yihui-heben
yihui-heben
θとβ
30 posts
θは嘘しかつけない。
Don't wanna be here? Send us removal request.
yihui-heben · 1 year ago
Text
β
自殺のニュース
自殺のニュースを見聞きすると、ヒトとしてどうかと思われるのはわかってはいるのだけど、心から安心し、尊敬し、慈愛に満ちて、嫉妬し、ゆっくり休めるといいなと思う。思ってしまうのではなく、思う。嘘に近い自殺のニュースには怒りが出てくる。自殺示唆・教唆なんかもってのほかで甘くもなんともない。他人の(もう死んでいたら灰になってヒトではないのだけど)そのようなニュースに安らぎや安心を感じる自身に恐れや軽蔑はなくて、ただぼんやりとした、日向に長いこと���てられた背中の温かみのような安堵がある。
手段は首吊りや飛び降りやガスの引き込みらが好ましく、こちらに苦しさが少し伝わる方が望ましい。それは自身に当てはめて、わたしが死ぬ、ところを想像することができるからだと思う。よく、夢として、苦しくなった時のおまじないとして、首に縄をかけてぎゅっと絞めて足元の台を思い切り蹴飛ばすことを考える。揺れる身体に苦悶の表情にぎちぎちと軋んで締め付ける縄の音を考える。2度未遂に終わった自殺(ただ邪魔や運の悪さで完遂できなかったために未遂と言っていいのかわからない)を今度こそというイメージに置き換えて安心を計る。
病気、病気、病気。。。「病気が治ったら」。。歌詞の中の「同じ」には含まれていない疎外感が、マイノリティにも属せなかった自身の保てなさを加速させてしまう。マイノリティにすら属せない。1:1で話す必要がある、それ以上はもうカウンセリングに近くなって会話に集中できなくなる。
僕の名前をつけた人間は、僕が顔をしっかり見る前に首を吊って死んだ。それが原因なのか?だけどもしこれを見てる人に、家族やそれに近しい人たちを自死によって亡くされた方々がいるのなら申し訳ない。
深く考えたくない
3 notes · View notes
yihui-heben · 2 years ago
Text
β
きみからはエゴイストの匂いがする。
コンビニの店員にそう言われた。最初は怒りと戸惑いしか出てこなかった。少し考えれば家に出る前につけた香水の名前だとわかったはずなのに。
0 notes
yihui-heben · 2 years ago
Text
きみが熱心に話している間も僕は電波塔のこと考えてる
紺色の空の下揺らがないあれに思い盗まれてる
愛しいきみにもわかってほしい
不可侵のきみと鎮座する塔
きみが涙目で訴えてる時も僕は電波塔のこと考えてる
これでお別れになってもあれとは交信されてる
賢いきみにもわかってほしい
不器用なきみと静謐な塔
1 note · View note
yihui-heben · 3 years ago
Text
β
ぽつぽつと連絡を取る。そうしていく内に自分と相手の輪郭が曖昧になっていく。わたしが描いた境界線と描くためのペンをどの範囲まで相手側に譲れるか、が僕の中のコミュニケーションで、ペンのインクが掠れるまで渡しすぎたり、ペンを渡さなかったり、そういった過度なプラスやマイナスに数年間費やしてしまったし、ある程度わたしを操縦しているつもりである今も、たまにわたしの地盤をぐらつかせてしまう時がある。
幸運にも僕の周りには、興味のある人たちしか居ない。ここでいう、居る、とはインターネットと現実の垣根を越えた、わたしの身体の外側、皮一枚隔てた外側に得体の知れないモノがあるという意味である。そういった興味のある人たちに、たまに言われることがある。「この曲はきみのことみたい」と。自分では、そうかなあ、と顎に手を置いて、長く考えてしまうのだけれど、難しいことは分からなくなって、原始的な感情が出てくる。嬉しいような恥ずかしいような、たまに怒ってもいいのかなとさえ思う、贅沢な時間が、ある。作者の手を離れたモノ・コトは、ヒトに様々な思い出や考えを想起させ、新しく考えのバイパスを作らせたりする。そうしてまた別のヒトに伝播していくものだと考えている(当たり前なのですが)のだけど、その、わたし、みたいな曲は一体どういったところから来ているのだろう。歌詞やメロディの流れが、そう思わせるのかもしれない。心の中で友人と呼べる、小さくとも関わっている人たちは、わたし、をどう捉えてどう接しようとしてくれているのだろうか。こんなことを書くと、その人の考えを僕にとって都合良く固定してしまう気がしてずるい気もする。
