Tumgik
#ボックス型小銭入れ
cavane · 1 year
Photo
Tumblr media
New in... forme Crispell calf Short wallet / fo-23001-2(fip-26) made in Japan 『 Crispell calf Short wallet 』 革はクリスペルカーフを使用した上品なショートウォレット formeより新作の財布が入荷しました。 機能性が重視された小ぶりで持ち運びも便利な財布です。 カーフレザーは柔らかく、キズも少なく、滑らかな手触りです。使用する度に馴染んでいき革は艶を増し色も濃くなっていきます。 ・ドイツ ぺリンガー社のクリスペルカーフを採用 ・ファスナーには滑らかで高級感を与えるエクセラジップを採用 ・裏側にはベジタブルタンニンで鞣した馬革(SHF)を採用 クラシカル、モード、カジュアルな装いに小物スタイリングが楽しめ長くご愛用いただけます。 贈り物・ギフト・ご自身用におすすめです。※ボックス付き 詳細は下記よりオンラインストアをご利用下さいませ。 https://cavane.shop ・ ・ ・ forme NO : fo-23001-2(fip-26) ITEM : Crispell calf Short wallet TYPE : men・women SIZE : W12 cm x D2.5cm x H9 cm COLOR : BLACK・TAUPE STOCK:1 素材 : Crispell calf (仔牛革) 100% forme フォルメ designer_Akihiro Kojima 小銭用のジップ収納、お札、カード入れとシンプルなデザインは各仕切りがあり、しっかりとした収納が出来ます。 クラシカル、モード、カジュアルな装いに小物スタイリングが楽しめ長くご愛用いただけます。 シリアルナンバー入り専用ボックス付きとなります。 革について キメ細かな繊維でキズも少なく、スベスベで滑らかな手触りのカーフ。 全ての革の中でも最高級の部類に入る希少な革素材です。 使用していく内に味わい深いレザーに増していきます。 乾拭きをしていて表面にかさつきが出てくる場合は、皮革用のクリームなどで油分を補ってください。 フォルメは独自の木型開発、設計革本来の質感が良くわかる 植物染料による染めやベジタブルタンニングによる 革を用いた繊細な物作り。 ヨーロッパにおいて靴の大量生産(メーカー化)が行われる 前の当時では当たり前としてあった技術 (木型、製法、染色)を用いた靴作り。 道具として生活に根ざしたモノとしての靴。 一足一足の箱にシリアルナンバー記載。 アフターケアも万全で、ブランドとショップにて 修理を受付させて頂きますので、 より長く愛着を持って履くことの出来る一足です。 ※ 採寸は個体差がありますので、若干の誤差が生じます ご了承ください。 ※ 実際の商品と仕様、加工、サイズが若干異なる場合があります。 ※ 返品・交換はご了承くださいませ。 ※ 再入荷はございません。 ※ デイリーケアは天然繊維の布や天然繊維のブラシで乾拭きをしてあげるだけで、ツヤを引き出すことができます。 こちらよりお問い合わせください。 TEL: 06-6449-8588 or MAIL: [email protected] ・ ・ ・ #forme #formeshoes #artisan #handmade #fashiongoods #leatherwallet #vintage #Crispellcalf #shortwallet #gift #cavane #フォルメ  #牛革 #ベジタブルタンニンレザー #ぺリンガー社 #クリスペルカーフ #革財布 #京町堀 #革小物 #贈り物 #23ss (Cavane) https://www.instagram.com/p/CpJdkJIPoGS/?igshid=NGJjMDIxMWI=
2 notes · View notes
Text
ICカードも入る、新定番・縦型ボックスコインケース BOXコインケース
ICカードも入る、新定番・縦型ボックスコインケース Camouflage Tree BOXコインケース 山藤の定番デザイン、縦開きのボックス型コインケースにカモフラージュ・ツリーシリーズが登場。そのスリムなボディは片手で持つのに納まりがよく、フラップを開けば、まるで手のひらの上で小銭を見るような感覚で硬貨を探すことが出来ます。ミニマムなサイズ感ながら、裏面にはカードポケットが2つあり、ICカードやクレジットカードを収納出来、フラップ裏側のポケットには数枚の紙幣や鍵などを入れることで、小さなお財布としても使い勝手抜群でお使いいただけます。 カラー/サイズ ネイビー ブラック ブラウン オリーブ チャコール 通常価格 11,550円(税込) この商品のお届け可能期間は、 2023/05/14~2023/07/02 です。
Tumblr media
View On WordPress
0 notes
mizuhiki-gallery · 1 year
Photo
Tumblr media
【水引がま口財布👛 黄金色💰】 神々しい黄金色は、金運アップだけでなく総合運を引き出す願いを込めた最強カラー✨ 眩しす��て外で使うのが恥ずかしい方は、お家の中で保管用や仕分け用として大切になさってください⛩️ お金もお財布も丁寧に使って、様々なご縁に恵まれますように🪢 内側は、ボックス型小銭入れ1ヶ所、カード入れ2ヶ所、お札入れ1ヶ所の使いやすい内装です。 6色からお好みのカラーをお選びいただけます😊 【Makuake】 〜3/24まで「水引がま口財布」先行割引販売中 https://www.makuake.com/project/kamihitoe/ 【オンラインショップ】 ・初回クーポン《HAPPY10off》 ******************** 紙単衣 - kamihitoe - 水引アクセサリーと雑貨のお店 Makuake、水引の商品、お問い合わせは @kamihitoe_mizuhiki プロフィールのリンクから #水引 #mizuhiki #金運財布 #ギフトにおすすめ #伝統工芸品 #縁起物 #黄金色 #ゴールド #金運 #金運アップ #財布レディース #madeinjapan #職人の手仕事 #金色 #セカンド財布 #春財布 #クラウドファンディング #二つ折り財布 #紙単衣 #水引財布 #水引がま口財布 #Makuake #マクアケ #応援購入 #和財布 #財布好き #日本製 #財布 #あわじ結びコレクション https://www.instagram.com/p/Cnl1CxGPpCa/?igshid=NGJjMDIxMWI=
0 notes
furoku · 2 years
Link
0 notes
cestlavie-sevenstar · 3 years
Text
01/21 ヤクザと家族 The Family 試写会に参加しました
*ネタバレどころか全編通しての感想なので一定期間が経過したら本記事は非公開に移行いたします🙆‍♀️
*記事全体でお名前や役名などを敬称略にて記載させていただいている部分が多数あります。ご不快に感じられる方がいらっしゃいましたらブラウザバックしていただけますと幸いです。
2021年1月21日(木)、映画「ヤクザと家族 The Family」試写会に参加させていただきました。年末年始は「1月29日を迎える」ことを目標に繁忙期を生き抜いたため、当選通知のメールを見た瞬間私の2021年は終わったような気持ちでした。(誇張表現)
今回も初見時の気持ちをフレッシュに残しておくべく、鑑賞しつつこんな感じでメモっていました。 黒い文字が上映中のメモ、緑の文字は帰宅後に補足で書き足したメモです。
Tumblr media
これまでは人に見せることを前提とせず目と耳に入ったことや感想を自由にメモっていたのですが、今回を機にメモを見返しつつ(時に載せつつ)感想ブログなどもしたため始めてみようと思い、画像と文字を投稿しやすそうなTumblrを開設してみました。普段芸術と程遠い業務にいそしむ会社員の感想を眺めて「わかる〜」「いやわからね〜」みたいな楽しみ方をしていただけたら幸いです。
今回はB6ノートに見開き10ページ分ひたすら悶絶しているメモとなりました。
映画開始から終了までの時系列順で書いています。ちょこちょこ下記のようにスクショで掲載します。
Tumblr media
水中から始まる…… フレッシュなダイイングメッセージみたいな文字で書き始めているのですが映画冒頭、あぶくに包まれながら沈んでいく推定・綾野剛さんの映像がとても綺麗でした。今思い出すと「ああ〜Familia……」という感じです…… 一緒に見に行った方が観賞後、「この映画は山本賢治の走馬灯なんじゃないか」という話をされていて打ちのめされました。
そう言われてみると最後の沈むシーンでは刺された血液か返り血かで体の周りにもやのような赤が浮いていますが、冒頭の沈む映像ではそれがなかった気がするので山本さんの自己認識的な映像なのかな〜とも考えていました。 確か右手を伸ばすようなカットがあり、写っている手がなんだか小さく見えたので「19歳の前に胎児からスタートなのかな?」と斜め上なことを考えていたのですが、上方に伸ばした手を自分で見上げているので確かに小さい感じに見えるんだな〜とも考えていました。
1999年
小さい原チャリの山本賢治くん(19)が着席するまでの一連、白い上着で葬儀場に入って行く俯き気味の後頭部が愛しかったです……読み間違いかもなのですが喪主が山本賢治に読めて、あ〜頼れる親族いなかったんだ……とすでに泣きそうになっていました。
少し後のシーンで山本宅が映る時、お父さんの名前で賞状も雑多に積まれていたのが何だったのかな〜と思いながら観賞後にサイトを読んだら証券マンだったとのことで、優秀な社員さんだったのかな……と思いつつ母親も離婚などではなく亡くなっているという記載からかつての山本家に思いを馳せて切なくなっていました。
Tumblr media
いちはらはやとかわいい 市原隼人さんをドラマ版『ROOKIES』で知り、『猿ロック』『ボックス!』くらいしか見たことがないながらにくしゃっと笑う顔が好き^〜〜〜と思っていた高校生時代を思い出しました。原チャに足乗せて数珠をいじってるの大変かわいかったです。数珠は手作りなのでしょうか🤔2019年で大原の墓前にも赤マルと一緒にお供えされてるのを見ると三人でお揃いで作ったのかしら……と深読みして涙する私でした。
Tumblr media
おかねにはしゃぐのかわいい 夜の堤防で強奪してきたクラッチバッグを開けるシーン。大原を演じる二ノ宮隆太郎さん、お顔は存じていたのですがお名前が出てこず、さらに事前にあまり情報を入れないようにして映画に没入しに行ったので「大原」「細野」の名前が最後までわからず迷走したメモになっています(言い訳) バッグの中から20万円くらいが出てきて堤防でめっちゃはしゃぐ大原が大変かわいかった……1999年でも2005年でも大原が笑ったり喜んだりすると見ているこっちもニコ……☺️と笑顔になるのが不思議でした。
このシーンで月におシャブさんをかざして「きれェ」って言う細野もやばいけど投げ捨てちゃう賢治くんの衝動性も心配な感じでした。この衝動性が2005年の川山を瓶でゴン事件に繋がるんだろうな〜と思いつつ……
Tumblr media
あかちゃんあやすいちはらはやときゃわ オモニ食堂で赤ちゃんの翼くんをせっせとあやす細野の笑顔がほんと〜〜に好きで…… 山本・細野・大原の三人でいっぱい食べてるのめちゃめちゃかわいい空間でした。
Tumblr media
くみちょうかっこいい 帰宅してから追記したメモもだいぶ頓珍漢なのですが「激シブ」と書きたかったんだと思います。
この食堂乱闘事件の最後、大原が出口手前の机に綺麗にぶつかって気持ちよくひっくり返して走って出て行くのも爽快でした。(どんな感想?)
Tumblr media
ドアちゃんとしめるけんじくん 寿司パに呼ばれた賢治くんがビルの入り口ドアを後ろ手ながらちゃんと閉めるのが偉いな〜と思って見ていました。(今思うと金文字の「柴咲組」を見せるためかな〜とも思いつつ) この後商店街を走る時も「どけどけ!」だったのが「どいてどいて!」になって、後に続く言葉の方が優しい感じになる辺りに人柄を感じてグッときました……
Tumblr media
はねられたあとはしるけんじくん 雑誌の『キネマ旬報』だったかで綾野さんがスタント無しで挑んだというのは読んでおり、事前公開された映像も見たので心の準備はできているつもりだったのですが劇場で見ると迫力が凄まじかったです……は、はねられている……あと確か長回しがはねられた後も続いていてハラハラしていました。
そしてこのあと盃交わす場面までほとんどメモ取ってませんでした。SNSの完成披露会を見られなかったので一緒に行った方に教えていただいたのですが、あのシーン本当に蹴られているということで……よくぞご無事で……😭 香港までの密輸(入国)船のサイズが意外と小さくて、時々ニュースで見る国境近辺の船ってそういえばこんな感じだったな〜と思い出していました。 あと加藤こと豊原功補さん、『のだめカンタービレ』の江藤しか知らなかったので「なんか見たことあるような…」とは思いつつ一瞬気づきませんでした……!江藤塾の指導が「ヤクザのとりたてみたいな指導しやがって!」と千秋に言われるのですが江藤と加藤全然違う人間ですごかったです……
ところでこの臓器くん三人が密輸されかけるくだりの辺り、賢治くんが柴咲組との関係を否定したのに中村の兄貴が迎えに来てくれて三人とも助かってる描写の理由が1回目だとわからなかったので今後わかるまで見に行きます(ムビチケを追加で積んだ顔)
盃交わすシーンで縦書きのクレジット入るのめちゃめちゃテンション上がりました。かっこいい……ここのシーンの背景や人の配置とお顔など、後で出てくる方いらっしゃるのかな〜と思いながら見ていて白文字を読んでいなかったので結局エンドロールまで気づかなかったのですが今回岩代太郎さんが音楽だったそうで、初めて映画のサントラ買ったのが『武士の献立』だったのでエンドロールでもテンション上がる事態になっていました。
2005年
Tumblr media
おしりまで入ってるの 銭湯で山本さんが湯船に向かう後ろ姿のシーンで刺青が背中通り越しておしりと太ももにまで入っていた衝撃のメモ。 そういえば私も小学生くらいの頃、近所の銭湯にどうしても行ってみたかったのですが連れて行ってもらえなかったことを思い出しました。(誰彼構わず話しかけては走り回って物を壊す子供だったのでいろいろな意味で人生変わるところでした)
大原と細野の背中にも線彫りでごっついでかい刺青が一面に入っているのですが、山本賢治さん(25)の気合の入り様がエグいかっこよかった……何年かけて彫ったのか…… 米国にいた時スナック感覚で一緒に刺青入れよ〜と誘われた際、断りつつ色々調べて知ったのですが、線ではなく面の刺青は痛さも尋常じゃない上にグラデーションは彫り師さんの技術も問われるところとのことでお尻やふとももとか脇の肋骨のあたりみたいな皮膚の薄そうなところにまで見事に入っているのを見て山本さんの六年間に思いを馳せたりしていました。あと全然関係ないですがお風呂めっちゃ気持ちよさそうで私も帰宅してお風呂沸かしました。
Tumblr media
中村「てれるな」かわいい 安易に「かわいい」という形容詞を使いがちなのですが魅力を感じた時にさくっとメモする時やっぱり「かわいい」とか「かわ」って書くのがラクという。 若頭襲名?就任?のお祝いをされてぽつっと一言中村の兄貴が「照れるな」と言うのがかわいかったです。立ってるだけでめちゃめちゃ怖いし1999年の方でも怖かった中村さんが口を開くと思ったよりフランクで端々にポップさが垣間見えて「あっ好き」と引き込まれた瞬間のひとつでもありました。ドラマ『アンナチュラル』の宍戸だ!!と思って警戒しながら見ていたのですがここで警戒を解いて仲間だ〜🌼と思いながら見ていたので2019年の方で落ち込みました……(鑑賞中に落ち込む視聴者とは)
このシーンで細野が「これ山本の兄貴からです」のような文言で中村さんにプレゼント(とは言わないのかしら……)を渡す時、言い方や間の取り方があまりにも自然なモブっぽくて一瞬細野だと思いませんでした。山本さんから中村さんにお祝いの品を渡すだけの舎弟の役割を果たしている細野aka市原隼人にグッときていました……
Tumblr media
せんえんくれる オモニ食堂で小学生の翼くんに千円札をくれる山本さんのシーン。一万円とかではなく、でも小学生には大金の千円札をお小遣いにくれる山本さんのバランス感覚がとても好きでした。愛子さんが止めるでもなく受け取っときなと言う様子になぜか嬉しくなってました。そして翼くんがンマ〜〜〜かわいい……その翼くんと会話してる時の山本さんと細野がこれまたンマ〜〜〜かわいい……あの笑顔は無形文化遺産認定の日も近いです。
「子供と会話すると笑顔になるよな〜」と思いつつ見ていたのですが今思うと大原くんと亡くなった翼くんのお父さんが似ていたというところから、自然と人を笑顔にさせる特性みたいなものを翼くんもお父さんから受け継いでたのかなぁとか、いろんな人の居場所になってたオモニ食堂を切り盛りしてるお母さんから学んだりしてたのかなぁとか色々考えていました。
Tumblr media
ジッポのチーンかわいい この「かわいい」も魅力的だったな〜の「かわいい」です。2005年の山本さん喫煙シーンで印象的なジッポライターの開閉音、薄い金属音がおしゃれで好きでした……小中学生の時分、ジッポに憧れて百均やらドンキやらで安いのを買ってはガチッとかバチッみたいな音を立てて開閉させていた勢なので「かっこいい……」と痺れていました。あと山本さんの手が綺麗で二倍痺れました……
2019年、山本さんの出所後に「柴咲組一同、盛大に」のシーンで煙草に火をつける時は百円ライター的なジッという音になっていて泣きそうになりました。対比がエグい……
Tumblr media
くうきのかわりかた 2秒前まで翼くんと近所のお兄ちゃんみたいな会話をしていた細野が山本の電話の様子を見て一瞬で空気を切り替えるのがビリッと来ました。オモニ食堂の壁際に飾られた七五三か端午の節句かの人形を挟んで会話していたのも何故か記憶に残っています。
この画面大原があまり映ってなくて若干寂しかったりしました。三人でご飯食べにくるの可愛かった……ビールの乾杯の時にグラス合わせる位置が特に山本さんが上という感じもなく三人でかんぱ〜いってなってたのが本当に好きでした。(見間違いだったらどうしよう…)山本さんの貴重な笑顔……
Tumblr media
あめちゃんなげるのかわいい この「かわいい」は「かっこいい」と「かわいい」が半々くらいのかわいいです。去り際に細野が翼くんに2つか3つか何か投げるので「小銭?にしては雑…?」と思っていたらキャラメルなのかラムネなのかアメなのかオレンジ色の細長いのを翼くんが両手で受け取ってて可愛くて死にました。 お菓子を持ち歩く細野……
続くクラブ C'est la vie で敵対勢力が煽りに煽るシーン、細野が身を乗り出してゴリゴリに睨んでる中、山本さんが微動だにせず立ってるのがめ〜ちゃ怖かったです……まじで身じろぎひとつせず川山のことをじっと見ている様子が、あまりにも静かなのに絶対静かな訳がない嵐の前の大気そのものでひたすらぞわぞわしました……
川山が立ち去った後でママが気を取り直して女の子たちに声をかけるのがまた好きでした。ママの肝の据わり方よ……
そしてここで登場するみゆきちゃんこと工藤由香。青いドレスが似合ってて素敵でした。今思い出すと冒頭や最後の海を思い出すような深い青なのですが、由香ちゃんの明るい人柄と真逆な色かつ尾野真千子さんの雰囲気にぴったりの綺麗な深さだったな〜と思いました。(小並感)
自己紹介もなく隣に座り山本さんの親指の付け根部分にガラス片が入っているのをそっと取ってくれる由香ちゃんを見つめる山本さんの目元がサングラスと前髪でわかりづらかったのもエモでした。わかりづらいけれど、川山と話していた時とは完全に異質の静けさ……
さっきまで流血沙汰の事件起こしてた男が、自分で気にもしていない(蔑ろにしている)傷に気づいて手当てをする由香ちゃん、彼女の来歴が映画の中ではほとんど見えないのも「山本の走馬灯」と考えると納得でした。
ついでにこの後ホテルに呼び出される由香ちゃんのシーンがめちゃめちゃ可愛くてニコニコしながら見ていました…… 由香ちゃんの到着で、画面には映らないジッポの音が「山本さん緊張してるのかな…」という感じでかわいかったです。そして由香ちゃんの私服(チェックのシャツワンピースとフードつきダウン)が青いドレスとこれまた180°正反対とは言わずとも90°くらいの位置にある感じでとてもかわいかったです。◯まむらかパ◯オスか……
Tumblr media
ぺちぺちたたかれてる かわいい 抵抗する由香ちゃんのぺちぺちパンチが大変かわいかったというメモでした。
Tumblr media
そういえば山本さんの背中におわしますは修羅でしたね
抵抗している由香ちゃんに動揺しまくる山本さん、さっきまで貫禄凄かったのに急に中学生男子になってニコニコしちゃいました。川山とか加藤にこんな態度を取ったら親族もいない由香ちゃんは臓器ちゃんコースでもおかしくないのに、運転しておうちまで送ってくれる…… ここで携帯渡して「入れろ」だけ言われて、一回でちゃんと正しい情報を打ち込んで渡してくれる由香ちゃんの律儀さもかわいかったです。ラブコメ映画ならここで一回ギャグ挟んでから山本さんが「あいつ…!」って思ってるときに携帯に由香ちゃんから連絡入るパターン……🤔💭と思考が逸れるくらいかわいいシーンでした。
Tumblr media
セーターのおじちゃんかわいいね… この「かわいい」も「かっこいい」と「魅力的」の混ざった感情でした。川山の件で加藤との会談に中村の兄貴を連れて行く柴崎さんにスルッと流されてしまって立ち尽くす山本さんに肩ポンしながら「たまには兄貴に花持たせたれや」のようなことを言うおじちゃんがその場面で一人だけスーツではなくセーター着用だったのがかわいいな〜と思った感想。
ビリビリに張り詰めた空気の中で元凶とも言える山本さんに声をかけようにもかけられない(かける勇気が出なさそうな)雰囲気の中、かる〜い感じで声をかけてくれるおじちゃんが大変好きでした。何かあったときに気持ち的にラクにしてくれる方が職場とかに一人いてくださると心理的安全ダンチだなぁなどと今打ちながらしみじみ考えます。みんな頼ってひっそり相談に行く感じ……
あとこの「たまには」という一言、最初はおじちゃんが気を遣ってくれてる感じかと思っていたのですが、2019年の方で中村の兄貴と乱闘になる場面で出所したての山本さんに兄貴が「いつもいいとこどりしやがって」みたいなことを言っていたのを考えると、1999年〜2005年の6年で相当派手に活躍していたんでしょうね山本さん……
Tumblr media
出待ちしてるのかわいい これは紛れもなく「かわいい」でした。クラブの前で車で由香ちゃんを待ってる山本さんのシーン。この直前の事務所でソファで仰向けで煙草吸いながら起き上がって天井見上げてまた吸って……というシーンの山本さんは手首や体の動かし方から漢と色気の混ざり合った匂いを画面越しに感じるほどかっこいいのに、由香ちゃん呼び出して「無理なんで……」とわりと年単位で寝込みそうな断り方をされて無言クラクションパーーーーーで強制的に呼び止めるあたりの流れまじでラブコメでかわいかったです。
Tumblr media
みゆきちゃんにオラつけてないのかわいい まさしく。別に山本さんが「オラついている」訳ではなく「ペースを乱されまくっている」と書きたかったのですが勢いでメモっていたのでこんな書き方になってしまいました。語彙力……
このシーンではまだ「ゆか」という名前が出てこなかったので鑑賞中のメモが「みゆきちゃん」記載。
Tumblr media
ドライブ(きょうせい)かわいい 由香ちゃん青いドレスのまま上着だけ持ってきてドライブしてたような気がします。白い上着に青が映えるな〜と思いながら見ていた気がするのですが見間違いかな……次見る時確認します。
そして今気づきましたが「(強制)」と言うと常田大希さんが年末にSNSで公開していた綾野剛さんとのメッセージを思い出します。どんなおせちだったんだろう……ちょろぎ入ってたのかな……🤤
Tumblr media
顔が良いあやのごう 夜明けの海岸で由香ちゃんに「どうやって儲けてんの」「なんでヤクザやってんの」のような質問攻めにされるシーン。今回のメモぶっちゃけ6割くらい綾野剛の顔が良い(または諸々が「かわいい」)で埋まっていたのですが、この辺りから各俳優さんの様々な「美しさ」に魂が震える映像になっていった気がしてメモ内容が圧倒的に表情のことや空気感についての言及になっていたので我ながら記述が曖昧で頭抱えました。咄嗟の語彙力 増強 方法 検索👆ポチ
夜通しドライブした二人が由香ちゃんの気軽な質問からほんの一瞬だけお互いの深いところに触れる描写が夜明け前の一瞬の空を思わせてエモでした。
Tumblr media
まじすか!? かわいい ここからしんどかった…釣りに出かけた柴咲さん・山本さん・運転手の大原くんの三人が車内で会話しているシーン。 電話で呼び出された時山本さんが着てたセーターかわいかったな〜というのも記憶に残っています。そういえば山本さんが住んでるところって柴咲組の寮的なところなのかしら🤔最初に由香ちゃんが呼び出された時、ドアに避難経路が貼ってあったのでホテルかと思ったのですがそういえばこの場面でも同じベッドな気がするのでホテルじゃなくて家なのかな……?
