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痛飲過日
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丸橋 十二月
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m12gatsu · 6 days ago
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見るものは見られる夜
電車で斜向かいに座った女の顔が見事に整っていた。しばし見惚れて、しかしむろんじろじろ凝視するのは失礼っていうか全く罪業なので気取られないように瞥見。瞥見バウアー。そもそも「見たい」という情動はなんだか後ろ暗い。でも美しいものは見てみたい。見る主体は視座にあぐらをかき、見られる客体の自意識を侵襲するだろう。転倒できない勾配がある。美人であるがゆえの女の苦労を想像して、同情さえもする。余計なお世話である。死にたくなる。
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m12gatsu · 8 days ago
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ムムム
昨日もあった犬の糞が干涸びている。全体に黒くひび割れ、一回り縮んでいる。お前である。俺である。通勤ラッシュの人流を、川で流されたサンダルみたいな気分で下っていく。実に色んな顔の人間がいる。日傘を差して、うつむいて。うつをむく。うつにむく。ぽっかり空いたうつろがこちらを向いているから、こちらもそちらを向いてしまう。むくむく肥大した、うす紫色の、あけびみたいな果実。それを剥くのである。てにをはの呪い。こそあどの祈り。太陽とアスファルトのダッチオーブン。焼かれてというか、焦がれてというか。むく、むかない、むく、むかない。
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m12gatsu · 11 days ago
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無題
髪の毛を耳にかけた、かいなの内側が異様に白かった。一番白いところを強く掴んでみたい。驚いたあんたの顔を確かめて、ゆっくりと手を離す。赤くふちどられた、手の形についた跡が、正気を取り戻すみたいに、元に戻っていく。あれは加虐でしたか、加害でしたか。落書きみたいなショートケーキのタトゥー。なんで自分には見えないところに入れたんだろう。
空音央の『HAPPYEND』をようやく観た。不本意ながら、サブスクで。近未来の日本を舞台にした、ミックスルーツの高校生たちの青春群像劇。体制側の描かれ方が“絶対悪”過ぎる気もしたけれど、反体制側のゆらぎみたいなものもちゃんと描かれていた。しかしまあ、本当に見事なまでに予見的というか。どっかの馬鹿どもに観てほしい、と強く思う。けれど、そもそも馬鹿には理解できないだろう、馬鹿ゆえに。ということを思ってまたもどかしい、やるせない。ラストシーン良かった。永遠を信じたくなった。
過日、21時の寝かしつけがうまくいった日は、家人と肩を並べて映画を観る。しかし、このところ夜泣きがちょっとひどい。毎日ではないけれど、ひどい時は本当にひどい。寝不足でちょっと頭がおかしくなった家人が、真夜中に泣き叫ぶ子どもを置いて、ベッドの下をごそごそまさぐりはじめたので、どうしたの、と尋ねると、いや、ここに子どもを入れるための箱があるはずなんだけど……と言い出して本当に怖かった。むろんそんな箱などどこにもない。翌朝、わたし変なこといってたよね? おかしかったよね? と述懐するので、俺は静かにうなずいて微笑むよりほかなかった。
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m12gatsu · 12 days ago
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丸橋さん。
初めまして、古川です。
いつもtumbler拝見させていただいています。      私には、結婚したいと思えるほどのパートナーがいます。私は『人生には2人の運命の人がいる』というオカルトを信じています。1人目の運命の人は、別れの寂しさを教えてくれる人、2人目の運命の人は、永遠の愛を教えてくれるひと人らしいです。
丸橋さんは、もう2人の運命の人に出会いましたか?
