#撮られ慣れてなくて撮り終わった後に恥ずかしくて駆け抜ける人
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sleepersriver · 1 year ago
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裸の自分
2022年夏、ひとりで石垣島に行ってきた。
その直前に行ったオーストラリアでシュノーケリングにハマり、どうしても夏のうちにもう一度やりたくて、日本に帰ってすぐ往復チケットとゲストハウス、シュノーケリングツアーを予約した。
荷物はリュックの中に着替えの短パン・Tシャツ、小さなタオルとニベアくらい、ビーサンを引きずりながら飛行機へ乗った。
当時は、ずっとしていたジェルネイルもキャットアイが特徴のメイクもやめていて、かろうじて残されていたのは、パーマでつくられた人工的な「ナチュラルウェーブヘア」だけ。あれほど大切にしていた自分の「こだわり」から遠ざかっていた。
「大学生」という肩書一枚だったゆかは、自分にまとわりつく「何かしらの概念を持つレイヤー」をできる限りそぎ落としたかったのだ。
小学生の頃は「お勉強のゆかちゃん」
中学生の頃は「ダンスのゆかちゃん」
高校生の頃は「チアのゆかちゃん」
大学生の頃は、部活を引退するまで「アメフトのゆかちゃん」
部活を引退してからはじめて「ただの学生」になった。
その解放感がゆかと自然を繋ぎ合わせたのだろうか、海の中の世界を自分の居場所のように感じた。
「ゆかちゃん」を象徴するものを手放して、裸一貫、島へ向かった。
台風が来るか来ないかの瀬戸際の時期だったが、当日は快晴。同じ船にはゆか以外に、女の子二人組、ダイビングで参加している数人と会社で来ている10人くらいのグループが一緒に乗り込み3つのスポットを回る。
最初のスポットに到着すると、さっそくみんな海に飛び込んでいく。「どうぞ、自由に泳いでください!」というスタイルのそのツアーではガイドさんによる案内はほとんどなく、写真を撮ってくれたり、個別に声をかけて軽く潜り方を教えてくれるくらいだった。
シュノーケリングはオーストラリアで何度かしただけでまだまだ初心者だったが、おさかなと泳いだり、見よう見真似で潜ったり、フィンとシュノーケルをうまく使いこなし、水中の心地よさを楽しめるまで��達していた。
そして、海の中はまさに『海中都市』。
人の手が行き届いていない海こそ、繁栄した都市のように活気に満ち溢れていた。
この世界にもっと近づきたい、受け入れられたい、住人にはなれなくても「おなじみのゲスト」くらいにはならせてもらえませんかね、と海の住人たちに向かって話しかけていた。
次のスポットに到着するとダイビングの準備をするよう促された。シュノーケリングだけのつもりだったので「?」となったが、話を聞くとゆかは間違えてシュノーケリング+2ダイブのツアーを予約してしまっていたそうだ。
ゆかにとってシュノーケリングの魅力は、「裸に近い状態で呼吸を止めて異世界にお邪魔する」というところにあった。地上生物と海中生物の垣根を地上側のより発展した文明に頼らず肉体ひとつで超えていくからこそ海の世界と繋がり合えるのだ。でっかいボンベをがっつり背負って海中に踏み込んでいくダイビングは「ずる」な気がしていた。しかし、その分の料金を払ってしまっているのでしょうがない。初心者のゆかに専属でつくガイドさんに連れられて、初めて深い海の底までお邪魔させてもらうことになった。
ガイドさんはとても優しく、ゆっくり海の中を案内してくれた。途中で気づいたが、全く自分の脚で泳いでいない。ガイドさんに導かれるまま、同じ目線を泳ぎ回るおさかなたちと次々と表情を変える青の中に立ち尽くしていた。
世界全体が「ピュア」だった。
その「ピュア」の中にいるゆかは彼らの目にどのように映っていたのだろうか。
船に戻り昼食の時間になった。提供されたお弁当はカレーで、朝からほとんど食べていなかったゆかは全部平らげてしまった。その後もまたダイビングだ。海中で苦しくならないか心配だったが、食欲には逆らえなかった。
ランチタイムが終わり、最後のスポットに向かう。2回目のダイビングと、もう1回シュノーケリングをする時間もあるらしい。今度はさっきの優しいガイドさんに代わり、若いにいちゃん系ガイドさんが付いてくれることになった。「さっきのように付きっきりで案内してくれるんだろうな」と、甘えた気持ちでいた。
今度はゆかとガイドさんの他にダイビング資格を所有する参加者の2人が一緒に潜るそうだ。慣れてそうなダイバーの2人に迷惑をかけないようにしなければと、少し緊張が走る。
船から海の中に入るはしごに足をかけた。
一段、また一段と下っていくごとに感じる胃への圧迫感。
「ちょっと苦しいかも?」「いやいや、みんなも同じ量を食べてるし、1回目も少し苦しかったからこれが普通なのだろう」と、自分を説得させて、ラストダイブに挑む決意を改めた。
4人で海の中を回る。他の3人は上手にコミュニケーションを取りながらズンズン進んでいく。パシャパシャ写真まで撮っている。
ゆかは付いていくのに必死だった。「若いにいちゃん系ガイドさん」は「手厚いサポートをしてくれない系ガイドさん」だった。一生懸命脚を動かして前に進む。腰におもりを付けているのにドンドン浮いしまう体にぐっと力を入れて沈めながら、遅れをとってしまわないように頑張って泳ぐ。
胃は先ほどよりも圧迫されていた。1度でボンベから吸える酸素の量は少なく、さらに水圧と力む体の圧で苦しい。辺りはたぶん絶景。でも全然見れない、楽しめない、苦しい。
「途中で出たくなった時のジェスチャー」は教わっていたから、何度もガイドさんに伝えようとした。でも他の参加者に迷惑がかかるし、せっかくの機会だしと我慢。
が、限界。
遂にゆかはガイドさんに向けてジェスチャーをして、海面に引きあげられた。
海面に着くと、シュノーケリングをしている参加者たちの間を器用にすり抜けて、1回目の時の優しいガイドさんが駆け寄って来た。ガイドさんはどうしたのかと聞き、苦しかったと答えた。「まだ行けそうか、行けそうだったらもう1度海の中に連れていく。」という問いに、ゆかは優柔不断な態度を示した。
「行けるものなら行きたい、苦しかったけどもしかしたらまだ頑張れたんじゃないか」と悩んでいたその時だった。
急に食道を逆流してきたカレーがゆかの口を塞いだ。
ガイドさんはすぐさまダイビングマスクを外す。
クルっとゆかの体を半回転させ、そのまま首根っこを掴んで船まで連れ戻していく。
出てくるカレー
集まる魚
離れる人々
空は澄んでいた。
カレーの代わりに取り込んだ空気によって浄化されていくゆかの体内を映しているかのようだった。
人間じゃない気分だった。
ただの生き物?
ちがう。
『溺れかけた猫』
そんな気分だった。
船に戻って休憩して、体調も落ち着いた。もう1度シュノーケリングをするかと聞かれたが、もう疲れ果てていて気分が乗らなかったから、それでツアーは終了となった。
そんな変な(?)思い出となった初ダイビングだが、また挑戦したいと思う。でもやっぱり、シュノーケリング6回:ダイビング1回くらいのバランスがいいかな。
「裸に近い状態で呼吸を止めて異世界にお邪魔する」というシュノーケリングの魅力。
異世界にお邪魔する時は、できるだけその世界になじむ姿で踏み込みたい。そして、それにともなう苦しみも受け入れたい。
自然が裸ならゆかも裸。
ゆかにとって自然との関わり合いはそれが理想的なのだ。
でも、たまには文明の力を使ってでもより深く自然を知りたい。
深く知り合うことがよりよい関係をつくるのだから。
その時のためにダイビングも練習しよう。
そして次は直前に満腹になるのはやめよう。
地上の生活に戻ったゆかは、ジェルネイルも、キャットアイのメイクも、ピアスも服も、今まで通りこだわりを貫き通すことにした。
あの時のゆかは裸の自分で生きてみたかった。
裸の自分で生きられるのか試してみたかった。
でも、この地上では服を着ないと苦しい。
恥ずかしいし、傷つきやすいし、不安。
服を着ると途端に不安は消える。
今度は不満が現れる。
あれでもない、これでもない、ゆかが着たい服はどこだ。
色んなお店に足を運んだが、結局自分のクローゼットの中にある服が一番しっくりきた。
無理にそぎ落とそうとしていたレイヤーは、唯一無二の勝負服に姿を変えていたのだ。
一生ものの勝負服。つぎはぎだらけになっても大切にしたい。
たまにその服を脱ぎたくなったら、自然と戯れにまた海にお邪魔しに行こう。
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sorairono-neko · 6 years ago
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はつこい
「恋人はいるのかい?」という問いの答えは「ノー」。「昔の恋人は?」には「ノーコメント」。最初に訊いた「好きな女の子はいるの?」という質問なら、返事さえもらっていない。いったい勇利にはそういう相手がいるのかいないのか。このたぐいの話になると困ったような顔をするし、ぴったりと口を閉ざしてしまうので、ヴィクトルは結局知ることができないままだった。  しかし、最初は興味本位とすこしの特別な思いから気になっていた事柄も、時が経つにつれて、「特別な思い」のほうが強くなってきた。勇利には好きな相手はいるのか? 恋人はいるのか? いまはいないらしいけれど、過去にはいたのか。いたとして、どこまでの間柄だったのか。キスはした? 身体の関係は結んだ? どんな相手だったのだろう? いまでも好き? 忘れられない? ──そんなことが気になって仕方なく、それはヴィクトルのこころを痛めつけ、頭を悩ませる。こんなにひとりの人間を想ったのは初めてだ。胸が苦しい。  世の中のたいていの者がそうであるように、変わり者だ、天才だと言われるヴィクトルも例に漏れず、気になる相手のことは注意深く観察した。そして、視線の動きひとつ、首を傾けるしぐさひとつで勇利の気持ちを推し量ることができるまでになった。もっとも──その「推し量った」結果が正しいとは限らないのだけれど。しかし少なくとも、ヴィクトルの中で答えをさだめることができる程度には、勇利のことがわかってきた。そしてそのころに知ったのだ。  勇利には、ある癖がある。  最初はわからなかった。それはさりげないそぶりだったので、何かのついでに見たのだろうとか、そこに必要なものがしまってあったのだろうとか、その程度の見極めしかできていなかった。��が、そのうち、なんとなく理解した。あれは特別なことなのだ。勇利が意識的にしている、重要な行動なのである。  勇利はおりにふれ、財布をのぞいている。支払いのとき以外でも、である。折りたたみ式の財布をひらき、中から何かを取り出して、じっと眺めているのである。  いったい何を見ているのか。それを確認できたことはない。勇利がそうするのは、きまってヴィクトルがすこし離れているときで、興味をもって近づくと、さっと片づけてしまうのだ。「なに見てたの?」と無邪気を装って尋ねても、「いらないレシート捨ててた」とか、「ジュース飲みたいんだけど小銭あるかなって」とか、そんな言葉でごまかされる。ヴィクトルはおもしろくなかった。  あれは何なんだ、と考えたとき、まず思い浮かぶのは写真である。パスケースや手帳に恋人の写真を挟んでいる者は多い。勇利はどちらも持ち歩く習慣がないから、財布に入れているのだ。遠くから調べた感じでは、確かに何か紙のようなものを手にしていた。それも、文字が書いてあるのではない、色のついた、いかにも写真じみたものだった。まちがってはいないだろう。  さて、では誰の写真なのか。勇利には恋人はいないという。ヴィクトルの見たところ、その言葉はうそではない。彼にそういった相手がいる気配はまるでない。こっそり付き合っていると考えられなくもないけれど、あの純粋な勇利のことだ、もし本当にそうなら、彼を注意深く観察しているヴィクトルにはたやすく知れてしまうだろう。勇利に恋人はいない。  では、好きな相手だろうか? それならあり得る。勇利は練習ばかりで誰かと会っている様子はないが、片想いをしているだけならそれもおかしくはない。会えないのか、会う機会が少ないのかはわからないけれど、写真をみつめるだけで満足するしかない状況なのだ。  あの写真が見たい。ヴィクトルは熱烈にそう思うようになっていた。勇利の好きな相手。いったいどんな女なのか。あるいは男? わからないが、とにかくどういった者なのかが知りたい。勇利にふさわしい相手なのか。美人? 優しい? スケートはできる? 俺ほどうつくしく、勇利に優しく、スケートの上手いやつはいないのに、とヴィクトルは拗ねた。なんで俺以外のやつを好きになるんだ? 理解しがたい。勇利は本当に変わってるな。  じつは、見ようと思えば見られないことはないのだった。勇利は財布を肌身離さず持っているというわけではない。リンクにいるときは、知っている者しかいないという安心感から、かばんに入れてそのままにしている。自宅ではなおさらだ。机の上にほうり出したままということも珍しくない。ちょっと手を伸ばせば調査することができる、という状況にヴィクトルはいるのである。  だが、彼は、それを確認することができなかった。見たい。どうしても見たい。熱狂的にそう思うのに、見たくない、そんなことを確かめてどうする気なんだ、というあきらめも働くのだ。写真を見たからといって、勇利が俺を好きになるわけでもないのに。具体的な嫉妬の相手ができるだけじゃないか。そんなもの知りたくない……。 「え? 勇利くんの好きな相手?」  優子に尋ねてみたこともある。もしかしたら彼女ではないか、と疑ったからである。勇利は優子と話すときはすこしはにかんでいるし、一緒にいて楽しそうだ。優子は顔立ちもかわいらしいし、昔からの知り合いだし、好きにな���て何の不思議もない。 「さあ……、ヴィクトルじゃないの?」  優子はにっこり笑って言った。 「それはそうだろうけど、ほかにだよ。なんていうか……、恋愛の意味で」 「恋愛……」 「勇利にはそういう相手はいた? ガールフレンドができたことは?」 「勇利くん、高校までしかここにいなかったから……」 「高校生なら交際をしてもちっともおかしくないだろ?」 「そうだね。でも、いなかったと思う。勇利くんって普段はごく目立たない感じなんだけど、リンクではあんなじゃない?」  ヴィクトルはほほえんだ。 「うん、そうだね」 「だから、スケートを見に来る子のあいだでは人気あったの。地元では有名だったし」 「そうだろうな」 「でも、勇利くんって……、あんなじゃない?」  優子は同じ言葉をくり返した。ヴィクトルは笑ってしまった。 「そうだね」 「人に興味ないっていうか……、スケートに興味がありすぎたのかな。スケートのことばっかりで、恋愛どころじゃなくて」 「そうか……」 「私も、知り合いなら紹介してって友達に言われたことあったけど、勇利くんにはそういうのは……、あっ、でも」  優子は思いついたように手を叩いた。 「なに?」 「好きなひとは、もしかしたらいるかも」 「え?」 「恋愛に関心がないっていうより、片想いしてたからほかはどうでもよかったのかも……?」  ヴィクトルはごくっとつばをのんだ。 「だ、誰?」  彼は思わず身を乗り出したものだ。 「誰なんだい、それは」  しかし優子はかぶりを振った。 「わからないの」 「なぜ?」 「勇利くん、あのころ、定期入れに写真を入れてて……、それをよく取り出してみつめてたんだけど、近づくと隠しちゃうの。もしかしたらあれ、好きなひとの写真だったのかもしれないなって」  ヴィクトルはぼうぜんとした。そんなに昔から好きなのか、とせつなくなった。 「勇利くんはいちずだから、まだ好きなんじゃないかなあ……」 「……それ、ユウコじゃないのかい?」 「え?」 「勇利はユウコの写真を持ち歩いてるんじゃないのか」  優子はきょとんとし、ふるふるとかぶりを振った。 「ちがうと思う」 「そうかな。だって、人に興味のない勇利が、ユウコには丁寧だろう?」 「勇利くん、確かに私には優しいけど……」  優子は目を伏せた。 「あんな瞳で見られたことはないから」 「あんな瞳?」 「遠くからでもわかるの。勇利くん、写真見てるときは、ものすごく熱烈な目つきをしてた。ぼんやりして、うっとりして、もう、大好き、っていう感じの……。そんなにちゃんと観察してないけど、ちらっと見ただけでこっちがどきっとしちゃうくらい。私のことは、そんなふうに見ないから」  優子のその言葉に、ヴィクトルは落ちこんでしまった。勇利について新しいことを知られた、という喜びはなかった。かえって、知りたくなかった、という気がした。やっぱり写真は見ないほうがよいのだ。見たらもっと衝撃を受ける。  しかし、だからといって、もうどうでもいい、気にしない、とほうっておくことはできなかった。勇利のことを好きなのはやめられないし、彼には自分のほうを向いて欲しい。どうにか昔の恋人を忘れさせる方法はないものだろうか?  ヴィクトルは、勇利に片想いの相手がいるからといって、あきらめるようなことはなかった。かえって奪ってやるというくらいの気持ちで彼に接した。勇利もヴィクトルに好意を持っているから、赤くなったり、はにかんだりして、とてもかわいらしい対応をした。ヴィクトルは、絶対に俺のものにできる、という強い気持ちがあった。実際、幾度も、もう勇利は俺を愛しているのでは、と感じたのだ。きっといまキスをしてもこの子は怒らない、と直感したことが、少なくとも六度はあった。だが、そのたびに──自信を持つたびに、その自信はもろくも砕かれるのだ。勇利は空いた時間に、そっと写真を取り出しては眺めている。ヴィクトルに完全にこころを明け渡さない。ヴィクトルは苦しかった。  なんで? どうして俺じゃだめなの? 俺のこと、一生懸命みつめるじゃないか。俺に「見てて」「目をそらさないで」って言うじゃないか。愛してるからじゃないのか? まだ初恋の相手がいちばんなのか? いい加減忘れてくれてもいいだろう。なんでそんなに好きなんだ。そいつは勇利に何をしてくれた? 俺は──俺は、なんだって、勇利が望むならどんなことだってしてやれるのに……。  いったい誰のことが好きなのだ……。優子は勇利の好きな相手を知らなかった。勇利がいまもっとも仲よくしている相手はピチット・チュラノンである。ヴィクトルは試合後のバンケットで、彼におそるおそる声をかけた。 「デトロイト時代、勇利に恋人はいただろうか」  ピチットがそうだったら笑い話にもならない。いささかヴィクトルはおののいていたけれど、それはないだろうと判断した。勇利のピチットへの接し方は、友人としてのそれでしかない。優子の言うような──そしてヴィクトルもいくたびも目にしたあの情熱的なまなざしは、彼には向くことがない。ピチットもまた同様で、勇利を親友以上に取り扱ってはいない。彼ではないはずだ。 「そんな相手はいなかったと思う。勇利がいたって言ったの?」 「いや、そうじゃないんだが……、彼はそういう話はしてくれないから」 「ああ、まあそうだろうね。僕が知ってる勇利の好きな相手はヴィクトルだけだよ」 「俺以外にはいない?」 「うん」 「でも彼は好きな相手の写真を持ってるだろう?」 「え? そんなの持ってたかな……」  ピチットが眉根を寄せて考えこんだ。すぐに彼は明るく笑う。 「ああ、それ、ヴィクトルでしょ?」 「え?」 「ヴィクトルの写真じゃないの?」 「……勇利がそう言ったのか?」 「うん」  ピチットはこっくりうなずいた。 「定期入れからよく何か出して見てるから、なに見てるのって訊いたら、ヴィクトルの写真だよって」 「…………」 「ヴィクトルの写真。恋人とかそういうのじゃないよ」  そんなはずはない、とヴィクトルは思った。ヴィクトルの写真を持ち歩いていたのなら、優子にひみつにする必要はないはずだ。だが、彼女には隠した。ヴィクトルではない。ピチットに本当のことを言うのが気恥ずかしくて、勇利はごまかしたのだ。誰でもすることではないか。好きな相手はいるの、と訊かれたおり、答えたくなかったら、ごまかすようにアイドル歌手や俳優の名を挙げるのである。勇利の場合はヴィクトルがいちばんそうしやすい相手だったのだろう。 「それ、君は見たことがある? つまり、勇利の持ってる写真が俺だと確認したことは?」 「それはないけど……」  ピチットはくすっと笑った。 「勇利、ぼくだけのヴィクトルだから、とか言って見せてくれなかったんだよね」  やっぱり。ヴィクトルではないのだ。だから見せられないのだ。ヴィクトルは胸が痛かった。誰なのだ。いったい勇利は、誰の写真を持ち、誰を熱烈に愛し、誰をいまでも恋しがっているのだ……。  やがて勇利はロシア��やってきた。彼はヴィクトルの家に住み暮らし、ヴィクトルのリンクへ通い、ヴィクトルの教えた店で買い物をし、ヴィクトルのために食事をつくるようになった。ヴィクトルがこしらえたものも美味しそうに食べた。ふたりでマッカチンの散歩をし、掃除をし、洗濯をし、彼らだけの城を築いた。ヴィクトルは勇利とそんなふうに過ごすのが夢のようで、楽しい中にたくさんの不安をみつけた。もし朝起きて勇利がいなかったらどうしよう? これはまぼろしなのでは? まぼろしではなくても、急に勇利が「日本へ帰る」と言い出したら? あるいは、「ぼくも独り立ちしなくちゃね」と自立心を示したら? いや、それより、何より──、「ヴィクトル、ぼく、好きなひとができたんだ」と言い出したら? 「そのひとと暮らそうと思うんだ」 「だからもうここにはいられないよ」 「いままでありがとう、ヴィクトル」 「さよなら」 「──ヴィクトル、どうしたの?」  いやな夢を見、夜中に飛び起きたヴィクトルに勇利は不思議そうな顔をした。彼はまくらべのあかりをともし、何か読んでいるところだった。雑誌だ。ヴィクトルの特集記事である。 「あ、もしかしてまぶしかった? ごめんね。でも、これロシア語だから、読むのに時間がかかってさ。今日はあまり読めなかったから、すこしでも多く調べておきたくて。もう寝るよ」  好きなひ��なんてできるはずがない。だって勇利は過去に好きになった相手──おそらくは初恋のひとを忘れていないのだ。いや、しかし、彼はヴィクトルを好きなはずだ。そう感じたではないか。だから、でも、けれど──。 「ヴィクトル?」  汗だくになったヴィクトルのおもてを勇利がのぞきこんだ。 「どうしたの? 大丈夫?」 「…………」 「具合が悪いの? おなか痛い?」 「勇利……」 「熱がある? 何か飲む? どうしてあげればいいのかな?」 「勇利」 「あ」  ヴィクトルは勇利の痩身をかき抱いた。勇利は驚いて身をかたくしたけれど、あらがうことはしなかった。 「勇利、勇利」 「どうしたの」 「勇利、おねがいだ」  おねがいだから、おねがいだから──。  初恋の相手のことは忘れてくれ。 「おまえのことが好きなんだ」 「え……?」 「愛してるんだ。誰よりも」  勇利が息をのんだ。 「勇利のことしか見えない……」 「…………」 「頭がおかしくなりそうだ」  ヴィクトルはうめいた。 「約束してくれ。ずっとそばにいるって。離れずにそばにいてくれと言ったのは勇利だろう? だったらその責任を果たしてくれ。俺をこんなにしておいて、どうしてきみはすずしい顔をしているんだ。毎日、勇利のことで頭の中はいっぱいだ。どうすればきみがどこにも行かないか、俺を拒絶しないか、そんなことばかり考えている。勇利は俺のファンだろう? 俺が変になってもいいのか? 俺が狂ってしまってもいいのか?」 「ヴィクトル……」 「頼むから俺のものになってくれ。もうだめだ。これ以上は……」 「……ヴィクトル」  勇利がヴィクトルの頬にふれた。身体を押され、ヴィクトルは顔を離した。勇利が優しく笑っていた。 「どうしたの? そんなに一生懸命にならなくても、ぼくはどこにも行かないよ。ヴィクトルはもっとどんと構えていていいんだよ」 「でも勇利は……」 「ぼくのこころは最初からヴィクトルのものだけど……、知らなかったの?」  勇利が可笑しそうに目をほそめた。 「ヴィクトル自信満々だし、愛されるのに慣れてるし、とっくにわかってると思ってたよ」 「勇利に愛されるのに���慣れてない」 「うそばっかり……」  勇利はヴィクトルのくちびるを指先でなぞった。 「誰よりも、ぼくに愛されるのには慣れてるはずだよ……貴方は」  ヴィクトルは勇利の衣服を乱暴に剥ぎ取り、裸身にして組み敷いた。勇利はべつに文句も言わず、されるがままになっていた。いささか無茶なことをしたと、ヴィクトルはあとになって自分にあきれたが、勇利は何とも思わなかったようで、翌朝はいたずらっぽくささやいた。 「鬼コーチでも、今日くらいは練習やすませてくれるでしょ?」 「俺は鬼コーチじゃない。勇利のほうがひどい。俺をもてあそぶし、ジャンプをたくさん跳ばせるし。鬼生徒だ」 「いいじゃない。その鬼生徒をゆうべはたくさん泣かせていい気分になったでしょ。ぼくは腰がだるい」  言ってから勇利は頬を上気させた。 「しあわせだけど」  ヴィクトルもしあわせだった。ようやく勇利が俺のものになった、と思った。それからの日々はばら色で、世界は輝いていた。リンクメイトに薄気味悪いと言われるほどだった。勇利は楽しそうにしていた。  しかし、そうして幸福感をおぼえればおぼえるほど、また不安が増してくるのだった。勇利はもう初恋の相手は忘れただろうか? 彼はヴィクトルの前では写真を見たりはしない。しかし、そんなことは当たり前ではないか。誰が交際している男の前で、堂々と過去に愛した者の写真を出すだろう。いくら勇利がそういったことにうとくても、それくらいはわきまえているはずである。彼は感受性が強いのだ。  勇利は結局、まだ初恋の日々に浸っているのでは? 俺に隠れて初恋の相手と連絡を取り合っているのでは? そんなことばかり考えた。勇利のふるまいには不審なところなどなく、かえってヴィクトルへの愛情しか感じられないというのに、被害妄想ばかりがふくらんでいった。愛し愛されても、しあわせになっても、それでもせつなさは尽きないのか。恋とはこういうものなのだろうか。胸が苦しい。 「ヴィクトル、大丈夫?」  勇利がヴィクトルのことをひどく心配した。リンクからの帰り道でのことだ。 「最近元気ないね。疲れてるの?」 「いや……」 「今日はヴィクトルの好きなものつくってあげる」  彼は子どもっぽい笑みを浮かべた。 「あんまり上手にできないかもしれないけど、がんばるよ。何がいい?」 「勇利……」 「もしかして、ぼくのジャンプが安定しないから気にしてるのかな。そっちも一生懸命やるから。努力するよ」 「ああ……」  ちがうんだ、勇利。俺はそんなふうにしてもらいたいんじゃないんだ。勇利に苦手なジャンプがあったって教え甲斐があるし、きみが上達していくのを見るのは楽しいんだ。食事だって、もちろんつくってくれるのはうれしいけれど、本当はそんなのなくてもいいんだ。ただそばで勇利が笑っていてくれれば──、そして、「ヴィクトルだけ愛してるよ」「過去のひとなんてもう忘れたから」そう言ってくれれば、俺は──。 「ねえ、勇利」 「ん?」  全部忘れてよ。俺のことだけ見てよ。こんなに勇利を愛してる俺がいるのに、勇利には初恋の相手が必要なのか? いらないだろう? 俺がいればいいじゃないか。──そう言おうとして、ヴィクトルは思いとどまった。 「なに?」  勇利が無邪気にヴィクトルを見上げる。ヴィクトルは黙って彼にキスした。勇利は目をみひらき、それから花がほころぶように笑い出した。彼も背伸びをし、キスを返した。 「なに食べたい? カツ丼?」 「うん」 「おみそ汁?」 「そうだね」 「それから……」 「そのあと」  ヴィクトルは勇利の耳元にくちびるを寄せた。 「勇利が欲しい」 「…………」  勇利はまっかになってうつむきこみ、しばらく口を閉ざしていたけれど、やがておもてを上げて気恥ずかしそうに笑い、「うん」とけなげにうなずいた。  取材や撮影や打ち合わせで、五日ほど家を空けることになった。留守は勇利に頼み、ヴィクトルは精力的に働いた。一刻も早く勇利に会いたかった。勇利がいないと力が発揮できない。自分は本当にだめになってしまった。もうちょっとまともだったはずなのに。でも勇利が──。  どうにか仕事を終わらせ、予定より早く帰宅した。帰りつくと、すでに日は暮れ落ちていた。ヴィクトルははやる気持ちを抑え、勇利を驚かせようと、そっと家に入った。そして居間をのぞきこみ、愕然とした。  勇利はソファに座っていた。そしてそこで、何かを見ていた。定期入れだ。それには事務的なものしか入っておらず、何も見蕩れる要素はないはずだった。それなのに勇利は熱心に見ている。すこしさびしそうに、せつなそうに、熱愛のこもった瞳で、求めるように──。  ヴィクトルの手からかばんが落ちた。勇利がはっと振り返り、寝そべっていたマッカチンが目をさました。彼は定期入れをさっとボトムのポケットに押しこんだ。 「ヴィクトル!」  勇利が立ち上がった。 「どうしたの。帰り、明日か明後日じゃなかった? 早かったね。どうしよう、何も食べるものがないよ。ぼくひとりだと思ったから、残り物でいいやって……。いまから出かけるのいやだよね? 何か配達を頼む? もしかして急いで帰ってきたの? 大変だったんじゃない? とにかくおかえり!」  マッカチンが駆けてき、勇利も笑顔でヴィクトルを迎えた。しかしヴィクトルの胸は苦しい気持ちでいっぱいだった。 「勇利……」 「なに? あ、コート脱いだら? かけてあげる」 「俺が帰ってきて、うれしい……?」 「もちろんだよ」 「さびしかった?」 「え? えっと……、うん」 「本当に?」 「ん」  勇利が頬を赤くした。ヴィクトルははらわたが煮えくりかえる思いだった。さびしかっただって? だから初恋の相手を思い出していたのか? 俺じゃなく──過去の誰かにすがっていたのか? 「早く帰ってきてくれて……びっくりしたけどうれしい」  ヴィクトルは勇利の手首をつかんだ。勇利が驚いてぱちりと瞬く。 「……ヴィクトル?」 「…………」 「どうしたの?」 「勇利……」 「えっと……、何か怒ってる? あの……」 「勇利、きみは」  ヴィクトルは押し殺した声でささやいた。 「いま、何を見ていたんだ?」 「え?」 「ソファに座って何かを見ていた。そうだろ?」 「えっと……」  勇利の視線がそれた。彼はきまりが悪いというようにせわしなく瞬く。 「な、何も、見てなんか……」 「うそをつくな」 「…………」 「写真だ。そうだろう」  勇利の頬がさらに赤くなった。 「いったい誰の写真だ?」 「あの……」 「おまえは、俺以外の──」  ヴィクトルの手が、ポケットからのぞいていた茶色い定期入れをぱっと取り上げた。勇利が「あっ!」と声を上げる。 「ヴィクトル!」 「これに入れてるんだろ? 誰かな? 勇利はどんな相手を想ってさびしさを感じていたんだ? そのさびしさは、本当に俺の不在から生じたものか? きみは──」 「返して!」  勇利がうろたえたように取り戻そうとした。ヴィクトルは彼に背を向けた。 「見てあげるよ。どんなやつなのかな。何年も──ずっと昔から勇利のこころをとらえていた相手は」 「やめてよ! 返して!」 「黙って」 「やだよ! ヴィクトル返してよ! 恥ずかしい!」 「恥ずかしい?」  まだそんなのんきなことを言っているのか。ばかな勇利。 「言っておくけど、俺はおまえを手放すつもりはない」  おまえが誰にどれほど惚れていようと──。  ヴィクトルは定期入れをひらき、中をのぞいた。左側にあるのはメトロやバスのカードだ。右側のポケットに入っているのは──。 「えっ?」  ヴィクトルはまぬけな声を上げた。え、という言葉しか出てこない。──なんだこれは? 「やだヴィクトル見ないで! 返してよ!」  勇利がヴィクトルの背中をかるくぶった。ヴィクトルは振り向けなかった。これは──。  ヴィクトルの写真だった。勇利が撮ったものではない。雑誌の切り抜きだ。日常風景といった感じの一枚を、勇利はそこにおさめていたのだった。 「ヴィクトル、見ないでってば! 恥ずかしい! やだ!」  うそだ。そう思った。そんなはずはない。だって勇利は何年も前からこうして写真をひそかに持っていたはずなのだ。これは最近のものではないか。絶対におかしい。こんなはずは……。  ヴィクトルは、その写真の下に別の写真があることに気がついた。重なっている。はっとなった。そうか。隠していたのか。ヴィクトルにみつかってもごまかせるように……。 「下にもあるね」 「やだ!」  勇利が躍起になって腕を伸ばした。ヴィクトルは高く手を上げ、自分の写真の下からもう一枚紙片を取り出した。そして──。 「え……」  つぶやいた。さらに間の抜けた声だった。無理もない。 「これは……」  もう一枚もまた、ヴィクトルの写真だった。これはずいぶん昔のものだ。そう、ジュニア時代、まだ髪が長かったころのヴィクトルだった。端がまるくなって、すこし色褪せて、皺が寄っている。何年も持ち歩いていたのがよくわかった。 「俺……の、写真……」 「もう、やだ……」  勇利がヴィクトルの背中におもてをうめた。ヴィクトルはちらと彼を振り返った。耳まで赤い。 「勇利……、ずっと俺の写真、持ってたの……?」 「…………」 「なんで……?」 「……だってぼく、普通のヴィクトルの写真、一枚も持ってないし……」  勇利はかぼそい声で答えた。 「雑誌の切り抜きを持ち歩くしかなくて……」 「そんなことを訊いてるんじゃない。勇利は初恋の相手の写真を持っているんじゃなかったのか?」 「え?」 「だってユウコが言っていた」  ヴィクトルは振り返り、優子から聞いたことを説明した。勇利は頬に手を当て、いたたまれないというように目を伏せた。 「彼女は、『片想いの相手だ』って……」 「…………」  勇利がうかがうようにヴィクトルをちらと見た。その愛くるしい目つきに、ヴィクトルはくらくらした。 「……合ってるじゃん」 「え?」 「優ちゃんの言うこと、合ってるじゃん……」 「…………」 「ああそうだよ! 片想いの相手の写真を持ってたんだよ! そのジュニア時代のヴィクトルの写真だよ! 熱烈な目で見てたんだよ! 悪かったね!」  勇利が怒り出した。ヴィクトルは彼の剣幕に気圧されながら、「そ、それなら……」と言った。 「ユウコにそう言えばよかっただろう? なぜ隠していたんだ? 見られたくないっていうそぶりをしたんだよね? 勇利が俺のファンだなんて、ユウコはとっくに知ってたはずだろ?」 「でも恥ずかしかったんだよ!」  勇利は自棄になったように言った。 「恥ずかしかったんだ! だって、ただのファンじゃない! 写真を持ち歩いて、ことあるごとに取り出して、じっとみつめて、そ、それに、それに……」  勇利が声をふるわせた。 「ぼ、ぼく���誰も見てないと思って、ヴィクトルの写真に、ちゅ、ちゅーを……」  そう言ってまた赤くなるから、ヴィクトルのほうまで照れてしまった。 「そうしたときに、優ちゃんが近くにいたことがあって……ぼく、もしかしたら見られたかもしれないと思って��でも訊けなくて……。ヴィクトルの写真持ってるなんて言ったら、ヴィクトルにちゅーしたことがばれるじゃないか!」 「…………」 「そ、そんなの、知られたくないにきまってるだろ! 隠すよ! わかんないようにするよ! 当たり前じゃん! ヴィクトルのばか!」  勇利がヴィクトルの目を見た。ヴィクトルはまだぼうぜんとしていた。勇利はヴィクトルをにらみつけると、「なんだよ、そんな顔で見ないでよ!」とわめいた。 「ぼくが気持ち悪くなったの? 知らないよ! ヴィクトルが勝手に見たんじゃん! 隠してたのに……、い、いまでもこっそりちゅーとかしてるし、ヴィクトルいないとさびしいから話しかけたりしてるし……、知ってるのはマッカチンだけだったんだよ! そうだよ、ぼくはもうずっとヴィクトルが好きで、家では部屋じゅうにポスターを貼ってたんだよ! ヴィクトルは知らないだろうけどね! こいつ気持ち悪いって思われるのがいやで、ヴィクトルが来た日の夜に剥がしたんだ! 写真だってずっと持ち歩いてた! 何が悪いんだよ! 好きなんだからいいじゃん! べつにヴィクトルに迷惑かけてないだろ! 気持ち悪いって言われたってぼくの知ったことじゃないよ! ぼくいやだって言ったのに、ヴィクトルが無理にあばいて……」  勇利はヴィクトルの手にある写真と定期入れを見ると、「返してよ!」と叫んで乱暴に取り戻した。 「これはぼくのなんだから……、燃やすって言っても絶対渡さないからね!」 「…………」 「なに? 気持ち悪いから別れたいの? 勝手にすれば! いいよ! ぼくはぜんぜん構わないよ! ヴィクトルがぼくを嫌いになったって、ぼくはずっと好きだからね!」  勇利はヴィクトルに背を向け、胸に写真を押しつけた。 「一生好きでいてやる。ずっとずーっと、これは持ち歩いてやるんだから!」  宣言したあと、勇利は肩をふるわせた。彼は深くうつむくと、両手をおもてに当て、「うぅ~っ……」と泣き声を漏らした。ヴィクトルは静かに勇利に歩み寄った。 「勇利」  背後から優しく抱きしめる。勇利がびくりとふるえた。 「ごめんね。勇利の大切なひみつを無理にあばいたりして」 「…………」 「でも、うれしいよ。気持ち悪いって? そんなわけないじゃないか。大好きなひとが、俺の写真をずっと持っててくれたんだ。気持ち悪いなんて言うやつがいるのかい? 俺も勇利の写真が欲しいな」 「う……」 「ごめんね。もしかしたら勇利は俺以外のやつを好きなんじゃないかって、ずっと気にしてたんだ。苦しくて死にそうだった」 「……ぼく、ヴィクトルのことしか考えてない」 「うん。ごめん」 「なんでそんなばかなこと思いつくの? ヴィクトルほんとにばかだよ」 「ああ、ばかだね。おおばかだ」 「ばか」 「うん、愛してる」 「ばか……」 「キスしていい?」 「なんで訊くの? ばかなんじゃないの?」  ヴィクトルは勇利を振り向かせ、くちびるに優しく接吻した。 「抱いていい?」 「ばかなの?」 「勇利、好きだよ」 「ん……」 「ほんとに好きだよ。大好きだ」 「もう何回も聞いたから……」 「はあ、いままでの苦悩は何だったんだ……」 「そんなに悩んでたんだ?」  勇利がくすっと笑った。彼の黒髪がまくらの上に散らばっている。ヴィクトルはそれを指でもてあそんだ。 「ああ、悩んだ。きみの友達──ピチットに尋ねたりして」 「何を?」 「勇利は誰かの写真を持ってないかって」 「ピチットくん、なんて?」 「ヴィクトルのを持ってるはずだ、って」 「それでなんで悩む必要があるの?」  勇利は不思議そうに言った。ヴィクトルは笑��出した。その通りだ。  まくらべにむき出しの腕を差し伸べ、勇利が写真をつまみ上げた。彼は嘆いた。 「これ持ったまま泣いたせいで、ふにゃふにゃになっちゃった。涙が……」 「新しいのをあげるよ」  ヴィクトルは勇利のなめらかな肩を抱き寄せた。 「勇利が撮ってね。きっと最高の写真になると思うから……」