運転手の大原くんが嬉しそうに相槌を打つのが可愛すぎて劇場でニマニマしてました。「こいついっつもお前の話するんだよ」みたいなことを柴咲さんに言われて山本さんが呆れてるのに「すみません!」ってお返事しながらニコニコしてるの本当にかわいかったです。
気を張ったり気が立ったりがデフォルトの中で大原くんみたいな人がそばにいるとホッとして笑顔になったり少し安心したりするんだろうなぁ、愛されてるんだなぁと思って(由香ちゃんとのラブコメからのエモの流れで完全に油断していたこともあり)完全にリラックスしてたところで二人乗りバイク………………………………
ずるい……………………… 大原くんの魅力にフォーカスした直後のこれはずるい……………………
今思い返すとこのシーンも多分長回しでした。どこからどこまでだったんだろう……完全に頭から世界観に浸って「釣りか〜何が釣れる時期かな〜」とか考えてたのでめちゃめちゃ衝撃でした…… そしてここで山本さんが車を振り返って呆然とする流れが辛いのにめちゃめちゃ綺麗でした。昼前の太陽の明るさ……
Tumblr media
ないてるいちはらはやと 翼くんを撫でて笑おうとする細野がぼろぼろ泣いてしまうシーン。シンプルにつらすぎて胸にきました。トレーラー映像で主題歌が入る前あたりに映る煙、煙草かなぁと思ったらこの大原の葬儀のシーンだったんですね……ずるい……
この時の翼くん6〜7歳でしょうか。物心ついてから初めて参加したお葬式だったのかな、と思うと普段と様子の違う知ってる人たちの中で細野ならいつもみたいに笑ってくれる!と思ってたりしたのかなぁみたいなことも考えて辛み増してました。ちょっと戸惑うような様子が辛かった…… 細野の翼くんと接する時のあの笑顔が印象的に描かれていたからこそ辛さが倍増(どころの問題じゃない)でした。
そういえばこの後から細野の笑顔がちょっと変わったような。🥲 2005年ではもう笑うシーンがなく、2019年の方でも相当苦労したんだろうなぁという感じで笑顔の雰囲気が変わっていて辛かったです……パパしてる時ももう翼くんに笑いかけたみたいな笑顔じゃなくて……無形文化遺産儚い メタい感想だと「笑顔」ってそんなに種類分けられるものなの……?と市原隼人さんの表現ぢからにタコ殴りにされていました。安仁屋……
Tumblr media
けいさつとヤクザの髪型 ちがうのすごい 柴咲さんと大迫が会話するシーン。画面右側に柴咲さんと中村の兄貴、左側に大迫と若い警官?が映るのですが、中村の兄貴も警官も「髪が短く襟足は刈り上げに近い感じ」「スーツ」「姿勢良く立ってる」とほぼ同じ条件のはずなのに、どう見ても右側がヤクザで左側が警官だったのがすごかったです。さらに場面的に逆光でほぼシルエットだったにも関わらず明らかな差異があったので痺れました。
Tumblr media
��ン坊なのかわいいな…… 入院している山本さんのお見舞い兼報告?で柴咲さんと細野が病室を訪れるシーン。もうすでに嫌な予感はしていたので感想がかわいいポイントだけフォーカスして書いてありました。柴咲さんが「ケン坊」って呼ぶの本当に愛が深くてなんでか泣きそうになります…… 花籠を置きながらずっと泣きそうな顔をしている細野の私が代わりに泣きました。(なんで?)
Tumblr media
えっ えっ顔が良い あやのごう…… だいぶ���揺しています。ベッドで横になった山本さんの思考をなぞるように俯瞰でゆっくり回る画面のシーン。天井視点というべきか何と言うか…… 1999年に侠葉会から逃げる賢治くんのシーンでも画面がぎゅん!と回って大混乱なところがあってすごく好きでした。
あの静かな表情が怖いのか美しいのか、ぞっとするのか狂おしいほど愛しいのか、全部詰まっていて文字通り息が止まりました。二重幅の目元がずっと脳裏に残っています。
そしてこの後クラブの中で山本さんに紙袋を手渡す細野、サイトのキャスト紹介の写真もしかしてこの場面では……?と気づいて地に倒れ伏しました。苦しい……
Tumblr media
な…中村さん…… 1999年でおシャブさんを扱わない柴咲組に「じゃあ何をやってるんだよ」みたいなことを聞いた賢治くん19歳に、凛と張りのある声で答えていた中村さんを思い出しました。山本さんとはまた別の理由で耐えきれなかったのかな中村さん…… 屋上でゴルフしてる柴咲さんと山本さんを見てる時の中村さんの目線がなんとなく不穏だった気がしたのですが、中村さんは任侠の人でした……😭
刺殺する時は刃物を縦ではなく肋骨に沿うように横にして差し込むと致命傷になるみたいな話を思い出して現実逃避しながら見ていたのですが銃を選んだ山本さんと刃物を選んだ中村さんの違いみたいなところにも思いを馳せていました。 (そういえばサイト読むとドス的なものではなく包丁だったんですね)
Tumblr media
そぼくなゆかちゃんハウスかわいい 質素倹約大学生の一人暮らしアパートとてもかわいかったです。調べたら2005年といえばファーが流行したりエスニック柄が流行した時期らしいのですがそんなものの影もない本棚やキッチンの生活用品のカゴに生活を感じてグッときました。そこに転がり込んでくる血まみれの山本賢治……
震えてる山本さんに動揺しながらも少しずつ落ち着いて癒してくれる由香ちゃんと、最初触れるだけのキスをするのがすごくグッときました。
Tumblr media
みあげるとき 19さいだ… 翌朝、事務所に帰ってきた山本さんがソファに座ったままぼんやり柴咲さんを見上げて立ち上がるシーン。1999年、加藤の元から助け出された後を思い出しました。ESSE のインタビューで綾野剛さんが語られていた内容もふと思い出し、朝陽の入る光景に胸が痛くなりました。 その後で柴咲さんが山本さんが怪我をしている左肩を大切にして首元を引き寄せて、自分の白い上着を気にするそぶりも見せずにガッと抱き寄せるのがまた辛かったです……(あまりにも当たり前のように深く抱き寄せてたのでしばらく柴咲さんの上着が白いことにも気づきませんでした) 大迫が入ってきて手錠をかけているあたりのシーンで柴咲さんの上着に血がついててウグ……となっていました。
よりにもよって連行される時のニュースを翼くんがガッツリ見ているというのも辛かった……来なくなった大原、逮捕された山本さん、細野は一人でオモニ食堂にご飯食べに行ったりしたんでしょうか……2019年の方だと細野と翼くんのコンタクトが一切なかった気がしてまた辛いです……
怪我が治ってないのに歩かされて収監されてる山本さんが辛すぎると同時に、真っ暗な中から明るいところに出る流れの表情に鳥肌バキバキでした。
2019年
Tumblr media
2019年の方が青いの…?(色)がめんの 早朝出所する場面から始まることもあってか映像が青くて「あれ…?」と思うなどしていました。初めて見る丸メガネの若い子と中村の兄貴が迎えにきてくれて、「細野くん来ないんだ…」とざわざわしていました。
そして事務所に到着すると剥がされている金の「柴咲組」。剥がされた後のスプレー跡が残ってるのが傷跡みたいでまた辛い…(この後ほぼ「つらい」「しんどい」しか形容詞が出てこない)
Tumblr media
19才の鼻のキズのこっちゃうんだなぁ 出所後にすっかり様変わりした街並みを見上げながら事務所に戻り、多分14年ぶりに柴咲さんにも会うシーン。和装の柴咲さんに嬉しそうにしてる山本さんの鼻に傷跡が残ってるのがなんとなく印象的でした。
20年経ってるんだなぁと思いつつ、2005年の加藤との会談での「俺のたまでも取ってみるか」はもちろん何気ない会話の一言でも声の厚みがめちゃめちゃかっこよかった柴咲さんの声が弱くなっててめちゃめちゃ不安になりました。
あとこの事務所が映る時に「がらんどうだ………」と思った覚えがあります。置いてある小物の数が著しく減ったとかではなかったと思うのですが、何が違ったんだろう……2005年の時から人が減ったのに様子が変わらないから寂しく見えたのかしら……次見に行った時確認します……
そういえば美術の部谷京子さんが『容疑者Xの献身』の方と後で調べて知って唸り倒しました。寂寥感とあたたかさが混在する空間大好きです……
Tumblr media
SEKISUI HOUSE 山本さんの新居のアパートの壁にSEKISUI HOUSEのロゴがありましたという。なぜこれメモったんだろう。しんどさが限界点突破して何か関係ないものメモりたかったのかな……
このシーンの前でたぶん大原くんのお墓参りをしているんですが、そこで赤マルお供えしてるのと、あと多分ほどけてる数珠がお供えしてあったのも印象的でした。お揃いで作ってたのか、それとも細野が趣味で作ってたのを置いてったのか、ちょっと次見る時に三人が1999年と2005年でおそろっちしてるか確認します……
丸メガネの子がしょんぼり辛そうに条例の話をシンプルにしてくれるのを聞いてから山本さんがまず由香ちゃんに連絡取ろうとしてるのがかわいかったです……しかし繋がらない…… ここのスマホ使い慣れてなさそうなところがまた紛れもないかわいさでかわいかったです。通信機器って差し入れできないんですね……
そしてこの後の出所祝いが😭ひ、ひたすら辛かった……… 「柴咲組一同、盛大に」という文言はきっと昔から使われてきたもので、山本さんも何度も聞いたことのあるような乾杯の掛け声なんだろうなと思いつつ、どうしてもかつての賑やかさを思い出してしまって辛かったです……煙草に火をつける音が百円ライター……ビールは瓶のプレモル……(これも現実逃避メモ)
追い討ちをかけるようにシラスの密漁シーンが入り、大変な寒さに違いないだろうに「これで食わせてもらってんだよなぁ」的なことを言いながらはしゃぐようにしてるオジキたちがしんどかったです……
そして現存していたオモニ食堂😭よかった……!あった……!変わらず待っててくれる愛子さん、久しぶりの細野……!でもやっぱり笑い方が変わってるというか、なんかあんまり山本さんの方を見てなかったような……この辺りメモがくちゃくちゃ(文字が重なってて)になってて己の動揺を見ました🥲
配偶者を「ヨメ」って呼ぶ細野かわいいな〜と思いつつ、丸めた千円札をぎゅっと押し付けて出て行くまでの流れが辛すぎました。慰めるでもなく何か言うわけでもなく一緒に時間を共有してくれる愛子さんの存在に私も救われていた沈黙のシーンからの翼くん帰宅。上着こそ赤ですがまんま1999年の山本賢治(19)でかわいい〜!となるやら翼くん〜😭となるやら、感情のジェットコースターでした…… あとで加藤と会話してる時にも思ったのですが、翼くんの敬語の使い方が大変最近の若者感で好きでした。何が違うんだろう…🤔何が最近の若者感なんだろう……
Tumblr media
ふうとうにフッてするんだね… 親父の入院費を中村さんが徴収するシーン。細かい仕草なのですが気になりました。確かに新しい封筒を開いて紙の端を指で支えて、こう、中の空間を広げて……みたいなのをモタモタやるより一発でガッと開くので効率的ですね。完全に現実逃避の着眼点的メモです。
ここで出所祝金を封筒ごと出して全額出す山本さんもしんどみでした😭お守りみたいに持ってる…… (この部分、あとで由香ちゃんが14年間300万円に手をつけなかった部分と重なるなぁと思っていました)
Tumblr media
な…中村さん… おシャブ………………でもいろんな作品見てても「覚醒剤や大麻って儲かるのか〜」と思うので組を守るために背に腹だったのか……と思いつつ、本当に困窮するまで手を出さなかったであろう中村さんの葛藤を思って泣きそうでした🥲
Tumblr media
ひかりのかげんすごいすき 車のライトの前で取っ組み合いする中村さんと山本さんのシーン。足が長い二人がこういう画面で喧嘩すると足しか映らないんだな〜と辛さから逃げる思考をしつつ、画面の中央に車を置かない、全部見えない、どっちがどっちかわからなくなりながら怒鳴って掴んで引っ張って引きずり倒して、という二人の感情の発露を息を呑んで見入っていました。この時どこかのタイミングで月も映ってたと���うのですが、1999年に細野がシャブをすかしてた半月と同じだったりしたのかな……早くもう一回見に行きたい……
Tumblr media
中村さんよかった…やってない… 「そこまで落ちてねぇよ」的なことを言いながら自分のハンチング帽?で山本さんをぺしってする中村さんの仕草に「照れるな」の時と同じホッとする気持ちで気が緩んで泣きそうでした。ちょっと嬉しそうな山本さんの表情に私も嬉しくて…😭
(そういえばFitbitの記録見たら多分大原くんの死から2019年中盤あたりにかけてめちゃめちゃ落ちててすごい落ち込みながら見てたんだなぁと思いました)
Tumblr media
出待ちしがち山本けんじ 韻を踏んでいる😄煙崎市の市役所職員入り口前で由香ちゃんを出待ちしているシーン。最後自宅前でも出待ちしてましたね。 私個人「来るかわからない」「いるかわからない」「会えたところでめちゃくちゃ嫌な顔をされるかもしれない」状態で待つのが辛すぎて無理の民なので、山本さんの忍耐力や相手を想う気持ちの強さに泣きそうになった場面でした。(よくわからないところで泣く系)
月の出ている夕方の海、かつて隣で見た明け方とは異なりこれから暗くなる空の下で会話して、送ってもらってからあの時の血のついたままのお金を持ってくる由香ちゃんのいろいろな気持ちを思うと辛すぎてダメでした………
Tumblr media
キムチチャーハン(うまそう) 現実逃避メモ。お夕飯作ってる娘・あやちゃんが可愛くて可愛くて……😭😭そしてたぶんこれはキムチチャーハンではなくてケチャップライスでした。笑
昨年の『ドクター・デスの遺産 THE BLACK FILE』でも父だった綾野剛さん、今回は「父」としてあやちゃんに接する場面がありませんでしたが、先日公開された主題歌FamiliaのMVでおずおず近づいて抱きしめてくれるあやちゃんに腕を回して抱き返す姿になぜだか救われた気持ちがしました。(歌詞と学生服のあやちゃんが映った瞬間から涙が止まらなくて1日あけてからもう一回見ました)
Tumblr media
オヤジからぬけろって言われるの… 入院した柴咲さんを見舞った山本さんに優しく柴咲さんが「お前はまだやり直せる」と言うシーン。辛かった…
ドラマ『アンナチュラル』5話で鈴木さんがミコトに「何が間に合うの」「果歩はもう死んだ」と返して刃物を握りなおすシーンを思い出しました。 山本さんにとっては何も間違えていなかった、やり直すことはなかったんじゃないかな、と思う反面、妻と自分の子供と静かに暮らすためには「やり直す」必要があったのか……と思うといろいろな感情で諸々ぐるぐるしました🌀
Tumblr media
な…中村さん…… 除籍後、密漁するオジキたちのカットの後で車中で細い注射器で………………おシャブを打つ中村さんのシーン………………………だったと思います……
ハンドルに寄りかかって乱れた髪を手でさらにくしゃっと握りながらメガネがズレるのも構わない様子にめちゃくちゃ……落ち込みました……中村さん……
Tumblr media
謎に上から(笑) 加藤宅でお話ししてるシーンで翼くんがタメ語になる瞬間。この場面でも翼くんはずっと敬語でお話ししていて無用な軋轢を産まないというか禍根を残さないと言うか、処世術的にというか極端に悪い言い方をするなら日和見寄りな部分で現代っ子っぽいな〜という印象でした。あっ最近の若者感ってこれかしら…?
