#雨曝しなら濡れるがいいさ
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2025.5.31
eastern youth『単独公演2025新宿歌舞伎町』at Zepp新宿
1.夜明けの歌
2.沸点36℃
3.今日も続いてゆく
4.ズッコケ問答
5.いずこへ
6.徒手空拳
7.雨曝しなら濡れるがいいさ
8.敗者復活の歌
9.片道切符の歌
10.踵鳴る
11.月影
12.青すぎる空
13.素晴らしい世界
14.世界は割れ響く耳鳴りのようだ
15.ソンゲントジユウ
16.時計台の鐘
17.一切合切太陽みたいに輝く
18.街の底
En.1夏の日の午後
En.2DON QUIJOTE
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☺︎☻☺︎ 1980年の今頃。 なんだこのメンツ。。笑 せっかくなので今日はSANTANAからのMAHAVISHNU方面へフライト予定です。 ☻☺︎☻ あいにくの空模様でも千葉公園では「YOHAS」、中央公園プロムナードでは「屋台横丁」と色々やってるし、雨を楽しんでいきましょー♪ JAM TREEでもサイコロチャレンジでもしよーかな?🎲🎲 ☺︎☻☺︎ #NoRainNoRainbow #雨曝しなら濡れるがいいさ #ダイスをころがせ #JAMTREE #ジャムツリー #千葉 #千葉駅 #裏千葉 #bar #rockbar #djbar #livebar #cafe #バー #カフェ #ハワイ料理 #ジャマイカ料理 #タイ料理 #メキシコ料理 #エスニック料理 #多国籍料理 #rock #reggae #latin #jamband #allgoodmusic #音楽とおいしいに国境なし #JAMる (World Kitchen & Bar JAM TREE)
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どのような結末または読後感をもたらす物語を書くかというのは、その人がどのような性質かということに紐づいているのではないだろうかというのは長年の疑問。当たり前なことを言い出すものではないよ、という感じはあると思うけれど、一人の人が、あまりにも辛い物語を書いたり、あまりにも大団円な物語を書いたり、というのが想像しづらい(プロの作家には、色々な振れ幅が商業的にも必要だと思うし、自分の性質に挑むという意味での挑戦もあるとは思うのだけど)。つらいだけの話、幸せな話、辛いけれど最後には希望が少し訪れる話、などなど、とくに二次創作をする人においては、ある程度傾向が人によって絞られてくると思う。プロの場合でも、ああ、あの人の書く話はああいう感じだよね、という傾向があり、あの人の書く話はハッピーエンドとバッドエンドの振れ幅がすごい、とかそういうのまで属性になりうる気がする。その間のグラデーションをくまなく描く人というのもいるかもしれない。人は一面的ではないから当然あると思う。思うが、自分に限って考えた場合、やはりどう考えてもハッピーハッピーハッピーエンドにしてしまう。希望の見えない話は嫌だ。何を希望とするかもまた各人のあいだでグラデーションだと思うが、私はたとえば恋愛の話であるなら、そのふたりのコミュニケーションがこの先も続くことを予感して終わりたい。例えば過去、ふたりの一方または両方が消滅する話は書いたことがあるが、それは双方の納得のうえでのものであった。双方の納得がなければ私は死別はさせない。そこでコミュニケーションが終わってしまうのがつらいから。双方の納得というのは、あなたが死ぬこと(わたしを置いていくこと)をわたしは了承します、むしろそれを善いものとして捉えます、という覚悟のうえでの死であることで、必ずしも恋愛的に成功していなくてもよいんだけど……まあでも成功していたら嬉しい。究極的には、双方のコミュニケーションが一定の水準に達してある程度の共通認識が形成された上で死んでほしい。ちなみにコミュニケーション上の納得のない死別以外は私は特にバッドエンドとは思わない。コミュニケーションが可能ならば二人の話はつづくだろうし、続くのならばそれでOK。どちらかが幸せを感じるとか、どちらもが幸せを感じるとか、そういうことは、まああれば嬉しいけど、というオプションくらいかもしれない。読む時はそんな感じで、自分が書く時は、もうオプションもりもりで最高級ハッピーにできるだけ近づけた状態で話は一旦幕します。まあやっぱりそういう話が読みたいから書いている。ただし、その最高級ハッピーが自分の好みの方向性でないと、最高の読書体験(快楽)にはならないので、こうかな?こうだな?と、自分の読みたいものを読むために結構工夫を凝らしてというか、より良きハッピーをもとめて書いている。全て自分が読みたいがため。自分の読みたい文体で、自分の読みたい音程で、自分の読みたい展開で、自分の読みたいせりふを、自分の読みたい映像を想起するために読めることは、無上の喜び。この麻薬にはまってしまってなんだかかなりの年数が経つ気がする。いや。話が逸れました。私はつらいけど最後に希望が見えるくらいの話が好きで、つまり結構辛い話が好き。でも最後に少し希望が見えてほしいから、『ガンスリンガー・ガール』とか、『秘密』とかが好き。エンドまでは全くもって辛い展開の連続でお願いしたい。エンドで垣間見える雨上がりの弱い日差し。それだけを求めている。そのためか、ほのぼの、みたいな傾向の話に興味が無い。最初から安全や安心が約束されているものに興味がない。基本的には険悪な仲のカップリングにしかはまってきていないのはそういうことだと思う。最後に差す晴れ間(カタルシス)を劇的にするためだけに、きみたちはできるだけ仲悪くいてくれ。土沖。仏英。シズイザ。白鬼。皆兵。いちつる。いちさま。じろさぶ。そしてここに来てフィガファウ。もう全部そうですね。仲悪いままセックスして、最終的におずおずと小指の先にふれるくらいの優しさへ逆行(?)してほしい。いいですか。ここテストに出ます。まあそんなディテールはともかくとして、私は幸せな話が好きです。ハッピーエンドが永遠の夢。でも、この世にはこう、世の中のつらさとか苦しさとか恐ろしさとか、そういうのをえんえんと描く人もいて、本当はそういう人に、なぜそういう話が好きなのか、というインタビューをしてみたい。もしかしたら、泣くことで感情がある程度浄化されるように、辛い話を書くことで、なにか自分のなかの澱のようなものがすこし減るとか、そういうことなのか、と想像だけしている。つらくもないが幸せでもない話を描く人は、ひたすらに現実主義者だなあと思う。写実主義的というか。私はとにかく理想主義、ロマン派、なんというかそういう感じです。これは生まれつきの衝動(性質)なのでしょうかね。それとも環境要因もあるだろうか。私はフィクションを摂取する時、多くの場合がその行動は現実からの逃避だったため、幸せな物語を求めていた。フィクションのなかに何かを探究しようとしてその場に行く人は、きっと幸せは求めていないと思う。そういう人は現実でもストレス耐性が強そうだなあと思うけれど、まあまず、フィクションの世界でさえカタルシスを求めないということは、かなり心も体も頑強であるという予想は立つ。快楽に流されなさそう。向上心が強そう。実社会に自分を適応させることがある程度必要だとわかっているし、フィクションに逃げている暇があったら実社会を変えるために行動する、という人であると思う。私は残念ながら、心も体もひ弱なため、フィクションに逃げます。カタルシスの大きなフィクションを使って、自分の感情を慰め、精神的な回復を得てから、また現実世界と戦う装置みたいなのを作っている気がする。私のフィクションはきっと療養や救急の意が強い。そういう物語を好む人達はやはり性質が似ていて、心も体もそんなには強くない。あと、これは内緒の話かもしれないけれど、私の話を良いと言ってくれたり、実はとても多い感想第1位「泣きました」を送ってくださる方は、理不尽な暴力に叩きのめされまくって生き延びてきた人が多い。私が仕込む「つらさ」に知らず共鳴してしまい、最後のカタルシスで救われた、と思ってしまう人は、私は心配だなと思っている。私は将来というかこの先、できれば商業的に売ることの出来る本を書きたいと思っているが、その本は、あまり多くの人の支持を受けてはいけないと思う。でも、もはやこの時代、私の書くものを必要とする人がおそらくけっこうな母数になってしまっていて、それには純粋に悲しみを感じる。私のような人間が発生すること自体悲しいし、そして私が「私のような人間」を癒すために書いたものが支持を得てしまったら、それは本当に、前提としてもう悲しい世界だと思う。それでも、その悲しい世界を良くするためにやはり書くしかないと思うし、フィクションを生むだけでなく、実社会でも活動していかなければならないと思う。とにか��生きろと言いたい。生き延びて幸せになれ。どんなに弱くてもお前には生きる義務があり、幸せになる義務がある。動物としては、生きているだけで世界に貢献しているのだから(弱い=少数派ながらも生きている=多様性を担保している)、偉いし、とにかく幸せになってほしい。報われてほしい。止まない雨があるとして、傘を差したりかっぱを着たり他人の傘に入れてもらったり、濡れながら凍えながらでも水の美しさを見つめることはできる。一秒でも長く生きろと言いたい。死ぬなとかそういうことじゃなくて、とにかく生きて幸せになれ。なんか突然熱いメッセージを発する日記になってしまった。突然というか、いつも思っているので別にいつも通りです。私には、あまり問題がない。正直なところ。だから自分のために苦しむ必要があまりない。それで、それなら他人の問題の解決に手を貸すのが吉、と思えるのである。
昨日は鬼滅の刃の映画を見て、ひたすらにまっすぐなメッセージを受け取った。わかりやすいことはいいことだ。伝える努力はすばらしいし、伝える過程で、伝えようとしていることが変容せず、ちゃんとこちら側まで届くのもすごくいい。伝えたいことを、伝えたいやり方で、伝える。私たちはその為だけに生きているし、それよりもっと重要なのは、受け取りたいメッセージを、受け取りたいやり方で、受け取ることに、きちんと快感を覚えられることだと思う。読むのが上手い人、読むのが好きな人は、多くの場合書くのも上手いし、好きなことが多い。とはいえ私は人間の主機能は受信機だと思っている。伝えたくて伝えたくて喚いて泣いている人のことばを、きちんと聞いてあげること。そして聞くことによって自分もまた癒されたり、成長したりできること。読むことよりも書くことのほうが好きになってしまったら、それは危険信号だと私は思っている。もちろんみんなが私じゃないので、その現象が起こってもあいかわらずすごくすごいメッセージを発し続けている人もいると思う。そういう人は最初に受信した分でもう永遠に発せるくらいの燃料を得ている、驚異的な感受性の持ち主だと思うので、だいたい社会生活は破綻していると思う。というか、かなり心身の健康が心配だ。ちなみに、人の話を聞くことをせずに、自分のしたい話だけをえんえんと繰り返している人(そういう人は新しい吸収がないので無限に同じことを言う)の書くものは、私はメッセージとしてはもうあまり受け取る価値がないと思っているので受け取らない。みなそれぞれに楽しくやればいいと思うけど、自己の快楽だけを追ってしまう、なんらかの強迫観念のもとに縛り付けられてしまっている人は不幸だと思う。
さて、色々と一段落したので、明日は一応焼肉を食べに行く予定ですよ。今日もまた寝るのが明け方になってしまった。昼夜逆転まではいかないけれど、夜更かしが過ぎるのはとても体に悪い。今日あたり早起きして、きちんと朝起きて活動し、夜寝る体にならなければなあ。
そう、御嬢が日記で、私のことについて触れてくれていた(女史のことも)。魔女なんだって。よくわからないけれど、ふふふ、となった。いや、曝け出す程度は自分で決めてよいと思うのだけど、やはり日記を書く人は、ある程度「身を削って」いるよなあと私は思う。他人の娯楽に自分の生身を差し出す。ただ、それはコントロールされ演出された生身なので、これは私の目を通したフィクション(私の生身という物語)とも言える。私は彼女に強い友情を感じているので、書いていただいて、嬉しかった。とても照れてしまったので、口頭で言及することは避けた(今日もこしょこしょと笑い合う時間があった)。それにしても原稿。明日こそ始めなければ。勉強の算段が少しついたので、仕事が本格的に始まるまでに、本に載せるぶんの作品はきちんと文章にしてしまいたい。
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各地句会報
花鳥誌 令和4年8月号

坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和4年5月7日 零の会 坊城俊樹選 特選句
金剛の粒となりけり薔薇の雨 和子 鍵穴を覗けば明治聖五月 きみよ 薔薇園のクレオパトラはまだ蕾 秋尚 ひざまづく職人の手に朽ちし薔薇 久 華やかに薔薇から離れゆく女 順子 旧家とは黴の匂ひと薔薇の香と 久 ダイアナと言ふ白薔薇にさみだるる きみよ 避雷針錆びて眠りし夏館 いづみ セルを着て館の手すり撫でてをり 季凜 棕櫚の花待つ洋館の灯は昏く 和子 この薔薇も名の幻を抱き続け 順子 罪深き身をつつみたる薔薇の風 和子
岡田順子選 特選句
セピア色かな夏炉の上の写真 光子 父と子の聖霊が触れバラ白に いづみ 緞通の褪せし撞球室に夏 光子 大滝の水のふたつの光る芯 三郎 裏木戸を守る閂とめまとひと 久 黴の世や蔵に遺作の絵が少し 同 薔薇の夜に抱かれて園の鳥となり いづみ いくつもの薔薇の名を呼びゐたりけり 光子 薔薇を売る男はそつと跪く 小鳥 金剛の粒となりけり薔薇の雨 和子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月9日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
観音の慈悲の眼差し春の雨 中山昭子 春愁や逝きたる友と病む友と ミチ子 奥院に鎮もる神や祭果つ 昭中山子 渓水の音も卯の花腐しかな 時江 田植機の通りて泥の日曜日 久子 幾何学も知らず蜘蛛の囲かけてをり 中山昭子 代掻くや鉄塔揺らし雲揺らす みす枝 仏壇の母と語りし母の日よ 信子 無人駅菜の花一輪挿しの卓 英美子 海色の風を運びて夏来る 時江 とりどりの駄菓子買ひ込み昭和の日 上嶋昭子 粽解く香りの中に母の顔 みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月9日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
北信の山々を背に鯉幟 貴薫 風を呑む園児手作り鯉のぼり 三無 新茶淹れ母と語らふ京都旅 せつこ そこはかと由緒ある家鯉幟 美貴 嫌なことすうと消えゆく新茶の香 美貴 故郷の新茶届きて長電話 史空 鯉幟男児誕生高らかに せつこ 新茶汲む最後の雫ていねいに 美貴 新茶の香部屋にすつきり立ち昇り せつこ 五人目にたうたう男の子鯉幟 あき子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月9日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
奥越の麻耶姫目覚め山若葉 令子 子どもの日少年その日句を作る 同 書き込みの多き譜面や夏浅し 登美子 駆け足も卯月の雨に追ひつかれ 紀子 肩ぐるま手を伸ばしをり藤の花 実加 二輪車のオイル残香夏に入る 紀子 菓子のやう小さなトマト頰張りし あけみ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月10日 萩花鳥句会
句友とも会へぬコロナや夏に入る 祐子 育つ子に未来の風を鯉のぼり 健雄 ひとけなく今は昔の多越の藤 恒雄 葉桜や母と集ひしこのホテル ゆかり 甘夏の里は潮風吹くところ 陽子 葉桜を揺らす影なし廃校舎 明子 葉桜の土手お揃ひのユニホーム 美恵子
………………………………………………………………
令和4年5月12日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
ウクライナいつまで続く五月闇 由季子 母の日に思ふ後に父もゐて さとみ おしやれする気持ちかき立て更衣 同 麦秋や大河一筋地を分ける 都
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月12日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
湯の句会 第一回
ご機嫌の鶯老を鳴きにけり かづを 若葉風光となりて消えゆけり 同 雨意去りし故山に鶯老を鳴く 同 問ひかけに長い返事や暮れの春 和子 黄金の麦田後へ三国線 同 絹ずれの音や女将の裾捌き 雪子 群青の海深くして沖朧 希
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月13日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
湯の句会 第二回
境内に浄土思はす白牡丹 希 巫女が舞ふ白きうなじの祭髪 同 日本海見えゐる岬卯波寄す 同 夏立つや虹物語ある町の 匠 雑談に疎き耳なり宿浴衣 清女 宿の名に謂のありて花菖蒲 千代子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月13日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
チューリップ幼き我に連れ戻す 佐代子 海彦へ浜の茅花野風に伏す 都 廃線の駅名標に花菜雨 宇太郎 風を待つ鯉幟眼を天に向け 佐代子 葉がくれに花見つけたり朴散華 すみ子 虞美人の涙のかたち芥子坊主 美智子 配膳車筍飯の香を乗せて 悦子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月14日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
野仏の錫の錆姫女菀 亜栄子 木陰抜け風の広ごる麦の秋 秋尚 枡形はなべて大樹や寺若葉 百合子 竹林を暗め卯の花腐しかな 秋尚 鯉のぼり色塗り分けて切り抜いて 白陶 母の日は父の寡黙の思ひ出も ゆう子 母の日の遺影の母は凜として 多美女 雨に濡れ向きそれぞれの竹落葉 秋尚
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月15日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
頰杖の墓美しく新樹光 慶月 木の朽ちて大蛇めきたる翳り沼 文英 あぢさゐの色ととのはず人逝けり 葉月 黒南風や樹霊を浸す水の音 千種 蜘蛛の糸聖観音の背中より 慶月 鎌倉へ羽蟻を運ぶ蟻一つ 久子 青梅の転がる坂の下に句碑 要
栗林圭魚選 特選句
朴の花真白き命天に置き 三無 大空を水馬飛ぶ池の面 軽象 ひとつづつ落つる準備のえごの花 秋尚 稲毛氏の寺門はひそと朴の花 芙佐子 錆びゆくを天へ曝して朴の花 要 母の塔新樹の風に集ふ人 ます江 翡翠の帰りを待たず水流る 久
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
口笛の鳴る子鳴らぬ子揚げ雲雀 清女 一匹の蟻に従ふ千の蟻 英美子 魚釣る女子学生の夏帽子 千代子 三代も待ちし男の子や鯉幟 みす枝 新緑を塗り重ねたる昨夜の雨 かづを 金色の観音像や夏近し 和子 ロシアより卯波来るかと若狭湾 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月18日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
母の日や吾子は二人の母となり 千加江 葉桜や葉室麟よむ木陰あり 令子 早逝の友かと思ふ春の虹 淳子 母と子の二人だけなる鯉幟 同 花衣母の手を借り着たる日も 清女 麦秋の夕陽をあびて波立ちぬ 笑子 ぜんまいの萌ゆのけぞつてのけぞつて 雪 髢草少し癖毛でありし母 同 春日あまねし万葉の流刑地に 同 鶯や万葉の野を席巻す 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月21日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
一輪は少し小さく二輪草 雪 咲き倦みし十二単の紫も 同 人淋し二人静の花の名に 同 新しき鋏で薔薇の手入かな 同 人乗せてふらここと云ふ揺れ様に 同 永き日や動かして見る石一つ 同 人の世に二人静の花として 同 花冷と云ふ美しき夜の色 同 蝶知るや初蝶として待たれしを 同 虹立ちぬ私雨に軒借れば 一涓 町中の道に横切る蛇に遇ふ 中山昭子 羅やピアスに及ぶ愁ひあり 上嶋昭子 噴水のみどりの風に穂を揃へ 世詩明 風鈴を吊りて孤独を紛らはし 同 妊れる女片影寄り歩く 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月22日 月例会 坊城俊樹選 特選句
十字架はエルサレムへ向け風光る いづみ 青葉蔭ひそと風神育ちつつ 千種 砲口は二度と開かず夏の雲 月惑 風見鶏よりゆらゆらと夏の蝶 炳子 ジーパンへ真夏の脚をとぢこめる 光子 白鳩は夏雲の綺羅として零れ 小鳥 肩上げて走る少年夏の雲 和子 行く先へ一瞬止まる瑠璃蜥蜴 政江
岡田順子選 特選句
花に棲む木霊らしきへ黒揚羽 俊樹 夏霞海峡の橋空に架く 裕章 ジーパンへ真夏の脚をとぢこめる 光子 磔刑のイエスへ舞はぬ黒揚羽 俊樹 舞殿の鈴の鳴るかにユッカかな 圭魚 蓮の葉はいまだ小人が乗る程度 俊樹 靖国の同期のさくらんぼ揺るる いづみ を緋鯉呑みては金色に 俊樹 衛士は今休めの姿勢木下闇 梓渕 教会や十字架雲の峰を生む 和子
栗林圭魚選 特選句
桜の実踏み研修のバスガイド 順子 病葉を掃き寄せ森に戻しけり 梓渕 炎昼の影を小さく警邏立つ 光子 新樹萌え茶室を闇に誘へり 梓渕 万緑の闇に鎮みし八咫鏡 いづみ 山姥の齧り捨てたる桜の実 要 葉桜や雑念払ひ切れずをり 秋尚
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
兵の死へ怒濤のごとき冬銀河 佐和 潮の香の茅花流しに出会ふ道 久美子 茅花流しみすゞの海の鯨墓 美穂 捩花や後ろの正面だあれ ひとみ 苺この光沢ベネチアングラス 勝利 夏潮の夕餉にぎあふ漁師飯 喜和 薬玉に風は平城宮より来 愛 茅花流し川向うより蹄音 成子 ビルの窓アルミホイルのやうな夏 ひとみ 離れ難くて飛ばしたる草矢かな 美穂
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年4月6日 立待俳句会 坊城俊樹選 特選句
筍が十二単を纏ひつつ 世詩明 南方に行けば散りたる渡り鳥 同 巣つばめに留守を預けし駐在所 同 風立ちて赤き炎の野火走る ただし 霾るや大名町も片町も 清女 小屋の前若芽探るや茗荷汁 輝一 猫寺に春待ち顔の猫ばかり 洋子 三つ編の少女三人ふらここに 同 蕗の薹仏秘観音在す寺 やす香 乱心の如くさまよひ梅雨の蝶 秋子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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2020.8.8(sat) マイアンセム@亀戸 IN THE AIR

POW's playlist (30min)
「トーク&ミュージックシリーズ」企画ということで、通常のDJプレイではなくセレクターとしてあらかじめピックアップした楽曲を流しながら解説を行いました。テーマは「NHK-FM "ミュージックスクエア" OP/ED曲に見る90年代後期邦ロックシーン」です。※番組テーマ曲として使用された時期をカッコ内に記載しています。
01.チャーム ポイント / 岡村靖幸 [1995年10月OP] 02.Believe in fate / GLAY [1996年1月OP] 03.バンザイ ~好きでよかった~ / ウルフルズ [1996年2,3月ED] 04.Hey, Mr.dreamer / PLAGUES [1996年6,7月OP] 05.犬と猫 / 中村一義 [1996年12月,1997年1月OP] 06.キミのカオ / ホフディラン [1997年4月OP] 07.Shangri-La / 電気グルーヴ [1997年4月ED] 08.ガソリンの揺れかた / Blankey Jet City [1997年6,7月ED] 09.Regret / RAZZ MA TAZZ [1997年8,9月OP] 10.WALKING IN THE RHYTHM / FISHMANS [1997年10,11月ED] 11.Lucky / スーパーカー [1997年12月,1998年1月OP] 12.Beat de Jump / ROUND TABLE [1998年4,5月OP] 13.夜明け前 -Single ver.- / TOKYO No.1 SOUL SET [1998年4,5月ED] 14.白日 / GRAPEVINE [1998年8,9月OP] 15.東京 / くるり [1998年10,11月ED] 16.スロウライダー / サニーデイ・サービス [1999年8,9月OP] 17.雨曝しなら濡れるがいいさ / eastern youth [1999年10,11月ED]
