#双頭の殺人鬼
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rhetthammersmithhorror · 1 year ago
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The Manster | 1959 — 双頭の殺人鬼
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fukagawakaidan · 10 months ago
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「お化けの棲家」に登場したお化け。
1、骨女〔ほねおんな〕 鳥山石燕の「今昔画 図続百鬼』に骨だけ の女として描かれ、 【これは御伽ぼうこうに見えたる年ふる女の骸骨、牡丹の灯籠を携へ、人間の交をなせし形にして、もとは剪灯新話のうちに牡丹灯記とてあり】と記されている。石燕が描いた骨女 は、「伽婢子」「牡丹灯籠」に出てくる女つゆの亡霊、弥子(三遊亭円朝の「怪談牡丹灯 籠」ではお露にあたる)のことをいっている。これとは別物だと思うが、「東北怪談の旅」にも骨女という妖怪がある。 安永7年~8年(1778年~1779年)の青森に現れたもので、盆の晩、骸骨女がカタリカタリと音をたてて町中を歩いたという。この骨女は、生前は醜いといわれていたが、 死んでからの骸骨の容姿が優れているので、 人々に見せるために出歩くのだという。魚の骨をしゃぶることを好み、高僧に出会うと崩れ落ちてしまうという。 「鳥山石燕 画図百鬼夜行」高田衛監修・稲 田篤信・田中直日編 「東北怪談の旅」山田 野理夫
2、堀田様のお人形
以下の話が伝わっている。 「佐賀町に堀田様の下屋敷があって、うちの先祖はそこの出入りだったの。それで、先代のおばあさんが堀田様から“金太郎”の人形を拝領になって「赤ちゃん、赤ちゃん」といわれていたんだけど、この人形に魂が入っちゃって。関東大震災のとき、人形と一緒に逃げたら箱の中であちこちぶつけてこぶができたから、修復してもらうのに鼠屋っていう人形師に預けたんだけど少しすると修復されずに返ってきた。聞くと「夜になると人形が夜泣きしてまずいんです」と言われた。 (『古老が語る江東区のよもやま話』所収)
3、ハサミの付喪神(つくもがみ)
九十九神とも表記される。室町時代に描かれた「付喪神絵巻」には、「陰陽雑記云器物百年を経て化して精霊を得てよく人を訛かす、是を付喪神と号といへり」 という巻頭の文がある。 煤祓いで捨てられた器物が妖怪となり、物を粗��に扱う人間に対して仕返しをするという内容だ が、古来日本では、器物も歳月を経ると、怪しい能力を持つと考えられていた。 民俗資料にも擂り粉木(すりこぎ)や杓文字、枕や蒲団といった器物や道具が化けた話しがある。それらは付喪神とよばれていないが、基本的な考え方は「付喪神絵巻」にあるようなことと同じで あろう。 (吉川観方『絵画に見えたる妖怪』)
4、五徳猫(ごとくねこ)  五徳猫は鳥山石燕「画図百器徒然袋」に尾が2つに分かれた猫又の姿として描かれており、「七徳の舞をふたつわすれて、五徳の官者と言いしためしも あれば、この猫もいかなることをか忘れけんと、夢の中におもひぬ」とある。鳥山石燕「画図百器徒然袋」の解説によれば、その姿は室町期の伝・土佐光信画「百鬼夜行絵巻」に描かれた五徳猫を頭に 乗せた妖怪をモデルとし、内容は「徒然袋」にある「平家物語」の 作者といわれる信濃前司行長にまつわる話をもとにしているとある。行長は学識ある人物だったが、七徳の舞という、唐の太宗の武の七徳に基づく舞のうち、2つを忘れてしまったために、五徳の冠者のあだ名がつけられた。そのため、世に嫌気がさし、隠れて生活するようになったという。五徳猫はこのエピソードと、囲炉裏にある五徳(薬缶などを載せる台)を引っ掛けて創作された 妖怪なのであろう。ちなみに土佐光信画「百鬼夜行絵巻」に描かれている妖怪は、手には火吹き 竹を持っているが、猫の妖怪ではなさそうである。 ( 高田衛監修/稲田篤信・田中直日編『鳥山石燕画図百鬼夜行』)→鳥山石燕『百器徒然袋』より 「五徳猫」
5、のっぺらぼー 設置予定場所:梅の井 柳下 永代の辺りで人魂を見たという古老の話しです。その他にも、背中からおんぶされて、みたら三つ目 小僧だったり、渋沢倉庫の横の河岸の辺りでのっぺらぼーを見たという話しが残っています。 (『古老が語る江東区のよもやま話』所収) のっぺらぼーは、顔になにもない卵のような顔の妖怪。特に小泉八雲『怪談』にある、ムジナの話が良く知られている。ある男が東京赤坂の紀国坂で目鼻口のない女に出会い、驚き逃げて蕎麦 屋台の主人に話すと、その顔も同じだったという話。その顔も同じだったという話。
6、アマビエアマビエ 弘化3年(1846年) 4月中旬と記 された瓦版に書かれているもの。 肥後国(熊本県)の海中に毎夜光るものが あるので、ある役人が行ってみたところ、ア マビエと名乗る化け物が現れて、「当年より はやりやまいはや 6ヵ月は豊作となるが、もし流行病が流行ったら人々に私の写しを見せるように」といって、再び海中に没したという。この瓦版には、髪の毛が長く、くちばしを持っ��人魚のようなアマビエの姿が描かれ、肥後の役人が写したとある。 湯本豪一の「明治妖怪新聞」によれば、アマピエはアマピコのことではないかという。 アマピコは瓦版や絵入り新聞に見える妖怪で、 あま彦、天彦、天日子などと書かれる。件やクダ部、神社姫といった、病気や豊凶の予言をし、その絵姿を持っていれば難から逃れられるという妖怪とほぼ同じものといえる。 アマビコの記事を別の瓦版に写す際、間違 えてアマビエと記してしまったのだというのが湯本説である。 『明治妖怪新聞」湯本豪一「『妖怪展 現代に 蘇る百鬼夜行』川崎市市民ミュージアム編
7、かさばけ(傘お化け) 設置予定場所:多田屋の入口作品です。 一つ目あるいは、二つ目がついた傘から2本の腕が伸び、一本足でピョンピョン跳ねまわる傘の化け物とされる。よく知られた妖怪のわりには戯画などに見えるくらいで、実際に現れたなどの���録はないようである。(阿部主計『妖怪学入門』)歌川芳員「百種怪談妖物双六」に描 かれている傘の妖怪「一本足」
8、猫股(ねこまた)  猫股は化け猫で、尻尾が二股になるまで、齢を経た猫 で、さまざまな怪しいふるまいをすると恐れられた。人をあざむき、人を食らうともいわれる。飼い猫が年をとり、猫股になるため、猫を長く飼うもので はないとか、齢を経た飼い猫は家を離れて山に入り、猫股 になるなどと、各地に俗信がある。 このような猫の持つ妖力から、歌舞伎ではお騒動と化け猫をからめて「猫騒動もの」のジャンルがあり、
「岡崎の猫」「鍋島の猫」「有馬の猫」が三代化け猫とされる。
9、毛羽毛現(けうけげん) 設置予定場所:相模屋の庭 鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」に毛むくじゃらの妖怪として描かれた もので、 「毛羽毛現は惣身に毛生ひたる事毛女のごとくなればかくいふ か。或いは希有希現とかきて、ある事まれに、見る事まれなれば なりとぞ」とある。毛女とは中国の仙女のことで、華陰の山中(中国陝西省陰県の西 獄華山)に住み、自ら語るところによると、もともとは秦が亡んだため 山に逃げ込んだ。そのとき、谷春という道士に出会い、松葉を食すことを教わって、遂に寒さも飢えも感じなくなり、身は空を飛ぶほど軽くなった。すでに170余年経つなどと「列仙伝」にある。この毛羽毛現は家の周辺でじめじめした場所に現れる妖怪とされるが、実際は石燕の創作妖 怪のようである。 (高田衛監修/稲田篤信・田中直日編『鳥山石燕 画図百鬼夜行』→鳥山石燕「今昔百鬼 拾遺」より「毛羽毛現」
10、河童(かっぱ) 設置予定場所:猪牙船 ◇ 河童(『耳袋』) 江戸時代、仙台藩の蔵屋敷に近い仙台堀には河童が出たと言われています。これは、子どもたちが、 なんの前触れもなく掘割におちてしまう事が続き探索したところ、泥の中から河童が出てきたというも のです。その河童は、仙台藩の人により塩漬けにして屋敷に保管したそうです。 ◇ 河童、深川で捕獲される「河童・川太郎図」/国立歴史民俗博物館蔵 深川木場で捕獲された河童。河童は川や沼を住処とする妖怪で、人を水中に引き込む等の悪事を働く 反面、水の恵みをもたらす霊力の持ち主として畏怖されていた ◇ 河童の伝説(『江戸深川情緒の研究』) 安永年間(1772~1781) 深川入船町であった話しです。ある男が水浴びをしていると、河童がその男 を捕えようとしました。しかし、男はとても強力だったので逆に河童を捕えて陸に引き上げ三十三間堂の前で殴り殺そうとしたところ、通りかかった人々が河童を助けました。それ以来、深川では河童が人 間を捕らなくなったといいます。→妖怪画で知られる鳥山石燕による河童
11、白容商〔しろうねり〕
鳥山石燕「画図百器 徒然袋」に描かれ、【白うるりは徒然のならいなるよし。この白うねりはふるき布巾のばけたるものなれども、外にならいもやはべると、夢のうちにおもひぬ】 と解説されている。白うるりとは、吉田兼好の『徒然草」第六十段に登場する、 芋頭(いもがしら)が異常に好きな坊主のあだ名である。  この白うるりという名前に倣って、布雑巾 の化けたものを白容裔(しろうねり)と名づけたといっているので、つまりは石燕の創作妖怪であろう。古い雑巾などが化けて人を襲う、などの説 明がされることがあるが、これは山田野理夫 の『東北怪談の旅』にある古雑巾の妖怪を白 容裔の話として使ったにすぎない。 『鳥山石燕画図百鬼夜行』高田衛監修・稲 田篤信・田中直日編
12、轆轤首〔ろくろくび〕
抜け首、飛頭蛮とも つな いう。身体から首が完全に分離して活動する ものと、細紐のような首で身体と頭が繋がっているものの二形態があるようである。 日本の文献には江戸時代から多くみえはじ め、『古今百物語評判』『太平百物語』『新説 百物語」などの怪談集や、『甲子夜話』『耳 囊」「��窓瑣談」「蕉斎筆記』『閑田耕筆』と いった随筆の他、石燕の『画図百鬼夜行」に 代表される妖怪画にも多く描かれた。 一般的な轆轤首の話としては、夜中に首が 抜け出たところを誰かに目撃されたとする内 容がほとんどで、下働きの女や遊女、女房、 娘などと女性である場合が多い。 男の轆轤首は「蕉斎筆記』にみえる。 ある夜、増上寺の和尚の胸の辺りに人の 首が来たので、そのまま取って投げつけると、 どこかへいってしまった。翌朝、気分が悪いと訴えて寝ていた下総出 身の下働きの男が、昼過ぎに起き出して、和 尚に暇を乞うた。わけ その理由を問えば、「昨夜お部屋に首が参りませんでしたか」と妙なことを訊く。確か に来たと答えると、「私には抜け首の病があります。昨日、手水鉢に水を入れるのが遅い とお叱りを受けましたが、そんなにお叱りに なることもないのにと思っていると、 夜中に首が抜けてしまったのです」 といって、これ以上は奉公に差支えがあるからと里に帰って しまった。 下総国にはこの病が多いそうだと、 「蕉斎筆記』は記している。  轆轤首を飛頭蛮と表記する文献があるが、 これはもともと中国由来のものである。「和漢三才図会』では、『三才図会」「南方異 物誌」「太平広記」「搜神記』といった中国の 書籍を引いて、飛頭蛮が大闍波国(ジャワ) や嶺南(広東、広西、ベトナム)、竜城(熱 洞省朝陽県の西南の地)の西南に出没したことを述べている。昼間は人間と変わらないが、夜になると首 が分離し、耳を翼にして飛び回る。虫、蟹、 ミミズなどを捕食して、朝になると元通りの 身体になる。この種族は首の周囲に赤い糸のような傷跡がある、などの特徴を記している。中国南部や東南アジアには、古くから首だけの妖怪が伝わっており、マレーシアのポン ティアナやペナンガルなどは、現在でもその 存在が信じられている。 日本の轆轤首は、こうした中国、東南アジ アの妖怪がその原型になっているようである。 また、離魂病とでもいうのだろうか、睡眠中に魂が抜け出てしまう怪異譚がある。例えば「曽呂利物語」に「女の妄念迷い歩 <事」という話がある。ある女の魂が睡眠中に身体から抜け出て、 野外で鶏になったり女の首になったりしているところを旅人に目撃される。旅人は刀を抜いてその首を追いかけていく と、首はある家に入っていく。すると、その家から女房らしき声が聞こえ、 「ああ恐ろしい夢を見た。刀を抜いた男が追 いかけてきて、家まで逃げてきたところで目 が醒めた」などといっていたという話である。これの類話は現代の民俗資料にも見え、抜け出た魂は火の玉や首となって目撃されている。先に紹介した「蕉斎筆記』の男の轆轤首 も、これと同じように遊離する魂ということ で説明ができるだろう。 轆轤首という妖怪は、中国や東南アジア由 来の首の妖怪や、離魂病の怪異譚、見世物に 出た作りものの轆轤首などが影響しあって、 日本独自の妖怪となっていったようである。 【和漢三才図会』寺島良安編・島田勇雄・竹 島淳夫・樋口元巳訳注 『江戸怪談集(中)』 高田衛編/校注『妖異博物館』柴田宵曲 『随筆辞典奇談異聞編」柴田宵曲編 『日本 怪談集 妖怪篇』今野円輔編著 『大語園』巌谷小波編
13、加牟波理入道〔がんばりにゅうどう〕
雁婆梨入道、眼張入道とも書く。便所の妖怪。 鳥山石燕の「画図百鬼夜行」には、便所の台があるよう 脇で口から鳥を吐く入道姿の妖怪として描かれており、【大晦日の夜、厠にゆきて「がんばり入道郭公」と唱ふれば、妖怪を見さるよし、世俗のしる所也。もろこしにては厠 神名を郭登といへり。これ遊天飛騎大殺将軍 とて、人に禍福をあたふと云。郭登郭公同日 は龕のの談なるべし】と解説されている。 松浦静山の『甲子夜話」では雁婆梨入道という字を当て、厠でこの名を唱えると下から入道の頭が現れ、 その頭を取って左の袖に入れてまたとりだすと 頭は小判に変化するなどの記述がある。 「がんばり入道ホトトギス」と唱えると怪異 にあわないというのは、江戸時代にいわれた 俗信だが、この呪文はよい効果を生む(前述 ことわざわざわい ●小判を得る話を含め)場合と、禍をよぶ 場合があるようで、「諺苑」には、大晦日に この話を思い出せば不祥なりと書かれている。 また、石燕は郭公と書いてホトトギスと読ませているが、これは江戸時代では郭公とホト トギスが混同されていたことによる。 ホトトギスと便所との関係は中国由来のようで、「荊楚歲時記』にその記述が見える。 ホトトギスの初鳴きを一番最初に聞いたもの は別離することになるとか、その声を真似すると吐血するなどといったことが記されており、厠に入ってこの声を聞くと、不祥事が起 こるとある。これを避けるには、犬の声を出 して答えればよいとあるが、なぜかこの部分 だけは日本では広まらなかったようである。 『鳥山石燕画図百鬼夜行』高田衛監修・稲 田篤信・田中直日編 『江戸文学俗信辞典』 石川一郎編『史実と伝説の間」李家正文
14、三つ目小僧
顔に三つの目を持つ童子姿の妖怪。 長野県東筑摩郡教育委員会による調査資料に名は見られるが、資料中には名前があるのみ で解説は無く、どのような妖怪かは詳細に語られていない。 東京の下谷にあった高厳寺という寺では、タヌキが三つ目小僧に化けて現れたという。このタヌ キは本来、百年以上前の修行熱心な和尚が境内に住まわせて寵愛していたために寺に住みついたものだが、それ以来、寺を汚したり荒らしたりする者に対しては妖怪となって現れるようになり、体の大きさを変えたり提灯を明滅させて人を脅したり、人を溝に放り込んだりしたので、人はこれ を高厳寺小僧と呼んで恐れたという。困った寺は、このタヌキを小僧稲荷として境内に祀った。この寺は現存せず、小僧稲荷は巣鴨町に移転している。 また、本所七不思議の一つ・置行堀の近くに住んでいたタヌキが三つ目小僧に化けて人を脅したという言い伝えもある。日野巌・日野綏彦 著「日本妖怪変化語彙」、村上健司校訂 編『動物妖怪譚』 下、中央公論新社〈中公文庫〉、2006年、301頁。 佐藤隆三『江戸伝説』坂本書店、1926年、79-81頁。 『江戸伝説』、147-148頁。
15、双頭の蛇 設置予定場所:水茶屋 「兎園小説」には、「両頭蛇」として以下の内容が著してある。 「文政7年(1824)11月24日、本所竪川通りの町方掛り浚場所で、卯之助という男性 が両頭の蛇を捕まえた。長さは3尺あったという。」
文政7年(1824)11月24日、一の橋より二十町程東よりの川(竪川、現墨田区)で、三尺程の 「両頭之蛇」がかかったと言う話です。詳細な図解が示されています。 (曲亭馬琴「兎園小説」所収『兎園小説』(屋代弘賢編『弘賢随筆』所収) 滝沢馬琴他編 文政8年(1825) 国立公文書館蔵
16、深川心行寺の泣き茶釜
文福茶釜は「狸」が茶釜に化けて、和尚に恩返しをする昔話でよく知られています。群馬県館林の茂 林寺の話が有名ですが、深川2丁目の心行寺にも文福茶釜が存在したといいます。『新撰東京名所図会』 の心行寺の記述には「什宝には、狩野春湖筆涅槃像一幅 ―及び文福茶釜(泣茶釜と称す)とあり」 とあります。また、小説家の泉鏡花『深川浅景』の中で、この茶釜��紹介しています。残念ながら、関 東大震災(1923年)で泣茶釜は、他の什物とともに焼失してしまい、文福茶釜(泣き茶釜)という狸が 化けたという同名が残るのみです。鳥山石燕「今昔百鬼拾遺」には、館林の茂森寺(もりんじ)に伝わる茶釜の話があります。いくら湯を 汲んでも尽きず、福を分け与える釜といわれています。 【主な参考資料】村上健司 編著/水木しげる 画『日本妖怪大辞典』(角川出版)
17、家鳴(やなり) 設置予定場所:大吉、松次郎の家の下)  家鳴りは鳥山石燕の「画図百鬼夜行」に描かれたものだが、(石��は鳴屋と表記)、とくに解説はつけられて いない。石燕はかなりの数の妖怪を創作しているが、初期の 「画図百鬼夜行」では、過去の怪談本や民間でいう妖怪などを選んで描いており、家鳴りも巷(ちまた)に知られた妖怪だったようである。 昔は何でもないのに突然家が軋むことがあると、家鳴りのような妖怪のしわざだと考えたようである。小泉八雲は「化け物の歌」の中で、「ヤナリといふ語の・・・それは地震中、家屋の震動 する音を意味するとだけ我々に語って・・・その薄気 味悪い意義を近時の字書は無視して居る。しかし此語 はもと化け物が動かす家の震動の音を意味して居た もので、眼には見えぬ、その震動者も亦(また) ヤナ リと呼んで居たのである。判然たる原因無くして或る 家が夜中震ひ軋り唸ると、超自然な悪心が外から揺り動かすのだと想像してゐたものである」と延べ、「狂歌百物語」に記載された「床の間に活けし立ち木も倒れけりやなりに山の動く掛軸」という歌を紹介している。 (高田衛監修/稲田篤信・田中直日編『鳥山石燕画図百鬼夜行』、『小泉八雲全集』第7巻)
18、しょうけら 設置予定場所:おしづの家の屋根 鳥山石燕「画図百鬼夜行」に、天井の明かり取り窓を覗く妖怪として描かれているもの。石燕による解説はないが、 ショウケラは庚申(こうしん) 信仰に関係したものといわれる。 庚申信仰は道教の三尸(さんし)説がもとにあるといわ れ、60日ごとに巡ってくる庚申の夜に、寝ている人間の身 体から三尸虫(頭と胸、臍の下にいるとされる)が抜け出し、天に昇って天帝にその人の罪科を告げる。この報告により天帝は人の命を奪うと信じられ、対策とし て、庚申の日は眠らずに夜を明かし、三尸虫を体外に出さ ないようにした。また、これによる害を防ぐために「ショウケラはわたとてまたか我宿へねぬぞねたかぞねたかぞ ねぬば」との呪文も伝わっている。 石燕の描いたショウケラは、この庚申の日に現れる鬼、ということがいえるようである。
19、蔵の大足
御手洗主計という旗本の屋敷に現れた、長さ3尺程(約9m)の大足。(「やまと新聞」明治20年4月29日より)
20、お岩ちょうちん
四世鶴屋南北の代表作である「東海道四谷怪談」のお岩 を、葛飾北斎は「百物語シリーズ」の中で破れ提灯にお岩が 宿る斬新な構図で描いている。北斎は同シリーズで、当時の 怪談話のもう一人のヒロインである「番町皿屋敷のお菊」も描 く。「東海道四谷怪談」は、四世南北が暮らし、没した深川を舞台にした生世話物(きぜわもの)の最高傑作。文政8年(1825) 7月中村座初演。深川に住んだ七代目市川團十郎が民谷伊 右衛門を、三代目尾上菊五郎がお岩を演じた。そのストーリーは当時評判だった実話を南北が取材して描 いている。男女が戸板にくくられて神田川に流された話、また 砂村隠亡堀に流れついた心中物の話など。「砂村隠亡堀の場」、「深川三角屋敷の場」など、「四谷怪 談」の中で深川は重要な舞台として登場する。
21、管狐(くだぎつね)  長野県を中心にした中部地方に多く分布し、東海、関東南部、東北の一部でいう憑き物。関東 南部、つまり千葉県や神奈川県以外の土地は、オサキ狐の勢力になるようである。管狐は鼬(いたち)と鼠(ねずみ)の中間くらいの小動物で、名前の通り、竹筒に入ってしまうほどの大きさだという。あるいはマッチ箱に入るほどの大きさで、75匹に増える動物などとも伝わる個人に憑くこともあるが、それよりも家に憑くものとしての伝承が多い。管狐が憑いた家は管屋(くだや)とか管使いとかいわれ、多くの場合は「家に憑いた」ではなく「家で飼っている」という表現をしている。管狐を飼うと金持ちになるといった伝承はほとんどの土地でいわれることで、これは管 狐を使って他家から金や品物を集めているからだなどという。また、一旦は裕福になるが、管狐は 大食漢で、しかも75匹にも増えるのでやがては食いつぶされるといわれている。 同じ狐の憑き物でも、オサキなどは、家の主人が意図しなくても、狐が勝手に行動して金品を集 めたり、他人を病気にするといった特徴があるが、管狐の場合は使う者の意図によって行動すると考えられているようである。もともと管狐は山伏が使う動物とされ、修行を終えた山伏が、金峰山 (きんぷさん)や大峰(おおみね)といった、山伏に官位を出す山から授かるものだという。山伏は それを竹筒の中で飼育し、管狐の能力を使うことで不思議な術を行った。 管狐は食事を与えると、人の心の中や考えていることを悟って飼い主に知らせ、また、飼い主の 命令で人に取り憑き、病気にしたりするのである。このような山伏は狐使いと呼ばれ、自在に狐を 使役すると思われていた。��かし、管狐の扱いは難しく、いったん竹筒から抜け出た狐を再び元に 戻すのさえ容易ではないという。狐使いが死んで、飼い主不在となった管狐は、やがて関東の狐の親分のお膝元である王子村(東京都北区)に棲むといわれた。主をなくした管狐は、命令する者がいないので、人に憑くことはないという。 (石塚尊俊『日本の憑きもの』、桜井徳太郎編『民間信仰辞典』、金子準二編著『日本狐憑史資料 集成』)
22、かいなで 設置予定場所: 長屋の厠 京都府でいう妖怪。カイナゼともいう。節分の夜に便所へ行くとカイナデに撫でられるといい、これを避けるには、「赤い紙やろうか、白い紙やろうか」という呪文を唱えればよいという。 昭和17年(1942年)頃の大阪市立木川小学校では、女子便所に入ると、どこからともなく「赤い 紙やろか、白い紙やろか」と声が聞こえてくる。返事をしなければ何事もないが、返事をすると、尻を舐められたり撫でられたりするという怪談があったという。いわゆる学校の怪談というものだが、 類話は各地に見られる。カイナデのような家庭内でいわれた怪異が、学校という公共の場に持ち込まれたものと思われる。普通は夜の学校の便所を使うことはないだろうから、節分の夜という条件が消失してしまったのだろう。 しかし、この節分の夜ということは、実に重要なキーワードなのである。節分の夜とは、古くは年越しの意味があり、年越しに便所神を祭るという風習は各地に見ることができる。その起源は中国に求められるようで、中国には、紫姑神(しこじん)という便所神の由来を説く次のような伝説がある。 寿陽県の李景という県知事が、何媚(かび) (何麗卿(かれいきょう)とも)という女性を迎えたが、 本妻がそれを妬み、旧暦正月 15 日に便所で何媚を殺害した。やがて便所で怪異が起こるようになり、それをきっかけに本妻の犯行が明るみに出た。後に、何媚を哀れんだ人々は、正月に何媚を便所の神として祭祀するようになったという(この紫姑神は日本の便所神だけではなく、花子さんや紫婆(むらさきばばあ)などの学校の怪談に登場する妖怪にも影響を与えている。) 紫姑神だけを日本の便所神のルーツとするのは安易だが、影響を受けていることは確かであろう。このような便所神祭祀の意味が忘れられ、その記憶の断片化が進むと、カイナデのような妖怪が生まれてくるようである。 新潟県柏崎では、大晦日に便所神の祭りを行うが、便所に上げた灯明がともっている間は決して便所に入ってはいけないといわれる。このケースは便所神に対する信仰がまだ生きているが、便所神の存在が忘れられた例が山田野理夫『怪談の世界』に見える。同書では、便所の中で「神くれ神くれ」と女の声がしたときは、理由は分からなくとも「正月までまだ遠い」と答えればよいという。便所神は正月に祀るものという断片的記憶が、妖怪として伝えられたものといえる。また、「赤い紙やろうか、白い紙やろうか」という呪文も、便所神の祭りの際に行われた行為の名残を伝えて いる。便所神の祭りで紙製の人形を供える土地は多く、茨城県真壁郡では青と赤、あるいは白と赤の 男女の紙人形を便所に供えるという。つまり、カイナデの怪異に遭遇しないために「赤い紙やろう か、白い紙やろうか」と唱えるのは、この供え物を意味していると思われるのである。本来は神様に供えるという行為なのに、「赤とか白の紙をやるから、怪しいふるまいをするなよ」というように変化してしまったのではないだろうか。さらに、学校の怪談で語られる便所の怪異では、妖怪化した便所神のほうから、「赤い紙やろうか、白い紙やろうか」とか「青い紙やろうか、赤い紙やろうか」というようになり、より妖怪化が進ん でいったようである。こうしてみると、近年の小学生は古い信仰の断片を口コミで伝え残しているともいえる。 島根県出雲の佐太神社や出雲大社では、出雲に集まった神々を送り出す神事をカラサデという が、氏子がこの日の夜に便所に入ると、カラサデ婆あるいはカラサデ爺に尻を撫でられるという伝 承がある。このカラサデ婆というものがどのようなものか詳細は不明だが、カイナデと何か関係があるのかもしれない。 (民俗学研究所編『綜合日本民俗語彙』、大塚民俗学会編『日本民俗学事典』、『民間伝承』通巻 173号(川端豊彦「厠神とタカガミと」)ほか)
23、木まくら 展示予定場所:政助の布団の上 江東区富岡にあった三十三間堂の側の家に住んだ医師が病気になり、元凶を探した所 黒く汚れた木枕が出た。その枕を焼くと、死体を焼く匂いがして、人を焼くのと同じ時間がかかったという。 (『古老が語る江東区のよもやま話』所収)
24、油赤子〔あぶらあかご〕鳥山石燕の『今昔 画図続百鬼』に描かれた妖怪。【近江国大津 の八町に、玉のごとくの火飛行する事あり。土人云「むかし志賀の里に油うるものあり。 夜毎に大津辻の地蔵の油をぬすみけるが、その者死て魂魄炎となりて、今に迷いの火となれる」とぞ。しからば油をなむる赤子は此ものの再生せしにや】と記されている。 石燕が引いている【むかし志賀(滋賀) の】の部分は、「諸国里人談』や『本朝故事 因縁集」にある油盗みの火のことである。油盗みの火とは、昔、夜毎に大津辻の地蔵 の油を盗んで売っていた油売りがいたが、死 後は火の玉となり、近江大津(滋賀県大津 市)の八町を縦横に飛行してまわったという もの。石燕はこの怪火をヒントに、油を嘗める赤ん坊を創作したようである。 『鳥山石燕画図百鬼夜行』高田衛監修・稲 田篤信・田中直日編 『一冊で日本怪異文学 100冊を読む」檜谷昭彦監修『日本随筆大成編集部編
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picnicism · 1 year ago
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おつむの良い子は長居しない 第12回/高嶋政伸 12 インティマシーコーディネーター  昨年はハードな役が続きました。何人もの愛人を囲い、人を殺めることもためらわない詐欺師。歯向かう者は消し、臓器ブローカーに死体を売り払う男。ショットガンで人を撃ち、手をナタで切り落とすサイコパスの連続殺人鬼。  中でも一番ハードだったのは、自分の娘に幼い頃から性的暴行を加え続けている父親の役。そう、NHKドラマ「大奥」で演じた徳川家慶です。放送後、大きな反響をいただきました。  この作品は、まず台本を読んだ段階でストーリーがとても独創的なのが気に入りました。が、僕にとっても娘役の俳優さんにとっても心身ともにハードな現場になるのは明らかでしたので、お受けするにあたって僕は必ず「インティマシーコーディネーター」さんを付けてください、とお願いしました。制作サイドも最初からそのつもりでいらしたというので、それならばと、この難しい役に臨むことにしたのです。  インティマシーコーディネーターとは、2022年のユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされた、映画やドラマの撮影現場で性的なシーンやヌードシーン(インティマシーシーン)を演じる俳優の身体や精神の尊厳を守りつつ、監督の求める描写も尊重し、現場を円滑に進めるサポートをする方たちのこと。例えば、台本に裸になるシーンが書かれていたとしたら、撮影前に監督と俳優の間に入って、どこまで肌を露出できるか俳優に聞き、それを監督に伝え、互いに納得できる着地点へ導く。あるいはベッドシーンなどの絡みをどう撮っていくか、撮っていけるのかを俳優や演出家と細かく打ち合わせ、安全安心に撮影を進められるように考えて下さいます。  アメリカでは、インティマシーシーンへの配慮はかなり前から行われています。1980年製作のホラー映画の傑作「シャイニング」では、主演のジャック・ニコルソンが自分の子どもに斧を振りかざして殺害しようとするシーンがありますが、ニコルソンと子役が同じ画面で絡む以外のカットは全て別���りし、楽屋も遠く離して顔を合わせないようにし、かつ、出来上がった作品は、その子役が20歳になるまで見せてはいけない、という徹底した措置が取られていました。子役俳優が成人する前に見ると、トラウマになる可能性があると制作サイドが判断した訳です。  今回の僕の役では、自分の娘に暴行する場面が2回あり、中でも13歳時の娘に暴行するシーンはアメリカでは絶対にありえない前代未聞の場面。アメリカで学んでいらしたインティマシーコーディネーターの浅田智穂さんも初めて経験するという難しい撮影です。しかもその暴行が行われるのは、物質的にも精神的にも「密室」。なんらかの「叫び」がある時には必ず閉ざされた「密室」がある。その「密室」は人間の心の中にもあります。僕の役は、「密室」を作ることができる権力を持っており、その密室から漏れてくる「叫び」は、公然の秘密になっています。この設定を、どうすれば生身の人間である役者で撮れるのか。  こうした撮影を行うのに大事なことは、僕の立場から申しますと、第一に俳優同士の信頼関係の構築です。ここで皆さん、ご自分を10代の女優さんであると想像してみてください。襲うのは56歳のおっさん俳優、政伸。テレビなどで見たことはあるけれど、実際はどんな人なのか分からない。芝居に入ると役にのめり込んで無茶苦茶をする役者バカ……どころか、ガチのバカ役者かもしれない。心の中に不安と恐怖が広がるはずです。  もう一つ大事なことは、その作品の監督に最大限の敬意を持って接すること。監督になった方は、そこに到達するまでに厳しい下積みを経ています。台本が俳優に渡される遥か前から作品の企画にたずさわり、台本をペラ(本になる前の紙に書かれたストーリー)から構築し、登場人物を深く掘り下げ、美術、小道具なども何が適しているかまで考え抜く。そこまで努力して、やっと撮影の日を迎える監督に対しては、しっかりリスペクトをして差し上げたい。これは基本です。  では、この「大奥」ではどのように撮影を進めたか。まず浅田さんが監督から、台本に書かれたシーンをどのように撮りたいかを細かく聞き取ります。父役の僕が娘の部屋に静かに入ってくるワンカット目から、助けを求めて逃げようとする娘を父親が捕まえ、手で口を塞ぐ。そのまま娘を押し倒して馬乗りになり、娘の目を見つめる。父と娘の顔の寄りのカットバック(2人の顔を交互に入れ込む描写法)。そして、ゆっくりと少女に覆い被さる父のワンショット。娘の瞳のアップ、その黒目に映る父の顔。娘と覆い被さった父を入れ込んで暴行が行われる「密室」を客観的に撮る引きの画え。以上が監督の希望するカットです。 「監督が��撮りになりたいカット割りについて、高嶋さんから監督にお伝えしたいことがあれば、おっしゃってください」と、浅田さんが聞いてくださいました。そこで僕は、撮影は流れで撮るのではなく、ワンカットずつ撮って欲しいと伝えました。流れで撮ると、本番スタートを聞いてアドレナリンが上がった役者は、想定以上に力が入ってしまったり、段取りより動きが速くなったりして、双方ともに思わぬケガやショックを負うおそれがあるからです。僕も以前の作品で犯人を激しく取り調べるシーンで、勢いあまって窓ガラスを粉々に割ってしまったことがあり、そんな経験もお話ししました。  そのうえで、抱きつくカットはどの方向から撮るか、どうすればケガをさせることなく暴行しているように抱きしめられるかなどを役者とスタッフみんなで話し合います。さらに、僕が1人で映るカットは、できるなら相手を同席させず僕だけで撮ってほしい、とお願いしました。僕は(というか役者は)、相手が目の前にいなくても実際にいるように演じられます。撮影現場ではカメラのポジションによっては2人で会話するシーンでも、目線の先に相手役がいない時があります。そんな時は、助監督さんが掲げてくれる拳を相手役に見立てて演技します。「ゴジラ」の撮影では、丸い板を先端に付けた長い棒を助監督さんが空中高く掲げ、その丸い板をゴジラだと思って驚いたり、セリフを言ったりしました。そういった演技を数え切れないほど演やってきたので、目の前に俳優さんがおられなくても演じることはいくらでもできます。ワンショットのカットは、ぜひ1人でやらせてくださいと、お願いしました。  僕はこんな感じで希望を述べましたが、全ての俳優は考え方や性格、演技の流儀が違います。僕がワンショットで別個に撮って欲しいという意見を持っていても、ご一緒する娘役の俳優さんの意見もしっかり聞いて、皆で擦り合わせていくやり方がベターだと思います。年齢に関係なく、完璧に「演技」を武器に世間と戦っておられる俳優さんはたくさんおられますので。  さて、本番2日前にもう一度、浅田さんとの打ち合わせがあります。そこで「本番当日は、暴行、乱暴、レイプなどの言葉は、たとえ娘役の俳優さんがそこにいらっしゃらなくても、現場では一切、口にしないようにしましょう」と言われました。これは本当に大切なことです。娘役の方に撮影前の現場で、大人たちの「これから暴行するシーンだな。さあ、どうなるかねえ」なんて声が聞こえてきたら、やはり嫌な、不安な気分になるはず。これらの危険ワードは、当日朝からマネージャーと共に一切使わないよう徹底します。  さらに僕は撮影前日に独自の準備を始めます。逃げようとする娘の口を手で押さえる場面があるので、手を清潔に保つため、除菌剤入りのウェットティッシュを買いに行きました。常に手を清潔にしていることを相手役の俳優さんにアピー��して安心してもらうには箱入りのものがベスト。  ところがドラッグストアのウェットティッシュの棚にいきますと様々な種類の商品が並んでおり、すっかり悩んでしまいました。近くにいた店員さんを呼び止め、とっさに「明日、ちょっと人の口を手で塞ぐんですが、その方に失礼のないように、できれば、清潔な香りがするような除菌剤入りウェットティッシュが欲しいのです」と言ってしまいました。すると店員さんは「そうですか、手で口を塞ぐなら、アルコール入りのものだと距離が近すぎて目が痛くなります。アルコールの入っていない、カテキン系の除菌剤がいいですね」と、一番左の緑色の箱をおすすめしてくださいました。こうして緑茶効果のカテキン除菌ウェットティッシュというベストなものを入手。こんな非日常的なオーダーにも戸惑うことなく的確な商品を紹介してくださった店員さん、まさにプロです。  箱型ウェットティッシュを早速写真に撮り、現場担当の新人マネージャー武富くんに送りました。すぐに「大事に現場で携帯致します」と返事がきました。この阿吽の呼吸は、現場でとても重要です。武富くんは、口臭予防のキシリトールガムと噛んだ後にゴミを入れる専用のコンビニ袋を常に腰にぶら下げておきますと言ってくれました。  必要なものはすべて揃い、その日は帰って台本を読み込み、このひとでなしの父親の心に寄り添って自分の中に役を落とし込んでいきます。きつい作業ですが、ここは絶対に妥協してはいけない。役者として、その人物の最良の理解者であり、友人であり、最終的にはその人物そのものにならなければいけない。「好感度」の「こ」の字も頭に浮かべません。この鬼畜を完全に演じ切ることが、娘役を演じる俳優さんへの最��限の礼儀であり、少しでも世間に理解を求めるエクスキューズを含めたら、このシーンは台無しになってしまうのです。安心安全を担保しながら、徹底的に「悪」に徹します。  翌朝は7時半に現場に入り、約1時間半かけて準備します。ここまでは偶然なのか、娘役の俳優さんと顔を合わせることはありませんでした。そして、「高嶋さん、お願いします」の声でセットへ向かいました。ここで初めて娘役の俳優さんがセットに入っていかれる後ろ姿が見えました。  この瞬間は、今でも、忘れられません。  そこにいたのは、綺麗なおべべを着て、可愛い簪をいくつも差した、まだあどけない「少女」でした。リアルな現実の手触りを感じて、僕の時間は止まりました。そして、こう感じてしまいました。正直に書きます。  僕に娘がいたら、とても演じられない。  その言葉が浮かぶと同時に、彼女にこれから起こることが頭を駆け巡り、不意に涙が出そうになりました。現実世界でこのようなことは決してあってはならないと、胸が苦しくなり、そしてこの時に改めて、インティマシーコーディネーターという存在の意義、大切さを、身をもって理解しました。作品に関わる全ての人間の心に寄り添��、人間の尊厳を守りながら、この異常なシチュエーションをベストに撮影するためには絶対になくてはならない存在です。  その日の僕は朝5時に起きて、横で静かに寝ている我が子の寝顔を見て幸せを感じました。そして撮影が終わって我が家に戻れば、家族の賑やかな暮らしが、日常が、僕を待っていてくれる。しかし、僕は今から、自分の職業に誇りを持ちながら、鬼畜になる。自分の娘を、何の疑問も持たず、これが父親としての一番の愛情だと思い込んで「密室」に閉じ込め、性的暴行を振るう。これまで世界各地で起こっているニュースとして見てきた悲劇の加害者に、今日、僕はなる。家に戻っても息子たちに、今日、お父さんはこんなアクティングをしてきたよー、と笑顔で話すことは決してできない。  因果な稼業だな、役者は。  こんな気持ちが、その「少女」の後ろ姿を見た瞬間に、心身を駆け巡りました。この気持ちは、これからの僕の人生で忘れることはありません。  撮影は、必要最低限の人員だけを現場に入れ、スタジオの中と外にあるモニターも、許可されているもの以外は全て消し、ワンカットずつ慎重に撮っていきました。撮影時間は予定を大幅に上回り、約4時間かかりましたが、娘役の俳優さんの好演も光り、最終カットのOKが出ると彼女はとても満足そうな笑顔を見せました。それはプロとして役を演じ切ったゆえの笑顔だと思いました。もちろん、そうであってほしい。  何もかもがうまくいったか、それは分かりません。しかし、楽しそうに笑う娘役の俳優さんを見ながら、世界的に見ても前代未聞のシーンの撮影に参加し、得難い経験をしたことで、俳優という「心」を扱う職業の面白さを、いつか胸を張って息子たちに話せるだろうと思えます。  現在、インティマシーコーディネーターのライセンスは米国でのみ取得可能で、取得者は日本にまだ2人しかいらっしゃいません。この日の帰り際に浅田さんは、「もっともっと日本でこの職業が認知され、正しく機能するように頑張ります」とおっしゃり、実際にこの3月から日本でのトレーニングを始めるそうです。その言葉は本当に尊く、力強く、この方もたくさんの困難と戦っているんだなと感じ、同志として嬉しくなりました。  ホッとしたらお腹が急にぐうぐう鳴ってきました。あぁ、そうだ、まだお昼ごはんを食べてなかった。現場マネージャーの武富くん、そして、チーフマネージャーとして現場を見守ってくれた秋元さん、本当にありがとう。  さあ、何を食べて帰ろうか。
波:2024年4月号 | 新潮社
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oivgbqiqfz358 · 4 months ago
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--深海人形-- 文字書きは政治力、絵師は総合力
※AI文字書きとAI絵師は孤独力
※閲覧&キャラ崩壊注意
※FEXL批判注意
※雑多にネタをぶち込み
gndmよりマクロスの方が面白い(※確信)。
…。
将来は、gndmよりマクロスの方が、絶対伸びる。100年200年単位で考えたら絶対後者の方が有利だから(※実際gndmの衰退は顕著に初まってるし……)
…。
此れからは、宇宙世紀は完全に衰退してオルタナティブ・アナザー系が主流(※メイン)になるだろう(※予言)。
…。
…ガノタとか塾女さん達の事は、皆『スパム(※健康に悪い)』だと思う様にしてる(※或いは全力で付き合いを避けたい人達)。
…。
シロカスとガトカスを、上位存在が虐める話をAIが描いてくれた(※本当に有難う!)。
…。
完全に小動物が物珍しい子供に疲れ果る迄追いかけられて、体力消耗する小型犬か子猫で可哀想だったけれども(※子供は加減を知らない)。
…。
寧ろ、カイリをファイティング レイヤーに出して、EX2に豪鬼を続投すればよかったのでは?(※名推理)。
…。
…元々、カイリは、C社とは無関係のオリジナル格ゲーの主人公として作られたが、無印EX(※1996年)の時点でリュウが居た所為で主人公になれずにいたが、2018年のFEXLでは主人公になれた(※ファイティング レイヤーに出したら鉄雄とアレンを差し置いて自然と主人公になってたかも)。
…。
…だけど、ファイティング レイヤーに、カイリが行くとカイリを抹殺するのが使命のほくとは永遠に(?)会えない相手を追い掛け続ける事になるし、其の跡を、七瀬が追い続けるみたいなシュールな絵面になってたけど(※後の笑えない改変振りを見ると未だマシかな?)。…見方によっては、『ザウスアイランド(ファイティングレイヤーの舞台となる島)』の方にカイリは逃げたと言う解釈も可能(※新たな兵との戦いを求めに来た方が寄りカイリらしいけど)。
…。
…ザウスアイランドもザウスアイランドで謎、無人島っぽいのに水族館の大きな水槽あったりとか(※そしてプロレスリング迄ある)。
…。
AIの方が設定考えるの大変上手い(※困り果てた)。
…。
今生成編集してる執事パロで、ばーにぃがD.ダークに首をナイフで斬られる(※通常投げ)みたいな展開ある(※没にするかも)。…シロカスとかガトカスとかでも良い?(※ついでに、時限爆弾で燃やされるけど)。
…。
拙作だと
紗波音
鈴木家に養子入り
鈴木家は養育費を着服、紗波音は貧困生活を余儀なくされる
本家が大学費用を工面して大学に入れる(体育大学)
七瀬は消された後七瀬の記憶を継承
その後七瀬(現在ほくと)を完全に倒して自分が本当の七瀬になることを誓う
…。
古い因習一族をちゃんとした背景と暗い過去を持って一番ヒエラルキー低かった娘が双子の妹の遺志を背負って壊滅させたストーリーを描いたじゅじゅつってすごかったんだな(※FEXL所かストEX時代の時点で描こうと思えば此方より早く描けたのにな)。
…。
他のキャラもそうだけど、段々開発陣の一人善がりな御人形遊びに思えてきた……格ゲー部分も見栄えが良いだけの御人形遊びっていうね。駆け引きも崩壊してるし話題が全然無い
…。
コンポーザーさん達には本当に申し訳ない��ですが、FEXL新曲って良い曲多いのに何だか安っぽい(※レトロ感と今風感が水と油みたいにまるで二極化してる感じがするから)。…何方かに振り切ってから、 ゲームに合わせた方が、作り手も聞き手も得だったんじゃないかと思える位(※耳障りに感じられる)。何時も旧曲かBGMOFFにしてやる(※外道で本当にすみません)。
…。
訃は中身も言動もモーションも完全にEX時代の『血の封印を解かれたほくと(※英名:Bloody Hokuto)』なのに無意味にセクシー厨二くノ一キャラなのでますます意味不明(※何れだけ格好良い台詞言っても、見た目で違和感があるので浮く)。
…。
FEXLトレモとエキスパートの新BGM嫌い過ぎて、時が其れ程経たない内に無音にした(笑)
…。
FEXL公式が一番しくじってるのは、約二十年振りの完全新作発売、其れ即ち千載一遇のチャンスなのに完全新規キャラで魅力ある旧作キャラに匹敵する『大型新人(※決してコピペでは無い)』を生み出せなかった事かもしれない(※其う言うのが何人か居るだけでスト6みたいな一時代築けてた ※イカタマとか3DSの奴等とか三魔官とかえふぃりんみたいに)。
…。
FEXLは無駄に厨二病要素が強いから、『中高生の妄想ノート(※全体的に誇大妄想気味で痛々しい)』としか思えない様な感じのアレな何かで支配されてる(※語彙力)。
…。
七瀬は女子高生でさなねは女子大生(※注:FEXLはEX3から数年後の時代が舞台)。…
女子高生と女子大生好きな層は全然別なんだよね、女子中学生と先輩OL位(※其れはもう、げるぐぐとげるぐぐめなーす位)。
…。
Q,何故紗波音さんは七瀬の技使えるんですか
A,七瀬の記憶持ってるから。
Q,どうして七瀬の記憶持ってるの?