加藤の「時代遅れ」な助言の裏にしっかり見えてる支配欲に笑っちゃいそうな雰囲気が、絶えず続けられる撮影にも現れてるような気がしつつ、意外なところで動揺している様子が意外なようなちょっと安心するような気持ちで見ていました。お父さんのことが気になっていた翼くん……
Tumblr media
く…くまさんカップ……! 工藤宅で朝ごはんを一緒に囲む山本さんがくまさんカップでスープなのかココアなのかをいただくシーン。この穏やかな朝ご飯の空気と山本さんの柔らかい表情をトレーラーで死ぬほど見てはいたので、これ多分後で崩れ去るんだろうな〜のような予想をしつつ色々気持ちの準備とか覚悟とかしていたのですが、まさかくまさんカップとは思っておらず「かわいい」という気持ちで脳がパンクするかと思いました。と言うよりもパンクしまして準備していた覚悟的なものも全部粉砕したのでこの後のシーンのしんどさ全部真正面から浴びてしまって「もうやめて…やめて…」と泣いてました……(好き)
山本さんにくまさんカップを使わせるに至るまでのあやちゃんと由香ちゃんと山本さんのやりとりも考え始めると辛すぎました。かわいい。辛い。かわいい…………ゆるして…もうやめて………(好き)
空色の車で市役所と学校に二人を送るシーン、学校までのちょっとの時間をあやちゃんと二人で過ごす山本さんが愛しくて泣いてました。この辺りずっと泣いてる…… 「最近ママ楽しそうだよ」って言うあやちゃんに穏やかに笑ってる山本さんがもう無理でした。愛しい空気のままここで見終わりたい……と大号泣している自分と、ここからの展開に期待全開で姿勢を正してアドレナリン分泌の大号令を出す自分が同時に存在したので多分このシーンで私の副腎は副腎皮質も副腎髄質も絶賛大稼働していました。
Tumblr media
ありがとうほそのくん… 社長に無理を言って産廃処理工場に勤めさせてくれる細野くん。本当にありがとう……「初めてこいつに感謝したよ」みたいなことを山本さんが笑いながら言うのですがそんなところまで含めてかわいいシーン……………と思っていたら、二人の正面に座る若いの(かみやくん?)が口を開いた瞬間から不安でたまりませんでした。翼くんともまた違う若者口調……
そして場面が変わって翼くんがけつもち?しているお店に大迫が来るシーン。しかし一枚上手の翼くん💪いやここで頼もしい写真の証拠と、さっきのシーンでの記念写真の対比がエグい……
翼くんに一枚取られたのが悔しかったのか、八つ当たりみたいに産廃工場に来る大迫さん。シーンが繋がってたせいか余計そう見えてしまいました。大迫さんへいい感じに負の感情が向いた鑑賞中でした。
そういえば大迫さんもざっくり20年以上刑事を務めているんですよね。ドラマ『MIU404』のガマさんに一瞬思いを馳せていました。ふと思い出すと米ドラマ『The Mentalist』や『NCIS』だと現場に出てくる定年後の刑事ってあんまり出てこない印象があるなぁとも考えていました。『The Mentalist』に至っては『MIU404』の陣馬さんポジションのレギュラーいなかったような🤔ミネリはマメジかな……
「全部終わりだよ」とくずおれる細野、にやつく大迫と山本さんのやりとり、続く由香ちゃんとのシーンはただ呆然と見ていました。目も合わせてもらえないまま「お願いです、出ていってください」と泣かれて土下座されて、敷居を挟んで立ち尽くす山本さん……
ここで気づいたのですが、どのあたりからか山本さんのセリフがどんどん少なくなってってる気がしました。元々しゃべる立ち回りはしない山本さんでしたがますます口を開かなくなって……いたような……
Tumblr media
まばたきもしないでないてるの… 病院にかけつけた山本さんが危篤状態の柴咲さんに「まだ親父って呼んでくれるんだなぁ」と言われてまばたきもせずぽろぽろ涙をこぼすシーン。微笑んで「俺の父親は親父だけです」のように返す声で心臓がぎゅっとしました…
このシーン、不謹慎ですが見入ってしまいました。綺麗だった……
Tumblr media
6組「彩」ってしんどさよ… 転校?の挨拶をするあやちゃんの左奥、教室の壁に大きく貼られたクラスの標語が皮肉すぎました。名前の漢字、あやちゃん「彩」じゃなかったっけ……
このシーン山本さんが事務所から由香ちゃんの携帯に留守電を残すモノローグが入っていて嫌な予感しかしなくてずっと心臓ばくばくしていました。 そして帰宅すると家がからっぽの細野………土砂降り……
そして半グレの仲間達と金属バット持参で傘もささず父の仇のもとへ向かう翼くんと、その時にはもう着手している山本さん。返り血を浴びた表情がまさに背中の修羅そのものでした……担架で運び出されていた大迫はまだ息があったのか否か……
血まみれのまま朝方の堤防でぽやっと煙草を吸って2、3回軽く咳き込む山本さん、バイクの音が3人分聞こえてたような…… そして泣いてる細野……
Tumblr media
このカットがチラシなの!? 心の底から思いました。「ただ、愛した」という短いコピーと薄い空の色にどんな場面なんだろうと思っていたので、ここかぁと胸が熱くなりました。
刺されながら抱きしめて「ごめんな」と返事をする山本さんの体からどんどん力が抜けて、それでも溢れるほどの愛情がそこにあったような気がして息を呑みました。 細野の右頬にべったりと血が残っているのが脳裏に焼き付いています。
そして冒頭の沈む山本さん。海水の中で目を開けて、海面に手を伸ばそうとするような動作をしていたと思うのですが正直泣いててあんまり見えてませんでした。早く次見に行きたい……
後日、大きな白い花束を持って堤防に来てくれる翼くん。山本が吸っていたセッターを一口吸ってから箱ごと供えて立ち去ろうとするとあやちゃんが入れ違いでやってくるシーンがまた最高に好きでした。
Tumblr media
お母さんゆずりのグイグイ…… 翼くんに「あんたヤクザ?」とどストレートな質問を投げかけ、「お父さんってどんな人だったの」と質問を重ねるあやちゃんに、夜明けの海岸で山本さんにグイグイ質問していた由香ちゃんを垣間見て涙腺にきました。その後の翼くんの表情の変遷がまためちゃめちゃ好きでした……
血を分けた家族、血や肉の繋がりを超えた家族、いろいろな家族が描かれる中で、ただ愛した人たちと一緒にいたかった山本さんの人生を時系列で見せてもらえてしばらく放心していました。 幸せは人によって異なり、一緒にいたい人と築く家族の形も世帯の数だけ存在すると改めて思いつつ、山本さんが幸せだった時間も一緒に見せてもらえたことが私にとって幸せでした。
感想何かちょっといい感じの感想で〆たかったのですが全然なにもまとまっていないので月間シナリオ2月号で掲載されているという台本を読みつつ1月29日を待ちます。あと円盤にインタビューやオーコメや未公開映像があったらいいな〜と思いつつ円盤も待ちます。あと今後藤井監督や綾野剛さん・舘ひろしさんをはじめとしたみなさんが今後いろんな媒体でまた『ヤクザと家族 The Family』について言及される機会があるだろうと願いつつ各種媒体おっかけながら生き延びます。生きます。
4 notes · View notes
e-mono · 5 years
Photo
Tumblr media
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ 亀甲のボックスコインケース。 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ボックス型なので小銭が取り出しやすくなっています。 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ #古都印伝 #印伝の柄 #印伝 #日本 #和柄 #革小物 #小銭入れ #コインケース #林吾 #emono #leather #japan #madeinjapan http://bit.ly/2GiIncc
1 note · View note
premierteru · 3 years
Text
[Le sourire] 二つ折り 財布 カード18枚収納 ボックス型小銭入れ 本革 メンズ #Amazon #タイムセール #プレってる
[Le sourire] 二つ折り 財布 カード18枚収納 ボックス型小銭入れ 本革 メンズ #Amazon #タイムセール #プレってる
商品リンク: https://amzn.to/3ahLkHB
View On WordPress
0 notes
Text
【小説】JOKER 第一部
プロローグ
  〈1〉
  深夜零時。
ロレックスに目を落とした緒方進(おがたすすむ)はブリーフケースを手に、生ぬるい海風を受けながら水銀灯の明かりで照らされた新庄市郊外の公園に立っている。
海に面した絶好のデートスポットなのだが、残念な事に交通の便が悪い上に駐車場すらなく、昼間でも子供でさえロクに遊びに来る事が無い。
緒方の両隣りに二人、公園の入り口と四メートル道路に停めたベンツに運転手代わりが一人貼りついている。
全員原色のスーツに金ネックレスならプロ野球選手の夜遊びと言えない事も無いだろうが、広域指定暴力団矢沢組の組員は落ち着いたビジネススーツが常だ。
そしてブリーフケースには二百万円分のメタンフェタミン――覚醒剤が入っている。
取り引き相手は調子に乗っている街の半グレ。
昔で言うストリートギャングだ。
半グレと言っても若者ではない。若い頃にやんちゃをしたがいいが足抜けに失敗し、ヤクザになる器量も無いチンピラだ。
 麻薬が若者に蔓延している、というのは半分正解で半分間違いだ。
 昨今の若造は非正規労働などで麻薬に金を渋るどころか、タバコにさえ金を落とさない。
 麻薬を使っているのは女を薬で縛って風俗で働かせるか、末端の構成員を薬で縛り付けるかのどちらかだ。
 スポーツ選手や芸能人は大金を落とすが、それは表沙汰にしない為の口止め料としての意味合いが強く、普通に流通している薬はそこまで高くない。
 そんな価格設定をしたら麻薬依存症患者は年収五千万円以上に限られてしまうだろう。
 そしてスポーツ選手や芸能人などの成り上がりはともかく、そんな高所得者は基本的に麻薬など嗜む事は無い。
 麻薬というのは貧乏人を貧乏人に縛り付け、思うがままに操る道具なのだ。
 緒方がそれでも月収に相当する額のブリーフケースの重みを感じていると、年甲斐もなくスウェットを来た男が軽のワゴンで公園に乗りつけた。
 逆向きにかぶった野球帽はヤンキースなのに、スウェットはボストン大学という統一性の無い男の後ろに三人の若造が続く。
 間違いなくアメリカのストリートギャングを意識しているが、残念ながらエミネムにもJAY-Zにも見えない。
 オーバーサイズの服をだらしなく来た日本人だ。
「緒方さん、金持って来ました」
 ヤンキース帽がポケットから雑に札束を出して見せる。
 それでクールだと思っているのだからタチが悪い。
「ブツはある」
 緒方が顎をしゃくると若い衆がヤンキース帽の札束を確認する。
 帯どめしてある訳でもなく、おおよそでしか金額は分からない。
 しかし、金額が違っていれば差額を血肉で支払う事になる事はヤンキース帽も理解しているだろう。
 若い衆がざっと金を数えた所で、水銀灯の下にトレンチコートの男が忽然と姿を現した。
 紫色のどぎついトレンチコートに西洋風のピエロのマスク。
「ハッピー、ハロウィーン」
 おどけたような合成音声が響いた時、緒方は背筋から嫌な汗が滲むのを感じた。
 遭遇するのは初めてだが、ヤクザや半グレをターゲットにしたハッピートリガーの噂は緒方も聞いた事がある。
 トレンチコートに突っ込んだ手が引き抜かれた瞬間、銃声と共に足下と背後の遊具で火花が爆ぜる。
「緒方さん!」
 若い衆の一人が銃を抜いてピエロ――ジョーカーに応戦しようとする。
 ジョーカーのトレンチコートが開いて、内側から映画でしか見た事の無いショットガンより大振りな銃器――グレネードランチャーが姿を現す。
「ハロウィーン? 失敬、まだ五月だ」
 ジョーカーのグレネードが火を噴くと同時に地面が爆発して公園に身体が投げ出される。
 半グレがへっぴり腰で公園の外に出ようとした瞬間、ジョーカーのもう一方の手に自動小銃が握られていた。
「屋根よぉーり高い、鯉のーぼーりー」
 自動小銃が瞬き、公園の出口付近に無数の弾丸がばら撒かれる。
 隙を突いて緒方は裏手に停めたベンツに向かって走る。
 初対面とはいえ、こんな火器を狂ったように撃ちまくる狂人を相手になどしていられない。
 自動小銃が向きを変え、ベンツの防弾ガラスに傷が穿たれる。
 それでも緒方がベンツに戻る間に、半グレの連中は軽のワゴンに向けて疾走している。
 ジョーカーのグレネードがベンツに向けられる。
 助手席に転がり込んだ緒方は叫んだ。
「出せ!」
 猛スピードで走り出すベンツをジョーカーは追って来なかった。
 緒方はあの猛烈な砲火の中、生き延びた事を奇跡のように感じていた。
  〈2〉
   午後八時。
 没個性的なダークスーツに身を包んだ三浦清史郎(みうらきよしろう)は新庄���駅前にある新庄商店街の場末のバー『サイレントヴォイス』を訪れている。
 新庄市は首都圏のベッドタウンとして栄えている太平洋に面した、人口八十万の町だ。
 駅前の商店街では二百を超える店舗が活況を呈しており、湾岸という事もあり工場地帯も存在する。
 耳に心地よいJAZZが流れる中、清史郎がショットを二杯開けた所でパリッとしたスーツを粋に着こなした慶田盛弁護士事務所の慶田盛敦(けだもりあつし)が現れた。
 互いに若手と呼ばれる頃に知り合い、今では二十年の付き合いになる。
「待たせたようだな。今幾つか案件を抱えていてね」
 慶田盛弁護士事務所は警察の冤罪事件を扱う事で、その道では知られている弁護士事務所だ。
 日本では警察が立件した裁判では99%の確率で検察が勝利している。
その検察がでっち上げたものを、証拠を積み上げ無罪に、更には真犯人を警察に突き出して解決する。
 それが慶田盛弁護士事務所の仕事であり、清史郎の三浦探偵事務所は裁判の為の情報である事件の調査依頼を受けている。
 売れ筋である浮気調査などはしていない為、懐には常に隙間風が吹いている。
「最近はこっちも忙しくてね」
 清四郎はスコッチを注文した慶田盛とグラスを合わせる。
 『サイレントヴォイス』のマスターは、以前ヤクザに恐喝されていた所をジョーカーに扮して助けたという経緯がある。
 もっとも通い続けて十五年だから隠す事もありはしない。
 気のおけない古い友人のようなものだ。
「吉祥寺の死体遺棄事件の件は進展はあったのか?」
 吉祥寺の死体遺棄事件とは、富山純也二十五才宅で、川上千尋二十二才が自傷行為で死んでいたというものだ。
 死後二日後に近所の人間に通報された事から、警察は富山を死体遺棄事件の容疑者として逮捕。書類送検した。
 富山は無罪を主張し、慶田盛弁護士事務所に泣きつき、慶田盛が三浦探偵事務所に調査を依頼したのだ。
「川上は富山と同棲していた。富山の証言では自傷行為など考えられない」
 同棲していた富山が被害者の死亡時に出張で家を空けていた事はアリバイとして記録に残っている。
「それは本人から直接聞いている」
 慶田盛の言葉に清史郎は頷く。
「川上は都内の建築会社で事務をしていたが、実は裏で足つぼマッサージをしていた。これは歩合給で明細書も無い手渡しだ。小遣い稼ぎには丁度良かったんだろう」
 清史郎は店舗の写真を慶田盛に見せる。
 富山も都内の広告代理店に勤務していたが収入はお世辞にも良いとは言えず、川上としては将来を考えても副収入が欲しかったという所だろう。
 その辺りの事情はマッサージ店の同僚から聴取住みだ。
「富山は言っていなかった。どうやって調べたんだ」
 慶田盛が驚いた様子で写真を手に取る。
「足で稼いだんだよ。で、マッサージ店には川上に執着している、大野正則という客がいた。この男は二十歳でコンビニでアルバイトをしていたが、その給料のほとんどをマッサージ店の指名につぎ込んでいる」
 清史郎は大野と、彼がコンビニで働いている写真を見せる。
 大野という男が川上に執着し、横恋慕していた事は他の店員からも話が聞けている。
「じゃあ、そいつがストーカー化して川上を殺したのか?」
 やりきれないといった様子で慶田盛がスコッチに口をつける。
「このコンビニには別に野原椎名という二十五才のアルバイト店員がいる。この女は大野と交際していると公言しており、ストーカーの気質もあるようだ。大野は全面的に否定しているけどな」
 清史郎は野原と、野原が大野を尾行している写真をカウンターに乗せる。
 追っている者は追われている事は忘れがちなものだが、大野が川上を付け回し、その大野を野原が追い回していたという訳だ。
 そして道ならぬ恋に破れた野原は凶行に出た。
「じゃあ、野原が大野と川上の関係を勘違いして……」
 話を整理するようにして慶田盛が言う。
「川上の切創は手首と腕に集中している。これは自傷行為というより防御創だ。更に他に傷跡も無い事から自傷行為の常習という事も考えられない。仮に大野が殺したとするなら、体格差から刺殺になった事だろう。つまり傷跡から考えても同程度の体格の相手から切り付けられたと考えないと成立しないんだ」
 警察から入手した傷跡の写真には古い傷跡は一つも無い。自傷行為が常習性を持つという事を考えれば自殺の線は消えたと考えていい。
「川上は外に助けを求めに出ようとは思わなかったのか?」
「手のひらも切られていたんだ。普通の神経ではドアノブを握る事もためられただろうし、本人も富山が帰ってくれば助かると思ったんだろう」
 富山は残業や出張が多く、帰宅時間は一定していなかった。
 富山が出張を被害者に伝えていなかった事も証言から明らかになっている。
 清史郎は資料の束を慶田盛に渡す。
「毎度仕事が早くて助かるよ。これで検察の容疑を晴らして真犯人を起訴できる」 
 慶田盛が満足そうに言う。探偵業をしていて良かったと思える一瞬だ。
「で、娘の学費の件なんだが……」
 清史郎は慶田盛に話を切り出す。
 大学を卒業してすぐに結婚し、娘ができて半年と経たずに妻が離婚を申し出た。
 不倫である事は分かっていたが、彼女の名誉の為に黙って養育費を受け入れた。
 とはいえ、慶田盛弁護士事務所の依頼者の多くは金銭的に厳しい者が多く、その仕事を更に下請けする三浦探偵事務所の実入りはとても良いとは言えない。
 一年で五十件の冤罪事件を解決した年もあったが、その年の収入でさえ四百万を少し上回る程度だったのだ。
 テナント料と養育費を払ってしまえば食費もロクに残らない。
 半ば商店街の好意で事務所を置かせてもらっていると言っても過言ではない。
 そしてようやく養育費を払い終わったと思ったら、元嫁が娘の学費を請求して来たのだ。
 慶田盛いわく法的には支払いの義務は無いとの事だが、娘を大学に進学させてやりたいという思いはある。
「示談にするのが一番じゃないか? 向こうも本気で学費を巻き上げられるなんて思ってない」
「敏腕弁護士が中途半端な事を言うじゃないか」
「君の元奥さんは金が欲しいだけで最初から娘を大学に行かそうなんて思っていない」
 慶田盛の言葉に清史郎は石を飲んだような気分になる。
「私が支払うと言えば嫌でも大学に行かせなくてはならなくなるだろう」
 元嫁に対する愛情など欠片も無いが、娘に対する愛情は残っている。
「そんな金が君のどこにあるって言うんだ。夕食を場末のバーボンで済ませる男の食生活がこれ以上荒むのは見るに堪えない」
 慶田盛の言葉に清史郎はため息をつく。
 確かに慶田盛の言う事に間違いは無い。
 ――あの女のせいで自分も娘も……――
 ジョーカーとして稼いだ金を出せば解決可能だが、帳簿に乗らない金を出したなら国税局に乗り込まれる事になる。
 結局私生活は何一つ変わっていないのだ。
「しばらくしたら仕事の量を増やすさ」
 ジョーカーを演じ始めたのは与党と矢沢組が推し進める新庄市再開発計画を阻止する為だ。
 その行方を占う知事選挙が四か月後に控えている。
「もう歳なんだ。いい加減町を騒がすハッピートリガーなんてやってられないだろう」
「これはそこいらの冤罪なんてモンとは次元が違う。新庄市に生きる人々の生活がかかっているんだ」
 清史郎が言うと慶田盛が苦笑する。
「相変わらず正義感だけは人一倍だな」
「皮肉を言うならお前も大手の弁護士事務所に転職したらどうだ?」
 清史郎の言葉に慶田盛が笑みを浮かべる。
「それこそ真っ平だ」
 清史郎は笑みを交し合うとグラスの底に残ったバーボンを飲み干した。
 慶田盛も自分も世間で言う所の真っ当な大人にはなりきれていないのだ。
  〈3〉
   今年で二十七才になる円山健司はマンションの部屋のボタンを適当に押していた。
『はい、どちら様ですか』
「amazon様からの御届け物です」
 本物のamazonの箱を抱え、配達員の服装をしているのだから疑う者も無いだろう。
 ――注文客以外は――
 マンションのオートロックをパスしようと思ったら、住人について行くのが一番手っ取り早い。
 しかし、それ以上に手堅いのが郵便物の配達員になりすますという方法だ。
 amazonであればほとんどと言って良い人間が利用しており、世帯主では無くてもファミリー向けマンションなら家族が注文している可能性もある。
 そしてオートロックをパスしてしまえば、実際にその部屋にものを届ける必要など無いのだ。
 健司はオートロックをパスすると非常階段で配達員の服装を箱に収め、ビジネススーツに身を包んだ。
 どこに居ても違和感を感じさせないという点で、ビジネススーツはほぼ最強のアイテムと言える。
 健司は時刻が二十二時になるのを待って、十四階の廊下にクリスマス用のランプを天井から垂れ下がるように飾り付けた。
 全て両面テープで一瞬で剥がせるようにしてある。
 更に待つ事一時間、程よく酔ったスーツ姿の男がエレベーターから出て来る。
 健司は息を飲んで男の背後につけ、クリスマスの飾りつけを一斉に点灯させる。
 男の胡乱な目と意識が飾り付けに向いた瞬間、健司は男の両足を抱えるようにして廊下から外に向かって放り出していた。
 悲鳴を上げる間���無く、鈍い音が階下から響く。
 八階以下なら死亡の確認も行うが、十四階で生きている事はまず無い。
 飾り付けの一方を引っ張って仕掛けを回収し、箱に収めてエレベーターで悠々とマンションを後にする。
 明日には会社員自殺の報が流れるかも知れないし、流れないかも知れない。
 いずれにせよ、目的を果たした健司は『殺し屋』へと足を向けた。
 『殺し屋』は歌舞伎町の風俗ビルの一室にある。
 夜更かししてまで仕事をする気は無い為、殺し屋と書かれた看板の電源を入れ、のれんをかけるのは明日の朝九時になってからだ。
 ボックス席が二つにカウンターが六脚。
 お品書きには殺し方のメニューが書かれている。
 客はその中から死因や死体の放置の有無などを選択し、健司は見積もりを出してターゲットを殺す。
 ごくごくシンプルなビジネスだ。
 今日のターゲットはヤクザに貸し渋りをした銀行の支店長で、死因は自殺で死体は放置で良いという事なので仕事としては楽なものだった。
 とはいえ、調査に四日かけて二百万の報酬。
 ヤクザが稼ぐ額に��べれば雀の涙だが、踏み倒される事を考えれば前払いでささやかに仕事をする方が余程いい。
 殺し屋も楽な仕事ではないのだ。
  〈4〉
   渋谷のクラブ『クイーンメイブ』で、三浦清史郎は所在無げに立っていた。
 本日のDJはKENこと前田健だ。
 アップテンポのR&Bと若い男女の支配する空間で、中年の疲れたサラリーマンといった体の清史郎は明らかに浮いている。
 健がボックスのVIP席を用意してくれているが、一人でそんな所に座っていても落ち着かないだけだ。
 健の��フォーマンスが一段落した所で、清史郎は二十歳過ぎのTシャツにデニムのショートパンツといった服装の女性に声をかけられた。
「ジョーカー、何疲れてんの?」
「仕事とここの空気のダブルパンチだ」
 声をかけて来たのは長い髪を茶色に染めた飯島加奈というコンビニの店員だ。
 快活な女性で、見ている限り店長より仕事をテキパキとこなしているように見える。
 仕事さえ違えば有能なのかも知れないが、このご時世では仕事があるだけでも儲けものだ。
「ノれば楽しいって」
 加奈がしなやかな身体を動かしてダンスらしきものを踊って見せるが、清史郎には真似をする事もできそうにない。
「俺の頃、ダンスは学校の授業に無かったからな」
 清史郎はカウンターでアーリータイムズを注文する。
