#横山黄昏咄咄怪事
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modernheavy · 2 years ago
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今日読んだ漫画 2023年7月31日(月)
コミックライドアイビーvol.06(電子書籍)
⚔️『蜜の巫女と花の従者』18話 / のくらじれ
作品ページ
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【蜜の巫女と花の従者】
ヤングキングアワーズ2023年9月号
🏙️『横浜黄昏咄咄怪事』吉川景都
電子書籍
☔【分冊版】『この恋は世界でいちばん美しい雨』7巻 / 碧井ハル+宇山佳佑
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buriedbornes · 6 years ago
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第32話 『赤子の視る夢 (4) - “夢”』 Fetus dream chapter 4 - “Dream”
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 瞬間的に感じたのは、彼の怒りだった。ヴァルター博士は立ち尽くしたまま、無表情でいようと務めているが、その目の奥にくすぶる激情は消せないようだ。
 ぐるぐると私を渦巻いていた多くの音が遠ざかり、私は呆然とヴァルター博士を見つめていた。
 ――私はこの男を殴って逃げた。マティアス博士は私とヴァルター博士に後を任すと言った。ふたりの博士が私のところにやってくる……
 異界への門。
 その門に執着したというマティアス博士。ヴァルター博士はマティアス博士の何を知っているのだろうか。いいや、死んだと言っていたではないか。だからこそ、私に記憶を取り戻せと。
 読まされた論文は確かに異界と私たち人間のかかわりに関するものだったが、それすら、私にはそれが真実であると確かめるすべもないのだ。
 異界は確かに存在するのだろう、目の前にある門の向こうが我々の世界ではないことは疑う余地もない。
 だからこそ、私はどうしていいか途方に暮れた。どちらが正しい? あるいは、ふたりとも、ただそれぞれに異なる見解を持っているだけなのか? 私は哀れな道化のようにじりじりと追い詰められていくだけだ。
 ヴァルター博士は息を整えてから、私にきちんと向き直った。
「突然いなくなるものだから、驚きました」
「……」
「さぁ、病室に戻りましょう」
「どうしてですか?」
 私の声は強張り、隠すべき警戒をごまかすことは出来なかった。
 それにヴァルター博士は驚いたように目を見開いた。大きな目玉がごろんと飛び出て来てそうで、私はじりっと後ずさった。
「どうしてって……あなたは昏睡から目覚めてすぐですし、それに記憶だって」
「あなたは何を隠しているんですか?」
 私の投げかけた問いに、ヴァルター博士が息を飲んだのが分かった。
「あなたはどうして私を監視していたんですか?」
「監視……?」
 ヴァルター博士はいよいよ怪訝そうに首を傾げている。
「監視なんて、どうして私がする必要があるんですか」
「私が��いているんです、博士。この監視所に生き残っているのは他にどれだけいるというのです? あの看護婦は? テオは? モニカは? マティアス博士も!」
 問い詰める私の声の緊迫に対して、ヴァルター博士は身を乗り出した。
「思い出したのですか?」
「いいえ、ちっとも。全く」
「てっきり思い出したのかと思いました」
 ヴァルター博士のついたため息は大仰に響いた。彼はどこまでが本心なのだろうか……ただ、記憶を取り戻していないと聞いた今の表情には嘘がなかったように思えた。
 私が思い出すことを本当に望んでいるのだろうか。分からない。
「さぁ、病室に帰りましょう。記憶がないというのに、色々お話をしてしましました。混乱されているでしょう。申し訳ない、私も焦りすぎていたようだ」
「近づくな……」
「落ち着いてください、お部屋に戻るだけですから」
「来るな……っ」
 私の拒絶の声はかすれて、ヴァルター博士には伝わらなかった。ただ、私に手を伸ばしながら、じりじりと退路を断つように近づいてくる。穏やかな口ぶりだが、どこか高圧的に行動を誘導しようとしているのが分かる。
 白いその手のひらに、私は闇を見ていた。
 私が信用すべきものは何だろうか。客観的な事実は目の前にある、異界へと繋がるその赤黒い腹を晒したその門だけで、異界の向こうであったという事件も、そのほかの人間も私は知らない。
 私は本当に、クラウスなのだろうか? 私はどこにいる? 確かに窓の外、円形の中庭を抱えた監視所の向こうは深い森である、鬱蒼とした、いっそ森しかないほどの山の中ほどのようだ。少しばかり変化のあるのは、遠く峰が冠雪するばかりで、人里からは離れているのが分かる。……こんな大がかりな準備をして、ただ記憶のない私に拵えた嘘を信じさせようとするのであれば、それは尋常ではない。何か、想像を越えるほどの大きな目的のために、記憶を失った私を利用して何かを仕向けようとしているのではないだろうか。門の存在だけは真実だが、どこまでが真実だろうか。
 ヴァルター博士の目は乾き切り、何の感情も出さないように努めているのが分かる。口だけが笑っているが、酷く醜く、気味が悪い。
「さぁ、体も冷えたでしょう。温かい懐炉も用意させますから」
 赤子は宿主の記憶を読み取ると記されていた。ヴァルター博士の首筋に垣間見えた赤黒い影が脳裏を過る。
 目の前のこの男が、既に赤子に成り代わられているとして、なんの不思議があろう。
「私に全てを思い出させて、一体どうするつもりなんですか?」
 私の疑問は余程意外だったのか、ヴァルター博士の目に一瞬だけ逡巡の色がちらついた。
「真実のためです」
「……真実? 門の向こうに入った人間はほとんど死に絶えた。それだけでは足りませんか?」
「門の向こうで起きたことを、私は知りません。なにも記録することは出来ない。本物の乳母を目の当たりにして帰ったのは、あなた達ふたりだけだ。あなたは真実に辿り着き、マティアス博士の遺志を継ぐ必要があるのです」
 丁寧に感情の取り除かれた声で、ヴァルター博士は呟く。
「ヴァルター博士。私は何が真実か分からないのです……」
「そうでしょう、仲間を失い、異界の脅威に晒された。当然のことです」
「私はあなたが信用できない」
 魔物に見えるとは、口には出来なかった。
 遠慮したためでもない、ひゅっと目の前に杖が突き付けられたためだ。
「――……手荒な真似はさせないでくれ」
 声は冷たく澄んでいた。
 私は自分に突き付けられた杖の先が、迸る雷光をまとっていることに気が付いて、また一歩後ずさった。しかし、部屋の中だ、逃げ場などない。ヴァルター博士が意志を込めれば、その杖は瞬く間に私に一撃を見舞うだろう。
「――…���やはり」
「博士、あなた……」
「私はずっと疑問だった、切開して肉片が見つからなかったから、あなたは安全だとマティアス博士は判断したが……やはり――やはりあなたは赤子の成り代わりなのか……」
 丁寧な口調に徹していた分、命令じみたその話し方は、あまりに無機質に私を追い詰めてくる。
「ならば、処置するまで」
「処置……?」
 ヴァルター博士は杖の先を揺らす。
「いずれにしても、安全のため一旦病室に戻ってもらう」
「閉じ込めるのか」
「それはあなた次第です」
「モニカは逃げ出したのか?」
「――……信じたくない気持ちは分かる。だが彼女は、誓って、こちら側には戻ってきていない」
「杖を下ろしてくれ、私だって真相は知りたいのですから」
「私だって知りたい。だが、君はもう異界に冒されているのだ。私には他の隊員を守る責務がある」
「私は大丈夫だとマティアス博士は言っていたじゃないですか!」
 中々従わない私に苛立ってヴァルター博士の眉がひくりと跳ねあがった。
「村には成り代わりが出た。精神に異常をきたし、周囲に怪異をまき散らしながら死んだ……そいつらは死んで、人の姿を失った。…我々が目にしたのは、崩れ去った肉片だけだ。人の姿である内の完成体の解剖は、まだ行われていなかった。」
「違う!」
 私は声の限り叫んだ。
 ――……ねえ、クラウス。
 モニカの声は確かにした。私を呼ぶ声が。
「モニカ……?」
 ――……本当に信じてもいいのかしら。なんだか、少し怖い気がするわ。
「私は信じてなんていない。騙されたりはしない……!」
「クラウス君?」
 ――……あなたはどう思う? どちらの言い分にも、筋は通っているけれど……。
「うまく行くはずない……こんなこと」
「クラウス君、気を確かに持つんだ」
 ヴァルターが私を捕まえようと手を伸ばす。
 捕まるわけにはいかない。このままあの独房へと帰れば、そのまま何もわからないまま、永遠に外には出られまい。
 逃げなければ。真実を知るため��も、そして、モニカを救うためにも。
 ――……クラウス……!
 彼女はこんなに、私に救いを求めていたというのに!
「私が確かにクラウスだというのならば、私はあなたを信じることは出来ない」
「私は君を信じたい、だが……っ」
「そうやって私を閉じ込めても、永遠にこの事件は解決はしない」
 ヴァルター博士は赤子に取り込まれ、新たな犠牲者を招こうとしているのか?
 あるいは、マティアス博士とは異なる形で異界の研究を推し進めようとしているのだろうか? いずれにしても、"私"を己の目的のために利用しようとしているのには違いあるまい。
 この門ごと私たちを葬り、門の封印を自身の手柄とするつもりなのか。
 いや、門の向こうに仲間を閉じ込め、赤子へ代わる様を観察するためなのか。
 ――……助けて……!
「まさか……!」
 ヴァルター博士がハッと息を飲み、杖を捨てて私に手を伸ばす。捕まるわけにはいかない。
「待ちなさい!」
 悲鳴に近い制止を振り切り、私は開け放たれたままの窓から門のある中庭へと飛び出した。夕闇が忍び寄り、禍々しいまでの赤黒い内部は近づくほどに不思議な光を帯びていく。
 私は門の前で、監視室を振り向いた。
 ヴァルター博士は監視室の窓の向こう、立ち尽くしてこちらを見つめ、叫んだ。
「あなたは、間違っている……!」
 絞り出すように放たれた声には、強い、裏切りへの怨嗟に似たものが感じられた。
 一瞬足が竦む。
 そんな私の視界の端を、よく実った稲穂のように束ねた黄金色の髪がよぎった。
 この香りを、覚えている―――気がする。
「モニカ……?」
 私はヴァルター博士から目を離し、再び門を振り向いた。
 赤黒い内壁は、脈打ちうねり、うごめいている。寸での先で曲がっているのか、奥が見えなかった。
 その曲がり角をモニカが歩いていく。その先に数人の人影も見える。
「モニカ!」
 きっと彼女だ。
 私の声が聞こえないのか、モニカの姿は肉の壁の向こうに消えた。
 本能的に竦む足を叱咤して、門に飛び込んだ。
 足がぐにゃりと沈み込む感触、踏みしめることのできない地面に足を取られ倒れ込みそうになる。生ぬるい風がかすかに吹いていた。
 手をつく壁もぐにゃりとゆがみ、そして、蠢く。
 垂れ下がった肉という肉が、壁や扉、カーテンのように行く手を阻み、私の視界を遮った。あれほどはっきり見えていたモニカ達が見えない。
「モニカ!」
「しかし、暑い……博士、一枚だけ脱いでもよろしいですか? 他の隊員たちの消耗してしまいます」
「……仕方ない。袖のあるものは残しなさい」
 ぐわんぐわんと肉の空間を反響して、声が間延びして聞こえた。
 ……後ろ?
 声は、私が先ほど足を踏み入れたばかりの門の方から聞こえてきた。
 私は恐る恐る背後の空間へと振り向く。
「クラウス、付着物から何かに感染するかも」
「構わない。どうせこの空間を進む限り汚染は避けられないから、出てからまとめて洗浄する。体力を温存しておきたい」
 大仰なバッグを担ぎ、肉壁の中を慎重に進んでいる一団がうっそりと歩いていた。あたりを探る視線の動きや、慎重そのものの歩き方。あれは、写真で見た、仲間たちだ……。
 どうして。いつの間に、後ろへ?
 彼らの中に、先ほど私が見た同じ髪の女性がいる。忘れるわけがない、ついさっき、彼女の背中を見て飛び込んだのだから。
 モニカに駆け寄ろうと足を踏み出した瞬間、先ほどよりも深く、ぐにゃりと地面が沈み込み、私は無様に肉の中へと倒れ込んだ。
「嘘だ……」
 静かに、そしてまるで霧になるようにして、はっきりと見ていたはずの彼らが消えた。ぐっと胃の奥から吐き気が込み上げてきた。
 何かがおかしい。
 甲高く思わず耳を塞ぎたくなるような泣き声が聞こえた。まるで獣のようなその声に私はぼそりと呟く。
「赤ん坊……?」
 赤子の異界。
 マティアス博士の論文がよみがえった。
 赤子の異界と名付けたのはマティアス博士だったが、まさか、比喩ではなく、本当に異界には赤子がいるのか?
 私は気付けばブンブンと頭を強く、大きく振っていた。
 赤子の泣き声は止まる気配を見せない。
 泣き声が次第に高まる中で、加えて妙な音が聞こえはじめた。水分を含んだ肉と肉がこすれあって、歪な音を出している。
 肉だらけの異界の中で、ズル、ズル、と音が近づいてくる。異音のオーケストラに包み込まれ、私は朦朧としていたが、唐突に胸部に激しい痛みを覚え、身を跳ねさせた。
 咄嗟に抑えた手に、硬い感触がある。表面は柔らかく、熱く、けれども確かな芯のあるそれは……、
「――……肉……?」
 愕然とする。
 私の胸に深々と刺さっているそれは、肉片に他ならない。皮膚を突き破り、まるで角のように伸びている。
 こんなものが刺さったのであれば、すぐに気付いていたはずだ。
 痛みも微塵も感じなかったのに、今は赤黒くてらてらと光るその存在を主張し、激痛でこの身を強く支配して離さない。
 呼吸すらままならず、私はその場に蹲り、うめき声を上げる。
 世界を構成する肉の壁が、共鳴するように微かに揺れる。肉と肉の向こうに何かが見えた。あれほど重かった壁を容易く押しのけて、巨大な何かが近づいてくる。
 それはとても大きくて、また、小さかった。恐ろしいようで暖かく、また拒絶するようで受容している。
 ああ、
 ああ、お前が。
 視界が陰りゆく。
 恐怖は、跡形もなく消えていた。
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 ――……ブウ――――ウン、ンン―――ウウン…………。
 私の脳が揺さぶられるように、震えているのが分かる。
 歓喜に打ち震えているようにも、怯えて縮こまっているようにも思える。
 ――……ブウウン、ンン―――ウウン…………。
 この音に合わせて震えているのだ、私の頭は。
 ピチャリ、ピチャリと濡れた音が聞こえる、この音も私は知っている。
 音以外の全ての感覚が間遠く鈍い、かわりにかえって来る浮遊感。
 ドクリドクリと脈打つ音。その音と水音が私をゆったりと包み込んでいる。
 これは、羊水のようなものか。
 私の脳は更に震えた。
 ブウウン、ピチャリ、ドクリドクリ、まるで競うように奏で合う。音ばかりが響き合う。心地よい温度に包まれて、私は恍惚としている。
 私?