"永遠の正体は神様が女を口説く時の嘘"なんてマヒトゥザピーポーのパンチラインがございまして、とかく人の夢は儚いものであります。いうてますけども。
思い浮かぶ人が2、3人いないではないけれど、あなたのその言説に共感はできません。ただ、そういうナラティヴをでっちあげて、失恋や別離の痛手を癒そうとしたり、あるいは永遠の愛を何とかして証明しようとしたりすることには概ね賛同します。
ロボット・ドリームズというアニメーション映画を最近観ました。オカルティックな話ではないけれど、運命ということについてしばし思いを馳せました。未見でしたら是非。
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m12gatsu · 17 days ago
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未明の君
子どもが39℃を発熱して、未明から夜明けまでぐずり明かした。抱いている体が熱かった。熱燗の徳利くらい熱い、と思った。かかりつけで処方してもらった坐薬をぶちこんで、氷嚢をあてがって、家人とあらゆる手を尽くしてみたが、一向におさまらず、寝汗に濡れた頭を撫でてやると、大泉門がいささか腫れている。インターネットで検索してみると、髄膜炎だとか水頭症だとか、かなり致命的な診断が並んでいて、いよいよ慌てた。救急車の搬送も視野に、ひとまず24時間受け付けている医療相談窓口に電話した。深夜3時頃であった。母乳を飲んで、泣き叫ぶ元気があるのなら大丈夫、本当に重篤なら猛烈に嘔吐してぐったりしているはずである、との見立てで、ひとまず安心しつつ、しかしそのまま寝つかれずに朝を迎えた。磨りがらす越しに差し込んでくる白い朝の光に、子どもを抱き、あぐらをかいて上躰を前にぐっとかしげた妻のシルエットが徐々に浮かびあがっていった。濃密な疲労の色を翳らせて、黙りこんでしまった彼女のからだ。俺は仕事を2時間遅刻して、4時間だけ働いて、2時間早退した。
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m12gatsu · 18 days ago
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最近あったくだらない面白い話をおしえてください
あるホモ・サピエンスが渡世に倦み、退屈に飢えて、帰り道にYouTubeで観るけんた食堂を唯一の楽しみとしていた。しかしそんなことをしてもますます腹が減って飢えるばかり。テレビは連日参院選の報道でくそみたいな政党が躍進しているとかしてないとか、SNSはくそがくそ踏んだみたいな話題で溢れ、サブスクはくそパーソナライズされてくそみたいなおすすめを羅列し、そして何よりくそみたいな夏がくそみたいに暑かった。ホモ・サピエンスは、話し相手が欲しかった。何か、面白い話を共有できる相手。いや、一時的に報酬系が刺激されたところで結局何かが満たされるわけでもない、もっとこう、肩の力の抜けた、脱力してしまうような、くだらない、面白い話。そう思い立ったホモ・サピエンスは、早速chat GPTのプロンプトに「くだらない面白い話をして」と打ち込んでみた。
もちろん、じゃあ、ちょっとくだらなくて笑える話をひとつどうぞ:
ある日、カバがスーパーでレジに並んでたんだ。レジの店員がびっくりして聞いたの。
「えっ!?カバさん、なんでスーパーに!?」
カバが真顔で言った。
「セルフレジがあるって聞いて、自分でやってみたくて。」
で、セルフレジの前でずーっと立ってるから、店員がもう一度聞いた。
「どうしました?使い方分かりますか?」
カバが一言。
「足、短すぎてバーコード読めない。」
くそつまらなかった。そもそも、「くだらない」と「面白い」は矛盾する対の概念なのだ。生成AIごときに理解できるわけがなかった。ホモ・サピエンスは絶望し、ますます飢えていった。
そんなくそみたいなある日の帰り道、ホモ・サピエンスは路地裏に座り込んでいる男と目が合った。男は何年も前から界隈に住み着き、詩人を自称して夜毎に世迷言をぼそぼそとひとりつぶやいている浮浪者だった。今までも何度か見かけたことはあったが、関わってはいけない類の人種だと思って見て見ぬふりをしていた。しかしこの日は、ふと話しかけてみる気になったのだ。ホモ・サピエンスは恐る恐る歩み寄って、声をかけた。くだらない面白い話をおしえてください、と。ぼそぼそ何かつぶやいていた詩人は、途端にむっつりと黙り込んで、右手を差し出した。金を寄越せ、ということらしい。ホモ・サピエンスは渋々財布から千円札を取り出した。詩人はその手から素早く金を奪い取ると、半笑いを浮かべながら、ゆっくりと口を開いた。……たへは……うかね……? ぼそぼそと小声で、よくきこえない。ホモ・サピエンスは少し腹を立てて、え? と問い返した。昇降するエレベーターで放たれた屁は、慣性の法則に従ってかごの中に留まるのかね? そういうと詩人はにやりと笑って立ち上がり、呆気に取られて立ち尽くしているホモ・サピエンス残して歩き出し、路地の奥にある日高屋に吸い込まれていった。
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m12gatsu · 21 days ago
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初めまして。よければこの質問に回答をしていただければと思います。
6/26妊娠発覚し、5週5日でした。そして、7/11中絶手術をしました。
お恥ずかしい話なのですが、人生で初めて誰にも相談できない悩み事を抱えました。吐きどころのないこの事実をどうしたらいいのかわかりません。お腹に命がいると言う実感が湧かず、悲しいと言う気持ちも芽生えません。                     タイムリーな話の「海のはじまり」と言うドラマも見ました。中絶した役柄の人は泣いていました。私は泣いてもいないなと思ったんです。ただ泣いたことといえば、彼に負担をかけていると言う申し訳なさとつわりの酷さです。
