#逢うべき糸に出逢えることを人は幸せと呼びます
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tachikoma-x · 1 year ago
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dolcissimamiavita · 8 months ago
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題詠100首 2024
「短歌は奴隷の韻律」と喝破した小野十三郎の短歌否定論を読んだあとで、それでもここに戻ってきてしまうのは、やはりこの詩型が好きだからなのかもしれない。
五十嵐きよみさん主宰の「題詠100首」に参加しました。ありがとうございました
2024-001:言 言ひかけたそのくちびるをくちびるでふさげば夜はすみれのにほひ
2024-002:置 置く露の消ぬべきものと思へどもなほなつかしき鬢のほつれ毛
2024-003:果 白鳥のゆくへ知らずもさびしさの果てなんくにへ飛び去りぬらむ
2024-004:吸 くちづけは甘き陶酔蜜を吸ふみつばちににて飽くことのなき
2024-005:大切 大切なものこそ目にはさやかなれこの目この肩このふくらはぎ
2024-006:差 差しみづするやうにして息をつぐ逢瀬のまへの胸の高鳴り
2024-007:拭 足拭ふそのくるぶしの白さゆゑねむれぬ夜をすぐしてけりな
2024-008:すっかり もうすっかり秋なのですね江ノ電に待ち合はすれば日影のながく
2024-009:可 不可分のふたりなりけりかんづめの鰯のやうに身を寄せあつ��
2024-010:携 天の川白しと言ひて仰ぎみつ手を携へて川わたるとき
2024-011:記 ツンドクをツンドラと読みまちがへてガリア戦記に雪のふりつむ
2024-012:ショック あの夏の藤の木かげをおもひいづルドルフ・ショックのあまき歌ごゑ
2024-013:屈 身を屈め砂に字を書く主イエスは赦したまふやこのふかなさけ
2024-014:外国 マラケシュへ脱出したしサフランとなつめの香る外国(とつくに)の果て
2024-015:見 あひ見てののちのおもひはすみれいろ日の出のまへのひさかたの空
2024-016:叡  あさぼらけ比叡のやまにたつ霧のふかくぞひとを思ひそめてし
2024-017:いとこ 豆好きの子の記念日につくりおくかぼちやとあづきいとこ煮にして
2024-018:窮 窮鼠にも朝は来るらし鎧戸のすきまより洩るひかりひとすぢ
2024-019:高 抱きあげて高いたかいをするたびにはじけるやうにわらひたりけり
2024-020:夢中 青春は夢中のうちにすぎさりぬめざめていまは白き秋風
2024-021:腰 腰骨の上に手をおき抱きよせる サルサのリズム 波うつ体
2024-022:シェア イヤフォンをシェアしてバッハ聴きをりぬ予定日すぎて子を待ちながら
2024-023:曳 ひかり曳くものこそなべてかなしけれ流るる星もほたるのむれも
2024-024:裏側 いかにせんうかがひしれぬものありて人のこころは月の裏側
2024-025:散 知られじな夜もすがら吹く木枯らしに散るもみぢ葉のつもる思ひを
2024-026:頁 世界史の頁を閉ぢて夢見をり講義のをはりとこの世のをはり
2024-027:おでん 二日めのおでんのやうにしみてくるやさしく気づかふあなたのことば
2024-028:辞 言霊の幸ふ国に聞き飽きる 美辞も麗句も誹謗も揶揄も
2024-029:金曜 泣きぼくろつついておこすとなりの子金曜五限睡魔のきはみ
2024-030:丈 つり革にとどく背丈となりし子の腋窩の白く夏さりにけり
2024-031:けじめ ひるよるのけじめもつかぬ薄明かりいのちの果てのけしきとぞ見る
2024-032:織 経糸も緯糸もなき鳥たちの声の織りもの聞けども飽かぬ
2024-033:制 制限字数こえてあふるるわが思ひたぎつ早瀬となりにけるかも
2024-034:感想 「感想を十四字以内で述べなさい」「あいたいときにあなたはいない」
2024-035:台 灯台のやうに照らせよぬばたまの無明の闇に��よぐこの身を
2024-036:拙 目をとぢてなにおもふらん古拙なる笑みをうかぶる半跏思惟像
2024-037:ゴジラ 清涼水ささげまつらん着ぐるみをぬいでくつろぐゴジラのひとに
2024-038:点 夕されば宵宮に灯の点されて稲穂をわたる風かぐはしき
2024-039:セブン 響きあふセブンスコードやはらかくスイスロマンドかんげんがくだん
2024-040:罪 罪深きものと知りつつやめられぬ午前零時のキッシュロレーヌ
2024-041:田畑 とり入れををへし田畑に雀らのさわぐを聞けば秋更けにけり
2024-042:耐 陣痛に耐ふるつまの手にぎりをり痛みを分かつすべあらなくに
2024-043:虫 別れきて秋の夜長をなきとほす虫の息にもなりにけるかな
2024-044:やきもち 黒い怒りもしづまるでせうやきもちにきなこまぶして頬張るならば
2024-045:桁 花ごろも衣桁にかけて待ち遠し色とりどりに咲きみつる春
2024-046:翻訳 ふさふさのしつぽを立ててあゆみ去るねこのことばの翻訳もがな
2024-047:接 おたがひの足音のみを聞いてをり話の接ぎ穂見つからぬまま
2024-048:紐 「結んでよ後ろの紐を」あらはなる背中見せつつ言ひたまひける
2024-049:コロナ かろやかに走り抜けたり太陽のコロナのやうに髪なびかせて
2024-050:倍 この仕打ち受けても七の七十倍赦しなさいと命ぜらるるや
2024-051:齢 少女らのもはや倦みたる遊具あり遊具にもまた適齢期あり
2024-052:圧力 ゆつくりと圧力かけて皺のばすアイロン台に湯気は立ちつつ
2024-053:柄 春の夢見させてください花柄のスカートのうへに膝まくらして
2024-054:朧 朧なる記憶の底にきこゆなり赤子のわれを呼ぶ祖母のこゑ
2024-055:データ データなぞ改竄するのが前提といふひとあれば美しくない国
2024-056:紋 わがうたにいまだ紋章なきことも恥ぢずこよひも豆腐が旨い
2024-057:抑 「好きといふきもちは抑へられなくて」読みかへす午後ひざしうつろに
2024-058:反対 環状線反対まはりに乗せられてはじまりしわが大阪時代
2024-059:稿 ブルックナー第八初稿で祝ひたり生誕二百周年の宵
2024-060:ユーロ ふらんすはあまりに遠し「赤と黒」原書にはがすユーロの値札
2024-061:老 生ましめしのちのよふけのしづもりに老助産師のたばこくゆらす
2024-062:嘘つき どうせならうつとりさせて狂はせる目覚ましい嘘つきなさいませ
2024-063:写 ちちははの結婚写真色あせてアルバム白く夏は来たりぬ
2024-064:素敵 はにかんでものいふときの片頬にゑくぼをきざむ笑顔が素敵
2024-065:家 家ひとつこぼちて三つ家を建つなんのふしぎもなしとはいへど
2024-066:しかし 焼き魚ほぐしつついふもしかしてわたし妊娠してゐるかしら
2024-067:許 胸許にきつつなれにしスカーフあり柩のひとの息あるごとく
2024-068:蓋 きみがため抜山蓋世のますらをも恋のとりことなりにけらしな
2024-069:ポテト ベークドポテトふたつにわればふうはりと湯気立ちのぼるバター落して
2024-070:乱 黒髪の乱れも知らずうちふして幾何証明にゆきなやむ吾子
2024-071:材料 材料はグラム単位ではかりませう恋の女神にささぐるお菓子
2024-072:没 ひそやかにゐなくなりたし没年齢しられぬままに墓標もなしに
2024-073:提 下駄ならしなつまつりよりかへりきぬゆかたの子らは金魚を提げて
2024-074:うかつ 「もうすこし一緒にゐたいな」うかつにもつぶやきしゆゑ底なしの沼
2024-075:埒 ひとり舞ふほかにすべなしもろびとの大縄跳びの埒外なれば
2024-076:第 しんしんと肺蒼きまでしみとほるかなしみふかき第二楽章
2024-077:オルガン オルガンの裏にひかへてふいご踏み風を送りし労苦を思ふ
2024-078:杯 願はくはおなじ杯よりのみほさん媚薬なりとも毒薬なりとも
2024-079:遺 「きらひなのさういふところ」といはれたり不貞寝して聞く遺愛寺の鐘
2024-080:なかば ランウェイに踏みだすやうなあひびきはのぞみとおそれ相なかばして
2024-081:蓮 さきゆきは見通さずともしろたへの酢蓮を食めばこころはなやぐ
2024-082:統一 姿見のまへでくるりとひとまはり「青で統一秋色コーデ」
2024-083:楼 春高楼の花のうたげはまぼろしか廃墟の城を照らす月かげ
2024-084:脱 管弦のとよもすホール脱けだせばしんとしづもる明きフォアイエ
2024-085:ブレーキ ブレーキのきかぬくるまかすこしづつあなたの方にかたむくこころ
2024-086:冥 冥府よりプロセルピナはもどりたり野の緑もえ春のおとづれ
2024-087:華やか 華やかに開幕ベルは鳴りしかどせりふおぼえずお化粧もまだ
2024-088:候 姸を競ふ花嫁候補に目もくれず選びたまふは桐壺の姫
2024-089:亀 わたつみの底の浄土の住みごこちいかにと問ひぬ��海亀に
2024-090:苗 十年後ジャスミンティーの再会は苗字かはりて人の子の母
2024-091:喪 青き花好みたまひしひとなれば青き旗もて喪章となしつ
2024-092:休日 窓ごしに別れを告げる新幹線休日なんてあつといふ間ね
2024-093:蜜 乳と蜜ながるるところといはれたるカナンの地いま血潮ながるる
2024-094:ニット 置きわすれられしニットのセーターに顔うづむればにほひなつかし
2024-095:祈 祈るやうに手をあはせたりめづらしき蝶見つけしと馳せきたりけり
2024-096:献 妻あての訳者の献辞見返しにあり「罪と罰」古書あがなへば
2024-097:たくさん ひとつぶのあかい木の実をかみしめるあしたまたたくさんとぶために
2024-098:格 格変化となへつつ夜ぞふけにけるロシヤ語講師の赤き唇
2024-099:注 ちらぬまま朽ち果ててゆくあぢさゐのはなのをはりにふり注ぐ雨
2024-100:思 さめやらぬ夢のほとりに置く露のかわくまもなくもの思ふころ
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yuupsychedelic · 1 year ago
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詩集『Commons』
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詩集『Commons』収録作品
1.「戦争しか知らない」 2.「愛なき世代に薔薇の花を」 3.「青春とロコモティブ・シンドローム」 4.「商店街の純喫茶」 5.「広場、それは私の……」 6.「女は微笑むために生きてるんじゃない」 7.「もうすぐ朝は来るだろう」 8.「いくつになってもマイ・フレンド」 9.「断絶の季節」 10.「失墜」 11.「しぼんでいくこの風船で」 12.「自由になろうよ」
1.「戦争しか知らない」
僕は戦争の最中にここで生まれた 僕は戦争のない日々を未だ知らない 大人なら戦争を止められると信じていた 世界は味方してくれると信じていた
でも欧米から遠く離れたこの国に 振り向く人など誰もいない
愛せるものもなく 信じられる人もなく 生と死の狭間を彷徨い 明日が来ることすら 運命に委ねてた
もはや痛みも感じない 昨日も友達が死んだ
いつか大きくなったら銃を取り 憎き兵士に鉛を叩き込んでやると 幼い僕は無邪気に思ってた
でもいざ戦場で相手兵士の顔を見た時 同じ時代を生きる者同士だと気付いた
誰かの思惑で 何も説明されず 生と死の狭間を彷徨い イデオロギーの違いに 正義を委ねてた
もはや痛みも感じない さっきも友達が死んだ
何年待てば戦争は終わりますか? 僕は戦争のために生まれてきたのですか?
地獄のような日常の中 さすらい続けるのは 空っぽになった良心たち
愛せるものもなく 信じられる人もなく 生と死の狭間を彷徨い 明日が来ることすら 運命に委ねてた
誰かの思惑で 何も説明されず 生と死の狭間を彷徨い イデオロギーの違いに 正義を委ねてた
もはや痛みも感じない 毎日仲間が死ぬ 僕は今日もここで 死を待つ
2.「愛なき世代に薔薇の花を」
レイトショーに微睡み ベランダで佇む恋人 僕たちは星空を見つめつつ 愛をたしかめた
いつしか白髪も増え 日々に燃えなくなった おじさんと馬鹿にされても 何も感じなくなった
愛なき人と呼ばれても 薔薇の花さえあれば 愛なき世代と呼ばれても 薔薇の花さえあれば
いっそ殺してしまえと祈った日 僕はあえて憂鬱を殺してみた
おそらく若い頃は夢を見て 王国でも作ろうとした カブトムシにすらなれないのに 虹を見つめていた
さりげなく大人になり 大仰に歳をとった 会社では役職持ち 部下に媚びを売られる日々
愛なき人と呼ばれても 薔薇の翼さえあれば 愛なき世代と呼ばれても 薔薇の翼さえあれば
いっそ散ってしまえと祈った日 僕はあえて羨望を殺してみた
あんなに泣き虫だったのに もう泣けなくなった レイトショーにはチェコ語の文字 隣で微睡むのは借り物の恋人
愛なき人と呼ばれても 薔薇の翼さえあれば 愛なき世代と呼ばれても 薔薇の翼さえあれば
薔薇があれば生きていける 薔薇があれば生きていける
愛なき時代に生まれても 薔薇の花さえあれば 僕だって生きていける レイトショーは続く 月光に照らされながら永遠に この先も続くだろう
3.「青春とロコモティブ・シンドローム」
十年前の僕は空も飛べる気がした 手を伸ばせば宇宙にだって行ける気がした 僕はいつしか夢を見なくなり 君もいつの間にか大人になったね
数えきれないほどの出逢いと別れを重ねて 青春時代にたしかなピリオドを打つ
ある日突然身体が動かなくなり 新しいことを始める勇気が出ない 僕は必死に今を生きようとするけど 心が何かを無性に止めようとしてるんだ
感覚だけで生きられる そんな季節は過ぎ去った
十年後の僕は何をしてるんだろう 恋も友達���夢もどこへ行ってしまったの? やりたいことがやりたくないことに忙殺され 誰かの意図のままに動く僕が生まれた
いつか見た花は芽が出ずに枯れた 青春時代よ僕に何を伝えたのか
あの日突然身体が動かなくなり すべては幻の中へ溶けていく 僕は必死に今を生きようとするけど かつてのように出来はしない
純情だけで生きられる そんな時代は過ぎ去った
涙が今日も止まらない 何故だかよくわからないけど 心を覆うガーゼは夢を目指した墓標
ある日突然身体が動かなくなり 新しいことを始める勇気が出ない 僕は必死に今を生きようとするけど 心が何かを無性に止めようとしてるんだ
感覚だけで生きられる そんな季節は過ぎ去った
心と身体とシンドローム なりたい自分になるために がむしゃらになれた…… そんな時代は過ぎ去った 僕は花を咲かせられなかった
4.「商店街の純喫茶」
君と僕 ふたりで飲むクリームソーダ 昼下がり 逢いたくなるのは恋じゃない もう何年 続いたのかこの関係 逢えなくなる そう決まって動き出す
遠距離恋愛 幼馴染 不似合いな言葉が 煙草に溶けてく
君と僕 ふたりで飲むウィンナーコーヒー 夕暮れ時 淋しくなるのは夢じゃない も���何度 憂いたのかこの関係 逢いたくなる そう思って呼び出した
蒼穹の彼方へ 時は行く 君の隣に別の男 想像もしたくない
あの頃僕らは若かった いつか見た夢が 煙草に溶けてく 時は流れた
遠距離恋愛 幼馴染 不似合いな言葉が 煙草に溶けてく 埃混じりの便箋 交わす文字 涙に溢れた 青年の日々よ いつかわかるさ……
5.「広場、それは私の……」
街の片隅の広場には さまざまな風が集まる 散らばったり集まったり 繰り返す星のように
私もここに行くたび いくつか時は重ねても 泣いたり笑ったり 変わらぬ声の響きよ
広場、それは私の…… 広場、それは私の……
いつか土に還っても思い出す まだ見ぬ未来を集めた場所 広場、それは私の……
街の片隅にある広場が もうすぐ月になるらしい 守られたり壊されたり 時の調べの中で
虹を追いかけた頃 正解なんてなくても 話したり話さなかったり なんとなく楽しかった
広場、それは私の…… 広場、それは私の……
かつてここにあったと語り継ぐ まだ見ぬ未来を集めた場所…… 広場、それは私の……
名もなき恋の始まり 語り継がれぬ友情よ 穏やかな家族の団欒 政治やデモクラシー
すべてはここから紡がれ いつか魂を結ぶ
広場、それは私の…… 広場、それは私たちの……
子どもから大人まで 人から石まで すべてが集う場所
広場、それは私の…… 広場、それは私の……
時を繋ぐ場所 忘れないで 失くさないで 広場、そこは私の……
6.「女は微笑むために生きてるんじゃない」
蝋燭を吹き消そうとして 消せなかった まるで恋愛のように 私を憎みたくなる
華やかな夜と穏やかな朝 仮に人形だって もっと上手く生きられるはずだ
何度泣いたのだろう 何度笑ったのだろう 作られた感情の先に 繰り越された本音の傷
女は微笑むために生きてるわけじゃない 偽物の愛に照らされて澱んだ光よ 女は微笑むために生きてるわけじゃない 最期に残したいのはこれ以上ない影
あなたを殺そうとして 殺さなかった ナイフの刺さった痕から 碧い血が流れる
笑う男と哀しむ女 仮にロボットだって もっと賢く犯れるはずさ
何度怒ったのだろう 何度誓ったのだろう 踏み躙られた日々の先に 作り込まれた私の愛
女は微笑むために生きてるわけじゃない すべては周りに穢された果ての叫びだ 女は微笑むために生きてるわけじゃない ほんとうは優しくありたかっただけ
さよならを言う前に……
女は微笑むために生きてるわけじゃない 太陽が昇る前の約束のポリフォニー 女は微笑むために生きてるわけじゃない 月が沈む前の運命のモノフォニー
女は微笑むために生きてるわけじゃない 偽物の愛に照らされて澱んだ光よ 女は微笑むために生きてるわけじゃない 最期に残したいのはこれ以上ない影
さよならを言う前に…… 女は微笑むために生きてるんじゃない
7.「もうすぐ朝は来るだろう」
淋しさと棲んできた 愛しさも喜びも抱きしめて いつか実れと祈ってた 幸せの果実よ
ただ夜明けを待つだけじゃ 何も始まらなかった もう歩み出そうとしたって すべて遅すぎるんだ
踏み出せなかった後悔と 変わらぬ平穏の海で 僕は舟を漕ぐ
恋愛がしたかった ぬくもりもつめたさも抱きしめて いつか出逢えると信じてた 運命の人よ
ただ糸を持つだけじゃ 何も生まれなかった もうやり直そうとしたって やり直せはしないんだ
過ぎ去りし日々への懺悔と 決められた宿命の海で 僕は舟を漕ぐ
遠くに太陽が見える もうすぐ来るのか 何度願ったのだろう?
一瞬のうちに沈んでいく 運命という名の儚さよ 何度祈ったのだろう?
それでも変わろうと 僕はこの舟を漕ぐ それでも生きようと 僕は運命に誓う
変わらなくても やり直せなくても 僕が僕であるために この舟を漕ぎ出す
もうすぐ朝は来るだろう いつか僕は夢を見た 朝は来るだろう
8.「いくつになってもマイ・フレンド」
足腰も弱り言葉も出ない そんな時代になっても 僕たちはマイ・フレンド
放課後の教室で語り合う そんな時代からの 僕たちはマイ・フレンド
すれ違うアベック 走るスポーツマン 夕焼けに照らされて すべてが思い出になる
十年経っても百年経っても 僕たちはマイ・フレンド もう迷わない 何処へだって行けるさ
仕事は残業 夫婦は倦怠期 こんな暮らしになっても 僕たちはマイ・フレンド
何したって変わらないさ こんな口癖になっても 僕たちはマイ・フレンド
走り出せ群青 いなくなれ憂鬱 夕焼けに口笛吹けば すべて無かったことに ……できないか
十年経っても百年経っても 僕たちはマイ・フレンド もう迷わない 何処へだって行けるさ だいじょうぶ
「あの頃は若かった」 そうじゃないだろ? まだ跳べるだろ?
十年経っても百年経っても 僕たちはマイ・フレンド もう迷わない 何処へだって行けるさ だいじょうぶ
いくつになっても腰が曲がっても 僕たちはマイ・フレンド 夢だって見るし 無茶だってするのだ
だいじょうぶだ 僕たちは大人だもの 生きてりゃ
9.「断絶の季節」
大人になったら楽になると思っていました いつかの若かった私にもう戻れません 春も夏も秋冬も繰り返すうちに 何も感じなくなった私がいました
たった一日の違いなのに なぜ私は大人を演じなきゃいけないんでしょう 答えを探しても見つかりはしない 現実という名の虚構の中で
断絶した季節を重ねた人は 人が人でなくなると嘆いています でも自覚的にそれを言葉にできない人は なんて幸せなんだと私は思います
幸せの価値など決められないのに どうして他人を決めつけてしまうんでしょう 人生の意味などわからないのに どうして上下をつけようとするんでしょう
自然体で生きているという人がもしいたら 私は自然って何かと疑ってしまいます それを無意識にしてしまうその事自体が 何て嫌な奴なんだろうと私を嫌いになるのです
断絶した心を持った人は 大切な何かを吐き捨ててしまったのです 痛みも憎しみも優しさも忘れて 自分だけの空間で生きているのです
安らぎや激しさの先に 猛烈な時代が過ぎ去っていくのなら 私はいつ楽になるのでしょう 一生このまま働くのでしょうか
断絶した季節を重ねた人は 人が人でなくなると嘆いています でも自覚的にそれを言葉にできない人は なんて幸せなんだと私は思います
愛とは何かを語らった時代よ 夢をふたりで無邪気に見つめた季節よ すべては断絶の中へ消え去り 時の魔法はいつしか解けました
断絶した心を持った人は 大切な何かを吐き捨ててしまったのです 痛みも憎しみも優しさも忘れて 自分だけの空間で生きているのです
死ぬこともできず 生きることもできない そんな臆病者として 私は明日も生きていくのです
10.「失墜」
クラスで一番人気の男子が学校に来なくなった 最初は噂になったけど今や話題にもならない どんな人も数日で忘れられていく 記憶の怖さを思い知ったんだ
記者会見で疑惑を否定した政治家が逮捕された 大臣にまで登り詰めた人だったけれど 裏金と虚飾に浮かれるうちに 人相すらも変わっていた
どんな人さえも どんな事さえも どんな権力に登り詰めても どんな利益を得られても
人は一夜で失墜する まるでコインの裏表のように 人は一夜で染まってしまう まるでカルトの教示のように
誰もが私は普通なんだと 心の中では信じている
ふたり並び立つ存在と称されたアイドルも 数年後にはそれぞれ別の道を行く ひとりは圧倒的なカリスマと呼ばれ もうひとりは「あの人は今」と囁かれる
有る事無い事書き立てる週刊誌 あんなもの無くなってしまえばいいのに 善意仕立てのプロパガンダ マスメディアは社会を侵略するウイルス
どんな恋さえも どんな愛さえも どんな至高の夢さえも どんな上向きな会社も どんな主張も どんな義務を押し付けられても
人は一夜で変身する まるでコブラの猛毒のように 人は一夜で塗り潰される まるでペンキを浴びたように
誰もが私は世界の中心だと 心の中では信じている
登りゆく太陽があるのなら 沈みかけの斜陽もあるだろう もし私が月というのなら 光だという人もいるはずさ
人は一夜で失墜する まるでコインの裏表のように 人は一夜で染まってしまう まるでカルトの教示のように
誰もが私は普通なんだと 心の中では信じている
宇宙が始まるその時に 運命が決められたといえるなら 昇華も失墜も誰かの書いた筋書き 私たちの普通も誰かに造られた偽物
誰もが私は世界の中心だと 心の中では信じている
11.「しぼんでいくこの風船で」
幼い頃から通い詰めた遊園地が 来週の日曜日で閉園するらしい ここ数年は人もまばらだったけど 久々に訪れてみると人の花が咲く
しぼんでいく風船を 人は膨らませて 明日は誰が創るのか 遺された人たちへ繋ぐ今日
ピエロとぬいぐるみたちが最後に舞い踊る 思い出をみんな語り合いながら どこか淋しげで もう少し君も僕も行ってたら ��んなエンディングも あと少し先になったかな?
観覧車もジェットコースターも この後はどこへ行く? 数年後にはここは公園になるらしい こうして街は生まれ変わる
しぼんでいく風船で みんな生きている 最初に君と出逢った日 人はまだ沢山いたよ
陽が沈んだ後にセレモニーは始まる ひと時のサヨナラと また逢う日までの約束 でも皆気づいてる「もう逢えない」って ただ見つめたいんだ 今よりちょっといい未来を
映画の世界をそっくりそのまま 始まった頃の君は今と違っていた いつしかここはいろんな色が交わり そして去りゆく季節の先に 何処にでもある日常が流れていく
もう少し僕がここに行ってたら こんなエンディングも あと少し先になったかな?
