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彼と同じ休日を過ごしただけなのに
私には好きな人がいる。名前は佐藤一輝さん。同じクラスの男の子だ。
初めて会ったのは去年の四月のこと。クラスが一緒になった私たちはすぐに仲良しになりました。
私は彼のことを『カズくん』と呼びますけど、彼は私のことを呼びません。名字で呼んでくるんです。別に名前で呼ばれることが嫌いなわけじゃありませんよ? ただ、少しだけ……ほんのちょっぴりだけ寂しいです。でもそんなことはどうだっていいですね! 私たちの関係は良好そのもの、特に喧嘩をしたこともありませんでした。もちろん浮気なんてこともなかったはずです。
それなのに……あの日以来、私は彼に避けられています。
そう、『あれ』が起きた日からずっと。
私が何をしたというんでしょうか……。わからないまま時間だけが過ぎていきました。
そして今日──彼が突然��い出したんです。
「俺に付き纏うのをやめてくれ」って。意味がわからなくて理由を聞いてみたら、「迷惑なんだ」と言われてしまいました。
正直ショックでした。でも機嫌が悪いなら仕方ないよねと思いました。だからせめて最後にもう一度デートさせて欲しいと言ってみました。
そしたら彼はこう言ったのです。「俺はお前なんか知らない」って。おかしいですよね。確かに私は彼と話したことすらありませんでしたけれど、それでもクラスメイトだったんですよ? 忘れているとしたら、それはちょっと酷すぎやしないですか?
…………いえ、本当は気づいていました。カズくんは私のことを覚えていないんじゃなくって、そもそも知らないんだということくらい。
だって私の名前すら聞いてきませんでしたもの。本当に酷い人だと思いませんか? でも、もう諦めようと思います。これ以上しつこくして嫌われたくないですから。それに……こんなにも悲しい気持ちになるなら、最初から好きにならないほうがよかったかもしれません。身の上以上のことを求めなければよかった。
だから彼が悪い人と付き合わないように、これからは見守ってあげたいと思います。
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