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2024/2/2

月が綺麗ですね/処刑台が錆びてますね/川が増水しているらしいですね/五臓が六腑してますね/刺客が放たれてますね/若い芽が摘まれてますね/マインドがネヴァーですね/メリーゴーランドが燃えながら回転してますね/モルタルアパートの一室から喘ぎ声が漏れていますね/ボートが爆発後に沈んで行きますね/

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大きい地震がきて、うわーやばいなーとか思いつつもそのままマリオパーティーのミニゲームやってたんだよね、あのーなんか車で走る、みたいなやつをさあ、やってたわけ。そしたら双子の弟がなんか地震のショックで病んじゃってベッドから起き上がれなくなっちゃったんだけど、まあわたしはそういうこともあるか〜て、ニコニコ動画み始めたんだよね。ニコニコでさ、ヒモムシの動画見てたんだよ、うわーこういう生き物いるんだーとか思ってたら、一年経ってて、ええーてなって、あれ、昨日も3月11日だったよなあ、あれれ、みたいな、あ、一年経ったの、みたいな、人生の結構な割合ヒモムシで塗りつぶしちゃったなあ、て思ってたら、記憶が飛んでなんか車乗ってて、父親が運転しててどっか山奥の高速道路みたいなところで逆走してんの、あ、これわたし捨てられるやつだ、どっか山の奥で捨てられるやつ、あー、あー、なんで捨てられるんだろう、そこまで悪い人間だったか、わたし、と人生を顧みるも、そこまでの瑕疵は自分の視座からは見当たらず、見当たらないだけで、きっと色々なことを忘れている、ヒモムシの捕食シーンだけは覚えている、忘れないよ、わたし、ヒモムシのことだけは。でも、忘れることは本当にしないでいられるのだろうか、望むと望まざるとに関わらず、今のわたしも今の辻褄のために昔の自分を読み換えているのかも知れず、忘れまいと強くなぞって知らず輪郭を書き換えた自分を今のわたしも抱えているのではーて思ってたら目が覚めてることに気がついた。

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詩集の見開きに田園が重なり黒装束の人々が列を成してい���。女の子が詩を詠むと人々は鼓を打って踊りだし、詩集のフォントがゴシック体になる。階段から落ちて不随になった役者が窓からそれ眺めて泣いていて、さらにそれを観て泣いているのは、マスクを付けずにスーパーマーケットに来た人たちだった。スーパーにトラックが突っ込んで、責任を問われた人の住んでいた団地が取り壊しになる。団地を解体する男が木材をベランダから投げ捨てて、上を見上げた中学生に当たって死んだ。中学生の遺品のピアノを軽トラで運ぶ母親を追っていたら立体駐車場の屋上にいた。薄暮の東京にゴシック体の巨大な平仮名がたくさん落ちてきて、街があっという間にぶち壊れていった。靖国の鳥居が近くに見えて、あ、当たると思ったところで目が覚めた。

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20年前に住んでいた町を想像する。母はお参りに行く、と言って、夜の雪道でリヤカーを牽いている。荷台に藁と線香を積むのは私と弟で、丘の上までそれを牽くのは母だった。丘の上では柵がずっと続いていて、その向こうに3000人がじっと佇んでいる。私達は藁を運んでくると、柵の手前にいる女に卸して渡す。それから近くの祠みたいなところで線香を立てて手を合わせる。母はそのまましばらく動かなくなる。しばらく待っていれば藁が空から降ってくるはずだけど、タイミングはいつでもまちまちなので同じくお参りに来ていた子供と雪でぱやぱやしていれば、野焼きの匂いが何処からとも無く漂ってくる。藁の焼ける匂いっていいよね、と一緒に遊んでいた女の子に言うと、わかんね、と言われるので、気のせいだった気がしてくる。やがて柵の向こうに火のついた稲藁の束が空から降ってくる。丘のあたり一面が明るくなるほどの勢いで、燃えた藁が落ちてくる。炎はあっという間に柵の向こうに閉じ込められていた人々を飲み込んでいく。焼かれる人たちの叫び声が聞こえてくると、やっぱり人間だったんだな、とぼんやり思う。人々が炎にすっかり焼き尽くされると私たちは家に帰る。母になぜあの人たちは燃やされてしまったのか、と聞けば「あれは人形。人に似せた人形を燃やして神様にお願いするんだよ」と言った。