 酒屋ではボトルで買っても千円程度なのに、クラブではショットで四百円取られるのだから暴利もいい所だ。
「私の頃だって無かったってば」
 加奈がカシスオレンジを注文しているとパフォーマンスを終えた健が近づいて来た。
「どォよ、俺のパフォーマンスはよ」
「毎度疲れるよ」
 清史郎は肩を竦めて答える。
「釣れねぇ態度、クイーンはどうだった?」
 健が加奈――クイーンに話題を振る。
「いいんじゃない? ここではナンバーワンなんでしょ?」
 楽しんではいたが加奈もDJの良し悪しは良く分かっていないようだ。
「だろ? 俺、最高にクールだったよな?」
 言って健がスクリュードライバーを注文する。
 健だけは店舗でDJをしている為にドリンクが無料だ。
「センスがいいのは認めるけど、ここのクラブで一番でも他所で一番って事にはならないから」
 ぴしゃりとした口調で加奈が言う。
「これだけで食っていけるとは思ってねぇよ」 
 悄然とした口調で健が肩を落とす。
 DJを優先している為、不規則な生活の彼は普段は日雇いのバイトをしている。
 全員が飲み物を手にした所でダンスフロアを横切ってボックス席に向かう。
「に、してもよジョーク、昨日のヤクザ連中のビビりっぷりは最高だったな」
 楽しそうな口調で健が合皮のソファーに腰を下ろす。
「エースは機械いじってただけでしょ? 仕込みをしたのはあたしとジョーカーなんだから」
 加奈が健――エースを叱責するような口調で言う。
「俺は俺で神経使ってんだって。第一お前らだけじゃWi-Fiのクラッキングもままならねぇだろ」
「その危険地帯にジョーカーが踏み込んで機材を仕掛けてるんじゃない」
 清史郎はITに関しては門外漢だが、昔ながらの盗聴や盗撮、ピッキングといった技術は職業柄身につけている。
 しかし、大手の情報企業と契約していない為、早いという利点は存在しない。
 現在一般的な興信所は大手情報企業と契約しており、端末の通信履歴からクレジットの支払い履歴まで二十万円から六十万円でパッケージで購入している。
 ETCの履歴まで買えるのだから、全て現金で賄い、更に携帯電話もスマートフォンも持たないので無ければ市民の生活は筒抜けだ。
 だが、情報企業に頼るという事は、利害が密接に絡んでいる対象を調査できなくなるという事も意味している。
 従って検察を敵に回している清史郎は情報企業を利用できないのだ。
 その清史郎がジョーカーという仕事をするに当たって健をスカウトしたのは、単にDJは複雑な機材を器用に使っているという思い込みだけだった。
 最初はヤクザに嫌がらせをするただの乱射魔演出という構想だったのだが、健のITスキルが想像以上に高く、健の元同級生で実務能力に長けた加奈が加わり、神出鬼没のハッピートリガー、ジョーカーが誕生する事になったのだ。
「そこはWINWINじゃね? 俺の真似は二人ともできないんだろ?」
 勝ち誇った様子で健が笑みを浮かべる。
「現金回収したの私なんだからね」
 封筒を手にした加奈が健に向かって言う。
昨夜のヤクザの取り引きでジョーカーが登場した時、どさくさに紛れて半グレの落とした金を拾ったのは加奈なのだ。
「で、幾らになったんだよ」
「がっつかないの。バラけてたので百十一万。ジョーカーが三十一万でいいって言ってるから四十万」
「あざーっす!」
 健が笑顔で加奈から封筒を受け取る。
「に、してもボれぇよな。俺なんて一日工事現場で働いても七千円だぜ」
「私だって八時間みっちりシフト入って八千円行かないんだから。あんたは税金の天引きが無いだろうけど、私はガッツリ取られるんだから」
 加奈が小さくため息をついて言う。
「私は確定申告で青息吐息だよ」
 清史郎は苦笑を浮かべる。
 本業の探偵は労力の割に儲かっているとは言い難い。
 その中で臨時でも帳簿に乗らない収入があるのはありがたい事だった。
「ジョーク、辛気臭ぇ話は無しにしようぜ! 今日は俺のおごりだ」
 健がバーテンにボトルを注文する。
 ――今日の所は好意に甘えておこう――
 清史郎は明日から始まる地道な仕事に思いを馳せた。
   第一章 殺し屋VSジョーカー 
  〈1〉
  「まさかお前まで手玉に取られるとはな」
 純和風の邸宅の四十畳ほどの上座から、矢沢組組長矢沢栄作の声が響く。
 矢沢は東大出身で大手の組の金庫番をしていた経済ヤクザだったが、手腕を見込まれて盃を受けて新庄市を任された男だ。
 大型カジノ施設と契約し、建設費用だけで二千億円を超える大規模開発事業に着手。
 地域活性を謳ってケツモチをしている与党の知事を、市民公園を作ると言って与党の市長を当選させ、財務局を握って人口八十万程度の町である新庄市の経済活性としてカジノ施設を呼び込む段階まで運び込んだ。
 しかし、新庄市には古くからの商店街があり、カジノ施設に一斉に反対。
 この動きを野党が連合して支援した事で、矢沢組の工作虚しく市会議員選挙でまさかの野党大勝与党過半数割れとなった。
 そこで組として商店街に圧力をかけ、一方で麻薬や売春で治安を悪化させて風紀を乱すという策に出た。
 そこに商店街からの刺客のように出現したのがジョーカーだ。
 従って、今回の取り引きでたかだか百万程度の損失を出した事は問題ではない。
 手足となる半グレが震えあがり、商店街が盛り返してしまう事の方が問題なのだ。
 ジョーカーは確実にドラッグか銃のある時にしか出現せず、空取り引きで警察を使って捕えようとしても決して出て来ない。
 支配下にある警察でも公安とマル暴がジョーカーを追っているがかすりもしない。
「完全に俺の失態です」
 緒方は畳に額をこすりつける。ジョーカーが来るかも知れないと備えていても、圧倒的な火力を見せられて対応できる組員など存在しなかった。
「お前で駄目なら誰が行っても同じだろう。幸いヤクは複数のルートでさばいている。一か所の取り引きが潰れたくらいでプランに変更は無い」
 矢沢の言葉に緒方は頭を下げ続ける。
 ジョーカーに遭遇すれば十中八九取引どころではなくなるし、組員の士気の低下につながるだろう。
 しかも、ジョーカーの正体はまるで分らない。
 ヤクザが取引の現場に発砲魔が現れたと被害届を出せば、警察と幾ら緊密な関係にあるとはいえジョーカー逮捕の前に麻薬取引や銃刀法で御用となる。
 警察が味方と言っても、捜査させる理屈が見つからないのだ。
 従って、科捜研を動かしてジョーカーを特定するという事もできない。
 かと言って、ジョーカーらしき人物は大手の情報企業のデータベースにも存在しない。
 そもそも個人が特定できていないのだから、企業から情報を購入しようが無い。
「カジノ施設反対派は金で分断しろ。一億二億なら建設の際に財務局の法で水増しできる」
 矢沢の言葉を緒方は脳裏で反芻する。
 これは緒方の裁量で動かして良いのが二億円程度という話だ。
 商店街含め、新庄市でカジノ施設に反対している事業者は七百に上る。
 二十万円づつ配ったところで効果は見込めないし、家業と住み慣れた町を捨てさせるには最低でも二千万は必要になり、十人買収したところで七百の事業者から見れば雀の涙だ。
 二億という金をどう効果的に使うか。
 麻薬の売買で風紀と治安を乱そうとしたところで、商店街が機能して失業者も少ないという環境にあっては大きな効果を見込めない。
 警察は見逃してくれても市民に監視されているようなものなのだ。
 ――いつまでもこの状況を引き延ばす訳には行かない――
 半年後の知事選で知事が敗れ、反対派の知事が誕生すればカジノ施設誘致契約が破談となり、二千億を超える金が利益ではなく損失として計上される事になるのだ。
 それは矢沢組の滅亡を意味していた。 
 
 〈2〉
   午前八時半。
 『殺し屋』に出勤した健司は店舗の掃除を始める。
 明るく綺麗な店舗は客商売の基本中の基本だ。
 『殺し屋』を訪れる客は決して多くはないが、だからと言って手を抜いて良い理由にはならない。
 風俗ビルの一室というどうにもならない立地上の限界はあるにせよ、一国一城の主として近隣の風俗店や飲食店と比較して店舗が清潔かつ快適であるという自負がある。
 カウンターとボックス席を磨き上げ、店の前に出した看板の電源を入れて暖簾をかける。
 健司はカウンターの中で客の訪れを待つ。
 健司が『殺し屋』を始めたのは大学卒業から四か月が過ぎてからだ。
 在籍中に内定を取る事ができず、無職のまま卒業を迎えて露頭に迷う事になった。
 住んでいたアパートも追い出され、頼ったのは風俗嬢になった同級生。
 働いているという店舗を訪れ、偶然奥のテナントが空いているのに気付いたのだ。
 幸運な事に鍵は開いたままで、住む所の無かった健司はそのままそのテナントを利用する事にした。
 しかし、いつまでも居座る訳にも行かず、就職する必要があったが卒業した後では求人がほとんど無かった。
 そこでテナントを利用して自営業を始めようと考えたのだ。
 偶然町で見かけた『冷やし中華はじめました』という張り紙をヒントに、テナントのドアに『殺し屋はじめました』というビラを貼ったのだ。
 それまで人間を殺した事は一度もなかったが、どんな仕事にも初めては存在すると割り切った。
 最初の客は風俗ビルで働く風俗嬢だった。
 ターゲットはストーカー化した客。
 苦労はしたものの、一か月で痕跡を残さずに殺す事に成功した。
 以後、口コミで話題となり、多くの人が『殺し屋』を訪れるようになった。
 依頼を二百もこなす頃にはだいぶ勝手が分かってきて効率的に殺す事ができるようになってきた。
 四年が過ぎた今ではオプションサービスも充実させ、店もリフォームした。
 今では年収一千万を超えている。
 ヤクザに比べればささやかなものだが、悪事を働いているわけではないから商店主としてはこの不景気にあって良い方ではないかとも思っている。
 健司がカウンターに立っていると、一���の客が暖簾をくぐった。
「いらっしゃいませ! ご注文がお決まりになりましたらお申しつけください」
 言って冷茶を注いだグラスをカウンターに座ったビジネスマン風の男の前に出す。
 男がお品書きを見て目を細める。
「殺しの注文というのは相手の氏名が分からないと無理なのか?」
「素行調査であれば興信所を使われるのが一番です。当店では速やかな仕事を心がけておりますので本業以外の仕事は見合わせております」
 健司は男の様子を観察する。一見するとビジネスマンに見えるが、作り笑いに慣れていない、否、笑わない職業である事が見て取れる。
 能面のような顔の裏に押し殺した暴力的な雰囲気は、警察か暴力団員かそれに近い者だろう。
「前金で二千万」
 男がにこりともせずに言う。
「当店は誠実がモットーでございます。確実に殺せないターゲットをお引き受けする事はできません」
「それなら総理大臣でも殺せるのか?」
「名前と住所どころか一日のスケジュールまで手に入りますから、さほど難しく無いターゲットだと考えております。ただし知られている通り警備も厳重ですから時間も必要となり費用も高くなります」
 健司が言うと男が低く唸る。
「総理大臣でも不可能ではないと?」
「もちろん、オーダーが首つり自殺などですと難しい案件にはなります」
「首つり自殺は難しいか……面白い事を言う」
 男の口元に小さな笑みが浮かぶ。
「二千万はターゲットの調査費用という事でどうだ? 成功報酬は四千万」
 健司は小さく息を飲む。
 金払いがいい相手である事は確かだが、それだけの力の持ち主でもあるという事だ。
 ――失敗すれば命は無い――
 しかし、ヤクザを敵に回せばテナントから追い出されるだけでは済まないだろう。
「繰り返しになりますが当店は殺し屋でして、興信所ではありません。ターゲットの補足は素人のようなものです。その二千万円でターゲットを補足されましたら確実に殺させていただきますが、二千万円を頂いてもターゲットを補足できるとは限りません」
「二千万を手に高跳びとは考えないのか?」
「飛んだ先で失業すれば同じ事です。地域の皆様に愛される店づくりが当店のモットーです」
 健司の言葉に男が破顔する。
「俺は矢沢組の緒方。二千万はここに置いていく。ターゲットはジョーカーと言われている銃の乱射魔だ。俺はお前が気に入った」
 言って冷茶を飲み干した緒方が席を立つ。
 ――これは大変な事になってしまった――
 健司はジョーカーという謎の相手を探るために、出したばかりの看板と暖簾を引っ込めた。
  〈3〉
   午前五時。
 健は薄汚れた作業服を着て、年季の入った肉体労働者の列に混じっている。
 ホームレスも珍しくないが、ホームレスでもとび職になると一日に二万円以上稼いでホテルに泊まっていたりするから、定住しないのは税金対策といった事情が大きいだろう。
 午前六時半、一台のワゴンが健の前に停車する。
「おい、若ぇの、乗れ」
「うぃっす」
 筋肉隆々といった古参の肉体労働者に囲まれていると既にやる気が萎えてくる。
 労働者ですし詰めのワゴンで移動する事小一時間、朝日が白々と空を照らす中健は自分には一生縁の無さそうな高級マンションの現場にいた。 
 現場監督のどうでもいいような話に続き、ラジオ体操をさせられる。
 眠いだけならまだいい、ラジオ体操が終わってからが地獄だ。
「コンパネ運んで来い! トラック入れねぇじゃねぇか!」
 自分に向けられた言葉と気付いた時には、組まされるらしい土工の目が険悪になっている。
 男がコンパネと呼ばれる90cm×180cmの板を十枚程抱えて通用口に出ていく。
 健の腕力では精一杯頑張った所で三枚だ。
 この板を敷いてその上をトラックが走れるようにするのだが並べるだけでも容易ではない。
 健はもともと運動神経が良い方ではない。
 高校では情報科学部でLinuxを使用してITの全国コンテストで優秀賞を手にした生粋のインドア派だったのだ。
 PCの扱いと音楽好きなのとでDJには一定の技術も知識もあったが、一般科目では赤点スレスレで奨学金がもらえるような成績でも無かった。
 そんな中、PCを触れて音楽もできるDJという職種を選んだ。
 しかし、一晩パフォーマンスをしても六千円程度にしかならないし、他にもDJはいるのだから毎日入る事などできはしない。
 従って一人暮らしのワンルームの家賃を払っていく為には、DJの仕事を妨げない、時間にゆとりのある職業に就くしかなかった。
「チンタラ運んでんじゃねぇ! 三枚しか運ばねぇってタマついてやがんのか」
 年配の作業員がヤニの混ざった唾を吐き捨てる。
 健が運んだコンパネをトラックの通路に並べていると、いら立った様子の作業員が近づいて来る。
「シャベル持って付いて来い」
「シャベルってどこにあるんスか?」
「ふざけてんのか! テメェで見つけろ! 遅れたら承知しねぇからな」
 健は屈辱にも似た気分に耐えながら、建設現場をうろついて乗ってきたワゴンでシャベルを見つける。
 今日拾われた工務店はどうやらマンションの裏手に穴を掘っているらしい。
「ここに管通すんだからな、掘れたら石詰めだ」
 幅は四十センチ程、深さは六十センチは掘らなくてはならない。
 総延長は二十メートルにはなるだろう。
 小型のユンボを使って欲しいが、既に他の管と入り組んでおり不可能らしい。
 配管の順序が逆になるという事は設計ミスの可能性も高いだろう。
 健はだるくなる腕を支えるようにして必至でシャベルで穴を掘る。
 要領の良し悪しなど分からない。分かるのは掘らなければ怒号と罵声が飛んでくるという事だけだ。
 昼過ぎに作業が終わったと思いきや、
「ネコでガラ片付けて来い」
「ネコって何っスか」
 反射的に首を竦めながら健は尋ねる。
「手押しの一輪車だ! この使えねぇボンボンが……」
 健は奥歯を噛みしめながらネコを探して歩きまわる。
 ネコを見つけてもガラ運びという重労働が待っている。
 健は暗澹とした気分で工事現場を歩き回る。
 ――俺だってジョーカーの一員だってのに―― 
  〈4〉
  「暑っつ~い! ったく、エースのヤツ今日は土建屋だなんて……」
 加奈がマイナスドライバーで水銀灯にへばり付いたガムを剥がしながら言う。
 ガムの中には火薬と小さな信管が仕込まれている。
「休みがお前だけだったんだから仕方ないだろう」
 清史郎はシャベルで地面に埋まった火薬を穿りながら言う。 
 乱射魔ジョーカーには秘密がある。
 それは実際にはモデルガンしか持っていないということだ。
 そこで、予め花火で集めた火薬をセットしておき、ヤクザが商売をしようという所で爆破して妨害する訳だ。
 モデルガンには赤外線カメラが搭載されており、Bluetoothで健の端末とつながっている。
 清史郎が引き金を引くと同時に健が火薬にセットされた信管を反応させ、銃撃のように見せかけているというだけなのだ。
 だからグレネードランチャーの爆発と言っても、実際には大きな花火が地面の下で爆発しているだけで殺傷能力など存在しない。
 とはいえ、撃たなかった方向にも埋め込んだ火薬はあり、子供などがうっかり触って怪我をしてしまう可能性もある。
 従ってジョーカーとしての仕事の後は必ず後始末が必要になるのだ。
「まぁ、ジョーカー一人に炎天下で作業させるわけにも行かないし。歳だし」
 加奈の言葉に清史郎は苦笑する。
 加奈と健は二十一歳だが、清史郎は四十五歳だ。
 肉体的に無理のきかない歳という事は重々承知の上だ。
 炎天下でひたすら火薬を撤去する事四時間。
 仕事を終え、加奈と一緒にたこ焼き屋の店先で麦茶を飲む。
 近年おおだこが当たり前になっているが、清史郎が行きつけにしている昔ながらのたこ焼きはピンポン玉より少し小さい程度で味も良く、言えば店のおばちゃんが麦茶を出してくれるというサービスがついてくる。
「おばちゃん、最近ヤクザはどうだい?」
 清史郎は店主兼店員の初老の女性に声をかける。
「あんたに相談したらそれっきりだよ。派手なドンパチがあったみたいだけどね」
 おばちゃんの言葉に清史郎は笑顔を返す。
 警察や興信所に相談してもヤクザ絡みの事件は解決しないが、しがらみの無い三浦探偵事務所とジョーカーなら不可能も可能になるのだ。 
 商店街や商工会の中でも事情は不明だが、清史郎に依頼をすればヤクザが引っ込むという都市伝説めいた話が広がっている。
 だが、あまりに知られ過ぎると清史郎がマークされ、ジョーカーを出現させられないという事になる。
 従って三浦探偵事務所は慶田盛弁護士事務所とは緊密な関係にあるが、地元の商店街とは付かず離れずの関係を続けているのだ。
 加奈と一緒にたこ焼きを食べているとスマートフォンが着信を告げる。
 健が清史郎が仕掛けた無線wifiのクラックシステムで、ヤクザの新たな取引を察知したのだ。
 ――健が稼ぎたがるのも分かるがな――
 火薬を調達し、設置し、身体を晒す身としては、ヤクザが本腰を入れない為にもジョーカーの出番は抑えておきたいところだった。
  〈5〉
   健司は朝のラッシュアワーで意図的に駆け込み乗車に失敗した。
 健司に乗車を妨害された形のスーツ姿の男性が、苛立った様子で最前列に立つ。
 山手線の次の列車が来るのは四分後だ。
 健司はポケットからsimフリーのスマートフォンを取り出す。
 simフリーではあるがsimも入れていなければ、個人情報にかかわる情報も一つとしてインストールしていない。
 健司はスマートフォンを操作するフリをして考える。
 ジョーカーは新庄市から出ていない。
 矢沢組から健司の得た情報は散文的なものだった。
 ヤクザが取引をしようとする、もしくは刀や銃で武装した状態で市民を脅そうとする。
 ヤクザが警察に通報できない時に、狙ったようにジョーカーが出現している。
 単純に考えて情報が筒抜けになっているという事だろう。
 乱射魔と支離滅裂な口調という仮面が狂人を作り上げているが、警察を巧みに避けている事からもジョーカーが充分過ぎる程に理性的な人物である事が分かる。
 相手は狂気の人間ではない。恐ろしい程の知能犯だ。
 健司は矢沢組から入手したドライブレコーダーの映像を繰り返し『殺し屋』のカウンター内のPCで再生した。
 ヤクザが出ていき、しばらくして銃火がひらめき、慌てふためいたヤクザが逃げてくる。
 どの映像も流れは同じだ。ヤクザがドライブレコーダーを使っているというのは不思議なものだが、ヤクザも交通事故では警察の世話になりたくないという事だろう。
 ジョーカーの紫のトレンチコートとピエロの仮面にはモデルが存在する。
 アメコミ最高の悪役とも言えるバットマンに出て��るジョーカーだ。
 相手の頭脳から推し量ってもそれくらいの事は分かってやっているのだろう。
 敵を混乱させるという意味ではジョーカーは最高の仕事をしていると言っていい。
 では、ジョーカーの行動にロジックは存在しないのだろうか。
 その最大の理由は新庄市に活動を絞り、矢沢組と戦っているという点に存在するだろう。
 ジョーカーの動機が判明すればその正体を絞り込めるはずだ。
 健司の後ろに列ができ、周囲が人垣と言っても良い程になる。
 ほとんどの人が急いでいるかスマートフォンを操作している。
 毎日このような息苦しい思いをするのが分かっていて、どこの会社も出社時刻を一緒にしているのか謎だが、このような状況が起きる事で仕事を円滑に進められるのも事実だ。
 駅のホームは渋谷のスクランブル交差点のように混雑しており、点在する監視カメラからも死角になっている。
 列車が見えた所で健司はsimフリーのスマートフォンを線路に放り投げた。
「落ちましたよ」
 健司の言葉に周囲の人間の視線が線路に落ちるスマートフォンにくぎ付けになる。
 健司が乗車を邪魔した男が慌てた様子で胸ポケットに手を当てる。
 健司はスマートフォンを拾おうとするかのように踏み出しながら、素早く男の背を押す。
 男が線路に転がり落ちるのと列車が到着するのは同時だった。
 ブレーキ音と悲鳴が駅のホームを支配する。
 ――これで今日もお客様を笑顔にできた――
 健司は動揺を装いながら駅員の誘導に従って満足感と共にホームを後にした。
  〈6〉
   潮風が香る深夜の埠頭の倉庫街。
 緒方は三十人の組員を伏せさせ、更に暴走族を張り込ませて取引に臨んだ。
 捌くドラッグの金額は一千万。
 ジョーカーが金を狙っているならこの好機を逃すはずが無い。
 半グレの三団体の代表がベンツで乗り付け、ヘッドライトの光を背に向かってくる。
 ――どうするジョーカー――
 傍から見ればこれ以上のカモは無いだろう。
 しかし周囲には銃で武装した構成員と、それに数倍する人数の暴走族がいるのだ。
 仮に強襲に成功したとしてもこの包囲網を抜け出る事は不可能だろう。
 金をアタッシュケースに入れた男たちが近づいて来る。
 ジョーカーは金を見せた時に最も多く出現する。
 緒方はドラッグの詰まったスーツケースを手にヘッドライトに身を晒す。
「緒方さん、ご苦労様です」
 半グレの代表のスーツ姿の男が言う。
 アタッシュケースが開かれ、帯どめされた札束が姿を現す。
 緒方もスーツケースを開いてロシア経由の最高級品を見せる。
 と、緒方は場違いな程騒々しいエンジン音を聞きつけた。
『奢れるヤクザもコンバンハ』
 拡声器の声と共に波を蹴ったボートが一直線に突っ込んでくる。
 船首に立ったジョーカーが銃を抜いて問答無用で撃ち始める。
 緒方の周囲で火花が散り、半グレが慌てた様子でアタッシュケースを取り落とす。
 伏せていた緒方の部下がジョーカーに向かって応射を開始する。
 ジョーカーがグレネードランチャーを構えて砲火を閃かせる。
 ベンツの車体が火を噴いて浮き上がる。
 倉庫街の至る所で爆発が起こり、火の手が上がる。
 ただの撃ち合いなら警察も黙っているが、火災が発生したのでは消防が動き追って警察も出動を余儀なくされる。
 ボートが埠頭の岸壁を掠め、ジョーカーが猛火の中を歩んでいく。
「今宵のコテツは鉛に飢えて、オイラの引き金も軽くなるゥ~」
 相変わらずの意味不明な言葉でジョーカーが戦場となった埠頭を蹂躙する。
 雄たけびを上げた半グレの一人が鉄パイプを振り上げてジョーカーに向かっていく。
 鉄パイプの一撃を受けたジョーカーの動きが鈍る。
「あの世の旅も道連れ世は情け、痛いの痛いの焼死体」
 ジョーカーが鉄パイプを奪い取って半グレを路上に蹴り飛ばす。
 ジョーカーが怒り狂ったようにグレネードを乱射する。
 緒方は炎で崩れ落ちる倉庫を避けて部下のベンツに向かって走る。
 この乱射の中では同士討ちが危ぶまれるどころではない。
 まずは消防がやって来る前に現場を離脱しなければならない。
 取り残される組員や半グレには悪いが、矢沢組としても幹部が尻を蹴飛ばされたままブタ箱に入る訳には行かないのだ。
  〈7〉 
 
 
