夏のせい
副題:初恋拗らせ童貞坊やは幸せな夢を見ない
葉を隠すなら森の中。
人を隠すなら人混みの中。
死体を隠すなら墓の下。
ミーン、ミーン、なんて鳴き声が七月に入ってから休みなく四六時中ずっと聞こえてくる。八つ当たりで手に持っていたスマホを床に叩きつけると、ぴたりと全ての音が止んだ。
これ幸いと、寝室へ向かえば小さな寝息が聞こえる。眉を潜め、膨らんだベッドに向かうと不健康そうな顔色をした司が気持ち良さそうに眠っていた。
人差し指を伸ばして、痩せた頬を突っつくと言葉になってない意味不明な寝言が返ってきた。日本語でも外国語でも出来損ないの音。勝手に翻訳してみよう。なるほど。どうやら、彼は自分のことを愛しているらしい。
大変だ、愛の告白ではないか。
こはくは慌てて、台所まで走った。シンクもコンロも、新品未使用のように綺麗だ。それなのに棚を開けると、使い古した料理器具が溢れだして雪崩を起こして出てくる。
ハンドミキサー、フードプロテッサー、ヘラ、おろし器。どれもいまいちだ。
悩みあぐねていると、電子レンジから音がした。チン、という音があまりにも心地いいので、コッコッコッと笑ってしまった。レンジはチン。こはくはコッコッコッ。設定音声には、従わないといけない。
電子レンジの中を開けて覗けば、そこには熱々の電動ノコギリがあった。きっと、時限タイマー式で調理されたのだ。ミトンを両手にはめて、電源を入れる。音はうるさかったが、先程まで合唱していた虫けらたちとは違い上品なものだ。
新曲を口ずさみながら寝室に戻ると、愛しの坊は寝相を悪くしていた。ちゃんと被っていた布団を床に蹴飛ばし大の字の体勢でいる。まったく、風邪をひいたらどうするのか。クーラーのリモコンを探して、温度を上げておいた。
こはくはスリッパを脱いでベッドの上にお邪魔すると、何等分にして分けるか首を傾け視線の角度を変えて観察する。オーソドックスなのは首、右腕、左腕、右足、左足、胴体の六個の小分けだろう。
首を落とさなければエグゾディア分けという名称になると天城燐音が言っていたが、恐らく絶対にホラだろう。その横でニキが、カードゲーム原作アニメの世辞辛さを語っていたから、元ネタはそれかもしれないが。
こはくは、司の顔が好きだ。怒った顔も、笑った顔も、憎しみを堪える顔も、悲しみを悟らせないとする顔も、どれもこれも甘美で魅力的でヨかった。自分だけで独り占めしたい。それだけだった。
電動ノコギリの回転する速度が上がっていき、勢いよく手元から離れた。ノコギリはステップを踏みながらリズムを取ってベッドの上を跳ねる。ぴょんぴょんと、跳び跳ねそのまま司の首に刃を立ててしまった。
「こら!なんてことするんじゃ!」
怒鳴り付けたのに、ノコギリは話も聞かずにどんどん司の腕や足にも纏わりついていく。暴れん坊め。反抗期の子供を持った親の気持ちがわかった。
枕を強く投げつけば見事に当たり、おとなしくなった。
─やっぱり、こうするんが手っ取り早い。
こはくは、身体の一部が欠けた司を見下ろした。
そういえば、この不完全な司は、本当に司なのかと疑問が沸く。
人の魂が脳に宿るなら、頭と切り離された司の体は既に司ではないことになるだろう。じゃあこれは何だ? 不要品、すなわちゴミだ。
こはくはサイドテーブルに置かれていたゴミ袋を手に取った。透明なそれに、ぎゅうぎゅうと欠陥品を詰める。でも大きなそれは綺麗には収まらずに、飛び出してしまった。
切って小分けにしようと考え付いても、実行するための道具は先程自分が壊してしまった。枕で壊れるなんて軟弱なやつだ。
仕方がないから、ねじ曲げてコンパクトにするしかない。動かす度に音がして、液体も漏れるのが厄介だったが試行錯誤の末にきちんと袋に詰めることができた。
────。
耳鳴りのような、着信音がする。電波が届くことに驚いて、電話に出る。もし、もしよ。
あれ、電話は壊したはずなのに。なんで動くのだ。
振り向けばほら、かわいい声がする。
「ここですよ」
窓の外に、無表情な彼が張り付いていた。
◆
「付き合ってるんですよ、私と桃李くん」
冷房で冷えきった体が、更に温度を無くしていった。
