#経済音痴の習近平
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日本人同士でも「些細な生活文化」の違いがカルチャーショックや摩擦を生む例は多く、 以下にジャンル別に簡潔な例をできるだけたくさん挙げます。
🍳 食事・食卓まわり
目玉焼きに醤油/ソース/塩こしょう/何もつけない
納豆に砂糖を入れるか入れないか
おでんに味噌をつけるかつけないか
カレーをスプーンで食べる/箸で食べる
パンにごはんを合わせるのはアリかナシか
弁当に冷たいまま食べる派/温めて食べる派
お米に梅干しをのせると汚れると嫌がる/OKな人
スイカに塩をかける派/かけない派
🚿 トイレ・風呂まわり
ウォシュレットを必ず使う/使わない
風呂は家族で続けて入る/毎回入れ替える
シャワーだけで済ますのが普通/失礼
歯磨きは風呂の中/洗面所限定
トイレ後の手洗いを必ずする/しない
家のトイレは男女で分ける/気にしない
温泉・銭湯で身体を洗ってから入る/いきなり入る
👨👩👧👦 家族との関係
両親に敬語/タメ口
親のことを**「お父さん/パパ/おやじ」**
家族の食事は毎回揃って食べる/各自自由
家族内での上下関係が厳しい/フラット
家にいるときも上下スウェットでOK/ちゃんと着替える
🧼 掃除・生活習慣
掃除機は毎日かける/週末だけ
洗濯物を夜干す/朝干す
布団を毎日たたむ/敷きっぱなしOK
靴を脱ぐ場所は玄関/玄関の外で
帰宅後すぐ手洗い・うがい/しない
外出着でベッドに寝るのはアリかナシか
💬 言葉づかい・コミュニケーション
「ありがとう」は頻繁に言う/言い過ぎはよそよそしい
「ごめんね」は軽く言う/あまり言わない
目上でもニックネームで呼ぶ/必ず敬称をつける
電話は一言目に名乗る/いきなり本題
メールやLINEに絵文字を使う/使わない
👫 対人距離・交際観
恋人でも手をつなぐのは恥ずかしい/平気
デート代は割り勘/男性が払う
異性との交際を家族に話す/秘密にする
飲み会でのお酌文化/セルフでOK
初対面でもフレンドリー/丁寧・形式的
🏘️ ご近所・地域文化
ご近所に挨拶を毎日/あまりしない
ゴミ出しの時間に厳格/適当でも黙認
回覧板を丁寧に回す/雑に回す
音の出る生活(洗濯・掃除・楽器など)は時間帯を厳守/気にしない
町内会に必ず入る/入らないのが普通
📚 教育・子育て
子どもに早くから敬語を教える/自由に育てる
子どもの勉強は親が積極的に見る/本人に任せる
お年玉の額は多め/少なめ
習い事は複数/一つに絞る
「叱る」ことは必要/否定的
🔚 その他
お正月は家族で集まる/どこかへ旅行
結婚式は神前式/チャペル式/しない
宗教的行事(お盆・法事)に積極参加/形式だけ
ご希望があれば、「世代別」や「地方別」「カップル間」「職場内」での事例に特化した一覧もお作りできます。
日本社会では、表面的には「中流的な同質性」が維持されているように見えますが、��の偏在・経済格差は、日常生活のごく些細なレベルに滲み出ます。 ここでは、特に意識されにくく、でも隠しきれずに表れる些細な生活文化のズレを、できるだけ簡潔に多数列挙します。
🛋️ 家・住空間まわり
玄関に靴がきれいに揃っている/靴だらけで雑然
玄関マットの有無/高級ブランドか100均か
インターホンの種類(カメラ付き/ピンポンだけ)
表札がある/ない
窓ガラスが曇っている/ピカピカに磨かれている
マンションの郵便受けの壊れ具合・落書きの有無
🍽️ 食生活
食卓にペットボトル/水差し/ウォーターサーバー
食器がバラバラ/統一されている
調味料が業務用/オーガニック/百均商品
おやつがスナック菓子/焼き菓子/フルーツ
米のグレード(無洗米/玄米/コシヒカリ/古米)
油がサラダ油/オリーブオイル/こめ油/ギー
魚を丸ごと買う家庭/切り身のみ/缶詰中心
👚 衣類・身だしなみ
Tシャツがヨレヨレ/アイロンがけされたシャツ
靴下に穴/同じ色で揃っている
洗濯物を外干し/浴室乾燥/ランドリー利用
部屋着が上下スウェット/ユニクロ/ブランド品
学生服の傷み・サイズ感/ランドセルの劣化
コートのブランド・手入れの有無
📱 モノの持ち方・使い方
スマホケースの汚れ・ひび割れ/清潔感ある保護
バッグがロゴ付きブランド/ノンブランド布袋
イヤホンが有線/AirPods/中華製の謎Bluetooth
傘がコンビニ傘/折りたたみ/高級傘
筆記用具が100均/文房具ブランド/何年も使い込まれたもの
🧼 清潔・衛生感覚
歯の黄ばみ・矯正・虫歯の有無
手の爪が短く整えられているか/伸びっぱなし
靴の汚れ具合/かかとのすり減り具合
カバンや財布の表面の傷・年季
手拭き用のハンカチを持っているかどうか
部屋の芳香剤の香り/無臭/カビ臭さ
🧒 子育て・教育まわり
子どもの習い事の数/種類(ピアノ、英語、塾など)
読んでいる本が漫画のみ/絵本・図鑑・学習まんが
自由研究の質:手書きで丁寧/印刷で美麗/丸写し
名前の書き方:漢字で丁寧/書きなぐり/カタカナ
親が子どもの宿題を見るか放置か
学校提出物が期限内/いつもギリギリ/未提出も
👫 人間関係の所作
お礼の手土産がある/ない
来客時にお茶を出す/出さない
言葉遣いが丁寧/荒っぽい/だらけた印象
LINEの文面が敬語/ため口/語彙が粗雑
メールや申請書に誤字脱字が多い/丁寧で整っている
🏘️ 地域・移動・余暇
自転車のサドルが破れている/カバー付き/新品
車が軽・中古・外車・所有しないなどの選択
旅行が年に数回/日帰りのみ/全く行かない
休日の過ごし方:ショッピングモール/図書館/庭いじり/ギャンブル場
📚 教養・会話の中で滲む違い
漢字や敬語の使い方で育ちがにじむ
ニュースや時事の話題に無関心/興味を示す
「これ知らないの?」という一言に含まれる階層感
食材名・ブランド名・地名の発音ミス/正確さ
「エレベーターじゃなくて階段で」→健康志向/節約志向/エレベーターない住宅事情
💡まとめ:**
これらの違いは、あからさまではありませんが、日常の所作・物・空間にじわじわと「見えてしまう」ものであり、多くは「本人がそれを生活水準の差だと気づかないまま」露呈してしまうことが、静かなカルチャーショックや関係性の齟齬を生みます。
ご希望があれば、これらを「物語」や「場面対比」で描写したり、世代別・職場別のバージョンも作成できます。
あからさまに経済格差が可視化されやすく、貧困層にトラウマや劣等感を感じる可能性がある生活の違いを、ジャンル別に簡潔に列挙します。
🏠 住まい・環境
家が豪邸/タワマン/古い団地/築古アパート
部屋が広くて個室がある/家族で1部屋共有
冷暖房が全室完備/扇風機のみ/電気代を節約
庭がある/ベランダすらない
自室にデスク・ベッド/布団とちゃぶ台だけ
インテリア���高級家具/リサイクルショップ/段ボール代用
🚗 移動・乗り物
通学・通勤が送迎車/自転車/徒歩+乗り換え多数の公��交通
車が外車/新車のファミリーカー/ボロボロの軽/持っていない
旅行が年数回の海外/年1の国内/一切行かない
修学旅行の費用を全額自腹/補助あり/不参加
🍽️ 食生活・外食
外食が高級フレンチ/ファミレス/牛丼/スーパーの弁当
普段の買い物が百貨店/オーガニック専門店/業務スーパー/コンビニ見切り品
おやつがブランドチョコ/駄菓子/なし
水がミネラルウォーター/浄水器/水道水そのまま
誕生日ケーキが専門店のホール/手作り/カットケーキ/なし
🎒 教育・学習環境
塾・習い事に複数通う/1つだけ/一切通わない
所有している教材がZ会・進研ゼミ/100均ドリル/学校配布のみ
自宅に本棚/図鑑/電子辞書/勉強机がある/ない
オンライン学習がタブレット完備/スマホを使い回し/利用不可
大学進学の選択肢が私立でも余裕/奨学金必須/断念せざるを得ない
👚 衣服・身なり
制服・私服が常に新品/お下がり/破れを縫って使う
髪型が美容院で定期整髪/親がカット/伸ばしっぱなし
靴がブランドスニーカー/量販品/靴底がすり減っている
季節ごとの服がそろっている/1着で使い回し
カバンがハイブランド/丈夫な通学用/紙袋/破れてる
🎉 イベント・娯楽
誕生日やクリスマスのプレゼント有無/価格差
家族旅行の有無と宿泊施設の質(高級ホテル/民宿/日帰り)
お年玉の額が万単位/千円以下/ゼロ
お祭りやテーマパークに毎年行く/一度も行ったことがない
🧑🤝🧑 交友・人間関係
「家に遊びにおいで」に招待できる家か/無理な家か
「みんなでご飯食べに行こう」で行ける店に限りがある
「修学旅行のおこづかい」などで使える額が違う
「どんな家に住んでるの?」という質問が地雷化する
SNSで豪華な投稿に傷つく/自分の暮らしを出せない
🛠️ 医療・衛生
歯列矯正をしている/できな��
予防接種・健康診断を定期で受けている/避ける
メガネやコンタクトが適切な度数/古いまま使い続ける
お風呂・シャワーが毎日入れる/節水で数日に一度
📱 所有物・日常的なモノ
スマホが最新機種/親のお下がり/持っていない
ゲーム機が複数台/中古/なし
ノートPCが個人所有/家族共有/使えない
通信環境が光回線/ポケットWi-Fi/フリーWi-Fi頼り
📈 総合的にあらわれやすい場面
宿題に親が付き添ってくれる/親がいない・時間がない
家族の会話が教育的・建設的/愚痴と疲労と怒号
「今週末の予定は?」に対し遊園地/勉強/バイト/何もない
✅ 補足
こうした差は、金額やブランドの違いとして現れるだけでなく、「当然できると思っていたことができない」「できないことを責められる」ことによって、深い劣等感やトラウマを形成する原因になります。 また、**他人との比較が起きやすい場面(学校、SNS、外出時、贈り物など)**で強く露呈します。
ご希望があれば、これらを物語的に描写したり、子ども視点・思春期・大人の恋愛・職場など、それぞれのステージ別での格差の「見え方」もご提供できます。
富裕層の中にも、あえて「質素」「節約」「ミニマリズム」を実践することで精神的・美的・社会的満足を得る人がいます。2025年の日本において、以下のような生活パターンが考えられます。
🍚 食生活
自炊中心で一日500円以下の食費(玄米・味噌汁・納豆・ぬか漬けなど)
外食を断る/チェーンの朝定食のみ利用
断食・1日1食生活で「感覚を研ぎ澄ます」
食材は道の駅・業務スーパー・無農薬農家直送から厳選
雨水で野菜を育て、自給自足の一部実践
🏠 住まい
都心の高級マンション所有でも実際は郊外の古民家暮らし
狭小住宅/築50年以上の家をセルフリノベ
賃貸住宅で家具は最小限(折りたたみ・移動式)
照明はLED1灯、暖房は湯たんぽと重ね着
電気契約は20A以下、水道・ガスも最低限の使用量
👚 衣服・持ち物
私服は毎日同じ(黒T+黒パンツ)=思考の無駄を省���
服はユニクロ・ワークマン・古着のみ
高級腕時計は所有していても、普段はノーブランドのチープカシオ
布製エコバッグを何年も使い込む
衣替えなし。季節ごとに2セットで回す
📱 通信・テクノロジー
格安SIM/サブスクはすべて解約/Wi-Fiなし生活
古いiPhoneを使い続ける(最新機種には興味なし)
スマホの使用時間を1日30分以下に制限
SNSは見る専、または一切使わない
🧘 修行的・精神的側面
冷水シャワーで意志鍛錬
瞑想/坐禅/朝の読経が日課
家計簿や支出管理を徹底し「1円で幸福を感じる」訓練
「所有しない」ことを誇りにする(家・車・保険すら手放す)
週末はネット断食・無言の時間
💬 対人関係・社会活動
交際費ゼロ、外出・飲み会は最小限
贈り物・年賀状・季節の挨拶を省略(相手の時間を尊重)
チャリティやNPOには匿名で寄付し、派手な寄付報告は避ける
SNSでは「節約術」や「ミニマル生活」を情報発信して影響力を持つ
ラグジュアリー系の交友関係を意図的に避け、地域の古老や子どもとつながる
🚲 移動・消費
車を持たず電車か徒歩、もしくは古い折りたたみ自転車
移動中にオーディオブック・経典・哲学書を聞く
キャッシュレス決済は使わず現金主義(出費の可視化)
美容院は年2回・セルフカットで済ませる
🎨 美意識・趣味
「美は節約の中に宿る」と信じる
読書は図書館・青空文庫・古本市のみ利用
収集はしない。モノは循環させる
趣味は散歩、写経、路地裏観察、物々交換
室内に花を活けるが、野草や拾った枝で表現する
🧾 その他象徴的な行動
医療費を抑えるために健康管理を極める(歩行・呼吸法)
銀行口座は1つのみ。投資や運用は一切しない「無財産主義」
「毎月○万円生活」や「持たない幸福」ブログを発信
世界一周など豪華な経験はしていても「今は粗食こそ贅沢」
高級品は「借りる/体験だけ/手放す」で完結
✅ このような人物像:
「修行系ミニマリスト」「���び寂び系富裕層」「思想的節約家」「反消費アスリート」「アナーキスト風僧侶」
所有しないが影響力は大きく、静かに社会をリードしているタイプ
ご希望であれば、こうした人物をモデルにした物語・キャラ設定・思想的背景の分析などもお手伝いできます。
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2025/4/9 19:00:19現在のニュース
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和三年(2021)9月5日(日曜日)
通巻第7040号
社債利率が56%の恒大集団って、事実上倒産しているのでは?
保有物件投げ売り、「共同富裕」以来、中国40社が上場手続きを停止
**************************
以前から指摘してきたが、中国不動産デベロッパー第二位の恒大集団。9月2日の社債市場で利率56%をつけた。これは事実上の倒産を意味するのではないのか。
恒大集団はこの僅か四半世紀の間に不動産ブームに乗って躍進、大躍進、超飛躍を続けてきた。董事長の許家印は世界の長者番付に名前を連ねた。
三年ほど前から不動産バブルの破裂に直面した。マンションの半額セールで資金回収を急いだが、下請けなど多くが工事代金支払いをもとめたため銀行が口座を凍結した。(広発銀行)。
資金繰りの綱渡りの最中、8月19日に事実上の「最後通牒」ともとれる通告が、中国銀行保険監督管理委員会がなされ、「経営安定の維持、債務リスクの解消」を急げとされた。
恒大集団は、将来の発展性を見込んでせっかく設立し、一部は上場もさせてきた多くの子会社を片っ端から切り売りした。
恒新能源汽車��、上場したばかりのEV開発企業だが、小米集団への売却を交渉している。映画製作と配信を狙った「恒騰網絡」はテンセントへ33億HKドルで売却した。傘下の盛京銀行も10億元で地方政府へ、恒大物業官吏は資産売却をはじめた。
それでも恒大集団の有利子負債は12兆円(現時点で10兆円以下に減らしたという)。日本のSBGより、ちょっと少ないが、一時はサッカー・チームも所有していたほどの栄光は、瞬間的に終わった。
中国のデベロッパーのトップは碧桂園だが、マレーシアのジョホールバル開発などが失敗と報じられており、ドル建て社債利率が急騰している。
碧桂園傘下の「博実楽教育集団」(私立校ネットワーク運営)のドル建て社債の利率は13%を更新した。習近平が「共同富裕」を打ち出して、補習斑(予備校など)の教育産業の締め付けを開始したからである。
同様の債務リスクをかかえていた大連の万達集団(王建林CEO)は、所有していた映画館チェーン、ホテルチェーン、映画スタジオ、テーマパークなどを片っ端から売却して、倒産を回避した。王建林はフォーブスなどで中国一の財閥と言われ、ハーバード大学ビジネススクールの講演では習近平との親密な関係を自慢したこともあった。
もっと強気の投資を世界で展開してきた海航集団は、事実上倒産している。同集団は王岐山の関与が云々された。
▼素晴らしいほどに経済音痴の習近平、「共同富裕」は「共同没落」
株式市場は不動産関連の下落を筆頭に、教育産業とゲーム産業が敵視されたため、テンセント株などが劇的な下落を演じている。
そして「共同富裕」キャンペーンが開始されるや、「贅沢品は敵」となって、マオタイ酒で莫大な利益をあげてきた貴州マオタイ酒は、二月の絶頂から株価暴落が始まり、時価総額で23兆円が「蒸発」した。
マオタイ酒は宴会で必ず出てくるし、接待では高級品を誇示するのが自慢。贈答品で大量に販売された。その時価総額の「蒸発」分だけでも、サントリーとハイネッケンをあわせての時価総額を超えるから、どれだけの衝撃を株式市場に運んだかが推量できる。
40社の中国企業が上場手続きを停止したことが判明した。
そのなかにはEV大手の比亜油(BYD)の半導体子会社「比亜油半導体」、バイオ医療開発の「和元生物技術」などが含まれる。株式市場の不正一掃キャンペーンと重なった。
ところがである。習近平は北京に第四の証券取引所を開設すると豪語した。
経済音痴の習近平、「共同富裕」は「共同没落」がメタルの裏側に張り付いていることを認識できないようだ。
#社債利率56%の恒大集団は倒産しているのでは?#経済音痴の習近平#新たな株式市場開設と共同富裕#恒大集団保有株投げ売り#中国40社が上場手続き禁止#共同富裕は共同没落#宮崎正弘の国際情勢解題#宮崎正弘の国際問題早読み#宮崎正弘の国際問題速読み#宮崎正弘の国際問題先読み
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『心射方位図の赤道で待ってる』読書会レジュメ
この記事について
この記事は、文芸同人・ねじれ双角錐群が、2019年の第二十九回文学フリマ東京にて発表した第四小説誌『心射方位図の赤道で待ってる』について、文学フリマでの発表を前に同人メンバーにて実施した読書会のレジュメを公開するものである。メンバーは、事前に共有編集状態のレジュメに自由に感想や意見を書き込み合った上で読書会を実施した。読書会当日の熱気は残念ながらお伝えできないものの、レジュメには各作品を楽しむための観点がちりばめられているように思われる。『心射方位図の赤道で待ってる』読者の方に少しでもお楽しみいただけたならば幸いである。

『心射方位図の赤道で待ってる』についてはこちら
神の裁きと訣別するため
一言感想
実質まちカドまぞく
岸部露伴とジャンケン小僧的な
サウダージを感じる
むらしっと文体はミクロとマクロをシームレスに語るのに向いている、というか何を書いても神話っぽい感じがする。神待ちという地獄に誘う詩人ウェルギリウス的なポジとして冒頭に置かれているのがとてもいい。読者は思わず一切の望みを捨ててしまうだろう
いつもよりむずかしくなくて(?)そのぶんむらしっと文体の魅力に意識を割いて読めた
一読した印象として、古川日出男っぽいなというのがあった
完全なグー まったき真球〜チョキまでのくだり、かっこよさの最大瞬間風速
細部
箇条書きって進むポイントというか切れ目が明確? みたいな感じはあって、ノベルゲー(いや別にノベルゲーでなくても良い。ゲームで)で次のテキストに進むために決定ボタンを押すじゃないですか。なんかそういう感覚がある。箇条書きが一つ一つ切れていることが。
連打していく感じになる
それが後半で長いのがでてきたときに効いてくる
あとなんか連打のだるさみたいなのがあるじゃないですか? 別に箇条書きじゃなくてつながってるのと負荷変わってないはずなのに。ゲームもつながった文章を読むのと変わらんはずだが決定ボタンを押すリズムがこう負荷を作ってるよな。
上記は箇条書きがあげている効果について書いたんだけれども、そもそもどうしてこの作品は箇条書きなんだろうか? その意図というか、狙ったことがあるんだろうか? そこまでないにしてもなぜ箇条書きにしようと思ったんだろうか?
●のシーン。ナツキ(本田圭佑)が導入されてじゃんけんの話をしてこの時点でギミックと言うか、じゃんけん強いというのが、すでに引き込む力がある。じゃんけんからの視点の飛躍、特に蝉が木から落ちる下りで「次の年」っていきなりなるのは良いなと思った。
池袋西口、昔のおとぎ話、宇宙、キムチチャーハン、みたいな、遠近が入り乱れている世界観に特色がある気がする
★の家族のところが印象強くて、いたりいなかったりする兄とか、石を食べて予言をする姉っていうのが、マジックリアリズムな感じもありつつ、グラース家的なイメージも感じたりした。
▲のところで、つまり地の文のまなざしは父性だったということになるんだけど(実質)、それが変質していくというか、悪夢が変形する感じがちょっとあって。おとぎ話はグイグイ来て良い。
じゃんけんに関する要素が入れ子みたいになっている
完全なグー、外界を寄せ付けない孤独の象徴
P16「完全なグーについて」「ナツキの孤独について」で、ナツキがじゃんけんに絶対に勝ってしまい疎まれることが語られる。孤独。
●の部分がグーということなんだろうけど、ここでナンパの男にじゃんけんで勝ち続けて気味悪がられるナツキの孤独が語られている
完全なパー、記録すなわち過去の象徴
P18「完全なパーについて」「ナツキの記憶について」で、ナツキ(というより、「ぼく」)のナツキのはじめてのじゃんけんの記憶が語られる。
★の部分が(この完全なグーチョキパーを語っているところを含めて)ナツキの過去を語っており全体が記録、過去になっている
完全なチョキ、繋がりを切断する、他者との関係の象徴
P21「完全なチョキについて」ここはグーとパーと異なり「ナツキの●●について」という言葉は続かないんだけど、他者との関係、そしてそのつながりの切断についてということになるんだろう。家族のことが語られる
▲の部分が、逆に★の部分で語られなかった相手である「ぼく」、父親との関係とその断絶になっている
P21ではじめてのじゃんけんでナツキに無意識に出された手が、完全なチョキであったことの意味を噛みしめてる感
我が子に関係を「切断」されたということを否定したくて(その完全性を壊したくて)、躍起になったのかな
ところどころナツキが負けたがっていることを知っている描写があり、自分がナツキの完全性を否定することが彼女の救いになることもわかっているはずだ
でもなんか挑発的だし、やっぱり負けたのが��ごく悔しかったのかもしれない
官吏(仮)も天体望遠鏡の順番決めでじゃんけんをしていた。むしろじゃんけんのほうをたのしみにしているようにも読める(P14)。
父もナツキに負けたことで、宇宙をいくつかまわって再び勝負をしかけるくらい入れ込んでいた。
父も実はじゃんけん自信ニキだった?
本田圭佑vs本田圭佑
全然関係ないが、じゃんけんする人の国民的ポジションを一瞬で本田圭佑がサザエさんから奪い去ったのすごいな
自信ニキにしてはパー(過去)を出すのにも「失敗したキムチチャーハン」で負けるあたり、舐めていたのか、地力が低かったのか、ナツキが強すぎたのか。
父は抱きしめてやるべきだったんだよこれ。
おとぎ話、これなんなんだ?
最強の手「グーチョキパー」と、官吏が囚人とのじゃんけんで出した手が官吏にしか分からない(グーとチョキとパーいずれかを事後報告できる)ということは、似ている
並行宇宙の話をしてたから、つまり重ね合わせの状態の手を出しているということか(???)
どの宇宙でも勝つように収束する
やけに星がよく見える池袋でナツキたちのちょうど反対側にいた男の故郷(この国でいっとう星がよく見える土地)と、官吏の故郷(星がいっとうよく見える土地というのがこの世界にはある。おれの故郷はそんな場所の一つだ)の類似
わからん。もう少し考えたい
それはちょっと意識してるのかなーとおもったけど、おもったけど、その先がわからなかったな
よく側を通り過ぎている女二人は官吏の妻と、彼女と密会していた女っぽい(P33)?
あの二人はなんか意味はありそうなんだけど、そうなんですかね? なんか手がかりある?
そもそも官吏の妻が密会していた女っていうのがよくわからん。p33「隣の独り身の女と、三日にいっぺんは会っていた」も最初は読み方がわからないというか、男の誤記か、会っていたの主語は官吏の方かとか考えてしまったから、でもここでその目立つ書き方をしているってことは、通り過ぎている女二人なのかもしれないな、必然性があるはずだと考えるならば。
「~しあわせな結末が待っている/そのまえにすこしだけの試練~(P12)」「おれの女房が、じつはおれのことを好いていない~(P33)」
同性愛で、片方には少なくとも家庭があり云々っていう話で素朴に読んでました。おとぎ話と「現実」が地続きなことを示唆する描写っぽいけど、地続きだとしてどういうことになるのかはまだよくわかりません。
反対側に官吏(仮)がいるので、当然彼女たちのことも見かけているはずだけど、そういうところには踏み込んでいない。
「塔のまわりをぐるぐる回るわたしにまとわりついて、しゃべりはじめた(P30, L9)」
ナツキの父の一人称は「わたし」じゃなくて「ぼく」
ここの「わたし」が「ぼく」の誤りだったら、「実は父の回想でした」筋が通る気がするんだけど
だとしたら反対側にいる男がおとぎ話の官吏で、囚人がナツキの父親なら、ふたりともここにいる/そこにいないのはどういうことかってなるし
おとぎ話パートに一人称が出てきてもなんらおかしくないという当たり前の結論に達した
これがただのおとぎ話だとしたらやっぱり、上記の類似はなに?ってなるな
「官吏のいかさま/それを覆す方法」のどちらかが、ナツキに「勝てる方法(P30, L2)」と対応する?
「つまらない方法」でも「教訓がない」と強調されている
P16で完全なグーチョキパーと「昨日見た夢」が並列に扱われている
おとぎ話との関係ありそうか?
最後のじゃんけんのところ
「親指をひろげて」「人差し指をひろげて」「中指をひろげて」「薬指をとじて」「小指をとじて」なんかじゃんけんの最強の裏の手みたいなやつか?
『ラッキーマン』で勝利マンがじゃんけんで出す最強の手「グーチョキパー」の印象が強かったので読みながらウフフとなった
指を家族にたとえる歌「おはなしゆびさん」
「中指をひろげて おにいさんゆび」って言ってるけどこの宇宙には、もうおにいさんは「すでにいない(P22)」はず
ナツキはおにいさんが「すでにいない」ことを知らないのか
「だからおおむね、いるのだといっていいのだろう(P22)」で解決か
小指=あかちゃんゆび=ナツキ自身
「わたしはもういなくなるから」の意味とは?
めっちゃかっこいいんだが、なんで勝つと神の不在を証明できるんだ?
自分を負かす存在を待っている→やってきた男に勝つ、という構図で、テーマが神待ちだから?
(1)完全性の自覚を打ち砕いてくれるくらい完全なもの(神)に出会いたい→満を持して史上最も期待できそうなやつ(父)が現れるが、勝ってしまう→神の不在に感じ入る
(2)「勝てる方法」を使用してくる父に勝つには「最強の手」を使うしかない→勝つために「最強の手」を使った自分は完全ではなくなった→「じゃんけんの神」であるナツキはいなくなった。(※「最強の手」には完全性が宿らないという前提)
後者だと「わたしはもういなくなるから」に若干繋がりそうな気配があるが……。
「気に入らない男だけれど、負けるのはほんとうらしい(P30)」
実は勝ってないけど負けることによって勝利しているとかそういう話の可能性は、ないか。
なにもわからなくなってきた。
最後のビュレットがないことの意図
ここまでの文が全部、ナツキが最後に出した「最強の手」の動線ってことなのか。
山の神さん
一言感想
広瀬の(声 - 小野大輔)感
笹さんは本当にエッチな男だなあ
広瀬の絶妙なすけべ感がすごいいいんだよな
舞台が大正時代なのもあって、なんとなく森見登美彦風味も感じた
実質ヤマノススメ
過去と未来、機械と人が「重なって」ゆき止揚される様がいい。
私は毎回打���笹さんを目指してカワイイ女の子を描こうと四苦八苦しているのだが、そんな私の苦闘を尻目に笹さんは毎回さらりと可憐な少女を書いてしまう。私がシャミ子なら笹さんはさながらちよももといえるのではないか? この観点からね群とまちカドまぞくの類似点について指摘したい。
ね群とまちカドまぞくの類似点について指摘するのはやめろ
おもしろい小説を書くのってむずかしい(今回なぜかとくに思った)んだけど(隙自語)笹さんはすごいよ
時代は姉SF
対比的な文体芸が楽しい
ちゃんとそれぞれの文体の思考法でおのおのの結論に至るという意味での必然性もあり
短文が素打ちされていき、隙間にとぼけた感じが挟まれるこの手の文章が自分は好きなんだよなと思った。というか、思えるくらいに自然でうまいというのがある
p58で一瞬ネタにして明示してくれるの親切というか、やっぱりそうなんだ!っていううれしさがあり、かといってそれ以上しつこくネタにしない慎み深さがある
「機械の身体」にたいする各々の対照的な考えが、登山という身体性をともなう行為によって止揚される云々!テーマの消化のしかたがきれい
おれは登山をしたことはほとんどないが……
とまれ、こういう短いキャッチフレーズにまとめられるくらいの主題があるのは大事だよなあといつも思うんですよね……
会話が四コマ漫画を連想させてまんがタイムきららだろ、これ。
意識して読んだらマジでまんがタイムきららが脳内展開された。
ドキドキビジュアルコミックス
SF的な設定について
ものすごく複雑なことをしてるわけでもないと思うんだけど、人間と機械のきょうだいってのはちょっといろいろ考えがいがありそうなんだよな
血縁がないにもかかわらず姉妹を擬制するというのはひとつの伝統なので……
義姉妹の約を結んだのか……
単純にスペア的な存在のような気が(名前が神籬だし)
医王山登りたいな
プロットで動機や結末などを「重すぎず、軽すぎず」っていう思案してたっぽいけど、それがちゃんと活かされててよいな。
細部
大正15年、大正デモクラシーの流れで前年に男子普通選挙法、昭和が目前、世界恐慌��だしそんな世情はギスギスしてない感じだろうか。張作霖爆殺が昭和3年とかなので徐々に種が撒かれてた感もあるか
舞台は金沢らしい。旧制高校のエリートである
転移時の文章のくずれのかっこよさ、これなにか書くコツとかあるのかな……
実質パプリカ(映画)なんだよな
今敏監督で映画化だ
p52で先を歩かせてるときにスカートがちらちらするのぜったい気にしとる��ろがそれを明らかにせず別の理由をつけるあたりのむっつり感
「まったく許しがたいことだ」じゃあないんだよ
p.72「広瀬は次に登る山のことを考え始めた」の爽快感がすごくよかった。
でもじつは神籬のことをめっちゃ考えてたんだけど、私小説的な照れ隠しでこの書きっぷりだった可能性もあるな
エピローグ(p.72の※以降)で広瀬たちと神籬の後日談があることが最高の読後感を提供してくるんだよな
囚獄啓き
一言感想
夜ごと街を走って体力を高めるの草
え、なんで妻は罪を犯したの?
愛だ。小林さんは愛の輪郭線をたどることで愛を浮かびあがらせるのが巧い。直江兼続の兜を想起させる。そして銀河犬が気になる。
いつもよりギュッとしてる
ぼくも同じ印象を持って、最初は漢字のとじひらきがかなり過剰に閉じ寄りになってるからかなと思ったんだけど、むしろいつもより地の文が多く、強めの短文を連打してるからなのかな
どこかに魚が出てくるかなと思ったけど、なかった
ところどころに小林さんの昏い性癖が出てる気がします
冒頭にある「地獄とは心の在り方ではないか」がポイントなんすかね
平等な地獄を作ったはずの主人公が、また別の、その人固有でしかありえない、妻の不在という地獄に……という、やっぱ愛か……
刑罰ってのがそもそも歴史がありその意義などいろいろな話があり現代に照らし返せるものの多い、したがって近未来の世界の「当たり前」がどうなっているかを描くまっとうなSFに向くテーマで、そのへんを上記の愛の話のもう片手として簡潔にまとめてるので、SF!って感じがするのだよな
理屈づけのおもしろさで魅せてく鴻上さんのとか、未来ならではの思索で魅せてく笹さんやばななさんのとあわせて、SFらしさのバリエーションがでてると思う
初読時には時系列というかエピソード間の間隔のことあんま意識して読んでなかったんだけど、妻が事件を起こしてから刑を執行されるまでにけっこう時間が経ってるのがわかって、なかなか大変やなというきもちになった
と言いつつ実はちょっとわかってないんですが、二人称で語られる断章は(多少その前な箇所もあるとして、おおむね)妻が捕まって以降の話ということでいいのかな?p85の妻への言及とかも相まって自信がないんですが
そもそもそのへんの語り全体が妻の見ている地獄という解釈もあるんだろうけど……(でないとなんで語り手がこんな詳らかに知ってるのかが説明できないというのもあり)
「牛乳を含んだ雑巾」みたいな独特の比喩から小林節を感じる。
SFってガジェット自体の新規性や利便性から話の筋を作るというのもあるんだけど、そういう未来を描くことで(かえってその迂回が)現在に通用する倫理とか問題意識を切実にさせる側面もあるんじゃないか、みたいなこと考えることがあり、これはすごくそれよりな感じがします(感の想)。時代によらず共感しうるものだったり、いま揺れている倫理に地続きの問いだったりが中心に据えられている。んじゃなかろうか。
「あなた」の作る地獄(への道)を「無関心」で舗装していたのは、むしろ妻のほうか(P79の後ろからL5、あるいは全体に漂うフラットな語り口から)? 舗装、とは言い得て妙かもしれない。その下に押しつぶされているもののほうをこそ俺はなんとなく想像してしまう。
妻の犯した過ちには子供の死と、ひょっとしたら、球獄とそれを取り巻く感情が関係している。いる?
平等であるというのは、ある意味残酷なことだ。だからこそふさわしいのだろう。意思が介入せず、全くぶれない罰を与える球獄だからこそ、罪の清算(救済)が可能である。それがどんなに償い難い罪だろうと、いやむしろ償い難いものであるほどそう感じられるのかもしれない。「あなた」による偏執的な研究の日々の傍で失われていったものがあるならば、それらの重さは球獄という完全性への期待に加担する。その信仰は、妻の中にも「あなた」の中にも、いつからかあるはずだ。
「神待ち」に関して
これから堕ちる地獄(世界)の創造主(=神)に「そこで待っている」という発言をしたことが、テーマに沿っている気がしたんだけど、どうなんだろう。
こういう発言にも妻の「あなた」への共犯意識が垣間見れるし、なんかやっぱり妻の罪の動機と球獄の製作って関わってるよね。そこをあえてすっぽり省いてる気がして。
脳波の逆位相を……という発想がよく考えたみたらどういうことだってところではあるんだけど、とくに瑕疵にらなないのはいいなというのがある
性的快感の逆位相=性的快感以外のすべてがある
妻がいない世界に生きる「あなた」=妻以外のすべてがある世界に生きる「あなた」
ということで、妻の地獄と、それ以降の「あなた」の生活は相似しており、このことがp.90「僕たちは二人並んで閻魔様に裁かれて、それから長い長い地獄に落ちるんだ」に繋がるところがうまいと思った。
細部
終盤で語り手が妻だとわかるみたいな仕掛けはやっぱりグッときちゃうんだよな
p80 パパ活やってて喫茶店のスティックシュガーパクる?と思って笑ってしまった
p81 京文線、なぜか印象に残る。急に架空の(だよな?)固有名詞が差し込まれるのが異質っぽいのかな?(ワイン、とか、省、とか、固有名詞が割と排除されている空気の中で)
「顔が見えていても私はいいんだけどね」「また来ても良い?」普通は、三倍払うと言われてそれ��釣られてやってきた女は、こんな好意的な反応を返さないだろうから、そこに都合の良さというか、あるいは記録者による逆のバイアスがあるのかなとか思ったりする
p82「再び端末のキーを押下」エンジニアしぐさ
p84「君の身勝手な自棄で何人の未来を奪ったんだ」なにやらかしたの?
p.86「銀河犬」「(おばあちゃん)その辺で見ませんでしたか?」の台詞がすごく好き。小林さんは一作目からこの手のシュールさを志向している印象がある
記録の語り手が妻っていうのはなるほどねと思った
p.85「それから数年にわたって女はあなたの研究室に通い続けた」以降は、妻が罪を犯した後?
p.88「語りが過ぎた。ここで記録は結ばれ、以降は記録ではなく〜」記録3の後の最後の断章は、妻が地獄執行される場面であり、妻はその場面の記録を執筆できないということを意味している
p.89「私の心は現在どのレイヤーにあるのだろうか。」レイヤー?わからなかった
杞憂
一言感想
中盤からの加速感
これ絶対あれだろと思って読んでたのにやられた
デジタルタトゥーとかそういう意味じゃないけどわかる単語がずるいよな
インディアンのネーミングについて調べてしまった(おもしろい)
この手の一般名詞(?)をそのまま訳して名前として表すやつがなんか知らんが妙に好きなんだよな
ナツメもライチも中国原産っぽい?
原産というか縁がありそう
両方とも滋養強壮できるらしい
ちゃんと資料にあたり、ネイティブアメリカンの習俗とかJKリフレの店内の様子とかそういう細かいところをしっかりさせてて、小説の足腰ができている、見習いたいんだ……おれは……神は細部に……
SF的な理屈をいかに飽きさせずに読ませるかってところで、JKリフレとの強引な対応関係をつくる手つきがすげえ上手いんだよな
馴染みのある語彙に変な言葉を紛れさせて地の文で展開する、みたいな
オーバーロードが中年男性に……(さらにはそれがエルクに……)っていう絵面的なおもしろさと設定的な必然性を両立してるのとか、漫才っぽいプレイの流れのなかでちゃんと話進めるところとか
文化盗用とかアーミッシュへの皮肉っぽい視線みたいなのは前回の感動ポルノに通じるところあるよな
バトルシーンの手の込みようとおっぱいで窒息するくだらなさの融合だけで“勝ち”なんだよな……
もしかしてこれをやりたいがためにここまでの全部を作り込んできてないか!?!?!?