「……ッ」
 清史郎は左腕を押さえたままボートの床に腰かけている。
 夜の海から見えるのは照明で浮かび上がる工場の幻想的とも言える光景。
 酔狂なカップルなら観光に来るのかも知れないが、現在の清史郎にその余裕は無い。
 ボートが揺れる度に左腕が痛み、肩から背中までもが痛むように感じられる。
 ――腕を折られたか――
 折れたと言っても粉砕骨折では無いだろう。
 粉砕骨折なら幾ら警察OBの探偵から護身術を習っているとはいえ、鉄パイプを奪って蹴り飛ばす事などできてはいない。
 問題なのは常識的に考えて鉄パイプを持った敵に対してなぜ発砲しなかったかという事だ。
 客観的に見ればこれほど奇妙な事は無いだろう。
 狂気の道化師、ジョーカーなのだからと見逃してくれる輩ばかりではないだろう。
「ジョーカー、大丈夫?」
 気遣う様子で加奈が声をかけてくる。
「今回の作戦はリスクは織り込み済みだったんだ。鉛弾を食らわなかっただけでもいいってモンだ」
 清史郎は虚勢を張って言う。
 健が入手した情報は矢沢組が最も警戒している取引、もしくはジョーカーをおびき出そうとしている作戦だった。
 当然もっと楽なターゲットを探す事も可能。
 しかし、健がこの難度の高い作戦にこだわり、清史郎もジョーカーの名を上げる為に乗ったのだ。
「ジョークには悪かったけど今日だけで六百万だぜ? 一人二百万ってすごくね?」
 ボートを運転しながら健が言う。
 百人以上が動員されている取引を強襲する為に海路を選んだのは正解だった。
 通常は予め現場に潜んでいるが、今回はヤクザが張り込む事が分かっていた。
 脱出の目途もたたないのに予め潜むという手段は使えない。
 と、なれば相手が考えてもいない方向から強襲して、対応されるより早く逃げるという方法だ。
「アタッシュケース拾って来るのも命がけだったんだから。あんたは安全な所でPCたたいてるだけだからいいかもしれないけど」
 加奈がボートでPCを操作していた健に向かって言う。
 清史郎が派手に暴れている隙に半グレが落としたアタッシュケースを回収したのは加奈だ。
 ヤクザが銃で応戦して来る中で拾ったのだから、生きた心地がしなかったのであろう事は想像に難くない。
「ジョークだって腕を切り落とされたとかじゃねぇんだし、保険証が使えねぇなら金あんだし海外で手術とかもアリじゃね?」
 楽観的な口調で健が言う。確かに健の案もいいが致命的な欠陥がある。
「ジョーカーは左腕を殴られている。保険の記録に残らなくても俺が左腕をギプスで吊っていたら正体を宣伝してまわるのと同じことだ」
「あ、そうか」
「あ、そうかじゃないでしょ! だいたいあんたが怪我してるわけじゃないんだから」
 加奈が虚を突かれた様子の健に向かって言う。
「腕は町の獣医に頼んで治してもらうよ。問題は探偵事務所の方だな」
 町の獣医であれば顔なじみだし、保険の記録に残る事も無い。
「事務所はほとんど客来ねぇからOKじゃね?」
 相変わらず楽観的な様子で健が言う。
「エースってば本当に失礼なんだから」
「本当の事だからいいんだけどな。でも選挙が近づいているからカジノ反対派の人たちが現職知事の裏情報を求めてくるかもしれない」
 情報が盗まれたものなら裁判では証拠にならないが、盗み出して内部告発の形をとって匿名でばらまくという事は可能だ。
「与党の現職知事って矢沢組がカジノ呼ぶ為に当選させたんだろ?」
 健の言葉に清史郎は頷く。
 元々災害避難地域指定だった公園の指定を解除し財務省に許可を発行させ、企業が進出できるよう実際に動いたのは与党だ。
 暴力団が本体か与党が本体かというのは、鶏と卵のパラドクスを解くに等しい。 
「でも物的証拠が無い。音声データやメールは改ざん可能だから決定打にはなり得ない」
「手書きのサインの入った書類が無いと証拠にならないって訳ね」
 加奈が話を要約して言う。
「それって探偵とかの仕事じゃねぇのか?」
 健の言葉に清史郎は痛みを感じながらもため息をつく。
「私はその探偵なんだよ。儲かっていないだけで」
「とりあえず一人二百万入ったし、ジョーカーはひとまずお休みするしかないわよね」
 加奈は状況を落ち着いて観察できているようだ。
「でもよ、選挙が終わって反対派が勝ったら出番も無いんじゃね?」
「そもそも反対派を勝たせる為に始めたんだよ。目的を忘れないでくれ」
 商店街と探偵事務所を守る為のジョーカーなのだから脅威が消えれば戦う必要は無い。
 もともと町を守る為の義賊として、健も同意して始めた事なのだ。
「あ~、キャデラックに乗りたかったぁ~」
 船の縁に寄りかかって健が空に目を向ける。
「外車ディーラーで試乗でもすればいいでしょ」
「そういう事じゃねぇんだよ。こう、リッチな気分でパーッとやりたかったって言うかさ」
「気持ちは分からなくも無いけどさ、私らもともと何千円で一喜一憂してたんだからね」
「へぇ~い」
 加奈に言われた健がため息をつく。
 二人のやり取りを聞きながら清史郎は考える。腕を折られたジョーカーが休養すれば、不死身の化け物のようなイメージが揺らぐ事になる。
 双方の総力戦の様相を呈した今回の戦いで、相手もジョーカーが手傷を負った事は分かっているはずだ。
 ――大人しく休養というわけには行かないか――
 清史郎は加奈に目を向ける。
 IT機器を素早く操作できない以上、空白期間にジョーカーを演じられるのは加奈だけだ。 
  〈8〉
   ジョーカーは手傷を負った。
 店内の観葉植物の葉を丁寧に拭いながら、健司は緒方からの情報の意味を考える。
 圧倒的な火力を持ちながら、鉄パイプを手に向かって来る敵に対してジョーカーは無策と言っても良い状態だったのだ。
 これはこれまで一人も死者を出していないというジョーカーの姿勢と符合する。
 その後の乱射により埠頭は混沌と化し有益な情報は集まっていないが、ジョーカーが現金の入ったアタッシュケースだけを手に海に逃れた事は間違いない。
 ――ジョーカーは人を殺さないという前提で考えたら――
 単純にヤクザを驚かせたいという、愉快犯の姿が浮かび上がる。
 だが、愉快犯ならリスクの高いヤクザを狙う理由は少ない。
 銃器を振り回��なくても、健司のような一般市民相手に全裸になって見せるだけで充分に他人を不快にする事ができる。
 ヤクザに警察に通報できないという弱みがあったとしても、それ以上にリスクは大きいはずだ。
 ヤクザに恨みがあるのだとしても、それならば落ちた金だけ拾うという点では実質的にダメージはほとんど与えられていない。
 収入として考えているなら猶更ジョーカーの行動は不可解過ぎる。
 愉快犯でありながらそれは副次的なものでしかなく、目的の為の手段に過ぎない。
 だが、愉快犯である事を手段とする目的とは一体何だろうか。
 ――僕のような常識人では手が届かないと言うのだろうか――
 健司は観葉植物の葉に霧吹きで水をかけながら考える。
 矢沢組は一体誰に何をし、その結果ジョーカーを生み出したのだろうか。
 健司は店内の照明を切り、暖簾と看板を店内にしまう。
 店を出て新宿のチェーン店の居酒屋に向かう。
 健司が一杯のビールと焼き鳥を二本腹に収めていると、三人の男が連れ立って店内に入ってきた。
 健司は三人組がボックス席に入るのを確認してアタッシュケースを手にトイレに向かう。
 三人組が毎回このチェーン店を使う事と、最初にビールを注文する事は分かっている。
 健司はスーツを脱ぎネクタイを外してケースに収め、代わりにエプロンを身に着ける。
 保冷剤で冷やしておいた缶に入ったビールを、同じく冷やしておいた100均で買ったグラスに注ぐ。
 そのうち一つにはシアナミドを混入してある。
 シアナミドは無色透明の抗酒剤で、副飲する事でアルコールアレルギー反応を引き起こす禁酒用の薬品。
 一言で言えば一口飲む事で急性アルコール中毒症状を引き起こすのだ。
 健司は三人の席におしぼりが置かれ、店員が去るのを待ってビールジョッキを手に席に向かう。
「お待たせしました」
 健司はターゲットにシアナミドを混入したビールを手渡し、両手にビニールの手袋を嵌めてトイレの傍に潜む。
 ややあって鍵をかけていないトイレに青ざめ、脂汗を流したターゲットの靴が覗いた。
 健司は入れ替わるようにしてすれ違いながら様子を確認する。
 シアナミドにより意識は朦朧としているようだ。
「介抱しますよ」
 健司は男を抱きかかえるようにしてトイレのドアを後ろ手に閉じる。
 男が便器に前のめりになって嘔吐する。
 健司は男の頭を掴んで便器に押し込むと首の頸動脈にシャープペンシルを突き刺す。
 男の首から血が噴き出すのに合わせてトイレの水を流す。
 音消し水とはよく言ったものだ。
 窒息と出血の双方で男が瞬く間に衰弱して行く。
 相手がプロレスラーだろうとこの状態で健司に抗する事はできはしない。
 健司は男の脈を取って死亡を確認するとエプロンとシャープペンシルを放置し、元通りスーツに身を包んで会計を済ませて店を出た。
 殺害方法は分かっても誰が殺したのかは目撃されていない限り分からないだろう。
 ――小さな仕事でも手を抜かない事が顧客満足度につながるんだ―― 
  第二章 二人目のジョーカー 
  〈1〉
  「矢沢組のヤツら慎重になってやがんな。もう大口取引はしねぇらしい」
 清史郎の耳には爆音と左程変わらない音が響いている、クイーンメイブのボックス席で健が言う。
 清史郎は獣医に頼んでギブスなしで左腕を固定している。
 診断は骨にヒビが入っているとの事で、二週間は安静にする必要があるらしい。
「そりゃ百人集めて失敗したなら、もう大口でジョーカーを誘おうなんて思わないでしょ」
 言って加奈がカクテルで唇を湿らせる。 
「一回の取引でせいぜい百万円。しかも街中でやってやがる」
 健がラップトップを開いて矢沢組の予定表を表示させる。 
「儲けが少ないからやらないって話にはしない約束でしょ?」
 加奈が健に睨みをきかせる。前回の襲撃は加奈は反対だったのだ。
「でもよ、ジョークは骨折してるし、街中でグレネードはさすがにヤベェだろ」
 カクテルをチビチビ飲みながら健が言う。
 確かに街中では自動小銃がせいぜいといったところだ。
 仮にグレネードを使ったとしても、見た目が派手なだけで破壊力が無い事が露呈する。
「自動小銃でも相手を驚かすような事はできるだろう。演出次第だ」
 清史郎は頭を巡らせながら言う。
 今となっては拳銃を抜いて撃つくらいではヤクザは驚かない。
 下手をすれば一人二人射殺されても驚かないかも知れない。
 と、なればどうやって驚かせるかが問題になってくる。
「演出って言うけど、ジョーカーは左手が使えないんでしょ?」
「そこだ。連中は俺が腕を怪我するのを見ている。ここで動きを止めればジョーカーというキャラクターの怪物性が損なわれてしまう。そこで今回は加奈にジョーカーを依頼したい」
 清史郎の言葉に加奈が驚いたような表情を浮かべる。
「町の人たちがカジノに反対できているのは、ヤクザがジョーカーを恐れているという漠然として安心感があるからだ。ジョーカーが怪我で動けないとなったらヤクザを恐れて寝返る住人が出てくるかもしれない」
 清史郎の言葉に加奈が思案顔になる。
「……そういう事なら……でも策はあるの? 私はジョーカーみたいに相手を脅せないよ?」
 加奈の言葉に清史郎は頷く。
「喋るのはマイクで私が担当する。元々ボイスチェンジャーを使ってるからスピーカーから音を出してもヤクザには分からないだろう」
 清史郎は矢沢組のリストの一つを指さす。
 雑居ビルの屋上での取引。
 金額は百万だが人が多く割かれている訳ではない。
 そしていざとなれば清史郎も右腕一本で戦うのだ。
  〈2〉
  「ありがとうございました」
 客の手に両手を添えるようにしてつり銭を渡す。 
 我ながら流れるような動作だと加奈は思っている。
 品物は働き出してから一週間で覚えたし、二か月で発注も任されるようになった。
 オーナーが発注していた頃に比べて売り上げは八%上昇している。
 業者のパレットに乗った商品が運び込まれ、そこに緩慢な動作で大塚という中年女性が向かっていく。
 大塚はこのコンビニに長く勤めているが、何をするにも動きが遅く、やる事が雑だ。
 加奈は母子家庭ではあったが高校時代は生徒会長を務めていた。
 生徒会の切り盛りでは過去最高の生徒会長だったという自負もある。
 奨学金を借りて大学に入学したいと何度思った事か分からない。
 しかし、その度に返済の目途が立たないという現実で踏みとどまった。
 加奈が借りる金額では返済する頃には五十代。
 キャリアウーマンとしてバリバリ働いて行けるならいいだろうが、男社会の中で目立っても左遷されるのがオチだ。
 奨学金を諦め、近所のファミレスとコンビニの双方を天秤にかけた時、ファミレスの厨房は嫌だったし、発注のような頭を使う仕事がしたかった事からコンビニで働く事にした。
 しかし、今現在、視線の先では大塚が商品を手前から、しかも違う棚に並べている。
 新しい品物を後ろに、古い品物を前にしなければ賞味期限切れで廃棄になる。
 それはコストとすら呼べるものではない。
 注意した事は一度や二度ではないが、返ってくるのは「今時の若い子は」という恨みがましい言葉だけだ。
 仕方なく業務の合間を縫って品物を並べなおす。
 そうすると今度はレジに長蛇の列ができる。
 大塚はバーコードの読み込みも遅ければ、テンキーの打ち込みもできない。
 公共料金などの支払いも一々店長にやらせている。
 店長は一体何の弱みがあってこの女を雇っているのか分からない。
 それでも、このリスクを織り込んだ発注で収益を上げたのは自分の手腕だ。
「飯島くん、これじゃ困るよ。お客さんを待たせているじゃないか」
 抜き打ちでやって来たマネージャーの言葉に加奈はため息をつきたくなる。
 自分がレジにいればこのような現象は起きないのだ。
 そして、レジにいれば大量の食品を廃棄しなくてはならなくなる。
「分かりました。棚の商品を並べなおしてもらえますか」
 チクリと言い返し、立ち仕事で痛む足を引きずって加奈はレジに向かう。
 こんな事をこの先何年続けて行けばいいと言うのか。
 少なくとも大塚がクビにならない限りは、ただでさえハードなコンビニの仕事すらまともにこなす事ができないのだ。 
 ――ジョーカーとしてならもう少し有能に働けるのに―― 
 
 〈3〉
   深夜、ビルの屋上に銃声が響き火花が散る。
 ビルの給水塔の上で清史郎が見ている下で、四人の男たちが手にしたバッグを胸に抱える。
「迷えるヤクザよコンバンハァ!」
 二階分高いビルの屋上から、ワイヤーを伝って自動小銃を乱射しながらジョーカーが降下して来る。
 ヤクザの一人が屋内に逃れようとした所でジョーカーの自動小銃が火を噴いてドアを蜂の巣にする。
 恐慌状態に陥ったヤクザの前に、床の上で一回転したジョーカーが立つ。
 この辺りの動きは加奈の方が本家よりいいと言える。
ジョーカーの自動小銃が火を噴き、ヤクザたちの動きが止まる。
清史郎はありあわせの材料で作った分銅でヤクザの手からケースを叩き落す。
「金は天下の猿回しぃ~、回る回るよ目が回るぅ~」
 床を滑ったケースがジョーカーの足元で止まる。
 ジョーカーがケースを手に屋上のフェンスを乗り越える。
「それでは諸君ごきげんようそろ、面舵一杯腹八分目ぇ~」
 ジョーカーがフェンスを乗り越えてビルの外に姿を消す姿をヤクザたちは茫然と眺めている。
 加奈はほぼ完ぺきに、運動神経という面では清史郎以上にジョーカーを演じて見せた。
 ヤクザたちがスマートフォンを取り出して連絡を取りながら屋内へと消えていく。
 加奈は当初隣のビルの屋上に潜んでおり、ヤクザの取引するビルとの間にはワイヤーが取り付けてあった。
 清史郎の合図で火薬を爆発させ、加奈は小型の滑車を使ってビルの屋上に降り立った。
 予定通り混乱に乗じて清史郎がヤクザの金のアタッシュケースを叩き落し、それを回収した加奈は予め用意されていた脱出用のワイヤーで一目散に逃げ去ったという訳だ。
 清史郎がヤクザの去っていった通用口を見ていると、二人のヤクザが姿を現した。
 痕跡を確認するか、ジョーカーを追跡しようという考えかもしれない。
「イナイイイナイバウアアァァァァッ!」
 万が一に備えてジョーカーに扮していた清史郎は、咄嗟の判断でショットガンを手にヤクザたちの前に飛び降りる。
 銃声と共にドアを吹き飛ばす。
 今度こそ恐慌状態に陥ったヤクザたちは階下へと消えていった。
  〈4〉
   健司は『殺し屋』のカウンターでグラスを磨きながら考える。
 ヤクザは取引を分散させるという戦術を取ったが、ジョーカーは確実に��か所一か所を狙い撃ちにしている。
 被害総額は大きくないのだろうが、心理的な影響は大きい。
 ――ここで敵の目的は明らかになったと言っていい――
 これは心理戦なのだ。
 矢沢組が恐れるに足りない存在だと思わせる為のデモンストレーションなのだ。
 実際矢沢組の構成員たちも明日は我が身と必要以上に警戒しており、結果として街中での暴行などで警察に捕縛されるケースも散見し始めている。
 警察もヤクザと事を構える事はしたくないだろうが、暴行は立派な犯罪だ。
 矢沢組を弱体化、もしくは弱体化して見せている目的。
 これは幾つかのケースが考えられる。
 例えば同格の田畑組がシマを狙っているケース。
 しかし、これでは全面戦争がしたいと言っているようなものであり、そうなれば別の第三の組が弱った二つの組を併合してしまうだろう。
 更に言えば『本物』の銃器を使っているのだとしたら、これまでに過失で殺してしまった人間が居てもおかしくはないはずだ。
 これまであれだけ派手に銃を乱射していて軽度のやけどくらいしか負傷者がいないというのは、空砲かモデルガンかのどちらかだろう。
 そして犯人がヤクザであるなら、モデルガンなどという恥ずかしいものは持ち歩かないだろう。
 第二の敵が政治結社だ。
 現在矢沢組の推す現職与党の代議士が知事を務めている。
 三か月後には知事選が予定されており、野党は連合して対立候補を立てている。
 現在新庄市には土地の価値だけで二千億を超える空き地が存在し、そこに巨大カジノカジノを誘致するか、市民公園にするかで市民の世論が割れている。
 カジノが実現すれば莫大な金額が動く事になり、矢沢組は軽く数百億は稼ぐ事になるだろう。
 一方、野党が勝利してしまえば議会も野党に握られた事から市民公園が確定。
 造園業者や、スタンド付きの運動公園を造る建築業者がいくらか儲かるにせよ、利権はほとんど存在しない事になる。
 本来矢沢組こそが野党を攻撃しそうなものだが、野党のカルト的な集団ないし、狂信的な人間が矢沢組を狙っている可能性は否定できない。
 しかし、カルトや狂信的な人間がここまで綿密な計画を練り、実行に移せるだろうか。
 そこが政治結社を敵に想定した場合のボトルネックとなってくる。
 第三の相手は想定が難しいがカジノに反対している市民だ。
 市民の大半は再開発計画に興味を持っていないが、商店街や商工会は地場産業が脅かされるとして強硬に反対している。
 矢沢組はこの商店街の切り崩しを行っていたのだが、その矢先にジョーカーが出現するようになり、商店街を攻略するどころではなくなってしまったのだ。
 そう考えると、人のいい商店街の人々こそが実は矢沢組の最大の敵という事になる。
 ――商店街がジョーカーの可能性――
 だが、それなら情報漏洩が少なからずあるはずだ。
 ――もし商店街の誰かがジョーカーで、他の人間は知らないのだとしたら――
 ジョーカーは一方的に守るだけで損をしているように見えるが、最終的には商店街が守られるのだから自分の仕事も守る事になる。
 ――商店街の何物かが、か――
 健司はPCで商店街の店舗の情報を検索する。ほとんどが個人事業主でHPもまともに作れているとは言い難い。
 そんな中、健司は気になる存在を発見した。
 ――人権派弁護士、慶田盛敦――
 直接の関与の有無は別にして、慶田盛が商店街や町を守ろうとするのはありそうな事だった。
  〈5〉
  「急な訪問で恐れ入ります。慶田盛先生の事務所は意外と質素なんですね」
 新庄市の雑居ビルの一室を訪れた健司は慶田盛敦に向かって言う。
「君は……殺し屋との事だが……」
 当惑した様子で慶田盛が応接用の合皮のソファーに腰かけて言う。
「屋号のようなものです。ただの飲食店ですよ。保健所で営業許可も取っています」
 健司は爽やかな笑みを浮かべる。
「で、歌舞伎町の飲食店がここに一体何の相談なんだい?」
 敏腕弁護士という割にはお人よしなのだろう、慶田盛が問うて来る。
「店が襲われたんです」
 健司の言葉に慶田盛の視線が険しくなる。
「それは警察に訴えるべき案件なんじゃないのかい?」
「歌舞伎町で店が襲われた程度で警察が動くと思いますか?」
 健司が言うと慶田盛が思案気な表情を浮かべる。
「相手に目星はついているのかい? 組関係だと厄介だぞ?」
 歌舞伎町という事を意識しているのか慶田盛が言う。
「ピエロのマスクに紫のトレンチコート、銃撃で店は蜂の巣です」
 慶田盛の表情が一瞬硬直する。
 ――慶田盛はジョーカーを知っている――
「最近はそういった愉快犯が流行っているようだね」
「慶田盛先生はご存知ないのですか? ジョーカーと呼ばれているようなのですが」
 慶田盛の顔がポーカーフェイスに変わるが遅すぎだ。
 今更表情を消した所で知っていると言っているようなものだ。
 健司はさり気なくソファーの隙間に盗聴器を滑り込ませる。
「噂で聞いている程度だね。でも、弁護士だからといって探偵の真似事ができる訳じゃない」
「慶田盛先生は懇意にしている探偵などはおられないのですか?」
「古い付き合いの探偵はいるけどね。彼を紹介するにはそれなりの理由が必要だよ」
 慶田盛が慎重に言葉を選ぶ。
「店が襲撃された以上の理由が、ですか?」
「僕はその破壊された店舗の写真すら見ていないんだよ? 被害実態が明らかではないのに探偵の手を煩わせると思うかい?」
「随分と庇われるんですね。逆に興味が湧いてきましたよ」
 健司は切り上げどころと判断してソファーから立ち上がる。
「貴重なお時間を頂きありがとうございました」
 健司は慶田盛と握手しながら唇の端が吊り上がりそうになるのを堪える。
 ――これで慶田盛が探偵に連絡を取ればその相手がジョーカーである可能性は高い―― 
 
 〈6〉
  「いやぁ~俺たちマジ凄くね? もうハリウッドレベルだって」
 クイーンメイブのボックス席で健がいつものように能天気な口調で言う。 
「たちじゃなくて身体張ってる私たちが凄いの」
「お前PCなんて触れないだろ」
 健が加奈に言い返す。
「PCコンビニの使えてるし!」
「ンなの使えてるうちに入らねーよ。な、ジョーク」
 健の言葉に清史郎は肩を竦める。加奈と比較すればPCを使える方だろうが、ITというレベルには程遠い。
 ヤクザの事務所に仕掛けた盗聴器をBluetoothで飛ばしたり、WIFIでデータを引き抜いたりといった芸当は清史郎には不可能だ。
 しかも従来の興信所の盗聴器探知は電波の周波数帯で探っている為、健のカスタムした機材を探知する事ができない。
 健は新庄市のヤクザの誰よりも彼らの動きに詳しいと言っても過言ではないのだ。
 その中から清史郎が獲物になりそうな案件を選び出し、加奈と下準備を行っているのだ。
「なぁ~んか納得行かない」
 加奈が口をとがらせるが、こればかりは健の能力を素直に認めるしかない。
「エースの情報収集能力がなければ火薬を仕掛けにも行けないだろ」
「土建屋の癖に何かムカつく」 
「土建屋じゃなくてDJだっつーの」
「DJで食ってる訳じゃないでしょ? なら土建屋じゃない」
「ンだとコラァ!」
 声を荒げる健を清史郎は慌てて宥める。
 手を挙げるような青年ではないが、つまらない事で耳目を引くのは得策ではない。
「俺は二人におんぶにだっこだ。二人がいなければジョーカーなんてやってられない。そうだろう?」
「私もジョーカーやったしね。やってないのはエースだけ」
「俺がいなかったら起爆できねぇじゃねぇか」
 むっつりとした口調で健が言う。
「裏方の仕事があっての晴れ舞台って事もあるんだ。もっとも、舞台役者が良くなかったらどんなに裏方の仕事が良くても芝居にはならない」
 清史郎の言葉に加奈がため息をつく。
「ジョーカー人間できてるわ」
「単に口の上手いオッサンってだけかもな」
 健が悪童のような笑みを浮かべる。
「多分エースの言う通りだろう。で、いよいよ選挙まで三か月を切った訳だ。矢沢組だけじゃない、カジノ関連の企業が再開発計画に群がってきている」