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2ttf · 13 years ago
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kkagneta2 · 6 years ago
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マジックハンド
巨乳な女の子に「せんぱい、先輩、せんぱい!!!」って呼ばれたいという妄想から始まった短編。
真夏、――と言ってもまだ六月ではあるけれども、クーラーの入るか入らないかギリギリの季節の図書室は、地獄と言ってもそれほど違和感は無いにも関わらず、陸也は後輩に勧められるがまま手渡された短編集を開いていたのであるが、もうかれこれ三十分ほどは字を追いかけるだけで内容なんてちっとも入って来ていなかった。正直に言って本を読むことなんて二の次なのだから、別段この灼熱地獄を耐える必要など無い。が、眼の前に座っている後輩、――汀沙(なぎさ)などとおだやかそうな名前をしている一つ歳の離れた女子が、パタパタと下敷きで自身を扇ぎながら、瞬きもあんまりせず熱心に目を上から下へ動かしているので、仕方無いけれども彼女が一息つくまで待たねばならぬ。陸也は暑さに耐えかねて静かにため息をつくと、本を少しだけ下ろして、視界を広げて、器用に片手でページをめくる彼女の姿を覗いた。彼女とはここで初めて会った、……というのは嘘だけれど、ちゃんと話したのはこの図書室が初めてなのだから、そう言っても良いであろう。その時から小生意気で、先輩というよりは友達感覚で接してきて、これがあの人の妹なのかと、ついつい声が出てしまったのであるが、それでも黙っていると美人なものは美人で。彼女の日本人らしい黒髪は、短いけれども艶々と夏の陽で輝いているし、すっと伸びた眉毛から目元��鼻先は性格に似合わ��小造りであるし、パタ………、と止まった手首はほの白く、全くもって姉と同じ華車な曲線を描いている。陸也はそれだけでもかつて恋い焦がれていた〝先輩〟を思い出してしまうのであるが、机の上に重々しく乗って、扇ぐのを再開した腕に合わせてふるふると揺れ動く汀沙の、――およそ世界で一番大きいと言っても過言ではないおっぱいを見ていると、いつしか本を閉じて机の上に置いていた。
「せんぱい、せんぱい、それどうです? 面白いでしょ?」
目ざとく陸也の動きに反応した汀沙が相変わらず自分の顔を扇ぎながら言う。額にひたひたと張り付いていたかと思っていた前髪が、ふわりと浮いては、ふわりと額を撫でる。
「せやな。………」
「先輩?」
「んん?」
「その本の一番最初の話を七十字程度に要約せよ。出来なければジュース一本おごりで。――あ、二本でもいいですよ」
と得意げな顔をして言うのは、陸也が暑さで朦朧としているのを知っているからである。
「あー、あー、おごってあげるから、俺もそいつで扇いでくれ。………」
「やっぱり。仕方ないですねぇ」
と本を置いて、ぐいと、体を前に乗り出し、バサバサと両手で下敷きを持って扇いでくれる。図書室は狭いくせに結構広めの机だから、陸也に届く頃にはさらさらとしたそよ風になっていたけれども、あるか無いかでは大違いであった。だが長くは続かない。………
「はい、お終い!」
と再び自分をパタパタと扇ぎ初めた。
「えー、もう?」
「えー、じゃないです。扇ぐ方の身にもなってください」
「……俺、先輩だし。………」
「っていうか、先輩が隣に来たら良いんですよ。たぶん横の席は涼しいと思いますよ?」
とニヤリと目を細めて言い、ぽんぽんと左手にある席を叩く。確かに、汀沙の言う通り隣の席に行けば風に当たることは出来よう、しかし彼がそういう風に座らなかったのは、今更示しても無駄な理性が働いたからであった。先程、汀沙のおっぱいは世界で一番大きい、と言ったのは全くの嘘ではなく、自身の顔を超え、バスケットボールを超え、………いやそうやって辿って行くと果てしがないので一気に飛ばして言うと、バスケットボール三つ分よりもまだ大きい。恐らくこの世には、机におっぱいが乗る女性などごまんと居るであろうが、片方だけでも西瓜よりまだまだずっと大きい彼女のおっぱいは、乗る、というよりは、乗り上げる、と言った方が正しく、こんもりと山のように盛り上がったおっぱいは彼女の顎にまで当たりそうで、そして両隣の席にまで大きくはみ出しているのである。制服に包まれてその姿は拝むことは出来ないが、自身の重さで描かれるたわやかな楕円だったり、ここ最近の成長に追いつけずパツパツに張っている生地を見ていると、それだけで手が伸びてしまう。隣に座ればきっと我慢することな���出来やしない。心行くまで後輩のおっぱいを揉みしだいてしまう。だから陸也は彼女の隣に座らなかったのであるが、結局はいつものように汀沙の誘いに誘われるがまま、席を立つのであった。
「せんぱいのえっち。でも今日は、いつもより耐えられた、………ような気がします」
「いつも思うんだけど、どうしてすぐに触らせてくれないの。………」
そういえば去年の冬、試験勉強をしている最中に消しゴムが彼女の胸元へ転がって、拾おうと手を伸ばして、ちょっと触れてしまったことがあった。その時にひどく怒られて以来しばらく、陸也はすぐに彼女のおっぱいには触れられなくなったのであるが、そんなこともうどうでもよくなった汀沙からすると、今では何だか面白いから続けているようなものだし、窒息して気を失うまで胸元に押し付けられた陸也からすると、今では新たな性癖が芽生えて自分で自分を縛っているだけである。
「私はお姉ちゃんのように甘くはありませんからね。――あ、どうぞどうぞ、こちらへ。………」
とガラガラという音を立てさせつつ椅子を引いてくれたので、大人しく座った。おっぱいに引っ張られて床と平行になった胸ポケットから名札がこちらを覗いていたが、すっと目の前に出てきたのはしなやかな指に挟まれた下敷きであった。
「ん? ――」
「先輩、扇いでください。さっきは私がしてあげたでしょう?」
「………えー」
「えー、じゃないですってば。後少しで切りの良いところにたどり着くので、――ほらほら、でないと私帰っちゃいますよ?」
「しゃあなしやで」
こうやって焦らされるのはいつものことだけれども、今日は特に上機嫌なせいか、特にいじられている気がする。陸也は手でボールを転がすようにおっぱいを揺すっている汀沙に下敷きを向け、パタパタとちょうどよい力加減で扇いであげた。たなびく髪の影からちらちらと彼女のうなじが見えて来たけれども、ちょっと艶めかしすぎるので目をそらしてしまったが、今度は制服を突き抜け、インナーを突き抜けてその存在を主張するゴツゴツとした、きっと巨大であろうブラジャーが目に飛び込んできて、もうどうすることもなしにただ校舎の外に植えられているクスノキを眺め初めた。傾きかけた陽の光が木の葉に映って綺麗であった。――
汀沙の「後少し」は、ほんとうに後少しだったのか五分ともせずにパタンと、本を閉じて陸也の方を向く。
「先輩、切りの良いところまでたどり着いたので、気分転換に〝ミステリー小説を探しに行きましょう〟」
これが二人の合言葉であった。汀沙は手を机について立ち上がると、制服の裾を引っ張ってだらしのなくなった胸元をきちんと正し、ついでに肩にかかるストラップがズレているのが気に食わなくて正し、そうすると次は、そろそろ収まりの悪くなってきたブラジャーから何となくおっぱいが溢れているような気がしたが、よく考えればこれは昨日からだった。無言で陸也と視線を交わして、図書室の奥の奥、……自分たちの住む街の町史だか何だかがある、決して誰も近寄らず、空気がどんよりと留まって、嫌な匂いのする場所、……そこに向かう。図書室には基本的に人はあまり来ないから、そんな変な匂いに包まれることも無いのだが、陸也がどうしてもここでと言うからいつもそこである。今一度見渡してみると陽の光は入らないし、天上にある蛍光灯は切れたままだし、やっぱりカビ臭いし、聞こえるのは布の擦れる音と、自分と陸也の呼吸だけ。………もう誰にも見られていないに違い無いので、彼の胸元に自分の大きく育ちすぎたおっぱいを押し付けながら、強く強く抱きついた。もし、服を着ていなければ、きっと上半身をほとんど包み込めていただろうが、こうやって私と、陸也の力でぎゅっ……と距離を縮めるのも悪くはない。汀沙はそっと手を離して、半ば陸也の拘束を振りほどくように、くるりと回って背を向けた。
「先輩、今日こそ優しくおねがいします。………」
と小声で、両手を股の辺りでしっかりと握りながら言うと、背中から彼の体がぴったりと密着してくる。脇の下から彼の手がそっと通ってくる。その手は迷うこと無く自分の一番敏感な部分に制服の上から触れ、こそばゆいまでに優しくおっぱい全体を撫で回す。もう一年以上、同じことを休日以外は毎日されているけれども、この瞬間だけは慣れない。汀沙は顔を赤くしながら口を抑えると、背中を陸也にすっかり預けて、砕けそうになる膝に力を入れて、すりすりとてっぺんを撫でてくる手の心地よさに必死で抗った。
やっぱり今日も、魔法の手は魔法の手だった。姉から、りっくんの手は魔法の手だから気をつけて。ほんの少しだけ触れられるだけでこう、……何て言ったら良いのか���、おっぱいのうずきが体中に広がって、背筋がゾクゾクして、膝がガクガクして、立っていられなくなるの。上手くは説明できないけど、一度体験したら分かると思う。よくスカートを汚して帰ってきたことがあったでしょう? あれはりっくんの無慈悲な手を味わい続けて、腰を抜かしてしまったからなの。女の子の扱いなんて知らないような子だから、毎回抱き起こすのが下手でね、しかもあの魔法の手で背中を擦ってきてね、腰の骨が無くなっちゃったような感じがしてね、――と、しごく嬉しそうな顔をしてのろけられたことがあったのだが、その時はまだ高校に入学する前だったので、何を言ってるんだこの姉は。よくつまづくから自分でコケたんじゃないか、と半信半疑、いや、あの常日頃ぼんやりとしているような男に姉が負ける訳が無いと、全くもって疑っていたのである。けれども一年前のゴールデンウィーク前日に、廊下を歩いていると、後ろから名前を呼びかけられると共に肩を叩かれた事があった。陸也は手を振ってさっさと去ってしまったが、妙に肩から力が抜けたような気がしてならぬ。いや、そんなことはありえないと、しかしちょっとだけ期待して図書室へ行ったが彼の姿はどこにも見当たらなかったので、その日は大人しく家に帰って眠って、ほんの一��間にも満たない休日を満喫しようと思っていた。が、やはりあの手の感触が忘れられない、それになぜだか胸が張って来たような気がする。中学生の頃からすくすくと成長してきた彼女のおっぱいは、その時すでにIカップ。クラスではもちろん一番大きいし、学年でもたぶんここまで大きい同級生は居ないはず。そんなおっぱいがぷっくりと、今までに無い瑞々しいハリを持ち始め、触ってみたらピリピリと痛んで、肌着はもちろんのことブラジャーすら、違和感でずっとは着けていられなかった。
結局ゴールデンウィークが開ける頃には彼女のおっぱいはJカップにまで育っていたが、それよりも陸也の手が気になって気になって仕方がなく、久しぶりの授業が終わるやいなや図書室へと駆け込んだ。姉からりっくんは図書室に居るよと伝えられていたし、実際四月にもしばしば姿を見かけていたので、適当に本を一冊見繕って座って待っていると、程なくして彼はやって来た。汀沙を見つけるとにっこりと笑って、対面に座り、図書室なので声を潜めてありきたりなことを喋りだす。だがこれまで挨拶を交わす程度の仲である、……すぐに話のネタが尽き無言の時間が訪れたので、汀沙は思い切って、姉から伝えられていた〝合言葉〟を口に出した。――これが彼女にとっての初めて。Jカップのおっぱいをまさぐる優しい手付きに、汀沙は一瞬で崩れ落ち、秘部からはとろとろと蜜が溢れ、足は立たず、最後にはぺたんと座り込んで恍惚(うっとり)と、背中を擦ってトドメを刺してくる陸也をぼんやり眺めるのみ。声こそ出さなかったものの、そのせいで過呼吸みたいに浅い息が止まらないし、止めどもなく出てくる涙はポタポタと床に落ちていくし、姉の言葉を信じていればと後悔したけれども、ジンジンと痺れるおっぱいは、我が子のように愛おしい。もっと撫でてほしい。………
その日を境に、汀沙のおっぱいは驚異的な成長を遂げた、いや、今も遂げている。最初の頃は二日や三日に一カップは大きくなっていっていたので、ただでさえJカップという大きなおっぱいが、ものの一ヶ月で、K、L、M、N、O、P、Q、R、………と六月に入る頃にはTカップにまで成長していた。姉からはなるほどね、という目で見られたが、友達たちにはどう言えばいいものか、特に休日を挟むと一回り大きくなっているので、校舎の反対側に居る同級生にすら、毎週月曜日は祈願も込めて汀沙のおっぱいは揉まれに揉まれた。ある人はただその感触を味わいたいが故に訪れては揉み、ある人は育乳のコツを聞くついでに訪れては揉み、まだ彼女のことを知らぬ者はギョッとして写真を撮る。汀沙はちょっとした学校の人気者になっていたのであったが、休み時間は無いようなものになったし、お昼ご飯もまともに食べられないし、それに何より放課後そういう人たちを撒くのに手間取り陸也との時間が減ったので、かなりうんざりとしていた。が、そういったいわゆる「汀沙まつり」も六月の最終週には収まった。――とうとう彼女のおっぱいがZカップを超えたのである。たった一ヶ月で頭よりも大きくなり、二ヶ月でアルファベットで数えられなくなったおっぱいに、さすがの女子たちも、それに男子たちも気味が悪いと感じたのであろうか、触れてはいけないという目で見てくるようになって、居心地の悪さと言ったらなかった。以前のように行列を作るようなことは無くなったどころか、仲の良い友達も自分のおっぱいを話題に上げることすらしない。どこか距離を置かれているような、そんな感じである。
だがそれは自分から話題を振るとやっぱり、彼女たちも我慢していたのか以前と変わらない接し方をしてくれ、週明けには何センチ大きくなった? とも聞いてくるようになったのであるが、さて困ったのは授業である。と言っても普段の授業は、机の上におっぱいが乗ってノートが取れないと言っても、出来るだけ椅子を引けば膝の上に柔らかく落ち着かせることが出来るから、そこまで支障は無い。ほんとうに困ったのは体育である。体調も悪いのでなしに休むことが出来なければ、見学することも出来ない。かと言って意外に真面目な彼女は仮病なんて使いたくない。幸いにも水泳は無かったからブラジャーと同じでバカでかい水着を買うことは無かったけれども、やはり少しくらいは授業に参加しなければならず、たぷんたぷんと揺れるおっぱいを片腕で抑えながら行うバスケやバトミントンは、思い出すだけで死にたくなってくる。殊にバスケではボールを手に持っていると友達から、あれ? ボールが三つもあるよ? などと冷やかされ、どっちの方が大きいんだろう、……などとバスケットボールとおっぱいを比べられ、うっそ、まじでおっぱいの方が大きい、………などと言われ、ちょっとした喧嘩に発展しそうになった事もある。今では片方だけで十キロ以上あるから基本的に体育は見学でも良くなったものの、去年一年間のことはもう思い出したくもない。陸也との思い出以外には。………
おっぱいを触れられてから恋心が目覚めるなど、順番がおかしいように感じるが、汀沙はあの魔法の手でおっぱいを揉まれてからというもの、その前後に交わす会話から少しずつ陸也に心が寄っていくのを感じていた。姉妹揃って同じ人物に惚れるなんてドラマじゃあるまいし、もしそうなったらドロドロになりそうで嫌だなぁ、と思っていたら現実になりかけている。「なりかけている」というのは若干の諦めが混じっているからなのだが、それが何故なのかと言うと、陸也はやっぱり姉の方に心を傾けているのである。先輩は決して遊びで私のおっぱいを揉んではいないけれども、どこかよそよそしく感じるのはどうしてだろう、姉は魔法の手でおっぱいを揉みしだかれたと言うが、私はもにもにと軽く力を入れられた記憶しかない。それだけで十分といえば十分ではあるが、やはり物足りない。やはり先輩はお姉ちゃんの方が好き。もうこんなに、――歩くのも大変で、況してや階段を降りるなんて一段一段手すりに捕まらなければ出来ないというのに、毎朝あの巨大なブラジャーを付けるのに十分は手こずるというのに、お風呂に入ればお湯が大方流れて行ってしまうというのに、毎夜寝返りも打てず目が覚めては布団を掛け直さなくてはならないというのに、電車に乗れば痴漢どころか人をこのおっぱいで飲み込まなければいけないというのに、振り向くどころか姉の影すら重ねてくれない。汀沙は今ではやけっぱちになって、陸也を弄っている折があるけれども、内心ではいつか、と言っても彼が高校を卒業するまでもう一年も無いけれど、いつかきっと、……という思いがあるのであった。
「――汀沙、そろそろ揉むよ、良い?」
と一人の女の子を快楽で悶えさせていた陸也が、今までやっていたのは準備体操と言わんばかりに軽く言う。実際、彼はおっぱいの感触を楽しむ、というよりはそれをすっぽりと包む純白のブラジャー、……のゴツゴツとした感触を制服越しになぞっていただけであった。
「お、おね、おねがい。……」
普段はよく舌の回る汀沙も、魔法の手には敵わない。ここに居る間は原則として声を発してはいけないことになっているから、陸也からの返事は無いが、次第におっぱいを持ち上げるように手を下に入れられると、指がその柔らかな肉に食い込み始めた。ブラジャーを着けて支えていてもへそを隠してしまうおっぱいは、中々持ち上がりそうに無く、ギシギシとカップの軋む音だけが聞こえてくる。特注のブラジャーはいたる所にワイヤーが通されてかなり頑丈に作られているから、ちょっとやそっとではへこまないのであるが、そんな音が聞こえてくるということは、相当力を入れているのであろう。そう思うだけでも快感が頭にまで登ってくる。
「んっ、……」
思わず声が出てしまった。呼吸が苦しくなってきたので、口から手を離して息を吸うと、彼もまた浅く荒く呼吸しているのが分かった、目はしっかりと見開き、額に汗をにじませながら彼女の、巨大なおっぱいを揉んでいる。……汀沙はその事実がたまらなかった。例えお姉ちゃんを忘れられずに行っている陸也の自慰行為とは言っても、ただの想像だけではここまで興奮はしないはず。今だけは姉のおっぱいではなく、私のおっぱいに注目してくれている、私のおっぱいで興奮してくれている。けれどもやっぱり、その目には姉が映っているのであろう、私もその愛を受けてみたい、あんまりおっぱいは大きく無いけれど、私に向けられて言うのではないけれど、その愛を感じてみたい。――と思うと汀沙は自然に陸也の名前を呼んでいた。
「りっくん。………」
とは姉が陸也を呼ぶ時のあだ名。
「遥奈。………」
とは姉の名。あゝ、やっぱり、彼は私のことなんて見ていなかった、それにお姉ちゃんのことを「先輩」なんて呼んでいなかった。陸也の手は汀沙が彼を呼んだ時に止まってしまっていたけれども、やがて思いついたように、再びすりすりとおっぱいを大きく撫で回していた。その手を取って、無理やり自分の一番敏感な部分にピタッとつけると、ここを揉めと声に出す代わりに、魔法の手の上から自分のおっぱいを揉む。
「汀沙?」
「今は遥奈でもいいです。けど、そのかわり遠慮なんてしないでください。私をお姉ちゃんだと思って、……おねがいします。――」
言っているうちに涙が出てきて止まらなかった。汗ばんだ頬を伝って、ぽたりぽたりと、美しい形の雫が異常に発達した乳房に落つ。その時眼の前が覆われたかと思えば��意外とかわいい柄をしたハンカチで、ぽんぽんと、優しく目元を拭われていた。
「汀沙、やっぱりそれは出来ない。汀沙は汀沙だし、遥奈は遥奈だよ」
「ふ、ふ、……さっき私のこと遥奈って言ったくせになにかっこつけてるんです」
ぺらりと垂れ下がったハンカチから、極端にデフォルメされたうさぎがこちらを覗き込んでいるので、涙が引くどころか、笑みさえ浮かべる余裕が出来たのである。
「まぁ、うん、ごめんなさい。――今日はこの辺にしておく?」
「それは駄目です。もうちょっとお願いします」
「えー、……」
「えー、じゃないって何回言えば分かるんですか。早くそのファンシーなハンカチをしまってください」
と陸也がハンカチをしまったのを見て、そういえば昔、家でああいう柄をしたハンカチを見たことがあるのを思い出すと、またしても心が痛くなったけれども、所詮叶わぬ夢だったのだと思い込んで、再び魔法の手による快楽地獄に身を任せてから、シワの入ってしまった制服を整えつつ席に戻った。
「そろそろ帰るかー。暗くなりそうだし。それに夜は雨だそうだし」
と背伸びをして、陸也はポキポキと首を鳴らす。外にあるクスノキの葉は、夕焼けに照らされて鈍く赤く輝いてはいるけれども、遠くの方を見ると墨を垂らしたような黒い雲が、雨の降るのを予見していた。
「ですね。それ、借りていきます?」
と指さしたのは、例の短編集で。
「うん。まだ最初の二三話しか読めてないしね」
「ゆっくり読んでくださいね。あと声に出すともっと面白いですよ、その作者の作品はどれも、――私は好きじゃない言い方なんですけど、異様にリズムが良い文体で書かれているから。……」
「なるほど、なるほど、やってみよう。……ちょっと恥ずかしいけど」
「大丈夫ですよ。聞いてる側は鼻歌のように感じますから。……って、お姉ちゃんに言われただけなので、あんまり信憑性が無いですけどね��――」
汀沙が本を書架に返しに行っているあいだに、陸也は後輩おすすめの短編集を借りて、二人は一緒に学校の校門をくぐった。薄暗い図書室よりも、夕焼けの差す外の方が涼しくて最初こそ足は弾んだが、袂を分かつ辻にたどり着く頃には、二十キロ以上の重りを胸に着けている汀沙の背に手を回して、足並みをそろえて、付き添うようにゆっくりと歩くようになっていた。あまり車通りの無いのんびりとした交差点だからか、汀沙はふと足を止めると、不思議そうに顔を覗き込んでくる陸也の腕をとって言う。
「先輩、お父さんも、お母さんも居ないので、今日こそ私の家に来てくれませんか?」
途端、それまで柔和だった陸也の顔が引き締まる。
「それは、……駄目だろう。バレたら今度こそ会えなくなる」
「でも、一目だけでも、お姉ちゃんと会ってくれませんか? ずっとずっと待ってるんですよ、あの狭い暗い部屋の中で一人で。――」
「いや駄目だ。あと六ヶ月と二日、……それだけ待てば後は好きなだけ会えるんだ。あともう少しの���抱なんだ。………」
陸也は現在、汀沙の姉であり、恋人である遥奈と会うことはおろか、電話すらも出来ないのであった。詳しく話せば大分長くなるのでかいつまんで説明すると、陸也は高校へ入学して早々、図書室の主であった遥奈と出会ったのであるが、もともと似た体質だったせいかすぐさま意気投合して、何にも告白などしていないにも関わらず、気がついた時には恋仲となっていた。妹の汀沙も高校一年生の時点でIカップあって胸は大きかったが、姉の遥奈はもっともっとすごく、聞けば中学一年の時点でKカップあり、早熟かと思って油断していると、あれよあれよという間にどんどん大きくなっていって、魔法の手を借りずとも高校一年生でXカップ、その年度内にZカップを超え、高校二年に上がる頃にはバストは百七十センチとなっていたと言う。当然、そんなおっぱいを持つ女性と恋仲になるということは、相当強い理性を持っていなければ、手が伸びてしまうということで、陸也はこの日のように図書室の奥の奥、……自分たちの住む街の町史だか何だかがある、決して誰も近寄らず、空気がどんよりと留まって、嫌な匂いのする場所、……そこで毎日のように遥奈と唇を重ね、太陽が沈んでもおっぱいを揉みしだいていたのである。ここで少し匂わせておくと、娘が毎日門限ギリギリに帰ってくることに遥奈らの両親は心配よりも、何かいかがわしいことをしているのでないかと、本格的な夏に入る前から疑っていたらしい。で、再びおっぱいの話に戻ると、陸也の魔法の手によって、高校一年生でIカップだった汀沙がたった一年で(――遥奈は別として、)世界一のバストを持つ女子高校生になったのだから、高校一年生でXカップあった遥奈への効果は言うまでもなかろう、半年もしないうちに、立っていても地面に柔らかく着いてしまうようになっていた。もうその頃には彼女は、そもそも身動きすらその巨大なおっぱいのために出来ず、学校へ行けなくなっていたので、陸也と会うためには彼が直接家まで向かわなければいけない。だが、ここで問題があった。彼女らの両親、……母親はともかくとして、父親がそういうことに厳格な人物らしく、男を家に上げたがらないのである。しかも親馬鹿な面も持ち合わせているので、娘が今、身動きすら取れないことに非常に心配していらっしゃるらしく、面と向かって会うのは避けた方が良い、それにお忍びで会うなんて何か素敵だよね、と遥奈が言うので、陸也は両親の居ないすきを突いて遥奈と会い、唇を重ね、おっぱいを揉みしだき、時には体を重ねた。その時唯一知られたのは、ひょんなことで中学校から帰って来た妹の汀沙であるのだが、二人の仲を切り裂くことなんて微塵も思って無く、むしろ両親に悟られないように手助けすると言って、ほんとうにあれこれ尽くしてくれた。――が、そんな汀沙の努力も虚しく見つかってしまった。それはクリスマスの少し前あたりであった。幸いにも行為が終わって余韻に浸りながら楽しく喋っているところではあったが、冷たい顔をした父親に一人別室に呼び出された陸也はそこで根掘り葉掘り、娘と何をしていたのか聞き出されることになったのである。若い男女が二人、ベッドの上で横に並び合い、手を繋いで離す���ど、それだけでも父親にはたまらなかったが、何より良くなかったのはお忍びで会っていたことで、何をこそこそとやっとるんだ、もしかして遥奈の帰りが遅くなっていたのはお前のせいか、俺は娘が嘘をついていることなんて分かっていたが、やっぱりそういうことだったのか、などとまだ高校一年生の陸也には手のつけようが無いほど怒り狂ってしまい、最終的に下された結論は、二年間遥奈と会わないこと、通話もしないこと。お前もその時には十八歳になっているだろうから、その時に初めて交際を許可する。分かったなら早く家へ帰りなさい。――と、遥奈に別れも告げられずに家を追い出されたのである。
だから陸也はもう一年以上、あのおっとりとした声を聞いていないし、あのほっそりとした指で頬を撫でられていないし、あのぷっくりと麗しい唇と己の唇を重ねられていないし、あの人を一人や二人は簡単に飲み込める巨大なおっぱいに触れられていないのである。二年くらいどうってことない、すぐに過ぎ去る、と思っていたけれども、妹に己の欲望をぶつけてしまうほどに彼女が恋しい。今も一人この鮮やかに街を照らす夕日を眺めているのだろうか、それとも窓を締め切って、カーテンを締め切って、一人寂しさに打ち震えているのであろうか、はたまた無理矢理にでも攫ってくれない自分に愛想をつかしているのであろうか。――頭の中はいつだって遥奈のことでいっぱいである。汀沙から毎日のように状況は聞いているが、自分の目でその姿を見られないのが非常にもどかしい。陸也はもたれかかっていた電柱にその悔しさをぶつけると、その場に座り込んだ。
「先輩、大丈夫ですか?」
「無理かも。……」
「あ、あの、……無理言ってごめんなさい。……」
「いや、汀沙が謝ることはないよ。全部俺の意気地が無いだけだから。……」
「……先輩、私はいつだって先輩とお姉ちゃんの味方ですからね。だからあと半年感、――ちょっとおっぱいは足りないけど、私をお姉ちゃんだと思って好きなだけ甘えてください。ほら、――」
さらさらと、汀沙が頬を撫でてくる、ちょうど遥奈と同じような力加減で、ちょうど遥奈と同じような手付きで。………
「ありがとう汀沙、ありがとう。………」
絞り出したその声は、震えていてついには風切り音にかき消されてしまったが、側に居る汀沙の心にはしっかりと響いていた。
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kkagtate2 · 6 years ago
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マジックハンド
巨乳な後輩のおっぱいを揉む話。
真夏、――と言ってもまだ六月ではあるけれども、クーラーの入るか入らないかギリギリの季節の図書室は、地獄と言ってもそれほど違和感は無いにも関わらず、陸也は後輩に勧められるがまま手渡された短編集を開いていたのであるが、もうかれこれ三十分ほどは字を追いかけるだけで内容なんてちっとも入って来ていなかった。正直に言って本を読むことなんて二の次なのだから、別段この灼熱地獄を耐える必要など無い。が、眼の前に座っている後輩、――汀沙(なぎさ)などとおだやかそうな名前をしている一つ歳の離れた女子が、パタパタと下敷きで自身を扇ぎながら、瞬きもあんまりせず熱心に目を上から下へ動かしているので、仕方無いけれども彼女が一息つくまで待たねばならぬ。陸也は暑さに耐えかねて静かにため息をつくと、本を少しだけ下ろして、視界を広げて、器用に片手でページをめくる彼女の姿を覗いた。彼女とはここで初めて会った、……というのは嘘だけれど、ちゃんと話したのはこの図書室が初めてなのだから、そう言っても良いであろう。その時から小生意気で、先輩というよりは友達感覚で接してきて、これがあの人の妹なのかと、ついつい声が出てしまったのであるが、それでも黙っていると美人なものは美人で。彼女の日本人らしい黒髪は、短いけれども艶々と夏の陽で輝いているし、すっと伸びた眉毛から目元、鼻先は性格に似合わず小造りであるし、パタ………、と止まった手首はほの白く、全くもって姉と同じ華車な曲線を描いている。陸也はそれだけでもかつて恋い焦がれていた〝先輩〟を思い出してしまうのであるが、机の上に重々しく乗って、扇ぐのを再開した腕に合わせてふるふると揺れ動く汀沙の、――およそ世界で一番大きいと言っても過言ではないおっぱいを見ていると、いつしか本を閉じて机の上に置いていた。
「せんぱい、せんぱい、それどうです? 面白いでしょ?」
目ざとく陸也の動きに反応した汀沙が相変わらず自分の顔を扇ぎながら言う。額にひたひたと張り付いていたかと思っていた前髪が、ふわりと浮いては、ふわりと額を撫でる。
「せやな。………」
「先輩?」
「んん?」
「その本の一番最初の話を七十字程度に要約せよ。出来なければジュース一本おごりで。――あ、二本でもいいですよ」
と得意げな顔をして言うのは、陸也が暑さで朦朧としているのを知っているからである。
「あー、あー、おごってあげるから、俺もそいつで扇いでくれ。………」
「やっぱり。仕方ないですねぇ」
と本を置いて、ぐいと、体を前に乗り出し、バサバサと両手で下敷きを持って扇いでくれる。図書室は狭いくせに結構広めの机だから、陸也に届く頃にはさらさらとしたそよ��になっていたけれども、あるか無いかでは大違いであった。だが長くは続かない。………
「はい、お終い!」
と再び自分をパタパタと扇ぎ初めた。
「えー、もう?」
「えー、じゃないです。扇ぐ方の身にもなってください」
「……俺、先輩だし。………」
「っていうか、先輩が隣に来たら良いんですよ。たぶん横の席は涼しいと思いますよ?」
とニヤリと目を細めて言い、ぽんぽんと左手にある席を叩く。確かに、汀沙の言う通り隣の席に行けば風に当たることは出来よう、しかし彼がそういう風に座らなかったのは、今更示しても無駄な理性が働いたからであった。先程、汀沙のおっぱいは世界で一番大きい、と言ったのは全くの嘘ではなく、自身の顔を超え、バスケットボールを超え、………いやそうやって辿って行くと果てしがないので一気に飛ばして言うと、バスケットボール三つ分よりもまだ大きい。恐らくこの世には、机におっぱいが乗る女性などごまんと居るであろうが、片方だけでも西瓜よりまだまだずっと大きい彼女のおっぱいは、乗る、というよりは、乗り上げる、と言った方が正しく、こんもりと山のように盛り上がったおっぱいは彼女の顎にまで当たりそうで、そして両隣の席にまで大きくはみ出しているのである。制服に包まれてその姿は拝むことは出来ないが、自身の重さで描かれるたわやかな楕円だったり、ここ最近の成長に追いつけずパツパツに張っている生地を見ていると、それだけで手が伸びてしまう。隣に座ればきっと我慢することなど出来やしない。心行くまで後輩のおっぱいを揉みしだいてしまう。だから陸也は彼女の隣に座らなかったのであるが、結局はいつものように汀沙の誘いに誘われるがまま、席を立つのであった。