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24/青い鳥小鳥
(しょたろぎとちびゆきの話)
(※CoCシナリオ「ストックホルムに愛を唄え」のネタバレがあります)
晴れた空はつきぬけるほどにたかくまで、あおくふかく、ほかのどんないろもゆるさないといいたげに、りんとすみわたっていた。いえいえのあいまに、木のこずえに、どんなところにもぎんいろをした、雪がふり満ちている。まるでそれらは、鏡をくだいて、そのかけらひとつひとつをふりまいたようにきらきらとさざめいて、ゆらいで、うたっている。
幼いこどもの目には、眩暈を覚えるほど、眩しい風景だった。 明るくて、美しくて、――救いようがないほど、冷たい世界だった。
未明、東京には珍しく、雪が降っていた。水をあまり含まない、ぱさぱさした雪だった。静かに、しかし確かに体積を町に埋め続けたそれは、夜のしじまでは物足りないと言わんばかりに、町の音という音をむさぼり尽くし、たった一夜のあっという間に、世界を真っ白に塗りつぶしたのだった。 とはいえ、都内の人の営みは、それらを厄介に思ったり足止めを食らったりすると言え、こんなもので遮られるほどにひ弱でない。朝も早い時間から、アスファルトの上に降り積もった白はその大多数が踏み潰され、びちゃびちゃに湿り、踏み固められた靴跡や轍が幾つも残っていた。 自宅から離れた、それなりに閑静で大きな家がたくさんあるこのあたりでも、車が通れるくらいの大きさの道路には、雪はもう殆ど残っていない。薄い残雪は、水分で溢れており、夜に冷え込んだらきっと氷になるのだろう。 黄色と緑の両目が、アスファルトを伝う雪水をぼんやりと見つめていた。
空木晴は踏み荒らされた雪の合間を縫って、わずかに残された綺麗な雪のかけらを丁寧に丁寧に、集めて歩いていた。両の手に抱える程の雪が留められていた。彼は、雪だるまを作りたかったのだ。 誰のためと言うわけではない。ただ、雪が積もってする遊びといえば、彼の中にはそれしかなかっただけのことだった。 最初、家のベランダで作ろうとしたのだけれど、邪魔だからと言う理由で止められた。素直に外に飛び出てみても、遊べるような綺麗な雪は、マンションの他の子供たちにもう荒らされてしまっていた。 だから、あてどなく歩いた。 無垢な雪の残りを探して、ただ街を歩いていた。 いくら晴れているとはいえ、真冬の空の下は、きんきんと光るように寒かった。手袋のない手のひらはやがて赤く腫れ、じんじんと痺れ、剥き出しの頬は、刃物で切られるように痛かった。 行けども行けども、住宅街にも、踏み荒らされた積雪にも、終わりはなかった。 冬休みの今、どの家も子供たちは外に飛び出す機会を穴ぐらの子ぎつねのように伺っていたようで、綺麗な雪はもうあらかた誰かに占領されており、晴ひとりが息を潜めて遊ぶことができる場所なんて、どこにもなかった。 塀の片隅に、電信柱の陰に、草むらの上に。誰の手にも触れられていない雪を一すくいずつ集めては、胸に抱えた。 どこか、誰に邪魔されることもない場所で、雪だるまを作るために。 ただ、そのためだけに。
ほうぼう彷徨って、やがて、一つの公園にたどり着いた。そこは、家のない部分を小さく区切って作った、空き地のような場所だった。ベンチと、一人漕ぎのブランコがある以外に、何もない場所だった。幸いにも、周囲には誰の気配だってない。遠くで、タイヤが水っぽい雪を掻き分けるときの、がしゃがしゃという音が響いている。 腕いっぱいに抱えた雪を地面に下ろすと、融けかけの塊はどさりと音をたて、公園の美しい無垢の上に寝転がった。ジャンパーの胸のところが冷たく濡れていた。 息を短く吸う。肺がきりきりと痛んだ。晴は赤く凍える手で、回りの雪をかき集めては、せっせとならし、凹凸のある肌をなめらかにならしていった。胴ができれば、次は頭を。柔らかな表層をすくい取って、手で丸くして、胴に乗せて、素手でならす。指が曲げる度に痛みを帯び、爪の先には少しずつ力が入らなくなっても、晴はただそれを繰り返していた。 ただ、ひとりで延々と、そうしていた。
「――星のおうじさま?」
突然、音のないはずの公園で、後ろから声がした。 思わず振り向いてみると、一人の少女が後ろのベンチの上に立ちながら、じっと晴の姿を見下ろしている。肩で綺麗に切りそろえられた髪は、冬の河底のような密やかな青をしており、銀河色をした大きな瞳が、興味深そうに晴の姿をとらえているのだった。 「ん? や、ちゃうな。おうじさまのかみの毛は、麦の穂ぉのきんいろやったしな……」 声は、独特の抑揚を持っている。この辺りでは、まず聞かないアクセントだった。 少女はそんな調子でぶつぶつ独り言をつぶやきながら、ベンチからぴょんと飛び降り、雪を踏みしめて、晴のところまでてくてくと歩いてくる。 若葉色のゴムぐつが白を割って刺さるたび、まるでそこだけが春の日差しを受けて草花が伸び、生の息吹を受けて眠りから目覚めるようだった。 「あ、かみの毛ぎんいろ」 「、っ」 「じゃあ、雪のおうじさまなんかな?」 晴は、つい身を竦めさせた。 怖いくらい、どきどきしていた。 容姿に触れられたことが、まずひとつ。もうひとつは、公園に来たとき、誰もいなかったはずだったから。公園には誰の足跡もなく、気配もなく、息の音もなかった。今、さっきまで。彼女は音もなくそっと晴の背後に忍び寄り、ベンチの上から猫のように晴のことを見ていたのだ。 公園の反対側の入り口には、迷いなく真っ直ぐ、ベンチまで伸びる小さな足跡が一人分あった。きっと、向こうの入り口からやってきたのだろう。 「……」 晴は固まって、少女がこちらに近づいてくるのを怯えながら見ていた。少女の紺色のコートが、マフラーの裾が、ふわふわと揺れていた。彼女は晴の傍までずんずんと近づいてくると、固まっている晴の顔を覗き込んで、まじまじとその色の異なる両目をまっすぐに見つめる。 「うん。お星さまより、おひさまの下の雪みたいなかみの毛しとうもんね。でも、きみ、目ぇも綺麗やなあ! お空から降ってきた、宝石みたいや!」 少女はそう、屈託の無い笑顔で言って、ただにこにこ笑っている。 晴は。
――晴は、いよいよいたたまれなくなって、冷たい両手で、自分の顔を覆った。これ以上見られないように、夏の雨のように突然体を打ち据えた恐怖ごと隠すように、じりじりと二、三歩後ずさる。少女は「えっ」と驚いた声を上げて、夜空のような瞳をまん丸くして、その星図を広げる。しかし、逃げられた分の距離を、若草色のゴムぐつは迷うことなく歩を詰める。 「やだ」 「? なんて?」 「……きれいでも、なんでもないのに、なんでほめるの」
どうして、この人、きもちわるいところなんて、ほめるの。
「だって、きれいやん」 彼の声の震えに気付かなかったのか、少女はきょとんとした顔で言った。星が大気の内側で歌うように、その銀河もまた息を吸って、ふるふると揺れる。逃げる意味を解釈することができないと言いたげに、困惑した表情を浮かべて、小鳥のように首を傾げる。 「やだ、」 晴はただひたすらに、ぞっとした。背筋にぴりっとした電流が走ったようだった。じり、と後ずさり、少女と距離をとる。小さな雪だるまの後ろに逃げ込むようにして、顔を、体を隠そうとする。 「なんで隠れんの!」 「や、だ!」 逃げた。 逃げるとは言っても、雪だるまを挟んで追いかけ合うだけだった。恐怖心が先立って足は縺れるし、混乱した頭では、公園の外へ飛び出すことなんて考えられなかった。少女は負けじと追ってくるし、諦める気配も無いようだった。 「待ってって言うとるやん!」 延々と続くかと思われた小さな鬼ごっこは、少女が晴の服の裾を問答無用でひっつかんだことで、あっけなく終わりを迎えた。二人がさんざん踏み散らかした雪の上に、晴がべしゃり、音を立てて転ぶ。 「あ、ごめ……」 「……ぅ」 雪の上に、じわりと涙がにじむ。 痛みからではない。どうしたらいいか、わからなかったからだ。そんな顔も見せたくなくて、暫く雪の上に伏せたままだった。冷たい両手は、鞭うたれたように痺れていた。 そんなところに、目の前に手が伸びてくる。それは、手袋に覆われた、少女の手だった。しゃがんで、申し訳なさそうに晴の顔を見ている。 真っ直ぐに、見つめている。 「ごめんなぁ? ……たてる?」 「……」 「だいじょうぶ?」 晴はただ、固まっていた。少女はじっと手を差し伸べたまま、動かない。冷たい風が、二人の前髪をさらさらと揺らした。どこかの木の枝から、やわらかく融けた雪の、落ちる音が聞こえた。 「……」 しばらく時間が経って、少女が寒さにふるりと身を震わせたころ、ほんとうに、ゆっくり、おずおずと、戸惑うように、躊躇うように、――晴が、少女に向けて手を伸ばした。彼女はそれを受けて、晴の体を引っ張り上げる。握られた指は鳴るように痛んだ。手袋の繊維の一本一本ですら、自分を攻撃しているような気分になった。 二人とも並んで立つと、少女の方が僅かに背が高かった。「ごめんなあ」としきりに謝りながら、ぱたぱたと晴の体についた雪や滴を払っていく。その様子を、晴は不安げなもどかしさを浮かべながら見ていた。 「……なんで、やさしくしてくれるの?」 「へあ?」 「……みんなぼくのこと、きもちわるいっていうのに」 「んなことあらへんよ」 「……なんで?」 「なんで、って……うちがきれいや思たもんにきれいって言うて、どーしてダメやって言われなあかんねん。うちはきれいだとおもたで。それで、ええことやないん?」 少女は「はい、もっときれいになった」と言って、もう一度すっくと立ち上がる。そうして、不意に思い出したように、自分の手袋を脱ぎ、素手のまま晴の両手を取った。突然手の指に重なるあたたかな人の体温に、晴の体が総毛立って硬直する。 「うわひゃっこ! なんでこんなんなるまで手袋せえへんの!?」 「……て、てぶくろ、ない」 「なんで!?」 晴がおろおろと眉根をよせて、ただ身を竦ませているのを見ると、彼女は大きく溜め息をついてから、とった両手を自分の顔の高さまで持ち上げた。そのまま、晴の両手にはあ、と息を吹きかけて、ゆっくりと摩(さす)った。 摩る、重ねられた手もまた、白く、小さな手のひらだった。赤く凍えて、濡れた皮膚を愛撫するように、少女は真剣な表情で晴の両手を温め続けた。晴は身を固くして、何度も手を引っ込めようとした。だが、少女の目があまりにも真摯だったので、何をすることもできなかった。 やがて、手のひらの冷たさは平等に二人の間に行き渡り、少女の手指が微かに赤らんだころ「はい」と言って彼女は自分の手袋を差し出した。 「はい。貸したる」 「……でも、��くがつけたら、寒くなっちゃうよ」 「だいじょーぶ、うち、替えのやつあるから。それに、うちがつけとったやつのほーが、ぬくいやろ」 躊躇していると、痺れを切らした彼女が無理矢理に手袋を嵌めてきた。抗おうとしても、両手で片手を握られてはたまらない。結局、晴の両手には、少女の手袋がすっぽりと被せられた。内側に、少女の体温が残されたままだった。誰かの寝ていた布団の中に、手を差し込んだ時のような暖かさだった。 晴がどうふるまったものか思案した挙句、そのままおずおずと雪だるまに手をつけ直すと、その様子を少女はじっと見つめていた。 「……雪であそぶの、すき?」 「……すき」 晴が頷くと、少女はどこか嬉しそうに、赤らんだ頬を緩めてにんまり笑った。 「うち、なまえな、“ゆきみつ”言うねん。いまあそんどる雪に、いっぱいになるっていういみの、満。で、ゆきみつ。みょーじがお風呂場にある鏡で、かがみゆきみつ」 自分を指さして言う。思わず、晴も指の指すほうに目線を吸い寄せられた。 「ゆき、みつ、……ちゃん」 「ゆき、でええよ。……きみは?」 「……はる。うつろぎはる」 「はるくんな!」 そう行って、雪満が差し出した右手の意味を、晴は理解できずに瞬きした。焦れたように、雪満が唇を尖らせて「あくしゅ」と言うと、晴はますます顔を曇らせる。 「あくしゅ?」 「ともだちになったら、そらあくしゅするやろ」 「……、……」 「どないした?」 「ともだちに、……なってくれるの?」 「うん? せやよ」 「……ほんとにほんとに、ともだちになって、くれるの」 「うん。だって、なまえ教えっこしたら、もうともだちやん」 「……、……、……やった……」 硬いつぼみが解けるような音を立てて、晴の目がきらきらと光る。焼けた石のような色をしていた。火に焼(く)べて融け出した、宝石の色だ。 そろそろと、ぎこちなく手を握る。雪満はその仕草に首を傾げてから、満足げに手をぶんぶんと上下させた。 「なあ、そんな小ちゃい雪だるまなんて作らんで、もっとおっきいやつ作ろや!」 「え」 「こーんなん!」 雪満が両手を大きく広げる。晴は目を大きく広げ、背伸びする雪満を目で追う。胸を張る雪満を、困ったように見上げた。 「え、でも、……おっきいのつくっても、こわされちゃうよ」 「そうなん? じゃあ、うちの庭につくればええ」 こっち。と言いながら、強引に手を引く。慌ててついていけば、公園を少し過ぎたところに、庭のある大きな邸宅が目に入った。塀は高く、門は優美で、前庭には常緑樹が茂っていた。表札を見上げる。晴にその漢字の意味はわからなかったが、苗字が一文字なのだということだけはわかった。 門は黒く、細いめっきのされた鉄で編まれていた。開いている。玄関に繋がるアプローチは、きちんと雪かきがされていた。