1 note · View note
yihui-heben · 3 years ago
Text
γ
また日が昇ってくる。セメントのような粘度の高そうな花弁が描かれた布を掛けただけの窓から、少しだけ射し込んでくる光。助かった気もするし、助からなかった気もする。逃げ切った・追いつかれた、にも似ている。20歳を迎えてから今に至るまで、それとも生まれてから現在まで、二律背反を抱えながら生きている。重く苦しい呻き声のようなチェロの音がスピーカーから流れているのに気がついて、慌てて消してしまった。すると窓の外からは、一方通行の道路を車が走っている音や、通学通勤に駅まで向かう人たちの足音が聞こえる。そのどれもが、部屋の右側から左側に聞こえるものだから、耳を澄ましていた自分まで右から左に、泳ぐように視線を動かしてしまっていた。逆方向に向かえば何か見つかるのだろうか、とも思ったが、どんどん太陽は昇っていくし、光量も薄い布では抑えきれなくなっていくのだろう、そんな考えが突然乱入してきて、搔き消されて、結局また外から聞こえてくる音しか意識することができなくなってしまった。自分で作った机の上に置かれた、ボックスのセブンスターから1本取り出して、紫色のbicライターで火を点けた。味がしなかった。そもそも煙草に対して、味という味を感じてなかったのかもしれない。もしそうだったら、雰囲気で吸い続けた8年間は、ただただ部屋と肺を黒くしていくだけで、何の思い出も感じられなくなると思った。 煙草を半分まで吸った頃、必死ほどまでいかない焦燥感がやってきて、何とか煙を舌の上で転がしてみた。きっと黄色や薄紫色の煙が、惑星の周りを漂うガスのようにぐるぐると渦巻いたり、霧散しているのだろうと思った。イメージばかり思い浮かんで、味がしなかった。イメージの奔流の源泉にどこまで向かっても、ただの煙でしかなかった。煙草を透明で大きい硝子の灰皿で揉み消したけど、それでもまだ少し煙が寂しそうに、上へ上へと昇って行った。椅子から立ち上がって、カーテン替わりの布をずらし、窓から見える風景を見た。2階の窓からは、ベランダと、人2人分ほどの幅しかない歩道が見えた。その歩道から少し目線を下げると、地域のごみ捨て場が見えた。そこには白いごみ袋が積み重ねられていて、そのひとつが横たわっている人に見えた。人はごみ袋の上に投げ捨てられたような体勢で、歪だった。だけど、目線だけはまっすぐに空を眺めていた。ワンフーの話を思い出した。昔、中国に居たと云われる伝説上の人間で、彼は空を目指していた。誰もが馬鹿げた話だと思うまま、彼だけが空に向けた憧れを捨てきれていなかった。彼は今でいうロケット花火を椅子に括り付け、その椅子に座り、周囲の人に点火してもらった。小さい椅子はワンフーを連れたまま、上へ上へ昇っていき、そのまま見えなくなった。そんな伝説を思い出した。でもその人に見えたごみ袋はワンフーでもないし、そもそも人でもなく、自分自身に見えた。自分自身がごみ袋の上に投げ捨てられていて、右から左へ人々や車が向かっていく。可哀そうだとも思わなかった。何が自分と違うのか分からず、その風景だけを切り取って見ていた。
3 notes · View notes
yihui-heben · 3 years ago
Text
β