「せんぱいのえっち。でも今日は、いつもより耐えられた、………ような気がします」
「いつも思うんだけど、どうしてすぐに触らせてくれないの。………」
そういえば去年の冬、試験勉強をしている最中に消しゴムが彼女の胸元へ転がって、拾おうと手を伸ばして、ちょっと触れてしまったことがあった。その時にひどく怒られて以来しばらく、陸也はすぐに彼女のおっぱいには触れられなくなったのであるが、そんなこともうどうでもよくなった汀沙からすると、今では何だか面白いから続けているようなものだし、窒息して気を失うまで胸元に押し付けられた陸也からすると、今では新たな性癖が芽生えて自分で自分を縛っているだけである。
「私はお姉ちゃんのように甘くはありませんからね。――あ、どうぞどうぞ、こちらへ。………」
とガラガラという音を立てさせつつ椅子を引いてくれたので、大人しく座った。おっぱいに引っ張られて床と平行になった胸ポケットから名札がこちらを覗いていたが、すっと目の前に出てきたのはしなやかな指に挟まれた下敷きであった。
「ん? ――」
「先輩、扇いでください。さっきは私がしてあげたでしょう?」
「………えー」
「えー、じゃないですってば。後少しで切りの良いところにたどり着くので、――ほらほら、でないと私帰っちゃいますよ?」
「しゃあなしやで」
こうやって焦らされるのはいつものことだけれども、今日は特に上機嫌なせいか、特にいじられている気がする。陸也は手でボールを転がすようにおっぱいを揺すっている汀沙に下敷きを向け、パタパタとちょうどよい力加減で扇いであげた。たなびく髪の影からちらちらと彼女のうなじが見えて来たけれども、ちょっと艶めかしすぎるので目をそらしてしまったが、今度は制服を突き抜け、インナーを突き抜けてその存在を主張するゴツゴツとした、きっと巨大であろうブラジャーが目に飛び込んできて、もうどうすることもなしにただ校舎の外に植えられているクスノキを眺め初めた。傾きかけた陽の光が木の葉に映って綺麗であった。――
汀沙の「後少し」は、ほんとうに後少しだったのか五分ともせずにパタンと、本を閉じて陸也の方を向く。
「先輩、切りの良いところまでたどり着いたので、気分転換に〝ミステリー小説を探しに行きましょう〟」
これが二人の合言葉であった。汀沙は手を机について立ち上がると、制服の裾を引っ張ってだらしのなくなった胸元をきちんと正し、ついでに肩にかかるストラップがズレているのが気に食わなくて正し、そうすると次は、そろそろ収まりの悪くなってきたブラジャーから何となくおっぱいが溢れているような気がしたが、よく考えればこれは昨日からだった。無言で陸也と視線を交わして、図書室の奥の奥、……自分たちの住む街の町史だか何だかがある、決して誰も近寄らず、空気がどんよりと留まって、嫌な匂いのする場所、……そこに向かう。図書室には基本的に人はあまり来ないから、そんな変な匂いに包まれることも無いのだが、陸也がどうしてもここでと言うからいつもそこである。今一度見渡してみると陽の光は入らないし、天上にある蛍光灯は切れたままだし、やっぱりカビ臭いし、聞こえるのは布の擦れる音と、自分と陸也の呼吸だけ。………もう誰にも見られていないに違い無いので、彼の胸元に自分の大きく育ちすぎたおっぱいを押し付けながら、強く強く抱きついた。もし、服を着ていなければ、きっと上半身をほとんど包み込めていただろうが、こうやって私と、陸也の力でぎゅっ……と距離を縮めるのも悪くはない。汀沙はそっと手を離して、半ば陸也の拘束を振りほどくように、くるりと回って背を向けた。
「先輩、今日こそ優しくおねがいします。………」
と小声で、両手を股の辺りでしっかりと握りながら言うと、背中から彼の体がぴったりと密着してくる。脇の下から彼の手がそっと通ってくる。その手は迷うこと無く自分の一番敏感な部分に制服の上から触れ、こそばゆいまでに優しくおっぱい全体を撫で回す。もう一年以上、同じことを休日以外は毎日されているけれども、この瞬間だけは慣れない。汀沙は顔を赤くしながら口を抑えると、背中を陸也にすっかり預けて、砕けそうになる膝に力を入れて、すりすりとてっぺんを撫でてくる手の心地よさに必死で抗った。
やっぱり今日も、魔法の手は魔法の手だった。姉から、りっくんの手は魔法の手だから気をつけて。ほんの少しだけ触れられるだけでこう、……何て言ったら良いのかな、おっぱいのうずきが体中に広がって、背筋がゾクゾクして、膝がガクガクして、立っていられなくなるの。上手くは説明できないけど、一度体験したら分かると思う。よくスカートを汚して帰ってきたことがあったでしょう? あれはりっくんの無慈悲な手を味わい続けて、腰を抜かしてしまったからなの。女の子の扱いなんて知らないような子だから、毎回抱き起こすのが下手でね、しかもあの魔法の手で背中を擦ってきてね、腰の骨が無くなっちゃったような感じがしてね、――と、しごく嬉しそうな顔をしてのろけられたことがあったのだが、その時はまだ高校に入学する前だったので、何を言ってるんだこの姉は。よくつまづくから自分でコケたんじゃないか、と半信半疑、いや、あの常日頃ぼんやりとしているような男に姉が負ける訳が無いと、全くもって疑っていたのである。けれども一年前のゴールデンウィーク前日に、廊下を歩いていると、後ろから名前を呼びかけられると共に肩を叩かれた事があった。陸也は手を振ってさっさと去ってしまったが、妙に肩から力が抜けたような気がしてならぬ。いや、そんなことはありえないと、しかしちょっとだけ期待して図書室へ行ったが彼の姿はどこにも見当たらなかったので、その日は大人しく家に帰って眠って、ほんの一週間にも満たない休日を満喫しようと思っていた。が、やはりあの手の感触が忘れられない、それになぜだか胸が張って来たような気がする。中学生の頃からすくすくと成長してきた彼女のおっぱいは、その時すでにIカップ。クラスではもちろん一番大きいし、学年でもたぶんここまで大きい同級生は居ないはず。そんなおっぱいがぷっくりと、今までに無い瑞々しいハリを持ち始め、触ってみたらピリピリと痛んで、肌着はもちろんのことブラジャーすら、違和感でずっとは着けていられなかった。
結局ゴールデンウィークが開ける頃には彼女のおっぱいはJカップにまで育っていたが、それよりも陸也の手が気になって気になって仕方がなく、久しぶりの授業が終わるやいなや図書室へと駆け込んだ。姉からりっくんは図書室に居るよと伝えられていたし、実際四月にもしばしば姿を見かけていたので、適当に本を一冊見繕って座って待っていると、程なくして彼はやって来た。汀沙を見つけるとにっこりと笑って、対面に座り、図書室なので声を潜めてありきたりなことを喋りだす。だがこれまで挨拶を交わす程度の仲である、……すぐに話のネタが尽き無言の時間が訪れたので、汀沙は思い切って、姉から伝えられていた〝合言葉〟を口に出した。――これが彼女にとっての初めて。Jカップのおっぱいをまさぐる優しい手付きに、汀沙は一瞬で崩れ落ち、秘部からはとろとろと蜜が溢れ、足は立たず、最後にはぺたんと座り込んで恍惚(うっとり)と、背中を擦ってトドメを刺してくる陸也をぼんやり眺めるのみ。声こそ出さなかったものの、そのせいで過呼吸みたいに浅い息が止まらないし、止めどもなく出てくる涙はポタポタと床に落ちていくし、姉の言葉を信じていればと後悔したけれども、ジンジンと痺れるおっぱいは、我が子のように愛おしい。もっと撫でてほしい。………
その日を境に、汀沙のおっぱいは驚異的な成長を遂げた、いや、今も遂げている。最初の頃は二日や三日に一カップは大きくなっていっていたので、ただでさえJカップという大きなおっぱいが、ものの一ヶ月で、K、L、M、N、O、P、Q、R、………と六月に入る頃にはTカップにまで成長していた。姉からはなるほどね、という目で見られたが、友達たちにはどう言えばいいものか、特に休日を挟むと一回り大きくなっているので、校舎の反対側に居る同級生にすら、毎週月曜日は祈願も込めて汀沙のおっぱいは揉まれに揉まれた。ある人はただその感触を味わいたいが故に訪れては揉み、ある人は育乳のコツを聞くついでに訪れては揉み、まだ彼女のことを知らぬ者はギョッとして写真を撮る。汀沙はちょっとした学校の人気者になっていたのであったが、休み時間は無いようなものになったし、お昼ご飯もまともに食べられないし、それに何より放課後そういう人たちを撒くのに手間取り陸也との時間が減ったので、かなりうんざりとしていた。が、そういったいわゆる「汀沙まつり」も六月の最終週には収まった。――とうとう彼女のおっぱいがZカップを超えたのである。たった一ヶ月で頭よりも大きくなり、二ヶ月でアルファベットで数えられなくなったおっぱいに、さすがの女子たちも、それに男子たちも気味が悪いと感じたのであろうか、触れてはいけないという目で見てくるようになって、居心地の悪さと言ったらなかった。以前のように行列を作るようなことは無くなったどころか、仲の良い友達も自分のおっぱいを話題に上げることすらしない。どこか距離を置かれているような、そんな感じである。
だがそれは自分から話題を振るとやっぱり、彼女たちも我慢していたのか以前と変わらない接し方をしてくれ、週明けには何センチ大きくなった? とも聞いてくるようになったのであるが、さて困ったのは授業である。と言っても普段の授業は、机の上におっぱいが乗ってノートが取れないと言っても、出来るだけ椅子を引けば膝の上に柔らかく落ち着かせることが出来るから、そこまで支障は無い。ほんとうに困ったのは体育である。体調も悪いのでなしに休むことが出来なければ、見学することも出来ない。かと言って意外に真面目な彼女は仮病なんて使いたくない。幸いにも水泳は無かったからブラジャーと同じでバカでかい水着を買うことは無かったけれども、やはり少しくらいは授業に参加しなければならず、たぷんたぷんと揺れるおっぱいを片腕で抑えながら行うバスケやバトミントンは、思い出すだけで死にたくなってくる。殊にバスケではボールを手に持っていると友達から、あれ? ボールが三つもあるよ? などと冷やかされ、どっちの方が大きいんだろう、……などとバスケットボールとおっぱいを比べられ、うっそ、まじでおっぱいの方が大きい、………などと言われ、ちょっとした喧嘩に発展しそうになった事もある。今では片方だけで十キロ以上あるから基本的に体育は見学でも良くなったものの、去年一年間のことはもう思い出したくもない。陸也との思い出以外には。………
おっぱいを触れられてから恋心が目覚めるなど、順番がおかしいように感じるが、汀沙はあの魔法の手でおっぱいを揉まれてからというもの、その前後に交わす会話から少しずつ陸也に心が寄っていくのを感じていた。姉妹揃って同じ人物に惚れるなんてドラマじゃあるまいし、もしそうなったらドロドロになりそうで嫌だなぁ、と思っていたら現実になりかけている。「なりかけている」というのは若干の諦めが混じっているからなのだが、それが何故なのかと言うと、陸也はやっぱり姉の方に心を傾けているのである。先輩は決して遊びで私のおっぱいを揉んではいないけれども、どこかよそよそしく感じるのはどうしてだろう、姉は魔法の手でおっぱいを揉みしだかれたと言うが、私はもにもにと軽く力を入れられた記憶しかない。それだけで十分といえば十分ではあるが、やはり物足りない。やはり先輩はお姉ちゃんの方が好き。もうこんなに、――歩くのも大変で、況してや階段を降りるなんて一段一段手すりに捕まらなければ出来ないというのに、毎朝あの巨大なブラジャーを付けるのに十分は手こずるというのに、お風呂に入ればお湯が大方流れて行ってしまうというのに、毎夜寝返りも打てず目が覚めては布団を掛け直さなくてはならないというのに、電車に乗れば痴漢どころか人をこのおっぱいで飲み込まなければいけないというのに、振り向くどころか姉の影すら重ねてくれない。汀沙は今ではやけっぱちになって、陸也を弄っている折があるけれども、内心ではいつか、と言っても彼が高校を卒業するまでもう一年も無いけれど、いつかきっと、……という思いがあるのであった。
「――汀沙、そろそろ揉むよ、良い?」
と一人の女の子を快楽で悶えさせていた陸也が、今までやっていたのは準備体操と言わんばかりに軽く言う。実際、彼はおっぱいの感触を楽しむ、というよりはそれをすっぽりと包む純白のブラジャー、……のゴツゴツとした感触を制服越しになぞっていただけであった。
「お、おね、おねがい。……」
普段はよく舌の回る汀沙も、魔法の手には敵わない。ここに居る間は原則として声を発してはいけないことになっているから、陸也からの返事は無いが、次第におっぱいを持ち上げるように手を下に入れられると、指がその柔らかな肉に食い込み始めた。ブラジャーを着けて支えていてもへそを隠してしまうおっぱいは、中々持ち上がりそうに無く、ギシギシとカップの軋む音だけが聞こえてくる。特注のブラジャーはいたる所にワイヤーが通されてかなり頑丈に作られているから、ちょっとやそっとではへこまないのであるが、そんな音が聞こえてくるということは、相当力を入れているのであろう。そう思うだけでも快感が頭にまで登ってくる。
「んっ、……」
思わず声が出てしまった。呼吸が苦しくなってきたので、口から手を離して息を吸うと、彼もまた浅く荒く呼吸しているのが分かった、目はしっかりと見開き、額に汗をにじませながら彼女の、巨大なおっぱいを揉んでいる。……汀沙はその事実がたまらなかった。例えお姉ちゃんを忘れられずに行っている陸也の自慰行為とは言っても、ただの想像だけではここまで興奮はしないはず。今だけは姉のおっぱいではなく、私のおっぱいに注目してくれている、私のおっぱいで興奮してくれている。けれどもやっぱり、その目には姉が映っているのであろう、私もその愛を受けてみたい、あんまりおっぱいは大きく無いけれど、私に向けられて言うのではないけれど、その愛を感じてみたい。――と思うと汀沙は自然に陸也の名前を呼んでいた。
「りっくん。………」
とは姉が陸也を呼ぶ時のあだ名。
「遥奈。………」
とは姉の名。あゝ、やっぱり、彼は私のことなんて見ていなかった、それにお姉ちゃんのことを「先輩」なんて呼んでいなかった。陸也の手は汀沙が彼を呼んだ時に止まってしまっていたけれども、やがて思いついたように、再びすりすりとおっぱいを大きく撫で回していた。その手を取って、無理やり自分の一番敏感な部分にピタッとつけると、ここを揉めと声に出す代わりに、魔法の手の上から自分のおっぱいを揉む。
「汀沙?」
「今は遥奈でもいいです。けど、そのかわり遠慮なんてしないでください。私をお姉ちゃんだと思って、……おねがいします。――」
言っているうちに涙が出てきて止まらなかった。汗ばんだ頬を伝って、ぽたりぽたりと、美しい形の雫が異常に発達した乳房に落つ。その時眼の前が覆われたかと思えば、意外とかわいい柄をしたハンカチで、ぽんぽんと、優しく目元を拭われていた。
「汀沙、やっぱりそれは出来ない。汀沙は汀沙だし、遥奈は遥奈だよ」
「ふ、ふ、……さっき私のこと遥奈って言ったくせになにかっこつけてるんです」
ぺらりと垂れ下がったハンカチから、極端にデフォルメされたうさぎがこちらを覗き込んでいるので、涙が引くどころか、笑みさえ浮かべる余裕が出来たのである。
「まぁ、うん、ごめんなさい。――今日はこの辺にしておく?」
「それは駄目です。もうちょっとお願いします」
「えー、……」
「えー、じゃないって何回言えば分かるんですか。早くそのファンシーなハンカチをしまってください」
と陸也がハンカチをしまったのを見て、そういえば昔、家でああいう柄をしたハンカチを見たことがあるのを思い出すと、またしても心が痛くなったけれども、所詮叶わぬ夢だったのだと思い込んで、再び魔法の手による快楽地獄に身を任せてから、シワの入ってしまった制服を整えつつ席に戻った。
「そろそろ帰るかー。暗くなりそうだし。それに夜は雨だそうだし」
と背伸びをして、陸也はポキポキと首を鳴らす。外にあるクスノキの葉は、夕焼けに照らされて鈍く赤く輝いてはいるけれども、遠くの方を見ると墨を垂らしたような黒い雲が、雨の降るのを予見していた。
「ですね。それ、借りていきます?」
と指さしたのは、例の短編集で。
「うん。まだ最初の二三話しか読めてないしね」
「ゆっくり読んでくださいね。あと声に出すともっと面白いですよ、その作者の作品はどれも、――私は好きじゃない言い方なんですけど、異様にリズムが良い文体で書かれているから。……」
「なるほど、なるほど、やってみよう。……ちょっと恥ずかしいけど」
「大丈夫ですよ。聞いてる側は鼻歌のように感じますから。……って、お姉ちゃんに言われただけなので、あんまり信憑性が無いですけどね。――」
汀沙が本を書架に返しに行っているあいだに、陸也は後輩おすすめの短編集を借りて、二人は一緒に学校の校門をくぐった。薄暗い図書室よりも、夕焼けの差す外の方が涼しくて最初こそ足は弾んだが、袂を分かつ辻にたどり着く頃には、二十キロ以上の重りを胸に着けている汀沙の背に手を回して、足並みをそろえて、付き添うようにゆっくりと歩くようになっていた。あまり車通りの無いのんびりとした交差点だからか、汀沙はふと足を止めると、不思議そうに顔を覗き込んでくる陸也の腕をとって言う。
「先輩、お父さんも、お母さんも居ないので、今日こそ私の家に来てくれませんか?」
途端、それまで柔和だった陸也の顔が引き締まる。
「それは、……駄目だろう。バレたら今度こそ会えなくなる」
「でも、一目だけでも、お姉ちゃんと会ってくれませんか? ずっとずっと待ってるんですよ、あの狭い暗い部屋の中で一人で。――」
「いや駄目だ。あと六ヶ月と二日、……それだけ待てば後は好きなだけ会えるんだ。あともう少しの辛抱なんだ。………」
陸也は現在、汀沙の姉であり、恋人である遥奈と会うことはおろか、電話すらも出来ないのであった。詳しく話せば大分長くなるのでかいつまんで説明すると、陸也は高校へ入学して早々、図書室の主であった遥奈と出会ったのであるが、もともと似た体質だったせいかすぐさま意気投合して、何にも告白などしていないにも関わらず、気がついた時には恋仲となっていた。妹の汀沙も高校一年生の時点でIカップあって胸は大きかったが、姉の遥奈はもっともっとすごく、聞けば中学一年の時点でKカップあり、早熟かと思って油断していると、あれよあれよという間にどんどん大きくなっていって、魔法の手を借りずとも高校一年生でXカップ、その年度内にZカップを超え、高校二年に上がる頃にはバストは百七十センチとなっていたと言う。当然、そんなおっぱいを持つ女性と恋仲になるということは、相当強い理性を持っていなければ、手が伸びてしまうということで、陸也はこの日のように図書室の奥の奥、……自分たちの住む街の町史だか何だかがある、決して誰も近寄らず、空気がどんよりと留まって、嫌な匂いのする場所、……そこで毎日のように遥奈と唇を重ね、太陽が沈んでもおっぱいを揉みしだいていたのである。ここで少し匂わせておくと、娘が毎日門限ギリギリに帰ってくることに遥奈らの両親は心配よりも、何かいかがわしいことをしているのでないかと、本格的な夏に入る前から疑っていたらしい。で、再びおっぱいの話に戻ると、陸也の魔法の手によって、高校一年生でIカップだった汀沙がたった一年で(――遥奈は別として、)世界一のバストを持つ女子高校生になったのだから、高校一年生でXカップあった遥奈への効果は言うまでもなかろう、半年もしないうちに、立っていても地面に柔らかく着いてしまうようになっていた。もうその頃には彼女は、そもそも身動きすらその巨大なおっぱいのために出来ず、学校へ行けなくなっていたので、陸也と会うためには彼が直接家まで向かわなければいけない。だが、ここで問題があった。彼女らの両親、……母親はともかくとして、父親がそういうことに厳格な人物らしく、男を家に上げたがらないのである。しかも親馬鹿な面も持ち合わせているので、娘が今、身動きすら取れないことに非常に心配していらっしゃるらしく、面と向かって会うのは避けた方が良い、それにお忍びで会うなんて何か素敵だよね、と遥奈が言うので、陸也は両親の居ないすきを突いて遥奈と会い、唇を重ね、おっぱいを揉みしだき、時には体を重ねた。その時唯一知られたのは、ひょんなことで中学校から帰って来た妹の汀沙であるのだが、二人の仲を切り裂くことなんて微塵も思って無く、むしろ両親に悟られないように手助けすると言って、ほんとうにあれこれ尽くしてくれた。――が、そんな汀沙の努力も虚しく見つかってしまった。それはクリスマスの少し前あたりであった。幸いにも行為が終わって余韻に浸りながら楽しく喋っているところではあったが、冷たい顔をした父親に一人別室に呼び出された陸也はそこで根掘り葉掘り、娘と何をしていたのか聞き出されることになったのである。若い男女が二人、ベッドの上で横に並び合い、手を繋いで離すなど、それだけでも父親にはたまらなかったが、何より良くなかったのはお忍びで会っていたことで、何をこそこそとやっとるんだ、もしかして遥奈の帰りが遅くなっていたのはお前のせいか、俺は娘が嘘をついていることなんて分かっていたが、やっぱりそういうことだったのか、などとまだ高校一年生の陸也には手のつけようが無いほど怒り狂ってしまい、最終的に下された結論は、二年間遥奈と会わないこと、通話もしないこと。お前もその時には十八歳になっているだろうから、その時に初めて交際を許可する。分かったなら早く家へ帰りなさい。――と、遥奈に別れも告げられずに家を追い出されたのである。
だから陸也はもう一年以上、あのおっとりとした声を聞いていないし、あのほっそりとした指で頬を撫でられていないし、あのぷっくりと麗しい唇と己の唇を重ねられていないし、あの人を一人や二人は簡単に飲み込める巨大なおっぱいに触れられていないのである。二年くらいどうってことない、すぐに過ぎ去る、と思っていたけれども、妹に己の欲望をぶつけてしまうほどに彼女が恋しい。今も一人この鮮やかに街を照らす夕日を眺めているのだろうか、それとも窓を締め切って、カーテンを締め切って、一人寂しさに打ち震えているのであろうか、はたまた無理矢理にでも攫ってくれない自分に愛想をつかしているのであろうか。――頭の中はいつだって遥奈のことでいっぱいである。汀沙から毎日のように状況は聞いているが、自分の目でその姿を見られないのが非常にもどかしい。陸也はもたれかかっていた電柱にその悔しさをぶつけると、その場に座り込んだ。
「先輩、大丈夫ですか?」
「無理かも。……」
「あ、あの、……無理言ってごめんなさい。……」
「いや、汀沙が謝ることはないよ。全部俺の意気地が無いだけだから。……」
「……先輩、私はいつだって先輩とお姉ちゃんの味方ですからね。だからあと半年感、――ちょっとおっぱいは足りないけど、私をお姉ちゃんだと思って好きなだけ甘えてください。ほら、――」
さらさらと、汀沙が頬を撫でてくる、ちょうど遥奈と同じような力加減で、ちょうど遥奈と同じような手付きで。………
「ありがとう汀沙、ありがとう。………」
絞り出したその声は、震えていてついには風切り音にかき消されてしまったが、側に居る汀沙の心にはしっかりと響いていた。
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usickyou · 3 years ago
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運命の人
   この出会いを、運命でなくなんと呼ぼう。
 1
「貴音、オフだよね?」  早朝。そう尋ねられた二時間後、私の体は空を浮いていた。  当機は安定姿勢に入ったとアナウンスが告げ、私はシートベルトを外して小さく緊張を吐き出した。飛行機には乗り慣れている、そう言ってもいいだろう。けれど、いつも不安になる。ゲートをくぐる瞬間の、自分が異物になったような感覚。柔らかな座席の、排他的な感触。空へ発つ際、地面が崩れていくような振動。見慣れた街の景色が消えていく。あらゆる現象が、再びあの暖かい場所に戻れるのだろうかと、私を心細くさせる。  空は、見上げるにはあまりに美しく、溶け合うにはあまりに恐ろしく、いつだって心を捕らえて離さない。 「やっぱり、怖い?」  隣には、響がいる。当然のように私の手のひらを包んでくれる彼女も、もちろん私も、もう少女の歳ではない。他人に見られれば、悪戯な、邪な、あらゆる好奇を生むことは互いに理解している。  けれど、響は私に触れる。きっとここでなくとも、彼女は私のために手のひらを包んでくれる。 「平気……とは言えませんが、ええ、慣れました」  この言葉は、嘘だろうか。  私の世界には、恐いものがたくさんある。飛行機が恐い。人の悪意が恐い。おばけが恐い。茫漠たる空が恐い。  あなたは、その世界の最も離れた場所にいる。  けれど、世界をくるりと丸めてみる。二つの世界は接し、混じり合い、一つになる。 「大丈夫だぞ、貴音。自分とずーっとしゃべってたら、あっという間だから」  そう言って響は、少女の頃のような笑顔を見せてくれる。  その瞬間に、触れ合う手にかすかな痛みが走り、手から腕、体、全身へと広がる熱を感じた。  きっと、血が流れている。見えはせず、触れられない。そういう血が、この空へどろりと溶け出している。  そうやってこの青い空は夕に染まっていくのだと、そんなことを、考えていた。
 2
「……本当に、この島はいつも暖かいのですね」 「うん。日が出てれば半袖でも平気だぞ」 「海は、泳げるのですか?」 「さすがに厳しいかな。入りたいの?」 「いえ、気になっただけです」 「あとで、見に行こうね」  曇天模様の空の下、とりとめない話を繋ぎながら、空港を後にタクシーへ乗り換える。壮年の運転手は、響を認めるとすぐにあれやこれやと背中越しに言葉を降らせた。  娘が響のファンだとということ。娘は高校生で、合唱部だということ。年頃だから会話も減ってきたが、響に会ったと言えば羨ましがるだろう、ということ。  初めて会うにも関わらず、彼と響は十年来の知己であるかのように言葉を交わした。去り際に撮ったスナップ写真と領収証の裏に記したサインは、きっと彼の大切になるのだろう。  ごめんね、こっちだけで話しこんじゃって、と響は私に手を合わせてみせる。構いませんよ、と返し、響が愛されていることが嬉しいと、伝えようとして、その言葉を飲み込んだ。どうしてそうしたのかも、知らず。 「しばらく、歩くのですか」 「うん。疲れたら言ってね」 「……では、少しゆるりと行きましょう。これほど快い時間は、久方ぶりです」 「よーし、エスコートするからな!」  よしなに、と私は響の半歩後ろを歩く。響は、目に映る景色、漂う香り、流れる音の全てを伝えようとするかのように、語りかける。新緑より鮮やかな草木のこと。触れると思うより柔らかい石壁。鳥たちの奏でるメロディー。歌声。また、響の思い出。この柵を飛び越して怪我をした。ここで花の蜜を吸っていたら蜂に刺されたこと。部活動の大会で負けた帰り道。  私の知っている響が、私の知らない響を教え、そうして、私はもっと響を知っていく。 「あの花は、なんというのですか?」  ふと、目に留まったのは道端に咲いた一輪の花。白に臙脂を一滴混ぜたような色、花弁はひとひらでなく櫛で梳いたような形、簡単にいじけてしまいそうな、どこか頼りなさげな容貌。 「うーん、自分植物はあんまり詳しくないから……」  と、考え込む響へ、少し目についただけですから、と謝意を伝える。 「……あ、撫子! そうそう、昔、おばあが珍しいって言ってたんだ。……この花、なんだか貴音みたいだね」  響は撫子の花と私を交互に見やり、ふんふんと頷いてみせる。撫子、ですか。と承知を見せながら、私は覗かせていた下心の尾を掴まれたように思えて、気恥ずかしく顔をそらしてしまう。 「ちょっと待ってね」  そう言ってかがみ込んだ、響は何かを始めた。私は、赤らんでいるかもしれない顔を覗かせるよりも、背中越しに尋ねてみる。 「何をしているのですか?」 「この子に聞いてるんだ。一緒に行かない、って」 「……ですが、響」 「……うん、そうだよね。わかったぞ」  かがみ込む瞬間と同様に一息に立ち上がると、響は私にぱちんと手を合わせてみせる。 「ごめん! やっぱり、ここから離れたくないって」  響の唐突に少々驚かされながら、体のどこかで生まれた緊張が溶け出していく。 「ええ、私も、そうであってほしいと思っていました」 「そうだよね。……でも、貴音の髪に差したらすごくきれいだ、って思ったんだ」  その心だけで十分です、ありがとうございます、響。そう伝え、再び灰色で蓋をしたような空の下を歩き出す。そうしながら、私は響の想像に自身を重ねていた。  響が、手ずから折った撫子の花を持ち、細く柔いその指で私の髪を梳きながら、そっと、すぐには零れてしまわないよう、丁寧にその一輪を織り込んでくれる。私は目を閉じてただひたすらに、従順に待ち受け、やがて響の言葉を合図にしずしずと瞳を開いてみせる。 「たかねー、こっちこっち!」  その瞬間、響はなんと私に言うだろう。  しかし、その瞬間の幸福、きっと多くを投げ出しても得難いほどの幸福よりも、道端に咲いた一輪の花を手折らなかった、その行為が私を幸福にさせる。響の世界に咲く一輪の花が、まるで私の世界にも咲いたようだ。  逸る心をなだめ小走りで駆け寄りながら、私は、次に見える響の世界に待ち焦がれていた。  次はどうして、どんな花が咲くだろう。
 3
「……ああ、真、素敵な晩でした。そうきそばに、ぱぱやーちゃんぷるーの甘露……」 「あんまーも喜んでたぞ、おいしそうに食べるから作りでがあるって」 「ふふ、有り難きことです」  響の家族との夕餉を終え、入浴を済ませ、明日の準備、そうしてもう日付をまたごうかという時刻。 「明日は、何時入り?」 「十四時です。響は?」 「自分は十七時。ごめんね、もうちょっとゆっくりできたらよかったんだけど……」 「いえ、この上ない、素晴らしい時間でした」  そう、眠りに着き明日を迎えれば、私たちには戻る場所がある。思いつきや気まぐれで二日三日の時間を過ごせないほどには、私たちは多忙な日々を送っていた。  特に、今の私に至っては。 「ねえ、貴音」  響が呼びかけ、なんですか、と私は答える。その瞬間に、時計は零時を差し、今日という雫が広大な昨日の海に呑み込まれていった。 「少し、歩かない?」  頷き、私たちは立ち上がる。足音を消して階段を下り、先の喧噪が夢であったかのように密みきった居間を抜け、サンダル履きで玄関をくぐった。  夜は寒いから、と持参していた上着を羽織り、月明かりの差さない夜を二人潜っていく。足下気をつけてね、と響に手を引かれ、そのなすがままに歩く。昼間とは違い、言葉はない。何も語らない響の意志を、私は背中越しに覗き見ている。  そうして、はじめに感じたのは、潮の匂い。次に、肌を撫ぜる風。耳に波の音。  そして、開けた視界に、一面の海。  ああ、と言葉を失う私の手をさらに引き、響は波打ち際のそばに立ち止まると、一歩足を引いて私と肩を並べた。 「これをさ、見せたかったんだ」  本当は晴れてたら、月の光が海のずっと向こうまで道を作って、もっときれいだった。そう、響は続ける。月は雲間に隠れ、目を凝らせば居場所を探すことはできるが、その姿を捉えることは叶わない。 「……懐かしいね」  ささやくように、一人言のように響が言う。けれど、その言葉、そこに内包された記憶を、私は知っている。 「ええ、皆での旅行の晩も、こうして二人で海を眺めましたね」 「……うん。あの海も、すっごくきれいだった」 「ええ。お互いまだ、十代の頃でしたね……」 「自分なんか、十六だぞ」  過ぎ去りし過去を想って立ち止まるには早すぎると、知っている。  けれど、少し振り返るくらいはと、そう思う。 「遠くまで、来たよね」  並び走る皆がいて、そして、空と海と憧憬を分かち合う響がいた。 「貴音、自分ね」  だから今日まで、ここまでたどり着けた。 「さよならの、練習に来たんだ」  響を見る。その視線は変わらず海の向こうに、焦がれるように注がれている。だから、私も同じ場所を見つめる。懸命に、けれど広範へ、響と同じものを見つめるために。 「予感は、していました」 「だよね。皆とお別れなのは、貴音なんだから」  でも、自信がないんだ、と響は続ける。 「もうすぐ、最後のライブとさよなら会でしょ? 自分、今はまだ普通にできてるけど、その時にはどうかわかんないから」 「だから、練習を?」 「うん。笑って、さよならしたいんだ」  よいしょ、と響は砂浜に腰���下ろし、私も倣って隣へ座る。  二人の間に、ささやくような波の音が響いている。 「私も……笑顔で迎えたいと、思っています」  波の間に滑らせた言葉は、声ではなく、かすかな首肯の気配で返される。視線は、あくまでも遠くへ。私が旅立つ未来。響が進む未来。月の光が差さない夜には、どれほど先を見ても交わる二つの線は、ない。 「それと、もう一つあってね」  響は、すうっと指を一本立てる。 「貴音に、知ってほしかったんだ」  一つ。きっとそれだけの仕草なのだろう。けれど私の瞳には、光ない海に一筋の道を描こうとする、そ���な尊い行為として映る。 「ここ、ですか」 「そう。自分が、いつか帰る場所だから」  掲げた指がなくなり、私の瞳には、そして、きっと心には一条の残像があった。遙か彼方、おそらくは水平線の向こうまで延びる、光の行路。 「……こんな、重く雲がかかる夜には」  ふと、昔々に聞いた話を思い出す。あれは童話かおとぎ話の一節、それとも創話だったのだろうか。話してくれたのはじいやか、ばあやか、もしかすると母だったか、それすら判然としない、遠い過去のこと。 「雲の向こう、高く遠い空の内で、人目を逃れた太陽と月が逢瀬を交わしているのだそうです」 「何を話してるの?」 「わかりません。二人だけの、秘密なのだそうです」 「ひょっとして、今考えた?」 「ふふ、どうでしょうか」  あの記憶は、本当だろうか。もしかすると響の言うように、私が私の目を盗んで作り上げた、絵空事なのかもしれない。 「響。どうか、聞いてください」  だとしても、この想いにも、願いにも、いつか訪れるその日に焦がれる心にも、何も変わりはない。 「太陽も月も浮かばない、こんな曇天の空にあっては、雲の上、私と踊ってほしいのです」  だから、私は先へと進むことができる。 「なんか……照れるぞ」 「そうでしょうか」  貴音はそのへんすごいな、と響は呟いて、少しあり、答えるように呟く。 「また、会えるよね」  私も、小さな声で、しかし波音に消えないように答える。 「互いが願っていれば、必ず」  うん、と返す響の声を最後に、会話は途切れた。  私たちは、心を整理する。さよならの練習と、再会の約束と、あんまーの料理、道端の撫子や、タクシーの運転手、飛行機、『貴音、オフだよね』。記憶を辿り、その一つ一つを混ぜ合わせ、そっと磨き、そうして生まれる、宝石のような感情。  光も、星も、雨も降らない、こんなにも静かな夜に、かがやきが降り注いでいる。
