#硝子と木そして花
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asoufuyu · 11 months ago
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僕は惑星周期の途上で遺書を書いている。
蝶が一度吸って落とした蜜のようにいとしかった日々を。
この歌は僕の生きてきたかろい足取りであり、君に渡す重い鐵の塊である。
第一章
「ヴァニラ・アイスクリームの日々」
僕はたれよりも孤独だった
S駅へ向かういつもの電車に寄りかかり
肋骨の夢を見ていた
僕の骨骨は美しく浮き上がり
青い血管と白んだ脂肪らがそれを包む
(八センチのピンヒール。)
―――穢い人。
そのひとは扇風機を、パスタを、一万円札をくれた
花火を見に行かず
僕は何より穢いことやものを集めて回る
総てはそんな風だった
ヴァニラ・アイスクリームを
一日に一個だけ、それだけ食べた
第二章
「自由律」
ミュージックよ鳴り響いて!スクエアホールは退屈のなかただ破滅を願っていた
(針葉樹林の夢を見る)
音階を壊してその硝子片で流れる血を太陽に捧げた
外の見えない窓、エアーコンディショナーの緑、十六度の部屋はいつも冷たかった
   石を並べて遊ぼう
   賽の河原ごっこしようよ
   地獄めぐりの地図は持ってきた?
天国に近いアパートメントの一階で冬を描いた
(深い森の中で迷ってしまったらなんてくだらない問いかけをして、)
遺書も残さずに十一月に死んだ君
遺書を描き続ける僕の日々
冷蔵庫は小さすぎて駅に行ける程のお酒も入れられませんでした、あの日六畳のアパートで見たライト、ライト、ライトの銀河の圧倒的な漠々を、オーバートリップ、月の板、死体は宇宙を泳ぎますか、君は十三歳で旅行に出た、僕は十三階からぐしゃぐしゃの地上に憧れてただ眺めていた…
第三章
「サーティーファイブの夢」
35個の夢をもって
30人を殺そうとした
あの日のチェーン・カフェで
君は青い猫
迎えに来て
いつでも
アトリエでホテルで駅で途方で
いつも君を待った
君は無表情で立っていた
いつでも
(かろくなったからだで、飛べた日のこと、僕はいつでもゆめをみた、短い生と、上映され続ける夢のフィルム、東京。)
「大丈夫。」
「だいじょうぶ
「ダイジョウブ
ツー。
最終章
「海へ」
三月のよく晴れた日にジンジャーエールを持って長いながい電車の旅の末、僕はいつだって海へ来た、海辺から少しのところに死んだ大きな木が縺れ踊るように佇んでいた、僕はそれを一生忘れないだろうと思った、そしてボロボロのブーツを捨てた日にも、小さなベッドのある宇宙の果てでも、その海を忘れなかった。
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nekotubuyaki-blog-blog · 2 years ago
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2023年に読んで「オォッ!」と思った本や作品……その1
『長靴をはいた猫』(シャルル・ペロー著/澁澤龍彦訳/河出文庫/Kindle版) 『台湾漫遊鉄道のふたり』(楊双子著/三浦裕子訳/装画:Naffy/装幀:田中久子/中央公論新社/Kindle版) 『聊斎志異(上下巻)』(蒲松齢作/立間祥介編訳/岩波文庫) 『灯台守の話』(ジャネット・ウィンターソン著/岸本佐知子訳/装幀:吉田浩美、吉田篤弘〔クラフト・エヴィング商會〕/白水社) 『新版 小さなトロールと大きな洪水』(ヤンソン著/冨原眞弓訳/さし絵・カバー装画:ヤンソン/講談社文庫/Kindle版) 『象の旅』(ジョゼ・サラマーゴ著/木下眞穂訳/書肆侃侃房/Kindle版) 『リリアンと燃える双子の終わらない夏』(ケヴィン・ウィルソン著/芹澤恵訳/イラストレーション:中島ミドリ/ブックデザイン:アルビレオ/集英社) 『透明人間』(ハーバート・ジョージ ウェルズ、著/海野十三訳/青空文庫/Kindle版) 『世界の終わりの天文台』(リリー・ブルックス=ダルトン著/佐田千織訳/創元SF文庫/Kindle版) 『去年を待ちながら 新訳版』(フィリップ・Kディック著/山形浩生訳/カバーデザイン:土井宏明/ハヤカワ文庫SF/Kindle版) 『ザップガン』(フィリップ・K・ディック著/大森望訳/扉デザイン:土井宏明/ハヤカワ文庫SF/Kindle版) 『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』(フィリップ・K・ディック著/浅倉久志訳/早川書房) 『火星のタイム・スリップ』(フィリップ・K・ディック著/小尾芙佐訳/扉デザイン:土井宏明/ハヤカワ文庫SF/Kindle版) 『マーダーボット・ダイアリー 上下』(マーサ・ウェルズ著/中原尚哉訳/カバーイラスト:安倍吉俊/東京創元社/創元SF文庫/Kindle版) 『珈琲と煙草』(フェルディナント・フォン・シーラッハ著/酒寄進一訳/東京創元社/Kindle版) 『シャーロック・ホームズ シリーズ全10巻 合本版』(コナン・ドイル著/延原謙訳解説/新潮文庫/Kindle版) 『イラハイ』(佐藤哲也著/佐藤亜紀発行/Kindle版) 『シンドローム』(佐藤哲也著/森見登美彦解説/カバー装画:西村ツチカ/カバーデザイン:祖父江慎+コズフィッシュ/キノブックス文庫) 『俺の自叙伝』(大泉黒石著/四方田犬彦解説/岩波文庫) 『ブサとジェジェ』(嶽本野ばら著/『三田文學 153 春季号 2023』掲載作品) 『珈琲挽き』(小沼丹著/清水良典解説/年譜・著書目録:中村明/講談社文芸文庫) 『不機嫌な姫とブルックナー団』(高原英理著/講談社/Kindle版) 『祝福』(高原英理著/装幀:水戸部功/帯文:渡辺祐真/河出書房新社) 『若芽』(島田清次郎著/青空文庫Kindle版) 『交尾』(梶井基次郎著/青空文庫/Kindle版) 『のんきな患者』(梶井基次郎著/青空文庫/Kindle版) 『城のある町にて』(梶井基次郎著/青空文庫/Kindle版) 『風立ちぬ』(堀辰雄著/青空文庫/Kindle版) 『自分の羽根』(庄野潤三著/講談社文芸文庫/Kindle版) 『幾度目かの最期 久坂葉子作品集』(久坂葉子著/久坂部羊解説/年譜・著書目録:久米勲/デザイン:菊地信義/講談社文芸文庫) 『現代語訳 南総里見八犬伝 上下巻』(曲亭馬琴著/白井喬二訳/カバーデザイン:渡辺和雄/河出書房新社/Kindle版) 『キッチン』(吉本ばなな著/カバーデザイン:増子由美/幻冬舎文庫/Kindle版) 『かもめ食堂』(群ようこ著/装画:牧野伊三夫/カバーデザイン:井上庸子/幻冬舎文庫/Kindle版) 『ハピネス』(嶽本野ばら著/カバーイラスト:カスヤナガト/カバーデザイン:松田行正/小学館文庫/小学館eBooks/Kindle版) 『猫の木のある庭』(大濱普美子著/金井美恵子解説/装幀:大久保伸子/装画:武田史子/カバーフォーマット:佐々木暁/河出文庫) 『ハンチバック』(市川沙央著/装幀:大久保明子/装画:Title: mohohan Year: 2020 Photo: Ina Jang / Art + Commerce/文藝春秋) 『文豪たちの妙な旅』(徳田秋聲、石川啄木、林芙美子、田山花袋、室生犀星、宇野浩二、堀辰雄、中島敦、萩原朔太郎著/山前譲編/カバーデザイン:坂野公一+吉田友美(welle design)/カバー装画:樋口モエ/カバーフォーマット:佐々木暁/河出文庫) 『作家の仕事部屋』(ジャン=ルイ・ド・ランビュール編/岩崎力訳/読書猿解説/カバーイラスト:Guillaume Reynard/カバーデザイン:細野綾子/中公文庫) 『腿太郎伝説(人呼んで、腿伝)』(深掘骨著/左右社/Kindle版) 『硝子戸の中』(夏目漱石著/石原千秋解説/カバー装画:安野光雅/新潮文庫) 『思い出す事など』(夏目漱石著/青空文庫/Kindle版) 『文鳥』(夏目漱石著/青空文庫/Kindle版) 『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』(川本直著/文庫版解説:若島正/ロゴ・表紙デザイン:粟津潔/本文・カバーフォーマット:佐々木暁/カバー装幀:大島依提亜/カバー装画:宇野亞喜良/帯文:魔夜峰央/河出文庫) 『駅前旅館』(井伏鱒二著/解説:池内紀/カバー装画・文字:峰岸達/新潮文庫)『硝子戸の中』(夏目漱石著/カバー:津田青楓装幀「色鳥」より/注解:紅野敏郎/解説:荒正人/新潮文庫) 『村のエトランジェ』(小沼丹著/講談社文芸文庫/Kindle版) 『午後三時にビールを 酒場作品集』(萩原朔太郎、井伏鱒二、大岡昇平、森敦、太宰治、坂口安吾、山之口貘、檀一雄、久世光彦、小沼丹、内田百閒、池波正太郎、吉村昭、開高健、向田邦子、安西水丸、���中小実昌、石川桂郎、寺田博、中上健次、島田雅彦、戌井昭人、吉田健一、野坂昭如、倉橋由美子、松浦寿輝、山高登著/カバー画:山高登「ビヤホール」/カバーデザイン:高林昭太/中央公論新社編/中公文庫/Kindle版) 『対談 日本の文学 素顔の文豪たち』(中央公論新社編/巻末付録:全集『日本の文学』資料/中公文庫) 『40歳だけど大人になりたい』(王谷晶著/デザイン:アルビレオ/平凡社/Kindle版) 『人生ミスっても自殺しないで、旅』(諸隈元著/ブックデザイン:祖父江慎+根本匠(コズフィッシュ)/晶文社) 『ロバのスーコと旅をする』(髙田晃太郎著/装幀:大倉真一郎/地図制作:小野寺美恵/河出書房新社) 『本当の翻訳の話をしよう 増補版』(村上春樹、柴田元幸著/カバー装画:横山雄(BOOTLEG)/新潮文庫) 『書籍修繕という仕事 刻まれた記憶、思い出、物語の守り手として生きる』(ジェヨン著/牧野美加訳/装幀:藤田知子/装画:谷山彩子/原書房)
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pid-b · 8 months ago
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日々あれこれ#153
2024年10月28日 前を向く が分からずに 頭の後ろに目を移動 これでいい それは違う と 支配人はムチをふるう 見えている その醜さ 空を切る音は発散と高揚 無の象徴 絶対的な権力を有すプライドは 頭の中で高速回転して バターになって溶けている 虎と同じ いや違う その孤高ではなく 無残を作る無残