 私とは――。
 ……ああ、これはきっと、「赤子の視る夢」なのだ。
 これから赤子として目覚めるのだ……。
 門の中に入り、私はあの時もきっとこの光景を見たのだ。死に絶え、消え行く命を、呆然と見守ったのだ。迫りくる脅威に怯え、哭き、叫びながら、潰えるものの中から産まれたものを、見守ったのだ。
 私たちを待つものは……、私たちが得たものは……。
 赤子は泣いている。いつまでも、いつまでも。ああ、何がそんなに悲しいというのだ。この暖かな空間から飛び出すことが恐ろしいのか。
 私たちは何を求めていたのだろう。求めた先にどんな未来があったというのだろう。 
 次第に、何かが遠ざかっていきながら近づいてくる、矛盾した奇妙な感覚を覚えた。
 それは波のように押し寄せては、元の形から解けていくものの流れでもあり、また確かな形を得るように集まっていくようでもある。
 人の形をしていることだけが、人であるということの証左になるのだろうか。 
 私と世界との輪郭が次第に明確になっていく���覚に、胸が高鳴る。
 ゆっくりと、影が私の視界を覆い始める。見開かれながらも、何も映さない瞳。
 額から滴が流れ、それを覚束ない手付きで拭う。まるで血のように赤かった。
 やがて音は絶えて、その影が輪郭を持ち始める。おぼろげな光を背負ったその影はパックリと顔を真横に引き裂くようにして笑った。
「あっ……クラウス博士……」
 私は叫ぶ間もなく、意識を遂に手放した。
 ――……ブウウン、ンン―――ウウン…………。
 ブウン、ウンンン……―��
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~おわり~
原作: ohNussy
著作: 森きいこ
※今回のショートストーリーはohNussyが作成したプロットを元に代筆していただく形を取っております。ご了承ください。
「ショートストーリー」は、Buriedbornesの本編で語られる事のない物語を補完するためのゲーム外コンテンツです。「ショートストーリー」で、よりBuriedbornesの世界を楽しんでいただけましたら幸いです。
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gateofwriting-blog · 4 years ago
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《歌德堡变奏曲1122》
《歌德堡变奏曲1122》
大佛顶首楞严经 唐天竺.沙门般剌密帝译 卷七
阿难汝问摄心法 我今宜为汝先说 入三摩地修学门 求菩萨道学佛法 要先持此四律仪 皎如冰霜至清水 自不能生诸枝叶 心三口四必无因
佛言阿难汝应知! 如是四事若不失 色香味触尚不缘 云何发生诸魔事?
若有宿习不能除 汝教是人一心诵 大佛顶首光明咒 无上神咒摩诃萨 无见顶相是如来 无为心佛顶发辉 坐宝莲华所说神
汝宿世与摩登伽 历劫因缘爱习气 非是一生及一劫 我一宣扬彼淫女 爱心永脱成罗汉
彼尚淫女无修行 神力冥资证无学 云何汝等声闻乘 求最上乘难成佛? 譬如以尘扬顺风 有何艰险不成功?
若有末世欲道场 先持比丘清净戒 要当选择戒净者 第一沙门以为师
若其不遇清净僧 汝戒律仪必不成 戒成已后着净衣 然香闲居清净心 诵此心佛所说咒 诵咒遍满一百八 然后结界立道场 如来求于十方界 现住国土无上佛 放大悲光灌其顶
佛言阿难汝应知! 如是末世清净僧 若比丘尼或居士 心灭贪淫持佛戒 发菩萨愿道场中 六时行道出入浴 如是不寐三七日 我自现身至其前 摩顶安慰令开悟
阿难白佛言世尊! 我蒙如来无上诲 心已开悟不迷惑 自知修证无学道 末法修行建道场 云何结界云何造 合佛清净仪轨则?
佛告阿难若末世 人愿造立佛道场 先取雪山大白牛 食其山中肥香草 此牛唯饮雪山水 其粪微细取其粪 和合旃檀泥其地
若非雪山牛臭秽 不堪涂地不能用 若非雪山于平原 穿去地皮五尺下 取其黄土和旃檀 沉水苏合及薰陆 郁金白胶及青木 零陵甘松鸡舌香 以此十种细罗粉 合土成泥涂场地 方圆丈六八角坛
坛心安置一莲华 金银铜木所制造 莲华之中安一钵 钵盛八月清露水 水中随安诸华叶
取八圆镜安各方 围绕中心莲华钵 十六莲华镜外立 十六香鑪华铺设 庄严香鑪烧沉水 无令见火无令炽
取白牛乳十六器 乳为煎饼并砂糖 油饼乳糜及苏合 蜜姜纯酥及纯蜜
绕莲华外各十六 以奉诸佛及菩萨 每以食时若中夜 取蜜半升用酥合
坛前别安小火鑪 兜楼婆香煎香水 沐浴其炭然猛炽 投是酥蜜炎鑪内 烧令烟尽享诸佛
遍悬幡华于四外 于坛室中之四壁 敷设十方如来佛 及诸菩萨诸形像
应于当阳供佛像 释迦弥勒卢舍那 阿閦弥陀观音像 兼金刚藏安左右
帝释梵王蓝地迦 乌刍瑟摩軍荼利 与毗俱胝四天王 频那夜迦张门侧 左右安置严守护
又取八镜悬虚空 与坛场中所安镜 方位方面互相对 使其形影重相涉
修者当于初七中 至诚顶礼十方佛 诸大菩萨阿罗汉 恒于六时诵咒围 至心行道无散乱 一时常行百八遍
第二七中修如是 发菩萨愿专一心 心无间断不散乱 我毗奈耶先愿教
第三七中��二时 向持佛咒般怛啰 至第七日不散乱 十方如来一时现 承佛摩顶镜光汇 修三摩地于道场 末世修学令如是 身心明净如琉璃
佛言阿难汝应知! 若此比丘本受戒 及同会中十比丘 其有一者不清净 如是道场多不成
从三七后坐安居 有利根者经百日 得须陀洹不起座 纵其心未成圣果 决知成佛不谬误 汝问道场建如是
阿难顶礼而白佛: 自我出家恃佛爱 求多闻故未证道 遭彼梵天邪术禁 心虽明了力不逮
赖遇文殊令我脱 虽蒙如来佛顶咒 冥获其力未亲闻 惟愿大慈重为说 悲救此会修行辈 末及当来在轮回 承佛密音身意解 于时会中诸大众 普皆作礼同此愿 伫闻如来秘章句
尔时世尊大慈悲 从肉髻中涌宝光 光中涌出千叶莲 有化如来坐宝华 顶放十道百宝光 一一光明互映照 皆遍示现十恒沙 金刚密迹擎山杵 遍虚空界众仰观 畏爱兼抱求哀佑 无见顶相放光佛 一心听宣说神咒
南无萨怛他。苏伽多耶。阿啰诃帝。三藐三菩陀写。南无萨怛他。 佛陀俱胝瑟尼钐。南无萨婆。勃陀勃地。 萨跢鞞弊。南无萨多南。三藐三菩陀。俱知南。 娑舍啰婆迦。僧伽喃。南无卢鸡阿罗汉跢喃。 南无苏卢多波那喃。南无娑羯唎陀伽弥喃。南无卢鸡三藐伽跢喃。 三藐伽波啰。底波多那喃。南无提婆离瑟赧。 南无悉陀耶。毗地耶。陀啰离瑟赧。舍波奴。揭啰诃。 娑诃娑啰摩他喃。南无跋啰诃摩泥。南无因陀啰耶。 南无婆伽婆帝。卢陀啰耶。乌摩般帝。娑醯夜耶。 南无婆伽婆帝。那啰野。拏耶。槃遮摩诃三慕陀啰。南无悉羯唎多耶。 南无婆伽婆帝。摩诃迦罗耶。地唎般剌那。 伽啰毗陀啰。波拏迦啰耶。阿地目帝。尸摩舍那泥。 婆悉泥。摩怛唎伽拏。南无悉羯唎多耶。南无婆伽婆帝。 多他伽跢俱啰耶。南无般头摩俱啰耶。南无跋阇啰俱啰耶。 南无摩尼俱啰耶。南无伽阇俱啰耶。南无婆伽婆帝。帝唎茶。 输啰西那。波啰诃啰拏啰阇耶。跢他伽多耶。南无婆伽婆帝。 南无阿弥多婆耶。跢他伽多耶。阿啰诃帝。三藐三菩陀耶。 南无婆伽婆帝。阿刍鞞耶。跢他伽多耶。阿啰诃帝。 三藐三菩陀耶。南无婆伽婆帝。鞞沙阇耶。俱卢吠柱唎耶。 般啰婆啰阇耶。跢他伽多耶。南无婆伽婆帝。三补师毖多。 萨怜捺啰剌阇耶。跢他伽多耶。阿啰诃帝。三藐三菩陀耶。 南无婆伽婆帝。舍鸡野母那曳。跢他伽多耶。阿啰诃帝。 三藐三菩陀耶。南无婆伽婆帝。剌怛那鸡都啰阇耶。 跢他伽多耶。阿啰诃帝。三藐三菩陀耶。帝瓢。南无萨羯唎多。 翳昙婆伽婆多。萨怛他伽都瑟尼钐。萨怛多般怛[口+蓝]。 南无阿婆啰视眈。般啰帝。扬岐啰。萨啰婆部多揭啰诃。 ��羯啰诃。揭迦啰诃尼。跋啰瑟地耶。叱陀你。 阿迦啰。蜜唎柱。般唎怛啰耶。儜揭唎。萨啰婆。 槃陀那。目叉尼。萨啰婆。突瑟吒。突悉乏。般那你。伐啰尼。 赭都啰。失帝南。羯啰诃。娑诃萨啰若阇。毗多崩娑那羯唎。 阿瑟吒冰舍帝南。那叉刹怛啰若阇。波啰萨陀那羯唎。 阿瑟吒南。摩诃揭啰诃若阇。毗多崩萨那羯唎。萨婆舍都嚧。 你婆啰若阇。呼蓝突悉乏。难遮那舍尼。毖沙舍。悉怛啰。阿吉尼。 乌陀迦啰若阇。阿般啰视多具啰。摩诃般啰战持。摩诃叠多。摩诃帝阇。 摩诃税多阇婆啰。摩诃跋啰槃陀啰。婆悉你。阿唎耶多啰。毗唎俱知。 誓婆毗阇耶。跋阇啰摩礼底。毗舍嚧多。勃腾罔迦。跋阇啰制喝那阿遮。 摩啰制婆。般啰质多。跋阇啰檀持。毗舍啰遮。扇多舍。鞞提婆。补视多。 苏摩嚧波。摩诃税多。阿唎耶多啰。摩诃婆啰阿般啰。跋阇啰商羯啰制婆。 跋阇啰俱摩唎。俱蓝陀唎。跋阇啰喝萨多遮。毗地耶。乾遮那。 摩唎迦。啒苏母。婆羯啰跢那。鞞嚧遮那。俱唎耶。夜啰菟。 瑟尼钐。毗折蓝婆摩尼遮。跋阇啰迦那迦波啰婆。嚧阇那。 跋阇啰顿稚遮。税多遮。迦摩啰。刹奢尸。波啰婆。翳帝夷帝。 母陀啰。羯拏。娑鞞啰忏。掘梵都。印兔那么么写。
乌[合+牛]。唎瑟揭拏。般剌舍悉多。 萨怛他。伽都瑟尼钐。虎[合+牛]都嚧雍。瞻婆那。 虎[合+牛]都嚧雍。悉耽婆那。虎[合+牛]都嚧雍。 波啰瑟地耶。三般叉。拏羯啰。虎[合+牛]都嚧雍。 萨婆药叉。喝啰刹娑。揭啰诃若阇。毗腾崩萨那羯啰。 虎[合+牛]都嚧雍。者都啰。尸底南。揭啰诃。 娑诃萨啰南。毗腾崩萨那啰。虎[合+牛]都嚧雍。 啰叉。婆伽梵。萨怛他。伽都瑟尼钐。波啰点。阇吉唎。 摩诃娑诃萨啰。勃树娑诃萨啰。室唎沙。俱知娑诃萨泥。 帝[口+隶]阿弊提视婆唎多。吒吒甖迦。摩诃跋阇嚧陀啰。 帝唎菩婆那。曼茶啰。乌[合+牛]。莎悉帝。薄婆都。么么。印兔那么么写。
啰阇婆夜。主啰跋夜。阿祇尼婆夜。乌陀迦婆夜。 毗沙婆夜。舍萨多啰娑夜。婆啰斫羯啰婆夜。 突瑟叉婆夜。阿舍你婆夜。阿迦啰。密唎柱婆夜。 陀啰尼部弥剑。波伽波陀婆夜。乌啰迦婆多婆夜。 剌阇坛茶婆夜。那伽婆夜。毗条怛婆夜。苏波啰拏婆夜。 药叉揭啰诃。啰叉私揭啰诃。毕唎多揭啰诃。毗舍遮揭啰诃。 部多揭啰诃。鸠槃茶揭啰诃。补丹那揭啰诃。迦吒补丹那揭啰诃。 悉乾度揭啰诃。阿播悉摩啰揭啰诃。乌檀摩陀揭啰诃。 车夜揭啰诃。醯唎婆帝揭啰诃。社多诃唎南。揭婆诃唎南。 嚧地啰诃唎南。忙娑诃唎南。谜陀诃唎南。摩阇诃唎南。 阇多诃唎女。视比多诃唎南。毗多诃唎南。婆多诃唎南。 阿输遮诃唎女。质多诃唎女。帝钐萨鞞钐。萨婆揭啰诃南。 毗陀耶阇。瞋陀夜弥。鸡啰夜弥。波唎跋啰者迦。讫唎担。 毗陀夜阇。瞋陀夜弥。鸡啰夜弥。茶演尼。讫唎担。毗陀夜阇。 瞋陀夜弥。鸡啰夜弥。摩诃般输般怛夜。嚧陀啰。讫唎担。 毗陀夜阇。瞋陀夜弥。鸡啰夜弥。那啰夜拏。讫唎担。毗陀夜阇。 瞋陀夜弥。鸡啰夜弥。怛埵伽嚧茶西。讫唎担。毗陀夜阇。 瞋陀夜弥。鸡啰夜弥。摩诃迦啰。摩怛唎伽拏。讫唎担。 毗陀夜阇。瞋陀夜弥。鸡啰夜弥。迦波���迦。讫唎担。 毗陀夜阇。瞋陀夜弥。鸡啰夜弥。阇耶羯啰。摩度羯啰。 萨婆啰他娑达那。讫唎担。毗陀夜阇。瞋陀夜弥。鸡啰夜弥。 赭咄啰。婆耆你。讫唎担。毗陀夜阇。瞋陀夜弥。鸡啰夜弥。 毗唎羊讫唎知。难陀鸡沙啰。伽拏般帝。索醯夜。讫唎担。 毗陀夜阇。瞋陀夜弥。鸡啰夜弥。那揭那舍啰婆拏。讫唎担。 毗陀夜阇。瞋陀夜弥。鸡啰夜弥。阿罗汉。讫唎担。毗陀夜阇。 瞋陀夜弥。鸡啰夜弥。毗多啰伽。讫唎担。毗陀夜阇。瞋陀夜弥。 鸡啰夜弥。跋阇啰波你。具醯夜具醯夜。迦地般帝。讫唎担。 毗陀夜阇。瞋陀夜弥。鸡啰夜弥。啰叉罔。婆伽梵。印兔那么么写。
