ギリギリセーフで『ファントム・スレッド』観てきました!
この前公開したばっかりな気がしてたんですが・・・(笑)
作品によって公開期間や上映時間に差が出るのって、映画好きとしてはちょっと困りますよね。
とりあえずあれは観てこれは後にしよう、とかやってると、後に回した作品がいつのまにか上映終了していたり、1日1本しか上映しない上にとんでもない時間だったりしてね。
そんなわけで『犬ヶ島』はDVD待ちになりそうだ〜〜つらい・・・
ちなみに『ファントム・スレッド』もすでに小さいスクリーンでの上映(しかも1日1本のみ)だったのですが、お客さんがかなり入っていてびっくりしました。
何効果なんだろう?アカデミー賞?ダニエル・デイ=ルイス?
ファントム・スレッド(Phanthom Thread)
監督 ポール・トーマス・アンダーソン 脚本 ポール・トーマス・アンダーソン 出演者 ダニエル・デイ=ルイス
レスリー・マンヴィル
ヴィッキー・クリープス 公開 2017年 製作国 日本
あらすじ
1950年代、ロンドン。英国ファッションの中心に君臨し、社交界から脚光を浴びる天才的な仕立て屋のレイノルズ。
ある日、レイノルズはウェイトレスのアルマと出会い、彼女を新たなミューズに迎え入れる。
彼はアルマの“完璧な身体”を愛し、彼女をモデルに昼夜問わず取り憑かれたようにドレスを作り続けた。
しかし、アルマの気持ちを無視して無神経な態度を繰り返すレイノルズに不満を募らせたアルマは、ある日朝食に微量の毒を混ぜ込む・・・
やがてふたりは、後戻りできない禁断の愛の扉を開き、誰もが想像し得ない境地へと向かう。
この愛のかたちは、歪んでいるのか?それとも純愛なのか・・・?
華やかなオートクチュール(高級仕立服)の裏側で、映画史上もっとも甘美で狂おしい愛の心理戦がはじまる!(公式サイトより)
2017年に公開されたアメリカ映画。日本ではおよそ半年遅れで公開しました。
第90回アカデミー賞において、衣装デザイン賞を受賞。
監督を務めるのは、ポール・トーマス・アンダーソン。
主演は、本作で俳優の引退を発表していたダニエル・デイ=ルイスが務めます。
ラブストーリというよりも、不気味なホラー映画?
わかるけど、わからない、うーん。
海外ではかなり評価されているようですが、正直よくわからなかったですね。
あ、話の内容がわからないのではなくて、レイノルズとアルマの感情がドロドロしすぎていて、私の理解の範疇を超えてました(笑)
にも
メリーバッドエンドが好きな方にはたまらないかも。
ラブロマンスっていうよりは、ホラーっぽかったですね。
あそこまでホラー寄りのお話だとは思わなかったのですが、かなりゾッとするシーンやセリフが多かったです。
ストーリーは体の芯から冷えるような、冷や汗が出るような恐ろしさがありましたが、一方、レイノルズが生み出すドレスや、1950年代のイギリスの風景、生活などはうつくしく、また音楽の使い方も印象的でした。
通好みな作品
ロンドンの有名デザイナーの男が、とある女性と出会ったことで大きく人生を狂わされていく、愛と狂気の物語。
後半からはホラー満載、レイノルズとアルマのおぞましいマウント争いでしたね。
にも
あんな方向に狂っていくとは思わなんだ・・・(笑)
設定や舞台はロマンチックでいかにも映画らしいチョイスですが、中身は現代でも通じる内容なんじゃないですかね。
仕事一筋で生きてきた男が、とんでもないパワーを持った女にあれよあれよという間に翻弄されてしまうのです。
仕事に対して狂ったほどの情熱を注ぎ続けるデザイナーのレイノルズは、休暇のために訪れた先でアルマという女性と出会います。