2024年10月29日 こころがねじれて歪むのは ひとりぼっちだからでもなく 偏見に突き上げられてもいない 無残にも走る車から蹴り落とされ 捨てられてもなく そうさ 嘘が降ってきた 白か黒か灰色か 分からない 嘘まみれ 全身に降り染みる 穴の開いたその場所の 脳の一部 ねじれてねじれてねじ 歪みに変わる
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2024年10月31日 雨上がりの午後 あるいは ぬけた先の日差し いつもと違うのは湿度ではなく 必要以上のみずみずしさ 透き通っているのは水じゃない 壁も空もあなただって 夏の風 吹いている 木々や花から生まれるみずみずしさは あなたからも生まれて 透明度が呼んでいる だからそこにゆくよ つつまれたい
2024年11月1日 拾われたのは過去のかけら そこに映っている わたし 誰が拾いどこに置く 組み込まれたわけではないが 周囲に影響をおよぼす注意 過去 動くはずのないもの そこにあったかのように 置いただけ おさまってしまう かけら その現象は すべてのパネルを裏返す力を持ち 存在感を消し とどまる
2024年11月2日 青の玉 本当は紫の 大きな味わい 上流から流れてくれば どんぶらこ 川に揉まれる最中にも 揺れを伝えぬ仕組み ぶら下がるぼんぼり または 硝子細工のランプシェードの外側 中は炎か それとも 白熱球のランプ ぼんやりと橙色 じゃなくて薄い緑がかった翡翠色 甘いのさ とても 遠くまで
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practiceposts2 · 8 months ago
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大学一年生の頃のわたしが居住していたのは一の矢の中でも最も北に位置する学生宿舎で、そもそも一の矢自体が大学の敷地の中でも最も北に位置する区域なのだから、つまりその頃のわたしは大学の最北端で寝起きしていたことになるわけで、主に理工学群の講義を行っている第三エリアにたどり着くためには一苦労しなくてはならなくて、宿舎を出て玄関のすぐそばにある駐輪場で自転車に乗り、春になるたび白地に桃いろ暈しの大きなやわらかい花を咲かせ一の矢を彩るハナミズキの並木道(正確に言えば一般にハナミズキの花とされている箇所は「総苞片(そうほうへん)」と言って花のつけ根の葉が変形したものなので、ほんとうの花はその総苞片の中心にある小さな丸っこい薄緑いろの突起のほうなんだよ、とわたしに教えてくれたのは高校の生物教師だったが、わたしはこの人から木や草や花や鳥や魚や獣を観察し描写し言語化することの――つまり博物学の――淫靡な快楽を教わった)を抜けて、コンビニと銭湯と食堂と理髪店と電器店と事務室とがある共用棟(正面エントランスは二階まで続く大きな窓硝子になっていてそのおか���で太陽の光がよく差し込むし風通しもいいし、一階の吹き抜けの下にはソファとテーブルが置いてあってだれでもくつろげるようになっているから、わたしはよくそこで本を読んだりコーヒーを飲んだり寝転がったり友達と駄弁ったりしたものだった)の前を通り、ゆるやかに湾曲しながら次第に雑木林の中に入っていくペデ(わたしの大学では教授も学生も単にペデと呼んでいて、だれもペデストリアンデッキなんて長ったらしい呼び名を使ったりはしていなかった)を進んで、上空から見ると巨大なL字型を��ていてその一辺が二、三百メートルはあるだろう兵太郎池(陰気な粘っこい鳴き声をたえまなく響かせている牛蛙の群れを狩るためにねこやからすが集う薄汚く澱んだ池というよりは沼といったほうがいいだろう水面の、そのむこうから月がシューシューと音を立てて空高く昇り、幾重にも重なりあって水滴を球形に弾いてはきらきらとふりこぼす黄緑いろの蓮の葉や、濃い灰いろの粘土質の泥がたえず対流しているせいでひどく濁っている水の中で尾をひるがえし悠然と泳いでいく黒に近い灰いろをした鯉の群れをあざやかに照らし出し、と同時に風が吹き抜けて兵太郎池のほとりの無数の窓辺のカーテンを一斉にゆらしたその瞬間、わたしはその風景を――一度も見たことがないはずなのに――いつかどこかで見たことがあるという既視感に襲われて、思考と知覚の境界が破線と化してかすれ薄まり消えていく感覚のあまりの甘美さに内臓的な嫌悪感をおぼえる)をぐるりと回り込んで、次第に傾斜を増していって最後はいつも立ち漕ぎをせざるをえなくなる鉄筋コンクリート造の陸橋を越えて虹の丘という芝生やクローバーが一面に敷きつめてある柔らかな丸みを帯びた小さな丘が三つか四つ連なった地帯を過ぎ、灰いろがかった薄茶いろのなめらかな樹皮をした欅が空にむけて真っ直ぐに枝を伸ばし淡い緑いろの木洩れ日を濃い灰いろの路面の上に落としている道を横断し、毎年春の終わりになるとあざやかな濃い桃いろの花びらを十重二十重にも折り重ねた濃い桃いろの豪奢な花を一斉に咲かせ、まるでひと塊りの濃い桃いろの雲のようになる八重桜の下を通り抜けると、その先が主に理工学群の講義を行っている第三エリアで、わたしは毎日その第三エリアに通っていたのだが、体育芸術エリア(略称体芸エリア)は第三エリアよりもさらに一キロ以上南にあって、そのあまりの遠さにわたしは何度でもくり返し辟易せざるをえない。
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kotobatoki-arai · 9 months ago
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くだんのために
 どこへむかって 富んで征くのか? (じつに青い鳥とは悪意であろうよ)  なにをおもって 演って来た? (みじめに 揺れたのですよ)  つたえることもなく、みえやしないか (極限を おもいえがいたときに)   さてね、あらわれるものだから  この國國の一点に細い群れの白昼夢は不協和音の彫刻。てばなし。幽かな指の間をすり抜けて、ほらね。泥を塗る。ひとびとは巧妙な多幸感のまなざしも擦り付け「星のめぐりを試す」と云い――絹の付箋に示された腐肉の正解が耳目に触れる体積は、せわしく啜る昼顔の露におなじ  モダンな葬列があらわなボロを広げては沁み入るようなランプと灯し続け、存在を握る手が「わたしたることを、ただぞんざいに土に飢える。」アカツキはますます強くなり、たぶん室内はざっと数えても底しれない它翅、垂れ流したアクビであろうが  たしかに手招きを模倣し運ばれた瓶と巣を、 (��け止められものと結びついたものを  解くには容易でなくてね)  または制帽と羽織を冠るように押し付ける。 貴重なる海の破水されたぬいぐるみのようで  蝋細工である蛆虫の196ピースが 無数のそれは無数の、残骸は  肌に触れるとおどげでないものの誹りとして 窓窓窓に囲まれる。片道切符、苦い快感と共に  2歩歩く。葉音に群れる大事な誓いだ どの歪んだ顔。全身でわらう花を 我らを  なんと呼ぼうが。燐片に備わる露骨な妄想だ   ダイヤルを回し/新しいラインにのせると  ――ほらね 柳の下のような気がする予。  :滅びた後も存在すると考えられることも多い    未知とはただただ かぎりなくにせもの――  言いかけた言葉が強引に仔羊を柘榴に戻し、塞がれた風穴などまっすぐにモーテルへ続き、迂闊にもがれたのだから仕方ない。癇癪を熾した、たましい  韜晦のランタンに近づくと黒く 変色していた蝴蝶もこちらは、複雑な爪痕をやどした塒に 薄化粧した数珠はしめり、袖に隠して置いた循環。あげつらうインクのしみに正午を打つもよおし、艶やかな鳩時計があればいい鴨。スマホの奥でよだれを垂らすおくゆきこそ神、不自然な鷺の種を蒔きどこか水に流す印象、故意は乞いを語彙に敷き詰める 焦げたてんびん。混ぜ込んだのは薬剤と大小の活字、それと灰と秘蜜だよ  ものぐさでもわるびれないから〝だれはばからず たれまく〟発作のよう黄昏に染まり、彼はざわめく木立の。この狂いの原因は、道楽の議論、あゝ僻地の風通しも元気か  鮮陣を疾走っていた/ですが旅鳥はその過程で立ち上がった/私を照らすのは無影灯、どこかへいく。だがきみでありぼくであれ生命とある。システムは无ム悲観に肯定する/かなたの海もあたいの山も、知らないところで。宿主は装飾の施された見世物小屋に絶えず経ち自由に選ばれる、にぶい姿態はすべて響いていた。あおいかべに消せない嶌影(その犠牲のうえに。(その代償に架けて。  賭して惨めな格好が畫かれる常々は末路など啓かれず そんなものだとて石を拾っては、お花畑にみえるならそれでいい。用途も要点もない幼稚���色彩にありつづける   汝、しかいがふみしめると    ――なにもかもわすれていく   ステンドグラスの焦土ですかねぇ   信号も交差点も三途の川ばかしの    綿菓子が熔けて痙攣した   ざわついた骨が黙劇の訪れ、    どうせ詩を唱えているばかりだ かくしてこの初秋のことである。 不規則なある物のように、不条理にある者のように ――わたくしは死んだのですよ  過去の未来へ切断された鏡面に萎縮し、剥がれた夜気がヌメるように無常にも微笑った。綾がいくつかにわかれ のたり、あっというまのこと、古びた風に呑まれて 光沢の波に紛れて  また、お静かに、白い海は。 「序曲でも失明でもない。まだ感じられない。時は聾唖であり、綻びかけたなにか。」だとして 追い詰められた闇の底に空想を交えた荒寥が犠牲にした、煌々と灯る、ケモノミチに。きりきざんだ潮の流れをも見つめながら、あわただしい人生の深淵に孕んでいた游び場は、水切りの塚とあしあと。わざとらしい感嘆の溜息が暮れのこり、念と透明に鉤爪の恒星はひとつかみ。とばりがまた映し出す、ことわり故 恍惚と舟に浮かび――あゝ精神は風見鶏。不甲斐なさとでも硝子の笈に湛め。異なる数の手足を持ち 今あるヒカリが跋扈する、胎盤はめまいと共に瞑想的なもので。怒りの味がするほど感覚は低い低い瞼で。じつと上澄みを未饐えてゆく    旅立つこともなく  極端にのろい切り傷がズレた  ミクロコスモス  /ピンホールカメラからみどりごを覗く、凪    またうまれうまれ、そらへゆくゆく  /コカインでもヘロインでもあるけど    鉛筆でセカイ《赤ン坊》と書いて掌に蠢いている  /輪廻など持ち込めやしない    途切れた約束を。お忘れになられたからまた  /ささやくように さざなみだしたという    まだ聞こえない、入道雲が沸き立つまでの距離だ  重なる檻を形成した花のかおり 秘色はまだ窺うようで、瞬間の、不格好にうわずらせた合図も恨みのまた、ざわめく植え込みが 横目で彼らを見ながら、白線の たくしあげる裾を、浮き橋に はだけながら、途はぞんざいにへばりついて、白痴という死体をみなぎらすなにかが 口に放る、  できるだけあるべき姿を縋り付くように��称を勃たせた、大きな縫い針で 私はSOSを発しているレコード  泥舟もまた自らの手。抑圧のどこかで外したものでは無いと、またスイレンは朝まだ浅い、みみずくのこらと。この心臓に暴かれた楽園。終わりなどまざまざとカニバリズム《愛》全裸に近づくように  眼鏡のしずくとひかり、  ともに弾かれしゃがみこんだ時   すべてのものを見た。 (冷えた指はしらない。)くだんのために  :また少女は《Eiserne Jungfrau》   ほんのすこし、   きれいだった、ことを おもい    かえしては いたのでした 2024-08-24
