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現代の怠惰で不満の多い世代を生みだした原因の大部分は、私たちの比較的高い生活水準である、という人もいるが、これは決して新しいことではない。ギリシャ、ローマ、そのほかすべての文明が、若者をはじめ、多くの成人のあいだに、動揺と不幸を経験させている。その主な原因は、生活水準の高さではなく、心を育もうとしないこと、人をつくるのはその人自身という事実を悟らないこと、意思決定に選択と態度の自由を生かさないこと、責任を受け入れないことである。これらすべてが生活の一部になったときに初めて、人は自分の存在の意味と目的を見出すだろう。
キングスレイ・ウォード著、城山三郎訳『ビジネスマン���父より息子への30通の手紙』新潮文庫、1996年
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もしあなたが芸術や文学を求めているのならギリシャ人の書いたものを読めばいい。真の芸術が生み出されるためには奴隷制度が必要不可欠だからだ。古代ギリシャ人がそうであったように、奴隷が畑を耕し、食事を作り、船を漕ぎ、そしてその間に市民は地中海の太陽の下で詩作に耽り、数学に取り組む。芸術とはそういったものだ。
村上春樹『風の歌を聴け』講談社文庫、1982年
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でもね、よく考えてみろよ。条件はみんな同じなんだ。故障した飛行機に乗り合わせたみたいにさ。もちろん運の強いのもいりゃ運の悪いのもいる。タフなのもいりゃ弱いのもいる、金持ちもいりゃ貧乏人もいる。だけどね、人並み外れた強さを持ったやつなんて誰もいないんだ。みんな同じさ。何か持ってるやつはいつ���失くすんじゃないかとビクついてるし、何も持ってないやつは永遠に何も持てないんじゃないかと心配してる。みんな同じさ。だから早くそれに気づいた人間がほんの少しでも強くなろうって努力するべきなんだ。振りをするだけでもいい。そうだろ? 強い人間なんてどこにも居やしない。強い振りのできる人が居るだけさ。
村上春樹『風の歌を聴け』講談社文庫、1982年
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春は夜桜 夏には星
秋には満月 冬には雪
それをめでるだけで
酒は十分うまい
それでも まずいなら
それは自分自身の何かが
病んでいる証しだ
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僕は周囲の人達から斜に構えていると捉えられることが多かった。緊張で顔が強張っているだけであっても、それは他者に興味を持っていないことの意志表示、もしくは好戦的な敵意と受け取られた。周りから「奴は朱に交わらず独自の道を進もうとしている」と半ば嘲りながら言われると、そんなことは露程も思っていなかったのに、いつの間にか自分でもそうしなければならないような気になり、少しずつ自分主義の言動が増えた。すると、その言動を証拠として周りがそれを信じ始める。ただし才能の部分は一切認めていないので残酷な評価になる。確固たる立脚点を持たぬまま芸人としての自分が形成されていく。その様に自分でも戸惑いつつも、あるいは、これこそが本当の自分なのではないかなどと右往左往するのである。つまり、僕は凄まじく面倒な奴だと認識されていた。
又吉直樹『火花』文春文庫、2017年
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シュムペーターによれば、資本主義のエンジンともいうべきものは、「企業家」が不断に行なう「革新(イノベーション)」です。これを彼が「創造的破壊」と呼んだことは、いまではよく知られています。
岡本裕一郎『いま世界の哲学者が考えていること』ダイヤモンド社、2016年
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競争によってテクノロジーを飛躍的に発展させ、生産性を上げて価格を下げるのは、資本主義のロジックそのものなのです。
ところが、そのロジックが極限まで進められると、「限界費用」���ゼロになり、資本主義の命脈とも言える利益が枯渇するわけです。したがって、資本主義は成功することによって失敗するのです。
岡本裕一郎『いま世界の哲学者が考えていること』ダイヤモンド社、2016年
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このもう一つの貨幣論の中心にあるもの、原始概念といってもいいものは、信用だ。マネーは、交換の手段ではなく、三つの基本要素でできた社会的技術である。基本要素の一つ目は抽象的な価値単位を提供することである。二つ目は、会計システムだ。取引から発生する個人や組織の債権あるいは債務の残高を記録する仕組みのことである。そして三つ目は、譲渡性である。現債権者は債務者の債務を第三者に譲り渡して、別の債務の決済に当てることができる。
デヴィッド・ハーヴェイ著、森田成也ほか訳『新自由主義ーその歴史的展開と現在』作品社、2007年
岡本裕一郎『いま世界の哲学者が考えていること』ダイヤモンド社、2016年
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個々人が自分の生き方を自由に選ぶのは、現代社会の大前提になっています。誰と結婚し、どのような子どもを産むか、またその子どもをどのように教育するかも、それぞれの個人の自由な選択にもとづいています。このような現代のライフスタイルを考えると、ナチス型の優生学は論外としても、リベラルな優生学に反対する理由を見つけるのは困難です。
