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mukmagazine · 4 years
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【Interview】宮内優里
「いろんな感覚の「真ん中らへん」を目指しているような気がします。美しいと汚い、カッコいいとカッコ悪い、アナログとデジタル、上手いと下手とか、いろんな真ん中の曖昧な感じ。その感じが僕にとってリアリティがあって、落ち着くような気がして。」
ポップで優しいエレクトロニカで知られ、映画音楽やCMでも活躍されている宮内優里さん。アルバムでは高橋幸宏、原田知世、小山田圭吾、星野源、It’s a Musical、GUTHERなど国内外問わず様々なアーティストとコラボレーション。ライブでは多重録音によってその場で1人で音を作り出す演奏をされ、近年はイベントでのBGM演奏といった活動もされています。幅広い活動をされる宮内さんに音楽のルーツや音楽制作で意識していることについて伺いました。
音楽を始めた経緯やルーツの音楽について教えてください。
最初にちゃんと楽器に触ったのは小学生の時に吹奏楽部で打楽器を担当した時です。ドラムやティンパニなど。その経験もあって、中学生からバンドを始めました。ギターもその頃から弾き始めて。高校時代に宅録を始めて。高校を卒業してからはパソコンを使って曲作りを始めました。
学生時代(90年代)はJ-POPやバンドサウンドばかり聴いていました。
今の音楽のルーツというとe*vax、Greg Davis、soraの音楽はかなり影響を受けていると思います。2000年代前半くらいのエレクトロニカ、フォークトロニカと呼ばれるあたりがずっと好きですね。
エレクトロニカを始めた経緯について教えてください。
高校時代から宅録的なことはチャレンジしていたのですが、高校卒業して、一人でシンガーソングライターみたいな感じを目指す中で、打ち込みも始めました。当時だと生ドラムをキレイに再現することが難しかったりして、だったらリズムマシンを使って電子音楽にしちゃえばいいか、みたいな感じでやりたい音楽を模索していたら、上に書いたような方達の電子音楽を知って。デジタルなのにどこか温かさを感じられて感動したのを覚えています。色々聴くうちに僕もそういう音楽を作りたいと思うようになりました。
宮内さんの楽曲はいろいろな音が入っているため繰り返し聞くと新しい発見があって楽しいのですが、この点こだわりなどあれば教えてください。また、最近取り入れた楽器などがあれば教えてください。
こだわりってほどでもないですが、いろんな感覚の「真ん中らへん」を目指しているような気がします。美しいと汚い、カッコいいとカッコ悪い、アナログとデジタル、上手いと下手とか、いろんな真ん中の曖昧な感じ。その感じが僕にとってリアリティがあって、落ち着くような気がして。
楽器はここ最近はエレキギターやエレクトリックピアノをよく使うようになりました。前は楽器はアコースティックばかりでしたが。あと最近はサンプリングの手法も試しています。一度自分で作った曲やフレーズをサンプリング素材として使っています。
作曲はどのようにされているのでしょうか。
とりあえず色々と手を動かして、リズムでも、ギターフレーズでも、鍵盤でも、サンプリングでも、何か取っ掛かりを探します。一つ核のようなものができたら、あとはそれに肉付けしていくように色々な音を足したり引いたりして作っていきます。あんまり最初から完成をイメージして作っていなくて、最終的に思ってもみないところに着地した時が一番手応えを感じます。
映画やCMでの音楽とその他の音楽の作曲意識の違いなどあれば教えてください。
映画やCMははっきり着地点が決まっていたりするので、完成をある程度イメージします。今までの経験を活かして完成まで積み上げていく感じですね。クライアントの想像を少しだけ超えられるように、オーダーをベースに色々と一手間を加えていきます。
自分の活動での音楽は上にも書きましたが、ゼロから適当に色々と積み上げていく感じです。ほとんどの場合、完成イメージのない中で進めます。アルバムで出す作品はほとんどの曲はまぐれみたいなものです。自分でもどうやって作ったのかわからない曲もたくさんあります。
最近はその境界も曖昧になってきましたね。仕事でも好き勝手やらせてもらえる音楽もあったり、仕事で得た経験を自分の活動に活かしたり。曖昧になるのは良いことだと思ってます。
ライブ活動としてイベントのBGM演奏をされていますが、どのような活動か教えてください。
これはここ2、3年で始めた活動で、内容ははっきり決まっていません。とにかく空間のBGM演奏をしますよっていう感じです。一番多いのは読書のための演奏で、お客さん全員に本を読んでもらいながら、すぐそばで演奏するというものです。陶芸体験の後ろで演奏していたりとかもありましたね。先日、オフィスでの仕事のためのBGM演奏というのもやってみましたが、それも面白かったですね。
何かに集中していただく内容とのセットが多いです。それ以外にも最近は4時間程度の長時間にわたってゆるゆるとイベント会場のBGMを演奏する、みたいなのもたまにやっています。
ライブ活動で意識していることなどあれば教えてください。
演奏する音楽がその場、空間にフィットするように、流れる音楽が心地よくなることに感覚を集中して、他のことはあんまり考えないようにしています。演奏はほとんど即興演奏で行うので、余計なことを考えてしまうと演奏に「わざとらしさ」みたいなものが出てしまう。硬くなるというか。できるだけ感覚的にやることを心がけています。
BGMは空間を意識して自由にやる感じで、パフォーマン��としてのライブでは基本は一緒ですが、少し作為的に盛り上げてみたり、実験的なことをしてみたり、という感じです。最近はその境目も曖昧になってきています。
BGM LAB.という背景音楽を研究するプロジェクトをされていますが、どのような活動か教えてください。また、始めたきっかけやこだわっていることについても教えてください。
BGM LAB.はRALLYE LABELのレーベルメイトでもあるKENJI KIHARA(木原 健児)というミュージシャンと一緒にやっているプロジェクトです。当初僕一人のサイドプロジェクトとしてやろうと思っていたんですが、ちょうどその時期に一緒にライブをしたりする機会があって、彼の音楽はもちろん、色々話す中ですごく共感する部分が多くて、一緒にやってほしいと誘いました。
自分のBGMの活動と重なる部分もありますが、演奏よりも制作の機会が多いかもしれません。耳で楽しむというよりは、香りのように一つの道具として使えるような音楽を目指して制作しています。日常において少し便利な音楽というか。
たまに依頼があれば二人で演奏をしに行ったりも。それぞれ一人でもBGMの活動をしているので、その時々でそれぞれ動いたり、一緒にやったり、自由にマイペースに活動しています。
これからの活動の展望について教えてください。
とりあえずは、自分の新しいアルバム作品を作りたいなと思っています。
コロナ禍の今、良くも悪くも時間ができて、とても非効率ですが実験的に音楽を作ることができています。この数年忙しく動いていたのでなかなかそういう進め方ができてなかった。時間を取ってもその時間を貴重に感じてしまって、どこかで効率を考えてしまうことで結果的に奇跡が生まれる可能性を排除していたような気がします。15年近くやって来て小手先だけ器用になって、だいぶ頭が堅くなってきていたようです。そうなると、うまくやろうとするほど、うまくいかないものですね。最近は活動初期を思い出して、あれこれと試しています。
そうしていたらずっとこの数年進まなかったのが、急にゆっくりですが進み始めて。今の現状は大変な部分はもちろん多いですが、制作に関して言えば、今の時間は自分を見つめ直す良い機会になっています。
新しい活動としては、最近はごく小規模な作曲のワークショップなんかも地元で始めて。とても楽しいです。最近、活動の規模は小さい方が僕は合っているのかなと感じてきていて。試しにもっともっと小さくしていこうと思っています。小さくした先にどうなるのかに、興味があります。
こんな風になりたい、っていうのがどんどんなくなってきて。半分どうしようって感じですが。笑 でも足元を見ると面白そうなことはたくさんあって。そういうものにちょこちょこ手を出していくことが、僕のできることなのかなと感じています。
僕は飽きっぽいので、あれこれ決めずにぼんやり進めたい。飽きちゃったらやめたい。なんかもう、多少はブレても良いのかなと。ブレながらも、より太い芯が出来ていけば。どうしたらぼんやり生きられるのかを、とっても真面目に考えていますね。
宮内さんは全国でライブ活動を行なっていらっしゃいます。ライブに行った日は素敵な1日になること間違いなしなので、ぜひ足を運んでみてください。
宮内優里 公式サイト https://www.miyauchiyuri.com/ BGM LAB. 公式サイト https://www.bgmlab.com/ 6th album「宮内優里」 https://open.spotify.com/album/3Ht5EvIEX3sWaLIpgu1HIe
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mukmagazine · 4 years
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【Interview】sitaq
「人生において幾度となく訪れる”人と人”との別れと出会いに対しての僕らなりのアンサーとして生まれたのがこの曲で」
名古屋発、4人組ロックバンド、sitaq。くるりを彷彿とさせるオルタナティブ・ロックを奏でながら、ブラックミュージックのリズムやポスト・モダンをも表現する。暖かくもどこか都会的なリアリズムを感じる歌詞と、一言ではカテゴライズできない複雑な音作りからは、素朴でありながら洗練されたポップスが紡ぎ出されている。次世代を担う彼らについて、インタビューした。 
―バンド構成を教えてください
カズ朝倉(ギターとボーカル)
オオシマユウカ(ベースとボーカル)
山田弘夢(ギターとコーラス)
太田有紀(ドラムとコーラス) 
―形成のきっかけを教えてください。
オオシマ:ギターの山田くん以外は各々名古屋でバンドをやっていて、同じタイミングくらいで皆活動休止したんです。活動休止した後もドラムの有紀ちゃんとは仲が良くて、色々遊んでたんですけど、ある日お互い楽器も弾けるしスタジオで遊ぼうって話になって。ギターボーカルの朝倉くんを誘ってclimb the mindのコピーをしました。そこからバンドがゆるっとスタート、途中で朝倉くんがライブハウスでフラフラしていた山田くんを誘って4人になりました。 
―印象的なバンド名ですが、由来はありますか?
朝倉:日本語をローマ字表記かつ短くて印象に残りやすいバンド名がいいねと皆で漠然と考えてたんですけど、僕がたまたま世界各国の山を調べているとペルーに「sitaq」という名前の山が存在することを発見したんです。山の正式な読み方はわからないけど、日本人の日常の中で馴染みのある「支度」というワードで読むことができる点が目指していた音楽性や雰囲気とリンクすることからこのバンド名になりました。(ちなみにGoogle Map上でsitaqを検索すると綺麗な雪山が現れます。) 
―バンドの理念などあれば教えてください。
太田:こうしていこう!みたいな決め事のようなものがあるわけではないのですが、自然と練習の合間や移動中にお気に入りの音楽を共有したりしています。なのでパート問わず「この楽器をこうしたい」などの意見を交わすことも多いように思います。シェアハピ大事ですね。 
―作詞、作曲のプロセスはどういったものですか?
オオシマ:ギターのフレーズから作ったりリズムから作ったり、割と自由です。誰かが作ってくるスタイルではなく、みんなで「せーの!」で合わせて作っています。すごくアナログな方法で1曲ができるまでに時間がかかるけど、その分できた時の喜びは大きくひとりひとりの曲に対する愛も強いと思います。作詞や歌は最後にできることが多いです。 
―作詞について、意識していることがあれば教えてください。
オオシマ:sitaqは主にメインで歌ってる人が作詞をしているのですが、カーディガンとpersonsだけは朝倉くんと共同で作っています。この2曲はこういう想いがあるということを彼に伝えて、大部分は彼���書いてくれています。朝倉くんが作る歌詞は心にすっと入ってきて体に染み付くからすごい。私自身が作詞するものは、日常で目に触れるものや感じたことがぼんやりと聴いてる人に伝わるように意識してます。 
朝倉:自分がメインで作詞している楽曲たちで共通していることは、「自分の生活から零れ落ちた言葉」で歌うことを意識しています。僕自身の過去や未来に対する肯定・否定をちりばめた曲がほとんどなので、奇をてらったり背伸びしたワードを選ぶのはちょっと違うかなと思うので。今回のEP収録曲の中でも「fuzz green」は顕著にそういう部分が現れていて、”許されるなら力づくで殴れ”なんて本心がモロに出てますね。笑 
EP,「persons」について
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―EP名の由来はありますか?
朝倉:同名のリード曲「persons」をそのままEP名に採用した形なので曲名の由来になってしまうのですが、この曲を制作しているときに親しかった「Rain caughts」というバンドが解散することを知ってメンバー全員が途方に暮れてしまったんです。一見、解散や別れといった出来事っていうのはどうしても悲しさが付き纏ってしまいがちですけど、それでも個々の歩みを止めることはしない、出来ない。それならまた生きて会おうぜ。人生において幾度となく訪れる”人と人”との別れと出会いに対しての僕らなりのアンサーとして生まれたのがこの曲で”人と人”という点に着目して「persons」と名付けました。
―EPを通じて、共通の世界観などはありますか?
朝倉:特にテーマを設けて制作したわけではなく、作り貯めた曲たちを一つの作品として収めた形のEPなので雰囲気やアプローチの振り幅はあれど、どの楽曲も人や生活の機微を捉えた世界観の共通点はあると思っています。
 ―EPを作るにあたって、参考にしたアーティストや曲はありますか?
