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フリーのアクセシビリティコーディネーターがアクセシビリティや障害者差別解消を考えるブログ
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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CEATEC アクセシビリティセミナー2017へ行ってきた
10月3日から6日まで幕張メッセで開催されたIT技術とエレクトロニクスの国際展示会CEATEC JAPAN 2017。10月5日(木)にアクセシビリティセミナー2017があり、2つのセッションを聴講してきたので所感とレポートを書いていく。
所感
CEATECでのアクセシビリティセミナー聴講は昨年に引き続き2度目。今年行われたセッションのタイトルは次の通り。
わたしたち、こうして使っています ~障害当事者に聞く、使える・使いたいアプリ・サービス~
わたしたち、こうしてつくっています ~アクセシブルなサービス提供に向けた取り組み~
1.は視覚に障害を持つ利用者が仕事やプライベートでどのようにウェブサイト、スマホアプリを使っているかを紹介するデモンストレーションで、2.は民間企業が製品やサービスを作る際、どのようにアクセシビリティを配慮しているかを話し合うパネルディスカッションだった。
ちなみに昨年2016年のセッションタイトルは次の通り。
「Webアクセシビリティ最新動向 ~JIS X 8341-3:2016と障害者差別解消法~」
「情報取得における支援技術の進展と利用シーンの変化」
昨年はアクセシビリティのJIS規格「JISX 8341-3:2016」の改正や障害者差別解消法施行などアクセシビリティに関するハード面の整備が色々なされたこともあり、ルールや法律、公的機関の取り組みや海外の動向などが中心の話だった。
対して今年のセッションはタイトルからしてカジュアルで、障害のある利用者がどのようにウェブサイトやアプリを使っているか、民間企業がアクセシビリティに対しどのように取り組んでいるかという、ソフト面の話がメインという印象だった。
今年のセッションで特に興味深かったのは次の2点。
アクセシビリティ対応はやはり顧客獲得につながる
アクセシビリティ=問題(デバイド)解決の手法
顧客獲得についてはロービジョンの伊敷さんや全盲の山田さんが実際にデモをしてくれたアプリの話が興味深かった。カラオケ店JOYSOUNDのアプリを使って自分で曲を選択することができるようになり「カラオケと言えばJOYSOUNDになりました」という伊敷さんの言葉が印象的だった。山田さんのラジオアプリの話では情報構造やデザインのちょっとした違いによって、音声読み上げでの使い心地が大きく異なる。潜在的な顧客の獲得はアクセシビリティのメリットのひとつとして以前から言われていたことではあるが、今回実例を見ることでそれがより鮮明に感じられた。
「アクセシビリティ=問題(デバイド)解決の手法」については、2つ目のセッションでfreee(株)の伊原さんが投げかけていたテーマが印象的だった。アクセシビリティは「JISの基準を守る」という意味合いだけでなく、デバイドを解決するための手段になってきているのではないかというもの。個人的にとてもワクワクしたところだった。
ここからは個人的な意見。アクセシビリティというと、確かにJISで決められた達成基準というルールを守ってサイトやアプリを作ること、というイメージがある。それはもちろん前提として行うべきことなのけれど、「何がなんでも基準を守る」ことに固執することに疑問を抱くところがあった。
例えば動画コンテンツ。動画コンテンツを含めたウェブページをJISの適合レベルに準拠させるのはけっこう大変で、最低限アクセシビリティを確保できるレベルAに準拠する場合もキャプション(字幕)をつけなければならず、公的機関に求められるその一段階上のレベルAA準拠となると、プラスで音声解説もつけなければならない。動画の内容をすべて文字起こししなければならないので、時間もコストもかかる。コンテンツ提供者にとっては負担が大きいため、基準を満たすことを優先して動画コンテンツは使わない、という判断をする事例を見たことがあった。
もちろんそれも現状ではひとつの判断ではあるのだけれど、本末転倒というか、ウェブの持つ力を制限してしまうことがもったいないと思っていた。動画コンテンツは文字を読むことが苦手な学習障害を持つユーザーにとっては文字情報よりも理解しやすい場合が多いし、障害の有無関わらずユーザー体験の向上につながりやすい。動画を使うことで解決できる問題(デバイド)もあるわけだ。