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karasutosagi · 1 year ago
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たとえ曇天星邱。
 呱呱のそこ何処 かしこに、嵐そのもの垂る虹硝子の胸 かざり 抱懐 あとのまつりとなり、切り取られた影のわけ、梟をまなうらを担った。  軽くなった躯 皓い、露アラワ、暈ボけ肇ハジめた貝殻骨の。並木道には丸い瞳、偶人が冷やかに蕩けては見紛うよう、また少女が咲うのだと、この優刻ユウコクに眩むのだな   あちらからもこちらからも  後退りをしては追いかけるばかりの、磨き立て軽く曝す すべてはシノプシス。見ず知らずのすがたは一目惚れかな。含みを払う本質を蕾にあると覗き、依怙地にして暗黙と節穴、道半ば密かは度々賛美にして天華    つごもりはせつらしい。   雲海  これは気づかなかっただけなのである  狂乱の炎はまるで黄昏を海、堕とした。銀鼠の肌を持ち 縹色を髪にお付きにした 苦い刺青を好み、さびしいものの茂みでもっと ちがった空間に 輪廻であると展開する、  沙漠に陽、尽きぬことを耳朶に障る眼福に犠牲を強いる、牡丹柄の、基調とした狆くしゃの、竹林ばかり ニンゲンで 不滅だろう  中にはただ見えなくなったやつが、執拗な自然ばかりを生い茂らせ始末におえない形を持っていて、山も谷も川もせせらぎ、つつ、大海をも淀んだ風に彩りを殺し、ひっそりとこの空は灰色とかわり、氷雨混じりのいたみを残していた。  きみもぼくも、今に乗せられた、破天荒を編み上げる 色の瞳も感じない、愉快な衝突を交わしている、さやさやとなる細い藤のつたない現象 縫うようでいて、留まることがない 砂紋の渦と零している、ある噂を  わたくしの、あとにもさきにも   ちいさな人生ではそのうち消えてしまいましたが  ただ窓辺に腰掛け、今、春を待つていどの時をこうして 意味もなく 枯れ枝の葉脈と紬いでいる意味でございます。  どうしてか涙地のオーロラはゆらゆらと湛え、臙脂のモビール、数秒後のあなたは隻眼の花が衣。勿忘草のノクターン 旻を描いている。もじゃくちゃ。  銀光の歯車は祈りなき地面を紫に踏み鳴らす頃、斎を緩めない、ただ跡形もなく、永遠を踊らせる輪舞曲、自身も他者も、いままさに根も葉もなく  この手で感じている感覚はきっと吹きさらしのものでしょう、両手で囲うほのおは熱くも��温くもない、マボロシてあったのかも知れません。  海岸はフルイドアートの中に。沈む   それは靑い雛罌の瞳の 粗末な街に寄せ返す  したたかな朝日が開いたから、ふかく毛布を惹く、終ぞソファーはかたい海の底まで。檸檬色をふくむ。今さら銀の円鏡と夢幻に身を委ねてもただ苦しいのかもわからなかったが、  吹き消すこともなく続いていったこの意図が、どこに繋がれるのでしょうか。ただこうしてどこか繕い、穴を埋めているだけでしょう  ゆめのはなり/死期が近い。   多分雲の上にいる、    手を繋ぐ、歩き出す。  不確かなツルの障り、モザイクの尖りや悼み、  やわらかな砂の鳥は肌狂フれた時の寸感   たとえ曇天星邱とも  多分そのころは空想だった(だらだらとしていたから) 「メルヘンは貧相だから直ぐしぼんでしまうんだねえ」 『温ったかな」とても柔かった」小さかった。』  声もなかったが名前はあった。  離陸した鵬翼、まあ翔けなかったけど。  口裏を合わせたように思えて仕方なかった、  夢を抱いた夢をみたんだ  どうとして色彩に委ねる、女の首ばかり飾っているそちら、枯れてなお美しくあろうと手を尽くしているあれら。空気に溺れている 安裸花にありたかった  枯れ草も、老齢のススキも、嘯いた種も、薄く燐として繊月を扇いでいる。爆ぜるような風だけが嗚咽を経て、空だけが雨とほどく季節、たたらば。  アーモンドの花が一肢シずつ 増えては  のみ込まれて行く。丸くあった青海が、近づく旅に  誰かの落とし物を探し回る、微温い風が  欠伸している、その奥地の、こちょこちょばなしを  うんちくな素肌が、ひととき、振り解いた熱を  また寄せ返す。波間にいきる、某がすべてと  おとなしく響いていた―― 2024-01-01
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nzchao · 2 years ago
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4日土曜日、「アークラ大サーカス 2023」に「詩の会(静岡・詩織り会 + 東京・西荻草子)」として参加します。「詩織り会」からクイーカ、anna「西荻草子」から柚山颯、ムラカミロキという面子で野外アートパフォーマンスとして即興連詩を行います。
アークラ大サーカス 2023 #アークラ2023
「ごてんばアート・クラフトフェア」が生まれ変わった東部最大級の野外アートクラフトフェア「アークラ大サーカス」が今年も開催!  全国から約180店舗以上の個性豊かなショップが、富士山の麓、御殿場市に大集結する。黄金色に色付く銀杏並木でショッピングを楽しんだ後は、『カフェの小径』や『グルメ・フードの郷』で生演奏を楽しみながら舌鼓。サーカステントステージでは手に汗握るパフォーマンスが楽しめる。
【開催場所】 国立中央青少年交流の家
【開催日時】 2023年11月4日(土)10:00~16:00 2023年11月5日(日)9:00~15:00
【アート野外展示 アートパフォーマンス】 CB' DOPE (ARú & Surpass) mattari ✕ kikki 瞬時 great!!! 詩の会(静岡・詩織り会 + 東京・西荻草子)
【ステージ タイムテーブル】 ■11月4日(土) テントステージ MC: Mr mokke 10:10 fennel 11:00 わっしょいゆ~た 12:00 レトロ モダン サァカス 叶結 13:00 kagalibi 14:10 THE BLUE PORTRAIT IN THE CLOUD 15:10 スペシャルパフォーマンス
マシンステージ 10:30 生方洋佑 11:20 yuri plus 12:20 わっしょいゆ~た 13:10 Equinox Lily 14:10 テラサカ カイト 15:00 さとるんキッズ
■11月5日(日) テントステージ MC: ミュータン 9:30 小心ズ 10:30 レトロ モダン サァカス 叶結 11:30 moku 12:40 スペシャルパフォーマンス 13:50 ハモニカクリームズ
マシンステージ 9:20 わっしょいゆ~た 10:10 Pugmal Sensor 11:10 生方洋佑 12:00 tanutanu 13:00 SERi 14:10 ファイター
【フード】 Dining Azito 静岡 アメ富士 静岡 RAI4 静岡 うめぼしの松本農園 三重 skywalker bakery&cafe 静岡 種萬 ���田本舗 和歌山 テキーラダイナー 静岡 スペイン炭火焼BARBARO 静岡 yaizu blue + 寺岡けい吉商店 静岡 asian Su-Ha 静岡 肉汁うどんまえはら 静岡 雨のち林檎 静岡 cafe kitchen car mame no ne 静岡 HORAANA 静岡 ILUMINAR KITCHEN 静岡 焼菓子こがねいろ 静岡 渡辺ハム工房 静岡 COFFEE×BEER TRERRE 静岡 Lumos café 静岡 Nomu Suke Cafe 静岡 富士山麓の自家焙煎珈琲屋 赤富士 静岡 世界の丼∞遊流人∞ユルト 山梨 わたじろう 山梨 CAPU 静岡 SUNCAFE 静岡 みくりやそば振舞隊 静岡
【クラフトアート】 Applepheromone 静岡 グラスキャリコ 神奈川 でぼか硝子玉そうさく室 岐阜 あいらぼ 東京 nico glass and yarn 静岡 CRAFTSFARM 京都 鳥小屋 千葉 speakerscorner 神奈川 造り雑貨店SEIGETSU 静岡 ガラス工房veLa Branca 群馬 103craft 埼玉 Suie 東京 glint 静岡 二十三屋 神奈川
0-1camp 新潟 GINNEZU 東京 金属工房「飾」 宮城 komorebi コモレビ 静岡 hutte 京都 cb works 静岡 武器あります。 静岡 irugmod 静岡 金工舎2106 埼玉 Atelier Wald 長野 Share the travel 静岡
あはは工房 静岡 ISSEI 長野 crystalglitters 愛知 森製作所 静岡 siesta 山梨 aoya bags 神奈川 YOMORU WOOLY 神奈川 ツバメヤ 山梨 red beans 富山 アニマル専科真心堂 大阪 Atelier Roji 静岡 Gipsy 静岡 SILVER 広島 culthat 静岡 たかほりひろこ 茨城 YOPOOHRU 静岡 喜多屋商店 静岡 nunohana hana*hana 静岡 Folkie Works 愛知
merry note 群馬 KUBOZUKA YUSUKE 群馬 ハリガネ工房Tsukihi 静岡 HITO 神奈川 紙切り工房 みずぐちちはる 静岡
ropos 滋賀 creaturu 長野 KASSHIRIA 静岡 Rurikoyarn 愛知 ヤマシタ張り子店 山梨 くま店長の花屋イレポーレム 群馬 ankoro 静岡 一五八 山梨 CIHORU 山梨 山室畳店 神奈川 とんぼ屋 愛知 竹工房キコ 静岡 ボンドガール 長野 ソルティレイジュ 愛知 L CRAFT 神奈川