周辺に公園ほど綺麗な雪は残っていなかったけれど、庭先には木から零れ落ちた雪が積もっていた。 それらを集めて、小さな雪玉をつくって二人で転がした。庭先には、雪玉の形にそって、除雪された道がくねくねと作り出される。土が混じり、茶色くなった雪玉は、限界まで転がした結果、二人の肩以上に大きくなった。葉っぱの切れ端や、小石が混じったせいで、雪だるまはでこぼこだらけの上、無骨で、どう評価したとしても不細工としか形容できない有様だったが、それは門の脇の木陰に堂々と聳え立っていた。 しかし、大きくなりすぎて、一つ問題ができてしまう。 「あかん! これじゃあたま、乗っけられへん!」 「どうしよう」 「うちがはるくんのことかたぐるましても、雪玉持てへんしな」 晴はおろおろと雪満と、土まみれの雪だるまを交互に見る。当の雪満は難しそうな顔をしながら、何かを考えていたが、暫く顔をもんもんとさせた後、 「うん、よし、むり。おとんにやってもらお」 と、あっけなく諦めた。 「えっ」 「おとーん! 雪だるま作ったから! 頭乗せてー!」 唐突に踵を返して、家の中へ向かって、高らかに吼える。 晴があっけにとられていると、雪満はそれを気にせず彼を引っ張って玄関へ走った。父親のことを呼びながら。晴は動転していたものの、雪満の手を握る力が強すぎて、振りほどくこともできなかった。 父親、家族。しかも、他人の。ぐるぐると晴の目が回る。落ち着いていたはずの胸が、またぎりぎりと締め付けられるようだった。 玄関ポーチの前まで来ると、中から呆れたような溜め息を吐きながら、彼女の父親らしき男性が姿を現す。晴が肩を跳ねさせた。 「なんやねんな……あ~、また日陰にえらいごっつい雪玉作りよって……」 「雪玉やないもん! 雪だるまやもん! はるくんと一緒に作ったんやで! どや、すごいやろ」 「はるくん……?」 「うん、おともだち」 ほら。と言って、雪満が手を引っ張る。晴は、おどおどと眉を下げたまま、萎縮したように体を小さくした。男性の目が、どこか品定めするように晴を舐める。思わず俯いて、足下を見た。 一瞬のような無限の時間、裁きを待つ罪人のような心持ちで天啓を待ちわびていると、「おーそか。雪満と遊んでもろてすまんなあ」と、思った以上に軽い声が降ってきて、思わず顔を上げた。 「お前らどんだけ遊び回っとったか知らんけど、全身びちゃびちゃにしとるやん……ほれ、おかんからタオルもろてきて拭いとき。風邪引いたら、たまらんで」 「そうする! おとん、雪だるまかっこよくしといてな!」 「顔くらい自分で作っとかんかい」 「ご近所でいっとーべっぴんにして!」 「オスにしたらええのかメスしたらええのか、わからへんぞそれ」 彼女らがするそんなやりとりを、あっけにとられて眺めていた。 また、ぐいと手が引かれる。雪満はほくほくとした顔で、晴の手を離さないまま、玄関の扉をくぐって家の中へ入っていった。腕の先の晴が萎縮していることに気がついているのかいないのか、雪満は「ただいまあ」と間の抜けた声を出した。 屋根の下の玄関も、庭に見合って広い。晴にとって、三人以上の人間が立って入ることのできる玄関なんて、マンションのロビーくらいなものだった。ほう、と息が出る。外界との空気が遮断されて初めて、体が芯まで冷え切っていることに気がついた。繋いだ腕がぷるぷると震える。 「お帰り。……誰やその子、ご近所の子?」 「せや! 雪のおうじさまやで!」 「アホな事言うとらんと。あんたに王子様なんておるわけないやろ」 「ちゃうてー! 外に積もっとうほーやてー!」 「はいはい。……んで、何くんやったけ」 「、はる、です」 母親からすっと目線を移されて、思わず体がぴんと張る。彼女は一瞬だけ顔の色を無くしたが、すぐにはあ、と息を吐いて、呆れたように笑った。 「はるくんも雪満も、全身びちゃびちゃやん。タオルやるから、ちゃんと服着替えて、身体拭いてき」 「おかん、おとんと同じこと言うとるな」 「やかまし。はよ着替えてきんさい」 「はぁい」 雪満がぽいぽい、と手早くマフラー、ゴムぐつを脱ぎ捨てて、玄関を上がろうとすると、ぐいと後ろにつんのめる。慌てて振り返ると、晴は困ったような顔をして立ち尽くしていた。母親と雪満が同じように不思議そうな顔をした。 「ぼく、きがえもってないよ」 「! パンツまでびちょびちょなんか!?」 「ち、ちがうけど、でも、おうちにとりにいかないと、」 「え、うちのパジャマのズボンくらいなら貸したるて」 「でも……」 「ええから! カゼ引くよりはまーし!」 それからは、追い剥ぎのようなありさまだった。濡れたジャンパーも、靴下も、ズボンまでが引っぺがされ、恥ずかしがる暇すらなく、タオルと替えのズボンを渡される。泡を食いながらも、流石に濡れた素肌では室内でも鳥肌が立ってしまうほどだったので、晴はしどろもどろになりながら、それらを身につけた。 柔らかな繊維からは先の先まで、柔軟剤の華やかな匂いがしていた。自分の家のものとは、全く異なる香りだった。 現状がめまぐるしすぎて、呼吸の仕方すら忘れそうだった。なぜ彼女の母親が、赤の他人の、それも今さっき自分の存在を知ったばかりなのに、手厚くもてなして、まるで“母親のように”自分に溜め息をつき、手を出してくれるのか全く理解の外にあった。
着替えが終わると、雪満は彼を台所に引っ張って行った。そうして、二人で母親が淹れてくれたココアを飲んだ。暖かな甘さが、痛いほどに優しかった。目に見えないほど深い所の傷口に、沁みるような味をしていた。 「なあ、はるくんて、いましょーがくせー?」 「四月から、しょうがくせい」 「うちも! おないどしやん」 「いっしょのがっこう?」 「ご近所やったら、多分いっしょ! あそこの、かどまがったとこのピアノ教室をすぎたとこの……」 「あ、おんなじ」 「やった! じゃあ、春からもはるくんとあそべるんやね、うれしなあ」 雪満は上機嫌でココアを飲み干す。爪の先でマグを弾くと、きん、と高い音が響いた。 「ね、はるくんは他におともだちおらんの」 「……、いない……」 「きょーだいは?」 「お兄ちゃんが、……ぼくは、お兄ちゃんだと思ってるけど、」 「なか、良くない?」 その言葉には小さく頷いた。 正直に返すと、胸がじんじんと痛んで、思わず自分の膝を見た。冷たさに、心まで真っ赤に腫れ上がってしまったのだろうか。 寂しい子供だと、思われただろうか。やはり、彼女もまた、そんな独りぼっちで雪玉を固めて遊ぶ奴なんて、よくよく考えてみたら気持ちが悪いと、思っただろうか。マグカップを握る手に力が入る。 ぽっと出た杞憂の芽は、ふふふ、と隣から、堪えきれない笑いがこぼれたことでつまみ出される。
「ほんなら、今はるくんのなかで、うちがいちばんやん」 雪満は目を細めて、にやにやと、漏れ出る喜びを抑えきれないといった顔で笑う。晴は驚いた後、二度くらいゆっくりと瞬きをして、――彼女の笑いに釣られて、照れくさそうにへにゃ、と表情を歪めた。 それは笑ったわけではなく、反射的に口角が歪んだだけだったのかもしれない。上手な笑顔の作り方は、まだ彼にはわからなかったからだ。 「うちもねえ、まだ引っ越してきたばっかでともだちおらんし、一人っこやから、はるくんがいちばんやで」 「ほんとう? ……、……ぼくが、いちばん?」 「そー。うちら、いちばんどうしやね」 「……! うん!」
軒先の雪が、固まって地面に落ちた。 窓の向こうに、くぐもった音で響いていた。壁のこちら側には、届かない。
外は相も変わらず、底意地悪いほど青一色に晴れ渡っていたけれど、冷たい空気から室内の温さに染められてしまった二人は、ココアを飲んで肩を寄せ合って、他愛のないお互いの話に、面白そうに笑うばかりだった。 晴の赤かった指先は、いつの間にか血の気を取り戻し、柔らかくなっていた。痺れはなく、痛みも無かった。前髪だけが、少し水気に曝されて湿っているばかりだった。 雪満がマグカップを持って椅子を飛び降りる。晴もそれに続いて、流しにそれを押し込んだあと、雪満がくるりと晴を振り向いて自信たっぷりな顔で笑った。 「ね、うちの部屋いこ!」 「ゆきちゃんのおへや?」 「うん。はるくんが雪であそぶのすきなんなら、うちもうちのすきなこと教えたる」 「、うん!」 雪満の部屋は二階の、東側の部屋だった。朝の日差しが取り込めるように、東の壁が大きく出窓になっていて、水色の柔らかな色をしたカーテンが、ふっくら揺れていた。部屋の中はまだ越してきたばかりと言うこともあるのか、クリーニングの匂いがした。 ただ、それ以上に、紙の香りが溢れている。まるで森の中のようだと思った。暗い山の奥から厳かに運び出され、漂白され、苗を植え付けられた、白い森の中にいるようだった。 「うちねえ、本読むのすきなん」 「ご本?」 「そーやで」 招かれた部屋の中は、エアコンでこんこんと暖められていて廊下のような冷たさはない。足下から上ってくる冷えに耐えきれず、二人はそそくさと部屋の中に入った。淡い色のカーペットは足が長く、腰を下ろすと気持ちが良さそうだった。 真新しい勉強机が一つ、それについた椅子が一つ、ベッドが一つ。 それ以上に、晴が目を引かれたのは、部屋にぎっしり所狭しと押し込められた、本棚の群れだ。 「すごいやろ」 おおよそ、小学生に上がる子供の部屋とは思えないほどの蔵書量だった。本棚の足下にはキャスターがついており、左右に移動が容易だった。棚を動かしたその奥にも更に本が詰まっており、その中には晴にはまだ読めないくらい、難しい字のものもあった。 訳の分からない背表紙を一冊引き抜いて、小難しそうな表紙を開いてみる。中にある文字もまた、よくわからないものだった。本当に難しい字にはふりがながついているけれど、小学校で習うのであろう漢字には、ルビも何もついていない。 「よめない!」 「それはちょっとむつかしーやつやんな。うちもたまによめないもじある」 「ゆきちゃん、こんなのよんでるの……!?」 「せやで。ふふん、うちのこと、おねえちゃん扱いする気になったやろ」 「なった! すごい!」 本たちは整然と並べられている。文庫は文庫、菊判は菊判、四六判は四六判で、多少の背の違いはあれ、皆大人しく自分の与えられた隙間でじっと押し黙っていた。 雪満は本たちの背表紙を、そろりとなぞる。書棚の中でも下のほうには、子供向けの、判型がいっそう不ぞろいな絵本たちがわらわらと押し込まれていた。後ろからそれを眺めている晴にも、そのやたらめったら彩色が派手で嫌が応にも目を引くような、ページ数の薄くて紙の厚い本たちの存在は、ぴしっと背の揃った他の本たちに比べて、わやくちゃで、不ぞろいで、どこか親しみやすいものだった。 雪満はその中から、数冊の本を抜き出しては横に重ね、そうしてそれを胸に抱えて、ベッドに座る。自分の右側のスペースをぽんぽんと叩いて、晴を招いた。 「おねえちゃんらしく、うちがはるくんにご本よんであげよー」 「なによんでくれるの?」 「なにがええかなあ。いっこずつよんでこ」 「うん」 さんざん迷って、吟味して、白い小さな手はやがて恭しく一冊の本を持ち上げた。勿体ぶって、仰々しくページを開く。小さな紙面を、二人で覗き込むようにして、肩を寄せ合って、絵本を眺める。雪満の唇が、メーテルリンクの青い文字をなぞった。 「むかしむかし……」
†
子供部屋は、やおら静かになっていった。
そっと雪満の部屋のドアを開くと、エアコンが暖気を吐き出す音だけがごうごうと静かに囁いていた。晴と雪満は、二人揃ってベッドの上で丸くなり、寝息を立てている。絵本や、子供向け文学書や、たぶん、晴にはよくわからないような書籍なども、片づけられもせずその辺に転がっていた。 本を読みながら寝てしまったらしい。 母親は、雪満が頬を乗せている開いたままのヘンゼルとグレーテルの本をそっと抜いて、ページを閉じた。空っぽの絵本棚に戻す。
幸せそうに寝息を立てるふたりのこどもを見下ろす目には、色も感情も、何もかもが、なかった。 ただ、底知れない目だった。 少なくとも、子供をもつ母親の目とは形容しがたかった。こんな目で、子供を見下ろす母親が、どのくらいこの世界にいるのだろうと、背筋の凍えるような、そんな眼差しだった。