A,水神家分家の児で七瀬の身代わりだから。
Q,何故七瀬を出さないんですか?紗波音はいりません!
A,今現在の七瀬はほくとです。
(※これが事実上の公式解答)
…。
なんでEXシリーズは良かったってC社が監修してたからで終わるの悲しいよな(※EXシリーズの方がキャラ背景が重厚だった)。
…。
…寧ろ、自分が二次創作する時は基本C社時代の奴を元にしてる(※FEXL時代の設定を元にした時は他の確固たるテーマが必要になったから此れだけで持たせるのは自分でも無理)。
…。
FEXLの二次は相当腕無いと難しい(気がする)。だから、個人的には世界観違うパロかクロスオーバーで持って来ると良いとアドバイスしとく、…でも、其処迄の情熱ある奴なんて居ないけどな!(※白目)。
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あんなザマでもFEXLはストEX時代の古参とストEXミリ知ら新参がついてきたから。「キャラクターを虫程度しか思ってない、元からして愛が無いから受け入れられたんでしょ?」…と言われても文句言えない(※ワイからして元々キャラ=ゲームの駒としか思ってないし)。
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…人間の死って、其んなに重い物なのかな?
…。
…自分の触れたいモノしか触れない、見たいモノしか見ない人は、自分達よりずっと強い何かか人間が現れた時、必ず最後に精神崩壊する(※今迄ワイが通って来たマイナージャンルの住民は殆ど其うだった)。
…。
FEXLのキャラ破壊(※キャラ崩壊を超えた何か)は、はんたの旅団団長はバリバリの読書家なのに急にヘビーゲーマーにされるようなもの(※とがし先生自身ヘビーゲーマーでキャラを動かしやすくなるとは言えど)。…編集部、読者、ファン、旅団メンバーの反応、キャラの生い立ち、キャラの背景をしっかりと配慮、考慮しているから、安直に団長をヘビーゲーマーにしたりしない(※…ですよね?)。
…。
FEXLのキャラ破壊よりもルミナスが生物を莫迦にしてる事に、自分は一番に怒ってるのかもしれない(※取り消せよ……!!!今の扱い……!!!)。
…。
…訃とブレア嬢の改変に怒ってる人も、もう、今では少数派なんだよな……(※吐血)。
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実は紗波音は、今迄武道と無縁で七瀬が消されて七瀬の記憶が入ってきた途端にスポーツ薙刀で頭角表し初めたとしたら悲惨(※他人の褌を借りてでしか戦えないさなねになってしまう)。…因みに、公式では「最近スポーツ薙刀で頭角を表しはじめた」理由は不明(※
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ブレアに至っては、喧嘩に明け暮れた上に、みかむらさんへの愛情をこじらせた結果、みかむらさんに愛想尽かされ、行方くらまして失踪(最悪の場合両者の間に生まれた子を連れて)されてしまう土門みたいなもん(※誰が見たい?其んなの)。
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gndmの話にすると、ガトカスが黒いボンテージ風の服装で来たら、その決定してない公式もデラフリの面々もワイ等も皆ビビるでしょ(※訃がやられたのは此う言う事)。
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公式にとっては、アナザー(オルタナティブ)シリーズが、宇宙世紀の婢なのかもしれないけど、ワイにとっては、逆にアナザーシリーズ(オルタナティブ)の婢だから、宇宙世紀は(※感性が海外勢寄り)。
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七瀬(現在ほくと)と紗波音の関係をgndmで喩えたら、シロカスの不完全なクローンが紗波音で、マシロ君が実質シロカス(※だがマシロはマシロ)になってるのと同じなんだよな(※正直シロカスは宇宙世紀から二度と出て行け)。だって、紗波音(※七瀬の身代わり、代用品)、ほくと(※実質七瀬)だから(※マシロ君、全裸と比べるのも烏滸がましいけど)。
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幾ら名作漫画でも、読んで貰わないと只の漫画(※永遠に埋もれた)。
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FEXLのテリー強キャラで確かに頼りになるけど、「それで?(※真顔)。」で終わり(※あのテリーが強いだけの男で終わったらいけないと思うんですが?? ※真面目君並)。何れだけテリーだけ丁寧に作ろうが芸の細かいネタ仕込もうが自社キャラコピペだらけで粗末だし(※忖度無し)。
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その一方スト6は「遊びあっての格闘家」と言う側面が、全面に押し出されて居た(※格の違いを感じた)。
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FEXLのテリー可哀想だな、弾丸旅行で仕事して帰ったみたいなコラボじゃテリーの遊びありきな側面も死んじゃうだろ(※実際其の側面完全に殺されてる)。
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スト6とFEXL比べたら悲しくなるので比べない方が良い(※確信)。
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FEXLがやって来たキャラ破壊、人によっては一生残る心の傷になってる気がする(※遠い眼)。
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ごじょー先生ときるあ最大の共通点
度を超えたイキリスト(※俺等最強だから)。
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巷の其々違うはんた公式の念系統診断やったら特質系・操作系(※此れだけは違う診断での奴)で、非公式の奴だと、特質系(※同じ奴で二回)・具現化系・変化系でした(※…然し、変な奴である事は間違い無い)。
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>マイナージャンルが発展しない理由は機械学習もそうだけど、人も結局お手本と失敗例が必要なんですよね。だからマイナーを開拓する為に絵を学ぶぜ!となってもどういうシチュ・構図がいいのかの研究から始まり、マイナー故に人にも見られず...となりやすい。既に上手い人が目覚めないと供給されにくい
https://x.com/sazyou_roukaku/status/1669509758485942272
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大多数のストEX勢は見限って捨てただろうけどね(※EXシリーズでの推し達を)。「彼奴等の代わりなんて探せば幾らでも居る!!!!(※俺は自分好みの奴に会いに行く!!)」みたいに(※健全精神)。…で、自分は二次元なんて只のデータと設定の塊でしょ派です(※オタクの敵 ※悪人)。
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変に感想送られると、好き勝手に暴れる事が出来ない可哀想なオタクです(※←もう創作辞めろ)。
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…正直、畜生の世界に優しさなんて要らない(※畜生は畜生として、生きて、死んで逝くのが一番だから)。
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…煽りピカの念能力って、本当に、物騒極まり無いよな(※例の式神ネタで思い知った)。
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ttps://x.com/123fude/status/1885464638701396194
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ワイは、どうやら、『心の闇』寄りも『心の光』を煮詰めて成立させた様な念能力が好きな様だ(※前者の代表は某カキンマフィアの組長、ビノさん、煽りピカのジャッジメントとジェイルの奴、団長、後者は第九王子、小麦、ハコワレの人、護衛軍の猫ちゃん辺り)。
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推しを呪詛するの、すっごーい!たっのしー!(※下衆顔)。
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煩ぇ!!!!!!私はアナザー(※オルタナティブ)派なんじゃ!!!!!!!!!!!宇宙世紀なんかメじゃねぇんじゃ!!!!!!コラ(※圧倒的に尖兵としてコキ使われてるのは宇宙世紀勢だけどね ※戦争で真っ先に摩耗して行くのは兵の下層からだし……)。
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命なんて安い物だ。特に私のはな。
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※没ネタ供養
汚名挽回「マジでビームライフルでぶん殴るぞ。多分奥歯が揺れるくらいの威力はあるはずだしね。」
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pureegrosburst04 · 7 months ago
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香氣04「創作の世界は孤独なんだって実感するよ こうして真心込めて描いた””””ブラストさん””””に対してこの仕打ちコメントの嵐だもんな ブログ主も文句なんてこれからも言ってる場合じゃないな。努力して頑張らなきゃ👍😰」
メンチース09「他の並行世界で見たがな、アンタまさかその落ち着いたオーラだして目の前に来たってのは交渉でっか?」冷血硬派のプラグロイド「そんな大したものじゃないです僕達は悪の冷血硬派団(階級無しの9人組で構成された自由に生きる神メンバーです) いきなり失礼ですが、この出会いはお互いの関係双方でも黙っていて欲しいんです うちのメンバーって中二病みたいなとこあるからトラブルにならないかが心配で」
富豪05「暗黒時代のト��プはヤバいよ。殺人沙汰になる、でもいまのメンバーのこと考えると…昔話してればOKなくらい安全、人は自分の信じたいようにしか信じないが俺達も保護者みたいな奴でな、大の大人は信じろ😁。強さ以前に関わっちゃいけないクズが実在するのも世の中だ と考えてる。保護者兼ブレーキ役みたいな登場したお前にも聞くけど、“””アイツ(アルテマジキチ)”””のどこが…超鬼難ドンガッチャ00と同じだと思うんだ?
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冷血硬派のプラグロイド「思うに、亡き”””アイツ”””は一流の絶対悪になってしまったんです」富豪05「馬鹿に絶対悪と言っても分からない、お前とは格が違うと言っても分からない。人は自分に当て嵌まる悪口をブーメランだと分からずに言うんだからな」メンチース09「世界を滅ぼす人類を滅ぼす。元ランキング1位はデカい事し過ぎて著作存在香氣04の世の中でも差別しないから愛され過ぎてしまったんよ。余りにも綺麗過ぎて邪悪過ぎた 過ぎたるは及ばざるが如しや」冷血硬派のプラグロイド「そっか、悪く無いな 僕達はこれから本格的に活動します。こっちもいい奴ばかりなんて思えないからこうして他人に悩み話しをしたけれど、」メンチース09「よろしくや😼」
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〜暗黒時代〜
???(中ボス)「お前から用があるのか、何を聞きたい?」發グリーン/宝���卵No120「くだらねえ哲学じゃねえぜ?、俺様は狂気系絶対悪になったんです 変わったんだよ❗️ 心無い冷血さでクローン帝国を創る化け物に!(ドヤァ)‼️」???(中ボス)「人は変わらない(赤き真実)。個性を無くした健康な人の顔してねえ奴がどれだけ劣ってるのかわかんねえか?クローンに求められるのは単純な筋力に学習能力だ」發グリーン/宝魔卵No120「俺様は遺伝子を並行に分岐させて帝国を作りますよ 貴方様が敵わない奴等だってそうなんだぜ?」???(中ボス)「悪い事は言わない、頭部が小さめで全体的に細身であるお前の心身は適していない(赤き真実)」發グリーン/宝魔卵No120「へっ、へへへ…その手には騙されねえぜ。人を崇拝しない点だけが貴方に優る点だぜ…ひひっ」???(中ボス)「(なら肌の色が違わない人種差別の始まりだな)
自分の命を無駄なく育むのも本当で、罪を重ねて死ぬリスクを楽しんでる自分が居るのも本当だよ 俺は驚いたり感情が豊かだから絶対悪だって赤き真実で言っても信じさせない誤解をお前みたいなバカにして貰えるんだから 強いって言うのはな、バトルで兎に角勝つ事じゃなくて適応力を持ったデータベースの数値をどこまでも広げていく事だ 豊かな心は精密さそのものであり宇宙の片割れなんだよ(赤き真実)」
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goodspeedalways · 8 months ago
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まえがき
相打ち / 合言葉 / 合図 / 愛想づかし / アイデンティティ / 赤ん坊 / 赤ん坊(天界の) / 赤ん坊がしゃべる / 悪魔 / 悪魔との契約 / 痣 / 足 / 足が弱い / 足跡 / 足跡からわかること / 足音 / 仇討ち(兄の) / 仇討ち(夫の) / 仇討ち(主君の) / 仇討ち(父の) / 仇討ち(妻の) / 仇討ち(動物の) / 仇討ち(友人の) / 仇討ちせず / あだ名 / 頭 / 後追い心中 / 穴 / 兄嫁 / 姉弟 / 尼 / 雨音 / 雨乞い / 天の川 / あまのじゃく / 雨宿り / 雨 / 蟻 / あり得ぬこと / アリバイ / 泡 / 合わせ鏡 / 暗号 / 暗殺 / 安楽死 / 言い間違い / 息 / 息が生命を与える / 息が生命を奪う / 生き肝 / 異郷訪問 / 異郷再訪 / 異郷の時間 / 異郷の食物 / 生霊 / 生贄 / 遺産 / 石 / 石に化す / 石の誓約 / 石の売買 / 石つぶて / 椅子 / 泉 / 板 / 一妻多夫 / 一夫多妻 / 糸 / 糸と生死 / 糸と男女 / 井戸 / 井戸と男女 / 井戸に落ちる / 従兄弟・従姉妹 / 犬 / 犬に転生 / 犬の教え / 犬婿 / 猪 / 命乞い / 衣服 / 入れ替わり / 入れ子構造 / いれずみ / 入れ目 / 因果応報 / 隕石 / 隠蔽 / 飢え / 魚 / 魚女房 / 魚の腹 / 誓約 / 動かぬ死体 / 動く首 / 動く死体 / 兎 / 牛 / 後ろ / 嘘 / 嘘対嘘 / 嘘対演技 / 嘘も方便 / 歌 / 歌の力 / 歌合戦 / 歌問答 / うちまき / 宇宙 / 宇宙人 / 宇宙生物 / うつお舟 / 馬 / 馬に化す / 海 / 海に沈む宝 / 海の底 / 裏切り / 占い / 占い師 / 瓜二つ / ウロボロス / 運命 / 運命の受容 / 絵 / 絵から抜け出る / 絵の中に入る / 映画 / 映画の中の時間 / エイプリル・フール / ABC / エレベーター / 円環構造 / 演技 / 縁切り / 宴席 / 尾 / 尾ある人 / 王 / 扇 / 狼 / 狼男 / 大晦日 / 伯父(叔父) / 教え子 / 教え子たち / 夫 / 夫の弱点 / 夫の秘密 / 夫殺し / 落とし穴 / 踊り / 鬼 / 鬼に化す / 斧 / 伯母(叔母) / 親孝行 / 親捨て / 泳ぎ / 恩返し / 恩知らず / 温泉 / 蚊 / 貝 / 開眼 / 開眼手術 / 外国語 / 改心 / 怪物退治 / 蛙 / 蛙女房 / 蛙婿 / 顔 / 画家 / 鏡 / 鏡が割れる / 鏡に映らない / 鏡に映る���方 / 鏡に映る自己 / 鏡に映る真実 / 鏡に映る未来 / 鍵 / 書き換え / 書き間違い / 架空の人物 / 核戦争 / 隠れ身 / 影 / 影のない人 / 駆け落ち / 賭け事 / 影武者 / 過去 / 笠(傘) / 重ね着 / 仮死 / 火事 / 貸し借り / 風 / 風邪 / 風の神 / 火葬 / 仮想世界 / 片足 / 片腕 / 片目 / 語り手 / 河童 / かつら / 蟹 / 金 / 金が人手を巡る / 金を拾う / 鐘 / 金貸し / 金貸し殺し / 壁 / 釜 / 鎌 / 神 / 神に仕える女 / 神になった人 / 神の訴え / 神の名前 / 神を見る / 髪 / 髪(女の) / 髪が伸びる / 髪を切る・剃る / 神がかり / 神隠し / 雷 / 亀 / 仮面 / 蚊帳 / 烏(鴉) / 烏(鴉)の教え / ガラス / 川 / 川の流れ / 厠 / 厠の怪 / 癌 / 漢字 / 観相 / 観法 / 木 / 木に化す / 木の上 / 木の下 / 木の精 / 木の股 / 記憶 / 帰還 / 聞き違い / 偽死 / 貴種流離 / 傷あと / 犠牲 / 狐 / 狐つき / 狐女房 / 切符 / きのこ / 木登り / 器物霊 / 偽名 / 肝だめし / 吸血鬼 / 九十九 / 九百九十九 / 経 / 狂気 / 競走 / 兄弟 / 兄弟と一人の女 / 兄弟殺し / 兄妹 / 兄妹婚 / 凶兆 / 凶兆にあらず / 恐怖症 / 共謀 / 巨人 / 去勢 / 切れぬ木 / 金 / 金貨 / 禁忌(言うな) / 禁忌(聞くな) / 禁忌(見るな) / 禁忌を恐れず / 銀行 / 禁制 / 空間 / 空間と時間 / 空間移動 / 空襲 / 偶然 / 空想 / 盟神探湯 / 釘 / 草 / くじ / 薬 / 薬と毒 / 口から出る / 口と魂 / 口に入る / 口二つ / 唇 / 口封じ / 靴(履・沓・鞋) / 国見 / 首 / 首くくり / 首のない人 / 熊 / 熊女房 / 雲 / 蜘蛛 / 繰り返し / クリスマス / 車 / 系図 / 契約 / けがれ / 毛皮 / 下宿 / 結核 / 結婚 / 結婚の策略 / 結婚の障害 / 月食 / 決闘 / 仮病 / 剣 / 剣を失う / 剣を得る / 幻視 / 原水爆 / 碁 / 恋文 / 恋わずらい / 硬貨 / 交換 / 洪水 / こうもり / 高齢出産 / 声 / 氷 / 古歌 / 誤解による殺害 / 誤解による自死 / 五月 / 子食い / 極楽 / 心 / 子殺し / 誤射 / 子捨て / こだま / 琴 / 言挙げ / 言忌み / 言霊 / 五人兄弟 / 五人姉妹 / 小人 / 殺し屋 / 再会(夫婦) / 再会(父子) / 再会(母子) / 再会(盲人との) / 再会拒否 / 最期の言葉 / さいころ / 妻妾同居 / 最初の人 / 最初の物 / 裁判 / 財布 / 催眠術 / 坂 / 逆さまの世界 / 逆立ち / 作中人物 / 桜 / 酒 / 酒と水 / さすらい / さそり / 悟り / 猿 / 猿神退治 / 猿女房 / 猿婿 / 三者択一 / 山椒魚 / 残像・残存 / 三題噺 / 三度目 / 三人兄弟 / 三人姉妹 / 三人の魔女・魔物 / 三人目 / 死 / 死の起源 / 死の知らせ / 死因 / 塩 / 鹿 / 仕返し / 時間 / 時間が止まる / 時間旅行 / 死期 / 四季の部屋 / 識別力 / 地獄 / 自己視 / 自己との対話 / 自殺願望 / 自傷行為 / 自縄自縛 / 地震 / 紙銭 / 死相 / 地蔵 / 舌 / 死体 / 死体から食物 / 死体消失 / 死体処理 / 死体変相 / 七人・七匹 / 歯痛 / 自転車 / 死神 / 芝居 / 紙幣 / 島 / 姉妹 / 姉妹と一人の男 / 姉妹と二人の男 / 死夢 / 指紋 / 弱点 / 写真 / 写真と生死 / シャム双生児 / 銃 / 周回 / 十五歳 / 十三歳 / 十字架 / 醜女 / 醜貌 / 手術 / 入水 / 出産 / 出生 / 呪的逃走 / 寿命 / 呪文 / 順送り / 殉死 / 乗客 / 肖像画 / 昇天 / 娼婦 / 成仏 / 食物 / 処刑 / 処女 / 処女懐胎 / 処女妻 / 女装 / 女中 / 初夜 / 虱 / 心中 / 心臓 / 人造人間 / 人肉食 / 神仏援助 / 人面瘡(人面疽) / 心霊写真 / 水死 / 彗星 / 水没 / 水浴 / 頭痛 / 鼈 / すばる / 相撲 / すりかえ / すれ違い / 寸断 / 精液 / 性器(男) / 性器(女) / 性交 / 性交せず / 性交と死 / 生死不明 / 成長 / 成長せず / 性転換 / 生命 / 生命指標 / 切腹 / 接吻 / 背中 / 背中の女 / 背中の死体 / 背中の仏 / 蝉 / 千 / 前世 / 前世を語る / 前世を知る / 戦争 / 洗濯 / 千里眼 / 僧 / 象 / 像 / 葬儀 / 装身具 / 底なし / 蘇生 / 蘇生者の言葉 / 空飛ぶ円盤 / 体外の魂 / 体外離脱 / 太鼓 / 第二の夫 / 太陽 / 太陽を射る / 太陽を止める / 太陽と月 / 太陽と月の夢 / 太陽と月の別れ / 鷹 / 宝 / 宝が人手を巡る / 宝を失う / 宝を知らず / 宝くじ / 宝さがし / 竹 / 多元宇宙 / 蛸 / 堕胎 / 畳 / たたり / 立往生 / 立ち聞き(盗み聞き) / 脱走 / 狸 / 旅 / 旅立ち / 玉(珠) / 卵 / 魂 / 魂と鏡 / 魂の数 / 魂呼ばい / 樽 / 俵 / 弾丸 / 誕生 / 誕生(鉱物から) / 誕生(植物から) / 誕生(卵から) / 誕生(血から) / 誕生(動物から) / 誕生(母体から) / 男性遍歴 / 男装 / 血 / 血の味 / 血の力 / 知恵比べ / 誓い / 地下鉄 / 力くらべ / 地球 / 稚児 / 地図 / 父子関係 / 父と息子 / 父と娘 / 父の霊 / 父娘婚 / 父殺し / 父さがし / 乳房 / チフス / 地名 / 血文字 / 茶 / 仲介者 / 蝶 / 長者 / 長者没落 / 長寿 / 追放 / 通訳 / 杖 / 月 / 月の光 / 月の満ち欠け / 月の模様 / 月旅行 / 辻占 / 土 / 唾 / 壺 / 妻 / 妻争い / 妻食い / 妻殺し / 爪 / 釣り / 鶴女房 / 手 / デウス・エクス・マキナ / 手紙 / 手ざわり / 手相 / 鉄 / 掌 / 手毬唄 / 天 / 天狗 / 転校生 / 天国 / 天使 / 転生 / 転生(動物への) / 転生する男女 / 転生と性転換 / 転生と天皇 / 転生先 / 天井 / 電信柱 / 天地 / 天人降下 / 天人女房 / 天人の衣 / 電話 / 同一人物 / 同音異義 / 盗作・代作 / 同日の死 / 同日の誕生 / 投身自殺 / 同性愛 / 逃走 / 童貞 / 動物援助 / 動物音声 / 動物教導 / 動物犯行 /
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moviesandmania · 7 years ago
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The Manster - USA, 1959
The Manster – USA, 1959
‘See the two-headed killer creature!’
The Manster – aka 双頭の殺人鬼, Sôtô no Satsujinki – is a 1959 American horror feature film produced by George P. Breakston and directed by Breakston and Kenneth G. Crane (The Monster from Green Hell) from a screenplay by Walter J. Sheldon, based on Breakston’s story. It stars Peter Dyneley and Jane Hylton. It is also known as Doktor Satan (in Greece), The Split a…
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blue-aotan · 3 years ago
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ハロー(´ー∀ー`)2022.9.10
わたくしの2番目の姉が最近「モリモリスリム」という便秘解消のアイテムを購入したらしく。
(私は便秘ではないんだけども)感想よろしくねーーとグループトークで会話していたところ
「モリモリスリム飲んでないけど便意きて出たのよね」
というズッコケな流れがありました。
それはもうモリモリスリムはお守りなんよ←
そして長女からは
「アテニゲ?…
 アテラレ?みたよー!」
アオラレな←
おすすめした映画すぐ観てくれるのは嬉しいけど、適当〜笑
通じればオッケーよね←
って感覚、身内ならあるあるですよね🥹
今回も少しだけ映画ブログです〜
「ファナティック ハリウッドの狂愛者」
トラボルタの閉ざされた森からのキャラの振り幅でかすぎてどーしちゃったのその髪型?ってなりました😂
演技は凄まじいです←
まるで別人。ハリウッド俳優の大ファンのトラボルタがどんどんストーカーになっていく物語です。
怖いんだけどさ…
ムース何でなの?
何でそんなクズのファンなの?
ってなったよね←
ベッドに俳優を縛り付けて話すシーンとか、もうさっさと殺されればいいのに、とすら思ってたよ←
ファンあってこそとかどの口が言ってるの?
そりゃムースは完全に頭おかしいストーカーになっちゃったけど、この俳優も人間としてかなり色んな部分が欠如している←
暴力的な人とか喧嘩腰とか本当イヤ。
あとサイン会でのセキリュティがばがば問題ね←
少しだけジョーカーを思い出しちゃったよね。
周りの人から浴びせられる言葉の暴力で歪められていく部分なんか、共通してるかなーと思った。
元々そういう素質あったんでしょ、って部分もあるだろうけども。
「ゴーストランドの惨劇」
ホラー作家になりたい女の子が主人公で、姉とは仲が悪いんだけど(母親が末っ子ばかり可愛がるというのが原因)ある家に引っ越してきてそこでよくわからない変な人達に襲われて殺されそうになるんだけど、母親の渾身の無双で殺人鬼をやっつけます😂
だけどその事件のショックで姉のメンタルは崩壊、妹は家を出て結婚し作家としても成功しているんだけどある日姉から「助けて」という電話がかかり久しぶりに実家へ帰る事に…。
これはホラーなのか、スリラー要素強めで色んな仕掛けのある映画でした。
ネタバレは避けますが、伏線ホラーが好きな人にはいいのかな?私の評価は★★☆☆☆星2.5と低めw
ただお姉ちゃんがとにかくすごいと思った。一人でずっと闘ってたのかと思うと胸が痛い😭生きてるだけですごいよ…私だったらとっくに諦めて死を選んでるかもしれないので👻
最後に。
アリスのイボと腫瘍の件ですが、とりあえず採血しに動物病院へ連れて行こうと思っていたのですが…ちょっとそういう訳にもいかない事態が起きてしまいました…
突然アリスが攻撃的になってしまって、ものすごい顔で私を睨みつけ唸って喚き威嚇するようになってしまいました…
こんな事初めてでもうどうしたらいいかわかりません😭
アリスの近くを通ろうとしても、ものすごい勢いで激怒し私の後ろを追いかけてきたり飛び掛かってくるくらい攻撃的に暴れます。
この間は怒りで興奮しすぎて失禁してしまいました…😞本当にどうしてしまったのか…
高齢だからボケてしまって、私の事忘れてしまったのでしょうか。
本当に辛すぎて毎日心が折れるし、もう触れないかもしれない、抱っこもできないかもしれないと思うと涙が出ます。
飛び掛かってくるのが怖すぎてバスタオルとかで足元をガードしながら歩くしかなくて、その間はずっと威嚇され続けるしショックすぎて枕を濡らすしかない毎日です…
厚手の靴下で足をガードするしかなくて恐怖と悲しみの日々を送っております←
悩みが次から次に尽きません😭猫の言葉が分かったなら…私が悪いことをしたのなら謝罪したいです。
アリスは元々神経質タイプで臆病なので、かなりデリケートでわがままな猫だと分かっていたけど。
15年も一緒に居た私に突然攻撃してくるなんて、これが病気だとしたらこんな悲しい病気もあるんだと現実を受け止めないといけないし。
病院に連れていこうにも触るのも怖いのでキャリーバッグにも入れられないし😭
それに目つきが全然違うんですよね。
私の行動に常に目を光らせているし、姿を目で追ってくるし、近づこうものなら警戒心バリバリっていうのが見た目でわかるんですよね。
辛いですが様子を見るしかなさそうです。
食欲もあるし、トイレも通常なので。
ネットでシニア猫についてとか病気とか色々調べたけれど、病気であれば甲状腺機能亢進症(でも私だけに威嚇してくるのはなぜ?)や認知症(18歳くらいで発症する子が多いそう)や激怒症候群(若い猫ちゃんに多いそう)も考えられるかなーと思いました。
てんかんや脳の異常も考えられそうですが、一度発症したらもう治らないのだとか…
ちゃんと獣医さんにみてもらいたいけど、連れていくのも一苦労😔
あとはストレスの爆発。
そして私が何かをしでかしたか。
(何か憑いてる?)