【ワークショップ】 ふじみ屋 fujimi-ya 埼玉 体験屋 おれんじ工房 山梨 moonchild 千葉 ametsuchi 静岡 UEYO hanasakka 静岡 Atelier.kianem 愛知 そらいろ~こどものアトリエ~ 静岡 ぴのこ家 静岡 東静岡アートラボ 静岡 I.S.M. 静岡 KISOU 〜tricot 静岡〜 静岡 森のクラフト もりくら 神奈川 あおいとゆみたのMLÉKO A KOČKY 静岡 SUGAR 沼津 ハンモック ReLife 沼津 kukkula 東京 あそびの広場 静岡 ミニチュアガーデン 静岡 Craft A 静岡 nabe * hanko 静岡
【スタートアップ】 ARANA 神奈川 横山 たくみ 静岡
【注意事項】 ・ペット同伴での入場は禁止です。 ・場内駐車場は事前予約制で、チケットが必要です。 ・近隣施設への無断駐車は禁止です。 ・御殿場駅と「アークラ大サーカス」会場を結ぶ無料シャトルバスは「御殿場駅富士山口7番線」から出発します。 ・新型コロナウイルスのまん延状況や天候により、やむを得ず中止となる場合があります。詳しくは「アークラ大サーカス」ホームページまたはSNSでご確認ください。
【アークラ大サーカス】 Mail. [email protected] Web https://www.xn--cckslyv9zped9563g.com Instagram: @artcraftcircus https://www.instagram.com/artcraftcircus/ YouTube Channel https://www.youtube.com/@user-acra Facebook Page https://www.facebook.com/artcraftcircus/
【国立中央青少年交流の家】 〒412-0006 静岡県御殿場市中畑2092-5 受付時間 日帰り・宿泊研修ご予約 10:00〜17:00 その他のお問い合わせ 8:30〜17:15 Tel. 0550-89-2020 FAX. 0550-89-2025(24時間受付) Mail. [email protected] Web https://fujinosato.niye.go.jp/ Facebook Page https://www.facebook.com/fujinosato.since1959/ Instagaram: @fujinosatogram https://www.instagram.com/fujinosatogram/
■詩織り会 Twitter: @shiorikai2023 https://twitter.com/shiorikai2023
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aoi--zine · 2 years ago
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夕すぎより降り出した雨は、刺すように続いている。私は歩いているが、すっかり濡れた服を着ながら、今すぐに脱いでしまえといった強引な気持ちにもなるけれど中々にそうはいかない。それは何匹か、しかしかなり多くの蟾蜍が、蛞蝓が、まいまいなどがが皮膚の至る処で図太い居眠りをしているのに一匹ずつそれらを引き剥がすような膨大な作業を想像し、諦め私はただ、今の私を犠牲にし、今の私をただ受け入れるしかないように思えるからだ。散るような雲が右から刻々と形を変えて、左へ行っているのに気がつき、漸く雨も止むようだと気持ちから先に晴れてゆく心地もしている。しかしそれもどれ程後のことなのかわからない。それならばなお、繰り返し、今の自分がどうであるかということを咀嚼する様に認めてやっと、時間というものを意識せずに済むのだ。それでも、それでもやはり私は、遠からぬ未来、白雲の隙間を縫って私にぶつかって来るような、無遠慮な太陽を全身で浴びているところを想像し、正確に言えば硝子のことを思い浮かべてこの妙にじっとりとした生活を見送るのである。
大きな夢を見ている若者たちは、そのため、働かなくては当日ですら暮らしていくことも叶わない。朝から働き、夜まで働き、まして夜から働き、二十五歳の、眩しく、透明で美しい時間は長方形の皺寄った、手の黒くなる様な円形の輪郭を与えられ、実際に我々の手中からこちらを見つめている。いや、違って見つめているのは私か。何か言いたげに、それでいて何も言わないかつて時間だった金は、甘い味がする。貴様も舐めてみるといい。少女の股の若々しく酸い味や、明後日食う肉脂の味、布団で鎮座する、安全な午睡の塩っぱい涎の味が、一切合わさり甘い味がする。酒は旨いが、苦労した金で飲む酒は殊更である。気がつくと私や、彼らは便器の中を覗き込んで、貴様に向かって叫ぶみたいにして、私たちしか知らない言語で「殺してやる」と、繰り返し、また繰り返す。目に浮かぶものが涙でないならあれは何か。それは彼方である。海水を掬って、掌の隙間から零れた点滴を逆さまに貫通して来た楽園が尖って、両目に突き刺さっている。時系は最早無意味に右へ行き、過去へ戻っていく。そこに立っているのが、せめて自分の愛する人であればいいと、立て掛けられたような依代に両肩をだらし無く預けて、真っ白のエネルギーを屑籠に堆く積み上げていくのである。
「今日は大変でした。私には黄色がいる、それは高木くんも承知のことかと思われますが、とにかく私の彫刻を買いたいって言ってしつこいやつがいたのです。私は一万でなら売ると何度も言いました。そうしたら急にあいつ、自分のポートフォリオなんて取り出してルックザットワーク!なんて言って結局自分の作品の話をしたがるんですもの。私はすごいね、かっこいいねなんて適当おべっかこいてたんだけど、あの手のやつには珍しくそういうのに聡いんだな。どの辺がいいだとかなぜそう思ったとか、ねちねち聞いてきてさ。俺はそれに説得力のあるようなこと言ってやり過ごしていたら今度はあんたの作品を見せなさいよっつって、見せたらこれを買いたい、一万でなら売る、私の作品を見ろ、この順を三繰りくらいしてたのさ?」
「ああ」
「するとベイビーがこっちに来てお友達?とかって聞くから俺は仕方なく、俺の彫刻が買いたいんだって説明してあげて、話の流れでさ、いや俺もわざとらしいとは思ったよ。けどとにかくベイビーは俺の彼女なんだってそいつに言ってやったらそいつ、I already know だなんて冷たく言い放った。冷えたね俺、いや熱かったね、あいつが放った言葉がベイビーの眉間に跳ね返って火花散らしてた、そんな感じだった」
私は自転車を押しながらそのことについて考えるのだが、ケイが本気で言っているのか、冗談として言っているのか分からない。結局何も言えなかった。ちょっとコンビニと言い残し、蛍光の直方体に吸い込まれていくケイの背中だけ妙に暗かった。ケイが私に追い付く前に自宅へ辿り着いた。シャワーを浴びて部屋の戸を開けるとケイは私の部屋で火のついた煙草を咥えて、熱心に何かをノートに描いていた。骨董市に一緒に行った時に買った、白い表紙に古い紙のノートで、背表紙にローマ字で論外と書かれた瀟洒なノートで、私はそのノートが気に入っている。なかには良いものしか描かれていないからだ。ケイのまえがみを潜って自由な煙は、次々に形をなくしていき、シェードの下で行き場のなさそうにうろうろとしている。いつになったら私は正直になれるのだろうか。ケイは決してノートを私に見せようとはせず、ただ黙りこくって真剣にノートを埋めていた。
つまり145番辺りで。なんて言って通じる者たちの間には不思議な了解がある。それは、今生きているのが何らかの偶然の加減だということである。
我々は109番と、110番に腰掛けて順繰り根元まで吸い干した煙草を海に投げ捨てていた。水平線は燃え、そして暗闇に溶けていった。
「昔付き合っていた女が、女の部屋で知らない男と寝ているのを見た時に私が何を思ったかわかりますか」
兎の瞳のように白々しくルークはそう私に問うた。
「私はすぐさま自分を客観したのです。きっとそれがよくなかった。自分の身体を盾に後ろ図去し、精神として事実を見守ったのです。言いたいことはわかりますか?」
恐らく、と答えて一際高い波が私の履いたズボンの裾を染めた。私は反射するように体勢を変えた。何となくそんな自分を恥じて、失礼と言った。ルークは続けた。
「精神は傷つきません。観察するだけですから。ただし私の精神が私の身体に収まっているなら話は別で、点のような隙間を満たすのが悲しみや怒りです」
「喜びも同様ですか」
「はい、喜びもまたそのようです」
「だとしたら愛はどこにあるのですか」
「愛は在るものではなく、探すものではないですか?あなたがいま尋ねたように。目の前にあっては既に愛ではないはずです。浮気や不倫は簡単ですが、愛は難しい。空気を抱くのにも似た曖昧な理想の中浮気や不倫は最高として形を取ります。しかし愛は既にそこにあるから、既に愛ではないというジレンマを常に抱えている。私はそういった試みのような関係性に疲れたのでしょう。両方とも完璧ではないが、両方とも中々良いということに甘んじて、常に自分自身を防いでいるのです」
しばし独白が続き、私は思い切って口を開いた。
「何からですか」
愛からです、とルークは言わずに私の挑発を躱す余裕が彼の諦めの堅さを伺わせて私は悲しくなった。
「私は硝子の為なら傷つくことができます。私を笑いますか」
ルークは私に対して何も言わなかった。爪に電話をかけると言って、テトラポットを伝ってどこかへ行ってしまった。
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沈黙の扉を開けると、ケイと黄色と、ルークを除くラタンタラの連中が下品に笑っているのを横目に沈黙のマスターが仕方なくグラスを磨いていた。私はカウンターの右端に座ると、驚くべき一、二の間でアイスコーヒーが給仕され、マスターは何もなかったようにまたグラスを磨き始めた。そのグラスは既に綺麗だよと声をかけると、汚くはないだろうねと言われ、その言葉の意味を考えた。マスターは思い出したようにこちらに急いで駆け寄って「あ、深い意味なんてないよ」と言ってまたグラスを磨き始めた。
「やっぱり僕は紙が好きですね、紙でないと見えない景色があります」とケイの声が聞こえる。
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hisoca-kyoto · 3 years ago
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本日にて「硝子と木、そして花」展店舗での会期を終えました。本日も雨の中ご来店いただきありがとうございました。昨日は元橋みぎわさん、今日はtubuの山口さんや日はうたうの美和子さんも来てくださり最終日まで楽しんでいただけて嬉しかったです!