どこか値踏みするように一瞬息を止めた後、彼女は二人を起こさないように、ゆっくりと部屋を下がる。扉の音がしないよう、慎重に扉を閉め、廊下に立つと、その隣で父親がナイフで手遊びしながら、声を潜めて聞いた。 「殺らないんか?」 母親は目配せして、肩を竦めた。 「こんな引っ越してすぐ、ご近所の子ぉに手ぇ出したら、流石に足がつくで」 「まぁ、そうやのうても雪満が探すわなあ。恰好の獲物やったんに、流石うちらの子ぉ言うか、めざとい言うか」 「あの感じやと、おらんくなっても親も本腰入れて探さんやろ。一度相手の親御さんにもご挨拶しとかんとなあ」 「生まれながらに蚊帳の外っちゅうことか。けったいやのお」 「そういう家(の)がおるから、うちらみたいなんが居れるんやけどなあ」 二人して、にたにたと下卑た笑いを浮かべる。そうして、母親が何か思いついたような顔をして、より顔の皺をくしゃっと深めて、笑った。 「優しゅうされたことない子ぉはなあ、扱いやすいからなあ。きっとよう懐いてくれるやろなあ」 「お前、なんか悪いこと思いついたやろ」 「いやぁ? でも、せやなあ。ウチにしたら妙案やと思うわぁ。あの子、殺さんでおいて、大事に大事にしたるのも、ええんやないかって思っただけやで」 「またそら、どうして」 母親は、底知れない宇宙のような黒い目を、三日月のように細くした。
「そら、子供は肥らせたほうが、美味いやろお」
魔女が食うもんなんやったら、余計なあ。
たった一枚の扉だけを隔てて、廊下は寒々しく、血も凍るほどに冷たく。暖かな部屋の内側で二人はそんなことも知らず、ただ寄り添って夢を見ていた。 温い、柔らかな日だまりのようなこの夢が、どこまで続くかも知らないまま、ただゆらゆらと、まどろんでいた。 定められた最果てが、道行の無い断崖だなんてまだ知らない。 ただ、それだけ。それだけのこと。
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@karitoshi2011 原発事故発生から6年以上が経過している。 そして、地震と津波の発生からも。 被害者たちの多くは、当初 「私たちの被害の様子を誰かが聞きに来て、それを元にして、補償や賠償や支援、生活再建昨りつあんの目安にしてくれるはずだ」と待っていた。 しかし。 誰も聞きに来なかった。 特に、原発事故によって避難指示を受け、強制的に避難させられた人たちは、 「私たちは故郷を奪われた被害者で、賠償や補償もしてくれるというのだから、 被害の程度を確かめるためにも各個人の状況を聞き取ることは必要なはずだった。 彼らを含め、多くの被害者や被災者は、事情聴取を待っていた。 正直、私もその一人だった。 誰かが、どこかから、被害状況を確認しに来るだろうと思っていた。 目の前てみていても混乱(または「恐慌」)状況にあることがわかる、自治体役場職員や、県庁職員、政府職員が事情聴取を行うことは期待できない。 来るとしたら、政府か、マスコミだろうと思っていた。 2011年3月11日直後、私はまだ、日本の大組織メディアのトップたちに多少の期待を抱いていた。民主党内閣にも期待していた。 そして福島県知事佐藤雄平が、県知事として県民の生命と健康を守る義務を果たすという最低の義務を忘れはしないだろうと、勝手に、一方的に、思い込んでいた。 311の後、私が期待していたものが、次々に私たちを裏切る様子を見ることになる。そして、私は自己の甘さ、勝手な期待のもろさを思い知ることになる。 私の間違いが最初に現れたのは、私の自宅が停電から復旧したころだった。1号機建屋が爆発した頃、組織メディアの全てが住民を見捨て避難した。 1号建屋が爆発した時点で、民主党政権は、自民党政権ならばできなかったであろう、住民を守るための政策決定をした。自民党政権が「最大避難距離」としていた10kmを超えて事故原発20km以内の住民に避難指示を出し、30km以内の住民に警告を発し、実質的に自主避難を促したのだ。 当時私はメディアが30km以内の住民が避難するなら、その様子を報道してくれるだろうと思い込んでいたのだが、実際には報道などしてくれなかった。その前に、業務命令で避難を始め、住民の自主避難の様子を取材さえしなかった。いわき市や南相馬市は多くの住民が避難したのに、中通りは知らなかった 311直後、いわき市からは多くの住民が避難し、いわき駅前は無人の様な状況になった。南相馬市では、市長は一方では手を尽くして住民の市外への避難手段を確保し、もう一方では残留することを決めた市民に物資が届かないことに苦慮していた。 この状況も、福島県の中通りにさえ伝わらなかった。 3月12日、1号建屋が爆発した後、私は全国・県内を問わず、テレビ局や新聞やラジオが、100km圏内の人々への防護を呼び掛けてくれると思っていた。しかし、3号建屋が爆発した14日になっても、2号4号の建屋で何かわからない異変が起きても、20kmよりも外の人達に警告を発さなかった。 組織メディアがどうやら何かの緘口令を敷かれて、20km以遠の人々に放射性物質の危険性を伝えることができないだろうことは理解できた。理解できなかったのは、それまで反原発の立場だった筈の科学者たちが「この事故によって拡散されている放射性物質は危険ではない」と言い始めたことだ。 2011年3月14日に3号建屋が爆発しても、15日早朝に2号4号建屋で何かが起き、それまでで最悪の放射性物質の拡散が発生しても、メディアは空間放射線量の変化を定点計測で伝えるだけだった。その数字が何を意味するのか、説得力をもって解説してくれる人は、待っても待っても現れなかった。 後で知ったのだが、2011年3月14日の3号建屋爆発の後、福島県幹部が東京電力に「『この爆発では何の健康影響も出ない』と発表してくれ」と無茶な要求をして断られている。菅首相から「妊婦と子どもだけでも避難させないか」と言われた福島県知事佐藤雄平は、明確に申し出を拒絶している。 県知事に妊婦や子どもの追加避難を拒絶された民主党政権は、このあと福島県民に県外への避難を呼びかけることをやめた。そして、福島県内に福島県外から寄せられる避難の呼びかけを、福島県庁がシャットアウトして、県民に伝えなかった。テレビ局も新聞も、福島県庁に従った。県民だけが知らなかった。 6年遅れだし、私には何も代表できないけれど、お礼を言いたい。 原発事故発生直後に、避難者を迎えようと呼びかけ、準備してくれたのに、 福島県からの避難者が殆どやってこなかった全国の、いや、世界中の皆さんに。 みなさんの呼びかけ自体が、福島県内の住民には届かなかったのだ。 時系列通りに並べると、私にとって最も重い話がここに来る。 2011年3月16日。福島県中通りと会津地方での、福島県立高校の合格発表が、例年通りに屋外で行われた。福島県の場合、原則的に発表から2時間以内に受験生自身が高校に行き、書類一式を受け取る。この年も原則通りに実施された。 2011年3月16日に、中通りと会津で、何の警告も防護呼びかけもせずに、福島県立高校の合格発表を行った段階で、福島県庁と教育委員会には、福島県民を被曝から守ろう、生命と健康を守ろうという意思がないということが、私の目には明白になった。県の公務員の多くには理解してもらえなかったが。 今でも、福島県内で頑張って��る人たちの多くは、その度合いに濃淡はあるだろうけれども、福島県庁が言っている「安全・安心」がある程度真実であってほしいと願っているだろうと思う。事実であるかどうかよりも「安全であってほしい」という思いがある。本当に危険なら言ってくれるという期待がある。 2011年3月16日の福島県立高校合格発表の際にも、多くの人々が「福島県庁や教育委員会が平常通りに、何の警告も防護の呼びかけも無しに実施するのだから、安全なはずだ」と思ったのだろう。 現実には、福島市では公式発表で毎時15μSvの空間線量があり、雨や雪が降っていた。危険だった。 3月16日、空間線量が高く雨や雪が降っているという事は、放射性物質が雨や雪と一緒に降下しているということでもあるので、屋外に出るだけで多量の被曝をし、雨や雪に濡れるということはさらに多量の被曝をすることになる。原発事故に関する基礎知識がある人なら全員知っているレベルの話だ。 しかし、福島県庁と福島県教育委員会は、2011年3月16日、中通りと会津の県立高校合格発表を強行した。会議で異論を出しても「県からの指示なので実行する」という答えしか返ってこなかった。 福島県庁と福島県教育委員会に、県民の生命と健康を放射性物質から守ろうという意思がないと判明した その合格発表の様子を、例年通りに報道する福島県内テレビ局、新聞社、ラジオ局の報道姿勢によって、これら組織メディアにも福島県民の生命と健康を守ろうとする意思がない事が判明した。県内メディアからニュースを受け取り報道した全国新聞やテレビ局にも、原発事故の被害を正確に伝えない事も判明。
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2017/05/24 20:50
兵庫県神戸市
北北東の風1m/22℃/雨1mm/h/湿度92% ONYX 42CPM 0.103μSv/h
TERRA 0.000
PM2.5 25μg/m3 ONYX再び低め。 但し雨のタイミングで0.153前後の事も有。 今日は久し振りの雨、濡れたらあかん… と分かっていたのに濡れてしまった。 急がば回れ。反省。 結果、2時間後くらいから目眩、吐気。 続いて足の怠さが強張りに繋がり、 攣りかける。 夕方前に下半身セルフマッサージで 鼻呼吸がスッと通じた。 深呼吸に繋げ、肩の筋肉を緩める。 調理ができそうだったので、 蜂蜜梅干を食べながら料理。 トマトソースに多めの塩! やはり被曝して体が欲しがっていた様で、 2人前食べた。更に梅干追加、 入浴後ヨーグルト追加。 今日だけで0.6kgほど食べている。 お陰で脳はスッキリ、 多少呼吸がしんどいが動けるレベル。 トマト、塩、乳酸菌、 クエン酸、お白湯は欠かせない。 明日買い足しとこ!
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2024.12.14
eastern youth at 名古屋クラブクアトロ
『単独巡業2024』
1.夏の日の午後
2.砂塵の彼方へ
3.細やかな願い
4.今日も続いてゆく
5.サンセットマン
6.炎上する幸福
7.踵鳴る
8.夜がまた来る
9.青すぎる空
10.素晴らしい世界
11.ズッコケ問答
12.雨曝しなら濡れるがいいさ
13.ソンゲントジユウ
14.時計台の鐘
15.荒野に針路を取れ
16.沸点36℃
17.夜明けの歌
18.街の底
EN.1
街はふるさと
EN.2
DON QUIJOTE
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雨の日はなんだか高校2年生の秋を思い出す。 まだ夏の暑さが残っていて、今思えばよく着てたなと思うくらいピチピチのTシャツに学校指定のジャージのハーフパンツをわざわざ捲り上げて穿いていた。当時好きだった人と会うことになって、でも付き合ってもいなかったから、所謂カップルの穴場みたいなところにも行けず、ただ木の下で話した。途中から雨が降ってきて「行くところもないけど、まだ話したい」という意見は一致して、ずぶ濡れになりながら話す方を選んだ。好きな人は1つ上で部活も引退していたから制服で、雨に濡れたら中に何も着ていないのが分かって、目のやり場に困った。今日こそは告白されるんじゃないかと思っていたけど、そんな話題にもならず、告白されたのは結局その2ヶ月後だった。2時間も豪雨に曝されて、今思い返すとゾッとするくらいのメンタルとフィジカル。でもその時は、びっちょびちょになったリュックや教科書、制服すら愛おしくて、家に帰ってお母さんに怒られてる間も、お風呂で温まっている間も、ずっとその日のことを思い返しては照れていた気がする。こんな甘酸っぱい思い出、自分にもあったな〜〜、とふと思い出してなんだか切なくなる。でもこの人と後に付き合ってこの人が進学するにあたって遠距離恋愛になるのだけれど、電話で浮気してたことを自己申告されて「別れたほうがいいってことだよね?」って聞いたら「そうだね。もう付き合っちゃってるし。。。」って言われたのも梅雨の時期のムシムシした雨の日だったな。もうすぐ春が来るけれど、それが終わればすぐ梅雨の時期が来る。梅雨が来たら嫌いな桜もベタベタと汚く地面に落ちる。それまでの辛抱だね。
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FUJI ROCK FESTIVAL '18 Day 2 (SAT, JUL 28)

eastern youth
The Birthday
小袋成彬
superorganism
マキシマム ザ ホルモン
D.A.N.