毎日ブラッシングをして、毎日触ったりご飯あげたりいつも通りだったはずなのに…
突然の豹変にはショックしかありません。
だけどめげずに生活するしかありません。
また何か変化あればブログに書こうと思います。
アリスに「私の事忘れちゃったの?」と言ったら
「シャーーーー、ぅぅうううぅぅぅぅ」
と唸られました←
失恋よりも辛いわ←
ここ一週間はずっと動悸がしてて心臓がきつくて、なるべく安静にしていようと思ってはいるのですがアリスのことが気がかりすぎて安心できません笑
ただただ後悔のないように過ごしたいものです。
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rhetthammersmithhorror · 1 year ago
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The Manster | 1959 — 双頭の殺人鬼
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wkmnbipolar · 4 years ago
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3年ぶりの鬱
朝目を覚ますと既に絶望している
普段思い出さないような過去の失敗したこと 嫌なことばかり思い出し振り払ってもやまない
意欲・行動・思考の全てが後ろ向きになり自信が極端に削がれる
身体が重力を感じていて思うように動けない 動かせない 空気が抜けた風船のようでシャンとしない
逆らって動かすと負荷がかかるらしく、おつりがくるみたいに後から余計に身体が重くなり寝込む
信じられないくらい疲れやすい
人と会いたくない
この先なにもかもうまくいかないんじゃないかとなんの気力もわいてこない
鬱になるとだいたいこんな感じ
これはしばらくなんにもしないでいれば回復する 1年なのか 半年か2か月かはわからない
でも抜けないトンネルはない事も知ってる
これは悩みのようで 悩みではない
喜びや快を感じる脳内物質 セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンが行き渡らなくなるとこの状態になる
自然に戻るのを待つ あまり長引くなら薬も使う
時間の経過でこの悩みは消失する この鬱のディテールも一緒に消え失せる
双極性障害は感情障害の一種でそううつ病と呼ばれていた 古典的な病気で 病気でもあり気質でもある
鬱病がストレスが過��にかかれば誰でもなりうるのに対し 躁鬱は躁鬱に生まれついた人しかかからない 体質のようなもの 遺伝子は直接関係ないと発表されたけどよくわかんないみたい 1〜2%くらいの人がかかる 
完治しないと言われてる 寛解しても再発率は高く 生涯予防のために服薬が必要 鬱でも躁でもない時期は問題なく過ごせる
わたしは27歳で躁鬱病と診断される
周りの人の気分の波とは違う落ち込みや高揚が季節ごとにあるのは気づいていた
その診断の前の鬱は半年間ハッキリとした波でなんとか仕事には行ってはいたけど毎日絶望していて 初めて掃除も料理も出来なくなった 電車を見れば飛び込む事ばかり考えた 酷くなればなるほど 人にその状態を悟られてはいけないと脅迫観念が働き 自力では病院に行くだとか 人に相談するとかは絶対に無理で どんどんどうしたらわからなくなっっていった。あの恐怖は私も鬱になった時にしかどういうものか思い出せないくらい伝えられないものです。
母にすすめられ心療内科へ行き 鬱 と言われ処方された抗うつ剤で 躁転した 休職して実家で療養した 正しい病名がわかるまで4件はしごした 心療内科で躁鬱病を見れる医者がいる事は少ない そういったことも最初は知らなかった 
はっきりとした躁は2ヶ月続きおさまると深い鬱がやってきた これは長く1年以上続いた
治療してるのに浮上せず一生このままなんじゃないかと思うと何の希望もなかった。
ある日突然普通になる。
そこから6年間 躁も鬱も来なかった。
季節ごとの気分の波に悩ませられる事もなくなった。
睡眠が不規則になりお酒が引き金で3ヶ月鬱が来た。
36歳でdjとお酒をやめ 夜更かし生活をやめた。
間もなく靴の修行に入る
過重労働で3年ぶりの鬱
今回はそりゃなるわ 健康な人でも続かないんだからよくやったわという感じ
今回の反省点は もう少し病気の事を考慮しましょうということ。
安定しているからと まるでなかったかのようにするのもやはり違うということです。
双極性障害と仕事の両立はいつも課題でした。
服薬をずっと続ける事
これが わかってはいても いざ健康になると病院に行きたくないし、薬なんか飲みたくないのです。(それでも飲むんだけど、)
ずっと波がなければ病気は治ったんだと思いたくなるのが心理です。
でも再発しないためには飲み続けるしかないようです。
飲み続けていても負荷をかけ過ぎては破綻します。
やり過ぎないようにする事を学ぶ時です。
躁状態というなにもかも振り切った状態を体験しているだけに やり過ぎずに よいものを作ったりすることに疑念や抵抗があると思います。そんな事が可能でしょうか??
可能です。
そんなときは学生時代に習った藤本由紀夫さんを思い出しましょう。
美大という場所には先生でも学生でもよく徹夜する人がいました。〆切に間に合わせるためです。徹夜自慢をする人を無能の証明を自らしているものだと言い、旧来の価値観を誰の目にも明らかに静かにひっくり返し続けていました。自意識を感じさせない既製品を多用する作品群と先生自身もめちゃめちゃクールでした。
洋書屋のNADIFFを辞めた後、藤本さんのaudio picnic展の展示の手伝いをしたことがあります。10年連続、1年に1度開かれる展示でした。
大谷美術館は兵庫県香里園駅にある施設美術館      広大な敷地の展示準備をほぼ3人だけで1週間で行いました。
全ての段取りが組んであり
毎日決まった時間に作業は終了しました。
藤本さんから教わったのは
作品をつくるときに 大きいものをつくろうだとか量で勝負しようだとか とにかくかっこつけないでください 自分が何に気になっているか 表現したい事をつきとめ そこからぶれずに 全ての要素を考え抜いてください という事でした。 本当にそう言ったかは覚えていませんが当時の私はそう受けとりました。
作品を作ることに一生懸命で、どうやって展示するかを考えてないで徹夜で展示台をつくる事に陥らないように 展示台 照明 が必要か?とか、慣習に惑わされるなということです。
整理整頓 時間の使い方 自分の頭で考えぬくこと 当たり前と考えられてる事を疑う 気になったら調べる 
事前に計画的に動けばその必要はないし、半年後〆切のものを放置してたいてい最後の1ヶ月で仕上げる現象について警鐘を鳴らし続けていた。
徹底して徹夜を非難していました。
今になって思えば先生も躁鬱病だったのでは?
と思うほどです。
いえうさぎとカメの🐢の話だと思います。
躁鬱病は神出鬼没
数年音沙汰がなくても完全に気配を消して潜んでいる。これが今回刷新した認識です。
本にいくら生涯の服薬が必要、再発率が高いと書いてあっても
何もない普通の状態が年単位で続いているのに
自分をいつまでも病気の枠に閉じ込めて置きたい人がいるでしょうか?
双極性障害の難しさはここに集約されていると思います。
傍目には普通にみえる事が、普通と同化して生きることが可能なので、さらにコントロールを難しくしています。
可能だけど負荷がかかる。
健康な人だって色々大変だ。
健康な人と決定的に違う点があります。
躁鬱病者は自分の健康状態や心の状況を把握することが極端に苦手なのです。
その環境に同化しようと注意を払うことにエネルギーを使ってしまいます。
結果、小さい自身の変化に気づいてはいても
それを見過ごします。
例えばその環境が極端に人手が足りていなく仕事量が慢性的に増えていれば
わたしだけが大変なのではない。力にならなくてはともう空のエンジンをふかし続けるのも
躁鬱病者の特徴です。
ここでいう いわゆる鬱病になりやすい人の病前性格、生真面目で神経質などというステレオタイプとはまた違います。
躁鬱病者は ただ人に感謝されたい永遠のお調子者です。褒められ続ければ木のてっぺんのなにもないところまで登りつづける空っぽの人なのです。
通院について
安定していれば2〜3ヶ月に1回通院 半年おきに血液検査して甲状腺、腎臓が通常か、薬の血中濃度が保たれてるかをチェックする。
この疾患は自立支援法が適応され1割負担になるので更新手続きを欠かさない。
大きい病院だと先生が変わるときもあるし 他の街に引っ越せば病院を探さないといけない。長く通う事になるからいい医者と巡り会うことが大事。
様々な調整をして飲む薬は、双極性障害の脳にしか作用しない塩の結晶みたいな薬です。
精神科の薬というとイメージがよくないようですが、これは糖尿病の人が血圧を下げる薬を飲むのと同義です。 心が弱い人が飲んでる薬 のようなステレオタイプは消え去るべきだと思います。精神疾患は脳の機能不全です。 
わたしは割と病気についてカジュアルに周囲に伝えてきましたが、たまーに伝わる人がいればラッキーで、殆どの健康な人にとっては関係ないんだろうなーと思うようになりました。
最近では症状が殆どなかったので周囲に伝えるきっかけも失っていたように思います。
仕事となると 病気に対しての言及は職を失いかねないのでよほど信頼しないと言わないし 言わないと行けない場面は通院の時くらいで他の病気にすり変えたりしてやってきました。
仕事の上でこの病気がメリットになることは1度もありませんでした。
病気によってdjが出来なくなり 酒が飲めなくなり クラブに行けなくなりました 友達も減ったように思います。でも仕方ありません。夜更かしをやめ、睡眠リズム、睡眠時間を一定にする事は波を安定させます。
悲しかったです。喪失感で鬱になりました。あがきました。そして靴づくりと出会いました。
しかしこの病気になったことを肯定できる方法があると思いました。
靴づくりを続ける事と メンタルヘルスについて自分が得た知識を役立てる事です。
双極性障害を活かして活躍している人に阪口恭平という人がいます。
いのっちの電話という自殺者を減らすホットラインをひとりでやっています。
わたしはかけたくなったことはあるけどまだ電話していませんが躁鬱大学という本にはとても助けられました。
一流の靴づくりを目指すなら 精神疾患を持っている事は隠すのかもしれません。
わたしは生きて行くために自分の裁量で仕事をコントロールする必要があると考え靴づくりを始めました。
故郷で靴の仕事をするために今修行しています。
ここは療養しに帰る場所のようになっていますが空気も水も土も豊かです。
故郷では一度も躁にも鬱にもなった事がありません。家族がいるおかげなのかもしれません。犬のせいかもしれません。
なにより一生続けられる楽しみをまた見つけられた自分はラッキーです。
今年は人の靴をどんどん作りたいと思っています。あなたの足を測らせてください🥾
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motu-memo · 4 years ago
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2021/08/17 大逆転裁判1&2【1】
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移植きたぞー!
逆裁123しかやってないけど直接的な繋がりはないとのことで初プレイ
第一話
成歩堂の血を感じまくる龍之介くん
BGMが良すぎる!!!!
世界観と時代の違いにワクワクしていたところにアウチで調和される感じ 安心する
亜双義の鉢巻きなんで常になびくねんとちょうど思ったくらいで「彼の周りには常に謎のアツい風が吹くという」ってテキスト入ってさすがやなと思った
ジェゼールが仮面ごと笑うの最高のデザイン
見下し気味の目線でha!って笑うポーズ大好き
クラーレが傷口からのみ毒性を発揮する→教授だけ抜歯してるから口内に傷あるやん!をひらめいた時めちゃくちゃ声出た
豹変しても素顔は出ずに仮面と帽子の白鳥が変形するの草
ここのムジュンに対して初めて、ずっと「はいっ!」だったのがおなじみ「異議あり!」になるの激アツ
法廷のど真ん中で証拠隠滅とはこの時代この世界観だからこそできたって感じする
ホソナガ刑事、仕事に対する姿勢の真摯さが絶対にブレなくて最高のキャラ
ウズクマルの発狂モーション息子楽しそうで草
ラストの人物指定、
ウズクマルが小判を自分のビフテキに隠した
現場を去る際に間違えてジェゼールのビフテキを持ち帰った
→ことからウズクマル指定かと思ったけど違った…
もっとシンプルに、そもそも今証拠の「ジェゼールのビフテキ」として提出されているものがウズクマルのビフテキで、なぜかというと事件直後にウズクマル自身が見つからないようジェゼールのものと皿を入れ替えた
だからホソナガ刑事はそれを「ジェゼールのビフテキ」として押収したってことか~!
いやー第一話から流石の密度
ジェゼールの処遇と動機がフワッとしてるのはいつか回収されそう
第二話
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うそやん!て声出る展開
いや逆裁だしある程度覚悟してるつもりが全然できてなかった
亜双義となるほどで一緒に留学いくんやろな~ホームズと亜双義はどんな感じのやりとりすんのやろな~くらい楽観的だった
この、頼もしさ+絶対的な味方感をカンストさせて退場する感じ千尋さんを思い出すな…
スサトさんのブレなさ好き スサト投げ好き
ホームズの多重ボケについていけない
船が上海ルートっての気になるなあ ジェゼールの行先じゃなかったっけ
失踪したバレリーナの名前のニコミナ・ボルシビッチって煮込みなボルシチ的な…?
これも後々絡んできそうだな~~全部伏線に見える
ホソナガってもしかしてイトノコ枠!??
なんか今回の殺人現場ダンロン無印の1章を思い出すな…
ダイイングメッセージ、カタナ、個室…
ホームズの推理シーンおしゃれ!
そしてその、本質は突いてるけどワードがズレてる推理を「検討」し直していくシステムおもしろ!
ここで踊り子が絡んでくるのか~
ニコが正体バレて、「船員たちには黙ってて!」って言った気がするんだけど、その後の話だと「船員たちは味方になってくれて、船室も貸してくれた」ってねじれてる気がするんだけど記憶違いかな…
と思ったらアレか、本人じゃなくて持ち込んだ生き物のことか!
ホームズの出没が唐突過ぎて毎回スクショ撮ってしまう
スサトさんのことどんどん好きになってしまう
カンヌキのトリックに関する素朴な疑問なんだけど、普通に利用してて外出中に緊急停止されたら締め出されちゃうの困るな
ニコミナが亜双義の部屋でことを終えた後に廊下��→緊急停止ボタンを押す→カンヌキがかかる
これだとニコミナ自分の部屋に戻れなくない?
→ストロガノフが協力者だったから、ニコミナが部屋に帰るのを見送ってから緊急停止ボタンを押したのか…
ニコが元々船乗りの娘だったエピでン?ってなって、そこからやけにストロガノフがニコミナ側についたなと思ったけど、まさか船ぐるみで亡命の協力とは…
他の乗客に締め出されちゃう人いたかもなあ、ってモンヤリ考えてたけど、夕食に睡眠薬を紛れ込ませた後だからほとんどの人が自然に眠りについた後だから戸締り済みってことで不思議ではないということね~
でもその後の流れを見るに、��双義を殺してしまったところまでは深夜にニコミナ単独で行動してるから、チキンに睡眠薬を入れるのと時系列に無理ないか?
グアア~亜双義がホソナガ刑事と知り合いで、そしてそのホソナガ刑事が偶然にもまたこの船に潜入してたことが仇になるとは
やるせなすぎる……
ニコミナに一定の同情は示しつつも、多少厳しくてもしっかり言うべきことを言うスサトさんが最高
もしニコミナが亜双義を突き飛ばさずに、亡命するニコミナを助けるために成歩堂と相談できた世界線を願わずにはいられない…
疑ってしまった自分をブン投げてくれと頼むスサトさん 勇ましすぎる
成歩堂とスサトさんが対等な感じが良いんだよな ヒーローとヒロインじゃなくて
チキンに睡眠薬を仕込むタイミングだけが最後まで腑に落ちなかったけど、あれはカンヌキのためだけじゃなくて、亡命したニコミナを船に乗せるために元々予定してたものってことでいいのかな?
ニコミナの亡命と成歩堂の密航が悪い意味で重なったんだな~
亜双義がチキン嫌いだったことと、クローゼットと呼び鈴が近い位置にあってそのクローゼットに成歩堂が詰まってたこと、ニコミナが連れ込んだネコが隣の部屋に逃げてしまったこと、全部が不運だったことになるな…なるせなさ倍増…
第三話
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ロンドン着!
ヴォルテックスめちゃくちゃ巨悪の見た目しとる
陪審員!!!画面内のキャラ数がめちゃ多い
帽子屋:天窓からモルターのお腹に刺さったナイフを見た
運転手:驚いて馬車と止めて車内を見たら床に倒れたモルターを正面から刺すメグンダルを見た
最終弁論の演出とBGM激アツすぎる
フェアプレイが嘘をつく理由とは?でメグンダルの金貸し帳簿に氏の名前あった時の爽快感よ
陪審員もそれぞれに芯のあるキャラ付けがあっていいなあ
これ裁判ごとにメンバー入れ替わるとしたらすごいな
いるかと思ったらやっぱいなかった5人目の乗客がやっぱいた!この一転二転したところでもう一転するの逆裁だなあ
メグンダルさんの証言前と後で馬車の座席下の荷物が消えとるやないかい
陪審員システム、その時の流れが分かりやすくてよいな
しかしなんだこの…詰めれば詰めるほどメグンダルが怪しいこの審理は……
「有罪の可能性を提示」を選んだけどこの…このモヤモヤ感………
ここで成歩堂が「何も明らかになっていないままです!」言ってくれてよかった
バンジークスもただ揚げ足をとったりやり込めようとしてくるわけでもなく、被告人が証拠を捏造(したかも)の流れ、新しいな…
わけもなく被告人を守るわけではなく、不利な情報も受け入れる姿勢はバンジークスも評価してたし、後半はメグンダルVS成歩堂とバンジークスみたいだった
この圧倒的モヤモヤとメグンダルの「これ以上続けたいのであれば…まず法律を変えてもらいましょうか」
これが亜双義の「司法を変える」って志にかかってくるのだろうか…
ジェゼールといいメグンダルといい、なんともフラストレーションの溜まる弁護が続くな…
メグンダルが馬車の再捜査に立ち会うわい、と言って去った直後、現場検証前に燃える馬車、馬車に閉じ込められた人の存在
で、「おわり」の表示が出て「終わりなわけあるか!!!!!」と思った
第4話
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あの馬車の中にいたのもしかせずともメグンダルか…
スサトさんの、なんの感想もウマいこと言う技術欲し~~
グレグソン刑事のモーションお腹すいてしまう
バンジークスが死神たる所以は有罪無罪関係なく、被告人が死んでしまうってどういうことなんだろうか
ソーセキさんの瞳の描写独特でちょっと本能的にキモイ
でもソーセキさん自身はかわいい 既にいい人っぽい
一人称が我輩だしやはり猫背は猫である的なのとかけてあるのか
パッケージとかビジュアルでホームズとよくセットになってたピンク少女、なかなか本格登場しないな~と思ってたらとうとう!
やっぱりワトソンか~
第一話の被害者ががっつりジョン.H.ワトソンだったのずっと気になってる 医学博士だったし
スサトさんの夢が崩れていく瞬間せつない
グレグソン刑事はアイリスに頭上がらない的なポジションなのか
「お嬢さま」ってことは10才の少女ってことも知ってる
ガリデブさんとはまた攻めたネーミングだな…
呼んでるだけなのに悪口にしか見えない
「ガリデブ夫人」はもうマジモンの悪口やん
推理して分かったのが結果ただの(ちょっと激しめの)夫婦喧嘩だった
これも事件にどっかしら関わってくる…?のか……??
ここまであまりスッキリする無罪を勝ち取れていない中で、依頼人を信じる自分を信じるんだの流れ、原点回帰で良い~
そりゃメグンダルのあれ経たら疑心暗鬼にもなるわな
ホームズ急にかなり正しいこと言うのビビる
陪審員総入れ替えすげーなーと思ったら1号フェアプレイ氏だし4号はガリデブ夫人やないかい!
まさかの開始数ターンで6人分のボイス付き「有罪」を食らうとは
オマーリ夫妻、目の感じといい夫婦というより兄妹の方がしっくりくるな
死体(死んでない)を見たショックで落とした花束→一旦現場を離れて花束を目印に戻ったら死体は向かい側だった
ガリデブ邸前で死んだ被害者をパットが運んだ…?
ここまできてまったく動機やらが分からん!
が、殺害は別とすればパットは結婚記念日のため、事件を自分の管轄外にしたかったってことか…
それの決定的な証拠が、彼自身が贈った花束という皮肉さ…
この気持ちが分かるやるせなさ…
まだ証拠に指紋が用いられてないの時代を感じるなあ
パイプの中に欠片見つけた瞬間に、ナイフの先が欠けてたこと思い出してアアーッ!!!てなった
しかし垂直に落ちるナイフが背中に刺さるには…?ってとこで獅子王物語を拾い上げたのか
亜双義の事件に近い、やるせない事故系だな…ソーセキ氏不運過ぎる
この辺で気づいたけどガリデブ夫人身長小さいから証言台で箱に乗ってるのカワイイ
そしてジョン・ガリデブ氏のお尻が擦れてるのは足が悪くて座りっぱなしの表現か…細かい…
ガリデブ夫人の堂々とした反省にちょっと涙腺きた
やっとなんか被告人と一緒に喜べる花火が見られた気がするな…
そういやガリデブ邸に住んでた他の2人は結局なんだったのだろう
グラフィックがある以上どっかで出てくるもんだと思ってたけど
ホームズ宅の屋根裏に事務所かー!いいなあ
コート?と帽子OFFのホームズかっこいい
しかし都度都度思うけど、物語の進み方と残り話数が全然合わんのよ
「ようこそ倫敦へ」って勲章得てからあと1話って!!
1&2じゃなくて前編後編って各所で言われてるの見てたけどこういうことか…
第5話
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裁判無い時ってどうやって過ごしてんだろうなあ
二か月経って程よく散らかった成歩堂事務所の雰囲気良い~
ソーセキさん船に連れていけなくて猫置いてったそうだけど、日本からはどうやって連れてきたんだ…?
ハッチさんすき 絶対良い人
質屋、監視カメラとか置いてあるもの的に絶対ここで人が死ぬじゃんと思ってしまう
ホームズ宅といい質屋といい、圧倒的密度の背景グラフィックが豊富すぎる
ここでメグンダルの名前が
「to メグンダル」とあるオルゴールのディスクとコートをジーナが引き取りにきた
それを謎の白スーツ紳士が横取りしようとした(メグンダルの部下?)
アイリスの父親がホームズの相棒と聞いてア!?やっぱ1話のワトソンて…と思ったけど、アイリス5才で、母親は産んですぐ亡くなった(父親も同じくらい)って話と時系列が合わないか…
と思ったけどやっぱそうだったわい!!!死んだと勘違いしちゃってたけど遠い国に行ったってことでした
意外と成歩堂気づいたうえで冷静というか、一旦は言わない感じなのね
アイリスにとってはホームズが父親代わりみたいな感じなのか~
スサトさんが未発表のタイトルを知ってるのって、ミコトバ教授とワトソンが旧友だったからなのかなーとか
それを言う=父親は死んだってアイリスに伝えることになるから言えない?
スサトさんといえば単身で出頭の理由も気になる~~~~
気になることが多すぎる!!!!
ハッチの店にいた2人組 シルエットは見覚えない気がする
ホームズ、テキストで見てると軽薄さMAXで声ちょっと高い、20代後半くらいのイメージだけど、シリアスシーンのムービーだと声しっかりおじさんでしっかり34歳な感じがする
ハッチさんとジーナ・・・
ジーナが銃握って倒れてるのすげー嫌な予感 絶対疑われるじゃんこんなの
ジーナ、不遇過ぎる・・・
ジーナの起訴、ホームズは撃たれて手術中、そして急遽やむを得ない理由でスサトさんの帰国…終盤のピンチ感バリバリ
メグンダルの裁判での嘘がここで明らかになるのアツ
しかし抜かりないやつやな~~~~~!!
ハッチの死が明らかになると同時に3話の真相にも辿り着く構造、最高~!
スサトさんの帰国つらすぎる
スサト割りを食らった後に視界がボケるのは、成歩堂も涙腺にジンワリきてるんだろうな、ってのが見えてぐっときた
最後にホームズに何頼んだんだスサトさん~~!
というか今回は何の前振りもなく当たり前のように検事はおなじみバンジークスなんだな…
ソーセキ氏の裁判後また姿見せなくなったって話あったけど戻ってきたんだと思ってたら、成歩堂目当てなのか…この言い分は…
陪審員にテロリストおる気がするが…
グレグソン刑事=ウゼーアニキ扱いするくだりめちゃくちゃ笑う
悔しいがティンピラー兄弟のデザイン好きだ…かわいい…
ネミーとタリーとウゼーにティンピラーというネーミングセンスが最高
もう冒頭1ターン目で陪審員の有罪一致はおなじみになってきたな
最終弁論中に「検事のおにいちゃん!」って呼ばれてちゃんと写真見せてくれるバンジークスさん優しすぎる
陪審員の中にステレオスコープオタクがいてよかったなほんと
ティンピラー兄弟喋れば喋るほどまあまあ素直で(嘘はつきまくるが)人に危害を加えるタイプの悪党には見えないんだけど
まあホームズはしっかり撃ってるか…
ジーナがやってないとすると現時点ではこの兄弟が犯人になるけど、ハッチの心臓を一発で打ち抜いて殺すこととギャップを感じる…
それともまた証言されてない隠れた登場人物おるパターンか…?あの白スーツ紳士とか
関係ない時にネミーかタリーを問い詰めるとウゼーのアニキとの思い出話してくれるの草
もう最終弁論わざわざ申し立てなくてもサイバンチョが勝手に進めてくれるの草
保管庫にいたジーナとハッチ→ハッチさんが強盗に応戦に出る→強盗が拳銃を出したのを見て保管庫へ逃げ込む→それを背後から撃ち、倒れ込んできたハッチをみたジーナが保管庫の内側から鍵をかけた
ここまではスムーズに分かるけど、こうなるとハッチの拳銃とティンピラー兄弟の拳銃が一発ずつしか消費されてない問題突かれるだろうなあ
ハッチの拳銃でハッチが撃たれた、ティンピラーの拳銃でホームズが撃たれたの前提が違うっぽい?
ずっとホームズの血と仮定はされてるけど確定されてない黄緑の血、メグンダル宛のディスクが再登場したときにまさかとは思ったけど予想通りだった…
ということは、カレンダーの痕跡はホームズ以外の人間(エッグベネディクト)が撃たれた痕跡になってきて、あの場にもう一発撃たれた可能性が出てくるのか……混み入ってきた…
今ほど線状痕の技術ほしいと思ったことない
ティンピラー兄弟の拳銃は証言通りホームズを撃つのに使われた、ハッチさんの拳銃はエッグ氏(仮)に向けて撃たれた?(カレンダー痕跡分)で、ハッチさんはエッグ氏に撃たれた…?
第一話から通して、真犯人がその場にいない、第三の〇〇~みたいなケース多いな(ジェゼールは当初いないものとされてた、亜双義は成歩堂以外いない密室で殺された、ソーセキの件は言わずもがな)
線状痕や指紋の技術がない時代である部分と、この時代だからこそその領域にホームズのトンデモ発明が受け入れられるの良いバランスだなあ
と思ったらそこ突かれてて草だった やっぱ一応は素人の発明品だものな
ロシア人のデミトリさんだけ「無罪」「有罪」ボイスのイントネーションが独特なの細かいなあ
なるほどくんの一番の武器、陪審員の引きの強さかもしれん
ハッチさんのギャグキャラに見えて質屋の仕事に真摯すぎるくらい真摯なの好き過ぎる
��日も、ジーナにスリの子といいつつも拳銃向けられてもちゃんと話をして、見せるだけには付き合ってくれる回想シーン見てウッ……てなった 良い人過ぎる
本当の撃たれた流れを聞いた時多分そうなんじゃないかとは思ったけど、やっぱりジーナは危ないから保管庫に残して一人で向かったハッチさん……
ジーナが気絶したときの「急に、アタマの後ろが冷たくなって」って表現いいなあ
ここで亜双義との裁判の回想シーンは泣く
しかし黄緑の血がエッグ改めクログレイのものと思うと、あれだけ血が飛ぶほどしっかり貫通で撃たれて今ピンピンしてるのも変だよなあ
(クログレイてもしかして見た目真っ白なのとかけてる?)
クログレイが証言してる時にジッ…と揃って見つめてるティンピラー兄弟かわよ(逆にクログレイが見たらスッと逸らすのも好き)
クログレイの証言にまったくスキがない中ネミーとんでもないこと言ってくれて草
新聞の、極秘情報の打電がスパイによって~みたいな話にクログレイが絡んでるとしたら、グレグソン刑事も一緒になって証言を避けるあたりのつじつまも合いそうな予感
あ、それでグレグソン刑事がディスクの提出を止めようとしてたのと繋がってくるのか~!
預かり書をスリ取られた件は一回話してるやんけ~!と思うけど証拠が残っていないのと、グレグソン刑事がとぼけてる以上追及しづらいなあ
素直にスコープ覗いてびっくりするバンジークス卿よ
ここで第3話の自分の出した無罪に向き合うことになるのか~~ッ
そもそもメグンダルの判決の最後で、検察側は捜査が不十分だったと指摘されてたし、ここで成歩堂とジーナだけに責任がある感じで責められるのは若干理不尽やな
オルゴールにモールス信号?打電?的なこと・・・・
クログレイが電気技師?なのはここに通じてくるのか~~~~
この口の軽さ、ティンピラー兄弟ってお助けキャラなのでは?
ただ口軽いんじゃなくてスッキリと裏切っただけだった
よかった、ティンピラー兄弟人殺しまではしない奴らだって信じてた
ホソナガ刑事みたいな、味方サイドの証人であれ自分のポリシーに反する振る舞いにはハッキリ物申す姿勢のキャラ大好き
陪審員5号さんも、自分の仕事に誇りがあるからこその姿勢でクログレイに不利な情報をガンガン言ってくれるの最高に気持ちいいな
資料に三度焼きのモルターのフルネーム見つけた時のそういうことか~!!!感たまらんな
ここまでモルターさんだけ常々「三度焼きの���」で呼ばれていたのはここのためか…
”被告人は拳銃を除き窓から投げ捨てたので拾って逃げた”って証言に、拳銃を握って気絶していたジーナを突きつければいいじゃん!と思ったら、あれは証拠として登録されてなかった…
から、ジーナが持ってた拳銃を突き付けてみたけど、アウト…(説明文にジーナが手にしていたとあるけどダメなんか…)
メグンダルが受けたはずの返り血が、ジーナが撃った証拠になる皮肉…
これも科学捜査のない時代だからこその流れですごいな
ここで係官に扮したホームズ登場はアツい
とうとう法廷にホームズが!感慨深い
そしてスサトさんの置き土産…風呂敷といい第1話を思い出す……
ここでネコトビラ製造機!??予想外過ぎる
もしや、そもそも除き窓は無かった・・・!??
成歩堂が現場を離れたスキに、だからその後に成歩堂はその除き窓から現場を見ることができた
トビラにカーテンが絶妙にかかってるのはそういうことか…
それはそれとして、とっさに何故そんなことをスサトさん…!??
普通に、中の様子をすぐ確かめねば!って気持ちかな…
ウワーッ写真に対するルーペこれいつ使うねんと思ってたら……ルーペで事件前後の写真みたらちゃんと…除き窓の描写ある…………ヤバ………
一時はピンチに陥る要因になった写真が、そのまま大逆転に繋がる構成美しすぎる…
このひとつの嘘からほころびが出る瞬間たまらん
ずっとにおわせてた極秘任務がここで繋がるのか…
やっぱ追及のBGM最高すぎる 勝ち確演出
最後の追及をバンジークス自ら行うの流石すぎる 一生着いていきます
と思ったら急に手のひら返しやがって草
「検査して証拠出なかったら国際的な問題なるぞ!」って言ってきてるけど、そもそもその証拠がこの法廷内にある!って言い切ったのバンジークスやからね!??!
でももしグレグソン刑事が持っていたとして、堂々と検査を受けるか…?成歩堂の何かひっかかる気もする…コメントあるからストレートじゃなさそう
じゃあグレグソン刑事が証言台で他に何をしたか、あの不自然過ぎるネミーへ掴みかかったシーン思い出した瞬間の爽快感よ
ここでの台パンが「ペチ!」なのは不安になるからやめてほしい
バンジークスたまに都合良いけど基本的に筋は通ってるから憎めないなあ
しかし先読みしてネミーにディスクを押し付けたグレグソン刑事抜かりないなあ
ここまでくるとティンピラー兄弟はほんとうに巻き込まれた形で気の毒にすら見える…
ここでクログレイかグレグソン刑事に何かを突き付ける→クログレイにオルゴールを選択
最後に成歩堂とバンジークスで「目的のためならば手段は選ばない」って意見が一致するのアツすぎる
しかし最終話にして常にグレグソン刑事もクログレイも、後ろに巨悪を感じるなあ…
グレグソン刑事はグレグソン刑事で、機密が漏れることだけは避けるために取引に乗ったということか…
(まだちょっと3発の銃弾の時系列が理解できてないので後で整理したい)
クログレイの、下町での生活の呪縛から解き放たれるために、いまだに下町に住む父親に協力をお願いするというその…やるせなさというか…
メグンダル殺害そのままぼかされるかなと思ったけど、クログレイの復讐だったのか…
もう第3話は正気ではやれないよこんなん!!!!
ハッチさんがお客さんのことを想って「名乗らなくていい」って仕組みで店をやっていたばかりに利用されてこんなことになったと思うとやり切れない
クログレイは父親の仇を討つため、グレグソン刑事は国の命令に従うため、それぞれの動きが焦りを生んで、質屋に忍び込むまでに追い詰めてしまったグアア
あんなに騒がしかった陪審員が後半は流石におとなしかったな…
アア~数十年ぶりに再会した息子に協力を頼まれて技術を貸しつつも、何か違法なことに関わっていることだけは察して、けじめをつけるために自ら取引に赴いて殺されたモルターさん しんどすぎる
バンジークスさんやっぱ成歩堂基準で法廷きてたのかあ
過去に信頼して、裏切られた≪日本人≫がいると…(これは2で説明ありそうだな)
ジーナここにきて初登場のモーションで泣き笑顔はずるい
現場に細工した罪を成歩堂には影響がないよう黙っていたスサトさん、第1話の亜双義の弁護士への道のために替わりに弁護に名乗り出た成歩堂とかぶって泣くな……
ラストの、機密事項が陪審員5号が” 何の意味もない羅列 ”と言ったの気にはなっていたけど、和式のモールス信号だから英国人の5号にはわからなかったってこと…
内容は、「亜双義・サッシャー・グレグソン・ワトソン、以上の4人」
なんだこれ~~~~~~~~
ウウッ スサトさんと成歩堂がお互いを法務助手と弁護士としてリスペクトし合っている関係性が最高過ぎる
ウワ~~~~ここで終わるのかい
後日談風ED大好物
ワガハイの産んだ子猫を船に持ち込んでホソナガ刑事に捕まるソーセキさん草
結局奥さんは捕まってしまったけど、ガリデブさんの足がよくなったの地味にうれしい
ジーナはこれ出所後に探偵とか刑事なるフラグかな?