祖母が死んだ。90歳だった。最後に近親が死んだのは多分18年くらい前で、その時は一粒も涙が出なかったし、一筋も人が死ぬ道理が分からず、唯の出来事だった。昔から家族や親族、周囲20mにいる人達に対する情というものは持っている筈なのに、悲しんだり怒ったりすることに対して本気になれなかった。今も言えることではあるけど、どうにも俯瞰的に自分を見てしまう癖が辞められない。それが原因で後悔する羽目になると解ってはいても、役に���り込むようで嫌だ。祖母の場合は最後に会ったのが10年ほど前で、自分如きが悲しんでいいのかという気持ちが胸にあるまま夜行バスに揺られて実家に帰���た。
通夜には母親の弟の家族が待っていて、小学校の頃の面影を顔の中心に残しながら、上下左右に膨らんでいた。祖母が眠っている場所の襖を開けると、記憶とは違う祖母が居た。黒々としていた髪は真っ白になっていて、布越しにも身長が縮んでいるのがわかった、というより僕が大きくなったのか。顔も身体も凄く痩せてしまっていて、病気というものはつくづく恐ろしいんだなと思った。母親はさっきまで剽軽に親族と話していたけど、やはり眠ってる祖母を見た時、抱きついて何も言わずに泣いていた。母親は訳あって曽祖父・曽祖母に育てられ、祖母のことをお母さんと一度も呼んだことがなかった。なんだか見てられなかった。お祈りの時も、線香をあげる時も、神社で参拝する時も、手と手を合わせる時には何にも頭に浮かばない。今回も合掌するというポーズを取っているだけだった。決まってそういう時は熱いぐるぐるが鳩尾の辺りで周っている。座っていると、段々、母親の兄弟姉妹とその家族が集まってきて、いつの間にか用意されていた椅子は満席状態で、聞いたことのある昔話や聞いたこともない昔話をしていた。僕はその間、第三者であろうとしていた。椅子を用意したり、菓子や飲み物を出したり、天候を気にしたりしていて、会場の人たちが花を搬入していた時、手伝おうかとも思った。
笑い話がずっと続いていた。親族は根っからの剽軽者たちで、祖母も勿論そうだった。だからきっと他の人たちから見たら、最低最悪で不謹慎極まりない家族だなと思うだろう。でもみんな尊敬を違う形で発露させてるだけのように見えて仕方なかった。昔、最後にみんなで集まった時のビデオを流していた。映った僕は今とかけ離れていた。歳を取るのは恐ろしく早かったし、ある年齢を越えると緩やかと言えども、祖母にとっても早かったんだと思う。あと1ヶ月、あと1週間、あと2日と余命宣告された気持ちを考えると、痛さを無視できなかった。笑い声と相反していて場違いな場所にいる気持ちだった。
会場の人が来て、祖母の身体を洗う行為(恥ずかしいめど何も知識がないのできっと名前はあるんだと思う)を親族全員で見ていた。僕の隣に立った従兄弟は、いつも軽口を叩く人なのに、足が震えると言っていた。足から胸元までお湯を掛けた後、祖母をみんなで囲んだ。昔、よく祖母がふざけて変な眼鏡や帽子や付け髭を着けていたのだけど、母親の弟が持ってきて、眠っている祖母に着けていた。死に化粧をした祖母は本当に眠ってるようにしか見えなかった。男たちで棺まで祖母を運んだ。
会場の人たちが用意したちょっとした儀式を見た。棺の前の机の上にお水が入っていて、5人兄妹でお別れのために献杯をして一言言うものだった。母親が一番最初に行き、グラスを合わせた後水を飲んで、祖母の近くに行って、嗚咽していた。さっきまでみんな茶化していたけど、その時だけはみんな黙っていた。何を言っていたのかは、後から聞いた僕と母親しか知らない。
火葬には立ち会わなかった。骨になるのを見たくなかった。だから帰り際に祖母に、ありがとう、おつかれさまでした、またね。と言った。あと何回親族で集まるのかわからない。母親を大切にしようと思った。
0 notes
yihui-heben · 3 years ago
Text
羽根は好きじゃない
白や赤から思い起こされるものの普遍さ
ミニマムの原因とマキシマムの結果
出てきた結果は原因を打ち消す
生きてる間は原因が沸々と額まで昇ってくる
フラクタルな憎しみや悲しみ
味噌汁は好きじゃない
ベッドの硬さ
0 notes
yihui-heben · 3 years ago
Text
θ