Skrillex
Kendrick Lamar
5lack
この日はイースタン・ユースから。何度か観てはいるが、このフジロックのグリーン・ステージで彼らのライブを観るというのはやはり何か特別な思いがこみ上げる。最初から最後までめちゃくちゃエモかった(最近「エモい」という言葉を軽々しく多用してしまうのだが、自重しようと思う。こういう時のために取っておかなくては)。あまりに良すぎて、1日の体力と酒量の配分を早速大幅に狂わされてしまった。降りそうで降らない、はっきりしない曇り空の下で聴いた「青すぎる空」、「雨曝しなら濡れるがいいさ」、「夏の日の午後」。一生忘れないと思う。
そのままグリーンに残って、ザ・バースデイ。前にクロマニヨンズを観た時にも感じたけど、こういう余計なものをそぎ落としたシンプルなロックンロールを聴くと、完全に語彙を奪われて「笑っちゃうぐらいかっけーな!」としか言えなくなってしまう。ロックンロールにとって若さというのは大きな武器だが、それを代償に手に入れた年季や説得力の方がずっと得難いものだし、最近はそちらに心を奪われることが多くなってきた。

レッドマーキーに移動。この日は風がなく、ひどく蒸し暑い。そんな中で小袋成彬の音数が少ないトラックとクールなボーカルは体感温度が低くてとてもマッチしていた。
再びジャスミンタイで、今度はマッサマンカレーを食べながら様子を見ていると、開演まで30分以上あるのにすでにレッドマーキーにはかなりの人が。この日、ケンドリック ・ラマーと並んで楽しみにしていたsuperorganism。サンプリングを織り交ぜたゆるいビート、脱力感のあるグルーヴは音源の通りだが、オロノのヴォーカルはかなり印象が違った。あどけなさの残る気だるい歌声ではあるものの、実際に見る彼女はその奥に忍ばせた確固たる意志が前面に出ていて、しかも常に何かに対するイラつきを撒き散らしていた。その佇まいは久しく見なくなったロックスターのそれであり、なんとなく僕は、アシッドハウスという同じく緩めのサウンドを纏って『スクリーマデリカ』というパンクなアルバムを放った90年代初頭のプライマル・スクリームのボビー・ギレスピーはこんな空気を持っていたのではないかと思った。

グリーンまで移動し、遠くからかすかに聴こえる「Girl From Mars」に思わずホワイトステージのAshに駆け出したくなったが、体力がついてこなくて、グリーン後方で座ってのんびりマキシマム ザ ホルモンを観る。これほど「座ってのんびり観る」のに適さないバンドもなかなかいないが、以前3回ほど彼らを観たロック・イン・ジャパン・フェスでは後方まで人がギッシリで、こんな風にゆったり観られることはなかったので、これはこれで贅沢な気もする。ライブは相変わらず最高だった。
今年はレッドマーキーにそのキャパシティを超える集客力のあるアクトが多かったし、昨年から旧ワールドレストラン跡地に出来たBLUE GALAXYの音被りもあって、混雑時に後方の木立でのんびり聴くということができず、そこは少し不満が残る。途中何曲かだけ観たD.A.Nは以前よりもスケールアップしていて、緻密でテクノロジカルなサウンドでありながら、バンドならではのダイナミズムもあり見応えがあった。
とにかくケンドリック・ラマーを万全の状態で観たいので、この時点でカーラ・トーマスとMGMTを諦め、強くなってきた雨を避けるためグリーン後方の森へ移動。Skrillexを聴きつつ、リュックを会場入り口でもらうビニール袋に入れ、レインウェアを上下着込んで完全防備で潜む。フードに打ちつける雨音、人を踊らせることに特化したスクリレックスの機能的なビート、最後に唐突に差し込まれてきた「Endless Rain」のピアノ、聞き覚えのある意外と体育会系なYOSHIKIの野太いシャウト。朧気な意識の中でそれらが混ざり合い、夢と現と幻の間をさまよう。
そして毎年1度おとずれる「俺は安くないお金を払ってこんな山の中で雨にうたれて、一体何をしているんだろう?」タイム。宿に帰って風呂に入って眠りたい。
それでも気力を振り絞ってグリーンステージへ。どうせなら豪雨の過酷な状況の方がライブとしてのレジェンドポイント的なものは上がるなあなんて思ってもいたのだが、定刻の21時を回った頃に急に雨足が弱まる。それと同時に、そんなくだらない自分の思惑も、事前からSNS上で懸念されていた客入りや、今回ライブがYouTubeで配信された事による雑音や何やかやも霧消して、文字通り固唾を飲んで待つ形になった。
満を持して登場したKendrick Lamerはまさに圧巻だった。冒頭の「DNA.」の時点ですでに感情も言葉も根こそぎ奪われてしまって、だいぶ時間が経った今でもその感覚を上手く言語化することができない。規格外の圧倒的なスキルとテンション、脇に潜ませたバンドの鉄壁な演奏とシンプルな演出、DAMN.ツアーを通して使われている映像とともにシリアスとコミカルの間を自在に飛び回る表現力。佇まいから挙動、表情にいたるまで完全にスターのそれで、カリスマとはこういうものかと素直に感心してしまった。
そして、僕が今までに観たいくつもの忘れえぬライブと同様に、この日のケンドリックのステージにおいても、こうやってなんとか言葉にして書き綴ることのできる部分というのはあまり重要ではない。貴重な体験というのは、時間とともにその細部や詳細の記憶が薄れていっても、ある印象的な瞬間がイメージとして心に残り続けるものだ。ケンドリック・ラマーは万単位の人々をそのパフォーマンスで魅了し熱狂させたが、会場のボルテージが高まれば高まるほど、オーディエンスのレスポンスが大きくなればなるほど、本人は醒めていった。ように見えた。それは事前にも事後にもいたるところで言及されている日本の観客の質やノリがどうとかいう事とは関係ないし、うまく説明するのは難しいのだけど、でも、その瞳の奥にどうしようもない孤独を感じたことで、自分がなぜ彼の音楽を繰り返し聴いてしまうのかが少し分かった気がした。
終演後に再び降りはじめた雨は風とともに一気に強まり、これまで苗場で経験したことのない暴風雨が会場を襲った。ケンドリックのライブの余韻とずぶ濡れのヤケクソ感で酒が進み、最後に観た5lackもケンドリックに負けず劣らずの最高のライブだったが、いかんせん記憶はほとんどない。でも、この2人を同じ日に続けて観られたのは本当にエキサイティングで楽しくて幸せだったな。

忘備録 8:30起床、10:00出発、3:00就寝 昼:半袖カットソー 夜:長袖カットソー+レインウェア上下
FUJI ROCK FESTIVAL ‘18 Day 1 (FRI, JUL 27) FUJI ROCK FESTIVAL ‘18 Day 3 (SUN, JUL 29)
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温度変化と身体の関係って??
台風やら、寒かったり暑かったりと、温度変化が激しく、体調管理も大変な時期です。こんな時期は、自律神経の乱れもあって免疫力低下、体調不良になりがちです。
先月のニュースですが、福岡市で高校生が雨の降る中の体育祭中に体調不良で病院に何名も搬送されるという事が起きてましたね。
若者でも倒れてしまうんです。。。原因は低体温症だろうと…
あの日は、雨が降り気温は21度くらい。その前まで30度超えだった福岡ですが、その日は寒かったと覚えています。雨で濡れた衣服で、外でずっと待機させられている中で起こったそうです。これは若いこでも大人でも具合が悪くなりそうですよね。
人の体温は、恒常性(ホメオスタシス)により通常は外気温にかかわらず一定範囲内で保たれています。しかし、自律的な体温調節の限界を超えて寒冷環境に曝され続けたり、何らかの原因で体温保持能力が低下したりすると、恒常体温の下限を下回るレベルまで体温が低下し、身体機能にさまざまな支障を生じ多臓器不全にいたります。この状態を低体温症といいます。
低体温症は冬季や登山など極端な寒冷下でのみ起こるとは限らず、水泳用20-24℃のプールや濡れた衣服による気化熱や屋外での泥酔状態といった条件次第では、夏場や日常的な市街地でもなることがあります。
軽度であれば自律神経の働きにより自力で回復しますが、重度の場合や自律神経の働きがわるい場合は、最悪、死に至る事もある症状です。これらは、常に体内で発生しているカラダの反応が、温度変化により、通常通りに起こらない事によりなるんです。
今季の夏場は酷暑で、室内は冷房を効かせ、冷たい物の摂取、睡眠不足、ストレスなどにより自律神経のバランスがガタガタの状態の方が多いはず。こんな時に、今回の事件になってしまったんではないかと思います。人の体は繊細です。若い子でも大人でも高齢の方でもみんな同じです。
鍼やお灸をする事で自律神経のバランスを整えてくれる手助けになりますよ。ですが、大前提には、しっかり休息、睡眠、栄養をとって自律神経のバランスを整えていきたいですね。

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風月句会
2022年5月15日

於:多摩市民館4F第6会議室
坊城俊樹選 栗林圭魚選
坊城俊樹選 特選句
坊城俊樹選 特選句
頬杖の墓美しく新樹光 慶月 木の朽ちて大蛇めきたる翳り沼 文英 あぢさゐの色ととのはず人逝けり 葉月 黒南風や樹霊を浸す水の音 千種 蜘蛛の糸聖観音の背中より 慶月 鎌倉へ羽蟻を運ぶ蟻一つ 久子 青梅の転がる坂の下に句碑 要
坊城俊樹選 入選句
一陣の古の風時鳥 久子 鎌倉の城跡遥か谷若葉 眞理子 将来は植物学者蛇苺 久 切株を包み十薬香り濃し 圭魚 さくらの実とはくれなゐにほろ苦く 斉 姫女苑供花とし宝永墓朽ちぬ 慶月 行春や梵鐘音をくれぬまま���佑天 朴の花真白き命天に置き 三無 梅雨昏む空突き上げて母子像 芙佐子 葉隠を少し灯して柿の花 斉 五輪塔朽ち老鶯の鳴き渡る 要 街騒を遠くまとひて山若葉 眞理子 枡形門夏黒蝶は武士か ます江 人しれず頭擡ぐる蛇苺 千種 濡れてゐる薔薇の薫りに夜の匂 斉 隠沼に泥を漁りて夏の鴨 要 陽子さんへ供華のどくだみ姫女苑 慶月 姫女苑ここにも澄まし顔をして 秋尚 枡形の山にとよもす青葉木菟 幸風 青葉冷メタセコイアは傾かず 千種 稲毛氏の寺門はひそと朴の花 芙佐子 錆びゆくを天へ曝して朴の花 要 薔薇園へバスの乗客ただならず 圭魚 切り岸を埋め棒立ち姫女苑 千種 赤き灯を点す漫ろの蛇苺 亜栄子 春闌ける多摩川のたり流れたり 佑天 丹沢の影墨絵めく夏霞 秋尚 柿の花万余中ばは地に還り 圭魚 山門を昏めて高き朴の花 斉 峠路へ傾れ落ちをり山うつぎ 芙佐子 城址へと胸突坂の薄暑かな 炳子 傾きし墓碑に重なる桜蘂 葉月 五輪塔黴に傾げてをる古刹 慶月 母の塔マリア降りくる聖五月 久子 若葉風丸く広がる地平線 白陶 夏帽をちよと上げ詣で心かな千種 谷間の暗きに菖蒲黃を放つ 芙佐子 森抜けて薫風よぎる母の塔 三無 鈍色の空を薄めて朴咲けり 亜栄子 観音の結縁円し暮の春 佑天 十薬の十字の白や武士の墓 葉月
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栗林圭魚選 出句
栗林圭魚選 出句
薔薇園へバスの乗客ただならず 朴の花崩れ落ちんとかくも焦げ 万緑や遠き丹沢行夢見 切株を包み十薬香り濃し 笹藪を抜けて華やぎ金銀花 柿の花万余中ばは地に還り 薄曇囀り細く途切れがち
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栗林圭魚選 特選句
栗林圭魚選 特選句
朴の花真白き命天に置き 三無 大空を水馬飛ぶ池の面 軽象 ひとつづつ落つる準備のえごの花 秋尚 稲毛氏の寺門はひそと朴の花 芙佐子 錆びゆくを天へ曝して朴の花 要 母の塔新樹の風に集ふ人 ます江 翡翠の帰りを待たず水流る 久
栗林圭魚選 入選句
鎌倉の城跡遥か谷若葉 眞理子 母の塔TARO恋しと鳴く老鶯 亜栄子 登城坂なりしよ定家葛咲く 千種 漆黒のD51映ゆる樟若葉 芙佐子 姫女苑植物園の道すがら 白陶 鎮魂碑メタセコイアの緑さす 要 夏めくや樹々耀ふて音を成し 眞理子 梅雨昏む空突き上げて母子像 芙佐子 街路樹は桂新樹の波となり ます江 大いなる新樹並木の中に入る 白陶 五輪塔朽ち老鶯の鳴き渡る 要 竹組みに幼の塗り絵蟻登る 佑天 蜘蛛の糸聖観音の背中より 慶月 老鶯の木霊す横山母の塔 亜栄子 枡形門夏黒蝶は武士か ます江 城址に都心一望夏霞 芙佐子 若楓空にささやきかけてをり 白陶 隠沼に泥を漁りて夏の鴨 要 軒下に伸びする猫や花卯木 眞理子 見下せど見えざるほどに谷若葉 白陶 ジョギングの蹴散らしゆく桜の実 芙佐子 鐘楼の綱を五月の風揺らす 慶月 丹沢の影墨絵めく夏霞 秋尚 山門を昏めて高き朴の花 斉 青梅の転がる坂の下に句碑 要 城址へと胸突坂の薄暑かな 炳子 定家かずら花より蔓をたどりたる 久 五輪塔黴に傾げてをる古刹 慶月 隠沼にメタセコイアの新樹光 幸風 夏帽をちよと上げ詣で心かな 千種 森抜けて薫風よぎる母の塔 三無 鈍色の空を薄めて朴咲けり 亜栄子 観音の結縁円し暮の春 佑天 墓石より旅立つ揚羽蝶雲へ 慶月
