#昨年の今頃は鞄3つしかお買い上げいただけなかった
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kabanbaka-blog · 8 years ago
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名刺入れ作成の準備中。 頑張って早よ作れるようになります(;_;) . . . #小物難しい #休みがほしい #技術不足と納期との闘い #でもこれがどれだけありがたいことか知っている #昨年の今頃は鞄3つしかお買い上げいただけなかった #大いなる進歩 #周りの方へ感謝 #牛革 #本革 #オリジナル #オリジナルブランド #京都の鞄職人 #鞄職人 #革鞄 #革 #鞄 #かばんばか #革好き #madeinkawamoto #川本有哉#kabanbaka #art #fashion #leather #アート #ファッション #レザー #like4like #like4follow #いいねした人全員フォローする
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sytlo · 7 years ago
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CROSS HEART PUZZLE
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「カボチャの馬車が来たのです」  皮が銀色だと固すぎて食べれないと思います。  そう言いかけた私を取り残して、徳川さんは電車に――いえいえ馬車です――ぴょんと飛び乗ります。白黒のシックな服装できゅーとな仕草……お茶目な仕草が目に留ったのは、私以外にもいるはず。いないでほしいなんて、ささやかなねがい。 「では徳川さん、また明日」  明日会える保証もないのに。これも私の、ささやかな―― 「明日では遅すぎるのです」  ちょこん、と指が私の膝元を示しました。そこにはターコイズの便箋。その色だけで、さっきまで私の隣にいた人が配達人だと分かります。  驚く私を残して、カボチャの馬車は銀色の蹄鉄を鳴らして、走り出してしまいま��た。たくさんの従者と一緒に、お姫さまはマシュマロのお城駅前へ。私は別の列車で自宅へ。 「……さてさて」  さびしさを包み込むはずだった両手で、便箋の封を切りました。 『瑞希ちゃんへ』 「これは」  ゆるい口元が更にゆるゆるに。手紙には口元は正反対の、均一な四角が幾つも並んでいます。左上の小さな数字、そして対応した文字列。徳川さんから貰ったのは手紙ではなくて、挑戦状だったようです。シャープペンシルをかちかちと鳴らしてから、私は徳川さんと言葉を交わします。  交わす言葉は暗号。  クロス・ワード・パズル。           □     5:□□□□(紬ちゃんの色なのです)  揺れる列車の中で文字を書くのは難しいですが、最初の答えは簡単に分かりました。白石さんのトレードカラーは瑠璃色(るりいろ)、私の水色よりも深みのある、綺麗な色です。そういえば、瑠璃色の金魚は本当にいるのでしょうか。  答えのヒントは、まるで話しかけるような言葉で書かれています。丸くてふわふわとした文字は、少し目を離したら宙へと浮かんでしまいそうです。 ⑤:□□□(理科の実験で使ったあさがおなのです)  小学生の頃、観察日記を付けたことはありますが……あの時咲いた色も、瑠璃色でした。中谷さんや周防さん、大神さんも、日記、書いているのかな。  さて。ヒントで分からなくても、先に文字が分かる場合があります。白石さん、ナイスアシスト。 ⑤:ろ□□  ……理科の実験。あさがお、の、形。漏斗(ろうと)でしょう。ろ紙と一緒に使って、ろ過の実験をしたことがあります。徳川さんにも、そんな経験があったんでしょう。きっと。 6:う□□(鳥さんが川に作っている巣なのです)  巣……蜂の巣、空き巣とあるなら、きっと最後は巣で終わるはず。とりあえず、次にいきましょう。後回しにしてヒントを得ることも大事な戦略です。そして降りる駅を見過ごさないことも大事。 7:□と□□(ロコちゃんのアートを買ったのです)  横の四文字。伴田さんのアートを買った、アート買った……あとかた? 漢字で書かなくてもいいんですが、少し気になります。しかしスマホを使うのは御法度なので、我慢だぞ。 ⑦:□か(消える水事件、なのです)  理科の問題が多めですね。得意科目なのかもしれません。水が消える、気化(きか)。これで鳥の巣の答えも分かりました。 6:うきす(鳥さんが川に作っている巣なのです)  浮巣?  そんな私自身がふわりと揺れたのは、がらんとした列車が止ま��たからです。窓の外に見える空はもうすぐオレンジ色、私が降りるまではこのままが、いいな。満員電車で手紙に文字を書くのは、大変ですから。  続けましょう。 ⑥:□□(履かせたら律子ちゃんに怒られるのです)  秋月さんが怒るのは、悪戯をした時と、プロデューサーが数字を間違えた時。この前は数字が多すぎで、こらーっと……履かせるのは、下駄(げた)ですね。 2:□□げ□(ショートコント、なのです)  北上さんと野々原さんの漫才でしょうか。それとも実は、徳川さんはお笑いが好きで、内容を考えているのかもしれません。相方は、誰なのでしょう。冗談は苦手なので、ツッコミ募集だと、いいな。答えは演劇……いえ、ショートだから、寸劇(すんげき)ですね。 ⑧:□き(付いたらぱちぱちなのです)  何だか頭の中がぱちぱちと、電気が走ってばちばちと、ひらめきの火がぱぁっと起こりました。付いたのは火。付けるのは、薪(まき)。 ④:□ん□(社長さんは達筆なのです)  社長が書くもの、事務所の壁に貼ってある習字。文字。教え。訓示(訓示)。最近書いていたのは、『ここで野球をしてはいけません!!』……これは劇場に貼ってあった、田中さんの訓示でした。 3:□□□じた(二枚あったら発音が楽になるかもしれないのです。うそなのです)  じた、舌、二枚あれば二枚舌(にまいじた)。うそはいけません。  あと少し。全ての答えも、駅に着くのも。 ③:□すい□い(頭の中から体の調子を整えてくれる頑張り屋なのです)  む、これは難しい。すいすい、水平、彗星、水泳。どれも一文字足りませんし、頭の中にはありません。頭蓋骨、脳、海馬……ううむ、理科――私たちの年齢なら科学ですね――の知識では、徳川さんに敵わないようです。 4:□□□(この前環ちゃんがつかまえてきたのです)  文字のヒントもありません。これは記憶力テスト。大神さんがつかまえてきた、動物……違います、昆虫です。 『ぴょんぴょん跳ねて、捕まえるの大変だった!』  苦労を感じさせないくしゃくしゃの笑顔。��ロデューサーに見せていた籠に入っていた、バッタ(ばった)。これで先程の文字が一つ埋まります。 ③:□すいたい  衰退?  埋まらない一文字を探して、最後のヒント。 1:□□□く(革を新しくするのです)  新しい革。革……ワニの革……ワニに仮装した徳川さん。愛らしい緑のワニさんから変貌、艶やかなクロコダイル。一緒に見ていた百瀬さんがぐったりとうなだれていました。私は、どきどき。今も、少し。手紙に埋められた徳川さんのメッセージが、浮かんできたからです。  新しくする、変貌、変わる、改める……なるほど。改革(かいかく)ですね。これで、頭の中にある頑張り屋の正体も、現われてくれ��した。 ③:かすいたい  かすいたい。家に帰ったら科学の教科書とにらめっこです。  ……さて。  ぴったりと止まる体。目当ての駅名がアナウンス。手紙を大切に鞄へしまって、ぴょんと立ち上がって、電車を出る流れに乗ります。のんびりとした流れの中、ぷかぷか浮かぶ私は、しんきんぐたいむ。貰ったヒントは全て文字に変わりました。あとは、パズルの中に隠れた、徳川さんからのメッセージを見つけるだけです。           □      このパズルには、最初からミスがありました。ヒントが足りないのです。一覧を見ればすぐに気付きます。今まで考えなかったのは、それがミスではないと、徳川さんがこんなミスをするはずがないと、信じていたからです。電車を待っている間に作った即興のパズル……きっと、めいびー、だいじょうぶ。  ヒントがなくても文字は浮かんでいます。さっきまでじっと見ていたパズルです、頭の中に三つの文字が浮かびます。 ①:か□にばる ⑨:□□すた  そして。 ②:まつり  ……まつり。  ふぇすた。  かーにばる。  このパズルは、それだけ。  ただそれだけで、おしまい。  まつり、ふぇすた、かーにばる。  私は、頭の中で三つの言葉を繰り返し並べます。改札を出ると、言葉のテンポに合わせて足がダンス、夕方前にダンス。肩がぴょこぴょこ、鞄もぴょこぴょこ。  パズルに隠したメッセージ。  徳川さんが私に伝えたかったメッセージ。  確かに、これならヒントはいりませんね。  駅の外には街の明かり、沈む太陽に色を重ねたら溶けてしまいそうな橙色が整列して、私の進む道を照らしてくれます。駐車場はカラフルに光を返して、モノクロな足元を楽しく色付けてくれます。辺りのざわざわとした声も、何だか華やいできました。  銀色の蹄鉄が遠ざかっていきます。  まつり、ふぇすた、かーにばる。  クロスワードに隠れていたメッセージは、徳川さんそのもの。三つ重ねれば魔法の言葉。毎日の風景を変えてしまう、世界の秘密。私にだけこっそりと伝えてくれたメッセージ。  鏡よ鏡、私には私が見えてしまいます。ぽかぽか温かい身体に、ゆるゆるの頬。真壁瑞希の大変身……劇場のみんなもきっと、びっくりです。徳川さんは、私を見て、何と言ってくれるでしょう。 『瑞希ちゃんにも、カボチャの馬車が見えたのです?』  路地裏から飛び出すお姫さまの質問に、私はハイタッチで答えます。きっと今なら、徳川さんを連れて行ったオレンジ色の馬車も、それを走らせる白馬の姿も、その背に乗っているネズミの尻尾さえも、くっきり見えるでしょう。  だから、徳川さん。  手紙には手紙で、お返しをします。  明るい道を走り抜けて、玄関を開け、ただいまさえも家族に言わないで、机の引き出しを大捜索です。水色の――私の色に染まった手紙が、奥の方から出てきてくれました。  まつり、ふぇすた、かーにばる。  もう一度唱えて、私は手紙を書き始めます。もらった呪文よりも大きくなった気持ちを伝えるために、私は最初��、定規で線を引くのです。明日、徳川さんに会いたいと、まっすぐな願いを込めながら。           ○      ふらふらと、私の周りにそんな文字が浮かんでいます。朝のまぶしい日差しですくすくと歩く人たちの中、一人だけ遅れてしまうのは、昨日の夜が長かったせいです。その成果を潜ませた鞄をぎゅっと持ちながら、きりっと気を引き締めて、人ひしめく駅内へと入っていきます。  マシュマロのお城前駅を確かめる余裕もなく、私は満員電車の中に押し込まれていきました。当然、座れませんから、劇場までの長い時間は、リハーサルで過ごします。  徳川さんに会った時、最初に何を伝えましょう。 「瑞希ちゃん、寝不足なのです?」  偶然の奇跡に、私は寝不足のまぶたをこすりこすり、頭の上のリボンからつま先のブーツまで、目の前に立っている姿が徳川さんであることを、ふらり車内が揺れて、ぴったりと体がくっついた瞬間に、確かめました。ピンクの柔らかなフリルが、私を包んでくれました。 「大丈夫、なのです?」 「は、はい……」  徳川さんが驚いたままの私を支えてくれます。電車は人が行き交って、また発進。どきどきは止まりません。それから私は上の空、駅に着くまで何も話せませんでした。 「今日の瑞希ちゃんはふうせんさんなのです」  徳川さんの手に連れられると、本当にそう思えてきます。 「ふらふらで、ふわふわで」  空に飛んでしまいそうな、どきどきの風船。 「何だか、幸せそうなのです」 「……お見通し、ですね」  少し前を歩いていた徳川さんが、振り返り、にっこりと笑ってくれました。その瞳には、どこまで私が映っているのでしょう。 「徳川さん」 「ほ?」  立ち止まり、鞄の中から水色の手紙を取り出します。もしかしたら、手紙の中身もお見通しかもしれません。 「お返事を、書いてきました」 「……ちゃんと解けたのです?」 「勿論です。真壁瑞希、解けなかったパズルは、一つもありません」 「もっと難しくすれば良かったのです」  ……私の問題は、難しいですよ。とっても、とっても。  向かい合う私たちの距離は、手紙を差し出すことで埋まりました。私はもう、何も言いません。ただ、信じています。徳川さんなら、全てを解いてくれることを。  交わす心の暗号。  クロス・ハート・パズル。  どうか、私の心が、あなたにとどきますように。
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marisa-kagome · 6 years ago
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【JCCoC】コックリチョコレヰト
【始めに】
このシナリオは「ティーンエイジ・サイコプレイス」の前日譚となります。 ティーンエイジ・サイコプレイスを通過済の方もそうでない方も、プレイ可能です。
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【概要】
当シナリオは、現代日本、女子中学校を舞台としたものになります。 PLは中学一年生の女子と言う前提で、クトゥルフ2010の学生探索者作成手順に従って探索者を製作してください。
(ティーンエイジサイコプレイスを通過済の探索者の場合、能力値はそのままで構いません。SAN値や成長分の値は無しでお願いします。このシナリオの後に結果の増減をプラスして下さい)
また、このシナリオには推奨技能はありません。KPは推奨技能を提示せず、JC作成を見守って下さい。 もしこの値は女子中学生らしくないと言う内容であれば、修正を促して下さい。
推奨技能:なし プレイ人数:二人 プレイ時間:1~2時間
【シナリオ内容】
好奇心旺盛な所のある中学一年生、渡木二那(わたしきにな)は、こっくりさんで自分の好きな相手に恋人がいるかどうかをバレンタイン前に知ろうとしている。しかし、普段から行動が読めず、突き進む幼馴染に不安を抱いていた長名なじみ(おさななじみ)はハンと関わったことにより、こっくりさんが失敗、二那が乗っ取られ暴走する未来を知っていた。
なんとか止めたいと最終手段の忘却呪文も手に入れた���じみだったが、こっくりさんをやろうとしていた前日、正気を失う予知夢を幾度も見ていた所為で起き上がれないほどの高熱を出してしまう。無意識に助けを求めた先は、二那に誘われていた探索者たちだった。
【導入】
探索者たちは、私立織塚女子中学校に通う中学一年生である。
2月12日、探索者たちが放課後帰ろうとしていると「ねぇ、明日の放課後ひま?」と教室後方のロッカールームで少女が尋ねて来る。彼女の名前は「渡木二那(わたしきにな)」といい、活発で好奇心が旺盛なクラスメイトであることを知っていてよい。
渡木は「こっくりさんやろうって言ってるんだ」「なじみと一緒にやろうって言ってて声かけてるんだけど、中々あと二人、捕まえようと思ってもやらないって断られちゃって。〇〇ちゃんと〇〇ちゃん、よかったら一緒にやろうよ」と話しかけ��れる。なじみ、とは、渡木と仲のよい「長名なじみ(おさななじみ)」のことである。アイデアに成功すれば、この二人は幼稚園の頃から一緒に過ごしていることを知っていてよい。また、長名は渡木とは逆に、物静かで引っ込み思案なクラスメイトであることもわかる。