古事成語オチをつけてなんかやっぱネイティブアメリカンの伝承の話だった?みたいにするふざけかたも好き
あ、ここから怒涛のあれが来るんだって予感でわくわくしてやはり来て、凄かった。
SF的な設定���未来の世界での娯楽・趣味的的な観点がけっこうよくて
意図されたであろう魅力が初読で存分に伝わるつくりで、かつ細部に注目する部分がたくさん残されているのがめちゃくちゃつよい。
人物やガジェットのネーミング、その他取り扱われている文化へのリスペクトなど。
細部
p97「俺たちの世界の理にして〜」、読み返してみると、焼き脛は序盤からちゃんとわかって言ってんだな……
侍ミーて
「ひょっとするとお忍びで欲望を満たしにきた元老院議員の可能性さえある。」ここクソ笑うんだよな。千と千尋のあれかよ。
「あれこれ無駄な心配をする痴れ者をさして杞憂と呼ぶ習慣」これ文脈的に杞憂じゃなくてマウンティングベアって呼ばれるんじゃないの??
なんか笑った
略されて使用されていくうちに逸れていく、みたいな、なんかそういう言葉いくつかある気がする。いまは思いつかないけど
用語について調べて/考えてみる
赫の終端(レッドコーダ):ハンドラ族の長
赫は赤いこと、勢いが盛んであること。コーダは音楽で終わるあれ。なので日本語とルビは直訳的に対応しているっぽい。レッドコーダーだと、競技プログラミングのあれになる。プログラミング力が高いから長なのか?
ポアソンの分霊獣
ポアソン:名前。有名どころだと数学者? ポアソン分布の。
分霊獣:分霊は分け御霊。獣?
分霊という言葉のもともとの意味は、分け御霊ということで、コピーして増えるという意味の分けるなんだけど、作中でこの獣の動きとしては、流れを分ける、分配するという意味の様子。
っていうかロードバランサだよな? だからポアソン分布なのか! 待ち行列だから神待ちなんだ!(今更気づいたの俺だけか?)
待ち行列SFらしいということは垣間みえていたんですけど、まさかこんなん出てくると思わんやろ
杞憂(キユー)
杞憂は空が落ちてくることを心配した故事成語。カタカナでキユウではなくキユーなのはなにか意味あるのかな。待ち行列のキュー?
あー!なんで杞憂なのかと思ってたら、そうか、queueか!気づかなかった……
キューとかレッドコーダーみたいな二重の意味、他のやつにもそういうのあるんじゃないかと思ったけどわからんな
キノコジュース
一言感想
光――
初手「ふざけるなよ」と感想を書こうとしていたんですが、本人がふざけているつもりないとしたらめちゃくちゃ失礼になってしまうな、と口をつぐんでいました。やはりふざけるなよでよさそうです。
そういう意味では、我々としてはかなり楽しく読めるんですが、どこまで本気でやってるのか測れない距離の読者からすれば、読んでいて不安になる可能性もあるのかもですね
購入者の感想がたのしみです(なんなら自分の作品よりも)
ふざけどころの緩急がすき
ナンセンス漫画ってやっぱ絵があるからこそギリギリ成り立つもんなのかなあと思っていたところ、それを小説で成り立たせてる腕力がすごい
理路のつながらなさをゲーム的な世界観と苦しむ顔がかわいい女を好きな思い込みの激しい男とでギリギリもたせている感じというか、一般のナンセンス文学の退屈さを補う怒涛のクリシェというか
ほかの人のはそれぞれに「自分もこういうのできるようになりたい」という部分があり、その一方で「だけど本当にそれが書けるようになることを自分は求めてるのか?」という立ち止まりもあるなかで、国戸さんのは心情的に共感みがすごいんだよな。「これをやりたいし、これをやればおれのやりたいことができるのか!」みたいな
好き。酒呑みながらブコウスキー読んだときとおんなじ仕合わせな気持ちになる作品。
実際完敗した感じはあるんだよな。旋風こよりを前にした上矢あがりみたいな。
国戸さんの料理好きな部分が出てるのか。登場する食べ物飲み物が気になる。苔とか。
笑えすぎて本当にずるい
細部
すべてが細部なので読みながら挙げていきます(正直一文一文挙げてきたいところはあるんだが……)
そもそも冒頭の大剣のくだりからしていきなりバカにしてて、そこから「エロい体」の「悪魔系の魔物」が出てきて(系ってなんだよ)、ハートがパチン、そして光——の畳み掛けで完全に引き込まれちゃうんだよな
本当に最初の3行ですごいじわじわきたところに「セクシーで人間と同じ形状をしたエロい体の悪魔系の魔物」でトドメ刺されるんだよな。笑えすぎる。
くっそお、俺はこいつが好きだ
「大型魔物」、「の」を入れないのが良い
最強の二人のもう片方、だれだっけて
双剣を捨てる言い訳から店主を攻撃して半殺しってところまで一文一文笑いどころしかない
全体的にそうだという気もするんだけど、とくに「ルシエは用心棒で〜」からのくだり、なんか妙にサガフロ2を思い出したんだよな
キノコジュースのくだり正直まったく不要で、リアリティを増すための習俗の描写を馬鹿にしまくってる感がある
そういう意味ではその前の鴻上さんの緻密さと対比的でおもしろいな
「戦闘で、全力でしゃべってるんだと感じた」突然詩的になるな+ペンダントのくだりの思い込みの激しさ
いきなり世界が壊れだしてから第三世界の長井みがこれまでにも増して、ちゃんとゲームの世界なんですよという無用の目配せに笑ってしまうんだよな
素直に強く反省する主人公
p136の唐突な暴力描写の投げやりっぷり
「まさか点滅して消えるだなんて」ほんと好き
「その勢いは凄まじく、まるで矢のような勢いで飛び込んで来たのだ。」ここも好き
ひかりごけをいきなり食って、しかも飢えた人間へと連想をつなげるのをやめろ
もうこのあたり完全にゾーン入ってるんだよな、一文一文が常に笑える
「強い恐怖は、それまで持っていた弱い恐怖を克服する」の決め台詞感に至るまでの思考回路がくだらなすぎる
玉ねぎの連想から無理やり涙につなげて、象徴にもなってない象徴を引っ張り出したうえで「確かに」と結論づけさせるのすごすぎる
「過去の出来事が現在の状況を暗示している」みたいなありがちなアレをばかにしてる
いきなり寝ている、いきなり寝るな
「すると〜」からの段落の描写の雑さが主人公の現実認識の雑さを象徴しててめちゃくちゃいいんだよな
ダグラスの登場あたりからやにわに話が盛り上がるのだが(そもそもこれで盛り上がってる感がちゃんと出てるのがまずすごい)、インベントリがいっぱいなことを心配したり速い虫の話をしたりさらには親の回想がはじまったりしてこいつ集中力がなさすぎないか?
とても速いなにかしらの虫ってなんなんだよ、ほんとに。何回読んでも笑ってしまう
でもなんかちょっとかっこいいんだよな
p140からのなんかいいこと言ってる感の空虚さがすごいし、そもそもなんでダグラス現出してんだよだし、それらすべてが学校の机でガタンの恥ずかしさとなんかしらんが妙にリンクしてる感じがして凄みがすごい
「あれ、これだいぶ前にもやらなかったか?」で突然我に返って、読んでる方も一瞬我に返り、ページをめくると最終ページの登場である
「苦しそうな顔が〜」で最後までふざけて、ロケットが開くのもなんか勢いで、それから光——ではないんだよ
まさしく腕力
リュシー (Lucie)は、フランス語の女性名。 ラテン語の男性名ルキウス(Lucius)に対応した女性名ルキア(Lucia)に由来し、『光』を意味する。
蟹と待ち合わせ
一言感想
マァンドリン
わりと文章が硬質なんだけど擬音語擬態語とか、こういう音声的な話を印象的に使ってくる印象がばななさんにあったけど今回それが強まっている気がする
いつもより書いてて楽しそうな印象をうけた
どこかでも書いたがばななさんの導入いつもよいと思う(導入以外が、という話ではなく)
今作はわりとエキゾチックなんだよな。キャノンビーチの鳥居を蟹がくぐる光景がエモい。
全体的にアルカイックなのは意識の誕生以前の世界への回帰だからか。
おなじ文献に着想を得てるのに杞憂との落差よ。
御神体フェチ
毎回SFギミックがハードコアではあるのだけど今回もそうで、そのうえ↓の書き手の感想にあるとおり、実際書き方がより挑戦的になってる
んだけど、それなのに!夏の島のバカンスの雰囲気に包まれててめちゃくちゃさわやかなんだよな、なんなんだよ
そう、すごくさわやかなんだよな……本当に
ずっと空と海を描いていて、そのうつくしさは質感としては憧憬に近いんだけど、ラストで急にその突き抜ける青さが手元に戻ってきて調和するのがすきなんだ
人類補完でなにが起こるかのところにこの回答持ってきたのは(↓で書いた情報の出し方のおかげもきっとあるんだけど、個人的な考えとしても)個人的にはめちゃくちゃ納得感がある
収録作のなかでもアジテーション的で、わりと全体通してゆっくりアジってくるので「たしかにそうだよな……」みたいな納得感がある。あるよな?
「鯨」で強めの主張をしてからの「石球」での転調、そこからラストの「蟹」で落とす流れがきれい
というか、全体的に情報の出し方のコントロールという基本ががうまいんだよな。我慢できなくて設定語りしちゃわない?おれは我慢汁出ちゃう!
細部
ちょっと入り組んでいるので整理を試みます(みなさん適宜修正してくれ):
人類
全体と言語野を共有している
読む限り電脳である以外、形としては「普通の人間」でよさそう?
現代から100年後が舞台であること(そう遠くなく、まだ最後の電脳化が終わって間もない)、人間の肉体として考えて不自然な描写が出てこないこと
もし「異形」であるなら、相応の描写があっていいはず
自然な人間の形であるからこそ「四本足」や「七つの目」という描写が活きているんじゃないかと思って
しかし、なんでもいいというのも、この話の主題のひとつだ
「アラスカやシベリアの軍事拠点と並び、地球上で全住民の接続を完了した最後の地のうちの一つだった(P152)」
語り手たちはまだ完全に統合しておらず「人間らしい」雑念に溢れている(ように語っている、が)
笠木
御神体「ヘイスタック・ロック」
「キャノンビーチ」
笠木グループ:腕が各2本、脚が各2本の3体か
彼らの姿を想像することにあまり意味はなさそうだがいちおう
肉体(?)の数と一人称複数形のバリエーションの数は一致しない
p146で「三つの肉体」とあるから上記の解釈をしたんだと思うけど、最初読んだときそう読み取っていなかったのでなるほどと思った。何故かはよくわからないが、6本腕(兼ねる、脚)がある物理的には1つの塊を最初イメージした。p145で「七つの瞳」(3では割り切れない)とか、「三つの声、四つの声」とか書いてあるのを読んで、あまり整合的にわかりやすい体の形をしたものが何体かいるみたいな状況じゃないんだろうなと思ってしまったので。
でも油圧ショベルを操縦してるから、人間みたいな形をしているのだろうか(人間向けの油圧ショベルなのかどうかは定かではないが)
瞳のひとつは「対流圏から熱圏にいたる範囲を巡航する種々の飛行撮影機と衛星によって構成された視線(P163)」とのこと
なるほど!!
どうも彼らは記録をしているらしい���とがわかる
マンドリングループ(たぶん)とは異なる一人称複数的な主体を維持しており、(一方的であれ)独立性を保てるらしいことがわかる
性交は非対称的な行為であること
「私たちは背中が三つある獣(P147)」すごいな
マンドリン
御神体「鯨→海自体へのイメージ」(仮)
マンドリングループ:腕が計6本、脚は計4本
……とあるけれど、海岸を歩んでいない2本があったりするかもしれないか
人類全体の意識(というべきではないかもしれないが)が共有されており、各々の肉体は物理的な入出力器官として位置付けられている、入れ替わることもあるていど自由っぽいことがわかる
「四本の足(P150)」という表現、ひとりはかならず共用スペースで開発をこなしているという描写(ここすき)
「肉体と精神の求めに応じて」とあるので海岸を散策する肉体も実際に交代してそうな雰囲気がある
「巨大な一つの意思たる海、それを身に纏う美しい惑星(P154)」(『ソラリス』だ)に自分たちの集合知としての存在を重ねる
パレイドリアがそれなり大事そうな概念として導入される
大戦があったこと、舞台が太平洋の群島であることなど、若干の歴史や場所の情報
環礁・核実験・地形などの情報からビキニ環礁だと思われる
鯨
鯨グループ:7つの眼
あとの「蟹」を読むかぎりでは笠木グループと同一であると思われるが……
パレイドリアの話の続きとして:自他の境界がない(このへんが神々の沈黙っぽい)→パターンを形作ることができず、生の感覚(?)としてしか受容できないみたいな話になってくる(現代的に見れば統合の失調ではある)
人間の意識(?)が完全に同一化するまでの過渡期らしいことがわかる
石球
御神体「石球」
「2121年9月のアラスカ」と明確に述べられている
時系列的にはちょっと前のように見えるが、正直よくわかってない
夢:イリアスっぽい描写
このへんも神々の沈黙で、ゆうたら「自他の境界がない、昔バージョン」の話
「開いた」球
視覚的な描写ができない、よね?
蟹
笠木グループっぽい
7つのうちのひとつの瞳が別の夢を見たらしい
俯瞰することの話ふただび
ここまでときどき出てくる語りのアップロードなどなどの話から徐々に彼らの生態の全体像が見えてくる形になってる
小さなボートのなかに女
「人類すべての言語野がつながったのが、いまからちょうど半年前(P152)」で七つ目の瞳は「一年以上にわたって(P160)」漂流していた女を見ていた(という夢を見ていた?)
P158で大地が揺れたことと関係がありそうなんだけど
鳥居をくぐる。今まで、あえて鳥居をくぐることはしなかった(P161)
純粋な観測者であるはずの7つ目の瞳が女をとらえて震える
「間近で見た御神体の岩肌は、海鳥の��にまみれて白く汚れていた(P164)」は単純に美醜の描写を行ったり来たりすることで対象の存在感が強まるという効果もあるんだけど、もしかしたら「岩→女」への神性の移行ともとれる
女は一人称単数でしゃべる
濃い日焼け、脇毛ぼうぼう、乳に蟹
その前の段落の「あたしはようやく目を覚ます」の主体がちょっとあいまいで、おそらくこの女なのだけど、どうもここまでの一人称複数であった人間たちのうちの一個体のようにも読める……読めない?
むずかしい……最後の台詞の読解にかかっている気がする
ここで個としての人間が復活しているらしく、たしかにしているっぽいのだが
システムの「手足」に回収されつつある在りかたを、独立した「動物」のほうに引き戻してくれたらということなんだろうけど、この言いかただとそういう流れは止まらないと展望している
しかし七つ目の瞳のほうは、純粋な観測者としてあるまじき挙動をしていて……
もはや個を剥奪された端末になりつつある人間から全体への、人間性の逆流? といえばいいのか?
鳥居(文脈から切り離された木一般の意味が異邦で再構築される)というのが、いや鳥居に限らず漂着物の再構築などが(マンドリンもそうだ)、女の登場と構造的に対応しているように思う
単純な近似ではなく、その異質さを強調するための
イリアスパートの「怒り」は、システムに回収されつつある生の叫び(全体的な語りから読み取れる)に沿っている気がする(捕らわれたクリューセーイスの奪還と、漂着した「女」の物語的な関係やいかに。未読なので詳しくはわかりません)
鯨も同様、またソラリスの話も寓意に富む
女、オフラインなのかな(最後の台詞からははっきりと推測できない)
書こうか迷ったが、もしかしたら「正体」があるんじゃないか
P150の環礁・核実験・軍艦というワード(七つ目の瞳では観測できない海底)
ビキニ環礁のクロスロード作戦
鳥居への祈りから、日本の軍艦を連想
クロスロード作戦で沈没した日本艦は長門・酒匂
軍艦の擬人化と言えば艦これ・アズレン
双方のキャラクターの特性に照らす
「あたし」という一人称と「ささやかな乳房」という情報
「酒匂」ちゃん??
艦これの話か?
なんかこうもっとロジカルに導きたいんだけど、まだひらめきに近い
でもこう読むとすっと入ってくる描写とかある気がするんだよ
海への柔らかい執着とか、肉体の話とか
深海棲艦説としか思えなくなってきた
あー、なんかそっちっぽい!
最後の台詞がわかった気がする
元の肉体(艦)が(七つ目の瞳以外に)憧憬?をもって観測されつづけたことによって顕現できた、みたいなことか?
どうなんや
元あたし(傍点)じゃん?
いくつもあった「すれ違う」描写���しかし最後に「越境」して交わり、岐路に立つ!
つまり女の漂着は人類にとっての“クロスロード”だったんだよ!!!(キバヤシ)
ブロックバスター
一言感想
コインを振る。裏。←かっこいい
まったくわからないんだけど、いつもよりわかるよな
Cの盛り上がりがBとDのクライマックスと呼応していく感じが好き
読後感すごくいいからやっぱりこれ最後配置で正解なんだよな
津浦さんの作品一番難解なんだけど、なんか童話的な柔らかさがあるんだよな
ポリフォニック(ね群メンバーの作品は全体的にそうかもだけど)
こーしーもう一杯
王の祈る姿が比例して増えた←感謝の正拳突きしそう
細かな表現のかっこよさはもはや言うに及ばずなんだよな
Aの語りに出てくるモチーフの並置の伸縮自在さとか
あと「その大きさはもはや比喩の範疇を超えて唯一だった」がめっちゃ好き
挙げてくとキリがないのでやめます
細部
こっちもまずは整理してみる(修正求む)構成:4幕。
(1) p.168「「世界」という言葉がきらいだった」
(2) p.171「「世界」という言葉は、ずっと昔のあいまいな約束だった」
(3) p.174「「世界」という言葉は、その実なにも説明できていない」
(4) p.177「「世界」という言葉が薄い殻から芽吹くとき、その平熱の期待を逃してはならない」
語りの種類:5種類。
A:ほかと同じ明朝体のやつ
各挿話の最初に置かれ、「「世界」という言葉」からはじまる
p.168は病院に行く(お見舞い?)シーン?
p173「恋人の手」と「犬のクソ」は素晴らしいものと価値のないものを表しておりそれらを混同しないとみんな言いはるんだけど実際には紙一重だ、みたいなことを言っているように読み取れる、一方でp174では「生きている私たち」の強調によって、両者はいずれも生命を示しているというふうにも止揚されてくる
p.177「意味のある対象が〜
B:丸ゴシックのやつ
母を知らず、物語を作るハルと、魚から這い出したところを見つかった、八つ目の毛玉のキャット
八つ目!魚から!Cの「ものども」あるいは王だ!
母を知らないっていう宣言的な言い方がDとの関係というか、そういうものを感じる
p171「私は無垢を演じているのではないかと~」からも、直截的にはそういう読み方が誘発されると思った。Dの母との問題を無視した空想の世界。p171の描写は作り物感を補強している。p172「自身のスペアを要請」
世界の果てでコインを投げる
世界の果てが出てきて殻を破るって実質ウテナじゃん
p.180「あるいは誰かのその前駆が私と私の世界を作ったのだとしたら〜」エフェメラルな雰囲気がする
最後に揺れて、そのあと魚、でもって「彼」は(世界の)棘を持つ、(Cの)大亀だわな…
C:教科書体(?)のやつ←例のクレー
彷徨し、「世界の棘」を持つ大亀、王とものども
p.183より、ものども(たぶん王も)八つ目である
最後、魚がめっちゃとんできて世界の殻が壊れる
p.183Bによれば、Bにおける「物語」が世界と同一視できそうではある
D:薄めの丸ゴシックのやつ
現代劇っぽさのあるわたし(空想が好き、大学は文学部、就職に困る)と母。二人は折り合いが悪い
p178「世界に目を向けて」という母親の言葉とそれに従わずに目を閉じる私。「世界」という言葉への反発はAにつながっているように思う。
目を閉じて以降、空に魚が出現し母が消えるので、ここで世界に背を向けたように感じられる。というかp182のBにシーン的には合流しているように読める。丸ゴシック繋がりもあり。
ふと思ったがここの「わたし」が神待ち行為を行なっていた可能性があるぞ!!!!(ないです)
最後、やっぱ空に魚(バラクーダ!)が出現する。母はいなくな
E:薄めの明朝体のやつ
わたしと「彼女」(母性を感じはする)、あやとり
p.174「わたしは彼女の暇潰しの相手に過ぎない」が、その前のp.173B「気晴らし」につながらなくはなくて、そうなると物語自体ってことになるのか?
p.183「名づけたのは他でもない、わたしだ」。「世界」を?「世界の棘」を?
「ふだん浮遊している〜彼の棘はもたらす」らしいぞ!(だいじそう)
ストーリー性は希薄で、間投される語り
p.183、やっぱ魚は大亀の斥候なんだよな
あ、ここに寝室(Dの末尾の舞台)出てくんじゃん
あえて階層構造を仮定するなら、基底から順にD→B(Dのわたしの空想あるいは物語)→C(Bのハルの物語)で、大亀による崩壊がC→B→Dと還流してるように読めなくはない気はするんだけども……(BとDは……つーか、いうたら全部上下がなく並列でもいけるか)。で、それで世界がつながるのはわかる。じゃあ「その外に残された」の外って?(火じたいは王の演説にも出てくる)
レイヤーを想定しちゃうのは悪い癖だな。読み返してたらあんま上下関係ない説の方が強まってきた
自分だったらレイヤーを想定して書くのだろうが、多分作風的にはレイヤーとかじゃないんだと思う。しかし相互の関係性とかが変奏していく感じがあって良いんだよな
テーマについて
神待ち
神の裁きと訣別するため:自分を負かす誰かを待っている→勝って神の不在を証明
山の神さん:神待ちアプリ
囚獄啓き: 「地獄とは神の不在なり」なので、不在なんじゃないかな
杞憂:中年男性(世界を維持するための計算資源→神?)待ち、待ち行列理論
キノコジュース:ルシエが宮殿で完全性を持つであろう存在を待っていたこと
蟹と待ち合わせ:蟹待ち
ブロックバスター:亀待ち
むりやりまとめると、神待ちの「神」を、原義側に寄せた、圧倒的なものとか完全なものとかでとって書いたのが多数派、という感じだろうか
とどのつまりは祈りだ。
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スパイク・リー監督・主演『ドゥ・ザ・ライト・シング』 (その2:事件の背景と本作に込めらたメッセージ) 原題:Do The Right Thing 制作:アメリカ, 1989年. ベッドスタイの夏の日の朝、ラヒームの死を思う者は誰もいなかった。しかし、ラヒームは誰かの手で計画的に殺されたわけではない。かといって、「太陽が眩しかった」から殺されたわけでもない。 ラヒームはなぜ警官の犠牲になり、スパイク・リー監督はこの映画に何を込めたのだろうか。本稿では、(その1)の現場風景を手がかりに、映画���ドゥ・ザ・ライト・シング』の背景と本作に込められたメッセージを探ってみたい。 なお、以下の記述のうち現場に関連する多くは、(その1:物語の現場はどうなっていたか)に状況を記し、文中に登場する会話は太字で示した。
CONTENTS ・日常の均衡を象徴するラヒーム ・黒人と白人双方の憎しみが黒人の犠牲者を生む ・なぜ、ムーキーはゴミ缶を投げたのか? ・黒人殺害事件の背景:(1) 格差の実態 ・黒人殺害事件の背景:(2) 格差を生む教育システム ・黒人殺害事件の背景:(3) 恐るべき警察の収監システム
日常の均衡を象徴するラヒーム 本作はベッドスタイの街を、愛と憎しみが拮抗する日常風景から描きはじめている。全体として怒りと憎しみの描写が目立つが、愛と寛容も描かれている。 DJダディは愛と尊敬を込めて、60人もの黒人ミュージシャンの名前を読み上げる。酔っ払いの老人ダー・メイヤーは、諍いに出会うたびに仲裁し、18年ものあいだ愚痴を欠かさない未亡人に、なけなしの金をはたいてバラの花束を贈ったりもする。 ときには警官も寛容さを発揮する。街の若者が消火栓で水を撒き散らして遊ぶなか、通りかかった白人のクルマに水を浴びせる場面では、告訴すると怒る白人を警官がとりなし、黒人の若者を無罪放免にしたりする。 反対に、生活の苦しさや家族の軋轢を描いた場面は数多くある。ムーキーには恋人のティナとの間にできた男の子がいる。しかし、ティナと同居している母親との折り合いが悪く、寝泊りするのは妹のジェイドのアパートだ。ティナは子守をしてくれない母親と言い争い、面倒見の悪いムーキーに「くたばればいい」と罵声を浴びせる。だが、その母親が子守をするアパートの別室で、ティナはムーキーと愛し合ったりもする。 ラジオ・ラヒームはこの相反する感情のバランスを体現するかのようだ。彼はいつも手に下げたラジオで大音量の "Fight The Power" を鳴らしている。しかしラヒームは、そのことで「戦い」をしているわけではない。「愛が勝つんだ」と言い、子どもと手をつなぎ楽しげに街を歩く姿も見える。ラヒームにとって "Fight The Power" は、日常を彩るラップ曲に他ならない。だがラヒームは、憎しみを忘れたお調子者ではない。 両手にはめた "LOVE" と "HATE" の指輪は、そうした日常の象徴だ。ラヒームはムーキーに、「憎しみで人は殺しあう、愛が人の魂に触れる。最後は愛が勝つ」と話す。このときムーキーは「じゃ、後でな。平和を」といって別れている。ラヒームもムーキーも、憎しみを抱えながら愛の力で日常をやり過ごしている。 街のあちこちで、愛と憎しみのバランスを取りながら生きる人々の姿が伝わってくる。これが真夏のベッドスタイの日常風景なのだろう。スパイク・リー監督が本作の前半でこうした日常を描いて見せたのは、それがひとつの「正しいこと」だからだろう。だがその正しさは、穏健な牧師の説教のようなものではない。 黒人と白人双方の憎しみが黒人の犠牲者を生む 『ドゥ・ザ・ライト・シング』の前半で描かれる日常風景は、事件への伏線に他ならない。 サルのピザ屋にバギンがやってくる。ひと切れのピザに文句をいい、支払いを渋るバギン。それをサルが、「月賦で支払うか?」とからかったそのひと言で、保たれていたはずの均衡が崩れはじめる。このときバギンは壁の写真に黒人が一人もいないと文句を言い、これが高じて店のボイコットへと発展する。 そして、サルがラヒームのラジオをバットで叩き割ったことで、事件はさらに深刻になる。互いの暴力行為が警察の介入をもたらし、警官の過剰対応がラヒームを死に追いやる。過剰対応を招いた警官の心情はほとんど描かれていないが、街をパトロールする警官が黒人に目線を定め「クソったれ」と漏らす場面が描かれている。 このときパトカーにいた二人の警官が、ラヒームを警棒で締め上げ殺害した当事者だ。しかし、同時にこの警官はサルの店でピザを買い、黒人の水遊びに腹を立て告訴するという白人をなだめ、黒人少年を逃したりもしていた。白人警官の黒人に対する憎しみがわずかしか描かれていないのも本作の特徴だろう。 白人もまた黒人に憎しみの心情を抱きながら、なんとか愛と憎しみのバランスに折り合いをつけながらベッドスタイの日常を過ごしている。しかし、このバランスは黒人にとっても白人にとっても、少しの不注意や不寛容で崩れてしまう脆弱なものだ。その上でスパイク・リー監督はアメリカ系アメリカ人の登場と彼らへの悪口を控えているように見える。これは、白人が黒人を貶めるほどには白人を責めてこなかった、黒人の姿の反映かもしれない。 ラヒームが言うように、愛と憎しみのせめぎ合いのなかで人は殺し合う。だが、この日ベッドスタイでKO勝ちしたのは憎しみの方だった。店のボイコットを切っ掛けにラヒームは自らの憎しみをサルに向け、白人警官の憎しみは黒人のラヒームに向けられた。二重の憎悪が愛と憎しみのバランスを狂わせ、ラヒームがその犠牲になった。 黒人と白人の双方が憎みあい、黒人に多くの死をもたらす構造は、過去に起きた同種の事件に共通している。スパイク・リー監督は本作を「エレノア・バンパーズ銃撃事件」他5名の犠牲者に捧げているが、その6人はすべて黒人だ。直近では今年5月25日にミネアポリスで起きた「黒人男性拘束死事件」でも犠牲者は黒人だった。これだけを見ても、映画に描かれた状況は30年以上も変わっていないことがわかる。 なぜ、ムーキーはゴミ缶を投げたのか? 『ドゥ・ザ・ライト・シング』で最も興味深い場面は、ラヒームが死亡したあとの顛末である。パトカーが動かなくなったラヒームを運び去ったあと、ムーキーが思わぬ行動に出る。大型のゴミ缶をサルの店のウインドウに投げつける場面だ。これがきっかけで街の住人は暴徒化し、店の什器は破壊し尽くされ、現金が盗まれたあげく店に火が放たれる。 なぜ、ムーキーは店を破壊する行動に出たのか? それはムーキーが、サル一家を暴徒から助けようとしたから、というのがわたしの見方だ。本作が描く現場には、そう思わせるさまざまな状況証拠がある。 ムーキーがゴミ缶を投げる前、群衆の怒りがサル親子に向けられる場面がある。ムーキーもサルらの側に立ち、詰め寄る人々の怒りに囲まれる。このときのムーキーの表情が印象的だ。彼はサルの家族に視線を向け、祈るような仕草をする。ムーキーは「このままではマズイことになる」と思ったのだろう。 店で妹と食事を楽しみ、サルから給料をもらい、ピノと話が通じるムーキーの心情が、サルたちへの憎しみ一色だとは思えない。「家に帰れ」という警官にムーキーが「ここが家だ」叫んだように、彼らは日常をともに過ごす「家」の住人なのだ。彼はその生活の絆が徹底的に破壊されるのを避けたかった。だからこそムーキーは、群衆の気を引くように「憎しみだ!」と叫びながらゴミ缶をサルの店に投げてみせた。人々の怒りをサルたちにではなく、店に向けさせるために。 ムーキーの心情に憎しみのカケラもなかったかと言えば、そうでもないだろう。彼は何度も仕事ぶりをサルにけなされている。ピノとの折り合いも悪かった。その鬱憤を晴らす気持ちもあったかもしれない。それでもムーキーは、人々を暴動に誘おうとしてゴミ缶を投げたわけではない。彼の行動の本質は、サル一家に決定的な危害が及ぶのを阻止しようとことにある。別な見方はあるかも知れないが、わたしはムーキーの行動をそのように受け止めた。 このことは、群衆の怒りの矛先がコリアン雑貨店に向かう場面と辻褄が合う。サルたちはこのとき、雑貨店が餌食になる様子を息を飲むような表情で見つめていた。そこに、犠牲になりかねなかった自分たちの姿を重ねたからだろう。サルたちは、無関係の彼らが自分たちの身代わりになることを案じたのではなかっただろうか。 他にも証拠がある。翌朝、ムーキーは未払いだった250ドルの給料をもらいに焼け落ちたサルの店に行く。その際のやり取りで、激昂しながらもサルはムーキーがゴミ缶を投げたことを責めていない。普通に考えて、自分の店にゴミ缶を投げつけて壊し放火を招いた相手を目の前に、責めないことがあるだろうか。なぜ、サルはそのことを口にしなかったのだろうか? それはサルがゴミ缶を投げたムーキーの心情を知っていたからだ。また、ムーキーはサルが投げてよこした500ドルのうち、残りの250ドルもポケットに入れている。このやりとりでムーキーはサルに、「借りておく」と言っている。サルとの関係はこれからも続くということだろう。 店への破壊行為、友人の死、さらには店への放火といった暴力行為を描きながら、この作品を通じてスパイク・リーは、愛と憎しみの平衡を何とか取り戻そうとする主人公の姿を演じている。"Fight The Power" が "Black Lives Matter(黒人も大切にしてくれ)" の叫びに聞こえる。これは本作で彼が監督として示した一貫した姿勢��と思う。穏健な改革派のキング牧師と、暴力を否定しなかったマルコムXを同時に登場させたのもその現れだろう。 スパイク・リー監督が『ドゥ・ザ・ライト・シング』で行って見せたのは、時には暴力に訴えることもあるがやり過ぎてはいけない。ともかく黒人も大切にしてほしいという、ごく当たり前の訴えなのだと思う。 黒人殺害事件の背景:(1) 格差の実態 それにしても、本作に描かれた事件と同種の事件が後を絶たない。本作は制作年の1989年までに起きた同種の6つの事件に捧げられているが、本稿を書いている現在も先月5月25日にミネアポリスで起きた「黒人男性拘束死事件」の余波は世界的な広がりをみせている。 そして、またあらたな事件が起こった。数日前の6月12日、ドライブスルーで警官に撃たれた黒人男性が死亡した。こうした事件は、アメリカで1964年に公民権法が制定された後も絶えることがない。 ミネアポリスの「黒人男性拘束死事件」は、その後 "Black Lives Matter" として世界的な抗議活動に発展し、1) 現在も収まる気配がない。そうしたなか、この種の事件が起こる背景についてさまざまな報道が行われている。その多くは経済格差とその背後にある政治や司法の問題を指摘し、さらにトランプ大統領の政策が影響しているとする意見も多い。 例えば、6月11日付けの日本経済新聞は「黒人暴行死事件の背景を探る」として、黒人の置かれた状況をデータで示すとともに、人種差別の歴史を振り返る特集記事を掲載している。前者の要点は次のようなものだ。個々の詳細は、元記事2) を参照いただきたい。
白人の世帯年収平均金額の中央値は黒人の1.7倍 黒人の無保険者は白人の1.8倍 コロナによる黒人の死者数は白人の約2.5倍 各人口あたりの警官による殺害は黒人が白人の約2.8倍 マリファナ使用による逮捕者数は黒人が白人の約3.7倍 警察の呼び止めを正当と思う人は黒人より白人が多い 黒人有権者のトランプ氏支持率は9% 黒人はバイデン氏の支持率が圧倒的に高い
一見して白人と黒人の間の格差は大きく、記事がいう国家的な仕組みが関係しているとしか考えられないものだ。そうであれば、その制度を擁護し、声高に「アメリカ・ファースト」を主張し、「白人至上主義者にも良い人はいる」といった発言を繰り返すトランプ氏が黒人から嫌われるのは当然のことだろう。 トランプ氏のトレードマークにもなっている「アメリカ・ファースト」については、その差別的な背景について、2018年公開の『ブラック・クランズマン』のなかでスパイク・リー監督が鋭く切り込んでいる。同作品よれば「アメリカ・ファースト」には、明らかに白人の黒人に対する差別が込められている。 こうした差別や格差に関するデータについては、例えばソキウス101の「アメリカの貧困と格差の凄まじさがわかる30のデータ」などにより詳しく取り上げられている。3) 子どもの貧困、寿命格差、食糧支給、ホームレスなど、より広範な視点で世界中に広がる格差の状況を概観することができる。 黒人殺害事件の背景:(2) 格差を生む教育システム だが、こうした記事やデータを読むだけでは不公平な制度の中身はわからない。このため、日経記事が掲げるような問題、例えば黒人が白人よりも大幅に低所得なのは、彼らが働かないからだと思い勝ちだ。 本作でもムーキーがピザ屋に顔を出して最初の会話は、ピノからの「遅刻だ」の一言だ。通りを掃除しろと言われても、「オレの仕事はピザの出前だ」と聞こうとはしない。さらにムーキーは、配達中に道草をしてサルに叱られ「出前にはビトを(見張りに)付けよう」といわれたりする。そもそも、映画に登場するベッドスタイの住人のほとんどは働いていないように見える。 こうした描写を見ると、アメリカの保守派が口にする自己責任論がもっともらしく思えてくる。保守派にしてみれば保険も自己責任で費用を負担し加入しているのであって、働こうとしない人々に自分らが負担してまで保険制度を適用するのは反対だという考え方になる。これはオバマケアでさんざん議論されたことだ。 しかし、雇用、保険、教育など、人間が生きる上での基本的人権にかかわる制度自体に歪みがあり、黒人の雇用が狭められているとすれば、働かないのは働けない仕組みのせいになる。この点について、本田創造氏の『アメリカ黒人の歴史 新版』に次の記述がある。4)
「黒人問題」は、すでに詳しく述べた公民権運動の数々の輝かしい差別撤廃の成果にもかかわらず、依然として解決されていないということである。(…)しかし、黒人大衆の経済状態は、最近では、むしろ悪化さえしている。それは、かれらの存在そのものが、最高度に発達したアメリカ資本主義の重要な存立基盤のひとつとして、この国の社会経済機構の中に差別されたかたちで構造的に組み込まれているからである。 (Kindle の位置No.2903-2908).