この質問を見て、あなた様はどのように感じましたか。率直な思いを教えていただきたいです。
中絶に至った事情が書かれていないので、何とも。知りたくもない、というのが率直なところでしょうか。お大事にどうぞ。配偶者と流産を経験してからというもの、そういう話題を心ならず忌避するようになりました。咄嗟に嫌悪感を覚えてしまう、ということも言い添えておきます。あと、「彼の負担」って何なんですかね。
そのドラマのことは知りませんが、人工妊娠中絶を露悪的に描いたいくつかの映画のことを思います。エンター・ザ・ボイド、ザ・トライブ、トラスト・ミー、あのこと。趣味でホラー映画もよく観るんですが、赤ん坊が効果的なモチーフとして用いられることがよくある。みんな潜在的に堕胎を恐れているからなのだろうと思います。
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m12gatsu · 22 days ago
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もし僕らのことばが
過日、祖母の遺品を整理していて、台所の床下収納から桐箱に入った未開封の山崎12年が出てきた。顔の広かった亡祖父の貰い物と思われる。祖父母はいずれも下戸で、その祖父が亡くなったのも20年以上前のことになるから、12年足すことの一体何年熟成されたのか、質屋に持ち込んでその価値をはかってみても一興かと思ったけれど、そんなことよりは祖父母を偲んで飲んじまった方が孝行だろうってんで、四十九日を待って、かしこみかしこみ開栓、晩酌時にちびちび舐めたり、来客があれば饗応してやって寸評を仰いで閉口させるなどして愉しんでいる。俺とてウイスキーの味を理解して言語化できるような舌は持っていないけれど、うまい。なんかこう、あまい。「うまし」が「あまし」と同根の形容詞だということを身をもって知る。お座りを覚えて二回食がはじまった息子も、最近はいっちょまえに好き嫌いを発するようになって、新玉ねぎと春キャベツとか、バナナときなことか、特に甘いものへの食いつきはいちじるしい。酒飲みは甘いものを好まないはずだが。
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m12gatsu · 23 days ago
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aka
少し前に首相の演説をテレビで見た祖父が、もっと口角泡飛ばして髪振り乱して話さなきゃあダメだ、といっていた。雄弁な政治家っていうと俺はチョビ髭の独裁者を安易に連想して苦笑してしまうのだけど。昨日の緊急事態宣言は職場のテレビで見た。首相のいう「強力な経済対策」と、俺の愛する古本屋とかミニシアターとかビアバーが目の前で潰れかかってることの折り合いがどうしてもつかない。
祖父は今も赤い新聞を愛読する古参の共産党員である。書架にはレーニンや資本論なんかが並んでいる。裸のラリーズの元メンバーで、若い頃は国家転覆を企んで公安にマークされていたかというとこれは俺が今適当に考えた過激派共産主義者のイメージなんだけど、祖父は安藤昌益の『自然真営道』に惚れ込んで農民組合運動に奔走した父、つまり俺の曽祖父の影響を大いに受けたようである。だいぶ簡単な言い方をすると、「お侍より農民が偉いんだ」という思想。これを現代というか現状に落とし込んで考えれば、俺の不満も多少説明がつく気がしてくる。
さてそんな祖父が、数日前に救急車で運ばれた。一時は生命の危機に陥って母からももうダメかもしれないと連絡がきていたけれど、一命は取り留めて今は話せるまでに回復しているらしい。肺炎と聞いた時はかなり狼狽したけれど、さいわい新型ではなかったようである。旧い方の肺炎。なんて冗談いう余裕はまだある。この状況では見舞いも謝絶されている。コロナ以前の日常は、もう戻ってこないんじゃないか、という気がしている。ペシミスティックな意味ではなく、現実的に考えて。
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m12gatsu · 24 days ago
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引っ越しをしました。伽藍堂です。寂しい?のか心細いので家に帰らず一人で飲み屋をほっつき歩くなどしています。そういう時期は丸橋さんにもありましたか。
眠ったら明日が来てしまうのが侘しくて、一日の締め作業を放棄して痛飲、今日と明日の境目を何度も書いて消してするようなことがあったし、あるし、あるだろうと思います。閑散としている様子を表すがらがらっていう擬態語と、がらんどうのがらは関係あるのかしら、どうでもいいけど。
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m12gatsu · 25 days ago
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接触の感度