次の日に僕は遊園地を訪れた 昨日の狂騒はまるで嘘みたく 他と変わらない空気に覆われてた 遊園地は人と時を繋ぐ場所 思い出の栞にたしかに刻まれている
しぼんでいくこの風船で僕らは いくつかのおはようとサヨナラを…… ダンスは続いていく そして愛を遺して新たな夢を携え 生まれ変わる
12.「自由になろうよ」
私がまだ制服を着ていた頃 貴方には出逢ってなかった クラスの輪にも入れず なんでもない日々をやり過ごしていた
そんなある日ふと入った公園で ギターを爪弾く青年がいた 私は思わず声をかけて ふたりで歌った「花はどこへ行った?」
たとえば貴方が白ヘルを被り あの連中と入り浸っていたとしても 私が貴方を好きでいる限り なかったことに出来るわ
自由になりたいと願ったのは 世代の声だから 大人に押しつぶされたままで 私は生きていけない
大学がロックアウトされた朝 隣を見ると貴方はいなかった 寝床にあったモーリスを手に取り ひとりで歌った「���ァンタナメラ」
たとえば貴方が季節の炎に包まれ 他の女と抱き合っていたとしても 貴方が私を諦めない限り 見なかったことに出来るわ
自由になるために若者が集った この公園を私は見渡し 桜の木に残したイニシャルを そっと指でなぞる
ひとりで歌った「風に吹かれて」 こうして私たち ヒッピー気取りから足を洗う 幸せの終わり
自由を夢見て 自由を愛した 私たちの夏は歴史に残らない
失ったのは恋人の命と私自身の魂 政治と闘争の季節は終わった
たとえば貴方よりも良い人で 誰もが好きになるような魅力があっても 貴方以上に愛せる人は現れないだろう ひとりで歌う「結婚しようよ」
自由になるために若者が集った この公園を私は見渡し 桜の木に残したイニシャルを そっと指でなぞる
Bonus.「いつかまた「おはよう」を言うために」
何もかも思い出になっても 私のこと憶えててくれるかな? いつかまた逢う日まで 風の中に溶けていく
キミのこと忘れないから 私のこと憶えててくれるかな? きっとまた逢える日まで 風の中で見てるからね
はじめてステージに立った日のこと 今も忘れられないドキドキ それでも手を振ってくれるキミがいたから ここまで歩いて来れたんだ 夢を追いかけられたんだ
私たちがたとえ空気になっても 「こんな人がいたな」と時々思い出してね それだけで十分すぎるくらいだけど 出来たら名前も憶えててほしいな
ふたりから始まった旅路で 私たちは変われたのかな? いつかまた逢う日まで それぞれの旅は続くはず
キミが追いかけてくれた日々を 私は青春と呼んでいいかな? きっとまた逢える日まで 絶対に忘れないから
はじめてステージに立った日のこと 今も忘れられないトキメキ 私たちを好きになってくれたキミがいたから こうして大人になれたんだ 夢を追いかけられたんだ
私たちの魔法が解けても キミにかけた魔法は解かさない 仮に私たちを忘れても どこかでキミが幸せにいられますように とっておきのおまじない
アイドルに憧れ アイドルになった アイドルと呼ばれて アイドルを愛した
私たちが愛した日々 夢中になった日々 思うがままに走り続けた 私色の青春
私たちがたとえ空気になっても 「こんな人がいたな」と時々思い出してね それだけで十分すぎるくらいだけど 出来たら名前も憶えててほしいな
私たちの魔法が解けても キミにかけた魔法は解かさない 仮に私たちを忘れても どこかでキミが幸せにいられますように とっておきのおまじない
キミに出逢ってよかった 好きだよ いつまでも
詩集『Commons』Credits
Produced / All Words Written by Yuu Sakaoka(Sakaoka Project)
Co-Authored / Co-Producer: Yurine(「青春とロコモティブ・シンドローム」「いつかまた「おはよう」を言うために」) TORIMOMO(「商店街の純喫茶」) Koharu Takamoto(「断絶の季節」「失墜」) Sakura Ogawa(「しぼんでいくこの風船で」)
Written at Yuu Sakaoka Studio, Mikage House, JR West Japan Series 225 Train, STUDIO U
Respect to ザ・フォーク・クルセダーズとすべての戦争に参加する人々(「戦争しか知らない」) ムーンライダーズ(「愛なき世代に薔薇の花を」「女は微笑むために生きてるんじゃない」「しぼんでいくこの風船で」) ガロと山上路夫(「商店街の純喫茶」) Yellow Magic Orchestra(「広場、それは私の……」) あの頃夢を見た若者たち(「自由になろうよ」)
Designed / Edited by Yuu Sakaoka Photo by YAT(PAKUTASO) Special Thanks to Koharu Takamoto, Yurine, Sakura Ogawa
Dedicated to My Best Friends
Management by SAKAOKA PROJECT
Very very very thanks to my friend, my familly, and all my fan!!
2024.2.7 坂岡 優
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myeverythinglyric · 1 year ago
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迎えた2回目の元旦、「今年は健康に迎えられたね」なんて始まった1月も後半に予定した逢瀬を待ち詫びてる間に過ぎ去る。今年のスタートダッシュは完璧だ。先月の逢瀬からも紆余曲折、気持ちをボール代わりにした言葉の打ち合いを経て俺たちはまた一つお互いを好きになれた気がする。どんなに喧嘩をしたって「もう逢わない」なんて選択肢にはならない俺ら、待ち合わせも少しずつスムーズになってきて最初の頃より隣で歩き出す時間が早くなったね。相変わらず御前は「あれ、何処で降りるんだっけ?」なんてとぼけてたけど。まるで昨日も顔を合わせていたかのように手を挙げる照れ隠しの俺と、久しぶりに逢えて嬉しい気持ちを隠しきれない緩んだ表情で笑う御前。対照的だとしても想いが同じだからこそこうして迎えられる幾度目かの逢瀬があるんだなとしみじみ感じる、これ��てやっぱり奇跡でしかないよね。そんな事考えながら夢中で話す北斗の顔を眺めてた、揺られる電車の中。
乗り継いで訪れた1泊目は北斗チョイスのホテル。過ごしやすい快適な部屋で重い荷物から漸く解放される瞬間、此の儘ベッドに四肢を投げ出したい欲を抑えてキャリーを漁る、ベッドで寛ぐ御前に少し不器用に差し出した今年のチョコレート。作るセンスを生憎持ち合わせていない俺は必死に選んで独自に詰めただけのチョコレートをプレゼントした、それでも嬉しそうに受け取る御前を見て一安心。1つずつ味わってまた今回の旅でも思い出してくれたら良いなと思ってる。俺の母親からのプレゼントにも喜んでくれて、早速カバンにつけてはしゃいでたね、有難う。
二度目ましての北斗の家族はやっぱり温かくて、何度訪れても羨ましいなと思える気がする。御前とは少し似つかない、警戒心の強い愛犬とも二度目なのにすげえ尻尾を振って出迎えてもらえたって喜んでたら、灯りをつけて俺を見た瞬間吠えながら逃げてったのは笑ったな。それでも同じ空間に居てもそんなに吠えないから珍しいね、なんて言われて愛犬にも家族にも認めてもらえた気がしてやっぱり嬉しかった。御両親に手料理を振舞ってもらって、兄弟と一緒にゲームをしてはしゃいで。台所に立つお母さんを背中に座ってるのは少しばかりソワソワしたけど、寛いでる御前と兄弟を見てこれがこの家庭の当たり前なんだなと思ったら安心出来た。「早く近くに引っ越しておいで」なんて言ってもらえて、俺も早くそうしたい気分に駆られつつ。「実は作ってたんだよね」って照れ臭そうに笑いながら北斗から貰ったガトーショコラは、愛情がこもってて美味しかった。内緒で作っててくれた事もまた嬉しくて、ホテルに帰って一つ食べて幸せな気持ちに満たされた。お母さんからも貰ったチョコレートも大切に持ち帰ったよ。家族みんなでいつも迎え入れてくれて有難う。
少しだけ冷える夜風の中、明日の朝食を買って優雅なホテルで夜を過ごした。ベッドが動かせるって分かったら絶対くっつけて寝ようとする御前に慣れた俺は「眠れない」と駄々を捏ねる御前の我儘に応じて、疲れ果てた俺らは静かに眠りについたね。仕事の日と変わらない時間に目を覚ました俺らはいそいそと身支度を整えて全ての荷物を持って街へ繰り出した。2日目の朝、待ちに待ったディズニーシー。相変わらず天候に恵まれて、電車の混雑もさほどなく快適に目的地へ進んだ。
2ヶ月前から御前には「顔見知りの別荘を借りる」なんて言って、2日目の宿泊先を任せてもらってた。疑われたら正直に言おうなんて思いながら次々と出てくる細かい嘘に御前は最後まで気付かなくて、いま思い返しても「顔見知り?ミッキーのことだよ」って伝えた瞬間に腰を抜かしてミラコスタの部屋に座り込む御前は最高に面白かったよ。1ミリも疑わない心は信頼から生まれてるものだろうから、その心を穢してしまわないように汚い嘘をつくのだけは絶対に控えようと強く感じた瞬間でもあった。
今まで重ねられた今日までの嘘を何度も思い返しては「嗚呼、だからあの時…」なんてパーク内で物思いにふける御前のことをいつまででも眺めていられそうな気がしたよ。
パークでギリギリまではしゃいだ今日のディナーはミラコスタ内のビュッフェ。「元取るぞ」とか言って笑い合いながら見慣れない名前の料理に舌鼓を打って腹を満たした。だだっ広いミラコスタの部屋は常に暖かく、窓からは夜が耽けるギリギリまで華やかなメロディが流れていた。夏場ぶりに一緒に風呂に入ってから、既に疲れ果てて眠い身体に買い集めたアルコールとお菓子を広げてダチと話した。いつもなら「寝るの早い」なんて俺を叩き起す御前も今回ばかりは泣いたり笑ったり忙しない1日に疲れてたのか大人しく自分のベッドに潜り込んで寝てたね。これからの御前を応援すべく計画していた大きなイベントを無事終えて、俺も安心して眠りについた。
のんびり目を覚まして優雅なメロディのもと朝食を囲みながら抜け殻のベッドの乱れ方とか、インスタントコーヒーのミルクをコーヒーと間違えて「どっち飲む?」とか聞いてくる北斗とかインスタント食品に翻弄される北斗にずっと笑ってたね。今日はイクスピアリに行こうかなんて話したり、来年のバレンタインは何を作ろうかなんて1年先の話をしたり、日々たくさんの言葉を交わしていても無くならない話題に花を咲かせてた。そんな事もきっと北斗とじゃなきゃ今頃話題にも詰まってて、行先にも詰まってたりしたんだろうなと思うと顔を合わせるたび何度でも、こうして足並みを揃えて生きる相手が北斗で良かったと心から感じる。珍しく最終日も身支度ばっちりにして名残惜しくもミラコスタを後にした。
それでも最終日は御前のテンションも何処か低くて、無理した笑顔と心からの笑顔の繰り返し。どうしたら少しでも楽しい時間に出来るか、なんて考えながら互いに食べたいものを選んで、見たいもの買いたいものを目指してお店巡りをした。「お揃��のものがもっと欲しい」と言う北斗の願いのもと、アクセサリーショップで一緒に指輪を選んだ。ピンキーリングに落ち着いた俺たちはそれを付けて、「なんだか運命の赤い糸の象徴みたいだよね」なんて嬉しそうに語る御前を見て頬を緩めた。まだまだお揃いのものを増やしていきたいよね、全身お揃いで埋め尽くされるくらい。時間をかけて少しずつ、増やしていきたいね。
楽しい時間を過ごすほど、帰りの時間も近付いてきて預けていた荷物を受け取ると御前はいよいよ口数が減る。高速バスに揺られて少しうたた寝をしながら、辿り着いた空港のカフェでまたこれからの計画を話し合う。
環境が変わるんだ、暫く逢えなくなるのは仕方ない。そうは理解しつつも逢えない寂しさは埋められるはずも無く、御前は必死にどうにか逢える方法を考えたり行きたい場所を探したりしていた。楽に逢える日を待ってる間に俺たちは2回目の記念日を迎える。1回目だってまともに迎えた経験のない俺が、疑うことも無く2回目のその瞬間を迎えようと考えていることに少しばかり驚いてる。惰性のない愛情、終わりのない恋慕。こんなにも未来を見据えて隣を歩ける相手は後にも先にも御前だけ。「行ってきます」とまたいつものように笑って手を振ってそれぞれの自宅へ帰る。また逢えるよ、意識して信じずともまた逢えることを疑っていない俺らだから何度でも。
この先もきっと、思わぬ出来事に意見を違えて言い合うかもしれない。互いの言動を受け入れられずに擦れ違うこともあるかもしれない。それでも俺たちは、俺たちなら何度ぶつかっても最後には互いを受け止めて、認め合って進んでいける。信じて疑わない、言葉には形容しきれない何かが俺たちには絶対にあるから大丈夫。そう思えるから、真っ直ぐ御前にも「大丈夫」と言える。
健やかなる時も病める時も、苦楽を共有して多くの感情を共にして生きていこう。なんてまるでプロポーズみたいだけど、北斗とならこの命尽きる瞬間まで共に生きていけると思ってるよ。そんなたくさんの想いを引っ括めてただ一言、愛してる。
楽しい時も辛い時も、俺は常に御前の隣に居るよ。
今年はいっそう、頑張っていこうね。
また笑顔で顔を合わせられるように。
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skf14 · 5 years ago
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11180143
愛読者が、死んだ。
いや、本当に死んだのかどうかは分からない。が、死んだ、と思うしか、ないのだろう。
そもそも私が小説で脚光を浴びたきっかけは、ある男のルポルタージュを書いたからだった。数多の取材を全て断っていた彼は、なぜか私にだけは心を開いて、全てを話してくれた。だからこそ書けた、そして注目された。
彼は、モラルの欠落した人間だった。善と悪を、その概念から全て捨て去ってしまっていた。人が良いと思うことも、不快に思うことも、彼は理解が出来ず、ただ彼の中のルールを元に生きている、パーソナリティ障害の一種だろうと私は初めて彼に会った時に直感した。
彼は、胸に大きな穴を抱えて、生きていた。無論、それは本当に穴が空いていたわけではないが、彼にとっては本当に穴が空いていて、穴の向こうから人が行き交う景色が見え、空虚、虚無を抱いて生きていた。不思議だ。幻覚、にしては突拍子が無さすぎる。幼い頃にスコンと空いたその穴は成長するごとに広がっていき、穴を埋める為、彼は試行し、画策した。
私が初めて彼に会ったのは、まだ裁判が始まる前のことだった。弁護士すらも遠ざけている、という彼に、私はただ、簡単な挨拶と自己紹介と、そして、「理解しない人間に理解させるため、言葉を紡ぎませんか。」と書き添えて、名刺と共に送付した。
その頃の私は書き殴った小説未満をコンテストに送り付けては、音沙汰のない携帯を握り締め、虚無感溢れる日々をなんとか食い繋いでいた。いわゆる底辺、だ。夢もなく、希望もなく、ただ、人並みの能がこれしかない、と、藁よりも脆い小説に、私は縋っていた。
そんな追い込まれた状況で手を伸ばした先が、極刑は免れないだろう男だったのは、今考えてもなぜなのか、よくわからない。ただ、他の囚人に興味があったわけでもなく、ルポルタージュが書きたかったわけでもなく、ただ、話したい。そう思った。
夏の暑い日のことだった。私の家に届いた茶封筒の中には白無地の紙が一枚入っており、筆圧の無い薄い鉛筆の字で「8月24日に、お待ちしています。」と、ただ一文だけが書き記されていた。
こちらから申し込むのに囚人側から日付を指定してくるなんて、風変わりな男だ。と、私は概要程度しか知らない彼の事件について、一通り知っておこうとパソコンを開いた。
『事件の被疑者、高山一途の家は貧しく、母親は風俗で日銭を稼ぎ、父親は勤めていた会社でトラブルを起こしクビになってからずっと、家で酒を飲んでは暴れる日々だった。怒鳴り声、金切声、過去に高山一家の近所に住んでいた住人は、幾度となく喧嘩の声を聞いていたという。高山は友人のない青春時代を送り、高校を卒業し就職した会社でも活躍することは出来ず、社会から孤立しその精神を捻じ曲げていった。高山は己の不出来を己以外の全てのせいだと責任転嫁し、世間を憎み、全てを恨み、そして凶行に至った。
被害者Aは20xx年8月24日午後11時過ぎ、高山の自宅において後頭部をバールで殴打され殺害。その後、高山により身体をバラバラに解体された後ミンチ状に叩き潰された。発見された段階では、人間だったものとは到底思えず修復不可能なほどだったという。
きっかけは近隣住民からの異臭がするという通報だった。高山は殺害から2週間後、Aさんだった腐肉と室内で戯れている所を発見、逮捕に至る。現場はひどい有り様で、近隣住民の中には体調を崩し救急搬送される者もいた。身体に、腐肉とそこから滲み出る汁を塗りたくっていた高山は抵抗することもなく素直に同行し、Aさん殺害及び死体損壊等の罪を認めた。初公判は※月※日予定。』
いくつも情報を拾っていく中で、私は唐突に、彼の名前の意味について気が付き、二の腕にぞわりと鳥肌が立った。
一途。イット。それ。
あぁ、彼は、ずっと忌み嫌われ、居場所もなくただ産み落とされたという理由で必死に生きてきたんだと、何も知らない私ですら胸が締め付けられる思いがした。私は頭に入れた情報から憶測を全て消し、残った彼の人生のカケラを持って、刑務所へと赴いた。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
「失礼します。」
「どうぞ。」
手錠と腰縄を付けて出てきた青年は、私と大して歳の変わらない、人畜無害、悪く言えば何の印象にも残らない、黒髪と、黒曜石のような真っ黒な瞳の持ち主だった。奥深い、どこまでも底のない瞳をつい値踏みするように見てしまって、慌てて促されるままパイプ椅子へと腰掛けた。彼は開口一番、私の書いている小説のことを聞いた。
「何か一つ、話してくれませんか。」
「え、あ、はい、どんな話がお好きですか。」
「貴方が一番好きな話を。」
「分かりました。では、...世界から言葉が消えたなら。」
私の一番気に入っている話、それは、10万字話すと死んでしまう奇病にかかった、愛し合う二人の話。彼は朗読などしたこともない、世に出てすらいない私の拙い小説を、目を細めて静かに聞いていた。最後まで一度も口を挟むことなく聞いているから、読み上げる私も自然と力が入ってしまう。読み終え、余韻と共に顔を上げると、彼はほろほろ、と、目から雫を溢していた。人が泣く姿を、こんなにまじまじと見たのは初めてだった。
「だ、大丈夫ですか、」
「えぇ。ありがとうございます。」
「あの、すみません、どうして私と、会っていただけることになったんでしょうか。」
ふるふる、と犬のように首を振った彼はにこり、と機械的にはにかんで、机に手を置き私を見つめた。か���ゃり、と決して軽くない鉄の音が、無機質な部屋に響く。
「僕に大してアクションを起こしてくる人達は皆、同情や好奇心、粗探しと金儲けの匂いがしました。送られてくる手紙は全て下手に出ているようで、僕を品定めするように舐め回してくる文章ばかり。」
「...それは、お察しします。」
「でも、貴方の手紙には、「理解しない人間に理解させるため、言葉を紡ぎませんか。」と書かれていた。面白いな、って思いませんか。」
「何故?」
「だって、貴方、「理解させる」って、僕と同じ目線に立って、物を言ってるでしょう。」
「.........意識、していませんでした。私はただ、憶測が嫌いで、貴方のことを理解したいと、そう思っただけです。」
「また、来てくれますか。」
「勿論。貴方のことを、少しずつでいいので、教えてくれますか。」
「一つ、条件があります。」
「何でしょう。」
「もし本にするなら、僕の言葉じゃなく、貴方の言葉で書いて欲しい。」
そして私は、彼の元へ通うことになった。話を聞けば聞くほど、彼の気持ちが痛いほど分かって、いや、分かっていたのかどうかは分からない。共鳴していただけかもしれない、同情心もあったかもしれない、でも私はただただあくる日も、そのあくる日も、私の言葉で彼を表し続けた。私の記した言葉を聞いて、楽しそうに微笑む彼は、私の言葉を最後まで一度も訂正しなかった。
「貴方はどう思う?僕の、したことについて。」
「...私なら、諦めてしまって、きっと得物を手に取って終わってしまうと思います。最後の最後まで、私が満たされることよりも、世間を気にしてしまう。不幸だと己を憐れんで、見えている答えからは目を背けて、後悔し続けて死ぬことは、きっと貴方の目から見れば不思議に映る、と思います。」
「理性的だけど、道徳的な答えではないね。普通はきっと、「己を満たす為に人を殺すのは躊躇う」って、そう答えるんじゃないかな。」
「でも、乾き続ける己のままで生きることは耐え難い苦痛だった時、己を満たす選択をしたことを、誰が責められるんでしょうか。」
「...貴方に、もう少し早く、出逢いたかった。」
ぽつり、零された言葉と、アクリル板越しに翳された掌。温度が重なることはない。触れ合って、痛みを分かち合うこともない。来園者の真似をする猿のように、彼の手に私の手を合わせて、ただ、じっとその目を見つめた。相変わらず何の感情もない目は、いつもより少しだけ暖かいような、そんな気がした。
彼も、私も、孤独だったのだと、その時初めて気が付いた。世間から隔離され、もしくは自ら距離を置き、人間が信じられず、理解不能な数億もの生き物に囲まれて秩序を保ちながら日々歩かされることに抗えず、翻弄され。きっと彼の胸に空いていた穴は、彼が被害者を殺害し、埋めようと必死に肉塊を塗りたくっていた穴は、彼以外の人間が、もしくは彼が、無意識のうちに彼から抉り取っていった、彼そのものだったのだろう。理解した瞬間止まらなくなった涙を、彼は拭えない。そうだった、最初に私の話で涙した彼の頬を撫でることだって、私には出来なかった。私と彼は、分かり合��たはずなのに、分かり合えない。私の言葉で作り上げた彼は、世間が言う狂人でも可哀想な子でもない、ただ一人の、人間だった。
その数日後、彼が獄中で首を吊ったという報道が流れた時、何となく、そうなるような気がしていて、それでも私は、彼が味わったような、胸に穴が開くような喪失感を抱いた。彼はただ、理解されたかっただけだ。理解のない人間の言葉が、行動が、彼の歩く道を少しずつ曲げていった。
私は書き溜めていた彼の全てを、一冊の本にした。本のタイトルは、「今日も、皮肉なほど空は青い。」。逮捕された彼が手錠をかけられた時、部屋のカーテンの隙間から空が見えた、と言っていた。ぴっちり閉じていたはずなのに、その時だけひらりと翻った暗赤色のカーテンの間から顔を覗かせた青は、目に刺さって痛いほど、青かった、と。
出版社は皆、猟奇的殺人犯のノンフィクションを出版したい、と食い付いた。帯に著名人の寒気がする言葉も書かれた。私の名前も大々的に張り出され、重版が決定し、至る所で賛否両論が巻き起こった。被害者の遺族は怒りを露わにし、会見で私と、彼に対しての呪詛をぶちまけた。
インタビュー、取材、関わってくる人間の全てを私は拒否して、来る日も来る日も、読者から届く手紙、メール、SNS上に散乱する、本の感想を読み漁り続けた。
そこに、私の望むものは何もなかった。
『あなたは犯罪者に対して同情を誘いたいんですか?』
私がいつ、どこに、彼を可哀想だと記したのだろう。
『犯罪者を擁護したいのですか?理解出来ません。彼は人を殺したんですよ。』
彼は許されるべきだとも、悪くない、とも私は書いていない。彼は素直に逮捕され、正式な処罰ではないが、命をもって罪へ対応した。これ以上、何をしろ、と言うのだろう。彼が跪き頭を地面に擦り付け、涙ながらに謝罪する所を見たかったのだろうか。
『とても面白かったです。狂人の世界が何となく理解出来ました。』
何をどう理解したら、この感想が浮かぶのだろう。そもそもこの人は、私の本を読んだのだろうか。
『作者はもしかしたら接していくうちに、高山を愛してしまったのではないか?贔屓目の文章は公平ではなく気持ちが悪い。』
『全てを人のせいにして自分が悪くないと喚く子供に殺された方が哀れでならない。』
『結局人殺しの自己正当化本。それに手を貸した筆者も同罪。裁かれろ。』
『ただただ不快。皆寂しかったり、一人になる瞬間はある。自分だけが苦しい、と言わんばかりの態度に腹が立つ。』
『いくら貰えるんだろうなぁ筆者。羨ましいぜ、人殺しのキチガイの本書いて金貰えるなんて。』
私は、とても愚かだったのだと気付かされた。
皆に理解させよう、などと宣って、彼を、私の言葉で形作ったこと。裏を返せば、その行為は、言葉を尽くせば理解され���、と、人間に期待をしていたに他ならない。
私は、彼によって得たわずかな幸福よりも、その後に押し寄せてくる大きな悲しみ、不幸がどうしようもなく耐え難く、心底、己が哀れだった。
胸に穴が空いている、と言う幻覚を見続けた彼は、穴が塞がりそうになるたび、そしてまた無機質な空虚に戻るたび、こんな痛みを感じていたのだろうか。
私は毎日、感想を読み続けた。貰った手紙は、読んだものから燃やしていった。他者に理解される、ということが、どれほど難しいのかを、思い知った。言葉を紡ぐことが怖くなり、彼を理解した私ですら、疑わしく、かといって己と論争するほどの気力はなく、ただ、この世に私以外の、彼の理解者は現れず、唯一の彼の理解者はここにいても、もう彼の話に相槌を打つことは叶わず、陰鬱とする思考の暗闇の中を、堂々巡りしていた。
思考を持つ植物になりたい、と、ずっと思っていた。人間は考える葦である、という言葉が皮肉に聞こえるほど、私はただ、一人で、誰の脳にも引っ掛からず、狭間を生きていた。
孤独、などという言葉で表すのは烏滸がましいほど、私、彼が抱えるソレは哀しく、決して治らない不治の病のようなものだった。私は彼であり、彼は私だった。同じ境遇、というわけではない。赤の他人。彼には守るべき己の秩序があり、私にはそんな誇り高いものすらなく、能動的、怠惰に流されて生きていた。
彼は、目の前にいた人間の頭にバールを振り下ろす瞬間も、身体をミンチにする工程も、全て正気だった。ただ心の中に一つだけ、それをしなければ、生きているのが恐ろしい、今しなければずっと後悔し続ける、胸を掻きむしり大声を上げて暴れたくなるような焦燥感、漠然とした不安感、それらをごちゃ混ぜにした感情、抗えない欲求のようなものが湧き上がってきた、と話していた。上手く呼吸が出来なくなる感覚、と言われて、思わず己の胸を抑えた記憶が懐かしい。