この瞬間、レイノルズとアルマの人生の歯車は噛み合いながらも歪み始めるんですね。
完璧な体���もつアルマを、最高のマネキンとしてそばに置いておくレイノルズと、レイノルズの仕事への情熱・才能に惹かれるアルマ。
しかしアルマはやがてレイノルズに対して、愛情を覚えるようになるのです。
レイノルズのそばでいい子にしていたアルマが、徐々にレイノルズの心を求めるようになります。
そしてここからが本番!(笑)
なかなかアルマに心を明け渡してくれないレイノルズに対して、突然アルマがとんでもない行動を起こすのです。
いや〜このシーンはかなりゾッとしたなあ。
正直いうと、いまいち作品にのれませんでした。
本当にふたりが何を考えているのかわからなくて、わからないのがこの作品の面白いところなんだろうけど、わからなさすぎて共感できませんでした。
アルマも考えが幼稚で欲深いし、レイノルズも気難しすぎるし過去が重すぎるし・・・
にも
二人の世界が濃密すぎて、みている私が蚊帳の外になっちゃったのかもしれませんね〜
後半のホラー展開も、人を選ぶ通好みな展開。
結局、ずるずる堕ちるアルマに引かれて、レイノルズもずるずるとアルマの元へと堕ちてしまうのですが、「お互いとんでもない相手を引いてしまったなあ・・・」と苦笑いしちゃいました(笑)
タイトルは凝っていて面白いですね。
ファントムは「幻想、亡霊」。スレッドは「紡がれた糸の1本」。
スレッドに関してはちょっと訳が難しいんですよ。
糸をよくみるとわかるのですが、1本じゃできていないんですよね。
ちょっとこするとさらに細い糸がほつれてくるんですよ、DNAの構造みたいに。
その1本のことを指しているようです。
亡霊の紡ぎ糸、みたいな訳し方がいいのかな?
若い時に亡くなったお母さんへの思いが断ち切れず、何かに呪われたかのようにドレスを作り続けるレイノルズ。
そんな彼がドレス達に使う糸のことなんでしょうか。
どっちもどっちだわい!
このふたりはねえー・・・
どっちもどっちでヤバいんですよ!(笑)
レイノルズは几帳面で神経質でこだわりがあるという、なかなかの案件もち。
まあ天才的なデザイナーをやってるくらいだからね。
そのうえマザコン。しかもそのお母さんは16歳の時に亡くなっているんですよ。
母親の再婚のためのドレスを作り始めたのをきっかけに、ドレス作りに夢中になっていくのです。
劇中では何度もお母さんの話をし、クライマックスでは亡霊をみるまでに。
これはこじらせてますねえ〜
そんなレイノルズは、最終的にアルマに自分の亡くなった母親を重ねるのです。
いや、出会った時から重ねてはいたのですが、死の淵をさまよっていたときに手厚く介抱してくれたアルマに、完全に母の姿を重ねてしまうのです。
にも
まあそのくだりもアルマの計画通りなんですけどね・・・
「君の母親の写真がみたい。」といった言葉の意味がじわじわと理解できて、ため息つきそうになっちゃいましたね(笑)
序盤では小綺麗な老紳士で身なりにも気を使っていたのに、アルマに溺れていくにつれ、どんどん老け込んで髪の毛ボッサボサになっていくのが印象的だったな。
さて、アルマについて。
彼女はレイノルズに出会うまで、田舎のウェイトレスをやっていた、ごく普通の女の子。
にも
多分レイノルズに出会わなければ普通の女の子だったんじゃないかな・・・
レイノルズに出会い、彼に選ばれ、ミューズとして生活していくことで、徐々に彼女の中に潜んでいた欲望がむくむくと湧き上がっていきます。
そこからの圧倒的な存在感がすごい。
悪女っていうよりは悪魔って感じ・・・?
