#日本代表チーム選抜者帰国展
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2024年6月26日
2024 明治安田J1リーグ 第20節 サンフレッチェ広島 1-1 アルビレックス新潟@エディオンピースウイング広島 22774人/11分 谷口 海斗、27分 大橋 祐紀
満田誠選手/迷わずにプレーできた
……左ウイングバック、どういう思いでピ��チに立ちましたか。
満田●自分は攻撃的に仕掛けたり、攻撃でリズムを作ることを求められたと思います。守備の部分では前から行くことに対して、奪い切ることを求められてたと思うので、そこはまだまだ足りないですけど、必要最低限のことはできたのかなって思います。
……立ち上がりからうまく攻撃に絡んで、ゴールに向かっていけたらと思うんだけど、ある程度自分の思ってたようなプレーができた。
満田●攻撃の部分で相手のサイドハーフの選手も戻ってきて、2人で対応されてしまうことが多かったので、その前にもうちょっと自分が素早く仕掛けることができたら、もっとチャンスは広がったのかなって思います。
……1-1の結果に終わったけど、その結果については。
満田●チャンスももちろんありましたし、攻め込まれる時間帯もありましたけど、全員で守ってくれてたので。前の選手、自分も含めてそうですけど、もう1点取って、チームを勝たせてあげられなかったってことは、すごく悔しいです。次の試合に向けての反省なのかなって思います。
……満田選手も最後まで、オープンな展開になってもゴールに向かうっていう意志は見えた。
満田●自分はやっぱりゴールを求められてると思うので、そこは常に狙ってました。チャンスがあれば中にも切り込んでいってのシュートの場面っていうのを増やしていければよかったと思う。そういった場面っていうのをこれからもっと増やしていければいいのかなって思います。
……プロ生活はこのポジションでスタートしたんで、なんか初心に戻るみたいなイメージはあるんだろうか。
満田●2年ぶりぐらいにやってみて、やっぱり本職の選手はすごいなっていうのは感じました。まだまだ自分も足りないとこだったり、まだまだな部分がたくさんあるので、そこは試合を重ねるごとに、ですね。どこで出るかわかんないですけど、出たらそのポジションで与えられた役割っていうのを意識しながら。自分はアグレッシブな攻撃・守備が特徴だと思うので、そこはどこのポジションでもできると思うし、ぶれずにやっていきたいなと思います。
……後半戦のスタートっていう意味で、自分の中でもう1回ここからみたいな思いもあったのかなって思うんだけど。
満田●そこまで意識はしてなかったんですけど、試合に出ることは選手としては嬉しいことですし、それがどのポジションであっても、与えられた役割っていうのをこなしながら、いかに自分をアピールしていくか。もうちょっとアシストだったりゴールっていう結果が出れば、もっと自分もサイドとしてもアピールできたのかなって思いました。
……迷いなくプレーしているような印象を受けました。
満田●周りを使うことだったり、仕掛けることだったりっていうのを頭の中でクリアに考えることができたので、そこの選択肢で迷うことはあんまりなかったのかなって思います。
中島洋太朗選手/途中で判断を変えた
中島●今���も(G大阪戦の時と同じように)引き分けの状況でピッチに出て、とにかく点に絡んでチームを勝たせたいって思いでピッチに入りました。監督や選手のみんなも、どんどん前に行っていいよっていうふうに言ってくれたんで、とてもやりやすかった。思い切ってどんどん前に行けたんで、あとは決めるだけだったかなと思います。
……G大阪戦のときよりも、プレー時間は長かったですね。
中島●はい。G大阪戦よりも出場時間も少し伸びてますし、これからどんどんその時間を増やしていけるように、頑張っていきます。
……決定的なシーンもあった。
中島●シュートまではよかったんですけど、入ってないんで悔しいし、次は決められるように頑張りたいと思います。
……今日の経験、これからどんなふうに生かしていきますか。
中島●結果を残すところは本当に大事だなって思った。次はああいうシーンで決めてチームを勝たせられるような選手になっていきたいと思います。
……ファーストタッチのところ、左にパスしたところ。マルコスが蹴ろうとしたところで、なんか奪い取ったみたいな感じもあったけど、あれはもう譲るつもりなかったの。
中島●マルコスは後ろ向きで自分が前向きだったんで、自分はパスをミスりましたけど、見えてるとこがあったんで、自分が出そうかなって思いました。
……マルコスには怒られなかった。
中島●怒られなかったです(笑)。
……でもその次の展開のパスもいいところにいたなと思うけど、見えるところも全然見えていたの。
中島●どっちとも質の問題で、見えていた。そこはやっぱり合わせていきたいなと思います。
……シュートシーン、ドグからもらったと思うんだけど、パスをもらった瞬間にもう決めてやるっていう思いだった?
中島●いえ、最初はシュートまで行くことは考えてなくて、ちょっとずつ相手がどう出るかを見ながら、ボールを持っていたら2人目(のDF)が来たんで、そこをうまくかわしてシュートまで行きました。
……最初は違う選択肢だった。
中島●そうですね。ああいう状況だったんで、あそこから自分でシュートまで持っていくっていうよりも、バスをうまく使ってゴールまで行こうと思ったんですけど、相手が先に動いてくれたんで、そこに対応してうまく持っていけたと思います。
……相手がもしこなかったら、どういう選択肢だったの。
中島●持ちながら、組み立てを考えていました、(相手を見ながらだったので)どうなってたかわかんないですけど、持ちながら考えてました。
……ヒーローになったと思った。
中島●��やあ、なりかけたんですけど、なりたかったっすね。
……次の川崎F戦、チャンスをもらえるかわからないけれども、チャンスが来たら。
中島●どういう状況で出るかわかんないですけど、チームの勝利に貢献できるようにやるだけかなと思います。
ミヒャエル スキッベ監督/最後のシュートが入っていれば、素晴らしい物語が書けた
スキッベ監督●今日は楽しい、素晴らしい試合だったと思います。最後の中島洋太朗のシュート、あれが入っていたならば、サンフレッチェ史上に残る素晴らしい物語が書けたのではないかと思うんですが、そこは少し残念です。まあ、それ以外にゴールが入りましたのでね。
全員が本当にいいパフォーマンスを見せたと思っています。DF陣はケガ人が多くて非常に苦しい状態ですけれども、そんな中でしっかり守りました。オフェンスの選手たちもす��くいいパフォーマンスでした。全員のパフォーマンスはよかった。ただ結果に関して満足しているかといったら、完全に満足してるわけじゃありません。
……満田選手をウイングバックで使った意図と成果は。
スキッベ監督●彼の持っているパワーとエネルギーをワイドで発揮して欲しかった。これを今日はみることができました。本当に最初の頃、マコは今日と同じポジションでやっていましたね。
今日のマコのパフォーマンスについてはすごく満足しています。自分たちが求めていた「走れるマコ」が戻ってきた。望んでいた通りの素晴らしいマコが帰ってきたと思います。
……今日はいつもの試合以上にハイプレスでしたが、保持する新潟に対してそういう指示をされたのですか
スキッベ監督●その通りです。前からどんどんいこうっていうような話をしていました。最低でもボールを組み立てていくところを丁寧にやらせないぐらい、アグレッシブにいこう。そんな話をしていました。最初の3〜4分ぐらいで、おおちゃんがフリーになって、いい形でシュートまで行ったと思ったんですけどね。でも、そういったシーンを作り出すことができました。
……中島洋太朗をこの緊迫した状態で使った理由と、彼の未来について。
スキッベ監督●我々は若い選手をどんどん使っていくっていうクラブであります。また、今回の(MFの)移籍の件で、中盤の選手が少なくなりましたからね。そこが原因で彼がメンバーに入ったわけですが、彼にとってはチャンスを掴むいい時期だと思っています。彼自身もすごく、本当に才能のある選手なので、これから今後も楽しみな選手です。

防衛省が呉市に巨大「防衛拠点」計画 市民が危機感を募らせる理由とは 日本製鉄の製鉄所跡地に急浮上(東京新聞)
広島県呉市で、日本製鉄の製鉄所跡地を防衛省が買収し、新たな防衛拠点をつくる計画が浮上している。海上自衛隊のある基地の街だが、地元住民にとっては寝耳に水。自治体も唐突な話に困惑する。計画に反対する市民団体が結成されるなど、戦艦大和を生んだかつての軍港都市は揺れている。(岸本拓也)
◆製鉄所跡地を「すべて買い取り」
「このままでは市民に十分な説明もなく、防衛省の計画にのまれてしまう」
防衛省の計画案に反対する市民団体「日鉄呉跡地問題を考える会」共同代表の西岡由紀夫さん=呉市=は25日、取材に危機感をあらわにした。
防衛省が計画案を公表したのは3月4日。防衛省の担当者が県と市を訪れ、昨年9月に閉鎖した日本製鉄の瀬戸内製鉄所呉地区の跡地全てを買い取って「多機能な複合防衛拠点」として整備したいと申し入れた。
◆すでに基地がある「地理上の利点」
防衛省の説明によると、拠点整備は「防衛力の抜本的強化」のため。約130ヘクタールに及ぶ跡地を国が一括で買い取って、(1)装備品などの維持整備や製造(2)ヘリポートなどの防災拠点と、艦艇の配備や訓練場といった部隊活動(3)港湾―の三つの主な機能を持つ拠点にする想定という。火薬庫の整備も検討するが、具体的な設備案や整備時期は明らかになっていない。
3月の呉市議会に出席した防衛省地方協力局の村井勝総務課長は、呉地区を選んだのは地理上の利点からと強調。すでに海自呉基地があり、陸上自衛隊海田市駐屯地(広島県海田町)や、米軍と海自が共同運用する岩国基地(山口県岩国市)などが近い点を挙げ、「太平洋や日本海、南西方面へのアクセスが容易で、今後、呉地区の重要性は増大していく」と述べた。
◆中国を念頭に「西日本全体を強化」
軍事ジャーナリストの小西誠氏は、中国を念頭に九州南端から台湾へと連なる南西諸島で自衛隊の体制を強化する「南西シフト」の一環とみる。「京都の陸自祝園(ほうその)分屯地に新たな弾薬庫をつくる計画もそうだが、西日本全体が(必要な物資や人員を後方支援する)兵たん拠点として強化されている」とし、「将来的に、呉を艦船の修理・補給拠点として米軍が利用することもありえる」との見方を示す。
防衛省は年内にも跡地につくる施設の配置案を示す考え。日鉄側も「防衛省案は当社方針に合う」と交渉に前向きだ。ただ、日鉄は、防衛省案以外の跡地活用策を検討する県市との3者協議に加わらず、湯崎英彦知事が「地域のことを無視しないでほしい」と不快感を示すなど不協和音も生じている。一方、市議会や地元経済界などは防衛省案に前向き。「考える会」は、今月28日の市議会で防衛省案へ賛成を表明する可能性もあると懸念している。
◆平和都市を目指す「戦後の流れに逆行」
3月の計画浮上後、反対集会を開き、日鉄に跡地売却の中止などを求めてきた「考える会」。市にも、市民の声を直接聞く説明会などの機会をつくるよう求めているが、市は後ろ向きな対応に終始する。日鉄跡地は、戦前は戦艦大和も造られた海軍工廠で、何度も激しい空襲を受けた。西岡さんは「兵たん拠点が相手の攻撃の標的になるのは、軍事の常識」と訴える。
1950年施行の旧軍港市転換法(軍転法)で、呉市を含む旧日本軍の軍港4市は平和都市の建設を目指してきた。だが2025年3月には、海自呉基地に陸海空自衛隊共同の新部隊「自衛隊海上輸送群」の司令部も設置される。そんな中の今回の計画に、西岡さんは「呉基地の約1.5倍の面積がある製鉄所跡地が新たな防衛拠点となれば、戦後の流れを逆回転させることになる」と危機感を募らせる。

なぜ「大東亜戦争」と呼びたい?(毎日新聞 6月26日)7月3日 Yahooニュース掲載
中国・浙江省杭州市富陽区で 1938年5月4日撮影
陸上自衛隊第32普通科連隊の公式X(ツイッター)が「大東亜戦争」という表現を使いました(その後削除)。日本近代史が専門の明治大学文学部教授の山田朗さんに聞きました。【聞き手・須藤孝】
――先の戦争をどう呼ぶか、定まりません。
山田氏 日本人の手によって戦争の実態が十分に解明されてこなかったからではないでしょうか。特に、日中戦争が日本人にとってなんであったかが問い直されないまま、今に至っています。
――中国をどうみているかに関係します。
日清戦争が転換点です。それまで日本人には、文明の中心は中国・インドだという漠然と��た意識がありました。ところが、日清戦争では、日本は欧米の文明を受け入れた文明国で清国は野蛮な国だ、「文明と野蛮の���いだ」とされ、政治家や知識人があおり、一般にも広がりました。大東亜戦争という呼び方もその流れで見なければなりません。
◇ 「大東亜新秩序」から
――大東亜はどこから出てきた言葉でしょうか。
「大東亜」は1940年に出てきた言葉です。それ以前は東亜新秩序でした。38年に近衛内閣で東亜新秩序声明を出しています。東亜新秩序は、日本と、日本のかいらい国家である満州国と、「日本と協力する中国」を意味していました。
40年9月に、日本軍の北部仏印(フランス領インドシナ、現ベトナム)進駐が行われます。この政策を決定する時に「大」をつけて、「大東亜新秩序」という言葉が作られました。
東亜を中核とした大きなエリアという意味でしょうか。単に大きいだけではなく、偉大なという意味も含んでいます。
――地理的な意味だけではないのですね。
大東亜の地理的範囲は一度も定義されたことがありません。たとえば、インドが含まれるかどうかはその時々で変わります。当時の地図などを見るとインドが含まれていることも多いのですが、ドイツと世界分割の取り決めをした時には、インドはソ連圏とされました。都合よく使われる、あいまいな概念です。
◇ 膨張主義��宣言
――当時の政府が大東亜戦争と呼んだ理由はなんでしょうか。
41年12月に対英米戦争が始まって宣言します。同月12日に閣議決定します。同じ日に内閣情報局が追加発表しますが、「大東亜戦争と称するは、大東亜新秩序建設を目的とする戦争なることを意味するもの」と定義しました。
大東亜新秩序、つまり大東亜共栄圏の建設を目的とする戦争と言ってしまえば、膨張主義的な戦争と宣言したことになります。12月8日に出された、天皇による宣戦の詔書では自存自衛としか言っていません。ところがその直後に、政府自身が隠れた目的を明らかにしてしまったのです。政策の手段としての戦争だとしているので、当時としても国際法違反です。
◇ 背景に日独伊三国同盟
――本音が出てしまったということでしょうか。
「大」をつけたことが大事です。世界を相手にした戦争だという意味が明確になりました。
背景には欧米中心の国際秩序への挑戦があります。「大東亜」はドイツとの交渉でよく使われました。大東亜における指導性とか、大東亜における優位性のような言い方をします。
独伊が欧州で新秩序を目指すことに対応して、日本が大東亜新秩序を作る構図です。ドイツにひっぱられた言葉遣いです。日独伊三国同盟の言葉で、日本単独の言葉ではありません。
――戦後は使えなくなりました。
GHQ(連合国軍総司令部)から政府が公的に使ってはいけないと指定された言葉の一つです。言い換えとして、太平洋戦争という言葉が定着します。
◇ 使われなくなった「太平洋戦争」
――太平洋戦争という言葉は最近では使われなくなっています。
戦後40年が節目でした。85年に「アジア太平洋戦争」や「アジア・太平洋戦争」という名称が提唱されました。「アジア・太平洋戦争」のほうが多数派です。
太平洋戦争では、インド・ビルマ戦線や中国戦線が抜け落ちてしまいます。太平洋戦争という言葉が長く使われたのは、日本人の戦争観のなかからアジアの部分が欠けていたことの表れです。
――「アジア・太平洋戦争」もあまり定着していません。
当時の政府の名称としては満州事変、支那事変、大東亜戦争の三つがありますが、戦後の歴史学でも、この3段階はほぼ前提になっています。
そのうえで、3段階の連続性を重視する人は15年戦争と言いますし、断絶を重視する人は別の言い方をします。
アジア太平洋戦争やアジア・太平洋戦争は、もともとは3段階の三つ目の大東亜戦争、太平洋戦争の言い換えのはずだったのですが、全体を指す、15年戦争の言い換えでも使われるようになります。広い意味と狭い意味の両方で使われ、混乱しています。
◇ 現実を認めたくない
――そのなかで大東亜戦争の言葉も復権してきます。
ターニングポイントは、戦後50年にあたって、日本による過去の植民地支配と侵略を認めて謝罪した村山富市首相談話が出た95年です。村山談話に対する危機感から、自民党の「歴史・検討委員会」が作られ、ここで大東亜戦争という言葉が使われます。
――今の問題でもあるのですね。
大東亜戦争という言葉は、現在のアジアに対する日本の意識の反映でもあります。日本がアジアのリーダーでありたいという考え方が反映しています。経済力などで近隣諸国に抜かれた現実を認めたくないから、大東亜という日本がリーダーシップをとったアジアの秩序を美しいものに見せたいのです。
日中戦争の時に使われた暴支膺懲(ぼうしようちょう、中国をこらしめる)のような考え方は今もあります。大東亜戦争という言葉にはそのことが反映しているのです。(政治プレミア)
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By Chuin-Wei Yap and Dan Strumpf, Dustin Volz, Kate O’Keeffe and Aruna Viswanatha2019 年 5 月 29 日 16:12 JST 更新
2004年夏のある日の夕刻、シカゴでの通信機器展示会スーパーコムのイベントが閉幕する際の出来事である。現場にいた人々の話によると、中年の中国人来訪者が、ほとんど無人となった展示ブースの間を歩き始めた。そして、高価なネットワーク機器のふたをポンと開けると、内部の回路基板の写真を撮ろうとした。
警備員が男性の行動を制止し、メモリースティック、写真、AT&Tに帰属するデータや図表が記されたノート、富士通ネットワークコミュニケーションズやノーテル・ネットワークスなど6社のリストなどを押収した。
男性はイベントのスタッフに対し、エンジニアのZhu Yibinと名乗った。首から提げた名札には「ウェイファー(Weihua)」と記されていた。これについて男性は、勤務先である華為技術(ファーウェイ=Huawei)の前後のつづりが逆になったと説明した。通信分野の調査会社ライト・リーディングの共同創業者であるピーター・ヘイウッド氏によれば、このエンジニアは翌日、しわだらけの服をまとい当惑した様子で現れ、米国に来たのはこれが初めてで、撮影禁止というスーパーコムのルールを知らなかったと語った。
ライト・リーディングのイベント取材の一環としてこの男性のインタビューを行ったヘイウッド氏は、「ジェームズ・ボンドとは正反対の印象の人物だった」と振り返り、「彼は何か悪事を企んでいる人物とは思えなかった。しかし、そう印象づける知恵を持っていたのだろう」と語った。
その後ファーウェイは、名もなき不法侵入者から、中国最大手の国際ハイテク企業、世界最大の通信機器メーカー、第5世代移動通信システム(5G)のリーダー、超大国間の対立の主要因になるまでに成長した。ファーウェイは現在、170カ国以上で18万8000人を雇用し、アップルより多くのスマートフォンを販売し、クラウドサービスを提供し、マイクロチップを生産し、世界のインターネット通信を支える海底ケーブルを運営している。

中国・東莞市にあるファーウェイの工場(4月) PHOTO: KEVIN FRAYER/GETTY IMAGES
そこに至る過程でファーウェイは、同社の台頭は模倣と窃盗行為によるものだとの批判を浴びてきた。米連邦裁判所での10件の裁判の内容を精査し、米当局者や元従業員、競合企業、提携企業などを対象に数多くのインタビューを行った結果浮かび上がってきたのは、競争力を獲得するための手段と倫理観の境界線があいまいなファーウェイの企業文化だった。
ファーウェイを批判する人々は、広範かつ厚かましく、機に乗じる同社の手法を指摘する。ファーウェイの創業者である任正非氏の親類で、モトローラに勤務していた人物が、北京での会合で、モトローラの技術に関する詳細な秘密情報をもたらしたとされるのはその一例だ。
米政府は現在、ファーウェイへの圧力を強めつつある。同社が世界の競合企業を一気に追い抜いて国家安全保障上のリスクをまき散らしていると米政府が見ているためだ。トランプ政権は先週、ファーウェイと同社への重要なサプライヤーとなっている米企業との関係断絶や、米国内でのファーウェイの事業禁止につながりかねない措置を打ち出した。
トランプ政権は、ファーウェイが他の中国企業と同様に、中国政府の命令に従わざるを得ない状況にあると考えている。また、独裁的色彩を近年強めつつあると米当局者らが懸念する中国共産党にとって、世界ナンバー1の通信機器メーカーとしての同��の地位が、強力な武器になるとも考えている。これが、ファーウェイに対する規制措置の原動力となっている。
米治安当局筋によれば、2012年前後には、ファーウェイの米国内施設に、電子装置による盗聴が不可能な機密保持の部屋が設けられていることが発覚した。これは世界の情報当局の施設にある設備と似通ったものであり、米当局の警戒感を強める一因となった。
ファーウェイは、どこの政府のためにも、スパイ活動を行っていないと主張しており、米当局はファーウェイがサイバー空間でのスパイ活動を行った証拠を提示していない。中国外務省は、同国の法律がファーウェイにスパイ行為を強いることはないとしている。
ファーウェイは5Gの標準技術に不可欠の特許を世界で最も多く保有している。同社は、電子メールを通じて、世界市場で法律を順守する姿勢を貫いており、技術革新を重ねてきていると主張。「われわれは自社の事業だけでなく、同業者、提携企業、競合企業についても、知的財産権の価値を尊重している」と記している。

ロンドンではファーウェイ製5G通信機器の試験運用が行われた(3月) PHOTO: SIMON DAWSON/BLOOMBERG NEWS
数カ月前まで、米国のファーウェイ対策は統一性がなかったことを当局者らも認めている。米企業も中国との取引継続を望んでいたため、当局による対処を求めていなかった。
2002年から2003年にかけてファーウェイのスウェーデンのオフィスで契約エンジニアとして勤務していたロバート・リード氏は「彼らは技術を盗むことに全精力を傾けていた」「マザーボードを盗んで持ち帰り、分解して模倣するといった作業だ」と語っている。
ファーウェイによれば、同社の昨年の研究予算は152億ドル(約1兆6600億円)だった。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータによれば、研究予算がこれを上回っている企業は、グーグル、アマゾン、サムスン電子だけだ。ファーウェイは2018年までの10年間で、研究開発部門の人員を約8万人に倍増させた。
ファーウェイは国外進出当初は、目立たないよう努めていた。米国では最初、フューチャーウェイという名前を使い、2001年にテキサス州プレイノ、2002年にカリフォルニア州サンタクララに事務所を構えた。現在も米国内での研究開発事業でこの社名を使っている。当時ネットワーク技術で優位にあった欧州で頂点に立っていたストックホルムに進出した際には、ファーウェイは通りを挟んでエリクソンの向かいのロケーションを選択した。ただし、4年間はアテリエイ(Atelier)という社名を使っていた。
ファーウェイのスウェーデン事務所で2004年から2017年にかけて上級アドバイザーを務めたヤーン・イェークストロム氏は「彼らは『ここにファーウェイがいます』と知らせるような看板をビルに掲げたくなかった」と語っている。
元従業員らによれば、ファーウェイ事務所のスタッフらは、ライバル企業の人材のリクルートを指示されたが、当初はうまくいかなかった。そこでファーウェイは、ライバル企業のネットワーク機器を精査するようになった。リード氏によると、ストックホルムの事務所では、アテリエイの研究者らが、電子的な情報漏れを防ぐ機密保持の地下室に外国製の機器を隠匿していたという。その一部は中国に運び出され、技術者らによって分解された。
こうした秘密の部屋は、ファーウェイ帝国のあらゆる拠点に設けられていた。米当局者らによれば、ファーウェイは、テキサス州など各地のオフィスの奥に、米国人従業員立ち入り禁止のこうした機密保持の部屋を作っていた。
情報機関当局者らは、こうした部屋の存在について、ファーウェイが情報をまるで国家情報機関のように扱っていたことを示していると考えている。そこには、中国政府との安全な通信経路に依存する、厳格に管理された機密保持の階層が存在していた。
ファーウェイは、こうした機密保持の部屋について、自社に対するスパイ行為を防ぐためのものであり、他社へのスパイ行為を可能にするためのものではなかったと主張している。
窃盗や産業スパイ行為は、世界のハイテク産業では比較的よくあることだ。ファーウェイは、外国の知的財産の窃盗で非難される唯一の企業ではない。ファーウェイに批判的な向きは、同社を特別な存在にしているのは窃盗行為の悪質性だと指摘する。
スーパーコムでの騒動の18カ月前となる2003年1月、シスコは同社のソフトウエアとマニュアルをコピーしたとして、ファーウェイを訴えた。このとき、ファーウェイは初めて、窃盗行為をめぐり国際的な裁判で争うことになった。

ファーウェイ創業者の任正非氏(21日) PHOTO: XINHUA/ZUMA PRESS
シスコは裁判で「彼らはシスコのユーザーマニュアルの全てを一語一句変えずにコピーした」と述べた。シスコによれば、同社のマニュアルはルーターに同封されており、同社のソフトウエアはルーターが動いている間、見えるようになっている。そのため、この2つは容易にコピーされたという。
裁判によると、コピーがあまりにも広範囲になされていたため、ファーウェイはうっかり、シスコのソフトのバグもコピーしていた。
ファーウェイの人事担当マネジャーだったチャド・レイノルズ氏は裁判文書で「ルーターに含まれていたかなりの数のありふれたバグを修正するまで、ファーウェイはルーターを出荷できなかった」と述べた。盗んだものであることが発覚するのを恐れたからだという。シスコはコメントを差し控えた。
この件に詳しい人物によると、シスコのマーク・チャンドラー法務顧問は任氏と対峙(たいじ)するため、ファーウェイによる窃盗行為の証拠を携えて深圳に向かった。中には、シスコのマニュアルのタイプミスが、ファーウェイのマニュアルにそのまま残っているという証拠があった。
任氏は無表情で話を聞き、一言「偶然だ」と返答した。シスコの広報担当者は「信頼される企業の一つとして、非公式のビジネス会合についての情報は公開しない」と回答した。
ファーウェイはシスコのルーターのソフトの一部をコピーしたことを認め、2004年7月にシスコとの訴訟で和解した。その1カ月後、ファーウェイはライト・リーディングに対し、スーパーコムで騒動を起こしたZhu氏を解雇したことを明らかにした。同氏との接触を試みたが、できなかった。
元社員によると、結果を求める任氏は設立当初の数年間に何回か、ストックホルムのハイテク地区シスタにある「アテリエイ」を訪問していた。
前出のリード氏によると、エリクソンがレイオフを発表するたびに、ファーウェイの幹部から現地通貨である「スウェーデン・クローナ」の札束を渡され、地下鉄のシスタ駅の近くにあるバーに行かされたという。レイオフされたハイテク人材に飲み物をおごるためだ。ファーウェイは2010年、同国南部ルンドに研究拠点を設立した。イェークストロム氏によれば、それはソニー・エリクソン・モバイル・コミュニケーションズがルンドで450人の従業員をレイオフすると発表した数カ月後のことだった。
20世紀末に起きたドットコム・クラッシュからファーウェイは打撃を受けない代わりに、大量採用という恩恵を受けた。同社のワシントンオフィスで政府業務担当責任者を務めていたウィリアム・プラマー氏は今年行ったインタビューで「こうした人材の多くは突然捨てられた。どこも大打撃を受けたからだ。魔法のようなものは何もなかった。タイミングだけだ」と話した。
ペンシルベニア州西部地区担当連邦検事だったデービッド・ヒクトン氏によると、中国企業と取引のある米国企業が技術の窃取を懸念する一方で、利益を得る可能性を考慮し、企業秘密の窃取を巡る正式な申し立てをためらった。ただ、多くは非公式に米当局に助けを求めていた。
正式に申し立てを行った企業の一つがシカゴに本拠を置くモトローラだった。20年間にわたって中国に投資してきたモトローラは2010年7月、SC300に関する技術を窃取したとしてファーウェイを訴えた。SC300は無線ネットワーク内の端末をつなぐ簡易的な基地局で、建物の内部や農村地域に設置できるものだ。
その7年前、当時モトローラで働いていた任氏の親族の潘紹偉氏は2人の同僚とともに北京に飛んだ。モトローラによれば、その任務は、潘氏が秘密裏にSC300の仕様をファーウェイに見せるというものだった。
ファーウェイはイリノイ連邦裁判所で、潘氏は「勝手に」同氏のチームの製品開発に関する情報や顧客の反応、モトローラを���社する意向を任氏に伝えてきたと主張。同社は潘氏とそのチームがファーウェイ向けに製品開発したことを否定した。潘氏にコメントを要請したが、返答はなかった。
潘氏のノートパソコンから復元し、モトローラの訴状に追加した電子メールの断片によると、潘氏は任氏との面会後に送ったメールに「あなたから要請されたSC300の仕様に関する書類を添付します」と書いていた。ファーウェイはその後、類似した小型の機器(重さはSC300の半分)を製造し、新興諸国の農村地域で販売した。
米当局は2007年2月、潘氏と共謀したとされる人物の一人、金漢娟氏を逮捕した。シカゴのオヘア国際空港で、モトローラの企業秘密を含む1000枚以上の書類を入れたバッグと、北京への片道チケットを持っていた金氏を呼び止めた。連邦捜査局(FBI)はその年の7月、任氏に事情聴取を行ったが、彼らが窃盗行為について話し合っていたかを判断できなかった。司法省はFBIの捜査結果の公開を拒否した。連邦政府は2012年、企業秘密の窃取の罪で金氏を有罪とした。
そのときまでに、モトローラは訴えを取り下げていた。中国商務省は、モトローラがネットワーク機器事業をノキア・シーメンス・ネットワークスに12億ドルで売却する案件にからむ反トラスト(独占禁止法違反)の審査を長引かせていた。アナリストはこれが商務省を通じた報復行為だとみている。モトローラは中国でビジネスを行っていたため、商務省はこの件に関して影響力を持っていた。