出版から3ヶ月、私は感想を読むのをやめた。人間がもっと憎らしく、恐ろしく、嫌いになった。彼が褒めてくれた、利己的な幸せの話を追い求めよう。そう決めた。私の秩序は、小説を書き続けること。嗚呼と叫ぶ声を、流れた血を、光のない部屋を、全てを飲み込む黒を文字に乗せて、上手く呼吸すること。
出版社は、どこも私の名前を見た瞬間、原稿を送り返し、もしくは廃棄した。『君も人殺したんでしょ?なんだか噂で聞いたよ。』『よくうちで本出せると思ったね、君、自分がしたこと忘れたの?』『無理ですね。会社潰したくないので。』『女ならまだ赤裸々なセックスエッセイでも書かせてやれるけど、男じゃ使えないよ、いらない。』数多の断り文句は見事に各社で違うもので、私は感嘆すると共に、人間がまた嫌いになった。彼が乗せてくれたから、私の言葉が輝いていたのだと痛感した。きっとあの本は、ノンフィクション、ルポルタージュじゃなくても、���っと人の心に突き刺さったはずだと、そう思わずにはいられなかった。
以前に働いていた会社は、ルポの出版の直前に辞表を出した。私がいなくても、普段通り世界は回る。著者の実物を狂ったように探し回っていた人間も、見つからないと分かるや否や他の叩く対象を見つけ、そちらで楽しんでいるようだった。私の書いた彼の本は、悪趣味な三流ルポ、と呼ばれた。貯金は底を尽きた。手当たり次第応募して見つけた仕事で、小銭を稼いだ。家賃と、食事に使えばもう残りは硬貨しか残らない、そんな生活になった。元より、彼の本によって得た利益は、全て燃やしてしまっていた。それが、正しい末路だと思ったからだったが、何故と言われれば説明は出来ない。ただ燃えて、真っ赤になった札が灰白色に色褪せ、風に脆く崩れていく姿を見て、幸せそうだと、そう思った。
名前を伏せ、webサイトで小説を投稿し始めた。アクセス数も、いいね!も、どうでも良かった。私はただ秩序を保つために書き、顎を上げて、夜店の金魚のように、浅い水槽の中で居場所なく肩を縮めながら、ただ、遥か遠くにある空を眺めては、届くはずもない鰭を伸ばした。
ある日、web上のダイレクトメールに一件のメッセージが入った。非難か、批評か、スパムか。開いた画面には文字がつらつらと記されていた。
『貴方の本を、販売当時に読みました。明記はされていませんが、某殺人事件のルポを書かれていた方ですか?文体が、似ていたのでもし勘違いであれば、すみません。』
断言するように言い当てられたのは初めてだったが、画面をスクロールする指はもう今更震えない。
『最新作、読みました。とても...哀しい話でした。ゾンビ、なんてコミカルなテーマなのに、貴方はコメをトラにしてしまう才能があるんでしょうね。悲劇。ただ、二人が次の世界で、二人の望む幸せを得られることを祈りたくなる、そんな話でした。過去作も、全て読みました。目を覆いたくなるリアルな描写も、抽象的なのに五感のどこかに優しく触れるような比喩も、とても素敵です。これからも、書いてください。』
コメとトラ。私が太宰の「人間失格」を好きな事は当然知らないだろうに、不思議と親近感が湧いた。単純だ。と少し笑ってから、私はその奇特な人間に一言、返信した。
『私のルポルタージュを読んで、どう思われましたか。』
無名の人間、それも、ファンタジーやラブコメがランキング上位を占めるwebにおいて、埋もれに埋もれていた私を見つけた人。だからこそ聞きたかった。例えどんな答えが返ってきても構わなかった。もう、罵詈雑言には慣れていた。
数日後、通知音に誘われて開いたDMには、前回よりも短い感想が送られてきていた。
『人を殺めた事実を別にす��ば、私は少しだけ、彼の気持ちを理解出来る気がしました。。彼の抱いていた底なしの虚無感が見せた胸の穴も、それを埋めようと無意識のうちに焦がれていたものがやっと現れた時の衝動。共感は微塵も出来ないが、全く理解が出来ない化け物でも狂人でもない、赤色を見て赤色だと思う一人の人間だと思いました。』
何度も読み返していると、もう1通、メッセージが来た。惜しみながらも画面をスクロールする。
『もう一度読み直して、感想を考えました。外野からどうこう言えるほど、彼を軽んじることが出来ませんでした。良い悪いは、彼の起こした行動に対してであれば悪で、それを彼は自死という形で償った。彼の思考について善悪を語れるのは、本人だけ。』
私は、画面の向こうに現れた人間に、頭を下げた。見えるはずもない。自己満足だ。そう知りながらも、下げずにはいられなかった。彼を、私を、理解してくれてありがとう。それが、私が愛読者と出会った瞬間だった。
愛読者は、どうやら私の作風をいたく気に入ったらしかった。あれやこれや、私の言葉で色んな世界を見てみたい、と強請った。その様子はどこか彼にも似ている気がして、私は愛読者の望むまま、数多の世界を創造した。いっそう創作は捗った。愛読者以外の人間は、ろくに寄り付かずたまに冷やかす輩が現れる程度で、私の言葉は、世間には刺さらない。
まるで神にでもなった気分だった。初めて小説を書いた時、私の指先一つで、人が自由に動き、話し、歩き、生きて、死ぬ。理想の愛を作り上げることも、到底現実世界では幸せになれない人を幸せにすることも、なんでも出来た。幸福のシロップが私の脳のタンパク質にじゅわじゅわと染みていって、甘ったるいスポンジになって、溢れ出すのは快楽物質。
そう、私は神になった。上から下界を見下ろし、手に持った無数の糸を引いて切って繋いでダンス。鼻歌まじりに踊るはワルツ。喜悲劇とも呼べるその一人芝居を、私はただ、演じた。
世の偉いベストセラー作家も、私の敬愛する文豪も、ポエムを垂れ流す病んだSNSの住人も、暗闇の中で自慰じみた創作をして死んでいく私も、きっと書く理由なんて、ただ楽しくて気持ちいいから。それに尽きるような気がする。
愛読者は私の思考をよく理解し、ただモラルのない行為にはノーを突きつけ、感想を欠かさずくれた。楽しかった。アクリルの向こうで私の話を聞いていた彼は、感想を口にすることはなかった。核心を突き、時に厳しい指摘をし、それでも全ての登場人物に対して寄り添い、「理解」してくれた。行動の理由を、言動の意味を、目線の行く先を、彼らの見る世界を。
一人で歩いていた暗い世界に、ぽつり、ぽつりと街灯が灯っていく、そんな感覚。じわりじわり暖かくなる肌触りのいい空気が私を包んで、私は初めて、人と共有することの幸せを味わった。不���を自分以外に見出し、脳内を共鳴させることの価値を知った。
幸せは麻薬だ、とかの人が説く。0の状態から1の幸せを得た人間は、気付いた頃にはその1を見失う。10の幸せがないと、幸せを感じなくなる。人間は1の幸せを持っていても、0の時よりも、不幸に感じる。幸福感という魔物に侵され支配されてしまった哀れな脳が見せる、もっと大きな、訪れるはずと信じて疑わない幻影の幸せ。
私はさしずめ、来るはずのプレゼントを玄関先でそわそわと待つ少女のように無垢で、そして、馬鹿だった。無知ゆえの、無垢の信頼ゆえの、馬鹿。救えない。
愛読者は姿を消した。ある日話を更新した私のDMは、いつまで経っても鳴らなかった。震える手で押した愛読者のアカウントは消えていた。私はその時初めて、愛読者の名前も顔も性別も、何もかもを知らないことに気が付いた。遅すぎた、否、知っていたところで何が出来たのだろう。私はただ、愛読者から感想という自己顕示欲を満たせる砂糖を注がれ続けて、その甘さに耽溺していた白痴の蟻だったのに。並ぶ言葉がざらざらと、砂時計の砂の如く崩れて床に散らばっていく幻覚が見えて、私は端末を放り投げ、野良猫を落ち着かせるように布団を被り、何がいけなかったのかをひとしきり考え、そして、やめた。
人間は、皆、勝手だ。何故か。皆、自分が大事だからだ。誰も守ってくれない己を守るため、生きるため、人は必死に崖を這い上がって、その途中で崖にしがみつく他者の手を足場にしていたとしても、気付く術はない。
愛読者は何も悪くない。これは、人間に期待し、信用という目に見えない清らかな物を崇拝し、焦がれ、浅はかにも己の手の中に得られると勘違いし小躍りした、道化師の喜劇だ。
愛読者は今日も、どこかで息をして、空を見上げているのだろうか。彼が亡くなった時と同じ感覚を抱いていた。彼が最後に見た澄んだ空。私が、諦観し絶望しながらも、明日も見るであろう狭い空。人生には不幸も幸せもなく、ただいっさいがすぎていく、そう言った27歳の太宰の言葉が、彼の年に近付いてからやっと分かるようになった。そう、人が生きる、ということに、最初から大して意味はない。今、人間がヒエラルキーの頂点に君臨し、80億弱もひしめき合って睨み合って生きていることにも、意味はない。ただ、そうあったから。
愛読者が消えた意味も、彼が自ら命を絶った理由も、考えるのをやめよう。と思った。呼吸代わりに、ある種の強迫観念に基づいて狂ったように綴っていた世界も、閉じたところで私は死なないし、私は死ぬ。最早私が今こうして生きているのも、植物状態で眠る私の見ている長い長い夢かもしれない。
私は思考を捨て、人でいることをやめた。
途端に、世界が輝きだした。全てが美しく見える。私が今ここにあることが、何よりも楽しく、笑いが止まらない。鉄線入りの窓ガラスが、かの大聖堂のステンドグラスよりも耽美に見える。
太宰先生、貴方はきっと思考を続けたから、あんな話を書いたのよ。私、今、そこかしこに檸檬を置いて回りたいほど愉快。
これがきっと、幸せ。って呼ぶのね。
愛読者は死んだ。もう戻らない。私の世界と共に死んだ、と思っていたが、元から生きても死んでもいなかった。否、生きていて、死んでいた。シュレディンガーの猫だ。
「嗚呼、私、やっぱり、
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lucky21r · 5 years ago
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昔は2.3時間寝れれば全然元気だったし、体力も復活してたんだけど、最近はどうもすぐバテる。飯も抜けば体重なんて減ってたのに…酒飲んだだけで変なのがついちゃうから、歳を感じる。とか言ったら色々きっと怒られそうな予感(笑)歳じゃなくて、夏のせいにしとく?でもほんと、めちゃくちゃな暑さが続いてますよね。と、前置き。
憧れの人と好きな人は違う
これ、前に観た映画で言ってたんだけど、賛否両論ありそうな答え。憧れの人にするドキドキと、好きな人にするドキドキ…まぁ分からなくもない。けど、憧れの人が隣にいたら、やっぱり自慢。憧れの人の知らなかった部分が、自分だけ知ってると思ったら、こんな幸せな事ってないと思う。それが自分色に染まってくれたなら、尚更幸せじゃん?憧れの人が変わる事ってないから、ずっとその気持ちを忘れることなく、一緒に居れると思うんだよね。って26歳男が何言ってんだって話なんだけど…
逢うべき糸に出逢えることを、人は仕合わせと呼びます
これがまさになんだよ。ほら、俺が映画の番宣しちゃった(笑)今日公開だって、観に行きたいな。
おめでとう
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りょを。
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yuriage · 6 years ago
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出会いは奇跡、出会えば一生の宝物! あなたに出会えて本当に幸せです! 良い出会いを引き寄せる6つの秘訣       『 あなたに出会えて幸せです 』     出会いは一瞬、 繋がりは一生。   誰と出会うかで 人生が変わる   出会いは 待つものではなく 自らが作るもの。     - ゆたか -       人は出会いと別れを 繰り返しますが、   どんな出会いも 無駄じゃなかったと思う。   それは大人になると 実感できるもの。   だから出会ってきた人に 「ありがとう」     - 前田亘輝 -       自分の人生と命は、 自分が主人公であると 自覚する。   時には嫌いな人、 ひどい人に出会い、 理不尽な仕打ちを 味わうことがある。   しかし、 相手の振る舞いに 自分の人生と心を 支配させない。   相手のために 人生を棒に振る 必要はない     - 内藤いづみ -       落ち込んでも 避けない方がいい。   それを乗り越えるから 新しい出会いがあるのだ     - 井ノ原快彦 -       限られた時間の中で 出会える人の数は、 出会えない人の数より ずっと少ない。   だから、出会った人を どれだけ大事に するかですね     - 作者不詳 -       この何億人といる世界で あなたに出会えて、 そしてあなたの笑顔が見れて 私は幸せです     - 逸見道郎 -       縦の糸はあなた 横の糸は私   逢うべき糸に 出会えることを 人は仕合わせと呼びます     - 中島みゆき -         良い出会いを 引き寄せる6つの秘訣       ■ 出会いがない原因とは!?       『出会う気がそもそもない!』     毎日会社と自宅の往復で、自分から出会うための活動をしていない、もしくは時間がなくて活動していない場合や人に疲れて週末はほぼ自宅に引きこもってしまうなどの理由により、多くの人は出会いのための積極的な行動を取っていません。     にもかかわらず、「どこかに良い出会いはないかな?」と、ため息交じりにぼやいたりしていませんか?。仕事で疲れているので、休みの日ぐらい家でゆっくり休んでいたい気持ちはわかりますが、これではいつまでたってもいい出会いはやってきません。     これは恋愛にかぎったことではなく、人生を豊かにしてくれる友人と呼ぶにふさわしいひとたちとの出会いも閉ざされてしまいます。         『恋愛に向いていないと思い込んでいる!』     「私は恋愛に向いていない」と言って、恋愛そのものから逃げてしまえば当然出会いなんてありません。実はこれが「出会いがない」原因の最も大きな割合を占めています。出会いを自分から出会いを遠ざけてしまい、自分の殻にこもってしまうケースが少なくありません。         『出会いの機会が沢山あっても気がつかない!』     「出会いがない」「出会えない」と嘆く女性の多くは、実際には出会えていることがほとんどなんです。例え��学校、バイト、会社など、家から出れば常に出会いはあるはずです。学校なら違う学年の人、バイトならお客さん、会社なら違う部署や取引先など、色々な出会いがあります。     ではなぜ気づけないのか?、「出会いがない」、「いい人がいない」と自分で言っているので、自分で出会いをブロックしているからです。このブロックを外すには、こういった出会いを遠ざけるネガティブワードを言わなければいいだけです。     ネガティブワードを言うのをやめた瞬間から出会いのスイッチがオンに切り替わります。         ■ 出会いのチャンスを増やすには!?     (1)出会いの場はどこにでもあると心得る     職場から、ふと足を運んだスタンドバー、風邪で訪れた病院まで…さまざまな場所で出会い、交際がスタートしています。初対面から知りあいへ、知りあいから友達へ、友達から恋人へとステップアップしていくことが大切です。         (2)時には「おひとりさま」行動をしてみる     出会いを求めているはずの彼女たちは、いつも友達と離れられないことで、みすみす出会いのチャンスを逃してしまっています。おひとりさま力が、恋愛に発展する出会いを引き寄せる大きな理由が、もう一つあります。それは、運命の出会いは、あなたが個性を最高に輝かせている時に訪れるものだからです。     一人でいるときは、誰の目も気にしないで済むので、普段自分を抑えつけているガードが外れて、のびのび行動することができる点も、あなた本来の魅力をさらけ出す大きな要因となります。海外旅行に行くと現地の異性と自由な恋愛を楽しんでいる日本人をよく目にします。     一人で行動することを楽しめるようになると出会いが加速します。         (3)もっと見た目を大事にする     疲れて髪がボサボサ、メイクする気になれずほとんどスッピン状態では、出会っても相手に好意を持ってもらえません。体臭や肌をケアする。きちんと服で身を装い、正しい礼儀やマナーを心得る。そうすれば内面から自然と自信が湧き、毎日がイキイキと充実してくる。       https://www.instagram.com/p/Bzce6QqJqwy/?igshid=1xp4d1raouqhy
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6iqiz · 2 years ago
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俺もみんなと曲を共有したいなと思ったんだけど、プレイリストを見せるのってなんだか素を覗かれるような感じがして小っ恥ずかしかったのでこれ置いておこうかな。本当は30日かけてやるやつなんだろうけどそんなん絶対続かないので眠れないついでにズラーっと書き連ねておきます。普段聴く曲とは多少違うけど、あなたも聴く曲があったら同じ���んーって思いながら見てみてください。
思いついたタイミングでなんか小話でも書いていこうかな。
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d1 「あなたの様にあたしも大丈夫になりたい」
    雲は白リンゴは赤/aiko
d2 「誰よりも好きよ、言わないだけで」
    ルート16/マカロニえんぴつ
d3 「色んなこと話したけれど
    好きだってことが言えなかった」
    夏祭り/ジッタリン・ジン
夏を思い出す曲って星の数ほどあると思うけど、子供の頃から染み付いた夏の曲はこれっていう人、多いんじゃないかな。俺多分太鼓ゲームの譜面、まだ覚えてるよ。
d4 「愛が愛を「重すぎる」って理解に拒み
    憎しみに変わっていく前に」
    儚くも永久のカナシ/UVERworld
d5 「涙を流したってきっとここじゃバレないさ」
    ライブハウスで会おうぜ/ハンブレッダーズ
d6 「踊ってない夜がない夜なんて
    とってもとっても退屈です」
    オドループ/フレデリック
d7 「偶然なんか待てないようんざりだもう」
    STAYTUNE/Suchmos
d8 「コンビニエンスストアで
    350mlの缶ビール買って君と夜の散歩」
    クロノスタシス/きのこ帝国
d9 「悪になろうと君の味方でいたいから」
    味方/My Hair is Bad
何が正義で何が悪かなんてわからないけど、たとえ悪だとしても誰よりも君の味方だ、って言ってくれる存在がいるって何より幸せなことだと思います。君がいれば���僕は負けない。素敵だなー!
d10「ただ涙、涙、涙でも君が笑えるなら」
    ミセナイナミダハ、きっといつか/GReeeeN
リリースされてから大分経つけど、あの頃も今でもMVを観ると泣いてしまうのが僕です。「悲しませる」とはちょっとニュアンスが違うかもしれないけど。
d11「うつむいてるくらいがちょうどいい」
    栞/クリープハイプ
この曲を聴くとお前のこと思い出す、って言われたけど俺はこの曲を聴いてお前を思い出してんのよ。
d12「乙女は羽のように丘をくだる彼の元へ」
    亜麻色の髪の乙女/島谷ひとみ
d13「きっとあなたのキスほど
    きらめくはずないもの」
    木綿のハンカチーフ/太田裕美
d14「おまえは今でもアイドルさみんな大好きだぜ」
    愛を叫べ/嵐
d15「逢うべき糸に出逢えることを
    人は仕合わせと呼びます」
    糸/菅田将暉&石崎ひゅーい
d16「舞い上がるスカートを翼にかえて
    生きる今日も」
    ピクニック/RADWIMPS
誰にも教えず、ただひたすら1人で聴いてきた曲。とっておきのお気に入り。特別に教えてあげる。ここをみてくれる人がいるならば、是非この曲が主題歌となった映画も観ていただきたいところ。
d17「もう二度と戻らない恋
    痛みだけがちょっと動いた」
    青いベンチ/サスケ
d18「今がすべてじゃないから
    あんまりムキになんなよ」
    ナイスな心意気/嵐
d19「エンディングテーマはこんなもんだろう」
    エンディングテーマ/amazarashi
d20「別にそれもう要らないし」
    左耳/クリープハイプ
俺が教えたバンド、俺が教えた曲、この曲を気に入って聴いたお前。ライブ会場で久しぶりに再開したそいつの横にはまた新しい相手が居たし、そこからの俺はいかにお前と会わずにライブに行くかで大変だよ。全く。
d21「本当の声で言葉で話がしたいの」
    アノニマス/さユり
d22「同じアホならハジけにゃ損!損!」
    前向きスクリーム!/関ジャニ∞
d23「絶望になんて気づかないふりをしていようよ」
    ふたりのせかい/レイラ
d24「日常の中に僕らは愛を見つけてはホッとして」
    最愛/ミオヤマザキ
d25「最後の花火に今年もなったな」
    若者のすべて/フジファブリック
14年前のクリスマスイヴらしい。何年経っても、思い出してしまうな。
d26「忘れられない夏になるかも」
    君と夏フェス/SHISHAMO
どう考えても、キュンofキュン。音楽と共に恋するって厄介だとは思うんだけど、やっぱりそれって素敵なことだと思う。
d27「寝たふり続ける僕の恋人」
    さよならミッドナイト/大柴広己
d28「わたし、わたしが先に忘れよう」
    帰ろう/藤井風
d29「この道ずっと行けば
    あの街につづいてる気がする」
    カントリーロード/野見裕ニ
d30「今JETしよう、ね、HiHi Jets」
    HiHi Jets/HiHi Jets
俺といえば、俺らといえば、でしょ。
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wasite · 3 years ago
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WASITE.store 2022/08/29 now OPEN 今日の海 「生活とは つまり   習慣の織物である」 『日記』よりアンリ・フレデリック・アミエル 織物ってことは、 縦糸と横糸を交差させて 織り込まれたもの。。。 「た〜ての糸はあ〜なた〜   よ〜この糸はわ〜たし〜〜〜」 と中島みゆきさん「糸」。 そんな「縦糸」担当の俺っちですが、 縦糸には他にも意味がある。 それが! ラテン語の縦糸は「スターミナ」! "運命の女神が紡ぐ生命の糸" という意味でしたが、現在のあれですよ、あれ 「スタミナ」 つまり体力精力持久力!!! 元気のもと。 というのは、今日は日付の語呂合わせで 「焼肉の日」 です。 夏バテ気味の人に焼肉を食べて スタミナをつけてもらおうという日です。 今年は、暑い! 夏バテしてる人も例年より多いんじゃ? (ただの予想) 運命の縦糸(スタミナ)を強くするには 焼肉ですよ、焼く肉。 焼肉の健康効果や食べ方とかは 何年か前にもやった気がするから 今年は華麗にスルーする。 で、織物の業界言葉で 縦糸は経糸 横糸は緯糸 と呼びます。 これ、地球儀に交錯している線、 地図の座標につかう 経度と緯度の字と一緒。 これはもともと布・織物の言葉が 地理の世界に持ち込まれたから。 で、中島みゆきさんの「糸」に戻りますが、 歌の最後 「逢うべき糸に   出逢えることを    人は「・・・・」と呼びます」 何と呼ぶ??? 「しあわせ」 です。 じゃあその字は? 「幸せ」 じゃないの??? No 中島さんは、 糸と糸が出会う「しあわせ」を 「仕合わせ」 と歌詞にしました。 <仕 + 合わせる> 自分の置かれた状況に 様々なことが重なって重なって、 物事は成り立っている。 日本語の「しあわせ」の語源は、 この言葉の 「し合わす」だとされてる。 これは偶然の巡り合わせでもあり、 良いことも、悪いことも すべて重なり合って 「しあわせ=仕合わせ」 だったわけです。 そんな偶然の重なりに織り込まれた縦糸は 運命の女神の縦糸(スタミナ)だなんて、 なんかいい具合じゃないですか!? スタミナ!大事ですよ! だってまた歌でもあるじゃない? 「幸せは歩いてこない、   だから歩いてゆくんだね」 by 水前寺 清子 歩き続けるスタミナ(運命の糸)を、 今日は焼肉で!!! え〜、どこまで歩くんじゃい? と歩くことにお疲れの人もいるはず。 そこでまた水前寺 清子です。 某エヴァ映画でも使われましたが 「真実一路のマーチ」 「この世は長い 坂道だけど   長さじゃないよ〜! 人生は」 です。 だって、いつまで歩けるかわからないよ? 偶然があって「仕合わせ」です。 そこで清子さんは 「真実一路 生きたなら   短くたってかまわない」 と歌う。 織田信長だってさ、 舞いましたよ! 「敦盛」を。 あれは 「人の50年なんて  一睡の夢、幻みたいなもんやで」 って意味。 なので、 某スポーツニュースのアレみたいな感じ 「あ〜つ〜も〜りーーーーー!!!」 という会心のライフタイムリスペクトで 毎日をお過ごしください。 ・・・ あー、後半ちょっとネタに振りすぎた感が ちょっと自分でもよくないってわかってる。 途中までは綺麗だったのになー。 スタミナが続かなかった。 と言うわけで、今日も ストーーーーーーップ!!!ロシア!!! では、今日も良い1日を! #WASITE #ワシテ (at WASITE) https://www.instagram.com/p/Ch1Lb_Xv0iZ/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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groyanderson · 4 years ago
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☆プロトタイプ版☆ ひとみに映る影シーズン2 第七話「復活、ワヤン不動」
☆プロトタイプ版☆ こちらは電子書籍「ひとみに映る影 シーズン2」の 無料プロトタイプ版となります。 誤字脱字等修正前のデータになりますので、あしからずご了承下さい。
☆ここから買おう☆
(シーズン2あらすじ) 私はファッションモデルの紅一美。 旅番組ロケで訪れた島は怪物だらけ!? 霊能者達の除霊コンペとバッティングしちゃった! 実は私も霊感あるけど、知られたくないなあ…… なんて言っている場合じゃない。 諸悪の根源は恩師の仇、金剛有明団だったんだ! 憤怒の化身ワヤン不動が、今度はリゾートで炸裂する!!
