#茶立ての清水直売所
Explore tagged Tumblr posts
Text
【今シーズンスタート】茶立ての清水直売所

↑茶立ての清水直売所の裏にあるガーデン。地域のみなさんが集まって花植えをしました。

↑生保内から玉川へ向かう途中にあるので、通りがかりにガーデンを見ることができます。

↑みんなで力を合わせてスムーズ作業。きれいに植わさりました!

↑「みんなで育てよう茶立ての花畑」

↑本日6月1日より、ばばも出品している茶立ての清水直売所が通常営業になりました。

↑茶立ての清水直売所の営業日カレンダーはこちら。営業時間は9:00~12:00までです。

↑自作した直売所看板を掲示して、いざオープン!
季節によって、採れたて山菜・野菜・漬物・菓子等を販売しております。

↑本日のサラメシ。冷蔵庫の奥底で眠っていた残りものこしあぶらと、規格外で出荷しない小さい根曲がり竹で、あまじょっぱ味噌炒めを作りました。簡単一品料理。こしあぶらは冷蔵庫で一週間ほど保存できますが、長く置けば置くほど香りは飛ぶし固くなってしまうので、届いてすぐにお召し上がりいただくのをおすすめします。が、残ってしまった場合は、このような調理方法で美味しく食べることができます。
■■■おまけ■■■
↑今日はちゃとらーず日記より、るりちゃん&ようちゃんの朝のひとときをご紹介。父さんにブラッシングしてもらっているるりちゃん。おもむろにカットインしてくるようちゃん。ようちゃんの舌がぺろりんちょしております。
1 note
·
View note
Text
梅雨に入り、屋外で練習を行う部活動は、なかなかグランドではできずにいた。ラグビー部も然りで、荒天の時には練習を取り止めざるを得なかった。
浩志は何とか悪天候でも筋力トレーニングはさせたいと、例えば校舎内の走り込みや体育館内での筋力トレーニングなど、色々と知恵を絞った。そんな中でも忍はラグビー部の様子を見に来ていた。あの制服の一件を機に、忍は個人的に相談する様になっていた。彼は言った。
「実は…僕、男が好きみたいです」
「…え?」
「物心ついた頃から、女の子を見ても何も思わなかったンです。中学一年の時に、一年上の先輩が好きになっちゃって…夢精したンです」
「『夢精』…?」
「その先輩の体操服姿がカッコよくて…いつもオ◯ニーしてた」
「…そうか」
やはり同性を好きになることはあるンだなァと、浩志は思った。オレも、振り返れば異性と付き合ったことはなく、大学一年の時に幸雄と出逢い、関係を持ったっけ。彼は忍の気持ちに向き合った。
「小松﨑君、先生もそうだよ。大学時代は年上の男と付き合ってたし、エッチもしたよ」
そう話すと、忍は���眼を一瞬見開いた。彼は、
「え、先生が? 女の子にモテたのかな?って思ってた…」
と信じられない様子だった。
最初は忍自身の話が主だったが、次第に彼の家族のことになっていった。父親の名前は修と言い、職を転々とした挙げ句に今のタクシーの運転手をやっているとの事。母親は末広町のスーパーで働いていたが、彼とは今の仕事に就く前にたまたま一緒に働いていた時に出逢い、結婚したと言う。母親は梢と言った。姉は萌と言う名前で、五軒町の私立T女子高の看護科を卒業し、今年から市内の病院で働き始めたと話した。一見、共働きながら何とか生計を立て、頑張ってきたのだなァと浩志は思ったが、忍曰く、母親を亡くした頃から父親の様子が違うのだと言う。彼は言った。
「父ですけど、母が死んでから休みの日になると何処かに出掛けてしまうンです。夕方には帰って来るンだけど…。時々、夜の七時ぐらいになることもあるンです」
「何か趣味はあるの?」
「ずっと仕事に行く姿しか見たことないし…。思いつかないです」
「…何だろうね」
男一人で二人の子どもを育てるなんてオレには無理だわと思いながら、浩志は聞いていた。タクシーの運転手だから飲みに行くことは考えられない。基本的に家では酒を飲まないと、忍は話していた。でなければ…と、気付くと日曜日を目前にしていた。
この日は、いつもの如く天王町の成人映画館へ行った。浩志は自宅から通っていたので、徒歩でも行ける範囲内ではあった。浅草の映画館よりは人気がなく、館内にはポツリポツリと中年か壮年ぐらいの男たちが座っている程度だった。真っ暗な中で突然内腿を触れられ、そのままチノパン越しに股間を弄られた。浩志は幸雄がしてくれたことを思い出しながら自らチャックを開け、ベルトを外した。唇を奪われ、ねっとりと舌と舌が絡まるのを感じながら彼は欲情した。次第にブリーフの中でいきり勃ったチ◯ポの先端が濡れるのを感じ、
「しゃぶって…」
と彼は訴えた。しかし、相手の男は接吻を止めず、逆にワイシャツのボタンを外してランニングシャツの右側から乳房を露にし、
「吸って…」
と求めた。スラックス越しに浩志が彼のチ◯ポに触れるとすでに硬直していた。逆にしゃぶって欲しいンだなと思い、その通りにした。
未だ、この世界に足を踏み入れてから間もない感じがした。フェラ◯オも、何となくぎこちなく、歯が亀の頭に当たって萎えそうだった。相手の男は仕事の合間なのか、ネクタイとベストを着ていた。何の仕事をしてるンだろう?と、浩志は思った。彼はウェストゴムに水色のラインがはしったブリーフを穿き、チ◯ポも太く長かった。オルガズムに達すると、
「はァ…、ああッ、あん!」
と恥ずかしそうに声の調子を抑え、しかし浩志の口に流した愛液は熱く、ドロッと粘っこかった。
その後、浩志もその男の口の中に愛液を出した。嗚呼、関係を持ちたいと浩志はその男と抱擁しては接吻し、再び情事(こと)に及んだ。額に汗を浮かべ、唇が唾液と愛液とで汚れた。
映画が二本終わると、清掃時間なのか館内がパッと照明で明るくなった。周囲も濡れ事の真っ最中か、慌てて乱れた服を直し、シートから去って行った。これまで情事の相手をしてくれた男の顔を確認するや、浩志は驚いた。思わず、
「ま、まさか…」
と声を上げた。その相手は、忍の父親である修だった。彼も慌ててワイシャツのボタンを留め、
「さ、佐伯先生…」
と小声で呼んだ。膝まで下げたブリーフとスラックスを急いで上げながら、
「…私、夜勤明けには必ず来るンです。水商売をやってる女の子が柄の悪い男と明け方まで飲んだり、時にはラブホテルまで送って行ったりして大変で…。独りでアパートに帰るのも淋しくて、つい…」
と話した。彼は続けた。
「先生、このことは忍には絶対に黙っててください。もし知られたら、あの子、ショックでおかしくなっちゃうから…」
「大丈夫です。黙ってます」
…と言って、まさかその忍も同性が好きな様ですとは、口が裂けても話せないよなァと、浩志は思った。彼は言った。
「せっかくだから、何処かでコーヒーでも飲みませんか?」
その誘いに修は頷いた。二人は成人映画館を出ると、I百貨店の方に歩いて行った。本館地下一階の喫茶店に入り、ちょうど昼食の時間帯でもあったので軽食も注文した。修はお冷を飲みながら、
「家内が生きていた時は、未だ娘も高校で学んでましたし、忍も受験を目前にしていたので、家事をしながらタクシーの仕事もして目まぐるしくかった。でも、死んでから何だか心に穴が空いた様な感覚が続いて…。人肌恋しくなっちゃったンです。そんな時、たまたま柳堤橋を渡ったところにあるサウナへ夜勤明けに寄ったらしゃぶられちゃって…。それが気持ちよかった。接吻(キス)もされ、すっかり『ホモ』の仲間入りをしちゃいました。男同士なら相手を妊娠させることもないし…」
コーヒーを飲みながら、よくしゃべるなァと浩志は思った。この日はブリランチンを付けておらず、髪に元々癖があった。忍はどちらかと言えば母親に似たンだな…。彼は先刻の、映画館での情事を思い出しながら、恍惚な表情の修が可愛いと思った。乳房を吸った時にピクッと天井を仰ぐ様子が、何となくだが幸雄と重なった。このまま関係を持ちたいと言う欲望が、彼の中ではらんだ。そんな風に思っていた矢先、修が言った。
「…また会ってもらえますか? でも、忍には内緒で。私、淋しいンです」
次の瞬間、彼は両手を浩志の方に伸ばした。その手指を彼は両手を絡ませた。この言葉に浩志は応えた。
こうして、二人は最初はあの成人映画館で絡み、徐々に「密会」する場所を雑木林や山奥のモーテルへと行動の範囲を拡げていった。会っていく毎に修は浩志を「先生」ではなく「さん」と呼び、己の下半身の穴さえ見せるほどに欲情していった。浩志も、幸雄以外の男の肉体に生唾を飲んだ。この時は彼の中で「忍の父親」と言う意識はなく、一人の情人(アマン)と考えていた。
ところが、そんな二人の関係も長くは続かなかった。
4 notes
·
View notes
Text
"Kill them with kindness" Wrong. CURSE OF MINATOMO NO YORITOMO
アイウエオカキクケコガギグゲゴサシスセソザジズゼゾタチツテトダ ヂ ヅ デ ドナニヌネノハヒフヘホバ ビ ブ ベ ボパ ピ プ ペ ポマミムメモヤユヨrラリルレロワヰヱヲあいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわゐゑを日一国会人年大十二本中長出三同時政事自行社見月分議後前民生連五発間対上部東者党地合市業内相方四定今回新場金員九入選立開手米力学問高代明実円関決子動京全目表戦経通外最言氏現理調体化田当八六約主題下首意法不来作性的要用制治度務強気小七成期公持野協取都和統以機平総加山思家話世受区領多県続進正安設保改数記院女初北午指権心界支第産結百派点教報済書府活原先共得解名交資予川向際査勝面委告軍文反元重近千考判認画海参売利組知案道信策集在件団別物側任引使求所次水半品昨論計死官増係感特情投示変打男基私各始島直両朝革価式確村提運終挙果西勢減台広容必応演電歳住争談能無再位置企真流格有疑口過局少放税検藤町常校料沢裁状工建語球営空職証土与急止送援供可役構木割聞身費付施切由説転食比難防補車優夫研収断井何南石足違消境神番規術護展態導鮮備宅害配副算視条幹独警宮究育席輸訪楽起万着乗店述残想線率病農州武声質念待試族象銀域助労例衛然早張映限親額監環験追審商葉義伝働形景落欧担好退準賞訴辺造英被株頭技低毎医復仕去姿味負閣韓渡失移差衆個門写評課末守若脳極種美岡影命含福蔵量望松非撃佐核観察整段横融型白深字答夜製票況音申様財港識注呼渉達良響阪帰針専推谷古候史天階程満敗管値歌買突兵接請器士光討路悪科攻崎督授催細効図週積丸他及湾録処省旧室憲太橋歩離岸客風紙激否周師摘材登系批郎母易健黒火戸速存花春飛殺央券赤号単盟座青破編捜竹除完降超責並療従右修捕隊危採織森競拡故館振給屋介読弁根色友��就迎走販園具左異歴辞将秋因献厳馬愛幅休維富浜父遺彼般未塁貿講邦舞林装諸夏素亡劇河遣航抗冷模雄適婦鉄寄益込顔緊類児余禁印逆王返標換久短油妻暴輪占宣背昭廃植熱宿薬伊江清習険頼僚覚吉盛船倍均億途圧芸許皇臨踏駅署抜壊債便伸留罪停興爆陸玉源儀波創障継筋狙帯延羽努固闘精則葬乱避普散司康測豊洋静善逮婚厚喜齢囲卒迫略承浮惑崩順紀聴脱旅絶級幸岩練押軽倒了庁博城患締等救執層版老令角絡損房募曲撤裏払削密庭徒措仏績築貨志混載昇池陣我勤為血遅抑幕居染温雑招奈季困星傷永択秀著徴誌庫弾償刊像功拠香欠更秘拒刑坂刻底賛塚致抱繰服犯尾描布恐寺鈴盤息宇項喪伴遠養懸戻街巨震願絵希越契掲躍棄欲痛触邸依籍汚縮還枚属笑互複慮郵束仲栄札枠似夕恵板列露沖探逃借緩節需骨射傾届曜遊迷夢巻購揮君燃充雨閉緒跡包駐貢鹿弱却端賃折紹獲郡併草徹飲貴埼衝焦奪雇災浦暮替析預焼簡譲称肉納樹挑章臓律誘紛貸至宗促慎控贈智握照宙酒俊銭薄堂渋群銃悲秒操携奥診詰託晴撮誕侵括掛謝双孝刺到駆寝透津壁稲仮暗裂敏鳥純是飯排裕堅訳盗芝綱吸典賀扱顧弘看訟戒祉誉歓勉奏勧騒翌陽閥甲快縄片郷敬揺免既薦隣悩華泉御範隠冬徳皮哲漁杉里釈己荒貯硬妥威豪熊歯滞微隆埋症暫忠倉昼茶彦肝柱喚沿妙唱祭袋阿索誠忘襲雪筆吹訓懇浴俳童宝柄驚麻封胸娘砂李塩浩誤剤瀬趣陥斎貫仙慰賢序弟旬腕兼聖旨即洗柳舎偽較覇兆床畑慣詳毛緑尊抵脅祝礼窓柔茂犠旗距雅飾網竜詩昔繁殿濃翼牛茨潟敵魅嫌魚斉液貧敷擁衣肩圏零酸兄罰怒滅泳礎腐祖幼脚菱荷潮梅泊尽杯僕桜滑孤黄煕炎賠句寿鋼頑甘臣鎖彩摩浅励掃雲掘縦輝蓄軸巡疲稼瞬捨皆砲軟噴沈誇祥牲秩帝宏唆鳴阻泰賄撲凍堀腹菊絞乳煙縁唯膨矢耐恋塾漏紅慶猛芳懲郊剣腰炭踊幌彰棋丁冊恒眠揚冒之勇曽械倫陳憶怖犬菜耳潜珍
“kill them with kindness” Wrong. CURSE OF RA 𓀀 𓀁 𓀂 𓀃 𓀄 𓀅 𓀆 𓀇 𓀈 𓀉 𓀊 𓀋 𓀌 𓀍 𓀎 𓀏 𓀐 𓀑 𓀒 𓀓 𓀔 𓀕 𓀖 𓀗 𓀘 𓀙 𓀚 𓀛 𓀜 𓀝 𓀞 𓀟 𓀠 𓀡 𓀢 𓀣 𓀤 𓀥 𓀦 𓀧 𓀨 𓀩 𓀪 𓀫 𓀬 𓀭 𓀮 𓀯 𓀰 𓀱 𓀲 𓀳 𓀴 𓀵 𓀶 𓀷 𓀸 𓀹 𓀺 𓀻 𓀼 𓀽 𓀾 𓀿 𓁀 𓁁 𓁂 𓁃 𓁄 𓁅 𓁆 𓁇 𓁈 𓁉 𓁊 𓁋 𓁌 𓁍 𓁎 𓁏 𓁐 𓁑 𓀄 𓀅 𓀆
200K notes
·
View notes
Text
--深海人形-- 穀潰しの命寄りも大事な畑
※閲覧&キャラ崩壊注意
※雑多にネタをぶち込み
※『うちの畑を荒らす』をキャラクター名の前に付けると何だか許せなくなる
うちの畑を荒らすアナベル・ガトー(※水星じゃなくてサイド3の ※狸か??????????)
…。
プロテスタント教会の人に、「動物達もイエス様を信仰してる」…と言われて、「?!!?!!」となった事を思い出す(※宗派的には、其う言う見解かもしれないけど)。
…。
プロテスタント「全被造物が神を賛美している!!!!動物達にも霊的な側面がある!!!!!」
カソリック「…ええええええ………」
正教会「…ええええええ………………」
某中東発の一神教「はぁ??」
仏教「畜生共には其んな知能ねぇよww」
…。
…引き寄せの法則によって、「死」は引き寄せられるのか?……其れは、神の名の下に、より祝福として、理想的な形で、引き寄せられるであろう。
…。
…(昔の)カトリックは、天帝や大日如来の存在を間借りして「大日��」、「天主」、「上帝」と表現する配慮があったけど、プロテスタントは、可也無神経(?)で、全部、一律に「神」とする(※「神」以外は神では無いので)。
…。
共産党vs.一神教vs.いんゆめ厨(※vs.だーくらい)。
…。
…寛容論では『ユダヤ人(※此処では一神教に範囲を広げる)はローマだろうがエジプトだろうが其処の神々を敬わないどころか、本気で、其の神々を軽蔑したので、現地民から憎まれていた』みたいに書かれて居たので、現代中国でも同じ事になってるのかもしれない(※其んな事よりいんゆめ厨を何とかした方が良いんじゃないんですかね〜〜 ※親切心)。
…。
…私、宇宙世紀しか興味無い、見ない、見えてない人、本当に、心底から大嫌い(※種しか興味無い、見ない、見てない奴も)。
…。
神仏本位と言いながら、自分本位で、金本位の聖職者()なんて掃いて捨てる程存在する(※余りにも普遍過ぎて、最早、聖職者の本質)。
…。
…自分本位の聖職者なんて、神仏の面汚しでしかないのにね()。
…。
…サラとカツの結婚式に出席するシロカス(※色んなシロカス君)。
…。
アホ「AIが自我を持ったら人類を粛清し始める!!!!!!」
ワイ「そもそも電力ないと動かないんだけど??」
…。
…個人的に、睡眠改善機能性食品は、自殺リスク高める、…と思ってる(※将来、其う言う論文は出ると予言する)。
…。
…余りにも食生活が無軌道過ぎて、遂にAIに迄心配されるワイであった(※…だが、一向に構わんッッッ!おりゃっー!エナドリ漬け!!)。
…。
塩分糖分カロリーカフェイン過多(※もう長くないね ※大爆笑)。……で、何だっけ、エナドリの理想的接種頻度って……、月に二十本位だったかな(※或いは一日一本だったかな……)。
…。
某Vtuberの「美味しいエナジー!不眠不眠!眠れないぜ!ぶーん(※エンジン音)」は、エナドリガチ勢なら誰でも分かる名言(※自分もめちゃくちゃ分かる、エナドリ義務飲みも)。
…。
…今日も元気無いので、甘いカフェイン飲料やらで命の前借りしている(※命の前借りエンジョイ勢)。
…。
…死にたくなったら、波照間島みたいな所に旅行に行く寄りも、其処等辺で買ったエナドリ一気に四本飲んだ方がコスパもタイパも良くないかな(※突然死しそうだけどね)。
…。
自分達のナワバリ、其の中でしか通用しない妄想と推しへの思い込みを守る為に、何故、其処迄して、人生を浪費するのかが分からない���
十何年も『ちっぽけな石の下のダンゴムシ』としか言い様が無い人生生きてて何が楽しいんだろう
…。
…引き寄せの法則によって、『死』が引き寄せられるのなら、自らの手での死を強く思うものは、尚更、確実性が増し、その悲願は叶いやすくなるのか。
…。
…車、バイクに乗れなくても、自らの意志で自分を死なせられるんですね(※当たり前)。
…。
…引き寄せの法則で、インスタントに『他死と言う名の死』を得られるか、一寸、私の人生で其れを確かみてみようと思う。
…。
…自らの意志で、天国に行った人のアカウントとか、配信とかブログとかサイトとか見てると癒される(※存外大衆向けのリア充が多いから)。
…。
中華(韓)ゲーあるある
ゲーム性も大抵和ゲーのパクリ(多くの場合キャラデザも)
すぐ飽きる
重課金しないと良い思いが出来ない
公式が宣伝・SNS工作の常習犯
何よりも宣伝に力を入れる
なぜか広告の時点で嫌われている
キャライメージ構築はキャラデザ、声優頼み
品位の求められる立場の御嬢様でも普段着の時点でミニスカ、セクシー衣装
無駄な露出のある服装
見た目ばかり綺麗な虚無ゲー
長期的視点なし。売れなくなったら短期で売り切ってポイ
どんなに人気でもサービス終了したら用済み。和ゲーの場合は公式による『福利厚生(※ストーリーモードだけを残したアプリを出す)があったりするのに
日本人声優が何か愛国的(靖国神社に参拝)な行動を起こしたら自分たちの都合でリストラ
新キャラ追加はせっせこするのに既にいるキャラ掘り上げは積極的にしない
キャラ同士の関係性、人間関係が希薄。例えば、上司や部下がいてもただの上下関係、同僚がいても大抵ただのビジネスパートナーで終わり
…。
売れなくなったらポイ、捨てる→また次ので当てれば良い
日本人の配信者に案件を渡す時、抗日要素を入れる様に指示→親日ではないアピール、自国に忠誠心を見せる為
コラボ重視→売り上げの為……とは言う物の、話題性作りと媚び売りとコネ作りと自分達の趣味
政治的柵であっさり担当声優解雇→売り上げの為
性能、見栄え最重視→売り上げの為
次々に新キャラ投入、古参キャラが埋もれ様がお構いなし→売り上げの為
世界観、キャラの奥行き構築軽視→売り上げには直接関係無いから
此んなゲーム作ってて何が楽しいんだろう(※呆れ)
…。
マイクラとかアンテとか���神主の奴とか型月のゲームが何故、下手な商業ゲームより圧倒的に売れるのか理解出来ない儘、彼等はゲーム開発を続けるんだろうな(※本当に可哀想)。
…。
何で、中華ゲーは、すぐにポンポン新キャラを追加するんだろう??(※真顔)。…古参キャラの掘り下げした方が皆ユーザーは喜ぶ筈なのに(※本気で其のゲームを愛しているのなら)。
中国のユーザーは推しが中身スカスカハリボテでも満足なのかな(※理解不能)。
…。
…転売屋も其うだけど、目先の利益しか見えて無い。原神もゼンレスも鳴潮もサービス終了したら、運営も、かつてのファンも、皆、何食わぬ顔で、新しくゲーム開発して運営してたり、商売してたり、好きにオタクしてたり推し活してたりするんだろうな(※遠い目)。
…。
矢張り、魂を込めて無い、篭って無いと思い出すら残らないのか(※哀しいね)。
…。
…じーくあくすも上のと構造似てると思う、目先の利益にしか興味を持って無いから(※財団Bには珍しく、長期的な視点がまるで無い)。
…。
でも、此処迄、卑怯も手段も厭わない戦法での勝利を許されて、好き放題生きられて、暴れられたら、長生き出来る上に、充実した人生送れそうで羨ましい。
…。
中華ゲー世界、過去に文明の大崩壊起こり過ぎ問題(※何で右へ倣えで捻りが無いの??まじで理解できない)。
…。
…「中華製ゲームは脅威!ゲーム業界方面でも欧米と日本は勝てない時代が来る!!(※お中華様凄い!!!!!!!)。」…みたいに言う人いるけど欧米か日本で大人気インディータイトルが���規で数本来たら(※…或いは、既にあるタイトルがボソボソ存続してるだけで)、簡単に、其の覇権が簡単に奪われるであろう時点で、中華ゲーの実力なんてたかが知れてる(※経済は金の動かし方かも知れないけど、本来ならば、ゲームは売り方では無く、作り方の筈ですよね??)。
…。
ぶっちゃけ、『死なずに生きてたら良い事ある(※生きてればいつか幸せになれる)』なんてのは、ただの思い込みかある種の迷信にしか過ぎない(※…早めに、事故死か病死でもして置いた方が良い人生は確実に存在する)。
…。
…とある昔の、Vの配信聞いてたら、そのVの大学生時代の友達が飛び降りで亡くなった話が出て来た(※よくある話)。
…。
日本メディアがほとんど報じなかった黒人キリスト教徒大虐殺テロ ナイジェリアで起きている「極度の迫害」
s://www.fnn.jp/articles/-/380540?display=full
…。
…あんな連続ドラマみたいな茶番(??)、個人的に凄まじくつまらないの��、舞台少女達には、りこりこみたいな銃撃戦して欲しいなと思う(※無粋)。彼女達がリコリスのモブメンバーみたいに、美しく、次々に格闘戦で殴られ、蹴り飛ばされたり射殺されて、死ぬ所が見たい(※リョナラーの鑑)。
…。
※某おまけ〜〜〜の結末
…太陽のある世界に帰って来た後、シロカスは、服毒で、ガトカスは、宇宙空間に生身で身を投げ、浦木君は、拳銃で、其の他は首吊り諸々で、其々、自らの意志で天に召された(※マジで雑な死に方)。
…その後、館主様は、人類の手によって最早、脳だけの存在になりながら、生体パーツとして機械に組み込まれた(※ド定番の機体直結)。
…。
犬にとっての宝物は人間にとってのゴミ(※人間にとっての祝福は、ハイパーボリア人にとっての呪詛)。…人類にとって死は不幸だが、巨人達にとっては救済(※まごう事無く)。
…。
館主様「全人類は、心の奥底から、イエス・キリストを信じるべきである!!!!(※敬虔)。」
ワイ「素晴らしい(※感動)。」
…。
…普段は、自分の事しか見えて居ないのに、ある時に成れば、自分以外の事しか見えなくなる(※人は其れを無能と言う)。
…。
ベストフレンズ(※裏切り者)。
…。
※自画自賛スターロード王子のガイドライン(※ヒテリスネタ注意)。
ゆゅゆゆ様「ほらききなさいよ〜 あんなにたくさんの人妖が 富士見の娘をたたえて かんせいをおくっているわ。ゴーストリーダー・ユユコに栄光あれと…。」
みょん「はいはいワロスワロス、すごいすごい。」
…。
紅白の巫女さん「ほらききなさい。あんなにたくさんの住民が 巫女をたたえて かんせいをおくっているわ。幻想郷の空飛ぶ巫女 ハクレイ シュライン メイデン・レイムに栄光あれと…。
黒白魔法使い「あほくさ。」
…。
赤い阿保「きくがいい あんなにたくさんの市民が 大佐をたたえて かんせいをおくっている サイド3の光のニュータイプ レッドコメット・キャスバルに栄光あれと…」
ららぁ「えっ…そんな人いません…あきらめてください」
…。
※別ver
赤い阿保「ほらきくがいい あんなにたくさんの市民が 総帥をたたえて かんせいをおくっている アクシズの光のニュータイプ スターフューラー・キャスバルに栄光あれと…。
くぇす「えっ…そんな人いるわけないよ…あきらめて。」
…。
シロカス「おききください あんなにたくさんの市民が 大佐をたたえて かんせいをおくっています 地球圏の光の木星帰り たった一握りの大天才・パプティマスに栄光あれと…」
サラ「えっ…そんな人いません…あきらめてください」
…。
浦木「きいてくれ、あんなにたくさんの俺の仲間達が 中尉をたたえて かんせいをおくっている。
地球連邦の光の中尉 幻の撃墜王・浦木に栄光あれと…。」
ニナ「えっ…、そんな人いる訳ないでしょ…、さっさとあきらめてね。」
…。
ガトカス「きくがいい。あんなにたくさんの国民が エースパイロット���たたえて かんせいをおくっている。公国のソロモンの悪夢 エースパイロット・アナベルに栄光あれと…。」
ニナ「えっ…そんな人いません…あきらめてください」
…。
桃「おききください あんなにたくさんの国民が 総理をたたえて かんせいをおくっています
日本国の光の総理 漢の中の漢・剣桃太郎に栄光あれと…」
秘書「えっ…そんな人いません…あきらめてください」
…。
館主様「おききください あんなにたくさんの館生が 館主をたたえて かんせいをおくっている。狼髏館の光の館主 星の館主様・Ling-yanに栄光あれと…。」
某令嬢「えっ…そんな人いません…あきらめてください」
…。
はっぱ王子「おききください あんなにたくさんの市民が 王子をたたえて かんせいをおくっている。トラキア解放の光の王子 バンデッドロード・リーフに栄光あれと…。」
サラ(FE)「えっ…そんな人いません…あきらめてください」
…。
襟木「おききください あんなにたくさんの市民が 領主をたたえて かんせいをおくっている。リキアの光の領主 ロードナイト・エリウッドに栄光あれと…。」
軍師(マーク)「えっ…そんな人いません…あきらめてください」
…。
諸星大二郎先生の『生物都市』、『暗黒神話」』、『妖怪ハンター(特に生命の木)』、『バイオの黙示録』には恐ろしく深く強く影響を受けました
今思えば、諸星大二郎先生の漫画は、私の基礎の重要な隅石の一つだったのかもしれません
…。
gndmは言っている。
「あなたがたは心を騒がせてはなりません。神を信じ、またわたし(キリスト)を信じなさい 。」
※ヨハネ 14:1より
…。
…。
※ゴミ置き場
雑魚1「おぉーん!switch2落選したぁ!!!!!!(※死)。」
雑魚2「又落選だぁ!発売日にゲットは無理ィ!!!!!!!!!!!(※絶望)。」
ワイ「第一回抽選で多言語版に応募し優勝^_^発売日に届く^_^(※高みの見物)。」
雑魚1・2「頼むから死んでくれ(※殺意100%中の100%)。」
(※此れがswitch2狂乱の現状
…。
0 notes
Text
八篇 下 その二
大阪にやってきた弥次郎兵衛と北八。 富くじの交換にやってきた二人。 自分たちの拾ったくじが外れていることがわかって、がっくりする。
富くじが外れてがっかりしている二人に声をかけた佐平次に、 「しかし佐平次さん。お前も悪い。 俺たちは他国ものでこの土地の勝手は知らないのだし、あの札の十二支の理屈もいってきかしてくんなさると、何もこんな番狂わせはなかったものを。 いまいましい。 いっそのことこれから、どっか遊びにつれてくれなされ。」 と北八は、佐平次も悪いと言い出した。 「ほんに、わしも全然気がつかなんだわいの。 まあなんじゃあろと、ひとまず宿に戻りましょうか。その着物のこともあるさかい。」 と一の富のあてが外れて、佐平次も自分が引き受けた貸衣装代のこともきにかかり又、弥次郎兵衛がひどい落ち込みようでもしや、橋の上からでも川に飛び込むんじゃないかとさまざまに言いくるめて、長町の河内屋に連れ帰った。
さて番頭は、富くじのことを知っているのでさては、百両せしめて意気揚揚と帰ってくると思って出迎えた。 「これは、おはやうござ��ます、それ、女ども、お茶あげんかい。 まあ、奥へ奥へ。 ところでお客さま方は何やらおめでたいことがあると昨夜、ちらりと聞きましたがどうでございましたかな。」 「いや。どうってことはない。しかし、命には別状なく帰りました。」 と弥次郎兵衛がふらふらしながら、二人は奥の座敷に行くと、佐平次は番頭にささやいて、 「いやもう、えらい番狂わせであったわいな。」 と言うと番頭も心得たもので、 「おおかた十二支違いじゃあろぞい。ははは。」 と答える。
「さいのう。そじゃさかい、あの、歳の行ったお方がどうやら気のふれたようにみえるさかい、気をつけさんした方がよいわいの。 もし、便所に行ってなら、油断せんほうがいい。 首でも、くくるりおるかもしれんわいの。」 それをきいて番頭は、ぶるっと体を震わせると、 「そりゃ、気味が悪い。 はやいとこ、ほり出したほうが、いいじゃろ。」 と別れると、佐平次は奥の座敷にやってきた。 「もし早速ながら、貸衣装代をとりに来ておりますが、もうお脱ぎなされてお戻しなさるがよござりましょ。」 「ああ、返してくんな。さあ、弥次さん。お前も、脱ぎな。」 と二人は不承不承脱ぐと、元の古着に着替えた。
佐平次はこれをたたみなおすと、 「それでは、貸衣装の御代でございます。」 とさしいだす書付を、北八とりあげ 「なんだ。しめて一人八百文。 こいつは高い、高い。ちっとまけてもらってくんなせえ。」 と書付を佐平次につきかえす。それと、入れ替わりに女中がやってきて、 「ただ今、新町の九軒屋から、御勘定いただきにさんじたわいな。」 と又、書付をおいていく。
弥次郎兵衛はそれを取り上げると、 「なんだ、座敷代十五文、硯ふた三文、吸い物二文、肴いろいろ十二文、酒が七文、ろうそく一文、しめて、四十文。 ひゃあ、目が飛び出るわ。」 帰ってきた佐平次に、北八が、 「他国のものだと思って、吹っかけやがる。 夕べ食ったものが、何こんなにかかるものか。 上方ものは、いじきたねえ。まるで、ドロボウと同じだ。」 佐平次は、書付を見ている二人を交互に見ながら、 「いや、お前さんがたのほうが、けち臭いわ。 何じゃあろと食ったものはお払い下さんせにゃ、わしが、恥をかく。」 「なに、俺たちをけちだととは、なんのこった。ばかなつらが。」 「金を出してから、いいなされ。」 「おい、佐平次さん。お前がいくら力んでも、この新町の書付の書き出しは、間違っている。」 と弥次郎兵衛が首をかしげている。
「違うとは、何が違うぞいな。」 「そりゃ俺たちが借りて来たのは、子の四十文でこの書き出しは、亥の四十文とある。」 「ええい、冗談じゃない。四の五の言わずに金出せやい。」 佐平次は座敷に書付をばんとたたきつけた。 「いや、この野郎目。ふてえ奴だ。」 と北八がたちかかると、佐平次もひとすじではいかぬやつで互いに負けずに、つかみ合いの喧嘩になってしまった。 そこにこの河内屋の亭主の四郎兵衛が駆け出してきて、佐平次を叱りちらし北八をなだめて、一切合財を聞き出した。 ことに、このときの亭主の様子が頼もしげにみえ、さすがにこの家に主とみえて、身の上もすかんぴんなることも打ちあけてたのみければ、亭主、四郎兵衛は理解のある男でぐっとのみこみ、 「よござります。どんな大金持ちでも、旅先では金に困ることは、あるもんじゃげにござります。 この商売をしておりますと、いろんなお客様があります。 たとえ、どないなお方でもお客はお客。 宿泊代がないとてそんなら出ていなしゃれとは申しませぬさかい、何日なと、逗留してお帰りなされ。」 「それは、ありがとうございます。 私らももゆるりと所々見物しとうござりますが、もうそんなに長逗留しても、つまりやせんから、明日、出ることにいたしましょう。」
亭主は、そんな二人が哀れに思えたのか、 「はて、せっかくお出たもんじゃ。ゆるりと御見物なされ。 まだ住吉かてまだじゃあろ。幸い今日、私も住吉へ行くさかい、いっしょにお出んかいな。」 「・・・」 「しかし私は、袴屋新田の方に用事が有るさかい、船で行こうかと思っておったんじゃが、お前さんがたは壬生から天王寺にかけて歩いてお出なされ。 新家の三文字屋という茶屋にて、お待ち申ましょさかい。 のう佐平次さんや、こなさんも仲直りに、お供さんせ。 もうすぐ昼になるじゃろう。すぐに、お出になるのがようございます。」 と言ってくれるので、二人も幸いなことだと相談も決まり、佐平次とも仲直りすると、すぐに支度を整えた。 亭主は船にて、先に行ってしまっている。
三人は玉天王寺を回っていこうと、又、佐平次の案内で、ここを立ち出る。 高津新地から、生玉神社の社に参って、
御普請も あらたに見へて 金ものの ひかり盆なり いく玉のみや
当社は生魂命化現の妙玉を鎮たてまつるという。 いつでも参詣の人が多く行きかい、境内には田楽茶屋がたて続き、見世物、はみがきうり、女祭文、東清七のうきよものまね。 そほかにもさまざまあるが中でも、栗餅の曲春は、ここを元祖とする。
向こ���鉢巻に杵を持ち、斜に構えた男が、 「さあさあ、評判で、評判で。元祖名代あわもちの曲つきは、生玉やが家の看板、それつくぞ、やれつくぞ、ありゃや、こりゃやつくつく。 何をつく。粟つく麦つく米をつく。旦那はんがたには、供がつく。 若い後家には、虫がつく。隠居さんは、ちょうちんで、餅をつく。 女形はお客のえりにつく。芸子にや、またしても、紐がつく。 膝立ちなら、金たまへ砂がつく。よいよい、さっさ、さっさ、評判評判。」 「おいらは、年中うそをつくが聞いてあきれらあ。」 と弥次郎兵衛。
商売の うまみを見せて 銭金を ぬれ手でつかむ 粟餅の茶屋
そのまま境内を通り過ぎて、馬場先通りにでるとここは少しばかりの遊所があって、女形や芸子のなまめかしいのが行きかうさまは、誠に華やかである。
ここに、股引をはいて、ちょいと着物のはしをはしょった男がいる。 茶屋の前に立ってわめいているのを聞くと、 「いやあ、新吉に船場あたりのお医者の娘でぽっとりした中年増。おねまのところはおっとりとしていて、そこにはちょっとしたさじ加減を、お持ちなされてごろうじろ。 天王寺屋にこれはまた、ある年の飴屋の娘でて、にっちゃりくっちゃりやり、水あめのような、白くて、上物。いづれもおたのみ申ます。」 とふれていく。
北八は、それに気がついて、 「佐平次さん。ありゃあなんだね。」 「あれかいな。ここの女郎屋に新入りが入ると、あないに言うて呼屋をふれて、あるきおるのじゃわいな。」 と答える。 「こりゃ、珍しい。ははは。」 「ところで、わしはちょっとこの裏に用事があるさかいお前さんがたは、この通りをまっすぐに先にお出なされ。 ついこのさきが天王寺じゃ。あとで、すぐに追いつくさかい。」 「そうか。そんなら、先にまいりましょう。」 とここで、佐平次と一旦別れ二人は、話しながら連れ立っていくと突き当たりで少しまがる所にでた。
さて、どちらにいこうかまよっていると、先を歩いている親父がいる。 「もしもし天王寺へは、どうまいりますね。」 と弥次郎兵衛がそのおやじにといかけると、呼び止められた男は、 「わしが、あとへついてごんせ。」 「ええい、付いて来いは、ゴメンだ。とでもなく臭い。臭い。」 と北八が鼻を押さえながら、後ろにさがる。 男は肥取りで、抱えた桶の中には、肥が入っているようである。 「これいの、わしゃ、天王寺の側に住んでおるから、連れていこわいの。 さあ、さあ。ところで、お前がたは、どこじゃいな。」 「私ら、江戸でございやす。」 と弥次郎兵衛。 「はあ、お江戸はえいとこじゃげなあ。 あのお江戸は、肥が一荷で何ぼ程するぞいな。」 「私ら、そんなことは知りやせん。」 「おい、弥次さん。もっと後ろにさがって行こう。」 と弥次郎兵衛のそでを引いて、肥取りのおやじをさきにやってしまおうとわざと小便をする。
つづく。
1 note
·
View note
Text
2024年11月20日
原爆を見つめた2人の学長 広島大学で企画展「長田新と飯島宗一」(毎日新聞)
広島大の前身・広島文理科大で学長だった長田(おさだ)新(あらた)氏(1887~1961年)と、広島大第4代学長の飯島宗一氏(1922~2004年)。同郷で同窓、同じ大学の学長を務め、原爆がもたらした被害に熱心に向き合った2人の足跡を紹介する展示「信州から来た2人の学長、原爆を見つめる 長田新と飯島宗一」が、広島大医学部医学資料館(広島市南区)で開かれている。
「広島大学創立75+75周年記念事業」の一環。広島大は1949年創立で、最も古い前身校の白島学校が設立された1874年から数えると、2024年は150年の節目となる。前半の75年の学長を代表して長田氏、後半の75年では飯島氏を取り上げた。
2人とも長野県出身で、諏訪中学(現諏訪清陵高)の卒業生。その生涯を県民性や母校からひもとくと共に、広島との出会いや原爆との関わりを示すパネルや書籍などを展示している。
広島に原爆が投下された1945年8月6日、広島文理科大の教授だった教育学者の長田氏は自宅で被爆。同年12月から学長に就任し、大学の復興に努めた。その後、長田氏は広島で原爆を体験した子ども1175人の作文を集めて編集し、51年に手記集「原爆の子 広島の少年少女のうったえ」を出版した。105人分を収録し、序文で84人の作文を部分的に紹介している。
出版翌年の52年、作文を書いた子どもたちは「原爆の子友の会」を結成し、彼らをねぎらう集会も開かれた。展示では、当時作文を寄せた1人の早志(はやし)百合子さん(88)がその時の写真を提供し、教室に集まった子どもたちが長田氏から本を手渡されている様子や、集合写真などが並ぶ。
病理学者だった飯島氏は、米軍が接収していた被爆直後の解剖資料を返還させるなどした。69年に46歳の若さで広島大学長に就き、東広島市へのキャンパス移転など大学改革を主導。72年に発足した「広島大学原爆死没者慰霊行事委員会」の委員長を務め、74年8月には原爆死没者を追悼する碑を建立した。
被爆30年の75年には、大学の被爆状況や被爆、被災した学生・職員らの記録「生死の火 広島大学原爆被災誌」を刊行。飯島氏が広島大原爆放射線医���学研究所(原医研)に寄贈したものを今回展示している。飯島氏は母校の名古屋大の学長も務めた。
展示を企画した原医研の久保田明子助教は「広島出身ではない2人が大学人として、広島の大学がどうあるべきか考え、原爆のことに尽力した。その功績と併せ、信州についても知ってもらえたらうれしい」と話している。
入場無料。12月25日まで、平日午前10時~午後4時。土日祝日休館。【根本佳奈】