障害のある利用者向けの仕組みというわけではないが、KDDIウェブコミュニケーションズの「Twilio」やChatWorksの「食券チャット」など、複数の技術を組み合わせてインターネットを活用した問題解決手法を各社が提供している話はとても興味深かった。
過去に聞いてきたセミナーや講義はJISの説明や公的機関の取り組みをメインにしているものが多く、今回聞くことのできた利用者や民間企業の話はとても新鮮で、アクセシビリティが次のステップに入ってきたのではないかということを感じることのできるセミナーだった。
レポート
わたしたち、こうして使っています ~障害当事者に聞く、使える・使いたいアプリ・サービス~
障害を持つ方がどのようにウェブサイトやスマホアプリを使っているかを紹介するセッション。スピーカーはロービジョンの伊敷政英さん(Cocktailz)と全盲の山田崇仁さん(富士ゼロックス(株))。仕事やプライベートでどのようにウェブやアプリを使っているか実演して見せてくれた。
伊敷さん
じゃらんnet
ロービジョンの伊敷さんは、仕事で遠方に行く時の宿泊予約にじゃらんnetを使っているとのこと。サイトを使う際、背景が白だと見づらいため、まずはWindowsに標準搭載されている反転機能により背景を黒へ変更、さらにやはり標準搭載の拡大鏡ツールを使って、ページの一部を拡大しながら画面を見て必要事項を選択していく。料理などの写真を見る場合は反転だと見にくいため、元に戻すということだった。
なお、このサイトの使いづらいところは次の点とのこと。
(1)宿泊の日付を選ぶフォーム部分。横にある「日付未定」にチェックが入っていると、そのチェックを外さなければ日付を選択できないようになっている。ただ、チェックが入っていることに気づきにくく、日付を選べないことに戸惑うことがある。
(2)日付を押して前面に表示されるカレンダーについて、反転時にはカレンダーと背面が同じ色となり、境界線の色も明確でないため、画面拡大しているとどこまでがカレンダーかわかりづらい。
(3)メインメニュー項目上にマウスカーソルをのせたときだけ下にドロップダウンメニューが開くが、カーソルが少しでも動くと閉じてしまう。画面拡大しているためドロップダウンを一度に全部見ることができず、下の方を見ようとしてカーソルを動かすと閉じてしまう。
Dropbox
オンラインストレージのDropboxも仕事で使用する伊敷さんだが、使いにくいところが結構多いとのことだった。
(1)じゃらんnetのドロップダウンメニューと同様、マウスをのせたときだけ文字が出るアイコンがあり、それがわかりにくい。
(2)ドロップボックスに格納したファイルを他のユーザーと共有する際、ファイル名と「共有」ボタンの間が離れすぎており、拡大鏡だと見えづらい。
(3)人の顔のアイコンがあるが、マウスをのせても文字が出ず、何を示すものかわからない。ファイルの残り残量を示すメニューだが、アナウンスが何もないので押しづらい。
JOYSOUNDのアプリ
カラオケ店にある紙の目録や電子目録は見えず、以前は自分で歌いたい曲の予約ができなかったという伊敷さん。このJOYSOUNDのアプリがあれば自分で曲を入力することができ、文字を拡大させて歌詞を見ることもできるので、曲選択の幅が大きく増えたと言う。このアプリがあるからこそ「カラオケと言えばJOYSOUND」という認識になったということだった。
ニュースアプリ
トップニュースなどは背景に写真が配置されている場合が多く、背景色を反転した際に読みづらくなってしまう問題点があることを指摘していた。
山田さん
ネットプリント
全盲の山田さんは、ウェブ利用の際に画面の内容を音声で読み上げるソフトを利用している。
サービスとしてはセブンイレブンの「ネットプリント」をよく使うとのこと。ウェブ上に印刷したいファイルを登録しておくこ��で、セブンイレブン内にあるコピー機を使ってウェブ上から取り出し、印刷できるサービスだ。
音声読み上げソフトで操作を実演してくれたところ、読み上げには概ね問題ないサイト構成になっていた。ただ、ファイル登録の際に「普通紙にプリント」「フォト用紙にプリント」「はがきにプリント」という選択肢があり、それぞれボタン画像になっているのだが、適切な代替テキストが入っていないために音声読み上げでは画像ファイルの名前がそれぞれ読まれてしまい、何を示すのかわかりにくくなっていた。
Yahoo!メール
メジャーなサービスではあるが、これについては使い方を諦めたとのことだった。Yahoo!メールの受信箱はテーブルで記述されており、音声読み上げソフトのテーブルスキップ機能を用いて受信箱へ移動することができる。だが、ウェブブラウザがChromeだと表見出しだけを読み上げた後に受信箱の外へ出てしまい、メールの内容を確認できないため、使うことができなかった。なお、Firefoxの場合はメールボックスの中身も順番に読まれており、ブラウザによる違いもまだまだ多いとのこと。
