pygmalionpilgrim
pygmalionpilgrim
pygmalion pilgrim
8 posts
Don't wanna be here? Send us removal request.
pygmalionpilgrim · 8 years ago
Text
冷たい石の上で凍り付いた時計 待ち合わせの時刻がわからなくなった女の子が瞳だけで僕に語りかけてくる 僕にあげられる言葉はないよと 口を開けて示すけど 彼女はあきらめきれないほどに 会いたい人がいるらしい そんな人もいるんだと 海面に映った月の光が僕に教えた 生まれ育った街を背にして 誰がなぜなんのために作ったかわからない金属片で水切りをする やっぱり僕は海から生まれてきたんだと思う 海から生き物がいなくなっても やっぱり僕は海を眺めたいと思うだろう そんな感傷を枝でつついて 波に押し流す 煙突は息継ぎせず毒を吐いてる 誰かが僕を探しているような気がして 白い息と空を混ぜながら帰路につく 僕の身体から一欠片が剥がれ落ち 新しい色を輝かせながら
0 notes
pygmalionpilgrim · 8 years ago
Text
霧の中 街灯が消えたり点いたり 何かを思い出してはまた次のことを思い出そうとするように 雨が降って うんざりするのは人間ぐらい 抗えない重力が僕には気持ちがいいから 月を眺めるだけにしよう 時々どこにいるのかわからなくなれば たくさん本を開き なにか特別な一文を探し当てるまで 名前の無い誰かに追いかけられているように怯えながらも ろうそくの火を絶やしてはならない 窓辺から 僕が寝静まったと思ったのか 幼い頃の僕が覗いている きっと鍵を渡しにきたのだ だけど家の中に入ろうと思っても 家を開ける鍵は無い 陽が昇るまで夜空を見ながら お父さんに教えてもらった星座の名前だけ 繰り返すだろう そして僕は振り返るだろう 財布の中身を数えるように つけた足跡の数を数えて 大事にしまう 誰にも盗まれないように 生活の見えない部分に こっそりとしるしをつけていく どこまでも続きそうなこの距離を いつか儚く思うのかな 冷たい両手が他人みたいだ 
0 notes
pygmalionpilgrim · 8 years ago
Text
翼の生えた友達
翼の生えた友達が 海の上を飛んでいるのを ぼくは海岸で見ている おめでとうと言って 手を振るけど 友達は自分が飛んでいることに興奮して どんどん沖の方へ 飛んで行く ぼく��背中はムズムズするが 翼なんか生えてきやしない 砂を掴んで また離す 打ち上げられた 名前も知らない魚に 同情している 地平線に止まった豪華客船 およそぼくと関わりのない人たちが 関わりのないことで祝っているのだろう ぼくは酒が飲めないので タバコをふかす 船にタバコを重ねて まるで船は燃え上がるようだ つまらないから帰ろうか 友達よ あまり遠くへ行かないでくれよな ぼくはいつでもここにいるのだから
0 notes
pygmalionpilgrim · 8 years ago
Text
彼女の瞳の中 幼い頃の彼女がいて お母さんの帰りを待っている なぜいつも彼女は悲しそうなのか なぜ僕は悲しさを見出すのか わからなくなるほどに 彼女の瞳に吸い込まれていく 鍵が見つからない と彼女は部屋のそこら中を散らかして 泣いている どうやら冬が来るまでに 鍵を見つける必要があるらしい 息の詰まりそうな部屋の中で彼女は床に沈み 僕は天井にぷかぷか浮かぶ 彼女の人形たちと共に 彼女を見つめている 誰かドアを開けるかな そしたら彼女にも僕にも 行くところができると思うんだけどな 誰も来やしないだろう これは空白の多い 持続性に欠けた 物語なんだ 彼女がもし泣くことに飽きて 僕の方を見たとき 彼女のもとまで 泳いでいく覚悟がおまえにはあるか と彼女の人形の一体が 僕に問いかけた
0 notes
pygmalionpilgrim · 8 years ago
Text