見上げると鴨の羽色の木々からどろどろに溶かされた朱色の空がちらほらと映っていた。今も消えない明日への焦りのような揺らめき方をしていた。僕は両手で構えていたチェーンソーを大きな広葉樹の幹の根本に置き、その隣に座った。柔らかくて湿った赤土のなんとも言えない温度が背筋にまで昇ってきた。首を幹にもたれさせ、目を瞑っても、先の空と葉の違和感から逃れられなかった。僕は左手で地面を押し上げて立ち上がり、チェーンソーを手に取った。僕はスターターロープを泥だらけの手で引っ張ると、チェーンソーはぶうんと一度大きく唸って、その細かい無数の冷たい刃が一枚に見えるほど速く回った。僕がここまで来たということは、この幹を切らないといけないということだった。あの人を探しても見つからないままで、あの人の夢を食べた結果、吸い寄せられるようにこの森に来た。約束めいた儀式、儀式めいた約束、どちらにせよこの木を切らないといけなかった。回るチェーンソーの刃が木に当たると、その部分が緩く燃えてはすぐに火は消えて炭化した。漏れ出た樹液はきらきらとした琥珀色だったが、熱ですぐに固まった。機械式の鳥たちが飛んでいて、油の切れた翼を何度も羽ばたかせていたから、きいきいと鳴っていて、責められている気がした。僕は昔から同素材の音がぶつかったりする音に慣れなかった。金属と金属、木と木、プラスチックとプラスチック、街中でそれらが擦れたりぶつかったりする時の音がすると立ち止まって耳を塞いでしまうものだった。太鼓の様な音を立てているチェーンソーを握りしめて、木を殺すのに集中した。半径より少し切断した頃、樹液は返り血の様に僕に浴びせて硬化した。僕の中身は吸い上げられては戻された。左目から枝が生えているのがわかった。ここで絵画の様に空想を切り取られた一場面になってしまう気がした。
1 note · View note
yihui-heben · 3 years ago
Text
θ
あの人の肩を噛んだ。白くて程よく張っているけど柔らかかった。1センチほど食い込ませた途端に、わっと泣き出した。泣いているところは今までに2回ほどしか見なかった。大きい泣き声と、肩口から堰を切ったように空気が飛び出していった。後々考えると、慌てる必要がない気がするのだけど、その時ばかりはとんでもなく焦った。ヒューと吹き続けている空気が、部屋の中で風となって、わずかな灯りで見える埃を飛ばしていた。止まる様子も止められる様子も、傷口からは感じられなかった。傷口の皮膚は、破裂したガスタンクの容器のように、ざくろのヘタのように、ランダムに飛び散っていた。僕は鼻を近づけて匂いを嗅いだ。悲しい匂いがした。それは今までなかった感覚だった。突発的に口を大きく開いてそれを塞いだ。耐えれそうになかったけどそうするしかなかった。麻酔作用のある空気は、琥珀色をしていて、産まれる前の記憶を思い起こさせたし、口の中から胃の辺りまで麻痺して、自分のものじゃなくなってしまった。結局夜明けまで泣いたあの人は目が真っ赤になっていた。僕も泣いてしまって、目の前が滲んで、あの人の肩の輪郭がぼんやりと動いているように見えた。
0 notes
yihui-heben · 3 years ago
Text
β
不健康に10キロほど太った。太ももと太ももがくっつくくらい太った。民間人に戻ってから、荒れている部分とマシになった部分、それから酷くなった部分がちょっとずつ延びたり目立ったりするようになった。髪色も落ち着かなくなった。赤茶から金へ、金から青へ、青から銀へ。好きな映画のヒロイン(どっちがヒロインか分からないくらい主人公は女々しいのだけど。(女々しさっていうのはもう死語なのかもしれない。))くらいころころ変わってしまった。映画とアニメをたくさん観た。だけど、自分が怖くなった部分があって、感想を書くことよりも、口にしたほうがすらすらと出てくるようになったことに気付いてしまって、僕が食い破られるみたいな感覚が気持ち悪かった。
以下、2021年公開、「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」のネタバレ、ラストについての軽い言及があります。