NHKラジオ らじるらじる、radiko
ラジオが好きな山田さんは、プライベートで使っているアプリとして2つのラジオアプリを実演して見せてくれた。
1つ目に実演した「NHKラジオ らじるらじる」は音声読み上げでもわかりやすい構造となっていたが、もうひとつのアプリ「radiko」の方は、放送局と番組名が紐づけられておらず、音声読み上げでは各番組がどの放送局のものかわからないということだった。
まとめ
ロービジョンや全盲の利用者でも障害者向けの特殊なサイト、アプリを使っているわけではなく、周りの人と同じものを使っている
アプリ開発の際のポイントとして、独自にいちから開発するとアクセシブルでない点が出てきてしまう可能性がある。Appleなどのプラットフォームが標準で用意しているコンポーネントを利用して開発した方が、結果としてアクセシブルになりやすい
わたしたち、こうしてつくっています
2つ目のセッションは民間企業がアクセシビリティにどのように配慮して製品やサービスを作っているか話し合うパネルディスカッション。パネラーは次の通り。
伊原力也さん(freee(株))モデレーター
神森勉さん((株)KDDI ウェブコミュニケーションズ)
守谷絵美さん(ChatWork(株))
四方田正夫さん(富士ゼロックス(株))
矢田由紀さん(日本電気(株))
5人から自己紹介があった後、次の3つの問いについて、パネラーが各社を代表して会社のケースを紹介した。
問1:アクセシビリティ、必要性をどう考えたか
問2:アクセシビリティ、どんなことに取り組むか
問3:社内でどうやっていくか
問1:アクセシビリティ、必要性をどう考えたか
アクセシビリティの必要性について、各社それぞれなぜ必要性を感じたかについて紹介があった。
神森さん
KDDI ウェブコミュニケーションズ(以下KWC)がアクセシビリティに取り組んだのはここ1、2年。「働き方改革に伴う採用」において障害者採用を視野に入れてできることがないか、ということがきっかけだった。
守谷さん
ChatWorkのミッションは「世界の働き方を変える」こと。それは同時に「誰もが使えるもの」でなくてはならず、グローバルにビジネスを展開するうえでアクセシビリティへの取り組みも見られている。海外では金銭に発展する訴訟に発展するおそれがあることから、そのリスクを減らすことも必要性のひとつ。
四方田さん
きれいごとではなく法律だからこそやるという認識。アメリカのリハビリテーション法セクション508をはじめとして、世界では法律化されているという現状で取り組む必要があった。
矢田さん
日本電気(株)(以下NEC)のグループビジョンは「人と地球にやさしい情報社会」。そのビジョンを果たすためNECではアクセシビリティに関する事業を社会ソリューション事業領域として行っている。
問1のまとめ
ここで伊原さんから、各社の話を聞き、かつてはJISで決められた基準を達成するためにやらなければならないものであったのが、価値を生むためにやるものという要素を帯びてきているのではないかという示唆。
問2 アクセシビリティ、どんなことに取り組むか
伊原さんより「アクセシビリティ=決まりを守ること?」というテーマが示され、アクセシビリティへの取り組みは基準を必ずしもを守るだけではないと考えられるのでは?という点で各社取り組んでいることがあるかについて話し合われた。
守谷さん
現状は基準に沿ってなんとかするという意味合いが大きくなるとは思うが、チャットというウェブサービスを通じて何かできるのではないかと考えている。ChatWork社内での事例だがbotを利用した「食券チャット」という仕組みがあり、経費処理の効率化に努めている。インターネットを活用しているからこそできるサービスがあるのは事実だと思う。
神森さん
KWCではTwilioというAPIサービスを提供している。福岡市ではこのAPIを元にウェブで配信しているPM2.5情報を電話でも受け取ることができるようにし、電話しか持っていない高齢者に情報を届ける仕組みを作った。
四方田さん
独自の「ユニバーサルデザインブック」や「アクセシビリティ配慮製品紹介シート」にに基づいて製品開発を行っている。
矢田さん
組み込みの表示機器のフォントが重要と考えて���ニバーサルフォントを開発した。文字が並んだときのがたつきが少ないフォントで、セブン銀行ATMなどに組み込まれている。
伊原さん
アクセシビリティの意味合いは、「JISなどの基準を守ってアクセスできるようにする」にとどまらなくなっているのではないか?