同書は1964年に旧版が出たあと、公民権運動の中心となった黒人解放運動などを書き加え、1991年に新版として出版された。引用にある「最近」は、映画の舞台となったベッドスタイの時代と重なる。そしてその当時から現在まで、白人と黒人の経済格差はいっこうに縮まっていない。本田氏の言う「社会経済構造のなかの差別」は当時からおよそ30年を経過した現在も続いていることになる。 この制度問題に関する記事は必ずしも多くないようだが、ニューヨーク在住のライター堂本かおる氏が制度的人種差別について、「白人���官はなぜ黒人を殺害するのか 日本人が知らない差別の仕組み」のなかで次の指摘をしている。5)
米国の公立学校の財源はほとんどが固定資産税で賄われており、貧困地区と裕福な地区の極端な税収格差が、子供たちが受ける教育格差に直結している。こうした要素が重なり、貧しい黒人の子供たちが学力格差を克服するのはほぼ不可能に近いとさえ言われている。
また、同記事を補足する形で、ショーンKY氏が「アメリカの格差と分断の背景にある自治体内での福祉予算循環」と題する記事のなかで、アメリカに現存する制度的な差別の実態と構造を詳しく論じている。6) 格差社会アメリカの構造を知る上で有用な内容で、わたしは次の一節に至る理由を読んで、アメリカの格差問題は本当に根が深いと思った。
アメリカにおける自治体別の格差は、本質的には所得格差に由来するものである。これがなぜ人種格差と結びつくかと言えば、(…)それが学校・警察を経由した格差の相続装置であり、一度生じた格差を時間が経つごとに拡大させるエンジンになっているからである。
格差の発生源を「時間とともに格差を拡大させるエンジン」と形容したのは秀逸だと思う。この喩えを広げれば、税収は燃料、教育システムはエンジンと燃料で動く内燃機関になるだろう。 エンジンは富裕層が住むゲートの内側と外側にあり、それぞれの燃料(税収)の多寡に応じて働く。燃料が豊かなゲートの内側では教育設備や環境が整い効率的に富の生産が行われる。一方、燃料が乏しいゲートの外では設備の不足や老朽化が進み、教師も満足とは言えず価値の生産が滞りその質も低下する。 さらに言えば、ゲートの内側では学力の向上が高学歴を促し、生徒が社会に出て政治の世界に手が届くと、豊かな教育を受けた本人は自身の育ちを肯定的に捉え、内燃機関(教育システム)を信奉するようになる。反対にゲートの外側では劣悪な教育が犯罪の温床となり、そこでは機能しないエンジンを直そうとする者も育たない。エンジンの例えが秀逸だと思ったのは、ここで説明されている教育システムが、白人中心に営まれるアメリカ社会の原動力をうまく表現していると思ったからだ。 教育制度が抱えるこうした差別的な構造は、黒人の賃金を抑え白人社会に利益を移転する搾取の問題以上に、学習意欲や労働意欲を阻害する点で、人生により根本的で深刻な危害をもたらす。学校の設備は貧相で古いものばかり、そのうえ教師の能力も劣る。家に帰れば、貧しい家計が食事や医療を圧迫する。そうした環境で多くの黒人が育つとすれば、彼らが白人と同等の学ぶ意欲を持つのは容易ではないだろう。白人が同じ環境に置かれれば、同様に意欲を削がれはずだ。意欲なしには十分な知識や給与は得られない。生きる意欲なしに、一体どうすれば生活が良くなるのだろう。格差は拡大する一方だ。 ムーキーらが暮らす1989年のベッドスタイは、ゲートの外にある文字通り"DO-OR-DIE"の世界である。映画のなかで本の話題が二度出るが、どちらも「お前が本を読むか?」とからかうネタにされている。少なくてもムーキーとティナの子ヘクターがゲートの外にいる限り、彼を働き者に育てるのは容易ではないだろう。社会のシステムが、両親が得た以上の教育を受けることを困難にしているからだ。 映画のなかでムーキーは25歳だ。彼はちょうど公民権法が制定された年に生まれたことになる。本田氏の指摘によれば、その後「黒人大衆の経済状態はむしろ悪化」した。ムーキーの労働意欲の欠如と低い収入は、アメリカ社会の制度的な歪みが大きく関係していると思われる。ベッドスタイの人々の多くは、働かない生活を自己責任で選び取ったのではないだろう。黒人のすべてがそうだとは言えないが、その多くは働く意欲を削ぐ社会的な仕組みの犠牲者だというしかない。 黒人殺害事件の背景:(3) 恐るべき警察の収監システム 教育システムとともに、もうひとつ制度上の大きな問題がある。警察の収監システムである。『ドゥ・ザ・ライト・シング』のなかで収監そのものが描かれているわけではないが、これも当時の黒人の生活や、ラヒームが犠牲になった背景に関係している。 先日の「黒人男性拘束死事件」に端を発したデモの映像で、何度か警察予算の削減を訴えるプラカード "DEFUND THE POLICE" を目にした。7) この標語は "BLACK LIVES MATTER" とともに、この種の事件が発生するたびに何度も使われてきたスローガンである。 英語版のWikipediaによれば、"DEFUND THE POLICE" は警察からの資金を分離し、社会サービス、青少年サービス、住宅、教育、その他の地域社会の資源など、公共の安全と地域社会の支援といった非警察的な形態に向けて再配分しようと訴えるものだ。8) さらに解説を読み進むと、こうしたスローガンが生まれた背景に、凶悪犯罪を取り締まるはずの警察が軽犯罪ばかりを取り締まり、人種的偏見にもとづく、貧困層を狙い撃ちにした逮捕が横行する実態があることがわかる。 映画で描かれたラヒームとサルの喧嘩も、殴り合いだけなら軽犯罪で済んだことだろう。顔見知りで同じ街で生活を共にしてきた二人が、もつれあいのなか相手を殺害するとは考えにくい。もし、そうなりそうなら周りが止めただろう。サルはバットでラジオを壊しはしたが、バットでラヒームに殴りかかりはしなかった。また、ラヒームも凶器を持っていない。それが警察の介入で殺害へと変貌するのは、日常的に繰り返される逮捕の多さと、安易に過剰に走る取り締まりに問題の一端があると思わせる。 軽犯罪を理由に大量の人々を逮捕するには、警官の人件費や装備費に多額の予算が必要になる。こうした実状から、弱いものを狩る部隊と化した警察予算を分離し、弱いものを救うためのサービスに予算を振り替えようといのが "DEFUND THE POLICE" の主旨だが、そうなる理由を掘り下げて考えるには、Netflixが独���に制作した動画『13th -憲法修正第13条-』(以下、『13th』と略記)がひとつの手掛かりになる。9) 動画は奴隷解放がいかにして収監システムに姿を変えたかを、歴史を振り返りながら伝えている。奴隷解放宣言(1863年)のあと公民権法が制定(1964年)され黒人への人種差別はなくなったはずだが、奴隷だった黒人の多くは受刑者として、新たな制度に引き継がれたという。 動画の題名になっているアメリカ合衆国憲法修正第13条は、公式に奴隷制を廃止し、奴隷制の禁止を定めたものだが、「犯罪者を除外する」という主旨の例外規定がある。この例外規定が犯罪者を奴隷扱いすることを可能にしたというのが『13th』の本質を成す主張である。動画は概ね次のように述べている。
公民権法が制定されて、400万人の奴隷をどうするかが問題になった。彼らは南部の経済や生産に欠かせない存在だったからだ。では、奴隷だった者をどうするか? 奴隷の恩恵を得て伸びてきた経済をどうするか? この二つの問題解決に修正13条の抜け穴が利用された。
この抜け穴が大量の受刑者を生み出す原点となった。 いうまでもなく受刑者は刑務所に収監され、社会や家族との接触を断たれる。動画によればその数は、2014年の時点で230万6,200人を数える。国別ではアメリカが世界最多、米国内の人種別では黒人が受刑者の40.2%を占めるという。しかも、1980年から2000年までの20年間で、受刑者の数はおよそ3.5倍という増加ぶりだ。下図にアメリカ国内の受刑者数の推移を示す。10)
なぜ、これほどの数の受刑者がいて、しかも急激に増えたのだろうか? 動画はこの背景に、刑事司法制度と産獄共同体が抱える問題があると指摘している。前者の司法制度については、そもそも「容疑者に対する裁判そのものが行われていない」として次のように述べている。
保釈金を払って保釈されようと思えば1万ドルが必要だが、貧しい家庭ではできない。そこで、検事から司法取引が持ちかけられる。「司法取り引きするなら3年、裁判をするなら30年の刑だ。それでも裁判をするか?」貧乏人は裁判をしない。拘留された人のうち97%は裁判を断念し、司法取引に応じている。これは考えうる限り、アメリカにおける最悪の人権問題のひとつだ。
有罪か無罪かの真実ではなく、富が結果を決める現実がある。しかも、司法取引に応じて身に覚えのない罪を認め有罪になれば、その後生涯にわたって社会的な制限を受けることになる。 『13th』によればそうした社会的な罰は、学生ローン、事業免許、食糧配給券、家の賃借、生命保険など全部で「4万にもおよび」、「アラバマ州の黒人男性の約30%が、前歴のせいで投票権を永久に失っていることを誰も知らない。」という。掛けられた嫌疑の真実がどうであろうと、いったん有罪の烙印が押されれば、その印は一生ついてまわる。お金の多寡で罪が決められ、社会の仕組みによって罰が与えられるとは、何という悲惨、何という不幸だろうか。 こうした現実が長きにわたって続いているのは、司法制度と産獄共同体(産獄複合体とも呼ばれる)が一体となり、収監システムとして機能しているからだという。上述のWikipediaによれば複合体は、企業、政治家、メディア、看守組合などの利権集団で構成される。このうち『13th』で具体的に言及されるのは、CCA(Corrections Corporation of America)と呼ばれる民間刑務所会社、ロビー団体の米国立法交流協議会ALEC(American Legislative Exchange Council)とその会員企業である。動画はかなりの時間を、産獄複合体の実態についての説明に充てている。 それによれば、CCAはアメリカ初の民間刑務所会社として1983年に発足した。発足当時は小さな会社だったが、現在では全米60ヵ所以上で施設を運営している。Wikipediaによれば、直近の売り上げは約20億ドル、純利益1.9億ドル、従業員14,075人とある。売上高純利益率からいえば、すばらしい成績の優良企業だ。11) CCAがこれだけの好成績を上げていられるのは、刑務所が常に満杯で、しかも年々収容者数を増やしてきたからだ。『13th』はそれがどのように成し遂げられたかを次のように描いている(主旨)。
CCAは州と契約して投資を行うため、州は刑務所を満杯にする必要があった。CCAの働きかけででALECは、受刑者数を増やすための法案を提出した。クリントン政権の時代、「スリーストライク法」「必要的最低量刑法」「刑期の85%を下限にする」といった法律が次々と制定された。全て彼らが作った自分都合の法律だ。受刑者の安定供給によって生み出された利益は株主の懐に入る。80年代後半から90年台前半にかけて、刑務所運営は成長産業になった。成功が確実に保証された事業モデルだった。こうしてCCAは民間刑務所のトップになり、人を罰することで巨万の富を得ている。
「スリーストライク法」は、重刑を三回犯した者を一生刑務所に閉じ込めることを可能にした。「必要的最低量刑法」は比較的軽微な薬物犯などであっても、強制的に一定期間の拘禁刑を科す法律である。「刑期の85%を下限に」も含め、すべてクリントン政権の時代(1993年1月〜2001年1月)に法制化されたようだ。 収容者を増やすための法律という批判に対し、メリーランド州の上院議員がインタビューに「質問の意味がわからない」と答え、クリントン氏が「受刑者の増加率は減った」と反論する場面もあるが、前掲の図のように1993年から2001年のクリントン政権の時代、収容者は大幅に増えている。一方で、凶悪犯の検挙率が極めて低いことを考えると、収容者を増やすための法律といわれても仕方がないだろう。このような背景のもとで、収監システムは民間の刑務所のビジネスを急拡大させ、社会的な存在感を増していった。 『ドゥ・ザ・ライト・シング』が作られた1989年は、こうした時代の真っ只中にあった。司法と刑務所が収監システムへと姿を変え、貧困層の黒人をまるで利益のための餌のように狩る時代の嵐のなかでこの映画は作られたことになる。『13th』は動画の終盤で次のように訴えている。
理解してほしい、黒人の命だけが大切なのではない、全ての人々の命が大切なのだ。例外は存在しない。刑事司法制度の関係者も、産獄共同体の関係者もそうだ。黒人だけの問題ではない。人間の尊厳について、この国の意識を変える必要がる。
これは、スパイク・リー監督にとっても同じ思いではないだろうか。ムーキーは働かないのではない、働くための途方もなく高い壁を乗り越えられないのだ。その一方で、警官はシステムのなかで働く白人の一人としてラヒームを殺害した。その現場でムーキーはひとりの人間として、イタリア系アメリカ人のサル一家を暴徒から守ろうとゴミ缶を投げたのである。 スパイク・リー監督は本作を制作した29年後の2018年に『ブラック・クランズマン』を作った。その映像に彼は、ラヒームと同様に犠牲になった白人女性ヘザー・ハイヤー氏の、「憎しみのうちには、何人の居場所もない」という言葉を添えている。繰り返すが、ハイヤー氏は黒人女性ではない。生前ラヒームが拳を掲げて言ったように「最後は愛が勝つ」。スパイク・リー氏とともに、わたしもその言葉を信じていたい。
(その1:物語の現場はどうなっていたか)
1)BLMの訴え自体は、2013年2月にフロリダ州で黒人少年のトレイボン・マーティンが白人警官のジョージ・ジマーマンに射殺された事件に端を発すると言われている。 Wikipedia「ブラック・ライブズ・マター」 https://bit.ly/2Y5oGfW 2)日本経済新聞「黒人暴行死事件の背景を探る(上)(下)」2020.06.11. https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60150710Z00C20A6I00000/ 3)ソキウス101「アメリカの貧困と格差の凄まじさがわかる30のデータ」2020.4.30. http://socius101.com/poverty-and-inequality-of-the-us/ 4)本田創造『アメリカ黒人の歴史 新版』岩波書店, 1991. 5)堂本かおる「白人警官はなぜ黒人を殺害するのか 日本人が知らない差別の仕組み」文春オンライン, 2020.6.8. https://bunshun.jp/articles/-/38288?page=2 6)ショーンKY「アメリカの格差と分断の背景にある自治体内での福祉予算循環」note, 2020.6.9. https://note.com/kyslog/n/n5b8601ac8905 7)時事ドットコムニュース「「警察に予算回すな」 デモ継続、改革要求強まる―米」2020.6.8. https://www.jiji.com/jc/article?k=2020060800088&g=int 8)Wikipedia “DEFUND THE POLICE” https://en.wikipedia.org/wiki/Defund_the_police 9)Netflix『13th -憲法修正第13条-』2020.4.17. https://youtu.be/krfcq5pF8u8 10)Wikipedia “Incarceration in the United States” https://en.wikipedia.org/wiki/Incarceration_in_the_United_States 11)Wikipedia「コレクションズ・コーポレイション・オブ・アメリカ」 https://bit.ly/2CjUJA5
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ARASHI EXHIBITION JOURNEY 嵐を旅する展覧会 @tokyo September
母と2人で行ってきたARASHI EXHIBITION JOURNEY 嵐を旅する展覧会の並ぶところからの覚書雑感です。覚えている限りなので曖昧なところもあるかも。
やはり集合時間前から館内で並ばせてくれてたみたいで指示通り時間前に早く着きすぎるのは良くないと、集合時間5分前くらいに着くともうその回のほぼ最後尾グループみたいな感じだったの。でも、展示観ててしばらく経っても後続グループは来なかったしそっちの方がのんびり見られてよかったのかなあと。昼の回でグッズ完売もなかったので良かった!
ガラス張りの入り口入ってすぐのところからあいばちゃん、ニノ、大野さん、寝そべる松ずん、櫻井さんとか順番うろ覚えだけど五人がそれぞれ大自然に扮した壮大な天井〜床までの写真が続いてるホールちっくなところに並ぶ。並ぶ左手は見終わった後のスーベニアショップに繋がってるからスタート&ゴール地点。松ずんは2写真共寝そべってばっかりで並んでる人の頭の辺りになっちゃうから顔見えにくかったな。母と、松ずんいなくない?相葉ちゃん2人いるじゃん!みたいに言ってた記憶。
大自然模した巨大嵐さんは右となりの部屋まで続いててそのとなりの部屋に移る間にチケットと本人確認。チケット画面に触ることはなかったけど、画面読み取った後の会員証、本人確認書類は写真も顔と照らしてきっちりみてた!コンサートもこれくらいやってほしい…。ここの写真もだけど全体的なテーマ写真の、あの大自然をなぜ自分たちで表現しようとおもったのかは最後までわからなかったな…笑
チケット確認済ませるとグッズパンフとグッズ購入引換券がビニール袋に入ったの1人1組貰えた。となりの並ぶだけの部屋に移るとまたもや壮大な大自然嵐さんたちを眺めながら待機タイム。パンフ1部取り出して、購入引換券をまとめて大切にカバンに保管したあと笑、母と2人でじっくり、パンフや壁を眺めてた。パンフ1部は未開封で保管しておくのよ!綺麗に!って言ったら母に大笑いされた笑 そして引換券無くしたらお買い物できないからね!レジでお会計の時に交換するから大切にカバンの奥底に。
入り口〜この部屋までは壁がガラス張りだから外から建物撮るときはそこが写り込まないようにスタッフさんが外で撮影する人に声かけてた。最初に並ぶチケット確認側の部屋の奥にカーテンで仕切られてるところがあって、誘導されて入ると左に続く通路があってそこに14〜16人くらい1グループで通された。そこまで集合時間から15分くらいかな?右の壁に嵐さんの、グッズにもなってるアクリル板の旅に出るやっちまった家族写真(等身大気味)が並べられてて左側はなんかジャングル風…謎の…笑 そこから角を右に曲がると嵐さんからの開催目的のメッセージが今度は左側の壁に掲示。右側は石が積み上げられてるの。ほんとこの大自然の全体テーマ…何…笑 やっちまった家族写真の壁の前で待つので原寸気味だね、とか目の前にあった相葉ちゃんが細いとか翔さん綺麗とか、ほんとにこのグッズ買うの?とか母と話してた笑 曲がったところでまた止まってスタッフさんから写真撮影不可とかスマホ電源切るとかの注意事項と、次の部屋の機械説明受けたあと、右の扉を通り過ぎて最初の小部屋に。チケット確認前にもスマホとか注意事項は案内あったし傘を持ってたら鞄に入れられないサイズのかどうかも確認してて入らなければ入口の傘立て誘導されるんだと思います。
最初の小部屋は4分半くらい?の完全入れ替え制の映像で、宇宙空間みたいな背景の写真の群れの中に五人(全身やや等身大気味?)が正面に現れて、挨拶やこの部屋の写真とかの説明を話してくれた。4面ある壁をメンバーが動いてその写真の小話を少し。懐かしいね〜みたいな。写真と動くメンバーと、どこをみたらいいのかわからなくなって困る!笑 そのあと次に行く?って映像が変わって、私たちはその部屋にいたまま、嵐さんだけ映像が変わります!5×20のPV撮影してた砂浜で寝そべる、翔さん、ニノ、松ずん(入り口壁)にぐるりと囲まれて変わる。ちょうどアップ!入り口に飾られていた大自然嵐さんとは比べ物にならないどアップ!ニノは腕組みするような感じで正面から、松ずんは頭に頬杖ついて横たわってた!翔さんもニノ同様正面からしかみえなかったかな。天井から床まであるスクリーンなんだけど、その2/3が顔くらいのサイズのとんでもないどアップなの!何も知らずに入ってすぐのところに立ってたら左手にニノだった!入り口の扉がある壁面が松ずん、その向かい側が翔さん、二人の間がニノ。天然二人はどこだ?と思ったら二宮さんの反対側(出口がある)の壁面遠くでキャッチボールしててお客さんの頭で全然見えてなかったけど、おーい始まってるよ〜!って呼ばれてるのが可愛くて笑 これPVで謎の超遠景キャッチボール撮影してる時だよね?別アングルからこんなの撮ってたの?そんな何回もキャッチボールしなくない?って母と話してた笑 駆け寄ってくるときに砂浜の砂をバッとみんなに掛かるように輪に加わって三人にバカ!やめろ!とか言われて笑う相葉ちゃんと、途中砂がすごいって自分で愚痴る相葉ちゃんにニノがそれ自分だからなって突っ込んでて相変わらず可愛かった笑 二宮さんと松ずんをメインに見てたから天然側ほとんど見てないよ…😭
話の内容ほとんど覚えてないんだけど、でっかい二宮さんが可愛くて…あんな巨人になら弄ばれたいと思ったんだけど…大きくて可愛いって最強だよね!んね!!この部屋の最後は、寝そべってるみんなが立ち上がって、松ずんの壁と天然の壁の角のところにある出口の周りに集まって、またね〜とか行ってらっしゃーいってまるでアトラクションの誘導かい!っていうわちゃわちゃ感でご案内!スタッフさんが扉開けて待ってる。もちろん名残惜しいんだけど、五人の映像もフェードアウトするからそのタイミングで出た!
次から最後の小部屋前までは時間制限、グループ分けなく自分のペースで見られる模様。平日水曜昼の回でだいぶ人少なくてのーんびり堪能できました。
映像部屋から左に細長く続くのはどこからか忘れたけど最新5×20までのコンサート楽屋裏写真!ポプコンはあった。僕と君もあった!ということは…10周年終わってから…?WSでも映ってた部屋だね。背面はそのコンサートの日程。正直ここの写真を全種売って欲しいと思うほどでした。全部可愛い!表情判定に厳しいから写真買わない母も欲しがってた!自然な顔がお好きなの、母もわたしも笑
5×20でおふざけ分と本ちゃんuntitledでUB練習のにのあい、ゲーム機とキーボード詰め込まれたキャスター付鞄ドヤ顔披露の二宮さん、上半身脱ぐ他三人の写真もちらちらあったな。デジの電極?つけられてるとことか。円陣組んでるuntitledのコンサート前とか、5×20のコンサート終わりのエレベーターにスタッフさん含め6〜7人詰め込まれるとき体を縦書きかぎかっこ並みに横に曲げて前髪ちょういい感じに横に流しながら愛想振りまいてる二宮さんとか。覚えきれないくらいたくさん!全然覚えてられてない。まぢで全種買わせてください!!って思った。平成最後の誕生日祝ってもらってる相葉ちゃんの写真もあったね。お金は用意したのに…なぜ手元に残させてくれないの…。
そのまま直線上の部屋が衣装のコーナーで5×10のスケスケ、5×20・ジャポ・あゆはぴ・ポップコーン・5×10・ハワイのそれぞれオープニングの衣装!足の内もも側は大体素材違いで恐らくストレッチきいてそうな素材で、5×20では松ずんの衣装は肩幅大きかったし、ジャポでは大野さんの身長ちっこかった!笑 靴まであったのは5×20だけでマネキンの身長揃ってたんだけど、ほかの6衣装は全部身長合わせの展示っぽくて、大宮に挟まれた相葉ちゃんの衣装の背が高くて驚いた!ふたりがちっこいのか。松ずんのとか翔さんのとか胸板周りの厚みが他三人と違ったり。ポプコンの、かなり可愛いから下で見たかった!右手前から��ケスケ、その上がポプコン、その奥中段にハワイ。左手前から5×20、上にあゆはぴ、奥下段にじゃぽ。5×10は通路正面上段で、お得意のスケルトンステージ風だから真下からのぞけた!笑 本当に刺繍とかスパンコールとかクリスタルとかフリンジとか細かくて、できれば生地の厚みも触って確かめたかった…プロジェクトランウェイ好きとしては!!笑 5×20はツアー中だけどああいうのって普通何着作っておくのかな。汗かきまくるから3着はあるよね…?ちゃんと衣装の足元にメンバーカラーが置いてあるのでここでファン力を確かめられることはありません。あ、でもどのコンサートの衣装かは背景に静止画置いてあるんだけどあゆはぴ衣装は特徴ないから後ろみるまでわからなかった…笑
次が左に曲がるとコの字型にピカンチで岡本さんの撮ってくれた写真の部屋。印画紙にきちんと焼かれてすごく綺麗で。この部屋の壁がグレーでそれがまた良かった。この部屋の色にしたいっていったら暗いって言われたけど笑 二宮さんが車内で飲むのと、翔さんのピントぼやかしたやつ欲しい。あの写真集買ってない…今回の載ってないのかな。なくても買うべきよね…。みんな細くて若々しくて。がむしゃら感がびんびん。
岡本くんがメッセージくれてて、誰よりも早く大人になりたがって岡本くんの周りにいた松ずん、うまくやりたいけどできなくてでもそれも笑顔でみんなとわかちあう相葉ちゃん、パンクかロックとフォークの融合してるニノ、すべてに無頓着なのにすべてにおいて最高のレベルで表現する大野さん、学ランリーゼントで今なら最強とか言うくせにすごく難しい英単語を覚えて大学卒業を目指す翔さん、ってな感じで。すごく良かった。ブレイクしたいっすってずっと言ってた彼らのブレイクは、まだこれからなのか、今もうその時なのかはわからないけど、この五人の巻き起こす嵐に巻き込まれるのはすごく心地いいみたいな、そういうことも書いてくださってて…。客観的な嵐さんは展示の中でここだけだし、嵐の中からじゃなくて、次元は違うけどある種私たちと同じ外からの唯一の文章の、その最後の部分読んだ時、この展示会で涙腺一番刺激されてしまった。この次の部屋でメモを取ってる人が見かけたからわたしもそうしたらよかったなあ。
次は絵の部屋。ここもコの字気味かな?嵐さんの書いたミッキーが、たぶん印刷だけど並んでる。ここはAMNOS順。相葉ちゃんのは鉛筆の下書き線もあった。あの大きさで見るとやっぱり大野さんのは線にブレがなくて綺麗なのがよくわかる。このメンバーミッキー絵を見ながらメモを取っていた方はなにをメモしていたのか知りたい…笑
その横は嵐さんが演じたドラマ・映画の原作漫画家さんが、嵐さん自身を描いてくれた新聞広告の大判。これも当たり前だけど原画じゃなくて残念。それでも新聞の判も大きくサイズ揃えてあるし新聞の枠とかないからやっぱりカッコ良い。実家にまだ貼って飾ってるから回収してこようかな笑 あと嵐四人が大野さんの展覧会の時に描いた彼の似顔絵が、大野さんの写真を挟んで松ずん、二宮さん、写真、相葉ちゃん、翔さん、の順でかな?飾ってあった。フリースタイル観に行ってないから初見!松ずんの絵はぼかしで影とかきちんといれてたし相葉ちゃんと翔さんはミッキーもだけど模写うまい!二宮さんはノーコメントで…笑 その下にはさらにその絵を大野さんが模写した展示。最初はなんで同じ絵のちょっといびつな絵があるんだろ?って思って母とわやわや話してたらスタッフさんが本人が描いたんですって教えてくれました。スタッフさん全体的に優しい。恐らく大野さんは壁に直接描いてるとおもう!四人の絵が飾られてる所とともに一枚大きな板になってたから、剥がしてほかの会場にも持っていけるはず!
次の部屋もコの字気味。やたらカラフルな2019年2月にLA行った時の撮影風景映像が真っ先に。たぶん自由にみられる全部の映像の中で一番長くて4分ちょっとくらい?集合アートボードの跳ねてるところの撮影風景もあったけど映像自体は無音。部屋全体にはBGM流れてるけど。全部の映像部分には尺表記してあってお優しかった☺️(どれも正しい尺は覚えてない笑)どぎついサーモンピンクみたいな壁の色で全体的に明るい、写真そのものを展示する部屋。LAで撮ったものが高そうな紙に印刷されてた!額装も1つずつあって光輝かしいスターのLAツアーって感じします。写真の中に個別ソロのエンドレスで青白い壁と水色の光の中でそよ風受け続ける五人の映像が飾ってあったのでどこからループするのかしばらく見つめてた笑 グラミー賞観に行った時の写真も混ざってた。でもこのLA撮影の背景と、コンサートのピンクジャケットじゃない衣装や小物のケバケバしさとのミスマッチやら髪の長さやらであんまり好きくなくて、俯瞰でサングラスかけた五人を撮影してるのとか以外はあんまりだったかな笑 そのまま、デビュー〜いままでの、お土産屋さんよろしくポストカード風に大量の写真が飾ってあるゾーンがあったんだけど、普通の横並びのと、カードスタンドにも縦横構わず挿さってるのもあるのに触っちゃいけないから首と腰がめっちゃ痛かった笑 しかもスタンドの方は無駄に何枚も同じのをさも売り物のように挿してあるの!笑 売ってないのに!!笑 仕事場以外で撮ったものも混ざってたみたいで、若めの頃の空港とかのもあった。ここの最後に、LAと箱根のプリクラ、箱根のお皿と犬のぬいぐるみ、ジオラマの気球とヘリがあった。ヘリちょうちっこいの。むしろこれを売ってくれ!って感じよ。嵐さんのサインもあったな。あれは何年のだったろう。箱根のプリクラは加工系のだからみんな目がでかくて顎がなくてエイリアンみたいだった笑 マジパンでつくられたみたいなケーキっぽいものはあれ何に使われたやつだろう…記憶…。会報で作った嵐さんのスノードームもあったけど一番上の段でかなり見にくかったよ!笑
写真ブースにもある壮大な嵐さんの右横にこのコーナー最後の家族旅行の五人がいて、入り口のところと同じ原寸大ちっく!大きいから爆笑も原寸大だしまたここで繰り広げられるアクリル板グッズ買うのやりとり笑
展示の写真に関しては、最初のコンサート裏のがクオリティ一番可愛くて欲しかった。このピンクの部屋の写真もチラチラ自然な一面のあったけど、見る姿勢がきついのもあって、ふうん…程度の感じ…笑 アイドルであっても裸体に関心ないから箱根の入浴写真も髪型キマってるなあ程度の感想でした笑
アクリル板家族に別れを告げて進む直線の細い廊下みたいなところは5×20の歌詞が星空��斜めにでっかく印刷されてる。文字が透明なぷくぷくシールみたいな加工されてて綺麗だった!大きくなったからこそ数え間違いのないあの5つの点はわざとだと思うの!って歌詞初見の母に熱弁しちゃったよ笑
その次から個々のコーナー!年齢順に並んでた!
大野さんのところは絵とダンス。入って左には絵の筆と、ベニヤに書かれた左手の縁取り完成版と、失敗の途中までの。ちゃんと失敗って書いてあるのが可愛い。実際に使ってたパレット三種類は何枚も重なってる使用済みペーパーと普通のプラスチックのと、透明なアクリルの薄い蓋みたいな四角いやつを使ってた。この蓋みたいなやつは本当に蓋だと思うのよ笑 筆も10本以上あったんじゃないかな。一列に並べてて、筆先円柱だったり平らなのから極細までたくさん。綺麗に洗ってあったし道具丁寧に使うの素敵だなと。奥には5×20コンサートのために振り付け練習する大野さん。いつものTシャツ着てた!笑 右にはちょう巨大なキャンバスにアクリルで書かれた自画像。2016年作ってあったかな。大野さんの展覧会ってたった3年前…?ん??こんなに大きいの描きたいんじゃ仕事してたら無理ねって母は言ってた。わたしはこんなに大きい絵を描いておける部屋が家にあるのかなって言ってた笑 あとたぶんモデペとか使って立体的になってるところもあって、わたしもまたすこーし絵が描きたくなってるタイミングだからまじまじと見てしまった。モデペ使うの苦手なんだよな〜。
次は翔さん。リリックができるまで!リリックを書く自宅のリビングを再現。流れる音楽は5×20のラップデモを翔さんが歌ってて新鮮でかっこよかった!歌詞が所々違うし天井近くには添削してるラップ詞の映像もあった。流れてるデモと実際のでは違う部分も。吹き込み歌声ラフなのもあってちょうかっこよかった。スノードームもあのサイズなんだなあって、集めたいと思ってたから参考になった。入って正面には、自宅リビングのテレビボードが再現されてて、ブース前でラップ仕上げる翔さんの映像が流れてるテレビの横に、アロマが置いてあって必死にかいだけど忘れちゃった笑 いい香りではあった!嵐ジェットの模型、グラミーのチケット、どこかの国の新聞紙のカレンダー、GQのトロフィー、こないだのしやがれ三人旅行のお写真、おそらく最初の日テレ嵐WEEKの看板?、知識不足でど��たかわからないけどイラストとフィギュアちっくなやつ、ヤッターマン関係のフィギュアと初紅白のスタンドとかが飾られてた。インテリアセンスはあるじゃん!って笑、かっこ良い横長の細い木目のテレビボードというか壁面で。おっとなー!って感じ笑
相葉ちゃんのコーナーのテーマがよく覚えてない笑 あんまりにのあいはあんまり裏感なかった笑 バズりNightの手作りTシャツと、ボクシングのグローブ、大野さんが作ってくれたGパン、ベストジーニストの盾、自転車ドラマの台本、ラブラブ愛してるの人形、とか。あ!子供の頃のお写真たくさんあって、お母さんに面影が似てるなあと思った。まだ一度も中華屋さんに行ったことないからご両親初見…。翔さんのとは別の嵐ジェットのもあったな。あの壁の絵は相葉ちゃんが描いたのかなあ?バイクを絵にしておいたって言ってたけど、それにしてはうまくない??プロの手よね…??笑
次の二宮さんの部屋のテーマは映画とゲーム。ゲームは触れるよ!とかっていう表記がそのテーマに沿ったところみたい。伝わりにくい!笑 報知映画賞のとか、日本アカデミー賞の。母と暮せばと検察側の罪人だったかな?作品ふたっつであんなにもらえるなんてすごいし受賞も大変…物量的に!最優秀主演男優賞のトロフィーにはさわれて、1.5kgあるって係りの人言ってた。撫でるだけじゃなくてしっかり触らせてあげたい!っていう二宮さんの言葉通り、さわったところがすごい擦れてるの笑 みんながさわったあれはこのあとどうするんだろう…ジャニーズ事務所に飾るのかな…絶対家に持ち帰らないよね…?笑 優秀賞に選ばれると小さいトロフィーと賞状がもらえて、最優秀だと金の縁取り幅がすごく広い賞状だった!そういう違いがあるのね〜。ただし、なんというか、まあ…賞を自慢するワンパッケージの二宮さんの原点!笑 翔さんとか大野さんのみたいな裏側が見たかったよ!!笑 いやまあほんとうに誇らしいけど!!なんならハマってるゲームのプレイ動画とか見たかった笑 でもなんだろな…やっぱり嵐さんがお休みしたら役者業が増えるのかな、とはこの部屋をみて思ったかな…。嵐さんが休む感じはこの展覧会では微塵も感じなかったんだけどね!
最後の松ずんのとこは通しリハを見て取ってる松ずんメモ。実物が少しあって、綺麗なのを選んだんだろうね〜って母が笑 男の子の字!っていう感じ。ジュニアの並びが汚いとか端的に書いてあるのがリアル。金剛山ってなんだろ?あとさすがまとまりがあって読みやすくて書き慣れてる感じした。それもそういうのは選んだのかな。実際に書いてる松ずんの映像と共に。後ろには何枚も重ねて拡大されたメモ。毎回素敵なコンサート作り出してくれてありがとうございます!あなたのおかげで私たちは安心して夢の世界に浸れます!!白むちエンジェル松ずんありがとう。
ここで最後の部屋に入る前の並ぶための部屋に。可愛い方の顔の壮大な自然になりすます嵐さんの一枚写真があって、衣装はキービジュアルの並んでる時のともちがうやつ。しっかりスーベニアのマグネットとクリアファイルになってます。可愛いお顔だったから思いのほかたくさんお迎えした笑 思い出してみたら山々や大自然になりすます入り口の並んでるとことスーベニアショップの上にいた寝そべったりしてる嵐さんは同じなんだけど、スーベニアにはなってないなって。顔は微妙だったからいいけど笑
一番最後の展示は恐らく1組ずつ見せてもらえる3分ちょっとのデビュー〜5×20までのコンサート切り取り映像部屋。斜めに5×20が掲示してあったところの背中がこのゾーン。この部屋に入るともう展示に戻れませんみたいに言われるからここまでは戻り放題だったのかな…?悔やむ…。最初のメンバーが説明してくれる部屋と同じ完全入れ替え制。私たちの時は1組ずつ通してくれてたけどどうなんだろう?母と二人きりの貸切!(知人に聞いたら別の組とも合わせて数組で見たそうなので貸切はタイミング次第みたい。)スタッフさんが説明してくれて、映像がはじまるの。BGMはバラードちっくなピアノメインアレンジのA・RA・SHI。はじめは、低い4〜5段の段差の最前列座ってみたけど首痛さ限界だから前から二段目に座って観た。ちょうど良い高さ。映像はAll the BEST!!1999-2019についてるやつの凝縮版ってかんじ。おそらく内容は違うとは思うけど…。10周年とかuntitled長めだった気がするよ?大宮SKもいたしポップコーンマンもいた!若い頃はギラギラしてるし最近のは行って観た記憶もある。曲がしっとりしてるからしんみりセンチメンタルな空気になってしまった。お休みがわかってるから。お休み…。淋しい…。でもお休みがなかったらこの展覧会にはならなかっただろうから意味のない仮定はもうしない。素敵な展覧会のシメだった。
最後の最後の出口の上には嵐さんの大好きだよ!by大野さんとか家に帰るまでがえきしびしょんだよbyニノ(恐らく)、俺たち全部一緒に旅してきたよinイングリッシュby翔さん、ありがとうまたねby松ずん、嵐大好き!by相葉ちゃん、みたいな一言メッセージと個々のサインで終わり!これは最後の部屋に入る前に並んでる時にじっくりみてられるんだと思うんだけど、なにぶん誰もいなかったからむしろ早く部屋に案内したそうなスタッフさんの思いを受けたこともあり笑、メモしてないからうろ覚えすぎて。途中からでも取れば良かったしそういうところくらいの予備知識入れていくべきでした!帰ってきてずっとそこ後悔。特に岡本くんのところ。ニノについてのコメントが大野さんに次いで的確だと思ったのにほぼ記憶にない…😭
スーベニアショップについたけどじっくりみたかったからスタッフさんに声かけてトイレに先に行きました。また戻るときに声かけてじっくりお買い物。
ノリタケさんのポストカードだけ買い忘れたんだけどそんなに広くはないから壁沿いに進んでいけば1巡すれば買い逃しは無いはず。友人に頼まれてたものも買い漏らしなく、母とわたし最大4個買えるから予備欲しいのは母にも協力してもらってお買い物。会場に向かうときすれ違うお買い物済ませた人の袋がやたら小さかったり薄くてみんななんでそんなに少なく買うの?わたしちょう買う気満々なのに!という意気込み通り9万ほど買いました。さらさら素材のビニール袋のサイズ3種類あって母は中を1袋で、わたしは大を二重という買物結果。それでも重くて持ち手切れそうだからスタッフさんに聞いたら二重までなんですって。小分けの袋も(小サイズの?)もらえたらしくそれは1枚まで。友人に渡すのに貰い忘れたよ…ごめにょ…。何円とかの有料でいいから丈夫にしたかったな。予定していた10万超えは無かった!笑 実物みたら意外と予備買いしなくていいやっていうのがあったりメンバーソロ写真は全員分買わなかった…ラグランTもBEAMSコラボも厳選しました。造り丈夫でわたしの中で有名なででにー公認なのにラグランの素材うすいし…笑 でも、11月ディズニー行くので着ていきたいと思います笑 母は一応翔さん推しを自認してるのに、ベアブリックもミッキーキーホルダーもラグランも、色とタッチから松ずん選んでました笑 特に松ずんのミッキーは一番お気に召してて楽しそうに選んでるとこ可愛かった☺️親馬鹿ならぬ子馬鹿です!花道真横の席になったとき、初めて真近で会えた通り過ぎる松ずんのスーパースターのきらめきにやられちゃったもんね、って納得させてた🤣笑 母が楽しめたことが一番嬉しくて良い展覧会だったよ!