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 早朝の空港は、平日ということもあって概ね落ち着いていた。これなら急ぐ必要もない、そう思いながら早めにカウンターで手続きを済ませる。何事も、準備しておくに越したことはない。ましてそれが、習慣の外にあっては尚更のことだ。 「準備できた?」  空の色をした外套に身を包み、響はいつもと同じように溌剌と私を呼ぶ。白く澄んだ朝の空気を背負って佇む、その姿はどこか静謐の空気を感じさせた。  その手に、帰りの航空券は握られていない。 「滞りなく」 「一緒に帰れなくて、ごめんね」 「いえ、……いい練習になります」 「うん。だと思ったんだ。でも……」  響の言葉の上から、柔らかい女性のアナウンスが降ってきて、搭乗の時間、この練習を締めくくる時を告げた。  私は、待つ。言葉を繋がず、瞳をそらさず。  響は何かを伝えようと、二度三度と決意の仕草を繰り返す。けれど、言い澱み繰り返す、その仕草はやはり、響には似合わない。 「……でも、自分ってやっぱ完璧だな! って思って!」  その言葉��私の心を揺り動かす、記憶の触媒。  そして、言葉の通りに完璧な響の笑顔。 「……ええ。本当に、本当に完璧な計画でした」  だから、私も出来るだけ、完璧な笑顔を返す。優しい光が降り注ぐ、こんなにも綺麗な日に似つかわしいのは、きっとそちらなのだから。 「さようなら、響」 「さよなら、貴音」  その一言、それと一度の握手と、それだけを取り交わして、私たちはお互いへ背を向ける。そうして一度も振り返ることなく、二人は遠ざかり、姿さえ見えなくなる。  そうして、この旅は終わりを迎えた。
 安定を告げるアナウンス、その機械的な声色が私を小さく恐怖させる。シートベルトを外して緊張を吐き出すと、柔らかく排他的なシートに体が預けた。  私の世界には、恐いものがたくさんある。飛行機が恐い。無邪気な悪意が恐い。ヘビが恐い。先の見えない未来が恐い。  響のいない世界。  ちらりと隣の座席を見る。そこに、響はいない。私の心を誰より先に探し当て、手のひらを包んだその暖かさは、今は、もうない。  けれど想像していたよりも、平然としている私がそこにはいた。  それは、振り切れた感情の、いわば恐慌状態だろうか。きっと、違う。あるいは、睡眠不足による無感動。または、麻痺。空元気。一過性の安定飛行。  きっと、どれも違う。  願う限り、必ず。その宝石を、私はもう胸のうちに宿していて、だから、ひとりきりでこの青い空を飛んでいられる。  この空に、血の色は混じらない。 「……ねえ、ねえ」  ふと、気が付くと、少女がいた。全く見知らぬ、年の頃なら五つくらいだろうか。浅く焼けた髪に南国の花冠を巻いて、私をじっと見上げている。 「どうか、しましたか?」  平静と、私は答える。もしかして、私を知っている? ありえないことではないと、そんな風に考えていた。 「どこか痛いの?」  しかし、飛んできたのは予期せぬ言葉。 「いえ、どうしてですか?」 「だって、お姉ちゃん泣いてるから」 「……ああ、そうですね」  そう言われ、知る。私は泣いている。 「大丈夫?」 「ええ、平気です……平気なのですが……」  私は、確かに泣いている。けれど、悲しくはない。嬉しくて、人は泣くのだと、今、私は彼女に伝えたい。 「元気だしてね、これ、あげる」  しかし、移り気な少女の時間は私の心を待ちはしない。ポケットから一輪、しおれかけた花を取り出し、私へ押しつけて去っていった。  ありがとうございます、と手渡された花を見つめる。  白と臙脂。響が手折るのをためらった、撫子の花。  なんという、ことだろう。  響の優しさと、少女の純粋。それぞれに付託された行為。個別たる意志はなんの連なりの持たずして巡り、私へ幸福と、一輪の花をもたらした。  これを、なんと呼べばいいのだろう。  少し、呆然と眺めていた。花弁に雫を落とし、ようやく涙を拭くことを思い出す。  ハンカチで頬を拭いながら、窓の外へ視線を飛ばした。照りつけるような空の色、瞳をぐんと圧されるような感触をこらえながら、眼界の端々まで空を見渡した。  雲の上で踊る、太陽と月は存在しない。  視線を外し、瞳を閉じる。少し、眠っておこう。ほんの一時間でも、このまま起きているより���、ずっといい。  手のうちに、頼りない手触りを感じながら、意識はまどろみの内に落ちていく。  瞼の裏で、私たちは出会う。髪を下ろし今日よりずっと大人びた響と、少し髪を短くした私。砂の上で、二人は踊る。来たるべきものはどうしようと来たる、その喜びをこの世界に刻み込むように。  傍らで、一輪の撫子が風に揺れている。  この運命の二人を、祝福するように。
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yamashita03 · 7 years ago
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迷ったら中米に行こう!~戦々恐々とコスタリカを旅する~
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20代最後の夏に思い切って中米コスタリカへ行きました。
幼稚園からの友人が海外協力隊として現地で活動しており、彼を頼りに8月10日から16日の1週間、初一人海外へ出て行きました。
コスタリカで見たものや経験はどれもみずみずしく新鮮なものばかりで、この気持ちが少しでもフレッシュなうちにメモを残しておきたいと考え、帰国の途につくコスタリカサンホセ空港にてキーボードを叩き始めました。(が結局書ききれたのがだいぶ後になってしまいました汗)散文的な内容になることを恐れずゴリゴリ書いていこうと思います。
【コスタリカの概況】
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言語はスペイン語。国教はカトリック。そのため街の要所には教会が立ち並んでいる。
コスタリカの歴史は基本的にはスペイン人統治時代から始まり、それ以前の先住民の歴史的、文化的な遺産などの観光資源に乏しいのが現状。
しかし、先住民たちが森を切り開き巨大な文明を築かなかったことと恵まれた気候から自然が非常に豊かで九州と四国を合わせた程度の国土面積に、地球全体の5%もの動植物が存在すると言われている。
国はこの点を自国の観光資源として捉え、国土の多くを国立公園として保護し、その自然の中を探索する『エコツーリズム』を世界に先駆けて始めた。これが世界に受け入れられ、それまで農業依存だった国の経済構造を好転させた。
そのほかにも軍隊を持たない平和国家として、軍事費に充てていた費用を教育や医療、再生可能エネルギーなどに投資し、前述のエコツーリズムに加え、中南米で屈指の教育、福祉、自然エネルギーの国��して強い国家アイデンティティを保有している。(日本も見習いたい)
街の観光地はどこもごみが少なく、水道水も飲めるのは中米に限らず世界的にも希少な国のひとつではないだろうか。
【コスタリカの人々】
・観光地のガイドからUberのドライバー、クラブに来ていた若者に小学生まで様々な人と触れ合ったが総じて気さくで穏やかな人が多かった印象。車の運転もアジアなどに比べても丁寧な感じだった。
・観光地やホテルでは英語を話せる人が非常に多いため、スペイン語が苦手でもガイドを受けたり簡単なコミュニケーションは十分可能(ただし自分は英語もできなかったため状況は変わらなかった)
・中米の中で治安が良く経済が安定していることもあり、多くの移民が存在し、とくに貧しいニカラグア人が市街地でホームレス化している現状が社会問題となっている。そのほかにも社会情勢が不安定なベネズエラ人なども目立った。
私のコスタリカ旅行
友人が1週間のバカンス休暇を取りほぼ土地勘もコミュニケーションもできない私にほぼ24時間付き添ってくれて様々な場所に行かせてくれました。
現地で撮った写真を見ながら適当な順番と粒度でコスタリカについて語りたいと思います。
1.市街地の風景
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成田からヒューストンを経由し、サンホセ空港に到着。
駅からバスでサンホセ市街地へ出て街を散策。初めての中米だが、町の雰囲気は東南アジアとも近い印象。首都ということもあり、おそらく単純に国の経済力、発展度によって似た雰囲気の街が出来上がってしまうのかもしれない。(日本も昔はこうだったのかも)
市街地には人通りが多い。また、路上に座り大声で物売りをする人も多く見かけたが、友人曰く彼らはニカラグア移民だとのこと。あまり近づかないようにした。
2.食事
「コスタリカの食事はマズイ」と友人から聞かされていたため戦々恐々として乗り込んだものの、総じておいしかった。ただし、値段の割に(というか高い店に限って)全くおいしくない店もあり、その辺はどんな店でも一定のクオリティは保っている日本の外食店文化のありがたさを感じた。
<上流国民編> 
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初日夜は友人の現地の友達で日本に留学経験もあるというコスタリカの方とコスタリカの中ではちょっとハイソな街で夕食。とてもいい方たちだった。
写真は2件目に行ったビールバー。クラフトビールの飲み比べができた。
※ここに関わらず外食費は総じて日本よりやや安いものの大きな差はなく、中米の中では非常に高いとのこと。家族を大事にし、家での食事を重んじる国民性があるとはいうものの、平均月収が日本の数分の一ということを考えると外食はなかなか大変な出費になるのだと思う。
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山でのレジャーや森の散策を楽しめるモンテベルデ自然保護区で止まったホテルの隣にあったレストラン。モンテベルデという土地柄もあり周りは外国の観光客だらけ。
キャンドルがあったりと店の雰囲気は日本の都会のおしゃれレストランさながらな雰囲気だったが、料理は10ドル弱、ワインもボトル15ドル程度となかなかのコスパ。そして味が抜群にうまかった。この旅の中でもトップクラスに満足した食事だった。
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同じくモンテベルデでの食事。わかりづらいが、本物の大木をそのまま残し、その周りに3階建ての建物を巻きつける(?)ような特徴的な構造を持ったモンテベルデの有名レストラン。パスタは15ドル程度と結構お高め。
ただ申し訳ないが味がマズかった。4分の1程度しか食べれなかった。友人が「コスタリカの料理は味が薄い」と言っていたのはこれか!と納得。
その後パスタは宿へ持ち帰るも、部屋に置いておいたら蟻の餌食となり無事死亡。
<庶民編>
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友人行きつけという現地の食堂にて。コスタリカでは米(左)、レモンとパク���ーの効いたサラダ(中央)、ポテト(右)、豆(奥)を基本セットに、そこに豚肉やチキンなどのメインが乗るワンプレート料理がスタンダード。
米はタイ米などに近く、日本のよりも細長くて水分が少ない。また、黒い豆と米を合わせて炊くとコスタリカの伝統料理「ガチョピント」となる。
だが、米と豆を別々に食べても味は大差ない。
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これは別の店だが、基本は一緒。そこに焼きバナナなどがついていた。
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モンテベルデの屋台にて。鶏むね肉とポテトというシンプルで豪快なファストフード。非常にボリューミーだが500円程度。美味しかった。
<家庭料理編>
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チフリーゴ。友人がお世話になっているホストファミリーのお家に自分もお邪魔してごちそうになった伝統料理。
ご飯に鶏肉と豆が乗っており、そこに刻んだトマトとパクチー(←これもよくコスタリカで出てくる)をお好みで載せて食べるどんぶり。鶏肉にトマトの酸味やパクチーの刺激が合わさりとても美味しかった。
米を食べる文化があるため、各家庭に炊飯器もある模様。(米があるのはありがたかった・・・)
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朝は旦那さんのほうが準備してくれた。ガーリックトーストにソーセージに卵、そしてパパイヤとかなりボリューム満点でおいしかった。
3.文化編
<原住民編>
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原住民が木の実などをすりつぶす際に使用していたとされる石の机。独特な形状が面白い。石工技術の高さがうかがえる。
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よく日本のテレビなどでもコスタリカを紹介する際に一緒に出てくる謎の石球。その製造年代や製造方法、作られた目的などが不透明で一部ではオーパーツの一つともいわれていたが、現在では研究も進みその謎が徐々に明らかになっているとかいないとか。
ちなみに写真は国立博物館にあったレプリカ。本物はコスタリカの郊外にあるため、観光地にはしばしばこのようなレプリカ���置かれていた。
<建造物>
国立劇場
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コスタリカを象徴する建造物の一つ。この建物を壊したくないがために内紛が起こらない、と言われるほど現地人からも愛されているという建物。劇場内部も見学ができる。
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息を飲むほどの迫力。今なお現役の劇場として使用されており、しばしば日本の能や和太鼓の演奏なども上演されるとか。
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受付兼待合室。豪華すぎて落ち着いて待てなさそう。
ロスアンヘレス大聖堂
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首都サンホセの隣の県カルタゴにある大聖堂。国内各地から人々が巡礼に訪れる聖地で建物も非常にでかい。
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中の造りも荘厳で素晴らしい。礼拝に訪れた人は中央の通路を膝立ちで移動して祭壇へ向かう慣習があるようだった。我々は邪魔にならぬよう脇の通路を回って見学した。
<若者文化>
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現地人が多く集まる深夜のクラブへ友人と2日連続で繰り出した。入場前にID(自分の場合パスポート)と場所によってボディチェックが行われ、さらに場所によっては入場料も支払う。
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クラブで飲むのは大体ビール。他の酒より値段が安いため、お金のない現地の人もビールばっか飲んでいるとのこと。
ちなみにコスタリカのメジャーなビールはimperialとPilsenの2種類。そしてちょっと高くてマイナーなBAVARIA(写真)がある。味はimperialが薄くて軽く、Pilsenは少し香りとえぐ味が強い印象。BAVARIAはその中間といった感じ。
美味しかったのは写真に乗せたBAVARIAのゴールド。一番日本のビールに近い。時点でimperialのsilverという種類のもの。
BAVARIAはあまり扱っているところが少ないため、一通り飲んだ後はimperialを選んで飲むことが多かった。
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左の黒人Jango。入場の手続きで手間取っていると後ろから声をかけてきた。身長めっちゃ高いし超怖い。
でも本当は荷物を預ける場所を教えてくれようとしていたこのクラブ界隈の従業員?オーナー?的な人だったらしい。その後テキーラを2杯もご馳走してくれた。めっちゃ気さくでいい人。
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ぶれぶれ。お酒飲みながら爆音の音楽を聴いてるとある若者グループの輪に招かれて一緒に踊ってた。なんとなくアジア人で(自分は楽しんでたけど)周りになじめてないオーラが出ていたのか誘ってくれたのだと思う。
言葉は通じないけどお酒もあいまって身振りや表情でコミュニケーションを取る感じがなんとも楽しかった。
友人が話したところそこのグループにいたほとんどの人がベネズエラ人だったとのこと。ベネズエラといえば近年の超インフレで経済が破綻寸前、首都の治安は世界最悪と言われている国。あんなに気のよさそうな彼らの背景にそんな深刻な事情があるのか、と色々と考えさせられた。
4.自然編
上でも触れたモンテベルデ自然保護区にて、昼と夜の森林散策ツアーやキャノピーなどのレジャーを体験した。
昼はオランダ人の家族と一緒にガイドの話を聞きながら野山を散策。
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トゥカーン(の子供)
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なんか笑顔の木
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景色が一望できる!と思ったもののあいにくの雨。朝は晴れていたのに、、
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羽が透明な蛾?
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ゴミをあさっていたアライグマ。全然人を怖がらない。
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ちょっとここからはモンテベルデではないけど、
これは幻の鳥といわれるケツァールを見にいくツアーでの朝の集合場所のロッジに来ていたハチドリ。
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で、1時間以上何か所もポイントを回ってやっとお目にかかれたケツァール。 これはメスのため尾が短いが、オスはもっと尾が長く色も鮮やか。残念ながらこの日オスはお目にかかれず。
5.その他
帰国最終日にどこ行きたいかを友人に尋ねられ、彼の職場のゴミ収集センターと地域の小学校へ行くことに。
サンホセのゴミ収集センター
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回収されたごみたち。袋の中身はまだまだ分別が行き届いていない状態。
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各地から届けられたごみ袋はこの台で職員の方が一つ一つ開封し手作業でごみを仕分けている。
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普段はこの仕分け作業をおばちゃん2~3人で行うそうだが、この日は民間企業からCSR活動の一環と職場体験ということでさらに数名参加していた。エライ
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ペットボトルは無色と有色のものを分けてプレス。プレスすることで輸送にかかるコストを下げている。
これらは民間の業者に売却され、資源として再利用される。
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段ボールも同様。談笑しながらも手際よく潰してトラックにつめていた。
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外では家庭のごみなどを持ってくる人がごみを捨てていた。まだまだポイ捨てなんかも多く、ゴミに関しての市民の意識が低いとも感じられたが、このように律義にごみを持ってきて捨ててくれる人がいることがありがたいとのこと。
サンホセの小学校
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その後サンホセの小学校にアポなしで突撃するも、友人の顔パスで難なく入れた。
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カメラを向けると照れて顔をそらす子供。なんかとても開放的で自由な雰囲気。
生徒たちは全員1日学校にいるわけではなく、上級生と下級生が曜日ごとに午前、午後の授業日を交代でまわすようなカリキュラムを取っているそう。
例えば月曜日の午前が上級生の授業なら、午後には上級生は下校��、下級生が授業をする。火曜日はその逆、といった感じ。
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後者が”ロ”の字型になっており、中庭が校庭になっており、中央の礼拝堂を挟んでコンクリートのバスケコートが二面あった。
ただしバスケを行っている生徒は誰もいなかった。コスタリカ人はサッカーが好きだからフットサルコートにでもすればいいのに。
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牛乳パックを再利用してできた机だそう。木のように固い。
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体育の時間で誰もいない教室。
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パソコン教育も行われている。ここのパソコンも友人の協力隊活動の一環で企業から提供されたもので、この部屋はそのために新たに作られたものなのだそう。
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食堂。おやつにフルーツを振る舞われることも。
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帰り際に先生に挨拶をすると我々もフルーツをゲット。リンゴをむしゃむしゃ食べながら帰路についた。
さいごに:コスタリカを旅行しての感想いろいろ
1.意外と多かった、日本を親しんでくれる人々
この旅で最も印象深く嬉しかったものの一つが日本に親しんでくれている人が多かったこと。上でも述べた初日に紹介してもらった女性たちのほかにも、例えば2日目に行ったクラブでは「日本人!?」と声をかけてくれたコスタリカ人がいたのだが、彼はなんと3月まで我々の地元の宮城県の東北大学に留学していたとのこと。
さらに4日目に利用したUberの車の後ろにはなぜか日本の国旗が飾ってあって、話を聞いてみると彼は日本にこそ行ったことないものの、日本の興味があり自主的に日本語を学んでいるとのことだった。友人曰くこんなに色々と日本を知っている人に出会うことは珍しくてラッキーだったとのこと。楽しい出会いのある旅行だった。
2.中米への関心が深まった
当たり前すぎる小学生並みの感想だが、こちらも自分の心に大きな変化をもたらした。
先ほども述べたようにあまり日本人にとってなじみのないコスタリカだが、地球の裏側では日本に関心を持ってくれている若者たちがいる。そしてみんな気さくで親しみやすく、とても可愛げのある人たちだった。
日本に興味を持ってくれている人たちがこんなにもいてくれていることを考えるとすごく嬉しく感じたのと同時に、自分たちももっと海外に目を向けていかなければいけないと感じた。
さらに前述したベネズエラ人との出会いも考えさせられるものがあった。恥ずかしながら自分はベネズエラなんていう国は国名を知っている程度の知識で、彼らに出会わなければきっとこの先もベネズエラに関してここまで関心を抱くこともなかったと思う。
帰国してすぐに、超インフレが進むベネズエラでは桁を減らすための新たな通貨の単位を作るという経済政策が打ち立てられたとのニュースが入ってきた。もちろんこんな政策ではさらに経済を混乱させることになりかねないという見方が大半だ。経済が混乱すれば他国への移民問題もより深刻になるだろう。これから先中米はどうなるのか、今後の情勢には色々と関心を寄せていきたいと考えるようになった。
3.外国語を話せるようになりたいと思うようになった
今回の旅行は友人のサポートもあり様々な出会いと気づきのある非常に楽しい旅行だったが、それゆえに言葉を理解して自分の気持ちを伝えられないもどかしさを抱えていた。
例えば彼のホストファミリーの家にお世話になった際も、食事を「美味しい」という気持ちすらうまく伝えられず非常にもどかしかった。お土産に持って行った九谷焼についても、本当はその背景にある日本の文化や歴史なんかを話したいという気持ちはあれどそんな高度なコミュニケーションが取れるはずもなく、、
ホストファミリーのおじいちゃんおばあちゃんが本当に親切にしてくれただけに、自分の気持ちを言葉で伝えられない歯がゆさがあった。
海外旅行は恐らく簡単な英語と身振り手振りで頑張れば、観光地を巡ったり宿に泊まったりなどある程度の目的は達成することができると思うし、実際自分もその程度で良いと考えていた。
でも海外旅行で一番楽しいのは現地の人との生のコミュニケーションだろうと思った。その土地の人が何を考え同くらいしているのか、そういったことを言葉を介して理解し、また自分の考えも相手に伝えられるようになりたいと強く感じた。
せめて日常会話レベルの英語でも身につけたい。。30年弱の人生で今が一番外国語学習欲が高まっていると感じている。今やらないと一生やらない気がするので、ひとまず本を読みながら拙いながらも話せるように勉強中。
4.ごみのことに関心を持つようになった
友人の職場に行き、いろいろとごみへの思いを語ってくれたこともあり自分もごみへの関心が高まった。
自分が普段何気なく出しているごみも処理には多くの人手が必要ということ、作業はハードなこと、そして何よりも地球上の多くの人が関わり、今後も関わり続けていかなくてはならないものだということ。
現地の方の仕事ぶりを見て説明を受けると、自分もなにかできないか自然と思いを巡らせていた。
例えば友人はごみを出す段階で分別がされていないことがひとつの問題と言っていた。
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なるほど、確かにゴミ箱は色分けされてどこに何を捨てるべきかが分かりやすくなっている。
ただ、ちょっとデザインの���点から考えてみるとゴミ箱の上にはごみの種類が分かるような絵を入れたり、ゴミの入れ口を入れるごみの形にしてごみを捨てる行為をアフォードさせるような施策があってもよいかと感じた。
現状だと識別する要素が色と小さく書かれた文字のみのため、例えば歩きながら街を歩く人がごみを捨てようとした際に反射的に自分が捨てたいごみの正しいゴミ箱を判断しづらいのではと感じた。色とごみの種類に明確な関係性がないため、ほかの要素で使い手に正しいゴミ箱を反射的に認知させる仕掛けが必要と考えた。
日本のごみ箱はまだそのへんが少し良くできていて、入れ口の直下に何を入れるごみ箱なのかを絵と言葉で入れることでごみを捨てる人の目に必ず入るように工夫されているとともに、口の形状で何を入れるべきかを感覚的に示している。
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缶やペットボトルなど、入れ口を丸くすることでそのごみ箱が飲み物の容器を捨てるものだと把握できるのと同時に、丸い形状に筒状のものを入れたくなる人間の心理も上手に作用させている。
そんな小さな改善を重ねながら、街がもっと綺麗になってコスタリカ人のごみへの関心が高まることを願っている。
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recordsthing · 4 years ago
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志希晴拘束えっち
久々のR-18 えっちな描写に全振りしました tumblrって官能小説OKなんですね  イベント後の楽屋に残ってしまっているのは、疲れているせいとかこの後に打ち合わせがあるとかじゃない。ソファーに座っているのだが、後ろからしっかりと抱きつかれていて、身動きがとれなくなってしまっているのだ。 「なあ、どうしたんだよ?」 「…………」  さっきからずっとこの調子だ。同じユニットの皆は既に解散してしまって、オレが残っていたところに志希がやってきた。ソファーに座って帰り支度をしていたのだが、挨拶もせずに抱きついてきてから、不機嫌な様子のまま何も言わない。とはいえこのままでは埒が明かない。どうにかこうにか志希が不機嫌な理由を考えていはいるが、これといった理由を思い出せない。確かにお互い仕事が忙しかったが、廊下ですれ違う時は挨拶したし、撮影の合間に会いに来てくれてちゃんと放したりしてたはずだ。 「なにかやなことでもあったのか?」 「…………違う」 「じゃあなんで不機嫌なんだよ……話してくれなきゃわかんねぇよ……」  つい語気が荒くなってしまう。しかし、怒っているわけではないのだ。どちらかというと不安な方が強くて、どうにかできないか悩んでいる。そんな様子を察してくれたのか、ゆっくりと志希が話し始めてくれた。 「だって……二人きりじゃなかったじゃん」 「……え?」 「あたしと晴ちゃん以外にプロデューサーやスタッフさんがいたり、他のアイドルの娘たちが必ずいたりしたじゃん……。だからこうやってぎゅーってしたり、色んなお話したりができなかった。せっかく晴ちゃんが傍にいるのにやりたいことや話したいことが全然できなくて、もどかしくて、寂しくて、辛かった」  抱きしめる力がより一層強くなる。志希の香りが鼻をくすぐって、ああ確かにこんな風に時間を過ごすことはなかったな、と思い出す。 「そっか、じゃあ今日はこれからずっと志希に付き合うよ。それならいいだろ?」 「ほんと!?ありがと晴ちゃん♪」  志希の喋り方が明るくなる。なにはともあれ、機嫌が直ったようで良かった。この時に一つ誤算があったとすれば、志希がやりたいことっていうことが自分が想像したこともないようなことで、それに付き合わされる破目になってしまったことだった。