モトローラの企業秘密を窃取した罪で4年の刑を言い渡され連邦裁判所を出る金漢娟(中央) PHOTO: M. SPENCER GREEN/ASSOCIATED PRESS
国家安全保障に関する連邦議会の監視機関、米中経済・安全保障問題検討委員会のメンバーであるマイケル・ウェセル氏は「中国は、独占禁止、反マネーロンダリング(資金洗浄)、国家機密など多くの手法を使って多数の企業に報復を行い、業界に衝撃を与えている」と話す。
中国当局は2011年4月にモトローラのネットワーク事業の売却を承認した。これは、モトローラがファーウェイとの和解で合意した1週間後のことだった。モトローラと当局にコメントを要請したが、回答はなかった。
それでも、窃盗行為の疑惑はなくならなかった。ネットワーク向けアンテナを開発するクインテル・テクノロジーの最高技術責任者、デービッド・バーカー氏は2015年、カナダの通信業者テラスとの会議に出席した。すると、テラスの人々からファーウェイが提供した新技術「ユーザー・スペシフィック・チルト」について説明があった。
バーカー氏は、「ユーザー・スペシフィック・チルト」について聞いたことがなかった。それはアンテナから出るシグナルの数を増やし、傾きを調整するもので、携帯電話による通信の精度を高めるものだった。
しかし、バーカー氏は概念的に同一の技術「パー・ユーザー・チルト」について聞いたことがあった。クインテルがファーウェイによる企業秘密の悪用を訴えた裁判によると、それは同氏が7年前に作り出したものだった。クインテルによれば、それはファーウェイからビジネス提携を提案された後、2009年9月にファーウェイと共有した技術だった。
だがファーウェイとクインテルの提携が実現することはなかった。ファーウェイはクインテルとの最初の会合から1カ月後、この技術のコンセプトの特許を取得するため文書を提出したが、その中の文書の1枚には「クインテル」の社名が印刷され、「営業秘密」との文字が記載されていた。
クインテルは昨年、3年間に及ぶ訴訟の後、裁判所での和解に仕方なく同意した。同社の元エンジニアリング・ディレクター、ブレント・アービン氏は、和解案には「恒久的秘密保持条項」が盛り込まれていると述べた。他のクインテル役員はコメント要請に回答しなかった。
そのころになるとファーウェイは、欧米の大半の技術上の競争相手をしのぐようになり始めた。その勢いを背景に、米側は徐々にではあるものの協調的な対応をするようになった。事情に詳しい複数の人物によれば、米当局者はAT&Tに対し、ファーウェイに発注する4Gの契約を撤回するよう働き掛けた。米政府は同盟国・地域に対しファーウェイとの関係を避けるよう要請を行い、米領グアムや日本およびその他地域にファーウェイとのビジネスをやめるよう求める協議のため当局者を派遣している。
2012年の議会報告はファーウェイを国家安全保障上の脅威と断じた。だが同社は同報告結果を強く否定。事業を進める同社の動きを止めるには、議会報告は十分とは言えなかった。
ポルトガル人でマルチメディア・プロデューサーのルイ・オリベイラ氏(45)がWSJに語ったところによれば、同氏は2014年、テキサス州プレイノにあるファーウェイの米国事業本部を空路で訪問した。理由は同社の役員らが同氏の持つスマートフォン向けのアタッチメント式カメラの特許に関心を示したためだった。
オリベイラ氏によると、誰も座っていない12脚の椅子が取り囲む会議室で、ファーウェイの役員2人が同氏の製品に関する説明を聞いた。オリベイラ氏はファーウェイによるライセンス生産を期待しており、製品の参考価格として99.95ドルを提言した。
ファーウェイ側は「後ほど話しましょう」とオリベイラ氏に告げた。それから3年後、ポルトガルの友人からファーウェイはなぜ「あなたのカメラ」を販売しているのか、と聞かれたという。オリベイラ氏の反応は「ファーウェイだって? あり得ない。何のことだ」だった。
そしてオリベイラ氏はファーウェイ製品の写真を見た。(四角型の)正面は中心から端にかけて傾斜がついており、四隅は丸みを帯びていた。ファーウェイのカメラはオリベイラ氏の持つ特許と実質的に見極めがつかないものだった。その小売価格は99.99ドルだった。
「盗まれたと思った」とオリベイラ氏は語った。
この問題についてファーウェイ側と話そうとすると、同社の役員は引き延ばし戦術を取った。このため、同氏は訴訟を起こすと警告した。
ところ��逆にファーウェイが3月、特許に関する非侵害確認訴訟をテキサス州の裁判所に起こした。この中でファーウェイ側は、オリベイラ氏が有利な立場を得るため、カメラに関する自身の見解を広く公言していることに不満を表明している。同社は裁判所に提出した文書でオリベイラ氏の主張に言及しているが、同氏の特許は侵害していないと主張。この訴訟はまだ決着していない。

中国・東莞市にあるファーウェイの生産拠点 PHOTO: KEVIN FRAYER/GETTY IMAGES
現・元社員らによれば、ファーウェイは社員に対し結果を出すよう猛烈な圧力をかける。任氏は社内用ポータルサイトに社員を鼓吹する言葉を書き込むが、その内容はファーウェイの国際的使命を軍事行動になぞらえているものだという。
米国内での起訴内容や元関係者によると、ファーウェイ中国本社のエンジニアたちは国外のスタッフに対し、電話会議や「kindly reminder(念のため確認ですが)」の文言がちりばめられた大量のメールを通じ、機密情報を含む外国のデータを収集するよう繰り返し要求している。ファーウェイはコメントを拒否した。
米携帯電話大手Tモバイルは以前、スマートフォンの検査に使用される「タッピー」と呼ばれる技術を開発した。人の指が素早く動くのに似せた装置で、スマートフォンの反応を検査するためのものだった。これを受けて米国在住のファーウェイのエンジニア、熊新福氏の元には9カ月にわたり中国在住の同社エンジニアたちから一斉にこの装置の複製製造方法に関する情報取得の要求が届いた。米連邦検事によれば、熊氏はファーウェイの指示を受け、2013年5月にタッピーの情報の一部を盗み出した。
Tモバイルからの申し立てを受けたファーウェイは、熊氏と同僚1人は「自分たちの判断で行動した」とし、彼らを解雇した。Tモバイルは2014年9月、企業秘密を盗んだとしてファーウェイを相手取り訴訟を起こし、(2017年5月に)陪審裁判で損害賠償金として480万ドルが認められている。
連邦検事らは今年1月、ワシントン州シアトルの連邦裁判所にファーウェイを起訴し、Tモバイルの主張を繰り返した。ファーウェイは起訴内容を否定している。
米司法省は声明を発表し、「民事訴訟での結果は連邦犯罪が行われたのかどうか、それがどれだけ深刻なものなのかどうか、あるいは法の裁きが下されたのかどうかという問題を必ずしも解決するものではない」と指摘した。
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9月18日(日)|生身の音
ついに! 京セラドーム大阪へ! 足を踏み入れ! た! ぞ!
と、いう昨日。野球観戦経験は、小さい頃にナゴヤドームで中日戦を観たきりで、親によるとその際も飽きて背中を向けながら過ごしていたという、そんなたいして興味をもたないまま生きてきたのが、まさかみずから率先して球場に足を運ぼうとする日がくるとは思いもよらず。ただなにか粗相がないようにしなければとか応援のマナーはどうとか暗黙のルールはどうなのかとかそもそもちゃんと球場に辿り着けるのかゲートはわ��るのか席はわかるのかと、あらゆる不安が湧くばかりで早い時間に家を出た。しかし最寄り駅まで向かう大阪メトロに乗ってみると既に明らかに野球ファンといったひとびとが大量にいたので、私は後方にぴったりとついていくだけで良かった。改札を出るとそこにはオリックスの選手達の巨大な広告が出ていたりして、高揚感が高まりスキップでもしたいような気分を抑え込んで、始まったばかりの検温会場へと向かった。検温というからには店の入り口で見かけるような一人一人おでこなど近付けて計るセンサーを想像していたのだが、一列で並んでいるところをおそらくはサーモグラフィーでざっくりと検温していくだけだったので、なにも止まることなく川の流れのごとくするりと検温は終わり、紫色の検温証明書をもらった、それが場内へ入る時にチケットと共に必要になるらしい。検温所を抜けると一塁側は左で三塁側は右だと看板が出ていて左へと曲がっていき階段を上がっていけばそれが当然京セラドームだった。
既に外野自由席なのか内野席なのか、随分と人が並んでいて圧倒されつつ、指定席だったので特に慌てる必要もないのでグッズ売り場に行って諸々応援によさげなものを見繕おうショップを探すのだがどこにあるのかいまいちわからず、うろうろとしている間に去年のパ・リーグ優勝記念のシンボルがでかでかと貼り付けられたりもして忙しなくスマホで写真を撮っているうちにすっかり迷子になりそうだったので、スマホで地図を確かめてまっすぐにショップへ向かう。着いてしまえばなにも難しい場所ではなかった。三連休に、天王山の三連戦とだけあってどこもかしこも人は多く、更にこの三連休に乗りかかって夏の商品などは割引されていたりもして大盛況だった。野球のグッズが恐ろしいほど頻繁に新商品が出るのはこの一年横目で眺めているだけでもよくわかったのだけれども、売る方も必死なのだとしみじみ。この売り上げがチームの多大なる運営費やら選手の年棒やらに繋がっていく。慣れぬ人間にはユニフォームも一着一万円、高っ、と驚いてしまう。しかしそれでも買う人は多くいる。事実、どんどん手に取られていった。先日引退表明をした能見投手は、ユニフォームもタオルも軒並み売り切れており、みんな考えることは同じだった。価値があると思えば、手を出すのだ。私も、高っ、と思いつつも、今日の目的でもある山本投手のユニフォームを買って、大好きなスヌーピーとの���ラボグッズのハンカチにも手を出し、応援用にとタオルを買って、ひとまずにわかであっても観戦者としての擬態は果たせそうな装備を整え、なんだか完全に掌の上で転がされながらご満悦でもあり、同時にまた一段賃労働への意欲が増した。
模倣ユニフォームに袖を通しながら、そんな時間のすべてが不思議でしょうがなかった。なにもかもが新鮮で、浮ついた空気がそこら中に漂っていて、それぞれ気に入った選手のユニフォームを着て、帽子を被り、あちらこちらで選手の名前や野球の話題が飛び交っていて、その中に飛び込んでうろうろとしていて、なんだかちぐはぐみたいですべてが面白かった。
来たばかりの時はまだ入場が始まっておらず遊園地の人気アトラクションを彷彿させる長蛇の列となっていたけれども、買い物を終えて外に出た頃にはそうした行列も幾分消えており、中で売られている球場グルメも見たかったので受付をすませようとしたら検温証明書の行方がわからなくなっていた。というのももらったそばからひとまずポケットに入れたのがまずく、おそらくは同じポケットでスマホを出し入れしたりしている間に恐らく落ちてしまったのだろう。しょんぼりとしながら検温所へと戻り、いや、今来ましたけど、と、誰もそんなことを気にしているはずがないのに素知らぬ顔でガバガバ検温所を通り抜けてまた同じ証明書をもらった。そのまま再び一塁側へと向かって3番ゲートから受付を終え、通り抜けたら、席へと向かう入り口からグラウンドの緑が視界に入り、そこからずっと視線が通り抜けていって球場の広さに改めて驚愕し、またどんどん楽しくなってくる。急ぐ必要もないけれども席が列の中ほどなので、早めに行った方がなにかと良さそうだったので、グルメを少し見て歩いたら焼きそばと生ビールを買った。持参の水があったので正直なところビールは頼まなくたって良かったのだが、野球とビールはセットという完全なイメージに脳内は支配されており、飲まずにいるという選択は、たとえ一杯750円まあまあ高いな~という気はしてももう少し安い酎ハイにするとかソフトドリンクにしたところで後悔しそうな気がしたので、生ビールにした。
生ビールを片手に席へと向かうといよいよグラウンドが広がっていて、なんだか立ち尽くしそうになりながら、テレビやネットでしか見たことがなかった選手たちの位置をまだからっぽのグラウンドに想像した。広いな、という印象と、思っていたよりも小さいかも、という感想が同時に飛来した。狭くはないけれども、完全に屋根がついているドームならではの閉塞感のせいかもしれない。多くの人間が身を寄せる観客席と、たった一人ずつで位置について守備をする野球選手とでは、この広さに対する印象もまったく違うだろう。たえかねてビールを一口のむと冷たい苦味が喉を通り抜けていき、なんだか随分久しぶりにビールを飲んだと気がついた。美味しくて震えた。
薄く吹く風があっても、熱気のせいなのか、湿度のせいなのか、けっこう暑くて、時間が経つにつれて人が増えていくほどにますます暑くなって、入場者プレゼントでもらった応援ハリセン用の厚紙で、団扇代わりにあおいでいるうちに、選手が出てきた。山本投手がまず出てきて、キャッチャーの若月選手が出てきて、二人で遠投のキャッチボールをする。その、ボールを受けた音が球場内に響いて、ボール自体は小さく、ミット自体も手元のものでしかないのに、音の拡がりが投球の鋭さをものがたっていて、距離が離れていても生身の音に強く引き寄せられて、肌が緊張した。この音を聞きたくて、ここにきたのだった。
その後、次々とベンチ入りメンバーが出てきてウォーミングアップを開始し、いつの間にか覚えてしまった選手たちの名前と背番号と顔とを遠目で確認した。なんだかこれは、ものすごい場所にいる。
ソフトバンクとの試合は、投手戦となった。ソフトバンク表の攻撃から始まり、マウンドに立った山本投手は一人目こそ四球で歩かせてしまったが、ほぼ危なげなく抑えていく。初回裏、ファウルになるかと思った中川選手の打球は微妙に軌道を曲げてぎりぎりファウルのポールの内側に飛び込んでいき、ええっ入った!? というどよめきと拍手が一挙に広がった、ホームランだった。全体にどちらの投手も調子が良く、じりじりとした展開が続いた。しかし、山本投手の投球は圧巻で、途中からは一塁も踏ませず、淡々と投げていった。
緊迫と躍動の表れ、叫ぶ声。バットとボール、ミットとボールが重なる、音。大勢の観客の、手拍子の中で、繰り返されていく。
山本投手は近いうちにメジャーリーグに行くだろう。アメリカに渡ってしまえば、生で投球を見ることは、現実的にとても難しい。だからもしも一度だけ球場に行くのならば、彼の投球を見たかった。けれど、他の選手も、来年にはいるのかわからない。オリックスだけでいっても、シーズン中に後藤選手はトレードで中日に移籍したし、能見投手は引退を決め、来年もコーチをするかどうかはわからない。外国人選手は帰国するかもしれないし、他の選手もどうなるかわからない。怪我をしたり、コロナにかかったり、思わぬ病気にかかったり、誰もと同様に、いつその身になにが起こるかは予想できない。彼等の仕事は、身体が最大限のパフォーマンスをしていかなければ生き残っていけないシビアな業種なので、体調管理をしっかりとしているだろうけれども、そうはいっても人間なので、わからない。わからない、だらけだ。そんなことも考えていると、健康体でのびのびとプレ���をしている姿に感慨があった。そもそも、彼等はほんとうに実在していたんだなと、月並みな点ではあるが、そんなところから感慨深かった。
試合は2-0でオリックスが勝ち、山本投手が最後まで投げきって完封とした。試合終了するとキャッチャーの若月選手と抱き合う姿は、涙がこみあげてきそうになるたまらない瞬間だった。山本投手くらいになってくるともはや完封も不思議ではない贅沢さ、ぽっとでのミーハーが味わうにはあまりにももったいないくらいだったけれども、ミーハーであれ古参であれ、すべては楽しんだもの勝ちだなあと確信した夜。まあせっかく奮発してユニフォームまで買ったのだし、一度と言わず、また行きたい。
しかし席がまんなかの方だとビールのおかわりで売り子さんを呼ぼうにも人が密集していてどうにもならず、ああいうときはみなさんどうしているんだろう。なんだかやたら美味しかったので、もう一杯くらいならいいかと気が大きくなったものの諦めてしまい、それが若干の心残り。
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【パトリック・バーン】 2021/2/8 16:07 JST

https://www.deepcapture.com/2021/02/how-djt-lost-the-white-house-chapter-5-the-chaos-january-6-20/
ディープキャプチャー DJTはいかにしてホワイトハウスを失ったか 第5章:混沌(1月6日~20日) 1月6日の午後に起こったことは、自由運動にとって最悪の出来事でした。何百万人もの人々が国政選挙の盗用に抗議し、真実のために立ち上がる人々を支援するためにDCに降り立っていました。しかし、抗議の途中で、グーンたちが暴れまわったのです...
※続きに、和訳。みんなもレッツ検証。

あとは後書きだけです。

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DJTはいかにしてホワイトハウスを失ったか、第5章 煽りと混沌(1月6日~20日) 2021年2月8日 10分読む
1月6日の午後に起こったことは、自由運動にとって最悪の出来事だった。何百万人もの人々が、国政選挙が盗まれたことに抗議し、真実のために立ち上がる人々を支持するためにDCに集結していた。しかし、抗議行動の最中に、グーン(※バカ、チンピラ暴徒)が国会議事堂を襲撃した。結果、5人が亡くなったという。一人の女性は警察の不必要な発砲により、一人の警官は死因不明のまま死亡した:(『メディア報道に矛盾-無名の法執行機関の情報源は、最初にスニック氏が消火器で頭を撲殺されたと支局に語ったが、匿名を条件に語った別の人物らによれば、スニック氏が鈍器による外傷を受けたことを示す直接的な証拠はなかったとして、これらの主張に反論した』、『議事堂暴動からひと月、ブライアン・スニック巡査の検死結果いまなお保留中』、Fox、2021年2月8日)。主流メディアは、例えば、襲撃の数日後に自殺したとされる2人の警察官を含めることで、死体の数を増やした。
(2020年の間)33人の警察官を殺害し、700人の警察官を負傷させ、何千もの企業を燃やした、アンティファとブラック・ライブズ・マター(※以降BLM)の行動を「ほとんど平和的な抗議行動」と表現していた、この同じ主流メディアによれば、今回の議事堂での出来事は、真珠湾以来のアメリカを襲った最大の悲劇として描写している。政治の中に、主流メディアにとって好ましくない何らかのグーン主義がまだあるのは嬉しいことだ。 私自身は、自分に都合の良い暴力だけでなく、すべての政治的暴力を排斥している。
あの運命的な午後に起きた議事堂での出来事を考察するにあたって、2通りの方法がある。私は両方とも真実だと思うが、どちらがより真実であるかは、現時点では、誰にも分からない。
党派路線の説明はこうだ。抗議者百万人から分裂した一部(200-400人)が議事堂を襲撃することにした。この党派路線の説明は、怠惰で従順なマスコミによって、嫌というほど繰り返されており、現在もはや公職ではない人の弾劾(信じられない)材料になっていることを考えると、これ以上この解釈に時間を割くことはしない。しかし、私もこの解釈を完全に否定するつもりはない。
代替的な説明はもっと微妙で、モルドバについての私の話に沿ったものだ。「全アメリカ民兵に送る、グーン左翼とエージェント挑発者(下着の広告ではない)についてのメッセージ」で説明している。この説明が考えるのは、この事件は心理作戦の一部として、選挙結果に懐疑的な人々の信用を失墜させ、グーン左翼によるアメリカの他地域での国家警察的な弾圧を正当化するために仕組まれたということだ。
議事堂の略奪は政治的にそれら好機を逃さない人々によって意図的にもたらされたという、この代替説明を支持する証拠はどのようなものがあるだろうか?証拠を見直してみよう。
1月12日に、インディペンデント・センチネルによる記事( 『ペロシ-マコーネルが警備強化を拒否!トランプ氏の演説終了前に議事堂変事が始まった』)は、前日のワシントン・ポストの記事を記述する形で掲載した。
※ここ以降機械訳、ちょっとお待ちを。
ワシントン・ポスト紙は、日曜日の夜遅くに、退任する議事堂警察署長のスティーブ・サンドが、建物を確保するための彼の努力が、ナンシー・ペロシ下院議長とミッチ・マコネル上院議長に直接答える下院と上院の警備当局からの懸念の欠如によって損なわれたと考えていると報じています。
そしてWaPoから引用。
議会がジョー・バイデン次期大統領の勝利を正式に決定する2日前、議事堂警察署長のスティーブン・サンドは、抗議のためにワシントンに押し寄せると予想される親トランプ派の群衆の規模をますます心配するようになっていた。
安全な側にいるために、サンド署長は下院と上院の警備当局者に、彼が迅速なバックアップが必要な場合に備えて、D.C.州兵を待機させることを要求する許可を求めた。
しかし、日曜日にサンド署長は言った、彼らは彼を断った...
サンド署長の支援要請が拒否されたり、遅れたりしたのは6回のうちの最初だったと彼は言った。2日後の水曜日の午後に、すでに危機の真っ只中に彼の力は、サンド署長は、彼がこれまでに想像していたよりもはるかに悲惨なシーンが歴史的な国会議事堂の敷地内で展開されたように、彼は助けを求めて5回以上懇願したと述べた。
尋ねられたときに彼らの存在を増やすために議事堂を保護する警察の上層部が阻止することに加えて、議事堂の占領がある程度招待されたことを示唆する他の証拠があるのだろうかか?
このクリップ(「議事堂警察は抗議者の国会議事堂へのアクセスを許可する」)では、警察は、実際に、バリケードを越えて抗議者を招待するのを見ることができる。
Capitol Police Allow Protesters to Reach the Capitol https://rumble.com/vck44f-capitol-police-allow-protesters-to-reach-the-capitol.html

その後、警察は脇に立ち、議事堂を暴行させる(愛国者の傍観者はそれを止めるように頼みながら)。
DC Capitol Riot Police Stand By While Allowing Mob To Storm U.S. Capitol Building(Jan 6th) https://rumble.com/vd0gu3-dc-capitol-riot-police-stand-by-while-allowing-mob-to-storm-u.s.-capitol-bu.html

ここには愛国者が何が起こっているのかをキャッチし、アンティファ/BLMの扇動者自身を止めようとしている。
Patriot Stoping Antifa From Breaking DC Capitol Building Windows https://rumble.com/vcj97w-patriot-stoping-antifa-from-breaking-dc-capitol-building-windows.html

正しい質問をする記事が翌日に登場した。「トランプ支持者は、彼らが損傷を始めたときに議事堂から暴力的な抗議者を引き離した - これらの人々は誰だったのか?」
ここでは、議事堂内の誰かが議事堂の外の人に武器を渡しているのがはっきりと見えるので、彼らは自分のやり方を破ることができるだろう。
ANTIFA given weapons from inside capitol building https://rumble.com/vclvlp-antifa-given-weapons-from-inside-capitol-building.html

そして、このクリップ(「国会議事堂の警察が抗議者のためにドアを開ける。彼らは脇に立って彼らを中に招待する」)警察がすることは...まさにタイトルが主張していることだ。: Capitol police open doors for the protestors. They stand aside and invite them inside. https://rumble.com/vcjzsn-capitol-police-open-doors-for-the-protestors.-they-stand-aside-and-invite-t.html

そしてこれ(「警察が議事堂の扉を開けてみんなを招き入れる」)。 Police open the doors of the capital and invite everyone in https://rumble.com/vcpxbt-police-open-the-doors-of-the-capital-and-invite-everyone-in.html

「DCキャピタル警察は、抗議者が米国議会議事堂に入り、嵐を起こすのを許す」 DC Capital Police Lets Protestors Enter and Storm US Capitol Building https://rumble.com/vcj6g6-dc-capital-police-lets-protestors-enter-and-storm-us-capitol-building.html

侵略者に圧倒されている警察官がいる。何か演出しているように見えないか? DC Capital Police Allowing Protestors To Enter and Storm US Capitol https://rumble.com/vcj1f2-dc-capital-police-allowing-protestors-to-enter-and-storm-us-capitol.html

これは有名なQシャーマンと8人のフォトジャーナリストだ。何か演出したように見えるものは?

ここには、警察官が慎重に狙いを定め、丸腰の抗議者(女性)の喉を撃ったことを示す優れた「シンチ編集」があります。彼女は死亡した。 https://www.youtube.com/watch?v=3Kn4JVIKB1Q Capitol 2021 Ashli Babbitt sync edit 2

興味深いことに、丸腰の女性抗議者の喉を撃った警察官の身元はメディアによって守られているが、これが彼であるという未確認の報告がある。

(もしそのスコアについて決定的な情報を持っているレイダーがいたら、コメントに残してください。)
女性が撃たれた時、廊下にいた抗議者の群衆を注意深く見れば、この人物に気づくだろう。

(※目隠ししました) 彼の名前はジョン・サリバンで、ユタ州を拠点に活動するアンティファ/BLMの活動家だ(「ユタ州の男、暴力的なアンティファ、BLMの抗議を組織化した歴史を持つ男、議事堂の中にいた」)。奇妙なことに、彼はその日の1時間前、午前11時にBLMの集会を組織し、BLMバスの存在をツイートした(「ユタ州の活動家ジョン・サリバン氏、嵐に遭う前に米議会議事堂近くでアンティファ抗議デモを開催 - 6日、DCでBLMバスが走っていることをツイート」):後にバスで議事堂前までエスコートされ、そこから最初の暴徒が出てくるだけだったという報告があったので、これは重要なことである。
彼は、その日の議事堂での行動で逮捕され、その後、彼の左翼的な政治的嗜好が発覚した途端、無罪で釈放された。
それは奇妙に見えるか?今は違う。
主流メディアは、もともとこの可能性を議論することを許されていた。1月7日、NYポストは 「2人の知られているアンティファのメンバーは、議事堂暴動に潜入するために親トランプを装っていた:情報源」。
「反政府勢力がトランプ支持者を議事堂に潜入させた証拠が明らかにした。」(クリスティアニティ・トゥデイ 2021年1月8日)
さらなる興味のために、私はこの21分のミニドキュメンタリーを見ることをお勧めする。 https://seed122.bitchute.com/7pnW7bckCQes/DYlb92zMkj41.mp4