探索者が肯定の返事をすれば喜び、断れば残念そうに渡木は返事をする。
その時、ちょうど長名が近寄ってくる。彼女は迷いながらも「…ねぇになちゃん、やっぱりこっくりさん、やめようよ」と言うだろう。「えーなんで、大丈夫だよ」「…ダメだって、あんまりよくないと……おもう、よ…」この様なやり取りをしながら二人は帰って行く。
もしここで心理学に成功すれば、長名が何か怯えている様な表情であることが分かってもよい。しかしその事を聞いても長名はためらうような表情で押し黙るだけだろう。その日は探索者たちも家へ帰ることとなる。
夜、いつも通り布団に入り、眠りについた探索者はふと目を覚ます。気が付けば帰ったはずだというのに何故か自分の教室の黒板の前に立っており、夢にしてはやたらと鮮明なその景色にうっすらと寒気すら覚えるだろう。黒板にはびっしりと、写真が貼られている。また、机の所で二人の生徒が突っ伏すように寝ており、それが渡木二那と長名なじみであること、そして、目の前の教卓にラッピングされたチョコレートと、一枚の紙が置かれていることが分かる。
教室のドアや窓には鍵がかかっているのか、開けようとしても一切開かない。
窓の外は暗く、夜のようである。
◎紙
「目覚めれば 三百を数える間に朝へ」と書かれている。
◎チョコレート
よく見てみれば何か棒状のものにチョコが掛けられており、近くで見た探索者はその正体に凍り付く。かわいらしいラッピングが施されているその中にあるのは、チョコレートをかけられた人の指だった。SANチェック1/1d3。
◎教卓の引き出し 鍵がかかっている。渡木のロッカーにある鞄に入っていた鍵で開けることが出来る。中には明らかに血塗れと分かるカードが入っており、そこには「 先生へ 多分何度でも好きになると思います。先生が誰かの人であっても 」と書かれている。SANチェック0/1d2。
◎写真
どの写真にも大体渡木の姿が写っている。
目星:一枚だけ、手だけが四つ写っている写真がある。それはこっくりさんをやっており、一本の指が十円玉から離れていることがわかる。
アイデア:大人の女性も写っているが、そのどれもがどことなく渡木に似ていると思う。また、渡木に似た女性が病院のベッドにいる写真もいくつか見受けられる。
もし写真を手に取り裏を見てみれば、どれにも四桁の数字がそれぞれ記載されていることがわかる。手だけ写っている写真の数字は「0213」である
◎渡木二那
近寄ってみれば彼女は机に突っ伏してぐっすり寝ているようだ。
また、その耳に耳栓がされていることも分かる。揺さぶっても起きることは無いが、栓を外すと目を覚ます。
目星:口元に茶色の乾いた汚れがついている。そして爪が人ではあり得ない形に、不気味に伸びていることにも気付く。SANチェック0/1d2。
生物学:これは動物の爪ではないか、と思う。
医学:彼女の口元の汚れが血であることが分かる。SANチェック0/1d2。
引き出し:体を少し動かして彼女の机の引き出しを開ければ、こっくりさんのやりかたの書かれた紙が出てくる。
☆こっくりさんのやり方
白い紙に五十音と数字、はい、いいえ、それから鳥居を書く。
四人で机を囲み、鳥居に十円玉を置く。全員で十円玉に人差し指を置き、聞きたいことを質問すると十円玉が動く。一つ質問が終わるごとに「鳥居の位置までお戻りください」と言って十円玉を鳥居まで戻す。
こっくりさんを終わらせるには、「こっくりさん、こっくりさん、どうぞお戻り下さい」とお願いして、十円が「はい」に移動した後、鳥居まで戻っていく。戻ったら「ありがとうございました」と礼をいうこと。なお、終わらせるまでは決して指を離してはいけない。こっくりさんに憑りつかれてしまうので、気をつけること。
◎長名なじみ
こちらもぐっすり眠っている。同じように耳栓をしており、彼女の体にもし触れてみるならば、熱を出しているように熱いことにも気付く。
目星:手に何か握られている。開いてみればそれはくしゃくしゃに丸まった紙で「記憶を曇らせる呪文」と書かれている。 「記憶を曇らせる呪文」 この呪文の対象になったものは意識的にある特定の出来事を覚えれいられなくなる。五分ほどの呪文を唱えれば効果は即現れる。呪文の使い手は対象が目に見えていなければならず、対象は呪文の使い手の指示が受け取れる状況でなければなれらない。 呪文の使い手は呪文をかけようとしている出来事を知っていなければならない。すなわち「お前のやったことは忘れろ」というあいまいな命令をだすことはできない。「モンスターに襲われたことを忘れろ」というように、具体的なものでなければならない。 ※呪文の詳細は基本ルールブックP255。少し改変したものになります。
※呪文のMP対抗ロールだが、渡木、長名両者は空間の生成にMP消費を既にしている状態とし、現在のMP現在値を「1」とした状況で対抗ロールをさせること。ほぼほぼ自動成功で構いませんが、プレイヤーにはNPCのMPは伏せた状態でお願いします。
引き出し:体を少し動かして彼女の机の引き出しを開ければ、一枚のルーズリーフが出てくる。「になちゃんはすごい。何でもできるし、何でもやろうとする。でも時々なにをするかわからなくて、怖くなる。になちゃんは今度は、何をするんだろう。私と何をするんだろう」
◎ロッカールーム
☆渡木のロッカー
一枚のルーズリーフと鞄が出てくる。ルーズリーフには「なじみはすごい。私なんかよりとっても真面目で、努力家。でも、最近眠れていないのか、青い顔をずっとしている。心配だからどうしたのって聞いてみるけど、何も教えてくれない。一体あの子は何をして、何を考えてるんだろう」
鞄には携帯と手帳、小さな鍵が入っている。手帳には「沢谷先生カッコイイな~、好きな人いるのかな、こっくりさんに聞いてみよっかな」という淡い思いが綴られている。
携帯にはなじみとのやり取りがある。「こっくりさんなんて絶対よくないよ、やめようよ」「なんで。大丈夫だよ、なじみも聞きたいことないの?やってみよ?」
☆長名のロッカー
開けてみると、一つの箱と一冊の本が入っている。
箱:箱は木製の箱である。錠前がかけられており、四桁の数字で開く仕組みになっている。また、もし鍵開けで試すのなら「この鍵はあらゆる番号で開きそうである」ことが分かる。
※この箱は「日付に該当すればその数字でも開く」ようになっており、開くとその日の「渡木二那の写真」が入っている仕組みになっている。
0213と入れた場合:渡木が出欠名簿を見ている写真や、こっくりさんを行う渡木の写真が大量に入っている。その中で渡木が指を離してしまい、慌てた表情をしているものもある。また出欠名簿では、長名が高熱で休んでいる旨も記載されている。
0214と入れた場合:男性教師に襲い掛かる渡木の写真が大量に入っている。渡木の瞳孔は気味が悪いほどに開いており、その爪は先ほどの見たのと同じく鋭く長い。写真の中で渡木が「教師に襲いかかり」「指を噛みちぎり」「四つ足で走り去る」といった流れが確認できる。SANチェック1/1d3。教師は理科の教師である「沢谷海人(さわやかいと)」であると探索者たちは知っている。
本:「予知」と言うタイトルの本には付箋が貼ってある。その付箋の部分には黒い霧の様な何かが描かれている。「この存在は、厚い霧のとばりに隠されて出現する。初めは霧が立ち込め始め、数秒以内に視界が2~3メートルになるほど霧が濃くなる。冷たい霧の中にいるすべての者は、不気味な遠吠えとうめき声を聞き、怪しげな、ぼんやりとした顔と奇妙な姿を見る。この霧の中心に、それはいる。ハンの姿は霧に遮られ、見えるのは身長およそ3メートルの、フード付きの外套をはためかせた、人間とも生霊ともつかない姿である。崇拝の見返りとして、ハンは未来を占う能力を信者に与える。予知は幻視、夢などの手段を通じて行われる」この奇妙な記事を読んだ探索者は、背筋がぞわりとするような、気味の悪い感覚を覚え一歩後ずさるだろう。SANチェック1/1d4。
【脱出方法】
耳栓を外し渡木か長名を、もしくは渡木と長名を同時に起こすと、彼女たちは目が覚めればぼんやりとした表情で探索者を見つめるだろう。どちらかが、またはどちら���が目を覚ました約五分後に、急に辺りが真っ白になり、気付けば探索者は自室のベッドの中にいる。
NPCを起こした後に取る行動でエンディングが変わる。詳細は後述。
エンド1:五分間の間で、探索者二人が一人ずつにつき、同時に「渡木にこっくりさんを忘れさせる様に呪文をかける」「長名に未来予知(ハン)のことを忘れさせる様に呪文を掛ける」。
エンド2:五分間の間で、「渡木にこっくりさんを忘れさせる様に呪文をかける」。
エンド3:起こしてからの五分間、何もしない。
※教師のことを忘れさせても、今後出会えばまた彼女は恋に落ち、こっくりさんに真実を聞いては暴走するだろう。またこの呪文は「事象やモノ」を忘れさせるものであって、「気持ち」などの忘却はできないものとする。探索者が迷っていれば、アイデアを振らせてもよい。
【エンド分岐】
エンド1「双方に呪文を掛ける」
翌日、目を覚まし学校に行けば渡木に出会い、今日の放課後、ハンバーガーを食べに行かないか誘われるだろう。彼女の口からこっくりさんという単語が出てくることは一度もない。
また、その日長名は欠席しているが、14日には登校してくるだろう。彼女は一昨日よりも顔色がよく、皆を見ればふわりと笑って「おはよ」と声をかけてくるだろう。憑き物が落ちたかの様な彼女は仲良く渡木と話し始める。 その数日後、想い人が既婚であることを知り号泣した渡木だが、泣くだけで済んだ様だ。彼女は長名に慰められながら青春の小さな傷を癒していくことだろう。織塚女子中学校の「最悪な未来」は防げたのかもしれない。トゥルーエンド。
エンド2「渡木に呪文を掛ける」
翌日、目を覚まし学校に行けば渡木に出会い、今日の放課後、ハンバーガーを食べに行かないか誘われるだろう。彼女の口からこっくりさんという単語が出てくることは一度もない。
また、その日長名は欠席しているが、14日には��校してくるだろう。彼女はこっくりさんを昨日やったのか、ということをまず探索者に聞いて来る。やってないと言えば彼女は安心したような表情を一瞬見せるが、それ以降も顔色が悪く徐々に休みがちになるだろう。
中学二年の始業式、長名の姿を見かけることはない。誰かに尋ねれば彼女は転校していったと聞く。それを隣で聞いていた渡木は持っていたカバンを取り落とす。
「……きいて、ないよ。そんなの」彼女はそう言うと、らしくなくぼろぼろと泣き出すだろう。カバンには二人で買ったお揃いのキーホルダーが寂しく揺れていた。ノーマルエンド。
エンド3「何もせず朝を迎える」
翌日、渡木は放課後、予定通りこっくりさんに誘ってくる。探索者が誘いに乗らなければ他の人を誘うだろう。長名は高熱で休んでいるようだ。
こっくりさんを開始し幾つか質問をした後、渡木は「沢谷先生に好きな人はいますか」と尋ねる。十円玉はするりと、はい、と言う方向に動いたあと「け つ こ ん し て ま す」と言う文字を指す。次の瞬間「え?」と声を上げて指を離したのは渡木だった。もしその場に探索者がいれば、見覚えのある、先日夢で見た写真の様な光景に嫌な予感を覚えるだろう。
こっくりさんはきまずい雰囲気で再開され、終わった後に渡木はどこか虚ろな目で帰宅する。
そしてその翌日、廊下で悲鳴が響き渡る。探索者たちが目にしたのは、沢谷に襲いかかり、薬指を噛みちぎる���変した渡木の姿だった。SANチェック1d3/1d6+1。
そのまま警察が呼ばれ、渡木は連れていかれる。長名も登校して来ず、中学二年に上がれば、二人の名前は名簿から消えていた。バッドエンド。
※もしティーンエイジ通過者で、探索者の関係性に齟齬が生じる場合、目が覚めた時に夢の内容を全て忘れていても構わない。
【報酬】
渡木に呪文をかけこっくりさんを阻止する:SAN1d4
長名に呪文をかけハンのことを忘れさせる:SAN1d4
※SANは元の値を超えて回復しないようにお願いします。
【最後に】
ここまで楽しめて頂けましたら幸いです。
もし気になりましたら後日譚「ティーンエイジ・サイコプレイス」の方もよろしくお願い致します。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11876150
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yukiosa-progress · 7 years ago
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30th Dec. 2018, Sunday
PLPロンドン_15週目_Yuki OSA
《旅の備忘録》
12/22 05:55 LTN → 09:50 BRI
N16のバスに乗って、旧市街手前で降ろしてもらう。バスの中の譲り合いや、チケットの受け渡しに南伊の人々の暖かさを感じる。
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歩いて15分ほどで大通り沿いにある宿の近くまで着いたが、Googleマップの場所に宿がなく、右往左往。近くのビルの警備員の人に聞いてみたところ、その人もわからず、一緒に探してくれる。キオスクの友人に聞いてくれたりして、地図のポイントがワンブロックずれていることが判明。御礼を言って別れる。
宿の中は旧式のエレベーター。それを取り囲むように階段が螺旋状に上がっている。エレベーターは少し乗るのが気が引けて、階段で登る。
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4階の宿に着く。両開き扉が狭い。片側だけ開いていて、肩幅ぎりぎりで荷物が引っ掛かる。
中には宿のおばさんと招き猫の人形が腕を振っている。受付前に立つイタリア人らしい長髪に少しパーマのイケメンがおばさんと話している。挨拶をするとその人もなんとフローレンスで学んだ建築家らしい。今晩エンジニアの友人とご飯を食べるけど一緒に来て語らわないかと言われたが、アルベロベッロに経つのでいけなかった。誘ってくれるだけで嬉しいと伝えた。またマテイラに行くことも伝えたら、マテイラは来年ヨーロッパのカルチャー首都に2019からなるという情報を教えてくれた。
部屋から若い女性がチェックアウトをして出て行く。
支払いを済ませると、おばさんが入浴用タオルを貸してくれた。優しい。お茶も飲まないかと言われたが、アルベロベッロ行きの電車が迫っていたので、丁寧に断った。
宿泊用の荷物を置き、手提げだけ持ちバーリの駅まで徒歩で向かう。10分ほどだが碁盤の目状の道はとても長く感じる。
駅に着いてみると掲示板に乗る予定の電車がなく焦る。駅員のおじさんに聞くと、違う駅だから地下を歩いて左に行けと言われたが、行ってみても何もない。引き返し通行人のおばさんに聞くがイタリア語でわからず。そうこうしているうちに、時間が迫りのこり3分。焦っていたところ、駅員の若い女性が地下に潜り反対側の車線のところが違う駅なのだと教えてくれる。ややこしい。
また地下に潜り反対側の車線まで走ってなんとか間に合うことができた。
12:03 Bari central→ 14:05 Alberobello
プッティガーノに着くとバス停があり、そこで待機。待つこと30分ようやくバスが来る。そこでもタバコを吸ったおばさんに助けられる。南伊の優しさに感謝。
アルベロベッロに到着。するも新市街に降ろされ場所不明。Wi-Fiもないので右往左往。ガソリンスタンドの売店のおじさんに教えてもらう。
トゥルッリの地域着。石積みのとんがり屋根状の家々が建ち並ぶ丘陵の眺めに感動。