婆伽梵。萨怛多般怛啰。南无粹都帝。阿悉多那啰剌迦。 波啰婆。悉普吒。毗迦萨怛多钵帝唎。什佛啰什佛啰。陀啰陀啰。频陀啰频陀啰。 瞋陀瞋陀。虎[合+牛]虎[合+牛]。泮吒泮吒泮吒泮吒泮吒。娑诃。醯醯泮。 阿牟迦耶泮。阿波啰提诃多泮。婆啰波啰陀泮。阿素啰。毗陀啰。波迦泮。萨婆提鞞弊泮。萨婆那伽弊泮。 萨婆药叉弊泮。萨婆乾闼婆弊泮。萨婆补丹那弊泮。迦吒补丹那弊泮。萨婆突狼枳帝弊泮。萨婆突涩比[口+犁]。 讫瑟帝弊泮。萨婆什婆[口+犁]弊泮。萨婆阿播悉摩[口+犁]弊泮。 萨婆舍啰婆拏弊泮。萨婆地帝鸡弊泮。萨婆怛摩陀继弊泮。萨婆毗陀耶。 啰誓遮[口+犁]弊泮。阇夜羯啰。摩度羯啰。萨婆罗他娑陀鸡弊泮。毗地夜。 遮唎弊泮。者都啰。缚耆你弊泮。跋阇啰。俱摩唎。毗陀夜。啰誓弊泮。 摩诃波啰丁羊。乂耆唎弊泮。跋阇啰商羯啰夜。波啰丈耆啰阇耶泮。 摩诃迦啰夜。摩诃末怛唎迦拏。南无娑羯唎多夜泮。毖瑟拏婢曳泮。 勃啰诃牟尼曳泮。阿耆尼曳泮。摩诃羯唎曳泮。羯啰檀持曳泮。 蔑怛唎曳泮。唠怛唎曳泮。遮文茶曳泮。羯逻啰怛唎曳泮。迦般唎曳泮。 阿地目质多。迦尸摩舍那。婆私你曳泮。演吉质。萨埵婆写。么么印兔那么么写。
突瑟吒质多。阿末怛唎质多。乌阇诃啰。伽婆诃啰。嚧地啰诃啰。婆娑诃啰。摩阇诃啰。 阇多诃啰。视毖多诃啰。跋略夜诃啰。乾陀诃啰。布史波诃啰。颇啰诃啰。婆写诃啰。般波质多。 突瑟吒质多。唠陀啰质多。药叉揭啰诃。啰刹娑揭啰诃。闭[口+隶]多揭啰诃。 毗舍遮揭啰诃。部多揭啰诃。鸠槃茶揭啰诃。悉乾陀揭啰诃。乌怛摩陀揭啰诃。车夜揭啰诃。 阿播萨摩啰揭啰诃。宅袪革。茶耆尼揭啰诃。唎佛帝揭啰诃。阇弥迦揭啰诃。舍俱尼揭啰诃。 姥陀啰。难地迦揭啰诃。阿蓝婆揭啰诃。乾度波尼揭啰诃。 什伐啰。堙迦醯迦。坠帝药迦。怛隶帝药迦。者突托迦。 昵提什伐啰。毖钐摩什伐啰。薄底迦。鼻底迦。室隶瑟蜜迦。 娑你般帝迦。萨婆什伐啰。室嚧吉帝。末陀鞞达嚧制剑。 阿绮嚧钳。目佉嚧钳。羯唎突嚧钳。揭啰诃。揭蓝羯拏输蓝。 惮多输蓝。迄唎夜输蓝。末么输蓝。跋唎室婆输蓝。毖栗瑟吒输蓝。 乌陀啰输蓝。羯知输蓝。跋悉帝输蓝。邬嚧输蓝。常伽输蓝。 喝悉多输蓝。跋陀输蓝。娑房盎伽。般啰丈伽输蓝。部多毖跢茶。 茶耆尼。什婆啰。陀突嚧迦。建咄嚧吉知。婆路多毗。萨般嚧。 诃凌伽。输沙怛啰。婆那羯啰。毗沙喻迦。阿耆尼乌陀迦。末啰鞞啰。 建跢啰。阿迦啰。密唎咄。怛敛部迦。地栗剌吒。毖唎瑟质迦。 萨婆那俱啰。肆引伽弊。揭啰唎药叉。怛啰刍。末啰视。吠帝钐。 娑鞞钐。悉怛多钵怛啰。摩诃跋阇嚧。瑟尼钐。摩诃般赖丈耆蓝。 夜波突陀。舍喻阇那。辫怛隶拏。毗陀耶。槃昙迦嚧弥。帝殊。 槃昙迦嚧弥。般啰毗陀。槃昙迦嚧弥。跢侄他。唵。阿那隶。 毗舍提。鞞啰。跋阇啰。陀唎。槃陀槃陀你。跋阇啰谤尼泮。 虎[合+牛]都嚧瓮泮。莎婆诃。
阿难是佛顶光聚 悉怛多般怛啰咒 秘密伽陀微章句 出生十方一切佛
十方如来因此咒 得成无上正遍觉 十方如来执此咒 降伏诸魔制外道
十方如来乘咒心 坐宝莲华微尘国 十方如来含咒心 于微尘国转法轮
十方如来持咒心 能于十方摩顶授 自果未成真修者 亦于十方蒙授记
十方如来依咒心 能于十方济群苦 所谓地狱饿鬼道 畜生盲聋喑哑者 冤憎会苦爱别离 求不得苦心孤苦
五阴炽盛嗔恨苦 大小诸横同解脱 贼难兵难及王难 风火水难及狱难 饥渴贫穷应念销
十方如来随咒心 能事十方善知识 四威仪中供如意 恒沙如来于会中 推其为大法王子
十方如来行咒心 能于十方摄亲因 令诸小乘闻秘藏 不生惊怖得安泰
十方如来诵此咒 成无上觉无上道 坐菩提树入涅槃 十方如来传此咒 于灭度后正道传 究竟住持付佛法 严净戒律悉清净
若我说是佛心咒 般怛罗咒顶光聚 从旦至暮音声联 字句中间不重叠 经恒沙劫不能尽 此咒亦名如来顶
汝等有学在轮回 发心至诚取罗汉 不持此咒坐道场 欲其身心远魔事 无有是处难成就!
阿难若于诸世界 随所国土诸众生 随国所生桦树皮 贝叶纸素及白叠 书写此咒贮香囊 是人心昏未能诵 或带身上或书宅 当知是人尽其年 一切诸毒不能害
阿难我今为汝众 更说此咒般怛啰 救护世间得无畏 成就众生出世智
若我灭后末世众 有能自诵教他诵 当知如是诵持众 火不能烧水不溺 大毒小毒不能害 乃至天龙及鬼神 精祇魔魅及恶咒 皆不能着心正受
一切咒诅及厌蛊 毒药金毒及银毒 草木虫蛇及毒气 入此人口成甘露
一切恶星并鬼神 碜心毒人及毒物 于如是人不起恶 频那夜迦常随魔 诸恶鬼王并眷属 皆领深恩常守护
阿难当知是佛咒 常有八万四千数 恒沙俱胝那由他 金刚藏王菩萨族 一一皆有金刚众 而为眷属昼夜侍
设有众生散乱心 非三摩地心忆持 是金刚王常随从 彼诸比丘善男子
何况决定菩提心 菩萨藏王诸金刚 精心阴速发神识 是人应时心能忆 八万四千恒沙劫 周遍了知得无惑
从第一劫至后身 药叉罗刹生生灭 及富单那鸠槃茶 迦富单那毗舍遮 并诸饿鬼及有形 无形有想及无想 如是恶处邪妄处
是善男子若读诵 若书若写若带藏 诸色供养以记忆 劫劫不生贫穷家 不生下贱不乐处
此诸众生善男女 纵其自身不作福 十方如来常护佑 所有功德与此人
由是得于恒河沙 阿僧祇劫不可说 常与诸佛同一处 无量功德神鬼聚 同处熏修永不散
是故能令破戒人 戒根清净心清净 未得戒者令得戒 未精进者令精进 无智慧者令智慧 不清净者得清净 不持斋戒自斋戒
佛言阿难汝应知! 是善男子持咒时 设犯禁戒未受时 持咒之后破戒罪 无问轻重一时销
纵经饮酒啖五辛 种种不净未脱离 一切诸佛及菩萨 金刚天仙及鬼神 不将为过皆赦免
设着不净破弊衣 一行一住悉清净 纵不作坛不入庙 不入道场不行道 诵持此咒住咒心 还同入坛行功德 等无差别无有异
若造五逆无间罪 及诸比丘比丘尼 四弃八弃诵咒已 如是重业如是罪 如猛风吹聚沙散 悉皆消灭无毫发
阿难若有诸众生 无量无数劫始来 所有一切轻重罪 从前世来未及忏
读诵书写此佛咒 身上带持若安住 庄宅园馆如是业 犹汤消雪冰融化 不久得悟无生忍
复次阿难若女人 未生男女欲求孕 若能至心念斯咒 或能身上带汝此 悉怛多般怛啰者
便生福德智男女 求长命者得长命 欲求果报速圆满 即能速得果圆满
身命色力亦如是 命终之后神识引 随愿往生十方国 必定不生边地贱 何况杂形畜生类
阿难若有诸国土 州县聚落饥荒疫 或复刀兵贼难斗 兼余一切厄难地
写此神咒安城门 并诸支提脱阇上 令其国土诸众生 奉迎斯咒念此咒 礼拜恭敬一心供 令其人民各身佩 或各安所居宅地 一切灾厄悉销灭
佛言阿难汝应知! 在在处处国土众 天龙欢喜有此咒 风雨顺时五谷丰 兆庶安乐民富泰
亦复能镇诸妖魔 一切恶星随变怪 灾障不起人无夭 杻械枷锁不着身 昼夜安眠无恶梦
阿难是诸娑婆界 八万四千灾恶星 二八恶星为上首 复有八大恶星主
作种种形现世时 能生众生种种灾 有此咒地皆消灭 十二由旬结界地 诸恶灾祥永不入
是故如来宣此咒 于未来世十方国 保护初学修行者 入三摩地心泰�� 得大安隐无忧患 更无一切魔鬼神 及无始来冤宿殃 旧业陈债来相害
汝及众中诸有学 及未来世修行者 如法持戒依坛场 所受戒主清净僧 持此咒心不疑悔 是善男子是比丘 于此父母所生身 不得心通不成道 十方如来便妄语
会中佛说是语已 护法金刚无量数 一时合掌顶礼佛 而白佛言称如是
我当诚心大勇猛 保护如是修行者 尔时梵王天帝释 四天大王及部属 亦于佛前同顶礼 而白佛言称如是 审有如是修学人 我当尽心诚保护 令其一生作如愿
复有无量药叉将 富单那王罗刹王 鸠槃茶王毗舍遮 频那夜迦大鬼王 及诸鬼帅及部众 合掌顶礼于佛前 我亦誓愿护是人 令菩提心速圆满
日月天子复无量 风师雨师及云师 雷师水师电伯等 年岁巡官星眷属 顶礼佛足于会中 而白佛言称如是: 我亦保护修行人 安立道场得无畏
山神海神复无量 一切土地及水陆 空行万物之精祇 无色界天风神王 同时稽首于佛前 而白佛言称如是: 我亦保护修行人 得成菩提无魔事
尔时八万四千数 恒沙俱胝那由他 金刚藏王菩萨众 在大会中从座起 顶礼佛足白佛言: 世尊如我等辈众 所修功业久成道 不取涅槃随此咒 救护众生于末世 修三摩地正修者
如是修心求正定 若在道场及余行 乃至散心游聚落 我等徒众常随从 侍卫此人无闪失
纵令魔王及鬼众 大自在天求方便 终不可得其便利 诸小鬼神或邪妖 去此善人十由旬 除彼发心乐修禅 世尊如是恶魔邪 若魔眷属为恶障 欲来侵扰是善人 我以宝杵碎其首 犹如微尘不复碍 恒令此人作如愿
阿难即时从座起 顶礼佛足白佛言: 我辈愚钝好多闻 于诸漏心未出离
蒙佛慈诲得正修 身心快然大饶益 世尊阿难有一问 如是修证佛三昧 未到涅槃未究竟 云何名为干慧地 四十四心是云何? 得修行目何渐次? 诣何方所名入地? 等觉菩萨云何为? 五体投地是语已 大众一心伫佛音 瞪瞢瞻仰待佛言
尔时世尊赞阿难: 善哉善哉汝是问! 汝等乃能普为众 及诸末世诸众生 修三摩地求大乘 终大涅槃从凡夫 悬示无上正行路 汝今谛听为汝说! 阿难大众合掌礼 刳心默然愿受教
佛言阿难汝当知 妙性圆明离名相 本来无有诸众生 因妄有生因生灭 生灭名妄��妄真
佛称无上菩提心 二转依号大涅槃 佛言阿难汝当知! 汝今欲修三摩地 直诣如来大涅槃 先当识此诸众生 二颠倒因起世界 颠倒不生妄不起 真三摩地即如来
佛言阿难汝当知! 众生颠倒云何为? 由性明心明圆故 因明发性妄见生
毕竟无成究竟有 此有所有非因因 住所住相无根本 本此无住无起灭 建立世界及众生
迷本圆明生虚妄 妄性无体非有依 将欲复真真非真 欲真已非真如性 非真求复成非相
非生非住复非心 非法非非展转生 生力发明熏成业 同业相感因有感 相灭相生生生灭 众生颠倒由是故
佛言阿难汝当知! 云何名为性颠倒? 是有所有妄生有 分段妄生此界立
非因所因无住住 迁流不住此世成 三世四方合相涉 变化众生十二类
是故世界动有声 因声有色因色香 因香有触触有味 因味知法法本妄
六乱妄想成业性 十二区分此轮转 声香味触故世间 穷十二变一旋复
乘此轮转颠倒相 是有世界以卵生 胎生湿生及化生 有色无色有无想 若非有色非无色 若非有想非无想
佛言阿难汝当知! 由因世界妄轮回 动颠倒故合气成 八万四千沉飞想 卵羯逻蓝是故有 流转国土成卵生 鱼鸟龟蛇类充塞
由因世界染轮回 欲颠倒故合滋成 八万四千横竖想 胎遏蒲昙是故有 流转国土成胎生 人畜龙仙类充塞
由因世界执轮回 趣颠倒故合暖成 八万四千翻覆想 如是故有湿蔽尸 流转国土成湿生 含蠢蝡动类充塞
由因世界变轮回 假颠倒故合触成 八万四千新故想 化相羯南是故有 流转国土成化生 转蜕飞行类充塞
由因世界碍轮回 障颠倒故合着成 八万四千精耀想 色相羯南是故有 流转国土色相生 休咎精明类充塞
由因世界销轮回 惑颠倒故合暗成 八万四千阴隐想 无色羯南是故有 流转国土生无色 空散销沉类充塞
由因世界罔轮回 影颠倒故合忆成 八万四千潜结想 想相羯南是故有 流转国土想相生 神鬼精灵类充塞