それで、議事堂の襲撃は不名誉だったのか?イエス。それはまた設計されたおよび/またはある程度の演出だったか?
私を「未定」として降ろして下さい 笑
1月7日、上院が議事を終え、ジョセフ・バイデン氏を大統領に選出した 5 分後、ジョン・ラトクリフ大尉は宿題を出した(12月18日までに提出した)。それは、彼が監督していたICコミュニティが、米国の選挙における中国の役割を十分に反映していない報告書を提出したこと、そして、付随するオンブズマンの報告書が、情報アナリストが非難される可能性のある最悪の罪、すなわち情報製品を政治化することを浮き彫りにしたことだ。ラトクリフ大尉の手紙(MSMはオーウェルの記憶の穴に流してしまった)は、あまりにも衝撃的で、最初の50%を引用する。
ラトクリフ - インテリジェンス・コミュニティの選挙の安全性分析についての見解
ラトクリフは、次の大統領を選ぶという憲法上のプロセスを「政治化」してしまうので、これ以上早く報告書を提出したくなかったと主張した。彼は「光学」を心配するもう一人のDCの共和党員だった。狂っている」と呼ばれるかもしれないが、私自身は、正しい分析は、「次の大統領を選ぶための憲法上のプロセスが十分に知らされるように、この報告書を期限内に提出すべきであり、もし選挙��外国からの干渉、特に中国からの干渉が含まれているならば、私はそのプロセスに関わる人々にそれを知らせる義務がある」というものだっただろうと考えている。
移動中....
シドニーは1月6日の前に出発していたが、1月6日の出来事の後、マイク・フリン、サイバー忍者、ドルフィンスピーカー、そして私は全員で別れの準備をした。我々は自分たちの生活に取り掛かるために町を出ていった。 しかし、1月7日の夜、午後10時半に電話があり、ジュリアーニ市長が私のホテルへの出席を要請しているとのことだった。仲介人は、「この件については、そろそろ手を引くところですが、あなたのアイデアについてお話を伺いたいのです」と言った。私は靴を履いてルディのホテルに向かった。到着すると、スイートルームで8人が待っていた。ルディはそこにいて、保安官、凡人、頭のいい弁護士、そして他の数人と一緒にいた。私はルディの前に座ると、彼らは「やめる準備はできているが、何か考えがあるかどうか見てみたい」と繰り返した。
私が答えようとすると、ルディは再び携帯電話をチェックし始め、文字通り、2つ、3つともいじったり、メールを読んだりしていた。私は初めて2ヶ月前にすべきことをした。単に話すのを止めたのだ。彼は「いやいや、続けろ」と言った。私は黙ったまま、ただ彼を見つめていた。彼は言った。「これは消せない。大統領から電話がかかってくるかもしれない」
「じゃあ、それを」と言って、私は彼の左の人を指して、自分の無礼さに驚いた。それからは「彼らから目を離すな、大統領から電話があったらジュリアーニ市長に知らせろ」
ルディは電話を置いて、凡人にスライドさせた。私が再び話し始めたのと同じように、凡人が回って、隣の席の誰かとの会話を始め、再び私は手を組み、凡人を見つめ、私の口を閉じていました。私は、私が言う準備をしていたポイントに達していた。「あなたは自分が誰だと思いますか?午後10時30分に電話をかけてきて、私の考えを共有するためにあなたのホテルに来るように私に言って、その後、注意を払う礼儀さえ持っていないのですか?」しかし、私が口を開くと、凡人は横での会話を断ち切り、静かに私と向き合った。部屋の他の誰もが同様に静かになって、私を見た。
あのグループを相手にして2ヶ月、彼らが普通のビジネスパーソン(というか、「普通の大人」)がするような振る舞いをしたのは、初めての瞬間だった。私は初めてルディの完全な注意を引いたことに気付き、それだけでなく、彼が30年前のルディ・ジュリアーニのように、マフィアに対抗する準備をし、指揮を執り、集中していた時に初めて彼と一緒にいたことに気付いたのだ。 沈黙は、私が考えたように、そして言ったように伸びた。
「これらの機械は約束を持って公衆に販売されました:フェイルセーフとして、バックアップとして使用��る紙の投票用紙が常にあるでしょう。今がその時です。FBIとCISAは両方とも 選挙が外国からの攻撃を受けたと見解を述べています。私たちは同様にその証拠を提供しました。トランプ大統領は、外国からの干渉があったと認めるべきであり、その上で、連邦軍の部隊を米国の連邦保安官、または州兵、またはDHS、またはFBIに派遣して、もし、重大な不正がなければ、彼は譲歩すべきです。しかし、私たちが思うように、何十万もの投票用紙の食い違いを発見した場合、彼には選択肢があります。6つの州を再集計するか、連邦軍にその6つの州で選挙を再実施するよう命令するか。1月20日までに全てを終わらせることができるかもしれません。」
沈黙があった。数秒後、委員長がかき混ぜて話した。彼が口から手を滑らせて顎を撫でると、私は彼の方を向いた。彼はゆっくりとうなずき、「うん。理にかなっている」。凡人に火がつき、私の左にいる現場の新人弁護士が話し出し、その利点を声に出して探り始めた。ルディも同調し、数分以内に彼らはそれがすべてうまくいった:それは狭かったので、あまり異議を唱えられず、それは答えを生成し、結果次第では、トランプへのルートを与える。私はさらに30分ほど滞在し、彼らが興奮の火花を散らしながらアイデアを出し合った。最後に彼らは詳細を検討中で、おそらく大統領にも電話をするだろうと言い、私はそれを合図にその場を立ち去った。彼らに別れを告げ、コートを着た。
私が帰ろうとした時、市長が来て握手をしてくれた。そして、私の胸を指でたたいて、静かに悔しそうに言った。「あと一ヶ月あれば」と。
本当に。私は、ジュリアーニ市長と彼のチームが何の組織性も進歩もないまま、2ヶ月が過ぎていくのを見ていた。彼らが何かを成し遂げようとしているのを見ていると、6匹のサルがサッカーボールをファックしようとしているのを見ているようなものだった。しかし今は「あと1ヶ月あれば」と言っていた。あと10年もあれば、何も変わらなかったのに。彼らは間違っていた。ルディは、もう複雑な訴訟を扱うべきではないから、確かにサイバーに関する複雑な訴訟を扱うべきではないし、ポッドキャストをやって日々を過ごす方が好きだからだ。我々が疑うようになったほど凡庸な元政府職員は、混乱のエージェントとして派遣され、他の人たちは(最終報告では)3億ドルと成長していた現金のポットに焦点を当てていた。
私は雪に覆われた真夜中のワシントンDCの通りを歩いてホテルに戻り��出発のための荷造りを終えた。
翌日の8日、私はチェックアウトし、ワシントンDCに行く用事があるたびに感じる不満を改めて実感した。達成感があまりにも偏っている人々への不満(官僚は他の派閥を阻止するというパラダイムの中で自分たちの成果を測り、普通の人たちが「達成」と数えるようなものではない)、DCの国に対する驚異的なコスト、そこに蓄積された驚異的な富(参照:『DC郊外には、アメリカで最も裕福な10の郡のうち7つが含まれています。』 スレート、2012年9月)。アーチェリーを抜きにしてハンガーゲームになってしまった。しかし、この数ヶ月の間に知り合いになり、好きになり、尊敬するようになった人たちがいて、そのほとんどの人たちと個別に訪問して別れを告げる機会があった。
私は9日の土曜日までにユタ州の自宅に戻り、体調不良を感じながらも、この連載でお読みになっている話を書くことに集中していた。次の日までに、私は何かを拾ったことに気付き、1月11日(月)の朝、私は疑いを持っていたように、COVIDの陽性反応が出た。私は数日間、101度の熱を出しても気楽に過ごし、「インフルエンザの評価は1-10で2だ」と自分に言い聞かせながら、まだ気にしていなかった。 このために世界が閉鎖されたのか?1月14日(木)に目覚めた時は ほとんど元気だった。熱は100度以下に戻っていた。もう大丈夫だと思っていた。しかし午後になるとまた体調が悪くなり、1時間以内に体温は105.4になった。かろうじて病院に行くことができたが、病院に行ったら、危険因子が多すぎて、リストアップするには気が滅入ってしまうため、モノクローナル抗体を投与された。それに対処することと、それに続いてCOVIDフォグに対処することは、私は1週間以上の費用がかかった。
その終わり近く、1月20日、バイデンが大統領に宣誓された日に、私は2つの異なるトランプ・ホワイトハウスのスタッフから2つの電話を受けた。彼らは最後にホワイトハウスを去る前の話をしたいと言っていた。彼らが話してくれた話は、詳細に重なり合い、一致していました。私はここでそれを関連付けることにする。
1月18日、10分間のお別れのはずが、何人かの忠実なスタッフがトランプ氏のオフィスを訪れていた。しかし、議論は選挙の話になり、いつの間にかトランプ氏はどこで間違いを犯したのかと、これまでの決断を蒸し返していた。話題はシドニー、マイク、そして私、そして私たちがホワイトハウスに持ってきた計画に移った。トランプ氏は20分ほどスタッフと一緒にその計画を練り歩いたそうだが、彼にとっては納得がいくまでの間は「それだけ?」彼は怒って尋ねた。「それが彼らがしたかったすべてか?6つの郡で紙の投票用紙を数えること?」トランプ氏は興奮してアイデアを探り、それがどのように簡単になるかを見て、それが起こるように引き起こすために、オフィスで彼の最後の48時間で、それはあまりにも遅くはないかもしれないという可能性さえ持ち出した。会議は1時間以上も延びた、と2人の情報源は私に言った、と彼らは去り際に、アイデアに焚きつけられたトランプ氏から、その日の午後、大統領として残された最後の2日間で実行できる方法を考え出す必要があ��、と指示を与えられた。しかし、その1時間後に彼らのオフィスに電話がかかってきた。大統領は上級スタッフとさらに協議を重ね、説得を断られ、若いスタッフはそのアイデアを取り下げるように指示されたという。
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物語の黄金則【西野亮廣エンタメ研究所 投稿共有】 12月2日(月) ※12月4日以降は『いいね』を押さないでください。 ━━━━━━━━━━ おはようございます。 これからスリランカに行くのですが、着替えを全て忘れてきたキングコング西野です。 (※出国前に書いているので、少し早めの投稿となっております)。 さて。 たとえば、「魅力的な物語を書いてください」という宿題が出されたら、どんな物語を書きますか? あれやこれやと考えて、「そりゃ、応援される主人公にした方がいいだろう」と結論し、きっとあなたは、その物語の主人公に「強力な敵」か「過酷な環境」を用意することでしょう。 主人公が勇気を振りしぼり、最後の最後には逆境に打ち勝��ストーリー展開を用意されるのではないでしょうか? そういったストーリー展開を『ヒーローズジャーニー(英雄の旅)』と呼んだりします。 音楽でいうところの『カノンコード』のように、物語にも「こういう感じで物語が展開していくと、グッときちゃうよねぇ~」という“物語の黄金則”があって、ほとんどのヒット作、ほとんどの「応援される主人公」は、この『ヒーローズジャーニー』の上を走っています。 日常生活があって、 冒険の誘いがあって、 強力な敵が現れて、 メンター(すげー師匠・仲間)が現れて、 覚醒して、 敵を倒して、 帰還 ……みたいな流れです。 僕たちは、『ヒーローズジャーニー』に沿った冒険をする主人公が応援されることを知っています。 なので、作家として物語を書く時は、主人公に『ヒーローズジャーニー』の上を走らせて、応援者(ファン)を増やします。 そして僕たちは、現代が「あらゆるサービスや表現のクオリティーが上がり、均一化され、機能で差別化が図りにくくなった時代」ということを知っていて、「応援者(ファン)を自分につけなきゃいけない時代になった」ということも、なんとなく把握しています。 となってくると答えは一つで、自分自身が『ヒーローズジャーニー』の上を走ればいいわけですが、これが面白いことに、皆、自分のコトとなると、途端に「コスパ思考」となり、なるべく敵がいない、なるべく安全で無駄のない道を選びます。 コスパ街道を走ったところで応援者は生まれないし、応援者が生まれないと、これからの時代は厳しくなってくることを頭では理解しているのに、多くの人は『ヒーローズジャーニー』を走る人生を選びません。 仕事柄、毎日いろんな仕事人(サービス)を間近で見させていただいておりますが、「チームリーダーが『コスパ思考』から『物語思考』へ移行できているかどうか?」で結果が大きく変わってきています。 (※『コスパ思考』から抜け出せないチームは、ここ最近、分かりやすく“集客”に苦戦していたりします) 中でも優秀なリーダーはプロジェクト設計に『ヒーローズジャーニー』を反映させています。 これからの経営者は、ビジネスの勉強の他に、『脚本の基礎』を勉強しなきゃいけなくなってきたように思います。 漫画をたくさん読んで、その漫画の主人公を、プロジェクト設計の参考にするといいかも。 応援しています。 お互い頑張りましょう。 現場からは以上でーす。
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TEDにて
ジョセフ・ナイ:グローバル パワーシフト
(詳しくご覧になりたい場合は上記リンクからどうぞ)
歴史家、外交官であるジョセフ・ナイが大局的に見た国際社会における米国と中国の力関係。そして、経済・外交。そして、ソフトパワーがもたらす世界的なパワーシフトについて語る。
この場合の「パワー」とは、20世紀の遺跡である軍事力のことを「ハードパワー」と定義しています。こちらは「パワー?かフォースか?」の書籍の「フォース」側だと個人的に定義しました。
「ソフトパワー」を上記の書籍での、「パワー」側と定義し、ハイブリッドにする行為を「スマートパワー」と個人的に分類して論じていきます。ゼロサムではないプラスサムの方法での方法も後半にあります!
産業革命からの東西の移転、1970年代からのコンピューティング技術による価格低下により参入障壁の低下も拡大している。
とてもフラットな競争が激化しています。でも、心配はいりません!
リーマンショックによって、アメリカの終焉説は再燃しましたが、10〜15年周期で昔から言われて来たことだそうです。
また、線形での予測は裏切られ、非線形に出来事は変化していきます。
安易に予測することの危険性も指摘しています。バタフライ効果?未来は何が起こるかわかりません。
さらに、現状の3つの局面を説明して解決方法も語っています。
今日、皆さんにお話しすることは、この21世紀の国際社会のパワーについてです。つまり、このパワーは、変化を遂げつつあって、その変化には、二つのタイプがあるという話です。
一つは「パワーの移転」国際社会における国家間のパワーバランスの変化です。
言い換えれば、西洋から東洋へのパワーの移転です。もう一つは「パワーの分散」パワーが洋の東西を問わず、全ての国家主体から非国家主体に移行しているということです。
この二つが我々の世紀で起きているパワーバランスの大きな変化なのです。
それぞれの説明のあとでこの二つがどう影響し合い、それがなぜなのか?を説明して、最後には喜ばしいお知らせもお伝えします。
「パワーの移転」について話すとき、しばしば「アジアの台頭」が話題に挙がります。実際は「アジアの復活」あるいは 「アジア回帰」と捉えるべきかもしれません。
1800年の世界では、世界人口の半分以上がアジアに住み、世界の総生産高の半分以上を生み出していました。
1900年になると、世界人口の半分以上は依然として、アジアに居住していましたが、アジアの生産量は、全世界の5分の1に減少しました。
何が起きたのか?当時の新産業の代表「産業革命」です。
古代エジプト以来の突然の変化でした。持続的なイノベーションにより人間の限界を遥かに超える近代化したヨーロッパとアメリカが、世界の支配的中心になったのです。
しかし、この21世紀に世界人口の半分以上の人口を有する地域として、世界生産量の半分以上を生み出す地域としてアジアが復活しつつあります。
とても重要なパワーシフトが起きていると考えるべきでしょう。ここでもう一つのパワーシフト「パワーの分散」について少しお話します。
「パワーの分散」を理解するために、まず次の事を考えてみて下さい。
コンピューター技術とコミニューケーションに関連するコストは、1970年から今世紀初頭の間に1000分の1近くまで下がりました。
非常に大きく抽象的な数字でしたが、今や現実的な数字になりました。
たとえば、自動車の価格がコンピューター技術の価格と同じくらいの速さで下落したとすると、自動車が5ドルで購入できるという計算になります。
今やあらゆる技術の価格が劇的に下落し、参入する壁が低くなり、誰もが経済に参加できるようになりました。
1970年。オックスフォードからヨハネスブルク、ニューデリーやブラジリアなど、至る所と同時にコミュニケーションを取りたいと思えば
それを可能にするテクノロジーはあったのです。しかし、それを実行するためには、大変なお金持ちでなければなりませんでした。
たとえば、政府、多国籍企業。あるいは、カトリック教会かもしれませんが、とにかく富を持つ身分である必要がありました現在はどうでしょう。
その価格ゆえに限られた者しか、手にできなかった能力を今では誰でも持つことができます。
スカイプならば、無料です。つまり、一部の者に限定されていた能力を今では、誰もが持てるようになったのです。
これは「国家主体の時代が終わった」という意味ではありません。国家は、依然、重要な存在です。しかし、国家だけではなく、舞台は多くの出演者で混み合っています。
しかし、これは従来の言葉や概念に基づいた考え方にどう影響するでしょうか?
例えば、戦争、国家間の戦争という観点で考えてみます。1941年を振り返ってみてください。旧日本政府が真珠湾でアメリカを攻撃した年です。
これに対し2001年。非政府組織がアメリカを攻撃し、1941年の真珠湾攻撃時を上回る数のアメリカ人の犠牲者を出したことは注目すべきでしょう。
戦争の非国家化だと皆さん思われるかもしれません。そうです。私たちはパワーの分散という点において大きな変化に立ち会っているのです。
今日、私たちの語るストーリーは、大国の盛衰というテーマに捉われがちです。そのほとんどが中国の台頭と米国の衰退でしょう。
事実、2008年の金融危機の際「アメリカンパワーが終焉に向かい始めた」とよく言われていました。国際政治の地質構造が変化していると言っていたのです。
しかし、実際には、衰退をそのように言い表すのは、しばしば、誤解を招く恐れがあります。最近の歴史を見れば、アメリカの衰退だ。という意見が10年または15年ごとのサイクルで語られていることに気がつくでしょう。
1958年。ソ連のスプートニク打ち上げ成功により「アメリカの終焉」と言われました。
1973年の石油禁輸措置と金ドル交換停止は「アメリカの終焉」を意味しました。1980年代。レーガン政権時代にアメリカが経験した転換。
レーガノミクス、サッチャー政権。つまり、中西部の製造業基盤の経済からカリフォルニアのシリコンバレー経済への転換は「アメリカの終焉」と言われました。
しかし、今挙げた例は、真実ではありません。確かに、2000年代初頭。ニューエコノミー。ドットコムバブル。人々は過剰に熱狂し、アメリカは何でもできると考えていました。
そういった考えが破壊的で冒険的な外交政策を招いたのです。そして、今も衰退しつつあるのです。
この話の教訓は、国家の盛衰について述べる全てのストーリーが、事実よりも心理面に重点を置いているということです。
事実に焦点を当てようというのなら中国やアメリカで実際に起きていることに注目する必要があります。
一流の金融企業は中国経済が、2027年までにアメリカ経済を追い越すと予測しています。
つまり、あと17年もすれば、中国がアメリカよりも大きくなるのです。いつか、中国13億人が豊かになり、中国はアメリカより大きくなるのです。
しかし、こうした予測には注意が必要です。
今世紀のパワー移転をあたかも正確に示しているかのように見える一流の金融企業の予測に対しても注意が必要です。
予測があまりにも単純だと言える三つの理由をお話しましょう。まず、それが線形予測だからです。たいていこれが中国の成長率。
これがアメリカの成長率で直線的に変化すると言います。
歴史は、真っすぐな線ではありません。道路にはでこぼこがあり途中には事故も起こるでしょう。
第2に中国経済は、2030年にはアメリカ経済を追い抜くと言われますが、それは、全体経済を見た場合であり、国民一人当りの収入ではありません。
つまり、国の経済構造を指し示しているものではないのです。
中国は、依然、経済の発展していない地域が多いので経済の高度化を計るモノサシとしては、国民平均所得のほうが適切です。
中国がアメリカに追いつく。あるいは追い越すのは、今世紀後半。2050年以降になるのではないでしょうか?
もう一つの注目すべきポイントは、この予測がいかに一面的であるかということです。国内総生産に基づいて経済力を検討してはいますが、軍事力についてはあまり説明がありません。
一流の金融企業が示したような単純な予測はパワーの移転について知りたい事柄を説明してくれません。
たぶん、皆さんお尋ねになるでしょう。だから?となぜ重要なの?どうでもよくない?と。しょせん、外交官やアカデミックな奴らのゲームじゃないのか?と。
でも、これは非常に重要な事柄なのです。もしも、衰退を信じ、架空の話などではないこういった事実について判断を間違えば、非常に危険な政策を採用することになるかもしれないのです。
歴史のある一例をご紹介しましょう。
ペロ���ネソス戦争は、今から2500年前に古代ギリシャ都市国家を分裂させるに至らしめた都市国家間の激しい抗争でした。何が原因だったのか?
ペロポネソス戦争史を著した偉大な歴史家トゥキディデスによれば、戦争の原因はアテネ勢力の台頭とスパルタ内で生じたアテネ勢力への恐怖であるとされています。両方の立場に注目してください。
多くの人が21世紀は、20世紀の繰り返しになるだろうと論じています。20世紀には、第一世界大戦が発生し、ヨーロッパ国家システムが分断され、世界の中心地域が破壊されました。
戦争の原因としてドイツ勢力の台頭とイギリス国内で生じたドイツに対する恐怖がありました。
そして、今、この事が繰り返されようとしていると語る人たちがいます。
今世紀、同じ事が起きるというのです。私はそれは間違いだと思います。そこには暗い歴史があったのです。
例えば、1900年までにドイツは工業生産力でイギリスを上回っていたのです。先程、話したように中国は、アメリカを追い越して��いません。
しかし、そう思い込んで恐怖の念を抱けば、過激な反応を呼ぶでしょう。
東洋へのパワーの移転をうまく乗り切ろうとするときに最も危険となるのが恐怖です。フランクリンルーズベルトの言葉をこれに当てはめるとすれば「恐れるべき最大のものは恐怖そのものである」
私たちは、中国の台頭やアジアの復活を恐れる必要はありません。大局的見地から歴史をとらえて現状に取り組む政策をとれば、この過渡期をうまく乗り切ることができるのです。
もう一つお伝えしたいことは、21世紀のパワーを考えるとき「パワーは常にゼロサムだ」「自分が勝ち。相手は負け」 または、その逆。
という考えは捨てることです。パワーの総和がプラスになることもあるのです。相手の得は自分の得にもなり得るのです。
ここで、私たちが考えなければいけないことは、全員が利益を得られるグローバルな公共財をどのように力を合わせて産み出すかということなのです。
では、ゼロサムではなく、プラスサム(総和をプラス)にするためには、各国の国益をどう定めたらよいのでしょうか?
この点について、例えば、アメリカにとって参考になるのは、19世紀にイギリスが国益とした自由貿易システムの維持。金融安定の維持。公海航行の自由の維持です。
これらは、イギリスだけでなく、他国にとっても有益なものでした。そして、21世紀。同様な事を行う必要があります。
自分たちのみならず、全ての人々にとって素晴らしいグローバルな公共財をどのようにしてプラスサムとして作り出せばいいのでしょうか?
こういった考え方は、21世紀のパワーを考える上で必要な検討事項の中でも良い部分だといえます。
格差に関しては、トマ·ピケティの記事も参考にしてみてください。
超富豪層に累進課税すること。2020年からは、世界中のトレンドになりつつあります!!
技術が、すべてのことを解決できると言いますが、我々が、100倍エネルギー効率のいい乗り物を作ることができるとすれば、大枠としてこれは正しい意見です。
しかし、エネルギー効率ではなく、生産性を高めた結果、イギリスは見事に産業が空洞化してしまいました!
これでもバカのひとつ覚えのように、生産性を高めますか?基本的人権も無視して・・・
ロビン・ハンソンの言うように、一神教での仕事や労働の概念、定義などがトーマスクーン「科学革命の構造」で言うところのパラダイムシフトを起こし、ベーシックインカムや年金を毎月支給されるだけで生活できるようになるかもしれません。
そうすれば、アンソニー・ゴールドブルームの言うように、機械に先んじる可能性が開けるでしょう。
最後に、マクロ経済学の大目標には、「長期的に生活水準を高め、今日のこども達がおじいさん達よりも良い暮らしを送れるようにする!!」という目標があります。
経済成長を「パーセント」という指数関数的な指標で数値化します。経験則的に毎年、経済成長2%くらいで巡航速度にて上昇すれば良いことがわかっています。
たった、経済成長2%のように見えますが、毎年、積み重ねるとムーアの法則みたいに膨大な量になって行きます。
また、経済学は、大前提としてある個人、法人モデルを扱う。それは、身勝手で自己中心的な欲望を満たしていく人間の部類としては最低クズというハードルの高い個人、法人。
たとえば、生産性、利益という欲だけを追求する人間。地球を救うという欲だけを追求する人間。利益と真逆なぐうたらしたい時間を最大化したいという欲を追求する人間。などの最低生活を保護、向上しつつお金の循環を通じて個人同士の相互作用も考えていく(また、憎しみの連鎖も解消する)
多様性はあるが、欲という側面では皆平等。つまり、利益以外からも解決策を見出しお金儲けだけの話だけではないのが経済学(カントの「永遠平和のために」思想も含めて個人のプライバシーも考慮)
(個人的なアイデア)
参考として、フランスの哲学者であり啓蒙思想家のモンテスキュー。
法の原理として、三権分立論を提唱。フランス革命(立憲君主制とは異なり王様は処刑されました)の理念やアメリカ独立の思想に大きな影響を与え、現代においても、言葉の定義を決めつつも、再解釈されながら議論されています。
また、ジョン・ロックの「統治二論」を基礎において修正を加え、権力分立、法の規範、奴隷制度の廃止や市民的自由の保持などの提案もしています。現代では権力分立のアイデアは「トリレンマ」「ゲーム理論の均衡状態」に似ています。概念を数値化できるかもしれません。
権限が分離されていても、各権力を実行する人間が、同一人物であれば権力分立は意味をなさない。
そのため、権力の分離の一つの要素として兼職の禁止が挙げられるが、その他、法律上、日本ではどうなのか?権力者を縛るための日本国憲法側には書いてない。
モンテスキューの「法の精神」からのバランス上、法律側なのか不明。
立法と行政の関係においては、アメリカ型の限定的な独裁である大統領制において、相互の抑制均衡を重視し、厳格な分立をとるのに対し、イギリス、日本などの議院内閣制は、相互の協働関係を重んじるため、ゆるい権力分立にとどまる。
アメリカ型の限定的な独裁である大統領制は、立法権と行政権を厳格に独立させるもので、行政権をつかさどる大統領選挙と立法権をつかさどる議員選挙を、別々に選出する政治制度となっている。
通常の「プロトコル」の定義は、独占禁止法の優越的地位の乱用、基本的人権の尊重に深く関わってきます。
通信に特化した通信プロトコルとは違います。言葉に特化した言葉プロトコル。またの名を、言論の自由ともいわれますがこれとも異なります。科学者やエンジニアに特化したのは、サイエンスプロトコルとここでは定義します。
基本的人権がないと科学者やエンジニアはどうなるかは、歴史が証明している!独占独裁君主に口封じに形を変えつつ処刑される!確実に!これでも人権に無関係といえますか?だから、マスメディアも含めた権力者を厳しくファクトチェックし説明責任、透明性を高めて監視しないといけない。
さらに、2020年5月21日。ついにリリースしました。AppleとGoogleが、協調してプライバシーに配慮し高いセキュリティの、APIを提供してます(中国のアプリは危険なため)
以下は、iOS、Androidアプリの作成に当たってライセンス上、守るべきガイドラインです。
第一に、アプリは公衆衛生当局が自ら作るか、外部機関に依頼して作らせたものでなければならず、しかも「COVID-19対応」以外の目的では利用することができないライセンスになっている。できるだけ多くの人が、同じアプリを使用し分断が起きないようにAPIの利用は1カ国1アプリのみ。
第二に、Exposure Notification API(濃厚接触通知API)の利用の前に、ユーザーの同意を得る必要がある。
第三に、利用者のCOVID-19感染が確認された場合、結果を共有する前に、必ず利用者の同意を得る必要がある。(同意を得ると当局が利用者のデバイスにひも付いた「Diagnosys Key : 診断鍵」に対して「陽性」の情報を登録する。二段階でキー生成がなされます。)
第四に、アプリは、利用者のスマートフォンから可能な限り最小限の情報しか獲得してはならず、 その利用はCOVID-19対策に限られる。ターゲティング広告を含め、それ以外のあらゆる個人情報の利用は禁じる。
第五に、アプリは、スマートフォンの位置情報獲得を求めてはならない。
などの個人を特定しにくくする工夫が加えられている新型コロナウイルス「濃厚接触通知」のプライバシー強化がほどこされています。
具体的に、AirDropやApplePayの仕組みを応用し、通信方法はBluetooth経由で、暗号化された毎日ランダムに15分単位で生成されるお互いのキー情報のみを相互接続します。
ApplePayの仕組みについて(当店サイトからも曲購入にて対応しております)
GPS情報、ユーザーの氏名や性別、年齢も原則取得しない
ユーザー同意のもと感染報告者の「キー(その1)」は、政府か保健機関が提供するアプリを通じてサーバーへ送られる。
続いて、API対応アプリは、定期的に全国から報告される「キー(その1)」をダウンロードする。そして、端末上で、誰かと会ったときの「キー(その2)」とマッチするかどうか判定し濃厚接触の可能性を判定する仕組み。
日本では、行政府の内閣直轄チームが進めるアプリ開発で同APIを利用します。このAPIは、常にAppleとGoogleが改善して全世界同時アップグレードされます。
<おすすめサイト>
ロジェカイヨワ戦争論と日本の神仏習合との偶然の一致について2019
ケビン・ラッド:中国とアメリカは衝突する運命なのか?
エリック•X•リー:二つの政治体制の物語
ハワード ラインゴールド: 個々のイノベーションをコラボレーションさせる
ダニエル・カーネマン: 経験と記憶の謎(所得政策も)
エピソード1Episode1 - オリンピックとパワー(Olympics and Power)について(パワーか、フォースか―人間のレベルを測る科学 - Amazon)
エピソード2Episode2 - パワーについて(パワーか、フォースか―人間のレベルを測る科学 - Amazon)
エピソード3Episode3 - Light clean since there is also in the darkness闇の中にも清浄な光が存在(パワーか、フォースか―人間のレベルを測る科学 - Amazon)
エピソード4Episode4 - 政治の善性について(パワーか、フォースか―人間のレベルを測る科学 - Amazon)
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ルトハー・ブレフマン:貧困は「人格の欠如」ではなく「金銭の欠乏」である!
個人賃金保障、ベーシックインカムは、労働市場に対する破壊的イノベーションということ?2020(人間の限界を遥かに超えることが前提条件)
世界の通貨供給量は、幸福の最低ライン人間ひとりで年収6万ドルに到達しているのか?2017
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Hinge presents an anthology of love stories almost never told. Read more on https://no-ordinary-love.co
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帰り道総括
いつも公演から数カ月がたつと、前回の公演を自然と振り返りたくなる。今回もそんな欲求に駆られて、前作『帰り道』の総括をいたします。

—————————— 野外人形劇団のらぼう 夜の短い物語「帰り道」
2019年10月1日(火)- 14日(日) 毎晩20時開演(内容30分程) あがたの森公園 投げ銭制
出演 前田斜め/成田明加/白鳥達也 表題曲 水野安実と5レモネーズ「帰り道」 ――――――――――

まずは曲の紹介 本作品は、”水野安実と5レモネーズ”の「帰り道」という曲を表題曲として起用し制作されました。この楽曲は現在、7インチレコードとなって発売中(MARKING RECORDS|〒390-0811 長野県松本市中央3-12-8|にて取り扱い)(https://www.instagram.com/p/B9--CK5hOmj/?igshid=dgisahyzi2r9)。さらにはbandcampにてネット販売もしているようです。(https://mizunoami.bandcamp.com/album/-) ご興味ある方、また『帰り道』の公演にお越し下さった方は是非お楽しみください。聞くと確かによみがえるあの時の情景が愉しく、心地が良いです。
では総括、
曲から始まったプロジェクト 今回の作品作りの発端は、のらぼうとしてはそろそろ人形を使って作品を、ひいては巨大人形を使っての作品を作りたいと考えていたところ、別のアプローチから既存の曲を使って芝居が作れないかという提案があった。それが”水野安実と5レモネーズ”の「帰り道」。劇団としてはそろそろ本格的に人形に手を染めていかないと名前だけで体裁を取り繕っていてはかたじけない、と考えていただけでそれ以外に制約はほとんど無かったため、ちょうどいいというかタイミング的にも問題なかったため作品作りに”曲”の命題がつき進行していくことになった。
そして更にもうひとつ重要だったことは、今回、この「帰り道」という曲のMVをものらぼうの創作でもって制作することになったのだ。この曲はもともと7インチレコードとしてリリース、そして配信が予定されていたためその機会に合わせて今回制作する芝居を映像化したものなどをベースにMVを制作することが目論まれた。つまり曲、そこからの芝居、そしてMVというつながりで付随した作品作りが行われることになったのである。今回はその芝居作りの総括。
なお、MVに関しては残念ながら制作が滞っている。どうしても芝居の後にMVを仕上げようとすると、芝居の存在に引っ張られてしまいのらぼうのMVになってしまいかねない。それでいてもともとそのつもりで創作してきていたので題材を軌道変更するのは難しい。また、芝居の旨味と映像の旨味は別種であるという基本を改めて目の当たりにし、思考を凝らしたものの満足のいく結果には至らず、大変申し訳ないながらも当初の予定には間に合わずMVの公開は見送られた。

あがたの森公園にて公演 今回の芝居のスタイルは、お馴染みの野外演劇スタイルである。松本に来てからわたくし前田斜めはこのスタイルでしか創作していないし、基本的に何かやるときはいつも野外がセットで考えるようにもう思考回路がそういうふうにできている。『野外演劇』とか『大道芸』だとか当てはめる枠はいくらかあるのだろうけれど野外演劇というほど大それたものじゃないし、大道芸というほど芸に長けたものでもない。もっと野生的な衝動で外に駆り出されているといった方が近い。単に、光が好きで風が好きで雨も好きでそれを感じていたいから、ただそれだけ。最近は「ストリート」や「路上」といってまとめられた方がしっくり来ている。なんにせよ、野外はのらぼうにとっても一番最初の衝動なのでありどんな作品ももれなく野外での公演をベースに検討される。 そんな中、今回は松本市のみぞおち(?)辺りに位置するあがたの森公園を公演地に選んだ。これまで自主公演は行ったことのない場所だったが、過去十数年前には全国各地のテント芝居など、野外演劇隆盛期ともいえる時代のその先鋭的集団がいくつも訪れ公演を行っていたと伝え聞いている。ここでの市の公園緑地課との交渉は難航することが予想されたが、今回のような持ち運びスタイルでの小規模開催の場合は苦慮することなく借りられた。まさに夜の短い物語スタイルともいうべき30分程の短い演劇を、客席なし、照明なし、舞台なしで行うということが体現できただけでも功績は大きい。大変に自由度は高いし、これくらいの時間なら立ちっぱなしでもお客さんに苦痛を強いらせない。だいいち座りたくなったら各々見繕って座ることができるし、今回は後述する”移動”が劇中に挟まっていたこともあって立ちっぱなしで30分という印象は薄かったのではないかと勝手に想像している。さらにはこれも後述するように、台詞が一切ない芝居だったことも効果は大きい。台詞がないために聞き取ろうとする必要がない。だから各々眺めたい距離で好き好きに観劇することができる。よく観たければ近くに場所を移せばいいし、なんとなく遠くからぼんやり眺めるということも今回の芝居では相性が良かったように思う。そんな情景をお客さんが個々に選択できるというのは有意義な体験であったのではないか。そんな要因がバランス良く取れた芝居だったように思う。

