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幾重にも降り続く雨
見えない細い糸は
僕らをここに閉じ込めた
優しく柔らかな繭の中
する事といえば眠る事
眠気が体をふくらませ
吐く糸は繭に巻きつき
だれもここには入れない
きっといつか
乱暴な誰かが無理矢理に
私の家を壊すのだろう
その時見る世界は
楽園か地獄か
やまない雨は
何を育てるのだろうか
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ゆきに宿る
調和のハーモニーを
響かせながら
降る無音の白い鈴
音もなく
重さもなく
光あれば煌き
風あれば鋭く
降り積もる夜には
孕む熱
外は無音で発光するそれらに覆われた
沈む火と膨張する熱
ゆきに宿る
体内の火は
幾億年の積層に
閉じ込められて
行き場を失くす
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ねこの不在
ねこがしんだ
クリスマスイブのあさ
訴えるようにヒューヒュー鳴いて
もがくように空を掻き
ぶるぶるっと体を震わせたら
そのまま息を止め
何回か大きく呼吸をして
動かなくなった
ねこは産まれた時からよく鳴くねこだった
小さな体で胸のあたりに乗って
ミーミー鳴きながら
べったりと人に張り付いて
いつも一緒に眠った
華奢なねこで
だれよりも小さかった
人に抱かれるのを好み
しつこいくらい人を舐めていた
ひとの世話をよくし
可愛がられるのも上手だった
名前を呼べば
甘い声で応えた
老いてからは
毎日一緒のふとんに入った
必ず枕を使い
上手に並んで寝た
いつもあとをついてきた
お風呂にもついてきた
わたしがおざなりにする日が続いても
最後までいちばん側にいてくれた
いつも一緒にいようとしてくれた
ねこが病んだ時
ねこからは甘く腐った匂いがしていた
あごが膿み
ドロドロとした体液が流れていた
ねこの甘い匂い
滑らかな毛並
短い毛がキレイに揃った鼻頭
少し平たい後頭部
ねこの腐った甘い匂いは
妖艶な蘭を思わせた
小さく愛らしい甘え上手なねこが溶けてゆく
溶けて甘い匂いを放ち
時を早���りするかのように
急激に崩れてゆく
その速さに
わたしの負の感情は追いつかない
クリスマスイブの夜
ねこはもういない
わたしの涙はまだ流れない
ねこの不在は
いつくるのだろう
わたしはいつ
ねこがいないことを受け止めるのだろう
ねこの手触り
ねこのざらざらした舌
ねこの甘い声
ねこのパタつく足音
ねこの不在はまだ見えない
甘い蘭の匂いもまだ消えない
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記念日
風が四方から渦巻くようにうなる
立春を過ぎた快晴の日
いつもの閑散とした公園は
木々のざわめきで賑やかだ
透明度の高い強い日光に照らされたのは
冬の憂鬱が去ってぽっかり空いた穴
その空虚な空間に射す光は
どこからか聞こえるチャイムと
まぜこぜになって溶けてゆく
春が来るのだ
春が来る為の空虚な1日なのだ
木々の枯葉は大方落ちてしまった
空は薄い水色で雲ひとつない
鳥の姿はなく花もない
何もない今日が
きっと記念日になる
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祝福
天井から垂れる蜘蛛の糸
光にあたってキラキラしながら揺れている
窓際の小さな人形は
動くほどに影がのび
窓にはぼんやりもうひとつの人
水面は風に吹かれて音のない模様を描き
瓶には一輪のオールドローズ
小さな鏡
覗く目
光が霧のように拡散して
ちいさな窓から差し込む夜
夜の人形
影は見えない
映る投影は巨大化してる
紙に皺をつける音
風が転がす葉の音
一巡りで明るくなって
祝福の細かい雨がキラキラと降る朝
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頭痛
ずっと眠っていたみたいです
目の奥に毒が溜まっているみたいに
頭が痛い
起きてしまったら出掛けなくちゃいけないのでしょ?