お越しいただきましたお客さまのお楽しみとしてご参加いただきました、マフィンと焼きお菓子の「日はうたう」さんとブレンドティーの「ALTEHMIS」さんを最後にご紹介をさせていただきます。
北白川にある「日はうたう」さんには吉村工務店の1階にある、旬の材料やこだわりの材料を使った日々に寄り添う焼き菓子のお店です。今回は2回に分けてマフィンとクッキーを作っていただきましたが美味しい上にいつもラッピングも素敵なのでどちらもあっという間に完売してしまいました。後半のお菓子の中には展示のイメージに合わせて、硝子(袋)・木(判子)・お花(クッキー)を組み合わせてラッピングしてくださった黒糖サブレも登場したり一緒に展示を楽しんでくださり嬉しかったです!お店は木とコンクリートの建物の中に古道具が置かれた落ち着く空間で、中にはカフェスペースもあるので美味しいお菓子とお茶が楽しめます。今の季節は季節のフルーツソースを添えたかき氷も人気です。笑顔の素敵な焼き菓子を作られる理恵さんとオーナーの美和子さんのお二人にも会いに訪れてみてくださいね。私も近いうちにお伺いしようと思っています♪
ブレンドティーのワークショップでお馴染みのALTHEMISの猪塚さんには、暑さを和らげるようなバタフライピーを効かせてほんのりブルーなサマーブレンドを作って下さいました。ダージリンをベースにオーデコロンミント、ジャスミン、バタフライピー、レモングラスやオレンジピールなどをブレンドして、爽やかなブレンドに仕上げて下さいました。この時期の猪塚さんのブレンドティーを心待ちにされていた方も多く展示とともに楽しんでいただけました。猪塚さん、今回も美味しいお茶をありがとうございました。
明日より展示入れ替えや今回の展示のオンラインショップの掲載準備などの為(お家のことも色々滞っていて・・・汗)、12日までまとめてお休みをいただきます。お店に来て作業している日もありますのでお問い合わせなどはお伺いできますのでお気軽にどうぞ。またオンラインショップの準備が整いましたら改めてお知らせさせていただきますね。制作の点数が少ない作家さまの作品は掲載出来ないものもありますのでご了承お願いいたします。会期に間に合わなかった方や遠方の方にも展示を楽しんでいただけると嬉しいです。それではよろしくお願いいたします。
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kamihirayoko · 4 years ago
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2022 楽譜一覧
JAZZ や ボッサ クラシックなどのよく知る名曲 ◉ALL OF ME
◉WHAT A WONDERFUL WORLD
◉アメージンググレイス
◉雨にぬれても
◉イパネマの娘
◉オーバーザレインボウ 虹の彼方に
◉SMILE スマイル
◉ワンノートサンバ
◉MOON GLOW
◉明るい表通りで On the Sunny Side of the Street
◉エーデルワイス
◉TICO TICO
◉エル クンバンチェロ
◉黒いオルフェ
◉���ュニジアの夜
◉G線上のアリア
◉ジュ トウ ヴ
◉スタンド バイ ミー
◉Moanin モーニン
◉Night and Day
◉さらばジャマイカ
◉My blue heaven 私の青空
◉Red roses for blue Lady
◉Its sin to tell a lie 嘘は罪
◉cry me  river
◉close to you
◉Fly me to the moon
◉gone with the wind
◉MOON RIVER
◉ 波路はるかに
◉ リンゴの木の下で
◉ 朧月夜
◉ Sleigh Ride そりすべり
オールデイズ ROCK Pops
◯ killing me softly
◯ Till there was you
◯ オブラディオブラダ
◯ デスペラード
◯ Loving you
◯ I will
◯ HELP 
◯ 好きにならずにいられない
◯ isn't she lovely
◯ ボラーレ
◯ Long Ago and Far Away
◯you've got a friend in me
◯Change the world
◯man in the mirror
◯Du plaosir
◯Black or White
◯He aint heavy, he's my brother
◯Nothing gonna change my love for you
◯ Whatever オアシス
◯ Mr blue sky
◯L'appuntamento
◯perfect フェアグランドアトラクション
ハワイアン
🌺タヒチアンララバイ
🌺プアリリレフア
🌺 Lei Hala
🌺 Haleluia
🌺 Pua kiele
🌺 pearly shell
🌺 カノ ホナ ピリ カイ
🌺 kuu leo aloha
🌺 Na vaqueros
🌺 lovely hula hands
J-pop 日本のROCK & ポップス
⚫︎ドライフラワー 優里
⚫︎パプリカ 米津玄師
●スピーチバルーン 大瀧詠一
●ひこうき雲 荒井由美
●高気圧ガール 山下達郎
⚫︎pretender Official髭男dism
⚫︎ここではないどこかへ GLAY
⚫︎瞳そらさないで Deen
⚫︎マイフレンド ZARD
⚫︎浪漫飛行 米米CLUB
⚫︎モンローウォーク 南佳孝
⚫︎ほととぎす 桑田佳祐
⚫︎涙がキラリ⭐︎ スピッツ
⚫︎はじまりはいつも雨 ASUKA
⚫︎真夏の果実 サザンオールスターズ
⚫︎瑠璃色の地球 松田聖子
⚫︎時をかける少女 bossa   原田知世
⚫︎ハルノヒ あいみょん
⚫︎love affair 秘密のデート サザンオールスターズ
⚫︎ でっかい愛 ジャニーズwest
⚫︎ luv bias Kis-My-F2
⚫︎ジュリアに傷心 チェッカーズ
⚫︎すみれSeptember love  一風堂
⚫︎sweet memories 松田聖子
⚫︎ 猫 dish
⚫︎イミテーションゴール��� 中森明菜
⚫︎クリスマスソング back number
⚫︎カイト 嵐
⚫︎裸の心 あいみょん
⚫︎真夏の夜の夢 松任谷由実
⚫︎コーヒールンバ 井上陽水
⚫︎歩いて帰ろう 斉藤和義
⚫︎硝子の少年 kinki kids
⚫︎赤いスイトピー 松田聖子
⚫︎飾りじゃないのよ涙は 中森明菜
⚫︎one more time one more chance 山崎まさよし
⚫︎ガンダーラ ゴダイゴ
⚫︎いい日旅立ち 山口百恵
⚫︎さよならエレジー 菅田将暉
⚫︎every thing  Misia
⚫︎whenever you call 嵐
⚫︎元気を出して 竹内まりや
⚫︎スマイル ホフディラン
⚫︎三線の花 ビギン
インスト曲 アニメ 映画のテーマ
♪ 幸福の硬貨
♪ summer
♪ Brave
♪ 海の見える街
♪さんぽ
♪ 風のとおり道
♪ 人生のメリーゴーランド
♪ remember me
♪美女と野獣
♪情熱大陸
♪under the sea
♪ pretty woman
♪ 放課後の音楽室
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thus-library · 3 years ago
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97. 灼
(英題)The Unidentified
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2022/07/10
作曲: thus(2022) 編曲: thus(2022) 歌詞: thus(2022) © 2022 thus. Composed by thus
絵: 茶仔(2022) © 2022 茶仔. Art by 茶仔
動画: thus(2022) (フォント: あんずもじ2020)
ニコニコ動画 https://nico.ms/sm41292526
YouTube https://youtu.be/75pvCzWtGI0
哔哩哔哩 https://www.bilibili.com/video/BV1mV4y1g7w7/
【灼(あらたか)】
花火(はなび)は鳴(な)り終(お)わり 寂寥(せきりょう)と硝煙(しょうえん)の匂(にお)い 夏夜(なつよ)の闇(やみ)へ過(す)ぎて熄(き)える頃(ころ) 人気(ひとけ)のない畦道(あぜみち)の通(とお)りで 来(こ)いよ来(こ)いよと招(まね)いている影(かげ)が
何(なに)かと思(おも)って 近(ちか)づいてみるけど どうしたことか 距離(きょり)が縮(ちぢ)まらない あんまり暗(くら)くて 顔(かお)も良(よ)く見(み)えない おいでおいでと招(まね)いている影(かげ)が
私(わたし)は星(ほし)の仔(こ)よ 帰(かえ)れないと 大奥(おおおく)に佇(たたず)み こちらを見(み)ているのか 吹(ふ)く夜風(よかぜ)が 余熱(ほとぼり)を撫(な)でるように 僕(ぼく)に何(なに)かを求(もと)めているのか
私(わたし)は星(ほし)の仔(こ)よ 帰(かえ)れないと ただ上(うえ)を見上(みあ)げて憂(う)いているようだった 天(あま)の川(がわ)を背(せ)に湛(たた)えた光(ひか)る山(やま)で 僕(ぼく)に何(なに)をか求(もと)めているのか