 清史郎は話を本来の筋道に戻す。
「それは分かるけどさ、ヤクザは脅せても民間企業はどうにもならないんじゃない?」
 加奈の言葉に清史郎は頷く。
「そこは商店街と市民の手に委ねる。俺たちが考えなきゃいけないのは、矢沢組をあと三か月どう騙し抜くかって事なんだ」
 最終的にカジノ施設を選ぶか、市民公園を選ぶかは市民の手に委ねられるべきだ。
 ジョーカーはそこに介入しようとする矢沢組をけん制しているに過ぎない。
「一年以上見破られてねぇんだし、今更どうって事も無いんじゃね?」
 健が楽観的な口調で言う。
「一年って言っても綱渡りだったじゃない。ジョーカーも怪我したんだし」
 常に現場を見て来た加奈が健に向かって言う。
「人生にはスリルがつきものだろ」
「必要ないのにスリルをつける必要ないでしょ?」
「人生にはロマンが必要だよ。なぁ、ジョーカー」
「私の人生にはロマンらしいロマンは無かったよ」
 明らかに会話を楽しんでいる健に清史郎は苦笑する。
「人生堅実が一番なの。あんたみたいのが一番ホームレスに近いんだから」
「お前だってコンビニ店員以外何ができるよ」
「ちょっとジョーカー、何とか言ってやってよ」
 怒った様子の加奈が話を振ってくる。
「景気が良くなったら事務所で求人でも出すよ。それより今は仕事をやり抜く時だ」
 清史郎の真剣な言葉に二人が頷く。
 ――後三か月――
 この凸凹コンビと一緒に駆け抜けなければならない。
 
 〈6〉 
  「ここの探偵事務所では人探しをしたりはしないんですか?」
 健司は三浦探偵事務所の安普請の椅子に腰かけて、所長兼調査員の三浦清史郎と向かい合っている。
 慶田盛は健司が面会した翌日に同じく新庄市に居を構えている三浦に連絡を取った。
 探られている事を多少は警戒しているだろうが、昨日の今日で会いに来るとは思っていないだろう。
「今の所請け負ってはいないね。知っているかどうか知らないが、日本の年間行方不明者は二十万人。警察が民事だと言ってサジを投げるレベルだ。うち毎年六千人前後が死体で発見される。これが日本の行方不明の実情だ」
 四十五歳、探偵というより疲れたサラリーマンを思わせる風貌だが、どこにでもなじめるという点ではこの風貌は役に立っている事だろう。
「携帯電話の通信記録を探ったりしないんですか?」
「そういう情報は大手の情報企業が握っているんだ。契約していなければ盗み出すしかないだろうし、それをすれば犯��だ」
「企業が形はどうあれ本人の同意なしに情報を持っている事は犯罪ではないと」
「正当だと思えば契約している、と、答えたら君に私の考えは分かってもらえるかな」
 清史郎はかなり真っ当な昔気質の探偵であるらしい。
 三浦探偵事務所は商店街の噂では浮気調査などではパッとしないが、事件性のある案件だと警察を出し抜く腕前なのだと言う。
「独り言だと思って聞いてもらえればいいんですが、ジョーカーという男をご存知ではないですか?」
「知っているよ。少なくとも片手には余るほどね」
 掴みどころのない口調で清史郎が言う。
 ――だが、他の商店街の人間はジョーカーと聞けば逆に動揺したものだ――
「ヤクザ相手にモデルガンを振り回す愉快犯。前金で一千万。正体が分かれば更に一千万」
 健司はリュックサックから帯留めされた札束の入った紙袋を押し出す。
「これだけ流行らない事務所だ。一千万を受け取って私が雲隠れするとは考えないのかい?」
「見つけられなくても差し上げますよ」
 健司は内心で清史郎がジョーカーであるとの確信を強めながら言う。
「そういう事であれば遠慮なく預かろう。所でジョーカーについてもう少し詳しく話を聞けないかな? さすがに名前だけでは調査にならない」
「僕もまた聞きでしか知らないんですが、ヤクザが武装しているか麻薬を所持している時に出現し、モデルガンを利用してあたかも本物のように見せかけて驚かせ、ヤクザが金を落としていけばそれを拾っていく。そういう話です。被害に遭っているのは主に矢沢組で、矢沢組は現職与党知事のケツモチをしている」
「つまり、君の推理が正しければ現職知事と利害関係にある人物が選挙で優位に立��べく矢沢組を攻撃している、攻撃しているように見せかけているという事だね?」
「そう、その人物の特定が難しいんですよ。ヤクザの情報を自分の家のPCのように自在に覗き見て、常に有利な状況でモデルガンによる脅迫を行っている」
 そこが健司が最も解せない所だ。
 この三浦清史郎という男は探偵としては優れているように察せられるが、ITに強いようには見えない。
 情報を買っている訳でも無いのだとしたら、一体どのようにして情報を得ているのか。
 更に情報を得たとしてそれを整理し、取捨選択する事も必要になる。
 事務員の一人もいないこの事務所のどこに実務を取り仕切る人間がいるというのか。
 自分はこの男の何かを見落としているとでも言うのだろうか。
「つまり、ジョーカーという人物にはハッカーとしての側面もあるという事だね?」
「そう考えないと辻褄が合いません」
「では、ハッカーであり、モデルガンでヤクザを脅すジョーカーという愉快犯を特定してほしいという事だね」
「結論としてそういう事になるかと」
「プライバシーに踏み込むつもりはないが、そのジョーカーという人物の特定にどういった動機があるか聞かせてもらえるかな? 参考までにという事で構わないが」
「僕が矢沢組に依頼されたからですよ。でも僕の力だけでは見つけられそうに無い」
 健司はチェスを指すかのような心境で言葉を選ぶ。
 目の前の男がジョーカーである可能性は限りなく大きいのだ。
「君も探偵なのか?」
 清史郎の言葉に健司は肩を竦めて名刺を差し出す。
「歌舞伎町で殺し屋を営んでおります円山健司と言います」
 言った瞬間、清史郎の顔に何かグロテスクなものでも見たかのような表情が浮かぶ。
 健司はその表情をこれまで嫌という程見てきたのだった。
  第三章       殺し屋
  〈1〉
   清史郎は拙いとは知りつつ、円山健司を尾行していた。
 尾行を知られたとしても、探偵が依頼者の事を知ろうとする事に問題は無い。
 そもそもがジョーカーなどという得体の知れない人物を探せという無理難題なのだ。
 例え自分がジョーカーであったとしてもだ。
 電車を乗り継ぎSUICAのチャージマネーが尽きそうになった時、円山は新宿の歌舞伎町にある『殺し屋』という店舗に入っていった。
 信じられない事だが、冗談でないとするなら殺人を生業とする人間が看板を出して店を営業しているのだ。
 円山は自ら隠れるという事が無い。
 本当に殺人が生業なのだとしたら、その手段に余程自信を持っているという事なのだろう。
 清史郎は逡巡しながらも暖簾を潜る。
 相手にその気があればビルに入った瞬間から監視カメラで自分を監視していても不思議ではないからだ。
「いらっしゃいませ! ご注文がお決まりになりましたらお気軽にお申しつけ下さい」
 円山が人が違ったような口調で声をかけてくる。
「さっき会ったばかりだろう? それよりこのお品書きというのは本当なのか?」
 お品書きには殺人方法や死体を残すのか残さないのかなど様々なオプションサービスが書き込まれている。
「はい、迅速丁寧をモットーに確実にターゲットを殺させて頂いております」
「例えば、この絞殺で死体を残すというオプションにした場合、警察に犯人特定されやすいんじゃないのか?」
「企業秘密にはなりますが、TPOに応じて柔軟に対応させていただいております」
「ジョーカーはどうやって殺す事になっているんだ?」
「お客様の情報を開示する訳には行きませんが、強いて言うなら殺し方は問わないとの事です」
 円山の言葉が事実なら矢沢組はなりふり構っていないという事だろう。
 ジョーカーは確実に矢沢組に打撃を与えているのだ。
「じゃあ俺も注文したいんだが構わないか?」
「どのようなご注文でしょうか?」
 爽やかな笑顔で円山が言う。
「ジョーカーをオプションサービスで九月三十一日に殺してほしい」
 清史郎の言葉に円山の目が見開かれる。
「前金で一千万。不足なら五百万を追加する」
 清史郎は受け取ったばかりの一千万をカウンターに乗せる。
「ジョーカー殺害日時の指定は確かにオプションで追加可能ですが……」
「ジョーカーを殺す日時の指定は矢沢組からは無かったんだろう?」
 清史郎が言うと円山が顎に指を当てて思案気な表情を浮かべる。
「依頼が重複した事は初めてで、対応致しかねます」
「いや、重複していない。私が矢沢組の手先で、追加でオプションを申し込んでいるとしたならどうなんだ? 君は依頼主の事をどれだけ調査しているんだ?」
 清史郎の言葉に円山の表情が曇る。
「お客様のプライバシーを優先して営業しております。業務上必要な情報は収集致しますが……」
「九月三十一日、ジョーカーは新庄市商店街の外れ、たこ焼き屋千夏の前に現れる」
 清史郎の言葉に円山の表情が強張る。
「もしお客様がジョーカーだった場合……」
「自分を殺してくれという依頼はこれまでなかったのか?」
 円山が何かを試すような視線を向けてくる。
「もちろん、そういった依頼もございました」
「なら問題は無いだろう?」
「……つまり、あなたは探偵としての任務を全うし、殺し屋に仕事を依頼しに来た。そういう事ですね」
「そういう事になるな」
 清史郎が笑みを浮かべると円山の口元に笑みが浮かぶ。
「矢沢組がそれ以前の日時を指定して来たら?」
「それこそ二重契約は無効だと言えばいいだろう?」
「矢沢組がジョーカーの正体を教えろと言ってきたら?」
「ここは興信所ではないのだろう? それに私は九月三十一日にジョーカーが現れるとは言ったが、私がジョーカーだとは一言も言っていないぞ」
 円山は殺しという商売にプライドを持っている。
 そのプライドに反する行為はできないはずだ。
「了解しました。九月三十一日に現れるジョーカーを殺します。しかし、他に機会がある場合もありますので悪しからず」
 円山が一千万の入った紙袋を掴んでカウンターの内側に置く。
 これで円山の精神には一つのストッパーがかかった事になる。
 後はいかに円山を寄せ付けないように立ち回れるかだ。
  〈2〉
  
 してやられた。
 健司は先制に成功したつもりが、乗り込まれて悪条件を飲まされた事を今更ながらに実感していた。
 三浦の期日を守れば選挙は終わってしまうだろう。
 矢沢組は選挙で勝利する為にジョーカーを殺したいのだから、仮に殺せたとしても契約違反と言いかねない。
 そもそも条件は問わないという話だったのだから構わないと言えば構わないのだが、ヤクザがそのような道理を飲むとは思えない。
――そもそも乗り気な仕事では無かったのだ――
 とはいえ、呑気に構えていてはヤクザに消される事になる。
 九月三十一日に殺せたとしても、それは報復の意味しか持たない。
 そして九月には三十日までしか存在しない。
 十月一日を無理やり九月三十一日と解釈できない事も無いが、完全に手玉に取られたとの感を禁じ得ない。
 緒方が猶予として見るのは何週間だろうか。
 幸い緒方は健司が三浦と接触した事を知らない。
 まだジョーカーを探していると言えば時間稼ぎはできるだろう。
 最悪二千万はドブに捨てたのだと言うくらいの器量は緒方にはあるだろう。
 しかし、それでは殺し屋の看板に傷がつく。
 創業四年、地道に仕事を続けて来た実績に泥がつくのだ。
――三浦清史郎を殺すか――
 それを考えて健司は三浦の余裕が気にかかる。
 三浦がジョーカー本人だというならそれで構わないだろう。
 しかし、ただの連絡役だったり複数犯だったりした場合はどうなるだろうか。
 ジョーカーは死んでも蘇る。
 その事の方が矢沢組にとって脅威だろう。
 ジョーカーのテンプレートが商店街で共有される事にでもなったら、矢沢組は人的物量的に無数のジョーカーに襲われて新庄市を撤退しなくてはならなくなるだろう。
 その時、ジョーカーを殺せと依頼されたなら、一体何人を殺せばよいのか分からず、それだけの数を連続で殺せば証拠を残す事になりかねない。 
 そうなれば警察に捕らえられて全てが水の泡だ。
――そう、殺すのは三浦清史郎ではなくジョーカーである必要がある――
 その為にはジョーカーの仕事の実態を掴まなくてはならない。
 これまでのジョーカーの襲撃箇所と状況を再確認する。
 ジョーカーは神出鬼没のように見えるが、確実な逃走経路のある場合以外は出現していない。
 ジョーカーは矢沢組の取引の全てを俯瞰し、最も有利な形を作り出している。
 と、なれば健司も事前に情報を収集しなくてはならない。
 以前緒方が入店した時、店内のシステムでスマートフォンはクラックしてある。
 緒方のスマートフォンを経由して矢沢組組長矢沢栄作の端末に潜入する。
 ホストを掌握して矢沢の端末から矢沢組の取引データを吸い上げる。
 半グレたちは無料WIFIに接続している者が多く、セキュリティも糞も無い。
 健司は新庄市の地図を広げ三浦の心理を読もうとする。
 正面切っての対決の後で、あの食わせ物が仕掛ける事は間違いないのだ。
  〈3〉
  始発電車で歌舞伎町を訪れた清史郎は街路を歩き回りながら、人通りの少ない場所や人目につかない場所にトランプのジョーカーのカードを置いていく。
『殺し屋』がテナントに入ったビルの前の壁にはスマートフォンと接続したラズベリーパイの監視カメラを設置した。 
 監視カメラの映像は近場の喫茶店でタブレット端末で見ようと思ったのだが、歌舞伎町には静かに端末を見る事のできるような喫茶店が見当たらなかった。
 仕方なく新宿駅前のコーヒーの不味いチェーン店に足を向けた。
 電波は良好、通勤前の客も訪れておりタブレット端末を見ていても不審には思われない。
 スマートフォンを操作して朝のニュースをチェックするが、特に気になるような情報は無い。
 八時二十四分、円山が風俗ビルにスーツ姿でやって来た。
 一見地味なスーツ姿に見えるがバーバリーにリーガルのシューズといったいで立ちだ。
 見る人間が見れば逆に趣味が良いと答えるだろう。
 屋内の監視カメラを警戒して清史郎はビルには監視カメラを仕掛けていない。
 九時きっかりにスーツ姿にアタッシュケース姿の円山がビルから出てくる。
 清史郎は円山が新宿駅に向かったのを見て小走りに店を出る。
 円山を捕捉し、充分に金をチャージしたSUICAで改札を潜る。
 円山を尾行する事二十分、新庄駅で円山は列車を降りた。
 チャージマネーで改札が通れて良かったと思える一瞬だ。
 昔なら駅によっては乗り越し清算をしなくてはならないところだ。
 円山は商店街を突っ切り、三浦探偵事務所にほど近い喫茶店に入っていく。
 清史郎は更に離れた喫茶店で画像を喫茶店のものに切り替える。
 商店街の店にはセキュリティの名目で三浦探偵事務所の監視カメラが取り付けられているのだ。
 円山が注文するより早く、店員がコーヒーにトランプのジョーカーを添えて差し出している。
 円山の表情が一瞬硬直する。
 清史郎は商店街の店に予めジョーカーのカードを配り、前払いで商品を出すよう話をつけておいたのだ。
 これで円山は自らが監視対象である事を知る。
 コーヒーを飲み干した円山が喫茶店を出て周囲を見回す。
 ――追われる気分はどうだ、円山――
 円山は午後六時になると歌舞伎町のビルに戻り、吉祥寺の自宅であるらしいマンションに帰宅した。
 清史郎は吉祥寺界隈の店に金とトランプのジョーカーを配り、路地裏などにカードを仕掛けて帰路についた。
  〈4〉
  「って事は正体バレちまったのかよ」
 相変わらず騒々しいクイーンメイブのボックス席で健が声を上げる。
「殺し屋って名刺出してる殺し屋って狂ってるとしか思えないけど」
「腕に余程の自信があるんだろう。今の日本じゃ老衰や自殺や病死や事故死以外の異常死が毎年十七万件発生しているんだ。死体なんかあった所で警察の手が回る状態じゃない」
「ジョークと話してて思うんだけどさ、警察って何してんだ?」
「総資産一億円以上の人間の事は守ってるだろうさ。後は交通違反の取り締まりだな」
 清史郎は答える。実際警察が殺人や行方不明を事件化する基準は分からないのだ。
 確かなのは毎年日本では殺人事件は百件前後しか起こってはならず、検挙率は96%を下回ってはならないという暗黙の了解があるという事だ。
「どっちみち最初から警察は味方じゃないでしょ。矢沢組が商店街に嫌がらせをしても見て見ぬふりだったんだし」
「だよな。俺たちジョーカーが正義の味方なんだ。そうだろ」
「多少稼がせてもらってるけどね」
 健も加奈もジョーカーという仕事には少なからず誇りは持っている。
 士気が高いという点では矢沢組と戦っていく上で大きなアドバンテージになるだろう。
 殺し屋円山健司がジョーカーの核心に近づいたとは言っても、健と加奈まで特定している訳ではないのだ。
 そして健のITを見て警戒していた為、あの新宿の風俗ビルにはスマートフォンも時計も持ち込んでいない。
 顔は間違いなく撮影されているだろうが、顔認証は広範なエリアから自在に情報を引き抜けるようなものではない。
 いつ、どのカメラに映っているのか分からなければどのカメラをハッキングすれば良いのか分からない。
本当の所は分からないが、公には警察でも店舗など個人のカメラの映像は捜査協力や令状で記録を閲覧しているのだ。
健のIT技術にした所でカメラを特定し、通信可能な距離で『物理接触』しない事にはデータを閲覧する事などできないのだ。
「円山って野郎の鼻を明かしてやろうぜ。こっちは天下御免のジョーカーなんだ」
「でもさ、ジョーカーを探り当てたって事は相当の切れ者なんじゃない? 殺し方だって一つや二つじゃないからこれまで捕まってないんでしょ?」
 加奈が慎重論を述べる。この慎重さがチームの要になっていると言ってもいい。
「じゃあどうするってんだよ。まさか止めるとは言わねぇよな」
「多少趣向を変える必要はあるだろうな」
 清史郎はカバンからジョーカーマスクをのぞかせる。
「マスク……一体何枚あんだ? 量産して成功すんのは北朝鮮のモロコシくらいだろ」
「そっか……これをこれまで被害に遭った半グレに匿名で送り付ければ……」
 ITには弱くても頭の回転の早い加奈には分かったようだ。
「確実な取引情報を手にした本物の銃を持ったジョーカーが出現するんだ」 
 清史郎の言葉に健が唖然とした表情を浮かべる。
「さっすがジョーカー。でもよ、俺たちと鉢合わせにはならねぇのか?」
「一応発信機は取り付けてある。合成音声のスイッチを入れれば起動する仕組みだ」
「じゃあ信号がなかったら作戦決行って訳ね」
「それに送り付ける相手はこっちが選べるんだ。事前に動きを掴む事も難しくないだろう」
 清史郎はこれまでの取引の状況から矢沢組に逆らいそうな半グレをリストアップしている。
 表立って逆らう事はしないだろうが、ジョーカーとしてなら薬をガメるくらいの事はしかねない連中だ。
「でも、それって少ししたら矢沢組に露見するんじゃない?」
「ああ。でも矢沢組は確実に疑心暗鬼に陥るし、本物の銃弾が飛んでけが人でも出ればジョーカーに対して慎重にもなるだろう」
「最高にクールだぜジョーカー! ジョーカーが犯罪者だったら今頃大金持ちだぜ」
 健の笑みに清史郎も笑みで答える。
「じゃあ今日の仕事もクールに決めましょ」
 加奈の突き出した拳に三人の拳がぶつかる。
 本家ジョーカーは最高のチームなのだ。
  〈5〉
   自宅まで嗅ぎつけられたとは。
 午前七時、健司は朝食を食べようと吉祥寺の喫茶店に入った所で、ジョーカーのカードと対面する事となった。
 もっとも、ずっと尾行されていたなら自宅が特定されるのは不思議でも何でもない。
 一番の問題は探偵に四六時中張り込まれたらジョーカーどころではなく、他の仕事も一切できないという事だ。
 動揺を押し隠し、それでも周囲を警戒しながら歌舞伎町の店舗に向かう。
 ドアに挟んだ髪の毛が落ちた様子は無く、侵入者はいないようだ。
 店内に入り、一通り掃除を終えると鋭利に削ったシャープペンシルをカウンターから取り出す。
 殺しの方法はいくらでもある。
 相手が尾行しているなら、人通りの少ない所に誘い込んで始末するという方法も取れるのだ。
 健司は尾行のプロである三浦を警戒する事を止め、路地裏へと足を踏み入れる。
 一定歩いた所で振り向き、シャープペンシルを引き抜く。
 が、そこには三浦の影も形も無かった。
 四六時中張り込んでいるという訳ではないという事だろうか。
 健司が安堵しかけた瞬間、路上に落ちているトランプのカードに気付いた。
 ――ジョーカー!――
 三浦はこちらの考えを見抜いて行動に出ているのだ。
 と、言う事は人通りの少ない所は三浦本人に監視されない反面、ヤクザを監視しているような遠隔装置で監視している可能性が高いだろう。
 ――この僕が身動き一つ取れないと言うのか――
 健司は拾い上げたトランプのジョーカーを握りつぶした。
  
〈6〉
  
 深夜の路地裏、半沢芳樹はジョーカーマスクと紫色のどぎついトレンチコートに身を包んで、汗が出るほどにトカレフを握りしめている。
 部下二人が矢沢組とヤクの取引をする事になっており、そこをジョーカーのフリをして襲撃するのだ。
 成功すればタダでドラッグが手に入り、失敗してもジョーカーのせいだ。
 うだつの上がらない半グレの四十代、ヤクザに昇格できる見込みも無い。
 忠義を示せと言う方が無理というものだ。
 視線の先には金を手にした部下の姿、ヘッドライトで周囲を照らす矢沢組のベンツがある。
 部下が金を出し、組員がスーツケースを開いてドラッグを見せる。
 半沢はそのドラッグを見ているだけで身体にアドレナリンが駆け回ったような気分になる。
「動くんじゃねぇ! こっちにヤクを寄越せ」
 取引成立の寸前に半沢は銃を手に飛び出す。
 矢沢組の構成員がスーツの内側から銃を抜く。
「金もヤクも俺のモンだっつってんだ!」
 半沢は先制して引き金を引く。轟音が響き矢沢組の構成員が気圧されたように見える。
 立て続けに引き金を引いて距離を詰める。
 矢沢組の構成員が引き金を引き、半沢の頬を掠める。
 ジョーカーの姿で出ていけば怯むと思っていたのだが、反撃は想定外だ。
 それでもここが正念場と半沢は引き金を引く。
 一発の弾丸が矢沢組の構成員の鎖骨の辺りを貫く。
 凶悪な一瞥をくれて矢沢組の構成員たちが引き上げていく。
 半沢は両手でヤクを掴んで高笑いする。
 こんなにチョロい商売にこれまでどうして気付かなかったのだろう。
 ――ジョーカーを続ける限り俺は無敵だ――
  〈7〉
   事務所に次々に凶報が舞い込む中、矢沢組の緒方は状況の変化を理解していた。
 ジョーカーの模倣犯は自然発生的に生まれたものではない。
 本当に模倣する脳があるなら金や麻薬を要求する訳が無い。
 と、すれば中身は町の半グレや暴走族と察しがつく。
 とはいえ、数は厄介であり、ジョーカーの真似をすれば処刑だと言った所で本物のジョーカーもどこかにいるのだろうから半グレは高をくくって矢沢組の命令に従おうとはしないだろう。
 そして更に厄介なのはちゃんとジョーカーを模倣できている者もいるという事だ。
 ジョーカーを見たら撃てというのは簡単だが、半グレが連合して矢沢組に反旗を翻したら手足を失った矢沢組に抵抗する術は無い。
 矢沢組は権力と金と麻薬は持っているが、マンパワーが多いという訳ではないのだ。
 ジョーカーはその弱点を的確に突いて来たのだ。
「緒方、考えは無ぇか?」
 電話越しの矢沢の言葉に緒方は頭を巡らせる。
「ジョーカーマスクに百万の懸賞金をかけてはいかがでしょう?」
 マスクをつけている人間の罪を問わず、マスクを差し出せば百万��ると言えばわざわざ危ない橋を渡ろうという連中は少なくなるだろう。
 その上でジョーカーの��滅を図ればいいのだ。
「その手は使えそうだな。問題はマスクがどれだけ出回っているかだが」
「数は多くないと考えます。そもそも同時多発的にジョーカーが出現したという事は、誰かが創意工夫して模倣されたのではなく、何者かが意図的に行ったと考える方が自然です」
 言って緒方は組員たちに通達を出し、ついでに警察にも懸賞を知らせておく。
 公権力が銃刀法で取り締まりを開始すれば半グレは震えあがってジョーカーの真似などしていられなくなるだろう。
  〈8〉 
 
  健司は新庄市のホテルの床に落ちた髪の毛を拾いながら、事態の急変と自分の読みが正しかった事を知る。
 三浦は健司に捕捉された事で作戦変更を余儀なくされた。
 健司も身動きできなくなったが、それはお互い様なのだ。
 そこで今回のジョーカー量産化計画を演出したのだろう。
 しばらくの間町中にはジョーカーがあふれる事になる。