もはや悪女ですら勝てないくらいの恐ろしさが漂っていました。
ほんの2時間前まで、無邪気で無垢な女の子って感じだったのに、終わるころにはすっかり邪気たっぷりの女性に成長してるので、その変貌っぷりを楽しむのもいいかもしれませんね(笑)
アルマがじわじわとレイノルズの生活に侵食していく過程は、若干引きながらも興味が湧くシーンでした。
朝食のシーンは特に印象的ですよね。
音を立てながら食事をするアルマに最初はイラだっていたレイノルズが、結婚した後は何も言わずに視線をよこすだけ。
ああレイノルズがどんどんアルマに食われていく・・・と思いながら眺めていました(笑)
成熟したベテラン俳優と新進気鋭の若手女優の絡みがうつくしい
刺激的なストーリーをさらにドラマティックに、ロマンチックに盛り上げているのが、役者二人の演技。
ここに関しては素晴らしかったと言いたい!とても良かったです。
神経質なマザコンをみごと演じきったダニエル・デイ=ルイス。
『ギャング・オブ・ニューヨーク』のあのボスの役が記憶に残ってますが、あの時の演技もすごくよかったの覚え���るもんな〜
本作でも一人の女性にどんどん飲み込まれていく様を見事演じていました。
にも
クライマックスの「倒れる前にキスしてくれ。」のシーンは恐ろしいシーンなのに、壮絶な色気を放っていて、まいっちゃいました。
ダニエル・デイ=ルイスにとっては、役者最後の作品。
この作品をチョイスするってのもなかなかセンスありますね。
みている側がどんどん引き込まれていく演技をしてくれる素晴らしい役者は、まだまだ色々な作品に出て欲しいと思うのですが、こればっかりは本人の意思がありますからねえ・・・
気が変わってくれることを願うばかり。
さて、役者人生を終わらせようとしている大ベテランのお相手は、新進気鋭の若手女優、ヴィッキー・クリープス。
ヨーロッパの映画を中心に活動されているようです。
彼女の演技には圧倒されましたね。
怖いなこの子〜と思いながらも、ついつい目が惹かれてしまいました。
にも
表情、中でも「目」がよかったな〜
衣食住と音楽に魅了される
演技だけでなく、建物や小物、衣装などの美術の演出やこだわりもとても素敵でした。
まず衣装。
アカデミー賞の衣裳賞を受賞するだけあって、劇中に登場するドレスはどれも華やか。
華やかといってもゴージャスなのではなくて、どちらかというとエレガント。
当時の時代の流行に合わせているんでしょうね。
にも
シンプルな中にちょっと変わったアクセントを入れたりしていて・・・。スーツと言い、昔からイギリスの人はオシャレですよね。
アルマが着ているドレスも愛らしさと上品さのあるものばかりで、うっとりしちゃいました。
女王のウエディングドレスもみたかったな。
そして、1950年代のイギリスの生活・文化が反映された空間は憧れますね。
『オリエント急行殺人事件』や、『君の名前で僕を呼んで』のときも思ったけど、ヨーロッパの人ってゆで卵大好きですよね。
にも
あのよくみる専用の容器に入れて、スプーンの裏でコツコツやってるの、一回私もやってみたい・・・(笑)
美術に関してはかなり凝っていて、レイノルズが住んでいる家がもう独特なんですよね。
縦に長く、部屋数がいくつもあり、お客さんの採寸をする場所もあればドレスを仕立てる部屋もあるし、お姉さんが事務仕事をする部屋や、レイノルズが寝る部屋もある。
自宅が仕事場になっているから、家自体が珍しい間取りになっています。
高級感と質の感じる壁や扉、長い螺旋階段、上質な家具。
上流階級の暮らしってこんな感じなのかなあ〜と想いを馳せました。
日本にはないイギリス・ロンドンらしい優雅さに憧れますね。
最後に欠かせないのが、音楽。
音楽の入れるところがまたうまいんですよ〜
ここぞ!と盛り上がるところじゃなくて、物語が急展開を迎えるところで突然クラシックが流れるんです。
しかも短調の激しい曲。
ああ、これからどんどん物語の雲行きは怪しくなるぞ・・・と、より悲劇的な気持ちになりました。
総評
評価
ストーリー
(3.0)
キャラクター
(3.0)
キャスト
(5.0)
演出
(4.0)
映像・音響
(5.0)
総合評価
(3.0)
良かった点
役者の演技
衣食住の演出
二人の熱演が作品をより妖艶なものにしています。
悪かった点
やや中だるみしている
好き嫌いがはっきり分かれる内容なのはいいとして、二人が結婚したあたりはちょっとテンポ悪かったかなあと。
まとめ
なかなかクセのある濃厚な作品でした。
好みが分かれるとは思いますが、好きな人はとことん作品の世界にどっぷり浸かってしまう、中毒性の高い物語です。
妖艶で耽美な雰囲気が特徴的。
私は登場人物にはあまり共感できませんでした(笑)
一方で美術セットや衣装、音楽などの作品を彩る演出はとても素敵で印象的だったな。
優雅で上品な画面には大変満足です。
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