一番考えたのはシンエヴァで、シンジが神経衰弱している部分が、僕がこてんぱんにやられている時を、ひとつひとつ細かく描写してはいないのだけど、雰囲気や絵のタッチ、ほとんどないセリフでつらつらと流されていて、苛々する気持ちと内臓を撫でられているような不快な気持ちでいっぱいになった。汚さとは何か、みたいなことについて、未だに自分の中でしっかり確立させられていなくて、そのことは熟れすぎた実みたいに、ぽとっと肚の下の方に落っこちると、飛び散るくらいに柔らかい。ご飯を綾波レイに持ってきてもらって、しばらくは目もくれないのだけど、数日経つと我慢できなくて夢中で口にしてしまう汚さ、涙を流しながら食べるけども、嫌悪感の味が広がるのがありありと思い浮かんだ。
でもなんか、味方にはなれなかった。劇中のように、思春期に綾波レイやアスカ、大人になりきれない部分もあるNERVの大人たちのような人たちと関わらなかったし、術も知らなかったから、苛立ちが勝ってしまった。喪失のあとの、新しい出会いのステージに行かなかった僕に100パーセントの原因があるのだけど、どうしても先に行ってしまったシンジを羨ましく思ったし、限りなく遠くに行ってしまった人という記号にしか見えなくなってしまった。ストーリー終盤付近のゲンドウのセリフや描写も同じだった。1番好きなのは碇ゲンドウというキャラクターだと思った。シンジやゲンドウをみると、内外面関わらずキャラクターが生きていて、「どうしてこういう細かい描写ができるの?実体験ですか、あなたはこうやって抜け出したから、今よれよれだったとしても立てているのですか?寝ていてすみません。」、と畏敬の念が沸々と出てくる。2時間半で見事に、綺麗に、エヴァが終わった。最後のアニメと現実の切り替わりはやっぱり、「現実を生きよう、彼らも前に進んだのだから。」、というメッセージなんだろうか、と思ったら、宇多田ヒカルの"One Last Kiss"が流れてきた。
最初の
Tumblr media
という部分、こんな表現どうやったら思い浮かぶんだろう。
youtube
0 notes
yihui-heben · 3 years ago
Text
θ
あの人が描かれた絵に触れた。あの人はこちら側に、はっきりとした質感のある手を伸ばしていた。ざらざらした感触があって、顔が引き攣った。肉体という劇場から出たがっていることや、僕だけが迎えてしまった日に対する恨みを、僕の人差し指が捉えた。格好をつけるわけじゃなくて、本当に文字通りそう思った。青い僕の手。赤いあの人の手。展覧会には僕以外にもいっぱい居た。みんなの手は健康的だった。浮いた骨もなく、かといってぶくぶくと丸まってもない。あの人の手は陶磁器みたいに冷たく思えた。心臓が早くなって、親指も膨れた。ぎゅうぎゅうに血を詰められて曲げられなくなった親指。一方で赤い手はすべすべとしていて冷たそうだった。僕は大きな金の額縁の秘密の模様が見えるまで近付いた。立体的に描かれたあの人の五指が僕の首根っこをぐっと握った。思っていたよりももっと力強くてもっと冷たかった。ぐぐぐっと力が入ると、熱が篭った僕の首ごと、そこで冷えて固まって僕も作品になってしまいそうだった。
1 note · View note
yihui-heben · 3 years ago
Text
θ
足の甲から脛まで植物が生えていた。それも沢山の多肉植物。植物は分厚く、薄緑色の不透明さをもって、摘むとぐにぐにとした感触だった。靴下を履こうにも、植物はつま先側に向かって広がって生えていたから、少しでも植物の根元に靴下を引っ掛けてしまったら、足の肉ごとこそげ落とす羽目になってしまうのだった。仕方がなく、僕は諦めて、よく観察することにした。目に見える範囲内の植物を数えてみると脛側に合計50枚、脹脛側に20枚あった。脹脛側の植物は、所々萎れていて、筍の皮のようになっていた。僕は段々その植物を見ているとイライラするようになった。だから僕は植物を無視することにして、外に出ることにした。裸足でアスファルトや砂利や土やゴミや戦車で轢かれて粉々になった夢食動物の骨の上を歩いた。