由因世界愚轮回 痴颠倒故合顽成 八万四千枯槁想 无想羯南是故有 流转国土神化土 木金石类充塞
由因世界待轮回 伪颠倒故合染成 八万四千因依想 成色羯南非有色 流转国土诸水母 以虾为目类充塞
由因世界引轮回 性颠倒故合咒成 八万四千召乱想 由是故有非无色 无色羯南流国土 咒诅厌生类充塞
由因世界妄轮回 罔颠倒故合异成 八万四千互乱想 如是故有非有想 成想羯南流国土 彼蒲卢等是其类 异质相成类充塞
由因世界怨轮回 杀颠倒故合怪成 八万四千食父母 非无想相是想故 无想羯南流国土 附块为儿如土枭 及破镜鸟行如是 以毒树果抱为子 子成父母遭其食 其类充塞怨轮回
是名众生十二类
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groyanderson · 4 years ago
Text
☆プロトタイプ版☆ ひとみに映る影シーズン2 第七話「復活、ワヤン不動」
☆プロトタイプ版☆ こちらは電子書籍「ひとみに映る影 シーズン2」の 無料プロトタイプ版となります。 誤字脱字等修正前のデータになりますので、あしからずご了承下さい。
☆ここから買おう☆
(シーズン2あらすじ) 私はファッション��デルの紅一美。 旅番組ロケで訪れた島は怪物だらけ!? 霊能者達の除霊コンペとバッティングしちゃった! 実は私も霊感あるけど、知られたくないなあ…… なんて言っている場合じゃない。 諸悪の根源は恩師の仇、金剛有明団だったんだ! 憤怒の化身ワヤン不動が、今度はリゾートで炸裂する!!
pixiv版 (※内容は一緒です。)
དང་པོ་
 ニライカナイから帰還した私達はその後、魔耶さんに呼ばれて食堂へ向かう。食堂内では五寸釘愚連隊と生き残った河童信者が集合していた。更に最奥のテーブルには、全身ボッコボコにされたスーツ姿の男。バリカンか何かで雑に剃り上げられた頭頂部を両手で抑えながら、傍らでふんぞり返る禍耶さんに怯えて震えている。 「えーと……お名前、誰さんでしたっけ」  この人は確か、河童の家をリムジンに案内していたアトム社員だ。特徴的な名前だった気はするんだけど、思い出せない。 「あっ……あっ……」 「名乗れ!」 「はひいぃぃ! アトムツアー営業部の五間擦平雄(ごますり ひらお)と申します!」  禍耶さんに凄まれ、五間擦氏は半泣きで名乗った。少なくともモノホンかチョットの方なんだろう。すると河童信者の中で一番上等そうなバッジを付けた男が席を立ち、机に手をついて私達に深々と頭を下げた。 「紅さん、志多田さん。先程は家のアホ大師が大っっっ変ご迷惑をおかけ致しました! この落とし前は我々河童の家が後日必ず付けさせて頂きます!」 「い、いえそんな……って、その声まさか、昨年のお笑いオリンピックで金メダルを総ナメしたマスク・ド・あんこう鍋さんじゃないですか! お久しぶりですね!?」  さすがお笑い界のトップ組織、河童の家だ。ていうか仕事で何度か会ったことあるのに素顔初めて見た。 「あお久しぶりっす! ただこちらの謝罪の前に、お二人に話さなきゃいけない事があるんです。ほら説明しろボケナスがッ!!」  あんこう鍋さんが五間擦氏の椅子を蹴飛ばす。 「ぎゃひぃ! ごご、ご説明さひぇて頂きますぅぅぅ!!」  五間擦氏は観念して、千里が島とこの除霊コンペに関する驚愕の事実を私達に洗いざらい暴露した。その全貌はこうだ。  千里が島では散減に縁を奪われた人間が死ぬと、『金剛の楽園』と呼ばれる何処かに飛び去ってしまうと言い伝えられている。そうなれば千里が島には人間が生きていくために必要な魂の素が枯渇し、乳幼児の生存率が激減してしまうんだ。そのため島民達は縁切り神社を建て、島外の人々を呼びこみ縁を奪って生き延びてきたのだという。  アトムグループが最初に派遣した建設会社社員も伝説に違わず祟られ、全滅。その後も幾つかの建設会社が犠牲になり、ようやく事態を重く受け止めたアトムが再開発中断を検討し始めた頃。アトムツアー社屋に幽霊が現れるという噂が囁かれ始めた。その霊は『日本で名のある霊能者達の縁を散減に献上すれば千里が島を安全に開発させてやろう』と宣うらしい。そんな奇妙な話に最初は半信半疑だった重役達も、『その霊がグループ重役会議に突如現れアトムツアーの筆頭株主を目の前で肉襦袢に変えた』事で霊の要求を承認。除霊コンペティションを行うと嘘の依頼をして、日本中から霊能者を集めたのだった。  ところが行きの飛行機で、牛久大師は袋の鼠だったにも関わらず中級サイズの散減をあっさり撃墜してしまう。その上業界ではインチキ疑惑すら噂されていた加賀繍へし子の取り巻きに散減をけしかけても、突然謎のレディース暴走族幽霊が現れて返り討ちにされてしまった。度重なる大失態に激怒した幽霊はアトムツアーイケメンライダーズを全員肉襦袢に変えて楽園へ持ち帰ってしまい、メタボ体型のため唯一見逃された五間擦氏はついに牛久大師に命乞いをする。かくして大師は大散減を退治すべく、祠の封印を剥がしたのだった。以上の話が終わると、私は五間擦氏に馬乗りになって彼の残り少ない髪の毛を引っこ抜き始めた。 「それじゃあ、大師は初めから封印を解くつもりじゃなかったんですか?」 「ぎゃあああ! 毛が毛が毛がああぁぁ!!」  あんこう鍋さんは首を横に振る。 「とんでもない。あの人は力がどうとか言うタイプじゃありません。地上波で音波芸やろうとしてNICを追放されたアホですよ? 我々はただの笑いと金が大好きなぼったくりカルトです」 「ほぎゃああぁぁ! 俺の貴重な縁があぁぁ、抜けるウゥゥーーーッ!!」 「そうだったんですね。だから『ただの関係者』って言ってたんだ……」  そういう事だったのか。全ては千里が島、���トムグループ、ひいては金剛有明団までもがグルになって仕掛けた壮大なドッキリ……いや、大量殺人計画だったんだ! 大師も斉二さんもこいつらの手の上で踊らされた挙句逝去したとわかった以上、大散減は尚更許してはおけない。  魔耶さんと禍耶さんは食堂のカウンターに登り、ハンマーを掲げる。 「あなた達。ここまでコケにされて、大散減を許せるの? 許せないわよねぇ?」 「ここにいる全員で謀反を起こしてやるわ。そこの祝女と影法師使いも協力しなさい」  禍耶さんが私達を見る。玲蘭ちゃんは数珠を持ち上げ、神人に変身した。 「全員で魔物(マジムン)退治とか……マジウケる。てか、絶対行くし」 「その肉襦袢野郎とは個人的な因縁もあるんです。是非一緒に滅ぼさせて下さい!」 「私も! さ、さすがに戦うのは無理だけど……でもでも、出来ることはいっぱい手伝うよ!」  佳奈さんもやる気満々のようだ。 「決まりね! そうしたら……」 「その作戦、私達も参加させて頂けませんか?」  食堂入口から突然割り込む声。そこに立っていたのは…… 「斉一さん!」「狸おじさん!」  死の淵から復活した後女津親子だ! 斉一さんは傷だらけで万狸ちゃんに肩を借りながらも、極彩色の細かい糸を纏い力強く微笑んでいる。入口近くの席に座り、経緯を語りだした。 「遅くなって申し訳ない。魂の三分の一が奪われたので、万狸に体を任せて、斉三と共にこの地に住まう魂を幾つか分けて貰っていました」  すると斉一さんの肩に斉三さんも現れる。 「診療所も結界を張り終え、とりあえず負傷者の安全は確保した。それと、島の魂達から一つ興味深い情報を得ました」 「聞かせて、狸ちゃん」  魔耶さんが促す。 「御戌神に関する、正しい歴史についてです」  時は遡り江戸時代。そもそも江戸幕府征服を目論んだ物の怪とは、他ならぬ金剛有明団の事だった。生まれた直後に悪霊を埋め込まれた徳松は、ゆくゆくは金剛の意のままに動く将軍に成長するよう運命付けられていたんだ。しかし将軍の息子であった彼は神職者に早急に保護され、七五三の儀式が行われる。そこから先の歴史は青木さんが説明してくれた通り。けど、この話には続きがあるらしい。 「大散減の祠などに、星型に似たシンボルを見ませんでしたか? あれは大散減の膨大な力の一部を取り込み霊能力を得るための、給電装置みたいな物です。もちろんその力を得た者は縁が失せて怪物になるのですが、当時の愚か者共はそうとは知らず、大散減を『徳川の埋蔵金』と称し挙って島に移住しました」  私達したたびが探していた徳川埋蔵金とはなんと、金剛の膨大な霊力と衆生の縁の塊、大散減の事だったんだ。ただ勿論、霊能者を志し島に近付いた者達はまんまと金剛に魂を奪われた。そこで彼らの遺族は風前の灯火だった御戌神に星型の霊符を貼り、自分達の代わりに島外の人間から縁を狩る猟犬に仕立て上げたんだ。こうして御戌神社ができ、御戌神は地中で飢え続ける大散減の手足となってせっせと人の縁を奪い続けているのだという。 「千里が島の民は元々霊能者やそれを志した者の子孫です。多少なりとも力を持つ者は多く、彼らは代々『御戌神の器』を選出し、『人工転生』を行ってきました」  斉一さんが若干小声で言う。人工転生。まだ魂が未発達の赤子に、ある特定の幽霊やそれに纏わる因子を宛てがって純度の高い『生まれ変わり』を作る事。つまり金剛が徳松に行おうとしたのと同じ所業だ。 「じゃあ、今もこの島のどこかに御戌様の生まれ変わりがいるんですか?」  佳奈さんは飲み込みが早い。 「ええ。そして御戌神は、私達が大散減に歯向かえば再び襲ってきます。だからこの戦いでは、誰かが対御戌神を引き受け……最悪、殺生しなければなりません」 「殺生……」  生きている人間を、殺す。死者を成仏させるのとは訳が違う話だ。魔耶さんは胸の釘を握りしめた。 「そのワンちゃん、なんて可哀想なの……可哀想すぎる。攻撃なんて、とてもできない」 「魔耶、今更甘えた事言ってんじゃないわよ。いくら生きてるからって、中身は三百年前に死んだバケモノよ! いい加減ラクにしてやるべきだわ」 「でもぉ禍耶、あんまりじゃない! 生まれた時から不幸な運命を課せられて、それでも人々のために戦ったのに。結局愚かな連中の道具にされて、利用され続けているのよ!」 (……!)  道具。その言葉を聞いた途端、私は心臓を握り潰されるような恐怖を覚えた。本来は衆生を救うために手に入れた力を、正反対の悪事に利用されてしまう。そして余所者から邪尊(バケモノ)と呼ばれ、恐れられるようになる……。 ―テロリストですよ。ドマル・イダムという邪尊の力を操ってチベットを支配していた、最悪の独裁宗派です―  自分の言った言葉が心に反響する。御戌神が戦いの中で見せた悲しそうな目と、ニライカナイで見たドマルの絶望的な目が日蝕のように重なる。瞳に映ったあの目は……私自身が前世で経験した地獄の、合わせ鏡だったんだ。 「……魔耶さん、禍耶さん。御戌神は、私が相手をします」 「え!?」 「正気なの!? 殺生なんて私達死者に任せておけばいいのよ! でないとあんた、���人罪に問われるかもしれないのに……」  圧。 