朝倉:特定のアーティストから影響を受けて作った楽曲は「カーディガン」。sitaqを始めるちょっと前に女性SSWのmei eharaさんの「sway」というアルバムを聴いて衝撃を受けて、なんなら彼女と同じ色のダンエレクトロのギターを探し回って手に入れたぐらいです。彼女の楽曲から漂う憂いを帯びた引き算のアンサンブルを自分でもやってみたくて作ったのがカーディガンです。あとはアウトロのシンセ音はカシオトーンっていう80年代に発売されたカシオの電子キーボードで鳴らしていて、これはずっと好きなシャムキャッツのGt/Vo菅原さんが使用していることを突き止めて購入しバンドで活用しています。誰かの楽曲のこの要素!というより機材なんかのハード面の影響を受けがちです...笑
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山田:参考にできているのかは分かりませんが、曲を作っている期間中はJames Ihaのアルバムをよく聴いていました。Ihaの歌の後ろのギターフレーズがとても耳に残っていて、EPでは歌を大事にしながらも埋もれないフレーズを意識しながら演奏しています。
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オオシマ:capはTyler, The CreatorのI DON’T LOVE YOU ANYMOREみたいな曲にしたくて。ドラムはキックが多めで、歌もちょっと早口にしました。全体のサウンドもTylerに寄せてもっと重たくしたかったんですけど、歌に合わなさすぎて没になりました。笑
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太田:先にユウカさんが述べてたTylerもそうですけど、定期的にユウカさんから個人LINEで「この曲が好き!」とURLが送られてくるんですよ。「次回のスタジオで叩けるようにしてきてね」という謎の圧と期待と一緒に。お陰で普段聞かないようなヒップホップとかジャズとかで学ぶ部分が多少曲に影響されていたら嬉しいです。あとはfuzz greenのリズムは私の1番好きなバンドAPOGEEのゴースト・ソングから影響を受けてます。
―「着膨れのこどもたち」のどこか寂しく、温かい歌詞が印象的です。曲のイメージはありますか?
朝倉:ぼんやりなイメージですけど、「THE・歌モノ」なポジションの勝負曲が欲しいと考えて作った曲です。サビのドラマチックでいなたいコード進行が先に出来ていて、それを活かすようにサビ以外のアレンジと歌詞を当てはめていきました。作詞するときは普段から書き留めてあるメモ帳の中から拾っていくのですが、タイトルにもなっている「着膨れのこどもたち」と歌い出しの「ひとつ空けた席で眺める都市の切れ目」という2つのキーワードから膨らませました。
くるりの「ハイウェイ」を聴きながら地方都市からベッドタウンへ電車で帰る仕事終わりの主人公。同じ車両には多分心配性の親に着せられたであろう何枚も重ね着した塾帰りの子どもたちの話し声だけが響く。忙しない日々の中、確かな憧れのイメージを抱いてそれに近づきたい、そんな人に聴いてもらいたい風景と心情を描いた曲です。
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―最後に、今後の展望を教えてください
太田:もちろんsitaqをもっと多くの人に聴いてもらいたいし、さらにsitaqきっかけで名古屋にいる素敵なバンドをもっと知ってもらいたいです。名古屋の人には県外にいるかっこいいバンドをもっと知ってもらいたい。最近名古屋がアツい!というお声を多方面で耳にすると嬉しくなります。そんなコミュニティが広がるような企画とかもどんどんやってみたいです。
オオシマ:もっと大勢の人にsitaqを聴いてもらえるよう、いろんな場所で演奏したいです。
山田:生活の中で思ったことを、誰かに伝えられるようなものを作りたいです。
朝倉:FUJIROCKに出たいです。
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mukmagazine · 4 years
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【Interview】Strip Joint
「俺の手の届かない部分についてはメンバーを信頼してるから、それからの変化は流れに任せる。一曲にこだわるタチだから、できたと思ってもできていなくて、変わってくことがよくあるし、今もその途中だね」
都内を中心に活動するバンド、Strip Joint。2019年にCeremonyから改名し、同年7月には7インチシングルLike A Storm/Leisurelyをリリースした。リリースパーティーをはじめ数々のイベントを精力的にこなし、ジャンルの壁を超え話題となっている彼ら/彼女ら。メンバーの4人全員に話を聞いた。(このインタビューは2019年に行われたものです。)
—まずはメンバーのみなさんの自己紹介をお願いします。
岸岡:ボーカル、ギター、たまに鍵盤を弾いてる岸岡大暉です。曲作りも主に担当してます。まあ、リーダーですね。
島本:ギターの島本理緒です。
今井:ベースの今井理紗子です。
西田:ドラムの西田弘之です。
—活動歴を教えてください。
岸岡:2016年の12月くらいから組もうかって話をしてて、オフィシャルには17年の1月に結成。最初はCeremonyって名前でやってた。まだ今井さんはいなくて、前のベースは俺がもともとやってたバンドのベースなんだけど、彼女は留学のタイミングで抜けちゃった。そのあと今井さんが入って、今年の4月くらいに名前が変わって、今に至る。
—主な活動内容を教えてください。
岸岡:リリースは、自主でCDを何枚か出した。都内で主に俺んちかスタジオで練習してる。曲を作ったり、酒を飲んだり、あとはカラオケに行ってキラーズを歌ったりしてますね。
—そんな中で、気になっている人が多いのが、CeremonyからStrip Jointにバンド名が変わったことだと思います。
岸岡:ビッグな変化だからね、一番。名前を変えたのは確かに外から見たら大きな変化だと思うんだけど、バンド自体がずっと変化をし続けてて、その過程の中の1つの変化。まあでも、名前を変えるっていうのはやっぱり理由があるんだけど…。いたんだよね、Ceremonyが(笑)ややこしいんだよね、Ceremonyが来日したときに対バンできないし…っていうくらいで、もともと名前も気に入ってたし、アティテュードが大きく変わったとかではない。強いていうなら、音楽をやる上で1個のジャンルを目指してやるよりも、影響されるものに縛られないでっていう意識が根本にあるから。Ceremonyって言葉からパッと連想されるものがあると思うのね。それを広げるっていう意味でも良かったかなとは思ってる。
—確かに儀式っていう印象もありますし、有名な曲のタイトルにもありますしね。
岸岡:そうそう。もっと抽象的な意味になったかな。
—Strip Jointというバンド名はどのような由来なんですか。
島本:いろいろ試行錯誤してて、悩んだ挙句に、岸岡が見たGO! GO! L.A.っていう映画で、ジョニーデップが落ち込んじゃった主人公に、落ち込んでないでストリップジョイント行けや!みたいなシーンがあって、それが良いなってなったらしい。
岸岡:なかなかジョニーデップの役どころも面白いし、一言では説明できない映画なんだけど、その場面にピンときた。下世話な部分もあれば、めちゃめちゃ広い意味での救いみたいな意味もあるし、すごい心に留まったんだよね。その留まるのが俺らっぽいセンスなんじゃないかなっていう気がしたから、取ったんだと思う。
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—7インチシングルのLike A Storm/Leisurelyについて聞いていこうと思います。まず、Like A Stormはどういった経緯でできた曲なんでしょうか。
岸岡:作り始めたときのことはよく覚えてる。今までの曲が内面の吐露みたいな面が強かったのを、もうちょっと広げようと思って、自分が見たり聞いたりする世界のことを書こうって思ってたのね。面白い女の子がいて、それについて頭の中で話ができて。その抽象的だけど具体的なことも入れつつみたいな歌詞に合わせて、ピアノ弾きながら作った曲。
—今までのCeremonyというと、Drift Foreverのようなアップテンポな曲が印象的でしたが、Like a Stormは割とレイドバックしているというか、落ち着いてるところが面白いなと思いました。曲調も最初から決めていたんですか?
岸岡:あんまり決めてない。ひとつのことだけをやり続けて、Drift Foreverみたいな曲を量産しようっていうよりは、その時々の気分で作った結果、そのときはああいうちょっとゆったりした感じだったっていうことだね。俺がっていうのもあるし、バンド全体もそういう感じがあったんじゃないかな。
—早いテンポでポストパンクっぽいのばっかりやるのも違うというか、面白くないということでしょうか。
き:そもそも、そういうバンドやりたかったわけじゃないっていうか、みんな色んな音楽好きだし、ほんとになんでも聴くからね。
—Leisurelyについて。この曲はCeremony時代の一番最初からあって、今回シングルにするにあたり再録したと聞いています。再録するに至った経緯や、昔と今でどこが変わったかについて教えてください。
岸岡:この曲は2016年、Ceremonyが始まる前に一人で宅録で作って、めちゃめちゃいい曲だと思ったから、バンドを始めようと思った。新しく。
—バンドを始めるきっかけになった曲ということですね。
島本:そう。バンド組まない?みたいな話をされたときに、LINEで今こういう曲があるんだよねって名刺代わりに送られてきたのがLeisurelyで。
岸岡:最初はピアノも入ってなかったし、構成も入れ替えたんだよね。ライブではしばらく元のバージョンでやってたんだけど、もっと良くなるな、というか今の気分と違うな、と思ったんだよね。それで一旦ライブでやるのをやめて、でもやっぱりこの曲は大事にしたいし、ひとつ俺らのものとしての曲だと思ってたから、作り直そうとした。
—Ceremonyを組むきっかけになった曲をStrip Jointのデビューシングルにするっていうのは、記念碑的な意味があるのでしょうか。
岸岡:どうなのかな。
島本:今思えば、って感じだよね。
岸岡:それを意図して作ったわけではない。
西田:最初の2年くらいは、最初に作ったLeisurelyのデモの延長線上の曲をずっとやってたんですよ。単純なコード進行でBPM150、単純なエイトビート、Communionsみたいな。その象徴としてLeisurelyはあって。歌詞も、俺はこんなんじゃねえ、でもなかなか現実はそうも行かねえけどぼちぼち頑張るぞ、みたいな感じなんだけど。そういうのが岸岡の中でだんだん違うなってきて、そういう文脈を一旦全部離れて、今あるフィーリングで自由に書こうって気持ちになっと思うんだよね。最初に作ったこの曲を、今の自分に当てはめて作り直したっていう。
島本:歌が前に出るようになったり、ちょっと嫌な言い方になるけど、インディー臭さみたいなものを脱却しようという流れがあったり。それは音源を聴いても歴然としてるかなと思う。
��岡:枠に閉じ込められてる状態が嫌だから。ああこういう音ね、みたいな。あと具体的な変化があるんだよね。ギターを弾くときに3-6弦でパワーコードを弾いて、1-2弦の開放弦が偶然的にadd9になったり7thになったりして、コード上にない音も入ってたりする複雑な響きを使う、でもルート音は基本的にシンプルなギターポップっぽい進行でやる、っていう方法論を以前は持ってたんだけど、それから一旦離れて、じゃあ実際に鳴ってる音はC7なのかCadd9なのかって考えるようになったら、それ以外の方法論もあるってことに気づいた。一般的な曲の書き方なんだけど、CM7からFm7にいって、みたいなのをちゃんと考えるようになったかな。
—枠を脱却しようという流れがバンドの中にあって、その流れに乗ってこの曲も変わっていったと。
西田:で、そういう流れに乗ってバンド名も変えたんじゃないかな。
岸岡:そうだね。今だなって思ったの。変わる意志はあったんだけど、明確に見えてきたから変わった。 
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—作曲のプロセスについて教えてください。
西田:まず岸岡がDAWで全パート+歌まで書いてきて、それを各自コピーして、スタジオでやる。それで原型ができてライブで演奏するんだけど、やっていくにつれてなんか違うなって感じになる。デモの段階ではドラムが詰め切れてないことも多いから、岸岡と2人で話して、ドラムを作り直す。ドラムを作り直したらそれに対してアプローチするベースとかも変わっていく。ライブとかスタジオを重ねるにつれてどんどん変わっていって、最終的にひとつにまとまっていく、みたいな。岸岡は最初からかなり細部まで作ってくれる人だから、セッションとかインプロの入ってくる具合っていうのはほんとに少ない。
岸岡:歌が、とかっていうよりも、まずバンド全体が頭の中に鳴るのね。それを再現したいわけよ。曲をつくる者としてはね。
—島本さんと今井さんは、曲作りにはどのくらい関わっていますか。
島本:ギター主導で曲を作ることはほとんどなくて、基本的に岸岡が既に出来上がったものを持ってきて、それを耳コピする。Ceremonyの最初の頃はすごい速度で曲ができてて、それコピーするだけで手一杯だったんですけど、最近になって一曲に集中して作るようになって。たまに私が作ったフレーズがちょこちょこ入ってきたり、岸岡が出してきたものに対してこっちの方がいいんじゃないみたいな、それでめっちゃ喧嘩したり、ってことがまあ数回はあったかな...。私が全部自分でやってるって言えるのは音作りだけで、フレーズはほとんど岸岡が作ってる。音作りはあんまりとやかく言ってこないので、私が最初にデモ聴いてこんな感じかなっていうのをライブとかで弾いて、そんなに意見の齟齬もない感じです。
岸岡:俺が作ったものをみんなでやるわけだけど、俺の手の届かない部分についてはメンバーを信頼してるから、それからの変化は流れに任せる。一曲にこだわるタチだから、できたと思ってもできていなくて、変わってくことがよくあるし、今もその途中だね。今井さんも島本と同じようにそんなに曲作りをしてるわけではないけど、バンド全体を通すことでの変化には関わってる。
島本:前に岸岡が、自分は曲を作るときにそれぞれのプレイヤーを頭に浮かべて、たとえば島本が弾くギターだと思ってギターを考えたり、今井さんが弾くベースだと思ってベースを考えたりしてるっていうふうに言ってて、それがうまく凝縮されてるなって思う。それぞれ弾いてて心地のいいパートを与えられてる気はしますね。
今井:弾いてて全然違和感はないですね。自分にないものを出さなきゃいけない、みたいなときはないかな。
岸岡:俺以外のひとにも思ってること聞いたら面白くなるかも。確かに俺がコントロールしてる部分がかなり大きいんだけど、そうじゃない部分も絶対あって、そこが面白いところでもあると思う。
西田:バンドをやるっていうのは共同作業的な面が大きいから、各々の人生とか考えてることが出てくるというか。自分としてやりたいこと、自分の好きな音楽もあるわけで、バンドをやる上で一番ネックになるのってそういうことじゃないですか。全員が同じ音楽好きだったら何も問題ないけど、そうじゃないから。
岸岡:問題ないけど面白くないだろうね。
西田:でもどうアプローチするかみたいな高尚なことが言えるほど全然上手くもないという。となると自分の中でいろいろ葛藤する。自分はこんなアプローチもあるよ、とか見せたいけど俺が叩けるのはエイトビートだけ、みたいな。
岸岡:それは俺もそうだよ。曲が出来たときには完璧な曲を作ったと思ってるんだけど、それがみんなでやっていくうちに変わっていくっていうか。
西田:喧嘩しようにも土俵にも立てない時期もずっとあったけど、結局は、岸岡が書いてきたドラムラインを叩くっていうのが基礎にある仕事。それとは別に、好きな音楽をいっぱい聴いて自分の音楽観みたいなものを形成していく。バンド以外のところでも岸岡とはずっと話してるから、俺のその音楽観の上で岸岡にこうしたら?って話したら理解してくれて、変わっていく部分もあると思う。だから俺の仕事はドラムをよく練習すること、音楽をよく聴くこと、それから岸岡とよくコミュニケーションをとることの3つしかない、と思ってやっています。
岸岡:いい関係性だと思っています。
—島本さんとバンドとの相互作用について教えてください。
島本:私は大学でバンドサークルに入っていて、そこでいろいろコピーした経験が音作りの面では生きてるかなと思う。あとけっこう岸岡の通ってきてない音楽、例えばR&Bだったり、ゴリゴリのポップスだったり、が私けっこう好きで。
岸岡:うん。マイケルジャクソンとかほとんど聴いたことなかったんだけど、この人の影響で聴くようになった。
島本:あと日本のバンドだったり。幸いにも岸岡が網羅できてないところを私はよく聴いてて、岸岡は全然好きじゃないのわかってるけど無理やり聴かせたり、ずっとマイケルジャクソン流したり、しつけのように聴かせて、良いんだぞ!って言ってるうちに好きになって...っていうのがLike A Stromとかには生きてるのかなって。そこが私が胸を張ってアウトプットできてるって思うところです。
—今井さんにも伺います。前のベースの方が留学で抜けて...
