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pizzoccheri-soba · 6 years
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《Pizzoccheri + Soba》collaboration with Natalie Meister, 2016, Performance, Video
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<蕎麦の実>の図解
 ある時スイス人の友人から、日本食で一番好きなものは何かと訊かれたので、私は「蕎麦だ。」と云った。友人は蕎麦について知らなかったので、材料や食べ方を一通り説明していると、スイスにもイタリアとの国境の山岳地帯に蕎麦粉を使ったPizzoccheri(ピッツォッケリ)という麺状の郷土料理があると教えてもらった。その後、調べてみると、それは灰色(いわゆる日本の蕎麦を想像した時の色)をしたスープのない短い棊子麺のような料理であり、パスタの一種として扱われていた。味が気になったので、試しに調べたレシピで作ってみた。驚いたことに麺の作り方は、蕎麦と全く同じで、蕎麦粉と小麦粉の割合も一般的な蕎麦の配合率8:2であった。ピッツォッケリは、そこに炒めた野菜とバターとチーズを和え���。味は、チーズのトロッとした食感と香りの奥に、蕎麦粉の香りを感じ、日本の山の風景を思い出すといった具合だった。私はこのピッツォッケリの故郷を調べるべく、この料理の生まれた標高1000mの谷の街ポスキアーヴォに向かう。
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ポスキアーヴォにある修道院サンタ・マリア
 ポスキアーヴォは、とても小さくて細長い街で、流れの速い澄んだ川が真ん中に流れている。街の建物はほとんどが14〜17世紀に建てられたものだった。人々は、ロマンシュ語訛りのイタリア語を話す。周りの山は、街のどこにいても両側から迫ってくるほど近く感じられ、空気が澄んでいるので山頂あたりまで、木 一本一本や山肌をくっきり確認することができた。夜は、恐らく山頂付近にあるであろう山小屋の光があまりにも高すぎるので、実は星なんじゃないかと疑った。着いたその夜私たちは、その老舗ホテルの1階にあるレストランでピッツォッケリを注文してみた。1枚のチコリとサラミが麺の山のてっぺんに配置されて、華やかな印象を与えていた。味はバターの風味が強すぎて、蕎麦の香りは感じづらかった。
 街の修道院サンタ・マリアに泊まりながら、シスターたちからピッツォッケリのレシピを教えてもらい、修道院の中にある中くらいの大きさのキッチンを貸してもらった。最後の夜に、教えてもらったピッツォッケリと蕎麦を作り、シスターたちに食べてもらうことにした。ピッツォッケリ用と蕎麦用の生地は一緒に捏ねて二等分した。蕎麦は、茄子と人参と椎茸を入れた温蕎麦を作った。
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ピッツォッケリの麺を作る様子
夜、食堂にシスターたちを招いた。彼らは、日本食を食べたことがなかったので、椎茸の食感に驚き、醤油風味のカツオの出し汁を「興味深いわ...」ともらした。一方、ピッツォッケリに対しては「ポスキアーヴォの味よ!」と言いながら喜んでいた。
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この修道院には、下が15歳から上が87歳、��12人のシスターが住んでいた。内、コロンビアから来たシスターが多く、スペイン語とイタリア語が公用語となっていた。レシピを教えてくれた調理担当のシスターは、現在21歳で12年前にコロンビアからやって来たらしい。去年まで2年間ポスキアーヴォの調理学校に通い、スイスの様々な郷土料理を勉強したそうだ。今はまた修道院に戻って、毎日の献立計画と全員分の食事準備をしている。ポスキアーヴォ生まれ、ポスキアーヴォ育ちのシスターは、一人だけだった。
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左でピッツォッケリを、右で蕎麦を作る様子
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