さらにこのあがたの森公園というのがまた良くできた公園である。実は次回作(2020.4月現在)もあがたの森公園にて公演しようと考えているのだが下見に行くたびに発見が絶えない。松本市市街地に位置する公園で規模としては一般的な都市にひとつはある中央公園と言うべく大きさの公園であるが、印象としては井之頭公園を彷彿とさせる鬱蒼と覆いかぶさる広大な敷地を想起する。そこは踏み入れると樹木の歴史にタイムスリップし迷い込めば1時間は優に抜け出すことができない錯覚を起こさせるが実際はそんなことはない。意識して歩いてしまえばなんのこともない規模の公園なのだが、どうしたわけか毎回誘われてしまうのだ。さらに敷地内の区分けでもデザインが行き届いておりそれも素晴らしい。令和ではおおよそ体感できない古を醸し出すヒマラヤスギの大木並木や旧制高校校舎の大正ロマンを思わせる木造建築、中世ヨーロッパを知りもしないのに感じさせる中庭、どこまでも続くはずがないのに続いているように見える芝生の広場、かと思ったら日本庭園風の池や松、そして現代アートと化した水のないプール、丘より小高い小さい丘、など。まだまだ余すことなくこの公園を使用したくなる魅力の詰まった小宇宙、それがあがたの森公園なのである。距離も抜群にいい。今後ものらぼうとしては親身にこの公園と付き合っていきたいと考えている。 なお、上演時間が20時と設定されたのは、平日休日問わずお客さんが来やすい時間でもあり、なにしろ出演者が各々の仕事を終えて集まれる時間、そして公園内にまばらに散歩する人や帰宅する人がいる時間として設定された。これは概ね想定通りであった。


人形先行で作った内容 まさにこの芝居の主役であり名実ともにデカい存在に間違いなかったのが人形ーサミュエルである。身長3m50cm程ある72歳のおじいさんで、ひとり佇み、ステッキ片手に公園を散歩している。 今回の芝居はこの巨大人形を使う、ということがもっとも大きく掲げられた命題であった。しかし、その時はまだ巨大人形は存在していない。当たり前のことだが、作らなきゃいけない。そして作ってみてみなければその人形を使った芝居についてなんて考えられない。だからカレンダーを眺めて、ある時から人形の制作のみに舵を切ることにした。それまでは曲を聴きながら、芝居の内容を考えつつ、人形のディティールなども考えていたのだが、そんな悠長なことしてる暇などない、拉致あかない。脚本の完成を待っていては人形の完成が危ぶまれる。脚本などあとだ!というひとり強制連行で次の日から人形制作に取り掛かった。この決断があとあと功をそうした。やはり人形制作というものは時間がかかるし、ましてや初めて、更には規格外の巨大人形ともなると単純に足の長さ、手の長さ、首、頭などわからないこと、やってみて初めて気がつくことのオンパレードで予想よりもはるかに難航し時間がかかり、また、予算も大きく跳ね上がった。結果として人形の大まかな部分はわたし斜めが制作し、衣装や色塗りといったところを女性チームが制作した。真夏の倉庫でラジオから流れる甲子園を聴きながら、次第に形作られる骨格に衣装や帽子などの装飾品も加わり、えてして愛おしい風合いのサミュエル人形は完成した。芝居の内容はこの完成した人形を元に作られていくことになる。

この人形は、立てる、歩ける、座れる、見れる(首が動かせる)、触れる(手を動かせる)、握れる、などなど、できることを列挙していった。当たり前にできそうなことでも操作性からやり辛いこともある。だからできないことは無理してやらない。もしも先に脚本を仕上げていたら無理が生じて苦悩していたかもしれないけれど、この人形でできることのみを構成していったことにより、そういった不具合は発生しなかった。そうして列挙されたサミュエルの動きから抜粋してそれぞれをつなぎ合わせてゆきひとつの流れの作品になった。だから特別な物語はなかった、と考えている。何か物語の進展や変化を提示することなく佇むということを肯定した芝居になったのではないか。 ひとつだけ、この人形は巨大ではあるものの『歩ける』ということだけは最初から大前提に掲げて制作していた。世の中には色々な手法で作られ操作される人形があるわけだけれども、実際は浮いていたり、歩いているように見えて水平移動しているだけだったりと様々だが、サミュエルは補助や土台となる台座は必要だったものの『歩ける』ということだけは最初から念頭に置いき、実際1人が人形の足元に搭乗する形で両足を操作し、しっかりと地に足をつけ、足音も鳴らせて歩くことのできる人形に仕上がった。 ※ここではロワイヤルドリュクスの巨大人形の影響を大きく受けている。その作品もさることながら作品の展開の仕方や町との関係性が大変興味深い。造船が盛んな港町でその溶接技術を活かし、職人や町そのものを巻き込んだ作品を仕上げようと始まったプロジェクトだとか。5年に1度くらいのペースで作品が発表されその規格外の大きさ、規模、技巧、人員を有した作品は完全に唯一無二。 https://www.youtube.com/watch?v=qtXyXVVssQ4 (久シブリニ映像見マシタケド比較対象ニナリマセンネ。。。コンナスバラシイセカイヲアリガトウ。。。)

芝居中に人形とともに歩いて移動 これはもともと構想に入れてた部分ではあるが、個人的に観劇中に移動を要するとか、何かしら強制的にお客さんに強いるということには良い印象を持っていなかったので、作品の構想が固まってくるうちに後回しにされ、結果的には本番前に公園内を練り歩く通称パレードと称されて準備されていた。なんとなく30分ばかし練り歩いて所定の場所までやってきてそこで公演をやればいいのではないか?というような魂胆。しかしそれが本番の前日か前々日?のゲネで大きく変更してしまった。作品の途中で、突如として人形が立ち上がってお客さんを引き連れて歩くことができるのではないか?というイメージが湧いたのであるが、これその時とっても重要なことと思われた。
芝居でもなんでも、何か物事を始める時の発端はいつでも入射角というのを重要に考える。地平線上に沿うように物事を出現させるのか、それとも逆行させたりせき止めたりするように物事を出現させるのか。今回の芝居ではこの入射角は非常に滑らかである必要があった。つまり、日常のあがたの森公園のその先の延長線上に劇世界がある必要があった。その”いざない”として今回の芝居では”歩く”ということが効果を発揮したと思っている。”歩く”ことが公演の前の時間に別物としてなんとなく行われるよりも、劇中にお客さんとともに確実に行われることで日常の上を歩いているはずが、いつの間にか劇世界にのめり込んで行く、さっきまでの”眺める”、”観る”という行為よりもはっきりと一緒に劇世界を体験することができたのではないか。そのことが今回の芝居の中で邪魔にならなかった要因は、まずあがたの森公園のロケーションが素晴らしかったこと。そしてその規模とサミュエル人形の大きさがマッチしたこと、さらにサミュエル人形の歩くという行為のみにおいても足音や見上げる表情など愉しむに足る時間を演出できたこと、などがあるのではないか。これなかなか人間だけの芝居ではやるのに勇気がでない。できる、のだろうとは思うけれども本作品においては巨大人形であるサミュエルの魅力が十分に発揮されてこそ成り立ったシーンであった。演っている方としてもただ歩いているだけなのに、今まで体験したことのない印象深いシーンであった。 実際に本番で歩いたのと同じ距離を歩いてみると途方もなく短く感じる。1分もあれば十分に歩いて来れる距離を、作品では10分間かけて人形とともに歩いた。 ※ここでは「老いと演劇」Oibokkeshiの”徘徊演劇”を参照した。もともとメンバーの成田明加発案で”歩く”というものがあり、紹介されたのが徘徊演劇であった。この公演自体に立ち会ったことはないけれど、そのスタイルに大きく惹かれる。しかしこの作品の場合は台詞がある。一体どうやってまともているのだろうか。しかしこんな形式でも作品が作れるとするならば、と想像するとまだまだやれる面白そうなことはごまんとあり、まさしく宝庫である。これだから路上はやめられない。 https://youtu.be/GbseDpRNza4
台詞がなかった 今回の芝居は台詞なしで約30分間が構成された。それによってももたらされた効果や語ることができたことがあるということを、忘れたくない。 音楽家やダンサー、舞踏家の先輩方諸氏の作品に触れる度自分としてはどうであろうかと考えることがしばしばあり、芝居では台詞語りを多く用いることにやるせなさを感じたりもしていた。同じ時間芸術であるとして、どうして彼らは言葉がなくても表現が成立するのかということを頭でっかちに考えてみたりした。

いつだって衝動とそのカウンターの繰り返しで創作活動は行われるけれど、言葉ではない表現は常に憧れている部分でもあるし、それでいて、”言葉で語る”ということは僕たちが持っている身体や表情、その他の技術や小道具や音響、照明、美術といった芝居をする上で舞台上に当たり前に持っている術の一つに過ぎないのだと理解すべきだ。だからつまり、語る時は大抵の場合言葉に頼ってしまうけれど、必ずしも言葉を使って語る必要に迫られなくていい。その他の要素と鑑みて、動くか道具を使うか音楽を使うか、それとも言葉を使うのか、舞台であるがゆえに選択は様々ある。そのことが少しだけ垣間見えた公演であった。 かつてアウトサイダーアートを目の当たりにして感銘を受けた少年であった私であったが、その時も似たような感慨があった。いわゆるアウトサイダーと呼ばれる人たちがいて、その人たちはよき事業所や介助者、そして自分にあった手法に巡り合った場合、怒涛の勢いで嬉々として数々の作品を世に送り出している。彼らは、日々創作活動に打ち込んでいる、というわけではなくもっともっと初期衝動的なエネルギーを保ち続けて結晶化し、それが結果として作品に結びつき世に送り出されている。だからつまりアウトサイダーというものは、初期衝動という点では誰しもがそうなりうる可能性を平等に秘めているわけであり、しかしそのことを知ってしまってはいけないし、そこに甲乙がついたり、その存在を世の中が発見してしまってはアウトサイダーとしての定義を失ってしまうのでややこしいのだけれど、ここではそのことは一旦置いておいて、そのアウトサイダーと呼ばれる人たちの言ってしまえば『無駄』とも捉えうるような、あくなきまでの探究心とその行動に自分の『持っているものと持っていないもの』というものに関して考える機会があった。

どうして彼らはここまで闇雲に夢中になってとある行動(例えばひたすらに布を縫ったり、木を掘ったり、鉛筆がなくなるまで紙に擦り付けて絵を描いたり)を続けることができるのか。僕は芝居なんてものをしているものだから、それは少なくともひとつの衝動では成り立たないし、どんなに小規模でやろうとしても自分以外の要素の力が必要だし、なおかつ複数人でやる場合は他者への理解や信頼がなければ成り立たない。そんなどうにもこうにも初期衝動とは遠いところで戦っているのに、果たしてどうしてその衝動を保っていられようか。で、今回は台詞があるのか、ないのか、なんてことに命題を置いたりしてあーでもないこーでもないと頭を悩ませており、そのこと自身が煩わしくてしょうがないのだが、この生きてく上での性ともいうべきしょうもない秩序に自分で自分を苦しめて、アウトサイダーのことを羨ましく思ったりした時期もあった。しかしそこで例えば自分で自分の持っている技をひとつ置いて、つまり自分自身を拘束してやれることを削り舞台上に上がろうとすると、それはそれであざとく白々しく映る。潔くない。健康的でない。だってアウトサーダーになろうとしてやることを削ったって(つまり『言葉を使わない』とか)、そんなアプローチをしようとした時点で残念ながらアウトライダーにはなれないのだから。アウトサイダーそんなこと考えていない。だから違うのだ。セリフがあるなしとかではないのだ。五体満足に、そして言語を有して生まれたこの存在と環境を存分に発揮して余すことなく全てをぶつけてもってして、やっと表現というものは成り立��のである。結果としてそれがある分野においてはアウトサイダーたるかもしれず、行き過ぎて専門になったり時代次第では大衆になったりする。しかしそんなこと発端のプレイヤーが考えるには及ばないのであり周りが判断すればいい。ただひたすらに闇雲に邁進する姿に憧れたのではなかったか。だから金輪際、今回の作品で僕たちは言葉を使わなかったというのではなく、無言を使った、という風に理解したい。そう考えると、台詞を有さなかったことの意義が見えてくる。無言を貫いたことで作品としては眺める人それぞれの捉え方の幅が広がり、見続けても見飽きない、また何度見ても耐えうる、そんな作品になったのではないかと思い返す。実際何度も足を運んでくれる人は多かったし、会期中必ず訪れる仕事帰りのサラリーマン風のおじさまも印象的な存在だった。もちろん子どもや外国人にも受け入れられた。この無言であるがゆえに伝えられることがあるということは今後忘れてしまいがちなことでもあるので肝に銘じたい。言葉は常に持っている。でもその効果に適切に照らし合わせて使ってもいいし使わなくてもいい。