分(わ)からない���れど 困(こま)っていそうだから 僕(ぼく)は山(やま)を一緒(いっしょ)に登(のぼ)っていた 今日(きょう)も熱帯夜(ねったいや) 日付(ひづけ)が変(か)わる頃(ころ) 提灯(ちょうちん)を片手(かたて)に 深夜(しんや)の肝試(きもだめ)し
そう言(い)えば この山(やま)は初(はじ)めて登(のぼ)ったかな いや盆頃(ぼんごろ)先祖供養(せんぞくよう)で登(のぼ)ったかな どうも道中(どうちゅう)で 鼻(はな)突(つ)く屋台(やたい)の香(かお)りが 後(あと)の祭(まつ)りの余興(よきょう)と並(なら)んでいる
燐(りん)の人魂(ひとだま)が飛(と)んでいる 布地(ぬのじ)のお化(ば)けも交(か)っている 樹木(じゅもく)が唆(そそのか)す 籤引(くじび)き御布施(おふせ)のインチキ商売屋(しょうばいや)
私(わたし)は星(ほし)の仔(こ)よ 帰(かえ)りたいと 頂(いただき)に佇(たたず)み 空(そら)を見上(みあ)げていた 吹(ふ)く夜風(よかぜ)の冷(つめ)たさと同(おな)じような その素振(そぶ)りは 寂(さび)しそうだった
私(わたし)は星(ほし)の仔(こ)よ 帰(かえ)りたいと あの星(ほし)を指差(ゆびさ)し言(い)っているようだった 天(あま)の川(がわ)の繁星(はんせい)が集(すだ)く逆光(ぎゃっこう)に翳(かげ)る その姿(すがた)は 綺麗(きれい)で儚(はかな)かった
暫(しばら)くは静(しず)かに 何(なん)にもない時(とき)で 夜空(よぞら)の星(ほし)を 手持無沙汰(てもちぶさた)に眺(なが)めた 夏(なつ)の大三角(だいさんかく)を何(なん)となく探(さが)したら 青(あお)い地球(ちきゅう)が浮(う)いていたんだ
見(み)てはいけないものを 見(み)てしまったような気分(きぶん) そんな僕(ぼく)を心配(しんぱい)そうに覗(のぞ)き込(こ)む 月明(つきあ)かりと星(ほし)の輝(かがや)きに照(て)る 見(み)たその顔(かお)は 僕(ぼく)の顔(かお)だった
君(きみ)は星(ほし)の仔(こ)よ 灼(あらたか)の仔(こ)よ 貴方(あなた)の還(かえ)るべき星(ほし)はあそこにある 遠(とお)い向(む)こう側(がわ)で鈴々(りんりん)と聞(き)こえる囃子(はやし)を 耳(みみ)にしながら じっと見(み)つめていた
君(きみ)は星(ほし)の仔(こ)よ 灼(あらたか)の仔(こ)よ 貴方(あなた)の故郷(ふるさと)は まだここではないと 吹(ふ)く夜風(よかぜ)に 星(ほし)へ向(む)けて舞(ま)い上(あ)がれ 僕(ぼく)の身体(からだ)が ふわりと浮(う)いていく
私(わたし)の星(ほし)の仔(こ)よ 灼(あらたか)の仔(こ)よ その身(み)を輝(かがや)かせ さあ還(かえ)りなさいと 遠(とお)く離(はな)れていく 花火(はなび)も屋台(やたい)も小(ちい)さくなって 星(ほし)の彼方(かなた)へ消(き)えてしまった もう 夏(なつ)の終(お)わりと共(とも)に熄(き)えた
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kachoushi · 6 months ago
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月例会報告
2024年10月27日
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坊城俊樹選 岡田順子選
於:千代田区立九段生涯学習舘
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十字架に届かぬ小鳥かもしれぬ 和子 能舞台素風を入れてまた昏し 光子 鳥渡る硝子細工となりし首都 光子 行く秋の天に呼ばれし人恋し 伸子 入江たか子高峰秀子と新走り 佑天 乙女らの梨食む音の鈴めきて 真知子 小雨来る靖国の杜小鳥来る て津子 秋声を鐘の音としミサの朝 はるか
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この空の青き果てへと秋の逝く 順子 秋声や深き影おく清水門 はるか 末枯の野に青き花青き玉 千種 兵士とて母に抱るる菊日和 慶月 破れ蓮影のみ揺るるほどの波 千種 天高し太鼓も桴も当たりよく としゑ 鬼の子のぶらり宇宙にぶら下がる 佑天 行く秋の坂に沈みて人また人 和子 神留守の池の闇より真鯉かな 雅春 北濠の今も彼処に烏瓜 炳子
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世之介の放蕩三昧藪枯らし 幸月 輪台へ怒濤のごとく菊を盛り 順子 松羽目へ菊の香そよと迷ひ込む 裕章 カノン砲桜紅葉を乗せたまま 光子 ほの青き白菊の香の沈みたる 和子 楽団を遠く流して薄紅葉 順子 青空の余白にそつと真弓の実 昌文 天窓に切り取る空や赤とんぼ 真知子 零戦の会とあり天高き日に 慶月 銀杏に右往左往の小径かな 和子
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祈りの手結ぶかたちに敗るゝ蓮 順子 露の世を九段会館また灯る 光子 十字架のうしろ青鈍の秋雨 和子
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鳥渡る硝子細工となりし首都 光子 艪をこぎて千鳥ヶ淵の秋惜む 政江 菊の供華黄なり男の子のものかとも 俊樹 乙女らの梨食む音の鈴めきて 真知子 秋声を鐘の音としミサの朝 はるか 年尾忌を厚物咲の黄と白と 光子 くろがねの大鳥居にも小鳥来る 佑天 末枯の野に青き花青き玉 千種
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路地裏は小さき花街や鉢の菊 俊樹 靖國の裏はマリアの枯葉道 俊樹 菊の香の道を辿りて神池へ 伸子 あり余る過去かさこそと落葉掻く 昌文 松羽目へ菊の香そよと迷ひ込む 裕章 ほの青き白菊の香の沈みたる 和子 木守柿古き町の名残る路地 幸月 行き交ひて青年の胸赤い羽根 伸子 天よりの使者か蜻蛉と眼合ふ 伸子 天窓に切り取る空や赤とんぼ 真知子
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ぽつてりと花弁厚き菊花かな 佑天 零戦の会とあり天高き日に 慶月 一穢なき如雨露に記す菊師の名 光子 集英社あたり真昼の蚯蚓鳴く 俊樹 人それぞれの月の大きさむら芒 真知子 鯉太り残んの萩の色深く 政江 パリ五区のごと青き路地壁の蔦 みもざ 秋の蝶朝のひかりを纏ひ来る はるか 晩秋の日に粲々と菊御紋 政江 旅立てる神の家とは素寒貧 俊樹
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銀杏を踏み踏み地霊喜ばす 千種 柿百やドッジボールの校庭に 音呼 露の世を九段会館また灯る 光子 秋蝶の対の乱舞や教会下 慶月 十字架のうしろ青鈍の秋雨 和子 大鳥居の強く切り取る秋の青 雅春 十字架に届かぬ小鳥かもしれぬ 和子
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kirin-lemonade · 3 years ago
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去年の8/15頃に書きためた駄文を手慰みに。
書かずにいられない心持ちで吐き出す様に何かを書いたのは、随分久しぶりな気がします。
錠剤
油紙を敷いた缶に、錠剤を分けて入れる作業が私の日課。持病の硝子症の薬だ。雨が降った後は塵が雨に絡めとられるので空気が澄んで遠くまでよく見える。でも私が発した言葉が行き着く先までは見えない。
時間はこの家を通り過ぎて裏庭で散り散りになった後、結晶化されていく。持病の原因はその結晶だと医師はいう。
亡母#1
アルミニウムは新しい金属です、と亡母が呟く声が聞こえる。夕餉の為に圧力鍋を用意している私は、何?と聞き返すが、亡母はアルミニウムは新しい金属ですと繰り返す。私は夫の好物が鶏の煮物だったか急に自信がなくなる。原子番号ハジュウサン原子量ハニジュウロクテンキュウハチ。夫はまだ帰らない
瓦斯#1
先程からこの部屋に充満している蒸気はきっとそのままにして良いのだろうと
眠りから覚めた私はぼんやりと思う
肌に付着する水の粒子の中に瓦斯の匂いが混じっていることが気になるが、左利きの私にはどうすることもできない
仕方なく真新しい鋏の切れ味を試す事にする
昨日近くの荒物屋で買った鋏だ
プレス機#1
漸く気が付いた。私は巨大なプレス機の中に横たわっている、いつからかは思い出せないが。ナックル構造のこの機械は、地球の自転という回転運動をピストン運動に変化させ、ゆっくりと私の上に鉄の塊を下ろしてくる。ピストンが下死点に達するまでに、私は私の原子番号を思い出さなければいけない。
受付#1
何かご不明な点はございますかと係の女性が笑顔で訊くので、ずっと気になっている事を訊く事にした。妻の猫は無事なのでしょうか。ええ大丈夫ですよと、綺麗に貼られた切手のような笑顔で彼女が答える。ならば良いのだ、7年前に天寿をまっとうした、あの雉猫が無事ならば。先着順です。彼女は笑う。
お神籤#1
今日、神社で御神籤をひいた。偏頭痛が酷かったのだ。札には「怨嗟に苛まれ続けよ」とあったので掛り付けの医師に見せることにした。
医師が、高血圧みたいなものです、その札は黄色のボウルに水を張り、浸しておくといいというので帰りにボウルを買った。色は白だがその位は大目にみてくれるだろう。