小さな火 もっともっと小さな火が いつもここで燃え続ける その火を消してはならないと 風に乗って 廊下を渡り 亡き人がささやく 亡き人は 今もどこかに在るという だが姿を現すことはなく わたしの問いに答えることもなく ささやきかける 火を守りなさい 火はあなたに見えなくとも たしかに灯るものなのだ 窓を閉め わたしはわたしを抱きしめる わたしの鼓動が聞こえる 鼓動は歌のように流れる この部屋いっぱいに広がって 何ものも入ることが出来ないように 埋め尽くす わたしだけが息をすることの出来る 歌 歌 歌 目が覚めた夜 暗がりには わたしの影が揺れ わたしの火を囲むように 亡き人たちが 舞っている
0 notes
pygmalionpilgrim · 8 years ago
Text
真夜中、
真夜中、僕は家を抜け出してパジャマ姿で黒い川を眺めた そうしてひとりぼっちの中に真実を見い出そうとするんだね 川底には目を閉じた裸の女が沈んでいて 七色の薔薇の花を口にくわえている 流れることも出来ない重さが彼女の悲しさなのかな 魚たちは目を開いているので僕は思わず話しかけそうになってしまう 一枚ウロコを売ってくれってね するとジージー音を立てテレビの顔をした人間が 頭を抱えながら僕に電源を切ってくれってお願いしに来た 僕は気が引けたので代わりに一緒に散歩をしようと誘ったんだが テレビ顔の人間は石につまずいて川にはまって壊れてしまった ならば、僕は手紙でも書こうか 笹舟を作って手紙を乗せて流す 手紙には「読んでくれてありがとう」って書こう 返事は期待できないからね それにいつかは海になるのだろうし まあとにかく今は朝陽を浴びて粉々になる吸血鬼みたいな気分だよ それなら君に杭で打たれる方がマシなのかな、どうだろう 月が綺麗なのは当たり前で 僕らが美しさにまわす余裕があるかどうかってことなんじゃないか 僕なら愛を一番最後に残しとくなんてしない、夏休みの宿題と似てる
1 note · View note
pygmalionpilgrim · 8 years ago
Text
疲れてしまった友達へ
君は何もかもを知り尽くしたかのように僕に話をしていた そんな君はまるで小さな頭の中から出てきた大きな舟みたいに見えて 僕はその形にうっとりと見とれていたんだよ 変わらないことばかりに僕たちはこだわり続け それに永遠と名付けては一番奥の引き出しにしまっていってた ただ、それは変わることを恐れていただけだったんじゃないだろうか とか今の僕ならそう思うんだ。そう思わないか 随分遠回りしてきた僕たちには3時のおやつなんか残ってないだろう みんなと笑えなかったからこそ苦しみについて語り合った 「こんな気持ちは今だけだ」と言った君の横顔 僕はよく覚えてる
僕はといえば自分を忘れたくないかのように書きまくってる そして今は君を僕の中から追い出すために書きまくってる あの日に交わした約束も今では想い出みたいだろ でも君はずっとおんなじメロディを探してるんだろ 壊れたオルゴールを抱きかかえながら 長い長い夢を見ているんだ あの日と変わらない姿で いま君に何を言えるだろうかと考えている
1 note · View note
pygmalionpilgrim · 8 years ago
Text
白の夢
見たこともない風景の中に見覚えのあるきみがいて 知らない歌を歌いながら知ってる素振りで歩いてくる むかしテレビで見た外国の白い建物の街並みを歩きながら きみは何か見せたいものがあるかのように手招きしてる 僕はどうしたことか斜めにしか歩けなくて 固い壁にぶつかってしまい座り込む するときみは笑いながら真っ赤なりんごを差し出してくる りんごは「食べちゃだめだ」と震えながら僕に言う もう僕の知っているきみじゃないのかもしれない 太陽が真上にやってきた お腹が空いてくる どうしよう 鐘が鳴る 鐘楼の上で白髪まじりの神父が嘘くさい顔で笑ってる りんごはいつの間にか年老いて茶色くなっていた 絵画の天使たちがラッパを吹きながら行進してくる まるできみを讃えている 不思議だな 路傍の雑草からねずみが顔を出し僕に逃げ道を教えてくれたが たぶん僕の知っているきみじゃないのだろう なのにあの時の甘い香りがする ほんとに不思議 パラグライダーに乗った兵士たちがたくさんの矢をばらまく 驚いたきみは 少女のような顔つきで僕を見る その顔は僕の知っているきみだ 短針と長針がぴったり重なって やっと出会えた
0 notes