お買い物の後に残されたフォトブースでは、ジオラマと嵐さんを自分で好きに撮るミニコーナーと、2箇所にいるスタッフさんが1組3パターンまで嵐さんと撮ってくれるコーナーがあった。スタッフさんのところは二箇所とも同じ写真だからどちらかでのみ。自分たち込みで撮ってくれたあと、嵐さんだけのも3枚撮ってくれました。言えば1組じゃなくて1人分ずつのカメラで撮ってくれたのかな。なかなか図々しく聞けないけど今度からは図々しく聞いてみよう…。あとメモ!コンサート行くときもメモ…はちょっと難しいけど!だって目の前には本物の嵐さんいるからね。
結局実際に通路の中に入ってから出るまでに3時間かけました。長いのかな。スーベニアショップお買い物後半はおそらくつぎの組先頭が追いついたのか混み合ったけどそれまで悠々だったので、結果集合時間間際に並んでラッキー。レジもほぼ空いてた。商品在庫も潤沢でむしろ常にたぷたぷになるようにマメにスタッフさんが品出ししてました。
六本木駅からの道順もわかりやすいしあの展示で1500円って安すぎる…と思うくらい楽しかったです。グッズ代で賄えるんだろうけどそれならもっとオリジナル写真欲しかったし、是非とも展覧会のパンフレットが欲しかった!惜しいよ嵐さん!笑 展覧会の図録って普通あるじゃない…?笑 あんなにも記憶に焼き付けなくちゃいけない時間は早々なくて集中してみたけどやっぱり覚えきれなくて。特に、ほんっとうに、岡本くんのところ…��どなたか岡本くんの寄稿全文メモされてないでしょうか…。
でもでも、大好きな母と一緒にかなりのんびりじっくり堪能できたので本当に満足です。腰や首が相当痛かったので帰り道��見かけたつるとんたんで食べられたのも良かった。母と行きたいなって思ってたので!
東京残すところ2ヶ月分と、各地回ったあともう一周してくれたら何度でも見に行きたいと思うほど素敵でした。ありがとうございました!
わたしと母の次の嵐さんとの花火は、ひとまずは10月ハロウィンのコンサート!母が良い席で観られますように✨🙏✨






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今日、婚約した。本当に結婚してくださる?
勇利は水を止めると、丁寧に手をぬぐい、かけていたエプロンを外して振り返った。 「じゃあ、ぼく帰るね」 食事を終え、洗い物をしたら、勇利がすぐに「帰る」と言い出すのがヴィクトルには不満だった。おかげで、できるだけ長く時間をかけて食べようと、行儀の悪い癖がついてしまったくらいだ。 「もうすこしいいだろう?」 「だめ」 勇利は笑った。 「あんまり長居したら、それが習慣になっちゃうでしょ?」 それの何がいけないのか、ヴィクトルにはさっぱりわからなかった。かえって、それならなんとしてでも引き止めたいというふうに思った。 「あんまり長居したら、離れがたくなっちゃうでしょ?」 承服できかねるというヴィクトルの気持ちを感じ取ったのか、勇利はそんなふうに言い直した。ヴィクトルはますます何がいけないのかわからなくなり、ますます勇利をまだいさせたいという気がした。 「帰ってからやりたいこともあるしね」 勇利が付け足した。 「それはなに?」 ヴィクトルは語気も鋭く問い返した。 「どうせ、俺の動画を見るとか写真集を眺めるとか、そんなたわいもないことだろう。くだらない。本物を見ればいいのに」 「ぼくがしたいのは今日の反省だよ。自分の映像を見て、ノートにいろいろまとめたいんだよ。注意点とか、そんなことをね。それをと���どき見返すと、自分の考えや目標が整理されてすごくためになるんだ」 言ってから勇利は楽しそうに笑い、腰に手を当てた。 「この会話、何度目?」 「送ろう」 ヴィクトルはしぶしぶ了承し、溜息をつきながら上着を取った。勇利は自分のリュックサックを取って、マッカチンに挨拶をした。 「マッカチン、またね」 勇利がロシアに移り住むとき、ヴィクトルは当然自分の家に彼を住まわせるつもりでいた。それが当たり前だと思っており、勇利の住居に関しては問題ないときめつけていた。だから、勇利が自分で住むところを探してきたときは驚き、それ以上にうろたえた。 「いい場所なんだよ。リンクからも近いし、建物も古くておもむきがあるし。あと、家賃も手頃で、なんとかなりそうだから」 ヴィクトルは、ただちに癇癪を起こし、きみは俺の家に住むべきだと主張しようとした。しかし、もうすこしのところで思いとどまった。勇利は自立心の強いたちをしている。自身に必要以上に踏みこまれることを好まない。長谷津ではともに暮らしていたけれど、家族がいるのと、ふたりきりで生活するのとではまた勝手がちがうだろう。長谷津へ行った当初だって、勇利の性質が難しいと知ってからは、ごく慎重に、真剣に仲を進展させたのだ。環境が変わるのだから、いきなりへだたりをうめるようなことをするのはよくない。また警戒されてしまうかもしれない。勇利はすぐにひとりで考え、勝手に思いつめるのだ。「もう終わりにしたい」といつ言い出すことか。 「そ、そう」 ヴィクトルは超人的な努力で平静を装って返事をした。 「その場所は知ってるよ。確かに静かでいいところかもしれない。でも、何かあったらすぐ俺に言ってね」 ヴィクトルの自宅から車で十分程度というところも、譲歩の理由だった。もっと遠かったら文句を言っていただろう。しかしつまりは、もっと遠ければ「勇利にとって好ましくない」と却下することができたということなので、それもヴィクトルにとっては不幸だった。 「勇利がさぁ……、ひとりで部屋を借りたとか言うんだよ。どうかしてると思わない? あの子頭おかしいんじゃない?」 ヴィクトルはヤコフにぐずぐずと愚痴を言ったものだ。ヤコフはつめたく応じた。 「普通のことだろうが。何が気に入らんのか理解できん」 ヤコフは何もわかってない、とヴィクトルは思った。 そういうわけで、ヴィクトルと勇利は現在、別々に暮らしている。勇利と知り合ってからなかったことなので、ヴィクトルは不満と不安でいっぱいだった。 だが、何の手立ても講じず、のんびりとしていたわけではない。勇利が来てから、ヴィクトルはすこしずつ、彼と過ごす時間を増やしていった。まずは外食に誘い、それが頻繁になると家に招待してごちそうし、近頃では、ふたりで買い物をして食事の支度をする、というところまで進歩していた。そしてヴィクトルはある日、とうとう提案したのだ。 「勇利、これを持っててくれないか」 「なに? 鍵?」 「俺のところの鍵だよ」 勇利は驚いた。 「え……。そんな大切なもの、だめだよ」 「ちがうんだ。これは俺のためでもあるんだ。俺だってひとりなんだから、たまには助けが必要になることもある。ほら、たとえば病気のときとか、留守にするからマッカチンの世話を頼みたいときとか。具合が悪くて動けないとき、誰かに連絡するとしたら、それは勇利なんだよ。勇利がいちばん近くに住んでいるからね。そうなったら、それ、必要でしょ?」 「うーん、そうだね……」 勇利はためらいながらも鍵を受け取った。ヴィクトルはそれでたいへん満足したのだが、しかし、勇利はけっして勝手にヴィクトルの家に入ってこようとはしなかった。彼のほうから訪問してきたときも、必ず呼び鈴を押して礼儀正しくふるまう。ヴィクトルがどきどきしながら「鍵を持ってるんだから入ってくればいいのに」と言ったら、笑顔で「そんなの失礼でしょ」と返された。失礼だったら鍵を渡したりするわけないだろ! ヴィクトルは、勇利はなんにもわかってない、と拗ねたものだ。 そんなふうに、一定以上に親しくはなれなかったけれど、ヴィクトルが注意深く距離を縮め続けたこともあって、いまでは、勇利はヴィクトルの自宅で過ごすのが当たり前になっていた。練習のあとふたりで一緒に帰ることもあるし、ヴィクトルに別の仕事が入っていたりすると、勇利がひとりで買い物をしてやってくることもある。そんなとき、ヴィクトルは幸福に包まれる。 「市場へ行ったらね、すっごく新鮮な野菜があったから、名前もわからないやつも一緒くたにして買ってきちゃった。これ、どうやって調理すればいいのかな? ヴィクトル知ってる? 知らないなら一緒に調べてよ」 カウンターに買い物袋を置きながら言われると、ぼうっとなってしまう。 「勇利……」 「なに?」 「タダイマって言ってみて」 「え? 入るときにお邪魔しますって言ったよ」 「言って」 「た……ただいま?」 「オカエリ」 もう勇利、俺といるのが普通になってない? 自分の部屋になんて、寝に帰ってるだけじゃないか。ヴィクトルは、勇利もここで暮らせばいいのに、一緒に暮らせばいいのに、とそんなことを毎日考えていた。 しかし、勇利のほうはそう思わないようで、毎日、夕食の洗い物が済むと、すぐに帰ると言い出す。ヴィクトルは、もうすこし堕落すればいいのに、とうらめしく思った。 「あ、なんだか混んでるみたいだね」 勇利は助手席の窓から、彼の住む建物の前に何台か車が停まっているのを見た。 「ここでいいよ。歩いて帰る」 「前まで行くよ」 「でも、時間かかりそうだよ。すぐそこだから大丈夫」 勇利はにっこり笑ってヴィクトルを見た。 「ヴィクトル、どうもありがとう。気をつけて帰ってね」 「ああ……」 勇利は車から降り、リュックサックを背負って、それを揺らしながら駆けていった。ヴィクトルはその子どもっぽい後ろ姿を、窓越しにずっと見守っていた。古めかしい階段を駆け上がると、戸を開ける前に、勇利はさっと振り返った。彼はヴィクトルに向かってにっこり笑い──はっきりわからなかったけれど笑っているはずだ。そうにきまっている──肩のあたりでちょっと手を振った。それから建物の中へ入った。 ヴィクトルは溜息をついた。なんで勇利を見送らなきゃならないんだ、とふてくされた。勇利が「おなかすいたぁ」と言いながら家に入ってくるときのときめかしさとは正反対の気持ちを、いつもこのとき味わう。 勇利、おかしいと思わないか? 毎日リンクで一緒にいて、そのあとは俺のところへ来て、ふたりで料理をして、食事をして、笑いあって、そして俺はきみをきみの部屋へ送る。きみはひと晩眠って、朝になるとまた俺とリンクで会うんだ。 「もう一緒に住めばよくない?」 ヴィクトルは不満だった。 それにしても、勇利はどういうつもりでいるのだろう? ヴィクトルには勇利の気持ちが謎だった。彼がヴィクトルのことを愛しているという事実は疑いようもなく、それについては安心しきっている。なにしろ彼は、テレビカメラの前で、「初めてつなぎとめたいと思ったひとはヴィクトル」「そのヴィクトルへの気持ちを愛と名付けることにした」と言い切ったのだ。日本語だったので何を言っているかはわからなかったし、勇利もそのことについてはひとつも教えてくれなかったけれど、あとでミナコが説明してくれた。それでヴィクトルは楽々とした気分になり、加えて勇利は離れずにそばにいてなどと言ってくるし、指輪など渡してくるしで、もう愚かなほど浮かれきっていた。 しかし、このところ、その愛というのはどういう愛なのだろうと心配になってきた。勇利はヴィクトルのスケートを昔から愛している。その延長線上にあるものではないだろうかという気がしてきた。勝生勇利ならあり得ることである。彼の愛情に偽りの混じる余地はないけれど、それはヴィクトルの望むたぐいのものではないのかもしれない。 ヴィクトルは勇利に尋ねてみようか、どうしようかと迷った。だが、どうにも踏みきれなかった。人の本音を知るのがおそろしいと思ったのは初めてだ。勇利は本当に、ヴィクトルのこころをかきみだす子である。どうしてこう次から次へと難題を突きつけてくるのだとヴィクトルは溜息をついた。 「ヴィクトル、なに食べたい?」 「うーん……この前つくってくれたやつかな。生クリームの入ってるスープで、じゃがいもがごろごろの……」 「ああ、あれね。じゃがいもの皮むくの手伝ってね」 市場でじゃがいもを手に取りながら、勇利はにっこり笑った。これなんてもう、普通の友人同士の会話じゃないだろう? 特別な関係の者しかこんな話しないぞ。セックスしたふたりの話しあいだ。ヴィクトルは独り合点した。 まじめにじゃがいもの皮むきにいそしみ、ヴィクトルは勇利の美味しいスープを食べた。 「今日のお昼、俺が食堂へ行ったとき、勇利、女子選手に囲まれてたよね」 ヴィクトルは、こころの狭いところを見せないようにしなければ、と思いながら話した。 「なんだか盛り上がってたようだけど、あれ、何についてのことだったの?」 「あのさ、囲まれてたって、ぼくが座ってるところにミラたちが来ただけだからね。しかもあとからヴィクトルが割りこんできて、彼女たち迷惑そうだったじゃん。話してたのは結婚の話だよ」 ヴィクトルはスプーンを取り落としそうになった。 「へ、へえ……」 「結婚観? 理想の結婚? なんかそんなことを話してたよ」 「勇利に訊いたの?」 「ううん、彼女たちが好きにしゃべってただけ」 「それ、勇利に語る必要ある?」 「知らないよ。ぼくに話してたっていうより、たまたま空いてる席に座ったらぼくがいて、ぼくに関係なく話題にしたんじゃないの」 「そうか……」 ヴィクトルは勇利の薬指にある指輪を見た。でもこれ、お守りだったな……。 勇利は何か結婚について考えてることはある? その質問がなかなかできない。 「ヴィクトルはさ」 勇利が顔を上げた。ヴィクトルはどきっとした。 「……なに?」 「結婚するとなったら」 「うん……」 「結婚式の日を忘れちゃいそうだよね」 勇利が笑った。 「忘れっぽいでしょ? 花婿が式場に現れなくて大騒ぎなんていうこと、ヴィクトルならあり得るかもね」 ヴィクトルはスープをのみこんだ。急に味がわからなくなった。 「……俺の結婚がきまったら」 ヴィクトルはつぶやいた。 「勇利がおぼえていて、式はこの日だよ、って注意してくれればいい」 勇利がヴィクトルを見た。ヴィクトルは真剣に彼の目を見返した。勇利はほほえんだ。 「ぼく、ヴィクトルの生徒っていうより、マネージャーみたいだね」 「…………」 「ごちそうさまでした」 ヴィクトルは洗い物を勇利と一緒にしながら、どういう意味だ、とずっと考えていた。勇利が「そろそろ帰るよ」と言い、「送るよ」と応じて車を運転しているあいだも思案していた。出た結論は、「勇利は俺の意図とはちがう受け取り方をしている」ということだった。 勇利のアパートメントが近づいてくると、彼はふと窓に顔を寄せ、「あ」とつぶやいた。 「どうかした?」 「ううん……」 「なに?」 「いや、いま中に入っていった人、この前、親しくなった人だから。カフェで声をかけられたんだ。同じアパートメントに住んでるって」 「……女?」 「いや、男の人だよ。ぼくよりずっと年上で、プロレスラーみたいな体格なんだ。髭も生えててすっごく強そうなんだよ。でも気は優しくて、奥さんと娘さんの写真をうれしそうに見せてくれた。仕事でひとりでここへ来てるんだって。家族に会いたいって言ってた」 ヴィクトルは不愉快になった。たぶんその男は気のいいたちで、いかにも子どもっぽい東洋人がひとりで暮らしているのを気遣ったのだろう。だから話し相手になろうとした。べつにヴィクトルが心配するようなことはないし、勇利にとっても、そういう友人ができるのは喜ばしいなりゆきだ。だが、それでも、いい気持ちはしなかった。勇利が自分の知らないところで人間関係を築いていくことが我慢できなかった。 すこし、まずいな、と思った。勇利との境界線がわからなくなっている。彼のすべてを把握していないと気が済まない。これはあまり健全な感情ではない。制御しなければ。きっと勇利との間柄が不安定だからこんな気持ちになるのだ。彼の愛を勝ち得ていると信じられるなら、ここまでのことは思わない。 「じゃあヴィクトル、どうもありがとう」 勇利が言って扉の取っ手に手をかけた。 「とっても楽しかった。おやすみ」 彼は車から降りようとした。ヴィクトルは勇利の手首をつかんでひきとめた。勇利が振り向き、なに? というようにヴィクトルを見た。ヴィクトルは顔を近づけ、黙ってキスした。 「え……」 勇利がヴィクトルを凝視した。ヴィクトルは彼の黒い瞳をのぞきこみ、まじめにみつめた。勇利はふらつきながら車を降りた。習慣のように彼は戸を閉めた。 ヴィクトルはくらくらした。とにかく、安全に運転して帰らなければ、と思い、殊更にそのことに意識を集中した。 さて困ったことになった。 「マッカチン、勇利にキスしちゃったよ」 勇利はどう思っているだろう。怒っている? あきれている? 照れているだろうか? 自分でしたことなのにヴィクトルらしくもなく動揺し、赤くなったり青くなったりした。そして「俺らしくない」という判断に腹を立てた。自分らしいとはなんだろう。いままでの経験からくる言葉なのか? 愛したのは勇利が初めてだ。これまで積み重ねてきたことなんて関係ないだろう。ヴィクトル・ニキフォロフは、人を愛したらこうなるのだ。これが「俺らしい」のだ。 しかし、開き直っても事は進展しない。翌日、ヴィクトルはどきどきしながらリンクへ行った。勇利はもう来ていた。彼はヴィクトルに気がつくといつものように笑い、「おはようヴィクトル!」と駆け寄ってきた。 「今日はどんなふうに進める? ぼく、午前中はリンク使っていいんだよね」 「ああ……」 ヴィクトルの悩みなど知らぬといったふうに、勇利は明るかった。ヴィクトルもどうにか普段のようにふるまいながら、これはどういうことだ、と困惑した。キスされて平然としているなんてちょっと普通じゃない。冗談だとでも思っているのだろうか。そういえば、前にキスしたときも、勇利はほのかに笑ってさえいた。突然くちづけられたというのに落ち着いて、清廉な感じで、それを受け容れて──。 ヴィクトルはどきっとした。前にキスをした。そうだ。リンクでキスをしたことがある。試合のあと。ヴィクトルは「驚かせるにはこれしか方法がなかった」というようなことを言った。勇利は「そっか」という態度だった。べつにいやがってもいなかったし、そういうものなんだね、と言いたげだった。 もしかして──あれと同じと思われているのでは? 突然頭を抱え、手すりに突っ伏したヴィクトルに、隣にいたヤコフが「なんだいきなり」といぶかしげな視線を向けた。ヴィクトルはそれに気づかなかった。 なんというか──勇利にとってキスは習慣になりつつあるのではないだろうか。まだ二度目だけれど、その可能性が高い。ヴィクトルが頻繁にくっついていったり、さわったり、耳元にささやいたりするものだから、キスもそのうちのひとつ、と受け取っているのだ。そうにきまっている。 「あぁあ……」 「だから何なんだおまえは」 いや、待て。待って。たとえそうでも、好意がなかったらそんな気持ちにはならないのではないだろうか? 接触過多なところだって、いやなら拒絶するだろう。あの勝生勇利だ。ヴィクトルにだって遠慮しない。普通、「驚かせたかった」とキスされて「そうなんだ」とうなずく者はそうそういない。誰だってそういうのには感心しないだろう。とくに驚かせる必要もない別れ際などに、理由もなくされたらなおさら──。 しかし、勇利なのだ。そう「あの勝生勇利」だ。ヴィクトルを愛しているのである。ヴィクトルの望む愛かは別として。人生をヴィクトル・ニキフォロフに捧げきっている勇利なら、キスくらいどうということもないのではないか? たとえ、キスしたいという気持ちで愛していなくても──。 「ヴィーチャ、聞いとるのか」 「気分が悪くなってきた」 「なんだと」 そのとき、トレーニングルームで基礎訓練をしていた勇利が戻ってきた。彼はヴィクトルを見ると、「どうしたの?」と心配した。 「気分が悪いそうだ」 「そうなの? 大丈夫? 病院行く?」 「いや……そういうのじゃない」 「すこし早いがもういいだろう。上がれ」 勇利は帰り道で、熱はないのか、頭痛はするかとヴィクトルの体調を気遣った。 「勇利の顔を見たら治った」 「そういう適当なこと言ってないで、まじめに答えてよ」 「本当だ」 その日は出来合いのものを買って帰ってふたりで食べた。ヴィクトルがいつも通り話すようになったので、勇利は安心したらしかった。 「ヴィクトル、ちゃんと寝てる? 忙しいんだからたくさん睡眠とらないとだめだよ。今日は送らなくていいよ。ゆっくりやすんで」 もう耐えられなかった。ヴィクトルは帰り支度をととのえる勇利の手首をつかむと、じっと彼をみつめ、低くかすれる声でささやいた。 「帰したくない」 勇利は目をみひらき、それからかすかな苦笑を浮かべた。 「そんなこと言って。さびしいの?」 「ここにいてくれ」 「マッカチンがいるじゃない」 「泊まっていって」 「もう具合は悪くないんでしょ」 「勇利」 ヴィクトルは勇利にキスした。勇利がぽかんとした。 「絶対に帰さない」 ヴィクトルは勇利を寝室へ連れていった。そこで服を脱がせたけれど、彼はとくに何も言わなかった。ベッドに押し倒しても黙っていたし、あちこちさわっても、身体じゅうにくちづけても、誰も知らないようなところへ入りこんでも、やっぱり文句は言わなかった。 「おはよう」 目がさめると勇利が笑っていた。ヴィクトルはまくらに顔を押しつけた。 「どうしたの?」 朝一番に勇利の笑顔を見るのは心臓に悪い……。ヴィクトルはうめいた。 「目ざめたらヴィクトルが隣にいるっていうのは心臓に悪いね。綺麗すぎてどきどきするよ」 勇利はヴィクトルが思っているのと同じことを言い、そっとベッドから抜け出した。 「どこ行く?」 「朝食の支度してくる。ヴィクトルはもうすこしゆっくりしてて」 「勇利」 「んー?」 「その……身体は大丈夫かい?」 ヴィクトルは心配した。勇利が笑った。 「うん。ちょっとだるいけど、とくに差し障りはないよ。優しくしてくれてありがとう」 「いや……」 「パンがいい? シリアル?」 「……パン」 「了解。悪いけどシャワー貸してね」 勇利はヴィクトルのバスローブを羽織ると、かろやかな足取りで寝室を出ていった。扉の向こうから、「おはよう、マッカチン。ごめんね、ひとりで寝させちゃって」と謝る声が聞こえた。 「…………」 ヴィクトルはぽすっとまくらに頭をつけた。白い天井をみつめてしばらくぼんやりとした。それからわき上がる喜びを抑えきれず、ごろんと寝返りを打って、勇利の寝ていたところへおもてをこすりつけた。 勇利とセックスした! セックスしたんだ……。 ヴィクトルは浮かれ、まくらを抱きしめてベッドの上を転げまわった。あまりおぼえていなかった。ただ、勇利がかわいかった。その感想でこころは埋め尽くされていた。 ヴィクトルは、勇利との甘美な時に思いをめぐらせながらあちこちへ転がる、ということに時間を費やした。勇利が戻ってきて、「ヴィクトル、ごはんできたよ。ヴィクトルもシャワー浴びたら?」と言ったとき、彼は目をまるくした。 「なんだか、さっきよりベッドがめちゃくちゃになってない?」 「シャワーを浴びるよ!」 「ああ、どうぞ……」 勇利は、食事のすぐあとには帰らなくなった。毎日というわけにはいかないけれど、夕食後、居間のソファや寝室のベッドで過ごす時間はじゅうぶんにあった。ヴィクトルは浮かれて安心しきった。これで勇利はヴィクトルのものになり、ヴィクトルは勇利のものになったのだ。 「材料、全部そろったよね?」 いつものように夕飯のための買い物を済ませた勇利は、袋をのぞきこみながら言った。 「そうだね」 「今日は失敗しないようにしないとね。前のときは、すこし焦がしちゃったから」 言ってほほえむ勇利が、ヴィクトルには天使にしか見えなかった。ヴィクトルはふいに彼の肩を抱き寄せ、耳元にくちびるを寄せた。 「食事の材料はそろったけど、まだ足りないものがあるよ」 「なに?」 「スキン……前ので最後だったんだ」 勇利は���っかになって、ヴィクトル買ってきてよ、とそっぽを向いた。ヴィクトルはしあわせを感じた。 望み通りヴィクトルが買って、今夜は焦がさずに鶏の香草焼きをつくり、そのあと、購入したばかりのゴムをふたつ使った。勇利は静かにヴィクトルの下から抜け出ると、「シャワー貸してね」と言って浴室へ行った。 「一緒に浴びよう」 「だめ」 「なんで」 「恥ずかしいから」 「さっきまでもっと恥ずかしいことをしてたよ」 「シャワーを一緒に浴びるほうが恥ずかしいよ」 「ふたりで温泉にも入ったのに」 「シャワーのほうが恥ずかしい」 勇利は絶対にヴィクトルと浴室へ行ったりはしないのだった。 「ねえ、勇利」 ヴィクトルは勇利を送る車の中で提案した。 「たまには泊まっていったら?」 「ああ、ごめん。めんどうだったら送らなくてもいいよ。ぼく大丈夫だから」 「そういうことじゃなくて」 一緒にいたいと言っているのだ。相変わらずにぶい子だ。 「こんなのは手間でもなんでもないけど、勇利だって、慌ただしく帰りたくないだろう?」 勇利は窓にもたれて外を眺めていた。 「だめ」 「なぜ?」 「朝、困るよ。着替えもないし」 「持ってくればいいだろう?」 「いいよ、そんなの……」 「よくわからないな」 勇利が振り返った。彼はかすかな微笑を浮かべた。 「いいの。だって、そんなことしたら、だんだんあいまいになってくるでしょう?」 「何が?」 「ぼくはリンクへ行って、ヴィクトルと一緒に帰って、ヴィクトルと食事をしてるんだよ。そのあと泊まったりしたら、そのままリンクへ行くことになる。ぼくはいったいいつ自分の部屋に帰るの?」 その通りだ。だから泊まっていって欲しいのだ。勇利は何もわかっていない。 「線引きはちゃんとしなきゃ」 勇利がきっぱりと言った。線引きとはなんだろう。何と何のあいだに彼は線を引いているつもりなのか。 「今夜もどうもありがとう。いつもごめんね」 車が停まると、勇利は優しく言った。 「勇利」 ヴィクトルは彼を引き寄せ、情熱をこめてキスした。勇利は目を閉じ、それからうすくまぶたを開けてほのかに笑った。 「……おやすみ」 「おやすみなさい。気をつけて」 勇利は最初の夜以来、けっしてヴィクトルのところへ泊まっていかない。私物だって持ちこまないし、合鍵も相変わらず使おうとしない。浮かれていたヴィクトルも、すぐに不安になってきた。 ヴィクトルは、勇利と特別な関係になれたと思っていた。奥まで踏みこんだ、かたく結ばれた間柄だと。たとえば勇利に何か個人的な問題が持ち上がったら意見を言うことができると思っていた。助言も、反対する考えも述べられる。その権利を得たと確信していた。しかし、本当にそうだろうか? 勇利はヴィクトルをそういう相手として取り扱っているだろうか? なるほど、愛は交わすようになったかもしれない。けれど、それだけではないか。勇利の態度に、これまでと何かちがうところがあるだろうか? 勇利はいつだって──謙虚で、どこか遠慮がちで──。 ヴィクトルはこわくなってきた。勇利はヴィクトルのことをどう思っているのだろう? コーチ。親しい相手。そして──セックスをする関係。 「セックスフレンド?」 ヴィクトルの顔が引きつった。まさか。勇利はそういうものの考え方はしない。そんなたちではないのだ。もっと純粋で、健全で、ごくきよらかだ。身体だけのつながりなんてよしとするはずがない。 でも……。 帰宅したヴィクトルは、台所や居間や寝室を眺めた。ここにさっきまで勇利がいた。しかし彼の痕跡はまるでない。おまえの夢だ、と言われれば、そうかもしれない、という気になってくる。勇利は自分の存在をかけらも残さない。 まるで──いずれ離れるのだから、と言っているみたいに──。 「そんなばかな」 ヴィクトルは次の休みの前夜、いつものように勇利と過ごし、ベッドでは激しくふるまった。勇利は驚いており、普段よりたくさん泣いたが、いやがることはなかった。疲れきった勇利が眠ってしまうのを見て、ヴィクトルは安心した。これで勇利はどこにも行かない。ヴィクトルは彼を抱きしめ、みちたりた気持ちで眠りに落ちた。 翌朝、勇利はベッドにいなかった。台所のカウンターの上に、書き置きがあった。 『よく眠っていたので起こさず帰ります。今日は一日寝てるから、電話してきちゃだめだよ。貴方のせいなんだからね』 ヴィクトルは溜息をついた。どうして勇利は泊まっていってくれないのだ。 もしかしてセックスも同じなのだろうか、とヴィクトルは気がついた。これもヴィクトルが勇利に多くする接触の一種なのか。もちろんヴィクトルはそんなつもりはないけれど、勇利はそう受け取っているかもしれない。 「へえ。ヴィクトルってさわったりキスしたりするだけじゃなく、えっちなこともするんだぁ」 そんな勇利の声が聞こえるようだ。ただの生徒にそんなのするわけないだろ! ヴィクトルはいらだった。セックスも驚かせる方法のひとつだとでも思っているのだろうか。そんなことを言い出すやつは頭が変ではないか。 どうにかしなければならない。勇利はおかしい。どこかがおかしい。何かすれちがっている。勇利と愛を交わしたつもりになっているのに、甘い雰囲気にならないのはどうしてだ。 ヴィクトルは勇利と話しあいたかった。しかし、なかなか言い出せずにいた。言おう、とこころをきめたのは、勇利と一日一緒にいられなかった日で、外での仕事をして帰宅する途中、ヴィクトルは勇利の部屋へ寄ることにした。 車を停め、石段を上って建物の中へ入る。狭い内廊下を歩き、階段を上り、奥の勇利の部屋を目指した。 そのとき、すぐそばの扉の向こうから、女性の甲高い笑い声が響いた。ヴィクトルは気にしなかったが、それに続いた青年の声にびくりとし、足を止めた。 勇利の声だった。 頭の中が真っ白になった。勇利がいる。自分の部屋ではない部屋に。女性の部屋に。夜に。楽しそうに話している。何をしているのだ。何をするのだ? ──これから。 ヴィクトルはくるりときびすを返した。気がつくと自分の家におり、かたわらにマッカチンが座っていた。どうやって帰ってきたのかまったく思い出せなかった。 どうしよう。 落ち着きなく、うろうろと部屋の中を歩きまわった。どうしよう。どうしよう。勇利はヴィクトルのことをどう思っているのだろう。やはりセックスするだけの相手なのか。彼はヴィクトルの誘いを断ったことなんてないけれど、自分から抱いて欲しいと言ったこともない。 どうしようもなくて、ヴィクトルは電話をかけた。クリストフが出るなり、挨拶もせず、洗いざらいぶちまけた。勇利が鍵を使ってくれない。勇利が泊まっていってくれない。勇利が抱いて欲しいと言ってくれない。勇利が女の部屋にいた。勇利が──勇利が。 クリストフは黙って聞いていた。ヴィクトルが口をつぐむと、彼はひとしきり楽しそうに笑った。 「ヴィクトル、俺はね、ヴィクトル・ニキフォロフにそんな泣き言を言われる日が来るなんて、思ってもみなかったよ」 「皮肉はいいんだ」 ヴィクトルは文句を言った。 「単純明快な解決方法がある。聞きたい?」 「ああ」 「勇利に訊けば?」 「は?」 「勇利に訊けばいい。おまえは俺を愛してないのか? なんで泊まっていってくれないんだ? セックスフレンドのつもりなのか? どうして女の部屋にいた? ──全部訊けばいいんだよ。ばかばかしい。そんなの、相談のうちにも入らない」 クリストフは通話を切ってしまった。 「りんごを買ってきたよ。美味しそうだったから」 翌日もヴィクトルはちょっとした用事でリンクへ行けず、しかし帰りは早いと勇利に連絡していたので、彼は練習のあと、ひとりで買い物をしてヴィクトルの部屋へやってきた。 「今日は肉じゃがをつくろうと思うんだ。どう?」 「ああ、いいね」 ヴィクトルはうなずいた。勇利はにっこりして「玉ねぎはヴィクトルが担当ね」と言った。以前、玉ねぎを切って泣いているのをからかったので、根に持っているらしい。なんてかわいい勇利、とヴィクトルは胸が甘く痛むのを感じた。 料理のときも、食事のあいだも、勇利はいつも通りだった。いや、いつもより機嫌がよいくらいだった。もしゆうべヴィクトルが勇利の住むアパートメントへ行っていなかったら、「一日俺に会えなかったから、今日は会えてうれしいんだな」などと浮かれた考えを起こしていただろう。しかしヴィクトルは知ってしまった。だから別のことを想像する。勇利はあの女性と一緒にいたから、そのことを思い出して今日も楽しそうにしているのだろうか。俺より彼女のほうがいいのだろうか。あのあと、ふたりは夜をともに過ごしただろうか? いやなことばかりが頭を占める。 「りんごをむこうか」 食事のあと、勇利がつやつやしたりんごを持ってヴィクトルに笑いかけた。とても可憐で、そのまま絵に描いてしまいたいくらいみずみずしい笑顔だった。 「いや、いらない」 ヴィクトルは上の空で答えた。 「せっかく買ったのに」 「そんなことより」 ヴィクトルは勇利を抱きしめた。勇利はおとなしくキスを受けたけれど、焦らすようにヴィクトルのくちびるを指一本で押し戻し、「シャワーを貸して」とささやいた。 「今日、クラブで浴びられなかったんだ」 「なぜ?」 「順番待ちだったんだよ」 「そう」 これも、以前なら、早く俺に会いたくてシャワーをあきらめたんだな、などとはしゃぐところだ。 ひとりになったヴィクトルは、居間のソファに座り、そこに置いてあった勇利の携帯電話をなにげなく取り上げた。他人には操作できないようになっているが、ヴィクトルは別だ。彼は手早く目当てのものを起動させた。 勇利の自分以外とのつながりを調査しようとしたわけではない。そんなみっともないことはしたくない。ただ、勇利の予定を確認したかったのだ。確か来週、取材や撮影が何本か入っていた。ヴィクトルは予定表を調べ、満足すると、携帯電話を戻そうとした。しかし、ふと思いとどまった。とくに目的があったわけではない。なんとなく、過去のカレンダーをひらいてみた。適当にめくったら、去年の十二月が表示された。それを眺めたヴィクトルは、どきっとして手を止めた。グランプリファイナルショートプログラムの前日。そこに何か書きこみのしるしがある。 勇利に日記をつける習慣はない。ただのおぼえ書きだろう。だがヴィクトルは、吸い寄せられるようにそこに指をすべらせていた。その日の詳細がひらいた。 『今日、婚約した。ヴィクトルが長谷津に来たときのような驚き』 ヴィクトルは目をみひらいた。手がふるえた。思わず携帯電話を伏せ、呼吸を深くして自分を落ち着かせなければならなかった。それからもう一度ディスプレイをのぞきこみ、カレンダーに戻した。その翌日にも書きこみがあった。ショートプログラムの日だ。ヴィクトルは憑かれたようにそれを表示させた。 『昨日の婚約という言葉は正しくない。ヴィクトルは冗談で言ったのだし、それはぼくもわかっている。だけど、そういうことにしてみたかった。ヴィクトルと結婚はできない。でも金メダルは獲りたい。もうヴィクトルはぼくにキスしてくれないだろうけど、メダルにはしてもらいたい。彼はぼくのメダルにキスし、永遠にぼくから去るだろう』 「ごめんね、わりと時間かかっちゃった」 勇利がバスローブ姿で寝室へ入ってきたとき、ヴィクトルはベッドに横になってぼんやりしていた。 「ヴィクトル? 寝てるの?」 「……いや……」 勇利が隣にすべりこんできた。彼はヴィクトルのほうを向き、ほのかに笑った。ヴィクトルの頬にふれ、それからバスローブをはだけようとした。 「勇利」 「なに?」 