今、私は、20年後にいて、あの時母が本当に焼きたかったものを想像してい��。想像している。時間はあたたかく、私はこのまま水になりたいと思っていた。小さな私たちと、私たちの母が、歩いているのをずっと見ている。ずっと見ている。数年後の私はまたこのことを忘れている。でも、いつか死んだ私はずっと覚えている。死んだ私が私の代わりに、ずっとここにいる。

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2022/5/25

香港に帰ったらまたしばらくそんな時間もなくなるので日記という名のメモを。

二人分の葬式と墓参りをため込んでしまっていたので秋田に向かった。東京から新幹線と電車とバスを乗り継いで6時間半、香港から成田に飛んでくるよりも遠い。遠すぎる秋田。

東北新幹線に乗るといつも肌がヒリヒリ痛んだ。ビールを飲みすぎた次の日の朝、みたいに皮膚の表面が疼く。痛みは仙台に差し掛かったところでピークを迎えて、岩手に入ると引いていく。ありがとう岩手、大きい岩手、人がいい岩手。

自分と同じ苗字の人間がたくさん入っている墓は岬の上にある。ちょっと足を踏み外すとそのまま日本海に落ちて砕けて死ぬ。最近祖父母が新しく入ったその墓の前に立ってみたりしたけど、特に感想とかなかった。特に感想がない人間をここに立たせたらダメじゃんね、とか思いつつ、とりあえず手を合わせた。自分と同じ苗字の人はみんなここに入る、ということは自分もここに入るのだろうか、それは嫌だな〜〜〜。俺が死んだら焼かずにどっかの花壇に埋めてほしい、それか動物の餌にしてほしい。墓参りからの帰りしな、親戚の家の猫が死んだ話を聞いた。手厚く供養したからきっと天国に行けただろうとのことだった。でも、天国も人間が考えた人間のための地獄だ。猫が、死んだ後まで人間なんかについてくる必要はないと思った。猫はもっといい場所にいって欲しい、と思った。

移動中の車内で、訪問先の家で、「家」の話を聞いた。親族と関わる以上、避けがたいことだった。ここ数年来の実家に於ける、「人間とは何か」「家とは何か」「愛とは何か」が陳腐な悲惨さとともに問われ続けている状況、フィクションや他人事ならば多少は深く考え込み感じ入ることもできたろうに、その状況の一切を拒絶し我関せずという顔でこの歳になるまでやってきた。それが卑怯だというのならそれは多分、そうなのだと思う。けれども、集団を形成するのに血縁以上の根拠がないことは、暴力とは言わないのだろうか。あらゆる倫理が血縁に優越され、人間が人間扱いされない世界がある。性行為によって人間は殖えるが、その性行為さえも暴力から距離のあるものとは到底思えない。あらゆる人間のくるしみは暴力によって産まれて、暴力によって再生産されていく。若く新鮮な暴力に新しい血が混ざり、人間がいる限り受け継がれていく。もちろん自分も逃れようもなく、その鎖の一部だった。香港にいる間はそのことを忘れていられた。圧倒的な余所者という身分でいることは、ある面では心を軽くしてくれる。

それでもいつでも、生きることはひどく苦しいことだった。暴力を浴び続けることで固く硬直してしまった身体を引きずって生活することは、自分にはままならないことだった。全部終わりにしてしまいたい夜がたくさんあった。たまたま死ななかった結果、生きているという結果がここにあるだけだった。

秋田から仙台に移動する車内から、数々の人間の生活を眺めていた。こんなことを考えるのは初めてだったのだけれど、東北から出ずに暮らしていく生活もあったんじゃないだろうか、というようなことを考えていた。震災があってからもここで暮らしてきた人たちへの引け目みたいな感情がずっとある。ずっとあるが、未だうまく消化できない。11年経っているのにも関わらず。別に今の生活も自ら主体的に選び取ってきたわけでもなかった。たまたま成り行きでこうなった。成り行きでここまで生きてきた。東北で暮らす未来を考えるとまた皮膚がヒリヒリ痛んだ。