pixiv版 (※内容は一緒です。)
དང་པོ་
 ニライカナイから帰還した私達はその後、魔耶さんに呼ばれて食堂へ向かう。食堂内では五寸釘愚連隊と生き残った河童信者が集合していた。更に最奥のテーブルには、全身ボッコボコにされたスーツ姿の男。バリカンか何かで雑に剃り上げられた頭頂部を両手で抑えながら、傍らでふんぞり返る禍耶さんに怯えて震えている。 「えーと……お名前、誰さんでしたっけ」  この人は確か、河童の家をリムジンに案内していたアトム社員だ。特徴的な名前だった気はするんだけど、思い出せない。 「あっ……あっ……」 「名乗れ!」 「はひいぃぃ! アトムツアー営業部の五間擦平雄(ごますり ひらお)と申します!」  禍耶さんに凄まれ、五間擦氏は半泣きで名乗った。少なくともモノホンかチョットの方なんだろう。すると河童信者の中で一番上等そうなバッジを付けた男が席を立ち、机に手をついて私達に深々と頭を下げた。 「紅さん、志多田さん。先程は家のアホ大師が大っっっ変ご迷惑をおかけ致しました! この落とし前は我々河童の家が後日必ず付けさせて頂きます!」 「い、いえそんな……って、その声まさか、昨年のお笑いオリンピックで金メダルを総ナメしたマスク・ド・あんこう鍋さんじゃないですか! お久しぶりですね!?」  さすがお笑い界のトップ組織、河童の家だ。ていうか仕事で何度か会ったことあるのに素顔初めて見た。 「あお久しぶりっす! ただこちらの謝罪の前に、お二人に話さなきゃいけない事があるんです。ほら説明しろボケナスがッ!!」  あんこう鍋さんが五間擦氏の椅子を蹴飛ばす。 「ぎゃひぃ! ごご、ご説明さひぇて頂きますぅぅぅ!!」  五間擦氏は観念して、千里が島とこの除霊コンペに関する驚愕の事実を私達に洗いざらい暴露した。その全貌はこうだ。  千里が島では散減に縁を奪われた人間が死ぬと、『金剛の楽園』と呼ばれる何処かに飛び去ってしまうと言い伝えられている。そうなれば千里が島には人間が生きていくために必要な魂の素が枯渇し、乳幼児の生存率が激減してしまうんだ。そのため島民達は縁切り神社を建て、島外の人々を呼びこみ縁を奪って��き延びてきたのだという。  アトムグループが最初に派遣した建設会社社員も伝説に違わず祟られ、全滅。その後も幾つかの建設会社が犠牲になり、ようやく事態を重く受け止めたアトムが再開発中断を検討し始めた頃。アトムツアー社屋に幽霊が現れるという噂が囁かれ始めた。その霊は『日本で名のある霊能者達の縁を散減に献上すれば千里が島を安全に開発させてやろう』と宣うらしい。そんな奇妙な話に最初は半信半疑だった重役達も、『その霊がグループ重役会議に突如現れアトムツアーの筆頭株主を目の前で肉襦袢に変えた』事で霊の要求を承認。除霊コンペティションを行うと嘘の依頼をして、日本中から霊能者を集めたのだった。  ところが行きの飛行機で、牛久大師は袋の鼠だったにも関わらず中級サイズの散減をあっさり撃墜してしまう。その上業界ではインチキ疑惑すら噂されていた加賀繍へし子の取り巻きに散減をけしかけても、突然謎のレディース暴走族幽霊が現れて返り討ちにされてしまった。度重なる大失態に激怒した幽霊はアトムツアーイケメンライダーズを全員肉襦袢に変えて楽園へ持ち帰ってしまい、メタボ体型のため唯一見逃された五間擦氏はついに牛久大師に命乞いをする。かくして大師は大散減を退治すべく、祠の封印を剥がしたのだった。以上の話が終わると、私は五間擦氏に馬乗りになって彼の残り少ない髪の毛を引っこ抜き始めた。 「それじゃあ、大師は初めから封印を解くつもりじゃなかったんですか?」 「ぎゃあああ! 毛が毛が毛がああぁぁ!!」  あんこう鍋さんは首を横に振る。 「とんでもない。あの人は力がどうとか言うタイプじゃありません。地上波で音波芸やろうとしてNICを追放されたアホですよ? 我々はただの笑いと金が大好きなぼったくりカルトです」 「ほぎゃああぁぁ! 俺の貴重な縁があぁぁ、抜けるウゥゥーーーッ!!」 「そうだったんですね。だから『ただの関係者』って言ってたんだ……」  そういう事だったのか。全ては千里が島、アトムグループ、ひいては金剛有明団までもがグルになって仕掛けた壮大なドッキリ……いや、大量殺人計画だったんだ! 大師も斉二さんもこいつらの手の上で踊らされた挙句逝去したとわかった以上、大散減は尚更許してはおけない。  魔耶さんと禍耶さんは食堂のカウンターに登り、ハンマーを掲げる。 「あなた達。ここまでコケにされて、大散減を許せるの? 許せないわよねぇ?」 「ここにいる全員で謀反を起こしてやるわ。そこの祝女と影法師使いも協力しなさい」  禍耶さんが私達を見る。玲蘭ちゃんは数珠を持ち上げ、神人に変身した。 「全員で魔物(マジムン)退治とか……マジウケる。てか、絶対行くし」 「その肉襦袢野郎とは個人的な因縁もあるんです。是非一緒に滅ぼさせて下さい!」 「私も! さ、さすがに戦うのは無理だけど……でもでも、出来ることはいっぱい手伝うよ!」  佳奈さんもやる気満々のようだ。 「決まりね! そうしたら……」 「その作戦、私達も参加させて頂けませんか?」  食堂入口から突然割り込む声。そこに立っていたのは…… 「斉一さん!」「狸おじさん!」  死の淵から復活した後女津親子だ! 斉一さんは傷だらけで万狸ちゃんに肩を借りながらも、極彩色の細かい糸を纏い力強く微笑んでいる。入口近くの席に座り、経緯を語りだした。 「遅くなって申し訳ない。魂の三分の一が奪われたので、万狸に体を任せて、斉三と共にこの地に住まう魂を幾つか分けて貰っていました」  すると斉一さんの肩に斉三さんも現れる。 「診療所も結界を張り終え、とりあえず負傷者の安全は確保した。それと、島の魂達から一つ興味深い情報を得ました」 「聞かせて、狸ちゃん」  魔耶さんが促す。 「御戌神に関する、正しい歴史についてです」  時は遡り江戸時代。そもそも江戸幕府征服を目論んだ物の怪とは、他ならぬ金剛有明団の事だった。生まれた直後に悪霊を埋め込まれた徳松は、ゆくゆくは金剛の意のままに動く将軍に成長するよう運命付けられていたんだ。しかし将軍の息子であった彼は神職者に早急に保護され、七五三の儀式が行われる。そこから先の歴史は青木さんが説明してくれた通り。けど、この話には続きがあるらしい。 「大散減の祠などに、星型に似たシンボルを見ませんでしたか? あれは大散減の膨大な力の一部を取り込み霊能力を得るための、給電装置みたいな物です。もちろんその力を得た者は縁が失せて怪物になるのですが、当時の愚か者共はそうとは知らず、大散減を『徳川の埋蔵金』と称し挙って島に移住しました」  私達したたびが探していた徳川埋蔵金とはなんと、金剛の膨大な霊力と衆生の縁の塊、大散減の事だったんだ。ただ勿論、霊能者を志し島に近付いた者達はまんまと金剛に魂を奪われた。そこで彼らの遺族は風前の灯火だった御戌神に星型の霊符を貼り、自分達の代わりに島外の人間から縁を狩る猟犬に仕立て上げたんだ。こうして御戌神社ができ、御戌神は地中で飢え続ける大散減の手足となってせっせと人の縁を奪い続けているのだという。 「千里が島の民は元々霊能者やそれを志した者の子孫です。多少なりとも力を持つ者は多く、彼らは代々『御戌神の器』を選出し、『人工転生』を行ってきました」  斉一さんが若干小声で言う。人工転生。まだ魂が未発達の赤子に、ある特定の幽霊やそれに纏わる因子を宛てがって純度の高い『生まれ変わり』を作る事。つまり金剛が徳松に行おうとしたのと同じ所業だ。 「じゃあ、今もこの島のどこかに御戌様の生まれ変わりがいるんですか?」  佳奈さんは飲み込みが早い。 「ええ。そして御戌神は、私達が大散減に歯向かえば再び襲ってきます。だからこの戦いでは、誰かが対御戌神を引き受け……最悪、殺生しなければなりません」 「殺生……」  生きている人間を、殺す。死者を成仏させるのとは訳が違う話だ。魔耶さんは胸の釘を握りしめた。 「そのワンちゃん、なんて可哀想なの……可哀想すぎる。攻撃なんて、とてもできない」 「魔耶、今更甘えた事言ってんじゃないわよ。いくら生きてるからって、中身は三百年前に死んだバケモノよ! いい加減ラクにしてやるべきだわ」 「でもぉ禍耶、あんまりじゃない! 生まれた時から不幸な運命を課せられて、それでも人々のために戦ったのに。結局愚かな連中の道具にされて、利用され続けているのよ!」 (……!)  道具。その言葉を聞いた途端、私は心臓を握り潰されるような恐怖を覚えた。本来は衆生を救うために手に入れた力を、正反対の悪事に利用されてしまう。そして余所者から邪尊(バケモノ)と呼ばれ、恐れられるようになる……。 ―テロリストですよ。ドマル・イダムという邪尊の力を操ってチベットを支配していた、最悪の独裁宗派です―  自分の言った言葉が心に反響する。御戌神が戦いの中で見せた悲しそうな目と、ニライカナイで見たドマルの絶望的な目が日蝕のように重なる。瞳に映ったあの目は……私自身が前世で経験した地獄の、合わせ鏡だったんだ。 「……魔耶さん、禍耶さん。御戌神は、私が相手をします」 「え!?」 「正気なの!? 殺生なんて私達死者に任せておけばいいのよ! でないとあんた、殺人罪に問われるかもしれないのに……」  圧。 「ッ!?」  私は無意識に、前世から受け継がれた眼圧で総長姉妹を萎縮させた。 「……悪魔の心臓は御仏を産み、悪人の遺骨は鎮魂歌を奏でる。悪縁に操られた御戌神も、必ず菩提に転じる事が出来るはずです」  私は御戌神が誰なのか、確証を持っている。本当の『彼』は優しくて、これ以上金剛なんかの為に罪を重ねてはいけない人。たとえ孤独な境遇でも人との縁を大切にする、子犬のようにまっすぐな人なんだ。 「……そう。殺さずに解決するつもりなのね、影法師使いさん。いいわ。あなたに任せます」  魔耶さんがスレッジハンマーの先を私に突きつける。 「失敗したら承知しない。私、絶対に承知しないわよ」  私はそこに拳を当て、無言で頷いた。  こうして話し合いの結果、対大散減戦における役割分担が決定した。五寸釘愚連隊と河童の家、玲蘭ちゃんは神社で大散減本体を引きずり出し叩く。私は御戌神を探し、神社に行かれる前に説得か足止めを試みる。そして後女津家は私達が解読した暗号に沿って星型の大結界を巡り、大散減の力を放出して弱体化を図る事になった。 「志多田さん。宜しければ、お手伝いして頂けませんか?」  斉一さんが立ち上がり、佳奈さんを見る。一方佳奈さんは申し訳なさそうに目を伏せた。 「で……でも、私は……」  すると万狸ちゃんが佳奈さんの前に行く。 「……あのね。私のママね、災害で植物状態になったの。大雨で津波の警報が出て、��パが車で一生懸命高台に移動したんだけど、そこで土砂崩れに遭っちゃって」 「え、そんな……!」 「ね、普通は不幸な事故だと思うよね。でもママの両親、私のおじいちゃんとおばあちゃん……パパの事すっごく責めたんだって。『お前のせいで娘は』『お前が代わりに死ねば良かったのに』みたいに。パパの魂がバラバラに引き裂かれるぐらい、いっぱいいっぱい責めたの」  昨晩斉三さんから聞いた事故の話だ。奥さんを守れなかった上にそんな言葉をかけられた斉一さんの気持ちを想うと、自分まで胸が張り裂けそうだ。けど、奥さんのご両親が取り乱す気持ちもまたわかる。だって奥さんのお腹には、万狸ちゃんもいたのだから……。 「三つに裂けたパパ……斉一さんは、生きる屍みたいにママの為に無我夢中で働いた。斉三さんは病院のママに取り憑いたまま、何年も命を留めてた。それから、斉二さんは……一人だけ狸の里(あの世)に行って、水子になっちゃったママの娘を育て続けた」 「!」 「斉二さんはいつも言ってたの。俺は分裂した魂の、『後悔』の側面だ。天災なんて誰も悪くないのに、目を覚まさない妻を恨んでしまった。妻の両親を憎んでしまった。だからこんなダメな狸親父に万狸が似ないよう、お前をこっちで育てる事にしたんだ。って」  万狸ちゃんが背筋をシャンと伸ばし、顔を上げた。それは勇気に満ちた笑顔だった。 「だから私知ってる。佳奈ちゃんは一美ちゃんを助けようとしただけだし、ぜんぜん悪いだなんて思えない。斉二さんの役割は、完璧に成功してたんだよ」 「万狸ちゃん……」 「あっでもでも、今回は天災じゃなくて人災なんだよね? それなら金剛有明団をコッテンパンパンにしないと! 佳奈ちゃんもいっぱい悲しい思いした被害者でしょ?」  万狸ちゃんは右手を佳奈さんに差し出す。佳奈さんも顔を上げ、その手を強く握った。 「うん。金剛ぜったい許せない! 大散減の埋蔵金、一緒にばら撒いちゃお!」  その時、ホテルロビーのからくり時計から音楽が鳴り始めた。曲は民謡『ザトウムシ』。日没と大散減との対決を告げるファンファーレだ。魔耶さんは裁判官が木槌を振り下ろすように、机にハンマーを叩きつけた! 「行ぃぃくぞおおおぉぉお前らああぁぁぁ!!!」 「「「うおおぉぉーーーっ!!」」」  総員出撃! ザトウムシが鳴り響く逢魔が時の千里が島で今、日本最大の除霊戦争が勃発する!
གཉིས་པ་
 大散減討伐軍は御戌神社へ、後女津親子と佳奈さんはホテルから最寄りの結界である石見沼へと向かった。さて、私も御戌神の居場所には当てがある。御戌神は日蝕の目を持つ獣。それに因んだ地名は『食虫洞』。つまり、行先は新千里が島トンネル方面だ。  薄暗いトンネル内を歩いていると、電灯に照らされた私の影が勝手に絵を描き始めた。空で輝く太陽に向かって無数の虫が冒涜的に母乳を吐く。太陽は穢れに覆われ、光を失った日蝕状態になる。闇の緞帳(どんちょう)に包まれた空は奇妙な星を孕み、大きな獣となって大地に災いをもたらす。すると地平線から血のように赤い月が昇り、星や虫を焼き殺しながら太陽に到達。太陽と重なり合うやいなや、天上天下を焼き尽くすほどの輝きを放つのだった……。  幻のような影絵劇が終わると、私はトンネルを抜けていた。目の前のコンビニは既に電気が消えている。その店舗全体に、腐ったミルクのような色のペンキで星型に線を一本足した記号が描かれている。更に接近すると、デッキブラシを持った白髪の偉丈夫が記号を消そうと悪戦苦闘しているのが見えた。 「あ、紅さん」  私に気がつき振り返った青木さんは、足下のバケツを倒して水をこぼしてしまった。彼は慌ててバケツを立て直す。 「見て下さい。誰がこんな酷い事を? こいつはコトだ」  青木さんはデッキブラシで星型の記号を擦る。でもそれは掠れすらしない。 「ブラシで擦っても? ケッタイな落書きを……っ!?」  指で直接記号に触れようとした青木さんは、直後謎の力に弾き飛ばされた。 「……」  青木さんは何かを思い出したようだ。 「紅さん。そういえば僕も、ケッタイな体験をした事が」  夕日が沈んでいき、島中の店や防災無線からはザトウムシが鳴り続ける。 「犬に吠えられ、夜中に目を覚まして。永遠に飢え続ける犬は、僕のおつむの中で、ひどく悲しい声で鳴く。それならこれは幻聴か? 犬でないなら幽霊かもだ……」  青木さんは私に背を向け、沈む夕日に引き寄せられるように歩きだした。 「早くなんとかせにゃ。犬を助けてあげなきゃ、僕まで���うにかなっちまうかもだ。するとどこからか、目ん玉が潰れた双頭の毛虫がやって来て、口からミルクを吐き出した。僕はたまらず、それにむしゃぶりつく」  デッキブラシから滴った水が地面に線を引き、一緒に夕日を浴びた青木さんの影も伸びていく。 「嫌だ。もう犬にはなりたくない。きっとおっとろしい事が起きるに違いない。満月が男を狼にするみたいに、毛虫の親玉を解き放つなど……」 「青木さん」  私はその影を呼び止めた。 「この落書きは、デッキブラシじゃ落とせません」 「え?」 「これは散減に穢された縁の母乳、普通の人には見えない液体なんです」  カターン。青木さんの手からデッキブラシが落ちた途端、全てのザトウムシが鳴り止んだ。青木さんはゆっくりとこちらへ振り向く。重たい目隠れ前髪が狛犬のたてがみのように逆立ち、子犬のように輝く目は濁った穢れに覆われていく。 「グルルルル……救、済、ヲ……!」  私も胸のペンダントに取り付けたカンリンを吹いた。パゥーーー……空虚な悲鳴のような音が響く。私の体は神経線維で編まれた深紅の僧衣に包まれ、激痛と共に影が天高く燃え上がった。 「青木さん。いや、御戌神よ。私は紅の守護尊、ワヤン不動。しかし出来れば、お前とは戦いたくない」  夕日を浴びて陰る日蝕の戌神と、そこから伸びた赤い神影(ワヤン)が対峙する。 「救済セニャアアァ!」 「そうか。……ならば神影繰り(ワヤン・クリ)の時間だ!」  空の月と太陽が見下ろす今この時、地上で激突する光の神と影の明王! 穢れた色に輝く御戌神が突撃! 「グルアアァァ!」  私はティグクでそれをいなし、黒々と地面に伸びた自らの影を滑りながら後退。駐車場の車止めをバネに跳躍、傍らに描かれた邪悪な星目掛けてキョンジャクを振るった。二〇%浄化! 分解霧散した星の一片から大量の散減が噴出! 「マバアアアァァ!!」「ウバアァァァ!」  すると御戌神の首に巻かれた幾つもの頭蓋骨が共鳴。ケタケタと震えるように笑い、それに伴い御戌神も悶絶する。 「グルアァァ……ガルァァーーーッ!!」  咆哮と共に全骨射出! 頭蓋骨は穢れた光の尾を引き宙を旋回、地を這う散減共とドッキングし牙を剥く! 「がッは!」  毛虫の体を得た頭蓋骨が飛び回り、私の血肉を穿つ。しかし反撃に転じる寸前、彼らの正体を閃いた。 「さては歴代の『器』か」  この頭蓋骨らは御戌神転生の為に生贄となった、どこの誰が産んだかもわからない島民達の残滓だ。なら速やかに解放せねばなるまい! 人頭毛虫の猛攻をティグクの柄やキョンジャクで防ぎながら、ティグクに付随する旗に影炎を着火! 「お前達の悔恨を我が炎の糧とする! どおぉりゃああぁーーーーっ!!」   ティグク猛回転、憤怒の地獄大車輪だ! 飛んで火に入る人頭毛虫らはたちどころに分解霧散、私の影体に無数の苦痛と絶望と飢えを施す! 「クハァ……ッ! そうだ……それでいい。私達は仲間だ、この痛みを以て金剛に汚された因果を必ずや断ち切ってやろう! かはあぁーーーっはーーっはっはっはっはァァーーッ!!!」  苦痛が無上の瑜伽へと昇華しワヤン不動は呵呵大笑! ティグクから神経線維の熱線が伸び大車輪の火力を増強、星型記号を更に焼却する! 記号は大文字焼きの如く燃え上がり穢れ母乳と散減を大放出! 「ガウルル、グルルルル!」  押し寄せる母乳と毛虫の洪水に突っ込み喰らおうと飢えた御戌神が足掻く。だがそうはさせるものか、私の使命は彼を穢れの悪循環から救い出す事だ。 「徳川徳松ゥ!」 「!」  人の縁を奪われ、畜生道に堕ちた哀しき少年の名を呼ぶ。そして丁度目の前に飛んできた散減を灼熱の手で掴むと、轟々と燃え上がるそれを遠くへ放り投げた! 「取ってこい!」 「ガルアァァ!!」  犬の本能が刺激された御戌神は我を忘れ散減を追う! 街路樹よりも高く跳躍し口で見事キャッチ、私目掛けて猪突猛進。だがその時! 彼の本体である衆生が、青木光が意識を取り戻した! (戦いはダメだ……穢れなど!)  日蝕の目が僅かに輝きを増す。御戌神は空中で停止、咥えている散減を噛み砕いて破壊した! 「かぁははは、いい子だ徳松��! ならば次はこれだあぁぁ!!」  私はフリスビーに見立ててキョンジャクを投擲。御戌神が尻尾を振ってハッハとそれを追いかける。キョンジャクは散減共の間をジグザグと縫い進み、その軌跡を乱暴になぞる御戌神が散減大量蹂躙! 薄汚い死屍累々で染まった軌跡はまさに彼が歩んできた畜生道の具現化だ!! 「衆生ぉぉ……済度ぉおおおぉぉぉーーーーっ!!!」  ゴシャアァン!!! ティグクを振りかぶって地面に叩きつける! 視神経色の亀裂が畜生道へと広がり御戌神の背後に到達。その瞬間ガバッと大地が割れ、那由多度に煮え滾る業火を地獄から吹き上げた! ズゴゴゴゴガガ……マグマが滾ったまま連立する巨大灯篭の如く隆起し散減大量焼却! 振り返った御戌神の目に陰る穢れも、紅の影で焼き溶かされていく。 「……クゥン……」  小さく子犬のような声を発する御戌神。私は憤怒相を収め、その隣に立つ。彼の両眼からは止めどなく饐えた涙が零れ、その度に日蝕が晴れていく。気がつけば空は殆ど薄暗い黄昏時になっていた。闇夜を迎える空、赤く燃える月と青く輝く太陽が並ぶ大地。天と地の光彩が逆転したこの瞬間、私達は互いが互いの前世の声を聞いた。 『不思議だ。あの火柱見てると、ぼくの飢えが消えてく。お不動様はどんな法力を?』 ༼ なに、特別な力ではない。あれは慈悲というものだ ༽ 『じひ』  徳松がドマルの手を握った。ドマルの目の奥に、憎しみや悲しみとは異なる熱が込み上がる。 『救済の事で?』 ༼ ……ま、その類いといえばそうか。童よ、あなたは自分を生贄にした衆生が憎いか? ༽  徳松は首を横に振る。 『ううん、これっぽっちも。だってぼく、みんなを救済した神様なんだから』  すると今度はドマルが両手で徳松の手を包み、そのまま深々と合掌した。 ༼ なら、あなたはもう大丈夫だ。衆生との縁に飢える事は、今後二度とあるまい ༽
གསུམ་པ་
 時刻は……わからないけど、日は完全に沈んだ。私も青木さんも地面に大の字で倒れ、炎上するコンビニや隆起した柱状節理まみれの駐車場を呆然と眺めている。 「……アーーー……」  ふと青木さんが、ずっと咥えっ放しだったキョンジャクを口から取り出した。それを泥まみれの白ニットで拭い、私に返そうとして……止めた。 「……洗ってからせにゃ」 「いいですよ。この後まだいっぱい戦うもん」 「大散減とも? おったまげ」  青木さんにキョンジャクを返してもらった。 「実は、まだ学生の時……友達が僕に、『彼女にしたい芸能人は?』って質問を。けど特に思いつかなくて、その時期『非常勤刑事』やってたので紅一美ちゃんと。そしたら今回、本当にしたたびさんが……これが縁ってやつなら、ちぃと申し訳ないかもだ」 「青木さんもですか」 「え?」 「私も実は、この間雑誌で『好きな男性のタイプは何ですか』って聞かれて、なんか適当に答えたんですけど……『高身長でわんこ顔な方言男子』とかそんなの」 「そりゃ……ふふっ。いやけど、僕とは全然違うイメージだったかもでしょ?」 「そうなんですよ。だから青木さんの素顔初めて見た時、キュンときたっていうより『あ、実在するとこんな感じなの!?』って思っちゃったです。……なんかすいません」  その時、遠くでズーンと地鳴りのような音がした。蜃気楼の向こうに耳をそばだてると、怒号や悲鳴のような声。どうやら敵の大将が地上に現れたようだ。 「行くので?」 「大丈夫。必ず戻ってきます」  私は重い体を立ち上げ、ティグクとキョンジャクに再び炎を纏った。そして山頂の御戌神社へ出発…… 「きゃっ!」  しようとした瞬間、何かに服の裾を掴まれたかのような感覚。転びそうになって咄嗟にティグクの柄をつく。足下を見ると、小さなエネルギー眼がピンのように私の影を地面と縫いつけている。 ༼ そうはならんだろ、小心者娘 ༽ 「ちょ、ドマル!?」  一方青木さんの方も、徳松に体を勝手に動かされ始めた。輝く両目から声がする。 『バカ! あそこまで話しといて告白しねえなど!? このボボ知らず!』 「ぼっ、ぼっ、ボボ知らずでねえ! 嘘こくなぁぁ!」  民謡の『お空で見下ろす出しゃばりな月と太陽』って、ひょっとしたら私達じゃなくてこの前世二人の方を予言してたのかも。それにしてもボボってなんだろ、南地語かな。 ༼ これだよ ༽  ドマルのエネルギー眼が炸裂し、私は何故かまた玲蘭ちゃんの童貞を殺す服に身を包んでいた。すると何故か青木さんが悶絶し始めた。 「あややっ……ちょっと、ダメ! 紅さん! そんなオチチがピチピチな……こいつはコトだ!!」  ああ、成程。ボボ知らずってそういう…… 「ってだから、私の体で検証すなーっ! ていうか、こんな事している間にも上で死闘が繰り広げられているんだ!」 ༼ だからぁ……ああもう! 何故わからないのか! ヤブユムして行けと言っているんだ、その方が生存率上がるしスマートだろ! ༽ 「あ、そういう事?」  ヤブユム。確か、固い絆で結ばれた男女の仏が合体して雌雄一体となる事で色々と超越できる、みたいな意味の仏教用語……だったはず。どうすればできるのかまではサッパリわかんないけど。 「え、えと、えと、紅さん……一美ちゃん!」 「はい……う、うん、光君!」  両前世からプレッシャーを受け、私と光君は赤面しながら唇を近付ける。 『あーもー違う! ヤブユムっていうのは……』 ༼ まーまー待て。ここは現世を生きる衆生の好きにさせてみようじゃないか ༽  そんな事言われても困る……それでも、今私と光君の想いは一つ、大散減討伐だ。うん、多分……なんとかなる! はずだ!