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インフォメーションセンターを探していると、美味しそうなパン屋。朝から何も食べていなかったので、プンチャをオーダー。15cmほどの温められた丸く薄べったいパンに、トマト、モッツァレラチーズ、ベーコンが挟まっている。美味。
バンダナっぽい旧式の帽子を被ったパン屋のダンディなおじさんに、インフォメーションセンターの場所を聞くと、何しに行くんだと聞かれ、地図をもらいにと答えると、うちにもあるからちょっと待ってろ、と引き出しを開けて地図を取り出すと、名所や巡った方が良いところを丁寧に教えてくれた。感謝。
プンチャを片手に食べながらトゥルッリの街並みを登る。石積みの狭い階段の両脇は、観光客向けの店で犇めいている。お土産には興味がないが、トゥルッリの内部が気になるのでいくつか入ってみる。とんがり屋根の裏側上部まで塗装されているところが多いが、石積みをそのまま見せているところも。円形の平面を長い二本の木製の梁が流れる。
観光店通りを離れ、住居群を歩くと、屋根の補修工事現場にあたる。しばらく眺めていると、その場で石を砕き、丁寧に石を積み上げていく技術はまさに職人技。1273年から続く技術の伝承。厚さ大きさの違うライムストーンを使い分け積み上げていく。分厚く大きな石は円形の壁に使われ1.3~1.8mほどよ壁を形成する。その上に木製の梁を二本流しつつ、屋根が上に乗る。屋根は三層構造で、まずはじめに屋根の構造となる20cmほどの少し厚めの石を内部空間側の斜め状の角度に合わせカットしながらとんがり状に積んでいく。この角度には緩やかさ加減を徐々に変えて、長年の構造に耐えうる知識が詰まっているらし���。次に隙間を埋めるための砕けた細かい砂礫を詰め込んで、最後に薄い石板を瓦状に積んでいく。屋根の最上部には、十字架だけではなくユニークなシンボルが、キリスト教の様々な願いや想いを込めた形豊かなかたちで表現されていると同時にキーストーン同様の役割も持ち、屋根全体のアーチ構造の重しにもなっている。外壁を白く塗装するようになったのはいつからか不明だが、1つの家が同じ素材で出来上がっていく光景は感嘆に値する。しかもその素材は、同じ地域から産まれた石なのだ。風景に対して相性が良く感ずるのはそういう事由であると感心。
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17時過ぎに日が暮れて、そこからは夜のバスまでの6時間をどうするか考える。最近の色々な悩みなどを抱えつつ、思索に耽りながら直線上に歩き続けていると、大きなバシリカ様式の教会にあたる。中世の都市構成の誘導的意図を感じる。
中へ入り、お祈りなどをしつつ、座っていると、子供のためのクリスマス礼拝が始まる。賑やかな子供達が礼拝を済ませ帰っていく。
どれくらい座っていただろうか。気がつくと今度は大人たちのクリスマス礼拝が始まっていた。壮大なパイプオルガンの音や賛美歌の音、僧侶の聖書を読む声などが、幻想的に礼拝堂内に響き渡り、目を閉じて耳を澄ませる。
教会に滞在すること3時間半。とても心が落ち着いていた。
あてもなく夜の街を歩く。
夜のトゥルッリは、昼とは違った趣を見せる。月明かりと街灯に照らされた影の陰影が深いためか。
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子供達が夜にもかかわらず大人も伴わず出かけていく。街角には井戸水の蛇口があり、そこへ首を傾けて口を近づけ飲んでいる。私も飲んでみようか。
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20分ほど歩くと、広場にでる。広場はとても賑わっており、様々な店舗が出ている。
徐々に子供の数が減っていき夜も更ける。
23:25 Alberobello → 00:40 Bari
バスの中で寝過ごさないか心配であったが、なんとか宿に到着。
STAY@ Bari “MoViDa CaVour”
12/23
カフェでバスを待つ。本場のカプチーノは濃い。
クロワッサンも密度あり。
7:25 Bari → 8:35 Matera
マテーラに到着する。が、徒歩30分程度離れた新市街にて降ろされる。
途方に暮れていたところ、同じバスでバーリから来た、2人の若いカップルに話しかける。2人ともバーリで法律を学んでいて、来年就職らしい。今日はクリスマスイブ前日のワンデートリップにマテーラまで来たと言う。彼女の方は日本に二回も行ったことがあるらしく、話が弾む。旧市街広場までは道のりが同じで、一緒にローカルバスに乗り向かう。
旧市街着。カップルと別れる。
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別れ際に教会になぜドクロが彫り込まれているのかについて少し話した。
南伊では結構多いらしい。
STAY@ Matera “L'Ostello dei Sassi”  
宿着。荷物を置く。荷物といってもA4サイズのリュックだが、一日中担ぐのは応える。
15分ほど待つと受付の人が出勤してきたので、荷物を置いて良いかと聞くと、チェックインもできるということなので、そうする。イタリアのユースは一泊16ユーロくらいが相場で、どこも安い。
今回泊まるところは、マテーラ特有のサッシと呼ばれる岩窟住居をホステルに改装したところ。
荷物を置き、街へ出る。
光と影のコントラストが素晴らしい。街全体がどこを切り取ってみても彫刻作品として成り立つのではないか。
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階段の折り重なる迷路のような街路を歩き、散策する。
サンタルチア教会を前に、殉難をあらわす聖杯のシンボルを目にする。この土地の人々が受けてきた、耐え抜いてきた苦悩や災難を思う。私事の悩みが小事に思える。
農家の家の跡、復元などを見つつ、土地の特性に合わせて工夫された生活様式を学ぶ。雪を貯めるシステムなども面白い。
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歩き続け、登り続け、大聖堂手前の高台の道の途中にあるカフェで立ち止まる。
昼もとうに過ぎていた。
喉がとても乾いていたため、カフェアメリカーノを頼むと、バシリーカ州産のクッキーを一緒に出してくれた。とても美味しい。
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1時間ほど座りながら景色を眺め、考え事をする。
続きの坂道を登ると、大聖堂があり、その眼下のもう1つの集落が見渡せる高台に着く。
日も上りきり15時くらいにはなっていたかと思うが、高台広場にあるベンチで、鞄を枕に横になる。
とても心地よい。
太陽と、風と、温湿度が最高のバランスでミックスされた感じ。
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その後は当てもなく歩き続け、日も傾き、そろそろ帰ろうかという気持ちがよぎった時に、ダリの作品である彫刻が見えた。
どうやら、サルバドール・ダリの美術館が岩窟住居の跡地に整備されているようだ。
ダリの天邪鬼というべきか、すべてに対する反骨主義の徹底した作品コンセプトに感銘を受ける。
時間の速度は個人の感情や心の景色、触感、聴感、嗅感、立場であったり、周りの環境であったり、すべてに触発されて、まったくもって安定したものではない。不合理、不条理という言葉を久しぶりに目にした気がする。合理的なものと非合理的なものの狭間。不条理は時に災難もあれば、圧倒的な美を生み出す時もある。それを取り持つ合理的な知性といったところであろうか。
また、女性の秘める美しさに対する彫刻表現にも驚嘆した。シュールレアリズムの作家についてはほかにあまり知らないが、コンセプトはとても強い不条理に対するメッセージやイデオロギーを持ち合わせているが、その反面コンセプトと作品自体の一貫性はとても強く感じると思う。これほど説明を聞いて、なるほど、と感じる芸術作品はあまりないと思った。
だいぶ遠くに来ていたのか、帰路がかなり長く感じる。
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旧市街を出ると、新市街との境界沿いの細長い広場に出る。そこを東の端にある宿まで、歩いていく。
途中で突然名前を呼ばれ、誰かと思い振り向いたら、今朝のバーリから来た法律を学ぶ学生カップルであった。どうやら彼らは30分後のバスでバーリへ帰るらしい。一日中誰とも話していなかったからか、珍しくとても話したい気分ではあったが、彼らのバスの時間もあるため、惜しみつつお別れをした。
宿に荷物を置き、寒さに耐えられる服を着込み、夜の街へ再び出かける。
ラビオリを食べる。
量は少ないが、黒トリュフの香りがとてもよい。
旧市街へ再び行き、今朝とは違うルートで歩く。
満月である。
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ふと、隙間風を感じる。
崖沿いの厚さのある石積みの手摺に腰をかけ、崖に足を投げる。
12/24
08:35 Matera → 12:20 Naples
朝起きて、30分程度歩く。
バスを待つ。
ナポリへ向かう。
マテーラは高木と呼べる木々がとても少なく、そのために岩窟住居が発展していったのかもしれないが、西へ向かうにつれて、風景が変化し、木々が増えていく。
太陽の照らす芝に寝そべる牛を見る。
ナポリに昼に到着する。
いつものようにインフォメーションセンターで地図を貰うべく、探すが一向に見つからない。
昼も食べてから宿に行こうかと思っていたが、仕方なく、歩き始める。
街が汚い。
パリ北駅などの治安の悪さと同質の雰囲気を感じる。
足早に歩き続ける。
いつのまにか道幅がとても狭い旧市街へ。
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歩いていると、上の方から名前を呼ぶ声が聞こえる。ユースホステルを利用して、こんなことは今までなかったから正直驚いた。
むしろ、呼んでもらえなかったら入口を見つけられなかった、と後から思う。
STAY@ Naples “Giovanni's Home”
3階に上がり、ジョバンニの家に入る。
70過ぎの小太り��優しいお爺さんといった印象だ。
奥の方で、1人の青年が手作りパスタを、丁寧にトレイの上に並べている。
ジョバンニ曰く、今からこのパスタを茹でて、宿泊している皆んなとランチを食べるという。
もちろんお前も食べるよなと言われ、驚く。
状況が読めない。
奥の青年は誰なのか。
ジョバンニは荷物をとにかくロビーにおいて、キッチンに来いと言う。
バシリーカ州特有の、とてもシンプルなパスタを作ると言う。Stracinati con i peperoni cruchi e mollica と言うパスタのようだ。ドライチリペッパーと乾燥したパン屑を使うガーリックとオリーブオイルの効いた素材の味がわかるパスタ。
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その後、シンガポール人の2人が宿に帰ってきて、さっきパスタを並べていた青年(ブラジル人のジョアオと言うらしい。彼も私の2時間ほど前に到着し、突然パスタ作りを手伝わされたと言う)と、ジョバンニと私のその日宿にいたメンバー全員で出来上がったパスタを頂く。
とても美味しい。
話が弾み、全員の距離がぐっと縮まる。
今日がクリスマスイブであることを忘れていた。
その後、ジョアオとともに、ジョバンニからのナポリレクチャー(とても歴史に対しても話が深く、地理学的な観点から、火山の種類、彫刻芸術、現代建築家の作ったメトロの駅まで話が及ぶが、とにかく話が長い。)を聞く。
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16時前になっていた。
ジョアオとともに街に出る。
ジョバンニお勧めの教会や円形競技場が住宅に変化したところ、地下通路などを探してみるが、どこもクリスマスイブのため閉まっていた。
途中雨が降ってきた。
やたらとジョアオはセルフィを撮っている。
彼からすれば私はやたらと路地を撮っている、と思っただろうか。
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旧市街はどこも開いていないから、海でも見に行こうと言うことになり、海岸沿いの城や広場などを眺めつつ歩く。
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彼とビールを片手に海沿いで飲む。
In to the wildの映画の話で盛り上がる。
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さておき、彼はなんと19歳。私より10歳も若い。political science の中のstates sienceという、地方行政のマネジメント、デモクラシー、それらの歴史を学んでいるという。特に中世が好きらしい。シンガポール人にあとでブラジルの政治は酷いよねとからかわれていたが、そんな事はない、夢のある学問だと思う。
12/25
8:30 Naples → 10:00 Amalfi
アマルフィ着。
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クリスマスなのでナポリにいても仕方がないと思いアマルフィに来たが、ここもほぼ閉まっている。
一件だけ海岸沿いに開店しているカフェを見つける。
とりあえずエスプレッソ。
海と崖と集落の奏でる光景が素晴らしい。
1時間ほど座りながら景色を眺める。
ガラガラだった周りの席も、客で賑わいを見せる。そろそろかと思い、立ち上がる。
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クリスマスで唯一開いているのは教会。アラブシシリア様式の縞模様の入った列柱廊のある大聖堂に繋がる大階段を登る。
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天気が良い。
太陽がクリスマスを祝福している。
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教会に入るとミサの最中であった。
アルベロベッロの経験でクリスマスミサの流れや、お祈りの仕方なども分かっていたので、参加する事にした。
特に隣の人々と握手をして、隣人を愛し助け合うことを確認することがとても良い。
太陽の差し込む礼拝堂と、とても美しい歌声に、本当に自分でも驚いたが、涙が止まらなかった。
ハンカチで顔をふく姿が周りの人々には不思議だったかも知れないが、感動したのだから仕方がない。
ミサの後、街に出た。
観光客の姿が朝よりも増えている。朝閉まっていた店もぽつぽつと開いていた。2割弱の開店率といったところか。
中央通りを登っていくと紙に関する美術館があるとの情報を得たので登っていくが、見当たらず。当然のように閉まっていて見つけられなかっただけなのか。
その代わり、その道を登り続け、途中��ら獣道に変わる。
渓谷が深くなってゆく。
地元の人がBBQをした跡などがあったが、基本山道で枝を避けながら進んでいく。
渓谷の反対側は陽があたり、レモン畑が傾斜地に並んでいる。
どうにか反対側へ行く事はできないかと思い、渡れる橋を探すが見当たらない。