今井:私は別でMs. Machineってバンドやってて、その企画にCeremonyを呼んだんですね。Ms. MachineのSAIっていうボーカルがみんなの共通の知り合いで、そこで出会って。でも加入の経緯はわかんないです。急に誘われて。
島本:単純にポストが空いちゃったから、ベース入れなきゃってなったんですよ。Ms. Machineって力強いパンクバンドなんですけど、そこでカッコよくゴリゴリ弾いてるイメージがあって。誰が良いかなって挙げていく中でイマイさんに到達して、スタジオ入って、単純によかった。ハマったていう。
西田:東京にこの人しかいない。これはマジです。
岸岡:うん。4人のバランスもいいと思いますよ。一番ゴリゴリして荒々しい趣味を持ってるのはベースかな。
島本:間違いない。
今井:同じ曲しか聴かないみたいなのをひたすら続けてて。気に入った曲を1週間くらいずっと1000回くらい聴いて、次に好きな曲見つかったらそれを1000回聴くみたいな聴き方をしてます。
岸岡:アホや(笑)
今井:普段はSavagesとかPJ Harveyとか聴いてます。
西田:今日聴いてきたのは何?
今井:今日はね、BjörkのArmy of Me。
—バンドをやる上でのスタンスはどのように考えていますか。
今井:もともと自分のスタイルがあって、それを見て良いなと思って誘ってくれたので、どんな曲でも自分の感じは忘れないようにしたいですね。でも今は試行錯誤中って感じですかね。メロウな曲とかも心から良いと思ってやってますので、頑張ろうという気持ちです。
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—みなさんが影響を受けたアーティスト、アルバムなどあれば教えてください。
岸岡:好みのものを1つ挙げるっていうのが苦手で。でも、Queens of the Stone AgeのLike Clockwork...っていうアルバムの影響を読み取ってもらえたら嬉しい気持ちはありますね。David BowieのThe Next Day。TV on the RadioのSeeds。King Krule。Swervedriver。Jesus and Mary Chain。あとArctic Monkeysは直接的な影響っていうよりも入り口として捉えてるかもしれない。実はいろんな要素があるから。まあでもヒーローだね。
島本:私は高校の時とか、音楽の原体験的なところで、ずっとイギリスのポップチャートのラジオをずっと垂れ流して聴いてて、ダンスミュージックとかDaft Punkとかがチャートを席巻してて。Disclosureとかも本当に大好きで高校生の頃から聴いてたんですよ。高校の時はそれをどう反映して良いかわからず、とりあえずツェッペリンのカバーとかしてたんですよ。Daft Punkを無理矢理やったこともあるな。でも大学に入ってギターのプレイヤーとしてめちゃくちゃ影響を受けたのはアクモンとストロークス。音作りとかそういう面で影響を受けたのはDIIVだったりCaptured Tracks系の澄み渡る音だったり。後はTurnoverとかのUSインディー。
岸岡:DIIVのOshinはフェイヴァリットアルバムだね。
今井:私はキムゴードンと、スマパンのダーシーと、トーキングヘッズのティナだっけ。かっこいい女が好きで。男のカッコ良さにも憧れますけど、やっぱり女のカッコ良さとは違うじゃないですか。あと大学でLydia LunchがやってるTeenage Jesus & The Jerksってバンドのコピーして、それにめっちゃ喰らって、超ハマりましたね。
西田:ドラムに関して言えば、メタルから来たものがすごい好きで、例えばRoyal Blood、 QOTSA、METZ、遡ればHelmet、Quicksandとか。バックビートとしてパワフルでローが飛んでくるみたいなものが好きですね。メタルの文脈でポストハードコアも好きだし。その反面サイケと60年代後半からのジャズロックをこの1年くらい掘ってて、Jefferson Airplaneのファーストとか、Beach BoysとかSoft Machineとか。あとビートルズのRevolverとRubber Soulとか。まあそれはボンゾ、ツェッペリンに行き着くんですけど、打ち込みが入ってくる前の、縦のジャストがない音楽っていうか。あの人たちは多分クリックとか聴いてないから。「間」が好きです。
岸岡:Iceageのアルバムたち。Communionsのファーストを出す前のEP。ホラーズのセカンド。
島本:ファーストだろ!(笑)
岸岡:この人はファーストだそうです。
—リリースパーティーやライブを精力的に行われていますが、どのような意図があるのでしょうか。
岸岡:ライブをやるにしても、できるだけ主体的に動きたい。今の日本にはイベントはたくさんあるんだけど、いい感じに遊びに行きたくなるような場所があるとは決して思えなくて。本当にやりたいことを明確な意志を持ってやるっていうのが、行って楽しいイベントだと思うんだけど、そういうのを自分たちはちゃんとやりたい。KLONNSの人たちがBushbashでやってるDisciplineっていうイベントとか。自分たちがやってきた行動の結果今いる場所にいるわけだから、そのすべてに文句を言うのは間違ってると思うんだけど、もっと違う方法論を提示したいみたいな気持ちは確実にあって。自慢げにその姿勢が素晴らしいからもっとちゃんとやれよとか言うつもりはないんだけど、とはいえ、もっと違うのがあるじゃんっていう気持ちはある。インディペンデントな、DIYな文化が一つしっかりと根付いてるシーンと比べたら、まだまだ、上に頼る、人に頼る人が多い。それは悪いとかじゃなくて、そういう風に社会ができてるし、とは思うんだけど、でも悪い部分も絶対あるよね。自分の思う通りにやるってだけでも精一杯なことなのに、周りの価値観なり何なりに流されることって人間けっこう多いから、自分の思う通りにやるっていうのが一番大事だと思う。それをみんなやればシーンはもっと良くなると思うけどね。
—今後の予定や展望を教えてください。
岸岡:とりあえず今はレコーディングに向けて動こうと思ってて、多分半年から1年くらいゆっくりかけて。今までは自分の手で全部コントロールして録音からやってみるってことがなかったから、それをやってみようかなっていうところ。それに伴ってライブはちょっとお休みすると思う。その作業がうまくいけばなんか出すことにはなるとは思うんだけど、どういう風に出すかは全然決まってない。でも50歳になっても続けてたいね、とは思う。
西田:それは俺も思います。
岸岡:1年から50歳まで飛んじゃったけど(笑)その間は未定です。
—最後になにかあればお願いします。
西田:このバンドには岸岡の性格がよく出てると思う。自分が正しいと思ってることを地道にやるだけみたいな。のし上がろうっていう気持ちはあるけど、頑張ってオーディション受けてみたいなことは全くないし、別に3年、5年芽が出なくても全然いいし。そういうのって大人からは嫌われる姿勢だと思うんだけど。もっと頑張れ、必死こけみたいな。でも基本的なスタンスとしてあるのは、今あるものをただやるっていう。音楽性もどんどん変わっていくし、やりたいことをどんどんやっていく感じ。だからこそ続けられてるっていうか。
岸岡:でもやってるうちに、自分たちだけで満足いくことをやるだけじゃなくて、自分たちの音楽を聴いてくれる人たちに新しい姿を見せることが求められてるんだなってことに気づいたから、それはやりたいことの中に入ってる。だから仙人のように閉じこもって音楽をこねくり回してるだけではなくて、ちゃんと世に出したいなって気持ちはある。
西田:そういう承認欲求もバランスよく持ってるし、逆張りばっかりというわけでもない。でも承認欲求を満たすためにやりたくないことをやることはない。バランス感覚が岸岡の中にある。
島本:し、バンドの中にもある。
西田:だから居心地もいいし。
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mukmagazine · 4 years
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Taiko Super Kicks 【INTERVIEW】
「抽象的なものを抽象的なまま受け入れようとするマインドは、歌詞や詩を楽しむうえでとても重要だと思います。」
Taiko Super Kicks
東京都内を中心に活動中。
2014年8月、ミニアルバム『霊感』をダウンロード・フィジカル盤ともにリリース。
2015年12月23日、ファーストアルバム『Many Shapes』をリリース。
2018年2月7日、セカンドアルバム『Fragment』をリリース。
2018年11月17日、7インチシングル『感性の網目 / bones』をリリース。
90年代のオルタナティブロックをひとつのルーツとしているが、定住を好まず、意欲的に音楽性の進化・発展を志向する。
メンバー4人の独特で有機的なアンサンブルは、忘れられかけたバンド本来の奥行きをそれ自体で体現している。
(公式サイトより抜粋)
伊藤⇒伊藤暁里(Vo)
樺山⇒樺山太地(Gt)
大堀⇒大堀晃生(Ba)
こばやし⇒こばやしのぞみ(Dr)
*回答者名がないものは伊藤による回答
-「午後は低い」「分かれてのびていく」など、シュールで解釈の幅が広い歌詞が印象的です。意図的にそうしたアブストラクトな言葉遣いをしているのでしょうか。それとも自発的にそうした言葉が浮かんでくるのでしょうか。歌詞を書く際のインスピレーションやこだわりについても併せてお伺いしたいです。
歌詞を書くうえでは、意味がはっきりと分かるような表現は避けるようにしています。自発的にそういう言葉に行きつくことが多いですし、意図的にそういう言葉を選ぶ時もあります。歌詞に限らず、抽象的だけど共感できる、なんか分かる気がする、という状態が好きです。会話をしていて、「それって具体的にどういうこと?」と逐一聞いてくる人が時々いますが、この態度はあまり好きじゃありません。抽象的なものを抽象的なまま受け入れようとするマインドは、歌詞や詩を楽しむうえでとても重要だと思います。
一方で、最近、生きづらさのようなものをインスピレーションとし、それゆえにアブストラクトな言葉ではなく、言葉そのものとしては具体的な表現を選んで使おうとしています。アブストラクトというよりはコンクリートな言葉を使って、平板な感触を出しながらも、裏の奥行を感じさせるようなものを目指しています。
- メンバーの皆さんが影響を受けた音楽について教えてください。最近のお気に入りのプレイリストなどもあれば教えてくださると嬉しいです。
(伊藤) 小学校の頃に少しピアノを習っていて、ピアノで曲を作って歌うことを始めました。その時にはMONGOL800と平井堅をよく聞いていました。もとをたどればこのころ触れていた音楽は大事だったと思います。最近は、Chris Cohenの『Chris Cohen』、Surface To Air Missiveの『Shelly’s Gone』などを聞いています。
(樺山) Pavement、The Pixies、Jimi Hendrix、Fugazi、Dinosaur Jr. 、羅針盤、Augustus Pablo、The Shadows がごちゃ混ぜになっています。プレイリストはレゲエの名曲がまとまったやつを適当に聴くくらいです。最近は10代の頃好きだったゲーム「Mother」の音楽を聴き返しています。
(大堀) Radioheadのベースが好き。リズムよりではない色香を感じる。最近は、Doctor Fluorescentという二人組のユニットのシンセポップな音楽を聴いてます。
(こばやし) 自分の演奏に関していうと、ヨ・ラ・テンゴに影響を受けていると思います。最近はNetflixのドラマ『ノット・オーケー』がよかったので、劇中で流れる曲たちをよく聴いています。カレン・ダルトンがかかるところが特に好きです。
- 伊藤さんがあるインタビューで「お客さんを盛り上げるよりも気持ちよくて寝そうになる音楽を作りたい」とおっしゃっていたように、アルバム"Many Shapes"は全体的に音に包まれる囲繞感があり、どこか気だるさがある音だという印象を受けました。アルバム"Fragment"では囲繞感や気だるさはありつつも比較的前作よりも余白が多く風通しがいい、こじんまりとした印象があります。この2作の間にどのような変化があったのでしょうか。
活動初期のインタビューまで読んでいただきありがとうございます。その印象の違いの大きい要因は録音の質感だと思います。『Many Shapes』がどちらかというとウエットな録音の質感だったのに対し、『Fragment』制作時には、ドライで冷たい質感を意識してレコーディングしました。『Fragment』でそういう質感を目指したのは、4人のバンドであること、個々が明確に存在していることを表現したかったからです。それを実現するために、4人が混然一体となってウォームな響きを出すのではなく、それぞれが一定の距離をもってしっかりと聞こえてくるような音色、ミックスにしました。
- 個人的にTaiko Super Kicksの音楽は、メンバーそれぞれが自由に音を鳴らしているように見えるのに不思議な一体感があるように感じます。またTaikoのリスナーも、ある人はベースラインが好きだったりある人はメロディが好きだったりと、リスナーによって着目する音の部分が違うのも魅力だと思っています。これらは、メンバーひとりひとりの個を大切にするTaikoならではの現象だと思いますが、曲作りやライブ演奏においてメンバーの個性はどのように取り入れられているのでしょうか。具体的に意識していることがあれば教えてください。
(伊藤) 僕はソングライターなので、その意味で自分の個性が取り入れられているのは言うまでもありませんが、ライブの時などには特に意識していることはありません。なるべく自然体でいようと思っています。また、不思議な一体感というものがあるとすれば、取り入れられているというより、自然とメンバーの関係性が反映されているのだと思います。
(樺山) ギターのフレーズや音作りは、伊藤さんの意見をもらいつつ進めていくことが多いです。メンバーの演奏から刺激を受けることも多々あるので、Taiko Super Kicksとしての僕のギターには、メンバー全員の個性が入り込んでいると言えます。「不思議な一体感」が出ているとしたらそういう所が要因かもしれません。曲ごとに新しいエフェクターを試すのは意識してやっています。