「ッ!?」  私は無意識に、前世から受け継がれた眼圧で総長姉妹を萎縮させた。 「……悪魔の心臓は御仏を産み、悪人の遺骨は鎮魂歌を奏でる。悪縁に操られた御戌神も、必ず菩提に転じる事が出来るはずです」  私は御戌神が誰なのか、確証を持っている。本当の『彼』は優しくて、これ以上金剛なんかの為に罪を重ねてはいけない人。たとえ孤独な境遇でも人との縁を大切にする、子犬のようにまっすぐな人なんだ。 「……そう。殺さずに解決するつもりなのね、影法師使いさん。いいわ。あなたに任せます」  魔耶さんがスレッジハンマーの先を私に突きつける。 「失敗したら承知しない。私、絶対に承知しないわよ」  私はそこに拳を当て、無言で頷いた。  こうして話し合いの結果、対大散減戦における役割分担が決定した。五寸釘愚連隊と河童の家、玲蘭ちゃんは神社で大散減本体を引きずり出し叩く。私は御戌神を探し、神社に行かれる前に説得か足止めを試みる。そして後女津家は私達が解読した暗号に沿って星型の大結界を巡り、大散減の力を放出して弱体化を図る事になった。 「志多田さん。宜しければ、お手伝いして頂けませんか?」  斉一さんが立ち上がり、佳奈さんを見る。一方佳奈さんは申し訳なさそうに目を伏せた。 「で……でも、私は……」  すると万狸ちゃんが佳奈さんの前に行く。 「……あのね。私のママね、災害で植物状態になったの。大雨で津波の警報が出て、パパが車で一生懸命高台に移動したんだけど、そこで土砂崩れに遭っちゃって」 「え、そんな……!」 「ね、普通は不幸な事故だと思うよね。でもママの両親、私のおじいちゃんとおばあちゃん……パパの事すっごく責めたんだって。『お前のせいで娘は』『お前が代わりに死ねば良かったのに』みたいに。パパの魂がバラバラに引き裂かれるぐらい、いっぱいいっぱい責めたの」  昨晩斉三さんから聞いた事故の話だ。奥さんを守れなかった上にそんな言葉をかけられた斉一さんの気持ちを想うと、自分まで胸が張り裂けそうだ。けど、奥さんのご両親が取り乱す気持ちもまたわかる。だって奥さんのお腹には、万狸ちゃんもいたのだから……。 「三つに裂けたパパ……斉一さんは、生きる屍みたいにママの為に無我夢中で働いた。斉三さんは病院のママに取り憑いたまま、何年も命を留めてた。それから、斉二さんは……一人だけ狸の里(あの世)に行って、水子になっちゃったママの娘を育て続けた」 「!」 「斉二さんはいつも言ってたの。俺は分裂した魂の、『後悔』の側面だ。天災なんて誰も悪くないのに、目を覚まさない妻を恨んでしまった。妻の両親を憎んでしまった。だからこんなダメな狸親父に万狸が似ないよう、お前をこっちで育てる事にしたんだ。って」  万狸ちゃんが背筋をシャンと伸ばし、顔を上げた。それは勇気に満ちた笑顔だった。 「だから私知ってる。佳奈ちゃんは一美ちゃんを助けようとしただけだし、ぜんぜん悪いだなんて思えない。斉二さんの役割は、完璧に成功してたんだよ」 「万狸ちゃん……」 「あっでもでも、今回は天災じゃなくて人災なんだよね? それなら金剛有明団をコッテンパンパンにしないと! 佳奈ちゃんもいっぱい悲しい思いした被害者でしょ?」  万狸ちゃんは右手を佳奈さんに差し出す。佳奈さんも顔を上げ、その手を強く握った。 「うん。金剛ぜったい許せない! 大散減の埋蔵金、一緒にばら撒いちゃお!」  その時、ホテルロビーのからくり時計から音楽が鳴り始めた。曲は民謡『ザトウムシ』。日没と大散減との対決を告げるファンファーレだ。魔耶さんは裁判官が木槌を振り下ろすように、机にハンマーを叩きつけた! 「行ぃぃくぞおおおぉぉお前らああぁぁぁ!!!」 「「「うおおぉぉーーーっ!!」」」  総員出撃! ザトウムシが鳴り響く逢魔が時の千里が島で今、日本最大の除霊戦争が勃発する!
གཉིས་པ་
 大散減討伐軍は御戌神社へ、後女津親子と佳奈さんはホテルから最寄りの結界である石見沼へと向かった。さて、私も御戌神の居場所には当てがある。御戌神は日蝕の目を持つ獣。それに因んだ地名は『食虫洞』。つまり、行先は新千里が島トンネル方面だ。  薄暗いトンネル内を歩いていると、電灯に照らされた私の影が勝手に絵を描き始めた。空で輝く太陽に向かって無数の虫が冒涜的に母乳を吐く。太陽は穢れに覆われ、光を失った日蝕状態になる。闇の緞帳(どんちょう)に包まれた空は奇妙な星を孕み、大きな獣となって大地に災いをもたらす。すると地平線から血のように赤い月が昇り、星や虫を焼き殺しながら太陽に到達。太陽と重なり合うやいなや、天上天下を焼き尽くすほどの輝きを放つのだった……。  幻のような影絵劇が終わると、私はトンネルを抜けていた。目の前のコンビニは既に電気が消えている。その店舗全体に、腐ったミルクのような色のペンキで星型に線を一本足した記号が描かれている。更に接近すると、デッキブラシを持った白髪の偉丈夫が記号を消そうと悪戦苦闘しているのが見えた。 「あ、紅さん」  私に気がつき振り返った青木さんは、足下のバケツを倒して水をこぼしてしまった。彼は慌ててバケツを立て直す。 「見て下さい。誰がこんな酷い事を? こいつはコトだ」  青木さんはデッキブラシで星型の記号を擦る。でもそれは掠れすらしない��� 「ブラシで擦っても? ケッタイな落書きを……っ!?」  指で直接記号に触れようとした青木さんは、直後謎の力に弾き飛ばされた。 「……」  青木さんは何かを思い出したようだ。 「紅さん。そういえば僕も、ケッタイな体験をした事が」  夕日が沈んでいき、島中の店や防災無線からはザトウムシが鳴り続ける。 「犬に吠えられ、夜中に目を覚まして。永遠に飢え続ける犬は、僕のおつむの中で、ひどく悲しい声で鳴く。それならこれは幻聴か? 犬でないなら幽霊かもだ……」  青木さんは私に背を向け、沈む夕日に引き寄せられるように歩きだした。 「早くなんとかせにゃ。犬を助けてあげなきゃ、僕までどうにかなっちまうかもだ。するとどこからか、目ん玉が潰れた双頭の毛虫がやって来て、口からミルクを吐き出した。僕はたまらず、それにむしゃぶりつく」  デッキブラシから滴った水が地面に線を引き、一緒に夕日を浴びた青木さんの影も伸びていく。 「嫌だ。もう犬にはなりたくない。きっとおっとろしい事が起きるに違いない。満月が男を狼にするみたいに、毛虫の親玉を解き放つなど……」 「青木さん」  私はその影を呼び止めた。 「この落書きは、デッキブラシじゃ落とせません」 「え?」 「これは散減に穢された縁の母乳、普通の人には見えない液体なんです」  カターン。青木さんの手からデッキブラシが落ちた途端、全てのザトウムシが鳴り止んだ。青木さんはゆっくりとこちらへ振り向く。重たい目隠れ前髪が狛犬のたてがみのように逆立ち、子犬のように輝く目は濁った穢れに覆われていく。 「グルルルル……救、済、ヲ……!」  私も胸のペンダントに取り付けたカンリンを吹いた。パゥーーー……空虚な悲鳴のような音が響く。私の体は神経線維で編まれた深紅の僧衣に包まれ、激痛と共に影が天高く燃え上がった。 「青木さん。いや、御戌神よ。私は紅の守護尊、ワヤン不動。しかし出来れば、お前とは戦いたくない」  夕日を浴びて陰る日蝕の戌神と、そこから伸びた赤い神影(ワヤン)が対峙する。 「救済セニャアアァ!」 「そうか。……ならば神影繰り(ワヤン・クリ)の時間だ!」  空の月と太陽が見下ろす今この時、地上で激突する光の神と影の明王! 穢れた色に輝く御戌神が突撃! 「グルアアァァ!」  私はティグクでそれをいなし、黒々と地面に伸びた自らの影を滑りながら後退。駐車場の車止めをバネに跳躍、傍らに描かれた邪悪な星目掛けてキョンジャクを振るった。二〇%浄化! 分解霧散した星の一片から大量の散減が噴出! 「マバアアアァァ!!」「ウバアァァァ!」  すると御戌神の首に巻かれた幾つもの頭蓋骨が共鳴。ケタケタと震えるように笑い、それに伴い御戌神も悶絶する。 「グルアァァ……ガルァァーーーッ!!」  咆哮と共に全骨射出! 頭蓋骨は穢れた光の尾を引き宙を旋回、地を這う散減共とドッキングし牙を剥く! 「がッは!」  毛虫の体を得た頭蓋骨が飛び回り、私の血肉を穿つ。しかし反撃に転じる寸前、彼らの正体を閃いた。 「さては歴代の『器』か」  この頭蓋骨らは御戌神転生の為に生贄となった、どこの誰が産んだかもわからない島民達の残滓だ。なら速やかに解放せねばなるまい! 人頭毛虫の猛攻をティグクの柄やキョンジャクで防ぎながら、ティグクに付随する旗に影炎を着火! 「お前達の悔恨を我が炎の糧とする! どおぉりゃああぁーーーーっ!!」   ティグク猛回転、憤怒の地獄大車輪だ! 飛んで火に入る人頭毛虫らはたちどころに分解霧散、私の影体に無数の苦痛と絶望と飢えを施す! 「クハァ……ッ! そうだ……それでいい。私達は仲間だ、この痛みを以て金剛に汚された因果を必ずや断ち切ってやろう! かはあぁーーーっはーーっはっはっはっはァァーーッ!!!」  苦痛が無上の瑜伽へと昇華しワヤン不動は呵呵大笑! ティグクから神経線維の熱線が伸び大車輪の火力を増強、星型記号を更に焼却する! 記号は大文字焼きの如く燃え上がり穢れ母乳と散減を大放出! 「ガウルル、グルルルル!」  押し寄せる母乳と毛虫の洪水に突っ込み喰らおうと飢えた御戌神が足掻く。だがそうはさせるものか、私の使命は彼を穢れの悪循環から救い出す事だ。 「徳川徳松ゥ!」 「!」  人の縁を奪われ、畜生道に堕ちた哀しき少年の名を呼ぶ。そして丁度目の前に飛んできた散減を灼熱の手で掴むと、轟々と燃え上がるそれを遠くへ放り投げた! 「取ってこい!」 「ガルアァァ!!」  犬の本能が刺激された御戌神は我を忘れ散減を追う! 街路樹よりも高く跳躍し口で見事キャッチ、私目掛けて猪突猛進。だがその時! 彼の本体である衆生が、青木光が意識を取り戻した! (戦いはダメだ……穢れなど!)  日蝕の目が僅かに輝きを増す。御戌神は空中で停止、咥えている散減を噛み砕いて破壊した! 「かぁははは、いい子だ徳松よ! ならば次はこれだあぁぁ!!」  私はフリスビーに見立ててキョンジャクを投擲。御戌神が尻尾を振ってハッハとそれを追いかける。キョンジャクは散減共の間をジグザグと縫い進み、その軌跡を乱暴になぞる御戌神が散減大量蹂躙! 薄汚い死屍累々で染まった軌跡はまさに彼が歩んできた畜生道の具現化だ!! 「衆生ぉぉ……済度ぉおおおぉぉぉーーーーっ!!!」  ゴシャアァン!!! ティグクを振りかぶって地面に叩きつける! 視神経色の亀裂が畜生道へと広がり御戌神の背後に到達。その瞬間ガバッと大地が割れ、那由多度に煮え滾る業火を地獄から吹き上げた! ズゴゴゴゴガガ……マグマが滾ったまま連立する���大灯篭の如く隆起し散減大量焼却! 振り返った御戌神の目に陰る穢れも、紅の影で焼き溶かされていく。 「……クゥン……」  小さく子犬のような声を発する御戌神。私は憤怒相を収め、その隣に立つ。彼の両眼からは止めどなく饐えた涙が零れ、その度に日蝕が晴れていく。気がつけば空は殆ど薄暗い黄昏時になっていた。闇夜を迎える空、赤く燃える月と青く輝く太陽が並ぶ大地。天と地の光彩が逆転したこの瞬間、私達は互いが互いの前世の声を聞いた。 『不思議だ。あの火柱見てると、ぼくの飢えが消えてく。お不動様はどんな法力を?』 ༼ なに、特別な力ではない。あれは慈悲というものだ ༽ 『じひ』  徳松がドマルの手を握った。ドマルの目の奥に、憎しみや悲しみとは異なる熱が込み上がる。 『救済の事で?』 ༼ ……ま、その類いといえばそうか。童よ、あなたは自分を生贄にした衆生が憎いか? ༽  徳松は首を横に振る。 『ううん、これっぽっちも。だってぼく、みんなを救済した神様なんだから』  すると今度はドマルが両手で徳松の手を包み、そのまま深々と合掌した。 ༼ なら、あなたはもう大丈夫だ。衆生との縁に飢える事は、今後二度とあるまい ༽