だから
頭が痛くても眠っていたいのです
空はまるで子供の頃のように幸せな青で
風がカラカラカラフルな落ち葉で歌う
外はおとぎ話の世界で
物語があちこちに潜んでる
もう少し眠っていよう
今日だけ眼を瞑っていよう
毒の沼を潜って地下の世界で夢を見よう
悪夢が私の免罪符
頭が痛い
頭が痛い
きっと明日は健康な1日なんだ
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飛行機とサーカス
昨日のお昼に野原で寝そべって見た白い飛行機は
イーンと小さな音だったのに
夜には東の空からゴウゴウゴウ
今夜は北のそらからボウボウボウ
ひっきりなしに西のそらからウォンウォンウォン
空がとってもうるさいと思っていたら
地上は虫達ががーがーわんわん大合唱
一階のママのお皿洗いもガチャガチャピシャピシャジャージャー
夜はあちこちがとってもうるさいんだ
なんだかサーカスのテントの中に入ったみたいに
いろんな音がこもってる
みんな昼間はどこかにお出かけしてて
夜の地球というテントに帰ってくるのかな
僕も飛行機も蛙もママも
みんな大きなサーカステントに帰ってきた
だからこんなに賑やかなんだ
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血潮と雨粒
あなたへの恋を通して
私は私の弱さと可能性を知りました
間違った肉体は
歪みから崩壊し
再生するのです
世界と接続し始めるその時
私の血管が網をはり
赤く温かい血が温度をあげて流れ出す
広がるネットワークは
わたしの可能性の熱量です
蒸発するいのちは
世界に溶けてなくなってゆく
悲しい出来事が
凝結した雨を降らすでしょう
私の恋は
ようやく大地に
帰ってきました
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後悔は
誤った過去にあるのでも
不安な未来にあるのでもなくて
いつも必ず
自分と世界を受けとることの出来ない
今にある
間違った選択は
通るべきまわりみち
豊かな人生の一部です
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育てる
「優しくなりたいなら植物でもなんでもいいから、育てることね」
昔読んだ小説に、こんな意味のことを登場人物が話していて、
当時高校生だった私の心にスッと入り込んでずっと忘れなかった言葉
その後、観葉植物や多肉植物を中心に、様々な植物を育て、部屋がジャングル化するほどでした。
そして、その頃はとても楽しかった。情熱、というものは愛情を注ぐ対象に感じる自分の熱量。
育てる、という行為に優しさが必然なのは、自分ではない他の命の世話をする訳なので、相手の立場や必要とするものを理解しようとする姿勢をとるから。
そう思っていたのだけど、あれから何年もたってわかったもうひとつの要素。
それは信頼。
パキラを栄養十分な土に植え、燦々と降り注ぐ太陽の光の下に置き、乾ききる直前を見計らって水を思う存分やる。
そんで愛でて放っておく。世話なんてしなくとも。
環境を整えたらあとは愛でるだけ!という信頼。
水をやると喜んでいるのがわかるくらい、ぐんぐん育って、楽しかった。
その後、仕事の忙しさから、意識を向けなくなっていって、そしたら全然育てられなくなって、随分鉢をへらしました。
今年からまた育てているのだけど、いろいろと手間をかけたくなってしまって、やりすぎたり、タイミング悪かったり、
なにより当時の情熱と愛情を感じることが出来ない。私自身の愛情機能が壊れているようで、リハビリのように毎日少しずつ取り戻そうとしてる。
で、話は変わって
今、ハマりつつあるのが、
豆乳ヨーグルト
玄米で発酵させたり、蜂蜜で発酵させたり、いろいろやっているんだけど、
これも育てるもの
特に種菌ができるまでは、毎日毎朝毎夜眺めてしまう。
そして、出来たら食べて、
今度は自分の腸を育てる気分
体幹トレーニングやヨガをはじめたのも、自分の体を育てる気分があがってきたからだし、
高校生の頃、優しさ=(他を)育てるだったのが、今は、=(自己を)育てるにシフトしたのだなぁと。
というか、自己を育てることなしに他を育てることって出来ないなぁと。
今さらの実感。
優しさも、まずは、自分から。なんだな。
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今日は雨
今日は雨降りだから