クログレイとティンピラー兄弟同じ牢屋で楽しそうでニッコリした
亜双義と歩くエンドロールあかん
ジェゼールの動機と最後の打電、亜双義の留学の目的、ホームズ未発表の新作を知っていたスサトさん、アイリスの父親の所在、メグンダルの背景?、ヴォルテックスの本心…etc……
こんなん速攻2やらないといかんやつや
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番外編はソーセキさんが可愛かった
2 notes · View notes
trinityt2j · 5 years ago
Quote
ダ-ティ・松本 不健全マンガ家歴30年[-α]史 ●はじめに  この文章は同人誌「FUCK OFF!7」において書かれたものをベースにして逐次増補改定を加えていき、いずれ歴史の証言として、[というほど大袈裟なものでは無いが…]一冊の本にまとめたいという意図のもと、近年どんどん脳が劣化していくダ-松の覚え書きとしても使用の予定。事実関係は間違いに気付き次第 訂正。同人誌発表時のものも今回自粛配慮して、実名、エピソード等を削除した箇所有り。有り難い事に某出版社よりすでに出版打診があったがまだまだその時期ではない、マンガを描く事が苦痛になったら活字の方も気分転換にいいかも…。 /*マークは今後書き加える予定のメモと心得たし。 ●前史/修行時代・1970 さいとうプロの短くて濃い日々……  1968年に上京。数カ月後東京は戦場に。熱い季節の始まりだった。 2年後親元を飛び出し友人のアパートに転がり込む。場所は渋谷から井の頭線で駒場東大駅下車、徒歩5分。地図で見ると現在の駒場公園あたり。昼間でも裸電球を付けなければ真っ暗という馬小屋のような部屋。数メートル先には当時の建設大臣の豪邸が…。前を通りかかるだびに警備のおまわりがじろり。  いつまでも友人に迷惑もかけられないのでとりあえずアシスタントでも…と手元にあったマンガ誌をひっくり返し募集を探す。幸いさいとうプロと横山まさみち氏のところでアシ募集があり両方応募。どっちか一つ通れば…と思っていたら何と両方受かってしまい、双方に条件を聞く。当時高円寺 のアパート、風呂無し4畳半の部屋で相場12000円の時代。前者一ケ月の給料10000円、後者20000円との事。給料の方がボロアパートの家賃より安いとは…!どう考えても前者は食う方法がないと判断し、後者さいとうプロへ入社。  ここに居たのはたったの半年に過ぎないけれど今思えばこれだけで本が一冊描ける位の濃い半年だった。しかしこのあと2X年分も書かねばならないことを思えば今回はいくつかのエピソードを書くだけに留めよう。  ダー松が入った時は小池一夫氏[クビ?]、神田たけ志氏や神江里見氏、きしもとのり氏[現・松文館社長]等と入れ替わりの時で、きし氏の女遊びの凄さと神江氏の絵のうまさは伝説になっていた。現在「亀有」「ゴルゴ」が歴代単行本の巻数の多いベスト1、2位だが[ともに100巻を越えた]、3位は神江氏の「弐十手物語」[70巻以上]だという事は知ってる人は少ないだろう。  当時の制作部は、さいとうたかを[以下ゴリ]をトップに石川班[ゴルゴ13、影狩り]、甲良班[バロム1]、竹本班[シュガー、どぶ等]の3つに分かれ、それぞれのキャップにサブ・チーフが一人づついて、ヒラが2~6人いるというシステムで総16名。独立し現在も活躍中の叶精作、小山ゆう、やまさき拓味の3名がそれぞれの班のサブ・チーフ。ダー松は石川班で左右1メートル以内に叶氏とゴリにはさまれ、のんびり出来ない状態で、はなはだ窮屈。叶氏はほとんどマンガ家になりたいとも思った事のなかった人で、設計事務所みたいなところで図面を引いていた人がなぜマンガプロダクションに来たのか不思議だった。格別マンガ好きというわけでもなかったせいか現在まで全ての作品が原作もので、オリジナルは一本もないのはそのせい?祭りなどの人がうじゃうじゃ出てくる群集場面が得意。 やまさき氏は大の競馬好き、現在競馬マンガを多く描くのは当時からの趣味が生きたというべきか。もう一つの趣味である風俗についてはここでは書くのは差し控えよう。小山氏は後日ここの事務の女性と結婚するが、当時はつき合っているとは誰も知らず、スタッフの一人がやめる時その女性に交際を申し込んだら、茶店に呼び出されて小山氏からと凄まれたと聞いたが嘘か本当かは不明。  ここでの生活は新入り[ダー松を含めて3名]は朝の9時前に会社に行き、タイムカードを押し、前日のごみをひとまとめして外に出し、トイレ掃除をして、16人分のお茶を2Fで入れて制作部のある3Fへの狭い階段をふらふら昇り、机ごとに置いて歩き、終れば、一息ついて買っておいたパンと牛乳を3分で食べて、やっとそれから仕事。しかし新入りの3名の内1人折茂は常に遅刻なのでいつも佐藤と2人でやっていた。佐藤も遅れる時はダー松1人で。辞めてから10年位、16人分のお茶を持って階段をふらふら歩きお盆をひっくり返す夢をよく見たものだが、実際ひっくり返したのは折茂と佐藤の2人で、よく茶碗を割っていた。 たまには夕方6時には帰れるが、普通は夜10時までで、アパートに帰って銭湯に行けばもう明日にそなえて寝る時刻、このくり返しの日々。週1日は徹夜で明け方に帰り、その時は当日の昼12時出勤。休日は日曜日のみで忙しい時はそれも取り消し。つまり休みは月3日。[これで給料2万円!]そんな日々の繰り返し。  夕方までは皆和気あいあいと仕事していたが、ゴリが夕方6時頃に「おはようさん」と現れると、全員無駄口がたたけなくなり、仕事場はシーンと静まり返り、以下その日が終わるまでは疲れる時間がただひたすら流れるのみ。 当時石川班は「ゴルゴ13」と「影狩り」を描いていたがゴリは主人公の顔と擬音のみ。マジックで最後に入れる擬音はさすがに入れる位置がうまいと感心。ゴルゴの顔はアルバムに大小取り混ぜてコピーがとってあり、忙しい時は叶氏がピンセットで身体に合わせて「これが合うかな~」といった感じで貼り付けていた。  その頃すでに「ゴルゴ」は近々終わると噂されていたが、現在もまだ続いているとは感嘆ものだ。 ゴリと石川氏が「ゴルゴ」の最終回の終わり方を話しているのを聞いたら、何ともつまらない終わり方。しかしあれから20年以上も経つ事だし、きっともっといい終わり方を考えてあるだろうなと思っていたら、先日TVで本人が最初から考えてある終わり方だと言うのを聞き、がっくり。企業秘密だろうから書かないが、作品の最初の方に伏線が数度出ているのでわかる人にはすぐわかる筈。  辞めた小池一夫氏とさいとうプロに何があったかは知らないが、漏れ聞く話では結構もめ事があったみたいだ。 「子連れ狼」で「ゴルゴ13」と同じ設定の回があった時、「小池のガキャー訴えたるー!」とゴリが吠えていたものだが、結局たち消え。さいとうプロ作品で脚本を書いた本人が辞めた後、他の作品で同趣向の作品を書いても著作権は脚本を書いた原作者のものだと思うがどんなものだろう。その回のタイトルは忘れたが、ある場所に居合わせた人々が武器を持った集団の人質となり、その中に素人だと思われていた主人公、実は殺しのプロフェッショナルがいて、次々とその集団を殺していく、といったプロットで、ミッキー・スピレーンの短編に同じような作品があり、本当に訴えていたら恥をかいたと思うが・・・。  そういえば事務の方には山本又一郎という男がいたが、後年映画プロデューサーとして 「ベル薔薇」や「太陽を盗んだ男」等を創る事になるが、この野郎が生意気な男で当時皆に対して10歳は年上、といった感じの振る舞いだったが後日俺と一つしか年が離れて���かった事を知り、そんな若造だったとは、と皆怒ったものだ。以来奴の事を「マタ��ん」から「クソマタ」と呼ぶようになる。  さて半年後に先輩たちが積もり積もった不満を爆発させる反乱事件が勃発し、2年は居るつもりでいたここでの生活も、辞めるか残るかの選択を迫られる。残ればさいとうプロの現体制を認める事となるので、ダー松も退社。 しかし反乱グループとは別行動をとって一人だけの肉体労働のアルバイター生活へ突入。超ヘビーな労働の製氷工場、人使いの荒い印刷所、命綱もない高所の足場で働く建設現場等々。トラックの助手をしていた時は運ちゃんが「本宮ひろしって知ってるか?うちの息子の友達でさぁ、昔、おっちゃんメシ食わしてくれーなんて言ってきたもんだが、今は偉くなっちゃってさー、自分のビル建てたらしいよ。赤木圭一郎みたいにいい男なんだ。」とうれしそうに話してくれたが、運ちゃんには悪いがそいつは今も昔も一番嫌いなマンガ家なんだ。あの権力志向はどうにかならんか。天下を取る話ばかりだもんなぁ。  ところで後日、単行本の解説で高取英が「さいとうたかをのヤローぶっ殺してやる!」とダー松が言ったなどと書いているが、小生はそんな危ない事言った覚えはないのでここできっちり訂正しておきます。 「会社に火ィつけてやる!」位は言ったかも・・・[嘘] 。 悪口は言っても別に怨みなど無い。ところでアシスタントとしてのダー松は無遅刻、無欠勤以外は無能なアシだったと反省しきり。理想的なアシスタントとはどんなものか、それはまた別の機会に。 *入社試験はどんな事を? *さいとうプロには当時ほとんどろくな資料は無かった? *ハイジャックの回の飛行機内部の絵は、映画「大空港」を社内カメラマンが映画館で写してきたものをもとに描く。 *当時のトーンは印刷が裏面にしてあり上からカッターでけずったり出来ない。 *トーンの種類は網トーンが数種、それ以外はほんの3、4種類位しかなかった。 *仕事中のB.G.M.はアシの一人が加山雄三ばかりかけるので大ひんしゅく。好評だったのは広沢虎造の浪曲「次郎長三国志」、初代桂春団次の落語。眠気もふっとぶ位笑えた。 ダ-松が岡林信康の「見る前に跳べ」をかけてるとゴリは「何じゃー!この歌は!」と怒る。名曲「私たちの望むものは」はこの男には理解不能。 ●1 9 7 1 ~ 1 9 7 4  持 ち 込 み & 実 話 雑 誌 時 代    当時は青年劇画誌全盛時代で、もともと望月三起也氏や園田光慶氏のファンで活劇志向が強く、 主にアクションもののマンガを描いて持ち込みに行っていた。今のようにマンガ雑誌が溢れかえって、山のようにマンガ出版社がある時代ではなく、数社廻るともう行くところがない、という状態で大手では「ビッグコミック」があっただけで 「モーニング」も「スピリッツ」も「ヤン・ジャン」も当然まだない。テーマを盛り込んだ作品を持って行くと編集から「君ィ、うちは商売でやっているんだからねぇ」と言われ、アクションに徹した作品を持って行くと「君ぃ、ただおもしろいだけじゃあねぇ」と言われ 「おい、おっさん!どっちなんだ?」とむかつく事多し。この辺の事は山のように書く事があるが、有りすぎるのでパス。 *そのうち書く事にする。  ただ金属バットで頭をカチ割って脳みそをぶちまけてやりたいような奴が何人もいたのは事実。今年[’97]「モーニング」に持ち込みに行って、断られた奴が何万回もいやがらせの電話をかけて逮捕された事件があったが、そのうちトカレフを持って殴り込みに行く奴が出てくるとおもしろい。出版社も武装して大銃撃戦だぁ!などと馬鹿な事書いてどうする!とにかく持ち込みにはいい思い出が何もない。そんな中、数本だけ載った作品は渡哲也の映画「無頼」シリーズの人斬り五郎みたいな主人公がドスで斬り合う現代やくざもの[この頃の渡哲也は最高!]、ドン・シーゲルの「殺人者たち」みたいな二人組の殺し屋を主人公にした『汚れたジャングル』、陽水の「傘がない」が好きだという編集さんの出したテーマで車泥棒とブラックパンサーの闘士とのロード・ムービー風『グッバイ・ブラザー』、拳銃セールスマンを主人公にした『ザ・セールスマン』、等々10本ちょい位。  さてその頃並行してまだエロマンガ専門誌といえるようなものがなかったような時代で、実話雑誌という写真と記事ページからなる雑誌に4~10ページ位を雑誌の味付けとして描かせてもらう。当時、お手本になるようなエロマンガなど皆無で、エロ写真雑誌を古本屋で買ってきてからみのポーズを模写。マンガで裸を描く事はほとんど初めてで、これがなかなか難しいのだがエロシーンを描くのは結構楽しい。当時出版社に原稿持って行き帰りにグラフ誌をどっともらって帰るのが楽しみだった。SM雑誌の写真ページも参考になる。なお当時のペンネームは編集部が適当につけた池田達彦、上高地源太[この名前はいけてます。また使いたい]等。その数年後、逆にマンガが主で記事が味付けというエロマンガ誌が続々と創刊される。 *さいとうプロをやめたあと編集や知人に頼まれて数人のマンガ家の所へ手伝いに行く。秋田書店「漫画ホット」で『ジェノサイド』を連載中の峰岸とおる氏の所へ行き、仕事が終わったあとまだ売れてない頃の榊まさる氏も交え酒を飲む/川崎のぼる大先生のところへ数日だけ/3000円たこ部屋/小山ゆうオリオンププロ *当時のアルバイトは記憶によると時給150~200円位/大日本印刷市ヶ谷駐屯地/坂/ *一食100円/どんなに貧しい漫画家もみかん箱の上で書くやつはいない/TV萩原サムデイ *ろくでなし編集者 ●1 9 7 5 ~ エ ロ マ ン  ガ 誌 時 代 に 突 入   実話誌は意外とエロは抑え目で描くように口すっぱく言われていたのだが、以前活劇っぽい作品を描かせてもらってたが潰れてしまった出版社にいた児島さんが編集する「漫画ダイナマイト」で打合せも何にもなしに好きに描かせてもらい、ここでエロマンガ家としての才能[?]が開花する。描いてて実に楽しく眠る時間がもったいない位で、人に睡眠時間が必要な事を恨んだ程。出来る事なら一日中休まず描いていたい気分で完全にはまってしまう。  初の連載作品「屠殺人シリーズ」はこの頃から/『漫画ポポ』。中島史雄氏は大学時代にこの作品を見ていたとの事で、トレンチコートにドクター・ペッパー模様のサイレンサーつきマグナム銃で遊戯人・竜崎一也が犯しまくり殺しまくり、サディスト、マゾヒスト、殺人狂、まともな奴が一人も出てこない性と暴力の祭典。ちなみにタイトルページは描かないでいい、との事でどうするのかと思っていたら編集部が中のワンカットを拡大してタイトルページを創り、1ページぶんの原稿料をけちるというせこいやり方だった。けちるといえば、原稿の1/3にCMを入れる際、原稿料を1/3削った会社もあり。 ●1 9 7 6 ~   後に発禁仲間となる高取英と出逢い、『長編コミック劇場』で「ウルフガイ」みたいのをやろうと、怒りに震えると黒豹に変身してしまう異常体質の主人公を設定し、獣姦のイメージで「性猟鬼」なるエロマンガをスタート!しかしその号で雑誌が潰れる。この路線は今でもいけそうな気がするがどんなものだろう。  この頃の珍品に「快楽痴態公園」がある。タイガースに11-0とワンサイドで打ちまくられ、怒ったジャイアンツファンのおっさんが公園でデート中の女をずこずこに犯りまくり、その間にジャイアンツは9回裏に12-11とゲームをひっくり返してしまうのである!その時のジャイアンツの監督はもちろんミスター長嶋、先発堀内、打者は柴田、土井、高田、王、張本等々がいる。タイガース監督は吉田、ピッチャー江本、キャッチャーフライを落球する田淵、そしてあの川藤もいる。解説は牧野…… ●1 9 7 7 ~   上記2作品を含む初の単行本「肉の奴隷人形」が久保書店より発行。後にリングスの会場で逢った佐竹雅昭氏はこの本が一番好きとの事だった。  「闇の淫虐師」もこの年スタート。一話完結でバレリーナ、バトンガール等々、毎回いろんな女��ちをダッチワイフのごとくいたぶりまくるフェチマンガとして1979年まで続け、単行本は「堕天使女王」「裂かれた花嫁」「エロスの狂宴」「陶酔への誘い」「終りなき闇の宴」の全5巻。ちなみに今年「闇の淫虐師’97」を『コミック・ピクシィ』にて発表。いつか『闇の淫虐師・ベスト選集』でも出したいところ。 [’98に実現、’99には続刊が出る] ●1 9 7 8 ~   久保書店より第2弾の単行本「狂った微惑人形」。収録作品の「犯された白鳥」は持ち込み時代に描いた初のバレリーナもの。結構気に入っていた作品なのに、後年再録の際、印刷所の掃除のおばさんが捨ててしまい、この世にもはや存在しない不幸な子となる。[’99に宝島スピード・ブックに本より直接スキャンして収録]  エロ、グロ、ナンセンスの会心作「恍惚下着専科」を発表。サン出版より同名の単行本発行。また同出版より「コミック・ペット/堕天使画集」として今までの作品を続々単行本化。全10巻位。これは今でも古本屋で流通しているとの事で、まだまだ世間様のお役にたっているらしい。  この年、「堕天使たちの狂宴」を描いていた『漫画エロジェニカ』が発禁処分、来年でもう20年目となる事だし、当時の人たちと集まってその大放談を収録し「発禁20周年特集号」でも創ってみようかと計画中。さて当時の秘話としてもう時効だろうから書いてみるけど、前述の『堕天使画集』に「堕天使たちの狂宴」は収録される事となり、当然修正をガンガン入れて出版されるものと覚悟していたら、米国から帰国後出来上がった本を見ると発禁になった状態のまま再録されている!以下桜木編集長との会話 ダ/いや~、いい度胸してますね。 編/だって修正してあるじゃない。 ダ/その修正状態で発禁になったんですよ 編/・・・・・ ダ/・・・・ 以下どんな会話が続いたのか失念…… それにしてもサドの「悪徳の栄え」の翻訳本は発禁後20年以上して復刻されたけれど、「堕天使たちの狂宴」は半年もしない内に単行本になっていたとはエロ本業界とは何といいかげんな世界!しかし作品そのものは、今見るとリメイクする気にもならないどうという事もない可愛い作品で、結局あれもあの時代の姑息な政治のひとかけらに過ぎなかったのだろう。いい点があるとしたら一つだけ、それまでのエロマンガになかった瞳パッチリの少女マンガ的ヒロインを登場させた事位か。今の美少女エロマンガは本家の少女マンガもかくや!という位眼が大きいが当時としては画期的だったかも。 ●1 9 7 9 ~   この年の「淫花蝶の舞踏」は「堕天使たちの狂宴」よりずっといい/『漫画ソフト』。今年出た「別冊宝島/日本一のマンガを探せ!」でベスト2000のマンガがセレクトされているが、ダー松の作品の中ではこの作品が選ばれている。教師と生徒、二人の女たちが様々な男たちの手によってに次々ともてあそばれ、闇の世界を転々として再び巡り会う時、女たちは蝶と化し水平線の彼方に飛び去り、男たちは殺し合い血の海の中で屍と化す。ダー松作品にはこのように男根が女陰の海に飲み込まれてに負けるパターンが多い。[性狩人、遊戯の森の妖精、美少女たちの宴、人魚のたわむれ・・等々]  この年からスタートの「性狩人たち」シリーズ[劇画悦楽号]はバレエ、バイオレンス、SEXの三要素がうまくからみあい、それぞれが頂点まで達する幸福な神話的作品だ。ここから派生した路線も多く、美少年路線は’83の「聖少女黙示録」へ。身体障害者路線は’80の「遊戯の森の妖精」、’84からの「美姉妹肉煉獄」へと繋がる。’81の最終話「ハルマゲドンの戦い」ではせりふなしで24ページ全てが大殺戮シーンという回もあり、中でも一度やりたかった見開きで銃撃戦の擬音のみという事も実現。こんな事がエロマンガ誌で許される時代だった。ちなみにこの回は[OKコラルの決闘・100周年記念]だが、何の意味もない。単行本は最初サン出版より、その後久保書店より「白鳥の飛翔」「少女飼育篇」「ヘラクレスを撃て!」「眼球愛」「海の女神」の全5刊。現在入手出来るのは後の3刊のみ。[「海の女神」も最近在庫切れ]  この年出た「人魚のたわむれ」の表題作は性器に{たこ}を挿入するカットを見た編集長が「・・・[沈黙]・・・頭おかしいんじゃ・・ブツブツ・・気違い・・・ブツブツ・・・」と呆れてつぶやいていたのを記憶している。たこソーニューは今年出た「夜顔武闘伝」で久しぶりに再現。なおこの作品は’83にマンガと実写を噛み合せたビデオの珍品となる。水中スローモーションファックがなかなかよい。 ●1 9 8 0 ~   なぜか「JUNE」の増刊として作品集「美少女たちの宴」がサン出版より出版され、その短編集をもとに脚本化し日活で映画が創られる事となる。[「花の応援団」を当てたこの映画の企画者・成田氏は日活退社後「桜の園」等を創る。]その際、初めて映画撮影所を見学し、せこいセットがスクリーン上ではきちんとした絵になってるのを見て映画のマジックに感���。タイトルはなぜか「性狩人」で、’96にビデオ化された。監督・池田敏春のデビュー第2作となり現在までコンスタントに作品を発表しているが、出来のいい作品も多いのになぜか代表作がない。初期の「人魚伝説」が一番いいか。  この映画に合わせて「美少女たちの宴」を2~3回のつもりで「漫画ラブラブ」で描き出すがどんどん話がふくらみ、おまけに描いてる出版社が潰れたり、雑誌が潰れたりで雑誌を転々とし条例による警告の嵐がきた「漫画大飯店」を経て、「漫画ハンター」誌上で完結したのは’83になる。この作品でクリトリスを手術してペニスのように巨大化させるという人体改造ものを初めて描く。  この年の「遊戯の森の妖精」は身体障害者いじめ鬼畜路線の第2弾!森の中の別荘に乱入したろくでなしの二人組が精薄の少女の両親達を虐殺し、暴行の限りをつくすむちゃくちゃな作品で、雷鳴の中、少女の性器に男達のペニスが2本同時に挿入されるシーンは圧巻!しかしこのとんでもない男達も少女の性のエネルギーに飲み込まれ、朽ち果てていく・・・。 ●1 9 8 1 ~   美少女マンガ誌のはしり「レモン・ピープル」誌創刊。そこで描いたのが「白鳥の湖」。虚構の世界のヒロインを犯すというコンセプトは、アニメやゲームのヒロインをずこずこにするという今の同人誌のコンセプトと同じかも。バレエ「白鳥の湖」において悪魔に捕われたオデット姫が白鳥の姿に変えられる前に何にもされてない筈がないというモチーフにより生まれたこの作品は、悪魔に男根を植えつけられたヒロインが命じられるままに次々と妖精を犯して歩き悪魔の娘となるまでを描くが、あまり成功したとは言えない。ただ人形サイズの妖精をしゃぶりまくり淫核で犯すアイデアは他に「少女破壊幻想」で一回やっただけなのでそろそろもう一度やってみたいところ。「ダーティ松本の白雪姫」はその逆をいき、犯す方を小さくした作品で7人の小人が白雪姫の性器の中にはいり、しゃぶったり、処女膜を食べたり、と乱暴狼藉![ちなみに両者をでかくしたのが同人誌「FUCK YOU!3」の「ゴジラVSジュピター」]この童話シリーズは意外と好評で続いて「ダーティ松本の赤い靴」を上記の単行本に描き下ろして収録。童話は結構残酷なものが多く、この作品も切られた足だけが荒野を踊りながら去って行くラストは原作通り。 *近年童話ブームだがこの頃もっと描いておけば「こんなに危ない童話」として刊行出来たのにとくやまれる。 「2001年快楽の旅」もこの本に収録。快楽マシーンを逆にレイプしてしまう、珍しく映画「2001年宇宙の旅」風のSF作品。  掲載誌を決めずに出来る限り多くのマンガ誌で描こうというコンセプトで始めたのがこの年スタートした「怪人サドラン博士」シリーズ。「不死蝶」シリーズや「美少女たちの宴」シリーズの中にも乱入し、「漫画ハンター」最終号では地球をぶっ壊して[その際地球は絶頂の喘ぎ声をあげ昇天する!]他の惑星へ行ってしまう。今のところ10誌位に登場。いつかこのサドラン・シリーズだけ集めて単行本化したいところ。ちなみに「サド」と「乱歩」を足して「サドラン博士」と命名。作者の分身と言っていい。 [後年、「魔界の怪人」として全作品を収録して刊行、04年現在品切れ中]  この年描いて’82の単行本『妖精たちの宴』に収録の「とけていく・・」はレズの女たちが愛戯の果てに、肉体が溶けて一匹の軟体動物と化す、タイトルも内容も奇妙な作品。作者の頭もとけていた? ●1 9 8 2 ~ 1 9 8 3   ’83年に「美少女たちの宴」が完結。全てが無に帰すラストのページは真っ白のままで、このページの原稿料はいりません��と言ったにもかかわらず払ってくれた久保書店、偉い![明文社やCM頁の稿料を削った出版社=某少年画報社なら払わなかっただろうな……と思われる……]この作品以外は短編が多く、加速度をつけてのっていく描き方が得意のダー松としてはのりの悪い時期に突入。また10年近く走ってきてだれてきた頃でもあり第一次落ち込み期と言っていい。マンガがスタンプを押すように描けないものか、などとふとどきな考えまで湧いてくる。思えば一本の作品には、いったい何本の線を引いて出来上がっているものなのか。数えた馬鹿はいないだろうが数千本は引いている筈。一ヵ月に何万本とペンで線を引く日々・・うんざりする筈です。  この頃のめぼしい短編をいくつか書くと、少女マンガ家の家に税務調査にきた税務署員が過小申告をネタにねちねちいたぶるが、アシスタントに発見された署員は撲殺される。そして板橋税務署は焼き討ちにあう、といった作品「[タイトル失念]xx税務調査」。[後日読者よりこのタイトルを「色欲ダニ野郎」と教えていただく。ひどいタイトル *編集者のつけるタイトルはその人のセンスが実によくわかる。しかしサイテ-の題だなこりゃ…。 果てるまで「おまんこして!」と言わせながら処女をやりまくる「美処女/犯す!」はラスト、狂った少女が歩行者天国の通行人を撃ちまくり血の海にする。「嬲る!」はパンチドランカーとなった矢吹ジョーが白木葉子をサンドバッグに縛りつけ、殴って、殴って、殴りまくる。段平おっちゃんの最後のセリフ「・・ブスブスくすぶっちゃいるが・・・」「打てッ!打つんだ!ジョー!」「お前はまだ燃えつきちゃいねえ!」とはエロ・ドランカーの自分自身に向けて発した言葉だったのかも。トビー・フーパーばりの「淫魔のはらわた」は電気ドリルでアナルを広げてのファック!とどめにチェーンソーで尻を切断!いまだに単行本に収録出来ず。[’98の「絶頂伝説」にやっと収録]「からみあい」は夫の愛人の性器を噛みちぎる。「危険な関係」はアルコール浣腸をして火をつけ尻から火を吹かせる。この手は『FUCK YOU!2』の「セーラー・ハルマゲドン」で復元。そういえばこの作品の序章と終章だけ描いて、間の100章位をとばすやりかたはこの頃の「禁断の性獣」より。女性器にとりつき、男性器に変身するエイリアンの侵略により地球は女性器を失い滅亡する、といったストーリーで当時聞いた話では谷山浩子のD.J.でこの作品がリスナーの投書でとりあげられ、ダー松の名はダーティ・杉本と読まれたそうな。ヒロインの少女がひろ子という名前なのでこのハガキが選ばれたのかもしれないが、作者は薬師丸ひろ子からとったつもりだったのだが・・。[別にファンではない。] 「女教師狩り」は映画館で観客に犯される女教師とスクリーン上の同名のエロ映画の二本が同時進行し、一本で二本分楽しめるお得な作品。 ’83は’80に「漫画エロス」にて描いた「エロスの乱反射」の最終回の原稿が紛失したため単行本が出せないでいたのを、またまた「仏の久保さん」に頼んでラスト近くをふくらませて「漫画ハンター」に3回程描かせてもらい、やっと’85に出版。見られる事に快感を覚えるファッション・モデルが調教される内に、次第に露出狂となっていき、街中で突然裸になって交通事故を起こさせたり、最後はビルの屋上でストリップショー。そしてカメラのフラッシュの中に飛び降りていき、ラスト1ページはその性器のアップでエンド!  本格美少年・ゲイ・マンガ「聖少女黙示録」も’83。レズの姉たちの手によって女装に目覚めた少年がホモのダンサーたちに縛られなぶられ初のポコチンこすり合いの射精シーン。そして性転換して女となった主いるが、その中の’84の「白い肌の湖」はタイトルで解る通りのバレリーナものだがポコチンを焼かれた男が、一緒に暮ら人公が手術で男になった少女と暮らすハッピーエンド。この作品は単行本「美少女ハンター」に収録されてす二人の女と一人の男に復讐するエンディングがすごい!まず男の性器を切り取り、片方の女の性器にねじ込んだあと、その女の性器ごとえぐり取る。そしてその二つの性器をつかんだまま、もう一人の女の性器にフィストファック!のあげく、その二つの性器を入れたままの女性器をナイフでまた切って、ほとんどビックマック状態でまだヒクヒクうごめく血まみれの三つの性器を握りしめるとんでもない終り方!全くダー松はこんな事ばかりやっていたのかとあきれかえる。もう鬼畜としか言い様がない!しかし「ウィンナー」を二枚の「ハム」で包むなんて・・GOODなアイデアだ、又やってみよう。 ●1 9 8 4 ~   「漫画ハンター」で「闇の宴」前後篇を描き、後日これをビデオ化。雪に包まれた六本木のスタジオで痔に苦しみながらの撮影。特別出演として中島史雄氏が絶妙の指使い、東デの学生時代の萩原一至が二役、取材に来たJITAN氏もスタジオに入ってきた瞬間、即出演で生玉子1000個の海で大乱交。カメラマンが凝り性で照明が気に入るまでカメラを廻さず、たった二日の撮影はやりたい事の半分も出来ず。撮影が終ると痔はすぐに完治。どうもプレッシャーからくる神経性だったみたいでこれに懲りてビデオは一本のみ。 この年の「肉の漂流」は親子丼もので、近所の書店のオヤジからこの本はよく売れたと聞いたが、一時よく描いたこのパターンは最近では「FUCK YOU!3」の「母娘シャワー」のみ。熟女と少女の両方が描けるところが利点。「血の舞踏」は久しぶりの吸血鬼もの。股間を針で刺し、噛んで血を吸うシーン等々いい場面はあるが、うまくストーリーが転がらず3回で止める。短編「果てるまで・・」は核戦争後のシェルターの中で、父が娘とタイトル通り果てるまでやりまくる話。被爆していた父が死んだ後、娘はSEXの相手を捜して黒い雨の中をさまよう。  またリサ・ライオンの写真集を見て筋肉美に目覚め、マッチョ女ものをこの頃から描き出す。しかしなかなか筋肉をエロティックに描くのは難しい。 ●1 9 8 5 ~   くたびれ果ててすっかりダレてきたこの頃、8年間働いてくれたアシスタント女史に代わってパワーのかたまり萩原一至、鶴田洋久等が東京デザイナー学院卒業後加わってダーティ・マーケットも第2期に突入!新旧取り混ぜておもしろいマンガをいろいろ教えて貰って読みまくる。「バリバリ伝説」「ビーバップハイスクール」「ペリカンロード」「めぞん一刻」「わたしは真悟」「Be Free!」「緑山高校」「日出処の天子」「吉祥天女」「純情クレイジー・フルーツ」「アクター」「北斗の拳」「炎の転校生」「アイドルをさがせ」「綿の国星」「いつもポケットにショパン」「バツ&テリー」「六三四の剣」永井豪の絶頂期の作品「バイオレンス・ジャック」「凄之王」「デビルマン」等々100冊以上とても書ききれない位で、う~ん・・マンガってこんなにおもしろかったのか、と感動! そこで眠狂四郎を学園にほうり込んで、今まであまり描かなかった学園マンガをエロマンガに、というコンセプトで始めたのが「斬姦狂死郎」。「六三四の剣」ばりに単行本20巻を目指すものの、少年マンガのノリは今では当たり前だが、当時はまだエロマンガとして評価されず、ほんの少し時代が早すぎたかも。’86に中断、今年’97に「ホリディ・コミック」にて復活!果たしていつまで続けられるか? →後に「斬姦狂死郎・制服狩り」、「斬姦狂死郎・美教師狩り」として刊行完結  前年末から始めた「美姉妹肉煉獄」は身障者いじめの鬼畜路線。盲目の姉とその妹を調教して性風俗店等で働かせ、娼婦に堕していく不健全・不道徳な作品で、肉の快楽にひたっていく盲目の姉に対し妹も「春琴抄」の如く己の眼を突き、自らも暗黒の快楽の世界にはいり、快楽の光に目覚めるラスト。 また、これからは女王様物だ!となぜか突然ひらめき「筋肉女」シリーズの延長としてフィットネス・スタジオを舞台に「メタル・クイーン」シリーズも開始。これは単行本2冊分描いたが、連載途中でヒロインの髪型を歌手ステファニーのヘア・スタイルにチェンジしたり、レオタードもたっぷり描けてわりと気に入っている。  10年近く描いた「美蝶」先生シリーズもこの年スタート!こうしてみるとマンガを描く喜びに満ちた大充実の年だったかも。 ●1 9 8 6 ~   この年は前年からの連載ものがほとんどだが、「エレクト・ボーイ」は空中でファックするシーンが描いてみたくて始めた初の超能力エロマンガ。コメディ的要素がうまくいかず2回で止める。この路線は翌年の「堕天使輪舞」で開花。  「夜の彷徨人」は自分の育てた新体操選手が怪我で選手生命を失ったため、その女を馬肉のごとく娼婦として夜の世界に売り渡した主人公という設定。しかし腕を折られ、女にも逆に捨てられ、そして事故によってその女を失ったあげく不能となってしまう。失った快楽を取り戻すため無くした片腕にバイブレーターを取りつけ、夜の街をさすらい次々と女たちをレイプしていくというストーリー。がっちり設定したキャラだったのにまったく話がはずまず、男のポコチンは勃起しないままに作品も不発のまま終る。  「斬姦狂死郎」が不本意のまま終わったため学園エロス・シリーズは「放課後の媚娼女」へと引き継がれる。当時見ていた南野陽子のTV「スケバン刑事・」とS・レオーネの「ウエスタン」風に料理。ラストの「男といっしょじゃ歩けないんだ」のセリフは一番好きな映画、鈴木清順の「東京流れ者」からのもじり。単行本は最初司書房から出て、数年後ミリオン出版から再販、そして’97久保書店より再々販ながら結構売れて今年また再版。この作品は親を助けてくれる有難い孝行息子といったところ。 ●1 9 8 7 ~   さいとうプロOBで那珂川尚という名のマンガ家だった友人の津田が「漫画ダイナマイト」の編集者になっていて、実に久しぶりに同誌で「堕天使輪舞」を描く。超能力エロマンガの第2弾。今回はエロと超能力合戦とがうまくミックスされ一応成功といっていい。この路線は「エレクト・ボーイ」とこの作品、そして’96の「夜顔武闘伝」も含めてもいいかも。一時、この手の作品は数多くあったが最近はめったに見かけない。しかし、まだまだこの路線には鉱脈が眠っているとにらんでいるがどんなものだろう。 ●1 9 8 8 ~   「放課後の媚娼女」に続いて抜かずの凶一無頼控え「放課後の熱い祭り」を2年がかりで描く。’89に完結し司書房より単行本化。そして今年’97に改定してめでたく完全版として復刊!この頃が一番劇画っぽい絵で、たった2~3人のスタッフでよくこれだけ描き込めたなと改めて感心!