きっとみんな、そうなのだ。分かち合えない俺専用の地獄があり、あいつ専用の地獄があり、お前専用の地獄があった。

関東に戻ってきて、水がまずいな、と思った。

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2021/3/1

それはこんな顔ではなかったかい？

振り返った残像が

いくつも折り重なって

悲鳴を上げる、振りをした

みたいものをみてしまうから

言葉を奪ってほしいのです

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2020/8/9

18時間寝た。連休初日から昼夜逆転してしまった。こんなに寝たのにまだ眠い。身体が動かない。

眠っている間に心臓が止まればいいのに���と思って毎日眠りにつくけどそれでも目が覚める。目が覚めてしまうから仕方がない。生きることの主体を自分の身体に明け渡すことは怠慢か、自分の意思で以って死なないことを選んでいることと、身体が朽ちないから生きている、という状態に差はあるのだろうか。頭が重い。

20代の後半にもなると、様々なことに折り合いをつけて、自分なりの信仰を世界に見出して、なんとかやっていくことができるようになると思っていた。でも���然そんなことはなかった。なんもわからん。なんもわからんということだけがわかる。むしろ、何かをわかっている、という状態になることへの恐れがある。何もわからないまま死にたいとすら思っている。それでいいのか26歳、夏の夜。

他人との関わり方が今まで以上にわからなくなってきた。そもそも職場以外の他人と関わる機会が疫病騒ぎのせいで著しく減ってきていて、知り合いとどういう風に会話していたのか全然思い出せないし、知り合いをどう思いたかったのかも思い出せない。知り合いのコミュニティのTwitterを再開してみようか迷う。

今のこの、地に足ついていないふわふわした状態が、他人とちゃんと関わろうとしなかった事や、自分の考え方を白黒はっきりさせようとしてこなかったツケなのだろうか。

でもそれがツケだとしてなんだというのかという気持ちもある。人間を愛したいという凶暴な感情に身を任せてめちゃくちゃになってしまいたいと思う時がある。自分一人でめちゃくちゃになる分にはいいが、人様を巻き込んではいけないと自戒する。え、そうなのか？本当に？

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2020/7/26

でも本当は、神なんて人の心の中にしかいない。試されたつもりになるのも許されたつもりになるのも心の中だけだ。神を心に含んだ人間の怒りは楽しみのためにあり、人間の行うすべては楽しみに回収される。人間という命の長い、知性を持つ生き物は、それゆえひたすら退屈を厭い、楽しむためなら何でもする。苦しみ、悲しみ、それに耐え、悪意にとらわれ、人を騙し、殺し、それを悔やみ、惜しみ、泣き、涙が枯れた後には死のうと思い、死ななくてはいけないと思い、死ねない自分は駄目だと思うが、それらはすべてそういう気分を楽しんでるだけなので、死なない。終わらせるのは最後でいい。

舞城王太郎 - Dead for Good

日記を書くと少しだけ情緒がマシになる。ある程度の長さの文章を書くことで頭の中が整理されて、身体の重心のありかがわかるようになる。そうやってまた、まっすぐ立って歩けるようになる。

しかし、とも思う。自分の人格と文章、どちらに主体があるのか、とよく思う。文章を書く、ということ自体が自分に影響を与えることに無批判でいることは危険に感じる。自分から距離のある視線を書き起こすことで、それを内面化しようとする力学は虚だ。切実さの見当たらない文章にはいつでも訝しげになってしまう。

どうしたらいいのだろう。今感じている耐えがたいつらさは、よしんばこの疫病騒ぎがおさまったところで、どうにかなるものなのだろうか。心のどこかで欺瞞だと思いつつも、騙し騙しやっていこうとしていた人生、例えば、自分の生活から遠くへ遠くへ移動して満足感を得ようとすることや、酒場でどうでもいい話をして夜が更けていくこと、そういう後に何も残らないものを内に取り込んで、なんとかやっていこうと思っていたのに、ここにきて全部が嘘っぽく思えてきた。巨で虚なものが立ち上がり首をもたげて命を狙っている。

***

この間、初めて「もののけ姫」を観た。最初から最後まで、自分でもどうかと思うくらい泣いていた。分かち合えない孤独を背負った者どうしの断絶と交わり。初めて観たのが映画館でよかったと本当に思った。

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2020/7/25

「あなたに生きる意味がなくても、それはあなたが生きるに値する人間であることを妨げない。だから、問題はむしろ、あなたが自分の人生を、生に値するものと無条件に信じられなくなっていることだ。わたしたちのゆく道ゆく道、本当は地獄を選んだっていいはずなのだから」

