換えや、背後をイメージした歩行などにも取り組んでみます。
「器」としてのカラダづくりを楽しんでみましょう。
18:30-20:30  
森川弘和『ようこそ森川クラスへ/試行錯誤を楽しむ、自分の練習を見つける』/3000yen
床をごろごろ動く練習、ひとりで体を探る練習、ペアになって相手に影響したりされたりする練習(コンタクトインプロヴィゼーション)の 3 本立てです。上手にできるようになったり何かを習得するということは忘れて、それぞれのペースで動きを愉しんでいきましょう。体に意識を向けたり動きを丁寧に観察することを大切にします。体や動きに興味のある方でしたらどなたでもご参加いただけます。(少々の筋トレや挑戦が含まれます。)
8月13日(日)
10:30-12:00  
赤木はるか『バレエを整える』/2500yen
バーレッスンからセンターレッスンまで行います。バーレッスンで軸、ポジション、パを整え、センターレッスンまで意識を繋げます。また、パ を整えることにより動きの組み立てかたの理解を深めます。
12:30-13:30
重田侑美『表情力を鍛えて新たな表現力を身につける!コアフェイストレーニング』 〜顔も体と同じ筋肉、意識して動かしましょう!〜 /2500yen
40代半ばすぎから、お顔の老け感や左右差が気になりだし、何とかしたくてコアフェイストレーニングを開始。
やっていくうちに、老け感の改善は元より、笑顔の印象が全く変わったのにビックリ!表情も豊かになるし、自分のお顔は自分で作れる、この楽しさをお伝えしたくて活動しています。
14:00-15:30  
石亀尚子(をどり組)『かっぽれ入門』/2500yen
江戸の伝統芸能である『かっぽれ』を体の使い方の特徴から始めます。なんば歩き、すり足、など日本の伝統芸能特有の使い方がふんだんに盛り込まれています。また男踊りですので外に向かった体の使い方をし、五穀豊穣などお祝い事である「陽」の踊りを体験していただきます。
日本特有の身体の使い方を体験したい方、ダンスはちょっと恥ずかしいけど「踊り」ならという方、脳トレをしたい方、ぜひぜひご参加ください。 老若男女入り混じり、ねじりはちまきで楽しく踊りましょう。
*お持ちの方は足袋を、お待ちでない方は靴下をご持参ください
16:00-20:00   
岩渕貞太『エイリアンのダンスフロア』/5000yen
2023 年 3 月の新作『ALIEN MIRROR BALLISM』のラストシーン「ダンスフロア」の振付を踊ります。 このシーンは「アメーバ身体」、「指の踊り」、「クロスリズム」などいくつかの要素をダンサーと共有して、それぞれの身体と思考で 20 分ほどの曲を乗りきる、踊りきるシーンです。4 時間のワークショップでシーンが出来上がっていくプロセスを体験していただけます。 岩渕の身体の思考と振付法のエッセンスがぎゅっと詰まってます。楽しいと思います!!
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