 矢沢組が引き締めを行っているものの、偽ジョーカーの模倣犯も出現し本来の偽ジョーカーより多くのジョーカーが出現しているのが現状だ。
 ――でもこの狂騒はすぐに終わる――
 健司は日が暮れるのを待ってアタッシュケースを手にホテルを出る。
 三浦が四六時中張り付いている訳ではない事も分かっている。
 いずれにせよ仕事を迅速に済ませれば証拠も残りはしないのだ。
 深夜の人気の消えたオフィス街を歩きながら手に手術用のビニール手袋をはめる。
 靴のサイズは自分の標準よりワンサイズ大きく、髪型は大きく変えていないが頭にはカツラをかぶっている。
 一般で売られているカツラには、インドの仏教徒やヒンズー教徒が出家する時の髪の毛が使われている。
 そして、インド人の髪の断面は日本人が楕円であるのに対し正円に近い。
 仮に髪が現場に落ち、科捜研が調査したところで出てくるのは謎のインド人という事になるのだ。
 健司は予定していた地点にたどり着くと、持ってきたボルトを電柱の穴に差して二・五メートル程の高さにまで登って電柱に寄り添うようにして立つ。
 予定通りスポーツバッグを手にしたジョーカーが走ってくる。
 中身は半沢という三下の半グレだ。
 正面だけに注意を向け、自分の身長より上には注意が向いていないらしい。
 健司はボルトに引っ掛けたテグスを引っ張る。
 ジョーカーの首にテグスが食い込み、仰向けに倒れかかる。
 アイスピックを手にした健司はジョーカーに圧し掛かるようにして飛び降りる。
 アイスピックがジョーカーのマスクと頭蓋骨を貫き、脳を攪拌する。
 健司はアイスピックをその場に放り捨てて、テグスもそのままに歩き去る。
 アイスピックもテグスも殺人犯を特定する決定的な証拠とはなり得ない。
 少し歩いた所で歩きやすい靴に履き替え、手袋を脱いでしまえば何一つ痕跡は残らない。
 意識していたが三浦に行動を監視されていた様子は無い。
 三浦はマスクをばらまいた事でジョーカー業を一定退いたのかも知れない。
 それならそれで……
 ――ジョーカーを名乗れば問答無用の死が訪れる――
 それでもジョーカーを続けられる者がいるだろうか。
 健司の受けた依頼はジョーカーの殺害であって三浦清史郎の暗殺ではないのだ。
  〈7〉
   緒方は苦い気分で事務所でTVを見ている。
 一週間で九人のジョーカーが殺され、四人のジョーカー、三人の組員が射殺された。
 ワイドショーは死体にピエロのマスクをかぶせる愉快犯として報道している。
 常識的に考えればそうなのだろう。
 だが、現実にはジョーカーの模倣犯が跋扈し、殺し屋円山がジョーカーを殺しまくっているのだ。
 この問題の裏が表ざたになれば矢沢組に捜査の手が伸びる。
 組長が事情徴収という事にでもなれば、知事選敗北は必至だ。
 この銃弾飛び交い殺し屋が闊歩する状況は、客観的に見れば矢沢組の内部抗争なのだ。
 ――やってくれたなジョーカー――
 日用品を用いて鮮やかに殺しを遂行する健司に対する恐怖は広がっており、それなりの数のジョーカーマスクが届いてもいるが、それでも自分だけは大丈夫と考えるのが人間の性であるらしい。
「兄貴、県警本部長が来ています」
 部下の言葉に緒方は舌打ちしたくなるのを堪える。
 何人か人身御供に出す必要はあるだろうが、それでジョーカー問題が片付く訳でも無い。
 今の新庄市はさながらギャングの蔓延る六十年代のニューヨークだ。
 このネガティブイメージの中ではカジノ施設の誘致も集客の為だなどという言葉で誤魔化せない。
 ――だが、商店街も打撃を受けているはずだ――
 緒方は次善の手を考えながら県警本部長を待たせてある応接室に向かう。
「緒方です。この度はお騒がせしております」
「いや、そうかしこまらんでくれたまえ。私がこうしておれるのも矢沢組あっての事だ」
 県警本部長の茨木義男が本革張りのソファーから腰を上げて言う。
 茨木は東大卒のキャリアで矢沢の後輩に当たり、同じゼミを受講していた間柄だ。
「殺人事件は起こせない。それが警察の不文律でしょう?」
「今回のカジノ施設建設は内閣肝いりでもあるんだよ。情報操作で反対派が工作しているように演出する事は可能だろうよ」
 転んでもタダで起きないのが政治家やエリートというものであるらしい。
「つまりはカジノ施設反対派が、賛成派の人間を殺してピエロのマスクをつけていると?」
「そういう報道になっているだろう?」
 茨木の言葉に緒方は唖然とする。
 当事者としての立場で見ていた為に気付かなかったが、一般視聴者の目線で見るとそういう風に見えるのだ。
「で、私の在任中にこれだけの死者を出しているんだ。票は囲い込めているんだろうね」
「固定票は押さえております」
 実際の所、矢沢組は内紛に近い状態で票を囲い込めるような状態ではない。
 大手のチェーン店などでは本部通達で票の取り込みができているが、個人事業主は依然として反対の姿勢を崩していない。
 ――やる事成す事裏目に出る―― 
「死人は出る、カジノ施設はできないでは私の本庁復帰が危うくなるんだよ。その意味は分かっているだろうな」
「はい」
 不満げな茨木に緒方は短く答える。
 ――県警本部長が殺害されれば流れが変わるかもな――
 緒方は脳裏にあのとらえ所のない殺し屋の姿を思い描いた。
  第四章       トリックスター
  〈1〉
  「最近俺たちが出てもヤクザもビビらねぇのな」
 クイーンメイブのボックス席で健がぼやく。
 本物の銃を撃つジョーカーもいれば、ジョーカーを狙い撃ちにする殺人鬼も存在する。
 実際に死人も出ているのだから今更驚かす程度ではヤクザも怯みはしないだろう。
「銃で撃たれるって不安。前より遠慮なく撃たれてる感じ」
 加奈が沈んだ様子でカクテルに口をつける。
「おいおい、私たちの本来の目的を忘れたんじゃないだろうな。私たちの目的はカジノ施設誘致の妨害だ。今の状況でカジノ施設がオープンしたとして誰がテナントに入るんだ? 暴力がこれだけ蔓延る状況を許した現職知事は窮地に立たされている。住民の安全と地域の活性に誠実に取り組む人物が取って代わらなければ市民が納得しない」
 ショットのバーボンを口に運んで清史郎は言う。
「いや、確かにジョーカーの言う事は分かるんだけどさ、昔は良かったっつーか、実入りが少ないのは我慢するとしてもよ」
「私たちの本当の目的に近づいているんだから喜んでいいはずなんだけどね」
「選挙の公示まで三日、世襲できそうな人間がいない以上与党は今更候補者を変更できないし、現職のまま選挙を戦う事になる。野党には追及の材料が掃いて捨てるほどある。これで負けるようなら本当に世の中が腐りきってるってだけだ」
 健と加奈の気持ちを察しながらも清史郎は言う。
「もう少しで全部終わっちまうんだよなぁ~。何か微妙だぜ」
「コンビニも忙しいって言えば忙しいんだけど、税金は取られるのに退職金も無いし年金のアテもないし」
 健が仕事にやりがいを感じられないのも、加奈がお先真っ暗だと言うのも理解できる。
「そうは言っても九月三十一日にはジョーカーは死ぬんだ」
「してやられましたよ。九月に三十一日なんて無いじゃないですか」
 ボックス席に当たり前のように現れた円山が言う。
「誰だテメェ!」
 健が身を乗り出す。
「歌舞伎町で殺し屋を経営している円山健司と言います。ここが三浦さんの本当の事務所だったんですね」
「まさか一週間で九人も殺したのって……」
「やだなぁ~僕はもっと殺してますよ。警察だって報道内容には気を遣うんです」
 涼しい表情でグラスを手にした円山がボックス席に座る。
「人殺しだってバラすぞ、テメェ」
 健が円山に向かって噛みつきそうな声と表情を向ける。
「ご自由にどうぞ。何か一つでも証拠が存在するならね」
「で、その殺し屋さんがここに何の用?」
「いや、本家のジョーカーはどうしているのかと思ってね。偽物でもこれだけ殺せば本家も仮面を捨てるんじゃないかって思って」
「おたくの言う通りだ。こんな凄腕の殺し屋がいるならジョーカーなんてやるだけ損だ」
「本当にそう思っていますか? 本家はまだ何か隠し玉を持っているんじゃないかって思うんですけど」
「随分と余裕かましてんじゃねぇか。ジョークを殺ったらテメェを殺す」
「殺しはしたくないけどジョーカーを殺させる事は絶対にしない」
「人望があるんですね。いっそ事務所でこの二人を雇ったらどうです? 今より金回りはよくなるんじゃないですか?」
「殺し屋より儲かるとは思えないね」
「それはリスクを負っていますから」
「テメェは嫌味を言いに来たのか。悪いが俺たちはテメェになんざ負けねぇ」 
 頭に血の上った健が言う。
「そうそう、一つプレゼントがあるんです」
「あんたがくれるものなんてロクなものじゃないと思うんだけど」
「野党連合の候補を殺すように県警本部長から依頼を受けたんです」
 笑顔で言った円山がグラスを空ける。
 突然の事に健と加奈が硬直する。
 選挙期間中に候補が殺されてしまったら票が分散して現職が有利となる。
 どれだけ黒い噂があったとしてもだ。
「それは俺たちに守って見せろと言っているのか?」
「さぁ、気まぐれですよ。僕はこれでもあなたの事が嫌いではないんですよ」
 言った円山が席を立って去っていく。
 加奈と健が茫然とその背を見送る。
「私たちと候補者をまとめて葬るつもりか……」
 清史郎は思案��る。候補者を守る為に張り付けば二人まとめて殺される可能性がある。
 しかし、候補者を放置しておけば間違いなく殺されるだろう。
 具体的な殺人予告という訳ではなく、あったとしても警察はアテにはならない。 
 市民は自衛するしか無いのだ。
――どうする……―― 
「なぁ、ジョーク、どうすんだ?」
「あんたも少しは考えなさいよ」
「考えてるって。頭の中じゃあの野郎を三十回は殺してる」
 非生産的な事を考えている健が言う。 
「ジョーカー、私、どうしていいか……」
 加奈は追い詰められた様子だ。
「こうなったらお望み通りにしてやろう。ジョーカーの最期を見せてやるんだ」
 清史郎は一抹の寂しさを感じながら笑みを浮かべて見せた。
 円山を前にして取れる手は一つしか無いと言っていい。
 ――あの男はこの結果を望んでいたのだろうか――
  〈2〉
  『……皆さん、この町の惨状は突然起きたのでしょうか? その根幹には市の中央にある広大な県の土地があります。この土地は江戸時代に火災の延焼を避ける為に作られた防災の為の土地でした。しかし新庄市が栄えるに従い、土地の価格が上がり莫大な利益が生まれる事が分かってきました。ヤクザやギャング、財界の人間はその利権に群がっているんです。もし、彼らの思い通りにさせるなら彼らの存在を容認する事になります。二百年前の先人の知恵に従い、ここを防災を兼ねた市民公園にする事こそが行政の成すべき事です……』
 夕暮れの新庄市の駅前で野党候補の峰山春香が声を上げる。
 聴衆はさほど多くはないが商店街や青年団が集まって盛り上げようと四苦八苦している。
 清史郎はオープンカーのハンドルを握りながらタイミングを計っている。
『ジョーカー、スタンバイOKよ』
 イヤホンから加奈の声が聞こえてくる。
『警察は野党の候補に人は割いちゃいねぇ、殺るなら今だ』
 健の声を受けて清史郎は紫のどぎついトレンチコートを羽織り、ピエロのマスクをかぶる。
「そこのお前……」
 演説を警備していた警官が警棒を手に近づいて来る。
「制服ギャングも久しからず」
 清史郎は銃を引き抜く。
 警官の足元で火花が爆ぜる。
 聴衆だけでなく、夕暮れの帰宅ラッシュの人々の足が止まる。
「綺麗ごとでマニィをロンダリィ! 俺はハッピーにトリガー、堅実な人生が諸行無常!」
 清史郎は自動小銃を抜いて選挙カーに銃弾を浴びせかける。
 銃声が響き至る所で火花が散る。
 ガードマンに守られて逃れようとする峰山の背に向けて引き金を引く。
 血を噴出させた野党候補が倒れる。
「こんな時には正露丸! キャベジンがあれば国士無双ゥ! ユンケル飲んだら夜金棒!」
 峰山が選挙カーに運び込まれ、現場から離脱しようとする。
『ジョーク、サツが動いた。射殺してもいいって言ってやがる』
 健の言葉に清史郎は生唾を飲む。想定してはいたが、想像以上に警察もなりふり構っていないらしい。
 清史郎はオープンカーで選挙カーを追い、グレネードランチャーで後ろ半分を吹き飛ばす。
 煙を上げた選挙カーが路肩で停止する。
 清史郎は高笑いしながら選挙カーの脇をすり抜け、オープンカーで町を駆け抜ける。
 無数のパトカーが清史郎のオープンカーを追う。
『ジョーク、法定速度は無視してくれ、俺がナビゲートしてんだし、今更ネズミ捕りが怖いって訳でもねぇだろ』
 健のナビゲーションでパトカーを避けて清史郎は埠頭へと向かう。
 銃声が響き、音速より早く飛んだ弾丸がオープンカーに襲い掛かる。
 警察が矢沢組の懸賞を狙っている事は健のハッキングで知っている。
 制止する警官の声と銃撃を受けながら、フルスロットルのまま岸壁から海上へと車体を躍らせる。
 肩と背中に銃弾を受けた清史郎は冷たくなり始めた海の中へと沈んでいく。
 清史郎が意識を失いかけた時、淀んだ海の中にウェットスーツに身を包んだ加奈が姿を現した。
 
 
 〈3〉
   警察が捜査した結果、海で手に入れる事ができたのは一台の盗難車とピエロの仮面と紫色のトレンチコートだけだった。
 知事候補が襲撃された事もあり、今後清史郎がジョーカーの扮装をすれば正体が露見する可能性は極めて高くなるだろう。
 ――本家ジョーカーは死亡した――
 健司は病院の廊下を歩きながらポケットの中のビニール手袋の感触を確かめる。
 野党候補は銃創を負って病院に入院している。
 実際には銃創など負っていないのだろうが、ジョーカーと候補が一芝居打つのだとしても病院は避けて通れない。
 ――悪いけど僕は殺しの依頼は完遂する――
 健司は候補の部屋の前のボディガードの様子を観察する。
「すみません。新庄市後援会の青年団の円山と言います。先生はご無事でしょうか?」
「先生はご無事だ」
 鉄面皮のボディガードが返答する。
「それを聞いて安心しました。一言無事をお祝い申し上げたいのですが構いませんか?」
「十分だ」
 ボディガードの言葉に笑みを返して健司は一人部屋に足を踏み入れる。
 両手にビニール手袋をはめ、小銭袋を握りこむ。
「やぁ、先生、ご無事なようで何よりです」
「無事なものか。ポリの弾丸を四発も食らったんだ」
 そこで見た光景に健司は言葉を失った。
「お陰で選挙が終わるまで退院できそうにない」
 三浦が笑みを向けてくる。
「バカな……あなたは……」
 身を隠さなくてはならないはずだ。
 治療する為にも……。
 ――治療する為に候補に成りすましたと言うのか――
 入院している間は世間の目は避けられる。
 それでは候補はどこに消えたと言うのか。
「お前は野党候補を殺せというオーダーを受けたはずだ。今彼女は立候補しているが、生死不明で野党の統一候補ではない。今は慶田盛弁護士事務所で事務の手伝いはしているが選挙活動はしていない。それでもお前は殺すのか?」
 健司は清史郎の言葉に笑いがこみあげてくるのを感じた。
「詭弁にも程がありますよ。ほとんど屁理屈じゃないですか」
「屁理屈でも君は依頼に忠実なんだろう? あと面会は手短に頼むよ。これでも歳でね、銃創って言うのは堪えるんだ」 
 銃創が堪えているのは本当らしい。
「それでも最後には候補は復活しなきゃならない」
「死んでいなければね」
 カーテンの影から姿を現した女性がグレネードランチャーを構える。
「まさか……」
「ジョーカーは死んだ、ヒットマンは来た。これで充分だ。なぁ、ジョーク」
 ラップトップコンピューターを小脇に抱えた青年が言う。
「ゲームオーバーだ」
 清史郎が不敵な笑みを向けてくる。
 健司は小銭袋を窓に投げつける。
 砕けたガラスの破片を拾い上げて身構えながら退路を探る。
 ガラスの破片で候補の命を絶つつもりだったが今三浦を殺した所で意味が無い。
 今は割れた窓の外に逃れる隙さえあればいい。
 女性の指がグレネードランチャーの引き金にかかる。
 猛烈な爆音と閃光が室内に満ちる。
 健司は窓の外に身体を躍らせた。
 ――これで知事候補が殺された事になるのか――
 健司は地面を転がり、人目を避けながらバッグから出した白衣を羽織る。
 ――僕は最期までジョーカーに踊らされたって訳か――
 敗北感より、どこか清々しさを感じながら健司は病院を後にした。
  〈3〉
  「慶田盛弁護士事務所では峰山候補を歓迎しますよ」
 新庄市にある、冤罪に強いと噂の弁護士事務所で峰山春香は未だに自分の身に起きた事が信じられないでいる。
 峰山が候補に決まったのは公示二日前、そこから慌ただしく野党の党首などと会談を交わし、選挙戦の流れになったのだが、その直後に慶田盛敦という弁護士が現れたのだ。
 慶田盛の噂は峰山も聞いており、信頼できる人物であるとは感じていたが、話の内容は想像のはるか斜め上を行くものだった。
 新庄市の乱射魔ジョーカーの本家は、冤罪事件の解決を主に行っている三浦探偵事務所の所長三浦清史郎だったのだ。
 三浦は知事選を前に町に大量のジョーカーマスクをバラまいて一時的に身を引いた。
 しかし、ジョーカーと野党知事候補は確実にターゲットを仕留める円山という男に命を狙われているのだ。
 更には矢沢組がジョーカーに懸賞首をかけており、警察も生死を問わないという条件でジョーカーを狙っているという。
 そこで三浦が出して来た案がジョーカーに候補者が襲われて入院、ジョーカーは警察に追われて死亡、更に候補者の運び込まれた市民病院に現れる円山を三浦が撃退するというものだったのだ。
 三浦は警察に追われて手傷を負う事は間違いなく、それならば知事候補と入れ替わって入院してもゆっくりと治療ができる。
 一方春香は慶田盛弁護士事務所で投票日三日前まで、事務職として短期採用される。
 円山のターゲットは知事候補であり、事務員殺害ではなく、その一線を越えてこないのも円山という男なのだという事だった。
「何もかもが信じられないわ。生死不明で選挙戦を戦うなんて……」
「野党の党首が連日新庄入りするって話になったじゃないですか」
 春香は慶田盛弁護士事務所の安普請の椅子に腰かける。
「それはいいとしても、いいえ、大きな借りを作る事になりますし……」
「市民に対して不誠実だと?」
 春香の心中を察した慶田盛が言う。
「その通りよ。三日前に復活なんて話が良すぎるし」
「でも、実際問題あなたを救う手立ては他に無かった」
 事務所の電話が鳴り、慶田盛が受話器を手に取る。
 ボタンを押してスピーカーに切り替える。
「私だ。円山が知事候補殺害に現れたよ。こっちで見かけだけは派手な爆薬を爆発させて追い出した。これで知事はテロリストにまで襲われた事になるわけだ。しばらく身を隠さなきゃならない理由が増えたんじゃないか?」
「三浦さんですね? あなたが身体に銃創を負ったという話は聞いています。あなたはどうしてここまでやったんですか?」
「若い連中と付き合いがあると、柄にもない正義感なんてものも持つものなのさ」
 三浦の言葉に春香はため息をつく。
 実際の傷はどうあれ、体面上知事候補は集中治療室にかくまわれるだろう。
「市民病院が告発したらどうするつもり?」
「それは無いさ。与党の市長になってから予算を削減されて、市民病院では上から下まで味方しようなんてヤツはいないんだから」
 慶田盛が肩を竦めて見せる。
「あと、仕事柄マスコミの相手をするのは苦手じゃないんだ」
「ああ、こいつは口先だけは有能だからな」
 二人の言葉を聞いていた春香は苦笑する。
 悪だくらみのような作戦だが、この二人にとってはこれは健全な正義のスポーツのようなものなのだ。
 
 〈4〉
   野党候補の入院先で爆破テロが起こった事で、与党候補に対する疑惑は大きなものとなった。
 野党候補は生死の境を彷徨っていると報道されている。
 清史郎は病院で何不自由なく治療生活を送っている。
 のだが……。
「なぁ、ジョーク、ここで寝てるってのは何かの冗談だろ?」
「怪我してるのは事実なんだから無茶言わないの」
 健と加奈は連日競うようにして病室を訪れている。
「お前ら、もうジョーカーの出番は無いんだぞ? 知事選も候補が無事を表明すれば一発で決まる。もうやる事は無いんだ」
 清史郎が言うと健が叱られた犬のような表情を浮かべる。
「いやさジョーク、俺、土建屋辞めたんだ」
「私も……その、コンビニ辞めたんだ」
 清史郎は二人の言葉に唖然とする。
 このご時世に仕事を自ら捨ててどうしようと言うのか。
「ジョーク、儲からないっつってるけどよ、俺が手伝ったら何とかなんじゃね?」
「先に言わないでよ。採用するなら私の方が得なんだから。多分」
 清史郎は額に手を当ててこみ上げてくる笑い声を抑える。
 傷に響くが笑いたくなるのだから仕方がない。
「お前ら、馬鹿じゃないのか? こんなオッサンと組んだって心中するようなモンだろ」
「それでもいいくらい楽しかったんだよ」
「またスリル、くれるんでしょ?」
 清史郎は笑い声をあげて身体を起こす。
 傷が引きつるが痛みなど気にならない。
「資本金はお前らと合わせて裏金三千万円。社員は三人。一人はオッサン。ジョーカー探偵事務所とでもするか」
「何かダセェ。中年は変に英語にするから逆にカッコ悪いんだよ。三浦探偵事務所でいいだろ」
「中年のセンスが悪いのは今に始まった事じゃない」
 清史郎は憮然として健に言い返す。
「じゃあ新しい門出に」
 加奈がバッグからワインのボトルを取り出す。
 若い二人は自分に老ける暇を与えてくれないらしい。
 清史郎はコップに注がれたワインを掲げる。
「乾杯」
 紙コップが音もなく打ち合わされ、新しい何かが動き始めた。
  エピローグ
   清史郎は健と加奈を引き連れて病院の廊下を歩いている。
 向かいからスーツ姿の峰山春香が歩いてくる。
 握手しようと峰山が手を差し出してくるのを無視して清史郎は右手を軽く上げる。
 峰山が応じて右手を挙げてハイタッチすると、清史郎と峰山は入れ替わるように方向を変える。
 清史郎の背後でフラッシュが瞬き、峰山が光とシャッター音に包まれる。
 生死不明から無傷での生還。
 これほどの宣伝も無いだろう。
 ジョーカーはカジノ施設を阻止するというその使命を果たしたのだ。
   選挙戦は野党党首が連日交代で訪れるという形で、野党が攻勢を強めていた。
 そして投票日三日前に野党候補が無傷で出現。
 暗殺者に狙われていた事を告げ、改めて支持を訴えた。
 緒方は事務所で出来の悪すぎる茶番劇を見せられたような気分を味わっている。
 ジョーカーという乱射魔が出現、殺し屋に依頼をしたらジョーカーの模倣犯が大量に出現。野党候補を狙ったら本家ジョーカーに命を狙われ、生死不明から一転蘇った。
 市民の心理を考えるまでもなくこの選挙は完敗だ。
 何処で何を間違えたのかなど分からない。
 否、最初からこの町には矢沢組を受け入れない何かが存在していたのだ。
 近々上層の組から矢沢更迭が告げられるだろう。
 だが、緒方は矢沢にとって代わろうなどとは思わない。
 ――この町にはジョーカーという化け物が存在するのだから――
   十月一日、健司はいつものように殺し屋のカウンターの内側にアルコールを吹きかけている。
 もしも、九月に三十一日が存在しているならジョーカーが殺されてやると言っていた日。
 新庄市では市民の支持を得た新知事の誕生でお祭り騒ぎらしい。
 と、殺し屋の戸口に宅急便の配達員が現れた。
「殺し屋様ですか? Amazon様からのお届けものです」
 記憶には無いが健司は笑顔で箱を受け取り、伝票にサインする。
 ナイフで慎重に箱の封を開けるとそこにはピエロのマスクが収まっていた。
 健司は口元に笑みが浮かぶのを感じた。
 ――確かにジョーカーは死んだ――
 健司はその自然な笑みを機械的な笑みの後ろに隠し、カウンターを磨き始めた。
 今日も新たな客がやって来るに違いないのだ。 
0 notes
tidegather-blog · 4 years
Photo
Tumblr media
Louis Vuitton ルイヴィトン ベルトバッグ 小銭入れ モノグラム 財布 円形ボックス型 金具ロゴ 革 斜めがけバッグ 大人気 海外販売
0 notes
cavane · 1 year
Photo
Tumblr media