まっすぐ行くと、唯一昔の水道橋のような廃墟が現る。入口手前まで歩いて行ったが、昼にも関わらず、先が見えない暗闇。
仕方なく引き返す事にする。
アマルフィの街は、渓谷の中央に車が一台通れるくらいの幅の一本の道が海岸まで貫通していて、基本的にその道沿いに商店や薬局、クリニック、教会、ホテルなど小さいながらに隣りあいながら並んでいる印象だ。その道から一つ脇に入ると渓谷の両側に登るような感じで入り組んだ階段状の通路が張り巡らされている。通路の幅は人1人が歩ける程度なので80センチくらいだろうか、すれ違うのは肩を傾けなければいけない。とにかくこの通路が面白い。階段を登っては等高線に並行に歩き、また登る、を繰り返す。陽が当たるところもあれば、洞窟状に家々の下をくぐり抜けるものもある。
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どのくらい登っただろうか、階段の両脇は家や高い壁で囲われているので、自分のいる場所を把握するのが難しい。
谷側の廃墟の壁の柵状の開口部から、明るく漏れる光があった。
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覗くと廃墟の中には陽が溢れんばかりに入り込み、青々と茂る草の上に寝そべる一匹の猫がいた。最初警戒していたが、やがて堂々と再び寝そべりこちらを眺める。こちらも優しく見つめ返す。
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猫を側に、頭をあげて目の前を見ると、廃墟の谷側の壁は崩れほぼ在らず、アマルフィ全体の街並みが見渡せた。
先程のクリスマスミサを受けた教会やその塔も見える。渓谷の反対側の家々もよく見渡せる。
足元にはレモン畑も広がっている。
そこからは素晴らしい景色が続いていて、等高線状に歩みを進める。
テラスがあり、そこの手摺に腰掛ける。
誰も来ない。
洗濯物を干しているおばさん��家の中の誰かと話をしている。
犬が吠える。
猫が足元のレモン畑をこっそりと通り抜ける。
波の音がざわざわと耳に届く。
すべての音が陽の光と調和しているように感じる。
傾斜地の家々が開けている狭い通路をそれらの音が風に乗って通り抜けてくるかのような感触。
もちろん陽で暖められた風の音だから、気温は寒いが暖かく感じる。
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夕日が沈み、中央広場に行く。
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16:45 Amalfi → 18:15 Naples
待ち合わせ時間の15分前に運転手が来ていた。
礼をいい、ナポリまで乗せてもらう。
途中アマルフィ側では沈んでいたように見えた太陽が山を越えると、まだそこにいて、ナポリの街を紅く照らしていた。
ヴェスーヴィオ火山の稜線が綺麗に浮かび上がっていた。
尾根と谷側をぐるぐると回りながら降りていくので、同じ景色を微妙な高さの違いと、刻一刻と太陽が下がっていく時の変化を感じながら降りるのが面白い。
STAY@ Naples “Giovanni's Home”
ナポリの中央駅で降ろしてもらい、宿まで30分ほど歩いて帰ると、パスタ(ペンネアラビアータ)を全員分の量をまとめて料理している最中だった。
宿泊する人が昨日の3人から6人に増えている。
全員男。
バーリで農業を学ぶイラン人、アメリカ人、耳の聞こえないフィンランド人だった。
夕食は筆談で盛り上がり、さすがアメリカ人はデリカシーないこともずばすば聞くんだなと��思いながらも夜は更けた。
普段はお酒が禁止なホステルだが、今日はクリスマスだからと、解禁してみんなで瓶ビールを開けた。
即席の旅のチームを結成し、明日のポンペイ日帰り計画の予定を立てている。どうやらみんなは明日7:30の列車に乗るらしい。早起きなのにこの時間まで起きていて大丈夫か。
私はすでに別行程で予約を取っていたので、フィンランド人と筆談を続ける。
12/26
朝10:20のバスだったので、8時頃には宿を出て、ナポリの街を散策することにした。
朝起きた時には即席チームメンバーの姿はなかったので、無事起きれたのであろう。
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8時半からカペラ・サンセベッロがオープンするということなので、行ってみた。
噂には聞いていたが、とても地味な路地裏にチケット売り場と入口がある。
フリーメイソンの集会所としての教会でもあったらしい。
路地裏に着くとまだ10分くらい時間があったので、周辺をふらついていると、お馴染みのペペロンキーホルダーを大量に持ったおじいさんがいたので、五つお土産用に購入することにした。
ペペロン=チリペッパーはナポリの特産品であることを、ここに来て初めて知った。
カペラ・サンセベッロに入ると、教会としてはかなり小振りな側廊もなく、長方形の中廊のみがある小さな空間であったが、中は至極の彫刻であふれていた。時間を忘れて作品の前に立ち尽くす。
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他にナポリでは古代地下通路なども見てみたかったが、時間が無いため諦める。
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Half day Pompeii tour from 10:20
ポンペイ着。
ギリシャ人達がクリスチャンニズム以前に神達を祀っていた神殿がバシリカといい、それがローマ人によって教会として使われるようになったという話を聞く。
他にも2度のヴェスーヴィオ火山の噴火の話、2万人いた都市の4千人しか遺体が見つかっていない話、都市の1/3は未だ地中に眠っていること、ローマ人の円形劇場の一日の使い方、パン窯がシェルター兼保存食置場になっていたこと、ローマ人は朝7時から13時までの6時間しか働かず、その中に1時間の昼食時間が含まれており、ロバの馬車で渋滞を作りながら、商店のカウンターに並んだ話、商店の昼食のテイクアウト皿はパンで出来ていて、それを奴隷達に食べ終わった後に与えていてそれがピザになったのでは説の話、仕事が終わるとスパに並び、風呂に入り家に帰っていた話、風呂場のトイレのお尻を拭くスポンジは一つしかなく、遅くいくと他の人が使ったやつで尻を拭かなければいけないことからsomeone’s spongeということわざができた話、下水処理設備が無かったため、道路の車道を垂れ流しで、膝高さ程度の歩道が整備されて道を渡るときは飛び石が使われていた話、その飛び石はロバ二匹に馬車を引かせていて120センチの車輪幅でそれが今でもヨーロッパの鉄道規格として使われている話、娼婦館のレッドライトの起源の話など、いろいろ驚くべき話を英語フランス語スペイン語を使い分けるガイドから聞き、ポンペイで半日過ごす。
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フロリダに家族を置いて一人旅をしているお爺ちゃんのジョンと仲良くなる。
ジョンが奥さんにハート型のお土産を買っている。
ナポリに到着。
PLPで同僚のマリアと15時に海岸沿いのピザ屋で待ち合わせ。
時間通りに着くが、一向に現れず。
30分ほど待ち、仕方がないので道行く子供連れのピンク色のダウンジャケットを着たお母さんに、iPhoneのネットワークをシェアしてもらい、WhatsAppでマリアに連絡する。
どうやら車で来ており、駐車場が激混みで見つからないとのこと。
マリア到着。
まだ駐車場が見つからないらしい。
車に移動。
マ���アの妹のリザが助手席に座っている。
リザめちゃくちゃ美人。
2人ともナポリ生まれで、クリスマスに合わせ実家に帰省しているとのこと。
リザはマドリードでエクスペディアでイタリア担当の企画マネジメントをしているらしい。
ファッションも好きで、将来は自主ブランドを立ち上げたいらしい。確かにオシャレ。
車を止めて、ピザ屋を探す。
当初の行こうとしていた店はすでにいっぱい。
ウェイティングリストも一杯で名前をかけないほどの人気店。
仕方なく、3人で海沿いを歩く。
雲ひとつない快晴の天気だ。
時間は4時を回り、太陽はすでに夕日と呼べるほど空を紅く染めている。
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リザが足を止め、店のウェイターに声をかける。
他にも列を作り並んでいる客がいるにも関わらず、即座にテラスの座席に案内してくれる。
これが美人の力か。
男一人旅にはありえない光景を目の当たりにする。
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マリアが赤ワイン大好きなので、MOIO57(モイオ チンクエットセッタ)という赤をボトル��頼む。
運転大丈夫?と聞きつつ、イタリアはいいのよ、と自慢気。
ダメだろ、と思いつつ聞き流す。
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ここまでパスタしか食べておらず(ラビオリ、ストラッシナーティ、パスタグリル、タッリアテッレ、ペンネアラビアータ、トルティーニといった感じ)、ようやくピザを食べることができた。
1人ひとつづつ注文し、みんなで分ける。
3時に遅い昼飯をブランチ的に食べようと言っていたのが、もはや夜飯も兼ねることに。
定番のマルゲリータは最高。
シシリアーナピザは旧シチリア王国の南イタリアならではのピザで、マルゲリータと同じトマトベースだが、茄子や諸々地域の野菜が使われていて美味。
そしてホワイトベースのサルシッチャ&フリィアリエーリ パンナ プロスキュート エ マイスは、リザの好物らしく、スパイシーなソーセージと青物の葉とチーズが相まってとても美味しい。
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そのあと店を変えて、リモンチェッロを3つ食後酒としてみんなで飲んで、お別れ。
バスの出発時刻に遅れそうで走ることになったが、なんとか間に合いローマ行きのバスに乗る。
21:00 Naples → 23:30 Rome
ローマ23:30着。
バスターミナルなのでタクシーなども見当たらず、ローカルバスもこの時間だけに止まっている。宿までの地図も分からず、仕方なしにターミナルの誘導員の黄色いジャケットを着たおじさんに、タクシー乗り場知らないかと聞いてみると、まってろといい、バスターミナル外の柵側の暗闇にひたすら誰かの名前を呼び続ける。
そういうシステムか、と思いつつ、暗闇から現れたタクシーもどき運ちゃんらしき人を紹介される。
まぁ他に手段がないから仕方ないと思い、値段と行き先を交渉する。一応値切り交渉は成功。
英語があまり喋れないらしく、なぜかフランス語で道中会話。ローマの治安情報や、ローカルバスの乗り方や、オススメのレストランなどを聞く。
宿に到着。
STAY@ Rome “The Yellow”
イエローホステルは受付ロビーと宿泊部屋、バー、などが普通の二車線道路を向かい側に挟んで、道路やテラス席などを取り囲むように構成されている。
先程まで暗く治安が悪そうに感じたローマの街がこの道の中央の一画だけ明るくかつWi-fiも飛び、人で溢れ、とても安全に感じた。
6人部屋の二段ベットの下に荷物を置き、バーで1人IPAを飲みながら、明日の飛行機までの時間とルートを考える。
プライベートな悩みも相まってすこし孤独モード。
周りはパーティらしく、おそらく知らない人同士が出会い話し盛り上がっているが、混ざる気になれず、地図を眺める。
1時半に就寝。
12/27 
8時前にチェックアウトをし、荷物を預け街に出る。
道端の地元民が行きそうなカフェでエスプレッソを飲む。
パンテオンに向かう。
30分程度の道のりを50分程度かけて歩く。
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途中トレビの泉をたまたま通り過ぎたが、朝にもかかわらず、観光客が中央でセルフィーを撮らんと押し合いしている。
昔は泉の水の循環システムってどうしていたんだろうか、などぶつぶつ考えながら通り過ぎる。
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パンテオン着。
9時開館と書いてあったが、すでに開いている。
人少なめ。
1時間以上滞在する。
太陽の動きを見る。
想像していたよりスケールがとても大きく感じた。
重機ない時代にどうやって施工したんだろうか。
そして幾何学の床モチーフ含め、厳格な構成美を体感する。
あとで帰り道にもまた来よう、陽の光がどう動いているのか確かめようと思い、パンテオンを出る。
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人通りの少ない裏路地やノヴァ広場、駐車場などを抜けて、エンジェル橋を渡りながらバチカンに到着。
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サン・ピエトロ広場は確かに大きいが思っていたよりもヒューマンスケールよりかな、と感じつつ列に並ぶ。
途中のインド人らしき自称ガイドが、列に並ぶと数時間入れないけど、ガイドツアーチケット(75€)買えば並ばずに入れるよ、と言っていて胡散臭いなと思っていた���、案の定、何のことない30分ほど並べばセキュリティゲートに着き、無料で入れるではないか。
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並んでいる途中、そのチケットを買ったであろう人が列を抜かして行ったが、セキュリティゲートの手前で止められて結局並ばされていた。詐欺なのか。騙されなくて良かった&よく教皇のいるバチカンの目の前で詐欺ができるもんだ、と感心しながら並ぶ。
広場と反対に教会の建物自体は若干のオーバースケール感を感じた。ただ中の光の取り入れ方は計算され尽くしているように感じ、来場者が神秘性を感じるように光の移動と芸術品の配置や側廊のリズムなどが決められているように感じた。
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ただアマルフィで感じたような涙は出なかった。権力的な威圧感も同時に感じたからだろうか。
建築が言葉なくも語りかける空間の性格みたいなものに、この旅の中で敏感になっているように感じた。
クーポラに登る。
ひたすら螺旋階段をあがり、最上部に到着。サン・ピエトロ広場だけでなく、ローマ全体が見渡せる。素晴らしい都市軸。
すべての道はローマに通ずという言葉があるけど、正確にはローマのどこを目指しているのだろう、バチカンか、でもそうも見えなかったなぁ、などとぶつぶつ言いながら螺旋階段を降りる。
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帰り道パンテオンに立ち寄る。
正午過ぎの光。
奥まで入り込んでいたが、不思議なことに、朝よりも全体が暗く感じた。
なぜだろうか。
コントラストを強く表現して、神秘性を高める効果を狙っているのだろうか。
ちなみに中央の屋根のガラスはもともとガラスだったのだろうか、勉強不足だからあとで調べよう、などと思いつつ宿へ荷物を取りに帰る。
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昼食をとりつつ、空港までのバスを待つ。ローマはFCO空港まで1時間ほどかかる。