 志希につれられて、倉庫の中のラボまでやってきた。今はもうほとんど使用されてないせいか、少し埃っぽいここは滅多に人が来なくて確かに二人きりになるにはもってこいの場所だ。なぜか志希はここの合鍵を持っていて、念入りに鍵までする。過去にどうやら一度間違って入って来てしまった人がいるらしく、その際に自分の実験道具で怪我をさせてしまうかもしれなかった、とのことだった。  棚と棚の間の実験スペースは、様々な薬品を扱うせいかある程度清潔に保たれている。ただし、大きな実験机の上は資料やら機材やらでごちゃごちゃしてるし、床に敷かれている布団は折りたたまれることなく乱雑に放置されてある。いつものように上に掛かってある布団をどかして二人でそこに座り込む。椅子もあることはあるのだが、机を使わないとき以外は基本使わない。布団の上の方が気楽な姿勢でいられるし、横になったりもできるからだ。いつもとは違う感触がするような気がして、目線を布団の下に向けてみるとオレが前に来た時にはなかったマットが敷いてあった。志希なりに気を使ってくれたのかな、と思うと自然と頬が緩んでしまう。  普段通りになにか話すのかな、と顔を向けた途端に志希の綺麗な顔が目の前に映っていた。あまりに一瞬の事で驚いていると、口に触れる感覚からようやく状況を理解する、 (あ……キスされてる……)  ここ一ヵ月近くこういうことをしていなかった気がする。どことなく懐かしい感触を覚えながら、ゆっくりと目を閉じる。わずかな部分に触れているだけ、それでも確かに感じる相手の愛情を長く深く受け止めあう。今までの時��を取り戻すかのように、お互いに離れようとはしなかった。  この時間がずっと続くと思っていたけど、不意に志希がオレの肩を掴んで引き離した。 「あれ……?」  目を開けると、志希はこちらをじっと見つめていた。普段の何倍も真剣な様子なのに、恥ずかしいのかほんのり顔が赤く染まっている。 「ごめん、晴ちゃん。もう抑えきれないかも」  優しくゆっくりと押し倒される。志希が望んでいることがわかるし、これから恥ずかしい目にあわされるっていうのもわかるのに、少しも嫌な気持ちにはならない。多分オレもそれを望んでいるんだろう。ああ、もうどうにでもなれ。好きな相手から求められるのは嬉しいって思ってしまうか��。 「脱がせていーい?」 「……一々聞くなよ、イヤって言っても……その……」 「うん♪でもやっぱり晴ちゃんの口から聞きたいなーって」 「…………」 「んーやっぱり我慢できないっ!」 「うわあっ!」  返事を待たずに押し倒されて、着ていた服を脱がされる。あっという間に下着だけにされて、まじまじと見つめられる。 「あんまり見んなよ……」  今着てるのは無地のブラとショーツが一緒に売られてるやつだ。服は基本おさがりだし気にしないのだけれど、こうやってじっくり観察されるとちゃんとしたもの着てくれば良かった、と思ってしまう。 「ん~、今度一緒に下着買いに行かない?それかプレゼントしてあげるっ♪」 「なんかそういうの選んでもらうの、すっげぇ恥ずかしいんだけど……」 「え~?もう気にしてないでしょ?今だってわざわざ脱がせやすい体勢でいてくれたし♪」 「~~っ!?」  本当か?いやでも確かに抵抗するよりか、志希に脱がされるのが当たり前になってて、手間取らないようにそうしている……気がする。志希のなすがままになっているどころか受け入れてる自分が急に恥ずかしくなって、膝と肘を折り曲げて身体の前に持ってきて、志希の真正面から離れるように姿勢を横にする、 「ねえ、晴ちゃん。ついでにもう一個だけお願いしていい?」 「……なんだよ」 「こういうこと♪」  志希の両手がオレの手首を包み込んだかと、いつの間にかバンドのようなものが巻かれている、両手首を一つの輪っかが縛っていて、自力では外せなさそうだ。両腕を開こうとしてみるものの、手首に食い込んでいるそれは充分な強度をもっていて外れる気配さえない。なんとなく、嫌な予感がする。 「なあこれ、外れねーんだけど……」 「次は足だね♪ほら暴れなーい」  絶対にマズいことになる。しかし、抵抗しようにも腕は自由にならない上に体格の差もあるし、志希の方が自由になるポジションにいる。結局抵抗らしい抵抗さえできずに、足首に細長いロープが巻かれて近くの棚の脚と結びつけられる。そのせいで、足が開かれたまま閉じることができない。縛られたせいで、身体は仰向けの状態に引き戻され横を向くこともできない。 「な、なぁ志希、もういいだろ?このカッコすっげー恥ずかしいし……」  今まで着せられてきたどんな衣装よりよっぽど恥ずかしい。自分の身が自由にならないことがこんなに恐怖を感じるとは思わなかった。身体が熱くなって、少しずつ汗が湧いてくる。 「うん、これで最後だから安心して♪」  志希の両腕がオレの頭の後ろに回ったかと思うと、視界が深紅に包まれる。ふわりとした感触からハンカチが巻かれているのだと察する。厚手なせいか、全く前が見えなくなったかと思うと後ろできつく結ばれる。 「これでよしっ!どう?」 「どうって……動けねえし前は見えねえし……不安だよ、志希」 「大丈夫、ちゃんと気持ちよくしてあげるから♪」 「そういう問題じゃ……っ!?」  頬に柔らかくて細い感触がした。志希の指だろうか。予想がつかなかったせいか、驚いて身体が跳ねてしまう。頬から首へと伝う感触がいつもよりしっかり感じられてしまうせいで、こそばゆくてしょうがない。手で止めようにも自由にならないこの視界と両腕じゃどうしようもない。 「どう?いつもよりしっかりと……あたしを感じられるでしょ?」 「あっ……」  耳元でそう囁かれる。志希の綺麗な声も、いい匂いも、やわらかで繊細な指の感触も、全部全部強く感じられて心臓の高鳴りが抑えきれない。どうしようもなく不安なのに、この状況に興奮してしまっている自分がいる。  体をなぞる指が首から鎖骨へと降りてきて、胸の中心から下へと辿っていく。その位置から下着が上へとズラされて、胸が外気に晒される。自分の呼吸がいやに大きく聞こえて、身体が息に合わせて上下する。 「ねえ、晴ちゃんからは何も見えないだろうけど……すっごくいやらしいよ、今の晴ちゃん♪」 「~~っ!!」 「晴ちゃんも……どきどきしてくれてるかな?」  追い打ちのような言葉で余計に羞恥心が煽られる。思考が一瞬止まった隙に、志希の指が離れたかと思うとショーツの締めつけが緩くなって、代わりに小さな固い感触が腰の両側に当たる。 「志希、まっ……て!!」 「ここで待ってもいいけど、もっと恥ずかしくなるだけだよ?待たないんだけどね♪」 「あ、あぁ……!」  ゆっくりゆっくりと下着が下ろされていく。動かせない両足ではどうやったって抵抗なんて手出来ない。じわじわと痛めつけられるような辱められるような行為に、頭も心臓も熱くなってどうにかなってしまいそうだ。下着が膝まで下ろされて、外気が触れていた部分が入れ替わる。一番恥ずかしくて見られてほしくない場所を晒しているのに、少しも隠すことができないどころか、どうなっているかすらわからない。羞恥と恐怖と興奮で頭がぐちゃぐちゃになって、なぜか涙が出てきた。 「うっ…くっ、しき……ぃ」 「あれ……やりすぎちゃったかな?……でも、こっちは喜んでくれてるみたい♪」 「うあっ!!?」  身体に快楽の電流が流れる。足と足の間に滑り込ませた指から秘所へと与えられた刺激が、この状況によって増幅されて全身に巡る。今まで経験したことのない衝撃に体が震えて、勝手に声が出る。 「ここ、すっごいぐしょぐしょだね……晴ちゃんもすっかりえっちになっちゃったね♪」 「なっ……!?そんなんじゃ……」  指の動きが止まって、おそらく反対側の手で頭を撫でられる。 「違わないでしょ?もうあたしと変わらないぐらいえっちだって♪言ってみて、ほらっ」 「う……」  こんなのずるい。卑怯だ。恥ずかしくてどうしようもないセリフのはずなのに、頭を撫でられて、志希からおねだりされてしまうとなんでもしてしまいたくなる。それで気が済むなら、喜んでくれるなら、少しくらい恥ずかしくてもいいって思わせられる。もう十分すぎるほど恥ずかしい目にあわされてるはずなのに。 「オレは……志希と同じくらい……えっち、です……」 「……晴ちゃんさー、あたしのことを信用してくれるのは嬉しいんだけど、信用しすぎなのもどうかと思うよ?♪」  小さな音と共に耳の近くに何かが置かれる。すると、少ししてからさっき言ったセリフがオレの声で再生された。 「志希ぃっ!!けっ、消せ!!」 「え~、せっかく晴ちゃんからのあたしだけが聞けるメッセージなのに……」 「ふざけんなっ!!」 「はいはい、じゃあ消してくるから待っててね♪」  耳元に置かれていたものを拾い上げるような音がしたと思うと、足音が遠ざかっていく。 「お、おい!待てって!置いていくなよ!」 「すぐ戻ってくるよ♪」 「う、嘘だろ……からかうなよ、志希……志希?」  声が返ってこない。まさか本当に置いていかれたのだろうか。熱くてどうしようもなかった身体が、急速に熱を失っていく。いつ帰ってくるのかもわからないのに、ここに人が入ってこないとも限らない。そうなったらお終いだ。それをわからないはずがないのに、どうして行ってしまったのだろうか。焼ききれそうだった脳が、ぐるぐると不安が巡り始める。 「嫌だよ、行かないで……志希……っ」  歯を食いしばって、目頭が熱くなる。早く、早く。それ以外にはなにも考えられない。 「だから、信用しすぎちゃダメだって」 「え、あ……」  頬に温かくて柔らかい感触がする、涙と汗が混じって流れた通路を舐めとって、猫が子猫をあやしてるみたいだ。 「ごめんね、不安にさせちゃって。数分ぶりの志希ちゃんだよ♪」  はらりと目の前を覆っていたものが取り除かれて、志希の姿が視界に映る。あんなに酷いことを二回もされたのに、この笑顔を見ると安心して全部許してしまいたくなる。  抱きしめようとして両腕を伸ばして、縛られていることに気づく。 「なあ、これも外してくれよ」 「それはだめ♪まだ最後にひとつだけ試したいことがあってねー」  今度は志希の手のひらで目を覆われてしまった。手首に香水をつけているのが、匂いが一層濃くなって頭がくらっとなる。 「力抜いてくださーい♪」 「あっ……いっ!?」  下から異物が挿入ってくる。志希の指よりも、冷たくて固くて大きなものが多少は指で慣らされた場所をこじ開けるように侵入しようとしてくる。視界の代わりに他の感覚が補おうとして、体の中に入ってくるそれを深く重く感じてしまう。 「こうした方が落ち着くかな?」  目を覆っていた手が頭の方に移動して撫でてくる。志希は隣に座っていて、可愛がるような目線でこちらを見ていた。 「あ……いいっ!!?」  志希の姿が見えて、一瞬気を落ち着けた瞬間に一気にそれは身体の中に入ってきた。不意の衝撃に身体が反って、まるで身体の中に一本の長い棒が通されたみたいだ。 「あちゃー……やっぱり痛かった?大丈夫、これからはゆっくり気持ちよくなっていくよー♪」 「なっ……あっ!?ひいっ!」  刺さっていたそれが上下に動いて、中を荒らし始める。往復するたびに弱いところと擦れて、感じたことのない快楽の波に溺れてしまいそうだ。 「ああっ!!だめっ……だってぇ!!」 「気持ちいいでしょー、晴ちゃんの弱いところにちゃーんと当たるように改良したからね♪もうイっちゃいそうでしょ?」  興奮と快楽が溜まっていって、今にも吐き出しそうになる。志希の声も、いやらしい水音も、匂いも、今まで感じたことのない痛みと感触も、全部全部身体が受け入れていく。それは同時に限界を呼び寄せることになる。 「……っっ!!!!!」  声ではない音が口から漏れて、気持ちよさに溺れた身体が数回跳ねる。頭の中も身体も愛おしい気持ちも恥ずかしい気持ちも全部溢れ出すみたいにはじけ飛んだ。しかし、余韻に浸ろうとした身体はまだ動いてるそれによって再び起こされる。 「イっ……たのに、なんでっ!?」 「んっ♪」  志希が両手を開いてこちらに見せる。何も触ってないのに、中にあるそれは確かにまだ動き続けている。快楽を受けて崩壊した身体に再び波��押し寄せる。 「早く……抜いてぇっ……」 「うん、あたしが満足したらね♪」  満足したら。それは一体いつなのだろうか。快楽によって薄れゆく意識と共に、終わったら絶対に一言文句を言ってやる、と誓うことでしか抵抗なんてできなかった。
「ねー晴ちゃーん、機嫌直してよー、やりすぎたのは謝るからさー」 「………………」  結局あの後は晴ちゃんが気絶するまでしちゃっていた。さすがにやりすぎたことを反省して、すぐさま後処理をすることにした。縛っていた手はまだしも足首は少し赤くなっていて、とりあえず軽い応急処置だけしておいた。汗と涙と愛液に濡れた身体を拭いて、布団に寝かせてあげた。ただ、起きてからというもの自分の服を体育座りで抱え込んで、ずっとそっぽを向いている。 「ほら、さすがにそろそろ帰らないといけないし、服とか着ちゃったら?」 「……むこう向いてろよな」 「うん、あと一応身体は拭いておいたけど、もし使いたいなら机の上のタオルを自由に使ってね」  そう言った途端に、後頭部に柔らかいけど勢いのある感触が飛んできた。自由に使って、とはそういう意味じゃなかったんだけど、これも仕方ないだろう。 「……もういいよ」  振り返ると、晴ちゃんがもう身支度を済ませて靴を履こうとしていた。……やばい、めっちゃ怒ってる。でもしょうがない、お預けされてた分を取り返すにはあれくらいしないと気が済まなかった。それでこうやって怒らせているのだから、元も子もないのだけれど。  あたしの横を通り過ぎたかと思うと、すぐにぴたりと立ち止まった。あれ?と思っていると、右手が後ろ向きに差し出される。 「……送ってってくれるんだろ?遅くなっちまったし……」 「うん!」  左手でそれを受け取って、前へと歩き出す。晴ちゃんを引っ張るようにして、出口へと向かう。 「志希……」 「はい、なんでしょう」  ……あれ?やっぱり許してもらえてない? 「今日みたいなこと、すっげえ恥ずかしかったし、怖かったし、痛かった」 「う……ごめん……」 「でも……いいから」 「え?」 「志希がしたいなら、その……また……っっ!なんでもねえ!はやく行くぞ!!」 「は~い♪」  駆け出した晴ちゃんに置いてかれないように、一緒に走る。次があるなら今回のようなことではきっと満足できなくなってるだろうけど、晴ちゃんは許してくれるだろうか?  ボイスレコーダーと棚に仕込んでおいたビデオカメラのメモリーカードは、確かにポケットの中にある。しばらくはこれで満足で��るだろうと思っていたけれど、さっきのセリフを録音してないことを後悔した。  でも、本当に大事なことは記録やデータには残らないことをよく知っている。だからこそ、今はただこの愛しい恋人との二人三脚のような走りを楽しむことにした。
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yoml · 8 years ago
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1612-1911 断片、その先(全章)
1-1612 三年前 
「俺が勇利のコーチじゃなきゃいいのに」 
 ヴィクトルがコーチになったその年のグランプリファイナル。試合後のバンケットも終わり、それぞれの部屋に戻る途中のことだった。何の文脈もなく発せられたその台詞に続く言葉が予想できなくて、勇利は少し身構えた。エレベーターのボタンを押して、ヴィクトルは続ける。 「ときどき思うんだ。例えば勇利が絶不調のときね。心がもたないよ。ただのライバルなら、今回は競争相手が一人減ったなって喜ぶだけで済むだろうに」  なんだ、とありがちな話に勇利は少し安心して、「ヴィクトルでもライバルが減るとうれしいと思うんだ」と笑って返した。 「思うさ。俺は勝利に貪欲だからね」 エレベーターの扉が開く。乗客は誰もいない。 「僕はヴィクトルがコーチじゃなきゃよかったなんて、思ったこと一度もない」  ヴィクトルが少し間を置いた。「うれしいことを言ってくれるね」と微かに笑う。 「だけどやっぱり俺は思うよ。コーチじゃなきゃよかったって。特にこういうときなんかは」 「銀メダルでごめんなさい……」 「うん、いや、そうじゃなくて」  ヴィクトルが勇利の目をまっすぐ捕らえた。青い目に違和感があった。 「勇利が欲しくてたまらないとき」  言われた言葉の意味がわからなくて、勇利は文字通りきょとん、とした。エレベーターの扉が開く。ヴィクトルが先に降りて、勇利は慌ててあとに続きながら軽く混乱する。今、この人なんて言った? 返事ができないまま歩いていると急にヴィクトルが振り返った。 「勇利の部屋はあっち」  ハッと気付く。 「おやすみ勇利。今回の滑りは最高だったよ」  コーチの部屋の扉が閉まり、オートロックの鍵が閉まる小さな機械音が廊下に響いた。  三年前のことだった。 
2-1710 新宿の夜 
 これはたぶん何かを超えてしまった。  そう勇利が悟ったのは、ロシアに拠点を移してから半年、スポンサーとの仕事で日本に一時帰国したときだった。一年間のコーチ生活ですっかり日本が気に入ってしまったヴィクトルは、ここぞとばかりに勇利に同行した。が、この時の彼はもう勇利のコーチではなかった。グランプリファイナルでライバルたちの勇姿を見た彼が浮かれた頭で思い描いたコーチ兼ライバルという関係は、とはいえ到底現実的なものではなかったのだ。それでも勇利がロシアに渡ったのはただ日本にふさわしいコーチがいなかったからで、その頃の勇利には、ヴィクトルのコーチであるヤコフ・フェルツマンの紹介で新たな(そして有能な)ロシア人コーチがついていた。  仕事の前に無理やり長谷津に立ち寄って、実家に一泊だけしてから東京へ移動しいくつかの撮影やインタビューを済ませると、たった四泊の慌ただしい日本滞在はあっという間に終わってしまった。日本にいる間は不思議な感覚だった。二人の関係は常に変わっていく。憧れ続けたスター選手とどこにでもいるスケーター。突然現れたコーチと再起をかけた瀕死のスケーター。そして、最高のライバルを得た世界トップクラスのスケーター同士。自分の立場の変化に、ときどき勇利の心は追いつかない。こんなに遠くまで本当に自分の足でたどり着いたのか、いまだに半信半疑でいた。「もしこの人を追いかけていなかったら」。ヴィクトルのいない人生を思うと、勇利はいつも自分の存在自体を疑いたくなるのだった。  日本滞在最後の夜、新宿のホテルの近くにある焼き鳥屋で、二人はだらだらとビールを飲んだ。小さな飲み屋が連なるそのエリアは外国人観光客で溢れていて、煙だらけの狭い店内に不思議と馴染んだヴィクトルは普段よりも一段と楽しそうに笑っていた。めったに味わうことのない観光気分が、彼の抱えるプレッシャーを和らげていたのかもしれない。「博多の夜を思い出すよ」なんて言いながら、コーチ時代の思い出を語り始める。妙に懐かしかった。あれから大して時間も経ってい��いのに、二人にはそれがはるか昔のことのように思えたのだ。 「ずっと聞きたかったんだけど」  店内の騒々しさを良いことに、勇利はこれまでずっと不安に思い続けてきたことを聞いてみた。 「コーチをしていた一年を、ヴィクトルは後悔していないの」  ヴィクトルはそれまで上機嫌に細めていた目を大きく見開くと、何を言ってる? と言わんばかりの顔で勇利を見返した。そしてすぐに、ふっと笑った。 「勇利はびっくりした?」 「した。今でもあの頃が信じられないし、ロシアに拠点を移した今の状況もまだ信じられないよ」 「俺もね、びっくりしたんだ」 「自分の行動に?」 「全部だよ」 「全部」 「そう、全部。勇利のコーチになれたことは大きな意味があったんだ」 「コーチになって良かった?」
「俺が勇利のコーチじゃなきゃいいのに」
 突然、頭の片隅で声がした。バルセロナで聞いたあの台詞。目の前のヴィクトルは何も答えず笑っているだけで、あの時のことを覚えていたかはわからない。だけどなぜかそれ以上聞いてはいけない気がして、勇利は飲みかけのビールを手に取った。
 その後もだらだらと話を続けた二人は、ホテルへの帰り道、どういうわけか、本当にどういうわけか、気付くとキスを交わしていた。何がそうさせたのか、勇利は今でもわからない。まっすぐ帰ればいいところを、なぜかわざわざ回り道をして、ときどき肩をぶつけては、時間を惜しむようにゆっくりと二人は歩いていた。ちょっとした流れのようなものだった。右足が出たら次に左足が出るように、それくらい自然に、歩く二人の距離が近づいた。それで唇が触れ合ったその瞬間、喧騒が消え、街灯が消え、視界は閉ざされ、過去から繋がってきた一つの線がそこで急にプツリと途絶えた。このあと一体どうすればいいのかわからない二人は、そのまましばらく唇の熱を分け合いながら、たぶんもう戻れない。そう思った。 
   ホテルの部屋は別々にとっていた。足早にエレベーターに乗り込むと、勇利はヴィクトルのフロアのボタンだけを押した。乗客は二人だけ。行き先は一つだけ。決定打を押したのも勇利だった。銀髪に触れるほどの距離で、彼は小さく囁いた。 「ヴィクトルはもうコーチじゃないよ」
 その夜、勇利は初めて男に触れられる感覚を知った。
3-1904 春を走る
 東京では浜辺を走れない。ランニングの途中で砂浜に降りて、ウミネコを眺めながらぼんやりする、そうした時間はここにはない。代わりに勇利は公園を走る。少年野球のチームや、体育大学の学生や、小洒落たウェアに身を包んだ若者や、犬の散歩をする老人に混ざって、長谷津よりもひんやりとした東京の春を彼は走る。トレーニングではない、ただの日課。帰り道、公園脇のカフェでショートサイズのコーヒーを買う。カップを持つ彼の右手に、かつてはめられていた指輪はない。マンションに着くと、シャワーを浴びて仕事のメールを確認する。マネージメントを任せているエージェンシーから、新しいアイスショーの話が来ていた。断る理由もないので、淡々と勇利は返信を打つ。
 新しい日々が始まっていた。一人のプロスケーターとして、日本のスケート史上に名を残したメダリストとして、人生の次のキャリアを進み始めた26歳の青年として、東京の勇利は忙しかった。
4-1908 ときどき思い出す
 スケートに関わっている限り、勇利がヴィクトルのことを避けて生きてくことはできない。お互いすでに引退した選手だとはいえ、レジェンドの称号を得た男がスケート界の過去になるには、まだまだ時間が足りなかった。    引退後のヴィクトルの活動は、悪い言い方をすれば多くの人の期待を裏切るかのように地味なものだった。セレブタレントの座に落ち着くことはなく、無駄に広告やメディアに露出することもなく、フィギュアスケート連盟の一員として選手強化と環境改善に従事した。もちろん天性のカリスマ性とスター性は裏方になってもなお人々の目を引き、解説者やコメンテーターとしてテレビに出れば視聴者は彼の一言一句に注目したが、いずれにせよ今のヴィクトルの活動は今後の主軸を定めるための調整期間のように見えていた。どこかふわふわしていたのだ。  コーチ業に転身しなかったことを不思議がる人もいなくはなかったが、多くのファンや関係者にとってヴィクトルが勇利のコーチをしていた一年間はラッキーな気まぐれのようなものとして記憶されていたし、あのシーズンの勇利が劇的な活躍を見せたのも、ヴィクトルのコーチ手腕というよりはライバル同士の妙なケミストリーの結果だと認識されていた。「コーチごっこ」とは当時の辛辣なメディアが何度も書き連ねた言葉だが、誰もが心のどこかでそう思っていたのだ。誰もヴィクトルにコーチになって欲しくなかった。まだ十分に戦える絶対王者として、華やかなその演技で自分たちの目を楽しませて欲しかった――ただ一人を除いて。勝生勇利、彼の教え子になり得たたった一人の男、彼の独りよがりな望みだけが、世界中の期待を跳ね除けたのだ。だけどそれも今となっては、たくさんの過去のひと幕に過ぎない。  今でも勇利が取材を受けるときは、決まってヴィクトルのことを聞かれる。ロシアで切磋琢磨した二年間(とはいえ勇利が渡露した一年後にヴィクトルはあっさり引退したわけだが)、帰国後の一年間、かつてのコーチでありライバルでもあった彼とはどんな関係を築いていたのか。それで今、二人はどんな関係にあるのか。そう言われても、と勇利は思う。  連絡は取っていなかった。取るわけがなかった。理由がないのだ。ロシアのスケート連盟と日本のプロスケーターが個人的に連絡をする必要はないし、人は二人を「元ライバル」なんて呼ぶけれど、正しく言うならばその関係は「元恋人」と言うべきもので、そんな二人が連絡を取らないことに説明は要らない。    勇利は昔から熱心にヴィクトルを追いかけてきたけれど、何かにつけて、彼を遮断するときがあった。自分のスケートに集中しきっているとき、成績が振るわずヴィクトルの栄冠を見るのがつらいとき、絶望しているとき、他に心奪われるものができたとき。今はそのどれでもないけれど、だから勇利はヴィクトルの遮断にわりと慣れていて、今もその最中だった。ヴィクトルのことはわからないし興味もないです、なんてことが言えるわけもなく、勇利は当り障りのない言葉でインタビュアーをごまかすのだった。  メディアで彼を見かけること��あった。勇利は別にそうしたものを一切視界に入れないようシャットアウトしているわけではない。見ても何も思わないよう、自分の心に遮断機を下ろすのだ。ヴィクトルは相変わらず美しく、今でも目を奪うには十分すぎる魅力がある。それでときどき、本当にときどきだけど、その細く乾いた銀髪を見ながら勇利はこう思う。 「僕はこの人のセックスを知っている」  だけどそれがどんなものだったか、あの途方もない感覚を勇利はうまく思い出せない。
5-1710 変化の朝
 初めて体の関係を持った新宿の夜、勇利はそれをセックスと呼んでいいのかすらわからなかった。ホテルの部屋のドアを開けるなり、二人は貪るかのようにキスをして、無抵抗の勇利はヴィクトルの手になぞられるままにその肌を露わにした。首筋から肩に流れるラインにヴィクトルの唇がひときわ強く吸い付くと、勇利はだけど耐え切れない恥ずかしさと緊張で相手の両肩をぐっと押した。「汗、かいてるし、においも、さっきの」。うまく繋がらない一言一言を、ヴィクトルはうん、うん、と逐一頷きながら拾って、どうしてもそれてしまう勇利の目をまっすぐ追いかけた。「じゃあシャワー行こう」と言って腕を引くと、バスルームの引き戸を開けてシャワーをひねり、自分はあっさりと服を脱ぎ捨てた。熱湯で一気に眼鏡が曇る。まだかけてたんだ、とヴィクトルは笑って、勇利からそっと眼鏡を外すと彼をシャワールームに引き連れた。肌を流れる水が、たくさんのものを洗い流していく。汗と、恥じらいと、ためらいと、キスと、手の感触。ぴったりと密着した下半身でどちらともなく硬くなったそこを感じると、勇利は思わず声を漏らした。ヴィクトルの大きな掌が二人のそれを握りしめる。流れ続けるシャワーの音が二人を世界から隔離したように思えて、勇利はただ耳だけを澄ませながら、見えない感覚に身を委ねた。腰が砕けたのはそのすぐあとだ。ヴィクトルの体にしがみつくと、水がベールのように二人の体を包み込み、発散しきれない熱にともすれば意識を失いかねない。立ち上る水蒸気に混じって、知らない精液のにおいがした。
 早朝に目を覚ました勇利は、しばらくベッドの中でぼんやりしていた。鼻の先にあるヴィクトルの肩は、まだ静かな眠りの呼吸に揺れている。頭が現実を取り戻してくると、突然今日のフライトを思い出した。慌ててベッドから起き上がり、銀髪の人を軽く揺らして声を掛ける。 「ねぇ、荷物まとめないと。僕、一度部屋に戻るよ」  ヴィクトルは目を開けなかったけれど、ん、と声を漏らしながら腕を伸ばすと、手探りで勇利の頬に触れた。 「キスをして」
 脱ぎ散らかした服を手早く身に付けると、勇利はヴィクトルの部屋を出た。誰もいないホテルの廊下を歩きながら、ああ、僕はゲイだったんだ、と思った。昨晩の衝撃と、今朝の納得と、変わりすぎた二人の関係に、勇利はどこかまだぼんやりしていた。ぼんやりしながら、踊り出したいくらいにうれしかった。
6-1909 走れない日
走りに行けない朝がある。 カーテンの端を見つめたまま、勇利の体はどうにも動かない。 一人分の体温と一人分の空���を抱えながら、ベッドの中で涙が乾くのをじっと待っている。
7-1812 男たちの別れ
 ヴィクトルが引退した翌年、勇利のロシア二年目のシーズン、勇利には今が自分のラストシーズンになる確信があった。それは別にネガティブなものではなく、肉体的なピークと精神的な充足感が奇跡的なリンクを成し、ごく自然なかたちで、彼は自分自身に引退の道を許したのだった。スケーターとしての勇利にとっては何の問題もない選択だったけれど、一方で一人の男にとって、ある種の偉業をなし得たとはいえまだまだ二十代も半ばを過ぎたばかりの未熟な男にとっては、巨大な不安がはっきりと顔をもたげ始めた瞬間だった。この先自分は何者として、どこで、誰と、どう生きていけばいいのだろう。
 その不安はヴィクトルとの関係において顕著だった。具体的に言えばその頃から、勇利はヴィクトルとのセックスを拒否するようになっていた。勇利の人生にとってスケートとヴィクトルは常にセットで、スケートを介さなければ決して出会うことがなかったように、スケートなしでは二人が恋人の(ような)関係になることはあり得なかった。だからこそ勇利はこわかったのだ。自分からスケート選手という肩書きがなくなったとき、すでに現役選手としての肩書きを捨てているヴィクトルと、果たして純粋に今の関係を続けられるのかが。  勇利が初めてヴィクトルと関係を持ってからの一年間、二人のセックスは、よく言えば情熱的な、悪く言えば無茶苦茶なものだった。スケートと同じくらいの情熱を持って何かを愛するという経験を持たなかった二人は、それまで溜め込んできた「愛する」という欲望のすべてを互いにぶつけ合った。セックス自体の経験値こそまるで違えど、ぶつかる熱の高さは競いようもなく、貪欲な絶頂に幾度となく体を震わせた。競技者という者たちが決定的に抱える孤独が、その時だけは確かに溶けていくと実感できた。その意味において、勇利にとってヴィクトルとのセックスは、特別な意味を持ち過ぎていたのだ。ヴィクトルなしでは成立し得ない彼の人生は、それまではスケートという枠組みの中だけに言えることだった。だけど今は、全部なのだ。全部。
「セックスがつらいから別れるの?」 「そうじゃない」 「わからない、じゃあなんで」 「ヴィクトルはそれでもいいの」 「セックスのために一緒にいるわけじゃない」   「違うよ、違う、だけどつらくて仕方がないんだよ」 「自分だけがつらいふりをして!」
 ヴィクトルにはわからなかった。勇利に惹かれ、勇利を求め、勇利といたい、それ以外の想いなんて彼にはなかった。肌を重ねるたび、互いの中に入るたび、全身でその気持ちを伝えてきたつもりだった。最初のためらいを超えて勇利がヴィクトルを受け入れるようになってからはなおさら、彼はどんどん自由になっているようにすら見えた。全身で愛されることの喜び、誰かを抱くことの自信、解放された感情、そうしたものは勇利という人間のあり方を確かにある面で変えていたし、スケーティングにおいてもそれは顕著だった。二人の関係を周囲が騒ぎ立てることもあったけれど、そんなノイズの一つや二つ、二人が気にするまでのものではなかったし、くだらないメディアに対して沈黙を貫く二人の姿勢は、彼らが作り出す領域の不可侵性を高める一方だった。なのに、なぜ。失おうとしているものの大きさに、ヴィクトルはただただ腹を立てていた。怒りに震えたその指では、掛け違えたボタンを直すことなんてできなかった。
 誰を責めるのも正しくはなかった。一度崩れたバランスが崩壊するのは不可抗力としか言いようがない。涙をためていたのはお互いだったけれど、それが嗚咽に変わることはないまま凍ってしまった。呆れるほどに強くなりすぎたのだ。外の世界と、あるいは互いの世界と、戦い続けている間に。
 ちょうどその頃、勇利は引退を発表した。そういうことか、とヴィクトルは思った。コーチでもない、恋人でもない、今となっては勇利の何でもないヴィクトルには、その勝手な引退の決意を咎める権利なんてなかった。コミットする権利を奪われたのだ。最愛の人に。ヴィクトルは何も言わず、勇利の帰国を見送った。本当はできることならもう一度、その黒髪に指を通し、こめかみに幾度となくキスを落としたかった。どれだけ腹を立てていようと、どれだけその後がつらくなろうと、もしかしたら何かが変わるかもしれない。そんな望みを、あるいは抱いていたのかもしれない。
 勇利の送別会が終わった翌日、ヴィクトルはベッドのシーツを剥ぎ取ると、壁に飾っていた一枚の写真を外した。どこまでも青く広がった、遠い異国の、風に揺れる、穏やかな海の景色だった。 
8-1807 ネヴァ川を見る
 サンクトペテルブルクに、海の記憶はあまりない。代わりに勇利は川を思い出す。いくつもの運河が入り混じる水の街の主流を成すネヴァ川。その川沿いに建ち並ぶ巨大で仰々しい建物の名前を、だけど勇利はなかなか覚えなかった。それが美術館だろうと大学だろうと聖堂だろうと、勇利にはわりとどうでもよかったのだ。ただこの景色がヴィクトルの日常であり、自分が今その日常の中でスケーティングを続けている、その事実だけが重要だった。  それでもいつだったか、早朝に川岸を走っていたときふと目をやったペテルブルクの風景は、日本からやって来た若い青年の胸を打つには十分な異国情緒があった。スマートフォンを取り出すと、普段めったに使わないカメラを立ち上げて、勇利は下手くそな写真を撮った。オレンジともピンクとも紫とも言えない朝日が、ついさっき暗くなったばかりのネイビーの空を、圧倒的な存在感で染め上げていく。混じり合う色と色のグラデーションが急速に消えていくのがなんだか妙に惜しくて、勇利はこのまま空を見続けていたいと思った。写真は全然素敵なものではなかったけれど、勇利は何年振りかに、それをスマートフォンの背景画像に変更した。  その日の夜、そういえば、と勇利はベッドサイドテーブルの上で充電ケーブルに繋がれていたスマートフォンを手に取って、ヴィクトルにネヴァ川の写真を見せた。 「これ、今朝の。きれいだった」  ヴィクトルは勇利が自分で撮った写真を見せてくれる、ということにまずおどろきながら、写真を覗き込む。 「勇利、写真にはもっと構図ってものが……」とヴィクトルがからかうので、勇利は彼の顔を枕でぎゅっと押しつぶす。 「うそうそ、ごめん、きれいだよ、本当に」 「あれみたいに飾れるレベルだといいんだけど」  ヴィクトルの寝室には一枚の海の写真が飾られている。コーチとして長谷津にいた頃、ロシアから雑誌の取材が来たことがあった。スチール撮影は海を背景に行われ、その時カメラマンが押さえた風景カットがとてもきれいで、ヴィクトルはスタッフに頼んでそのデータをもらったのだ。ベッドに寝そべるとちょうど目に入るくらいの位置に、大きく引き伸ばされたその海は飾られている。 「わかるよ、俺もそういう空が好き」  さっき枕を押し付けられたせいで、ヴィクトルの前髪は不恰好に癖がついている。それを気に留める様子もなく、彼は写真をじっと見つめる。 「あの時の衣装みたいだ」
9-1911 冬が来る
  玄関のドアを開けた瞬間、季節が変わった、と勇利は思った。寒さを感じるにはまだ少し遠い、それでも確かにひんやりと冷えた朝の空気。いつもと違うにおいをゆっくり吸い込むと、鼻の奥がつんとした。冬がやってくる。     四階の部屋から、エレベーターは使わず外階段をたんたんと駆け下りる。エントランスを抜けて通りに出ると、いつものランニングコースへ足を向ける。最初は少し歩く。駅へと向かう近所のサラリーマンたちとすれ違う。ぐいっと腕を上げて肩を回すと、おもむろに勇利は走り始める。もう一度風のにおいを嗅ぐ。十分ほど走って公園につくと、ドッグランを横目にそのままランニングレーンに入る。  一周二キロのコースの二週目に入ったあたりで、この日の勇利はなんだか急に面倒になって走るのをやめた。虚しくなった、というほうが正しかったかもしれない。普段あまり意識しない感情の重さに、勇利は少しだけうんざりした。それとほぼ同時に、ウェアのポケットに入れていたスマートフォンが鳴る。こんな朝から、と歩きながらスマートフォンを取り出した勇利の足が、突然ぴたりと止まる。手の中でバイブを続けるスマートフォン。動かない勇利の指。画面につと現れたあの名前。 「“Victor Nikiforov”」
10-1911 コーチの助言
「人というのは、自分が守られているとわかっているときにこそ心置きなく冒険できるものなんだ、ヴィーチャ」 ヴィクトルは時折この話を思い出す。大昔のことだ。 「お前の安心はなんだ? メダル? 名声? それとも尊敬?」  ヴィクトルは考えた。そのどれもが、彼にとっては確かに重要なものだった。 「もしお前の足が止まるようなことがあれば、そうしたものを一度見直してみるといい」  そう言われると、ヴィクトルは少し腹が立った。自分が心血を注いで獲得してきたものを、真っ向から否定されている気がしたのだ。 「自分を守ると思っていたものが突然自らの足枷になって、お前を縛り付けるかもしれないからな」
 目的地までの残り時間を告げる機長のアナウンスで、ヴィクトルは目を覚ました。モニターをタッチしてフライトマップを映し出す。飛行機はいよいよユーラシア大陸を超え、Naritaの文字まであと少し。あれからもう何年も経つというのに、いまだにコーチの助言は有効力を失ってはいなかった。まだ少し焦点が合わない目で明け方の空を眺めながら、ヴィクトル���その言葉を声に出してみる。
「安全基地を見失うな」
11-1911 ジンクスと可能性
 バゲージクレームのベルトコンベヤーの前で、ヴィクトルは荷物が出てくるのをじっと待ってい���。レーンの先を真剣に見つめているのは、なにも焦っているからでも大切なものを預けているからでもない。ジンクスがあるのだ。ベルトコンベヤーに乗せられた自分のスーツケースが、表を向いていればその滞在はうまくいく。裏を向いていれば用心が必要。ベルトコンベヤーが動き出す。プライオリティタグの付いた彼の荷物が出てくるまで、時間はそんなにかからない。見慣れたシルバーのスーツケースが視界に入ると、ヴィクトルは思わず苦笑した。流れてきたスーツケースは、サイドの持ち手に手が届きやすいよう、行儀良く横置きされていた。  荷物を受け取ってロビーに出ると、時刻は朝の八時を少し回ったところだった。スマートフォンを取り出すと、ヴィクトルは自分でも少し驚くくらいためらいなく、勇利への発信ボタンをタップした。朝のランニングを日課にしている彼のことだから、今頃はそれを終えて朝食でもとっているか、その日の仕事に出かけるところだろう。だけど予想通り、その着信に答える声はなかった。スマートフォンをポケットにしまうと、ヴィクトルは軽いため息をついて成田エクスプレスの乗り場へ。「事前予告なんて俺らしくない」と思ってはみたものの、だけどヴィクトルには向かうべき先がわからなかった。東京に拠点を移したということ以外、勇利の居場所についてはなに一つ知らなかったのだ。唯一向かう先として確定している新宿へのルートを確認しながら、やっぱり羽田着にすれば良かったと思った。彼はいい加減に疲れていた。サンクトペテルブルクからモスクワ、モスクワから成田、成田から新宿。スムーズなルートではあるものの、これ以上時間をかけるのが煩わしい。その気持ちもあってかどうか、新宿に到着するのとほぼ同時に、ヴィクトルは勇利にメッセージを送った。 「しばらく東京にいる。可能性は?」
“可能性”?