ガイドラインはもちろん大事だが、もっと広範囲のデバイドを解決することが「アクセシブルにする」という認識となり、その認識をもとに多くの人をターゲットにする製品やサービスを作ることができるのではないか。
問3 社内でどうやっていくか
今後のアクセシビリティへの取り組みについて、各社が内部的にどのように行うかについて話があった。
神森さん
アクセシビリティ対応を行うには、ある程度トップダウンで必要なところにお金をかけ、投資やブランディングの観点やガイドライン整備を行うのがよいのではないか。ボトムアップの取り組みは、直接的な効果に目を奪われがちであるため、時間がかかると考えている。
守谷さん
ChatWorkでは、逆にボトムアップで行っていくパターン。会社の理念につなげてアクセシビリティ方針を設定し、すでにあるワークフローに無理なくアクセシビリティ対応を含める。社内勉強会など開催し、デザイナーとしてどう伝えるかを考えている。
矢田さん
NECではアクセシビリティ推進部門が各製品部門と連携して行っている。
四方田さん
富士ゼロックスでは会社として法律にどう対応していくかを継続してやっていく。
最後にひとこと
神森さん
KWCでは自社ガイドラインを元にウェブサイト制作会社へ依頼してきたが、ガイドラインが無くても最初からアクセシビリティの知識を持っている会社へ依頼するようになった。例えば、事業会社としてはランディングページを作成した場合そのコンバージョンを考えなければならないが、外注したページがアクセシビリティに配慮していないものだった場合、コミュニケーションロスになると考えている。
守谷さん
インハウスデザイナーとして社内にどう広げるか?が課題。信念を持って伝えていけば同調してもらえると考えている。
四方田さん
継続することが大事。法律とかガイドラインをきちんと抑えたうえで進める。
矢田さん
継続と信念が大事。より多くの皆様に利用いただけるのをモチベーションにやっていく。
以上
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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アクセシビリティキャンプ東京2016へ行ってきた
2016年10月29日土曜日にアクセシビリティキャンプ東京というイベントに参加してきました。
アクセシビリティキャンプとは?
自分がアクセシビリティ関連の仕事をしているのにもかかわらずこのイベントのことは初めて知りました。国際的なイベントで、アメリカ、カナダ、イギリスなどでも地元の有志によって開催されているらしい。
今回は『日中韓 Webアクセシビリティ サミット』という副題で、韓国や中国のアクセシビリティ状況に関するセッションを聞くことができました。なかなか日本以外の状況を知ることができなかったので、実際にそれぞれの国で仕事をしている方の話しを聞くことができ、とても勉強になりました。
セッションについて
1.Webアクセシビリティ 日本の最新動向
有限会社ユニバーサルワークス代表取締役の清家順さん、株式会社インフォアクシア代表取締役の植木真さんによる日本国内のアクセシビリティ動向に関するセッションでした。
日本のアクセシビリティ動向を知るうえで欠かせないJIS X 8341-3改正や障害者差別解消法施行の解説があり、日本も世界各国の基準と同じように、適合レベルAA(国際的なアクセシビリティのガイドラインであるWCAG2.0と同等のレベル)に準拠することが、公的機関には求められていることが述べられました。
また、日本の公的機関がどの程度アクセシビリティへの対応を行っているかを、アクセシビリティ方針の公開、試験結果の公開という点で、府省等、都道府県、政令指定都市がそれぞれどの程度行っているか、そのデータが示されました。都道府県や政令指定都市は方針公開、試験結果公開どちらも少しずつ行っているのですが、府省等に関しては、過半数がまだどちらも対応できていないとのことです。
特に面白かったのは、清家さんのユニバーサルワークスで行っている自治体サイトの調査事例でした。
自治体サイトでもよく使われているカルーセルパネルで起こりやすい問題(一時停止ボタンがない、スクロールが速いなど)や、文字色と背景色とのコントラスト比が低い問題など、具体例を元に説明がありました。
この調査は今年で14回目とのことで、調査を開始したころ(まだJISの2004年版が出たばかり)に比べると、まだまだ上記のような問題は残っているものの、すごく全体的なレベルは上がっているとのことでした。
一方で、公式サイトのレベルは上がっているものの、シティプロモーションや移住のための魅力を伝える特設サイトなどは公式サイトとは違う表現になっているため、そういったサイトは比較的問題が多く、コンテンツによって差が生じてしまっていることは否めない、とのことでした。