遠いいが、国際線なので早めに到着。
18:00 Rome FCO → 20:40 Croatia ZAG
STAY@ Zagreb “Hotel Central”
クロアチアの首都ザグレブに着く。
22時前にホテルに着き、MJS同期2人と�����合わせ。
3人で夜の広場を巡る。
三ヶ月振りの再会で、近況を話し合う。
やはり楽しい。
12/28 Zagreb
朝からマーケットや旧市街を巡る。チェッダーチーズというヨーグルトを固めたようなチーズが有名らしく、同じ商品を10人くらいのお爺さんお婆さんがそれぞれ違う屋台を出して、売っている。買う人はどこを選べばいいのやら。
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クロアチアの伝統料理を食す。サルマという名のロールキャベツうまし。
チーズと薄肉ポークのハムカツにチェッダーチーズをすこし付けて食べる料理もうまし。まさにハムカツだよね、といって盛り上がる。
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午後4時のバスでプリトヴィッツェ国立公園へ向かう。
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12/29 Plitvice Lake,  Dubrovnik
朝8時15分に宿の主人に車で国立公園第二入口まで送ってもらう。
5時間歩く。
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虹鱒の唐揚げが有名らしいが、食べることができなかった。
ザグレブ経由で、ドブロブニクへ向かう。
ドブロブニクの宿23時着。
夜の城壁で囲われた街を散策。
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12/30 
朝、日の出を海岸沿いから眺める。
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カフェで朝食を食べ、城壁を巡る。
一周するのに約2時間。天然の要塞と人工の石積みと自然の美しさを兼ね備える素晴らしい都市である。
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その後ロープウェイで山頂まで登り全体を見渡す。
クロアチアの国旗が快晴の空をはためいている。
旅もここまで。
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ドブロブニク特有の海鮮料理をみんなで食し、お別れ。
次会うのは9ヶ月後になるか。
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後ろ髪引かれる思いの中、空港へ向かう。
ロンドンへ向かう。
16:30 DBV → 20:45 LHR
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ama-gaeru · 7 years ago
Text
トゥンヌスは夏にたわわに実る
 ハンプティダンプティはすでに粉々になったのだ。
 気がついているのは私だけ。
 北セイルブリッジに向かう電車内はかなり空いていたが、私はずっと扉の前に立ち続けていた。
 エアコンはラッシュ時を想定した温度のままになっており、かなり寒い。冷蔵庫の中の食品になった気分だ。
 私はガラスの向こうの景色を見つめる。
 高く青い空と入道雲。殺意に満ちた日差しを反射してジラジラと輝く家々の屋根。昨日と同じく、今日も熱中症で子供か老人が死ぬだろう。恐らくは明日も。明後日もだ。疑いようもなく暴力的な夏がガラス1枚隔てた場所に満ちている。
 私は扉に凭れて額と左手でガラスに触れる。じわりと熱が伝わってきた。珈琲を飲み干した時のような吐息が漏れる。
 しばしこの夏の熱を味わっていたかったが、間もなくして電車は地下に入り、ガラスの向こうの夏は味気ないコンクリートの壁に変わってしまった。
 ガラスに反射した自分と目があう。
 酷く疲れた顔。枯れたホオズキか、干した鷹の爪か。指で少し力を込めて突けばパリパリと皮膚が割れて、小さな種以外には何もない空洞と化した中身が明らかにされるのだろう。
 私は老いた。若かった頃があったなどと夢想もできぬ程に。
 枯れ木のような手で平らな額から、突き出した顎の先、のど仏までをゆっくりと撫でる。
 そうすれば滲みだした疲労が全部ではないにせよ幾らかは拭い落せるのではないかと思ったのだが、増々酷くなったように見えた。
 私は鞄からスマートフォンを取り出し、スリープを解除する。
 着信��なし。メールは2件。amazonのダイレクトメールと、登録したきり全く利用していないebayからのダイレクトメールだった。
 アンドレア・バスラーか、ゴー・シィジィエからの着信はない。
 もう終わったのか、それともこれからなのか。
 出来ればもう終わっていて欲しかった。
 彼らが人生最後の電話をかけてきて、涙混じりの声で助けを求めてきたら……あるいは、これは全てお前の仕業なのかと責め詰ってきたらと考えると、胃が握り込んだ拳のように硬く縮んだ。
 彼らをあの連中に売ったのは、彼らが例の秘密を知る3人の内2人だったからで、それ以外の理由はない。彼らには申し訳ないことをした。
 私は同じ研究者として2人を尊敬していたし、好意を持っていた。きっと2人は信じまいが、これは事実だ。
 アンドレアは私より2つ年上で、同じ大学の先輩後輩の間柄だった。若い頃には1度だけではあるにせよ——彼女は「罰ゲームだったのよ」と笑い話にしようとするが——デートもした。
 上機嫌になると歌うように喋りだす癖があり、怒ると頬をぷぅっと膨らませる癖があり、ちょっとしたことでキャァキャァとはしゃぐ。
 こういった少女のような振る舞いは、孫を2人持つ身となった今でも彼女を魅力的に見せている。恐らくは若い頃よりもずっと。
 そしてあのどこか眠そうな、夢を見ているような蜂蜜色の瞳の素晴らしさときたら言葉にできない。彼女の夢見る瞳をこちらに向けさせるために、大抵の人はついつい喋り過ぎてしまうのだ。
 私もそんな者たちの1人で、ついつい彼女には色々な私的なことを話してしまった。
 研究にばかり時間をつぎ込んでしまい、気がつけば親も兄弟も死んでひとりぼっち。あまりにも長い間1人でいたので、ロマンスの相手と出会う場所もなければ、紹介してくれる友人もいない。君と知り合ってからもう何十年も経つけど、一度も私をパーティに読んでくれないね。私は君の華やかな交友関係の中にふさわしくないんだろうね、とかなんとか。今思い返しても赤面ものだ。
 私の情けない子供じみたおねだりに応え、彼女は私を自宅のパーティに招待してくれた。
 表向きは「うちの好き嫌いばかりする孫に食品の大切さを教えてあげて」という理由だったが、独り身で友人もいない私を気遣っていたのは明白だった。
 私は1度だけ招待に応じたが、それ以降は辞退している。
 自分でおねだりしておいて情けないが、大勢の人間がいる場所は苦手だし、彼女に気を使わせてしまうのが申し訳なかったのだ。
 場違いな奴がいるとでも言わんばかりの他の招待客の無礼な目線は彼女のせいではないのだから、それで彼女を責め���のは筋違いだろう。
 私が急用を思い出したから退席すると伝えた時、あからさまに安堵しているように見えたのは恐らく私の被害妄想だろうし、以降彼女がパーティに私を誘う時、その瞳に「一応招待くらいはするけど、イエスって答えは期待してないのよ」という光が宿っていたように見えたのも、私の思い過ごしなのだろう。
 いずれにせよ、彼女は善人だ。皆に好かれている。素晴らしい人だ。
 彼女のお陰で私たちは最後の食用牛が死んだ後も、変わらずステーキやハンバーガーを口にすることが出来ているのだから。
 シィジィエは研究室で最も若いメンバーだ。まだ22になったばかり。
 小柄な上に童顔で髭も生えていないため、施設の警備員が新しくなる度に出入り口で呼び止められるのが常だった。
 彼の育った東フィールドのチャイナタウンは非常に大きく、そして古かった。シィジィエが言うには「クレオパトラが全裸で絨毯に包まってた頃に原型ができたんだ」そうだ。
 そのチャイナタウンに住んでいる中国系住人の殆どが中国語以外の言葉は喋れなかった。喋る必要もなかったのだ。町が丸ごと中国だったのだから。
 シィジィエはそんな町に突如として出現した神童だった。
 幼い頃から家族で経営している中華料理店を手伝っていた彼は、その耳で観光客達の言葉を覚えていた。英語、フランス語、ドイツ語、日本語、それからロシア語も。
 間もなくして語学だけではなく他の面においても極めて高い能力を持っているとわかったため、シィジィエは家族の住む町から1人離れ、大学のある都会で暮らしていた親戚の元に引き取られることになった。
 そして僅か10歳で名門トレヴァー・グレース記念大学に入学したのだ。
 当たり前と言えば当たり前なのかもしれないが、シィジィエには友人が全く出来なかった。家の近所の子供達とも話が合わず、引き取ってくれた親戚とも話が合わず、彼の話し相手は大学の教授達ばかりになった。
 私もその中の1人だ。
 シィジィエと出会った時、私は世界食料再生研究会で既に絶滅したとされる魚類、特にサバ科魚類の再生を研究する一方、週に3日、午前中のみトレヴァー・グレース記念大学で教鞭を握っていた。
 彼は極めて優秀な生徒の1人だった。授業中に鋭い質問を何度も私に投げかけ、時折、彼の解釈の方が私の解釈よりも優れていると感じることもあった。
 彼は11歳になるかならないかで大学を卒業し、そのままリビク教授の研究室に入って助手を務め、リビク教授が亡くなった後に私がスカウトして今の研究チームに招き入れた。
 その時確か、15歳だったと思う。
 シィジィエは最初、私達チーム皆の弟子だった。今は同僚兼仲間。あと1年か2年が過ぎる頃には、彼は私達のリーダーになるだろう。
 彼には人望があり、才覚があり、未来をより良くしたいという信念がある。他の何者にもなれなかったがために、特に信念もなく研究者になった私とは土台が違うのだろう。
 これは非常に喜ばしいことだ。若者の才能が伸びてゆくのを眺めるのは年配者の特権だ。
 彼は私の実験結果を熱心に見つめ、間違いを指摘し、より効率的な方法を教えてくれた。
 皆が見ている場で呼び捨てにされ、次々と誤りを指摘されることを侮辱だと考える者もいるだろうが、私とシィジィエの場合は違う。私たちの間には確かな信頼関係があり、言葉を交わす機会こそ少ないが、実に親密なのだ。
 彼が食堂で友人達——そう! 彼にはやっと彼と同等の知性を持つ友人に恵まれたのだ。半ば親のような目で彼を見つめていた私がこれを祝わないわけがない!——に私のことを「あの人、サバ臭いんだよ」と笑っているのに遭遇したが、これが私と彼の間でだけ許されている少々悪辣な冗談であることは明白な事実だ。その証拠に彼は私が側にいるのに気がついても少しも悪びれず、にこやかに手を振ってみせたのだから。
 いずれにせよ彼はいい青年だ。それは間違いない。彼もまた皆に好かれている。素晴らしい人だから。
 全ての鳥類が人類にとって有害であるとされた後も、フライドチキンやオムレツ、その他様々な卵を使った料理が食べられるのは一重に彼のお陰なのだ。
 スマートフォン画面のデジタル時計に目を向ける。もう10時を過ぎていた。
 先週の月曜日の夜。
 人通りのない駅の裏通りで、私はあの連中の『係』を名乗る男にアンドレアが月に1度のホームパーティの材料を買いに行くスーパーと、シィジィエのガールフレンドが働く安いレストランの場所を教えた。2人の車のナンバーとスマートフォンの番号。買い物やデートの時間も。
 男は「結果が見たいのならサイトの更新は1週間後の10時丁度だ。あなたのおかげでこの世から罪人が2人消える。協力に感謝しているよ」と告げて去っていった。
 以来、男を見かけることはない。この先もずっと見かけないだろう。
 あの連中が罪人と見なすのは——あの連中いわく——神が『食べるべきではない不浄のもの』と決めた四つ足の動物や、神が『守り慈しむべき天���使い』と決めた鳥を『食べるために』作り出す者だけだ。
 神が『人の子らの飢えを満たすもの』と決めた魚類を食用として供給している私は、あの連中にしてみれば聖人なのだ。
 あの連中のWebサイトに行って「動画」がアップされているかどうかを確認したかったが、Web閲覧履歴に足跡を残したくないのでぐっと耐える。疑われるような真似は出来るだけ避けなければならない。
 運が良ければ今頃、アンドレアとシィジィエはあの頭のおかしい連中に、空気圧縮銃で頭を撃ち抜かれて死んでいるだろう。
 そしてかつ���の豚や牛のように首の血管を切って血抜きされ、吊るされ、皮を剥がされ、頭を落され、内臓を取られた姿で、どこかに、恐らくは食肉解体施設跡地か養豚場跡地に放置されているだろう。
 運が悪ければ、空気圧縮銃は使われず、首の血管を切られることもないまま行程が進み、最後に頭を落とされているだろう。
 最近は運が悪い人間が増えている。とても残念だ。2人が強運の持ち主であることを心から願っている。
 10時5分だ。
 動画を観た悪趣味な連中が「こんなことをするなんて許せない」とツイートしつつ、我先にと彼らの死体がどこにあるのかをグーグルマップで探し始めているだろう。いつものように。
 私は足下に視線を落とす。水色の安っぽい——安っぽくないクーラーボックスなどあるのだろうか? ——クーラーボックス。
 これが私に太陽をくれるのだ。
                           
 結局全て、このビニールのせいだ。
 夏のどろりとした熱が蜂蜜のように垂れ落ちて、視界が続く限りどこまでも広がっている巨大なビニールハウス達を虐めている。
 焼けたビニールの臭いが空気に染み付く。
 幼少期、砂浜に座り込んでビニール製の浮き輪の空気穴にしゃぶり付いていた時に感じたあの臭いそのものだった。
 ビニール、熱い砂、海水。
 この臭いがさざ波の音すら聞こえないこの町を歩く私に、海を思い起こさせる。
 幅の広い道路を忙しくトラックが行き来している。恐らくは収穫されたばかりの魚を運んでいるのだろう。
 全く同じように見えるビニールハウスの横を歩き、角を曲がり、進み、また曲がり、進み、何度かこれを繰り返してようやく目的のビニールハウスにたどり着く。他のビニールハウスよりずっと小さいがそれでも私の自宅よりはずっと大きい。
 私は髪を軽く撫で付けてからビニールハウスの中へと足を踏み入れた。
 途端、夏の熱は消え失せ、塩の匂いが増す。匂いだけで皮膚がぴりつく程だ。
 銀色のレールから垂れ下がった乳白色のカーテンがビニールハウスの中を幾つもの縦の列に仕切っている。天井についた空調機のファンが起こすささやかな風にカーテンは揺れて、ひそひそ話に似た音を立てていた。
 カーテンのこすれ合うそれとは異なる音が奥から聞こえてきた。
 私は肩にかけていたクーラーボックスを軽く担ぎ直すと、音の聞こえる方へ歩き出した。
 最初はカタカタと何か軽い物を持ち上げたり、下ろしたりしているようにしか聞こえなかった音が徐々に鮮明になる。
 食器をテーブルに置く音だろう。足音も聞こえる。1人分。
 彼の足音はいつもうるさい。自分の足音が誰かを不快にさせているかどうかなんて生まれて一度も気にかけたことがないような足音だ。そして実際に、その通りなのだろう。
 一体、アルバート・ディケンズが誰を気にかけると��うんだ? 