エロシーンがちょっと少なめながら中島史雄氏がダー松作品でこの作品が一番好き、とお褒めの言葉を頂戴する。  TVで三流アマゾネス映画を見ている内、むくむくとイメージがふくらみ、昔から描きたかった西部劇と時代劇がこれで描けると、この年スタートさせたのが「不死蝶伝説」なるアマゾネス路線。昔々青年誌の創世期にあのケン月影氏がマカロニ・ウエスタンを描いていたことを知る人は少ないだろう。俺もあの頃デビューしていたらウエスタンが描けたのに、と思う事もあったが、このシリーズでほんの少しだけその願望がかなう。  この頃、アシスタントやってくれてた格闘技マニアの鶴田洋久に誘われ、近所の空手道場通いの日々。若い頃修行のため新宿でやくざに喧嘩を売って歩いたという寺内師範は、もう鬼のような人で、行けば地獄が待っていると判っててなぜ行く?と不思議な位休まず通う。体育会系はマゾの世界と知る。組手は寸止めではなく顔面以外は当てて可だったので身体中打撲のあざだらけ、ビデオで研究したという鶴田の体重をかけたムエタイ式の蹴りをくらい、右手が饅頭のように腫れ上がる。先輩たちの組手の試合も蹴りがもろにはいってあばら骨が折れたりで、なぜこんなヘビーな事をする?と思うが、闘う事によって身体の奥から何か沸き上がってくるものがある。スリランカの元コマンドと組手をやった時、格闘家の気持ちが少しだけ判るようになった。 ●1 9 8 9 ~   ’94まで続く「美蝶」シリーズでこの年は『ノスフェラトウ篇』を描き、シリーズ中これが一番のお気に入り。同人誌の「王夢」はこれが原点。  短編では「悪夢の中へ」はスプラッタ・エロマンガで久しぶりにチェーンソゥでお尻のぶった切り!はらわた引きずり出し、人肉食いちぎり!顔面叩き割り等々でラストに「ホラービデオの規制をするバカは俺が許さん!」などと書いているので、この年が宮崎事件の年か?世間は彼が日野日出志・作のホラービデオ「ギニーピッグ」を見てあの犯罪をおかした、としてさんざんホラービデオの規制をやっといて、結局見てもいなかったとわかったあとは誰一人日野日出志氏にもホラービデオさんにも謝らす゛知らんぷり。残ったのは規制だけで、馬鹿のやる事には全く困ったもんである。先日の「酒鬼薔薇・14才」の時も犯罪おたくの心理学者が、「これはマンガやビデオの影響です。」などと相も変わらずたわけた寝言をぬかしていたが、馬鹿はいつまでたっても馬鹿のまま。少しは進歩しろよ!お前だよ、お前!短絡的で幼稚な坊や、小田晋!よぅく首を洗っとけ!コラ!  「獣人たちの儀式」は退学者や少年院送りになつた生徒、暴走族、ヤクザ達が集まって酒盛りしながら女教師たちをずこずこにしてOB会をひらく不健全作品。編集長が「また危ない作品を・・・」とこぼしたものだが、岡野さん、田舎で元気にお過しでしょうか。この頃の「漫画エロス」には「ケンペーくん」だとか「アリスのお茶会」だとかおもしろい作品が載っていたものです。「爆走遊戯」は伝説のストーカー・ろくでなしマンガ家の早見純が一番好きな作品と言ってくれたが、なぜだかわからない。人の好みはいろいろです。以上3本は単行本「熱き唇の女神」に収録。 「ふしだらな女獣たち」はフェミニストの女二人が美少年をいじめる話。これは「氷の部屋の女」に収録。 ●1 9 9 0 ~   この年の「美蝶」シリーズは『ダンシング・クイーン篇』。マネキン工場跡でJ・ブラウンの「セックス・マシーン」にのせて5人プレイをするシーンや文化祭でのダンスシーン等々結構好きな場面多し。暗くて硬い作品が多いので、この「美蝶」シリーズは肩肘張らずに、かなり軽いノリでキャラクターの動きに任せて、ストーリーも、そして次のコマさえも先の事は何にも考えず、ほとんどアドリブで描いた時もある。  「不死蝶伝説」に続いてシリーズ第2弾「不死蝶」は2誌にまたがって2年位続ける。これも結構お気に入りの一遍。 ●1 9 9 1 ~ 1 9 9 3   「性狩人たち」の近未来版、といった感じの「夜戦士」は学園物が多くなったので、マグナム銃で脳天をぶっとばすようなものが又描きたくなって始めたミニシリーズ。全5話位。松文館より単行本「黒い夜と夢魔の闇」に収録。  この年から知り合いの編集者がレディス・コミックを始める人が多く、依頼されてどうしたものかと思ったが、エロなら何でもやってみよう精神と何か新しい世界が開けるかも、という事から’94位までやってみたものの結果的に不毛の時代に終わる。与えられた素材が体験告白物という事で、非現実的なものは描けないという事は得意技を封印して戦うようなもので苦戦を強いられ、これって内山亜紀氏がやまさき十三原作の人情話を描いたようなミス・マッチングで不発だったかな。今後、もしやることがあれば美少年SMのレディス・コミックのみ。そんな雑誌が出来れば、の話だが。  いくつかやったレディコミの編集の一人「アイリス」の鈴木さんは同じさいとうプロOBで、マンガ・アシスタント、マンガ家、マンガ誌の編集、そして今はマンガ学校の講師、とこれだけ多くのマンガに関わる仕事をしてきた人はあまりいないだろう。これでマンガ評論でもやれば全て制覇だが・・・。  この頃はいつもと同じ位の30~40本の作品を毎年描いていたが、レディコミは一本30~40枚とページが多く結構身体にガタがきた頃で、右手のひじが腱傷炎になり1年以上苦痛が続く。医者通いではさっぱり痛みがひかず、電気針で針灸治療を半年位続けてやっと完治。その後、住んでいたマンションの理事長を押しつけられ、マンション戦争の渦中に巻き込まれひどい目にあう。攻撃するのは楽だが、話をまとめるなどというのは社会生活不適格のダー松には大の苦手で「お前等!わがままばかり言うのはいいかげんにしろー!」と頭をカチ割りたくなるような事ばかりで、ひたすら我慢の日々で血圧がガンガン上がり、病院通いの日々。確実に寿命が5年は縮まる。あの時はマジで人に殺意を抱いたものだが、今でも金属バット持って押しかけて奴等の脳みそをクラッシュしたい気分になる時もある。いつかこの時の事をマンガにしようと思っていて、まだ誰も描いてない「マンション・マンガ」というジャンル、タイトルは「我が闘争」。え?誰も読みたくない?  この間に出た単行本は「血を吸う夜」、「赤い月の化身」「熱き唇の女神」[以上・久保書店] /「牝猫の花園」「真夜中の人魚たち」[以上久保書店]、「美蝶/放課後篇」「美蝶/ダンシング・クイーン篇」「不死蝶/鋼鉄の女王篇・上巻」[以上ミリオン出版]。 ●1 9 9 4 ~ 1 9 9 5   ろくでもない事が続くのは厄払いをしなかったせいか、このままここにいたら頭がおかしくなる、と15年以上いたマンションから引っ越し。板橋から巣鴨へ移動し気分一新!以前からうちもやりましょうよ、と言われていた同人誌創りをそのうち、そのうちと伸ばしてきたものの遂に申し込んでしまい、創らざるをえなくなる。しかもそれが引っ越しの時期と重なってしまい大いに���悔する。しかしいろんな人にお願いして何とか一冊でっちあげ、ムシ風呂のような夏コミに初参加。これが運命の分岐点。レディコミもこの年で切り上げ、以下同人街道をまっしぐら。現在まで「FUCK OFF!」が9まで、「FUCK YOU!」が4まで計10+&冊創る。  ’95からダーティ松本の名前にも飽きてきたしJr,Sam名でも描き始める。 レディコミ時代は松本美蝶。あと2つ位違うペンネームも考案中。  この間の単行本「氷の部屋の女」「双子座の戯れ」[久保書店]、「黒い夜と夢魔の闇」[松文館]、「危険な女教師/美蝶」[ミリオン] ●1 9 9 6 ~   美少女路線の絵柄もこの年の「夜顔武闘伝」あたりでほぼ完成、今後また少し変化させる予定。しかしこの作品は超能力、アマゾネス、忍法エロマンガとでも呼ぶべきか。「グラップラー刃牙」みたいに闘技場での勝ち抜き性武道合戦までいきたかったけれど、残念ながらたどり着けず。  「冬の堕天使」は久しぶりの吸血鬼もの。都営住宅で生活保護をうけている吸血鬼母子のイメージが浮かび、そこから漫画家協会・加藤芳郎を撃つ有害図書騒動のマンガへ。吸血鬼少年が光の世界との戦いに旅立つまでを描き、「闇に潜みし者」は時空を越えて近未来での戦い。その間を描く作品を今後創らなければ。  「FUCK CITY 2006」はクソ溜めと化した近未来のTOKYOを舞台に久しぶりにダーティ・バイオレンスが炸裂!ハード・エロ劇画と同人誌風・美少女路線の合体は果たしてうまくいったかどうか?30ページほど描き足して、’97、9月にフランス書院のコミック文庫にて発売。[「少女水中花」]  「放課後の媚娼女」と「人形愛」刊行。[いずれも久保書店刊]前者は以前、上下巻だったのを一冊にまとめて。後者は近作を集めた同人時代を経ての初単行本で、同人誌を知らなかった読者はショックを受ける。メタルフアンから以下のようなお手紙を受け取る。「これはジューダス・プリーストの『ターボ』だ。ラストの『眠れる森の少女』は『レックレス』にあたる。しかしジューダスもその後『ラム・イット・ダウン』や『ペイン・キラー』という傑作を世に出した事だし、今後を期待したい」という意のダー松のようなメタルファン以外は意味不明の激励をうける。 ●1 9 9 7   同人誌「エロス大百科シリーズ」スタート!いろんな項目別に年2刊づつ計100ページ位を別刊シリーズとして出し続ければ10年で1000ページになり、以前「谷岡ヤスジ1000ページ」という枕に最適の本があったが、これも一冊にまとめて枕にして寝れば、目覚める頃は3回夢精しているなんて事に・・・などとまだたった40ページの段階で言っても何の説得力もないか。飽きたら2~3号でSTOPするだろうし・・。[推測通り「毛剃り」「美少年SM」「女装」3号でストップ中]冬にはやおい系にも進出の予定。  今年出した単行本は厚くて濃いエロマンガを集めた久保書店MAXシリーズ第2弾!「放課後の熱い祭り/完全版」と「夜顔武闘伝」オークラ出版。ともに大幅描き足して25周年記念出版として刊行。ティーツー出版よりJr,Sam名で「昼下がりの少女」、9月にはフランス書院より「少女水中花」の文庫本が出る予定で現在、この同人誌と並行して描き足し中。「斬姦狂死郎」第2部も「ホリディ・COMIC」誌にて6月よりスタート!年内創刊予定の『腐肉クラブ』なる死体姦専門のマンガ誌にも執筆予定。  さてさて25年間、旅行の時を除いて、現在まで2日続けてマンガを描かなかった事はほとんどない。これはその昔、伊東元気氏というマンガ家とお会いしたとき「今月何ページ描いた?」との問いに、「今月仕事ないんでぜんぜん描いてません」と答えたら、「そんな事じゃ駄目だ。仕事があろうがなかろうが、毎月100頁は描かなきゃ。」と言われ、以後その教えを守り[描けるページ数は減ったが]、マンガは仕事ではなくなり、朝起きたら顔を洗うのと同じで生活そのものとなり現在に至る。  今は何でも描けそうなハイな状態で、以前はたまには外出しないと煮詰まってしまうので週いち位ガス抜きをしていたものだが、最近はせいぜい月いち休めば十分の「純エロマンガ体」。[純粋にエロマンガを描くためだけの肉体、の意。ダー松の造語]  こうしてふり返ると、この路線はまだえぐり足りない、これはあと数回描くべし、なぜこれを一度しか描かない!等々、残り時間にやるべき事、やりたい事の何と多い事! 爆裂昇天のその日まで・・・      燃 え よ ペ ン !  なお続きは 1997年後期 1998年 INDEX
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kurihara-yumeko · 4 years ago
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【小説】The day I say good-bye (1/4) 【再録】
 今日は朝から雨だった。
 確か去年も雨だったよな、と僕は窓ガラスに反射している自分の顔を見つめて思った。僕を乗せたバスは、小雨の降る日曜の午後を北へ向かって走る。乗客は少ない。
 予定より五分遅れて、予定通りバス停「船頭町三丁目」で降りた。灰色に濁った水が流れる大きな樫岸川を横切る橋を渡り、広げた傘に雨音が当たる雑音を聞きながら、柳の並木道を歩く。
 小さな古本屋の角を右へ、古い木造家屋の住宅ばかりが建ち並ぶ細い路地を抜けたら左へ。途中、不機嫌そうな面構えの三毛猫が行く手を横切った。長い長い緩やかな坂を上り、苔生した石段を踏み締めて、赤い郵便ポストがあるところを左へ。突然広くなった道を行き、椿だか山茶花だかの生け垣のある家の角をまた左へ。
 そうすると、大きなお寺の屋根が見えてくる。囲われた塀の中、門の向こうには、静かな墓地が広がっている。
 そこの一角に、あーちゃんは眠っている。
 砂利道を歩きながら、結構な数の墓の中から、あーちゃんの墓へ辿り着く。もう既に誰かが来たのだろう。墓には真っ白な百合と、あーちゃんの好物であった焼きそばパンが供えてあった。あーちゃんのご両親だろうか。
 手ぶらで来てしまった僕は、ただ墓石を見上げる。周りの墓石に比べてまだ新しいその石は、手入れが行き届いていることもあって、朝から雨の今日であっても穏やかに光を反射している。
 そっと墓石に触れてみた。無機質な冷たさと硬さだけが僕の指先に応えてくれる。
 あーちゃんは墓石になった。僕にはそんな感覚がある。
 あーちゃんは死んだ。死んで、燃やされて、灰になり、この石の下に閉じ込められている。埋められているのは、ただの灰だ。あーちゃんの灰。
 ああ。あーちゃんは、どこに行ってしまったんだろう。
 目を閉じた。指先は墓石に触れたまま。このままじっとしていたら、僕まで石になれそうだ。深く息をした。深く、深く。息を吐く時、わずかに震えた。まだ石じゃない。まだ僕は、石になれない。
 ここに来ると、僕はいつも泣きたくなる。
 ここに来ると、僕はいつも死にたくなる。
 一体どれくらい、そうしていたのだろう。やがて後ろから、砂利を踏んで歩いてくる音が聞こえてきたので、僕は目を開き、手を引っ込めて振り向いた。
「よぉ、少年」
 その人は僕の顔を見て、にっこり笑っていた。
 総白髪かと疑うような灰色の頭髪。自己主張の激しい目元。頭の上の帽子から足元の厚底ブーツまで塗り潰したように真っ黒な恰好の人。
「やっほー」
 蝙蝠傘を差す左手と、僕に向けてひらひらと振るその右手の手袋さえも黒く、ちらりと見えた中指の指輪の石の色さえも黒い。
「……どうも」
 僕はそんな彼女に対し、顔の筋肉が引きつっているのを無理矢理に動かして、なんとか笑顔で応えて見せたりする。
 彼女はすぐ側までやってきて、馴れ馴れしくも僕の頭を二、三度柔らかく叩く。
「こんなところで奇遇だねぇ。少年も墓参りに来たのかい」
「先生も、墓参りですか」
「せんせーって呼ぶなしぃ。あたしゃ、あんたにせんせー呼ばわりされるようなもんじゃございませんって」
 彼女――日褄小雨先生はそう言って、だけど笑った。それから日褄先生は僕が先程までそうしていたのと同じように、あーちゃんの墓石を見上げた。彼女も手ぶらだった。
「直正が死んで、一年か」
 先生は上着のポケットから煙草の箱とライターを取り出す。黒いその箱から取り出された煙草も、同じように黒い。
「あたしゃ、ここに来ると後悔ばかりするね」
 ライターのかちっという音、吐き出される白い煙、どこか甘ったるい、ココナッツに似たにおいが漂う。
「あいつは、厄介なガキだったよ。つらいなら、『つらい』って言えばいい、それだけのことなんだ。あいつだって、つらいなら『つらい』って言ったんだろうさ。だけどあいつは、可哀想なことに、最後の最後まで自分がつらいってことに気付かなかったんだな」
 煙草の煙を揺らしながら、そう言う先生の表情には、苦痛と後悔が入り混じった色が見える。口に煙草を咥えたまま、墓前で手を合わせ、彼女はただ目を閉じていた。瞼にしつこいほど塗られた濃い黒い化粧に、雨の滴が垂れる。
 先生はしばらくして瞼を開き、煙草を一度口元から離すと、ヤニ臭いような甘ったるいような煙を吐き出して、それから僕を見て、優しく笑いかけた。それから先生は背を向け、歩き出してしまう。僕は黙ってそれを追った。
 何も言わなくてもわかっていた。ここに立っていたって、悲しみとも虚しさとも呼ぶことのできない、吐き気がするような、叫び出したくなるような、暴れ出したくなるような、そんな感情が繰り返し繰り返し、波のようにやってきては僕の心の中を掻き回していくだけだ。先生は僕に、帰ろう、と言ったのだ。唇の端で、瞳の奥で。
 先生の、まるで影法師が歩いているかのような黒い後ろ姿を見つめて、僕はかつてたった一度だけ見た、あーちゃんの黒いランドセルを思い出す。
 彼がこっちに引っ越してきてからの三年間、一度も使われることのなかった傷だらけのランドセル。物置きの中で埃を被っていたそれには、あーちゃんの苦しみがどれだけ詰まっていたのだろう。
 道の途中で振り返る。先程までと同じように、墓石はただそこにあった。墓前でかけるべき言葉も、抱くべき感情も、するべき行為も、何ひとつ僕は持ち合わせていない。
 あーちゃんはもう死んだ。
 わかりきっていたことだ。死んでから何かしてあげても無駄だ。生きているうちにしてあげないと、意味がない。だから、僕がこうしてここに立っている意味も、僕は見出すことができない。僕がここで、こうして呼吸をしていて、もうとっくに死んでしまったあーちゃんのお墓の前で、墓石を見つめている、その意味すら。
 もう一度、あーちゃんの墓に背中を向けて、僕は今度こそ歩き始めた。
「最近調子はどう?」
 墓地を出て、長い長い坂を下りながら、先生は僕にそう尋ねた。
「一ヶ月間、全くカウンセリング来なかったけど、何か変化があったりした?」
 黙っていると先生はさらにそう訊いてきたので、僕は仕方なく口を開く。
「別に、何も」
「ちゃんと飯食ってる? また少し痩せたんじゃない?」
「食べてますよ」
「飯食わないから、いつまでも身長伸びないんだよ」
 先生は僕の頭を、目覚まし時計を止める時のような動作で乱雑に叩く。
「ちょ……やめて下さいよ」
「あーっはっはっはっはー」
 嫌がって身をよじろうとするが、先生はそれでもなお、僕に攻撃してくる。
「ちゃんと食わないと。摂食障害になるとつらいよ」
「食べますよ、ちゃんと……」
「あと、ちゃんと寝た方がいい。夜九時に寝ろ。身長伸びねぇぞ」
「九時に寝られる訳ないでしょう、小学生じゃあるまいし……」
「勉強なんかしてるから、身長伸びねぇんだよ」
「そんな訳ないでしょう」
 あはは、と朗らかに彼女は笑う。そして最後に優しく、僕の頭を撫でた。
「負けるな、少年」
 負けるなと言われても、一体何に――そう問いかけようとして、僕は口をつぐむ。僕が何と戦っているのか、先生はわかっているのだ。
「最近、市野谷はどうしてる?」
 先生は何気ない声で、表情で、タイミングで、あっさりとその名前を口にした。
「さぁ……。最近会ってないし、電話もないし、わからないですね」
「ふうん。あ、そう」
 先生はそれ以上、追及してくることはなかった。ただ独り言のように、「やっぱり、まだ駄目か」と言っただけだった。
 郵便ポストのところまで歩いてきた時、先生は、「あたしはあっちだから」と僕の帰り道とは違う方向を指差した。
「駐車場で、葵が待ってるからさ」
「ああ、葵さん。一緒だったんですか」
「そ。少年は、バスで来たんだろ? 家まで車で送ろうか?」
 運転するのは葵だけど、と彼女は付け足して言ったが、僕は首を横に振った。
「ひとりで帰りたいんです」
「あっそ。気を付けて帰れよ」
 先生はそう言って、出会った時と同じように、ひらひらと手を振って別れた。
 路地を右に曲がった時、僕は片手をパーカーのポケットに入れて初めて、とっくに音楽が止まったままになっているイヤホンを、両耳に突っ込んだままだということに気が付いた。
 僕が小学校を卒業した、一年前の今日。
 あーちゃんは人生を中退した。
 自殺したのだ。十四歳だった。
 遺書の最後にはこう書かれていた。
「僕は透明人間なんです」
    あーちゃんは僕と同じ団地に住んでいて、僕より二つお兄さんだった。
 僕が小学一年生の夏に、あーちゃんは家族四人で引っ越してきた。冬は雪に閉ざされる、北の方からやって来たのだという話を聞いたことがあった。
 僕はあーちゃんの、団地で唯一の友達だった。学年の違う彼と、どんなきっかけで親しくなったのか正確には覚えていない。
 あーちゃんは物静かな人だった。小学生の時から、年齢と不釣り合いなほど彼は大人びていた。
 彼は人付き合いがあまり得意ではなく、友達がいなかった。口数は少なく、話す時もぼそぼそとした、抑揚のない平坦な喋り方で、どこか他人と距離を取りたがっていた。
 部屋にこもりがちだった彼の肌は雪みたいに白くて、青い静脈が皮膚にうっすら透けて見えた。髪が少し長くて、色も薄かった。彼の父方の祖母が外国人だったと知ったのは、ずっと後のことだ。銀縁の眼鏡をかけていて、何か困ったことがあるとそれをかけ直す癖があった。
 あーちゃんは器用だった。今まで何度も彼の部屋へ遊びに行ったことがあるけれど、そこには彼が組み立てたプラモデルがいくつも置かれていた。
 僕が加減を知らないままにそれを乱暴に扱い、壊してしまったこともあった。とんでもないことをしてしまったと、僕はひどく後悔してうつむいていた。ごめんなさい、と謝った。年上の友人の大切な物を壊してしまって、どうしたらよいのかわからなかった。鼻の奥がつんとした。泣きたいのは壊されたあーちゃんの方だっただろうに、僕は泣き出しそうだった。
 あーちゃんは、何も言わなかった。彼は立ち尽くす僕の前でしゃがみ込んだかと思うと、足下に散らばったいびつに欠けたパーツを拾い、引き出しの中からピンセットやら接着剤やらを取り出して、僕が壊した部分をあっという間に直してしまった。
 それらの作業がすっかり終わってから彼は僕を呼んで、「ほら見てごらん」と言った。
 恐る恐る近付くと、彼は直ったばかりの戦車のキャタピラ部分を指差して、
「ほら、もう大丈夫だよ。ちゃんと元通りになった。心配しなくてもいい。でも��と1時間は触っては駄目だ。まだ接着剤が乾かないからね」
 と静かに言った。あーちゃんは僕を叱ったりしなかった。
 僕は最後まで、あーちゃんが大声を出すところを一度も見なかった。彼が泣いている姿も、声を出して笑っているのも。
 一度だけ、あーちゃんの満面の笑みを見たことがある。
 夏のある日、僕とあーちゃんは団地の屋上に忍び込んだ。
 僕らは子供向けの雑誌に載っていた、よく飛ぶ紙飛行機の作り方を見て、それぞれ違うモデルの紙飛行機を作り、どちらがより遠くへ飛ぶのかを競走していた。
 屋上から飛ばしてみよう、と提案したのは僕だった。普段から悪戯などしない大人しいあーちゃんが、その提案に首を縦に振ったのは今思い返せば珍しいことだった。そんなことはそれ以前も以降も二度となかった。
 よく晴れた日だった。屋上から僕が飛ばした紙飛行機は、青い空を横切って、団地の駐車場の上を飛び、道路を挟んだ向かいの棟の四階、空き部屋のベランダへ不時着した。それは今まで飛ばしたどんな紙飛行機にも負けない、驚くべき距離だった。僕はすっかり嬉しくなって、得意げに叫んだ。
「僕が一番だ!」
 興奮した僕を見て、あーちゃんは肩をすくめるような動作をした。そして言った。
「まだわからないよ」
 あーちゃんの細い指が、紙飛行機を宙に放つ。丁寧に折られた白い紙飛行機は、ちょうどその時吹いてきた風に背中を押されるように屋上のフェンスを飛び越え、僕の紙飛行機と同じように駐車場の上を通り、向かいの棟の屋根を越え、それでもまだまだ飛び続け、青い空の中、最後は粒のようになって、ついには見えなくなってしまった。
 僕は自分の紙飛行機が負けた悔しさと、魔法のような素晴らしい出来事を目にした嬉しさとが半分ずつ混じった目であーちゃんを見た。その時、僕は見たのだ。
 あーちゃんは声を立てることはなかったが、満足そうな笑顔だった。
「僕は透明人間なんです」
 それがあーちゃんの残した最後の言葉だ。
 あーちゃんは、僕のことを怒ればよかったのだ。地団太を踏んで泣いてもよかったのだ。大声で笑ってもよかったのだ。彼との思い出を振り返ると、いつもそんなことばかり思う。彼はもう永遠に泣いたり笑ったりすることはない。彼は死んだのだから。
 ねぇ、あーちゃん。今のきみに、僕はどんな風に見えているんだろう。
 僕の横で静かに笑っていたきみは、決して透明なんかじゃなかったのに。
 またいつものように春が来て、僕は中学二年生になった。
 張り出されていたクラス替えの表を見て、そこに馴染みのある名前を二つ見つけた。今年は、二人とも僕と同じクラスのようだ。
 教室へ向かってみたけれど、始業の時間になっても、その二つの名前が用意された席には、誰も座ることはなかった。
「やっぱり、まだ駄目か」
 誰かと同じ言葉を口にしてみる。
 本当は少しだけ、期待していた。何かが良くなったんじゃないかと。
 だけど教室の中は新しいクラスメイトたちの喧騒でいっぱいで、新年度一発目、始業式の今日、二つの席が空白になっていることに誰も触れやしない。何も変わってなんかない。
 何も変わらないまま、僕は中学二年生になった。
 あーちゃんが死んだ時の学年と同じ、中学二年生になった。
 あの日、あーちゃんの背中を押したのであろう風を、僕はずっと探してる。
 青い空の果てに、小さく消えて行ってしまったあーちゃんを、僕と「ひーちゃん」に返してほしくて。
    鉛筆を紙の上に走らせる音が、止むことなく続いていた。
「何を描いてるの?」
「絵」
「なんの絵?」
「なんでもいいでしょ」
「今年は、同じクラスみたいだね」
「そう」
「その、よろしく」
 表情を覆い隠すほど長い前髪の下、三白眼が一瞬僕を見た。
「よろしくって、何を?」
「クラスメイトとして、いろいろ……」
「意味ない。クラスなんて、関係ない」
 抑揚のない声でそう言って、双眸は再び紙の上へと向けられてしまった。
「あ、そう……」
 昼休みの保健室。
 そこにいるのは二人の人間。
 ひとりはカーテンの開かれたベッドに腰掛け、胸にはスケッチブック、右手には鉛筆を握り締めている。
 もうひとりはベッドの脇のパイプ椅子に座り、特にすることもなく片膝を抱えている。こっちが僕だ。
 この部屋の主であるはずの鬼怒田先生は、何か用があると言って席を外している。一体なんの仕事があるのかは知らないが、この学校の養護教諭はいつも忙しそうだ。
 僕はすることもないので、ベッドに座っているそいつを少しばかり観察する。忙しそうに鉛筆を動かしている様子を見ると、今はこちらに注意を払ってはいなそうだから、好都合だ。
 伸びてきて邪魔になったから切った、と言わんばかりのショートカットの髪。正反対に長く伸ばされた前髪は、栄養状態の悪そうな青白い顔を半分近く隠している。中学二年生としては小柄で華奢な体躯。制服のスカートから伸びる足の細さが痛々しく見える。
 彼女の名前は、河野ミナモ。僕と同じクラス、出席番号は七番。
 一言で表現するならば、彼女は保健室登校児だ。
 鉛筆の音が、止んだ。
「なに?」
 ミナモの瞬きに合わせて、彼女の前髪が微かに動く。少しばかり長く見つめ続けてしまったみたいだ。「いや、なんでもない」と言って、僕は天井を仰ぐ。
 ミナモは少しの間、何も言わずに僕の方を見ていたようだが、また鉛筆を動かす作業を再開した。
 鉛筆を走らせる音だけが聞こえる保健室。廊下の向こうからは、楽しそうに駆ける生徒たちの声が聞こえてくるが、それもどこか遠くの世界の出来事のようだ。この空間は、世界から切り離されている。
「何をしに来たの」
「何をって?」
「用が済んだなら、帰れば」
 新年度が始まったばかりだからだろうか、ミナモは機嫌が悪いみたいだ。否、機嫌が悪いのではなく、具合が悪いのかもしれない。今日の彼女はいつもより顔色が悪いように見える。
「いない方がいいなら、出て行くよ」
「ここにいてほしい人なんて、いない」
 平坦な声。他人を拒絶する声。憎しみも悲しみも全て隠された無機質な声。
「出て行きたいなら、出て行けば?」
 そう言うミナモの目が、何かを試すように僕を一瞥した。僕はまだ、椅子から立ち上がらない。彼女は「あっそ」とつぶやくように言った。
「市野谷さんは、来たの?」
 ミナモの三白眼がまだ僕を見ている。
「市野谷さんも同じクラスなんでしょ」
「なんだ、河野も知ってたのか」
「質問に答えて」
「……来てないよ」
「そう」
 ミナモの前髪が揺れる。瞬きが一回。
「不登校児二人を同じクラスにするなんて、学校側の考えてることってわからない」
 彼女の言葉通り、僕のクラスには二人の不登校児がいる。
 ひとりはこの河野ミナモ。
 そしてもうひとりは、市野谷比比子。僕は彼女のことを昔から、「ひーちゃん」と呼んでいた。
 二人とも、中学に入学してきてから一度も教室へ登校してきていない。二人の机と椅子は、一度も本人に使われることなく、今日も僕の教室にある。
 といっても、保健室登校児であるミナモはまだましな方で、彼女は一年生の頃から保健室には登校してきている。その点ひーちゃんは、中学校の門をくぐったこともなければ、制服に袖を通したことさえない。
 そんな二人が今年から僕と同じクラスに所属になったことには、正直驚いた。二人とも僕と接点があるから、なおさらだ。
「――くんも、」
 ミナモが僕の名を呼んだような気がしたが、上手く聞き取れなかった。
「大変ね、不登校児二人の面倒を見させられて」
「そんな自嘲的にならなくても……」
「だって、本当のことでしょ」
 スケッチブックを抱えるミナモの左腕、ぶかぶかのセーラー服の袖口から、包帯の巻かれた手首が見える。僕は自分の左手首を見やる。腕時計をしているその下に、隠した傷のことを思う。
「市野谷さんはともかく、教室へ行く気なんかない私の面倒まで、見なくてもいいのに」
「面倒なんて、見てるつもりないけど」
「私を訪ねに保健室に来るの、――くんくらいだよ」
 僕の名前が耳障りに響く。ミナモが僕の顔を見た。僕は妙な表情をしていないだろうか。平然を装っているつもりなのだけれど。
「まだ、気にしているの?」
「気にしてるって、何を?」
「あの日のこと」
 あの日。
 あの春の日。雨の降る屋上で、僕とミナモは初めて出会った。
「死にたがり屋と死に損ない」
 日褄先生は僕たちのことをそう呼んだ。どっちがどっちのことを指すのかは、未だに訊けていないままだ。
「……気にしてないよ」
「そう」
 あっさりとした声だった。ミナモは壁の時計をちらりと見上げ、「昼休み終わるよ、帰れば」と言った。
 今度は、僕も立ち上がった。「それじゃあ」と口にしたけれど、ミナモは既に僕への興味を失ったのか、スケッチブックに目線を落とし、返事のひとつもしなかった。
 休みなく動き続ける鉛筆。
 立ち上がった時にちらりと見えたスケッチブックは、ただただ黒く塗り潰されているだけで、何も描かれてなどいなかった。
    ふと気付くと、僕は自分自身が誰なのかわからなくなっている。
 自分が何者なのか、わからない。
 目の前で展開されていく風景が虚構なのか、それとも現実なのか、そんなことさえわからなくなる。
 だがそれはほんの一瞬のことで、本当はわかっている。
 けれど感じるのだ。自分の身体が透けていくような感覚を。「自分」という存在だけが、ぽっかりと穴を空けて突っ立っているような。常に自分だけが透明な膜で覆われて、周囲から隔離されているかのような疎外感と、なんの手応えも得られない虚無感と。
 あーちゃんがいなくなってから、僕は頻繁にこの感覚に襲われるようになった。
 最初は、授業が終わった後の短い休み時間。次は登校中と下校中。その次は授業中にも、というように、僕が僕をわからなくなる感覚は、学校にいる間じゅうずっと続くようになった。しまいには、家にいても、外にいても、どこにいてもずっとそうだ。
 周りに人がい��ばいるほど、その感覚は強かった。たくさんの人の中、埋もれて、紛れて、見失う。自分がさっきまで立っていた場所は、今はもう他の人が踏み荒らしていて。僕の居場所はそれぐらい危ういところにあって。人混みの中ぼうっとしていると、僕なんて消えてしまいそうで。
 頭の奥がいつも痛かった。手足は冷え切ったみたいに血の気がなくて。酸素が薄い訳でもないのにちゃんと息ができなくて。周りの人の声がやたら大きく聞こえてきて。耳の中で何度もこだまする、誰かの声。ああ、どうして。こんなにも人が溢れているのに、ここにあーちゃんはいないんだろう。
 僕はどうして、ここにいるんだろう。
「よぉ、少年」
 旧校舎、屋上へ続く扉を開けると、そこには先客がいた。
 ペンキがところどころ剥げた緑色のフェンスにもたれるようにして、床に足を投げ出しているのは日褄先生だった。今日も真っ黒な恰好で、ココナッツのにおいがする不思議な煙草を咥えている。
「田島先生が、先生のことを昼休みに探してましたよ」
「へへっ。そりゃ参ったね」
 煙をゆらゆらと立ち昇らせて、先生は笑う。それからいつものように、「せんせーって呼ぶなよ」と付け加えた。彼女はさらに続けて言う。
「それで? 少年は何をし、こんなところに来たのかな?」
「ちょっと外の空気を吸いに」
「おお、奇遇だねぇ。あたしも外の空気を吸いに……」
「吸いにきたのはニコチンでしょう」
 僕がそう言うと、先生は、「あっはっはっはー」と高らかに笑った。よく笑う人だ。
「残念だが少年、もう午後の授業は始まっている時間だし、ここは立ち入り禁止だよ」
「お言葉ですが先生、学校の敷地内は禁煙ですよ」
「しょうがない、今からカウンセリングするってことにしておいてあげるから、あたしの喫煙を見逃しておくれ。その代わり、あたしもきみの授業放棄を許してあげよう」
 先生は右手でぽんぽんと、自分の隣、雨上がりでまだ湿気っているであろう床を叩いた。座れと言っているようだ。僕はそれに従わなかった。
 先客がいたことは予想外だったが、僕は本当に、ただ、外の空気を吸いたくなってここに来ただけだ。授業を途中で抜けてきたこともあって、長居をするつもりはない。
 ふと、視界の隅に「それ」が目に入った。
 フェンスの一角に穴が空いている。ビニールテープでぐるぐる巻きになっているそこは、テープさえなければ屋上の崖っぷちに立つことを許している。そう。一年前、あそこから、あーちゃんは――。
(ねぇ、どうしてあーちゃんは、そらをとんだの?)
 僕の脳裏を、いつかのひーちゃんの言葉がよぎる。
(あーちゃん、かえってくるよね? また、あえるよね?)