བཞི་པ་
 所変わって御戌神社。姿を現した大散減は地中で回復してきたらしく、幾つか継ぎ目が見えるも八本足の完全体だ。十五メートルの巨体で暴れ回り、周囲一帯を蹂躙している。鳥居は倒壊、御戌塚も跡形もなく粉々に。島民達が保身の為に作り上げた生贄の祭壇は、もはや何の意味も為さない平地と化したんだ。  そんな絶望的状況にも関わらず、大散減討伐軍は果敢に戦い続ける。五寸釘愚連隊がバイクで特攻し、河童信者はカルトで培った統率力で彼女達をサポート。玲蘭ちゃんも一枚隔てた異次元から大散減を構成する無数の霊魂を解析し、虱潰しに破壊していく。ところが、 「あグッ!」  バゴォッ!! 大散減から三メガパスカル級の水圧で射出された穢れ母乳が、河童信者の一人に直撃。信者の左半身を粉砕! 禍耶さんがキュウリの改造バイクで駆けつける。 「河童信者!」 「あ、か……禍耶の姐御……。俺の、魂を……吸収……し……」 「何言ってるの、そんな事できるわけないでしょ!?」 「……大散、ぃに、縁……取られ、嫌、……。か、っぱは……キュウリ……好き……っか……ら…………」  河童信者の瞳孔が開いた。禍耶さんの唇がわなわなと痙攣する。 「河童って馬鹿ね……最後まで馬鹿だった……。貴方の命、必ず無駄にはしないわ!」  ガバッ、キュイイィィ! 息絶えて間もない河童信者の霊魂が分解霧散する前に、キュウリバイクの給油口に吸収される。ところが魔耶さんの悲鳴! 「禍耶、上ぇっ!!」 「!」  見上げると空気を読まず飛びかかってきた大散減! 咄嗟にバイクを発進できず為す術もない禍耶さんが絶望に目を瞑った、その時。 「……え?」  ……何も起こらない。禍耶さんはそっと目を開けようとする。が、直後すぐに顔を覆った。 「眩しっ! この光は……あああっ!」  頭上には朝日のように輝く青白い戌神。そしてその光の中、轟々と燃える紅の不動明王。光と影、男と女が一つになったその究極仏は、大散減を遥か彼方に吹き飛ばし悠然と口を開いた。 「月と太陽が同時に出ている、今この時……」 「瞳に映る醜き影を、憤怒の炎で滅却する」 「「救済の時間だ!!!」」  カッ! 眩い光と底知れぬ深い影が炸裂、落下中の大散減を再びスマッシュ! 「遅くなって本当にすみません。合体に手間取っちゃって……」  御戌神が放つ輝きの中で、燃える影体の私は揺らめく。するとキュウリバイクが言葉を発した。 <問題なし! だぶか登場早すぎっすよ、くたばったのはまだ俺だけです。やっちまいましょう、姐さん!> 「そうね。行くわよ河童!」  ドルルン! 輩悪苦満誕(ハイオクまんたん)のキュウリバイクが発進! 私達も共に駆け出す。 「一美ちゃん、火の準備を!」 「もう出来ているぞぉ、カハァーーーッハハハハハハァーーー!!」  ティグクが炎を噴く! 火の輪をくぐり青白い肉弾が繰り出す! 巨大サンドバッグと化した大散減にバイクの大軍が突撃するゥゥゥ!!! 「「「ボァガギャバアアアアァァアアア!!!」」」  八本足にそれぞれ付いた顔が一斉絶叫! 中空で巻き散らかされた大散減の肉片を無数の散減に変えた! 「灰燼に帰すがいい!」  シャゴン、シャゴン、バゴホオォン!! 御戌神から波状に繰り出される光と���の合間に那由多度の影炎を込め雑魚を一掃! やはりヤブユムは強い。光源がないと力を発揮出来ない私と、偽りの闇���遮られてしまっていた光君。二人が一つになる事で、永久機関にも似た法力を得る事が出来る!  大散減は地に叩きつけられるかと思いきや、まるで地盤沈下のように地中へ潜って行ってしまった。後を追えず停車した五寸釘愚連隊が舌打ちする。 「逃げやがったわ、あの毛グモ野郎」  しかし玲蘭ちゃんは不敵な笑みを浮かべた。 「大丈夫です。大散減は結界に分散した力を補充しに行ったはず。なら、今頃……」  ズドガアアァァァアン!!! 遠くで吹き上がる火柱、そして大散減のシルエット! 「イェーイ!」  呆然と見とれていた私達の後方、数分前まで鳥居があった瓦礫の上に後女津親子と佳奈さんが立っている。 「「ドッキリ大成功ー! ぽーんぽっこぽーん!」」  ぽこぽん、シャララン! 佳奈さんと万狸ちゃんが腹鼓を打ち、斉一さんが弦を爪弾く。瞬間、ドゴーーン!! 今度は彼女らの背後でも火柱が上がった! 「あのねあのね! 地図に書いてあった星の地点をよーく探したら、やっぱり御札の貼ってある祠があったの。それで佳奈ちゃんが凄いこと閃いたんだよ!」 「その名も『ショート回路作戦』! 紙に御札とぴったり同じ絵を写して、それを鏡合わせに貼り付ける。その上に私の霊力京友禅で薄く蓋をして、その上から斉一さんが大散減から力を吸収しようとする。だけど吸い上げられた大散減のエネルギーは二枚の御札の間で行ったり来たりしながら段々滞る。そうとは知らない大散減が内側から急に突進すれば……」  ドォーーン! 万狸ちゃんと佳奈さんの超常理論を実証する火柱! 「さすがです佳奈さん! ちなみに最終学歴は?」 「だからいちご保育園だってば~、この小心者ぉ!」  こんなやり取りも随分と久しぶりな気がする。さて、この後大散減は立て続けに二度爆発した。計五回爆ぜた事になる。地図上で星のシンボルを描く地点は合計六つ、そのうち一つである食虫洞のシンボルは私がコンビニで焼却したアレだろう。 「シンボルが全滅すると、奴は何処へ行くだろうか」  斉三さんが地図を睨む。すると突如地図上に青白く輝く道順が描かれた。御戌神だ。 「でっかい大散減はなるべく広い場所へ逃走を。となると、海岸沿いかもだ。東の『いねとしサンライズビーチ』はサイクリングロードで狭いから、石見沼の下にある『石見海岸』ので」 「成程……って、君はまさか!?」 「青木君!?」  そうか、みんな知らなかったんだっけ。御戌神は遠慮がちに会釈し、かき上がったたてがみの一部を下ろして目隠れ前髪を作ってみせた。光君の面影を認識して皆は納得の表情を浮かべた。 「と……ともかく! ずっと地中でオネンネしてた大散減と違って、地の利はこちらにある。案内するので先回りを!」  御戌神が駆け出す! 私は彼が放つ輝きの中で水上スキーみたいに引っ張られ、五寸釘愚連隊や他の霊能者達も続く。いざ、石見海岸へ!
ལྔ་པ་
 御戌神の太陽の両眼は、前髪によるランプシェード効果が付与されて更に広範囲を照らせるようになった。石見沼に到着した時点で海岸の様子がはっきり見える。まずいことに、こんな時に限って海岸に島民が集まっている!? 「おいガキ共、ボートを降りろ! 早く避難所へ!」 「黙れ! こんな島のどこに安全が!? 俺達は内地へおさらばだ!」  会話から察するに、中学生位の子達が島を脱出しようと試みるのを大人達が引き止めているようだ。ところが間髪入れず陸側から迫る地響き! 危ない! 「救済せにゃ!」  石見の崖を御戌神が飛んだ! 私は光の中で身構える。着地すると同時に目の前の砂が隆起、ザボオオォォン!! 大散減出現! 「かははは、一足遅いわ!」  ズカアァァン!!! 出会い頭に強烈なティグクの一撃! 吹き飛んだ大散減は沿岸道路を破壊し民家二棟に叩きつけられた。建造物損壊と追い越し禁止線通過でダブル罪業加点! 間一髪巻き込まれずに済んだ島民達がどよめく。 「御戌様?」 「御戌様が子供達を救済したので!?」 「それより御戌様の影に映ってる火ダルマは一体!?」  その問いに、陸側から聞き覚えのある声が答える。 「ご先祖様さ!」  ブオォォン! 高級バイクに似つかわしくない凶悪なエンジン音を吹かして現れたのは加賀繍さんだ! 何故かアサッテの方向に数珠を投げ、私の正体を堂々と宣言する。 「御戌神がいくら縁切りの神だって、家族の縁は簡単に切れやしないんだ。徳川徳松を一番気にかけてたご先祖様が仏様になって、祟りを鎮めるんだよ!」 「徳松様を気にかけてた、ご先祖様……」 「まさか、将軍様など!?」 「「「徳川綱吉将軍!!」」」  私は暴れん坊な将軍様の幽霊という事になってしまった。だぶか吉宗さんじゃないけど。すると加賀繍さんの紙一重隣で大散減が復帰! 「マバゥウゥゥゥゥウウウ!!!」  神社にいた時よりも甲高い大散減の鳴き声。消耗している証拠だろう。脚も既に残り五本、ラストスパートだ! 「畳み掛けるぞ夜露死苦ッ!」  スクラムを組むように愚連隊が全方位から大散減へ突進、総長姉妹のハンマーで右前脚破壊! 「ぽんぽこぉーーー……ドロップ!!」  身動きの取れなくなった大散減に大かむろが垂直落下、左中央二脚粉砕! 「「「大師の敵ーーーっ!」」」  微弱ながら霊力を持つ河童信者達が集団投石、既に千切れかけていた左後脚切断! 「くすけー、マジムン!」  大散減の内側から玲蘭ちゃんの声。するうち黄色い閃光を放って大散減はメルトダウン! 全ての脚が落ち、最後の本体が不格好な蓮根と化した直後……地面に散らばる脚の一本の顔に、ギョロギョロと蠢く目が現れた。光君の話を思い出す。 ―八本足にそれぞれ顔がついてて、そのうち本物の顔を見つけて潰さないと死なない怪物で!― 「そうか、あっちが真の本体!」  私と光君が同時に動く! また地中に逃げようと飛び上がった大散減本体に光と影は先回りし、メロン格子状の包囲網を組んだ! 絶縁怪虫大散減、今こそお前をこの世からエンガチョしてくれるわあああああああ!! 「そこだーーーッ!! ワヤン不動ーーー!!」 「やっちゃえーーーッ!」「御戌様ーーーッ!」 「「「ワヤン不動オォーーーーーッ!!!」」」 「どおおぉぉるあぁああぁぁぁーーーーーー!!!!」  シャガンッ! 突如大量のハロゲンランプを一斉に焚いたかのように、世界が白一色の静寂に染まる。存在するものは影である私と、光に拒絶された大散減のみ。ティグクを掲げた私の両腕が夕陽を浴びた影の如く伸び、背中で燃える炎に怒れる恩師の馬頭観音相が浮かんだ時……大散減は断罪される! 「世尊妙相具我今重問彼仏子何因縁名為観世音具足妙相尊偈答無盡意汝聴観音行善応諸方所弘誓深如海歴劫不思議侍多千億仏発大清浄願我為汝略説聞名及見身心念不空過能滅諸有苦!」  仏道とは無縁の怪獣よ、己の業に叩き斬られながら私の観音行を聞け! 燃える馬頭観音と彼の骨であるティグクを仰げ! その苦痛から解放されたくば、海よりも深き意志で清浄を願う聖人の名を私がお前に文字通り刻みつけてやる! 「仮使興害意推落大火坑念彼観音力火坑変成池或漂流巨海龍魚諸鬼難念彼観音力波浪不能没或在須弥峰為人所推堕念彼観音力如日虚空住或被悪人逐堕落金剛山念彼観音力不能損一毛!!」  たとえ金剛の悪意により火口へ落とされようと、心に観音力を念ずれば火もまた涼し。苦難の海でどんな怪物と対峙しても決して沈むものか! 須弥山から突き落とされようが、金剛を邪道に蹴落とされようが、観音力は不屈だ! 「或値怨賊繞各執刀加害念彼観音力咸即起慈心或遭王難苦臨刑欲寿終念彼観音力刀尋段段壊或囚禁枷鎖手足被杻械念彼観音力釈然得解脱呪詛諸毒薬所欲害身者念彼観音力還著於本人或遇悪羅刹毒龍諸鬼等念彼観音力時悉不敢害!!」  お前達に歪められた衆生の理は全て正してくれる! 金剛有明団がどんなに強大でも、和尚様や私の魂は決して滅びぬ。磔にされていた抜苦与楽の化身は解放され、悪鬼羅刹四苦八苦を燃やす憤怒の化身として生まれ変わったんだ! 「若悪獣囲繞利牙爪可怖念彼観音力疾走無辺方蚖蛇及蝮蝎気毒煙火燃念彼観音力尋声自回去雲雷鼓掣電降雹澍大雨念彼観音力応時得消散衆生被困厄無量苦逼身観音妙智力能救世間苦!!!」  獣よ、この力を畏れろ。毒煙を吐く外道よ霧散しろ! 雷や雹が如く降り注ぐお前達の呪いから全ての衆生を救済してみせよう! 「具足神通力廣修智方便十方諸国土無刹不現身種種諸悪趣地獄鬼畜生生老病死苦以漸悉令滅真観清浄観広大智慧観悲観及慈観常願常瞻仰無垢清浄光慧日破諸闇能伏災風火普明照世間ッ!!!」  どこへ逃げても無駄だ、何度生まれ変わってでも憤怒の化身は蘇るだろう! お前達のいかなる鬼畜的所業も潰えるんだ。瞳に映る慈悲深き菩薩、そして汚れなき聖なる光と共に偽りの闇を葬り去る! 「悲体戒雷震慈意妙大雲澍甘露法雨滅除煩悩燄諍訟経官処怖畏軍陣中念彼観音力衆怨悉退散妙音観世音梵音海潮音勝彼世間音是故須常念念念勿生疑観世音浄聖於苦悩死厄能為作依怙具一切功徳慈眼視衆生福聚海無量是故応頂……」  雷雲の如き慈悲が君臨し、雑音をかき消す潮騒の如き観音力で全てを救うんだ。目の前で粉微塵と化した大散減よ、盲目の哀れな座頭虫よ、私はお前をも苦しみなく逝去させてみせる。 「……礼ィィィーーーーーッ!!!」  ダカアアアアァァアアン!!!! 光が飛散した夜空の下。呪われた気枯地、千里が島を大いなる光と影の化身が無量の炎で叩き割った。その背後で滅んだ醜き怪獣は、業一つない純粋な粒子となって分解霧散。それはこの地に新たな魂が生まれるための糧となり、やがて衆生に縁を育むだろう。  時は亥の刻、石見海岸。ここ千里が島で縁が結ばれた全ての仲間達が勝利に湧き、歓喜と安堵に包まれた。その騒ぎに乗じて私と光君は、今度こそ人目も憚らず唇を重ね合った。
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mashiroyami · 5 years ago
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Page 118 : 魂の在処
 彼女は夢を見た。  久方振りの夢だった。  時に、赤い獣の眼に囲まれ、腹から止めどなく血を流す弟の姿、全てを焼き尽くす暴力的な炎に食い尽くされるような悪夢に、夜中に眼が覚めることもあった。逆に、一生眼を覚ましたくないほどに幸福な夢を見ることもあった。弟が笑いながら背の高い向日葵畑に歓声をあげていて、世話になった叔父夫婦が遠くで師弟を見つめている、そしてエーフィやブラッキーがくるくると踊るように甘えてきて抱きしめる、たとえばそんな夢。  この時は、夜の夢だった。長い��闇を歩いた先だったから、記憶に引き摺られたのかもしれなかった。  彼女は乾いた匂いの立つ草原に座り、夜空を見ていた。星の敷き詰められた空だった。天の河は本当に河のように星がゆっくりと流れていて、満天の星空には瞼がまたたくたびにいくつもの流星がちらつき、白であったり、青であったり、赤であったり、はたまた虹色であったり、様々な色を発している。輝いては、さっと、消えていく。あっけなく跡形もなく消えていく。零れおちてきそうなほどたくさんの星に満たされていながら、不思議と騒がしい印象はない。静かだった。静粛で、息を呑んで見守る他無い、広大無辺の空間であった。しかし、幻想的に静かに輝く夜空の下、遙か彼方で佇む真っ黒な山間のあたりには赤い別種の光があった。妙にお互い繋がりながら脈打つように輝いていた。それは森を燃やす炎の光だった。  これだけの光が広がっているにも関わらず星光はあまりにも遠く、彼女の座る場所は殆ど周囲がはっきりとしなかった。耳を撫でる草の音や、さわさわと身体を撫で付ける草叢の感触で今ここは草原だと判別できるだけで、それが無ければ、ひとり、宇宙に浮かんでいるような光景だった。  不意に、彼女は肩を叩かれ、隣を振り向いた。  見覚えのある顔に、虚ろな瞳が見開く。  僅かな星の光を浴び、青年、アラン・オルコットが微笑んで、なんでもないような素振りで隣に座っていた。嘗ての日々、笑っていたあの頃のままの、幻。  昂ぶる感情があるのか、彼女は口を開けては閉じて、言葉を発することすらできずに彼をじっと見つめる。彼女より背丈の高い青年は、小さな子供を可愛がるように、優しく栗色の髪を撫でた。  あたたかな行為で決壊したように、彼女は彼の胸へと跳び込んで、背中ごと強く抱きしめた。そして、言葉の代わりに泣いた。  彼の肩口が濡れていく。咎めず、突き放さず、彼もまた彼女の背に手を回して、あやすように背中を優しく叩いた。声は無く、なんてことないように笑っていた。一定のゆっくりとしたリズムに、不規則な嗚咽が混じり、闇夜に染み込む。  張り詰めていたものが解かれ、ただの子供へと戻った彼女は、ゆっくりと顔を話し、腫らした瞼のままですぐ傍の彼をもう一度目視する。  事あれば隙間無く喋り続けていた彼だったが、声を失ってしまったように口を閉ざしたままだ。暫く沈黙を挟み、彼女は、ごめん、と言った。涙が彼方の星光を反射していた。彼はゆるく首を横に振った。依然何も言わないままで。  彼は姿勢を崩し、ゆっくりと立ち上がる。繋いだ手に引かれて彼女も重たかった身体を起こした。ずっとそこに座って閉じこもっていたけれど、夜の中に立ち上がり、ほんの少しだけ宇宙に近付いた。彼女は泣いた分だけ幼くなって、彼の掌にすっぽりと小さな手を収め、ぎゅっと硬い指を握りしめた。  おーい。  不意に、懐かしい声が彼女の隣から発された。彼の声だった。繋がれていない手を頬に当て、遠くに向けて呼びかけた。闇に吸い込まれていったその先に、淡いオレンジ色の炎が揺れている。  彼女はつぶらな栗色の瞳を瞬かせて、鬼火のような淡い炎を凝視する。  炎を纏った仔馬がぼんやりと振り返る。その傍に、足下だけ浮かび上がっている、誰か。炎にも星にも照らされることなく、誰かがいることは解るのだけれど、誰なのか判然としない。まるで、足だけ残して、絵を無理矢理上から黒く塗り潰して消したような、そんないびつな姿をしていた。
 口から泡が鈍い音と共に吐き出されて、自らの衝撃に叩かれアランは夢から醒めた。  急いで身体を起こし、掌を見ると、いつも通りの大きさでそこにある。水に揺らぐ袖を捲ると、鳥肌がびっしりと立っていた。汗が垂れる環境であれば、額に脂汗が滲んでいたことだろう。  おもむろに周囲を見渡す。眠る前と同じく球形を半分に切り取ったドーム状の洞は変わらず、よりかかる傍には置物と化した巨大な獣が横たわっている。ブラッキーも同様で、彼の方はまだ眠っていた。苦悶という程ではないが、安堵でもない、僅かに眉間に皺を寄せた表情で眠っている。彼もまた夢を視ているのかもしれなかった。  彼女を眠らせたそれは姿を消していた。  ふと、アランは左肩に手を当てた。  ブラッキーの鋭い牙に穿たれた傷は無く、服も破れてはいない。僅かな穴すら無く、綺麗なものだった。一瞬の出来事ではあったが、彼女の記憶に深く根ざしているのだろう。しかし、丁寧に指を添わせ何度確認しようとも、結果は同じだった。  そしてブラッキーも、ガブリアスの残虐ともいえる逆鱗の連続に身体が抉られたはずだ。宙に舞った血液が、晴れ渡った蒼穹には鮮明な対比を成していた。アランは黒い体躯に掌を当て探るが、まるで傷は見当たらない。天井にちらつく碧い光が照らす薄暗い環境下で、相変わらず月の輪が光らない点も妙だった。  そもそも、この場所自体、得体が知れない。  明らかに水中なのだけれど、アラン達はその中で容易に眼を開けていられる。息苦しさも無い。泳いでいるというわけでも沈んでいるというわけでもなく、身体が異様に重いだけで、地上を歩くように移動することができる。けれど、水に揺れるように髪や服は靡いていて、口から零れるものは泡沫である。  確かに彼女とブラッキーは、湖に飛び込み、そして沈んだ。意識が途切れて気が付いてみれば、不思議な水底の森に倒れていた。初めの形が想像できぬほど瓦解した廃墟は、エクトルが地上の教会でアランに語った、嘗て湖底に沈んだ元々のキリの残骸、水底の遺跡と考えるのが自然か。しかし、それにしては不自然ばかりの場所である。  碧い廃墟を見回していると、長い洞窟とを繋ぐ出入り口に影が揺らぎ、それが帰ってきた。散歩にでも赴いていたような素振りで踏み入れてくると、目覚めたアランに気付いて瞳を丸くした。憎めない顔つきである。  手ぶらのままのんびりとした足取りで座り混んでいるアランの傍までやってくると、巨大な貝殻を填め込んだ重たげな頭を下げた。つられてアランも礼を返す。 (あの)  アランは恐る恐る言葉を発する。水、のような周囲に薄められながらも、相手には届いているらしく、それは小首を傾げる。 (ここは……どこですか? 本当に湖の底なんですか? 貴方は、水神様、なんですか?)  それは明らかに人間ではなく、獣の類の形をしていた。そしてクラリスは、水神はポケモンだと断言していた。  しかしそれは何も返さず、沈黙だけ流れていく。 (元の場所に、帰られるんですか?)  それは何も言わない。 (……帰らせてください)  懇願するような目つきで見上げると、漸く、それが動いた。返答は、否。首を横に振る。何故かと彼女が問う前に、それが手を差し出してきた。顔の前に出されたその仕草には既視感を抱いただろう。彼女は警戒を強め動こうとしたが、身体はその場に縫い付けられているのか、腰が浮かなかった。  それは、しかし再び彼女を眠りにつかせようとはせず、腰を曲げて肩に手を置いて、二度軽く叩いただけだった。  アランは意図を図りかねたのだろう、怪訝な表情を浮かべていたが、自由に身動きがとれなければ抵抗のしようがない。  困惑を拭えないでいると、それはアランの隣に屈んでくる。壁に寄りかかって眼を閉じている巨大でしなやかな獣を撫でる。その手つきに愛おしさが滲んでいて、アランはまじまじと見つめた。触れられた獣は眼を開けることはなく、ぴくりとも動かない。  きっと、死んでいる。  この世界は死に絶えている。動いているのは、獣を撫でるそれと、アランと、静かに寝息を立てているブラッキーだけ。  アランは水に揺れる自らの掌に視線を落とす。 (私、死んだんでしょうか)  既に諦念が滲んでいる声音に、それは顔を上げる。  生を超越した空間であるなら、数々の不自然は、誰も経験することがない人智の届かぬ世界では成り立つ可能性がある。  掌がゆっくりと畳まれる。 (実感が無い……)  俯いた顔は、光を閉ざして真っ暗だった。その中心の双眼が抱えるは、更に深く昏い、沼底の色。  ぱっと顔が上がったのは、項垂れた手に他の手が重ねられたからだった。望みを失った平坦な表情が、間近でそれの顔を見る。全く違う種族のそれが、彼女の両手を包んで、首を振って、微笑んだ。  絶句するアランを導くように、それは立ち上がり、出入り口に視線を向けた。つられてアランも視線を遣ると、この洞へ伸びるあのおぞましい程に暗い横穴の奥に白い影が見えた。暗闇の中に映える光のようだった。碧い光ばかりが点在している世界に浮かび上がる、異様な揺らめきであった。  固唾を呑んでアランは近付いてくる存在に眼を凝らす。  そして、ぐっと瞳孔が縮まる。 (なんで)  声が微細に震えた。  白壁が鮮やかに映えるキリの町を象徴するようなその存在は、全身を覆うゆったりとしたワンピースのような純白の布を身につけている。目深に被ったフードを模した布が顔を半分ほど覆っているが、綺麗に切り揃えられた黒髪がその隙間に窺え、水に揺蕩うように揺れていた。 (クラリス)  俄には信じ難いといったようだった。ごくごく短期間だったにも関わらず強烈な印象を残していった友人を、彼女は忘れるはずがなかっただろう。 (クラリス……!)  アランの口から大きな水泡が溢れ出した。  