གསུམ་པ་
 時刻は……わからないけど、日は完全に沈んだ。私も青木さんも地面に大の字で倒れ、炎上するコンビニや隆起した柱状節理まみれの駐車場を呆然と眺めている。 「……アーーー……」  ふと青木さんが、ずっと咥えっ放しだったキョンジャクを口から取り出した。それを泥まみれの白ニットで拭い、私に返そうとして……止めた。 「……洗ってからせにゃ」 「いいですよ。この後まだいっぱい戦うもん」 「大散減とも? おったまげ」  青木さんにキョンジャクを返してもらった。 「実は、まだ学生の時……友達が僕に、『彼女にしたい芸能人は?』って質問を。けど特に思いつかなくて、その時期『非常勤刑事』やってたので紅一美ちゃんと。そしたら今回、本当にしたたびさんが……これが縁ってやつなら、ちぃと申し訳ないかもだ」 「青木さんもですか」 「え?」 「私も実は、この間雑誌で『好きな男性のタイプは何ですか』って聞かれて、なんか適当に答えたんですけど……『高身長でわんこ顔な方言男子』とかそんなの」 「そりゃ……ふふっ。いやけど、僕とは全然違うイメージだったかもでしょ?」 「そうなんですよ。だから青木さんの素顔初めて見た時、キュンときたっていうより『あ、実在するとこんな感じなの!?』って思っちゃったです。……なんかすいません」  その時、遠くでズーンと地鳴りのような音がした。蜃気楼の向こうに耳をそばだてると、怒号や悲鳴のような声。どうやら敵の大将が地上に現れたようだ。 「行くので?」 「大丈夫。必ず戻ってきます」  私は重い体を立ち上げ、ティグクとキョンジャクに再び炎を纏った。そして山頂の御戌神社へ出発…… 「きゃっ!」  しようとした瞬間、何かに服の裾を掴まれたかのような感覚。転びそうになって咄嗟にティグクの柄をつく。足下を見ると、小さなエネルギー眼がピンのように私の影を地面と縫いつけている。 ༼ そうはならんだろ、小心者娘 ༽ 「ちょ、ドマル!?」  一方青木さんの方も、徳松に体を勝手に動かされ始めた。輝く両目から声がする。 『バカ! あそこまで話しといて告白しねえなど!? このボボ知らず!』 「ぼっ、ぼっ、ボボ知らずでねえ! 嘘こくなぁぁ!」  民謡の『お空で見下ろす出しゃばりな月と太陽』って、ひょっとしたら私達じゃなくてこの前世二人の方を予言してたのかも。それにしてもボボってなんだろ、南地語かな。 ༼ これだよ ༽  ドマルのエネルギー眼が炸裂し、私は何故かまた玲蘭ちゃんの童貞を殺す服に身を包んでいた。すると何故か青木さんが悶絶し始めた。 「あややっ……ちょっと、ダメ! 紅さん! そんなオチチがピチピチな……こいつはコトだ!!」  ああ、成程。ボボ知らずってそういう…… 「ってだから、私の体で検証すなーっ! ていうか、こんな事している間にも上で死闘が繰り広げられているんだ!」 ༼ だからぁ……ああもう! 何故わからないのか! ヤブユムして行けと言っているんだ、その方が生存率上がるしスマートだろ! ༽ 「あ、そういう事?」  ヤブユム。確か、固い絆で結ばれた男女の仏が合体して雌雄一体となる事で色々と超越できる、みたいな意味の仏教用語……だったはず。どうすればできるのかまではサッパリわかんないけど。 「え、えと、えと、紅さん……一美ちゃん!」 「はい……う、うん、光君!」  両前世からプレッシャーを受け、私と光君は赤面しながら唇を近付ける。 『あーもー違う! ヤブユムっていうのは……』 ༼ まーまー待て。ここは現世を生きる衆生の好きにさせてみようじゃないか ༽  そんな事言われても困る……それでも、今私と光君の想いは一つ、大散減討伐だ。うん、多分……なんとかなる! はずだ!
བཞི་པ་
 所変わって御戌神社。姿を現した大散減は地中で回復してきたらしく、幾つか継ぎ目が見えるも八本足の完全体だ。十五メートルの巨体で暴れ回り、周囲一帯を蹂躙している。鳥居は倒壊、御戌塚も跡形もなく粉々に。島民達が保身の為に作り上げた生贄の祭壇は、もはや何の意味も為さない平地と化したんだ。  そんな絶望的状況にも関わらず、大散減討伐軍は果敢に戦い続ける。五寸釘愚連隊がバイクで特攻し、河童信者はカルトで培った統率力で彼女達をサポート。玲蘭ちゃんも一枚隔てた異次元から大散減を構成する無数の霊魂を解析し、虱潰しに破壊していく。ところが、 「あグッ!」  バゴォッ!! 大散減から三メガパスカル級の水圧で射出���れた穢れ母乳が、河童信者の一人に直撃。信者の左半身を粉砕! 禍耶さんがキュウリの改造バイクで駆けつける。 「河童信者!」 「あ、か……禍耶の姐御……。俺の、魂を……吸収……し……」 「何言ってるの、そんな事できるわけないでしょ!?」 「……大散、ぃに、縁……取られ、嫌、……。か、っぱは……キュウリ……好き……っか……ら…………」  河童信者の瞳孔が開いた。禍耶さんの唇がわなわなと痙攣する。 「河童って馬鹿ね……最後まで馬鹿だった……。貴方の命、必ず無駄にはしないわ!」  ガバッ、キュイイィィ! 息絶えて間もない河童信者の霊魂が分解霧散する前に、キュウリバイクの給油口に吸収される。ところが魔耶さんの悲鳴! 「禍耶、上ぇっ!!」 「!」  見上げると空気を読まず飛びかかってきた大散減! 咄嗟にバイクを発進できず為す術もない禍耶さんが絶望に目を瞑った、その時。 「……え?」  ……何も起こらない。禍耶さんはそっと目を開けようとする。が、直後すぐに顔を覆った。 「眩しっ! この光は……あああっ!」  頭上には朝日のように輝く青白い戌神。そしてその光の中、轟々と燃える紅の不動明王。光と影、男と女が一つになったその究極仏は、大散減を遥か彼方に吹き飛ばし悠然と口を開いた。 「月と太陽が同時に出ている、今この時……」 「瞳に映る醜き影を、憤怒の炎で滅却する」 「「救済の時間だ!!!」」  カッ! 眩い光と底知れぬ深い影が炸裂、落下中の大散減を再びスマッシュ! 「遅くなって本当にすみません。合体に手間取っちゃって……」  御戌神が放つ輝きの中で、燃える影体の私は揺らめく。するとキュウリバイクが言葉を発した。 <問題なし! だぶか登場早すぎっすよ、くたばったのはまだ俺だけです。やっちまいましょう、姐さん!> 「そうね。行くわよ河童!」  ドルルン! 輩悪苦満誕(ハイオクまんたん)のキュウリバイクが発進! 私達も共に駆け出す。 「一美ちゃん、火の準備を!」 「もう出来ているぞぉ、カハァーーーッハハハハハハァーーー!!」  ティグクが炎を噴く! 火の輪をくぐり青白い肉弾が繰り出す! 巨大サンドバッグと化した大散減にバイクの大軍が突撃するゥゥゥ!!! 「「「ボァガギャバアアアアァァアアア!!!」」」  八本足にそれぞれ付いた顔が一斉絶叫! 中空で巻き散らかされた大散減の肉片を無数の散減に変えた! 「灰燼に帰すがいい!」  シャゴン、シャゴン、バゴホオォン!! 御戌神から波状に繰り出される光と光の合間に那由多度の影炎を込め雑魚を一掃! やはりヤブユムは強い。光源がないと力を発揮出来ない私と、偽りの闇に遮られてしまっていた光君。二人が一つになる事で、永久機関にも似た法力を得る事が出来る!  大散減は地に叩きつけられるかと思いきや、まるで地盤沈下のように地中へ潜って行ってしまった。後を追えず停車した五寸釘愚連隊が舌打ちする。 「逃げやがったわ、あの毛グモ野郎」  しかし玲蘭ちゃんは不敵な笑みを浮かべた。 「大丈夫です。大散減は結界に分散した力を補充しに行ったはず。なら、今頃……」  ズドガアアァァァアン!!! 遠くで吹き上がる火柱、そして大散減のシルエット! 「イェーイ!」  呆然と見とれていた私達の後方、数分前まで鳥居があった瓦礫の上に後女津親子と佳奈さんが立っている。 「「ドッキリ大成功ー! ぽーんぽっこぽーん!」」  ぽこぽん、シャララン! 佳奈さんと万狸ちゃんが腹鼓を打ち、斉一さんが弦を爪弾く。瞬間、ドゴーーン!! 今度は彼女らの背後でも火柱が上がった! 「あのねあのね! 地図に書いてあった星の地点をよーく探したら、やっぱり御札の貼ってある祠があったの。それで佳奈ちゃんが凄いこと閃いたんだよ!」 「その名も『ショート回路作戦』! 紙に御札とぴったり同じ絵を写して、それを鏡合わせに貼り付ける。その上に私の霊力京友禅で薄く蓋をして、その上から斉一さんが大散減から力を吸収しようとする。だけど吸い上げられた大散減のエネルギーは二枚の御札の間で行ったり来たりしながら段々滞る。そうとは知らない大散減が内側から急に突進すれば……」  ドォーーン! 万狸ちゃんと佳奈さんの超常理論を実証する火柱! 「さすがです佳奈さん! ちなみに最終学歴は?」 「だからいちご保育園だってば~、この小心者ぉ!」  こんなやり取りも随分と久しぶりな気がする。さて、この後大散減は立て続けに二度爆発した。計五回爆ぜた事になる。地図上で星のシンボルを描く地点は合計六つ、そのうち一つである食虫洞のシンボルは私がコンビニで焼却したアレだろう。 「シンボルが全滅すると、奴は何処へ行くだろうか」  斉三さんが地図を睨む。すると突如地図上に青白く輝く道順が描かれた。御戌神だ。 「でっかい大散減はなるべく広い場所へ逃走を。となると、海岸沿いかもだ。東の『いねとしサンライズビーチ』はサイクリングロードで狭いから、石見沼の下にある『石見海岸』ので」 「成程……って、君はまさか!?」 「青木君!?」  そうか、みんな知らなかったんだっけ。御戌神は遠慮がちに会釈し、かき上がったたてがみの一部を下ろして目隠れ前髪を作ってみせた。光君の面影を認識して皆は納得の表情を浮かべた。 「と……ともかく! ずっと地中でオネンネしてた大散減と違って、地の利はこちらにある。案内するので先回りを!」  御戌神が駆け出す! 私は彼が放つ輝きの中で水上スキーみたいに引っ張られ、五寸釘愚連隊や他の霊能者達も続く。いざ、石見海岸へ!