亡父#1
昨夜亡父が福引で当たったと云って持ち帰った其れは呻き声をあげる、見たことのない生き物でした。一見、烏鷺の木のようにも見えますが生き物です。おい何か云いたい事があるなら云いなさいと、亡父は其れの首と思われる場所を菜箸で突くのです。其れにとって私達は卒塔婆のように見えていたのです
亡父#2
等間隔に立つ街灯が一斉に灯を落とした。亡父に頼まれ凧糸を買いに行った帰りだ(彼は其れで髪を結う)
確かに今朝の新聞に報せが載っていた。冷蔵庫の中に溜め込んだ羊歯の葉(亡父の主食)を地下の氷室に移さないと。歩調を早める私の目に汗が滲みいる。宙に浮く監視機の小さな赤い光だけが、頼りだ。
亡父#3
何となく息苦しいと思ったら、案の定、天井のプロペラが回っている。この部屋は真空なので気が付かなかった。でもな、それを見続けていると音が聞こえてくるから気をつけろ、亡父が言う。こう在るべきだと、脳が勝手に音を鳴らすんだ。構わず私は見続ける。その時私の頭の中ではどんな音が鳴るのか。
迎え火#1
あの子は私を妹と呼びました。歳はおろか、体の大きさだって私の何十倍もあるのですから、それも当然です。いちねんぶりに懐かしいよびごえがキこえたので、あのコのところに戻りまス今クらしているだいせいどウは居心地がいいでスああ泣いているのはワタシでしょうか尻尾のないあのコでしょうわかりま
老母#1
頭蓋骨を微細な波長で揺らすそれがwhiteroomで暮らす老母からの信号と気づいた朝
彼女は何を伝えようとしていたのか
古えの話を伝えようとしていたのか
それはまだ、元号があった頃
(今は勿論、樹暦1337年)
もう誰も摂氏で気温を測らない
ああ、いつまでも続く彼女の振動
亡父#4
私は壁の木目から此方を覗いている叔父と視線があったまま動けないでいる。叔父の葬儀はそれはもう、豪奢なものだった。ヒヤシンス、亡父が泣く、木目には記憶が存在しないのに。映る筈のないテレヴィジョンが、ぷつっと息を吹き返した。画面の中に咲き誇る花が見える。ヒヤシンス、亡父の涙は止まない
読書#1
落ち着いて、集中して、と彼女は私の手の甲を摩りながら云う。落ち着いて、集中して。彼女の内部には私が想像しているこの部屋しか存在しないことが愚かな私にも分かる。先生、それは、と私は言葉を探す。彼女は首を擡げる。それは机の上で開かれた本が、自らその頁を閉じる様な、ゆっくりと静かな動き。
ラジオ講座#1
「先週は」、ラジオの向こうの先生が云う。「発した言葉が土壌の中でどのように分解するかを学びましたが、今週はもっとシンプルに発した言葉の熱量がテーマです」この講座を聴くのは四回目。家事の合間に丁度良い時間なのだ。冷蔵庫からアイスクリンを出す。上手く溶けますようにと、私は言葉を準備する。
#亡父5
私は亡父を散歩に連れ出す。彼は近くの植物園が好きなので、何時もそこを散歩のルートにしている。園内の池にたどり着くと、彼は小石を詰まらなそうな顔でひとつふたつと、池に投げ込む。沈澱している、等と思ふのは我等が水面の上から臨んでいる故だ。私は曖昧な笑顔のまま彼の首輪の紐を曳く。
傘#1
ラジオで天気予報を聞きながら、停車場のベンチに座っていると、足元を摂氏70度の水が波打ち流れていきました。ああまただ、また裏庭に無数の傘の残骸が集められるのかと、私は情けない気持ちで歩き始めます。傘のビニールはすぐに朽ちて、植木鉢の裏底のような哀しい臭いを放ち始めるので苦手です。
名前#1
亡父が以前縁日で手に入れた生き物は、亡父が世話をしないので、私が食事を与え散歩に連れて行くようになりました。ラジオで、物体には必ず名前をつけた方が良い、と聞いたので、二人で考えて「シジマ」にすることにしました。私が彼に「亡父」と名付けた時は私一人で考えたので至って楽な作業でした。
執務室#1
ずっとその存在を疑っていた世界に、今日呼び出された。書状にある撮影所に向かい、彼の執務室を訪れると、彼は無言で次々と書類にサインし続けながら時折視線を此方に向けた。服の土埃を払うことも口を開くことも許されずペン先の掠れる音を聞いていると、確かに私も世界も存在していると実感できた。
海図#1
最初、彼は自らを「シテン」と名乗った。視点、支点、始点、死点。訝しむ私に彼は言う「航海士が海図にコンパスの針を突き立てると、船を取り巻く海がその動きを止めるように、お前がこの場所に私を突き立てれば、お前を取り巻く全てがその動きを止める」納得した私は彼を亡父と名付け、家に上げた。
輪転機#1
裏庭で野晒しの輪転機がごおんとゆっくりと回り始めました、纏わりついた水滴を振動で弾き飛ばしながら。私だの君だのこざかしい、亡父が私の背後で呟くと忽ち、輪転機からは火柱が吹き上がり、亡父の体臭は異国の空港の匂いの様に懐かしく哀しく。私の残照は失墜して悲しみに溢れ、葉脈へと行き着きます、やがて
市場#1
デスクの抽斗には裏庭で掻き集めた硝子の粉が敷き詰められていて。通り過ぎたじかんが結晶化し地面に落ちて砕けたものです、ゆえ、市場に卸します一斤三円で何処かに売られていく曾てじかんだったものを悼みます。空腹を恥じこの躰を呪いつつ誰かの傘に入れてもらいつつ。終わったじかんを売り〼、ココ
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hiraharu · 4 years ago
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【涼を感じる器】
1899年の創業より、硝子の美しさに魅せられ一筋に歩んできた廣田硝子。
世の中に広く受け入れられる商品づくり、江戸切子・江戸硝子という古くから有る東京のガラス食器の技術承継、効率にとらわれないものづくりという考えを基軸にし、東京錦糸町・廣田硝子だけにしかないものを、これまでもそしてこれからも丁寧に作り続けます。
淡雪を降らせたような白いふち取りの[雪の花]シリーズ。美しい輝きが、レトロモダンの懐かしい時間を感じさせてくれるようです。涼しげなガラスの器は、夏に大活躍するでしょう。
廣田硝子の商品まとめ https://wazawaza.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=1565117
・・・・・・・・・・・・・・・ 〔わざわざ&問tou/店舗営業日〕 毎週木〜日、11:00〜16:00の営業です。 〔パン・お菓子のご注文はこちら〕 https://kinarino-mall.jp/item-55763
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kotobatoki-arai · 9 months ago
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ユートピアを考えていた。
 このなだらかなスロープをのぼる体はだいぶ軋んでいた。皆が支える滑車は見事に装飾され様々な色合いを纏い蔦をおおく絡めている。そこのミチを抜けると断層にあたるから、低く照らし尽くした桟道はなんぼもなく、曲線に沿って地下を巡ってください。厳粛な門扉は硝子でできており遠くまで見渡せていたが、ちょうど突きあたりの掉尾を飾るからなんてこともない、そこはゆるりとあればいい。  歩みだすときはどうせ坂道を転げるように自由を求める、いつかの雨晴れ。ひときれ振りまく苦笑いに流れるらしい わたしの日常は、腐った美術館だと畫けば、  fragileをのみこんでいった  無意識の傾げ、やわらかく暗がりを抱擁する低い空に神の皓さは具象する、湿っぽい賢者であろうと叩き壊した少々の本音はやはり馨り、あたりいちめんないような感覚と憂いたすべては酔彩、  (溜息、)羽とすれば咲くがいいか。  四六浮き積と漂う媒体、崩してむき出しに沈シンだ柔肌と、ちょうど上澄みの配列をいつかと散り敷かれる、  つまらない祝日がたどたどしく腰をおろして。  どうやら、読みかけの頁 と混じりあい 孤独を拐かしたように感じ、生身の体はまた地に湛む 一夜の姿を見せ/考える/ジオラマだと勝手、わらえばいいけど。しかしだよ。この雨はやまなかったが、あなたはやわらかなかおをして、たまにかがやいてみえる。  繊細は腐静仏と吸い寄せられ  ひとつぶの常ジョウは物換星移  いま暁のことですから  ハンドルNでは風刺画にもなりゃしないが  そうだな これは焼けた砂浜の車をやめて、素足で降り立ち おんなはまた/猥りがましいから胎をさすって。ビーチハットを目深に被り、奥に統べるように干潟を浚い、この瞳もなにもみえやしないが。キャンバス上を、流れてゆく先々を想像したときに。――と、まあそんなしあわせがほしかった。そう、声なき声���。いつかの稚気をそぎおとした某名のひとつとして、  それともなにか適した通勤バスのなかは温室じみて、しばらく床に落ちた水加減が混じり、座席はテンプレートのように日差しが溶け込み、にわかにひっくりかえした特徴は天地に蒼くざわめいた。  決して。軽く蒸れ乾いた沈黙(額縁)を、のそのそと  這い出ると/おおごえで/振り向けば、主張がない/視覚を  片々な素材を塗り重ね、或いは くたくたな結び目の一方に火をいれたばかりのものは、枢ククリ地図を片手に押し開き、この状態を完璧なものだと、一途にあり。こわばる実を幾つか抱いた木々がまたヒトカズに入イる。独自な悪路にさしかかるワダツミの質感までがアサギと可溜り、珠海の鳳獄や銀竜草ユウレイタケと解き、あっちこっちに群生し、おどろくほど弱い罠だとひとつ摘みとり、瞬く間に枯れて、どうせまわりはおだやかに過ぎゆくのですから  もはや風であれ繋がれ、ほつれ目からそれぞれの人相を窺う、あるべきところへ薪は焚べられたのです。  