「付き合ってるって…それって」
どういう意味の、なんて続けなくともわかった。紅がないのに頬を赤くした彼が、目線を迷子にさせて困っていたから。そんなのもう、答えを口にしてるようなものだ。
「真剣交際…だと、思います…」
繁華街のわかりにくい場所にある喫茶店は、平日の昼過ぎなら客入りも少なく内緒話には持ってこいだ。
こはくは理解した。おすすめのスイーツがある店というのは建前で本題はこちらだったと。何が二人だけのスイーツ会活動だろうか。甘いのはぬしはんだけやと怒鳴り散らしたくなる。
「へぇ。知らんかったわ。それで、何で隠しとったことをわざわざわしに?」
「隠し事ができなくなるからですかね」
「隠し事?」
なんでもないようなふりをして、繰り返し聞く。司は先程の吐露で度胸がついたのだろう、なんて事ないように言���てのけた。
「私、寮を出て家を借りようと思ってるんです」
「…なんやそれ」
「集団生活も面白くて為になりますが…まぁ、お互いの都合が悪いといいますか…」
「ああ。共同生活やとしにくいもんな」
髪の色と同じく、桃色な事を想像して口にするこはくに、司は顔を熱く燃え上がらせて黙り込んでしまった。
暑そうで可哀想に。こはくは、司との温度差を感じながらメニューを開いた。
目に留まるのは、ホットコーヒーの項目だ。
◆
同室のジュンが仕事で不在のおかげか、お泊まりイベントが発生したこはくは小躍りしていた。振り付けは最近練習している新曲のものだ。彼もまた、アイドルなのだ。
「最近、眠れないらしいですね」
「藪から棒になんや?」
坊だけに、との中で付け足した筈なのに冷めた目線をプレゼントされる。暑かったからちょうどいいと開き直りたくなるのも許さない、律した瞳だ。
「眠れないというよりかは、眠りが浅いのでしょうか?」
なんでそんなこと知ってる、と問うだけ無駄だろう。同室のジュンが心配して、世間話ついでで司に進言したのは想像に難くない。
「まぁな…多分、疲れが溜まっとるんやろ。わし、ユニット兼任しとるから最近忙しいんじゃ」
「本当ですか?」
「ほんまや」
嘘だ。夢見が悪いせいだが、専門家でも医療関係者でもない司に、そんなことを話して何になるのか。ただ悪戯に心配をかけるくらいなら、こはくは司を騙してでも安心させる道を躊躇なく選ぶ。
「じゃあ、これを見てください」
そう言うと司は、こはくのベッドに腰をかけてゆっくりとベルトを外していく。
「は、え、ま、坊!?」
慌てて動きを止めようと押さえ込もうとしたらひょいと避けられた。言い訳させて貰うと、こはくも思春期の男なので好きな人が自分の部屋で脱ぎ出すというシチュエーションには興奮する。そのため、理性を総動員させるためには目線を彼から背けるしかないのだ。ああ、無情。
「こはくん、よく見てくださいね」
「うぇ、あ…」
そういえば、今日の司は普段とは違う服装をしていた。いつもの半袖シャツではなく、黒いタートルネックのノースリーブのセーターを身に付けている。サマーセーターとわかっていても、暑苦しい格好をしているが、正直えっちという感想以外浮かばない。
司が首を覆っている布を焦らすようにゆっくりとずりおろす。それは、ストリップショーのような視る快感というのこちらに与えてくれる。無性にチップを挟みたくなる。生唾を飲み込んだところで、こはくは目を見開いた。
正面にいる司の喉仏の下には、赤い線がくっきりと浮かんでいた。切り傷などではない、一時的な痣のようだが、それは切り取り線のようにも見える。
「こはくん。あなた、私に何をしたんですか?」
こはくは呼吸の仕方がわからなくなった。息を吸って吐くという動作ができず、体の体温をコントロールする発汗作用もおかしくなった。運動したわけでもないのに、汗が流れ出していく。
「あっ…わし、ちが、っぁ…」
歯がカチカチ鳴る。カスタネットような口内は喧しく、声を発する邪魔になる。
「こはくんの、すけべ」
気付いたら、肌色が視界いっぱいに広がっていた。
◆
深夜三時になると、隣にいるかわいいあの子は目を覚ます。
熱帯夜の外を遮断する室内は、一定の冷気で保たれて暑くない筈なのに起き上がる彼はいつも汗でぐっしょりだ。