「きみは俺のことをどう思っているんだ?」 勇利が目を上げた。ヴィクトルは真剣に彼をみつめた。にらんでいるといってもよい目つきだった。 「……どうって?」 「なんで俺とこんなことをする?」 「ヴィクトル、したくないの?」 「俺との関係を勇利がどう受け止めているのか知りたい」 「…………」 勇利はもぞもぞと起き上がった。ヴィクトルも身体を起こして座った。勇利はうつむき、それからヴィクトルをちらと見てほほえんだ。 「ヴィクトルはどうなの?」 「…………」 「なんでぼくとこんなことするの」 勇利が左右の手を組み合わせ、ぎゅっと握った。ヴィクトルは、その手がふるえているのを見た。 ──勇利。別れを告げようとしたのはきみだ。なのになぜ、俺のほうが去ってゆくと感じているんだ? 「勇利は何も言ってくれない」 ヴィクトルは苦しく吐き出した。 「俺が求めることに従うばかりだ。きみは自分の意思でこうしているのか? それとも、俺が望むから慈愛の精神で身を捧げるのか?」 「…………」 「どうして鍵を使わない? なぜ泊まっていかない? セックスだけすればいいのか?」 勇利はくちびるを引き結んでいる。 「とても不安だ。勇利の気持ちがさっぱりわからない。何を考えているんだ? 笑ってるだけじゃなく、ちゃんと思っていることを口に出してくれ。そうじゃなくてもきみは難しいんだから」 勇利はうつむいていた。ヴィクトルは待った。やがて勇利は口元をふるわせ、ちいさな声で「なんだよ……」とつぶやいた。 「え?」 「なんでぼくが責められるんだよ。ぼくが悪いの?」 「悪いなんて言ってないだろう。わからないと言ってるんだ。俺は勇利と一緒に目ざめた朝は一度しかない。勇利はこういうことをするのがいやなんじゃないかって──」 「自分はどうなんだよ!」 勇利が顔を上げ、激しく言った。彼の目は、透明なしずくがこぼれそうなくらいにうるんでいた。 「ぼくが何も言わないって、ヴィクトルだって言わないじゃん!」 「俺は──」 「ヴィクトルがなんでぼくとセックスするのかわかんないよ! 意味なんてないのか、遊んでるのか、交流の一環なのか、──それくらいしかぼくに価値がないからなのか!」 勇利の目から涙があふれた。ヴィクトルはあぜんとした。勇利は何を言っているのだ? 「ヴィクトルはまるで愛してるみたいにぼくを抱くから、ぼくだって混乱するじゃないか! なんでこんなことするんだろうって。何が目的なのかなって。でもこわくて訊けないんだよ! 進歩のないおまえのスケートにはうんざりしてる、性欲の解消くらいしかおまえは役に立たないって言われたらどうしようって──もうコーチやめたいんじゃないかって!」 「そんなわけないだろ……」 ヴィクトルはぼうぜんとしてつぶやいた。ますます勇利がわからなくなった。なんでそんな考え方する、ととりみだした。そういうつめたい態度を取ったことがあっただろうか? 「そんな──そんなひどいことを、俺が──」 「わかってるよ! ヴィクトルはそんなこと考えないよ! でも不安なんだよ!」 勇利は泣きじゃくった。 「ロシアに来て、クラブの人たちのスケート見て、みんなすごく上手いし、どんどん新しいことを取り入れてるし……。ぼくなんかがここにいていいのかってこわいんだよ! ぜんぜんかなわないんじゃないかって……ぼくだけ幼稚で、ぼくなんかを生徒に持ってるヴィクトルが笑われてるんじゃないかって……」 ヴィクトルはものが言えなかった。勇利は知らないのだろうか? 彼の言う「上手いクラブのみんな」は、勇利のスケートを見てうっとりしているのだ。流れるようなスケーティングに感銘を受け、ステップシークエンスの足捌きをうらやみ、彼の音楽性に魅了されている。わからないのだろうか? 「そんな中でもヴィクトルはいちばん上手で、ぼくはそれがうれしいんだけど、こんなひとをコーチにしてていいのかなって憂鬱になるし、ぼくがいなかったらヴィクトルはもっと練習できるんじゃないかとか、ぼくがもろいから気にして毎日家に呼んでくれるけど、本当はもうちょっと自立して欲しいって思ってんじゃないかとか、苦しくて……。毎日自分の動画見直して、修正できるところを書き出して、ひとりでもちゃんとできるとこを見せなきゃってがんばってるんだけど、上手くいかなくて、でもヴィクトルに抱きしめられると安心して、ぼくはヴィクトルに甘えて逃げてるんじゃないかって気がして、そんな自分がいやで、でもヴィクトルが優しくしてくれるとうれしくて、もしこのひとがぼくから離れたらぼくはどうなるんだろうって……、」 勇利の頬から、大粒の涙が次々と流れ落ちた。 「そんなことばっかり考えるんだよ!」 彼は激しくしゃくり上げた。 「ヴィクトルこそ、なんでぼくを抱いたりするんだよ! かわいそうだから? そうして寄り添わないと、ぼくがいかにも崩れてめちゃめちゃになりそうだから!?」 「…………」 「ヴィクトルはぼくにどんな自分でいて欲しいか訊いたよね。恋人がいいならがんばってみるかって。がんばれば恋人のふりもできるんでしょ? そんなつもりなくても、ぼくが望むならそういうお芝居ができるんでしょ?」 ヴィクトルは目をみひらいたまま、ゆるゆるとかぶりを振った。 「ちがう、そういう意味じゃない……あれは……」 「自分の教え子にならそんな親切ができるんでしょ……」 「そうじゃない……」 勇利の身体がひときわ大きくふるえた。 「……ぼくに訊かないでよ……どんなつもりかなんて……。こんなみじめなことしか言えないよ……」 勇利はうつむきこむと、手の甲で目元をこすり、ちいさな嗚咽を続けて漏らした。ヴィクトルは口が利けなかった。 愛していると言ったことはなかっただろうか。勇利に。──なかったかもしれない。いつも、まなざしで、しぐさで、ふるまいで伝えているつもりになっていた。勇利は「ヴィクトルの愛は知っている」と言うから、それに絶対的な信頼を寄せていたのだ。 勇利に「完全」なんてないのに。彼はいつでも不安定で──その均衡のあやうさにヴィクトルは惹かれたというのに。 「勇利」 ヴィクトルは両手を差し伸べ、勇利の頬を包んでおもてを上げさせた。勇利の幼い顔は、痛々しくおびえた表情だった。 「金メダルで結婚というのは、冗談なんかじゃない」 勇利がつらそうに瞬いた。 「俺は本気だ」 彼はひとつしゃくり上げた。 「勇利を優勝させると言っただろう? そして勇利が金メダルを獲ったら結婚だ。どちらもまじめに言ってる。俺の口から言ってるんだ。このふたつの意味、わかるよね?」 勇利が目をこすった。 「……わからないよ」 彼はつぶやいた。 「ちゃんと、はっきり言ってよ。ぼくはフィーリングとかいうので生きてないよ……」 「勇利、きみを愛してる。結婚しよう」 勇利の目から新しい涙がこぼれた。ヴィクトルは彼を抱きしめ、ベッドに倒してささやいた。 「俺は勇利のコーチだ。きみを必ず優勝させる。でも強敵がいる。ヴィクトル・ニキフォロフだ。どちらの俺も手加減はしないよ。それが俺の愛だからね」 ヴィクトルは勇利の涙を指でぬぐい、かすかに笑ってささやいた。 「勇利。ヴィクトル・ニキフォロフを倒して俺と結婚してくれ」 その夜勇利は、最初に結ばれた日以来、初めてヴィクトルの部屋へ泊まった。朝、甘い余韻を帯びながら、ベッドの中でたわむれるのは、なんという楽しさだろう。 「勇利……、一昨日の夜、誰といた……?」 「んー……?」 勇利はヴィクトルに抱きつき、裸身をぴったりとくっつけていた。ヴィクトルは彼の素肌の体温がここちよく、ひどく幸福だと思った。 「えっと……、ああ、前に話した同じアパートの人……」 「え?」 ヴィクトルはびっくりした。 「また忘れちゃったの?」 勇利がくすくす笑う。 「言ったでしょ。プロレスラーみたいな人だよ」 「いや、それはおぼえているが……」 「珍しくぼくが早く帰ったから、いつも送ってくれる彼氏にふられたのかってすごく心配してくれたんだ。ちがうって言ったんだけど聞かないの」 勇利の肩が楽しそうにふるえる。 「ぼく、一昨日ちょっと調子悪くて気が滅入ってたから、まあいつふられてもおかしくないですけど、って言ったら、ますます気になったらしくて……うちでごはん食べろって招いてくれたんだ。そのときちょうど彼の娘さんが来て、一緒に食べたの」 「あ……」 その女性の声か! ヴィクトルは合点した。 「彼女はぼくを知ってたみたい。ヴィクトル・ニキフォロフの教え子よって彼に言ったんだけど、彼はヴィクトルのことは知ってたけどぼくはわからなかった。ヴィクトルが日本のスケーターを連れて帰ってきたってあんなにニュースになってたのになんで知らないの、って彼女は大笑いしてたよ」 「そうか……」 「それがどうかしたの?」 勇利はヴィクトルの肩に頬をすり寄せて甘えた。たちそうだ、とヴィクトルは思った。 「いや……」 「あ、わかった。ヴィクトル、ぼくが浮気でもしたんじゃないかと思ったんでしょう」 勇利はゆうべの彼からは想像もつかない、明るい声を上げて陽気に笑った。 「ばかみたい」 ヴィクトルはほほえんだ。 「そうだ。ばかだ」 「なに、開き直っちゃって……」 勇利がヴィクトルの肩口を指先でなぞった。 「やめてくれ」 「どうして?」 「たちそうなんだ」 「はしたない」 言いたくないな、とヴィクトルは思った。あんなみっともないこと……。でも、言おうとヴィクトルはこころぎめをした。 「勇利、きみに白状しなきゃいけないことがふたつある」 「なに? もしかして隠し子がいるの? 何人?」 ヴィクトルはぎょっとして勇利をみつめた。勇利はくすくす笑っている。 「勇利……」 「ちがうの? じゃあもう奥さんがいるの?」 「精神攻撃をやめてくれ。ゆうべから、もう……」 「ゆうべ? ぼく、何か言った?」 「涙にはよわいんだよ」 「苦手なんでしょ」 「いや、勇利の涙にはよわいんだ」 「そう言うと聞こえがいいね。何を白状するの? さっさと言いなさい」 「ひとつめはね……、一昨日、俺はきみの部屋へ行ったということ」 勇利はきょとんとした。 「え? ぼくを待ってたの? いつごろ? いなかったよ」 「いや、部屋の前までは行かなかった。行けなかったんだ」 「どうして?」 「行き着く前に、ほかの部屋から、きみの声と女性の笑い声が聞こえたから……」 その恥ずかしい告白を聞いて、勇利はひどく長いあいだ笑っていた。ヴィクトルも笑った。いまは何が起こっても可笑しい。 「おもしろい?」 「うん、おもしろい」 「俺という男に幻滅した? みっともないって……」 「ううん、すてき……」 とりつくろいではないようで、勇利はうっとりとヴィクトルをみつめた。朝のひかりにきよらかに輝いている彼の可憐な頬のほうがすてきだった。 「もうひとつは……?」 「もうひとつはね……、きみの十二月のカレンダーを見てしまったということ……」 勇利は瞬いた。すこし考え、それからはっとし、わずかに口をひらいた。彼は信じられないというようにヴィクトルをみつめ、それからおそろしい顔でにらみつけ──、そして最後に上品にほほえんだ。 「怒らないのかい?」 「ゆるして��げる」 「こわいな……」 「どういう意味かな……」 「いや、意味はない。とくには」 「最初にけなげな告白をしてくれたからね。そっちで帳消しにしてあげる。ぼく優しいでしょ?」 「ああ、優しい」 ヴィクトルは笑って、勇利のまくらにしていた腕で彼のつむりを抱き寄せ、髪にそっとくちづけた。 「勇利のほうは、俺に告白しておくことはない?」 「うーん……」 「いまのうちだよ。いま言ったらゆるしてあげる」 「本当?」 勇利が顔を上げた。 「本当さ」 「じゃあ言うけど……」 「なに?」 「ぼく、じつは……デトロイトにいたころ……」 ヴィクトルはどきっとした。どうやら勇利はこの機会に、本当に懺悔らしいことをするつもりのようである。何もないと信じていたから言ったのに、とんだ事態になってしまった。どうしよう。何かあったのだろうか。誰かと──親密な愛を交わしていたとか? まさか結婚していたなんてことは──。 「これはピチットくんしか知らないことなんだけど……、ぼく……、デトロイトで……」 「あ、ああ……」 ヴィクトルはごくっとつばをのんだ。 「写真立てにヴィクトルの写真を入れて、ずっと机に飾ってたんだ……そして毎晩寝るときは『おやすみ』って言ってキスしてたの……」 「…………」 「ごめんね……だから、ぼくのファーストキスの相手は、ヴィクトルなんだ……」 ……なんだ。 なんだ。 なんだ……。 ヴィクトルは安堵の深い溜息をついた。額に手を当てる。 「おまえね……」 「あははっ、びっくりした? どきどきした? 心臓止まりそうだった?」 「俺をもてあそんで……」 「いま、すっごくうろたえた顔してたね。ヴィクトルでも動揺するんだぁ……」 「いい加減にしないと……」 「ぼく、いやなやつでしょ」 勇利がヴィクトルの頬に手を当て、ぐいと自分のほうを向かせた。 「ああ、困った子だ」 ヴィクトルは彼をにらむ。 「もうこりごり?」 「そこまでは言ってない」 「本当に?」 勇利は目をほそめてほほえんだ。 「ぼくはめんどうくさくて、すぐ泣く扱いづらいやつです。コーチ、それでもぼくと結婚してくださる?」 それから数日後のある休日、勇利が家にやってきた。彼は自分の鍵で勝手に扉を開けて入ってきて、大きなトランクとリュックサックをどさっと床に置いた。 「なんだいその大荷物」 ヴィクトルはきょとんとした。 「ぼく、今日からここで暮らしますから」 「え?」 「部屋は引き払ってきた。だって結婚するんでしょ? ぼくは慎重なんだ。ヴィクトルって変なひとだし、わけのわからないこといっぱいしそう。結婚したあと慌てないように、いまから教育しておかなきゃね」 勇利は腰に手を当て、それからヴィクトルを得意げに見た。彼のきらきら輝く瞳に、ヴィクトルはいっぺんにのぼせ上がった。 「困った?」 ヴィクトルは勇利を夢中で抱きしめた。 「そういうの、大好きだよ!」
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190216 明日への帰り道
スフィアについての小説を書きました。

このタイミングで上げると、この日のために用意したみたいになるけれど、充電期間を迎えた直後に『こえ部』さんから「スフィアについてのSS」というお題で依頼を頂き、寄稿させて頂いた短編です。代表のばんばさんから許可を頂いたので、掲載しようと思った次第です(こえ部Vol.11にオリジナル版があります)。
私は、ずっとステージの上からもらった輝きを小説として書き続けて来ましたが、後にも先にも『スフィア』と名称をごまかさず書いたのはこの『明日への帰り道』というタイトルの小説一編のみです。
『IGNITION』を迎える前に、充電直後に何を思っていたのか振り返ろうとしたところ、感情はTwitterのつぶやきや皆さんとお話する中に流してしまって、一つの形として残したのは、この小説でした。
あと、これはまず読まれないであろうことをいいことに、いつも一緒にライブに行ってくれる『We are SPHERE!!!!!』幕張メッセイベントホール公演を共にした3人の友人に宛てた小説でもありました。
あの日の帰り道と、明日のライブを繋げるために、Tumblrのスフィア楽曲想い出振り返りシリーズを終えようと思います。暇だったら是非読んで下さい。
「ねぇ、350gなんだって」 「え、なんて?」 「野菜たっぷりタンメンに含まれる野菜の量。350g」 「書いてあるからね。そこのポスターに」 「えっちゃん。そこはさ『ふーん……そういうことよく知ってるよね』って返すのが礼儀だと思うんだ」 「その秒速5センチメートルごっこ、私以外、誰にも伝わらんから……」 日曜夜の日高屋は、終わりかけた週末の感傷に浸された喧噪と倦怠感に満ちている。 ライブが終わった後、この中華料理チェーン店でささやかな感想戦に興じるのは、私たちのお約束になっていた。 女2人でお酒を飲むのには、あまりに色気が無い場所であることには気づいていたけれど、どのライブ会場の近くにも待ち構えるように存在したし、何より安い。そして美味い。すなわち間違いない。懐事情が寂しい学生時代の私たちが、終演直後の熱を吐き出しあうにはピッタリな場所のように思えて、お互いに学生ではなくなった現在まで、なんとなくその習慣は残り続けている。 「愛生ちゃん、今日のソロパートで『letter writer』歌うのは反則だと思わない?」 「わかる。正直、私ですらグッときたもん」 「上手く言葉に出来ないけど、いろいろ思い出しちゃうよね……」 対面に座る千広ちゃんは、鼻声をごまかすように、ニラレバ炒め、餃子、唐揚げを三角食べして、ハイボールで流し込む。いっぱい叫んでいっぱい泣いたら、お腹が空くからと、ライブ終わりには、毎回部活帰りの高校生みたいな量のご飯を平らげてしまう。 「私は、その後に『Q&Aリサイタル』のイントロが流れた瞬間、うわあああ……って泣きそうになった」 「そのパターンは珍しいね」 「スフィアのソロパートのはるちゃんはさ、常にみんなの期待の上に立って、それに応え続けてきた���ゃん。私はその強さが本当に大好きだったから。やっぱり、世界中の誰よりも、私にとってのアイドルなんだなって思わされたんだよ」 はるちゃんの話になると、どうしても早口になってしまう。 「そういえば、初めて2人で代々木に行った時も、愛生ちゃんが『letter writer』で、はるちゃんが『Q&Aリサイタル』じゃなかった?」 「あー……。4年前も似たような話してた気がするね」 「ウチらも変わらないねー。てか、もう4年前ってヤバくない?」 そう笑うと、千広ちゃんは、座席に設けられた呼び鈴を鳴らして、ハイボールのおかわりを頼む。 私は日高屋にくると、中華そば半チャーハンセットにレモンサワーと決めている。これも4年前から変わらない。 4年前の私たちは、まだ大学2年生で、お酒が飲める歳になってまもなく、これから無限に何でも出来るような、全能感に満ちた時間を過ごしていた。 千広ちゃんと私は、大学と入学年度が同じなだけで、所属する学部も学科もサ��クルも違った。 ある日、キャンパス内で、よく見慣れたシリコンバンドをカバンにジャラジャラつけている千広ちゃんの後ろ姿を見つけて、私が勇気を振り絞って「それ、スフィアのグッズだよね」と声をかけたのだった。千広ちゃんは「わかるの!?」と目を爛々と輝かせて、その後に予定していた講義をサボってまでお話してくれた。それから、私たちの関係は始まった。 千広ちゃんは、そこに居るだけで周囲の明度が上がるような、明るくて目立つ女の子だった。大学時代は軽音楽サークルに所属していて、愛生ちゃん個人の音楽をきっかけに、スフィアにもハマっていったらしい。 地味で根暗な私からすると、 スフィアを好きという共通点に気付けなければ、関わることすら無かっただろうと思うくらい、キラキラした世界に住んでいる女の子だった。 そんな私は、戸松遥さんが好きだったのだけど、それ以上にスフィアという名前を背負ってステージに立つ4人の姿が大好きだった。 私にとってそうだったように、千広ちゃんにとっても、大学内でスフィアの話を出来るのは私くらいだったようで、新しいシングルがリリースされたり、何かイベントがあったりすると、どちらからでもなく連絡を取りあって話をするようになった。全学部共通の講義を一緒に受けるようになったり、ライブにも一緒に行くようにもなった。 それでも、日常の大半は別々の時間を過ごしていて、それぞれの居場所にそれぞれの人間関係があって、大学構内ですれ違っても、やんわりと手を振り合うくらいだった。 それが私たちの関係性で、それでも今の今まで続いている、その奇跡のような繋がりを、私はとても大切なもののように感じていたのだ。 千広ちゃんがどう思っているかは分からないけれど。 「はー。結婚したいな」 「どうしたの急に」 「いやさ、ここ最近の愛生ちゃんの話聞いてたら、なんか羨ましく思えてきて」 「千広ちゃん、顔はいいけど女子力不足だからなー」 「む、なんだそれは。そういうえっちゃんは、浮いた話でもあるのかよ」 「うっ、無いけど……」 ライブの話を語り尽くすと、ちびちびと枝豆をつまみながら、それぞれの近況報告会が始まる。 就職してからは、結婚とか、健康とか、仕事の愚痴についての話ばかりになっている気がする。 今期のアニメで何が一番面白いのかを報告しあう方がよっぽど楽しかったのに、いつしか私も千広ちゃんも、あまりアニメを観なくなっていた。これが大人になっていくということなのだろうか。 「もし、私たちのどっちかが結婚したら、こうして会うことも無くなっちゃうのかな」 「うーん……それはどうだろう?」 あの日、みなちゃんの口から充電が発表された時、当たり前に続くように思っていた時間が、決して不変のものではないことをようやく実感した。 それは私たちが変わることでも、スフィアのみんなが変わることでも、どちらでも変化しうる時間なのだと思う。 今まで当たり前だった日常がほどけていくのは、やっぱり少しだけこわい。 「充電期間について、日高屋で喩えていい?」 千広ちゃんは、たまに脈絡のないことを言い始めるところがある。 「ダメとは言わないけど……」 「これからウチらがお会計をすると、もれなく大盛り無料券が渡される。ウチらは、それを期間内に絶対使わなくちゃいけない訳じゃない。貰わなくたっていい。それでも、日高屋は『また来て欲しい』という気持ちで大盛り無料券を渡してくれる。その想いに応えようと思った訳ではないけど、結果として、4年経ってもここに居る。そういうことなんじゃないかな」 「ごめん。やっぱ日高屋で喩えられると、全然内容が入ってこなかった」 「めちゃくちゃ適切な比喩表現だったと自負しているが……」 千広ちゃんは釈然としない表情で、ジョッキに残ったハイボールを全て飲み干す。 「まあ、そんな泣きそうな顔をしなさんなってことだよ。えっちゃん。2月の舞浜ソロコンサートも決まったことだし」 「泣きそうな顔なんかしてないし」 「はいはい」 本当のことを言うと、少しだけ不安なのだ。 出会ってからこれまで、私と千広ちゃんを繋げる理由はスフィアしかなくて、学校を卒業した今となっては、直接会うのも、ライブの時くらいになってしまったから。 いつの間にか、私の中ではスフィアのステージを観るのと同じくらい、こうして終演後に、千広ちゃんとくだらない話をする時間が大切になっていたのだなと思う。 割り勘でお会計を済ませると、2人分の大盛り無料券が外国人の店員さんから手渡される。期限は2018年3月31日まで。また使う日が来るだろうか。 外に出ると、風が肌を刺すように冷たい。季節はもうすっかり冬で、コートにしっかりと身を埋めなければ、寒さに耐えることが出来ない。 駅へと繋がる遊歩道を少し早足で歩く。改札を潜ってホームに上がると、ライブが終わって結構時間が経っているはずなのに、まだスフィアファンと思われる人たちの姿がちらほらと見えた。私たちと一緒で、ご飯を食べながら思い出話に花を咲かせていたのだろう。 海浜幕張からだと、どれだけ粘って遠回りしても、千広ちゃんとは東京までしか一緒には帰れない。それが少し名残惜しかった。 「あ、スフィアのみんなが『下田に行きたい』って言ってたし、今度ウチらも下田行こうよ」 つり革につかまって、中吊り広告をアテに話していると、千広ちゃんが唐突にそんな提案をしてくる。 「えー、何しに?」 「別にいいんじゃない? 特別な理由なんて無くても」 そういって笑う千広ちゃんの横顔を見た瞬間、私はなんとなく『明日への帰り道』という曲のことを思い出していた。 会うための理由が無ければ、また新しく約束をすればいい。 スフィアが10周年に向けた約束を私たちにしてくれたのも、きっとそういうことだったのかもしれない。 「千広ちゃん、”もしかしたらスフィアのみんなに会えるかも”って下心ない?」 「いやいやいや。そんなこと思ってない、思ってないよ?」 「千広ちゃんのそういうワンチャン狙いみたいな発想、あんまり好きじゃないなー」 金目鯛のように大きな千広ちゃんの目は、ぐるぐると元気に泳いでいる。 「私、次で降りるね」 「あれ、新木場で降りちゃうの?」 「うん。こっちの方が近いんだ。下田、いつごろ行く?」 「うーん、大盛り無料券の期限が切れる前に?」 「下田に行ってまで日高屋行きたくないよ……おさかなが食べたい」 「まあ、そうだよね。スケジュール分かったら連絡する。またね」 「うん。また」 新木場駅のホームから、電車の中の千広ちゃんに向かって手を振る。 次の約束まで、しばしのお別れ。 今はもう、明日を迎えるのがそんなに寂しくないように思えた。
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【黒バス】Bye bye by Bye bye
2016/05/03発行コピー本web再録
封された手紙と一緒にお渡ししておりました。
手紙の中身の一文は最後に入れておきます。
この感情に色をつける。そうすると、俺は何色の絵の具を手に取れば良いのだろう。
悲しみはブルーで、イエローはハッピーだ。恋だったらピンクで、情熱レッド? いいや情熱はバイオレットかもしれない。『危険信号』は赤と黄色で、緑は『癒し』。或いは運命。
いつの間にか、俺たちの感情は、大昔に誰かが塗り分けた姿をそのまま使わされていることに気づく。まるで神様みたいだよな。一番最初に、空を青に塗ったみたいに、夕焼けを橙に染めたみたいに、夜を闇色にしたみたいに、俺たちは決められた色で動いて��る。赤は止まれ。緑は進め!
別にそれに、文句を言う訳じゃない。ただ、教えて欲しいだけなんだ。正解があるなら、正解であるに越したことは無い。一度色を塗ってしまったら、上塗りできる保証なんて、どこにもないだろう。
なあ、俺って今、何色なんだ?
一番最初のピカソでも、モネでもダリでも、或いはエジプトの壁画を描いたような古代人でもなんでもいい。誰か教えてくれないか。俺のこの感情は、果たして何と呼ばれるものなのか。
なあ、お前だったら、俺を何色に塗ってくれるんだ?
*
「真ちゃんさあ、これ版画の授業ってわかってんの」
「もちろんだ」
「版画ってさあ、こう、なんかさ、ざっくり線をとってさ、大まかな形を表現してさ、そんで自由に色を塗るようなもんだなって、俺、思ってたんだけど」
「そうか」
こんなやり取り、前にもした気がする。した気がする、というか、間違いなく、したんだよな。覚えてるし。あれはいつのことだったっけ。確か、校庭のど真ん中で、俺とコイツは並んで絵を描いていた。油彩の授業だったんだ。空から鳥の糞が落ちてきて、真ちゃんは嫌そうな顔したんだっけ。青空と、強い風。何処かから飛んで来たコンビニのビニール袋が、夢みたいに空を舞い踊っていた。
写真みたいに覚えているのに、細かい所がぼやけている。
まあ、過去は過去だ。今は今。油彩じゃなくて、今学期の課題は版画。風のない教室の、後ろの方に陣取って、俺は緑の頭越しに、どう贔屓目に見ても版画には見えない風景画を覗き込んでいる。
美術の授業は大概自由だ。思いっきり大声で喋っていても、席を移動しても、なんなら、他の教科の宿題をやっていても怒られやしない。自由な感性が自由な作品を生む、だとか、なんとか。そういうポリシーらしい。ホントか? ただまあ、そうは言っても秀徳高校、自由には責任がつきまとう、ということで、提出期限が一日でも遅れれば落第、中身が酷ければ容赦なく赤点、泣きつけば減点。恐ろしい世界。
「お前、下絵の段階でその細かさで、どうやって彫る気よ? マジで一生かかっても終わんねえだろ」
「馬鹿が。誰がこれを彫ると言った」
「いや、え?」
戸惑う俺を他所に、真ちゃんは淡々と、教室の風景を白いキャンパスに写し取っている。写すとは言って���、動き回っている生徒たちは軒並み存在を消されて、そこに描かれているのは、がらんどうの教室だ。がやがやと、ざわざわと鼓膜を揺らすあらゆる感情のお喋りと、面前のキャンパスの静けさが噛み合わなくて違和感しかない。精密な筆致のせいで、余計に奇妙に見える。机の上の落書きも、汚れたままの黒板もそのままなのに、それを生み出した筈の人間がいない。いやでも視界に映る、沢山の制服と喧騒、その全てが排除された白黒の教室。
「え、じゃあお前、何描いてんの」
「見たままだが」
お前の目には邪魔な生徒は映ってねえのかよ。怖ぇよ。
というのは、まあ冗談として、見たまま、見たままね。じいっと見つめる俺など知らん顔で、テーピングされた左手は着々と教室を完成させていく。鉛筆の粉がこぼれて、指先が僅かに黒ずんでいるのを、俺は黙って見過ごしている。
「いや……版画の下絵じゃねえの?」
「彫刻刀など、一歩間違えれば手を傷つけるようなもの、使うわけが無いだろう」
「いや、それは、まあ、ちょっと思ったけどさ、いやでも、彫らずに版画とか無理だろ」
「お前が代わりに彫ってくれるんだろう?」
「絶対にお断りだわ! どんな苦行だよ!」
冗談だ、と真ちゃんは嘯くが、ここで俺が「やってやるよ」などと言っていたら、マジでやらされていた気がするので油断ならない。真ちゃんは案外、目的のために手段を選ばないずるい男なのだ。ホントの話ね。その目的のほとんどが、まあ一般的には害のないものなので、あまり周囲に伝わらないだけである。こわい奴だよ。
今だって、真ちゃんの目的はこの風景画を完成させることにあるので、さっきから話をしている俺のほうへ振り向いてもくれないのだ。あーあ。優先順位がはっきりしてやがる。
こっち向いてよ。見ればわかると思うけど、お前の隣には今、俺がいるんです。
「教師には、版画は絶対にやらないと言ってある。例え成績評価で最下点を付けられようが、なんだろうがな。とはいっても、授業中に何もしない訳にもいかないだろう。美術の授業なのだから、美術的なことを行うべきだ。代わりとして、油彩とレポート提出で代替評価としてもらうよう交渉した」
「はあ……そんなことできんの」
「監督に我が儘二十一回分で」
「マー坊に謝れや! いや二十一回分って、すげえんだか、そうじゃないんだかもよくわかんねえけどな!」
「授業の回数なのだよ」
「一回につき一ワガママかよ。節約してんじゃねえよ」
言ってしまえば、こんなの授業のボイコットだ。授業一回につき三ワガママくらいは使われて然るべきだろ。等価交換とは言わないが、最低限の仁義っつーか。なんつーか。
「だから水曜は二回しかワガママが使えん」
「なんで不満げなんだよ。二回も使えることに感謝しろよ。一般ピープルはゼロ回だからな」
まあ、真ちゃんの手を傷つけたくないのはバスケ部の総意だ。どんなに腹立たしくても、こいつの手が毎週水曜四限に傷ついてたんじゃ話にならない。というか、それこそ俺が見ていられなくて代わりに彫ってしまいそうだ。奴隷根性極まれりってか。手を止めて消しゴムを探しているらしき瞳に、俺はそのへんに転がっていた消しゴムを放り投げる。こうやって、言葉にされる前に甘やかしてしまうからいけない。わかってんだけどなあ。
マー坊も苦渋の決断だったろうな。そんで、なんで美術の教師はオッケーしたんだよ。普通に考えたらありえねーだろ。自由か。これも自由の一環だっていうのか。
「うっわ、緑間、ナニやってんの」
「真ちゃんさあ、彫刻刀使わねえかわりに油彩なんだってよ」
「うーわ、相変わらずだなお前」
「うるさい。これが人事を尽くすということなのだよ」
立って騒いでいた三村が、真ちゃんのキャンパスが目に入ったのか、ずかずか近づいて悲鳴をあげた。そりゃな。版画でこれやろうと思ったら気が狂うよな。でもちげーんだよ。こいつは既に先生に交渉済で、何故か一人だけ油彩をやるんだよ。高校生が、教師の作ったカリキュラムに逆らうって、なかなかどうして、普通できねえもんだけどな。
三村は、どへぇ、だか、うひゃあ、だか、意味の無い雄叫びをあげて真ちゃんの絵を見ている。真ちゃんはもう会話は終わったといわんばかりに、黙って己の作業を進めている。そうして、窓の外は青い。昔のように青い。覗き込めば、校庭で馬鹿みたいに笑ってる俺がいそうな気がする。
気がつけば、三村はもう元の位置に戻って騒ぎを広げていた。机が揺れる音、椅子が床をこする音、笑い声、叫び声、どうでもいいお喋りと、低く聞こえてくる誰かの愚痴。誰かが空気を震わせるたびに、そこが色づいていく。黄色い声、赤い叫び、緑の音、青い響き。多分世界中で、ここがいま、一番雑多にうるさいんだろうな。
「ってかさあ、真ちゃんクラスメイトも書こうよ」
「何故」
「何故って、これ風景画だろ?」
「あんな動き回る喋り倒す輩を、一人一人描いていたら、それこそ終わらないのだよ。風景画だからこそ、人を配置する必要性は無いだろう」
「まあ、そりゃそうかもしんねえけど」
教卓の歪みも、窓の外の街並みも正確なのに、生徒たちがいないだけで全く違う教室だ。段々と完成されていく世界があんまりモノクロなので、俺は何故か不安になる。白と黒の線だけの世界は、ちょっとぞっとするほど冷たい。
「お前だけ描いてやろうか」
「えっ」
「この課題が終わるまで、一ミリも動かずに静止して黙っていられるならな」
「死ねって言ってる?」
「親切心だ」
お前も、人のばかり見ていないで、自分の課題をやったらどうだ。
そう顎で示された先は、今日の授業開始からほとんど進んでいない俺の下絵だった。そもそも何を描いているんだ、と言う真ちゃんには、俺の半分も進んでいない下絵じゃ何も伝わらないらしい。テーマ? テーマはね、体育館。いっぱい見てるし、床と壁しかねえから楽かと思って。ちなみに、バスケのゴールリングは省略してある。ゴールは描くために存在してるわけじゃないから、いいんだよ。
「遅れれば落第」
「あー! あーもう分かってるよ! くっそ、油彩の奴には負けたくねえ。油彩で合格して版画で落ちるのは勘弁」
もういっそ、下絵なしに彫ってみたら、味のある絵になるんじゃねえ? そう思って、試しに適当な所に刃を入れてみたら、木の欠片だけが無意味に散った。ぱらぱらと、木屑が落ちる。強くやりすぎたのか、深く抉れて、一箇所だけ穴があいたようだ。三角形の、あなぼこ。
「おい、高尾、飛ばすな。木屑があたってるのだよ」
「うるせー」
がりがりと、彫る。がりがりと。がりがり、がりり。意味の���からない奇妙な曲線が生まれて、俺もなんだか不思議な気分だ。楽しいような、気持ちいいような、妬ましいような、何か。体育館の床が、丸く抉れていく。
「勢いよく、いきすぎじゃないか」
「いーんだよ、こんくらいで」
「後戻りできないのに、よくやるな」
後戻りできないのにね。ホントにな。俺は彫っていく。体育館? いいや、目に見えない、俺の中の何かの景色を。
多分、今期の美術、評価ヤバイな、これ。
*
バッシュの靴紐は右から結ぶ。俺じゃあなくて、真ちゃんの話。真ちゃんの、結び目は、とても綺麗だ。性格出るよな。右と左が綺麗に対称になっていて、紐は長すぎず短すぎず、バランスを保って鎮座している。なんだろう。あるべき姿として、おさまってるんだ。紐ひとつに言い過ぎかもしれないが、こいつの場合は一事が万事これなのだ。鉛筆は絶対に芯が尖っているし、ハンカチはいつも縦に二回、横に二回畳まれてポケットに入っている。