 私はカーテンとカーテンの間にある細い道を真っすぐ進む。
 私の足音は分厚いゴム製の床に吸収されて響くことなく消えてゆく。
 道の先は行き止まりに見えるが、あれはただのカーテンの仕切りだと私は知っている。あの向こうはアルバートが持ち込んだ——どう考えてもビニールハウスには不似合いな——様々な家具が並ぶゲストルームだ。
 歩くたびに私の両側に並ぶカーテンの隙間からチラチラと中の様子が見える。等間隔で立てられた鉄製の柱の間にナイロンを撚って作った丈夫な網が広げかけられている。まるでバレーボールのネットのように。
 ネットには私の腕程の太さの肉色の蔓が巻き付いている。蔓の至る所から軸が伸びて、そこから丸々と太ったクロマグロが実っていた。新鮮そのもの。艶を見れば食べごろなのは明らかだ。
「美味そうだろう」
 自信に満ちた低い声が響く。声のした方、道の先に目を向ければそこに彼が立っていた。
 偉大なるディケンズ。舌の王。
「そろそろ収穫しないと痛む」
「腐り落ちる経過を見てるんだ。腐った後で土壌を汚染する可能性もゼロじゃないだろ。前にあんたの作った食品でそういう事故があったじゃないか」
 あれはアンドレアのデザインした牛テールで起きた事故だ。私の担当ではない。
「それは私のデザインした食品では」
 一応訂正しておこうと思ったが、ディケンズはさっさと背後のカーテンを捲り、奥へと姿を消してしまった。
 いつもこうだ。ディケンズは他人の感情に関心を払わない。自分がどう思われようが関係ないのだ。それは強さだろうか? 愚鈍さだろうか? 
 どうでもいいことだ。気にしてはいけない。
 私は彼の後を追ってカーテンの間からゲストルームへと入る。
 モデルルームか、IKEAのショールームのような空間がビニールハウスの中に広がっている。
 ビニールハウスの床はゴム材なのだが、ここだけはフローリングだ。
 収穫した魚を調理するための簡易キッチンもついている。簡易と言ってもオーブンレンジがあり、コンロがあり、その他各種様々な調理器具は一通り揃っているので、ここで作れないものはまずないだろう。元々、そのための部屋だ。
「まぁ、座りなよ」
 ディケンズに勧められるがまま、私は客用の椅子に腰を下ろした。
次話
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sabooone · 8 years ago
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3|或る晴れた日に
あゝ笑つてゐる――
斯波の視線の先には庭で花を愛でる百合子がいた。 自動車を野宮の邸の道の脇に停め、車窓ごしに庭を��み見る。 硝子を隔てた上に、遠目からなのでその表情は実は殆ど見えない。 けれど、斯波には分かった。 柔らかい藤色の着物の裾の動き、繻子のように白いしなやかな腕の動き一つで、 百合子が今幸せなのだと。 その仕草に、目が離せなかった。 無言で、背凭れに身体を預けて、百合子の様子を息を潜めて見守る。 耳を澄ませれば、百合子の明るい声さえも聞こえてきそうだった。 斯波は春の日差しの眩しさに目を細める。 運転手が無粋にもその沈黙を割って声をかけた。
「邸に入られなくてよろしいのですか?」 「ここで良い」
短く答える。 そろそろ自動車を動かさなければ不審に思われる。 分かっているのに、名残惜しく斯波は運転手に声を掛けられない。 百合子の姿が木陰で隠れ見えなくなってしまって、ようやく重く一つ息を吐く。 そして、頬にぴりりと視線を感じて邸を見ると、瑞人が二階の部屋から見下ろす様に立っていた。 斯波は視線をそらせて、正面を向いた。
「出せ」
一番見られたくない人間に見つかって斯波は舌打ちする。 ある舞踏会に招かれた夜、どこで斯波の所在を知ったのか瑞人が乗り込んできて大勢の目の前で斯波を殴った。 ひ弱な若様と侮っていたが、殴られた後の左顎は一週間は青く腫れ、熱を帯びていた。 しばらくは咀嚼も難儀で肉も食べられず、洋酒も歯茎に滲みるので避けたほどだ。 もう痛みのない顎に手をやって、足を組み直す。
清との貿易が上手く行かなくなって半年が過ぎた。 どうにか状況を打開しようと、国内の工場を新しく稼働したがこれも順調とは言いがたい。 斯波の仲間内では、もう船で儲けられる時代は終わった、と誰もが口にする。 それを考慮しても大道洋行の凋落は世情や景気の所為とは考えにくい事態だった。 船を出せば出すほど赤字になる様なら、いっそ事業を分散させ別々に売り払った方がいい。 山崎と話し合いそう決めたが、まだ株主や社員への通達が残っていた。 エンジンの音と自動車の揺れを身体で感じながら、斯波は重い瞼を閉じる。
毎日会社に通い詰め、遅く帰っても百合子はいつも憂鬱そうな暗い顔をしていた。 どんな贈り物を贈っても能書きのような感謝の言葉と作り物の笑顔。
「貴方は純粋に俺の金が目的で結婚したんだろうな――」
何もかも上手くいかない、その苛立ちからいつにない厳しい言葉で百合子を追い詰めた。 自分と結婚���るように仕向けたのは斯波自身だというのに、まるで百合子を攻めるように言葉を続けた。 それが八つ当たりだと自分でも分かっていたが止められなかった。 十ほど���幼い小さな少女を乱暴に抱いて、増々百合子の心が離れていくのが分かった。 百合子が妊娠したと知っても、辛く当たるのを止められなかった。
(金が目的ならばそれで良いじゃないか。今更それをあばいてどうなる。  だが、もし、金がなくなったら? 彼女は俺の元から去ってしまう――)
そう考えると恐怖でどうにかなってしまいそうだった。 斯波は何かに追い立てられ逃げるように洋行の船に乗る。 手酷く抱いた朝は自己嫌悪で吐き気がしたのに、一日も経てばまた百合子を抱きたくなった。 未だ見たことのない、百合子の心からの笑顔を思い描いては、洋行先の店で宝石や流行りの服を買う。 百合子に贈り物を止めてほしい、と言われた時の虚しさと悲しみ。 いつも百合子を思い、品を定めるのは斯波の唯一の楽しみになっていた。 それを、百合子自身に否定され、斯波は悲しみを怒りで覆い被せて隠してしまった。
百合子の月のものが止まったのが、妊娠ではなく心因的な物だと言うのは船の上の手紙で知った。 妊娠したという事が分かった時、百合子はどんな贈り物でも開かなかった心を少しだけ開いた。 口元を綻ばせ、瞳に涙を滲ませながら、亡くなった父母に知らせたいと、墓参りに行った。
帰京した夜、斯波は百合子の顔を見るのが怖くてたまらなかった。 そして虚ろな表情で、抱いてほしいと繰り言を呟く百合子が痛ましく耐えられなかった。 百合子をここまで追い詰めたのは自分だ。 客間で百合子を寝かせ、女中に眠れる薬を出させる。 扉の影から百合子が泣きはらした瞳で、しゃっくりを上げながら薬を飲むのを見る。 飲み終わって敷布にくるまり、声を押し殺してまた泣くのを部屋の外で聞く。
(――俺は彼女を助けるために、その為だけに生きてきたんじゃないのか)
今更百合子に愛を求めるのは、あまりにも強欲に思えた。 何よりその斯波の強欲さが、百合子は不幸にしてしまう。 すすり泣く声が寝息に変わる。 しばらくして斯波はゆっくりと音を立てないように扉を開けて部屋へ入った。 広い寝台に百合子が横になっているのを新台の側で佇んで見入った。 赤く火照った頬に涙の後が残り、髪の毛を一筋張り付けている。 寝台に腰掛ける。 百合子の蒼いほど白い額、熱を持った頬、艶やかな髪の毛に手をやった。 頬にかかった髪の毛を優しい仕草で脇にやり、髪を梳いた。
愛していたから、結婚した。 そして、愛しているから離縁するのだ。
斯波はようやく決心をつけ、眠っている百合子に口付けた。 頬から伝う涙が百合子の頬に落ち、濡らす。 柔らかな唇にそっと触れるだけの口付けを繰り返す。 斯波が最後に百合子に贈った物。 それは、手に触れられなければ、身にも飾れない、目にすら見えない物だった。
(ああ、笑っている――)
どんな贈り物をしても心を開かなかった百合子が、笑っていた。 幸せそうに、笑っていたのだ。 例えそこに自分がいなくても百合子が笑っている。それで十分だった。
///
「随分と足元を見られたものだな」
同業者に船や倉庫を売り渡す時期になって、そのあまりの安さに斯波は顔をしかめた。 相手は同じ貿易業者として何度も言葉を交わした事のある相手だ。 夫人の催しの茶会や会社の記念式にも招かれる親しい間柄だった。 倒産の話をしたら、いかにも残念そうな顔をし何でも力になると固く手を握ってきた。 情に厚く気の良い友人の様に思っていたが、実際はそうではなかったらしい。 会社の傾きが明るみになると、今までは友人のように思っていた人間が次々と斯波の前から消えていった。 商売は信用で成り立っている、取引相手などは仕方がないとまだ諦められる。 だが、社内にも問題が残り、突然積荷が消えたり在庫が減る事態に見舞われた。 元々信頼を寄せる部下も山崎と僅かしかいなかったのだが、能力による不遇を逆恨みする人間が居る様だ。
「何もかもが莫迦らしくなってくる……」
煙草に火を付けて、煙を燻らせながら自虐的に笑う。 銀座に構えていたビルは次の買い手が決まり、不要な事務用品を運び出していた。 その喧騒を避けるように、応接室に灰皿だけを持って窓辺に腰掛ける。 銀座街道と呼ばれる通りは自動車や俥、電車が行き交い、 モダンで洒落た格好をした人が気取って歩く。 かつてその一員だった斯波は、どんな気取った人間も纏っているもの一枚脱げば獣だと笑う。 茶色の封筒に書類を戻して、山崎に渡す。
「向こうの言い値で売れ」 「しかし――では、私に交渉役をやらせてください。向こうの値の倍はつくはずです」
斯波は山崎の言葉に顔を上げる。 煙草の火を灰皿に押し当てて消すと、改めて姿勢を正して山崎を見る。
「お前は向こうの会社に引き抜かれる事が決まっているだろう。  そんな事をしたらそれもどうなるか分からんぞ」 「この会社は――我々が育てた子供の様な存在です。  売ってしまうとして、どうして悪条件で手放せましょう」
斯波一人の会社なのではないと、山崎は言う。 社長は一人だが、その下には何人も社員が部下がいる、全てを含めて一つの会社なのだと。
「社長はお仕事をされている時、とても楽しそうでした。  それが付き合いのための会食や、根回しのための舞踏会などであっても。  いつも堂々とされた姿に、我々は本当に誇り高かったものです」 「――楽しそう、か」
斯波は山崎の言葉を反芻する。 生来の気性からか、人付き合いは苦ではなく世辞も冗談も嫌いではなかった。 会社が軌道に乗ってからは、社員が増えると事務作業や現場の作業をする機会は減り、 人付き合いや会社の付き合いの方が多くなっていった。
「会食や会合、舞踏会や芸者遊びを無駄遣いと一概に責める人間はそれこそ視野が狭い。  そこで作られる財界の伝手、政治的繋がりがどれほど重要か分かっていないのです」 「お前、新聞を読んだのか」
斯波は苦笑いしながら言った。 新聞がそれらの叩きやすい事柄をやり玉にあげていたのを思い出す。 斯波の邸も成金趣味と辛辣に斬り捨てられ、庭の桜を日本人的情緒の欠落とも書かれた。
「――お前の言うことは分かった。だが……」 「ご心配には及びません、私は優秀なので引く手数多ですから」 「随分と勇ましいな」 「社長に借財を残す訳には参りません」
山崎はそう言ったが、損失分に加え社員や工員の給料の未払いが随分ある。 切り替えが早かったので首を括るという事態は避けられそうだが、相当額の借財になりそうだった。 野宮の借財の権利が高利貸しに譲渡されていた時のことを思い出す。二の轍を踏むわけにはいかない。
「社長は――今後はどうされるおつもりなのですか?」 「……そうだな、ある知り合いが工場の責任者を探していると言うのでな」 「奥様はどうなさいます」
百合子から何度か連絡があったのを斯波も山崎も知っていた。 応接室の外をがやがやと家具を運ぶ声が聞こえる。 大勢の足音が去り、一旦静かになるのを待って答えた。
「別れた妻だ。今更何も関係ない。  何を聞かれても俺のことは言うな」 「――分かりました」
山崎は斯波から書類を受け取ると、一礼して部屋から出た。 斯波は窓から山崎が忙しなく雑踏に紛れるのを見て、溜息を漏らした。
二度と、会わない方がいいのだ。 そうでないと、固く誓った決意が揺らいでしまう。
百合子と瑞人の名代で藤田が銀座のビルにまで来たのは五月の終わり頃だった。 その頃には殆どの片付けは終わっていて、ビルも人手に渡っていた。 残った借財は信用の置ける知り合いに肩代わりしてもらい、斯波はその人物の持つ工場で働くことになっていた。 東京の郊外、工場の近くに家を借りて今はそこで寝泊まりしていた。 上質の布地のオーダーメイドの洋装に久しぶりに袖を通す。 これが終われば、この服も売る手はずだった。 野宮の家令と会うのにあまり見窄らしい格好では示しがつかない。
藤田が怒り心頭とばかりに応接室を出て行く。 紙の焦げる匂いに、ふと甘い匂いが混じっている様な気がする。 灰になってしまった手紙は指で摘むと、ぽろぽろと崩れ落ちた。
(何と書いてあったのだろう)
斯波は考えを巡らせたが、もはや一生分からない。 百合子から斯波への手紙など、初めて書かれた物ではないだろうか。 内容の知れぬ手紙。 薄い桃色の封筒の端に書かれた”百合子”という美しい手蹟ばかりが瞼の裏に残った。
///
(ここに置けだと? ――どういうつもりだ。  あの家令も殿様も、何故止めない!)