冬も厳しくなって、時折シャッターを喧しく叩く風も吹くようになっていたから、足元まで隠れるロングコートに裸足で歩く僕は、周囲から奇異な目で見られてもおかしくはなかったのだけど、誰も彼もが、ぼんやりとした目で、関係に飽きた人が話す退屈な話を聞く時の目を付けて、後ろに後ろに流れていった。僕は学校に着いた。ここは夢について学ぶことのできる4年制の大学で、僕は2年間通っていた。僕は、時に害を成す夢を、栄養にうまく結びつけられるかどうかを学んでいた。実験で何度も夢をみた。進学する時に、特にやりたいこともなかったから、周りの進学に流されるままこの大学に入った。毎日の実験による夢酔いでふらふらの僕に教授が夢ゼリーをくれたけど、ひとつも飲まなかった。夢酔いの後の(基幹)現実酔いがひどくなり始めた2年生の冬に僕は辞めた。門を抜けて吹き抜けの廊下に出て、右手にある生協やコンビニや実験で使う夢植物の花壇があった。生協には3人組がこれでもかというほど詰め込まれていて気分が悪くなった。思えば大学生がひとりなのを見たことがない。汗が噴き出てきたから、左手の学生指導室に向かった。日光が差す廊下を歩いていると、裸足の部分が照らされて、足が重くなった。ちらっと歩きながら見える部分だけを見ると、足の甲や脛の植物の肉が大きくなっていた。小走りで廊下を過ぎて、学生指導室前のベンチに座った。隣には在校生が座っていて、顔色が悪そうだった。僕は何故か自慢したくなった。先輩風を吹かせたくなった。卒業すると夢と現実の境目がわからなくなったりするんだよ、そしてそのまま気を抜くとこうやって植物が生えてくるんだよ、と言った。後輩とも呼べるその人は、はぁ、と言って僕から離れていった。急に孤独感が大きくなって自分で自分を抱きしめた。相変わらず脚には肉肉しい植物がてらてらと生えていた。僕は左手で抱きしめたまま、右手で植物を抜いた。思いの外簡単に抜けて、素っ頓狂な声が出そうになった。抜いた部分はそのまま傷口になっていて、少しひりひりした。
3 notes · View notes
yihui-heben · 4 years ago
Text
β
ギターを新調した。とってもかっこいいギター。
Tumblr media
描いた絵と似ていると思ったし、やっぱり緑色は僕には似合わないけど、心模様と同じだと思っていて、いい買い物ができたと思っている。
数年ぶりに左手や右手を楽器のために働か��てみているけど、やっぱりバタバタしてしまう。
いま挑戦しているのは日本語の曲ばかりで、理由はちょっとだけ歌ってみたいから。
楽器の楽しさに模倣がある。僕は新しいものを産み出すのは苦手だし、(美しさを差し引いた)クリシェも憂鬱になってしまう。模倣者としての楽しみは、憧れを隠さずに持つところだとも思う。自分がグループの一員になる。それは演奏中の所属意識や、聴いている中での帰属意識内で覚える。
https://youtu.be/ZxBTK_Inny8
https://youtu.be/dZL2sxYElFs
youtube
youtube
3 notes · View notes
yihui-heben · 4 years ago
Text
θ
部屋の灯りは古道具屋で一目惚れしたランプだけだった。樫の机の上に置いたランプ。電球に被さるように浮かぶ傘はウランガラスで出来ていて、深緑色をしていた。その深緑色が、ぶーんと音を立てて光る電球のオレンジを、どろどろに溶かして、部屋を曖昧に照らしていた。僕はランプを見つめていた。できることならずっと見つめていたかった。電球の中のフィラメントは、追い詰められた狐の眼みたいに鋭く強くガラスの向こうを睨みつけていた。歪んだ薄いガラスの内側には、淡い希望みたいなガスが満ちていた。僕は柔らかさが苦手だった。小さい頃からずっと柔らかさというものが苦手で、途方もない恐怖がある。ベッドに飛び込んでしまったが最後、マットレスを越えて、スプリングを越えて、床を越えて、土の中を抜けて、マントルを抜けたとしても、もっと奥深く、知覚できないくらいまでどこまでも落ちていきそうだと思った。柔らかさというものは僕にとって、どこかのポイントで、抱かれることもなく、すり抜けていくことだった。僕の身体も、ハードウェアに抱かれるソフトウェア。質感を持って生きたいと思った。僕のランプの内側、薄く引き延ばされた桃色の細胞のコロニーの中には、どんなゼロもなかった、僕はそれを探すために、樫の机の上のランプを見つめていたんだと思った。