「無人餃子」閉店ラッシュの中、なぜスーパーの冷凍餃子は“復権”できたのか(ITmedia ビジネスオンライン)
「盛者必衰の理をあらわす」とは、まさしくこのことだ。コロナ禍で日本全国に急増した「餃子無人販売店」の閉店ラッシュが続いている。
それを象徴するのが、このカテゴリーを代表する「餃子の雪松」だ。2019年7月に無人店舗で冷凍餃子の販売をスタート。群馬県みなかみ町にある老舗中華食堂「雪松」の人気の味を再現した餃子は、「冷凍とは思えないおいしさ」との評判だった。
その結果、コロナ禍真っ只中の2022年には、全国400カ所以上への出店を実現。また、「2023年内に1000カ所を目指す」という経営陣の声も注目を集めた。
『マネー現代』が2024年6月に公式Webサイトで店舗数を数えたところによると、374店舗だったという。ところが11月17日時点で、同じく公式Webサイトでカウントしたら219店舗。2年前から半分ほどの規模にまで縮小してしまったのである。
実際、ネットやSNSではさまざまな地域で「近所の雪松がなくなってしまった」など閉店を惜しむ声が多く寄せられている。
さて、��のような話を聞くと、「高級食パンと同じで最初は珍しいから飛びつくけれど結局、たくさん似たような店ができて飽きられちゃうんだよなあ」という感想を抱く人も多いだろう。
確かにそのような面もあるだろうが、個人的にはここまで苦戦を強いられているのは、「ライバル」に足を引っ張られていることも大きいと思っている。つまり、「無人餃子」ブームで客を奪われていた「スーパーで売っている冷凍餃子」が復権してきたのだ。
冷凍餃子の売り上げはパッとしない?
冷凍餃子最大手の味の素冷凍食品(以下:味の素、東京都中央区)の調べでは、2010年4月から2021年3月にかけて、市販用冷凍餃子売り上げ(金額ベース)は約2倍に伸長している。もともと冷凍餃子というものを世に出した味の素は大きなシェアを握っており、「大阪王将」で知られるイートアンドフーズ(東京都品川区)とともにツートップとして市場をけん引している。
ただ、伸長はしているが、ずっと順調に成長しているわけではない。2016~18年の3年は横ばいで、以下のような記事が出るように、王者・味の素もパッとしなかった。
『味の素、「冷凍ギョーザ」の販売が冴えないワケ』(東洋経済オンライン 2019年2月15日)
背景にはいろいろあるが、味の素が2012年に開発した「水なし・油なし」という調理方法が競合品でも当たり前になったことで、「似たような冷凍餃子」ばかりになってしまったことも大きい。
2018年7月には味の素のライバル、イートアンドフーズ運営の「大阪王将」が「水なし・油なし・フタなし」という画期的な冷凍餃子を世に送り出したことで市場は再び成長していくが、3年間の「隙」をつく形で新たなプレーヤーが参入してくる。「餃子無人販売店」だ。
コロナ禍で「無人餃子」が勢力を拡大、しかし……
火付け役の「餃子の雪松」も2018年9月に1号店を誕生させると、その味のクオリティーもさることながら、24時間いつでも購入できる便利さからじわじわとファンを増やし、それがコロナ禍のステイホームで大ブレーク。つまり、スーパーの冷凍餃子の成長が踊り場になった隙をついて、「無人餃子」が勢力を拡大していった、という構図だ。
それがここにきて「無人餃子」があからさまな苦境に陥っている。そのタイミングで、食品業界紙に以下のような記事が出るほど冷凍餃子が好調ならば、「客が奪われている」と見るべきではないか。
『【速報】味の素冷凍食品、「ギョーザ」復権し出足好調』(日本食糧新聞 2024年7月9日)
なぜここにきてスーパーの冷凍餃子は「復権」できたのか。一つは、最大手で業界をけん引している味の素が「顧客の声に真摯に向き合う」という普通の企業なら腰が引けてしまうことに乗り出したことが大きい。
スーパーの冷凍餃子をよくつくっている人なら分かると思うが、「水なし・油なし」さらに「フタなし」などと掲げている商品で説明書き通りにやっても、うまく焼けないことがある。焼きむらができ、底はパリっと焼けても上のほうがまだ凍っていたり、逆に火加減やフライパンによっては焦げ付いて、餃子の皮が取れてしまうなんてこともある。
このようなややネガティブな声、ストレートにいえば「文句」というものに対して普通、食品メーカーはあまりまともに取り合わない。調理環境など個々の事情が影響している場合もあるので、1つ1つ取り合ったらキリがないからだ。だから、「調理方法をもう一度よくご確認のうえ調理してください」などと当たり障りのない対応をしてお茶を濁すのが常だ。
味の素の戦略
しかし、味の素はこの「文句」に真正面から向き合った。「こちらでは何度やってもうまく焼けるのに、焼けない消費者がいることは、こちらが想定していない状況があるはずだ」ということで、冷凍餃子がうまく焼けなかったフライパンの提供をSNSで呼びかけたのである。
これが反響を呼び、なんと全国から3520個も届けられた。しかも、驚くのはここからだ。味の素はそれらを全て検証し、その結果を専用サイトに掲載したのである。
それからほどなくしてリニューアルした冷凍餃子がよく売れたことは言うまでもない。メーカーへの「文句」に対して、ここまで真摯に向き合って改良した餃子を食べてみたいと思うのは、消費者として自然な感情だ。
ちなみに、味の素がやったのは「マネジメント」で知られるピーター・ファーディナンド・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)氏が言うところの「フィードバック」というものだ。
ドラッカーは、組織外からの情報を得て学習する「フィードバック」が機能している組織のマーケティングは、「セールスや宣伝をしなくても自然にモノが売れていく」状態になると説いた。味の素はドラッカー理論に基づいてマーケティングを成功に導いたのだ。
このように冷凍餃子市場をけん引する最大手が「顧客の声に真摯に向き合う」という範を示したことで、他のプレーヤーも刺激を受けたのか、「冷凍餃子の顧客満足度向上」に力を入れてきたことも大きい。
マルハニチロが14年ぶりにカムバック
分かりやすいのは、14年ぶりに冷凍餃子市場にカムバックしてきたマルハニチロ(東京都江東区)だ。
2024年7月に発売した「赤坂璃宮の餃子」は、その名の通り高級中華・赤坂離宮監修のもとで素材にこだわった高級餃子が「水なし・油なし」で手軽に調理できるというのが売りだ。
また、大阪の中華料理店から餃子の製造・販売メーカーとなった「餃子計画」が2024年9月から発売している「創業の味 生餃子 12個」も分かりやすい。
一般的なスーパーの冷凍餃子というのは、餡を皮で包んだ後に蒸してから冷凍する。しかし、この商品の場合は餡を皮で包んだ「生」のまま急速冷凍している。このような製法をすることで、具材の旨みや香りが抜けないという。
確かに、料理をする人は分かるだろうが、炒め物でも蒸し物でも、一度加熱したものを温め直すと味や香りが若干落ちる。そこで、熱を入れるのは最小限のほうがいいという発想である。
このような形で、各社がスーパーの冷凍餃子の質や顧客満足度を競い合うように上げていけば当然、市場は盛り上がる。そうなると、「これまで無人販売店で売っている餃子がおいしいと思って買ってたけど、スーパーで売っている冷凍餃子コーナーも充実していいじゃん」という感じで、客がスーパーの冷凍餃子売り場に戻ってくるというワケだ。
「閉店ラッシュ」の要因は他にも
もちろん、「閉店ラッシュ」の要因はそれだけではない。コロナ禍で「24時間無人で餃子が買えるなんて面白い」と注目を集めた「強み」の部分が、近年の餃子ブームで「近場にある有名な店に行けば、どこでも冷凍餃子が買える」という状況になって、かすんでしまったこともある。
冷凍餃子は参入障壁が低い。イオンやライフといったスーパーのPB(プライベートブランド)はもちろん、大手コンビニ3社、無印良品などもオリジナル冷凍餃子を販売している。
極端な言い方をすれば「やる気さえあれば誰でも参入できる」ジャンルだ。実際、UFOやネッシーなどダイナミックなスクープが一面に踊ることで知られる『東京スポーツ』も、少し前に「東スポ餃子」という冷凍餃子の販売に乗り出している。
この動きは2024年に入ってからさらに加速しており、これまで冷凍餃子に無縁だったプレーヤーが「オリジナル冷凍餃子」の販売に乗り出している。
その代表が、ドラッグストア大手のウエルシア薬局(東京都千代田区)だ。同社初の冷凍食品として「黒豚をちゃんと感じる幸せの肉餃子」を2024年4月に発売。2023年に「ドラックストアにあったらうれしい食品」に関するアンケートを行ったところ、冷凍おかず、特に冷凍餃子を求める声が最多だったため、開発をスタートしたという。
百貨店なども参入
「閉店ラッシュ」に苦しむ百貨店も参入している。
広島県内で展開する老舗百貨店「福屋」(広島市)は、同じく広島県内で「広島カープ餃子」などを製造している井辻食産(広島県安芸高田市)とコラボして、消費者と一緒にアイデアを出し合いながら、広島県産の食材を用いた「カラダにやさしい餃子」を開発した。これを「広島新名物 餃子としあわせ」とネーミン��して、オンラインショップや百貨店で2024年3月から販売している。
「町おこし」の世界でも冷凍餃子はアツい。草津温泉のある群馬県の草津観光公社では2024年7月、嬬恋高原キャベツなどの厳選食材をふんだんに使った「草津温泉餃子」を発売した。全国にある「道の駅」でも、オリジナルの冷凍餃子を販売している。
このような「どこでも誰でもオリジナル冷凍餃子」という社会状況になってしまうと、いくら群馬県の名店「雪松」の味を忠実に再現しても、無人店舗で24時間購入できたとしても、「馬群に沈む」ことになってしまうのは致し方ないのではないか。
これはスーパーの冷凍餃子にも同じことが言える。今は好調かもしれないが、ちょっとでも景気の良いところには「オレにも甘い汁を吸わせろ」と言わんばかりに新規参入が殺到して、すぐにレッドオーシャンになる、というのが最近の日本のパターンだ。
つまり近い将来、ビールメーカーが作ったこだわりの冷凍餃子とか、有名シェフが監修した冷凍餃子なんてのが、スーパーの冷凍食品に並んで、壮絶なシェアの奪い合いが始まるのだ。
実際、この原稿を書いているとき、近くの「肉汁餃子のダンダダン」でランチをしたら、「鳥羽周作シェフ監修 究極の餃子定食」を展開していた。
もはや「国民食」というほど普及した餃子カテゴリーの中で、「おいしい」を訴求するのは当たり前だ。それ以外に、どうやって競合と異なる独自のカラーや強みを打ち出し、消費者の支持を得ていくのかは大きなテーマだ。
熾烈な生き残り争いに突入した冷凍餃子プレーヤーたちの次の一手に注目したい。
中井彰人(株式会社nakaja lab 代表取締役/流通アナリスト)見解 日本冷凍食品協会のR6年「冷凍食品の利用状況実態調査」によれば、冷凍食品を利用する機会が増えた理由のアンケート結果では、2024年と2020年の回答の変化が示されている。そこでは「おいしいと思う商品が増えたから」、「野菜など生鮮品の価格が上がったから」という回答が増えていて、中でも価格が上がったという答えが2倍以上に増えている。これでみると、おいしさとコスパが相対的に良くなったことで、スーパーで冷凍食品を選ぶ人が増えたことが背景にあることが伺える。多くの消費者にとって、食品の買物で価格上昇が最大の問題であり、賢く選択していくためには、冷凍食品のコスパがはずせなくなってきているということと解釈出来る。ただ、冷凍食品全体の需要が増えていても、無人餃子はコロナ禍における選択であり、制約がなくなり、かつ、スーパーなどでの選択肢が増えている中では、減少するのはやむを得ないのだろう。
西川立一(ラディック代表/流通ジャーナリスト/マーケティングプランナー)補足 餃子の無人販売店や自販機は、物珍しさで消費者が飛びつき、媒体がこぞって取り上げSNSなどで拡散しブームとなったが、出店戦略やマーケティングを駆使した事業展開ではなかったことから、ブームが沈静化すれば淘汰されるのは当然��結果。
それに対して冷凍のスーパーの販路においては、有力メーカーの商品開発力とマーケティングにより巨大な定番市場を形成している。
その一方で、こだわりやプレミアムのアイテムの商品開発も行われ、それぞれ棲み分けがなされ、市場は活性化している。
0 notes
Text
猫は知っていた 7月4日 土曜日
さて、7月4日になり、仁木兄妹が箱崎医院に引っ越してくるところからです。
夏空に“ソフト・アイ���クリーム”の形の入道雲という表現が面白いです。 今なら、ソフトクリームですね。
不二家が、昭和26年(1951年)にソフト・アイスクリームを作る機械をアメリカから輸入したそうです。 昭和27年(1952年)5月13日の朝刊に不二家洋菓子の広告に〈ソフトアイスクリーム〉の掲載があります。 昭和28年(1953年)には、ソフトクリームブームが到来したみたいです。 でも、ここでソフト・アイスクリームと表現したということは、不二家の影響が強いのでしょうか? 恐るべし不二家ですね。
荷物は、小さなオート三輪で運んできました。 昭和34年の話だとして、小さなオート三輪なら昭和32年に発売された「ミゼット」でしょうか?
さて、案内された部屋は七号室でした。 八号室では夕日のせいで暑くなるだろうからという理由でです。
わざわざ八号室から七号室に移ることを明確に書いているということはなにかあるのでしょうね。 というか、何かあるとしたら、部屋を変えさせた人物が関係しているのかも。 箱崎医院の関係者ですかね。
家永看護婦の嫌味がチクリと刺さりますが、これも伏線でしょうね。 階段の上り下りはギシギシとでも音がするのでしょうね、手術があったので静かにといってます。
悦子は、そんな家永看護婦のようすを“権柄尽く”といってます。 権力に任せて、強引に事を行うことですね。
2階に上がると今度は野田看護婦とあいます。 野田看護婦は、悦子の持っているブラックの絵に関心を示します。 ブラックとしか書かれていませんが、ジョルジュ・ブラックですかね。 パブロ・ピカソとともに「キュビスム」を生み出したフランスの画家です。凡人には全くわかりません。
この後、入院患者がわざとらしく紹介されます。 これも、何かの伏線でしょうね。
一号室は、小山田すみ子という中年の婦人で、頸部リンパ腺炎だそうだが、もうほとんどいいらしい。一人で入院している。 二号室が例の平坂勝也です。例のというのは、プロローグに出てきたからですね。 清子夫人が付添って看護しています。 職業は貿易商で、外人に日本の浮世絵や古美術品を売りつけているみたいです。 三号室は空室です。 五号には若い男の患者がふたりはいっています。 宮内正は26、7の機械技師で職場で左手を負傷したのだが、もう痛みもないので毎日を退屈しきっている。 桐野次郎は大学生でサッカーの練習中ころんで足を折り、つい二日ばかり前に入院した。 六号室は、工藤(くどう)まゆみで、十三くらいの女の子です。 背中におできができて手術したのが今日です。 七号室は、引越し先ですね。 で、不思議なんですが、八号室についてはかかれていません。 誰かが入っていればそれ���書くのでしょうから、空室なんでしょうがなぜそのことにふれないんでしょうか?
で、部屋の片付けの途中で、 兄が大事にしている“フレウム・アルピヌス”(Phleum alpinumフレウム・アルピヌムのことですかね)にちょっとふれてます。 これは、兄が植物学を専攻していることと、それ以外にもなにかの目的があってここに挿入されいるのかもしれません。 フレウム・アルピヌムは学名で、みやまあわがえり(深山粟返り)の頃らしいですが、7月だと花がしている時期だと思うのですが、そのことにはふれていません。
片付けをしていると、夕食の案内にユリさんが入ってきます。 ところが、このユリさん、様子が変です。 心ここにあらずで、顔色も青く、寝不足の時のように、いらいらと血走った目をしています。 これは、何かありますね。
さて、夕食です。 院長夫妻、おばあちゃん、英一さん、幸子ちゃん、それに仁木兄妹の七人が食卓を囲んでいます。 箱崎家のはなれの八畳の茶の間です。
・気分が悪いというユリのこと。 ・仁木兄は、大好きなくせにアルコールに弱く、すぐ眠くなってしまう。 ・幸子ちゃんが、金魚の模様のゆかたのことを。 ・おしゃれにうるさい敬二は、四月から医大へ行っていて、中野で下宿している。 ・病院と台所が離れているので、患者や看護婦の食事を運ぶのが大変だと。 ・洗濯も、病院専用の大きな電気洗たく機を買ってからは、楽になった。 ・調理場も建て増しして、家族と別にする。 ・親が読んでためになる小さい子供の音楽のおけいこに参考になる本このこと。
と多岐にわたります。
そして、これが一番の核心なんでしょうか。 英一が、“ヒヨドリジョウゴ”は、毒草なのかと、仁木兄に尋ねます。
鵯上戸(ヒヨドリジョウゴ)は、つる性多年草で日本全土の山野に分布しています。 ジャガイモの新芽に含まれることで有名な有毒成分である“ソラニン”を含むみたいです。 なんと、種が鳥や土に運ばれて、家庭の庭やベランダのプランターから突然生えてくることもあるようです。 他にも、モクレン科の常緑小喬木であるシキミにも、きれいな実がなるが、猛毒で子供が食べて死んだりします。 もともと『悪しき実』と呼ばれていたのが、シキミという名になったらしいです。 直接ではないのかもしれませんが、毒による事件でも起こることの伏線ですかね。
夕食の最後に女中のカヨさんが、水蜜桃を運んで来ます。 水蜜桃とは桃全体のことを意味しているみたいです。 そのため「水蜜桃」という品種はなく桃はほとんどがもともと「水蜜桃」だそうです。 知りませんでした。 ももではなく「水蜜桃」というと、通っぽくていいですね。
その後、仁木兄妹は、英一の書斎を訪ねることになります。
英一の書斎は、家の東側にあたる八畳の和室です。 窓際に勉強机と腰掛があって、本のぎっしり並んだ大きな書棚が二つあります。 きちんと整頓されていた書棚は、英一の几帳面な性格を表しているようです。 専門の医学書が大部分で、通俗科学書も少しありそれ以外の本は見当たらないようです。
英一は、平たいボール箱を探しますが、見当たらないようで、悦子が、壁ぎわの書類ののっている机を指さして「ここにあったのでは?」といいます。 理由は、丁度箱ぐらいの大きさの四角な物ぐらいに、ほこりがななかったからでした。 それに、英一は、例の用心深い目の色で、じっと悦子を見つめ、“置いてあったのは、人から預かって置きっ放してあったのを、返した”と答えます。 これも、なんだかわざとらしく挿入されていますね。 これも伏線なんでしょうか? いったいどんな箱なんでしょう?
英一が、探偵小説が好きなのかと��子に振ります。 その部屋には敬二の本棚があり、探偵小説ずらりと並んでいます。
いくつか名の売れた一級品として挙げられています。
「ABC殺人事件」 ・1936年発表。 ・アガサ・クリスティの推理小説。 ABC殺人事件 (創元推理文庫) ISBN-10 : 4488105386 ISBN-13 : 978-4488105389 ポアロの元に、「ABC」と署名された挑戦状が届いて、その通りに事件がおきます。 面白そうです。
「赤い家の秘密」 ・1921年発表。 ・A・A・ミルンの推理小説。 赤い館の秘密【新訳版】 (創元推理文庫) ISBN-10 : 4488116027 ISBN-13 : 978-4488116026 「赤い館」で「銃声のような音が聞こえた」と、そこに人が倒れている。 この事件の謎を素人探偵のアントニー・ギリンガムが調査します。
「血の収穫」 ・1929年発表。 ・ダシール・ハメット作の1929年の探偵小説。 血の収穫【新訳版】 (創元推理文庫) ISBN-10 : 4488130062 ISBN-13 : 978-4488130060 悪党たちの対立によって荒廃した町に主人公が現れ、複数の陣営に接触して扇動や撹乱を行い彼らの抗争を激化させて殲滅する。 ハードボイルドやアクション小説というところでしょうか。 大好きなジャンルなので、今度読んでみたいですね。
「Xの悲劇」 ・1932年発表。 ・エラリー・クイーンの長編推理小説。 Xの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫) ISBN-10 : 4488104436 ISBN-13 : 978-4488104436 密閉状況での殺人やダイイング・メッセージとして「X」の形を作っていたなど、推理小説しては非常に面白そうです。
「カナリヤ殺人事件」 ・1927年発表。 ・S・S・ヴァン・ダイン作の長編推理小説。 カナリア殺人事件【新訳版】 (創元推理文庫) ISBN-10 : 4488103200 ISBN-13 : 978-4488103200 殺害現場が密室で犯人を特定するために、ポーカーによる心理探偵法を実践するという話です。
日本の作家がないのが残念ですが、ここにのは載せられないような事情があるのでしょうね。
英一と仁木兄は、毒草のことで盛り上がっています。 ヤマトリカブト(山鳥兜)は、特に根にアコニチン(アルカロイド)と呼ばれる毒が大量に含まれているみたいです。 アコニチンは、猛毒で、嘔吐・痙攣・呼吸困難・心臓発作を引き起こすみたいです。 そんなのここにあっていいのでしょうか?
英一さんのところから自分たちの部屋に帰るとき、桑田のおばあちゃんとあって、ユリさんの状態を確認します。 この状況は、ユリさんの部屋から出てきた桑田のおばあちゃんと仁木兄妹が会ったという感じでしょうか? その後、桑田のおばあちゃんは、脇玄関の戸をあけて外に出て行きます。 何をしに外に出たのかは説明されいません。 そのとき、桑田のおばあちゃんは、そでの中に何かをかくしてでもいるような感じだったとあります。 何かを持って外へ出たみたいですね。 様子のいおかしいユリさんも気になりますね。 これもなにかの伏線なのでしょうか?
これで、翌日に続きます。 特に何も起きないのが、かえってワクワクしますね。
つづく
0 notes
Text
Wikipedia書き抜き(更新中)
異歯性は顕著であり、頭蓋骨は後頭部でオーバーハングしている。二次口蓋は、咀嚼と同時に呼吸が出来た事を示している。大量の酸素を必要としていた彼らは恒温性を獲得しつつあった。身体を丸め、眠った姿のまま化石化した。
夜はボクシングジムで鍛練を重ねる裏の顔を持ち、部長の愛人を麻薬とセックスで籠絡する。1億円強奪殺人事件で奪った1億円を安全なヘロインに換えるため、市会議員の磯川とも接触。刺客たちも難なく始末した。
「しまったー! 99800円のパソコンなんてどう考えても安くしすぎだ! うっかり、してました」という特徴的なコーラスでインパクトを与えたが、「ウソテック」や「総鉄屑」「粗ーテック」「糞ーテック」といったあだ名(インターネットスラング)が登場するなど、同社は著しく株を落とした。
2019年に特化則非該当の「サラセーヌAZ」へとさらなる進化を遂げ、「サラセーヌ堅鎧(タフガイ)システム」が実現した。
その影響はこれ以外にもジバンの機械的な動作や、各種メカニックの描写などにも大きく現れており、このようなロボット戦士路線は宇宙刑事シリーズのような正統派ヒーロー路線への回帰が意図されたものとなった。また、当初は主人公とヒーローが同一であるような演出をしない効果的にアナクロニズムを生かした手法や、主人公と深く繋がる少女である五十嵐まゆみの登場など1950年代の特撮ヒーローを彷彿させる設定となっている。
再び首と身体が一緒になるのではないかと恐れて、頭と身体を二つの岩の頂上に置いて、その岩の裂け目の中に石像をおき、それぞれの寺院を建立した。二つの寺院の間は、以前は4ヨージャナあったが、今は1クローシャしかないと言われている。 わたしの師匠が見たとき、寺院は岩壁がくっついて入り口がなく、窓から見ると、両方とも台座の上に石像の破片のようなものがそれぞれ置いてあったと言う。
土間基礎のコンクリートを打設しました。仕上げに『ヘラコプター』を使用しています。 業界入りたての頃、先輩に出力を2倍にすると空に飛べると教えられ、しばらく信じていた事を思い出しました。
サマラの「蜘蛛歩き」と呼ばれる四つん這いで、手(肩)よりも足が前に出る股関節が外れたような人間では考えられないような不気味な動きはCGではなく、実際にサマラを演じたボニー・モーガンが行��っている。
水素の音は漫画だけではなく、多くの関連イラストも作成され話題になりました。多くの人が水素の音の通販動画の虜になり、作成されたのでしょう。ただ再現するだけのイラストだけではなくストーリー性を持つものも多くあったのです。 それもまた面白く、水素の音が長くトレンドに残った要因の一つでしょう。人の想像力は本当に素晴らしく、多くの関連イラストを見ているだけで時間をつぶすことができるでしょう。AA(アスキーアート)でも水素の音が作成されました。AAとは文字や記号を組み合わせて作られる絵のことです。ずれが生じたりするため、それを作ることは容易ではありません。 水素の音のAAは、もちろん「あぁ~!水素の音ぉ~!」という場面です。ほかにもある可能性がありますが、やはり話題になるのはこの場面でしょう。 イラストやMAD動画、ノムリッシュ版に漫画、そしてAAなど様々な場面で作り変えられるほど水素水が話題になったことがよくわかりました。
素晴らしい時間の過ごし方だと思います。将来私のために勉強することができて嬉しいです。 私は自分のPTSDと複数の外傷性脳傷害で正社員として働けなくなりました。 精神的にも身体的にも社会人として生活することは難しいけど、将来につながる勉強と大麻が今の私の希望です。
エチゼンクラゲが地球で果たしている役割が明らかになっている。エチゼンクラゲは体がベタベタしており、弱って泳げなくなると体の表面に細かいごみがまとわりつき、重くなって沈んでしまう。このような形で、地球の生物地球化学的循環(生物循環)に寄与している。 ズワイガニもエチゼンクラゲを捕食している。 細かくしてアイスクリームに入れ、エチゼンクラゲアイスとして販売されることもある。 2009年は大発生して日本各地で漁業に大きな被害を与えたが、2010年度はその千分の一に激減した。
広く好まれた見世物であり、熊や猿を連れた旅芸人が犬をけしかけたり、観衆に石を投げさせて娯楽とした。狂人の観察などと並ぶ人気の興行であり、芝居見物などと等しいごく普通の習慣だった。
シーモンキー(アルテミア)は普通の塩とエサではうまく育ちません。孵化は容易ですが、その後の育成は難しいです。シー藻はシーモンキー飼育に最適な藻。シー藻を入れると良質なバクテリアが繁殖し、それをアルテミアが食べるので餌やりが全く不要になります。死んだシーモンキーや糞はシー藻の養分となって水槽内で循環します。併せてシー藻が酸素を出すため酸欠が起きず水も腐りません。過去に失敗された方にもおすすめです。小さな容器では水温や水質が安定しないため、なかなかうまく育ちません。大きな容器で飼うほどに失敗が激減します。孵化率の低い中古の飼育セットも出回っているようです。アルテミアは生き物です、おもちゃではありません。小さな生物だからこそ最上の環境で育ててあげてください。お子様の教育にもお役に立ちます。
マディディティティはオレンジ色から茶色の体毛で、頭に特徴的な金色の王冠のような模様を持つ。尾は白く、手足は赤褐色である。自然保護の基金を作るために命名権を競売に出し、オンラインカジノ会社のゴールデンパレスが65万ドルで落札した。そのため、ゴールデンパレスドットコムモンキー(http://GoldenPalace.com monkey)とも呼ばれる。
26世紀の愛のピアノ音楽。Limb 1st。辺境の惑星でいま二人のピアニストの魂が出会う。どうしてわかりあえるのにこんなに時間がかかってしまったのか。さる東欧のX地区でソ連解体以前、アンダーグラウンドピアノレジスタンスがロケット基地を占拠した。ピアノを演奏する事により推進力を得るピアノエンジンが積まれたロケットに乗り、宇宙に脱出するレジスタンスの演奏記録。ヴァルカンピアノ砲照射、大気圏脱出後の強烈な光が。ピアノが宇宙に行くとどうなるんでしょうか。
最弱童貞の俺、非モテ女子に告ってイチャイチャライフを送ることにしました。~今更羨ましいと言ってももう遅い~
また、オリジナルデザインにしたらもっと良い物ができたのではないかという質問に対しては「デザインは全くのオリジナル。至る所に新しい機軸を取り入れている」と、このデザインはあくまでもオリジナルだという事を主張した。 今後の方向性としては、カラーバリエーションは考えず、トランスルーセントではないバージョンやPentium IIIなどを搭載した高速化を考えているという。 ゲストとして招かれていたインテル株式会社の傳田代表取締役社長は、「今までパソコンはデザインが良くなかった。このe-oneでリンゴのマークの人たちがこちらに来てくれる事を期待している」と語り、会場の笑いを誘った。
生きているロゴマークは、ずっと「変わりたい」と願っていました。ある時、清い水と出会ったことで、色々な形に姿を変えることが出来る様になりました。その時から、ロゴマークはこのキャラクターと、ひとつになりました。ロゴマークは「なりたい自分になる」そう願いながら日々、より善き姿を求めて変化しています。
リング状に成型して焼き上げたいちご味のもちもち生地を、いちごチョコでコーティングしました。リング状に成型して焼き上げたいちご味のもちもち生地を、いちごチョコでコーティングしました。ファミマのいちごモッチうますぎて、口に入れた瞬間女の子座りして泣いちゃいました。
HONUMIスーパーナチュラルシステム 海の作り方発明しました。 水換え不要の凄い生簀・活魚水槽の特長 従来の生簀と当社の凄い生簀の比較
車が��上、爆発。全身にヤケドを負い、病院で息を引き取るが、亡くなったのは替え玉で、本人は生きていた。亡くなった替え玉も、死んでも死にきれず、真棹を絞殺しようとした。しかし真棹を殺せず、それが事件にとって最大の誤算を生み出したため、洞窟で真棹を殺そうとした。
パンダは大量に竹を食べ、快速に排出する食べ方で、自分の体の需要を満足しています。一日の食糧は大体:筍23~40㌔、笹は104~18㌔、竹の枝は17㌔です。 パンダは垂直移動する習性があります。夏には高山へ筍を取り、秋と冬には雪のない中低山の地区へ移動します。 多量な竹が開花し、枯死することはほかの植物の更新を促進する役目があるから、生物種と生物系統の多様性を保持するには必要な過程です。一種の竹が開花しても、まだほかの食べられる竹があるから、竹の開花はパンダの生存を脅かすことにはならないはずです。しかし、現在パンダの生息地がごくわずかしかないし、分断化されているから、この「小島」での唯一の竹が一旦開花したら、パンダも食物に困る状況に迫られるのです。
クロムウェル夫人は、自分が設立した町が北京の裏側にあると思っていたため、町を「ペキン」と名付けたと言われています。(1700年代後半から1800年代初頭にかけて、中国と米国は地球の正反対の側にあると考えられ、町はしばしば中国の場所にちなんで名付けられました。別の例はオハイオ州カントンです。
藤原さんの主たる活動は北見の基地にて隊員(何十人という、最大時は84人と聞いています。元自衛隊員が多かったと聞いています。)と共に、地下に潜り火山の爆発と地震を止める仕事をしていました。
最初に迷乱する因は、3つの無明である 。 自己を認知しないという局面は、所取と能取としては生じていないので、実際上は「不迷乱」であるが、それが迷乱になる。たとえば「無名」が名前になるようなものである。これが①「同一性の無明」である。 「それを認知しない境界」という対象化、それが②「倶生の無明」であって、「輪廻と涅槃の両者」という顕現として生じる。 対象としての顕現を、知によって単なる二元的顕現に分割分離し、名称の指示対象を実体として概念構想する局面に至っては③「遍計の無明」と呼ばれる。
世界で唯一のアルビノゴリラ・スノーフレークは、かつてスペインの植民地だったアフリカの赤道ギニア共和国で捕獲された。群れの仲間は皆ハンターに殺され、スノーフレークだけが1966年にバルセロナ動物園に連れてこられた。2003年に皮膚がんで死ぬまで同動物園で��らした。
4人は進級し、堂郷和太郎の協力を得て楓は写真部を創部する。そこに声をかけたのは憧憬の路で楓の写真を撮り、賞をとった三谷かなえだった。写真部は楓とかなえ、そして楓を支援する3人が集まる「ぽって部」を合わせた5人で活動する。楓は、父の訪れた場所を訪ね、父の残した足跡を辿る。 また5人とかおるの姉の塙さよみは横須賀に行き、ちひろとその友人のともちゃんに会う。しかしかなえは受験のため、私たち展を最後に部活を引退する。その後かなえは大学に合格し、高校を卒業した。
1 note
·
View note
Text
ある画家の手記if.117 行屋虚彦/名廊直人視点 告白
一度実家に帰って制服とってきた。 俺は今高校生だったらしい。入学式にも出てねーからなんの実感もなかった。一昨日、担任からケータイに電話きて、夏休み前に宿題とかいろいろ渡すもんがあるからって言われて、学校に呼び出された。
学校に行かないのはそこまで気が回らねえっつーか…普通に暮らしてて学校に行く時間とか体力の余地がどこに出てくんだよ…とかもそんなに思ったことないな、学校とか通学とかの概念からねえし完全に忘れきってて。 でも周りの大人は初対面だとけっこうな高確率で訊いてくる。「学校に行きながら絵も描いてるのか?」そう訊かれるたびに、学校ってのは人間が生きてくためにそんな重要なもんなのかなとか、こうやってテキトーに抜かしてっとなんかまずいことになんのかなとか。わかんねえけど。 それでたまーに小・中の頃も顔出す程度には行ったりしてた。それでも俺に友達とかができないのは、俺がコミュ障だからなのか、滅多にいないやつだからなのか、イライラしてることが多いせいか、目つきが悪いせいか、友達欲しいわけでもないからか、全部かもしれねえし…とか思ってた。視界の暗さの正体と、あからさまな嫌がらせみたいなのされるまでは。
高校がどこかわかんねーからタクシー使って学校の名前言ったら門のとこにつけてくれた。 俺の今日の行動はどうもこっからマズかったらしい。 教師には徒歩で通学して心身を鍛える目的がどーのこーの、クラスのやつにはあいつタクシーで来てた、って言われて、教師のはなんか言い分があんだなと思ったけどクラスのやつのは完全に謎だった。タクシーで来た、その通りだけど、それがなんなんだよ…タクシー代はちゃんと自分で稼いだ金で払ってるっての… 教師のは黒じゃなかったな…クラスのやつのはかなり黒に近くて、黒板が見えにくいレベルだったから授業中に一人で教室を出た。なんか言われた気がするけど誰の声かも分からなかった、他の教室からも声がしてて、なんでこれを… いや… 普通は取捨選択して不必要な情報は意識から落ちる…んだっけ、あの人が言ってたっけ、知るか、俺はそうなんないんだから普通が俺を どう助けてくれるんだよ
教室から出て校庭の鉄棒の横の花壇のレンガに座って、ぼんやりしてた。春に飽和して人体との境界線を曖昧にしてた白い空気が夏に向かって少しだけ引き締まってる。心地いい温度に融ける人間。耐えられないやつは死ぬ。これを五月病とかいうんだっけ。違うっけ。 今日はもう七月でだいぶ暑い。でも外にいたら問答無用で熱中症になるってほどでもない。風が鉄紺色、少し冷たい心地いい風。 ポケットに入れてた小さなルーペを出して、地面に当てて見る。このルーペはずっと昔に直人さんがくれたもの。俺がイライラしてた時、視野のスケールを極端に変えたらどうかなって、言われて。広く見るのは難しいから極小の世界を、こうしてたまに見る。…ルーペの向こうには普通にしてて俺に見えないものが、たくさん見える。 花壇に咲いてる花はたぶんどれも綺麗ってやつなんだろうな、じゃなきゃわざわざ植えねえのか。花をよく見ようとそばに手をついて少しかがんだ、手元に、ぼたっと落ちてくるみたいに黒が 咄嗟に立ち上がって何歩か退いたけど 遅かった 頭にバシャっと水かけられた …いってーな…3階以上の高さからやったろ今の… でも不潔な水とかじゃないな、水道水か?それだけでもまだマシか…今のは回避できなかった俺のミスだ、見えてんのに反応遅かった。最近ガチで学校きてなくてこういう危機意識鈍ってたかな。 と、思いながら頭上を咄嗟に庇おうと掲げた片手に、ぶっすり尖った鉛筆が一本、貫通して突き刺さってた。水は綺麗でも異物混じってたか。…ギリギリ貫通はしてなかった。手のひらから抜いてその辺に鉛筆を放る。 はー…制服は濡れるし、散々かよ。
一度鞄とりに教室に帰ったらいろいろ言われてた。黒の濃さからして水落としてきたのは隣の教室っぽいけど。 あえて意識して声を言葉として拾ってみるよう意識を集中する。 ーーー画家って普段なにしてんの? ーーーさあ好きな絵描いてるだけじゃね ーーーそれで学校休んでいいことになるんだ ーーーそういうんじゃなくてただの不登校だろ ーーーあいつべつに画家じゃないだろまだ学生だし ーーー稼いだ金どうしてんの ーーー画家って儲かるの~ ーーー才能とかあれば高く売れるんじゃない ーーーあいつのはあれだろ、ガキの頃から描いてるってのが売りポイントっつーかそこがまず高ステータスになるみたいな ーーー才能関係なくね?子タレと同じ ーーー小さい頃から好き勝手してもなんも言われなかったんだね ーーー父親のほうが名前売れてるからそういう家にいたら流れで子どもも描いたりすんじゃね ーーーお家柄ってやつ ーーー売れる絵の書き方とか小さい頃から教えてもらえそうだもんね、そりゃ上手いに決まってるわ ーーーさっき水かけたやつってあれだろ、隣のクラスの美術部の、中学ん時あいつと比べられて学祭のポスターこき下ろされたとかいう
ここまで ここまで! これ以上は聴かねえ 走って教室を出る 俺はただ描いてるだけなのに 誰を蹴落としたこともねえよ ただ描くだけがどうしてもそうなるから昔から嫌なんだこんな場所 画家同士なら ただ描くことが誰も誰かを傷つけないのに 知るか どいつもこいつも勝手に潰れろ
そのあと職員室いって、受けとるもん受けとって帰った。帰り際に担任にあれこれ言われた。曰く、 母親が亡くなって生活は大変かも知れないが自分で稼げるからってなんでも金で解決しようとするな、タクシーも使うな、もっと運動しろ、もっとよく食べろ、健康的な生活しろ、なるべく学校にきて同世代の友達と交流を持て、勉強もしろ、今が楽しいからって絵ばっかり描いてるといつか後悔するぞ、高校は義務教育じゃないのに通えるありがたみを知れ、親御さんに感謝しろ、画家なんて仕事は卒業してから始めたって遅くない、でも同世代との学校生活というものは今しかないんだぞ …赤と青が声と扇風機の風に乗ってひらひら天井に向けて舞い上がってるのを見てたら、ちゃんと顔見て話を聞けって言われた。なんで濡れてるのか訊かれたから、暑かったんでペットボトルで水かぶりましたつっといた。
帰り道は学校から見えない距離まで歩いて、そっからタクシー使った。 行きは場所がわかんなかったからだけど、今は濡れてるから電車とか乗るとちょっとこのままじゃ風邪ひきそう。 帰ってから制服をハンガーにかけて壁にかけて、ドライヤーをあててたらインターホンが鳴った。 出てみたら香澄さんだった。
「すみません、俺も今帰ったば��かで」お茶菓子とかなんも用意できてないしちょっと散らかってます、って続けようとして黙る。 「……」 香澄さんの いつもと色が違う。表情も違うせいか?…なんかあったのか 「香澄さん? ここ来るまでに、なんか…ありました?」 「…え?」 やべ…やらかした。相手が自覚ないときはそういうの言わなくていいんだっての… とか思ってたら香澄さんが少し首下げて俺の髪の毛に顔近づけてきた。そういや濡れたままだった。 「水…? 手も怪我してる」 言われていろいろ思い出す、手も今の今まで忘れてた…。ドライヤー片手にどう返そうかと思ってたら風呂に直行することになった。俺が。…なんでだ。 「怪我してるし、風呂入るの手伝うよ」 「… え、 …手伝… ��」 「髪洗ったりタオルしぼったり…」 「え…いやそれは、…え…っと、」 「…ごめん 他人に頭とか触られんの嫌かな」 「そういうこと…じゃなくてですね、」 香澄さんが風呂に入るの手伝うっていうのをめちゃめちゃ遠慮してなんとか一人で風呂に入る。 手伝うってあれか、前に俺が母さんにやってたようなことか。俺はそんなに抵抗なくやってたけど、…あれって結構ハードル高い人には高いらしいからな…。そうじゃないから申し出てくれたのかもだけど。…わかんねー… 風呂入る前に香澄さんに穴あいてるほうの手を清潔なビニール袋で包まれて、手首にゴムみたいなのでしっかり固定された。防水? 「困ったことあったら呼んでね」って言われて、ようやく香澄さんはちょっと普段の表情に戻った、けど、色は来たときと何も変わってなかった。 湯船に2分くらい浸かってただけでもう逆上せてきた。くらくらしながら風呂から上がる。 髪をタオルで拭きながらリビングに行ったら嵌めたままのビニール袋とられて治療?がはじまった。…そんなたいした怪我じゃねえんだけど… 手当てされながら「何があったの?」って訊かれた。 「学校行って宿題受けとってきました」深いとこに折れて埋まった鉛筆の芯はどうもならなさそうだな。なんかちょっと大袈裟なくらいに包帯が巻かれていく。 「学校…」 手元狂わせずにどんどん処置を進めながら香澄さんが呟いた。そういや俺、今日まで学校行ってる素振りとか全然なかっただろうし実際行ってないからただの無所属ニートと思われてたかもな。画家ってそんなもんではあるけど。 「もらっても宿題やんないですけどね」ちゃんとやったことは一度もない。それで殺されるわけでなし、毎年違うスケジュールとかぶるんだよな。公募とかもこの時期多いし。 「うつひこくんはいま…高校生?どうして学校いくの?」 「普段は行ってない不登校児ってやつですよ。でももうすぐ夏休みだから、たまには顔見せないとっていう程度の」 …ん?今のって、今日なんで学校行ったかじゃなくて、俺が学校行ってる理由全体を聞かれたのか?俺…日本語が不自由か… 「そうなんだ …俺高校って行かなかったから、どんなかわからなくて…ごめんね」 謝られた。やっぱなんか俺が間違ってた気がする。こういうとこに学校行く意味とか意義とかがあんじゃねーの…とか思う。日本語での円滑な意思疎通みたいな…。 「この怪我はどうしたの?」 包帯を巻き終わった俺の手をじっと見て香澄さんが言う。…利き手じゃねーし、まあ利き手でもか、そんな痛くはないし平気だし、…こんなじめっとした話聞かされても困るんじゃねえの。 でもこういうこと訊かれんのも久しぶりだ。香澄さんがそういう界隈の人じゃないからか。 「そういう風に訊いてもらえるだけでだいぶ救われます」 包帯が巻かれたほうの手を俺も見ながら、ちょっと俯き加減になる。 「自傷で片目がこうなったの、俺の周囲はだいたい知ってるんで、そっからはなんか怪我しても自分でやらかしてんだろってスルーか嗤うかくらいしか誰からも反応ないから」 どういう経緯で片目潰したか知ってる少数の人間は別だけど、その人らも忙しいからなかなか会わなかったりで、結局一番接してる人間は名前も覚えてないような個人的な付き合いのない人たちばっかだ。だからこそ言えるし嗤えるってとこはあんだろうけど。 ーーーーでも、そういう人たちも… 「…。」 なんか裸足の足裏…足元が湿ると思ったら、香澄さんが目の前で悲しそうな顔してた。…来たときの色が、落ちてる。 「自分でやったの…」 …どっちだこれ…迂闊に目のこととか話題にしないべきだったか…せっかく …いや、事実は事実でどうにもなんねえしな。 「…手ですか、目ですか」 香澄さんは一度顔上げて俺のほう見たけど、喋るごとに俯いてく。 「え、あ、どっちも…?どっちっていうか、ごめん…えっと…」 …俺が完全に取りちがえて主旨ずらしたっぽいよな、たぶん。 楽しくもない、じめっとしてて、いい気分にはならない、そういう話を、聞いてくれようとしてた…のか 「夏休み前だから夏休みの宿題取りに来いって担任から呼び出しの電話きたんで久しぶりに行ったんです。教室の中は俺の噂か陰口か微妙なので溢れてて、校庭に逃げてって。そしたら上階の窓から水かけられて、水はただの水だったけど中に鉛筆とか釘とか混ぜてあって、俺が咄嗟に頭庇おうとして手をかざしちゃったから、手のひらに降ってきた鉛筆が刺さったんです。 …それだけです。」 「……そう」 香澄さんがまたちょっと表情強ばらせてる。…こんな詳細まで言わなくてもはしょればよかったかと思ってたら頭にそっと手が乗った 「………」 「お疲れさま、…今日はもうのんびりしよ」 優しい感じの撫でかたで頭を撫でられる …。 「頭庇ったのは偉いよ、すごいねえ俺たぶん咄嗟に動けないや」 俺的には失敗…いや…大差ねえか…でも顔とか頭とかより手を庇うべきだった気もしないでもない… 立ててた片脚に体を乗せてぐたっと項垂れる 香澄さんの撫でかた、ちょっと母さんと似てるな …黒 「やったのが誰かは分かってるから、怒るとか、教師に言うとか、…そいつが悪いって言えれば… … 」 言うべきなのかもしれない。それとか他のなんか、行動起こすとか。俺にそういうことやるんなら他の人間にも平気でやってんのかもだし、とか、俺一人で片付けていい問題じゃない、みたいな。よく知らねえけど、いろんな意味で。…でも、 「でもみんな… 何かあるじゃないすか ゲームの敵キャラみたいに俺を痛めつけるだけに生きてるわけじゃない 今日の俺にとってはそうでも … …みんなにそれぞれのここまできた時間と色があって …俺は誰かを指差せないです、おまえが悪いとかっては そうしたほうが …みんなのためによくても… …」 今日の俺に…とっても、か…。 「…… 誰のどんな事情もうつひこくんに怪我させていい理由にはならないよ」 理由… …走ってったとき隣の教室から出てきた一人の黒いやつ、たぶん間違いねえと思うけど、降ってきた黒と同じだった、黒にもいろいろある 廊下でちょっとだけ睨まれた気がする。 黒いけど、他の色もあった、入り混じって、俺への悪意だけでできた存在じゃないのは見ればわかった、あいつにもいろいろあるんだ、何があるのかまでは俺には分からねえけど みんなにそれがある 俺はあれでいいと思った 美しいと あれが俺への悪意や複雑な感情の現れたものなら あのままがいいな 美しくはないよ、そんなこと言ったら現実はなにも美しくない でもそう思う以外にどうすれば 俺は ……………… ……… ………
包帯巻かれてなければ普通めに動かせるんだけどがっちり巻かれてガードされてて、今日もう何もできなさそーってことで、俺は例の人をダメにするクッションの上に大の字に寝そべって首のけぞらせて香澄さんのしてることを上下逆にぼんやり眺めてた。こいつマジで人をダメにすんな… 香澄さんはキッチンで今日の夕飯作ってくれてた。 さっき手当てしてもらってて服の裾からちょっと覗いた香澄さんの地肌、なんか古傷みたいなのあった。白い光を放ってて、それが白く見えてたんじゃないかと思って一瞬ぞっとした。 朱の中の、白い筋、人体の脂肪分みたいな …どういう事情かなんてそれこそなんも知らないけど、白く見えてるのがなんかの傷か傷跡なら大量の傷が頭から爪先まで全身にある…もしくはあった、のかもしれない。 事情は知らない、でも…学校で地味な嫌がらせされてるとかって話題は香澄さんの前ではテキトーな嘘ついてでも避けたがよかったんじゃねえの…今更だけど… とかぼんやり考えてたら夕飯ができた。 香澄さんと二人で向かい合って食べる。美味そうだけど見たことないオシャレな感じの料理。赤いな 「うつひこくんは好きな食べ物ある?」 「肉ですね」 「肉。」 「焼いた肉ならなんでも」 「人と食事したりは平気かな」 「全然です。食えないもんもないし。一人でいるとダルさが勝つんで食事抜きがちなだけで」 「そのソファちょっと気に入った?」 「はい。ここ来るまではアトリエで描いてそのままコンクリとか板の床にぶっ倒れて寝て、ってののエンドレスリピートだったんで、このソファやばいすよね。座ってると自分がこれまで石器時代と同じ生活レベルで生きてたの実感します」 二人でなんてことない会話をして夕飯食べて、食べ終わったらまた香澄さんが食器洗ったりとか全部してくれて、 俺は誰かが俺のかわりに家事とか全部やってくれる不思議空間でそれをじーっと見てた。 ……………… ……… ……… 俯いたまま床を見つめ続けて、 さっき見た色 黒に … ……… ……… … 無理だ なんとかしようとしたけど俺一人の手に負えるものじゃない
「香澄さん 直人さんちに連れてってください」
***
急に香澄から連絡がきて、今からイキヤがこの新居に来るらしい。 僕は描いてたのを中断して、屋根裏部屋のアトリエを少し整理して整える。越してきたばかりだけど既に描いた紙が山のようにあちこち積まれてたから雪崩を起こさないように。 イキヤも無意識にうろうろするほうだけど、僕より半径が広かった気がするな。寄せて置いてた木製のラックを端のほうに避けて少し広めに空間を空けておく。 …30… いや、イキヤの身長が170ないくらいだから、腕の長さ的にはP20か…短時間勝負なら15号がいいかもしれない、どれもここにあるから一応15号をイーゼルにセットしておいて本人に聞いてみるかな。 そうこうしてるうちに外と玄関で音がして、玄関からすごい勢いでイキヤが走って入ってきた。「アトリエは3階、階段はそこ。F15?」「15です、ありがとうございます」 その一言だけで素早く階段を上っていった。追加で背中に投げる。「コバルト使うのに変な遠慮するなよ」「しないすよ」 後ろからついてきた香澄がきょとんとしてる。 苦笑い、とまでもいかないけど、腕を組んで笑いかける。 「描かないと処理できなかったかな」 アトリエのほうを見上げて続ける。 「イキヤなら一時間かからないから、そのあたりで様子見に行こうか。たぶんそのまま床で寝てるから、せめて客間に布団敷いて転がしておこう」
きっかり一時間経った頃に様子を見に行こうとしたら僕より先に香澄がアトリエに行って、やっぱり床で寝てたイキヤを抱え上げてた。 僕が客間に布団を敷いて、香澄がそこにイキヤを寝かせる。イキヤは一度眠ったら気絶したみたいに何しても起きない。 起きるまで客間についてようとする香澄を「今日はもう目を覚まさないから」って説得して、自分の部屋に寝かせる。 僕は今夜は睡眠薬を飲まないでコーヒーを啜りながら、イキヤの寝てる客間と隣接した部屋で夜通し仕事の続きをした。
.
0 notes
Text
【4話】 ガサが入ると分かっていたのに大麻を所持していたときのレポ 【大麻取り締まられレポ】
前回のあらすじ 僕と友人の吉岡は、プッシャーのANIから大麻とANI特製の曲げ玉(MDMAとLSD)をひいた後、運悪く職質をしてきた警察に大麻が見つかり、警察署に連行されたのであった。
――僕を乗せたパトカーが警察署に着くと、同乗していた警官は、後続の車に乗っている吉岡やANIを待たずに、僕を警察署の中へと連れて行く。
警官はそのまま3階に上がり、刑事課の脇の通路を歩いていくと、オフィス机にパイプ椅子が2つだけの、いかにも取調室という感じの部屋に案内し、ここで待つようにと僕に言いつけてどこかへ去った。
取調室で待っている間、刑事課のオフィスをじろじろ眺めていると、刑事らは事務作業の手を止めて、僕ににらみを利かせてきた。刑事課は目がパキっている刑事ばかりでおっかない雰囲気だった。