百合子と藤田を乗せた自動車の音が遠ざかるのを聞いて、斯波はよろよろと立ち上がった。 背を預けていた引き戸がみしりと軋む。
家の中は明かりがつけられ、淡黄色の光が居間を照らす。 居間には畳んでいた卓袱台が出て、上に布巾が掛けられている。 取り払ってみると、小皿に焼いた茄子やつけものが乗っていた。 櫃には温かいご飯に、竈の上には味噌汁の入った鍋が置いてある。
(――まさかこれを? ……いや、藤田か)
そして斯波は居間の畳に、忘れられたらしい巾着が置かれているのに気がついた。 その中に一葉の写真を見つけた。掌ほどの小さな写真だ。 写真の中の百合子の顔。
(あんな顔をさせたいんじゃないんだ)
今日の暗がりの中で見た百合子の顔を思い出す。 野宮の邸で見せていた笑顔とは程遠い、斯波に怯えたような顔。 百合子の姿を見た時、まさかと思った。 何故という疑問と驚きの中に、隠し切れない喜びがあったのを斯波自身分かっていた。
借財の額に、仕事の過酷さ、見窄らしい借家、食べ物の貧しさ。 百合子にはそう言った苦労とは無縁であるべきだ。 美しい庭で花に囲まれ、穏やかな日々を過ごす。 百合子の幸せの為に、離縁したのだ。
ぶんぶん、と紛れ込んだ蛾が光に惹かれてこつこつと電球にぶつかる。 斯波はようやく立ち上がり、土間に降りた。 そして湯のみに水を入れ、一気に飲み干す。 隣の竈の味噌汁の匂いに誘われ、お玉で一口掬い啜ってみた。 塩味の足りない味噌汁は、味が薄くお世辞にも美味しいとは言い難い。 だからこそ、余計に斯波を戸惑わせるのだった。
(同情だ) (どうして今更) (信じられるものか) (どうせ、もう二度と来ない) (また去って行く) (彼女が不幸になる) (会いたかった) (駄目だ) (嬉しい) (責任感だ) (明日は来ない) (俺は期待している) (一時の気の迷いだ) (会いたい、駄目だ、駄目だ)
様々な思いが交錯し斯波は両手で頭を抱える。 心臓の鼓動が早い。胸が、苦しい。 忙しく働くようになって、久しく忘れていた感情がざわめき立つ。 狂おしいまでの愛憎だった。
一度会ってしまえば決心が揺らぐと分かっていた。 百合子を愛しくて愛しくて堪らない。
だが、百合子は斯波を愛してはいない。 この家に来たのも同情心と責任感からだ。 そして、百合子の言葉通り百合子をここに置き、一緒に暮らすようにでもなれば。 そうなれば、斯波は百合子を二度と手放せないだろうと思った。 例えそれが、百合子を不幸に貶めると分かっていても。
(俺は恐ろしい……)
同情だろうが責任感だろうが、もはや構わないとすら思う。 愛する人を不幸にすると分かっていながらも、これ程までに強く求めてしまう自分自身が。
///
野宮百合子様
私が貴方の元から去ってしまって、随分と経ったような気がします。 あの頃の貴方は、老齢の女の様で、それでいて五つの童女の様でした。
今になって、何故貴方に手紙を書くのか――。 友人が、無精だから手紙は書かないと言っていたのを思い出します。
けれど、私は今、何だかとても、無性に。貴方に。 今の私の気持ちを書き残しておきたいと思ったのです。
一方的に別れを告げておいて、何を今更と思う事でしょう。 私は貴方を捨てて逃げながら、その実何度も貴方を探しました。
そして日々の中、貴方は遠くへ行ってしまったと思いながらも、 どうしてか、いつも貴方が側に居てくれていた様にも思うのです。
この手紙が実際に過去に届く事はないのですから、 これは私のひとりよがりにすぎません。
それで���、あの日何もかもに惑っていた私へ届く事を願います。
///
淡い緑色の紗。 百合子は夏らしい爽やかな色合いの着物を手に取りふと考えこむ。
「お洋服にしようかしら……」
箪笥の隣のクロゼットを開ける。 斯波から譲り受けた夜会服が掛けられる分だけと、滅多に装わない洋服もいくつか掛かっていた。 長袖の白いブラウスに、丈の長い濃紺のスカートを手に取り、寝台の上に並べる。 着物と見比べ、一つ頷いて百合子は洋服に着替えた。 背中まである長い髪を深緑のリボンで一つに結わえて胸に垂らす。 クロゼットの底部に備え付けられた棚に磨かれた黒い靴もあった。 鏡に全身を映してみると、着物の時よりも幾分幼く見えた。 昨日の斯波の言葉を思い出し、心が不安に揺れる。 ふるふると首を振り、目を閉じて大きく深呼吸を繰り返す。 朝の清廉な空気が胸いっぱいになり、揺れた心が収まった。 藤田の待つ玄関まで駆けて降りる。
「藤田、お待たせ」 「お早う御座います、姫様。  ――洋服ですか?」 「そう、着物は袂を上手く纏められないし……変かしら?」 「いいえ、お似合いです。  何だかお若く見えますね、女学生の頃のようです」 「私も同じ様なことを思ったわ」
藤田の言葉に百合子は微笑った。 自動車に乗り込むと藤田がエンジンを掛ける。 昨夜斯波にあんな追い出され方をしたのに、藤田は百合子に何も言わなかった。
斯波の家に行く前に、朝市に寄り野菜の選び方やお金の使い方を藤田に教えてもらう。 百合子は馬鈴薯や魚の干物、朝市名物のおこわを買う。 上品な若い女の客と言うだけで、饅頭や漬物などをおまけしてくれた。
「でも、悪いわ……こんなに」 「今後も贔屓に、と言うことでしょう。  それに、姫様は昔から愛敬さんでしたから――」 「愛敬? そう言われてみればそうかもしれないわ。  お前もよくチョコレートをくれたものね」 「屈託なく笑われるお顔を見るとどうしても甘くなってしまいます」
藤田が珍しく苦笑するのを見て百合子の心も明るくなる。 市場のざわめきが何とも耳に心地よかった。
斯波の家に着くと、仕事に出た後だった。 藤田が家の鍵を開けるのを見ながら呟く。
「――今思ったのだけれど、これって泥棒よね」 「何も盗まず、夕ごはんを作って帰る泥棒ですか?」 「藤田、今日は私一人で居るわ。  昨日の様にお前にまで迷惑掛けられないもの」 「……ですが」 「大丈夫よ、ね?」 「……」
百合子が明るく笑って言ってみるが、藤田は顔を顰めて百合子を見下ろす。 迷っている藤田の腕を持って百合子は続ける。
「もしも、追い出されたらどうにか電話のある邸を探して連絡するわ」 「夜半にですか? 無茶すぎます」 「大丈夫、追い出されたりしないわ」 「――分かりました。では私は一旦お邸に帰ります。  そして夜半ごろまた様子を伺いに参ります」 「分かったわ」
藤田はそう言うと市場で買った野菜を土間に運んだ。 心配そうな顔をしていたが、百合子が何度も念押しするとようやく自動車に乗った。 自動車を出すまで延々と心配事が口をついて出て、百合子はその言葉一つ一つに分かっているとばかりに何度も頷くことになった。
「火傷には気をつけてくださいね。それから火事にも。  訪問客が来たからと邸の様に軽々出てはいけません。  刃物に気をつけて、お皿も割ってしまったらその破片に気をつけてください」
最後は野菜の棘や魚の小骨に気をつけろとまで話しが及ぶ。 それでもまだ心配だと藤田が続けようとした所で、他の自動車が後ろに現れて仕方なしに自動車を発進する。 離れ行く自動車に向かって百合子は小さく手を振った。 藤田の乗った自動車があぜ道を抜けて小さくなっていく。 その先には晴れ渡った青い空に真っ白な入道雲が広がる。 午に近くなって、太陽が増々明るく、じりじりじりと蝉が鳴く。
居間の机の上には布巾をかけたまま手付かずのままの昨日の夕食が置いてあった。
(悲しいなんて思う資格、私には無いわ)
百合子は自分にそう言い聞かせて残った夕食を土間に運ぶ。 不恰好な切り口の胡瓜の漬物、身の殆ど無くなった焼き茄子、塩辛すぎる味噌汁。 それでも、百合子は斯波がこれを口にしただろうかと何度も思い返していた。 手を付けていないかもしれないと自分に言い聞かせてみた。
(でも、こんなにも悲しいなんて……)
斯波の邸で食欲が無いからと食べ物を残していたのを思い出した。 百合子は冷たくなったご飯に塩を振って握る。 皿におにぎり三つと漬物を乗せて布巾を掛けると、戸棚の涼しい所へ置いた。
「お部屋が少ないから、お掃除も簡単ね」
百合子はつとめて明るく言うと、雨戸を開けて風を通しながら部屋の中を掃除する。 布巾を濡らして固く絞り、机や家具を拭く。 居間の隅に畳まれた布団を、表の物干しで干した。 日差しは増々強くなり、肌が焼けるようだった。
百合子は不思議と涼しい土間に戻ると朝市で買ったばかりの馬鈴薯を取り出した。 蛇口を捻り盥に水を溜めて馬鈴薯を洗う。 土が水に流されて、黄色い皮が見えてくる。 水は出始めは生ぬるかったが井戸から引いている水は、次第に指先が震えるほど冷たくなった。
空気の通り道に気を払いながら、竈に火を入れる。 百合子は鞄の中から料理の覚え書きを書いたノートを取り出して水道の横に置く。 まだ料理が得意ではない百合子のために、藤田が料理に工夫を凝らしてくれたのを注釈で書いている。
(本来なら、馬鈴薯の皮は最初に剥いた方が良いでしょう。  けれど、慣れるまでは皮つきのまま茹でて下さい。  茹で上がった時に手で剥いだ方が安全です)
百合子は馬鈴薯の泥を落とすと、鍋に水を入れて馬鈴薯を2つ転がす。 そしてそのまま竈の上に置いた。
(マッシュは早めに作って置くといいでしょう。  魚の干物は斯波様がお帰りになる頃に焼きあがるようにすると良いかと)
藤田の言葉を思い出しながら、馬鈴薯をつつく。 茹で上がると火傷に気をつけながら湯を捨てて、まな板の上で半分に切る。 上手く茹でられた馬鈴薯は身��皮が剥がれやすく、手で簡単にするすると剥けた。 小さく切って深い皿に入れ、木杓で潰す。途中塩と胡椒で味をつけて、味を見る。
「美味しいと思うのだけれど――」
料理が下手な自分だけでは正確な評価は心許なかった。 一息着くと、丁度午砲が鳴る。 戸棚にしまっていたおにぎりと漬物、冷たい味噌汁で昼ごはんにした。 質素な食事だったが、自分で作ったからかお腹が空いていたからか美味しく感じた。
午後からは持って来た裁縫道具で箪笥の中のシャツの釦留めをしたり、家の前を竹箒で掃いたりした。 日が暮れ始めると干していた布団を取り込み、雨戸を閉める。 蚊取り線香に火を入れ、電気をつける。 昼の内は汗が流れるほど暑かったが、日が落ちると急に冷え込んだ。 溝の蛙がげこげこと喉を鳴らし、小川がさらさらと流れる。 時折、子供たちのはしゃぐ声が遠くに聞こえ、突然の風に青々とした草葉が揺れる。
百合子は机に馬鈴薯のマッシュの皿を置き、市場で買ったおこわを茶碗に盛り、湯のみを置く。 七輪に火を入れて、網を乗せ魚の干物を炙る。 じゅわと干物の脂が炭に落ちる度にもくもくと白い煙が上がった。 ぱちぱちと炭が爆ぜる度に、きらきらと火の粉が舞う。 しばらく炙っていると、魚の焼けるいい匂いがしてきた。
そろそろ焼き上がりと言う時に、家の勝手口の引き戸が開く。 怒ったような表情をした斯波が大股で百合子に近づくと腕を掴んで引き上げる。
「俺に関わるなと何度言えば分かるんだ!」 「どうして、どうして、関わってはいけないの?」 「迷惑だと言っているんだ!  同情か気紛れかしらないが、もう二度とここには来るな!」
斯波の気迫に呑まれ百合子は唇を噛む。 男性から怒鳴られた事のない百合子は斯波の声と言葉に怯む。 掴まれた腕が痛み、目を強く瞑って首を振る。
「貴方にはこんな生活は無理だ!」 「無理なんかじゃないわ!」