つまり、あの人だけの神様になりたかった。個人的な神様でありたかった。僕のことを考えていない時には罪になるような神様になりたかった。裏返しは人をいつも臆病にさせるもので、僕があの人に対して思ってしまった。あの人を僕の神様にしてしまった。ソフトウェアに宿る、煙にも似た願い。僕はランプに電力を送っているクリーム色のプラグを根本から引き抜いた。一瞬、プラグの先端とコンセントの間に、別れを躊躇うような、未練がましい青白い火花が見えた。部屋が暗くなり、頭がくらくらした。それで、僕も消えた。
3 notes · View notes
yihui-heben · 4 years ago
Text
β
それにしても精神が安定しない。 今まで特定の人間とコミュニケーションを取ろうとしなかったからなのか、それとも僕と僕の周囲の変化を、僕の繊細な部分が感じ取ったからなのか、はたまた生まれつきという牢獄にも似た運命なのか(簡単にこの言葉で片づけていいものだろうか)、わからない。きっとそれ以外にももっとあって、それら全てが大変なプレッシャーになっていると思った。 酒に頼るのは簡単だった。飲んでしばらくしたら、目に見える効果で自分と自分以外の境界がどろどろに溶けてしまって、感覚だけが鋭くなって、感情が鈍った。 薬に頼るのは簡単だった。飲んでしばらくしたら、全て薔薇色に思えるか、全て敵に思えるかのどちらかになって、仮に悪い方向に行こうが、最終的には自分以外のせいに出来た。 僕は自分の事を弱いとは思わない。思いたくないだけだと思いたい。きっと思いたくないだけだと思う。実際に弱いのか、そうでありたいのか、弱さのせいにして、いくら��も逃げる人がある程度いる世界が現状で、その人たちは酔っている。自分・環境・要因、自己を守る為の表現としての文章・行動、さまざまなコト・モノに酔っている。悪い事とは言わないけれども、そんな沼に足が一歩でも入ったら、もう足掻ける自信がない。沼にずぶり入ってしまった。 自分の精神を彫像として、毎日、自分がぐらついてしまうような事が彫像を削っていく。 修繕の方法が掴めないまま、削られていって、足元から汚い埃を巻き上げながら崩れていく。 逃げの為の短絡思考は、所詮は逃げの為で、精神が泣けど、肉体は泣かない。自分の中ででも境目が分からないから。 結果的に粉々になった時に取り返しがつかないようなことを平気で、僕を無視して僕がそうしてしまう。 完全に負のスパイラルだった。上りのない螺旋階段だった。誰にもどうしようもないと思う。思いたくない。 目が覚めたら服も顔も髪も体も壁も床も一緒くたに汚れていた。何をしていたか1ミリも思い出せなくて、頭が割れてしまいそうだった。きっと割れたらクラッカーのように紙吹雪でも出るんだろうな、と思う。苦しめど苦しめど、20数年間、吹き飛ばしたい頭の中で起きる紛争が、結局空っぽだったらなんて皮肉なんだろう。 奇妙な日々だと思う。 これだけすれ違う人々が、僕と同じような事を、毎日とは言わないまでも、日常的に考えた事があるのだろうか?自分と自分以外について、言ってしまえば本当にすべての物事で、苦しんだりするんだろうか?そうでないと哀しくなるばかりだけど、目に見える範囲では、そう思えない。みんな、のほほんと暮らしている様で、一人ぼっちの気分になってしまう。 同志とは思えないけど、そんな時に寄り添ってくれるのは音楽だけかもしれない。 言語になって���ない音。 直接的かつ直感的に柔らかい所にぶすりと刺さっては染み入るような音だけが救いかもしれない。 もしそうだったらどうすればいいんだろう。これほど哀しい事はない。 僕が意識的にそうしてるだけかもしれないけど、最低になってしまった時は、あまり人に何かを期待しないようにしている。 仮に助けを求めてしまったら、その人を含めて攻撃してしまう自分を抑えられなくなって、そうしてしまう自分にも攻撃してしまって、更に、と、これまた負のスパイラルに陥ってしまう、気がするから。 まだ、まだ人に頼るのは試してもいないし、怖くて自分からは出来ないから、僕は毎日音楽を聴いて過ごしている。