「坊。アイス食べる?」
「…ガリガリしてるほう食べたい」
「ほいほい」
望みのものを取ってきてやろうとこはくがベッドから降りると、司もついてきた。行儀悪く寝台の上で飲食と洒落込もうと思ったが、居間でまったりするのも悪くないのかもしれない。
毎日掃除されている清潔なフローリングから、ぺたぺたと裸足の音を立てる。見ないで手を伸ばして、電気プレートの感触を確かめて二つ目のものを押す。暗い部屋が明るくなるのに、何故かほっとした。
「あ。ここまで来といてなんやけど、ガリガリしたアイスないかもしれん」
「今朝残ってるの見ましたよ?」
「んーそやっけ?」
冷蔵庫を前にしてそんな問答を行う。さっさと中を確認すればいいではないかという思考は、野暮だ。
「まあ、見てみるか」
こはくが下から二段目の冷凍ボックスを開く。氷と種類豊富なアイスクリームに手を突っ込み漁る。がさごそ掘り起こしたりしてみるが、目当ての物はなかった。
「ごめんな坊。やっぱりなかったわ」
「いいですよ。他ので我慢します」
「ええこやなぁ」
こはくが頭を撫でると、司は無図痒そうに体を動かすがされるがままにしていた。昔とは異なる態度が無性に嬉しくて、そのまま抱きしめる。互いに背中に手を回して、そっと唇に触れる。人肌が生々しく、背筋に甘い痺れを起こす。
「なぁ坊。今度はどんな夢見たんや?」
優しく、幼い子をあやすように声を落とす。
「…こはくんが、可哀想な夢です」
自分が可哀想。新しいパターンだと、こはくは表には出さす動揺した。これまでの司の悪夢には法則性があったしテンプレートがあった。大まかに分けて、学院と家とアイドル。この三つで、司を苦しめていく。
「わしがどう、可哀想なんや?」
「私に酷いことされて、酷いことするんです」
「そっか」
要領を得ないが、それでいい。別にこはくは探偵志望のストーリーテラーではない。全ての全貌を解き明かそうなんて考えは持ち合わせていない。
二人で逃げるようにこのマンションを借りてからは、司は幸福になったとこはくは信じていた。だから、彼を悩ませるものを無理に知ろうと思っていない。この暮らしがあれば、それ以上は望まない。
「こはくん、寒い」
冷凍庫を開けっ放しにしてた。冷気が漏れだして確かに冷たかったと閉めるが、司は相変わらずしがみついたままだ。
「こはくん。あたためて」
ほぅ、と吐く息が熱い。寝室に行くのも勿体なく感じて、司の手を引いて居間のソファーベッドに押し倒す形で横にした。パジャマを床に落としていくと、ごめんなさいと謝罪が聞こえた。
「私知ってました。ガリガリしたアイスがないの、知ってたんです」
誘い上手になったものだ。こはくは、司の額に口づけして悪い子だとからかって戯れでくすぐって笑わせた。
何も泳いでない水槽から、ポチャンと音がした。
◆
蝉の鳴き声がする。
異臭がする。
彼がここにいる。
どこにいる。
冷蔵庫の中だったか。ベッドの下だったか。浴槽の底だったか。プランターに植えたか。水槽に沈めたか。
料理した、寝た、入浴した、菜園した、飼育した。
彼と一緒にしたのか、いや、彼にそうしたのか。
「ここですよ」
ゴミ箱から、声がする。
◆
寮の食堂では、お残しは許しまへんでぇ!という声が響いていた。
こはくは共同の冷蔵庫に向かい、自分の名前が書かれてあるコンビニのざるそばを取り出す。値段もそこそこでうまいのだから、昼食にはもってこいである。
適当な席についてずるずる音を立てて食事をすると、隣の椅子が動いた。
「こはくん。それだけじゃ足りませんよ」
「坊はわしの胃袋の大きさなんてしらんやろ」
「反抗的! 心配してるんですよ!」
そのままこはくの隣に座った司は、持っていたトレイをテーブルに降ろした。
おにぎり、漬物、煮物、チキンソテー。最後だけ西洋かぶれなんかいとツッコミするのを抑えてそっぽ向く。そんなこはくに怒りはしないが呆れているのか、柔らかく笑った。
「もう。困った子ですね」
ことん、とこはくの側に皿が置かれる。見ると、綺麗に握られて海苔が巻かれたおにぎりが二つ鎮座している。
「…なんやこれ」
「おにぎりです」