(順不同特選句のみ掲載)三無記
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THE BLACK BEATLE 2
「セックスしたことあんのか?」
直球で聞かれる。
俺は目を瞑って、首を横に振った。
「フェラしたことあんじゃねェかよ?」
彼にベッドの上で詰め寄られて、
「ムショで、咥えさせられた…だけだ………」
恥ずかしくて恥ずかしくて死んでしまいそうだ。
「フェラされたのは?」
尋問。
「女とならセックスある………」
正直に告白すると、彼は俺の頭を優しく抱き締めて、
「そっか………色々と聞いて悪かった…」
と、言い、
「全部、話してくれてアリガトウ」
と、俺の頭を撫でた。
ソファの上で暫く、黙って抱き合って、
思い出した様にキスをした。
彼は俺の首に何度もキスをして、キスの生々しい音が耳の近くでするから、俺は頭がぼんやりしてくる。
「セックスしてェ………」
ぼそりと彼が呟いた。
「テメェとしてェ………」
彼を見ると、黒い瞳がこちらを見ていて、グレーの瞳の中のグラデーションに吸い込まれてしまいそうだ。
「………どうやるんだよ…?」
素直に尋ねる。
「男同士は知らねェのか………」
彼のシャープな顔がくしゃりと笑って、いつものすました顔も好きだが、この顔も好きだなと頭の隅で思った。
そこでやっと気付いたのだが、
「ああ………こうゆうことか……」
と、言うと、
「どした?」
俺の頬にキスをしながら、
「俺は、オマエの笑う顔が好きなんだ………」
と、言うと、
彼は、
「マジか………」
もっと笑った。
「服、脱げよ。シャワー浴びよう」
彼はソファの上で膝立ちになって、パーカーを脱ぎ捨てた。デニムのバックルを外す音がして、目を上げると、彼の黒い瞳と目が合った。
視線を下げると、彼の上半身の裸が目に入って、脇腹の筋肉が好きだ。
彼の腹に描かれた黒いタトゥーのハートが俺の心臓を覗き込む。
目の奥に彼のハートが焼き付く。
彼のハートからは逃げられない気がしたから、
俺も、
シャツを脱いで、デニムも脱ぐ。
下着をどうしようかと思ったら、彼はベッドから降りて、下着を着けてなかったから、俺も脱いだ。
「ほら」
彼は左手を俺に差し伸べて、俺は右手でその手を掴んで、
二人で手を繋いで、
部屋を出た。
シャワーは中々、温かくならないから、シャワーブース前で二人で裸で立って待つ。
「…湯に…なかなかならねェな……」
隣の部屋の奴がシャワーを使っているんだろうか。シャワーはずっと水のままだ。俺は、シャワーブース横のトイレの便器に座った。
「………………」
俺は待つのは苦じゃない。むしろ得意な方だ。
水の音を聞きながらなら、いつまでも待てるなと、思った。
雨の中にいるようだ。
横を見ると、じっとシャワーの水を見詰めたままの彼の横顔が見えた。
ぼーっとシャワーの水の飛沫を見ている。
「シャワー先に、浴びるのか? 後でじゃダメか?」
と、聞くと、
「後も浴びてもいいが、ヤるなら先に浴びて、中を洗わないと」
と、言うから、
「中?」
どういう意味か分からずに、
「ヤる前に、中を洗浄しとかないと」
しかし、彼は当然というように、さらりと言った。
「ウソだろ!?」
俺はぎょっとして、
「洗浄すんだよ。それが相手に対するマナーってもんだろうが」
と、当然のことのように言う。
「俺もしとく」
とも、彼は言った。
視線はシャワーの水先を見詰めたまま、彼は言った。
シャワーの水を指先で触り、
「やっと、温かくなったぞ………」
彼は俺の腕を掴み、狭いシャワーブースに引っ張り込む。縺れ込むようにシャワーの湯が頭に当たって、
「ギャア」
まだ、俺の肌にはこの湯の温度は熱い。
「すぐに慣れる」
彼は俺の頭を水で濡らして、棚の上のシャンプーのポンプに片手で何回かプッシュして、俺の頭に付ける。
「うわっ……泡………」
湯を浴びながら、シャンプーをするから、シャンプーの泡が顔の上に落ちてきて、
「後で俺も洗ってくれ」
片目を開けると、
シャワーの、
水の向こう側で、
水遊びで遊ぶガキみたいに笑う彼がいた。
シャワーの湯は流しっぱなしで、二人でシャワーブースの端っこに寄って、ボディソープを体中に塗ったくる。熱い湯の飛沫を背中に浴びながら、ボディソープの泡を彼の髪の毛や髭に付けて、洗うと、彼は嬉しそうに口元を緩めた。
俺も彼も、びしょびしょに濡れて、泡だらけで、
彼の黒い髪の毛は濡れて、ピッタリと額に貼りついていて、セクシーだと、感じた。
彼の手は優しく、俺の肩を触り、泡を広げていく。胸も背中も撫でられて、
「ココも触ってもいいか?」
俺の、腰骨を触りながら、
「………………」
無言で、俺は頷いた。
彼の温かい手が柔らかい泡と一緒に俺のアンダーヘアを触り、そこを触りながら、俺が感じない程度にペニスを優しく洗ってくれる。
「…………んっ…」
俺は湯の熱さとか、色んな感情で、頬が上気するのが分かる。
「オマエって…カワイイんだな………」
彼は、俺の口に��音を立ててキスをした。
「かわいくなんかねェよ!!」
俺は、ビックリしてそう言うと、
「そうか………そうか?」
と、彼は聞き返す。
「脚を上げろよ」
俺は片手を壁に突いて、片足を上げたら、彼はボディソープを手元に足して、両手で泡立てて、太ももから足先までボディソープの泡で撫でた。くすぐったいような、不思議な感触。両足を足裏まで洗ってもらったら、泡だらけのままで、今度は俺が彼を洗う。自分の身体に付いた泡を彼の身体に擦りつけていく。
「くすぐってぇよ」
脇を触ったら彼がそう言ったから、
「…わるい……」
謝りながらも、俺は、人を洗うのがこんなに楽しいとは思ってもいなかったので、新鮮な感動を覚える。
「あやまるなよ…」
シャープな黒目が笑うから、俺は嬉しくて、おずおずと、彼の唇に下から口付けした。すぐに離すと、
「………………」
黒い瞳がとにかく笑っていて、
とにかく俺は嬉しくなるのだ。
「ちょっと待ってろ」
泡を流し終わって、彼は裸のまま、シャワーブースを出て行った。シャワーブースの入り口で、猫が顔を覗かせて、彼は彼女の頭をさっと撫でて、でも、彼女はもっとかまって欲しそうで、彼は、『後でな』と、言った。
バスルームから部屋まで、彼の足跡の水が付いた。
戻って来た彼は、手のひらサイズの小さいスポイトみたいのを2個持っていて、
「……………?」
シンクの蛇口を捻って、コップに水を溜めて、
「座れ」
スポイトに水を入れて、俺にそう言う。
俺はシャワーブースのまだ、湯が流れきってなくて、温まった床にしゃがみ込む。
「入れるぞ」
言われて、彼の手元を見ていたら、水の入ったスポイトを俺の下半身に近付けたから、
「……えっ、イ、イヤだ…ふざけんな……」
嫌な予感がして、俺は尻で後ずさった。
「…………ッチ」
彼はコップを床に置いて、俺の左の足首を掴んで、局部を彼の眼前に曝け出す、ポーズを取らされる。
「こわい、こわい、こわいだろ、なんだそれ」
彼は、
「………うるせぇな、ガタガタ言うな。傷付けんだろーが」
と、言って、俺のペニスを薬指でつーっとなぞり、水の入ったスポイトの先を、
「うわあ!」
俺の中につぷりと差し込んだ。
「つめてぇ」
間を入れずに、スポイトを押して、俺の中に少量の水が入り込む。すぐにスポイトは抜かれて、
「水、出せ」
言われる間も無く、俺の中心から水が、ちょろちょろと流れ出す。俺はもう見てられなくて、自分の目元を両腕で覆った。
「あと、もうちょっとな………」
そして、同じことを2回もやられて、俺はずっと目が開けられなかった。
「終わったぞ………」
彼はそう言って、少しだけ顔を上げて彼を覗いたら、彼はスポイトをゴミ箱に投げ捨てた。
「こ、こんなことするなんて、汚くないのか…?」
そう聞いたら、彼は首を傾げて、
「人間なんて、みんな汚ねェんだよ」
と、言った。
「オレもオマエも、人間だ」
いつものように淡々と、
「でも、人間だから………」
彼はしゃがんで、
「オレはオマエが好きなんだ…」
そう言うのだ。
黒い瞳が覗き込んできて、心の中を覗かれる気分。
「オレは自分でするけど、オマエの前でしていいか?」
聞くから、
「ここでされたくないなら、俺はトイレでする」
俺は、
「………ここでしろよ……」
消え入るような声で頷いて、また、目元を両腕で隠した。彼は俺の頭を撫でて、
彼が立ち上がった気配がした。
直視なんて到底できない。
スポイトに水が入る音がして、排泄する水音が聞こえてきて、
ああ、
好きな人とセックスするのはこんなに大変なものかと、
人を愛するのはこんなに大変なものかと、
途方に暮れる。
シャワーブースで座り込んだまま、立ち上がらないでいるとバスタオルでぐるぐる巻きにされて、ベッドまで、運ばれた。俺を抱き上げたままで移動。彼はバスタオルから出てる俺の身体にガツガツとキスをする。飢えたガキみたいだ。濡れたままの部分にもおかまいなしでキスをする。
頭はまだ湿っぽいままで、ベッドの上で、キスをされながら、乱暴に体中を拭かれる。犬になった気分。あらかた、俺を拭き終えると、半分、濡れたバスタオルを彼は自分だけ腰に巻き付けて、俺は裸でベッドに転がされる。
どうしていいか分からずに、俺はそこにあった枕をかき抱いて、身体を隠すように、丸まった。
彼は、指輪を外して、纏めてサイドテーブルに置く。
カチャリとシルバーがぶつかる音が静かな部屋に残る。
彼のシルバーの指輪が、薄暗い明りの中で、鈍く光った。
「オイ………こっち向けよ」
彼に言われて、枕の端から目だけ出す。
「どっちがしたい?」
と、聞かれて、意味が分からずに、
「どっちってなにが……?」
と、答えると、
「入れるのがしたいか、入れられたいか、オマエはどっちだ?」
と、やはり、ド直球に聞く。
考えてもいなかった…。
俺は、枕に顔を埋めて、
「………………」
無言を貫く。想像したことがないから、答えられない。
「……………ヲイ」
黙ったまんまの俺の、頭に彼は手を置いて、
「また、分かんねェのか?」
と、察してくれたので、俺は無言で頷いた。
「じゃあ、俺がヤりたいようにヤる」
と、言い切って、サイドテーブルからコンドームとワセリンの缶を取り出す。
「好きにヤってくれ………」
俺はそれしか言えなかった。
「…………………」
彼は俺の頬に、顔を寄せて、囁いて、
「………オレは大体、オマエのこと分かってるんだ…」
ちゅっと音を立ててキスをした。
「意地悪でワルイな」
言って、
「脚、開けるか?」
優しい声色が耳元で囁く。
ああ、俺が突っ込まれるんだ…、と思い、思考がぐるぐる回りすぎて、足を閉じたままで、身体が追い付かないでいると、
「勝手にするぞ」
彼は俺の足首を掴んだ。
「……………っ!?」
両足首を掴まれて、左右に広げられる。
「脚、広げたままにしとけ」
言われるがまま。それより、緊張して動けない。
彼はワセリンの蓋を開けて、右手の指をワセリンに突っ込んで、ぬちゃぬちゃと掻き混ぜた。
指にたっぷりとワセリンを取って、
「指入れるから、力、抜いとけ………」
『無理』、と、言う間もなく、
「…………っひっ」
変な声が出た。
異物感。
さきほど、入れられた水は冷たかったのに、今度は熱い。
「痛くないか?」
熱い。
「………痛くは……ないっ」
熱い指を抜き差しされて、俺の声は上擦る。
「もっと……入れるぞ…」
もうこのまま目を瞑ったまま、気を失ってしまいたい。
ぬるりとした感触に絶望を感じる。
それなのに、
「………あっ…」
感じる。
彼の指が俺の中を探る。
驚いて、目を見開くと、
「気持ちイイか………?」
俺は、首を横に振って、
「イヤだ……ちがうちが………っ」
彼は、悪戯に笑いながら、
「……あっ…ああっ」
俺は、思わず、声を上げる。
「ココか?」
彼は笑いながら、指を動かす。
「ちが……ちがう………」
身体の中を弄られて、
「ウソだろ……オマエはココが好きだろ」
触られて、変な感覚が俺を襲う。
戸惑う俺に、
彼は、
「セックスはコミュニケーションだ」
と、言う。しかも、
「かなり高度なコミュニケーションだ」
とも、言う。
「五感をフルで使うんだ。言語コミュニケーションも豊富だ」
彼は俺に口付けして、
ぴったりと唇と唇を合わせる。
唾液の味を感じて、