そして最後に、この芝居は終始言葉がない言葉がないと言っておきながら、よく考えたらあるではないか。最後に流れる表題曲にだけは言葉があるではないかと気が付いた。これは明らかにそこにいた全員が耳にする作品中唯一こちらから提示する言葉であって、曲がここで浮き彫りになって立ち現れる。はっと聞き入る、そんなこともできるのかと改めて言葉を発露するということの意義深さを感じられた瞬間であった。
※写真は全てdig-earth yohei ito撮影
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J1リーグ 全順位予想 2/14
今季のサッカー/J1リーグもACLプレーオフを皮切りに、ゼロックス・スーパーカップと、ACLグループ・リーグなどが戦われ、徐々に開幕へと近づいてきた。数日後にはリーグカップである「ルヴァンカップ」によって、本格的なシーズンが幕を開ける。新型肺炎ウィルスの蔓延など、心配なニュースもあるが、楽しみであることに変わりはない。
昨季は横浜Fマリノスが、前年からの躍進を果たして、攻撃的なチームで優勝に辿り着いた。昨シーズンからはリーグ全体のコンペティションの質もワン・ランク上のステージへと上がり、補強合戦も激しくなった。まだ飛び抜けたクラブはなく、差の少ない横一線でシーズンが進むことだろう。以下で、順位の予想を公開する。
1位 柏レイソル
同じ奇跡が、再現するかもしれない。2011年シーズンで、ネルシーニョが率いる柏レイソルは前々年のJ2降格から、1年で再昇格して、即J1優勝を果たした。今季も、同じような良い循環が来ている。
柏はJ2の前半戦ではなかなか結果を出せずに来たが、フォーメーションを変更し、粘りづよいトレーニングで、ネルシーニョの目指すサッカーを体現できるようになった後半は、J2レヴェルではない戦力を十分に活用できるようになって、他クラブを圧倒する内容でJ2を制することになった。
新シーズンに向けては、オルンガや瀬川に移籍の兆候はあったが、結局、主力級の離脱はなく、逆にJ1、J2から才能の光る選手たちを的確に補強して、若く、可能性のある選手層を整えた。
フォーメーションは多分、4-3-3をベースにしたものと考えられ、これは昨季優勝の横浜FMと、そのコーチだったクラモフスキーが指揮を執る清水、そして、やや守備的な形ながらも、フォーメーションをこのシステムにかえた東京と同じである。柏はどちらかというと、東京の形にちかそうだが、後ろの攻撃参加はそれほど重要でなく、アンカーを除く、FW、MFの豊富なアタッカー5人によるコンビワークが冴えることになりそうだ。
前記2選手をはじめ、若手によい選手層を抱えるチーム事情から、夏の移籍などで選手が抜かれる可能性も低くはなく、プレ・シーズンの準公式戦におけるGK中村航輔の怪我も心配されるものの、そのバックアップには神戸で鳴らした名手キム・スンギュを獲得済みで、スタートダッシュから前に出られれば、シーズン最後まで高い順位を維持できる実力が十分にあるはずだ。
問題は、ディフェンス・ラインだろう。ベテランのCB鎌田らを中心とする昨季のバックラインは、J1に入ったときに質の高いものではないことは明らかで、U-23アジアカップで致命的なパス・ミスを犯した古賀など、SBの若手にもかなりの成長が求められる。実績のある三丸や高橋が狙いどおりに機能し、磐田から引き抜いた若手の大型CB大南らの成長具合によっては、優勝も夢ではないと考えている。
2位 ガンバ大阪
ガンバ大阪は、プレ・シーズンの評判がよさげに聞こえるチームのひとつだ。昨季は前半の戦いぶりで、クラブ・レジェンド=宮本監督の手腕に疑問符もついたが、後半は宇佐美がドイツから復帰する���どして、攻撃的な戦術に転換したことが功を奏して、見るべき成果を上げた。大胆な発想の転換と、それに適応できるチーム構成の素晴らしさは素直に評価すべきだ。
近年はその宇佐美をはじめ、井手口、堂安、中村敬斗、食野と、次々に有望な若手を海外へ送り出す流れが続いていたが、その中でうまくキャリアを伸ばせなかった選手の復帰という流れもできつつある。井手口などはスペイン、イングランドにおける過去数シーズンの飼い殺しによって、落ちに落ちたコンディションもようやく回復してくるにちがいない。本来は、代表を背負って立つぐらいのタレントだった。
システムは、3-5-2が予想される。前線は宇佐美を中心に、アデミウソン、パトリックなど、日本での実績も十分で、決定力の高いメンツを揃えている。攻撃の核となるのは宇佐美のキープ力と、倉田や小野瀬からのクオリティの高いボールの供給だ。新加入の福田や、井手口、矢島などが水を運ぶ役目を果たす。90分はもたないが、勝負どころでは遠藤の投入で、まったくちがう展開が望めるだろうし、プレ・シーズンは調子もよかったと報道されている。遠藤、藤春のようなベテランと、若いメンバーの融合は進んでおり、上位進出を期待できる戦力が揃った。
ただ、ディフェンス・リーダーの三浦弦太については海外移籍の志向が強いようで、早ければ、夏の移籍も噂されている。その対策ということもあり、フランスに渡っていた昌子の補強が急転直下で決定した。もっとも、トゥールーズでは怪我の治療が進んでおらず、まずはそれを治して、コンディションを上げ、戦力化してくるまでには、かつての清武や井手口の例を考えても、早くとも半年、もしくは1年以上の猶予をみなくてはならないはずだ。
その間、金英権に加え、呉宰碩、菅沼、そして、新里などの踏ん張りが効けば、優勝にも手が届く位置にあるとみている。今年こそは、素晴らしいホーム吹田に相応しい結果を残せるのではなかろうか。
3位 FC東京
昨季は惜しいところで横浜FMに競り負け、栄冠を掴むには至らなかった。キープレーヤーの離脱や移籍に対して、的確な対応をできた横浜との差が如実に表れた。フリー・トランスファーで、久保がレアル・マドリーに旅立ったあと、左サイドのポジションを埋めることがシーズン最後まで課題として残ってしまった。
今季は4-3-3に組み替え、戦術のブラッシュ・アップを図る。しかし、そのシステムはチャンピオン・チームへの追随ではなく、長谷川監督らしい手堅い変更だ。守備意識を高くもち、切り替えの早さで鋭いカウンターを仕掛ける基本戦術は変わっていない。3トップはどちらかというと中央に絞り、ブラジル人同士の連携で、崩そうという意図が明確だ。そこで空いてくるペナルティ・エリア脇のスペースを、東京のストロング・ポイントを成す室屋と小川の両SBが頻繁に使い、高い精度でクロスを上げて、攻撃を活性化する作戦だと思われる。
この戦術が昨季はディエゴ・オリベイラの個人技と、カウンターにおける永井のスピードだけに頼っていた攻撃力を磨く鍵になるかは、正直、心許ない。ACLグループリーグでの蔚山との戦いをみると、とりたてて攻撃面で進歩があるようには思えなかった。ディエゴ、アデミウソン、レアンドロといったアタッカー陣のスキルはそれぞれに魅力的だが、3人の連動はシステマティックに組み合ってられたものではなく、1試合や、年間を通じて、一貫性があるものではない。
中盤は逆三角形型で、DMFに橋本を置く布陣が基本となりそうだ。これは横浜FMの2ボランチが終始、ポジションを離れて、(偽)SBなどと連携し、攻撃にも頻繁に出ていく布陣とは一線を画し、やや守備的な選択である。代表の常連になりつつある橋本のスキルは、半分しか生かされない点で残念だ。前の2枚は現時点で東が離脱中のため、高萩と、新人の安部柊斗が起用されている。昨季から特別指定で出場可能だった選手だが、大学4冠を達成した昨季の明大から加入した安部のさらなる成長は、高萩、東といった実績あるタレントを十分に脅かすポテンシャルを示しつつある。
中盤では、さらに神戸から復帰した三田のスキルフルで、精力的な動きや、からだの強さが目立つ羅相浩らもおり、オプションが豊富だ。
結局のところ、攻守のバランスが長谷川監督のサッカーの肝だ。CBには森重が座り、相方で五輪代表候補の渡辺も、昨季以上の成長をみせている。そして、バックアッパーには神戸と鳥栖でプレーしたレバノン代表のオマリを確保した。SBは替えが効かない2人だが、ベストメンバーは隙がなく、かなり強力といえるだろう。
室屋と小川、それに橋本は海外から引き抜かれるリスクがあり、その場合は、久保と同様の問題が生じそうだが、SBに関しては、トルコで居場所のなくなった長友の復帰という噂もあり、それが事実となれば、得がたい戦力になるだけではなく、マーケティング的にも大きな意味を持ってくる。資金力のあるロシア・クラブとの綱引きともいわれており、高額な年俸もネックではあるが、2-3億円であれば、安い買い物かもしれない。
4位 鹿島アントラーズ
ACLプレーオフではオーストラリアのチームに敗れ、本戦GLの進出を逃し、悔しい船出となった。しかし、リーグ戦という観点でみれば、重荷を下ろした鹿島の今季は期待が大きいだろう。新監督のアントニオ・カルロス・ザーゴが就任5日目でみせたゲームでさえも、負けて強しの内容だった。伝統の4-4-2のフォーメーションは維持しながらも、そこにザーゴがオリジナルの動きを混ぜ込んで、強固な組織が完成する見取り図が窺われたからだ。
移籍市場では昨季チーム得点王のセカンド・ストライカー、セルジーニョが中国2部に移籍し、CB鄭昇炫が韓国に戻った一方で、名古屋からスキルフルで突破力のあるウインガーの和泉、川崎から経験豊富なCB奈良を補強したほか、横浜FMから広瀬、仙台から永戸という攻撃的な左右のSBを揃え、湘南からもポリヴァレントな若手のタレント杉岡も迎え入れて、十分な戦力を整えた。さらに、静学から入団したアタッカーの松村もオプションに加わり、既存の土居、伊藤翔らとのコンビネーションがはまれば面白い。
アタッカーには監督人事同様、ジーコの強烈なコネクションにより、FWエヴェラウドと、MFファン・アラーノを加えることができた。このうち、エヴェラウドは先のゲームでもスコアこそなかったが、十分な存在感を示し、セルジーニョの穴は完全に埋めてくれるだろう。強力な9番でゴリゴリ行くところもありながら、周りの選手も使えるクレヴァーさが目を惹く。一方、アラーノのほうはブラジルで将来を嘱望されていたタレントという触れ込みだが、現時点では、日本での適応にいささか苦労しているようだ。
問題は、こちらも守備面だろう。多分、移籍組でも奈良が中心となり、犬飼、ブエノ、町田、さらに関川あたりがレギュラーを競うことになるが、ほかのポジションと比べて、やや頼りない。SBが積極的に出ていくタイプの選手である分、後ろの備えをどう整えるかにザーゴの手腕が問われることだろう。
5位 横浜Fマリノス
ポステコグルーの構築した攻撃的なサッカーで、昨季は東京とともに抜きん出た成績を収めて、優勝を勝ち取った。シーズン中には点取り屋のエジガル・ジュニオが負傷離脱して、槍の先端を喪い、三好や天野といった貴重なレフティのタレントを海外へ送り出す難しいシーズンではあったが、エリキらの的確な補強もあり、ペースの落ちこみを最低限に止めての快挙だった。
しかし、私の感想はやや出来すぎというものである。90分間、足を止めず、次々に新しい狙いをもって動き出す理想のサッカーは、十分に完成していなかったものの、東京や鹿島など、上位陣のふらつきと、仲川やマルコス・ジュニオールの破壊力が桁知らずだった点、そして、チアゴ・マルチンスの高い能力と、相方=畠中の成長による守備の安定が決め手だった。
新シーズンに向けてはFWオナイウ、MF水沼、DF前、山本などを獲得し、不動のレギュラー・メンバーに対して、層の薄い部分の厚みを増すことに成功した。このうち、オナイウはスタメン獲得に向けて奮闘中である。また、補強ではないが、スーパーカップ、ACLにおいて成長著しいのが遠藤の動きだ。昨季はRWGの仲川、もしくは、エリキの攻撃力が目立ち、逆サイドから遠藤がフォローする感じだったが、今季はむしろ、遠藤の攻撃力のほうに注目が集まりそうだ。
私が気になっているのは、CB畠中の出来である。ここ数シーズンに飛躍的な成長を見せ、国内組では貴重な手堅いCBとして代表でもフル回転しており、疲れがあるのかもしれない。英コミュニティ・シールド方式で、TM的な性格も持っているとはいえ、スーパーカップでポステコグルー監督は後半から伊藤槙人にチャンスを与え、その後のACLでは畠中がスタメンを続けたが、動き自体はよくなかった。チアゴの相棒役に苦労すると、チーム全体のバランスも揺らぎかねないと思う。
今季はACLの過密日程を戦う必要もあるが、新型ウィルス対策で、日程そのものが流動的ということもあり、参加クラブには難しい事情がある。代表監督も務めたとはいえ、ポステコグルーもこのような戦いに慣れているとは言えないので、適応は簡単ではないはずだ。
また、仲川や遠藤、喜田などには移籍のリスクもある。CFGへの加盟は世界的な情報網を生かして、一貫した強化を行える基盤を得る一方で、日本で発掘された優秀な才能を世界へと送り出していく側面も備えている。その点で、若干の値引きは必要であろう。
6位 浦和レッズ
今季、プレ・シーズンでポジティヴな表情が窺えるのはガンバ以外に、浦和レッズがある。昨季はオリヴェイラ監督がシーズン途中で指揮権を奪われ、後任の大槻監督が現場に復帰して悪戦苦闘したが、リーグ戦は降格も懸念される低空飛行に終始し、ACLは決勝まで進んだことは立派だが、中東チームの前に何もできずに完敗した。
退潮傾向にあるチームを生まれ変わらせるべく、大槻監督はフォーメーションを3バックから4-4-2に組み替え、新シーズンに備えている。すると、戦術的な流動性は出にくいものの、各個のタスクが限定されるシステムがよく機能し、選手が躍動し始めた。鳴り物入りで加入したものの、ロング・ポジションに悩んだSBの山中なども実力を発揮し始め、マリノス時代の勢いが鳴りを潜めて、過去2シーズンはベンチに甘んじたMFマルティノスの好調も伝えられている。
大槻監督は最先端の戦術をバリバリ埋め込んでいくような手腕はないものの、選手のタスクを理解させ、長所を研磨していく指導力には長けている。一時期、代表でも注目されたMF長澤や、個性的な突破力をもつMF汰木などもブレイクの可能性がある。
そして、今季の掘り出し物は、FWレオナルドだろう。当初、これといって際立ったステイタスはなかったが、岡野オーナーのJ3鳥取から、J2新潟へ渡り歩き、2つのカテゴリーで連続して得点王となったスピード感あふれるアタッカーの存在が、近年は「興梠FC」と揶揄されるまでになったレッズの攻撃陣を変えてくれるかもしれない。
昨今は人気の退潮も指摘されるようになったリーグの鑑としてのクラブに、復活の気配が窺われるのは悪いことではない。ただ、後ろの危うさは相変わらずであり、槙野らがさらに年齢を重ねてきたにもかかわらず、後継の補強がなかった。槙野、マウリシオを中心軸に、鈴木大輔、岩波らが競争する形となるが、やや手薄なのは否めないところだ。
7位 川崎フロンターレ
この低い順位に、川崎を置くのはすこし勇気がいる。ベストメンバーはなお有力だが、年間を通しての一貫性をみると、やや層の薄さが目立つのである。また、負傷中の中村憲剛を中心に、家長、小林悠などの主力が、年齢的にフル稼働できるかわからないのも不安要素だ。好調であれば手のつけられない天才の家長も、昨季はゴールがなかった。そのなかで、キープレーヤーとなり得た阿部を手放したのも痛い。
一方で、CMFのクオリティは全球団のなかでもピカイチである。当面、憲剛を除くとしても、大島と、U-23でブレイクした田中碧を中心に、守田、下田といった活きのいいタレントが揃う顔ぶれは魅力的であり、器用な守田に至っては昨季から偽SBのような形で、最終ラインでも起用されるようになった。今季は4-3-3に組み替え、そのような戦術への適応に向けて、本格的なトレーニングに取り組んでいる。このシステムに特徴的な動きによくフィットしそうな選手としては、SBの登里をはじめ、守田、アタッカーでは脇坂や長谷川、斎藤、旗手など豊富なリソースがあり、もともと試合のなかでのポジション調整は得意なチームであることから、大きな可能性を含んでいる。
もっとも、これらの若いタレントは近年、日本に目をつけてきている海外クラブの草刈り場となり得ることも否定できない。最近では、このファクターを重く捉えないといけなくなってきた。例えば、田中碧は東京五輪があるにせよ、その前後にある夏の移籍で、ヨーロッパのクラブに移る可能性が高いのではないか。川崎はエウシーニョの例でも分かるように、財政的にはきわめてシビアなルールがあり、引き止めに大金を投じるようなことはしないクラブだ。親会社である、富士通の業績が渋いこともある。
もちろん、優勝シャーレの奪還も十分に可能なメンバー構成と、戦術ではあるだろう。様々なリスクに対して、4年目となる鬼木監督のマネージメントが問われるシーズンになるだろう。
8位 ヴィッセル神戸
フィンク体制がようやく固まってきたヴィッセルだが、このクラブの着火剤は言うまでもなく、強欲で、要求のシビアなオーナーの側にあることは間違いない。初めての天皇杯を獲得しての今オフは、昨季のフェルマーレンなどの加入を先行させていたこともあり、資金力に対して、補強は物静かなものになった。夏以降はダヴィ・シルバや、ペドロといったスペインの名プレーヤーの加入も噂されているが、どこまで本当になるかはわからない。
清水からFWドウグラスを補強したのは大きいが、当初、2億円ほどといわれた年俸も、移籍元である清水の頑強な抵抗にあい、3億円ほどに膨らんだと噂されている。ブラジルの代理人は、本当に遣り手である。しかも、清水が昨季前に、中国クラブとのマネーゲームに勝って、確立した契約を反故にする解除金を満額払ったうえでのオペレーションであり、さすがの神戸にも重い投資になったことは間違いない。
イニエスタ、噂のスペイン人選手たち、ドウグラスは、年齢を考えてみても、その後、売り抜けすることができない片道の投資といえる。もっともイニエスタ加入によるリターンは、クラブ・レヴェルを越えて大きなものになったが、クラブのバランス・シートそのものは他の堅実な運営をするクラブや、一般の企業からは理解しがたいものになっているはずだ。
天皇杯では、古橋と藤本という日本人の元気のいい2FWが相手を追い回し、その他の選手が的確にレーンを埋めて、ボールを拾うことで、ピッチを支配していただけに、この投資が本当に正しいものだったのかについては疑問が残る。SB西の残留には成功したものの、中盤から後ろの層の薄さも改善しなかった。
スーパーカップでは相手側の自滅もあり、クレイジーなPK戦の末に貴重な賞金も手にしたが、チーム戦術というよりは、イニエスタ、山口、古橋、酒井などへの依存体質が生まれており、チームとして、どれほど高く機能するかには疑問のほうが大きくなった。すこしでもうまくいかなくなると、オーナーが悪魔の顔をみせ、チームをバラバラにしてしまう可能性もあるのだ。このヒステリー体質は、誰にも止められない。
また、大きなリスクとして、古橋の海外移籍も現実味が高まってきている。それまでに、ACL初戦で活躍した小川などの成長が、どこまで来ているかが鍵になるだろう。相手がACLのレヴェルに適応していないマレーシアのクラブだったとはいえ、そこで証明した小川の得点力は高いが、古橋のアグレッシヴな動きと比べると、まだまだ見劣りがする。
また、中盤では安井や郷家の成長も期待される。郷家は高校時代の活躍などから見ても、アタッカーにちかい中盤と思われてきたが、ACLでは山口の離脱から緊急でこ��した、やや守備的なタスクも柔軟に務めることができた。柏木のように、柔軟性のあるタレントになれる可能性も示したのはポジティヴなことだろう。
9位 清水エスパルス
贔屓のチームゆえに、優勝を信じてサポートするが、冷静に分析すれば、1桁の順位を獲得するのが最初の目標だろう。経営陣、スカウト体制、監督・コーチ陣、選手を大幅に入れ替え、一挙に成功を掴む体制は出来上がっているものの、オリンピック・イヤーということもあり、準備が例年に比べても短いのに加えて、体制の確立が遅れたことは決してポジティヴとは言えない。そのため、例えば、スイスからの加入がほぼ確実と言われているFWカルリーニョスの加入は、まだ正式に発表できる状況にない。
また、エウシーニョが怪我の影響で、チームに合流できていないほか、中盤のダイナモであるヘナト・アウグストも、昨季中の腕の怪我からの快復過程にあり、ボディ・コンタクト以外のところでコンディションは上がっているものの、起用は3月から4月にずれこむだろう。そのほかの選手にも獲得交渉を行っているようではあるが、2月、3月の時期に行われる6試合は、現有戦力によるサバイバルとなりそうだ。
それでもポジティヴな雰囲気に満ちているのは、昨季優勝の横浜FMを現場レヴェルで強烈にコントロールしてきたピーター・クラモフスキー監督の加入が大きいのだろう。システムも横浜FMのミラーとなる4-3-3のアグレッシヴなスタイルに切り替わり、まだ完成には程遠いものの、ドウグラスの高さと尋常ではない決定力に頼った昨季からは、攻撃パターンが圧倒的に増えているのは明らかだ。
ドウグラスのほか、SB松原もベルギーにフリー・トランスファーとなり、年々、タレントを喪っていく現状ではあるが、新任の大熊GMは、それでもサポーターのポジティヴな反応を生むだけの的確な補強策を進めており、クラモフスキーが求めるフットボールのスタイルに、選手たちも懸命に適応しようとしている過程をみると、感動的でさえある。
かといって、結果が出るかは別問題だ。TMでは不用意なミスからの失点も多く、カウンターの対応など、課題も依然として多い。ブラジレイロ・セリエAのセアラーで主力級だったCBヴァウドが加入したが、トリッキーな日本のリーグでの実績はなく、若い立田とのコンビが予想される守備陣の再構築は決して簡単ではない。しかし、GKにはコロンビア王者から、足もとの技術に優れたブラジル人の正GKネト・ヴォルピを獲得するなど、期待感のある補強はできた。
先にも述べたように、先行する横浜FMの戦術完成度には、まだまだ隙がある。清水は今季中における若手の移籍リスクは少なく、スカッドも当初は大きめになっており、カップ戦のターンオーバーにも余裕がある。この強みを生かし、高度なトレーニングで選手たちが覚醒していった場合、ひょっとすればひょっとするという可能性もあるチームに生まれ変わった。
なお、どれほどの戦力になるかは定かでないが、タイでは、わが国のカズ選手のように英雄視されるFWティーラシン・デンダーの加入も話題性がある。移籍元のムアントンFCとも濃密に手を組んだ移籍は、東南アジアにおけるクラブのブランド価値を高めるのにも貢献するはずだ。今冬の獲得は見送ったようだが、タイU-23代表のSBティタトーンの加入などにつながれば、それはそれで面白い。
ティーラシンは一昨シーズン、在籍した広島では1年で6ゴールを記録。後半は重要な戦力とまではなりきれなかったが、それでも、十分にポテンシャルを評価されていたということだ。身長はやや足らないが、スキルフルな選手で、ミートもうまく、ヘッドの技術も高い。実績十分の元エース鄭大世、大分から新加入の精力的なFW後藤などとポジションを争う存在として、期待は大きい。
10位 セレッソ大阪
J2でヴェルディ川崎を指揮したロティーナが就任して、セレッソはキャラ変し、相手よりも多く獲るサッカーから、まずは守備を固めて、手堅くキープしてボールを握る戦術に移行して、リーグ屈指の守備網を築き上げた。その一例として、一昨季まではすこし足らない存在と思われていたCB木本は今オフ、各クラブが狙いをつける人気株となったが、本人は残留を選択した。これは、クラブにとって大きな決断だった。
チームを離れるとみられていた攻撃の要ブルーノ・メンデスも、レンタル延長に成功し、大きな補強がなくとも、チームの基軸はしっかりと残すことができた。ここに、ベルギーではそこそこの得点力を見せ続けながらも、ついに帰国を選んだFW豊川を加え、山形からはスピード感あふれるサイド・プレーヤーの坂元を、桐光学園からは欧州のビッグ・クラブも熱視線を注ぐ若手のタレント西川潤が加わり、前線には厚みが増した。ただし、西川は早い段階で、ビッグ・クラブに引き抜かれる可能性が指摘されている。
タレントが多くとも、起用できる人数が増えるわけではない。ロティーナのフットボールの問題点は、ボールを保持するにしても、攻めが遅いことであり、相手がリトリートしてからの崩しでは、なかなか効果的な攻めは見せられない。セレッソの布陣は、オーソドックスな4-4-2で変わりないだろう。ソウザが移籍したボランチに目立った補強はなく、デ・サバトと藤田が基本線になるとみられており、攻撃面で特徴が出せる面子とはいえない。
すると、攻撃面は前4人でのコンビネーションが中心となる。前線はブルーノ・メンデスを中心に、柿谷、奥埜 、豊川、都倉、鈴木などのオプションがある。サイドハーフは清武、西川、坂元のほか、新加入のルーカス・ミネイロと、残りの攻撃陣から選ぶ。駒は豊富だが、それよりも、前述のようにスピードアップした攻撃が構築できるかどうかが鍵を握るだろう。守備面の安定を生かすための、攻撃のアイディアに一貫性をもたせることが必要だ。
それがうまくいかない場合、自分たちから主導権を握ろうとするチームも増えた中で、どれだけポゼッションの優位を守れるかは疑問に思うところである。10位というのは、あまりにシビアな予想かもしれない。もちろん、うまくはまれば、優勝も狙えるメンバー構成である。
11位 サンフレッチェ広島
城福体制が期待以上のフィットをみせる広島だが、年々、戦力は渋い状態が続いている。昨季の目玉だった攻撃的なSBサロモンソンは、ディフェンス・ラインの中核とはなれずに、期限付きで放出された。昨季途中からFWパトリックもチームを離れ、今季はさらに中盤の汗かき役であった稲垣や、ストライカーとしてそこそこの働きを見せていた渡も放出した。
ハイネルやレアンドロ・ペレイラという活躍選手を、期限付き延長でクラブに残せたのはポジティヴだ。新加入の目玉であるエゼキエウはまだ21歳で、トリッキーな技術をもつようだが、線が細く、まだ州レヴェルでの活躍しか見られない。むしろ、松本から加入した永井龍のほうが、このチームで可能性がある。
フォーメーションは3-4-2-1となり、前線はドウグラス・ヴィエイラを中心に、森島や川辺が掻きまわす間に、サイドのハイネル、柏が入り込んでくる攻撃パターンが強力だ。稲垣を放出したことで、相変わらず、中盤の軸は青山だろう。誰もが認めるクオリティの高いプレーヤーではあるが、年間を通じての活躍は期待できるのであろうか。守備面では荒木、野上を中心とするディフェンス・ラインに、名古屋から櫛引が加わったのは大きい。代表にも召集された大器、荒木の成長も楽しみだが、その分、移籍リスクも嵩む。
スタメンは十分に強力だが、層が厚いとは言いかねる。年間を通しての一貫性ということで、このクラブには脆弱性が見出せる。しかし、そのような状態でも、ここ数年は下馬評をはるかに上回る安定の実績を挙げてきており、それが崩れるはっきりした兆候も見出せない。
戦力の問題以上に、サポーターとクラブの関係は決して良好とはいえないようだ。新スタジアムの建設場所が決まるなど、ポジティヴな要素も出てきた一方で、アウェイ・ユニフォームをめぐっては他クラブとの連携で、日の丸をモティーフにした赤を採用し、伝統的なチームカラー(紫)とは異なるうえに、広島だけに「カープ・カラー」と揶揄されるなど、ゴタゴタが絶えない結果になっている。サポーターからの反対意見も多く出されたようだが、現時点でクラブに変更の意思はない模様だ。
サポが試合をするわけではなく、また、ユニフォームのことでサポがまったく応援を放棄するとも思えないが、ワン・チームとなって戦うのにネガティヴな要素であることは間違いない。
12位 大分トリニータ
昨季は一時、上位を維持するなど、J1昇格年でも片野坂監督の構築する特異なサッカーは十分に通用した。戦力を上回る強力な実績をあげたが、終盤は息切れがみられ、研究もされたのか、中位に落ち着いた。
若いタレント=オナイウの復帰はならなかったが、今季も主力級の移籍はなく、質の高いサッカーが崩れることはない。移籍市場では地味な動きだったが、FWの渡と知念を加え、弱点である攻撃の切っ先に的確な補強がなされた。両者とも厳しい競争やチーム事情のなかで、活躍が限られていたものの、大分ではブレイクが期待できる素材である。仮に彼らがフィットしない場合でも、チームで長くやってきた三平が控えているのは大きい。
さらに、ロドリゲス監督のJ2徳島では、その躍進を演出したMFの野村もかなりのブレイクが期待されている。小塚と組む2シャドーは、野村のほか、軽快な動きとテクニックを誇る町田という可能性もある。サイドハーフには田中と松本というタレントがおり、3バックからも岩田や三竿が機をみて飛び出し、どこからでも攻撃が成り立つ柔軟性のある戦術はピカイチだ。さらに、香川の加入で、4バックのオプションもあり得るようになった。
この状況で、大分を低くみる理由はないが、私の勘が苦戦を告げている。片野坂監督は、これまでやってきたことを、さらに研磨するためのアイディアをもっているのであろうか。グァルディオラの、マンチェスター・シティをみてみよう。多くの指導者が参考にする、あれだけ成熟したはずのチームが、結果的にはまだまだ上位にいるが、リヴァプールとは差を開けられ、歯車が狂うと格下相手にも勝ち点を落とすようになってきた。CLの結果にもよるだろうが、ペップは近い将来、チームの指揮権を失うかもしれないと噂されている。
13位 コンサドーレ札幌
1季を過ごしたメンバー全員の残留は、ある意味では最強の補強である。ペトロヴィッチの号令一下、その荒業をほぼ実現した札幌だが、より攻撃的なスタイルに移行している過程であり、プレ・シーズンではややネガティヴな結果が聞こえてきている。昨季も、大分と同様、前半戦は周囲の予想を上回る結果を残していたが、終盤まで上位に留まることはできなかった。
新シーズンは代表にも定着しつつあるFW鈴木武蔵や、FKを武器とするDF福森などの移籍なども取り沙汰されたが、岩崎を除く、貴重な戦力の保持に成功した。今季はそのベースに基づき、1対1の競り合いを軸とした新しいフットボールが、まったく仕上がっていないようだ。実際の試合をみないとわからないものの、そのキーワードから想像できるのはイタリア/セリエAに所属する、アタランタのガスペリーニ監督を見本とする��タイルだ。
昨季のメンバーでいうと、例えばフィジカルに優れたCBの金眠泰が積極的に、相手前線のボール・ホルダーに食いついた途端、すべての選手が相手と1対1になる形をつくり、オール・コート・マンマークでボールの行く先を塞いだ上、そこで奪ったボールを素早く相手ゴールまで運ぶというアグレッシヴな戦い方だ。激しくボールに食いつき、球際に妥協せず、相手のロストを誘うのが特徴だが、1対1が外れてしまうと、背後に広大なスペースを与えることになり、リスキーでもある。フィジカルの強さと、タフなスタミナに自信がないとできない戦術である。アタランタは、この新戦術で中小の育成型クラブでありながら、国内リーグの上位に浮上するだけではなく、欧州で最高ランクのコンペティションに当たるCLでも、旋風を巻き起こしている最中だ。
正にペトロヴィッチが、全員残留を勝ち取ってこそ、初めて選ぶことができた戦術である。これがうまくいけば、札幌は確かに大きな野心を達成できるだろう。それだけのタレントも揃っているはずだ。ただ、ジェイのように年齢を重ねた選手や、アンデルソン・ロペスのように攻撃的な選手にはハードルが高いようにも思う。福森も1対1ということでいえば、ディフェンス面で甘いのではな���ろうか。
誰もやったことがないサッカーに挑戦する!その志は、大いに応援したい気持ちもあるのだが。
14位 名古屋グランパス
ここ数シーズンは他が羨むような戦力を整えながらも、期待された結果とは遠いシーズンを送ってきた。昨季途中で、ついに風間監督を諦めたが、後任のフィッカデンティも、正反対のサッカー観からチームを建て直せたとは言いがたい状況だった。新シーズン、クラブは監督を信じ、続投させた。一方で、攻撃的なチームの構築を命じている。この矛盾が、再び名古屋の足を引っ張るのは目に見えている。
フィッカデンティはイタリアのプロヴィンツィアで指揮を執ってきた叩き上げの指導者で、セリエA時代のチェゼーナでは、その後、インテルで長く活躍することになる長友を抜擢したことで有名だ。その手堅い手腕に注目し、FC東京が日本に連れてきてからはJクラブに定着して、鳥栖でも実績をあげ、この程、名古屋のファイアーマンに指名された。いずれも守備に軸足を置いたチームづくりであり、攻撃的なスタイルには挑戦したことがない(イタリア時代はわからないが)。
戦力的には、さすがにトヨタ・マネーが効いており、既に一流のものを揃えていて、今冬は比較的、控えめだが、十分なものを維持している。一線級の選手ではジョー、長谷川のバックアップで、質のいい活躍を見せたFWの赤崎と、スキルフルなサイドプレーヤーとして、様々な高さで起用された和泉が、チームを後にしている。さらに、若手のDF櫛引と、経験豊富なSBの金井が放出された。
一方で、横浜FMでは怪我人の穴を埋め、優勝にも貢献したマテウスがレンタル・バック。五輪代表候補の攻撃的なタレントである相馬も鹿島から戻ったほか、湘南からは精力的なポスト・プレーヤーの山﨑、川崎からは気の利いた動きができる「優勝請負」MF阿部、広島からも足を止めない守備的な中盤の稲垣という特徴あるキャラクターを次々に入手した。昨季の戦力と合わせ、強力なスカッドが完成したのは間違いない。
攻撃面では常にJのトップに位置するFWジョーの決定力と、際立った攻撃センスをもつガブリエル・シャビエルの存在感が大きいが、ジョーは現時点で故障しており、年齢を重ねた彼と、安定感を欠くシャビエルは、年間を通して計算できるアタッカーとまでは言えない。それに加え、昨季は前線で大きく成長し、これら2人をあるいは越える存在感を放っていた長谷川アーリアジャスールも、しばらく戦列を離れることになりそうだ。
新加入の山﨑と、突破力のある前田に、阿部、マテウス、相馬が加わるユニットは十分に頼りになると思われるが、ここへきて、LSBにも不安が出てきた。このポジションにも適応できる金井は清水に新天地を求めたが、残ったメンバーに怪我が相次いでいるのだ。この状況では、昨季の川崎のように、中盤の選手の偽SBとしての起用も考えられる。例えば、阿部はそのような役割をこなすことができる柔軟な能力をもっているはずだ。
CBも含め、後ろはやや手薄な印象だ。風間時代と比べ、フィッカデンティが就任してからの名古屋のポゼッションは悪かった。その反省を踏まえて、主導権を握る攻撃の構築が、このあたりの弱点をカヴァーするはずである。しかし、それならば、もっと適任の指導者がいたのではなかろうか?
15位 湘南ベルマーレ
湘南、鳥栖、仙台、横浜FCが、今季のボトムにちかいと思われる。それぞれにネガティヴなポイントがあるが、湘南の場合は攻守の要であったDF山根と、FW山﨑の離脱が痛すぎるのは確かだろう。ただし、FW岩崎や、MF茨田と福田、三幸、CB大岩、SB馬渡など、計算できる補強は十分にできた。
浮嶋監督は、問題になった曹元監督とは対照的に、人柄は優しめの指導者と思われる。ただし、湘南が一時代を築いたブートキャンプ方式を捨てるとは思えない。他サポからすれば、「浮嶋さんって誰?」という感じだが、横浜FCと湘南で長く育成のほうに携わってきた。そのステイタスで、難しい時期の指揮を執り、そのままの指揮権が認められたのだから、素材はしっかりしている。
新加入のタリクはノルウェー代表ではあるが、実は北アフリカの生まれで、典型的なノルマン人種のように長身ではないため、2トップの確立を探っている。茨田や三幸といったメーカーがいるため、トップだけではなく、サイドからの侵入が攻撃の鍵を握ると思われるのだ。
特に攻撃の構築は難しく、守備にも難しい点はいくつかあるが、清水との最終チェックでは手ごたえを感じたようだ。正直、自分たちでも、どれだけ通用するかは予測できないところが大きいのだろう。しかし、パワハラ監督のほうがよかったと言われたくはない。これまでのシーズン通り、クレヴァーに勝点を獲得していってほしいものである。
16位 横浜FC
横浜FCはPO圏でも、自動降格は免れると予想する。戦力は、確かに見劣りする。だが、下平監督は十分でないリソースを十分に生かして、難しいJ2を2位で通過させ、その戦いぶりには安定感があった。
J2では安定的に得点しながらも、J1から声が掛かることはなかったイバのようなストライカーが、J1でどれほど活躍できるかはわからないが、転じて、一美の獲得は間違いなく大きい。中盤には、技術のしっかりした手塚を加え、爆発的なスピードをもつSBのマギーニョも、期限付きで獲得した。水戸から個人昇格した志知も質のいい選手と聞いている。
カズ、俊輔、松井、レドミなどの昔の名前で出ている、話題性のあるメンバーは、あまり戦力にはならないだろう。俊輔がトップ下で起用されるとの報道もあるが、俄かには信じがたく、年間を通じた一貫性も期待できない。しかし、その場合はハーフウェイよりやや前方に位置して、精確なロングボールでサイドを混乱に陥れるか、逆にサイドに開いて、斜めに中央のターゲットを狙う戦術が予想できる。
一方で、GK六反は精神と肉体の不調であるオバトレから快復してきており、十分な戦力になり得るはずだ。清水での好調期のパフォーマンスを考えれば、重要な補強であった。カズにも似たストイックな姿勢をもち、若手への影響力も大きい選手だ。
問題は、チーム全体の運動量であろうか。J1のハードワークは、J2のそれと比べても、はるかに質が高く、タフなものが求められるからだ。それに耐えられるだけの選手が揃っているのかどうか。
メンバーも大きく変わり、下平監督にはまた難しいミッションが待ち受けている。しかし、柏時代にはJ1屈指のマネージメント能力を示し、不幸にして、レイソルのJ2降格の起点にはなったものの、その実はACLへの対応で不調だった早い時期に、クラブが我慢しきれなかったことが大きかった。フリューゲルス消滅から13年。それとはまったくちがうチームの内実にはなっているものの、多くの人が心密かに気にかけているクラブであることに変わりはない。
17位 サガン鳥栖
ネットゲーム大手のサイゲームスの撤退に次いで、DHCがスポンサーから撤退し、それに代わる大きなスポンサー契約は結ぶことができなかった。フェルナンド・トーレス獲得というお祭り騒ぎを頂点に、鳥栖の陣容は大きく厳しさを増してきている。昨季は最終戦で清水に敗れ、最後は他力本願ながら、POを戦わずに済んだ。
今季も重要なタレントの多くを喪ったが、フロントもできるだけのことはしてきている。攻撃面では強烈なキックをもったチアゴ・アウベスを残留させ、金森も完全移籍で獲得し、チームに残留させている。LWGのクエンカや、攻撃的な位置でポリヴァレントな働きをみせる小野を喪ったのは大きいが、鹿島で一世を風靡したFW金崎や、ハートの強いクラブの象徴であるFW豊田がいるほか、ウイング的な動きが鋭い安庸佑なども残留し、アタッカー陣は十分に強力で、ヴァリエーションが揃った。
サイドプレーヤーとしては小谷松を獲得、最終ラインに神戸の宮を獲得するなど、目を惹く加入も演出した。GKは足もとの自信がある高丘が昨季、躍進をみせたが、松本から加入の守田も「1番」をつけ、熾烈なレギュラー争いがみられる。
これらのタレントを、金監督がブート・キャンプ方式の厳しいトレーニングで鍛え上げて、戦力を整えていくことになると思う。カレーラス体制に始まり、どん底に落ちた状態から、昨季、クラブをJ1残留��導いた金の指導力は十分、評価に値する。厳しい状況にもかかわらず、勝点を稼ぐ武器は十分に豊富といえる。中位進出はぐらいなら、やりようによっては可能性のある戦力とみている。
18位 ベガルタ仙台
戦術家の渡邉監督を切り、隣のJ2山形から木山監督を引き抜いて起用した。あくまで攻撃的なサッカーを志向する前監督の継続を選ばず、より現実的な選択がよいとする判断だ。内情はわからないが、フロントと監督の間で、深刻な齟齬があったように見受けられる。木山も、前監督と同様にクレヴァーなチームを構築するが、やや守備的なことは否めない。
攻撃的なサッカーがすべてのクラブにマッチするわけではないが、今季のトレンドをみる限り、仙台はかなりの我慢を強いられるはずである。
才能ゆたかなプレーヤーであったSB永戸がステップアップし、昨季のキャプテンを務めた大岩も、他チームへと去った。補強も渋いが、FW赤崎と、DF浜崎の加入は、ポジティヴである。ベストメンバーをみると、十分にものになる戦力が整ったとみるべきである。堅い守備を武器に、前線は絶対的な高さを誇る長沢の落としに、ジャーメインやクエンカが反応する。これらのタレントの決定力は、決して見劣りしない
しかし、ここにきて、その鍵となる長沢とクエンカの離脱が明らかになった。赤崎やゲデスもいるが、当初、構想した戦術は採れないかもしれない。ただ、赤崎を中心に、道渕、中原、石原、椎橋、松下らが掻きまわす布陣は、相手にとって、かえって厄介かもしれない。
J1チームとして、恥ずかしくないだけの戦力は揃えてきた。横一線のサバイバルに、自信をもってチャレンジできるはずだ。
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コロンビア戦が終わって沸き上がってきたのは、なんとも言えない不思議な感情だった。 驚きを多分に含んだその感情は、あまり味わえるものではない。長くサッカー現場の取材をしてきた私にとっても、フットボールの奥深さを痛感させられるゲームだった。 どんなにサムライブルーがこっぴどく国内で批判されていようが、ワールドカップの戦いは最後の2~3週間の準備がきわめて重要なのだ。いかなる強豪国であっても、そこで失敗すると良い結果は求められない。西野朗監督は、本当に素晴らしいマネジメントをした。こちらが想定していた以上に、すべてが上手くハマったのである。柴崎岳、香川真司、そして吉田麻也と昌子源のCBセットを先発させ、ほんの2週間前とはまるで違うチームになっていた。まさしく勝負師の英断。チームの成長をしっかり見定め、最適な選手と組合せを探り当て、勝利した。お見事である。 奇跡の勝利だと騒がれているが、私はそうは思わない。フットボールのストーリーというものは、言ってみればキャプテン翼のようにガラリと展開が変わることがある。まったく異なる光が生み出されることがある。西野ジャパンの場合は、地味だが黙々と短い時間で積み上げた努力が、結晶となって光り輝いた。それが歴史を動かしたのである。なんと素晴らしいノンフィクションだろうか。 日本のファンは試合前、勝利を期待してはいたものの、どこかに疑心暗鬼はなかったか。それが一夜にして、一変した。世界最高峰の舞台で戦う日本代表選手を誰もが認め、その自信を共有し、途轍もなく大きなリスペクトが芽生えたのだ。国のムード自体が変わった、と換言してもいいだろう。ワールドカップはたった1勝ですべてが変わる、そういう大会なのだ。 ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督を更迭し、ガーナ戦、スイス戦で低調な出来に終始していたは事実だ。日本はFIFAランキングも61位と低く、出場32か国では下から数えて3番目である。パラグアイ戦で良い勝ちっぷりを見せたとはいえ、刷り込まれた先入観というものはなかなか拭いがたく、サポーターはどこか心に不信や不安を抱いていただろう。 そうした意味では、開催国のロシアや同じアジア勢のイランは、日本代表チームにもサポーターにも勇気を与えたのかもしれない。下馬評は決して高くなかったが、前者は開幕戦で見事な攻撃サッカーを披露してサウジアラビアから5点を奪い、後者は強敵モロッコを相手に粘り勝ちした。彼らもまた、最後の2~3週間に最高の準備ができたのだろう。やかましい外野の雑音にいっさい耳を傾けず、自分たちのスタイル熟成にのみ集中した結果だ。
西野監督にとってはやはり、パラグアイ戦で得た収穫が大きかっただろう。 攻守の迅速な切り替えを念頭に置き、中盤のコンビネーションを高めるためにはどんな組み合わせがベストなのか。積極的なテストにパラグアイ戦を費やし、コロンビア戦では乾貴士、香川、柴崎、長谷部誠、原口元気の5人のMFを並べる最適解を見出したのだ。彼ら5人が同時にピッチに立つのは初めてだったはずだが、西野監督にはどう機能するかのイメージができていたのだろう。連携はいたってスムーズだった。 守備の安定も目を見張るばかりだった。高い位置での追い込みも、最後の局面での対応もだ。結果的にFKでの失点を招いた長谷部のファウルは正直言ってアンラッキーで、むしろラダメル・ファルカオの反則だった。最前線の大迫勇也からして守備意識が高かったし、誰もが素早い帰陣と積極的なフォアチェックを意識していたように思う。短い強化期間であれだけの連動性を示せたのは、個々の取り組みと互いへの信頼性に拠るところが大きい。吉田と昌子のコンビも強度が高かった。あのファルカオがGK川島永嗣へのバックパスのようなシュートしか撃てなかったのだから。 後半は完全に日本のペースで試合を進めた。ああなると10人のコロンビアは勇気を保てなくなる。その状況下でいくらハメス・ロドリゲスのようなワールドクラスを投じても、挽回するのは至難の業だ。終盤にいくつか危ないシーンはあったものの、コロンビアはパワープレーさえ仕掛ける手立てがなかった。数的有利だったことを加味しても、日本の完勝だったと考える。 前回のパラグアイ戦のコラム��、わたしは柴崎を称え、スタメンで起用すべきだと書いた。コロンビア戦では攻守両面で気の利いたプレーを続けていたし、いまや彼のいない日本代表が想像できないほどだ。わずか2試合でステータスを一気に高めたのである。 乾も香川も申し分なかったし、決勝点を挙げた大迫も足を止めずにつねに動き回っていた。選手個々の長所を上手く引き出した、西野監督の手腕に唸らされる。スペシャルであり、リスペクトに値するだろう。 昌子は安定感があり、ほぼミスなく90分間をプレーした。とはいえこれは結果論であり、CBのコンビを本番で変えるのは、相当な勇気がいっただろう。 吉田と昌子のコンビは言わばコロンビア戦のサプライズだった。私なども吉田には槙野智章、昌子には植田直通が相棒という固定観念がどこかにあって、吉田が外せない以上、さすがに昌子を先発に据えるのはギャンブルだろうと考えていた。ところが、だ。指揮官の思い切りの良さには頭が下がる。吉田の経験と昌子の身体的な強さが相乗効果を発揮し、コロンビアの攻撃オプションをしっかり封じ込んでいた。セネガルやポーランドを相手にしても強度を保てるのではないかと、そんな期待を抱かせてくれる。
本田圭佑も忘れてはいけない。依然として大きな役割を担っているように思う。この日はスーパーサブとして振る舞い、きっちり展開を変えるプレーを見せて、CKから決勝点をお膳立てした。国際的な知名度の高い本田がベンチにいるだけで、それなりの威圧感はあるはずで、対戦相手は気になってしょうはないだろう。日本がベンチに座るハメスの動向に気を揉んだのと同じだ。 あらためて、日本はなぜ勝てたのか。個としても集としてもコンディションが良く、互いへのリスペクトと信頼をベースに、選手たちが指揮官のビジョンをピッチ上で具現化できたからにほかならない。潜在的な能力が蘇ったのだ。
ハメスがスタメンでなく、開始早々に敵が退場者を出し、コロンビアの後半の戦いぶりは積極性に欠け、交代策にも失敗した。そうしたラッキーな側面があったにせよ、それを勝利に結びつけられたのは確かなチーム力があったからだ。11人同士で戦っていたら負けていた? それは分からないだろう。日本がPKを奪ったシーンを思い起こしてほしい。ああしたカウンターを何度も繰り出していた可能性は低くない。 もう一度言おう、決して奇跡ではないのだ。 我が母国イングランドはラウンド・オブ16で、コロンビアかポーランドと戦うイメージを持っていたはずだ。だがセネガルもポーランドを下したいま、このグループはどこが抜け出してもおかしくないオープンな構図となった。いまごろイングランドは慌てて、日本のスカウティングを始めているかもしれない。 ――――――――――◆―――――――――◆―――――――――――― 著者プロフィール マイケル・プラストウ/1959年、英国のサセックス州出身。80年に初来日。91年に英国の老舗サッカー専門誌『ワールドサッカー』の日本担当となり、現在に至る。日本代表やJリーグのみならず、アジアカップやACLも精力的に取材し、アジアを幅広くカバー。常に第一線で活躍してきた名物記者だ。ケンブリッジ大学卒。
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石川直宏氏に訊くCL展望。「注目はグループE。優勝候補はシティ、リバプール、そして…」
2019.9.17 Soccer Digest