俯いた白い衣の下から、淡い化粧を施した唇が動き、僅かに布が浮いて露わになった漆黒の宝石のような両眼がアランを捉えた。凪いだ湖面のように静かだった表情が一瞬驚愕にぶれた。まさしく彼女はクラリス・クヴルールその人であった。  しかし、動揺は瞬時に潜む。ぐっと瞳を閉じ、胸の前で合わせた手の指先に力が籠もる。そのまま前へ、つまりはアランとそれが待っているドームの奥へと歩みを進めていく。  反応に手応えがなく、アランは固唾を呑んで彼女の行動を見守る。  円の中心に向かうのはクラリスだけではない。地に縫い止められたアランを置いて、それも歩み出す。  音すら死に絶えた場所で、惹かれ合うように両者は出逢い、正面で向き合い視線を絡ませる。それは頭に被った貝殻が巨大で、何もせずに立っていると目線はクラリスの方が上になる。クラリスは瓦礫と貝殻の破片が敷き詰められた地に両膝を折り、深くそれに礼をする。  それも返礼し、右手を出す。その指が、クラリスが被る衣の隙間を縫って、額に触れた。  一瞬、衣に隠れたクラリスの瞳が戦慄き、それを隠すように瞼が閉じられる。  暫し石像のように彼等は動かず、クラリスの身につけている純白の柔らかな衣だけが、生きた魚のたおやかな鰭のように靡いていた。不思議な光景を、アランは静観していた。  やがて、クラリスは俯いたままで瞳を開け、ゆっくりと立ち上がった。そのまま顔を隠していた衣が剥がれて、今度は、それの背後で座り込んでいるアランに視線が移った。  心臓が大きく跳ねたアランだったが、クラリスは平静な表情を浮かべていた。そこには、友愛とも呼べるような感情は読めない。  それがおもむろに振り返り、奥へ戻っていく。クラリスもそれを追い、呆然とするアランの前に両者が立った。 (クラリス)  もう一度アランは名を呼んだ。  あの日、あの瞬間、湖上で叫んだ名を。  しかし、近くにしたクラリスは俯いた眼差しを湛えており、焦点が合っていなかった。 (……漸く、話せる)  待望であった声はアランの耳にも届いただろう。透いた声は水底にお誂え向けであったが、表情と同様に声にも感情の起伏はなかった。  アランははっきりと違和感を抱いたのか、瞬時に眉間に皺が刻まれる。 (そう怒ることではない。噺人を通さなければ言葉を交わせないのだ)  クラリスの唇が動き、小さな泡が零れては上っていき、消える。  アランは隣に立つそれを見やり、もう一度クラリスを見た。 (……クラリスじゃない?) (察しが早くて助かる)  それが微笑んだ。クラリスは無表情のままで。  そして、それはしゃがみ込み、座るアランと視線の高さを合わせる。 (直接貴方に語りかければ、貴方を破壊する可能性があった)語るはそれの方だが、実際の声は脇で棒立ちになっているクラリスであるというのが不思議であった。(噺人以外を呼んだのはいつ以来か。よく参った) (呼んだ……)  アランは戸惑いながら、それを見据える。 (貴方は、水神様ですか?)  ��の空間にやってきた際の問いをアランは再度投げかける。 (今や、形だけだがね)  水神は、自嘲めいて呟いた。正しくは、呟いたのはクラリスの口ではあったが。 (あまり驚いているようには見えんな) (驚いていますよ。でも、そうだろうなとは思っていたので) (最初、私にそう問いかけたね。虚を突かれたものだった。貴方は想像を少しだけ違えてくる)  水神は微笑んだ。 (だから興味深い。人間は皆、面白いのだがね。……たとえば、ずっと尋ねたかったのだが、貴方は、ここにやってくる時何も感じなかったのか)  感じる、とアランは呟いて口から小さな水泡が零れた。 (暗闇が纏わり付いてくるような感覚。無性に不安に駆られるような、或いは囁きが聞こえてくるような、厭なものを、何か感じなかったか) (何も。……いえ、確かに、厭な感じはありました。重くて、寒気がするような。でも、それだけで) (そうか)  水神は眼を細める。  そのままゆっくりとクラリスの横を擦り抜けて、アランの前に屈むと、右手が彼女の頬に触れた。アランは一見毅然とした表情で、ぶれることなく水神の顔を見つめる。 (まみえた時に先ず解った。とても昏い目つきをしている)  頬を撫でる仕草には、慈愛を含んでいるようであった。 (心を閉ざしているのだね)  揺れる毛先を手で避ければ、碧い光に照らされるばかりの栗色の双眼が露わとなる。 (ここではむしろ心は露わとなる。肉体に守られている精神が剥き出しになれば、自ずと安定を失い、蔓延る気配に毒される。以前、多くの異形の者達が砕かれていった。この世界には癒やされることのない怨念が沈み、根付いている) (この世界は、どこなんですか?) (どこだと思う)  アランは暫し一考し、顔を上げる。 (死後の世界) (当たらずとも遠からず)  水神は苦笑する。 (それが真だとすれば、貴方もそこの獣も、このクラリスも死んでいることになる) (ああ……)  納得したようにアランは相槌を打つ。  水中でありながら生きているように存在している不思議な状況下で、アランやブラッキーの存在がいかほどかは不明であっても、クラリスは水神の言葉を民に伝えるためにキリに戻る。であれば、彼女は死んでいるはずがない。 (でも、ここは、キリの湖の底でしょう、きっと。私は湖に跳び込んで溺れるブラッキーを助けようとして、そうしたら突然大きな波が立って、水の中に引き摺り込まれて、それはなんとなく覚えているんです。……眼が醒めたら、ここにいました) (確かにここは湖の底だ。しかし、異なる。水底の更に奥。生ける者は来られない場所)  アランは唇を噛む。 (それって、死んでいるということでは) (いいや。貴方も獣も死んではいない。肉体は鼓動を続けている。辛うじてだがね。肉体と精神が離れているだけで、死ではない。今の貴方という存在は、貴方という魂そのものなのだ。獣も、クラリスも同様) (魂……) (理解したかね)  アランは自分の手を覗く。碧い暗闇に浸り、水の動きに合わせて指先が揺れている。しかし、薄れるわけでも溶けるわけでもなく、確かにそこに存在していた。 (全然、解りませんし、変な感じですけども)ぽつりと言う。(死んでいないということは、信じます) (充分)  満足げに水神は微笑む。  水神はのっそりとした動きでアランの正面に座る。クラリスは対面する彼等の中間地点で、双方の顔が見える位置に無言で続いた。純白の衣が動きに合わせて海月のように揺れる。クラリスは相変わらず無表情であり、そこに自我は無い様子だった。 (貴方を呼ぶのに)  両者に挟まれたクラリスの声で、水神は語りかける。 (特別な理由は無い。しかし、貴方のことは知っていた。彼女が噺人として初めてここにやってくる日、貴方が彼女の名を湖で呼んでいたと、知っている) (……え) (必死に呼んでいただろう。喉が枯れるほどに叫んでいた)  アランは目を丸くし、まじまじと水神を見つめる。 (聞こえていたんですか) (聞こえていた。視えていた、という感覚が近いが) (そんな)  アランは小さく狼狽える。  エクトルですら湖上に少女とエアームドの姿があったと人伝に後から聞いたという話だった。であれば、クラリスに届くはずもなく、誰の耳にも入ることのない無意味な行為として消えたはずである。 (まさか、クラリスにも聞こえていたんですか) (彼女からは聞いていない。しかし、クラリスは貴方の話をしていた。それから、貴方の友人や従える獣の話も。噺人でクヴルール以外の話題、それも外部の人間に関する話をするとは随分珍しいから興味深かった。湖上で呼んでいたのが貴方だとすぐに解った)  アランは意志を持たないクラリスを見やった。  整った横顔は凜とした気配を漂わせながらも、決してそこに彼女は居ない。 (だから私は貴方を認知したのだ。湖面に触れた瞬間に理解した。血の気配は標になった。そして呼んだ。貴方を呼んで、そして貴方はここに来た。長い行程だったろう)  水神は静かに慮る。  水底の森を探りながら進み、辿り着いた長い洞窟を、碧い灯りを頼りに抜けてきた。窮してもおかしくはない暗い道程を思い返したのか、アランは沈黙し、静かに頷く。視界はほぼ暗闇であり、本来であれば暗闇に作動するブラッキーの発光習性も全く機能しなかった。慎重な旅路ではあったが、暗闇に屈せずに歩く姿は、光を求めて手探りで彷徨う生き物そのものだった。 (自分の足音すら聞こえなかったのに、何故かずっと誰かに呼ばれているような気がしていたんです。見えない糸を、ずっと手繰ってここまで来たような) (事実、私は確かに呼んでいた。声ではなく、意識を寄せていた。意志を拡げれば、私達は繋がることができる。その波紋を掴んだ貴方はここに来た。だが、この外はあまりに深い森だから、迷い込んだまま自分の形すら失う魂も少なくはない) (それは)一度考え、アランは再び口を開く。(消える、ということですか) (消えるわけではない。迷ったままなのだ。しかし迷い込んだことも解らなくなり、いずれ自分を忘れる。そうして自分の輪郭を保てなくなり、砕け、暗闇に溶ける。水は蒸発しても消失しないだろう。同様に、魂は消えず漂い続ける。そこに意志は最早無いが、彼等の思念が更にこの世界を濃くする。暗い、寂しい、悲しい……母を呼び、父を呼ぶ。愛する者を呼ぶ。私はいつも耳を傾けている。目を瞑ると、聞こえてこないか)  促され、アランは躊躇いがちに瞼を伏せる。  碧い光が遠くで揺らぐ中、暗い空間を暫く見つめていた栗色の瞳が静かに姿を現す。 (聞こえません)  凜とした言葉には、偽りも強がりも透けてこない。  クラリスの声で、そうか、と水神は呟く。 (水底に響く激情を抱えながらも完全に閉ざすとは考えにくいが。それでいてここまで辿り着いた。不思議なものだ) (閉ざすって、心を?) (そう。魂そのものでありながら、その器の更に内側に心をしまいこんでいる。だから干渉されない。その獣が歩く力すら失ったのは、無数の魂に感化されたためでもあるだろう) (ブラッキーが……いなくなるかもしれないんですか?) (その獣は、ブラッキーというのだね)水神は微笑みを深くして、ブラッキーに視線を遣った。(それは彼次第であり、貴方次第でもある。少なくとも貴方がブラッキーを覚えている限り、彼は彼で在り続けるだろう) (忘れるなんて) (人は忘れる生き物だ)  水神はアランの言葉をしんと遮る。 (この獣はそうでなくても不安定だ。強い憎悪を感じる。彼を繋ぎ止めておきたいなら意識を向けなさい。肉体から離れた魂は脆い。記憶は存在証明となる。心象によって存在は形作られる。クラリスのことも、きちんと覚えていられるように) (クラリスも……) (彼女の場合は少し特殊だがね。けれど、感情豊かな彼女を形作るのは、貴方達の存在も小さくはない) (クラリスは……怨念というものが、平気だったんですか) (噺人と私の間では繋がりが殊更強い。だから彼女達は誘いを辿って迷い無くここにやってくることができる。そこにたとえ感情が無くとも)  淡々と話す水神の言葉に、アランは沈黙する。 (むしろ、感情はできるだけ無い方が安全ともいえる。魂に共感して不安定になるためだ。噺人が外の世界からの干渉を断つのはそこに所以がある。彼女達を守るための方法でもある)  心をできるだけ清らかに保つ。さもなければ、水神の元へ辿り着くことすら出来ない。地上にて、エクトルはアランにそう語った。 (でも、そんなのは) (言わんとすることは理解する。噺人を呼び止めようとしていた貴方のこと。私も、正しいばかりではないと考えが移りつつある)  アランは憂う水神の表情を凝視した。 (だから暫く噺人を選ばなかった) (……クラリスは、久しぶりの噺人、なんですよね) (よく知っている。彼女から聞いたか) (はい) (未来を視る鳥獣のことも知っているか) (ネイティオのことですか) (彼等には惨い思いをさせた) (そうしたのはクヴルールの人達です) (きっかけを作ったのは私だ。そんなつもりはなかったと言っても、漂う獣達は許さないだろう)  水神と同様、未来を正確に導き出す特殊なネイティオを作り出すまでに、クヴルールは生まれない噺人の代わりにネイティオを水神の元へと送りこもうと試みた。しかし、ネイティオの魂は水神の元に辿り着けずに魂は壊れたのだろう。嘗て傷だらけになって帰ってきたという鳥獣の肉体と別に、帰り損ねた心は永遠に水底を飛び続けている。 (ネイティオが可哀想で、噺人を選んだんですか) (いいや)水神は僅かに首を振る。(人間の行動は意外ではあったが、気にも留めていなかった) (じゃあ、どうして)  水神は沈黙した。クラリスに劣らずまっすぐとした言葉を投げかける。 (ここには時間という概念が殆ど無い)  ぽつりと水神は呟く。 (貴方はキリの人間ではない。噺人の本来の由来を知らないだろう)  アランは頷く。 (元々は、ここに留まる私達に時を報せ、水底に朽ちた嘗ての町の噺を伝聞するための存在だった。未来予知は副次的なものに過ぎない。彼等の欲するものを与えただけ。……嘗て、キリの民は私の教えた未来を信じて生活していた。ほんの少し、いくらかの日を超えれば嵐が来る、或いは初雪が降る、���天の吉日、些細な事象を含めて分け与えた未来を一つの柱として生きていただろう。しかし、今や、私が居なくなろうと、その役割は私だけのものでないと証明された。水神という存在を必要としない者も多くいるだろう。私の与えるものに価値は消えつつある。それは人間にとっての私自身の価値に等しい)  存在そのものを尊重された生き物が、長い時を経て、人々の記憶から失われていき、代わりに生まれたものによって価値は低下していく。新しきが古きを駆逐し、変容していく様と同じように。  そして、少しずつ忘れられていき、朽ち果てていく。 (……それでも、噺人をまた選んだのは……)  アランがしんと入り込む。 (寂しかったから、ですか?) (寂しい、か)  情緒的だ、と水神は言う。 (太陽も月も無い、時間の無い水底における時の指針。それが噺人。貴方が現在を知るために空を仰ぐように、私は噺人を寄せた。それだけのこと) (でも、未来を視ることができるんですよね) (未来は過去の先にあり、現在の先にある。現在という点が解らなければ、視える点を測ることは出来ない。春の嵐、夏の夕立、秋の木枯らし、冬の吹雪、重なり得ないものが重なる。今が解れば何が過去で何が未来なのかは自ずと判明する)  アランは顔を顰める。 (解るような、解らないような) (生きている貴方は理解しなくてもいい。生きるとは時間の中にいることに他ならない。生物は存在そのものが今であるのだから) (……水神様は、生きてないんですか) (私は長く水底に居座り続けている。この場所自体が時の流れから隔絶されている。死んでいるとも、生きているとも言える)  相変わらずアランが悩ましげな表情を浮かべている姿を、水神は微笑ましく見守った。 (貴方は知りたがりのようだ。ここに居ればいずれ自然と理解できるだろう)  水神は立ち上がり、アランの一歩前にやってくる。天井の碧い光を浴びて、アランには水神の作る大きな群青の影がのしかかる。彼女の目はぼんやりと濃く碧い逆光の中にいる水神を見つめ返した。 (私と居るか)  時の流れない、誰の言葉も届かないこの水底に。  アランは再度口を動かした。しかしその直後、がくんと頭が前に揺れる。瞼が重くのしかかろうとしている瞬間を耐えるように持ち堪えた。 (負荷が大きいのだろう) (何……) (少し眠るがいい。心配せずとも、ここでは時は無限だ) (でも……、まだ……)  水神の右手がアランの瞼に迫る。彼女が水神の棲むこの場所へやってきた時と同じ動きであることにアランは気付いたかどうか。碧い影に更に暗闇が被さって、クラリスを映した暗い視界を遮り、柔らかな掌が触れた。強張った表情が和らぎ、抗う隙も無く彼女の瞼は閉じられた。  浮かぶことなく、地上で重力に従って倒れ込むように、アランはそのまま前へと倒れていった。  意志を失った魂を水神は受け止める。  そしてゆったりとした動作で上半身を起こし、背後に横たわる巨大な獣にまた寄り添わせた。眠るアラン、ブラッキーの顔は苦しみとは無縁で、穏やかな顔つきをしている。  おやすみなさい。水神はぽつりと呟き、クラリスとの回路を切断した。 < index >
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yuupsychedelic · 4 years ago
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詩集「Aries -白緋-」
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Yuu「Aries -白緋-」(YSSP-001)
1.「わたしたちの詩」 2.「青春あれ」 3.「人生のすれ違い」 4.「ふつうびと」 5.「桜糸」 6.「BOX男」 7.「グリムセイ島より」 8.「色恋沙汰のない世界」 9.「白緋 ~裏表一体~」 10.「いらない!」 11.「From Chat」 12.「新しい旅」
1.「わたしたちの詩」
君を守りたい 愛を護りたい 見えない壁 ぶつかったまま 青春 踏み出せなかった
憧れたのは自由 見つめたのは未来 あの頃の僕らは影を知らない
Wow Wow Wow わたしの詩…… ひとりからふたりへ ふたりからみんなへ 繋がる想いが波になる
Wow Wow Wow わたしの詩…… 大切なひと 守りたいこと 目の前の道だけ信じて
虹の棲む空 星の降る街 見えないもの 信じられないまま わたしは大人になった
今日からでも遅くない 素直になるのは 誰のためでなくわたしのため
Wow Wow Wow わたしの詩…… 喜びとか悲しみとか 優しさとか怒りとか 時を繋いで時代になる
Wow Wow Wow わたしの詩…… 人が風を好くのは 明日を信じたいから 走り出す一歩がいつか星になる
めぐり逢うのは使命 望んだのは運命 三度続いた偶然は宿命 その感覚をもう一度信じてみよう
Wow Wow Wow わたしの詩…… ひとりからふたりへ ふたりからみんなへ 繋がる想いが波になる
Wow Wow Wow わたしの詩…… 大切なひと 守りたかったこと 目の前の道だけ信じて
手を繋ごう 声に合わせて…… 誰かのために生きるわけじゃない わたしだけの道を歩こう 闇の中にきっと光りはあるから
Wow Wow Wow わたしの詩…… 走り出す一歩が いつか星に変わるよ 必ず!
Wow Wow Wow わたしたちの詩…… Wow Wow Wow わたしたちの詩…… Wow Wow Wow わたしたちの詩……
2.「青春あれ」
新しいクラスに馴染めず 昼食は屋上で摂る日々 友達が出来ないことを僕は いつしか誰かのせいにしてた
そんなある日だった 見知らぬ少女が目の前に現れて ただ僕を無言で見つめている 気まずくて声をかけた時 いきなりザーッと雨が降り出した
光る黒髪、ぎゅっと握った手は 駆け出す青春の鐘 高らかに告げる合図
誰かを好きになるなんて 想像もできなかった 恋人が出来る度 馬鹿にしてた僕だけど いざ恋すると幸せを感じた
あれもこれも全部君のせい 予測不能な感情は 毎日変わる波のように 揺れ動く僕を抱きしめる
ほっとけなかったんだ 好きになったキッカケ 君は魔法みたく そっと心に棲み付いた
そんなある日だった 僕は自分の想いを伝えようと決めた 告白なんてしたことないけど 当たって砕けろ! いつもそうしてきたじゃないか
「ずっと好きでした」緊張性エモーション 涙ぐみ微笑む君は 世界で一番好きな人
君に出逢ってから僕は 少しずつ変わった
クラスメイトの眼も 日常も一瞬も 何気ない日々が色づいた
あれもこれも全部君のせい 予測不能な感情は 毎日変わる波のように 揺れ動く僕を抱きしめる
世界で一人だけの大切な人 僕らに青春あれ!
いつか旅行先で 君がそっと肩にもたれかかり 気持ち良さそうに眠ってた時は 僕の心は舞い上がってしまいそうだった こんな想いにさせてくれたのは 君なんだ 君だけなんだ
大好きだ! 愛してる! 想いが止まらない!
あれもこれも全部君のせい 予測不能な感情は 毎日変わる波のように 揺れ動く僕を抱きしめる
誰かを好きになるなんて 想像できなかった
恋人が出来る度 馬鹿にしてた僕だけど いざ恋すると幸せを感じた
いつか終わりが来るなんて 今は考えたくない 一度きりの日々 この瞬間だけを 世界で一番大切にするんだ
あれもこれも全部君のせい 予測不能な感情は 毎日変わる波のように 揺れ動く僕を抱きしめて
この愛のすべてを 君に贈りたい
3.「人生のすれ違い」
久々のセンター街 楽器屋への道中(みちなか) 随分街は変わったと 周りを見渡せば
すれ違う人生 交差するドラマ ふと気づいた瞬間 不思議な気持ち
ぼーっと生きてちゃ 何も気付けない 人は誰もが 私というドラマを 演じてるもの
行きつけのカフェ いつものコーヒー マスターは淋しげに 終わりを嘆く
破れた夢に かける言葉がない ふと気づいた一瞬 少し大人になる
さーっと歩いてちゃ 何もわからない 人は誰もが 私という嘘を つき続けるもの
素直に生きてるつもりでも 些細な嘘から逃げられはしない 愛することは嘘をつくことさ 最初は違っても ときめきを信じることさ
すれ違う人生 交差するドラマ 気づいた瞬間(とき)には 君もドラマの主人公
ぼーっと生きてちゃ 何も気付けない 人は誰もが 私というドラマを 演じてるもの
4.「ふつうびと」
自分のこと 取り柄なんてないって ずっと信じてた みんな凄いのに 恐縮してばかりで 何故ここにいるのか そもそもいていいのか 逃げ出したくなった
クラスメイトは優しい いつも励ましてくれる 困った時には助けてくれる 嬉しい時には笑い合える すべて理想的なのに 私だけが理想じゃない いつの間にか自分のことが 何もわからなくなった
文化祭の時も体育祭の時も 何かをやるわけもなく 言われたことだけをやった そうするしかなかった 透明人間になりたかった
私はふつうびと 自転車立ち漕ぎで 気付かれないよう…… 誰よりも早く学校へ行き 誰よりも遅く家に帰った
何���こんなに嫌ってたのか 思い返す度に泣きたくなる もっと歩み寄ればよかった 後悔が止まらない
いつからだろう? 自分のこと やけに繕うようになったのは その度に私は傷だらけ
本音で話せなくなった 言いたいことも言えなくなった 友を傷つけるのが怖くて ひとりでいる時間が増えた
誰か気付いてよ わかってよ 何も言わなくちゃ伝わらない そんなの知ってるよ
でも出来ないんだ 今の私には
時は流れた 何回か桜が咲いて散った 出逢いと別れを繰り返して 大人と呼ばれる年齢になった
空っぽの心を物語で満たす日々 外に出てはいけない 誰かに心配をかけてはいけない 枕元だけが自分になれる場所 涙も流せなくなった
星空に癒されたり かわいいに憧れたり 色々ありすぎた十代の日々
何をしようとしたのだろう? 何を掴もうとしたのだろう?