「見ればわかるわ」
「おかかと梅です」
「具のことは聞いてないんじゃ」
段々と半目になるこはくとは反対に、司は目を丸くしている。すっとぼけているのか素なのか、こはくでさえも判断つかない。
「でもこの握り飯、坊の分やろ」
おかずだらけの食膳に主食の米がないのはきついだろう。しかも味も薄いとは言い難いラインナップときてる。
こちらは蕎麦のみだが、それだけで十分ちゃんとした一食になるからいいと遠慮しているのに、司は譲らない。
「いいからお食べなさい。いっぱい食べて大きくなりなさい」
「身長がわしと同じ坊に言われても…」
「くあぁ! い、いいから年上からの好意には黙って受け取りなさい! それに私はこれ以外にもたくさん作ってありますから!」
ムキになった司は手にしていた鞄の中身を開けて見せてきた。確かに、中には綺麗なシートで包装されたおにぎりがある。あるのだが、今度は多すぎる量だった。
「坊そんなに食べきれるんか?」
「これは…まぁ、食生活がなってない先輩方とかにお裾分けしたりするので」
「ふぅん。大変やなリーダーちゅうのも」
こはくは口にしてから思った。いや、うちのリーダーはそんなことしてないな。
「だからほら、こはくん遠慮せず食べてくださいよ!」
「わかったわかった。近いわもう」
こはくは手前にあった方を手にする。空腹でも満腹でもないので、別に食べる必要はないのだが、期待した顔を向けてこちらを見つめるかわいい兄はんが喜ぶというのなら、こはくの選択は一つだ。口を大きく開いて、かぶりつく。
「…んっ、おいしいわ」
「本当ですか!?」
「だから近い! …最初は坊が自炊なんて信じられんかったけど、大した腕やな」
「ふふん。そうでしょう。ちゃんとレシピ通りにすれば不味くなることは有り得ないんですよ。だから材料と下拵えの準備も万全にしておけば…」
「ご馳走さん」
「早いですね!? 早食いは体に悪いですよ!」
満足感を得た腹を撫でながら、冷えた麦茶で喉を潤す。司は、こはくの親以上にこはくに対して心配するし世話を焼こうとする。こはくにとって、愛されるという感覚はよくわからない。だが、こうやって自分を気に掛ける司を守りたいという思いが愛ならば、それはどんなにいいことだろう。
「聞いてますかこはくん?」
「聞いとるよ。それより坊、時間は大丈夫なんか?」
こはくは自分の付けてる腕時計を司の目線に合わせる。
司はパチパチまばたきを繰り返すと、すっとんきょうな声をあげて慌てて食事を再開した。下品では所作で急いで皿を空にしていくのには素直に感心を覚える。こはくは早食いは体に悪いというお小言を止めて、司に渡すために麦茶をいれたコップを構えて待機した。
最後になった漬物を口にした司は、それを噛むと素早く噛んで飲み込んだ。そのタイミ��グでお茶を差し出せば、すぐ受け取って飲み干された。こはくは小さく拍手した。
「ふぅ…ありがとうこはくん」
「お粗末さま。ほら坊、わしが食器片付けたるから早う行け」
「えっでも…いえ、今日のところはお願いしますね」
簡潔に頭を下げて小走りで食堂を出る司を見送る。さて、食器を洗おうと立ち上がって、あることに気付く。今まで意識になかったが、食堂には自分たち以外の誰もいなかった。最初にきたときは騒がしく、そこそこの人数がいたのだが。
「…疲れてるんかな」
溜め息を吐く。
蛇口を捻って水を出して暫く眺める。節水しないと、とは考えるが滝のように一直線に流れ落ちる水はなんだか落ち着く。
そのとき、こはくのズボンのポケットが震えた。正確には、ポケットの中にあるスマホなのだが。
はっとして蛇口を閉めて、ポケットに手を突っ込む。取り出したスマホの画面には『ラブはん』と書かれており、彼からのメッセージの知らせのようだった。
ヒビが入っていて触り心地が悪い液晶を軽く指で叩いて中を見るとなんてことはない内容だった。下世話なアイドルの恋愛事情だ。でも残念なことに、それはゴシップ雑誌とは違い信憑性がある。そして、自分たち身内のことであり、新鮮な情報だった。
デートするらしい。誰と誰が。門の前で待ち合わせていた姫宮と朱桜が。
そうか、デートなのか。お互いの仕事の目的で水族館に行くだけだろう。でも、だって。