線状降水帯が帰り道を分断していった。激しい雨が駅舎を叩いて、コンコースにはサーーーっというヒスノイズみたいな音が鳴り響いていた。雨漏りで改札がひとつだめになっていた。濡れそぼった体に電車の冷房がこたえた。履き古したドドメ色の革靴が浸水して、靴下がぐずぐずになった。サイテー。ベンジーが参政党を支持しているという話にだいぶ落ち込んでいる。きつい。しんどい。転入の届出を出した日から引き続き3か月以上、当該市区町村の住民基本台帳に記録されていなければ選挙人名簿に登録されない、らしい、ので、現住所では選挙権がない、ので、妻子を連れて、久しぶりに多摩川を越えて、前に住んでいた街へ行って、期日前投票をしてきた。俺は日本国籍で、定型発達の五体満足で、ヘテロセクシュアルで、この国のマジョリティ。常に自分の感覚や考え方が多数派だというような意識があった。でも、どうやらそうとも限らない、ということが、少しずつわかってきた。安倍晋三のことなんてみんな嫌いだと思ってた。でも、そんなことはなかった。彼が撃ち殺された事件を確かに一つのきっかけとして、しかし、それよりも前から、何かおかしいと思っていた、気がする。とにかく、色んな考えの人間がいる。特に考えのない人間もいる。人数の寡多があり、情勢の優劣がある。左右がある。上下がある。越境する。ただからだがそこにある。
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m12gatsu · 1 month ago
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m12gatsu · 1 month ago
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無題
いままさに青みがかった薄暮の中へ、いや、中というか、屋外なので外というべきか、外の中というか、とにかく、青みがかった薄暮を内包する屋外の内側へ、校舎の中から躍り出てきた、いや、出てきたというか、青みがかった薄暮の中へ入ってきたというか、とにかくそこで女子高生たちが口々に青いね、青いね! と叫んでいた。ポカリのCMかと思った。俺はちょっと鼻白む。つかめそうな大気。何か降りてきそうな空。パッケージにできない気持ちを生きましょうね。雨雲レーダーの深い青が、西から東へにじりよってきて、俺の帰路に覆い被さる。最寄駅が烟るような雨に閉ざされていた。幸福は揮発するだろうか? サッカー選手の訃報に胸を痛める。暗がりのむこうから並走してくる自転車のライトが乗用車に見えた。
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m12gatsu · 1 month ago
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無題
過日、T君が韓国人の女性を娶った。Kと一緒に招かれて、青山で開かれた結婚式に参列した。宮益坂のあがりはなにあったドトールがなくなってた。テナントごとなくなって、新しいビルが建ってた。イメージフォーラムの上映時間を待つ時によく使ってた。俺たち3人は大学の同窓で、卒業旅行で一緒にカンボジアへ行った仲。本当は、トルコへ行こうとした。カッパドキアで石窟のホテルに泊まれる、学生料金で10万円を切るツアーを旅行会社の窓口で紹介されて、そこへ決めようとした矢先にイスタンブールでテロが起きた。当時はイスラム国が跋扈していた頃で、外務省のハザードマップも限りなく赤かった。行ってみたかった。披露宴の席次を見ると漢字カタカナまじりのさまざまな名前が並んでいて、歓談中に飛び交う言語も多様だった。花嫁は両親への手紙を韓国語で読み上げ、スクリーンには日本語の字幕が映し出された。美しい、素晴らしい式だった。排外主義を排外する。全ての憎悪を憎悪する。祝福を祝福する。
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m12gatsu · 1 month ago
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別れ話を、切り出したことはありますか?
あります。今さらつまびらかに披瀝する気力はないけれど。癒着しているものをひっぺがすわけだから、痛みが伴うのはきっと自明でしょう。自分で剥がすのか、剥がしてもらうのかってだけで。おいたわしや。ご自愛ください。東京遊びに来る時は連絡ください。良い店教えてあげます。
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m12gatsu · 1 month ago
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心が壊れても平気だったよ
blgtz/meme
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m12gatsu · 2 months ago
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無闇に明るい
六つか七つ、年少の女とさし向かって飲酒した。女が成人してしばらくは連絡も絶えて久しく、就職して何年か経つ、人生に惓みはじめている、大学に戻ろうかとも考えている、とにかく会って話をきいてほしい、と女の方が突然連絡を寄越したのだった。あまり飲むクチではないという女は男梅サワーを少しずつ、しかし着実に空けていき、俺は女の調子を見て半杯ほどの差を保ちながらひたすらビ��ルだけ呷っていった。結婚願望みたいなものはあるけれど、今の恋人は口先ばかりでその気が感じられない、などと女はありきたりな愚痴をききはじめ、とうとう、あなたと結婚したかった、とうそぶいた。女の赤らんだ顔を中心として、世界が急速に遠のいていった。こいつを抱いた後の寝覚めの悪さと、飽くなき女体への興味・関心を、逡巡しながら、逡巡したまま、会計を支払い、22時そこそこ、言葉少なに、改札まで送り届け、反対方面の電車のホームへ向かっていく女の背中を見送った。あんたを笑っているあんたがいた。一体なんだったんだね、あれは。
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