現地時間9月17日に、いよいよ2019‐20シーズンのチャンピオンズ・リーグ(CL)が開幕する。 昨シーズンは、トッテナムとのプレミアリーグ勢対決を制し、リバプールが14年ぶりの戴冠を果たした。イングランド勢の時代が続くのか、スペイン勢が復権するのか――。 「DAZN」の『フットボールフリークス』に出演する石川直宏氏に、優勝候補やダークホース、注目のグループなど、今シーズンのCLを展望してもらった。
――昨シーズンは、リーガ勢の5連覇が止まり、プレミア勢が躍進しました。 「いつの時代もサッカーにはトレンドというものがあって、あるチームが抜きん出ると、それを倒すためにはどうすればいいのか、ということを考えますよね。昨シーズンだと特に顕著だったのがリバプールで、ハイプレス、トランジションの速さ、ハードワークを前面に出したサッカーを展開し、バルセロナのパスサッカーを打ち破りました。逆に今シーズンは、リバプールのようなサッカーへの対策をしてくるチームが出てくるかもしれません。それも楽しみのひとつですね」
――もっとも注目しているグループは? 「個人的にはグループEですね。リバプールとナポリは、昨シーズンも死のグループ(他にパリ・サンジェルマンとレッドスター)で同組でしたよね。もちろん、この2チームが有力ですけど、南野(拓実)選手と奥川(雅也)選手がいるザルツブルク、伊東純也選手がいるヘンクがどこまでやれるか楽しみです。3人とも攻撃的なポジションの選手なので、キープレーヤーになると思います」 ――その3選手の他に、ガラタサライの長友(佑都)選手、そして登録メンバーに入ったバルセロナの安部(裕葵)選手も出場する可能性があります。 「ユウト(長友)は昨シーズンに続いてですし、内田(篤人)選手なんかもそうですけど、どんな雰囲気なのか訊いてみたいですよね。CLはチームが出場するだけでも大変ですから。僕自身はアタッカーだったので、南野選手や伊東選手に注目しています。南野選手は昨シーズンにヨーロッパリーグで活躍して、ステップアップした姿が見られると思います」

――他に気になるグループはありますか? 「やはり、バルセロナ、インテル、ドルトムントが入ったグループFですかね(他にスラビア・プラハ)。とくに注目しているのがインテルのルカクです。マンチェスター・ユナイテッドでは消化不良に終わりましたけど、新天地でどう攻撃に絡んでいくのか楽しみですね。早速ゴールも決めているようですし。昨シーズンのインテルは、相手の戦術に合わせすぎて自滅してしまう試合もあったので、戦術家のコンテ監督の下でどう変わるか。多少時間はかかるかもしれないですが」 ――バルセロナはどう見ていますか? 「リーガではやや出遅れましたけど、メッシがそろそろ帰ってきますよね。新戦力のグリエーズマンとデヨングが入り、どう機能するのかが見物ですね」 ――グループステージでもっとも注目しているカードは? 「いきなり第1節で当たるナポリ対リバプールですかね。昨シーズンは、両チームが勝点、得失点差で並んで、総得点の差でリバプールが決勝トーナメントに進んで、結局タイトルを手にしました。そういう因縁も含めて、楽しみですよね。ザルツブルク対ヘンクの日本人対決もいきなり観られますね」
――ずばり優勝候補は? 「難しいですね(笑)。マンチェスター・シティ、リバプールあたりと……ユベントスにも注目しています。いい補強もしましたし、サッリ新監督の攻撃サッカーがどう機能するか。クリスチアーノ・ロナウドを擁す前線も強烈ですし、バランスもいいと思います。 キーマンはデリフトですかね。空中戦に強く、足下の技術もあって、次代を担うセンターバックです。アヤックスでは、個でガツガツいけた部分があったのですが、ユーベではもう少し組織的・戦術的なところが求められる。個の力を組織の中で活かせるようになれば、さらなる成長に繋がると思います。 昨シーズンのリバプールを見ても分かるように、国内リーグとの2冠を取るのは本当に難しい。セリエAのタイトルは当たり前と見られているなかで、どうマネジメントしているかが問われますね」 ――その3チームの争いになりそうですか? 「あとはバルセロナですかね。ややまとまりに欠けているように見えますけど、あのスタイルでプレミア勢の迫力あるサッカーにどう対抗していくか。興味がありますね」

――昨シーズンまで3連覇していたレアル・マドリーはどうでしょう? 「やはりアザールが鍵を握ると思います。あとは、守備が安定しない部分があるので、どう修正していくかですね。いきなり故障者が続出していますが、昨シーズンのリバプールを見ても、コンディションというのは本当に重要な要素なので、そこも気になりますね」 ――ベイルやハメスは、一度は構想外になりながら、先発で起用されています。 「どういう感覚なんでしょうかね。他に欲しいクラブがいくらでもあったはずですが、それでも残ってプレーしているというのは。ただ、チームのために、というよりは個人のためという印象が否めないですね。その点リバプールはクロップ監督の下で一致団結して勝ち上がりました。あのレベルのチームをまとめる手腕というのは、本当にすごいと思いますね」
――昨シーズンのアヤックスのようなダークホース候補は? 「初出場のアタランタは面白そうですね。組み分け(マンチェスター・シティ、シャフタール、ディナモ・ザグレブ)を見ても、グループステージを突破する可能性は十分あります」 ――注目している選手は? 「ベンフィカからアトレティコ・マドリーに移籍したジョアン・フェリックスですね。高いレベルでやればやるほど、能力を発揮しそうな選手ですね。フィニッシュもチャンスメークもできる万能型です。ビジュアル的にも人気が出そうですしね(笑)。ポルトガル代表の先輩である、ロナウドとの対決(第1節、第5節)も楽しみですね」 取材・文●江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)
オリジナル記事はこちら:https://www.soccerdigestweb.com/news/detail3/id=64262
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2022年5月3日

2022 明治安田生命J1リーグ 第11節 サンフレッチェ広島 1-2 柏レイソル@エディオンスタジアム広島 10821人/13分 ジュニオールサントス、70分 森海渡、87分 森海渡
J1第8節 広島 1-0 福岡@Eスタの試合当日(4月10日)試合前に欠場が決まった浅野雄也がベンチ復帰・後半25分から出場
広島新加入のFWベン・カリファがホームデビュー「気持ちよくサッカーができる」(サッカーキング)
サンフレッチェ広島に加入した元スイス代表FWナッシム・ベン・カリファが3日、明治安田生命J1リーグ第11節の柏レイソル戦でホームデビューを飾った。
ベン・カリファは4月26日にチームに合流し、3日後に行われた第10節の清水エスパルス戦でいきなりメンバー入り。後半開始から出場して日本デビューを飾り、前線からのプレスや周りを活かすプレー、クロスに対する動きなど期待感が膨らむパフォーマンスを披露した。
柏戦では71分に途中出場し、初めてエディオンスタジアム広島のピッチに立った。ホームデビューを果たしたベン・カリファは試合後、「声を出して応援ができない中でも、ポジティブな雰囲気を出してもらっているので、すごく気持ちよくサッカーができる」と、制限がある中でもサポーターが作るホームの雰囲気に心地よさを感じたようだ。
ホームで実力の片鱗も見せた。1点ビハインドの90分に相手DFの裏へ飛び出し、DF野上結貴からのロングパスを収めると、上がってきたMF柏好文とパス交換。最後はペナルティエリア前中央からゴール右隅を狙いすましたシュートでゴールネットを揺ら��た。土壇場での同点弾かと思われたが、これは惜しくも自身のオフサイドで得点は認められなかった。ゴールは幻となったものの、裏への意識やシュート技術を見せつけた。本人は、「裏に抜けるところ、コンビネーションから抜け出すところはこれからもどんどん増えてくると思う」と自身のストロングポイントを活かしていく構えだ。
広島は柏に1-2の逆転負けを喫して、リーグ戦6試合ぶりの黒星となった。ベン・カリファは、「残念ながら結果だけがついてこなかった。ここから次の試合がすぐきてしまうので、しっかり切り替えて、次の試合に向けてやっていきたい」と中3日で7日に行われる次節・鹿島アントラーズ戦を見据えた。

創立30周年事業特別企画 レジェンドOB 森保一

周年コラボパッケージ焼そばソース オタフクソース

野々村チェアマン来場

塩谷司選手J1リーグ通算150試合出場達成セレモニー
3月19日J1第5節 広島 0-2 川崎F@EスタでJ1通算150試合出場を達成。今節で154試合出場。

前田大然のいないJ1でスプリント回数上位に食い込む男は? 走力で存在感発揮する広島MF(ザ・ワールドweb 5月9日)
横浜FM戦では51回でトップに
昨季までのJ1で毎年のようにスプリント数ランキングの上位にいた男が、現在セルティックで活躍す���前田大然だ。昨シーズンは横浜F・マリノスで得点王に輝き、1試合のスプリント回数ランキングでは、トップ15のうち12が前田というすさまじい成績を残してスコットランドへ飛び立った。
そんな前田がいない今季のJ1でスプリントで存在感を残すのが、サンフレッチェ広島の藤井智也だ。立命館大学を経て2020年に広島へと加入した藤井は、昨季29試合に出場して、レギュラー争いに名乗りを挙げる。すると今季はここまで全試合に先発出場し、右ウイングバックとして存在感を放っている。
そんな藤井は第7節の横浜FM戦で今シーズン最多の「51回」を記録。リーグのスプリント回数ランキングでもトップに立っており、2位も第5節の川崎フロンターレ戦の「50回」だ。今季のスプリント回数ランキング上位10のうち、藤井が6回食い込んでおり、走力でチームに貢献している。
直近の3-0と勝利した鹿島アントラーズ戦でも32回と両クラブで最多の数を記録した藤井。圧倒的なスピードとそれを何度も繰り返して発揮できるスタミナは、ミヒャエル・スキッベ監督の新たな広島で大きな武器となっているのだ。シーズン終了後には、前田のようにスプリント回数ランキングが藤井でうめつくされているかもしれない(データはJリーグ公式より)。

原爆資料館南側に8メートルの花の塔 広島でフラワーフェスティバル(毎日新聞映像グループ)
フラワーフェスティバル始まる(広島ホームテレビ)
花で平和を伝える祭典「フラワーフェスティバル」が始まりました。今年も新型コロナの影響でパレードなど一部のイベントは見送られています。
フラワーフェスティバルのシンボル、「花の塔」には、平和の灯から採火され子どもたちの手でつながれた火がともされました。
コロナ禍前に行われていたパレードで通りを彩った花車は、フォトスポットに。舞台に乗って記念撮影を楽しむ人たちの姿がありました。
大野貴嗣 実行委員長 「地域の人たちや子どもたちの日ごろの成果を発揮して、笑顔の輪からどんどんフラワーから広がっていくようなお祭りになればと思います」
フラワーフェスティバルは5日までで、国際会議場など3つのステージでは、3年ぶりに一般公募された出演者約3千人が音楽やダンスを披露します。

【社説】<社説>憲法記念日に考える 良心のバトンをつなぐ(東京新聞)
近代の戦争で日本人はいったい何人、死んだのでしょうか。
日清戦争(一八九四〜九五年)で約一万四千人、日露戦争(一九〇四〜〇五年)では約十一万八千人といわれています。その後のシベリア出兵、満州事変と、日本の戦争は際限なく続き、そのたびに死者も千人単位、一万人単位で積み上げられました。
日中戦争・太平洋戦争での戦没者は軍民合わせ約三百十万人にもなります。
アジアの人々の犠牲も甚大です。中国では一千万人以上、インドネシアで約四百万人、ベトナムで約二百万人、フィリピンで約百十万人が死亡したといわれます。
驚くべき死者数です。これが昭和の敗戦まで続く戦争の姿です。
ヨーロッパに目を転じても、第一次大戦(一四〜一八年)では約一千万人の兵士らが死んだといわれます。戦車や潜水艦、毒ガスなど残酷な新兵器が登場し、死者数が膨大になったのです。
◆血塗られた20世紀
第二次大戦(三九〜四五年)では死者数はさらに飛躍的に増えました=図。ドイツなど枢軸国側が約千二百万人、米英など連合国側が四千三百六十万人に。アジア・太平洋諸国を加えると、すさまじい犠牲者数になります。
とくに旧ソ連(ロシア)では何と約二千百五十万人、ポーランドでは約六百六十万人と甚大です。「タイムズ・アトラス 第二次世界大戦歴史地図」(原書房)や「日本の戦争」(同)などの資料に基づきましたが、二十世紀はまさに血塗られた時代でした。
日本に落とされた原爆や空襲の被害も悲惨でした。このような人類の惨状を踏まえて、四七年に施行されたのが日本国憲法です。
しばしば憲法は法人である国家と国民との間で結ばれた社会契約だと説明されます。契約の第一は基本的人権の保障でしょう。九七条は次のように記しています。
<日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである>
私たちが自由に生き、権利を行使できるのも、人類の多年にわたる努力の成果に他なりません。戦争はとりわけ厳しい試練でした。「信託」という難しい言葉が書かれていますが、憲法をつくった人々が、未来の人々に託したバトンであるに違いありません。
私たちは良心のバトンを受けた受託者であり、また権利の恩恵を受ける受益者だという構図です。では委託者は誰なのでしょう。
もちろん憲法をつくった当時の人々ですが、その脳裏には戦争で無残に亡くなった無数の人々の姿があったことでしょう。
そう考えれば、委託者には死者も含まれて当然です。死者たちの声が憲法の条文に生きている。そんな発想が必要です。
民主主義は「現在」の多数派が少数派の意見を踏まえつつ権力を行使します。それに対し、憲法を力にする立憲主義は「過去」が未来を拘束します。
例えば「過去」が保障した基本的人権は、「現在」の多数派がたとえ奪おうとしても、奪うことができません。もちろん国民主権もです。人間は愚かで移ろいやすいゆえに、憲法原理は変えられないようにしているのです。
でも、日本国憲法の三本柱である平和主義は壊れつつあります。歴代政権が「不可能」と言ってきた集団的自衛権行使を「解釈改憲」なる手段で「可能」に変えてしまったのですから…。
◆愚かな為政者が戦争を
平和大国を冒涜するものです。平和主義は非現実的という声もありますが、平和を唱え続けないと平和が守れないのも事実です。他国の脅威が戦争を始めるのではありません。愚かな為政者が戦争を始めるのです。
もっともらしい脅威や危機をあおり、「軍事」の掛け声が聞こえたら危険信号です。歴史の教えです。明治維新から昭和の敗戦に至る戦争の七十七年。敗戦から今日までの平和の七十七年。未来の分水嶺のような年です。
静かに死者たちの声を聞き、次の時代に良心のバトンをつなぎたいものです。
岸田首相、改憲へ議論進展期待 立民代表「国民投票法、まだ不十分」(時事通信 5月1日)
与野党党首は1日放送のNHK番組で、国会での憲法審議の進め方について議論した。岸田文雄首相(自民党総裁)が憲法改正に向けた議論進展に期待する考えを示したのに対し、立憲民主党の泉健太代表はCM規制など国民投票法の改正を優先させるべきだとの立場を重ねて示した。
首相は「施行から75年がたった憲法には、時代にそぐわないとか、不足している部分もあるのではないか」と指摘。「国民の中で、憲法に対する意識がより高まり、改正の議論が進むことを期待したい」と語った。
これに対し、泉氏は「国民投票法の整備はまだ不十分だ」と述べ、CM規制や外国人寄付の問題などの優先審議を求めた。
日本維新の会の馬場伸幸共同代表は「いろんな項目について議論を深め、採決し発議するかどうか決めよう」と主張。国民民主党の玉木雄一郎代表も「立法府の機能を維持するための(国会議員)任期の特例延長について、速やかに結論を得るべきだ」と語った。
一方、公明党の山口那津男代表は「今日的な課題も出ているが、この憲法の意義を改めて共有すべきだ」として、丁寧な議論を要請。共産党の志位和夫委員長は「憲法9条を変える議論ではなく、9条を生かした平和外交の議論を大いにやりたい」と訴えた。
れいわ新選組の山本太郎代表は「憲法改正の優先順位は低い」と述べ、新型コロナウイルス対策や社会保障の議論が重要との考えを示した。番組は4月27日に収録された。
岸田首相 憲法改正に意欲「挑戦し続けなければならない」(NHKニュース)
憲法改正を目指す立場の人たちでつくる団体の集会が開かれ、岸田総理大臣はビデオメッセージで「社会が大きく変化する今だからこそ挑戦し続けなければならない」と述べ、憲法改正への意欲を改めて示しました。
この中で岸田総理大臣は、新型コロナの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻などを踏まえ、緊急事態への対応や自衛隊の位置づけなどについて議論を深めなければならないと指摘しました。
そして、自民党がまとめている「自衛隊の明記」など4項目の改正案について「いずれも極めて現代的な課題であり、早期の実現が求められる」と述べました。
そのうえで「憲法改正への挑戦は決して容易なものではない��、社会が大きく変化する今だからこそ挑戦し続けなければならない」と述べ、憲法改正への意欲を改めて示しました。
また、自民党の古屋憲法改正実現本部長は「世界の安全保障環境が大きく変わっている時代に憲法9条は世界遺産だと言って北朝鮮や中国に何の効果があるのか。参議院選挙の公約の大項目に憲法改正の必要性をいれて訴える」と述べました。
公明党の浜地憲法調査会事務局長は「大災害や有事、感染症のまん延があっても国会の機能を維持する観点がより重要だ。国民の理解と関心を得る中で憲法議論が進むことを願っている」と述べました。
日本維新の会の足立国会議員団政務調査会長は「ウクライナ危機の勃発で何よりも議論すべき項目は憲法9条だ。党として参議院選挙までに憲法9条と緊急事態条項の改正案を策定し、憲法論議の先頭に立ちたい」と述べました。
国民民主党の玉木代表は「緊急事態については定義を定めることが非常に大事だ。自衛隊の明記の議論では国際法でいう軍隊なのか、議論を避けてはいけない。賛否とともに考えていくことが今の時代には必要だ」と述べました。
立民や共産など野党3党 “憲法改正に向けた動きを阻止”と訴え(NHKニュース)
立憲民主党や共産党など野党3党は、憲法を守る立場の市民団体が東京都内で開いた集会に出席し、与党などの憲法改正に向けた動きを阻止していくと訴えました。
この中で、衆議院憲法審査会で野党側の筆頭幹事を務める立憲民主党の奥野総一郎氏は「ウクライナの問題をだしにして、緊急事態対応などを理由に改憲に突き進もうとする与党の姿勢を許すわけにはいかない。憲法9条は日本に平和をもたらすと正面から議論し、国民に与党の憲法改正案のひどさを訴えていきたい」と述べました。
そのうえで、夏の参議院選挙に向けて「改憲勢力が3分の2を下回るよう、しっかりと野党で共闘し、改憲にストップをかけていきたい」と訴えました。
共産党の志位委員長は「戦争を起こさないために、憲法9条を生かした外交に知恵と力を尽くすのが政治の役割だ。日本がやるべきことは敵基地攻撃能力ではなく、東アジアを戦争の心配のない平和な地域にすることだ」と述べました。
また、社民党の福島党首は「今こそ、戦争をしないと決めた憲法9条が世界で輝く時だ。民主主義の力で政治を変えて、憲法を輝かさせていこう」と訴えました。

【本日 (5/3)の広島県内の感染状況】(広島県)
【国内感染】新型コロナ 55人死亡 3万481人感染(3日18:00)(NHKニュース)
東京都 新型コロナ 4人死亡 3357人感染 前週火曜比約1700人減(NHKニュース)
大阪府 新型コロナ 13人死亡 新たに3318人感染確認(NHKニュース)