自分は知ってるじゃないか。彼らが他人同士でないことを。
冷蔵庫から音がした。
氷のできる音がガタガタする。
「もうええよ」
呟いた言葉を合図に、蝉が音楽会を始めた。
夏は、終わらない。
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ファミリー系4コマ誌の大定番-「まんがライフオリジナル」5作品ショートレビュー
ども。たっちーです。
私事で2か月ほどお休みいただきまして、今週から復帰です。
しばらくは多忙な状況が続きますので、掲載が不定期になるかもしれませんが、今後ともよろしくお願いいたします。
さて復帰初回となる今回ですが、「4コマ専門誌語りシリーズ」の4回目をお届けします。今回は、竹書房から毎月11日に発行されている「まんがライフオリジナル」を取り上げたいと思います。
まんがライフオリジナル
まんがライフオリジナル 2017年 10 月号 [雑誌]
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▼最新号(2017年10月号:9/11発売)連載陣(順不同)
ちぃちゃんのおしながき/大井昌和
銀子の窓口/唐草ミチル
動物のおしゃべり/神仙寺瑛<隔月連載>
晴れのちシンデレラ/宮成楽<隔月連載>
リコーダーとランドセル/東屋めめ
ふくよかさん/井村瑛
ねこようかい/ぱんだにあ
よっけ家族/宇仁田ゆみ
みっちゃんとアルバート/森長あやみ
クレオパトラな日々/柳原満月
鬼桐さんの洗濯/ふかさくえみ
きらきらビームプロダクション/板倉梓<10月号で最終回>
願いましては/碓井尻尾<10月号で最終回>
出没!アダチック天国/吉沢緑時
なごみクラブ/遠藤淑子
りふじんなふたり/松田円
ばつ×いち/おーはしるい
おうちがいちばん~アンコール~/秋月りす
そのアパート、座敷童子付き物件につき…/小夏ゆーた
中年女子画報/柘植文
先生ロックオン!2nd/神堂あらし
セトギワ花ヨメ/胡桃ちの
猫喫茶いぬい/みずしな孝之
とーこん家族/よしもとあきこ
新婚よそじのメシ事情/小坂俊史
さかな&ねこ/森井ケンシロウ
ぼのちゃん/いがらしみきお
のみじょし。/迂闊<隔月連載:10月号掲載なし>
(1Pコラムや持ち回り企画等を除く)
「家族」がメイン
まんがライフオリジナルは竹書房から1988年7月に創刊され、来年30周年を迎えます。竹書房の4コマ誌としては前年に創刊された「まんがくらぶ」の次、3番目の創刊となっています。私が読み始めた15年前頃の表紙は秋月りすさんの「かしましハウス」でした。2003年から作品が「おうちがいちばん」になり、2015年まではずっと秋月りすさんの表紙が目印でしたが、2016年に入って表紙から降板して連載も「アンコール」に。半年は連載陣で持ち回りでしたが、現在は大井昌和さんの「ちぃちゃんのおしながき」に固定となりました。最初は「半年」という記載がありましたが、まだまだしばらくは表紙担当が続きそうな感じです。
ではここで、10年前と連載作品を比較してみましょう。
▼まんがライフオリジナル 2007年7月号(連載作品のみ/順不同)
おうちがいちばん/◆秋月りす
あくまCalling/秋吉由美子
東京眼鏡/あらい・まりこ
ひとねこペネ/◇いがらしみきお
ういうい days/犬上すくね
よにんぐらし/◇宇仁田ゆみ
ちぃちゃんのおしながき/◆大井昌和
おいしい日曜日/小笠原朋子
ぼくと姉とオバケたち/押切蓮介
セトギワ花ヨメ/◆胡桃ちの
ハルコビヨリ/◇小坂俊史
ゴーイン!!マイクック/後藤羽矢子
12月生まれの少年/施川ユウキ
動物のおしゃべり/◆神仙寺瑛
だってヤンママ/すみれいこ
がんばる父さん/田中しょう
猫実カフェ/丹沢恵
クロジとマーブル/富永ゆかり
奥様うでまくりっ!/野中のばら
ご契約ください!/◇東屋めめ
おバカさん/平岡奈津子
エデンの東北/深谷かほる
ちとせげっちゅ!!/真島悦也
えんかい君/松田まさお
貴美TALLEST/美月李予
なっちゃんはね!?/南ひろこ