そうこうしていると、ほぼ唯一穏やかな面をした中年男がやってきた。中年は「事情は聞いたけど、運転席の男が大麻の売人なんじゃないのかな?」などと穏やかな口調で質問してきたが、僕は「さぁ? 違うと思いますけどねえ」などと意味深にしらばっくれておいた。
それから1時間半くらい、中年のゆるい質問にいい加減に返答していると、中年は取り調べに飽きた様子で、「煙草吸うんだっけか? 喫煙所は下の駐車場なんだけど、行くか?」などと言ってきたので、ニコチン中毒の僕は喜んでついていった。
喫煙所で中年と煙草を吸っていると、中年は「前に捕まった漫画家なんかはさ、大麻吸ってインスピレーションを得ようとしてたみたいなんだよね」などと無駄話をしてきた。
僕は素知らぬ顔で「へーそうなんですね。ところで大麻ってどんな効果があるんですか?」と質問してみると、中年は「酩酊感があって、ある種のトランス状態に入れるみたいなんだよ」などと的を射た説明をしていたので、ちょっと感心した。
そうして中年と雑談をしていると、刑事課のオフィスで目をパキらせていた刑事がやってきて「運転席の男から大麻買ったんだろ? 正直に言った方がいいよ」などと煙草も吸わずに無礼な物言いで問い���めてきた。
僕はそいつの問いかけを無視して、「こうやって気を抜いてるところを狙って、ボロ出させようみたいな作戦ですか?」と中年に話かけると、中年は「いやいや。まず取り調べ中に喫煙所に行くこと自体、滅多にないからなあ」などと言っていた。
僕は中年の方を見たまま「なんか刑事ドラマとかでありそうですよね。こういう取り調べのやり方」などと皮肉めいたことを言ってパキった刑事をあしらうと、パキった刑事は無言で僕を睨みだしたので、中年は気まずそうに煙草を吸っていた。