(大堀) 全体の印象を捉えるようにしたいと思っています。
(こばやし) 今は、曲作りやライブ演奏において、自分の個性を出そうとは考えていません。運動であるということを意識しています。
- Taikoの音楽は聴いている状況によってかなり印象が変わり、色んな形をした日常の場面をアメーバみたいに自在に包み込んでくれてとても好きです。皆さんはリスナーに自分たちの音楽をどう感じ取って欲しいと思っているのでしょうか。
(伊藤) あくまでも受け取る側の自由だとは思っています。とは言え、意図していない、かつ好ましくない解釈などを目にすると、どうしてもあまりいい気分はしません。変に深読みせずにそういうものとして受け取ってもらえるのが嬉しいです。
(樺山) アメーバ、良いですね。自分の言葉で考えてくれたことが分かる感想は嬉しいです。
(大堀) 空気と流れにのれるといい演奏をしたと思えます。
(こばやし) これもあまり考えていないですが、わたしはべつの(あたらしい)気分を知りたくて音楽を聴くので、自分たちの音楽も誰かにとってそういうものになっていたらいいとは思います。
皆さんはZINEやフリーペーパーを発刊したり、自主企画のライブを行ったりしてらっしゃいますが、楽曲制作だけでなくそうしたコミュニティづくりをする上で大切にしていらっしゃることがあれば教えてください。
特別に何かコミュニティづくりをしようというような意識はないと思いますが、音楽以外の活動を通して、バンドが多角的に、立体的に見えたらいいなと思っています。Taiko Super Kicksはいわゆるワンマンバンドのような雰囲気ではなく、メンバーそれぞれの人間味が深いので、そういう部分を含めてバンドという存在を補強できればと思います。
Taikoの皆さんは精力的にライブをたくさんやる、というよりは、めまぐるしいインディーシーンの中でもいい意味で群れずにマイペースに活動をしているという印象があります。メンバーの皆さんの生活の中でTaiko Super Kicksというバンドはどのような位置付けなのでしょうか。
(伊藤) このバンドが自分にとってどういう位置づけなのかは、まだわかりません。わかりやすく言えば趣味と仕事の間にあるもの、とでもいう感じです。それによって生活が成り立っている訳ではありませんが、生活がそれに大きく影響していることは確かです。
(樺山) ちょっとした実験を繰り返す場所。「ちょっとした」がミソ。わかりやすい派手さを良しとしない所がいいなと思います。ペースがゆったりしている分、明確な目標を見失いがちなのがIndieの難しいところです。
(大堀) 自分の人生と同じように、停滞感があったり、浮き沈みがある。メンバーと気持ちの流れがふと重なったりして面白い。
(こばやし) 最近は生活がめちゃくちゃなので、答えるのが難しいです。
- ありがとうございました。最後に、今後の展望を教えてください。
最近目立った活動は多くありませんが、新曲の制作を中心にじっくりと活動しています。直近では、『アボカドの固さ』という映画の主題歌を書下ろしました。2020年夏よりユーロスペース他にて公開予定です。ぜひ足を運んでみてください。
近い未来の展望としては、まずは新しいアルバムを発表することで、これはなるべく早くお知らせしたいと思っています。ご期待ください。
遠い未来の展望、というか目標みたいなものとしては、バンドが長く続いていくこと、個々の音楽的/人間的な成熟がバンドに反映されていくこと、今の4人のメンバーである意味が保持されること、といった感じです。
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Pot-pourri 「Classic」 全曲インタビュー 【Interview】
「何か一つのものが多面的に見えたら、それは素敵だろうし、そういうものの見せ方をしていけたら良いだろう、というような気持ちは日頃からあるような気もします。」
2019年10月にHEADZからデビューアルバム「Classic」をリリースしたPot-pourri。楽曲構成や音響の面では異物感のある実験性を意欲的に取り入れながらも、普遍的なポップネスを感じさせるこのアルバムだが、今回はアコースティックギター/ボーカルのSawawo氏と、プログラミングを担当するRyo Nagai氏に全曲インタビューを行った。
1. Cerulean
アルバムの幕開けを飾るのは「Cerulean」。等間隔で鳴らされるバスドラムのおかげで、どこか行進曲のようでもある。Pot-pourriの大きな特徴のひとつである加工されたアコースティックギターによる間奏も衝撃的だ。
—曲を通して拍の頭にバスドラムが鳴っていることで、1拍子感のようなものが生まれている気がします。ビートへのこだわりを教えてください。
Ryo Nagai(以下N): 曲の編集において最後に残ったのがこの曲でした。もともと編集前の段階ではシャッフルビートの、ポストパンクっぽいチープなドラムと生の(とても良い)ベースが入っていて、迷走してオートチューンの多重コーラスを加えたり、壊れたバイオリンみたいな音を加えていましたが、リズム隊も含めて削り、ギターと歌と空間処理のみのトラックにすると、この曲のもつ本来のリズムの複雑さに対して、ドラムはよりシンプルであるべきだと感じられました。そ��でキック(およびサブベースを同時に鳴らしている)の四つ打ちとサイドチェインをかけたパッドを加え、ドラムのビートはある種鳴っていないとも近似できるものにしました。
Sawawo(以下S):そういった判断のもと、最終的にリズムアレンジが殆どNagai君の手によるものになったので、自分としてはこの曲のビートについて言えることは余りありません。
Nagai君のアレンジによりこの曲では特に顕著になっていますが、アルバムを通して、人が演奏していることによる微妙なズレ以外での、極端なテンポや拍子の変化は余り入れないようにしたかもしれません。踊れる、というと変な感じもするのですが、音楽に全く乗れないところが来るようなものではなく、乗れる、というと言い過ぎかもしれないけど、乗らないことも、乗ることも、聴き手それぞれが選べるようなものを作りたいな、と漠然と思っていたところはあります。
—間奏では、生々しく鳴り響くピッチのズレたギターソロ、そしてRYO NAGAI氏による切り刻まれたギターの音処理が衝撃的です。このサウンドはどのように生まれたのでしょうか。
N:ギターのアタックの強さに対して、リズムの弛緩、緊張を操作するために左右にパンを振ったギターのトラックにそれぞれAbleton liveのグリッチ機能を用い、更にリターントラックのリバーブとディレイを要所で加えました。
S:ピッチがズレているのは自分が思いっきり殴るように弾いたからかもしれません。笑 「とにかく思いっきり…」というように弾いていたので、「サウンド」のような、肌理のような部分や、仕上がりとしてどうなるか、みたいなことは実は自分としてはそんなに意識していなかったかも、と録音当時を思い出すとそんな気がします。
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2. Kankitsu 
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すべての楽器が渾然一体となり断続的なリズムを刻むオープニング、引き伸ばされた言葉により強烈な印象を残すヴォーカリゼーション。この曲に度肝を抜かれた人も多いだろう。
—ライブを観ていて気づいたのですが、メインフレーズの最後、ドラムとベースに比べてギターのストロークが1拍だけ多いですよね。これはなぜでしょうか。
S:理由が明確にあるわけではないですが、メンバーの半ば勘違いから始まり、リハーサルを重ねるなかで録音時点ではこの形が最もしっくり来る、となりました。後で触れる「Lempicka」とかもそうですし、アルバムを通してそうなのですが、ライヴの演奏を重ねる中で形を纏めていった曲が殆どなので、意識的、無意識的にメンバーが感じた「これが良い」というような部分はかなり音源にも反映されています。
—ドラムがビートを刻み始めてリズムが明瞭になる瞬間に、一気に開けるような感覚があります。曲が進むにつれてビートが変化したり、不明瞭だったリズムが明らかになっていったりするような展開はアルバム中にいくつかみられますが、これは意識的なものなのでしょうか。
S:一つのリフが様々な形を見せるのに快感を感じて、曲の中で見せ方を変えていったりしたら面白いだろうと思ったり、そういった展開を好む部分は自分のなかにあると思います。リフに限らず、何か一つのものが多面的に見えたら、それは素敵だろうし、そういうものの見せ方をしていけたら良いだろう、というような気持ちは日頃からあるような気もします。上手く言えてないですが。
—名詞の羅列が続いたあとに、いきなり「いまきみと死にたくなる」というフレーズが出てくるので少しゾッとします。どのような内容の詞なのでしょうか。
S:何処となく男性の暴力、のようなものが頭にあったかもしれません。他人と関係する中でわがままになる部分を抑えきれずに、「きみと死にたくなる」と言ってしまうような。
3. Lempicka
ワルツを基本としてゆったりと展開されていく。アルバム中最も静謐であり、無音部分やピアノ、挿入されるギターのフレーズも印象的な一曲だ。
—シングル曲「Kaede」にもみられた母のモチーフがここでも登場しています。この曲を含め、様々な視点や関係性をもった歌詞が多いようですが、全体に通底するテーマなどがあれば教えてください。
S:「Kaede」との関係は明確に意識したわけではありませんが、母親という概念について興味を抱いてしまっているところはあるかもしれません。
全体に通底するテーマは、曲を書いていく中で色々なことを一貫性なく考えていたので、はっきりしたものは余り無いです。ただ、「Kankitsu」の所で答えたような、他人との関係や他者ということについて漠然と考えていたところはあるかもしれない、といまは思います。自分にとってほぼ初めての、宅録などではないバンドでの音源の制作で、曲を作ったり、演奏したり、それを録音に纏め上げていく上で、他人という存在をかなり意識するようになっていて、そこに対して自分なりに折り合いをつけようとしたり、なるべく開いていよう、という気持ちはありました。そしてそれは意識的にも無意識的にも、歌詞に影響していますし、それ以外の音の部分にもそうであるような気がしています。
—ゆったりとした歌パート、挿入されるアコギのソロや完全な無音部分など、劇のような曲展開が特徴的だと思います。アルバムの中でもかなりアブストラクトな構成の曲ですが、どのようにしてできた曲なのでしょうか。
S:元々かなり単調な曲だったのですが、演奏を重ねながら少しずつ細部を変えていきました。この曲は特にライヴでの演奏回数が多いので、そういった部分のフィードバックはかなりあると思います。これこれこういった部分があるからライヴで見て鮮やかだろうと思った、みたいなことは、上のところでも言った通りバンドメンバーのノリにより紡がれたところも大きかったりして、自分一人で言語化するのは意外と難しいところでもあります。
4. Revolver
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穏やかなシンセサイザーの音色とファルセットが優しく包み込む。しかしよく注意して聴くと、かなり複雑なリズム、構成を撮っていることに気づかされる。
—強いリバーブのおかげで、アルバムの中でも特に穏やかな印象があります。どのような意図のアレンジなのでしょうか。
S:アメリカのスロウコアと言われるバンドを聴いていて気持ち良いなと思ったことは大きいかもしれません。Lowとか。スロウコアとは言われないですけど、R.E.M.のバラードとか。
—穏やかな第一印象ですが、拍子が変わったり突然シャッフルしたりするなど、注意して聞くととても凝った構成になっているような気がします。他の曲でも後奏の長さが贅沢に取られていたり、メロディーの繰り返しの回数が意表を付いてきたりと、ポップでありながらも挑戦的な構成をしているところが多くみられます。曲構成について意図があれば教えてください。
S:あんまり意図のようなものがあったりするわけではなく、最終的にはこの構成が気持ち良いから、という部分が大きいです。でもこの曲の場合だと、大きな単位で漠然と音が置いてあって、穏やかで、チルアウト出来るというだけでは満足出来ない気持ちはあったかもしれません。言い換えるなら「大味な単位でチルアウト出来るだけ」ということが余り自分としては「気持ち良い」と思えない、というか。
5. Berceuse
アルバムは後半に突入する。ギターのアルペジオから始まり、滑らかなメロディーとともにゆったりと展開していき、最後のリフレインでクライマックスを迎える。
—表だと思っていたのが裏拍になったり、後半にかけてリズムが明瞭になっていったりするのが面白いと感じました。曲展開にはどのような意味がありますか。
S:意味と言われると特に無いですが、「Kankitsu」で答えたように、やはり一つのものが別のものに聴こえてきたりしたら気持ち良かったりするというのは大きいかもしれません。
—繊細なコードの移り変わり、特に食い込むようなベースラインが印象的です。こだわりや影響元などがあれば教えてください。
S:普段アコースティック・ギターで、一人で弾き語りをする時なんかとは別のものが聴こえてくるようにしたいな、という思いはあるかもしれません。バンドという形式(この曲の場合、音源はバンド・メンバーがフルで揃っているわけではないですけど)と曲のある程度の形として、余り必然性の無い結びつき方をしているものにしたくはなかったというか。ベース・ラインにもそういうところが表れている気はします。
6. Absinthe
性急なドラムが印象的なパンクナンバー。複数の一人称によって語られる歌詞は、曲の最後には左右両チャンネルに分かれていくのが面白い。
—アルバム中でも最もアップテンポでパンクな印象を受けました。どのようなコンセプトがあるのでしょうか。