ストーブの上のやかんで
熱いルイボスティーを淹れました
雨降りだから
無色透明なグラスにそれを注いで
湯気と一緒に飲みました
雨降りだから
お鍋でおかゆを炊いて
大根の葉っぱを刻んで食べました
雨降りだから
ハンカチにアイロンをかけて
今夜のパジ���マもアイロンしましょう
雨降りだから
テレビもスマホもいりません
音楽もなくていいのです
雨降りだから
猫の寝息が聴こえます
郵便屋さんの音もします
雨降りだから
私も誰かに葉書を書きましょう
きっと返事はないでしょう
雨降りだから
ただ窓の外を眺めていましょう
雨降りだから
今日は何もしない日です
ただ雨の音を聴くだけで
今日という日は充分です
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Bless
背中からは暖かい午後の陽射し
正面からは乾燥した肌に張りつく風
私という境界線は動き回り
時に右側が暖かく左側が冷たく
あるいは
細胞がバラバラになるような
光と
全てを濃縮させる闇
私はひとつの接点
動き回り、静止する
うらがえりひるがえり
ねじれながらも
ある瞬間には全てほどける
着地する
溶けた霜を踏み
泥に沈む足
無数に倒れたタンポポの綿毛
まざる土と氷と草
踏み潰してダンスをしよう
カオスの闇から春がくる
ほどけたリボンを木に結ぼう
土を踏み春を産む
私の生まれた春
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人魚
心がなくなったら
もしかしたら
とても平和かもしれません
湖の底から
水面に浮かぶ木葉を見るように
穏やかなさざ波と
やわらかい光と影
それをただ見上げているような
死体のような穏やかさは
いずれ朽ちて溶けてなくなるから
だから
平和かもしれません
水面にあがった景色はどんなだろう
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紺色
一晩中干したセーターは
夜露のなかに
星を閉じ込めて
宇宙の内緒話をそっと聴いていた
ゆっくり廻して
オルゴールの音楽
朝になったら光のなかに
音も溶けて帰るだろう
水のような音楽は
夜に流れて風となる
風が星を鳴らしてる
孤独で幸せなセーター
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恨みは
都合の悪い出来事を
自分と結びつける
ひとつの絆
繋がれることに
価値を見ている
自由になりたいならば
絆は足枷だと
自覚しなければならない
最初は愛情だったりして
その絆を手放せないのは
それが足枷だと気づいてないから
繋がらない孤独は
完結できるひとつの世界を持つこと
積み上げてその世界をつくること
迷いは
孤独への恐れでしょう
小さな
自分だけの
満足を
積み上げるだけ
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憧れ
電気がなくなってしまっても
私の幸せには関係ないこと
それは問題ではありません
明るい夜も
簡単な生活も
私の幸せに関係ないこと
今がよい時代でも
悪い時代でも
その時代についていっても
いかなくても
関係ない
欲しいと思う何かも
私の幸せとは関係ないのです
そのことがどこかでわかっているから
迷うのでしょうか
青空のなか
鳶がくるうりとまわって
ただ
うらやましく思うのは
選択する余地のない命を
受け入れる自由さ
自由は
私が持つものではなく
私を構成する私自身の中にある
それを鳶のように
自然に全開に
利用したいのです
空を飛びたいのは
出来ないからではなく
出来ることを知っているからなのかもしれません
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尊いもの
感動が何よりも尊い
同感です
でも
感動をきちんと受けとるならば
それは全肯定だということを知るべきでしょう
迷いや苦しみや弱さという悪魔も
楽しい嬉しい愛情喜びという光も
そこからみたら
きっと同じ
コントラストの美しさとダイナミズム
あなたがくだらないと切り捨てたのは
あなた自身のコントラスト
動く心の一部
否定することで持ち続ける何か
感動は
全肯定で全受容なのだから
自分の外と同時に内も
受けとるのだから
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