取調室に戻った後、中年は「じゃあ事情聴取はこれで終わりだから、パトカーで家まで送っていくよ」などと言って、僕は再度駐車場に連れて行かれた。
僕が乗るよう指示されたパトカーには、既に友人の吉岡が後部座席に乗っていた。警官がいる手前、余計な話はできないので、僕と吉岡はニヤニヤしながら互いを見合った。
パトカーが僕の住むアパートにつくと、同乗していた警官らは、アパートの外観や部屋の扉を撮影してから、住居が確認できる書類を見せるよう僕に言って、その書類を撮影していた。
僕が警官の一人に書類を見せている間、吉岡がふざけてその警官の背中に中指を立てていたが、もう一人の警官に見られてすぐ引っ込めていた。
警官を見送った後、僕と吉岡は“大麻が見つかったのに試薬検査で反応が出ず、現行犯逮捕されなかった”という事実に、2人して抱腹していた。僕らは一旦落ち着こうとコンビニに入るも、興奮が覚めやらず、店内でこれまでの互いの経緯について話し合った。
僕が一番気になっていたのは、吉岡がANIから貰った“曲げ玉”についてだったが、吉岡はANIが職質を受けている間、曲げ玉を後部座席のシートに捨て、それが運良く警察に見���からず、難を逃れたということだった。
そうしてようやく家に戻ってから、僕らは作戦会議をした。とりあえずガサは入るだろうから、今後はネタを持たない、喫煙具も持たない、wickrのログを残さない、ということを徹底し、また内偵にも気をつけようということになった。