俺はといえば、シャー芯は使い切る前に無くすし、ハンカチなんて持ってりゃ御の字、鞄の底で無限に折れ曲がっている。靴紐は何故か滅茶苦茶右上がりになるんだよな。自分でわかっちゃいるが、わかっただけで綺麗に結べりゃ問題無い。
「高尾交代! 多野上はいれ!」
「ハイ!」
「スリーメン五本、バック走三、残りケーオージャンプ五十、先頭水城、はじめ!」
「はい!」
喉に細かい罅が入ったような熱がある。それでも体育館中に響くような大声で、俺は必死に数を数える。
イチ、ニ、サン、ニ、ニ、サン、サン、ニ、サン、ヨン、ニ、サン。五回目、飛んだ瞬間に汗で滑って、顔が引きつった。下手な転び方しても、着地しくっても、すぐに捻挫だ。必死に体制を立て直しながら、俺は声を出し続ける。ロク、ニ、サン。
コートから出て、一瞬も休ませてもらえない。練習なんて、地獄の代名詞。至るところの筋肉が悲鳴をあげている。脛が剥がれ落ちそうだ。上げっぱなしの腕は震えて、そろそろ感覚が無い。血流が、必死に酸素を運んでいるのがわかる。指先から、脳みそのてっぺんまで、どくりどくりと脈動している。口の中に血の味がする。真っ赤な世界。
「そこまで! 一分後ランニング十周、そのままAB分かれて一ゲームだ。水分忘れるな!」
水飲んだら吐くけど、飲まなかったら死ぬな、って、冷静なところで考えた。体は今にも体育館に倒れこみそう。倒れたらもう、今日は試合に出させてもらえないだろうから、必死にふんじばっている。下を向いたら吐くから上を見上げている。体育館の照明が目を焼いた。視界の端には、緑色した頭がよぎる。視線をそのままスライドさせれば、そいつは浴びるように水を飲んでいた。マジかよ。バケモン。
「真ちゃん、さあ、そんな一気に飲んで、腹、やばくねえの」
「問題無い。飲まない方が死ぬだろう。恐らくマラソンのあと、水分補給の時間はないぞ」
「うそだろ……、いや、そっかマー坊言ってねえわ、くっそ」
「高尾、靴紐」
「あ?」
「あぶない」
近寄りながら、わざわざ指で指し示されたのは、俺のバッシュの右側。いつの間にか紐が解けて広がっている。もしかして、さっき滑った時に踏んづけたか? このままじゃ間違いなく転ぶ。自分が転ぶだけならまだしも、他の奴まで転ぶだろう。
結び直さないといけない。わかってる。当たり前だ。わかってる。
「ちょい待って……」
「何を待つのだよ。さっさと結べ。他の奴の邪魔だ」
「わーってる。わーってるけど、今しゃがんで、下向いたら、間違いなくヤバイ。リバース確実」
「……そういうことか」
呆れたような溜息に、心臓にまで罅が入る音がした。軋みをあげて唸っている。どくりどくりと流れていた血が、そこからじわじわ染み出していく。悪かったな。お前とは違う。情けねえ。動けねえ。畜生。
「全く、だからお前は駄目なのだよ」
「うっせ……」
ただ上を見ることしか出来ない俺に、覆いかぶさるように緑色の影が刺す。俺を見下ろす瞳は、逆光になっていてよく見えなかった。どつかれるか、冷たく諦めろと言われるか、どっちだろうな。腹を殴られて強制退場すらありえる。そんなことを俺が考えているなんて露知らず、溜息と一緒に、真ちゃんは、ふっと、しゃがみこんだ。
「は? え?」
「こっちを見るなよ。下を向いたら吐くんだろう。俺の頭にかけたら許さないからな」
「や、えっ、真ちゃん、俺」
「もう休憩が終わる。待ってられるか」
ごついバッシュに神経など通ってやしないが、気配だけで、真ちゃんが何をしているのかなどすぐわかる。しゅるしゅると、擦れる音、足首に、僅かな刺激。俺の靴紐を結んでいる。こいつが。緑間真太郎が。
「そもそも最初の結び目がゆるいんじゃないか? 結ぶの下手だろう、お前」
「うっせーよ……てか、余計なお世話だわ」
「そうか」
なら、次からは余計な世話をかけるなよ。
そう言いながら立ち上がったこいつは、確かに、かすかに笑っていた。ムカつく。悔しい。心臓が大きく動いて、血が染み出すどころか溢れ出ている。けど、それだけじゃない。顔に熱が集まっている。嬉しい。照れくさい。恥ずかしい。お礼を言うのも変な感じがして、茶化そうにも言葉が無かった。口だけを馬鹿みたいに開けて、餌を待ってる雛鳥かよ。俺が何も言えない間に、ホイッスルが空間を切り裂いた。
「これでマラソン中にへばったら、笑ってやるのだよ」
「うっせー、ぜってーに負けねえ。お前こそ疲れたへろへろシュート撃って外すんじゃねえぞ」
「誰に言ってる」
走る。怒声に応えるように、走る。走って、走って、もつれた足で、走る。下は見ない。腕を振れば、体は勝手に前に出る。床なんか見なくても、俺は足つけて走っていられる。顔をあげて、先頭をひた走る緑色の弾丸を睨みつけた。
「やめ! ゲームするぞ! 別れろ! チンタラするな! 走れ!」
才能を軸に、努力を装置に、意思を燃料に変えて、誰より早くひた走る、一つの、弾丸。高く高く撃ち上がる、ミサイル。天井すれすれから、地面を穿つように叩きつけられる、兵器にも似た何か。
あれはお前だ、お前のエネルギーそのものだ。お前の感情を、一つの球体に詰め込んで、お前はそれを撃ち上げる。
呼吸だってままならないような汗の中で、俺はそれを必死に見届ける。本当に、もう、一歩も動けない。声だって出せない。ブザーの音と、床に転がったままのボール。いつかあれが爆発したら、きっと世界は終わるだろう。誰も逃げられやしないんだ。いつか、あのボールが爆発したら、俺にトドメを刺すだろう。今はまだ、俺は、ブッ倒れそうな体を必死に地面に突き刺している。
「……っ、ふ、倒れなかったじゃ、ないか」
「ぁ、っはぁ、はぁつ、っ、は、あ、たりめー、っしょ……」
整列に並びに行くのも、もう無理だ。そう思ったら、強く腕をひかれた。今度こそ思いっきり転びそうになるけれど、転ぶだけの足すらもう動いてない。引きずられている。腕が動けば、体は前に出る。腕を動かされれば、体は前に、進まされる。力技すぎんだろ。
「や、っめ、ろ、おい、はなせっ、て」
「整列だ。待てない」
「あるけっ、から」
「嘘をつけ」
靴紐、解けなかったろう。そう言ってこいつが楽しそうに笑うので、俺は思わず下を見る。綺麗な蝶々が、俺の右足にだけ止まっていた。左側の、なんと不格好なこと。笑っちまうね。笑っちまうが、下を見たのは、本当に失敗だった。
*
「お、高尾きた」
「あっれ、どうしたの酒井」
雨だった。そして俺は弁当を忘れていた。四限が終わった瞬間にダッシュかけた俺は、目的の焼きそばパンとカレーパン、あとキムチおにぎりをゲットすることに成功。授業が時間ぴったりに終わってくれたことが、今回の勝因といえるだろう。気分が良いのでおしるこでもついでに買ってやろうかと思ったが、冷静に考えて多分あいつは今日の分をもう持ってる。朝一で買ってたもんな。
戦利品を抱え、割と朗らかな気持ちで教室に舞い戻ったら、俺の席には酒井がいた。
「いやマジ聞けよ。緑間ガチうけんだけど」
「おい、やめろ」
「えー、なになに」
「いやそれが」
「やめろと言っているだろう」
俺が購買にパンを買いに走っている間に何が起こったんだ? 窓際一番後ろ、真ちゃんの席。そのひとつ前、俺の席。俺が昼飯を買ってくるのを一人待っている筈の場所に、酒井が座って爆笑している。いや、そこ俺の席だから。
緑間がマジうける、のは今に始まったことじゃない。だけど、真ちゃんがその内容を喋らせようとしないのは珍しい。基本的に己の信念と欲求に正直に生きている男だから、なんというか、恥じらいというものが無いのだ。
何を恥ずかしがることがある、人事を尽くした結果なのだよ。俺の生き様に、恥ずべきことなど何も無い。
恐ろしいスタンスだ。己の信念を裏切らなければ、何をしても良いと思っていやがる。まあ、ラッキーアイテムとか、説明するまでもねえけど。
普通の人なら恥ずかしくて出来ないようなことを、こいつは平気でやってのけて、それを一つも隠さないのだ。おかしいだろう。
「酒井、言ったらはっ倒すのだよ」
「や、緑間ってそんなキャラだっけ? こええ!」
「五月蝿い。さっさと消えろ」
蠅を追い払うようにして、真ちゃんは酒井を追っ払った。けたけた笑いながら退散する背中を、俺は見送る。真ちゃん、酒井と仲良かったっけ。そういや、この前サッカーのチーム分け一緒になってたな。そん時は、真ちゃん倒すのに燃えすぎてよく見てなかったけど、どうやら、真ちゃん、イコール、面白い奴認定、は広まったらしい。そりゃな。嫌でも一緒にいりゃわかるよな。一緒にいて分かんないんだったら、そいつの目はレンコンかなんかなんだろう。
「真ちゃん、どーかしたの」
「いや、別に」
「ふーん」
がさり、と音をたてて、ビニールに入った昼食を真ちゃんの机に置く。俺の分だけ半分スペースをあけて弁当を広げていた真ちゃんは、こちらの準備が整うのを黙って待っている。チャイムが鳴って、何にも言わずに走り出したのに、待っててくれるんだから、こいつも大分まるくなったというか、なんというか。餌付けに成功したらこんな気持ちなんだろうな。それは、ちょっとだけ俺の心を満たす。
「酒井と何話してたのさー」
「別に、と言っただろう。お前には関係ないのだよ」
でしょうね。そうだろうよ。多分、本当に、どうでもいいことなんだろう。真ちゃんが毎日ナイトキャップかぶって寝てるとか、ラッキーアイテム保管用の部屋があるだとか、案外AVは女教師ものが好きとか、そういう感じの。多分、俺も知ってるような、或いは、知らなくても何も問題ないようなこと。知っても仕方がないこと。
「気になるなー気になっちゃうなー」
「しつこい。さっさと食べるぞ」
「へいへい」
誰も知らなくても問題ないようなことで、人間って出来上がってる。高尾和成が、何を好きだろうが、嫌いだろうが、家で何してようが、関係ない。幼い頃の初恋の先生の名前だとか、未だに捨てられないBB弾が入った、缶からの存在だとか、そういうの。そういうものの、寄せ集めで、俺の体は出来上がってる。きっと誰だって、そうだろう。
だけど、俺は、何だかいたたまれない気持ちになる。俺の知らない緑間真太郎がいることに。俺は知らないのに、俺じゃない誰かが知っている、緑間真太郎が存在していることが。
「聞いてよ真ちゃん。俺本当に今日勝ち組でさ」
「何が」
「焼きそばパンとカレーパンダブルでゲットした」
「何だと? どんな裏技を使った」
「いや走っただけなんだけどさ」
だから俺は、馬鹿みたいに喋り倒す。どうでもいいこと。知らなくていいこと。知ってほしい、こと。
くだらない、どうでもいいものが組みあがって出来上がった、俺のカラダと血肉を、お前には知っていて欲しい。
雨がざんざか降っている。俺は結構、窓越しに聞くこの音が好きなんだけれど、お前は果たしてどうだろう。どうでもいい、知らなくていいことを、俺は何故だか、知りたくなる。灰色の雨が降っている。
*
「お兄ちゃんはさ」
「うん?」
「誰かになんかあげたいとか、思ったことないの?」
「なんじゃそりゃ」
夜、リビングのソファでテレビつけながらゴロついていたら、何やら妹ちゃんが不審な動きで台所に立っていた。普段料理なんて、てんでしないくせに。がさごそと、音を立てて動き回っている。台所は、料理をする場所だ。まさか包丁探して誰か殺しに行くわけでもあるまいし。とすると、へえ、なんか作って持っていくのか。
でもバレンタインって結構最近終わったばっか。ていうかコイツ、バレンタインに友チョコとかする可愛げも無かった気すんだけど。マジでどうしたんだろうな。
「彼女いないの」
「あ? そういう話? 彼女ができたらちゃんとプレゼントしろってこと?」
「違うよお、まあ、それはそれで、そうなんだけどさ」
起き上がりもせずに声だけを寄越す俺に、妹ちゃんも淡々と、姿のない声だけを返す。
「私が彼女だったら、イベント及び記念日ごとにプレゼントを所望するね。そんでもって、他の人と遊びに行くときは必ず報告するようにしてもらう」
顔が思わず引き攣るのを感じる。単純に怖い。何が怖いって、俺の妹は、なんというか、割と俺に似て、人生楽しんだもん勝ちというか、あまり何かに執着しないタチなのだ。
周りの空気を壊さない程度には合わせるけれど、自分の好きなことだけをやってるタイプ。それがこんな、こと恋愛になると、束縛型というか、なんというか、女って怖い。
「えー……と、つまり、お前彼氏できたってこと?」
「出来てない。片思い。多分」
「多分って」
「脈なしじゃ無いと思うんだけど、なんか、人のことは分かっても自分ってなると、分かんないよね」
「ああ、成程」
台所で、恐らく調理器具を探していたのであろう音がひと段落して、今度はガシャガシャとボウルの音が聞こえてきた。普段料理の音なんて意識したこと無いけど、こうして聞くと、料理の音って、メシ作るのとお菓子作るので全然違うんだな。いや、お菓子とは限らねえのか。なんか勝手に、誰かに渡すんならお菓子って、そう思ってた。
「友達だったらさー、『それ絶対に脈アリだよ、長本くんも待ってるって、コクっちゃいなよー』とか言えるけど、自分となると、自意識過剰なんじゃないかとか、いやそうやって謙遜してる方が逆に変じゃないか、どう見ても私のこと好きじゃないかとか、ぐるぐるしちゃうよね」
「自覚してんのは良いけど、長本誰だよ」
「サッカー部のフツメン」
「イケメンじゃねえのか」
「お兄ちゃんよりカッコよくない」
「んー? それ俺のこと褒めてんの? けなしてんの?」
「事実。お兄ちゃんはフツメンの上」
あんまりにもな言い草に、思わず笑ってしまう。正直かよ。テレビでげらげらと、作りこまれた笑い声がする。別にテレビなんて見ていない。頭の中を空っぽにしたいだけだ。何だか最近、色んなことを考えすぎてお疲れの俺。学校楽しい、バスケ楽しい、生きてて楽しい。でも何か苦しい。たまに、ひどく、呼吸しにくい。心は簡単に体を裏切って、勝手に俺を息苦しくする。名前の無い、色も形も得体のしれないエネルギーが、俺の中でとぐろを巻く。
「そんで? なんかクッキーでも焼くの」
「大正解」
「わかりやすいな」
「わかりやすいから良いんじゃん。好きでも無い人にクッキー渡さないでしょ。しかもこんな時期に」
「成程。明快だな」
誕生日でも記念日でもない日に、突然付き合ってもいない奴からクッキー渡されたら、勘違いする方が難しい。俺もお菓子って、勝手に思ったくらいだし。だからこそ、渡すのは結構勇気いると思うけどな。
「迷ったんだけどね」
「何が? クッキー渡すか?」
「それもだし、何を渡すかっていうか。別にクッキーあげたいわけじゃないんだよね」
「うん? よくわかんねえな」
ガシャガシャと、音は続いている。クッキーって、こんなにずっと、何かをかき混ぜているもんなのか。ずっと、少し荒っぽい、音がする。恋をして、ウキウキしたリズムではなく、やるせない、大雨のような音だ。あらゆる感情をかき混ぜて、種を埋め込んでいる、音。
「何でもいいんだよ。ていうか、なんかさ、自分の持って���もの全部あげたくなっちゃうの」
「お前そんなボランティアキャラだっけ?」
「うっさいなあ。そうじゃなくて、その人にはってこと。その人には、自分の持ってるもの、全部あげたくってさ」
「おお、恋してんな」
「恋だよ。これはマジで恋だよ。だってさ、あげたいだけじゃなくって、全部欲しいんだよ。意味わかんくない?」
「ソレ、分かるのか分からないのか、どっちなんだよ」
「そういう感じなんだよ」
分かんねえよ。あまりにもアホらしい会話に、考える方が馬鹿らしくなってくる。勢いと感覚だけで話しすぎ。コイツはどんな顔してこんな話してんのかと、ソファから起き上がって台所に向かった俺はちょっと後悔した。
「見返りが欲しいんだよね」
想像していたより、三百倍くらい、真剣な顔をしていた。全然楽しそうじゃなかった。むしろ、嫌そうな顔をしていた。手元でクリーム色になっている何かは、もう十分に混ぜ合わさっているのに、コイツは手を止めない。俺は何故だか、この遣る瀬無い物体を見て、バスケットボールを思い出す。感情の坩堝。あらゆる衝動を詰め込んだ、一つの爆弾。
「不純すぎねえ」
「だよねえ」
このクッキーは、あのボールと同じなのだ。爆発したら、死んでしまう。誰も逃げられない、致死性の爆弾だ。それを必死に溶かして、かき混ぜて、一つの形に、閉じ込めている。
誰かはそれを、信念と呼ぶかもしれないし、執念と恐れるかもしれない。大切な気持ちをありったけ詰め込んだけれど、どうでもいい物だって、一緒に沢山入れてしまった。
それは、俺の、或いは誰かの、全てなのだ。
「自分のものあげるのなんてさ、勝手じゃん。あげればって感じ。相手が欲しくなかったら捨てるだろうしさ、はいどーぞ、はいどーもって感じで、終わりじゃん。でもさ、欲しいんだよね。相手の全部知ってなくちゃ嫌だし、自分が知らないとこ出されると、ムカつくし不安になるし、でも全部なんて無理ってわかってるから、もやもやするしさ」
ガシャン、と一際大きな音を立てて、調理器具は洗い場に放り込まれた。
「何で無理って分かってんのに欲しがるんだろうね?何で無茶って分かってんのにやろうとすんだろうね? そんで、そこまで分かってるくせに、なんで心のどっかで期待してんだろうね?」
溜息と一緒にチョコチップが放り込まれていく。この一粒が、コイツの感情で、あの一粒が、コイツの感情だ。そうやって、感情を消化している。
「むなしいわ。むなしいけど、何もしないのも耐えらんないから、クッキー。本当は、全部ぶん投げたいし、全部欲しいけど、どうしようもないから、クッキー」
あー、もー、やだやだ。そう言って笑う顔は、俺によく似ていた。本当に、馬鹿だなあ。俺もお前も。
「やっぱお前って俺の妹だわ」
「はあ? 何当然のこと言ってんの」
「欲張りで、嫉妬深くて、でもへんに計算できるから上手いこと傍目には帳尻合わせて、その癖頑固だから自分の意思は曲げれずに、最終的に勢い任せに突っ走ってる感じが」
「あー、そりゃ、私だわ」
「だろ?��ちなみに俺もだ」
「じゃあ、お兄ちゃんも恋してんの」
「してるね。こりゃ」
ほんと、やだやだって感じだよ。参っちゃうね。こんな所で、こんな形で、自覚する羽目になるなんて、な。妹ちゃん、お前のその爆弾は、思わぬところに被害を及ぼしているぞ。
「じゃあ、これあげるよ」
無造作に放り出されていた、透明な袋を一つ取って、俺の心臓に押し付けたこの爆弾魔は、やけに楽しそうな顔で笑っている。仲間ができたのが嬉しいらしい。
「十五枚セットしかなかったからそれ買っちゃったけど、別に十五回もクッキーあげる予定ないし」
まさかお兄ちゃんも恋する乙女だったとはね。それで、何か、あげればいいんじゃないの。
俺の中ではね、恋って、ハッピーピンクなイメージだったわけ。女の子がね、きゃいきゃい夢見て、男はそれにそわそわしてる。彼女欲しい、エロいことしてえって叫んで白い目で見られてさ、それ見てけたけた黄色く笑うみたいな。そう言う感じ。まあ別に何色でも良いんだ。なんかこう、しんみりした夕焼け色でも構わない。
けど、まさか、こんな戦場みたいな、沼地みたいな、何にも掬い取れない代わりに、全部に足を絡め取られるようなモンだとは思ってなかった。爆弾は俺の心臓に眠っている。
「高尾!」
「うっわ、びっくりした!」
「さっきから呼んでいるのに、お前が返事をしないからだ」
「へっ、マジ?」
「本当にどうした? 彫るのも進んでいないし、話しかけてもこないどころか、こちらが話しても気づいていないし」
「あ、あー、ごめんごめん。考え事。ぼんやりしてた」
お前のこと考えてたよ、なんて言える筈もなく、戦争と平和について考えてた、と言ったら怪訝な顔をされた。そんな顔を見れたことでさえ、なんだか嬉しくなってしまう。
全部知りたいし、全部知ってほしい。構って欲しいし、構いたい。驚く程今までの俺のアレコレは恋だったし、今だってそれの真っ最中だ。
「お前……本当に間に合わないぞ」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ、な、筈」
俺って鈍感だったんだろうか。いや、気づいては、いたと思う。俺の、この、不可解な熱に。ただそれに、恋という名前を付けるのを渋ってただけなのだ。友情ってタグを付けて、カテゴリ分けしていればよかった。その中で、親友とか、相棒とか、好き勝手なラベル貼り付けて、満足できるハズだったんだ。俺の心の中じゃ、俺が神様。俺の気持ちは、俺が決められる。それなのに、このザマ、笑っちまうね。
「ってか、真ちゃん進んだね……」
「当たり前だ。作業していたのだから」
覗き込んだキャンパスは、相変わらず、誰もいない教室。だけど、白黒から段々と色を重ねられた景色の印象は随分と違った。窓の外は青い、教室は陽が差し込んで暖かい。机の影だって、僅かに揺れて緩んでいるようだ。お前に見えている景色は、きっと、誰かが想像するより、優しい。
「あれ? 真ちゃん、ここ塗るの失敗したの?」
「ん? ああ」
画面の端、青空にはみ出して僅かに一筆塗られた橙色を指させば、真ちゃんは不本意そうな顔をした。失敗したらしい。
「端にお前を描こうと思ったんだが」
「へっ?」
「冷静に考えると、お前はいつも隣にいるから、この視界には写らないのだよ。それでやめた」
「えっ、と」
「弁当やら他の授業の時は正面にいるがな。今更この画面のど真ん中にお前を配置するのは流石に無理があるし」
「俺、描こうとしてくれたの」
「? 言わなかったか?」
「……言ってた」
冗談だろうなって、思ってたよ。
喉がからからに乾いていく。今すぐ水を飲まないといけない。水を飲まないと死んでしまう。だけど、飲んだら、吐いてしまいそうだ。俺の感情。俺の爆弾。お前は本当に、俺を殺すのがうまい。
「…………それで、失敗しちゃったんだ」
「そうだな。まあ、いいだろう、別に」
「いいの?」
「塗り直せばいいだけの話だ。油彩なのだし」
失敗したら、やり直せばいい。正解するまで、それだけの話なのだよ。
淡々と、そう言う真ちゃんは、きっと躊躇いもなく、一筆分の俺を、青空で塗りつぶすだろう。それでいい。それが正解だ。正しいものがあるなら、それに越したことはない。
俺は、後戻りできない穴を見つめて、笑っている。三角形に、深くえぐれた、穴ぼこ。俺の爆心地。
そういえば、リボン渡すの忘れてたよ。それだけ言って、妹ちゃんは部屋から出ていった。クッキーの結末は聞いてない。ちなみにおこぼれにも預かってない。
透明な袋と、きらきらしたリボンを蛍光灯に翳して考える。光が反射して、ちかちかする。そうだ。恋って、こんなイメージだった。
全部あげたいけど、無理だから、クッキー。
我が妹ながら聡明だ。それは酷く正しかった。そうして愚かな兄は、何もあげるものが見つからなかった。
おしるこ? ラッキーアイテム? 参考書? NBAのDVD? あいつが喜びそうなものはいくつも思いつくけれど、それは別に、俺があげたいものとは違う。
全部あげたい。その見返りに、全部欲しい。
信じられない強欲だ。俺は、俺そのものを与えたいのだ。あいつそのものが欲しいのだ。そんな小っ恥ずかしいことを考えて突っ伏した。信じらんねえ。自覚って怖い。恋って怖い。やばい、俺、絶対に、誰とどこに行くとか、めっちゃ聞いちゃうよ。休日の予定とか、いちいち確認しちゃうよ。俺ってもしかして、結構粘着質な束縛タイプだったのか。
どうしようにも行き詰まって、溢れたそれを持て余して、俺は、すっからかんのビニール袋に、何にもいれずにリボンを結んだ。
全部あげたい。全部欲しい。お前が好きだ。恋をしている。そんなの、言える筈も無かった。クッキーなんて、渡せてたまるか。全部が手に入らないなら、いっそ、何にも無い方がマシだ。嘘。何も無いなんて無理。だから、ラベルはお前が貼ってくれ。友情でも、相棒でも、下僕でも、まあいいや。
その透明な爆弾を、下駄箱に、誰もいない隙に、放り込んだ、空っぽの袋。名前もない、中身もないこれを、お前はただのイタズラだと思って、捨てるだろう。
*
「高尾」
「んあ、どーしたの真ちゃん」
「見ろ」
「っ、ええ!? で、ジャンボヤキソバオムレツパン!」
「人事を尽くした結果なのだよ」
「いやいや、えっ、それ限定五個のやつじゃねえの! どんな裏技使ったんだよ!」
「走った」
「や、やっぱそれかー!」
階段を登るのに三段飛ばし出来るのは、やはりアドバンテージとして強いな。そんなことを悠々と言うこいつは、本日昼飯を忘れたらしい。お前でも忘れることあるんだなって言ったら、忘れたのは母だ、とぶっきらぼうに返された。いや、鞄の中持ってんじゃん。勝手に手を伸ばしても、真ちゃんは止めなかった。やけに軽い感触と、何の反動もなく開いた蓋。
「ぶっは、えっ、うそ、こんな漫画みてえなことあんの」
「あるのだよ。目の前に」
「やっべ、中身入れ忘れるって、真ちゃんのママさんも、結構、天然っつーか、なんつーか」
「受け取った時に軽いことを指摘すれば良かったのだよ……俺のミスだ」
いや別にこれにミスとかねーだろ。そう言って笑う俺の心は穏やかだ。透明な、俺の爆弾をぶち込んだ、次の日。真ちゃんから何か言ってくることは無かった。まあ、そりゃ、当然だろう。そもそも俺からだと、わかる筈もないし。そうして、勝手に目に見えない感情を押し付けた俺は、ホンの少し、すっきりしている。
「そういや、俺多分あと二週間くらいで終わるわ、版画」
「なんだと。抜けがけか」
「抜けがけってなんだよ」
名前をつけられなかったこの日々を、俺は気に入っている。
「あ、お兄ちゃん、おかえり」
「んあ、どーしたんわざわざ」
「いや、帰ってきたらさ、封筒あったんだけど、なんかどこにも名前がなくて。間違いなのかな。でも、切手も貼ってないから、直接ウチのポスト入れたと思うんだよね。だから、お兄ちゃん、心あたり、ないかと思って」
リビングの机の上に、ひとつだけぽつりと置かれた、名前も無い、宛名も無い、緑色の封筒。緑色。緑は癒し。或いは、運命。俺の中で、緑色は一人しかいない。
「あー、もうあけた?」
「開けてない。心当た���あったら、悪いと思って」
心臓が、うるさい。あの日、黙って下駄箱にぶち込んだ筈の爆弾が、俺の胸で鳴っている。
「あ、あー、多分俺だわ。サンキュ」
「うん」
それ以上、何も聞かれなかった。俺がクッキーのこと、何にも聞かなかった、お返しとでも思っているのかもしれない。
心臓が痛い。呼吸が苦しい。
部屋に戻って、少し震える手で、開けた。中に何か、が、
入っている。
読みたくなかったけれど、見ないでいることは出来なかった。俺はもう、確信している。これは、あいつからだ。
さあ、覚悟を決めろ。
勢いのままに開けば、予想に反して、それは手紙では、なかった。いいや、手紙、なのだろうか。たった一言。見慣れた文字で、書いてあるそれは、一瞬で視界に飛び込んできた。
脳みそが処理しきれずに、その一言を、何度も何度も、読み返す。想像していた全ての言葉と違うその一言を、理解するのに、しばらく時間がかかった。
そうして、理解して、俺は思わず、笑ってしまう。
なんだよそれ、そんなの、ずるい。いいや、ずるいのは、俺だって同じだ。名前も無い、中身もない、リボンだけをかけた、空っぽの袋。宛名も無い、差出人も無い、たった一言だけの手紙。
そうだな、分からない筈が、無かった。伝わらない筈が、無かった。だって、俺とお前は、ずっと隣で、下らない話を、していた。
「ちょっと出かけてくる!」
走って飛び出す。今すぐに、伝えに行こう。
この胸の爆弾が、俺を急かす。走れ! 今にも爆発して、世界を終わらせそうな、高鳴りよ!
どうしてやろうかと思った。
まさか、バレないとでも、思ったのだろうか。俺に分かるはずが無いと、思ったのだろうか。いいや、確かに、分かる方が、おかしいのかもしれない。けれど、俺には分かる。
パスが通った時に、シュートが決まった時に、目��合った時に、或いは、教室で、下らない話を、している時に。
俺とお前が抱えていたのは、全く同じ、ものではなかったか。お前の、その自慢の目には、見えていなかったとでも、言うつもりだろうか。
いいや、違う。分かっていただろう。俺に分かったように、お前だって、知っていた筈だ。それをこんな、回りくどい手段で、俺に決めさせようというのなら、お前がずるい。
お前は本当に、ずるい男だ。
無視してやったって、よかった。むしろ、その方が簡単だ。名前も無い、中身もない空っぽの袋に、俺は好きな名前をつけることができる。名前をつけないでいることができる。
けれど、俺は案外、みっともない男なのだ。あいつがどう思っているのかはしらないが、俺は、目的のためには、手段を選ばない。大切なものが、両手をあげて飛び込んできたら、みっともなくとも、そのまま掴み取るだろう。
掴み取ってやる。後悔などしない。俺は俺に、恥じることなど一つもないのだ。
しかし、実際、どちらが我が儘だという話だ。こうやって、言葉にされる前に、甘やかしてしまうから、よくない。悟って、理解して、動いてしまう。下らないことばかりを喋る口で、お前は肝心のことを言おうとしないのだ。
そうはいくか、と、思う。
俺だけに決定権を委ねて、終わらせるなど、言語道断だ。お前の抱える感情には、お前が自分で名前をつけろ。俺は俺に、決着をつけるので手一杯なのだから。
暫く考えて、手近な便箋を手にとった。長々と、書いてやるのもにくらしい。そもそも、そう、伝わらないと、思っていることが、腹立たしい。気がつかれないと、思われていることが、腹立たしい。お前が俺を見ていたように、俺だって、お前を見ていたのだと、何故、気がつかない。大馬鹿者。
一言だけ書いた。宛名も差出人も、つけなかった。明日の帰りにでも、直接郵便受けにいれてやろう。別に、他の誰に開けられて、困るようなことは書いていない。あいつだけが、分かればいい。あいつだけが、分かることを、書いた。
さあ、この愚かな戦争に、別れを告げよう。
「お前は、リボンを結ぶのが下手くそだ」
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戦争と祖父と河童のはなし
これからお話し聞かせようと思うのは、わたしの祖父が話し聞かせてくれた祖父自身の物語ということになるでしょうか。まだわたしの幼い頃にきかせてくれたはなしで、祖父は晩年そうなったようにアルコール依存性にもなっておらず、盛んに渓流釣りにもでておりましたから、頭脳にも足腰にもかくじつに衰えが忍びよっていたとはいえ、まだまだ壮年の余力を蓄えもっていた時期になると思われます。ですから、あのきわめて寡黙だった祖父が、酒を呑んでもなお押し黙っていた祖父が、痴呆か酒かで気の触れたように語り出したとはとても思えないのです。ですから、つまり、何が言いたいかといいますと、わたしは祖父の話し聞かせてくれた物語を真実だと思っている。嘘いつわりではないと思うのです。
その日、わたしがオウム貝の貝殻へ海底の音を聴きに行こうとすると、祖父はいつものように住宅の店舗部分で趣味の彫刻をしていました(商売はほとんどが配達で済んでしまうので、お客はめったにやって来ません)。祖父の無口は当時からよく知っていましたから、勝手に貝殻に耳をあて、満足してから住宅部分にもどろうとすると、珍しいことに祖父がちょっとと呼び止める。
ーこれ、なんだと思うら?
ー河童、かな
ーそうだら、河童だら
祖父はフクロウやニホンオオカミや、あるいは河童など、一風変わった動物を好んで彫っていました。
そして、学徒動員って知ってるら、と唐突に祖父の物語がはじまったのです。わたしは学校の図書館で不覚にも『はだしのゲン』を読んでしまい、一���はノイローゼになって窓硝子にも近づけなくなるほどでしたから、戦争についてあるていどの知識はありました。
おらは、と祖父はとくとくと語り続けました。
終戦の間際の頃、村の有志たちといっしょに学生志願兵として遠州地方の生まれ故郷を飛び出しました。目指すは浦賀、そこへ学徒動員のための訓練兵が集っていたのです。灰色の空高くを空襲へ向かうB-29の隊連が黒い機影となって通過するのを幾度と眺めながらの、何十日間かけての徒歩での行程でした。それでも足どりは軽いものでした。何しろお国のため、天皇陛下のためですから、意気揚々と歩みを進める。時にはだだっ広い田園地帯のさなかで偵察中のアメリカ機から機銃掃射を受けることもありましたが、天皇陛下万歳と叫べば、銃弾はふしぎと我々のからだをよけていくのでした。
長い旅と幾たびもの野宿に疲れはてていた我々でしたが、どうにかこうにか浦賀港にまで辿り着くと、たちまち疲れは吹き飛びました。横須賀一帯は大規模な空襲を受けたときいていましたが、浦賀の海には水上を埋め尽くすほどの軍艦が大日本帝国の国旗を潮風に雄大にはためかせていたのです。その光景を目の当たりにした我々は、その場で大きく万歳、万歳と、万歳を幾度も繰り返しました。
訓練所に入寮すると、さっそくボロのモンペに代わって格好良い軍服が支給されました。これを身に纏っただけで、もう戦争に勝った思いがしたものでした。
さて、訓練がはじまり、初日こそはどうにか持ち堪えたものの、三日目には来る場所を間違えてしまったと確信しました。そこでの訓練はとても練兵と呼べたものではなく、如何にして死ぬかを叩き込まれるものだったのです。これでは命がいくつあっても足りはしない、実際つまらないことで上官に恥をかかせた訓練兵が実演習と称して手榴弾を引かされ爆死しました。
その爆死を目の当たりにした翌日、わたしと村でいちばん仲の良かった為三は脱走を企だてました。こんな馬鹿げたところにいるぐらいなら非国民になったほうがましだ、と為三は言い放ちました。それから数時間後、為三は歩哨の兵に射殺され、わたしだけが辛うじて訓練所から脱走することができました。脱走の直前に、どちらかが死んでもいいようにあらかじめ交換しておいた為三の家族への手紙を握りしめながら、見晴らしのよい場所を避けて、身を隠しやすそうな山のほうへ、山のほうへと必死になって走り続けました。
いったいどれぐらい走ったことでしょう、気がつくと土砂降りの大雨のなかをひとり疾駆していました。周囲は深い灰色いブルーの一色で、この雨がわたしを追手から逃してくれたのだと不意に悟りました。機械仕掛けの運動のように駆け続けていた足の歩幅を徐々に狭め、半ば強引に立ち止まると、真っ直ぐに降りしきる雨の線をようやく感じました。じぶんがこうして前にも後ろにも動かず、ただじっと立ち止まっていることが不思議でなりませんでした。すこしでも油断すれば、また足が勝手に駆けだしそうで、駆けだしそうで。そうなりそうになるのをぐっと堪えながら、唯々目のまえをしきりに流れてゆく雨の線を眺めました。
やがて、雨があがり、ここがいったい何処なのかはともかく、山間の森のなかにいるらしいことが知れました。ボタボタッと樹々から雨の滴が落下し、すぐ近くの沼には水に浮いた睡蓮の群れが水玉の雫を葉の表面にいくつもたたえている。もう死んでいるのかもしれないと本気で考えました。よもや走りながらに死んでいて、今更になって死んだことに気づいたのか。ところが、たしかに息をしているし、両足で立っている、何よりもびしょ濡れで居心地の悪い軍服が生きていることを物語っている。
ーヘイ、ジャップ!