S:この曲でドラムを演奏しているChikuwaさんはサークルの先輩で、ハードコア・パンクの曲を叩くと非常に映える人でした。それを観ていた自分は「彼が叩くハードコア・パンクの曲、そうでなくても2ビートの曲がPot-pourriにあったら最高だ!」と思い、何とか落としどころを見つけようとしたのがこの曲です。要するに「当て書き」に近いです。
—2つの一人称が登場し、最後には左右のチャンネルで違う人格が叫んでいるように聞こえるのが面白いです。このアイデアはどこからきたのでしょうか。
S:日本語の一人称がたくさんあることは元々外国語を勉強したりするなかで思い始めたところではあるかもしれません。ただ、それが即二つのヴォーカルを合わせて録るアイデアに繋がったわけではなく、左右から二つの声が聴こえてくることに対して感じている面白みはもともと自分のなかでは別のものとしてありました。あくまで音としての面白みがありそうなアイデアだったものが、この曲の詞で使えばより活きるのではないか?と思った、という形です。
7. Nocturne
嵐の後の静けさのような、落ち着かせるバラード。「あなたと夜明けが見たい」という歌詞はストレートかつ甘美だ。エフェクトの渦に飲み込まれつつエンディングを迎える。
—最もストレートな歌モノだなと感じました。「あなたと夜明けが見たい」という直接的なメッセージもやや意外でしたが、どのような立ち位置の曲ですか。
S:1つくらい甘ったるい曲があっても良いかも、とは制作する前にちょっと思いました。笑
—Ryo Nagai氏の「プログラミング」の仕事では、暴力的とも言えるインダストリアルなサウンドが目立ちますが、この曲においてはアトモスフェリックで優しいサウンドが印象的です。このサウンドはどのようにして生まれたのでしょうか。
N:この曲ではSAWAWO氏のドラムの打ち込み、そしてnoguchi taoru氏によるミキシングでのリバーブが温かみを感じさせるように思えます。
Pot-pourriにおけるギターのエフェクトは多くの場合、ある軸で相反した要素、矛盾しているような感覚を掬うように考えています(例えば穏やかなある瞬間にエフェクトによってNine Inch NailsやRadianのようなギターが鳴る、というような)。この曲ではギターにシマーリバーブやディレイを加え、ディレイタイムを変えピッチを下げたりすることを曲自体に組み込んでいます。エフェクトにおける直接のリファレンスはないですが、強いて言えばBroadcast、Nicolas Jaar、THE NOVEMBERS、Radioheadかなと思い返します。
S:この曲も一見アトモスフェリックなところが大きいように見えて、途中で入ってくる金属的なエフェクトや、曲を締めるノイズの部分に、そういう「アトモスフェリック」「優しい」「温かい」部分と相反する不穏な要素が入っていると思います。それでもなおアトモスフェリックで優しくこの曲が聴こえるのは、その不穏さと対比される形で、穏やかな部分もまた目立っているからかもしれません。
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8. Silkworm
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アルバムからのファーストシングルでもある最終曲。ゴーストタウンの夕方の情景が浮かび上がるような、ミドルテンポで優しくもどこか現実離れした怪しい雰囲気も醸し出す曲だ。
—アルバム全体ついても言えることですが、拍に対して過剰な音節数の歌詞が耳に残ります。歌詞とリズムの関係について教えてください。
S:リズム的に言葉がズレたら気持ち良いと思うところは大きいかもしれません。言葉のリズムがズレると、歌がリズム的に合っているときよりも「音楽的っぽい」ようなところから遠ざかったように聴こえて、それが面白かったり気持ちよかったりするかもしれないです。いわゆる「ポエトリー」に近いラップを聴いているときだったり、字余りっぽいフォークを聴いているときの快感の一つに、そういうものがあるかも、というのは思います。
—後半でビートが倍速になるところでは明るい印象がある一方で、終盤のエフェクトでは怪しい雰囲気も醸し出しています。アルバムのエンディングとしてどのようなことを意識したのでしょうか。
N:シンセのループが裏返って耳が壊れそう。作ったときは曲順を知らなかったんですが、終わりとしてはふさわしいように感じます。
S:自分も特に最終曲にするつもりで作ったわけではないですが、何となく最後に配置すると、ひとまずの結論っぽい感じがするとは曲が出揃い始めた辺りで思っていました。明るい曲にしよう、みたいな意識は特にしていなかったかもしれません。
9. アルバム全体について
—アートワークやロゴ、質感に特徴のあるブックレットにはかなりのこだわりを感じました。制作過程について教えてください。
S:アートワーク、ブックレットについては担当の芦藻彬君と一緒に進めて、物として手に取った時に発見があるような、物理メディアならではのデザインを目指して打ち合わせしていきました。また彼にロゴ・デザインをしている今學さんを紹介してもらい、今回ロゴを制作していただきました。
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—Classicというアルバムタイトルはかなり大胆だなと思いました。由来はなんでしょうか。
S:半ば冗談のつもりです。ただ、自分が良いと思っているものを出したいというか、自分の作ったものを良いと思っているよ、という意思表示はしたほうが良いかな、というような気持ちはありました。極論ですが、自分の作ったものを「そんなに良くないです」と言って出すのも違うだろう、というような。今回の場合、やり過ぎかもしれないですが。
—アルバムのコンセプトがあれば教えてください。
S:明確なものは特にないですが、敢えて言うなら、今までの曲でも触れて来ましたが、いろいろな意味での「他者」。
バンドメンバーと作業していく中で生まれた変化も「他者」との作業から生まれたものですし、曲を作ったりする中で、他者に対して開いてあろうとして、詞を書くときに関係性のことが頭に何となくあったり、曲を聴いた人が、その音楽に乗ったり、乗らなかったり、どう向き合うんだろう? みたいなことを考えたりしたというのも「他者」からの影響です。取っ付き難いところもあるかもしれないですが、自分なりのそうした他者との向き合い方の成果のようなこの音源に向き合ってくれた人がいまの段階でも何人もいてとても嬉しいですし、もっといろいろな人に届いて欲しいとも思います。
Pot-pourri『Classic』
UNKNOWNMIX 50 / HEADZ 239 ¥2000+tax
1. Cerulean 2. Kankitsu 3. Lempicka 4. Revolver 5. Berceuse 6. Absinthe 7. Nocturne 8. Silkworm
ストア
HEADZ通販(※特典あり) / disk union(※特典あり) / Amazon / TOWER RECORDS / FILE-UNDER
ライブ予定
◇2020年1月28日(火) 22時よりスタジオ・セッション配信。詳細はTwitterにて
◇2020年2月1日(土) 夕涼み会 @ 旭川(北海道)Mosquito w/ SACOYAN、タカイヒロナオ、cult grass stars、カーマイン、Happy Valley Rice Shower、DJすもまん food hifumi、ねじめ o/s 18:00/18:30 a/d ¥1500/¥1500+1d(¥500)
◇2020年3月15日(日) Grace Cathedral Parkとの共同イベント @ 落合soup w/ Grace Cathedral Park、EXTRUDERS o/s TBA a/d TBA 続報はTwitter、Instagramにて。
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mukmagazine · 4 years
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STEPHENSMITH【INTERVIEW】
2013 年に結成され、インディ R&B やフリージャズ、シティポップなど幅広い分野をメロウや UK ロックの系譜に落とし込んだ独特のポップセンスでインディーズ界隈を揺らす3 人組ロックバンド、STEPHENSMITH。結成 4 年目となる昨年には、初の宅録音源を発信するなど、挑戦し続ける彼らにインタビューに答えていただいた。
―バンド構成を教えてください。
ギターボーカル:掛優大、ベース:大城寛斗、ドラム:市原太郎のトリオバンドです。
―バンド結成の由来を教えてください
掛優大:大学の軽音サークルで組みました。ベースの大城は元々弾き語りをやってて何度か対バンしたことがあって、前のベースが抜けたタイミングで入りたいと言ってくれて加入しました。
―バンド名の由来があれば教えてください。
掛優大:名前みたいなバンド名にしたいと言うことで決まりました。特にこだわりは無く、なんとなくで決めちゃいました。  
―影響を受けたアーティストはいますか?
掛優大:年齢や時代によって流動的に変わるものだと思いますが、普遍的な影響となると音楽面では john mayer trio、ゆらゆら帝国、d'angelo。思想の面だと frank ocean の存在が大きかったです。歌詞は坂本慎太郎さんにいつも感動します。最近はいしわたり淳治さんの歌詞も参考にしてます。HIPHOP も好きで、RIP SLYME 世代なので自分では意識してないですが影響されてる気がします。
大城寛斗:Vulfpeck の joe dart です。体格的な意味でははなく音楽的にマッチョ過ぎて。憧れですね。
市原太郎:Steve Jordan は憧れのドラマーの 1 人です。叩くということだけでなく、コーラスもとても素敵だと思うし、そうなりたいです。
―作詞、作曲のプロセスを教えてください。
掛優大:結構、曲によってで一貫性が無いです。歌詞がとにかく完成しません。ただ順番的に「メロディ→コード→ドラム→ベース→歌詞」で作る時がしっくりきますが、この作り方だとミニマルなアレンジが僕にはまだ出来ないです。「ドラム→ベース→コード→メロディ→歌詞」の流れには慣れてきましたが、こっちの方は歌詞が倍の時間かかります。どちらの作り方もですが、めんどくさがり過ぎてコードは 3~4 つくらいしか使わないです。
―歌詞をつけるうえでこだわりは何かありますか?
掛優大:口語と文語の使い分けです。
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―最近聞いているアーティストはいますか?
掛優大:一つの曲やアルバムをずっと聴くタイプです。
SUPERCAR の STORYWRITER
RAMJAC の Transfusions(アルバム)
Bruno Major の Like Someone in Love
山下達郎 の RECIPE
柴田聡子 の 涙
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大城寛斗:最近は、徳永英明を聴いてます。どっしりとした演奏と歌でうっとりしてます。
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市原太郎:Tony Allen を知ってから 2 年くらい聴き続けています。
とにかく気持ちの良いリズムで、ドラムの音だけでも聴いていられると思います。
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新 Single、「LADY」について
―LADY、ローファーのそれぞれの世界観を教えてください。
『LADY』
掛優大:歌詞では女性のエゴイスティックに愛して欲しいという気持ちを前面に押し出していますがそこじゃなくて歌詞を描いたのが男っていうのが世界観に繋がるのかも。女性ってこう思ってるんじゃないかな?って気持ちで書いてたら「でも、こりゃ男もこんな風に愛されたい時あるよなぁ」って僕はなりました。愛って男女とかじゃなくて人としての話だから。ジェンダーレスな曲かもしれません。
『ローファー』
掛優大:生きてると「え?もしかしてただ一方的に愛してるだけなんじゃ?」と思う時などがあります。もう、そういうのは大体どうしようもないですが「外界の変化」は単なる「自分の心の変化」だったりします。だからなんだっていう…そんな曲です。
―初の宅録とのことですが、宅録にした意味やきっかけを教えてください。
市原太郎:正直なきっかけとしては、音源は作りたいけどレコーディングスタジオで作るお金はない…
「じゃあ宅録すればいいじゃん!」といった感じです。
ただ、ネガティブな思いつきではなく、3 人だけで作ったらどんな音源ができるんだろうという興味と、宅録の方が自分たちのアイデアを気軽に出しやすいんじゃないかなという思いも以前からありました。自由に動ける今だからこそ好きなように作ってみようよ、という気持ちで始めました。
―これまでの作品と比較して意識して変えた点などありますか?
市原太郎:意識して変えた点…と言われると難しいですが、意識的になれたのかなと思います。曲と詞を作っているボーカルの優大は、こんな曲だ!というイメージがあると思うんですが、今まではそのイメージ頼りで、そこに近づけなくちゃ、という意識がありました。でも今回は僕と大城くんの持つイメージやアイデアを気軽に試せたし、イメージに寄せるんじゃなくてイメージしてなかったことを 3 人それぞれが言えることが重要なんだなと思えるようになりました。宅録の一番の恩恵はそこかもしれません。
―参考にした作品があれば教えてください。
市原太郎:LADY に関しては邦楽の雰囲気を参考にしたいなと思い、Mr.children、椎名林檎、superfly 等を聴いていました。
LOAFER は、Puma Blue、Mac Ayres、Mndsgn 等を参考にしました。
―最後に、今後の展望を教えてください。
掛優大:CM・映画等のタイアップ
ラジオ番組や雑誌の連載を持つ
などなど、世に出たいです。
大城寛斗:リキッドルームワンマンソールドアウト!!
音楽好きな方はもちろんですが、沢山の人に認知されるようなバンドになりたいです。
市原太郎:日比谷野音でワンマンライブするのが一つの目標です!