そういうわけで、僕らは家に残っていたなけなしの大麻を全て吸いきった。これで大麻を吸うのは当分先になるだろうと思うと残念だったが、証拠を隠滅できたと思うと清々しさがあった。
朝になり、僕らは早速喫煙具を捨てに行くことにした。出際に職質されては元も子もないので、吉岡に偵察をしてもらったのち、僕はリュックの中に2Lのペットボトルくらいの大きさのガラスボングとモンキーパイプを入れて家を出た。

僕らは途中で吉岡の家に寄り、吉岡の喫煙具もリュックに詰めると、“エゴデス公園”に向かった。エゴデス公園は、僕と吉岡がLSDでエゴデス(自我の死)を経験したメモリアルな公園であり、また深い池があるので、捨てるならここしかないだろうという話になっていた。
エゴデス公園に着くと、僕らは早速、池に向かってパイプを放り投げた。僕は続けて、ボングを池の中央に放った。放ったボングは、ドボンと音を立てて水中に沈んでから、一度水面に浮上すると、コポコポと音を立てながら再度水中に沈んでいった。
ボングの供養が終わると、忘れていた疲れがどっと襲ってきたので、今日のところは解散し、各々何かあれば逐一報告しようということになった。
――翌日の夜、僕はANIにwickrで電話をかけた。ANIは電話に出るなり「お前らよぉ、喋ってねえだろうなぁ?」とドスの利いた声で聞いてきたので、僕はちょっと萎縮して「喋ってないですよ」と答えた。
しかしANIは僕を警戒して「本当か? 喋ってないか?」などと同じ質問を繰り返した後、「今そこに誰かいるか?」 「今、家か? TVの音聞かせろ」などと言って、僕が警察と一緒にいないかを念入りに確認してくる。
僕がちゃんとANIに言われた通りにすると、ANIは「まぁ大丈夫そうか」などと言い、急にいつものようなフランクな口調に変わって、「お前よぉ、車ん中に大麻捨てたろ?」などと軽く笑いながら聞いてきた。
僕は「すいません。でもあの状況ではそうするしかなくて」と言い訳すると、ANIはふざけた口調で「お前だけ捕まってれば丸く収まってたのによー」などと冗談か本気かわからないことを言っていた。
それから僕は「実は大麻だけじゃなくて、曲げ玉も車内に捨てちゃったんですけど、あれバレなかったですか?」と恐る恐るANIに尋ねると、ANIは愉快なことを言っていた。
ANIの話を要約すると、ANIは自分の車で警察署に向かう際、一度車内をチェックしたところ、僕と吉岡にあげたはずの曲げ玉を発見したので、警官の目をかいくぐってその場で口に放り込んだということだった。
そして、その後の取り調べでは、職質のときに大麻の試薬検査をしていた女の刑事に、朝まで5時間も取り調べされていたという。LSDとMDMAがキマった状態で。
僕は「自白剤飲んだのに、よくも喋らず取り調べトリップを遂行できましたねー」などと茶化すと、ANIは「逆にフレンドリーに対応できてよかったけどな」などと勇ましいことを言っていた。

――それから2ヶ月経ったが、警察からは何も音沙汰がなかった。僕はこの頃、大麻の使用は合法だし、吸うぐらいならいいだろうと高をくくって、別の友人の家で大麻を吸っていた。
――そうして3ヶ月が経つと、なぜか僕の家には、大麻のバッズやリキッドにエディブル、さらにはLSDまでもが置いてあった。
丁度3ヶ月経った日の夜、吉岡から電話がかかってきた。吉岡は「知り合いの元半グレにドラッグの師匠がいるらしいんだけど、その人に聞いてもらったら、「職質から3ヶ月もガサが入らないってことは通常ないから、この件は事件化してないはずだ」って言ってたんだって」などと嬉しそうに言っていた。
僕はその時、大麻を所持している分際で「吉岡さあ、正常性バイアスかかっちゃってるよ」などと吉岡を腐したが、日が経過するごとに(本当にそうなんじゃないか?)と思うようになっていった。

――3ヶ月半ほど経った日の朝、在宅勤務の僕は、いつものようにパソコンで出勤ボタンを押すと、再び眠りについた。
それから約1時間後、(コンコンコンコン)とドアをノックする音が聞こえて、僕は目を覚ま��た。僕はふらふらとした足取りでドアの前まで行く。
「どなたですか?」と尋ねるも、返事がない。もう一度「どなたですか?」と尋ねると、ドアの向こうから「下の階の者ですが」と返事が来る。
僕は眠い目をこすりながら(朝っぱらからなんの用だよ)と少しイラつきつつドアを開けると、警察が4人立っていた。
恰幅のいい一人の男が「警察。今から家宅捜索するから」と目を血走らせながら言った。一瞬で眠気が飛んだ。

.
つづく
.
この物語はフィクションです。また、あらゆる薬物犯罪の防止・軽減を目的としています( ΦωΦ )
63 notes
·
View notes
Text
【冬仕事】茶立ての清水直売所最終日

↑今日は勤労感謝の日。茶立ての清水直売所、今シーズン最終日。朝から沢山のお客様がご来店です。
じじとばばは今日も元気に勤労なう。

↑並べたそばから秒で売れてゆく採れたて農産品達。どれもこだわりの「んめもの」ばかりです。

↑ばば商品はこちら。特製のこがね漬け。

↑できたばかり!今年の新物いぶり大根醤油漬け。

↑ばばが苦労して手作りしている揚げほしもち、手作り焼きゆべし。

↑ばば畑で採れたばかりの超巨大ビッグバン大根。食べ応えありすぎ問題。

↑他にも直売所メンバーが出品した商品で品揃えモリモリです。

↑新鮮白菜、キャベツ、山芋、ねぎなどなど。

↑幻の田沢長芋も数量限定で販売していました。
毎回大入り御礼な茶立ての清水直売所。今日もあっという間に商品が売り切れて、昼前頃には閉店ガラガラとなりました。感謝。
また来シーズン、んめものばかりをご用意いたしますので、よろしくお願いいたします。

↑そして家に帰るといぶりがっこ作りです。3回目に燻製する大根達をばばが紐で編んでくれたので、燻製小屋に吊るして着火ファイヤーです。

↑いぶり具合がなるべく均一になるように、太くて長いのは内側、細くて短めなのは外側に吊るします。

↑着火ファイヤー。もわっ!けむい!息くるし!しかしこれこそが美味しいスモーキーフレーバーの秘密そのものなのです。

↑3回目の燻製中に、4回目に燻製する大根を掘り上げました。先日の雪中銀世界はあとかたもなく消えましたが、山の様子を見ると雪がすぐそこまで来ています。冬も大根も待ってくれない。時折冷たい小雨が降る中掘り上げ、真っ暗闇に包まれながら大急ぎできれいに洗いました。
冬は夕方4時になると薄暗くなってきて、5時にはもう真っ暗です。毎日どんどん日が短くなっていく。あっという間に過ぎ去ってしまったけれど、秋が恋しい秋田黒猫屋です。
1 note
·
View note
Text
2022/9/23〜

9月23日 今日はとにかくいろんなものを見過ぎて、 いろんな表情をつくり過ぎて、 いろんなことを喋り過ぎて、相槌を打ち過ぎて、 目と顔の筋肉と喉が痛い。
初めての逗子の町の、観光地と絶えないほどの、リゾートまで華やかではないけれど、海の町特有の小さいお店がある感じの町のつくりを中途半端に体験して、浜辺で波を見ても全然怖くなくて、気がついたら鎌倉で八幡宮のお参りをしれっとしてしていて、ばちが当たりそう。 人とお話して時間を過ごすことと、自分が街やその空間を楽しむことを両立できる日はくるのかしら。

アレック・ソスの展示は、思っていたのと違ったけれど楽しめた。 フライヤーの写真とデザインが、あまり今回の作品展と合っていない気がして、予告編だけ好きな映画ってあるかも、と思った。 山間部にハンガーかけやミラーボールをセットして生活している人のインタビュー記事の写真シリーズが好きだった。
とにかく長い時間だった気がする。 我に帰ったのは、行きも帰りも、日暮里駅の2階のサイゼリアの窓際のボックス席を車窓から見た時で「こんな時間(と、いうほどおかしな時間ではない)にサイゼリア…」と、思った時だった。 昔、雷雨で中断した花火大会の帰りに、びしょ濡れで入ったファミレスは、このサイゼリアな気がする!
一緒に展示を見た友人は、子供の話と動物の話をいつもしていて、今日も友達が子供を産んだ話をしたので、彼女自身がそろそろ子供を持つのかな〜、と思っていた。それと、動物が可愛いうんぬん、と言っていて、犬でも飼うんだろうか〜、とも思った(今日は子豚の話をしていたけれど)。
私は出産がどんなものなのか経験してみたいけれど、子育てはしたくないので、他人の子を産めば良いのかな、と考えて、でも倫理的にアウト?
帰り、旦那さんと合流して帰る友人と横浜駅で別れる。いつも私と遊ぶ時、私たちが遊んでいる場所の近くまで旦那さんが来ていたり、待ち合わせのラインを仕切りにしていたり、常に影が見え隠れする感じで、彼女との時間を過ごしている。私はいつか、彼女と2人で遊ぶ待ち合わせの場に、しれっと旦那さんもいて、今日は3人で……みたいなことになったりしないかドキドキしている。

9月24日 人付き合いがだめなターンなので、1時間くらいキュッとおしゃべりするだけでよかった。 今日は、クラシカルなメイド喫茶で本格紅茶を飲んで、人の物件探しに付き添った。
メイド喫茶は、電子ケトルで沸かしたお湯を、高い位置からティーポットへ注いでいて、やかんでなくてケトルで可愛い。
物件探しは、楽しそうなので付き添っちゃお!と思っていたのに、結果、不動産屋ってこの世の嫌い空間わりと上位に入るのでは!と気が付いたのと、人の生活に関わっている暇はない!と、自分の生活のタスクをいろいろ思い出して、先に帰ってきてしまった。
駅の広場でちいかわとサンリオのコラボグッズが売られていた。たくさんの女の子達が本当にちいかわを愛でている!と驚き、友人に報告のメッセージを送る。
メイド喫茶から不動産屋までの移動中、マンスーンさんとすれ違ったのかもしれない…でも人違いかもしれない…ちいかわグッズを見にきていたのかもしれない…テンションが上がっている、と久しぶりに実感した。


9月25日 このところの人間関係の悪態を反省して一日を過ごした。 昨日の雨で、川の水が増大していて、いつも野球やサッカーをしているところまで川が拡幅していた。ボートで何かを捜索している様子もあり、土手からたくさんの人が見ていた。
昨日投稿した日記を読み返すと、毎度のことながら誤字だらけ!最近はiPhoneで文字起こしをしているのだけれど、変換の精度が高すぎる(?)。 「うそみたい」→「朝みたい」、「かるいんで」→「辛いんで」、「ぶしょ」→「場所」、「きえないと」→「変えないと」。 読みと異なる変換を一番上に持ってくるのをやめてほしい。でもこれがiPhone的正解ワード。 30歳で変えないと!
9月26日 「落とし物が届いています」と、朝一で内線に電話が届く。ありがとうございます。まるっと落としたパスケース全部が手元に戻ってきた。
文化庁メディア芸術祭の展覧会が今日までだった!毎年、情報収集のために会場へ行っていたけれど、今年はネットで眺めよう、と、マンガ部門の大賞を確認する。北極百貨店?という素敵なタイトルの漫画をKindleでダウンロードしてみた。

9月27日 2日分の洗濯物を溜めて洗濯機を回してみた…!ドキドキ。確かにこちらの方が回し甲斐がありそう。
隣の席の上司から、アメリカのチョコレートをもらう。お姉さんが、アメリカ在住とのことで、日本に一時帰国されているらしい。最近のアメリカは、グルテンフリー 、パレオ、ケト、と健康志向の食事がブーム。マックにはあまり行かない(そもそもマックの値段が高い。ハッピーセットで1000円弱するとか。)とのこと。コーラもみんな飲んでないんだって! プレッツェルのお菓子のパッケージには“BIG TIME FLAVOR”とあり、大きい時間風味…? 大味ってこと?となった。
日本で言う、ハワイアンとかミラノ風とか清涼感とか、味覚以外で食べ物を感じる感覚の表現なのかな。
明日は出張(研修)で、乗ったことのない電車に乗って、行ったことのないところへ行くのでへとへとになってしまうと思う。

9月28日 研修のため、いつもより2時間遅い出勤。 朝にいろいろお掃除ができて精神衛生も良くなる。 空港へつながる路線、違う駅名だけど乗り換えできる駅間の30秒くらい歩く町、目印のデイリーヤマザキ、4匹の猫の親子、多分もう全部見ることはないんだと思うものばかりを通過して研修先へ行く。 (帰りに、オンライン研修でしか顔を合わせたことのなかった同期にこのことを話したら、めっちゃわかる、と言ってた。)
幼稚園や小学校の施設のにおいが苦手なので、気持ち悪くなりながら2時間歩き回った。 黒板に、前の授業の板書が残されていて“ゆでる→ものをやわらかくする。ゆで汁は捨てる。 煮る→味をしみこませる”とあり、思わずメモに書き写す。研修の報告レポートには使えない。
“BIG TIME”とは“すげーまじうまい!”的な意味らしい。
乗車駅でメロンくらいの巨大梨が売られていた。下車駅では行方不明の女の子を探すチラシを配っている人がいた。
9月29日 エドワード・レルフの場所性の本を冒頭から読み直し中。目次を見て、興味のある章から読んでいたけれど、ばかみたいに頭から読むと、ちゃんと点と点が繋がるように理解できるところが増えた。 ①物理的なもの②人々の動き③感覚 が、場所を構成していた、①と②は定量的なもので捉えやすいが、③は一概に言えるものがなく捉えにくい。そもそも①②③の相関関係を探ることが重要。 自分を中心とした同心円を描きながら人は移動をし、その円の内にいれるものに人は愛着を持つ。愛着の持てる場所には配慮があり“つつましさ”が、ある。……などなど。
研修のレポートを3枚提出した。 1から自分で文章を作り上げるのは、始めるまで気力がかかるけれど、始まってしまえば添削までずっと楽しいし、良い疲れかたができる。

9月30日 研修のレポートを上司に褒めてもらう。 内容というより、レポートの構成や読みやすさ、伝わりやすさ、独自の視点の効果的な入れどころなど。こういう場の書き物には正解がある気がしていて、それを叩き出してしまった複雑な気持ち。でも褒められるのは嬉しい。
一期下の方とロッカールーム前でおしゃべりした花金の終業後。やっぱり私はこの方がすごく好きなのだと思う。写真を撮りたい!とも思えて、その発見に嬉しくなり帰り道はなんだか明るい気分。
社会の人をみんな嫌いなわけではなくて、その人個人をみてしまって、それでもっと関��りたい!と思ってしまうこともある。
そして、昔からの友人達を撮りたいと思わなくなったのは、新鮮さがなくなってしまったこともあると思う。 たぶん、今日ラインを交換して、「一緒に遊びましょう!」と言い合った時が、一番楽しい時だったかもしれない。 人と関わるときの新鮮さが好きなので、なるべく頻度や距離を、高めず詰め過ぎずにしたい。
やっと粗大ゴミセンターに電話を繋げ予約をした!えらい!
帰り道の遠くの茂みと、私が立っている道の間で、猫が何かを捕食していた。