ལྔ་པ་
 御戌神の太陽の両眼は、前髪によるランプシェード効果が付与されて更に広範囲を照らせるようになった。石見沼に到着した時点で海岸の様子がはっきり見える。まずいことに、こんな時に限って海岸に島民が集まっている!? 「おいガキ共、ボートを降りろ! 早く避難所へ!」 「黙れ! こんな島のどこに安全が!? 俺達は内地へおさらばだ!」  会話から察するに、中学生位の子達が島を脱出しようと試みるのを大人達が引き止めているようだ。ところが間髪入れず陸側から迫る地響き! 危ない! 「救済せにゃ!」  石見の崖を御戌神が飛んだ! 私は光の中で身構える。着地すると同時に目の前の砂が隆起、ザボオオォォン!! 大散減出現! 「かははは、一足遅いわ!」  ズカアァァン!!! 出会い頭に強烈なティグクの一撃! 吹き飛んだ大散減は沿岸道路を破壊し民家二棟に叩きつけられた。建造物損壊と追い越し禁止線通過でダブル罪業加点! 間一髪巻き込まれずに済んだ島民達がどよめく。 「御戌様?」 「御戌様が子供達を救済したので!?」 「それより御戌様の影に映ってる火ダルマは一体!?」  その問いに、陸側から聞き覚えのある声が答える。 「ご先祖様さ!」  ブオォォン! 高級バイクに似つかわしくない凶悪なエンジン音を吹かして現れたのは加賀繍さんだ! 何故かアサッテの方向に数珠を投げ、私の正体を堂々と宣言する。 「御戌神がいくら縁切りの神だって、家族の縁は簡単に切れやしないんだ。徳川徳松を一番気にかけてたご先祖様が仏様になって、祟りを鎮めるんだよ!」 「徳松様を気にかけてた、ご先祖様……」 「まさか、将軍様など!?」 「「「徳川綱吉将軍!!」」」  私は暴れん坊な将軍様の幽霊という事になってしまった。だぶか吉宗さんじゃないけど。すると加賀繍さんの紙一重隣で大散減が復帰! 「マ��ゥウゥゥゥゥウウウ!!!」  神社にいた時よりも甲高い大散減の鳴き声。消耗している証拠だろう。脚も既に残り五本、ラストスパートだ! 「畳み掛けるぞ夜露死苦ッ!」  スクラムを組むように愚連隊が全方位から大散減へ突進、総長姉妹のハンマーで右前脚破壊! 「ぽんぽこぉーーー……ドロップ!!」  身動きの取れなくなった大散減に大かむろが垂直落下、左中央二脚粉砕! 「「「大師の敵ーーーっ!」」」  微弱ながら霊力を持つ河童信者達が集団投石、既に千切れかけていた左後脚切断! 「くすけー、マジムン!」  大散減の内側から玲蘭ちゃんの声。するうち黄色い閃光を放って大散減はメルトダウン! 全ての脚が落ち、最後の本体が不格好な蓮根と化した直後……地面に散らばる脚の一本の顔に、ギョロギョロと蠢く目が現れた。光君の話を思い出す。 ―八本足にそれぞれ顔がついてて、そのうち本物の顔を見つけて潰さないと死なない怪物で!― 「そうか、あっちが真の本体!」  私と光君が同時に動く! また地中に逃げようと飛��上がった大散減本体に光と影は先回りし、メロン格子状の包囲網を組んだ! 絶縁怪虫大散減、今こそお前をこの世からエンガチョしてくれるわあああああああ!! 「そこだーーーッ!! ワヤン不動ーーー!!」 「やっちゃえーーーッ!」「御戌様ーーーッ!」 「「「ワヤン不動オォーーーーーッ!!!」」」 「どおおぉぉるあぁああぁぁぁーーーーーー!!!!」  シャガンッ! 突如大量のハロゲンランプを一斉に焚いたかのように、世界が白一色の静寂に染まる。存在するものは影である私と、光に拒絶された大散減のみ。ティグクを掲げた私の両腕が夕陽を浴びた影の如く伸び、背中で燃える炎に怒れる恩師の馬頭観音相が浮かんだ時……大散減は断罪される! 「世尊妙相具我今重問彼仏子何因縁名為観世音具足妙相尊偈答無盡意汝聴観音行善応諸方所弘誓深如海歴劫不思議侍多千億仏発大清浄願我為汝略説聞名及見身心念不空過能滅諸有苦!」  仏道とは無縁の怪獣よ、己の業に叩き斬られながら私の観音行を聞け! 燃える馬頭観音と彼の骨であるティグクを仰げ! その苦痛から解放されたくば、海よりも深き意志で清浄を願う聖人の名を私がお前に文字通り刻みつけてやる! 「仮使興害意推落大火坑念彼観音力火坑変成池或漂流巨海龍魚諸鬼難念彼観音力波浪不能没或在須弥峰為人所推堕念彼観音力如日虚空住或被悪人逐堕落金剛山念彼観音力不能損一毛!!」  たとえ金剛の悪意により火口へ落とされようと、心に観音力を念ずれば火もまた涼し。苦難の海でどんな怪物と対峙しても決して沈むものか! 須弥山から突き落とされようが、金剛を邪道に蹴落とされようが、観音力は不屈だ! 「或値怨賊繞各執刀加害念彼観音力咸即起慈心或遭王難苦臨刑欲寿終念彼観音力刀尋段段壊或囚禁枷鎖手足被杻械念彼観音力釈然得解脱呪詛諸毒薬所欲害身者念彼観音力還著於本人或遇悪羅刹毒龍諸鬼等念彼観音力時悉不敢害!!」  お前達に歪められた衆生の理は全て正してくれる! 金剛有明団がどんなに強大でも、和尚様や私の魂は決して滅びぬ。磔にされていた抜苦与楽の化身は解放され、悪鬼羅刹四苦八苦を燃やす憤怒の化身として生まれ変わったんだ! 「若悪獣囲繞利牙爪可怖念彼観音力疾走無辺方蚖蛇及蝮蝎気毒煙火燃念彼観音力尋声自回去雲雷鼓掣電降雹澍大雨念彼観音力応時得消散衆生被困厄無量���逼身観音妙智力能救世間苦!!!」  獣よ、この力を畏れろ。毒煙を吐く外道よ霧散しろ! 雷や雹が如く降り注ぐお前達の呪いから全ての衆生を救済してみせよう! 「具足神通力廣修智方便十方諸国土無刹不現身種種諸悪趣地獄鬼畜生生老病死苦以漸悉令滅真観清浄観広大智慧観悲観及慈観常願常瞻仰無垢清浄光慧日破諸闇能伏災風火普明照世間ッ!!!」  どこへ逃げても無駄だ、何度生まれ変わってでも憤怒の化身は蘇るだろう! お前達のいかなる鬼畜的所業も潰えるんだ。瞳に映る慈悲深き菩薩、そして汚れなき聖なる光と共に偽りの闇を葬り去る! 「悲体戒雷震慈意妙大雲澍甘露法雨滅除煩悩燄諍訟経官処怖畏軍陣中念彼観音力衆怨悉退散妙音観世音梵音海潮音勝彼世間音是故須常念念念勿生疑観世音浄聖於苦悩死厄能為作依怙具一切功徳慈眼視衆生福聚海無量是故応頂……」  雷雲の如き慈悲が君臨し、雑音をかき消す潮騒の如き観音力で全てを救うんだ。目の前で粉微塵と化した大散減よ、盲目の哀れな座頭虫よ、私はお前をも苦しみなく逝去させてみせる。 「……礼ィィィーーーーーッ!!!」  ダカアアアアァァアアン!!!! 光が飛散した夜空の下。呪われた気枯地、千里が島を大いなる光と影の化身が無量の炎で叩き割った。その背後で滅んだ醜き怪獣は、業一つない純粋な粒子となって分解霧散。それはこの地に新たな魂が生まれるための糧となり、やがて衆生に縁を育むだろう。  時は亥の刻、石見海岸。ここ千里が島で縁が結ばれた全ての仲間達が勝利に湧き、歓喜と安堵に包まれた。その騒ぎに乗じて私と光君は、今度こそ人目も憚らず唇を重ね合った。
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mashiroyami · 6 years ago
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Page 107 : 迷子たち
 訪問者を部屋に招き入れると、ザナトアは扉を素早く閉め、強い足取りで案内した。老齢を思わせない足腰でさっさと進み、エーフィ達はそれを追う。  玄関から入るとまず横に長いカウンターテーブルがあり、右端の空白が通行口となっている。部屋の壁には棚が並べられ、ファイリングされた資料が所狭しと詰め込まれていた。彼女は育て屋を営んでいた。短期か長期かは客に寄るが、他者のポケモンを預かるにも契約書を始めとして様々な書類が必要となる。夥しい量のそれは、職場を通り過ぎ、生活の居住空間に入ってもずらりと並ぶ。日焼けしたように変色したものも少なくない。長きに渡って職を全うした痕跡が窺われた。  褪せた部屋の香りと、古びた紙の匂い、そして濃い獣の臭い。其々が混ざり合い、育て屋の空気を形成している。新たな臭いを纏った者達は、ある者は興味深げに鼻をひくひくと動かし、ある者は無心で物音立てずに歩き、ある者は慣れぬ浮遊に夢想気分で浸る。  ザナトアはエーフィを促し、リビングルームの奥のソファに彼女を横たわらせた。滑らかな念力に、老婆は内心舌を巻いていた。同時に複数の対象物を操り、異なる動きをさせるには相当の力量が必要だ。にも関わらず、このエーフィは涼しい顔をして、自らの手足のように自在にサイコキネシスを操ってみせる。  血の気を失った顔を薄く開いた目で確認する。呼吸は穏やかだ。ただ眠っているだけのようでもある。  ポケモンに対して言えば多少の医療知識は持っているし備品もある。しかし人間となれば話は別だ。湿布に絆創膏、包帯にガーゼ、それと自身の常用薬ばかり。歳をとれば嫌でも身体は衰える。自分の為の備えならある程度揃っているが、あくまで自分へ向けたものだ。  面倒なことを、と心中で改めてぼやく。苦渋の表情を緩めないザナトアの脇で、フカマルはソファを登ろうと足をかけていた。 「馬鹿、何やってんだい」  小さな手が少女の顔に伸びたところで咄嗟に叱りつけると、フカマルはひっくり返り床に背中から転がった。 「ばれてないとでも思ったかい。無闇にソファを傷つけられても困るよ」  ザナトアは翻り、部屋を出て行く。  見張りがいなくなれば、叱咤にしょぼくれるのも一瞬である。頭をブルブルと振り、性懲りも無くまたラーナーに手を出そうとしたところで、今度は違う叱責が飛び込んできた。  殺意を帯びた声に、流石に萎縮し、悪寒を頼りに振り返った。視線の先で赤い眼差しに串刺しにされる。彼の特性は威嚇ではないけれど、フカマルを怯えさせるには十分だった。硬直する獣を放置し、ブラッキーはその目の前を通り過ぎ、見張りをするようにソファの前を陣どって横たわった。ザナトアが部屋に戻った頃には、その場に座り込んでいる訪問者達と落ち着かずに右往左往しているフカマルとの対比は明らかだった。  呆れた表情を浮かべながら何も言わず、ザナトアはポケモンフーズをたっぷりと盛ったプラスチック容器を両手にポケモン達に足早に近付き、エーフィとブラッキーの前にそれぞれ置く。 「味気ないものだが、腹を空かせているなら食べな。夕食には少し早いけどね」  二対の獣は互いに視線を交わし、ザナトアに向け、最後に足下に移した。ザナトアは気に留める素振りも無く、アメモースを見る。 「あんたはどうだ。まだ食べられそうかい」  逡巡の後、アメモースは力無く頭を横に振る。  警戒心がな��ったわけではないが、既に気を許し始めていたエーフィは差し出された食事に真っ先に口をつけた。一つ啄み、やがて決壊したように夢中になって食いついた。その様子を遠目に眺め、ブラッキーは暫し悩んだが、やがてゆっくりと頬張り始めた。  固形物を齧る硬質な音が転がる。  フカマルからは切実な視線が送られている。ザナトアは微かな苦笑を浮かべた。ドラゴンポケモンは基本的に総じて大食漢だ。目前で潔い食べっぷりを見せつけられれば、大きな涎が垂れても仕方が無いだろう。  ザナトアは身を翻し、壁際の台所へ足先を向けた。シンクの下の引き出しを開け、魚肉の缶詰を三個取り出し、エーフィ達に差し出したものより一回り大きな容器に慣れた手つきで中身を掻き出していく。特有の魚臭さが一気にたちこめ、誘われるようにフカマルは彼女の足下に駆け寄り、輝く視線を向けた。  栄養価の高いポケモンフーズを一緒くたに容器に流し入れ、和え物のようにかき混ぜる。殆ど茶色の外見は華やかとは言い難いが、フカマルには十分にご馳走だった。  山盛りの夕食を用意し、ザナトアはまたソファの元に戻っていく。刷り込まれた雛鳥のようにフカマルは彼女の後ろにぴったりと付き、エーフィの傍に置かれた食事に飛びついた。生え揃った逞しい牙の奏でる咀嚼音は豪快だ。しかし、床に撒き散らす様子は無い。ザナトアがしつこく躾てきた証であった。  一息ついたザナトアは、ダイニングテーブルに置かれたラジオをつけて、ラーナーの横たわるものとは違う一人用の小さなソファに腰を落ち着けた。  低音がのびやかに空気を震わせる。響き渡るチェロの旋律に他の弦楽器が伴奏している。電波に乗った音質が妙に心地良く、褪せた部屋に浸透していく。 「もういいのかい」  ザナトアは本を手に取り、半分ほどで食事を止めたブラッキーに声をかける。小さな頷きを追随せず、目を細めただけで、そう、と呟いた。  栞を挟んだところへページをめくろうとしたところで、袖を引かれるように、改めて横たわる少女を見る。  終始、仮面を身につけて��るような印象だった。  初めから終わりまで、アメモースがこのままでは死ぬとはっきり宣告しても顔色も表情も殆ど変わらなかった。発する声は僅かに震えていた。辛うじて狼狽える様子はあったけれど表面的なもので、ある種の気味悪さを受け取った。  個性豊かなポケモン達を見てきたのと同じように、千差万別のトレーナーと出会ってきた。育て屋に預ける理由は様々だ。覚えさせたい技があり確実な習得のために預ける者もいれば、効率的に能力を伸ばすことを目的とする者もいる。中には捨て子同然に預けてそのまま戻ってこなかった例もある。見極める目はある程度養っている。彼女を無責任だと突き放すことは簡単だ。しかしその一方、ポケモン達、とりわけエーフィとブラッキーが向ける労りが気にか��っていた。 「物好きだね、あんたたちは」  ブラッキーは視線だけ老婆に寄越した。  弦楽器の調べに、歌が乗る。男声のバラードがしっとりと時間をくるめる。 「トレーナーとポケモンはモンスターボールが間にあるから面倒さ。だけどボールの強制力なんて本当は大したことないはずなのさ。生き物だから、お互い相性がある。人同士なら適当にやり過ごせばいいけどね、だけど、何も無理についていかなければいけないわけじゃない。この子に限った話じゃない。子供のトレーナーは総じて未熟なんだ」  ザナトアは浅い溜息をつく。 「子供に限った話じゃない。いつまで経っても駄目なトレーナーはいる。おやとするポケモンが不憫でならない。時折居るよ。たとえば、自分のポケモンに怪我を負わされて激昂し摘み出す奴。出来の悪いポケモンだってね。そりゃあね、ポケモンにも頭の良い奴悪い奴はいる。だけど責任を片方にだけ押し付けて自分を顧みないのは都合が良すぎる。言葉が通じないから誤解しやすいけどね、相手をよく見ていない証拠さね。真摯にしていれば、なんとなく相手の考えることはわかる」  綺麗に平らげたエーフィを見やり、ザナトアは柔和な笑みを浮かべた。その横で 「あたしは事情を知らないけれど、あんたたちが聡いことは分かる。一目見て分かったよ、よく育てられている。……これは勝手な予想だけど、この子、本当はあんたたちのおやではないだろう」  見通しているような鋭さに、ブラッキーの目が丸くなる。  いつのまにか皆ザナトアに注目している。ザナトアがそれぞれに視線を配れば、アメモースの目が揺れた。  この子達は恐らく人間に沢山触れてきたのだろう、とザナトアは思う。触れてきたとは話しかけられてきたということだ。肌を知り、言葉を聞き、感情の機微に触れ、影響を受けている。  目を閉じ、手に取っていた本を戻した。なだらかに終わっていく黄昏を彩る音楽も結末を迎えようとしている。 「あんたたち、このトレーナーのことが好きかい」  ビブラートのかかったヴァイオリンの長い、長い、糸のようなか細い音が、少しずつ収束していく。その末端が消えるか消えないか、あやふやなほどの余韻もまだ響いているような静寂が辺りを満たす。  暫くして、そうかい、とそれだけ声がする。  窓の外では、鮮やかな夕焼けは息を潜め深い藍と混ざる。沈黙する夜の帳が下りようとしていた。