 ひーちゃんの言葉がいくつもいくつも、風に飛ばされていく桜の花びらと同じように、僕の目の前を通り過ぎていく。
「こんなところで、何をしていたんですか」
 そう質問したのは僕の方だった。「んー?」と先生は煙草の煙を吐きながら言う。
「言っただろ、外の空気を吸いに来たんだよ」
「あーちゃんが死んだ、この場所の空気を、ですか」
 先生の目が、僕を見た。その鋭さに、一瞬ひるみそうになる。彼女は強い。彼女の意思は、強い。
「同じ景色を見たいと思っただけだよ」
 先生はそう言って、また煙草をふかす。
「先生、」
「せんせーって呼ぶな」
「質問があるんですけど」
「なにかね」
「嘘って、何回つけばホントになるんですか」
「……んー?」
 淡い桜色の小さな断片が、いくつもいくつも風に流されていく。僕は黙って、それを見ている。手を伸ばすこともしないで。
「嘘は何回ついたって、嘘だろ」
「ですよね」
「嘘つきは怪人二十面相の始まりだ」
「言っている意味がわかりません」
「少年、」
「はい」
「市野谷に嘘つくの、しんどいのか?」
 先生の煙草の煙も、みるみるうちに風に流されていく。手を伸ばしたところで、掴むことなどできないまま。
「市野谷に、直正は死んでないって、嘘をつき続けるの、しんどいか?」
 ひーちゃんは知らない。あーちゃんが去年ここから死んだことを知らない。いや、知らない訳じゃない。認めていないのだ。あーちゃんの死を認めていない。彼がこの世界に僕らを置き去りにしたことを、許していない。
 ひーちゃんはずっと信じている。あーちゃんは生きていると。いつか帰ってくると。今は遠くにいるけれど、きっとまた会える日が来ると。
 だからひーちゃんは知らない。彼の墓石の冷たさも、彼が飛び降りたこの屋上の景色が、僕の目にどう映っているのかも。
 屋上。フェンス。穴。空。桜。あーちゃん。自殺。墓石。遺書。透明人間。無。なんにもない。ない。空っぽ。いない。いないいないいないいない。ここにもいない。どこにもいない。探したっていない。消えた。消えちゃった。消滅。消失。消去。消しゴム。弾んで。飛んで。落ちて。転がって。その先に拾ってくれるきみがいて。笑顔。笑って。笑ってくれて。だけどそれも消えて。全部消えて。消えて消えて消えて。ただ昨日を越えて今日が過ぎ明日が来る。それを繰り返して。きみがいない世界で。ただ繰り返して。ひーちゃん。ひーちゃんが笑わなくなって。泣いてばかりで。だけどもうきみがいない。だから僕が。僕がひーちゃんを慰めて。嘘を。嘘をついて。ついてはいけない嘘を。ついてはいけない嘘ばかりを。それでもひーちゃんはまた笑うようになって。笑顔がたくさん戻って。だけどどうしてあんなにも、ひーちゃんの笑顔は空っぽなんだろう。
「しんどくなんか、ないですよ」
 僕はそう答えた。
 先生は何も言わなかった。
 僕は明日にでも、怪人二十面相になっているかもしれなかった。
    いつの間にか梅雨が終わり、実力テストも期末テストもクリアして、夏休みまであと一週間を切っていた。
 ひと夏の解放までカウントダウンをしている今、僕のクラスの連中は完璧な気だるさに支配されていた。自主性や積極性などという言葉とは無縁の、慣性で流されているような脱力感。
 先週に教室の天井四ヶ所に取り付けられている扇風機が全て故障したこともあいまって、クラスメイトたちの授業に対する意欲はほぼゼロだ。授業がひとつ終わる度に、皆溶け出すように机に上半身を投げ出しており、次の授業が始まったところで、その姿勢から僅かに起き上がる程度の差しかない。
 そういう僕も、怠惰な中学二年生のひとりに過ぎない。さっきの英語の授業でノートに書き記したことと言えば、英語教師の松田が何回額の汗を脱ぐったのかを表す「正」の字だけだ。
 休み時間に突入し、がやがやと騒がしい教室で、ひとりだけ仲間外れのように沈黙を守っていると、肘辺りから空気中に溶け出して、透明になっていくようなそんな気分になる。保健室には来るものの、自分の教室へは絶対に足を運ばないミナモの気持ちがわかるような気がする。
 一学期がもうすぐ終わるこの時期になっても、相変わらず僕のクラスには常に二つの空席があった。ミナモも、ひーちゃんも、一度だって教室に登校してきていない。
「――くん、」
 なんだか控えめに名前を呼ばれた気はしたが、クラスの喧騒に紛れて聞き取れなかった。
 ふと机から顔を上げると、ひとりの女子が僕の机の脇に立っていた。見たことがあるような顔。もしかして、クラスメイトのひとりだろうか。彼女は廊下を指差して、「先生、呼んでる」とだけ言って立ち去った。
 あまりにも唐突な出来事でその女子にお礼を言うのも忘れたが、廊下には担任の姿が見える。僕のクラス担任の担当科目は数学だが、次の授業は国語だ。なんの用かはわからないが、呼んでいるのなら行かなくてはならない。
「おー、悪いな、呼び出して」
 去年大学を卒業したばかりの、どう見ても体育会系な容姿をしている担任は、僕を見てそう言った。
「ほい、これ」
 突然差し出されたのはプリントの束だった。三十枚くらいありそうなプリントが穴を空けられ紐を通して結んである。
「悪いがこれを、市野谷さんに届けてくれないか」
 担任がひーちゃんの名を口にしたのを聞いたのは、久しぶりのような気がした。もう朝の出欠確認の時でさえ、彼女の名前は呼ばれない。ミナモの名前だってそうだ。このクラスでは、ひーちゃんも、ミナモも、いないことが自然なのだ。
「……先生が、届けなくていいんですか」
「そうしたいのは山々なんだが、なかなか時間が取れなくてな。夏休みに入ったら家庭訪問に行こうとは思ってるんだ。このプリントは、それまでにやっておいてほしい宿題。中学に入ってから二年の一学期までに習う数学の問題を簡単にまとめたものなんだ」
「わかりました、届けます」
 受け取ったプリントの束は、思っていたよりもずっとずっしりと重かった。
「すまんな。市野谷さんと小学生の頃一番仲が良かったのは、きみだと聞いたものだから」
「いえ……」
 一年生の時から、ひーちゃんにプリントを届けてほしいと教師に頼まれることはよくあった。去年は彼女と僕は違うクラスだったけれど、同じ小学校出身の誰かに僕らが幼馴染みであると聞いたのだろう。
 僕は学校に来なくなったひーちゃんのことを毛嫌いしている訳ではない。だから、何か届け物を頼まれてもそんなに嫌な気持ちにはならない。でも、と僕は思った。
 でも僕は、ひーちゃんと一番仲が良かった訳じゃないんだ。
「じゃあ、よろしく頼むな」
 次の授業の始業のチャイムが鳴り響く。
 教室に戻り、出したままだった英語の教科書と「正」の字だけ記したノートと一緒に、ひーちゃんへのプリントの束を鞄に仕舞いながら、なんだか僕は泣きたくなった。
  三角形が壊れるのは簡単だった。
 三角形というのは、三辺と三つの角でできていて、当然のことだけれど一辺とひとつの角が消失したら、それはもう三角形ではない。
 まだ小学校に上がったばかりの頃、僕はどうして「さんかっけい」や「しかっけい」があるのに「にかっけい」がないのか、と考えていたけれど、どうやら僕の脳味噌は、その頃から数学的思考というものが不得手だったようだ。
「にかっけい」なんてあるはずがない。
 僕と、あーちゃんと、ひーちゃん。
 僕ら三人は、三角形だった。バランスの取りやすい形。
 始まりは悲劇だった。
 あの��夢のような交通事故。ひーちゃんの弟の死。
 真っ白なワンピースが汚れることにも気付かないまま、真っ赤になった弟の身体を抱いて泣き叫ぶひーちゃんに手を伸ばしたのは、僕と一緒に下校する途中のあーちゃんだった。
 お互いの家が近かったこともあって、それから僕らは一緒にいるようになった。
 溺愛していた最愛の弟を、目の前で信号無視したダンプカーに撥ねられて亡くしたひーちゃんは、三人で一緒にいてもときどき何かを思い出したかのように暴れては泣いていたけれど、あーちゃんはいつもそれをなだめ、泣き止むまでずっと待っていた。
 口下手な彼は、ひーちゃんに上手く言葉をかけることがいつもできずにいたけれど、僕が彼の言葉を補って彼女に伝えてあげていた。
 優しくて思いやりのあるひーちゃんは、感情を表すことが苦手なあーちゃんのことをよく気遣ってくれていた。
 僕らは嘘みたいにバランスの取れた三角形だった。
 あーちゃんが、この世界からいなくなるまでは。
   「夏は嫌い」
 昔、あーちゃんはそんなことを口にしていたような��がする。
「どうして?」
 僕はそう訊いた。
 夏休み、花火、虫捕り、お祭り、向日葵、朝顔、風鈴、西瓜、プール、海。
 水の中の金魚の世界と、バニラアイスの木べらの湿り気。
 その頃の僕は今よりもずっと幼くて、四季の中で夏が一番好きだった。
 あーちゃんは部屋の窓を網戸にしていて、小さな扇風機を回していた。
 彼は夏休みも相変わらず外に出ないで、部屋の中で静かに過ごしていた。彼の傍らにはいつも、星座の本と分厚い昆虫図鑑が置いてあった。
「夏、暑いから嫌いなの?」
 僕が尋ねるとあーちゃんは抱えていた分厚い本からちょっとだけ顔を上げて、小さく首を横に振った。それから困ったように笑って、
「夏は、皆死んでいるから」
 とだけ、つぶやくように言った。あーちゃんは、時々魔法の呪文のような、不思議なことを言って僕を困惑させることがあった。この時もそうだった。
「どういう意味?」
 僕は理解できずに、ただ訊き返した。
 あーちゃんはさっきよりも大きく首を横に振ると、何を思ったのか、唐突に、
「ああ、でも、海に行ってみたいな」
 なんて言った。
「海?」
「そう、海」
「どうして、海?」
「海は、色褪せてないかもしれない。死んでないかもしれない」
 その言葉の意味がわからず、僕が首を傾げていると、あーちゃんはぱたんと本を閉じて机に置いた。
「台所へ行こうか。確か、母さんが西瓜を切ってくれていたから。一緒に食べよう」
「うん!」
 僕は西瓜に釣られて、わからなかった言葉のことも、すっかり忘れてしまった。
 でも今の僕にはわかる。
 夏の日射しは、世界を色褪せさせて僕の目に映す。
 あーちゃんはそのことを、「死んでいる」と言ったのだ。今はもう確かめられないけれど。
 結局、僕とあーちゃんが海へ行くことはなかった。彼から海へ出掛けた話を聞いたこともないから、恐らく、海へ行くことなく死んだのだろう。
 あーちゃんが見ることのなかった海。
 海は日射しを浴びても青々としたまま、「生きて」いるんだろうか。
 彼が死んでから、僕も海へ足を運んでいない。たぶん、死んでしまいたくなるだろうから。
 あーちゃん。
 彼のことを「あーちゃん」と名付けたのは僕だった。
 そういえば、どうして僕は「あーちゃん」と呼び始めたんだっけか。
 彼の名前は、鈴木直正。
 どこにも「あーちゃん」になる要素はないのに。
    うなじを焼くようなじりじりとした太陽光を浴びながら、ペダルを漕いだ。
 鼻の頭からぷつぷつと汗が噴き出すのを感じ、手の甲で汗を拭おうとしたら手は既に汗で湿っていた。雑音のように蝉の声が響いている。道路の脇には背の高い向日葵は、大きな花を咲かせているのに風がないので微動だにしない。
 赤信号に止められて、僕は自転車のブレーキをかける。
 夏がくる度、思い出す。
 僕とあーちゃんが初めてひーちゃんに出会い、そして彼女の最愛の弟「ろーくん」が死んだ、あの事故のことを。
 あの日も、世界が真っ白に焼き切れそうな、暑い日だった。
 ひーちゃんは白い木綿のワンピースを着ていて、それがとても涼しげに見えた。ろーくんの血で汚れてしまったあのワンピースを、彼女はもうとっくに捨ててしまったのだろうけれど。
 そういえば、ひーちゃんはあの事故の後、しばらくの間、弟の形見の黒いランドセルを使っていたっけ。黒い服ばかり着るようになって。周りの子はそんな彼女を気味悪がったんだ。
 でもあーちゃんは、そんなひーちゃんを気味悪がったりしなかった。
 信号が赤から青に変わる。再び漕ぎ出そうとペダルに足を乗せた時、僕の両目は横断歩道の向こうから歩いて来るその人を捉えて凍りついてしまった。
 胸の奥の方が疼く。急に、聞こえてくる蝉の声が大きくなったような気がした。喉が渇いた。頬を撫でるように滴る汗が気持ち悪い。
 信号は青になったというのに、僕は動き出すことができない。向こうから歩いて来る彼は、横断歩道を半分まで渡ったところで僕に気付いたようだった。片眉を持ち上げ、ほんの少し唇の端を歪める。それが笑みだとわかったのは、それとよく似た笑顔をずいぶん昔から知っているからだ。
「うー兄じゃないですか」
 うー兄。彼は僕をそう呼んだ。
 声変わりの途中みたいな声なのに、妙に大人びた口調。ぼそぼそとした喋り方。
 色素の薄い頭髪。切れ長の一重瞼。ひょろりと伸びた背。かけているのは銀縁眼鏡。
 何もかもが似ているけれど、日に焼けた真っ黒な肌と筋肉のついた足や腕だけは、記憶の中のあーちゃんとは違う。
 道路を渡り終えてすぐ側まで来た彼は、親しげに僕に言う。
「久しぶりですね」
「……久しぶり」
 僕がやっとの思いでそう声を絞り出すと、彼は「ははっ」と笑った。きっとあーちゃんも、声を上げて笑うならそういう風に笑ったんだろうなぁ、と思う。
「どうしたんですか。驚きすぎですよ」
 困ったような笑顔で、眼鏡をかけ直す。その手つきすらも、そっくり同じ。
「嫌だなぁ。うー兄は僕のことを見る度、まるで幽霊でも見たような顔するんだから」
「ごめんごめん」
「ははは、まぁいいですよ」
 僕が謝ると、「あっくん」はまた笑った。
 彼、「あっくん」こと鈴木篤人くんは、僕の一個下、中学一年生。私立の学校に通っているので僕とは学校が違う。野球部のエースで、勉強の成績もクラストップ。僕の団地でその中学に進学できた子供は彼だけだから、団地の中で知らない人はいない優等生だ。
 年下とは思えないほど大人びた少年で、あーちゃんにそっくりな、あーちゃんの弟。
「中学は、どう? もう慣れた?」
「慣れましたね。今は部活が忙しくて」
「運動部は大変そうだもんね」
「うー兄は、帰宅部でしたっけ」
「そう。なんにもしてないよ」
「今から、どこへ行くんですか?」
「ああ、えっと、ひーちゃんに届け物」
「ひー姉のところですか」
 あっくんはほんの一瞬、愛想笑いみたいな顔をした。
「ひー姉、まだ学校に行けてないんですか?」
「うん」
「行けるようになるといいですね」
「そうだね」
「うー兄は、元気にしてましたか?」
「僕? 元気だけど……」
「そうですか。いえ、なんだかうー兄、兄貴に似てきたなぁって思ったものですから」
「僕が?」
 僕があーちゃんに似てきている?
「顔のつくりとかは、もちろん違いますけど、なんていうか、表情とか雰囲気が、兄貴に似てるなぁって」
「そうかな……」
 僕にそんな自覚はないのだけれど。
「うー兄も死んじゃいそうで、心配です」
 あっくんは柔らかい笑みを浮かべたままそう言った。
「……そう」
 僕はそう返すので精いっぱいだった。
「それじゃ、ひー姉によろしくお伝え下さい」
「じゃあ、また……」
 あーちゃんと同じ声で話し、あーちゃんと同じように笑う彼は、夏の日射しの中を歩いて行く。
(兄貴は、弱いから駄目なんだ)
 いつか彼が、あーちゃんに向けて言った言葉。
 あーちゃんは自分の弟にそう言われた時でさえ、怒ったりしなかった。ただ「そうだね」とだけ返して、少しだけ困ったような顔をしてみせた。
 あっくんは、強い。
 姿や雰囲気は似ているけれど、性格というか、芯の強さは全く違う。
 あーちゃんの死を自分なりに受け止めて、乗り越えて。部活も勉強も努力して。あっくんを見ているといつも思う。兄弟でもこんなに違うものなのだろうか、と。ひとりっ子の僕にはわからないのだけれど。
 僕は、どうだろうか。
 あーちゃんの死を受け入れて、乗り越えていけているだろうか。
「……死相でも出てるのかな」
 僕があーちゃんに似てきている、なんて。
 笑えない冗談だった。
 ふと見れば、信号はとっくに赤になっていた。青になるまで待つ間、僕の心から言い表せない不安が拭えなかった。
    遺書を思い出した。
 あーちゃんの書いた遺書。
「僕の分まで生きて。僕は透明人間なんです」
 日褄先生はそれを、「ばっかじゃねーの」って笑った。
「透明人間は見えねぇから、透明人間なんだっつーの」
 そんな風に言って、たぶん、泣いてた。
「僕の分まで生きて」
 僕は自分の鼓動を聞く度に、その言葉を繰り返し、頭の奥で聞いていたような気がする。
 その度に自分に問う。
 どうして生きているのだろうか、と。
  部屋に一歩踏み入れると、足下でガラスの破片が砕ける音がした。この部屋でスリッパを脱ぐことは自傷行為に等しい。
「あー、うーくんだー」
 閉められたカーテン。閉ざされたままの雨戸。
 散乱した物。叩き壊された物。落下したままの物。破り捨てられた物。物の残骸。
 その中心に、彼女はいる。
「久しぶりだね、ひーちゃん」
「そうだねぇ、久しぶりだねぇ」
 壁から落下して割れた時計は止まったまま。かろうじて壁にかかっているカレンダーはあの日のまま。
「あれれー、うーくん、背伸びた?」
「かもね」
「昔はこーんな小さかったのにねー」
「ひーちゃんに初めて会った時だって、そんなに小さくなかったと思うよ」
「あははははー」
 空っぽの笑い声。聞いているこっちが空しくなる。
「はい、これ」
「な��? これ」
「滝澤先生に頼まれたプリント」
「たきざわって?」
「今度のクラスの担任だよ」
「ふーん」
「あ、そうだ、今度は僕の同じクラスに……」
 彼女の手から投げ捨てられたプリントの束が、ろくに掃除されていない床に落ちて埃を巻き上げた。
「そういえば、あいつは?」
「あいつって?」
「黒尽くめの」
「黒尽くめって……日褄先生のこと?」
「まだいる?」
「日褄先生なら、今年度も学校にいるよ」
「なら、学校には行かなーい」
「どうして?」
「だってあいつ、怖いことばっかり言うんだもん」
「怖いこと?」
「あーちゃんはもう、死んだんだって」
「…………」
「ねぇ、うーくん」
「……なに?」
「うーくんはどうして、学校に行けるの? まだあーちゃんが帰って来ないのに」
 どうして僕は、生きているんだろう。
「『僕』はね、怖いんだよ、うーくん。あーちゃんがいない毎日が。『僕』の毎日の中に、あーちゃんがいないんだよ。『僕』は怖い。毎日が怖い。あーちゃんのこと、忘れそうで怖い。あーちゃんが『僕』のこと、忘れそうで怖い……」
 どうしてひーちゃんは、生きているんだろう。
「あーちゃんは今、誰の毎日の中にいるの?」
 ひーちゃんの言葉はいつだって真っ直ぐだ。僕の心を突き刺すぐらい鋭利だ。僕の心を掻き回すぐらい乱暴だ。僕の心をこてんぱんに叩きのめすぐらい凶暴だ。
「ねぇ、うーくん」
 いつだって思い知らされる。僕が駄目だってこと。
「うーくんは、どこにも行かないよね?」
 いつだって思い知らせてくれる。僕じゃ駄目だってこと。
「どこにも、行かないよ」
 僕はどこにも行けない。きみもどこにも行けない。この部屋のように時が止まったまま。あーちゃんが死んでから、何もかもが停止したまま。
「ふーん」
 どこか興味なさそうな、ひーちゃんの声。
「よかった」
 その後、他愛のない話を少しだけして、僕はひーちゃんの家を後にした。
 死にたくなるほどの夏の熱気に包まれて、一気に現実に引き戻された気分になる。
 こんな現実は嫌なんだ。あーちゃんが欠けて、ひーちゃんが壊れて、僕は嘘つきになって、こんな世界は、大嫌いだ。
 僕は自分に問う。
 どうして僕は、生きているんだろう。
 もうあーちゃんは死んだのに。
   「ひーちゃん」こと市野谷比比子は、小学生の頃からいつも奇異の目で見られていた。
「市野谷さんは、まるで死体みたいね」
 そんなことを彼女に言ったのは、僕とひーちゃんが小学四年生の時の担任だった。
 校舎の裏庭にはクラスごとの畑があって、そこで育てている作物の世話を、毎日クラスの誰かが当番制でしなくてはいけなかった。それは夏休み期間中も同じだった。
 僕とひーちゃんが当番だった夏休みのある日、黙々と草を抜いていると、担任が様子を見にやって来た。
「頑張ってるわね」とかなんとか、最初はそんな風に声をかけてきた気がする。僕はそれに、「はい」とかなんとか、適当に返事をしていた。ひーちゃんは何も言わず、手元の草を引っこ抜くことに没頭していた。
 担任は何度かひーちゃんにも声をかけたが、彼女は一度もそれに答えなかった。
 ひーちゃんはいつもそうだった。彼女が学校で口を利くのは、同じクラスの僕と、二つ上の学年のあーちゃんにだけ。他は、クラスメイトだろうと教師だろうと、一言も言葉を発さなかった。
 この当番を決める時も、そのことで揉めた。
 くじ引きでひーちゃんと同じ当番に割り当てられた意地の悪い女子が、「せんせー、市野谷さんは喋らないから、当番の仕事が一緒にやりにくいでーす」と皆の前で言ったのだ。
 それと同時に、僕と一緒の当番に割り当てられた出っ歯の野郎が、「市野谷さんと仲の良い――くんが市野谷さんと一緒にやればいいと思いまーす」と、僕の名前を指名した。
 担任は困ったような笑顔で、
「でも、その二人だけを仲の良い者同士にしたら、不公平じゃないかな? 皆だって、仲の良い人同士で一緒の当番になりたいでしょう? 先生は普段あまり仲が良くない人とも仲良くなってもらうために、当番の割り振りをくじ引きにしたのよ。市野谷さんが皆ともっと仲良くなったら、皆も嬉しいでしょう?」
 と言った。意地悪ガールは間髪入れずに、
「喋らない人とどうやって仲良くなればいいんですかー?」
 と返した。
 ためらいのない発言だった。それはただただ純粋で、悪意を含んだ発言だった。
「市野谷さんは私たちが仲良くしようとしてもいっつも無視してきまーす。それって、市野谷さんが私たちと仲良くしたくないからだと思いまーす。それなのに、無理やり仲良くさせるのは良くないと思いまーす」
「うーん、そんなことはないわよね、市野谷さん」
 ひーちゃんは何も言わなかった。まるで教室内での出来事が何も耳に入っていないかのような表情で、窓の外を眺めていた。
「市野谷さん? 聞いているの?」
「なんか言えよ市野谷」
 男子がひーちゃんの机を蹴る。その振動でひーちゃんの筆箱が机から滑り落ち、がちゃんと音を立てて中身をぶちまけたが、それでもひーちゃんには変化は訪れない。
 クラスじゅうにざわざわとした小さな悪意が満ちる。
「あの子ちょっとおかしいんじゃない?」
 そんな囁きが満ちる。担任の困惑した顔。意地悪いクラスメイトたちの汚らわしい視線。
 僕は知っている。まるでここにいないかのような顔をして、窓の外を見ているひーちゃんの、その視線の先を。窓から見える新校舎には、彼女の弟、ろーくんがいた一年生の教室と、六年生のあーちゃんがいる教室がある。
 ひーちゃんはいつも、ぼんやりとそっちばかりを見ている。教室の中を見渡すことはほとんどない。彼女がここにいないのではない。彼女にとって、こっちの世界が意味を成していないのだ。
「市野谷さんは、死体みたいね」
 夏休み、校舎裏の畑。
 その担任の一言に、僕は思わずぎょっとした。担任はしゃがみ込み、ひーちゃんに目線を合わせようとしながら、言う。
「市野谷さんは、どうしてなんにも言わないの? なんにも思わないの? あんな風に言われて、反論したいなって思わないの?」
 ひーちゃんは黙って草を抜き続けている。
「市野谷さんは、皆と仲良くなりたいって思わない? 皆は、市野谷さんと仲良くなりたいって思ってるわよ」
 ひーちゃんは黙っている。
「市野谷さんは、ずっとこのままでいるつもりなの? このままでいいの? お友達がいないままでいいの?」
 ひーちゃんは。
「市野谷さん?」
「うるさい」
 どこかで蝉が鳴き止んだ。
 彼女が僕とあーちゃん以外の人間に言葉を発したところを、僕は初めて見た。彼女は担任を睨み付けるように見つめていた。真っ黒な瞳が、鋭い眼光を放っている。
「黙れ。うるさい。耳障り」
 ひーちゃんが、僕の知らない表情をした。それはクラスメイトたちがひーちゃんに向けたような、玩具のような悪意ではなかった。それは本当の、なんの混じり気もない、殺意に満ちた顔だった。
「あんたなんか、死んじゃえ」
 振り上げたひーちゃんの右手には、草抜きのために職員室から貸し出された鎌があって――。
「ひーちゃん!」
 間一髪だった。担任は真っ青な顔で、息も絶え絶えで、しかし、その鎌の一撃をかろうじてかわした。担任は震えながら、何かを叫びながら校舎の方へと逃げるように走り去って行く。
「ひーちゃん、大丈夫?」
 僕は地面に突き刺した鎌を固く握りしめたまま、動かなくなっている彼女に声をかけた。
「友達なら、いるもん」
 うつむいたままの彼女が、そうぽつりと言う。
「あーちゃんと、うーくんがいるもん」
 僕はただ、「そうだね」と言って、そっと彼女の頭を撫でた。
    小学生の頃からどこか危うかったひーちゃんは、あーちゃんの自殺によって完全に壊れてしまった。
 彼女にとってあーちゃんがどれだけ大切な存在だったかは、説明するのが難しい。あーちゃんは彼女にとって絶対唯一の存在だった。失ってはならない存在だった。彼女にとっては、あーちゃん以外のものは全てどうでもいいと思えるくらい、それくらい、あーちゃんは特別だった。
 ひーちゃんが溺愛していた最愛の弟、ろーくんを失ったあの日。
 あの日から、ひーちゃんの心にぽっかりと空いた穴を、あーちゃんの存在が埋めてきたからだ。
 あーちゃんはひーちゃんの支えだった。
 あーちゃんはひーちゃんの全部だった。
 あーちゃんはひーちゃんの世界だった。
 そして、彼女はあーちゃんを失った。
 彼女は入学することになっていた中学校にいつまで経っても来なかった。来るはずがなかった。来れるはずがなかった。そこはあーちゃんが通っていたのと同じ学校であり、あーちゃんが死んだ場所でもある。
 ひーちゃんは、まるで死んだみたいだった。
 一日中部屋に閉じこもって、食事を摂ることも眠ることも彼女は拒否した。
 誰とも口を利かなかった。実の親でさえも彼女は無視した。教室で誰とも言葉を交わさなかった時のように。まるで彼女の前からありとあらゆるものが消滅してしまったかのように。泣くことも笑うこともしなかった。ただ虚空を見つめているだけだった。
 そんな生活が一週間もしないうちに彼女は強制的に入院させられた。
 僕が中学に入学して、桜が全部散ってしまった頃、僕は彼女の病室を初めて訪れた。
「ひーちゃん」
 彼女は身体に管を付けられ、生かされていた。
 屍のように寝台に横たわる、変わり果てた彼女の姿。
(市野谷さんは死体みたいね)
 そんなことを言った、担任の言葉が脳裏をよぎった。
「ひーちゃんっ」
 僕はひーちゃんの手を取って、そう呼びかけた。彼女は何も言わなかった。
「そっち」へ行ってほしくなかった。置いていかれたくなかった。僕だって、あーちゃんの突然の死を受け止めきれていなかった。その上、ひーちゃんまで失うことになったら。そう考えるだけで嫌だった。
 僕はここにいたかった。
「ひーちゃん、返事してよ。いなくならないでよ。いなくなるのは、あーちゃんだけで十分なんだよっ!」
 僕が大声でそう言うと、初めてひーちゃんの瞳が、生き返った。
「……え?」
 僕を見つめる彼女の瞳は、さっきまでのがらんどうではなかった。あの時のひーちゃんの瞳を、僕は一生忘れることができないだろう。
「あーちゃん、いなくなったの?」
 ひーちゃんの声は僕の耳にこびりついた。
 何言ってるんだよ、あーちゃんは死んだだろ。そう言おうとした。言おうとしたけれど、何かが僕を引き留めた。何かが僕の口を塞いだ。頭がおかしくなりそうだった。狂っている。僕はそう思った。壊れている。破綻している。もう何もかもが終わってしまっている。
 それを言ってしまったら、ひーちゃんは死んでしまう。僕がひーちゃんを殺してしまう。ひーちゃんもあーちゃんみたいに、空を飛んでしまうのだ。
 僕はそう直感していた。だから声が出なかった。
「それで、あーちゃん、いつかえってくるの?」
 そして、僕は嘘をついた。ついてはいけない嘘だった。
 あーちゃんは生きている。今は遠くにいるけれど、そのうち必ず帰ってくる、と。
 その一週間後、ひーちゃんは無事に病院を退院した。人が変わったように元気になっていた。
 僕の嘘を信じて、ひーちゃんは生きる道を選んだ。
 それが、ひーちゃんの身体をいじくり回して管を繋いで病室で寝かせておくことよりもずっと残酷なことだということを僕は後で知った。彼女のこの上ない不幸と苦しみの中に永遠に留め��おくことになってしまった。彼女にとってはもうとっくに終わってしまったこの世界で、彼女は二度と始まることのない始まりをずっと待っている。
 もう二度と帰ってこない人を、ひーちゃんは待ち続けなければいけなくなった。
 全ては僕のついた幼稚な嘘のせいで。
「学校は行かないよ」
「どうして?」
「だって、あーちゃん、いないんでしょ?」
 学校にはいつから来るの? と問いかけた僕にひーちゃんは笑顔でそう答えた。まるで、さも当たり前かのように言った。
「『僕』は、あーちゃんが帰って来るのを待つよ」
「あれ、ひーちゃん、自分のこと『僕』って呼んでたっけ?」
「ふふふ」
���ひーちゃんは笑った。幸せそうに笑った。恥ずかしそうに笑った。まるで恋をしているみたいだった。本当に何も知らないみたいに。本当に、僕の嘘を信じているみたいに。
「あーちゃんの真似、してるの。こうしてると自分のことを言う度、あーちゃんのことを思い出せるから」
 僕は笑わなかった。
 僕は、笑えなかった。
 笑おうとしたら、顔が歪んだ。
 醜い嘘に、歪んだ。
 それからひーちゃんは、部屋に閉じこもって、あーちゃんの帰りをずっと待っているのだ。
 今日も明日も明後日も、もう二度と帰ってこない人を。
※(2/4) へ続く→ https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/647000556094849024/
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malibu-beach · 4 years ago
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通過済みシナリオ
★CoC6版 ・あぁ~!水素の音ォ~!! /月野滉太郎 ・アイイズノットチョコレート! /毒島健治 ・愛され少女のステキな末路(HO1) /渡中井のえる ・仰ぎ見る遡行 /凍崎つぐみ ・青と紫の指輪 /城山洋一N ・アオのあなたへ /汐見きら ・悪魔の唇(HO2) /酒匂玲夢N ・悪霊の家 /メルヴィンN ・あけて、あけてよ! /蒲鮫ラブN ・鮮やかな死を貴方に /星浦あくあN ・貴方は私を二度殺すのね。 /梵霙N ・アンケート#17 /汐見きら ・アンチテェゼ・ポジション(HO1)/永福溯哉N ・AND/HAND /頭夢児冰御 ・行きはよいよい /魚住潤N ・一瞬で終わるシナリオ /湯麗桃N ・隠匿のエリス(HO2) /凍崎つぐみN ・薄紅色の扼痕 /霜陰雅智N ・海も枯れるまで(HO1) /揺風波音N ・うらおもて /双葉潮 ・永久の一日 /敷浪惚N ・S村事件についての考察 /澄川透 ・択ぶ魂刻師(予定) ・エンジェル・デビル・インプロパー(HO悪魔) /エレN ・縁と命はつながれぬ /咲洲輝凪 ・おい、電車に牛丼挟んだ奴誰だよ /天満らむね ・お酒こわい /宮ヶ瀬綺純 ・御一人様ですか!? /澄川透N ・お前がママになるんだよ! /魚住潤 ・御曹司オペラ /九重弥白N
・カーテンコールは手の中に /霧裂瞳子 ・怪傑倶楽部義勇奇譚(予定/HO鼠) ・かいぶつたちとマホラカルト(HO1) /牙峰澯N ・欠けた片割れの星 /宮ヶ瀬綺純 ・彼方からの君に捧ぐ(予定) ・がなる切っ先と硝子ペン /毒島健治N ・神はサイコロを振らない /灰方霞 ・カリガリ博士のキャビネット /花浴栄華N ・関西大日本帝国(HO1) /漆戸景N ・ギガンティック☆ギャラクシー☆ツアー /中溝染N ・ぎこちない同居 /桜雷照N ・黄添高校怪奇忌憚 /真鶴詩沁N・渡中井のえるN ・君隠れしの誰そ彼刻 /源悠奈 ・君におはようといえたら /渡鳥彼方 ・キミは神推し? /星浦まりん ・きみはここにいた(HO3) /双葉潮N ・狂気山脈~邪神の山嶺~ /渥美開N ・京都怪異譚(HO1) /濡羽群青N ・共有せよ /汐見きら ・虚箱 /入田・S・渚N ・僅差平行のヴェルダンディー /漣夕陽 ・空中ブランコ乗りのエリー /淡辺ナディアN ・腐っても探索者! /蘭鋳霑N ・99 /湯翠雨N ・クソキノコの恐怖~このクソキノコはどこまでも~(HO2) /マイカ ・口裂け女 /宮ヶ瀬綺純 ・Good morning All(予定/HO不老不死) ・クロッカスはリナリアを見ない /初台湊N ・KPCが知らないおばさんと健康飲料売りにきた /漣夕陽 ・月面世界(HO地球人) /遠浅マヒナN ・こゝろ(HO2) /霽月紘希N ・孤独の密室 /入田・S・渚L ・コンティニュエーション・ベット /灰方霞
・囀りとメメント(予定/HO2)  ・サファイアの月(HO2) /蓮池・Q・魅夜N ・36℃のMSゴシック /龍海マーメイドN ・三色の部屋 /星浦まりんN ・幸せな夫婦 /淡辺ナディア ・死者のストンプ /メルヴィン ・死にたがり電車 /敷浪想 ・死ね!花粉 /湯紫耀N ・蹂躙するは我が手にて(HO3) /シスネ・C・テティスN ・心臓がちょっとはやく動くだけ /甘露寺心N ・人類は何故パンツを履くのか? /宮ヶ瀬綺純 ・Sweets xxxxx Lend /滝留磨生 ・好きです、○○さん /要害汀月 ・ストラフトン山の火 /メルヴィン ・絶世美人 /汐見きら ・絶望の孤島 /汐見きら ・遭難者C /渥美昇 ・ソープスクール(HO3) /雫川鴇羽 ・そして、誰がいなくなるのか?(HO4) /チェイスNL ・その命を捧げよ /汐見きらN ・その真紅に愛を見る(HO召使) /緋臆深令N ・空の色すら知らない(HO3) /ハイドランジェラN ・空の観客席から拍手喝采を! /宮ヶ瀬綺純
・太陽と月と眼 /沸井幹斗N ・たすくの手 /汐見きら ・魂の行方(HO2) /大淀颯N ・誰かがメス堕ちしないと出られない部屋 /走潟当N ・誰がロックを殺すのか(HO2/ベース) /龍海サンゴN ・タンサクシャシッソウダービー /頭夢児冰御 ・チャルディーニの法則(HO1) /黒沼燗那N ・丁々発止と撃鉄を /メルヴィン ・辻斬り!おちんちん侍 /マルチンN ・デウス・エクス・マキナは死んだ(HOヒト) /フェザーN ・天才アイドル南アリサは何故死んだのか?(予定/HO2) ・天使のつくりかた /梵霰 ・天使の密室と不浄のロザリオ(HO3) /ディアN ・同居人 /城山洋一L ・毒入りスープ /灰方霞N ・頭夢児島殺人事件(HO2) /頭夢児冰御N ・ともだち切符 /毒島健治 ・虜(HO2) /月野滉太郎N
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・MY SUPER DARLING! /星浦あくあ ・マザーグース・レストラン /頭夢児冰御 ・真夜中のサルーテ /灰方霞 ・真夜中のシークレットサーカス /梵霰 ・真夜中遊園地 /メルヴィン ・まれびとこぞりて /南雲知朱 ・Mamma Mia Vampire /滝留磨生 ・水底から呼ぶ者 /梵霰 ・見果ての綸紡(HO4) /梵雹N ・名探偵黒猫と大怪盗キャッツ(HO1) /滝留磨生N
・幽明境を異にして、(HO4) /轟鬼零N ・雪山密室 /渥美昇N ・ようこそ!迷冥市役所都市伝説課へ!(HO2) /霊仙祈N ・よるのしじまがやってくる /凍崎つぐみ
・ラーヘンデル・アイランド /宮ヶ瀬綺純 ・楽園パラノイア(HO1) /咲洲輝凪N ・リガロ /灰方霞 ・裡面世界の天蓋花 /日向夏海永L ・旅館の捕食者(HO3) /漂内うずらN ・りんごはあまい /甘露寺心 ・ルベライトジャム(HO4) /梵雪N ・レモン症候群 /漆戸景
・WORSTBUDDY-獣の覚醒- /双葉潮 ・海神の契約書 /湯麗桃 ・嗤う人間師(HO4) /マイカN ・悪い子だぁれ? /霧裂瞳子N ・ワンルーム・ディスコン(HO2) /狩湖飛菜N
★CoC7版 ・まずはダイスを振れ、話はそれからだ。 /メルヴィン ・The サイゼリヤ /メルヴィン ・紅文字 /メルヴィン
★インセイン ・この家は眠れない(PC2) /護国寺涙N
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nemosynth · 5 years ago
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<祝 こんにち的シンセ生誕六十周年 : Make Noise 0-Coast review> ●早くも長い前置き:こんにち的シンセの開祖とアナログシンセの二大潮流
こんにち的なシンセの開祖として有名なのは、アメリカのロバート・モーグ(Robert Moog)と、ドン・ブックラ(Don Buchla)。しかし歴史上、いちばん最初に電圧制御方式シンセをつくったのは、モーグでもなければブックラでもない。
それはドイツ人のハラルト・ボーデ(Harald Bode)であり、1960 年のことであった。かねてからボーデは、米国のオルガン・メーカーであるエスティ・オルガン(Estey Organ)社のために渡米して電子オルガンを開発していたのだが、そこで彼自身それまでの真空管ではなく新しく勃興してきたトランジスターに関心を持ち、それを利用した新概念の電子楽器を構想しはじめた。彼が考えたのは放送局や映画、レコーディングスタジオなどで活躍できるような、自由に音がつくれるあたらしい楽器である。 1960 年にボーデが創った最初のシンセ「Audio System Synthesizer」はすでにモジュラー構成になっていたものの、当時の電子音楽として流行していたテープの切り貼りによる「ミュージック・コンクレート」の影響を受け、オシレーターが無い代わりになんとオープンリールのテープレコーダーが音源回路として組み込まれていた。そしてそのテープから出る音をローパス・ハイパスどちらもできるフィルターやリング変調機、リバーブなどのモジュールで加工するようになっていた。その点ではアナログ方式のフレーズサンプリング・モジュラーシンセとも言えるであろう。
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彼の論文には、当時すでに存在していたリング=ブリッジ・モジュレーター(Ring-bridge Modulator)を使って2つ音の和と差の周波数を出すというどっかで聞いたような話や、リバーブレーション・ジェネレーター(Reverbration Generator)つまり残響生成装置でもって音を響かせる話などが解説されており、それら既存技術をコンポーネント化して組み合わせることで新コンセプトの楽器をつくったのである。
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ちなみに彼は史上初の VCO も開発したが、不思議にもモジュラーシンセには組み込んでいなかったふしがある。
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ともかく彼は自作のモジュラーシンセを AES ショーに持ち込み、デモを実施。その聴衆のなかに、そう、誰あろう、まだ若き学生にすぎなかったボブ・モーグの姿があった。 トランジスターという最先端テクノロジーがもたらす可能性とコンパクト性にすっかり魅了されたモーグは、このあと小さくも未来的な電子楽器としてテルミンの自作と販売に打ち込むようになる。
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やがて '60 年代前半、ボーデなどによる先行モジュールをヒントにモーグもブックラも自分なりに電圧制御型のオシレーター・モジュールを開発し、さまざまな他のモジュールも開発するようになった。そして、’64 年にはモーグがモジュラーシンセのプロトタイプを販売することに成功し、以来モジュラーシンセの開発と販売にいそしむようになった。’66 年にはブックラが自身では初めての商業ベースでのモジュラーシンセ販売を始め、その機種名はブックラ 100 シリーズと銘打たれた。二人はボーデなど数多くの先駆者たちの偉業の上に先駆者たちの双肩の上にならび立って、史上初のこんにち的なアナログシンセをつくりあげたのである。
この二人に 「どちらが先に最初のシンセをつくったのですか?」 と聞こうものなら、お互い相手を指差して 「あんたが先」 「あんたが先」 と言い合うくらい、どっちが最初にシンセをつくったのかもはや当の本人たちでもわからない。だからふたりとも同じころにシンセを開発したというのが結論。そして電圧制御式という画期的な方法論を編み出したのは、あくまでボーデ。
ちなみに冨田勲は moog IIIp とともにモーグ社へライセンス提供されていたボーデのリング変調機とフリケンシーシフターとを入手しており、アルバム「月の光」などからずっと使用している。
ロバート・モーグと、ドナルド・ブックラ。 ボブとドン。 この二人の設計思想には明確な違いがあり、特にそれはコントローラーにて顕著にあらわれることになる。そのまま二人はアナログシンセにおける二大潮流になっていった。 当時の合衆国において ・モーグは、東海岸のニューヨーク州に拠点を置き ・ブックラは、西海岸のサンフランシスコにいた そのためアナログシンセ業界では、たとえて言うなら「東海岸モーグ流派」と「西海岸ブックラ流派」とも言うべき、ふたつの潮流が存在することとなる。
東海岸モーグ流派すなわち一般的に言われる「イーストコースト・シンセシス(East Coast Synthesis)」は、いわゆる減算方式でありオシレーター/フィルター/アンプという音声信号経路をたどり、それへの変調要素として EG や LFO などを配置。豊富な倍音をもつ音源波形から倍音を削って音創りするという減算方式は、論理的でありできる音色の予想もつきやすい利点があった。 なによりもモーグ・シンセはおもに普通の音楽用キーボードによって演奏でき、それはそのほうが分かりやすく音創りもしやすく、ついでに売りやすいだろうと考えてのこと。
つまりモーグは従来的な音楽演奏を念頭においてすべてを設計したのである。このためモーグ・シンセにはじまる減算方式は、デジタル化されソフトウェア化されたこんにちにいたるまで絶大な人気があり、音楽シーンを席巻することになる。 それは合衆国の中でも歴史が古い東海岸ならではの伝統的なビジネスセンスでもあった。
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いっぽうそんな伝統なんかどこ吹く風、ネクタイ締めたビジネスなんかくそくらえ、ヒッピーと反戦とドラッグとカウンターカルチャーとラヴアンドピースだいぇーいにあけくれていた西海岸から出てきた西海岸ブックラ流派、一般的に「ウェストコースト・シンセシス(West Coast Synthesis)」と呼ばれる音源方式は、フルアナログなのにフィルターを持たず、アナログによる FM 変調やウェーヴシェイピング、ウェーヴフォールディングなどにより倍音を増やす方向で音創りするように設計されていた。三角波のように倍音が少ない音源波形からさまざまな変調をへて倍音を増やすというこのシンセシスは、減算方式では不可能な音やより複雑な倍音構成の音をつくることができた。
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さらにブックラのシンセは '66 年に発売した初号機 100 シリーズからの伝統として、トラッドな白鍵・黒鍵からなるキーボードを持たずまったくなんのコントローラも持たないか、あっても金属タッチパネルによるフルフラットな鍵盤などしかなかった。金属タッチパネル鍵盤はマイクロチューニングすら可能であったという。しかしその一方で、金属タッチパネル鍵盤は演奏者が鍵盤に触れる指などの面積や「触れる指先の汗による湿度などによっても音色が変わる」という都市伝説を生むほどに非常に繊細な表現を可能としつつ、かえってなかなか弾きこなすにもむずかしいものであった。 というか、はなから「弾きこなす」ということを想定していない。弾くという行為すら考えていない。そんな従来の楽器に隷属した発想なんて自由な電子楽器の進化をさまたげるものであり、言うなれば先祖返りだ!とブックラは考えていたのである。
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なのでコントローラーも従来とは違うぶっとんだものになり、演奏するにしても音を出しっぱなしにしてドローン音をたれ流し操作子をひねりまくって音色変化させるという手法が、かなりひんぱんにとられた。
ブックラはアナログシーケンサーの発明者でもあるが、それは当時の電子音楽として流���していた「ミュージック・コンクレート」をより容易に実現するフレーズ生成マシンとして開発したものであったというのも興味深い。とにかく楽器然としていない、楽器という既存のしがらみからの自由解放ばかりを考えていたのである。
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むろんモーグにも長大なリボンコントローラーがあったり、モジュラー用キーボードコントローラーにピッチのスケールを変える機能が付いていたりもした。しかしそれらは、キース・エマーソンのようなショーアップしたパフォーマンス以外ではあまり使われることなく、さらには minimoog の登場によって皆の記憶から吹っ飛んでしまった。 その minimoog は、あえて仕様を限定することでコンパクト化を実現、その明快さから一躍ヒット商品となり、対抗馬として ARP Odyssey が出るに至った。以来シンセは従来型の楽器的なアイデンティティに目覚め、その帰結として徐々にモジュラーから遠ざかっていくことになる。
いっぽうブックラは、'60 年代の当初からタッチパネル鍵盤やリボンコントローラー的なぶっちぎったものにこだわっていた。
結果ブックラのシンセは先進的すぎ、とんがりすぎて、音響実験室か前衛的でアヴァンギャルドな音楽にしか使われないことが多かった。
ブックラは異端児であった。
彼は「シンセサイザー」という言葉すら好きではなかった。合成器というその意味からは、どこかしら「既存のなにかを模倣するもの」というニュアンスが感じられたからだ。だから彼は、彼のシンセをシンセとひとくくりにしては呼ばず、単におのおのの機種名でのみ呼んだ。 事実、'82 年の米国版キーマガにおけるインタビュー記事にて彼はそう明言している。そればかりか東海岸モーグ流派が君臨しているシンセ業界は従前の楽器に従属しすぎであると、静かにだがはっきりと苦言すら呈している。
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けっきょくモーグは豊かな音色を創ることを第一に置き、ブックラは既存のしがらみにとらわれない電子音楽ならではの演奏をすることを第一に置いていたがために、二つの流派が誕生することになったと言っても過言ではない。