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mukmagazine · 5 years
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【東京レーベル探訪】
BIG ROMANTIC RECORDS 寺尾ブッダ氏 (3/3)
様々な地域から影響を受け独自の進化を遂げた台湾の音楽シーン。オルタナティブバンド「透明雑誌」が注目を集めて以来、数々のバンドがグローバルに活動を続け、各国のリスナーを虜にしてきた。そんな中今回取材したのは日本と台湾をつなぐレーベルとして精力的に活動を行なっているBig Romantic Records代表の寺尾ブッダ氏。日台の音楽交流、そして中華圏をはじめとして新たなステージへと向かうアジアの音楽事情まで伺った。
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寺尾ブッダ
BIG ROMANTIC ENTERTAINMENT大浪漫娛樂集團代表。青山のライブハウス『月見ル君想フ』の店長を経て、台北に支店をオープン。日台アーティストのブッキングエージェントとして活動する中で、台湾と日本をつなぐ音楽レーベル『BIG ROMANTIC RECORDS』を設立。アジア・インディーシーンにおけるキーパーソンの1人。
- 最近は韓国のバンドの活躍もめざましいですよね。
「そう、台湾とも交流盛んですよ。昔は距離があったようにも思いますが。でももう最近は若い人は韓国のカルチャー大好きだし、インディーズのバンドも行ったり来たりしてます。韓国のバンドって何か突き抜けたものがあるんで、アジアでもめちゃくちゃ売れてますね。ポップスはもう言わずもがなで、インディーズも強いですね。日本のバンドと一見規模が同じように見えても如実にチケットの値段と売れる枚数が違うこともありますし…ここは日本のバンド頑張って欲しいと思います。まあでも日本のバンドだとポストロックはかなりいい線いってますよ。TOEは十分成功していると言えると思います。」
- 日本のバンドだとメロディアスな売れ線バンドよりかはユニークなサウンドが特徴のバンドの方が売れてるイメージが漠然とありますね。
「国内と国外のマーケットは違うっていう前提で、そういうオルタナティブな音の方が面白いと思われる可能性はあります。日本で見落とされるものは海外でのウケが良かったり。今うちが台湾でやってる日本のバンドはそういうタイプのバンドもいます。なんか最近日本のそういう海外で売れたバンドって海外引っ越しちゃいますよね。」
- 確かに。海外に拠点置きがち。
「それちょっと心配なんですよ。日本で暮らせないっていうのはどういうことだろう…海外の方がたくさんチャンスが転がってるでしょうし憧れもあるんでしょうけど、そういう人たちが日本でも稼げてもっとシーンを盛り上げてくれたらとも思いますけどね…逆に海外のバンドも日本で暮らしながら拠点を日本において活動するっていうのがあってもいいと思います。現状難しそうですが、もっと開かれたシーンであって欲しいと思います。」
- 台湾のバンドなんかも海外で売れちゃったら引っ越す事もあるんですか?
「あんまりないです。基本台湾に拠点置いてます。売れたら結局は年300日海外ってことになりますけどね。台湾人としてはそういうのに抵抗はないんでしょうね。台湾国内のツアーばかりでも規模が限られてるので海外に出ないと、ね。」
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↑台北・月見ル君想フ
1階はカレー屋、地下は簡易的なアコースティックライブハウス。キャパは100人未満とのこと。週末を中心に週2回ほどライブ開催している。
- 今後の展望は。
「日本国内で日本のバンドのマネジメントもやりたいんですよ。日本の活動を軸にしながら海外でのプロモーションも並行してやるイメージで。今のところはいろんなアーティストやレーベルの方と海外の業務に関してのみご一緒してしてますけど、いずれは日本国内で契約したアーティストをそのまま海外にっていうのができればいいなと思ってます。もちろん既に活躍されてるバンドの活動をサポートしていくのも全力でやりたいと思ってます。 今だとCHAIやYogee、シャムキャッツのアジアでのブッキングを担当させていただいて、いろんなフェスに売り込んだりツアー組んだり色々しているんですけど、それもかなりチャレンジングな仕事ですね。国によってはそもそもマーケットがまるっきりなかったりもするので。中華圏を外れて東南アジアなんかに行くと「思ってたのと違う…」ってことが多々あります。そういう地域も開拓していこうと取り組みつつあります。」
- 東南アジアの音楽シーンは寺尾さんにとってもやっぱり未知の領域なんですか。
「未知の領域ですよ。東南アジアといっても国によって細かく文化や習慣も違うでしょうし。タイは中華圏ではないですけど、昔から日本文化との繋がりを感じていて、自分も好きで良く行ってたのもあってそんなに未知でもないです。最近タイにライブしに行く日本のバンドは割といますよ。あとはマレーシア・インドネシア・シンガポールが候補にはありまして、シンガポールは多民族国家なので、基本的には中華圏の人々がまずはターゲットになるんですけど、もっと広げていきたいです。以前マレーシアで青葉市子さんというシンガーソングライターが公演をしたことがあったのですけど、あそこも多民族国家なので、現地のプロモーターの方の提案で、インド系とマレー系と中華系のシンガーそれぞれと一堂に共演することになったんです。結果まんべんなくいろんな層のお客さんが来てくれて、民族関係なくお客さんの心にも響いたみたいです。まああの人ちょっとスペシャルだからっていうのもあるかなあ…青葉市子さんの才能が故ですが、音楽が言語を越えていく瞬間を目の当たりにした、自分にとっての一つの理想の形ではありました。」
- これから東南アジアに手を広げていくとしたらどこが有力ですか?
「結構もう既に日本人のバンドも行ってるんですけどね。すごく重要なのは、現地でもいいバンドがいて、そのお客さんがいてっていうシーンがあるかないかってところなのです。マレーシアはいいバンドもいるんですけど、そんなにとっかかりにピンときてないですね。中華系、特に台湾のバンドにとっては結構親和性のあるシーンが既にできています。タイはインディポップ盛り上がってきていいバンドもたくさん出てきて、かつそう言う音楽が好きなお客さんも現地にいるってことが希望になってますね。日本でもタイのバンドのファンがいるし、向こうにも日本のバンドが好きな人もいるだろうし、どんどん現地のローカルシーンとコミットしていくのが大事かなと思います。弊社で5月にタイのGym and Swimというバンドのアジアツアーを企画しまして、これを機にもっと盛り上がってくれたらいいなと思います、タイ。Gym and Swim台湾だと既にかなり人気が出ていて、前に台湾でSunsetRollercoasterとの共演を企画して、めちゃめちゃ盛り上がって。それ以来台湾でもタイのインディシーンが少し注目されるようになりました。日本だとまだまだこれからって感じですが、まあでも結構いろんな人がいいねって言ってくれて興味持ってくれてはいるので、今後も楽しみです。」
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- 日本と他のアジアの国のロックフェスの時期って被ったりするんですか?
「冬はあんまりやらないってのは共通しているんですけど、何しろ中国なんかは北から南まで広いので、南の方行けば12月くらいまでやってることはあります。日本は7月8月がフェスのピークですけど、中国だとその時期暑すぎちゃうし学生が帰省しちゃってるってのもあってちょっと少なくなります。中国のフェスのお客さんは基本的に学生主体なので。東南アジアでは乾季にやったり。」
- 1年中忙しくなりそうですね…
「そうそうそう。前、台湾で1月にあるフェスへのオファーの話がありましたが、でも1月はさすがにちょっと休みたいって言ってる日本のバンドはいました(笑)いやあ、にしてもいい時代になったなあ…」
- アジアでいろんな国のバンドが飛び交ってって、今ならではですね。
「そうですね。それにこれは特に終わることもないと思うんですよ。アジアだけじゃ無くなるとも思いますし。欧米でもみんなやりたいと思ってるだろうし。日本のバンドにとってはほんとチャンスが広がったと言う感じ。それで言うとシティポップの世界的ブームはかなりの追い風ですね。ここまで世界中で日本の音楽フューチャーされたことないですよ今まで。これはチャンス…まあこれに乗っかっちゃったのはAORやった台湾のバンドだったんですけど(笑) なんか、今更日本のベテランが海外でやるとも思えないしな…山下達郎さんとかアジアツアーやったらとんでもないことになると思うんですけどね。なんでやらないんだろう…そういえば普段はどんな音楽聴くんですか?」
- 私は結構ゴリゴリの音が好みです。ゴリゴリ?というか、最近はポストパンクとシューゲイザーにハマってて、轟音に浸るのが好きです。でも有名な欧米のバンドばっかり聴いちゃうんですよね…見つけやすくて。
「ポストパンクって結構中国で盛り上がってるんですよ。欧米のポストパンクは中国でめちゃめちゃ人気あるんです。中国はダークで轟音系の音好まれるんで。日本だと最近なのか昔からなのかあんまり人気ない。月見ルでもやるんですけど、日本だとマーケット小さいな。」
- 最近Soft Moon来てましたよね。
「そう。あのバンドはもともと中国のツアーに呼ばれてて、その流れで日本でもライブをやることになったんですよ。中国だと800人くらいのキャパの会場が満杯なのに、日本はさすがにそこまでは入らなかったです。そのくらいの規模のバンドは日本だと月見ルくらいの大きさの会場がちょうど良い感じですね。だから予算的にも中国のほうが採算とれるでしょうね。」
- なんで日本で人気ないんだろう。
「他に聴く音楽いっぱいあるんじゃないですか。世の中に不満がないというか(笑)暗いのはごめんだみたいな。もうちょっと明るく自然体でいこうよみたいな感じなのかな。その点中国行くと面白いですよ。ロックがロックのままで残っている感じ。かっこいいことがロック、みたいな。あんまりポップなロックバンドはウケてない。北京のライブハウス行くと衝撃うけますよ。みんな優しくない感じで。」
- トゲトゲしてそうですね。
「トゲトゲしてる。ヒップな感じですよ。」
- 面白いですね…日本だと、日本だとっていうか私の周りはエモ聞いてる人多いかもしれないです。アメフトとか、あれをエモって呼ぶなって人もいますけど。
「そっか...っていうか中国にchinese footballっていますよね。」
- いますよね(笑)今度アメフトと対バンするとかなんとか。
「そうなんですか。それはいい話だ(笑)」
- 彼ら中国ではかなり売れてるって聞きました。
「そう。オルタナティブな新世代の代表的なバンドですよ。音楽はちょっとアメフトと違いますよね。彼らはね、台湾の透明雑誌ってバンドの影響がどこか感じられますね。もちろん本人達同士での繋がりもありますし、台湾のオルタナの影響も大きいと思います。」
- そうやって海外と日本を行き来してらっしゃるとやっぱりとてもお忙しそうですね。
「超忙しいです。日本のバンドの中国ツアーがあると、ね、もう。中国の方はツアーとかフェスのシーズンが結構長いので。あと中国って一回のツアーの日程もすごい長いんですよ…でかいので、毎日飛行機で移動したりして。中国から台湾に帰るとホッとします。改めて台湾って落ち着いたメロウな場所なんですね。」
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mukmagazine · 5 years
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【東京レーベル探訪】
BIG ROMANTIC RECORDS 寺尾ブッダ氏 (2/3)
様々な地域から影響を受け独自の進化を遂げた台湾の音楽シーン。オルタナティブバンド「透明雑誌」が注目を集めて以来、数々のバンドがグローバルに活動を続け、各国のリスナーを虜にしてきた。そんな中今回取材したのは日本と台湾をつなぐレーベルとして精力的に活動を行なっているBig Romantic Records代表の寺尾ブッダ氏。日台の音楽交流、そして中華圏をはじめとして新たなステージへと向かうアジアの音楽事情まで伺った。
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寺尾ブッダ
BIG ROMANTIC ENTERTAINMENT大浪漫娛樂集團代表。青山のライブハウス『月見ル君想フ』の店長を経て、台北に支店をオープン。日台アーティストのブッキングエー���ェントとして活動する中で、台湾と日本をつなぐ音楽レーベル『BIG ROMANTIC RECORDS』を設立。アジア・インディーシーンにおけるキーパーソンの1人。
- 先ほど日本の音楽シーンが台湾の音楽シーンに影響している部分があるとおっしゃってましたけど、最近は特に日本のバンドが台湾で公演したり台湾のバンドが日本で公演したり、かなりお互いの交流が活発ですよね。これって一昔前ではなかなか見られないことだったと思うのですが。
「そう、刻々と変わっていってると思います。昔はやっぱり海外に行くっていっても飛行機が高かったりであんまり気軽に行けないっていうのはあったし、今の方が行きやすい環境が整ってますよね。インターネットで情報が得やすいし、飛行機も安いのあるし、バンドも自分たちだけでやり取りできちゃったり。インディーズにとっては特に今はすごく恵まれた環境だと思いますよ。まあちゃんとやるんだったら海外でもあらかじめ知名度がないと難しいですけど、昔だったら全く日本のバンドの音楽聴く人がいないような土地だったりしても、今はYouTubeとかSpotifyのおかげでファンがいる可能性はあるので、現地の人にコンタクトとってライブもしやすいですし。単純にお客さんが集まりやすくなってるっていう面もあります。」
- そういったストリーミングの普及ってでかいですよね。例えば従来の日本だとどうしても「邦楽」か「西洋の音楽」って二択に絞られがちでしたけど、今ではそれ以外の地域の音楽もより多くの人が聴きやすくなってますよね。
「確かにそういうサービスの普及で、アジアの音楽がぐわっと浮き彫りにされた感じはすごいありますね。ただ、アジアの音楽シーンは始まったのが最近という話もありますけどね。まあ台湾は割と歴史長いですけど、例えばタイのインディーズが盛り上がってきたのはつい最近ですね。もちろん10年前にもなかったわけではないですけど、そんなにインディーズバンドが多くなくシーンとして盛り上がっている感じはしませんでしたし。そうやって盛り上がってきた時にちょうど交流しやすい便利な時代になっていた、時期的にそういう要素が上手いこと合わさったんでしょうね。にしてもインターネットの影響はすごくでかいと思いますね。そこで音楽がシェアされて。
台湾ですごく面白いのは、インターネットが普及しだした初期の頃から、一部の音楽ファンはファイル共有サービスっていうちょっとやばいやつでみんな聴いてたんですよ(笑)で、もう超マイナーでコアな音楽を探して掘り出しまくってたんです。台湾のオタクの趣味みたいなもんでした。だから2000年代頭くらいでバンドやって��人たちでも日本の音楽にすごい詳しかったりします。今はもっと探すの簡単だから、もっと日本のバンド海外で売れてもいいと思うんですけどね。でもなんかこう、スコーンと行かないというか(笑)」
- 日本のバンド聴いてる台湾とか米英の人たちと聞くと、コアなのが好きな人たちなのかなって印象にどうしてもなっちゃいますよね
「あんまり日本のバンド突き抜けないですよねー。それは割と最近のテーマです(笑)今、中国を割とメインに日本のバンドのツアーをブッキングして、そこを出発点にアジアだけでなくてもっと広い範囲で売れて行ってほしいなと思ってるんですけど。」
- 中国で日本のバンドは結構ウケるんですか?