怖気とは苦しみで悲しみで飼い殺した���知不明の蛇行を挟んでここに、種を蒔く。  無遠慮な灌木が芽吹きはじめる。侘しさが降り注ぎ窓に並ぶ。例えるなら眼鏡ごしに平行線の感傷とする。なにを掴み取ればよいのか。なにより御承知のとおり 喜劇覚書など粛々と眠るまえに  ――ここに、延ばして掻きとるだけの今とは、ただただ下る 生活と通過する故に、蝋燭を立てインクを溢すのだから。その質感とあれば消沈の舵は荒廃を取り分け旨は潮流をややこと更け、刻としてうつほと孕む一筋のひかりを掴もうと手を伸ばし、ぬくみだけが輪郭と繊細に沁みて  ……行く先をはじまりとみようが、柔らかな陽が透きとおったリネンのカーテンから現にみちみちて。シンプルないたみばかりが喉元を絞めるから。目覚めているようでどこか夢の最中あり、秒針も忙しない鼓動が重ならずに呼び起こしただけ切り抜きなのです (ひたぶる視覚に沿って包まれていたと、おもわれる、堺はまたどこかで傷付いて、脳裏ではたくさんのオリが生まれては消えていくのだ)  ではやがて十坪に満たない明日になったら、赫々たる尊びも、ね――もう褪せた夏の秘色を解いたばかりの、あれら連中(労働者���はハリツケの丘を一蹴する。タンパク質が絵にかいたようなifの夢 (同時に朝もやと書き置き、手繰り寄せた白湯を啜った)  沖から外を眺め見ることが叶うよう、彫り込まれた深い庇が一夜のように天赦し、ゆるくズレていくと 人生のにぎわいにあたる。のちに複製され、舌の先まで熱い手のひらの流れに、記憶の隅に複雑に追いやられてしまい、なにもないほど、あたりまえになる  このおとこの口から、光沢のある眼球まで感覚を欠けて、斜めから錠を取り付け、(まったく大袈裟な微睡みだと咳き込んでさぁ)  順序よく咀嚼させたものです。  ぬるい愚直なれ、鬱蒼とある なんぼか くねくねと、  まんべんなく虚脱感を肉体に添えるからだと  些細な歴史と覗き込めば銀河の畔もなれはて、一朝の圧倒を縫ってそれほど充てる、澪標の跡は手のひらだけに催涙雨と成す  しかし豊かな光や深い影が情け無いかも知れません。いまやあなたの芝居がかった振る舞いも幅広く、自然という退廃美と永久欠番の黒鍵と奏でる自白なども、いろを混ぜ合わせ、憐れみひとつも感じないから。膿んだほとぼりとはきっと反復する、ほんのつかのまの名画だとして  ではループする7番線の占いは―― 「どうってことねえの。」  ――もしシーラカンスの脊柱は太い中空の管~左右を除する足音が発する。そうしたなかで皆それぞれに閉ざされていて、晴た口吻のまどかに手を付けた展望のあぶき、かろやかに伏し拝みしどき、受け皿を序す貽貝の毒はへばれども堅く。くどくどとそれを憔悴爆撃とすくんでも老いても  あれらはどうであろう《多機能携帯端末と徘徊する》  、と――  並んでいるところに立って おとこは むかっていた、  碑錆びた名残りとある廟のようでも。  天体観望会は、アンタレスだけ満たし、うららかな裏を反して。考える葦であればびくともしない性格で。悠長に眠っているくせに。月蝕のあいだじゅう表情が消える。 (あなたのネグリジェを、黄昏が、さりげなく梳いたという)  にんげんは俯瞰してみれば限りなく小さく、日常の如何にのっぺらとしたことよ。あの手この手も、多少の変化にびくつきながら過ごす、懐かしさもちょっとしたありえない夢も、抄録コラージュしたばかりで  気づけば景観を彫像する箱庭であるのに、ほんのすこしかいま見る窓辺では霧のむこうにある、風景とはひやりとなみだしたり、肖像がほころびたりするけれども、春がまた濡れている  あなただとして 〈枝と花で飾る、ことを。〉  おもいかえしては此等、あるがまま 〝恣意ている〟から ゆらぎ (尾ひれがつく。そう想われるのだ)  すりつぶす星の粒が、ゆがんだ波が寄せては引いて、いつかの桜花を兆すまで闇が浮かび落ちる、わずかな影が同形な足で真直な選を追いたら、すくわれ続ける。うたかたの日は昇り、また沈み、一匹の貧相な観賞魚アナタをおもいえがく  爛れた流星痕とは口遊んだ野火だったから  況して、それからずっとひかりはリビングダイニングに処方箋を継ぎ足す。あなたから仕切られた曲線で、くすんだ指で 蝶尾がそこら中ともしらぬものを仄カタムけ、真っ白に潰されたひかりに値いし、天穹と深海をいずれも結ぼれるように反射した六畳一間に わたしと金魚鉢ひとつ、空蝉と置いてな(筆舌に尽くしがたい) 2024/07/27
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pleiades23 · 4 years ago
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天気がいい日はどうも空を眺めたくなって、ドライブがてら空の開けた場まで車を走らせるのがオフの楽しみの一つ。神社巡りや温泉が好きだったり、ふと自然を感じたいなと思ったり。現に今まで人に尋ねられた時はそれらが好きだと口にしてきた。本当に好きなものは中々変わらないようだ。今日も、空や景色が綺麗に見えるお気に入りの場所へ。好きな音楽をシャッフルで流しながら好きな飲み物を手に取って、無意識に上がる速度。車窓を流れるありふれた景色すらも何故か心地良く感じ、緩やかな風に揺られて木々が舞い踊っているように見える程今の俺は上機嫌らしい。きっと一気に辺りを包み始めたこの暖かさのせいだ。冬の終わりと春の目覚めを思わせる、一時の夢を見ているようで。多くの人間に漏れず自分もこの温もりに浮かされている。外を歩く人々の表情がいつもより明るく見えたのも、きっと同じ理由だ。…今は舞い散る木花の脅威は忘れよう。
車内に広がる音の波に乗って口遊んでいるうちに目的地に到着。空が開けた場所ということは、そびえ立つものも空間を遮る人工物も、透明な硝子の壁も何一つ無い。つまり。そう、今君が思い浮かべた場所かもね。幸い周りに車も人もいないから今日は俺一人だ。よっしゃ、独り占めできんじゃん。なんて子供地味た喜びを口元に含みつつ適当に車を止めて降りる。今の時期だと昼下がりのこの時間くらいが意外と丁度いいんだよな。遅くても3時半過ぎくらい。日差しがまだそんなに強くなくて、でも明るいから空の青が鮮やかで。そんなことを考えながら数メートル先に進むと待望の景観が目の前に広がった。思わず辺りを一望する。ああ、空ってやっぱこんなに青いんだな。でも一色じゃなくて濃淡があって、光の具合で彩度も変わってる。めちゃくちゃ心洗われるわ。いや、そう言うと普段どんだけ汚れてんだよってなるけど。俺はそうでもないはず。まぁ人間だから色々あるし、ってそんな事はどうでもよくて。やっぱ人間は地球に生きてんだなーって漠然と思うわけよ。心做しか風の匂いが今日はちがう気がする。何かの鳥の囀りもどこからか聞こえたような。
この場所に来ると空と景色の写真を撮るのが知らずのうちに恒例となっている。今回も掌に収まる機器を掲げ、あの夜と同じように時を切り取った。あの日とは真逆の、光に包まれた世界。少しずつ高まりつつある湿度に煽られて膨らむ雲達が穏やかに漂っており、一際輝く真っ直ぐな筋がその隙間を通り抜けているのがはっきりと見える。淡い青空にかかった光のカーテンは、太陽の有無に関わらずそこに佇む雲があるからこそ人間の瞳に映るのだと、ふと頬に触れて走り去った風が得意げに囁いた。俺は太陽よりも月の方が好きだけど、お前がいないと月を見ることができないな。今はまだ穏やかに世界を照らしている遠い存在にささやかな感謝を捧げたところで。何も、自分の為に写真を撮った訳じゃない。俺が一方的にやっている日常の共有。いつからか始まった、二人だけの空間に送られる世界。見せる度に綺麗だと素直に感動してくれる彼が愛しくて。いつだって少数派だと看做され恐怖心を抱かれた感性と本能は変えられないまま時を過ごした中で、自分が美しいと感じたものを同じく美しいと共感してくれることが嬉しくて。何気ない日々が互いの瞳には違って見えるのが当たり前だと分かっていたはずなのに。俺の見ている世界を知りたいと望まれるなんて思ってもいなかったから。つい、心が緩んでいく。嗚呼、知らない世界を知ってしまった。俺も彼奴もこのまま元に戻らなくていい。などと零れ落ちた少しの欲まで、まだ沈んでいない光が世界の全てと同等にそして無邪気に照らす。これは胸の内に収めておこう。まぁそんなことしなくても彼奴の日常に溶け込んでしまえばいいんだし。…あ、撮るだけ撮って満足してたわ。送ってなかった。よし、目的達成。彼奴今日は何してんだろ。なんだかんだのんびり過ごしてそうだな。確か休みだったはず。あー、いつでもいいから今度は温泉に行きたい。旅館に泊まって美味しいもの食べて、酒飲んで気持ちよくなって、あたたかい温泉に好きなだけつかりたい。欲望が湧き出てくる時って語彙力どっか行くよな。最近行けてないから気持ちだけが募ってるし、考えるより感じろって脳も言ってるんだよ。きっと。うん、気持ちいい自己の正当化。そんな取り留めもない思考を脳内でぐるぐると掻き混ぜていると、聞き慣れた通知音と共に液晶に文字が浮かび上がる。どうやら此方の唐突な贈り物に気付いたらしい。
『うわっ、めっちゃ綺麗!』
「だろ?すげぇいい天気だよ。」
『一人で行ったの?』
「ん、そうだけど?」
『今度は俺も連れてってよ。俺助手席ね。』
「ふは。いいよ。そこ、お前にあげるわ。」
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