死んだ心地も束の間、背後からの唐突な呼び声に心臓が縮み上がった。でも、たとえ逃亡兵相手とはいえ、日本兵がジャップなんて物言いはするだろうか。懼るおそる両手をあげてふりかえると、そこには戦前の映画でみたことのある西部劇の農家のような格好(色褪せた水色のジーンズに野球帽をかぶって、腰には黒皮のウエストポーチをまわしている)をした河童が立っていました。河童はおもむろにウエストポーチから笹の葉に包まれた握り飯とキュウリの一本漬けを差し出して、食うか、と言った。(ごめんなさい、ここはさすがに脚色で、じっさいにはただ食い物を差し出されたとしか聞かされていません)その途端にも腹がぐううと鳴ったのは言うまでもありません。ただでさえ少量の配給に、その日は日がな一日何も食べていなかったのです。
食べながらでいいから聞け、と河童は言いました。ずっとお前のことを後からつけてきた。今日は逃げ切れたかもしれないが、その格好ではいずれ捕まってしまうだろう。だから服を交換してやる。この格好なら逃亡兵とは気づかれまい。まもなく日が暮れる。今宵はこの沼で宿をとるといい、すぐ近くに眠るのに丁度よい洞穴がある。食って着替えたら案内しよう。明日になったら、我ら河童一族に伝わる釣りの極意を教えよう。これさえ覚えてしまえば、しばらくは食いっぱぐれることもあるまい。
河童と服を取り換えながら、何故こんなに親切にしてくれるのか、と尋ねると、お前のあたまのてっぺんには皿がふたつある(おそらく、つむじのことだと思われます)。皿のふたつある人間は、まだ人と河童の分け隔てなかった時代の、いにしえの河童の子孫である証拠だ、と言う。ついでにこの服はどうしたのか、尋ねると、戦争の始まる前、渡日中のアメリカ人に相撲で勝利して、尻子玉を抜くかわりに巻きあげたのだそうだ。とても気に入っていたが、同胞のためなら仕方がない、せいぜい大切にしてくれ、と河童はさいごに付け加えました。
翌朝は稀にみる晴天となり、河童から釣りの極意を学ぶこと二十九つ。余すところ七十もの(すなわち全部で九十九の)奥義があるといいますが、差し当たりはこれだけで十分だろうということでした。それから三日三晩、山間の釣りの要所を河童と巡りながら、実演を交えた練習をして、三日目の月のでた晩に河童は山奥深くの滝の上から滝壺の中へと消えてゆきました。
逃亡兵の身分では平地の里へは下りて行かれませんから、人里離れた山から山をつたって故郷の遠州地方を目指しました。その帰省の旅は、平地を歩いた行きの旅とは比べものにならない多難な道のりで、あっというまに季節がひとつ、ふたつと過ぎ去ってゆきました。しかし河童のお陰で食料には不自由なく、ときには戸籍を持たないサンカと呼ばれる放浪民の集団と鉢合わせることもあり、物々交換でシカやイノシシの肉にありつけることすらありました。
ところが、みっつめの季節が過ぎ去ろうという頃、どうしても米が食べたくて食べたくて仕方なくなり、ついつい平地の里へ下りていくと、よそよそしい態度が祟ったのかあっさりと憲兵に捕まってしまったのです。そこでもう堪忍して浦賀の訓練所から脱走してきたことを洗いざらい白状すると、憲兵は呆れたように笑いながら言うのです。原爆の投下、ソ連軍の参戦、日本軍の降伏、玉音放送、それらをこの時いちどきに知りました。わたしが山間で釣りをしながら逃亡の旅を続けているあいだに、日本国はポツダム宣言を受諾して大東亜戦争に終止符を打っていたというのです。1945年の夏が過ぎ、涼しさのこみ上げてくる季節でした。わたしは憲兵に捕まるどころか帰りの汽車の切符まで持たされて無事に故郷に帰ることができました。
ひとしきり話し終えると、祖父はわたしの頭を撫でながら言いました。
ーお前さんの頭にも皿がふたつあるら。ほれ、おらの頭にもふたつある
そう言って野球帽を外した祖父の頭はとうに禿げあがり、ふたつのつむじの位置はおろか、むしろ、河童の頭そのもののようにみえるのでした。
晩年の祖父は先にもいった通り、アルコール依存性と痴呆を併発して、誰にも黙ったままふいにどこかへ消えてしまうのでした。家を探すと釣り道具がないので、どうやら渓流釣りに出かけたらしい。でも、あんなからだで、酒気帯びで車の運転だってままならないのに。ひと晩じゅう帰って来ないなんてこともままあり、とうとう急流にでも流されたのか、祖母と母が耐えかねて捜索願いを出そうする。そんな祖母たちを父がよく宥めていました。お義父さんの釣りの腕前は確かですから、川で死ぬなんてことはありえませんよ、と。父は海釣りが専門でしたが、釣りにかけては専門誌にも紹介されるほどの腕前で、そんな父をもってすら、お義父さんの釣りの技術は凄いと唸るのでした。
度重なる失踪のせいで祖父は運転免許を取り上げられ、ついでに祖母の手で家じゅうのお酒も隠されてしまいました。それでも所有の裏山までよったよったと歩いて出かけてゆき、祖母のはなしでは裏山の小屋にお酒を隠してこっそり飲んでいるんだわ、と。
まもなく祖父は風邪を拗らせて肺炎であっけなく亡くなりました。棺のなかの祖父は白い死装束こそ身にまとっていましたが、その上から色褪せた水色のジーンズと黒皮のウエストポーチと野球帽とが被せられ、いつもと大して変わらない姿で火葬場に入っていきました。祖父が生涯に渡り身につけたトレードマークたちを棺に一緒に納めるなんて、ずいぶんと気の利いた演出だと思い、いったい誰が発案したのか家族に尋ねてまわると、遺書にそうするように記してあったということでした。
祖父の死後、祖父の管理していた裏山の手入れが行き届かなくなり、季節ごとに結構な量の栗や果物が実っては無駄に落ちるだけで勿体ないということになりました。そこで祖母は、ほとんどタダも同然の値段で駆けだしの若い農家に裏山を丸ごと貸してやり、収穫も好きにしていいという契約を交わしたのですが、数ヶ月が経つと、若者が逃げるように裏山を離れてゆく。そんなことが二度三度と続いたのです。
このお話は祖父から話し聞いたことを書き記したものですが、何しろ幼い頃のことで記憶が曖昧な部分もあります。そこでわたしと同じく祖父のはなしをきいた祖父の弟が、戦後に祖父と為三の物語を自費出版した『軍靴の響き』という小説を参考にしている部分があります。その小説にはやはり河童は出てこず、祖父もあの小説は嘘っぱちだとぼやいていたのですが。
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松田学さんよりシェア
素っ気ない内容の先日の所信表明演説、期待された国家ビジョンが不発で、また自助共助公助で終わったのをみても、今回、江崎道朗さんからベトナムとインドネシア訪問に関する議論を聞いても、菅さんは不言実行スタイルの総理なのか…。
ただ、その実行という面は凄まじいものがあるかもしれないと思わせるのが今回の外遊。
安倍前総理のときに2016年にはインド太平洋「戦略」と言っていたのが、18年には「構想」となり、今回の所信表明では「インド太平洋」と素っ気ない地理の名称に変わったのも、実は、本格的に対中包囲網を実行するため。
菅総理がアジア版NATOを反中包囲網になるとして否定したことを保守派は批判しているようですが、とんでもない。
日本政府が着々と積み重ねていることについて無知なまま、言葉だけが勇ましいのが愛国保守だといったような空回りにくれぐれもならないよう、この対談番組をぜひ、ご覧いただければと思います。
「菅首相初外遊は東南アジア これは極めて戦略的な外交だ!」(ゲスト:評論家 江崎道朗氏)、こちらです↓
なぜ最初にベトナム、インドネシアだったのか。クアッド。これは2010年代からあるが、安倍総理のダイヤモンドセキュリティ構想で安全保障の色彩が強まったもの。
一つは米大統領選。トランプ、バイデンどちらになっても日本は対応できなければならない。
なぜトランプが安倍総理を評価したか。対中国を考えるとインドとアセアンを巻き込む必要。
インドと米国は関係悪い。アセアンは米国大嫌い。マレーシアも米国大嫌い。インドネシアも基本的に米国嫌い。ドュテルテも米国嫌い。みんなそうである。
とりわけインドはモディ、政党はBJP。これはナショナリズムが強く、核武装に踏み切った政権。そのとき、経済制裁を米国から食らった。中国に対抗するためだったのに。
それでナショナリストはみんな反米になった。BJP系のインドにとっては米国は信用ならない国。日本に対しては親近感。インドは中国と紛争抱えていても米国とは組みたくない。
マレーシアは通貨危機でやられた。米国の金融資本は嫌。インドネシアはイスラムの国。無神論の中国はいやだが、十字軍は嫌い。ベトナムはベトナム戦争でやられた国。
みんなアセアン諸国の実態をわかっていない。
タイ以外は対中包囲網を米国が言っても乗らない。アセアン、インドシナ諸国の状況を日本人は知らない。韓国中国には関心持つが。政治家も突っ込んだ話をこの地域の国々とはしない。
米国はやりたいけど、できない。インド太平洋は安倍さんのイニシアチブ。
彼らを仲間に引き込むことができるまのは日本だけ。だから米国は乗るしかなかった。
彼らは日本が言うなら乗ってもいいかなとなる。
アジア太平洋を味方につけるとき、日本が重要なのはトランプもバイデンも同じ。
菅さんはまずはポンペオと日米同盟を固め、そして…と非常に戦略的な外交���やっている。
この地域は「力によらず」…と述べて、名指しは避けつつ中国の南シナ海進出をもろに批判。中国側は沈黙。
中国に対して、自分たちはアセアンやインドと組みながら、平和的にやっているのに、尖閣は力でやっているではないかとのメッセージ。戦略的なメッセージ。
米国にとって必要なことをちゃんとわかってますよ、やってますよという両大統領候補に対するメッセージ。
アジア版NATOに対して自分は反中包囲網はしないと言った。
実は、反中と言ったとたんに東南アジアは日本と組めなくなる。中国からの報復が怖い。日本と違って彼らは小国。日本は中国に対して結構平気。彼らは違う。
彼らが中国に対して何か言っても、国際ニュースとして相手にされない。
ジョコウィはインド中国対等外交。金融とサプライチェーンは華僑が握っている。これは中国に国が牛耳られている状態。これへの対抗としてインドと手を組むという基本政策。中国を批判しない代わりにインドを巻き込む。
日本が「反中」といったとたんに、米中対立に巻き込まないでくれとなる。
インドもそう。中印国境紛争に仲介しましょうかとトランプが働きかけても、モディは即、拒否。どことも同盟関係を結ばない国。アジアの覇者は自分だと思っている国だから。
反中包囲網と言わないで、実質的に取り込むことが大事。保守派の人たちは反中だと言うことのほうが大事だと思っているようだ。現実に巻き込むことが大事。
菅さんが10月19日に中国をやんわりと批判した同じ日に4つのことが起こっている。いずれも10月19日と20日。
その1。米国海軍と日本の海上自衛隊と豪州海軍が南シナ海で合同演習。菅の言っていることを米国と豪州は全面的にバックアップとのメッセージ。菅さんは米国と豪州と日本の軍まで連れてきている。菅は口先の男ではない…となる。
その2。まさにこの日、インド国防相が声明。日米豪で毎年やっている合同演習に今年はインドも入ると。マラパールというインド洋での合同演習をやる。
中国軍がインド洋に来るようになっている。これをけん制する能力はインドにはない。インド海軍の能力構築をやってきたのは日本と豪州。能力構築支援。これからはODAという経済支援ではなく、軍事と治安組織、テロ対策でもやりますと、安倍前総理がインドに言っていた。だから、クアッドになっていった。
その3。岸防衛大臣が豪州国防相と会談。今後は豪州海軍も守る。日米の枠組みを、日米豪にした。集団的自衛権の枠組みを作ったので、日米から日米豪にしますということを確認。これも19日。
その4。その翌日、これらを受けて、米国のビーガンがクアッドに触れて、今後定例化して公式化すると述べた。
19日と20日、全部つながっている。総理の外遊に合わせて米豪印が一斉に動いている。そういう状態の中で対中国の戦略的枠組みができていることを見事に示した。
ベトナムから見ても、日本は日本だけで来ているのではない。この枠組みで来ている。
日本のメディアはバラバラに見ていて、連動しているとは報道していないが、これはすごい話。
菅さんが外交音痴?現実をみてもらったほうがいい。現実が動いている。日本の外務省や防衛省がどれだけインドなどと積み重ねてきたか。凄まじい積み重ねをやっている。まさにDIME(外交、インテリジェンス、軍事、経済を一体的戦略的に遂行)が起動している。
ベトナムの首相と菅さんは何を話したか。解決しましょうという案件が12ある。
その1。裁判制度。ベトナムは共産党政権なので裁判が独立しておらず、汚職などいろいろな問題。企業が進出してもつかまってしまう危険性。安心してベトナムに進出できるよう。裁判制度を改善。共産党による不法な逮捕や嫌がらせをしない。法の支配の話。
その2。公安。日本人をスパイとして取り締まったり、いやがらせをしたり。両国の警察公安が連携しながら、いやがらせをやらせない。法執行の面でも。
中国と立ち向かうからベトナムは味方だというような単純な見方はしていない。一党独裁の改革をしないと、よい関係は難しいということを押さえる。ベトナムとしても中国に対抗するためには、日本と、そのバックにいる米豪が必要。それを得たいなら、裁判制度と警察を改革しろよ。なんでもいいからお金を渡すような愚かなことをしない。
その3。港湾。サプライチェーンの問題。中国からの移転を日本だけでなくベトナムなどにも移動させていく。問題になるのは、一党独裁ゆえに規制が多いこと。港の整備だけでなく、物流インフラをやってあげます���それなくば、生産拠点を日本から移せない。
その4。工業団地。整備に日本は協力。日本企業が移せるような環境整備に協力するのだから、いやがらせはやめよ。ベトナムの経済も大きくなるのだから。ベトナムは決して善意の国ではない。
その5。発電所。
以上、全部、理にかなっている。その国の発展に資するために、日本の国益にプラスになるためにベトナムに来たんだ。ちゃんとみていく。
その6。防衛装備品。これは軍支援。全部ロシア製の中で米国製を買わない。装備品とは、それを扱うノウハウのこと。軍事顧問団として日本がベトナムに協力する。事実上、ベトナム軍に入る。これも了解。
ここまでやっても菅さんは反中でないというのか。
安倍前総理のもとでNSC設立。NSS、経済班。この辺りの問題に関するシナリオを作っているのは経済班。
法務省、警察、国交省、経産省、防衛省、外務省…省庁挙げてベトナムの取り込みに。各省庁ごとの積み上げではなく、日本国家として明確にベトナムを取り込む。
これは菅さんがすごいというだけでなく、安倍政権の時に確立したDIMEの成果。四つを組み合わせる。金渡すだけでどうなっているかわからない状態からの卒業。
…反中か親中かなどと言っているうちに、日本政府はもうすでに先を行っていて、やっています。それを踏まえずしてリアルな議論はできないでしょう。大戦後、戦略性をすっかり喪失していた日本が、ここまで来ています。習近平の訪日の是非を含め、これから中国に関しては色々な議論が出てくると思いますが、日本政府が冷静に「不言実行」で進んでいることを、頭のどこかに置いておくべきでしょう。
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この世で最も大切なもの
それはバックアップデータです。
おはようございます、30期の木下愛梨(通称:きりみ。)です!…あれ?おはようございます?
すみません…こんなはずじゃ……こんなはずじゃなかったんだ!!私、役者紹介はとっくに下書きが終わっているということで昨日の投稿を当てられたのですが、さぁメモ帳からコピーしようという段階で間違って「切り取り」をタップしてしまいました。さらにパニクった私は何故かそのまま保存してしまいました。もちろん役者紹介は消えました。まぁまぁの人数分消えました。詰んだーーー。どんなものでもバックアップをとることは大切ですね。内容を思い出してひたすら入力する作業、なんともいえない悲しさですよ。皆さんは大切なレポートのデータとか飛ばさないように気をつけてくださいね!
そんなこんなでなんとか自力で復元した役者紹介でございます。今回は新歓公演ということで、役者としての姿と先輩としての姿、その両面から紹介していきたいと思いますよっ!しばしお付き合いくださいませ〜♪
●森中社(29期,法)ニックネーム:ジンジャー
ちゃうかのラブコメ作家といえばこの人でしょう!会社名ではなく「もりなかやしろ」さんです。すっかり脚本・演出の人という感じですが、役者としてもすごいのよ!学外公演で演じていた酒呑童子は本当にかっこよかった!普段はマスコットキャラみたいな先輩。この前天王寺動物園でトドだかセイウチだかを見たとき、この人に似てるなぁと思ってしまいました。
●児玉桃香(29期,文)ニックネーム:ぺちか
今年のうちの看板女優はこの人(※あくまで個人の感想です)!可愛いんだけどそれだけじゃないぜって感じの役者。その演技は、男も女も虜にするでしょう。まぁとにかく一度ご覧下さい◎普段は、溢れる「彼女感」がはんぱない先輩。女の子っぽい服のときとラフな格好のときのギャップがたまらん可愛い。初対面での話しやすさはトップクラスだと思う(経験者は語る)!
●渡部快平(30期,経)ニックネーム:ワカ
私は認めていないがイケメン!高身長(1820mm)イケボ経済学部、つまりイケメン!当初はクールな男かと思われていたが、なかなか弾けた演技もする役者。過去公演もぜひチェックして頂きたい!普段は、優しいお兄さんって感じの先輩になると思うけど、たまにキャラブレするので注意。舞台監督として厳しい姿も見せつつ、自由な私たちをきちんとまとめあげている。
●古家健作(30期,経)ニックネーム:あずぁす、Google(どっちも呼ばれてない)
さっきの渡部快平と並ぶ、30期の二大イケメン!公演終了後、いちばんかっこよかったって言われがちな役者。ちゃうか屈指の遅刻魔でありながら、演出補佐としてはその実力を遺憾なく発揮している。普段は「なんだこいつ……ただ者じゃねぇッ」って感じの先輩になるんじゃないかな。写真の腕がそんなに良くなくても彼はなんかかっこよく映るので、撮りたくなる。
●遠藤由己(29期,工・環エネ)ニックネーム:えんDo
ミスターオリジナリティ!表情と動きのコミカルさが特徴で、他の人にはなかなか真似できない役者。いい人やクレイジーキャラがテッパンかなぁ?普段は優しくて、「まぁなんとかなるんじゃね?」って言ってそうな先輩。言ってるかどうかは知らん。何を隠そう、このお方こそ我らが座長である!いつも太陽みたいな笑顔でちゃうかちゃわんを明るく支えてくれている。
●久保伊織(29期,人科)ニックネーム:イッヒ、ミッフィ、久保マッチョ(中略)伊織(後略)
ちゃうか随一のイケボの持ち主。演技の幅は広く、イケメンな役も似合うけれど、個人的にはむしろばりばりネタキャラの方が好きだなーと思う役者。普段はマッチョ紳士な副座長で、ポイ○ルを常に持ち歩いている。そんなポイフ○お兄さんは非常にデキる男。「困った時は久保伊織」みたいなとこある。全然怒らないからいつもおちょくってしまうけど、尊敬している。
●小澤祐貴(30期,工・電情)ニックネーム:オッズ
ちゃうかのツッコミマスター!難しいツッコミでも簡単そうにやってのけ、どんな役も彼色に染めてしまうタイプの役者。彼の代読をすると、彼が如何に凄いかを実感する。その無表情の裏にはアツいアドリブ魂と笑いの創造力を秘めているよ!普段は取っ付きにくい先輩…と見せかけて「なんやこの人めっちゃおもろい!」ってなると思う。後出しジャンケンみたいね。
●樹木キキ(30期,文)ニックネーム:キキ
群馬が産んだギャグマシーン!舞台上でいちばん可愛いのがこの子(公式)。たとえセリフが少なくても、観る者に鮮烈な印象を残していく役者。凄いと思う。でもそろそろこの子がヒロインの舞台も観てみたい気がする。普段は笑いに貪欲でありながらも品の良さを感じる、とてもキュートな先輩になるでしょう。似てるのかどうかよくわからんモノマネも可愛いからOK!
●三葛麻衣(30期,外・スペ)ニックネーム:きらら
圧倒的コメディヒロイン。メンヘラ情緒不安定ハイテンションキャラが上手いと思う。変顔やコントなど体を張って笑いを取りに行く傍ら、確かな演技力を見せている役者。普段は、「キラキラ外語女子…うっ眩し…くない!?」って感じの先輩になるでしょう。とても真面目なワーカホリック系女子です。まぁ働きすぎは良くないので、いいところだけ見習いましょう。
●髙木悠(30期,工・環エネ)ニックネーム:ばたけ
30期唯一のフォルムを持つ男。初稽古から本番までの伸び幅がいちばん大きい役者だと思う。まぁお客様は本番しか観られないので、これは言っても伝わらないんですけどね笑。普段は、新入生が話し下手でも沈黙回避できる先輩になるんじゃないかな。遊戯王と料理とメイクについて語らせたら急には止まれないぜ!あ、最近ダイエットを始めたらしい。頑張ればたけ!
●GEO(30期,工・応理)ニックネーム:GEO
身体能力高い系男子。ちゃうかの誰よりも高く飛べるよ!振り付けにジャンプがあると、彼だけ滞空時間がおかしくなるらしい。もし松岡修造役があったら絶対こいつに回ってくるだろうなって感じの役者(?)。普段は、新入生の憧れをかっさらっていく先輩になりそう。コミュ力と意識が高い。忙しい人だからあまり会えないかもしれないけど、絶対すぐ仲良くなれる。
●Airman(30期,基礎工・情)ニックネーム:エアーマン
史上最恐の奇才!ヤベェ奴の役がデフォルトな役者。脚本の段階でヤベェ役が、彼の演技によってよりヤベェ完成体となる。しかし奇行に惑わされず顔面だけ見てみると実は結構可愛かったり?普段は、後輩にも敬語で喋る先輩になりそう。いろいろ勢いが凄いので新入生は最初ヒくかもしれませんけど(笑)、すぐにめちゃくちゃいい奴だって分かるのでご安心ください◎
●初田和大(29期,工・応理)ニックネーム:Z
ちゃうかの騒音源!いるとうるさいがいないと寂しい。全身タイツ&ドーラン(顔用塗料)の装備率と劇中死亡率が高い役者。私にとって、ちゃうか本公演共演率100%の人。普段は、ぐいぐい来る割に引くところを弁えているため絡みやすい先輩。いつも(無駄に)元気なのに、最近は少しお疲れのご様子…私が所属する班のチーフなので、公演が終わったら労わってあげたい。
●音川(29期,文)ニックネーム:こりん
29期ナンバーワンパワープレイヤー(らしい)!男共が引き抜けなかった聖剣を引き抜いた過去を持つんだとか。可愛さとかっこよさを兼ね備えた役者です。ダンスや殺陣などで発揮される動きのキレが素晴らしい。普段は、人のことをよく見ていてくれる先輩。ちょっと沈んでいるときにはすぐに声をかけてくれたり、いいお姉ちゃんって感じ!でも誰よりもミニサイズ!
●木下愛梨(30期,工・環エネ)ニックネーム:きりみ。
GEOいわく、ちゃうか唯一の魚類。ちゃうかちゃわんの哺乳類率が100%にならない原因はこいつらしい。あ、これが私ね。人工知能・鬼女・黒猫・魔法少女と、普通の人間をまだ演じたことがない役者。早く人間になりた…って誰がベムやねん!普段は、方向音痴極めた世話の焼ける先輩になるでしょう。誰かと一緒に出かける時は、たとえ後輩でもその人を頼りにする予定。
●lulu(30期,法)ニックネーム:lulu
圧倒的正統派ヒロイン!なんと2018年度に出演した舞台の半数以上でヒロインを演じている。最年少とは思えない貫禄を見せる役者。普段は、一部(の性癖)に刺さる先輩になりそうな予感?従順なイヌよりも歯向かってくる者をねじ伏せる方がお好きらしい。…あれ、こんなこと言ってたかしら。なんか違う気がするけどとりあえずそんな感じの子!でもとても可愛いよ!
はい、役者は以上でございます。ただし、今回は出ていなくても個性的で素敵な役者は他にもたくさんいます◎その一例が以下ですね。
●小林秋人(30期,工・環エネ)ニックネーム:ハーベスト、長谷部
30期のアイドル!?みんな大好きハーベストは今回、照明操作です。滑舌とイントネーションと表情筋に悩みながらもひたむきに稽古に取り組み成長を続ける役者。普段はツッコミがボケみたいな人なので、いじりがいのある先輩になりそう!まぁめっちゃいい奴だから後輩が出来たらモテるんじゃね?なんて言われている。なんか最近本当に若くなった。見た目的に。
●町民I(29期,人科)ニックネーム:トム
ちゃうかの職人!小道具職人でありながらツッコミ職人でもある今回の音響操作さん。レジ打ちのマイムがやたら上手い役者。私とはまだ共演したことがない。普段は同期後輩関係なくいじり煽ってるけど、とても楽しい先輩。さらっと出てくるツッコミが頭良くてほんと職人、憧れる!いつも着ているウインドブレーカーは、開閉したくなる絶妙な位置にチャックがある。
●あみ(30期,工・地総)ニックネーム:ドンキー、あみちゃん
30期バ畜三銃士のひとり。何気にキャパシティが半端ない彼は今回、映像操作を担当します。可愛い役ならお任せあれ♡って感じの役者。でもあみちゃん、歴とした男の子です。普段は、雑に扱ってもいいような気がする先輩になるでしょう。ドMなのかなんなのか、自分に冷たい人が大好きみたい。それとも大好きな人がたまたまあみちゃんに冷たいのかな。分かんねーや!
さてさて、本来ならもうスタッフも不参加も含めてちゃうか民を全員紹介したいところですが、みなさんそろそろ飽きてくる頃でしょう。というか、どんな役者かなんて観に来てくださったお客様が自分の感覚で決めることですから!いや、ここまで書いておいてなんやねんって話ですけども…。とにかく、1年前の私が惚れたちゃうかちゃわんを、今度は皆さんに観て頂きたいです。ぜひご自分の目でお確かめください!今日から3日間、大集会室でお待ちしております♪
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クソ回文
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『部分的にそう』
あなたのことは前からそんなに好きじゃなかったし、と、呆気ないほど素っ気なく恋の幕は閉じられた。情けない姿を晒すまいと閉じ込めていた気持ちはいつのまにか溢れだしていて、ただ黙って、告白の舞台として僕が指定した中庭をとぼとぼと歩いて帰るしかなかった自分が、本当は一番情けなかった。 忘れなければいけないのだろう。本当は、忘れなければ大変なことになると、自分でもそう分かっているはずなのに、高嶺の花相手に挑んだ無謀な恋愛の後遺症は、僕が思ったよりも強く深く抉れた傷を僕に与えてきた。まるで誰も足を踏み入れることができない山岳地帯に咲いている白いサザンカを自らのものにするために、命懸けでそこに分け入っていったら、何か逆らえない神の逆鱗に触れたような重力で全身を強打したみたいな、そんな痛々しい気分だった。 じゃあ、なんであんなに気のあるフリをしたんだよ! ああいうことをするから、僕みたいに勘違いして傷つく奴が出るんだろ、って。そうは思わないかい、──。 僕は路傍にあった石ころ、その全てを転がして、晴れない気持ちを全てそこに籠めるかのように、制服が汚れるかもしれないという懸念も頭に浮かぶことなく水溜りの方へシュートしてみせた。瞬間、汚い水しぶきが上がるのを見たが、もちろんそんなものでは何の気休めにもなりやしなかった。 家に帰って来てから、晩御飯を食べる気力もなかった。休んだ部活の同級生から来たメッセージを横目で消していくだけで、なんとなく精一杯だったから。きょうのことがなかったことに出来たなら、ちょっとは楽なのにな。告白した相手に僕の感情が漏れていたなら、正直、女々しいんじゃないの? って言われてしまいそうだった。 晩夏の夕空にかかった飛行機雲を見ながら、明日は雨なら学校に行かない、と憂鬱な気持ちを飛ばしていった。コップに注いだ強めの炭酸水の泡が抜けていく音が、魂の抜けていくような気持ちと重なって哀しい。名前のない感情が、声のない声に漏れ出ている。 力の抜けた片手で、さっき落としたスマホを拾い上げる。相変わらずメッセージを読む気力はない。 しかし、メッセージアプリの上のほうにいつも表示されている広告に、今日はなぜか目がいった。その広告は、どこか気味が悪くて自分の知らない異国の言葉で飾り立てられていたけれど、イメージを示す絵だけで、すぐにそれが意味するところが分かってしまった。 そのバナーを押したときに、自分は何をしているんだ、と内なる理性が僕を押しとどめようとした。なんの未練もないはずなのに、そんなに不確実なことをしてまで知りたいなんて、どうかしている、と。 内なる衝動もそれに答える。別に、自分にはどうでもいいことに成り果てたが、恋もつい先ほどまで生きていたんだから、供養をしてあげなければいけない。それに少し時間を割くことまで否定されるのは、なんとも耐え難い、と。 自分の中で延々とループし続ける善悪の秩序に、流れる無音の精神は鎮まらないままに、耳にはサイトから流れるエキゾチックな音楽、もう発狂しそうだった。情報が整理できない。こんなところで情報を受け取ってしまったら、もう二度と自分の消し去りたい過去から逃れることが出来ないんじゃないか、と散々悩んだ挙句、結局、そのサイトに描かれている珍妙で勝ち誇ったような顔をしたランプの魔神の導きに僕は従っていった。 サイトにある「人やキャラクターを思い浮かべて」というメッセージに従って、まさにきょう振られたばかりの女子を思い浮かべ���。なんて甘えた妄想をしてしまうのだろう、と少し頭を振る。そして「スタート」の文字をタップすると、その魔神が、誰にでも簡単に答えられるような質問をしてくる。僕はそれに答えていれば、それでいいようだった。 『男性ですか?』 いいえ。 『30代ですか?』 いいえ。 『名前に漢字が入っている?』 はい。 『眼鏡をかけていますか?』 うーん、たぶん、いや絶対かけていたはず。 『セクシーなビデオに出たことがある?』 そんなの、いいえ、に決まってる。 『その人は個人的にあなたを知っている?』 これはどうだろう。僕は間違いなくあの子のことを知っていたけど、彼女が僕のことを知っていたかどうかは全く分からない。 『学生ですか?』 はい、間違いなく。 『その人は人気者ですか?』 ……たぶんそう、部分的にそう。 『その人の部活動は、体育会系?』 残念、ガチガチに文化系なんだよね。 『背は高いですか?』 はい。身長の低い僕がコンプレックスを抱くくらいには。 『さっぱりした性格?』 これも間違いなくそう。表向きに振る舞う顔は明るく利発そうな優等生だし、僕の告白を断った時だって、まるで僕の気持ちを慮ったからねと言いたげに、さらりと流れるように済ませたけれど、きっとひとりでいるときの彼女はもっとずっと暗くて深い。僕がそうなんだから、彼女もきっとそうなんだ。 『その子は、白いシュシュをしている?』 即座に自分の指は「はい」を押していた。核心をついた問いを突然ぶつけられて、処理能力を越えてしまったのだ。どぎまぎするのは、なんでこんな個人的なことを知っているんだろう、という疑念。狂気。僅かな恐怖。 誰も目にかけないほど小さなシュシュのことを思い浮かべるのは、彼女に執着しているから、どれほど細かなことでも見えてしまうくらいに見つめていたってこと。そんなことを、なんで初対面のはずの魔神が? 僕はスマホに映っている魔神の目を見ている間、ずっと密かに困惑した。だけど、偶然に当たってしまっただけのことかもしれない、と思いたい気持ちもどこか端々にはあったのも事実だった。 生唾を飲み込んだ。少し手汗をかいていた。緊張が顔以外の場所に出るのは、自覚している限りでは初めての経験だった。 『その子は、──ですか?』 やはり、か。僕は自分がしたことの重大さと軽率さに呆れかえるほど悲しんだ。しかし、同時に奇妙な達成感も味わってしまった。見つけてしまったと思うことで、失恋相手をコンピューターに学習させ、これからの彼女の人生をほんの少し変化させるくらいの、いや、バタフライエフェクトを起こすくらいのことが起こるのではないかという期待すら感じた。 だが、それだけなら僕は自己満足の自慰行為に勤しんだ虚しさで寝転んでしまってもおかしくなかったはずなのだ。無為なことだと斬り捨ててしまえば、それまでだったんだから。 僕がそれでもスマホの画面から目を離すことが出来なかったのは、彼女の顔写真を誤操作でタップしたときに表示された、彼女を象る個人情報の暴走のせいだった。 そこに出ていたデータは、名前や生年月日から、住所や電話番号、家族構成、自室の写真まで、有象無象森羅万象が全て記載されていた。 僕は、最初、それを全く信じなかった。名前や誕生日だったらまだ知れないこともないけれど、どう見ても本人しか知り得ない質問にも回答されてしまっている以上、こいつは嘘デタラメを書き記しているんじゃないかと思ったのだ。それでも何度か見返すうちに、その記述内容がどんどん彼女の本来持っている気性である根暗な性格にぴったりと当てはまるようにして見えてきてしまった。 ベンチウォーマーだった自分のことなんか見ているはずもないのに、彼女は彼女なりに「誰にでも分け隔てなく笑いかける華凛な少女」を演じようとしていたのだろう。しかし、運の悪いことに、それが僕を不機嫌にさせてしまったのだから、仕方ない。 窓の外は、スマホにくぎ付けになっている間にもう闇の中へと溶けていた。全てを凍り付かせる月の光は、ぴきり、ぴきりと心の壁まで冷気で覆う。もう、目の前のサイトがいかにして個人情報を手に入れているとか、人智を越えたものに対する畏怖とか、そういうものをすっとばして心は既に歪なほうへとねじれていた。