5月3日 19:40 震度3 【群馬県】群馬県南部【神奈川県】神奈川県東部 神奈川県西部
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Page 110 : 親子の夢
卵屋の二階を訪れたザナトアは、古い椅子に腰掛けて身体を休めていた。 年を取るにつれて、不自由な身体だと実感する。肉体を駆使するからこそ余計に痛感するのだ。かつては簡単に踏み出せた数歩すらあまりに鈍く、重く、身体の節々は痛む。視界は霞み、老眼鏡をかけなければ文字を追い辛くなった。幸いにして脳はさほど衰えていないが、不意に足下を掬われ、床に沈み、それから目を見張る速度で老いる例はザナトアも知るところだ。 生き物はいずれ死ぬものであり、生きていれば老いていく必定に縛られている。育て屋稼業を営んできたザナトアは、キャリアの間に数えきれぬ別れを経験してきた。依頼主のもとへ帰って行く別れもあれば、野生に戻っていく別れもあり、そして死別もある。生き延びるほど、別れに対して鈍感になっていく。ポケモンに限らない。狭小な世間では、人付き合いの悪い彼女の耳にも時折届く。誰某が倒れただの、死んだだの、腐った魚が泳いでくるように、或いは静かな波に揺れて打ち上げられてきたように、新鮮味を失った報せとしてやってくる。 老いているという自覚は、思いがけず幼い旅人を家に住まわせてから更に濃厚になった。 風化していくこの家で借り暮らしを始めたアランが、籠を藁で埋めて何度も階段を往復し、或いはポケモン達に餌を与え、或いは床や壁を掃いて磨いて、そういった細々とした仕事を文句の一つ吐かずに淡々とこなしている姿を、多少は感心しながら観察していた。本音を漏らせば、老体には助かってもいる。不慣れ故の手際の悪さは目につくが、吸収が早い点にも身軽な身体にも若さを実感した。ザナトアはもうじき齢七十四。アランとの年の差は殆どちょうど六十年分と知った時は呆気にとられたものだ。孫と言っても通じてしまう。 卵屋の内部はいつもより静かだ。ヒノヤコマを頭とした群れが出かけているところである。親友である幼く飛べないドラゴンは、衰弱を契機とした病で飛べなくなったピジョンと談笑している。その隣で、涼やかにエーフィは横になっていた。 この子達をどこまで世話してやれるのだろう。騒がしいポケモン達を前にふと静けさに襲われた時、ザナトアは一考する。 少なくとも、余程の不幸が無い限りフカマルは遺される立場となる。ドラゴンポケモンの寿命は長い。種族によっては人の一生を超越する。純粋培養といえようか、無邪気でとぼけた明るさを���ったまますくすくと育つ彼を見ていると、必然的に彼が経験する別れについて考えざるを得ない。則ち、自身の死後の世界について。 誰かが死んでも、此の世は途切れることなく動いていく。しかし自分の命は自分だけのものではないと知っている。だからフカマルには自分以外のおやが必要だ。野生を経験していないのだから尚更である。ドラゴンポケモンを簡単に野に放てば、生態系が崩れる恐れもある。無論、フカマルに限らない。ここに住むポケモン達、皆まとめて、互いに互いの生命を共有しており、誰かの助けを借りなければ生きられないポケモンもいる。 ふと、顔を上げた。風の流れが変わった。傍でドラゴンが軽快に鳴く。 フカマルが窓に跳び乗り、小さな手を懸命に振っている。つられるように、エーフィが隣へ歩み身を乗り出した。ヒノヤコマや、野生に帰ろうとしているあのポッポを含めた群れが帰ってくるところのようだった。ザナトアは立ち上がり、整然と隊列を成して飛翔する群衆を見つめる。彼等は数日後に控える、湖を舞台にしたレースに出場する面々だ。 秋、晴天の吉日に催されるキリの一大行事である秋季祭で行われる、鳥ポケモンによる湖を舞台としたレース、通称ポッポレースには、いくつかの部門がある。 町を超えて、国土各地のチェックポイントを回り再びこのキリに戻ってくる過酷で長期間を覚悟する部門。こちらは数日を必要とする。一方、湖畔に点在するチェックポイントを全て回り同じ場所へと帰ってくる、数時間で終えるレースは、一定のタイムをクリアした精鋭の参加する部門と、誰でも参加可能な部門とがある。ザナトアの擁する野生ポケモンのグループは後者での参加となる。前者は参加規定としてポッポのみという縛りがあるが、後者は種族を選ばない。形式上順位はつけられるものの、己の肉体を駆使し競うことが目的というよりも、空気感を楽しむ場だ。出場するポケモンが多岐に渡るため、華やかがなんといっても特徴である。家族や友人同士で共に飛ばせたり、衣装を着せたり、背中に別のポケモンや人間を乗せて飛ぶのも許されているような自由なレギュレーションだ。当日の飛び入り参加も可能、飛べさえすれば良いという内容で、珍しいドラゴンポケモンでも出場すれば拍手喝采、注目を浴びる。手に汗握る本気の試合形式とはまた違った趣向で祭を盛り上げる。 とはいえ、混沌とするため事故を招きやすい実情がある。 大小入り交じる見知らぬポケモン達に囲まれると、不安に煽られあらぬ方向へ飛んでいき迷子になる、或いは単純に体力不足等の様々な理由で、棄権するポケモンも出てくる。ザナトアは全員が最後まで飛び続けることを最大の目標とする。そのために、チームで隊列を組み練習を重ねさせた。ただ、ザナトアは特別なことは殆どしていない。飛んでしまえば手を離れる故もあるが、彼女が口を出さずともヒノヤコマやピジョンなどレースの経験者である進化ポケモンが全体をコントロールしてくれている。彼等は血は繋がっていないけれど、皆兄弟のようなものだ。信頼で結ばれた結束は固い。 しかし、このうちの何匹かは恐らくそう遠くない将来にこの卵屋を離れていくだろう。自分の手元から離し本来の居場所へと帰す、それこそが今のザナトアの使命である。 不意に、新入りの獣の尾がぴんと伸びて、喜びの声をあげた。 ほんの少しの挙動だけで解る。主人が帰ってきたのだ。 西日が強くなっている中、長い丘の階段を上がりきったところだ。漸く見慣れてきた栗色の髪を、朝と同じく後ろで一つに結っている。両手に紙袋を抱えて重たげであった。 「手伝いに行っておやり」 エーフィに声をかけると、彼女は頷いて、すぐさま駆け下りていった。惚れ惚れするような滑らかに引き締まった身体を柔軟に伸ばし、主を労うことだろう。 群れが窓の傍で密集し、小鳥達から中へ入っていく。一気に賑やかになり、フカマルが一匹一匹に声をかけていた。このささやかな時間がザナトアにとっては愛おしいものである。 逞しいポケモン達と時間を過ごすほど、別れを意識し、同時に命を貰っていると痛感する。けれど別ればかりが人生ではない。ここが居場所と定住を決めた者もいる。まだこの子たちといたい。痛快な人生、まだ終わらせるには勿体ない。 「お疲れさん。さ、ゆっくりお休みよ」 薄い黄金色をした穀物を餌箱に流し込めば、疲労もなんのその、活気溢れて食い付く鳥ポケモン達に微笑んだ。先導したヒノヤコマ達に声をかける。後で好物の小魚を持ってきてやろう。祭日に向けて、皆順調だ。 フカマルを引き連れて、食事に騒ぐ卵屋を後にする。リビングに戻ってくると、アランが荷物を下ろしているところだった。白い頬に薄らと血色が透いている。アランはザナトアに気付くと、柔和な笑みを浮かべた。 反射的に抱いたのは違和感である。 妙だ。 ザナトアは直感した。 アランは約束通り夕食準備に間に合うように帰宅し、台所では隣に立ち、いつものように料理を手伝う。流石に熟れてきて、ザナトアが何も言わずともフカマルの好みを押さえた餌を用意できるようになったし、自身のポケモン達にもそれぞれに合った食事を用意している。購入品を手早く冷蔵庫にしまえるようになり、食器の収納場所は迷い無く覚えてしまった。 ポケモンに対しては些細な変化にも気を配れる自負があるザナトアだが、人間相手となると疎いことも自覚している。良くも悪くも厳しく、距離を置かれることも多い。自然と人との交流が減り、偏屈に磨きがかかった。しかしそんなザナトアでも、頑なに無表情だったアランが町から帰ってきて急に笑うようになれば、嫌でも勘付く。人形のようだった人間が、本来の形に戻って笑む。それは人としておかしくはないことであるが、違和感を持つのは皮肉である。 散らかった机上に無理矢理空間を作ったような場所で日常通り食事を囲い、アランはぽつぽつと穏やかな色合いで話す。アメモースの抜糸やブラッキーには異常が無かったこと、町はいよいよ祭が近付き浮き足立っていたこと、湖畔の自然公園に巨大なステージが設置されていたこと、町中でポッポレースの広告を見かけたこと。確かに喜ばしい報せもあるが、アメモースは完治したわけではなく、他の問題が解決したわけでもない。大きな変化を与えるほど彼女が祭に興味を持っているかと考えれば、ザナトア自身は疑問を抱いた。過ぎるのは、別の要因がある予感だ。無表情の裏で何を考えているのか読むことの出来ない、端からは底知れない少女にしては、実に明白な変化だった。 「町で何があったんだい」 食器を置き、単刀直入に尋ねた。表情は変わったが、相変わらず食事の進む速度は鈍い。 アランの笑みが消える。ザナトアの問う意味をすぐに理解したかのように。 逡巡するような間を置いて、口を開いた。 「エクトルさんに会いました」 存外あっさりと答えて、ザナトアは不意を打たれたように目を丸くした。 「病院でアメモースとブラッキーを診てもらってから、時間があったので」 「……そうか」 知人に出会い気が紛れたのだろうか。アランは常にどこか緊張し、相手の様子を窺う目つきをしていた。普段は気にもならないが、時折妙に儚げに飛行するポケモン達を眺めていることもあれば、刃先を向けているような非道く冷酷な顔つきをしていることもある。 二人共暫く黙り込んでいたが、長くは続かなかった。ザナトアの方から続ける。 「あの子、元気にしているのかい」 「はい」 「そうかい」細い目が、更に小さくなった。「それなら、別にいいんだけどね」 ザナトアの肩がゆるやかに落ちる。 アランは目を伏せ、手にしていたスプーンを皿に置く。スープなら多少は食べられるので��ここ最近は専らそればかり口にしていた。 「前から思っていたんですけど、ザナトアさんとエクトルさんは、どういう関係なんでしょうか」 耳を疑うように、老婆の眉間に大きな縦皺が寄る。 「知らないのかい」 信じられないとでも言いたげな声音だ。アランが戸惑うように肯くと、大きな溜息が返ってきた。 「呆れた。……いや、あいつにね。今更だよ。語るほどのものでもないけれど」 「昔、お世話になっていたとは聞いています」 「それだけかい?」 できるだけ相手の神経を逆撫でしないよう注意しているかのように、慎重にアランは頷く。 「そうかい。まあ、それだけだがね、しょうがない子だね……あんたも本人に聞いてやればいいのに」 「なんとなく、聞いてはいけないような雰囲気があって」 「これだけ年が経ってもまだ引き摺っているんだろうねえ……あたしのことなんて忘れたものだと思っていたくらいなのに」 解った、と彼女は言う。 「これを食べたら喋ってやるさね。ちょっと長くなるかもしれないがね。だからあんたも今日はそれを食べきってやりな」 ザナトアはパンを千切りながら顎でアランの手元のスープを指した。今日買ってきた野菜をふんだんに使い、細切れの豚肉を放り込み、うんと柔らかくなるまで煮込んでスープに溶けてしまうほどになっているものだ。ミルク仕立てで見た目はシチューにも近いが、濃厚な味付けではない。味が濃いと気分が悪くなってしまうからだった。 黙ってアランは食事を再開した。義務感に駆られるのか、その日は綺麗に平らげてしまった。
食事を終え、部屋の奥のダイニングテーブルに熱いアールグレイを淹れたカップを二つ並べ、二人は直角の具合にソファに腰掛けた。アランは眠たげに触角を下げたままのアメモースを膝に抱える。 ザナトアは小さく浮かぶ湯気を眺めて、一口軽く含んだ。味わう間も殆ど無く、胸中を熱い塊がするりと落ちていく。 ポケモントレーナーだったんだよ、とザナトアは始め、アランは背筋を伸ばした。 「まだあたしが育て屋の現役だった頃にあの子は遊びに来るようになった。クヴルールの家元だったから実家は町の方だが、親戚がこの辺りに住んでいてね。何の縁か、ここにやってきた。子供は大体ポケモンに憧れるからね。噂でも聞きつけたんだろう。ここには沢山のポケモンがいると。 多くのキリの人間が一家に一匹は鳥ポケモンを持っているように、あの子も一匹ポケモンを持っていた。 今でも覚えているよ。見てほしい、としつこいから仕方なく相手してやったら、モンスターボールから立派なチルタリスを出してきた」 まだ八つか九つか、そのくらいの年齢だったはずだとザナトアは笑う。 「自分で育てたって言うんだ。多少は震えたね。勿論、ほんのちょっとさね。それから流石に嘘だろうと思い直したけど、話を聞くほど、どうやら本当らしい。こっそり野生ポケモンと戦わせたり、本を読んで技を訓練したりね。やけに熱っぽく語るものだからさ、嘘にしちゃ上出来だとね。 その日からあの子はよくここに来るようになった。町からここまでは遠いよ。一日に数回だけ通るバスを使ってさ、チルタリスが人を乗せられるようになってからは、その背中に乗ってね。学校が終わってからここに来て、長期休暇になれば泊まり込んで。ポケモン達とバトルをして、遊んでいた。親がどう言うかあたしは心配だったんだが、どうも事情が複雑で、誰からも咎められることはなかった。あの子の家族は、あの子に無関心だったのさ」 ザナトアはソファを立ち上がり、リビングから廊下へと繋がる扉のすぐ隣にある本棚の前に立ち、一つ取り出した。古びた群青色で、厚みのあるアルバムだった。 ダイニングテーブルに広げられたものを、アランは覗き込んだ。少し焼けて褪せた色が写真の古さを物語った。幼い黒髪の少年と、チルタリス、数多くのポケモン達の日々が記録されている。たまに写る女性は、今よりずっと皺の少ないザナトアだった。カメラを向けられることに慣れていないように、ぎこちなく攣った表情をしている。 少年は満面の笑みを浮かべていた。乳歯が抜けたばかりのように、でこぼことした白い歯並びが印象的である。ページを捲るほど目に見えて身長は伸び、体格は大きくなっていく。顔にも膝小僧にも擦り傷をつくり、絆創膏を貼り付けているのは変わらない。時を進ませたどの写真でも多様な表情を浮かべている。説明が無くとも、少年期のエクトルであると察することができた。基本的には無愛想な今の彼とは正反対の、自由奔放に溌剌とした姿であった。 「悪ガキだったよ、あたしからしてみれば。こちとら仕事だからね、勝手にバトルされると調整が狂うからやめろって言ってるのに聞かないんだから。外が静かになったと思ったら書庫で本を読み漁って床に物が散乱してるし、こうした方がいいああした方がいいって育成に口を出してくるし。子供は黙ってろってね。でもちゃんと聞くと、的を外しているわけではない。あたしも随分教えたね。気に食わないところもあったけどね、楽しいもんだったよ。 ポケモンを持つ子供が皆そういうように、プロのポケモントレーナーになりたい、ポケモンマスターになりたいって話をしていた。あの子は確かに子供だったけど、立派なポケモントレーナーだった。 実際、ちょっとした大会にも参加していてね。キリは地域柄ポケモン関連のイベント事は盛んな方だが、ジュニアじゃ抜きん出ていて話にならなかった。大人相手でも遅れをとらない。その頃になればはっき��と確信したね。あの子には才能がある。こんな田舎町で燻らせるには勿体ないくらい。 あの子が家でよく思われていないのも流石に解っていた。どれだけ結果を出しても気にも留めない奴等なんか見返してやりな、とよく言い聞かせていた。誰よりもあの子のことを解っている気でいた。だから客のトレーナーともバトルの経験を積ませ、首都で開かれるような全国区の大会にも参加させた。あたしが保護者役でね。そこまでいくとレベルが高くなってきてね。バトルが得意な人間なんていくらでもいるんだよ。最初は一回戦で負けた。こんなもんかとちょっと残念だったけど、悔しかったのか更に夢中になって遂には家出してしまってね。流石のあたしもあの子の親戚の元に話をしに行ったんだがね、好きにさせてやれなんていうものだから、腹を括ったというかね……。あの子はあの子で、難しい本を読んで知識を詰め、新しいポケモンも育てて、技を鍛え、毎日戦略を練って、益々のめり込んでいった」 ふとアランに笑いかける。幾分、いつもよりもザナトアの表情は柔らかかった。 「修行の旅まで出たんだよ」 アランは僅かに目を丸くした。 「旅……ですか?」 「そうさ、あんたと同じ。と、あんたは別にトレーナー修業ではなかったか」 ザナトアは続ける。 「危険が伴うから賛否あるがね、西の山脈方面に向かうと手強い野生の根城がごろごろある。それから各地の大会に出て、経験を積んでいった。旅を始めてからは何か合致したように腕を上げていってね、楽しそうだったよ。元々風来坊なところはあったけど、自由な生活が性に合っていたんだろうね。自分の居場所を自分の力で探すのは、とても大変だけれど。立派なことさ。挫折も経験、栄光も経験、ポケモン達と共に成長していった。あたしの楽しみは、チルタリスに乗って帰ってくるあの子の土産話だった。日に焼けて、身体はどんどん大きく逞しくなって、元気な顔を見せてくれることがさ。あたしには子供がいないけど、息子のような存在だった」 流暢な口が、不意に立ち止まる。 「転機は恐らく、クヴルール本家のご息女が生まれた事だね」 静かな口調は、次への展開を不穏に物語った。つまりは、クラリスの影響となる。アランは口元を引き締める。 「規律に厳しいと言われてるクヴルールの人でありながらあの子が自由にできたのは、分家も分家、それも末端の、末っ子の人間だったからだ。そこらのキリの人間とそう変わらない、ただ名字だけクヴルールと貰っている程度。 詳しい経緯は知らない。ただ、あの子が連れ戻されたのは、奇しくもあの子がここらでは誰よりも強いトレーナーだったからだ。そのときには最早誰もが認めざるを得ないほどに。 細かい事情は、あたしだって知らないけどね。要は、お嬢さんのお目付役を頼まれたってことさ。 ポケモントレーナーとしての目標を捨てると、トレーナーはもう辞めると言い出した時は、あたしの方まで目の前が暗くなったね。そこに至る葛藤を今なら想像こそできるが、……いや、それは烏滸がましいだろうね。うん。激しい口論になったものさ。 純粋な自分の望みなら大した問題じゃない。プロの道は甘くないし、途中で諦めるトレーナーは数知れない。あの子もその一人だったというだけ。だけどあの子の場合、その理由はあの家にあった。 あまりにも今更だろう。どれだけ戦果を上げようと家族は殆ど見向きもせず、むしろ邪魔者が離れてせいせいしたというくらいだったのに、トレーナーとして誰が見てもそれなりに形になってきてこれから成熟していこうという時に。家に戻れ、ご息女を護れ。どの面下げて言えるのか、ふざけるのも大概にしろとね。人生の選択に少しばかり自由になりつつあるだろうに、いつの時代を生きているつもりなのかとね。クヴルールを許せなかった��、屈するあの子にも幻滅してしまった。……あの子は本当は、多分ね、寂しがっていたよ。家族に振り向かれないことを。だからポケモンに没頭していたというのも否めない。それを利用したのなら尚更たちが悪い。 結局喧嘩別れになって、それきりさね。あの子とは二十年近く会っていないことになる。凝り固まってたあたしも悪かったと今なら思うけれど、謝るタイミングも無くなってしまったね」 長い溜息をついた。 「エクトルはね、ポケモンが大好きだった」 噛み締めるように、懐かしむように、切実に、語る。 「あたしはこの界隈に身を埋めているから、プロトレーナーの道がどれだけ険しいかは理解しているさ。それでもね。ポケモンは沢山のことをあたし達に教えてくれる。あたしは今でも学んでるよ。彼等を通して得る経験はかけがえのないものになる。旅を勧めたのはあたしだけれど、あの子には世界はキリだけではないと教えたかったって理由もあった。トレーナーとして成功せずとも、ブリーダーでも、うちの手伝いでもいい。なんだって良かったんだ。あの子のポケモンに対する愛情は純粋だった、だからあたしはあの子がポケモンのと共にのびのびと生きてくれるのなら、それ以上に幸せなことはないと思っていた。宝だとすら思っていた。視野が広くて、冷静と情熱を使い分けられる子だった。そして何よりポケモンが好きだった。……自惚れだと、甘いと思うかもしれないけれどね、あの愛情は、正しい使い方をするよう誰かが導いてやらなければならなかった」 あたしには出来なかった、と感傷的に呟く。 「どんな形でもいい。あの家から引き剥がすべきだったと、あたしは今でも信じているし、後悔しているさね」
ザナトアは彼女の核心にも迫る語り部を続けようとした最中、目頭を強く抑え、頭痛がすると言って、すんなりと幕引きを迎えた。アランはザナトアの骨と薄い肉ほどしかないような細く丸まった小さな身体を支えて、寝室へと連れて行った。やんちゃなフカマルもおとなしくして、ザナトアの傍についている。 寝床のソファに寝そべり毛布にくるまりながら、アランは夜の静寂をじっくりと味わう。 散りばめられた星から星座が生まれるように点と点が結ばれていき、合致する。嘗てエクトルがクラリスに放った言葉もクラリスが自由を求めて起こした行動も、昼間に彼が放った責任という意味合いも、真の根源は彼にあるのだとすれば繋がる。 判断を誤った、とエクトルは言った。 ならば正しい判断とは一体なんなのか。どこから誤っていたのか。どうすれば正しかったのか。 愛情の正しい使い方とはなんなのか。 ザナトアの言うことがもしも正しいのなら、彼は間違いで出来ているのか。間違ったまま生きているのか。正しくない愛情の行き所はどこなのか。そもそも正しさとはなんなのか。 以前キリで、ポケモンを好きだろうと彼女が言うと、彼は返した。そんな時代もあったかもしれない、と。大好きだったものがずっと好きであるだなんて確証はどこにもなくて、ならば、ザナトアの語った純粋な愛情はどう変容したのか。幸福の膨れあがった笑顔を浮かべポケモンに囲まれていた少年は、数多のネイティオの屍を重ねて繁栄を繋げようとした家の渦中に飛び込んでいった人物と同一なのだ。しかし、衰弱したアメモースに憂えた表情を浮かべた男もまた同じ人間である。 結局、暴力的なまでの濁流に巻き込まれれば、ひと一人分の人生など意味を成さないようでもある。アランの口から流れゆく重い吐息が、音も無く広がった。 生き物はずっと同じではいられない。人はいつまでも純粋ではいられない。アランも、アランを取り巻く存在も、皆。 部屋をぼんやりと照らす足下の小さな光が揺れている。暗闇に浮かぶ黄金の輝きがソファの傍にあって、余波のような淡さでアランの視界を僅かに明白にする。僅かな光も、暗闇の中ではしるべのようである。 月光に照らされるアラン自身は、今、無色の顔をしている。ザナトアの話を終始醒めた目で聴いていた。瞼をきつく閉じる。毛布を擦る音、白い月光、紙の匂い、沈黙するラジオ、健やかな寝息、闇夜に抱かれ皆眠る。ひとまぜになって混濁は透き通っていく。 部屋に響く風の音が強い。夜を彩る虫の歌が部屋に差し込む。 どれほどのことがあろうと、時間はやはり等しく生き物を静かに流し、夜を越えて、朝はやってくる。 卵屋の傍で首を千切られたポッポの死体が発見されたのは、朝陽もそよ風も穏やかで、たおやかで、平凡な翌日のことだった。 < index >
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■「黒い羊」のメモ
▼欅坂46「黒い羊」のMVが公開された。27日にはCDもリリースとなる。

http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/contents/5996715305001?ima=0000
▼先行してラジオ番組で公開された音源は聴いていたが、その時から「美しさの中に不穏さの入り混じるピアノ(エキセントリック)」、「ダークさを際立たせるベーススラップ(避雷針)」、「矢継ぎ早に言葉のつぶてを投げつけるような語り(角を曲がる)」、「Aメロ、Bメロ、サビ、Aメロ、Bメロ…」のような「定型」を大きく踏み外すエモさ重視の曲展開(アンビバレント)など、今まで手にした全ての武器を使って、この社会に「最後の戦い」を挑んでいるように思え、胸が苦しかった。
▼「最後の戦い」の意味は後で書くが、だからこそ「どういうMVになるんだろうか?」と、かなり気になっていた。
▼しかし、メチャメチャ気にはなっていたものの、MV公開日の金曜は、家でちゃんと観たいと思い「仕事が終わるまでは見ない!」と我慢。
▼が…やっぱり気になってしまい「まとめサイト」をチラ見してしまう…。すると、「オールシー���1カット」、「ストーリー仕立て」の情報や「スカジャンを着込んだ不良なしーちゃんの画像」などが目に飛び込んできてしまい、「ちょっとマズってるんじゃないか?」とやや不安になった。
▼「たぶん前作のアンビバでは、目がチカチカするくらいカットを割っていたので、今回は真逆に行ってやろう!と監督は考えたんだろう」
▼「けど、全シーン1カットで、しかもMVなのでセリフも��とんどつけられないとすると、パッと見ただけで理解できる設定や情景にしないといけない」
▼「そのせいで、ベタな『悩める少女たち』が出てくるコントみたいになってしまっているんでは…」
▼「それに芝居仕立てだと何回も見たくならないんだよなあ…」などと不安に思った。
▼しかし、家に帰り観てみると、そんな思いは杞憂だった。
▼➀「歌詞&映像の物語」、②「欅坂46の物語」、③「社会の語り(社会批評)」が見事に圧縮され、緻密かつ大胆な賭けにも出た、大傑作だった!
▼以下、欅メンバーの話なども参考にしつつ➀~③の順に思ったことを書く。
■➀「歌詞(映像)の物語」について
▼映像は道端で美しくも不穏な音色を奏でるピアニストの姿から幕を開ける。
▼パーンするとあいみょん「生きていたんだよな」の「5日前、飛び降り自殺した人のニュースが流れてきた」風な映像が飛び込んでくる。
▼自殺現場には、報道陣や野次馬が群がってくる。
▼そんな光景を横目でみていたのが、ジージャンを着こなし、もはや尾崎豊にしかみえない平手(笑)。彼岸花を手にしている。
▼その後、平手は意を決したように、地下駐車場のような薄暗いビルの中を進んでいく…
▼そこには、親との不和に絶望する少女、警察に補導される不良少女、いじめられる女子高生など、「悩める女の子」たちが続々と現れる。
▼そんな中、平手は、悩める女の子たちを見つけると、誰かれかまわず抱きしめてみせる。もう、次々次々と抱きしめる。「ほっといてくれよ」とかわされようとも「余計なお世話なんだよ!」と突き飛ばされようとも、ひたすら前に進みながら抱きしめていく。
▼「生きることに絶望するな!」そういうことなんだろう。
▼女の子たちの姿は、先にも書いたように1カメショーでパッと状況を理解してもらう必要もあって「類型的」だ。通常ならマイナス要素。だが、監督の新宮さんにしてみればそんなことは100どころか500も承知だろう。
▼おそらく、欅メンバーの「物語への没入力」を持ってすれば、類型的かどうかなど気にならないくらい「突き抜けたもの」が撮れるはず。そう踏んで、賭けに出たんだと思う。
(その「没入力」を引き出すため、メンバーたちには映像では伝わらないような細かい設定が与えられているようだ。)
▼その賭けに勝ったかどうかは、観た人がそれぞれに判断してくれればいいと思うが、俺は目の前に展開する光景にただただ圧倒された。泣く間もなく、ただ圧倒されるという感じだった。
▼だが平手がいくら抱きしめても、女の子たちの絶望は晴れない。むしろ進行していく。
▼そして、女の子達は、暗いビルを1階また1階とかけ上がっていく。
▼なお、映像は女の子たちが階を上がっていく様子と、絶望が深まっていく様子を対応づけて表現している。
▼つまり、自分の中に「黒い羊度数」を何割か持つ人たちが、自分らしい生き方ができず「100%白い羊」のふりをして生きていくしかない…と思いつめていく過程を、階を上がって飛び降り自殺しにいく姿になぞらえてある。
▼たしかに、自分の思いを100%押し殺して生きていくのは、心臓は動いていても、生きてないようなものだから。
▼具体的には…
・1階にいるときは「自分は自分らしく生きているだけなのに、なぜ周囲は自分を排除するんだ」と状況を受け入れられない状態。
・2階は「やっぱり自分は厄介者の黒い羊だったのか」と周囲の言い分を受け入れていく状態。
・そして最後の屋上は「もう、白い羊の群れである社会に自分を押し殺して溶け込むしかないのか…」と諦めかけている状態ということになるだろう。
▼楽曲的にも、2階で踊るタイミングで2サビの「黒い羊そうだ僕だけがいなくなればいいんだ」が流れ、屋上で踊るタイミングではラスサビの「白い羊なんて僕は絶対なりたくないんだ」が流れるなど、ち密な対応づけがなされている。
(※この点、長濱ねるがラジオで言っていた解釈とは逆になっている。だが、俺はこっちの線で解釈している。たぶん、ねるは自分が就活に失敗して階段を降りていく役だったので、下の階にいくにつれ絶望が深まる。逆に言えば、上の階にいくにつれ絶望が晴れていくと解釈してると思う。けど、それだと、屋上に行き飛び降りること=白い羊の群れに混ざり自分を押し殺すこと=「社会的自殺」の比喩関係をつかみ損ねると思う。)
▼ともあれ、こうして女の子たちは、打ちっぱなしの暗い部屋を抜け出し、光の差し込む屋上へと駆け出していく。
▼それにしても、このシーンの不穏さがヤバい。おそらく、「this is america」(「USA」とは大違い!)の引用なんだろうが、そんなことがどうでもよくなるくらい不穏でヤバい。今の時代を覆う「協調性圧がしんどい。もう死にたい。」っていう感じがよく出ている。

▼一方、そんな女の子たちを追いかけながら、平手も屋上へ。
▼そして、少女たちの「絶望死」を食い止めるため、最後の闘いに出るべく「(死ぬのは)僕だけでいい!」と叫び、屋上へとなだれ込んでいく。
▼だが、そこにいたのは絶望する女の子たちだけではなかった。今までのシーンで目にした全ての登場人物たちが並び立っていた。「黒い羊度数」ということでいえば、メンバーを攻撃しているようにみえる人たちだって何割かはあるわけで、だから全員屋上に来てしまう、ということだろう。
▼そんな光景を前に、平手はここでもひたすらハグ。もう、少女だろうが、敵対する大人だろうが、見るもの見るものひたすら抱きしめて回る平手。
▼「絶望しているのは少女だけじゃない。もし、絶望しているというなら今この社会に生きる全員が、この社会に絶望している」と言わんばかりに高速度で人々を抱きしめる。
▼そして、世の中にいる「黒い羊」たちに向けられる憎悪を全て背負い、もがくように踊った後、ビルから飛び降りることを決意する…
▼その姿は、「自分が全人類の罪を背負い天に召される変わりに、地上の人たちは救われる」と説くイエス・キリストのようだ。
▼それにしても、もがくように踊る平手がヤバい。たぶんアドリブなんだろうけど、メチャクチャに踊っているようでいて、ちゃんと歌詞に合ってるのが恐ろしい。他の人がやったら、本当にメチャクチャになるか、逆にそれが怖いので計算づくのダンスになるかしてしまうだろう。ヤバい。この人はマジでヤバい!

▼ともあれ、屋上の「向こう側」を泣きそうな顔で見つめる平手。ここに来て、この後のシーンが冒頭のシーンとつながることに視聴者は気づく。つまりは、始まりと終わりはループしており、今まで観てきた平手は、すでに自殺した彼女の「幽霊的存在」だったことが示唆される(「あの世とこの世の境界」の象徴である彼岸花を手にしていたのもそのためだったと分かる)。
▼そう、「全シーン1カット」は「アンビバの逆張り」というよりも、このループを強調するために選び取られた手法だった。
▼おそらくこの「幽霊が自殺することで時空がループする」というモチーフは「a ghost story」の引用だろう。


▼だが、同時に見逃してはいけないのが、平手の背後に映る登場人物たちだ。泣きそうになりながらビルの向こうを見つめる彼女の元に、少しずつではあるが、彼らは歩みよってくる。
▼おそらく、平手のハグの意味を理解した人が近づいてきてるのだろう。そして、このうち何人かが彼女を抱きとめれば、平手の飛び降りは食い止められる。
▼つまりは、冒頭につながる自爆→幽霊化のループも止まる。
▼これは、視聴者に「あなたはこのループを止める人間か?許してしまう人間か?」=「黒い羊に寄り添える人間か?黒い羊を排除してしまう人間か?」ということを問いかけているのだろう。
▼この辺はドラマ「3年A組」と似ている。「���題歌になればよかったのになあ」と結構悔しい思いでいる(笑)
▼ちなみに、MVの途中、幼少時代の平手(チビ平手)がでてきて、彼女が一度握りつぶした彼岸花を再度渡すシーンがある。「この意味は何?」とネットでは少し話題になっているようだが、自説を書く。
▼彼岸花は、幽霊的存在の平手が「こっち側の世界」に干渉できる道具だと考える。
▼MVでは「全部僕のせいだ」の歌詞のところで平手は、彼岸花を握りつぶしてしまう。これは「やはりハグなんかしてもムリか」と、絶望しかけたことを意味するのだろう。つまり「もうこっちの世界に干渉しても無駄だ」と諦めたということ。
▼しかし、幼少期のチビ平手に会い、「お前はそうやって諦める人間か?もう1回やってみろ!」と再度、彼岸花を渡される。それを受け、彼女は奮起して屋上にいく…ということかなと思っている。
▼ちなみに、後に書くことともからめ、やや邪道な解釈も書いておく。
▼冒頭の自殺者を、平手ではなく、別の誰か(X)と考える解釈だ。
▼その死の光景を見た平手は、Xのような「絶望死」をこの世界からなくしたいと思い、絶望する少女たちの元を駆け巡る。そして「絶望するな!」とハグを続ける。
▼だが、少女たちの絶望はとまらず、「絶望死」を目指し、屋上へと向かう。
▼平手はそれを食い止めるべく、この世の「黒い羊」に向けられたすべての憎悪を背負って、1人死のうと決意する。
▼だが、自分が絶望して死んでしまえばどうなるか?「絶望死をこの世界から亡くしたい」という冒頭に自らが抱いた決意と矛盾してしまう。
▼そう思い、平手は「絶望死」を思い留まる…。
▼こう考えるなら、平手は死をまぬかれるので「救い」がもたらされたようにみえる。しかも、繰り返される自爆のループが断ち切られたようにもみえる。
▼ただ、平手が死ななければ、今度は、他の少女(メンバー)たちがやっぱり絶望して、レミングの群れのように、ビルから連続死するだろう…。はたして、これは「救い」なのか?
■②「欅坂46の物語」について
▼これまで何度も書いてきたが…
▼アイドルを商品としてしか見ないプロ(運営)よりも、アイドルを愛している俺たち(ファン)の方が、彼女たちを育て、輝かせることができる…
▼そう考えて、遠く離れた場所にいたアイドルを自分たちの元に引き寄せ続ける「アイドル民主化」の歴史がアイドル史だった。
▼そして、その歴史は「会いにいけるアイドル」akb48の登場により完成したかにみえた。劇場、握手会、総選挙などでアイドルとの距離を極限まで近づけることにより、ファンは運営も気づけなかったアイドルの隠れた魅力に気づくことができる。そして、それをネットに書き込みファン同士で共有知とする。その様子を運営が観察することで、次のプロデュースが生み出される。
▼こうしてファンの愛が生んだ「魅力の共有知」により、アイドルは輝くことができる。はずだった…。
▼が、フタをあけてみれば、ファンはアイドルを育てるどころか、病ませる存在となり、「アイドル民主化」のプロジェクトは無残にも破産した。
▼現在は「NGT事件」により、その破産がさらに進行している状態だ…。
▼「民主主義」は「何が自分にとってよきことか?」のみならず「何が社会にとってよきことか?」という視点が、市民の間になければ、うまくまわらない。また、市民の間に仲間意識や友愛がなくてもうまくまわらない。
▼自分の思う「よき決定」とは異なる決定がなされても「まあ、仲間たちで決めたことなんだから受け入れるか」と思えなければ、制度は機能しなくなる。「なぜ、俺があいつらの考えに従わなきゃいけないんだ!」と、たえず疑義や不満が噴出してしまう。
▼今のフランスの暴動などを参照すれば、その意味が分かるだろう。
▼アイドルをめぐる「民主制」も同じことだ。「自分の推しメンにとってよきことは何か?」のみならず「グループにとってよきことは何か?」という視点がなければ「アイドルの民主制」はまわらない。
▼「推しメン」を持ちあげるための「他メン叩き」が横行していては、アイドル民主制は機能不全を起こしてしまう。「グループにとってよきことなんか知ったことか。あいつが消えて俺の推しがいっぱい映ればいいんだよ!」みたいなファンが増えるようでは、アイドルのかじ取りなど任せられない。
▼たとえば「平手がけやかけを休むことでグループに与えるデメリット」と「平手がスターゲイザーのMVに起用されることでグループが得られるメリット」を比較し、「平手がいる方がグループにとってメリットが大きいのか?」、「平手が出ていった方がグループにとってメリットが大きいのか?」を考量することもできなくなってしまう。
▼こうなると結局、かつてのように運営に任せるしかなくなってしまう。
(ただ、「NGT事件」をみても分かるが、運営に任せていればいいかというと、そういうわけでもない。。そこが今のアイドルをめぐる状況の厳しさだ。)
▼ともかくも、欅はそんなアイドル民主制の「終わりの時代」に誕生した。だから「ファンの愛」という白い民意を吸い上げて成長するのではなく、「ファンの憎悪」という黒い民意を吸い上げて成長する。
▼「ファンの民意の機能不全」自体を「民意」として吸い上げ作品として打ち返す。
▼実際、7thシングルの発売からこの曲が出るまでの間にも、欅の活動に関し、数限りない暴言や悪意ある発言が拡散された。
●「今泉の卒業は、平手独裁体制のせい。」
●「今泉の卒業は、平手派である上村・佐藤のいじめのせい。」
●「ジコチューのサークルクラッシャー、今泉は出ていけ」
●「ライブの度に好調不調の波を繰り返す平手は出て行け」
●「映画など個人仕事ばかり受けて、ライブや番組を休む平手は出て行け」
●「【歎願】やる気なしダンスの平手は年末の音楽番組には出ないでください」
…などなど。毎日まとめサイトなどを見ているので分かるが、これらは欅に浴びせられたコメントのごくごく一部。実際には、この何十倍もの悪意あるコメントがネット上に飛び交った。
▼「黒い羊」は、こうした「××は厄介もの!」「全部××のせいだ!」というネット上の悪意を、これでもかというくらい吸い上げて生み出された曲だ。
▼たしかに、各発言の背景には、それを言いたくなるような理由もないではない。だが、それが「ファンの民意」だというなら「黒い羊」のような曲が生まれるのも当然だろう。
▼俺からすれば、これだけの罵声が日々飛び交う中で「二人セゾンみたいな美しい曲をはよ!」とか、よくも言えたもんだなあと思う。出るわけないだろうがよ!!
▼「美しい曲」を出してほしいなら、自分がまず人を魅了するような美しいコメントを書いてみろ!と言いたい。
▼さておき、そんな前提を元に映像を観ると、このMVは「厄介者は卒業しろ」という悪意がかつてないほど飛び交う中で、「消失と復活」を繰り返し、もはや「幽霊」と化した平手をどう受け止めるか?という作品にも見える。
▼たしかに、このMVが示すようにここ1年の平手は「幽霊」のようだった。
▼「謎の失踪」→(映画撮影)→「復活」→「怪我による戦線離脱」…
▼「けやかけに出るのか?出ないのか?」、「生存しているのか?していないのか?」…まさに「幽霊部員」のようにみえるとして、ネットでは、この1年、「平手、出るでない問題」が話題に上がり続けた。
▼そんな存在をどう受け止めるべきなのか?「全部あいつのせいだ」として、排除すればいいのか?それとも、そんな彼女も欅の仲間だとして抱き止めるべきか?
▼MVをみていると、平手を巡り、時に突き放したくなるものの、抱きしめ合うメンバーたちの姿が目に浮かぶ。
▼そんな光景をみて共感するのか?それとも「やっぱりあいつは厄介者だ!」だとしてヘイトコメントを続けるのか?ファンの民意が問われている。
▼なお、先述したように冒頭の「自殺者X」を「卒業メンバー」と考えるとまた別の光景がみえてくる。
▼���あいつのせいで欅がおかしくなった」、「21人の絆なんて嘘だった」…これでもかというほどの悪意がネット上に飛び交う中、「なぜこんなことになったんだ」とぶつかり合い、そして「もう2度とこんな悲しみはなくしたい」と、抱き合う。そんな光景が目に浮かぶ。
▼それに共感するのか?それとも「厄介者は出ていって正解」だとしてヘイトコメントを続けるのか?これまたファンの民意が問われている。
■③「社会の語り(社会批評)」について
▼冒頭にも書いたとおり、この曲を聴くと今の世の中に最後の闘いを仕掛けてるようで、胸が締め付けられる。
▼こんな例え話が浮かぶ。
➀:主人公がいて、彼には川が汚れているように見えた。だから「汚れている!」と叫んだ。すると「よし!川の汚れをなくそう!」と何割の人々がついてきた。
②:だが、頑張っても川はあまりキレイにならなかった。すると「川なんてこんなもんだったんだ。いつまでも汚れてと言ってるのは子供だ」となった。
③:さらには「いや、他の川をみるともっと汚れている」とか「汚れているとはA成分が×%以上のことを言う。でもこの川はA成分がさほど多くない。データを見てから言えよ、この中二病!」とも言われるようになった。
④:こうして主人公は「どうみても茶色なんだけどな。でも、これをみて汚れてるって思ったこと事体がそもそも間違いだったんだ」と罪悪感を抱くようになった。
⑤:その後、川は相変わらず茶色いまま流れ続けている…
▼サイマジョ~不協和音くらいの頃までは、➀~②段階の状況が描かれていた。「声をあげれば川の姿(他人や社会)は変えられる」と思えていた。だが、そこから数年が経ち、この曲が出るころには状況は③段階まで進行していた。
▼「yesでいいのか!?」と物言わぬ大衆たちに突きつけてから約3年。気づけば「yesでいいんじゃね?」という声が大半になっていた、とでもいうべきか。この国の首相すらが「国の姿を変えようと試行錯誤した政権交代は悪夢であった」と言い、それに多くの人たちが共感しているのだから。
▼だから、この曲の主人公はひどく追い詰められている。
▼「どうやら自分の力では川は変えられない。でも、せめて、川が汚れていると思う自分の気持ちまでは変えられたくない」というところまで主張が後退してしまっている。
▼そのため聴いていて、胸が苦しい。
▼しかし、これさえも「中二病っぽいから共感できない」という人が増えると、事態は④段階目に進む。
▼そこまで行くともう病的だと思う。「キレイになるならないは別として、汚れていると思うこと事体が罪」みたいになるわけだから。
▼だから制作チームは「この曲を中二病で片づけられたら社会は終わる」くらいの気持ちで世に送り出してると思う。これが「最後の闘い」という言葉で言いたかったことだ。
▼しかし、現実はどうだろうか?
▼電通過労自殺問題、森友官僚自殺問題、NGT問題、統計不正問題、加えて望月衣塑子記者クラブ排除問題まで入れてもいいかもしれない…
▼「今の組織はどこかがおかしい」と誰かが声をあげても、声を上げた方に問題があるとされ「黒い羊」として厄介ばらいされていく。「厄介ばらい」の中には、文字通り「この世から」排除されるケースもある。そして問題は結局のところうやむやにされてしまう。こうした事態が頻発している。
▼というか、近年頻出する事態を「黒い羊」というワンワードに集約させてみせる秋元Pのワードセンスが凄い。しかも、曲ができたのはNGT事件の前だと考えると、時代の空気を可視化する力がヤバい(ただ、今回は自分が関わっているグループで問題が起きているのでホメてばかりもいられないが、、)。
▼その一方で、排除する側も苦しんでいる。
▼「一度決まったことは無理筋だろうと、全員が疲弊しようとやり抜きましょう!それが協調性!」みたいな考えが強固なものとなり、「この決定は無理筋だ」と分かっていても誰も疑義を挟むことができなくなっている。
▼グローバル化が急速に進み、テクノロジーもかつてない速度で進化している。だから未来は予測不能になっている。だとすれば、とにかく現状や今の組織を維持するしかないじゃないか?現状に疑義を挟んだとして「現状維持」以外のどんな対案があるのか?ないならギャアギャア騒がないでくれよ。そういうことなんだろう。
▼去年バズった映画になぞらえるなら、どれだけ提示されたゾンビ映画の撮影が無理筋でも「カメラを止めろ!」とは言えなくなっている。そして「カメラを止めない」姿をみて国民も拍手喝采している。
▼「この問題は隠蔽するって決めたんです。無理筋だろうが、全員が疲弊しようが隠し抜きましょう!」
▼「意見するのは子供、ぐっとこらえるのが大人。全部のみこみましょう。」
▼そう言っている側も前向きに言っているというよりは、「これ以外やりようがないじゃないか」という諦めから言っている(諦めを自覚しているか否かは別として)。だから排除する側も苦しい。
▼そう、排除する側もされる側も絶望している。MVのようにみんなが屋上を目指して駆け出してしまっている。先にも書いたが、この光景は本当に今の時代の空気を射抜いたヤバすぎる表現だと思う。
▼こういう状況の中で、厄介者の黒い羊に寄り添いハグすることができるのか?寄り添いハグすれば組織全体が崩壊するかもしれないが、それでも歩み寄れるのか?寄れないとすればどうなるのか?
▼MVの屋上で描かれたラストシーンの「その先」を考えることは、この社会の「その先」を考えることでもある。
▼ちなみに、これは半分冗談で半分本気だが、次の曲で「主人公」は「海外留学」したらいいと思う。この国にいると「社会も他人も変えられない」という思いが日に日に強まるかもしれないが、シンガポールなり、深圳なりに行ってみれば考え方は変わるかもしれない。9thでは「JAPRISON(by SKY-HI)からの留学」をテーマに掲げてみたらよいと思う。
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【トランプ大統領】 2021/1/20 6:36 JST
via telegram