民間企業については、方針公開、試験実施企業が増えているということで、三菱電機やヤマハ、Yahoo Japanなどが方針公開している事例などが紹介されました。
また、サイボウズやサイバーエージェントのようにWebアプリケーションやWebサービスを行っている会社も積極的に取り組み始めていて、勉強会を開いているなどの紹介がありました。
2.韓国モバイルアクセシビリティ 現況と展望
韓国のアクセシビリティ・ユーザビリティ専門コンサルタント会社 SNC Labの張善英(ジャン・ソンヨン)さんから、韓国のアクセシビリティ状況についてお話がありました。
韓国では、障害者差別禁止法という法律があり、これは日本の障害者差別解消法よりも厳しいもののようで、法律に違反した場合はきっちりと罰則があるようです(罰則があればいいってものではないですが)。ウェブのアクセシビリティを守らなければどうなるか?というと、差別をしたものに対し3年以下の懲役または3千万ウォン以下の罰金になる可能性があるということです。キビシイですね。
韓国ではアクセシビリティのガイドラインとして、
韓国型ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン2.1
モバイルアプリケーションのコンテンツアクセシビリティガイドライン2.0
という2つの国家標準があるとのことです。
また、ウェブアクセシビリティ専用の品質認証制度というものもあり、SNC Labのような会社による審査を受けて、品質の高いサイトであると認証されると、政府が公認したマークを表示させることができるそうです。張さんは、認証があればいいというものではないけど、マーク取得のために努力するのは悪いことではないと話していました。
その他、実際に韓国で起こったアクセシビリティの違反事例と、それを解消するための技術の適用事例について紹介がありました。例えば、現在モバイルアプリに関して、韓国ではスマホなどにインストールするネイティブアプリとモバイルのブラウザで使用するハイブリッド型のアプリが増えているそうです。ネイティブアプリにWebコンテンツを内蔵しているため、ネイティブとWebコンテンツの双方でアクセシビリティに配慮しなければなりません。スワイプバナー提供時、左右のボタンで制御機能を提供しなければならない、複数のクリック手段を提供する単純なクリックボタンを提供しなければならない、などの具体例紹介がありました。
最後は、SNC Labで行っているウェブアクセシビリティとユーザビリティの評価方法について説明があり、使用している自動チェックツールや評価報告書の例などを知ることができ、試験を行っている身としては大変興味深いものでした。
3.中国Webビジネスの現状と戦略
ITに関するコンサルティング企業である株式会社シドウの金度淵(キム・ドヨン)さんから、中国のWebビジネスとアクセシビリティの状況について説明がありました。金さんは韓国の方なのですが、中国の状況について詳しいとのことで、このセッションを担当されてました。
まず中国のWeb環境全体について、データに基づき説明がありました。
中国でのインターネット普及は、スタートは遅かったものの、ものすごいスピードで進んでいるとのことで、特にモバイルでのネット接続は6億人(!)に達しているとのことです。モバイルショッピングが進んでいて、お年玉もモバイル決済で行われていたりするそうです。
また、Googleを使うことのできない中国でWebサイトが検索エンジンに表示されるためには、以下の対応を行わなければダメだそうです(タイヘンですね)。
認証を受ける
きちんとウェブ標準に準拠して制作する(些細なミスで表示されないことがある)
Google Analyticsなどのモジュールは使わない
中国国産検索エンジン「百度(バイドゥ)」で検索される(サーバーも中国内にないとダメ)
で、中国のウェブ標準とアクセシビリティの動向ですが、日本や韓国のようなガイドラインや、それを後押しするための障害者差別解消法などは、現状ではまだないようです。
ただ、2010年以来W3Cに積極的に参加しており、2012年ごろから条例ができているということで、近々法律ができると予想されるそうです。
また、中国も日本と同じように高齢化の問題が進んでおり、現在65歳以上の人口は2億8000万人とのことです(規模が桁違いですネ)。シルバータウン(5000世帯くらい)がどんどんできていて、そのタウン向けのサイトでアクセシビリティを改善した事例があるとのことです。
また、アクセシブルでないサイトを公開していた鉄道会社を大学生が訴えて勝った事例もあったとのことです。
パネルディスカッション
パネルディスカッションというよりは、各国からそれぞれの国に対する質疑応答でした。メモできたかぎりの質問と回答を書いていきます(注意:十分に聞き取れていない箇所もあるので参考程度に)。
Q.韓国のガイドラインKWCAG2.1はWCAGと具体的にどのくらい違う?