人を騙すつもりはない純粋な少女の姿を目で追ってしまう、そんな歪んだ独占欲のせいで、あのサイトを使った次の日から、僕は世間一般でいうところのストーカーになってしまった。そうでもしなければ、一人で満足に承認欲求も満たせやしないのだ。 いつかの歌に『怖がらないでね、好きなだけ。近づきたいだけ、気づいて』なんて歌詞があって、初めて聴いたときはまったく共感できなかったけど、今なら分かる。全て知ってしまった今だからこそ、僕には彼女にいまさら何度もアタックする勇気も根気もない代わりに、彼女のことをずっと見ていたいという気持ちだけがふつふつと湧き上がっていた。怖いくらいに、そんなことがとても純粋だと自分の中で思いあがっていたのだ。 現実にリンクしない世界の話じゃないのに、ゲームを操作している感覚を持って浮遊している。いま、自分はあの魔神が操作するアバターで、彼女は間違いなく最終ターゲットのヒロインに違いなかった。そう、視野狭窄だから、この眼にはボクとキミの二つしか映っていないのだ。 角を曲がって商店街の花屋が見えるあたりに、彼女が足繁く通う古めかしい喫茶店が見える。きっと、午後五時きっかりに彼女はこの店を出て、家に帰っていくのだ、とあのサイトに書いてあった。であれば、いつものようにここからつけていけば、彼女の一人きりの姿を独占できるに違いない、今日だってそう思っていたのだ。 そう「思っていた」と過去形になったのは、彼女が店を出たときに感じたただひとつの違和感によってだった。彼女はいつもジャムトーストとミルクティーのセットを頼んでいると書いてあったが、今日はいつもと違って口の端にストロベリージャムをつけたまま、どこか落ち着かないような気持ちでもって辺りをきょろきょろと見渡す(そのしぐさは相変わらず可愛かった)。しかしその後に、思いもかけないような光景を目にしてしまって、僕は思わず眩暈を感じた。くらくらしたのだ。 彼女は、店の中の方へ誰かを手招きしたと思ったら、財布を鞄の中に仕舞いながらドアを開けた男の手を握った。とてもその姿が仄かに輝いていて、僕は暗闇の中の宝石を見つけた気分だった。しかし、その輝きも、横にいるよく知りもしないような男のせいで一気にくすんでしまう。こ、こ、こいつは誰だ。一体、誰なんだ。俺の知らない人間を招き入れるのだけでも何か純粋なものを汚された気分になるのに、そんなに近しい距離で彼女と男が歩いているということで、もう、世の中に不条理しか感じなくなる一歩手前まで自分の心が乱されてしまう。 彼女たちに与えられた風はそのまま僕の方まで平等に吹き抜けた。そのおかげか、雨の匂いを敏感な感覚器官で感じ取るが、生憎、僕には傘がない。知り得た情報だけでは何にもならないように、いまここで降りそうな雨を防ぐには鞄を屋根代わりにしただけじゃ不十分に違いないのだった。 「僕の知らないところで……何で告白を……受けたんだ……」 僕の私怨を飲み込むほど彼女も子供じゃないことは分かっていた、つまり僕の方があまりに幼い精神のもとで行動していたことは相手にもバレているんじゃないか、と恐れながら生きていた。しかし、ここまで来てしまった今、もう止まることはできない。 僕はすぐさまスマートフォンのシャッター音が鳴らない改造カメラアプリを起動し、彼女と一緒に歩いている男の写真を撮った。もちろん、名前も、素性も、いやもしかすると僕と同じ高校であるという確証すらないのかもしれない。それでももしかしたら、彼女を『解体』したときと同じように、名前すら分からなくとも何者かが分かるはずだ、と僕は察知したのだ──本当にできるかどうかはともかく。 興奮のあまり、通信料を気にしてしまうなんてこともなく、その場で例のサイトにアクセスした。僕は、そこで先に撮ったイメージを想起し、彼女を思い浮かべたときと同じような要領で、魔神が出してくる質問にただただ淡々と答えていった。 『男性ですか?』 はい。 『背は高いですか?』 はい。 『その人は百八〇センチ以上ありましたか?』 こればかりは、平均より背が低い僕がいくら相対的にといえども評価することはできないだろう。だから、分からないとだけ言っておいた。 『人気者ですか?』 これも全く分からない。この男のことを一度も見たこともないから、判断しようがないのだ。 『眼鏡をかけていますか?』 魔神は眼鏡フェチなんだろうか? (問いに対して、)いいえ。 『あなたの近くに住んでいる人ですか?』 正直、『近く』という言葉の定義次第だろうとは思うが、まあ、あの喫茶店から出て来たのだから、近所に住んでいるという解釈でだいたい間違いはないだろう。 『その人は目つきが悪いですか?』 その質問を見たとき、少し思い当たる節があって、さっき撮った写真を拡大してみた。男の目のあたりを比べてみると、たしかに鋭くて吊り上がった狐目が特徴的だった。 『どちらかというと暗い雰囲気ですか?』 彼女といたときの彼からは、──無表情気味ではあったけれど──どこか人格に欠損のあるような後ろ暗さを持っている感じはなかった。そして彼女もそんな奴を選ぶほど落ちぶれてはいないはずなんだろうって、そう信じたいだけだった。 『その人は、あなたの大切な人の横にいますか?』 魔神はなぜこんなにも意地悪で、絶望を促すようなことで僕を揺さぶるのだろう。好きになったのに、好きになれなかったという屈辱的な現実に死にたくなるけれど、しかしそれは厳然たる事実を示しているに過ぎなかった。彼女は好きになりたかった大切な人で、その傍にあの憎き男がいたのだ。それは僕の目が捉えた紛れもない、正しいことなんだと、再び絶望の淵に突き落とされた気分だった。 そして、それが最後の質問だったようだ。僕は、魔神の考える姿を見て、この魔神は電子空間上の存在だから感情の正負もないし誰かの悪意も感じないはずなのにどうしてこんなに「悪意」の姿が見え隠れするのだろう、と訝しんだ。 数分の後、やはり僕の知らない男の名が画面に表示される。彼女と同じように顔の画像はタップすることが可能となっていて、やはりこれも彼の個人情報を確認することが出来る。 男の名を知り、その住所や電話番号、学年やクラス(僕が知らないだけで、彼は同じ高校の同級生だった)、好きなものや嫌いなもの、所属する部活動、家族構成、果てには性的嗜好やバイタルデータ、その全てを知った時に覚える慄然とした気持ちを、僕は否定しようとした。 ──イマ、ボクハナニヲシヨウトシテル? 否定しようとした気持ちは間違いなく理性だった。しかし衝動はもはやあのサイトに出て来た魔神のコントロール下にあって、彼を罰せよ、彼を憎めよ、と原始的な生存本能でもって敵対する雄を蹴散らそうとする。なぜ魔神の制御を受けていると言えるのかというと、もはや今この場所に立っている自分は、あのサイトを見て行動を起こす前の失恋したときの自分とは、まるきり行動規範が違うからだ。いくら誰を否定しようとも、それを傷つけることを選ばなかった自分が、「復讐」の二文字さえ頭によぎるくらい、それくらい海より深く山より高い嫉妬に狂わされていた。 ──オイ、オマエノテキッテノハ、アイツラダロ? 内なる声のナビゲーションは、僕を路地裏への暗がりへと誘って、そのまま潜む。 ぐらぐらと実存が脅かされる音がする。魔神が把握していた位置情報によれば、彼女と男は、喫茶店から商店街を突き抜けるかと思いきや、そこから脇道に外れて、地元でも有名な治安の悪い通りへと進んでいった。 通りの悪評は、ネットで調べなくたって、この町では暗黙のうちに知れ渡っているところだ。路には吐き捨てられたガムと鳥の糞が交互に撒き散らされていて、使い捨てられたコンドームの箱であるとか、あるいは良く知らない外国産の薬のゴミ、タバコの吸い殻、そういったものがあちらこちらにあった。何度綺麗にしたってそうなるのだから、周囲の人々もほとんど諦めているに違いない、と僕は思っている。 ──大丈夫だ、僕にやましいことなど何一つない。 そんなステートメントとは裏腹に、やましいことだらけの僕が足を進めた。 辺りは灯も少なくて、闇の青さがすぅっと浮かび上がっているのだ。その青さが、心霊現象すら思わせるくらい非人間的な冷たさを含んでいて、僕はまだ秋にもなっていないのになぜか背筋が凍るように寒かった。 慎重に、痰とかガムとか糞を踏まないように気を付けながら、彼女らの後ろをつける。もはや気づかれることが怖い、なんて地平はいつのまにか超えていた。もう、死ねない僕は幽霊になって足跡を残さずにどこにでも付いていければいいんじゃないかって、そのくらいのことはずっと考えていたのだから。 暗い路地の隙間から、一軒、また一軒と光が漏れ出しているのを僕は見た。藍色の中から浮かび上がるそれを神々し���と表現するのは、とても浅はかなことだ。なぜなら、その光は林立するラブホテルからラブホテルへとつながっていたのだから。 光を追えば、必ず彼女たちへと繋がった。それは、到底避けられないような類の天災に似ていた。月並みな表現だが、雷が落ちたときって、こんなにビリビリするものなのか、と雲一つない空に思うのだった。 そして、こんなときに限って、あの告白を断られたときに言われた台詞が思い浮かぶのだ。 「──……君って、なんで私のことが好きなの? だって、私は……君のこと、まったく知らないし、興味もないのに」 知らないわけないだろう、と思っていた。彼女のことなら何でも知っていると勘違いして告白して、そして彼女のことを全て知ることが出来たと錯覚した今もまだ、勘違いしている。きっと僕がストーカーだと彼女が知ったなら、それはそれで彼女はゾッとするだろうが、何よりそのときに僕に向けられるであろう視線で僕は瞬間冷凍されるだろうと思った。一方通行の愛でもない、まがいものを見るような顔をするだろう……、ふたりとも。 しかし、歩き出した足は止まろうともしなかった。もう、これは魔神のせいなんかではない。自らの本能が、それでも自らの愛を受け入れなかった彼女らに罰を与えんとしているのだ。 汚れっちまった悲しみに、なすところもなく日は暮れるのだ。何も生まないことは知っている。 彼の背中を目がけて、一気に距離を詰め、家から持ち出した果物ナイフを何度も突き刺す、何度も突き刺すのだ。一度じゃ、人は死なないから、念入りに、何度も刺すのを忘れずに。ついでに、目撃者となる彼女にも、そうした鋭い苦痛を分け与えてやる。誰かに返り血でバレたって構わないのだ。もはや復讐は目的であって手段でもあった。 『あなたが復讐したい相手はいますか?』 魔神に問いかけられる声がして、ふとナイフを取り出す手が止まる。……そりゃあ、もちろん、殺してやりたいほどなんだ。それをなんだ、今更どうしたんだ、と僕は少し愚痴るような表情で心の中のランプに問いかけた。 『あなたは、相手があなたのことを知っていると思いますか?』 どうだろう。彼女が僕のことを知らないはずはない──覚えていないかもしれないが──、だから彼女から男へと「こんな情けない男がいたんだよ」くらいのことは伝わっているのかもしれない。答えは『部分的にそう』ってところだろうか。 『あなたは、相手があなたのしようとしていることを知っていると思いますか?』 そんなことはない! 僕は叫びたくなるのを抑えた。 死にたくなるほど惨めで飢えた獣が何をしたって構わないと思われているのかもしれないが、相手は僕のことを「覚えていない」とか言った奴なんだから、知らないに決まってるだろうよ! 『あなたは、相手のやろうとしていることを知っていますか?』 全く、ひとつとして知らない。それが答えで、特にそれ以上のこともない。大体、相手は間抜けにも復讐されて殺される側なんだから、これ以上彼女のことを考えるのは時間の無駄だ。 もう、さっさとめった刺しにしてやりたい。だが、魔神の声は質問が終わるまで僕を離してはくれないのだ。 魔神は、突然すっとぼけたような声でこんなことを問うた。 『あなたは、いま、幸せですか?』 幸せの定義にもよるだろうな、と僕は思った。そもそも、僕の周りにある大体のことは僕が不幸になるように出来ている。それを前提にして彼女や傍にいるクソ男を恨むという今の状況は、一面的に見れば幸せとは程遠い。しかし、反対から見てみれば、彼ら彼女らさえ消してしまったなら、恨まざるを得ない対象から解放されるのだから、それを幸福と呼ぶことだって僕は厭わない。 僕はそんなことでもって、結局『部分的にそう』としか答えられないのだった。 そして、それきり魔神の声は聞こえなくなった。 僕は、魔神が何をしたかったのかさっぱり分からなかったが、それを聞いたことによって、復讐をすることの意義であるとか正統な理由を獲得することに成功したのは確かだった。 まるで霧に包まれたかのように謎深き彼女のことも、あるいは隣で見せつけるように笑って彼女の手を繋いでいる男のことも、今では僕のスマホの中にある情報によって、地獄まで追いかけてやることすら可能だって、いったい誰が想像したんだろうね? 僕は人の悪い笑みを浮かべて、鞄から想像通りに果物ナイフを取り出す。そこから何十歩か歩めば、彼の背中に、満願叶って二度と消えない傷を刻めるのだ。その瞬間に僕はこの世で受けて来た耐え難い苦悩から逃れることができるし、くだらない集団から一抜けすることもできる。ああ、ようやくこの時が来たのだ! 晴れがましい気持ちで、すっかり夜になったこの町の空気を、一度だけ大きく肺に取り入れる。……少しだけ、煙草臭かった。 恐ろしい計画は、血飛沫で清々しく終わりたかった。だから、勢いをつけて、彼の背中へと突進する構えでもって飛び込んでいった。 ぐさり。 その擬音が生じたのは、彼の背中ではなく僕のお腹であった。瞬間、内臓の中を抉られるような深く鋭い痛みと、今にも沸騰しそうな血の熱さが僕の中を駆け巡る。 イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ──イタイ──イタイ…… 「お前がやろうとしてたことなんか、全部バレてんだよ。 知ってるだろ、このアプリ?」 男は、息絶えかけている僕にとても不快な微笑みを向け、スマホの画面を見せた。朦朧とする意識と、刺された衝撃でかけていたメガネが吹っ飛んだせいで弱まった視力でも、それは確かに分かった。『部分的にそう』なんて玉虫色の回答をするつもりもない。 「ああ、知っているよ」 魔神の顔は、俺を嗤うように口角が吊り上がっていた。思い返してみれば、さっきの声は警告だったのか? ……なんにせよ、全ては、あの魔神の掌の上で出来上がっていたことであって、きっと世界のシステムの中に仕組まれていたことだったのだ。 イタイイタイイタイ……イタイイタイ……タスケテ……イタイイタイイタイイタイイタイイタイ! きっとこんな腐った路地じゃ、助けを呼んでも誰も来ない。おまけに僕は果物ナイフを持っていたから、仮に彼が罪に問われるとしても正当防衛として弁護されてしまうのだろう。 僕は意識を手放す前に、僕の中に現れた魔神に問いかけた。 『これは、僕が死ぬために仕組まれたことだったのか?』 答えは、なかった。答えるはずもなかった。これは憶測でしかないが、僕の中に魔神はいなかったのだ。あくまで、純粋な狂気が詰め合わされただけの自分を、あのサイトが後押ししただけだったのだ。 ああ、ああ、思考する能力がだんだんと弱まっていく……。 とある恋を葬るための赤い噴水が、僕の身体から吹きあがるときに──、白いサザンカが彼岸に揺れているのを見た。 その花言葉は、『あなたは私の愛を退ける』。
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azsklhjebf/awhjkilebf
先年、とある二つの一軒家にて二人の男女の遺体が見つかつたと云ふ。一方は県中央部の騒々しい住宅街にて、他方は県境近傍ののどやかな湖畔沿いにて、前者は男の家、後者は女の家、二人は夫婦でありながら既に別居状態、こゝ数年間は交流すら途絶えてゐ、知人の少ない女はもとより、男の方も仕事場の同僚に拠れば、めつきり夫人の噂を聞くことは無く、前々から変はつた人だとは思はれてゐたが、矢張りこゝ数年間は殊におかしく、気狂いのやうに意味の分からぬ戯言(たはごと)を云つて、突然息を荒げ出すことが珍しくは無かつたのださうである。司法解剖の��果から両者共に服毒自殺との判断が為され、静粛な葬儀の後、早々に、夫の方は夫の親族の眠る墓地へ、妻の方は其の母親の傍に埋葬され、今となりては地下にて眠る。死んで尚離れ〴〵になりしまゝ、如何があらむとは思へるが、残されし遺書の何方にも、さう願ふ旨が記述されてゐるとの事。幸ひ男の御両親に話を伺ふ機会に拝見した所、我々夫婦にとつて最も良い埋葬法とは、互ひを切り離し、声の聞こえ無いやうに、目の届か無いやうに、何処にゐるのかさへ分から無いやうに、存在を悟られ無いやうに地下へ埋めることのやうに思へる。願はくば此の身を其の地へ、妻の身を彼の地へ葬り給へ。心安く還りなむと柔らかな筆跡で綴られてをり、その後に、されども我妻が安らかに眠れるやう、無いとは思ふが意見の相違がある場合は譲る事にすとあり、凡そ埋葬先までは示し合はせられてゐなかつたと考へらる。交流こそ無けれども、夫婦揃つて同じ考へに至るは愛の為せる偶然か。伺つた先々に於いても、互ひの凹凸の見事に嵌つた、付け込む隙の無い夫婦でありはしたけれども死に際まで共にするとはと偲び〳〵此の事件を語る。蓋し読者の中には妻の愛など疾うに無くなつてゐると考ふる者が居ようが、当時の日記から、夫の気が狂うてからも思ひ続けてゐた事は事実にてある。けふもまた好みのけしやうをし、いつものやうにほこり一つないよう家ぢうをそうじゝ、いつものやうにふたり分のれうりを朝晩つくり、いつ連絡があつてもいゝやうに受話口の前にたゝずみ、いつたずねられてもいゝやうにゑ顔をたやさず、いつ求められてもいゝやうに体を清め、写真をながめてはため息をつく日々にたえきれなくなつてゐるやうな気さへする、向かうにあるなくなることのないみそ汁にすら思ふことおほしと記してある事から、生木を裂く心地にあつたゞらうと思はる、浅はかな推測は差し控へるべし。事実、十五もの歳の差のある夫婦なり。其れ程の歳の差なれば、例には行き違ふ日も出来るべき、理解し合へぬ事もあるべきなめれど、先達て友人の伝を辿り、男の上司に当たる大学教授の端本幸希氏に話を伺ふに、寧ろ、話してゐる内に何方と喋つてゐるのか分から無くなるまで、似通つた夫婦であつたと、又、余り似過ぎてゐるのでおつかない感じがしたとも仰る。彼の変はり者として名高い端本氏だに此のやうな印象を持たるゝのであるから、両者の差異は単に生殖器の違ひでしか無い。何故其処まで似通うてゐたか、思ふに、女側が擦り寄うてゐたからでは無いか、其れすら勝手な想像ではあれども、見初められた時分、未だ少女とも云ふべき年齢であつた事実を考慮するに、憧れにも似た心地を抱きて、知らず識らず男の考へに染まりつゝあつたのでは無いか。而して己に残つた己が別居後に開花する事も無く、正確には開花する前に、終には果敢無くなつてしまはれたのでは無いか。其の可能性があつたからこそ、男は遺書に、無いとは思ふが意見の相違があつた場合はと書いたのでは無いか。死人に口無しと云ふには少々違ひはあれど、今となりては聞くことも出来ず、矢張り想像するしかあらず。斯と云つて安易に推測するべきで無い特殊な夫婦事情に、件の事件に纏ひ付く不思議な香りの原因があるとの事、本物語は事件の解明を目的とした文章では無い事と共に此処に記す。
とばかり陽を見るのも難(むつか)しき夏の頃、同好の士が云ふに、新聞記事の隅に興味を惹くべき内容が載つてゐるとあり、大学図書館を訪れたのが、深入りをする端緒となつたのであるが、凡そ一年(ひとゝせ)の月日を経て男の家を尋ぬれば、青紅葉の美しく生え渡る季節にて、庭には大きな木陰が出来、家の壁、隣家との境に��何とも知らぬ蔓草が蔓延り、入る前より耐えられぬ心地となる。周囲の家々、地域柄を思ふと、尚更哀れに感じらる。三階建ての、黒緋(くろあけ)に似る濃い色の洋なる邸宅に加えて、日本家屋めく小さな離れあり、蔓、草、共に避けるが如く其処には生えぬ事から、此の離れが男の部屋だと察す。思ひきや其の佇まいは未だに人が住んでゐるやうで、母屋も蔓に覆はれてゐるのみで、見える壁、窓、屋根、塀、柱、どれも雨の跡すら無く、察するに単に手入れを怠つた結果か。子を失くした親は廃人のやうにて早々に発つ。扠、女の家に赴いてみれば、湖畔のほゞ湿地帯に位置するために、虫の飛び交ひが酷く、加えて木の生い茂りも酷ければ、道と云ふ道、家と云ふ家、店と云ふ店から断絶され、地平面となる湖のみ目の前に見える、侘しい日本家屋なり。蔓は伸びぬものゝ此方には竹が、皮を足元に散らしながら息苦しいまでに生ゆ。春先まで親縁の者が住み込みで遺品の整理に当たつてゐたと云ひ〳〵、筍を処理せず、其れ切り来客すら途絶えて久しいと見える、あらはに毀ち散らされ、破れ〳〵に成つた障子の隙間から中の気色を覗くに、粛として乱雑、未(いま)だ二十歳代の娘とは思へぬ程、古代の家財道具が立ち並び、褥一つ取りても平らか且つ不揃いの布に縫はれ、落つる書籍は並(な)べて茶色に染み付き、唯一の電子機器である電子風琴(オルガン)に至りては、骨董品とも云へる型にあり、女の暮らしの非情だつた事が察せらる。彼女はね、生まれる前からものすごく貧乏だつたのだよと同好の士が云ふ。事に凡そ三十年前、未(ま)だ産声すら上げられぬ頃、母親の胎内に其の種を撒きし男が絶えてしまはれた事から始まつた一家の凋落に、気づけば自身は見窄らしく、幼年期より耐へ忍ぶ事多く、汚げな身形をはひ隠しがちに、常に孤独、後年の口癖に、捨てゝも見放してはくれるなとあるは、幼き心の傷の名残だと解釈するが良からう、特徴の一つである卑屈な性格も此の時点で早くも醸成される事になる。尚、父没前の生活は定かで無い。ある者に問へば豊かな生活を送つてゐたと、別の者に聞けば買ふ物も買へぬ日々を送つてゐたと云ひ、全くの不明瞭であるが、後の母親の言動から状況は良からじ。甲斐無き人にありはしたけれど、家を譲らばこの身も、と。対照に、男の家は今よりも一層富み栄え、地元紙に拠れば、時を同じくして頂点に達すとあり、話題に上げるには未(ま)だ早いにしも、何故男が此の卑しいばかりの女に惚れたのか、抑々見る事はおろか、知る事さへ叶はぬ身の丈の違ひのみならず、既に行末も定つてゐるやうな女童の後見をするには見目悪く、事実、残された写真を見るに、美麗とも可憐とも決して形容出来ぬ其の姿は、田舎者特有の晴れぼつた顔立ちに、汚げにねぢくる髪、痩せて甚く細うなりし肢体を持ち合はせ、褒める所無く見ゆるものから、同時に、眉の甚く優しげに垂るゝ様、手付き口付きのいとつゝましやかなる様から、儚い愛嬌を感ぜられもし、世の中に良くあるやうに、斯くある少女こそ美しげに育つと見抜いてゐたのか、其れとも何者にも染まらぬ無垢な少女に変態的な欲望を抱いたのか、其れとも己とは全く趣を異にする少女に不思議な魅力を感じたのか、本人以外の口をして語るべきにあらず。湖の先に綺羅びやかに消えて行く太陽まことに美し。頑な親に捨てられ、恨みも無く独り小石を用いて遊ぶ様を、引き込まれるがまゝ湖畔沿いに佇みながらたゞ思ふ。
出会ひは唐突であつたと云ふ。時、女十二、男二十七の秋。家の様子は今と然程変はりは無かつたと云ふ。理由は定かで無けれども、酷く気を病む事があり、紅葉の名所として名にし負ふ彼の地に静養中、湖の周りを歩(あり)いてゐる内、一軒の寂れた家の屋根が見えて来、此のやうな家は今の今まであつたかと驚いて赴いてみれば、無人の如く静まり返りてゐたと云ふ。無常な心地に包まれて立ち止まつてゐると、後ろから呼ぶ声す。どちらさまでいらつしやりますかと思ひの外稚い女の声なれば、再び驚いて、振り返つて其の姿を見ゆ。残念ながら誰も其の時の様子を見た者は居らぬし、結局推測するしか無いが、女の日記帳に、なぜ、どうして、などの言葉が立ち並ぶ事から、実際に口に出した言葉もさうであつたかと思はれる。互ひに見つめ合ひながら、湖のさゞめくを聞くとは我が想像に過ぎず。後に、運命とは斯くある事を云ふのだよ、君のは全くもつて平凡で詰まら無いと惚気ける程の出会ひ、両者共に親煩ければ、静養中は密かに立ち寄りて見つゝ、種々の施しを与え、契を結び、時には遥か遠くにまで連れ出し愛づ。都会に帰りて後、暫し間を開けて逢ふ。以降、半月に一度程度の頻度で逢つてゐたとは友人の証言だが、男がありつる家に訪れる事は最早無く、一方的に女を呼び寄せては前段の離れに閉ぢ込めてしまひ、況して独り暮らし得る住処であれば、家の者すら気づきもせず。やう〳〵訝しんでみれば、酷く口上手な男に、唯一秘密を覗きける猫をして丸め込まるゝに、あの日本家屋めいた離れの中で何が起きてゐたのかは全く不明である。防音処置された一室に、幼少期より慣れ親しむ電子風琴(オルガン)あり。習はせてゐたとは男の証言にて、取り繕うた言葉には違ひはあらねども、而して女の母に嗅ぎ付けられる契機となつた事実を顧みるに、事実、事実にてありけるべし。二つの風琴(オルガン)とは二人の母の物である。読者は此の共通点、如何が思へるか。並べて世の例に漏れず、姦通の有無を疑はるゝにあたりて共に首を振らざりしを、行為に及んでゐたと解するは尤もであり、結果、其の後(ご)数年の時を隔てる宿命となるが、否定するも肯定するも、如何ともし難いやうに思へてならず、虚実をもつて引き裂かれし思ひの程、如何があらむ。男の体には火傷の痕がある。まだ幼き時、過ぎたる悪戯の一貫として火の燃え盛る焼却炉に体を押し付けらるゝに、左半身は臀部から腰、右半身に至りては肩甲骨近く且つ右腕の根を焼き焦がし、溶けた衣服が皮と肉と一体となりて泣き叫ぶが、多くは醜い瘢痕として残り、心をすら蝕みてある様にてあれば決して人に見せず、たゞ女のみ甚く心を痛めて、なぜまだこれが私にもない。なぜ彼ばかりなのか。おかしい。この世は壊れている。と思ふ事から、男の生肌を彼の離れの一室で見たは事実、然れども性交を行つてゐた事実には関係あらず、先にも云ふやう常識の通じぬ夫婦にて、例へ互ひに息を切らしながら抱き合うてゐたとしても、安易に決めつける事無かれ、事実はより捻くれるに、我々夫婦には夜の営みなど必要ない、たゞそこに居てくれさへしたらよい。抑々考へて見給へ、僅か十二歳の少女と体を混じらはせるなど強姦に相当するではないか、そんなこと、貞操観念の堅い我と彼女がするとでも思ふのかね、と語るのすら意味を持つ。後の段にて詳しく述べる。火傷の傷跡、女の心に強く残りて夜離(よが)れの日々を送るうちにも、辛きことを嘆く。此の時男の飼ひし猫が死ぬに合はせて、唯一の友人である佐伯苗香氏を事故で失ひて、予てより燻つてゐた過ぎたる悪戯を受けるが、如何に除け者にしやうとも、如何に暴力を振るはうとも笑つて済ます、又は、親より受け継がれし強情な気質を以て反逆をす、結果、心の傷となりて残るを、当時の人物の云ふ、感謝すると云ひ微笑む仕草、再び薄汚く成り行く身形なれば、時を待たずして収まる。一方の男、再び気を病みて療養との事だが、静養地に湖の沿岸を指定するは、爽やかに移ろひて行く景色のみならず、密かに女の様子をはひ隠れ見るためであるとは、夜な〳〵彷徨ひ歩(あり)いて日の上ると共に帰る行動からも、彼はそんなに辛さうにしてゐなかつたといふ端本氏の証言からも容易に理解出来る。昔人に擬へて忍び〳〵に会ひ、遣戸を引き開けて同じ月を見、時には静かな声にて歌をすら詠んでゐたと知る者は云ふ〳〵。然と思はせて実際には堂々と会うてゐたやうだが、一体誰が知つてゐやう。
端本氏の評価に拠れば物事を整理、整頓し、尚且つ其れを公の場で伝ふ能力に長けてゐたとあるを、狡猾に用いて女の教育を承りて、会ふ事を許されて後、例の屋敷に日々引き入れて教へるを、矢張り人の聞こえが程々に悪うて、家の者は当時の彼らには嫌と云ふ程困らされました。お二人ともご主人様のお言葉をお聞きになりませんから、間に立つ私がいつも被害を被つてをりました。中でも特に頭を悩ませたのは、女様の通ふ学校の先生が御出でになつた時でせうか、注意喚起をしたいとおつしやりましたが、男様は帰つてもらへと一言。もちろん引き下がりなどしませんので、しばし往来してゐると、不機嫌におなりなされた男様に、お前は云ふ事が聞けんのかと云はれ〳〵、恥を知れとも云はれ〳〵、泣く〳〵ご主人様に訴へますと、今度はあの子も色々あるからとおつしゃつて相手にしてくれません。困り果てゝかの離れに三度伺ひますと、蛻の殻のやうになつてゐまして、言訳を致しますのにどれほどの時間がかゝつた事やら、あの時ほどこの家を離れやうとしたことはありません、と語るを聞くついでに、仕事を取られし恨みも聞く。時に女、十四歳となりて既に真似事でもなく男の妻として身の回りの世話を行ひしに、部屋の清掃をすら行ふ。でなければ彼の部屋は紙くずで埋め尽くされてしまふ、私がやらなければ誰がやると云ふのか、特に雨の日は朝に行つたとしても床が見えぬ程騒然とするから、かさの増えた湖に足を取られつゝも、あの屋敷へと向かはねばならない、と義務感に駆られてゐたと云ふが、此の紙屑なるものは男の用いた計算用紙であつたことが察せられる。端本氏の云ふには、世の成り立ちを希求する学問の中でも殊更に計算量の多き分野に属し、等号の次、等号を書くまでに紙一枚、二枚を隔てるは大抵の事、時には作用の構成に半年を掛く、気力集中力を持たねば力尽く、床を紙で埋めども自然な事、男は深夜にかけても計算を行ふ、臥す間に女が片付ける。まことや女に学問を教ふに、いよ〳〵交際を公言するやうになりなば、嘗ての同僚福井大貴氏曰く、あいつは俺と同じくらゐ理解力がいゝ、なまじ完璧な馬鹿よりはあのくらゐあつてくれた方が助かる、と誇りを持つて云ふものを、されど伝へ聞くに、女は然こそ賢くは無し。当然の事、此れまで本を読むことも出来なければ、学ばうともせず、耳につく事其のまゝに過ごしければ、感覚が育たぬ。机に向うのさへ厭ふやうであれば、救ひやうもなし。世に良く云ふ、一年の勉学のみをして大学の地を踏む物語は夢物語にもならず。そも人のやり方を真似して、己の体質に合はぬ方法をし続けて何になる、全ては世の人の言葉を全て忘れる事から始まるとは男の言葉であるが、全く持つて其の通り、思慮も無く著名の人を信頼するは白痴のする業なり。女幸運にして幸ひに、傍に仕へて感覚を養ふと共に教へを受け、甚く努力をして次なる段階へと駒を進め、男は其れをも大なる声を以て福井氏などに云ひ放ちて暫し疎遠となるが、此の無学な女を才(かど)ありと言い張りしが災ひとなりて、教師と生徒の淫らな関係を訝しめらるゝに、女の傍ら痛きを強いして春の時分、桜の咲き乱るゝ丘陵地帯にて花見を行ふに引き連れて、姿を公に晒して、見目形など前評判と少々違ひければ、幾許か物足りなく感じるものゝ、元はあの地の生まれにしては華奢で愛らしく、話し掛けば押しも引きもせず至極上品に笑ひ、男の傍から離れぬを、時が経ちて場に慣るゝにやあらむ、話してゐる傍(はた)から口を挟み、思ひ浮かんだ疑問質問意見を率直に述べる、果たして誰と似通ふかなと思へば男であり、彼の端本氏の云ふ、話してゐる内に何方と喋つてゐるのか分から無くなるとは此の事、福井氏も又同様の事を思うて、この界隈はその方が都合がいゝことが多いのだけど、あの歳にして物怖ぢをしないのは逆にこちらの方が恐ろしくも感じると云ひ〳〵、あんなに言動が逸脱してゐる彼と対等に渡り会へるのは彼女だけだつただらうと思ふ、似た者夫婦だつたよとも云ふ、華奢で愛らしい女の様子、如何に見たいと思うてももうをらぬ。花見は春の凪にて穏やかに進み、紛れ込んだ一輪の花に、男も女も皆挙つて湧き上がつたとぞ。
扠、花見の際、福井氏は女の姿を一目見て大層驚いたと云ふ。此の方、男の良き古き友なれば種々の内証事を教へるに、断じて漏らしてはいけないと云ひて変はつた趣味を持つ事も語り、写真文章其の他を我に見せる、皆女に似る女性の写真なり。此れは彼かと同好の士が尋ぬるに驚いて今一度見れば、顎の形、肩の盛り方、手首の尺骨、指の関節、出ぬ尻など、どれも男性の特色を滲ませてありはするものから、目元口元頬鼻のみ見えれば矢張り女其の物の顔とのみ見ゆ。同好の士のさらに云ふ。彼は女装癖を持つてゐたのだよ、と。福井氏に拠れば元々女装癖自体は凡そ少年時代から行つてゐ、其の筋の催物にも屡々足を運んでゐたやうであるが、二十台後半、詰り女と会ひし時より隠れた趣味とは最早云へぬ程打ち込み、日常に於いさへ何処か色気を発するやうになつてゐたと云ふ。召し物も然る事ながら、髪の毛も鬘を被らぬやう長くし、手入れを怠らず。振り向けば匂ひ満つ。体を痩せに痩せさせ、骨の太きを取り繕ひ、逆に胸に至りては、何をしけるにか、詰め物をせでやはらかに丘を為す。書く文字をすらたをやかなるを、目付き口調から其の姿は強く美しき女性にて、男は元より女にも云ひ寄らるゝ事多し、或る時暴漢に襲はれ声も届かぬ室内にて衣服をひん剥かれしに、男と思はず両性具有と思はれ、暴漢の股座萎える事無く突き抜けさうになりて以来、少々隠るやうなるけれども艶やかな魅力消えること無し。たゞ何故己の女に姿を寄せてゐたのか。福井氏の写真に映る男は何れも将来妻となる者とほゞ合致、二人で写るもあれば、同じ顔をして笑ふ。昔、例の離れ屋に入らせてもらつたことがあるんだが、あの中ではあの子の服を着ていたみたいだと福井氏の云ひしが、同好の士、女もまた男物を着て、外を練り歩く。見給へ、背丈さへ揃へば男と同じだらうと、或る写真を指差すを、よう考へれば、性交の有無の一件も自ずと理解されやう。男も変態であれば、女も変態である。惟ふに変態とは体を重ねて欲を満たさず、遥かに尊い悟りの中で性の喜びを感ず。理解出来ぬならば、己に眠る真(まこと)の性癖を目醒してゐざるに過ぎず。奇しくも互ひに似通ふ変態なれば、服を取り替へ化粧をし、並々ならぬ衝動を抱ふるがまゝに、女は女となりし男の姿を、男は男となりし女の姿を、互ひに眺めるのみ、性交は無し、あらば男は女の物を、女は男の物を取りて手淫するまで、接吻だになかりけるべし。時を経て、俄に愛する者に近づきつゝある自身の姿も又、格別なるべし。福井氏は男の秘密を知る者にて、入れ代はり立ち代はり、日毎に互ひの姿を真似して恰も振り子の如く性別を入れ替へる二人と共に永平寺へ訪ねるに当たりて、ぱら〳〵と海苔の懸つた、五目飯(ちらし)の下等にはあらぬが、鮨を食ふとて暖簾を潜りて腰を下ろすに、色違ひの着物だつものを着なし、髪の長さは同じにて、同じ化粧、同じ装飾、同じ仕草、同じ気色、夕闇の小暗き店内、声すらも真似て話をするは真に恐ろしき有様、されど其れこそが彼の夫婦の性癖なれば、時折目を血走らせて熱き息を苦しげにつぐ。柿葉鮨のほのかな匂ひに、鯖の脂の旨味、酢飯の滑らかな口当たりなど、何も感じず。店の者に如何為されたと憂へらるれど、茶を飲みて取り繕ひ、共に席を立ちて厠へ向いて、返つてくれば同じ笑顔にて、此の俺の耳元の艶めかしいのが美しいと女の耳を舐りながら、此の私の鎖骨の隆々としたのが美しいと男の首を舐る、魚籠の中に鮮魚(あざらけき)は採れてゐたか。採れず、代はりに蚰蜒(げじ)の大なるが入る。ならば刺身にして食はせよ、俺も食へ。其れは天照大御(おほん)神の悪み給ふ事、斯く口賢しき書は神風にて沈む。古も斯くやは人の惑ひけむ、などゝ語り合ひしが耐へられず、先に店から出たものゝ宿にても斯くあるを、次の日になれば睦まじい男女となつて、精進料理を細やかに食す。流石に仏様の御前では煩悩を直隠(ひたかく)しにして跪く事にしたか。けふは男の姿にて、同じ器の同じ料理を同じ分量だけ箸に取りて、同じ時に口へ運ぶ。互ひに美男ではあるが、却りて無気味な心地に包まるれば、其れ切り二人を置いて逸早(いちはや)く大阪へ帰り、後の事は想像もしたく無いと嘆く。尚、当然の如く、二人の間に子供は居ない。要らぬ。此の俺に子供など、邪魔になるだけである。少しはまともな思考をしたらどうかねと子をなす事を勧めた者を邪険に扱うたが、過去に孕ませた女の子と屡々人目を偲んで会ひ、養育費教育費其の他諸々を生涯に渡つて援助し続けたとあるは、自分の妻以上の高待遇故、未だ以て理解出来ぬ事である。
純潔を守り通す事がどれ程の意味を持つかは二人にしか分からぬが、結婚すらも厭ひて、女が学業を収めるが変はらぬ生活をし続け、約二年の時を経て叔母をして云ふ、神に仕う奉る巫女となれと、首を振りて肯定するに、先の叔母の仕る神社なれば疾く巫女となり、疾くしろたへの小袖に色鮮やかな緋袴を着なして生業と為す。時に女、二十歳となりてあざやかに育つ。髪を結ひ、朝靄の幽かに広がる中を悠々と歩く様、口寄せの時代を彷彿と、恰も神との戯れをなし得るが如し、由々しき思ひさへす、背筋が冷えに冷え入りて、汗が止まらぬ、あの有様では物の怪をも飼ひ慣らせるめり、物恐ろしとは叔母なる者の云ふ事、甥が初めてあの者を連れて来た時分、大して可愛くも無いと率直に思ひはしたが、あのやうな艶めかしい美女の様相を呈するやうになつてゐたとは。仕事ぶりも悪くは無ければ愛想も程々に良く、度々近所の子どもたちに神社での作法を教へてゐたと云ふを聞くに、其の微笑ましき様子を絵にでも書きたいと思ふものを、更に聞けば、此の時神社に移り住んでゐたと云ひて、男との交流も途絶えがちに雑務、神主の補佐に打ち込み、夫はどうしたと聞けども、彼は忙しい身ですのでと答えるのみで要領を得ず。寧ろ同じく神に仕う奉る同僚の巫女と共に、未婚女性としての悩み愚痴を云ひ合ひ笑ひ合ふ日々を過ぐす。或る時、或る者云ふ、其れ程愛しき女に男居らぬは奇し。居るべきなりと。女大いに恥じらいて云ふ、凡そ十年前より思い染める者ありと。嘸(さぞ)かし酷く妬まれ、酷く羨ましがられたであらう。巫女の仕事は力を伴ふ仕事にて、辛くも苦しくもあらめ。されど神社に仕る人々、皆良き人なれば、此の時ばかりは女も頭を悩ませず充実してゐたと、叔母なる者は云ふ。此れらは恐らく男の計らひであつたゞらう。男も又女の自慢をせざりければ、一体どうした、到頭(たうとう)逃げられたかと云はれども否と答ふのみにて、上司同僚には口を閉ざすが、酒の席にて酔の廻りし時、直属の生徒に対して、俺は俺に世の中といふものを知つて欲しかつた、俺は俺以外の人間を何も知らぬ。それでは対応にならぬと珍らかに落ち着け払ふ声にて云ひ、其れから女がありし湖畔の家に帰るまで、身を案じ続けてゐたと云ふ。巫女装束を艶やかに着なす女の姿いとたをやかに、噂を聞きつければ己も買うて髪を結ひ、眉を剃うた其の姿、姿は見ねども瓜二つであつたとは、云ふべきにもあらず。夫婦の離別は斯く始まるが、男の祖父亡くなりし時、女の母、予てより病を患ひければ、雪のはら〳〵と降り積もる師走十五日、愈々(いよ〳〵)面は黄に、肌黒く痩せ、古き衾(ふすま)のうへに悶え臥すやうなる。粥を作りて与へるが口の先にて舌を以(も)て吐く。水を飲めども息苦しきに噎(む)す。女の身にて子を一人成人にまで養はゞ、斯くの如くなりけるか、痩せ衰へたる指にて箪笥の元、衣類に高く埋もれたる山を指す。親族は無し。女が近寄りて山を掻き分ければ、鴛鴦、鶴、鶴亀の描かれし三枚の風呂敷なり。共に白髪の生ゆるまで、叶はぬ願ひを娘に託して戌の中刻に、遂に絶え果てぬ。身は冷え〴〵と、相貌も疎ましく変はり行く程、たゞ其の胸に抱きて、暗う物怖ぢせざるを得ぬ家の中、男も来て共に悲嘆に暮れる。明朝、湯を沸かすとて厨に立つ。此の程、誤つて薬缶を足の甲に落とし、流れ出た熱湯に女は重大な火傷を負ひて、家の中を這ひずり回り、凍てつく湖の水にて足を冷やすを、醜い痕となりて其の後数ヶ月間、靴すらも履けず。以前読みし小説に、狼狽の餘りの所爲でもないその夜春琴は全く氣を失ひ、翌朝に至つて正氣付いたが燒け爛れた皮膚が乾き着るまでに二箇月以上を要した中々の重傷だつたのである。などゝいふ一節があつたが、此の女の場合は治癒までに一ヶ月も要せず、何を以て数ヶ月も生足で土を踏みしめてゐたのか、佐助のやうに師と同じ傷痕をして同じ世界に住む悦びを感じたのか、もう語れる者は居ないが、あゝ、待ち遠であつた、時間が問題だつたのだ、私にも漸くあの醜い瘢痕が出来上がる喜び、最早云ひ様もないと歓喜に湧き上がれば、跪きて、否、時間とは無意味である、我は毎日、時間を空間にし、時間を空間と共に回転させ、尺度をも変へる者である、かうなる���は当然の事、と、ほの白い脚、其処にへばり付く瘡蓋に愛ほしく口付けす。己も背中の瘢痕を曝け出し、足首の肉を食み出せば、云はれずとも口を大きく開け、ぬら〳〵と濡れし舌で舐む。此の一件を以て巫女の職を辞し、二人は契りを交はす。されど男は例の離れ屋敷にて、女は例の湖畔を望む家にて住む。男の女装癖は此の時が頂点だつたと見える、性転換こそせざるものゝ生きる全ての時に於いて女物の服を着、毎朝化粧に時間をかけ、厠へ行けば鏡の前にて小一時間佇み、遠出をすれば男を誑かす、如何に変人の多い界隈と云へども其の佇まいは限りなく異質、時には講義中、股間を膨らませ、俺が、俺が、俺が、俺が居る、俺が居ると声を荒げて、棟から飛び降りるが如く階段を駆け下りて居なくなる事すら少なくなく、言動の著しさが原因となりて謹慎を受けるに、女から譲り受けし巫女装束にて舞を踊る。女も又、男物の衣服を着、嘗ての職場へと足を運んでゐたさうだが誰も気づかず、其の事実を以て夜な〳〵淫猥な声を発しゝが原因となつて捕まへらる。然れども男は女への愛を忘れず、女は男への愛を忘れず。如何なる時も女の身を案ず。如何なる時も二人分の酒飯の設けをす。けれども見ることは最早あらず。死の決意は婚約から三年後の事なり。男の手記には、限界だの一言。女の日記には、限界だの一言。最後の最後、毒を貰ひ受けるに当りて偶然の再開を果たすが、言葉も交はさず。冒頭部に戻る。両者の遺言に沿うて男は三親等乃至四親等の親族のみ、女は嘗ての同僚の内数人のみを招いて同人数とし、厳かな葬送を行いて骸を遠く離れた地へと葬り、弔ふ人はまばらにてあるが、向い合ふ二人の墓の気色、恰も空の上にては一つの雲となるが如し。尚、毒を譲つた者が何者であるか、其れは我が興味の範疇外にて関係者各位の尽力に期待する事にす。
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