The Noel Collection ❄︎❄︎❄︎ forme Liscio leather hand wallet / fo-22009 (fip-21 ) made in Japan 『 forme Liscio leather hand wallet 』 formeより革財布のご紹介です。 機能性が重視された小ぶりで持ち運びも便利な財布です。 革は歴史あるイタリアのトスカーナ地方で作られているLiscio「バダラッシィ・カルロ社」最高級のタンニンなめし革。 使用する度に馴染んでいき革は艶を増し色も濃くなっていきます。 クラシカル、モード、カジュアルな装いに小物スタイリングが楽しめ長くご愛用いただけます。 贈り物・ギフト・ご自身用におすすめです。※ボックス付き 詳細は下記よりオンラインストアをご利用下さいませ。 https://cavane.shop ・ ・ ・ forme NO : fo-22009 (fip-21 ) ITEM : Liscio leather hand wallet TYPE : men・women SIZE : W13 cm x D2.5cm x H9cm COLOR : Liscio Black 素材 : リスシオ(Italian Vegetable Tanned Leather / Liscio) 100% forme フォルメ designer_Akihiro Kojima 留め具のホックには真鍮製フラットリベットボタンを採用。小銭用のジップ収納、お札、カード入れとシンプルなデザインは各仕切りがあり、しっかりとした収納が出来ます。クラシカル、モード、カジュアルな装いに小物スタイリングが楽しめ長くご愛用いただけます。シリアルナンバー入り専用ボックス付きとなります。 革について Liscio(リスシオ)Italy Carlo Badalassi社 バダラッシィ・カルロ社 Liscio(リスシオ)はイタリア語で「滑らか」という意。 使用していく内に味わい深いレザーに増していきます。乾拭きをしていて表面にかさつきが出てくる場合は、皮革用のクリームなどで油分を補ってください。 フォルメは独自の木型開発、設計革本来の質感が良くわかる 植物染料による染めやベジタブルタンニングによる 革を用いた繊細な物作り。 ヨーロッパにおいて靴の大量生産(メーカー化)が行われる 前の当時では当たり前としてあった技術 (木型、製法、染色)を用いた靴作り。 道具として生活に根ざしたモノとしての靴。 一足一足の箱にシリアルナンバー記載。 アフターケアも万全で、ブランドとショップにて 修理を受付させて頂きますので、 より長く愛着を持って履くことの出来る一足です。 ※ 採寸は個体差がありますので、若干の誤差が生じます ご了承ください。 ※ 実際の商品と仕様、加工、サイズが若干異なる場合があります。 ※ 返品・交換はご了承くださいませ。 ※ 再入荷はございません。 ※ デイリーケアは天然繊維の布や天然繊維のブラシで乾拭きをしてあげるだけで、ツヤを引き出すことができます。 こちらよりお問い合わせください。 TEL: 06-6449-8588 or MAIL: [email protected] ・ ・ ・ #forme #formeshoes #artisan #handmade #fashiongoods #leatherwallet #Christmas #vintage #Carlo Bdalassi社 #liscio #shortwallet #Noel #gift #cavane #フォルメ  #牛革 #ベジタブルタンニンレザー #革財布 #京町堀 #革小物 #ノエル #クリスマス #贈り物 #22aw (Cavane) https://www.instagram.com/p/Cl4sRa9PB6F/?igshid=NGJjMDIxMWI=
2 notes · View notes
Text
ICカードも入る、新定番・縦型ボックスコインケース BOXコインケース
ICカードも入る、新定番・縦型ボックスコインケース Camouflage Tree BOXコインケース 山藤の定番デザイン、縦開きのボックス型コインケースにカモフラージュ・ツリーシリーズが登場。そのスリムなボディは片手で持つのに納まりがよく、フラップを開けば、まるで手のひらの上で小銭を見るような感覚で硬貨を探すことが出来ます。ミニマムなサイズ感ながら、裏面にはカードポケットが2つあり、ICカードやクレジットカードを収納出来、フラップ裏側のポケットには数枚の紙幣や鍵などを入れることで、小さなお財布としても使い勝手抜群でお使いいただけます。 カラー/サイズ ネイビー ブラック ブラウン オリーブ チャコール 通常価格 11,550円(税込) この商品のお届け可能期間は、 2023/05/14~2023/07/02 です。
Tumblr media
View On WordPress
0 notes
mizuhiki-gallery · 1 year
Photo
Tumblr media
【水引がま口財布👛 ゴールドベージュ🏵】 ナチュラルで安心感のあるベージュ色は、しなやかで落ち着いた大人の女性にぴったり✨ #あわじ結びコレクション のアクセサリーでも人気のカラー。肌色と近い飾らなさに水引細工の繊細さが重なって健やかな魅力を引き立てます😊 金運アップの“金の気”と安定した運気を育む“土の気”をあわせ持って、確かな経済感覚をつかみましょう♪ 内側は、ボックス型小銭入れ1ヶ所、カード入れ2ヶ所、お札入れ1ヶ所の使いやすい内装です。 6色からお好みのカラーをお選びください😊 【Makuake】 〜3/24まで「水引がま口財布」先行予約販売 https://www.makuake.com/project/kamihitoe/ 【オンラインショップ】 初回クーポン《HAPPY10off》 ******************** 紙単衣 - kamihitoe - 水引アクセサリーと雑貨のお店 Makuake、水引の商品、お問い合わせは @kamihitoe_mizuhiki プロフィールのリンクから #水引 #mizuhiki #金運財布 #ギフトにおすすめ #伝統工芸品 #縁起物 #ベージュカラー #いいことありそう #金運 #金運アップ #財布レディース #madeinjapan #職人の手仕事 #ベージュコーデ #セカンド財布 #春財布 #クラウドファンディング #二つ折り財布 #紙単衣 #水引財布 #水引がま口財布 #Makuake #マクアケ #応援購入 #和財布 #財布好き #日本製 #財布 https://www.instagram.com/p/Cngp5vIPedp/?igshid=NGJjMDIxMWI=
0 notes
furoku · 2 years
Link
0 notes
mashiroyami · 5 years
Text
Page 104 : 不在
 方角を頼りにして近道のために選んだ荒い林の中を潜り抜け、秋の陽に照らされて凪いでいる湖の表面を木々の隙間から見た時、ラーナーの胸に宿ったのは傷に��みるような懐かしさだった。奥底からこみ上げてきてくると、まるでここが一つの故郷のような錯覚を覚えた。湖畔の町に滞在したのはほんの僅かだったというのに、何故だろう。或いは、安堵を勘違いしているのかもしれない。首都から歩き続けて辿り着くまでの道のりは長かった。はっきりとした目的地が、しかも既に見覚えのある場所であるというのは、真夏から地続きの旅の中で初めての経験だった。それは彼女が想像していたよりも大きな喜びを与えた。自ら決め、歩き出した旅で初めて辿り着こうとして辿り着いた場所。ここで味わったことを忘れたわけではないし、それもまた胸を痛めるけれど、今は達成感が上回った。  ゴールを目前にして、身体の倦怠感や痛みが和らいでいくのが分かり、足取りが自然と軽くなる。  湖の際をなぞる道はコンクリートで固められていて、その道をぼんやりとどこか夢心地のような感覚で辿る。エーフィが軽やかな動きで剥き出しの防波堤に跳び上がり、湖からほど近い境目を悠々とラーナーに合わせて歩き始めた。  風が無い。今日は天候も比較的良く、水面はとても静かだ。遠い向こう岸の小さな町並みも薄らと輪郭を視認できる。湖畔の町と銘打たれたこの町だが、湖畔という意味ではこの湖を囲う全ての町に当てはまるはずだ。それでもこのキリがその名を持つのは、最も繁栄しているからか、或いは、水神とやらの存在によるものか、もっと別の理由か。  けれどラーナーにとってはこの町こそが湖畔の町に値することは間違いない。  時折自動車が横切っていき、静寂を裂いていく。  長い舗装路を辿っていくと、背の低い白壁の家並みに入ってきて、いよいよ嘗て降り立った風景と重なる。昼間の日差しが白を余計に強調するけれど、その目映さは夏の頃とは異なった。町全体が馴染んだような、ぼやけたような、或いは枯れたような気配が漂っている。  しかし、すぐに以前訪れた時とは明らかな違いに気付く。  建物と建物の間、窓と窓を繋ぐように小さく色とりどりの旗がいくつも吊り下がっており、町を彩っていた。ポッポやムックルといった小型の鳥ポケモンがその旗の紐で足を休めては、飛び立って大きく揺らしていく。各住居の玄関口も掌大程のランプが秋の花と共に飾られている。夜になればランプの灯がともって、夜道を温かく柔らかな光が照らすだろう。  まるで祭りが催されているかのようだ。  町の静かな騒がしさを物珍しい目で眺めながら、ラーナーは道すがらに見つけた電話ボックスに入った。黒い公衆電話に小銭を投下し、鞄の中でいつの間にかくしゃくしゃに潰れてしまっていた一枚の手紙を丁寧に開いた。その中に記された電話番号を、間違えないように慎重に入力する。耳元でコール音が鳴るたびに、緊張で心臓の鼓動が早まっていった。五度目で目を閉じ、耳を傾ける。彼女の記した番号が間違っているとは到底思えなかった。だが、日中なのだ、電話に出られる状況でなくともおかしくはない。  時間をずらしてかけ直すべきか。七度目のコール音まで粘って受話器を置こうと耳から離す直前で、不自然に音が途切れた。  息を詰めて受話器を耳に押しつけた。薄い雑音が微弱に鼓膜を振動させる。電話が繋がっているが、相手からの声は無い。 「もしもし」勇気を出して震えるような弱々しい声を出してみる。「クレアライトです。ラーナー・クレアライトです」  祈るように受話器を握る手に汗が滲む。 「エクトルさんですか」  返答は無い。  寡黙で最低限のことだけ口にするような人物であるとは把握している。とはいえ反応がこうも一切無いと、ミスの無いようダイヤルを押したつもりでも自信が萎んでいく。  向こうで布を擦るような音がした。 『お久しぶりです』  冷ややかな低い声音には聞き覚えがある。威圧感をも与えるだけの不思議な迫力。それだけで、間違いなく本人だと確信し、一気に以前のこの町での記憶が走り抜ける。  安堵と緊張が同時に喉を通り抜けていって、生唾を呑んだ。 『この電話番号は、お嬢様に教わりましたか』 「あ……はい」  刺々しい口調に気圧されながら返答すると、受話器越しに溜息が聞こえてくる。 『解りました。それで、用件は』  感慨に耽る暇も他愛も無い談笑をする隙も無い。ラーナーもそれに乗じた。もう一枚手にしている、首都を出る間際に青年から貰ったメモに視線を落とす。つらつらと整った字体で書かれた手紙とは打って変わり、お世辞にも綺麗とは言えない走り書きの、まさにメモという言葉が当てはまるものだ。 「ザナトア・ブラウンという方を知っていますか」  返ってきたのは長い静寂であった。  僅かな溜息の後、返答が来る。 『存じ上げておりますが』  釣り餌に獲物が引っかかったような感覚に、ラーナーの胸が高鳴った。 「本当ですか」 『ええ、キリではそれなりに有名ですから』 「その人に会いたいんです」 『え』  珍しく狼狽の気配が露呈し、前のめりになりそうになったラーナーも瞬時にそれを察知した。 『……何故ですか』  冷静さを取り戻した声で尋ねられ、一呼吸を置く。 「昔、羽を失くしたクロバットをもう一度飛ばせることができたと聞きました。だから、会いたいんです。アメモースが、一枚翅が折れてしまって、飛べなくなったんです。もう一度飛ばせてあげたいんです」 『アメモース?』  疑うような声音。彼は鋭い人間だ。ラーナーの手持ちがエーフィとブラッキーのみであることを覚えているのなら、多少の違和感を覚えてもおかしくはない。しかし、事情を説明するのに今は時間も覚悟も足りていない。 「また追って説明します。とにかく、できるなら、その人に会わせてほしいんです」 『会うこと自体は、出来なくもないでしょうが』どこか歯切れの悪い口調だった。『承諾されないかと』 「どうして」  受話器を強く握りしめ、耳を澄ませる。  唯一の希望、ただそれだけを求めてここまで来たのだ。そう簡単には手放せない。 『……私も詳しくは存じませんが、羽を失くしたポケモンを再度飛ばせることに成功したのは、そのクロバットだけだったはずです。今、彼女がどうされているかは分かりませんが、恐らくもう手を引いているかと』  ラーナーは思わず足下で二又の尾を揺らしているエーフィに目配せした。  長い電子音が割り込んできた。通話終了が近いと報せる合図だ。ラーナーは片手で小銭を探る。 『ひとまず会って話しませんか。事情があるようですし、私も慎重になりたい用件なので』 「はい」 『今はキリにおられるので?』 「はい。キリの、駅に向かったら分かりやすいですか」 『いえ、以前お嬢様とおられた湖沿いの自然公園があったでしょう。あそこで落ち合いましょう。場所は覚えていますか』  自信があったわけではないが、湖畔に向かえば見つかるだろう。肯定し、すぐに会うとのことで約束をとりつけた。 「時間は大丈夫なんですか」  今更ではあるが、唐突にも関わらず妙にフットワークが軽いのが気にかかった。 『……ええ。以前より自由がきくようになりましたから』  皮肉めいたような言葉だった。  自分の旅の形が変わったように、周囲も変わっているのかもしれない。そんな火花のような予感を嗅ぎ取って、ラーナーは何も言えなくなった。 『それにこの番号にかけてきたら、すぐに駆けつけるよう言われておりましたので』 「……クラリスに?」 『はい。では後ほど』  そこで通話は途切れた。  ゆっくりと受話器を置き、ラーナーは長い息を吐く。  息の苦しくなる電話だった。目的も果たせるかどうか、雲行きが怪しい。しかし糸が完全に切れたわけではない。  鞄にメモをしまい、アメモースの入ったボールを見やる。フラネで飛行を試み失敗して以来、アメモースは諦めたように動かなくなった。暴れ回る気配も無く、無気力がそのまま生き物の形を成しているかのように、いつボールから出しても暗い表情を浮かべている。  飛べるようになったら、とラーナーは思う。そうしたら何かがきちんと噛み合って、うまくいくような予感がするのだ。  電話ボックスを出て、湖畔へと足先を向ける。元の道を辿り再び湖を前にし、自然公園に歩みを進めた。  殆ど車道しかない道を進んでいくと、やがて��備された白い歩道へと出る。雄大な湖を眺めながら散歩のできる贅沢な遊歩道帯だ。ここも心なしか人が多い。道に等間隔に備えられた街灯に、町中で見かけた情景と同じように花が添えられている。道に沿って一列に並んだ花壇に、成熟しようとしている稲穂のような植物がお辞儀をして茂っているのも印象的だ。車道と逆側に目線を移せば、ポッポが点々と湖上を飛び回り、水面と空の成す青い景色を眺めている人達が並んでいる。時間の流れ方が少しだけ遅れているような長閑な雰囲気が町全体をくるんでいる。  遊歩道の先に見覚えのある広大な芝生が一面に広がる自然公園へと辿り着いた。  のんびりと浮き足立った町の中で、周囲を見張るような目つきのネイティオを隣に据え、黒スーツを着こなしてだんまりとベンチに座り込み、小型のノートパソコンを打ち込んでいる彼は異質だった。座り込んでいても、体格の良さが背中越しに伝わる。派手ではないが、存在感があるのだ。  あの人はもう居ないのだ。男の背中を遠目に見つけたラーナーは改めて思いを���す。白く塗られた柵に寄りかかって明るい話も暗い話も交わしたあの人は。あの人達は。  ネイティオの首が不自然なほどぐるりと回り、大きな瞳に捉えられたラーナーは硬直する。いち早く感知したネイティオに気が付き、エクトルはパソコンを畳み振り返った。  現れたラーナーとエーフィを確認して、会釈をする。手本のような綺麗な所作だ。 「まさか戻ってこられるとは思っていませんでした」  出会って早々の言葉にしては棘があるようだが、以前と変わらない無表情を浮かべている。私もです、とラーナーは力無く流した。  居場所を迷っていたところに、促され、ラーナーは隣に浅く座る。居心地の悪さに腰から頭まで痺れるようで、背筋を伸ばす。その間にエクトルは鞄にパソコンをしまった。 「お仕事中にごめんなさい」 「いえ、休暇中なので」 「休暇?」  目を丸くしたラーナーは改めてエクトルを観察するが、群青のネクタイを形良く締め、皺も殆ど無いスーツをしんと伸びた姿勢で着て、嘗てキリで出会った時と印象は変わらない。その外見に休暇という弛緩した雰囲気はまるで感じ取られなかった。 「纏まった休みなんて随分取っていないので、結局仕事をしておりますがね」  他にやることもないですし、と付け足した。 「そういうものなんですか」 「さあ。私が欠けているだけです」  欠けている、という自虐の含まれた言葉にラーナーは口を噤む。それから、欠けている、と心の中で反芻した。  ぎこちない空気が流れている脇で、エーフィはネイティオの隣に歩いていき、二匹は目を見合わせる。ネイティオの表情は彫像のように変化が無い一方、エーフィは腰を下ろして尾を揺らし二人の様子を見守る。 「本題に移りましょう。アメモースは今居ますか」 「はい」  ラーナーは膝に鞄を乗せると、アメモースの入った紅白を取り出し、開閉スイッチを押す。閃光と共に同じ地点にアメモースが姿を現す。包帯を巻かれ翅を一枚失ったアメモースは触角を垂らし、やつれた様子で光を失った瞳をエクトルに向けた。  負傷したアメモースを前にエクトルの表情は静かに曇る。 「可哀想に」  口元で呟き、手を組む。 「……確かにあのクロバットは飛べるようになりました。飛べなくなった鳥ポケモンは珍しい話じゃありませんから、それ以来貴方と同じように彼女の腕を求めてキリの内外からトレーナーが訪ねてきました。けれど、結局クロバット以外を飛ばせることはできませんでした」 「それで、今も」 「今のことは分かりませんが、もう随分前から受け入れなくなったはずです」 「そう、なんですか」発する言葉が堅くなる。「あの、クロバットの話っていつのことなんですか」  暫し考え込む横顔に、望郷に似た雰囲気が滲んだ。 「二十……五、六年程前でしょうか。お嬢様が生まれる前ですから」  思わぬ過去の話にラーナーはたじろいだ。当然、彼女も生を受けていない頃のことになる。同時に、平然と語る目の前にいる人物が急に一回りも大きな人間に見えた。 「そんなに前の話だったんですか」 「ええ。なので余計に驚いたということもあります。噂がまだ残っているとは」  一瞥する視線に非難や憐れみの色が滲んでいるような気がして、ラーナーは肩を狭めた。 「自分で調べたわけじゃないんです。知り合いが教えてくれて、それに縋ってきてしまって」 「そうですか」 「でも、アメモースを飛ばせてやりたいのは、本当なんです」  口調に力を込める。  当事者は理解しているのかしていないのか、彼女の膝で黙り込んでいる。弱り切ったその様子を横目で見やり、エクトルは沈黙した。 「正直なところ」苦言を呈するように続ける。「私自身はあまり気が進みませんが」言葉に迷い、選び抜いたものを慎重に発しているような口ぶりだった。「希望を託したくなるトレーナーの気持ちもあるでしょう」  ラーナーが視線を上げると、相変わらずエクトルは難しい顔つきをしていた。 「私は事情がありその方とは会えませんが���話はしておきます。うまくいくかは分かりません。後は貴方次第です」  徒労に終わることも覚悟していたところに、僅かな光が差し込んだようだった。可能性は残されている。芯から広がる安堵に腰が抜けてしまいそうになり、ほっとエーフィに視線を投げると、相手も微笑んでいた。 「ありがとうございます」  声を絞り出すと、エクトルは首を振った。 「大したことではありません」 「いいえ、本当に有り難いです。危うく、何のためにここに来たのか、水の泡になるところだったので」 「頼りにするのは構いませんが、後先は考えた方がいいですよ」  直球な意見にラーナーは面食らい、そうですよね、と弱々しく返した。 「それに安心するにはまだ早いです。私の話を聞いていただけるとも限りません」 「エクトルさんのお知り合い、なんですか?」  彼の眉間が僅かに歪む。 「何故」 「なんとなく、そうなのかなって」  気分を害しただろうかと萎縮したが、次の瞬間には彼の表情は元通りになっていた。 「……昔お世話になっていた時がありました。ですが、もう長らく会っていません」  ネイティオを見やり、指に力を籠めた。 「あちらはもう私の顔なんて見たくはないでしょうし、私も合わせる顔がありませんから」  含みを持たせた言葉が気にかかる。  ザナトアという人物と彼の間に存在しているのであろうただならぬ気配に、これ以上踏み込んではいけない過去を想像させた。 「……なんだか」ラーナーは顔色を窺う。「元気が無いですか」  エクトルは細い漆黒の目を少しだけ丸くして、鼻で笑った。 「失礼。話しすぎると良くないですね」 「何があったんですか」 「特には。お嬢様の元を離れたというだけです」  水流のようにさらりと打ち明けられた事実は、ラーナーに与える衝撃の大きさとしては充分だった。  絶句したラーナーを振り返る男の淡々とした表情からは、感情が見えてこない。 「貴方こそ、以前より弱っていらっしゃるように見受けられます。あの二人の少年はどうされましたか。アメモースも貴方のポケモンではなかったはず。別行動をされているので?」  ラーナーはぐっと喉の奥を引き締める。  痛いところを躊躇無く突いてくるが、当然の事項だろう。出会った時から違和感を抱いていたに違いない。彼女たちを知る誰かからいつか必ずこの質問が来ることなど、とっくに理解している。  エクトルはラーナーを観察するが、彼女の顔色は何一つ変わらなかった。晴れも曇りもなく、寸分も変化の無い表情で口を開く。 「あの二人は今首都にいます。元々、一人で旅をするはずだったんです。漸く本来の形になった、ただそれだけなんです」  呪文のように言い切り、黙り込んだ。そうですか、と呟いたエクトルもそれ以上は追随しなかった。  深く尋ねられるほどお互いに親密な関係でもない。この短期間の変化についてそれぞれで疑問を抱いたまま、しかし干渉しなかった。少なくともラーナーにはそれをするだけの力が残されていなかった。欠けている、エクトルの発した言葉を再び思い返す。欠けたのは彼だけではない。ここにいる誰しもが、きっとどこか欠けている。 < index >
0 notes
e-mono · 2 years
Photo
Tumblr media
〓Customer's stamp〓 一工夫でおしゃれな革財布の出来上がり✨ こちらは𝒀𝒖𝒓𝒊様(@_yu.pom_)よりご注文頂きました。ご利用ありがとうございます🍀 やさしいトープ色にかわいいチンチラのスタンプが最高にマッチしています💕 シンプルな作りで馴染み深い形の二つ折り財布。小銭がすぐに取り出せるボックス型小銭入れがポイントです! 使っていく内に違った色味や質感が出てきて、長く楽しめるのが本革財布の魅力です。 個人のプレゼントから会社のノベルティまで、幅広く対応可能のオリジナルスタンプ。是非一度お試しください🤝 — view on Instagram https://ift.tt/31n5tdE
0 notes
rigel-leather-blog · 6 years
Photo
Tumblr media
工房に展示しているサンプルモデルと色・デザインを全く同じでオーダーいただいたコインケースです🌟 逆にプレッシャー掛かりましたが、気に入っていただけたようで良かったです😊 ありがとうございました🙇 #革工房Rigel #sapporo #otaru #hokkaido #leather #xt1 #fujifilm #北海道 #札幌 #小樽 #革 #レザークラフト #手作り#手縫い #手染め #体験 #ハンドメイド #オーダーメイド #日常 #彩り #カラフル #ナチュラル #ヴィンテージ #ノスタルジー #レトロ #工房 #富士フイルム #小銭入れ #コインケース #ボックス型
0 notes