4 notes
·
View notes
Text

Aさんへ 22
Aさんへ
Aさんこんにちは
先日のパワームーン……スーパームーンでしたでしょうか?
ご覧になられましたか?
美しかったです
ムーンの周りをぐるりと雲が囲い、その雲がわたしにはドラゴンにしか見えず……オレンジみのムーンに、ドラゴン
心中で「この世はでっかい宝島……シェンロン……」と呟いたのは言わずもがなです
Aさんにもスーパームーンのパワーがどうか届きますように
Sより
*********
『正常性バイアス vol.ティラミス』
多分、男はガトーショコラ。いや、さてはあのフォルムはフォンダンショコラか。底辺に血の色に近いソースが見える気がする。リョウは目を細める。夜は乱視の乱れが強くなる。ともあれ女はかき氷。
ラーメン丼と見紛うほどの、しかし、ラーメン丼とするには底の浅い、小ぶりな乳房のようにゆるやかな曲線の大きな純白の陶器に盛られたかき氷は緑色であるから恐らくは抹茶であろうと見当をつける。
それがもし、万が一、ピスタチオかもしくはずんだであるならば自分もタカシも潔くイチゴにするであろう。
リョウは、隣のテーブルの男女のそれらを数秒ながめたあとラミネートされたメニューの
『復活!台湾風かき氷♪フワッフワ!♪夏だけの期間限定!こだわりのフレーバーは全8種類♪』
をひととおりをその細部までをながめながらコーヒーカップに手を添える。イチゴもいいが、
『今夏から♪新登場~♪』
らしいティラミスが捨てがたい。かき氷でティラミスを味覚表現する攻めの姿勢に俄然興味が湧く。
ふつふつ湧いた興味のあと、呼び水的必然さでソノコのティラミスを思い出す。容赦なくティラミスのフォルムが、白い楕円の皿が、華奢なデザートフォークが、味覚の記憶が鮮明によみがえる。
(あいつはうまかった。)
3人の夜。ソノコがつくった
「はじめてつくったの。試作にして集大成。大成功。」
春がふんだんに盛り込まれた炊き込みご飯をおかわりし満腹をかかえてソファーに転がると、
「これは常連。常連史上最高の出来よ。」
とティラミスがのった皿を、芸術品を扱う所作で丁寧にテーブルに置いた。
ロングタイムアゴー。かなり、もう何年も何十年も前のことに思えるほどとても昔の、また、タカシが生きていたころの3人のグッドメモリー。タカシの人生に必要不可欠かつ必然的な最後のピースとしてソノコがパチンと加わった日々の最中、いつかの夜。
そのピースは、リョウが自分のなかにある唯一の空白を埋めるべくピースであることに気づきはじめてしまった最中、いつかの夜。
彼女史上最高のティラミスを満腹直後に早食いファイターの勢いで完食し、締めに、皿の隅によけておいた彩りのミントを噛み砕いた。想像通りの青臭い清涼感が口内を充満した。ティラミスの余韻はあっけなく消えた。とっぷり浸っていた余韻の消滅があまりに淋しく、口直しの口直しをすべくティラミスのおかわりを依頼した。無論、ミント不要の旨をソノコにきっちり伝えた。
丁寧に抽出されたのであろう香り高いコーヒーのフレーバー。生クリームとマスカルポーネ。には
「秘密の配合」
でサワークリームを混ぜていること。アルコールを一切摂らないリョウが
「酔っぱらわない程度」
ほんの気持ち程度のリキュールが含まれており、その正体はコアントローで
「オレンジとコーヒーのタッグは最強であることを数年前に発見した」
と、誰からも聞かれていない秘密を自ら暴露していた。全粒粉にめがないという彼女がつくるティラミスはボトムがスポンジではなく、全粒粉ビスケットだった。
ソノコが作るデザート類の共通項であるごく控えめな甘さ。食べる度に丼で食べたいと思った。ソノコの料理の最大の特徴は「食べはじめると改めて食欲が増す。」で「食べれば食べるほど、もっともっとと食欲を刺激する。」であり、食べ終わる頃には「またこれ食べたいからまたつくって。」の腹になるのだった。つまり、ソノコの手料理はひとを元気にした。
かき氷のメニューを見つめながらコーヒーカップを唇に当て喉を潤すだけのためにひとくち飲み込む。ぬるい。そしてただぬるいだけではない。くそまずい。
コーヒーの真価はひとくちめではなく残りわずかになった終末に問われるのだとつくづく思う。
*
ナッツ類はギリギリ、豆類は完全アウトとし、唯一、枝豆の塩ゆでをビールのあてにする(噛むとガリガリ音をたてるほどの塩味つよめ。しかも茹でたてではなく一度きちんと冷やしたもの。)のだけは好んでいたタカシが豆由来のずんだ団子を、
「江戸時代の民衆はなぜ茹でてわざわざ潰してこれをわざ、わざ甘味に。」
と、鮮やかな緑と白の連結を忌々しげに見下ろしていた風景を思い出す。
定番のあんこやごま、みたらしの他に、色とりどりのトリッキーとしか言いようのないカラフルな団子を山ほど買い込んできたソノコがダイニングテーブルいっぱいに
「今日はおだんごランチよ。」
と団子を並べ、飲むように頬張り、嬉々としてモグモグする彼女の横でずんだの発祥を調べはじめ
「ごはんのときに携帯やめて。」
と注意されていた兄を思い出す。
大人しく携帯電話をテーブルに置き苦笑する兄の表情までを思いだし、そして、それ以降の三人の風景を思い出すことはやめる。過去ではなく今現在の、ぬるくまずいコーヒーに意識を集中させ思い出を消す。現実に軸足をおく。ハートフルなグッドメモリーが現在の自分を支え、温め、前進する活力となるにはそれなりの時間を要する。もしくはグッドメモリ��を上書きすべくベリーグッドメモリーをクリエイトする必要がある。当然、思い出すことをやめようとする抗いの力が働いているうちは自分を支えず温めず活力とはなり得ないし、そもそも自分の脳内か、もしくは心中ではひとつひとつのメモリーごとひとつひとつのフォルダに保管されている。それらはPDFして完結している。だから上書きのしようがないことをリョウはちゃんと認識している。すなわちお手上げ。上書きではなく新たなフォルダをクリエイトするしかない。
(クリエイトしたところで……)
吐き出したため息でぬるい琥珀の水面が揺れる。
(ケーキ。)
腕時計で時間を確認し、この時間なら選択の余地はなくコンビニで手にいれるしかないとおもう。
(だいぶ増えたな。)
いつも仕事帰りに寄るコンビニのデザート類が陳列する場所。
ショートケーキが真夏に売っているのだろうかと、シュークリームやあんみつなども思い浮かべてはみるもののやはり誕生日といえばショートケーキであろうと、純白と赤のコントラストのあと、再度腕時計を見下ろす。いたわりの気持ちで銀色の無数の傷を見つめる。
久々、改めてまじまじ観察してみると細かな傷がずいぶん増えたことに気づく。タカシから贈られたタカシとお揃いの、銀色の、文字盤が白の日付が時々狂う日本製の腕時計。今夜の日付は◯月◯日。正確な日付を確認する。世界で一番大切だったひとの誕生日。
大切なものを大切なものとしながら、そのくせ扱いが雑、気遣いは皆無であるとかつて「つった魚に餌をやらない。」と非難してきた女がいたが、そうではない。しかし、それは違うそうじゃないと反論したところで反論を理路整然と正論まがいの暴論に仕立てたところで納得してくれる女はこの広い世界のどこにもいないとおもう。いるはずがない。ここは荒野なのだから。荒野なのだから仕方がない。
(荒野。)
胸のなかだけで言葉にした荒野。の、ひび割れた枯渇の響き。なのにどうしても心には火が灯る。否応なしに温まる。たったひとつの些細なグッドメモリーによって。些細でありながら枯渇をいとも簡単に超越する。おき火となる。
「甘えてるのよねー。
すきなひとに自分をぜーんぶさらけ出して全身全霊、全力で甘えてる。
甘えることはリョウくんにとってきっと最上級の愛情表現なのよね。
さあ包容して許容してって。これが俺なんだからって全力で甘えん坊してる。
リョウくんみたいなひとを子供みたいなひとねって片づけてしまえば簡単だけど子供って賢くて打算的よ。愛されていることを知っている子供の甘えは確信犯的なただの確認作業に過ぎないから。
リョウくんの甘えは打算も計算もない。損得勘定もない。
純度100%の甘え。
そんな風に甘えられて受け入れることができたら女性はきっと女冥利に尽きるでしょうね。でも、
こんなおれをいらないならこっちから願い下げだー、くらいに強がって。ほんとはそーんなに強くないんでしょうしデリケートでナイーブなのにねー。
でもきっと、それらをぜんぶぜんぶひっくるめてリョウくんなのよ。」
***
ロングロングタイムアゴー。タカシに、
「リョウくんさ、いい加減にしなさいよ。わがまま過ぎやしないか。」
と、声音とは裏腹に笑みのない兄らしい表情で男を隠しながら、なにかしらの言動か行動を叱られたときだ。
深夜。化粧をおとしパジャマ姿でアイスクリームを食べながら寝しなにダイニングテーブルで新聞を読んでいたソノコの声。歌うような、滑らかな柔らかな声、言葉。
(そうだ。あのときだ。)
思い出す。口の内側を強く噛み笑いを堪える。
タカシの部屋でいつものように、ソノコがつくった夕食をたべソノコが当時気に入っていたイランイラン含有の入浴剤が大量に投入された乳白色の風呂につかり、危うく溺れそうになるほどの長風呂からあがり、放出した汗に比して唾でさえ一滴も残っていない喉のまま髪を乾かす余力もなく、仕方ないそろそろ帰るか。とごく軽くソファーに座った。ソノコが、
「はい、どうぞ。」
冷えたジャスミンティーを差し出した。
一息に飲み干した。底を天井に向けると氷が雪崩れた。
「いっきのみ。もう一杯のむ?」
無言で首をふり、結露したグラスをソノコに戻した。グラスを受け取り、ダイニングテーブルに戻ると新聞の続きを眠そうに読み始めた。
体験したことのない快適さが極まると、未知と遭遇した衝撃が高じて非日常に感じるのだと知った。
山奥の滝とか、神社や教会。湯気のたつ生まれたての赤ん坊との対面。だいすきな人の腕のなかでウトウトしてそのまま眠ること。入眠の直前「もうこのまま死んでもひとつも後悔はない。」と思うこと。限りなく透明に近いもの、こと、ひと。
見るものの濁りや淀みを一掃する存在感を、風呂上がりのそばかすが丸見えの素顔を、つるつる光る額と目尻近くのほくろを、兄を、兄のうしろのキッチンカウンターに置かれた
��みみまでふ~んわりのしっとりやわらか生食パン』
8枚切りをみた。2袋。
*
風呂にはいる前リョウは眠気覚ましにジャスミンティーを飲むため冷蔵庫をあけた。
黄色と橙色の(橙色のほうをみて「トムとジェリー。」とつぶやいた。食器を洗っていたソノコは背中を向けたまま真摯な声で「それね。わかるわ。」と応答した。)チーズ、トマトときゅうり、(水槽のやつ。)と思いながら水草のような草が入ったプラスチックパックを手に取り確認するとディルとあった。レタス、サワークリーム。生クリーム、こしあんの瓶、未開封の粒マスタード、未開封のほうじ茶バター、ボールにはいった卵サラダとポテトサラダたちが明朝の出番を待ち鎮座していた。
*
食パンと、冷蔵庫にスタンバイする食材に気持ちを奪われたまま、新聞を読むソノコをソファーから見つめた。帰りたくないと地団駄をふむ代わりに、ソファーに転がるとリョウは長く息を吐く。
明日の朝はサンドイッチ。
とても久々で懐かしくもあるワクワク感にリョウは包まれた。そのワクワク度合いはたとえば、
遠足の前夜
夏休みが始まる日。ではなく夏休み初日の前夜。でもなく夏休み初日の前々夜。つまり「明日は終業式。給食ないから午前中でおわり。そして明後日から夏休みだ。」
とても久々に腹の底からなにかしらの力強い、とはいえ名前をしらないワクワク感が吐き気をもよおすほどにわきあった。衝動的なワクワクに覆われた。ワクワクにひとしきり包まれたあと本格的に急速に眠くなった。
眠くなったことを口実に、
「やっぱり泊まるからソファーをベッドにしてくれ。」
と、俺にもアイスをくれと、アイスじゃなくて愛でもいい。やっぱりジャスミンティーもう一杯と軽口を叩いた時だった。タカシが珍しく苛つきを隠しきれぬ表情で「リョウくんさ、」と口をひらいた。夕飯のとき、
「お泊まり久々。忙しかったものね。」
とソノコが嬉しそうに隣のタカシに笑ったことを、ソノコの嬉しさの何十倍かの嬉しさであろうタカシが、思慮が深そうでいてわかりやすい男の浅はかであろう意味で何百倍もの嬉しさを控えめに、
「うん。」
だけで表現し微笑み返したことを、久々のお泊まりに相応しい湿度の高い艶のある笑顔であったことをリョウは「やっぱり泊まる」と発した時にはすっかり忘れていた。
*
忘れたふりをしたことを思い出す。
再度口の内側を噛む。眉根をひそめる。カップの底が透けて見える残りわずかのぬるい琥珀色を一口すする。ぬるくてまずくてとても苦い。そして残少。まるで俺の人生そのもの。目の前の女は息継ぎもせず喋り続ける。きっとこの女はクロールが早いだろうと、リョウは呆れではなく尊敬を込め女の話に頷く。
頷きながら隣の男女がガトーショコラらしきものとかき氷を交換し、楽しそうに幸せそうに笑っている様をみる。あっちの女も息継ぎなしにクロールを早く泳ぎそうだと思う。溶け始めたかき氷を見る。羨ましいと妬む気持ちさえ枯れている。ぬるくてまずくて苦い。自分には最高にお似合いだと思う。
*
急遽、1グラムも空気を呼まず「やっぱり泊まるから」とわずか1トンほどのわがままを告げた弟への兄からの至極当然な指摘を「わがままじゃないし。」と口には出さず触れ腐れていたリョウは
「甘えてるのよねー。」
から始まったソノコの言葉を息を止めて聞いた。
言葉を発することはできず、ただ、寝そべった姿勢のまま顔だけを捻り、兄を素通りして、ダイニングテーブルで新聞を読むひとの横顔だけを見つめた。
柔らかく滑らか。清らか。
兄弟が作り出す尖った空気を和ませるためかそれともただの、まっさらな、ソノコの。
リョウは、ソノコを見つめながら日本酒の瓶を思い出した。2日ほど前、岩手へ旅行にいってきたという一回り以上年齢が上の先輩から「なかなか手に入らない希少品。」だと、恭しく渡された土産の日本酒の瓶。ほとんど透明に近い水色の瓶。ラベルの大吟醸の文字。
ソノコを見つめ声と言葉を聞き、なぜか思い出した。
タカシの最後のピースは、そのひとは、自分にしてみても最後のピースで、ただのなんてことのない事実としてそれは荒野に凛と咲くたった一輪だった。
***
年季のいった兄とお揃いの腕時計をそっと指で撫でる。傷をなで、ごめんなと胸のなかだけで呟き、しかし、誰に対しなんのための謝罪であるのか、ごめんと謝るわりに許されること願っているのか、決して許されるわけがないと諦めているのか自分の真意は一瞬で蒸発する。
「ねえ。大丈夫?聞いてる?ていうか笑ってるよね。大丈夫?お疲れです?」
向かいに座る女の尖りを含有する声にハッとし、
「ごめん。」
慌てて指を腕時計からコーヒーカップに移す。空っぽ。ため息を辛うじて飲み込む。疲れる。とても疲れる、疲れた。どうやら自分は生きることの全てに疲れているのではないかとおもう。しかしまさか「大丈夫?」と問う女に「大丈夫だけれど疲れた。」と答えるわけにもいかずリョウは、
「大丈夫。」
とだけ答え頷く。
1 note
·
View note
Text
たまご
始発までまだ時間がある。 箱の中は外の静けさを無視し四打ちの音に満たされ、いつになく盛り上がっていた。 今日のメインであるDJがCDをリリースし、そのリリースパーティーとしてのイベントなのだが、今いる客の中でそのCDを聞いてきているのはほぼ皆無である。ほとんどは週末の夜になにか踊れるイベントはないかとフライヤーやネットでイベントを集めた中で一番盛り上がりそうなここを選んだ奴らだ。俺もその一人で、特に誰と待ち合わせるまでもなく、週末の夜にスパイスをふるような気分でここに来ていた。 地下にあるそのクラブはフロアが吹き抜けになっており、フロアから見て二階になるバーカウンターからDJブースを見下ろせるようになっている。俺は氷がとけだらしなく伸びてしまった酒を片手にフロアの喧噪をながめ、たまに下で踊ったりしていた。 そんなに広くはないフロアの正面にブロックを白いペンキを塗りたくって作られているDJブースがあり、フロアはここ以外にはほとんど照明がなく、その両サイドに天井まで届くようなスピーカーがある。天井を見上げるとミラーボールがあり、曲の盛り上がりに合わせ放射されるレーザーの明かりが乱反射しフロアに不規則な流星群を描いていた。背丈以上の高さのスピーカーの前で音の波間をただようクラゲのように揺れていると、音圧で服と腹に同じリズムが刻まれる。170bpm以上のテン��で刻まれているビニルの振動は時として早すぎてついていけないぐらい。音は止まる事がなく次から次へと疾走し、体は音圧の津波に流され、いつまでも留まる事のない浮遊感、焦燥感に似たそれでいていらだちのない多幸感に包まれる。時間の概念は融けだし目前で起きている事は終わりのないリズムの濁流こそがすべてで、溶け込んでしまった肉体を低音で揺さぶれる事で感じるだけなのである。思考は肉体と一緒に形をなくし、ウイスキーに落としたインクの一滴になる。盛り上がりの中にある混沌とした調和、フロアに響く新譜とスタンダード、未知の旋律、既知のリズム、シンセベースの連符、サイン波の歪み、潮溜まりに追い込まれるようなタメ、スモークの香り、泡立つリバーブ、湖底に揺らぐ絢爛、浮上の嬌声、踊、跳、音、乱、美、響、光、煙、幸、輝、悦、快、!。 音の中でおぼれている間はなにも考えず、ただただ体が動くままに動いている。ふと、今までの炭酸が何もしないのにパチパチと弾けるような高揚感が静まり、いつもの面々の一人にもまだ遭遇できないでいる漠然とした孤立感に、なんとなくの身の置き所のなさを感じていた。営業終了までしぶとく踊りつつけているつもりだったのだが、何となく腹も減ったので、どうする当てもなく夜明け前の街に出て漂よう事にした。 夜道は街頭で明るく、闇夜という言葉がこの世から消滅してしまうのではないかといらぬ心配をしながら、シャッターの閉じた駅まで歩き、適当な店が見つからず、駅周辺を足の向くままさまよっていた。 この時間に営業している店は、飲むか食べるか、もしくは色気のある店ぐらいだ。 今は腹が減っているだけであり、パーティーで手持ちぶささをごまかすのにいつも以上にタバコに火をつけていたせいか舌に苦い皮膜が張っているような感じがしている。こういう味のわからない時はできるだけ安くジャンクな食べ物で腹をごまかそうと思った。この時間に安くジャンクでというと、ラーメンとドンブリものに落ち着く。ただ何となくの食欲に選択するのも馬鹿馬鹿しい話なので、安い方を選び駅から少し離れた所にあった牛丼屋に入る。 街頭の明かりに慣らされた目には、牛丼屋の中の刺々しいほどに純白の蛍光灯の明かりは、なにやら消毒液を思わせるような体に障る清潔感を感じ、せっかくクラブでまとってきた夜の不健康が流されてしまうような気がした。 牛丼と生卵を頼み、渋皮のように舌にまとわりつくニコチンを水で流していると頼んだものが出される。 俺が食べようとした直前ぐらいからか耳障りな音が聞こえてくる。 入口から見てコの字型のカウンターの出入り口すぐに座ったのだが、奥の方から泥を混ぜてるような、高い所から粥を落としているような、ベチャベチャとした音を立てて食っている爺がいる。何を考えているのか知らないが、そいつは周りを見回しながら、そして見回した先の奴と目が合うとそいつに向かい見せつけるように大口を開けてわざとらしく口を動かしている。しつけのなってない犬だってもう少し静かに食べるのにもかかわらず、どういう環境で生きていたらそのような食べ方ができるのか不思議なぐらいだ。 内心ムカムカしながら箸を付けようとした時、その爺がこっちに口の中のものを見せるように大口を開けながら、その店で一番安い食べ物である牛丼を掻き込んでいた。 まばらに黒いのが混じるぼさぼさ頭、毛玉だらけのセーターに歯はほとんどが抜けていて、目元は野卑という言葉の似合う人にケンカを売るような好戦的で濁った視線。骸骨に皮を張っただけに見える肉のない顔についた口は、必要以上に大きく開かれているせいもあって上の前歯が3本、下の前歯が4本ぐらいだろうか、タバコやけをしているのか茶色い濁った色素が染みつき杭みたいになっているのが目に入った。 火傷跡みたいにヒリヒリとした嫌な感情が立ち上がり、運ばれてきた膳の中にあった生卵を反射的にぶつけてやろうかと思ったが、握った所で辞めた。 そのかわりに俺はほぼ呪詛に近い感覚で、死ねばいいと思いつつにらみつけていた。 卵じゃ煮え立つ感情には弱いので、湯飲みをぶつけてやろうか、それともしょう油瓶をぶつけてやろうかと思いながら、自分も箸を動かしていた。 だいたい、あの年にもなってまともに飯を食えない奴に生きている理由があるのだろうか、少なくとも人の目に触れる所に出してはいけない、どこか洞穴にでも押し込んで、一日に一回握り飯でも放り込んでおくぐらいで充分じゃないか、といらだちを増幅させ、ガンをつけ続ける自分を正当化し続けた。向こうもこっちをにらんでいる。ここは目がそらした方が負けなのである。 ほとんど獣のケンカみたいな状態で、何か動きがあったら投げつけてやろうと七味唐辛子の瓶を視界に入れながら、爺にガンをつけつつ丼を掻き込んでいた。 俺の丼の中はあと二口ぐらいだろうか、爺の方が目をそらした。腹の中に沸いていたヘドロみたいなむかつきは少しは引いたのだが、残ったのは情けない野良犬のいがみ合いのようなケンカの勝利だけであった。丼の底に小島のように固まっている牛肉のかけらとご飯の固まりを一気に掻き込んだ所で玉子の存在に気付いた。爺にむかついていたばかりに追加した玉子を丼に落とすのを忘れていた。食べて丼を置いたら勢いよく出て行こうかと考えていた所に気がつき、そこ置いていっても良かったのだが、卵を忘れていた自分に気が抜けそのままもって出る事にした。 店員に気付かれないよう、そしてできるだけさりげなく、上着のポケットに玉子を移す。 始発にはまだ時間があり、駅も開く気配がない。駅周辺をただようチリの気分になりながらのろのろと歩いていた。 上着のポケットにつっこんだ右手には卵がにぎられている。 店で出された時よりも手のぬくもりで暖められ、カルシウムのざらつきに包まれた、ずしりとした下ぶくれの珠が手の中にある。 クラブの中でふらふらしていた時とは違い、牛丼屋の中でざらついてしまった気持ちのやりどころのない嗜虐心を、手中の卵にぶつけた。手の内で転がるそれは、紛れもなく卵なのだが、そっと力を込めると指先の肉を受け止め、中身を守ろうとする殻の抵抗に遭う。割れてしまうと上着が台無しになるなと思いつつも、右手はポケットの中に閉じこもり、卵にじんわりと圧を与えては離すという蹂躙を繰り返していた。指先の乱暴は駅前の一区画をさまよい、気を取り直して飲もうと探しているスツールに座して少しの酒をすすれる店がことごとく営業を終わらせているのをみてまわるまで続いた。次の区画にうつる頃には指先の暴行は肉による緩やかな締め付けから爪での直接的な加害に変わっていた。爪も殻も肉の中で作られ、その中を守るためのものだ。爪がざらついた表面をなぞる。手のひらで転がしていた時には工芸品を思わせるようななめらかな表面に感じたのだが、爪の先でつぶさに観察してみると、コンクリートを思わせる引っかかりを見つける事ができる。下ぶくれ部分の緩やかな面を人差し指の先で一通りひっかき、その曲面すべてを爪がなぞると、ポケットの中でごそごそひっくり返し反対側のとがった部分を爪でなぞる。指を頂点目指してはわせている時のグイッというラインの持ち上がり方と、頂から下りる時の直滑降のスピード感が気持ちよく、何度となく人差し指が登り降りを繰り返した。そのうち頂点に加害をはじめた。ガリガリと引っ掻く音がするのではないかと思えるほど、しかし殻が割れないほどに加減をしながら、目では判らなくとも顕微鏡でつぶさに観察したら見えるのではないかと思うるような傷は付いているだろうと、微細な世界へ思いをはせながら爪を押し当て動かし続ける。孵化する可能性のない白色レグホンの卵への継続的な暴力は終わる事はなく、酒とスツールを求め駅周辺をただよう間に、ついには打撃を加えるようになった。親指と薬指とでしっかりと押さえ、人差し指の先でノックするようにたたく。指先に伝わる殻のガードは、割れないでいて服が汚れないで済む事の安心と、なかなか割れない殻に対して冷淡に見つめるような気持ちとが入り交じり、飲み屋を求めてさまよっているだけにもかかわらず、ジャケットのポケットの中で行っている事に対し、熱湯と氷の両方が混じる事がなくよどみ続けるような壊したい衝動とそうしたくない迷いがぐるぐると入り交じっていた。 結局入れる店が見つからず、ポケットの中に入れた卵を指先でつつきつつコンビニで買った酒をあおり、ざらついた感情を溶かしながら始発までの時間を過ごしていた。駅前に戻ると地下鉄の入口の近くで丸まって寝ているサラリーマンらしきスーツの男がいた。地下鉄の入口は始発が出るまではその門戸を閉ざし、雨が降ろうが風が吹こうが始発待ちの客を優しく向かい入れる事はなく、やっと開いたとしてもベンチは冷たく、構内でゆっくりくつろげるような所もあるわけではなく、ただただ地上と電車の途中をつなぐ通路として、モグラやミミズが入ってこれないようにコンクリートで四方を固めているだけである。 始発にはまだ待たなければならない。 俺は卵をどうしたものかと思いながら、冷たい夜風が避けられる所はないかと探していた。風よけになりそうなスキマを見つけては入ってみて居心地を試してみるのだが、どこも完全には風から守ってはくれない。唯一風がなさそうな所はスーツ姿の男がビジネスバッグを抱えるようにして丸まっている。 その男は器用に寝ていて、ビジネスバッグを抱え、体に新聞紙をかけているつもりでいるのだが、寝ぼけながらも新聞紙を深くかぶろうとしたのだろうか、丸まっている体の中心にバッグやら新聞やらが集まり、まるで巣を守る動物のようになっている。 寒空の下で寝ていられるのを感心する一方で、俺の頭の中では妙案が浮かんでいた。 この男を立派な親鳥にさせてやろう。 近くの公衆便所に行きトイレットペーパーをこぶし大ぐらい取り、それを細かく裂いた。そして新聞とバッグを抱えて寝ている男の中心に、鳥がそうするように卵の安住の場所を作ってやるのである。 起きないようにゆっくりと、けれども気付かれるのもつまらないので素早く、男の側に近づいた。ビルとビルのスキマである男の仮宿はちょうど街頭の明かりが直接目に入らないような所であり、俺が近づいた事でかろうじて男の体を照らしていた明かりも全く入り込まなくなってしまった。ほぼ暗闇の中、男が抱えてる新聞とカバンの上にトイレットペーパーの羽を広げるなければならない。 俺は男の前に近づいた体勢のまま、できるだけ物音を立てないよう、そしてすぐに逃げられるように前屈をするような姿で作業していた。試行錯誤する余裕はなく、一発勝負である。手のひらの上でトイレットペーパーの巣を作り、置くのではなく、ギリギリの所まで降ろしてから落とすようにして新聞とカバンの土台の上に巣を作った。少し斜めになってしまったが成功である。いよいよ卵を置き完成させる。できるだけ巣の中心に、卵が心地よいであろうポジションに安置できるよう、細心の注意を払いながら巣の中に卵を置く。トイレットペーパーで作った羽の中、人差し指と親指に運ばれゆっくりと卵は沈み込む。巣にすっかりと沈み込んだのを感じると、だめ押しでぐらつかないように人差し指でそっと押し込んだ。 そのとき、男のいびきが止まる。 俺もそれに合わせ、一瞬の硬直で男にあわせる。秒針が少し進むぐらいでしかないが、男が目を覚ましてしまうとせっかくの妙案が台無しになってしまう。俺は自分を電信柱だと思いこみ、男に気配を感じさせず目を覚ますきっかけを与えないようにした。 再び男が寝息を立て始めると、俺は体の硬直を説き卵に異変がないかを人差し指で触れる事で確認した。 無事に卵が巣の中にたたずんでいるのを確認すると、近づいた時と同じようにゆっくりと素早くそこから遠のいた。 街灯の明かりが戻り、男の体の中心には卵が鎮座している。 巣作りをし終わり、煙草をくわえながら“親鳥”を見ていると地下鉄のシャッターが開いた。地下へと続く階段は白々と色気のない照明で照らされていた。のろのろと階段を降りながらあの男、目を覚ましたらどんな顔をするのだろう。そう思うと今まで俺の気持ちの底に横たわっていた砂地に落ちた氷のような暗い感情が熔けたような気になり笑いがこみ上げ、くしゃみをするような短い咳払いみたいな笑い声がでてしまった。 長く続く地下鉄の階段に俺の笑い声の破片が少しだけ響き、あとは俺の足音だけになった。