 勇利がメッセージに気づいたのはその日の正午ごろだった。ヴィクトルの着信を無視して家に戻ってから、打ち合わせのためにマネージメント会社の事務所に向かった。スケジュール諸々の確認を済ませ、いくつかの事務的な話を終えて事務所を出ると、いつも無視するだけのSNS通知に混じってそのメッセージは届いていた。  精神的ヴィクトル遮断期の成果か、勇利は着信を見た時もメッセージに気づいた時も、思っていたほどのダメージを受けなかった。その代わり、「可能性」の文字が勇利の前に立ちはだかる。それはこの一年間、勇利がもっとも望み、同時にかき消そうと努めてきたものだった。メトロの入り口までの道を歩く間、勇利は逡巡した。が、地下に入って改札機にICカードをタッチすると、その瞬間に案外あっさり答えが決まった。募らせてきた孤独と愛おしさを開放するには、改札が開く小さなその電子音だけで十分だったのだ。 「どのホテル?」  メトロに乗り込む。5分ほどでヴィクトルからの返信。ホテルの名前を見た瞬間、勇利は一気に胸を掴まれた。スマートフォンをポケットではなく鞄に入れると、両手で思わず顔を覆ってひときわ大きなため息をついた。遮断機は壊れてしまった。抑揚のあるあの声を、肌に触れる乾いたあの髪の感触を、抱きしめたときの体の厚みを、汗と香水のにおいを、熱を、息を、そして氷上をしなやかに滑るあの姿を、勇利の体は鮮明に思い出した。メトロの中で、勇利はほとんど泣いていた。
12-1911/1812 言えなかった
 目が覚めると午後五時を回っていた。約束の時間まであと一時間。フライトの疲れはたぶん取れている。ヴィクトルはシャワーを浴びると、小ざっぱりとした自分自身を鏡越しに見つめた。現役時代と比べれば筋肉量は若干落ちたものの、傍目には変わらない体型を維持している。銀髪に混じる白髪は前からのことで、目の下のシワも見慣れている。だけどやはり変わったなと思うのは、その目元だった。ひとしきりの怒りとさみしさを通過したヴィクトルの目は、少し力なく、だけどそれ以上に、優しくなっていた。  話す言葉は何一つ用意していない。これからどうしたいかも決めていない。とにかく会えば、会えさえすれば、なんて甘えたことも思っていない。だけどヴィクトルは日本にやって来たし、勇利はそれをはねのけなかった。思えばあの時もそうだったのだ。自分が勇利のコーチになる可能性なんて本当はどこにもなかった。無茶苦茶なことをしている自覚もあった。持ち前の奔放さで周囲を驚かせてきた彼だったが、本当はいつだって、自分が一番驚いていたのだ。未知へと足を踏み入れたことに。不安を乗り越えられたことに。新しい安全基地を、確かに手に入れられたことに。ヴィクトルの冒険と不安を受け入れたのは勇利以外の何でもなかった。一緒に居れば何者にだってなれる。ただそれを、あの人に伝えたかった。 「ねぇ勇利」  鏡越しに独り言を呟く。
「今日から俺は勇利の何になる?」
 同じ台詞を、二人は別れる直前にも聞いていた。元師弟とも元ライバルとも恋人とも言える二人の関係を終わらせようとしている勇利の心を、ヴィクトルはどうしても知りたかった。いや、変えたかった。 「何だっていい。ヴィクトルはヴィクトルでいてくれたらいい」 「勇利は俺の何になる?」 「何だっていいよ」 「それがこわいのに?」  勇利は答えなかった。その通りだった。ヴィクトルがヴィクトルであること、勇利が勇利であること。口で言うには響きの良い台詞だけれど、その意味を、その事実を受け入れることは、思っていたよりたやすくなかったのだ。 「いつかこわくなくなると思う」 勇利は最後の最後になって、すがるようにヴィクトルの首元に腕を回し、鎖骨のあたりに顔を埋めた。自分勝手さなんて痛いほどわかっていた。ヴィクトルの手が軽く背中に触れたけれど、それはただ、触れただけだった。
「だからそれまで待っていて」とは、勇利はとても言えなかった。
13-1711 ゆだねる
「やっぱりこわい。ていうか……抵抗感がある」 「うん、無理にとは言わない」 「……ヴィクトルはどっちなの」 「どちらでも。勇利とならどっちでもいい」 「そういうもの?」 「俺はね。相手と一番気持ちいい関係でいたいから」 「どんな関係が一番かなんてわかんないよ」 「だから試さないと。そうだね、わがままを言うなら、俺は勇利に“受け入れる心地よさ”を経験してみてほしいかな」 「痛そうじゃん……」 「最初はね。でも相手にゆだねてしまえば、きっと良くなる。絶対に無理強いはしない」
 そう言いながら、これがハードルなんだろうな、とヴィクトルは思った。勇利は簡単に誰かに身をゆだねられるタイプの人間ではなかった。自信のなさはかつての彼の最大の欠点とも言えたが、言い換えればそれは一重にプライドの高さと自分への責任感であり、自分を支える存在を求めながらもその対象に依存するようなことは考えられないだろう。たとえそれが、氷上だろうとベッドであろうと。アスリートとして身につけてきた彼のストイックさを、怖れを超えたその先で解放される表現者としての素質を、だけどヴィクトルは何よりも愛していた。
「勇利の準備ができるまで、いつだって待つよ」
14-1910 空になったグラス
「どうせ誰かの専属コーチになることはないんだろ」  久しぶりに会った友人は、テーブルの企画書を片付けるとグラスに残っていたワインをゆっくりと飲み干した。 「おもしろいプロジェクトだと思う、君らしい。感情にさえ流されなければうまく行くんじゃない? まあそこが君の魅力だけど」 「余計な心配だ」  ヴィクトルの冗談を端的にかわすと、ポポーヴィッチは少し思案した後じっとヴィクトルを見つめた。 「真剣に聞いているんだ。このまま君が連盟の一員になっていくなんてとても思えない。コーチはしないまでも、その才能を裏方に回すなんて誰が望む? 凡庸なスケートショーに誘っているわけじゃない。一種のアートの試みだよ」  二年前、ポポーヴィッチはヴィクトルと同時期に引退し振付師へと転身した。もともと芸術家肌だった彼の野心は振り付けだけにとどまらず、最近ではショー全体のプロデュースに取り組みはじめ、スケート界の新しい動きとして一部から期待と注目を集めていた。 「とはいえ俺はアスリート気質だからねぇ。エンターテイナーでいることは苦手なんだよ、わかるだろ」 「エンターテイナーになれなんて言っていない。ヴィクトルという一人の人間として滑ってほしいんだ」 「ヴィクトルという人間、ねぇ……」  すでに空になっている自分のグラスを見つめながらそう呟くと、ヴィクトルはなぜか笑いたい気持ちになった。 「“お前は何者なんだ、ヴィクトル!”」  突然古風な芝居じみた口調で笑いだす友人に、ポポーヴィッチは呆れてため息をつく。 「本当に、ヴィクトル、これからどうするのかヤコフも心配している。最近じゃあのユーリですら……」  愛すべき友人の言葉を最後まで聞かずに、ヴィクトルはさっと立ち上がった。 「そろそろ決めてもらわないとね、俺が何者か」 「?」 「プロジェクトのことは考えておくよ、スパシーバ」  訝しげに見つめる友人の肩をぽんと叩いて、ヴィクトルは一人店を出る。帰りのタクシーの中でスマートフォンを取り出すと、ためらいなく成田行きのフライトを予約した。不思議なほどに、意気揚々と。
15-1911 それでも、なお
 ホテルのロビーで一人掛けのソファに腰を下ろした勇利は今、行き交う宿泊客をながめている。どうしていつも急に来るのだろうと、初めて彼が長谷津に現れたときのことを思い出す。頭の中で月日を数えて、勇利は思う。まだ4年も経っていないのか、と。どうしてヴィクトルが東京にいるのか、どうして勇利と会おうとしたのか、勇利には見当がつかない。これから会ってどんな話をするのか、勇利の方にだって何の準備もない。自分から離れた相手なのだ。どんな態度でどんな話をされたとしても、勇利はそれを受け入れるしかないとわかっている。それでもなお、勇利は思う。そこに可能性があるのなら。自分を失うこわさと引き換えに、別の何かを見つけ出す可能性があるのなら。自分を定義づけてくれる存在を、もう手放すようなことをしてはいけない。
 新宿に来る前、勇利は一度マンションに戻っていた。まっすぐ寝室に向かうと、クローゼットの奥から彼の持ち物の中では異質な黒い小箱を取り出した。最後にそれを見てから、もう一年近くが経とうとしている。「この歳になってもまだおまじないか」と苦笑いを混ぜて呟くと、それでも最大限��愛おしさを込めて、乾いた右手の薬指に小さな金の環を通した。それから右手を唇にぐっと押し当てるようにキスする癖は、一年経っても忘れてはいなかった。
 賭けをしよう。あの人の指にも同じものがあるだろうか。あるいは祈りを、あるいは冒険、あるいは。
 エレベーターがロビーフロアに到着する。数人の宿泊客とともに銀髪の彼が現れる。青い視線が黒髪を見つける。聞きなれたあの声が、勇利の名前をまっすぐ呼ぶ。
fin
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konyokoudou-sk · 8 years ago
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一日一はや慕Weekly 2017年12月27日~2018年1月2日
802. 12月27日
「はやりちゃんの今日の服もかわいかったよ」 「かわいかった…良かった…(慕ちゃんから褒めて貰えた…うれしい…)」 ファンや共演者から褒められても お世辞の一つと受け取るけど 慕ちゃんから褒められると 顔から火が出るように熱くなってしまうはやりん 「慕ちゃん照れるなぁ…」
「はやりちゃんかわいいから素直に言ってるだけだよ」 その言葉を聞いて ふっと腑に落ちたはやりん 慕ちゃんははやりんの全てを 愛してるから無邪気に なんでも褒めてしまえるのだと だからこそはやりんも 照れてしまうのだ 「そういう素直なところが慕ちゃんの良いところだよ…」
そっと慕ちゃんの頭を なでなでし始めるはやりん すると慕ちゃんの方も 照れてしまう 「照れてる慕ちゃんもかわいいよ」 「嬉しい」 「素直に言ってるだけだよ」 さっきの言葉をお返しするように さらになでなでするはやりん 「そんなはやりちゃんが大好きだよ」 「はや~…」
やはり慕ちゃんの無邪気な言葉に 叶わないなぁと心の中で やれやれと思うはやりん 「(あ、はやりんと白築さん。またイチャイチャしてる…)」 二人がお互いを褒め合ってる様子を 陰からこっそり観察していた はやりんのマネージャーは その様子を微笑ましく見守っていた 「(写真でも…)」
こそっとカメラを構えて 二人の和気藹々としてる様子を ファインダーに収めていく 「(ああ…私もちょっとしたことではやりんに褒められたいし。こっちも褒めたら照れて貰いたい…)」 瑞原はやりの打算のない純粋さと愛らしさを 一身に受ける白築慕をどこかで 羨ましく思うマネージャー
「あ、マネージャーさんこんにちは」 こそこそしてるのに気づいた慕ちゃんは とりあえずマネージャーに挨拶する 「白築さんこんにちは…。今日お二人ともかわいいですね…」 「そうかな?」 「そうだっけ」 二人が同じタイミングで首をかしげてみると どっと笑いがその場に満ちていった
「あはは、マネージャーさんこそかわいいじゃないですか。そのシュシュとか」 慕ちゃんに褒められてみて マネージャーは理解した 彼女は本当に素直に目の前の子を 褒めているだけだから きっと照れてしまうのだろう 「ちょっと、慕ちゃん」 「ごめんはやりちゃん。かわいいからつい…」
慕ちゃんがマネージャーを 褒めてしまったために はやりんがムッとしてしまったのを なだめるのにしばらくかかった 「この飴あげるから許して」 「許す」 「ありがと」 二人のこのやり取りを見て はやりんにとって慕ちゃんは 大切な存在であることを 実感したマネージャーであった
803. 12月28日
慕ちゃんは見た目は地味でおとなしくて 男子からの人気も一番じゃないけど 私だけがきっとそのかわいらしさに 気づいているから 「一緒にご飯食べる?」 「いいよ☆」 慕ちゃんから話しかけられただけで 胸が高鳴って仕方ないんだよ 「どうしちゃったの?」 「なんでもないよ☆」
ちょっと会話してみるだけで 慕ちゃんのかわいい顔を たくさん見られるから わざわざ席が隣になるようにしたり できるだけ側にいられるようにしたり 努力を欠かさない 「今日の閑無ちゃんの解答面白かったよね」 「あの答えはちょっと…でも勢いはあったし…ってチャイム」 「準備しないと…」
授業が始まっても慕ちゃんの顔を じっと見ることばかりに 気を取られて聞くのを忘れてしまう 「(静かに授業を聞いてる慕ちゃんもかわいい…)」 「瑞原ならわかるなこの問題」 「はいっ!?」 先生に当てられたけど前もって予習してるから 難なく回答して再び慕ちゃんの観察に戻る
「(この慕ちゃんもかわいいなぁ…カメラがあったら撮っておきたいのに…)」 見つめてぼーっとしてるだけで 心が溶けてしまうのもきっと私だけだから いや私だけでいいから 「(このまま手を伸ばせば…)」 前の座席の慕ちゃんへ そっと手を伸ばそうとしたけど 途中で諦めてひっこめた
きっと私が触ってしまうのも もったいないくらいに 慕ちゃんの髪が綺麗だから 「(やっぱり触りたい…)」 それでも未練がましく 手を伸ばしてみるが そこで終わりのチャイムが鳴って 「なにしてるの?」 「恥ずかしいから言わないで…」 その瞬間の顔を慕ちゃんに 見られまいと下を向いた
「はやりはな~、慕の頭にそっと手を伸ばそうとしてたんだぜ」 「そうなの?」 玲奈ちゃんが余計なことを言ったから 逃げ出したくなってきたじゃない 「あはは…」 「いつも慕のこと気にしてるもんなはやりは」 カンラカンラと笑顔でからかう玲奈ちゃんに 愛想笑いで返しているとそこに
玲奈ちゃんからこっそり耳打ちが飛んできた 「はやりさ、慕のかわいさは私だけがわかってるって思い込んでるけどな。私の方がよくわかってるんだぜ」 「さあ。玲奈ちゃんこそわかってないじゃない」 慕ちゃんのかわいさを理解してる 同志に出会った興奮と ちょっとした寂しさが心を通り抜けた
「とにかくな、慕のかわいさを理解してるのははやりだけじゃないってだけは言わせてもらうよ」 「私の慕ちゃんを盗ろうとしてもそうはいかないから」 にわかに高ぶった緊張感に 気づくや否や 三人で自販機にジュースでも 買いに行こうと提案する慕ちゃん 「ふ、二人とも…ジュース買いに行こ?」
「私も」 「丁度飲みたかった☆」 ライバルは意外にも身近にいたことに 気づけたことはいい収穫だった 早く慕ちゃんを完全に私のものにしないと 盗られちゃうので焦りを感じた 「(これから頑張らないとね、色々と)」 近いうちに慕ちゃんに告白する決意を 心のなかで静かに固めた
804. 12月29日
「はやりちゃんからメールだ」 いつものようにはやりちゃんから 暗号のようなメールが来たので 即座に内容を理解して 彼女と落ち合う 「ああ…いつものあの場所かぁ…。で、今日は良子ちゃん��来るんだね」 良子ちゃんの大きなおっぱいに 文字通り胸を膨らませながら 集合場所へ向かう
そこにははやりちゃんはまだいなかったけど 良子ちゃんは先に来ていて こちらをオバケでも見るような目つきをしていた 「ど、どうしてあの暗号メールが…」 何を聞いてきたかと思えば そういうことか あのメールの暗号文は 私とはやりちゃんの二人で考えたから 私が読めても不思議じゃないのに
「だって高校生のころからはやりちゃんのメール読んでたから」 それとなく昔からの付き合いを アピールしてやると 良子ちゃんはこっちを睨み付けてくる クールに見えて嫉妬深い良子ちゃんは かわいいから嫌いじゃない 「やっぱり慕さんには勝てませんか」 「簡単に勝たせてあげるほど甘くない」
「胸では勝ってますよ」 「勝てなくていいから、良子ちゃんのおっぱいも堪能してみたい」 「この場ではダメですよ」 まぁはやりちゃんと一緒にホテルに 入ってしまえば良子ちゃんのおっぱいも 楽しめるんだから別に問題は無い それにしてもはやりちゃん遅いなぁ どこで道草食ってるのか
「遅いですね」 「まぁいつものことだから気長に待つよ」 「そういえばあのメールの暗号文いつ教えて貰ったの」 「高校の時です。はやりさんと初めてデートした時あのメールが届いて。慣れないうちは何度も口頭で確認もしました」 「ズルいなぁ、良子ちゃんは。私はそういうやりとりなかったから」
良子ちゃんとたわいもない会話をするのも まぁ悪くはないんだけど 言い出しっぺのはやりちゃんが 来ないのが困りもの 「来ないね」 「今夜は二人でシメますか」 「それもいいね」 恋敵同士で珍しく意気投合しながらも なかなか来ない彼女を待つ心寂しさは 慣れないものだと身にしみるのでした
805. 12月30日
「ただいまはやりんは~、○○温泉に来ておりま~す☆」 自分以外誰も入っていない風呂で リポーターのようなセリフを 一人で叫んでるはやりん というのもはやりんに テレビのリポーターの仕事が 舞い込んできたので 風呂場で練習に励んでいた所だったのだ 温泉気分に浸るためバブを入れながら
「(はぁ…うまくできるかなぁ…リポーターのお仕事)」 とりあえず練習してるセリフを 一通り言い終えるなり お湯の中で小さく沈み込むはやりん 大学に入ってもなお アイドル活動と雀士としての活動を 学生生活とともに両立させるのは はやりんと言えど容易なことではなかった
何も知らないクラスメイトからすれば 学生としてもアイドルとしても雀士としても 華々しく活躍しているように見えるが その内情は苦難と努力の連続であった 目標の牌のお姉さんにはまだ届かないものの テレビのリポーターとしての仕事を やっと手にしたからには はやりんに失敗は許されなかった
「こんなことでくよくよしてる場合じゃないよね…慕ちゃんのためにも」 今のはやりんを誰よりも献身的に支えているのは 高卒でプロになった慕ちゃんだった 精神的にはやりんの支えになっているのはもちろん 金銭的にも実家からの仕送りとともに 慕ちゃんの稼ぎもアイドル活動の糧になっていた
そしてはやりんが今住んでいる オートロック付きのマンションも 慕ちゃんと共有しているものだ 同い年で幼い頃からの友達が プロとして数々の成功を収めているのを見て 焦燥に駆られないといえば嘘になる だが慕ちゃんの支えなしに アイドル活動を続けていけないことも事実だった
「いつまでも慕ちゃんに甘えていられない。だからちゃんとお仕事こなさないと」 はやりんが心の中の決意を言葉にして 確かなものにしてたところに 風呂場のドアが開いて 「あ、はやりちゃん先に入ってた?」 「ひゃあっ…」 「あれ、恥ずかしいところ見ちゃった?」 「ううん、気にしないで」
はやりんがお仕事のことで 少し思い詰めてるところがあることを 悟っていた慕ちゃんは そっと言葉を投げかけた 「はやりちゃん、頑張りたい気持ちはわかるんだけど。いくらでも私に甘えていいんだからね」 「…」 はやりんは何も言えなかった 言ってしまえば小さな決意が腐りそうになるから
「だって、私ははやりちゃんの恋人なんだよ?辛かったらなんとかするから」 慕ちゃんにそういうこと言われると 余計に甘えたくなくなってしまうのは ちょっとした反発心なのか 余計に頼りたくない決意を固めたが それも彼女の一言で瓦解する 「ほら、お風呂に入ってるのに身体がガチガチだよ」
慕ちゃんに触れられた途端 硬直していたはやりんの筋肉は ふわっと緩んでいく 「これじゃ疲れが全然取れないよ。リラックスリラックス」 さらに軽くはやりんの身体をもみほぐす 慕ちゃんに心の中のこわばりも 解きほぐされていく 「はぁ…また慕ちゃんに助けられちゃった」 「どうも」
無意識のうちにしていた緊張が 解けていくと温かいお湯が身体のうちに 染みこんでいくような感触を覚えるはやりん 「あったかい…」 「このまま暖まろっか」 「うん」 この時だけは色んなプレッシャーから 解放されて自然体になっていくはやりんは 慕ちゃんの身体に寄っかかっていた
「はやっ…」 そして寄りかかってきたはやりんの身体を そっと胸で包み込んでいく慕ちゃん 「…ズルいよ慕ちゃんは」 様々な感情を凝縮した一言を 慕ちゃんは涼しく受け止めた 「ズルくて当たり前だよ、大人なんだから」 そのさりげない言葉ははやりんの胸を ちくりと刺していった
「(大人かぁ…同い年なのに私は全然だなぁ)」 はやりんからすれば 昔から慕ちゃんはしっかりした子だったが プロになってからの彼女は より大人びて見えるようになった それもそのはず一足先に プロという大舞台へ掛けだしていって あまつさえ賞を獲得するなど 実績も残しているから当然だ
「ねぇ、慕ちゃん。私は牌のお姉さんになれるかな」 はやりんにとっての牌のお姉さんとは 立派の大人のシンボルであり 何よりも輝ける人生の目的だった でも今の現状を素直に捉えると その座に近づけているか 迷いが生じていた だが慕ちゃんはそんな迷いをあっさり切って捨てた
「そんなの愚問だよ。なれるに決まってるでしょ。はやりちゃんはずっとずっと努力を重ねてきたんだから。なれないはずない」 あくまで愚直に自分を信じてくれる慕ちゃんに モヤモヤを断ち切られた格好になったはやりん 「やっぱりズルいよ…」 「何がズルいのかよくわからない」 「そういう所」
「だからどういう所?」 「…考えるのめんどくさい」 「なにそれ」 ずっとお風呂に浸かってたので いい加減のぼせてきたはやりんは 慕ちゃんに寄っかかったまま ゆっくりと考えるのをやめていった そんな彼女を見て慕ちゃんは 「あまり考えすぎないでね、はやりちゃん」 「うん」
慕ちゃんの助言を素直に受け止めて 肯いているはやりん 「はやりちゃんが倒れちゃったら、お義母さんに怒られるのは私だからね」 「流石にお母さんにはね…」 「あと、ちゃんと食べる」 「食べないとね」 「あはは…」 本当に何気ないやり取りのはずなのに 不思議と笑いがこみ上げてきた二人
806. 12月31日(1)
慕「最後の一日だね」 は「今日が終われば今年は終わりだね」 慕「短かったね…もっと麻雀打っとけば良かった」 は「あれだけ打ったのにまだ打ち足りないの」 慕「もっと打ちたい~」 は「も~みんな呼んであげるから待ってて☆」 慕「やった!」 は「(どうせ酒が入るけど)」
807. 12月31日(2)
慕「今日悠彗ちゃんのサークルの日だよね」 は「どんな本なのかな?」 慕「よくわからないけど、面白いのかな?」 は「う~ん」 悠「(純真だ…ごめんよ二人とも。本の中身は汚れた妄想しかないんだ。そんな本の売り子をやってもらう二人には悪いね。超悪い)」
808. 12月31日(3)
「一年ってこんなに早かったっけ」 「はやっ☆」 ぬくぬくとコタツに潜りながら だらだらしている二人 大晦日だけにはやりんも 忙しいと思いきや 一日中慕ちゃんの部屋でゴロゴロしてるので ちょっと呆れてしまう 「大晦日とか正月とか、芸能人なら忙しそうなのに暇なのはやりちゃん」
それに対してはやりんは 眠たそうにリラックスした顔で 「今年は年末年始慕ちゃんと一緒に過ごそうと思って仕事入れてないんだ~」 猫のようにゴロゴロと床を転げ回るはやりんに 愛でたい衝動がわき起こる慕ちゃん その有様はダメ人間そのものだったが たまにはいっかと微笑ましい目で見ていた
元から整理整頓を欠かさないとはいえ 年末の大掃除はほぼ済ませてしまったし テレビを見ながら年越し蕎麦を食べる以外に 二人ともやることがないので 慕ちゃんもすっかり気が抜けた状態になっている 「私たち、完全に寝正月だね」 「慕ちゃんも寝正月したら?」 「うーん…どうしよう」
このまま誘惑に身を任せるが否か 葛藤を続ける慕ちゃんだったが 完全にお正月のおもちのように 溶けてしまっているはやりんを 前にしてどうでも良くなってきた 「私も寝ちゃう」 「やった」 「おせちも作っちゃったし、働かなくても食べ物に困らない」 「ゆっくりゴロ寝しよ。レッツゴロ寝」
しかしいざゴロ寝しようにも 眠れないのでコタツの上の ミカンを取ってムシャムシャ食べていく慕ちゃん 「なんでだろう、食べ始めると止まらない」 「いつもより甘く感じる」 口寂しさも相まって コタツの上のテーブルには 次々とミカンとその皮が積み上がっていった 「そういえば…」
「ん?何?」 「はやりちゃんって、ミカンの薄皮食べないんだ」 「慕ちゃんこそ、薄皮も一緒に食べるんだ」 「薄皮には栄養もありそうだし、何より取るときに手が汚れちゃうし」 「だって薄皮味しないし、口当たりも良くないし」 ミカンへの微妙な考え方の違いに 長年気づかなかった二人は
お互いにまだ知らない所もあるんだと 不思議な感情が芽生えた ミカンで 「(新しい発見、慕ちゃんあれ食べるんだ…)」 「(知らなかった…。はやりちゃん薄皮取って食べるんだ…)」 ミカンを一緒に食べる機会はあったのに 今まで気づいてなかったことで おかしくなって笑いがこみ上げる二人
そしてミカンでお腹がふくれてきた頃合いで 眠気が襲ってくる二人 「む…眠たくなってきちゃった…」 「食べきれないくらいミカン食べたから…」 「起きたら年越してるかな」 「きっと…むにゃむにゃ…」 そのままコタツのなかで 手をしっかりと握って 横になったまま眠りにつく二人
「(来年もこんな風に年を越せるといいなぁ…)」 意識が落ちる寸前に そんなことを思った二人だった そして二人が眠ってしばらく経って ガチャリとドアが開いた 「慕とはやり、どうしてるっかな?」 閑無ちゃんが二人の家へ訪れたのだ 杏果ちゃんも交えてお正月を過ごすために 「寝てる?」
慕ちゃんとはやりんがまるで 子豚かアザラシのように並んで 眠っていたのでちょっとした イタズラ心が沸く閑無ちゃん 「杏果もまだ着てないし、ちょっとぐらいいいよな…」 叩いても揺さぶっても起きない二人に これは何しても起きないぞと あくどそうに微笑む閑無ちゃん 「しめしめ…」
そして部屋にあった油性ペンで 適当に二人の顔に落書きをする閑無ちゃん 「ま、せっかくの正月なんだし福笑いだな」 嬉々として落書きに勤しむ 閑無ちゃんはとても28歳の大人には見えなかった 「こ・れ・で・よしっと。後ははやりと慕が目覚めたところで大笑いしてやれば大成功だな」
杏果ちゃんもなんとか二人の部屋に到着したが 閑無ちゃんの悪行についてはあえて触れずにスルーする 「(その方が面白そうだし)」 閑無ちゃんと杏果ちゃんがテレビを見ている間に 二人が同じタイミングで目覚めてしまい 「ふわぁ…よく寝た…」 「いま何時かな…とけいとけい…」
「あ、閑無ちゃん杏果ちゃん。来てくれたんだ」 「二人ともどうして笑って」 寝起きでボーッとしてる二人を見るなり 腹がよじれるほど大笑いしている 閑無ちゃんと杏果ちゃんを見て やっと寝てる間に行われた蛮行に気づいた二人 「まさか閑無ちゃん…」 「顔に落書きとかしてないよね?」
「お、おう。どうしてそこまで睨んで…」 「うふふ」 「あはは」 悪行が露呈した閑無ちゃんは 慕ちゃんとはやりんに容赦ない制裁を加えられる その有様を杏果ちゃんは黙ってみていた 「たすけ…」 「自業自得よ」 「お前には慈悲はないのか杏果~」 「これでも閑無への友情はあるけど?」
杏果ちゃんは二人に袋だたきにされる 閑無ちゃんを見つめながら 大昔にもこんなことがあったっけと 物思いに耽る 「(私たちって、結局根元のところで昔と変わってないのね。もう三十路も近いのに)」 年が暮れていくのを実感しながら 杏果ちゃんもまたコタツに寝そべっていくのだった
809. 12月31日(4)
慕「もうそろそろ年越すかな?」 は「越しちゃうよ…」 慕「こら」 は「外寒いから慕ちゃんのふとももから離れたくない」 慕「はやりちゃん暖房あったかい」 は「はや~」 慕「(なんだろう…すごく撫でたい…猫みたい…)」 は「ぐるぐる」 慕「(何これ萌えすぎるよ…)」
810. 1月1日(1)
は「もうあけちゃった…」 慕「蕎麦も食べちゃってもう眠いよ…」 は「あけまして~」 慕「今年もよろしく~」 は「早速だけどキスしちゃう?」 慕「キス納めしたとこなのに…まぁいっか」 は「一発目!」 慕「んんっ…」 は「いただきました~」 慕「も~不意打ちは卑怯だよ…」
811. 1月1日(2)
は「すごい人…」 慕「こんなに神社に人がいるなんて元旦ぐらいだよ…」 は「バレないよね…」 慕「丹念に厚化粧したからバレないよ」 は「は、早く行って早く帰ろっ」 慕「(おっぱいでバレちゃう可能性があるけど、言わない方がいいよね)」 は「今年も良いことあったらいいな☆」
812. 1月1日(3)
「あけましておめでとうはやりちゃん」 「あけましておめでとう慕ちゃん」 一月一日元旦 零時を過ぎて改まって挨拶をする二人 除夜の鐘の音があたりに響き渡るのを 聞きながらお互いに頭を下げ合う 「一年の初めに何しよっか」 「初夢、って言いたいところだけど全然眠くないから…」
「初キス?」 「それ」 はやりんの提案に慕ちゃんも乗っかって 今年初めてのキスをする二人 身長の高い慕ちゃんがはやりんの首を抱いて そのまま覆い被さるように唇を合わせ さらに舌を這わせていく 「おいしっ…」 「あっ…」 そしてお互いに舌を絡ませあったまま 深くキスに没入していく
やがて息が苦しくなって キスを続けるのも困難になってきたので ゆっくりと口を離していった 「はぁ…はぁ…」 「新年一発目で死んじゃうところだった…」 「あんまりキスに夢中になるのも良くないか…」 キスを終えてもしばらく お互いの鼓動がドクドクと伝わるような 余韻を味わう二人
そしてお互いをただ見つめ合うだけで 数分が経っていた 「もっと欲しい?」 慕ちゃんの問いかけに 無言で目を背けるはやりん 一見すれば拒絶してるように見えるが その表情は僅かに恥じらいを秘めていた 「…して」 「お安いご用」 はやりんのオーダーに答えて 再びキスが繰り返されていった
「ぷはぁ…」 「もう回数もわからないくらいしちゃったね」 その後も何度も唇を合わせては離し 合わせては離しを繰り返して やがて回数も忘れてしまうほど キスしてしまった二人 「もうキスに飽きちゃった?」 「うん…次はね…」 そしてキスでは物足りなくなったのか 次の行為を求める二人
一連のキスを通じて すっかり身体に灯が点ってしまった二人は 身体を求めることをもはややめられない 「もうすっかり眠れなくなっちゃったね」 「これじゃ神経が高ぶって…朝まで…」 「どっちにしたって、もう…」 慕ちゃんがゆっくりはやりんの服の 胸をはだけさせてそこを舐めていく
「はぅ…」 「もう乳首が立ってる…」 「そこぉ…」 はやりんの乳首を執拗に攻める一方で スカートの中をまさぐる慕ちゃん 「ここもすっかり熱くなっちゃって…」 「さっきのキスのせいだよ…」 「キスだけでそんなにしちゃうなんて悪い子だね」 慕ちゃんの一方的な攻めに耐えられないはやりん
「指も何本入るのかな」 「んんっ…」 膣内に指をねじ込められて 苦悶の表情を浮かべそれを見られまいと 顔を腕で隠すはやりん 「たっぷり飲み込んじゃって…しかも締めてくる」 「これ…壊れちゃうっ…」 はやりんの身体を知り尽くした 慕ちゃんの攻めは瞬く間に 彼女の理性を決壊させていく
「さぁ、弾けちゃえっ」 「ああっ…」 「これがはやりちゃんの、初イキかな?」 イクと同時に失神したはやりんを見届けると 自分も服を脱いでいき本格的に 姫始めの体勢に入る慕ちゃん 「はぁ…慕ちゃん…」 興奮がまだ冷めないはやりんの身体を 慕ちゃんはゆっくりと包み込んでいく
さっきまでの激しい攻めとは打って変わって 優しくはやりんの身体に寄り添って ゆったりとしたテンポで彼女を揺さぶっていく 「あたまふやふやで私っ」 「はやりちゃんは賢すぎるからたまには馬鹿になった方が楽だよ。ほら、こことか」 「あっ…」 二人はただ身体を重ねていくだけだったが
じんじんと芯から快感を高めていって 心も体もまさしく繋がってるような感覚になっていく 「はぅっ…あっ…」 「気持ちよすぎてホントに馬鹿になっちゃったのかな。まぁいっか、正月ぐらいは馬鹿にならないとね」 もはや二人は時間も忘れて お互いを求め合っていた まもなく初日の出だったが
二人にはどうでもいいことだった 「まだ…日が出てないよね」 「外出てないからわからないや」 そして二人は眠くなって 意識が落ちるまで交わり続けて 「おはよう…今何時」 「お昼の十二時かな…」 「もうちょっと寝てよっ」 何も身につけてない二人は 一晩の交わりの余韻に自堕落に浸ってた
813. 1月2日
「はやりちゃん、おはよう」 頭の中で何かが違うと叫��でいる でもその声が心地よいから 無理矢理押さえ込んだ 「朝ご飯できてるんだけど食べる?」 「もちろん、時間に余裕もあるから」 目の前に居る慕ちゃんが妙に優しい その事実が何故か腑に落ちない 「消化にいいものをメインにしたよ」
ニッコリと微笑む慕ちゃんが 心地よくて食も進む 彼女が豪語するように 消化にいいものを中心に栄養バランスも ちょうどいい献立で構成されていた 「今日お仕事だから、あんまり胃も疲れないものがいいかなって」 「…優しいね、慕ちゃんは」 「ううん。私ははやりちゃんの■■■■だから…」
慕ちゃんの言葉の一部が なぜか聞き取れなかったのは気のせいなのか 「どうしたの?」 「ああ…なんでも」 「それでね」 慕ちゃんは笑顔でずっと 色んなことを話してくれて 時間を忘れそうになる でも仕事だからこの部屋を出なきゃいけない 「そろそろ時間だから」 「いってらっしゃい」
名残惜しそうに手を振る慕ちゃんは どこか寂しそうに見えた でも仕事に出る時間が迫ってるから 仕方が無い早く出ないと あれ?急に頭が… どうして? 「はやりちゃん!?救急車…」 慌てて119番へ電話してるであろうと 慕ちゃんを横目で見ながら 私は意識を失っていく 「私…どうなっ…」
そして私は一人で目覚めて 気づいてしまったのだ さっきまでの世界は夢の世界だったことに 慕ちゃんが現実よりずっと優しいのも きっとそうあって欲しい私の願望が 無意識的にそうさせたのだろう 「うっ…」 いっそあの夢が 醒めてしまわなければよかったのに と暗い闇のなかで泣いていた
そしてもう一眠りしようと 布団を身体に掛けたとき 暖かいものが手に触れたことに気づいた 「慕ちゃん?」 まさかこんなところに慕ちゃんがいるなんて 夢と思って頬を抓ってみたら痛かった 「あ…」 布団に覆い被さるように眠っている慕ちゃんの その手には熱様シートとポカリが握られていた
体調を崩してしまった私のために わざわざ看病をしてくれたんだ そんなことを彼女に伝えたこと��なかったのに 「やっぱり…現実の慕ちゃんも優しいよ」 一人で頑張ってくれた慕ちゃんの身体を 風邪が移らないよう気をつけて優しく撫でた 「わたしは…はやりちゃんの…すきなひと…」