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つまり今日の芸術は、勝者の歴史の表象ではない地点で行われている（と、僕は信じ込んでいる）。だがその上で、僕が危惧するのは、こうしてすべてを芸術と呼ぶことが可能な状況のなかで、「芸術」という言葉がそれぞれの行動を脱政治化するための魔法の言葉としても使用される点にある。たしかに個別の行動は、それぞれ否定されるべきでないことだ。その時点では、相互に引きこもりの状態にある。だが芸術だと述べることで、それぞれの政治性を隠蔽しながら普遍性の傘を被るのは、ただの権威主義であり、暴力であり、そして差別だ。＜中略＞みずからの行動が、芸術と名指される領域で行われるからこそ、それが脱政治化されているものとして振舞うことは欺瞞である。むしろそれが漂白された暴力の形式であることは、西洋の歴史＝男性の物語の延長に立つ以上は事実なのだ。

繰り返し思い出したい文章を見つけたのでブックマークとして。


本文の趣旨からは外れるが、自覚なき者のふるう暴力とは別に、『自覚し覚悟を決めた』ように見える者の暴力は、それを行使する者と同一視され、神聖なものと扱われることがあるが、あれはどういう種類の感情なのか。

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2020/7/5

誰に向けてかは知らないが、知り合いが「文章を書け」と投稿していたので、最近考えていることの殴り書きをしておく。

加害する側としての身体を持った『男』を自分の中に飼い続けたくない、という気持ちを抱えている男性はかなり多いのではないかと思うのだけれど、私の観測範囲でそれを口に出す人は(私も含め)誰もいない。

シスヘテロ男性という立場で「それ」を口に出すことは許されないと思っているから、殊勝にフェミニズムを受け入れるポーズをして、自分の身体になんとなく纏わりつく罪の意識から逃れようとする。そのうちに、そういったフェイク仕草が徐々に内面化されて、自分自身の身体性を放棄したまま「俺は『女性』を尊重できる進歩的なオトコ』概念に辿り着くが、その本質は自分に罪悪感をいだかせる(と思っている)女性全体への屈託を内包しており、なんかの拍子に隠し持ったグロい感情が顔を出す。

男性性の根源は「自分自身の身体性を自分自身で享受できない」という点であり、それが身体に対する鈍さという有害な男性性として発現し、ゆくゆくは、客体として観念化した『女』を消費したいという欲望へ波及する。

そもそもが自分自身にペニスがあるから自分の身体に加害性があるという発想自体が自分の身体感覚が希薄ゆえだろうと感じる。そうした思考が既に暴力的であることに気がつけない程に自意識と肉体に断絶がある。

もし自分が女の身体に生まれていたらどうだっただろうか、と思う時もある。例えば、男女間の筋力の差に嫌気が差すことがあるだろうかといえば、それは絶対ある。例えば「生む機能を持って生まれた」ことへの戸惑いを感じることがあるだろうか。それもあるだろう。例えば「望まない性欲を向けられる」ことに嫌悪感を感じるだろうか、それだって勿論感じるだろう。しかし、それは今現実には男の身体を持った私が想像することであり、妊娠する可能性が潜在する身体を持つ人間の感覚にはこれっぽっちも肉薄しない。私は生理痛を体感することなくこれからも生きて、そして死ぬ。生殖機能の差を足がかりにしか、異なる性の身体を想像できない男が女について考えたところで、女のパロディしか提出できない。

しかし、それは男女間の分断を煽ったり、男が女を消費することを肯定する理由にはなり得ないのは自明であり、女を肯定するふりだけして男らしさの上に胡座をかくことは下劣の極みだ。

結局のところ、肉体を否定したところで善いものになれるわけではなく、最後は健全な意思があるかどうかの問題でしかない。健全な信頼関係の基礎となるような感覚を忘れて不安やリスクに振り回されると単純な論点に振り回されてしまう。そしてそれはポピュリストがやっていることでもある。誠実な思考に少なくとも男女の区別はないだろう。現実に起きている差別はわかりやすく肉体の性に基づいていて、だからこちらとしては肉体の性に振り回されて機会が損なわれないよう、なんとかやっていくしかない。そういった意味ではフェミニズムというのは男性の解放でもあると信じたいのだ、私は。

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2020/6/21

日光に当たり続けて白く劣化した洗濯バサミを強く握ると手の中で折れた。ここは何処ですか。

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2020/5/10

「君の鳥はうたえる」のクラブのシーンはめちゃくちゃカッコ良くて、「寝ても覚めても」のクラブのシーンはめちゃくちゃダサいから最高だよなと観るたび思う。