A.韓国のガイドラインは日本と似ている。韓国の事情に合わせて改訂されている。
Q.日本では文字サイズ変更ボタンを使う人がいるのか?という議論がある。韓国での普及や議論はどうなっているか?
A1.韓国では機能のボタン提供は必須ではない。KWCAG2.1の中ではブラウザで拡大することはできるかが書かれている。韓国ではマークをもらえばいいという感覚。
A2.ちなみに日本でも必須ではない。また、アクセシビリティサポーテッドという考え方があり、各国のスクリーンリーダーやその他支援技術がどの程度対応しているかを調べている。
Q.韓国や中国でメジャーな支援技術は?
A1.中国の場合は、アプリは活発だが、日本、韓国と比べたら遅れている。中国で自前で開発したブラウザが20個以上ある。ウェブと関連する技術も高いレベルまでいけるんじゃないかと。時間はそんなにかからないと思う。
A2.韓国の場合は、「センスリーダー」というスクリーンリーダーがもっとも人気があり、視覚障害者の90%が使っている。ただすべての基準にあてはまるわけではない。IEがよく使われていて、公共機関やショッピングモールを利用する際に、IEを通じてプラグイン設置が必要になる。その他iPhoneのボイスオーバーもよく使われている。
Q.アクセシビリティはすべての人に対するユーザビリティともとれる。ユーザビリティへの対応とアクセシビリティへの対応は同じ部分もあると思うが、どのように対応している?
A.本来アクセシビリティがうまくいくにはUXまで包括が必要。韓国は認証マークがあるから活性化される部分がある。障害者の使用性や認証マークを受けるためのチェックリストに限るケースが多い。一緒に考慮することは難しい点がある。多くの企業はUXの重要性を認知している。UXとアクセシビリティをいっしょにチェックする。衝突する部分もあるんじゃないかとは思う。
Q.認証するにあたって、ばらつきが出てくるのではないか?
A.認証マークを受けたとしても、それをもらったといっても優れているとはいえないサイトもある。ただ、認証マークがない場合よりも、個人がチェックするしかないので、認証マークをもらった方がクオリティは高いのではないか。ばらつきについては、2つの評価をする。ヒューリスティック評価(すでに決まっている)とより詳細な評価項目が他にもある。3名がテストをして平均値を出して判別するということをしている。
Q.ユーザテストのタスクは分野ごとに決まったものがある?サイトごとにゼロベースでつくる?
A.タスクをつくる基準はサイトの目的別に違う。ショッピングモールの場合は、品物を購入するプロセスが違う。基準が認証���ークのポリシーの中に入っている。
Q.認定する会社の能力によっては足を引っ張る事例もあるとのことだが、そのあたりはどうなのか?
A1.全体的にレベルはあがった。たしかに評価機関によってばらつきはある。
A2.クライアントなのか開発ベンダーなのかで違うと思う。
Q.韓国の視覚障害者の方に人気のあるショッピングモールはありますか?
A1.韓国の視覚障害者に言われるのは、使用したいけど、使用が難しい。よく使っているショッピングモールはあまりない。決済プロセスが複雑。オンラインで利用していない。安いものを手に入れる。それで購買するケースが多い。よく言っているショッピングモールサイトに入り宅急便でもらうことが多い。オンラインショッピングで一番大事なのは商品の概要説明。だいたいテキストベースで提供されている。
A2.韓国のオンライン決済システムは複雑で難しい。IEに偏っている。中国の場合は視覚障害者がショッピングモールを使っている。アリペイでは音声で決済ができる。オフラインの店がなくなってきている。モバイルユーザー、障害者の割合が高い。
Q.認証をとることによるメリットは?取ることで嬉しいとか、どういうモチベーションになるのか?