カギっこ/山口舞子
とーこん家族/◆よしもとあきこ
ファイト! 息切れOL/吉田美紀子
(脚注…◆:現在(2017年10月号)も連載中/◇:同誌別作品で現在も連載あり)
(参考:起承転結 第7号(2007年8月発行・4研))
5作品ショートレビュー
では、今回も連載作品から5作品ご紹介いたしましょう。
ちぃちゃんのおしながき(大井昌和)
(まんがライフオリジナル2017年10月号 P.11 2コマ目)
「とーこん家族」、「おうちがいちばん」に次ぐ3番目に長く、単行本も13巻を数えるロングラン連載であり、2016年からは雑誌の表紙を務めることにもなった、名実ともに雑誌の看板を背負って立つ作品です。小料理屋・みづはを舞台に、小学生板前の「ちぃちゃん」と、お酒が大好きな母・「みっちゃん」、そしてそこに集う常連客の日常を描く日常ファミリー4コマです。���絵の下に毎月違った切り口のキャラ紹介から始まり、毎月同じようなシチュエーションのオーソドックスな4コマの中に毎月新しい笑いがあり、そして温かい。これがちぃちゃんなのです。
銀子の窓口(唐草ミチル)
(まんがライフオリジナル2017年10月号 P.8 2コマ目)
ちぃちゃんが「温かい」なら、こちらは「クール」。とある架空の地方銀行を舞台に、笑顔なくいつも冷静に、機械のように完璧に仕事をこなす窓口係(テラー)・東雲銀子と、新人行員として配属されたドジだけど笑顔と愛嬌は人一倍の柵木音々子を中心に銀行員やお客たちの日常を描く、お仕事4コマです。コメディ4コマですが、ところどころにシリアスな面があったり、微百合展開があったり。クールな銀子さんを描く作品ではありますが、ヒューマンドラマが温かい作品でもあります。
クレオパトラな日々(柳原満月)
(まんがライフオリジナル2017年9月号 P.145 下)
「軍神ちゃんと呼ばないで」(芳文社)で4コママンガ界でも有名となりました柳原満月さん。竹書房での連載は同じく歴史ものですが、時代はそれよりかなりさかのぼって古代エジプト。最後のファラオと呼ばれる「クレオパトラ」を主人公にしたコメディ4コマです。「絶世の美女」として有名なクレオパトラとはいえ、紀元前の話になりますので、世界観はなかなかつかみづらいですが、読みやすい絵柄とコミカルなストーリー展開は柳原さん��らでは。10月号で9話ですのでおそらく単行本も来年には発売になるのではないかと思います。
猫喫茶いぬい(みずしな孝之)
(まんがライフオリジナル2017年8月号 P.183 1コマ目)
ベテラン・みずしな孝之さんの最新作は、ちょっと(?)変わった猫喫茶が舞台。死んだ父から猫喫茶を受け継いだ青年・乾くんは大の犬好きで、猫カフェの運営は自分には向いていないと思いながらも、お父さんの店を潰さないように猫と奮闘する姿を描くコメディ4コマです。カワイイ猫たちと、一癖も二癖もある店員たちとの日常を楽しむ作品に仕上がっています。
そのアパート、座敷童子付き物件につき…(小夏ゆーた)
(まんがライフオリジナル2017年8月号 P.136 下)
竹書房が開催している月例賞・「新人4コマ杯」の2016年度2月期に月間賞を受賞、該当年度のグランプリ作品となり、満を持して2016年11月号から連載となりました。奥さんと離婚した竜太郎と、1人暮らしのために借りたアパートに住む「幸運や富を運んでくる福の神」である座敷童子・沙和の二人を中心に、賑やかな日常を描くハートフルコメディ4コマです。綺麗な絵柄と、沙和ちゃんや大家さんである陽さんの可愛さを堪能しつつ、ヒューマンドラマも楽しむ一作になっています。
――――――
4コマ誌としては「オーソドックス」。だからこそ、読みやすいし面白い誌面となっています。取り上げたほかにも面白い作品は多いですし、俗にいう「ファミリー系4コマ誌」を読んでみたい方への入門書としておススメします。
次回の4コマ専門誌語りシリーズはまんがタイムきらら系から1誌取り上げますので、お楽しみに!
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