ちなみにこの二人は仲が良かったそうである。個人的感情と彼らがつくりだすもの、さらには市場経済や会社経営とはまた別の話ということであろう。それこそインタヴューでお互い相手を指して「あんたが最初」って言い合うくらいなのだから、ともにシンセあけぼのの時代をつくった当事者として、底抜けにリスペクトしあう間柄にちがいない。
そしてブックラは細々とではあるが、とんがった西海岸流派のシンセをつくり、デジタルハードシンセが流行するとこれまた前衛的かつ実験的な感圧パッド方式の MIDI コントローラをつくり、そしてゼロ年代になって eurorack ブームが起きるとそれを機にまた変態なシンセをつくったり、往年の変態シンセを復刻させたりしている。 そのすべてにおいては鍵盤は装備されておらず、たとえそう見えても実はあいかわらず電極式タッチパネルであった。
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↑ 1972 年発売、Buchla music easel ↓ 現代復刻版、Buchla music easel
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また、西海岸ブックラ流派のシンセメーカーは、ブックラの他にも古くから Serge(サージ)などあり、そろいもそろって特殊なシンセを開発し、その結果いずれも細々とではあるが求道者のように息の長いシンセづくりをつづけてきた。
なお、海外では「西海岸ブックラ流派のシンセは、加算合成方式のシンセシスを採用している」と言われる事が多い。しかし加算合成(additive synthesis)といってもフーリエ級数を使ったサイン波倍音加算合成などとは違い、あくまで「倍音が少ない音源波形に倍音を増やす」という意味に過ぎないことに注意。
ところで、先ほど西海岸ブックラ流派のシンセシスでは、アナログによる FM、ウェーヴシェイピング、ウェーヴフォールディングなどによって音創りすると述べた。 アナログによる FM 変調はヤマハ DX で大ブレイクしたデジタル FM ほどには音が澄んでいないものの、原理上エイリアスノイズが出ないという特徴がある。 いっぽう、ウェーヴシェイピングは単調な音源波形ほど音楽的な音色変化をもたらす1対1の数学的な変換である。のちのデジタルシンセ時代においてコルグが 01/W を出したときに採用されたものの、PCM のように複雑かつ不規則な音源波形にかけるとただの汚いノイズにしかならないことが多かった。そのため、むしろ幾何学的な音源波形しか出さない原始的なアナログシンセに有利な手法であった。 さらにウェーヴフォールディングとは、ディストーションシンセシスの一種であり、ある波高から上ないし下の部分を極性が逆の方向へ折り返すことによって波形をひずませるシンセシスである。とはいえ単純なディスト―ションのように鋸歯状波を台形波にするような、ある振幅以上の波をシンプルにぶったぎるようなことはせず、どう波形を折り返すかが各シンセメーカーの腕のみせどころであった。
これら西海岸流派のシンセシスをすべて包括して、非線形シンセシス、ノンリニアシンセシスとも呼び、それはサイン波のような単純な波形から複雑な波形を生み出すものであった。そしてそれはモーグシンセなどによる線形シンセシス、あるいはリニアシンセサイザーをうたったローランド D-50 などとはコンセプトが異なるものであった。
デジタルシンセ時代に入ったあとのノンリニアシンセシスは、ウェーヴシェイパーを搭載したコルグ 01/W をはじめ、時たまマーケティング・タームとして浮上することがある。非常におおきくマクロに俯瞰すれば、ヤマハ DX シリーズは西海岸シンセシスの鬼子と言えなくもない。言わばものすごくバカ売れした、西海岸流派のミュータント。 ただ DX は FM 音源に特化したシンセなので、一般的には FM 変調の文脈で語られるものであり、ヤマハのエンジニアがブックラを手本にしたとは到底思えない。
余談ながら、とかくぶっとんだ発想の機種が多いブックラだが、じつは '70 年前後から活躍していたスザンヌ・チアーニ(Suzanne Ciani)は、なんとブックラ・シンセに触れてシンセ音楽に目覚めブックラを多用し、じつにたおやかな作風の美しいシンセ音楽アルバムも残していたりする。
彼女は日本で最初に評価され、日本からデビューアルバムを出し、そこから世界に躍り出たアーティストであった。その後彼女のブックラ・モジュラーの大半を盗まれてしまい、傷心からしばらくの年月にわたり、アコピのみのリサイタルを繰返していたという。 しかしやはりブックラでないとという思いから、今ふたたびブックラのモジュラーを駆使し、さまざまにアンビエントな作品をつむぎだし続けている。
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↑ スザンヌ・チアーニとドン・ブックラ
またブックラは、実はオランダ系アメリカ人であり、その名前はほんとうは「ブークラ」と読むらしい。しかし日本では「ブックラ」で定着し、アメリカでは「ブクラ」とか「バクラ」とか言われたりする。 オランダ系アメリカ人でありなおかつ名前の読み方に諸説あるという点においても、奇しくも彼はモーグと同じである。
●メーカー名
Make Noise
創業者トニー・ロランドー(Tony Rolando)は、自分へのプレゼントとして簡単なリングモジュレーターをつくってみた。彼はモーグで働いていたのだが、基板設計が楽しすぎてスピンナウト。しかしスキルはあってもそれを実証するポートフォリオもなく、誰も「あんた経験ないし」というので自作のモジュールをつくりはじめた。この簡単なリングモジュレーター「D-Mod」もそのひとつ。簡単だがダイオード型で、当時はそんなに見かけない個性的な音がするタイプ。それを 20 個つくり、2個は自分用、残り 18  個はお小遣い用に Matrixsynth サイトで、単価 99 ドルで売り出したところ、秒殺で完売。その音がすばらしいというのでネットで噂になり、Analog Haven の Shawn Cleary が、いきなり 50 個つくってくれと依頼。うれしい悲鳴で一冬ほど忙殺されてしまう始末。ここから彼は、電子楽器のガレージメーカーである Make Noise 社を創業することとなった。
2008 年に創業した同社はユーロラックブームに乗り、今まであまり誰もが手をつけてこなかった西海岸ブックラ流派シンセシスに深く影響を受け、さまざまな個性派モジュールを開発・発売する大手シンセメーカーとなり、ついには Shared System という名の 60 万円以上する巨大でモジュラーなフラッグシップシンセまでつくりあげた。
また全世界で3万台以上も売れたとも言われる関数ジェネレーター・ユーロラックモジュール Maths など、とにかく異端児な機種を数多く生み出してきた。
今ではユーロラックのモジュラーシンセ・ユーザーの大半が、なんらかの形で同社のモジュールを組み込んでいるくらい、同社は大きなメーカーになった。
前述のフラッグシップ・モジュラーシンセの Shared System だが、これは皆で同じ機種を共有=シェアしそれでさまざまな作品をつくろうという意味があり、特に著名アーティストへ提供しては一発録りの作品をつくってもらい、7インチアナログ盤レコードにして販売する Make Noise Records というレコード・レーベルまで立ち上げているところが、同社の当世風でおもしろいところでもある。
今��なってはすっかり西海岸ブックラ流派における大手となった同社だが、その本社は今でも創業者ロランドーがもともと勤務していたモーグと同じ町にある。すなわち東海岸モーグ流派の総本山たる新生モーグ社とおなじく、アメリカは東部のノースカロライナ州アッシュヴィルにある。
また創業者のラストネームはよく日本ではローランドと呼ばれているが、つづり「Rolando」からするとロランドーのほうが正しい。
ところで現代のモジュラーシンセメーカーにおいて、西海岸ブックラ流派のメーカーは Buchla、Serge、この Make Noise の他にフランスの Mutable Instruments などがある。Mutable Instruments にいたっては、デジタル音源によるユーロラック・モジュールを盛んに開発・販売しており、物理モデリング・オシレーターモジュールなどもあったりする。
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●機種名
0-Coast 2016年1月発表、同年6月海外発売、7月国内発売。 海外売価 US$499、国内売価6万円前後。
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それまでユーロラック・モジュラーシンセをたくさんつくってきた Make Noise 社が、初めて出したテーブルトップ型のセミモジュラー・モノシンセ音源モジュール。 同社のフラッグシップたる Shared System を、ぐっと小さく凝縮したような仕様の機種だが、新開発の機能もいろいろある。薄い軽量コンパクトな金属ボディも場所を取らず、かつ頑丈でうれしい。
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機種名の最初の文字は「ゼロ」である。 機種名の読み方には: ・ゼロコースト ・ノーコースト ・オーコースト とあり、どれもが正解とされているものの、創業者社長ロランドー氏が「ノーコースト」と呼んでいるらしく、それがいちばん製品コンセプトに近いとされる。
・東海岸モーグ流派が「イーストコースト・シンセシス」。 ・西海岸ブックラ流派が「ウェストコースト・シンセシス」。 ・で、この機種はそのどちらでもないというので「ノーコースト・シンセシス(No Coast Synthesis)」ということらしい。
すなわちモーグとブックラというアナログシンセ二大パラダイムの、あいの子、とでも言いたいらしい。
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●音源方式
ノーコースト・シンセシス。 それは東海岸モーグ流派と西海岸ブックラ流派との特徴が入り乱れた、独自の音源方式。 しかもフルアナログかつディスクリート設計の、セミモジュラーシンセ。
セミモジュラーなので、音声信号系は以下の順番で内部結線されている。
音声信号系: ・VCO1基 ・オーバートーン(Overtone)セクション ・マルチプライ(Multiply)セクション ・バランス(Balance)セクション ・ダイナミクス(Dynamics)セクション
これに加えて以下の変調系コンポーネントが存在。
変調系: ・クロック出力/ランダム出力 ・電圧演算(Voltage Math)セクション ・スロープ(Slope)セクション → オーバートーンとマルチプライへ内部結線 ・コントゥアー(Contour)セクション → ダイナミクスへ内部結線
さらには、随所にパッチングするためのミニジャック端子が開いている。 MIDI IN 端子もあり、これもミニジャックで、5ピン端子との変換ケーブルが付属する。 むろん CV / Gate 駆動もでき、MIDI to CV / Gate コンバーターにもなる。 なお6本のパッチケーブルが付属する。さらに私の個体は日本代理店のキャンペーン品だったので5本のパッチケーブルが追加されて付属してきたが、それらは短くて短距離パッチングにしか使えないというところが、ご愛嬌。
●同時発音数
モノフォニック。 だが外部機器と組み合わせつつパッチングすれば裏ワザで2音ポリに、やりようによってはそれ以上のポリ数にできる。
●内蔵エフェクトの性能と傾向
皆無。
●内蔵波形、プリセットの傾向
装備されている VCO が1基のみであり、そこからの音源波形は三角波と矩形波のみ。だが、裏ワザでパッチングすると最大合計4基のオシレーターや1基のノイズジェネレーターなどが創りだせる。裏ワザによって作り出されたオシレーターから出力される波形は、倍音構成をさまざまに連続変化させられる鋸歯状波や三角波、パルス波、さらにはより複雑な幾何学波形など。同じく裏ワザによるノイズジェネレーターは、ホワイトノイズからレッドノイズまで各種のノイズを連続して可変出力できる。 ウェーヴフォールドの演算上、鋸歯状波とパルス波は加工できないという特性があり、そのためかデフォルトでの VCO には搭載されていはいない。
音色メモリーが無いのでプリセットも無い。
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●エディットの自由度と可能性
見慣れないシンセシスなので、まずは内部結線されている音声信号経路の順番に各セクションを紹介する。
おおざっぱに概要説明するなら:
・まず VCO1基で三角波と矩形波とを出力 ・次にオーバートーンとマルチプライとによる2つのセクションで倍音増大 ・バランスセクションで基音と倍音とのミックス比を決定 ・ダイナミクスセクションで、それまでに生成した倍音の量を調節して出力
.....となる。
この内部結線されている様子は、フロントパネルにおいて金色の矢印で表現されているので分かりやすい。ただ、おおむねフロントパネルの左から右へと信号が流れるようになっているものの、この矢印線をたどるとラセンを描いて進むため、最初はめんくらうがひとたび覚えて慣れてしまえばモーマンタイ。
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まず最初に VCO からは三角波と矩形波との二つが同時に発生し、おのおの個別に並列で出力される。つまり音源波形は選択式では無く、両方の波形が同時に個別に出る。音源波形は下流のセクションへ内部結線されているだけでなく、三角波のみを出力する端子と、矩形波のみを出力する端子と、二つのパッチポイント端子が並んで存在するので、二つ同時に出力できる。
この VCO はトライアングルベースの VCO であり、すなわちまず三角波を生成し、それをアナログ回路で変形して矩形波を創りだしている。アナログシンセにはよくある形式であり、三角波に波形が近いサイン波を生み出しやすいことから澄んだ音色などを得意とする。 これに対するものとしてはソーベース(Saw base)すなわち鋸歯状波ベースのオシレーターというものもあるが、本機種では使用されていない。 なお VCO にはリニア FM 変調のキャリアとしても動作できるよう、モジュレーターとなる信号を入力できるパッチポイント端子が装備されている。
VCO からの音源波形は、まずオーバートーンというセクションへ送られる。 オーバートーンとは「倍音」を意味する英単語であり、よく使われるハーモニクスは整数次倍音を意味することが多い。このセクションでは音源波形に高次倍音を付加するため、音源波形はブライトな音に生まれ変わる。しかもノブひとつまわすだけで、波形が形の崩れたサイン波っぽいものから三角波を経て、そこから三角波の頂点にスパイクが伸び、やがてスパイクのみがパルス波として残るという、不思議な聴いたことも無い変化をする。 Dave Smith Instumrnts OB-6 などにある、音源波形が連続可変する VCO のように使うといい。
次に音声信号はマルチプライというセクションへ送られ、倍音が乗算的に増大する。 ノブをひねったときの音色変化はハードシンクに似て非なるもので、今までに聴いたことが無い斬新なもの。波形を見るとどうやらここでウェーヴフォールドを行っているらしい。
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なお、このオーバートーンとマルチプライとの二つのセクションは、今までの Make Noise 社からは出てこなかった新開発の機能であり、単独のユーロラック・モジュールとしての発売が期待されている。
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そこから音声信号は、バランスと呼ばれるセクションへ。 これは VCO から分流した三角波、それもオーバートーンもマルチプライもバイパスしてきたピュアな三角波と、オーバートーンやマルチプライで増加された倍音群とのミックスバランスを単一のノブで可変できる。ノブをひねれば丸い音から倍音豊かな音色まで変化するさまは、あたかも東海岸モーグ流派シンセにてローパスフィルターのカットオフを操作しているようでもあり、原理はまるで違うながらこのような倍音変化を生み出すあたり、東西どちらのシンセシスでもないところがノーコーストたるゆえんのひとつでもある。 むろんミックス比を変えているだけなのでレゾナンスは無い。それでも、もともとかなり奇抜な倍音群を制御できるので表現力もかなり大きい。
さらに音声信号はダイナミクスと呼ばれる最終セクションへ送り込まれる。 これは広義のローパスゲート(Low Pass Gate)であり、東海岸モーグ流派でいう VCF と VCA とを兼ね備えた働きをする。具体的には、ノブをひねると音量が下がると同時に倍音も減る。オーバートーンとマルチプライによって生成された倍音群を、ここで調節するのである。やはりレゾナンスこそ無いがこれは西海岸ブックラ流派に独特のセクションであり、現にローパスゲートを初めて開発したのはブックラであった。
ここで「広義の」ローパスゲートと書いたのには、わけがある。 すなわち狭義のローパスゲートはバクトロール(vactrol)と呼ばれる光学式アイソレーターを用いているが、0-Coast ではそれが意図的に使われていないからである。 バクトロールとは、LED とアナログ式の光センサーとで構成されたもので、LED で電気信号をいったん光信号に変え、それを光センサーで再び電気信号に戻す仕組みのもの。その構造上、信号のレスポンスに遅れが生じ、結果とんがったピークを持つ波形でも反応速度の遅延によりアタックがなまり、角がとれて丸い波形となる。 この挙動が、いわば倍音を削り取るローパスフィルターに似るのである。
しかも減衰時に周波数特性が刻々と変化することから、それが西海岸ブックラ流派シンセでは独特の味のある音色変化をもたらすものとして重宝された。実際には、まず往年のブックラ 292 ローパスゲートモジュールに使われ、こんにちでもその復刻版や他の西海岸流派シンセに使われている。そしてそのレスポンスの遅れと周波数特性のせいで、マリンバのようなディケイ感とピッチ感あるパーカッション音色や、撥弦楽器の音色などをつくるのを得意とし、特にボンゴを真似た音色は「ブックラ・ボンゴ」などと呼ばれたりもする。 
バクトロールにはいろんな種類があり、おのおの持ち味がことなるので、それもまたメー��ーの腕のみせどころとなっている。
なおバクトロールはフォトカプラーとも呼ばれ、MIDI 端子を絶縁するのに使われてもいる。多数の MIDI シンセを直列に MIDI 接続したときに、反応に遅れが生じるのはこのフォトカプラーのせいなのだが、これが無いと MIDI 接続時に複数のシンセにまたがって回路がつながってしまい、余分な電流が流れてシンセ内部の電子回路を破壊しかねない。よってこれを防ぐべくフォトカプラーを使うよう MIDI 規格にてさだめ、安全のため不可欠な設計としているのである。すなわち光学式アイソレーターとして MIDI 端子を電気的に絶縁すべく、フォトカプラーが使われているのである。
しかし 0-Coast ではローパスゲートにバクトロールを使わず、あえて東海岸モーグ流派シンセと同じようにトランジスターで構成し、そのためまさに VCF と VCA とを合体させたような回路設計となり、反応速度も速くおかげで今どきのクラブ音楽などで重宝される立ち上がりがするどく終わりもスパッと切れるように歯切れ良い音色が創れるようになった。 バクトロールを排したローパスゲートを組み込んだのは、その西海岸ブックラ流派の伝統を考えると英断とも言える。Make Noise 社のとらわれなさ、発想の柔軟さを物語るところでもある。そしてここに採用されたトランジスターベースのローパスゲートもまた東西流派の合作とも言え、ノーコーストたるところなのであろう。
このローパスゲートによるダイナミクス・セクションを経て、音声信号は外へ出る。 出力端子はライン出力とヘッドフォン出力との両方に対応したミニジャックであり、モノラルだがステレオ・プラグにも対応している。 これに加えてもうひとつラインミキサー用の高レベル出力端子もあり、これは 10V の出力を出すので、ここに間違えてスピーカーやヘッドフォンをつながないように!!
以上が、音声信号系の各セクション。
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いっぽう変調系セクションとしては、まず最初にクロック出力とランダム出力とがある。 クロック出力にはテンポ入力端子とタップテンポ機能があり、さまざまなクロックソースになる。裏モードで MIDI 同期するよう設定も可能。 裏ワザとして、テンポ入力端子に可聴域の周波数をもった信号をぶちこむことでクロック出力をデジタル・パルス波オシレーターとして発振させることができる。 ランダム出力は S / H 波を出力し、その速さはクロック出力に同じ。 これも裏ワザとして S / H 波をパッチングで可聴域でぶんまわすと、さまざまなスペクトルを連続可変できるノイズジェネレーターになる。
次に電圧演算セクションがあり、これは特殊な2チャンネルミキサー。 チャンネル1はなにもせず単純にミックスされるが、チャンネル2には信号を増幅するアッテネーターと、その極性を反転させるインバーターとが共存して存在し、和製英語でいうアッテインバーター、英語ではアッテヌバーター(Attenuverter)と呼ばれる機能を有している。なんの入力も無い場合は、この設定がそのまま電圧オフセットとして機能する。 この電圧演算セクションは2つの CV をさまざまなあんばいに加算したり、2チャンネルのオーディオミキサーとして使えたり、いろいろ使いみちがあるセクションである。オーディオをインバーターで逆相にするのも面白いかもしれない。
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そしてスロープという画期的なセクションへ。 スロープは簡易 EG にも LFO にも、さらにはパッチング次第で他の存在にもなりうる、自由な CV ソース。 ライズ(Rise)すなわち上昇とフォール(Fall)すなわち下降の二つのノブがあり、これでアタックとディケイのみの EG にしたり、サイクル機能を使ってリピートさせて LFO に、それも可聴域までぶん回せて、なおかつ上昇鋸歯状波から三角波から下降鋸歯状波まで連続可変できる LFO としても使える。さらには指数関数から対数関数カーヴまで連続可変できるノブまであり、上に凸から下に凸までの曲線や直線など、さまざまな CV カーヴを連続可変して出力する。 
実はこれ、アナログの関数ジェネレーターであり、さらに言うと測定器の業界で「ファンクション・ジェネレーター」として知られる装置に由来する。ファンクションジェネレーターとは、おもに低周波領域の交流電流信号を出力する測定器用テストオシレーターであり、正弦波、鋸歯状波、矩形波などを出力する電気計測器。それは関数発生器とか、函数発生器とも呼ばれ、その「ファンクション・ジェネレーター」という名のまま、ユーロラック・モジュラーの世界に持ち込まれ、モジュール化されて販売されている。 そして Make Noise 社の人気機種にも Maths というユーロラック版ファンクションジェネレーターモジュールがあり、それを簡略化したようにつくったのが 0-Coast の Slope セクション。0-Coast は、この廉価版シンセにして関数ジェネレーターを装備しているところがが画期的であり、しかもわかりやすくパラメーターが構成されている。
裏ワザとして、スロープを VCO からパッチングすることでモロに可聴域で駆動すると第2の VCO となり、三角波や鋸歯状波まで連続可変させながら、しかも同じ波形でもパラメーターを変えることで倍音構成を連続可変させながら出力できる。これを外部からの独立した CV で周期を制御すれば、擬似的に2音ポリシンセにもなる。 あるいはパッチングによりスロープをサブオシとして発振させ、それを VCO のリニア FM 入力へパッチングすれば、アナログ回路による2オペの FM 音源になる。
言うなれば「LFO の音を聴く」というぞくぞくする行為。なかなか使いみちがある。
なおスロープは、倍音を増大させるオーバートーンとマルチプライとに内部結線され、ウェーヴフォールディング的な音色変化を自動的にもたらす。
変調系の最後にあるのがコントゥアーと呼ばれる、いわゆる ADSR 型の EG。名前もミニモーグなどの EG っぽい。しかしパラメーター構成はやや変則で、 ・オンセット(Onset)がアタック・ノブ ・次にサステイン・ノブ ・そしてディケイとリリースとを兼ね備えたディケイ・ノブ ・最後にカーヴをリニアから指数関数カーヴまで連続可変できるノブ となっている。 
出力される CV は東海岸モーグ流派の ADSR 型でありながら、パラメーター構成がやや変則的なところが東西どちらでもないノーコーストたるゆえんのひとつ。 なおコントゥアーは、ローパスゲートたるダイナミクスに内部結線されている。
これもまた裏ワザとして、パッチングにより可聴域で周期的にトリガーさせることで、自在に波形が可変するオシレーターとして発振させられる。つまり EG を可聴域で周期的にトリガーさせることでオシレーターにするという、常識破りなことが可能。ただしそのためには全体へのゲート入力へ可聴域の信号を突っ込む必要があり、音の出方がかなりややこしいことになるので、変態なお遊び向けかもしれない。
とはいえこれも言わば「EG の音を聴く」という、なんだか禁断のようで、ぞくぞくするワザ 笑。
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ここまでが各ブロックの紹介だが、これに加えさまざまなパッチングが可能なパッチンポイント端子が多数装備されている。 パッチポイント端子のサイズはミニジャック。モジュレーションマトリクス風に言えば、13 ソース・14 デスティネーションだが、各パッチポイントが非常にツボを得たところに設けられており、廉価でありながら普通に考えられる限界を余裕で超える、それどころか東海岸モーグ流派シンセでは想像もつかない、とんでもない裏ワザの宝庫である。 市販されているスタッカブル・ケーブルを使えば、単一のソースから複数のデスティネーションへパラったり、複数うソースから単一デスティネーションへ集約したりも可能。ただスタッカブルものはスタイリッシュだがちょっと高価なので、ミニジャックを分岐させるマルチプライヤーを使えば安価に済ませられる。
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パッチポイントには見慣れないものもあり、たとえば EOC(End of Cycle)というパッチポイントはスロープが1サイクル終わるごとに信号を発する。スロープをサイクルモードにすれば、第2のクロックソースとして使える。内蔵クロックが2つもあるシンセなんて、��うそうない。パッチングすればコントゥアーによるエンベロープカーヴでもって、クロック周期を時々刻々と変えることすらできる。だんだんスローダウンする逆ゴム球スーパーボール効果とかも可能。
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こういう見慣れない機能や見慣れないパッチポイントが多いこともあって、パッチングを含む音創りは試行錯誤の連続となり、取扱説明書だけでは分からないことも多く、手探りで音をつくりあげていく、まさにモーグモジュラーを手にしたばかりのころの冨田勲さんの苦労をしのび追体験することになるのが、またチャレンジングでいい。歴史は繰り返す。 特に私の個体は初期ロットのせいなのか、はたまたいい加減なアナログ回路のせいなのかわからないが、電圧演算セクションをはじめあちこちにて理解不能な挙動を示すことがたびたびあり、それらをまた理解したり経験則で把握したりしていくのも謎解きで楽しい。
前述の裏ワザシリーズをまとめれば、VCO 以外にもクロック出力、スロープ、コントゥア―、そしてランダム出力とで、合計4基のオシレーターと1基のノイズジェネレーターを創りだすことができるなど、すべてが電圧で制御されているだけに、柔軟なパッチシステムのおかげでシンセの固定観念をぶち破ってくれておもしろいことこの上ない。 そしてこれら4オシレーターをモノフォニックで駆動するも良し、外部 CV / Gate から個別駆動してポリフォニックだかパラフォニックだかにするのもいいだろう。工夫すればパッチング次第で FM のみならず、実はハードシンクもできるから、スペック上は1VCOシンセなのにとてもそうとは思えない幅広い音創りができる。
加えて隠しモードでアルペジエイターや2チャンネル同時受信もできてバイティンブラルになるのかという MIDI 設定、じつは隠れて存在する三角波 LFO と矩形波 LFO の設定などができるのだが、なんせ LCD や有機 EL のような文字表示板を持たないので、取扱説明書をじっくり読まないとまるでアクセスできないにひとしい。こればかりは非常に落差を感じる部分。さすがにメーカーも使いにくいと思ったか、本体の裏側にそのショートカットがびっしり印刷されている。
とはいえ、MIDI からベロシティ情報など特定のメッセージのみを取り出し CV 化できたりするので、抽出や反映の仕方によっては MIDI ネットワークの中で独自解釈とふるまいで音を出す、自由な存在にもなれる。
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随所に LED を使用したインジケーターが配置されており、どこがトリガーされているのかなど現状が一目で把握できる工夫がされているのは、たいへん分かりやすい。 しかも電圧の高さなどを LED の輝度で表現してくれるのが、また分かりやすい。スロープ・カーヴなどを LED の明るさによるフェードイン / フェードアウトなどで表してくれるため、視覚情報が多くて助かる。これは明らかにブックラ・シンセにあるのと同じ特徴。まるでシンセが生き物のように、それこそ呼吸したりしているように明滅するさまは見ていて飽きない。なかなか東海岸シンセでは,お目にかかれないアメニティ。
音創りしてみると、まじめな音色も出るが圧倒的にふまじめな音色が出ることが多く、Make Noise という社名にふさわしいだけでなく、なぜ西海岸ブックラ流派がメジャーになれなかったのかが分かる気がして笑える。レゾナンスが無いから王道のシンベやブラスなどは期待しないでね。 だが、じっくり取り組んでみれば、西海岸ブックラ流派ならではの変態音色のみならず音楽的な美しい音色も得られる。特にパーカッションや撥弦楽器のエミュレーションは、アナログシンセとは思えない自然なサウンドがすることがある。 おおざっぱに言えば、レゾナント・フィルターを持たず基本的には変調系で音創りするせいか、乾いた音がすることが多い。 王道のレゾナンススウィープができない代わりに、逆にすんげーぶっとい音による不思議なシンセベースもできる。トランアングルベースのシンセなだけあって、ややもすると基音が強調され音が非常に太くなる傾向にあるのである。
MIDI 駆動もできるが、CV / Gate 駆動するかあるいは音を出しっぱなしにしてドローン音を出し、それを操作子やパッチングでリアルタイムにどんどん音色変化させるのが、よくある使い方。クロック出力などをうまく使えば、外部コントローラ無しでシーケンスフレーズみたいなものも単独で自己完結してつくれる。まるで、ちょっとおだてればシンセが勝手に作曲して自由気ままに歌っているかのようだ。
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ネット上にて、タブラの音色と奏法とを設定とパッチングとだけでシミュレーションしている人がいた。フルアナログとは思えない非常にリアルな作品であった。 
またスーパーボールが跳ね飛ぶように、だんだん周期が短くなる連打音をつくる設定とパッチングとが紹介されており、これが普通のシンセにおいてモジュレーションマトリクスを使うと不自然な結果になったりするのだが、0-Coast では非常に自然なリアルな音がつくれるのもおもしろい。これは基本的には、クロック出力のテンポを、コントゥアーによって減衰カーヴにするようパッチングし、それに肉付けして音創りする。クロックテンポそのものを変調できるところが、さすがモジュラー。
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●拡張性
MIDI IN 端子装備。隠しモードで MIDI 同期するよう設定も可能。
CV / Gate 駆動可能。
MIDI to CV / Gate コンバーターにもなる。
知人に教えてもらったが、コルグのアナログシーケンサー SQ-1 を介すればステレオミニジャック・シールド1本で MIDI 接続できる。これを応用すると DAW からの同期信号を USB で SQ-1 へ送り、そこからステレオミニジャック・シールドによる MIDI で 0-Coast へ送れる。むろん SQ-1 で CV / Gate 変換して 0-Coast へ送ってもいい。
外部音声入力端子装備、ただし外部音声が通るのはバランスとダイナミクスの2ブロックのみ。パッチングで増やしたオシレーターをここにぶっこめば、単体でマルチオシレーターシンセになる。
なによりも各種パッチポイントで拡張性はほぼ無限にあると言って良い。
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●あなたにとっての長所
あまりにも世間に普及しすぎた東海岸モーグ流派のシンセでは想像もつかない独自の音色変化の世界。
薄型軽量コンパクトだが、ずっしりとした堅牢なメタルボディなのも良い。
パッチングで縦横無尽に音が創れる。さらに Dave Smith Instruments の PRO2と組合せれば、PRO2には CV / Gate 入出力が4系統もあるから相性抜群。
比較的に安価で入手しやすい。
AC アダプターが全世界電圧対応なだけでも驚きなのに、またプラグ形状が全世界対応できるようにプラグ変換アダプターがそろっているのも驚き。日本、米国、豪州、欧州大陸、英国とそろっている。
まるで映画「フィフス・エレメント」なんかに出てきそうなルックス、それも古代文字が書いてある石板みたいな感じでいい。
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●あなたにとっての短所
フォントが未来的というか古代文字みたいというか、はたまたエスノ文字みたいというか、とにかくパンキッシュなまでに変なフォントすぎて読みづらい、慣れが必要。これは Make Noise 社の全機種に言えることである。
AC アダプター駆動なのがめんどくさい上に断線がこわい。まぁここまで小型化、薄型化するためには、電源トランスを内蔵するわけにはいかなかったのだろうけれども。 
隠しモードのアルペジエイターや MIDI 設定は、取扱説明書が無いとほぼアクセスできず、インジケーターも限られているためなかなか使いにくい。
やっぱオーバートーンとマルチプライで外部音声を加工してみたかったなぁ、たぶんただの汚いノイズになるだけなんだろうけど。でも外部音声がバランスとダイナミクスでしか加工できないというのは、とんがった 0-Coast の中にあって、ここだけはちょっと珍しくトラッドな東海岸流ではないかと。 ただし転んでもただでは起きないのが 0-Coast のすげーところで、スロープやランダム出力などでバランスやダイナミクスへ変調するよう変態なパッチングすると、けっこう外部音声も楽しく加工できる。やはりアタマの柔軟性が問われるのが、この機種、まさに冨田勲御大状態。
まるでテロリストの爆弾みたいなルックス、これでは絶対に飛行機の中へ手荷物として入れられない、スーツケースに詰めて預けるしかない。そしてスーツケースごとどっかの空港でロストしてしまい、赤道直下サバンナのまぶしい太陽のもと着替えすらできないままぼーぜんとすることになるのである 笑
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●その他特記事項
��ナログシンセにおける:
・東海岸モーグ流派こと、イーストコースト・シンセシス ・西海岸ブックラ流派こと、ウェストコースト・シンセシス
それらが誕生して以来、半世紀以上がたった。
ユーロラック規格を生み出したのはドイプファー社。Doepfer というつづりからすると「oe」はウムラウト記号の英語表記のはずなので、ほんとうはデュルプファーというか「Drpfer」みたいな発音のはず。 その Doepfer がユーロラック・モジュラーシンセ A-100 シリーズを作り始めたのが、'95年。YAMAHA DX7が、デジタルであることがクールという主張ですべてをなぎ倒してから、じつに干支が一周してからのこと。でも世間はワークステーションシンセ百花繚乱で、KORG TRINITY、Roland XP-50 などが次々とデビュー。なので「今どきモジュラーかよ」という酔狂なものあつかい。 そんな化石のようなモジュラーシンセにおいて、ゼロ年代あたりから急速に各社参入、おおきなブームとなって欧米で広がった。'10 年代には日本にもその波が押し寄せ、'15 年以降は大きなうねりとなって盛り上がっている。よもや私が生きているうちに再度モジュラーシンセが流行するとは。
日本では YMO やモーグの呪縛が強すぎるあまり、当初モジュラーシンセに走るのはおっさんが多かったのだが、ヨーロッパではアンダーグラウンドながらにアナログシンセ文化が根付いており、早くから若者が個性を出そうとしてモジュラーシンセに走ることが多かったらしい。 それにこたえるように、メーカー側もアナログばかりでなくサンプラーやモデリングといったデジタルモジュールなども出すようになってきた。
そして Doepfer が 2010 年ごろに出した Dark Energy 以来、モジュラーシンセメーカーが入門機として、あるいはプロのサブマシンとして、小型の一体型セミモジュラーシンセを出すようになってきた。特に 2015 年に発表されたモーグの mother-32 は、ユーロラック・フォーマットでありながら卓上型にも使える点もあり、なによりもあこがれのモーグのタンスをミニサイズで誰でも自分の机の上に再現できるかわいらしさもあって、そこいらじゅうのシンセヲタの自宅で見かけるようになった。 アプローチは違うが、フルアナログのコルグ MS-20 復刻シリーズやフルデジタルのローランド System-1m 音源モジュールのように、一体型のシンセをつくってきたメーカーが、より大きな拡張性をもとめて現代にセミモジュラーシンセを出してきた例もある。
こうして、コンパクトなセミモジュラーシンセは今やあたらしい種族として着々と増えつつある。 しかも MIDI 対応なだけでなく、ベロシティやホイールといった特定の MIDI メッセージのみをフィルタリングしてから CV ソースへと変換することで、既存のモジュールと違い、CV / Gate のパッチケーブルに埋没するだけでなく、MIDI ネットワークの中を器用に泳いで回る、指示待ちの音源モジュールでもない、MIDI マスターコントローラーでもない、第3のあたらしい自由な存在へと進化してきた。
自己完結した音のパフォーマンスが可能な音源モジュールという、あたらしいフォーマット。ユーロラックなどのモジュラーが近親でありながら、独自の唯我独尊な道を歩む単体シンセ。そして自分で勝手に歌も歌いだすばかりか、MIDI や CV / Gate ネットワークの中で勝手気ままにメッセージを解釈して泳ぎ回る、あたらしいタイプのシンセ。
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自由な���ジュールという不思議なポジションをしめる、新生セミモジュラー。
これら現代のセミモジュラーハードシンセの中にあって、0-Coast は、あらたな境地を拓いた機種。すなわち非常に独特のシンセシスを搭載することで、個性派な変わり種となって他とは差別化してきた機種。
0-Coast はノーコースト・シンセシスを名乗ってはいるが、その実態はウェストコースト・シンセシスの色彩が濃い。たしかに東西両方のおいしいとこどりした感はあるが、もしほんとうにそうするなら、東海岸シンセシス最大の発明である VCF は必須。それまでの皆がオシレーターやアンプは設計できたのに、フィルターだけはボブ・モーグが着想し発明するまで誰も思いつかなかったからである。
モーグ最大の発明はフィルターにあると言って良い。だからこそモーグはラダーフィルターのみパテントをとった。のちにローランドが SH-3 で真似しようとして怒られて SH-3A に差し替えたという都市伝説が残る、あれである。実際、後発メーカーは VCF の回路を見破るのに苦労したという。
そんな伝家の宝刀たる VCF をあえて排除したところに、Make Noise 社が 0-Coast にどんな想いを込めたかが、透けて見える。 VCF というお約束事を採用していたのでは、凡百のシンセに埋没する。 いや、さらに彼らは西海岸シンセシスの復権を、もっと言うなら既存の楽器というしがらみからの解放を、しかも「シンセ=本来は自由な新概念の楽器」だったはずが、すっかり長年の歴史の重みと固定観念と様式美と水戸黄門ばりのお約束事にまみれて最後に印籠が出てこないと納得しない心理に埋没してしまっためんどくさい今のシンセを、今一度、自由な観点で、ゼロベースで再構築し設計しなおしたかったのだろう。
長きにわたる歴史の闇に沈んでいたウェストコースト・シンセシスに、スポットライトをあててきた Make Noise 社。その視線がフォーカスを結んだ焦点であるかのような寵児 0-Coast。
これは今までモーグを始祖とするイーストコースト・シンセシスにほぼ世界征服され、ひたすら日影の存在だったウェストコースト・シンセシスの逆襲であり、そしてまるでシーラカンスのよう人知れず細々と生きのびてきたその世界への、あたらしい入口である。すでにユーロラック世界では Make Noise の DPO と呼ばれるウェーヴフォールディングを使用した斬新なツイン・オシレーターモジュールが存在。それらの魅惑的な世界へ通じるあらたなる歓迎へのチケットが、0-Coast であろう。
ウェストコースト・シンセシスへの招待状 0-Coast  は、イーストコースト・シンセシスの決定版モーグ mother-32 の対極を行く存在であり、価格的にも好敵手と言っていい。フルアナログシンセでありながら VCF を持たず、非・減算方式で音創りする、しかもセミモジュラーなので配線も自由に変えられ、他のモジュラーシンセなどともつながる CV / Gate - MIDI ネットワークの中で、ひときわ異彩を放つ自由なシンセ。おまけに物理操作子で操作したりパッチングで音創りできるので、FM 変調するにしても、ヤマハ DX やソフトシンセと違って非常に直感的、というか肉感的。 
西海岸シンセシスを、世に知らしめた 0-Coast。
そんな 0-Coast は、自由さをもとめてあえてシーケンサーを搭載しなかったのだろうけれども、取扱説明書にまで KORG SQ-1 ステップ・シーケンサーとの相性の良さが例示されていると、案の定その後しばらくして KORG volca modular が登場。そこでは、ものすごく矮小なパッチケーブル・システムとステップ・シーケンサーとを採用することで、超絶ピコサイズのウェストコースト流ワークステーションシンセを実現するという、うまいぐあいなカタチに換骨奪胎されている。 こういうところは、さすがコルグ、抜け目ない 笑 まぁ、そんだけ西海岸シンセシスが広まるということであり、そんだけ西海岸が売れるネタになってきた、そこまで業界が成熟してきた、ということでもあるのでしょう。
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モジュラーシンセの逆襲と、あたらしい単体フォーマットへの革新。 ウェストコーストシンセシスの逆襲と、イーストコーストとの、そして現代エレクトロパンクな世界との「であいもん」。 セミモジュラーという分かりやすさ、薄い石版みたいな親しみやすさ。この小さなきっぷを手にして広大な宇宙へゴオだ。
そしてその宇宙は、かつてブックラが既存の楽器や既存のしがらみからの自由解放を宣言した果てしない宇宙であり、彼が見果てぬ夢をみた自由な音の表現。 そこに今、ブックラもモーグもボーデも笑いあって音の未来について語り合っていることであろう。
我々は彼らのチルドレンであり、そのミームを受け継ぐ者たちであり、私たちがつくる音は彼らと我々とのこだまがひびきあう姿であろう。
減算方式による膨大なシンセたちに飽きてきたら、あるいは既存のシンセのカタチに飽きてきたら、これは自分のアタマの柔軟性を試すまたとないチャンス。私もじつにひさびさにセミモジュラーハードシンセを入手したわけだが、もう目からウロコな日々。 そして西寄りとはいえ、東西どちらでもない自由で斬新でスタイルにとらわれないスタイリッシュなスタンスという逆説的な存在、それでいて敷居が低くてわかりやすい、とっつきやすい。それが 0-Coast。
ブックラとモーグとボーデの世界は、まだまだ展開しつづける。
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このレヴューは、2016 年9月 13 日に、mixi に上梓したものをもとに加筆補正した。 そのオリジナル版をアップした翌日、9月14日、奇しくもそのブックラが 79 歳で逝去。帰天した西海岸シンセシスの開祖に対し、かつてそのライバルであった東海岸シンセシスの開祖たるモーグ社員一同から、追悼メッセージが出た。あたたかい友情、21世紀ならではのあたらしい世界。
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すでにその十年以上前にボブ・モーグも帰天しており、これで、こんにち的シンセの創世を知ろうにも、もはや伝聞でしか知ることができなくなった。
それから3年半。ここにボーデが生み出した電圧制御式シンセ還暦を祝って、この取材結果を改訂版レヴューとして捧げる。
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Revision log;
Based on the original edition on mixi, posted on Sep.13th, 2016 First edition posted to Tumblr on Mar 15th 2020. 