1 note · View note
yihui-heben · 4 years ago
Text
γ
人を殺したことがある。17歳の秋、「さよなら」とあの人が僕に言ったきりで、今の今まで、それとこれから先、僕が満足に考えられる瞬間まで、僕ひとりだけで線を引き摺っていかなきゃいけない。死に顔は見れていない。通夜に、あの人の妹が僕に向かって、「最期になんて言ってましたか」と尋ねた時、何も言えなかった。あの人が「何も言うな」と、僕の口周りを無理矢理に万力で閉じたと今も思う。上下の唇を開いて、喉仏とお腹のあたりに力を入れて発声しようと思ったけど、本当に喉のあたりで堰き止められてしまって、ぐいぐいと口の周りの輪状の筋肉が硬直していって萎んだ。今、思い出して書いている訳じゃなくて、あの人を殺した後の数日は、遺跡みたいに僕の中で鎮座しているから、いつでもアクセスできる。
高校一年生、僕は中高一貫校の学生で、新しい春を迎える気分ではなかった。夏休みが始まる前には、今までの人間関係が全て嫌になって、文字通り孤立して生活するように、自分から行動した。群れの首魁から集団の中のひとりになるために、何も答えなかった。集団の中のひとりから僕を掘り出すために、学校に行かなかった。結局思春期特有の、自分という解を見つけるには経験値が足りなかったけども、パーソナルスペースを広げることはできた。何人も寄せ付けない美しさが欲しかった。進級し、クラスの最前列の左隅に僕の席が移った。別のクラスにいる気分だった。転校生が来た。あの人は最後列の左隅だった。数日ちやほやされて、そこからは日常に戻った。正直、あの人のことはあまり覚えていない。仲良くなるのにもお別れするのにも早すぎた。人間関係が急に進展することが恐ろしい。帰り道、今思うと本当にくだらない、僕が一歩引けばいいだけなのに、大人だということを見せつけてしまったから、喧嘩で別れた。「さよなら」と言われた。交通事故だった。
人を殺したことがある。比喩でもなんでもなく、あの時の「さよなら」と僕に言った時のあの人の目は、もう死んでいた。僕が殺した。僕が殺した人は、僕を殺した。罪の意識はまだある。水底遥か下まで錨を落とされたから、船はまだ進めない。恨んでもない。後悔も無い。深いところまで人間と関わってはいけない。僕自身とあの人自身を美化して生きてはいけない。生きてはいけない。言葉は常に選ばないといけない。報復してはいけない。否定の応酬をしないと浅はかさに気付けない。死ななきゃいけない。死にたくはない。いつも思い浮かぶイメージは、大蛇のような湿った縄が首にかけられて、あとは僕が思いっきりに足元の台を右脚で蹴り飛ばすこと。ひどく楽になってしまう。聴いたことのないリアルな感触と音が、僕に鳥肌をつける。悪夢を見ることも多くなった。恨んではない。本当に、本当に恨んではない。
それから2回自殺を計画した。未遂に終わった。今でも、成功すればいいのにとも、失敗すればいいのにとも思う。弱さを出していいなら、そんなことないよ、と言って欲しい。
2 notes · View notes
yihui-heben · 4 years ago
Text
β
自由にならない心と身体がある。心が身体を引っ張っているのか、逆なのか、相互なのか、分離してるのか、ランダムに選んでるのかは分からないけど、今のところ自由になっていない。半分眠ったまま、感覚が布で保護されたみたいになってる気分が続いている。気持ちに嘘はつけない。つける。そんな状態で、夢遊病みたいな感じで生きている。続きはまた書く。
2 notes · View notes