「割と台湾と似たような感じはあります。まあやっぱり台湾で成功するより中国で成功する方がでかいんですよねー。」
- 規模が半端ないですもんね(笑)
「そうそうそう(笑)いやマジででかいですよ(笑)桁が違う。あと、世界中に中国の人いっぱいいるんで、若い人、留学生もたくさん。だから中国でめちゃくちゃ売れたら世界中に広まるんですよ。実際今中国で売れてるバンドをアメリカツアーに連れて行くときは、基本的に現地のアジア系の留学生がターゲットになってます。チケットバンバン売れちゃうんですよ。特に中華系のアーティストだとお客さんは中国の方が多いですね。例えば去年の7月のNo Party For Cao Dongの東京公演の時はお客さん8割くらい中国人で、速攻ソールドアウトしました。こんなに中国の若い人達が東京のライブに来るんだい…!って感じで。彼らは中国とか台湾ではチケット取れないぐらいの超人気バンドなんで、多分東京でやるって聞いてみんな食いついたんでしょうね。こういうことがアメリカでも同じように起こってるんだろうなって想像できました。多分Cao Dongはアメリカツアーやっても数百人規模の会場だったら全部ソールドアウトできると思います。アジア系のお客さんで埋まっちゃうんだろうな。うーん、日本のバンドでそれできる人いるかなあ…(笑)」
- ちょっと微妙なとこかもしれないですね(笑)
「そうそう、日本カルチャーが及んでる、それこそアニメカルチャーが強く影響力を持つ地域じゃないと勝負できないんじゃないかなって気がして、ちょっとそれだと悲しすぎるのでもっと音楽で突き抜けられないものかなと思ってます。」
- わかんないですけど英語で歌い出したらまた変わってくるんですかね。
「まあ実際アジアで売れてる日本のThe fin.とかDYGLなんかはみんな英語で歌ってますよね。でもどうやったら成功するということとはあまり関係が無い気もしますが。でもまあ幅広く聴かれやすいという点では英語で歌った方がいいんすかね。」
- どうだろう…私は結構何歌ってるか全然わかんないけどでもかっこいい!ってバンドはとても好きなんです。
「そうですよね。例えばHigher Brothersっていうアメリカのレーベルで売れてる中国のラッパーグループは、自分たちの言葉、四川語でラップしてますよ。それでかなり売れてたりするんで、特にそこまで重要じゃないっていうか、決定的ではないのかも。」
- 欧米でウケる音っていうのがあるんですよね…
「まあ、それ研究したところでつまんないですよね(笑)」
- つまんないですね(笑)
「自分たちがすごく楽しい、いいって思えるものをとにかく突き詰めていって、それをどう伝えるかってとこですよね結局。こんなにいいじゃんっていうのを、こう伝染するように。」
- レーベルで新しい領域に手を広げて行く時なんかはやっぱり受け入れてもらえないっていう壁に当たること多いですか?
「うーん、でも基本的には外国に外国のものを売り込むっていうのをやってるんで、最初からあんまり多大な期待はしてないです(笑)」
- あはは(笑)
「まあ期待はしますけど、そんなに甘いもんじゃないっていうのはわかってるんで(笑)ゼロからやってるつもりなのでガッカリすることはしょっちゅうですけど、でもそんなに気にせず「じわじわやってやるぞ!」ってのはあります(笑)しぶとくやってこう、みたいな。こういう姿勢が大事ですよ。そんな簡単じゃないでしょ、っていう。人を扇動、誘導してどうにかなるもんじゃないんで。まあ自分がいいと思ったものをじっくり広めるしかないんですけど、最近あんまりチケットが売れなくて悩んでるんですよ(笑)
そう、バンドを中国に連れて行くときは必ず歌詞の検閲が入るんですよ。ライブっていわば人が集まる場なので集会とも言えるじゃないですか。許可が出て初めてビザが申請できるんですよ。台湾はそういうのないですけどね。あまりにも政治色強すぎるとやっぱりでも許可が下りない可能性はあります。日本でも特にミュージシャンだと政治的な面で中国に対して色々思うところがある人っていると思うんです。でも現地のお客さんはそういうの関係ない人がほとんどじゃないですか。色々制約がある中で、なんとか日本と中国の関係者が協力してここまで進めて来れてるので、争い事でファンを悲しませないように、業界全体で積み上げてきた努力を無駄にし無いように注意してもらいます。」
- それは大事ですよね。中国のバンドを台湾に呼ぶことはあるんですか?
「うーん、あったはありましたけど、ビザがまた複雑になってきます。文化交流として必要なことですけどね。中国のいいバンドがいれば、台湾の若者ももちろん聴きますし人気バンドのライブは台湾でも話題になります。」
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mukmagazine · 5 years
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【東京レーベル探訪】
BIG ROMANTIC RECORDS 寺尾ブッダ氏 (1/3)
様々な地域から影響を受け独自の進化を遂げた台湾の音楽シーン。オルタナティブバンド「透明雑誌」が注目を集めて以来、数々のバンドがグローバルに活動を続け、各国のリスナーを虜にしてきた。そんな中今回取材したのは日本と台湾をつなぐレーベルとして精力的に活動を行なっているBig Romantic Records代表の寺尾ブッダ氏。日台の音楽交流、そして中華圏をはじめとして新たなステージへと向かうアジアの音楽事情まで伺った。
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寺尾ブッダ BIG ROMANTIC ENTERTAINMENT大浪漫娛樂集團代表。 青山のライブハウス『月見ル君想フ』の店長を経て、台北に支店をオープン。日台アーティストのブッキングエージェントとして活動する中で、台湾と日本をつなぐ音楽レーベル『BIG ROMANTIC RECORDS』を設立。アジア・インディーシーンにおけるキーパーソンの1人。
- レーベルを創設したきっかけはなんだったんですか?
「元々Sunset Rollercoasterという台湾のバンドが、4年くらい前に日本でライブやりたいっていう話になったんですよ。彼らとは知り合いで、なんかやろうよっていう話になって、で日本に来たいと。彼らは昔サマソニに出たことがあるんですけど、それってどっちかというとお膳立てされて出たっていう感じだったんですね、台湾から何バンドかまとめて送り出されたみたいな。そのあとしばらく活動休止してて、再開したあとにまた日本にツアーしに行きたいっていう相談があって。でもサマソニに出たことがあると言っても知名度がなかったので、そのプロモーションのお手伝いをする必要があったんです。彼らは当時「JINJI KIKKO」っていうEPを出してたので、ライブの宣伝とともに日本盤もリリースして、それをできるだけより多くの人に聴いてもらおうっていうので始めたんですよ。じゃあ俺レーベルやるわ、って。だいたい仕事の段取りはもうわかってたんで、これをきっかけにレーベルを始めてみようと。だから当初は彼らのツアーとか、宣伝とか、CDのリリースが目的でした。」
- なるほど、では台湾に拠点を置いたのは元々Sunset Roller Coasterの影響で?
「台湾にライブハウスを開いた方が先でした。東京で15年くらい「月見ル君想フ」ってライブハウスも長いことやってて、台湾にも5年前にオープンしたんですけど。レーベルとかプロモーターとしての仕事より先に台湾でお店作って、で台湾でも色々音楽の仕事をしていく中で、Sunset rollercoasterに出会ったんですよね。」
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- というと、元々ご自身で台湾と何か関わりがあったんですか?
「実はそういうわけでもないです(笑)元々旅行が好きで、台湾も好きでよく行ってたんですけど、ある時台湾でインディーズのライブを見る機会があって。現地の音楽シーンがすごく面白かったんですよ、結構日本と似ているところもあったので。同業者として気になるのでいろんな国のライブハウス行って見るんですけど、その中でも台湾は日本に近いものがあって、なんというか日本人として「わかるわかる」みたいな(笑)。いろんなバンドがいて、リハする様子とか楽器買ってる様子が何となく想像つくんです。そういう似た雰囲気の音楽シーンが日本の近くにあるというのを知ったのがすごく新鮮に感じられて、それでもっと関わりたいなと思ったのが最初のきっかけだったんですよ。」
- なるほど。台湾の音楽シーンって少し前の日本みたいにシティポップのバンドが目立っているイメージですけど、実際はどうですか?
「シティポップが流行っているのは事実です。でも10年前はシティポップのシの字もなかったですね。日本の盛り上がり方と似てるとは思います、ここ最近の流行っていう感じで。もちろん80年代に日本がシティポップ生み出した時は、台湾でも近いものを作ってたんですよ。当時の音源はもちろん今でも残っていてそれはそれでまた面白いんですけどね、日本の影響をもろに受けたものですけど。今流行ってる理由は、世界のシティポップブームの流れで台湾の若者が聴くようになったのもあるし、まず台湾での日本のカルチャーの影響の大きさも関係していると思います。台湾の20代中ごろから30代くらいの人と話すと、彼らの小さい頃から日本は近くにあって文化的にクリエイティブで面白い国というイメージがあるみたいで。特に今の30代の人たちなんかは日本のアニメとかドラマ、音楽に触れて育ってきてる人が多く、日本のポピュラーな文化はかなり浸透してるんですよ。だから彼らからすると、日本のシティポップは懐かしく感じられるみたいで。加えて、今世界でメロウでクールな雰囲気の音楽が流行っているのもあり、日本で若いシティポップバンドが多いと言われているのもあり、ただのブームというだけではなくて色んな背景が絡み合って今の流行に繋がってると思います。でも台湾でシティポップっぽい音をやってるバンドってそんなに多くないです。sunset rollercoasterも実際台湾国内では商業的に大成功してるとは言えないですし、どっちかと言えば海外の方で売れてる感じですね。まあ、国内のマーケットと海外で売れるマーケットってテイストが違うじゃないですか。例えば日本でめちゃくちゃ演歌で売れてる人でも海外に行こう、とはなかなかならないですよね。」
- 確かにそれはそうですね(笑)台湾で受けるサウンドってどんなものなんですか?
「まあ確かにね、シティポップとか、そういうレトロなサウンドをフューチャーしたものは流行ってはいるんですけど、やっぱり大部分はメジャーなポップス、それこそバラードとか。最近はヒップホップとかもすごい人気あります。で、台湾はすごく狭い国でマーケットも限られているので、彼らは海外志向が強いんですよ。日本とか中国とかアメリカとか、海外である程度成功することが本当の成功みたいな。中国ではみんな受け入れられやすいんですよね。そういった意味で中国に行きやすい分、逆に日本で売れる、受け入れられるっていうのは台湾のバンドにとっては結構意味のあることだったりもするんです。」
- Sunset Roller coasterなんかもそうですけど、やっぱり海外に目を向けてるからか英語で歌うバンドも多いですよね。
「そうですね。海外では基本的には英語の方が受け入れられやすいのかも。」
- これから売り出したいバンドはいますか?
「誰も知らない人でもいいですか?(笑)Southbad boyっていう台湾のバンドちょっとやばいです、すごいいいです。現状だとライブがすごいさらっとしててそんなによくないんですけど。でもどっかでひと化けしたら結構、日本の人も好きだと思います。ローファイなインディーポップでセンスも最高。やる気あんのかないのかいまいちわからないですけど…(笑)2年前に知って色々イベント誘ったりしてたんですけど、そこからずっと同じラインにいますね…近くうちのイベントにも誘ったので出るんですけど、どうかな…変わってねえだろうな…でも何かアルバムリリースしたりすれば売れるはずだと思うんですけどね。アルバム出たら日本で売りたいですね。」
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- 台湾のインディー掘る時はどこから情報仕入れているんですか?
「台湾で暮らしていれば自然に入ってきますよ。フェイスブックとかでもうザーーって流れてって、今ここが熱いみたいなのもすぐにわかりますね。SNSでもうある程度情報はわかっちゃうんで、最近はもう探しに行って新しい人発掘するっていう文化は無くなっちゃいましたね。これだけ情報が行き渡ってると。日本でもそうですけど、いいバンドがいたらもうすぐ有名になる。その中でもうちが一緒にやるかどうかは、そのバンドのカラーを見つつ日本でも受け入れられるか慎重に見定めます。まぁ普通にレーベルとして当たり前のことをしてるだけなんですが。でも台湾国内で売れてるかどうかは重視しないです。売れてる音楽だけが良い音楽とは限りませんし。」
- 確かにそうですね。そういえば台湾のインディーを追ってるお客さんの年齢層ってどういう人たちなんですか。
「台湾のライブハウスに来るお客さんはみんな若いです。そこは多分日本と全然違いますね。サラリーマンとかが仕事終わりにライブ見にきてるのって日本のいいところだとも思いますけど、台湾にはそういうのはないです。ほとんど学生とかフリーターとか、30歳に満たない人たちですね。みんな学校卒業すると株とか金にしか興味なくなっちゃうんですよね、それはつまんないなって僕はちょっと憤ってるんですけど(笑)」
- 若者のカルチャーなんですね。
「そうですね、でもそれほんと勿体無いんで…何が悪いのかっていうと、色々文化的な背景もあるんですけど、まずミュージシャンがね、30歳ごろになるとやめてしまう人がめちゃくちゃ多いんですよ。」
- ええー!