今の私を見てごらんよ 誰かのせいにしてばかりだ 生きることさえ諦めたくなる 夢なんてない 見せかけの夢はあっても 未来など見えない
これが望んだ姿か 鏡を見る度に自分が嫌になる 夢中になれるものを見つけたつもりなのに 外面ばかりが気になりすぎ 素直な言葉で語れなくなった 思い出話では何も満たされないよ 世間話では何も始まらないよ 他愛のない会話にも怯え続けたまま 普通になろうとした日々 今も続いてる
普通に生きるってこんなに難しい 夢を見るってこんなに恥ずかしい
いつか共に夢見た君は 今や世界中のスーパースター
そろそろ舞台を去る頃なのかな 自分だけの夢を見つける頃かな 普通になる頃かな ただ切ない
気付いたよ 嫌われることより 何も言われない方が怖い あの日笑顔で手を繋いだ君は 本当は呆れていたんだよね
星座に想いを重ねても ただ通り過ぎるだけ 安らかな夜に激しく吹く 僕の風に気付かない だから僕は星座になる 普通じゃない誰かになろうとする
それが既に間違っているのに 愚かだね 間抜けだね 誰かの嘲笑を待っている 本当は違うのに 素直になりたいだけなのに
どうしてこんなに不器用なのかな 真実を語ろうとするのかな わからない
5.「桜糸」
糸に桜を繋げば 永遠になると信じてた 微かな風 流れる景色 かつての無垢を返してよ
青春時代を過ぎて 大切なものを失った 遥かなる夢 大切な恋人 あの日私は飛鳥(ひとり)になった
翼は折れたまま 飛び立つことを拒み 衝動を強さと勘違いして 独りになろうとした
街の外れの池で 抱きしめあう鳥 ふと見つめていたら 何かが見えた気がする
忘れていたこと もう一度始めてみよう あの頃桜咲く前に夢見た場所 今なら飛べるかもしれない
星に色を垂らせば 時を止められそうな気がした 激しく吹いた風 変わる時代よ いつか私を惑わせたよね
ハッシュタグで何も語れない 語れるのは瞬間だけ この素晴らしき人生 誰にも譲れぬ愛 やっとわかったんだ
折れた翼に 虹色 糸を紡ぐと 以前よりも強い力で 飛べる! もう迷わない……
小さく見える大地 いつか人が見た夢 当たり前のこと 当たり前じゃない 今更気付いたよ
あなたがいたから もう一度飛べたんだ 私のことが嫌いでもいい 伝えさせて 世界で一番好きだと
影に光りが差したら 道は目の前に 何気ない声が道標になる そして信じるべき翼にもなる
糸に桜を繋げば 永遠になると信じてた 今ならわかる 躊躇せずに言える 夢中になれるって素晴らしい
忘れていたこと もう一度始めてみよう あの頃桜咲く前に夢見た場所 今なら飛べる気がするんだ
あなたがいたから もう一度飛べたんだ 嫌いでもいい 伝えさせて 世界で一番好きだと
本当に大切なのは 誰でもない自分を信じること
6.「BOX男」
BOX BOX BOX BOX BOX BOX Focus Focus Focus Focus Focus Focus
何もしてないつもりなのに 笑い声がするよ 僕を見る君の視線が 胸に突き刺さり 傷痕は広がっていく
BOX BOX BOX Focus Focus Focus
穴があったら入りたい 逃げ場があるなら逃げてみたい スーツケースでも良いから 知らない街へ逃げ出したい
TAP TAP TAP HIP HIP HIP HOP HOP HOP POP POP POP
単語の羅列ばかりのメッセージ 絵文字に頭が痛くなる 僕の声には反応しないくせに クラスで人気のあいつには 決して既読では終わらせない
BOX BOX BOX Focus Focus Focus
殴っていいなら殴りたい 喧嘩していいなら打ちのめしたい でもそんな勇気はないから メモ帳に悪口を走り書きしてみた
NI Cu E…… 人のエゴイズム Wa Ru Gu Chi…… 良心が許さない
Ah そんな時に君が現れて ただ一言「ごめん」と言った 他に何も君は言わなくても 潤んだ瞳からすべてを察した
何も言えないよな 言い出せないよな 小さな社会はあまりに大きすぎる
BOX BOX BOX Focus Focus Focus
穴があったら入りたい 逃げ場があるなら逃げてみたい スーツケースでも良いから 知らない街へ逃げ出したい
BOX BOX BOX Focus Focus Focus
今は君がいてくれるから まだ生きようと思えるんだ ネガティヴな僕を変えてくれたのは 他でもない君だけ
BOX BOX BOX BOX BOX BOX CHANGE CHANGE CHANGE CHANGE CHANGE CHANGE
それでも世界は変わらずに 誰かを傷つけている 無感情的な悪意ばかりが 形なきまま拡散する
人はいつしかそれを『世間』と呼んだ
7.「グリムセイ島より」
レシプロ飛行機で 北の果てへ行く 忘られぬパフィンの面影(こえ) 今も君に重ねて
寂れたGSに When were you born……?? 何度問いかけても 返らぬ答え
真っ白なオーロラは いつかの僕を抱きしめる 手紙にはキスマーク 見知らぬ文字
それでも…… 僕は一途に 君だけを愛してる!
レイキャビクに帰れと 夢に君が現れて 逃げ水のようなダンス 僕を惑わせる
誰かの傷痕に When were you born……?? 歴史は繰り返す 遠距離恋愛
祈るのは君のため 便りなくとも愛したい だけど惑わすのは 見知らぬ文字
それでも…… 僕は一途に 君だけを信じてる!
数千キロの恋模様 カモメの声が懐かしい 夕陽のクリフ 君を抱きしめた 運命とわかっても 未だ諦めきれないよ
真っ白なオーロラは いつかの僕を抱きしめる 祈るのは君のため 便りなくとも愛したい
だけど僕を惑わすのは 誰かの代筆文字 そして見知らぬキスマーク
それでも…… 僕は一途に 君だけ信じて 夜空に願いを込め 胸いっぱいの愛を叫ぶ 君だけを愛してる!
8.「色恋沙汰のない世界」
気になるアイツに 今日も声かけられず 妄想恋愛浸るばかりで 益々堕落してく
ある日突然! 正体不明のDelivery 心ときめき止まらずに 思わず封を切った
Hey, come on! The dawn of a new era!! ボタン押すだけ超簡単 これで君もCyborg
騙し騙され Fake News! 君にフラれた Bad News!! 赤いアイツのおくりもの やっと言えるよ『グッバイ恋愛!』
大嫌いなアイツが 誰かに振られたらしい 被害妄想募るばかりで 呟く『こんなの俺じゃない……』
全部正体! 人は仮面を被れない バレる嘘は吐(つ)くなと No! No! No!
Hey, come on! The dawn of a new era!! ボタン押すだけ超簡単 アイツを消せる便利道具(Good Tool)
騙し騙され Slapstick! 感じ感じて Love Comedy!! 赤いアイツのおくりもの やっと言えるよ『グッバイ恋愛!』
騙し騙され Fake News! 君にフラれた Bad News!! 赤いアイツのおくりもの やっと言えるよ『グッバイ恋愛!』
僕は僕の人生を往く やっと言えたよ『グッバイ恋愛!』
9.「白緋 -表裏一体-」
幼い頃の夢を見た カンバスに色を塗る夢だ 最初は鮮やかだった 無邪気な色だった だが時が流れるほど その色は涙になる
自由だった頃の面影 追跡する 誰もが血を知らないまま 大人になった
Across adult or child……?? その差は何処に?
街で暴れる大人たち 家に閉じこもる子供たち 大人は子供を見くびらないで 子供は大人を怖がらないで
無責任な奴ほど声は大きい カンバスを染めるのはそんな奴らさ 東京孤独ステーション 白緋(はくび) すべてが表裏一体の世界
ニュースは涙を流す 人は涙を広げる 一人の声が世間になり 誰もが自分を嫌いになる だが未来の僕らを信じて 立ち上がる人もいる
今をあきらめないで 叫びたい 誰もが自分の夢を 諦めるその前に
Across Dream or Real……?? その差は何処に?
いつか夢見た大人たち 理想を叫ぶ子供たち 大人は子供を止めないで 子供は大人に染まらないで
現実を知るほど夢を見づらくなる 時を動かすのはそんな奴らさ 惑星・孤独の星 白緋(はくび) すべてが表裏一体の世界
Across live or died……?? どこで誰が決める?
強い人なんていない 弱い人もいない だから自分を見くびらないで
この宇宙が生まれた時 誰もが同じだった 何も知らぬまま 生きるしかなかった そして人に知恵が生まれ 誰かが夢を見る時 同時に争いも生まれた 銀河系何処へ行こうとも 生物ある限り 闘わなければならない どんなに今を愛してても それが宿命なら
Across peace or war……?? その差は何処に?
すべてはパズルのようだ 誰かの声が傾斜する 東京孤独ステーション 白緋(はくび) すべてが表裏一体の世界
地球生まれの僕らに 今できることはなんだ? 祈る前に今何かを始めよう 惑星・孤独の星 白緋(はくび) すべてが表裏一体の世界
10.「いらない」
あれもこれもいらない! 無駄だからいらない! 使わなさそうだからいらない! 気に入らないからいらない!
こんな世界で夢追いかけても 何も変わらないとわかっているから
夢なんていらない 愛なんていらない いっそ全部捨ててしまおう
君もあなたもいらない! この街にいらない! 社会にいらない! 間違えてるからいらない!
一生子供のままでいい 世界に大人なんて一人もいない
光なんていらない 影なんていらない いっそ全部捨ててしまおう
人はいらない! 生き物もいらない! 地球もいらない! 太陽系もいらない!
星なんていらない 宙なんていらない いっそ全部捨ててしまおう
時間はいらない! 過去も未来もいらない! 無も有もいらない! ありとあらゆる偶然も必然もいらない!
いらない! いらない! いらない!
11.「From Chat」
言葉は柔らかく 想いは激しく それがすべてだった
だけど待ち合わせ場所 現れたのは まったくの別人だった
後部座席で悟った 『やってしまった』と 気付いた時にはもう遅すぎた 声を奪われた
確かに愛してた あなただけはと信じてた 気付く前に裏切られた 総てを奪われた
From Chat ずぶ濡れのコートに愛はない
真っ暗な部屋 ぽつぽつと水滴 それがすべてだった
だけど微かな希望 一ミリでも あなたに愛があれば
翌日の朝 打ち砕かれた想い 流れる汗 何故この道を選んだのだろう?
確かに愛してた あなただけはと信じてた 気付く前に裏切られた 総てを奪われた
From Chat その笑顔に愛はない
いつか来てくれるはずと 初めのうちは信じてた だけど二人でいるうちに 同情している私がいた
気付いた時には遅すぎた 君が来るのは遅すぎた
From Chat 傷だらけのハートに明日はない
12.「新しい旅」
何かあったわけじゃない ただ旅をしたい 鞄に服とお金だけ詰め込んで 知らない電車に揺られたい
何も見えないほど まっすぐ広がる縁 人々の暮らしを繋ぐ橋が 無性に愛おしい
さあ旅に出よう 迷子になろう 終点のない旅も たまにはいいじゃない
さあ前を見よう 君を信じよう 行きたいところがあるなら それだけを見てさ
空はもくもく青い夏 あと少しで今年も 旅をしたくなる季節がやって来るよ
半袖の少女が すぐ傍を通り過ぎていく その後ろには少年が 必死にペダルを漕いでいる
シャンペンサイダーが いちばん合う季節 君も私も夏が好き 暑さだけは少し手加減してほしいけど
さあ旅に出よう 踏み出してみよう 知らない世界へ飛び込む またとないきっかけ
さあ旅に出よう いつでもいい 君が行きたい場所へ 気まぐれも抱きしめて
空はもくもく青い夏 あと少しで今年も 旅をしたくなる季節がやって来るよ
私はカメラと恋人になりたい
真夜中を越えた私達に もう敵などないよ 春夏秋冬 いつでも好きな季節に旅へ出よう
新しいことを始めよう 普通らしさなんていらないよ 好きなことに夢中な人がいちばん美しい
さあ旅に出よう 迷子になろう 終点のない旅も たまにはいいじゃない
さあ前を見よう 君を信じよう 行きたいところがあるなら それだけを見てさ
空はもくもく青い夏 あと少しで今年も 旅をしたくなる季節が…… 目の前に
Bonus「さよならストーカー」
君に言われなくたって 私のことは知ってるよ 髪を切った時「失恋した?」とか 正直鼻につくんだ
どんな髪型だって メイクしなくたって 私がかわいい そう思えるのなら 別にそれでいいんだよ 何も言わないで
きっとずっと見守っててよ 恋よ愛よ全部ぎゅっと 自由になりたい
SNSでリプ欄を閉鎖した でもエゴサしたら悪口ばかり 毎日続くと嫌になるよ 私も人間だから
自然体でいろって なんて不自然なんだろう あの歌を口ずさみ 憎しみへのレジスタンス どうでもいいのに 付きまとうあなたへ
いつもそばで見守ってるよ 夢よ明日よ全部ぎゅっと 気持ち悪くて
こんな日が始まる前から マスクは手放せなかった わざと似合わぬメイクをして 見えない影に気付かれぬように ビクビクしながら街を歩くのは もう嫌なんだよ
パッともっと素直になれよ アッと一途言わせてくれよ うるさい!
どんな髪型だって メイクしなくたって 私がかわいい そう思えるのなら 別にそれでいいんだよ 何も言わないで
きっとずっと見守っててよ 恋よ愛よ全部ぎゅっと 自由になりたい
【クレジット】 All Produced / Written:Yuu Sakaoka With our Respect to Takashi Matsumoto, Eiichi Ohtaki, Yasushi Akimoto, Toshihiko Takamizawa, mibuki, Takuro Yoshida, Bob Dylan, Pete Sinfield, John Lennon
Special Thanks to My Family, my friends and all my fans!!
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yume-tsukino-blog · 8 years ago
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エミリーに薔薇を
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エミリー・グリアソン(Emily Grierson)
ウィリアム・フォークナー著『エミリーに薔薇を』の登場人物
愛を知らない少女。
エミリー・グリアソンがこの世から去ったとき、町じゅうのひとたちがその弔いの宴に参加した。男たちはかつて憧れていた高嶺の花を見るために、女たちはいまだ誰も見たことのない家のなかを見たいがために。
彼女はジェファーソンという町に残された、最後の偶像だった。 「街」ではなく「町」。その些細でありながら重大な違いは、皮膚感覚の違いでもある。
町は彼女を見逃してはくれない。「かつて」と「いまだ」を同時に貼りつけた存在である彼女を、閉塞的に監視している。視線の糸は蜘蛛の巣のように絡みあい、その透明な糸で彼女を縛る。彼女は身動きを封じられる。
絹みたいに光る肉に、真綿のようにくるまれた幼子だったころ、彼女は世界の祝福の乳をのむ幸福な子どもに過ぎなかった。
世界中を「目」で歩いた。
見ることは触れること。
浮かびあがるもののかたち、知らない輪郭。観ることは覚えること。はじめて出逢った景色、鮮やかな色彩。
視ることは捉えること。
わたしのいる場所、あなたの好きなもの。たくさんの「みる」をめであるいた。歩きながら心のなかで旅をして、時間の呼吸の音を聴き、あふれる未知を数えあげていたころ、すべてが尊く、生まれたての目線で生まれたての世界をみていた。
そうよ、わたしのちいさな世界。隔絶された領域。あのまだ見ぬ闇の、やさしい時間。
いつからでしょう。
わたしはそのちいさな世界のなかに疎外されてしまったのです。幼子のままで。
いつまでも子どもでいることはできないように、「闇」を知らずに大人にはなれない。
そのとおり、そのとおり。
わたしは「闇」を知りました。それにもかかわらず、わたしは「大人」にはなれませんでした。世界はもう、わたしに白い祝福をあたえてはくれなかった。その乳からあふれるのは、黒い呪詛でした。
「見る」ことも「視られること」も、わたしにはもう呪いになってしまった。
愛なんて知らない。でもわたしはあのひとと結ばれることを望んだ。あのひとはわたしをごまかしつづけた。
あのひとはわたしのなかに巡る呪詛を浴びました。わたしもまた眠ろうと思います。この呪いにくるまって。
愛なんて知らない。そんなものはいらないから、わたしに花嫁衣裳を着せて。あなたの屍を抱いてあげるわ。
おやすみなさいをいうかわりに、わたしに薔薇をちょうだい。愛のように、真っ赤な薔薇を。
—―そうして、偶像は崩壊した。
画・ダリ/瞑想する薔薇
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u-rouge · 6 years ago
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相も変わらず楽しい、なんて本当に俺はこの子のことが好きみたいです。いや、ハハハ!って笑いたくなる程ガチデレしたわ、クソ。狡いのは俺じゃないんだよな、分かってる?オムライス成功したのと失敗したのを見せてもらったけども、顔を書け!って勘違いしたのか、ちょっとブサイクなニコちゃんマークみたいな俺の顔を描いてて可愛くて笑っちゃいました。名前とハート待ってる、って多分これは何回も言った気がしてる。俺はずっとこれしか言ってない、もはや!ちょ、早く写真な!待ってんだから!俺の食生活がやばい程安定してなくて弁当弁当弁当弁当だからオムライスが死ぬほど食いたくなりました。もう何ヶ月も食ってない。死にそうになる。手作り何時か食わせてね。その時は勿論俺の大好きなふわとろオムライスで宜しく。あ、オリジン弁当俺のオススメだから食べてね本当美味しいんだからアレ。自炊生活頑張るから俺のこと励ましてくれると嬉しい、まず買い物が面倒臭いからそこから無理なんだけど。って、嫌々、頑張ります。見てろよ。今俺たちのトーク画面の会話開いたら、あの可愛過ぎるで有名な某橋本環奈ちゃんが出てきて思わずデレっとしてしまった。危ない危ない。あの画像保存した?やばくない?本当死ぬ程可愛いよね。分かる。って一枚の写真で語れちゃうのでこの話は終わり。時代に跨る話はもう二人のツボなのでまたゆっくり話そうね。ウエハースとクリームソーダの話も、って思い出すと本当に笑ってまうから辞めよ。一回目の時と同様口説いてたって話もしたけど今思えば凄え懐かしいんだよな。アッツアツな関係やったね、今もアッツアツやけど。本当にあの頃はヘタレの癖に…とか思ってたのは内緒。内緒に出来てないけど、折角だからここで初出し情報。頼りにしてた、というか唯一弱音を吐けて、傍に居て欲しいと思ったのが俺にとってはこの子だけだったので、本当にあの頃は助かってた。名前呼んだらすぐに飛んで来てくれるヒーロー。…いや、ごめんな。プリキュアだわ。愛の戦士だったな、俺にとっては。強い、とは決して思ってなかったけど、包容力というか包み込んでくれる優しさみたいなのが俺にとっては心地良くて、ずっと傍に居たくて、いつの間にかこんなに大切になってて、気付いたら居なきゃならないくらいの存在だった。大袈裟だなーって笑うかもしれないけど、俺にとっては居てくれなきゃならない人であって、離れられたりしたら泣きます。びゃーびゃー泣きます。泣かれたくなかったら、俺の傍にずっと居てね。こんなに長く電話してると切る時がつらくて、いつも切って貰ってるけどそこは申し訳ない。俺切れない。同じ気持ちだったらいいなーって。切り際にいつも俺が言う言葉が有るんだけど、覚えてる? 言わせたいだけです、ただ単にアレは。素直だからこそ伝えてくれることが沢山あるから俺はいつもそれに付いて行けなくて一人で悶絶したりしてて、狡いなー愛しいなーって毎回思わされてるから本当に狡いと思う。前にも言ったように、俺は本当に人にデレないので、マジで貴重だよ���貴重というかもう、本当に何で?ってくらい好きだし。俺をここまでデレさせるって相当なんだよね。姿は何度も変わってるけど、相も変わらず普通に接して、好きだよって伝えてくれて、面白いって言ってくれて、何度伝えても言い足りないくらいには、愛しいなって思うし。いや、またここでもデレデレかっての。恥ずかしいわ。本当に出逢えて良かったって心の底から思ってるよ。何度も何度も伝えてきて、聞き飽きちゃった?まあ、言うのは辞めないんだけどね。大好きだよ。本当に本当に、大好きなんだよ。伝わってるでしょ?自惚れていいよ。自信持っていいよ。此奴に好かれてるんだって。愛されてるんだって。何度も伝えるし。バカップル並にバカな二人なのは自覚済みなんだけどね。多分俺も変だし。最近分かってきた。出逢ってから沢山の感情に気付かされて、あー俺こんなに感情豊かだったんだなって感じるくらいには沢山だった。好きだなって思ったら凄え好きだし、可愛いって思ったら愛しくてしょうがないし、何か言われる度にやけるし、返事返ってこなかったら勝手に淋しくなるし。なあ、これ書いてて思った。めっちゃ好きじゃん。溢れてくるから辞めよ。止まんないんだよね、多分いつまででも語れると思うよ。まだ滅茶苦茶可愛いって話もしてないし。けどそれは俺だけの特権ってことにしといて、他の奴には見せませんので残念。無念。面白いことも言えずに終わりそうなんだけど、大丈夫だよね?いや、許してよ。今回は滅茶苦茶真面目じゃん。真面目過ぎて逆にキモいって引かれないかな。それは心配。取り敢えずまとめると、いつも有難う。大好きだよ。ということです。終わり。 5/1-2 ut.
P.S. 曲がり角の出逢いは漫画やドラマでは在り来り過ぎるけど、俺たちにはそれがちょうどいいなって思った。何でだろうね、きっと多分そこで出逢えなくたって二回目に逢った人混みですれ違って見つめ合ったりして、ドラマチックな出逢い方したいな。出逢いが既にもうドラマだし俺らなら大丈夫かもしれないけど。鼻からイクラとタピオカだし、ブリッジ出来なくてちゃんとその日ブリ食べるし。運命だって、赤い糸引き寄せるからちゃんと俺の元に辿り着いてね。すぐそこまで来といてやっぱやーめた!とか言うの無しだからね。キミが幸せであるように、って誰よりも願ってるから、その幸せに俺も居させて下さいって我儘。
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buriedbornes · 6 years ago
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第28話 『ある術者の1日 (4) - “新しい夜明け”』 One day of a necromer chapter 4 - “New Dawn”
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白々と太陽が夜の淵を染め、新しい朝がやってこようとする頃、屍体の兵士は美しい女性を抱きかかえて小屋に戻って来た。
「ダレン!」
待ち受けていたマルクが、ドアを開けてダレンを受け入れる。
魔法陣の向こう、椅子にもたれ目を伏せる自分が真っ先に目に入った。
意識のない自分の体を前にすると奇妙な心地になった。魂が繋がっているのが見えるが、そこで眠る自分とエミリアのには大きな隔たりがある。
ダレンはこのあとすぐに目覚めるが、エミリアは一生目覚めない。
「すまないが、マルク。エミリアに何か掛ける物を持ってきてやってくれ。俺はこの屍体を埋めてくる」
「分かった……気をつけて」
マルクが奥に引っ込んだことを確認してから、ダレンはゆっくりとエミリアを横たえさせ、外に出た。
屍体を隠すことももう慣れた手順のはずだ。地中に身体を埋め、隠すことなど、心が揺れるはずもない。
だが、今日は妙に疲れた。骨の折れる作業に思え、永遠にこの穴を掘り続けるのではないかと、絶望的な感情が湧いた。
接続を解いてダレンが自らの体に戻る。
「ダレン……」
傍に座り込んでいたらしいマルクが力なく名前を呼んだ。
振り向いたマルクは憔悴しきった表情をしていた。
ほんの数時間前、『これで生き延びられる』と瞳を妖しいほどに輝かせていた同一人物とは思えない。
この一晩でめっきり老け込んでしまった。
恐らく、それはダレンも同じだ。
「――……夜が明けきったら、ヘルマンを弔いに行こう」
ダレンの提案に、マルクは一瞬怯えたように目を丸めたが、やがて頷いた。
死は見慣れたと思っていた。
墓を暴き、死を冒涜し、それに慣れたつもりだった。
それがどうだ?
友人の死を目の当たりに――しかも凄惨な死を――した途端、心が怯んだ。
もう感じないと思っていた痛みや苦しみが込み上げて、深い悔恨がもたげる。
――人の命を弄ぶことに、何も感じないのか!?