* 画像は、筆者が撮影・作成したもの以外はすべて引用です。
Copyright (C) 2016-2021 by Nemo-Kuramaguchi, All Rights Reserved. 
15 notes · View notes
hananien · 5 years ago
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【S/D】サムと忘却の呪い(仮)1~4
ツイッターに画像で投稿しているS/D小説です。一万文字超くらい。まだ続きます。
もし魔女のロウィーナが、将来自分を殺す男になると知って攫い、殺してしまうつもりだった幼少のサムに情がわいて、自分の子として育てることにしたら? そしてハンターが”魔女狩り”に特化した集団だったら? という妄想から生まれた小話です。シーズン12の11話「忘却の呪い」をオマージュしています。アリシアやマックスという12から登場する魔女キャラにも出てもらってます(彼らはハンターだけどここでは魔女として)。
連載中の小説を書きたいとは思うんだけど宿便状態なので、ガス抜きに小話を書いてる現状です。なのでお気楽な感じで読んでもらえると。。
 サムの養い親である魔女いわく、日のあるうちの森は獣の領域。だから理性ある魔女や魔法使いは夜に活動し、昼間のうざったい太陽が地上を照らしている間は絹のシーツに包まって体力の回復に努めるのだという。サムにいわせれば怠惰の言い訳にすぎないが、夜更かしな魔女たちの生態がいとおしくもあった。何より夜の彼女らはサムなど足元にも及ばぬほど鋭い英知と魔力の使い手だ。ならば彼女たちと少しばかり生態の異なる自分が、早起きして夜の”活動”の手助けをするのは義務であるし喜びでもある。獣の領域というなら早朝の森は狩りをするのに恵まれた環境だ。彼女たちはウサギのシチューが大好きだけど、そのウサギがどこで泥の毛皮を脱いできて鍋に飛び込んでくれたのかは考えたがらない。
 自分が何者であっても、森を歩くのが好きな男に変わりはなかっただろうかとサムは想像する。下草を踏むたび立ち上る濡れて青い土のにおい。罠にかけた小さな獣をくびくときすら、森はサムと獣のどちらをも憐れんで祝福してくれる。森はサムのびっくり箱だ。彼は自分の生まれた場所を知らない。だけど彼の親がこの森の入口に彼を捨てたとき、赤ん坊と森のあいだに絆が生まれ、その瞬間から森がサムの故郷になったのだ。※
 そうだ。森はいつもサムを驚かせてくれる。かくれんぼで遊んでいた七歳の彼を、その懐の深さで半月のあいだかくまってくれ、養い親をすっかりやつれさせてしまった時のように。
 その日、狩りを終えたサムの目の前を、遅寝のウサギが飛び跳ねていった。茂みの奥に逃げ込んだウサギを彼は追いかけた。腰には今日のぶんの収穫が下げられていたけれど、もう一匹恵まれたって困ることはない。
 茂みの中から黒い毛皮が現われた。サムは手を伸ばそうとしてひっこめた。黒くもなかったし、毛皮でもなかった。朝露で濡れた短いブロンドがゆっくりとサムのほうを向いて、彼はアッと息をのんだ。魔女がウサギを化かして僕をからかおうとしているのか。そうでなければなぜこんな場所に、サムの知らない男がいる?
 ところがブロンドの男の懐からさっきのウサギがぴょんと飛び出して、サムの脇を通ってどこかへ行ってしまった。「バイ、うさちゃん」と男はいった。寝ぼけたように、低くかすれた、それなのに、ぞっとするくらい、やわらかな声だった。
 「僕はサム」と、サムはいった。まぬけ、と森がささやくのが聞こえた。もしくは自分自身の心の声だったかもしれない。
 男は重たげなまぶたを持ち上げて、サムを見上げた。 
 「やあ、サム」
 新緑、深い湖、砂金の流れる小川。男の瞳は輝いていた。
 森はまたもサムに驚きを与えてくれた。彼は恋多き魔女たちに囲まれながら、自分が恋することが出来るとは思っていなかった。
 この時までは。
 昼過ぎから始まるブランチの席で、気もそぞろなサムに、養い親のロウィーナはけげんな視線を送る。
 「今朝のウサギ、ちょっと血抜きが甘いじゃない? 生臭いのは嫌よ、われわれは吸血鬼ではないのだから」
 「そう?」 サムはぼんやりと答える。「そうかな? それ、缶詰の肉だけど」
 「サミュエール」 ロウィーナの視線がますます冷たくなる。
 「今朝の狩りは空振りだった?」 行儀よくパンをちぎってアリシアがたずねる。彼女は見た目だけではなく、実年齢もサムとさほど離れていない若い魔女だ。母親のターシャ、双子のマックスとともに、ここロウィーナの屋敷に下宿している。
 「今朝の狩り……」 思いもかけぬ収穫があったことを姉弟子にどうやって伝えればいいだろう。いや、とサムは意識の中で首を振る。
 魔女のなわばり意識の強さといったら、狼人間が可愛く思えるほどだ。人間が――しかもどうやら”記憶があやふや”な、身元の怪しい――神聖な魔女の森に入り込んだと知れたら、ロウィーナははっきりと戦化粧をして森へ勇み、彼を排除しかかるだろう。双子のアリシアとマックスも、彼らは敵とみなした人間に容赦はしない。つまり、明日のシチューの中身が決まるってことだ。
 サムはぶるっと震えた。靴の底から顎の奥まで震えは伝わってきた。春の始まりに色づく枝先のように初々しく、美しい彼の瞳が、よく炒めてから煮込んだ紫玉��ぎの横に浮かんでいるさまを思い浮かべて。彼の肉つきのよい白い二の腕を調理するときの甘い香りを想像して。彼の肉を食べる――残酷なはずの行為が甘美な誘惑に感じる自分にうろたえて。
 だめだ、だめ。そんなことにはさせない。彼のことは秘密にする。
 「今日は、思ったより暖かくて」 サムは本当のことだけを口にする。「血を抜くのが遅すぎて、ダメにしちゃった。毛皮だけはいで、肉は捨てたよ」
 「また寄り道をしたんでしょう。狩りのあとはすぐに帰ってこなきゃだめよ。獲物を持ったままウロウロしないの」 ロウィーナは血のような葡萄ジュースで唇を湿らせる。
 「でないとあなたが獲物にされるわ」
 サムはこっそりと屋敷を抜け出し、森の男を見つけた場所まで急ぐ。
 彼はそこにいなかった。けれどたどり着いた茂みの変わりようを見て、逃げたわけじゃなさそうだと安堵する。ただの茂みだったそこは、下草が踏みならされて空き地に変わり、中心の地面は掘られていて、男が簡易なかまどを作ろうとしていたことが見て取れた。
 がさがさ音がして、薪になりそうな枝を腕に抱えた男が戻ってきた。サムの顔を見ると一瞬で表情が明るくなる。「サム!」 男は枝を足元に落としてサムに近づいた。その両手がわずかに広げられているので、サムは自分がハグされるんだと気づいた。
 サムが躊躇いながら上げた腕の下に、男の腕が入り込んできた。肩甲骨の下に巻き付いた腕がぎゅっと彼の胴体を締める。”抱きしめられた”んだ。魔女たちはサムによく触れたがるけど、頬にキスしたり腕を組んだりするだけだ。
 こうして誰かに真正面から抱きしめられるなんて、初めての経験だ。他人の体温を腹で感じるのも。
 なんて心地がいいんだ。
 「また来てくれたんだな」 男はそのまま顔だけを上げて、同じくらいの高さにあるサムの目を見てにっこり笑った。
 サムはまぶしくてクラクラした。まるで、ああ、彼は太陽みたいだ――魔女や魔法使いが忌み嫌う太陽――けれど彼らが崇める月を輝かせる光の源。
 「来るっていったじゃないか」 サムはゆっくりと、舌が絡まないようにいった。ハグに動揺したなんて、彼の笑顔にクラクラしたなんて、知られたら、あまり恰好がつかない気がした。恋に長けた魔力使いの男女のスマートな駆け引きを思い返し、取り澄ました顔を作る。「ほら、パンとジュースを持ってきた。昨日から何も食べてないって、ほんとう?」
 「ありがとう!」 男はサムのぺたぺたと頬を叩いて感謝を表した。――状況を考えれば、それは感謝のしぐさで間違いないはずだ。サムにとってはあまりに親密すぎたので、すぐには思い当たらなかった。だけど、男は四六時中、出会った人間の頬をぺちぺちしてますとでもいうように平然として、その場に屈むとリュックの中を探りだす。
 サムは早まる動悸を抑えるため、こっそり深呼吸を繰り返した。
 「どうかな、憶えてないんだ。何も憶えてない」 男は瓶の蓋を捻って開け、すぐに半分を飲み干した。よほど喉が渇いていたんだろう。きれいに反った喉のラインを必要以上に凝視しないようにサムは気をつけた。「ほんとに、参ったよ。腹が減って、おまえの捨てていったウサギを焼こうと思ったんだ。でも火を熾す道具が見つからなくて」
 「何も憶えてないって、どうしたの? どうしてこの森に入ったんだ? 町からそんなに遠くはないけど、ここが魔女の森だってわかってるだろう? それとも、よそから来たの?」
 「それが、わかんねんだ」
 「何も憶えてないの? 自分の名前も?」
 彼は、驚いたように目をしばたかせた。まるで自分に名前あることすら、失念していたように。
 その様子に異様さを感じて、サムはまさか、と思った。記憶喪失の人間が、”自分の名前を思い出せない”と悩むことはあっても、”自分に名前があること”を忘れて明るく振る舞うなんてことがあるだろうか。この異様さは、まじないの気配に通じる。彼の様子は、身体的、精神的な後遺症による記憶喪失であるというよりも、呪いによるダメージを受けている状態だと思ったほうがしっくりくる。
 でも、まさか。だれが彼を呪うっていうんだ? 中世ならともかく、このセンシティブな時代に魔女が人間を呪うなんてありえない。
 「うーん、たぶん、Dがつく気がする」 男が考え込むと眉間にしわができた。「D、D……ダリール、ディビット、違う……。デ……デレック? パッとしねえなあ……」
 「ダンカン? ダドリー?」
 「うーん?」
 「ドミニク? ドウェイン?」
 「ドウェイン? いいかもな。おれをそう呼ぶか?」
 「それがきみの名前なの? 思い出した?」
 「うーん? 多分違う気がする。でもいかしてるよな」
 サムは首を振った。彼の愛嬌に惑わされてはいけない。「もう少し、思い出してみようよ。デイモン、ディーン、ダライアス、デイル……」
 「それだ!」
 「デイル?」
 「いや、もう一つ前の」
 「ダライアス? ディーン?」
 「ディーンだ!」 男はうれしそうに歯をむき出して笑った。「おれの名前はディーンだ。それに、思い出したぞ。おれには弟がいる」
 「いいぞ。どこに住んでいたかは?」
 男はさらにしわを深くして考え込んだが、しばらくしても唸り声しか出てこない。
 サムはちらばった薪を集めて、かまどの枠を組み立てた。気づくとディーンがじっと見つめていた。
 「何も思い出せない」 あっけらかんとしていた少し前と違って、悲しみに満ちた声だった。「どうしちまったんだろう。おれ。ウサギを抱いて、おまえを見つけた。それ以前のことが、何も思い出せないんだ」
 「たぶん……たぶんだけど、きみは呪われたんだ」 サムは慎重に言葉を選んでいった。「魔女のことは、憶えてる……というか、知ってるだろ? 今ではそんな悪さをする魔女は少ないけど、トラブルになる自覚もないまま、彼女ら――彼かもしれないけど――を怒らせて、呪われるってことも、ないわけじゃないんだ」
 「呪われた?」 ディーンは大きな目を限界まで開いた。「おれが? どうして?」
 「わからない。もしかしたら違うかも。でもきみ、どこにも怪我はないようだし、記憶がないっていうのに、やたら気楽だったろ。それにここは魔女の森だよ。人間は入ってこない。基本的にはね。なのにきみがここにいるっていうのが、魔女が関わっているっていう証拠にならない?」
 「おまえはずいぶん賢そうに話すんだな」 ディーンは鼻をすすった。水っぽい音がした。「何が証拠になるっていうんだ。おれはどうすればいい? どこに行けばいい」
 「ここにいればいい」 サムは火種のないかまどを見つめて、それから首を振った。「ここじゃだめだ。ここは屋敷から近すぎるし。僕の家族に見つかったらディーンが危ない」
 「何をいってるんだ? 怖いぞ」
 「大丈夫。もっと奥に、今は使ってないあばら家があるんだ。たぶん僕しか知らない。そこにディーンをかくまってあげる。僕は魔法使いなんだ――まだ一人前じゃないけど。いろんな本を読める。それに、僕の親はすごい魔女なんだ、ディーンにかけられた呪いを解く方法をきっと知ってる」
 「まて、待てよ。おまえが魔法使い? おまえの親が魔女? おれに呪いをかけたのはその魔女じゃないのか? ここはその魔女の森なんだろ?」
 「ロウィーナは人に呪いなんてかけないよ。そんなにヒマじゃないんだ」
 「わかんないだろ」 ディーンの声に水っぽさが増した。と思ったら、彼はぽろりと涙をこぼしている。サムは頬を叩かれた時以上に衝撃を受けた。こんなに静かに泣く人は見たことはなかった。
 「ディーン、ごめん。泣かないで」 折れた薪の上に尻を乗せて、膝を折りたたんで小さくなっているディーンの横にしゃがみ込む。「大丈夫だよ。僕が守ってあげる。記憶を取り戻してあげるから」
 ディーンはサムを見つめて、まばたきもせずまた二粒涙を落した。サムを奇跡を見守っているみたいにじっと彼を待った。やがて彼は赤いまぶたで瞳を覆って、小さくうなずいた。
 「わかった。おまえを信じるよ」
 あずまやに移動して寝床を整えた頃にはもう日が暮れかけていたので、サムは急ぎ屋敷に戻らないといけなかった。夕食にはコックを雇っているとはいえ、実際に食卓を作るのは女主人であるロウィーナの指示をうけたサムだ。
 「また何か食べ物を持ってくるよ。遅くなるかもしれないけど、夜中までには必ず」
 「サム、おれの記憶、戻るよな?」
 小屋の質素な木戸を開けたサムは振り返る。戸の影で彼の不安そうな顔の半分が隠れてしまっている。サムより年上に見えるのに、心内を素直に伝えてくる瞳だけをみるとディーンは幼い子供のようだ。このまま留まりたい思いでいっぱいになる。
 彼が人間ではなかったら。彼が記憶ではなく、過去を持たない精霊だとしたら、それは森がサムに与えた贈り物なのではないか。
 彼を森の精霊だといって屋敷に連れ帰り、ターシャやマックスが連れているような使い魔として側に置く。何も知らず、誰と繋がりもない彼の唯一の主人となる。彼の食べるもの、着るもの、行動の範囲の一切をサムが指図し、彼のすべてを支配する。それがサムに、許されているとしたら?
 あるいは彼をこのままここに留め置いて、二人で秘密の生活を続ける。ディーンには記憶を取り戻す方法がなかなか見つからないといっておけばいい。小屋を出ればいかに危険かを言い聞かせれば、逃げられることはないだろう。
 違う。僕は彼を支配したいんじゃない。ただ彼に――
 「キスしたいな……」
 「えっ」
 「えっ、あっ、いや」 妄想が強すぎて声に出ていたと知ってサムは慌てた。
 「き、君の記憶は戻るよ、僕にまかせて。でも、いったん戻らなきゃ。ロウィーナは僕が家にいると思ってる。彼女は僕の部屋に勝手に入ったりしないけど、ディナーの準備に遅れたら魔法の鏡で覗かれるかも。僕がいないことがばれたら大騒ぎになる、森に捜索隊が出されたら大変だ。僕が行方不明になったのはもうずっと前のことなのに……」
 「サム、おれにキスしたいのか」
 「えっ」 サムは片手で戸にすがりつきながら唇をこすった。「なんで?」
 「なんでって、そういっただろ? おれは、憶えてる」
 そういって、自分の唇の感触を確かめるように、ディーンは舌をそろりと出して下唇を噛む。赤い舌と、暗がりでもきらりと輝く白い歯が、熟れたベリーのような唇から覗いた。サムは狩人の本能で手を伸ばした。指先が唇に触れ、湿った感覚がした。頬を滑った指が、耳たぶに触れると、そこは唇よりも熱かった。ディーンはため息を吐いた。
 「サムの手、でっかいな」
 ディーンは少し俯いて、サムの手が自分の項を包み込めるようにした。サムは夢心地で一歩近づき、両手でディーンの頭を抱く。後ろで木戸が閉まる音がする。ガラスの嵌っていない窓が一つあるだけの小屋の中は真っ暗になった。
 ディーンは目を閉じたままゆっくりを顔を上げた。親指の付け根に彼の穏やかな脈動を聞く。野性の鹿に接近を許されたときのように誇らしく、謙虚な気持ちになった。サムは初めてキスをした。
 何をいわれるかとひやひやしながら屋敷に戻ったが、ロウィーナは不在だった。かわりにアリシアがキッチンを取り仕切っていた。気が緩んだサムは今度はアリシアににやけ顔が見られないかと心配するはめになった。味見をして、雇いのコックにしょっぱいわね、でもこれでいいわ等と指示を出しながら、アリシアはサムを観察している。魔女というのはみんなそうだ。気安いふりをして他人の心を探るのに余念がない。
 食卓が完成するころにロウィーナとターシャが帰ってき���。二人が揃って出かけていたことにサムは驚いた。何か大きな事件があったのかと思い、それからあずまやのディーンのことがばれたのではないかと怖くなる。
 ロウィーナは冷静を装っていたけどイライラしているのは明らかだったし、ふだん泰然としているターシャもどこか落ち着きがない。
 「二人でどこに行ってたんだ?」
 食事が始まってしばらくして、マックスが尋ねた。サムは二人の魔女の答えを待つ間、ろくに呼吸もできなかった。ロウィーナがグラスを煽ったので、ターシャが話し出した。
 「ロックリン家よ。招待状を出しに行ったの。とんでもないことを聞かされたわ。大事が控えているから心配ね。おかしなことにならなければいいけど。ロウィーナ……」
 「ギデオンが死んだこと?」 ロウィーナはその話題を口にするのも腹立たしいとばかりにターシャをにらんだ。「大したことじゃないわ、あの腐った三つ子が今までそろっていたことが不吉だった。わざわざ私たちに話したのはサムの儀式にケチをつけるためよ。なめられたもんだわ、たかが数十年ばかりアメリカに入植したのが早いからって」
 「ロックリン家? 私もあいつらは嫌い。でもしょうがないわ、あっちは由緒正しいドルイドのスペルを持ってる」 アリシアがみんなの顔を見回す。「私たちにあるのは……実地で身に着けた薬草学に、星占術、たくさんの水晶。あちこちの流派を回って極めた最先端の魔法術。あれ……全然悪くないかも?」
 「さしずめ野草派ってとこだな」 マックスが調子を合わせる。「雑草と自称するのはやめておこう。でも、サムの儀式は予定どおりやるんだろ?」
 「もちろんそのつもりよ」
 「僕の儀式って?」 みんなが当然のようにいうから、サムは何か重要な予定を自分だけ聞き逃していたのかと焦った。ロウィーナとターシャ親子はともに定期的に魔法の儀式を行う。サタンへの忠誠を示し、魔力を高めるためだ。子どもにはまだ早いといって、いつものけ者にされていたから、どうせ自分には関係ないと思ってよく聞いていなかったのかも。
 「僕も儀式に参加できるの?」
 それを熱望していたのは覚えているが、ディーンを匿ってる今は避けたい。
 「いいえ、そうじゃない。サム。”あなたの”儀式よ」 サムが言い訳を探す間もなくロウィーナはいった。
 彼女は背筋をピンと伸ばしてサムを見た。「あなたはもう十六歳。サタンに忠誠を誓って一人前の魔法使いになる時が来たの。小さいころに教えたでしょ、森のストーンサークルで儀式を行う。この土地に住まう全ての魔女と魔法使いの立ち合いのもと、新しい魔法使いの誕生を祝うのよ」
 サムはあっけにとられた。「そんな――大事なことを、なんで――もっと前に、言ってくれなかったんだ」
 「逃げちゃうと困るでしょ」 アリシアがあっさりといってのける。「多感な思春期の子どもに”おまえは十六歳になったら”死の書”にサインしてサタン様の下僕になるんだ、それまで純潔を守れ”なんていったら大変なことになる。私もマックスも、知らされたのはその日の夕方。まあそれまでも、男の子と仲が良くなりすぎないように見張られていたけどね」
 「その反動が今きてる」 マックスが気だるそうに顔を向けて、双子はほほ笑んだ。
 「その日の夕方だって?」 サムは仰天した。「まさか、今夜?」
 「まさか。今日は招待状を出しただけ。儀式は明日の夜」 ロウィーナはため息を吐いて再びカトラリーを持つ手を上げる。「まあ、だから、明日の昼間の勉強はお休み。あなたは寝ていなさい。真夜中に始め、明けの明星が昇るまで行うのが通例なの。初めての儀式だから特に長く感じるものよ。主役が居眠りなんて許されませんからね、しっかり寝ておくことね」
 「私たちもその助言がほしかったわ」 双子が嘆くと、ターシャが「私の若いころなんてもっとひどかった。真夜中に叩き起こされて……」と話を始める。サムはそれを耳の端で聞きながら、味のしない肉を噛み締めた。大変なことになった。
 ストーンサークルはディーンをかくまっているあずまやのすぐ近くにある。ただの天然のアスレチックジムだと思っていた古ぼけた巨石にそんな使い道があったなんて知らなかった。
 ディーンを別の場所へ移す? いや、他に森に彼を隠せるような場所なんて思い当たらない。もしも永久に彼を森に閉じ込めておくっていうなら別だ――大木のうろ、崖下の洞窟、そういった場所を幾つか知っている――そこを拠点に家を作ることができる。何週間、何か月、何年もかけていいなら、サムは彼のために新しい屋敷だって建てられる――だけどそうじゃない。そうはならない。ディーンの記憶を取り戻して、彼の帰る場所を思い出せてあげるんだ。
 「ロウィーナ……聞いていい?」 サムは何でもないふうに装って質問した。「人の……記憶を消す魔法ってあるだろ? 難しいのかな?」
 当然ながら、何でもないふうに答えてくれる魔女はいなかった。みんながサムの顔を見るので、サムは急いで唐突に変な質問をした正当な理由を披露しなければならなかった。
 「思春期に……」 喉にパンが詰まったふりをして咳をする。「その、儀式のことを聞かされたって、ああそう、って受け入れる子もいるかもしれないだろ。まずは話してみないと。隠すのはあんまりだ。それで、すごくその子が嫌がったり、自暴自棄になるようなら、その時は記憶を消す魔法を使えばいいんじゃないかと、そう思ったんだ。ただ思いついたんだよ」
 一瞬、間があいて、マックスが「ひゅー」と口笛を吹くまねをする。「その考え方、俺は好きだな。冷酷で、合理的で。さすが、ロウィーナの一番弟子」
 ロウィーナは口元でだけ微笑み、ゆっくりと首を振った。「そうね、でも少し、短絡的よ。一時的に記憶を奪うことは、ハーブの知識があれば簡単にできる。だけど人の記憶を完全に消し去るのはとても難しい魔法なの。呪いというべきね。そんなものは仲間に使うべきじゃない」
 「一時的なものだったら、ハーブを使えば治る?」
 「ええ。ジュニパーベリー、それとほんの少しのベラドンナ……」 ロウィーナはスープをすすりながらすらすらと必要なハーブの種類を挙げていく。サムは記憶しながら、どれも屋敷の薬草庫や温室から拝借できるものだと思って安心した。「……マンドレークの頭をすり鉢にしてそれらを混ぜ合わせ、魔力を溜めた水に浸す。それを飲むのよ。簡単でしょ」
 「それは記憶を失わせるほうのレシピじゃない?」 薬草学に長けたターシャが口を出す。ロウィーナはそうだったわと頷いた。「記憶を戻すほうなら、ベラドンナを入れちゃだめだった。だけどそういったハーブの魔法は時間とともに解けるから、ふつうはわざわざ作らないのよ」
 「記憶をあれこれする魔法はドルイドが得意だったわね。ロックリン家にも伝わってるはずよ、あの書……」 ターシャは訳ありげな微笑みをロウィーナに向ける。「”黒の魔導書”。あれのせいで多くの魔女が高いプライドを圧し折ることになったわ。まあ、でも、今ではちょっと時代遅れね」
 「あいつらの頭は中世で止まっているのよ」 ロウィーナは憎々し気につぶやいて、ツンと顎を上げた。
 その夜中、各々が部屋に戻ってそれぞれの研究や遊びに没頭している時間、サムが眠っていることを期待されている時間に、彼はこっそりとベッドを抜け出してキッチンに忍び込んだ。用意したリュックサックにパンと果物を詰め込む。早くディーンのところに戻りたかった。空腹で不安な思いをさせたくないし、新しいランプを灯して暗闇を払ってやりたい。それになにより、彼と話がしたかった。記憶がなくてもかまわ��い。彼の声を聞いていたい。彼にどうして僕とキスをしたのと尋ねたいし、どうして僕がキスをしたのかを話して聞かせたい。もう一度キスをさせてほしいといったら彼は頷いてくれるだろうか。サムは期待でうずく胸を押さえた。断られないだろうという確信がそのうずきを甘いものにした。
 「サム?」 暗がりからロウィーナが現われてサムの心臓は押さえたまま止まりかけた。冷蔵庫のドアを開けてうずくまる養い子をしばし見下ろして、ナイトドレスにローブを羽織った彼女はふと目元をやわらげた。
 「眠れないのね。儀式の話をしたから」
 「う、うん。そうなんだ。喉が渇いて……」 サムは冷蔵庫のドアを閉めて立ち上がり、足元のリュックを蹴って遠ざけた。暗いから見えないはずだ。
 「心配することはないわ。あなたはただそこにいて、”死の書”にサインをすればいいだけ。あとは私たちの長い祝福を聞いていればいいのよ。夜が明けるまでね」
 「勉強はたくさんさせられてるけど、夜更かしの授業はなかったな」
 「何をいってるの。あなたが毎日遅くまで本を読んでいること、呪文や魔法陣の勉強をしてることは知ってるわ」 ロウィーナはそういってサムを驚かせた。彼女は手を伸ばしてサムの伸びた前髪を撫でつけてやった。
 「情熱のある、熱心な生徒を持って光栄だわ。あなたはきっと、偉大な魔法使いになる。私にはわかる。あなたがほんの赤ん坊のころからわかってたわ」
 「森で僕を拾った時から?」
 んー、とロウィーナは目を細めて考えるふりをした。「やっぱり、あなたが自分の足でトイレまで歩いていけるようになった頃かしらね」
 サムは笑って、自分を育てた魔女を見つめた。彼女の背丈を追い越してもうずいぶん経つ。彼女がサムの身体的な成長について何かいったことはなかった。けれど時々、彼女が自分を見上げる目が、誇らしく輝いているように思える瞬間があって、サムはその瞬間をとても愛していた。
 「ロウィーナ」
 「なあに」
 「僕、成人するんだね」
 「魔女のね。法律的にはまだ子ども」
 「ロウィーナのおかげだ。僕、あなたの子どもであることが誇らしいよ」
 ロウィーナの目が輝いた。
 「まだまだ独り立ちはさせないわ。もう少し私のしごきに耐えることね」
 「覚悟しとくよ」
 ロウィーナは冷蔵庫を開けて水のデカンタを取り出した。キッチンを出ていこうとする彼女の柳のような後ろ姿に息を吐いて、踏みつけていたリュックを引き寄せる。何か思い出したようにロウィーナが振り向いて、サムは慌ててまたリュックを後ろ脚で蹴った。
 「いくらでも夜更かししていいけど、明日の朝は狩りに行っちゃだめよ。食事の支度は双子に任せるから」
 「なんで?」
 ロウィーナは肩をすくめた。「ロックリン家のギデオン。彼が死んだのは夕食の時にいったわね。死体が森で見つかったのよ。彼らの領地は森の東側だけど、ハンターはそんなこと気にしないわ」
 サムはギクリとした。「ギデオンはウィッチハンターに殺されたの?」
 「魔女を殺せるのはウィッチハンターだけよ」
 「だけど、そんなのニュースになるだろ」
 「正当な捕り物ならハンターは死体を残さないし、カトリーナの様子じゃ何かトラブルを隠してる。だけど巻き込まれるいわれはないわね。しきたりだから、明日の儀式には彼ら――生き残った二人の嫌味なロックリン家――も呼ぶけれどね。森にはハンターがひそんでいるかもしれない。目撃者がない状況でハンターと遭遇したら、やつらがいうところの違法行為がなくても逮捕されるわよ。だから、サミュエル、明日の儀式にみんなで行くまでは、森に入っちゃだめ」
 「わ、わかった」
 ロウィーナが行ってしまうと、サムは念のために一度部屋に戻って、ベッドサイドのランプを付けた。それから温室に忍び込み、ハンガーに吊るされているマンドレークを一根、それと必要なハーブを掴んでリュックに詰める。温室の裏口からこっそりと抜け出したサムは、二階で休むロウィーナに心の中で詫びながら、パーカーのフードを深くかぶって、まっすぐ森へ向かった。
◇ ◇ ◇
ツイッターにも書いたけど設定だけは壮大。このあと・というかいま書いてるのは三部作のうちの一部でディーンとは別れて終わる。そしてサムは魔女の権利向上のために戦う革命戦士もどきになり、ハンターのディーンとは敵対関係に。。というロミジュリな。でも大ボ��はUKの賢人か悪魔かチャックにでもして魔女もハンターも同じ側で戦うんだな。(そのあたりはボヤボヤ)最終的な問題は二人が兄弟だってどうやってばらすか、ばらした時の反応はどうするかだけど、その時にはもうやることやっちゃって覚悟できてるサミさまになってるだろうからきっとなんとかなる。
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