大統領:アメリカ人同胞のみなさん。4年前、我々は国を再建し、その精神を新たにし、この政府の忠誠を市民に対して取り戻すための偉大な国家的取り組みに着手しました。手短に言えば、アメリカを再び偉大にするための使命に乗り出したのです―アメリカ人全員のために。
第45代合衆国大統領としての任期を終えるにあたり、みなさんの前で我々が共に達成してきたことを心から誇りに思います。我々はここに来て行うべきことを行いました―またそれ以上のことも。
今週新政権が発足しますが、新政権がアメリカを安全に豊かに保つことに成功することを祈ります。我々は成功を祈るとともに、幸運―とても重要な言葉です―に恵まれることを願います。
私はまず、我々の並外れた道のりを可能にしたわずか数名の素晴らしい人々に感謝したいと思います。
最初に華々しいファーストレディ、メラニアの愛と支援に圧倒的な感謝の意を述べさせてください。また、娘のイバンカ、義理の息子のジャレッドに、それからバロン、ドン、エリック、ティファニー、そしてララにも心からの感謝を伝えさせてください。あなたたちは私の世界を光と喜びで満たしてくれました。
またマイク・ペンス副大統領、その素晴らしい妻のカレン、そしてペンス一家全員にも感謝したいと思います。
マーク・メドウズ首席補佐官、ホワイトハウス職員と閣僚の献身的なメンバー、それからアメリカのための戦いに全身全霊を注ぎ込んだ政権の驚くべき人々全員にも感謝いたします。
また、全く並外れた一団の人々、合衆国シークレットサービスにも取り急ぎ感謝したいと思います。家族と私は、みなさんに永久の借りがあります。ホワイトハウス警護室の全員、マリーンワンとエアフォースワンのチーム、軍隊の全員、そして全国の州と地方の法執行機関にも心から感謝しています。
とりわけ私は、アメリカ国民に感謝したいと思います。大統領としての務めを果たすことは筆舌に尽くしがたい名誉でした。この類まれな恩恵に感謝いたします。そして本当にその通りです―偉大な恩恵であり偉大な名誉です。
アメリカ人は常に意見の相違がある一方で、我々は、国が繁栄・発展し大きく成功して良くなることを全員が願う、途方もなく礼儀正しく誠実で平和を愛する市民の国であることを忘れてはなりません。本当に高尚な国です。
アメリカ人全員が議事堂への襲撃に恐怖を覚えました。政治的暴力は我々がアメリカ人として大事にする全てに対する攻撃です。決して容認することはできません。
今我々は、かつてないほどに、共通の価値観を中心に団結し、党派的な敵意を乗り越え、運���共同体を築かなければなりません。
4年前私は、これまでで唯一全くの部外者として大統領の座を勝ち取った者としてワシントンにやってきました。私は政治家としての経歴はなく、建設者として開かれた地平線を見つめ、無限の可能性を想像してきました。私が大統領選に出馬したのは、アメリカにはまだ大きく伸びるのを待っているだけの高くそびえる新しい頂点があると知っていたからです。私は、アメリカを第1に置く限り国の可能性は無限だと知っていました。
ですから私はこれまでの半生を置き去りにして、とても困難ではあっても、適切に行えばあらゆる可能性を持つ活動の舞台に足を踏み入れたのです。アメリカは私に非常に多くの物を与えてくれましたので、何かお返しをしたかったのです。
この国の各地の何百万人もの勤勉な愛国者とともに、我々は国の歴史上で最も偉大な政治運動を築きました。また、世界の歴史上で最も偉大な経済を築きました。我々全員がアメリカを再び偉大にしたかったため「アメリカ・ファースト」が必要でした。我々は、国は市民に仕えるために存在するのだという原則を取り戻しました。我々の議題には右や左は関係なく、共和党や民主党も関係なく、国の利益が目的でした。つまり国全体のことです。
アメリカ国民の支持と祈りによって、我々は誰もが可能だと考える以上のことを成し遂げました。我々が近づくことすらできると考えた人は誰もいませんでした。
我々はアメリカ史上で最大の減税と改革の法案を成立させました。雇用を損なう規制を、かつてどの政権が行ったよりも多く廃止しました。壊れた貿易協定を修復し、最悪の環太平洋戦略的経済連携協定とあり得ないパリ気候条約から離脱し、一方的だった韓国との協定を再交渉し、NAFTAを画期的なUSMCA―メキシコとカナダのことですが―という、非常にうまく機能する協定に置き換えました。
またとても重要なこととして、我々は中国に歴史的で画期的な関税を課し、中国と新しい偉大な協定を結びました。しかし署名から間もないうちに、我々と世界は中国ウイルスの打撃を受けました。貿易関係は急速に変わっており、アメリカに何十億ドルも流れ込んでいましたが、ウイルスのために我々は別の方向に行くことを強いられました。
全世界が被害を被りましたが、アメリカは驚くべき経済と我々が築いた経済のために経済的に他国をしのいでいました。基盤と足場がなければ、このような結果は出なかったでしょう。我々はこれまでで最高の数字の一部を果たしていなかったでしょう。
また我々は、エネルギー資源を解き放ち、群を抜いて世界第1位の石油と天然ガス生産国となりました。こうした政策を原動力に、我々は世界の歴史上で最高の経済を築きました。アメリカの雇用創出を再燃させ、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系アメリカ人、アジア系アメリカ人、女性―ほとんど全員―で過去最低の失業率を達成しました。
所得は急上昇し、賃金は高騰し、アメリカン・ドリームは復帰し、わずか数年で何百万人もの人が貧困から脱出しました。奇跡でした。株式市場は次から次へと新記録を出してこの短期間で148回の最高値を記録し、全国の勤勉な市民の退職金と年金が増加しました。401(K)はかつてないレベルに達しています。このような数字を見たことがありませんが、それはパンデミック前とパンデミック後のことです。
我々はアメリカの製造業基盤を再建し、何千もの新工場を新設し、「メイドインUSA」という美しい言葉を取り戻しました。
労働者の家庭の生活を改善するために、我々は児童税額控除を2倍にし、過去最高の育児・発達のための支援拡大に署名しました。我々は将来の雇用のために1600万人以上のアメリカ人労働者を訓練するという約束を守るため、民間企業と協力しました。
国が悲惨なパンデミックに見舞われた時、我々は記録的なスピードで1つではなく2つのワクチンを作り出しましたが、すぐにもっと増えるでしょう。不可能だと言われましたが、我々は行いました。「医学上の奇跡」というのですが、そういう理由で彼らは今「医学上の奇跡」と呼んでいます。
別の政権ならワクチン開発に3,4,5年、ことによると10年も掛かっていたかもしれません。我々は9カ月でやりました。
失われた全ての命を悼み、彼らのことを忘れずにこの恐ろしいパンデミックを今回限りで一掃することを誓います。
このウイルスが世界の経済に厳しい損害を出した時、我々はこれまで経験した中で最速の経済回復に着手しました。経済支援に約4兆ドルを可決し、5,000万人以上の雇用を救済または支援し、失業率を半分に削減しました。これらはこの国でこれまになかった数字です。
我々は医療における選択と透明性を生み出し、特に最恵国約款を追加しようという取り組みにおいて、非常に多くの方法で製薬大手に対して立ち向かいましたので、やがて世界のどの国よりも安価な処方薬価格が実現するでしょう。
我々はVA Choice法、VA Accountability法、Right to Try法、そして画期的な刑事司法改革を成立させました。
我々は合衆国最高裁判所の3人の新裁判官を承認しました。憲法を書かれたとおりに解釈する約300人の連邦裁判官を任命しました。
長年、アメリカ国民はワシントンが国境を最終的に保護するよう求めて来ました。我々がその願いに答えて歴史上で最も安全な国境を実現したといえることを嬉しく思います。我々は、国境警備員と勇敢なICE職員が、これまで以上に職務を果たし、法を執行してアメリカを安全に守るために必要な道具を提供しました。
我々は、これまでで最も強く堅固な国境安全策が導入された状態を次期政権に引き継ぐことを誇りに思います。これには450マイルの強力な新しい壁に加えて、メキシコ、グアテマラ、ホンデュラス、エルサルバドルとの歴史的な合意も含まれています。
我々は国内でアメリカの力を、海外でアメリカのリーダーシップを取り戻しました。世界は我々を再び尊敬しています。その尊敬を失わないでください。
我々は国連でアメリカのために立ち上がり、決して我々の利益にならなかった一方的な世界協定から離脱することで、主権を取り戻しました。そしてNATO加盟国は今、私が数年前に到着した時より何千億ドルも負担しています。とても不公平でした。我々は世界のために費用を負担していました。今世界は我々を助けてくれています。
そしておそらく全ての中で最も重要なこととして、約3兆ドルで、我々はアメリカ軍を完全に再建しました―すべてUSA製です。我々は75年来で初めて新しい合衆国軍を立ち上げました。宇宙軍です。そして昨年の春、私はフロリダ州のケネディー宇宙センターに立ち、長年の間で初めてアメリカの宇宙飛行士がアメリカのロケットで宇宙に復帰するのを見守りました。
我々はかつてないほどに、中国に立ち向かうために同盟国を活性化させ、世界の国々を再結集させました。
我々はISISのカリフ国家を全滅させ、その創設者で指導者であるアル・バグダディの惨めな人生を終わらせました。イランの圧政的政権に立ち向かい、世界の代表的テロリストでイランの殺戮者であるカセム・ソレイマニを殺しました。
我々はエルサレムをイスラエルの首都として認め、ゴラン高原についてイスラエルの主権を認めました。
大胆な外交と原則に沿った現実主義の結果、我々は中東における一連の和平協定を達成しました。誰もが現実になるとは思いませんでした。アブラハム合意は、暴力と流血ではなく、平和と調和の未来への道を開きました。新たな中東の夜明けであり、我々は兵士たちを帰国させています。
私は特に、ここ数十年で新たな戦争を全く開始しなかった初めての大統領となったことを誇りに思います。
何よりも我々は、アメリカにおいて、政府は国民に答えるものだという神聖な考えを再び主張しました。我々の導きの光、北極星、揺るぎない信念は、我々はアメリカの高潔な一般市民に仕えるためにここにいるのだというものでした。我々の忠誠は、特定の利益団体、企業、あるいは国際機関に対するものではありません。子供たち、市民、そして国そのものに対するものです。
大統領として、私の最優先事項、不変の関心事は常に、アメリカの労働者とアメリカの家庭の利益を最優先させることでした。私は最も容易な道を追求しませんでした。実際間違いなく、最も困難でした。私は最も批判されることのない道を追求しませんでした。私は大変な戦い、最も厳しい戦い、最も困難な選択を引き受けました。それが、みなさんが私を選出して行わせようとしたことだったからです。みなさんのニーズが、私の最初で最後の揺るぎない焦点でした。
これが我々の最大の遺産となることを願います。ともに我々は、アメリカ国民が再び国を任されるようにしました。我々は自治を取り戻しました。我々はアメリカでは誰も忘れ去られることはないという考えを取り戻しました。なぜなら全ての人が重要であり、全ての人に発言権があるからです。我々は、全ての人が神によって平等に造られたために、全ての市民には平等な尊厳、平等な待遇、平等な権利の資格があるという原則のために戦いました。全ての人は尊敬を持って扱われ、意見を聞いてもらい、政府に話を聞いてもらう資格を持っています。みなさんは国に忠実ですが、私の政権は常にみなさんに忠実でした。
我々は、全ての市民が素晴らしい仕事を見つけて、素晴らしい家族を支えることのできる国を築くために努力しました。我々は、全てのアメリカ人が安全に暮らせるコミュニティと、全ての子供たちが学ぶことのできる学校のために戦いました。法律が守られ、英雄が尊敬され、歴史が守られ、法を順守する市民が気に掛けられないことのない文化を推進しました。アメリカ人は、我々がともに達成したこと全てにこの上なく満足を覚えるべきです。信じがたいほど素晴らしいことです。
さて私はホワイトハウスを去りますが、私は我々全員が共有するとても貴重な遺産を脅かす危険について思案してきました。世界で最も強力な国として、アメリカは常に海外からの脅威と課題に直面しています。しかし、我々が直面する最大の危険は、我々自身が自信を失うことであり、国の偉大さに自信を失うことです。国の強さはその精神と同じ程度にしかなりません。活力は自尊心と同じ程度にしかなりません。我々は、人々の心の中で脈打つ信念と同じ程度にしか活気に満ち溢れることはないのです。
価値観、歴史、英雄に対する信頼を失う国は、長く繁栄することはできません。というのも、これらがまさに団結と活力の源だからです。
アメリカが常に過去の大きな課題を克服して勝利することができたのは、国の高潔さと歴史上の固有の目的に対する揺るぎなく臆することのない信念のおかげでした。我々は決したこの信念を失ってはなりません。我々はアメリカに対する信念を決して捨ててはなりません。
国の偉大さの鍵は、国共通のアイデンティティを維持し植え付けることにあります。つまり、我々が共通して持っている物に集中するということです。それは全員が共有する遺産です。
この遺産を中心にあるのは、自由な表現、自由な言論、そして開かれた議論に対する断固とした信念でもあります。自分たちが誰であり、どうやってここに到達したのかを忘れる場合にのみ、政治的な検閲とブラックリスト化がアメリカで起こるのを許すことも起こり得ます。想像することもできないことです。自由でオープンな議論を締め出すことは、我々の核心的な価値と最も揺るぎない伝統を汚すものです。
アメリカでは、絶対的な一致を強く要求したり、柔軟性に欠ける正統性と過酷な言論規約を強制したりしません。我々はとにかくそのようなことはしません。アメリカは、同意しない人から守られ、保護される必要のある従順な人の臆病な国ではありません。我々はそのような者ではありません。我々はそのようになることはありません。
約250年間、あらゆる課題に直面して、アメリカ人は常に比類のない勇気・自信、断固とした独立心を奮い起こしてきました。これらは、かつて何百万人もの平凡な市民が、荒れ果てた大陸の各地に旅立ち、偉大な西部で新生活を切り開くことにつながった驚くべき特質です。それは、兵士たちを戦場に向かわせ宇宙飛行士を宇宙に向かわせたのと同じ、神から与えられた自由に対する深い愛でした。
この4年間を振り返ると、とりわけ1つのイメージが心に浮かびます。私が車列で道を移動するといつも、何千人ものたくさんの人たちがいました。彼らは家族と一緒に来て、我々が通過する時に立って、��らしげに偉大なアメリカの国旗を振っていました。私が深く感銘を受けなかったことはありませんでした。彼らは単に私への支持を示すために来たのではないと知っています。彼らが来たのは、国に対する支持と愛を私に示すためでした。
ここは、アメリカは歴史上ずっと偉大な国であるという共通の確信によって団結した誇りある市民の共和国です。我々は、全世界に対して希望、光、栄光の国であり、常にそうでなければなりません。これは我々が事あるごとに守らなければならない貴重な財産です。
この4年間、私はただそのために取り組んできました。リャドのイスラム教指導者の大集会場から、ワルシャワのポーランドの方々の大きな広場に至るまで、韓国の議会議場から国連総会の演壇に至るまで、そして北京の紫禁城からラシュモア山の麓に至るまで、私はみなさんのために戦い、みなさんの家族のために戦い、国のために戦いました。とりわけ私はアメリカとアメリカが支持する全てのために戦いました―それは安全で、強く、誇りある、自由なものです。
さて私は、20日の正午に新政権に引き継ぐ用意をする中で、我々が始めた運動は始まったばかりなのだということを知って欲しいと思います。そのようなものはこれまでありませんでした。国は市民に仕えなければならないという信念は、縮小するのではなく日に日に強く高まっていくしかないでしょう。
アメリカ国民が国に対する深く熱心な愛情を心に持つ限り、この国が成し遂げられないことはありません。コミュニティは繁栄するでしょう。国民は豊かになるでしょう。伝統は大事にされるでしょう。信仰は強くなるでしょう。そして未来はこれまでよりも明るくなるでしょう。
私は忠誠心と喜びに満ちた心、楽観的な精神、そして国にとって、子供たちにとって、最高なことが起きるのはまだこれからだという最高の確信をもって、この雄大な場所から出発します。
ありがとう、そしてさようなら。みなさんに神の祝福がありますように。アメリカ合衆国に神の祝福がありますように。
translated by ドナルド・トランプNEWS https://www.trumpnewsjapan.info/2021/01/20/remarks-by-president-trump-in-farewell-address-to-the-nation/#wrapper
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大クラッシュで話題となったマカオグランプリって、どんなレース?
11月18日にNHKなどのテレビや新聞などで大クラッシュが報じられた2018年のマカオグランプリ。 このクラッシュに巻き込まれたF3ワールドカップに出場の坪井翔選手は、搬送先の病院での検査の結果無事が確認され、レースはリタイアとなりましたが無事に帰国しています。 また大クラッシュを起したソフィア・フローシュ選手も手術が成功し、クラッシュに巻き込まれたマーシャルなども大怪我ではあるものの生命の危機はなく、救急搬送された日本人フォトグラファーも一晩の検査入院の末に無事に帰国しています。 この大クラッシュからマカオグランプリへ注目が集まっていますが、そもそもマカオグランプリとはどのようなレースなのでしょうか? マカオグランプリは今回(2018年開催)で65回という歴史を持ちます。その始まりは1954年で当初は当時植民地として支配していたポルトガル人や香港を植民地にしていたイギリス人などの自動車愛好家が集まってポルトガルのマカオ政庁に道路封鎖許可を取って開催した草レースで、そ��後香港や華僑、東南アジア諸国の富豪などが参加し規模が拡大していったといわれています。 1960年代から本格的なレースへと移行をはじめ、1970年代には日本メーカーも直接参戦するようなものとなって行きました。その中でも1974、75年に市販車を改造したクラスでトヨタ・セリカにより2連覇した舘信秀さん(現TOYOTA TEAM TOM’S代表)の功績は「マカオの虎」としてマカオグランプリの歴史に名を刻んでいます。 今回のマカオグランプリではメインレースとしてFIA F3ワールドカップ、FIA GT3ワールドカップ、WTCR世界ツーリングカーカップが18日の日曜日に開催されます。 FIA F3ワールドカップではF3レースを開催する世界のあらゆる国や地域から28台が参戦。それも各地域のトップクラスの選手がやってきます。なぜかといえば、道幅が狭く路面の悪いマカオで勝つためにはマシンやテクニックの他に勝負強さと運が必要で、そのマカオでのF3優勝はF1への最短ルートといわれているからです。 日本でもスーパーフォーニュラーにスポット参戦したダニエル・ティクトゥム選手は昨年の優勝者で今年は2連覇を狙います。そしてフェラーリのスカラシップから成長してきたあのミハエル・シューマッハさんのご子息であるミック・シューマッハ選手も参戦しています。 日本からは先述の坪井翔選手のほかに、今回日本人選手最上位となった宮田莉朋選手やスーパーフォーミュラーやSUPER GTで大活躍中の関口雄飛選手、その他総勢8名の日本人選手が参戦しています。 件のクラッシュの後、一時間ほどの中断を経てレースは再開され、優勝はダニエル・ティクトゥム選手でマカオGP史上3人目の2連覇を達成。日本人最上位は宮田莉朋選手の14位となります。 昨年は多重クラッシュで話題になったFIA GT3ワールドカップ。今年は15台という参加台数でレースが行われています。 優勝はBMWチーム・シュニッツァーのアウグスト・ファーフス選手。日本でも2016,17年とSUPER GT鈴鹿1000kmで Studie BMW M6の第3ドライバーとしてご記憶のある方も多いのではないでしょうか。 マカオグランプリの決勝レースのグリッド決定は非常に複雑で、FIA F3ワールドカップとFIA GT3 ワールドカップはタイムアタック形式の予選の後にレース形式の予選というものが行われます。タイムアタック形式の予選はレース形式の予選のグリッドを決定するに過ぎません。 FIA GT3ワールドカップではタイムアタック形式の予選では2位だったアウグスト・ファーフス選手がレース形式の予選でスタートを絶妙に決めて優勝し決勝レースのポールポジションを得ての優勝となったのです。 またこのFIA GT3 ワールドカップにも日本人選手が参加して話題となりました。 SUPER GTで何度もチャンピオン経験のある松田次生選手がマカオグランプリに19年ぶりに出場。松田選手は1999年のマカオグランプリのF3で4位という好成績を残していますが、それ以来の出場となります。 マシンの不調によりレース形式の予選には出走できず最後尾からのスタートとなりましたが、この抜きにくいマカオの市街地サーキットで1台を抜き、また1台が決勝レースに出走できなかったということもあって13位でフィニッシュしています。 国内でも10月に鈴鹿サーキットで初めて開催されたWTCR世界ツーリングカーカップ。その最終戦がマカオグランプリで開催されました。 2リッタークラスのツーリングカーをTCR規定でモディファイしレーシングカーとして市販したものを使って競われるWTCR。昨年まではWTCC世界ツーリングカー選手権として同様のレースは行われていましたが、あまりにも高度化しすぎてしまったために参戦への難易度が高くなりエントリー台数を減らしてしまった一方、その下のクラスとして人気が高まり地域戦でエントリーを伸ばしてきたTCR規定のマシンによって世界を転戦するシリーズが今年からWTCR世界ツーリングカーカップとして設定されました。 その魅力はなんといっても接近戦。性能が拮抗しているために常に繰り広げられるドッグファイトが観客を魅了します。 ホンダシビックやフォルクスワーゲンゴルフなど参加するマシンも比較的身近でワールドワイドな車種が多く、感情移入しやすいところも魅力の一端でしょう。 アウディRS3やプジョー308も出場しています。 2015年にSUPER GTのGT300クラスでチャンピオンとなったマカオ出身のアンドレ・クート選手はマカオではヒーロー的存在で、ここ数年のマカオグランプリにおいて必ずなにかのカテゴリーに出場しますが、今回はWTCRにスポット参戦していました。 マカオグランプリをこよなく愛することでマカオや香港、そしてアジア圏でも人気の高いロブ・ハフ選手は「他のグランプリで優勝してチャンピオンを獲ったとしてもマカオを走らなければ真のチャンピオンとは言えない」とまで言い切ります。 また「マカオは非常に難しい。そして運にも左右されるタフな場所。だからこそマカオを走ることができるのは誇り高いことなんだ」とも言います。 そのロブ・ハフ選手は2回行われたWTCRの予選の両方でポールポジションを得ています。予選2回の内訳はの1回目の予選は3回行われる決勝レースのレース1のスターティンググリッド、2回目の予選はレース3のグリッドを決定し、レース2はレース3のグリッド上位10台を逆に配置するリバースグリッドとなります。つまり予選2回目の10位がレース2のポールポジションとなるのです。 激しい接近戦や多重クラッシュなどの難関を乗り越えての優勝はロブ・ハフ選手の言うように誇り高いものであるといえるでしょう。その優勝者、レース1はアウディRS3 LMSのジャン・カール・ベルネイ選手、レース2も同じくアウディのフレデリック・バービッシュ選手で、アウディが強さを見せました。 そしてWTCRのメインイベントともいえるレース3に優勝したのは、ホンダCIVIC TYPE-R TCRのエステバン・グエリエリ選手。絶妙なスタートでロブ・ハフ選手の前に出ると終始ハフ選手とのドッグファイトを展開しながら巧みに押さえ込みながらの優勝はお見事! そして今年から始まったWTCR世界ツーリングカーカップの初代チャンピオンに輝いたのはヒュンダイi30N TCRのガブリエル・タルキーニ選手。シリーズ2位のイヴァン・ミューラー選手と3ポイント差でのチャンピオン獲得ということで、WTCRが如何に拮抗した戦いであるかがお解かりいただけるかと思います。 クラッシュばかりが大きく取りざたされるマカオグランプリですが、3枚看板となる世界戦を軸に伝統に裏打ちされたレースイベントとして世界中から注目され、また地元マカオの人々からも愛されているからこそ主要幹線道路を封鎖してのレースが65回も行われているのです。それこそマカオという都市が一体となって繰り広げるお祭りのようなもの。世界に唯一の存在として人々を魅了しているのです。 (写真・文:松永和浩) あわせて読みたい * ルノー・トゥインゴGTが全日本ラリー選手権の最終戦「新城ラリー2018」に初参戦 * トヨタ、WRCメーカーチャンピオン獲得!ドライバータイトルはオジェが6連覇【WRCラリー・オーストラリア】 * 決戦・オーストラリア。トヨタ悲願のタイトルなるか?「WRCラリーオーストラリア・デイ1,2」 * 【SUPER GT2018】話題のModulo KENWOOD NSX GT3、最終戦もてぎをどう戦ったのか? * レジェンド・のむけん引退! D1参戦前からの功績を辿る【D1GP TOKYO DRIFT】 http://dlvr.it/QrzxHd
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