寝てまで私のことを看病してるのかと 流石に自分でも呆れて笑ってしまった まぁわざわざ合鍵を使って忍び込んでまで 看病するほどだからよっぽどだけど 「さて、慕ちゃんの頑張りに答えて一生懸命治さないと」 慕ちゃんの持ってたポカリを一口飲んで 布団を被って私はそのまま眠りについた
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oharash · 6 years ago
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白砂の花びら
海沿いの俺のまちは、夏も冬も日本海からの潮風に守られている。この日はどういうわけか 普段よりずっと日差しが強く、昨日よりおとといより気温がだいぶ上昇していた。冬にはあおぐろく染まる北陸の空でも夏はそれなりに抜けるような青さを見せる。一種の雰囲気を感じて振りあおいだら、立ち枯れたみたいに生えている電信柱のいただきに、黒くうずくまる猛禽の視線と俺の視線がかちあった。
 海沿いの道は温泉へ向かう車が時折走り抜けるだけで、歩いているのは俺たちだけだった。俺の半歩後ろをついて歩くユウくんはスマートフォンを構えながらあれこれ撮影している。ポロン、ポロンとこの世界に異質なシャッター音が溢れて落ちる。
 バグジャンプのふもとまでたどり着くと、彼は先ほどの猛禽をあおいだ俺みたいに首をまわして仰いだ。
「映像で見るより大きい。ていうか高い。スキーのジャンプ台みたいだね」
 俺の貸したキャップとサングラスが絶妙に似合わない。卵型のユウくんの輪郭にウェリントン型のフレームは似合っているのだけど、ユウくんがかけるとアスリートというより、田舎の海にお忍びでやってきたはいいけれどただならぬ雰囲気を隠そうともしないセレブリティに見える。
 バグジャンプは体育館を改築した旧スケボーパークに隣接している。パークに置きっ放しのブーツと板からユウくんに合うサイズを選んでフィッティングして俺もブーツを履き、板を持って2人でバグジャンプへの階段を登った。
 登り切ると眼下に日本海が広がる。日本も世界もあちこち行ったけれど、俺は今も昔もこの景色を愛している。光をたたえた海は水平線へ行くほど白くて曖昧で、潮風が俺たちの頬を撫でた。ユウくんが歓声をあげてまたシャッターを切る。
 ユウくんの足をボードに固定しでグリップを締めた。いざとなったら抜けるくらいゆるく。アスリートのユウくんは自分の身体感覚に敏感だからかスタンスのチェックは一瞬だった。「まず俺が滑るから見てて。俺はスタンスが逆だけどそこは気にしないで」「トリックやってくれる?」「やんない。ユウくんのお手本だから滑って跳ぶだけ」フェイクの芝の上に板を滑らせる。重心を落として体重を全て板にのせ、軽く弾ませてスタートした。視界がスピードをもって背後に駆け抜けてゆく。軽く踏み切ってそのまま弧を描いてエアクッションに着地した。板を足から外して体を起こし、バグジャンプに取りすがってユウくんに電話をかける。「こんな感じ。ターンとかしないで普通に滑り下りればオッケー。スピードでて怖くなったら力抜いて。体重偏らせる方が危ないから。踏切のときにもどこにも力入れないで。そのまま落っこちる感じでいけば今みたいになるから」「YouTubeで見たのと同じ絵だ! すっごい。俺今北野アヅサの練習見てるよすごくね?」「俺の話きいてる?」「聞いてる聞いてる。体をフラットにして変に力入れないで、姿勢の維持だけしておけばオッケーってこと?」「そう」「りょーかあい」
 ユウくんがバグジャンプのてっぺんで右手を掲げる。スマホを動画撮影に切り替えて俺も手を挙げた。板をしならせて、ユウくんがスイッチした。レギュラースタンス。腰を軽く落とした姿勢はいい具合にリラックスしている。ユウくんの運動神経に間違いはないけれど、万が一ケガがあったらという不安が喉につかえた。俺の心配を茶化すようにその姿はあろうことか一回転してエアクッションに沈んだ。
 「ありえない。回転しくじってケガしたらどうすんの」
「狙ったんじゃないよ。ちょっとひねってみただけ。エアってすごく気持ちいいんだね。横の回転なら慣れてるけど縦の回転はないから、めっちゃ新鮮。空が見えるし楽しいし着地気にしなくていいなんて最高。両足固定されてるのはちょっと怖いけど」
 回転数のあがったユウくんは頰を火照らせて躁気味に笑っていて、まばたきが減って口数が多くなってるのが余計に危うい。教えてくれというので絶対に無茶はしないことを約束させて、基本の滑りにもう少し解説を加え、簡単なトリックをひとつレクチャーした。もともと体ができていることもあるしユウくんの身体と脳は笹の葉のように研ぎ澄まされていて、俺の言葉の通りに体を操っていく。終いにはタブレットでお互いの滑りを録画し、「ここ、ユウくんは左に落としたいんだろうけど下半身がついてってない」だとか「アヅはこのときどこを起点に体を引いてるの?」だとか結構真面目にやってしまった。休憩のたびにユウくんは海へ体を向けて「船」だの「カップル」だの「カモメ…ウミネコ? 」だの、言葉を覚えたての子どもが看板を読みたがるように単語を頭の中から取り出して眺めていた。「ジャンプやばい。やればやるほど考えたくなってやばいやつ。ね、夕ご飯の前に海行こ」とユウくんから言い出した。
   行く、と言ってもバグジャンプを降りて道路を横切り防波堤を越えればもう砂浜だ。ボードを片付けて、軽くなった足でアスファルトを踏む。防波堤の上に登るとユウくんはまた海の写真を撮り出したので、その足元にビーサンを並べてやる。俺も自分のスニーカーを脱いでビニールに入れ、バックパックにしまう。
 やや遠くから犬を散歩するじいさんがこちらへ歩いてくるくらいで、ここは遊泳区域でもないので先客はいなかった。ユウくんは「砂浜やばい、何年振り」だの「ここ走ったら体幹鍛えられそう」だの「日本海は綺麗だって聞いてたけど本当だね。うちの県の海水浴場は海藻ばっかりだよ」だの俺の相槌も必要とせず軽やかに波打ち際へと歩いて行った。
 波に脚を浸したユウくんの半歩後ろにたつ。そのまっすぐ伸びたかかとのうしろで、黒や茶色の細かい砂利が水のふるいにかけられて一瞬まとまり、また瓦解していく。そこには時折海藻だとか丸まったガラスの破片だとか、たよりなくひらひらと翻る桜貝だとかが浮かんでは消え、俺はなんとなくユウくんの白いかかとその様を眺めていた。
     ユウくんは「俺札幌雪まつりやる」と言い出し、それはどうやら砂で何かを造ることだったようで、黙々と建造を始めた。俺はごろんと横になって脚をのばし、自然と目に入ってきたユウくんの、キリンの子どもみたいに野生的な首筋についた砂つぶを眺めていると、風にあおられたその粒がハラハラと飛び散って俺の目に入った。ユウくんの向こうでは空が乳白色になるポイントと遠浅の海の水平線が交わりハレーションを起こしている。
 キャップをかぶせているとはいえユウくんを長時間砂浜で太陽光にさらすのはよくないだろう。日焼け止めはバックパックの中に入っているけれど…そう思いながら目をしばたいているうちに意識が遠のいていく。次に目に入ったのは呪いの像みたいな謎のオブジェだった。「…それって」「どう? 自由の女神」「ゲームにとかに出てきそう。調べると誰かの��書とかみつかるやつ」「アヅひっど。辛辣。砂と海水だけで作るの難しいね。ねえ、どこかの国にね、砂の像の本格的な大会があるんだって。砂と海水だけで最低でも高さ1m以上のものを作るの。砂浜一面にたくさん城だとかオブジェだとかが作られるんだけど、どれも満ち潮になると流されちゃうから、その日だけ。ヨーロッパっぽくないよね。その侘び寂び精神って日本っぽくない?」「侘び寂び精神?」「ほら日本人って桜が好きでしょ。すぐ散っちゃうハカナサ的なもの込みで。何かそういうこと」
 ユウくんはスタイルの悪い自由の女神の頭部を指先で整える。俺たちの一身先まで波がきてまた引いていった。ここも満潮時には水がやってきて、その呪いの女神像も今夜には海に還る。
 大学生になって夏休みの長さに驚いた。中高をほとんど行けてなかった俺にとって、夏休みは授業の進行を気にしなくていい気楽な期間だった。それにしたって大学の夏休みは長い。俺は授業があろうがなかろうが練習漬けの毎日だが、この2ヶ月という期間を世の大学生は一体何に使うのだろう。
 大学一年生の冬、2度目のオリンピックに出てからメディアからのオファーが目に見えて増えた。俺自身も思うところがあって露出を増やすことにした。15歳のときもメダルひとつで世界が変わったけど、あのときはそれでも中学生だったからか(すぐ高校生になったけど)競技の注目度の低さからか今考えれば優しいものだった。夏季オリンピックへの挑戦を表明してからは練習練習練習スポンサー仕事練習練習といった毎日だ。調整のために海外にいる日も少なくない。
    だからこの2日間だけが、きっと本当の夏休みになる。
    俺も俺で慌ただしかったが、そのパブリックな動き全てがニューストピックスになるユウくんのそれは俺の比ではなかった。シーズンが終わっても出身地にモニュメントが造られたりタイアップの観光案内が造られたり、国内のショーに彼が出演すると報じられた瞬間チケットの競争率がはね上がったり。そんな彼がスカイプで「夏休みをやりたい」と言い出したときは、いつもの気まぐれだろうと俺は生返事をした。しかしそれはなかなか本気だったようで「海行ったり花火したりする‘ぼくの夏休み’的なのやりたい。田んぼに囲まれた田舎のおばあちゃんちで過ごすみたいなワンダーランド感をアヅとやりたい」と彼は食い下がった。
「俺と? ユウくんのじいちゃんばあちゃん家ってどこにあるの?」
「うちの実家の近所。長閑な田舎感ゼロ」
 成人男子の頭をふたつ持ち寄ってしばし考えたものの、俺たちは家族旅行の記憶もまともにない。物心ついた頃から休日は練習だし、旅行=遠征だ。「国内がいいな。海…沖縄?」「このハイシーズンにユウくんが沖縄行ったりしたらめっちゃ目立たない?」「うううん、目立つのは仕方ないけどアヅとゆっくり過ごせないのはやだな…じゃあ何かマイナーなところ」そんな場所が即座に出てくるような経験はお互いにない。だからしばらくお互いスマホをつついてるうちに俺が「海と田んぼあって田舎で特に観光地でもない、ウチの地元みたいな場所っしょ。何もないところって探すの逆に大変なんだね」と口を滑らせたのは特に他意のないことだった。
「アヅの地元‼︎ 行きたい、スケートパークとかあのバグジャンプとか見たい。日本海って俺、ちゃんと見たことない。アヅの家見てみたい」と食い気味に言われて面食らったものの悪い気はしなかった。知らない土地に行くより気安いし何よりうちの地元には人がいない。両親は友人を連れていくことにはふたつ返事だったが、それがユウくんであることには絶句し、地味に続いている友人関係だと告げるとやや呆れていた。でもそんなの普通だろう。だって高校生を過ぎて、友人のことを逐一両親に話す必要なんてない。ユウくんがただの同級生だったらそんなこと言わないっしょ、と胸に芽生えたささやかな反発はそれでも、訓練された諦めによってすぐに摘み取られた。
 砂の上に起き上がり砂をさらっていくつか貝を拾い、謎の像を写真に収めているユウくんに声をかける。「そろそろ晩メシだから帰ろ」夏の太陽はそれでも夕暮れにはほど遠く、西に傾いた太陽の、ささやかに黄色い光がものがなしい。振り返ったユウくんの顔はなぜか泣きそうに見えた。その頰は午後5時の光線の中でもはっきりわかるくらい白くて、まるで俺が拾った桜貝の内側のようだった。彼の唇がちいさく動いたけれど、波の音に消されて何も聞こえない。かりにユウくんの目から涙がこぼれていたとして、そしてそれが流れる音がしても、波の音にかき消されてしまうだろう。「疲れたっしょ。車持ってくるから待ってて」。踵を返そうとしたらTシャツの裾を掴まれた。俺はユウくんの白い手を包んでゆっくりほぐした。「大丈夫、すぐ戻ってくるから」
 スケートパークの駐車場からラングラーを出し、国道へゆっくりと出る。ユウくんが防波堤の上で所在なさげに棒立ちになっているのが見えた。  
   まず落ちたのは母親だった。ユウくんがメディアで見せるような完璧な笑顔と言葉づかいで挨拶しスポンサードされている化粧品メーカーの新作を渡す頃には、母の瞳は目尻は別人のように下がっていた。そこには緊張も俺たち兄弟に向けるようなぶっきらぼうさも消え失せ、俺たちにとってはいっそ居心地の悪いほどの幸福が溢れていた。さすが王子様。さすが経済効果ウン億の男。さすがおばさまキラー。夕食が始まる頃には遠巻きに見ていた弟も積極的に絡み出し、ヤベエとパネエを連発していた。野心家なところがある父が酔って政治的な話題を持ち出さないかだけが心配だったが、父はあくまで俺の友人として接することに決めたようだ。ユウくんの完璧な笑顔、お手本のような言葉に少しだけ負けん気を混ぜる受け答え、しっかり躾けられた人の優雅な食事作法。兄は居心地が悪そうに俺の隣でメシを食っていた。俺と兄だけは今、心を連帯している。スノボをとったら芯からマイルドヤンキーな俺たちと、歯の浮くような爽やかさを恥ともしないユウくんではあまりに文化が違う。いつも感じている座りの悪さがむくむくと膨らむ中、母が産直で買ってきたであろうノドグロの刺身と名残のウニだけが美味かった。
 風呂上がりには念入りにストレッチをした。俺の部屋では狭いので居間でふたりで体をほぐす。ユウくんの体はゴムでできているように関節の可動域が広く、股割りを始めたときは思わず感嘆の声をあげた。俺もケガ防止に体は柔らかくしている方だが到底叶わない。いくつかペアストレッチをしてお互いの筋肉を触る。「アヅすんごい鍛えてるね。腹筋は前から板チョコだったけど大胸筋と下腿三頭筋ヤバい。何してるの?」「体幹メインだからそんなに意識してないけど…直で効いてるのはクリフハンガー。後で動画見よ」「もっと筋肉つける予定?」「んん、もう少し空中姿勢作りたいから、体幹は欲しいかな」「アヅがこれ以上かっこよくなったら俺どうしたらいいの…POPYEの表紙とかヤバイじゃん。ユニクロであれだけ格好いいとか何なの。あっ俺、明日は新しいスケートパーク行きたい」「マジ? ユウくんにスケボーとかさせれらないんだけど。怖くて」「うんやんなくてもいい。アヅが練習してるの見たい」ユウくんの幹のような太ももを抑えながら、俺は手のひらで彼の肩をぐっと押した。
   両親はユウくんをエアコンのある客間に通すように俺に言ったけれど「コンセプトは夏休みに友達んち、だから」と言って俺は自室に布団を運んだ。六畳の俺の部屋��俺が大学の寮へ移ってからもそのままにされている。どれだけモノを寄せてもふたり分の布団を敷けばもうスペースはない。ユウくんは俺の本棚の背表紙を指でなぞりながら「教科書とスノボ雑誌以外なんもねえ」と楽しそうにしている。さっき風呂から出たばかりなのにもう肘の内側や膝の裏が汗ばんでいて、ないよりはマシだろうと扇風機をまわした。「もう寝る?」「んん、寝ないけど電気消す」窓を開けて網戸を閉め、コードを引っ張って電気を消した。カエルの鳴き声が窓の外、群青色の彼方から夜をたなびかせてくる。それは記憶にあるよりずっと近く、耳の奥で遠く響いた。
 ユウくんは行儀よく布団に収まって俺の側に寝返りをうった。「自由の女神像、流されたかな」「多分ね。見に行く?」「あっそういうのもいいね。夜にこっそり家抜け出して海行くとか最高。でもいいや、そういう夢だけでいい」指の長い手のひらが、探るように俺の布団に潜り込んでくる。俺の指をつまむようにして指を絡めた。
「…何もしないのって思ってるでしょう」「うん」「今日は何もしないよ。ここはアヅの家だから。セックスして翌朝親御さんの前で息子やってるアヅも見てみたいけど、我慢する」ユウくんはいつもそうやって自分をあえて露悪的に見せる。思ったことだけ言えばいいのに、と心がざらついた。
「どうだった、うちの地元」
「うん、最高。アヅと歩いて、バグジャンプ見ただけじゃなくて跳べて、海で遊べたんだよ。こんな夏休み初めてだよ。バグジャンプからの眺め最高だった。一生忘れない」
「大げさ…」
 ユウくんの目はほとんど水分でできてるみたいに、夜の微かな光を集めてきらめいていた。その目がゆっくりと閉じられるのをずっと見ていた。指先にぬるい体温を感じながら。
   率直にいって覚えていないのだ。その夜、本当に何もなかったのか。
  眠りの浅い俺が微かな身じろぎを感じて起きると、ユウくんが窓辺にもたれていた。布団の上に起き上がって片膝をたてて窓枠に頰を押しつけるようにして、網戸の外へ視線を向けている。俺の貸した襟のゆるくなったTシャツから長い首と鎖骨が覗いていて、それが浮かび上がるように白い。
 扇風機のタイマーは切れていて夜風が俺の頰を心地よく撫でた。俺の部屋は二階。窓の外では田んぼが闇に沈んでいる。目が慣れてくるとそのはるか先に広がる山裾がぽっかりと口を開けるように黒く広がっていた。ユウくんの膝と壁の微かな隙間から細かな花弁を広げてガーベラみたいな花が咲いている。彼の足元から音も立てずシダが伸びていく。教育番組で見る高速再生みたいに、生き物として鎌首をもたげて。ユウくんは微動だにしない。名前のわからない背の高い花がもうひとつ、ユウくんの肩のあたりで花弁を広げた。
 海の底に沈んだみたいに静かで、どの植物も闇の奥で色もわからないのに、そこには生々しい熱が満ち満ちている。
  布団の上を這って脱力しているユウくんの左手の人差し指と中指、薬指を握った。ねっとりした感触に少し安堵する。
「アヅごめんね。起こしちゃったね」
 ユウくんは首だけを俺に向けて囁いた。
 背の低い葦がユウくんの膝を覆う。ずっと気づいていた。右足首の治りが芳しくないこと、それに引きづられるようにユウくんが心身のバランスを大きく欠いていること。
「ねえ、春からずっと考えてるんだ。今まで俺強かったの、俺が完璧に滑れば誰も叶わなかった。でもそうじゃない潮の流れがきちゃった。アヅ、日本選手権の前にテレビで‘誰でも何歳でもチャレンジはできる’って言ってたでしょう。あれ聞いて俺すごいどうしようもない気持ちになったんだよね。腹立てたり嫉妬したりした。お前まだ二十歳じゃん、俺も二十歳だったら、って。アヅとスカイプするたびに思い出しちゃって、一時期ちょっとダメだった。でもアヅに連絡しちゃうし、そういうのって考えるだけ無駄だし、もちろんアヅも悪くないし。なんか今までは細かいことに迷うことはあっても大きなベクトルを見失うことってなかったんだよね。世界選手権2連覇するとかそういうの。でも今わかんない。引退もしたくないけどどんどん前に行くガソリンみたいなのがない。スケート以外も何もやる気おきない。ゲームも立ち上げるの面倒くさいし音楽も聞きたくない。でもこういうことって最後は自分で何とかすることだから誰に言っても仕方ないし、自分の中で消化するしかないんだけど。アヅはどんどん先行っちゃうし。それがすごいカッコイイし。好きだけど嫌い。でも俺にとって世界で一番カッコイイのアヅだな。アヅみたいに必要なこと以外は喋らないでいたいな。アヅの隣にいるのすごい誇らしい。これ俺のカレシーって皆に言いたいくらい。それが言えないのもすごい嫌だし。何かもう何もかも」
  感情の揺れるままにユウくんは喋り、彼の語彙の海に引きずり込まれる。その偏りというか極端さというか、きっとこれが海水なら濃度が濃すぎて生き物は死んでしまうし、雪山だというのなら環境が過酷すぎて大した植物は育たない、そういったものに窒息しそうになった。俺たちの語彙や世界は圧倒的に貧しくて何も生きていけない。そこには美しさだってカケラもない。「よくわかんない。死に��くないけど、いなくなりたい」
 幾重にも重なるカエルの声。降り注ぐような虫の声。こんなにもたくさんの生き物が泣き喚いているのに、そしてこのやかましくて力強い音楽が月明かりに照らされ満ち溢れている世界で、それでも虚しさしか感じられないユウくんが哀れだった。誰も見向きもしないやせ細った貧弱な空虚を大切に抱えているユウくんが。
  ユウくんの背後に虚無が立ち彼の肩をさすっていた。けれどそはユウくんとほぼイコールの存在で、彼にとっては他人に損なわせてはいけない自らの一部だった。それは誰にも意味付けられたり否定されたり肯定されるべきではない。
 勝ち続ける、他者より秀でる、新しい技術を得る。けれど俺たちの誰も等しく人間であるので、それには自分の体を損なう危険が常に伴う。けれど誰にもう十分頑張った、と言われても表彰台の一番上が欲しいのだ。
 そして自分の体が重くなってゆくこと、誰かが自分より圧倒的に秀でるであろう予感を一番先に感じるのも、自分自身だ。
 ユウくんは空いている右手でなく、俺とつないでいる左手をそのまま持ち上げて頰をこすった。子どもじみた仕草で。
 ユウくんは孤独な惑星の住人で俺はその惑星のディテールの何一つもわからない。ただ俺もただひとりで惑星に佇んでいるという一点だけで、俺と彼は繋がっていた。
「アヅ、キスしたいな」
 繋いだ手はそのままに、俺は体を起こして膝でユウくんを包む葦とシダに分け入った。草いきれの中でユウくんのうなじを掴んでキスをする。最初は触るだけ、次はユウくんの薄い舌が俺の唇を舐めた。そのままゆっくりと歯を探られればやがて頭の芯が痺れてゆく。ユウくんの唾液はぬるくて少し甘い。音をたてないように静かにキスをしながら、指に力を込めた。これだけが本当だと伝わりはしないだろうか。
 こんなキスをしたらもう後戻りできない。俺の足に蔦が絡みつく。空虚が鳴る。胸を刺されるような哀れで悲しい音だった。
 次に目を冷ますと空が白んでいた。寝返りを打つうちにユウくんの後ろ髪に顔を突っ込んでいたらしく、それは麦わら帽子みたいな懐かしくて悲しい香りがした。スマホを引き寄せて時計を見ると4時半。ユウくんの肩は規則正しく上下している。そこは正しく俺の部屋で、布団とテレビと本棚、積まれた衣装ケースがあるいつもの光景だった。ユウくんの足元に追いやられていたタオルケットを引き上げて肩までかけてやった。
 首を傾けて窓の外を見る。抜けるような晴天にほんの少し雲がたなびいていた。手付かずの夏休み、2日目。俺はユウくんの腹に手をまわして目を閉じた。
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sorairono-neko · 6 years ago
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Daily Lifeはすてきな特別
 **企業主催、「ゆうりのはなそば日記」より数日分抜粋。 *月*日  みなさん、こんにちは。  勝生勇利です。  どこにでもいる日本のフィギュアスケート選手で、二十四歳です。  今回は、いつもぼくを応援してくれている**企業さんの二十周年企画の一環ということで、期間限定で日記をつけたいと思います。ぼくは文章を書くのがそれほど得意ではないし、平凡な暮らしぶりなのでおもしろいものではないですが、よろしくお願いします。  日記のタイトルはぼくが考えたものではありません。変えて欲しいと言ったけど押し切られてしまいました。かなり衝撃です。  正直、何を書いたらいいかわからないし、そんなに楽しい話題もないし、そもそもぼくに興味のある人はあまりいないと思うので、ぼくのコーチのことなんかを綴っていけたらなと思います。書けることだけ、ですけど……。  よかったら記事にコメントをつけて、質問をしてください。答えられそうなものに、答えられる範囲でお答えしていきたいと思います。  それでは、短いあいだですがよろしくお願いします。  勝生勇利 *月*日  勝生勇利です。  早速たくさんのコメントや質問、どうもありがとうございます。ちょっとびっくりしました。やっぱりみんなヴィクトルのこと知りたいんですね。答えやすそうなものと、あとは、事務局さんが選んだ質問に回答していくつもりです。  とりあえず、事務局さんのほうから、ちゃんと自分のことも書いてくださいと言われたので、ちょっとだけ書いておきます。  いまぼくは、ロシアはサンクトペテルブルクで暮らしています。コーチのヴィクトルと一緒です。ヴィクトルの家にいます。すごくひろくて豪華で、いろんな部屋がいっぱいあります。  それから、チムピオーンスポーツクラブで練習しています。ちいさいころから知っている(もちろんヴィクトルが所属しているクラブとして)ところで練習するのは変な感じで、とてもとても緊張します。大きなクラブです。でも、だいぶ慣れてきました。  ロシア語はまだぜんぜんだめです。ヴィクトルが一緒にいて通訳してくれます。リンクでは、わりと英語が通じるので助かっています。日本語を忘れそうですが、ヴィクトルがたまに「日本語で話してくれ」と言うので話しています。ヴィクトル、わかってるのかな?  英語といえば、この日記をずいぶん多くの国のかたが読んでくださっているようで、書きこみも日本語だけではなかったので、とりあえず、英語に訳したものも載せておくことにします。昨日のにも書き足しておきました。日本語と英語以外はぼくはできないので、そのほかの国のかたはすみません。でも、コメントは、翻訳機能に頼ってですが、ちゃんと読んでいます。  今日の質問です。 「ヴィクトルはいま何をしていますか?」  ヴィクトルは昨日から家にいません。仕事で留守にしています。ぼくはマッカチンとふたりでヴィクトルの帰りを待っています。練習は、ヴィクトルがいないときは、ひとりでするか、トレーナーのかたがついてくださるか、あと、たまにヤコフコーチが見てくださいます。 「いつからヴィクトルのことが好きでしたか?」  ヴィクトルが世界ジュニアで演技をしているのを見て夢中になりました。それからずっと彼を追いかけています。 「コーチになる前のヴィクトルと話したことがありますか?」  挨拶くらいはしていました。本当に数回ですけど。あと、もうすこし会話したこともありますが、ヴィクトルはおぼえていないと思います。 「ユーリはヴィクトルのどこが好き?」  すべて。 「スケートのこと以外で、ヴィクトルと普段どんな話をしていますか?」  なんだろう……普通の話です。何が食べたいとか、買い物はあるかとか、ヴィクトルがかっこいいとか、ぼくがダサいとか。 「『エロス』は勝生選手にとっていままでにないプログラムでしたが、どう受け止めていますか?」  あれは最高に難しいプログラムでした。これまでやったプログラムの中でいちばん難しかった。技術的な話ではなく、どう演じればいいのかわからなかったのです。方向性がきまってからは大胆にできるようになりました。  ひとつ言えることは、ヴィクトルがコーチでなければ、あれは完成しなかったということです。 「四回転フリップのこと、どう思いますか?」  ヴィクトルそのものです。  では、今日はこのあたりで。 *月*日  勝生勇利です。たくさんコメントありがとうございました。  今日は調子が出なくて、ジャンプがほとんどきまらないのであきらめて、別のことをやっていました。こういう日もあります。  この日記を読んでいるヴィクトルから電話がかかってきて、「俺も質問していい?」って訊かれました。直接すればいいのに……。  晩ごはんはロールキャベツです。自分でつくりました。見た感じがやばいので写真は載せません。  マッカチンを撫でながらこの日記を書いています。  今日の質問です。 「四回転フリップを跳ぶとき、どんなふうに跳んでいますか?」  ヴィクトルの跳び方を思い出して跳んでいます。 「アクセルジャンプが苦手です。勝生選手はトリプルアクセルが得意ですが、どうやって跳んでいますか?」  えいや、って。それか、せーの、って跳びます。 「自分の中でいちばん自信があるのはどこですか?」  ヴィクトルを好きな気持ち。 「コピーしたヴィクトルの『離れずにそばにいて』をヴィクトルが見たと知ったとき、どんなふうに思った? ヴィクトルになんて言われたか教えて欲しいな」  あのときのぼくは息をしていなかった。  そういえば、あの演技についてヴィクトルと話したことはありませんね。体型がやばいみたいなことは言われましたが……。 「ダイエットにいつもくじけます。勝生選手のダイエット方法を教えてください」  食事をもやしとブロッコリーにして、筋力トレーニングをして、あとはランニングをしています。体質にもよりますが、本気でやれば一週間くらいで、やばい体型から氷にのれる体型にまで落ちます。  がんばってください。 「ヴィクトルと一緒に寝ていますか?」  ベッドはぼくの部屋にもあります。 「食事はどちらがつくってる? 得意料理は?」  どっちもつくります。きまってないですね。ぼくは得意料理というものはありません。ヴィクトルはぼくのつくる里芋の煮ころがしと鯖の味噌煮とぶり大根と生姜焼きときんぴらと豚汁とだし巻きたまごが好きらしいです。ぼくが好きなヴィクトルの料理は……、なんだろう、名前がわかりません。野菜がいっぱい入った煮込み料理。  ごはんをつくっていると、ヴィクトルがそばに来て、隙あらばつまみぐいしようと狙っています。あと、ものすごくくっついてくるので料理しづらいです。 「最近、デートしていますか?」  はい。  では、今日はこのあたりで。 *月*日  こんにちは、勝生勇利です。  今日はジャンプの調子がよかったです。動画を撮ってヴィクトルに送ったら、「アメージング!」と言ってくれました。  マッカチンと一緒に買い物に行きました。マッカチンはぼくが買い物をしているあいだ、表でじっと待っていておりこうさんです。  今日の質問です。 「勇利くんはちいさいこ��バレエをしていたそうですが、そっちをやってればよかったなあと思うことはありますか?」  ありません。  いまでも練習でバレエをすることはありますし、好きですが、バレエをずっとしていたらヴィクトルに会えなかったので、スケートがいいです。 「『離れずにそばにいて』と『Yuri on ICE』どっちが難しいですか?」 「離れずにそばにいて」です。あれはヴィクトルのプログラムなので。「Yuri on ICE」はヴィクトルがぼくのために、ぼくのことを考えてつくってくれたプログラムなので、ぼくに合っています。  でも、どっちも大好きです。 「ユーリはどうしてそんなに上品なの?」  上品かな? 上品っていうのはヴィクトルみたいなひとのことを言うと思います。 「朝起きるのはヴィクトルと勇利くんどっちが早いですか?」  目覚ましを止めるのはだいたいヴィクトルです。ぼくも止めようと思うのですが、ヴィクトルがさきに止めちゃうのですぐうとうとしてしまいます。起こしてくれればいいのに、ずーっとぼくが寝てるのを見てるときがあるので困ります。 「好きなひとがいます。大好きなひとを振り向かせた勇利くんに訊きたいのですが、どうすれば両想いになれますか?」  これは……ぼくに答えられる質問じゃないような……。参考になるようなことが言えなくて申し訳ないです。  ぼくはただ、ヴィクトルと同じ氷の上に立ちたいなっていう気持ちでずーっとずーっと好きでした。それだけです。 「最近、キスしていますか?」  はい。 *月*日  勝生勇利です。  今日は練習でいろいろだめだったので、帰ってきてからヴィクトルの動画をずっと見ていました。ヴィクトルかっこよかー。  うきうきしながらボルシチつくったら失敗しました。  今日の質問です。 「ヴィクトルに今後望むことは?」  全部の大会で金メダル獲って! 「ヴィクトルと『離れずにそばにいて』をデュエットしている勝生勇利に何か声をかけるとしたら?」  しあわせそうだね。最高の気分だろ? 「『おまえは色気がない』と言われました。どうすれば勝生くんみたいに色っぽくなれますか?」  色っぽくないんですが……。ぼくが答えていいのかなあ? 色気はヴィクトルとかクリスの専門だと思いますが……。 「エロス」のぼくを見て言ってるのかな? あれはぼくが色っぽいんじゃなくて、ヴィクトルがいるから色っぽくなるんです。 「『エロス』のユーリに誘惑されたい!」  ごめんなさい、あの勝生勇利はヴィクトルしか見ていません。 「ヴィクトル以外��愛を交わした経験はある?」  ありません。 「最近、えっちなことをしましたか?」  えっちなことって、えっちなことですか?  そういうはしたない質問には答えられません。  ではこのあたりで。 *月*日  今日はヴィクトルが帰ってきます。  ごちそうを用意して待っています。  マッカチンがそわそわしていてかわいい。  マッカチンは本当にかしこい、行儀のよいいい子です。  ぼくたちは大の仲よしです。  今日の質問です。 「いまの望みはなんですか?」  全部の大会で金メダル獲りたい! 「ファンサービスは苦手ですか?」  はい。 「勝生くんみたいにかわいくなりたいです」  かわいくないんですが……。でも、言われ続けると自信がつくと思うので、たくさん「かわいいよ」「綺麗だよ」「すてきだよ」「初々しいね」「澄んだ瞳だね」「そんな目で見られるとどきどきするな」と言ってって、大好きなひとにお願いしてみるといいかもしれません。 「正装してヴィクトルと一緒に写真に写っている勇利くんが最高にうつくしいと思いました。ご自身ではどう思われますか?」  うつくしいです。正装したヴィクトルが。 「ヴィクトルのことをのろけて!」  のろけるって何だろう……。  ぼくのコーチは、スケートがすごくてかっこよくて綺麗でスタイル抜群で愛嬌があって楽しくて厳しくて優しくて男らしくてあったかくていい匂いがして指がうつくしくて声がすてきでいつも包みこんでくれる……。  とかかな……?  そんなこと、恥ずかしくて、ぼくにはとても言えません。 「勇利くんと付き合いたいです!」  ごめんなさい、勝生勇利はヴィクトルしか見ていません。 「ヴィクトルと付き合ってますか?」  付き合っていません。  というか「付き合う」がよくわからない……。  少なくとも、ヴィクトルに「付き合おう」って言われたことも言ったこともありません。 「いま、愛を感じていますか?」  はい。  ヴィクトル早く帰ってこないかなあ。  では今日はこれで。  すっかり夕食の支度を整えた勇利は、時計を見、そろそろかな、まだ遅くなるかな、とそわそわしながらソファに腰を下ろした。マッカチンがいない。ヴィクトルの匂いのする寝室にいるのだろう。ヴィクトルを待ちわびているマッカチンを見ると、ほほえましいような、胸が痛いような気が勇利はするのだった。かしこいマッカチンはわがままを言わない。ヴィっちゃんもぼくが帰るまでお行儀よくしてたよなあ、と思い出す。 「マッカチン、おいで!」  勇利はマッカチンを呼び、ソファに上げて膝に寄りかからせた。 「ヴィクトルは今夜帰ってくるからね。楽しみだね」  マッカチンが返事をした。 「ぼくもさびしかったよ。早く会いたいね。それまではこれで我慢しようね」  勇利は大きなテレビにヴィクトルの試合映像を映し出した。マッカチンが喜びの声を上げる。勇利はマッカチンと一緒に目を輝かせてうつくしいヴィクトルに見入った。 