「親の『何やってんじゃい』っていう圧力が強くて。だから若いうちだけ音楽やっててくれればいい、いずれはやめてくれみたいな空気が強い。日本の方がそういうのはもっと自由ですよね。ミュージシャンも歳をとっていっても音楽を続けられるのが理想だし、聴く方も歳をとっても生活の中にライブハウスに行くっていう文化が残るのがいいし。ライブハウスにとってもそれが生きながらえる上で大事なことなので、こっちも努力しないといけないですね…クールに構えて若者だけくればいいっていうスタンスじゃやっていけないのでね。」
- いやあ、でもバンド活動に親がそこまで干渉するのなかなか大変そう…
「台湾人にとって親はめちゃ強い存在ですよ。」
- 確かに中華圏はそういうイメージありますね。
「台湾はより強いです。ちょっと前までは兵役もバンド解散の原因によくなってました。最近はだいぶ制度が変わって、兵役期間も短くなったので、短期間の活動休止っていう形でバンドもサバイブしてます。」
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mukmagazine · 5 years
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帯化  【INTERVIEW】
「ぼくらのコンセプトのひとつとして「アジア的なものの再定義」というのがあって」
2019年2月にシングル「抹消ミュータント/manifest-群島理論-」でデビューした東京の2人組、帯化。独特の言語感覚と生々しい音像が特徴の彼らだが、その実体は謎に包まれていた。今回はメンバーの島崎さんに話を聞いた。
Q1. メンバー構成を教えてください。 「ギター、ボーカルの島崎とドラムの須永の2人体制です。高校の同級生仲良し二人組ロックバンドです。」
Q2. バンド結成のきっかけを教えてください。 「なんとなく2人でスタジオに入ったらいい感じだったので、「じゃ、やろっか」となって始めました。」
Q3. 印象的なバンド名ですが、どのような由来なのでしょうか。 「漢字であることと、字体と意味がかっこいいという条件を満たしていたのでこのバンド名にしました。あと動物ではなく植物に関連した言葉というところも気に入ってます。」
やはりバンド名からして唯一無二の感覚が発揮されていてかっこいい。影響を受けた音楽、ルーツは何��のだろうか。
島崎 ①klan aileen/すべての作品 ②mariah/うたかたの日々 ③mike cooper/white shadows in the south seas ④チャクラ/さてこそ ⑤kilchofer anklin/moto perpetuo ⑥高橋邦幸/early tape works 1986-1993 vol.2
須永 ①tame impala/currents ②坂本慎太郎/ナマで踊ろう ③sky ferreira/Ghost EP ④cosmic temple/temple and tree means like a cosmic ⑤klan  aileen/全部
多様なバックグラウンドがうかがえるが、どちらもKlan Aileenの名前が挙がっていることが興味深い。彼らの1stシングルの一部の録音やマスタリングにはKlan Aileenの松山氏が関わっているようだ。どのような経緯なのだろうか。 松山さんがレコーディングサービスを始めたので連絡しました。もともと知り合いだったとかではなく、ただのファンでした。現場で会ったら想像の700倍気さくな方でびっくりしました。
そんなシングルの録音について、こだわった点を聞いてみた。
「ボーカルの声の小ささと、展開の少なさ、ミニマル感です。あと録音に関係ないですが、歌詞はめっちゃ気に入ってます。歌詞を見たい人はカセットを買うといいと思います。」
シングルA面の抹消ミュータントには、ざらついたポストパンクやサイケを基調としつつも、日本的な、祭囃子的な要素を感じる。どういったコンセプトの曲なのだろうか。
「祭囃子的という指摘は嬉しいです。ぼくらのコンセプトのひとつとして「アジア的なものの再定義」というのがあって、その実践の手始めとして作られた曲です。最後のリンの音と微妙に拍の合ってないドラムのドコドコ感が気に入っています。」
一方B面、manifest-群島理論-はよりミニマルに展開して行く曲だ。どのような要素が込められているのか尋ねてみた。
「ぼくがいま一番掘っているジャンルがアンビエントなので、その音響感をシューゲイザーやポストロック的でない形で入れ込めないかと思って作った曲です。それとロックバンドという死につつあるフォーマットを懐かしむような雰囲気を出せたらいいなと思い、ボーカルとドラムはスカスカにしました。」
最後に、今後のライブや音源等の予定について。
「ライブをやりまくるという感じで活動するつもりはないですが、お誘いはお待ちしてます。いまやっているのは、他人の手を借りないで自分たちだけで録音からマスタリングまでやるという試みです。次の音源は、島崎による台湾旅行記と帯化の音源のダウンロードコード付きZINEです。」
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mukmagazine · 5 years
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Pygmy I’m Cricket  【INTERVIEW】
3月に1st EP 「Separation e.p.」をリリースした、都内で活動する4ピースバンドPygmy I’m cricket。今回はギターボーカルの森さんにインタビューに答えていただいた。
- メンバー構成を教えてください。
「Gt&Vo 森、Gr 齊藤、 Ba 大庭、Dr 中平 以上、四人組です。」
- 結成に至る経緯を教えてください。 「森、齊藤の間で数年前にバンドを組む構想が立ち上がりました。が、本格的に始動出来たのは2018年の夏頃からです。」
- 印象的なバンド名ですが、どういった由来なのでしょうか。 「三単語で構成された語感の良い名前にしようとだけ先に決めていました。森と齊藤が深夜に散歩をしながら思い付いた名前ですが、特に意味はありません。かなり気に入っています。」
- どのような方法で作曲していますか。 「森が大まかな曲構成、メロディーを持ってくる事が多いです。楽器の細かいフレーズ等はそれぞれのメンバーが付けていき、最後に齊藤が詞を付けています。最近は森以外のメンバーが持ってきた曲も少しずつ作っています。」
ポストロックやエモの影響を感じさせつつも、日本のオルタナティブロックの旨味も出ている彼らの音楽。影響を受けたバンドについて尋ねてみた。
「日本のバンドだとbed、LOSTAGE、海外だとPenfold、Death Cab for Cutie等。メンバーそれぞれ好きな音楽が結構バラバラなので、個々ではもっと色々あると思います。」
2019年3月に発表された彼らの1stEP「Separation e.p.」については、 - EPを通してのテーマはありますか。 「端的に言い表わせるコンセプトは無いのですが、楽曲についてはツインギターの響き、耳馴染みの良さを大事にしています。出来上がった後、別れがテーマになっている曲が多かったため、このアルバム名になりました。」
- EPの中でもっとも思い入れのある曲はどれですか? 「それぞれに思い入れがあるため、決められません。 一曲がそれほど長くないので、通して聴いて頂けたらと思います。」
- 90' Emo風の素敵なジャケットには、どのようなコンセプトがあるのでしょうか。 「楽曲もジャケットも、シンプルで無機質な雰囲気に仕上げたかったので、このような出来上がりになっています。デザインから印刷までほぼセルフで作れたので、全体的に気に入っています。」
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- 最後に、今後の活動予定について教えてください。 「具体的にはあまり決まっていませんが、新しい曲は作り続けています。冬頃に何かしらの形で二作目の音源を出せるかと思います。」
Separation EPの試聴はこちらから
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mukmagazine · 5 years
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What Gives  【INTERVIEW】
「ぼくたちの音楽的背景やインスピレーション源はそれぞれ違うけど、What Givesはメンバー全員の異なるバックグラウンドの集大成だと思うんだ。」
USエモリバイバルの中でもパワーポップ寄りの音楽性を持つシカゴのインディーロックバンド、What Gives。少しひねくれつつもキャッチーでセンチメンタルな泣き虫ロックが心地よいバンドだ。6〜7月の来日公演を終えたフロントマンのAndyにインタビュー。
 Annabel, ex-Dowsingといったシカゴエモシーンの代表的バンドのメンバーから成るWhat Gives。2012〜2013年のAnnabelとDowsingのアメリカ・ヨーロッパツアーがきっかけで結成に至ったそう。「ぼくたちの音楽的背景やインスピレーション源はそれぞれ違うけど、What Givesはメンバー全員の異なるバックグラウンドの集大成だと思うんだ。もちろんみんなパンク/インディー/エモを聞いてきたから、重なる部分もたくさんあるけど。僕のバックグラウンドはずっとAnnabelで演奏してきたこともあってエモシーンの中にある。Joeはelwayで演奏してきたからもっとパンク寄りのルーツ。でもメロディー、フック、そしてファズギターへの愛はみんなに共通してるから、それがWhat Givesの目指すところになったんだ。」
 このメンバーの多様性のおかげでずっとフレッシュな曲作りを続けられるとも語る。「ぼくたちの曲のほとんどは僕の頭に思い浮かんだギターリフやメロディーから始まって、練習の時にそれを使ってジャムをするんだ。そこからみんなで構成を組み上げて、完成まで試行錯誤。歌詞に関してはずっとみんなで協力して作ってきたよ。」
 お気に入りの曲はAll We WantedとAll We Got。この2曲は一緒に書かれたもので、連続した1曲のように演奏するのを想定してるんだそう。曲中に大きな動きがあり、柔らかなインタールードがあって、全体を通してまとまったストーリーを物語っているという点で、What Givesの音楽をよく特徴付けていると語る。Coreyの速弾きも聴きどころだ。
 シカゴのパンク/エモ/インディーシーンはある種統一感があり、定期的に一緒にライブをしてくれる協力的なバンドに恵まれていると、地元の環境には大変満足しているようだ。「シーンには全員にとって何かしら楽しめるものがあると思うし、毎週本当にかっこいいライブが開かれている。素晴らしいバンドがたくさんだから週4でライブ行くのもザラだね。シカゴの一番影響力が強い面は、才能あるアーティストの多さ。Lifted BellsとかNnamdi Ogbonnayaは僕なんかより全然楽器が上手いし。そういう面でもすごく影響されてるよ。」
 現在は新しいアルバムを制作中。2020年には音源を出したいと言う。
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mukmagazine · 5 years
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左右  【INTERVIEW】
「自分が見たものをなるべく見つけた状態のまま、またはあった場所だけ伝えるような音楽を作っていきたいです。」
桑原美穂(vo./gt.)、花池洋輝(vo./ba./dr.)の二人からなるバンド左右。近年ドイツツアーを敢行し、現在はニューアルバムの制作を行い、活躍の場を広げている左右に話を聞いた。
形態やそのサウンドも特徴的なバンドであるが、影響を受けた音楽をきいてみると、
花池(vo./ba./dr.):「メンバー二人とも、90年代にテレビで流行っていた日本のロック・ヒップホップを聴いて育ったのでそれは土台になっています。ライブ活動を開始してからは、共演して感銘を受けたバンドに影響を受けることが増えました。」
と答えてくれた。加えて最近はyaejiなどのアーティストをよく聴いていると教えてくれた。
続けてバンドの結成のきっかけを尋ねると、
花池(vo./ba./dr.):「鬱々としていた20代前半頃に、これはそろそろ自分の畑を耕さないとなと唐突に楽器を手に取り、バンドを始めました。メンバーの桑原はすでに子供の頃から目指していた職に就いて自分の畑を耕していたので、そこに趣味としてギターを弾くことを促し、それとなく二足目の草鞋を履かせました。」
と教えてくれた。また、二人組という変わった形態や特徴的な楽曲とは対照的に、アートワークは捻りを加えない、当たり前なものを心掛けており、バンド名もそうした中でなるべく見たままを表すことにしたと言う。
バンドのテーマのひとつとして「気まずさ」がしばしばキーワードにあがる。
花池(vo./ba./dr.):「自分がよく感じる感情なのにあまり歌にされていない気がして、バンドを始めたばかりの頃はそれをテーマのひとつとして制作していました。当初はあえて朴訥に表現していましたが、伝わり方に限界を感じたため、最近はそういった自分の感情をそのまま歌詞にせず、その周辺にある言葉から選ぶことが増えました。」
左右は現在アルバムを作成中とのことであるが、どんなアルバムになるのだろうか。
花池(vo./ba./dr.):「「気まずい」など様々ある個人的な感想の周辺で、それとは全く関係なく動いている人や物や出来事を表すようなアルバムに出来ればと思っています。」
最後に今後の展望について尋ねてみた。
花池(vo./ba./dr.):「自分が見たものをなるべく見つけた状態のまま、またはあった場所だけ伝えるような音楽を作っていきたいです。インターネット上や行ったことのない土地など、自分が今まで知らなかった場所で音楽を演奏したいです。」
見たものをなるべくそのまま伝えられるような音楽、そしてそれが聞く人の様々な感想とは独立している、という左右が目指す音楽はとても興味深いものだと思う。それ自体で存在できているような音楽というものが人々の耳には届きにくくなっている現在、左右はどのような音楽を提示していってくれるのだろうか。
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mukmagazine · 5 years
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The Raconteurs – Help Us Stranger
【Garage Rock】
実に11年ぶりのリリースとなるThe Raconteursの最新作。”Sunday Driver”、”Don’t Bother Me”に代表される、強烈なリフを中心にしたストレートなロックナンバーから、”Shine the Light on Me”のようなメロディアスなバラードまで揃った、完成度の高い一枚だ。ひとたび聞けばそれと分かるジャック・ホワイトのギターは、今作でも流石の存在感だ。(THIRD MAN RECORDS)
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mukmagazine · 5 years
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never young beach - STORY
【Pop】
never young beachの通算4枚目のアルバムとなる今作は、これまで開放感のあるサウンドが印象的であった彼らの新たな側面が見えた作品と言えるだろう。音数を減らしたミニマルな演奏によってタイト感が増し、その小気味よいグルーヴはVulfpeckや細野晴臣を連想させる。一聴すると時代を遡ったようだが、間違いなく新しいサウンドを聴かせるこのアルバムは、彼らの最高傑作だ。(Speedstar)
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mukmagazine · 5 years
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sassya- - 脊髄
【Post Hardcore】
東京の3ピースポストハードコアバンドによる2ndアルバム。確かな演奏力とこれぞポストハードコアというどこまでもソリッドでタメの効いた曲の数々、そして何よりも怒りをぶちまけたボーカルが本当にかっこいい。(Kerosene Records)
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mukmagazine · 5 years
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空間現代 - Palm
【Alternative】
バンド単独名義としては7年ぶりの3rdアルバム。いままでの作品に見られた脱リズム志向や痙攣するようなタイム感は息を潜め、徹底したミニマリズムが前面に押し出されている。メロディーはほぼ消失し、複雑なビートとどこにも着地しないギター/ベースのコードの反復によるアンサンブルは、機械的でありながらも肉体的という不思議な感覚をもたらす。(Ideologic Organ)
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