 栗色の薄眼が覗き、最初はぼやけた視界が時間をおいて慣れぬ天井を映す。すぐには理解しようがなかった。頭に痛みが疼いているが、我慢できない程ではない。  気怠く起き上がり、徐に部屋を見渡す。傍には小さなダイニングテーブル、その上に置かれた読みかけの古めかしい本とモンスターボール。更に視線を奥に動かせば、半分ほどが物で埋まったテーブルに台所が見える。そして壁を覆ういくつもの本棚が目を引く。どれも一切の隙間が無く詰められている。ちらかっているわけではないが、どこか雑然としている生活感のある部屋だった。当然、彼女には見覚えの無い内装である。  ソファの足下で、ブラッキーが眠っている。エーフィやアメモースは居ない。他にも姿は無い。壁掛け時計を見れば、正午を過ぎたところ。彼女から向かって右側の窓からは目映い陽光が差し込む。白い光だけが部屋の輪郭を確かにする。真昼のさなかだった。  靴を履き、獣を起こさないように慎重に立ち上がる。普段なら物音に敏感だが、疲労が溜まっているのか、まるで目を覚ます気配が無かった。  リビングルームから、直接外へと出られる扉が部屋の隅に設けられている。頭の高さほどのところに小さな硝子張りの窓が取り付けられていて、そこから覗き込めば、手前側に、高く積みあがった籠やブラシなどが棚に並べられている。その奥には、広大な草原が広がっていた。  引き寄せられるようにドアノブを回せばすんなりと扉は開く。爽やかな青空を示す風が肌を撫でる。  草の重なる音と香りに包まれる。それは自然のざわめきだ。  芝生を踏みしめ、日向へと歩を進める。穏やかな日光は真夏ほど強くはない。近くで音がしたので顔を上げれば、民家の隣から並ぶ木々でポッポが羽を休めていて、木陰の中からラーナーを見つめていた。  俄には信じ難いが、薄い記憶を頼りにすればここがどこなのかを彼女は察しつつあった。  だとすればどこかにこの家の主がいるだろう。  背後を振り返れば、見覚えのある背の高い建物が民家の隣にある。出窓からムックルが二匹飛び出していく。  引き寄せられるようにラーナーは歩みを進め、民家の裏手に回る。壁に沿って歩いていけば、すぐに隣の小屋の入り口に辿り着いた。巨大な円柱のような石造りの建物は、物々しい雰囲気で立ちはだかっている。  淡々と木の扉を後ろ手に叩く。待てども返事は来ない。  慎重に扉を押せば、立て付けが悪いのか、軋むのみだった。試しに引いてみてもびくともしない。もう一度押せば、僅かに動き、鍵がかかっているわけではない様子だった。体重をかけると少しずつ扉が床を引きずり、ようやく開けたと同時に悲鳴のような音が辺りに響いた。  円柱の壁に沿うような円を描く緩やかな螺旋階段。一階は、均一な棚がこれも円形に合わせて設けられているが、何も置かれていなかった。ゆっくりと歩み寄ると埃が溜まっていると分かり、指で掬えば指先が白く濁った。まさにもぬけの殻である。元々何に使われていたかは判断が付かない。螺旋階段は長く、天井は少々高い。棚の上は均等に窓が並べられ、陽の入る明るい部屋造りとなっていた。 「上がってきな」  ぼうっと天井を仰いでいたところに、唐突に声をかけられてラーナーの口元は引き締まった。声は上からした。嗄れた声には心当たりがある。  石造りの階段は一段一段は低く、安定感がある。内側��手すりに手をかけ、踏みしめるように上がっていく。  二階に上がる。外へと大きく開け放たれた窓は、外から見るよりも大きく見えた。  一階部分と違って、そこは賑やいでいた。  壁際に設けられた棚は一階よりも高さがあり、ふかふかの芝に横たわるヤヤコマやピジョンなどの姿が見える。天井にはいくつもの止まり木が直径を描くように重なり、鳥ポケモン達が身を寄せ合うようにして留まっている。独特の獣の臭いが一階よりも充満していて、騒がしい羽音が空気を震わせている。  鳥ポケモンに目を奪われていたラーナーの目前に、紫の獣が飛び込んできて、漸く我に返ったようだ。明るい鳴き声が、不思議と懐かしい。 「エーフィ」  歓迎されたラーナーは名を呼び、エーフィは二又の尾を忙しなく揺らした。 「起きたんだね」  続けざまにかけられた声に、ラーナーはエーフィを撫でる手を止めて視線を上げる。窓際に置いた椅子に座って、ザナトアはラーナーを正面から見据える。  緊張しないはずがない。彼女の記憶では、叱咤と直接地続きになっている。 「まずはポケモン達に感謝するんだね。その子達があんたをうちに連れてきた」  ラーナーは視線を落とす。 「……ありがとう」  素直に零すと、なんでもないとでも言いたげに、エーフィは涼やかな顔で無垢に笑った。 「ありがとうございます」  再びザナトアを見て述べたが、ザナトアは何も言わなかった。窓の淵に降り立ったポッポを撫で、立ち上がる。 「おいき」  突き放すような声音ではない。ポッポは暫しザナトアを見つめる。そこに、ポッポよりも一回り大きな朱色の鳥ポケモンが天井から飛んできて、小鳥の隣に着地する。 「ヒノヤコマ」ザナトアは微笑む。「見ていてあげられるかい」  指名を受けたポケモン、ヒノヤコマは凛とした顔つきで深く頷き、励ますような声をあげた。つられるように、他の小型の鳥ポケモン達が、何匹か降りてきて、窓から羽ばたいていった。ポッポが、引かれるように翼を広げた。不思議と、身体が大きくなったように見える。窓枠を蹴り上げた。そこからはあっという間だった。すぐにヒノヤコマが追随し、空を併走していった。  一部始終を見届けたラーナーは、空をじっと眺望した。 「あのポッポは二週間程前、身体に怪我を負った。近くで倒れていたのをうちの子が見つけた」  静かに語り始めたザナトアもまた空を見つめていた。彼女の目は、小さくなりゆく羽ばたきのみを追う。 「幸い軽傷だったから、自然治癒でまた飛べるようになった。ただ、気の小さい子で、群を外れたことで余計に怖くなったんだろうね。元々まだ幼い。今はまだああして誰かがついていてあげないと。いずれ一匹で飛び出せるようになれば、野生に戻れるかもしれない。ただ、群に戻れるかはやはりわからない。野生に放っても、数日後には無惨な姿で見つかったなんて、珍しい話じゃない」  ラーナーは、老婆に歩み寄る。彼女は再び椅子に座り、隣にやってきたラーナーを仰いだ。 「ここは、そういう、野生からこぼれた子たちの居場所さね」 「……飛べなくなって?」 「そうとは限らない。なんらかの原因で群��ら追い出された子、親から捨てられた子、あるいはトレーナーから捨てられて、野生に馴染めなかった子。それを再び野生に帰してあげる、あるいは最期まで面倒を見るのが、今のあたしの仕事」  いや、とザナトアは続ける。 「趣味みたいなものかね」 「育て屋は、本当にもうやめたんですね」 「そう言ったろう。とっくに引退した。確かに勘違いしてやってくるトレーナーは未だに他にもいる」  ザナトアはラーナーの表情を観察するが、少しも曇らなかった。何も無いようにも見えた。 「アメモースは、何故翅を」  ラーナーは暫し黙りこんだ。  辺りをちらつく鳴き声に耳を澄ませた。ここにアメモースはいない。ボールで休んでいるのだろう。ラーナーの言葉が当事者に届くことはない。  薄い唇の隙間から、溜め込んだ息が逃げ出していく。 「噛み千切られたんです」淡々と、簡潔にラーナーは言い放った。「激しいバトルの最中に。止められなかった」 「バトル?」 「はい」ラーナーの声音は、変わらなかった。「相手はすぐに逃げていったけれど、こちらもそれどころじゃありませんでしたから。命は幸い助かりましたけど、アメモースは飛べなくなった」 「……確かに、野良バトルでは、そういう事故はあるがね」 「アメモースをもう一度飛ばせるために、ここに来ました。羽を失ったクロバットをもう一度飛ばせたという、ザナトアさんの噂を聞いて」  沈黙に乗り、ラーナーは話を続けた。 「もし、失われたものが戻るのなら、何だってしようと思っていたんです」 「過去形かい」 「今は、よくわからないです」  自棄ともとれる言動だった。それを最後にラーナーは何も言わなくなった。  もう既に視界に飛び立ったポッポ達の姿は見えない。  失敗をすれば二度目を恐れる。立ち直るのに時間を要する場合もある。あのポッポはしかし羽ばたいていった。仲間に付き添われながら、ゆっくりと前を向いている。元の世界に戻っていくために。 「あんたは、アメモースのことをちゃんと見てあげた方がいい」  ザナトアの言葉に、ラーナーの視線が横に流れた。 「トレーナーのひとりよがりだけでは失敗する。まずすべきは、衰弱したあの子を回復させることだ。違うかい」 「……はい」 「そうしてから、あのアメモースが本当に飛びたがっているのか、飛ばせるべきなのかそうでないのか、話し合うんだ。もう一度飛ばせるとは、そう簡単にできることでない」  諦めた方が楽な場合もある、と老婆は言う。 「トレーナーが言うのは簡単さね。何故ならその苦難を味わうことは決して無いから。それでも飛べというのなら、必ず支え続けてやらなければならない。勿論、アメモースの意志が前提になる」  皺の寄った瞼が上向き、部屋で休む鳥ポケモン達を見渡す。  ここには、少なからず飛行を手放した鳥ポケモンが住んでいる。羽を傷つけた者、病んだ者、心に痛みを抱えた者、生まれつき出来ない者。誰もが当たり前に出来ることを、当たり前に出来ない者は存在する。迷い子のように世を足掻き、巡り巡ってここへ寄せられてきたポケモン達だ。 「飛べない鳥ポケモンは手が掛かる。翅を失ったのが事故だとしても、その生涯を背負う責任がおやにはある。それがトレーナーだとあたしは思っている」  ザナトアはラーナーを見る。 「残念だが、育て屋に押し付けて消える輩はいる。あたしには、あんたがその責任を背負っているようにも、飛ばせる覚悟があるようにも見えなかった。だからあの時追い払った」  槍のよ���な言葉を、敢えて彼女は使う。返ってくるのは淡泊な目線ばかりだった。  まるで池に石を投げ入れるばかりのようだった。水面に波紋は広がるけれど、やがて何事も無かったように凪いで元の静けさへと還る。いや、波が立つならまだ実感がある。何も届いていないような予感も過ぎった。栗色の瞳は深みを湛えてザナトアを見つめている。ここにいるのにどこにもいないような、無色透明の気配を纏っている。  それが益々ザナトアの神経を静かに逆撫でた。 「投げやりにするならすぐに出ていきな。年齢は関係無い、責任感の無いトレーナーの頼みを聞くほど暇じゃない」  用意された導線。火がつけば瞬く間に爆ぜるだろう。  エーフィは固唾を呑んで主人を見上げた。緊張を汲み取っているのか、心なしか、周囲の鳥ポケモン達もラーナーの返事を待っているかのように静まっていた。  白い指が右手首に巻かれたブレスレットを撫で、光が当てられれば星のように煌めく石の輝きを遮るようにそのまま掌で包み込んでしまう。 「少し、時間をください」  時間をかけて導きだした返答に、ザナトアは目を細める。 「それはなんの時間だ」 「アメモースが回復するだけの、時間。それと考えたいんです。これからどうしていくべきなのか。ポケモン達のことも、全くわからなくなってしまったから」  だから、と続けて、ラーナーは身体ごとザナトアに向けた。 「アメモースが回復するまで、ここに置かせてくれませんか。お手伝いはします。ザナトアさんとここのポケモン達の関係を、もう少し見ていたいんです」  ザナトアはまっすぐに向けられた視線を受け止めた。  これはまた。ザナトアは驚いたような納得したような心地に浸った。覚悟があるかと問うて、これでは覚悟は無いと宣言したようなものだ。いっそ清々しさすらある。存外図太い性格をしているじゃないか。堪えきれずに苦笑した。 「呆れた。随分大きな迷子が来たもんだ」 < index >
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modernheavy · 1 year ago
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今日読んだ漫画 2024年3月5日(火)
マンガワン(アプリ)
🧹『QQスイーパー』 最富 キョウスケ
QQスイーパー&クイーンズ・クオリティ
 玖太郎がドS(特に掃除)で文が時々なまってる……(要約:今と違って新鮮)
やわらかスピリッツ
🍵『後宮茶妃伝 ~寵妃は愛より茶が欲しい~』 井山 くらげ+唐澤 和希
 久しぶりに読んだら采夏かわいくなってた
ヤングキングアワーズ2024年4月号
🍱『横浜黄昏咄咄怪事』 吉川 景都
 金条も言ってた通り加賀美先生難儀な人だな~笑
ミモット
🐱『吉川さん家の猫事情』 吉川 景都
【吉川さん家の猫事情】#31話 布団で起こるナゾ行動 - マンガ連載:吉川さん家の猫事情 - mimot.(ミモット)
 猫さんたちにクスッとさせてもらえるから好き
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modernheavy · 2 years ago
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今日読んだ漫画 2023年10月3日(火)
ヤングキングアワーズ2023年11月号
🌇『横浜黄昏咄咄怪事』 吉川 景都
デジタルマーガレット
☔『この恋は世界でいちばん美しい雨』 碧井 ハル+宇山 佳佑
PASH UP!
⚡『私は敵になりません!〜悪の魔術師に転生したけど、死ぬのはごめんなのでシナリオに逆らって生き延びます』 藤代 千鶴+佐槻 奏多
私は敵になりません!〜悪の魔術師に転生したけど、死ぬのはごめんなのでシナリオに逆らって生き延びます〜
第5話 茨姫との邂逅 | PASH UP!
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🌆『コイビトアソビ』後日談 / 猪狩 そよ子
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