唇が離れた時、
「今のオマエには難しすぎるんだろう?」
と、呟いた。
そんな彼を、俺は、いつの間にか涙が滲んだ瞳で、見ると、
やはり、恐ろしいくらいシャープな黒い瞳が心の底から俺を見詰めるのだ。
片手で腰を抱き留められて、
「腰、ほっそェな………」
と、彼は舌で唇を舐めながら言った。
熱い。
熱い指に弄られている部分が、おかしいくらいに熱い。
「イヤだ……イヤだ」
もう耐えられなくて、反射的に脚を閉じようとしたら、
「もうちょっと」
彼は俺の右腿に、左手を置いて、
「……イヤだ…あああっ」
ソコをぐっと触れられると、声が止まらなくなる。
「気持ち良かったら、それを教えてくれよ」
と、彼はそう言うが、俺はそれどころじゃない。
コミュニケーションを取るとか、そうゆうどころじゃない。
脳の情報量が俺の限界を超え始める。
脳髄を走る、味わった事の無い感覚。
頭も心臓も、大事な部分を全部、失うような感覚。
熱い指で触られている。
彼が指で、俺の中を掻き乱す。
ペニスの裏側を、身体の中から触られる。
「あああああ」
喉から声が出た。
おかしくなる。
涙の奥でローが、いつもの癖の舌なめずりをした。
でも、
俺は、
そんなどころじゃなくて。
熱い熱量が一気に、自分のペニスに集まるのを感じる。
「………イく…イク………」
自分でペニスを触ってイくときの感覚ではなく、
強制的に、持ってイかれる。
「…………あああ」
なのに、
「もう少し」
彼は俺のペニスの根元を押さえて、
「……ぁあっ」
俺の口からは悲鳴みたいな声が出た。
「もう少し、我慢してろ」
ローは俺のペニスを離してくれない。
「あ、あ、あ、あ、」
マグマの熱が渦巻くように、熱い熱が俺の下半身をじんわりと包む。
「……ううあ………」
重く、甘く、包む。
「……………っ」
そのうち、喉の奥から空気しか出てこない。言葉なんか出ないくらい、甘い感覚が下半身から、ビリビリと伝わってくる。
「イくなよ」
彼は、俺から手を放し、俺は、重い足をだらりとベッドに投げだしたままで、何も出来ない。
自分の心を隠すことも出来ない。
俺のペニスは屹立したままで、
目の端で、彼がコンドームの袋を歯で千切って、
彼は自分のペニスに装着した。
「好きな体位はあるか?」
と、聞いた。
「………………ない」
俺は涙で顔をぐちゃぐちゃで、彼の質問なんかどうでもよく。
「じゃあ、入れやすいのでヤるぞ」
俺の背中の下に手を入れて、上半身を抱き起こされて、
「後ろ向いて、腰、突き出してろ」
俺はのろのろと枕の下に腕を入れて、枕を抱き締めて、顔を埋めた。
もうどうでもいい。
彼は、俺の腰を掴んで、引き寄せる。
引き寄せられると、自然と腰が上がって、
「ココ触っててやるから、力、抜いてろ」
彼は俺のペニスをやわやわと触って、でも、そんなことされると先にイってしましそうで、俺の背中がビクリと動いた。それを感じ取った彼は、
「悪いな。入れた時にイかないように、根元、押さえとくぞ。」
と、俺のペニスの根元を、射精できないようにする。
時系列で色んな事が起こるが、もうなにがなんだか。
「入れるぞ………」
そうは、聞こえたが、分かってはいるのだが、
「……………ああ」
状況に、脳が追い付けずにいると、
「ああああああ」
彼のペニスが一気に自分の中に入り込む。
「入った………」
彼は大きく、息を吸い込んだ。
彼の睾丸が俺の股の間にピッタリと当たっている。
本当に、一気に入り込んで、一気に身体の中が埋め尽くされる。
永遠のようで一瞬で、でもそれは今。
ジンジンと熱い。
信じられない。
じわじわと彼は腰を動かすと、
「あっ、ああっ」
脳髄を抉られるような、鋭い快感。
彼の睾丸が俺の尻に当たるのが分かる。
それに興奮するから、俺は彼が熱をぶつけてくる箇所に集中する。
彼のペニスを絡めとる。その感覚だけしかない。
他の感覚も思考も何もかも、
どこかに置き去りにしたまま、
俺は、
「あっ、あっ、あっ」
声を上げる。
甘い、甘い、感覚。
酔うより甘い、
痺れが、
臍近くを渦巻く。
頭の中はもう真っ白で、
「イく…イく………」
俺は奥歯を噛み締めて、ぎゅっと目を瞑ると、涙がぼろりと零れた。
「イきてぇ…よぉ……」
肩甲骨の間にキスをされて、
「もう少し…味わいてぇ……」
熱い息が背中を昇り、俺の首筋に彼はキスをして、
「気持ちいいか………?」
言って、頬を寄せた。俺は無我夢中で頷くと、
ローは俺の目元を犬みたいに、
獣みたいに舐めて、
「先にイけ……」
言って、俺の俺のペニスの根元を外し、指先でカリを触る。
「うあああ」
濁流のように、痺れが脳を支配し、
「------っ」
ペニスから熱を吐き出す瞬間も、
彼は俺の中を動いていて、
甘い感覚が終わらない。
身体が一瞬、硬直して、すぐに弛緩する。力の抜けた俺の腰を、掴まれて、
「オレもイく………」
荒い息。
イったばかりの俺の中を容赦なく抉るから、
「……………ーーーー」
獣みたいに、俺の肩が痙攣する。
ピストンが速い。
開ききった俺の口の端から唾液がポタ、ポタとシーツに落ちる。
俺の肘がガクガクと崩れ落ちた。
枕の上に突っ伏す。
「…………………っ」
彼もイった。
彼は大きく、溜息を吐いて、
俺は、大きく、やっと息を吸い込むことができた。
信じられないくらいの血流が、一気に全身を駆け巡った感覚。
酔うより強烈で、どんなドラッグよりも強烈。
「どうだった…」
彼は荒い息を吐きながら、
ずるりと、俺の中から、ペニスを引き抜いて、
「………………」
黙ったままの俺に、一瞥をくれて、
コンドームを外して、
「ワセリン使ったから、破けちまったな」
と、ポタポタと白い液体の零れ落ちる、ゴムの袋を見せた。
ブランデーの液体を口の中に押し込まれて、
強制的に意識を引き戻される。
「まだ、起きてろ」
彼はブランデーの瓶をあおり、もう一口、俺に飲ませた。
「寝てたか……? 水…水くれ」
言うと、
「寝てたというか…意識を一回、飛ばしたみたいだ」
何事も無かったかのように言う。
「待ってろ」
彼はキッチンからグラスに入った水を持って来て、俺の口元にグラスの端を着けた。
グラスを傾けて、俺は水を飲む。
唇の端から、かなりの水が零れ落ちて、俺の胸を濡らした。
「中に少し、出たから、処理するぞ」
喉を鳴らしながら、水を飲んで、
「………………」
無言で頷いた。
「自分で処理できるか?」
水をグラスの底まで、飲み切り、
「………………」
無言で、首を横に振った。意味が分からない。
「歩けるか?」
俺はベッドサイドにグラスを置いて、ベッドの端に座って、立ち上がろうとすると、
「……………?」
がくりと膝から崩れ落ちた。
膝までは感覚があるのだが、膝から上、腰に掛けての支えが無い。
「シャワー浴びるぞ」
彼は俺の、腕を掴んで、彼の身体に引き寄せて、
「………ねむてぇ」
言う、俺に、
「このまま寝ると、腹を下すぞ」
言って、俺の身体を担ぎ上げた。
「………なんでだ?」
俺は、彼に体重を預けて、もうそうするしか今の俺には出来ないのだが、
「浣腸したみてェになってんだよ。オレのザーメン、オマエの中に入れただろ。身体がそれを排出しようとして、明日くらい、下痢になる」
ああ、もういちいち、面倒くさいな、と思いながら、
「ほら、座れ」
冷たいシャワーブースに降ろされ、
「…………っつめてェえ」
彼がシャワーを捻ったから、頭から冷たいシャワーが降って来た。
一気に目が醒める。
俺が自分の肩を抱くと、そんな俺を彼は無言で、
「………………」
上から抱き締めた。
俺の顔には彼の背中から流れ落ちる水しか当たらなくなった。
彼は大概、頭が良いが、けっこう不器用なんだなと思った。
しかし、すぐにそれは温かい湯に変わる。
「中の出すから………指、入れるぞ」
シャワーの音に混じった彼の声。
返事をしようとすると、口の中に、大量のお湯が入ってくるので、
「……………っ」
俺は唇を噛み締めた。
雨の中、裸で座り込んだまま、下半身を弄られる感じ。
しかし、この雨は熱い。
彼は弛緩した俺の中心に指を入れて、シャワーの湯を流し込みながら、傷付けないように、彼は慎重に掻き回す。
その動きが虫かなんかが動くみたいで、俺は、
「…………気持ちワリィ」
顔を横に振る。頭で水を撒き散らしながら、
「………っはやく、終わらせろ……っ」
と、彼の腕にしがみ付いた。
もういい加減、嫌になってくる。何もかにも。
そんな俺に、彼は、
「わるいな…」
言って、俺の頭を抱き寄せて、でも、俺の身体を弄る手はそのままで、
「すぐに終わるから………」
と、言う。
熱いシャワーが俺が座る周りに滞留し、
その中に、
少量の精液とワセリンが混じったものが、
自分の過去と一緒に、
通り過ぎ、
流れていった。
��い湯で頬が上気する。
さきほどまで極寒の水を浴びていたのに、一気に、体温が上がり、同時に脳にも血流が駆け上がり、
「ああ、もうなにもかもが、面倒くせぇ」
と、俺は、首を振って言った。
すると、彼は、俺の顔を上から眺めて、
「それがセックスで」
真っすぐな黒い瞳で、
「恋愛だ」
と、言うのだ。
「人を好きになるっていうのは、そうゆうことだ」
一体、オマエは何を言うんだ、と彼は不思議そうな顔をする。
「人が人である限り、面倒くせェんだ」
と、
「どうしようもなく複雑で先が見えない迷路みてェなもんだ」
と、
至極、当然のことのように言って、
「………………」
俺には出来そうにもない無茶を強いるのだ。
朝、目が醒めると、ローは先に起きていて、横でベッドに座っていた。
「身体…、ダリい…」
肘だけで起き上がり、彼の下半身に頭を載せて、仰向けになり、天井を見る。
二日酔いとも、また違う感覚。
脳味噌に鉛が詰まっているような、なんとも言えない感覚。
そんな俺の顔を彼は、
見て、
薄く笑った。
「腹、減らないか」
彼が聞く。
「今、何時?」
「11時」
けっこう寝てたなと、
「頭が重てぇ………」
思いながら、
「寝すぎだ」
と、言われる。
「今日は、誰か来るか?」
聞くと、
「今日は、予定ないからゆっくりしてる」
俺は、天井をぼんやりと眺めて、
「ふうん」
目を薄めた。
「起きろよ。俺は腹が減ってるんだ」
肩を叩かれて、俺はしぶしぶ、彼の身体から自分の身体を起こす。
重い頭。
ベッドに暫く座り込む。
彼は、ベッド周りに、昨日、脱ぎ散らかした下着を着けて、デニムを履いて、キッチンへ行った。俺も、
服を、
着ようとするのだが、
血圧が低いせいか、脳に血が行かないから、全然、身体が動かない。
「あー……うー………」
唸りながら、俺は、何とかベッドから立ち上がり、
のろのろと下着を履いて、
自分のデニムを履いて、
キッチンへ���かう。
キッチンに入ると彼は、卵を冷蔵庫から取り出して、
「手伝ってくれ…」
言うから、俺は卵を受け取った。
スクランブルエッグとベイクドビーンズを食べ終えて、
「皿、洗うから、ゴミ出してきてくれ」
と、言われたから、
俺はゴミ箱からゴミ袋を取り出し、俺はそれを、半ば半分、引き摺りながら、玄関を出ると、
家の前ににビニール袋が転がっていて、ゴミを人の家の前に捨てんなよ、と思い、そのゴミ袋を覗き込むと、
中に人が入っている。
「ぎゃああああああ」
思わず叫ぶ。
俺は自宅のゴミ袋をその場に落として、
「ロー! ロー! 来い!いいから来い!はやく!」
キッチンにいる彼を呼ぶ。
「どうした?」
足音立てて、彼は走ってきて、
「………あー………」
しゃがみ込んで、大きなビニール袋を手で破って、中を確認する。
「これはこれは…………」
中の人の脈を測って、目を覗き込んで、
「死んでるな…。ダメだこりゃ」
と、何事も無かったかのように言った。
「ッチ、ココは遺体安置所じゃねェんだよ……」
彼はぶつぶつと文句を言いながら、俺は、そうゆう問題じゃないと思うが、
「死ぬ前に連れて来いよ」
と、彼は言った。
俺は、それはビニール袋に詰められている時点で、無理だろう、と思ったが言わなかった。
彼は、家の中に戻り、携帯を取ってきて、
「………もしもし」
警察に電話をする。
「遺体が家の前に…………」
詳細な状況を説明する彼の傍らで、猫が何の騒ぎかと、家の中から出てきた。
猫は、平気で死体の入ったビニール袋の中に顔を突っ込もうとするから、俺は急いで、ティーを袋から引き剥がす。
暴れる猫を抱きながら、俺はビニール袋の中の男の顔を凝視した。
見たことない顔でまだ若い。
顔色は白いが、まだ生きているように見えた。
その顔を見て、日常ってこんなものかと無感動に思い、
同時に、
昔の自分を思い出したので、
空を見上げた。
戻りたくない昔の記憶を掻き消すために青い空を見た。
END
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