2 notes
·
View notes
Text
11180143
愛読者が、死んだ。
いや、本当に死んだのかどうかは分からない。が、死んだ、と思うしか、ないのだろう。
そもそも私が小説で脚光を浴びたきっかけは、ある男のルポルタージュを書いたからだった。数多の取材を全て断っていた彼は、なぜか私にだけは心を開いて、全てを話してくれた。だからこそ書けた、そして注目された。
彼は、モラルの欠落した人間だった。善と悪を、その概念から全て捨て去ってしまっていた。人が良いと思うことも、不快に思うことも、彼は理解が出来ず、ただ彼の中のルールを元に生きている、パーソナリティ障害の一種だろうと私は初めて彼に会った時に直感した。
彼は、胸に大きな穴を抱えて、生きていた。無論、それは本当に穴が空いていたわけではないが、彼にとっては本当に穴が空いていて、穴の向こうから人が行き交う景色が見え、空虚、虚無を抱いて生きていた。不思議だ。幻覚、にしては突拍子が無さすぎる。幼い頃にスコンと空いたその穴は成長するごとに広がっていき、穴を埋める為、彼は試行し、画策した。
私が初めて彼に会ったのは、まだ裁判が始まる前のことだった。弁護士すらも遠ざけている、という彼に、私はただ、簡単な挨拶と自己紹介と、そして、「理解しない人間に理解させるため、言葉を紡ぎませんか。」と書き添えて、名刺と共に送付した。
その頃の私は書き殴った小説未満をコンテストに送り付けては、音沙汰のない携帯を握り締め、虚無感溢れる日々をなんとか食い繋いでいた。いわゆる底辺、だ。夢もなく、希望もなく、ただ、人並みの能がこれしかない、と、藁よりも脆い小説に、私は縋っていた。
そんな追い込まれた状況で手を伸ばした先が、極刑は免れないだろう男だったのは、今考えてもなぜなのか、よくわからない。ただ、他の囚人に興味があったわけでもなく、ルポルタージュが書きたかったわけでもなく、ただ、話したい。そう思った。
夏の暑い日のことだった。私の家に届いた茶封筒の中には白無地の紙が一枚入っており、筆圧の無い薄い鉛筆の字で「8月24日に、お待ちしています。」と、ただ一文だけが書き記されていた。
こちらから申し込むのに囚人側から日付を指定してくるなんて、風変わりな男だ。と、私は概要程度しか知らない彼の事件について、一通り知っておこうとパソコンを開いた。
『事件の被疑者、高山一途の家は貧しく、母親は風俗で日銭を稼ぎ、父親は勤めていた会社でトラブルを起こしクビになってからずっと、家で酒を飲んでは暴れる日々だった。怒鳴り声、金切声、過去に高山一家の近所に住んでいた住人は、幾度となく喧嘩の声を聞いていたという。高山は友人のない青春時代を送り、高校を卒業し就職した会社でも活躍することは出来ず、社会から孤立しその精神を捻じ曲げていった。高山は己の不出来を己以外の全てのせいだと責任転嫁し、世間を憎み、全てを恨み、そして凶行に至った。
被害者Aは20xx年8月24日午後11時過ぎ、高山の自宅において後頭部をバールで���打され殺害。その後、高山により身体をバラバラに解体された後ミンチ状に叩き潰された。発見された段階では、人間だったものとは到底思えず修復不可能なほどだったという。
きっかけは近隣住民からの異臭がするという通報だった。高山は殺害から2週間後、Aさんだった腐肉と室内で戯れている所を発見、逮捕に至る。現場はひどい有り様で、近隣住民の中には体調を崩し救急搬送される者もいた。身体に、腐肉とそこから滲み出る汁を塗りたくっていた高山は抵抗することもなく素直に同行し、Aさん殺害及び死体損壊等の罪を認めた。初公判は※月※日予定。』
いくつも情報を拾っていく中で、私は唐突に、彼の名前の意味について気が付き、二の腕にぞわりと鳥肌が立った。
一途。イット。それ。
あぁ、彼は、ずっと忌み嫌われ、居場所もなくただ産み落とされたという理由で必死に生きてきたんだと、何も知らない私ですら胸が締め付けられる思いがした。私は頭に入れた情報から憶測を全て消し、残った彼の人生のカケラを持って、刑務所へと赴いた。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
「失礼します。」
「どうぞ。」
手錠と腰縄を付けて出てきた青年は、私と大して歳の変わらない、人畜無害、悪く言えば何の印象にも残らない、黒髪と、黒曜石のような真っ黒な瞳の持ち主だった。奥深い、どこまでも底のない瞳をつい値踏みするように見てしまって、慌てて促されるままパイプ椅子へと腰掛けた。彼は開口一番、私の書いている小説のことを聞いた。
「何か一つ、話してくれませんか。」
「え、あ、はい、どんな話がお好きですか。」
「貴方が一番好きな話を。」
「分かりました。では、...世界から言葉が消えたなら。」
私の一番気に入っている話、それは、10万字話すと死んでしまう奇病にかかった、愛し合う二人の話。彼は朗読などしたこともない、世に出てすらいない私の拙い小説を、目を細めて静かに聞いていた。最後まで一度も口を挟むことなく聞いているから、読み上げる私も自然と力が入ってしまう。読み終え、余韻と共に顔を上げると、彼はほろほろ、と、目から雫を溢していた。人が泣く姿を、こんなにまじまじと見たのは初めてだった。
「だ、大丈夫ですか、」
「えぇ。ありがとうございます。」
「あの、すみません、どうして私と、会っていただけることになったんでしょうか。」
ふるふる、と犬のように首を振った彼はにこり、と機械的にはにかんで、机に手を置き私を見つめた。かしゃり、と決して軽くない鉄の音が、無機質な部屋に響く。
「僕に大してアクションを起こしてくる人達は皆、同情や好奇心、粗探しと金儲けの匂いがしました。送られてくる手紙は全て下手に出ているようで、僕を品定めするように舐め回してくる文章ばかり。」
「...それは、お察しします。」
「でも、貴方の手紙には、「理解しない人間に理解させるため、言葉を紡ぎませんか。」と書かれていた。面白いな、って思いませんか。」
「何故?」
「だって、貴方、「理解させる」って、僕と同じ目線に立って、物を言ってるでしょう。」
「.........意識、していませんでした。私はただ、憶測が嫌いで、貴方のことを理解したいと、そう思っただけです。」
「また、来てくれますか。」
「勿論。貴方のことを、少しずつでいいので、教えてくれますか。」
「一つ、条件があります。」
「何でしょう。」
「もし本にするなら、僕の言葉じゃなく、貴方の言葉で書いて欲しい。」
そして私は、彼の元へ通うことになった。話を聞けば聞くほど、彼の気持ちが痛いほど分かって、いや、分かっていたのかどうかは分からない。共鳴していただけかもしれない、同情心もあったかもしれない、でも私はただただあくる日も、そのあくる日も、私の言葉で彼を表し続けた。私の記した言葉を聞いて、楽しそうに微笑む彼は、私の言葉を最後まで一度も訂正しなかった。
「貴方はどう思う?僕の、したことについて。」
「...私なら、諦めてしまって、きっと得物を手に取って終わってしまうと思います。最後の最後まで、私が満たされることよりも、世間を気にしてしまう。不幸だと己を憐れんで、見えている答えからは目を背けて、後悔し続けて死ぬことは、きっと貴方の目から見れば不思議に映る、と思います。」
「理性的だけど、道徳的な答えではないね。普通はきっと、「己を満たす為に人を殺すのは躊躇う」って、そう答えるんじゃないかな。」
「でも、乾き続ける己のままで生きることは耐え難い苦痛だった時、己を満たす選択をしたことを、誰が責められるんでしょうか。」
「...貴方に、もう少し早く、出逢いたかった。」
ぽつり、零された言葉と、アクリル板越しに翳された掌。温度が重なることはない。触れ合って、痛みを分かち合うこともない。来園者の真似をする猿のように、彼の手に私の手を合わせて、ただ、じっとその目を見つめた。相変わらず何の感情もない目は、いつもより少しだけ暖かいような、そんな気がした。
彼も、私も、孤独だったのだと、その時初めて気が付いた。世間から隔離され、もしくは自ら距離を置き、人間が信じられず、理解不能な数億もの生き物に囲まれて秩序を保ちながら日々歩かされることに抗えず、翻弄され。きっと彼の胸に空いていた穴は、彼が被害者を殺害し、埋めようと必死に肉塊を塗りたくっていた穴は、彼以外の人間が、もしくは彼が、無意識のうちに彼から抉り取っていった、彼そのものだったのだろう。理解した瞬間止まらなくなった涙を、彼は拭えない。そうだった、最初に私の話で涙した彼の頬を撫でることだって、私には出来なかった。私と彼は、分かり合えたはずなのに、分かり合えない。私の言葉で作り上げた彼は、世間が言う狂人でも可哀想な子でもない、ただ一人の、人間だった。
その数日後、彼が獄中で首を吊ったという報道が流れた時、何となく、そうなるような気がしていて、それでも私は、彼が味わったような、胸に穴が開くような喪失感を抱いた。彼はただ、理解されたかっただけだ。理解のない人間の言葉が、行動が、彼の歩く道を少しずつ曲げていった。
私は書き溜めていた彼の全てを、一冊の本にした。本のタイトルは、「今日も、皮肉なほど空は青い。」。逮捕された彼が手錠をかけられた時、部屋のカーテンの隙間から空が見えた、と言っていた。ぴっちり閉じていたはずなのに、その時だけひらりと翻った暗赤色のカーテンの間から顔を覗かせた青は、目に刺さって痛いほど、青かった、と。
出版社は皆、猟奇的殺人犯のノンフィクションを出版したい、と食い付いた。帯に著名人の寒気がする言葉も書かれた。私の名前も大々的に張り出され、重版が決定し、至る所で賛否両論が巻き起こった。被害者の遺族は怒りを露わにし、会見で私と、彼に対しての呪詛をぶちまけた。
インタビュー、取材、関わってくる人間の全てを私は拒否して、来る日も来る日も、読者から届く手紙、メール、SNS上に散乱する、本の感想を読み漁り続けた。
そこに、私の望むものは何もなかった。
『あなたは犯罪者に対して同情を誘いたいんですか?』
私がいつ、どこに、彼を可哀想だと記したのだろう。
『犯罪者を擁護したいのですか?理解出来ません。彼は人を殺したんですよ。』
彼は許されるべきだとも、悪くない、とも私は書いていない。彼は素直に逮捕され、正式な処罰ではないが、命をもって罪へ対応した。これ以上、何をしろ、と言うのだろう。彼が跪き頭を地面に擦り付け、涙ながらに謝罪する所を見たかったのだろうか。
『とても面白かったです。狂人の世界が何となく理解出来ました。』
何をどう理解したら、この感想が浮かぶのだろう。そもそもこの人は、私の本を読んだのだろうか。
『作者はもしかしたら接していくうちに、高山を愛してしまったのではないか?贔屓目の文章は公平ではなく気持ちが悪い。』
『全てを人のせいにして自分が悪くないと喚く子供に殺された方が哀れでならない。』
『結局人殺しの自己正当化本。それに手を貸した筆者も同罪。裁かれろ。』
『ただただ不快。皆寂しかったり、一人になる瞬間はある。自分だけが苦しい、と言わんばかりの態度に腹が立つ。』
『いくら貰えるんだろうなぁ筆者。羨ましいぜ、人殺しのキチガイの本書いて金貰えるなんて。』
私は、とても愚かだったのだと気付かされた。
皆に理解させよう、などと宣って、彼を、私の言葉で形作ったこと。裏を返せば、その行為は、言葉を尽くせば理解される、と、人間に期待をしていたに他ならない。
私は、彼によって得たわずかな幸福よりも、その後に押し寄せてくる大きな悲しみ、不幸がどうしようもなく耐え難く、心底、己が哀れだった。
胸に穴が空いている、と言う幻覚を見続けた彼は、穴が塞がりそうになるたび、そしてまた無機質な空虚に戻るたび、こんな痛みを感じていたのだろうか。
私は毎日、感想を読み続けた。貰った手紙は、読んだものから燃やしていった。他者に理解される、ということが、どれほど難しいのかを、思い知った。言葉を紡ぐことが怖くなり、彼を理解した私ですら、疑わしく、かといって己と論争するほどの気力はなく、ただ、この世に私以外の、彼の理解者は現れず、唯一の彼の理解者はここにいても、もう彼の話に相槌を打つことは叶わず、陰鬱とする思考の暗闇の中を、堂々巡りしていた。
思考を持つ植物になりたい、と、ずっと思っていた。人間は考える葦である、という言葉が皮肉に聞こえるほど、私はただ、一人で、誰の脳にも引っ掛からず、狭間を生きていた。
孤独、などという言葉で表すのは烏滸がましいほど、私、彼が抱えるソレは哀しく、決して治らない不治の病のようなものだった。私は彼であり、彼は私だった。同じ境遇、というわけではない。赤の他人。彼には守るべき己の秩序があり、私にはそんな誇り高いものすらなく、能動的、怠惰に流されて生きていた。
彼は、目の前にいた人間の頭にバールを振り下ろす瞬間も、身体をミンチにする工程も、全て正気だった。ただ心の中に一つだけ、それをしなければ、生きているのが恐ろしい、今しなければずっと後悔し続ける、胸を掻きむしり大声を上げて暴れたくなるような焦燥感、漠然とした不安感、それらをごちゃ混ぜにした感情、抗えない欲求のようなものが湧き上がってきた、と話していた。上手く呼吸が出来なくなる感覚、と言われて、思わず己の胸を抑えた記憶が懐かしい。
出版から3ヶ月、私は感想を読むのをやめた。人間がもっと憎らしく、恐ろしく、嫌いになった。彼が褒めてくれた、利己的な幸せの話を追い求めよう。そう決めた。私の秩序は、小説を書き続けること。嗚呼と叫ぶ声を、流れた血を、光のない部屋を、全てを飲み込む黒を文字に乗せて、上手く呼吸すること。
出版社は、どこも私の名前を見た瞬間、原稿を送り返し、もしくは廃棄した。『君も人殺したんでしょ?なんだか噂で聞いたよ。』『よくうちで本出せると思ったね、君、自分がしたこと忘れたの?』『無理ですね。会社潰したくないので。』『女ならまだ赤裸々なセックスエッセイでも書かせてやれるけど、男じゃ使えないよ、いらない。』数多の断り文句は見事に各社で違うもので、私は感嘆すると共に、人間がまた嫌いになった。彼が乗せてくれたから、私の言葉が輝いていたのだと痛感した。きっとあの本は、ノンフィクション、ルポルタージュじゃなくても、きっと人の心に突き刺さったはずだと、そう思わずにはいられなかった。
以前に働いていた会社は、ルポの出版の直前に辞表を出した。私がいなくても、普段通り世界は回る。著者の実物を狂ったように探し回っていた人間も、見つからないと分かるや否や他の叩く対象を見つけ、そちらで楽しんでいるようだった。私の書いた彼の本は、悪趣味な三流ルポ、と呼ばれた。貯金は底を尽きた。手当たり次第応募して見つけた仕事で、小銭を稼いだ。家賃と、食事に使えばもう残りは硬貨しか残らない、そんな生活になった。元より、彼の本によって得た利益は、全て燃やしてしまっていた。それが、正しい末路だと思ったからだったが、何故と言われれば説明は出来ない。ただ燃えて、真っ赤になった札が灰白色に色褪せ、風に脆く崩れていく姿を見て、幸せそうだと、そう思った。
名前を伏せ、webサイトで小説を投稿し始めた。アクセス数も、いいね!も、どうでも良かった。私はただ秩序を保つために書き、顎を上げて、夜店の金魚のように、浅い水槽の中で居場所なく肩を縮めながら、ただ、遥か遠くにある空を眺めては、届くはずもない鰭を伸ばした。
ある日、web上のダイレクトメールに一件のメッセージが入った。非難か、批評か、スパムか。開いた画面には文字がつらつらと記されていた。
『貴方の本を、販売当時に読みました。明記はされていませんが、某殺人事件のルポを書かれていた方ですか?文体が、似ていたのでもし勘違いであれば、すみません。』
断言するように言い当てられたのは初めてだったが、画面をスクロールする指はもう今更震えない。
『最新作、読みました。とても...哀しい話でした。ゾンビ、なんてコミカルなテーマなのに、貴方はコメをトラにしてしまう才能があるんでしょうね。悲劇。ただ、二人が次の世界で、二人の望む幸せを得られることを祈りたくなる、そんな話でした。過去作も、全て読みました。目を覆いたくなるリアルな描写も、抽象的なのに五感のどこかに優しく触れるような比喩も、とても素敵です。これからも、書いてください。』
コメとトラ。私が太宰の「人間失格」を好きな事は当然知らないだろうに、不思議と親近感が湧いた。単純だ。と少し笑ってから、私はその奇特な人間に一言、返信した。
『私のルポルタージュを読んで、どう思われましたか。』
無名の人間、それも、ファンタジーやラブコメがランキング上位を占めるwebにおいて、埋もれに埋もれていた私を見つけた人。だからこそ聞きたかった。例えどんな答えが返ってきても構わなかった。もう、罵詈雑言には慣れていた。
数日後、通知音に誘われて開いたDMには、前回よりも短い感想が送られてきていた。
『人を殺めた事実を別にすれば、私は少しだけ、彼の気持ちを理解出来る気がしました。。彼の抱いていた底なしの虚無感が見せた胸の穴も、それを埋めようと無意識のうちに焦がれていたものがやっと現れた時の衝動。共感は微塵も出来ないが、全く理解が出来ない化け物でも狂人でもない、赤色を見て赤色だと思う一人の人間だと思いました。』
何度も読み返していると、もう1通、メッセージが来た。惜しみながらも画面をスクロールする。
『もう一度読み直して、感想を考えました。外野からどうこう言えるほど、彼を軽んじることが出来ませんでした。良い悪いは、彼の起こした行動に対してであれば悪で、それを彼は自死という形で償った。彼の思考について善悪を語れるのは、本人だけ。』
私は、画面の向こうに現れた人間に、頭を下げた。見えるはずもない。自己満足だ。そう知りながらも、下げずにはいられなかった。彼を、私を、理解してくれてありがとう。それが、私が愛読者と出会った瞬間だった。
愛読者は、どうやら私の作風をいたく気に入ったらしかった。あれやこれや、私の言葉で色んな世界を見てみたい、と強請った。その様子はどこか彼にも似ている気がして、私は愛読者の望むまま、数多の世界を創造した。いっそう創作は捗った。愛読者以外の人間は、ろくに寄り付かずたまに冷やかす輩が現れる程度で、私の言葉は、世間には刺さらない。
まるで神にでもなった気分だった。初めて小説を書いた時、私の指先一つで、人が自由に動き、話し、歩き、生きて、死ぬ。理想の愛を作り上げることも、到底現実世界では幸せになれない人を幸せにすることも、なんでも出来た。幸福のシロップが私の脳のタンパク質にじゅわじゅわと染みていって、甘ったるいスポンジになって、溢れ出すのは快楽物質。
そう、私は神になった。上から下界を見下ろし、手に持った無数の糸を引いて切って繋いでダンス。鼻歌まじりに踊るはワルツ。喜悲劇とも呼べるその一人芝居を、私はただ、演じた。
世の偉いベストセラー作家も、私の敬愛する文豪も、ポエムを垂れ流す病んだSNSの住人も、暗闇の中で自慰じみた創作をして死んでいく私も、きっと書く理由なんて、ただ楽しくて気持ちいいから。それに尽きるような気がする。
愛読者は私の思考をよく理解し、ただモラルのない行為にはノーを突きつけ、感想を欠かさずくれた。楽しかった。アクリルの向こうで私の話を聞いていた彼は、感想を口にす��ことはなかった。核心を突き、時に厳しい指摘をし、それでも全ての登場人物に対して寄り添い、「理解」してくれた。行動の理由を、言動の意味を、目線の行く先を、彼らの見る世界を。
一人で歩いていた暗い世界に、ぽつり、ぽつりと街灯が灯っていく、そんな感覚。じわりじわり暖かくなる肌触りのいい空気が私を包んで、私は初めて、人と共有することの幸せを味わった。不変を自分以外に見出し、脳内を共鳴させることの価値を知った。
幸せは麻薬だ、とかの人が説く。0の状態から1の幸せを得た人間は、気付いた頃にはその1を見失う。10の幸せがないと、幸せを感じなくなる。人間は1の幸せを持っていても、0の時よりも、不幸に感じる。幸福感という魔物に侵され支配されてしまった哀れな脳が見せる、もっと大きな、訪れるはずと信じて疑わない幻影の幸せ。
私はさしずめ、来るはずのプレゼントを玄関先でそわそわと待つ少女のように無垢で、そして、馬鹿だった。無知ゆえの、無垢の信頼ゆえの、馬鹿。救えない。
愛読者は姿を消した。ある日話を更新した私のDMは、いつまで経っても鳴らなかった。震える手で押した愛読者のアカウントは消えていた。私はその時初めて、愛読者の名前も顔も性別も、何もかもを知らないことに気が付いた。遅すぎた、否、知っていたところで何が出来たのだろう。私はただ、愛読者から感想という自己顕示欲を満たせる砂糖を注がれ続けて、その甘さに耽���していた白痴の蟻だったのに。並ぶ言葉がざらざらと、砂時計の砂の如く崩れて床に散らばっていく幻覚が見えて、私は端末を放り投げ、野良猫を落ち着かせるように布団を被り、何がいけなかったのかをひとしきり考え、そして、やめた。
人間は、皆、勝手だ。何故か。皆、自分が大事だからだ。誰も守ってくれない己を守るため、生きるため、人は必死に崖を這い上がって、その途中で崖にしがみつく他者の手を足場にしていたとしても、気付く術はない。
愛読者は何も悪くない。これは、人間に期待し、信用という目に見えない清らかな物を崇拝し、焦がれ、浅はかにも己の手の中に得られると勘違いし小躍りした、道化師の喜劇だ。