「これはね、三年前の世界選手権だよ。ぼく会場でヴィクトルを見たんだけど、すごくかっこよかったよ。そのときヴィクトルとちょっとだけ話をしたんだ。ヴィクトルはおぼえてないだろうけどね。あのころは、ヴィクトルと一緒に暮らすことになるなんて思ってもみなかったな。あの時代のぼくに言っても信じないだろうね」  プログラムが終わるとマッカチンがかなしそうにしたので、勇利は次々と過去の映像を選び、順ぐりに見せた。 「これはグランプリファイナル。このときで三連覇だよ。こっちはまだ髪が長いころだね。あ、ジュニア時代もあるよ。見る?」 「わん!」 「こっちのはね、ヴィクトルが髪を切って初めて公式試合に出たとき。大騒ぎになったんだよ。あ、復帰試合もあるよ。かっこいいねえ」 「わん!」 「普段のヴィクトルってさ……にこにこしながらぐさっと来るようなことも言うし、冗談も言うし、愛嬌があるんだけど、試合のときは本当に気品高くて見蕩れちゃうよね」 「わん」 「どんなヴィクトルも好きだけど……、家にいるヴィクトルはおかしなことを言うし、だいたい理解できないし、でもすっごく優しいし……あとちょっとえっち……」  勇利が赤くなって頬に手を当てたとき、マッカチンがぴくんと反応し、はしゃいで吠えながらソファから飛び降りた。 「あ、ヴィクトル帰ってきた?」  マッカチンの鋭い聴覚ではわかるのだろう。いつもそうだ。何かを聞きつけて騒ぎ出す。ヴィクトルも、「勇利が帰ってくるときはマッカチンが教えてくれるよ」と言っていた。 「やったね! お迎えしよう!」  勇利は駆け出したマッカチンのあとをぱたぱたと追って玄関へ行った。扉がひらき、ヴィクトルが入ってくる。 「ただいまー!」 「おかえり、ヴィクトル!」  マッカチンが陽気に吠えながらヴィクトルに飛びついた。ヴィクトルは笑い声を上げ、かがみこんでよしよしとマッカチンを撫でた。 「ただいま、マッカチン。勇利の言うことを聞いていい子にしてたかい?」 「わん!」  マッカチンが夢中でヴィクトルの頬を舐めている。ヴィクトルは笑い声を上げた。しばらくそうしてふたりが交流するのを、勇利はにこにこしながら眺めていた。 「ヴィクトル、お疲れ様」  勇利は立ち上がったヴィクトルからかばんを受け取った。 「何も変わったことなかったかい?」 「うん。問題ないよ。仕事大変だった?」 「勇利が喜ぶと思ってがんばってきたよ。あ、かばんの中にためし撮りしたやつが何枚か入ってるから見ていいよ。勇利が欲しがるって言ったらくれたんだ」 「ほんと!? ありがとう!」 「いい匂いがするね」 「ごはんつくった。すぐあたためるよ」  勇利が奥へ行きかけると、「勇利……」とヴィクトルが引き止め、気取ったしぐさでかるくくちびるにキスした。 「会いたかったよ、勇利。元気な顔を見られてうれしい」 「……ぼくも」  勇利はまっかになってぼそぼそ言い、かばんを抱きしめてヴィクトルの書斎へ逃げた。そこへ荷物を置き、急いで台所へ行く。ヴィクトルはコートを脱ぎながらマッカチンに何か話しかけていた。  まったくもう、きざなことすぐするんだからな……。勇利はほっと息をついた。まだ胸がどきどきしている。  食事のあいだ、マッカチンはヴィクトルの足元にうずくまってじっとしていた。ヴィクトルはときおりマッカチンと視線を合わせ、ほほえみかけた。 「仕事、どうだった?」 「予定してた衣装が届かないとかでかなり押した」 「えっ、大丈夫だったの」 「まあね」 「それでよく期間内に終わらせることができたね」 「がんばったからね。褒めてくれ」  勇利は笑い出し、「さすがヴィクトル、仕事ができる」と褒めた。 「なんか感情がこもってないなあ」 「本気本気」 「そういえば、表情がいきいきしてるって言われたよ。もうちょっとけだるい感じにしてくれって何度も注意された」 「ヴィクトルは陽気だもん」 「毎日勇利といるからだと思うね」 「なにそれ?」 「勇利がいると、しあわせ成分が分泌されて、俺は健康になるんだ」 「変なの!」  勇利はくすくす笑い、そういえば……とふと思い出した。勇利もオフシーズンになると撮影の仕事が入ったりするけれど、そのとき、同じようなことを言われたのだ。 『勝生さん、いつも肌綺麗だけど、今日はすごい。メイクのノリがぜんぜんちがいますよ』 『えっ、そうですか』 『うらやましい。何か特別なことしました?』 『え、特別なことって……何も……』 『化粧水変えたとか、手入れ方法勉強したとか』 『化粧水? ぼく何もしてませんけど』 『何もしてなくてこれ!?』 『あ……ずっと温泉に入ってたからかな……?』 『それだけじゃないんですよ』 『何がですか?』 『勝生さん。勝生さんは……』 『な、なんですか……』  勇利は緊張し、ごくりとつばをのみこんだものだ。 『綺麗になりました』 『え?』 『綺麗になりました』  くり返されて戸惑った。 『愛して愛されて、どんどん綺麗になってる、って感じ!』  勇利はそのときのことを思い出し、頬をほんのりとさくら色に染めた。ヴィクトルが気がついて目をほそめる。 「いまなに考えてる?」 「あ、べつに……」 「勇利も言われたことがあるんだろう」 「な、何を?」 「いままでとちがうって」 「…………」 「そうだな……、勇利なら……」  ヴィクトルは顔を近づけてささやいた。 「綺麗になった、なんて言われたんじゃないか?」  勇利はどきっとした。なぜわかるのだろう? 「そ、そんなんじゃないよ」 「そうかい?」 「うん。だってべつに綺麗じゃないし」 「…………」  ヴィクトルはいとおしそうに勇利をみつめ、熱愛のこもった慕わしい声でつぶやいた。 「勇利……、綺麗になったね……」 「!……」  勇利は耳まで赤くなってうつむいた。一生懸命に食事をするけれど、何を食べているのかよくわからなかった。 「こんなに綺麗な子の待っている家に帰ってこられるなんて、俺はしあわせ者だ」 「ヴィクトル、黙って」 「俺がいないあいだ、誰にも言い寄られなかっただろうね? 心配だよ。みんな俺のものにしたはずなのにね」 「黙って」 「でも勇利は俺の勇利だから、俺を待ちわびて、俺のことだけ考えていてくれたはずだね」 「黙ってってば!」  ヴィクトルは笑い出し、しばらく食事に集中した。 「練習はどう?」  一般的な会話になったので、勇利はほっと息をついた。 「ヤコフコーチがすっごく気にかけてくれた。びっくりしちゃった」 「なんだかんだいって勇利を気に入ってるからね」 「ヴィクトルのことが大事だからじゃない? あいつの生徒ならしょうがないな、みたいな感じで」 「ヤコフはよく勇利の方向性について意見してくるよ。俺がいなかったら直接勇利に注意できるからうれしかったんじゃないかな」 「そんなに言われてないよ。そういえば、コンパルソリーずーっとやってたら『好きなのか』ってしみじみ言われた」 「褒めてるんだよ、それ」 「そうなの?」 「勇利、これ美味しい」 「よかった」 「ホテルの食事は味気なかった」 「関係者と美味しいもの食べたりしたでしょ?」 「つまらなかったよ。勇利も来たらよかったのに」  勇利は笑い声を上げた。 「マッカチンのごはんの時間はぼくよりさきだし……ぼくもひとりぼっちでする食事、さびしかったな」 「勇利……」  ふたりは情熱的にみつめあった。勇利はほほえんだ。 「マッカチンがさびしがるから、ときどきヴィクトルの動画見せてあげてたんだ。そうしたら大喜び」 「わかる。俺も勇利がいないとき上映会やるよ」 「そうなの? 知らなかった」 「マッカチン、画面から離れないときあるよ」 「そ���なんだ」  食事のあとは居間のソファへ移動し、そこでテレビを見ながらたわいない話をした。マッカチンはずっとヴィクトルにくっついている。勇利はヴィクトルの隣に座った。 「勇利」  ヴィクトルが、静かに勇利の手を握った。勇利はにっこりした。 「日記読んだよ」 「ああ、あれ……。ほんとに毎日読んでたの?」 「俺がこの仕事をどうやって乗り切ったと思う? 毎晩あの日記をひらくのが生き甲斐だった」 「おおげさだな」 「勇利の日記はかわいいな……」  ヴィクトルの大きなてのひらが、勇利の手を優しく包んだ。 「俺も日記をつけようかな」 「ほんとに?」 「そして勇利のことを毎日のろけるんだ」 「ぼくはヴィクトルのことをのろけてなんかいないよ」 「あれ、ちがうの?」 「ちがうよ」 「そうかな」 「そうでしょ。そう書いたじゃん」 「そうかなあ」  ヴィクトルはく��くす笑った。 「俺がおぼえてない、コーチになる前にした話ってなんだい?」 「……ないしょ」  勇利はいたずらっぽく言った。 「意地悪だな」 「いいの。ぼくだけのひみつ」 「セックスしてるか、っていう質問に答えてあげればよかったのに」 「慎みのない」 「そういうところが上品なんだと思うけどね」 「あれはしぐさのことでしょ? ぼくわりとがさつだよ」 「そうかな。品があるよ、勇利はいつも。みだれてるときでも……」 「黙って」 「なんで?」 「慎みのない」  勇利がつんとして答えると、ヴィクトルはますます楽しそうに笑った。 「俺の質問に答えてくれなかった」 「そうだっけ」 「コメントがたくさんついてたじゃないか。ヴィクトルの質問に答えてあげて! って」 「知らない。気づかなかった」 「かわいいうそだね」 「だって、本物のヴィクトルの質問かわからないしね」 「気づいてるじゃないか」 「本物のヴィクトルなら知ってるよ、あの答えは」 「知っていても聞きたくなることがある」 「ヴィクトル、疲れてるでしょ? もう寝たほうがいいよ」 「勇利は?」 「ぼくもそろそろ……」 「勇利の部屋にもベッドはあるんだったね」 「そうだよ」 「でも今夜は?」 「わかってるよ……」  ヴィクトルが寝室のベッドに横になると、マッカチンが隣に寝そべった。勇利は反対側からヴィクトルに寄り添い、マッカチンのつむりを撫でた。 「おやすみ、マッカチン」 「わん」  ヴィクトルもマッカチンのふわふわのつむりに顔を寄せ、「おやすみ」とささやく。 「ヴィクトル、おやすみ」 「おやすみ、勇利」  ヴィクトルは勇利のくちびるにくちづけした。勇利はヴィクトルに抱きついた。久しぶりのぬくもりだ。腕枕もしばらくぶり……。  その夜は三人でぐっすり眠った。  翌朝、勇利はヴィクトルよりもさきにめざめた。ヴィクトルは寝ているときもうつくしいのでしばし見蕩れ、それからあくびをしながら台所へ行った。マッカチンがついてくる。 「おはよ、マッカチン。おなかすいたねえ」 「わん」  マッカチンのために食事を出してやり、かがみこんでしばらく眺めていた。 「美味しい?」 「わん」  マッカチンは居間へ行き、ソファに長くなってぱたりとしっぽを振った。微笑した勇利は寝室へ戻って、ヴィクトルの隣に横たわった。するとヴィクトルがすばやく勇利を抱きしめた。 「わあ。……起きてたの?」 「いま起きた」 「おはよう」 「何時だい?」 「まだ早いよ。もうすこし寝たら?」 「うん。昼までベッドにいよう」  ヴィクトルは上機嫌で言った。 「いいと思う」 「勇利もね……」 「…………」 「やすみだろ?」 「……うん」  ヴィクトルが勇利を抱いたまま身体を転がし、勇利をあおのかせてのしかかってきた。くちびるがふれたので勇利はおとなしく目を閉じた。どきどきする。ヴィクトルのはかりしれない愛を感じる。 「勇利……」  ぞくっとした。いつもとぜんぜんちがう声だ。勇利しか知らない……。 「会いたかったよ……」 「ぼくも……」 「勇利が日記でかわいいことしか言わないから、想いはつのるばかりだし……」 「かわいいことなんか言ってないもん……」 「かわいいよ」  ヴィクトルはささやいた。 「すごくかわいい……」 「あ……」  ヴィクトルの熱い手が寝巻の中に入ってきて、勇利は押し殺した声を漏らした。 「声、抑えないで……聞きたい……」 「…………」  ヴィクトルは勇利に、「綺麗だよ」「すてきだ」「初々しい反応だね」「澄んだ瞳が涙に濡れるとたまらなくなる」「そんな目で見られるとけだものみたいな気持ちになるよ……」とささやき続けた。 「はあ……」 「どうだい?」 「うん……」 「よかった?」 「ん……」 「まだ終わりじゃないよ」  勇利はこっくりとうなずいた。こういうときのヴィクトルの物言いはまったく情熱的で、さらに魔術的であり、勇利をどうしようもないほど甘美に泣きたい気持ちにさせるのだ。 「すこし、待って……やすませて……」 「俺のかわいい勇利」  ヴィクトルのくちびるが頬にふれた。くすぐったくて気持ちよかった。けだるく指をふるわせたら、ヴィクトルが手を握ってくれた。 「勇利……、直接訊けばいい、と言ったね。いま訊いたら答えてくれる?」 「…………」 「ヴィクトル・ニキフォロフのことを、どう思ってる?」  勇利は閉ざしていたまぶたをひらき、清楚な愛を秘めた熱っぽいいちずな瞳でヴィクトルをみつめた。そしてヴィクトルにしか聞かせないとろけた声で、可憐な告白をした。 「……愛しています」 「勇利」  くちびるが重なった。  俺もだよ、愛してる、と熱狂的に告白される、そんな久しぶりの再会の翌朝。
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gtea975t-blog · 6 years ago
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退職代行やってみました
退職代行
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harudidnothingwrong · 6 years ago
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1031yusuke · 7 years ago
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oriori-ki · 7 years ago
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第38回 『野生の王国 群馬サファリパーク』
●ダチョウとカメラ
 あっという間でした。手にしたカメラをひったくられたのは。いや、その瞬間は何がおこったのか、皆目わかりませんでした。
 それは、ダチョウを撮影していたときのことでした。人慣れしているのか、あるいはエサをくれると思ったのでしょうか。柵の中で1羽だけ展示されているダチョウが歩み寄ってきて、柵の上から長い首を折り曲げ、ギョロリとした目をむきだしにしたまま私に顔を近づけてきたのです。
「これはいいチャンスだ、ダチョウの顔の大アップ写真を撮ってやろう」
 少しでも間近な顔を撮影しようと両手を前に突き出してカメラを構えました。そのときです、突然、ダチョウがカメラにぶらさがっていた20cmほどのストラップを大きなくちばしで咥えてカメラごとひったくり、そのまま後ろ向きにブーンと振ったのです。そして数回大きく首を回すと、咥えていたカメラを放り投げました。
 ガシャ、カラッ、カラッン
無情にもカメラは地面を転がっていきました。柵の中です。
「ああっ、カメラが」、近くにいたお子さん連れの若いお母さんが悲痛な声をあげました。私は、あっと言う間のできごとにあっけにとられ、声もでません。         
 やっと我にかえった私は近くにあったホウキでカメラを柵の中から掻き出しました。慌てて液晶モニターを見ると、「SDメモリーカードが損傷しました」と、埃と傷だらけになった画面に表示が出ています。
「今朝から撮影した写真が全部だめになったか、今からの撮影もできないのか」と、目の前が真っ暗になりました。
「壊れちゃったんですか」、若いお母さんものぞき込みながら心配してくれています。
「……はぁー、どうもそうらしいです」
 しかし、奇跡的にカメラは大丈夫でした。「念のため」といったん電源をオフにして再起動し、撮影データを再生してみると、すぐ目の前に迫ったダチョウの大きな顔は映っていませんが、それまでのデータは無事でした。自動的に閉まるレンズキャップが痛んでいてきちんと作動しませんが、新たな撮影もできます。そのまま取材が続けられます。
 改めてダチョウに目をやると、柵のすぐ側に「ダチョウは好奇心が強く、なんでもエサと思ってくわえる習性がありますので、手にもったタオルや小物、ヘア用品など、物を取られないようにご注意下さい」と注意書きが掲げられていました。
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この直後に私のカメラを奪い取ったダチョウ
●群馬サファリパーク
 富岡製糸場といえば、多くの人が中学校や高等学校の歴史で教わった記憶があるでしょう。明治のはじめ、西洋諸国に追いつこうと時の政府が殖産興業の一環として建設した国営の製糸工場です。2014年に世界遺産に登録されたことは記憶に新しいと思います。その製糸場のある群馬県富岡市の郊外の山に36万平方メートルもの広大な面積を占めて1979年に開園したのが、民営の群馬サファリパークです。全国で5番目、東日本では初めての開園でした。
 群馬サファリパークは大きく二つのエリアに分かれます。いうまでもなく一つは動物園の「サファリ・エリア」、もう一つは「アミューズメント・エリア」と名付けられた子供用の遊園地です。ミニのジェットコースター、「サファリ列車」と名付けられたミニ鉄道、メリーゴーランド、大観覧車などがあります。今回の取材目的は動物園ですので、ここでは紹介だけにとどめておきます。
 サファリ・エリアでは山の起伏や傾斜を利用して、約100種の哺乳動物や鳥類が1000頭羽も飼われています。その全てではありませんが、たくさんの哺乳動物や鳥類が自然のままに放し飼いにされているのが特色です。このエリアは、アジアゾーン・アフリカゾーン・アメリカゾーンなどのように大陸・地域別に動物が展示されている区域のほかに、おそらく当園の最大の目玉である、トラゾーン・ライオンゾーンが独立して設けられています。
 訪れた日にちは5月26日、初夏の快晴の土曜日でした。そのためか、動物園入口前にある第一駐車場にはたくさんの乗用車がおかれ、大型観光バスもひっきりなしに到着します。駐車場は第三まであります。サファリパークの入園料金は大人一人(高校生以上)2,700円、子ども一人(3歳から中学生)1,400円ですが、それに見学コースによって異なる乗車料金が加わります。園の運行するコースのうち、シマウマの柄を施した大型バスに乗って定められた道から見学する「サファリバス」コースは一人500円、トラやライオンなどの形をした中型のバスに乗って草食・肉食動物にエサを与える「エサバス」コースはエサ付きで一人1,300円、オフロードカーで時には道から外れて動物に大接近する「レンジャーツアー」は、草食動物用のエサも付いて一人1,300円となっています。
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エサバスコースのライオンバス
 これらのコース以外に自分の乗ってきた自動車でそのまま園内に入って見学するマイカーコースもあり、その場合、「ガイドラジオ料金」として1台につき500円が加算されます。もちろん、オープンカーやトラックなど、安全でない車は園内に入れませんし、園内で車の窓を開けたり、車外に出ることは禁止されています。以前、車外に出て動物に襲われたケースもあります。これらは絶対に守らなくてはならないルールであることは言うまでもありません。「群馬サファリパーク入園のご案内」には、こうした注意事項のほかに「如何なる場合も動物による車の被害には、当園は一切の責任を負いません」とも明記されています。あとで飼育員さんに聞いた話では、こうした実例は「動物のほうが慣れていて」めったにないそうですが、相手は野性をもつ動物であることを忘れてはならないでしょう。  
           ●オフロードカーに乗って見学
 どのコースにするか、一思案後、私は「レンジャーツアー」で見学することにしました。このコースは、土・日・祝日のみの運行です。他のコースはおよそ20分ごとに運行されていますが、この「レンジャーツアー」は、30分あるいは時間帯によっては60分ごとの出発で、コースを90分ほどかけて一回りします。
 オフロードカーには5,6人の見学者が乗り込めますが、10時30分発には、ご夫婦の二人連れ、私のつごう3人が乗車し、運転手兼ガイド役として若い女性の大槻さんが乗り込んできました。
「サファリーバス」や「エサバス」のコースは山の起伏をくねくねと縫うように舗装された道に沿って運行されます。一方、「レンジャーツアー」のコースは、オフロードカーで舗装された道から外れ、動物の放し飼いにされたエリアにも入り込んで行き、上下左右に激しく揺れることもあります。しかし、すぐ目の前でみる迫力のある動物の姿態は格別でしょう。
 入園ゲートをくぐると、すぐにキリン、エランド(ウシの一種)などの草食動物がいます。車が近づくと、彼らは慣れていて、一直線に駆け寄ってきて車の窓にはられた金網の隙間から口を差し込んできます。金網の幅は数センチ四方なので口といっても唇だけですが。彼らは見学者の持つエサが目当てです。「レンジャーツアー」にも2束の草がエサとして付いてくるのです。エサを隙間から差し出すとすぐに食いちぎります。金網があるとはいえ、人の顔と動物の顔がくっつくほどの至近距離です。ものすごい鼻息と��が私の顔に飛んできます。
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オフロードカーに近づいてくるエランド
 しきりにエサをねだって車に近づいてくる彼らを見送り、お尻の縞柄色の薄いチャップマンシマウマや2.5トンも体重があるシロサイを間近に眺めながら、オフロードカーはつぎのエリアへと進みます。左側の急な崖のような斜面の端にバイソンの群れがいます。かつて��く観たアメリカの西部劇映画(最近はすっかり制作されなくなりました)には、草原を馬で疾駆するカウボーイの背景によく映っていましたから、バイソンには見覚えがあります。間近でみると、その大きさに圧倒されます。大槻さんの説明によると1トンくらいにもなるとか。でも映画とは違い、ここのバイソン、どれもがよれよれに破れかかった衣服を着ているかのように、体の半分ほどは長い毛が抜け始めてボロボロに垂れ下がった情けない格好です。
「ちょうど今、毛が冬用から夏用に生え代わるときなんです。今日は快晴でまだいいんですが、梅雨の時期になると、抜け切らない毛が雨と泥に濡れて体にへばりつき、もっとみすぼらしくなります」
「彼らは繁殖期になるとオスを中心にハーレムをつくり、オスの周りにメスを侍らせます。しかし、子育て中はメスが強くなります。『あなたはあっちに行ってて』と。人間とおなじですよ」
と大槻さん。
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エサに釣られてきた毛の生え代わり最中のアメリカバイソン、鼻息が私の顔にかかる距離
●ニホンゾーン
 次の日本ゾーンへと入っていくと、ニホンジカが数頭ゆったりとエサや草を食んでいます。シカそのものはそんなに珍しくはありません。そのすぐ側にあるニホンザルのゾーンに目が行きます。岩の上や樹下にサルたちが思い思いに毛繕いし、追いかけっこしてはしゃぎ合っております。でも、得意なはずの木登りをするサルは見当たりません。よく見ると、植えられている樹木のそれぞれの根元にはなにやらコードが巻き付けられています。
「あのコードには電気が流れています。放し飼いにしてあるので、冬に食料が不足すると木の皮を食べてしまうので、その防止のためです。もっとも今はたんなる脅しで電気は流れていません。彼らは学習能力が高いので同じような痛い目には二度とあわないのです」
 この案内役兼運転手の大槻さん、説明する動物たちのあたかも姉か母親のような口ぶりで、「彼ら」とか「あの子たち」などと丁寧にわかりやすく、しかも人さまの在りようを例えにしてユーモアをもって説明してくれます。その口ぶりの後ろには動物に対する深い愛情や尊敬さえも持ち合わせているのだと感じます。本当に動物たちが好きなのでしょう。
 なお、ニホンザルの放たれている周囲には高い板囲いが作られています。ただ高いだけではありません。なんせ身の軽いサル君たちですので、彼らが勝手に園外に遊びにいけないようにと、その一番高いところには彼らでも手がかりのないツルツルのブリキやアクリル板が内側に向けて斜めに取り付けられています。
 ニホンザルの反対側にはツキノワグマが2頭、岩の上に寝そべっています。その一画は針金の柵で囲まれていますが、柵はわずか2,3本の針金で張られており、高いものではなく、その間隔も広く、しかも簡単です。とてもクマを囲い込んでいる柵とは思えません。これには都会人は気づかず、あるいは気にもとめないでしょう。実はこれは電気柵なのです。この電気柵、昨今の農山村では秋に普通に見られます。農山村では、人口減少にともない、人の住む領域と山の領域を併せ持っていた里山が消滅した結果、本来は山深く棲息していたイノシシやシカなどが人間の領域まで侵入し、畑や水田を荒らすようになってきました。その防御のために、各地の農山村で山と田畑の境目に設置されているのです。このサファリパークでは、2年ほど前にツキノワグマによって従業員が不慮の事故に遭っていますので、念を入れて設置されたのでしょう。
●ウォーキングサファリゾーン
 ニホンゾーンを過ぎると、10m以上はある高い鉄の柵で囲まれた一画に出ます。その出入り口には、バスも通れる高さの大きな鉄柵のドアがあり、それも二重になっています。見学者はこの前で車から降り、係員の指示に従って中に入ります。車の中から放し飼いの動物を観察するサファリですが、このゾーンだけは普通の動物園のように檻に入った動物を見て回ります。
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ウォーキングサファリゾーンでの動物とのふれあいコーナー
 このゾーンには、チリーフラミンゴなど鳥類、ミーアキャットなどの小動物、アカテタマリンなどサルの仲間、ラマ・シカ・ヤギなどの草食動物がたくさん展示されています。テンジクネズミなどの愛玩動物と子どもたちが触れあえるコーナーもあります。
 しかし、何と言っても、子どもたちの人気が高いのは、ライオンやホワイトタイガーのエサやりでしょう。3cmほどの大きさにカットした肉片が5,6個入ったエサが販売されており、それを長い鉄製の火ばさみのような器具に挟んで檻に設けられた専用の窓から中に差し入れるしくみです。窓は1mほどの高さにありますので、ライオンたちは二本足で立って窓に取り付きます。エサをやる人のすぐ目の前に、大きな鋭い牙をもつライオンやホワイトタイガーの口が迫り、グォッ、ヴォーッと鼻を鳴らし唾を飛ばしながら肉に齧りつく迫力は相当なものです。大勢の子どもたちが火ばさみを持って、「ライオンさーん」「トラさーん」と黄色い声で呼びかけたり、「怖ーい」とお母さんの後ろに隠れいったりしています。
 そうそう、冒頭に紹介した、カメラをダチョウに奪われた話もこのゾーンでのことでした。
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エサに齧りつくホワイトタイガー(ウォーキングサファリゾーン)
●アジアゾーン
 ウォーキングサファリゾーンで30分ほどを過ごして、再び車に乗り込み、アジアゾーンへと向かいます。そこにも、ニホンジカが群れている一画があります。シカたちは勝手にテンでバラバラにいるように見えますが、よく観察すると、数頭で小さなグループをつくっており、グループごとに一定の方向に頭をそろえて並んだり円陣を組んだりしています。あるグループはずらりとこちらにお尻を向けて、同じリズムでしきりに尻尾を振っていました。
「オスのニホンジカにある角は年に一度生え代わります。この角は堅くて鋭く危険なので、奈良公園では人為的に年に一度切り落としています。角のある間のオスは気が強く、時にツキノワグマさえ攻撃します。でも角が落ちると、とたんに落ち込んでしまい、しょんぼりとして気の毒です。今のシーズンには赤ちゃんジカがたくさんいるんですが、見当たりませんね。実は、シカには赤ちゃんを藪の中などに隠す習性があります。ここでもあのU字抗や岩陰にいますので、よく見て下さい」
と、ガイドさん。
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人工的な木のほこらにジッと座っている赤ちゃんジカ
 なるほど、岩の隙間やU字抗などの薄暗い中に小さなシカたちがじっと座っています。「藪などに潜んだ赤ちゃんジカはお母さんが呼びにこなければ絶対に出てきません。そのため、お母さんが事故にあって来られないときなど、潜んだまま餓死したり、雨に濡れて体温を奪われて命を落としたりする赤ちゃんもいます」。赤ちゃんがそれほどまでに産んでくれた母親を頼りとし、母親がそれに必死で応えるのは動物の本能であろう。が、顧みる人間世界では、自己の欲望やわがままのために我が子でさえも虐待し、時には死に至らしめるニュースのなんと多いことか。自然のなかで培われてきた"動物としての本性"を捨て去って、己の欲望だけに生きようとする"人間の不条理"を嘆かわしく思う。動物園は動物の姿に仮託した己自身を見つめ直す場所でもあるのです。
 ヒトコブラクダやスリランカゾウを見やりながら、「ラクダのコブには水が入っているわけではありません。脂肪の塊で、この栄養分を使って砂漠でも一ヶ月は生きられます。そんなに知られてはいませんが、足の裏もぷにょぷにょしていて柔らかいんです。ゾウの妊娠期間は二十二ヶ月です」などと、相変わらずサービス精神旺盛な大槻さんのガイドに耳をかたむけながら、車は進みます。車の左方にたくさんのバイソンがいます。先ほどは崖の上の���から見たアメリカゾーンを今度は下方から見上げるのです。バイソンたちは、先日の雨でぬかるんだ泥を気にもせず、そこかしこにたたずみ、寝転び、思い思��に過ごしています。その中に今年春に生まれた赤ちゃんが2頭ほど親の陰に見え隠れしていました。
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群れ集うアメリカバイソンたち
  ●猛獣ゾーン
 車は猛獣のトラゾーン・ライオンゾーンへと進んで行きます。トラゾーンでは、大岩の上に夫婦でしょうか、2頭のホワイトタイガーが大きな肢体を投げ出したまま首だけをもたげてこちらに鋭い視線を向けてきます。ホワイトといっても真っ白ではなく、薄い墨茶色のトラ模様があります。
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放し飼いのホワイトタイガー
 車が左方向にハンドルを切ります。すると、木の下に、岩陰に、木組みの台の上にと、あちこちにライオンがたむろしています。そのほとんどが立派なたてがみを持つオスライオンです。
「自然界では、普通、ライオンは一頭のオスライオンと数頭から十数頭にもなるメスライオンたちとで一つの家族を構成しています。これをプライドといいます。狩りをするのはメスライオンの仕事です。でも、ここでは狩りの必要がないので縄張りを争うこともなく、ああして複数のオスライオンが一緒にいます。あっ、ちょうど今、エサバスがこちらに来ましたので、エサをたべるシーンが見られると思います」
と、ガイド兼運転手の大槻さん、ガタンと舗装道路を外れて、木の下や岩陰、台上のライオンにと車を急接近させます。窓ガラスに自分のたてがみが触れるほどに車に近づかれても、ライオンは意に介しません。
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オフロードカーの窓に体毛がくっつくほどの距離
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樹下にくつろぐオスライオンたち
 やがてエサバスが停車します。もちろん舗装された道路上です。するとライオンたちが一斉にバスに向かいます。
「わーっ」
「きゃぁー」
 バスの乗客から興奮に満ちた歓声があがります。窓に付けられた金網の間からエサの肉片を挟んだ金ばさみが突き出されていて、ライオンが、オスもメスもが折り重なってそれに食らいついているのです。グヴォー、ヴォーッと腹に響くような低く力強い唸り声をあげながら、バスのエサやり用の小窓に群がり集うライオンたちの迫力の凄まじさ、これがサファリパーク形式の動物園の真骨頂でしょう。
 ガイドの大槻さん、巧みにハンドルを操ってオフロードカーをライオンの鼻先にくっつけるようにして、ライオンの行き先もコントロールしています。「運転が上手くないと彼らにばかにされるのです」。こうした運転技術は、ライオンの群れ全体を管理するうえで必須で、新入社員の研修、訓練でも義務づけられているそうです。
 ところで、放し飼いのトラとライオンを分ける柵らしきものは見当たりません。
「実はトラもライオンも水がにがてなのです。わざわざ水に入ることはしないそうです。そこで水たまりを設け、それで区分けできるのです」
●アフリカゾーン
 起伏では上下に大きく揺れ、急カーブでは左右に激しく振られて、車は最後のアフリカゾーンに入って行きます。ここには、アフリカ水牛、チャップマンシマウマ、エランドなどの草食動物が水辺や小高い岩山などにかたまりになって飼育されています。
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アフリカゾーンにいるアフリカ水牛
 そのなかに数羽のダチョウが頭をツンツンと小刻みに動かして群れています。その大半が、お尻の羽が抜け落ちて地肌が丸出しです。
「気の毒ですが、ダチョウの羽は根元から抜けるとすぐに新しい羽が生えてくるんですが、途中から折れたようになって根元が残ると、すぐ生えてこず、ああした姿のようにお尻丸出しの恥ずかしい格好になるんです。他の鳥のように番で子どもを産み育てるのではなく、メスは何匹もが同じ巣に卵を産みます。で、あとは知らんぷり、オスが卵を温めるのです」
 このようにガイドの大槻さんの動物への愛情たっぷりの、そしてユーモアのある解説と巧みな運転に魅せられて、レンジャーツアーのコースはあっという間に終了したのでした。
 このサファリパークで観察できた動物たちは、どれもがその魅力と愛らしさを振りまいていました。四季それぞれに異なった姿もみせてくれることでしょう。とてもそのすべてをここで語り尽くすことはできません。あなたも足を運んでみてはいかがでしょうか。
(緒方三郎)
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