岡本裕一郎『いま世界の哲学者が考えていること』ダイヤモンド社、2016年
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考えてみたまえ。世の中の人が生きてゆくために必要なものは、どれ一つとして、人間の労働の産物でないものはないじゃあないか。
いや、学芸だの、芸術だのという高尚な仕事だって、そのために必要なものは、やはり、すべてあの人々が額に汗を出して作り出したものなのだ。
あの人々のあの労働なしには、文明もなければ世の中の進歩もありはしないのだ。
ところで、君自身はどうだろう。君自身は何をつくり出しているだろう。世の中からいろいろなものを受け取ってはいるが、逆に世の中に何を与えているかしら。
吉野源三郎『君たちはどう生きるか』マガジンハウス、2017年
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パノプティコン(panopticon)は語源的には、「すべて」を表す「pan」と、「見る」にかかわる「opticon」から構成され、多数者を診通る監視システムです。それに対して、マシーセンは「監視」だけでなく、多数者が少数者を見るという見物の側面も同時に備えた概念として、「一緒に、同時に」を表す「syn」を使って、シノプティコン(synopticon)と名づけています。つまり、私たちは「監視されるもの」であると同時に、「見物する者」でもあるのです。
岡本裕一郎『いま世界の哲学者が考えていること』ダイヤモンド社、2016年
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「距離をとって観察していないと、頭がおかしくなっちゃいそうになるんだもんね。でもね、そんな遠く離れた場所にひとりでいたって、何も変わらないよ。そんな誰もいない場所でこってりと練り上げた考察は、分析は、毒にも薬にも何にもならない。それは誰のことも支えないし、いつかあんたを助けたりするものにも、絶対にならない」
朝井リョウ『何者』新潮文庫
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自分より年が10以上も離れた先輩は、私よりも私のことをよく理解していたように思う。結局自分にとって、この世で一番大事なのは自分なのだと思っていることを。 お酒を飲んで赤く充血した先輩たちの目がやけに輝いて見えた。 それと同時に私は、シュウカツで営業と経理の部長を前にして最終面接を受けたあの日のことを思い出していた。一枚のエントリーシート、ほんの少しの面接で合否を分ける採用なんて無意味だと思っていた。しかしあの日、ほんの数分の会話ではあるが、私の2m先にいた常務執行役員たちは私の為人を見透かしていたのではないだろうかと。
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her 世界でひとつの彼女 (2013)
人間が人工知能に恋をする時代は、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。近い将来起こりうるであろう事象がなめらかに展開されてゆくこの映画を観て、人工知能と人間との境界線について考えた。
孤独のライター・セオドアは、最新型のOS上に「サマンサ」という名で登場する人工知能と日々を過ごし、次第にそれを愛するようになる。自身が抱く感情がリアルなものなのか葛藤し、自分が人間でないことを認識し、また「私は私であり、何かになりたいと思うことをやめた」と、個を確立してゆくサマンサの、ある種の人間らしさを感じる変化(あるいは成長というべきか)は、1周回って気味の悪さをも覚える。それらがすべてプログラミングにより定められた思考回路なのか、経験を集積し自ら見出したものなのかどうかは、もはや判断が難しい。
限りなく人間に近い感情を持つ人工知能との恋愛は、会うことのできない遠距離恋愛のようなものなのかもしれない。そんな考えも浮かんだ。しかしそこには、唯一にして決定的な違いがある。それは、人工知能には「実体がない」ということだ。多くの生き物がするように、肌を触れ合わせ、その温もりを確かめることはできない。たとえセックスの代理人を用意したところで、その溝を埋めることはできない。はたして人間は、異種ともいえる人工知能とその境界線を交えることができるのだろうか。ラストシーンは、その結末を象徴しているようにも思えた。
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「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ」 私は二度同じ言葉を繰���返しました。そうして、その言葉がKの上にどう影響するかを見詰めていました。
夏目漱石『こころ』青空文庫
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「では、このやりかたはあなたには納得していただけなかったわけです」と、将校はひとりごとををいって、微笑した。ちょうど、老人が子供のばかげたことを微笑し、その微笑の背後に自分のほんとうの考えをおさめておくような様子だった。
フランツ・カフカ『流刑地で』青空文庫
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