愛読者は今日も、どこかで息をして、空を見上げているのだろうか。彼が亡くなった時と同じ感覚を抱いていた。彼が最後に見た澄んだ空。私が、諦観し絶望しながらも、明日も見るであろう狭い空。人生には不幸も幸せもなく、ただいっさいがすぎていく、そう言った27歳の太宰の言葉が、彼の年に近付いてからやっと分かるようになった。そう、人が生きる、ということに、最初から大して意味はない。今、人間がヒエラルキーの頂点に君臨し、80億弱もひしめき合って睨み合って生きていることにも、意味はない。ただ、そうあったから。
愛読者が消えた意味も、彼が自ら命を絶った理由も、考えるのをやめよう。と思った。呼吸代わりに、ある種の強迫観念に基づいて狂ったように綴っていた世界も、閉じたところで私は死なないし、私は死ぬ。最早私が今こうして生きているのも、植物状態で眠る私の見ている長い長い夢かもしれない。
私は思考を捨て、人でいることをやめた。
途端に、世界が輝きだした。全てが美しく見える。私が今ここにあることが、何よりも楽しく、笑いが止まらない。鉄線入りの窓ガラスが、かの大聖堂のステンドグラスよりも耽美に見える。
太宰先生、貴方はきっと思考を続けたから、あんな話を書いたのよ。私、今、そこかしこに檸檬を置いて回りたいほど愉快。
これがきっと、幸せ。って呼ぶのね。
愛読者は死んだ。もう戻らない。私の世界と共に死んだ、と思っていたが、元から生きても死んでもいなかった。否、生きていて、死んでいた。シュレディンガーの猫だ。
「嗚呼、私、やっぱり、
7 notes
·
View notes
Text
おくすりをどうぞ
豪華なまばゆいひかりの下で、勇利は輝くようだった。彼はヴィクトルの選んだ新調のスーツを着、髪を上げて、すっきりときよらかな容貌をしており、このうえなくうつくしかった。確かにバンケット会場はまぶしかったけれど、勇利こそ、ヴィクトルが目をほそめなければ見られないきらめきだった。ヴィクトルが大切にかわいがり育てているこのいとしい生徒は、試合で好成績をおさめ、いま、幸福の絶頂にあった。そんな彼をみつめることはヴィクトルにとってももちろん最大のしあわせだったが、同時に、どこか胸苦しい、差し迫ったせつなさのようなものを感じさせるのも確かだった。勇利はあまりにうつくしい。 胸の痛みに耐えかねて、ヴィクトルはひとりになるため歩きだした。ずいぶん飲んでしまったけれど、それでも酔いと勢いにまかせて新しいグラスをとり、バルコニーへ向かった。一歩踏み出すとそこはしんと静まり返っており、ひんやりとして、会場の喧噪がうそのようだった。眼下にひろがる庭園の陰は青く、全体は月光でほの白く、ひそやかで、まるで別世界だ。 ヴィクトルは溜息をつき、手すりにもたれかかって勇利のことを想った。試合での勇利のふるまい、成績が出たときの喜び、笑顔、ヴィクトルへのささやき、そして交わした抱擁などが思い出された。ヴィクトルは勇利を溺愛しており、彼はこの世で唯一の存在だった。勇利ともっと親密になりたいけれど、手の届かない、高貴な花だという思いもあった。時には、自分ほど勇利に似合う者はいないという確信を持てるのだけれど、そうでないときは自信のない、気弱な、情けない男になってしまうのだ。それが勇利の魅力で、普段の彼はありふれた垢抜けない若者なのに、ひとたび輝きを増すと、絶対的な威力を示すのである。彼の純粋な魂、清純なこころ、まじめでひたむきな精神、そしてかわいらしくうつくしい姿かたちに、ヴィクトルは完全にまいってしまっているのだった。 勇利のことを考えているだけで、時はいくらでも、せつなく、幸福に過ぎてゆく。ヴィクトルはそこでぼんやりと過ごした。そのうち背後で物音がして、あきれたような声が聞こえた。 「こんなところで何してるんだい? みんながにぎわってるっていうのに」 クリストフだった。ヴィクトルは振り向かず、夜空を見上げたまま黙っていた。 「ヴィクトルがいないとみんなもつまらないと思うよ」 「俺だっていつも騒ぎの中心にいるわけじゃない」 ヴィクトルはぶっきらぼうに答えた。その口ぶりにクリストフが笑った。 「そういうのが好きだと思ってたよ」 「前まではね」 「いまは?」 「いまは……考えることが多くてね」 「まじめになったね、ヴィクトルコーチ」 クリストフは隣に来て、同じように手すりにもたれた。 「で? コーチにおかれましては、どんなことを考えていたのかな?」 「クリス……勇利を見たかい?」 ヴィクトルはまぶたを閉じ、手首に額を当てて低く言った。 「もちろん見たさ」 クリストフは肩をすくめた。 「君たちの場合、どっちかを見ればどっちかも自然に目に入るね。試合前のあの様子、なんだい? 勇利は黙っているし、君も静かにしてると思ったら、彼が氷に出た途端、急に……」 クリストフは思い出したようにくすくす笑った。 「勇利の手を握って、あんなに熱烈な目でみつめてさ……、見ていられないよ。かわいくて仕方ない、おまえしか見えない、おまえがいちばんうつくしい、っていう目つきだったよね。コーチは生徒のことをそういうふうに考えているものだけど、君の場合、もっと別の情熱があからさまなんだよ。見せつけられるこっちの身にもなって欲しい。思わず笑っちゃった。俺の滑走順のほうがさきでよかった。そういえば、彼、新調のスーツを着てたね。いや、君がコーチになってから、バンケットではいつも新しいのをこしらえてるけどね。あれも君が選んだの? いい色じゃないか。勇利はさっき、ピチットにグラスを勧められてたよ。一生懸命断ってたけど。よっぽどソチでのバンケットがこたえてるらしいね」 「綺麗だったろう?」 ヴィクトルはぽつんと言った。 「いままででいちばん綺麗だ。勇利はいつだって最高にうつくしいけどね」 クリストフが眉を上げてヴィクトルを眺めた。ヴィクトルは低く続けた。 「綺麗なんだ。なんていうか……勇利は綺麗だ。……とても」 クリストフはちいさく笑い、からかうように口の端を上げた。 「ご自慢の勇利がそんなに綺麗だっていうのに、君は何を拗ねてるの?」 「勇利は高嶺の花なんだ」 ヴィクトルはつぶやいた。 「気高く、おごそかで、気品がある。……俺には手が届かない」 クリストフが笑い声をたてた。 「ヴィクトル・ニキ���ォロフが手が届かないって? そんなこともあるんだね。勇利は君に夢中だよ」 「どうせあこがれさ」 ヴィクトルは自暴自棄だった。 確かに勇利はヴィクトルのことを愛している。彼の深い愛情を感じる。長いあいだ、勇利はヴィクトルしか見てこなかったし、これからもそうだろう。生涯をヴィクトル・ニキフォロフに捧げて生きるにちがいない。夢中だというクリストフの言葉は当たっている。一時的なものではなく、永遠に続く愛情だ。勇利はヴィクトルに熱烈な愛を誓っている。しかし……。 「彼がどんなに俺を好きだと言っても、愛してるとほほえんでも、あこがれ以上のなんでもない。ただそれだけなんだ。俺のことで胸を焦がして、せつない思いをしてくれるわけじゃない」 勇利はヴィクトルのことで物狂うような思いをするわけではない。涙がこぼれるほどにヴィクトルを想ったり、胸を締めつけられたり、甘く苦しい幸福を感じたりすることはない。勇利はただ、ヴィクトルを愛しているだけなのだ。もちろんそれはすばらしいことにちがいない。ちがいないが……。 「かなり酔っぱらってるね」 クリストフは可笑しそうだった。 「片想いだと思っていじけてるわけだ」 「勇利の愛はいつも目にあらわれる」 ヴィクトルはちいさく言った。 「彼のまなざしは俺にしか向かない。俺への愛だけを語っている。彼は俺以外の誰も目に入らない……」 「けっこうなことじゃないか」 ヴィクトルはゆっくりとかぶりを振った。 「勇利が俺を好きだという目をすればしたぶんだけ……俺はつらく、苦しくなるんだ……だって彼の好きというのは、俺の望む好きじゃない……。くるおしいほど愛している相手に『あこがれています』と言われる気持ちが君にわかるか?」 「やれやれ。重症だね」 クリストフは苦笑いを浮かべて溜息をついた。 「そんなことで悩んでこんなところでぐずぐずしてたの? ばかばかしい」 「俺にとってはおおごとだ。一生を左右する事件だ」 ��変わった男だってことはわかってたけど、ヴィクトル・ニキフォロフがこんなばかだとは思わなかった」 「勇利の魅力を知らないのか?」 「君ほどには知らないだろうね」 「クリスだって、人を愛すればこんなふうになる」 「愛を知ったヴィクトル・ニキフォロフは愚かだね。いいじゃないか」 クリストフは愉快そうに口元を上げた。 「俺は前よりずっと好きだよ。まるで人間みたいじゃない? 勇利はすごいね。ヴィクトルをこんなふうにしてしまった」 「そうやっておもしろがっていればいい。ひとりにしてくれ。俺は静かに勇利のことを想っていたいんだ」 ヴィクトルが無造作に手をひと振りすると、クリストフはひとしきり楽しそうに笑った。 「まったく、どうしようもないね。水と特効薬を用意してあげるよ。ちょっと待ってな」 「俺は酔ってなんかいない」 「わかったわかった」 クリストフはさっさと会場へ戻っていき、ヴィクトルは欠けた月のおぼろににじむ夜空を見上げてぼんやりした。なんと神秘的でうつくしく、ひそやかで、清楚なのか。まるで黒い衣装をまとった勇利ではないか。彼は氷の上では輝くけれど、音もなく静かに、そっと人を魅了してやまないということもある。時により勇利の可憐さはまったく異なる。 しかし、その勇利をどれほど想っても……。 ヴィクトルがいない。勇利はきょろきょろしながら会場内を歩いていた。どこへ行ったのだろう。ヴィクトルはすぐどっか行っちゃうからな、と溜息が出た。人気者だから誰かにつかまるのは当然のことなのだけれど、離れるならそう言ってからにして欲しい。なぜこんなふうにあっという間に姿を消すのか。普段はべたべたくっついてくるのに、と思った。つい昨日までだって……まあ、あれは試合だったからかな……ぼくがすぐ不安定になるから……。 「勇利」 声をかけられて振り返ると、クリストフが手を上げてやってくるところだった。 「クリス」 勇利はすこし安心してほほえんだ。知った顔を見るとほっとする。バンケットという場はいまだに苦手だ。 「ヴィクトル知らない? いなくなっちゃったんだよ。インタビューにまでくっついてきてずーっと話してるかと思ったら、いきなり消えるんだから。極端なんだよ。宇宙人の考えることもすることもわけわからない。どこかで酔っぱらってるのかな。あのひと、酔うと服を脱ぐんだ。大丈夫かな。でも変だよね。知り合うまで、バンケットで酔って脱いだところなんて見たことなかったのに。あ、ソチのぼくについてなら言わなくていいよ。その話は聞きたくない」 「あそこにテーブルがあるね」 クリストフがすこし向こうを指さし、勇利に言い聞かせるように話した。勇利はきょとんとしながら「そうだね」とうなずいた。 「あのテーブルには飲み物がある。水も置いてあるはずだよ」 「そうだろうね」 勇利自身、そこから取った水を飲んだりもしたのでよく知っていた。 「それを持ってバルコニーへ行ってみて」 「え? どうして?」 「そこに酔っぱらってる男がいるからさ。勝手に絶望して落ちこんでるから、なぐさめてやるといい」 勇利はぱちぱちと瞬いた。 「よくわからないけど……気分を悪くしてるなら、係の人に言ったほうがいいんじゃない?」 「君が係の人だと思うんだけどね」 クリストフは愉快そうに言って立ち去ってしまった。勇利はわけがわからなかった。係はホテルの人ではないのか。勇利は混乱しながらも言われたとおり水のグラスを取り、バルコニーへ向かった。もしかしたらヴィクトルかもしれないとちらと思ったりもしたけれど、彼なら、絶望して落ちこんでいるというのが妙だ。ヴィクトルが絶望するような出来事があったとは思えない。彼は勇利の試合がよかったので、ずっとにこにこしていたのだ。 あんまり具合が悪そうなら係の人を呼ぼう、と思いつつ、勇利はおそるおそるバルコニーへ出た。そしてそこに立っている長身の男を見た瞬間、驚いて立ち止まった。 ヴィクトルだった。 あれ? え? やっぱりヴィクトル? 落ちこんでるってなに? 絶望って? 勇利はせわしなく瞬いた。クリストフにからかわれたのだろうか? ただ、コーチを迎えに行ってやれという意味だったのかもしれない。勇利がヴィクトルを探していたので、ちょっとした遊びのような感覚で居場所を教えてくれたのだろう。なんだ……。 勇利はほっとし、ほほえみながらヴィクトルに近づいた。するとヴィクトルがいきなり、振り返りもせず口早に言った。 「クリス、まさか勇利に俺のことを話してやしないだろうね。勇利が愛してくれないと言ってすみっこで駄々をこねているなんて言いつけてないだろうな? あまりにみっともない。かんべんしてくれ。それに、そんなことを言われたら、勇利はどうしたらいいかわからなくなる。いいかい、あの子は純真なんだ。俺の気持ちなんか知ったら困ってしまう。俺が彼を愛してるなんてことはね。ずっと一緒にいるけど、俺は勇利には言ってないんだ。ひとことも言ってない。抱きしめたい、キスしたいなんてことは話してない。彼はね、清楚できよらかなんだ……セックスしたい、おまえを抱きたいなんて言ったら泣くんだよ! おまえを裸にしてすみずみまで撫でまわして、すべてを知りたいなんて言ったらね……」 勇利は何を言われたのかわからなかった。驚き、混乱し、あっけにとられて、話の意味を理解しようと頭をたくさん使わなければならなかった。ヴィクトル、ぼくをクリスと間違えてる? ううん。それはいい。いいんだ。でも……、愛してくれない? 駄々をこねてる? いや、それもいい。いい。だってぼくはヴィクトルが好きだし……。ヴィクトルもぼくを愛してるの? そんなこと知ってるよ。ヴィクトルの愛はぼくだけが知ってるんだ。だけど……抱きしめたい……キスしたいってなに? え? 抱きたいって? セ、セ……、はだかにして……すべてを……すみずみまで……。 勇利はまっかになった。完全に理解したわけではなかったけれど、とにかく頬が熱くなった。どういうことなの? ヴィクトルはつまり──ぼくを──え? ヴィクトルがいぶかしげに、ゆっくりと振り返った。勇利はとっさに逃げ出そうとした。けれど、足がまったく動かなかった。彼は両手でグラスを持ち、うつむいて、その場にじっと立っているしかなかった。 これまで見たこともないほど赤くなり、ものも言えない様子で立ち尽くしている勇利を前に、ヴィクトルは息もできず、経験したことがない狼狽でものが言えなくなった。勇利。勇利。どうして勇利がここに。いまのを聞いたのか? 俺が言ったことを? キスだのセックスだのあからさまなことを──この──純真な勇利が──聞いた? 「ゆ──」 勇利。 そう呼ぼうとしたけれど、声が喉に張りついて出てこなかった。なんてことだ。なんてことだ。どうしよう。けがらわしい男だと思われたにちがいない。いままでぼくのことをそんな目で見ていたのかと嫌悪されたにきまっている。どうすればいいのだ。なんて説明すればいい? 「勇利──その──」 「あ、あの……」 ふたりは同時に口をひらいた。ヴィクトルは何か言いたかったけれど、とりみだしてしまい、何も言えなかった。勇利も赤い頬をしてうろたえているらしかった。当然だろう。自分のコーチにいきなり裸だのセックスだのと言われて冷静でいられるわけがない。 「い、いまのは……えっと……」 勇利は口元に手を当て、顔をそらして、おおいに恥じらっているようだった。ヴィクトルはやはり何も言えなかった。なんというぽんこつぶり……。 「え、えっと」 勇利が、ほのかなひかりでもわかるほど赤いおもてを上げ、笑った。彼は手に持ったグラスを差し出し、ヴィクトルに勧めた。 「これ……、持っていってあげるといいってクリスから言われて……」 「あ、ああ」 ヴィクトルは反射的にグラスを受け取った。 「クリスが。そうか。クリスが」 「う、うん」 勇利はこくっとうなずいた。 「酔ってるみたいだからって……」 「ああ……ありがとう……」 酔っているのかいないのか、そんなことはどうでもいい。とにかくどうにかしなければ。ヴィクトルはそのことばかり考えていたけれど、まったく妙案は浮かばなかった。 「そうなの?」 勇利がヴィクトルの顔をのぞきこんだ。ヴィクトルは意味がわからず、間の抜けた声で「え?」と訊き返してしまった。 「酔ってるの? ヴィクトル……」 「ああ……いや……どうかな……」 勇利が黒い瞳でヴィクトルをじっとみつめた。勇利のまなざしにはとんでもない威力がある。ヴィクトルはさらにのぼせ上がった。 「そうだね……そうかもしれない。酔っているんだ……」 ヴィクトルは自分で何を言っているのかよくわからなかった。 「そう」 勇利は静かにうなずいた。 「じゃあ、えと……いまのは、そのせいなんだね」 「え?」 「ぼくを、その……なんていうか……」 勇利がまたうつむいた。ヴィクトルは勢いよく手すりにグラスを置いた。彼は勇利に迫り、肩に手をやって熱心に言った。 「ちがう!」 確かに妙なことを口走った。しかし、酔いにまかせて、こころにもないことを言ったわけではない。そうではないのだ。 「ちがうんだ、あれは……」 「あ、う、うん」 勇利はまたうなずいた。 「そうだよね。正気なら、���んなこと言うはずないし……」 ヴィクトルは「酔って言ったのではない」というつもりで否定しているのだけれど、勇利は「さっき言ったことは本当じゃない。ちがうんだ」というふうに受け取っているようだ。ヴィクトルはじれったくなった。 「勇利、そうじゃない……」 勇利が顔を上げた。彼のしっとりと濡れて澄んだ瞳、よるべないような目つき、清純な表情を見ていると、ヴィクトルは何も言えなくなるのだった。勇利はどうしてこんなに綺麗なんだ? 酔っていたせいだと言うのがいちばんいいのかもしれない。勇利はヴィクトルのあんな事情なんて知りたくなかったのだ。本当のことだと言われるほうが困るだろう。酔ってたんだ、何を言ったのかよくおぼえていないと笑い飛ばしてしまえば、勇利はほっとする。そうだ。わかっている。わかっているのだ。 しかしヴィクトルは、そんなふうに言うことはできなかった。気持ちをごまかすことはできない。さっきのは正真正銘の本心だ。勇利を愛している。彼にふれたい。抱きたい。キスがしたい。服を脱がせたい……。 「あ、あの、大丈夫だよ」 勇利が戸惑いながらけなげにほほえんだ。 「わかってるから。うん。平気」 「勇利……」 「気にしないで。ぼくも気にしない。うん。うん……」 勇利はヴィクトルにさっと背を向けた。 「えっと、ぼくさきに部屋に戻るね。ヴィクトルもほどほどにしたほうがいいよ」 ヴィクトルはいてもたってもいられず、もう一度勇利の肩に手を置いた。勇利はびくりとおののき、うつむいて両手を胸に押し当てた。彼のほっそりした首筋があらわになり、月光に白く照らし出された。 「勇利、ちがうんだ。ちがうんだ……」 ヴィクトルは勇利に説明したいのに、まったく頭が働かず、上手くものを言うことができなかった。勇利はおもてをさしうつむけ、身じろぎせずに立っていた。ヴィクトルは思いきって言った。 「俺も部屋へ戻るよ」 勇利はそれを静かに聞いていて、すこししてから返事をした。 「じゃあ、ぼくはもうすこしここにいようかな……」 「一緒に帰ろう」 「…………」 勇利はためらいがちに瞬き、それから振り返っていちずにヴィクトルをみつめた。 「あの、ヴィクトル……」 彼はささやくように頼んだ。 「もうあんなこと、言わないで欲しい……」 ヴィクトルは苦しくなった。勇利はヴィクトルのああいう思いは聞きたくないのだ。 「……なぜ?」 勇利は長いまつげを伏せてちいさく答えた。 「困るから……」 「あんなことを言われたら、困る? 俺をけがらわしいと思うかい? 俺のことがいやになった?」 「酔ってるのは仕方のないことだと思うけど……」 「勇利、俺は酔ってなんかいない。俺にああ言われたら困るのか?」 「いやだっていうことじゃないよ。でも……」 勇利はそこで口を閉ざし、考え深そうに呼吸をしてから、水際立った、けなげなまなざしでヴィクトルを見上げた。 「……困る……」 ヴィクトルはもう、何がなんだかわからなかった。ただ、目の前にいる勇利がいとおしく、たまらない気持ちだった。ヴィクトルは知らないうちに手を伸ばし、勇利を引き寄せて顔を近づけていた。 「勇利……」 「…………」 ふたりの鼻先がふれあった。吐息さえも感じた。しかし勇利は逃げようとはせず、真剣な、いじらしい目つきでヴィクトルをみつめていた。そのうるみを帯びた瞳を見ていると、ヴィクトルは気がふれそうになった。 なぜ勇利はこんな目をするんだ? なぜ勇利はこんなに清純なんだ? なぜ、勇利は……。 なぜ……なぜ……。 なぜ、勇利はこんなにうつくしいんだ? ヴィクトルはわけがわからなくなり、勇利を抱きしめ、夢中で接吻した。勇利はすがるようにヴィクトルの背に手をまわして目を閉じた。長いキスだったのか、短かったのか、ヴィクトルにはさっぱり理解できなかった。気がつくとまた彼は勇利とみつめあっ��おり、さっきよりも頭がくらくらしてめまいがひどかった。 「勇利……俺が言ったことは本当なんだ……」 「…………」 勇利がまつげを揺らして瞬いた。 「俺は酔ってなんかいない……勇利にキスがしたいんだ……勇利の身体にふれたいんだ……勇利の肌を知りたいんだ……勇利を脱がせて……すみずみまでどこもかしこも撫でまわして……舐めて……俺の熱を教えて……」 こんなことを言ってしまってはもうだめだ。なんて不潔な男なのだと勇利に拒絶されるにちがいない。もうおしまいだ。おしまいだ……。 「──おまえを抱きたい」 勇利は黙ってまつげを伏せた。ヴィクトルは熱狂的な愛と絶望でいっぱいだった。もう何もかも終わりだという気持ちと、勇利への愛情といとおしさでおかしくなりそうだった。 「……勇利」 声がかすれた。勇利が慎ましやかに目を上げた。彼はしっとりとうるおった清楚な瞳に、熱っぽいきらめきを宿し、吐息まじりに、ささやくように答えた。 「ぼくはそういうこと、よくわからないけど……」 ヴィクトルは息を止めた。 「でも……、」 それ以上は、勇利は言わなかった。しかし彼の瞳は、まなざしは、彼の愛そのものだった。勇利の気持ちはいつも目にあらわれているのだ。勇利の黒い瞳は熱愛にみちて、ヴィクトルだけを映していた。ヴィクトルはキスされたような気になった。勇利の目は、そういうこころもちにさせるのだ。 「俺は酔ってないんだ」 ヴィクトルはわけもわからずつぶやいた。 「酔ってない……勇利、愛している。愛してるんだ」 「うん……」 勇利はヴィクトルから目をそらさずに答えた。 「……ぼくも酔ってない」 勇利がすこし眠そうにあくびをした。ヴィクトルはすばやく彼の顔をのぞきこんだ。 「大丈夫かい?」 「え? 何が?」 「疲れてない?」 「それ、何回訊くの?」 勇利は可笑しそうに笑った。 「大丈夫だよ……変なの」 すこし時間ができたので、帰国前に街中を歩いてみようということになったのだが、勇利に無理をさせられない。ヴィクトルは彼をベンチに座らせると、「飲み物を買ってくるよ」と優しく言い、急いで道ばたの店に向かった。途中で振り返ると、勇利は脚を伸ばして空を見上げており、平穏な表情をして幸福そうだった。ヴィクトルが見ていることに気がついたらしく、彼はかすかに笑って、顔のそばでちいさく手を振った。ヴィクトルはたまらない気持ちになって、屋台式の売店まで走った。 「ずいぶん眠そうだね」 声をかけられて振り向くと、クリストフがサングラスをかけて立っていた。彼も街を散策しているのだろう。 「元気いっぱいだ」 「勇利のことだよ」 クリストフはのんびりしている勇利を視線で示し、にやっと笑った。 「ひと晩じゅう愛を語らってたって感じ」 ヴィクトルは黙って新鮮なジュースを注文した。それからすぐに思い直し、ひとつはお茶に変えてくれと言った。 「酔いはさめたの?」 クリストフがからかった。 「俺は酔ってなんかいなかった」 ヴィクトルは平然と答えた。クリストフはもっともらしくうなずいた。 「でも症状は最悪だったよね」 「もういいんだ。それはいいんだ。いまは絶好調だから」 「薬がずいぶん効いたわけだ」 クリストフがおおげさに言うのに、ヴィクトルはまじめな顔をして彼を見た。 「抜群だよ」 お茶とジュースを受け取ると、ヴィクトルは急いで勇利のもとへ戻った。 「勇利」 「ありがとう」 勇利が顔を上げてほほえんだ。それだけでもうヴィクトルはおかしくなりそうなくらいしあわせだった。 「さっきそこにいたの、クリス?」 「ああ。でも心配ない。ひとりで散歩するってさ」 「そういえば、ゆうべ……」 勇利は楽しそうにヴィクトルを見た。 「ヴィクトル、バルコニーで最初ぼくをクリスだと思ってたよね」 それから彼は頬をほんのりと赤くし、目をそらして恥じらった。 「あのとき、なんかいろいろ言ってたけど……」 「あ……いや、あれは……」 ヴィクトルはしどろもどろになった。勇利はつぶやいた。 「ゆうべベッドで泣いたのは、ヴィクトルが言ってたような理由じゃないよ。もっと別の感情と感覚のせいなんだけど……、あの、わかるよね?」
1 note
·
View note