百合子が気丈にそう言い返すも、斯波は居間に置いていた鞄と巾着を掴み百合子に押し付ける。 そして百合子を家の外に押し出して引き戸を閉める。 押し付けられた荷物が腕から地面に落ちる。 百合子はしゃがんでそれを拾うが、身体が重く立ち上がれなかった。
「無理なんかじゃ、ないわ……」
小さく呟くとぎゅうと荷物を抱きしめる。 朝市での買い物や、料理に掃除に裁縫――今まで出来なかった事を少しずつだが覚えていったのだ。 百合子は引き戸に向き直り、声を絞り出すように言葉を紡ぐ。
「私、毎日だって来ます。明日も、明後日も……」 「どうしてだ。――どうして、今更!」 「それは――」
百合子の声が詰まり、沈黙が降りる。 ささくれだった引き戸にそっと触れて、息を吐く。
「貴方と、同じ気持ちだから……」
百合子の言葉に斯波は答えなかった。 静寂の夜に、ざわざわ、と青葉が揺れる音が響く。 人の気配がしてそちらを見ると藤田が自動車で迎えに来ていた。 そっと引き戸から手を放し、鞄を持つ手に力を込める。
「馬鈴薯のマッシュ。水っぽくなってしまったの。  でも、――明日はもっと上手く作れるわ」
百合子はそう言うと踵を返した。 斯波は足音が遠ざかるのを聞き、土壁を拳で殴る。 乱暴に前髪を掻き毟り、頭を抱えて自分に言い聞かせるように怒鳴る。
「嘘だ! 信じられるものか!  彼女は俺を愛していない! 愛してなどいなかった!」
乱暴に居間に上がり、夕食の乗った机の端を持つ。 こんなもの、と怒りに任せてめちゃくちゃにしてしまいたかったが出来なかった。 机を持つ手が震えて、力なく居間に座り込んだ。
「明日も来る――お姫さんが明日も……」
斯波は箪笥に背中を預けて、ぼんやりと天井を仰ぎ見る。 そして、力なく笑った。
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本来なら寝ている時間帯だ。 瑞人は蒸し暑い銀座をいつもの着物姿で歩いていた。 昼をすぎてくらくらしそうなほど眩しく健全な日差しにうんざりとばかりに溜息をつく。 石畳の道路は熱気を孕み、温石のように足元から温める。
「あーあ、何でこんな日にこんな所でもって……」
少し歩いただけなのにもう額に汗が浮いている。 指先で濡れた前髪を払いながら、ようやく目当てのカフェを見つける。 黒檀の落ち着いた色合いのモダンな扉に、真鍮造りの窓枠、色硝子の嵌められた仕切り。 外の壁は赤い煉瓦造りで、緑の蔦を青々と繁らせていた。 ひんやりとした空気が流れていて、瑞人は大きく息を吸った。
女給が寄ってくるので、にこやかに微笑んで待ち合わせだと告げる。 奥まった机に案内されて、籐で編んだ涼しげな椅子に座ってひとごこちつく。 呼び出した当の本人はまだ居ないようだった。
「お飲み物は?」 「カルピスにしようかなあ、暑いから」
そう言って目を細めて笑った。 グラスに波々と注がれたカルピスを一口飲んで喉を潤す。 甘ったるい酸味が舌の上に広がり、知らない内に瑞人は微笑んでいた。 がらんがらんと乱暴な音がしてカフェの扉が開いたので、瑞人は待ち人が来たと感じて眉を顰める。 足音も大きく、仕切りから現れた長身の男は乱暴に椅子を引いて座る。 女給が慌てて聞く。
「お飲み物は――?」 「いらん!」
やれやれとため息をつくと、先程まで良い心地だったカルピスの甘酸っぱさが胸に焼けるようだと思った。 赤っぽい髪の毛を撫で付けて、半袖のシャツに茶色のズボン。 首からは手ぬぐいを下げていて、よく見るとシャツもところどころ油染みが浮いている。
「で、何の用だい」 「分かっているだろ、お姫さんの事だ!」 「百合子がどうかした?」 「どうかしたじゃないだろう――」 「怒鳴らなくても聞こえるよ」
相変わらずの早口で強引な口調に、瑞人は呆れて身を引き腕を組んだ。 斯波は腰を浮かせて畳み掛けていたが、のらりと瑞人に話の腰を折られて憤然と椅子に掛け直す。 そうして向い合ってようやく余裕が生まれたのか、特有の傲慢さの滲み出る笑いで顔を歪める。
「殿様は相変わらずのご様子ですね。  妹がどこで何をしていようが、興味も無いらしいな」 「百合子は、確かに僕の妹だがあの子ももう大人だ。  何をしようが、あの子の自由��よ」 「自由! 随分と都合のいい言葉だ」
斯波が鼻で笑う。 瑞人はそれを一瞥して首を傾げる。
「百合子の事なら、直接百合子に言えばいい。  どうして、僕を呼び出したりするんだい?」 「迷惑だと何度も伝えたが、止めないから貴方を呼び出したんだ」 「本当に迷惑だと思うなら、家の鍵を変えればいい。引っ越せばいい。  それとも手でも上げてみればいいじゃないか、どうしてそうしない?」 「貴方は――お姫さんが不幸になってもいいのか?」
斯波は机の上に置いた手を固く握る。 瑞人はグラスを傾けて、もう飲みたくも無くなったカルピスを一口含む。 今は眉間に皺を寄せるほど、甘い。 瑞人ののんびりとした動作を、斯波は苛立ちながら見ているのが分かる。 視線を合わせず、伏せていた瞳をあげ、ぱさりと垂れた前髪も掻き上げる。
「あの時の百合子、幸せそうに見えたかい?」
斯波は一瞬口を噤む。 あの時、と明確な日時を言わなかったが、おそらく斯波が百合子を盗み見た日だろうと推測する。 瑞人の涼やかな目元は感情がなく、何を考えているのか読み取れなかった。 そうだと認めるのは、あまりに悔しく斯波は喉から声を絞り出すように唸った。
「ああ、見えたさ! 俺の邸に居た時とはまるで違った!」 「――君は分からないだろうから、言うけれど。  あの子は、僕達の前では幸せそうに笑うんだよ」 「幸せだからだろう!? 家族も、使用人も邸も金も花も、あるからだ!」 「僕達が心配するから幸せそうに振る舞うんだ」
瑞人は一つ大きく息を吐く。 そして痛ましげに顔を歪ませた。
「まるで、幼い頃の様に。そうさせているのは僕達だ」 「――それならそれで、新しい縁談でも探してやるのが貴方の役目だろう!」 「あの子がそれを望んでいないのに? またあの子を苦しめろと?」 「また百合子さんを借金まみれにしたいのか?」 「こちらにも備えがある。  財産を整理し、爵位を返上する用意があるんだ」
瑞人の言葉に斯波は息を呑んだ。 野宮の財産のほとんどは斯波が百合子に譲った物ばかりだ。 百合子が野宮の邸で恙無く暮らせるように、というその思いだけだ。
「何故、俺を放っておいてくれない」 「それを、僕から説明されたいのかい」
冷たく言い放たれ、斯波は呻きながら肘をついて手を握る。 頭が鉛を詰め込まれたように重い。ぐらぐらする思考、瑞人の言葉が反響する。 脂汗が背中を流れて、暑いはずなのに全身に寒気が立ち震える。
「百合子は、自分の誕生日の夜会に父を亡くした。そのすぐ後に母を。  あの子が!僕に聞いたんだ! 自分は幸せになってもいいのかと!」
瑞人は声を荒げて斯波に言う。 けれど、本当に責めたいのは自分自身にだった。 百合子は不幸な連鎖の原因が自分にあると思い、ずっと罪を背負ってきた。 どうして、それを気づいてやれなかったのか。 百合子は言えなかっただろう、瑞人は父も母も血が継ってはいない。 ずっと家族のふりをしてきた。 二人の死でそれがようやく終わったと思い、心のどこかで安堵していた。 そんな、名ばかりの兄に百合子はとても言えはしなかっただろう。
家族や使用人を心配させまいと、幸せそうに笑う。 瑞人の複雑な心の裡を察して、一人で苦しむ。
瑞人は瞳を閉じる。心を落ち着けて、昔を懐かしむように言った。
「百合子はね、みんなに好かれていたよ。  いい子で、笑顔が可愛くて、話が上手で。  どんな嫌な子とだって、誰とだって、上手くやれるとても賢い子だった」 「……だが、俺は嫌われていた」
斯波が自嘲的に笑う。 瑞人はいつも通りの嫌味らしい苦笑いを顔に張り付けて淡々と言った。
「君みたいな野蛮人にだって、百合子はにっこり笑って愛しているふりだって出来たに違いない。  けれど、そうしなかった。出来なかった。なぜか? 考えてみるといい」
瑞人はそれだけ言い残すとカルピスの代金を机に置いて、立ち上がる。 淀んでいた空気が動き、一気に店内の雑音が耳に戻る。 店を出る際に置き時計を見て、つい目があった女給に少し微笑んで扉を開けた。 長く話し込んだと思ったのに五分と経っていなかった。 暗い店内が夢だったように、眩しい日差しと湿った熱気が全身にまとわりつく。 雑踏の喧しさに蝉の鳴き声に頭が割れるようだった。 眩しさに目を細めながら、銀座の街へ歩き出した。
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百合子は居間へ入るなり、机の上をみて目を丸くした。 おこわにも魚の干物にも手をつけられてはいなかったが、唯一馬鈴薯のマッシュだけは無くなっていた。 食べ終わった皿と箸を流し台に運び、洗う。 固くなってしまった干物は身をほぐしてお茶漬けにすればいいと藤田が教えてくれた。 薬味の生姜とか葱を少しと、海苔を炙って散らすと美味しいと言っていたのだ。
「暑いから食欲がないのかもしれないわ」
百合子はそう頷きながら、干物をほぐして皿にまとめる。 おこわもおにぎりにしてしまう。 固くなっているかもと不安になったが、胡麻油が入っているようで一晩たってももっちりとしていた。 戸棚には白いおにぎりと焼き茄子がある。 傷んでいないか匂いで確かめながらも、はっきりと分からずに首をかしげる。 一緒におこわのおにぎりと干物も戸棚に入れてきっちりと戸を閉める。 日の高い内に布団を干し、掃除を終える。 ふと竹で編んだ籠を見てみると、汚れたシャツに手拭い、下履きの肌着があった。 百合子は一人はっと息を飲む。そして、じわじわと頬が染まるのを首を振って追い払う。 茶色い染みが浮いているシャツを取ると機械油の苦い匂いがした。 そのかわりに、いつも斯波が付けていたオー・デ・コロンの香りも紙巻煙草の匂いもしなかった。 大胆に鼻を近づけてシャツの匂いを嗅いでいる事に気が付き、慌てて身から離す。 すっかり顔なじみになった又隣に住む道子に洗濯用の盥と洗濯板と石鹸を借りる。 三つの女の子と生まれたばかりの男の子の世話で忙しそうな様子だった。 手伝おうかと言われたが、量も無かったので断った。
「そういえば、いつも中庭に洗濯物が干してあったわ」
それは斯波の邸の記憶だった。 あの大きな邸の洗濯物は一体どれほどになるのだろう。 灰色に濁る水を外の水道の流しに捨てた。 夏は涼しくて良いが、冬だと寒くて大変だとまだ先のことをちらりと心配する。 洗濯物を干し終えて額の汗を払いながら冷やしたお茶を飲む。 午砲はまだだったが、おこわのおにぎりと焼き茄子を食べた。
靴下に出来た穴を不器用ながらに繕い、余所行きらしい黒い靴の泥を落として磨く。 水回りを細かく掃除して、勝手口のあたりの雑草を抜く。 見渡せば、道の端は全て青々とした雑草なので、真剣に草抜きを始めると切りが無い。 日が傾く頃になると洗濯物と布団をしまう。
「習慣になってきたら、何をすればいいか分かってきたわ」
百合子は洗濯したものを畳んで箪笥にしまいながら呟く。 土間に降りて、泥のついた馬鈴薯を二つ取り出した。
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