A1.公式的に認証をもらったとして、特別なものはない。韓国の大手が認証をもらう大きな理由は、社会貢献実現。義務的な部分もある。
A2.民間企業にメリットを与えるのは、他のことで問題を起こす可能性がある。訴訟が起きたりしたときに認証制度の有効期間、1年以内に努力を尽くしているという、逆の方向でのメリットがある。訴訟があるときに改善をしているということができる、というメリットがある。
Q.ウェブ制作会社のコミュニティはあるのか?
A.今日集まっている団体。いろいろな悩みを共有している。毎年大きなカンファレンスが開かれている。
Q.アクセシビリティをやろうとする人の絶対数は多くない。アクセシビリティを広めるモチベーションを高めるために、ヒントがあると嬉しい
A1.世界的に障害者の方はだいたい12%。オンラインでコンテンツサービスが必要とする人は、非障害者より多い。企業の観点から見ると、マーケティング担当者が、潜在的な10%のために売上の50%使わなければならない。 2番目としてはウェブサイト上でのコンテンツが普及できる可能性のあるものなのか。 3番目としては企業の立場として社会に貢献する。韓国でこういう話をよくします。10人の中で1人の障害者はあまり見えないかもしれないが、我々が属しているオンラインでは差別をなくすためにやるべきだという意識を持っている。強制とか義務ではなく。
A2.付け足すと、年にアクセシビリティ企業をランキングしてメディアに流されている。メディアの中でも興味を持っている人がいるのでやっている。
Q.韓国のサイトでちゃんとしているサイトは?
A1.主な公共機関は95%と順守率が高い。公共機関や大企業はよく守っている。負荷ではなくベーシックになるためにがんばっていきたい。
A2.サムスンの場合、基準を満たすために、自社で持っているガイドラインを設定している。オープンする前に必ずチェックをして修正・改善をしてからリリースをするプロセスを大事にしている。
所感
アクセシビリティに対する「公的な」取り組みの進み具合で言えば、法律に罰則規定があり、アクセシビリティ専用の認定制度が整っている韓国が一番進んでいて、それから日本、中国が続くという感じかな、という印象でした。
ただ、張さんが言っていたように認定制度とUXの表現がぶつかる場合も多々あるんじゃないかという懸念はあります。
例えば動画コンテンツについて言うと、WCAG2.0の適合レベルAAの達成基準を満たすためには字幕+状況を説明する音声解説(副音声)を入れる必要がありますが、けっこうハードルが高く、日本ではアクセシビリティ確保の対象範囲外にしているケースが多いですし、国によっては除外しているところもあるようです。
そういうことを考えるべきは公的機関よりも民間なのかな、公的機関にはやっぱりある程度強制力のある制度の方がいいのかな、と色々ジレンマは感じます。なかなかこのあたりは明確な答えがなく、いつも悩むところではあります。
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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“accessibility“の”a“と“y“の間に11の文字があるから”a11y“
What does "a11y" stand for?
If you’re reading through accessibility stuff, you sometimes run across the tag “a11y.” Looks rather like “ally,” but I soon learned it stood for accessibility….I just didn’t ask myself why. Since I looked it up and found out, I’m sharing it here.
“Accessibility” has 13 letters. Takes up a lot of space as a Twitter hashtag. OTOH, “a11y’ has 4. The "11” in the middle, represents the eleven subtracted letters. Rather clever, very helpful for anything with a character limit.
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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南海・和歌山市駅前の交差点で見つけた、その名も「喜の国信号」。信号が地面に埋め込まれたような感じ。横断歩道の手前に設置されています。補助的に使用されているようです。
調べたところ、腰の曲がった高齢者や視力の弱い人のために設置されたもので、和歌山駅周辺にしかないそう。これを発案したのはなんと小学生らしい! こういう発想こそがユニバーサルデザインなんですよね。
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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障害者にも自由に運転する喜びを、 画期的な車��子専用車 | Park blog JAF Mate Park
Elbee, automobile Hi-Tech per disabili - hi-tech https://www.youtube.com/watch?v=W6FWq02Z4u4
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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辛い
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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Easy access to online porn is 'damaging' men's health, says NHS therapist
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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色々な点ですごく共感する。
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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知らなかった。
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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考えてみれば当たり前のこと。
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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綺麗だ。
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a11ytimes-blog · 8 years ago
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うん、変じゃない。
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