ヘルマンの叫びが今では身に染みる。
感じなかったのは、その屍体が『他人』だったからだ。それだけ死の記憶を見ても、その個人の記憶を見ても、それは書物を読むような芝居を見るような感覚に過ぎなかった。
けれど、どうだ。
実際に目の前でヘルマンの死を見ても、同じことを言えるのか。
項垂れていたマルクはゆっくりと顔を上げた。
「……エミリアの屍体も、使うか?」
「……マルク……」
名前を呼ばうことしか出来なかった。
考えることを頭が拒否している。
「使える屍体も残り少ない……このままじゃ朽ち果てるか、掘り返されて喰われるか」
マルクの口調も流石に力がない。
「誰か知らない奴らに、エミリアを使われるだけだと思う。それに……」
その先は畳んだ。
だが、ダレンだって分かる。
微かに首を振ることしか出来なかった。
「――一晩だけでいい。一晩、考えさせてくれ」
「分かった」
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マルクが去った後も、ダレンは屍体に”なった”時の座った姿勢のまま、ただただ動けずにいた。
目を背けずに見れば、エミリアは既に生前通りではないことは分かる。
美しいエミリアが、徐々に永遠に時のない眠りに蝕まれていくのは仕方のないことだった。
輝くほどに白かった肌はくすみ、ハリを失っている。
抱き上げた身体も軽かった。それはBuriedbornesで、屍体の力を上げた影響だけではないはずだ。
やがて、ダレンはぎこちなく立ち上がった。
エミリアの伏せた睫毛を見下ろす。
この面影もいずれ消え失せてしまうのか、それとも、自分達の終わりが先��……。
マルクが言い淀んだ先の言葉を、ダレンだって理解している。
「エミリア……、このままでは俺達もみんな死んでしまう」
お願いだから、目を開けて微笑んではくれないだろうか。
「そっちはどうだい? いいところか? ヘルマンとは会えたかい?」
じっと見下ろしたまま語り続ける。自分自身の手でエミリアに触れることが恐ろしかった。
エミリアの死を本当に受け入れなければならなくなる。
彼女は永遠に変わらない、という思い込みを捨てなければならない。
それならば、
「……せめて、僕が死ぬ前に、君の想いを見せてくれ」
僕は、ずっと君を見ていた。君を愛していた。君を守りたかった。
ダレンは言えなかった熱烈な言葉を、その亡骸を前にしてさえ、やはり口に出来なかった。
ここまで来ても告げられない自分が愚かしく思えるが、エミリアに似合う言葉を探せないのだ。
自分達を救い、光をくれた彼女に陳腐な言葉は似合わない。
ダレンは振り向いた。Buriedbornesのためにマルクが描いたその魔法陣を。
魔法陣の前、先ほどまで埋もれるように座っていた椅子に戻る。
「エミリア……」
このまま死ぬならば、僕は、君のことを、君の想いを、見てから死にたい。
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「欲しいものは、何でも買ってもらえるの。だって、私のおうちはお金があるから」
私が覚えているのは、お姉様が新しいお人形を買ってもらった時に、私にそう嘯いたことだった。
お姉様はその半年後、風邪をこじらせてあっけなく亡くなり、お人形は私の物になった。「お金があっても買えないものがあるのね」ってお姉様に話しかけた。棺の中のお姉様は綺麗な白いドレスを着せてもらっていたわ。
あのドレスを着たいと言って、お母さまを困らせたっけ。
そういう意味で、私はとても恵まれた環境に育ったのだと思う。
お父様は商人をしていて、お母様はいつも窓辺でレース編みをしていらしたわ。何人ものお女中がいて、私は乳母に育てられた。
ヘルマンと出会ったのは5歳のころだった。新しいドレスをこしらえてもらって、遊びに行ったお家の子がヘルマンだったの。
ヘルマンのおうちは将軍様の家系で、立派な騎士の末裔なんだって、お庭にある馬に乗った騎士様の銅像を見ながらヘルマンは教えてくれた。
私達は子供らしい無邪気さで、1日ですっかり仲良くなったの。
今なら分かるわ、私の家は家柄が、ヘルマンの家は経済力が必要だった。そこにお誂え向きの年の近い息子と娘。願ったりかなったり。
でも、そんな思惑なんて関係なかった。
私もヘルマンも、一目でお互いを気に入ったの。お父様とお母様のように暖炉のある暖かな部屋で子供に絵本を読む、年を取ったヘルマンと私が自然と思い浮かんだわ。
だから、帰り際にヘルマンが「おとなになったらお嫁さんにしてあげる」と言ってくれた菫のお花を、押し花にしてずっと大事にしているの。
乳母も家庭教師も厳しかったけれど、お父様とお母様は『愛しいエミリア』って一人娘の私を可愛がってくださった。
お母様は教会の活動にも熱心で、レース編みのベッドカバーや刺繍入りのハンカチーフを差し入れていたわ。
そういう時は厨房でたくさんのお菓子を作るから、こっそりいただいていたの。
「可哀相な人には優しくするのよ」
大きな帽子を被ったお母様は完璧な貴婦人で、私もそうなりたいとドキドキしたものよ。
そんな中だった。
あの可哀相な子に出会ったのは。
「エミリア、何を見てるんだ」
ヘルマンがそう私に尋ねた声は、少し怖かった。
だってまるで命令するみたいだったから。
「……あの子、いつもああね」
「ああ、ダレンか」
大きな木陰に座っている男の子の名前を、何度聞いても私は忘れてしまう。
「親が殺されたんだって。孤児院に来たばかりで、全然馴染もうとしない」
「まぁ、可哀相じゃない」
可哀相だわ。
今まで風景の一部に溶け込むようにいたあの子が、急に立体的になる。
「何か読んでるのね。私、行ってくるわ」
「おい、エミリア!」
声変りを終えたばかりのみょうちくりんな声でヘルマンが咎めるけれど、私はダレンに駆け寄った。
「ねえ、何を読んでるの?」
――あら、あなた、案外綺麗な目をしてるのね。
私はそう内心で想いながら、ダレンの手元を覗き込んだ。
ダレンと一緒に遊ぶのは図書館が多かった。
ダレンは本が大好きで、孤児院の人達にもたくさんの本を与えられていたの。
そこに年下のマルクが加わって、自然と4人で遊ぶようになったわ。
図書館はいいところ。人目を忍べて、静かで、年若い恋人達にはぴったりの逢引の場所だった。
ヘルマンは時折、いきなり私を後ろから抱き寄せて、驚かせた。くすくす笑いながら抱きしめ合うことが本当に幸せだったわ。
慎み深い関係を続けていたけれど、人目を忍んで抱きしめ合うくらいは許されてもいいと思ったの。たくさんの書架は森みたいで、とてもロマンチックだった。
それに、私達は熱中していることがほかにもあった。
『医療魔術』について。
ダレンが1人で読んでいた本だったけれど、気が付けば私たち全員が夢中になった。
ヘルマンとダレンなんかはいつも話し合って、「ああでもない、こうでもない」って頭を抱えていたわ。
私が黙って見ていると、マルクが猫みたいにいなくなるの。
「……マルク?」
本の森に入り込んだマルクに声をかける。
マルクはいくつかの本を取り出して、パラパラと中を改めているところだった。
「エミリア……」
「その本、どうしたの?」
「ヘルマン達が話し合ってることの本。もう答えがここに書いてある」
私は驚いて瞬きをした。
そういえば、マルクはお医者様の息子だったことを思い出す。
「知ってたの? 教えてあげたらよかったのに」
「あの2人が話し合ってもいい案なんて出っこない。僕が新しい本を持って行かないと何も進まないんだ」
マルクは涼しい顔をして本を選び終えた。
「ヘルマンは図体はデカいし、力もある。ダレンは大人びてるよね。でも、2人ともそれだけだ」
「まぁ、マルク。そんなこと言っちゃだめよ」
私は驚いた。
いつもは2人について回っているくせに、内心では、そんな事を思っていたの?
「ふん。でも本当のことだ。僕がいないと、何も進まない、見ててごらんよ」
マルクの宣言の通りだった。
――確かに、2人だけじゃ、結論は出ないのだ。
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私とヘルマンの関係はうまく進んではいかなかった。
私達は仲良くいたままだったけれど、家同士の折り合いが中々つかなかったようだ。
おかげで、私はお母様のウェディングドレスを受け継いだもののそれを眺める日々を過ごしていた。
けれど、そんな中ようやくその日は訪れた。
とてもよく晴れた日、ヘルマンの家に、一家で招かれたのだ。
母は私にとっておきのドレスを着るように言った。もう既にくるぶしの出る子供用のドレスは卒業していた私は、一生懸命ドレスを選び、侍女と浮かれながら髪を結わいた。
そっと、ドレスの胸元に子供のころもらった菫の押し花を忍ばせる。
ようやく。ようやくヘルマンと結ばれる。
夢見た幸せな生活が待っているのだと思うと、自��と微笑みが漏れた。
なのに。
「……ヘル……、マン……?」
何が起きてるの?
ねえ、ヘルマン、あなた、どうして私をそんな目で見ているの?
庭園でのお茶会。その時外から悲鳴が聞こえ、逃げるようにと従僕達が駆けつけた。
必死で逃げたの、お父様もお母様も見失って、それでもヘルマンの手を握って必死で走ったわ。
街は、見たことのないほど荒れていた。
そこかしこを歩くおぞましい屍者達の群れ、襲われた人達のなれの果て。
一体何が起きたというの?
この世の終わりが、来てしまったの?
必死で逃げたけど、限界が来て、私は転んでしまった。
あれだけしっかりと繋いでいた手が、呆気なく解ける。
「エミリア!」
あなたはそう叫んでくれたわね。
でも、すぐに立ち竦んだ。
はじめ、熱いって思ったわ。全身を貫くような熱さのあとに、壮絶な痛みが走った。
見たら、お腹から剣の先が飛び出している。
悲鳴を上げようとした口からは、かわりにたくさんの血を吐いた。
「何やってんだ!」
知らない男の人の声がして、するりと剣が背中へ抜けていった。
中年の男性が、スコップを振り回して屍者を追い払った。
胸にぽっかりと空いた穴から、湧き水みたいに血がどくどくと外へ流れていく。
「ヘルマン……助けて……」
足が動かない。必死で手を伸ばすが、動こうとするほど、もっと血がいっぱい出て、体が動かなくなっていく。
背後で、助けてくれた男性の悲鳴がした。
ヘルマンの足に私が縋りつこうとしたその時、ヘルマンは駆け出した。
駆け出し、た?
私を蹴るように振り払い、何も言うことなく、逃げ出した。
嘘。
嘘よ……ヘルマン、嘘でしょう?
私を、愛していたのではないの? ねえ、ヘルマン。痛いの、体が動かないわ。今なら許してあげる。怖かったのよね、あなたも。
だって、訳も分からない化け物が襲ってきて、驚いたのよね?
私は必死で這った。
あの木、ダレンが座って本を読んでいた木の根元、大きな根にもたれるように体を���ける。
もう動けない。寒い。
ああ、どうして誰もいないの。ヘルマン、ダレン、マルク、私はここに来たのよ。
友情のはじまりはここじゃない? だからここにきたの。
助けてもらえると思って。
ねえ、どうしていないの。
あんたちは、逃げたっていうの?
私を置いて?
ねえ?
生きてる? この街の中のどこかにいるの? 私を守りに来ないで、あんた達は逃げてるの?
ねえ。
なんで私なの。
なんで私が死ななきゃいけないの。正しく生きてきたのに。
なんで……あいつらじゃ、ないの。
優しくして、やったのに……――
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マルクが浅い眠りから覚めたのは、物音のせいだった。
「……ダレン?」
すさまじくだるい。
だるい原因を思い返そうとすると吐き気がするので、慌てて頭を振って押しやった。
ただ、人影が小さい。
「……誰……?」
ふらり、と影が動き、緩慢に長い髪が揺れた。
「ダレン… …まさか、エミリ――」
マルクは最後まで口にすることが出来なかった。
影は抱き着くようにマルクの飛び込んできた。
そして、影が体を起こす――エミリアは無感動な目でじっとマルクを見つめていた。
その手には解剖用の短刀が握られ、深々とマルクの腹部に突き立てられている。
エミリアはずるりと、床に座り込んだ。
一瞬の間ののちに、糸の切れた操り人形のように、その場に倒れ込み、動かなくなった。
ダレンが研究室から、マルクの自室に移動した時、ベッドの上でマルクは痙攣していた。
それに目をやることなく、エミリアを見下ろした。
エミリアの目を通してみた過去は、ダレンの知るどの記憶とも形が違うものだった。
美しいはずのエミリアの最期は、ダレンの思っていた形とは違う残酷さを持ち、エミリアのダレンへ向けた優しさはただの自己満足だった。
「俺は何のために戦ってきたんだ」
エミリアは何と思うか、生き残ったからには恥じないように生きなければとずっと己に問うてきた。
Buriedbornesの術も、魔の契約も、『パーツ』の改造も、3人揃って生き延びるためだった。
「くふっ…… ふふ……」
ベッドに上体を横たえたマルクの体を片足で軽く小突くと、床にゴロリと転がり落ち、動かなくなる。
「何のためにィッ!」
マルクの脇腹を強く蹴り上げたが、ビクリともしない。
マルクも、ヘルマンも、エミリアさえも、僕の事を、軽蔑していたんだ、心の底で。
それが現実。
全ては幻だったのか?。
守るべき美しい記憶は、どこにもなかったのか?
守るだけの価値が、あったのか?
答えは、知ってしまった。
知らなければよかった。
でも、もう戻れない。
「ふ、ふふ、ははは」
再び乾いた笑いが、ダレンの口から零れ落ちた。
生き残ったのは自分ひとり。
この世にどれほどの価値があるだろうか?
夢も愛も信頼も、全て幻想だった。
どれもこれも、自分の都合に合わせて使うだけの詭弁だ。
人間も、地底の軍勢と何も変わらない。
誰も彼も、自分の事しか考えていやしない。
ならば、俺も、俺のために生きてやる。ここにある屍体を使って、全てを破壊し尽くしてやる。
それが生者であろうが、屍者であろうが。
もう弄ばれる側にはならないと決めたではないか。
今度は、自分が弄ぶ側なのだ。
「……なんだ、よく見たら大して美しくもないな…」
目を伏せたエミリアの目蓋はくぼみはじめ、色あせた肌は土色だ。
ダレンはエミリアを小脇に抱えるようにして、研究室に向かった。
幸い、マルクの行った処置のお陰で、死んでからかなりの時間が経ったにしては『新鮮な』屍体だ。
「俺は、生きる……」
手術台に横たえたエミリアの前に、鋸を手にして佇む。
その姿は、まるで亡霊のようだった。
空が白む。
また、ある術者の1日が、始まる。
奪い、殺し、壊すための、1日が。
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~おわり~
原作: ohNussy
著作: 森きいこ
※今回のショートストーリーはohNussyが作成したプロットを元に代筆していただく形を取っております。ご了承ください。
「ショートストーリー」は、Buriedbornesの本編で語られる事のない物語を補完するためのゲーム外コンテンツです。「ショートストーリー」で、よりBuriedbornesの世界を楽しんでいただけましたら幸いです。
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odaimatome · 7 years ago
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すべて
中指の指輪 アメシストの毒薬 スイートドリームファンタズム ピンクトルマリンの淡い恋 アジアンタムのある部屋で ロリポップフランベルジェ 愛と呼ぶには遅すぎた クロッカスが紫色になるまで有効 『お願い、ギリア』 沈丁花の花冠 シレネを持って微笑む君は 琥珀色の呪縛 コウホネを込めたマシンガン 賞賛はいらない 『キイジョウロウホトトギスを知ってるか』 神様は守ってくれない 勝者は敗者に嘘をつく ローファーを履いた背伸び 向日葵の愛 最初から秘密でした 臆病な恋歌 花言葉は長く持ちました 優しくしないで 硝子の眼をしたお人形 女の子は甘い麻薬でできているの クラシックショコラエチュード 空色の蜜 白いスミレが咲く頃に 親指の恋人 優しすぎるから、 小さな想いの拠り所 マラカイトを捧ぐ 今夜の約束 プリンセスはご機嫌ナナメ スイートリボンルージュ あと一歩、君の瞬きの傍に 指先が赤くなる頃に ホワイトカルサイトピース 大事な言葉が聞こえない 共に笑った日を数え 言うなれば赤の風信子 踏み出せないのはたった三寸 神様が受ける罰 涙はとうに枯れました 輪廻で解けない約束を あの停留所で待ち惚け 作戦名:馬酔木 ピエロは恋をしないのか ブルースター即興曲 ディアサファイア アルデバランを探していています ハイヒールに仕込み刀 ダリアが君を待っている 一生涯の上映時間 トカレフは忘れない あの星は海のしるし 彩玉を四半分 プラチナミスティルティン 飛沫の息吹 君の世界は晴天 菊の花はうそつき 君を守る空気砲 クランベリーボムに気をつけろ アルシャウカットの見る夢は ロードナイトに剣を シュトルーテルレイピア 明けない夜もなくはない シャドーマター・マスター 出たなでたらめ定期便 弱くて甘くて敵わない カランコエに埋もれてしまう 第三印象で諦めました 黒いメノウが君を呼ぶ Q.どうして僕が泣いているのでしょう ベゴニアのある生活 しめやかに騙してみせて 赤椿の髪飾り 未完成な身勝手 友人Wは猫も殺せない 月下美人は花咲けない 神様は夢も見られない メランコリー・メリー 雪柳の影に隠れて タンピング間奏曲 縷々流々留 点Pへ、点Cより 鈴の音をせがむ 雨が降ったら迎えに行くね あかしゃぐまのお気に入り ふるえる心の声を聴け 明日の天気はおそらく流転でしょう。 処方箋:砂金水晶 よわいいつつでおとなかおまけ スノードロップ・ステップ ストロベリーミサイルを放て! さらば青春の合言葉よ 薬指のキュゲスにキスを ガーデンクォーツシップ 僕の想いはいつも雨天 キックオフ・スタンダード アルビオリックスの演台 カンパニュラチャント カミサマカットミス よなよななよなよするなよな 黒い目の鬼、帰す 賞賛のキスはまだはやい 私の半身があちら側にいるのです 彼の声の冬天 トライアングル・トライデント 君はレグルス アマリリスのヒロイン 一色の虹色 どうか許さないで、を許して 好きな人の好きな人を好きになる魔法 「そばにいて」をただ求めて ペリステライトに帰らせていただきます チューベローズで口止め ささいなことでおこらせた つまらないことでなかせた それでもあいしてしまった 明日のあなたに用がない 今日終わる世界の隅で 昨日言えなかったこと メロディラインのワンピース シュガーアップルメリージェーン ハートレスなヘッドドレスを ミッドナイトミラクル グッドナイトスター シンクロサンライズ 想いは紅 いえないミステリー 覚悟は会えなく ミステリーサークルによろしく 浄玻璃ばかり かなしをみずして ごきげんようメルティハニー さびれたこころにカードキー あいにおぼれたぼくのマミー ハートのハスラー スペードのスリラー クローバーのクラーケン ダイヤのダースベイダー 僕の心の三転倒立 春待ちラピスラズリ ハッピーエンドは望まない 嘘をついたら燃やすこと 君が勝てない10の理由 タンザナイトは振り向かない 優しさでできた角砂糖 ノクターンはそれなり メメントモリはすぐそこに ずっと好きでいること 貴方の罪ばかり タチアオイは赤い アルタイルのきみ その涙を拭うのは 許してよスパイス 千切っても契っても恋 君を探せないわ 捨てないオーラライト 星屑でできた街 伸びゆきて刺し カバンサイトのアンテナ 血に抗えない ロベリアの天使 いつまでも可愛かった にくしみの瞳で撃ちぬいて 始まれぬ終わり あなたに逢いたくなかった 氷刃の穴 陽光は甘い シオンでいて ステルンベルギアフレイル 本能に爪をたてて 変われなくていいの 触れた指先ミントブルー 本日回天日和 狂ったワタシのこと、この気持ちこそ狂気なのです 飛びたいファハン 救われぬメシア 減らないラグー こもれびがささやくので カステラバーズ ツユクサに囲まれて 大気圏を超えたら アヤメのシンデレラ モテカワ神の7日世界創造 ミルクベイビービターハニー フォンダント・ハート Cuverture Sentimental マシュマロみたいなキスをして 俺の歯型ごと、 ドックタグなんてつけるな まるでブラックオパール 夢ばっか見てよ アイじゃなくて何? 芍薬にあわず インスタント神様 永遠にまたあした ミアプラの瓶 偶像にクチナシ ジギタリスしちゃおっか ささくれた音に乗って 愛になれなかったね アレキサンドライトの魂 触れたいのアンタレス 夏にしかいない彼女 夜なんかこなくても ベネトナシュのしずく ラリマーの子守唄 幸福の中に不幸 千秋楽の幕開け 婚約指輪はスフェーンが良い ザッハトルテの妃 色天まで行きたい レトリート・ラブラドライト サンザシだけで生きていける ロンギヌスの槍を壊せ 守ってよモルガナイト 立金花を待ってる 一生アンコール 君が統べて ダイヤモンドの砕き方 フォーマルハウトの孤独 教えてよマスター 君を包みたかった 大人になりそこねちゃったね 不自由だけで生きていく ラズベリーバレットで射抜け 「死ぬほど好きよ」と飛び降りた わたしの証はここにない デネボラをつかみたくて 子供の余韻 傷んだ毛先ごと愛して サンタピリアガール ハックルベリーロケットで空まで エンジェルシリカじゃいられない スノーフレークモーニング 四半世紀って骨になれる? 全部あげるから全部捨てて このまま彼方まで LAXの背骨 赤い糸なんて知ったこっちゃないよ 君に本音なんて言ったことあるかい わざわざざわざわきみのわざ わざわざざわざわわざわいは 何番目だったかだけ教えて ミルク・コルセスカ バルジが弾ける音を聞いた 踊れなくても王子様にはなれる おねがいなにも言わないで ちぎれたつながり 絡めた先からすりぬけた メロウに似合う悲劇がいいな 君以外映す眼はいらない インカローズ・シャムシール アザレアを贈りたいあなた ダビー・マイオールを彩る 冥界よりも10℃低い 笑顔が涙のようでした 憎しみこそ最も美しい愛だよ 殺すか愛すか選んで 目の見えない神様 嫌いなとこなら100言える 早々寄り添う嘘の相 指先の両翼では羽ばたけない 無敵の隣人 言葉にしないからオドントグロッサムで アテナに見捨てられたっていい ブルーベリーマシンガンに見惚れろ 山茶花を赤くして 僕の特別で君の普通 2人で飛び越える深夜2時 セルペンティスの誘惑 殴り合いコンチェルト 荒天が全てさらった ナズナの手錠をかけて いっそ狂ってしまえ 僕のヘリオトロープでは足りませんか 旅立ちトルマリン 地獄で生きてみろ 駆け抜けろアルマク サンタさんあなたをください こればっかりは許して(これで3度目です)許 嘘つきファンタジスタ 鴝鵒よ、欲は良く酔う様よ 君の人生のサントラになれただろうか 君よ、走るのを止めてくれ 身の丈にあったクライマックス 洗い立てのあなたの匂い イキシアを6本束ねたら エンゼルランプを灯そう 君が消えても僕は踊れる このさよならは二度とこない アケルナーで待ってる それでも君の笑顔は死なない スターチスによせて 泣くなゲンマの輝きよ 寝転べば青天井 もし不安が全部星になったら あれは夜、君の乞い。 あの雷を許せるかい 呉天の夢を見て眠れ 鍵を叩けカメリア ホマンに愛されし者の名 おんなじ悲しみに縋っていたい 憐れ私が溺れた夜 殺しに来たなら殺し返す こんなの愛だって私が言えない アベルの嘆願 アルテルフに焦がされて ぶち壊せと呼んでくれ フラチラリア・リズム 貴方がそれを馬鹿にした 私が愛していたことを、貴方だけ覚えていて 幸せになったら何もできない はじまりのサダルバリ ギャラクシー・キッチンのかくしあじ マクルで繋いで キングピーターで乾杯 優しい理由と下心 愛の悲劇、哀の喜劇 悲しみの灰皿にしていいよ ユーレイバナなんか咲くな 君に似てよく回るアルコール 恋で固めた嘘しかつけず 理想郷行、1枚 モルダバイトのひとみ 闇なんか怖くなかったの 踊って死ね、歌って死ぬから 君がまだ惑星だったころ ケンタウロスの足も見えない 夜が明けるまで好きでいて 「初めての1つや2つ、減るもんじゃないだろ」 神様に還さなくっちゃね 満ちても欠けても円くあれ アマゾナイトのコンパス 嫌って光って 貴方に殺される夢をみて眠る 心ばかりここになし サダルメリクに誤魔化されて 少女よ、カルミアであれ 甘えられたら恋なんかしてない 君の為に切った髪なのに! 赤い靴下燃やしに行こう いつか死んだ眼前の君 好きになってよくなかった 明ける夢の霜天 凍える指を温めてよ お前の炎で私を灯しておくれ 散った赤も翻せ白 思い出なんかにできるかよ 想いより先に繋がった 「えっその物々交換成り立ってる?」 さらさら浚う空の皿 愛と平和とラブとピースと地球とアースと君と僕 引く手数多の行く手無し ミヤスルビー、命燃やして 花束を踏んで去っていけ 花道に喝采を落として 墓までもってきゃ永遠だ 知りたくなくって知りたかった 感情線超特急君行き 指先まで汚しちゃってさ 幸せだってハイタッチしよう 凛と立つのは藪柑子 君が葡萄なら僕が楡 好きが高じて爆発してしまいました アクアマリンを持った来た マフラーなんかで隠さないで くすむぐらいなら死んでやる 近づく背中を追い続け センチメンタルバリアー 燃やすなら海じゃなくて山 3段フリルが良かったな 歯形すら愛しくてどうしよう 守れなかったヨルガオの笑み 「それならさ、ね、逃げちゃおっか」 嘘っぱちの永遠を飾れ 目が潰れるほど未来 揃いの絶望携えて 君と光年を歩こう 大っ嫌いだサクラソウ オールシーズン一致はしないよ シンプルでいることが一番難しい 自己都合宗教 愛も真似できない 星などならず側にいてくれ ベータ・アーラェにのせて踊ろう これっぽっちの終わり 蛇結茨��煙がお好き 幕が下りるまで恋人 その名を覚えているのは、もう アカシアの形をなぞる お揃いじみた恋情 絶望シンコウペーション アルギエバの温度 ローダンセを折るけどいいかな インナーから陰謀論 君と、ケーリュケイオンの蛇のように 灰になるほど愛していた 一緒に歴史になろうよ 絡めた小指を解いたら どこかの星で僕と握手! 近く遠く近い隣 氷製指輪でプロポーズ ベッドタイム・ア・ラ・モード それは君の夢か 美しい愛はちょっと苦い 僕だけのオキザリス 内々居ない否無い名 生き急いだ死にざま 肺にしか鳴れないメーデー 死に至る希望 想う間、のみ無敵 許したいから許せないの トリックがあったって魔法でいいよ それは君たちの残した呪い、背負った重み 君の煌めきをみんな忘れた いつまでも変わりたいまま アップルサイダーアキュリス 諦念退色 創った地獄に救われた 君に捧げた三十一の言葉たち 記憶にない記録 血肉になるよう弔って 定常宇宙テント 心の臓まで君のお守り 燃ゆる心は青い色 勝利を飾る百合の花 指先を洗う作法すら忘れてしまった僕らは 揺れる心の天球 伝承たれ我が王 君の瞳が焼き焦がす者 アイオライトみたいな声で 偶然必然アキメネス 地獄を病めないで たが為に死んだわたしの山 ストレリチアを繰り返し咲かせ 人の悲劇を嘆くな グロキニシアで魅せろ 惚れ直す為に嫌いになります 10年後もまだ愛でさ 温く撫ぜたゾズマ メルティック•ギサルメ 縁の切れ目は計画的に 山桜色の君だから おやすみ明ける未来まで 明明未明運命論 孤独好きの相棒 この世の終わりもあんたの隣 過去を整理して明日も消して さようならをやさしくするな 夢を売って買った夢 上げ底でしか歩けない あんな人でも宗教だったの 下らなくなかった夢の破片 一筆じゃ書けないよ、心 全部壊して楽になってよ 初期衝動のショーウィンドウ 爆発したって光は見えるよ 弾けないビートに意味はないけど 眠れなくなくて寂しい マジョリティの呪(まじな)い そんなふうに守るな 強くなってどうだった? 妥協点にいさせて 悪いところをリピート再生 馬鹿で可愛い私の少彦名 敢えて逢えなくたっていい 遅れ送る億劫な奥の手
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